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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(54)【発明の名称】強誘電体センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20220707BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20220707BHJP
   H01L 41/193 20060101ALI20220707BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20220707BHJP
   H01L 41/318 20130101ALI20220707BHJP
   H01L 41/317 20130101ALI20220707BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
G01L1/16 B
H01L41/187
H01L41/193
H01L41/047
H01L41/318
H01L41/317
H01L41/113
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568054
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2020063664
(87)【国際公開番号】W WO2020229674
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】102019112771.8
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】カッペルト, サンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ザクス, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ピヒラー, ヨハン
(57)【要約】
第1の電極(3a)と、強誘電体層(2)と、第2の電極(3b)とから成るセンサ(1)が記載される。前記第2の電極(3b)は接地されており、前記強誘電体層(2)は前記第1の電極(3a)と前記第2の電極(3b)との間に配置されている。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・第1の電極(3a)、
・強誘電体層(2)、
・第2の電極(3b)、
を有し、
前記第2の電極(3b)は接地されており、前記強誘電体層(2)は前記第1の電極(3a)と前記第2の電極(3b)との間に配置されている、センサ(1)。
【請求項2】
前記強誘電体層(2)は、ポリマー、セラミック又はポリマー・セラミック・マトリックスを含む、請求項1に記載のセンサ(1)。
【請求項3】
前記第1の電極(3a)及び/又は前記第2の電極(3b)は、透明かつ熱伝導性及び導電性の材料を含む、請求項1又は2に記載のセンサ(1)。
【請求項4】
前記第1の電極(3a)及び/又は前記第2の電極(3b)は1つの金属又は複数の金属を含み、前記1つの金属又は前記複数の金属は、Al、Cr、Ni、Ag、Cu、Fe、並びに、これらの元素の混合物又は合金を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項5】
前記第1の電極(3a)及び/又は前記第2の電極(3b)は、紫外-可視領域及び/又は赤外領域において透明な伝導性の層を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項6】
前記第1の電極(3a)及び/又は前記第2の電極(3b)は、ITO、PEDOT:PSS、銀、ナノワイヤ、グラファイト、カーボンナノチューブ又はグラフェンを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項7】
前記センサ(1)は、更なる第1の電極(3a)と、第2の電極(3b)と、強誘電体層(2)とを有し、前記強誘電体層(2)は、前記第1の電極(3a)と前記第2の電極(3b)との間に配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項8】
全ての第1の電極(3a)は互いに並列に接続され、かつ、全ての第2の電極(3b)は互いに並列に接続されており、
電気信号(S)は前記第1の電極と前記第2の電極との間で読み出される、請求項7に記載のセンサ(1)。
【請求項9】
個々の前記強誘電体層(2)は別々に接触されており、前記強誘電体層(2)の各々について、それぞれ前記第1の電極(3a)のうちの1つと前記第2の電極(3b)のうちの1つとの間で、電気信号が読み出される、請求項7に記載のセンサ(1)。
【請求項10】
前記第1の電極(3a)は前記センサ(1)の内部に配置されており、前記強誘電体層(2)は前記第1の電極(3a)を被覆し、前記第2の電極(3b)は前記強誘電体層(2)を被覆する、請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項11】
前記センサ(1)は、その上に前記第1の電極(3a)又は前記第2の電極(3b)が配置された絶縁層(9)を有し、
前記センサ(1)は、前記絶縁層(9)が内側に位置するように巻かれている、請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項12】
前記センサ(1)はキャリア材料(4)を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項13】
前記キャリア材料(4)の上に、前記第1の電極(3a)又は前記第2の電極(3b)が配置されている、請求項12に記載のセンサ(1)。
【請求項14】
前記センサ(1)は、その上に前記第1の電極(3a)又は前記第2の電極(3b)が配置された絶縁層(9)を有し、
前記センサ(1)は、前記絶縁層(9)が前記キャリア材料(4)の上に配置されるように巻かれている、請求項12に記載のセンサ(1)。
【請求項15】
前記キャリア材料(4)は前記センサ(1)の内部に配置されており、前記第1の電極(3a)は前記キャリア材料(4)を被覆し、前記強誘電体層(2)は前記第1の電極(3a)を被覆し、前記第2の電極(3b)は前記強誘電体層(2)を被覆する、請求項12に記載のセンサ(1)。
【請求項16】
更なる第1の電極(3a)及び第2の電極(3b)並びに更なる強誘電体層(2)が、前記第2の電極(3b)を被覆し、
第1の電極(3a)及び第2の電極(3b)は径方向に交互に配置されており、
前記強誘電体層(2)のうちの1つは、前記第1の電極(3a)のうちの1つと前記第2の電極(3b)のうちの1つとの間に配置されている、請求項10~15のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項17】
前記キャリア材料(4)は、織物繊維又はガラス繊維である、請求項12~16のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項18】
前記ガラス繊維の外被表面の一部には、光学的に反応性のセンサ層(6)が塗布されている、請求項17に記載のセンサ(1)。
【請求項19】
前記センサ(1)は円筒形に形成されている、又は、前記センサ(1)は板状に形成されている、請求項1~18のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項20】
前記センサ(1)は少なくとも1つの機械的な増幅要素(5)を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項21】
前記少なくとも1つの機械的な増幅要素(5)は、前記第1の電極(3a)及び/又は前記第2の電極(3b)から形成されている、請求項20に記載のセンサ(1)。
【請求項22】
前記少なくとも1つの機械的な増幅要素(5)は、前記キャリア材料(4)から形成されている、請求項12を引用する請求項20に記載のセンサ(1)。
【請求項23】
前記少なくとも1つの機械的な増幅要素(5)は、前記第1の電極(3a)及び前記キャリア材料(4)から形成されている、請求項12を引用する請求項20に記載のセンサ(1)。
【請求項24】
前記強誘電体層(2)及び/又は前記第1の電極(3a)及び/又は前記第2の電極(3b)は、50μmより薄い、請求項1~23のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項25】
前記強誘電体層(2)は、圧電材料又は焦電材料を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項26】
・少なくとも1つの評価電子機器(7)、
・請求項1~25のいずれか1項に記載のセンサ(1)、
を有する装置であって、
前記評価電子機器(7)は、前記センサ(1)によって生成された電気信号(S)を測定し、前記電気信号(S)の変化を通じて、圧電効果、焦電効果及び容量効果を認識するように構成されている、装置。
【請求項27】
前記評価電子機器(7)は、測定された前記電気信号の変化に基づいて、物体が前記センサ(1)に接近しているか、又は、物体が前記センサ(1)に接触しているか、を認識するように構成されている、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
測定された前記電気信号(S)の変化は、信号-時間推移及び/又は振幅及び/又は時間スケール及び/又は時間ダイナミクス及び/又は極性の変化を含む、請求項26又は27に記載の装置。
【請求項29】
前記電気信号(S)は、電圧及び/又は電荷及び/又はキャパシタンス及び/又は極性を含む、請求項26~28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
・請求項1~24のいずれか1項に記載の複数のセンサ(1)、
を含み、
前記センサ(1)はマトリックス状に配置されている。請求項26~29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
請求項1~25のいずれか1項に記載のセンサ(1)を有するロボット。
【請求項32】
請求項1~25のいずれか1項に記載のセンサ(1)を有する協調システム。
【請求項33】
請求項1~25のいずれか1項に記載のセンサ(1)を有する自動ドア。
【請求項34】
請求項1~25のいずれか1項に記載のセンサの製造方法であって、前記強誘電体層(2)は、例えばCVD又はPVDのような薄膜プロセス、ゾルゲル法とスピンコーティングとの組み合わせ、又は、スクリーン印刷によって、前記第1の電極(3a)上に塗布される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電体センサに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、インダストリー4.0又はモノのインターネットという用語の下で推進されているデジタル化の進展により、機械間の及び人間との相互作用が、ますます日常的になっている。多くの課題の1つは、事故を回避することによって、これらの相互作用における人間及び機械の安全性を高めることである。
【0003】
これに関連して、危険を検出し、起こり得る衝突を回避するために、しばしば種々の物理的効果に基づく様々なタイプのセンサが、ますます知能の優れた機械に組み込まれる。一方では、光学センサ又はカメラモジュールを、それらの検出領域の範囲のおかげで、起こり得る危険の早期の検出のために用いることができる。他方、超音波センサは、例えば近距離での測定に適しており、したがって明白な危険を検出することができる。すぐ近くの領域においては、すなわち機械と周囲との間に接触が生じる場合には、例えば接触保護ストリップのような容量性又は抵抗性のセンサを、接触の検出のために使用することができる。
【0004】
大抵の場合、部分的に又は完全に自律的な機械には、衝突を防止するために、複数の異なるタイプのセンサが組み込まれている。センサは、異なる領域をカバーするので、周囲のより全体的な画像を作成することができる。
【0005】
それにもかかわらず、異なるタイプの複数のセンサを用途に組み込むことは、費用がかかる。更に、異なるタイプのセンサの使用は、高い技術的コストと結び付いている。異なるセンサタイプは、それ自体の制御及び評価電子機器を必要とし、これにより、センサシステム全体が複雑になり、より大きくなる。更に、別のタイプのセンサのそれぞれに、少なくとも1つのそれ自体の連続的で固有の機能テストが適用されなければならないが、当該機能テストは、絶えずセンサ及び電子機器をチェックし、システム全体を更に膨張させる。
【0006】
したがって、種々の物理的効果に基づいて機能し、様々なタイプのセンサをそれ自体に統合するセンサが、望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、種々の物理的効果に基づいて測定信号を生成するセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題は、請求項1に記載のセンサによって解決される。更なる有利な実施形態及び考えられる構成は、更なる請求項から見て取ることができる。
【0009】
第1の電極と、強誘電体層と、第2の電極とから成るセンサが記載される。強誘電体層は2つの電極の間に配置され、第2の電極はアースに接続されている。
【0010】
測定信号は、電極間の電圧変化としてピックアップすることができる。アースは、地電位であることができる。
【0011】
強誘電体層は、ここでは、電界内で強誘電特性を示す材料から成ることができる。好ましくは、層は、圧電特性を有する強誘電材料から、特に好ましくは、焦電特性を有する強誘電材料から、成ることができる。
【0012】
全ての焦電材料は圧電材料でもあるので、電極間の機能層は、温度変化に対してだけでなく、圧電効果によるセンサのあらゆる変形に対しても、感度を有する。電極のうちの1つが接地されているので、電極の大幅な接近又は電極との接触は、接近する物体と電極との間のキャパシタンスを変化させることができ、電極間の電圧変化ももたらすことができる。このようにして、3つの異なる物理的効果、すなわち容量効果、圧電効果及び焦電効果を、1つのセンサ内で有効に利用することができる。
【0013】
焦電効果、圧電効果及び容量効果を1つのセンサ内で統合することは、3つの効果が異なる事象の検出に適しているため、特に有利である。焦電効果により、環境に由来する温度変化を記録することができる。例えば人間の体温又は機械の発熱に由来する温度変化を、非接触で遠方から決定することができる。容量効果も、非接触での検出に使用することができるが、そのためには、センサへの大規模な接近が必要である。しかしながら、同一の温度の物体の接近に起因する焦電効果の検出によって、センサ信号が全く又は僅かしか生じない場合であっても、接近を容量効果によって検出できることは、有利である。焦電効果を補完して、センサの他の物体との接触を把握するために、圧電効果又は容量効果を有効に利用することができる。更に、圧電効果又は容量効果は、改善された検出を可能とすることができる。なぜなら、同一のセンサにおいて、焦電効果によって生成される電圧信号は、圧電効果又は容量効果と比較して10~100倍弱いからである。電極における電圧変化に対して、圧電効果では、圧電層の能動的な空間的変形が生じなければならないが、それに反して容量効果では、既に静的な接触が電圧変化をもたらすという点で、圧電効果は容量効果から区別される。したがって、圧電効果によって、例えば可撓性であり、接近する物体によって曲げられる、空間的に外部に配置されたセンサの場合、圧電層の湾曲により電圧変化が引き起こされる。電圧変化は、接近する物体までの距離を測定するのに適している。なぜなら、電圧変化の大きさは、湾曲の程度に依存するからである。それに反して、変形した圧電層が静止している場合又は変形が生じていない場合、圧電効果に起因する電圧変化は生じない。この場合、容量効果が作用し、当該容量効果は、接地された電極が接触に至った場合、層の変形がなくても、電極間の電圧変化をもたらす。
【0014】
センサが、種々の物理的効果を検出の基礎として利用できることにより、用途に組み込まれなければならない異なるタイプのセンサの数を減らすことができる。更に、必要とされる制御及び評価電子機器は、センサタイプごとに別個に設けられる必要がないので、簡素化されスリム化され得る。更に、補完的な検出領域をカバーする種々の物理的効果がセンサで使用される場合、周囲のより正確な概観が与えられ、したがって物体の接近を確認することができる。
【0015】
電気信号の測定された変化は、信号-時間推移及び/又は振幅及び/又は時間スケール及び/又は時間ダイナミクス及び/又は極性の変化を含むことができる。したがって、電気信号の全ダイナミクスを把握することが可能である。
【0016】
電気信号は、電圧及び/又は電荷及び/又はキャパシタンス及び/又は極性を含むことができる。したがって、電気信号は測定の種類に依存しないことが可能であり、又は、測定は異なる測定原理に基づいて行われることが可能である。
【0017】
強誘電体層は、ポリマー、セラミック又はポリマー・セラミック・マトリックスを含むことができ、ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びその共重合体を使用することができ、セラミックとしては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)又はBaTiOを使用することができる。前述の例は、焦電特性を有し、工業的な要求を満たす強誘電材料である。PVDFは、可撓性であり、したがって特に好適な焦電性プラスチックである。PVDFを第1の電極の上に塗布するための好適な方法は、スピンコーティング、スクリーン印刷又はインクジェット印刷であり得る。それに反して、PZT及びBaTiOは、薄い層としてのみ可撓性である焦電性セラミックである。PZTセラミックは、電気的特性を適合させるために、付加的にNa、Ca又はLaを添加することができる。焦電層が、PZT、BaTiO又は他の無鉛若しくは鉛含有セラミックである場合、これは、例えばCVD、PVDのような薄膜プロセス、ゾルゲル法とスピンコーティングとの組み合わせ、又は、スクリーン印刷によって、第1の電極の上に塗布することができる。
【0018】
第1及び第2の電極は、いずれも、紫外-可視領域及び/又は好ましくは赤外領域において透明な及び/又は熱伝導性の材料から成ることができる。それにより、赤外線熱放射が直接的に強誘電体層に到達し、したがってセンサの感度を増大させることを、確実にすることができる。適切な材料は、例えば、ITO、PEDOT:PSS、グラファイト、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ又はグラフェンであり得る。
【0019】
それに加えて、電極は、Al、Cr、Ni、Ag、Cuのような金属、又は、これらの元素の混合物、金属間化合物及び合金の1つ以上の層から成ることができ、又は、これらの元素を含むことができる。それは、好ましくはスパッタ層である。スパッタ層の場合、異なる金属、例えばCr/Ni/Agの複数の層を、重ね合わせてスパッタすることもできる。それぞれの金属の選択を通じて、例えば半田付けによるセンサの接触を改善することができる。なぜなら、より良好な固着が可能になるからである。金属から成る電極は、高い電気伝導率及び熱伝導率を有し、それにより、センサの感度が著しく損なわれることはない。
【0020】
更に、センサは、更なる第1の電極と、第2の電極と、強誘電体層とを有することができ、強誘電体層は、第1の電極と第2の電極との間に配置されている。センサを多層部材として実現することにより、複数の機能性強誘電体層を順に並べることができ、センサの感度及び精度の両方を向上させることができる。
【0021】
構成要素上の又は構成要素間の配置は、配置された構成要素が互いに接触し互いの上に直接的に載置される直接配置、あるいは、重なり合って配置された構成要素の間に更なる構成要素が存在し得る間接配置、のいずれかであり得る。いずれにせよ、電極は強誘電体層の上に直接的に配置され、その結果、電極は強誘電体層に接触し、電気的な接触を確立する。
【0022】
多層部材においては、個々の機能層を別々に接触させることが可能である。この場合、第1の電極はそれぞれ別個の第1の接触要素と、第2の電極はそれぞれ別個の第2の接触要素と、それぞれ電気的に接触される。これにより、それぞれの機能層に対して別個のセンサ信号を評価することができ、更に、個々の機能層に対して異なる種類のセンサ信号をピックアップすることが可能である。
【0023】
これに代えて、多層部材においては、全ての第1の電極を同じ第1の電気的接触要素と、全ての第2の電極を同じ第2の電気的接触要素と、それぞれ電気的に接触させることができる。したがって、全ての第1の電極は互いに並列に接続され、全ての第2の電極は互いに並列に接続される。電気信号は、接触要素間でピックアップすることができる。これにより、個々の機能層の信号からのセンサ信号の信号加算の意味で、増幅された信号を評価のために利用することができる。
【0024】
更に、第1の電極はセンサの内部に配置することができ、強誘電体層は第1の電極を被覆することができ、第2の電極は強誘電体層を被覆することができる。そのような実施形態は、好ましくは、円筒状又はプレート状に形成することができる。センサ内の層は、センサの層に対して垂直な方向におけるセンサの広がりが、層に沿ったセンサの広がりと比較して短くなるように配置することができる。この実施形態は、本発明によるセンサのための無数の更なる用途を可能にする。更に、センサの円筒形の形状は、変形に対する感度を高めるために有益である。また、被覆されたセンサは、ワイヤ又はケーブルの製造と同様に、エンドレスプロセスで製造することができ、これにより、安価な製造が可能になる。
【0025】
用語「被覆」の1つの可能な使用によれば、被覆する層がその下にある層を完全にではないが大部分を覆う場合、層は他の層によって被覆されていると見なすこともできる。層を横切る断面画像が撮影される場合、断面画像の90%、95%、99%又は99.9%より多くが、被覆層内に、層の厚さ全体に亘って広がる欠陥部位を有さない場合、層は被覆されていると見なすことができる。層の製造の際、層内に不可避的に欠陥部位又は亀裂が生じることがあり、これらは完全な被覆を困難にする可能性がある。作動中にも、機械的な負荷によって、センサの層内に亀裂が生じる可能性があるが、これによるセンサの機能の妨害は限定的である。層によって被覆された層又は構成要素は、代替的に、当該層によって完全に包まれていてもよい。
【0026】
更に、センサは、その上に第1の電極又は第2の電極を配置することができる絶縁層を有することができ、センサは、絶縁層が内側に位置するように巻かれることができる。内面は、巻かれたセンサにおいて、センサの中心軸に向かい、センサの外被面から離れる方を向いている。巻くことにより、センサを通る断面においてた螺旋形の電極と、センサを通る断面において螺旋形で、同様に螺旋形の電極の間に挟まれて延びる強誘電体層と、がもたらされる。したがって、絶縁層の上に直接的に配置されていない電極のうちの1つは、巻かれたセンサの外被面を形成する。
【0027】
巻かれたセンサは、好ましくは、円筒形に形成することができる。センサを巻くことによって、平坦な層のための製造プロセスによって円筒形のセンサを製造することも可能である。絶縁層は、主に、さもなければ巻かれる際に短絡するであろう電極を、電気的に絶縁するために使用される。センサが複数回巻かれる場合、多層部材が生成されるが、センサは、第1及び第2の電極のみを有する。電気的な挙動は、複数の積み重ねられた層を有する被覆された実施形態とは著しく異なる。なぜなら、巻かれたセンサの場合、コンデンサの並列接続に対応する単一のキャパシタンスが形成されるが、複数の積み重ねられた層を有する被覆された実施形態の場合、電極間に形成されるキャパシタンスは、コンデンサの直列接続に対応するからである。したがって、同等の層数、材料及び寸法に対して、巻かれたセンサについて、より高いキャパシタンスが生じ、それにより、センサ内では容量効果が著しく顕著になる。
【0028】
更に、センサは、キャリア材料を有することができる。適用分野に応じて、キャリア材料は非弾性又は弾性であることができる。非弾性のキャリア材料は、センサの機械的安定性を向上させることができる。特に部材の輸送及び組み込みに対して、高い機械的安定性は、損傷を回避するために有用であり得る。ある種の用途に対しても、ガラス、コンクリート又はスチールから成るキャリア材料上の配置は、それによって圧電効果は低下するものの、必要であり得る。キャリア材料として考慮の対象となる弾性材料は、とりわけ、ゴム、プラスチック又は例えばポリエステルのような織物であることができる。
【0029】
第1の電極又は第2の電極は、キャリア材料上に配置することができる。電極とキャリア材料との間の十分な固着が必要であることに注意すべきである。十分な固着は、キャリア材料の材料及び電極を適切に選択することによって得られる。例えば粗面化のようなキャリア材料の表面処理も、キャリア材料と電極との間の固着を改善するために、実施することができる。
【0030】
更に、センサは、その上に第1の電極又は第2の電極が配置された絶縁層を有することができ、センサは、絶縁層がキャリア材料上に位置するように巻かれている。したがって、キャリア材料の選択を通じて、巻かれたセンサの機械的安定性を制御することができる。キャリア材料としては、種々の材料及び物品さえも考慮の対象となるので、そのような配置によって、センサのための多数の可能な適用分野が開かれる。センサを巻くことによって、センサの容量効果は増大する。
【0031】
更なる実施形態では、キャリア材料をセンサの内部に配置することができ、第1の電極はキャリア材料を、強誘電体層は第1の電極を、第2の電極は強誘電体層を、それぞれ被覆する。キャリア材料の選択を通じて、センサは、用途に応じて、より剛に又はより柔軟に、構成及び最適化することができる。この実施形態も、好ましくは、円筒状又はプレート状に形成することができる。更に、このように構成されたセンサを、エンドレスプロセスで、したがって安価に製造することも可能である。
【0032】
内部に第1の電極を有するセンサは、更なる第1の電極、第2の電極及び強誘電体層を有することができ、第1及び第2の電極は径方向に交互に配置されており、それぞれ1つの強誘電体層が、第1の電極のうちの1つと第2の電極のうちの1つとの間に配置されている。そのようにして複数の機能性強誘電体層を順に並べることができるので、センサの感度及び精度の両方を向上させることができる。
【0033】
被覆されたセンサ及び巻かれたセンサは、キャリア材料を有するか否かに全く関わりなく、更なる第1の電極、第2の電極及び強誘電体層を有することができ、それぞれ1つの強誘電体層が、第1の電極のうちの1つと第2の電極のうちの1つとの間に配置されている。したがって、積み重ねられた多層部材と同様に、センサの信号強度、したがって感度及び精度が向上する。
【0034】
被覆された又は巻かれたセンサのためのキャリア材料は、例えば織物繊維であることができる。このセンサは、例えば衣類、カバー又はカーペットに織り込むことができる。例えばポリエステルから成る人工織物繊維は、この使用に対して抜きん出て好適である。しかしながら、天然繊維も、それらが製造プロセスに耐えるならば、使用することができる。
【0035】
更に、キャリア材料は、ガラス繊維であることができる。これは、システム状態、例えば、センサの直接的な接触が生じているか、又は、熱源の接近があるかを、色出力又は色変化を通じて外部に伝えるために、使用することができる。
【0036】
ガラス繊維の外被表面の一部には、光学的に反応性のセンサ層を塗布することができる。この反応性の層は、例えば、色の変化によって、環境中のpH値又はO含有量に反応することができる。ガラス繊維の助けを借りて、この色変化を測定することができ、センサを、更なる感覚次元を含むように拡張することができる。キャリア材料としてファイバ・ブラッグ・グレーティングを使用することも可能であり、センサの情報出力を増大させることができる。
【0037】
センサを円筒形に形成することが有利であり得る。したがって、センサは径方向に対称であり、例えばセンサの変形によって生成される測定信号は、方向に依存しない。センサを板状に形成することも可能である。板状の形状の場合、幅及び長さは、高さの少なくとも10倍であることができる。これにより、平坦な層のための製造プロセスを、センサの製造に使用することができる。
【0038】
更に、センサは、少なくとも1つの機械的な増幅要素を有することができる。機械的増幅要素は、例えば、機械的な接触をセンサに伝達する、毛状又は剛毛状の突起であることができる。このようにして、変形による圧電効果及び容量効果を引き起こす有効範囲を、拡大することができる。機械的な増幅要素は、複合材料、又は、PET、熱硬化性樹脂若しくはテフロン(登録商標)のようなプラスチックから成ることができる。
【0039】
機械的な増幅要素は、第1及び/又は第2の電極から形成することができる。機械的な増幅要素の製造は、電極の製造プロセスに統合することができ、それにより、センサは、安価で複雑でない方法で、機械的な増幅要素を含むように拡張することができる。
【0040】
センサがキャリア材料を有する場合、少なくとも1つの機械的な増幅要素は、キャリア材料から形成することもできる。特に円筒形のセンサの場合、被覆されているか又は巻かれているかにかかわらず、内部に配置されたキャリア材料はセンサから突出することができ、したがって、簡単な方法で、機械的な増幅要素を形成することができる。
【0041】
代替的に、少なくとも1つの機械的な増幅要素は、第1の電極及びキャリア材料から形成することができる。この実施形態も、円筒形のセンサに特に適している。この場合、キャリア材料及びキャリア材料上に配置された電極は、センサから突出する。したがって、圧電効果の有効範囲だけでなく、センサの容量効果の有効範囲も拡張される。
【0042】
センサの個々の層、すなわち強誘電体層並びに第1及び第2の電極は、それぞれ50μmより薄くすることができる。センサを極めて薄く構成することにより、センサは可撓性であり、曲げることができ、これは、圧電効果に基づく測定において特に有利である。特に焦電層を薄く構成することは、センサの低い熱質量を可能にし、したがって、温度変化に対するセンサの応答時間及び感度を改善する。
【0043】
有利な構成は、上述したセンサ及び評価電子機器を有することができる。評価電子機器は、強誘電体層内で発生する電圧を測定し、圧電効果、焦電効果及び容量効果による電圧の変化を検出するために構成することができる。評価電子機器は、信号-時間推移から、振幅、時間スケール、時間ダイナミクス及び極性に基づいて、測定信号を、物理的効果のうちの1つ以上に分類するように設計されるべきである。電圧変化の1つ以上の物理的効果への分類に基づいて、評価電子機器は、物体がセンサに接近しているかどうか、又は、物体がセンサに接触しているかどうかを、検出することができる。
【0044】
更なる有利な構成では、複数のセンサをマトリックス状に配置することができる。センサをマトリックス状に配置することによって、空間分解能を有する測定を実行することができ、したがって、移動を追跡することもできる。例えば、平面センサは基材上に配置することができ、又は、円筒形センサは、カーペットのように基材から突出するように配置することができる。
【0045】
センサは、ロボットに一体化することができる。ロボット、例えば清掃ロボット、芝刈りロボット、配送ロボット又は搬送ロボットのような自律ロボットは、ロボットへの接近を確認することができる単純化されたセンサの恩恵を受ける。接近をセンサによって記録する場合、ロボットは、それに応じて、速度を減速させ、静止し又は障害物を回避するという方法で、動作することができる。
【0046】
本発明によるセンサを有する協調システムも、接近を記録する可能性から恩恵を受ける。協調システムでは、機械の人間との、及び、衝突の危険性を有する他の機械との、多数の相互作用が生じる。センサによる環境の確実な検出は、事故の危険性を最小にし、安全な作業工程を約束する。
【0047】
本発明によるセンサは、自動ドア、特に自動回転ドア又はエレベータドアに、一体化することもできる。センサが人間の接近を把握した場合、ドアは開くことができ、ドアが閉じることを防止し、又は、接近する人間の衝突又は挟み込みを防止するために回転ドアの回転速度を減速することができる。
【0048】
更なる態様は、上述したセンサの製造方法に関し、強誘電体層は、例えばCVD又はPVDのような薄膜プロセス、又は、ゾルゲル法とスピンコーティングとの組み合わせによって、第1の電極上に塗布される。
【0049】
以下において、本発明が、概略的な図示に基づいて、詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の第1の実施例の概略断面図を示す。
図2】センサ及び評価電子機器を有する概略的な構成を示す。
図3】センサ及び評価電子機器を有する更なる概略的な構成を示す。
図4】評価の構造図を示す。
図5】センサの概略的な測定曲線を示す。
図6】焦電効果による電圧変化の測定曲線を示す。
図7】圧電効果による電圧変化の測定曲線を示す。
図8】容量効果による電圧変化の測定曲線を示す。
図9】電気信号が増幅される、多層に具現されたセンサの概略断面図を示す。
図10】複数の個々の電気信号が読み出される、多層に具現されたセンサの概略断面図を示す。
図11】第1の電極がセンサの内部に配置された、板状の被覆された実施例の概略断面図を示す。
図12】キャリア材料がセンサの内部に配置された、板状の被覆された実施例の概略断面図を示す。
図13】増幅要素が第2の電極上に配置された、更なる実施例の概略断面図を示す。
図14】増幅要素がキャリア材料及び第1の電極上に配置された、円筒形の実施例の概略断面図を示す。
図15】延長されたキャリア材料が第1の電極と共に増幅要素として機能する、第4の円筒形の実施例の概略断面図を示す。
図16】円筒形の実施例の概略断面図を示す。
図17】多層の円筒形の実施例の概略断面図を示す。
図18】光学的に反応性の層がキャリア材料上に配置された、円筒形の実施例の概略断面図を示す。
図19】センサが巻かれている、絶縁層を有する実施例の概略断面図を示す。
図20】センサがキャリア材料の周りに巻かれている、絶縁層を有する実施例の概略断面図を示す。
図21】ロボットを、可能なセンサ位置と共に示す。
図22】協調システムを、可能なセンサ位置と共に示す。
図23】自動回転ドアを、可能なセンサ位置と共に示す。
図24】自動エレベータドアを、可能なセンサ位置と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
同一の要素、類似の又は明らかに同一の要素には、図面において同一の参照符号が付されている。図面及び図面中の大きさの比率は、縮尺どおりではない。
【0052】
図1には、本発明によるセンサ1の概略断面図が示される。第1の電極3aの上に強誘電体層2が配置され、その上に第2の電極3bが配置されている。第2の電極3bは、電気的に接触され、接地されている。
【0053】
強誘電体層は、ここでは、電界内で強誘電特性を示す材料から成ることができる。好ましくは、層は、圧電特性を有する強誘電材料から、特に好ましくは、焦電特性を有する強誘電材料から、成ることができる。
【0054】
電極3a、3bは電気的に接触され(図示せず)、例えば電極3a、3b間の電圧変化は、測定信号として読み出すことができる。同様に圧電性である焦電層2は、温度変化及び変形の両方に対して電荷分離で反応し、当該電荷分離は、電極3a、3bにおける電圧変化をもたらす。第2の電極3bが接地されているため、第2の電極3bと接近する物体との間のキャパシタンス変化の結果、大規模な接近又は接触の場合、電極3a、3b間の電圧変化が生じる。本発明のセンサ1は、異なる検出領域をカバーするために、3つの異なる物理的効果、すなわち容量効果、圧電効果及び焦電効果を、有効に利用する。
【0055】
焦電効果のおかげで、熱源に応じて数メートル離れている可能性のある温度変化を、検出することができる。容量効果も非接触検出に使用することができるが、そのためには、検出すべき物体が数センチメートルまで、センサ1に大規模に接近することが必要である。圧電効果及び容量効果は、センサ1の他の物体との接触を確認するために使用することができる。電極3a、3bにおける電圧変化に対して、圧電効果では、焦電層2の能動的な空間的変形が生じなければならないが、それに反して容量効果では、既に静的な接触が既に電圧変化をもたらすという点で、圧電効果は容量効果から区別される。
【0056】
強誘電体層2は、PVDF又はPZTを含む。両材料は、焦電性である。PVDFは、弾性である焦電性プラスチックとして特に適している。なぜなら、強誘電体層2は容易に変形され、したがって圧電効果によって電圧変化が引き起こされ得るからである。PVDFから成る強誘電体層2は、例えばスピンコーティング、スクリーン印刷又はインクジェット印刷によって、塗布することができる。それに反して、PZTは、非常に薄い層として可撓性を示す焦電性セラミックである。電気的特性を適合させるために、PZTセラミックにNa、Ca又はLaを添加することが可能である。PZT又は他の焦電性セラミックは、例えばCSD又はPVDのような薄膜プロセスの助けを借りて、塗布することができる。PVDFは、PZTのようなセラミックと比較して、問題なくより大きな面積に塗布することができるという利点を有する。なぜなら、大きな面積の層としてのセラミックは、内部の張力及び圧力によって破裂する可能性があるからである。
【0057】
好ましくは、第1及び第2の電極3a、3bは、例えばITO、PEDOT:PSS、銀、グラファイト、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ又はグラフェンのような、透明で導電性の材料から成る。紫外-可視領域及び/又は赤外領域で透明性を有し、及び/又は、良好な熱伝導率を示す材料は、電極3a、3bとして特に好適である。これは、強誘電体層2への入熱を容易にする。なぜなら、赤外線熱放射は、強誘電体層2に直接当たるからである。したがって、センサ1の感度、特に焦電効果に関する感度が、増大する。電極3a、3bは、Al、Cr、Ni、Ag、Cuのような金属、金属の混合物、金属間化合物又は合金から成ることもできる。金属は、高い電気伝導率及び熱伝導率を有するので、電極材料としても適している。
【0058】
センサ1の層は、それぞれ50μmより薄く、それにより、センサ1全体は可撓性であり、曲げることができる。したがって、センサ1は容易に変形され得るが、これは、圧電効果に起因する第1及び第2の電極3a、3b間の電圧変化をもたらす。センサ1は極めて薄いので、小さな熱質量を有し、それにより、応答時間が短縮され、温度変化に対するセンサ1の感度が高められる。
【0059】
センサ1は、図1に示すように1つの焦電層2のみで構成される必要はなく、複数の焦電層2並びに複数の第1及び第2の電極3a、3bによって、多層構造で実現することができる。ここで、焦電層2は、常に第1及び第2の電極3a、3b間に配置され、第1及び第2の電極3a、3bは、積層方向に交互に配置されている。センサ1を多層部材として実現することによって、センサ1の感度及び精度の両方を向上させることができる。
【0060】
第1及び第2の電極3a、3bでの電圧変化としてピックアップされる測定信号は、評価電子機器に転送される。評価電子機器7は、ここでは、図2に示すようにセンサ1と同一のキャリア材料4上に配置されてもよいし、図3に示すように同一のキャリア材料4上に配置されなくてもよい。評価電子機器7は、センサ1に直接的に、又は、図3に示すようにキャリア材料4を介して、接触されている。測定事象によってセンサ1に電圧変化が生じると、この電圧変化は、図4に見られるように、アナログ的に評価電子機器7に転送される。評価電子機器7は、とりわけ、信号増幅器、比較器及びマイクロプロセッサを有し、測定曲線を圧電効果、焦電効果又は容量効果に分類するように設計されている。次に、信号は、デジタル的にデジタル評価部8に送られ、当該デジタル評価部は、再び出力信号を出力する。
【0061】
図5には、センサ1の機械的又は熱的な励起の後の電圧変化を示す曲線の例が示される。図5のグラフでは、図6、7及び8のグラフと同様に、電圧が時間に対してプロットされる。図6には、純粋に焦電効果に起因する電圧変化が示される。部位Y1で熱源がスイッチオンされ、部位Y2で再びスイッチオフされる。図7には、圧電効果にのみ由来する測定曲線が示される。部位X1で圧力印加によって変形が引き起こされ、部位X2で圧力印加が再び取り除かれる。図8の測定曲線は、センサ1での電圧変化を示しており、これは、もっぱら容量効果に由来する。
【0062】
焦電効果による測定曲線の振れは、例えば、図6図7及び8との比較が示すように、圧電効果又は容量効果による振れよりも遅い。更に、図6に見られるように、焦電効果の場合の曲線の推移は、熱源がセンサ1に作用するとき(Y1)又はその後にスイッチオフ若しくは遮蔽されるとき(Y2)、不連続性を有し得る。この場合、熱源をスイッチオフすることは、負の温度差として作用し、それにより、極性が変化し、測定曲線はその符号を急激に変化させる。
【0063】
圧電効果の場合も、符号の変化が、図7に示すように、測定曲線において、例えばセンサ1が予め変形された(X1)後に解放された(X2)ときに、起こり得る。しかしながら、焦電効果とは対照的に、曲線の推移は連続的であり、はるかに速いものであり得る。振幅又は電圧変化は、焦電効果の場合、典型的には、圧電効果の場合よりも10~100倍小さいが、これは、曲線が対応して予め増幅されているため、図6図7との比較においては明白でない。
【0064】
他方、容量効果は、測定曲線における符号の変化を引き起こす可能性はなく、図8に見られるように、振れは、圧電効果による振れよりも時間的に速くなり得る。図8の2つの測定曲線は、第2の電極3bが、一方の場合には接地され、他方の場合には接地されていない、センサ1によって記録された。第2の電極3bの接地接続のない測定曲線では電圧変化が生じないので、電圧変化は単に容量効果に由来すべきものであり、第2の電極3bの接地接続にかかわらず電圧変化をもたらすであろう圧電効果は生じないことを、確認することができる。これらの異なる特徴に対する測定曲線の分析を通じて、評価電子機器7は、物理的効果への分類を行うことができる。
【0065】
センサ1が、図9に示すように多層部材として存在する場合、全ての第1の電極3aを同じ第1の電気的接触要素と、全ての第2の電極を同じ第2の電気的接触要素と、それぞれ電気的に接触させることができる。したがって、個々の第1及び第2の電極は、並列に接続される。これにより、信号加算の意味で、個々の機能層の電気信号S、増幅された電気信号S1を、評価のために使用することができる。
【0066】
代替的な実施形態では、図10に示すように、個々の機能層が別々に接触されている。この場合、第1の電極はそれぞれ別個の第1の接触要素と、第2の電極はそれぞれ別個の第2の接触要素と、それぞれ電気的に接触される。これにより、それぞれの機能層について別個の電気信号(S1,S2,S3,S4)を評価することができ、更に、個々の機能層について異なる種類のセンサ信号をピックアップし、物理的効果に応じて区別することが可能である。
【0067】
図11には、第1の電極3aがセンサ1の内部に配置された、板状の被覆された実施例の概略断面図が示され、強誘電体層2が第1の電極3aを被覆し、第2の電極が強誘電体層2を被覆している。このようなセンサ1は、例えばスクリーン印刷のような平坦な層のための適切な製造プロセスの助けを借りて、層ごとに構築することができる。この場合、被覆を実現するために、面積に関してより大きな層で内側の層を重ね刷りすることが有利であり得る。しかしながら、被覆を製造する場合、最初に内側の層の一方の側にその上に配置される層を塗布し、次に部材を反転させ、他方の側に同じタイプの層を塗布することも、好都合であり得る。反転の前に、塗布された層は乾燥させられる。
【0068】
図12は、センサ1の板状の被覆された実施例の図11に類似した概略断面図を示しており、この場合、キャリア材料4はセンサの内部に配置されている。この実施例も、図11のように、平坦な層のための製造プロセスを用いて製造することができ、層は、次々に塗布されるか、又は、部材が各被覆層について反転されることによって塗布される。
【0069】
キャリア材料4は、非弾性でも弾性でもよい。基板のような非弾性のキャリア材料4によって、センサ1の安定性が高められる。選択された用途のために、例えばガラス、コンクリート又はスチールから成るキャリア材料4上の配置が好ましいことがある。キャリア材料4として考慮の対象となる弾性材料は、とりわけ、ゴム、プラスチック又は例えば綿糸のような織物であることができる。
【0070】
図13には、図1に類似したセンサ1の概略断面図が示され、センサ1は、キャリア材料4上に配置されており、第2の電極3b上に機械的な増幅要素5を有する。
【0071】
図13において毛状又は剛毛状の突起として示されている機械的な増幅要素5は、接触を第2の電極3bに機械的に伝達することができる。強誘電体層2は第2の電極3bに固着しているので、この接触は強誘電体層2にも転送され、したがって強誘電体層2が変形する。これにより、圧電効果でカバーすることができる検出領域が拡大される。機械的な増幅要素5は、複合材料、又は、PET、熱硬化性樹脂若しくはテフロン(登録商標)のようなプラスチックのいずれかから成る。
【0072】
機械的な増幅要素5は、円筒形のセンサ1、及び、キャリア材料4上に配置されていないセンサ1の上にも、塗布され又は形成され得る。好ましくは、増幅要素5は、図14に示されるように、軸方向において、第1の電極3a及び/又はキャリア材料4の延長として装着されている。好ましくは、増幅要素5は、ここでは付加的に塗布されるのではなく、第1の電極3a及びキャリア材料4によって実現され、増幅要素5として機能する領域において、第1の電極3a及びキャリア材料4の上には、更なる強誘電体層2及び更なる第2の電極3bは塗布されていない。このように具現されたセンサの断面図が、図15に示されている。付加的な信号増幅のために、増幅要素5が設けられたこのような円筒形センサ1をまとめて、複数の個々のセンサ1から成る束とすることができる。
【0073】
代替的に、増幅要素5は、キャリア材料4のみから形成することもできる。キャリア材料4が内部に配置された円筒形の実施例では、増幅要素5の領域において第1の電極3aも省略される。センサ1が、センサ1自体よりも大きなサイズを有するキャリア材料4上に配置される場合、キャリア材料4のうち突出する部分は、増幅要素5としても作用する。キャリア材料4ではなく第1の電極3aが内部に配置されている実施形態では、増幅要素5は第1の電極3aのみから形成することもできる。その場合、第1の電極3aはセンサ1から突出し、強誘電体層2及び第2の電極3bは省略される。
【0074】
図16には、円筒状に具現されたセンサ1の概略断面図が示される。内部には、焦電層2によって被覆された第1の電極3aが配置されている。強誘電体層2は、第2の電極3bによって被覆されている。第2の電極3bは接地されているが、これは図16には示されていない。
【0075】
第1の電極3aは、市販のワイヤであることができる。好ましくは、第1の電極3aは、センサ1の熱質量を減少させるために、約150μm~250μmの直径で非常に薄く保たれている。強誘電体層2は、同じ理由から、5μm未満の厚さで具現されている。第2の、この実施形態では最も外側の電極の場合、層の厚さの選択の際、センサ1の感度と焦電層2の保護との間で、バランスをとらなければならない。実際上は約10μmの厚さが有利な妥協点であることが見出された。
【0076】
センサ1の円筒形の形状は、センサ1が狭い開口部に挿入されなければならない用途に対して、特に有利である。更に、センサ1の円筒形の形状は、変形に対する感度を高めるために有益である。更に、円筒形の実施形態は、センサ1を、ワイヤ又はケーブルの製造と同様に、エンドレスプロセスで製造することを可能にする。これは、製造を簡素化し、製造コストを低下させる。
【0077】
図17には、図14と同様に円筒状に具現されたセンサ1の概略断面図が示される。内部には、キャリア材料4が配置されている。それぞれ2つの第1及び第2の電極3a、3bが、交互にキャリア材料4を被覆し、それぞれ1つの強誘電体層2が、第1及び第2の電極3a、3bの間に配置されている。センサ1の内部の層は、この実施例においても5μmより薄い。最も外の層を形成する第2の電極3bの厚さは、好ましくは10μmである。複数の焦電層2を使用することにより、1つの焦電層2を有する実施例と比較して、センサ1の精度が高められる。
【0078】
キャリア材料4は、例えば、織物繊維、ガラス繊維又はファイバ・ブラッグ・グレーティングであることができる。織物繊維がキャリア材料4として使用される場合、当該織物繊維は、衣類、カバー、カーペット及び他の織物製品に織り込まれ得る。ポリエステルのようなプラスチックから成る織物繊維は、キャリア材料4として抜きん出て好適である。例えば木綿から成る天然繊維も、使用することができる。キャリア材料4としてのガラス繊維は、ある種の色の光がガラス繊維を透過することにより、例えば、直接的な接触又は接近が生じているかという、システム状態の表示のために使用することができる。キャリア材料4としてファイバ・ブラッグ・グレーティングを使用することも可能である。これらは、例えば力センサとして使用されることにより、センサ技術を拡張することができる。しかしながら、このためには更なる光学的な評価装置一式が必要であることに注意すべきである。
【0079】
図18には、円筒状に具現されたセンサ1の縦断面図が示される。内部には、第1及び第2の電極3a、3bによって被覆されたガラス繊維が配置され、強誘電体層2が、第1及び第2の電極3a、3bの間に配置されている。ガラス繊維の外被表面の一部には、第1及び第2の電極3a、3b並びに強誘電体層2は塗布されず、その代わりに光学的に反応性のセンサ層6が塗布された。この光学的に反応性の層6は、例えば、色の変化又は蛍光の変化によって、環境中のpH値又はO含有量に反応することができる。ガラス繊維から出てくるエバネセント光波の助けを借りて、この色の変化を測定することができる。このようにして、センサ技術及びセンサ1のための潜在的な適用分野を拡張することができる。
【0080】
図19には、絶縁層9を有する実施例の概略断面図が示され、センサ1は、絶縁層9が内側に位置するように巻かれている。絶縁層は、電気的に絶縁性の可撓性の層であり、可撓性で薄いキャリア材料4から成ることもできる。絶縁層9によって、第1及び第2の電極3a/3bが、巻かれる際に短絡することが、防止される。
【0081】
巻かれた実施形態は、平面の製造プロセスによって円筒形のセンサ1を製造することを可能にする。センサ1が複数回巻かれることによって、多層部材を製造することができ、径方向に連続する電極は、被覆されたセンサ1の場合のように電気的に互いに分離されておらず、互いに接続されていることに注意すべきである。したがって、巻かれたセンサ1は、被覆されたセンサ1と比較して、増大したキャパシタンスを有し、容量効果がより顕著である。
【0082】
図20には、図19と同様に、絶縁層9を有する実施例の概略断面図が示され、センサ1は、キャリア材料4の周りに巻かれている。キャリア材料4の助けを借りて、巻かれたセンサ1の機械的特性が、影響を受けることができる。
【0083】
異なる実施形態の組み合わせも可能である。したがって、例えば被覆されたセンサ1は、キャリア材料4として機能することができ、更なるセンサが、被覆されたセンサ1の周りに巻かれる。したがって、巻かれたセンサ1の顕著な容量効果は、被覆されたセンサ1の利点と組み合わせることができる。
【0084】
全ての実施例は、センサ1を有害な環境から保護するために、例えばプラスチックから成る保護層を更に備えることができる。
【0085】
図21には、例示的に、一般的なロボット用の自律搬送ロボットが示される。ロボットの下部領域のボックスは、本発明によるセンサ1を取り付けるための有利な位置を示す。ロボットが例えば人間に接近すると、数メートルの距離で、センサ1の電極3a、3bの焦電効果による電圧変化が確認され、その結果、ロボットは、例えばその速度を低下させることができる。ロボットが更に人間に接近すると、約1メートルの距離から、容量効果により発生する電圧変化が確認される。ロボットは、この時点で、人間に接近しているため、その移動方向を変えることができるであろう。それにもかかわらずロボットが人間と衝突すると、センサ1が変形し、圧電効果の結果として電圧変化が検出される。ここで、ロボットは、損傷を引き起こさないために、停止するか又は引き返すことができるであろう。ロボットが停止し、それにより強誘電体層の変形が変化しなければ、圧電効果による電圧変化は消滅する。それにもかかわらず、接触は、容量効果によって引き続き検出することができる。
【0086】
図22は、本発明によるセンサ1が一体化された協調システムを示す。特に、協働する人間に特に近づく可能性のあるロボットアームの端部は、センサ1を位置決めするのに適している。図23及び24には、自動ドア上のセンサ1の有利な位置が示される。自動回転ドアは、接近の場合は例えばその回転速度を低下させ、センサ1の接触の場合は回転速度を再び上昇させることができるであろう。図24に示すような自動エレベータドアは、例えば、人間の接近の場合に既に、ドアを開いたままにすることができるであろう。その結果、頻繁に使用される光バリアと比較して、安全性を高めることができる。なぜなら、センサは、ドアへの人間の接近を既に検出することができ、この人間が既にドアの中にいるときに初めて反応するのではないからである。
【符号の説明】
【0087】
1 センサ
2 強誘電体層
3a 第1の電極
3b 第2の電極
4 キャリア材料
5 機械的な増幅要素
6 光学的に反応性の層
7 評価電子機器
8 デジタル評価部
9 絶縁層
S 信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】