(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(54)【発明の名称】結合分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220707BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220707BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220707BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220707BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220707BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220707BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220707BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220707BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220707BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220707BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220707BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20220707BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220707BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K19/00
C07K16/18
C12P21/08
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 Y
A61K47/64
A61K39/395 D
A61P43/00 105
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568072
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-05
(86)【国際出願番号】 GB2020051199
(87)【国際公開番号】W WO2020229842
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517142462
【氏名又は名称】クレシェンド・バイオロジックス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グレイン・ダンレヴィー
(72)【発明者】
【氏名】コレット・ジョンストン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ・シドルク
(72)【発明者】
【氏名】マルティナ・レヴァンドフスカ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
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4C076AA94
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C085AA13
4C085AA33
4C085CC22
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、ヒト血清アルブミンと結合する単一ドメイン抗体及びそのような単一ドメイン抗体を使用して、治療分子の半減期を延長するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号2又は配列番号2と1若しくは2つの相違を有するアミノ酸配列を有するCDR1と、
b)配列番号3又は配列番号3と1、2、3、4、5、若しくは6つの相違を有するアミノ酸配列を有するCDR2と、
c)配列番号4又は配列番号4と1、2、3若しくは4つの相違を有するアミノ酸配列を有するCDR3と
を含む、ヒトHSAと結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体。
【請求項2】
配列番号1又はそれと少なくとも80%、90%若しくは95%の相同性を有する配列を含むか、或いはそれのみからなる、請求項1に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体。
【請求項3】
配列番号30又はそれと少なくとも80%、90%若しくは95%の相同性を有する配列を含むか、或いはそれのみからなる、請求項2に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体。
【請求項4】
d)配列番号6又は配列番号6と1若しくは2つの相違を有するアミノ酸配列を有するCDR1と、
e)配列番号7又は配列番号7と1、2、3、4、5、若しくは6つの相違を有するアミノ酸配列を有するCDR2と、
f)配列番号8又は配列番号8と1、2、3若しくは4つの相違を有するアミノ酸配列を有するCDR3と
を含む、ヒトHSAと結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体。
【請求項5】
配列番号5又はそれと少なくとも80%、90%若しくは95%の相同性を有する配列を含むか、或いはそれのみからなる、請求項4に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に規定の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、タンパク質又は構築物。
【請求項7】
治療的部分を含む、請求項6に記載のタンパク質又は構築物。
【請求項8】
前記治療的部分は、抗体又はそのフラグメントである、請求項7に記載のタンパク質又は構築物。
【請求項9】
前記フラグメントは、scFv、Fv、重鎖又は単一ドメイン抗体である、請求項8に記載のタンパク質又は構築物。
【請求項10】
前記単一ドメイン抗体は、単一重鎖可変ドメイン抗体である、請求項9に記載のタンパク質又は構築物。
【請求項11】
前記免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体は、ペプチドリンカーにより前記治療的部分に連結される、請求項6から10のいずれか一項に記載のタンパク質又は構築物。
【請求項12】
前記ペプチドリンカーは、(G4S)nであり、nは1から15である、請求項11に記載のタンパク質又は構築物。
【請求項13】
前記免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体は、前記タンパク質のN又はC末端に位置する、請求項6から12のいずれか一項に記載のタンパク質又は構築物。
【請求項14】
前記免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体は、前記タンパク質の前記C末端に位置し、1から50アミノ酸のC末端伸長を含む、請求項13に記載のタンパク質又は構築物。
【請求項15】
タンパク質の半減期を延長するための方法であって、前記タンパク質を、請求項1から5のいずれか一項に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体と連結する工程を含む、方法。
【請求項16】
請求項1から5のいずれか一項に規定の前記免疫グロブリン単一可変ドメインが融合タンパク質中の治療的部分に連結されている場合の前記治療的部分の半減期延長における、請求項1から5のいずれか一項に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体の使用。
【請求項17】
請求項1から5のいずれか一項に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体或いは請求項6から14のいずれか一項に記載のタンパク質又は構築物を含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項1から5のいずれか一項に規定のアミノ酸配列をコードする、核酸配列。
【請求項19】
配列番号16を含む、請求項18に記載の核酸配列。
【請求項20】
前記核酸配列は、リンカーにより第2の核酸配列と連結される、請求項18又は19に記載の核酸配列。
【請求項21】
前記第2の核酸は、治療的部分をコードする、請求項20に記載の核酸配列。
【請求項22】
前記リンカーは、核酸リンカーである、請求項20又は21に記載の核酸配列。
【請求項23】
請求項18から22のいずれか一項に記載の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項24】
請求項18から22のいずれか一項に記載の核酸配列又は請求項23に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項25】
請求項1から5のいずれか一項に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体又は請求項6から14のいずれか一項に記載のタンパク質若しくは構築物又は請求項17に記載の医薬組成物を含む、キット。
【請求項26】
ドメインがヒトV
Hドメインである、ヒトHSAと結合することができる請求項6から14のいずれか一項に規定の少なくとも1つのヒト免疫グロブリン単一ドメイン抗体を含む結合分子を生成するための方法であって、前記方法は、
a)トランスジェニックマウスをHSA抗原で免疫化する工程であって、前記マウスは、ヒト重鎖V遺伝子を含む核酸構築物を発現し、機能的な内因性軽鎖又は重鎖を生成することができない、免疫化する工程と、b)前記マウスからV
Hドメイン配列を含む配列のライブラリーを生成する工程と、
c)前記ライブラリーからV
Hドメイン配列を含む配列を単離する工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合分子、特にHSAと結合するヒト免疫グロブリン単一重鎖可変ドメイン抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
緒言
タンパク質及びペプチドの薬物動態は、吸収、体内分布、代謝、及び排出のパラメーターによって決定される。タンパク質及びペプチドに関するクリアランスの最も一般的な経路としては、大きなタンパク質に対するエンドサイトーシス及び肝細胞による膜輸送が関係するクリアランス、並びに小さなタンパク質及びペプチドに対する腎臓による糸球体ろ過が挙げられる。
【0003】
治療及び/又は診断の目的で有用であろう活性を持つ多くの薬物は、投与されると体から急速に除去されるため価値が限定される。例えば、治療的に有用な活性を有する多くのポリペプチドは、腎臓を介して循環から急速に除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2016/062990
【特許文献2】WO2003/000737
【特許文献3】WO2004/076618
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Stroh、「Fusion Proteins for Half-Life Extension of Biologics as a Strategy to Make Biobetters BioDrugs」、2015年; 29(4): 215~239頁
【非特許文献2】Green及びSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y. (2012年)
【非特許文献3】Therapeutic Monoclonal Antibodies: From Bench to Clinic、Zhiqiang An (編)、Wiley、(2009年)
【非特許文献4】Antibody Engineering、第2版、1及び2巻、Ontermann及びDubel編、Springer-Verlag、Heidelberg(2010年)
【非特許文献5】Kabatら、(1971年) Ann. NY Acad. Sci. 190:382~391頁
【非特許文献6】Kabatら、(1991年) Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No. 91~3242
【非特許文献7】Chothia及びLesk J. Mol. Biol. 196:901~917頁(1987年)
【非特許文献8】Lefrancら、Dev. Comp. Immunol.、29、185~203頁(2005年)
【非特許文献9】Wardら、1989年、Nature 341:544~546頁
【非特許文献10】Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual、Academic Press;第1版(1996年10月28日) Brian K. Kay、Jill Winter、John McCafferty
【非特許文献11】Bruschi, C.V.及びGjuracic, K. Yeast Artificial Chromosomes、Encyclopaedia of Life Sciences、2002年、Macmillan Publishers Ltd、Nature Publishing Group
【非特許文献12】Renら、Genomics、84、686頁、2004年
【非特許文献13】Zouら、J. Immunol.、170、1354頁、2003年
【非特許文献14】Antibody Engineering、Benny Lo編、第8章、161~176頁、2004年
【非特許文献15】(Dietzら、Cytometry 23:177~186頁(1996年)
【非特許文献16】Miragliaら、J. Biomol. Screening 4:193~204頁(1999年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、所望の治療効果を達成するためには、高用量が投与されなければならない。改善された薬物動態的特性を有する改善された治療及び診断用薬剤が必要とされている。
【0007】
よって、タンパク質若しくはペプチドのサイズ及び流体力学半径の増加、標的タンパク質若しくはペプチドの負電荷の増加又はアルブミンへの結合によるペプチド若しくはタンパク質の血清タンパク質結合のレベルの増加を含む、さまざまな戦略が小さなタンパク質及びペプチドの薬物動態を向上させるために利用されてきた。これには、生物学的に活性なタンパク質又はペプチドのヒト血清アルブミン(HSA)との融合、ヒト免疫グロブリン(Ig)Gの定常フラグメント(constant fragment)(Fc)ドメインとの融合又はXTEN等の非構造ポリペプチドとの融合が含まれる(Stroh、「Fusion Proteins for Half-Life Extension of Biologics as a Strategy to Make Biobetters BioDrugs」、2015年; 29(4): 215~239頁において概説されている)。
【0008】
異なる用途には、異なる半減期が必要とされ、依然としてオーダーメイドの半減期延長分子(half life extending molecule)を提供することへのニーズが存在する。本発明は、このニーズに対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、HSAと結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体、特に、ヒト免疫グロブリン単一重鎖可変ドメイン抗体、例えば、特に、再配列されていないヒトV、D、J遺伝子セグメントを発現するトランスジェニックマウスから得られるか、又は得ることができるヒト免疫グロブリン単一重鎖可変ドメイン抗体に関する。
【0010】
一態様において、本発明は、配列番号1又はそれと少なくとも80%、90%若しくは95%の相同性を有する配列、配列番号30又はそれと少なくとも80%、90%若しくは95%の相同性を有する配列或いは配列番号5又はそれと少なくとも80%、90%若しくは95%の相同性を有する配列を含むか、或いはそれからなる、HSAと結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体に関する。本発明はまた、配列番号1のバリアントであり、配列番号1と比較して1から20個のアミノ酸置換を有する、HSAと結合する免疫グロブリン単一可変ドメインに関する。本発明はまた、配列番号5のバリアントであり、配列番号5と比較して1から20個のアミノ酸置換を有する、HSAと結合する免疫グロブリン単一可変ドメインに関する。
【0011】
別の態様において、本発明はまた、タンパク質の半減期を延長するための方法であって、前記タンパク質を本明細書に記載されるとおりの免疫グロブリン単一可変ドメインに連結する工程を含む、方法に関する。
【0012】
本発明はまた、本明細書に記載されるとおりの免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体が融合タンパク質中の治療的部分と連結される場合に、前記治療的部分の半減期を延長する前記免疫グロブリン単一可変ドメインの使用に関する。
【0013】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるとおりの免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体又は本明細書に記載されるとおりのタンパク質又は構築物を含む、医薬組成物に関する。
【0014】
本発明はまた、本明細書に記載されるとおりのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関する。
【0015】
本発明は、本明細書に記載されるとおりの核酸配列を含むベクターに更に関する。
【0016】
本発明はまた、本明細書に記載されるとおりの核酸配列又は本明細書に記載されるとおりのベクターを含む、宿主細胞に関する。
【0017】
本発明はまた、本明細書に記載されるとおりの免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体又は本明細書に記載されるとおりのタンパク質若しくは構築物又は本明細書に記載されるとおりの医薬組成物を含む、キットに関する。
【0018】
更に、本発明は、本明細書に記載されるとおりヒトHSAと結合することができる、重鎖抗体(heavy chain only antibody)、又はドメインがヒトVHドメインである少なくとも1つのヒト免疫グロブリン単一ドメイン抗体を含む結合分子を生成するための方法であり、前記方法は、
a)トランスジェニックマウスをHSA抗原で免疫化する工程であって、前記マウスは、ヒト重鎖V遺伝子を含む核酸構築物を発現し、機能的な内因性軽鎖又は重鎖を生成することができない、免疫化する工程と、b)前記マウスからVHドメイン配列を含む配列のライブラリーを生成する工程と、
c)前記ライブラリーからVHドメイン配列を含む配列を単離する工程と
を含む、方法に関する。
【0019】
本発明は、以下の非限定的図面において更に例示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】カニクイザルにおける3mg/kgのTPP-1246の単回i.v.投与後の血清レベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態をここで更に記載する。以下の節において、さまざまな実施形態が記載される。そのように定義されるそれぞれの態様は、明らかに反対のことが示されない限り、任意の他の態様と組み合わされてもよい。
【0022】
一般に、本明細書に記載されている細胞及び組織培養、病理学、腫瘍学、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学並びにタンパク質及び核酸化学並びにハイブリダイゼーションに関連して使用される学術用語、並びにその技術は、当該技術分野において周知のものであり、一般的に使用される。本開示の方法及び技術は、別に指示がある場合を除いて、一般に、当該技術分野において周知の従来法に従って並びに本明細書全体をとおして引用され、述べられている一般的及びより特定的なさまざまな参考文献に記載されているとおりに実施される。例えば、Green及びSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y. (2012年);Therapeutic Monoclonal Antibodies: From Bench to Clinic、Zhiqiang An (編)、Wiley、(2009年);並びにAntibody Engineering、第2版、1及び2巻、Ontermann及びDubel編、Springer-Verlag、Heidelberg(2010年)を参照。
【0023】
酵素反応及び精製技術は、一般的に当該技術分野において遂行されるとおり、又は本明細書に記載されるとおりに製造業者の仕様書に従って実施される。本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学、並びに医薬及び製薬化学に関連して使用される学術用語並びにそれらの実験手順及び技術は、当該技術分野において周知のものであり、一般的に使用される。化学合成、化学分析、医薬調製、製剤化、及び送達並びに患者の処置に対して標準的な技術が使用される。
【0024】
本発明は、ヒト血清アルブミン(HSA)と結合するアミノ酸配列並びにそのようなアミノ酸配列を含む、タンパク質等の結合分子に関する。特に、本発明は、本明細書に記載されるとおりのアミノ酸を有する単一ドメイン抗体又は免疫グロブリン単一可変ドメインに関し、これは、本明細書に記載されるとおり治療方法及び使用並びに医薬製剤に活用することができる。
【0025】
本明細書に記載されている単一ドメイン抗体は、野生型ヒト血清アルブミンと特異的に結合する(UniProt受入番号Q56G89)。野生型ヒト血清アルブミンに関するアミノ酸配列は、配列番号9として示す。
【0026】
ヒト血清アルブミン(HSA、2BXN)は、およそ血漿タンパク質の60%を構成する。HSAは、3つの相同ドメイン(I、II、及びIII)を含む585アミノ酸長の単一鎖からなる。ドメインIは残基5~197からなり、ドメインIIは残基198~382を含み、ドメインIIIは残基383~569から形成される。各ドメインは、A及びBと呼ばれる2つのサブドメインから構成される(IA;残基5~107、IIA;残基108~197、IIA;残基198~296、IIB;残基297~382、IIIA;残基383~494、IIIB;残基495~569)。
【0027】
目的とする抗原、例えば、ヒト血清アルブミンと「結合する」又は「結合することができる」本発明の単一ドメイン抗体(sdAb)、免疫グロブリン単一可変ドメイン又はタンパク質は、本明細書に記載されるとおり、単一ドメイン抗体が抗原であるヒト血清アルブミンを発現する細胞又は組織を標的とする際に治療用薬剤として有用であるよう十分な親和性で抗原と結合するものである。
【0028】
本明細書に記載される単一ドメイン抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン又はタンパク質は、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する。言い換えると、ヒト血清アルブミン抗原への結合は、非特異的な相互作用とは測定可能な程度に異なる。実施例で示されるとおり、単一ドメイン抗体は、マウスヒト血清アルブミンとは交差反応しない。好ましくは、単一ドメイン抗体は、実施例で示されるとおり、ヒト血清アルブミンに結合し、サル血清アルブミンにも結合する。
【0029】
「抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖である4つのポリペプチド鎖から構成される任意の免疫グロブリン(Ig)分子、又はその抗原結合部分、或いはIg分子の必須のエピトープ結合特徴を保持するその任意の機能的フラグメント、変異体、バリアント、又は誘導体を広く指す。
【0030】
完全長抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域又はドメイン(本明細書においてはHCVRと略記される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域又はドメイン(本明細書においてはLCVRと略記される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。
【0031】
重鎖及び軽鎖可変領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が所々に挿入された相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に更に細分化することができる。各重鎖及び軽鎖可変領域は、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0032】
免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであってもうよい。「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域のそれぞれに3つのCDRが存在し、これらは、可変領域のそれぞれに関してCDR1、CDR2及びCDR3と指定される。「CDRセット」という用語は、抗原と結合することができる1つの可変領域に生じる3つのCDRの群を指す。これらのCDRの厳密な境界は、当該技術分野において知られているさまざまなシステムに従って異なって定義されることがある。
【0033】
Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列多様性に基づき、最も一般的に使用される(Kabatら、(1971年) Ann. NY Acad. Sci. 190:382~391頁及びKabatら、(1991年) Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No. 91~3242)。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置を基準とする(Chothia及びLesk J. Mol. Biol. 196:901~917頁(1987年))。可変ドメインの残基に言及する場合はKabat番号付けシステムが一般に使用される(軽鎖のおよそ残基1~107及び重鎖の残基1~113)。別のシステムは、ImMunoGeneTics(IMGT)番号付けスキームである。IMGT番号付けスキームについては、Lefrancら、Dev. Comp. Immunol.、29、185~203頁(2005年)に記載されている。
【0034】
Kabatによって示されたシステムが本明細書中では使用される。「Kabat番号付け」、「Kabat定義」及び「Kabatラベリング」という用語は、本明細書では同義に使用される。当該技術分野において認識されるこれらの用語は、抗体、又は抗原結合部分の重鎖及び軽鎖可変領域中の他のアミノ酸残基よりも可変性(すなわち、超可変性)のアミノ酸残基を番号付けするシステムを指す。
【0035】
「抗原結合部位」という用語は、抗原と特異的に結合する領域を含む抗体又は抗体フラグメントの部分を指す。抗原結合部位は、1つ又は複数の抗体可変ドメインによってもたらされる場合がある。抗原結合部位は、一般に、抗体又は抗体フラグメントの関連するVH及びVL内に含まれる。
【0036】
抗体フラグメントは、抗体の一部、例えば、F(ab')2、Fab、Fv、scFv、重鎖、軽鎖、可変重(VH)、可変軽(VL)鎖ドメイン等である。完全長型抗体の機能的フラグメントは、完全抗体の標的とする特異性を保持する。組換え型機能的抗体フラグメント、例えば、Fab(フラグメント、抗体)、scFv(単鎖可変鎖フラグメント)及び単一ドメイン抗体(dAb)は、したがって、mAbに基づく治療薬の代替物としての治療薬を開発するために使用されてきた。
【0037】
scFvフラグメント(約25kDa)は、2つの可変ドメイン、VH及びVLからなる。本来、VH及びVLドメインは、疎水性相互作用により非共有結合し、解離する傾向がある。しかしながら、安定なフラグメントは、親水性の柔軟なリンカーによりドメインを連結することによって操作されて、単鎖Fv(scFv)を作り出すことができる。
【0038】
最小の抗原結合フラグメントは、単一可変フラグメント、すなわち、可変重(VH)又は可変軽(VL)鎖ドメインである。VH及びVLドメインはそれぞれ、抗原と結合することができる。それぞれ軽鎖/重鎖パートナーとの結合又は実際には完全抗体の他の部分の存在は、標的結合には必要とされない。1つの単一ドメイン(VH又はVLドメインに相当する)にサイズが縮小された抗体の抗原結合要素は、一般に「単一ドメイン抗体」又は「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と呼ばれる。したがって、単一ドメイン抗体(約12から15kDa)は、VH又はVLドメインのいずれかを有し、すなわち、それは、完全抗体の他の部分を有さない。もともと軽鎖のないラクダ科動物重鎖抗体から誘導される単一ドメイン抗体並びにヒト重鎖ドメインを有する単一ドメイン抗体が報告されてきた。抗原結合単一VHドメインも、例えば、免疫化マウスの脾臓のゲノムDNAから増幅されたマウスVH遺伝子のライブラリーから特定され、大腸菌(E.coli)において発現させられてきた(Wardら、1989年、Nature 341:544~546頁)。Wardらは、「ドメイン抗体」にちなんで単離単一VHドメイン「dAb」と名づけた。「dAb」という用語は、一般に抗原と特異的に結合する単一免疫グロブリン可変ドメイン(VH、VHH又はVL)ポリペプチドを指す。治療に使用するためには、ラクダ科動物由来のVHHよりもヒト単一ドメイン抗体が好ましく、それは、主にヒト単一ドメイン抗体は、患者に投与されたときに、免疫応答を引き起こす可能性が低いためである。
【0039】
「単一ドメイン抗体、単一可変ドメイン又は免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISV)」という用語はすべて、当該技術分野において周知であり、標的抗原に結合する抗体の単一可変フラグメントを示す。これらの用語は、本明細書では同義に使用される。「単一重鎖ドメイン抗体、単一可変重鎖ドメイン、免疫グロブリン単一重鎖可変ドメイン(ISV)、ヒトVH単一ドメイン」は、軽鎖の不在下において抗原に対する結合特異性を保持する抗体の単一重鎖可変フラグメント又はその他の抗体フラグメントを示す。単一可変重鎖ドメイン抗体は、完全長型抗体のあらゆる他の鎖を含まず、いかなる軽鎖又は定常ドメインも有さない。したがって、それは、軽鎖の不在下において抗原に結合することができる。
【0040】
一態様において、本発明は、ヒト血清アルブミンと結合する免疫グロブリン単一可変ドメインに関する。下で説明されるとおり、本実施形態は、HSA抗原と結合する単一重鎖可変ドメイン抗体/免疫グロブリン単一可変重鎖ドメインに関する。したがって、単一重鎖可変ドメイン抗体は、軽鎖の不在下においてHSAと結合することができる。ヒト単一重鎖可変ドメイン抗体(「VH単一ドメイン抗体/単一VHドメイン抗体」)が特に好ましい。そのような結合分子は、本明細書においてはHumabody(登録商標)とも呼ばれる。Humabody(登録商標)は、Crescendo Biologics社の登録商標である。
【0041】
したがって、いくつかの実施形態において、単離された結合剤/分子は、少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含むか、又はそれからなり、前記ドメインは、ヒト免疫グロブリン可変重鎖ドメインであり、それらは、VLドメイン又はその他の抗体フラグメントがなく、標的抗原と結合する。
【0042】
「単離された」という用語は、その天然の環境から単離された部分を指す。例えば、「単離された」という用語は、その他の単一ドメイン抗体、抗体又は抗体フラグメントを実質的に含まない単一ドメイン抗体を指す。更に、単離された単一ドメイン抗体は、その他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない場合もある。
【0043】
各VHドメイン抗体は、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRを含む:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。したがって、本発明の一実施形態において、ドメインは、以下の式FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を有するヒト可変重鎖(VH)ドメインである。
【0044】
その特性を向上させるために本発明の単一ドメイン抗体に対してC又はN末端VHフレームワーク配列への改変が行われてもよい。例えば、VHドメインは、C又はN末端伸長を含んでもよい。C末端伸長は、VHドメインのC末端に付加されてもよく、これは、残基VTVSS(配列番号10)で終わる。
【0045】
一実施形態において、本発明の単一ドメイン抗体は、1から50残基、例えば、1から10、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10、1~20、1~30又は1~40の付加的なアミノ酸のC末端伸長を含む。一実施形態において、本発明の単一ドメイン抗体は、ヒトCH1ドメインの付加的なアミノ酸を含み、したがって、C末端がCH1ドメインまで伸長する。例えば、C末端伸長は、中性の非極性アミノ酸、例えば、A、L、V、P、M、G、I、F若しくはW又は中性の極性アミノ酸、例えば、S若しくはTを含んでもよい。C末端伸長はまた、ペプチドリンカー又はタグから選択されてもよい。更に、C又はN末端残基は、例えば、本発明の単一ドメイン抗体を別の部分、又は分子の検出を助けるタグと結合するために使用されるペプチドリンカーであってもよい。そのようなタグは、当該技術分野において周知であり、例えば、リンカーHisタグ、例えば、ヘキサ-His(HHHHHH、配列番号11)又はmycタグが挙げられる。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「相同性」又は「同一性」という用語は、一般に最大の相同性パーセントを達成するよう配列をアライメント後、及びいくつかの実施形態においては、必要に応じてギャップを挿入後、配列同一性の部分としていかなる保存的置換も考慮せず、それが比較される参照ポリペプチドの残基と同一である配列中のアミノ酸残基のパーセンテージを指す。したがって、2つのアミノ酸配列間の相同性パーセントは、2つの配列間の同一性パーセントに相当する。N末端又はC末端伸長、タグ又は挿入のいずれも、同一性又は相同性を低下させるものと解釈されるものではない。アライメントのための方法及びコンピュータプログラムは、周知である。2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、周知の数学的アルゴリズムを使用して求めることができる。
【0047】
本明細書に記載されるとおりの単一ドメイン抗体の可変ドメインは、完全ヒト又は実質的に完全ヒトである。VHドメイン抗体という用語は、本明細書中で使用される場合、(ラクダ科動物重鎖ドメインを指すVHHと相対する物として)ヒト単一重鎖可変ドメイン抗体を指す。本明細書中で使用される場合、ヒトVHドメインは、完全ヒト又は実質的に完全ヒトVHドメインを含む。本明細書中で使用される場合、ヒトVHドメインという用語はまた、特に、例えば、WO2016/062990及び下記実施例に記載されているとおり、目的とする抗原(すなわち、HSA)による免疫化に応じて完全ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座を発現するトランスジェニックマウスによって生成された重鎖抗体から単離されるVHドメインも含む。一実施形態において、ヒトVHドメインはまた、ヒトVHドメインアミノ酸から誘導されるか、若しくはそれに基づくか、又はヒトVH核酸配列から生成されるVHドメインも含む場合がある。したがって、ヒトVHドメインという用語は、ヒト免疫グロブリン配列から誘導されるか、若しくはそれによってコードされ、例えば、再配列されていない完全ヒトV、D、J遺伝子セグメントを発現するトランスジェニックマウスにおいて産生される重鎖抗体から得られる可変重鎖領域を含む。いくつかの実施形態において、実質的にヒトVHドメイン又はヒトVHドメインから誘導されるか、若しくはそれに基づくVHドメインは、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、ランダムな若しくは部位特異的な変異誘発によってインビトロにおいて導入されるか、又はインビボにおける体細胞変異によって導入される、例えば、変異)を含んでもよい。したがって、「ヒトVHドメイン」という用語はまた、例えば、配列傾向を除去するために、1つ以上のアミノ酸残基が改変された実質的にヒトVHドメインを含む。例えば、実質的にヒトVHドメインは、生殖系列ヒト配列と比較して、最大10、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10又は最大20個のアミノ酸改変を含んでもよい。
【0048】
ただし、「ヒトVHドメイン」又は「実質的にヒトVHドメイン」という用語は、本明細書中で使用される場合、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を含むことは意図されない。一実施形態において、「ヒトVHドメイン」という用語は、本明細書中で使用される場合、VHドメイン配列中の所定の位置を選択し、1つ又は複数の点変異を所定の位置に導入して、1つ又は複数の所定の残基をラクダ科動物VHHドメインにおいて見られる特定の残基に変える従来の変異誘発法によって、例えば、インビトロにおいて特異的に改変されたヒトVHドメインであるラクダ化(camelized)VHドメインを含むことも意図されない。
【0049】
本発明の分子は、完全ヒトであり、したがって免疫原性ではないため有利である。本発明の分子は、ヒト化の必要がない。
【0050】
第1の態様において、
a)配列番号2又は配列番号2と1、2、3、4、5若しくは5つの相違を有するアミノ酸配列を有するCDR1、
b)配列番号3又は配列番号3と1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16若しくは17の相違を有するアミノ酸配列を有するCDR2及び/又は
c)配列番号4又は配列番号4と1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13若しくは14の相違を有するアミノ酸配列を有するCDR3
を含む免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体が提供される。
【0051】
一実施形態において、免疫グロブリン単一可変ドメインは、上で定義されたCDR、例えば、CDR1、CDR2又はCDR3のうちの1つを有する。一実施形態において、CDRは、それぞれ、配列番号2、3又は4から選択される。別の実施形態において、CDRは、バリアントであり、上で定義されたとおりの置換を有する。別の実施形態において、2つのCDR配列の1つは、配列番号2、3又は4から定義されるとおりであり、残りのCDRは、適切な場合、それぞれのCDR配列2、3又は4のバリアントである。
【0052】
一実施形態において、単一可変ドメイン抗体は、配列番号1又はそれと少なくとも80%、90%若しくは95%の相同性を有する配列を含むか、或いはそれからなる。
【0053】
配列番号1を以下に示す。
【0054】
【0055】
(配列番号1、本明細書ではHumabody(登録商標)1とも呼ばれる)
【0056】
CDR1、CDR2及びCDR3に関する配列は、それぞれ上に太字で示す。CDRは、以下の配列を有する。
NYNMN CDR1:(配列番号2)
SISSAGTHIYSADSVKG CDR2:(配列番号3)
DPHSTGWYKDFDY CDR3:(配列番号4)
【0057】
一実施形態において、ヒト血清アルブミンと結合することができ、それぞれFR1からFR4の4つのフレームワーク領域、及びそれぞれCDR1からCDR3の3つの相補性決定領域を有する単一可変ドメイン抗体であって、
(i)CDR1は、配列番号2に示されるとおりのアミノ酸配列を含むか、又はそれであり、CDR2は、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、又はそれであり、CDR3は、配列番号4のアミノ酸配列を含むか、又はそれであり、
(ii)アミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%又は95%の配列同一性を有する、
単一可変ドメイン抗体が提供される。
【0058】
別の態様において、
a)配列番号6又は配列番号6と1、2、3、4、5若しくは5つの相違を有するアミノ酸配列を有するCDR1
b)配列番号7又は配列番号7と1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16若しくは17の相違を有するアミノ酸配列を有するCDR2及び/又は
c)配列番号8又は配列番号8と1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13若しくは14の相違を有するアミノ酸配列を有するCDR3
を含む免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体が提供される。
【0059】
一実施形態において、免疫グロブリン単一可変ドメインは、上で定義されたCDR、例えば、CDR1、CDR2又はCDR3のうちの1つを有する。一実施形態において、CDRは、それぞれ、配列番号6、7又は8から選択される。別の実施形態において、CDRは、バリアントであり、上で定義されたとおりの置換を有する。別の実施形態において、2つのCDR配列の1つは、配列番号6、7又は8から定義されるとおりであり、残りのCDRは、適切な場合、それぞれのCDR配列6、7、又は8のバリアントである。
【0060】
一実施形態において、単一可変ドメイン抗体は、配列番号5又はそれと少なくとも80%、90%若しくは95%の相同性を有する配列を含むか、或いはそれからなる。
【0061】
配列番号5を以下に示す。
【0062】
【0063】
(配列番号5、本明細書ではHumabody(登録商標)2とも呼ばれる)
【0064】
CDR1、CDR2及びCDR3に関する配列は、それぞれ上に太字で示す。CDRは、以下の配列を有する。
SYTMN CDR1:(配列番号6)
SISSSGRYIYYADSVKG CDR2:(配列番号7)
DPRMVGNPHEFDI CDR3:(配列番号8)
【0065】
一実施形態において、ヒト血清アルブミンと結合することができ、それぞれFR1からFR4の4つのフレームワーク領域、及びそれぞれCDR1からCDR3の3つの相補性決定領域を有する単一可変ドメイン抗体であって、
(i)CDR1は、配列番号6に示されるとおりのアミノ酸配列を含むか、又はそれであり、CDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、又はそれであり、CDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含むか、又はそれであり、
(ii)アミノ酸配列は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%又は95%の配列同一性を有する、
単一可変ドメイン抗体が提供される。
【0066】
上で使用される配列相同性/同一性は、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%、例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列相同性/同一性であってもよい。
【0067】
免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体は、1つ又は複数のアミノ酸置換、欠失、挿入又はその他の改変を有し、HSAと結合する単一ドメイン抗体の生物学的機能を保持する、配列番号1又は配列番号5のバリアントであってもよい。したがって、バリアントVH単一ドメイン抗体は、配列操作されてもよい。改変は、天然の配列VH単一ドメイン抗体又はポリペプチドと比較してアミノ酸配列に変化をもたらす単一ドメイン抗体又はポリペプチドをコードする1つ又は複数のコドンの1つ又は複数の置換、欠失又は挿入を含んでもよい。アミノ酸置換は、類似の構造的及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸による1つのアミノ酸の置換、例えば、セリンによるロイシンの置換、すなわち、保存的アミノ酸置換の結果であってもよい。挿入又は欠失は、任意に、約1から25、例えば、1から5、1から10、1から15、1から20アミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10アミノ酸の範囲であってもよい。許容される変動は、配列中のアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的に行い、完全長型又は成熟した天然の配列によって示される活性について得られたバリアントを試験することによって決定されてもよい。本明細書に記載されるVH単一ドメイン抗体のバリアントは、非バリアント分子と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性/同一性を有する。一実施形態において、改変は、保存的配列改変である。本明細書中で使用される場合、「保存的配列改変」という用語は、そのアミノ酸配列を含む抗体の結合特性に著しく影響を及ぼさないか、又はそれを変えないアミノ酸改変を指すことが意図される。そのような保存的改変としては、アミノ酸置換、付加及び欠失が挙げられる。改変は、当該技術分野において知られている標準的な技術、例えば、部位特異的変異誘発及びPCRによる変異誘発によって本発明のsdAbに導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性
側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。したがって、本発明の単一ドメイン抗体のCDR領域内の1つ又は複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基により置換されてもよく、改変された抗体は、本明細書に記載される機能的アッセイを使用して保持された機能(すなわち、HSA結合)に関して試験することができる。
【0068】
このように、これらのアミノ酸変更は、一般に、抗原に対するその親和性若しくはその特異性等のポリペプチドの生物学的活性、機能、又はその他の所望の特性を変えることなく行うことができる。一般に、ポリペプチドの必須ではない領域における単一のアミノ酸置換は、生物学的活性を実質的に変えない。更に、構造又は機能が類似したアミノ酸の置換は、ポリペプチドの生物学的活性を阻害する可能性がより低い。本明細書に記載されるポリペプチド及びペプチドを構成するアミノ酸残基に対する略語、並びにこれらのアミノ酸残基に対する保存的置換を下記Table 1(表1)に示す。
【0069】
【0070】
いくつかの実施形態において、本発明は、1つ又は複数の配列改変を含み、無改変単一ドメイン抗体と比較して結合親和性、特異性、熱安定性、発現レベル、エフェクター機能、グリコシル化、低減された免疫原性、又は溶解度等の特性のうちの1つ又は複数の改善を有する、配列番号1、配列番号30又は配列番号5と比較したVH単一ドメイン抗体のバリアントであるVH単一ドメイン抗体を提供する。
【0071】
当業者は、インビトロ及びインビボ発現ライブラリーを含む、本明細書に記載されるとおりの抗原結合分子を特定する、得る及び最適化するためのさまざまな方法があることがわかるであろう。これは、実施例で更に記載される。ディスプレイ(例えば、リボソーム及び/又はファージディスプレイ)及び/又は変異誘発(例えば、エラープローン変異誘発)等の当該技術分野において既知の最適化技術を使用してもよい。したがって、本発明はまた、本明細書に記載される単一ドメイン抗体の配列最適化バリアントも含む。
【0072】
一実施形態において、単一ドメイン抗体の免疫原性を低減するために改変が行われてもよい。例えば、アプローチの1つは、1つ又は複数のフレームワーク残基を対応するヒト生殖系列配列に戻すことである。更に具体的には、体細胞変異を受けた単一ドメイン抗体は、単一ドメイン抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含むこともある。そのような残基は、単一ドメイン抗体フレームワーク配列を単一ドメイン抗体が由来する生殖系列配列と比較することによって特定することができる。一実施形態において、すべてのフレームワーク配列は、生殖系列配列である。
【0073】
フレームワーク領域配列中の1つ又は複数のアミノ酸残基をその生殖系列配置に戻すために、体細胞変異が、例えば、部位特異的変異誘発又はPCRによる変異誘発によって生殖系列配列に「復帰変異」させられてもよい。
【0074】
別のタイプのフレームワーク改変は、T細胞エピトープを除去して、それにより、抗体の免疫原性の可能性を低減するために、フレームワーク領域内、又は更には1つ又は複数のCDR領域内の1つ以上の残基を変異させることを含む。
【0075】
更に別の実施形態において、グリコシル化が改変される。例えば、非グリコシル化(aglycoslated)抗体が作製されてもよい(すなわち、抗体は、グリコシル化がない)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を高めるために改変されてもよい。そのような炭水化物改変は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1つ又は複数の部位を変えることによって行われてもよい。例えば、1つ又は複数の可変領域フレームワークグリコシル化部位の除去をもたらし、それによりその部位のグリコシル化を除去する1つ又は複数のアミノ酸置換が行われてもよい。そのような非グリコシル化(aglycosylation)は、抗原に対する抗体の親和性を高めることがある。
【0076】
一実施形態において、1つ又は複数の置換は、CDR1、2又は3領域にある。例えば、CDR1、2又は3に、1、2、3、4、5つ以上のアミノ酸置換があってもよい。別の例において、1又は2つのアミノ酸欠失があってもよい。一実施形態において、1つ又は複数の置換は、フレームワーク領域にある。例えば、フレームワーク領域に1から10個以上のアミノ酸置換があってもよい。
【0077】
一実施形態において、バリアントは、配列番号1を基準にして1つ又は複数の以下の位置に置換、1つ又は複数の以下の置換又はそれらの組合せを含む:E1、V5、G44、Y60、92A、28T→A N31、N33、A54、G55、H57、I58及び/又はY106。位置は、Kabatに従う。
【0078】
一実施形態において、バリアントは、以下の位置等の配列番号1を基準にして1つ又は複数の以下の位置に置換、1つ又は複数の以下の置換又はそれらの組合せを含む:E1→Q;5V-L;G44→R;Y60→S;92A→G;28T→A;N31→S;N33→T;A54→G;G55→S;H57→Y;I58→K及び/又はY106→F。位置は、Kabatに従う。
【0079】
一実施形態において、バリアントは、1、2、3、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13個の上で挙げた改変を含む。したがって、改変の組合せが特に想定される。
【0080】
一実施形態において、バリアントは、下記の位置等における配列番号5を基準にして1つ又は複数の以下の置換又はそれらの組合せを含む:V5、T28、N84、S50、S54、G55、R56、Y60、L103、E108及び/又はI111。位置は、Kabatに従う。
【0081】
本発明による配列番号1のバリアントの1つを、配列番号30として下に示す。
EVQLVESGGG LVKPGGSLRL SCAASGFTFS NYNMNWVRQA PGKGLEWVSS ISSAGTHIYY ADSVKGRFTI SRDNAKNSLY LQMNSLRAED TAVYYCARDP HSTGWYKDFD YWGQGTLVTVSS
【0082】
対応する核酸を下に示す(配列番号31)。
GAGGTGCAGC TGGTGGAGTC TGGGGGAGGC CTGGTCAAGC CTGGGGGGTC CCTGAGACTC TCCTGTGCAG CCTCTGGATT CACCTTCAGT AACTATAACA TGAACTGGGT CCGCCAGGCT CCAGGGAAGG GGCTGGAGTG GGTCTCATCG ATTAGTAGTG CTGGTACTCA CATATACTAC GCAGACTCAG TGAAGGGCCG ATTCACCATC TCCAGAGACA ACGCCAAGAA CTCACTGTAT CTGCAAATGA ACAGCCTGAG AGCCGAGGAC ACAGCTGTTT ATTACTGTGC GAGAGATCCT CATAGCACTG GCTGGTACAA GGACTTTGAC TACTGGGGCC AGGGAACCCT GGTCACCGTC TCCTCA
【0083】
一実施形態において、バリアントは、下記の位置等における配列番号5を基準にして1つ又は複数の以下の置換又はそれらの組合せを含む:V5→L;T28→N若しくはA;N84→H;S50→A;S54→N;G55→S;R56→T;Y60→H;L103→V;E108→A及び/又はI111→V。位置は、Kabatに従う。
【0084】
記述のとおり、本発明によって提供されるアミノ酸配列は、ヒト血清アルブミンと結合することができる、特に(本明細書に記載されるとおり)特異的に結合することができるタンパク質である。したがって、これらは、例えば、(本明細書中で定義されるとおりの)半減期の延長を治療用化合物、部分又は要素に付与するために、ヒト血清アルブミンと結合するための結合ユニット又は結合ドメインとして使用することができる。
【0085】
「半減期」という用語は、使用される場合、例えば、配列若しくは化合物の分解及び/又は自然のメカニズムによる配列若しくは化合物のクリアランス若しくは除去により、アミノ酸配列、化合物又はポリペプチドの血清中濃度がインビボにおいて50%低減されるのにかかる時間を一般に指すことができる。本発明のアミノ酸配列、化合物又はポリペプチドのインビボ半減期は、薬物動態分析によって等、それ自体が既知の任意の手法で求めることができる。適した技術が当業者には明らかであろう。半減期は、tl/2-アルファ、tl/2-ベータ及び曲線下面積(AUC)等のパラメーターを使用して表すことができる。半減期(tアルファ及びtベータ)及びAUCは、時間に対する複合物又は融合物の血清中濃度の曲線から求めることができる。したがって、「半減期」という用語は、本明細書中で使用される場合、特にtl/2-ベータ又は終末相半減期を指す(この場合、tl/2-アルファ及び/又はAUC或いはその両方は考慮されなくてもよい)。
【0086】
例えば、第1の相(アルファ相)において、薬物組成物(例えば、薬物複合物、非共有結合性薬物複合物、薬物融合物)は、主に患者中に分散しており、一部は排出される。第2の相(ベータ相)は、薬物組成物(例えば、薬物複合物、非共有結合性薬物複合物、薬物融合物)が分散し、薬物組成物が患者から除去されるため血清中濃度が低下する終末相である。tアルファ半減期は第1の相の半減期であり、tベータ半減期は第2の相の半減期である。
【0087】
本発明のHSA結合免疫グロブリン可変ドメインは、
・1から72時間、例えば、10時間以上、例えば、最大20時間又は12、24、36若しくは48時間のヒトにおける血清中半減期(t1/2として表される)を有することができ、及び/又は
・治療的部分と連結される場合、得られたタンパク質に1から72時間、例えば、10時間以上、例えば、最大20時間又は12、24、36若しくは48時間のヒトにおける血清中半減期を与える。
【0088】
一実施形態において、HSA結合免疫グロブリン可変ドメインは、実施例で示されるとおりgenOway(登録商標)HSA/FcRnマウスモデルにおいて分子の半減期を約20から78時間延長する。
【0089】
一実施形態において、HSA結合免疫グロブリン可変ドメインは、カニクイザルにおいて約84時間の半減期を分子に与える。これは、例えば、配列番号30のHSAバインダーに関する実施例に示されるとおりでありうる。
【0090】
本発明のHSA結合免疫グロブリン可変ドメインはまた、実施例9に示されるとおり優れた保存安定性も有する。これらは、VH単一ドメイン抗体の半減期を延長することに特に適している。
【0091】
本発明はまた、例えば、配列番号1、配列番号30若しくは配列番号5及び/又は第2の部分を含むか、或いはそれからなる、本明細書に記載される免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体を含む結合分子に関する。一実施形態において、この部分は、治療的部分である。結合分子は、ポリペプチド、タンパク質又は構築物であってもよい。したがって、本明細書に記載される単一可変ドメイン抗体を含む、融合タンパク質、多価及び多重特異性タンパク質又は構築物も提供される。例えば、配列番号1、配列番号30又は配列番号5を含むか、或いはそれからなる、本明細書に記載される免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体は、治療標的等の別の標的と結合する部分とともに使用するためのものである。
【0092】
一実施形態において、治療的部分は、例えば、抗体又は抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab')2、Fv、単鎖Fvフラグメント(scFv)又は単一ドメイン抗体、例えば、VH若しくはVHHドメイン)或いは抗体模倣タンパク質から選択される結合分子である。一実施形態において、本発明の単一ドメイン抗体は、CH2及びCH3ドメインの一方若しくは両方、及び任意にヒンジ領域を含む、抗体Fc領域又はそのフラグメントに連結されてもよい。一実施形態において、少なくとも第2の部分は、VHドメインである。
【0093】
一実施形態において、本明細書に記載されるとおりのHSAと結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン及び第2の部分を含むタンパク質又はポリペプチドは、融合タンパク質である。一実施形態において、本明細書に記載されるとおりのHSAと結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン及び第2の部分を含むタンパク質又はポリペプチドは、薬物複合物である。
【0094】
本明細書中で使用される場合、「複合物」は、薬物と結合させられる、血清アルブミンと結合する抗体の抗原結合フラグメントを含む組成物を指す。
【0095】
そのような複合物としては、薬物が共有結合させられる、血清アルブミンと結合する抗体の抗原結合フラグメントを含む「薬物複合物」、及び薬物が非共有結合させられる、血清アルブミンと結合する抗体の抗原結合フラグメントを含む「非共有結合性薬物複合物」が挙げられる。
【0096】
本明細書中で使用される場合、「薬物複合物」は、薬物が共有結合させられる、血清アルブミンと結合する抗体の抗原結合フラグメントを含む組成物を指す。薬物は、抗原結合フラグメントと直接的に又は適したリンカー若しくはスペーサー部分により間接的に共有結合させられてもよい。薬物は、任意の適した位置、例えば、アミノ末端、カルボキシル末端に、又は適したアミノ酸側鎖により抗原結合フラグメントと結合させられてもよい。
【0097】
一実施形態において、免疫グロブリン単一可変ドメインは、2つの部分をつなぐためのペプチドリンカー又はその他の適したリンカーにより第2の部分と連結される。
【0098】
「ペプチドリンカー」という用語は、1つ又は複数のアミノ酸を含むペプチドを指す。ペプチドリンカーは、1から50個、例えば、1から20個のアミノ酸を含む。ペプチドリンカーは、当該技術分野において知られており、非限定例が本明細書に記載されている。適した非免疫原性リンカーペプチドは、例えば、G及び/又はS残基を含むリンカー、(G4S)n、(SG4)n又はG4(SG4)nペプチドリンカーであり、「n」は、一般に1から10の間の数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。一実施形態において、ペプチドは、例えば、GGGGS(配列番号12)、GGGGSGGGGS(配列番号13)、SGGGGSGGGG(配列番号14)、GGGGSGGGGSGGGG(配列番号15)、GSGSGSGS(配列番号16)、GGSGSGSG(配列番号17)、GGSGSG(配列番号18)及びGGSG(配列番号19)からなる群から選択される。
【0099】
結合薬剤は、多重特異性、例えば、二重特異性であってもよい。一実施形態において、結合分子は、本明細書に記載されるとおりのHSAと結合する第1のVH単一ドメイン抗体(VH(A))及び別の抗原と結合する第2のVH単一ドメイン抗体(VH(B))を含み、したがって、以下の式を有する:VH(A)-L-VH(B)。VH(A)は、VH(B)と結合させられ、これは、例えば、ペプチドリンカーによりVH(B)と連結される。Lは、リンカーを指す。
【0100】
各VHは、CDR及びFR領域を含む。したがって、結合分子は、以下の式を有してもよい:FR1(A)-CDR1(A)-FR2(A)-CDR2(A)-FR3(A)-CDR3(A)-FR4(A)-L-FR1(B)-CDR1(B)-FR2(B)-CDR2(B)-FR3(B)-CDR3(B)-FR4(B)。
【0101】
単一VHドメインA及びBの順序は特に制限されないため、本発明のポリペプチド内において、単一可変ドメインAがN末端に位置してもよく、単一可変ドメインBがC末端に位置してもよく、又は逆もまた同様である。
【0102】
一実施形態において、結合分子は、二重特異性である。したがって、一態様において、本発明は、本明細書に記載される単一ドメイン抗体とは異なる結合特異性を有する第2の機能的部分と連結された前記単一ドメイン抗体を含む二重特異性分子に関する。
【0103】
一実施形態において、結合分子、例えば、タンパク質又は構築物は多重特異性であり、更なる部分、すなわち、第3、第4、第5等の部分を含む。
【0104】
多重特異性タンパク質の一実施形態において、HSA結合VHドメインは、タンパク質のC末端に位置する。多重特異性タンパク質の一実施形態において、HSA結合VHドメインは、タンパク質のN末端に位置する。多重特異性タンパク質の一実施形態において、HSA結合VHドメインは、末端に位置しない。
【0105】
第2の治療的部分又は更なる治療的部分は、例えば、腫瘍抗原又はがん免疫標的(immunooncology target)と結合する部分から選択することができるが、当業者は、本発明がそれにより限定されないことがわかるであろう。
【0106】
本発明はまた、請求項のいずれか一項に記載の免疫グロブリン単一可変ドメインが融合タンパク質中の治療的部分と連結される場合に、前記治療的部分の半減期を延長する本明細書に記載されるとおりの免疫グロブリン単一可変ドメインの使用に関する。
【0107】
本発明はまた、請求項のいずれか一項に記載の免疫グロブリン単一可変ドメインが融合タンパク質中の治療的部分と連結される場合に、前記治療的部分の半減期を延長する本明細書に記載されるとおりの免疫グロブリン単一可変ドメインの使用に関する。例えば、これは、例えば、本明細書に記載されるとおり、CD137と結合するsdAb及びPSMA又はPD-1と結合するsdAbを含むタンパク質の半減期を延長するために使用することができる。
【0108】
本明細書に記載されるとおりの免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えば、分子は、VH(A)-VH(B)-VH(C)、VH(B)-VH(A)-VH(C)、VH(C)-VH(A)-VH(B)又はVH(C)-VH(B)-VH(A)の形式であってもよく、Aは、CD137と結合するsdAbであり、Bは、PSMA又はPD-1と結合するsdAbであり、Cは、本明細書に記載されるとおりの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、配列番号1、配列番号30又は配列番号5)である。VHの順序は柔軟で、別の場所で説明されるとおり、適切なリンカーがVH分子を連結する。例となる分子は、配列番号22、23、26、28、33、34又は35から選択される配列を含むか、又はそれからなる。
【0109】
一実施形態において、単一重鎖可変ドメイン抗体は、再配列されていないヒトV、D及びJ領域を含む導入遺伝子を発現するトランスジェニックげっ歯類、特に、ヒト重鎖抗体を産生するげっ歯類から得られるか、又は得ることができる。一実施形態において、前記げっ歯類は、機能的な内因性軽鎖及び重鎖を産生しない。
【0110】
一般に、本明細書において別のことが示されない限り、本明細書において言及される免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、タンパク質及びその他の化合物並びに構築物は、ヒト(及び/又は任意に温血動物、特に哺乳動物)の疾患又は障害の予防又は処置に使用することが意図される。したがって、一般に、本明細書に記載される免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、タンパク質及びその他の化合物並びに構築物は、(生物学的)薬物又はその他の薬学的若しくは治療的に活性な化合物及び/又は医薬製品若しくは組成物として使用することができるか、且つ/或いは適切にはそれらの一部として使用することができるようであることが好ましい。
【0111】
したがって、本発明はまた、本明細書に記載されるとおりのHSA結合単一ドメインを含む、本明細書に記載されるとおりの免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチド、タンパク質又は構築物、例えば、結合分子若しくは融合タンパク質を含む医薬組成物又は製剤に関する。医薬組成物は、任意に薬学的に許容される担体を含んでもよい。免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチド、タンパク質若しくは構築物又は医薬組成物は、経口、局所、非経口、舌下、直腸、経膣、眼、鼻腔内、肺内、皮内、硝子体内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、脳内、経皮、経粘膜、吸入によって、或いは特に耳、鼻、眼、若しくは皮膚への局所又は吸入による経路を含むが、これらに限定されない、任意の都合のよい経路によって投与されてもよい。
【0112】
非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、直腸、膀胱内、皮内、局所又は皮下投与が挙げられる。好ましくは、組成物は、非経口投与される。
【0113】
薬学的に許容される担体又はビヒクルは、粒状であってもよく、その結果、組成物は、例えば、錠剤又は粉末形態である。「担体」という用語は、本発明の薬物抗体複合物がともに投与される希釈剤、アジュバント又は賦形剤を指す。そのような薬学的担体は、水及び石油、動物、植物若しくは合成由来のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等を含む油等の液体であってもよい。担体は、生理的食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素等であってもよい。更に、補助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤及び着色剤が使用されてもよい。一実施形態において、動物に投与される場合、本発明の単一ドメイン抗体又は組成物及び薬学的に許容される担体は無菌である。水は、本発明の薬物抗体複合物が静脈内投与される場合に好適な担体である。生理食塩水並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も、特に注射可能な溶液用の液体担体として利用することができる。適した医薬担体としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアラート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等の賦形剤も挙げられる。本組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含んでもよい。
【0114】
本発明の医薬組成物は、液体の形態、例えば、溶液、エマルジョン又は懸濁液であってもよい。液体は、注射、輸液(例えば、IV輸液)による送達又は皮下への送達に有用な場合がある。経口投与が意図される場合、組成物は、好ましくは固体又は液体形態であり、この場合、半固体、半液体、懸濁液及びゲル形態が本明細書においては固体又は液体のいずれかと見なされる形態内に含まれる。
【0115】
経口投与用の固体組成物として、組成物は、散剤、顆粒、圧縮錠剤、丸薬、カプセル、チューインガム、ウェハース等の形態に製剤化されてもよい。そのような固体組成物は、一般に1つ又は複数の不活性希釈剤を含む。更に、1つ又は複数の以下のものが存在してもよい:結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、又はゼラチン;賦形剤、例えば、デンプン、ラクトース又はデキストリン;崩壊剤、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トウモロコシデンプン等;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロース又はサッカリン;香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジ香料;及び着色剤。組成物がカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の形態である場合、組成物は、上のタイプの材料に加えて、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン又は脂肪油等の液体担体を含んでもよい。
【0116】
組成物は、液体、例えば、エリキシル剤、シロップ、溶液、エマルジョン又は懸濁液の形態であってもよい。液体は、経口投与又は注射による送達に有用でありうる。経口投与が意図される場合、組成物は、甘味剤、保存剤、色素/着色剤及び風味増強剤のうちの1つ以上を含んでもよい。注射による投与用の組成物には、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、バッファー、安定化剤及び等張化剤のうちの1つ以上も含まれてもよい。
【0117】
組成物は、1つ又は複数の投与量単位の形態をとってもよい。特定の実施形態において、組成物を、処置を必要とする領域に局所投与するか、又は静脈内注射若しくは輸液によって投与するのが望ましい場合がある。
【0118】
本発明は、更に、本明細書に記載される医薬組成物若しくは製剤又は本明細書に記載されるとおりのHSA結合単一ドメインを含む結合分子若しくは融合タンパク質の投与を含む、疾患、例えば、がんの処置のための方法にまで及ぶ。疾患の処置に使用するため、例えば、がんの処置に使用するための、本明細書に記載される医薬組成物若しくは製剤又は本明細書に記載されるとおりのHSA結合単一ドメインを含む結合分子若しくは融合タンパク質も想定される。がんの処置のための医薬の製造における本明細書に記載される医薬組成物若しくは製剤又は本明細書に記載されるとおりのHSA結合単一ドメインを含む結合分子若しくは融合タンパク質の使用も想定される。
【0119】
特定の障害又は状態の処置に有効な/活性な治療薬の量は、障害又は状態の性質により左右されることになり、標準的な臨床技術によって決定することができる。更に、最適な投与量範囲を特定するのを助けるためにインビトロ又はインビボアッセイが任意に利用されてもよい。組成物に利用される厳密な用量は、投与経路、及び疾患又は障害の重篤度によっても左右されることになり、医師の判断及び各患者の状況に従って決定されるべきである。年齢、体重、性別、食事、投与の時間、排出の速度、受容者の状態、薬物の組合せ、反応感度及び疾患の重症度のような要素が考慮されるものとする。
【0120】
一般に、量は、組成物の少なくとも約0.01質量%の本発明の単一ドメイン抗体である。経口投与が意図される場合、この量は、組成物の約0.1質量%から約80質量%の範囲で変動してもよい。好ましい経口用組成物は、組成物の約4質量%から約50質量%の本発明の単一ドメイン抗体を含んでもよい。
【0121】
好ましい本発明の組成物は、非経口投与量単位が約0.01質量%から約2質量%の本発明の単一ドメイン抗体を含むように調製される。
【0122】
注射による投与のための組成物は、一般に約0.1mg/kg対象体重から約250mg/kg対象体重、好ましくは、約0.1mg/kg動物体重から約20mg/kg動物体重の間、より好ましくは、約1mg/kg動物体重から約10mg/kg動物体重を含んでもよい。一実施形態において、組成物は、約1から30mg/kg、例えば、約5から25mg/kg、約10から20mg/kg、約1から5mg/kg、又は約3mg/kgの用量で投与される。投薬スケジュールは、例えば、週に1回から2、3、又は4週に1回で変化してもよい。
【0123】
本明細書中で使用される場合、「処置する」、「処置すること」又は「処置」は、疾患又は障害を抑制又は軽減することを意味する。例えば、処置は、疾患若しくは障害と関連する症状の発症の先送り、及び/又は前記疾患とともに発症するか、若しくは発症することが予想されるそのような症状の重症度の低減を含んでもよい。この用語は、既存の症状を改善すること、更なる症状を予防すること、及びそのような症状の基となる原因を改善又は予防することを含む。したがって、この用語は、処置される哺乳動物、例えば、ヒト患者の少なくとも一部に有益な結果が与えられることを指す。多くの医学的処置は、処置を受ける一部の患者に対して有効であるが、すべての患者に対して有効な訳ではない。
【0124】
「対象」又は「患者」という用語は、処置、観察、又は実験の対象である動物を指す。例にすぎないが、対象としては、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ネズミ科動物、ウシ科動物、ウマ科動物、イヌ科の動物、ヒツジのような動物、若しくはネコ科動物を含むが、これらに限定されない哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
本発明の分子又は医薬組成物は、単独の活性成分として、又は1つ又は複数の他の治療用薬剤と組み合わせて投与されてもよい。治療用薬剤は、疾患の処置に有用な化合物又は分子である。治療用薬剤の例としては、抗体、抗体フラグメント、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節物質、アポトーシス促進剤、抗血管新生剤、ホウ素化合物、光活性薬剤又は色素及び放射性同位元素が挙げられる。
【0126】
本発明はまた、タンパク質の半減期を延長するための方法であって、前記タンパク質を本明細書に記載されるとおりの免疫グロブリン単一可変ドメインと連結する工程を含む、方法に関する。
【0127】
本発明はまた、本明細書に記載されるアミノ酸配列をコードする核酸配列に関する。一実施形態において、前記核酸は、配列番号20又はそれと少なくとも90%の配列相同性を有する核酸である。一実施形態において、前記核酸は、配列番号21又はそれと少なくとも90%の配列相同性を有する核酸である。一実施形態において、前記核酸配列は、リンカーにより第2の核酸配列と連結される。一実施形態において、前記第2の核酸は、治療的部分をコードする。一実施形態において、前記リンカーは、核酸リンカーである。
【0128】
配列番号20
GAGGTGCAGC TGTTGGAGTC TGGGGGAGGC CTGGTCAAGC CTGGGGGGTC CCTGAGACTC TCCTGTGCAG CCTCTGGATT CACCTTCAGT AACTATAACA TGAACTGGGT CCGCCAGGCT CCAGGGAAGA GGCTGGAGTG GGTCTCATCG ATTAGTAGTG CTGGTACTCA CATATACTCC GCAGACTCAG TGAAGGGCCG ATTCACCATC TCCAGAGACAACGCCAAGAA CTCACTGTAT CTGCAAATGA ACAGCCTGAG AGCCGAGGAC ACAGGTGTTT ATTACTGTGC GAGAGATCCT CATAGCACTG GCTGGTACAA GGACTTTGAC TACTGGGGCC AGGGAACCCT GGTCACCGTC TCCTCA
配列番号21
GAGGTGCAGC TGTTGGAGTC TGGGGGAGGC CTGGTCAAGC CGGGGGGGTC CCTGAGACTC TCCTGTGCAG CCTCTGGATT CACCGTCAGT AGCTATACCA TGAACTGGGT CCGCCAGGCT CCGGGGAAGG GGCTGGAGTG GGTCTCATCC ATTAGTAGTA GTGGTCGTTA CATATACTAC GCAGACTCAG TGAAGGGCCG ATTCACCATC TCCAGAGACA ACGCCAAGAA CTCATTATAT CTGCAAATGA ACAGCCTGAG AGCCGAGGAC ACAGCTGTAT ATTATTGTGC GAGAGATCCC CGTATGGTTG GGAACCCCCA TGAATTTGAT ATCTGGGGCC AAGGGACAAT GGTCACCGTC TCCTCA
【0129】
本発明はまた、本明細書に記載されるとおりの核酸配列を含むベクターに関する。本発明はまた、本明細書に記載されるとおりの核酸配列又は本明細書に記載されるとおりのベクターを含む、宿主細胞に関する。宿主細胞は、哺乳動物、細菌又は酵母細胞であってもよい。
【0130】
本発明はまた、本明細書に記載されるとおりの免疫グロブリン単一可変ドメイン若しくは医薬組成物、本明細書に記載されるとおりのタンパク質若しくは構築物又は本明細書に記載されるとおりの医薬組成物及び任意に使用のための説明書を含むキットに関する。
【0131】
本明細書に記載される単一ドメイン抗体は、HSA抗原による刺激時に重鎖抗体を発現するトランスジェニック哺乳動物、例えば、げっ歯類から得ることができる。トランスジェニックげっ歯類、例えば、マウスは、好ましくは、内因性抗体遺伝子を発現する能力が低下している。よって、一実施形態において、げっ歯類は、内因性軽及び/又は重鎖抗体遺伝子を発現する能力が低下している。したがって、げっ歯類は、例えば、下で更に説明されるとおり、機能的な軽及び/又は重鎖が産生されないように、内因性カッパ及びラムダ軽及び/又は重鎖抗体遺伝子の発現を阻害する改変を含んでもよい。
【0132】
一態様はまた、HSAと結合することができる本明細書に記載されるとおりのVHドメインを有するヒト重鎖抗体又は結合分子を生成するための方法であり、前記方法は、
a)トランスジェニックげっ歯類、例えば、マウスをHSA抗原で免疫化する工程であって、前記げっ歯類は、再配列されていないヒト重鎖V遺伝子を含む核酸構築物を発現し、機能的な内因性軽鎖又は重鎖を生成することはできない、免疫化する工程と、
b)ヒト重鎖抗体を単離する工程と
を含む、方法に関する。
【0133】
更なる工程は、例えば、前記げっ歯類、例えば、マウスからVHドメイン配列を含む配列のライブラリーを生成し、前記ライブラリーからVHドメイン配列を含む配列を単離することによる前記重鎖抗体からVHドメインを単離する工程を含んでもよい。
【0134】
別の態様はまた、ヒトHSAと結合することができる単一VHドメイン抗体を生成するための方法であり、前記方法は、
a)トランスジェニックげっ歯類、例えば、マウスをHSA抗原で免疫化する工程であって、前記げっ歯類は、再配列されていないヒト重鎖V遺伝子を含む核酸構築物を発現し、機能的な内因性軽鎖又は重鎖を生成することはできない、免疫化する工程と、
b)前記げっ歯類、例えば、マウスからVHドメイン配列を含む配列のライブラリーを生成する工程と、
c)前記ライブラリーからVHドメイン配列を含む配列を単離する工程と
を含む、方法に関する。
【0135】
更なる工程は、例えば、実施例に示されるとおりの機能的アッセイを使用することによる、HSAと結合する単一VHドメイン抗体又は重鎖抗体を特定する工程を含んでもよい。
【0136】
インビトロ発現ライブラリーを使用して本明細書に記載されるポリペプチド、核酸、宿主細胞、生成物及び組成物を調製又は生成するための方法は、
a)アミノ酸配列をコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリーを準備する工程と、
b)前記セット、コレクション又はライブラリーを、HSAと結合することができる/HSAに対して親和性を有するアミノ酸配列に関してスクリーニングする工程と、
c)HSAと結合することができる/HSAに対して親和性を有するアミノ酸配列を単離する工程と
を含んでもよい。
【0137】
本明細書に記載される単一VHドメイン抗体、結合分子又は融合タンパク質を調製するための方法であって、この方法は、本明細書に記載されるとおりの宿主細胞が本明細書に記載される単一VHドメイン抗体、結合分子又は融合タンパク質を産生又は発現するような条件下において、前記宿主細胞を培養又は維持する工程を含み、任意にそのように産生された本明細書に記載される単一VHドメイン抗体、結合分子又は融合タンパク質を単離する工程を更に含む、方法も提供される。
【0138】
上記方法において、アミノ酸配列のセット、コレクション又はライブラリーは、スクリーニングを容易にする等のために、ファージ、ファージミド、リボソーム又は適した微生物(酵母等)上に提示されてもよい。アミノ酸配列(のセット、コレクション又はライブラリー)を提示及びスクリーニングするのに適した方法、技術及び宿主生物は、当業者には明らかであろう(例えば、Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual、Academic Press;第1版(1996年10月28日) Brian K. Kay、Jill Winter、John McCaffertyを参照)。ライブラリー、例えば、ファージライブラリーは、抗原特異的な重鎖抗体を発現する細胞又は組織を単離し、単離された細胞又は組織由来のmRNAからVHドメインをコードする配列をクローニングし、ライブラリーを使用してコードタンパク質を提示することによって生成される。VHドメインは、細菌、酵母又はその他の発現系で発現されてもよい。
【0139】
本明細書に示されているさまざまな態様及び実施形態において、げっ歯類という用語は、マウス又はラットに関連してもよい。一実施形態において、げっ歯類は、マウスである。マウスは、非機能的な内因性ラムダ軽鎖遺伝子座を含んでもよい。したがって、マウスは、機能的な内因性ラムダ軽鎖を生成しない。一実施形態において、ラムダ軽鎖遺伝子座は、一部若しくは完全に除去されるか、又は挿入、逆位、組換え事象、遺伝子編集若しくは遺伝子サイレンシングにより非機能にされる。例えば、少なくとも定常領域遺伝子C1、C2及びC3は、除去されてもよく、又は挿入若しくは上記のとおりのその他の改変により非機能にされてもよい。一実施形態において、遺伝子座は、マウスが機能的なラムダ軽鎖を生成しないように機能的に発現抑制される。
【0140】
更に、マウスは、非機能的な内因性カッパ軽鎖遺伝子座を含んでもよい。したがって、マウスは、機能的な内因性カッパ軽鎖を生成しない。一実施形態において、カッパ軽鎖遺伝子座は、一部若しくは完全に除去されるか、又は挿入、逆位、組換え事象、遺伝子編集若しくは遺伝子サイレンシングにより非機能にされる。一実施形態において、この遺伝子座は、マウスが機能的なカッパ軽鎖を生成しないように機能的に発現抑制される。
【0141】
機能的に発現抑制された内因性ラムダ及びカッパL鎖遺伝子座を有するマウスは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2003/000737に開示されているとおりに作製されてもよい。
【0142】
更に、マウスは、例えば、(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)WO2004/076618に記載されているとおり、非機能的な内因性重鎖遺伝子座を含んでもよい。したがって、マウスは、機能的な内因性重鎖を生成しない。一実施形態において、重鎖遺伝子座は、一部若しくは完全に除去されるか、又は挿入、逆位、組換え事象、遺伝子編集若しくは遺伝子サイレンシングにより非機能にされる。一実施形態において、この遺伝子座は、マウスが機能的な重鎖を生成しないように機能的に発現抑制される。
【0143】
一実施形態において、マウスは、非機能的な内因性重鎖遺伝子座、非機能的な内因性ラムダ軽鎖遺伝子座及び非機能的な内因性カッパ軽鎖遺伝子座を含む。したがって、マウスは、機能的な内因性軽鎖又は重鎖を産生しない。よって、マウスは、トリプルノックアウト(TKO)マウスである。
【0144】
トランスジェニックマウスは、異種、好ましくは、ヒトの重鎖遺伝子座を発現するためのベクター、例えば、酵母人工染色体(YAC)を含んでもよい。YACは、酵母における非常に大きなDNAインサートのクローニングに利用可能なベクターである。天然の酵母染色体のように挙動するために必要な3つすべてのシス作用構造要素(自己複製配列(ARS)、セントロメア(CEN)及び2つのテロメア(TEL))を含むだけでなく、大きなDNAインサートを受け入れるその能力は、それらが酵母細胞における染色体様安定性及び伝達の正確さに必要とされる最小サイズ(150kb)に至るのを可能にする。YACの構築及び使用については、当該技術分野において周知である(例えば、Bruschi、C.V.及びGjuracic、K. Yeast Artificial Chromosomes、Encyclopaedia of Life Sciences、2002年、Macmillan Publishers Ltd、Nature Publishing Group)。
【0145】
例えば、YACは、CH1ドメイン、マウスエンハンサー及び調節領域の欠如したマウス免疫グロブリン定常領域遺伝子と組み合わせて過剰の再配列されていないヒトVH、D及びJ遺伝子を含んでもよい。ヒトVH、D及びJ遺伝子は、ヒトVH、D及びJ遺伝子座であり、これらは、完全ヒトである再配列されていない遺伝子である。YACは、WO2016/062990に記載されているとおりであってもよい。
【0146】
当該技術分野において既知の代替的な方法が、内因性マウス又はラット免疫グロブリン遺伝子の除去又は不活性化並びにCH1ドメイン、マウスエンハンサー及び調節領域の欠如したマウス免疫グロブリン定常領域遺伝子と組み合わせたヒトV、D及びJ遺伝子の導入のために使用されてもよい。
【0147】
トランスジェニックマウスは、実施例に示されるとおりの標準的な技術により作製することができる。トランスジェニックマウスを作製するための2つの最も特徴付けられた経路は、新たに受精させた卵母細胞への遺伝物質の前核マイクロインジェクションによるもの又は桑実期若しくは胚盤胞期胚への安定にトランスフェクションされた胚性幹細胞の導入によるものである。どのように遺伝物質が導入されるかにかかわらず、操作された胚が、妊娠が継続される偽妊娠中の雌レシピエントに移植され、トランスジェニック候補の子が産まれる。
【0148】
これらの広範な方法の間の主な差は、ESクローンを、トランスジェニック動物を作製するための使用の前に広範囲にわたってスクリーニングすることができることである。対照的に、前核マイクロインジェクションは、導入後の宿主ゲノムへの遺伝物質の組み込みに依存し、一般的に言って、導入遺伝子の組み込みの成功は、子が産まれるまで確認できない。
【0149】
導入遺伝子の組み込みの成功を助けるため、及びそれを判定するための両方のための当該技術分野において既知の多くの方法が存在する。トランスジェニック動物は、構築物のゲノムへのランダムな組み込み、部位特異的な組み込み、又は相同組換えを含む複数の手段によって作製することができる。薬剤耐性マーカー(正の選択)、リコンビナーゼ、組換えが関係するカセット交換、負の選択技術、及び組換えの効率を向上させるヌクレアーゼの使用を含む、導入遺伝子組み込み及びそれに続く改変のために駆動及び選択の両方のために使用することができるさまざまなツール及び技術が存在する。これらの方法の大半は、ES細胞の改変に一般的に使用される。ただし、一部の技術は、前核インジェクションによる遺伝子組換えを向上させるのに有用性がある場合もある。
【0150】
所望のバックグラウンド内でトランスジェニック系統のより効率的な形成をもたらすために更なる改良が用いられてもよい。上記のとおり、好適な実施形態において、内因性マウス免疫グロブリン発現が抑制されて、薬物の発見に活用可能な重鎖のみレパートリーの発現のために導入される導入遺伝子の単独の使用を可能にする。遺伝子操作されたマウス、例えば、すべての内因性免疫グロブリン遺伝子座(マウス重鎖、マウスカッパ鎖及びマウスラムダ鎖)に関して発現抑制されたTKOマウスが上記のとおり使用されてもよい。このTKOバックグラウンドへの任意の導入される導入遺伝子の移行は、従来の育種又はIVF工程を含めることを伴う育種のいずれかにより達成され、プロセスの効率的な規模の変更をすることができる。ただし、遺伝子組換え手順の間にTKOバックグラウンドを含めることも可能である。例えば、マイクロインジェクションに関して、卵母細胞が、TKOドナー由来であってもよい。同様に、遺伝子組換えに使用するためにTKO胚からES細胞が誘導されてもよい。
【0151】
免疫グロブリン遺伝子座を発現するよう導入遺伝子が導入されたトリプルノックアウトマウスは、本明細書ではTKO/Tgと称される。
【0152】
一実施形態において、このマウスについては、WO2016/062990に記載されている。本発明はまた、ヒト重鎖遺伝子座を発現し、HSA抗原で免疫化されたげっ歯類、好ましくは、マウスに関する。本発明はまた、ヒトHSAと結合するヒトVHドメインを含む重鎖抗体を発現する上記のとおりのげっ歯類、好ましくは、マウスに関する。好ましくは、前記げっ歯類は、機能的な内因性カッパ及びラムダ軽及び/又は重鎖を生成することができない。ヒト重鎖遺伝子座は、上記のとおりでありうる導入遺伝子に位置する。
【0153】
本発明はまた、ヒトVHドメインを含むか、又はヒトHSA抗原で免疫化され、ヒト重鎖遺伝子座を発現するげっ歯類、好ましくは、マウスから得られるか、若しくは得ることができる抗ヒトHSA単一VHドメイン抗体或いは抗ヒトHSA重鎖抗体に関する。好ましくは、前記げっ歯類は、機能的な内因性カッパ及びラムダ軽及び/又は重鎖を生成することができない。ヒト重鎖遺伝子座は、上記のとおりでありうる導入遺伝子に位置する。
【0154】
本明細書において別に定義されていない限り、本開示に関連して使用される科学及び技術用語は、当業者が一般的に理解する意味を有するものとする。前述の開示は、本開示を作製及び使用する方法、並びにその最良の形態を含む、本開示の範囲内に包含される主題の概括的な説明を提供するが、以下の実施例は、当業者が本開示を実施することを更に可能にするために提供される。ただし、当業者は、これらの実施例の詳細は、本発明を限定するものと解釈されるべきではなく、その範囲は、本開示に添付の請求項及びその等価物から認識されるべきであることを理解するであろう。本開示のさまざまな更なる態様及び実施形態は、本開示に鑑み当業者には明白であろう。
【0155】
遺伝子受入番号に対する参照、科学刊行物及び特許公報に対する参照を含む本明細書において言及されるすべての文書は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0156】
「及び/又は」は、本明細書中で使用される場合、その他のものを伴う、若しくは伴わない2つの明記された特徴又は構成要素のそれぞれの具体的な開示と解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、それぞれが本明細書において個別に述べられているかのように、(i)A、(ii)B及び(iii)A及びBのそれぞれの具体的な開示と解釈されるべきである。文脈が別のことを規定しない限り、上記の特徴の説明及び定義は、本発明の任意の特定の態様又は実施形態に限定されず、記載されているすべての態様及び実施形態に一様に当てはまる。
【0157】
本発明は、以下の非限定的実施例において更に示される。
【実施例】
【0158】
(実施例1)
Tg/TKOマウスの構築
内因性重鎖及び軽鎖抗体発現に関して発現抑制されたバックグラウンド内に生殖系列配置で重鎖抗体トランスジェニック遺伝子座を有するマウス(トリプルノックアウト、すなわちTKO)を、前に示されたとおりに作製した(WO2004/076618及びWO2003/000737、Renら、Genomics、84、686頁、2004年;Zouら、J. Immunol.、170、1354頁、2003年)。簡単にいえば、CH1ドメイン、マウスエンハンサー及び調節領域の欠如したマウス免疫グロブリン定常領域遺伝子と組み合わせて過剰なヒトVH、D及びJ遺伝子を含む酵母人工染色体(YAC)を用いた新たに受精させた卵母細胞の前核マイクロインジェクション後にトランスジェニックマウスを得た。酵母人工染色体(YAC)は、酵母における非常に大きなDNAインサートのクローニングに利用可能なベクターである。天然の酵母染色体のように挙動するために必要な3つすべてのシス作用構造要素(自己複製配列(ARS)、セントロメア(CEN)及び2つのテロメア(TEL))を含むだけでなく、大きなDNAインサートを受け入れるその能力は、それらが酵母細胞における染色体様安定性及び伝達の正確さに必要とされる最小サイズ(150kb)になるのを可能にする。YACの構築及び使用については、当該技術分野において周知である(例えば、Bruschi, C.V.及びGjuracic, K.、Yeast Artificial Chromosomes、ENCYCLOPEDIA OF LIFE SCIENCES 2002年 Macmillan Publishers Ltd、Nature Publishing Group / www.els.net)。
【0159】
使用したYACは約340kbであり、天然の配置で10のヒト重鎖V遺伝子、ヒト重鎖D及びJ遺伝子、マウスCγ1遺伝子並びにマウス3'エンハンサー遺伝子を含む。これは、CH1エクソンがない。具体的には、YACは、(5'から3'に)以下を含んでいた:テロメア-酵母TRP1マーカー遺伝子-セントロメア-23のヒトV遺伝子-ヒトD遺伝子-ヒトJ遺伝子-マウスμエンハンサー及びスイッチ-マウスCγ1(CH1Δ)遺伝子-マウス3'エンハンサー-ハイグロマイシン耐性遺伝子-酵母マーカー遺伝子HIS3-テロメア。
【0160】
トランスジェニック初代マウスを、内因性免疫グロブリン発現が欠如した動物と戻し交配して、記載されている免疫化試験に使用するTg/TKO系統を作り出した。
【0161】
(実施例2)
免疫化のための抗原
免疫化は、血清精製ヒト及びカニクイザル血清アルブミンを使用した。血清精製ヒト(HSA)及びカニクイザル(CSA)血清アルブミンを、Sigma社(カタログ番号A4327)及びAbcam社(カタログ番号ab184894)から購入した。
【0162】
(実施例3)
免疫化プロトコル
8~12週齢の3匹のCrescendoマウスのそれぞれに、完全フロイントアジュバント中に乳化され、皮下に送達される50μgのCSAの最初の免疫化を与え、続いて、不完全フロイントアジュバント中に乳化され、これもまた皮下投与され、最初のプライミング後週に1回の間隔で与えられる10μgのHSAの3回の追加免疫を行った。アジュバントの不在下においてリン酸緩衝食塩水中のHSAの最後の投与を腹腔内投与した。最初の免疫化の49日後にマウスを屠殺し、上腕及び鼠径リンパ節並びに脾臓をRNAlater(Qiagen社カタログ番号76104)に採取した。血清を、応答に関する試験のために回収し、保存した。
【0163】
(実施例4)
血清ELISA
Nunc Maxisorpプレートを、PBS溶液中1μg/mlのHSAにより4℃で一晩コーティングした。プレートを、その後、0.05%のツイーン20を加えたPBSを使用して洗浄し、続いてツイーンを添加していないPBSによる洗浄を行い、PBS中の3%スキムミルク粉末(Marvel)の溶液により室温で少なくとも1時間ブロッキングした。3%Marvel/PBS中の血清の希釈物を、ポリプロピレンチューブ又はプレート中で調製し、室温で少なくとも1時間インキュベートした後、少なくとも1時間の更なるインキュベーションが行われるブロッキングしたELISAプレートに移した。PBS/ツイーン及びPBS中における洗浄後に、PBS/3%Marvel中1:10000希釈で調製されたビオチン結合ヤギ抗マウスIgG、Fcガンマサブクラス1特異抗体(Jackson社115-065-205)の溶液を、その後、添加し、プレートを室温で少なくとも1時間インキュベートした後、PBS/ツイーン及びPBSを使用して洗浄した。3%Marvel/PBS中の1:1000希釈されたニュートラアビジン・HRP溶液(Pierce 31030)を、ELISAプレートに添加し、少なくとも30分間インキュベートした。更なる洗浄後、ELISAを、TMB基質(Sigma社カタログ番号T0440)を使用して発色させ、反応を、0.5MのH2SO4溶液の添加によって10分後に停止させた。吸光度を450nmにおいて読み取ることによって測定した。
【0164】
(実施例5)
免疫化マウスからライブラリーの生成
a.組織の処理、RNA抽出及びcDNA作製
免疫化されたそれぞれの動物から脾臓、及びリンパ節を、RNAlaterに回収した。各動物について、脾臓の1/4及び4つのリンパ節を別々に処理した。初めに、組織を均質化し、RNA沈殿が続く。RNeasy 96 QIAcubeキット及びQIAcube HTプラスチックを使用してQIAcubeにおいてRNA精製を行った。その後、各RNAサンプルを使用して、Superscript III RT-PCR high-fidelityキットを使用してcDNAを作製した。
【0165】
b.ファージミドベクターへのクローニング
VH cDNAライブラリーをファージミドベクター、pUCG3にクローニングするためにPCRベースの方法を使用した。精製したVH RT-PCR産物をメガプライマーとして直線化されたベクターpUCG3-Cタグとともに使用して、ファージライブラリー生成のためのファージミド産物を得た。PCRの産物を、1%アガロースゲル上で分析した。VH/ファージミドPCR産物を、由来元の動物によってプールし、製造業者の説明書に従ってThermo GeneJet PCR精製キットを使用して精製した。溶出DNAを使用して、Bio-Rad GenePulser Xcellを使用したエレクトロポレーションによってTG1大腸菌(E.coli)(Lucigen社、カタログ番号60502-2)を形質転換した。
【0166】
形質転換の10倍希釈系列を、2%(w/v)のグルコース及び100μg/mlのアンピシリンを含む2xTY寒天ペトリ皿に播いた。これらの皿上に得られたコロニーを使用して、ライブラリーのサイズを推定した。形質転換の残りを、2%(w/v)のグルコース及び100μg/mlのアンピシリンを加えた大型2xTY寒天バイオアッセイ皿に播いた。すべての寒天プレートを、30℃で一晩インキュベートした。ライブラリーを、10mlの2xTYブロスを大型バイオアッセイ皿に添加することによって回収した。細菌コロニーを軽くこすり、OD600を記録した。アリコートを、同量の50%(v/v)グリセロール溶液の添加後にクライオバイアル中において-80℃で保存するか、又はファージ選択プロセスに直接使用した
【0167】
(実施例6)
HSA結合VHの単離のための選択方法
Humabody(登録商標)リードを形成するために、マウスのPEG沈殿ファージライブラリーを、公開された方法に従ってpH5又はpH7の組換えHSAタンパク質が結合したイムノチューブを用いたパニング選択に使用して、ヒト血清アルブミン結合に関する質を高めた(Antibody Engineering、Benny Lo編、第8章、161~176頁、2004年)。
【0168】
(実施例7)
標的結合に関するアッセイ
さまざまな選択からのVHを、1つ以上の以下のアッセイにおいてスクリーニングして、HSA及びCSAと結合するVHを特定した。
【0169】
a.ヒト及びカニクイザル血清アルブミンに関するビーズベースのFLISA結合アッセイ
リードHumabody VH HSA194-D04及びHSA191E0-2に関して、プレート中のペリプラズム抽出物を、ヒト及びカニクイザル血清アルブミンと結合する特定のクローンを特定するために、蛍光微量アッセイ技術を使用した均一のハイスループットアッセイにおいて試験した。アッセイは、均一のアッセイ形式でアッセイプレートのウェルの底部における規定の体積内の細胞に関連する蛍光を測定する蛍光微量アッセイ技術を使用して実施した(Dietzら、Cytometry 23:177~186頁(1996年)、Miragliaら、J. Biomol. Screening 4:193~204頁(1999年))。アッセイを、384ウェルアッセイ方式で実施し、分析のために、その後、データを、96ウェルレイアウトのソースペリプラズムサンプルプレートに戻した。小規模の細菌ペリプラズム抽出物を、1mlの培養菌から調製し、深いウェルプレートで増殖させた。30℃、250rpmの振盪で0.1%(w/v)のグルコース+100ug/mlのアンピシリンを加えた2XTYブロス(Melford社、M2130)を含む96ウェルの深いウェルプレート(Fisher社、カタログ番号MPA-600-030X)に接種するためにスターター培養菌を使用した。OD600が0.5~1に達したら、IPTG(最終濃度5mM)及びアンピシリンを加えた100ulの2XTYを添加することによってVH産生を誘発し、培養菌を30℃、220rpmの振盪で一晩増殖させた。3200rpmで10分間の遠心分離によって大腸菌をペレット状にし、上清を捨てた。細胞ペレットを、120μlの氷冷MESバッファー(50mM MOPS、0.5mM EDTA、20% 0.5Mスクロース)中に再懸濁させ、その後、180μlの1:5希釈した氷冷抽出バッファーを添加した。細胞を、氷上で30分間インキュベートした後、4500rpm、4℃で15分間遠心分離した。上清を、ポリプロピレンプレートに移し、1×PBSTブロッキング溶液中におけるインキュベーション後、ELISAに直接使用した。
【0170】
ビーズの集団:組換えHSA Domain I-II(カタログ番号9905)、組換えHSA Domain II(カタログ番号9902)及びCSAと結合したSOL-R4、SOL-R5 Tmカルボキシルビーズ。そのビーズを必要とされる濃度に希釈した。
【0171】
b.精製VHの調製
pJExpressベクターを伴うW3110大腸菌の上清からVHを精製した。この手順に対して、250rpmの振盪で0.1%(w/v)のグルコース+50ug/mlのカナマイシンを加えた2xTYブロス(Melford社、M2130)中において37℃、250rpmの振盪で最大1Lの培養菌を増殖させた。OD600が0.5~1に達したら、IPTG及びカナマイシンを添加することによってVH産生を誘発し、その培養菌を、30℃、250rpmの振盪で一晩増殖させた。大腸菌を、3200rpmの遠心分離によってペレット状にし、得られた上清を回収し、Capture Select C-tag XLアフィニティマトリクス(Thermo Fisher社、カタログ番号2943072010)を使用してVHを精製し、続いてAKTA PureシステムにおいてHiLoad 26/600 Superdrex 75 pgカラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィーを行った。精製VHの収率を、分光光度的に推定し、純度をSDS PAGEを使用して評価した。
【0172】
c.結合動態。
pH7.4及びpH6.0におけるヒト、カニクイザル及びマウス血清アルブミンを用いた結合試験を、Biacore T200において、シングルサイクルカイネティクスを使用して行った。血清アルブミン(HSA、CSA、MSA)を、アミン試薬結合キットGE Healthcare社BR-1000-50を使用してアミン結合によってCM5チップに結合させた。チップの表面を、製造業者の説明書に従って活性化させた。10mMの酢酸ナトリウム、pH5.0中の血清アルブミン(HSA、CSA、MSA)の注入によって、血清アルブミン(HSA、CSA、MSA)が補足され、センサーチップ表面に架橋した。表面の血清アルブミンを安定化させるための1Mのエタノールアミンの注入が続く。この手順により、およそ300RUが固定された。
【0173】
動態測定のために、PBST pH7.4又はPBST pH6.0のいずれか中のVH単一ドメイン抗体(194D04-2又は191E02-2)の4倍段階希釈物を、45μl/分の流量、25℃で120s結合及び300s解離で注入した。結合反応は、ブランクフローセル及び同じフローセルにおけるバッファーランの両方を差し引くことによって補正した。トレースは、1:1モデルを使用してフィッティングした。
【0174】
【0175】
(実施例9)
VH単一ドメイン抗体は良好な安定性を示す
精製VHを、サイズ排除クロマトグラフィーに供した。簡単にいえば、精製VHを、選択されたバッファー中において10mg/mlで4℃又は25℃のいずれかにおいて0~7日間保存した後、Waters社ACQUITY BEH 125Å SECカラムにおける分離を伴う、PDA検出器(280nmにおける検出)を含むWaters社H-Class Bio UPLCを使用してさまざまな時点において分析した。サンプルを10μlの体積で注入し、0.4ml/分の流量で200mMのNaCl、100mMのリン酸ナトリウム、pH7.4+5%のプロパン-1-オールを含む移動相に流した。データを6分間収集し、保存後のサンプル中の単量体タンパク質のパーセンテージを計算した。
【0176】
4℃及び40℃で7日間のインキュベーション後、著しい変化は見られなかった。
【0177】
【0178】
(実施例10)
ダブルトランスジェニックヒト化FcRn/HSAマウスにおける半減期延長構築物の単回の静脈内投薬の薬物動態分析
簡単にいえば、雄又は雌のGenOwayヒトHSA/FcRn Tgマウスに尾静脈経由で1又は2mg/kgのいずれかのTable 4(表4)に列挙されている化合物を単回静脈内注射(n=3)により投薬した。一部の構築物は、ポリヒスチジン又はFLAGタグ等の精製/検出タグを含んでいた。投与前並びに伏在静脈経由の薬物投与の0.083h、1h、8h、24h、48h、72h及び96h後に血液サンプルを採取した。投薬の168h後に、すべての動物を安楽死させ、血液を採取した。血漿を分離し、-80℃でアッセイが行われるまで保存した。血漿サンプルを、捕捉としてビオチン化ヒトPSMA又はヒトCD137及び検出としてヒトCD137Dylight650、ヒトPD-1 Dylight650又は抗Flag-AF647ウサギmAb(NEB社、カタログ番号15009S)のいずれかを使用してGyrolabイムノアッセイプラットフォームにおいて分析した。Gyrosを使用してデータを分析して、血漿中の化合物濃度を得た。データの薬物動態分析を、PK Solver 2.0、Excelアドオンを使用して行った。試験の結果は、ヒトHSA/FcRn Tgマウスに1又は2mg/kgで静脈内投与された場合、化合物は19.9から78.7時間の範囲の半減期を有することを示す。
【0179】
【0180】
(実施例8)
カニクイザルにおけるPK試験
カニクイザルPK試験を開始する前に、置換、低減、及び精製要件、並びに倫理的及び科学的根拠(例えば、標的発現/ヒトに対する相同性、用量レベル等)、及びリスクの再検討をCrescendo Biologics社及び医薬品開発受託機関の両方において行った。このカニクイザルPK試験における動物試験は、英国に拠点を置く医薬品開発受託機関において英国内務省プロジェクトライセンスのもとで行った。この試験を管理する内務省ライセンスは、動物に対する影響の重大度の限度を厳重に規定する。プロトコルにおける手順は、手順の重大度の限度を上回るいかなる影響も引き起こさなかった。
【0181】
簡単にいえば、3匹の雄のカニクイザルに4mg/kgの表に列挙されているHumabody構築物(TPP-1246)を投与し、この試験は、Charles River Studyにおいて行った。投与前(-24時間)、投薬の1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、120時間、168時間、216時間、264時間、312時間、360時間、408時間及び504時間後にすべての試験対象から血清サンプルを採取し、試験に先立って凍結した。Crescendo社で開発されたアッセイを使用して血清サンプルに対してPK分析を行った。
【0182】
PKアッセイは、(表に列挙されている)検体を、ビオチン化CD137抗原によって固定し、dyLight650標識PD-1によって検出する、サンドイッチイムノアッセイ方式を使用したGyrolab Xploreイムノアッセイプラットフォームを利用する。アッセイを最適化し、確立して、範囲及び再現性を確認し、サンプル分析を確立されたアッセイにより完了した。以下の時点のPKデータに対してPK分析を行った:動物01:1から168時間、動物02:1から120時間及び動物03:1から168時間。報告したPKパラメーターは、それぞれの結果に関して3個体からの平均である。カニクイザル血清中におけるTPP-1246のT1/2は、84.5時間±7.58時間であることが示された。データを
図1に示す。
【0183】
【0184】
上のすべての実験において使用される分子は、上で明記したとおりの分子に基づくものであった。試験分子には、必要に応じて、精製タグ等のC末端配列が含まれた。
【配列表】
【国際調査報告】