(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(54)【発明の名称】GLY101VAL突然変異を有するBCL-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5377 20060101AFI20220707BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220707BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220707BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
A61K31/5377 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021567785
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2020063089
(87)【国際公開番号】W WO2020229429
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500287019
【氏名又は名称】レ ラボラトワール セルヴィエ
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】マレー,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】コラン,フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】クラペロン,オドレイ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086CB05
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、下記突然変異:(i)Gly101Val、(ii)Asp103Tyr、(iii)Asp103Val、(iv)Asp103Glu、(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤であり、ここで、Bcl-2阻害剤は、N-(4-ヒドロキシフェニル)-3-{6-[((3S)-3-(4-モルホリニルメチル)-3,4-ジヒドロ-2(1H)-イソキノリニル)カルボニル]-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル}-N-フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1-インドリジンカルボキサミド(化合物A)もしくは5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミド(化合物B)又はその薬学的に許容し得る塩である、Bcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤であり、
ここで、Bcl-2阻害剤は、N-(4-ヒドロキシフェニル)-3-{6-[((3S)-3-(4-モルホリニルメチル)-3,4-ジヒドロ-2(1H)-イソキノリニル)カルボニル]-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル}-N-フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1-インドリジンカルボキサミド(化合物A)及び5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミド(化合物B)又はその薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される、
Bcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤。
【請求項2】
ガンが、Gly101Val突然変異を有する、請求項1記載のBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤。
【請求項3】
ガンが、Asp103Tyr突然変異を有する、請求項1記載のBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤。
【請求項4】
ガンが、Asp103Val突然変異を有する、請求項1記載のBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤。
【請求項5】
ガンが、Asp103Glu突然変異を有する、請求項1記載のBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤。
【請求項6】
Bcl-2媒介性ガンが、慢性リンパ性白血病(CLL)である、請求項1~5のいずれか一項記載のBcl-2阻害剤。
【請求項7】
化合物Aが、塩酸塩の形態にある、請求項1~5のいずれか一項記載のBcl-2阻害剤。
【請求項8】
化合物Bが、硫酸水素塩の形態にある、請求項1~5のいずれか一項記載のBcl-2阻害剤。
【請求項9】
化合物Bが、塩酸塩の形態にある、請求項1~5のいずれか一項記載のBcl-2阻害剤。
【請求項10】
化合物Bを静脈内投与する、請求項1~5のいずれか一項記載のBcl-2阻害剤。
【請求項11】
下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、請求項1~10のいずれか一項記載のBcl-2阻害剤を含む、
医薬組成物。
【請求項12】
Gly101Val突然変異を有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、請求項11記載のBcl-2阻害剤を含む医薬組成物。
【請求項13】
Asp103Tyr突然変異を有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、請求項11記載のBcl-2阻害剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
Asp103Val突然変異を有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、請求項11記載のBcl-2阻害剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
Asp103Glu突然変異を有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、請求項11記載のBcl-2阻害剤を含む医薬組成物。
【請求項16】
下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有するBcl-2媒介性ガンを有し、(a)少なくとも1つの抗ガン剤に抵抗性であるかもしくは(b)抗ガン剤での処置後に再発しているか又は(a)と(b)との両方である患者を感作させるための方法であって、
治療上有効量の請求項1~10のいずれか一項記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与することを含む、
方法。
【請求項17】
Gly101Val突然変異を有するBcl-2媒介性ガンを有し、(i)少なくとも1つの抗ガン剤に抵抗性であるかもしくは(ii)抗ガン剤での処置後に再発しているか又は(i)と(ii)との両方である患者を感作させるための方法であって、
治療上有効量の請求項1~10のいずれか一項記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与することを含む、
方法。
【請求項18】
抗ガン剤が、ターゲット療法である、請求項16又は17記載の方法。
【請求項19】
ガンが、慢性リンパ性白血病(CLL)である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ターゲット療法が、ベネトクラクス(ABT-199)である、請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
患者におけるBcl-2媒介性ガンを処置する方法であって、
(a)前記患者から生体サンプルを取得し、生体サンプルが下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを含むかどうかを検出する工程と、
(b)ベネトクラクスに対する応答の可能性が低下していると、前記患者を特定する工程と、
(c)このようにして検出された突然変異の存在に基づいて、治療上有効量の請求項1~10のいずれか一項記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与する工程とを含む、
方法。
【請求項22】
患者におけるBcl-2媒介性ガンを処置する方法であって、
(a)前記患者から生体サンプルを取得し、生体サンプルがGly101Val突然変異を含むかどうかを検出する工程と、
(b)ベネトクラクスに対する応答の可能性が低下していると、前記患者を特定する工程と、
(c)Gly101Val突然変異の存在に基づいて、治療上有効量の請求項1~10のいずれか一項記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与する工程とを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤であり、ここで、Bcl-2阻害剤は、N-(4-ヒドロキシフェニル)-3-{6-[((3S)-3-(4-モルホリニルメチル)-3,4-ジヒドロ-2(1H)-イソキノリニル)カルボニル]-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル}-N-フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1-インドリジンカルボキサミド(化合物A、S55746又はBCL201としても公知)もしくは5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミド(化合物B)又はその薬学的に許容し得る塩である、Bcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤に関する。また、本発明は、下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するために、化合物A又は化合物Bを含む、医薬組成物に関する。更なる実施態様では、下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有するBcl-2媒介性ガンは、慢性リンパ性白血病(CLL)である。
【0002】
発明の背景
アポトーシス又はプログラムされた細胞死は、胚発生及び組織ホメオスタシスの維持に重要な生理学的プロセスである。アポトーシス型細胞死は、形態学的変化、例えば、核の凝縮、DNA断片化を伴い、生化学的現象、例えば、細胞の重要な構造成分に損傷を引き起こすカスパーゼの活性化も伴い、その解体及び死を誘引する。アポトーシスプロセスのレギュレーションは複雑であり、複数の細胞内シグナル伝達経路の活性化又はリプレッションが関与している(Cory S. et al., Nature Review Cancer, 2002, 2, 647-656)。
【0003】
アポトーシスのデレギュレーションは、特定の病理に関与している。アポトーシスの増加は、神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病及び虚血に関連している。逆に、アポトーシス実行の欠損は、ガンの進行及びその化学療法抵抗性、自己免疫疾患、炎症性疾患及びウイルス感染において重要な役割を果たす。したがって、アポトーシスの欠如は、ガンの表現型シグネチャーの1つである(Hanahan D. et al., Cell 2000, 100, 57-70)。Bcl-2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質は、多数の病理に関連している。Bcl-2ファミリーのタンパク質の関与は、多くのタイプのガン、例えば、結腸ガン、乳ガン、小細胞肺ガン、非小細胞肺ガン、膀胱ガン、卵巣ガン、前立腺ガン、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、骨髄腫及び前立腺ガンにおいて説明されている。Bcl-2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質の過剰発現は、腫瘍形成、化学療法に対する抵抗性及びガンに罹患した患者の臨床予後に関与する。したがって、Bcl-2ファミリーのタンパク質の抗アポトーシス活性を阻害する化合物に対する治療上の必要性が存在する。
【0004】
ベネトクラクス(ABT-199としても公知)は、選択的Bcl-2阻害剤であり、Bcl-2とBH3タンパク質との相互作用のみを打ち消し、このため、アポトーシスを誘引する。ベネトクラクスは、(i)17p欠失の有無にかかわらず、慢性リンパ性白血病(CLL)又は小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有し、以前に少なくとも1回の処置を受けている成人を処置し、(ii)アザシチジンもしくはデシタビン又は低用量のシタラビンとの組み合わせで、75歳以上で新たに診断された急性骨髄性白血病(AML)を有する成人又は標準的な化学療法の使用を妨げる他の医学的状態を有する成人を処置するのに承認されている。しかしながら、CLLではかなりの数の再発が観察されている。これは、抵抗性の獲得メカニズムが示唆される。他の高親和性ターゲット治療では、ターゲットの特定変異が、抵抗性の原因であることが実証されている(Garraway & Janne, Cancer Discovery 2012, 2, 214-226)。種々のベネトクラクス抵抗性由来白血病及びリンパ腫細胞系統において、その疎水溝に影響を及ぼすBcl-2突然変異が特定されている(Fresquet et al., Blood 2014, 123, 4111-4119;Tahir et al., BMC Cancer, 17:399)。Bcl-2における1つの突然変異(101位におけるグリシンがバリンにより置換される:Gly101Val)は、近年、臨床的に関連性があることが示された。ベネトクラクスに抵抗性の患者からのCLLサンプルで特定されたためである。このGly101Val突然変異は、Bcl-2の疎水性溝へのベネトクラクス結合の減少及びベネトクラクスに対する抵抗性と関連していた(Blombery et al., Cancer Discovery 2019, 9, 342-353)。また、Gly101Val突然変異は、臨床再発を妨げるための潜在的なバイオマーカーも提供する可能性がある。これらの臨床データに基づいて、Gly101Val突然変異を有するガン患者、特に、抵抗性患者及び再発患者を処置するのに使用することができる新規な治療薬を特定する必要がある。さらに近年では、Bcl-2における他の突然変異、例えば、Asp103Tyr(103位におけるアスパラギン酸がチロシンにより置換される、D103Yとも呼ばれる)、Asp103Val(103位におけるアスパラギン酸がバリンにより置換される、D103Vとも呼ばれる)、Asp103Glu(103位におけるアスパラギン酸がグルタミン酸により置換される、D103Eとも呼ばれる)、Ala113Gly(113位におけるアラニンがグリシンにより置換される、A113Gとも呼ばれる)、Arg129Leu(129位におけるアルギニンがロイシンにより置換される、R129Lとも呼ばれる)及びVal156Asp(156位にけるバリンがアスパラギン酸により置換される、V156Dとも呼ばれる)が、ベネトクラクスにより処置されたCLL患者において特定されているが、ナイーブなCLL患者では特定されていない(Tausch et al., Hematologica 2019, 9, e434-e437;Blombery et al., Blood 2020, 135(10), 773-777)。注目すべき点として、ゲノム分析により、1名のCLL患者が、異なるBcl-2突然変異(すなわち、G101V及びD103Yを含む)を有する場合があったことが実証されている。全ての突然変異は、NGS(次世代配列決定)データにおいて異なる読取りで存在することが観察され、異なる白血病細胞におけるそれらの存在(ヘテロ接合性を想定)及び突然変異の相互排他性と一致した(Blombery et al., Blood 2020, 135(10), 773-777)。
【0005】
化合物A及び化合物Bを含む第2世代のBcl-2特異的阻害剤が存在し、これらは、ベネトクラクスと比較して、部分的に重複するが、異なるBcl-2疎水性グルーブ結合様式を有する。
【0006】
化合物A(S55746又はBCL201としても公知)の化学構造は、
【化1】
である。
【0007】
化合物Aの調製及び幾つかのガンモデルにおけるその薬理学的効果は、文献(Casara et al., Oncotarget 2018, Vol.9, No.28, 20075-20088及び対応する補足情報)に記載されている。さらに、化合物A及び構造的に近い類似体、ガンの処置のためのBcl-2阻害剤としてのそれらの使用並びにそれらの医薬製剤も、WO第2013/110890号に記載されている。同文献の内容は、参照により組み入れられる。化合物Aの調製は、塩酸塩の形態で、その文献の実施例1に具体的に開示されている。
【0008】
化合物Aは、S2/3/4/5を含むタンパク質表面積の大部分を占めるベネトクラクス類似体(Souers et al., Nature Medicine 2013, 19, 202-208)とは対照的に、典型的には、S1/2/3と呼ばれる領域を占める。化合物Aは、S2に深く埋め込まれた残基A149の主鎖カルボニルへの1つの水素結合を形成する。Bcl-2への化合物Aの結合についてのサイズ非依存性エンタルピー効率(0.83)は、最適な極性及びファンデルワールス相互作用を示唆し、高度に特異的な結合を示す(Casara et al., Oncotarget 2018, 9, 20075-20088)。
【0009】
化合物Bの構造は、
【化2】
5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミド
である。
【0010】
化合物Bの調製、ガンの処置のためのBcl-2阻害剤としてのその使用及びその医薬製剤は、WO第2015/011400号に記載されている。同文献の内容は、参照により組み入れられる。化合物Bは、塩酸塩の形態で、WO第2015/011400号の実施例386に具体的に開示されている。化合物Bは、Bcl-2特異的BH3模倣体の全ての特徴を示し、血小板を温存しながら、Bcl-2依存性リンパ系腫瘍異種移植モデルにおいて堅牢な抗腫瘍活性を示す。
【0011】
1つの想定は、一方ではベネトクラクス、他方では化合物A又は化合物Bが、異なった結合様式を示すことである。この構造的仮説は、野生型Bcl-2タンパク質、Gly101Val、Asp103Tyr、Asp103Val、Asp103Glu、Arg129Leu及びAla113Gly突然変異体Bcl-2タンパク質の両方における3つの化合物の異なる結合パラメーターを決定することによって確認された。このため、Bcl-2タンパク質における突然変異は、ベネトクラクスに対する抵抗性の原因となる場合があるが、化合物A又は化合物Bに対する抵抗性の原因とはならない場合がある。とりわけ、Gly101Val突然変異は、ベネトクラクスとは対照的に、化合物A及び化合物Bの両方の結合部位から離れて位置した。さらに、Asp103Tyr突然変異は、Bcl-2とABT-199との間の重要な水素結合を除去し、Asp103Tyr突然変異を有するBcl-2に対するABT-199の親和性をかなり低下させる。化合物Bは、D103と全く直接的な相互作用を形成せず、D103から少なくとも9オングストローム離れて結合し、このため、Asp103Tyr突然変異を有するBcl-2に対するその親和性は、ほんのわずかしか影響を受けない。
【0012】
本発明のBcl-2阻害剤は、アポトーシスの欠損を含む病理、例えば、ガン並びに免疫疾患及び自己免疫疾患の処置、より具体的には、その疎水性溝に影響を及ぼすBcl-2突然変異に起因するベネトクラクスに抵抗性の患者において、それらを使用することを可能にするアポトーシス促進特性を有する。
【0013】
概要
本発明は、下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、Bcl-2阻害剤を提供し、ここで、Bcl-2阻害剤は、化合物A、化合物B又はその薬学的に許容し得る塩である。特に、本発明のBcl-2阻害剤は、Bcl-2 Gly101Val突然変異体に対して強力な活性を有することが見出された。野生型Bcl-2タンパク質とGly101Val突然変異体との間に観察される活性のわずかな損失は、本発明のBcl-2阻害剤の投与がGly101Val突然変異を有する患者において臨床的に関連する応答を誘引する可能性があることを示唆している。更なる細胞研究から、化合物Bは、Bcl-2野生型タンパク質を発現している細胞系統と比較して、Bcl-2 Gly101Val突然変異体を有する細胞系統において、わずかに効力の損失(9~7倍)を示したにすぎないことがさらに確認された。より一般的には、本明細書に開示された生化学的プロファイルを考慮すると、化合物Bは、ABT-199と比較して、上記検討された変異体のセットに対してより良好なオンターゲット活性を示すことが見出された。生化学的データに加えて、細胞研究から、Bcl-2 Asp103Tyrを過剰発現しているKMS-12-PE細胞系統を使用する細胞アッセイにおいて、ABT-199と化合物Bとの間の22倍の効力のシフトをさらに実証された。本開示は、全体として、本発明のBcl-2阻害剤、より具体的には、化合物Bが下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有する患者において有益な効果を有することができることを示唆している。特定の態様では、ベネトクラクス処置に対してさらに以前の突然変異のうちの1つを獲得したCLL患者がターゲットとなる。
【0014】
別の態様では、本発明は、下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全ての突然変異を有するBcl-2媒介ガンを有し、(i)少なくとも1つの抗ガン剤に抵抗性であるかもしくは(ii)抗ガン剤での処置後に再発しているか又は(i)と(ii)との両方である患者を感作させるための方法であって、治療上有効量のBcl-2阻害剤を前記患者に投与することを含む、方法に関する。
【0015】
全体として、本明細書に記載された本発明により、下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有する抵抗性又は再発性ガン患者(ベネトクラクス抵抗性患者を含む)に、治療上有効量の化合物A又は化合物Bを含む組成物を投与することが可能となる。
【0016】
発明の詳細な説明
「化合物A」は、N-(4-ヒドロキシフェニル)-3-{6-[((3S)-3-(4-モルホリニルメチル)-3,4-ジヒドロ-2(1H)-イソキノリニル)カルボニル]-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル}-N-フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1-インドリジンカルボキサミドを意味する。
【0017】
「化合物A,HCl」は、塩酸塩の形態にあるN-(4-ヒドロキシフェニル)-3-{6-[((3S)-3-(4-モルホリニルメチル)-3,4-ジヒドロ-2(1H)-イソキノリニル)カルボニル]-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル}-N-フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1-インドリジンカルボキサミドを意味する。
【0018】
「化合物B」は、5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドを意味する。
【0019】
「化合物B,HCl」は、5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドが塩酸塩の形態にあることを意味する。
【0020】
「化合物B,H2SO4」は、5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドが硫酸水素塩の形態にあることを意味する。
【0021】
「遊離分子」及び「遊離塩基」は、本明細書において互換的に使用され、塩形態でない場合の化合物A又は化合物Bを指す。
【0022】
「ガン」は、細胞群が制御不能な増殖を示す疾病のクラスを意味する。ガンの種類は、血液ガン(リンパ腫及び白血病)及びガン腫、肉腫又は芽腫を含む固形腫瘍を含む。特に「ガン」は、白血病、リンパ腫又は多発性骨髄腫、とりわけ、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫(濾胞性リンパ腫を含む)又は急性骨髄性白血病を指す。
【0023】
「Bcl-2媒介性ガン」は、Bcl-2タンパク質がアポトーシスに対する障壁として作用し、腫瘍発生及びガン治療に対する抵抗性を促進することができるガンを意味する。特に、「Bcl-2媒介性ガン」は、Bcl-2タンパク質発現のデレギュレーションにより特徴付けられるガンを含む。
【0024】
「HP-β-シクロデキストリン」は、「ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン」又は「2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン」又は「ヒドロキシプロピルベタデクス」とも呼ばれる。特に、HP-β-シクロデキストリンは、下記製品名:Cavitron(商標)W7HP7(典型的な置換度:6.0~8.0;分子量:約1520)、Cavitron(商標)W7HP5(典型的な置換度:4.1~5.1;分子量:約1410)、Kleptose(商標)HPB又はKleptose(商標)HPで市販されている。
【0025】
本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」を意味し、特に断らない限り、例えば、成分が合計して100%になる場合、任意の追加の成分の存在を排除することを意図しない。
【0026】
本明細書で使用する場合、任意の疾患又は障害の「処置する」、「処置すること」又は「処置」という用語は、一実施態様では、疾患又は障害を改善すること(すなわち、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発症を遅らせ、停止させ又は減少させること)を指す。別の実施態様では、「処置する」、「処置すること」又は「処置」は、患者により識別できない場合があるものを含む少なくとも1つの身体パラメーターを軽減し又は改善することを指す。さらに別の実施態様では、「処置する」、「処置すること」又は「処置」は、身体的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体パラメーターの安定化)のいずれか又はその両方で、疾患又は障害をモデュレーションすることを指す。
【0027】
本明細書で使用する場合、「治療上有効量の組成物」は、患者に治療上の利益を引き出すのに有効量の有効成分を含有する有効量の本発明の組成物を意味する。化合物Aについて、有用な用量は、遊離塩基として表わして1日当たりに50mg~1500mgの範囲である。本発明に従って投与される化合物Bの用量は、遊離塩基として表わして5mg~1000mgである。
【0028】
本明細書で使用する場合、「感作させるための方法」は、再発患者又は抵抗し得患者における疾患又は障害を改善する(すなわち、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発症を遅らせ又は停止させ又は減少させる)ことを可能にする治療法を意味する。特定の実施態様では、「感作させるための方法」は、既存の治療に抵抗性の患者における臨床反応の回復を意味する。
【0029】
本明細書で使用する場合、「ターゲット療法」は、単に(伝統的な化学療法と同様に)急速に分裂している全ての細胞を妨害するのではなく、発ガン及び腫瘍増殖に必要な特定のターゲット分子を妨害することにより、ガン細胞の増殖を阻止する治療法を意味する。
【0030】
実施態様
以下に、本発明の幾つかの実施態様を記載する。
E1.
下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤であり、
ここで、Bcl-2阻害剤は、N-(4-ヒドロキシフェニル)-3-{6-[((3S)-3-(4-モルホリニルメチル)-3,4-ジヒドロ-2(1H)-イソキノリニル)カルボニル]-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル}-N-フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1-インドリジンカルボキサミド(化合物A)及び5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミド(化合物B)又はその薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される、
Bcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤。
【0031】
E2.
ガンが、Gly101Val突然変異を有する、E1記載のBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤。
【0032】
E3.
ガンが、Asp103Tyr突然変異を有する、E1記載のBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤。
【0033】
E4.
ガンが、Asp103Val突然変異を有する、E1記載のBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤。
【0034】
E5.
ガンが、Asp103Glu突然変異を有する、E1記載のBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤。
【0035】
E6.
ガンが、Arg129Leu突然変異を有する、E1記載のBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤。
【0036】
E7.
ガンが、Ala113Gly突然変異を有する、E1記載のBcl-2媒介性ガンの処置に使用するためのBcl-2阻害剤。
【0037】
E8.
Bcl-2媒介性ガンが、慢性リンパ性白血病(CLL)である、E1~E7のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤。代替的には、Bcl-2媒介性ガンが、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫である。
【0038】
E9.
化合物Aが、塩酸塩の形態にある、E1~E7のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤。
【0039】
E10.
化合物Bが、硫酸水素塩の形態にある、E1~E7のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤。
【0040】
E11.
化合物Bが、塩酸塩の形態にある、E1~E7のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤。
【0041】
E12.
化合物Bを静脈内投与する、E1~E7のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤。
【0042】
E13.
下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、E1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を含む、
医薬組成物。
【0043】
E14.
Gly101Val突然変異を有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、E13記載のBcl-2阻害剤を含む、
医薬組成物。
【0044】
E15.
Asp103Tyr突然変異を有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、E13記載のBcl-2阻害剤を含む、
医薬組成物。
【0045】
E16.
Asp103Val突然変異を有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、E13記載のBcl-2阻害剤を含む、
医薬組成物。
【0046】
E17.
Asp103Glu突然変異を有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、E13記載のBcl-2阻害剤を含む、
医薬組成物。
【0047】
E18.
Arg129Leu突然変異を有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、E13記載のBcl-2阻害剤を含む、
医薬組成物。
【0048】
E19.
Ala113Gly突然変異を有するBcl-2媒介性ガンの処置に使用するための、E13記載のBcl-2阻害剤を含む、
医薬組成物。
【0049】
E20.
下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを有するBcl-2媒介性ガンを有し、(a)少なくとも1つの抗ガン剤に抵抗性であるかもしくは(b)抗ガン剤での処置後に再発しているか又は(a)と(b)との両方である患者を感作させるための方法であって、
治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与することを含む、
方法。
【0050】
E21.
Gly101Val突然変異を有するBcl-2媒介性ガンを有し、(i)少なくとも1つの抗ガン剤に抵抗性であるかもしくは(ii)抗ガン剤での処置後に再発しているか又は(i)と(ii)との両方である患者を感作させるための方法であって、
治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与することを含む、
方法。
【0051】
E22.
Asp103Tyr突然変異を有するBcl-2媒介性ガンを有し、(i)少なくとも1つの抗ガン剤に抵抗性であるかもしくは(ii)抗ガン剤での処置後に再発しているか又は(i)と(ii)との両方である患者を感作させるための方法であって、
治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与することを含む、
方法。
【0052】
E23.
Asp103Val突然変異を有するBcl-2媒介性ガンを有し、(i)少なくとも1つの抗ガン剤に抵抗性であるかもしくは(ii)抗ガン剤での処置後に再発しているか又は(i)と(ii)との両方である患者を感作させるための方法であって、
治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与することを含む、
方法。
【0053】
E24.
Asp103Glu突然変異を有するBcl-2媒介性ガンを有し、(i)少なくとも1つの抗ガン剤に抵抗性であるかもしくは(ii)抗ガン剤での処置後に再発しているか又は(i)と(ii)との両方である患者を感作させるための方法であって、
治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与することを含む、
方法。
【0054】
E25.
Arg129Leu突然変異を有するBcl-2媒介性ガンを有し、(i)少なくとも1つの抗ガン剤に抵抗性であるかもしくは(ii)抗ガン剤での処置後に再発しているか又は(i)と(ii)との両方である患者を感作させるための方法であって、
治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与することを含む、
方法。
【0055】
E26.
Ala113Gly突然変異を有するBcl-2媒介性ガンを有し、(i)少なくとも1つの抗ガン剤に抵抗性であるかもしくは(ii)抗ガン剤での処置後に再発しているか又は(i)と(ii)との両方である患者を感作させるための方法であって、
治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与することを含む、
方法。
【0056】
E27.
抗ガン剤が、ターゲット療法である、E20~E26のいずれか1つ記載の方法。
【0057】
E28.
ガンが、慢性リンパ性白血病(CLL)である、E27記載の方法。
【0058】
E29.
ターゲット療法が、ベネトクラクス(ABT-199)である、E27又はE28記載の方法。
【0059】
E30.
患者におけるBcl-2媒介性ガンを処置する方法であって、
(a)前記患者から生体サンプルを取得し、生体サンプルが下記突然変異:(i)Gly101Val;(ii)Asp103Tyr;(iii)Asp103Val;(iv)Asp103Glu;(v)Arg129Leu及び(vi)Ala113Glyの少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てを含むかどうかを検出する工程と、
(b)ベネトクラクスに対する応答の可能性が低下していると、前記患者を特定する工程と、
(c)このようにして検出された突然変異の存在に基づいて、治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与する工程とを含む、
方法。
【0060】
E31.
患者におけるBcl-2媒介性ガンを処置する方法であって、
(a)前記患者から生体サンプルを取得し、生体サンプルがGly101Val突然変異を含むかどうかを検出する工程と、
(b)ベネトクラクスに対する応答の可能性が低下していると、前記患者を特定する工程と、
(c)Gly101Val突然変異の存在に基づいて、治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与する工程とを含む、
方法。
【0061】
E32.
患者におけるBcl-2媒介性ガンを処置する方法であって、
(a)前記患者から生体サンプルを取得し、生体サンプルがAsp103Tyr突然変異を含むかどうかを検出する工程と、
(b)ベネトクラクスに対する応答の可能性が低下していると、前記患者を特定する工程と、
(c)Asp103Tyr突然変異の存在に基づいて、治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与する工程とを含む、
方法。
【0062】
E33.
患者におけるBcl-2媒介性ガンを処置する方法であって、
(a)前記患者から生体サンプルを取得し、生体サンプルがAsp103Val突然変異を含むかどうかを検出する工程と、
(b)ベネトクラクスに対する応答の可能性が低下していると、前記患者を特定する工程と、
(c)Asp103Val突然変異の存在に基づいて、治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与する工程とを含む、
方法。
【0063】
E34.
患者におけるBcl-2媒介性ガンを処置する方法であって、
(a)前記患者から生体サンプルを取得し、生体サンプルがAsp103Glu突然変異を含むかどうかを検出する工程と、
(b)ベネトクラクスに対する応答の可能性が低下していると、前記患者を特定する工程と、
(c)Asp103Glu突然変異の存在に基づいて、治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与する工程とを含む、
方法。
【0064】
E35.
患者におけるBcl-2媒介性ガンを処置する方法であって、
(a)前記患者から生体サンプルを取得し、生体サンプルがArg129Leu突然変異を含むかどうかを検出する工程と、
(b)ベネトクラクスに対する応答の可能性が低下していると、前記患者を特定する工程と、
(c)Arg129Leu突然変異の存在に基づいて、治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与する工程とを含む、
方法。
【0065】
E36.
患者におけるBcl-2媒介性ガンを処置する方法であって、
(a)前記患者から生体サンプルを取得し、生体サンプルがAla113Gly突然変異を含むかどうかを検出する工程と、
(b)ベネトクラクスに対する応答の可能性が低下していると、前記患者を特定する工程と、
(c)Ala113Gly突然変異の存在に基づいて、治療上有効量のE1~E12のいずれか1つ記載のBcl-2阻害剤を前記患者に投与する工程とを含む、
方法。
【0066】
実施例1:野生型Bcl-2及びBcl-2 Gly101Val突然変異体に対する化合物A及び化合物Bの親和性データ
蛍光クエンチアッセイにより、
(i)アミノ酸配列(配列番号:02):
【化3】
(同配列は、C末端において、以下で定義されるステインに対応するアミノ酸Xに連結している)
を有するC末端Cy5ラベルBcl-2野生型タンパク質(UniProtKB(登録商標)一次受託番号P10415)
又は
(ii)アミノ酸配列(配列番号:03):
【化4】
(同配列は、C末端において、以下で定義されるステインに対応するアミノ酸Xに連結している。ここで、Xは、Lumiprobe GmbHカタログ番号13380からのsulpho-Cyanine5により硫黄でラベルされたシステインである)
を有するBcl-2 Gly101Val突然変異体
の蛍光強度の変化を、アミノ酸配列(配列番号:01):[QWAREIGAQLRRMADDLNAQY](同配列は、C末端において、アミノ酸X’に連結している。ここで、X’は、AAT Bioquestカタログ番号2079からのTQ5WSにより硫黄でラベルされたシステインである)を有するPUMA(UniProtKB(登録商標)一次受託番号Q9BXH1)から得られたC末端ラベルされたペプチドの結合に基づいて測定する。
【0067】
このペプチドと同じ部位に競合的に結合する化合物の添加により、蛍光クエンチ剤の置換によるタンパク質の蛍光強度が向上する。
【0068】
各化合物の11点連続希釈をDMSO中で調製し、最終バッファー条件を10mM 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸[HEPES]、150mM NaCl、0.05% Tween 20(pH7.4)及び5% DMSOとした。アッセイにおける最終タンパク質濃度は、1nMであり、ペプチドは、50nM(野生型Bcl-2)又は100nM(Bcl-2 Gly101Val)で存在する。実験を室温で2時間インキュベーションし、その後、蛍光強度をBiotek SynergyNeoプレートリーダー(励起620nm、発光680nm)で測定した。用量応答曲線を、4パラメーターロジスティックモデル(シグモイド用量応答モデル)を使用して、XL-Fitソフトウェアでプロットし、50%の蛍光強度の上昇を与えた阻害濃度を決定した(IC50)。KI値をCer et al, Nucleic Acids Res, 2009, Jul 1;37(WebServer issue): W441-W445に従って、IC50値から決定した。
【0069】
【0070】
データから、Bcl-2野生型タンパク質と比較して、Bcl-2 Gly101Val突然変異体に対するABT-199の活性の顕著な損失が実証される。一方、化合物A及び化合物Bの親和性は、この突然変異によりわずかに影響を受けるのみである。さらに、化合物Bは、Bcl-2 Gly101Val突然変異体に対して、ABT-199より75倍強力である。
【0071】
実施例2:野生型Bcl-2又はBcl-2 Gly101Val突然変異体のいずれかを発現する改変細胞における化合物A及び化合物Bのin vitro細胞傷害性
材料及び方法
細胞系統を供給者により推奨される培地中において、5% CO2を含む加湿大気中、37℃で増殖させた。RS4;11(ATCC(登録商標)CRL1873(商標))をAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入し、KMS-12-PE(ACC 606)をLeibniz-Institute DSMZ(Braunschweig, Germany)から購入した。野生型Bcl-2(「Bcl-2 WT」とも呼ばれる)及びG101Vで変異したBcl-2(「Bcl-2 G101V」とも呼ばれる)を含有するレンチウイルス粒子をpcLV-CMV-DEST-IRES-TagRFPにクローニングした。レンチウイルス粒子(1×106個)を8μg/mlでポリブレンと混合し、32℃で1時間スピノキュレーションすることによりトランスダクションし、一晩インキュベーションした。KMS-12-PEについては8日後、RS4;11については21日後に、TagRFP陽性細胞をFACSにより分取した。BCL2発現を、抗Flag及び抗BCL2抗体を使用するイムノブロッティングによりモニターした。細胞を96ウェルプレートに播種し、1:3での16連続希釈の化合物(9つの異なる濃度)で処理した。ABT-199、化合物A及び化合物Bで72時間処理した後、細胞生存率を、CellTiter-Glo(登録商標)試薬を使用して評価した。結果を、化合物により処理しない細胞(対照ウェル)の生存率に対して正規化した。C50値を、XCellソフトウェアで非線形回帰アルゴリズムを使用して計算した。
【0072】
【0073】
【0074】
結論
これらの結果から、2種類の細胞系統を使用する細胞アッセイにおいて、ABT-199と化合物Bとの間の効力の変化が実証された。実際に、Bcl-2野生型タンパク質を過剰発現する細胞系統と比較して、Bcl-2 G101V突然変異体を過剰発現する細胞系統において、ABT-199の効力の著しい損失が観察された(細胞系統に応じて、41~12倍の差)。対照的に、化合物Bは、G101V Bcl-2タンパク質又は天然型タンパク質のいずれかを過剰発現する細胞系統間において、差異はわずか9~7倍であることが示した。化合物B及びABT-199は両方とも、野生型Bcl-2を過剰発現する両細胞系統において同様の効力を示したが、化合物Bは、Bcl-2 G101V突然変異体を過剰発現する細胞系統において、ABT-199より5~2倍高い効力を示した。
【0075】
実施例3:治験実施計画書
再発性又は抵抗性急性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫又は慢性リンパ性白血病(CLL)を有する患者を対象に静脈内投与された化合物Bを評価するための第I相非盲検非無作為化非比較多施設共同試験を設定した。特に、本試験に含まれたCLL患者は、iwCLLガイドライン(Hallek M. et al, Blood, 2018, Vol. 131, 25, 2745-2760)で定義されているように、ベネトクラクス処置に対して再発性又は処置抵抗性(処置失敗、例えば、病勢安定、非奏効、病勢進行、原因を問わない死亡を除く)であり、代替療法が確立されていない。この試験には、約60名の患者が登録されるであろう。この試験は、2つのパート:用量漸増のためのパート1、用量拡大のためのパート2に分けて設計されている。
【0076】
第1の目的
急性骨髄性白血病(AML)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)又は慢性リンパ性白血病(CLL)を有する患者における化合物Bの安全性プロファイル(用量制限毒性(DLT)及び最大耐用量(MTD)を含む)及び忍容性を決定し、推奨第II相用量(RP2D)を安全性、PK及び予備的な有効性の結果に従って決定する。
【0077】
第2の目的
-血漿中及び尿中の化合物Bの薬物動態(PK)プロファイルを決定する。
-化合物Bの予備的な抗腫瘍活性を、各評価集団(AML、NHL、MM、CLL)に適した奏効基準を使用して評価する。
【0078】
突然変異を有するCLL患者に関する探索的目的
以前にベネトクラクスを受けたAML又はCLLを患っている患者における処置前後の骨髄穿刺液及び血液サンプルを比較することにより、Bcl-2突然変異(Gly101Val突然変異及びAsp103Tyr突然変異を含む)を有する細胞に対する化合物Bの有効性を評価する。突然変異を、Droplet Digital PCR技術(Vogelstein and Kinzler, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999 96 Genetics; Olmedillas-Lopez S et al, Mol Diagn Ther. 2017 Oct;21(5):493-510)を使用して、患者サンプルを分析することにより検出する。
【0079】
試験薬剤
-化合物Bを、中心又は末梢静脈ラインを介して、i.v.注入により投与するものとする。
-注入用液を、以下に記載されるように、HP-β-シクロデキストリンと共に配合された150mg 化合物B(遊離塩基として表される)を含有する20mLバイアルを使用して調製するものとする。
-予備的な安全性及びPKデータに基づいて、注入期間を適合させることができる。
【0080】
20mLバイアル中でHP-β-シクロデキストリンに溶解させた化合物Bの凍結乾燥物の調製
凍結乾燥物を20mLバイアル中に調製する。このバイアル中で、非経口経路により投与される溶液を再構成することが可能であろう。この凍結乾燥物を、20mg/mL 化合物B(遊離塩基)の用量を含有する20% Cavitron(商標)W7HP5液の凍結乾燥により得る。
【0081】
手順
5L反応器中に、1500g 水を秤量する。マグネティックスターラーで攪拌しながら、ボルテックスし、ついで、600g Cavitron(商標)W7HP5に注ぐ。シクロデキストリンが完全に可溶化するまで、媒体を大気温度で撹拌し、68.16g 「化合物B,H2SO4」を加え、溶液を60℃以下に加熱する。懸濁液をマグネティックスターラーで数時間撹拌し、ついで、媒体を30℃未満の温度に戻す。得られた溶液のpHを測定し、0.5M NaOH溶液をゆっくり注いで、pH3.0に調整する。マグネティックスターラーでの攪拌を維持しながら、水を加えることにより、溶液を3Lの体積にする。
【0082】
そのようにして得られた溶液を0.2μmフィルターに通す。
【0083】
20mLバイアルにろ過された溶液を充填し、各バイアルが、少なくとも150mg 化合物B(遊離塩基として表される)を含有するようにし、サンプルを凍結乾燥工程に供する。
【0084】
得られた凍結乾燥物は、非経口投与のための医薬組成物の調製に使用されることが意図される。
【0085】
用量配分方法論
全ての適応症について組み合わせられ、過剰用量制御(EWOC)法による漸増により導かれるベイズ階層モデル(BHM)を、サイクル1中のDLTの発生に基づいて、用量漸増を導き、MTDを推定するのに使用するものとする。
【0086】
代替的に、過剰用量対照(EWOC)法による漸増により導かれる適応ベイズ論理回帰モデル(BLRM)を使用して、サイクル1中のDLTの発生に基づいて用量推奨を行い、単剤として投与された化合物BについてのMTD/RP2Dを推定する。
【0087】
処置期間
処置の予定期間は、病勢進行までとする。患者は、許容できない毒性のために試験薬剤による処置を早期に中止することができかつ/又は処置を治験責任医師もしくは患者の判断で治療を中止する。
【0088】
実施例4:野生型Bcl-2、Gly101Val突然変異体、Bcl-2 Asp103Tyr突然変異体、Asp103Val突然変異体、Asp103Glu突然変異体、Arg129Leu突然変異体及びAla113Gly突然変異体に対する化合物A及び化合物Bの親和性データ
蛍光クエンチアッセイにより、
(i)アミノ酸配列(配列番号:02):
【化5】
(同配列は、C末端において、以下で定義されるステインに対応するアミノ酸Xに連結している)
を有するC末端Cy5ラベルBcl-2野生型タンパク質(UniProtKB(登録商標)一次受託番号P10415)
又は
(ii)アミノ酸配列(配列番号:03):
【化6】
(同配列は、C末端において、以下で定義されるステインに対応するアミノ酸Xに連結している)
を有するBcl-2 Gly101Val突然変異体
もしくは
(iii)アミノ酸配列(配列番号:04):
【化7】
(同配列は、C末端において、以下で定義されるステインに対応するアミノ酸Xに連結している)
を有するBcl-2 Asp103Tyr突然変異体
もしくは
(iv)アミノ酸配列(配列番号:05):
【化8】
(同配列は、C末端において、以下で定義されるステインに対応するアミノ酸Xに連結している)
を有するBcl-2 Asp103Val突然変異体
もしくは
(v)アミノ酸配列(配列番号:06):
【化9】
(同配列は、C末端において、以下で定義されるステインに対応するアミノ酸Xに連結している)
を有するBcl-2 Asp103Glu突然変異体
もしくは
(vi)アミノ酸配列(配列番号:07):
【化10】
(同配列は、C末端において、以下で定義されるステインに対応するアミノ酸Xに連結している)
を有するBcl-2 Arg129Leu突然変異体
もしくは
(vii)アミノ酸配列(配列番号:08):
【化11】
(同配列は、C末端において、アミノ酸Xに連結している)
を有するBcl-2 Ala113Gly突然変異体
(ここで、Xは、Lumiprobe GmbHカタログ番号13380からのsulpho-Cyanine5により硫黄でラベルされたシステインである)
の蛍光強度の変化を、アミノ酸配列(配列番号:01):[QWAREIGAQLRRMADDLNAQY](同配列は、C末端領域において、アミノ酸X’に連結している。ここで、X’は、AAT Bioquestカタログ番号2079からのTQ5WSにより硫黄でラベルされたシステインである)を有するPUMA(UniProtKB(登録商標)一次受託番号Q9BXH1)から得られたC末端ラベルされたペプチドの結合に基づいて測定する。
【0089】
このペプチドと同じ部位に競合的に結合する化合物の添加により、蛍光クエンチ剤の置換によるタンパク質の蛍光強度が向上する。
【0090】
目的は、蛍光強度により測定される、PUMAクエンチ試薬置換を介した、リコンビナント野生型Bcl-2、G101V、D103Y、D103V、D103E、A113G、R129L突然変異体の競合的結合剤としてのABT-199、化合物A及び化合物BのKIを決定することであった。
【0091】
アッセイを黒壁、平底、低結合384ウェルプレート中で行った。化合物(DMSO中の最終濃度5%)を、G101Vの場合を除いて(この場合、100nM ペプチドを使用した)、50nM ペプチド(プローブ)及び[1nM 野生型Bcl-2タンパク質又は1nM Bcl-2突然変異体]を含有するバッファー(10mM 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸[HEPES]、150mM NaCl、0.05% Tween 20、pH7.4)中で混合した。アッセイプレートを18℃で約2時間インキュベーションし、蛍光強度をSynergy Neoリーダー(Ex.620nm、Em.680nm)において測定した。用量応答曲線を、4パラメーターロジスティックモデル(シグモイド用量応答モデル)を使用して、XL-Fitソフトウェアでプロットし、50%の蛍光強度の上昇を与えた阻害濃度を決定した(IC50)。cKI値をCer et al, Nucleic Acids Res, 2009, Jul 1;37(WebServer issue): W441-W445に従って、IC50値から決定した。
【0092】
【0093】
【0094】
データから、Bcl-2野生型タンパク質と比較して、Bcl-2 Asp103Tyr、Bcl-2 Asp103Val及びBcl-2 Asp103Glu突然変異体に対するABT-199の活性の著しい喪失が実証される。一方、化合物A及び化合物Bの親和性は、これらの突然変異によりわずかにしか影響を受けない。化合物Bの親和性は、Arg129Leu及びAla113Gly突然変異により中程度に影響を受ける。これにもかかわらず、化合物Bは、Arg129Leu及びAla113Gly突然変異体それぞれに対して、ABT-199より12倍及び4倍強力である。
【0095】
実施例5:Asp103Tyr変異体を発現する改変細胞における化合物B及びABT-199のin vitro細胞傷害性
材料及び方法
細胞系統を、供給者により推奨される培地中において、5% CO2を含む加湿大気中、37℃で増殖させた。KMS-12-PE(ACC 606)をLeibniz-Institute DSMZ(Braunschweig, Germany)から得た。D103Yで突然変異したBcl-2を含有するレンチウイルス粒子をpcLV-CMV-DEST-IRES-TagRFPにクロ-ニングした。レンチウイルス粒子(1×106個)を8μg/mlでポリブレンと混合し、32℃で1時間スピノキュレーションすることによりトランスダクションし、一晩インキュベーションした。8日後に、TagRFP陽性KMS-12-PE細胞をFACSにより分取した。Bcl-2発現を、抗Flag及び抗BCL2抗体を使用するイムノブロッティングによりモニターした。細胞を96ウェルプレートに播種し、1:3での16連続希釈の化合物により、9点で処理した。ABT-199及び化合物Bで72時間処理した後、細胞生存率を、CellTiter-Glo(登録商標)試薬を使用して評価した。結果を、化合物により処理しない細胞(対照ウェル)の生存率に対して正規化した。C50値を、XCellソフトウェアで非線形回帰アルゴリズムを使用して計算した。
【0096】
【0097】
結論
これらの結果から、BCL2 D103Yを過剰発現するKMS-12-PE細胞系統を使用する細胞アッセイにおいて、ABT-199と化合物Bとの間の効力の変化が実証された。化合物Bは、Bcl-2 D103Y突然変異体を過剰発現する細胞系統において、ABT-199より約22倍高い効力を示した。
【0098】
D103V、D103E、R129L及びA113G突然変異体を含む他のBcl-2臨床突然変異体を過剰発現する細胞系統を、現在、上記言及された化合物を評価するために、同じプロトコ-ルを同様に使用して設定しているところである。
【0099】
Bcl-2突然変異体を発現する改変細胞(実施例2及び5に記載された改変細胞系統を含む)に由来する異種移植モデルに基づく更なるin vivo実験から、化合物Bが、Bcl-2突然変異、例えば、G101V及び/又はD103Y等を有するBcl-2媒介性ガンを処置するのに有効な治療であることができることを示すことができる。
【0100】
更なる結果から、G101V、D103Y、D103V、D103E、R129L及びA113Gから選択されるBcl-2突然変異のうちの少なくとも1つを有するCLL患者由来のex vivoサンプルにおいて、化合物Bの効力を、細胞生存アッセイを使用して試験することにより得ることができる。
【配列表】
【国際調査報告】