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特表2022-532162移植片対宿主病の処置のためのβ-ラクタマーゼ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】移植片対宿主病の処置のためのβ-ラクタマーゼ組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20220706BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220706BHJP
   C12N 9/86 20060101ALN20220706BHJP
【FI】
A61K38/46 ZNA
A61P37/06
A61K47/02
A61K47/04
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/08
C12N9/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566450
(86)(22)【出願日】2020-05-05
(85)【翻訳文提出日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2020031429
(87)【国際公開番号】W WO2020227262
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/843,849
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516293727
【氏名又は名称】シンセティック・バイオロジクス・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カレコ、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】コネリー、シーラ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブリンク、マルセル、アール.エム.
(72)【発明者】
【氏名】ペレド、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ダ シルヴァ、マリナ、ブルゴス
【テーマコード(参考)】
4B050
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4B050CC01
4B050CC03
4B050DD02
4B050LL01
4C076AA12
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA95
4C076BB01
4C076CC50
4C076DD22Z
4C076DD23Z
4C076FF25
4C076FF61
4C076FF68
4C084AA02
4C084BA44
4C084DC22
4C084MA16
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB081
(57)【要約】
本発明は、部分的には、aGVHD並びにVREの定着及び/又はVREの血流感染症などのallo-HCTレシピエントにおけるβ-ラクタム系抗生物質の静脈内使用に関連する合併症の発生率及び/又は重症度を、β-ラクタマーゼ剤を用いて低減させる方法及び組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のβ-ラクタマーゼ剤を投与することを含む、移植片対宿主病(GVHD)の発生率及び/又は重症度を、その低減を必要とする対象において低減させる方法。
【請求項2】
前記β-ラクタマーゼ剤は配列番号1又は配列番号6と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記β-ラクタマーゼ剤は配列番号1又は配列番号6のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象は移植レシピエントである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対象は同種造血幹細胞移植のレシピエントである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記対象は、骨髄細胞、末梢血細胞、又は臍帯細胞のレシピエントである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記対象はβ-ラクタム系抗生物質が静脈内投与されるか、又は静脈内投与されている、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記β-ラクタム系抗生物質は、ペニシリン(例えば、ピペラシリン/タゾバクタム)、セファロスポリン(例えば、セフェピム)、及び/又はカルバペネム(例えば、メロペネム、イミペネム/シラスタチン)から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記GVHDは急性である、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記β-ラクタマーゼは移植の前に投与される、請求項4~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記β-ラクタマーゼは移植に続いて投与される、請求項4~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記対象において腸のディスバイオシス(dysbiosis)が低減又は除去される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象の腸内マイクロバイオーム内の新たな定着(colonization)が予防される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象の腸内マイクロバイオーム内の定着の拡大が予防される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
腸内マイクロバイオームの単一優占化(monodomination)が予防される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記マイクロバイオームの定着、定着の拡大、又は単一優占化は、1種類又は複数種類の多剤耐性生物を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1種類又は複数種類の多剤耐性生物は、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、バチルス属(Bacillus)(例えば、バチルス・セレウス(Bacillus cereus))、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrelia)、ブルセラ属(Brucella)、バークホルデリア属(Burkholderia)、C・デフィシル(C. difficile)、カンピロバクター属(Campylobacter)(例えば、カンピロバクター・フィタス(Campylobacter fetus)及びカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni))、クラミジア属(Chlamydia)、クラミドフィラ属(Chlamydophila)、クロストリジウム属(Clostridium)(例えば、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリディオイデス・デフィシル(Clostridioides difficile)(旧名クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile))、及びクロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens))、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、コクシエラ属(Coxiella)、エーリキア属(Ehrlichia)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(例えば、カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)及び基質拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科(ESBL-E))、フルオロキノロン耐性腸内細菌科、腸球菌属(Enterococcus)(例えば、バンコマイシン耐性腸球菌属菌種、基質拡張型β-ラクタム耐性腸球菌(ESBL)、及びバンコマイシン耐性腸球菌(VRE))、大腸菌属(Escherichia)(例えば、腸管凝集性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、腸管病原性大腸菌、腸管毒素原性大腸菌(例えば、これらに限定されないが、LT及び/又はST)、大腸菌0157:1-17、及び多剤耐性菌大腸菌)、フランシセラ属(Francisella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)(例えば、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))、クレブシエラ属(Klebsiella)(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiellia pneumonia)及び多剤耐性菌クレブシエラ)、レジオネラ属(Legionella)、レプトスピラ属(Leptospira)、リステリア属(Listeria)(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Lysteria monocytogenes))、モルガネラ属(Morganella)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ナイセリア属(Neisseria)、オリエンティア属(Orientia)、プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、抗生物質耐性プロテオバクテリア、プロテウス属(Proteus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)(例えば、サルモネラ・パラチフィ(Salmonella paratyphi)、サルモネラ属菌種、及びサルモネラ・チフィ(Salmonella typhi))、シゲラ属(Shigella)(例えば、シゲラ属菌種)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)及びスタフィロコッカス属菌種)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、トレポネーマ属(Treponema)、ビブリオ属(Vibrio)(例えば、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・パラヘモリチカス(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ属菌種、及びビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus))、並びにエルシニア属(Yersinia)(例えば、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica))から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記マイクロバイオームの定着、定着の拡大、又は単一優占化は、腸球菌種の異常増殖を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロバイオームの定着、定着の拡大、又は単一優占化は、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
GVHDの処置のための治療薬剤の用量又は投与の長さ若しくは投与頻度が低減される、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
GVHDの処置のための前記治療薬剤はステロイドである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
GVHDの処置のための前記治療薬剤はメチルプレドニゾロン又はプレドニゾンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記β-ラクタマーゼ剤は小腸中で放出される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記β-ラクタマーゼ剤は、十二指腸、空腸、回腸、及び/又は回盲部のうちの1又は複数で放出される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記β-ラクタマーゼ剤は大腸中で放出される、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記β-ラクタマーゼ剤は、盲腸、結腸の上行部、横行部、下行部、又はS状部、及び直腸のうちの少なくとも1又は複数で放出される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記β-ラクタマーゼ剤は、胃液中で実質的に安定である放出調節コーティングを用いて製剤化される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記β-ラクタマーゼ剤は、pH依存性の溶解性を有する放出調節コーティングを用いて製剤化される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記β-ラクタマーゼ剤は、時間依存的浸食プロファイルを有する放出調節コーティングを用いて製剤化される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記β-ラクタマーゼ剤は、腸内細菌叢に存在する微生物の酵素により分解される放出調節コーティングを用いて製剤化される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記β-ラクタマーゼ剤はカプセル剤又は錠剤として製剤化される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記β-ラクタマーゼ剤は経口投与用に製剤化される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
有効量のβ-ラクタマーゼ剤を投与することを含む、移植レシピエントである対象において1又は複数の多剤耐性病原菌による定着、定着の拡大、若しくは単一優占化、及び/又は感染の発生を予防又は低減する方法。
【請求項34】
前記β-ラクタマーゼ剤は配列番号1又は配列番号6と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記β-ラクタマーゼ剤は配列番号1又は配列番号6のアミノ酸配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記対象は、長期に及ぶ入院期間を経験したか、及び/又は前記定着及び/又は感染による死亡リスクが上昇している、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記対象は同種造血幹細胞移植のレシピエントである、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記対象は、骨髄細胞、末梢血細胞、又は臍帯細胞のレシピエントである、請求項33~37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記対象はβ-ラクタム系抗生物質が静脈内投与されるか、又は静脈内投与されている、請求項33~38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記β-ラクタム系抗生物質は、ペニシリン(ピペラシリン/タゾバクタム)、セファロスポリン(セフェピム)、イミペネム/シラスタチン、及びメロペネムから選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記β-ラクタマーゼは移植の前に投与される、請求項33~40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記β-ラクタマーゼは移植に続いて投与される、請求項36~41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記対象において腸のディスバイオシスが低減又は除去される、請求項33~42のいずれか一項に記載の方法
【請求項44】
前記対象の腸内マイクロバイオーム内の新たな定着(colonization)が予防される、請求項33~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記対象の腸内マイクロバイオーム内の定着の拡大が予防される、請求項33~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
腸内マイクロバイオームの単一優占化(monodomination)が予防される、請求項33~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記マイクロバイオームの定着、定着の拡大、又は単一優占化は、1又は複数の多剤耐性生物を含む、請求項33~46のいずれか一項に記載の方法
【請求項48】
前記1又は複数の多剤耐性生物は、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、バチルス属(Bacillus)(例えば、バチルス・セレウス(Bacillus cereus))、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrelia)、ブルセラ属(Brucella)、バークホルデリア属(Burkholderia)、C・デフィシル(C. difficile)、カンピロバクター属(Campylobacter)(例えば、カンピロバクター・フィタス(Campylobacter fetus)及びカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni))、クラミジア属(Chlamydia)、クラミドフィラ属(Chlamydophila)、クロストリジウム属(Clostridium)(例えば、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリディオイデス・デフィシル(Clostridioides difficile)(旧名クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile))、及びクロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens))、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、コクシエラ属(Coxiella)、エーリキア属(Ehrlichia)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(例えば、カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)及び基質拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科(ESBL-E))、フルオロキノロン耐性腸内細菌科、腸球菌属(Enterococcus)(例えば、バンコマイシン耐性腸球菌属菌種、基質拡張型β-ラクタム耐性腸球菌(ESBL)、及びバンコマイシン耐性腸球菌(VRE))、大腸菌属(Escherichia)(例えば、腸管凝集性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、腸管病原性大腸菌、腸管毒素原性大腸菌(例えば、これらに限定されないが、LT及び/又はST)、大腸菌0157:1-17、及び多剤耐性大腸菌)、フランシセラ属(Francisella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)(例えば、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))、クレブシエラ属(Klebsiella)(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiellia pneumonia)及び多剤耐性菌クレブシエラ)、レジオネラ属(Legionella)、レプトスピラ属(Leptospira)、リステリア属(Listeria)(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Lysteria monocytogenes))、モルガネラ属(Morganella)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ナイセリア属(Neisseria)、オリエンティア属(Orientia)、プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、抗生物質耐性プロテオバクテリア、プロテウス属(Proteus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)(例えば、サルモネラ・パラチフィ(Salmonella paratyphi)、サルモネラ属菌種、及びサルモネラ・チフィ(Salmonella typhi))、シゲラ属(Shigella)(例えば、シゲラ属菌種)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)及びスタフィロコッカス属菌種)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、トレポネーマ属(Treponema)、ビブリオ属(Vibrio)(例えば、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・パラヘモリチカス(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ属菌種、及びビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus))、並びにエルシニア属(Yersinia)(例えば、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica))から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
VREによる腸管定着が低減される、請求項33~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
VREによる血流感染症が低減される、請求項33~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
VREの定着及び/又は感染症の処置のための治療薬剤の用量又は投与の長さ若しくは投与頻度が低減される、請求項33~50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)による腸管定着が低減される、請求項33~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
CREによる血流感染症が低減される、請求項33~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
CREの定着及び/又は感染症の処置のための治療薬剤の用量又は投与の長さ若しくは投与頻度が低減される、請求項52~53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記β-ラクタマーゼ剤は小腸内で放出される、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記β-ラクタマーゼ剤は、十二指腸、空腸、回腸、及び/又は回盲部のうちの1又は複数で放出される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記β-ラクタマーゼ剤は大腸で放出される、請求項33~54のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記β-ラクタマーゼ剤は、盲腸、結腸の上行部、横行部、又はS状部、及び直腸のうちの1又は複数で放出される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記β-ラクタマーゼ剤は、胃液中で実質的に安定である放出調節コーティングを用いて製剤化される、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記β-ラクタマーゼ剤は、pH依存的性の溶解性を有する放出調節コーティングを用いて製剤化される、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記β-ラクタマーゼ剤は、時間依存的浸食プロファイルを有する放出調節コーティングを用いて製剤化される、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記β-ラクタマーゼ剤は、腸内細菌叢に存在する微生物の酵素により分解される放出調節コーティングを用いて製剤化される、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記β-ラクタマーゼ剤はカプセル剤又は錠剤として製剤化される、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記β-ラクタマーゼ剤は経口投与用に製剤化される、請求項1~63のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的には、移植片対宿主病(GVHD)の発生率及び/又は重症度を低減させる方法及び組成物に関する。特に、本発明は、部分的には、1種類又は複数種類のβ-ラクタマーゼ剤を用いてGVHDの発生率及び/又は重症度を低減させるための方法及び組成物を提供する。
【0002】
政府の利益
本発明は、米国国立衛生研究所による助成番号CA008748の政府援助の下でなされたものである。米国政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
関連出願の相互参照
本願は、2019年5月6日に出願された米国仮特許出願第62/843,849号に基づく優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0004】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。配列表のコンピュータ可読形式のコピー(ファイル名:「SYN-043PC_ST25.txt」、作成日:2020年5月4日、ファイルサイズ:12,140バイト)。
【背景技術】
【0005】
同種造血幹細胞移植(allo-HCT)は、白血病及びリンパ腫に対する根治的治療であり得、年間18,000人の患者を治療するために用いられる。しかしながら、移植片対宿主病(GVHD)は、allo-HCTレシピエントの20~50%に発症する主要合併症である。約半数のGVHD症例がステロイド応答性である。ステロイド抵抗性GVHD、及び特に胃腸(GI)GVHDは、重篤な問題であり、移植後死亡率の約20%の割合を占める。実際、マウスでの研究は、GVHDを有するマウスを抗生物質で処置することにより結腸の保護粘液内層が失われ、腸管バリア機能障害がもたらされることをさらに実証している。
【0006】
特に、恐らく発熱、特に、発熱性好中球減少症の経験に基づく治療に頻繁に必要とされる広域抗生物質に起因して、腸管細菌叢の重度のディスバイオシス(dysbiosis)がallo-HCT患者において観察される。結果として、腸管細菌叢は実際にはallo-HCT後の感染及びGVHDのリスクを調整し得ると考えられている。
【0007】
現在、GI GVHD合併症の軽減を目的とした有効な治療はほとんどない。したがって、GVHDを予防又は軽減するための新たな戦略が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、とりわけ、急性GVHD(aGVHD)及び/又はバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の定着及び/又は感染など、allo-HCTレシピエントへのβ-ラクタム系抗生物質の静脈内(IV)投与に関連する合併症の発生率及び/又は重症度を低減させる方法及び組成物を提供する。ある態様では、本発明は、allo-HCTレシピエントへのβ-ラクタム系抗生物質の静脈内(IV)投与に関連する合併症の発生率及び/又は重症度を、その低減を必要とする対象にβ-ラクタマーゼ剤を投与することにより低減させる方法を提供する。別の態様では、aGVHDの発生率及び/又は重症度を、その低減を必要とする対象に本明細書に記載されるβ-ラクタマーゼ剤を投与することにより低減させる方法を意図している。他の態様では、VREの定着及び/又はVREの血流感染症を、その予防を必要とする対象に本明細書に記載されるβ-ラクタマーゼ剤を投与することにより予防する方法を意図している。種々の実施形態では、対象は、β-ラクタム系抗生物質が静脈内(IV)投与されるか又は静脈内(IV)投与されている。
【0009】
いくつかの実施形態では、aGVHD及び/又はVREの定着及び/又はVREの血流感染症など、allo-HCTに関連する合併症の発生率及び/又は重症度を低減としては、マイクロバイオームに対する変化を防止することが挙げられる。例えば、本発明の方法は、微生物の多様性の喪失及び任意の所与の細菌株による異常増殖に起因するマイクロバイオームの単一優占化(monodomination)の予防及び/又は減弱をもたらし得る。
【0010】
種々の実施形態では、aGVHDの発症リスクがある対象は移植レシピエントである。他の実施形態では、対象はallo-HCTのレシピエントである。いくつかの実施形態では、対象は、骨髄細胞、末梢血細胞、及び臍帯血細胞のうちの1又は複数のレシピエントである。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は移植の前に投与される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は移植に続いて投与される。
【0012】
種々の実施形態では、本明細書に記載される製剤及び方法は胃腸(GI)管において排他的に機能するので、β-ラクタマーゼ剤への全身暴露を回避又は軽減し、且つその潜在的な全身作用を最小化しながら特異的な送達をもたらす。種々の実施形態では、β-ラクタマーゼ剤は腸管の1又は複数の領域へ放出される。ある実施形態では、β-ラクタマーゼ剤は小腸中へ放出される。別の実施形態では、β-ラクタマーゼ剤は大腸中へ放出される。
【0013】
種々の実施形態では、マイクロバイオーム保護剤(例えば、β-ラクタマーゼ剤)は、aGVHDを予防する免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、メトトレキサート)、抗体、及びその他の免疫調整剤を含むがこれらに限定されない追加の治療薬剤又は予防剤と組み合わせて対象に投与されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】500mg/kgのピペラシリン/タゾバクタムの1日に2回、2日間の皮下投与、及びP3Aの液体製剤(例えば、リン酸緩衝食塩水中のβ-ラクタマーゼ)の1日に2回、2日間の強制経口投与を受けたマウスにおいて、ピペラシリンの量(1gの糞便あたりのμg)が減少したことを示す図である。棒グラフの左端のバーは対照マウスのコホートからのデータに対応し、棒グラフの中央のバーはピペラシリン/タゾバクタムノンの投与を受けたがP3A(例えば、リン酸緩衝食塩水溶液中のβ-ラクタマーゼ)の投与を受けなかったマウスの第1コホートからのデータに対応し、棒グラフの右端のバーはピペラシリン/タゾバクタムとP3A(例えば、リン酸緩衝食塩水溶液中のβ-ラクタマーゼ)の両方の投与を受けたマウスの第2コホートからのデータに対応する。
図2】ピペラシリン/タゾバクタムの単独での投与によりマウス糞便中のファーミキューテス(Firmicutes)の存在量が減少し、ピペラシリン/タゾバクタムがP3Aと共に投与された場合にファーミキューテスの倍率存在量(fold abundance)が回復し保護されたことを示す図である。棒グラフの左端のバーはピペラシリン/タゾバクタムもβ-ラクタマーゼも投与されなかった対照マウスのコホートからのデータに対応し、左から2番目のバーはP3Aのみを投与されたマウスのコホートからのデータに対応し、右から2番目のバーはピペラシリン/タゾバクタムを投与されたがP3Aの液体製剤(例えば、リン酸緩衝食塩水溶液中のβ-ラクタマーゼ)は投与されなかったマウスの第1コホートからのデータに対応し、棒グラフの右端のバーはピペラシリン/タゾバクタムとP3A(例えば、リン酸緩衝食塩水溶液中のβ-ラクタマーゼ)の両方を投与されたマウスの第2コホートからのデータに対応する。
図3】ピペラシリン/タゾバクタムによりマウス糞便中に存在する全細菌コピー数が減少し、この減少はP3Aと共にピペラシリン/タゾバクタムが投与された場合に低減されたことを示す図である。棒グラフの左端のバーはピペラシリン/タゾバクタムもβ-ラクタマーゼも投与されなかった対照マウスのコホートからのデータに対応し、左から2番目のバーはP3Aのみを投与されたマウスのコホートからのデータに対応し、右から2番目のバーはピペラシリン/タゾバクタムを投与されたがP3Aの液体製剤(例えば、リン酸緩衝食塩水溶液中のβ-ラクタマーゼ)は投与されなかったマウスの第1コホートからのデータに対応し、棒グラフの右端のバーはピペラシリン/タゾバクタムとP3A(例えば、リン酸緩衝食塩水溶液中のβ-ラクタマーゼ)の両方を投与されたマウスの第2コホートからのデータに対応する。
図4】骨髄移植(BMT)後の30日目をエンドポイントとする生存試験の結果を示す図である。データは、死亡率低下の観点から、骨髄移植に関連する、抗生物質により悪化したGVHDが、P3A投与によって低減されたことを示す。BMは骨髄細胞のみを移植されたコホートを指す。BM+Tは骨髄細胞及び脾臓Tリンパ細胞を移植されたコホートを指す。
図5】16S配列解析の結果を示す図であり、ピペラシリン/タゾバクタム(Zosyn)及びSYN-004(P3A)の両方を投与されたマウスからの糞便試料は、ピペラシリン/タゾバクタムが単独で投与されたマウスからの糞便試料と比較して、腸球菌属(Enterococcus)の単一優占化の減少を示した。生理食塩水群はクロストリジウム属(Clostridium)として最も大きなバーを示し、Zosyn群は腸球菌属として最も大きなバーを示し、Zosyn+SYN-004群はクロストリジウム属として最も大きなバーを示す。
図6】16S配列決定解析の結果を示す図であり、ピペラシリン/タゾバクタム(Zosyn;ZOと省略)とSYN-004(P3A;Blactと省略)の両方を投与されたマウスからの糞便試料は、ZOが単独で投与されたマウスからの糞便試料と比較して腸球菌属(Enterococcus)の単一優占化の減少を示した。バーの空欄は特定の試料が増幅されなかったことを示す。BM(骨髄)群においては、生理食塩水コホートはクロストリジウム属(Clostridium)として最も大きなバーを示し、ZOコホートは腸球菌属として最も大きなバーを示し、ZO+Blactコホートは左から1つ目と2つ目のバーにおいては腸球菌属として、左から3つ目と4つ目のバーにおいてはクロストリジウム属として最も大きなバーを示す。BM(骨髄)+T細胞群においては、生理食塩水コホートはクロストリジウム属として最も大きなバーを示し、ZOコホートは腸球菌属として最も大きなバーを示し、ZO+Blactコホートはクロストリジウム属として最も大きなバーを示す。
図7】イミペネム+シラスタチン単独での存在下と比較して、イミペネム+シラスタチンと10mg/kg用量及び50mg/kg用量のP2Aとの両方の存在下でファーミキューテスの倍率存在量(fold abundance)が回復し保護されたことを示す図である。
図8】16S配列解析の結果を示す図であり、イミペネム+シラスタチンとSYN-006(P2A;10mg/kg用量及び50mg/kg用量)の両方を投与されたマウスからの糞便試料は、イミペネム+シラスタチンのみを投与されたマウスからの糞便試料と比較して、腸球菌属(Enterococcus)の単一優占化の減少を示した。イミペネム群においては、抗生物質前(「pre-abx」)のコホートはラクトバチルス属(Lactobacillus)として最も大きなバーを示し、抗生物質後(「post-abx」)のコホートは腸球菌属として最も大きなバーを示す。イミペネム+P2A(1mg)群においては、抗生物質前(「pre-abx」)のコホートはクロストリジウム属及びラクトバチルス属として最も大きなバーを示し、抗生物質後(「post-abx」)のコホートは腸球菌属として最も大きなバーを示す。イミペネム+P2A(10mg)群においては、抗生物質前(「pre-abx」)のコホートはラクトバチルス属として最も大きなバーを示し、抗生物質後(「post-abx」)のコホートはクロストリジウム属として最も大きなバーを示す。イミペネム+P2A(50mg)群においては、抗生物質前(「pre-abx」)のコホートはラクトバチルス属として最も大きなバーを示し、抗生物質後(「post-abx」)のコホートはラクトバチルス属及びクロストリジウム属として最も大きなバーを示す。
図9】イミペネム+シラスタチン単独で、又は1mg/kg、10mg/kg、及び50mg/kgの用量でP2Aと共に処置された場合のマウス糞便におけるエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の相対的存在量を示す図である。
図10】P2Aが投与された場合の骨髄移植後の40日目をエンドポイントとする生存試験の結果を示す図である。「BM」は骨髄細胞のみを移植されたコホートを指す。「BM+T」は骨髄細胞及び脾臓Tリンパ細胞を移植されたコホートを指す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、部分的には、同種造血幹細胞移植(allo-HCT)へのβ-ラクタム系抗生物質の静脈内投与に関連する、急性移植片対宿主病(aGVHD)並びにバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の定着及び/又はVREの血流感染症を含むがこれらに限定されない種々の合併症の発生率及び/又は重症度を低減させる組成物及び方法に関する。ある態様では、本発明は、allo-HCTレシピエントへのβ-ラクタム系抗生物質の静脈内投与に関連する合併症の発生率及び/又は重症度を、その低減を必要とする対象に本明細書に記載されるβ-ラクタマーゼ剤を投与することにより低減させる方法を提供する。種々の態様では、対象は、β-ラクタム系抗生物質が静脈内(IV)投与されるか、又は静脈内(IV)投与されている。
【0016】
別の態様では、aGVHDの発生率及び/又は重症度を、その低減を必要とする対象に本明細書に記載されるβ-ラクタマーゼ剤を投与することにより低減させる方法を意図している。他の態様では、VREの定着及び/又はVREの血流感染症を、その予防を必要とする対象に本明細書に記載されるβ-ラクタマーゼ剤を投与することにより予防する方法を意図している。種々の実施形態では、β-ラクタマーゼ剤は、腸管の1又は複数の領域へ放出され、そこで細菌量(bacterial load)を維持及び/又は調節し、細菌株の喪失を予防することにより、マイクロバイオームの多様性を保存し、マイクロバイオームの単一優占化を予防する。
【0017】
β-ラクタマーゼ剤
いくつかの態様では、本発明は、例えばallo-HCTレシピエントへのβラクタム系抗生物質の静脈内投与に関連する、aGVHD並びにVREの定着及び/又はVREの血流感染症を含むがこれらに限定されない合併症の発生率及び/又は重症度を低減させるための、1種類又は複数種類のβ-ラクタマーゼの使用に関する。
【0018】
本明細書では、β-ラクタマーゼは、β-ラクタムを加水分解する酵素を指す。β-ラクタム環のアミド結合の加水分解により、抗菌剤が生物学的に不活性化される。本明細書では、クラスA β-ラクタマーゼ(Amblerの分類)は、β-ラクタマーゼの加水分解が活性化部位(通常はαヘリックス中の70番目のアミノ酸)におけるセリンにより仲介されるセリンβ-ラクタマーゼを指す。クラスA β-ラクタマーゼとしては、これらに限定されないが、Len-1、SHV-1、TEM-1、PSE-3/PSE-3、ROB-1、5/Bの1型、569/Hの1型、及び569/Hの3型などのバチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・アントラシス菌種(Bacillus anthrasis sp)、PenPなどのバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・ウェイヘンステファネンシス(Bacillus weihenstephanensis)、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、PC1、Sme-1、NmcA、IMI型、PER型、VEB型、GES型、KPC型、CME-、及びCTX-M型のβ-ラクタマーゼが挙げられる。
【0019】
種々の態様では、本発明において有用なβ-ラクタマーゼは、配列番号1のアミノ酸配列を有する(すなわち、その内容全体が本明細書に参照により取り込まれるWO2011/148041の「SYN-004」、「ribaxamase」、又は「P3A」)。この配列を変異させて、本発明の方法により利用され得るβ-ラクタマーゼ誘導体を作製してもよい。
【0020】
【化1】
【0021】
いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼは、配列番号1と約60%以上(例えば、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、配列番号1は、その配列の最初の残基の前にMet及び/又はThrを有していてもよい。種々の実施形態では、Metは切断されてもよい。本明細書に記載されるように、最初の残基の前にMet及び/又はThrを含む配列を変異させて、β-ラクタマーゼ誘導体を作製してもよい。いくつかの実施形態では、先行Thrにより、他の先行アミノ酸(例えば、Lys)と比較して、酵素の安定性の増大がもたらされ得る。例えば、そのような残基により、アミノペプチダーゼに対する抵抗性の増大がもたらされ得る。
【0023】
本明細書では、配列番号2としてのSYN-004の核酸配列も提供される。
【0024】
【化2】
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号2と約60%以上(例えば、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%)の配列同一性を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼ、例えば、SYN-004は、実質的なセフトリアキソン加水分解活性を有する。いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼ、例えば、SYN-004は、天然のβ-ラクタマーゼであるP1Aよりも実質的により効率的にセフトリアキソンを加水分解する。
【0027】
例示的な実施形態では、β-ラクタマーゼは、配列番号1と60%以上の配列同一性を有し、Amblerの分類が、232番目にアラニン(A)以外の疎水性残基、237番目にアラニン(A)以外の親水性残基、238番目にアラニン(A)以外の疎水性残基、240番目にセリン(S)以外の親水性残基、及び276番目にアスパラギン酸(D)以外の親水性残基である、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、232番目のアラニン(A)以外の疎水性残基はグリシン(G)である。いくつかの実施形態では、237番目のアラニン(A)以外の親水性残基はセリン(S)である。いくつかの実施形態では、238番目のアラニン(A)以外の疎水性残基はグリシン(G)である。いくつかの実施形態では、240番目のセリン(S)以外の親水性残基はアスパラギン酸(D)である。いくつかの実施形態では、276番目のアスパラギン酸(D)以外はアスパラギン(N)である。いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼは、A232G、A237S、A238G、S240D、及びD276Nのうちの1又は複数を含む。いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼは、A232G、A237S、A238G、S240D、及びD276Nの全てを含み、その配列は配列番号3であり、すなわち、P4Aである。いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼ及び/又は医薬組成物は、配列番号3と90%以上、95%、97%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0028】
【化3】
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明のβ-ラクタマーゼポリペプチドは、配列番号3と約60%以上(例えば、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0030】
配列番号4は配列番号3に由来するものであり、シグナル及びQASKTアミノ酸をさらに含む(コーティング領域は下線で示される)。
【0031】
【化4】
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明のβ-ラクタマーゼポリペプチドは、配列番号4と約60%以上(例えば、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼ及び/又は医薬組成物は、配列番号4と90%以上、95%、97%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0034】
例示的な本発明のポリペプチドは配列番号5であり、これはA232G変異、A237S変異、A238G変異、S240D変異、及びD276N変異、Hind III部位(太字のAAGCTT)、及び追加のKアミノ酸とTアミノ酸の完全ヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態では、配列番号5の下線が付された部分は除外されて取り除かれている。リーダー及び追加のヌクレオチド(Hind III部位、及びアミノ酸配列QASKTの追加のためのKアミノ酸とTアミノ酸)は下線で示される。
【0035】
【化5】
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号5(下線が付された部分の有無にかかわらず)と約60%以上(例えば、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%)の配列同一性を有する。
【0037】
種々の態様では、β-ラクタマーゼポリペプチドは、配列番号6(すなわち、P2A)の配列を有するか、又は配列番号6の1又は複数の変異に由来する。
【0038】
【化6】
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明のβ-ラクタマーゼポリペプチドは、配列番号6と約60%以上(例えば、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼ及び/又は医薬組成物は、配列番号6と90%以上、95%、97%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0041】
P1A(すなわち、276番目がDでありNでないこと以外は配列番号1)、P2A、P3A/SYN-004、及びP4A、並びにこれらの誘導体を含むβ-ラクタマーゼの追加の配列は、例えば、その内容全体が本明細書に参照により取り込まれるWO2011/148041及びPCT/US2015/026457に記載される。
【0042】
さらに、β-ラクタマーゼポリペプチドは、配列番号1の最初の残基から追加の上流残基を含んでいてもよい(例えば、penP及びpenP1のエクソラージ型及びエクソスモール型を含み、その内容全体が本明細書に参照により取り込まれるJBC258(18):11211、1983参照)。さらに、β-ラクタマーゼポリペプチドはまた、配列番号1の最後の残基から追加の下流残基を含んでいてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼは、配列番号1又は配列番号2に対して、1または複数(例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、又は約10)の変異を含む。いくつかの実施形態において、β-ラクタマーゼは、SYN-004のバリアント、例えば、配列番号1又は配列番号2と95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有する配列を含む。種々の実施形態では、配列番号1の1または複数のアミノ酸は、親水性アミノ酸(例えば、アルギニン(R)またはリシン(K)などの極性で正電荷の親水性アミノ酸;アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、プロリン(P)、及びシステイン(C)などの極性で中性電荷の親水性アミノ酸;アスパラギン酸(D)若しくはグルタミン酸(E)などの極性で負電荷の親水性アミノ酸、又はヒスチジン(H)などの芳香族性の極性で正電荷の親水性アミノ酸)、若しくは疎水性アミノ酸(例えば、グリシン(G)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、又はバリン(V)などの疎水性脂肪族アミノ酸、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、又はチロシン(Y)などの疎水性芳香族アミノ酸)、又は非古典的アミノ酸(例えば、セレノシステイン、ピロリジン、N-ホルミルメチオニン β-アラニン、GABA及びδ-アミノレブリン酸、4-アミノ安息香酸(PABA)、一般的アミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナーアミノ酸(例えばβメチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸)、及び一般的なアミノ酸類似体)などの天然由来のアミノ酸で置換される。いくつかの実施形態では、配列番号1は、配列の最初の残基の前にMet及び/又はThrを有していてもよい。これらの残基は、上記と同様に変異されていてもよい。
【0044】
例示的な変異としては以下が挙げられる。
【表1】
【0045】
これらの突然変異体の全てにおいて、残基の番号は配列番号1に対応する。これらの残基の番号は、例えば、BLAST(Basic Local Alignment Search Tools)またはFASTA(FAST-AII)の使用により、任意の従来の生物情報学的方法の利用を通して、Ambler番号(その内容が参照により本明細書に取り込まれるAmbler et al.,1991,“A standard numbering scheme for the Class A β-lactamases”,Biochem.J.276:269-272)に変換されてもよい。
【0046】
様々な実施形態において、本発明で用いられるβ-ラクタマーゼは、大腸菌細胞などの細菌細胞で産生される(例えば、その内容全体が参照により本明細書に取り込まれるPCT/US15/47187参照)。
【0047】
種々の実施形態では、本発明のβ-ラクタマーゼはβ-ラクタムを加水分解する。β-ラクタム環のアミド結合の加水分解により、抗菌剤が生物学的に不活性化される。β-ラクタム系抗生物質の例は当業者に明らかになるであろう。静脈内β-ラクタム系抗生物質の例示的な例としては、これらに限定されないが、ペニシリン(ピペラシリン/タゾバクタム)、セファロスポリン(セフェピム)、及び/又はカルバペネム(メロペネム;イミペネム/シラスタチン)が挙げられる。
【0048】
処置方法
いくつかの態様は、allo-HCTレシピエントへのβ-ラクタム系抗生物質の静脈内投与に関連する、aGVHD及び/又はVREの定着及び/又はVREの血流感染症、及び/又は1種類又は複数種類の多剤耐性病原菌による感染若しくは定着、定着の拡大、又は単一優占化を含むがこれらに限定されない合併症の発生率及び/又は重症度を低減させる組成物及び方法を提供する。
【0049】
いくつかの実施形態では、単一優占化(monodomination)は、対象のマイクロバイオーム内の細菌叢の約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、又は約35%が単一生物であることを含む。
【0050】
特定の実施形態では、本発明は、VREの定着及び/又はVREの血流感染症を予防する組成物及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、VREの定着及び/又はVREの血流感染症に関連する腸内ディスバイオシスを予防する。
【0051】
いくつかの態様では、本発明のβ-ラクタマーゼを投与することを含む、移植レシピエントにおいて、VREの定着及び/又はVREの血流感染症を予防する方法が提供される。
【0052】
いくつかの態様では、本発明のβ-ラクタマーゼを投与することを含む、移植レシピエントにおいて、1種類又は複数種類の多剤耐性生物の定着及び/又は血流感染症を予防する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、1種類又は複数種類の多剤耐性生物による定着及び/又は血流感染症に関連する腸内ディスバイオシスを予防する。
【0053】
例えば、種々の実施形態では、本願方法は、以下の病原菌、すなわち、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、バチルス属(Bacillus)(例えば、バチルス・セレウス(Bacillus cereus))、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrelia)、ブルセラ属(Brucella)、バークホルデリア属(Burkholderia)、C・デフィシル(C. difficile)、カンピロバクター属(Campylobacter)(例えば、カンピロバクター・フィタス(Campylobacter fetus)及びカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni))、クラミジア属(Chlamydia)、クラミドフィラ属(Chlamydophila)、クロストリジウム属(Clostridium)(例えば、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリディオイデス・デフィシル(Clostridioides difficile)(旧名クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile))、及びクロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens))、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、コクシエラ属(Coxiella)、エーリキア属(Ehrlichia)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(例えば、カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)及び基質拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科(ESBL-E))、フルオロキノロン耐性腸内細菌科、腸球菌属(Enterococcus)(例えば、バンコマイシン耐性腸球菌属菌種、基質拡張型β-ラクタム耐性腸球菌(ESBL)、及びバンコマイシン耐性腸球菌(VRE))、大腸菌属(Escherichia)(例えば、腸管凝集性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、腸管病原性大腸菌、腸管毒素原性大腸菌(例えば、これらに限定されないが、LT及び/又はST)、大腸菌0157:1-17、及び多剤耐性大腸菌)、フランシセラ属(Francisella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)(例えば、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))、クレブシエラ属(Klebsiella)(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiellia pneumonia)及び多剤耐性菌クレブシエラ)、レジオネラ属(Legionella)、レプトスピラ属(Leptospira)、リステリア属(Listeria)(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Lysteria monocytogenes))、モルガネラ属(Morganella)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ナイセリア属(Neisseria)、オリエンティア属(Orientia)、プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、抗生物質耐性プロテオバクテリア、プロテウス属(Proteus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)(例えば、サルモネラ・パラチフィ(Salmonella paratyphi)、サルモネラ属菌種、及びサルモネラ・チフィ(Salmonella typhi))、シゲラ属(Shigella)(例えば、シゲラ属菌種)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)及びスタフィロコッカス属菌種)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、トレポネーマ属(Treponema)、ビブリオ属(Vibrio)(例えば、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・パラヘモリチカス(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ属菌種、及びビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus))、並びにエルシニア属(Yersinia)(例えば、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica))のうちの1種類又は複数種類による感染の処置又は予防において利用される。
【0054】
種々の実施形態では、本願方法は、抗生物質耐性細菌、例えば、抗生物質耐性プロテオバクテリア、VRE、カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)、フルオロキノロン耐性腸内細菌科、及び基質拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科(ESBL-E)の感染の処置又は予防において利用される。
【0055】
特定の実施形態では、本願発明は、aGVHDの発生率及び/又は重症度を低減させる組成物及び方法を提供する。種々の実施形態では、aGVHDの発症リスクがある対象は移植レシピエントである。他の実施形態では、対象はallo-HCTのレシピエントである。いくつかの実施形態では、対象は、骨髄細胞、末梢血細胞、及び臍帯血細胞のうちの1又は複数のレシピエントである。種々の実施形態では、aGVHDの発症リスクがある対象は、β-ラクタム系抗生物質が静脈内投与されるか、又は静脈内投与されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、本願方法は、aGVHDに関連する腸内ディスバイオシスを予防する。種々の実施形態では、本願方法は、aGVHDに関連する腸内細菌叢の多様性の喪失を予防する。例えば、本願発明の方法は、aGVHDに関連する任意の所与の細菌株(例えば、腸球菌属)の単一優占化を調節及び/又は低減する組成物の投与を意図している。本発明の他の実施形態は、移植を受けた対象におけるマイクロバイオームの多様性の低下を予防する組成物及び方法を提供する。
【0057】
いくつかの態様では、本発明のβ-ラクタマーゼ剤を投与することを含む、移植レシピエントにおけるaGVHDの発生率及び/又は重症度の低減に関する方法が提供される。例えば、aGVHDの重症度を低減させることは、β-ラクタマーゼを投与されている患者におけるaGVHDのグレードを、aGVHDの最も重症な型として分類されるグレードIVより小さいグレードまで減少させること、又はaGVHDを1又は複数グレード低減させる(例えば、グレードIIIからグレードII)ことを含み得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、本願方法は、移植レシピエントにおけるaGVHDの発生率及び/又は重症度の低減に関する。実施形態において、移植レシピエントは、がん患者、例えば、放射線若しくは化学療法を受けたか又は受けており、続いてallo-HCTを受けた患者である。実施形態において、移植レシピエントは血液又は骨髄のがんを有する。実施形態において、移植レシピエントは、造血幹細胞移植のレシピエントである。ある実施形態では、がんは、白血病、リンパ腫、骨髄腫、及び骨髄異形成から選択される。ある実施形態では、がんは、骨肉腫、ユーイング腫瘍、脊索腫、及び軟骨肉腫から選択される。
【0059】
aGVHDは、ドナーからレシピエントに移植された細胞又は組織の、その細胞又は組織が異物であるとのレシピエントの免疫系による認識に起因する、悪化である。したがって、クラスI MHCは体のより多くの細胞上に存在しているので、クラスI MHCプロファイルが最も適合し、次にクラスII MHCプロファイルが最も適合しているヒトからの細胞及び組織を移植することが最も好ましい。したがって、大部分の移植レシピエントにおいては、aGVHDは、不適合のクラスII MHC分子及びその他の多型タンパク質(マイナー組織適合抗原)に対する免疫系の活性化に起因する。
【0060】
血液又は骨髄のがんを処置するための一つの選択肢は、例えば放射線又は化学療法により、存在する血液及び骨髄の細胞を殺傷し、健康なドナーから同様の細胞を移植することであり、同種造血幹細胞移植(allo-HCT)と呼ばれる。
【0061】
実施形態においては、本願方法は、急性型及び慢性型のGVHDに関する。古典的な急性又は劇症型の疾患(aGVHD)は通常、移植後の最初の100日以内に観察され、付随する罹患率及び死亡率のため、移植の有効性に対する主要な課題である。慢性型の移植片対宿主病(cGVHD)は従来、100日以降に起きる。中程度から重度のcGVHDの症状の出現は、長期の生存に悪影響を与える。骨髄移植後、移植片に存在するT細胞は、混入物又はホストに意図的に導入されたもののいずれかとして、ホストの組織を抗原的に異物と認知した後に移植レシピエントの組織を攻撃する。T細胞は、TNFα及びインターフェロン-γ(IFNγ)を含む、過剰量のサイトカインを産生する。cGVHDの組織損傷は主に線維症に起因する。広範囲のホスト抗原、とりわけヒト白血球抗原(HLA)は、移植片対宿主病を引き起こす可能性がある。しかしながら、GVHDはHLAが同一である同胞がドナーである場合でさえ起こり得る。aGVHDは、肝臓、皮膚、及び粘膜、並びにGI管に対する選択的な損傷により特徴付けられる。aGVHDにおける組織損傷は主にアポトーシスによるものである。aGVHDの重症度は、病変/発疹の程度及び種類(皮膚)、下痢の量(GI)、及び血清ピルビリンレベル(肝臓)に基づいて、スケール1(軽度)からスケールIV(非常に重度)に等級分けされる。cGVHDは、aGVHDと比べてより広範囲な組織分布により特徴付けられる。GI管、肝臓、目、筋骨格系、及び造血系と共に、皮膚及び肺はcGVHDの主要な標的であると考えられている。超急性且つ急性致死性型のaGVHDは、通常は顕著なHLA不適合又は不十分なGVHD予防に起因して、同種HCTの最初の2週間以内に起こり得る。cGVHDに関連する危険因子は通常、事前のaGVHDに対する調整の後に変化せず、cGVHDは先行するaGVHDの単純な発展ではないことを示唆している。
【0062】
実施形態において、本願方法は、aGVHDの発生率及び/又は重症度を低減させることに関する。実施形態において、本願方法は、静脈内β-ラクタム系抗生物質で処置され、HLAの「不適合」、又は血縁関係がないドナー、患者の高年齢、雄性レシピエントに対する雌性ドナー、前処置レジメンの強度若しくは前処置レジメンの間の全身放射線照射の強度、及びドナーリンパ球の注入のなど、aGVHDの1又は複数の危険因子を有する患者へのβ-ラクタマーゼの投与を見込んでいる。実施形態において、本願方法は、皮膚の発疹、GI管の疾患、及び肝臓症状など、aGVHDの兆候の発生率及び/又は重症度を低減する。
【0063】
実施形態において、本願方法は、Billinghamの判断基準、すなわち、1)生存可能で機能的な免疫細胞と共に、免疫適格性移植片を投与、2)レシピエントは免疫学的には組織不適合である、及び3)レシピエントは免疫無防備状態であり、それにより移植された細胞を破壊又は不活性化することができない、のうちの1又は複数により定義されるGVHDに関する。
【0064】
製剤/放出調節プロファイル
種々の実施形態では、本発明は、少なくとも1種類のβ-ラクタマーゼを含む放出調節製剤を用いるものであり、前記製剤はGI管の1又は複数の領域中に十分な量のβ-ラクタマーゼを放出する。いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼはSYN-004(別名P3A)、若しくは本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、又は(例えば、上記に記載されるような)これらのバリアントである。いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼはSYN-006(別名P2A)又はその変異体である。例えば、前記製剤は、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004又はSYN-006)の約60%以上を、胃の後に、GI管の1又は複数の領域中へ放出してもよい。
【0065】
種々の実施形態では、本発明の放出調節製剤は、即時放出(例えば、摂取時)のために設計されている。種々の実施形態では、放出調節製剤は、徐放性(sustained-release)プロファイル、すなわち、長期間にわたる体内(例えば、GI管)での活性成分の緩徐放出性(slow release)を有していてもよい。種々の実施形態では、放出調節製剤は、遅延放出性(delayed-release)プロファイルを有していてもよく、すなわち、摂取時に活性成分が即時には放出されず、むしろ、例えば、小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1又は複数)又は大腸(盲腸、結腸の上行部、横行部、下行部、又はS状部、及び直腸のうちの1又は複数)における放出について、組成物がGI管において少なくなるまで活性成分の放出が延期される。例えば、組成物は、小腸又は大腸に到達するまで活性成分の放出を遅延させるために腸溶コーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、糞便中に実質的な量の本願製剤の活性成分が存在しない。
【0066】
種々の実施形態では、本発明の放出調節製剤は、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上を、胃の後に、腸管の1又は複数の領域中へ放出する。例えば、放出調節製剤は、腸管において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%を放出する。
【0067】
種々の実施形態では、本発明の放出調節製剤は、小腸において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上を放出する。例えば、放出調節製剤は、小腸において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%を放出する。
【0068】
ある実施形態では、本発明の放出調節製剤は、十二指腸において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上を放出する。例えば、放出調節製剤は、十二指腸において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%を放出する。
【0069】
ある実施形態では、本発明の放出調節製剤は、空腸において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上を放出する。例えば、放出調節製剤は、空腸において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%を放出する。
【0070】
ある実施形態では、本発明の放出調節製剤は、回腸/回盲部において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上を放出する。例えば、放出調節製剤は、回腸/回盲部において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%を放出する。
【0071】
種々の実施形態では、本発明の放出調節製剤は、大腸において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上を放出する。例えば、放出調節製剤は、大腸において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%を放出する。
【0072】
ある実施形態では、本発明の放出調節製剤は、盲腸において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上を放出する。例えば、放出調節製剤は、盲腸において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%を放出する。
【0073】
ある実施形態では、本発明の放出調節製剤は、結腸の上行部において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上を放出する。例えば、放出調節製剤は、結腸の上行部において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%を放出する。
【0074】
ある実施形態では、本発明の放出調節製剤は、結腸の横行部において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上を放出する。例えば、放出調節製剤は、結腸の横行部において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%を放出する。
【0075】
ある実施形態では、本発明の放出調節製剤は、結腸の下行部において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上を放出する。例えば、放出調節製剤は、結腸の下行部において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%を放出する。
【0076】
ある実施形態では、本発明の放出調節製剤は、S状結腸において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上を放出する。例えば、放出調節製剤は、S状結腸において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%を放出する。
【0077】
種々の実施形態では、放出調節製剤は、胃において、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を実質的に放出しない。
【0078】
ある実施形態では、放出調節製剤は、特定のpHでβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を放出する。例えば、いくつかの実施形態では、調節製剤は、酸性環境下で実質的に安定であり、且つ中性付近~アルカリ性の環境下で不安定(例えば、迅速に分解する、又は物理的に不安定)である。いくつかの実施形態では、安定性は実質的に放出されないことの指標であり、不安定性は実質的に放出されることの指標である。例えば、いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、約7.0以下、約6.5以下、約6.0以下、約5.5以下、約5.0以下、約4.5以下、約4.0以下、約3.5以下、約3.0以下、約2.5以下、約2.0以下、約1.5以下、又は約1.0以下のpHで実質的に安定である。いくつかの実施形態では、本願製剤は低pH領域において安定であり、したがって、例えば胃において、実質的に放出されない。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、約1から約4以下のpHで実質的に安定であり、且つより高いpH値で実質的に不安定である。これらの実施形態では、放出調節製剤は、胃において実質的に放出されない。これらの実施形態では、放出調節製剤は、小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1又は複数)及び/又は大腸(例えば、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、及びS状結腸のうちの1又は複数)において実質的に放出される。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、約4から約5以下のpHで実質的に安定であり、したがって、より高いpH値で実質的に不安定であるので、胃及び/又は小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1又は複数)において実質的に放出されない。これらの実施形態では、放出調節製剤は、大腸(例えば、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、及びS状結腸のうちの1又は複数)において実質的に放出される。様々な実施形態では、本明細書に記載されるpH値は、患者の状態、例えば、絶食状態であるか食後であるかを説明するために当該技術分野で知られているように調整されてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、胃液中で実質的に安定であり、且つ腸液中で実質的に不安定であり、したがって、小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1又は複数)及び/又は大腸(例えば、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、及びS状結腸のうちの1又は複数)において実質的に放出される。
【0080】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、胃液中で安定であるか、又は酸性環境下で安定である。これらの放出調節製剤は、約15分、約30分、約45分、約60分、又は約90分で、pHが約4から約5以下である胃液中又はpHが約4から約5以下である模擬胃液中に、放出調節製剤中のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)及び/又は追加の治療薬剤の約30重量%以下を放出する。本発明の放出調節製剤は、約15分、約30分、約45分、約60分、又は約90分で、pHが約4から約5以下である胃液中又はpHが約4から約5以下である模擬胃液中に、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)及び/又は追加の治療薬剤の約0重量%~約30重量%、約0重量%~約25重量%、約0重量%~約20重量%、約0重量%~約15重量%、約0重量%~約10重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約5重量%~約10重量%を放出してもよい。本発明の放出調節製剤は、約15分、約30分、約45分、約60分、又は約90分で、pHが5以下である胃液中又はpHが5以下である模擬胃液中に、全てのβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)及び/又は追加の治療薬剤の約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、又は約10重量%を放出してもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、腸液中で不安定である。これらの放出調節製剤は、約15分、約30分、約45分、約60分、又は約90分で、腸液中又は模擬腸液中に、放出調節製剤中のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)及び/又は追加の治療薬剤の約70重量%以上を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、中性付近~アルカリ性の環境で不安定である。これらの放出調節製剤は、約15分、約30分、約45分、約60分、又は約90分で、pHが約4から約5以上である腸液中又はpHが約4から約5以上である模擬腸液中に、放出調節製剤中のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)及び/又は追加の治療薬剤の約70重量%以上を放出する。中性付近又はアルカリ性の環境で不安定である放出調節製剤は、約5分~約90分、約10分~約90分、約15分~約90分、約20分~約90分、約25分~約90分、約30分~約90分、約5分~約60分、約10分~約60分、約15分~約60分、約20分~約60分、約25分~約90分、又は約30分~約60分で、pHが約5より高い液体(例えば、pHが約5~約14、約6~約14、約7~約14、約8~約14、約9~約14、約10~約14、又は約11~約14である液体)中に、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)及び/又は追加の治療薬剤の70重量%以上を放出してもよい。
【0082】
模擬胃液及び模擬腸液の例としては、限定されないが、2005 Pharmacopeia 23NF/28USP in Test Solutionsの2858ページに開示されているもの、及び/又は当業者に周知であるその他の模擬胃液及び模擬腸液、例えば、酵素を用いずに調製された模擬胃液及び/又は模擬腸液が挙げられる。
【0083】
ある実施形態では、放出調節製剤は、胃液中で、本質的に無傷(intact)のままであってもよく、又は、本質的に不溶性であってもよい。放出調節製剤は、pH依存性の1種類又は複数種類の遅延放出コーティングを含んでいてもよい。pH依存性の遅延放出コーティングは、酸性環境(pHが約5以下)で実質的に安定であり得、且つ、中性付近~アルカリ性の環境(pHが約5より高い)で実質的に不安定であり得る。例えば、遅延放出コーティングは、小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1又は複数)及び/又は大腸(例えば、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、及びS状結腸のうちの1又は複数)で見いだされるような中性付近~アルカリ性の環境下で、本質的に崩壊又は溶解してもよい。
【0084】
あるいは、放出調節製剤の安定性は酵素依存的であり得る。そのような実施形態では、放出調節製剤は、酵素依存的である1種類又は複数種類の遅延放出コーティングを含んでいてもよい。酵素依存的である遅延放出コーティングは、特定の酵素を含んでいない液体中で実質的に安定であり得、且つ、特定の酵素を含んでいる液体中で実質的に不安定であることになる。遅延放出コーティングは、適切な酵素を含む液体中で、本質的に崩壊又は溶解することになる。酵素依存的な制御は、例えば、ガラクトマンナンなど、腸管中の酵素に曝された場合にのみ活性成分を放出する材料を用いることによって行われ得る。また、放出調節製剤の安定性は、腸内細菌叢に存在する微生物の酵素の存在下では、酵素の安定性に依存し得る。
【0085】
種々の実施形態では、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又はこれらのバリアント)を含む放出調節製剤は、粥状液中で実質的に安定である。例えば、いくつかの実施形態では、投与から約10時間、約9時間、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、又は約1時間で、β-ラクタマーゼ活性の約50%、約40%、約30%、約20%、又は約10%以下が喪失する。
【0086】
いくつかの実施形態では、二重パルス(dual pulse)製剤が提供される。種々の実施形態では、本発明は、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の複数の用量を腸管に沿った異なる場所で、異なる時間で、及び/又は異なるpHで放出する放出調節製剤を提供する。例示的な実施形態では、放出調節製剤は、第1用量のβ-ラクタマーゼ及び第2用量のβ-ラクタマーゼを含み、第1用量及び第2用量は腸管に沿った異なる場所で、異なる時間で、及び/又は異なるpHで放出される。例えば、第1用量は十二指腸で放出され、第2用量は回腸で放出される。別の実施形態では、第1用量は空腸で放出され、第2用量は回腸で放出される。別の実施形態では、第1用量は小腸に沿った場所(例えば、十二指腸)で放出されるが、第2用量は大腸に沿った場所(例えば、上行結腸)で放出される。種々の実施形態では、放出調節製剤は、1回用量以上、2回用量以上、3回用量以上、4回用量以上、5回用量以上、6回用量以上、7回用量以上、又は8回用量以上のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を腸に沿った異なる場所で、異なる時間で、及び/又は異なるpHで放出してもよい。さらに本明細書の二重パルス製剤の記載は、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、又はこれらのバリアント)及び追加の治療薬剤を放出する放出調節製剤に適用される。
【0087】
種々の実施形態では、本発明は、薬学的に許容可能な担体又は非薬効成分(excipient)をさらに含んでいてもよい、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の放出調節製剤を使用する。当業者が認識するように、製剤は所望の使用及び投与経路に適した任意の適切な形態であってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼ(及び/又は追加の治療薬剤)を含む放出調節製剤の投与は、経口、静脈内、及び非経口のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼ(及び/又は追加の薬剤)を含む放出調節製剤の投与は、例えば、全身的に投与された抗生物質への干渉を予防するため、静脈内ではない。その他の実施形態では、投与経路としては、例えば、経口投与、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、鼻腔内投与、硬膜外投与、舌下投与、鼻腔内投与、脳内投与、膣内投与、経皮投与、直腸投与、吸入による投与、又は局所的投与、特に耳、鼻、目、若しくは皮膚への投与が挙げられる。
【0089】
本明細書に記載されるようなβ-ラクタマーゼ(及び/又は追加の治療薬剤)を含む任意の放出調節製剤は経口投与されてもよい。そのような独創的な製剤は、その他の従来の経路により、例えば、静脈内注入若しくは静脈内ボーラス注入により、上皮若しくは粘膜皮膚裏層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸の粘膜など)を通した吸収により投与されてもよく、追加の治療薬剤と共に投与されてもよい。投与は全身的であっても局所的であってもよい。いくつかの実施形態では、投与は、例えば感染部位での抗生物質の加水分解を回避するため、感染部位で行われない。例えば、リポソーム、マイクロパーティクル、マイクロカプセル、カプセル中へのカプセル化など、種々の送達系が知られており、投与に使用され得る。具体的な実施形態では、処置が必要な領域に局所的に投与することが望ましい場合がある。
【0090】
経口用途のための適切な投与形態としては、例えば、錠剤、分散性粉末、顆粒、及びカプセル剤などの固形投与形態が挙げられる。ある実施形態では、放出調節製剤はカプセル剤の形態である。別の実施形態では、放出調節製剤は錠剤の形態である。さらに別の実施形態では、放出調節製剤はソフトゲルカプセル剤の形態である。さらなる実施形態では、放出調節製剤は、ゼラチンカプセル又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルの形態である。
【0091】
いくつかの投与形態において、本明細書に記載される剤は、少なくとも1種類の不活性で薬学的に許容可能な非薬効成分(excipient)又は担体(クエン酸ナトリウム、第二リン酸カルシウムなど)、及び/又はa)賦形剤又は増量剤(デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、ケイ酸、微結晶性セルロース、及びBakers Special Sugarなど)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、アカシア、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、及びヒドロキシメチルセルロースなど)、c)保水剤(グリセロールなど)、d)崩壊剤(寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯デンプン又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、炭酸ナトリウム、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、クロスカルメロースナトリウム(架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)などの架橋ポリマー、デンプングリコール酸ナトリウムなど)、e)溶解遅延剤(パラフィンなど)、f)吸収促進剤(四級アンモニウム化合物など)、g)湿潤剤(例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノアセテートなど)、h)吸収剤(カオリン及びベントナイト粘土など)、及びi)潤滑剤(タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコールナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリルなど)、並びにそのような非薬効成分の混合物と混合される。当業者は、特定の非薬効成分が経口投与形態において2以上の機能を有し得ることを理解するであろう。例えば、カプセル剤又は錠剤などの経口投与形態の場合、投与形態はまた緩衝剤を含んでいてもよい。
【0092】
放出調節製剤は、界面活性剤をさらに含み得る。本発明における使用に適した界面活性剤は、これらに限定されないが、任意の薬学的に許容可能な非毒性界面活性剤である。本発明の組成物における使用に適した界面活性剤の種類としては、これらに限定されないが、ポリエトキシル化脂肪酸、PEG-脂肪酸ジエステル、PEG-脂肪酸モノエステルとPEG-脂肪酸ジエステルとの混合物、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、アルコール-油エステル転移反応産物、ポリグリセリン化(polyglycerized)脂肪酸、プロピレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコールエステルとグリセロールエステルとの混合物、モノグリセリド及びジグリセリド、ステロール及びステロール誘導体、プロピレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエステル、糖エステル、ポリエチレングリコールアルキルフェノール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、低級アルコール脂肪酸エステル、イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、これらに限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、及びクエン酸トリエチルを含む1種類又は複数種類の界面活性剤を含み得る。
【0093】
放出調節製剤はまた、柔軟性及び硬度などの所望の機械特性を得るために薬学的に許容可能な可塑剤を含み得る。そのような可塑剤としては、これらに限定されないが、トリアセチン、クエン酸エステル、クエン酸トリエチル、フタル酸エステル、セバシン酸ジブチル、セチルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、又はその他の可塑剤が挙げられる。
【0094】
放出調節製剤はまた、1種類又は複数種類の塗布溶剤を含み得る。例えば遅延放出コーティング組成物を塗布するために使用され得る,より一般的な一部の溶剤としては、イソプロピルアルコール、アセトン、及び塩化メチレンなどが挙げられる。
【0095】
放出調節製剤はまた、1種類又は複数種類のアルカリ性物質を含み得る。本発現の組成物における使用に適したアルカリ性物質としては、これらに限定されないが、リン酸化合物、炭酸化合物、クエン酸化合物、及びその他のアルミニウム化合物/マグネシウム化合物などの酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩が挙げられる。さらに、アルカリ性物質は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び酸化マグネシウムなどの制酸材料から選択されてもよい。
【0096】
固形経口投与形態は、例えば、1種類又は複数種類の適切な非薬効成分を用いて本発明の薬剤を造粒(例えば、湿式造粒又は乾式造粒)することにより調製され得る。あるいは、本発明の薬剤は、流動床コーティング又はパンコーティングなどの従来の方法を用いて不活性な核(例えば、ショ糖球体などのノンパレイユ/砂糖の球体、又はシリカ球体)上に積層されるか、又は当該技術分野で周知の方法を用いて押し出し及び活性化合物含有錠剤に球形化され得る。実施形態では、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)は、ショ糖球体上に噴霧コーティングされている。次に、そのような小球は、従来の方法を用いてタブレット剤又はカプセル剤中に取り込まれてもよい。
【0097】
活性薬剤に加えて、懸濁液は、例えば、エトキシ化イソセチルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタ水酸化物、ベントナイト、寒天、トラガントなど、及びこれらの混合物などの懸濁剤を含んでいてもよい。
【0098】
不活性希釈剤以外に、経口組成物はまた、甘味剤、香味剤、及び芳香剤などの補助剤を含み得る。
【0099】
非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、及び関節内への注射及び注入)に適した投与形態としては、例えば、溶液、懸濁液、分散液、及び乳化液などが挙げられる。これらはまた、使用直前に滅菌注射用媒体中に溶解又は懸濁することができる滅菌固形組成物(例えば、凍結乾燥された組成物)の形態で製造されてもよい。これらは、例えば、当該技術分野で既知の懸濁剤又は分散剤を含み得る。
【0100】
β-ラクタマーゼ(及び/又は追加の治療薬剤)を含む製剤は、慣習的に単位投与剤形で存在していてもよく、薬学の技術分野で周知の任意の方法により調製されてもよい。そのような方法は、通常、治療薬剤を1種類又は複数種類の副成分を構成する担体と組み合わせるステップを含む。一般的に、製剤は、治療薬剤を均一且つ密接に液体担体(例えば、リン酸緩衝食塩水)、微粉化固体担体、又はこれら両方と組み合わせ、必要であれば、次に(例えば、湿式顆粒又は乾式顆粒、粉体混合物など、続いて当該技術分野で既知の従来の方法を用いた錠剤化により)生成物を所望の製剤の投与形態に成形することにより調製される。
【0101】
種々の実施形態では、本発明の放出調節製剤は、任意にその他の追加の治療薬剤と共に、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)のGI管への有効な、遅延されるが実質的な送達をもたらすための遅延放出コーティングなど、1種類又は複数種類の放出調整コーティングを利用してもよい。
【0102】
ある実施形態では、遅延放出コーティングは、酸性環境下で実質的に安定であり、且つ中性付近~アルカリ性の環境下で不安定である腸溶剤を含んでいる。ある実施形態では、遅延放出コーティングは、胃液中で実質的に安定である腸溶剤を含んでいる。腸溶剤は、例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルエチルセルロース、及びEUDRAGIT(登録商標)型ポリマー(ポリ(メタクリル酸、メタクリル酸メチル)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、セラック、又はその他の腸溶コーティングポリマーの溶液又は分散液から選択され得る。EUDRAGIT(登録商標)型ポリマーとしては、例えば、EUDRAGIT(登録商標)FS 30D、L 30 D-55、L 100-55、L 100、L 12,5、L 12,5 P、RL 30 D、RL PO、RL 100、RL 12,5、RS 30 D、RS PO、RS 100、RS 12,5、NE 30 D、NE 40 D、NM 30 D、S 100、S 12,5、及びS 12,5 Pが挙げられる。同様のポリマーとしては、Kollicoat(登録商標) MAE 30 DP及びKollicoat(登録商標) MAE 100 P が挙げられる。いくつかの実施形態では、EUDRAGIT(登録商標) FS 30D、L 30 D-55、L 100-55、L 100、L 12,5、L 12,5 P RL 30 D、RL PO、RL 100、RL 12,5、RS 30 D、RS PO、RS 100、RS 12,5、NE 30 D、NE 40 D、NM 30 D、S 100、S 12,5 S 12,5 P、Kollicoat(登録商標) MAE 30 DP、及びKollicoat(登録商標) MAE 100 P のうち1又は複数が使用される。以下の文献は、その全体が参照により取り込まれる。(1)Thakral et al.,“Eudragit(登録商標):A technology evaluation”Expert Opinion on Drug Delivery Vol.10(2013)pp.131-149;(2)Niranjan Patra et al.,“Pharmaceutical significance of Eudragit:A review,”Future Journal of Pharmaceutical Sciences Vol.3(10.1016/j.fjps.2017.02.001);(3)Sonje,Abhijit and Chandra,Amrish,“Comprehensive review on eudragit polymers,”International Research Journal of Pharmacy Vol.4(10.7897/2230-8407.04515)。種々の実施形態では、腸溶剤は、前述の溶液又は分散液の組み合わせであってもよい。ある実施形態では、遅延放出コーティングは、腸溶剤であるEUDRAGIT(登録商標) L 30 D-55を含む。
【0103】
ある実施形態では、1種類又は複数種類のコーティング系添加物を腸溶剤と共に用いてもよい。例えば、抗粘着コーティング添加剤として、1種類又は複数種類のPlasACRYL(商標)添加剤を用いてもよい。例示的なPlasACRYL(商標)添加剤としては、これらに限定されないが、PlasACRYL(商標) HTP20及びPlasACRYL(商標) T20が挙げられる。ある実施形態では、PlasACRYL(商標) HTP20はEUDRAGIT(登録商標) L 30 D-55コーティングと共に製剤化される。別の実施形態では、PlasACRYL(商標) T20はEUDRAGIT(登録商標) FS 30 Dコーティングと共に製剤化される。
【0104】
別の実施形態では、遅延放出コーティングは、水性溶液中にある場合、pH及び/又は溶液中の酵素の存在にかかわらず、時間に応じて分解し得る。そのようなコーティングは、水不溶性ポリマーを含み得る。したがって、水性溶液中での溶解性はpH非依存的である。本明細書における「pH非依存的」との用語は、ポリマーの水浸透性及び医薬成分を放出するその能力がpHに応じていない、及び/又はほんのわずかしかpHに依存していないことを意味する。そのようなコーティングは、例えば、持続放出製剤を調製するために用いられ得る。適切な水不溶性ポリマーとしては、溶液のpH非依存的に水性媒体(例えば水)に実質的に不溶性の薬学的に許容可能な非毒性ポリマーが挙げられる。適切なポリマーとしては、これらに限定されないが、セルロースエーテル、セルロースエステル、又はセルロースエーテルエステル、すなわち、セルロース骨格上のヒドロキシ基の一部がアルキル基で置換され、一部がアルカノイル基で修飾されているセルロース誘導体が挙げられる。例としては、エチルセルロース、アセチルセルロース、及びニトロセルロースなどが挙げられる。不溶性ポリマーのその他の例としては、これらに限定されないが、ラッカー、並びにアクリル酸エステルポリマー及び/又はメタクリル酸エステルポリマー、第4級アミン含有量が低いアクリレート又はメタクリレートのポリマー又はコポリマー、又はこれらの混合物などが挙げられる。不溶性ポリマーのその他の例としては、EUDRAGIT RS(登録商標)、EUDRAGIT RL(登録商標)、及びEUDRAGIT NE(登録商標)が挙げられる。本発明において有用な不溶性ポリマーとしては、ポリビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、及びブタジエンスチレンコポリマーなどが挙げられる。ある実施形態では、結腸への送達は、緩徐浸食ワックスプラグ(slowly-eroding wax plug)(例えば、PEGの6000を含む種々のPEG)を用いて達成される。
【0105】
他の実施形態では、遅延放出コーティングは、腸内細菌叢中に存在する微生物酵素により分解され得る。ある実施形態では、遅延放出コーティングは、小腸中に存在する細菌により分解され得る。別の実施形態では、遅延放出コーティングは、大腸中に存在する細菌により分解され得る。
【0106】
種々の実施形態では、本発明により、1種類又は複数種類のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を含むベースコートを有する核粒子、及びコートされた核粒子上に配置される遅延放出コーティングを含む製剤が提供される。遅延放出コーティングは、酸性環境下及び/又は胃液中で実質的に安定である、及び/又は中性付近~アルカリ性の環境下又は腸液中で不安定であることによりコーティングされた核粒子が腸液に曝される。1種類又は複数種類のβ-ラクタマーゼを含むベースコートは、1種類又は複数種類の追加の治療薬剤をさらに含んでいてもよい。任意に、複数のベースコートを、各々がβ-ラクタマーゼ及び/又は追加の治療薬剤を含んでいてもよい核に塗布してもよい。ある実施形態では、核粒子はショ糖を含んでいてもよい。製剤は当該技術分野で既知の方法により調製され得る。例えば、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)は、不活性な核(例えば、ショ糖核又はショ糖球体)上に噴霧され、腸溶性の層(EUDRAGIT L30 D-55)と共に噴霧乾燥されて、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)含有ペレットを形成し得る。
【0107】
任意に、核粒子は1種類又は複数種類のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)及び/又は1種類又は複数種類の追加の治療薬剤を含んでいてもよい。ある実施形態では、1又は複数の用量のβ-ラクタマーゼは、例えば微小球の形態である、核粒子中にカプセル化されてもよい。例えば、β-ラクタマーゼは、ポリマー(例えば、ラテックス)と組み合わせられ、次に、ショ糖核を使用せずに粒子状マイクロカプセル化酵素製剤に成形されてもよい。次に、形成された微小球を遅延放出コーティングで任意に被覆してもよい。
【0108】
酵素の封入に適している粒子(例えば、微小球、凝集体など)を生成するための種々のアプローチが知られている。それらは通常、酵素を含む相、及び微粒子の骨格を形成するポリマーを含む相の2相以上が含まれる。最も一般的なものは、第三の成分の添加によりポリマーが溶媒相から分離されるコアセルベート、又は水中油中水型(w/o/w)型エマルションなどの多相エマルションであり、内側の水相はタンパク質を含み、中間の有機相はポリマーを含み、外側の水相は溶媒が除去されて微小球を形成するまでw/o/w二重エマルションを支持する安定化剤を含む。あるいは、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)及び安定化非薬効成分(例えば、トレハロース、マンニトール、Tween 80、ポリビニルアルコール)は組み合わされ、水性溶液から噴霧され、回収される。次に、粒子は、ポリマー及び放出調節化合物を含む、乾燥した水非混和性有機溶媒中に懸濁され、次に、懸濁液は超音波処理されて粒子が分散される。他のアプローチは水相を用いるが有機溶媒を用いない。具体的には、酵素、緩衝成分、ポリマーラテックス、並びに安定化非薬効成分及び放出調節非薬効成分が、水中に溶解/分散される。水性分散液は噴霧乾燥されて、ラテックスの合体が引き起こされ、タンパク質及び非薬効成分が合体したラテックスの粒子中に取り込まれる。放出調節剤が酸性条件下で不溶性であるがより高いpHで可溶性である場合(カルボン酸など)、マトリックスからの放出は、胃環境下で阻害される。
【0109】
いくつかの実施形態では、被覆された核粒子に遅延放出コーティングを塗布する前に、粒子は、任意に、例えばpH緩衝化合物などのアルカリ化合物を含む薬学的非薬効成分を含む、1又は複数の分離層で被覆され得る。分離層は本質的には被覆された核粒子を遅延放出コーティングから分離する。
【0110】
分離層は、通常、コーティングパン、コーティング造粒機などのコーティング装置を用いたコーティング工程又は積層工程により、又はコーティング工程のための水及び/又は有機溶媒を用いた流動床装置中で、被覆核粒子に塗布され得る。別の方法として、粉体コーティング技術を用いて分離層を核材料に塗布し得る。分離層のための材料は、薬学的に許容可能な化合物、例えば、単独又は混合物で使用される、砂糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどである。例えば、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、タルク、及びその他の添加剤など、可塑剤、着色剤、色素、賦形剤、抗粘着剤、及び静電気防止剤などの添加剤もまた、分離層に含まれ得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、遅延放出コーティングを有する被覆粒子は、上塗り層でさらに覆われていてもよい。上塗り層は、その他の被覆組成物について記載されるように塗布され得る。上塗り材料は、単独又は混合物で使用される、砂糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの薬学的に許容可能な化合物である。上塗り材料は遅延放出コーティングで被覆された粒子の潜在的な凝集を防止し、圧縮処理の間のクラッキングから遅延放出コーティングを保護するか又は打錠処理を促進し得る。
【0112】
種々の実施形態では、製剤は、複数の放出調節粒子、放出調節ペレット、又は放出調節微小球を含んでいてもよい。ある実施形態では、製剤は複数のペレットを含むカプセル剤の形態である。ある実施形態では、製剤は複数の微小球を含むカプセル剤の形態である。
【0113】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、β-ラクタマーゼが放出される複数のβ-ラクタマーゼ含有ペレット(例えば、SYN-004若しくはSYN-006(又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)含有ペレット)が充填されたカプセルであってもよい。ある実施形態では、カプセルは、硬ゼラチンカプセルなどのゼラチンカプセルである。別の実施形態では、カプセルはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルである。例えば、製剤は、多数のペレットを含むカプセルの形態であってもよい。例えば、製剤は、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を含む多数の腸溶コーティングされたペレットを含む、例えばゼラチンカプセル又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルなどのカプセルの形態であってもよい。そのような実施形態では、ペレットの組み合わせが利用されてもよく、各ペレットは特定の時点又は場所で放出されるように設計されている。種々の実施形態では、ペレット(例えば、腸溶コーティングされたペレット)は、変化せずに胃を通過した後、腸管の1又は複数の領域中へβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を放出するように設計されている。いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼ含有ペレットは、腸管の異なるpH値でβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を放出するように腸溶コーティングされてもよい。
【0114】
種々の実施形態では、本発明の製剤は、複数の腸溶コーティングされたβ-ラクタマーゼ含有ペレットを含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセル又はHPMCカプセル)の形態であってもよい。そのような実施形態では、ペレット(又は個々のペレット)は、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)、例えばSYN-004若しくはSYN-006又はこれらのバリアントなどのβ-ラクタマーゼが噴霧されているショ糖球体、結合剤非薬効成分(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))、腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55)、可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル)、流動促進剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン)、乳化剤、及び緩衝塩を含む。
【0115】
種々の実施形態では、本発明の製剤は、複数の腸溶コーティングされたβ-ラクタマーゼ含有ペレットを含む、カプセル(例えば、硬ゼラチンカプセル又はHPMCカプセル)の形態であってもよい。そのような実施形態では、ペレット(又は個々のペレット)は、約10~20重量%のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を含む。例えば、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)は、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、又は約20重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、ペレット(又は個々のペレット)は、約20~30重量%のショ糖球体を含み、例えばSYN-004若しくはSYN-006又はこれらのバリアントなどのβ-ラクタマーゼがショ糖球体上に噴霧されている。例えば、ショ糖球体は、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、又は約30重量%で存在していてもよい。種々の実施形態では、ペレット(又は個々のペレット)は、約30~40重量%の結合剤非薬効成分(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))を含む。例えば、結合剤非薬効成分は、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39%、又は約40重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、ペレット(又は個々のペレット)は、約15~25重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55)を含む。例えば、腸溶性ポリマーは、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、又は約25重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、ペレット(又は個々のペレット)は、約1.5~2.5重量%の可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル)を含む。例えば、可塑剤は、約1.5重量%、約1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、約2重量%、約2.1重量%、約2.2重量%、約2.3重量%、約2.4重量%、又は約2.5重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、ペレット(又は個々のペレット)は、約0.5~1.5重量%の流動促進剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン)を含む。例えば、流動促進剤は、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、又は約1.5重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、ペレット(又は個々のペレット)は、約0.1~1.0重量%の乳化剤(例えば、ポリソルベート-80)を含む。例えば、乳化剤は、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、又は約1重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、ペレット(又は個々のペレット)は、約1~2重量%の緩衝塩をさらに含む。例えば、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、約1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、又は約2重量%で存在していてもよい。本明細書でに記載され重量は、カプセル自体の重量を除く全成分の合計重量を指す。
【0116】
いくつかの実施形態では、ペレット(又は個々のペレット)は、約16重量%のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント);約23重量%のショ糖球体;約35重量%の結合剤非薬効成分(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC));約21重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55);約2重量%の可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル);約1重量%の流動促進剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン);約0.5重量%の乳化剤(例えば、ポリソルベート-80);及び約2重量%の緩衝塩を含む。本明細書に記載される重量は、カプセル自体の重量を除く全成分の合計重量を指す。
【0117】
例えば、ペレット(又は個々のペレット)は、約15.8重量%のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント);約23.3重量%のショ糖球体;約35重量%の結合剤非薬効成分(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC));約20.8重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55);約2.1重量%の可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル);約1.0重量%の流動促進剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン);約0.4重量%の乳化剤(例えば、ポリソルベート-80);及び約1.6重量%の緩衝塩を含む。本明細書に記載される重量は、カプセル自体の重量を除く全成分の合計重量を指す。
【0118】
種々の実施形態では、本発明の製剤は、約75mgのβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセル又はHPMCカプセル)の形態である。カプセルは、複数の腸溶コーティングされたβ-ラクタマーゼ含有ペレットを含む。そのような実施形態では、製剤は、約10~20重量%のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を含む。例えば、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)は、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、又は約20重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約15~25重量%のショ糖球体を含む。例えば、ショ糖球体は、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、又は約25重量%で存在していてもよい。種々の実施形態では、製剤は、約25~35重量%の結合剤非薬効成分(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))を含む。例えば、結合剤非薬効成分は、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、又は約35重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約10~25重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55)を含む。例えば、腸溶性ポリマーは、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、又は約25重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約1.5~2.5重量%の可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル)を含む。例えば、可塑剤は、約1.5重量%、約1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、約2重量%、約2.1重量%、約2.2重量%、約2.3重量%、約2.4重量%、又は約2.5重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約0.5~1.5重量%の流動促進剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン)を含む。例えば、流動促進剤は、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、又は約1.5重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約0.1~1.0重量%の乳化剤(例えば、ポリソルベート-80)を含む。例えば、乳化剤は、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、又は約1重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約1~2重量%の緩衝塩を含む。例えば、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、約1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、又は約2重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約10~20重量%のゼラチンカプセル又はHPMCカプセルを含んでいてもよい。例えば、ゼラチンカプセル又はHPMCカプセルは、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、又は約20重量%であってもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、約75mgのβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を含む。そのような実施形態では、製剤は、約13重量%のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント);約19重量%のショ糖球体;約29重量%の結合剤非薬効成分(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC));約17重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55);約2重量%の可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル);約1重量%の流動促進剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン);約0.5重量%の乳化剤(例えば、ポリソルベート-80);約1重量%の緩衝塩;及び約17重量%のゼラチンカプセル又はHPMCカプセルを含む。
【0120】
例えば、製剤は、約13.1重量%のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント);約19.4重量%のショ糖球体;約29.1重量%の結合剤非薬効成分(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC));約17.3重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55);約1.7重量%の可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル);約0.9重量%の流動促進剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン);約0.4重量%の乳化剤(例えば、ポリソルベート-80);約1.3重量%の緩衝塩;及び約16.8重量%のゼラチンカプセル又はHPMCカプセルを含む。
【0121】
種々の実施形態では、本発明の製剤は、約25mgのβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセル又はHPMCカプセル)の形態である。カプセルは、複数の腸溶コーティングされたβ-ラクタマーゼ含有ペレットを含む。そのような実施形態では、製剤は、約5~15重量%のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を含む。例えば、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)は、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、又は約15重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約10~20重量%のショ糖球体を含む。例えば、ショ糖球体は、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、又は約20重量%で存在していてもよい。種々の実施形態では、製剤は、約15~25重量%の結合剤非薬効成分(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))を含む。例えば、結合剤非薬効成分は、約15重量%、約16重量%、約1重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、又は約25重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約10~20重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55)を含む。例えば、腸溶性ポリマーは、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、又は約20重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約1.0~2.0重量%の可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル)を含む。例えば、可塑剤は、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、約1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、又は約2.0重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約0.1~1.0重量%の流動促進剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン)を含む。例えば、流動促進剤は、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9%重量%、又は約1重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約0.1~1.0重量%の乳化剤(例えば、ポリソルベート-80)を含む。例えば、乳化剤は、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、又は約1重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約0.5~1.5重量%の緩衝塩を含む。例えば、緩衝塩は、0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、又は約1.5重量%で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約30~40重量%のゼラチンカプセル又はHPMCカプセルを含んでいてもよい。例えば、ゼラチンカプセル又はHPMCカプセルは、30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、又は約40重量%であってもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、約25mgのβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)を含む。そのような実施形態では、製剤は、約10重量%のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント);約15重量%のショ糖球体;約22重量%の結合剤非薬効成分(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC));約13重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55);約1重量%の可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル);約0.5重量%の流動促進剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン);約0.3重量%の乳化剤(例えば、ポリソルベート-80);約1重量%の緩衝塩;及び約38重量%のゼラチンカプセル又はHPMCカプセルを含む。
【0123】
例えば、製剤は、約9.8重量%のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント);約14.5重量%のショ糖球体;約21.8重量%の結合剤非薬効成分(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC));約13重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55);約1.3重量%の可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル);約0.6重量%の流動促進剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン);約0.3重量%の乳化剤(例えば、ポリソルベート-80);約1.0重量%の緩衝塩;及び約37.7重量%のゼラチンカプセル又はHPMCカプセルを含む。
【0124】
本発明はまた、複数用量のβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)及び/又は追加の治療薬剤をGI管に沿って放出する放出調節製剤を提供する。そのような実施形態では、そのような製剤の全体の放出プロファイルは、例えば、複数の粒子種類又は複数の層を利用することにより調整してもよい。ある実施形態では、β-ラクタマーゼの第1用量は、例えば小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1又は複数)又は大腸(例えば、盲腸、結腸の上行部、横行部、下行部、又はS状部、及び直腸のうちの1又は複数)において放出されるように製剤化されてもよく、第2用量は、例えば小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1又は複数)又は大腸(例えば、盲腸、結腸の上行部、横行部、下行部、又はS状部、及び直腸のうちの1又は複数)の異なる場所で遅延放出されるように製剤化される。あるいは、腸管に沿った異なる場所で複数の用量が放出されてもよい。例えば、ある実施形態では、β-ラクタマーゼの第1用量は、例えば小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1又は複数)で放出されるように製剤化されてもよく、第2用量は、例えば小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1又は複数)の別の場所で遅延放出されるように製剤化される。別の実施形態では、β-ラクタマーゼの第1用量は、例えば大腸(例えば、盲腸、結腸の上行部、横行部、下行部、又はS状部、及び直腸のうちの1又は複数)で放出されるように製剤化されてもよく、第2用量は、例えば大腸(例えば、盲腸、結腸の上行部、横行部、下行部、又はS状部、及び直腸のうちの1又は複数)の別の場所で遅延放出されるように製剤化される。
【0125】
種々の実施形態では、本明細書に記載される薬剤は、薬学的に許容可能な塩、すなわち、過度の毒性、刺激、及びアレルギー反応などを伴わず、合理的なリスク・ベネフィット比に見合う、ヒト及びその他の動物の組織と接触させて使用することに適した塩の形態であってもよい。薬学的に許容可能な塩は当該技術分野で周知である。塩は、治療薬剤の最終的な単離及び精製の間にin situで、又は遊離塩基官能基を適切な酸と反応させるか、若しくは遊離酸官能基を適切なアルカリ部分と反応させることにより別々に調製され得る。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、及び吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムなど、並びに、これらに限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びエチルアミンなどを含む、非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンのカチオンが挙げられる。
【0126】
種々の実施形態では、本願製剤により多くの利点が提供される。例えば、本発明者らは、それ自体が挑戦的である、タンパク質(すなわち、β-ラクタマーゼ)の製剤化に成功した。これは、種々の実施形態で本願製剤が薬剤を放出するGI管環境によりさらに配合される。加えて、種々の実施形態では、本願製剤により、種々の抗生物質の有害作用からのGI管における良好な保護範囲を可能にするように十分に緩徐なGI管放出が、例えば小腸において(より緩徐な放出に見合うβ-ラクタマーゼ半減期の増大により強調される利点が)、提供される。さらに、本願ペレットの薬剤物質層を、EUDRAGITではなくHPCで被覆することにより、例えば、本願製剤は、製剤中のEUDRAGITの量を最小限に抑え、それにより用量制限毒性の可能性及び製造の複雑化を軽減する。
【0127】
投与及び用量
本願発明により投与されるβ-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の実際の用量は、例えば、特定の投与形態及び投与方法により異なり得ることが予測される。β-ラクタマーゼの作用を調節し得る多くの要因(例えば、体重、性別、食事、投与時間、投与経路、排出率、対象の病状、薬剤の組み合わせ、遺伝的気質、及び反応感受性)が当業者により考慮され得る。投与は連続的に行われてもよく、最大許容用量以内の1又は複数の別個の用量で行われてもよい。所与の一連の病状についての最適投与率は、従来の用量投与試験を用いて当業者により確認され得る。
【0128】
β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の個々の用量は、例えば、約0.01mg~約1,000mg、約0.01mg~約950mg、約0.01mg~約900mg、約0.01mg~約850mg、約0.01mg~約800mg、約0.01mg~約750mg、約0.01mg~約700mg、約0.01mg~約650mg、約0.01mg~約600mg、約0.01mg~約550mg、約0.01mg~約500mg、約0.01mg~約450mg、約0.01mg~約400mg、約0.01mg~約350mg、約0.01mg~約300mg、約0.01mg~約250mg、約0.01mg~約200mg、約0.01mg~約150mg、約0.01mg~約100mg、約0.1mg~約90mg、約0.1mg~約80mg、約0.1mg~約70mg、約0.1mg~約60mg、約0.1mg~約50mg、約0.1mg~約40mgの活性成分、単位投与形態当たり約0.1mg~約30mg、約0.1mg~約20mg、約0.1mg~約10mg、約0.1mg~約5mg、約0.1mg~約3mg、約0.1mg~約1mg、又は単位投与形態当たり約5mg~約80mgを含む単位用量形態(例えば、錠剤又はカプセル剤)で投与され得る。例えば、単位用量形態は、約0.01mg、約0.02mg、約0.03mg、約0.04mg、約0.05mg、約0.06mg、約0.07mg、約0.08mg、約0.09mg、約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約0.6mg、約0.7mg、約0.8mg、約0.9mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、又は約1,000mg(これらの間の全ての値及び範囲を含む)であってもよい。ある実施形態では、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の個々の用量は、25mgのβ-ラクタマーゼを含む単位投与形態で投与される。別の実施形態では、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の個々の用量は、50mgのβ-ラクタマーゼを含む単位投与形態で投与される。さらに別の実施形態では、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の個々の用量は、75mgのβ-ラクタマーゼを含む単位投与形態で投与される。
【0129】
ある実施形態では、β-ラクタマーゼは、1日当たり約0.01mg~約100mg、1日当たり約0.01mg~約1,000mg、1日当たり約0.01mg~約950mg、1日当たり約0.01mg~約900mg、1日当たり約0.01mg~約850mg、1日当たり約0.01mg~約800mg、1日当たり約0.01mg~約750mg、1日当たり約0.01mg~約700mg、1日当たり約0.01mg~約650mg、1日当たり約0.01mg~約600mg、1日当たり約0.01mg~約550mg、1日当たり約0.01mg~約500mg、1日当たり約0.01mg~約450mg、1日当たり約0.01mg~約400mg、1日当たり約0.01mg~約350mg、1日当たり約0.01mg~約300mg、1日当たり約0.01mg~約250mg、1日当たり約0.01mg~約200mg、1日当たり約0.01mg~約150mg、1日当たり約0.1mg~約100mg、1日当たり約0.1mg~約95mg、1日当たり約0.1mg~約90mg、1日当たり約0.1mg~約85mg、1日当たり約0.1mg~約80mg、1日当たり約0.1mg~約75mg、1日当たり約0.1mg~約70mg、1日当たり約0.1mg~約65mg、1日当たり約0.1mg~約60mg、1日当たり約0.1mg~約55mg、1日当たり約0.1mg~約50mg、1日当たり約0.1mg~約45mg、1日当たり約0.1mg~約40mg、1日当たり約0.1mg~約35mg、1日当たり約0.1mg~約30mg、1日当たり約0.1mg~約25mg、1日当たり約0.1mg~約20mg、1日当たり約0.1mg~約15mg、1日当たり約0.1mg~約10mg、1日当たり約0.1mg~約5mg、1日当たり約0.1mg~約3mg、1日当たり約0.1mg~約1mg、又は1日当たり約5mg~約80mgの量で投与される。
【0130】
種々の実施形態では、β-ラクタマーゼは、約0.01mg、約0.02mg、約0.03mg、約0.04mg、約0.05mg、約0.06mg、約0.07mg、約0.08mg、約0.09mg、約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約0.6mg、約0.7mg、約0.8mg、約0.9mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、又は約1,000mg(これらの間の全ての値及び範囲を含む)の1日用量で投与される。
【0131】
いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼ(例えば、SYN-004若しくはSYN-006、又は本明細書に記載されるその他のβ-ラクタマーゼ剤、及びこれらのバリアント)の適切な用量は、対象の体重1kg当たり約0.01mg~約100mgの範囲、例えば、体重1kg当たり、約0.01mg、約0.02mg、約0.03mg、約0.04mg、約0.05mg、約0.06mg、約0.07mg、約0.08mg、約0.09mg、約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約0.6mg、約0.7mg、約0.8mg、約0.9mg、約1mg、約1.1mg、約1.2mg、約1.3mg、約1.4mg、約1.5mg、約1.6mg、約1.7mg、約1.8mg、約1.9mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、又は約100mg(これらの間の全ての値及び範囲を含む)である。別の実施形態では、β-ラクタマーゼの適切な用量は、体重1kg当たり約0.01mg~約10mgの範囲、体重1kg当たり約0.01mg~約9mg、体重1kg当たり約0.01mg~約8mg、体重1kg当たり約0.01mg~約7mg、体重1kg当たり.01mg~約6mg、体重1kg当たり約0.05mg~約5mg、体重1kg当たり約0.05mg~約4mg、体重1kg当たり約0.05mg~約3mg、体重1kg当たり約0.05mg~約2mg、体重1kg当たり約0.05mg~約1.5mg、又は体重1kg当たり約0.05mg~約1mgである。
【0132】
種々の実施形態では、SYN-004又はSYN-006の用量は、約75mg~約300mgの間、例えば、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、又は約300mgである。
【0133】
本発明のある実施形態によれば、β-ラクタマーゼは、例えば、約1日に1回、約2日ごと、約3日ごと、約1週間に1回、約2週間に1回、約1か月に1回、約2か月に1回、約3か月に1回、約6か月に1回、又は約1年に1回投与されてもよい。ある実施形態では、β-ラクタマーゼは、1日に1回以上、例えば、1日に約2回、約3回、約4回、約5回、約6回、約7回、約8回、約9回、又は約10回投与されてもよい。
【0134】
追加の治療薬剤及び併用療法
本発明のマイクロバイオーム保護剤の投与は、追加の治療薬剤と組み合わされてもよい。追加の治療薬剤と本願製剤の共投与は、同時であってもよく、連続的であってもよい。さらに、本願製剤は、追加の治療薬剤を含んでいてもよい(例えば、同時製剤化)。
【0135】
いくつかの実施形態では、本発明の放出調節製剤は、追加の治療薬剤と組み合わせて投与される。ある実施形態では、追加の治療薬剤とマイクロバイオーム保護剤を、単一の放出調節製剤中に組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、治療及び/又は予防する方法は、本発明の放出調節製剤を、追加の治療薬剤を用いた処置を受けている対象に投与することを含む。
【0136】
ある実施形態では、追加の治療薬剤及びマイクロバイオーム保護剤は対象に同時に投与される。本明細書における「同時」との用語は、追加の治療薬剤及びマイクロバイオーム保護剤が、約30分以内、約20分以内、約10分以内、約5分以内、又は約1分以内など、約60分以内の時間間隔で投与されることを意味する。追加の治療薬剤及びマイクロバイオーム保護剤の投与は、単一製剤(例えば、追加の治療薬剤及びマイクロバイオーム保護剤を含む製剤)又は別個の製剤(例えば、追加の治療薬剤を含む第1の製剤及びマイクロバイオーム保護剤を含む第2の製剤)の同時投与によるものであり得る。
【0137】
共投与は、それらの投与のタイミングが、追加の治療薬剤とマイクロバイオーム保護剤の薬学的活性が時間的に重複し、それにより複合治療効果を発揮するようなタイミングであれば、追加の治療薬剤が同時に投与されることを必要としない。例えば、追加の薬剤及びマイクロバイオーム保護剤が連続的に投与され得る。本明細書における「連続的」との用語は、追加の薬剤及びマイクロバイオーム保護剤が、約60分以上の時間間隔で投与されることを意味する。例えば、追加の薬剤及びマイクロバイオーム保護剤の連続的投与の時間は、約60分以上、約2時間以上、約5時間以上、約10時間以上、約1日以上、約2日以上、約3日以上、又は約1週間以上離れていてもよい。最適投与時間は、投与される追加の薬剤及びマイクロバイオーム保護剤の代謝率、排出率、及び/又は薬物力学的活性に依存し得る。追加の薬剤又はマイクロバイオーム保護剤のいずれが最初に投与されてもよい。
【0138】
他の実施形態では、追加の治療薬剤及びマイクロバイオーム保護剤は対象に同時に投与されるが、GI管における追加の治療薬剤及びマイクロバイオーム保護剤のそれぞれの投与形態(又は共製剤化されている場合は単一投与形態)からの放出は連続的に起こる。
【0139】
共投与はまた、追加の治療薬剤が同じ投与経路で対象に投与されることを必要としない。むしろ、それぞれの治療薬剤は任意の適切な経路、例えば、非経口経路又は非経口以外の経路で投与され得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、1種類又は複数種類のマイクロバイオーム保護剤は、aGVHD並びにVREの定着及び/又はVREの血流感染症など、allo-HCTレシピエントへのβ-ラクタム系抗生物質の静脈内投与に関連する合併症の発生率及び/又は重症度を低減させる方法において使用される。
【0141】
いくつかの実施形態では、1種類又は複数種類のマイクロバイオーム保護剤は、aGVHD並びにVREの定着及び/又はVREの血流感染症など、allo-HCTに関連する疾患の1又は複数の兆候又は副作用を予防又は処置する1種類又は複数種類の治療薬剤と組み合わせて使用される。そのような薬剤としては、これらに限定されないが、コルチコステロイド(メチルプレドニゾロン又はプレドニゾロン)などの免疫抑制剤、及びその他の免疫抑制薬剤が挙げられる。例示的なaGVHD処置は、いくつかの実施形態では、プレドニゾロンである。その他の例示的なaGVHD予防及び処置としては、イブルチニブ(例えば、IMBRUVICA)、ミコフェノール酸モフェチル、mTOR阻害剤(シロリムス(ラパマイシン)、エベロリムスなど)、カルシニューリン阻害剤(タクロリムス又はシクロスポリンなど)、シクロスポリン、モノクローナル抗体(インフリキシマブ(例えば、REMICADE)、トシリズマブ(例えば、ACTEMRA)、アレムツズマブ(例えば、CAMPATH)、バシリキシマブ(例えば、SIMULECT)、ダクリズマブ(例えば、ZINBRYTA)など)、並びにデニロイキンジフチトクス(例えば、ONTAK)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗リンパ細胞グロブリン(ALG)、ペントスタチン(例えば、NIPENT)、ルキソリチニブ(例えば、JAKAFI)、及びフォトフェレーシスが挙げられる。
【0142】
いくつかの実施形態では、β-ラクタマーゼの投与によるaGVHDの発生率及び/又は重症度の低減により、イブルチニブ(例えば、IMBRUVICA)、ミコフェノール酸モフェチル、mTOR阻害剤(シロリムス(ラパマイシン)、エベロリムスなど)、カルシニューリン阻害剤(タクロリムス又はシクロスポリンなど)、シクロスポリン、モノクローナル抗体(インフリキシマブ(例えば、REMICADE)、トシリズマブ(例えば、ACTEMRA)、アレムツズマブ(例えば、CAMPATH)、バシリキシマブ(例えば、SIMULECT)、ダクリズマブ(例えば、ZINBRYTA)など)、並びにデニロイキンジフチトクス(例えば、ONTAK)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗リンパ細胞グロブリン(ALG)、ペントスタチン(例えば、NIPENT)、ルキソリチニブ(例えば、JAKAFI)、及びフォトフェレーシスを含む、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾロン及びその他の免疫抑制薬剤を含むaGVHDの予防又は処置に用いられる追加処置の用量又は投与の長さ若しくは投与頻度の低減が可能になる。例えば、これにより高用量及び高頻度での1種類又は複数種類のステロイドによる患者の治療が温存され得る。
【0143】
キット
本発明は、本明細書に記載される放出調節製剤の投与を単純化することができるキットを提供する。キットは、本明細書に記載される放出調節製剤のうちの少なくとも1つを含む、材料又は構成成分の集合体である。キットに構成される構成成分の正確な性質は意図された目的に依存する。ある実施形態では、キットはヒトの対象を処置する目的のために構成される。
【0144】
使用説明書をキットに含ませてもよい。使用説明書は通常、本明細書に記載される関連疾患を処置するためなど、所望の結果に影響を及ぼすキット中の構成要素の使用に際して用いられる技術を説明する具体的表現を含む。任意に、キットはまた、希釈剤、緩衝剤、薬学的に許容可能な担体、注射器、カテーテル、アプリケーター、ピペット操作器具若しくは測定器具、包帯材料、又は当該技術分野の当業者に容易に認識され得るようなその他の有用な道具など、その他の有用な構成要素を含む。
【0145】
キットに組まれた材料及び構成要素は、それらの操作性及び有用性を保存する任意の利便性及び適切な方法で実施者の保存場所に提供され得る。例えば、構成要素は、室温、冷蔵温度、又は冷凍温度で提供され得る。構成要素は通常、適切な包装材料中に含まれる。種々の実施形態では、包装材料は、好ましくは滅菌された汚染されていない環境を提供するための周知の方法により作成される。包装材料は、キット及び/又は構成要素の内容物及び/又は目的を表示する外部ラベルを有していてもよい。
【0146】
定義
本明細書で使用される「a」、「an」、又は「the」は、1、又は複数を意味し得る。
【0147】
さらに、参照数値表示と関連して使用される場合の「約」との用語は、その参照数値表示の最大10%を加算又は減算した参照数値表示を意味する。例えば、「約50%」との語は、45%~55%の範囲に及ぶ。
【0148】
「有効量」は、医学用途と関連して使用される場合、所望の疾患の測定可能な処置、予防、又は発症率の低減をもたらすために有効な量である。
【0149】
本明細書で使用される場合、薬剤又は刺激の存在下で、そのような調節の非存在下と比較して、活性及び/又は効果の読み取り値が有意な量、例えば、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上、又はそれ以上、約100%を含むそれ以下まで低減される場合に、何かが「低減される」。当業者に理解されるように、いくつかの実施形態では、活性が低減し、いくつかの下流の読み取りが低減することになるが、その他は増大し得る。
【0150】
反対に、薬剤又は刺激の存在下で、そのような薬剤又は刺激の非存在下と比較して、活性及び/又は効果の読み取り値が有意な量、例えば、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上、又はそれ以上、約100%又はそれ以上を含むそれ以下、約2倍以上、約3倍以上、約4倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、約10倍以上、約50倍以上、約100倍以上増大される場合に、活性が「増大される」。
【0151】
本願で参照される場合、別段の定めがない限り、全ての構成要素の割合は全構成要素の重量に対するものである。本明細書で使用される場合、「含む(include)」との語及びその変形は、非限定的であることを意図しており、リスト中の項目の記載は、本願技術の組成物及び方法において有用であり得るその他の類似の項目を排除するものではない。同様に、「し得る(can)」及び「してもよい(may)」との用語ならびにこれらの変形は、非限定的であることを意図しており、ある実施形態が特定の要素又は特徴を含み得る又は含んでいてもよいとの記載は、それらの要素又は特徴を含まない本願技術のその他の実施形態を排除するものではない。
【0152】
含む(include)、含有する(containing)、有する(having)などの用語の類義語である非限定的な用語「含む(comprising)」は、本明細書では、発明、本発明、又はその実施形態を記載及び請求するために使用され、「からなる(consisting of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」などの代替用語を用いて代替的に記載されてもよい。
【0153】
本明細書で使用される場合、「好ましい」及び「好ましくは」との語は、特定の状況下で特定の利益をもたらす技術の実施形態を指す。しかしながら、同じ状況下又はその他の状況下でその他の実施形態もまた好ましいことがある。さらに、1又は複数の好ましい実施形態の記載は、その他の実施形態が有用ではないことを意味するのではなく、本願技術の範囲からその他の実施形態を排除することを意図しているのではない。
【0154】
治療効果を達成するために必要とされる本明細書に記載される構成成分の量は、特定の目的のための従来の手順に従って経験的に決定されてもよい。一般に、治療目的のための治療薬剤(例えば、本明細書に記載されるβ-ラクタマーゼ及び/又は追加の治療薬剤)の投与について、治療薬剤は薬理学的に有効な用量で与えられる。「薬理学的に有効な量」、「薬理学的に有効な用量」、「治療的に有効な量」、又は「有効量」は、特に、障害又は疾患の処置について、所望の生理学的効果をもたらすのに十分な量又は所望の結果を達成可能な量を指す。本明細書で使用される有効量は、例えば、障害又は疾患の症状の発現を遅延させ、障害又は疾患の症状の経過を変化させ(例えば、疾患の症状の進行を遅くする)、障害又は疾患の1又は複数の症状又は兆候を低減又は除去し、障害又は疾患の症状を改善するために十分な量を含み得る。治療的有用性はまた、改善が自覚されているか否かにかかわらず、潜在的な疾患又は障害の進行を停止又は遅くすることも含む。
【0155】
有効量、毒性、及び治療効果は、例えば、LD50(母集団の約50%に対して致死的である用量)及びED50(母集団の約50%において治療的効果がある用量)を決定するための、細胞培養物、組織試料、組織ホモジネート、又は実験動物における標準的な薬学的手段により決定し得る。用量は、用いられる投与形態及び利用される投与経路によって異なり得る。毒性効果と治療効果との用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表され得る。いくつかの実施形態では、治療指数が大きい組成物及び方法が好ましい。治療的に有効な用量は、例えば細胞培養アッセイを含む、インビトロアッセイにより最初に評価される。また、用量は、細胞培養物において決定されたようなIC50を含む循環血漿濃度範囲を達成するための動物モデル、又は適切な動物モデルにおいて製剤化され得る。血漿中の記載される組成物のレベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィーにより測定され得る。任意の特定の投与量の効果は、適切なバイオアッセイによりモニタリングされ得る。投与量は、医師により決定され、必要に応じて治療の観察された効果に適合するよう調整される。
【0156】
特定の実施形態では、効果は、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約50%以上、約70%以上、約90%以上の定量可能な変化をもたらすことになる。いくつかの実施形態では、効果は、約10%、約20%、約30%、約50%、約70%、又は約90%若しくはそれ以上の定量可能な変化をもたらすことになる。治療的有用性はまた、改善が自覚されているか否かにかかわらず、潜在的な疾患又は障害の進行を停止又は遅くすることも含む。
【0157】
本明細書で使用される場合、「処置方法」は、本明細書に記載される疾患又は障害の処置のための組成物の使用、及び/又は使用のための組成物、及び/又は本明細書に記載される疾患又は障害の処置のための医薬の製造における使用にも等しく適用される。
【実施例
【0158】
実施例1:SYN-004(P3A)はマウス糞便におけるピペラシリンレベルを低下及び/又は低減させた
この実験の目的は、SYN-004の液体製剤(例えば、リン酸緩衝食塩水中のβ-ラクタマーゼ)が、強制経口投与によりマウスの小腸及び大腸に送達されるか否かを決定することであった。
【0159】
マウスは、500mg/kgのピペラシリン/タゾバクタムを1日に2回、2日間の皮下投与を受けた。マウスは同時に、(1)500mg/kgのピペラシリン/タゾバクタムの1日に2回、2日間の皮下投与を受けたが、P3Aの液体製剤(例えば、生理食塩水中のβ-ラクタマーゼ)の強制経口投与を受けなかった第1コホート;及び(2)500mg/kgのピペラシリン/タゾバクタムの1日に2回、2日間の皮下投与を受け、且つ、10mg/kgのP3Aの1日に2回、2日間の強制経口投与を受けた第2コホートの2つのコホートに分けられた。対照コホートのマウスは、ピペラシリン/タゾバクタムの投与もP3Aの強制経口投与も受けなかった。
【0160】
2日後、ピペラシリンの存在についてマウスの糞便を評価した。図1は、500mg/kgのピペラシリン/タゾバクタムの1日に2回、2日間の皮下投与、及びP3Aの液体製剤(例えば、リン酸緩衝食塩水中のβ-ラクタマーゼ)の1日に2回、2日間の強制経口投与を受けたマウスにおいて、ピペラシリンの量(1gの糞便あたりのμg)が減少したことを示す。棒グラフの左端のバーは対照マウスのコホートからのデータに対応し、棒グラフの中央のバーはピペラシリン/タゾバクタムの投与を受けたがP3Aの投与を受けなかったマウスの第1コホートからのデータに対応し、棒グラフの右端のバーはピペラシリン/タゾバクタムとP3Aの両方の投与を受けたマウスの第2コホートからのデータに対応する。
【0161】
実施例2:SYN-004(P3A)は、ピペラシリン/タゾバクタムからファーミキューテス細菌門を保護した
マウスは、125mg/kgのピペラシリン/タゾバクタムの1日に2回、2日間の皮下投与を受けた。マウスは同時に、(1)125mg/kgのピペラシリン/タゾバクタムの1日に2回、2日間の皮下投与を受けたが、P3Aの液体製剤(例えば、生理食塩水中のβ-ラクタマーゼ)の強制経口投与を受けなかった第1コホート;及び(2)125mg/kgのピペラシリン/タゾバクタムの1日に2回、2日間の皮下投与を受け、且つ、10mg/kgのP3Aの1日に2回、2日間の強制経口投与を受けた第2コホートの2つのコホートに分けられた。対照コホートのマウスは、ピペラシリン/タゾバクタムの投与もP3Aの強制経口投与も受けなかった。別の対象コホートのマウスは、P3Aのみのを投与された。
【0162】
2日後、マウス糞便中のファーミキューテス細菌門属(例えば、短鎖脂肪酸を産生するラクトバチルス属及びクロストリジウム属を含むG+嫌気性菌)のレベルを評価するため、マウス糞便の16S配列解析を行った。図2は、ピペラシリン/タゾバクタム単独によりマウス糞便中のファーミキューテスの存在量が減少し、P3Aの存在下でファーミキューテスの倍率存在量(fold abundance)が回復し保護されたことを示す。棒グラフの左端のバーは薬剤もβ-ラクタマーゼも投与されなかった対照マウスのコホートからのデータに対応し、左から2番目のバーはP3Aのみを投与されたマウスのコホートからのデータに対応し、右から2番目のバーはピペラシリン/タゾバクタムを投与されたがP3Aの液体製剤(例えば、リン酸緩衝食塩水溶液中のβ-ラクタマーゼ)は投与されなかったマウスの第1コホートからのデータに対応し、棒グラフの右端のバーはピペラシリン/タゾバクタムとP3Aの両方を投与されたマウスの第2コホートからのデータに対応する。
【0163】
16S配列解析は、マウス糞便1g当たりに存在する全細菌コピー数を評価するためにも行われた。図3は、ピペラシリン/タゾバクタムによりマウス糞便中に存在する全細菌コピー数が減少し、この減少はP3Aと共にピペラシリン/タゾバクタムが投与された場合に低減されたことを示す。棒グラフの左端のバーは薬剤もβ-ラクタマーゼも投与されなかった対照マウスのコホートからのデータに対応し、左から2番目のバーはP3Aのみを投与された受けたマウスのコホートからのデータに対応し、右から2番目のバーはピペラシリン/タゾバクタムを投与されたがP3Aの液体製剤(例えば、リン酸緩衝食塩水溶液中のβ-ラクタマーゼ)は投与されなかったマウスの第1コホートからのデータに対応し、棒グラフの右端のバーはピペラシリン/タゾバクタムとP3Aの両方を投与されたマウスの第2コホートからのデータに対応する。
【0164】
実施例3:SYN-004(P3A)はモデル生物において抗生物質により悪化したGVHDを低減した
この実験は、骨髄移植に関連するGVHD重症度の保護及び/又は低減に対するSYN-004投与の効果を評価するために行われた。
【0165】
129S1マウスは致死的に放射線照射された後、5Mに骨髄細胞(B6ドナー骨髄細胞)が移植され、2MにC57BL/6からの規定用量の脾臓Tリンパ細胞が移植された。これらのマウスはいずれもMHC型 H2を共有しているので、臨床的に関連性のあるMHCが合致した移植モデルを表す。
【0166】
マウスは、(1)5MにB6ドナー骨髄細胞の移植のみを受けたコホート;(2)5MにB6ドナー骨髄細胞の移植、2MにT細胞の移植、骨髄移植の10日後から100mg/kgのピペラシリン/タゾバクタムの1週間に3回の皮下投与、及びピペラシリン/タゾバクタム投与と同時に骨髄移植の10日後から20mg/kgのP3Aの液体製剤(例えば、リン酸緩衝食塩水溶液中のβ-ラクタマーゼ)の1週間に3回の強制経口投与を受けたコホート;(3)B6ドナー骨髄細胞とT細胞の移植を受けたコホート;及び(4)5MにB6ドナー骨髄細胞の移植、2MにT細胞の移植、及び骨髄移植の10日後から100mg/kgのピペラシリン/タゾバクタムの1週間に3回の皮下投与を受けたコホートの4つのコホートに分けられた。
【0167】
図4は、骨髄移植後の30日目をエンドポイントとする生存試験の結果を示す。データは、死亡率低下の観点から、骨髄移植に関連する、抗生物質により悪化したGVHDが、P3A投与によって低減されたことを示す。
【0168】
実施例4:SYN-004(P3A)はモデル生物において腸内細菌叢の多様性の喪失及び腸管のディスバイオシスを防止した
この実験は、腸球菌属の単一優占化の調節及び/又は低減に対するSYN-004投与の効果を評価するために行われた。この実験はまた、SYN-004投与により、骨髄移植を受けている致死的に放射線照射されたマウスにおけるマイクロバイオームの多様性の低下が防止され得るか否かを評価するために設計された。
【0169】
129S1マウスは致死的に放射線照射された後、5Mに骨髄細胞(B6ドナー骨髄細胞)が移植され、2MにC57BL/6からの規定用量の脾臓Tリンパ細胞が移植された。マウスは、(1)生理食塩水の投与を受けたコホート;(2)ピペラシリン/タゾバクタムの投与を受けたコホート;及び(3)ピペラシリン/タゾバクタム(Zosyn、ZOと省略)及びSYN-004(P3A;Blactと省略)の投与を受けたコホートの3つのコホートに分けられた。
【0170】
糞便試料は移植の21日後に採取され、16S配列解析が行われた。図5及び図6は16S配列決定解析の結果を示し、ピペラシリン/タゾバクタムとSYN-004の両方を投与されたマウスからの糞便試料は、ピペラシリン/タゾバクタムが単独で投与されたマウスからの糞便試料と比較して、腸球菌属の単一優占化の減少を示した。図6に関して、バーの空欄は特定の試料が増幅されなかったことを示す。
【0171】
実施例5:SYN-006(P2A)はβラクタム系抗生物質からモデル生物の腸内マイクロバイオームを保護した
この実験は、SYN-006の液体製剤(例えば、リン酸緩衝食塩水中のβ-ラクタマーゼ)を、強制経口投与によりマウスの小腸及び大腸に送達可能であるか否かを決定するために行われた。
【0172】
マウスは100mg/kgのイミペネム+シラスタチンの2日間の皮下投与を受け、3日目に糞便試料が採取された。マウスは同時に、(1)100mg/kgのイミペネム+シラスタチンの2日間の皮下投与を受けたが、P2Aの液体製剤(例えば、生理食塩水中のβ-ラクタマーゼ)の強制経口投与を受なかった第1コホート;(2)100mg/kgのイミペネム+シラスタチンの2日間の皮下投与を受け、且つ、1mg/kgのP2Aの1日に2回、2日間の強制経口投与を受けた第2コホート;(3)100mg/kgのイミペネム+シラスタチンの2日間の皮下投与を受け、且つ、10mg/kgのP2Aの1日に2回、2日間の強制経口投与を受けた第3コホート;及び(4)100mg/kgのイミペネム+シラスタチンの2日間の皮下投与を受け、且つ、50mg/kgのP2Aの1日に2回、2日間の強制経口投与を受けた第4コホートの4つのコホートに分けられた。
【0173】
3日目にマウスの糞便を採取した。マウス糞便中のファーミキューテス細菌門属(例えば、短鎖脂肪酸を産生するラクトバチルス属及びクロストリジウム属を含むG+嫌気性菌)のレベルを評価するため、マウス糞便の16S配列解析を行った。図7は、イミペネム+シラスタチン単独での存在下と比較して、イミペネム+シラスタチンと10mg/kg用量及び50mg/kg用量のP2Aとの両方の存在下でファーミキューテスの倍率存在量(fold abundance)が回復し保護されたことを示す。棒グラフの左端のバーはイミペネム+シラスタチンのみを投与されたマウスのコホートからのデータに対応し、左から2番目のバーはイミペネム+シラスタチン及び1mg/kgのP2Aを投与されたマウスの第2コホートからのデータに対応し、左から3番目のバーはイミペネム+シラスタチン及び10mg/kgのP2Aを投与されたマウスの第3コホートからのデータに対応し、棒グラフの右端のバーはイミペネム+シラスタチン及び50mg/kgのP2Aを投与されたマウスの第4コホートからのデータに対応する。
【0174】
次に、実験は、イミペネム処置マウスにおける腸球菌属の単一優占化、特にエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の異常増殖の調節及び/又は低減に対するSYN-006(P2A)投与の効果を評価するために行われた。
【0175】
マウスは100mg/kgのイミペネム+シラスタチンの2日間の皮下投与を受け、3日目に糞便試料が採取された。マウスは同時に、(1)100mg/kgのイミペネム+シラスタチンの2日間の皮下投与を受けたが、P2Aの液体製剤(例えば、生理食塩水中のβ-ラクタマーゼ)の強制経口投与を受なかった第1コホート;(2)100mg/kgのイミペネム+シラスタチンの2日間の皮下投与を受け、且つ、1mg/kgのP2Aの1日に2回、2日間の強制経口投与を受けた第2コホート;(3)100mg/kgのイミペネム+シラスタチンの2日間の皮下投与を受け、且つ、10mg/kgのP2Aの1日に2回、2日間の強制経口投与を受けた第3コホート;及び(4)100mg/kgのイミペネム+シラスタチンの2日間の皮下投与を受け、且つ、50mg/kgのP2Aの1日に2回、2日間の強制経口投与を受けた第4コホートの4つのコホートに分けられた。糞便試料は3日目に採取され、16S配列解析が行われた。図8は16S配列解析の結果を示し、イミペネム+シラスタチンとSYN-006(10mg/kg用量及び50mg/kg用量)の両方を投与されたマウスからの糞便試料は、イミペネム+シラスタチンが単独で投与されたマウスからの糞便試料と比較して、腸球菌属の単一優占化の減少を示した。図9は、イミペネム+シラスタチン単独で、又は1mg/kg、10mg/kg、及び50mg/kgの用量でP2Aと共に処置された場合のマウス糞便におけるエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の相対的存在量を示す。結果は、SYN-006(P2A)によりイミペネム処置マウスにおけるエンテロコッカス・フェシウムの異常増殖が防止されることを示す。各ヒストグラムにおいて、左側のクラスターは処置前の値を表し、右側のクラスターは処置後の値を表す。
【0176】
実施例6:SYN-006(P2A)はモデル生物において抗生物質により悪化したGVHDを低減した
この実験は、骨髄移植に関連するGVHD重症度の保護及び/又は低減に対するSYN-006(P2A)投与の効果を評価するために行われた。
【0177】
129S1マウスは致死的に放射線照射された後、5Mに骨髄細胞(B6ドナー骨髄細胞)が移植され、2MにC57BL/6からの規定用量の脾臓Tリンパ細胞が移植された。これらのマウスはいずれもMHC型 H2を共有しているので、臨床的に関連性のあるMHCが合致した移植モデルを表す。
【0178】
マウスは、(1)5MにB6ドナー骨髄細胞及び2MにT細胞の移植のみを受けたコホート;(2)5MにB6ドナー骨髄細胞の移植、2MにT細胞の移植、及び骨髄移植の10~25日後から100mg/kgのイミペネム+シラスタチンの1週間に3回の皮下投与を受けたコホート;(3)5MにB6ドナー骨髄細胞の移植、2MにT細胞の移植、骨髄移植の10~25日後から100mg/kgのイミペネム+シラスタチンの1週間に3回の皮下投与、及び骨髄移植の10~25日後から50mg/kgのP2Aの液体製剤(例えば、リン酸緩衝食塩水中のβ-ラクタマーゼ)の1週間に3回の強制経口投与を受けたを受けたコホートの3つのコホートに分けられた。
【0179】
図10は、骨髄移植後の40日目をエンドポイントとする生存試験の結果を示す。データは、死亡率低下の観点から、骨髄移植に関連する、抗生物質により悪化したGVHDが、P2A投与によって低減されたことを示す。
【0180】
本発明をその具体的実施形態に関連して記載したが、さらなる変更が可能であり、本願は、通常、発明の原理に従って、本発明の任意の変形物、使用、又は改変物に及ぶことを意図し、本開示からのそのような逸脱を含むことが本発明の属する技術の範囲内の既知の又は習慣的な実務の範囲内であり、前述した、及び以下の附属の特許請求の範囲における、本質的な特徴を適用し得ることが理解されるであろう。
【0181】
当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書に具体的に記載される特定の実施例の多数の均等物を認識することになる、又は解明可能であろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0182】
参照による取り込み
本明細書に記載された全ての特許及び出版物は、それら全体が参照により取り込まれる。本明細書で論じられた出版物は、本願出願日より前の開示を提供するのみである。本明細書は、本発明が、先行発明に基づくそのような出版物に先行する権利を与えることを承認するものとして解釈されるものではない。
【0183】
本明細書で使用される場合、全ての見出しは単に体系化のためであり、いずれの方法でも本開示を限定することを意図していない。個々のセクションの内容は全てのセクションに等しく適用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2022532162000001.app
【国際調査報告】