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特表2022-532310金属ストランドを製造する方法および金属ストランドを製造するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(54)【発明の名称】金属ストランドを製造する方法および金属ストランドを製造するための装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/10 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
B22F9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563688
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2020063026
(87)【国際公開番号】W WO2020229400
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】19173835.0
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19175749.1
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512247223
【氏名又は名称】マツクス-プランク-ゲゼルシヤフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシヤフテン エー フアウ
【氏名又は名称原語表記】MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FOeRDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
【住所又は居所原語表記】Hofgartenstrasse 8,80539 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】スパッツ,ヨアヒム ピー.
【テーマコード(参考)】
4K017
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017BA01
4K017BA05
4K017BA06
4K017BB06
4K017BB13
4K017BB16
4K017CA02
4K017CA04
4K017ED02
4K017ED03
4K017FA01
(57)【要約】
本発明は、るつぼを用いて、細長い金属ストランドまたは繊維を製造する方法に関し、この方法は、るつぼの内側と外側との間の調整された圧力差において、ノズル方向を堆積方向に有するノズルを通して、溶融金属を誘導するステップと、当該溶融金属を当該ノズルから回転軸を有する回転平面上に堆積させるステップと、細長い金属ストランドを形成するために1つの平面状の当該溶融金属を、当該回転平面を介して引入するステップであって、当該回転平面が、溶融金属の引入の間、堆積方向に対してあるアライメント角度でアライメントされている、引入するステップと、当該細長い金属ストランドを冷却して、固化金属ストランドを形成するステップと、当該金属ストランドを収集手段に誘導し、回転平面上に形成された固化金属ストランドを収集するステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
るつぼを用いて細長い金属ストランドおよび/または繊維(22)を製造する方法であって、
-溶融金属(15)を、前記るつぼの内側と外側との間の調整された圧力差で、堆積方向(D)にノズル方向を有するノズルを通して方向付けるステップと、
-前記溶融金属(15)を、前記ノズル(12)から回転軸(R)を有する回転平面(16)上に、堆積させるステップと、
-細長い金属ストランドおよび/または繊維(22)を形成するために、前記回転平面(16)を介して前記回転軸(R)の周りの1つの平面に前記溶融金属を引入するステップであって、前記溶融金属(15)の引入の間、前記回転平面(16)が、前記堆積方向(D)に対してアライメント角度(A)でアライメントされている、ステップと、
-前記細長い金属ストランド(22)を冷却して、固化金属ストランド(22)を形成するステップと、
-前記回転平面(16)上に形成された前記固化金属ストランド(22)を収集するために、収集手段に前記金属ストランド(22)を誘導するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記溶融金属(15)を引入および冷却する前記ステップ中に、前記回転平面(16)が、具体的には少なくともおおよそ、前記堆積方向(D)に対して垂直に配置され、前記回転平面(16)が、円形、楕円形、方形、長方形、または三角形の形状を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記回転平面(16)の前記アライメント角度(A)が、前記堆積方向(D)に対して90°~1°の範囲にあるように選択され、かつ/または前記ノズル方向(N)が、前記回転平面(16)に対して0°~90°の範囲にあるように選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ノズル(12)のノズル開口部(14)と前記回転平面(16)との間の間隔が、少なくとも10μmであり、典型的には10μm~20mm、具体的には50~300μmの範囲で選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記回転平面(16)が、回転ホイールのベースインタフェースである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記回転平面(16)が回転ホイール(20)のベースインタフェースとして設計されている場合、前記回転軸(R)が、前記回転平面(16)に対して垂直である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記回転平面(16)に対する前記ノズル(12)の前記堆積方向(D)が、好ましくは前記回転平面(16)に対して平行に、すなわち、前記回転軸(R)に対して半径方向に、および具体的にはまた前記回転平面(16)に対して垂直に、すなわち、前記回転平面(16)に対しておよび進退する方向に、調整され(28)、一方、前記ノズル(12)の向きは、任意の方向であり、好ましくは、前記回転平面(16)の回転に対して垂直または接線方向である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記回転平面(16)が、好ましくは、0~50℃の範囲にある温度、具体的には18~25℃の範囲の室温まで冷却される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
細長い金属ストランドおよび繊維を製造するための装置であって、前記装置が、好ましくは、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を使用するように構成されており、前記装置(10)が、回転平面(16)と、溶融金属(15)を前記回転平面(16)上の堆積方向(D)に方向付けるためのノズル方向(N)およびノズル開口部(14)を有する少なくとも1つのノズル(12)であって、前記回転平面(16)が、好ましくは、前記堆積方向(D)に対して垂直であるアライメント角度(A)の下で移動するように構成されており、1つの平面内の前記溶融金属(15)を前記回転平面(16)の移動を介して引入および冷却して、前記回転平面(16)で細長い固化金属ストランド(22)を形成する、前記ノズル(12)と、前記回転平面(16)上で形成され、前記回転平面(16)の移動によって発生された力によって前記回転平面(16)から分離された前記固化金属ストランド(22)を収集するように構成された収集手段(24)と、を備える、装置。
【請求項10】
前記装置が、回転可能なホイール(20)を備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記回転平面(16)が、前記溶融金属(15)の引入の間、前記堆積方向(D)に対して垂直にアライメントされている、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記回転平面(16)が、前記溶融金属(15)の引入の間、前記堆積方向(D)に対して前記アライメント角度(A)でアライメントされ、前記アライメント角度(A)が、90°~1°の範囲にあるように選択され、かつ/または前記ノズル方向(N)が、前記回転平面(16)に対して0°~90°の範囲にあるように選択される、請求項9または10に記載の装置。
【請求項13】
前記回転平面(16)が、前記回転平面(16)に対して垂直にアライメントされている回転軸(R)を中心に回転し、かつ/または
前記ノズル開口部(14)と前記回転平面(16)との間の間隔が、少なくとも10μmであり、典型的には10μm~20mm、具体的には100μm~500μmの範囲で選択される、請求項9から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記回転平面(16)が、少なくとも1つの交換可能なプレートを含む、請求項9から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
交換可能なプレートのセットが、前記交換可能なプレートのセットの残りのプレートと同じ材料から作製されている前記交換可能なプレートのセットの各プレートを備えるか、または異なる材料から作製された様々なプレートが前記交換可能なプレートのセットの中に提供されている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ノズル(12)の前記堆積方向(D)が、前記回転平面(16)に対して少なくとも平行に調整可能である、請求項9から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記ノズル開口部(14)が、任意の形状、具体的には長方形、円形、楕円形、方形または三角形であり、前記回転平面(16)に対して任意の方向にアライメントされている、請求項9から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
少なくとも2つの前記ノズル(12)、好ましくは4~12個の前記ノズル(12)、具体的には8個の前記ノズル(12)を備え、各々の前記ノズル(12)が、溶融金属(15)を前記回転平面(16)上に方向付けるための前記ノズル開口部(14)を有し、各々の前記ノズル(12)が、前記回転平面(16)に対して少なくとも平行に調整可能である、請求項9から17のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細長い金属ストランドおよび/または繊維を製造する方法、細長い金属ストランドおよび/または繊維を製造するための装置、ならびに本発明による方法によって、および/または本発明による装置を使用することによって取得可能な金属繊維に関する。
【0002】
金属ストランドを製造するための既知の方法は、溶融紡糸の工程である。溶融紡糸は、金属液体を急速に冷却するために使用される技術である。つまり、金属液体の細い流れが、高速回転ホイールの円周面上に滴下され、そこで急速に凝固する。この技術は、金属または金属ガラスなどの材料の細長いストランドを形成するために、非常に高い冷却速度を必要とする材料を開発するために使用される。溶融紡糸することにより達成可能な冷却速度は、毎秒10~10ケルビン(K/S)程度である。この工程では、材料の細いリボンを継続的に製造することができる。
【0003】
これに関連して、ストランドは、長さがその幅の少なくとも2倍である要素として理解することができ、一方、その断面の形状は、円形、楕円形、方形または三角形であり得ることに留意されたい。
【0004】
マイクロメートルの範囲、すなわち1~50マイクロメートル、および数ミリメートルまたは数センチメートルの長さで横寸法を有する金属ストランドおよび/または繊維には、特別な役割が割り当てられている。これらの材料は、個々の繊維、繊維のメッシュ、または繊維の束として、また他の材料と組み合わせて、ほとんどの多様な特性を改善するための一連の非常に多くの用途で、中心的な役割を果たす。そのようなものの例は、金属ウールおよび組織、電池および蓄電池用の三次元電極、触媒、ディスプレイおよびロボット分野の人工手などの接触感応システム用の導電性プラスチック、帯電防止テ織地およびプラスチック、機械的に強化された織地、軽量および重量構造物用のプラスチックおよびセメント、機械的および/または化学的ストレスあるいは触媒作用にさらされる環境で使用するフィルター材料である。
【0005】
金属ストランド系の材料機能を改善するための重要な側面は、大きな表面積対重量比、および工業的に関連した工程でそのようなストランドを製造および処理する能力である。これは、金属ストランドの調整可能な長さ、幅、および断面形状、再現性、製造方法の経済的な、および単位時間あたりの高い材料収量を伴う低工程コストを意味する。
【0006】
現在、金属ストランドに基づいた機能性材料の工業的に適切な製造は、約50μm以上のストランド幅に限定されている。これらの方法は、延伸、鋳型、圧延、または押し出し工程に基づく。幅が8マイクロメートルまでのステンレス鋼の繊維は、より小さな直径に引き伸ばされるより大きな直径の繊維の束から開始する複雑な延伸工程によって製造される。繊維が互いに沿って滑ることを可能にするために、繊維は、例えば、銅の層でコーティングされる必要がある。しかしながら、これらの方法は、それらが少数の材料のみ、長い処理時間、ならびに費用のかかる製造および製造後の工程に制限されるため、工業的に利用される場合には不利である。
【0007】
溶融紡糸工程を介して金属ストランドを製造するための従来知られている装置は、通常、溶融金属を回転ホイールの円周面上に流す。これにより、金属溶融物がホイールの回転する円周面をある特定の厚さで部分的にコーティングし、金属が固化すると、ホイールの回転から生じる遠心力により、定義された厚さの真っ直ぐなストランドとしてホイールから「投げ出される」ことが可能になる。
【0008】
通常、そのような機械の実用性は複雑であり、産業にあまり好都合でない。ホイールの円周面は、工程中に簡単に損傷し、ホイールの交換または研磨は時間とコストを消費する。回転ホイールの成り行きとして、遠心力は円周面から垂直に離れる方向を向き、回転ホイール上の金属溶融物の濡れ能力を低下させ、その結果、金属ストランドの厚さの縮小を制限する。ストランドが固化すると、遠心力の方向および円周面の曲率により、ストランドの円周面からの迅速な除去をもたらす。したがって、固化された金属ストランドの冷却は制限され、まだ熱い金属片がホイールから材料を取り除き、ホイールに損傷を与える。
【0009】
最終的に、従来の溶融物スピナの機械的精度は、重いホイールの回転軸を保持するベアリングが、ベアリングによってバランスが取られるホイールの重量により、一定の運動量に直面するため、従来の溶融物スピナの機械的精度が変えられる。これにより、ホイールは、運動量をもたらさないホイールではなく、低下した精度で回転する。
【0010】
本発明の目的は、再現可能な様式で、任意の所望される厚さ、幅または長さを有する金属ストランドおよび繊維を製造するための方法および装置を提供することである。
【0011】
この目的を満たすために、本発明によれば、るつぼを有する細長い金属ストランドおよび/または繊維を製造するための方法が提供され、この方法は、溶融金属を、るつぼの内側と外側との間の調整された圧力差での堆積方向、回転軸を有する回転平面上に前記ノズルから前記溶融金属を堆積し、前記回転平面を介して前記溶融金属を1つの平面に同伴して形成する。前記回転する平面が、溶融金属の同伴中に堆積方向に対して整列角度で整列され、前記細長い金属ストランドを冷却して固化した金属ストランドを形成し、前記金属ストランドを収集手段に誘導して収集する細長い金属ストランド。回転する平面上に形成された固化した金属ストランド。言い換えれば、溶融金属は、表面が回転している間に、平面上に滴下または注がれる。表面が移動するために、金属の液滴または流れが引入され、よって、ストランドに引き伸ばされる。依然として回転する平面上にあり、それとともに移動している間、溶融金属ストランドは、少なくともそれが金属ストランドに固化する時点まで冷却し得る。固化後の所与の時点で、金属ストランドは、例えば遠心力のために、表面の回転により表面から「投げ出される」ことになり、収集手段によって収集され得る。
【0012】
例えば円周面の代わりに、間堆積方向に対してあるアライメント角度でアライメントされている平面を使用することによって、金属が冷却して固化するのにかかり得る時間が大幅に増加され得る。すなわち、溶融金属はより長い平面との接触時間を有し、したがって、表面を再び離れる前に、より低い温度まで冷却することができる。このことはまた、以前可能であった長さ対幅の比より大きい比の金属ストランドを形成する可能性につながる。さらに、このことはまた、金属が表面を離れる前に適切に固化することができるので、より少ない表面の損傷につながる。
【0013】
本明細書に記載された本発明は、任意の所望される厚さ、また10マイクロメートルより著しく小さい厚さ、および2:1~最高1000:1を超える長さ対幅のアスペクト比を有する金属ストランドの製造を可能にする。
【0014】
本発明の第1の実施形態によれば、回転平面は、具体的には、当該溶融金属を引入および冷却する当該ステップ中、堆積方向に対して少なくともほぼ垂直に配置される。このことは、本実施形態では、方法の他のステップ中、平面が、堆積方向に垂直でないことを必ずしも意味しないが、少なくとも溶融金属を引入するステップ中は、平面が、堆積方向と垂直な方向に移動しなければならないことを意味する。したがって、平面は、例えば、方法のすべてのステップ中、常に堆積方向に垂直な平面内で回転する平面として設計され得る。回転平面は、円形、楕円形、方形または長方形の形状であり得、その横寸法は、1~5000cm、具体的には10~400cmまたは250cmもしくは350cmの範囲であり得る。
【0015】
本発明の第2の実施形態によれば、回転平面のアライメント角度は、堆積方向に対して90°~1°の範囲にあるように選択され、かつ/またはノズルの方向は、回転平面に対して0°~90°の範囲にあるように選択される。したがって、回転平面は、例えば、ノズルの堆積方向に対して垂直にアライメントされ得、ノズル自体は、平面に対して90°異なるノズル方向にアライメントされ得る。したがって、どの角度アライメントで、回転平面およびノズル、ならびにその堆積方向が互いに配列されるかが、必要に応じて選択され得る。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、移動面は、回転ホイールのベースインタフェースである。これは、ホイールがノズルに面するベースインタフェースに簡単にアライメントされることを意味している。
【0017】
したがって、回転平面は回転軸を中心に回転する。表面を、軸を中心に回転させると、遠心力が発生し得る。これらの遠心力は、固化金属ストランドを移動面から外に「投げる」ために使用され、それらを例えば収集手段に誘導し得る。そのような場合、収集部以外に、固化金属ストランドを取り出すためのさらなる装置は、必要とされない。
【0018】
ノズル開口部と回転平面との間隔は少なくとも10μmであり得、典型的には10μm~20mm、具体的には50、100または200μmの範囲で選択される。このようにして、溶融金属は、一般に、アライメント角度、すなわち回転平面に対するノズル方向に関係なく、回転平面上に垂直に投じられることが確実にされ得る。溶融金属が液滴の形態で、または回転平面上への溶融金属の連続的な流れとして、堆積されることが確実にされ得る。
【0019】
回転軸は、回転平面が回転ホイールのベースインタフェースとして設計されている場合、好ましくは、回転平面に垂直である。したがって、回転平面が、例えば、堆積方向に平行な、例えば、従来技術で既知であるようなホイールの円周面ではなく、ホイールの軸方向面のように、回転軸を中心に回転し得る場合、回転平面は、方法の間、常に堆積方向に垂直に配置され得る。
【0020】
回転平面に対するノズルの堆積位置が、回転平面に対して、例えば、平行に、好ましくはさらに垂直に、回転平面に対して調整されることが本発明の別の実施形態である。一例として、回転平面が回転ディスクに選択される場合、ユーザーがディスクの半径のどの点に溶融金属が堆積されるべきかを決定するために、ノズルの位置が、半径方向に調整され得る。ディスクの中心近くに堆積する溶融金属の液滴は、ディスクの外側にさらに堆積する液滴よりも小さな加速度を経験する。したがって、溶融金属が回転する平面上にどの正確な点に堆積されるべきかを決定できることは、したがって、どの加速度で溶融金属が回転ディスク上に堆積されるか、および金属は回転する平面と一緒に移動する。
【0021】
別の実施形態によれば、回転平面は、好ましくは、0~50℃の範囲にある温度まで、具体的には室温まで冷却される。回転平面は、表面がほぼ定常的に溶融した、故に高温の金属と接触するため、冷却される必要があり、したがって、非常に迅速に昇温し得る。加熱された表面は、溶融金属が冷えて固化するのを妨げ、それはそれがすべきこととは逆になる。さらに、活発に冷却された平面表面により、溶融金属の冷却勾配を制御することができ、したがって、固化した金属ストランドの再現性のある結果が期待できる。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、細長い金属ストランドおよび/または繊維を生成するための装置が提供され、好ましくは、装置が回転平面、ノズル方向に少なくとも1つのノズルを含む、本発明による方法を使用するように構成される。溶融金属を堆積方向に回転平面上に向けるためのノズル開口部を有し、回転平面は、溶融金属を1つの平面に同伴および冷却するために、前記堆積方向に対して整列角度、好ましくは垂直に移動するように構成される。回転平面の前記運動を介して、前記回転平面で固化した細長い金属ストランドを形成し、回転平面上に形成され、運動によって生成される力によって回転平面から分離された金属の固化ストランドを収集するように構成された収集手段。回転する平面の。ノズルのノズル開口部は、異なる幅のいずれかの金属ストランドを、すなわち1μm~5cmの範囲で、製造することができるように選択することができる。異なるサイズおよび幅のストランドおよび繊維を製造可能にするために、ノズル開口部の寸法および/または形状に制限はない。
【0023】
装置が回転可能なホイールを含むことは、本発明の一実施形態である。ホイールは、堆積方向に垂直に移動可能な平面を有することができ、すなわち、当該ホイールの半径方向の表面が平面として使用され得る。
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、回転平面は、溶融金属を引入する間、堆積方向に対して垂直にアライメントされる。溶融金属を引入すること、したがって、さらに冷却されること、が実行されている間の製造段階は、溶融紡糸工程の重要な部分である。溶融金属が回転平面上に長く留まることができるほど、金属のより低い温度を得ることができ、収集手段に導かれる前により良好に固化することができる。堆積方向に対して垂直にアライメントされる平面は、接触面としてホイールの円周面を多くの場合使用する既知の従来技術と比較して、溶融金属が引入および冷却される時間を大幅に増加させることができる。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、回転平面は、溶融金属を引入する間、堆積方向に対してアライメント角度でアライメントされ、アライメント角度は、堆積方向に対して90°~1°の範囲にあるように選択され、かつ/またはノズルの方向は、回転平面に対して0°~90°の範囲にあるように選択される。
【0026】
本発明の別の実施形態は、回転平面が、回転平面に対して垂直にアライメントされる回転軸を中心に回転することである。したがって、回転平面は、ディスク、ホイール、またはその回転中の少なくともある特定の時間に平面である一方で、例えば回転様式で移動することができる任意の他の表面として、実装され得る。
【0027】
堆積方向対して平行な回転軸を中心に回転するホイールまたはディスクの利点はさらに、ホイールの垂直ベアリングが水平ベアリングと比較してより安定していることが、証明されていることである。したがって、ディスクまたはホイールの回転がよりスムーズになる。
【0028】
別の実施形態によれば、回転平面は、少なくとも1つの交換可能なプレートを含む。平面は溶融した金属、つまり高温金属と接触することが多いため、時間の経過とともに摩耗することになる。交換可能なプレートは、表面の摩耗がもはや許容できないポイントに達したときに非常に有用であることが証明されている。このように、デバイス全体でなく、例えば回転平面が取り付けられているホイール全体でなく、摩耗の場合にはプレートのみが、交換または機械加工され得る。プレートの別の潜在的な用途は、例えば、異なる材料から作製された異なる種類のプレートの使用を使用すること、または溶融される金属の種類に応じて回転平面の表面構造の変更することである。プレートは、所望される結果により選択され得る。
【0029】
したがって、これに関連して、交換可能なプレートのセットが、交換可能なプレートのセットの残りのプレートと同じ材料から作製される交換可能なプレートのセットの各プレートを備える、または異なる材料から作製された様々なプレートが、交換可能なプレートのセットの中に提供される。
【0030】
一実施形態によれば、ノズルの堆積位置は、回転平面に少なくとも平行に調整可能である。すでに説明されたように、溶融紡糸工程の重要な部分の1つは、溶融金属が表面に留まる時間の長さである。金属が表面に長く留まることができるほど、より長く金属が冷えて固化され得る。例えば、溶融される金属の種類、または製造されるストランドもしくは繊維の寸法に応じて、冷却時間は変化し得る。調整可能なノズルにより、平面上のどの正確な点に金属を堆積させるか、したがって、例えば、遠心力によって収集手段に誘導される前に、どれだけ長く、金属を当該表面に留まらせることができるかが、選択され得る。
【0031】
別の実施形態によれば、ノズル開口部は、任意の形状、具体的には長方形、円形、楕円形、方形または三角形であり、回転平面に対して任意の方向にアライメントされている。金属ストランドの幅、太さ、長さの大きさに応じて、ノズル開口部のサイズと寸法が、適切に選択され得る。例えば、ノズルの幅は、マイクロメートル幅のストランドを製造するために、100μmよりも小さくなるようにさえ選択され得る。ノズル開口部の幅は、10μm~10mmの範囲で選択され得る。したがって、ノズル開口部の幅は、金属ストランドまたは繊維の所望される幅に応じて選択され得る。金属繊維の製造には、10~500μmの範囲から選択される幅が好ましく、一方、金属ストランドの製造には、500μm~10mmの範囲から選択される幅が好ましい。
【0032】
本発明の別の実施形態は、装置が、少なくとも2つのノズル、好ましくは4~12個のノズル、具体的には8個のノズルを備え、各ノズルが、溶融金属を移動手段の回転平面上に方向付けるためのノズル開口部を有することであり、各ノズルが、回転平面に対して少なくとも平行に調整可能であることである。そのような一実施形態の例は、回転ホイールの半径方向表面、具体的にはプレート上に溶融金属を堆積させる8つのノズルを備えた装置であり得る。ノズルは、同時に8本の金属ストランドを製造するために、当該半径方向表面の円周の辺りに均等にまたは不均等に配置され得る。これは、1つの装置のみで同時に複数の繊維またはストランドを製造され得るので、既知の装置と比較してより効率的な装置につながる。ノズル数は必要に応じて選択され得る。
【0033】
ホイールはさらに、環境の大気圧に、または環境の圧力よりも低い圧力に、もしくは環境の圧力よりも高い圧力に対応する圧力にある、雰囲気を有するチャンバー内で回転するように取り付けられることが好都合である。チャンバー内の雰囲気は、固化金属ストランドの形成に影響を与え、製造される金属ストランドの形状を微調整するために使用され得る。空気の成分と反応する金属には、チャンバー内で不活性ガス雰囲気を使用することが好ましい可能性がある。また、ある状況下では、反応性ガス雰囲気が有益であり得、例えば、硬化金属ストランドが所望される場合、窒素または炭素含有雰囲気が、好適な鋼材料を窒化または浸炭するために使用され得る。スクレーパブレードまたはドクターブレードなどのデフレクタが、任意選択的に、ノズルを介して表面上に溶融金属を堆積させる前に移動表面から境界空気をそらすために、ホイールの回転方向にノズルの上流に配設され得る。移動面から最小の間隔をその構造の損傷を回避するために有することだけを必要とする(その機能はノズルによっても、これが移動面の近くに配置されている場合提供され得る)、そのようなデフレクタは、移動面とともに運ばれる境界空気がノズルから回転平面への溶融金属の流れに望ましくない影響を与えること、例えば、それにより表面に到達する前の金属材料の冷却を減少させることを防止し得る。
【0034】
一般的に言えば、ガス圧が溶融金属に適用され、それがノズルを通過することを強制する。溶融金属の高い表面張力/エネルギーが小さなノズルを通るその流れを妨げることになるので、そのようなガス圧は一般に不可欠である。追加のガス圧(溶融金属の重量に加えて)により、溶融金属がノズルを通って流れる。本明細書で溶融金属に適用される圧力に言及する場合、記載される圧力は、圧力が、多くの場合、大気圧を下回って保持される、装置のチャンバー内で一般的な圧力、例えば、400mbarよりも高い量であると理解されることになる。
【0035】
ガス圧は通常、ノズル外部の圧力に対して50mbar~1bar過圧の範囲から選択される。ガス圧は、回転平面上への溶融金属の堆積速度を調整する。このパラメータは、金属リボンの寸法を同様に制御する。
【0036】
好ましくは、金属は、銅、シリコンを含む銅合金、アルミニウム、シリコンを含むアルミニウム合金、鉄、鉄合金、およびFeNiBのうちの1つである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
ここで、本発明は、添付図面を参照して、ほんの一例としてさらに詳細に説明される。図面には以下のものが示されている。
【0038】
図1】本発明による装置の第1の実施形態である。
図2】本発明による装置の第2の実施形態である。
図3】複数のノズルを有する例示的な実施形態の平面図である。
図4a】本発明による実在の装置の一例である。
図4b】本発明による装置で製造される金属ストランドおよび金属繊維の異なる例である。
図5】本発明による装置で製造される金属ストランドおよび金属繊維の異なる例である。
図6】本発明による装置で製造される金属ストランドおよび金属繊維の異なる例である。
図7】本発明による装置で製造される金属ストランドおよび金属繊維の異なる例である。
図8】本発明による装置で製造される金属ストランドおよび金属繊維の異なる例である。
図9】本発明による装置で製造される金属ストランドおよび金属繊維の異なる例である。
図10】本発明による装置で製造される金属ストランドおよび金属繊維の異なる例である。
図11】本発明による装置で製造されたストランドの太さの異なる分布である。
図12】本発明による装置で製造されたストランドの太さの異なる分布である。
【0039】
図1は、細長い金属ストランドを製造するための装置10の第1の実施形態、具体的には、回転平面16上への堆積方向(矢印Dを参照のこと)にある、溶融金属15の液滴または流れを堆積するノズル開口部14を備えたノズル12を備える溶融紡糸装置を示す。溶融金属を堆積させることを可能にするために、ノズル12は、ノズル12内の金属を、金属がその液体状態にある温度まで加熱する加熱デバイス18を備える。
【0040】
ノズル開口部14は、任意の形状、通常、円形、楕円形、長方形、方形または三角形であり得る。開口幅は、製造されるべき金属ストランド22または繊維22のサイズに応じて、10μm~10mmの範囲にあり得る。金属ストランド22の製造の場合、ノズル開口部14の幅は、通常、500μm~10mmの範囲から選択され、一方、繊維22の製造の場合、ノズル開口部14の幅は、10μm~500μmの範囲から選択される。したがって、装置10の所望される用途に応じて、異なるノズル開口部14のサイズが可能である。ノズル方向Nは、平面16に対して90°から変化し得、すなわち、90°~0°の範囲にあるように選択され得る。したがって、ノズル12はまた、回転平面16に平行にアライメントされ得、それでも平面16に対して垂直な、または他の任意の角度である堆積方向Dを有し得る。
【0041】
平面16は、堆積方向Dに平行にアライメントされる回転軸Rを中心に回転するホイール20上に配置されている。したがって、平面16は、ホイール20の半径方向表面となるように設計されている。ホイール20は、時計回りにも反時計回りにも回転し得ることに留意されたい。さらに、平面16はまた、堆積方向Dに対してアライメント角度Aでアライメントされ得、アライメント角度Aは、0~90°の範囲にあるように選択され得ることに留意されたい。さらに、表面16はまた、楕円形、長方形または方形形状を含み得る。
【0042】
ホイールの直径は1センチメートル~数メートルの範囲であり得、ホイールの材料は、金属溶融物の堆積と高回転速度に耐える任意の選択、具体的には銅、銅合金、真ちゅう、ニッケル、鉄、酸化鉄、ステンレス鋼などの金属合金、またはグラファイトもしくはカーバイドなどの炭素系材料、セラミック材料であり得る。ホイール20は、金属もしくは金属合金、セラミック材料、またはグラファイトもしくは気相堆積された炭素からなる層を有する基材のホイール、例えば、グラファイト層を有する銅ホイール20であることも可能である。
【0043】
ホイール20の回転のために、表面16と接触することになる溶融金属の液滴または流れ15は、引入され、それにより、ホイール20によって引き伸ばされて、細長い金属ストランド22を形成する。これらのストランド22は、十分に冷却され固化するまで、表面16上に留まる。この目的のために、回転ホイール20は、溶融金属液滴15が金属ストランド22に固化することができるようにするために、冷却デバイスCによって例えば室温まで、またはさらに低温に液体窒素で冷却することによって、冷却され得る。ホイールがまったく冷却されないとしたら、(高温の)溶融金属16との接触のために、ホイールは最終的に昇温してしまい、したがって溶融金属16が固化するのに十分に冷却されることを妨げる。ホイールの加熱はまた、その機械的安定性に影響を与え得る。冷却デバイスCは、回転可能なホイール20の内側に示されているが、必ずしもホイールの内側に配置されている必要はないことに留意されたい。そのようなデバイスを冷却するために知られている十分に多くの方法がある。
【0044】
金属ストランド22が固化されると、ホイール20の回転により金属ストランド22に作用する遠心力は、金属ストランド22を平面16離れるように移動させるために十分になる。なぜならば、固化金属ストランド22と平面16との間の接着力は、平面16の回転により金属ストランド22に作用する力よりも小さい。したがって、固化金属ストランド22は、ホイール20の円周を横断する方向にホイール20から飛んでいく。
【0045】
つまり、収集器24は、製造された金属ストランド22を収集するために、固化金属ストランド22を途中で捕らえ、それらを収集器24の底部にある開口部26に誘導するように配置されている。固化金属ストランドの誘導は、溶融紡糸チャンバー内のガスの流れによっても可能であり得る。乱流が、具体的には細い繊維の場合、金属ストランドの収集に影響を与え得る。このことは、繊維を誘導するガスの強い流れまたは固体壁を配置することによって、または乱流が発生しないようにチャンバーを排気することによって防止され得る。
【0046】
例えば、どの種類の金属を溶融するかによって、冷却時間は大幅に異なり得る。このことが、ノズルが少なくとも平面に平行に調整可能であることの理由でもある(矢印28を参照のこと)。回転可能なホイール20を使用する場合、ホイールの中心にどれだけ近づけて溶融金属15が堆積されるべきかを決定するために、ホイール20の半径方向に調整可能なノズルを使用することは理にかなっている。堆積位置に応じて、溶融金属は異なる加速度を受ける。いくつかの用途には、ノズル12はまた、平面16に対して垂直な方向に調整可能であり得る。
【0047】
20cm~55cmのホイール20の直径が好ましいが、これは重要ではなく、1~100cmの範囲のホイール20の直径が使用され得る。回転速度が一定に保たれ、ホイール20の軸に対するノズル12の位置が変更される場合、回転ホイール20の平面16のより大きな直径は、ホイール20の円周速度をより外側の軌道へ向かって増加させる。したがって、ホイール20のより大きな直径は、一定の回転速度において、金属ストランドまたは繊維22のより細い幅およびより短い長さという結果をもたらし得る。
【0048】
平面16の表面速度が10~100m/秒の範囲、具体的には30~80m/秒の範囲、理想的には、外周の20cm以上のホイール20を使用してホイール20の円周で40~60m/秒の間にあるように、ホイール20の回転速度を一定に維持するための制御装置(図示せず)が提供され得る。
【0049】
繊維材料および金属ストランドの製造は、ノズル12からの材料の流れと回転可能なホイール20の回転速度との組み合わせることである。ノズル12からの金属の流れを大幅に減らすことがうまくいく場合、より低い回転速度で運転することも可能であり得る。したがって、直径200mmのホイール20の10Hzの回転速度もまた、ノズル12から放出される溶融材料15の量がそれに応じて減少するならば、完全に可能である。
【0050】
図2は、図1の装置にほとんど相当する本発明による装置の一実施形態を示している。2つの実施形態間の唯一の違いは、回転可能なホイール20がプレート30を含み、それが結果として平面16を含むという事実にある。プレート30は交換可能であり、したがって、平面16が過度に摩耗しきった後、または平面16の異なる材料または表面構造が所望される場合、容易に交換することができる。したがって、ホイール20の汎用性は大幅に向上する。
【0051】
異なるプレート30はまた、溝などの異なる構造を含むことができ、または異なる材料で作製され得る。したがって、プレート30は、溶融される金属の種類に応じて、および/または製造されることになるストランドまたは繊維の種類に応じて選択され得る。
【0052】
したがって、プレート30または複数のプレート30は、図1のホイール20と同じ材料で作製され得る。さらに、異なる用途のための異なるプレート30、またはストランドまたは繊維22の製造に使用されることになる異なる種類の金属を有するために、異なる材料で層形成することが可能である。
【0053】
プレート30をホイール20上に配置するために、ホイール20は、プレート30が配置される凹部34を備える。図3のような回転ホイール20の場合、プレートは、円形ディスク、リング、リングセグメント、または円形セグメントとして設計され得る。したがって、1つのホイール20は、1つ以上のプレート30を同時に含むことができる。
【0054】
凹部34の寸法は、使用される1つ以上のプレート(または複数のプレート30)30の寸法に依存し、すなわち、凹部34は、リングまたは円のいずれかの形態を有し得る。したがって、プレート30(または複数のプレート30)に対応する凹部34は、ホイール20自体の直径とほぼ同じ、すなわち好ましくは、20~35cmである直径を有し得る。リングの形態の凹部34の正確な寸法は、プレート30の寸法に依存する。そのようなリングの内半径は1~30cmの範囲にあり、一方、そのようなリングの外半径の範囲は5~35cmの範囲にあり、常にホイール20の実際のサイズに依存する。これは、直径200cmのホイールの場合、プレートの外径は最大198cmであり、リング状のプレートの内径は5cm程度であることを意味する。くぼみ34の材料は、プレート30の材料とは異なり得る。すなわち、くぼみ34の材料は、タングステンのような機械的に非常に強い材料であり得、一方、プレート30の材料は、銅のように弱く、その結果、くぼみは、プレートを機械的に安定させる。このことにより、ホイール20は、凹部34が依然として安定しているが、遠心力のために内側プレート30が破壊され得る速度で回転することができる。
【0055】
1つのホイール20に対する複数のプレート30の場合、同時に使用されるすべてのプレート30が同じ材料で作製されていることが好ましい可能性がある。したがって、複数の同一のプレート30を使用することにより、装置10は、ともに平面16を形成する単一のプレート30が、摩耗の場合または別の種類の金属が製造に使用される場合もしくは別の種類の繊維が製造される場合、別々に交換され得るので、その取り扱い方がより多様になる。
【0056】
図3は、本発明の別の実施形態の上面図を示しており、1つの回転可能なホイール20が、それぞれの矢印28に沿って半径方向に調整可能なノズル12とともに提供されている。このような配置により、8本の金属ストランドが同時に製造され得る。このことは、装置を、最先端の既知の装置と比較して、はるかに効率的にする。
【0057】
原則として、ノズル12を配置する弧のすべての角度は、移動面16の円周の周りで可能である。ノズル12がホイール20の円周の周りに均等に配置されている場合が利点になり得ることが証明されている。したがって、図4に示されている例えば8つのノズル12の配置のための可能な角度は、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°および315°である。
【0058】
また、例えば12個のノズル12が存在する場合、30°、60°、120°、150°、210°、240°、300°および330°のような他の角度も可能である。したがって、ホイール20は、その回転軸Rを中心に回転しているので、ノズル12が移動面16の円周の周りに均等に配置されている限り、ノズル12の配置の正確な角度は、所望されるように選択され得ることが分かる。
【0059】
図4aは、地面に対して水平にアライメントされた、すなわち、その回転軸Rが溶融金属の堆積方向Dに平行にアライメントされる、ホイール20を備えた実在の装置10の一例の写真を示している。図4aは、図1および2に関連して説明された装置10の実在の適用の一例を示している。
【0060】
図4bから10は、図1による装置10で製造された金属ストランドおよび繊維22の種々の例を示している。
【0061】
図4bは、収集器24内に作製された金属繊維22からなる2つの写真を示している。製造された繊維22は、それらが操作者または(図示せず)容器によって収集され得る開口部26の方向に方向付けられていることが分かる。製造された繊維22の約90%が、収集器24で収集されることもあり得る。
【0062】
図5~7は、繊維22の拡大写真をさらに示している。製造された繊維22は、数十~数百マイクロメートルの幅を含むことが分かる。
【0063】
図4b~7に示されている繊維は、17×0.05mmのノズル開口部を有するノズル12を使用して、FeNiBから製造された。図8に示されている繊維22は、Al合金から製造されたが、図9および10に示されている繊維22は、Cu合金から製造された。
【0064】
したがって、本発明による装置10を使用して、金属ストランド22だけでなく、幅が著しく小さい繊維22も製造され得ることに留意されたい。
【0065】
本発明による装置10を用いてAl合金(図11)およびCu合金(図12)から製造されたAlおよびCu繊維22(図7および8を参照のこと)の厚さおよび幅のいくつかの分布図が、図11および図12に示されている。繊維22の幅は数十~数百マイクロメートルの範囲にあり、一方、これらの繊維22の太さは0.1~10マイクロメートルの範囲により多くあることが分かる。
【0066】
詳細には、図11では、Al合金から製造された繊維22のほとんどが、幅50μm未満、厚さ2.5μm未満で製造され得たことが分かる。一方、図12では、Cu合金から製造された繊維22が、70~200μmの範囲にある幅を、対応する厚さが約1~8μmとともに有することが分かる。したがって、金属の選択が、製造される繊維の幅に影響を与え得ることが分かるであろう。
【0067】
本発明による金属ストランドを製造する方法の実在の実施形態は、以下に記載されている、高速回転平面16上で定義された流れによって溶融金属15を投入することである。具体的には、これは、回転軸Rが、るつぼの開口部14から生じる溶融金属15の堆積方向Dにほぼ一直線に方向付けられるように、溶融紡糸ホイール20を取り付けることによって得られ、実際には、回転軸Rは垂直に方向付けられ、ホイールの上面と下面は水平に、すなわち地面に平行に回転する。これが、本発明による装置10が「水平溶融物スピナ」とも呼ばれる理由である。
【0068】
従来の溶融物スピナの場合、回転軸Rは、るつぼ14の開口部から生じる溶融金属15の堆積方向Dに垂直に取り付けられている。回転軸Rは水平に方向付けられ、ホイール20の面は地面に対して垂直に方向付けられている。これが、周知の溶融物スピナが「垂直溶融物スピナ」とも呼ばれる理由である。
【0069】
水平溶融物スピナ10の場合、溶融金属15は、回転軸Rが回転平面16に対して中心で垂直にアライメントされる表面16である円筒形ホイール20の平面ベース面16のうちの1つに滴下される。これにより、垂直溶融物スピナの回転ホイールの円周面に溶融物を滴下する場合よりも、ホイールのベース表面16上により広がるように、堆積される溶融物15にかかる遠心力の引っ張りが生じる。その結果、金属ストランド22の太さは著しく低減される。金属ストランド22の形状は、真っ直ぐではなく、対象物の伸びに沿って湾曲している。曲率は、金属溶融物15が堆積されるホイール20のベース表面16上の円形経路から取られたものである。ストランド22の接触時間は、従来の溶融紡糸によって得られるものよりも延長されている。このことは、ストランド22を、回転ホイール20を離れる前に、さらに冷却する。より少ないホイール材料がストランド22とともに表面16移動させられるため、このことが、ホイールの損傷を低減する。
【0070】
最終的に、水平溶融物スピナの場合、ホイール20の交換および研磨も大幅に簡素化される。最後に、ホイール20のそのベアリングへの機械的衝撃は、回転軸Rにほとんど運動量がかけられないので、より正確で安定した回転に有利に働く。
【0071】
回転ホイール20またはプレート30は、回転軸Rが向く円周および2つの丸いベースプレートを有する。本発明の目的は、金属溶融物15を円周方向ではなく、回転軸Rから離れたベースプレート表面16の1つに堆積させることである。回転軸Rおよび金属堆積方向Dは、通常、同じである。ただし、0°とは異なる角度を形成する場合もある。これにより、遠心力が、回転ホイール20を濡らす溶融金属15に、作用する。金属15を円周面に滴下する場合、遠心力は、表面から離れる方向を向き、金属による円周面の濡れに逆らって作用する。ベースプレート表面16のうちの1つに溶融金属15を滴下する場合、溶融金属15にかかる遠心力が表面16に沿って作用する。それにより、表面16上の金属液体を平坦化し、それをホイール20上に、より長い時間置いておく。一方、従来の溶融物スピナの場合、溶融金属15が円周面に滴下され、溶融物は、遠心力により円周面から離れるように移動させられる。
【0072】
参照符号
10 装置
12 ノズル
14 ノズル開口部
15 溶融金属
16 平面
18 加熱デバイス
20 ホイール
22 金属ストランド
24 収集器
26 開口部
28 調節機能
30 プレート
34 凹部
A アライメント角度
C 冷却デバイス
D 堆積方向
N ノズル方向
R 回転軸
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】