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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】エネルギ回収システム
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
H02N2/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021567960
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2020063645
(87)【国際公開番号】W WO2020229671
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】102019112746.7
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】518379278
【氏名又は名称】テーデーカー エレクトロニクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ブライラク,マルシン
(72)【発明者】
【氏名】サックス,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ルカン,ペーター
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA06
5H681BB08
5H681DD23
5H681FF32
5H681FF41
(57)【要約】
少なくとも2つの圧電ユニット(3)及び中央制御ユニット(2)を備えるエネルギ回収システムが記載されている。圧電ユニット(3)はそれぞれ、圧電層(6)及び集積エレクトロニクス(7)を備え、集積エレクトロニクス(7)は圧電層(6)にコンタクトしている。圧電層(6)は互いに角度を成して配置されている。圧電層(6)において生成された電圧を平滑化するために働く電気部品が集積エレクトロニクス内に組み込まれている。集積エレクトロニクス(7)は中央制御ユニット(2)にコンタクトしており、中央制御ユニット(2)は制御モジュール(4)を備え、圧電ユニット(3)から電気エネルギを集めるように設計されており、制御モジュール(4)は圧電ユニット(3)の相互の電気的減衰を最小化するか又は防止するように設計されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ回収システムであって、
少なくとも2つの圧電ユニットを備え、前記少なくとも2つの圧電ユニットは、それぞれ、
圧電層と、
集積エレクトロニクスと、を有し、
前記圧電層は前記集積エレクトロニクスによって電気的にコンタクトされ、
前記集積エレクトロニクスは、前記圧電層内で生成される電圧を平滑化するための電気部品を有し、
前記圧電層は、互いに角度を成して配置されており、
前記エネルギ回収システムはさらに、
前記集積エレクトロニクスによって電気的にコンタクトされる、中央制御ユニットを備え、
前記中央制御ユニットは制御モジュールを有し、前記圧電ユニットから電気エネルギを集めるように設計されており、
前記制御モジュールは前記圧電ユニットの相互の電気的減衰を最小化するか又は防止するように設計されている、
エネルギ回収システム。
【請求項2】
前記圧電層は互いに垂直に配置されている、
請求項1記載のエネルギ回収システム。
【請求項3】
前記少なくとも2つの圧電ユニットの前記圧電層に対して角度を成す圧電層を有する第3の圧電ユニットを備える、
請求項1又は2記載のエネルギ回収システム。
【請求項4】
前記第3圧電ユニットの前記圧電層は、前記少なくとも2つの圧電ユニットの圧電層に対して垂直である、
請求項3記載のエネルギ回収システム。
【請求項5】
さらなる圧電ユニットを備え、その圧電層は別の前記圧電ユニットに対して角度を成している、
請求項3又は4記載のエネルギ回収システム。
【請求項6】
前記圧電層が円形セグメント形状である、
請求項1乃至5いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項7】
前記圧電層は、交差する3つの円形状の平面内に配置されている、
請求項1乃至7いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項8】
前記圧電ユニット及び前記制御ユニットはフレームに取りつけられている、
請求項1乃至7いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項9】
前記フレームは球形状である、
請求項8記載のエネルギ回収システム。
【請求項10】
前記少なくとも2つの圧電ユニットの前記集積エレクトロニクスは互いに並列又は直列に群として相互接続されている、
請求項1乃至9いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項11】
前記エネルギ回収システムは複数の相互接続された集積エレクトロニクス群を備え、
前記集積エレクトロニクス群は互いに並列又は直列に相互接続されている、
請求項10記載のエネルギ回収システム。
【請求項12】
前記集積エレクトロニクス及び/又は前記制御ユニットは、前記圧電層において生成される電圧を制限するための電気部品を備える、
請求項1乃至11いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項13】
前記集積エレクトロニクスは整流器を備える、
請求項1乃至12いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項14】
前記整流器は分離した個別ダイオードの相互接続から形成されている、
請求項13記載のエネルギ回収システム。
【請求項15】
前記整流器は集積回路の中に集積されており、前記集積回路に対して並列にZダイオードが相互接続されている、
請求項10記載のエネルギ回収システム。
【請求項16】
前記整流器は集積回路の中に集積されており、前記集積回路に対して並列に保護回路が相互接続されており、
前記保護回路は、分圧器、トランジスタ及びコンデンサからなり、
前記トランジスタ及び前記コンデンサは直列に相互接続されており、
前記分圧器は、前記トランジスタ及び前記コンデンサに対して並列に相互接続されており、
前記トランジスタは前記分圧器から取り出された電圧で制御されている、
請求項13記載のエネルギ回収システム。
【請求項17】
前記制御ユニットはRFモジュールを備える、
請求項1乃至16いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項18】
前記制御ユニット及び前記RFモジュールは集められた前記電気エネルギによって稼働されるように構成されている、
請求項17記載のエネルギ回収システム。
【請求項19】
前記エネルギ回収システムはエネルギ的に自給自足である、
請求項1乃至18いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項20】
前記圧電層は、1mmよりも薄い基板上に配置されている、
請求項1乃至19いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項21】
前記基板は導電性である、
請求項20記載のエネルギ回収システム。
【請求項22】
前記圧電層の形状は前記基板の形状に適合している、
請求項20記載のエネルギ回収システム。
【請求項23】
前記圧電ユニットは、前記圧電層のたわみを制限するように設計されたリミッタを備える、
請求項1乃至22いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項24】
前記制御ユニットは直流電圧コンバータを備える、
請求項1乃至23いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項25】
前記集積エレクトロニクス及び/又は前記制御ユニットは平滑化コンデンサを備える、
請求項1乃至24いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項26】
前記制御モジュールはシステムオンチップ又はマイクロコントローラである、
請求項1乃至25いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項27】
前記RFモジュールは50msよりも短い期間のパワーオンリセット時間を備え、及び/又は
前記RFモジュールはZ-Waveモジュール、ZigBeeモジュール又はBluetoothモジュールである、
請求項1乃至26いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項28】
前記RFモジュールはBluetooth送信器であり、前記Bluetooth送信器はチャネル数を適合させるように構成されている、
請求項1乃至27いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項29】
前記Bluetooth送信器は単一のチャネル上で送信する、
請求項128記載のエネルギ回収システム。
【請求項30】
送信信号の持続時間、送信電力及び中間信号休止が、可能な限り少ないエネルギを消費するように設定されている、
請求項1乃至29いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項31】
前記制御ユニットは付加的に、エネルギ貯蔵のための、充電可能な電池又はコンデンサを備える、
請求項1乃至30いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項32】
前記制御ユニットは、前記圧電層において生成される電圧に基づいて、エネルギ回収システムに作用する加速度を方向に依存して決定するように設計されている、
請求項1乃至31いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項33】
前記制御ユニットは付加的なセンサを備える、
請求項1乃至32いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項34】
前記圧電層は、ポリマー層、セラミック層、セラミック薄層、多層セラミック又はモノリシックセラミックである、
請求項1乃至33いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項35】
前記圧電層は300μmよりも薄い、
請求項1乃至34いずれか1項記載のエネルギ回収システム。
【請求項36】
衝撃センサであって、
請求項1乃至35いずれか1項記載の、少なくとも1つのエネルギ回収システムを備え、
前記エネルギ回収システムは、衝突又は衝撃を検出し、この情報を受信器に送信するように設計されている、
ショックセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエネルギ回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型化が進むと、部品の寸法が小さくなるだけでなく、必要な電気エネルギの削減にもつながる。そのため今日では、例えばスマートフォンのように、より多くの機能をデバイスに統合することが可能であり、また、数年前には考えられなかったようなモバイル形態の電気機器を提供することが可能である。とはいえ、これらのモバイル機器には、エネルギ源として、定期的に交換しなければならないか又は外部電源で充電しなければならない充電池やバッテリーを必要とする。
【0003】
環境から少量のエネルギを得る「エネルギ回収(Energy Harvesting)」は、エネルギ的に独立した機器のエネルギ供給を可能にするための可能な解決アプローチとしての地位を確立している。最もよく知られているマクロ的な例は、機械式腕時計であり、アンバランスを介して着用者の機械的エネルギを利用して時計を作動させる。ミクロ的には、太陽光発電がよく知られた例であり、電力網から独立して街灯などの電気機器を作動させることができる。よく知られていないミクロ的な代替例は、圧電効果を利用することであり、環境からエネルギを得ることを実現する。圧電材料を圧力や振動などで変形させることで、エネルギ供給に使用することができる電圧を圧電材料においてタップすることができる。
【0004】
そのため、複数の空間方向で良好なエネルギ収量を有する圧電エネルギ回収システムが所望されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、複数の空間方向において有利なエネルギ効率を占める圧電エネルギ回収システムを提供することである。
【0006】
本課題は、請求項1に記載のエネルギ回収システムによって解決される。さらに有利な設計と可能な配置は、さらなる請求項に見られる。
【0007】
少なくとも2つの圧電ユニット及び中央制御ユニットを備えるエネルギ回収システムが記載されている。これらの圧電ユニットはそれぞれ、圧電層及び集積エレクトロニクスを備え、集積エレクトロニクスは圧電層にコンタクトしている。これらの圧電層は互いに角度を成して配置されている。圧電層において生成された電圧を平滑化するために働く電気部品が集積エレクトロニクス内に組み込まれている。集積エレクトロニクスは、中央制御ユニットにコンタクトしており、中央制御ユニットは制御モジュールを備え、圧電ユニットから電気エネルギを集めるように設計されており、制御モジュールは圧電ユニットの相互の電気的減衰を最小化するか又は防止するように設計されている。
【0008】
このようにして、回収素子として使用される複数の圧電素子を有するエネルギ回収システムを構築することができ、それぞれの圧電素子を互いに異なる方向に配置することができる。圧電ユニットに取り付けられた電子部品及び中央制御電子機器は、どのような場合でも、すなわちシステム全体がどの方向から励起されるかに関わらず、最大限可能な電気エネルギを生成するように協働して働く。このようにして、個々の圧電素子の相互の電気的減衰を防止することができる。
【0009】
この最大エネルギは、特にシステムの作動や、信号伝送、中間貯蔵(Zwischenspeicherung)などに使用することができる。
【0010】
「角度を成す(gewinkelt)」という用語は、ここでは、関係する複数の層が互いに任意の、ただし0°とは異なる角度で配置されている配置として理解できる。層間の角度は、各層の表面の面法線で囲まれた角度と考えることができる。このようにして、互いに角度を成す層は、互いに任意の角度で配置することができ、層の平行配置だけは除外される。好ましくは、互いに角度を成して配置された2つの層の間の角度は、少なくとも10°、特に好ましくは少なくとも45°である。
【0011】
圧電層が生成できるエネルギ量は、圧電材料の変形度合いに大きく依存し、したがって、使用される幾何学的形状と密接に関係する。特に圧電層のように異方性の柔軟性が続く幾何学的形状では、得られる可能性のあるエネルギは作用する力の方向に強く依存する。このように、圧電層では、法線に平行な方向の力は強い変形をもたらし、ひいては強いエネルギを発生させるが、対照的に、同じ大きさの、法線に垂直な方向の力は変形をもたらさず、エネルギも発生させない。
【0012】
各圧電ユニットには、圧電層で生成される電圧を平滑化して制限する独自の集積エレクトロニクスを有するため、生成された、しばしば強く変動する電圧は、さらなる電気部品に直接使用することができ、さらなる電気部品を電圧ピークから保護することができる。制御ユニット内の制御モジュールは、主に圧電ユニットの相互の電気的減衰を防止又は最小化するために使用することができる。
【0013】
2つの圧電層は互いに直交することができる。少なくとも2つの圧電層が角度を成すだけでなく垂直に配置されることは、特に有利である。エネルギ生成が、圧電層の法線のうちの1つに対する力の方向に依存するだけでなく、2つの圧電層の2つの法線で構成される平面に関する力の方向にも依存するからである。力が平面内に作用する場合、エネルギ生成は力の方向に依存しない。このようにして、例えば、車輪の回転のように平面内で推移する、力の影響や動きの場合でも、安定したエネルギ生成が可能になる。
【0014】
エネルギ回収システムは、第3圧電ユニットを備えることができ、第3圧電ユニットの圧電層は第1の両圧電ユニットの圧電層に対してそれぞれ角度を成している。これにより、さらなる第3空間方向から電気エネルギを得ることができる。
【0015】
第3圧電層を第1の両圧電層と垂直に配置すると、さらなる第3空間方向から最大のエネルギを集めることができる。3つの圧電体層をすべて直交させて配置すれば、各空間方向から最大のエネルギを集めることができる。3つの圧電体層を直交させて配置することで、力の方向に全く依存しないエネルギ生成が可能になる。
【0016】
さらに、エネルギ回収システムは、さらなる圧電ユニットを有することができ、さらなる圧電ユニットの圧電層は他の圧電ユニットに対して角度を成す。このようにして、機械的な衝突や振動から、より多くのエネルギを生成することができる。圧電層は円形セグメント形状又は扇形形状(kreissegmentfoermig)であることができる。円形セグメント形状の圧電層は、複数の層を1つの平面上に隙間なく配置することを可能にし、したがって、面全体をエネルギ生成のために最適に使用することができる。
【0017】
さらに、圧電層は、交差する3つの円形平面に配置されることができる。好ましい実施形態では、3つの平面は、互いに直角に交差することができる。したがって、エネルギの発生は方向に依存しなくなる。3つの面の圧電層から発生するエネルギの合計は、エネルギ回収システムの向きに依存しないで、同じになるからである。
【0018】
圧電ユニットと制御ユニットをフレームに固定することは、エネルギ回収システムのモバイル性を高める目的で役立つ。フレームに作用する振動や力が圧電層に伝わり、電気エネルギを発生させることができる。一つの可能性は、ネジによる固定であり、これにより、長期的な振動がある場合でも、堅固な接続を提供することができる。さらなる可能性は、接着剤を用いて固定することである。エネルギ回収システムにかかる予想される力に応じて、フレームは損傷することなく繰り返し耐えられるように十分安定していなければならなない。補強要素とりわけアングルによって、フレームを補強することは、フレームの安定性及び堅牢制をさらに向上させることができる。他の材料を排除するものではないが、プラスチックや金属を材料として使用することができる。
【0019】
フレームの1つの設計は、球形であることができる。球形状は、エネルギ回収システムが回転運動を介して電気エネルギを生成することを可能にする。さらに、球形状のエネルギ回収システムは、サッカーボール、バスケットボール、テニスボール、野球ボール、あるいはボウリングボールなどのスポーツボールに使用するのにも適している。
【0020】
さらに、少なくとも2つの集積エレクトロニクスは互いに並列又は直列に群として相互接続される(zu einer Gruppe verschalten)ことができる。圧電層の設計や材料に依存して、生成された電力は異なる電圧や電流で出力される。集積エレクトロニクスを並列に群として相互接続すれば、個々の集積エレクトロニクスの出力電流を加算して全体として増加させることができる。一方、集積回路の直列接続では、集積回路の出力電圧が加算され、したがって全体として増大する。
【0021】
さらに、エネルギ回収システムは、複数の相互接続された集積エレクトロニクス群を備え、集積エレクトロニクス群は互いに並列又は直列に相互接続されることができる。直列又は並列に相互接続された個々の集積エレクトロニクスと同様に、個々の群が並列に相互接続されている場合は複数の群の出力電流を加算することができ、個々の群が直列に相互接続されている場合は出力電圧を加算することができる。
【0022】
集積エレクトロニクス及び/又は前記制御ユニットは、圧電層において生成される電圧を制限するための電気部品を備えることができる。このように、設置された電気部品を、破壊の虞のある電圧ピークから保護することができる。
【0023】
さらに、集積エレクトロニクスは、整流器を備えることができる。圧電層から出力される電流は交流であり、直流に比べて扱いが複雑である。この整流器によって、圧電層からの交流電圧は平滑化された直流電圧に変換され、他の電気部品で利用できるようになる。したがって、交流を直流に変換する整流器を集積回路に実装することは有用である。
【0024】
この整流器は分離した個別ダイオード(diskreten Einzeldioden)の相互接続から形成することができる。分離した個別ダイオードは、高電流・高電圧に比較的敏感でなく、これを使用した整流器も同様に過負荷に敏感でない。
【0025】
一方、整流器を集積回路に内蔵し、その集積回路に並列にZダイオードを接続することも可能である。集積回路は、単品のダイオードとは異なり、過電圧に対して敏感である。集積回路は過負荷によって容易に破損してしまう。Zダイオードは、集積回路のヒューズのような役割を果たす。過電圧の際に、集積回路の負荷を逃がし、損傷から保護する。また、整流器や圧電層への出力電圧の可能性のあるフィードバックもZダイオードで抑制される。
【0026】
別の実施形態では、整流器が集積回路に集積され、保護回路が集積回路と並列に接続されていてもよい。保護回路は、分圧器、トランジスタ及びコンデンサで構成され、トランジスタ及びコンデンサは直列に相互接続され、分圧器は、トランジスタ及びコンデンサに対して並列に相互接続されることができる。トランジスタは、分圧器から得られる電圧で制御することができる。分圧器は、集積回路が破損する前にトランジスタが切り替わる(durchgeschalten)ように設計しなければならない。その結果、圧電層からの余剰電荷は直列接続されたコンデンサに貯蔵され、電圧ピーク後に使用することができる。したがって、記載された保護回路は、余剰電圧のピークを利用することができるため、Zダイオードを用いた回路よりも高い効率を実現することができる。さらに、過渡的な電圧ピークに対するコンデンサの抵抗値が低いため、生成された電荷が圧電層からよく流れるようになる。このようにして、圧電層の電気的減衰が減少し、エネルギ回収システムの効率が向上する。
【0027】
制御ユニットは、RFモジュールを有することができる。したがって、制御ユニットが受信器にワイヤレスで情報を送ることができる。
【0028】
制御ユニットとRFモジュールは、エネルギ回収システムから集めた電気エネルギで稼働するように設計することができる。このことは、総エネルギだけでなく、電圧と電流も、制御ユニットとRFモジュールに使用可能な範囲で提供されることを意味する。
【0029】
エネルギ回収システムは、圧電層から得られるエネルギのみでシステム内のすべての電気部品を稼働させるという、エネルギ面での完全な自給自足が可能である。このことは、外部からのエネルギ供給を完全に排除することを可能にし、それによって、エネルギ回収システムが独立しモバイルになる。
【0030】
さらに、1mmよりも薄い基板上に圧電体層を配置することも可能である。一方では、基板は圧電層の機械的安定性を高めるため、より大きな力にも破損することなく耐えることができる。他方では、基板は、特にそれが硬すぎる場合、圧電層の変位(Auslenkung)ひいては変形を妨げる可能性があり、したがって、可能なエネルギ生成を低減させる可能性がある。安定性と柔軟性の間の適切な妥協点を達成するには、1mm以下の厚さが有利であることがわかっている。好ましくは、基板の厚さは0.2mm未満であるべきではない。
【0031】
さらに、基板は導電性であることもできる。したがって、基板を介して圧電層は直接コンタクトされることができ、このようにして基板を電極として利用することができる。
【0032】
圧電層は基板の形状に適合することができる。それにより、基板上の可能な限り広い面積を圧電層で覆い、エネルギ生成を最適化することが可能になる。基板自体は、四角形、三角形、円形、円形セクタ形状又は他の任意の形状を有することができる。一方では、基板の形状ひいては圧電層の形状は、用途の幾何学的要件に適合させることができる。他方では、圧電層の形状や大きさによって、出力電圧を後述の電気部品の要求に合わせることができる。
【0033】
その他に、圧電ユニットは、圧電層のたわみ(Ausschlag)を制限するように設計されたリミッタを備えることができる。リミッタとは、例えば、圧電層の全体、半分、あるいは4分の1だけを所定の距離で覆う部品である。リミッタは、圧電層の変形又は変位の振幅を機械的に制限するように設計されており、例えば、最大許容変形量に達したときに圧電層がリミッタに当たるようになっている。
圧電層の長さが約10mmの場合、圧電層からの距離が約1mmであることが有利である。リミッタは、圧電層の最大変位を制限し、そのため、圧電層への機械的負荷は、強い力の影響があった場合に制限されるが、連続動作の場合にも制限される。さらに、リミッタにより、強い変形時に発生する圧電層の強い電圧ピークを防ぐことができる。
【0034】
制御ユニットは、制御モジュールとRFモジュールに加えて、集積エレクトロニクスが接続される直流電圧コンバータを備えることができる。このことは、集積回路から出力される直流電圧を、例えば制御モジュール又はRFモジュールに必要な、別の電圧に変換することを可能にする。このようにして、圧電層から出力される電圧で直接稼働できない電気部品を稼働させることも可能である。
【0035】
さらに、集積回路及びコントロールユニットは、平滑化コンデンサを備えることができる。直流電圧コンバータを有さないエネルギ回収システムの場合、集積エレクトロニクス及び制御ユニット内の平滑コンデンサは、電圧変動を抑え、電圧カーブを平滑化することができる。直流電圧コンバータが制御ユニットに集積されている場合、入力電圧と出力電圧の比率は、直流電圧コンバータの電気的上流側に接続された集積エレクトロニクス上の第1コンデンサの静電容量と、直流電圧コンバータの電気的下流側に接続された制御ユニット上の第2コンデンサの静電容量とに基づいて適合することができる。
【0036】
制御モジュールは、システムオンチップ(SoC:System-on-a-Chip)又はマイクロコントローラであることができる。いずれのオプションも、エネルギ回収システムにおいてプロセスや機能をプログラムすることを可能にし、さらに他の電気部品やプログラム可能な部品でエネルギ回収システムを拡張できるようにする。さらに、SoC及びマイクロコントローラは、RFモジュールの駆動制御に適している。
【0037】
さらに、RFモジュールは50msよりも短い期間のパワーオンリセット時間を備えることができる。このようにパワーオンリセット時間が短いRFモジュールは、機能的な状態に起動するために必要なエネルギが少なくて済む。そのため、パワーオンリセット時間が短いRFモジュールは、特にエネルギ回収システムへの集積に適している。特に、低エネルギの、Z-Waveモジュール、ZigBeeモジュール又はBluetooth(登録商標)モジュールは、必要なエネルギが少なく、制御モジュールを介して駆動制御できるため、RFモジュールとして適している。
【0038】
RFモジュールがBluetoothトランスミッターの場合Bluetoothトランスミッターは、チャンネル数を調整できるように設計されている。Bluetoothの規格では、それぞれ1MHzの周波数幅で79のチャンネルがある。小さなパケットの送信には、全周波数幅が必要なわけではないので、使用するBluetoothチャンネルの数を適合することで、エネルギ回収システムのエネルギ消費を抑えることができる。
【0039】
好ましい実施形態では、Bluetooth送信器は、単一のチャネルで送信することができる。これは、Bluetooth送信器とBluetooth受信器間の通信が可能な最小のチャンネル数である。その結果、チャンネル数によっては、1つのチャンネルだけで最もエネルギを節約することができる。
【0040】
さらに、RFモジュールでは、送信信号の持続時間、送信電力、中間信号休止を、できるだけエネルギを消費しないように設定することができる。これは、RFモジュールに応じて異なる方法で実装できる。例えば、受信強度に応じて、信頼性の高い接続が得られる限り送信電力を下げることができる。また、エネルギ消費を抑えるために、情報伝達を妨げない範囲で、送信信号の持続時間を短くしたり、中間信号休止を長くしたりすることも可能である。受信器がRFモジュールによって設定可能(konfigurierbar)であれば、RFモジュールの送信動作に適合させることができるため、安全な情報伝送でエネルギ消費を抑えることができる。
【0041】
制御ユニットはさらに、エネルギ貯蔵のために、充電可能なバッテリー又はコンデンサを備えることができる。このように、圧電層で得られたエネルギを貯蔵し、蓄積することができる。これにより、エネルギ回収システムで、より大きな電力を必要とする用途や電気部品を稼働させること、又は集められたエネルギを後の時点で使用することを可能になる。
【0042】
さらに、圧電層において生成された電圧に基づいて、エネルギ回収システムに作用する加速度を方向に依存して特定するように制御ユニットを設計することもできる。圧電層の変位は、主に圧電層に作用する加速度に比例するため、圧電層において生成される電圧から加速度を推定することができる。圧電層が互いに垂直に配置されているため、加速度の量と方向の両方を特定することができる。圧電層を加速度センサとして使用する場合には、圧電層から出力されるアナログ電圧を読み取ることができる集積アナログ・デジタル変換器を有する制御モジュールを使用することが有利である。
【0043】
さらに、制御ユニットには、さらなるセンサを備えることができる。目的に応じて、エネルギ回収システムは、拡張センサを必要とする多くの用途に役立つことができる。例えば、GPSセンサ、温度センサ、力センサ、湿度センサ、その他のセンサであることができる。
【0044】
さらに、圧電層は、ポリマー層、セラミック層、セラミック薄膜、多層セラミック又はモノリシックセラミックであることができる。層が圧電性である限り、原理的にはエネルギ回収システムへの使用に適している。ポリマー又はセラミックの薄膜は、他の圧電体層に比べて柔軟性が高いという利点がある。圧電性であるモノリシックセラミックスでは、モノリシックの相互接続を変化させることで、圧電層の電圧出力を適合させることができる。
【0045】
圧電層の厚さは300μmよりも薄くできる。圧電層の厚さだけでなく、その他の幾何学的、材料的要因によって、圧電層は硬くなったり又は柔軟になったり、安定したり又は不安定になったりする。また、基板上の圧電体層の配置によって、圧電体層の柔軟性だけでなく、基板の柔軟性も大きく変化させることができる。厚い圧電層は、薄い基板の柔軟性に悪影響を及ぼすため、この観点から、圧電層の層厚は300μm以下が好ましいことがわかっている。
【0046】
本発明によるエネルギ回収システムは、例えば、エネルギ回収システムをフレームに接続することによって、衝撃センサに集積することができ、エネルギ回収システムは、衝突又は衝撃を検出し、この情報を受信器に送信するように設計されている。このようなエネルギ自給型の衝撃センサは、外部からのエネルギ供給やバッテリーに依存することなく、衝突衝撃などの強い加速度を検知して、スマートフォンなどの受信器に送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下、模式図を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0048】
図1】基板上に配置された圧電体層の上面図である。
図2】3つの圧電素子の配置を示す空間図でである。
図3】集積エレクトロニクス及び制御ユニットの電気部品の可能な配置の構造図である。
図4】RFモジュールの送信電力を時間に対してプロットした模式的グラフである。
図5】保護回路の回路図である。
図6】トランジスタが8端子のMOSFETである場合の保護回路の回路図である。
図7図5の保護回路の回路基板のレイアウトを示す図である。
図8】2つの集積回路を並列に接続した図である。
図9】2つの集積エレクトロニクスが配置されたプリント回路基板であって、整流器は8つの個別のダイオードから構成されている、回路基板を示す図である。
図10図8及び図9に示した集積エレクトロニクスの回路図である。
図11】24個の圧電体層をフレーム内内に固定した配置を示す図である。
図12】24個の圧電ユニットをフレームに固定した配置を示す図である。
図13】本発明によるエネルギ回収システムが集積された開状態の衝撃センサを示す図である。
図14】アングルで補強された球形状のフレームを示す図である。
図15】中央制御ユニット用のホルダを示す図である。
図16】穴つきの、フレーム用半休形状ケーシングを示す図である。
図17】衝撃センサの仕組みを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
同一の要素、類似の要素、又は見かけ上同一の要素には、図中において同じ参照符号が付されている図及び図中のサイズ比率は縮尺通りではない。
【0050】
図1は、基板8上に配置されている、本発明によるエネルギ回収システム1に適した圧電層6の上面図である。ここでは、接着工程を用いて圧電層6を基板8に固定したが、圧電層6を基板8に直接堆積させたり又は他の方法で固定することも可能である。
【0051】
圧電層6は、基板8の可能な限り大きな面積を圧電層6で覆い、エネルギ生成を最適化するために、基板8の円形セクタ形状の外形に適合させた。基板8には、例えばネジなどで基板8を固定するための穴が設けられている。本実施形態の例では、基板8は用途に合わせて円形セクタ形状であるが、他の形状であることもできる。さらに、圧電層6の形状や大きさを介して出力電圧を変化させ、用途に適合させることも可能である。
【0052】
図1に示した圧電層6は、PZT-5Hセラミック層であるが、他の圧電セラミックから圧電層6を製作することも可能であり、また、セラミック薄膜、多層セラミック、モノリシックセラミック層、ポリマー層などを用いることも可能である。ポリマー層やセラミック薄膜は、他の多くの圧電体層6に比べて、特に柔軟性が高いという利点がある。通常の圧電層6に対するモノリシックセラミック層の優位性は、セラミック内のモノリシック相互接続を異なる方法でモデル化することによって電圧出力を適合させることができることである。
【0053】
基板8は鋼製であり、したがって導電性がある。図1に示すように、導電性の基板8上に圧電層6を直接配置した場合、基板8を電極として利用することで、基板8を介して圧電層6をコンタクトさせることができる。鋼以外にも、Cu、Fe、Alなどの金属や、非金属の導体を使うこともできる。
【0054】
図1のPZT-5H層の厚さは300μm、鋼基板の厚さは400μmである。一方で、基板8は、圧電層6の機械的安定性を高めることで、損傷することなくより大きな力に耐えることができる。他方で、基板8は、特に剛性が高すぎると、圧電体層6の変位及びひいては変形を妨げ、エネルギ生成の可能性を低下させてしまう。同時に、圧電層6の厚さに応じて、圧電層6は、剛性になるか又は柔軟性になり、かつ、安定になるか又は不安定になる。これらの点を考慮すると、圧電層6の層厚を300μm以下、基板8の厚さを1mm以下にすることが好ましいことがわかった。しかし、これらの厚さは、使用する素材やその弾力性によって大きく変化する
【0055】
図2は、3つの圧電ユニット3の配置を示す空間図であり、圧電ユニットは互いに垂直に配置されている。3つの圧電ユニット3のそれぞれは、圧電層6が配置された基板8と、圧電層6に発生する電圧を平滑化し、かつ制限する役割を果たす集積電子部品7を有している。
【0056】
エネルギ回収システム1は、3つの圧電ユニット3を備え、それらの圧電層6は互いに垂直に配置されているため、エネルギ生成は、システムに作用する力の方向には完全に依存しない。圧電層6の法線に平行な力成分は、単一の圧電ユニット3のエネルギ発生には主に重要である。これが、圧電層6の変位、ひいてはエネルギ発生に決定的な影響を与えるからである。各個別圧電層6については、層の法線に平行な力成分が変位に重要であり、したがって、エネルギ生成は、圧電層6の直交配置により、力の影響の方向に依存しなくなる。
【0057】
さらに、圧電層6で生成された電圧に基づいて、エネルギ回収システム1に作用する加速度を方向に依存して決定することができる。変位と圧電層にかかる加速度に依存する、圧電層6で生成された電圧から、制御モジュール4は、加速度を計算することができる。圧電層6が直交配置されていることで、加速度の大きさと方向の両方を求めることが可能になる。圧電層6を加速度センサとして使用する場合、集積されたアナログ/デジタル変換器を備える制御モジュール4を使用するのが有利である。アナログ/デジタル変換器は、圧電層6から出力されるアナログ電圧を読み取ることができるからである。
【0058】
図3は、集積エレクトロニクス7と制御ユニット2で構成される電気部品の可能な配置の構造図であり、左の3つの要素は集積エレクトロニクス7に属し、右の3つの要素は制御ユニット2に配置されている。
【0059】
圧電層6で生成された電圧は、圧電層6からの変動する交流電圧を滑らかな直流電圧に変換する、例えばブリッジ整流器などの整流器10でピックアップ(aufgenommen)される。集積エレクトロニクス7は、さらにZダイオードを備え、Zダイオードは、あらゆる電気部品を過電圧及びフィードバックから保護するが、図7には図示されていない。
【0060】
さらに、整流器10からの電圧は、直流電圧コンバータ11に送られ、直流電圧コンバータ11の上流と下流に平滑コンデンサ12が接続されている。直流電圧コンバータ11は、整流器10から出力された電圧を別の電圧、例えば制御ユニット2に必要な電圧に変換し、これらの電圧を束ねることを可能にする。これにより、圧電層6が出力する電圧で直接可動できない制御ユニット2上の電気部品を稼働させることを可能にする。直流電圧コンバータ11の上流側に電気的に接続された第1平滑化コンデンサ12と、直流電圧コンバータ11の下流側に電気的に接続された第2平滑化コンデンサ12を用いて、入力電圧と出力電圧とが両平滑化コンデンサ12の容量比を介して適合される。
【0061】
その後、例えばシステムオンチップ(SoC)又はマイクロコントローラであり得る制御モジュール4と、RFモジュール5に適切な電圧を提供することができる。コントロールユニット2上の電気部品が、圧電層6を介して直接得られるよりも高い電力を必要とする場合、エネルギ貯蔵のために、コントロールユニット2上に充電式バッテリー又はコンデンサを統合することができる。したがって、圧電層6で得られたエネルギを貯蔵し、蓄積することができる。蓄積されたエネルギは、例えば、センサ技術の拡張に利用することができる。それは、GPSセンサ、温度センサ、力センサ、湿度センサなど、さまざまなセンサであり得る。
【0062】
RFモジュール5に関して、RFモジュール5は、好ましくは、50ms未満の持続時間を有するパワーオンリセット時間を備えることに留意すべきである。パワーオンリセット時間が短いRFモジュール5は、機能状態への起動に必要なエネルギが少なくて済む。パワーオンリセット時間が短いRFモジュール5は、エネルギ回収システム1への組み込みに特に適している。低エネルギのZ-Wave、ZigBee、又はBluetoothモジュールは、エネルギ消費が少なく、制御モジュール4を介して駆動制御できるため、RFモジュール5として特に適している。
【0063】
図4は、Bluetoothモジュールの送信電力を時間に対してプロットした模式図である。Bluetoothモジュールは、約5msの起動時間又はパワーリセット時間を有する。さらに、Bluetoothモジュールは、3つのチャンネルで交替して送信する。チャンネルのサイクルは約1.5msである。この例では、79個の可能なチャンネルのうち3チャンネルを使用している。チャンネル数は、要求される伝送速度に応じて調整することができ、数が少ない方が、エネルギ効率は高くなる。特に好ましい実施形態では、可能な限りエネルギ効率の良い情報伝送を行うために、単一のチャンネルでのみ送信する。付加的に又は代替的に、送信電力や中間信号休止を適合し最適化することで、送信時に必要なエネルギを節約することができる。ここで示されるRFモジュールを有するエネルギ回収システムでは、用途に充分な、エネルギ消費量、伝送セキュリティ、伝送距離、伝送速度の間で妥協点を見出す必要がある。
【0064】
Zダイオードの代わりとして、電気部品を保護するために、図5に示すような保護回路17を用いることができる。これは、整流器10が集積回路内で実装されている場合に特に有用であり、集積回路における過電圧は不可逆的な損傷につながる可能性があるからである。抵抗R1とR2で構成される分圧器は、トランジスタM1と直列に接続されているコンデンサC2と並列に接続されている。抵抗R1とR2の間で電圧がタップされ、ゲートに電気的に接続される。分圧器及びトランジスタM1は、集積回路にダメージを与える可能性のある過電圧がトランジスタM1を切り換えるように互いに整合されている。好ましい実施形態では、抵抗器R1は抵抗器R2の10倍の大きさである。これにより、コンデンサC2に電荷が流れ、過電圧が低下する。このようにして、並列に接続された集積回路が保護される。さらに、電圧が再び下がった後、電荷はコンデンサから流出し、エネルギ回収システムで使用されることができる。Zダイオードとは対照的に、過剰な電荷も容易に流出し、圧電層の機械的運動の電気的に誘導された減衰を打ち消す(entgegen gewirkt)ことができる。トランジスタM1には、MOSFETを用いるのが好ましい。
【0065】
また、図6には、保護回路17が示されている。この保護回路17においても、抵抗器R1及び抵抗器R2からなる分圧器が、トランジスタと直列に接続されたコンデンサC1に並列に接続されている。図4の回路とは対照的に、こちらは8ピンのパワーMOSFET Q1であり、より大きい電力化に適している。第3ピンにあるゲートGは、分圧器に電気的にコンタクトされている。第4ピン及び第7ピンにある2つのソースS1とS2は、マイナス配線(Minus-Leiter)と接続されている。残りのピンでタップできるパワーMOSFET Q1の5つのドレインは、ノードポイントを介して相互に接続され、プラス配線に接続されているコンデンサC1にコンタクトする。
【0066】
図7は、図5に示した回路が配置されている配線基板18のレイアウトを示す。配線基板18は、フレーム14に適合するように円形セクタ形状を有しており、このフレーム14には、配線基板18の丸みを帯びた縁部に設けられた貫通孔を介して螺着することによって、配線基板18を固定することができる。分圧器は丸みを帯びた縁部に向けて配置され、抵抗R2は抵抗R1の上に設けられる(ueber den Widerstand R1 liegt)。配線基板18の丸みを帯びた縁部から反対側を向いて、コンデンサC1がトランジスタQ1の上に配置される(ueber den Transistor Q1 angeordnet)。パワーMOSFET Q1のドレイン端子のうち、3本がフラットコンタクトで同時にコンタクトする。
【0067】
図8は、2つの集積エレクトロニクス7を示しており、これらはそれぞれ、円形セクタ形状の配線基板18上に設置され、互いに並列に接続されて群を形成している圧電層6は通常、十分に高い電圧を供給することができるが、用途によっては発生する電流が低すぎる場合がある。集積エレクトロニクス7を互いに並列に接続することで、集積エレクトロニクス7の電流を互いに加算して増加させることができる。また、圧電層6の発生電流・電圧に応じて、複数の集積回路7を直列又は並列に相互接続して群を形成することもできる。また、必要な電圧や電流を達成するために、複数のグループを互いに直列又は並列に接続することも有効である。
【0068】
また、図9には、図7のプリント基板18と同様に、フレーム14の形状に適合させるために円形セクタ形状を有するプリント基板18が示されている。配線基板18は、丸みを帯びた縁部に2つの貫通穴を有し、それによってフレーム14に螺着によって固定することができる。図7及び図8の実施形態とは対照的に、2つの圧電ディスクからの電気エネルギを処理する2つの集積エレクトロニクス7が図9の配線基板18に設置され、2つの集積エレクトロニクス7は並列に相互接続される。集積エレクトロニクス7は、これまでの例のように、電圧を整流する集積回路を用いていない。その代わりに、集積エレクトロニクス7は、4つの分離個別ダイオードD1-D4を備える回路を使用している。個別ダイオードD1-D4は、集積回路に比べて過電圧に対する感度がはるかに低いため、Zダイオードや保護回路17を省略することができる。
【0069】
図10は、図9に示した配線基板18の回路図であり、それぞれが4つの分離個別ダイオードD1-D4で構成された2つのブリッジ整流器を並列に接続したものである。4つの分離個別ダイオードD1-D4は、直列に接続された2つの個別ダイオードD1-D4が互いに並列に接続されるように接続されている。圧電層6からの平滑化されるべき電圧は、直列に接続された個別ダイオードD1-D4の間に供給される。正の直流電圧はダイオードの順方向において、負の直流電圧は逆方向において、それぞれタップすることができる。より連続したより一定の電圧を得るために、あるいは個別ダイオードを保護するために、ブリッジ整流器、あるいは各個別ダイオードD1-D8にコンデンサを並列に接続することが有利な場合がある。個別ダイオードD1-D8として、特に、整流ダイオードや信号ダイオードが適している。
【0070】
図11は、図1と同様の24個の圧電体層6がフレーム14に固定された配置を示している。フレーム14は、3つのインターロッキングサークル(ineinandergreifende Kreise)がそれぞれ垂直に組み合わされている。好ましくは、プラスチックなどの非導電性の材料製であるが、高い安定性が求められる場合は金属製であることもできる。3つの垂直な円の中にそれぞれ8つの圧電層6が固定されており、フレーム14には合計24の圧電層6が収容されている。
【0071】
図12は、24個の圧電ユニット3が枠組み14に固定されている配置を示している。図11と比較すると、圧電層6のそれぞれにリミッタ9と内部電子機器7が取り付けられている。リミッタ9は、圧電層6のたわみを制限するように設計されている。図5のリミッタ9は、約1mmの距離で圧電層6の半分を覆っているが、一定の距離で圧電層6の全体を覆ったり、1/4だけを覆ったりすることができる。リミッタ9は、強い力の影響があった場合だけでなく、連続可動時にも圧電層6の機械的負荷を軽減する。リミッタ9は、非常に強い変位、ひいては強い変形を防ぐことで、圧電層6からの不要な電圧ピークを防止する。
【0072】
図13は、本発明によるエネルギ回収システム1が組み込まれた衝撃センサ13を示している。図12に示した配置に加えて、ここには制御ユニット2が設置されており、内部エレクトロニクス7が接続されている。集積されたエネルギ回収システム1を備えるフレーム14は、カバー部分15で閉じることができ、また、例えば革、ゴム、プラスチックなどの保護層で覆うことができる。かかる衝撃センサ13は、システム内のすべての電気部品が圧電層6から得られるエネルギのみで動作するため、エネルギ面では完全に自給自足である。そのため、外部からのエネルギ供給を完全に排除することができ、衝撃センサ13を完全に独立させ、モバイル化することができる。
【0073】
図14に示すように、衝撃センサ13のフレーム14を補強することができる。このように、衝撃センサ13は、さらにより大きな力や加速度に適しているため、より大きなエネルギを発生させることも可能となる。フレーム14の補強は、主にクロスブレース19によって実現されており、クロスブレース19は、インターロッキングサークルの角度に配置され、それらを接続する。また、クロスブレース19自体も円形で、カバー部分15を螺着することができる穴を有する。
【0074】
図15は、中央制御ユニット2用のホルダ20を示しており、このホルダは、記載した円形状の衝撃センサ13に使用するのに適している。外側の3本のロッドは、球形状の衝撃センサの8分の1以内に収まる形状で、インターロッキングサークルのそれぞれにねじ込まれることができる。このように、ホルダ20は、衝撃センサ13の安定性にも大きく貢献している。中央制御ユニット2は、2つの貫通穴を有する中央複合面に固定されることができる。
【0075】
図16は、カバー部分15の別の実施形態を示す。この実施形態では、球面の8分の1の形状ではなく、球面の半分の形状を有している。したがって、衝撃センサ13の球形状のフレーム14は、2つのカバー部分15ですでに覆われており、第1実施形態のように8つのカバー部分15を必要としない。これにより、衝撃センサ13の堅牢性が向上する。カバー部分15は、くぼみを備えた貫通穴を有し、それを介して、フレーム14のクロスブレース19の貫通穴によってフレーム14にねじ込まれている。図15の中央制御装置2のホルダ20の上に位置するカバー部分の部分において、カバー部分15は、多数の貫通穴を有する。これにより、コントロールユニット2に含まれるRFモジュール5の信号がより少ない減衰を受けることが達成される。
【0076】
図17は、衝撃センサ13の動作の概略を示したものである。左側の衝突前の状態では、センサはまだエネルギを有さないないため、情報を送ることができない。右側では、衝突後、衝撃センサ13は、衝撃時の振動及び強い加速度から十分なエネルギを得て、外部からのエネルギ供給やバッテリーに依存することなく、発生した衝撃に関する検出された情報を受信器16、この場合はスマートフォン、に送信する。衝撃センサ13は、他のセンサで拡張することができるため、様々な用途に使用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 エネルギ回収システム(Energy Harvesting System)
2 制御ユニット(Steuereinheit)
3 圧電ユニット(piezoelektrische Einheit)
4 制御モジュール(Steuermodul)
5 RFモジュール(RF-Modul)
6 圧電層(piezoelektrische Schicht)
7 集積エレクトロニクス(integrierte Elektronik)
8 基板(Substrat)
9 リミッタ(Begrenzer)
10 整流器(Gleichrichter)
11 直流電圧コンバータ(Gleichspannungswandler)
12 平滑化コンデンサ(Glaettungskondensator)
13 ショックセンサ(Schocksensor)
14 フレーム(Geruest)
15 カバー部分(Deckelteil)
16 受信器(Empfaenger)
17 保護回路(Schutzschaltung)
18 配線基板(Leiterplatte)
19 クロスブレース(Querstreben)
20 ホルダ(Halterung)
R1/R2 抵抗(Widerstand)
C1/C2 コンデンサ(Kondensator)
M1 トランジスタ(Transistor)
Q1 電力MOSFET(Leistungs-MOSFET)
D1-D6 分離個別ダイオード(diskrete Einzeldioden)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】