(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】デュアルピストンアセンブリ及びセレクタブルワンウェイクラッチを有するロックアップクラッチを備えた流体力学的トルク結合装置
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20220706BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20220706BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20220706BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20220706BHJP
【FI】
F16H45/02 X
F16H45/02 Y ZHV
B60K6/40
B60K6/36
B60K6/485
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566513
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 KR2020005781
(87)【国際公開番号】W WO2020231052
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519225255
【氏名又は名称】ヴァレオ、カペック、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VALEO KAPEC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】シュエシアン、イン
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202EE12
3D202EE15
3D202EE16
3D202EE22
3D202EE23
3D202FF15
(57)【要約】
ハイブリッド電気車両用の流体力学的トルク結合装置は、回転軸を中心に回転可能なケーシングと、インペラホイール及タービンホイールを含むトルクコンバータと、
デュアルピストンアセンブリを含むロックアップクラッチと、前記ケーシングの外に配置されるセレクタブルワンウェイクラッチと、を備える。セレクタブルワンウェイクラッチは、アウターレースと、複数のトルク伝達要素と、前記トルク伝達要素を介して前記アウターレースに動力伝達可能に且つ回転可能でなく結合可能であるインナーレースと、前記トルク伝達要素のペアのそれぞれにおいて前記トルク伝達要素を周方向に移動させるように構成された複数のアクチュエータ部材と、を含む。デュアルピストンアセンブリは、メインピストンと、アクチュエータロッドを有する少なくとも1つの二次ピストンと、を含む。複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれのトルク伝達要素は、アクチュエータ部材に作用する少なくとも1つのロックアップでの二次ピストンのアクチュエータロッドの軸方向の移動によって移動可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド電気車両用の流体力学的トルク結合装置であって、
回転軸を中心に回転可能なケーシングと、
インペラホイール及び前記インペラホイールと同軸に前記ケーシング内に配置されるタービンホイールを含むトルクコンバータと、
デュアルピストンアセンブリを含み、前記タービンホイールが前記ケーシングに対して回転可能となる流体圧伝達モードと、前記タービンホイールが前記ケーシングに回転可能でなく結合するロックアップモードとの間に切り換え可能なロックアップクラッチと、
前記ケーシングの外に配置されるセレクタブルワンウェイクラッチであって、アウターレースと、それぞれが第1及び第2トルク伝達要素を有する複数のトルク伝達要素のペアと、前記第1及び第2トルク伝達要素を介して前記アウターレースに動力伝達可能に且つ回転可能でなく結合可能であるインナーレースと、前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれにおいて前記第1トルク伝達要素を周方向に移動させるように構成された複数のアクチュエータ部材と、を含むセレクタブルワンウェイクラッチと、を備え、
前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1及び第2トルク伝達要素はそれぞれ、前記アウターレースが回転可能でなく前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記インナーレースに結合される噛み合い位置と、前記アウターレースが前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記インナーレースに対して回転可能となる非噛み合い位置との間で、前記アウターレース及び前記インナーレースのうちの少なくともいずれかに対して選択的に周方向に移動可能であり、
前記デュアルピストンアセンブリは、メインピストンと、前記メインピストンに取り付けられ且つ前記メインピストン及び前記ケーシングに対して軸方向に移動可能である少なくとも1つの二次ピストンと、を含み、
前記デュアルピストンアセンブリの前記メインピストンは、前記メインピストンが回転可能ではなく前記ケーシングに結合されるロックアップ位置と、前記メインピストンが前記ケーシングに対して回転可能である非ロックアップ位置との間で、前記ケーシング及び前記少なくとも1つの二次ピストンに対して選択的に軸方向に移動可能であり、
前記少なくとも1つの二次ピストンは、前記少なくとも1つの二次ピストンと単一となる複数のアクチュエータロッドを有し、
前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1トルク伝達要素は、前記アクチュエータ部材に作用する前記少なくとも1つのロックアップでの二次ピストンの前記アクチュエータロッドの軸方向の移動によって、選択的に周方向に、前記噛み合い位置から前記非噛み合い位置に移動可能である、ハイブリッド電気車両用の流体力学的トルク結合装置。
【請求項2】
前記アウターレースは、前記ケーシングに回転可能でなく固定され、前記インナーレースは、前記ケーシングに対して回転可能である、請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ部材のそれぞれは、前記少なくとも1つの二次ピストンの前記アクチュエータロッドのうちの1つと協働するように構成される、請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項4】
前記デュアルピストンアセンブリは、前記メインピストンに取り付けられ且つ前記メインピストン及び前記ケーシングに対して軸方向に移動可能な複数の前記二次ピストンを含み、前記二次ピストンのそれぞれは、前記二次ピストンのうちの1つと単一となる前記アクチュエータロッドのうちの1つを有する、請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項5】
前記アクチュエータ部材のそれぞれは、前記インナーレースの内側軌道面に沿って周方向に移動可能である、請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項6】
前記第1及び第2トルク伝達要素は、それぞれ、第1及び第2ローラーである、請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項7】
前記アクチュエータ部材のそれぞれは、前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1ローラーのうちの1つと隣り合い且つ噛み合うように構成された支持部分と、前記第1ローラーから離れ、前記支持部分から外側に延びる作用部分と、を含む、請求項6に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの二次ピストンの前記アクチュエータロッドのぞれぞれの自由遠位端は、前記ピストンロッドのそれぞれの先端と隣り合う円錐部分を有する、請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの二次ピストンの前記アクチュエータロッドのそれぞれの前記自由遠位端の前記円錐部分は、前記アクチュエータ部材のうちの1つの作用部分の作用端と協働するように構成されている、請求項8に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの二次ピストンは、延在位置と、前記メインピストンに対する退避位置との間で、前記メインピストン及び前記ケーシングに対して軸方向に移動可能であり、前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1トルク伝達要素は、前記少なくとも1つの二次ピストンが前記延在位置にあるとき、前記噛み合い位置になり、前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1トルク伝達要素は、前記少なくとも1つの二次ピストンが前記退避位置にあるとき、前記非噛み合いになる、請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの二次ピストンは、少なくとも1つの圧縮バネにより、前記延在位置に向けて前記軸方向に付勢される、請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項12】
前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1及び第2トルク伝達要素は、そzれお、対応する第1及び第2バネにより、前記噛み合い位置に付勢される、請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項13】
前記アウターレースの径方向での内側面は、均等に周方向に間隔を空けて一対で配置される複数の第1及び第2カムランプを含み、前記第1及び第2カムランプのペアの数は、前記トルク伝達要素のペアの数に対応する、請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項14】
前記ケーシングの外に配置されるねじり振動ダンパーを更に備え、前記セレクタブルワンウェイクラッチは、前記ケーシングと前記ねじり振動ダンパーとの間に配置される、請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項15】
前記ねじり振動ダンパーは、駆動部材と、被動部材と、前記駆動部材と前記被動部材との間で互いに直列に配置される、周方向に作用する複数の弾性部材と、を含む、請求項14に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項16】
前記アウターレースは、前記ケーシングに移動可能でなく固定され、前記インナーレースは、前記ねじり振動ダンパーの前記駆動部材に移動可能でなく固定され且つ前記ケーシングに対して回転可能である、請求項15に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項17】
前記ケーシングは、カバー覆い部と、軸方向で前記カバー覆い部の反対で前記カバー覆い部と同軸に配置されるインペラ覆い部とを含み、前記カバー覆い部及び前記インペラ覆い部は、互いに移動可能でなく結合される、請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項18】
前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記アウターレースは、前記ケーシングの前記カバー覆い部に回転可能でなく固定され、前記インナーレースは、前記ケーシングに対して回転可能である、請求項17に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項19】
前記メインピストンは、径方向に配向された環状のピストン本体と、筒状のフランジを有する環状のハブ部分と、を含み、前記少なくとも1つの二次ピストンは、ヘッド部材と、前記少なくとも1つの二次ピストン内で中空チャンバを形成する筒状のスカート部と、前記メインピストン及び前記ケーシングの前記カバー覆い部を通して前記ヘッド部材から軸方向に延びるピストンロッドと、を有する、請求項17に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項20】
前記メインピストンは、径方向に配向された環状のピストン本体と、前記二次ピストンを受容する軸方向に突出する少なくとも1つのボスとを含み、前記少なくとも1つの二次ピストンは、前記メインピストンの少なくとも1つの前記ボス及び前記カバー覆い部に対して軸方向に移動可能である、請求項17に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項21】
前記ケーシングの前記カバー覆い部は、前記ケーシングの前記カバー覆い部に一体に形成され、軸方向に突出し、且つ前記メインピストンの少なくとも1つの前記ボスを充当する少なくとも1つのピストンカップを含み、前記メインピストンの少なくとも1つの前記ボスは、前記ケーシングの前記カバー覆い部の少なくとも1つの前記ピストンカップに対して、前記軸方向に移動可能である、請求項20に記載の流体力学的トルク結合装置。
【請求項22】
内燃機関及び電気機械を備えるハイブリッド電気車両用の流体力学的トルク結合装置の操作方法であって、
前記流体力学的トルク結合装置は、
回転軸を中心に回転可能であり、前記電気機械に動力伝達可能に結合されるケーシングと、
インペラホイール及び前記インペラホイールと同軸に前記ケーシング内に配置されるタービンホイールを含むトルクコンバータと、
デュアルピストンアセンブリを含み、前記タービンホイールが前記ケーシングに対して回転可能となる流体圧伝達モードと、前記タービンホイールが前記ケーシングに回転可能でなく結合するロックアップモードとの間に切り換え可能なロックアップクラッチと、
前記ケーシングの外に配置されるセレクタブルワンウェイクラッチであって、アウターレースと、それぞれが第1及び第2トルク伝達要素を有する複数のトルク伝達要素のペアと、前記第1及び第2トルク伝達要素を介して前記アウターレースに動力伝達可能に且つ回転可能でなく結合可能であるインナーレースと、前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれにおいて前記第1トルク伝達要素を周方向に移動させるように構成された複数のアクチュエータ部材と、を含むセレクタブルワンウェイクラッチと、を備え、
前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1及び第2トルク伝達要素はそれぞれ、前記アウターレースが回転可能でなく前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記インナーレースに結合される噛み合い位置と、前記アウターレースが前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記インナーレースに対して回転可能となる非噛み合い位置との間で、前記アウターレース及び前記インナーレースのうちの少なくともいずれかに対して選択的に周方向に移動可能であり、
前記デュアルピストンアセンブリは、メインピストンと、前記メインピストンに取り付けられ且つ前記メインピストン及び前記ケーシングに対して軸方向に移動可能である少なくとも1つの二次ピストンと、を含み、
前記デュアルピストンアセンブリの前記メインピストンは、前記メインピストンが回転可能ではなく前記ケーシングに結合されるロックアップ位置と、前記メインピストンが前記ケーシングに対して回転可能である非ロックアップ位置との間で、前記ケーシング及び前記少なくとも1つの二次ピストンに対して選択的に軸方向に移動可能であり、
前記少なくとも1つの二次ピストンは、前記少なくとも1つの二次ピストンと単一となる複数のアクチュエータロッドを有し、
前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1トルク伝達要素は、前記アクチュエータ部材に作用する前記少なくとも1つのロックアップでの二次ピストンの前記アクチュエータロッドの軸方向の移動によって、選択的に周方向に、前記噛み合い位置から前記非噛み合い位置に移動可能であり、
当該操作方法は、前記噛み合い位置及び前記非噛み合い位置のうちの所望のいずれかに前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記第1トルク伝達要素を構成するために、前記メインピストン及び前記少なくとも1つの二次ピストンへの流体圧の調節によって、前記デュアルロックアップピストンアセンブリの軸方向の移動を選択的に制御するステップを備える、流体力学的トルク結合装置の操作方法。
【請求項23】
内燃機関と、少なくとも1つの電気機械と、機械的に前記内燃機関と前記少なくとも1つの電気機械とを結合する流体力学的トルク結合装置とを備えるハイブリッド電気車両であって、
前記流体力学的トルク結合装置は、
回転軸を中心に回転可能なケーシングと、
インペラホイール及び前記インペラホイールと同軸に前記ケーシング内に配置されるタービンホイールを含むトルクコンバータと、
デュアルピストンアセンブリを含み、前記タービンホイールが前記ケーシングに対して回転可能となる流体圧伝達モードと、前記タービンホイールが前記ケーシングに回転可能でなく結合するロックアップモードとの間に切り換え可能なロックアップクラッチと、
前記ケーシングの外に配置されるセレクタブルワンウェイクラッチであって、アウターレースと、それぞれが第1及び第2トルク伝達要素を有する複数のトルク伝達要素のペアと、前記第1及び第2トルク伝達要素を介して前記アウターレースに動力伝達可能に且つ回転可能でなく結合可能であるインナーレースと、前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれにおいて前記第1トルク伝達要素を周方向に移動させるように構成された複数のアクチュエータ部材と、を含むセレクタブルワンウェイクラッチと、を備え、
前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1及び第2トルク伝達要素はそれぞれ、前記アウターレースが回転可能でなく前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記インナーレースに結合される噛み合い位置と、前記アウターレースが前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記インナーレースに対して回転可能となる非噛み合い位置との間で、前記アウターレース及び前記インナーレースのうちの少なくともいずれかに対して選択的に周方向に移動可能であり、
前記デュアルピストンアセンブリは、メインピストンと、前記メインピストンに取り付けられ且つ前記メインピストン及び前記ケーシングに対して軸方向に移動可能である少なくとも1つの二次ピストンと、を含み、
前記デュアルピストンアセンブリの前記メインピストンは、前記メインピストンが回転可能ではなく前記ケーシングに結合されるロックアップ位置と、前記メインピストンが前記ケーシングに対して回転可能である非ロックアップ位置との間で、前記ケーシング及び前記少なくとも1つの二次ピストンに対して選択的に軸方向に移動可能であり、
前記少なくとも1つの二次ピストンは、前記少なくとも1つの二次ピストンと単一となる複数のアクチュエータロッドを有し、
前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1トルク伝達要素は、前記アクチュエータ部材に作用する前記少なくとも1つのロックアップでの二次ピストンの前記アクチュエータロッドの軸方向の移動によって、選択的に周方向に、前記噛み合い位置から前記非噛み合い位置に移動可能である、ハイブリッド電気車両。
【請求項24】
ハイブリッド電気車両であって、
内燃機関と、
電気機械と、
前記内燃機関、前記電気機械及び地面に接地するホイールに操作可能に関連するトルク伝達システムと、
前記トルク伝達システムに操作可能に関連する請求項1に記載の流体力学的トルク結合装置と、を備える、ハイブリッド電気車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体結合装置に関し、より詳しくは、デュアルピストン構造及びセレクタブルワンウェイクラッチを有する、車両ハイブリッドパワートレインシステム用の流体力学的トルク結合装置及びそれを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のハイブリッドパワートレインシステムは、内燃機関と、電気モーター/発電機とを含み、電気モーター/発電機は、牽引力用の動力伝達経路にトルクを伝達するべく車両トランスミッションに結合される。公知の電気モーター/発電機は、バッテリのようなエネルギー貯蔵システムから電力を供給される。ハイブリッドパワートレインシステムは、車両ホイールへの推進力を生成及び伝達するために、複数のモードで作動してもよい。
【0003】
上述に限定されないが上述を含むハイブリッドパワートレインシステムは、車両動力伝達経路の適用及び状態に関して受け入れられていることが判明しているが、性能及びコストは改良可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、ハイブリッド電気車両用の流体力学的トルク結合装置であって、回転軸を中心に回転可能なケーシングと、インペラホイール及び前記インペラホイールと同軸に前記ケーシング内に配置されるタービンホイールを含むトルクコンバータと、デュアルピストンアセンブリを含み、前記タービンホイールが前記ケーシングに対して回転可能となる流体圧伝達モードと、前記タービンホイールが前記ケーシングに回転可能でなく結合するロックアップモードとの間に切り換え可能なロックアップクラッチと、前記ケーシングの外に配置されるセレクタブルワンウェイクラッチと、を備える。セレクタブルワンウェイクラッチは、アウターレースと、それぞれが第1及び第2トルク伝達要素を有する複数のトルク伝達要素のペアと、前記第1及び第2トルク伝達要素を介して前記アウターレースに動力伝達可能に且つ回転可能でなく結合可能であるインナーレースと、前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれにおいて前記第1トルク伝達要素を周方向に移動させるように構成された複数のアクチュエータ部材と、を含む。前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1及び第2トルク伝達要素はそれぞれ、前記アウターレースが回転可能でなく前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記インナーレースに結合される噛み合い位置と、前記アウターレースが前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記インナーレースに対して回転可能となる非噛み合い位置との間で、前記アウターレース及び前記インナーレースのうちの少なくともいずれかに対して選択的に周方向に移動可能である。前記デュアルピストンアセンブリは、メインピストンと、前記メインピストンに取り付けられ且つ前記メインピストン及び前記ケーシングに対して軸方向に移動可能である少なくとも1つの二次ピストンと、を含む。前記デュアルピストンアセンブリの前記メインピストンは、前記メインピストンが回転可能ではなく前記ケーシングに結合されるロックアップ位置と、前記メインピストンが前記ケーシングに対して回転可能である非ロックアップ位置との間で、前記ケーシング及び前記少なくとも1つの二次ピストンに対して選択的に軸方向に移動可能である。前記少なくとも1つの二次ピストンは、前記少なくとも1つの二次ピストンと単一となる複数のアクチュエータロッドを有する。前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1トルク伝達要素は、前記アクチュエータ部材に作用する前記少なくとも1つのロックアップでの二次ピストンの前記アクチュエータロッドの軸方向の移動によって、選択的に周方向に、前記噛み合い位置から前記非噛み合い位置に移動可能である。
【0005】
本発明の第2の態様によれば、内燃機関及び電気機械を備えるハイブリッド電気車両用の流体力学的トルク結合装置の操作方法が開示される。前記流体力学的トルク結合装置は、回転軸を中心に回転可能であり、前記電気機械に動力伝達可能に結合されるケーシングと、インペラホイール及び前記インペラホイールと同軸に前記ケーシング内に配置されるタービンホイールを含むトルクコンバータと、デュアルピストンアセンブリを含み、前記タービンホイールが前記ケーシングに対して回転可能となる流体圧伝達モードと、前記タービンホイールが前記ケーシングに回転可能でなく結合するロックアップモードとの間に切り換え可能なロックアップクラッチと、前記ケーシングの外に配置されるセレクタブルワンウェイクラッチと、を備える。セレクタブルワンウェイクラッチは、アウターレースと、それぞれが第1及び第2トルク伝達要素を有する複数のトルク伝達要素のペアと、前記第1及び第2トルク伝達要素を介して前記アウターレースに動力伝達可能に且つ回転可能でなく結合可能であるインナーレースと、前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれにおいて前記第1トルク伝達要素を周方向に移動させるように構成された複数のアクチュエータ部材と、を含む。前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1及び第2トルク伝達要素はそれぞれ、前記アウターレースが回転可能でなく前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記インナーレースに結合される噛み合い位置と、前記アウターレースが前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記インナーレースに対して回転可能となる非噛み合い位置との間で、前記アウターレース及び前記インナーレースのうちの少なくともいずれかに対して選択的に周方向に移動可能である。前記デュアルピストンアセンブリは、メインピストンと、前記メインピストンに取り付けられ且つ前記メインピストン及び前記ケーシングに対して軸方向に移動可能である少なくとも1つの二次ピストンと、を含む。前記デュアルピストンアセンブリの前記メインピストンは、前記メインピストンが回転可能ではなく前記ケーシングに結合されるロックアップ位置と、前記メインピストンが前記ケーシングに対して回転可能である非ロックアップ位置との間で、前記ケーシング及び前記少なくとも1つの二次ピストンに対して選択的に軸方向に移動可能である。前記少なくとも1つの二次ピストンは、前記少なくとも1つの二次ピストンと単一となる複数のアクチュエータロッドを有する。前記複数のトルク伝達要素のペアのそれぞれの前記第1トルク伝達要素は、前記アクチュエータ部材に作用する前記少なくとも1つのロックアップでの二次ピストンの前記アクチュエータロッドの軸方向の移動によって、選択的に周方向に、前記噛み合い位置から前記非噛み合い位置に移動可能である。そして、当該流体力学的トルク結合装置の操作方法は、前記噛み合い位置及び前記非噛み合い位置のうちの所望のいずれかに前記セレクタブルワンウェイクラッチの前記第1トルク伝達要素を構成するために、前記メインピストン及び前記少なくとも1つの二次ピストンへの流体圧の調節によって、前記デュアルロックアップピストンアセンブリの軸方向の移動を選択的に制御するステップを備える。
【0006】
装置、機器、システム、コンバーター、方法及び本発明の一部を構成するようなものを含む本発明の他の態様は、例示的な実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより、より明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明に関連するハイブリッドパワートレインシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、操作の第1モードにおける本発明の例示的な実施形態に関連する流体力学的トルク結合装置の半断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の流体力学的トルク結合装置の断片の拡大図であり、タービンホイール、ロックアップクラッチおよびセレクタブルワンウェイクラッチ(SOWC)を示す図である。
【
図4】
図4は、
図2の流体力学的トルク結合装置の断片の拡大図であり、ロックアップクラッチ、セレクタブルワンウェイクラッチ(SOWC)、及びねじり振動ダンパを示す断片の拡大図である。
【
図5】
図5は、
図2の矩形「5」に示す動圧トルク結合装置の断片を拡大した図である。
【
図6】
図6は、本発明の例示的な実施形態に係るデュアルピストンアセンブリとカバー覆い部とを備えたロックアップクラッチの分解組立図である。
【
図7】
図7は、本発明の例示的な実施形態による、カバー覆い部に取り付けられたデュアルピストンアセンブリの斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の例示的な実施形態に係るデュアルピストンアセンブリのメインピストンの斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の例示的な実施形態に係るデュアルピストンアセンブリのセカンダリピストンの透視図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の例示的実施形態に係るセレクタブルワンウェイクラッチ(SOWC)の分解組立斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の例示的な実施形態に係るSOWCのアウターレースの斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の例示的な実施形態に係るSOWCのアクチュエータ部材の斜視図である。
【
図13】
図13は、SOWCのアクチュエータ部材に作用する二次ピストンのピストンロッドの自由遠位端も示す、非作動状態における本発明の例示的実施形態に係るSOWCの正面図である。
【
図14】
図14は、
図13の線14-14に沿ってとられた、本発明の例示的な実施形態によるSOWCの断面図である。
【
図15】
図15は、一対の第1及び第2のローラ並びに二次ピストンのピストンロッドの自由遠位端を示す、非作動状態における本発明の例示的な実施形態に係るSOWCの拡大前側斜視図である。
【
図16】
図16は、SOWCのアクチュエータ部材に作用する二次ピストンのピストンロッドの自由遠位端を示すことなく、非作動状態における本発明の例示的な実施形態に係るSOWCの正面図である。
【
図17】
図17は、本発明の例示的な実施形態に係る非作動状態にあるSOWCの背面図である。
【
図18】
図18は、一対の第1及び第2ローラを示す非作動状態における本発明の例示的な実施形態に係るSOWCの拡大後方断面図である。
【
図19】
図19は、第1ローラおよび対応するアクチュエータ部材を示す非作動状態における本発明の例示的な実施形態に係るSOWCの拡大後方断面図である。
【
図20】
図20は、操作の第2のモードにおける、本発明の例示的な実施形態による流体力学的トルク結合装置の断面図である。
【
図21】
図21は、
図20の矩形「20」に示す流体力学的トルク結合装置の断片を示す拡大図である。
【
図22】
図22は、操作の第3のモードにおける、本発明の例示的な実施形態による流体力学的トルク結合装置の断面図である。
【
図23】
図23は、
図22の矩形「22」に示す流体力学的トルク結合装置の断片を示す拡大図である。
【
図24】
図24は、SOWCのアクチュエータ部材に作用する二次ピストンのピストンロッドの自由遠位端をも示す、作動状態における本発明の例示的な実施形態に係るSOWCの前側断面図である。
【
図25】
図25は、
図24の線24-24に沿ってとられた、本発明の例示的な実施形態によるSOWCの断面図である。
【
図26】
図26は、操作の第4のモードにおける本発明の例示的な実施形態による流体力学的トルク結合装置の断面図である。
【
図27】
図27は、
図26の矩形「26」に示す動圧トルク結合装置の断片を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、添付図面に示されるような本発明の例示的な実施形態および方法について詳細に言及するが、図面全体において、同様の参照文字が同様の部分または対応する部分を指定している。しかしながら、その広い態様における本発明は、例示的な実施形態および方法に関連して示され且つ説明される特定の詳細、代表的な装置および方法、ならびに例示的な実施例に限定されないことに留意されたい。
【0009】
この例示的な実施形態の説明は、添付の図面と関連して読まれることを意図しており、これら図面、詳細な説明全体の一部とみなされるものとする。詳細な説明において、「水平」、「垂直」、「上」、「下」、「上側」、「下側」、「右」、「左」、「頂」、「底」などの相対的な用語、およびその派生語(例えば、「水平に」、「下に」、「上に」など)は、そのとき説明された、または議論中の病害されている図に示された向きに言及すると解釈すべきものである。これらの相対的な用語は、詳細な説明の便宜のためのものであり、通常、特定の方向性を要求することを意図していない。「接続された」、「相互接続された」などの取り付け、結合などに関する用語は、明示的に別記されていない限り、構造が直接または介在する構造を通して間接的に互いに固定または取り付けられる関係、ならびに可動または固定的の両方の取り付けまたは関係を指す。「操作可能に接続された」という用語は、その関係によって関連する構造が意図したとおりに動作することを可能にするような取り付け、結合または接続を意味する。「一体型」(または「単一となる」)という用語は、単一の部品として作られた部品、または互いに固定的に(すなわち移動不能に)接続された別々の部品からなる部品に関するものである。さらに、特許請求の範囲で使用される単語「1つ」は「少なくとも1つ」を意味し、特許請求の範囲で使用される単語「2」は「少なくとも2つ」を意味する。明確化のために、関連技術で知られているいくつかの技術資料は、不必要に開示を不明瞭にしないために詳細に記載されていない。
【0010】
図1は、本発明に係るハイブリッド自動車のハイブリッドパワートレインシステム2を示す概略図である。ハイブリッドパワートレインシステム2は、内燃機関(ICE)4と、少なくとも1つの回転電機(モータ、発電機、モータ/発電機など)6と、を含む複数のトルク発生装置から構成される。ICE4と電気機械6は、流体力学的トルク結合装置10と、トランスミッション3を介して機械的に結合され、推進力を車両ホイール1に伝達する。本発明の流体力学的トルク結合装置10は、流体力学的トルク結合装置10およびトランスミッション3を介して結合された内燃機関4および電気機械6を含む任意の適切なパワートレイン構成に採用され得る。ハイブリッドパワートレインシステム2は、乗用車、小型又は大型トラック、実用車、農業用車両、産業/倉庫用車両、娯楽用オフロード車両等を含む車両に採用されてもよいが、これらに限定されるわけではない。
【0011】
ハイブリッドパワートレインシステム3は、ICE4と電気機械6とが、流体力学的トルク結合装置10を採用するトランスミッション3に機械的に結合されるように構成されている。
【0012】
本発明の例示的な実施形態による流体力学的トルク結合装置は、
図2に最もよく示されているように、添付図面において参照符号10で概略的に表されている。流体力学的トルク結合装置10は、例えばハイブリッド自動車のハイブリッドパワートレインシステム2において、第1及び/又は第2の駆動軸を被動軸8に結合させることを目的としている。この場合、第1駆動軸は、
図1に最もよく示されるように、ハイブリッド自動車のICE4の出力軸(クランク軸など)5であり、第2駆動軸は、回転電機6の出力軸7である。従動軸8は、
図1に示すように、ハイブリッド自動車が有するトランスミッション(またはギアボックス)3の入力軸である。したがって、流体力学的トルク結合装置10は、ハイブリッド自動車のICE4および/または回転電機6を従動軸8に結合させるためのものである。
【0013】
流体力学的トルク結合装置10は、オイルやトランスミッション液などの流体が充填され、回転軸Xを中心に回転可能な密閉ケーシング12と、流体力学的トルクコンバーター14と、ロックアップクラッチ16と、弾性減衰装置(またはねじり振動ダンパ)18と、セレクタブルワンウェイクラッチ(SOWC)90と、を備えている。
図2に最もよく示されるように、ロックアップクラッチ16はケーシング12内に配置され、ねじり振動ダンパ18およびSOWC90は、ケーシング12の外に配置される。
【0014】
密閉ケーシング12、トルクコンバータ14、ロックアップクラッチ16、ねじり振動ダンパ18及びSOWC90は、いずれも回転軸Xを中心に回転可能である。当技術分野で知られているように、トルク結合装置10は、回転軸Xを中心に概ね対称的である。以下では、トルク結合装置10の回転軸Xに対する軸方向および径方向の配向とする。「軸方向に」、「半径方向に」、「周方向に」といった相対的な用語は、それぞれ、回転軸Xに平行な方向、回転軸Xに垂直な方向、および回転軸Xの周りに周回する方向に関するものとする。
【0015】
図2に示されるような例示的な実施形態による密閉ケーシング12は、第1の覆い部(又はカバー覆い部)20と、第1の覆い部20と同軸に、かつ軸方向に反対側に配置された第2の覆い部(又はインペラ覆い部)22と、を含む。第1および第1の覆い部20、22は、溶接部分13などによって、それらの外周部について相互に移動可能でなく(すなわち、固定的に)連結され、封止される。第1及び第2の覆い部20、22の各々は、一体型又は一体物(ワンピース)であり、例えば、ワンピースの金属板をプレス成形することにより製造することができる。
【0016】
第1の覆い部20は、ねじり振動ダンパー18およびSOWC90を介して、駆動軸、典型的にはICE4の出力軸5に選択的に動力伝達可能に連結可能である。
【0017】
具体的には、
図2の図示された実施形態では、ケーシング12は、ICE4によって選択的に回転駆動され、SOWC90を介してねじり振動ダンパ18および駆動軸5に、選択的に動力伝達可能に結合される。
【0018】
さらに、ケーシング12は、回転機械6の出力軸7に、SOWC90と一体的に形成され又は取り付けられ且つケーシング12に非可動(すなわち固定)的に(例えば溶接等の適宜の手段で)取り付けられたリングギア(またはスプロケット)及び連続ベルト9(またはピニオンギア)を介して動力伝達可能に(回転可能でなく)連結され、ケーシング12は、回転機械6がトルク伝達用に作動する速度と同じ速度で回転する。
【0019】
トルクコンバータ13は、
図2に最もよく示されるように、インペラホイール(ポンプ、インペラアセンブリまたはインペラということもある)24と、タービンホイール(タービンアセンブリまたはタービンということもある)26と、インペラホイール24とタービンホイール26との間に軸方向に介在するステータ(リアクタということもある)28と、を含んでいる。インペラホイール24、タービンホイール26、およびステータ28は、互いに回転軸Xと同軸に配置され、インペラホイール24、タービンホイール26、およびステータ28は、集合的にトーラスを形成している。インペラホイール24とタービンホイール26は、当技術分野で知られているように、動作中に互いに流体的に結合され得る。言い換えれば、タービンホイール26は、インペラホイール24によって流体力学的に駆動可能である。
【0020】
インペラホイール24は、インペラ覆い部22と、環状のインペラーコアリング31と、インペラ覆い部22及びインペラーコアリング31にろう付けなどで固定的に(すなわち、移動可能でなく)取り付けられた複数のインペラブレード32と、を含んでいる。インペラ覆い部22は、一体型(またはユニット型)部品であり、例えば、単一の部品または別々の部品を固定的に連結して作られている。
【0021】
タービンホイール26は、
図2及び
図3に最もよく示されているように、回転軸Xを中心に回転可能な環状の半トロイド状(又は凹状)のタービン覆い部34と、環状のタービンコアリング35と、タービンシェル34及びタービンコアリング35にろう付けなどで固定的に(すなわち、移動可能でなく)取り付けられた複数のタービンブレード36と、を含んでいる。タービンシェル34、タービンコアリング35、タービンブレード36は、一般に、スチールブランクからプレス加工により形成されている。インペラ覆い部22とタービン覆い部34は、まとめてその間にトロイダル内室(またはトーラス室)C
Tを画定している。ステータ28は、インペラホイール24とタービンホイール26の間に配置され、タービンホイール26からインペラホイール24に戻る流体を効率的に方向転換させる。ステータ28は、通常、ステータ28の逆回転を防止するために、ワンウェイ(またはオーバーランニング)クラッチ30に取り付けられている。
【0022】
タービンホイール26は、リベット、ネジ付きファスナーまたは溶接などの適切な手段によって、タービン(または出力)ハブ40に回転可能でなく固定される。タービンハブ40は、従動軸8に対して回転可能でなくスプライン結合されている。タービンハブ40は、回転軸Xを中心に回転可能であり、タービンホイール26を従動軸8にセンタリングするように従動軸8と同軸に配置されている。一般に、タービンホイール26のタービンブレード36は、既知の方法で、インペラホイール24のインペラブレード32と相互作用する。ステータ28は、ワンウェイ(またはオーバーランニング)クラッチ30を介して、静止しているステータシャフト29に回転結合されている。
【0023】
タービン軸回転数が低いときには、インペラホイール24からタービンホイール26に作動流体が流れ、ステータ28を通ってインペラホイール24に戻るようになり、それによって第1動力流路が提供される。ステータ28は、ワンウェイクラッチ30によって回転に対して保持され、流体の流れを方向転換し、トルク増のための反力トルクを与えることができるようになっている。ワンウェイクラッチ30は、ステータ28の一方向への回転のみを許容する。言い換えると、ステータ28は、典型的には、ステータ28の逆回転を防止するために、ワンウェイクラッチ30に取り付けられる。
【0024】
トルク結合装置10のロックアップクラッチ16は、摩擦リング42と、カバー覆い部20から軸方向に移動可能なデュアルピストンアセンブリ44と、を含む。摩擦リング42は、
図4および
図5に最もよく示されているように、ケーシング12のカバー覆い部20上に規定されたロック(または内側係合)面12eから、回転軸Xに沿ってケーシング12に対して軸方向に移動可能である。摩擦リング42は、ケーシング12のカバー覆い部20のロック面12eに選択的に摩擦係合するように構成されている。 摩擦リング42は、デュアルピストンアセンブリ44とカバー覆い部20との間に軸方向に配置されている。
【0025】
デュアルピストンアセンブリ44は、それに対して回転可能なようにカバーハブ46に取り付けられている。さらに、デュアルピストンアセンブリ44は、カバーハブ46に沿って軸方向に移動可能である。カバーハブ46は、溶接などの適切な手段により、カバー覆い部20に移動可能でなく取り付けられている。そして、カバーハブ46は、タービンハブ40に対して相対的に回転移動可能に、タービンハブ40に摺動自在に取り付けられている。
【0026】
密閉ケーシング12とデュアルピストンアセンブリ44は、まとめて、インペラ覆い部22とデュアルピストンアセンブリ44との間に、流体的に密閉された適用チャンバCAを規定し、カバー覆い部20とデュアルピストンアセンブリ44とカバーハブ46の間に、流体的に密閉された解放チャンバCRを規定する。流体力学的トルク結合装置が、典型的には、流体ポンプと、流体力学的トルク結合装置の流体圧を制御し調節する制御機構と、を含むことは、当業者に知られている。制御機構は、バルブシステムの操作により、適用チャンバCAおよび解放チャンバCR(すなわち、ロックアップピストンの軸方向の対向する側)の圧力を調節し、ロックアップピストンを、意図された1つの操作モードに関連する所望の位置に選択的に配置する。
【0027】
摩擦リング42は、
図4および
図5に最もよく示されているように、概して径方向に配向した環状の摩擦部分48と、摩擦リング42の摩擦部分48から軸方向の外方に延びる1つまたは複数の駆動タブ(または接触要素)50と、を含んでいる。
【0028】
さらに、駆動タブ50は、互いに等角度、等距離に配置されている。摩擦部48と駆動タブ50を有する摩擦リング42は、例えば、単一または一体の部品からなる一体型(またはユニット型)であるが、別々の部品が固定的に接続されたものであってもよい。好ましくは、駆動タブ50は、摩擦リング42に一体的にプレス成形される。摩擦リング42は、タービン覆い部34の外周面に溶接などの適宜の手段で固定された駆動タブ50およびタービンタブ37を介して、タービンホイール26と動力伝達可能に噛み合う。言い換えれば、駆動タブ50は、摩擦リング42をケーシング12のロック面12eに対して選択的に係合させるようにタービン覆い部34に対して回転軸Xに沿って軸方向に移動可能でありながら摩擦リング42がタービンホイール26に回転可能でなく結合されるように、タービンタブ37に動力伝達可能に噛み合う。
【0029】
摩擦リング42の環状摩擦部48は、
図5に最もよく示すように、軸方向に対向する第1摩擦面48
1および第2摩擦面48
2をそれぞれ有している。摩擦リング42の第1摩擦面48
1(摩擦リング42の係合面を規定する)は、ケーシング12のカバー覆い部20のロック面12eに対向している。摩擦リング42の環状摩擦部48の第1摩擦面48
1と第2摩擦面48
2のそれぞれには、
図5に最もよく示すように、接着剤による接着などで環状摩擦ライナ49が取り付けられている。
【0030】
デュアルピストンアセンブリ44は、カバーハブ46に対して回転可能なようにカバーハブ46に取り付けられる。さらに、デュアルピストンアセンブリ44は、カバーハブ46に沿って軸方向に移動可能である。デュアルピストンアセンブリ44は、
図4及び
図5に最も良く示されているように、カバー覆い部20に対して軸方向に移動可能な環状のメイン(又は第1)ピストン51と、メインピストン51に取り付けられ、メインピストン52に対して軸方向に移動可能な少なくとも1つの環状の二次(又は第2)ピストン54と、を含む。本発明の例示的な実施形態によれば、デュアルピストンアセンブリ44は、回転軸Xの周りに互いに周方向に等距離(または等角)に配置された複数の環状の二次ピストン54を含む。摩擦リング42の摩擦部48は、メインピストン52とカバー覆い部20のロック面12eとの間に軸線方向に配置されている。
【0031】
メインピストン52は、径方向に配向する環状のピストン本体56と、少なくとも1つの軸方向に突出したボス58と、メインピストン52の環状ピストン本体56に対して回転軸Xに近接した筒状のフランジ62を有する環状のハブ部分60と、を含む。メインピストン52のハブ部分60の筒状のフランジ62は、ハブ部分60の径方向内周側の端部で軸方向にタービンホイール26に向けて延びている。本発明の例示的な実施形態によれば、メインピストン52は、
図6~8に最もよく示されるように、回転軸Xの周りに互いに等距離(または等角度)に周方向に間隔をおいて配置された複数の軸方向に突出するボス58を含む。
【0032】
ケーシング12のカバー覆い部20は、
図2~6に最もよく示されるように、ケーシング12のカバー覆い部20と一体的に形成された、少なくとも1つの軸方向に突出したピストンカップ80を含んでいる。本発明の例示的な実施形態によれば、ケーシング12のカバー覆い部20は、
図6に最もよく示されているように、回転軸Xの周りに互いに周方向に等距離(又は等角度)に間隔をおいて配置された複数の軸方向に突出したピストンカップ80を含む。ピストンカップ80は、カバー覆い部20から二次ピストン54に向かって軸方向に突出している。さらに
図5および
図6に示すように、ピストンカップ80の各々は、回転軸Xと軸方向に平行に延びる筒状の内面81を有している。ピストンカップ80の各々の筒状の内面81は、
図2~5に最もよく示されているように、ボス58の1つに対応し、ボス58の1つを受け入れるように構成されている。ピストンカップ80を有するケーシング12のカバー覆い部20は、一体型(またはユニット型)部品であり、例えば、一体型の金属板をプレス成形することによって作られた単一部品、または別々の部品が固定的に接続されたものである。
【0033】
ボス58の各々は、カバー覆い部20に向かって軸方向に突出し、カバー覆い部20における軸方向に突出したピストンカップ80の1つに入り込んでいる。さらに
図5に示すように、ボス58の各々は、回転軸Xに軸方向に平行に延びる筒状の内面59
1および筒状の外面59
2を有している。ボス58の各々の筒状の内面59
1は、
図5に最もよく示されているように、二次ピストン54の1つに対応し、二次ピストン54の1つを受け入れるように構成されている。ボス58の各々の筒状の外面59
2は、
図5に最もよく示されているように、カバー覆い部20における軸方向に突出したピストンカップ80の1つに対応し、その中に受け入れられるように構成される。環状本体58およびボス58を有するメインピストン52は、例えば、一体型の金属板をプレス成形することによって単一部品で作られた一体型(またはユニット型)部品であり、または、互いに固定的に接続された別個の部品を含む。
【0034】
図2~5に最もよく示されているように、メインピストン52のボス58は、摩擦リング42の摩擦部分48の径方向で下方に配置されている。メインピストン52は、カバーハブ46に摺動自在に取り付けられ、軸方向に相対移動可能である。カバーハブ46の径方向における外側の表面は、
図2~4に最もよく示されているように、Oリング47などのシール部材を受け入れるための環状スロット(またはシール溝)を含んでいる。シール部材(例えばOリング)47は、メインピストン52とカバーハブ46の界面にシールを形成する。以下にさらに詳細に説明するように、メインピストン52は、この界面に沿ってカバーハブ46に対して軸方向に移動可能である。メインピストン52は、実質的に1つの円周上に配置され、カバーハブ46とメインピストン52との間で接線方向に向いている1組の弾性(または可撓性)舌部89によって、カバーハブ46に回転可能でなく連結され、メインピストン52のカバーハブ46に対する軸方向変位を許容する。具体的には、
図2~4および
図7に最もよく示されているように、軸方向に柔軟な舌状部89のそれぞれの一方の自由端は、メインピストン52の環状のハブ部分60に固定され、弾性の舌状部89のそれぞれの反対の自由端は、ストラップ板88に固定され、この板は、順に、溶接などの適切な手段でカバーハブ46に固定されている。軸方向に柔軟な舌状部89は、カバーハブ46に対するメインピストン52の軸方向変位を許容しつつ、メインピストン52とカバーハブ46との間でトルクを伝達するように構成される。言い換えると、弾性の舌状部89は、軸方向に弾性変形して、カバーハブ46に対するメインピストン52の相対移動を可能にするように構成されている。弾性の舌状部89は、メインピストン52をカバー覆い部20のロック面12eから離れるように付勢する。
【0035】
メインピストン52は、ロックアップクラッチ16のロックアップ位置と非ロックアップ位置との間でカバー覆い部20に対して軸方向に移動可能である。ロックアップクラッチ16のロックアップ位置では、メインピストン52がケーシング12のカバーシ覆い部
20のロック面12eに回転可能でなく摩擦的に噛み合う。
図5に最もよく示されるロックアップクラッチ16の非ロックアップ位置では、メインピストン52は、ケーシング12のカバー覆い部20のロック面12eから軸方向に間隔をあけており、ケーシング12のカバー覆い部20と摩擦的に噛み合うことはない。言い換えると、ロックアップクラッチ16のロックアップ位置では、メインピストン52は、ケーシング12をタービン覆い部34を介してタービンハブ40に回転可能でなく結合するように、ケーシング12に回転可能でなく結合されており、一方で、ロックアップクラッチ16の非ロックアップ位置では、ケーシング12は、トルクコンバータ14を介してタービンハブ40に回転可能に結合される。さらに、ストラップ板88は、
図2~4に最もよく示されるように、カバー覆い部20のロック面12eから離れる方向に、すなわちロックアップクラッチ16の非ロックアップ位置へ向かう、メインピストン52の軸方向移動を制限するものである。
【0036】
さらに本発明の例示的な実施形態によれば、二次ピストン54は、好ましくは同一である。二次ピストン54の各々は、
図4、5および9に最もよく示されているように、ヘッド部材70を有する筒状の中空本体68と、二次ピストン54内に中空チャンバ73を規定する筒状のスカート部72と、ヘッド部材70からメインピストン52を通って軸方向に延びるピストン(またはアクチュエータ)ロッド74と、を含む。筒状の中空本体68は、
図5に最もよく示すように、ヘッド部材70、筒状のスカート部72およびアクチュエータロッド74と一体に形成されている。
【0037】
二次ピストン54の各々は、メインピストン52のボス58の関連する1つ内に軸方向に摺動可能に取り付けられ、メインピストン52のボス58の各々は、
図2~55に最もよく示されるように、ケーシング12のカバー覆い部20の筒状のピストンカップ80の関連する1つ内に軸方向に摺動可能に取り付けられる。二次ピストン54の各々のピストンロッド74は、
図5に最もよく示されているように、カバー覆い部20のピストンカップ80の各々を通って延びる孔21を通って軸方向に延びている。筒状の中空本体68とピストンロッド74とを有する二次ピストン54は、例えば鋳造または機械加工により単一部品で作られた一体型(またはユニット型)部品であり、または互いに固定的に接続された別部品を含んでいる。
【0038】
各二次ピストン54の円筒状の中空本体68の円筒状のスカート部72には、例えば機械加工や鋳造によって環状溝84が形成されている。環状の第1ピストンシール部材85は、環状溝84内に配置されている。二次ピストン54の各々は、第1ピストン密封部材85によってメインピストン52のボス58の1つ内に密封される。本発明の例示的な実施形態によれば、二次ピストン54は、ケーシング12のメインピストン52とカバー覆い部20の両方に対して軸方向に往復動可能かつ密封を維持して移動可能である。二次ピストン54の各々の径方向外側の外周面に取り付けられた第1ピストンシール部材85は、メインピストン52と二次ピストン54の各々の界面にシールを形成している。同様に、各ボス58の筒状の外周面592には、各メインピストン152のボス58に形成された環状溝53が、例えば、機械加工や鋳造により形成されている。環状溝53には、環状の第2ピストンシール部材(例えば、Oリング)61が配置される。したがって、二次ピストン54の各々は、第1ピストンシール部材85によって主ピストン52のボス58の1つの中に密封され、メインピストン52は、第2ピストンシール部材61によってカバー覆い部20のピストンカップ80の1つの中に密封される。本発明の例示的な実施形態によれば、二次ピストン54は、メインピストン52の両方に対して軸方向に往復動可能かつ密封を維持して移動可能であり、メインピストン52は、ケーシング12のカバー覆い部20に対して軸方向に往復動可能かつ密封を維持して移動可能である。二次ピストン54の各々の径方向の外周面に取り付けられた第1ピストンシール部材85は、メインピストン52と二次ピストン54の各々の界面にシールを形成し、メインピストン52のボス58の各々の径方向の外周面に取り付けられた第2ピストンシール部材61は、メインピストン52とカバー覆い部20のピストンカップ80の各々の界面にシールを形成している。
【0039】
さらに、二次ピストン54の各々は、
図2~5に最もよく示されているように、少なくとも1つの圧縮ばね(コイルばねなど)78によって、ケーシング12のカバー覆い部20から離れるように軸方向に付勢されている。圧縮ばね78は、二次ピストン54のヘッド部材70とカバー覆い部20のピストンカップ80の径方向壁82との間で、二次ピストン54の中空チャンバ73内に配置される。ピストンロッド74の自由遠位端75には、例えばスナップリング77が設けられる。スナップリング77は、二次ピストン54のピストンロッド74に取り付けられ、カバー覆い部20のピストンカップ80の径方向壁82に係合するとき、タービンホイール26に向かう方向及びカバー覆い部20から離れる方向への二次ピストン54の軸方向移動を制限するために備えられている。二次ピストン54のピストンロッド74は、その中にスナップリング77が受け入れられる環状溝71(
図9に最もよく示されている)を有する。ピストンロッド74の自由遠位端75は、
図9に最もよく示されているように、最外周円錐部分76kと、スナップリング77と隣り合い、環状溝71と最外周円錐部分76kとの間に位置する内側筒状部分76cと、を有する。
【0040】
二次ピストン54の各々は、メインピストン52およびカバー覆い部20のピストンカップ80に対して、メインピストン52に対する延在位置と退避位置との間で軸方向に移動可能である。
【0041】
図2~5および13~18Bに最もよく示される延在位置では、二次ピストン54は、カバー覆い部20のピストンカップ80の径方向壁82から離れたメインピストン52における軸方向に突出したボス58のボア内に延び、二次ピストン54のピストンロッド75上のスナップリング77がカバー覆い部20のピストンカップ80の径方向壁82に係合する。さらに、圧縮バネ78は、二次ピストン54を延在位置に付勢する。
【0042】
図21~24に最もよく示される退避位置では、二次ピストン54は、カバー覆い部20のピストンカップ80の径方向壁82に向かってピストンカップ80に格納されているので、二次ピストン54のピストンロッド74上のスナップリング77は、選択的クラッチ18に向かってカバー覆い部20のピストンカップ80の径方向壁82から軸方向に間隔をおいて離間している。
【0043】
ねじり振動ダンパー18は、入力(または駆動)部材64と、周方向に作用する複数の弾性部材(ばね)65と、弾性部材65を介して駆動部材64に弾性的に結合された出力(または被動)部材66と、を備えている。
【0044】
駆動部材64は、ICE4のクランクシャフト5に、メカニカルファスナーや溶接などの適宜の手段で固定されている。被動部材66は、SOWC90を介してケーシング12に接続されている。弾性部材65は、
図4に最もよく示されるように、駆動部材64と被動部材66との間で互いに直列に配置される。
【0045】
ICEの出力軸5とカバー覆い部20との間に配置されたセレクタブルワンウェイクラッチ(SOWC)90は、流体力学的トルク結合装置10のケーシング12とICE4のクランク軸5とをねじり振動ダンパ18を介して選択的に動力伝達可能に結合している。さらに、SOWC90は、ケーシング12の外に配置され、
図2および
図3に最もよく示されるように、ベアリング91を介してカバー覆い部20の支持ボス23に取り付けられている。SOWC90は、アウターレース92と、インナーレース94と、アウターレース92とインナーレース94との間に径方向に配置された複数のトルク伝達素子と、を備える。本発明の例示的な実施形態によれば、トルク伝達要素は、アウターレース92とインナーレース94との間の半径方向の隙間に対で配置された、それぞれ第1及び第2ローラ(円筒ローラなど)96
1及び96
2の形態である。言い換えると、SOWC90は、アウターレース92とインナーレース94との間で径方向に配置され、アウターレース92とインナーレース94との両方に接触可能な、一対で配置された複数の第1及び第2ローラ96
1、96
2の組から構成されている。
【0046】
アウターレース92は、ローラワンウェイローラクラッチの技術分野において知られているように、SOWC90の外側軌道面を規定する径方向内側の表面93を含んでいる。SOWC90のアウターレース92は、
図3および
図5に最もよく示されるように、溶接部101などの適切な手段によってカバー覆い部200に回転可能でなく固定(すなわち、固定)される。言い換えると、SOWC90のアウターレース92は、ケーシング12に対して回転可能ではない。さらに、アウターレース92の径方向外側の環状周面は、
図1に示すように、連続ベルト9(またはピニオンギア)によって噛み合わされるように構成された複数の径方向外側における歯(またはスプライン)112(
図10および11に最もよく示すように)を備えている。
【0047】
アウターレース92の径方向内側の表面93には、周方向に等間隔に配置された複数の第1及び第2カムランプ95
1、95
2がそれぞれペアで含まれている。さらに、第1及び第2カムランプ95
1、95
2のペアの数は、第1及び第2ローラ96
1及び96
2の組の数に対応する。
図11、13、15、16、17及び18Aに最もよく示されているように、第1及び第2カムランプ95
1、95
2のペアは、アウターレース92の内側の表面93から径方向内方に延びる間隔ブロック97によって周方向に分離されており、複数のカムランプ95
1、95
2のそれぞれの対の第1及び第2カムランプ95
1及び95
2は、同じくアウターレース92の内側の表面93から径方向内方に延びるセパレータ98によって周方向に分離されている。
図10および
図11にさらに示すように、間隔ブロック97およびセパレータ98の両方は、アウターレース92と一体に形成されている。
【0048】
複数の第1及び第2のローラ96
1、96
2のペアのそれぞれの第1及び第2のローラ96
1、96
2のそれぞれは、対応する第1及び第2のローラスプリング99
1、99
2によって、第1及び第2カムランプ95
1、95
2に対してそれぞれ付勢される。第1及び第2のローラ96
1、96
2の各ペアの第1及び第2のローラスプリング99
1、99
2は、
図10に最もよく示すように、セパレータ98によって周方向に分離されている。
【0049】
インナーレース94は、回転軸Xと同軸の円筒状の径方向内側の軌道面100を含む。また、SOWC90のインナーレース94は、
図2及び
図3に最もよく示されるように、ベアリング91を介してカバー覆い部20の支持ボス23に取り付けられている。言い換えると、SOWC90のインナーレース94は、ケーシング12に対して回転可能である。
【0050】
さらに、ねじり振動ダンパー18の被動部材66は、
図4および
図5に最もよく示されるように、SOWC90のインナーレース94に、ファスナーまたは溶接部67などの適切な手段によって移動可能でなく取り付けられている。
【0051】
複数の第1及び第2のローラ961、962のペアのそれぞれの第1及び第2のローラ961、962は、第1及び第2のローラスプリング991、992によって、アウターレース02の内側の表面93上の第1及び第2カムランプ951、952とそれぞれ係合するように付勢されている。その結果、第1及び第2のローラ961、962は、アウターレース92の第1及び第2カムランプ951、952とインナーレース94の内側軌道面100との間で、それぞれ楔(または詰まり(jammed))となり、アウターレース92及びインナーレース94を一体として回転するように回転可能でなく結合(またはロック)させる。言い換えると、第1及び第2のローラ961、962は、噛み合い位置と、非噛み合い位置との間で、第1及び第2カムランプ951、952に移動可能である。噛み合い位置では、第1及び第2のローラ961、962は、アウターレース92及びインナーレース94の内側軌道面100の第1及び第2カムランプ951、952の間に、第1及び第2のローラスプリング991、992の付勢力により、それぞれ、挟み込まれる。非噛み合い位置では、第1及び第2のローラ961、962は、第1及び第2のローラスプリング991、992のいずれか1つの付勢力に抗して移動され、アウターレース92及びインナーレース94の内側軌道面100の第1及び第2カムランプ951、952の間に、それぞれ、挟み込まれない。さらに、複数のペアのローラ961、962のうち、第1ローラ961及び第2ローラ962の一方が、インナー及びアウターレース94,92の一方向への相対回転を阻止するように動作し、複数のペアのローラ961、962のうち、第1ローラ961及び第2ローラ962の他方が、インナー及びアウターレース94,92の反対方向の相対回転を阻止するように、第1ローラ961及び第2ローラ962が配置されている。
【0052】
SOWC90は、それぞれが第1ローラ96
1および第2ローラ96
2の1つのペアに動作可能に関連付けられた複数のアクチュエータ部材102をさらに備える。具体的には、アクチュエータ部材102の各々は、
図13および
図15~18Aに最もよく示されるように、第1ローラ96
1および第2ローラ96
2のうちのいずれかの第1ローラ96
1に接触するように構成される。
【0053】
本発明の例示的な実施形態によれば、アクチュエータ部材102は、好ましくは、構造的及び機能的に同一である。さらに、アクチュエータ部材102の数は、デュアルピストンアセンブリ44の二次ピストン54の数と、第1ローラ96
1および第2ローラ96
2のペアの数とに対応する。さらに、
図12および
図14に最もよく示されているように、アクチュエータ部材102の各々は、第1ローラ96
1の環状外周面と隣り合い、かつ、第1ローラ961と係合するように構成された凹状支持部分104と、第1ローラ96
1から離れ、凹状支持部分104から隣り合う間隔ブロック97に向かって外側に延びる作用部分106と、を含んでいる。
【0054】
アクチュエータ部材102の各々は、デュアルピストンアセンブリ44の二次ピストン54のうちの1つと協働するように構成される。具体的には、アクチュエータ部材102の各々の作用部分106は、
図5、13、14および15に最もよく示されているように、二次ピストン54のピストンロッド74の自由遠位端75と噛み合うように構成された作用縁部107を有している。また、アクチュエータ部材102の各々は、アウターレース92の外側軌道面93およびインナーレース94の内側軌道面100に沿って周方向に変位可能である。さらに、アウターレース92の外側軌道面93には、複数の円弧状のガイド溝108が形成されており、ガイド溝108はそれぞれ、第1ローラ96
1がその噛み合い位置へ移動できるように、セパレータ98から離れる方向および間隔ブロック97に向かう方向へのアクチュエータ部材102の周方向変位を制限するように構成された停止端部109を有している。具体的には、アクチュエータ部材102の作用縁部107が円弧状のガイド溝108の停止端部109に係合することで、アクチュエータ部材102の周方向の変位が停止されるようになっている。
【0055】
さらに、デュアルピストンアセンブリ44の二次ピストン54は、インナーレース94の内側の軌道面100に沿ってアクチュエータ部材102を周方向に変位させるように構成されている。その結果、アクチュエータ部材102は、対応する第1ローラスプリング991の作用に抗して第1ローラ961を、アウターレース92の第1カムランプ951との噛み合い位置(すなわち、くさび係合)から周方向に変位させて、第1ローラ961を非噛み合い位置に保持させる。
【0056】
図5、13、14及び15に最もよく示されているように、二次ピストン54が延在位置にあるとき、アクチュエータ部材102の作用部分106の作用縁部107は、二次ピストン54のピストンロッ74の自由遠位端75の円錐部分76kを、ピストンロッド74の先端付近で噛み合わせる。二次ピストン54の延在位置では、アクチュエータ部材102は、ピストンロッド74によって変位しない。したがって、第1ローラ96
1は、その噛み合い位置、すなわち、第1カムランプ95
1の狭い端部にある。さらに、二次ストン54が延在位置にあるとき、SOWC90は、非作動状態(
図5および
図13~18Bに図示)であり、両方向(時計回りおよび反時計回り)の回転方向にトルクを伝達するよう構成される。
【0057】
二次ピストン54が後退位置に移動すると、二次ピストン54のピストンロッド74の自由遠位端75の円錐部分76kは、アクチュエータ部材102を、第1カムランプ951の狭い端部から離れるように移動させる。その結果、アクチュエータ部材102の凹状支持部分104は、第1ローラ961がSOWC90のアウター及びインナーレース92、94の間で詰まることがないように、第1カムランプ951の狭い端部から非噛み合い位置へと第1ローラ961を押し出す。
【0058】
したがって、デュアルピストンアセンブリ44の二次ピストン54は、SOWC90のアクチュエータとして作用する。
【0059】
二次ピストン54が退避位置に達したとき(すなわち、二次ピストン54が
図24、
図25および
図27に示す右奥の位置にあるとき)、アクチュエータ部材102の作用部分106の作用縁部107が二次ピストン54のピストンロッド74の自由遠位端75の内側筒状部分76cに、ピストンロッド74の先端付近で噛み合う。二次ピストン54が退避位置にあるとき、第1ローラ96
1は、第1ローラ96
1がSOWC90のアウター及びインナーレース92,94の間で詰まることができないように、非噛み合い位置にある。従って、SOWC90は作動状態にあり、一方(
図13では反時計回り)の回転方向にのみトルクを伝達し、反対(
図13では時計回り)の回転方向にはフリーホイールするように構成されている。
【0060】
各二次ピストン54の圧縮ばね78は、500KPaの流体圧力に耐えられる大きさである。言い換えると、適用チャンバC
A内の流体圧力が500KPa以上となると、二次ピストン54は、ケーシング12のカバー覆い部20に向かって
図2~5の右方向に移動し、アクチュエータ部材102によってSOWC90の第1ローラ96
1を非噛み合い位置に周方向に変位させる。当業者であれば、設計に応じて500KPa以外の圧力を使用することができることを認識するであろう。
【0061】
本発明に係る流体力学的トルク結合装置10は、4つの操作モードを有する。
【0062】
図2~
図5に示す操作の第1のモードでは、解放チャンバC
R内のロックアップクラッチ16のリリース圧は約500KPaであり、一方、適用チャンバC
A内のロックアップクラッチ16の印加圧は約200KPaである。その結果、メインピストン52は、非ロックアップ位置にあり、二次ピストン54は、メインピストン52および二次ピストン54が共にカバー覆い部20から最大距離まで離間した延在位置にあるので、摩擦リング42の摩擦部48は、メインピストン52(つまり、ロックアップクラッチ16の非ロックアップ位置)によってケーシング12のカバー覆い部20のロック面12eeに摩擦的に噛み合わず、SOWC90は、非作動状態(
図5および
図13~18Bに図示)となっている。操作の第1のモードでは、メインピストン52は、摩擦リング42から軸方向に離間しており、トルク結合装置10は、SOWC90およびねじり振動ダンパ18を介してICE4が動力伝達可能に結合された流体力学モードである。
【0063】
図19~
図20に示す操作の第2のモードでは、適用チャンバC
Aにおけるロックアップクラッチ16の印加圧は、0~500KPa、好ましくは100~500KPaの間である。その結果、メインピストン52は、ロックアップ位置に向かって舌状部89の復元力に抗してカバー覆い部20側に移動し、その際、メインピストン52は、摩擦リング42の摩擦部48を押し付けて、摩擦リング42をケーシング12のカバー覆い部20のロック面12eに対して摩擦的に回転可能でなく噛み合うようにする(すなわち、ロックアップクラッチ16のロックアップ位置となる)。二次ピストン54は延在位置に留まり、このときSOWC90は非作動状態である。第2のモードでは、ICE4と伝動軸8とが直接接続される。第2のモードにおいて、ハイブリッド車両のバッテリは、充電モードであってもよい。
【0064】
図21~
図22に示す操作の第3のモードでは、ロックアップクラッチ16の適用チャンバC
Aにおける印加圧は500~800KPaである。その結果、二次ピストン54は、ケーシング12のカバー覆い部20に向かう方向で右方向に移動し、SOWC90を退避位置に配置し、SOWC90を作動状態とする。具体的には、ピストンロッド74の自由遠位端75は、アクチュエータ部材102を、第1カムランプ95
1の狭い端部から押し退ける。そして、アクチュエータ部材102の凹状支持部分104は、第1ローラ96
1がSOWC90のアウター及びインナーレース92、94の間で詰まることがないように、第1ローラスプリング99
1の復元力に抗して第1カムランプ95
1の狭い端部から非噛み合い位置に押し、SOWC90を作動状態に配置させる。メインピストン52は、ロックアップ位置に留まる。第3のモードでは、ICE4と流体力学的トルク結合装置10のケーシング12(したがって伝動軸8)とが切り離され、電動機械6と伝動軸8とが直接接続される。なお、ICE4はオフであってもよい。ハイブリッド車両は、リジェネレーションモードまたは電気駆動(またはE-drive)モードである。
【0065】
図25および
図26に示される操作の第4のモードでは、解放チャンバC
Rにおけるロックアップクラッチ16のリリース圧は約800KPaであり、適用チャンバC
Aにおけるロックアップクラッチ16の印加圧も約800KPaである。その結果、二次ピストン54は退避位置に留まり、SOWC90を作動状態に維持する。しかし、メインピストン52は、ケーシング12のカバー覆い部20から離れて左方向に移動し(
図25および
図26に図示)、ロックアップクラッチ16の非ロックアップ位置となる。第4のモードでは、ICE4はオン状態であり、操作の第1のモードへの切り替えが可能な状態である。
【0066】
なお、上述した実施形態には、
図2~
図26に示す追加実施形態を含め、様々な修正、変更、改変を実施することができるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
本発明の例示的な実施形態に関する前述の説明は、特許法の規定に従って説明のために提示されたものである。また、本発明を網羅的に説明したり、開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。本明細書に開示された実施形態は、本発明の原理およびその実用化を最もよく説明するために選択され、それによって、当業者は、本明細書に記載された原理に従う限り、意図された特定の用途に適するように種々の実施形態および種々の変更を伴って本発明を最もよく利用することができるようにした。したがって、本出願は、その一般原理を用いた本発明の変形、使用、または適応を対象とすることを意図している。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野において既知または慣用の範囲内にある、本開示からの逸脱をカバーすることを意図している。したがって、上述した本発明は、その趣旨および範囲を逸脱することなく変更を加えることができる。また、本発明の範囲は、それに添付された特許請求の範囲によって定義されることが意図されている。
【国際調査報告】