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特表2022-532256生分解性マイクロカプセルの調製方法及びこの方法で得たマイクロカプセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】生分解性マイクロカプセルの調製方法及びこの方法で得たマイクロカプセル
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/16 20060101AFI20220706BHJP
   C08G 73/02 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
B01J13/16
C08G73/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568675
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 FR2020000170
(87)【国際公開番号】W WO2020229744
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】1905127
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1912148
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】62/927,622
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521500454
【氏名又は名称】ジェム イノヴ
【氏名又は名称原語表記】GEM INNOV
(71)【出願人】
【識別番号】513210666
【氏名又は名称】ユニベルシテ デクス マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D‘AIX-MARSEILLE
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】オルテ,イヴ
(72)【発明者】
【氏名】リベイロ,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ウドゥア,キャウサー
(72)【発明者】
【氏名】ホ,テー ヒエン
(72)【発明者】
【氏名】ジメス,ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】ギラーヌフ,カトリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ギラーヌフ,ヨハン
【テーマコード(参考)】
4G005
4J043
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005AB14
4G005BA02
4G005BB06
4G005BB09
4G005DB02X
4G005DB22X
4G005DB27X
4G005DB30X
4G005DC03Y
4G005DC42Y
4G005DD04Y
4G005DD12W
4G005DD12Y
4G005DD32Z
4G005DD57W
4G005DD58Y
4G005DD63Y
4G005EA01
4G005EA03
4G005EA05
4G005EA06
4G005EA08
4J043PB02
4J043PB08
4J043PC075
4J043PC076
4J043PC085
4J043QC02
4J043RA08
4J043SA06
4J043TA72
4J043UB161
4J043UB241
4J043XA11
4J043XA31
4J043ZB05
(57)【要約】
活性成分と呼ばれる物質を封入するマイクロカプセルを製造する方法であって、当該方法において、界面活性剤の水溶液と、活性成分及び少なくとも第1のモノマーXを含む油相と、少なくとも第2のモノマーYを含む極性相とを用意し、O/Wエマルションを、油相を界面活性剤の水溶液に添加することにより調製し、XモノマーとYモノマーとを重合させてポリマーを得るために極性相をO/Wエマルションに添加し、この反応混合物から出発して、マイクロカプセルが、単離され、ポリマーにより形成され活性成分を封入する壁を含み、当該方法は、ポリマーがポリ(β-アミノエステル)であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
いわゆる活性成分を含有するマイクロカプセルを製造する方法であって、当該方法は、
-界面活性剤の水溶液と、前記活性成分及び少なくとも第1のモノマーXを含む油相と、少なくとも第2のモノマーYを含む極性相とを準備するステップと、
-前記油相を前記界面活性剤の水溶液に添加してO/W型エマルションを調製するステップと、
-前記モノマーXと前記モノマーYとを重合させてポリマーを得るために、前記極性相を前記O/Wエマルションに添加するステップと、
-この反応混合物から、前記ポリマーにより形成された壁を含み前記活性成分を含有する前記マイクロカプセルを単離するステップと、を含み、
前記方法は、前記ポリマーがポリ(β-アミノエステル)であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のモノマーXが、(マルチ)アクリレート、好適には式X’-(-O(C=O)-CH=CHであって、式中、n≧4であり、X’はn個のアクリレート構造の繰返し単位がグラフトされた分子である(マルチ)アクリレートから選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のモノマーXは、
-ジアクリレートと、
-トリアクリレート、特に、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラアクリレート、ペンタアクリレート、ヘキサアクリレート、これらの各種の、RがH又はCOCH=CHであるO[CHC(CHOR)型のアクリレートの混合物と、
-ペンダント型アクリレート基を有するポリマーと、
-例えば、ジアクリレート化合物を官能性の第一級アミン及び/又は官能性の第二級ジアミンと反応させて調製した官能性のオリゴ-PBAEと、
-上記の各種化合物の混合物とから形成された群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のモノマーYは、アミンから選択されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のモノマーYは、
-第一級アミンR-NHと、
-NH(CHNH型の第一級ジアミンであって、式中、nが通常1~20の整数、好適には2又は6の整数である第一級ジアミンと、
-芳香族コア部を有する第一級ジアミン、好適にはメタキシリレンジアミンと、
-第一級(マルチ)アミン、好適にはトリス(2-アミノエチル)アミンと、
-第一級アミン官能基及び第二級アミン官能基を含有する(マルチ)アミン、好適にはテトラエチレンペンタミンと、
-第二級ジアミン、好適にはピペラジンと、
-第一級アミン官能基及び第二級アミン官能基を含有するポリマー、好適にはポリエチレンイミンとにより形成された群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記モノマーの重合は、20~100℃の温度、好適には30~90℃の温度で撹拌しながら行うことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記界面活性剤は、高分子界面活性剤、好適には、ポリアクリレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、任意に一部分がエステル化又はエーテル化されたポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、無水物もしくはカルボン酸機能を有する合成ポリマー、エチレン/無水マレイン酸コポリマーにより形成された群から選択されること、及び前記界面活性剤はさらに好適にはポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記活性成分は、
-精油、香料と、
-インク、塗料、熱変色性及び/又は光互変性物質、染料、接着剤と、
-殺生物効果を有する生成物、殺菌効果を有する生成物、抗ウイルス効果を有する生成物、植物衛生効果を有する生成物、美容効果を有する生成物、製薬活性成分と、
-天然・食用油、植物・食用油、液状アルカン、エステル及び脂肪酸とにより形成された群から選択されることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロカプセルの壁を、前記マイクロカプセルの表面にポリマーの層を堆積させることにより、又は水相及び/もしくは油相にラジカル開始剤を添加することにより、又は水相に前記マイクロカプセルの表面の状態を変化させ得る水溶性アクリレートを添加することにより、変化させることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法で得られるマイクロカプセル。
【請求項11】
いわゆる活性成分を含有し、前記壁はポリ(β-アミノエステル)からなることを特徴とする請求項10に記載のマイクロカプセル。
【請求項12】
平均の直径は、100nm~100μm、好適には1μm~50μm、さらに好適には10μm~40μmであることを特徴とする請求項10又は11に記載のマイクロカプセル。
【請求項13】
前記マイクロカプセル及び/又は前記壁は、「OECDテストガイドライン:易生分解性試験」の方法301FによってManometric Respirometry試験でインキュベーション10日後に測定して、少なくとも80%、好適には少なくとも83%、さらに一層好適には85%の生分解性を示すことを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項14】
「OECDテストガイドライン:易生分解性試験」の方法301FによってManometric Respirometry試験でインキュベーション28日後に測定して、前記マイクロカプセル及び/又は前記壁とは、少なくとも90%、好適には少なくとも95%、さらに一層好適には少なくとも98%の生分解性を示すことを特徴とする請求項10~13のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項15】
前記マイクロカプセルの壁は、ポリマーの層を前記マイクロカプセルの表面に堆積させることにより、又は水相及び/もしくは油相にラジカル開始剤を添加することにより、又は前記水相に前記マイクロカプセルの表面の状態を変化させ得る水溶性アクリレートを添加することにより、変化を受けたことを特徴とする請求項10~14のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、マイクロカプセルの分野、さらに詳細には、精油などの活性成分を封入することを目的としたマイクロカプセルを製造する方法に関するものである。さらに詳細には、本明細書は、生分解性マイクロカプセルを調製する方法に関する。本方法は、ポリ(β-アミノエステル)を生じることになる多官能性化合物の界面重合を行う。本発明はまた、本方法で得られた生分解性マイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセル化は、大きさをナノメートルからマイクロメートルまで変化させ得るカプセルで、反応性物質、感受性物質又は揮発性物質(本明細書では「有効成分」と呼ぶ)を保護する方法である。そこで、カプセルのコア部をその外部環境から壁により隔離する。これによって、その蒸発、放出又は分解を遅延させることができるので、マイクロカプセルを錯体製剤に組み込むか又は生成物に適用してこれらの技術的な効果を利用する多数の用途が存在する。
【0003】
例えば、マイクロカプセルは、含有させた有効成分、特に、殺生物剤、殺虫剤、殺菌剤、又は香料を制御方式に分散させるように使用でき、これは、壁を通した拡散により又は壁を裂く外部の力の影響の下で引き起こすことができる。いくつかの用途において、有効成分の放出は、マイクロカプセルの壁を破る外部の力の影響の下で引き起こされ、こうして、接着剤(例えば、国際公開第03/016369号、Henkelを参照)又は試薬(例えば、国際公開第2009/115671号、Catalyseを参照)を放出できる。
【0004】
さらなる用途において、マイクロカプセルの内容物は、漏れることはないが、温度が変動する影響で色が変化すること(サーモクロミズム)又は紫外線照射の影響で色が変化すること(ホトクロミズム)が、外側から認められる(例えば、国際公開第2013/114025号、Gem Innov、又は国際公開第2007/070118号、Kimberly-Clark、又は欧州特許出願公開第1084860号明細書、The Pilot Ink Co.を参照)。
【0005】
マイクロカプセルを調製する技術がいくつかある。主なものは、スプレードライ法、界面重合方法、液中乾燥法、交互積層(LbL)法を用いたポリマーの自己組織化、及びコロイドソームの調製である。これらすべての方法によって、平均径が10μmの安定したマイクロカプセルを得ることができる。それでも、界面重合法は、壁の強度がマイクロカプセルを隔離するのに十分であるため多数の用途で使用されるマイクロカプセルを単一のステップで迅速に調製できることから、有力な方法である。
【0006】
界面重合によるマイクロカプセルの形成は、通常、4つのステップで実施し、(i)有効成分(例えば、精油)と有機可溶性モノマーとを含有する第1相を調製するステップと、(ii)界面活性剤を含有する水性媒体に第1相を分散させて、第2相に相当するエマルションを形成するステップと、(iii)水溶性モノマーを第2相に添加するステップと、(iv)モノマーを界面で重縮合により反応させて膜を形成し成熟させるステップとで実施する。
【0007】
ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)又はポリウレアなどいくつかのポリマーファミリーが、従来、マイクロカプセルの壁を製造するために使用されている(Perignon, C.ら, Journal of Microencapsulation 2015,32(1),1-15)。PAのマイクロカプセルの壁の調製には、一般的に、ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)のモノマー及び塩化アシル(例えば、セバコイルクロリド)型が使用され、その一方で、PUのマイクロカプセルの壁には、ジイソシアネート(HDI、IPDIなど)のモノマー及びジオール型が利用される。ポリウレアの場合、ジイソシアネート及びジアミン型のモノマー又はジイソシアネートが単独で使用され、界面における加水分解によって、ウレア基の合成を可能にするアミンが生成される。
【0008】
例えば、上に引用した国際公開第2009/115671号は、各種モノマー混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)及びエチレンジアミン、テトラエチルオルトケイ酸塩(TEO)及び3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリル酸塩(MPTS)、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)及び1,3フェニレンジアミン、2,4-トルエンジイソシアネート及び1,3-フェニレンジアミンを用いて、界面を重縮合させてマイクロカプセルの壁を形成することを記載している。
【0009】
他のタイプのポリマーを用いた界面重合法によりマイクロカプセルを調製することを報告する研究もすでにいくつかある。例えば、銅触媒によるアジド-アルキンの付加環化反応によるグリコナノカプセルの調製についてのJ. Bernardによる研究(R. Rouxら, J. ACS Macro Lett. 2012,1(8),1074-1078)、又はそれぞれ基剤及び光開始剤によりチオール-エン反応を開始してマイクロカプセルを調製するK. Landfesterによる研究(Siebertら Chem. Commun. 2012,48,5470-5472)、L.Shiらによる研究(J. Appl. Polym. Sci. 2016,133(36),168-7)及びD. Pattonらによる研究(ACS Appl. Mater. Interfaces 2017,9(4),3288-3293)を挙げることができる。
【0010】
したがって、比較的幅広い範囲のポリマー材料が、当業者に、所定の使用に適切なマイクロカプセルのタイプを選択するように提案されている。よって、マイクロカプセルは、すでに、多数の専門的な用途において使用されているが、潜在的な用途は、まだ十分には認識されておらず、一旦、マイクロカプセルの壁が、毒性及びリサイクル性に関連する厳しさを増す基準に適合すると、現れ出て著しい成長を見込める分野である。
【0011】
それでも、マイクロカプセルは、ポリマー材料の微粒子を代表するものである。数年の間、ポリマー材料の微粒子は、生態系、土壌、水界生態系及び海洋生態系に広く散布され、生態系に投入された場所から遠い場所に到達することから、環境事業の領域とみなされてきた。このように広く散布されることによって、一般に、これらの生態系に存在する生命体に害が及ぶばかりでなく、人間の健康にも有害な影響が及ぶ恐れがある。自然環境においてその場で分解されている間に微粒子を形成し得るプラスチック、特に、直接微粒子の形態で使用されるプラスチックの使用を制限する厳しさを増す規制が、すでに公表されている。
【0012】
環境上の理由から、ポリマー微粒子からなる新規な製品を開発する試みは、矛盾をはらむように思われる場合がある。それゆえ、マイクロカプセルを分解可能なポリマー材料から作製することが望ましいことが分かった。多数の特別な用途に使用され、一般的な用途(布地材料、化粧品又は植物検疫製品など)又は技術的な用途(塗料、ニス、インクなど)で多数の製品に投入可能なマイクロカプセルは、通常、生産が終了されても回収対象とはならないので、回収されたプラスチック製品について想定できるようにコンポスト化により生分解されることは不可能であることに留意する。よって、マイクロカプセルの壁を形成するプラスチックの分解性は、コンポスト化中に起こる化学的メカニズムに基づくものにはなり得ない。これに関連して、マイクロカプセルの分解性に生物学的メカニズムが必要か否かについての疑問は、さほど重要ではなく、重要なことは、生態系における分解性の方であって、この分解の化学的メカニズムとは関係ない。例えば、発酵は、生分解であり、その一方で、生態系における光の作用下の単純な分解は、生態系とは別の光化学反応だが、実際には、その状態は、特に分解が複数の段階で起こる場合、組み合わされることが多くなる。以後の「(生)分解可能な」という表現は、自然環境の特性と、この自然環境に存在する種々の化学物質へ材料が曝露されることとに応じて、比較的短い間隔(数週間単位又は年単位)のこの自然環境における材料の分解特性を指すために用いるものである。
【0013】
これまでに開発されたすべてのマイクロカプセルは、二官能性化合物の反応の場合物理的に結合するか又は1つ以上の多官能性化合物(官能性≧3)の場合架橋してポリマー鎖(ポリアミド、ポリウレア、ポリウレタンなど)が調製されることが確認されている。いずれにせよ、壁は、ポリマー鎖の性質により(生)分解不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第03/016369号
【特許文献2】国際公開第2009/115671号
【特許文献3】国際公開第2013/114025号
【特許文献4】国際公開第2007/070118号
【特許文献5】欧州特許出願公開第1084860号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Perignon,C.ら, Journal of Microencapsulation 2015,32(1),1-15
【非特許文献2】J.Bernardによる研究(R. Rouxら, J. ACS Macro Lett.2012,1(8),1074-1078)
【非特許文献3】K.Landfesterによる研究(Siebertら Chem. Commun.2012,48,5470-5472)
【非特許文献4】L.Shiら,J. Appl. Polym. Sci.2016,133(36),168-7
【非特許文献5】D.Pattonら,ACS Appl. Mater. Interfaces 2017,9(4),3288-3293
【非特許文献6】E.M.Hodnett及びD.A.Holmer, J Polym Sci,1962,58,1415-21
【非特許文献7】W.Eareckson, J Polym Sci,1959,399-406
【非特許文献8】P.W.Morgan及びS.L.Kwolek, J Polym Sci,1959,299-327
【非特許文献9】Lynn,D.M.;Langer,R.J. Am. Chem. Soc.2000,122(44),10761-10768
【非特許文献10】Liu,Y.;Li,Y.;Keskin,D.; Shi,L. Adv. Healthcare Mater.2018,2(2),1801359-24
【非特許文献11】Brey,D.M.; Erickson,I.;Burdick,J. A.J. Biomed. Mater. Res.2008,85A(3),731-741.7
【非特許文献12】Nayakらによる論文 Polymer-Plastics Technology and Engineering,2018,57,7,625-656
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が取り組む課題は、新規なタイプのマイクロカプセルであって、毒性のある原料及び/又は高価な原料を使用することなく、合成が容易であり、自然環境において(生)分解可能であり、多数の有効成分とともに用いることができ、含有予定の有効成分の外部からの十分な保護を提供する新規なタイプのマイクロカプセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、研究作業中に、その(生)分解性で知られるポリマーであるポリエステルからなる壁を調製することになる分解可能なマイクロカプセルを得る一つの可能性を発見した。文献は、このテーマについて研究がすでに行われており、酸塩化物とジオールとの間の反応速度が非常に緩やかであることが立証されていることを示している。この系は、よって、界面重合には不適切である(E.M.Hodnett及びD.A.Holmer, J Polym Sci, 1962,58,1415-21を参照)。ジオールとしてのビスフェノールAの使用及び/又は非常に大きいpHでの反応などの特定の条件によって、マイクロカプセルを得ることができるが(W.Eareckson, J Polym Sci,1959,399-406を参照。P.W.Morgan及びS.L.Kwolek, J Polym Sci,1959,299-327も参照)、これらの条件は、多数の内相及び/又は用途にとって制限が大きい。さらに、重合反応の緩やかな速度は、経済の面及び短期もしくは連続した製造サイクルの面で産業用途の妨げとなる。
【0018】
よって、本発明者らは、この方法を追究しなかった。
【0019】
本発明によれば、課題は、ポリ(β-アミノ)エステル(本明細書ではPBAEと略す)からなるマイクロカプセルを使用して、解決される。本発明によれば、これらのマイクロカプセルは、界面重合法によって、アミン官能基とアクリレート官能基との付加反応(「マイケル付加」として知られる反応)を介した単一の反応ステップで合成する。この反応によって、副生成物が形成されることなく、有機相がマイクロカプセル化されることになる(図6の反応図を参照)。エステル基がPBAEの骨格に存在することによって、加水分解を介してポリマーの分解特性が良好となる。
【0020】
ポリ(β-アミノエステル)は、それ自体は知られており、その生体適合性及び生分解性特性から、近年実質的に使用されてきたものであり(Lynn,D.M.;Langer,R.J. Am. Chem. Soc.2000,122(44),10761-10768;Liu,Y.;Li,Y.;Keskin,D.;Shi,L. Adv. Healthcare Mater.2018,2(2),1801359-24)、今や、生体適合材料として多数の用途を有する一群の材料を代表するものである(例えば、抗がん剤ベクターとして、抗菌材料として、また組織工学用に)。
【0021】
ポリ(β-アミノエステル)の用途の領域は、非常に広範囲である(図9を参照)。
【0022】
一般に、アザマイケル付加型の反応は、ハロゲン化された無極性溶媒(例えば、ジクロロメタン又はクロロホルム)から、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性溶媒まで広範囲の溶媒において起こすことができることが知られている(Liu,Y.;Li,Y.;Keskin,D.;Shi,L. Adv. Healthcare Mater.2018,2(2),1801359-24)。実際には、PBAEは、基本的には、溶液で調製され、その後、例えば、ミセル、粒子、ゲル剤/ヒドロゲル剤又は薄膜を生成するように調合される(いわゆる交互積層法)。オリゴ-PBAEはまた、光重合により(Brey,D.M.;Erickson,I.;Burdick,J.A.J. Biomed. Mater. Res.2008,85A(3),731-741.7)又はジイソシアネートの存在下で、第2相において架橋されてきた。
【0023】
直鎖状の又は架橋されたPBAEが中性媒体において比較的安定的であるが、酸及び/又は塩基性pHでのエステル基の加水分解によりさらに急速に分解されることもまた知られている。この加水分解の現象によって、直鎖状のPBAEを使用した場合、ビス(β-アミノ酸)及びジオールなどの小分子が遊離されることになり、これらの分子は、哺乳類細胞に対して非毒性であり健康な細胞の代謝への影響が少ないことが知られている。
【0024】
本発明の本質的な特徴によれば、PBAEの壁を有するマイクロカプセルは、界面重合法により合成される。
【0025】
さらに詳細には、本発明によれば、課題は、アミン基とアクリレート基との間のマイケル重縮合反応を用いて、界面重合によりポリ(β-アミノエステル)(PBAE)を得る方法により解決される。本発明者らは、カプセル化対象の種々の有効成分に適用可能なこの方法によって、乾燥により単離可能であるとともに(生)分解可能という特性を有する安定したマイクロカプセルを調製可能であることを発見した。
【0026】
本発明によるマイクロカプセル化方法は、以下のステップを含む。
(a)カプセル化対象の(適用可能な場合有効成分を含む)相を形成する有機溶液(本明細書ではエマルションに関連して「油相」とも呼ぶ)に少なくとも2つのアクリレート基を有する1つ以上の化合物を分散させるステップと、
(b)前記溶液容量を超える容量で1つ以上の界面活性剤を含む水相を添加して乳化させるステップと、
(c)ステップ(b)において得た、少なくとも1つの第一級アミン基及び/又は2つの第二級アミン基を含む1つ以上の化合物のエマルションを添加して、約20~100℃の温度で重合反応させるステップと、
(d)マイクロカプセルを捕集、洗浄及び乾燥させるステップとを含む方法。
【0027】
よって、本発明は、まず、いわゆる活性成分を含有するマイクロカプセルを製造する方法に関し、当該方法において、
-界面活性剤の水溶液と、前記活性成分及び少なくとも第1のモノマーXを含む油相と、少なくとも第2のモノマーYを含む極性相とを準備するステップと、
-前記油相を前記界面活性剤の水溶液に添加することによりO/W型エマルションを調製するステップと、
-前記モノマーXと前記モノマーYとを重合させてポリマーを得るために、前記極性相を前記O/Wエマルションに添加するステップと、
-この反応混合物から、前記ポリマーにより形成された壁を含み前記活性成分を含有する前記マイクロカプセルを単離するステップと、を含み、
前記方法は、前記ポリマーがポリ(β-アミノエステル)であることを特徴とする方法。
【0028】
前記第1のモノマーXが、(マルチ)アクリレート、特に、式X’-(-O(C=O)-CH=CHであって、式中、n≧2であり、X’はn個のアクリレート構造繰返し単位がグラフトされた分子である式の(マルチ)アクリレートから選択される。
【0029】
前記第1のモノマーXは、好適には、式X’-(-O(C=O)-CH=CHであって、式中、n≧4であり、X’はn個のアクリレート構造繰返し単位がグラフトされた分子である式の(マルチ)アクリレートから選択される。さらに詳細には、第1のモノマーは、以下により形成された群から選択されることが有利である。
-ジアクリレート、好適には、Nayakらによる論文(Polymer-Plastics Technology and Engineering,2018,57,7,625-656)に記載のジアクリレートと、
-トリアクリレート、特に、C1520(CAS番号15625-89-5、すなわち、トリメチロールプロパントリアクリレート)、テトラアクリレート、ペンタアクリレート、ヘキサアクリレート、これら各種の、RがH又はCOCH=CHであるO[CHC(CHOR)型のアクリレートの混合物と、
-Nayakらによる論文(Polymer-Plastics Technology and Engineering,2018,57,7,625-656)に記載の(マルチ)アクリレートと、
-ペンダント型アクリレート基を有するポリマーと、
-例えば、ジアクリレート化合物を官能性の第一級アミン及び/又は官能性の第二級ジアミンと反応させて調製した官能性のオリゴ-PBAEと、
-上記の各種化合物の混合物と、から形成された群から選択されることが有利である。
【0030】
前記第2のモノマーYは、アミンから選択される。さらに詳細には、第2のモノマーYは、
-第一級アミンR-NHと、
-NH(CHNH型の第一級ジアミンであって、式中、nが通常1~20の整数、好適には2又は6の整数である第一級ジアミンと、
-メタキシリレンジアミンなど芳香族コア部を含む第二級ジアミンと、
-トリス(2-アミノエチル)アミンなどの第一級(マルチ)アミンと、
-ピペラジンなどの第二級ジアミンと、
-テトラエチレンペンタミンなど第一級アミン官能基及び第二級アミン官能基を含有する(マルチ)アミンと、
-ポリエチレンイミンなど第一級アミン官能基及び第二級アミン官能基を含有するポリマーとにより形成された群から選択されることが有利である。
【0031】
一実施形態では、前記モノマーの重合は、20~100℃、好適には、30~90℃の温度で撹拌しながら行った。
【0032】
本発明は、さらに、その壁がポリ(β-アミノエステル)からなることを特徴とする、いわゆる活性成分を含有するマイクロカプセルに関する。
【0033】
本発明は、さらに、本発明による方法で得ることができるマイクロカプセルに関する。
【0034】
このように調製されたマイクロカプセルの壁を、ポリマー層をマイクロカプセルの表面に堆積させて追加することにより変化させることができる。この堆積は、カプセルの表面に堆積されることになるポリマーを水相に分散させて添加することにより行い得る。これらのポリマーの中から、多糖類(例えば、セルロース、デンプン、アルギン酸、キトサンなど)及びそれらの誘導体を挙げることができる。
【0035】
マイクロカプセルの壁を変化させる別の可能性は、ラジカル開始剤を水相又は油相のいずれかに添加することにより変化させることである。最後の可能性は、残留する表面のアミン基を水溶性の単官能アクリレートと反応させて、マイクロカプセルの表面の状態を変化させることである。
【0036】
[図面]
図1~18は、本発明の特定の態様を図示するが、その範囲を限定するものではない。図2~5は、実施例1に関連する。図7は実施例2に関連し、図8は実施例3に関連し、図8は実施例3に関連し、図10は実施例6に関連し、図11は実施例7に関連し、図12は実施例10に関連し、図13は実施例11に関連し、図14は実施例13に関連し、図15は実施例14に関連し、図16は実施例15に関連し、図17は実施例17に関連し、図18は実施例18に関連する。図2~5及び図10~14は、光学顕微鏡写真であり、画像の底部左の水平バーは、50μmの長さを表している。図17及び図18もまた、光学顕微鏡写真である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明に係る方法の概要図を示す。4桁の参照番号は、本方法のステップを表示する。
図2図2は、実施例1により得たマイクロカプセルの反応5時間後の光学顕微鏡写真を示す。
図3図3は、反応6時間後のスラリー中で単離されたマイクロカプセルの壁のフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルを示す。
図4図4は、実施例1により得たマイクロカプセルをガラスストリップ上で乾燥した後の光学顕微鏡写真を示す。
図5図5は、実施例1により得たマイクロカプセルをガラスストリップ上で乾燥した後の2つの光学顕微鏡写真を示す。左の顕微鏡写真は、斜入射光において得たもので、右の顕微鏡写真は、蛍光色素を数滴添加した後蛍光下で得たものである。
図6図6は、本発明に係る反応の反応図を示す。
図7図7は、熱変色性のマイクロカプセルが30分乾燥器にかけた後安定したこと、及び熱変色機能が保護されることを示す。
図8図8は、加速劣化試験によるマイクロカプセルの壁の分解性を図示したものである。
図9図9は、ポリ(β-アミノエステル)の各種適用分野を図示したものである。
図10図10は、マイクロカプセルが24時間後安定し、その平均径が10μm~30μmであることを示す。
図11図11は、別の実施例について、図10と同様の画像を示し、同一の結論を導くものである。
図12図12は、ノーカーボン紙における本発明に係るマイクロカプセルの使用結果を示す。
図13図13は、本発明の別の実施例に係るマイクロカプセルの写真を示す。
図14図14は、本発明の別の実施例に係るマイクロカプセルの写真を示す。
図15図15は、本発明に係るドライマイクロカプセルに対する時間の関数としての生分解率を示すものである。
図16図16は、本発明に係るマイクロカプセルの壁に対する時間の関数としての生分解率を示すものである。
図17図17は、本発明の別の実施例に係るマイクロカプセルの写真を示す。
図18図18は、本発明に係るマイクロカプセルと接触させて配置した綿繊維の、表面を変化させたもの(b)又は変化させていないもの(a)の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書の実施形態の以下の詳細な説明において、本発明の理解がさらに深まり、当業者が本発明を実施できるように、多数の特定の詳細を開示する。しかしながら、これらの特定の詳細がなくとも本明細書を実施可能であることは、当業者に自明であろう。他の場合、周知の特徴は、過度な負担のかかる説明を回避するために詳細には記載していない。
【0039】
図1は、本発明に係る方法の概要図を示すものである。界面活性剤の溶液(1000)を調製した。カプセル化対象の相を含む(いわゆる活性成分を含む)有機溶液(「油相」としても知られる)とモノマーXも、調製する(1002)。ステップ1010において、有機溶液であるこの油相1002を、前記水溶液1000に添加し、ステップ1020において、O/W(当業者に知られている用語によれば、水中油)型エマルション1022を得る。このエマルションにおいて、前記有機溶液は、いわゆる油相(O相)である。ステップ1030において、モノマーYの水溶液1024を前記エマルション1022に添加する。ステップ1040において、重合反応によって、反応混合物1042が生成され、当該反応混合物から、ステップ1050において、スラリーとして知られる異種混合物1052が形成され、当該異種混合物は、水溶性基剤に懸濁された、カプセル化対象の相を含有するマイクロカプセルを含む。
【0040】
ステップ1050では、一般に、反応混合物1042の温度を約20℃を超える温度にする必要があり、通常20~100℃が必要である。約30~90℃の温度が、好適であり、さらに好適には、約40~80℃である。
【0041】
本方法は、各種モノマーX及びYに適用できる。本発明によれば、モノマーXは、(マルチ)アクリレートであり、モノマーYは、アミン、好適には、第一級アミン及び/もしくは第一級(マルチ)アミン、及び/又は第二級ジアミン、及び/又は第一級アミン及び第二級アミンを有する化合物である。
【0042】
(マルチ)アクリレートという用語は、式X’-(-O(C=O)-CH=CHの任意の化合物であって、式中n≧2であり、X’はn個のアクリレートの構造単位がグラフト化した分子である任意の化合物を指す。
【0043】
第一級(マルチ)アミンという用語は、少なくとも2つの第一級アミン基を含む任意の化合物を指す。
【0044】
アクリレートとして、例えば、トリアクリレート(C15O、CAS番号15625-89-5など)、テトラアクリレート、ペンタアクリレート、ヘキサアクリレート、列挙したこれらの各種アクリレートの混合物を使用できる。例えば、O[CHC(CHOR)型の分子であって、式中、RはH又はCOCH=CHであり得るO[CHC(CHOR)型の分子を使用できる。
【0045】
アミンとして、例えば、NH(CHNH型の分子であって、式中、nは、通常1~20の整数であり、例えば、2(エチレンジアミン)又は6(ヘキサメチレンジアミン、CAS番号124-09-4)であり得る分子を使用できる。ピペラジン、メタキシリレンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)又はポリエチレンイミン(PEI)を使用することもできる。
【0046】
アミン及びアクリレートの性質および濃度は、変動させることができる。
【0047】
モノマーY(-NH)とモノマーX(アクリレート)との試薬の官能基比は、有利には、1を超え、通常1~5であり、好適には、1.2~3.8である。
【0048】
本発明の特定の実施形態によれば、モノマーX(アクリレート)及び/又はモノマーY(アミン)をバイオソース化する(biosourced)。
【0049】
図6は、第二級アミンとアクリレートとのアザマイケル付加反応(反応(a))と、架橋ポリマーを生成する、多官能性アクリレート化合物とマルチアミン化合物との重付加反応(反応(b))の反応図を示す。
【0050】
マイクロカプセルの有機コア部は、活性成分を含む有機相からなり得る。マイクロカプセルの形成中、この有機(油)相は、マイクロカプセルのポリマーの壁により囲まれ、当該壁が、環境から有機(油)相を保護する。前記有機(油)相は、前記活性成分からなり得るか、又は前記活性成分は、前記有機(油)相の一部であり得、有機(油)相は、特に溶解させ得る。「活性成分」という表現は、本明細書では、マイクロカプセルを使用する特定の目的を指し、一般に、マイクロカプセル製品の特異性という観点で、この目的は製造中常に認識されている。
【0051】
活性成分は、特に、例えば、精油、天然・食用油、植物・食用油、液状アルカン、エステル及び脂肪酸などの(純粋な又は他の分子を溶液に又は分散させて含有する)油から、又は染料、インク、塗料、熱変色性物質及び/又は光互変性物質、香料、殺生物効果を有する生成物、殺菌効果を有する生成物、抗ウイルス効果を有する生成物、植物衛生効果を有する生成物、製薬活性成分、美容効果を有する生成物、接着剤などから選択可能であり、これらの活性成分は、任意に、有機ベクターの存在下にある。
【0052】
非限定的ではあるが、ユーカリ、シトロネラ、ラベンダー、ミント、シナモン、カンファー、アニス、レモン、オレンジの精油などの天然生成物の蒸留抽出物を使用することができ、当該蒸留抽出物は、植物からの抽出又は合成により得ることができる。
【0053】
溶液に親油性溶液を含有し得る長鎖アルカン(例えば、テトラデカン)など他の物質を使用することもできる。
【0054】
一般に、マイクロカプセルに求められる機能によれば、任意の疎水性化合物を使用でき、当該疎水性化合物は、よって、自然に、水相に懸濁した疎水性液滴のエマルションの形態で分散されることになる。
【0055】
カプセル化対象の有機(油)相を赤外線放射、紫外線放射、特定のガスの不用意な流入又は酸化から十分保護できる多数の添加剤を、マイクロカプセルに組み込むことができる。
【0056】
マイクロカプセルの壁を、表面にコーティングを追加することにより変化させることができる。この堆積は、カプセルの表面に堆積されることになるポリマーを水相に分散させて添加することにより行い得る。これらのポリマーについて、多糖類(セルロース、デンプン、アルギン酸、キトサンなど)及びそれらの誘導体を挙げることができる。この添加は、界面重合ステップの最後に高温又は室温で実施できる。
【0057】
マイクロカプセルの壁を、ラジカル開始剤を水相又は有機(油)相のいずれかに添加することにより変化させることもできる。有機相における添加は、PBAE壁を調製する前及び/又は後に実行可能である。後の方で添加する場合、ラジカル開始剤をアセトンで希釈して、マイクロカプセル内での輸送を促進することができる。これらの開始剤は、(アゾビスイソブチロニトリル及びその誘導体などの)アゾ化合物又は過酸化化合物(過酸化ラウロイルなど)とすることができる。水相に添加する開始剤の場合、開始剤は、特に、水溶性のアゾ化合物(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩など)の酸化還元系(例えば、過硫酸アンモニウム又は過硫酸カリウムと、ピロ亜硫酸カリウムとの組み合わせ)からなるものとすることができる。不活性雰囲気下では、ラジカル開始剤の分解によるラジカルが、PBAE壁の残留アクリレート基に付加され、壁を機械的に補強しかつ/又はその極性を調整することができる。
【0058】
マイクロカプセルの壁を調整する他の方法は、残留する表面のアミン基を水溶性単官能アクリレートと反応させることである。この仮説に縛られるわけではないが、本発明者らは、マイケル付加を介して、アミノ-エステル結合が、形成され表面に官能基を固定するであろうと考えている。使用に適する水溶性アクリレートとしては、アクリル酸、アクリル酸2-カルボキシエチル、アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、アクリル酸3-スルホプロピルカリウム塩を挙げることができる。
【0059】
界面活性剤としては、特に、(HLB系による)親水親油平衡が特に10又はそれを超える、Encyclopedia of Chemical Technology,第8巻,912~915頁に引用されているものを使用することができる。
【0060】
他の高分子界面活性剤も使用できる。例えば、ポリアクリレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、任意に一部分がエステル化又はエーテル化されたポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、又はエチレン/無水マレイン酸コポリマーなど無水物もしくはカルボン酸の機能を有する合成ポリマーを挙げることができる。好適には、ポリビニルアルコールを界面活性剤として使用することができる。
【0061】
例えば、セルロース化合物の水溶液の場合、セルロース化合物の溶解を促進するために、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性水酸化物を少量添加する必要がある場合があり、このようなセルロース生成物はまた、例えば、直接、ナトリウム塩の形態で用いることもできる。プルロニック(登録商標)タイプの両親媒性コポリマーも使用できる。界面活性剤を0.1~5重量%含有する水溶液を使用するのが、一般的である。
【0062】
液滴の大きさは、界面活性剤の性質及び濃度、撹拌速度に依存し、後者は、平均液滴直径を小さくすることが求められる点で、特に高速が選択される。
【0063】
一般に、エマルション調製中の撹拌速度は、5000~10,000rpmである。エマルションは、通常、15~95℃の温度で調製される。
【0064】
一般に、エマルションを得たら、回転翼の撹拌を停止し、エマルションを、一般的なタイプの低速撹拌機、例えば、フレーム撹拌機(frame stirrer)タイプのものを使用して、通常150~1500rpmの速度で撹拌する。
【0065】
したがって、本発明に係る方法によって、導入した充填剤によれば、一般的に20~80重量%の、平均直径が100nm~100μmのマイクロカプセルを含有する均一な流体の懸濁液が生成される。マイクロカプセルの直径は、好適には1~50μm、さらに好適には10~40μmとすることができる。
【0066】
マイクロカプセル及び特にその壁は、本発明によれば、(生)分解可能である。生分解性は、例えば、文献「OECDテストガイドライン:生物分解性」(OECD理事会が1992年7月17日に採択)に記載の方法の1つにより決定され得る。Manometric Respirometry試験(301Fの方法)を用いることができるのが好適である。好適には、この試験は、マイクロカプセルの内容物の生分解が、マイクロカプセルの壁を形成する材料の生分解の特性を明らかにすることを目的とした試験の妨げにならないように、空にして洗浄したマイクロカプセルにおいて用いられる。好適には、本発明に係るマイクロカプセル及び/又はその壁は、前記方法301Fを用いて、インキュベーションの10日後に測定して、少なくとも80%、好適には少なくとも83%、さらに好適には85%が生分解されたことを示す。同じ方法で、インキュベーションの28日後、本発明に係るマイクロカプセルは、少なくとも90%、好適には少なくとも95%、さらに好適には少なくとも 98%が生分解されたことを示すことが好適である。
【実施例
【0067】
当業者が本発明を再現することができるように、実施例を本明細書に示すが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0068】
[実施例1]ジアミン(HMDA)ベースの香料マイクロカプセル
(i)エマルションの調製
精油(ユーカリ)11.0gをビーカーに入れ、マルチ-アクリレートモノマー(ジペンタエリスリトール ペンタ-/ヘキサ-アクリレート混合物)(0.39g、0.71mmol)を精油に磁気撹拌しながら(350rpm)分散させた。撹拌は、溶液が均一になるまで継続し、加温ステップを必要に応じて追加した。精油/有機モノマーの会合体を、予め調製した界面活性剤の溶液(40g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA(登録商標) T10を使用して9500rpmで3分間室温でホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0069】
(ii)マイクロカプセル化
二重壁リアクタにおいて、IKA 羽根機械式撹拌機を備え付け、50℃に予熱し、予め調製したエマルションを導入し250rpmの速度で撹拌した。エマルションが50℃に達すると、ジアミン(ヘキサメチレンジアミン HMDA)溶液(0.17g、1.46mmol)を2重量%のPVA溶液5gにシリンジを使用して撹拌しながら(250rpm)滴下した。反応中、各種反応時間における試料を、取り出し、マイクロカプセルの形成をモニターするために、光学顕微鏡法及びフーリエ変換赤外分光(FTIR)分光法により分析した。
【0070】
使用したモノマーの総量は、0.56gまでである。-NH/アクリレートの官能基比=1.6を得られるように、アミンをアクリレートモノマーより過剰に使用した。精油/水の質量比は、0.24と等しい。
【0071】
マイクロカプセルは、乾燥ステップの後顕微鏡法により分析できる。この分析によって、一旦単離されたマイクロカプセルの安定性を保証できる。第2の分析は、乾燥させたマイクロカプセルに蛍光色素(ナイルレッド)をある程度液滴することからなる。ナイルレッドは、有機相において蛍光のみを発する親水性発色団であって、それによって、マイクロカプセルのコア部がなお有機相を含有しマイクロカプセルが充填されていることを立証できる。
【0072】
図2は、反応5時間後の反応媒体の光学顕微鏡画像を示すものである。マイクロカプセルは球状であり、直径は約10~25μmである。図3は、反応6時間後に(アセトンで洗浄し、3つの遠心分離サイクルと乾燥器による乾燥とを行ってから)スラリーから単離されたマイクロカプセルのFTIRスペクトルを示すものである。N-H結合の特徴的な振動が、およそ3300cm-1~3400cm-1と観察され、それとともに、C=O結合の狭帯域特性は、およそ1727cm-1である。
【0073】
図4は、ガラスストリップ上の乾燥したマイクロカプセルの光学顕微鏡写真を示す。その直径は、およそ30~35μmである。図5は、ナイルレッドの蛍光色素を数滴追加した後の斜入射光(左)と蛍光(右)とにおけるガラスストリップ上の乾燥したマイクロカプセルの顕微鏡写真を示す。蛍光の強い放射は、マイクロカプセルのコア部が有機相を含有することを示すものである。
【0074】
[実施例2]ジアミン(HMDA)ベースの香料マイクロカプセルの調製
(i)エマルションの調製
熱変色性溶液(10°青色)11.0gをビーカーに入れ、オイルバスに配置し、磁気撹拌しながら(350rpm)130℃に加熱した。撹拌は、熱変色性溶液が均一になり透明になるまで継続した。熱変色性溶液を冷却し、その温度が50℃に達したら、(マルチ)アクリレートモノマー(ジペンタエリスリトール ペンター/ヘキサ-アクリレート混合物)(0.39g、0.71mmol)を、磁気撹拌しながら(350rpm)分散させる。撹拌は、溶液が均一になるまで継続する。熱変色性/有機モノマー会合体を、予め調製した界面活性剤の水溶液(40g、2重量%のPVA)に徐々に添加して、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用して9500rpmで3分間室温でホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0075】
(ii)マイクロカプセル化
二重壁リアクタにおいて、IKA 羽根機械式撹拌機を備え付け、50℃に予熱し、予め調製したエマルションを導入し250rpmの速度で撹拌した。エマルションが50℃に達すると、ジアミン(ヘキサメチレンジアミン HMDA)溶液(0.17g、1.46mmol)を2重量%のPVA溶液5gにシリンジを使用して撹拌しながら(250rpm)滴下した。反応中に、各種反応時間における試料を取り出し光学顕微鏡法により分析した。
【0076】
使用したモノマーの総量は、0.56gまでである。-NH/アクリレートの官能基比=1.6を得られるように、アミンをアクリレートモノマーより過剰に使用した。熱変色性溶液/水の質量比は、0.24と等しい。
【0077】
乾燥したマイクロカプセルは、10℃で可逆的な呈色変化を伴う可逆的な変色を示す。これらの同一のカプセルは、さらに、熱変色特性を変化させることなく、乾燥器内において130℃で30分間加温できる(図7)。
【0078】
[実施例3]ポリ(β-アミノエステル)分解度試験
第1の分解度試験を以下の手順により実施した。
(1)ポリ(β-アミノエステル)の合成
ビーカーにおいて、ヘキサメチレンジアミンHMDAモノマー(1.0g、8.6mmol)を、THF(4.0g)に可溶化し、THF2.5gに可溶化した(マルチ)アクリレート(トリメチロールプロパントリアクリレート)モノマーの溶液(1.8g、6.1mmol)に添加した。混合物をピルボックスに配置し、その後、50℃のオイルバスに配置した。
【0079】
-NH/アクリレートの官能基比=2を得られるように、アミンをアクリレートモノマーより過剰に使用した。
【0080】
反応5時間後抽出したポリマーを、アセトンで3回洗浄し乾燥器で乾燥した。
【0081】
(2)ポリ(β-アミノエステル)の分解
ポリ(β-アミノエステル)の分解を以下のプロトコルにより実施した。
水酸化ナトリウム溶液1mLで可溶化したポリマー20mg(3M、重水DO、pH~14)を、磁気撹拌機を備え付けたフラスコに入れる。ポリマーは、架橋すると水相に溶解しなくなる。
【0082】
図8は、ポリ(β-アミノエステル)が水相に溶解し、ポリマーがこのように分解が加速された状態で効果的に分解されることを特徴とすることを示す。
【0083】
[実施例4]トリアミン(TREN)ベースの香料マイクロカプセルの調製
(i)エマルションの調製
精油(ユーカリ)11.0gをビーカーに入れ、マルチ-アクリレートモノマー(ジペンタエリスリトール ペンター/ヘキサ-アクリレート混合物)(0.39g、0.74mmol)を精油に撹拌しながら分散させた。精油/有機モノマーの会合体を、予め調製した界面活性剤の溶液(40g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用してホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0084】
(ii)マイクロカプセル化
二重壁リアクタに、IKA羽根機械式撹拌機を備え付け、予め調製したエマルションを導入した。2重量%のPVA溶液5gにトリス(2-アミノエチル)アミン TRENの水溶液(0.145g、0.99mmol)を、50~60℃の温度で撹拌しながら添加した。
【0085】
[実施例5]トリアミン(TREN)ベースの熱変色性マイクロカプセルの調製
(i)エマルションの調製
熱変色性溶液11.0gをビーカーに入れ、加温して撹拌し、マルチ-アクリレートモノマー(ジペンタエリスリトール ペンター/ヘキサ-アクリレート混合物)(0.39g、0.74mmol)を撹拌しながら分散させた。熱変色性/有機モノマーの会合体を、予め調製した界面活性剤の水溶液(40g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用してホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0086】
(ii)マイクロカプセル化
二重壁リアクタに、IKA羽根機械式撹拌機を備え付け、予め調製したエマルションを約50~60℃で導入した。2重量%のPVA溶液5gにトリス(2-アミノエチル)アミン TREN(0.145g、0.99mmol)の水溶液を、50~80℃の温度で撹拌しながら添加した。
【0087】
[実施例6]生体モノマーベースのマイクロカプセル調製
(i)エマルションの調製
精油(ユーカリ)11.0gをビーカーに入れ、マルチ-アクリレートモノマー(ジペンタエリスリトール ペンター/ヘキサ-アクリレート混合物)(0.39g、0.74mmol)を精油に撹拌しながら分散させた。精油/有機モノマーの会合体を、予め調製した界面活性剤の水溶液(40g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用してホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0088】
(ii)マイクロカプセル化
二重壁リアクタに、IKA羽根機械式撹拌機を備え付け、予め調製したエマルションを導入して、ジアミンの水溶液(ブタン-1,4-ジアミン(プトレシン))(0.13g、1.47mmol)を2重量%のPVA5gに50~60℃の温度で撹拌しながら添加した。
【0089】
図10は、反応24時間後のカプセルの光学顕微鏡画像を示す。マイクロカプセルは、球状であり、平均径は約10~30μmである。
【0090】
[実施例7]ポリエチレンイミン(PEI)ベースのマイクロカプセルの調製
(i)エマルションの調製
精油(ユーカリ)11.0gをビーカーに入れ、マルチ-アクリレートモノマー(ジペンタエリスリトール ペンター/ヘキサアクリレート混合物)(0.39g、0.74mmol)を精油に撹拌しながら分散させた。精油/有機モノマーの会合体を、予め調製した界面活性剤の水溶液(40g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用してホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0091】
(ii)マイクロカプセル化
二重壁リアクタに、IKA羽根機械式撹拌機を備え付け、予め調製したエマルションを導入した。ポリエチレンイミン(PEI)溶液(1.78g、1.48mmol)を2重量%のPVA溶液5gに50~60℃の温度で撹拌しながら添加した。
【0092】
図11は、反応24時間後のカプセルの光学顕微鏡画像を示す。マイクロカプセルは球状であり、平均径は約10~30μmである。
【0093】
[実施例8]香料マイクロカプセルの調製(シェル/PI比=3.4%)
(i)エマルションの調製
精油(ユーカリ)193.6gをビーカーに入れ、マルチ-アクリレートモノマー(ジペンタエリスリトール ペンター/ヘキサ-アクリレート混合物)(4.5g、8.5mmol)を精油に撹拌しながら分散させた。精油/有機モノマーの会合体を、予め調製した界面活性剤の水溶液(255.9g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用してホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0094】
(ii)マイクロカプセル化
二重壁リアクタに、IKA羽根機械式撹拌機を備え付け、予め調製したエマルションを導入した。ジアミン(ヘキサメチレンジアミン HMDA)溶液(2.01g、17.2mmol)を2重量%のPVA溶液44.1gに、50~60℃の温度で撹拌しながら添加した。全体を、反応するように50℃で2時間、60℃で5時間置いた。
【0095】
[実施例9]香料マイクロカプセルの調製
(i)エマルションの調製
パイナップル・パパイヤ香料(フランス国アローシュのTechnicoflor社製 整理番号RS42370)80%と、ミリスチン酸メチル20%との混合物11.0gを、ビーカーに入れ、マルチーアクリレートモノマー(ジペンタエリスリトール ペンター/ヘキサ-アクリレート混合物)(0.39g、0.74mmol)を香料に撹拌しながら分散させた。精油/有機モノマーの会合体を、予め調製した界面活性剤の水溶液(40g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用してホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0096】
(ii)マイクロカプセル化
二重壁リアクタに、IKA羽根機械式撹拌機を備え付け、予め調製したエマルションを導入した。ジアミン(ヘキサメチレンジアミン HMDA)溶液(0.17g、1.49mmol)を2重量%のPVA5gの溶液に、50~60℃の温度で撹拌しながら添加した。全体を、反応するように50℃で2時間、60℃で5時間置いた。
【0097】
[実施例10]ノーカーボンコピー用紙用マイクロカプセルの調製(シェル/PI比=3.4%)
(i)エマルションの調製
内相(染料)193.6gをビーカーに入れ、マルチ-アクリレートモノマー(ジペンタエリスリトール ペンター/ヘキサ-アクリレート混合物)(4.5g、8.5mmol)を内相に撹拌しながら分散させた。全体を、予め調製した界面活性剤の溶液(255.9g 2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物をホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0098】
(ii)マイクロカプセル化
二重壁リアクタに、IKA羽根機械式撹拌機を備え付け、予め調製したエマルションを導入した。ジアミン(ヘキサメチレンジアミン HMDA)の水溶液を50~60℃の温度で撹拌しながら添加した。
【0099】
(iii)ノーカーボンコピー用紙におけるマイクロカプセルの使用
これらのマイクロカプセルを、既知の方法により用紙に適用し、ノーカーボンコピー装置において使用した。図12は、結果を示し、それは十分満足のいくものだった。
【0100】
[実施例11]POSS@オクタ(アクリレート)モノマーベースの熱変色性マイクロカプセルの調製
(i)エマルションの調製
熱変色性で、8つのアクリレート官能基により生成されたポリオクタヘドラルシルセスキオキサン(POSS@オクタ(アクリレート)、CAS番号1620202-27-8、Hydridplastics社から購入、1.48g、1.12mmol)と、熱阻害剤であるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、5.0mg)20.0gをビーカーに入れた。混合物を磁気撹拌しながら加温し可溶化した。撹拌は、溶液が均一になるまで継続した。熱変色性/POSS@オクタ(アクリレート)会合体を、予め調製した界面活性剤の水溶液(40g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用してホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0101】
(ii)マイクロカプセル化
リアクタに、予め調製したエマルションを導入した。ヘキサメチレンジアミン溶液(HMDA、0.35g、3.01mmol)をシリンジを使用して撹拌しながら滴下した。全体を、反応するように50℃で1時間及び80℃で23時間置いた。
【0102】
図13にこれらのマイクロカプセルの写真を示す。
【0103】
[実施例12]メタ-キシリレンジアミンを用いたPOSS@オクタ(アクリレート)モノマーベースの熱変色性マイクロカプセルの調製
(i)エマルションの調製
熱変色性で、8つのアクリレート官能基により生成されたポリオクタヘドラルシルセスキオキサン(POSS@オクタ(アクリレート)、CAS番号1620202-27-8、Hydridplastics社から購入、1.50g、1.12mmol)と、熱阻害剤であるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、5.0mg)10.0gをビーカーに入れた。混合物を磁気撹拌しながら加温し可溶化した。撹拌は、溶液が均一になるまで継続した。熱変色性/POSS@オクタ(アクリレート)会合体を、予め調製した界面活性剤の水溶液(40g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用してホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0104】
(ii)マイクロカプセル化
リアクタに、予め調製したエマルションを導入した。メタ-キシリレンジアミン(CAS番号1477-55-0、0.60g、3.01mmol)の溶液3mLを、シリンジを使用して撹拌しながら滴下した。全体を、反応するように65℃で1時間及び80℃で17時間置いた。
【0105】
[実施例13]POSS@オクタアンモニウム及びヘキサメチレンジアミン(HDMA)を用いたPOSS@オクタ(アクリレート)モノマーベースの熱変色性マイクロカプセルの調製
(i)エマルションの調製
熱変色性で、8つのアクリレート官能基により生成されたポリオクタヘドラルシルセスキオキサン(POSS@オクタ(アクリレート)、CAS番号1620202-27-8、Hydridplastics社から購入、1.40g、1.06mmol)と、熱阻害剤であるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、5.0mg)20.0gをビーカーに入れた。混合物を磁気撹拌しながら加温し可溶化した。撹拌は、溶液が均一になるまで継続した。熱変色性/POSS@オクタ(アクリレート)会合体を、予め調製した界面活性剤の水溶液(40g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用してホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0106】
(ii)マイクロカプセル化
リアクタに、予め調製したエマルションを導入した。その後、ヘキサメチレンジアミン(HMDA、0.70g、6.02mmol)溶液、POSS@(オクタ)アンモニウム(CAS番号150380-11-3、Hydridplastics社より購入、0.30g、0.26mmol)と、炭酸カリウム(0.16g、1.16mmol)水溶液をシリンジを使用して撹拌しながら滴下した。全体を、反応するように65℃で1時間及び80℃で17時間置いた。
【0107】
図14にこれらのマイクロカプセルの写真を示す。
【0108】
[実施例14]生分解性試験
実施例8により調製したマイクロカプセルのバッチを用意した。乾燥しているが精油(ユーカリ)を含有するマイクロカプセルに、方法301F(Manometric respirometry試験)を用いてOECD301文書に記載の生分解性試験(「OECDテストガイドライン:易生分解性試験」)を行った。19日のインキュベーション時間の後、生分解率は83%だった。
【0109】
図15は、19日の期間にわたる時間の関数としての生分解率の推移を示すものである。曲線(b)は、マイクロカプセルに対応し、一方で、曲線(a)は、同一の生分解条件下で個別に処理された対照製剤(酢酸ナトリウム)に対応している。
【0110】
[実施例15]生分解性試験
実施例8により調製したマイクロカプセルのバッチを用意した。マイクロカプセルを開いて空にし洗浄した。次に、マイクロカプセルに、OECD301文書(「OECDテストガイドライン:易生分解性試験」)に記載の生分解性試験を方法301F(Manometric respirometry試験)を用いて行った。28日のインキュベーション時間の後、生分解率は93%であった。
【0111】
図16は、時間の関数としての生分解率の推移を示すものである。
【0112】
[実施例16]マルチアミン(ペンタエチレンヘキサミン)ベースの香料マイクロカプセルの調製
(i)エマルションの調製
精油(ユーカリ)19.7gをビーカーに入れ、マルチ-アクリレートモノマー(ジペンタエリスリトール ペンター/ヘキサ-アクリレート混合物)(1.2g、2.29mmol)を精油に磁気撹拌しながら(350rpm)50℃で分散させた。撹拌は、溶液が均一になるまで継続した。精油/有機モノマー会合体を、予め50℃に加熱して調製しておいた界面活性剤の水溶液(31.7g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用して11,500rpmで3分間50℃でホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0113】
(ii)マイクロカプセル化
二重壁リアクタにおいて、IKA 羽根機械式撹拌機を備え付け、50℃に予熱して、予め調製したエマルションを導入し250rpmの速度で撹拌した。マルチアミン(ペンタエチレンヘキサミン)の溶液(1.9g、8.00mmol)を、2重量%のPVA溶液5.5gにシリンジを使用して撹拌しながら(250rpm)滴下した。反応混合物を50℃で2時間、それから60℃で5時間撹拌し続けた。使用したモノマーの総量は、3.1gだった。アミン/アクリレートのモル比=3.5を得られるように、アミンをアクリレートモノマーより過剰に使用した。精油/水の質量比は、0.53と等しい。
【0114】
[実施例17]芳香族ジアミン(メタ-キシレンジアミン)ベースの香料マイクロカプセルの調製
(i)エマルションの調製
香料22.0gをビーカーに入れ、マルチーアクリレートモノマー(ジペンタエリスリトール ペンター/ヘキサ-アクリレート混合物)(1.52g、2.90mmol)を50℃で磁気撹拌しながら(350rpm)香料に分散させた。撹拌は、溶液が均一になるまで継続した。香料/有機モノマー会合体を、予め調製した界面活性剤の水溶液(35.0g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用して11,500rpmで3分間50℃でホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0115】
(ii)マイクロカプセル化
二重壁リアクタにおいて、IKA 羽根機械式撹拌機を備え付け、65℃に予熱して、予め調製したエマルションを導入し250rpmの速度で撹拌した。エマルションが65℃に達したら、メタ-キシリレンジアミンの溶液(0.80g、5.88mmol)を、2重量%のPVA溶液5.0gにシリンジを使用して撹拌しながら(248rpm)滴下した。反応混合物を65℃で5時間及び80℃で1時間撹拌し続けた。
【0116】
使用したモノマーの総量は、2.3gだった。-NH/アクリレートの官能基比=1.6を得られるように、アミンをアクリレートモノマーより過剰に使用した。香料/水の質量比は、0.55と等しい。
【0117】
図17にこれらのマイクロカプセルの写真を示す。
【0118】
[実施例18]セルロースファイバーコーティングを用いた香料マイクロカプセルの調製
(i)エマルションの調製
香料22.0gをビーカーに入れ、マルチーアクリレートモノマー(ジペンタエリスリトール ペンター/ヘキサ-アクリレート混合物)(1.52g、2.90mmol)を50℃で磁気撹拌しながら(350rpm)香料に分散させた。撹拌は、溶液が均一になるまで継続した。香料/有機モノマー会合体を、予め調製した界面活性剤の水溶液(40.0g、2重量%のPVA)に徐々に添加し、混合物を、Ultraturrax IKA T10を使用して11,500rpmで3分間50℃でホモジナイズして、エマルションを形成した。
【0119】
(ii)マイクロカプセル化
二重壁リアクタにおいて、IKA 羽根機械式撹拌機を備え付け、65℃に予熱して、予め調製したエマルションを導入し250rpmの速度で撹拌した。エマルションが65℃に達したら、メタ-キシリレンジアミンの溶液(0.80g、5.88mmol)を、2重量%のPVA溶液5.0gにシリンジを使用して撹拌しながら(250rpm)滴下した。反応混合物を65℃で5時間及び80℃で1時間撹拌し続けた。
【0120】
使用したモノマーの総量は、2.3gだった。-NH/アクリレートの官能基比=1.6を得られるように、アミンをアクリレートモノマーより過剰に使用した。精油/水の質量比は、0.5と等しい。
【0121】
(iii)セルロースコーティング
セルロースマイクロファイバー(Exilva F 01-L)4重量%を、65~70℃の温度に予熱してから、加温したスラリーに撹拌しながら導入した。反応混合物に対して、室温で30分間及び2時間の撹拌をしながら、加温してホモジナイズした。
【0122】
綿繊維結合試験を実施し、綿繊維を予め湿らせてからスラリーに浸した。染色をシミュレートするように力強く徹底的に水で洗浄した後、繊維を室温で乾燥させた。
【0123】
図18は、表面を変化させたマイクロカプセルについて、スラリー溶液に浸して乾燥させた後の綿繊維の写真(画像(b))を示すものである。コーティングは、コーティングしていないマイクロカプセル(画像(a))と比較すると、マイクロカプセルの綿繊維への結合を強化している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】