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特表2022-532215皮膚および非皮膚薬物送達のためのアンダーカット特徴を有するマイクロニードルアレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】皮膚および非皮膚薬物送達のためのアンダーカット特徴を有するマイクロニードルアレイ
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20220706BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20220706BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20220706BHJP
   A61L 31/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
A61M37/00 505
A61M37/00 530
A61M37/00 520
A61L31/04 110
A61L31/04 120
A61L31/06
A61L31/04 100
A61L31/00
A61L31/14 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568014
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2020033235
(87)【国際公開番号】W WO2020232394
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】62/848,939
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504279968
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファロ, ルイス ディー.
(72)【発明者】
【氏名】コルクマズ, エムラー
【テーマコード(参考)】
4C081
4C267
【Fターム(参考)】
4C081AC03
4C081AC09
4C081BA16
4C081BB06
4C081CA051
4C081CA061
4C081CA181
4C081CD01
4C081CD021
4C081CD081
4C081CD111
4C081CE11
4C081DA03
4C081EA02
4C267AA72
4C267BB02
4C267BB06
4C267BB40
4C267CC01
4C267CC05
4C267FF10
4C267GG43
(57)【要約】
開示される方法は、可撓性モールド材料を含む生産モールドからのマイクロニードルアレイの形成に関する。上記生産モールドは、複数のそれぞれのマイクロニードルであって、各々、ステム、マイクロニードル先端、隅肉付きの基部、および少なくとも1個のアンダーカット特徴を有する複数のそれぞれのマイクロニードルを規定する形状にされた複数の空洞を含む。上記可撓性材料は、成形されたマイクロニードルアレイが、上記モールドによって規定されるとおりのマイクロニードルの形状の完全性を損傷することなく、および多数回の使用に関して上記モールドの完全性を保持して、1回引っ張ると上記生産モールドから外れることを可能にするために十分な弾性を有する。上記マイクロニードルは、種々の幾何構造を有することができ、異なる分解性および非分解性の層、ならびに異なるタイプの裏打ち層を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロニードルアレイを形成する方法であって、前記方法は、
可撓性材料の生産モールドを形成する工程であって、前記生産モールドは、複数のそれぞれのマイクロニードルであって、各々は、ステム、マイクロニードル先端、隅肉付きの基部、および少なくとも1個のアンダーカット特徴を有する複数のそれぞれのマイクロニードルを規定する形状にされた複数の空洞を含む工程;
少なくとも1種の生体活性材料を第1の分解性材料へと組み込んで、生分解性マトリクスを提供する工程;
前記生分解性マトリクスを、少なくとも、前記生産モールドのそれぞれの空洞によって規定される前記マイクロニードル先端部分に送達する工程;
複数のマイクロニードルを、前記生分解性マトリクスを含む生産モールドの中で形成する工程;ならびに
前記マイクロニードルを前記生産モールドから引っ張ることによって、前記マイクロニードルを前記モールドから外す工程、
を包含し、ここで前記可撓性材料は、前記成形されたマイクロニードルアレイが、前記モールドによって規定されるとおりのマイクロニードルの形状の完全性を損傷することなく、1回引っ張ると前記生産モールドから外れることを可能にするために十分な弾性を有する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1個のアンダーカット特徴は、前記マイクロニードル先端の直ぐ下にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステムは、前記第1の分解性材料から形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステムは、非分解性材料から形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のマイクロニードルアレイを形成する工程は、第2の分解性材料を前記生産モールドに提供して、前記マイクロニードル先端に隣接する前記ステムの一部分において分解する層を形成する工程を包含する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記分解する層の前記第2の分解性材料は、前記生体活性材料を含む生分解性または生物分解性マトリクスより迅速に分解する材料から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ステムの下部に隣接する裏打ち層を形成する工程をさらに包含する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記裏打ち層は、前記分解性材料から形成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記裏打ち層は、非分解性材料から形成される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記裏打ち層は、順応性材料から形成される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の分解性材料は、カルボキシメチルセルロース、トレハロース、ポリビニルピロリドン、マルトデキストリン、シルク、ヒアルロン酸、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(乳酸)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の分解性材料は、低分子量の迅速に分解するポリマーを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の分解性材料は、グルコース、トレハロース、スクロース、マルトデキストリン、ポリビニルピロリドン、またはこれらの組み合わせである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記順応性材料は、不均一な皮膚トポグラフィーに順応するように可撓性であり得る、変形し得る、または曲がり得る分解しないポリマーである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種の生体活性材料は、2種またはこれより多くの生体活性材料を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記1種またはこれより多くの生体活性材料は、化粧品材料、皮膚充填剤、スタチン、増殖因子、鎮痛剤、抗ヒスタミン薬、ビタミン、麻酔薬、老化防止剤、低分子量薬物、ハプテン、アレルゲン、抗炎症剤、タンパク質、ペプチド、微小小胞、エキソソーム、ポリプレックス(siRNA、shRNA、DNAベクター複合体)、組換えウイルスベクター(すなわち、アデノウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、およびこれらの異なる血清型)、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびに生細胞または溶解した細胞を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のマイクロニードルは、円形オベリスク、方形オベリスク、斜角付きオベリスク、方形ステム上に角錐、ステム上に矢尻形状、方形オベリスクステム上に角錐ヘッド、円形オベリスクステム上に円錐ヘッド、方形オベリスク、45°角錐、または30°角錐を含む形状を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のマイクロニードルは、前記裏打ち層と前記ステムとの交点において隅肉部分をさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の方法によって形成される、マイクロニードルアレイ。
【請求項20】
シングルプルモールドを使用して形成されるマイクロニードルアレイであって、前記アレイは、
裏打ち層;
複数のマイクロニードル;および
第1の分解性材料と合わさって、生分解性マトリクスを形成する少なくとも1種の生体活性材料、
を含み、ここで前記複数のマイクロニードルは各々、ステム、マイクロニードル先端、隅肉付きの基部、および少なくとも1個のアンダーカット特徴を有する、マイクロニードルアレイ。
【請求項21】
前記アンダーカット特徴は、前記ステムと前記マイクロニードル先端との交点に位置する、請求項20に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項22】
前記ステムは、前記第1の分解性材料から形成される、請求項20または21に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項23】
前記ステムは、非分解性材料から形成される、請求項20または21に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項24】
前記複数のマイクロニードルは各々、前記マイクロニードル先端に隣接する前記ステムの一部分に迅速に分解する層を形成する第2の分解性材料を含む、請求項20~23のいずれか1項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項25】
前記分解する層の前記第2の分解性材料は、前記生体活性材料を含む生分解性マトリクスより迅速に分解する材料から選択される、請求項24に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項26】
前記裏打ち層は、前記分解性材料から形成される、請求項20~25のいずれか1項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項27】
前記裏打ち層は、非分解性材料から形成される、請求項20~25のいずれか1項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項28】
前記裏打ち層は、順応性材料から形成される、請求項20~27に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項29】
前記第1の分解性材料は、カルボキシメチルセルロース、トレハロース、ポリビニルピロリドン、マルトデキストリン、シルク、ヒアルロン酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール、またはこれらの組み合わせを含む、請求項20~28のいずれか1項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項30】
前記第2の分解性材料は、低分子量の迅速に分解するポリマーを含む、請求項24または25に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項31】
前記第2の分解性材料は、グルコース、トレハロース、スクロース、ポリビニルピロリドン、マルトデキストリン、またはこれらの組み合わせである、請求項30に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項32】
前記順応性材料は、不均一な皮膚トポグラフィーに順応するように曲がり得る分解しないポリマーである、請求項28に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項33】
前記少なくとも1種の生体活性材料は、2種またはこれより多くの生体活性材料を含む、請求項20~32に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項34】
前記1種またはこれより多くの生体活性材料は、化粧品材料、皮膚充填剤、スタチン、増殖因子、鎮痛剤、抗ヒスタミン薬、ビタミン、麻酔薬、老化防止剤、低分子量薬物、ハプテン、アレルゲン、抗炎症剤、タンパク質、ペプチド、微小小胞、エキソソーム、ポリプレックス(siRNA、shRNA、DNAベクター複合体)、組換えウイルスベクター(すなわち、アデノウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、およびこれらの異なる血清型)、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびに生細胞または溶解した細胞を含む、請求項20~33に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項35】
前記複数のマイクロニードルは、円形オベリスク、方形オベリスク、斜角付きオベリスク、方形ステム上に角錐、ステム上に矢尻形状、方形オベリスクステム上に角錐ヘッド、円形オベリスクステム上に円錐ヘッド、方形オベリスク、45°角錐、または30°角錐を含む形状を有する、請求項20~34に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項36】
前記複数のマイクロニードルは、前記裏打ち層と前記ステムとの交点において隅肉部分をさらに含む、請求項20~35に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項37】
モールドを形成する方法であって、前記方法は、
少なくとも1個のアンダーカット特徴を有する複数のマイクロニードルを含むマイクロニードルアレイの3D-CAD図面を生成する工程;
前記3D-CAD図面を使用してマスターマイクロニードルアレイを形成する工程;
前記マスターマイクロニードルアレイの少なくとも1個のレプリカを形成する工程;および
前記少なくとも1個のレプリカを使用して、前記マイクロニードルアレイの生産モールドを形成する工程、
を包含し、ここで前記生産モールドは、可撓性材料から形成される、方法。
【請求項38】
前記可撓性材料は、成形されたマイクロニードルアレイが、前記生産モールドによって規定されるとおりの前記複数のマイクロニードルの形状の完全性を損傷することなく、1回引っ張ると前記生産モールドから外れることを可能にするために十分な弾性を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1個のレプリカは、複数のレプリカを含み、前記生産モールドを形成する工程は、マイクロニードルアレイホルダーを形成する工程、および前記複数のレプリカを前記マイクロニードルアレイホルダー上で一緒に合わせる工程を包含する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記マイクロニードルアレイホルダーは、樹脂材料から形成される、請求項27~38のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
組織接着性パッチを形成する方法であって、前記方法は、
可撓性材料の生産モールドを形成する工程であって、前記生産モールドは、複数のそれぞれのマイクロニードルであって、各々が、ステム、マイクロニードル先端、隅肉付きの基部、および少なくとも1個のアンダーカット特徴を有する複数のそれぞれのマイクロニードルを規定する形状にされた複数の空洞を含む工程、
少なくとも1種の生体活性材料を第1の分解性材料に組み込んで、生分解性マトリクスを提供する工程、
前記生分解性マトリクスを、少なくとも、前記生産モールドのそれぞれの空洞によって規定される前記マイクロニードル先端部分に送達する工程;
複数のマイクロニードルを、前記生分解性マトリクスを含む生産モールドの中で形成する工程;ならびに
前記マイクロニードルを前記生産モールドから引っ張ることによって、前記マイクロニードルを前記モールドから外す工程、
を包含し、ここで前記可撓性材料は、前記成形されたマイクロニードルアレイが、前記モールドによって規定されるとおりのマイクロニードルの形状の完全性を損傷することなく、1回引っ張ると前記生産モールドから外れることを可能にするために十分な弾性を有する方法。
【請求項42】
組織接着性パッチまたは微小突起アレイを形成する方法であって、前記方法は、
可撓性材料の生産モールドを形成する工程であって、前記生産モールドは、複数のそれぞれのマイクロニードルであって、各々、ステム、マイクロニードル先端、隅肉付きの基部、および少なくとも1個のアンダーカット特徴を有する複数のそれぞれのマイクロニードルを規定する形状にされた複数の空洞を含む工程、
少なくとも1種の生体活性材料を第1の分解性材料に組み込んで、生分解性マトリクスを提供する工程、
前記生分解性マトリクスを、少なくとも、前記生産モールドのそれぞれの空洞によって規定される前記マイクロニードル先端部分に送達する工程;
複数のマイクロニードルを、前記生分解性マトリクスを含む生産モールドの中で形成する工程;ならびに
前記マイクロニードルを前記生産モールドから引っ張ることによって、前記マイクロニードルを前記モールドから外す工程、
を包含し、ここで前記可撓性材料は、前記成形されたマイクロニードルアレイが、前記モールドによって規定されるとおりのマイクロニードルの形状の完全性を損傷することなく、1回引っ張ると前記生産モールドから外れることを可能にするために十分な弾性を有する方法。
【請求項43】
マイクロニードルアレイを形成する方法であって、前記方法は、
可撓性材料の生産モールドを形成する工程であって、前記生産モールドは、複数のそれぞれのマイクロニードルであって、各々は、ステム、マイクロニードル先端、隅肉付きの基部、および少なくとも1個のアンダーカット特徴を有する複数のそれぞれのマイクロニードルを規定する形状にされた複数の空洞を含む工程、
複数のマイクロニードルを前記生産モールドの中で形成する工程;
前記マイクロニードルを前記生産モールドから引っ張ることによって、前記マイクロニードルを前記モールドから外す工程;ならびに
前記複数のマイクロニードルの少なくとも一部分を、生体活性成分でコーティングする工程、
を包含し、ここで前記可撓性材料は、前記成形されたマイクロニードルアレイが、前記モールドによって規定されるとおりのマイクロニードルの形状の完全性を損傷することなく、1回引っ張ると前記生産モールドから外れることを可能にするために十分な弾性を有する方法。
【請求項44】
前記マイクロニードルは、ディップコーティング、エアスプレー、またはこれらの組み合わせによって前記生体活性成分でコーティングされる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項20~36の1項に従って形成されるマイクロニードルアレイのうちのいずれかを使用する方法であって、前記方法は、
前記マイクロニードルアレイを標的化した皮膚領域に適用して、前記少なくとも1種の生体活性成分を皮内に送達する工程、
を包含する方法。
【請求項46】
請求項20~36の1項に従って形成されるマイクロニードルアレイのうちのいずれかを使用する方法であって、前記方法は、
前記マイクロニードルアレイを非皮膚組織に適用して、前記少なくとも1種の生体活性成分を前記非皮膚組織に送達する工程、
を包含する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年5月16日出願の米国仮出願第62/848,939号(これは、その全体において本明細書に参考として援用される)の利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、マイクロニードルアレイに、特に、皮膚および非皮膚薬物送達のための、ならびに組織接着性パッチのためのアンダーカット特徴とともに形成されるマイクロニードルアレイに関する。
【0003】
政府支援の謝辞
本発明は、National Institutes of Healthによって授与された助成金番号AR071277およびAR074285の下で政府支援を得て行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景
皮膚は、多くの別個の機能(例えば、保護バリアおよび温度調節器として働く)を有する容易にアクセス可能な組織である。顕著なことには、皮膚はまた、活発な免疫器官としても機能する。免疫、がん免疫療法、およびアレルギー減感作のようないくらかの目的のために、皮膚は、好ましい解剖学的標的部位であり得る。なぜならそれは、優先的な抗原提示および免疫アクセサリ細胞の大きな集団を有するからである。大部分のワクチン、免疫改質剤(immune modifier)、およびがん治療薬(cancer drugs)は、皮下注射針ベースの注射を使用して投与される。しかし、旧来のシリンジを使用する薬物送達は、いくつかの欠点と関連する。これらとしては、投与のために訓練されたヘルスケア職員が必要であること、先端恐怖症(すなわち、針を恐れる)、不十分な患者コンプライアンス、疾患の伝播および針刺し事故のリスク、ならびに低温流通体系での貯蔵および輸送のコストが挙げられる。
【0005】
さらに、非経口的な注射は、標的化した皮膚微小環境へのバイオカーゴ(biocargo)を再現性よくかつ正確に送達できない。従って、従来の注射によって投与されるワクチンおよび薬物は、最適とはいえない有効性を生じ得る。集合的には、これらの要因は、ワクチン、がん治療薬または免疫調節物質の効果的な使用を妨げ、非効率的異な皮膚免疫化および処置ストラテジーをもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
マイクロニードルアレイの製造に、特に、皮膚および非皮膚薬物送達のための、ならびに組織接着性パッチのためのアンダーカット特徴とともに形成されるマイクロニードルアレイに関する種々の方法およびシステムが、本明細書で開示される。
【0007】
以下で記載される実施形態のうちのいくつかにおいて、マイクロニードルアレイを形成する方法は、可撓性材料の生産モールドを形成する工程であって、上記生産モールドは、複数のそれぞれのマイクロニードルであって、各々は、ステム、マイクロニードル先端、隅肉付きの基部、および少なくとも1個のアンダーカット特徴を有する複数のそれぞれのマイクロニードルを規定する形状にされた複数の空洞を有する工程、少なくとも1種の生体活性材料を第1の分解性材料へと組み込んで、生分解性マトリクスを提供する工程、上記生分解性マトリクスを、少なくとも、上記生産モールドのそれぞれの空洞によって規定される上記マイクロニードル先端部分に送達する工程、複数のマイクロニードルを、上記生分解性マトリクスを含む生産モールドの中で形成する工程、ならびに上記マイクロニードルを上記生産モールドから引っ張ることによって、上記マイクロニードルを上記モールドから外す工程を包含する。上記可撓性材料は、上記成形されたマイクロニードルアレイが、上記モールドによって規定されるとおりのマイクロニードルの形状の完全性を損傷することなく、1回引っ張ると上記生産モールドから外れることを可能にするために十分な弾性を有し得る。
【0008】
他の実施形態において、マイクロニードルアレイは、シングルプルモールドを使用して形成され、上記マイクロニードルアレイは、裏打ち層、複数のマイクロニードル、および第1の分解性材料と合わさって、生分解性マトリクスを形成する少なくとも1種の生体活性材料を含む。上記複数のマイクロニードルは各々、ステム、マイクロニードル先端、隅肉付きの基部、および少なくとも1個のアンダーカット特徴を有する。
【0009】
さらに他の実施形態において、モールドを形成する方法は、少なくとも1個のアンダーカット特徴を有する複数のマイクロニードルを含むマイクロニードルアレイの3D-CAD図面を生成する工程、上記3D-CAD図面を使用してマスターマイクロニードルアレイを形成する工程、上記マスターマイクロニードルアレイの少なくとも1個のレプリカを形成する工程、および上記少なくとも1個のレプリカを使用して、上記マイクロニードルアレイの生産モールドを形成する工程を包含する。上記生産モールドは、可撓性材料から形成される。
【0010】
本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面を参照しながら進められる以下の詳細な説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、これらの例において、鋭い先端の円錐ヘッド、円形のアンダーカットステム、および隅肉付きの基部を有する例示的なマイクロニードル設計を図示する。
【0012】
図2図2A~Cは、順応する裏打ち層とともに形成されるマイクロニードルアレイを図示する。
【0013】
図3A図3Aは、アンダーカット特徴および隅肉付きの基部を有する鋭いニードルを含む例示的なMNAのコンピューター支援設計(CAD)図面を開示する。
【0014】
図3B図3Bは、5×5のニードル配置を有する例示的なMNAの3D CAD図面を開示する。
【0015】
図4A図4Aは、例示的なMNA製造プロセスのフローチャートを開示する。
【0016】
図4B図4Bは、図4Aにおける例示的なMNA製造プロセスの異なる工程を図示する。
【0017】
図5A図5Aは、3D直接レーザー書き込みを使用して作製されるマスターMNAの光学顕微鏡画像を示す。
【0018】
図5B図5Bは、2段階微小成形ストラテジーを通じて作製されるマスターMNAのレプリカの光学顕微鏡画像を示す。
【0019】
図5C図5Cは、MNA生産モールドにおけるマイクロニードル形状のウェルの光学顕微鏡画像を示す。
【0020】
図5D図5Dは、3DプリントしたマスターMNA上の個々のアンダーカットニードルの光学顕微鏡画像を示す。
【0021】
図5E図5Eは、マスターMNAのレプリカ上の個々のアンダーカットニードルの光学顕微鏡画像を示す。
【0022】
図6A図6Aは、バイオカーゴ(例えば、OVA+ポリ(I:C))を組み込んだ最終的な分解する(CMC/Treh) MNAの光学顕微鏡画像を示す。
【0023】
図6B図6Bは、OVAを一体化したアンダーカットマイクロニードルを有する、分解する先端に装填されたPVP/PVA MNAの光学顕微鏡画像を示す。
【0024】
図6C図6Cは、画像化を容易にするために着色した薬物としてドキソルビシンを組み込む個々の先端に装填されたCMC/Treh アンダーカットマイクロニードルの光学顕微鏡画像を示す。
【0025】
図7A図7Aは、マイクロニードルの先端にTexas Red標識デキストラン(およそ40kDa分子量)を組み込んだPVP/PVA MNAを示す。
【0026】
図7B図7Bは、マイクロニードルの角錐領域にAllura Red R40色素(およそ500Da 分子量)を一体化した、先端に装填したCMC/Treh MNAを示す。
【0027】
図7C図7Cは、多数のカーゴ(例えば、Texas Red標識デキストランおよびAllura Red R40色素)を組み込んだ、先端に装填したPVP/PVA MNAを示す。
【0028】
図7D図7Dは、多数のカーゴ(例えば、Texas Red標識デキストランおよびAlexa488標識PLGA微粒子(10μm 平均直径))を組み込んだ、先端に装填したPVP/PVA MNAを示す。
【0029】
図8A図8Aは、3D直接レーザー書き込みを使用してIP-Sフォトレジストから製作した異なるマイクロニードル設計を図示する。
【0030】
図8B図8Bは、隅肉付きの基部を有するプリントしたマイクロニードルの画像を図示する。
【0031】
図9A図9Aは、ヒト皮膚適用の前の、Allura Red色素を組み込んだPVP/PVA-MNAの光学顕微鏡画像。
【0032】
図9B図9Bは、生きているヒト皮膚サンプル上のAllura Red R40色素マイクロニードル追跡の明視野顕微鏡画像を示す。
【0033】
図9C図9Cは、ヒト皮膚適用後の、Allura Red色素を組み込んだPVP/PVA-MNAの光学顕微鏡画像を示す。
【0034】
図9DEFGHI図9D~Iは、先端に装填したCMC/Treh MNAからのAlexa488標識ポリ(I:C)およびAlexa555標識OVAの皮内同時送達を示す。20×光学倍率。蛍光顕微鏡合成画像は、表皮および真皮上層に穿通する送達空洞、ならびに標的化した皮膚微小環境への抗原およびアジュバント両方の送達を示す。
【0035】
図10A図10Aは、Alexa555-OVAおよびAlexa488-ポリ(I:C)の両方を一体化したMNAの光学顕微鏡画像を示し、蛍光画像は、両方のカーゴを組み込んだ角錐ヘッドの代表図である。
【0036】
図10B図10Bは、示したマウスへのインビボ適用後のAlexa555-OVAおよびAlexa488-ポリ(I:C)を装填したMNAの代表的光学顕微鏡画像を示す。
【0037】
図10C図10Cおよび10Dは、新規なMNAを使用する、皮膚微小環境へのAlexa488-ポリ(I:C)およびAlexa555-OVAの効果的な同時送達を示す。
図10D図10Cおよび10Dは、新規なMNAを使用する、皮膚微小環境へのAlexa488-ポリ(I:C)およびAlexa555-OVAの効果的な同時送達を示す。
【0038】
図11A図11Aは、免疫したマウスおよび免疫していないマウスの脾臓に残っているCFSE標識細胞を示すフローサイトメトリー分析からの代表的ヒストグラムを図示する。
【0039】
図11B図11Bは、特異的細胞溶解の定量を示す(100%溶解は、標的細胞の完全な排除に相当する)(平均±SD。1群あたり3匹のマウス)。
【0040】
図11C図11Cは、OVA特異的IgG1およびIgG2c抗体の血清濃度を示す(バーは、平均値を表す。1群あたり3匹のマウス)。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
本明細書中の詳細な説明は、マイクロニードルアレイ(MNA)の製造および使用に関するある特定の例示的な実施形態を記載する。その例示的な実施形態は、MNAの特定のタイプを開示し得るが、MNAの他のタイプが、開示されるシステムおよび方法から利益を得る可能性があることは理解されるべきである。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「生物製剤(biologic)」、「活性構成要素(active component)」、「バイオカーゴ(biocargo)」、または「生体活性材料(bioactive material)」とは、薬学的に活性な薬剤(例えば、鎮痛剤、麻酔剤、抗喘息薬、抗生物質、抗鬱剤、抗糖尿病薬、抗真菌剤、降圧剤、抗炎症剤、抗新生物薬、抗不安薬、酵素活性薬剤(enzymatically active agent)、核酸構築物、免疫刺激剤、免疫抑制剤、ワクチンなど)に言及する。上記生体活性材料は、分解性の材料、不溶性であるが分散性の材料、天然のもしくは製剤化されたマクロ、ミクロ、およびナノ粒子、ならびに/または分解性の、分散性の、不溶性の材料のうちの2もしくはこれより多くの混合物、ならびに天然のおよび/または製剤化されたマクロ、ミクロ、およびナノ粒子を含み得る。この点において、多くの本明細書で開示されるMNA例が、ワクチンおよび免疫化に関するが、任意の他の適切な生体活性材料(例えば、上記で考察されるもの)が、新規なMNA設計において使用され得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「予備形成される(pre-formed)」とは、構造または要素が、使用する前に特定の形状または構成へと作製される、構築される、および/または形成されることを意味する。よって、予備形成されたマイクロニードルアレイの形状または構成は、マイクロニードルアレイのマイクロニードルのうちの1またはこれより多くを患者に挿入する前の、そのマイクロニードルアレイの形状または構成である。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「アンダーカット(undercut)」または「アンダーカット特徴(undercut feature)」とは、標準的な成形法を使用して接近不能であるとみなされる陥凹表面、および特に、従来の1部品のモールドからのこの特徴を有する成形された部分の取り出しを制限または妨げる特徴(例えば、刻み目(indentation)、突出、または他の幾何形状)に言及する。
【0045】
本明細書で記載されるシステムおよび方法、ならびにその個々の構成要素は、本明細書で記載される特定の使用またはシステムに限定されるとは決して解釈されるべきではない。実際に、本開示は、単独で、および互いとの種々の組み合わせおよび部分組み合わせにおいて、種々の開示される実施形態の全ての新規なおよび自明でない特徴および局面に関する。例えば、開示される実施形態の任意の特徴または局面は、本明細書で開示される情報に鑑みて、関連分野の当業者によって認識されるように、互いとの種々の組み合わせおよび部分組み合わせにおいて使用され得る。さらに、開示されるシステム、方法、およびその構成要素は、任意の具体的な局面または特徴またはこれらの組み合わせに限定されず、その開示されるものおよび方法が、いずれか1もしくはこれより多くの特定の利点が存在することも課題が解決されることも要求しない。見出しは、読みやすさを目的として提供されるに過ぎず、1つの節の中の要素および/または工程が、本開示中の異なる見出しの下にある要素および/または工程と組み合わされ得ることは、理解されるべきである。
【0046】
本出願で使用される場合、単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、および「上記、この、その(the)」とは、文脈が別段明示的に規定しなければ、複数形をも含む。さらに、用語「含む、包含する、が挙げられる(includes)」とは、「含む、包含する(comprises)」を意味する。さらに、本明細書で使用される場合、用語「および/または(and/or)」は、その語句の中のいずれか1つの項目または項目の組み合わせを意味する。さらに、用語「例示的な(exemplary)」とは、非限定的な例、事例、または例証として役立つことを意味する。本明細書で使用される場合、用語「例えば(e.g.,)」および「例えば(for example)」は、1またはこれより多くの非限定的な実施形態、例、事例、および/または例証のリストを導入する。
【0047】
開示される方法のうちのいくつかの作動は、便宜上の体裁のために特定の、連続的な順序において記載されるが、この記載様式は、特定の順序づけが以下に示される具体的文言によって要求されなければ、再配置を包含することが理解されるべきである。例えば、連続的に記載される作動は、場合によっては、再配置されてもよいし、同時に行われてもよい。さらに、単純さのために、添付の図面は、その開示されるものおよび方法が、他のものおよび方法とともに使用され得る種々の方法を示さないこともある。さらに、詳細な説明はときおり、「提供する(provide)」、「生成する(produce)」、「決定する(determine)」および「選択する(select)」のような用語を使用して、開示される方法を記載する。これらの用語は、行われる実際の作動の高レベルの説明である。これらの用語に相当する実際の作動は、特定の実行に応じて変動し、本開示の利益を有する当業者によって容易に認識可能である。
【0048】
例示的なマイクロニードルアレイ
【0049】
マイクロニードルアレイの使用は、従来の針ベースの注射技術を超える多くの利点を有する。この理由から、マイクロニードルアレイを使用する皮膚ワクチン接種または薬物送達は、皮膚の前述の理論的利点に起因して、効果的な免疫化またはがん免疫療法への実行可能なかつ魅力的なアプローチを提供する。
【0050】
局所的送達アプローチとは異なり、MNAは、角質層を物理的に穿通し、それによって、製剤化の複雑さを排除し、皮膚微小環境におけるワクチンまたは薬物の局部的な沈着を生じる。旧来の針での注射とは対照的に、上記マイクロニードルは、疼痛レセプターに対して温和であり、最小限に侵襲性の疼痛のない免疫化を可能にする。
【0051】
利益の中でもとりわけ、分解するMNAは、それらのより高い抗原装填能力、調整可能な放出動力学、単純な製造、および長期間安定性に起因して、高度に効果的なワクチン接種を提供し得る。このようなMNAは、皮膚に挿入される場合に分解する水溶性ポリマーから作製され得る。MNAのマイクロニードルは、好ましくは、それらの乾燥状態において角質層を穿通するために十分強く、その上、皮膚の流体環境において迅速に分解し、それによってワクチンを放出する。生体活性材料(例えば、ワクチン)の、皮膚微小環境への正確な送達は、改善された効率を生じ得、それによって、旧来の針注射と比較して、比較的低用量を必要とする。
【0052】
以下でより詳細に開示されるように、分解性および/または非分解性材料を含むアンダーカット幾何形状を有するマイクロニードルは、本明細書で記載される新規な方法およびシステムによって形成され得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、新規なMNAは、可撓性の生産モールド材料を利用する1工程微小成形プロセスを介して形成され得る。このような可撓性の生産モールド材料を使用することで、別の方法では可能でなかったある範囲の幾何的設計の生成が可能になる。上記可撓性の生産モールド材料は、所望の設計(例えば、所望の量のアンダーカットおよび/または他の幾何形状)のマイクロニードルの除去を可能にする、例えば、任意のエラストマーまたは他の可撓性材料を含み得る。別の方法で成形による製造が困難である種々の幾何形状を成形できることは、皮膚および他の組織(例えば、心臓および眼の組織への種々の生体活性材料の標的化した送達のために、新規かつ革新的な機能的に評価されるMNA(例えば、図1に示されるもの)を可能にする。
【0054】
図1は、本明細書で記載される方法およびシステムを使用して形成され得るマイクロニードルの異なる構造の例を図示する。図1を参照すると、4種の異なるマイクロニードル構造10、12、14、16が、可撓性材料(例えば、可撓性のエラストマー)から形成される生産モールド18の中に示される。
【0055】
マイクロニードル10は、分解性の裏打ち層20、分解性のステム22、および生体活性材料が装填されるマイクロニードル先端24とともに形成される。従って、マイクロニードル10は、全体を通じて、分解する(または生分解性の)材料から製作される。上記生体活性材料は、上記分解する材料の中に混合され得るが、好ましくは、送達効率を改善するために、図1に示されるとおりのニードルの先端に位置する。
【0056】
図1に示されるように、マイクロニードル10、12、14、16は、鋭い先端を有する角錐ヘッド形状および裏打ち層へと隅肉付きの基(filleted base)部を通じて接続するアンダーカットステムを有し得る。隅肉32は、組織挿入の間に改善された機械的性能を提供し売る。
【0057】
本明細書で記載されるMNAは、任意の生体活性材料(化粧品材料、皮膚充填剤、スタチン、増殖因子、鎮痛剤、抗ヒスタミン薬、ビタミン、麻酔薬、老化防止剤、低分子量薬物、ハプテン、アレルゲン、抗炎症剤、タンパク質、ペプチド、微小小胞、エキソソーム、ポリプレックス(siRNA、shRNA、DNAベクター複合体)、組換えウイルスベクター(すなわち、アデノウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、およびこれらの異なる血清型)、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびに生細胞または溶解した細胞が挙げられる)を組み込むために、任意の成形可能な分解する、生分解性の、および/または生体適合性の、非分解性材料(カルボキシメチルセルロース、トレハロース、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、マルトデキストリン、シルク、グルコース、ヒアルロン酸、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(乳酸)、光硬化性樹脂、およびこれらの組み合わせから製作され得る。
【0058】
マイクロニードル12は、非分解性の裏打ち層26、非分解性のステム28、および生体活性材料が装填されるマイクロニードル先端24から形成される。この機能的に評価されるアンダーカットMNA設計は、1種より多くの材料で製作され得る。例えば、角錐部分は、分解するまたは生分解性の材料を使用して作製され得る一方で、ステム部分および裏打ち層は、非分解性材料(例えば、非分解性の生体適合性剛性ポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリカーボネート、VeroWhiteならびに他のUV硬化性および熱硬化性の樹脂)から製造される。
【0059】
マイクロニードル12は、従って、隅肉付きの基部を通じて増強された機械的性能とともに、成功裡の組織穿通を可能にする鋭いニードル先端、および生体活性材料投与形態として働き、その生体活性材料が、分解するかまたは劣化する(degrading)生体材料マトリクスに組み込まれる場所である角錐ヘッドを提供し得る。上記アンダーカットステム部分は、移植する間の組織保持を確実にすると同時に、穿通の間の機械的性能を改善し、上記非分解性のアンダーカットステム部分は、製作プロセスおよび移植プロセス両方の間に、埋め込まれた生体活性材料の逆拡散を防止する。非分解性の裏打ち層はまた、裏打ち層の過剰な弯曲を生じてMNA適用を最適未満にし得る、貯蔵の間の湿度の吸収を防止する助けになり得る。
【0060】
マイクロニードル14は、マイクロニードル12、14に形状が類似しているが、別の分解する層30をさらに含む。例えば、角錐部分は、分解するまたは生分解性の材料を使用して作製され、より迅速に分解する層は、ステム/ニードル先端接続に隣接して提供される。上記分解する層は、例えば、グルコース、スクロース、トレハロース、マルトデキストリン、またはポリビニルピロリドンのような低分子量の迅速に分解するポリマーから形成され得る。ステム部分および裏打ち層の残りは、非分解性材料(例えば、非分解性の生体適合性剛性ポリマー(例えば、アクリル化ポリエステル、エポキシ、UV硬化性モノマー、樹脂、シリコーン))から形成され得る。
【0061】
マイクロニードル14は、従って、隅肉付きの基部を通じて増強された機械的性能とともに成功裡の組織穿通を可能にする鋭いニードル先端、生体活性材料投与形態として働き、その生体活性材料が、分解するかまたは劣化する生体材料マトリクスに組み込まれる場所である角錐ヘッド、移植の間の組織保持を確実にすると同時に、穿通の間の機械的性能を改善するアンダーカットステム部分、および分解する層と分解しない層との間の機械的ミスマッチとともに、角錐先端の迅速な分離を容易にする迅速に分解する層を提供する。
【0062】
マイクロニードル16は、マイクロニードル14に類似しているが、非分解性であり得る順応する裏打ち層34をさらに含む。特に、マイクロニードル16は、分解するまたは生分解性の材料を使用して作製される角錐部分とともに形成され得、上記迅速に分解する層は、上記で記載されるとおりに形成され得、ステム部分の残りは、非分解性材料から製造され得、上記裏打ち層は、順応する材料(例えば、非分解性の順応するポリマー(シリコーン、UV硬化性ポリマー、エラストマー)から製造され得る。
【0063】
マイクロニードル16は、従って、隅肉付きの基部を通じて増強された機械的性能とともに成功裡の組織穿通を可能にする鋭いニードル先端、生体活性材料投与形態として働き、その生体活性材料が、分解するかまたは劣化する生体材料マトリクスに組み込まれる場所である角錐ヘッド、および移植の間の組織保持を確実にすると同時に、穿通の間の機械的性能を改善するアンダーカットステム部分を提供する。マイクロニードル14と同様に、迅速に分解する層は、分解する層と分解しない層との間の機械的ミスマッチとともに、角錐先端の迅速な分離を容易にし得、上記非分解性のアンダーカットステム部分は、製作プロセスおよび移植プロセス両方の間に、埋め込まれた生体活性材料の逆拡散を防止する。この実施形態において、上記裏打ち層は、不均一な皮膚トポグラフィーにより良好に順応する可能性があり、非分解性の場合、それは、裏打ち層の過剰な弯曲を生じてMNA適用を最適未満にし得る湿度の吸収を防止する助けになり得る。
【0064】
図2A~2Cは、マイクロニードル52および順応する裏打ち層34を有するマイクロニードルアレイ50が曲げられ、曲げた後に、元の状態、または少なくとも、曲がった状態よりその元の状態に形状がより近い状態に戻すことができることを図示する。
【0065】
図1に-および本出願全体を通じて-開示される特徴の任意の組み合わせが企図されることは、理解されるべきである。例えば、マイクロニードル16の順応する裏打ち層およびマイクロニードル14、16の迅速に分解する層30は、本明細書で開示される他の構造(例えば、マイクロニードル10、12)のうちのいずれかと組み合わせて使用され得る。
【0066】
さらに、本明細書で開示されるプロセスは、全体的に、コーティングされたMNA、組織接着剤(パッチ)、および/または微小突起としての使用のための分解しない材料から形成されるマイクロニードルを作製するために使用され得る。非分解性のアンダーカット微小突起またはマイクロニードル幾何形状は、予め、付加的製造プロセスまたは機械的微細加工プロセスを使用して作製されている。しかし、それらの幾何形状のハイスループット製造は、効果的な微小成形プロセスがないことに起因して妨げられる。
【0067】
MNAの微小付加的製造
【0068】
いくつかの実施形態において、上記MNAは、微小付加的製造(μAM)技術を含め、付加的製造(AM)を使用して形成され得る。本明細書で記載される方法およびシステムは、微細作製の専門的技術がほとんどない医学研究者が、除去的製作プロセス(subtractive fabrication process)の複雑な要件なしに、コンピューター支援設計(CAD)図面からそれらのMNA設計を直接生成することを可能にし得る。本明細書で記載されるμAM技術は、効果的な皮膚および非皮膚薬物送達のために特異的に設計される新規なMNAを製作するための効果的な手段を提供する。
【0069】
本明細書で開示されるいくつかの実施形態において、上記MNA設計は、成功裡の皮膚穿通および保持を確実にするために、鋭い角錐ヘッドおよび隅肉付きの基部を有するアンダーカットステムを含む特有の形状のミクロンスケールのニードルを含んだ。従来のMNAとは異なり、本明細書で開示されるMNAは、3D直接レーザー書き込みでの三次元(3D)μAMアプローチによって製作され、これは、単純さおよび設計機能のその並ぶものがないレベルで、MNA分野の変形能力を提供する。
【0070】
以下でより詳細に記載されるように、いくつかの実施形態において、マスターMNAのレプリカが、2工程の微小成形アプローチによって、高い信頼性で、機械的に強く成形可能な樹脂から得られ得る。次いで、これらのレプリカは、生産モールド(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)生産モールド)を調製するために使用され得る。これは、アンダーカットマイクロニードルを有する新規な先端に装填した分解性のMNAの製作を可能にした。得られるMNAは、いくつかの実施形態において、効果的な皮膚薬物送達のために正確なアンダーカット特徴を有する完全に分解するMNAである。
【0071】
図1に示されるように、いくつかの実施形態において、複数のマスターMNAは、プリントされ得、そのマスターMNAのレプリカは迅速に得られ得、次いで、複数のレプリカは、一緒にアセンブリされて、より大きなMNAを作製し得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記MNAは、スピンキャスティング法を使用して、生物分解性の材料組成物(70%CMC/30%Treh)からモデル抗原であるオボアルブミン(OVA)±モデルアジュバントであるポリ(I:C)を組み込み得る。さらに、提唱されたMNA設計は、有利なモールド材料とともに、成形プロセスに干渉することなく、直接製作工程をストラテジー的に可能にした。その製作したMNAは、生きているヒト皮膚の角質層を通って穿通して、皮膚微小環境にそれらのバイオカーゴを送達するにあたって特に効果的である。これらの特有のMNAは、皮膚ワクチン接種に効果的な皮膚穿通のための幾何形状および機械的強度要件を満たし、それによって、皮膚標的化免疫化ストラテジーの代替の有望なアプローチを提示する。
【0073】
例示的なマイクロニードルおよびアレイ、ならびにその製造システム
【0074】
図3Aおよび3Bは、鋭い先端の角錐ヘッド(102)およびアンダーカットステム部分(104)を有するマイクロニードルを含む例示的なマイクロニードルアレイ(MNA)(100)を図示する。さらに、上記マイクロニードルは、隅肉付きの基部(106)を含む。
【0075】
本明細書で開示される方法およびシステムは、異なるおよび広く使用される分解するマイクロニードル材料(CMC、PVP、シルク、HA、CMC/トレハロース、CMC/グルコース、CMC/スクロース、PVP/PVA、および任意の他の成形可能な生物分解性組成物が挙げられる)からの、アンダーカット特徴を有する高品質の、先端に装填した分解するMNAの再現性のある製作を可能にする。
【0076】
この実施形態において、上記マイクロニードルは、50~1500μmの間の高さ(110)(例えば、高さ750μm)、および10°~60°の間(例えば、30°)の角錐ヘッドの頂角(A)を有する。
【0077】
1つの実施形態において、上記マイクロニードルのステム部分は、50~500μmの間(例えば、150μm)である幅(112)を有し得る。上記ステム部分(104)は、三次元(3D)角錐ヘッドの底部領域から、15~75μmの範囲(例えば、35μm)に及ぶ半径方向の隅肉付き接続を有する上記マイクロニードルの裏打ち層(108)へと延び得る。上記角錐ヘッドの底部領域の幅(114)は、例えば、100~400μmの間(例えば、250μm×250μm 基部面積)であり得る
【0078】
いくつかの実施形態において、上記アレイにおけるマイクロニードル間の先端間の距離(116)は、100~800μmの間(例えば、650μm)であり得る。いくつかの実施形態において、上記MNAは、1~1000個の間のマイクロニードルを(例えば、4.75mm×4.75mmの面積を有する裏打ち層上に25個のマイクロニードルを5×5アレイの構成で)含み得る。
【0079】
上記マイクロニードル基部の隅肉(106)は、鋭い角における関連する機械的な応力集中を低減する助けになり得、次に、製造プロセスおよび皮膚挿入の間のマイクロニードル性能を増大させる。上記マイクロニードルの頂角、幅、および高さを、改善された皮膚挿入力学を提供し、穿通における失敗を低減するために選択した。
【0080】
アンダーカット、または別の特徴は、適用の間の皮膚保持を改善し得、本明細書で開示される新規な方法およびシステムを使用して、処理工程に干渉することもなく、達成され得、それによって、MNAをモールドから直接除去することを可能にする。
【0081】
本明細書で記載される三次元微小付加的製造(3D-μAM)アプローチは、3D-CAD図面から特有のMNA設計の作製を可能にする。さらに、3D-μAMは、微小製作の専門的技術がほとんどないかまたは全くない医学研究者が、適用に向けた最適化とともに、MNAベースの薬物送達プラットフォームを設計および製造することを可能にし得る。
【0082】
例示的な製造システムおよびプロセスは、図4Aにおいてフローチャートで示され、図4Bにおいてグラフとして図示される。図4Aおよび図4Bに示されるように、そのプロセスは、ハイスループット製作を同時に達成しながら、新規な迅速に分解するMNAを作製するために、以下の工程を包含し得る。第1に、MNA設計の3D-CAD図面(132)を調製し得る(プロセス工程120)。第2に、CAD図面からのマスターMNA(134)の直接生成を、非分解性の樹脂(例えば、IP-Sフォトレジスト)を使用して3D直接レーザー書き込みによって生成し得る(プロセス工程122)。3D-μAM製造システムは、例えば、Nanoscribe 3Dプリントシステム(136)であり得る。
【0083】
第3に、上記マスターMNAの迅速かつ高信頼性の複製を、2工程微小成形アプローチを使用して、UV硬化性樹脂(例えば、VeroWhitePlus、Tangoblack、Digital Materials)で形成し得る(プロセス工程124)。このアプローチは、上記マスターMNAのレプリカ(140)を形成するために、ネガのエラストマーモールド(138)を含み得る。
【0084】
第4に、上記MNAマスターモールドを、3DプリントしたMNAホルダーの上に多数のマスターMNAレプリカ(例えば、6個のレプリカ)で作製し得る(プロセス工程126)。上記3DプリントしたMNAホルダー(142)は、例えば、樹脂材料から形成され得る。複数のマスターMNAレプリカの組み合わせを、例えば、3DプリントしたMNAホルダー上に一緒にして、より大きなMNAの作製を可能にし得、生産性を改善し得る。
【0085】
第5に、上記MNA生産モールド(144)を、微小成形を使用して、エラストマーPDMSから製造し得る(プロセス工程128)。第6に、先端に装填した分解するMNA(150)を製作し得る(プロセス工程130)。上記MNAは、1種またはこれより多くの生体活性材料(例えば、ワクチンまたは水溶性の生体順応性材料(例えば、CMCおよびTrehの組成物)に由来する任意の他の生体活性材料)を、遠心分離を使用するマルチステップスピンキャステキング法を通じて組み込んだアンダーカットマイクロニードルを有し得る。
【0086】
例えば、生体活性成分(例えば、ワクチン)を、PDMS生産モールドの先端にスピンキャスティングし得、分解性のヒドロゲル(例えば、CMC/トレハロース)を、生産モールドへとスピンキャスティングして、マイクロニードルの構造材料として働くようにし、MNAの裏打ち層を形成させ得る。いくつかの実施形態において、上記マスターMNA、上記マスターMNAのレプリカを含む上記MNAマスターモールド、および上記エラストマー生産モールドは、多数の処理サイクルのために再使用され得、それによって、特有の設計を有するMNAの製作コストを大いに低減し、生産性を改善することができる。
【0087】
図5A~5Eは、異なる製造または処理工程に相当する最終製品を示す。図5Aは、3D直接レーザー書き込みを使用して作製したマスターMNA(134)の光学顕微鏡画像を示し、図5Dは、3DプリントしたマスターMNA(134)上の個々のアンダーカットニードルの光学顕微鏡画像を示す。具体的には、上記マスターMNAを、3D直接レーザー書き込みによってIP-Sフォトレジストから作製した。IP-Sは、3Dレーザーリソグラフィーのために設計された特異的な材料であり、マイクロ構造体およびナノ構造体のための高解像度および機械的強度を提供する。2光子重合に基づく3Dレーザーリソグラフィーは、滑らかな縁部および鋭い先端を有し、かついかなる不要な残渣(例えば、切削屑)もないアンダーカットMNA設計の製作のための効果的な手段を提供した。
【0088】
図5Bは、2段階微小成形ストラテジー:UV硬化性微小成形と組み合わせたエラストマー成形を通じて作製したマスターMNAのレプリカ(140)の光学顕微鏡画像を示し、図5Eは、上記マスターMNAのレプリカ(140)上の個々のアンダーカットニードルの光学顕微鏡画像を示す。上記マスターMNAを、2工程微小成形プロセスを使用して生成した。上記IP-SマスターMNAを使用して、エラストマー成形を通じてPDMSの可撓性モールドを製作し、次いで、上記PDMSモールドを使用して、UV硬化性微小成形を通じていくつかのVeroWhite MNAレプリカを製造した。VeroWhite樹脂は、3D Polyjetプリンターとともに使用され得る耐摩耗性アクリルベースのフォトポリマーである。
【0089】
新規なMNAの拡張性のある製造を達成するために、次いで、上記MNAレプリカを使用して、多くのMNA(例えば、6個のMNAレプリカ)を含むMNAマスターモールドを作製した。最終MNAマスターモールドを、上記モールド表面上のPDMSの成功裡の硬化を促進するために、真空オーブン中で後処理し、次いで、上記エラストマーMNA生産モールド(これは、マイクロニードル形状のウェルからなる)を、PDMSから製作した。図5Cは、上記MNA生産モールド(144)におけるマイクロニードル形状のウェルの光学顕微鏡画像を示す。
【0090】
よって、これらの処理工程は、3D直接レーザー書き込みの高い幾何形状の適応能力とともに、拡張性のあるかつ効果的なMNA製造ストラテジーを生じた。さらに、耐摩耗性の成形可能材料を使用して3DプリントしたマスターMNAの迅速な複製は、実質的に生産性を改善した。異なるマイクロニードルおよびエラストマーモールド材料を使用する他のアンダーカット特徴はまた、本明細書で記載されるプロセスおよび方法と一致して、可能である。
【0091】
6個のMNAレプリカを有するMNAマスターモールドの製作の際に、上記ニードルの先端部分にワクチンを一体化した分解するMNAを、マスターモールドから生産モールド、最終的な分解性のMNAまでの従来の3段階製造ストラテジーを使用して製作した。
【0092】
以下でより詳細に考察されるように、アンダーカットニードルの先端部分にワクチン(10μg OVA±25μg ポリ(I:C))を組み込んだ分解するMNAを、2種の異なる材料組成(すなわち、CMC/トレハロースおよびPVP/PVA)からスピンキャスティングプロセスを通じて製作した。さらに、着色したモデル薬物(例えば、ドキソルビシン)を一体化したアンダーカットマイクロニードルを有する、先端に装填したCMC/トレハロース MNAを製作して、画像化を容易にし、化学療法剤との適合性を示した。本明細書で記載されるシステムおよび方法は、異なる分解性材料組成からのアンダーカットマイクロニードルを有する、先端に装填した分解するMNAの効果的でかつ迅速な製作を可能にした。
【0093】
図6Aは、バイオカーゴ(例えば、OVA+ポリ(I:C))を組み込んだ最終の分解する(CMC/Treh) MNAの光学顕微鏡画像を示す。図4Bは、OVAを一体化したアンダーカットマイクロニードルを有する、分解する先端に装填したPVP/PVA MNAの光学顕微鏡画像を示し、図4Cは、画像化を容易にするために着色した薬物としてドキソルビシンを組み込んだ、個々の先端に装填したCMC/Treh アンダーカットマイクロニードルの光学顕微鏡画像を示す。
【実施例
【0094】
実施例1 - 例示的なMNAの製造
【0095】
MNAを作製するための例示的なプロセスを、ここに記載する。
【0096】
マスターMNAの製作。 特有のMNA設計を、図1に示される3D-CAD図面から、光重合性の(photopolymetric)レジストIP-Sでの3Dレーザープリント(Nanoscribe Photonic Professional, GT)を使用して直接作製した。Nanoscribeプリントシステムは、レーザー発生装置、光学キャビネット、レーザー光線の焦点を合わせるためのレンズに取り付けられたZeiss光学顕微鏡、レーザー光線スキャンを指示するGalvoミラーシステム、正確なモーションコントロールのための圧電ステージ、および3Dプリントを行うための操作ソフトウェア(Nanowrite)を備えた。全システムを光学テーブルの上に置いて、プリントプロセスの間の振動を排除した。
【0097】
上記マスターMNAを製作するために、上記MNA設計を、「STL」(StereoLithography)フォーマットへと変換した。その後、上記STLファイルを、Nanoscribeシステムの専門のソフトウェア(DeScribe, Germany)にロードして、処理条件(すなわち、スライス、ハッチング、および分割の距離)を選択した。最後に、上記STLファイルを「GWL:(General Writing Lithography)フォーマットに変換して、マスターMNAをプリントするためのNanowriteソフトウェアにエクスポートした。上記マスターMNAを、XY平面においてGalvoスキャンモードをかつZ方向にピエゾスキャンモードを使用して製作した。上記マスターMNAを、作業範囲内で220μm×220μm×200μmのブロックに分割し、次いで、一緒にとじた。レーザー出力および書き込み速度を、それぞれ、100mWおよび6cm/sに設定した。最小および最大スライス距離、それぞれ、0.3μmおよび0.5μmを、使用した。次いで、上記マスターMNAを、Shell and Scaffoldモードにおいて25×およびNA0.8の対物レンズで特有の液中深部モード(deep-in-liquid mode)を使用して、750nmの波長においてフェムト秒でパルスしたレーザーによって、IP-Sフォトレジストの2光子重合を通じてプリントした。
【0098】
プリント後に、上記マスターMNAは、フォトレジスト溶媒プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中に30分間で現れ、続いて、5分間のイソプロピルアルコール(IPA)のすすぎを行った。上記マスターMNAを風乾した後、16mW/cm 強度を有するUV(365nm)光の下に30分間置いて、MNA構造を強化するために本体をさらに架橋させた。
【0099】
マスターMNAの複製。 マスターMNAを高信頼性でUV硬化性樹脂を使用して複製するために、2段階微小成形法を行った。第1に、上記マスターMNAのネガであるエラストマーモールドを、微小成形アプローチを使用してポリジメチルシロキサン(PDMS)から製造した。PDMSを使用するエラストマー成形は、高信頼性のミクロンスケール構造体の正確でかつ再現性のある複製を提供する。簡潔には、上記マスターMNAを、直径 5cmを有するペトリ皿の中に固定し、PDMSを、基本材料と硬化剤を10:1 SYLGARD(登録商標)-対-硬化剤比で混合することによって、2構成要素の硬化性シリコーンエラストマー、SYLGARD(登録商標) 184(Dow Corning)を使用して得た。その後、上記混合物を、ペトリ皿へと固定されたマスターMNAの上から注ぎ、15分間脱気した。次に、上記マスターMNAと脱気した混合物を、オーブン中に入れ、70℃で1時間硬化した。その硬化したPDMSを室温へと5分間冷却し、次いで、上記マスターMNAから分離して、ネガのPDMSモールドを得た。
【0100】
第2の処理工程は、ポジのMNAレプリカをUV硬化性樹脂(Stratasys(登録商標)、VeroWhiteplus-RGD835)から製作するためにネガのPDMSモールドを使用した。各PDMSモールドに関して、20μlの液体(硬化していない)樹脂を、そのモールド上に注ぎ、次いで、そのモールドを遠心分離機の中に入れて、4500 RPMおよび20℃において1分間、マイクロニードル形状のウェルに樹脂を満たした。次いで、その樹脂を、上側および下側の各々から、21.7mW/cm 強度のUV光(365nm)の下で5分間硬化して、基部およびマイクロニードル先端の両方を硬化させた。上記マスターMNAのレプリカの裏打ち層が平らであることを確実にするために、PDMSモールド上への50μl UV硬化性樹脂の2回目の装填を行った。これは、利用可能な残りの量に対して過剰であった。ガラススライドを、そのモールドの一番上に置いて、その過剰なVeroWhite樹脂を除去し、それによって、基部において均一で平らな表面を作製した。次いで、その液体樹脂を、5分間、上側から硬化させ、次いで、モールドを外して、上記マスターMNAのレプリカを得た。
【0101】
MNAマスターモールドの作製。 分解するMNAの拡張性のある製造を容易にするために、上記MNAマスターモールドを、上記マスターMNAの6個のレプリカを、高解像度(16μm) Polyjet 3Dプリントシステム(Objet Connex 500 multi-material)を使用してStratasys(登録商標)によって非分解性のフォトポリマー(VeroWhite)から製作したMNAホルダー上でのアセンブリを通じて作製した。MNAホルダーの3Dモデルを、SolidWorks 2018 CADソフトウェアを使用して作製し、次いで、「STL」(StereoLithography)ファイルフォーマットに変換した。その後、専門のソフトウェア(Objet Studio)がこの3Dモデルを2D断面層へとスライスし、3Dプリンターシステムへと送られるコンピューターファイルを作成した。3DプリントしたMNAホルダーにおけるチャネルを設計し、MNA生産モールドにおける隆起ポケットとして働くように製作して、スピンキャスティングプロセスの間の生体活性カーゴ(例えば、ワクチン)および分解するMNAの構造ヒドロゲル材料の両方のためのレザバとして支援した。その作製したMNAマスターモールドを、80℃において一晩真空オーブン中で焼いて、エラストマーMNA生産モールドの効果的な製作を容易にした。
【0102】
MNA生産モールドの製造。 マイクロニードル形状のウェルを含む上記MNA生産モールドを、MNAマスターの複製に関して記載されるように、一般に使用されるエラストマーポリジメチルシロキサン(PDMS)から製作した。基本材料を、硬化剤と10:1 SYLGARD(登録商標)-対-硬化剤比で混合した。その後、上記混合物を、10cm直径 ペトリ皿の中に置いたMNAマスターモールド上に注ぎ、15分間脱気した。次に、マスターモールドと上記脱気した混合物とを、オーブンの中に置いて、PDMSを70℃において1時間硬化させた。その硬化したPDMSを室温へと冷却した後、それを、MNAマスターモールドから分離して、PDMS MNA生産モールドを製作した。
【0103】
分解するMNAの生成。 OVA±ポリ(I:C)を組み込んだアンダーカットマイクロニードルを有する、先端に装填した分解するMNAを製作するために、カルボキシメチルセルロース(CMC, cat# C5678, Sigma-Aldrich, St Louis, MO)およびトレハロース(Treh, Cat# T9531, Sigma-Aldrich)を含む生物分解性材料組成物を使用した。分解するMNAの構造材料のヒドロゲル形態を調製するために、上記CMCおよびTreh粉末を、それぞれ、70%および30%の重量比に基づいて徹底的に混合した。次いで、この粉末混合物を、エンドトキシン非含有水(HyClone HyPure Cell Culture Grade Water)に添加し、激しく混合して、30% w/w 溶質濃度を達成した。その調製したヒドロゲルを、混合物を平衡化させるために4℃で24時間冷蔵した。次いで、特有の設計を有する先端に装填したCMC/Treh-MNAを、遠心分離機(Thermo Fisher Scientific Sorvall Legend XTRとSwinging Bucket Rotor TX-750)を使用して、マルチステップスピンキャスティング技術を通じて製造した。
【0104】
第1に、5μLのOVA溶液(エンドトキシン非含有水中に25mg/mL OVA)を、PDMS生産モールドに接しているMNAの各々の上に分与し、その生産モールドを、1分間20℃で、4500rpmにおいて遠心分離して、マイクロニードル形状の空洞を満たした。その生産モールドを一旦満たしたら、そのレザバ内の過剰なOVA溶液を回収した。その生産モールドを、30分間、20℃で、4500rpmにおいて再び遠心分離して、乾燥OVAカーゴがその生産モールドの中のニードル形状の空洞の先端部分に位置することを確実にした。
【0105】
OVA+ポリ(I:C)を一体化したMNAのために、OVAを装填した後、5μLのポリ(I:C)溶液(エンドトキシン非含有水中に62.5mg/mL ポリ(I:C))を、PDMS生産モールドに接しているMNAの各々の上に分与し、その生産モールドを、1分間20℃で、4500rpmにおいて遠心分離して、マイクロニードル形状の空洞を満たした。その生産モールドを一旦満たしたら、そのレザバ内の過剰なポリ(I:C)溶液を、回収した。上記生産モールドを、30分間、20℃で、4500rpmにおいて再び遠心分離して、ポリ(I:C)カーゴがその生産モールドの中のニードル形状の空洞の角錐部分に位置することを確実にした。マイクロニードルの先端にそのバイオカーゴを位置づけた後、40μLのヒドロゲル(30% w/w 70:30 CMC:Treh)を、PDMS生産モールドに接しているMNAの各々の上に装填して、生産モールドの中のマイクロニードル形状の幾何形状を満たし、上記MNAの裏打ち層を形成した。次いで、そのヒドロゲルを装填した生産モールドを、5時間、20℃で、4500rpmにおいて遠心分離して、10μg OVA±25μg ポリ(I:C)を装填した分解するMNAを得た。MNA生産モールドの特異的な幾何形状に起因して、各複製は、OVA±ポリ(I:C)を装填した分解するMNAの6個のアレイを同時に生成した。
【0106】
別の水溶性材料からのアンダーカットマイクロニードルを有する分解するMNAの製作(すなわち、材料適応能力(material capability))を示すために、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルアルコール(PVA)(40% w/w 60:40 PVP:PVA)の生物分解性ポリマー組成物をまた使用して、異なるバイオカーゴを有するMNAを製作した。その製作したマスターMNA、MNAのレプリカ、エラストマーMNA生産モールド、およびOVA±ポリ(I:C)を装填した分解するMNAを、明視野光学顕微鏡を使用して画像化して、アンダーカット特徴を有する新規なマイクロニードルの幾何形状の完全性を評価した。
【0107】
例示的なMNAを使用する皮膚送達
【0108】
エキソビボヒト皮膚外植片の調製。 ヒト皮膚外植片を、Pitt Biospecimen Coreを通じて獲得した形成外科手術を受けた、匿名化した健常ドナーから調製し、University of Pittsburgh Medical Centerガイドラインに従って使用した。組織を、70% エタノール中、次いで、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中ですすいだ。ヒト皮膚外植片(およそ1mm厚)を、Silverの小型皮膚移植ナイフ(Padgett, Integra Miltex, Plainsboro, NJ)を使用して採取し、次いで、20mm×20mmの正方形片へと切断した。その得られたヒト皮膚サンプルは、元に戻った表皮および下の真皮の薄い層から構成され、空気-流体境界面での培養によって通常の生理学的状態にある外植片として維持した。
【0109】
画像化分析。 生きているヒト皮膚外植片へのMNAが管理した(MNA-directed)皮内生体活性材料(例えば、ワクチン)送達を評価するために、多くの画像化分析を行った。着色したカーゴ(すなわち、Allura Red R40色素)を一体化した、先端に装填したCMC/Treh-MNAを、上記に記載される製造ストラテジーを使用して製作した。ヒト皮膚外植片にMNAを適用する前に、MNAを、明視野光学顕微鏡検査法を使用して画像化した。
【0110】
その後、MNAを、ヒト皮膚外植片に適用し、10分後に除去した。次いで、標的化したヒト皮膚領域を、明視野光学顕微鏡下で検査して、CMC/Treh-MNAからヒト皮膚へと沈着した着色したバイオカーゴのパターンを画像化した。残りのMNA材料をまた、ヒト皮膚適用後に光学顕微鏡検査法を使用して画像化した。ヒト皮膚への、MNAが管理した皮内ワクチン送達のさらなる定性的評価のために、Alexa555標識OVAおよびAlexa488標識ポリ(I:C)の両方を組み込んだCMC/Treh MNAを製作し、10分間ヒト皮膚に適用し、除去した。次いで、その標的化したヒト皮膚外植片を、組織学的に分析した。簡潔には、上記MNAが処置したヒト皮膚サンプルを、2% パラホルムアルデヒド中で固定し、続いて、スクロース溶液中に浸漬し、24時間にわたってこの溶液を3回交換した。次いで、組織切片を、最適切断温度(OCT)組織学化学物質中で急速凍結し、およそ10μm厚の切片へと凍結切片化した。その切片化したヒト皮膚サンプルを、核のDAPI蛍光色素を使用して対比染色した。次いで、その染色した切片を、Nikon透過型蛍光顕微鏡を使用して画像化して、ヒト皮膚の切片の中でAlexa555-OVAおよびAlexa488-ポリ(I:C)を検出し、同様に、明視野顕微鏡を使用して、角質層突破をより良好に示した。
【0111】
インビボでのMNAが管理した皮膚免疫化
【0112】
マウスおよび動物の管理(husbandry)。 雌性C57BL/6Jマウスを、The Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入し、8~10週齢で使用した。マウスを、University of Pittsburghにおいて特定病原体のない条件下で維持し、全ての実験を、施設内動物実験委員会(IACUC)ガイドラインに従って行った。
【0113】
インビボIVIS画像化。 新規な分解するMNAを使用するインビボ皮内ワクチン送達を、C57BL/6Jマウスを使用して示した。Alexa555標識OVAおよびAlexa488標識ポリ(I:C)の両方を一体化した、先端に装填したCMC/Treh-MNAを、上記に記載される製造ストラテジーを使用して作製し、10分間のイソフルラン吸入を介して一時的に麻酔したマウスの腹部に適用した。次に、MNAを除去し、そのマウスを、それらの通常の活動に戻した。OVA+ポリ(I:C)を装填したMNAを、インビボ適用の前および後に画像化した。MNAが処置したマウスの画像化を、フィルターを使用するIVIS 200インビボ画像化システム(PerkinElmer)で行って、蛍光標識ポリ(I:C)およびOVAに関してMNA適用部位をアッセイした。画像を、Living Imageソフトウェア(PerkinElmer)を使用して後処理した。
【0114】
細胞媒介性および液性免疫応答。 新規なMNAでの皮膚ワクチン接種を示すために、10μg OVA±25μg ポリ(I:C)を一体化した先端に装填したCMC/Treh MNAを、上記で記載されるように調製した。マウスを、MNAを使用する皮膚ワクチン接種(10μg OVA±25μg ポリ(I:C) MNAを、腹部右側および左側に適用(マウス1匹あたり2個のMNA))によって、もしくは後肢腓腹筋へのPBS中10μg OVAの2箇所の筋肉内注射によって免疫したか、または処置せずに放置した(すなわち、未処置)。免疫化を、0日目および7日目に、それぞれ、初回刺激用量およびブースト用量として行った。次いで、マウスを、十分に確立された技術を使用して、ブースト用量の5日後に、インビボOVA特異的細胞傷害性T細胞活性、およびOVA特異的抗体応答に関してアッセイした。
【0115】
OVA特異的抗体応答に関して、血液を、屠殺時に麻酔したマウスから心臓穿刺によって集め、血清を、BD Microtainer血清分離チューブ(BD Biosciences, San Jose, CA)を使用して単離した。血清中のOVA特異的IgG1およびIgG2c抗体を、間接的ELISAによって測定した。Costar EIA/RIAプレート(Corning Inc., Corning, NY)を、4℃において一晩インキュベーションすることによって、OVA(0.5M 炭酸-重炭酸緩衝液(pH9.6; Sigma)中100μg/mL)でコーティングした。プレートを、PBS中の0.05% Tween20で洗浄し(3×)、PBS中の1% ヤギ血清で1時間37℃においてブロッキングした。血清サンプルおよび標準(Cayman Chemical(Ann Arbor, MI)の抗OVA IgG1;Chondrex, Redmond, WAの抗OVA IgG2c)を、1% ヤギ血清で希釈し、プレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。洗浄(3×)の後、プレートを、1時間、37℃において、ビオチン化二次抗体(ヤギ抗マウスIgG1またはIgG2c、1% ヤギ血清中で1:20,000希釈;Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)とともにインキュベートした。次いで、プレートを洗浄し(3×)、30分間、ストレプトアビジン-HRP(1% ヤギ血清中で1:1000; BD Biosciences)とともにインキュベートした。プレートを再び洗浄し(3×)、室温において4,4’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)ペルオキシダーゼ基質(Sigma)とともに2~3分間インキュベートし、反応を、1.0M HSOでクエンチした。全てのELISAに関して、450nmでの吸光度(OD450)を、SpectraMax 340PCプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で読み取り、血清濃度を、標準曲線から計算した。
【0116】
OVA特異的細胞傷害性T細胞(CTL)活性を評価するために、未処置マウスの脾細胞に、2μg/ml OVA257-264(SIINFEKL)ペプチドを添加するか、または添加せずに1時間静置した。抗原を添加した脾細胞を洗浄し、高濃度カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE, 10μM)で染色した一方で、添加されていない脾細胞を、低濃度CFSE(1μM)で15分間、37℃において標識した。添加した標的細胞および添加されていないコントロール細胞(各々10)の1:1混合物を、免疫したマウスおよび未処置マウスに静脈内(IV)注射した。養子移入の20時間後に、マウスの脾細胞を単離し、標的細胞の殺滅を、抗原添加したおよび添加しなかった集団のフローサイトメトリーによる比較によって評価して、高CFSE標識SIINFEKL添加標的のOVA特異的殺滅を定量した。特異的溶解を計算し、%溶解={1-[(未処置マウスに由来する平均CFSE低/CFSE高比)/(ワクチン接種マウス由来のCFSE低/CFSE高比)]}×100として、最大溶解のパーセンテージとして表した。
【0117】
皮内および非皮膚使用
【0118】
皮膚ワクチン接種に加えて、本明細書で記載されるMNAは、広い範囲の皮内および非皮膚(例えば、眼および心臓組織)薬物送達適用のために使用され得る。図7A~Dに示されるように、目的のバイオカーゴは、スピンキャスティングプロセスにおいてマイクロニードルのまさに先端(すなわち、角錐の部分)に位置し得るか、または角錐領域全体が、用量要件に依存してバイオカーゴに装填され得る。図7Aは、マイクロニードルの先端にTexas Red標識デキストラン(およそ40kDa 分子量)を組み込んだPVP/PVA MNAを示す一方で、図7Bは、マイクロニードルの角錐領域にAllura Red R40色素(およそ500Da 分子量)を一体化した、先端に装填したCMC/Treh MNAを示す。
【0119】
さらに、多くの反復スピンキャスティング工程を行って、それらの角錐領域に多数のカーゴを組み込むアンダーカットマイクロニードルを有する高品質MNAを製作し得る(図7Cおよび7D)。図7Cは、Texas Red標識デキストランおよびAllura Red R40色素のような多数のカーゴを組み込んだ、先端に装填したPVP/PVA MNAを示し、図7Dは、Texas Red標識デキストランおよびAlexa488標識PLGA微粒子(10μm 平均直径)のような多数のカーゴを組み込んだ、先端に装填したPVP/PVA MNAを示す。
【0120】
よって、提示されるアプローチおよび新規なMNA設計は、いくつかの皮膚および非皮膚適用に関する単一のおよび併用療法と適合性である。重要なことには、同じ生産モールドを使用して、数サイクルにわたってアンダーカットマイクロニードルを有する分解するMNAを効果的に製作し得る(例えば、図7Aおよび7Cは、それぞれ、それを使用して、1回目および12回目のサイクル後に得たMNAを示す)。最も重要なことには、単一の(OVA)カーゴおよび多数のカーゴ(OVA+ポリ(I:C))のMNAのインビボ皮膚ワクチン接種適用を、本試験において示した。
【0121】
付加的製造または3Dプリントは、本明細書で記載されるシステムおよび方法で使用されるように、設計制限のない3Dの複雑な幾何形状の正確かつ再現性のある製造を提供し、高度な設計の融通性およびコントロールを提供する。本明細書でのシステムおよび方法を使用して、最適なアプリケーション駆動型の薬物送達システムの迅速な設計から製作への転換が可能である。
【0122】
多様なニードルの幾何形状
【0123】
上位で考察したように、本明細書で開示されるシステムおよび方法は、MNA設計に関する前例のないレベルの設計の融通性を提供する。3D直接レーザー書き込みの幾何形状の幾何形状の適応能力の範囲を示すために、マイクロニードル設計を、多様な幾何形状で製作した。
【0124】
図8A~8Bは、この技術が、アプリケーション駆動型の最適化に向けて高信頼性で広い範囲のマイクロニードル幾何形状の製作を可能にすることを示す。さらに、図8A~8Bに示されるように、それは、複雑で特注の処理工程を必要とすることなく、広い範囲の設計変更(マイクロニードルの高さ、幅、頂角、および幾何形状を含む)を可能にする。よって、この技術は、設計およびアプリケーション駆動型の特有のMNA設計の製作への道を開く。
【0125】
ヒト皮膚へのMNAベースの皮内ワクチン送達
【0126】
アンダーカットニードルを有する新規なMNAの皮膚バイオカーゴ特徴を評価するために、Allura Red R40色素を先端に装填したMNAを、提示した製作ストラテジーを使用して製造した。ヒト皮膚外植片を上記のように調製した。Allura Red R40色素を装填したMNAを、生きているヒト皮膚外植片に適用し、10分後に除去した。適用前(図9A)および適用後(図9B)のこれらのMNAの画像は、それぞれ、高品質MNAおよびマイクロニードルの完全な分解を示した。標的化した皮膚におけるMNAに埋め込まれたカーゴ(例えば、Allura Red R40色素)の相当する沈着物を、図9Cに示した。
【0127】
角質層から免疫細胞が豊富な皮膚微小環境への成功裡のワクチン送達は、効果的な皮内免疫化にとって極めて重要である。ヒト皮膚へのOVAおよびポリ(I:C)の送達を解剖学的に評価するために、Alexa555標識OVAおよびAlexa488標識ポリ(I:C)の両方を組み込んだCMC/Treh MNAを、ヒト皮膚外植片に10分間適用し、次いで、除去した。その標的化したヒト皮膚を、凍結切片化し、Nikon透過型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。組織学から、表皮から真皮へと穿通するマイクロニードル空洞(図9G)、ならびに標的化したヒト皮膚微小環境への蛍光標識したOVAおよびポリ(I:C)の送達(図9D~I: DAPI核染色、Alexa488標識ポリ(I:C)、Alexa555標識OVA、明視野、3種の異なる蛍光色の重ね合わせ、それぞれ全ての蛍光画像の画像と明視野画像との結合画像)が示された。図9D~Iでは、スケールバーは、100μmに相当する。
【0128】
まとめると、これらの画像は、提示した特有のMNAが、幾何形状(すなわち、鋭い先端および滑らかな縁部)および失敗のないヒト皮膚穿通(すなわち、角質層および生存性の表皮を突破する)のための機械的強度要件および皮膚の水性環境における効率的分解のための材料要件を満たし、それによって、効果的な皮膚の薬物およびワクチン送達プラットフォームを提示することを示唆する。
【0129】
インビボでのMNAが管理した皮膚免疫化
【0130】
新規なMNAを使用してインビボでマウスにおける皮内ワクチン送達を研究するために、Alexa555標識OVAおよびAlexa488標識ポリ(I:C)の両方を組み込んだ高信頼性のアンダーカットマイクロニードルを有するCMC/Treh MNAを、上記のように製作した。適用する前に、Alexa555-OVA+Alexa488-ポリ(I:C) MNAを、明視野光学顕微鏡検査法および落射蛍光顕微鏡検査法を使用して画像化した(図10A)。次いで、MNAをマウスに適用し、10分後に除去した。適用後に残っているMNA材料をまた、明視野光学顕微鏡検査法を使用して画像化した(図10B)。MNAで処置したマウスを、Alexa488-ポリ(I:C)およびAlexa555-OVAの両方に関して、フィルターを有するIVIS 200生存動物画像化システムを使用して画像化した。ポリ(I:C)およびOVAのMNAが管理した同時送達を、それぞれ、図10Cおよび10Dに示した。まとめると、これらの画像は、マウスにおいてインビボで新規なMNAの成功裡の適用を、そして次に、新たなMNA設計でのMNAが管理した効果的な皮膚の薬物およびおよびワクチン送達を示した。
【0131】
インビボでのワクチンの成功裡の皮内送達を示す際に、本発明者らは、MNAに埋め込まれた抗原±アジュバントの免疫原性を特異的に評価し、MNA免疫化と、臨床上一般的な筋肉内(IM)注射経路によるワクチン接種とを比較した、この目的のために、CMC/Treh MNAを、上記で記載されるとおりのMNAに従って、10μg OVA±25μg ポリ(I:C)で製作した。本発明者らおよび他は、タンパク質を一体化した分解するMNAが、それらの完全性を維持することを以前に示した。免疫するために、方法の節に記載されるワクチン接種レジメンは、それらの腹部を通じてIMおよびMNAで免疫しているマウスの両方に関して従った。OVA特異的細胞傷害性T細胞(CTL)および抗体応答を、それぞれ、標準的なインビボ溶解アッセイおよびELISAを使用して定量した。MNAでの皮膚ワクチン接種は、elicited 強い抗原特異的細胞性免疫応答を誘発した(図11A~B)。予測されるように、等しい数の抗原添加(CFSE高)標的細胞および添加されていない(CFSE低)標的細胞を、未処置または免疫していないマウスから回収し(図11A)、それによって、抗原特異的細胞溶解活性がないことを示した。対照的に、抗原添加した標的細胞の特異的溶解は、添加しなかった標的より低いOVA添加した標的の生存によって示されるように、免疫したマウスにおいて劇的に増強された。具体的には、2つの集団の回復における最小の差異は、IM-OVA免疫したマウスにおいて観察された(図11A)一方で、OVA-MNAで免疫したマウスは、(IM-OVAと比較した場合)添加してない標的より有意に低い生存およびOVA添加標的の回復(図11A)で、インビボでより大きなOVA特異的溶解を示した。OVA+ポリ(I:C)での免疫化はさらに、ワクチン接種の性能を改善した(図11A)。標準的な技術による抗原特異的溶解の定量から、MNA免疫化が強力なCTL免疫を誘発することが確認された(図11B)。これは、アジュバントであるポリ(I:C)を含めることによってさらに改善された。比較において、IM免疫化は、免疫していないコントロールに対して低レベルの応答を誘導した。まとめると、これらの結果は、これらのMNAが、抗原±アジュバントを、皮膚内のAPCが豊富な微小環境に効率的に送達して、強力なCTL免疫応答を誘導し得ることを示す。
【0132】
CTL免疫に加えて、MNAでの皮膚ワクチン接種は、強い抗原特異的液性免疫応答を誘発した(図11C)。MNAおよびIMの両方でのマウスのワクチン接種は、IgG応答を生じたが、分解するMNAでワクチン接種したマウスは、有意により高いIgG力価を有し、それによって、免疫化努力においてMNA技術の重要性が示された。最終的には、提示された新規なMNAは、皮膚内の規定された微小環境への埋め込まれた抗原±アジュバントの特異的かつ正確な送達の特有の機会を提供する。例えば、本発明者らおよび他は、皮膚に、ワクチン誘導性の免疫誘導に必須の樹状細胞および他の抗原提示細胞(APC)が豊富であることを示した。従って、MNAを使用して皮膚APCを標的化することは、概してワクチン接種のための、および特に細胞媒介性免疫応答(多くの感染性疾患およびがんを防止または処置するために必須のCTL応答を含む)の誘導のための有効なストラテジーであり得る。よって、提示されたMNA技術は、広い範囲のワクチン接種ストラテジーに関連する適応能力を可能にし得る。
【0133】
よって、アンダーカットマイクロニードルを有する新規な分解するMNAの開発および適用は、効果的な皮内ワクチン接種を提供する。特有のMNA設計は、角錐ヘッドおよび隅肉付きの基部を有するアンダーカットステム領域を含む。アンダーカットMNAを作製する製造アプローチは、3Dレーザープリントおよび多くの微小成形プロセスをストラテジーとして含んだ。無数のバイオカーゴを組み込んだアンダーカットニードルを有する分解性のMNAの成功裡のおよび再現性のある製作を、異なる生体適合性のおよび水溶性のポリマーを使用して達成した。重要なことには、3Dレーザープリントとの前例のないレベルの幾何形状の適応能力が、いくつかの皮膚および非皮膚薬物送達適用のためのアプリケーション駆動型のMNA設計に向けて示された。アンダーカット特徴を有する導入された新規のMNAは、ヒトおよびマウスにおける失敗のない皮膚穿刺のための強度要件を満たし、それらのバイオカーゴを標的化した皮膚微小環境に成功裡に送達した。重要なことには、モデル抗原を装填したMNA(OVA-MNA)を使用する皮膚ワクチン接種は、旧来の筋肉内注射(IM-OVA)ベースの免疫化によって得られるものより有意に強力な抗原特異的細胞性および液性免疫応答を誘発した。最も重要なことには、抗原(OVA)とアジュバント(ポリ(I:C))とのMNAが管理した同時送達は、IMベースのワクチン接種に関するワクチンの免疫原性を、増強されたMNAが管理した皮膚ワクチン接種に向けて改善した。まとめると、提示されたアプローチは、広い範囲の皮膚および非皮膚薬物送達適用のための新規な分解するMNAを製作する効果的な手段を提供する。
【0134】
開示される本発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態に鑑みて、例証された実施形態が、本発明の好ましい例に過ぎないことは認識されるべきであり、本発明の範囲を限定すると理解されるべきではない。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって規定される。従って、本発明者らは、これらの請求項の範囲および趣旨の範囲内にある全てを本発明者らの発明として特許請求する。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
【国際調査報告】