(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】匂い刺激を選択的に提供する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 11/00 20060101AFI20220706BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
A61M11/00
A61B5/113
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568027
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 IL2020050534
(87)【国際公開番号】W WO2020230143
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521495965
【氏名又は名称】アプセント メディカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Appscent Medical Ltd.
【住所又は居所原語表記】15 HaTidhar Street, RaAnana, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アズーレイ ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】ポラト エイモス
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA18
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
匂い分配を伴う呼吸を操作する方法は、使用者から10cm~3mの距離から使用者に向けて匂いの用量を分配することと、分配後の所定の期間に分配の近傍で匂いを制御可能に消散させることとを含む。この方法は、任意選択で、使用者が睡眠中のいびき及び/又は無呼吸事象を低減するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
匂い刺激を選択的に提供する方法であって、前記方法は、
使用者から10cm~3mの距離から前記使用者に向かって匂いの用量を分配することと、
前記分配後の所定の期間に前記分配の近傍で匂いを制御可能に消散させることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記分配は前記制御された消散と共に、前記使用者が睡眠中のいびき及び/又は無呼吸事象を低減するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記匂いは前記所定の期間に重力によって沈降するように構成された加重顆粒上に前記匂いの用量を懸濁することに基づいて制御可能に消散され、前記加重顆粒のサイズ及び重量のうちの少なくとも1つは前記所定の期間に前記消散を作動させるように選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記顆粒が、2mm~8mmの直径を有するサイズである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記顆粒が、0.01gm~0.5gmの重量になるように選択される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記顆粒が、シリコンである、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記顆粒が、球状である、請求項3~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記匂いが、ドライな匂いである、請求項3~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記匂いは、前記所定の期間に清浄空気の噴出を分配することに基づいて制御可能に消散される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記清浄空気の噴出は、前記匂いと同じ方向に分配される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記匂いが、呼吸事象と協調して分配される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記匂いは、前記呼吸事象を検出するように構成されたセンサからの出力に応答して分配される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記匂いが、規定の間隔で分配される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
複数の匂いのうちの1つを選択的に分配することを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記匂いは、機械学習プロセスに基づいて選択され、前記機械学習プロセスはセンサからの出力に基づく、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
使用者の位置を追跡し、前記分配をその位置に向けることを含み、前記追跡が自動化される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記追跡位置は、カメラからの出力に基づく、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記追跡位置は、音及び熱のうちの1つ以上で呼吸を感知することに基づく、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記分配を方向付けることが、前記匂いが分配されるノズルを方向付けるように構成された1つ以上のモータに基づく、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
匂い刺激を選択的に提供する装置であって、
乾燥形態の匂いを含む少なくとも1つのカートリッジと、
前記少なくとも1つのカートリッジから前記匂いを選択的に放出するように構成された弁と、
前記少なくとも1つのカートリッジから使用者に向けて使用者から10cm~3mの距離から前記匂いの別個の用量を分配するように構成されたノズルと、
前記ノズルを通して前記分配を作動させるように構成されたアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御するように構成されたコントローラであって、検知された呼吸パラメータに基づいて前記コントローラに入力を提供するように構成されたプロセッサと、を含む、装置。
【請求項21】
前記コントローラは、呼吸に関するパラメータを感知するセンサからの出力に基づいて、前記分配を作動させるように構成される、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記センサは、レーダーセンサである、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記センサは、前記装置内に収容される、請求項21又は22に記載の装置。
【請求項24】
前記センサからデータを受信するように構成された無線通信プロトコルを備え、前記センサは、前記装置から離れている、請求項21~23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記プロセッサは、異常な呼吸パターンの発生を識別するように構成され、前記コントローラは、前記異常な呼吸パターンの報告を送信するように構成される、請求項20~24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
前記プロセッサは、頻呼吸の発生を識別するように構成される、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記プロセッサは、COVID-19に関連する呼吸パターンを識別するように構成される、請求項25又は26に記載の装置。
【請求項28】
前記コントローラは、遠隔サイトにデータを送信するように構成された無線通信プロトコルを介して報告を送信するように構成されている、請求項25~27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
各々が乾燥形態の匂いを含むカートリッジのアレイと、
前記アレイ内の各バルブがカートリッジのアレイ内のカートリッジからの流出を制御するために専用であり、前記コントローラは、カートリッジの前記アレイからの匂いを動的に選択するように構成される、バルブのアレイと、
を含む、請求項20~28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
清浄空気を分配するように構成された清浄空気カートリッジを含み、前記清浄空気は、以前に分配された匂いを消散するように構成される、請求項20~29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
前記コントローラは、前記少なくとも1つのカートリッジから匂いを分配した後の所定の期間に、前記清浄空気カートリッジから前記清浄空気を分配することを作動させるように構成される、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記少なくとも1つのカートリッジ内の前記匂いが、匂い物質が懸濁された顆粒である、請求項20~31のいずれか1項に記載の装置。
【請求項33】
前記顆粒が、シリコンから形成される、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記顆粒が、2mm~8mmの直径を有する、請求項32又は33に記載の装置。
【請求項35】
前記顆粒の重量が、0.01gm~0.5gmである、請求項32~34のいずれか1項に記載の装置。
【請求項36】
前記プロセッサによって提供される前記入力は、いびき及び/又は無呼吸事象を低減するために前記分配を作動させるように構成される、請求項32~35のいずれか1項に記載の装置。
【請求項37】
2mm~8mmの直径を有し、0.01gm~0.5gmの重量を有する、その上に懸濁されたドライな匂いを含む顆粒を含む、呼吸を操作するための匂い物質。
【請求項38】
前記顆粒が、シリコンから形成される、請求項37に記載の匂い物質。
【請求項39】
前記顆粒が、球状である、請求項37又は38に記載の匂い物質。
【請求項40】
嗅覚機能試験を実施する方法であって、
用量の匂いを使用者に向けて分配することと、
前記分配された用量に関する前記使用者からのフィードバックの要求することと、
前記フィードバックに基づいて前記使用者の嗅覚機能を評価し、前記評価を報告することと、
を含む、方法。
【請求項41】
前記評価に基づいてCOVID-19の症状を評価することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
複数の異なる匂いを連続して使用者に向けて分配し、前記複数の異なる匂いの各々が分配された後にフィードバックを要求することを含む、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記分配後の所定の期間に前記分配の近傍で前記匂いを制御可能に消散させることを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記匂いの用量のパラメータが、予め定義されている、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記匂いの用量のパラメータは、無線通信によって遠隔操作者によって動的に作動される、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記匂いの用量が、請求項20~36のいずれか1項に記載の装置で分配される、請求項40~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記匂いの用量が、請求項37~39のいずれか1項に記載の匂い物質を含む、請求項40~46のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、呼吸状態を検出及び治療するための匂い刺激に関し、より詳細には、限定されるものではないが、匂いの選択的分配(selective dispensing of odors)に基づく無呼吸の治療に関する。
【0002】
<関連出願>
本出願は、2019年5月15日に出願された米国仮特許出願第62/847,979号の優先権の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
睡眠時無呼吸症(sleep apnea)は、睡眠中に呼吸が短時間中断される、よくみられるが重篤な睡眠障害(sleep disorder)である。睡眠時無呼吸症の最も一般的なタイプは、閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea)である。閉塞性睡眠時無呼吸は、睡眠中にのどの奥の軟部組織が弛緩して気道がふさがれると起こる。この閉塞は、呼吸の休止及び大きないびきにつながる。
【0004】
持続的気道陽圧(CPAP:Continuous Positive Airflow Pressure)は、中等度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸のための既知の治療法である。CPAP装置は、鼻と口を覆い、睡眠中に呼吸通路を開いたままにする空気の流れを提供するマスクのような機械である。多くの使用者は、CPAP装置がかさばり、大きく、一般に使用が不快であることを分かっている。
【0005】
「睡眠中の呼吸を制御するための装置及び方法」と題する米国特許出願公開第2012-0272958号は、睡眠中及び/又は無呼吸事象中のいびきの確率を低減するための装置を記載しており、その内容全体が本明細書に組み込まれる。呼吸(respiration)は、匂い分配を繰り返すことによって制御される。本装置は、匂いを分配させるように適合された匂い分配器と、使用者の生理学的特性を検出するように適合された検出器と、コントローラとを含むことが開示される。コントローラは、検出器による検出に応答して匂いを分配させるように匂い分配器に命令することに基づいて、いびきの確率を低減するように構成されるものとして説明される。匂い分配は、覚醒を誘発することなく吸入量を増加させるために、使用者の1つ以上の次の呼吸に影響を及ぼす。装置は、ノーズクリップとして着用することができ、又はベッドの枕に一体化することができることが説明されている。
【0006】
その内容全体が本明細書に組み込まれる「閉塞性睡眠時無呼吸事象の開始を検出するためのシステム及び方法」と題する米国特許第6,666,830号は、閉塞性睡眠時無呼吸事象が完全に発生する前及び呼吸停止が生じる前に閉塞性睡眠時無呼吸事象の開始を検出するためのシステム及び方法を説明する。このシステムは、人の気道内の呼吸音を検出することができる1つ以上のマイクロフォンを備える。マイクロフォンは呼吸音を表す信号を生成し、その信号をコントローラに送る。コントローラは、閉塞性睡眠時無呼吸事象の開始時に起こる人の呼吸パターンと関連する少なくとも1つの信号パターンを識別する。コントローラはまた、人の部分的に閉塞された呼吸パターンに関連する少なくとも1つの信号パターンを識別することができる。コントローラは、呼吸音を表す信号を分析するためにデジタル信号処理技法を使用することによって信号パターンを識別する。この方法は、人の気道内の呼吸音を検出し、呼吸音を表す信号を生成し、閉塞性睡眠時無呼吸事象の開始時に起こる人の呼吸パターンと関連する少なくとも1つの信号パターンを識別することを含む。
【0007】
その内容全体が本明細書に組み込まれる、「被験者の状態のモニタリング」と題する米国特許第8,679,030号は、無呼吸の発症を予測する方法を説明している。少なくとも呼吸関連運動を含む被験者の運動が感知され、感知された運動に対応する信号が生成される。呼吸関連信号は感知された運動信号から抽出され、無呼吸の開始は呼吸関連信号の分析に少なくとも部分的に応答して予測される。他の用途も記載されている。被験者及び/又は医療従事者に予測又は発生事象を通知するように適合された使用者インターフェースが開示される。近づいている臨床事象の予測は、早期の予防的治療を容易にし、それは一般的に必要な投薬量を減少させ、そして/又は死亡率及び罹病率を低下させる。
【発明の概要】
【0008】
室内に匂いを分配する一般的な方法は、空気中で液体を霧化することに基づく。霧化された液体は、典型的には長期間にわたって空気中に浮遊したままであるように構成される。例えば、エアフレッシュナーのような用途では、空気中の香りをできるだけ長く維持することが望ましい。しかしながら、呼吸状態を検出及び/又は治療するための刺激を提供するために匂いを分配する場合、分配された後の匂いの迅速な消散が好ましい場合がある。迅速な消散は、匂い刺激に対する使用者の適応を回避し、及び/又は匂いで部屋を飽和させない噴出刺激、スパイク香及び/又はスパイク刺激を提供することができる。適応及び/又は飽和は、刺激に対する同じ反応を得るために、時間当たりの匂い物質の用量を増加させる望ましくない必要性をもたらし得る。用量を徐々に増加させると、匂い刺激の制御が損なわれ、操作コストが増加し、部屋内の他の居住者を部屋内の匂い蓄積によって目覚めさせることがある。
【0009】
いくつかの例示的な実施形態によれば、呼吸状態を検出及び/又は治療するための匂い刺激の有効性及び制御可能性は、空気中に浮遊する匂いの迅速な消散に影響を及ぼすことに基づいて改善される。迅速な消散は、使用者の適応及び部屋の飽和を回避し得、その結果、呼吸における所望の反応がより少ない用量の匂い化された物質で、そしてより制御された様式で達成され得る。刺激の持続時間を制限することによって、検出及び/又は治療の感度を改善することができる。いくつかの例示的な実施形態では、無呼吸症の治療のための匂い刺激の有効性及び制御可能性が刺激のために使用される匂い物質を動的に変化させることに基づいてさらに改善される。さらに、匂い刺激の迅速な消散に基づいて、睡眠中の望ましくない障害を回避することができる。
【0010】
いくつかの例示的な実施形態によれば、使用者のための匂い刺激のパラメータは、機械学習プロセスに基づいて、個々の使用者について動的に調整されてもよい。
【0011】
いくつかの例示的な実施形態によれば、装置及び方法は、使用者が睡眠中のいびき及び/又は無呼吸事象を低減するように構成される。覚醒を誘発せずに睡眠中に呼吸を操作してもよい。
【0012】
いくつかの例示的な実施形態によれば、装置及び方法は、無呼吸関連呼吸パターン及び頻呼吸関連呼吸パターンを含む複数の異なるタイプの呼吸パターンをモニタ及び報告し、無呼吸関連呼吸パターンの検出に基づいて匂いを選択的に分配するようにさらに構成される。
【0013】
いくつかの例示的な実施形態によれば、装置及び方法は、COVID-19ウイルスに関連し得る損なわれた嗅覚機能を識別するために、相互作用性嗅覚機能試験を実施するように操作され得る。
【0014】
いくつかの例示的な実施形態の一態様によれば、匂い分配を用いて呼吸を操作する方法であって、使用者から10cm~3mの距離から使用者に向けて匂いの用量を分配することと、前記分配後の所定の期間に前記分配の近傍で匂いを制御可能に消散させることとを含む方法が提供される。
【0015】
任意選択で、分配は制御された消散と共に、使用者が睡眠中のいびき及び/又は無呼吸事象を低減するように構成される。
【0016】
任意選択で、匂いは、所定の期間に重力によって沈降するように構成された加重顆粒上に匂いの用量を懸濁させることに基づいて制御可能に消散され、加重顆粒のサイズ及び重量のうちの少なくとも1つは、所定の期間に消散を作動させるように選択される。
【0017】
任意選択で、顆粒は、2mm~8mmの直径を有するサイズにされる。
【0018】
任意選択で、顆粒は、0.01gm~0.5gmの重量になるように選択される。
【0019】
任意選択で、顆粒は、シリコンである。
【0020】
任意選択で、顆粒は、球状である。
【0021】
任意選択で、匂いはドライな匂い(dry odor)である。
【0022】
任意選択で、匂いは、所定の期間に清浄空気の噴出を分配することに基づいて制御可能に消散される。
【0023】
任意選択で、清浄の噴出は、匂いと同じ方向に分配される。
【0024】
任意選択で、匂いは、呼吸事象と協調して分配される。
【0025】
任意選択で、匂いは、呼吸事象を検出するように構成されたセンサからの出力に応答して分配される。
【0026】
任意選択で、匂いは、定義された間隔で分配される。
【0027】
任意選択で、本方法は、複数の匂いのうちの1つを選択的に分配することを含む。
【0028】
任意選択で、匂いは、機械学習プロセスに基づいて選択され、この機械学習プロセスはセンサからの出力に基づいている。
【0029】
任意選択で、この方法は使用者の位置を追跡し、分配をその位置に向けることを含み、追跡は自動化される。
【0030】
任意選択で、追跡位置は、カメラからの出力に基づいている。
【0031】
任意選択で、追跡位置は、音及び熱のうちの1つ以上で呼吸を感知することに基づく。
【0032】
任意選択で、分配を方向付けることは、匂いが分配されるノズルを配向するように構成された1つ以上のモータに基づく。
【0033】
いくつかの例示的な実施形態の態様によれば、乾燥形態の匂いを含む少なくとも1つのカートリッジと、少なくとも1つのカートリッジから匂いを選択的に放出するように構成された弁と、少なくとも1つのカートリッジから使用者に向けて使用者から10cm~3mの距離から匂いの別個の用量を分配するように構成されたノズルと、ノズルを通して分配を作動させるように構成されたアクチュエータと、アクチュエータを制御するように構成されたコントローラと、感知された呼吸パラメータに基づいてコントローラに入力を提供するように構成されたプロセッサと、を備える、匂い分配を用いて呼吸を操作する装置が提供される。
【0034】
任意選択で、コントローラは、呼吸関連パラメータを感知するセンサからの出力に基づいて、分配を作動させるように構成される。
【0035】
任意選択で、センサは、レーダーセンサである。
【0036】
任意選択で、センサは、装置内に収容される。
【0037】
任意選択で、装置は、センサからデータを受信するように構成された無線通信プロトコルを含み、このセンサは、装置から遠隔である。
【0038】
任意選択で、装置は各々が乾燥形態の匂いを含むカートリッジのアレイと、アレイ内の各バルブがカートリッジのアレイ内のカートリッジからの流出を制御するために専用であるバルブのアレイとを含み、コントローラは、カートリッジのアレイから匂いを動的に選択するように構成される。
【0039】
任意選択で、装置は清浄空気を分配するように構成された清浄空気カートリッジを含み、この清浄空気は、以前に分配された匂いを消散するように構成される。
【0040】
任意選択で、コントローラは少なくとも1つのカートリッジから匂いを分配した後の所定の期間に、清浄空気カートリッジから清浄空気を分配することを作動させるように構成される。
【0041】
任意選択で、少なくとも1つのカートリッジ内の匂いは、匂い物質が懸濁される顆粒である。
【0042】
任意選択で、顆粒は、シリコンから形成される。
【0043】
任意選択で、顆粒は、2mm~8mmの直径を有する。
【0044】
任意選択で、顆粒は、0.01gm~0.5gmの重量である。
【0045】
任意選択で、プロセッサによって提供される入力は、いびき及び/又は無呼吸事象を低減するために分配を作動させるように構成される。
【0046】
いくつかの例示的な実施形態の態様によれば、その上に懸濁されたドライな匂いを含む顆粒を含む、呼吸を操作するための匂い物質が提供され、顆粒は2mm~8mmの直径を有し、0.01gm~0.5gmの重量を有する。
【0047】
任意選択で、顆粒は、シリコンから形成される。
【0048】
任意選択で、顆粒は、球状である。
【0049】
いくつかの例示的な実施形態の態様によれば、嗅覚機能試験を実施するための方法が提供され、この方法は、使用者に向けて匂いの用量を分配することと、分配された用量に関するフィードバックを使用者に要求することと、フィードバックに基づいて使用者の嗅覚機能を評価することと、評価を報告することとを含む。
【0050】
任意選択で、この方法は、評価に基づいてCOVID-19の症状を評価することを含む。
【0051】
任意選択で、この方法は、複数の異なる匂いを連続して使用者に向けて分配することと、複数の異なる匂いのそれぞれが分配された後にフィードバックを要求することとを含む。
【0052】
任意選択で、本方法は、分配後の所定の期間に分配の近傍で匂いを制御可能に消散させることを含む。
【0053】
任意選択で、匂いの用量のパラメータは、事前に定義される。
【0054】
任意選択で、匂いの用量のパラメータは、無線通信によって遠隔オペレータによって動的に作動される。
【0055】
任意選択で、匂いの用量は、本明細書中上記に記載されるような装置で分配される。
【0056】
任意選択で、匂いの用量は、本明細書で上述したようなものである。
【0057】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は均等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験において使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は、例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、単に例として本明細書に記載される。ここで図面を詳細に特に参照すると、示される詳細は、例として、及び本発明の実施形態の例示的な議論の目的のためであることが強調される。この点に関して、図面を参照した説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【
図1】いくつかの例示的な実施形態による、匂い刺激を用いて呼吸状態を検出及び/又は治療するための例示的な装置の簡略化されたブロック図である。
【
図2】いくつかの例示的な実施形態による、匂い刺激を用いて呼吸状態を検出及び/又は治療する例示的な方法の簡略化されたフローチャートである。
【
図3】いくつかの実施形態による、機械学習エンジンへの入力及び出力の例を示す簡略化された概略図である。
【
図4】いくつかの例示的な実施形態による、匂い刺激を用いて呼吸状態を検出及び/又は治療するための例示的な非接触装置である。
【
図5】いくつかの例示的な実施形態による、2つの異なる角度構成で示される、匂いを分配するための例示的なノズルの図であり(
図5A及び
図5B)、いくつかの例示的な実施形態による、例示的な電動ノズルの簡略化されたブロック図である(
図5C)。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、いくつかの例示的な実施形態による、匂い分配を伴う呼吸を操作するための別の装置の例示的な匂い物質区画の斜視図を示す。
【
図7】いくつかの例示的な実施形態による、例示的な装置の内部構造を示す断面図である。
【
図8】いくつかの例示的な実施形態による、例示的な装置の拡大図である。
【
図9】いくつかの実施形態による、
図6A~
図8に示された例示的な装置の簡略化されたブロック図である。
【
図10】いくつかの例示的な実施形態による、例示的な匂い物質区画であり(
図10A)、いくつかの例示的な実施形態による、2つの異なる構成で示される匂い物質区画の外部ケースの概略図である(
図10B及び
図10C)。
【
図11】いくつかの例示的な実施形態による、例示的な装置を用いて対話式嗅覚機能試験を実施するための例示的な方法の簡略化されたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明はそのいくつかの実施形態では呼吸状態を検出及び治療するための匂い刺激に関し、より詳細には限定はしないが、匂いの選択的分配に基づいて無呼吸症を治療することに関する。
【0060】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は以下の説明に記載され、及び/又は図面に示される構成要素及び/又は方法の構成及び配置の詳細に、その出願が必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行されることが可能である。
【0061】
いくつかの例示的な実施形態によれば、1つ以上の匂いを分配するとともに、その消散、例えば、定義された持続時間後の使用者の鼻の近傍からのその消散に制御可能に影響を及ぼすように構成された匂い分配器(odor dispenser)が提供される。匂い分配器は定義された間隔で1回分(用量)の匂い(doze of odor)を分配し、次いで、1つ以上のセンサから受け取った入力に基づいて定義された持続時間後に匂いを消散させる(dissipate)ことができる。分配された匂い並びに規定された持続時間(期間)(duration)は、機械学習プロセスに基づいて、経時的に調整されてもよい。本発明者らは、使用者が匂いを嗅ぐことができる持続時間を制限することによって、噴出(burst)(及び/又はスパイク(spike))感覚を提供することが、既知の方法と比較して、匂い分配の繰り返しサイクルにわたって、より良好な嗅覚反応(sniffing reaction)を提供し得ることを見出した。
【0062】
いくつかの例示的な実施形態によれば、消散は、匂いの噴出(burst)が分配された後の所定の期間に清浄空気(clear air)の噴出を噴霧することに基づいて影響を受ける。代替的に又は追加的に、匂い、例えば、匂いを提供する分子は、加重粒子(粉末及び/又は顆粒)上に懸濁され、消散は、重力によって落ちた粒子に基づいて、使用者の鼻から離れるように行われる。粒子が落ちる率は、規定されたサイズ、形状及び/又は重量を有する粒子を選択することに基づいて制御され得る。
【0063】
任意選択で、制御可能な消散は、加重粒子上に匂いを懸濁させる(suspending an odor)ことに基づいており、この匂いは、噴霧され、その後、清浄な空気の噴出を噴霧して、粒子を使用者の鼻から離すように誘導する。任意選択で、匂いは、固体形態である。任意選択で、匂いは、気密封止されたカプセル又は区画内に貯蔵される。
【0064】
いくつかの例示的な実施形態によれば、匂い分配器は、非接触装置である。本明細書で使用される非接触装置は、使用者との物理的な接触なしに操作される装置を意味する。いくつかの例示的な実施形態では、装置が、使用者の生理学的パラメータを感知する装置からの無線通信に基づいて入力を受信するスタンドアロン装置である。他の例示的な実施形態では、装置が、感知を提供する装置と一体であってもよい。
【0065】
いくつかの例示的な実施形態によれば、装置は、使用者に向けられ得るノズルを含む。ノズルは、手動操作に基づいて、又は人の介在なしに自動的に、所望の方向に位置決めされてもよい。任意選択で、プロセッサを有するカメラは、使用者の顔を検出するように構成され、装置は、カメラからの入力に基づいてノズルを方向付けるように構成される。任意選択で、タグ、例えば、電子タグを使用者が着用するか、又は使用者の近くに配置することができ、装置は、タグの位置を検出し、検出された位置に基づいてノズルを配向することができる。いくつかの例示的な実施形態ではセンサが呼吸を検出するように構成され、装置は呼吸が検出される位置に基づいてノズルを配向するように構成される。任意選択で、呼吸は、音又は熱シグネチャ又はパターンを感知することに基づいて検出することができる。
【0066】
いくつかの例示的な実施形態によれば、装置は、異なる匂いを貯蔵するように構成された複数の区画と、2つ以上の匂いを同時に及び/又は連続的に分配するように構成されたアクチュエータとを含む。任意選択で、匂いは、学習及び/又は較正プロセスによって選択される。
【0067】
いくつかの例示的な実施形態によれば、装置及び方法は、睡眠中に呼吸パターンを変更するために匂い刺激を提供することに基づいて無呼吸症を治療するように構成される。任意選択で、治療は、覚醒又は目覚めを誘発することを回避するように構成される。任意選択で、装置及び方法は、覚醒又は目覚めを誘発することなく、睡眠中の1つ以上の呼吸にわたって呼吸パターンを変更するように構成される。いくつかの例示的な実施形態では、装置及び方法が、睡眠リラクゼーション、呼吸コーチング、ストレス軽減、外傷後ストレス障害軽減、及び/又はより深く、よりリラックスした睡眠を提供するように構成される。いくつかの例示的な実施形態では、装置及び方法が昏睡患者を治療するために匂い刺激を提供するように構成される。
【0068】
いくつかの例示的な実施形態によれば、装置は定義された呼吸パターンを検出し、報告、記憶、及び/又はさらなる処理のために、定義された呼吸パターンに関連するデータを遠隔装置に送信するように構成される。任意選択で、定義された呼吸パターンには、無呼吸関連の呼吸パターン及び頻呼吸関連の呼吸パターンが含まれる。任意選択で、送信は、遠隔地の医療専門家に警報を出すために提供されてもよい。
【0069】
いくつかの例示的な実施形態によれば、装置及び方法は、使用者の嗅覚機能を検出することを提供する。嗅覚機能試験の間、使用者は、装置によって選択的に分配される1つ以上の匂いを識別するように要求され得る。任意選択で、使用者入力は、例えばスマートフォンとの無線通信を介して提供されてもよい。使用者からの入力に基づいて、装置及び方法は、使用者の現在の嗅覚機能の評価を提供し得る。
【0070】
ここで、いくつかの例示的な実施形態による、匂い刺激を用いて呼吸状態を検出及び/又は治療するための例示的な装置の簡略化されたブロック図を示す
図1を参照する。いくつかの例示的な実施形態によれば、装置100は、選択された匂いを有するカートリッジ20のアレイ、例えば、それぞれが異なる匂いを含むカートリッジ21、22、23、及び24を含む。アレイ20内の5つのカートリッジが一例として示されていることに留意されたい。任意選択で、装置100は、1つのカートリッジ、5つ未満のカートリッジ、又は5つを超えるカートリッジを有することができる。任意選択で、装置100(及びアレイ20)は、匂いのない、そしてその代わりに清浄空気フィルタを有するカートリッジ25をさらに含む。任意選択で、清浄空気フィルタは、匂い化されていない空気を分配することができる自由流(free flow)カートリッジである。任意選択で、弁のアレイ10は、カートリッジを通る流れを選択的に制御するアレイ20内の各カートリッジのための専用バルブを含む。装置100の空気圧縮機11は、匂い又は清浄空気の分配を作動させ、空気を、アレイ10内の1つ以上の弁を介して、アレイ20内の1つ以上のカートリッジ21、22、23、24、及び25を通り、ノズル40を通るように導くことができる。任意選択で、ノズル40で匂い又は空気を分配する前に、空気を空気フィルタ30で濾過することができる。空気フィルタ30は安全目的のために、例えば、使用者がより大きな粒子又は塊を吸入することを防止するために、所定のサイズを超える塊又は粒子を濾過してもよい。
【0071】
装置100に含まれるコントローラ50は、装置100の動作を制御することができる。いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ50がアレイ20内に1つ以上の匂いを分配するタイミング、並びに匂いが分配される用量及び/又は速度を装置100によって動的に制御することができることに基づいて、空気圧縮機及び弁10のアレイの動作を制御する。いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ50はまた、分配される匂い又は空気が選択された方向に向けられるように、ノズル40の向きを動的に制御するように構成される。例えば、装置100は、ノズル40を動かすように構成されたモータを含んでもよく、コントローラ50は、モータの動作を制御してもよい。任意選択で、ノズル40は、コントローラ50で制御されるバルブを含む。ノズル40の弁は、空気圧縮機11から、アレイ20内の1つ以上のカートリッジを通り、ノズル40を通る流量を制御することができる安全弁又は弁とすることができる。任意選択で、ノズル40のバルブが、カートリッジから室内への匂いの漏出を防止してもよい。
【0072】
いくつかの例示的な実施形態によれば、コントローラ50は、1つ以上のセンサ480からの入力を受け取り、受け取った入力に基づいて装置100の動作を制御する。いくつかの例示的な実施形態によれば、センサ480のうちの少なくとも1つは、使用者の呼吸パターンを感知するように構成される。任意選択で、センサ480のうちの少なくとも1つは、匂い刺激に応答して嗅覚を感知するように構成される。任意選択で、センサ480は、複数の生理学的パラメータをモニタするセンサをさらに含む。任意選択で、センサ480の一部又は全部は、使用者に物理的に接触することなく使用者に関連するパラメータを感知する非接触センサ及び/又は遠隔センサである。センサ480は例えば、レーダーセンサ、温度センサ、及び/又は音響センサを含んでもよい。いくつかの例示的な実施形態では、センサ480が、物理的に使用者上の1つ以上のセンサを含む。いくつかの例では、センサ480のうちの1つは、脳活動を感知するように構成された、EEGセンサである。任意選択で、センサ480のうちの少なくとも1つは、装置による匂い刺激に基づいて脳活動の変化を感知することができる。
【0073】
いくつかの例示的な実施形態によれば、コントローラ50は、規定された間隔で、及び/又は規定された持続時間にわたって、アレイ20内の1つ以上のカートリッジから匂いの用量を放出するように構成される。選択されたカートリッジ、定義された間隔、及び定義された持続時間は、センサ480からの出力、及び/又はメモリ70に記憶されたデータからの出力に基づくことができる。メモリ70は、装置100に含まれるメモリであってもよく、又は有線又は無線の通信プロトコルに基づいてコントローラ50にアクセス可能なクラウドメモリであってもよい。コントローラ50は、処理能力を含むか、又は処理能力に関連する。任意選択で、コントローラ50は、センサ480から入力を受け取り、受け取った入力に基づいて無呼吸事象を検出及び/又は予測することができる。いくつかの例示的な実施形態では、センサ480が他の呼吸状態を検出することもできる。任意選択で、頻呼吸は、センサ480を用いて検出することができる。任意選択で、装置100によって提供される匂い刺激の1つ以上のパラメータは、検出及び/又は予測に基づいて定義される。任意選択で、COVID-19患者に関連する匂い喪失症状をモニタするために、嗅ぐ動作を検出し、使用することができる。任意選択で、コントローラ50は、装置100によって経時的に蓄積されたデータに基づいて、装置100によって提供される匂い刺激のパラメータを調整するように構成された機械学習エンジン55を含むか、又はそれに関連付けられる。いくつかの例示的な実施形態によれば、コントローラ50は、トランシーバ60を用いて時間とともに蓄積されたデータを、例えば、無線送信によって、遠隔サイトに送信することができる。蓄積されたデータは、無呼吸に関連している可能性があり、他の呼吸状態、例えば頻呼吸に関連している可能性があり、他の生理学的状態に関連している可能性があり、生理学的状態に関連している可能性がある。任意選択で、蓄積されたデータ及び/又はセンサ出力は、使用者、例えばCOVID-19の患者を遠隔でモニタするために、遠隔医療サービスセンタに送信されてもよい。任意選択で、COVID-19の患者は、装置100を用いて遠隔モニタされてもよい。任意選択で、COVID-19に関連する呼吸パターンは、使用者が睡眠中に装置100で検出されてもよく、使用者及び/又は医療関係者に報告されてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、装置100が、トランシーバ60を用いて遠隔サイトから入力を受信することもできる。入力は、例えば、遠隔医療サービスセンタから受信されてもよい。任意選択で、センサ480からの出力は、トランシーバ60を介した通信に基づいて医療従事者によって遠隔的にモニタされてもよい。
【0074】
任意選択で、装置100の動作は、トランシーバ60を介した通信に基づいて医療従事者によって遠隔的に制御されてもよい。任意選択で、蓄積されたデータ及び/又はセンサ出力は、昏睡状態の患者をモニタするために、又は心的外傷後ストレス障害を患っている使用者をモニタするために、遠隔医療サービスセンタに送信されてもよい。任意選択で、蓄積されたデータ及び/又はセンサ出力を、匂い刺激を有する患者、例えば無呼吸症患者、昏睡患者又は心的外傷後ストレス障害患者の治療をモニタするために、遠隔医療サービスセンタに送信することができる。
【0075】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ50が、カートリッジ21、22、23、及び24のうちの1つ以上から匂いの噴出を放出した後に、空気カートリッジ25を介して清浄空気の噴出を分配するように作動するように構成される。清浄空気は、放出された匂いを消散させるか、又は少なくとも匂いを使用者の鼻の近傍から離れるように移動させるように構成される。このようにして、使用者が匂い刺激を経験する持続時間は、装置100によって制御可能に制限され得る。
【0076】
いくつかの例示的な実施形態によれば、カートリッジアレイ20内の1つ以上のカートリッジは、匂いが懸濁された固体粒子及び/又は顆粒を含む。任意選択で、粒子は、定義された幾何学的形状及び重量を有するシリコンボール又はフレーク(flakes)である。いくつかの例示的な実施形態では、粒子が2mm~8mmの直径を有し、0.01gm~0.5gmの重量を有する。いくつかの例示的な実施形態によれば、固体粒子は、空気中に分配され、次いで、その重量に基づいて地面に沈降するように構成される。地面への沈降は、使用者が匂いを臭わないように、使用者から匂いをそらすことを提供することができる。このようにして、使用者が匂い刺激を受ける持続時間を制限することができる。
【0077】
任意選択で、匂い刺激の持続時間は、匂い化粒子、例えばシリコンボールを使用することと、1回分の匂い化粒子を分配した後に清浄空気の噴出を分配することとの両方に基づいて制御される。清浄な空気の噴出は、そうでなければ使用者のベッド上に沈降し得る粒子を置換することを提供し得るか、又は粒子をさらに置換し得る。代替案としては、匂い刺激の持続時間が、両方ではなく、これらの方法の1つに基づいて制御される。いくつかの例示的な実施形態によれば、匂い刺激のパラメータは、収集されたデータに基づいて、並びにどの刺激が使用者に最良の結果を提供するかを学習するように適合された機械学習プロセスに基づいて選択される。いくつかの例示的な実施形態では、パラメータが使用者を覚醒させることなく、使用者のモニタされた呼吸パターンにおいて所望の時間に匂いを嗅ぐ反応を開始することに基づいて、無呼吸症の発現を回避するように選択される。
【0078】
図2は、いくつかの例示的な実施形態による、匂い刺激を用いて呼吸状態を検出及び/又は治療する例示的な方法の簡略化されたフローチャートである。いくつかの例示的な実施形態によれば、呼吸状態は、1つ以上のセンサを用いてモニタ又は予測され(ブロック205)、センサからの出力に基づいて、匂い刺激のためのパラメータを決定することができる。匂い刺激のための選択されたパラメータは、刺激のためのタイミング(ブロック210)、刺激のための匂いのタイプ(ブロック215)、及び刺激のための持続時間(ブロック220)のうちの1つ以上を含み得る。選択されたパラメータに基づいて、匂い刺激を作動してもよい(ブロック225)。匂い刺激は、定義された間隔で繰り返されてもよく、又は感知されたパラメータに基づく単一の匂い刺激であってもよい。いくつかの実施形態によれば、匂い分配の後に、匂いの能動的消散が続く(ブロック230)。消散は、使用者の近傍から匂いを除去するように構成される。このようにして、使用者への刺激は、集中した噴出で提供されてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、匂い刺激に対する応答が、モニタされる(ブロック235)。後続の匂い刺激の1つ以上のパラメータの調整は、モニタに基づいて行うことができる。任意選択で、報告を生成し、無線送信によって使用者及び/又は医療従事者に報告を送信することができる(ブロック237)。いくつかの例示的な実施形態では、報告が、例えば、睡眠の質、感知された無呼吸事象の数、頻呼吸などの他の呼吸状態の検出、及び提供された匂い刺激を要約することができる。任意選択で、報告は、COVID-19患者の呼吸状態を要約することができる。
【0079】
図3は、いくつかの実施形態に従った機械学習エンジンへの入力及び出力の例を示す簡略化された概略図である。いくつかの例示的な実施形態によれば、装置100は、受信されたデータに基づいて経時的にデータを受信するように構成された機械学習エンジン55を含み、機械学習エンジン55は、匂い刺激のためのどのパラメータ値が使用者の呼吸パターンの所望の変化を提供するかを学習することができる。任意選択で、機械学習エンジン55を含む装置100は、使用者が睡眠中に、匂い刺激で使用者を覚醒させることなく、使用者の無呼吸の発現を低減するように構成される。いくつかの例示的な実施形態によれば、調整され得るパラメータ値は、匂い用量及び/又は持続時間(360)、匂い刺激の頻度及び/又はタイミング(365)、並びに匂いの種類を含む。これらのパラメータの1つ以上は、使用者に敏感である(sensitive)可能性がある。いくつかの例示的な実施形態によれば、呼吸パターンの所望の変化は、特定の時間及び特定の周囲条件において、特定の使用者のための専用パラメータ値を定義することに基づいて達成されてもよい。
【0080】
実施形態によれば、機械学習エンジンは、使用者(335)及び/又は周囲条件(340)の生理学的パラメータをモニタする1つ以上のセンサからの入力に基づいてパラメータ値を調整する。生理学的パラメータは、呼吸パターン、使用者の動き、睡眠フェーズ、及びいびきを含むことができる。生理学的パラメータは、センサ480(
図1)を用いて感知することができる。周囲条件は、室内の温度、室内の湿度、及び照明条件を含むことができる。機械学習エンジン55はまた、使用者の年齢、性別、体重、及び医学的状態などの使用者記憶パラメータ(330)を受け取ることができる。任意選択で、機械学習エンジンは、遠隔装置及び/又はクラウドメモリからデータを受信することもできる(345)。較正手順にわたって取得された、又は他の使用者から収集されたデータに基づいてデータが受信される。機械学習エンジン55に提供されるデータは、呼吸パターンに所望の変化を提供する、例えば、無呼吸の発現を回避し得る定義された時間に所望の匂いを嗅ぐ反応を提供する、匂い刺激のタイプを学習するために使用され得る。
【0081】
図4は、匂い刺激を用いて呼吸状態を検出及び/又は治療するための例示的な非接触装置であり、
図5A及び5Bは、両方ともいくつかの例示的な実施形態による、2つの異なる角度構成で示される、匂いを分配させるための例示的なノズルの図である。装置400は、ドレッサー、ナイトテーブル上に配置したり、壁に吊り下げたり、使用者の寝室の床に配置したりするのに適したスタンドアロン装置であってもよい。装置400は、使用者から10cm~3mの間の距離に配置されてもよい。装置400は、匂い刺激が分配されるノズル410を含むことができ、また、匂い刺激を消散させるために、それを通して清浄空気の噴出を分配することができる。いくつかの実施形態では、ノズル410が、ノズル410の配向が手動で調整され得るように、肩継手(shoulder joint)と一体化されてもよい。
【0082】
ここで、いくつかの例示的な実施形態に従った例示的な電動ノズルの簡略化されたブロック図を示す
図5Cを参照する。任意選択で、装置100は、モータ412、2つ以上のモータ又は他のアクチュエータ、及び、例えば、人間の介入なしにノズル410の向きを調整するためのコントローラ50を有する制御能力を含む。任意選択で、ノズル410は、使用者又は使用者の鼻の方に向けられてもよい。任意選択で、匂い刺激が使用者又は使用者の鼻に向けて分配されるように、使用者が睡眠中に動くにつれて、ノズル410の向きを動的に調整することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ50が、1つ以上のセンサ480からの出力に基づいて、ノズル410の方向を選択する。いくつかの例示的な実施形態では、1つ以上のセンサ480が、呼吸を検出するように構成された少なくとも1つのセンサを含み、装置400は、呼吸が検出される位置に基づいてノズルを配向するように構成される。任意選択で、呼吸は、音、熱シグネチャ又はパターン、及び/又は胸部の動きのうちの1つ以上を感知することに基づいて検出され得る。次に、コントローラ50は、1つ以上のモータ412を使用して、1つ以上の機械的継手411に取り付けられた、又は接続されたノズル410の所望の向きへの移動を作動させてもよい。
【0083】
ここで、匂い分配を伴う呼吸を操作するための別の装置の例示的な匂い物質区画の斜視図を示す
図6A及び6B、例示的な装置の内部構造を示す断面図を示す
図7、及びいくつかの例示的な実施形態による例示的な装置の拡大図を示す
図8を参照する。いくつかの例示的な実施形態によれば、装置101(
図7)は、カバー435で覆われたカルーセル(carousel)430内に匂い化粉末を含む1つ以上のパウチ440を収容するように構成される。カルーセルは、パウチ440を支持するための支柱と、各パウチ440から匂いを分離するための仕切り壁432とを有することができる。空気取入口(Air intake)は、通気口(vent)420を介してもよい。匂いは、カルーセル430を回転させ、選択された匂いを通気口420と整列させることによって選択することができる。ファン送風機(fan blower)450は、通気口420及び選択された区画を介して空気を吸引し、それによって、ノズル410を介して匂い刺激の噴出を分配することを作動させることができる。任意選択で、装置101は、分配前に匂いを混合するための循環チャンバ(circulation chamber)433を含む。任意選択で、モータ470は、回転トレイ440を回転させ、区画を通気口420と整列させるように構成される。任意選択で、モータ470は、2つ以上の匂いを混合するために分配しながらカルーセル440を回転させることができる。
【0084】
いくつかの例示的な実施形態では、装置101が1つ以上のセンサ480を含む。任意選択で、1つ以上のセンサ480は、呼吸パターンを感知するセンサを含む。任意選択で、呼吸パターンを感知するためのセンサは、レーダーセンサである。任意選択で、1つ以上のセンサ480は、使用者をモニタするための追加の生理学的パラメータを感知するセンサをさらに含む。任意選択で、装置101は、1つ以上のセンサ480からの出力を処理するように構成された処理能力をさらに含む。任意選択で、1つ以上のセンサ480は、COVID-19ウイルスに関連する呼吸パターンをモニタするように構成されたセンサを含む。任意選択で、プロセッサ、電源、及びコントローラは、装置101のベース490内に収容されてもよい。
【0085】
図9は、
図6A~
図8に示す例示的な装置の簡略化されたブロック図である。いくつかの実施形態例では、匂い物質1、2、3、及び4の各々は、粉末の形態の例示的な匂いであり、各々は専用のパウチ440に貯蔵され、各パウチ440はカルーセル430の区画に収容される。区画は、任意選択で、シリコンで形成されたカバー435で密閉されてもよい。センサ480からの入力に基づいて、(コントローラを有する)プロセッサ491は、匂い刺激を規定する。コントローラは、カルーセル430を所望の向きに位置決めするためにミキサ470の動きを作動させ、また、送風機450を作動させる。送風機450は、空気取入口405を介して、選択された区画内に空気を吸引し、ノズル410から外に空気を吐き出す。任意選択で、ミキサ470は、送風機450の動作中にカルーセルを回転させて、2つ以上の匂いを混合する。
【0086】
図10A、10B及び10Cは、全ていくつかの例示的な実施形態による、2つの異なる構成で示される、例示的な匂い物質区画(
図10A)及び匂い物質区画の外部ケースの概略図である。いくつかの例示的な実施形態では、使用者が、匂い刺激のための匂いを手動で選択することができる。任意選択で、使用者は、回転ベース490に基づいてカルーセル430を回転させることができる。選択された匂いの表示は、窓495を通して示すステッカ493に基づいて視覚化されてもよい。
【0087】
ここで、いくつかの例示的な実施形態による、例示的な装置を用いて対話式嗅覚機能試験を実施するための例示的な方法の簡略化されたフローチャートを示す
図11を参照する。いくつかの例示的な実施形態によれば、本明細書に記載されるような匂い刺激を用いて呼吸状態を検出及び/又は治療するための装置は、嗅覚評価を開始するための使用者からのコマンドを受信することに基づいて開始され得る、事前に定義された嗅覚評価モードを含み得る(ブロック505)。コマンドは、例えば、スマートフォン上の専用アプリケーションとの無線通信によって受信されてもよい。任意選択で、装置は、使用者がコマンドを提供することができる専用のスイッチ又はボタンを含む。いくつかの例示的な実施形態によれば、試験中に、装置は、1つ以上の匂い刺激を提供する(ブロック510)。任意選択で、複数の異なる匂い刺激が、提供される。いくつかの例示的な実施形態によれば、匂い刺激は、本明細書に記載されるような噴出及び/又はスパイク上の匂い刺激である。匂い刺激の各々に応答して、使用者は、感知された匂いを評価するためのフィードバックを提供することを要求され、それによって、使用者が匂い刺激を感知したかどうか、及び任意選択でどの程度、例えば強い匂い、弱い匂いを感知したかどうかを決定する(ブロック515)。入力は、例えば、スマートフォン上の専用アプリケーションと共に提供されてもよい。装置は、フィードバックを受信し(ブロック520)、任意選択で報告を提供する(ブロック525)。いくつかの例示的な実施形態では、本明細書に記載の装置及び方法を使用して、ある人がCOVD-19ウイルスに関連して嗅覚機能が障害されているかどうかを判定し、その嗅覚機能をモニタすることができる。いくつかの例示的な実施形態では、評価が、遠隔の医療施設及び/又は職員に報告される。いくつかの例示的な実施形態では、医療従事者が、装置の動作及び嗅覚機能試験を制御するために、装置にコマンドを遠隔で提供してもよい。任意選択で、遠隔医療パーソナルは、使用者と対話式に試験を実行することができる。医療従事者は、選択された匂い刺激を提供するために装置にコマンドを送信することができ、その提供された刺激に基づいて使用者にフィードバックを求めることができる。任意選択で、フィードバックは、電話によって提供されてもよい。
【0088】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、組合せにおいて、又は単一の実施形態において、提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は別々に、又は任意の適切なサブコンビネーションで、又は本発明の任意の他の説明された実施形態で適切なものとして提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしで動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0089】
上述したように、また以下の特許請求の範囲のセクションに記載されているように、本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的支持を見出す。
【0090】
<実施例>
ここで、以下の実施例を参照するが、これらは上記の説明と共に、本発明のいくつかの実施形態を非限定的な様式で例示する。
【0091】
本明細書に記載の方法に基づいて匂い刺激の持続時間を試験するために、一連の実験を行った。匂い刺激を提供するために、完全に乾燥した形態で匂い分子を貯蔵する硬質シリコンポリマー顆粒を使用した。30個の顆粒を、圧縮空気を用いて10秒間にわたって分配した。圧縮空気圧は、2barであった。匂いの存在を、匂いを分配する装置から10cm、20cm及び30cmでモニタした。分配前に、ベースラインレベルを測定した。測定したパラメータは、粒子数(ppb)と散逸時間を含んでいた。揮発性有機化合物(VOC)メーター装置を、この目的のために使用した。使用した装置のユニット名は、ppbRAE 3000(PGM-7340)であり、使用したユニットのファームウェアバージョンは、V1.06であった。
【0092】
<実施例1>
試験した匂い:ローズマリー
ローズマリーのベースラインレベルは、1200ppbであった。
表1は、ローズマリーの匂いの30個の顆粒を分配した後に得られた結果を含む。匂い消散時間は、ベースラインレベルを検出するのにかかる時間として定義される。
【表1】
ローズマリー香を分配した後、清浄空気の噴出を10秒間にわたって分配した。清浄空気の分配に基づき、匂い消散時間を平均40秒短縮した。
【0093】
<実施例2>
試験した匂い:リンゴ
リンゴの香りのベースラインレベルは、1600ppbであった。
表2は、リンゴ香の30個の顆粒を分配した後に得られた結果を含む。
【表2】
【0094】
<実施例3>
試験した匂い:呼気
「呼気」臭のベースラインレベルは、17ppmであった。
表3は、30個の呼気臭の顆粒を分配した後に得られた結果を含む。
【表3】
【0095】
<実施例4>
試験した匂い:ガム
ガム臭のベースラインレベルは、17ppmであった。
表4は、30個の顆粒のガム臭を分配した後に得られた結果を含む。
【表4】
【0096】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替、修正、及び変形が当業者には明らかであろうことは明白である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にある、そのような代替、修正、及び変形のすべてを包含することが意図される。
【0097】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書に組み込まれるように具体的かつ個別に示されたかのように、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。さらに、本出願における任意の参考文献の引用又は同定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを容認するものとして解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用される限り、それらは必ずしも限定するものと解釈されるべきではない。さらに、本出願の任意の優先権文書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】