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特表2022-532375検知及び刺激のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(54)【発明の名称】検知及び刺激のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568097
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 US2020033057
(87)【国際公開番号】W WO2020232333
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】62/848,739
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517325113
【氏名又は名称】ラングペーサー メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LUNGPACER MEDICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】エバンス、ダグラス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】タッカー、バイラル エス.
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ24
4C053JJ40
(57)【要約】
体組織を刺激するためのシステムは、刺激リード、センサ、及び制御ユニットを含んでもよい。刺激リードは、1つ以上のエネルギー源を含んでもよい。制御ユニットは、プロセッサと、非一時的コンピュータ可読媒体と、ユーザ入力を受け取るための及び情報をユーザに通信するためのインターフェイス(例えば、タッチスクリーンインターフェイス)とを含んでもよい。センサは、制御ユニットにインピーダンス測定値を提供するように構成されてもよい。制御ユニットは、肺ガス分布を計算しても及び/又は肺ガス分布をモデル化した画像を生成してもよい。刺激によって送達される刺激は、インピーダンス測定値に基づいて調整されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を刺激するためのシステムであって、
刺激デバイスと、
インピーダンスセンサと、
制御ユニットと、を備え、前記制御ユニットは、
前記インピーダンスセンサからインピーダンス信号を受信し、
前記インピーダンス信号に基づいて肺ガスパラメータの第1の値を決定し、
前記第1の値と前記肺ガスパラメータの所定値とを比較し、
前記第1の値と前記所定値との前記比較に基づいて1つ以上の第1の刺激パラメータを決定し、
前記刺激デバイスを介して、前記1つ以上の第1の刺激パラメータを含む刺激信号を組織に送達するように構成される、システム。
【請求項2】
外部呼吸補助デバイスを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記第1の値と前記所定値との前記比較に基づいて、前記外部呼吸補助デバイスにより供給される圧力又は容量を調整するように更に構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記組織は第1組織であり、前記インピーダンスセンサは、インピーダンスセンサのアレイの一部であり、前記アレイは、前記第1組織に近接する第2組織に取り付けられるように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御ユニットは、肺の区域間の空気の分布に対応する画像を生成するように更に構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記画像は、前記インピーダンス信号に基づいて生成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上の第1の刺激パラメータは、持続時間、パルス幅、周波数、振幅、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記インピーダンス信号は第1のインピーダンス信号であり、前記刺激信号は第1の刺激信号であり、前記制御ユニットは、
第2のインピーダンス信号を受信し、
前記第2のインピーダンス信号に基づいて、前記肺ガスパラメータの第2の値を決定し、
前記肺ガスパラメータの前記第2の値と前記肺ガスパラメータの前記第1の値又は前記肺ガスパラメータの前記所定値とを比較し、
前記第2の値と前記第1の値又は前記所定値との前記比較に基づいて、1つ以上の第2の刺激パラメータを決定するように更に構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記刺激デバイス又は前記インピーダンスセンサと無線通信する、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
リモートコントローラを更に含み、前記制御ユニットは、
前記リモートコントローラから調整信号を受信し、
前記調整信号を受信すると、前記刺激デバイスを介して、1つ以上の第2の刺激パラメータを含む第2刺激信号を組織に送達するように更に構成される、請求項1~7及び9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記刺激デバイスは、管状部材に支持された2つ以上の電極を含み、前記インピーダンスセンサは前記管状部材に支持される、請求項1~3及び5~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
フレキシブル回路は、前記管状部材の外部に取り付けられており、前記2つ以上の電極と前記インピーダンスセンサとに接続される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記肺ガスパラメータは、肺の区域間の空気の分布に対応する、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
肺の区域間の空気の前記分布は、前記肺の後区と前区との間の空気分布、前記肺の上区と下区との間の空気分布、及び右肺と左肺との間の空気分布の少なくとも1つを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記肺ガスパラメータは、1つ以上の肺気量に対応する、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、全般的に、検知し、刺激を送達するための方法及びデバイス(システムを含む)に関する。より具体的には、本開示は、神経及び/又は筋肉を検知し、神経及び/又は筋肉に刺激を送達するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院の集中治療室(ICU)内の患者は、その基礎疾患の状態により自発的に呼吸する能力が低下しており、換気補助を提供するために、陽圧機械的人工換気(PPMV:positive pressure mechanical ventilation)及び/又は他の外部呼吸補助手段(総称的にERS(External Respiratory Support))を必要とする場合がある。ICUにおいて、これら危篤状態の者に強制換気を提供するために、ERSは鎮静剤と併せて使用されることが多い。更に、例えば病院の手術室(OR:Operating Room)にて全身麻酔下で手術を受ける患者、又は例えば病院の救急室(ER:Emergency Room)で麻酔若しくは鎮静剤を必要とする処置を受ける患者の多くは、麻酔をかけられている又は鎮静状態にされている間、換気補助のためにERSを必要とすることが一般的である。
【0003】
機械的人工換気は生命維持手段であるが、鎮静剤又は麻酔と併用された場合には、横隔膜の能動的な収縮を妨げる。長期にわたり完全に制御された機械的人工換気は、横隔膜の神経活性化及び機械的活動の完全な喪失につながる可能性があり、筋萎縮、タンパク質分解、及び活性酸素種遊離を誘発し、人工呼吸器誘発横隔膜機能不全(VIDD:Ventilator-Induced Diaphragmatic Dysfunction)として知られる症候群である横隔膜機能の急速な喪失に至ることが示されている。これらの患者は、肺、脳、心臓、及びその他の臓器の損傷がより高レベルになることも知られている。これらの患者は、感染及び敗血症を含む他の共存症のリスクも高くなり、ERSが1日増えるごとに死亡のリスクが高まる。
【0004】
年間約1500万人のICU患者が機械的人工換気を必要としている。更に、これらの患者の約3分の1は、人工呼吸器への依存を克服するために長期の離脱を必要としている。横隔膜離脱を必要とする患者のほとんどは、横隔膜の萎縮及び機能不全を呈している。全般的に、機械的人工換気を必要とする患者は、長期にわたる長いICU/病院滞在、高い医療費、悪い長期の機能的結果、及び呼吸器の合併症及び死亡率の増加に陥ることになる。
【0005】
ERSのほとんどの方法は、自然な呼吸とは異なるガス交換手段を提供する。陽圧換気が使用される場合、気圧外傷として知られる高容量の損傷及び無気肺として知られる低容量の損傷の形態である人工呼吸器誘発肺損傷(VILI:ventilator induced lung injury)が容易に発生する。これらの非自然の呼吸法は、患者の肺に提供される空気の総量の変化につながる可能性があり、また、様々な肺区域(例えば、前、後、左、右、上、下など)間の空気の分布をシフトさせる可能性がある。陽圧換気などの特定タイプのERSを受けている患者の肺伸展受容器は、複数の臓器に影響を及ぼす炎症及びその他のプロセスに至る異常な信号を脳に与え、認知障害につながる人工呼吸器誘発脳損傷(VIBI:ventilator induced brain injury)などの更なる損傷を誘発するおそれがあると考えられる。横隔膜筋は、心臓に戻る静脈血の前負荷を典型的には支援し、陽圧人工呼吸器の高い圧力は胸部の圧力を高めるため、不活性な横隔膜を有するMV(機械的人工換気:mechanical ventilation)患者の心臓は、過剰労働による損傷を受けやすい可能性がある。患者はまた、人工呼吸器に起因する肺炎及び院内感染(VAP:ventilator-acquired pneumonia)及び敗血症の発生率が高くなりやすい。
【0006】
VIDD、VILI、VAP、VIBI及びその他のERS誘発損傷の発症は急速であり、患者の回復が遅くなり、更なる合併症のリスクが高まり、人工呼吸器への依存が長期化し、ICUの滞在が長くなり、入院費用が増大し、機械的人工換気の日数が1日増えるごとに死亡のリスクが高まる。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、とりわけ、呼吸補助を提供するためのシステム、デバイス、及び方法に関する。実施形態は、1つ以上の解剖学的標的に刺激を加えることを含む。本明細書に記載されるシステム及び方法の実施形態は、MVの代替及び/又は補助で使用されても、及び/又は例えば呼吸神経及び/又は呼吸筋の刺激などのERSを組み込んでもよい。本明細書に開示される各実施形態は、他の開示される実施形態のいずれかと関連して記載される特徴の1つ以上を含んでもよい。
【0008】
本開示の実施形態は、とりわけ、組織に刺激を加えるためのシステム、デバイス、及び方法に関する。本明細書に記載されるシステム及び方法の実施形態は、例えば呼吸神経及び/又は呼吸筋の刺激などの外部呼吸補助の代替及び/又は補助で使用されてもよい。本明細書に開示される各実施形態は、他の開示される実施形態のいずれかと関連して記載される特徴の1つ以上を含んでもよい。
【0009】
一例では、組織を刺激する方法は、刺激デバイスを介して第1の刺激(刺激パラメータの第1の値を含み得る)を組織に送達することと、肺組織のインピーダンスを測定することと、インピーダンスに基づいて、第2の刺激の刺激パラメータの第2の値であって、第1の値とは異なる第2の値を決定することと、刺激デバイスを介して第2の刺激を組織に送達することと、を含んでもよい。
【0010】
本明細書に開示される方法のいずれかは、以下の特徴のいずれかを含んでもよい。当該方法は、インピーダンスに基づいて肺ガスパラメータを計算すること及び/又は肺ガスパラメータと所定の肺ガスパラメータとを比較することを更に含んでもよい。第2の値を決定することは、肺ガスパラメータに基づいて第2の値を計算することを含んでもよい。肺ガスパラメータは、肺の後区と前区との間の空気分布、肺の上区と下区との間の空気分布、左肺と右肺との間の空気分布、及び/又は1つ以上の肺気量に対応し得る。第1の刺激を送達すること、第2の刺激を送達すること、又はこれらの両方は、電気刺激を送達することを含んでもよい。第2の刺激を送達することは、横隔神経に刺激を送達すること、及び/又は呼吸筋の収縮を引き起こす刺激を送達することを含んでもよい。インピーダンスは、患者上又は患者内に配置された1つ以上のセンサにより測定されてもよい。刺激デバイスは、少なくとも1つの電極を含んでもよく、本明細書の方法は、少なくとも1つの電極が横隔神経に近接するように患者内に刺激デバイスを配置することを含んでもよい。
【0011】
組織を刺激するための例示的な方法は、生体電気インピーダンスを測定することと、インピーダンスに基づいて、肺ガスパラメータの第1の値を決定することと、第1の値と肺ガスパラメータの所定値とを比較することと、第1の値と所定値との比較に基づいて、1つ以上の刺激パラメータを決定することと、1つ以上の刺激パラメータを含む刺激信号を組織に送達することとを含んでもよい。肺ガスパラメータは、肺の区域間の空気の分布に対応し得る。
【0012】
本明細書に開示される方法のいずれかは、以下の特徴のいずれかを含んでもよい。当該方法は、刺激信号を送達する前に第1の肺気量を決定することと、刺激信号を送達した後に第2の肺気量を決定することとを更に含んでもよい。第1の肺気量及び第2の肺気量のそれぞれは、肺の下区又は前区の容量であり得る。刺激パラメータは、持続時間、パルス幅、周波数、振幅、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。刺激信号は、少なくとも1つの電極を介して送達されてもよく、生体電気インピーダンスは、少なくとも1つの電極を介して測定されてもよい。肺ガスパラメータの第1の値と所定値とを比較することは、第1の値と所定の値の範囲とを比較することを含んでもよい。刺激信号を送達することは、呼吸筋の収縮を引き起こすことができる。生体電気インピーダンスは第1の生体電気インピーダンスであり得、刺激信号は第1の刺激信号であり得、1つ以上の刺激パラメータは第1の刺激パラメータであり、当該方法は、第2の生体電気インピーダンスを測定することと、第2の生体電気インピーダンスに基づいて、肺ガスパラメータの第2の値を決定することと、第2の値と第1の値又は所定値とを比較することと、第2の値と第1の値又は所定値との比較に基づいて、1つ以上の第2の刺激パラメータを決定すること及び/又は1つ以上の第2の刺激パラメータを含む第2の刺激を送達することと、を更に含んでもよい。
【0013】
組織を刺激するための例示的なシステムは、刺激デバイスと、インピーダンスセンサと、制御ユニットであって、インピーダンスセンサからインピーダンス信号を受信し、インピーダンス信号に基づいて肺ガスパラメータの第1の値を決定し、肺ガスパラメータは肺の区域間の空気の分布に対応し、第1の値と肺ガスパラメータの所定値とを比較し、第1の値と所定値との比較に基づいて、1つ以上の刺激パラメータを決定し、刺激デバイスを介して、1つ以上の刺激パラメータを含む刺激信号を組織に送達するように構成されている、制御ユニットと、を含んでもよい。
【0014】
本明細書に開示されるシステム又は方法のいずれかは、以下の特徴のいずれかを含んでもよい。システムは、外部呼吸補助デバイスを更に含んでもよい。インピーダンスセンサは、インピーダンスセンサのアレイの一部であってもよく、アレイは、患者の外部に取り付けられるように構成されてもよい。制御ユニットは、肺の区域間の空気の分布に対応する画像を生成するように更に構成されてもよい。
【0015】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を成す添付の図面は、本開示の非限定的な実施形態を示し、本明細書とともに、本開示の原理を説明する機能を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】1つ以上の実施形態による、ヒトの頭部、頚部、及び胴部内の選択した組織、血管、神経、及び臓器の解剖学的構造を示す図である。
図2】1つ以上の実施形態による例示的な呼吸筋刺激システムとともにヒトの頭部、頚部、及び胴部内の選択した組織、血管、神経、及び臓器の解剖学的構造を示す図である。
図3】1つ以上の実施形態による、刺激パルスを含む1つ以上の例示的な刺激列の図形表示である。
図4】傾斜勾配が列内のパルス幅変調及び/又はパルス周波数変調を表す代表的な傾斜包絡線の例を示す図である。
図5】共に組み合わされて単一ペーシング傾斜を形成することができる代表的なパルス幅傾斜包絡線及び刺激周波数包絡線の例を示す図である。
図6】1つ以上の実施形態による例示的な刺激リードとともに、ヒトの頭部、頚部、及び胴部内の選択した組織及び神経の解剖学的構造を示す図である。
図7】いくつかの実施形態による例示的な呼吸筋刺激システムとともにヒトの頭部、頚部、及び胴部内の選択した組織、血管、神経、及び臓器の解剖学的構造を示す図である。
図8】いくつかの実施形態による例示的な呼吸筋刺激システムとともにヒトの頭部、頚部、及び胴部内の選択した組織、血管、神経、及び臓器の解剖学的構造を示す図である。
図9A】いくつかの実施形態による例示的な呼吸筋刺激システムとともにヒトの頭部、頚部、及び胴部内の選択した組織、血管、神経、及び臓器の解剖学的構造を示す図である。
図9B】いくつかの実施形態による例示的な呼吸筋刺激システムとともにヒトの頭部、頚部、及び胴部内の選択した組織、血管、神経、及び臓器の解剖学的構造を示す図である。
図10A】いくつかの実施形態による例示的な刺激リード及び送達システムの斜視図である。
図10B】いくつかの実施形態による例示的な刺激リード及び送達システムの斜視図である。
図10C】いくつかの実施形態による例示的な刺激リード及び送達システムの斜視図である。
図10D】いくつかの実施形態による例示的な刺激リード及び送達システムの斜視図である。
図10E】いくつかの実施形態による例示的な刺激リードの斜視図である。
図10F】いくつかの実施形態による例示的な刺激リードの斜視図である。
図10G】いくつかの実施形態による例示的な刺激リードの斜視図である。
図10H】いくつかの実施形態による例示的な刺激リードの斜視図である。
図11】1つ以上の実施形態による、拡張可能部材を含む例示的な刺激リードの斜視図である。
図12】1つ以上の実施形態による、フレキシブル回路を含む例示的な刺激リードの斜視図である。
図13】1つ以上の実施形態による、アレイ内に収容された皮下電極マイクロ針の斜視図である。
図14】1つ以上の実施形態による、接着パッチアレイの斜視図である。
図15】1つ以上の実施形態による、呼吸筋刺激システムの様々な構成要素のブロック図である。
図16】1つ以上の実施形態による、呼吸筋刺激システムを自律モードで操作する方法のフローチャートである。
図17A】1つ以上の実施形態による、EITにより計算された肺ガス量分布の図形表示である。
図17B】1つ以上の実施形態による、EITにより計算された肺ガス量分布の図形表示である。
図18A】1つ以上の実施形態による、呼吸筋刺激に応じて変化する肺ガス量分布の図形表示である。
図18B】1つ以上の実施形態による、呼吸筋刺激に応じて変化する肺ガス量分布の図形表示である。
図18C】1つ以上の実施形態による、呼吸筋刺激に応じて変化する肺ガス量分布の図形表示である。
図18D】1つ以上の実施形態による、呼吸筋刺激に応じて変化する肺ガス量分布の図形表示である。
図19】いくつかの実施形態による、傾斜勾配が、列内のパルス幅変調、パルス周波数変調、及び/又は振幅変調を表す代表的な傾斜包絡線の例を示す図である。
図20】1つ以上の実施形態による、最大吸気圧の平均変化対呼吸筋刺激セッションの総数のプロットである。
図21A】1つ以上の実施形態による、機械的人工換気を受けている肺及び機械的人工換気と呼吸筋刺激とを併せて受けている肺に関して撮影されたEIT画像を含む図である。
図21B】1つ以上の実施形態による、機械的人工換気を受けている肺及び機械的人工換気と呼吸筋刺激とを併せて受けている肺に関して撮影されたEIT画像を含む図である。
図22】1つ以上の実施形態による、測定終末呼気肺気量損失の箱ひげ図である。
図23A】1つ以上の実施形態による、炎症マーカの測定血中濃度の箱ひげ図である。
図23B】1つ以上の実施形態による、炎症マーカの測定血中濃度の箱ひげ図である。
図23C】1つ以上の実施形態による、炎症マーカの測定血中濃度の箱ひげ図である。
図24A】1つ以上の実施形態による、測定最大吸気圧及びプラトー圧の箱ひげ図及び棒グラフを示す図である。
図24B】1つ以上の実施形態による、測定最大吸気圧及びプラトー圧の箱ひげ図及び棒グラフを示す図である。
図24C】1つ以上の実施形態による、測定最大吸気圧及びプラトー圧の箱ひげ図及び棒グラフを示す図である。
図25A】1つ以上の実施形態による、測定動的コンプライアンスの箱ひげ図及び棒グラフを示す図である。
図25B】1つ以上の実施形態による、測定動的コンプライアンスの箱ひげ図及び棒グラフを示す図である。
図26A】1つ以上の実施形態による、サンプル重量で正規化した異なる筋線維型の断面積の頻度分布を示す図である。
図26B】1つ以上の実施形態による、サンプル重量で正規化した異なる筋線維型の断面積の頻度分布を示す図である。
図26C】1つ以上の実施形態による、サンプル重量で正規化した異なる筋線維型の断面積の頻度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
横隔神経刺激、横隔膜筋ペーシング、及び経皮的刺激は、患者の呼吸筋(例えば、横隔膜、肋間、腹部など)の運動を助け、上述した課題に対処すると考えられる。検知する、刺激する、及び/又は及び呼吸補助を提供するための様々なシステム及び方法が本明細書に記載される。記載される方法の任意の構成要素、工程若しくはプロセス又は記載されるシステムの構成要素若しくは要素は、本明細書に記載される任意の方法の他の構成要素、工程若しくはプロセス又はシステムの構成要素若しくは要素と組み合わせて使用してもよいことは理解すべきである。
【0018】
概して、本明細書で言及される全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が参照により援用されると具体的に示される場合と同程度、それらの全体が参照により本明細書に援用される。例えば、本開示の実施形態は、米国特許第8,571,662号明細書、米国特許第9,242,088号明細書、米国特許第9,333,363号明細書、米国特許第9,776,005号明細書、米国特許第10,039,920号明細書、米国特許第10,293,164号明細書、米国特許出願公開第2015/0045810号明細書、米国特許出願公開第2019/0001126号明細書、米国特許出願公開第2019/0175908号明細書、米国特許出願公開第2019/0038894号明細書、及び/又は米国特許出願公開第2020/0147364号明細書に記載されている1つ以上のシステム、カテーテル、装置、及び電極と組み合わせて使用してもよい。これら全ての開示は、参照により本明細書に援用される。
【0019】
以下の説明を通して、当業者により完全な理解を提供するために具体的な詳細を示している。本技術の例に関する以下の説明は、網羅的であること又は本システムを任意の例示的な実施形態の厳密な形態に限定することを意図するものではない。したがって、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で解釈されるべきである。
【0020】
様々な医療デバイス構成要素の異なる実施形態は、任意の論理的構成で互いに組み合わせて使用してもよい。更に、任意の記載の実施形態の個々の特徴又は要素は、他の実施形態の個々の特徴又は要素とともに組み合わされてもよく、又は使用されてもよい。様々な実施形態は更に、本明細書に具体的に記載されている状況と異なる状況で使用されてもよい。例えば、開示される電極構造は、様々な診断的及び/又は治療的用途に関して当該技術分野で周知の様々な留置システムと組み合わされてもよく、又はこれと組み合わせて使用されてもよい。
【0021】
本開示の目的において、呼吸の筋肉(呼吸筋)とは、吸気、呼気、咳、又はヒトの空気の出入りのための任意の他の活動に寄与し得る又は関与し得る任意の筋肉を意味し得る。一般に、これらの筋肉は、胸腔、腹部、又は呼吸に関連する他の領域の拡張及び収縮/圧縮を助ける。呼吸筋の例としては、横隔膜、肋間筋、及び補助筋(胸鎖乳突筋、斜角筋(前、中、及び後斜角筋))が挙げられる。他の例示的な呼吸の筋肉としては、前鋸筋、大胸筋及び小胸筋、僧帽筋、広背筋、脊柱起立筋、腰腸肋筋、腰方形筋、上後鋸筋、下後鋸筋、肋骨挙筋、胸横筋、上唇鼻翼挙筋、及び鎖骨下筋が挙げられる。呼気を支持するものなど他の呼吸筋としては、腹壁筋(腹直筋、腹横筋、外斜筋、及び内斜筋)並びに内肋間筋が挙げられる。本明細書に記載される呼吸筋刺激システム及び装置は、これらの又は他の関連する呼吸筋のいずれかを活性化させるために使用され得る。
【0022】
本明細書に記載される1つ以上の方法は、例えば、患者の外部又は内部に配置され得る電極などのエネルギー源を使用した電気刺激を用いて呼吸筋の収縮を誘発することができる。エネルギーの送達を管理するために、外部の又は埋め込み式コントローラ(例えば、ペースメーカ状のデバイス)が使用され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、呼吸筋刺激デバイスは、1つ以上の横隔神経を刺激することにより筋収縮を活性化する。横隔膜の活性化を制御する2つの横隔神経は、胸郭内を心臓の左側及び右側に沿って走行し、次いで、横隔膜に達する。横隔神経の刺激は、患者の呼吸筋(例えば、横隔膜及び/又は1つ以上のその他の呼吸筋)を制御するために、1つ又は両方の横隔神経を電気的に刺激することにより実施され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の横隔神経の刺激は呼吸周期を誘発することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、患者の呼吸筋を刺激し、より自然な呼吸方法を提供し、身体の損傷を低減し、患者による独立呼吸の再獲得を促すための、配置が容易な低侵襲デバイスが設計される。
【0025】
いくつかの実施形態では、デバイス及びシステムは、呼吸筋活性部と、肺ガス分布センサと、患者の肺の様々な区域内の最適なガス平衡を向上させる/維持するために筋活性部のパラメータを調整するためのコントローラとを含んでもよい。
【0026】
少なくとも一実施形態において、呼吸療法システムは、患者の肺の区域内のガス(例えば、空気)の分布を管理するように構成され得る。システムは、制御ユニット、刺激アレイ、及び/又は複数のインピーダンス若しくはその他のガス分布(例えば、超音波、MRI、CTなど)センサを含んでもよい。制御ユニットは、呼吸療法システムの性能を管理するように構成されてもよい。更に、制御ユニットは、生体電気インピーダンス又はその他のガス分布信号を受信し、生体電気インピーダンス又はガス分布信号を解析し、肺ガスパラメータ値(例えば、肺の後区と前区との間のおおよその空気分布、肺の左側と右側との間の空気分布、量、及び/又は圧力)を決定する、及び/又は肺ガスパラメータ値と肺ガスパラメータ目標値(例えば、予定値)とを比較するように構成されてもよい。制御ユニットはまた、測定肺ガスパラメータ値が所望の肺ガスパラメータ値から逸脱する場合、刺激パラメータを調整するように構成されてもよい。
【0027】
刺激アレイは、当該技術分野で周知のエネルギー源(例えば、電気、超音波、電磁気など)によりエネルギーを送達するように構成されてもよい。刺激アレイによるエネルギーの送達は、呼吸筋の収縮を引き起こすことができる。刺激アレイは、制御ユニットに機能的に接続されてもよい。刺激アレイは、電極、被験者の外部に配置された電極、被験者の内部に配置された電極、又は被験者の外部に配置された電極及び被験者の内部に配置された電極を含んでもよい。刺激アレイは、電極のリニアアレイ又は電極の二次元アレイを含んでもよい。加えて又は代替的に、刺激は、電極以外のエネルギー源(例えば、トランスデューサ、電磁コイル、レーザなど)を含んでもよい。刺激アレイは、カテーテル、針及び/又は経皮若しくは皮下リードを含んでもよく、カテーテル、針及び/又は経皮若しくは皮下リード上に配置されてもよく、又はカテーテル、針及び/又は経皮若しくは皮下リードに電気的に接続されてもよい。刺激アレイは、患者の右側の呼吸筋を刺激するためのアレイ、患者の左側の呼吸筋を刺激するためのアレイ、又はこれらの両方を含んでもよい。いくつかの実施形態では、患者の右側の呼吸筋を刺激するためのアレイの刺激レベルと患者の左側の呼吸筋を刺激するためのアレイの刺激レベルは、独立して制御されてもよい。
【0028】
複数のインピーダンス又はその他のガス分布センサは、患者から生体電気インピーダンス信号を取得するように構成されてもよい。インピーダンスセンサは、制御ユニットに機能的に接続されてもよい。インピーダンスセンサは、電極、被験者の外部に配置された電極、被験者の内部に配置された電極、又は被験者の外部に配置された電極及び被験者の内部に配置された電極を含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのインピーダンスセンサは被験者の外部に配置され、少なくとも1つのインピーダンスセンサは被験者の皮膚下に配置される。インピーダンスセンサはまた、呼吸筋を刺激するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、被験者の内部に配置されたインピーダンスセンサ及び被験者の外部に配置されたインピーダンスセンサは、刺激を伝送して、吸気相及び呼気相の一部を制御してもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、システムは、無気肺、気圧外傷、VILI、及び/又はVIBIのうちの少なくとも1つを低減するために、肺伸展受容器からのシグナル伝達を低減するように構成されてもよい。システムは、患者の肺にガスを送るための外部陽圧呼吸デバイスを更に含んでもよい。システムは、陽圧呼吸デバイスの動作をセンサによって検知してもよく、又は陽圧呼吸デバイスと機能的に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラは、インピーダンスセンサ及び外部呼吸補助デバイスからの入力を管理し、刺激エネルギーを調整して、被験者の肺内のガス平衡を向上させることができる。システムは、1回換気量、肺気量(例えば、肺区域の容量)、呼吸圧、呼吸数、呼吸仕事量、CO飽和度、酸素飽和度、体温、血圧、心拍数、血中酸素濃度、運動、動き、及び/又は脳の活動のうちの少なくとも1つに関する患者の生理学的データを得るための、制御ユニットに機能的に接続された少なくとも1つの生理学的センサを更に含んでもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、デバイス及びシステムは、呼吸筋活性部、外部呼吸補助デバイス、肺ガス分布センサ、及び/又はコントローラを含んでもよい。コントローラは、1つ以上の呼吸周期中に患者の肺の様々な区域内の有利なガス平衡を向上させる/維持するために、筋活性部及び外部呼吸補助デバイスのパラメータを調整するように構成されてもよい。
【0031】
デバイス及びシステムは、溜まった粘液、流体及びその他の肺分泌物の破壊を管理するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、デバイス及びシステムは、エネルギーを送達するための刺激アレイを含んでもよい。送達されるエネルギーは、患者の肺内に溜まった粘液、流体及び/又はその他の分泌物を患者から容易に取り除くことができるように露出、除去、破壊、放出及び/又は輸送するように設計された周波数、強度、及び指定の波形にて1つ以上の呼吸筋の収縮を引き起こすことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、デバイス及びシステムは、溜まった粘液、流体及び/又はその他の分泌物を患者から容易に取り除くことができるように露出、除去、破壊、放出、輸送される及び/又は別の手法で作用されるように、下方/下/遠位/後肺区域を開放するように構成されてもよい。いくつかの態様では、患者の1回換気量は、経時的に増加する場合がある。
【0033】
健常人の肺からの分泌物及び粘液の除去は、主として、身体の正常な粘膜毛様体作用、咳、及び個人の身体の自発運動によって達成される。生理的に健全な状態下で、これらのメカニズムは、分泌物、粘液、混入物、及び/又は肺内のその他の流体蓄積物(集合的に、呼吸分泌物と呼ばれる)を効率的に取り除き且つ除去する。正常な粘膜毛様体除去システムの障害、座位又は寝たきりの期間、又は呼吸粘液の分泌過多は、肺内における粘液及び壊死組織片の蓄積につながる可能性がある。陽圧機械的人工換気などの外部呼吸補助を受けている患者に関しては、人工呼吸器による圧力が分泌物を下/後肺区域に押しやるため、この問題が更に悪化するおそれがある。なぜなら、これら下葉区は、典型的には経時的に虚脱し(例えば無気肺)、分泌物及び有害な細菌を捕らえ、患者の状況は咳ができないことにより更に複雑化する可能性があるからである。
【0034】
胸部理学療法は、多くの場合、臨床的に有効であり、典型的には、呼吸粘液の除去/輸送を促進するための標準的な医療行為の一部である。胸部理学療法は、多くの場合、胸部の機械的操作、外部からの振動作用、及び咳の誘発(directed cough)を含む。蓄積した肺分泌物を機械的に取り除くことを助けるデバイスを開発しようと試みた者もいる。しかしながら、前述したように、多くの患者の下/後区域は虚脱(例えば無気肺)し、分泌物を捕らえるため、標準的な手法(例えば、強制空気又は気道陽圧を伴うもの)は、これら物質を破壊する又は放出するのに効果的ではない。
【0035】
本明細書に記載される呼吸筋刺激システムは、下/後肺区域を開放するとともに、呼吸分泌物を放出するという追加の利点を提供するために使用され得る。分泌物分解性能は、呼吸周期中のいつでも(例えば、吸気中、呼気中など)実施されてもよい。吸息筋及び呼息筋又は腹筋のいずれか又は両方の刺激を用いることにより、所望の周波数での連係した収縮を使用してこれら分泌物を放出することができる。患者の状況に応じて、刺激は、別の側に対して一方の側に、例えば右側に集中させることができる。
【0036】
1つ以上の実施形態では、(例えば、呼吸療法システムを使用して)溜まった粘液及びその他の呼吸分泌物の除去を管理する方法は、下/後肺区域を開放し、蓄積した呼吸分泌物を露出、除去、破壊、放出及び/又は輸送するのに適した周波数、強度、及び指定の波形にて収縮するように吸息筋(例えば横隔膜筋)を刺激することを含んでもよい。呼吸分泌物が露出、除去、破壊、放出及び/又は輸送された後、呼吸分泌物は被験者から容易に除去され得る。吸息筋は、例えば、エネルギーを送達するように構成されている刺激アレイを介して刺激されてもよい。刺激アレイは、制御ユニットに機能的に接続されてもよく、制御ユニットは、呼吸療法システムの性能を管理するように構成されてもよい。刺激アレイは、患者の右側の呼吸筋を刺激するためのアレイ、患者の左側の呼吸筋を刺激するためのアレイ、又はこれらの両方を含んでもよい。いくつかの実施形態では、患者の右側の呼吸筋を刺激するためのアレイの刺激レベルと患者の左側の呼吸筋を刺激するためのアレイの刺激レベルは、独立して制御されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、(例えば、呼吸療法システムを使用して)溜まった粘液及びその他の呼吸分泌物の除去を管理する方法は、治療中又は治療後に下/後肺内のガス分布を増加させることを含んでもよい。治療中又は治療後の呼吸の1回換気量が増加し得る。吸息筋は、横隔膜筋及び/又は肋間筋であり得る。当該方法は、呼息筋を刺激することを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのインピーダンスセンサを使用して、区域による肺ガス分布を監視する。当該方法は、エアフローセンサ、圧力センサ、及び/又はボリュームセンサを使用することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、当該方法は、被験者の肺にガスを送るために外部陽圧呼吸デバイスを使用することを更に含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、機械的に換気された被験者は、呼吸分泌物の移動後により早く離脱することができる及び/又は増加した1回換気量を有し得る。例示的な方法で使用される呼吸療法システムは、センサによって陽圧呼吸デバイスの動作を検知するか、又は陽圧呼吸デバイスと機能的に接続され得るかのいずれかであり得る。システムは、1回換気量、肺気量(例えば、肺区域の容量)、呼吸圧、呼吸数、呼吸仕事量、CO飽和度、酸素飽和度、体温、血圧、心拍数、血中酸素濃度、及び/又は脳の活動のうちの少なくとも1つに関する患者の生理学的データを得るための、制御ユニットに機能的に接続された少なくとも1つの生理学的センサを更に含んでもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、溜まった粘液及びその他の肺分泌物の破壊を管理するように構成されている呼吸療法システムは、呼吸療法システムの性能を管理するための制御ユニット、刺激アレイ、及び/又は刺激アルゴリズムを含んでもよい。刺激アレイは、制御ユニットに機能的に接続されてもよく、制御ユニットは、呼吸療法システムの性能を管理するように構成されてもよい。刺激アレイは、患者の右側の呼吸筋を刺激するためのアレイ、患者の左側の呼吸筋を刺激するためのアレイ、又はこれらの両方を含んでもよい。いくつかの実施形態では、患者の右側の呼吸筋を刺激するためのアレイの刺激レベルと患者の左側の呼吸筋を刺激するためのアレイの刺激レベルは、独立して制御されてもよい。
【0040】
刺激アルゴリズムは、下/後肺区域を開放するために周波数、強度、及び指定の波形にて収縮するように吸息筋(例えば、横隔膜筋、肋間筋、腹筋など)を活性化するように構成されている1つ以上の波形を含んでもよい。吸息筋の収縮は、呼吸分泌物を患者から容易に取り除くことができるように露出、除去、破壊、放出及び/又は輸送することができる。
【0041】
溜まった粘液及びその他の肺分泌物の破壊を管理するように構成されている呼吸療法システムは、肺機能パラメータを決定するためのインピーダンス又はその他の肺センサを更に含んでもよい。コントローラは、肺機能パラメータに関するデータを受け取り、ユーザに肺機能パラメータを伝達するように構成されたアルゴリズムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、コントローラは、生体電気インピーダンス信号を解析し、肺の後区と前区との間の空気分布の変化を決定することができる。この決定は、ユーザに伝達され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、低侵襲デバイスが患者の呼吸筋を刺激するように構成されてもよい。デバイスは、エネルギーエミッタのアレイとデバイスを固定するためのアンカリングシステムとを含んでもよい。デバイスはまた、刺激エネルギーが標的神経及び/又は1つ以上の筋肉に長期間にわたって提供され得るように構成されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、呼吸療法システムは、制御ユニット、1つ以上のエネルギーエミッタ、送達カニューレ、方向付け手段、1つ以上のアンカー、及び/又は肺ガスパラメータを決定するためのセンサを含んでもよい。制御ユニットは、呼吸システムの性能を管理するように構成されてもよい。制御ユニットは、センサから信号を受け取り、センサからの信号を解析し、肺ガスパラメータ値(例えば、肺の後区と前区との間のおおよその空気分布、肺の左側と右側との間の空気分布、容量[例えば、1回換気量、局所肺気量など]、及び/又は圧力[例えば、MIP(maximal inspiratory pressure:最大吸気圧)、MEP(maximal expiratory pressure:最大呼気圧)、ピーク圧、プラトー圧、圧力時間積など]を決定する、及び/又は肺ガスパラメータ値と肺ガスパラメータ目標値(例えば、予定値、計算値など)とを比較するように構成されてもよい。制御ユニットはまた、測定肺ガスパラメータ値が所望の肺ガスパラメータ値から逸脱する場合、刺激パラメータを調整するように構成されてもよい。
【0044】
1つ以上のエネルギーエミッタ(例えば、刺激アレイ)は、呼吸筋の収縮を引き起こすためのエネルギーを送達するように構成されてもよい。1つ以上のエネルギーエミッタは、制御ユニットに機能的に接続されてもよい。送達カニューレは、1つ以上のエネルギーエミッタ(例えば、刺激アレイ)を標的組織に案内するように構成されてもよい。送達カニューレは、1つ以上のエネルギーエミッタを受け入れるための少なくとも1つの内腔(lumen)又はチャネルを有する長尺状のカニューレを含んでもよい。送達カニューレは、カニューレの先端部に沿って1つ以上の刺激窓を含んでもよく、1つ以上の刺激窓から、標的を刺激するためのエネルギーを放出することができる。方向付け手段は、送達カニューレ、1つ以上のエネルギーエミッタ、又は送達カニューレと1つ以上のエネルギーエミッタの両方に接触してもよい。方向付け手段は、エネルギーエミッタが送達カニューレの窓と整合することを可能にし得る。1つ以上のアンカーは、1つ以上のエネルギーエミッタに結合されてもよく、標的組織に近接する組織位置において1つ以上のエネルギーエミッタを固定するように構成されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、患者の身体の呼吸神経を刺激するための方法は、デバイスの先端部(例えば、リード本体)が標的神経に近接し、刺激デバイスの基端部が患者の外部にあるように呼吸筋刺激デバイスを配置することと、標的神経の一部分を刺激するためにデバイスの先端部に電気エネルギーを供給することと、呼吸神経の刺激から生じた応答を検知することと、リードの移動を軽減するために患者にリードを固定することと、呼吸筋の収縮を引き起こすためにデバイスの先端部に電気エネルギーを供給すること及び/又は少なくとも2日にわたって適切な回数呼吸筋を収縮させることと、を含んでもよい。このような方法は、呼吸筋力を高めることができる、又は筋力の喪失を軽減することができる。
【0046】
方法は、送達カニューレを配置することを含んでもよく、送達カニューレは、1つ以上のエネルギーエミッタを受け入れるための少なくとも1つの内腔又はチャネルを有する長尺状のカニューレを備える。送達カニューレはまた、カニューレの先端部に沿って1つ以上の刺激窓を含んでもよく、1つ以上の刺激窓から、標的を刺激するためのエネルギーが放出され得る。呼吸筋刺激デバイスの基端部は、方向付け手段を含んでもよい。方向付け手段は、送達カニューレ、リード本体、呼吸筋刺激デバイスの先端部上の1つ以上の電極、又はこれらの組み合わせと接触してもよい。方向付け手段は、患者の皮膚に対して好ましい向き又は好ましい位置(例えば、左又は右、上又は下、遠位側又は近位側など)を示すことができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、デバイスの先端部は、方向性電極を含む可撓性リードを含む。方向性電極は、電界を生成し得る。この電界は、刺激電極の近傍の所与の長手方向位置及び半径方向距離において、可撓性リードの長手方向軸線に対する周方向の角度位置に応じて強度が変化する。呼吸筋刺激デバイスを配置することは、分割剥離可能なカニューレ送達システムを通して可撓性リードを患者の身体に挿入することと、分割剥離可能なカニューレ送達システムを患者の身体から除去することと、分割剥離可能なカニューレ送達システムから可撓性リードを分離することができるように、分割剥離可能なカニューレ送達システム内に長手方向のチャネル又は開口を作製することと、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、リード本体の一部分は、第1のコンパクトな幾何学的構成(例えば、体内に配置する前)から第2の幾何学的構成(例えば、体内に配置した後)に変化する。第2の幾何学的構成は、第1の幾何学的構成に比べてコンパクトでない場合がある。
【0048】
1つ以上の実施形態では、システムは、エネルギー源(例えば、電荷を放散させる電極、又は電気、超音波、光、熱若しくは化学物質を含む何らかの形態のエネルギーを放出するその他のエネルギー源)を含む経皮リードを含んでもよい。エネルギー源は、少なくとも1つのその他のエネルギー源に電気的に接続されてもよい。システムは、エネルギーの送達を管理するために経皮リードと通信する制御ユニットを更に含んでもよい。制御ユニットは、送達されるエネルギーの量を変化させることにより所望の結果を制御するために、1つ以上のセンサと通信してもよい。1つ以上のセンサ(例えば、神経センサ、Oセンサ、COセンサ、モーションセンサ、気道流センサ、気道内圧センサ、インピーダンスセンサ、EIT(電気インピーダンス断層撮影法:electrical impedance tomography)センサ、EIS(電気インピーダンス断層走査法:electrical impedance scanning)センサ、EMG(筋電図:electromyography)センサ、ECG(脳波:electroencephalogram)センサ、EKGセンサ及び/又は認知機能センサなど)は、患者の生理的状態及び/又は環境因子及び/又は外部呼吸補助デバイスのステータスに関するフィードバックを制御ユニットに提供することができる。
【0049】
システムは、呼吸筋の収縮を引き起こすためにエネルギーを送達するように構成されてもよい。追加的に又は代替的に、システムは、炎症若しくは敗血症を低減するために、及び/又は心リズムを有利に変化させるために、迷走神経にエネルギーを送達するように構成されてもよい。更に、システムは、任意の他の神経又は筋を刺激するように構成されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、経皮リードは、皮膚の表面に配置されるパッチ又はカラーを含んでもよい。他の実施形態では、システムは、センサの微小電極エネルギー源を含む、皮膚に配置されるように構成されているパッチ又はカラーを含む。リード、パッチ、又はカラーは、製品の識別、無許可の使用の防止、及び/又は中央データ処理位置(例えば、1人より多い患者のデータが処理される場所)へのデータの再送信用のチップを含んでもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、経皮リードは、抗微生物コーティング及び/又は留置され得る可逆的なアンカリング機構(例えば、リードの移動を防ぐ)を有してもよい。いくつかの実施形態では、システムの構成要素は、無線接続、ブルートゥース(登録商標)接続、又はソナー接続を介して通信してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、システムは、複数のエネルギー源(例えば、エネルギーを放散させる電極)を有する構造体と、機械的人工呼吸器と、構造体のエネルギー源に接続された制御ユニットと、1つ以上のセンサとを含んでもよい。制御ユニット及び1つ以上のセンサは、本明細書に記載される制御ユニット及びセンサに類似し得る。例えば、制御ユニットは、機械的に換気される呼吸と横隔神経刺激の同期を制御するためのセンサに接続されてもよい。システムは、センサ(例えば、モーションセンサ、気道流センサ、圧力センサ、EMGセンサ、中心静脈圧センサ、インピーダンスセンサなど)からデータを受信し得る。構造体は、エネルギー源が横隔神経に近接するように患者に配置されるように構成されてもよい。例えば、構造体は、経血管的に、経皮的に、皮膚上に、又は経食道的に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、システムによるエネルギー送達は、ユーザのアクション(例えば、ボタン、音声コマンド、タッチスクリーンなど)によって手動でトリガーされてもよい。他の実施形態では、センサから受信されたデータは、制御ユニットに刺激パラメータ(例えば、刺激タイミング)を知らせることができる。制御ユニットに刺激パラメータを知らせるデータは、モーションセンサ、気道流センサ、気道内圧センサ、EMG、EKG、1回換気量センサ、呼吸仕事量センサ、外的機械呼吸仕事量センサ、Oレベルセンサ、COレベルセンサ、血液ガスセンサ、心拍数センサ、及び/又は伸展受容器信号センサなどのセンサから受信されるデータを含んでもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、システムは、1つ以上のセンサから受信されたデータに基づいて、最も効率的な、最適なエネルギー源及び/又は望ましくない効果を生じさせるエネルギー源をマッピングしてもよい。構造体は、抗菌コーティング、チップ、RFID、超音波によってより良好に観察できる領域、及び/又は1つ以上の神経が異なる方向から刺激され得るように配置される1つ以上の電極を含んでもよい。いくつかの実施形態では、異なる方向から及び/又は本明細書に記載される任意の刺激列プロファイルを用いて神経を刺激すると、関連する呼吸筋の疲労を低減することができる。いくつかの実施形態では、患者モジュール(例えば、リード、電極、パッチ)からシステムによって受信された信号は、Wi-Fi、ブルートゥース、RF、及び/又はソナーを介して無線で伝送されてもよい。
【0054】
いくつかの例示的な方法において、1つ以上の前述の構造体は、横隔神経又は迷走神経に近接して配置されてもよい。構造体は、経皮的に及び/又は頚部を介して配置されてもよい。解剖学的ランドマーク及び超音波イメージングにより、構造物の配置を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、構造物の配置は、患者の応答(例えば、送達されるエネルギーに対する応答)、1つ以上のセンサ(例えば、圧力、ボリューム、インピーダンス、神経活動)からのデータ、触診、及び/又は横隔膜の可視化(例えば、x線、蛍光透視法、超音波、CT、MRI)に基づいて確認されてもよい。このような方法は、横隔膜の強度を再構築する、横隔膜の萎縮を防止する、患者の呼吸を維持する、及び/又は患者の肺損傷を防止することができる。当該方法は、フレキシブル回路、アンカー、送達カニューレ、画像化技術、可撓性送達カニューレ、ひずみ取り穴、及び/又は電極を含むものを含む、本明細書に記載される任意のデバイス、システム、又は構造体を使用してもよい。
【0055】
呼吸筋刺激は、筋肉を直接活性化すること又は関連する神経、例えば(横隔神経)の刺激のいずれかによって実施されてもよい。刺激は、電気エネルギー、超音波エネルギー、磁気エネルギー、化学エネルギー、又は当該技術分野で周知の他の種類のエネルギーの送達を含んでもよい。刺激のために使用されるエネルギー源は、神経に近接して、血管内に(血管壁を介してエネルギーを送達する)、経皮的に、神経カフに、皮膚を通して(皮膚を通してエネルギーを送達する)配置されてもよく、又は筋肉若しくは隣接する組織に直接植え込まれてもよい。
【0056】
図1は、頚部及び胸部の解剖学的構造、並びに左及び右横隔神経(PhN)、迷走神経(VN)、内頚静脈(IJV)、外頸静脈(EJV)、腕頭静脈(BCV)、鎖骨下静脈(SCV)、上大静脈(SVC)及び肋間神経(IN)の相対位置を示す。横隔神経は、頚部脊髄神経根C3、C4、及びC5から発生する。左横隔神経は左半横隔膜(HD)まで延び、右横隔神経は右半横隔膜(HD)まで延びる。左横隔神経は、左鎖骨下静脈の後ろに走行し、胸郭上口を通って胸郭に入り、横隔膜の下面を貫き、これを神経支配する。右横隔神経は、右鎖骨下動脈の側部の前側を通り、上大静脈及び心臓の右心房の心膜に沿って進み、下大静脈口にて横隔膜を貫き、横隔膜の下面を神経支配する。
【0057】
図2は、経皮神経刺激リード1005と制御ユニット1001とを含む医療システム1000を示す。刺激リード1005は、複数のエネルギー源1006を含んでもよい。エネルギー源1006は、エネルギー(例えば、電気エネルギー、磁気エネルギー、超音波など)を放出する、伝達する、迂回させる及び/又は送達するように構成されてもよい。リード1005は、任意の標的神経又は筋に近接して配置されてもよい。いくつかの場合において、リード1005は、左横隔神経及び迷走神経など2つの神経の近傍に配置されてもよい。いくつかの場合においては、2つ以上のリード1005が配置されてもよい。各リード1005は、制御ユニット1001に動作的に接続されてもよい(例えば、有線接続、無線など)。制御ユニット1001は、システムと関連して本明細書に記載される機能のいずれかを実施するようにプログラムされてもよい。いくつかの実施形態では、制御ユニット1001は、患者又は医療専門家が制御ユニット1001から遠くで制御ユニット1001の動作を制御することを可能にするために、リモート(例えば、手持式など)コントローラ1002に機能的に接続されてもよい(例えば、有線接続、Wi-Fi、RFなど)。コントローラ1002は、図2に示されるような手持式デバイス1002を含んでもよい。いくつかの例では、コントローラ1002は、フットスイッチ/ペダル、音声作動式、接触作動式若しくは圧力作動式スイッチ又は任意の他の形態のリモートアクチュエータを含んでもよい。制御ユニット1001は、タッチスクリーンを含んでもよく、図8に示されるようなカートなどのカートによって支持されてもよい。システムは、例えば機械的人工呼吸器などの外部呼吸補助デバイス1007を更に含んでもよい。
【0058】
コントローラ1002(例えば、リモート及び/又は手持式コントローラ)は、呼吸パターンを制御するために患者又は他のユーザによって押され得るボタンを含んでもよい。他の例では、リモートコントローラ1002は、スマートフォン、タブレット、腕時計、又は適切な入力デバイスの形態であってもよい。一例では、コントローラ1002は、ユーザ(例えば、患者又は医療関係者)が溜息呼吸を開始することを可能にすることができ、これにより、前の呼吸に比べて大量の空気を患者の肺に入れることができる。溜息呼吸は、リード1005のエネルギー源1006(例えば電極)が、通常の呼吸よりも高いレベル(例えば、より長い刺激の持続時間を有する又はより大きな振幅、パルス幅若しくは周波数を持つパルスを有する刺激列)で横隔神経の1つ以上を刺激するように誘導されると生じ得る。より大きな振幅の刺激パルスは更なる神経線維を動員することができ、これにより更に、更なる筋線維に結合し、より強い及び/又はより深い筋収縮を引き起こすことができる。刺激列の延長されたパルス幅又は延長された持続時間は、より長時間にわたって刺激を送達し、筋収縮の持続時間を延長することができる。呼吸筋刺激の場合、複数のエネルギーパルスを伴う刺激列のより長い持続時間は、肺の外側により大きい又は延長された陰圧を提供することにより肺の下葉を拡張させる可能性がある。このような陰圧は、無気肺として知られる低圧肺損傷の形態の防止又は軽減に役立つ可能性がある。例えば横隔神経刺激による1つ以上の呼吸筋の刺激の増加は、筋(例えば、横隔膜筋、肋間筋など)のより強制的な収縮をもたらすことができ、患者により大量の空気を吸気させ、それにより、患者により大量の酸素を供給する。溜息呼吸は患者の快適性を高めることができる。
【0059】
他の例では、ボタン(例えば、コントローラ1002又は制御ユニット1001上にある)は、患者又は他のユーザが刺激療法を開始及び停止すること、又は刺激チャージ(振幅とパルス幅の積)、刺激列のパルスの周波数若しくは呼吸数を含む刺激パラメータを増加若しくは減少させることを可能にし得る。コントローラ上のLEDインジケータ又は小型LCD画面(図示せず)は、刺激パラメータ、システムセンサからのフィードバック、又は患者の状態に関してオペレータに案内する又は知らせる他の情報を提供してもよい。様々な目標値が設定されてもよく、所定の目標値外のシステム情報又は患者データが検出された場合、システムは、警報を発する又は他の手法で医療施術者に知らせることができる(例えば、画面通知、テキストメッセージ、警報など)。
【0060】
いくつかの実施形態では、システムの制御ユニット1001は、刺激リード1005とともに患者(図示せず)に植え込まれてもよい。埋め込み式システムは、リモートコントローラと、制御ユニット1001と無線通信するプログラマ(図示せず)とを更に含んでもよい。この実施形態では、プログラマ、制御ユニット1001、及びリモートコントローラ1002のそれぞれは、各構成要素が互いに無線通信することができるように、無線トランシーバを含んでもよい。各構成要素は、例えば、中央データストレージセンター又はデータ解析センターに情報を通信するために使用することができる(例えば、Wi-Fi、ブルートゥース、RF、ゼットウェーブ(Z Wave)など)。
【0061】
制御ユニット1001は、電子機器、ソフトウェア、及び本明細書に記載される機能を実施するために必要な機能論理の全てを含んでもよい。制御ユニット1001を埋め込むと、リード1005が永久呼吸ペースメーカとして機能することを可能にできる。プログラマは、患者又は医療専門家が神経刺激パラメータ又は検知パラメータを変更する又はそうでなければプログラムすることを可能にしてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、システムは、携帯型の制御ユニット1001(例えば図7を参照)を含んでもよい。携帯型制御ユニット1001は、図2の制御ユニットの機能を全て含み得るが、患者により高い可搬性を提供するために、患者又は他のユーザによって運ばれ得る。制御ユニット1001を運ぶことに加えて、患者は、例えば、ベルト上に、他の衣類上に、又は自身の首の周りに制御ユニット1001を装着することができる。他の例では、制御ユニット1001は、患者周囲の領域内のシステムの設置面積を最小限にするために、又は寝たきりの患者を別の場所に搬送又は移動させる必要がある場合に携帯式で筋刺激を与えるために、患者のベッドに取り付けられてもよい。
【0063】
更なる例では、筋活性リード1005が組織又他の血管内に配置され、組織又他の血管内を前進し、鎖骨下、上大静脈、頚静脈(例えば、図9A及び図9Bを参照)、腋窩静脈、橈側皮静脈、心膜横隔静脈、上腕静脈、又は橈骨静脈などの標的神経(例えば、横隔神経)に隣接する位置にアクセスを提供することができる。加えて、リード1005又はその他の刺激アレイ(例えば、経皮など)は、標的神経を活性化するために、超音波、光、磁気などの他の形態の刺激エネルギーを使用してもよい。いくつかの例では、システムは、横隔膜に加えて又はその代わりに、他の呼吸筋(例えば、肋間筋、腹筋など)を標的にしてもよい。エネルギーは、経血管、皮下、神経カフ、経皮的な刺激、又は当分野で周知の他の手法を含む1つ以上の方法により送達されてもよい。
【0064】
患者に外部呼吸補助1007を提供する手法を最適化することが望ましい場合がある。いくつかの場合において、患者が外部呼吸補助1007を受ける必要性を最終的に低減する又は排除することが望ましい場合がある。図2の外部呼吸補助1007は、安全な血液ガス(例えば、CO、Oなど)レベルの管理及び又は患者の呼吸仕事量の低減を補助するための任意のデバイス又は方法からなり得る。いくつかの非限定的な例としては、機械的人工換気、非侵襲的換気療法(NIV:non-invasive ventilation)、CPAP、BiPAP、高流量酸素/ガス、鼻カニューレ酸素投与/ガス、DPS(ダイヤフラムペーシングシステム:Diaphragm Pacing System)(シナプス(Synapse)、アベリー(Avery)など)、ECCO2、及びECMOが挙げられる。
【0065】
機械的人工換気は、自発呼吸を補助する又は代替するために機械的手段が使用される強制換気に関する用語である。これには、人工呼吸器と呼ばれる機械を伴う場合がある。機械的人工換気は、口(気管内チューブなど)又は皮膚(気管切開チューブなど)を貫通する任意の器具を伴う場合、「侵襲的」とみなされる。2つの主なタイプ、即ち、陽圧換気(空気(又は別のガス混合物)が陽圧によって気管内に強制的に送られる)及び陰圧換気(空気が肺(例えば、鉄の肺など)に引き込まれる(例えば、吸い込まれる))がある。機械的人工換気の多くのモードがある。機械的人工換気は、患者の自発換気により肺の効果的なガス交換を提供することができない時に使用される場合がある。
【0066】
換気はまた、喉頭マスク気道器具(例えば、喉頭マスク)を介して提供され得る。喉頭マスク気道器具は、麻酔又は意識喪失時に患者の気道を開放したままにするように設計されている。喉頭マスク気道器具は、声門上気道器具の一種と称されることが多い。喉頭マスクは、カフを有する楕円マスクに接続される気道チューブから構成される。カフは、患者の口内に挿入され、気管を下り、留置されると、声門の上で気密シールを形成し(声門を通過する気管チューブとは異なる)、確実な又は安定な気道を提供する。
【0067】
非侵襲的換気療法(NIV:non-invasive ventilation)は、気管内チューブの代わりに、フェイス(例えば、口、鼻、鼻-口)マスク/カニューレを介して管理される気道支持を使用する。吸気ガスには、多くの場合、1回換気量及び数が設定された圧支持又は補助制御換気を用いた呼気終末陽圧が与えられる。顔面にしっかりと密着したマスクによって吸気ガスが送達され、気管挿管を必要とすることはないため、これは「非侵襲的」と呼ばれる。
【0068】
持続的気道陽圧法(CPAP:continuous positive airway pressure)は、気道陽圧換気の一形態であり、自身で自発的に呼吸することはできるものの、あるレベルの圧支持を必要とし得る人の気道を持続的に開放したままにするために、持続的に弱い気圧を印加する。これは、呼気終末陽圧法(PEEP:positive end-expiratory pressure)の代替となるものである。両手法とも、肺の肺胞を開放したままにするため、肺の表面積のより多くを換気のために用いるのに役立ち得る。PEEPは、一般に、呼気の終了時にのみ陽圧をかけるデバイスを意味する。CPAPデバイスは、一般に、呼吸周期の全体を通して持続性気道陽圧を印加するが、いくつかのシステムは、呼吸周期中又はある期間にわたって圧力を変化させる。したがって、人工呼吸器それ自体は、CPAP中にサイクルせず、典型的にはCPAPのレベルを上回る追加的な圧力は提供されず、患者は各呼吸を自身で開始しなければならない。
【0069】
バイレベル気道陽圧(BiPAP:Bi-level Positive Airway Pressure)療法は、機能及び設計がCPAPに非常に似ている。BiPAPデバイスはまた、人が1分あたりに行うべき呼吸の量を測定する呼吸タイミングフィーチャを含むように設定することができる。呼吸と呼吸との間の時間が設定限界を超えた場合、機械は一時的に、人に強制的に呼吸させ、気圧を上昇させることができる。BiPAP機械とCPAP機械との間の主な違いは、BiPAP機械は、一般に、2つ以上の圧力設定、即ち、所定の吸気圧力(ipap:inspiratory positive airway pressure)及びより低い呼気圧力(epap:expiratory positive airway pressure)を有することである。2つの設定により、患者がより多くの空気を自身の肺から出し入れすることを可能にする。
【0070】
体外生命維持(ECLS:extracorporeal life support)としても知られる体外膜型人工肺による酸素化(ECMO:extracorporeal membrane oxygenation)は、心臓及び肺が適切な量のガス交換を提供できない患者に長期にわたる心臓及び呼吸補助を提供するための体外手法である。ECMOの技術は、より短期的な補助を提供するために典型的に使用される心肺バイパス時に使用される技術に類似する。ECMO中、人の体から血液が取り出され、二酸化炭素が除去され、赤血球に酸素を提供するデバイスを通過する。長期のECMO患者は、筋肉の不活動及びその他の原因によって呼吸筋の筋力低下が生じていることが多い。
【0071】
これらのデバイス/システムのそれぞれ及び血液ガスレベルを管理するために使用され得る当該技術分野で周知の任意のその他は、外部呼吸補助1007と総称される。
いくつかの実施形態では、刺激デバイス、アレイ、リード1005、又はリード1005の構成要素若しくはシステムの部品、例えば、電極もまた、それらを患者の体内又は体上に配置することによって被験者の生理学的変数を監視することができる。リード1005が1つ以上の中心静脈内に配置される実施形態では、デバイスは、中心静脈圧、体温、呼吸数、心電図、インピーダンス、心拍数、血流、CO、神経活動、EMG、ECG、混合静脈血酸素飽和度、及び当該技術分野で周知のその他の変数が挙げられるがこれらに限定されない生理学的変数を監視することができる。センサ1020の1つ以上などの、電極から離れた1つ以上のセンサが、そのような生理学的変数を監視するために使用されてもよいことは理解されるであろう。
【0072】
いくつかの実施形態では、システムは、外部呼吸補助1007(例えば、機械的人工呼吸器)のパラメータを検知するための呼吸センサ1009を含んでもよい。この点に関して、呼吸センサ1009は、集中治療用人工呼吸器において使用される任意の標準的な呼吸回路と接続するように構成されてもよく、したがって、ペーシングシステムは、使用される人工呼吸器のブランドに依存しない。図2に示されるような呼吸センサ1009は、呼吸回路内におけるその位置によって、いくつかの換気パラメータを監視及び/又は測定することができ、そのようなパラメータを制御ユニット1001に通信することができる。以下に更に詳細に記載されるように、呼吸センサ1009は、患者に与えられる刺激を調整するためのフィードバック制御スキームの一部であってもよく、又は患者に与えられる刺激を調整するためのフィードバック制御スキームとして単に使用されてもよい。検知される換気パラメータとしては、空気流(吸気及び/又は呼気)、容量、及び/又は圧力(気道、食道、胃、及び/又は前者のいくつかの組み合わせ/派生物)が挙げられ得るがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、呼吸センサ1009は、患者の胸腔上に配置される加速度計、ジャイロスコープ、及び/又はモーションセンサ(例えば、センサ1020)を含んでもよく、又はこれらと通信してもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のその他のセンサが1つ以上の換気パラメータの入手を補助してもよい。呼吸センサ1009は、有線又は無線によって制御ユニット1001に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、外部呼吸補助1007からの信号は、呼吸筋活性部(例えば、横隔神経刺激部など)を制御するために使用されてもよい。例示的なパラメータは、人工呼吸器に対して及び人工呼吸器からの両方で測定されてもよい。例えば、図2に示される実施形態では、呼吸センサ1009は外部呼吸補助1007の外部にあり、そのため、システムは、外部呼吸補助1007から独立したタイプ又はモデルである。しかしながら、システムはまた、外部呼吸補助1007の内部センサを使用するために統合されてもよく、又は外部呼吸補助1007によって外部に供給される信号が、適切な動作のための情報をシステムに提供することができ、そのため、外部呼吸センサ1009は省略することができる。1つ以上のその他のセンサは、神経又は筋肉活動を検知してもよく、呼吸筋エネルギー刺激と別のイベントとを同期させるために使用されてもよい。一例では、システムのセンサは、患者が呼吸しようとしている時に検知し、患者に陽圧換気及び神経筋刺激を送達する。いくつかの実施形態では、この陽圧換気及び神経筋刺激の送達は、呼吸周期の効率を高めることができる。
【0073】
刺激部(例えば、コントローラ、制御ユニット1001、又は類似のデバイス)は、センサのうちの1つ以上から受け取った情報及び/又はユーザ(例えば、患者又は医療関係者)によってシステムにプログラムされた情報に応じて、横隔膜及びその他の呼吸筋に治療を提供するための信号発生器を含んでもよい。この点に関して、刺激部は、本明細書に記載される1つ以上のプロトコルに従い刺激アレイにパルスを送達してもよい。以下に更に詳細に記載されるように、いくつかの実施形態では、パルスは、上述の所定の補助レベルの選択された横隔膜の寄与(例えば、容量、圧力、これらの両方、又は容量及び圧力から得られるパラメータにおける)を満たすのに十分な横隔膜動員を提供するために、横隔神経に電荷を送達するのに適した特性を備える刺激部によって生成される。
【0074】
刺激部は、その端部に向けて、以下、即ち、任意の数のパルス、定義されたパルスの任意の組み合わせ、定義されたパルスの任意の送達順序、任意の定義されたパルスの複数のインスタンス、刺激の任意の周波数、及び/又はパルス間の任意の遅延(例えば、パルス間遅延、変化するパルス間遅延など)が挙げられるがこれらに限定されない完全にプログラム可能な刺激を送達するように構成されている。各パルスは、独立してプログラム可能であり得る(例えば、周波数、振幅、持続時間など)。刺激パルス及び/又は列は、繰り返しパターンを生成してもしなくてもよい。
【0075】
各パルスは、電荷注入相及び電荷平衡相を含み得る(即ち、各パルスは二相性であり得る)。いくつかの実施形態では、平衡相の持続時間及び振幅は、ゼロ正味電荷が維持されるように、充電相の持続時間と振幅の比としてプログラム可能である。平衡に対する電荷の比は、電荷:平衡比(C:B比)と表記され、充電相及び平衡相の両方において振幅と持続時間の積(電荷)が等しくなるように適用される。いくつかの実施形態では、各パルスは、以下のパラメータ、即ち、平衡相の持続時間に対する充電相の持続時間の比、パルス幅範囲、刺激振幅(電流レベル)、及び充電相と平衡相との間の遅延によりプログラム可能である。刺激振幅は、同じ相の間に変更してもよい(例えば、充電パルス幅に対して徐々に減少する電流を発生させる)。いくつかの実施形態では、ゼロ正味電荷が好ましい。他の実施形態では、非ゼロ正味電荷が使用されてもよい。30μC/(cm相)を超える体積電荷密度は、神経及び組織損傷を引き起こすことが示されている。本明細書に記載されるシステム及び方法は、体積電荷密度限界を確実に超えないようにするためのメカニズムを含んでもよい。
【0076】
図3は、標的神経又は筋肉に送達され得る例示的な刺激信号を示す。例えば、骨格筋である横隔膜について述べると、ペーシングは、横隔神経に1つ以上の刺激信号を送達し、機械的に有効な横隔膜の収縮を生成することによって達成され得る。この点に関して、刺激信号は、刺激列にクループ化される複数のパルスを含み得る。本明細書で使用する場合、刺激列とは、刺激パルスの集合と定義される。この定義は、特定の構成物、送達の順序、及び/又は形状プロファイル若しくは包絡線を示唆するものではない。図3は、刺激部によって生成され、横隔神経を刺激するために1つ以上のリード1005(例えば、エネルギー源1006、電極など)に送達されるパルス1031a~1031hを含む例示的な刺激列1030a、1030b、1030cを示す。刺激列1030は、2組(一対のパルス1031)又は3組で開始してもよい。いくつかの実施形態では、動員の始めに素早く連続する2つ又は3つのパルス1031は、動員の最初の開始時にベースラインを上にシフトすることによって力プロファイル全体を増大させることができる。同様に、列1030の途中まで送達される2組又は3組は、持続的な力の増大を生じさせることができる。早期の力生成における上向きのシフトは、より少ない刺激パルス1031を使用して、同程度の期間に同じ量の力を横隔膜から生成することに相当し得る。過剰な刺激による横隔膜などの筋肉の過度の活性化は疲労を誘発するおそれがあるため、これらのプロファイルは有利になり得る。筋肉の過度の刺激もまた、速筋(力強いが容易に疲労する)から遅筋(疲労に耐えるが多量の力を生み出すことはできない)への変換を引き起こすおそれがある。
【0077】
刺激は、速度、持続時間、パルス幅、周波数、及び信号の振幅によって特徴付けられ得る。刺激の速度は、1分当たりに送達される刺激列1030の数に相当し得る。刺激速度は、患者の呼吸数(例えば、患者の生来の呼吸数)又は機械的人工呼吸器速度と相関し得る。刺激列1030の持続時間とは、刺激列1030が送達される時間の長さを意味し得る。パルス幅は、刺激列1030を作るそれぞれの個々のパルス1031の持続時間を示し得る。同様に、周波数は、1秒当たりに送達される個々のパルス1031の数を示し得る。振幅とは、送達される各パルス1031の電圧又は刺激列1030のパルス1031当たりに送達される平均電圧を意味し得る。理論によって制限されるものではないが、振幅、周波数、及びパルス幅は、誘発される横隔膜ペーシングの強度及びその他の特性又はパラメータを決定する因子であり得ると考えられる。
【0078】
図4は、刺激列(例えば、傾斜列)の例を示す。いくつかの実施形態では、刺激列は、傾斜列を形成する。例えば、傾斜列は、列内の連続パルスの瞬時周波数、列内の連続パルスの持続時間(パルス幅)、又はこれらの両方のいずれかを直線的に増加させる(又は減少させる)ことによって形成され得る。傾斜列は、注入電荷の変化が、プログラムされた刺激パラメータ、ユーザによる活性化、又はその他の適用される変調によって誘導されることを示し得る。
【0079】
パルス幅の変化及び周波数変調により、異なる傾斜列包絡線を設計することが可能になる。図4及び図5を参照すると、単一ペーシング傾斜中に、パルス幅のみ、周波数のみ、又はパルス幅及び周波数両方の傾斜包絡線を生成してもよい。
【0080】
図5は、ペーシング中に、所望の傾斜列を生成するために、パルス幅包絡線と刺激周波数包絡線が一緒に又は個々に変調され得る例を示す。例えば、図5を更に参照すると、組み合わせAF(一番左)は、一定周波数(発火頻度なし)で横隔膜運動ニューロンの段階的な動員を生じさせることができ、組み合わせBA(左から2番目)は、着実に増加する発火頻度を伴って、運動ニューロンを徐々に動員及び非動員することができるが、任意の組み合わせが可能である。発火頻度とは無関係に、単一ペーシング傾斜内のパルス幅の増加及び減少の持続時間の相対的割合を調整することによって運動ニューロンの動員及び非動員の速度(勾配)を変更することも可能である。更に、本開示は、数学的に定義されるパルス幅及び周波数変調を時間における別個の区分的関数として考え、それにより、任意の所望の傾斜包絡線を生成することを可能にする。
【0081】
多数組の傾斜列を生成することはできるが、傾斜列が以下のうちの1つ以上を実現するように構成されているいくつかの実施形態がある。1)それぞれパルス幅及び周波数変調を用いて動員及び発火頻度を単独で制御することにより、横隔膜の生理学的収縮を模倣する、2)神経筋疲労の開始を遅らせる、3)気道から又は気道内での流体若しくはその他の物質の移動を促す、4)健康な横隔膜の天然の線維組成を維持する又は回復する、及び/又は5)特定の線維型(例えば、I型、遅筋線維、耐疲労性線維などの成長を促進)に横隔膜を条件付ける。その他の例示的な刺激プロファイルが本明細書に記載され(例えば、図19のもの)、図3図5に記載した刺激プロファイルの一部と組み合わせて使用されてもよい。
【0082】
図6は、横隔神経近辺のいくつかの解剖学的ランドマークを示す。横隔神経は、頚部脊髄神経根C3、C4、及びC5から発生する。脊髄神経根C4が主に寄与し、C3及びC5の寄与はより少なく、一部は頚神経叢の線維と連絡している。この神経は、前斜角筋の外側境界にて発生する。次いで、この神経は、前斜角筋の前面上を下方に通過し、深く、頚筋膜の椎前葉に達する。両側において、神経は、鎖骨下静脈の後方を走行している。
【0083】
図6を更に参照すると、1つ以上の実施形態では、横隔神経刺激デバイスは、左PhNを刺激し得る。センサとしても機能し得るいくつかのエネルギー源1006がリード1005に沿ってアレイ状構成で分布してもよい。エネルギー放出は、アレイから1つの軸方向に集束されてもよく、又は複数の方向に均一に放射状に広がってもよい。神経刺激デバイスは、経時的な刺激アレイの移動の程度を軽減する又は低減するために患者に固定されてもよい。好適な固定又はアンカリング機構1015としては、接着パッチ又は縫合糸が挙げられ得る。固定又はアンカリング機構1015はまた、エネルギー源が標的神経又は筋肉に向けて集束されるように、リード1005の方向付けを補助してもよい。
【0084】
図7は、それぞれが複数のエネルギー源1006を有する2つの経皮リード1005を含む医療システム1000を示す。一方のリード1005は左横隔神経の近くに配置され、他方のリード1005は右横隔神経の近くに配置される。経皮リード1005はまた、望む通りに、迷走神経、横隔神経及び迷走神経の両方、又はその他の神経を刺激するように配置されてもよい。エネルギー源1006は、論理回路、バッテリー若しくはその他のエネルギー蓄積要素及び/又はその他の電子機器を収容し得る缶1025に電気的に接続される。缶1025は、患者に植え込まれてもよい。電子機器及びエネルギー蓄積要素はまた、患者の皮膚に取り付けられ得る皮膚パッチに埋め込まれてもよい。パッチ及び/又は缶1025は、有線又は無線接続を介して、プログラミングユニット、制御システム、制御ユニット1001、又はその他のシステムと相互作用してもよい。
【0085】
図8は、複数のエネルギー源1106を有する頚部カラー1105を含む医療システム1100を示す。カラーは、有線又は無線で制御ユニット1101に接続され得る。頚部刺激デバイス(頚部カラー1105)は、近傍の横隔神経、迷走神経、又はその他の神経を活性化することができる。制御ユニット1101は、カート上のコンピュータ(例えば、タッチスクリーン又はその他のグラフィカルユーザインターフェースを含む)を含んでもよい。制御ユニット1101は、システムの様々な構成要素と(例えば、無線で)通信してもよい。本明細書に記載される他のシステムと同様に、システム1100は、外部呼吸補助1107及び/又は呼吸センサ1109若しくはその他のセンサを任意選択的に含んでもよい。
【0086】
患者の左胴部及び右胴部上のセンサ1120は、制御ユニット1101に生理学的情報を送信することができる。いくつかの実施形態では、横隔膜上のモーションセンサが、横隔膜収縮/運動に関する情報を提供することができる。類似のセンサが、その他の筋肉(例えば、肋間筋)の収縮又は運動を検知するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、センサ1120は、エネルギーを送達し、1つ以上の呼吸筋の活性化を引き起こすことができる。いくつかの実施形態では、以下に記載されるように、インピーダンスセンサが、患者の様々な肺区域内のガスの分布を検出する及び/又は体内の組織の状態を検知するのを補助してもよい。
【0087】
EITが、肺機能を監視するために使用されてもよい。肺組織のインピーダンスは、胴部領域の他のほとんどの軟組織に比べて最大で約5倍大きい場合がある。インピーダンスの差は、肺の高いコントラストをもたらす。加えて、呼吸中(例えば、吸気と呼気との間の時間)の肺の抵抗率が数倍増加及び減少する可能性がある。インピーダンス測定値は、より低い抵抗率の領域からもたらされる肺の状態(例えば、血胸、胸水、無気肺、肺性水浮腫など)と、より高い抵抗率の領域からもたらされる肺の状態(例えば、気胸、気腫など)を特徴付け、これらの間を区別するのに役立ち得る。
【0088】
肺組織の電気インピーダンスは、空気量に応じて経時的に変化し得る。例えば、胸郭の電気インピーダンスは、吸気及び呼気中に変化する。胸郭は、2つの構成要素、即ち、比較的一定値と変化値とを含む電気インピーダンスを呈する。インピーダンスの変化は、吸気中の以下の2つの効果のうちの1つ又は両方からもたらされ得る。1)胸部の流体体積に対するガス体積の増加、これは導電率の減少を引き起こす可能性がある、及び2)肺が拡張した時のコンダクタンス経路(例えば、2つの電極の間)の長さの増加。これらの効果は、吸気中のインピーダンスの増加を引き起こす可能性がある。呼吸周期中のインピーダンス変化と空気の体積との間にはほぼ線形相関がある。変化するインピーダンスの構成要素(例えば、呼吸インピーダンス)は、(例えば、電極によって)電流が注入されると変化する電圧構成要素を発生させる。この変化する電圧構成要素を使用して、被験者の呼吸数を決定することができる。
【0089】
インピーダンス情報を使用して、例えば、様々な肺区域内の空気分布などの患者の動的呼吸状態を特徴付けることができる。様々な肺区域内の空気分布を使用して、例えば、刺激エネルギー、刺激パルス振幅、刺激パルス幅、刺激パルス周波数、刺激持続時間、刺激速度、及び/又は刺激/パルス列間の間隔などの、本明細書に記載されるデバイス又はシステムのパラメータ(例えば、呼吸筋活性部(RMA:respiratory muscle activator)パラメータ)を維持する又は調整する必要性を決定することができる。
【0090】
1つ以上の実施形態は、EITのリアルタイムモニタリングを利用して、左及び右、前及び後肺区域間の肺気量の分布の変化を測定するように設計される。本明細書に記載される更なる方法及びシステムは、理想的な空気分布を維持する若しくは向上させるために、肺ガス分布と目標とするより最適な分布とを比較し、より最適なガス分布に向けて空気分布を調整する必要性を評価し、呼吸相中に所望の肺ガス分布を実現するための呼吸筋活性部(RMA)の適切な刺激エネルギープロファイルを決定することができる及び/又は呼吸筋(及び/又は関連する神経)に所望の刺激エネルギープロファイルを送達することができる。いくつかの実施形態では、システムは、外部呼吸補助(ERS)(例えば、CPAP、機械的人工呼吸器、高流量酸素、ECMO、ECCOなど)を含んでもよく、ERS及びRMAの設定は、適切なガス交換を確保し、患者の傷害(例えば、VILI、気圧外傷、低い1回換気量、高い1回換気量など)の可能性を軽減するように調整され得る。適切なERS及びRMA設定の決定を補助するために、1つ以上のセンサ(例えば、心拍数センサ、COセンサ、Oセンサ、呼吸センサ、温度センサ、モーションセンサ、筋電図記録センサ、心電図記録センサ、空気流センサ、圧力センサなど)も使用してよい。
【0091】
上述のように、インピーダンス情報を使用して、様々な肺区域内の空気分布など、患者の呼吸状態を特徴付けることができ、それにより、呼吸筋活性部(RMA)パラメータ(例えば、エネルギー、刺激パルス振幅、刺激パルス幅、刺激パルス周波数、刺激持続時間、刺激/パルス列(例えば、刺激された呼吸数)間の間隔など)を維持する又は調整する必要性を決定することができる。
【0092】
上述のように、本明細書に記載される肺ガス分布デバイスは、インピーダンス検知電極を含むベルトを含んでもよい。インピーダンス検知電極は、患者の胴部上の様々な位置に配置されると、患者の肺の様々な区域内のガスの分布を決定することができる。
【0093】
組織インピーダンス検知(TIS:tissue impedance sensing)は、身体部分の導電率、誘電率、及び/又はインピーダンスが電極測定値から推測され、組織状態若しくは組成の断層画像又は多次元解析を形成するために使用され得る組織性状診断の一種である。導電率は、様々な生物学的組織間で、並びに組織内における流体及びガスの移動に応じて大幅に変化する。TISシステムは、単一周波数の小さい交流電流を印加することができる、又はその代わりに、TISシステムは、複数の周波数を使用して組織タイプ間をより良好に識別することができる。
【0094】
図9A及び図9Bは、呼吸筋刺激リード1205と、外部呼吸補助デバイス1207と、呼吸センサ1209と、肺ガス分布センサ(例えば、1つ以上の電極又はその他のエネルギー源1206、例えば、内部センサ、外部センサ、電極アレイ1225等など)と、制御ユニット1201とを含む例示的なシステム1200を示す。制御ユニット1201は、1つ以上の呼吸周期中における患者の肺の様々な区域内の最適なガス平衡を向上させる/維持するために、刺激及び外部呼吸補助デバイス1207のパラメータを調整するように構成されてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、呼吸筋刺激リード1205は、患者の皮膚を通過して血管に入るリード本体又はカニューレを含んでもよい。カニューレは、1つ以上のエネルギー源1206及び/又はセンサ(例えば、電極)を含んでもよい。図9A及び図9Bに示されるように、少なくとも1つのエネルギー源1206は、患者の皮膚上又は皮膚下のいずれかに配置され得る。更に、1つ以上のエネルギー源1206は左迷走神経を刺激するように配置されてもよく、1つ以上のエネルギー源1206は血管内に配置されてもよく、1つ以上のエネルギー源1206は左横隔神経を刺激するように配置されてもよく、1つ以上のエネルギー源1206は神経を経静脈的に刺激するために血管内に配置されてもよく、及び/又は1つ以上のエネルギー源1206は右横隔神経を刺激するように配置されてもよい。エネルギー源1206は、皮膚上、組織内、血管内、又は神経及び/又は筋活性に好適な任意の他の位置に位置してもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、導電性の表面電極1226及び/又は1つ以上のその他のセンサ(例えば、インピーダンスセンサ)は、患者の胴部の周囲の皮膚に取り付けられてもよい。代替的に又は加えて、インピーダンスを評価するために内部電極が使用されてもよい。図9A及び図9Bを参照すると、ベルト1225上の電極1226、カニューレ/針/カテーテル上の電極1206、又はこれらの両方が、組織のインピーダンスを評価するために及び/又は呼吸筋を刺激するために使用されてもよい。
【0097】
図9Bを参照すると、1つ以上の電極1226が、患者の前面、背面、側面、又はそれらの任意の組み合わせのいずれかの概ね第6肋骨の高さに、腋窩線に垂直に取り付けられてもよい。所望であれば、1つ以上の電極1226が、鎖骨の真下又は胸骨角、胸郭の下、及び/又は腋窩線にある剣状突起の高さなどの基準位置に配置されてもよい。他の構成では、電極1226は、インピーダンス検出及び/又は筋刺激を容易にするために、患者上のより高いところ又はより低いところに配置されてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極1226は、患者及び他の生理学的条件(例えば、心臓ペースメーカなどのインプラントの存在など)に応じて、その他の位置及び構成で配置されてもよい。
【0098】
1つ以上のインピーダンス電極1226が、患者に容易に取り付けられ、患者から容易に取り外され得る1つ以上のリード1205上に配置されてもよい。例えば、2つ以上の電極1226が、リニアアレイ、格子状パターン、及び/又は患者の解剖学的構造に合致するように設計された構成で配置されてもよい。いくつかの実施形態では、4つ以上の電極1226がリニアアレイ及び/又は格子状アレイで配置される。
【0099】
いくつかの実施形態では、複数電極1226は、ベルト1225、ベスト、及び/又はアレイとして配置される。好ましくは、1つ以上の電極1226、電極リード、及び/又はセンサが、患者の胴部の周囲に、被験者の胸郭又は腹部上に配置され得る。本明細書に記載されるシステム及び方法は、単回使用の電極又は複数回使用の電極を用いてもよい。インピーダンスアレイは、患者に電極又はアレイを固定するための取付手段(例えば、テープ、グルー、弾性ストラップ、調節可能なベルト1225、又はその他の固定部材など)を備えて構成されてもよい。アレイはまた、皮膚の炎症の可能性を低下させるために、柔らかい布、発泡体、非シリコーン材料などを組み込んでもよい。
【0100】
異なる大きさの患者(例えば、成人、小児、新生児、高BMI、低BMIなど)に対して異なるサイズの電極及び構成が用いられ得る。いくつかの実施形態では、電極は、約2mm~約6mmの表面積を有してもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、インピーダンス電極は、身体に電気インパルスを送達する及びインピーダンスを検知する、の両方のために、有効にされてもよい。他の実施形態では、電極のいくつかは、電気インパルスを送達するだけであってもよく、いくつかの電極は、インピーダンスを検知するだけであってもよい。いくつかの実施形態では、インピーダンス電極は、本明細書に記載されるように、神経活動、ECG、体温、又は運動などの患者の生理学的情報を検知するために使用されてもよい。検知のために使用される場合、電極の1つ以上は、信号取得モジュールに電子的に結合されてもよい。信号取得モジュールは、電極から信号を受信することができる。
【0102】
本明細書に記載される電極及び/又はその他のセンサは、(例えば、有線又は無線接続を介して)リモート制御ユニット1201に電気的に接続されてもよく、リモートセンサ又は制御センター/デバイス/システム/コントローラにデータを伝送するように構成されてもよい。電極及びセンサは、例えばボタン形電池などのローカル電源を含んでもよい。電極及びセンサは、外部又はリモート電源に電気的に接続されてもよい。
【0103】
1つ以上のインピーダンスセンサは、経時的にデータを収集するように構成されてもよい。信号は、いくつかの呼吸にわたって(例えば、15秒、30秒、又はその他の持続時間などの一定の時間間隔にわたって)記録され得る。検知は、継続的に又は断続的に行われてもよい。検知は、所定の及び可変的に選択された間隔で(例えば、少なくとも5回、10回、20回、又は50回までの患者の呼吸にわたって、少なくとも200回までの患者の呼吸にわたって、少なくとも2000回の患者の呼吸にわたって、又は別の持続時間にわたって)行われてもよい。
【0104】
前述したように、インピーダンス電極は、患者の体内に配置されてもよい。一例として、電極は、経皮リード本体上に位置してもよい。別の例として、電極は、本明細書並びに参照により援用される特許及び刊行物に記載されるカテーテルなどの経血管デバイス上に配置されてもよい。インピーダンスは、リード本体(例えば、カテーテル)の任意の2つの電極間において、カテーテル電極と皮膚電極との間において、又はこれらの両方において測定され得る。いくつかの実施形態では、インピーダンスは、a)最基端側電極又はハブのいずれかと、b)カテーテル上の先端側電極との間において測定され得る。
【0105】
注入電流(例えば、1つ以上の電極から伝送される電流)に対して示されるインピーダンスは、一対の検知電極間の局所的領域内における、電極を取り囲む又は組織に隣接する流体の導電率に依存し得る。導電率はまた、電極の場所の血管の断面積に依存し得る。電極のインピーダンスは、電極が載置されている媒体に応じて変化し得る。例えば、比較的大量の導電性流体中に配置されている電極は、血管壁に載置されている電極に比べて低いインピーダンスを有し得る。
【0106】
本明細書に記載され、当該技術分野で周知の信号フィルタリング、処理、及び解析技術が、インピーダンス測定値をリアルタイムで評価するために使用されてもよい。インピーダンスプロファイル、その他の生理学的情報、及び/又は警告若しくは通知の変化は、グラフィカルユーザインターフェース上で医療専門家、被験者、又はその他のユーザに対して表示されてもよい。
【0107】
刺激と患者の呼吸とを連係させるために、刺激と機械的人工呼吸器からの呼吸の送達とを連係させるために、又はこれらの両方のために様々なセンサが使用されてもよい。センサは、心拍数、CO、O、呼吸、体温、運動、インピーダンス、筋電図、心電図、空気流、圧力、又はこれらの任意の組み合わせを検知してもよい。
【0108】
本明細書に記載される呼吸療法システム1200(例えば、図9A及び図9Bに示されるもの)は、患者の肺への及び/又は患者の肺からのガスの流れを管理するために使用されてもよい。システムは、呼吸療法システムの性能を管理するための制御ユニット1201を含んでもよい。システムは、呼吸筋の収縮を引き起こすためのエネルギーを送達するための少なくとも1つのエネルギーエミッタ1206(例えば、刺激アレイ、電極リード、刺激カテーテルなど)を更に含んでもよく、エネルギーエミッタは、制御ユニット1201に機能的に接続されている(例えば、有線又は無線など)。一例として、刺激アレイは、患者の内部か患者の外部のいずれかに配置され得る、及び/又は内部構成要素及び外部構成要素の両方の組み合わせを組み込むことができる。刺激アレイは、カテーテル、カニューレ、針、リード本体、経皮エミッタ(例えば、テンス(TENS)など)又は本明細書に記載される若しくは当該技術分野で周知のその他のデバイスを含んでもよい。
【0109】
システムは、患者から生体電気インピーダンス信号を取得するための1つ以上のインピーダンスセンサ1226を含んでもよく、インピーダンスセンサ1226は、制御ユニット1201に機能的に接続されている。本明細書に記載されるように、インピーダンスセンサ1226は、被験者の内部、被験者の外部、又はそれらの両方のいずれかに位置し得る。
【0110】
コントローラ又は制御ユニット1201は、生体電気インピーダンス信号を受信し、生体電気インピーダンス信号を解析し、肺の区域(例えば、各左側及び右側の後区及び前区)内の望ましい空気分布に対する肺区域(例えば、後、前、左、右、上、下など)間のおおよその空気分布を決定し、更に、それにより、刺激アレイによって送達されるエネルギーが肺の空気分布を変化させることができるように、刺激パラメータを調整する。
【0111】
刺激アレイは、患者の右側の呼吸筋を刺激するように構成されたアレイと、患者の左側の呼吸筋を刺激するように構成されたアレイとを含んでもよい。刺激レベルは、患者の肺の異なる区域の空気の体積を平衡させるために別々に調整され得る。例えば、右横隔膜筋を対象とする刺激エネルギーを増加すると、上肺区から下肺区に空気又はガス分布をシフトさせるのを補助し得る。これにより、同様の1回換気量ではあるが、上/前肺葉における圧力がより低い患者の換気を可能にすることができ、それによって、下/後右肺の無気肺を軽減する及び/又は上右肺の気圧外傷の可能性を低減する。いくつかの実施形態では、上肺の圧力の低減は、肺伸展受容器からのシグナル伝達を低減することができ、それにより、VIBIも低減することができる。
【0112】
本明細書に記載されるシステムは、自律モード、即ちAモードで動作してもよい。Aモードは、外部呼吸補助と無関係に動作することができる生命維持モードである。図2及び図7図9Bに示されるものなどのいくつかの実施形態では、自律モードを含む1つ以上の機能を実施するためのルーチンがシステムによって実行されてもよい。この点に関して、Aモードは、センサのうちの1つ以上(例えば、センサ1020及び/又はインピーダンス電極1226)などの様々なセンサからのフィードバックを使用して閉ループ制御様式で動作する。これらのセンサを使用して、中心静脈圧、混合静脈血酸素飽和度、心拍数、及び運動活動レベルが挙げられ得るがこれらに限定されない生理学的変数を監視してもよい。Aモードは、本来の自発呼吸能力がない、いくらかある、又は完全にあり、呼吸補助を必要とする患者に対する調整可能な横隔膜ペーシングを提供してもよい。システムは、必要に応じて、患者の生理学的ニーズ及び変化した活動レベルに合わせて自動的に調整してもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、Aモードで動作するシステムは、バックアップ外部呼吸補助1007と接続されてもよい。例えば、Aモードは、機械的人工呼吸器に永久的に依存する又はそうでなければシステムによる持続的なペーシングを必要とする患者に適用可能であり得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、ペーサ開始換気モード(Pacer-Initiated Ventilation Mode)及び人工呼吸器開始ペーシングモード(Ventilator-Initiated Pacing Mode)を実施するためのいくつかのシステムとは対照的に、Aモードを実施するシステムは、上胸部領域の患者の皮膚下に完全に植え込まれてもよい。上述のように、システムは、一次又は充電式のいずれかの植え込み型バッテリーなどの電力貯蔵源によって給電されてもよく、患者の心臓又はその他の機能を支持する他の植え込み型デバイスと統合されてもよい。所望の組織のほぼリアルタイムの画像/ビデオを作成し、肺機能を監視するために持続的なデータ収集が用いられてもよい。
【0115】
小さい交流電流がいくつか又は全ての電極を介して印加されてもよく、生じた電位は、1つ以上のその他の電極により記録されてもよい。組織又は体液の遊離イオン含量は、組織又は流体の導電率を決定する。例えば、筋肉及び血液は、印加された電流を、例えば、脂肪、骨、又は肺組織よりも小さいインピーダンスで伝導する。インピーダンスの変化は、例えば、静止画像を作成することなどによって標的組織の特性を再構築するために使用されてもよい。このプロセスは、学習した組織の特性を生成するために多くの異なる電極構成において繰り返されてもよい。一例として、キャラクタライズ用のデータを使用し、画像再構成アルゴリズムにより多次元断層像を構築してもよい(電気インピーダンス断層撮影法/走査法、即ちEIT/EISとして知られる)。
【0116】
一実施形態では、インピーダンス電極は、刺激部としての役割も果たすように構成されてもよく、呼気を補助するために肋間筋を刺激するために使用されてもよく、例えば、吸気刺激部アレイ(例えば、横隔神経の針又はカテーテル刺激)と組み合わせて、患者の吸気及び呼気両方の一部を管理するために使用されてもよい。
【0117】
本明細書のシステムは、患者の肺にガスを送るための陽圧呼吸デバイスなどの外部呼吸補助デバイスを更に含んでもよい。このような実施形態では、呼吸療法システムは、陽圧呼吸デバイスの動作をセンサによって検知してもよく、又は陽圧呼吸デバイスと機能的に接続されてもよい。コントローラは、呼吸周期中、患者の肺の様々な区域内のガスレベル及び流れを平衡させるように、陽圧呼吸デバイスからの陽圧及び/又は呼吸筋刺激部からの刺激エネルギーの送達を最適化することができる。
【0118】
図10A図10Hは、例示的な送達デバイス、シース、カニューレ、針、可撓性刺激リード構造体、エネルギー源、及びアンカリング機構を示す。参照により援用される米国特許及び刊行物に記載されているものなどの他のカニューレ/針/カテーテル設計が実装されてもよい。例では、図10A図10Dに示されるように、リード1005は、最初に針(例えば、ステンレス鋼、ポリマーなどを含む)又はイントロデューサシースに内蔵され得る。刺激アレイ(例えば、エネルギー源1006を含むアレイ)を配置するための送達デバイスは、長尺状のカニューレ/針/カテーテル1050を含んでもよい。
【0119】
カニューレ/針/カテーテル1050は、従来のカニューレと比較して、比較的滑らかな外部表面、小さい断面積、及び皮膚及び組織を通過するのに適した先端側先端を有し得る。カニューレ/針/カテーテル1050を含む1つ以上の実施形態は、ガイドワイヤ、スタイレット、及び/又は刺激リード1005の受け入れに適した、カニューレ/針/カテーテル1050の本体によって画定されるチャネル又は内腔を含み得る。
【0120】
カニューレ/針/カテーテル1050は、導電性であってもよく、局所神経刺激を可能にするように配置されてもよい。カニューレ/針/カテーテル1050は、剛性であっても、可撓性であっても、又は所望の部位への刺激リード1005の操舵を補助するために制御可能に可撓性であってもよい。図10A及び図10Bに示されるように、カニューレ/針/カテーテル1050は、刺激アレイの配置を支援するように構成されているエネルギーエミッタ1056(例えば、先端側先端に位置する)を有してもよい。この例では、カニューレ/針/カテーテル1050は、先端側先端のエネルギーエミッタ1056に信号を直接提供するために刺激部及び/又は制御ユニットに接続され得る、又は(例えば、所望の位置に向けた先端側先端の操作を補助するために)カニューレ/針/カテーテル1050のその他の部分に接続され得る。いくつかの実施形態では、エネルギーエミッタ1056は、刺激するために標的神経(例えば、横隔神経、迷走神経など)の近傍に少なくとも1つの電極(例えば、エネルギー源1006)を前進させることができるように、カニューレ/針/カテーテル1050の外部表面に取り付けられてもよい。電気刺激の帰路を作成するために、第2の電極(図示せず)が患者の皮膚に接続されてもよい。
【0121】
カニューレ/針/カテーテル1050又はリード1005は、カニューレ/針/カテーテル1050又はリード1005に所望のレベルの剛性を与えるために通路を通して挿入され得るスタイレット又は閉塞具を含んでもよい。取り外されると、この通路又は別の通路は、流体/薬物送達のために又はその他の目的で使用されてもよい。カニューレ/針/カテーテル1050又はリード1005の位置決め中の操舵性を向上させるために、様々な形状のスタイレットが使用されてもよい(例えば、曲がった先端及び/又は傾斜した先端)。スタイレットが取り外されると、内腔は、患者に刺激アレイを挿入するために使用されてもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、長尺状のカニューレ/針/カテーテル1050は、線形、非線形、可撓性であり、標的神経に向けて操舵するのに適している、又はこれらの組み合わせである。カニューレ/針/カテーテル1050は、例えば、エネルギー源1006などの刺激電極の最適な位置決めを可能にするために、超音波機能などの可視化手段を含んでもよい。いくつかの場合では、カニューレ/針/カテーテル1050は、所望の位置に電極アレイを送達するために使用され、その後、カニューレ/針/カテーテル1050は体から取り除かれてもよい。例えば、分割式又は剥離式カニューレを用いてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、刺激アレイ(例えば、1つ以上のリード1005及び/又はエネルギー源1006を含むアレイ)は、標的神経に向けて操舵するのに好適であり得る(例えば、可撓性)。刺激用のリード1005及び/又はエネルギー源1006は、長尺状のカニューレ/針/カテーテル1050内の内腔又はチャネル内に容易に収まるように、折り畳まれてもよく、丸められてもよく、ねじられてもよく、巻かれてもよく、及び/又は巻き付けられてもよい。その後、リード1005及び/又はエネルギー源1006は、所望の位置に前進させ、留置することができ、この時点で、エネルギー源1006及び/又はリード1005は、別の幾何学的構成へと回復することができる。いくつかの実施形態では、アレイは、シャフトの周囲に配置された複数の電極(例えば、エネルギー源1006)を含んでもよい。例えば、離散的エネルギー源1006がそのエネルギーをカニューレ/針/カテーテル1050から励起領域内に放射状に出る特定の方向に誘導するように、フレキシブル回路が巻き付けられてもよい。カニューレ/針/カテーテル1050は、押出ポリマーチューブ(例えばカテーテル)又は金属針を含んでもよい。可撓性カニューレ/針/カテーテル1050は、カニューレ/針/カテーテル1050の外部に、臨床医に方向の表示を提供するための方向指示部を含んでもよい。カニューレ/針/カテーテル1050は、最適な刺激のために望ましい位置を実現するように方向付けられ得る(長手方向、軸方向など)。本明細書に記載される固定手段は、刺激アレイを所定の位置にロックするのを補助する。固定デバイスは、アレイのわずかな、場合によっては漸進的な前進又は後退を提供する、刺激アレイの位置に対する微調整を行うための調整機構を含んでもよい。
【0124】
1つ以上の実施形態では、刺激アレイは、針又はアレイを配置するための他の案内ツールを含み得る送達カニューレ/針/カテーテル1050を通して送達されてもよい。送達カニューレ/針/カテーテル1050及び/又は刺激アレイは、超音波、x線、又は配置を支援するためのその他の手段を介して見えるマーカ(例えば、放射線不透過性マーカ)を収容してもよい。アレイの配置後、他の外部マーカは、刺激アレイの位置の将来の基準を提供するために、例えば、一時的な包帯によって患者の皮膚上に配置されてもよい。
【0125】
横隔神経の識別及び/又は位置決めは、解剖学的ランドマーク、超音波、及び/又はCTスキャン若しくはMRIで生成された3D画像を使用して実施されてもよい。カニューレ/針/カテーテル1050、エネルギー源1006、及び/又はリード1005の挿入は、ほぼC5椎骨の高さの、輪状軟骨及び胸鎖乳突筋(SCM)の辺縁の外側の高さにおいてであり得る。患者は、最初に、刺激リード1005の挿入に関する適合性を決定するために評価され得る。超音波又はその他のイメージング技術を使用して、患者の解剖学的構造が刺激電極及び/又はリード1005の挿入に適しているかどうかを決定することができる。リード1005を配置するために、解剖学的ランドマーク(骨/静脈(超音波を使用する)外部ランドマークなど)が評価され、使用され得る。挿入場所が決定すると、挿入場所の周囲の領域は清潔にされ、滅菌され得る。
【0126】
典型的には、被験者の皮膚は、滅菌デバイス配置のために準備され得る及び/又は清潔にされ得る。滅菌ドレープが適用されてもよい。局所麻酔薬が投与されてもよい。いくつかの場合において、皮膚は、刺激アレイ及び/又は送達システム(例えば、カニューレ/針/カテーテル1050を含むシステム)の挿入を容易にするために、メス又はブレードで切り込みを入れられ得る或いは開かれる。蛍光透視、超音波、又はその他のナビゲーション手段を使用して、カニューレ/針/カテーテル1050及び/又は刺激アレイの配置を案内してもよい。外科用ドレッシング材が挿入場所を覆って配置されてもよい。抗生物質又はその他の手段を使用して、皮膚のアクセス部位の感染リスクを軽減してもよい。
【0127】
一実施形態では、カニューレ/針/カテーテル1050は、皮膚を通して典型的には45度以下の角度で挿入され、刺激アレイが留置される時、アレイ上の少なくとも1つ以上のエネルギー源1006(例えば、電極)が標的神経に近接し得るように、カニューレ/針/カテーテル1050の先端が標的神経(例えば、横隔神経、迷走神経など)の近傍にある状態で、より理想的には、標的神経を過ぎた位置にカニューレ/針/カテーテル1050の先端を前進させた状態で、前斜角筋(ASM)の筋線維と平行に、胸鎖乳突筋(SCM)の下を前進させる。その後、刺激標的(例えば、横隔膜、横隔神経、迷走神経など)に対して所望の位置にカニューレ/針/カテーテル1050を位置決めすることを補助するために、送達デバイスの配置中に、送達デバイス(例えば、カニューレ/針/カテーテル1050)に隣接する組織に刺激エネルギーが送達され得る。
【0128】
図10A及び図10Bに示されるものなどの一実施形態では、カニューレ/針/カテーテル1050は、1つ以上のエネルギー源(例えば、先端側先端エネルギーエミッタ1056)の別個の刺激アレイを含み得る。カニューレ/針/カテーテル1050が配置され、横隔膜又はその他の標的神経又は筋肉が刺激に応答すると、複数電極リードはカニューレ/針/カテーテル1050内を前進させることができる(例えば、図10C図10Dに示されるように)。
【0129】
いくつかの実施形態では、カニューレ/針/カテーテル1050は、刺激アレイのエネルギー源1006と整合する窓、開口部、及び/又は孔1055を含んでもよい(図10B図10Dに示されるように)。カニューレ/針/カテーテル1050及び/又は刺激アレイは、刺激アレイがカニューレ/針/カテーテル1050内に適切に配置されると1つ以上の電極が1つ以上の孔1055を通して少なくとも部分的に見えるように、整合特徴(例えば、マーキング、相手コネクタなど)を有してもよい。カニューレ/針/カテーテル1050を組織へと前進させる際、刺激アレイ上の特定のエネルギー源1006(例えば、電極)を作動させ、周囲組織に電界を貫通させることができる。刺激に対する呼吸筋の応答(例えば、横隔膜の単収縮又は収縮)は、手動で検出され、呼吸モニタなどの外部モニタ上で可視化され得る及び/又は本明細書に記載される異なるタイプのセンサによって測定され得る。
【0130】
図10C図10Iに示されるように、刺激リード1005の先端側先端は、リード1005を所定の位置にアンカーするための拡張可能な特徴を有してもよい。アンカリング特徴としては、逆棘、拡張可能部、形状変化部、拡張可能なニチノール部品、スズ、膨張式バルーン、形状変形、可撓性スズの機械システム、スタイレットの除去時にスズが留置される機械システム、及び/又は当該技術分野で周知の若しくは本明細書に記載されるその他のアンカリング特徴が挙げられ得る。例えば、縫合糸、接着剤、ドレッシング材、及び当該技術分野で周知のその他のデバイスなどのその他のアンカリング特徴が患者の外部に適用されてもよい。アンカリング特徴を含む実施形態は、例えば、図10C図10Hに示される。
【0131】
いくつかの実施形態では、カニューレ/針/カテーテル1050が望ましい位置に来ると、カニューレ/針/カテーテル1050は、刺激リード1005上の1つ以上のアンカリング特徴を露出させるためにわずかに後退させてもよい。その後、刺激リード1005は所定の位置にアンカーされてもよい。他の実施形態では、アンカー特徴は、刺激リード1005を固定するためにカニューレ/針/カテーテル1050を超えて延びるように作動させてもよく、その後、カニューレ/針/カテーテル1050は後退させてもよい。
【0132】
複数電極リード1005の位置は確認され得る(例えば、超音波などによって)。リード1005が適切な位置に来ると、図10D及び図10Eに示されるように、カニューレ/針/カテーテル1050は、患者から慎重に取り除かれ得る。カニューレ/針/カテーテル1050は、分割式であっても溝付きであってもよい。いくつかの場合では、カニューレ/針/カテーテル1050は、分割する或いはカニューレ/針/カテーテル1050内に長手方向のチャネルを作成するように曲げられる又は操作されるスナップウイングを収容してもよい。したがって、カニューレ/針/カテーテル1050は、経路を作成するために分割して開かれてもよく、経路によってリード1005又は刺激アレイから取り除かれ得る。他の実施形態では、カニューレ/針/カテーテル1050は、刺激リード1005の先端部上で取り除くことができ得る。
【0133】
図10C図10Eを参照すると、いくつかの実施形態では、刺激リード1005は、複数の拡張可能な脚を含んでもよい。脚は、送達デバイスの内腔内に配置されている間に拡張するように付勢されてもよく、脚がカニューレ/針/カテーテル1050の先端部を十分に超えて前進すると外側に延びる。任意の適切な数の拡張可能な脚が存在してもよく、脚は、例えば、プラスチック及び/又は形状保持金属合金などの任意の生体適合性材料でできていてもよい。脚の先端は、例えば、1つ以上の刺激標的に近接する組織などの組織に取り付けられるように構成されてもよい。
【0134】
図11は、バスケットを形成する拡張可能な腕を有するリード1005を示す。各腕は、複数のエネルギー源1006を有してもよい。いくつかの実施形態では、バスケットは、カニューレ/針/カテーテル1050内に配置されている間には折り畳まれた状態にあってもよく、拡張するように付勢され、バスケットがカニューレ/針/カテーテル1050の先端側先端を超えて前進すると拡張状態に移行してもよい。リード1005は、アンカリング機構を折り畳むことができるシースをリード1005上に挿入することによって容易に取り除くことができるように設計されてもよい。各拡張可能な腕は、リード1005と1つ以上の電極(例えば、エネルギー源1006)とに接続された絶縁された電気伝導体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、リード1005は、解剖学的内腔(例えば、血管)に挿入されてもよく、バスケットは、複数電極が様々な半径方向位置にて内腔の壁に接触することを可能にするように拡張してもよい。
【0135】
図12を参照すると、フレキシブル回路1070は、ポリマー若しくは金属チューブ/カニューレ1050及び/又は1つ以上のその他のリード本体構造体に巻き付けられた又は取り付けられた、電気トレース、チップ、センサ、エネルギー源1006、及び/又はその他の電極を含んでもよい。フレキシブル回路1070の構成要素は、所定の位置に結合或いは固定されてもよい。このタイプの構造は、低コストで容易に製造できる非常に可撓性のリード1005を提供し得る。
【0136】
制御システムは、エネルギーエミッタ(例えば、電極、トランスデューサなど)の様々な組み合わせによって刺激を定期的に送達することができ、例えばセンサなどの外部フィードバックを使用して、理想的なエミッタ(例えば、リード又は電極)の選択を最適化することができる。いくつかの実施形態では、インピーダンスセンサが様々な肺区域内の空気の体積を検出してもよく、システムは、所望の肺空気分布に到達するために刺激プロファイルを調整することができる。1つ以上の実施形態では、エアフローセンサが外部呼吸補助システムから患者への空気の流れを測定してもよく、制御ユニットは、患者の呼吸筋によって移動する空気の量及び外部呼吸補助によって移動する空気の量を管理するために、刺激プロファイルを調整してもよい。
【0137】
例えば、左横隔神経と右横隔神経、又は別の例として左肋間筋と右肋間筋を刺激するために、1つ以上の刺激アレイが2つの異なる位置に配置されている時、2つ以上の場所から延びる又は2つ以上の場所に取り付けられているリードは、共に固定され、外部制御ユニット/刺激部につながるリード/ワイヤのより清潔な束を提供することができる。
【0138】
図13は、アレイ内に収容された電極マイクロ針1303を用いた皮下刺激の一実施形態を示す。マイクロ針1303アレイは、刺激制御ユニットへの接続手段(例えば、無線、有線など)を有する。マイクロ針1303アレイは、電界を発生させるもう1つの極性電極アレイ(モノポーラ、バイポーラ、トリポーラ、又はマルチポーラ)又は単一若しくは複数のマイクロ針1303アレイによる横隔神経興奮用の超音波などのその他のエネルギー源を収容してもよい。
【0139】
マイクロ針アレイの先端部は、標的横隔神経又は任意の他の対象の神経の位置の近位側(例えば、頚部の左側又は頚部の右側)の皮下層に挿入され得る。頚部の左側の皮下層にバイポーラマイクロ針アレイを挿入すると、左横隔神経の興奮が可能になり得る。頚部の右側の皮下層にバイポーラマイクロ針アレイを挿入すると、右横隔神経の興奮が可能になり得る。横隔神経興奮は、左半横隔膜の動員、右半横隔膜の動員、又は全横隔膜の動員をもたらすことができる。
【0140】
マイクロニードルアレイは、皮膚の表面上に配置されるように構成されたパッチ上に取り付けられてもよい。パッチは、エネルギー源(例えば、バッテリーなど)、電子機器、ロジック、回路、通信手段、センサ、メモリ、及び/又はチップを収容してもよい。
【0141】
図14を参照すると、経皮的なアクセスでは、接着パッチアレイ内に含まれる接着剤内に埋め込まれた電極1406を用いてもよい。接着パッチアレイは、刺激制御ユニットに対する接続手段(有線又は無線)を有してもよい。接着パッチアレイは、1つ以上の接着パッチアレイから横隔神経興奮のための電界を生成する1つ又は2つ又は複数の極性電極1406アレイ(モノポーラ、バイポーラ、トリポーラ、又はマルチポーラ)を収容してもよい。
【0142】
接着パッチの遠位部は、標的横隔神経の位置の近位側(例えば、頚部の左側又は頚部の右側)の表皮に取り付けられてもよい。頚部の左側の表皮層に対して接着パッチアレイを固定すると、左横隔神経の興奮が可能になり得る。頚部の右側の表皮層に対して接着パッチアレイを固定すると、右横隔神経の興奮が可能になり得る。パッチは、エネルギー蓄積要素(バッテリー)、電子機器、ロジック、回路、通信デバイス、センサ、メモリ、及び/又はチップを収容してもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、エネルギーエミッタ/源(例えば、リード又は電極)は、刺激リード及び/又はカニューレ/針/カテーテルの外部の周囲270°以下に延びる。エネルギーエミッタ/源(例えばリード又は電極)は、刺激リード及び/又はカニューレ/針/カテーテルの外部の周囲の1°~270°の範囲内のいずれかに延びてもよい。1つ以上の実施形態では、エネルギーエミッタ/源(例えばリード又は電極)は、刺激リード及び/又はカニューレ/針/カテーテルの表面の周囲の最大360°に延び得る。この構造により、より集束された又は局所的な刺激を電極が有することが可能になり得る。
【0144】
電極は、リードの外部の周囲の、例えば30°~120°、又は60°~90°など、リードの外部の周囲の180°以下に延びてもよい。例えば、別の神経又は解剖学的構造(例えば、横隔神経など)を刺激することが望ましい一方で、特定の神経又は解剖学的構造(例えば、腕神経叢)の刺激を回避することが望ましい場合がある。他の実施形態では、例えば、自然な横隔膜呼吸収縮を提供するために1つの刺激パラメータセットによって横隔神経などの1つの神経を刺激する一方で、脳に抗炎症シグナル伝達を提供するために及び/又は敗血症を処置するために、別の異なる方向のエミッタを使用して例えば迷走神経などの第2の神経を刺激することが望ましい場合がある。
【0145】
更に、可撓性リード/カニューレ/シースが方向性エミッタ、例えば電極を含む場合、電極は、リードに沿った所与の長手方向位置及び刺激電極の表面から軸方向距離にて、可撓性リードの長手方向軸線に対する周方向の角度位置に応じてエネルギー強度が変化する電界を生成し得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、標的神経の刺激を最適化するために、及び非標的神経又は解剖学的構造の刺激を回避する/最小限にするために、3つ以上のエミッタ/電極(例えば、源及びシンク)を組み合わせて特別仕様の刺激場形状を作成してもよい。
【0147】
エネルギー源(エミッタ/電極)がリード/カニューレ/シースの外部の周囲の360°未満に延びる場合、リード/シースに沿った各エミッタの長さは、典型的には、例えば0.5~6ミリメートルなど、少なくとも0.5ミリメートルであり得る。電極がシースの周囲の360°に延びる場合、シースに沿った電極の長さは、典型的には、例えば0.5~6ミリメートル又は1~4ミリメートルなど、6ミリメートル未満であり得る。様々な大きさ及び/又は表面積を有するエミッタを含むデバイス及びシステムが本明細書では企図される。例えば、より長い電流路を作成するために、小さな電極から離れたいくつかの大きな電極を有することが望ましい場合がある。一例では、大きな電極は、電流シンクとしての役割を果たしてもよい。
【0148】
本明細書に記載される刺激リードには、薄いフレキシブル誘電体基板に接合された導体のアレイを含み得るフレキシブル回路を用いてもよい。誘電体基板は、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド、及び/又はポリフッ化ビニリデンを含んでもよい。導体は、グラフェン、金、銀、白金、白金-イリジウム合金、酸化イリジウム、窒化チタン、タングステン、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。導体は、誘電体基板上に堆積させ、その後、化学的又はレーザアブレーション手段によってエッチングし、電極パッドコンタクトとパッドをコネクタに接続するトレースとからなる電気回路を形成してもよい。(例えば、スパッタリング又は電気めっきにより)基板上に追加の材料を堆積させ、離散電極及び/又は絶縁表面を作成することができる。いくつかの実施形態では、局所スマート回路を提供するために、基板に例えばはんだ付けによって集積回路を取り付けてもよい。フレキシブル回路は、医療用途における高い実用性を可能にする、薄型及び可撓性という利点を有し得る。導電性材料と絶縁材料のいくつかの層を有するフレキシブル回路の複数層は、より複雑な電気ネットワークの3次元構造を可能にし得る。
【0149】
刺激電極は、リードに沿った任意の位置に配置されてもよく、様々な形状、表面積、及び間隔を有してもよい。刺激リードは、少なくとも1つの電極を含んでもよく、2つ、3つ、4つ、5つ、又はこれより多い電極を含んでもよい。電極は、約1mm~約2mm、約2mm~約4mm、約4mm~約8mm、又は8mm以上間隔が開けられてもよい。いくつかの場合において、単一の電極(又は電極対)が標的組織を刺激する。いくつかの実施形態では、2つ以上の電極を使用して組織を刺激してもよい。いくつかの状況では、例えば、標的位置の最も近くに配置される1つ以上の電極などの電極のサブセットが刺激エネルギーを提供してもよい。このような実施形態では、非標的組織、神経などを刺激する可能性は低下し得る。
【0150】
標的組織又は神経に近接する電極が選択される場合、比較的低レベルのエネルギーが使用されてもよい。リードのピーク電荷出力は、約300nC~約6000nCの範囲であり得る。電極の近接特性は、活動電位を生成するために必要なエネルギーの総量の低下を助け、それにより、バッテリー電力に応じた実施形態の電力消費を減少させることができる。
【0151】
デバイスは、神経の近傍に配置される電極によって神経に送達されるエネルギー刺激の2つ以上のチャネルと、神経に送達される経血管刺激の2つのチャネルとを含んでもよい。神経は、リード上に配置された1つより多いエネルギー源及び/又は複数のリード上に配置された1つより多いエネルギー源により部分的に若しくは完全に動員され得る。1つより多いエネルギー源による部分的な神経動員は、筋疲労を経時的に低減するのに有用であり得る。これは、複数のエネルギー源を通してエネルギー送達を交番することにより実現され得る。代替的に、2つ以上の異なるリードを異なる位置に配置することができるが、両方とも標的神経の近傍にある。様々なリード上のエネルギーエミッタ間で刺激を交番することは、また、筋疲労の最小化並びに望ましくない非標的神経刺激の回避のオプションを提供し得る。
【0152】
図15は、システムの様々な構成要素のブロック図を示す。リードは、任意の数のエネルギー源又はセンサを有してもよい。
システムは、本明細書に記載される制御ユニットのいずれかの一部であり得るコントローラを含んでもよい。システムの各構成要素は、コントローラに動作的に結合されてもよく、コントローラは、神経刺激中に各エネルギー源/センサの動作を管理し、様々なセンサ及び電極による情報の収集を制御し得る。
【0153】
本明細書に記載される様々なモジュールは、コンピューティングシステムの一部であってもよいことは理解すべきであり、単なる説明の目的で図15に別々に描かれている。モジュールが物理的に別々である必要はない。
【0154】
本明細書に記載されるシステムは、例えば、外部呼吸補助システム(即ち、ERS、「圧支持」)、呼吸筋刺激部(例えば、刺激部、刺激リード、エネルギー源など)、センサ(例えば、インピーダンスセンサ、圧力センサ、モーションセンサ、フローセンサ、超音波センサ、電気センサ、熱センサ、化学センサ、光センサなど)、制御ユニット、プロセッサ、コントローラ(例えば、リモートコントローラ)、クラウドストレージ、周辺インターフェイスデバイス、リモートデータストレージ、データ解析部、データフォーマット部、データ集約部、及び/又はコンピュータを含み得る。構成要素及び電子デバイスは、1つ以上のプロセッサ(例えば、アプリケーションプロセッサ(AP))、通信モジュール、加入者識別モジュール(SIM)、メモリモジュール、センサモジュール、入力デバイス、ディスプレイ、インターフェイス、オーディオモジュール、カメラモジュール、電力管理モジュール、バッテリー、インジケータ、警報、視覚インジケータ、光インジケータ、及び/又はモータを含み得る。
【0155】
プロセッサは、1つ以上の汎用プロセッサ(例えば、アーム(ARM)系プロセッサ)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等などの任意の適切なタイプの処理回路を含んでもよい。例えば、プロセッサは、中央処理ユニット(CPU)、アプリケーションプロセッサ(AP)、及び通信プロセッサ(CP)のうちの1つ以上を含んでもよい。プロセッサは、例えば、システム又は関連電子デバイスのうちの少なくとも1つの他の構成要素の制御及び/又は通信に関する計算又はデータ処理を実行してもよい。プロセッサは、オペレーティングシステム又はアプリケーションプログラムを駆動し、様々なデータの処理及び計算を実施することによって、プロセッサに接続された複数のハードウェア又はソフトウェア構成要素を制御してもよい。プロセッサは、例えば、システムオンチップ(SoC)として具現化され得る。1つ以上の実施形態では、プロセッサは、グラフィック処理ユニット(GPU)及び/又は画像信号プロセッサを更に含んでもよい。プロセッサは、他の構成要素の少なくとも1つ(例えば、不揮発性メモリ)から受け取ったコマンド又はデータを揮発性メモリにロードすることができ、ロードされたコマンド又はデータを処理することができ、様々なデータを不揮発性メモリに記憶することができる。
【0156】
制御ユニット及び/又は1つ以上のその他のプロセッサは、通信モジュールとしての役割を果たしてもよく、且つシステムの他の構成要素に対する通信インターフェイスとしての役割を果たしてもよい。機械的人工呼吸器などの外部呼吸補助デバイスもまた、通信モジュール及び/又はプロセッサとして機能し得る。通信モジュールは、例えば、セルラーモジュール、Wi-Fiモジュール、BTモジュール、GNSSモジュール(例えば、GPSモジュール、グロナス(Glonass)モジュール、ベイドゥ(Beidou)モジュール、又はガリレオ(Galileo)モジュールなど)、EEPROMモジュール、及びRFIDモジュール、NFCモジュール、及び/又は高周波(RF)モジュールを含んでもよい。
【0157】
システムは、1つ以上のデータストレージ又はメモリ構成要素を含んでもよく、これらは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ネットワークアクセス可能ストレージ(NAS)、クラウドストレージ、及び/又はソリッドステートドライブ(SSD)などの任意の適切なタイプの揮発性又は不揮発性メモリを含み得る。例えば、メモリは、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリを含んでもよい。メモリは、例えば、システム又はシステムを含む電子デバイスの少なくとも1つの他の構成要素に関連するコマンド又はデータを記憶してもよい。本開示の一実施形態によれば、メモリは、コンピュータのようなコントローラ(例えば、制御ユニット)内のソフトウェア及び/又はプログラムを記憶することができる。プログラムは、例えば、カーネル、ミドルウェア、アプリケーションプログラミングインターフェイス(API)、及び/又はアプリケーションプログラム(又は「アプリケーション」)を含んでもよい。カーネル、ミドルウェア、及びAPIのうちの少なくともいくつかは、オペレーティングシステム(OS)と呼ばれ得る。
【0158】
システムは、本明細書に記載されるように1つ以上のセンサを含んでもよい。例えば、センサは、被験者又は環境の物理的状態を測定する及び/又は接続された電子デバイスの動作状態を検出する。センサは、測定又は検出された情報を電気信号に変換することができる。センサは、例えば、インピーダンス、呼吸、気道内圧、ガス分布、空気流、CO、O、体温、血糖、心拍数、血圧、色、音、及び/又は運動を測定/監視してもよい。システムはまた、電子ノイズセンサ、筋電図(EMG:electromyography)センサ、脳波(EEG:electroencephalogram)センサ、心電図(ECG:electrocardiogram)センサ、赤外線(IR:infrared)センサ、虹彩スキャンセンサ、指スキャンセンサ、及び/又は本明細書に開示される若しくは当該技術分野で周知のその他のセンサを含んでもよい。センサモジュールは、その中に含まれる1つ以上のセンサを制御するための制御回路を更に含んでもよい。更に、センサは、例えば、ジェスチャセンサ、ジャイロセンサ、大気圧センサ(気圧計)、磁気センサ、加速度センサ、グリップセンサ、近接センサ、カラーセンサ(例えば、赤色、緑色、及び青色(RGB)センサ)、生体センサ(医療センサ)、温度/湿度センサ、照度センサ、及び/又は紫外線(UV)センサのうちの少なくとも1つを含んでもよい。個々の電子デバイスのいずれかは、プロセッサの一部として又はプロセッサと別々に、1つ以上のセンサモジュールを制御するように構成されているプロセッサを更に含んでもよく、プロセッサがスリープ状態にある間にセンサモジュールを制御してもよい。
【0159】
システムは、例えば、タッチパネル/画面、(デジタル)ペンセンサ、リモートコントロール、キー、及び/又はその他の入力デバイスなどの1つ以上の入力デバイスを含んでもよい。タッチパネルは、例えば、静電容量式、抵抗式、赤外線式、及び超音波式のうちの少なくとも1つを使用してもよい。タッチパネルは、制御回路を更に含んでもよい。タッチパネル又は入力デバイスのその他の要素は、触覚層を更に含んでもよく、ユーザに触覚応答を提供し得る。
【0160】
システムは、1つ以上の入出力インターフェイスを含む。1つ以上の入出力インターフェイスは、システム又はシステムを含む個々のデバイスの他の要素にユーザ又は別の外部デバイスから入力されたコマンド又はデータを伝達することができるインターフェイスとして機能する。更に、入出力インターフェイスは、システム又は電子デバイスの他の要素から受け取ったコマンド又はデータをユーザ(例えば、医療施術者又は患者など)又は別の外部デバイスに出力することができる。
【0161】
本開示の実施形態のシステムは、1つ以上のディスプレイを含んでもよい。ディスプレイの例としては、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、微小電子機械システム(MEMS)ディスプレイ、及び電子ペーパディスプレイが挙げられ得る。1つ以上のディスプレイは、例えば、様々なタイプのコンテンツ(例えば、テキスト、画像、ビデオ、アイコン、又は記号)をユーザに通信し得る。ディスプレイは、タッチスクリーンを含んでもよく、例えば、電子ペン若しくはユーザの体の一部を使用したタッチ、ジェスチャ、近接、又はホバリング入力を受信することができる。ディスプレイは、パネル、ホログラムデバイス、又はプロジェクタを含んでもよい。パネルは、例えば、可撓性、透明、又は着用可能であるように実装され得る。パネルは、タッチパネルを有する単一モジュールとして具現化されてもよい。
【0162】
システムは、システム又はシステム内の電子デバイスの特定の状態(例えば、ブーティング状態、メッセージ状態、充電状態、治療ステージ、患者状態、警告など)を表示し得る1つ以上のインジケータ/警報/通知モジュールを含んでもよい。モータ又は他の適切なデバイスは、電気信号を機械振動に変換してもよく、医療施術者又は患者にイベント又は状況を通知するために振動、触覚効果などを発生させることができる。図示しないが、各電子デバイス/構成要素は、処理デバイス(例えば、GPU)を含んでもよい。
【0163】
エネルギー源は、コントローラに通信的に結合され得る切換電子機器に電子的に結合されてもよい。切換電子機器は、特定用途向け集積回路、又はコントローラが刺激アレイのエネルギー源を独立制御することを可能にする他のタイプの回路を含んでもよい。ハブもまた、切換電子機器に接続されてもよく、エネルギー源又は電極又はセンサとして使用され得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、電極は、標的(例えば、神経及び/又は筋肉)を電気的に刺激する、及び生理学的情報を収集する、の両方のために使用されてもよい。神経又は筋肉刺激用に使用される場合、電極の第1の組み合わせ(例えば、1つ、2つ、3つ、又はこれより多い電極)が、第1の神経(例えば、右横隔神経)を刺激するために第1の刺激モジュールチャネルに電気的に接続されてもよく、別のリード上の電極の第2の組み合わせ(例えば、1つ、2つ、3つ、又はこれより多い電極)が、第2の神経(例えば、左横隔神経)を刺激するために第2の刺激モジュールチャネルに電気的に接続されてもよい。電気信号は、第1及び第2の刺激モジュールチャネルから電極の組み合わせに送られ、電極に神経を刺激させることができる。他の例では、2つを超える電極の組み合わせを使用して1つ以上の標的神経を刺激してもよく、システムは、2つを超える刺激モジュールチャネルを含んでもよい。いくつかの電極は、また、生理学的データ(例えば、インピーダンスなど)の収集に特化していてもよい。本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、患者に植え込まれ得る、患者の外側に位置し得る、又はこれら両方の組み合わせのエネルギー源及びセンサを使用してもよい。
【0165】
電極は、更に、本開示の全体を通して記載されるように、神経活動、ECG、又は電気インピーダンス、呼吸等などの患者の生理学的情報を検知するように構成されてもよい。検知のために使用される場合、電極の1つ以上は、信号取得モジュールに電子的に結合され得る。信号取得モジュールは、電極から信号を受信し得る。
【0166】
切換電子機器は、第1の刺激モジュールチャネル、第2の刺激モジュールチャネル、又は信号取得モジュールに電極を選択的に結合してもよい。一例では、任意の電極が神経刺激のために使用され得、任意の電極が本明細書に記載される検知機能のために使用され得る。換言すると、各電極は、神経を刺激するように構成されてもよく、各電極は、生理学的情報を検知するように構成されてもよい。
【0167】
信号取得モジュールは、更に、患者から生理学的情報を収集するように構成されている1つ以上のセンサに結合されてもよい。例えば、システムは、血液ガスセンサ又は圧力センサのうちの1つ以上を含んでもよい。これらのセンサは、刺激リードの内腔内、内腔と流体連通する患者の外側、カテーテルの外部表面上、又は任意の他の適切な位置に位置してもよい。一例では、血液ガスセンサは内腔に収容されてもよく、又は流体接続されてもよく、その一方で、圧力センサは内腔に収容されてもよく、又は流体接続されてもよい。血液ガスセンサは、患者の血液中のO又はCOの量を測定し得る。圧力センサは、患者の中心静脈圧(CVP)を測定し得る。
【0168】
血液ガスセンサからの信号は、処理及びフィルタリングして血液ガスレベルを決定するために血液ガス信号処理/フィルタリングモジュールに伝送され得る。電極からの信号は、それらが検知のために使用される場合、適宜、神経信号処理/フィルタリングモジュール、ECG信号処理/フィルタリングモジュール、又はインピーダンス信号処理/フィルタリングモジュールに送信され得る。電極又はその他のセンサからの信号は、適切な処理/フィルタリングモジュールに信号が送信される前に増幅するために、必要であれば、増幅モジュールに送信され得る。
【0169】
一実施形態では、センサは、患者の治療の送達の管理を補助するために使用され得る、神経信号からの情報を検出し得る。例えば、呼吸筋(例えば、横隔膜、肋間筋など)の電気活動並びに肺伸展受容器からの迷走神経信号を使用して、外部呼吸補助システム及び/又は呼吸筋刺激システムの送達に関連するパラメータを最適化することができる。
【0170】
中レベルから高レベルの意識を持つ患者に関しては、横隔膜の電気活動は、患者の神経呼吸駆動の正確な反射を提供し得る。この神経信号に加えて、吸気の量を制限し、それにより過膨張(ヘーリングブロイエル拡張反射)を防止するとともに呼気中の横隔膜の収縮を防止する(ヘーリングブロイエル収縮反射)、肺伸展を検知する迷走神経媒介反射が存在する。
【0171】
外部呼吸補助によって提供される陽圧、刺激された呼吸筋系によって提供される陰圧、又はこれらの両方は、ヘーリングブロイエル反射神経信号に応答するように調整及び連係され得る。例えば、電気的に刺激された呼吸筋によって提供される呼吸仕事量(例えば、陰圧呼吸)の増加は、人工呼吸器が必要とする陽圧の低減を可能にし得る。陽圧の低減は、気圧外傷又は肺伸展による傷害の可能性を低下させることができる。
【0172】
本明細書に記載されるシステム及びデバイスは、所定のレベルまで患者の血液を処理し、血液ガスを調整する、血液酸素化及び/又はCO除去デバイスを含んでもよい。本明細書に記載されるシステムはまた、1回換気量、呼吸圧、呼吸数、呼吸仕事量、CO飽和度、酸素飽和度、体温、血圧、心拍数、血中酸素濃度、及び/又は脳の活動のうちの少なくとも1つに関する患者の生理学的データを取得するように構成されている、制御ユニットに機能的に接続された少なくとも1つの生理学的センサを含んでもよい。生理学的データは、呼吸周期中の患者の肺内におけるガス/空気の分布を管理するために使用されてもよい。
【0173】
Aモードで動作するシステムは、呼吸筋(例えば、横隔膜、肋間筋など)を自律的に刺激するための閉ループ操作を含んでもよい。このモードは、ペーシングが必要であることを示すことを助ける任意の患者応答信号(フィードバック)を利用することができる。これらの信号としては、酸素飽和度、呼気終末CO(EtCO)、空気流、インピーダンス、心拍数、運動検知加速度計信号、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。Aモードでは、ペーシングは持続的に行ってもよい。アルゴリズムを使用して、生理学的応答信号を検知及び/又は修正し、所望の応答を引き出すために、刺激パターン、周波数、呼吸数、強度、タイプ、及び/又は形状プロファイルの変更が必要かどうかを決定してもよい。
【0174】
図16は、Aモードで動作するシステムの例示的なプロセス1600のフローチャートを示す。刺激がAモードで開始されると、呼吸筋が刺激され、所望の生理学的応答を生成することができる(工程1601)。センサを使用して、所望の生理学的応答が発生したかどうかを監視してもよい。刺激中、システムは、1つ以上のインピーダンス測定値を監視することができる(工程1602)及び/又は患者の生理学的応答を監視することができる(工程1603)。その後、システムは、1つ以上のインピーダンス測定値及び/又は患者の生理学的応答が所定の範囲内であるかどうかを決定することができる(工程1610)。所定の範囲は、ユーザによって、システムにプログラムされた選択された設定によってプログラムされても、及び/又は1つ以上の測定特性、性質、若しくはパラメータに基づいて決定されてもよい。1つ以上のインピーダンス測定値及び/又は患者の生理学的応答が所定の範囲内であるとシステムが決定した場合、システムは、呼吸筋を刺激し続け、所望の生理学的応答を生成することができる(工程1601)。1つ以上のインピーダンス測定値及び/又は患者の生理学的応答が所定の範囲内にないとシステムが決定した場合、呼吸筋を刺激し続けて所望の生理学的応答を生成する(工程1601)前に、システムは、プログラムされた刺激パラメータを変更することができる(工程1620)及び/又は外部呼吸補助パラメータを変更することができる(工程1630)。
【0175】
いくつかの実施形態では、複数電極リードは、横隔神経の所定の位置に固定されてもよい。コントローラ/刺激/システムを使用して、各半横隔膜に対する最良の電極セットを決定してもよい。最良の電極セットの決定は、最良の電極の組み合わせを見つけることを含んでもよく、これは、複数電極リード上の電極の異なる組み合わせを介して信号を送信することにより完了することができる。この選択は、センサからのフィードバックを使用して自動化され得る及び/又は医療関係者若しくはその他のユーザからのフィードバックを伴う。電極セットが選択されると、刺激部は、電流などの信号の態様を変化させ、応答を決定することにより、適切な信号を選択するプロセスを経ることができる。このプロセスが自動化される場合、システムは、一連の信号を送信することができ、センサからの応答により、どの信号が標的呼吸筋(例えば、横隔膜など)からの最大応答をトリガーしたかを決定する。これはまた、筋肉/神経からの応答の決定に医療関係者又はその他のユーザを関与させることにより手動で行ってもよい。
【0176】
上述のように、組織インピーダンス検知(TIS)を使用して、断層画像を形成しても及び/又は組織状態又は組成の解析を行ってもよい。システムは、肺ガス量、圧力、並びに患者の肺の左区と右区との間及び前(上)区と後(下)区との間の分布を調整するように構成されてもよい。左前(LA)、右前(RA)、左後(LP)、右後(RP)を含む区域による肺ガス分布のベースライン測定が収集され得る。1つのこのような例示的な分布のグラフィック表示が図17Aに示される。図17Aに示される特定の20%-30%-20%-30%の分布は1つの例であり、その他の分布も考えられる。表示は、システムの出力デバイスを介して示されてもよく、又はその他の手法でユーザに伝達されてもよい。測定された分布又は生成された表示に基づいて、本明細書に記載されるように肺ガスの分布を調整するために、1つ以上の刺激パラメータ及び/又は外部呼吸補助パラメータを変化させることができる。各2つの肺の2つの区域を示す図17Aの例は1つの例である。その他の構成は、図17Bに示されるように、2つの肺間で肺ガス分布を計算及び表示することを含む。
【0177】
加えて又は代替的に、各呼吸周期中に移動する空気の量(例えば、1回換気量)、最大気道内圧、プラトー圧、及び/又は圧力と時間の積が測定されてもよい。本明細書に記載されるように、その他の呼吸周期の特性並びにいくつかの実施形態では外部呼吸補助パラメータも測定され得る。呼吸周期の特性に関するデータは、肺ガス分布を平衡させるために刺激エネルギーを調整することを支援し得る。
【0178】
図18Aを参照すると、例示的な被験者は、肺の上区により高レベルの肺ガスを有し、ほとんどの肺ガスは右上側に移動していた。1回換気量は、望ましいものよりも低く、気道内圧は、高い側との境目であった。刺激アレイは、インピーダンス及び収集されたその他のセンサデータに基づいて活性化された。図18Bを参照すると、呼吸及び刺激パラメータが調整された後、1回換気量は目に見えて増加し、最大気道内圧はより安全な範囲に低下した。上肺区域と低肺区域との間の空気のより良好なバランスが得られた。呼吸筋刺激部の更なる調整により、図18Cに示されるより良好な左-右肺ガス平衡が得られた。肺の1/4区内の空気の分布は、呼吸筋又は呼吸筋を制御する神経にエネルギーを送達することによって変更することができる。左肺と右肺との間の空気の分布は、左側呼吸筋及び又は右側呼吸筋へのエネルギー送達を変更することによって変えることができる。前葉又は後葉間の空気の分布は、異なる呼吸筋線維を制御する別のエネルギー源(電極)をトリガーすることによって神経線維の異なる神経軸索を刺激することにより変えることができる。前葉又は後葉間の空気の分布はまた、異なる肋間筋又は腹筋を異なる強度で刺激することにより達成され得る。肺内の空気の総量は、呼吸筋及び/又は呼吸筋を制御する神経に送達されるエネルギー(例えば、総電荷)を変更することにより調整され得る。外部呼吸補助デバイスの仕事と呼吸筋によって行われる仕事とを平衡させることにより、肺ガス及び肺気量は、傷害を低減するように、患者の快適性を向上させるように、呼吸筋を修復するように、強化するように、又は運動させるようにより良好に分配され得る。センサを使用して、呼吸筋が疲労し始めたかどうかを決定又は検知してもよく、これらの状況において、呼吸筋の仕事の寄与は低下する場合があり、外部呼吸補助デバイスの仕事の寄与は増加する場合がある。
【0179】
図19を参照すると、呼吸筋及び/又は呼吸筋を制御する神経へのエネルギーの送達が、身体の正常な粘膜毛様体作用、咳の生成、或いは患者の気道からの流体の移動を支援することにつながり得る複数の非限定的な例示的な状況が記載されている。本明細書に記載される波形は、咳、及びより多くの生理学的陰圧換気による個人の肺内における流体の自発運動、いくつかの場合では、肺の流体(分泌物、粘液、粘液栓など)の移動促進を誘発し得る。呼吸筋は、図19(A1)に示されるような短時間(一実施形態では1~3秒)にわたる呼吸筋の急な収縮及び徐々の解放につながるエネルギーを送達することによって咳のような応答を発生させるエネルギー電荷包絡線によって刺激される。咳応答はまた、図19(A2)に示されるように短時間(一実施形態では1~3秒)にわたって呼吸筋を徐々に収縮させ、呼吸筋収縮を突如解放すること、又は図19(A3)に示されるように呼吸筋を突如収縮させ、それを短時間(一実施形態では1~3秒)にわたって維持し、筋肉を突如緩和させることによって発生させることができる。図19(A4)~図19(A6)に示されるものなどのいくつかの実施形態では、一連の咳応答の間に小さな時間ギャップ(例えば、1~10秒)を有する一連の咳応答が誘発され得る。
【0180】
呼吸筋は、徐々に収縮する又は突如収縮する場合がある。筋肉は、短時間の融合収縮によって収縮を維持する又は収縮するとすぐに緩和する場合がある。筋肉は、徐々に又は突如緩和する場合がある。電荷は、振幅(例えば、電流又は電圧)を変調することによって、パルス幅を変調することによって、及び/又はパルスの周波数を変調することによって、刺激列(複数パルス)内で変調する場合がある。
【0181】
いくつかの実施形態では、一連のエネルギーパルスが呼吸筋の吃逆(単収縮、非融合収縮)を発生させる場合がある。一連のエネルギーパルスは、肺内の流体の移動を補助する振動周波数(例えば、1~10Hz)にて送達され得る。一連のエネルギーパルスは、1日に複数(例えば、1~24)回、短時間(例えば、1~10分)にわたって送達され得る。
【0182】
医療施術者、その他のユーザ、又はコンピュータコントローラ(例えば、自動モードにおいて)は、所望の効果(例えば、呼吸分泌物、粘液、及び/又は体液の移動)を達成するために刺激エネルギー、周波数、振幅、及び/又はその他のパラメータを変調することができる。インピーダンスセンサ、圧力センサ、容量センサ、及びエアフローセンサなどの本明細書に記載されるセンサを使用して、分泌物遊離治療の経過を評価することができる。いくつかの実施形態では、RMSは、所望の効果を達成するために、外部陽圧治療又は外部胴部振動治療と組み合わせてもよい。連係した筋収縮、増幅された振動、及び/又は増加さした吸気/呼気圧は、個々に又は集合的に、呼吸分泌物の緩和及び除去につながり得る。
【0183】
いくつかの場合において、呼吸分泌物除去を支援するために吸引デバイスが使用され得る。吸引デバイスを含む本明細書に記載されるデバイス及びシステムが、刺激の送達中及び/又は送達後に取り除かれた物質を除去するために、患者の肺に挿入され得る。
【0184】
粘液及びその他の流体を含む呼吸分泌物は、本明細書に記載される方法及びシステムを使用して患者から容易に露出、除去、破壊、放出、及び搬出され得る。呼吸分泌物の除去は、1回換気量の増加、肺区域のより良好なガス分布、リハビリテーション時間の短縮、及びその他の治療的利点と関連し得る。
【0185】
電気刺激の送達は、複数の手法でトリガーされてもよい。1つ以上の実施形態では、医療関係者又はその他のユーザは、手持式コントローラを動作する。コントローラは、オペレータが刺激システムと柔軟に接続することを可能にすることができ、おそらくはユーザが被験者により接近することを可能にする。このようなコントローラは、また、被験者が刺激の送達を制御することを可能にし得る。このコントローラは、固有の制御を有し得る又は刺激システム内の別のインターフェイスで利用可能な制御の延長であり得る。
【0186】
手動でトリガーされる電気刺激に関しては、リモートコントローラは、ボタンを押すこと又はオペレータによる別の形態の手動トリガーによって刺激をトリガーしてもよい。閉ループシステムによってトリガーされる電気刺激に関しては、リモートコントローラは、閉ループプロセスを開始するために、又はこのプロセスを中断するために使用されてもよい。
【0187】
いくつかの実施形態では、電気刺激送達をトリガーするための閉ループ制御システムが用いられてもよい。このような閉ループシステムは、刺激送達プロセスを自動化し、オペレータに起因するエラーを取り除く。1つ以上のセンサを使用して、刺激送達をいつトリガーするかを決定することができる。患者の呼吸周期の終末呼気相又は呼吸周期の別の相に刺激をトリガーする空気流が測定され得る。患者の呼吸周期の終末呼気相又は呼吸周期の別の相に刺激をトリガーするために、呼吸回路内の圧力センサを使用して、患者が呼吸周期のどの相にあるかを決定してもよい。加速度計、ジャイロスコープ、又はその他のモーションセンサを使用して、患者の呼吸を検出し、患者の呼吸周期の適切な相に刺激をトリガーすることができる。COセンサ、Oセンサ、及び血液ガスセンサを使用して、患者の呼吸を検出し、患者の呼吸周期の適切な相に刺激をトリガーしてもよい。患者の呼吸周期の終末呼気相又はその他の呼吸周期相に刺激をトリガーするために、中心静脈圧を使用して、患者の現在の呼吸周期相を決定してもよい。
【0188】
患者の呼吸周期の終末呼気相又は別の呼吸周期相に刺激をトリガーするために、インピーダンスセンサを使用して、肺機能を測定し、患者が呼吸周期のどの相にあるかを決定してもよい。電極配置中に横隔神経の位置を特定するために、電極を使用して、横隔神経に対する信号を測定してもよい。
【0189】
閉ループシステムにおいては、センサのみならず、コントロールも必要である。複数のコントロールを使用して、システムの反応が必要な時を決定することができる。(パルス列内の及び/又はパルス列間の)刺激チャージ又は刺激周波数のコントロールとして伸展受容器を使用してもよい。脳波、ECG、覚醒等を測定するためのデバイスなどの認知機能センサを使用して、脳機能を監視してもよい。(パルス列内及び/又はパルス列間の)刺激チャージ又は周波数のコントロールとして、呼吸仕事量が使用され得る。(パルス列内及び/又はパルス列間の)刺激持続時間、刺激強度、又は刺激周波数のコントロールとして、気道又は中心静脈圧が使用されてもよい。(パルス列内及び/又はパルス列間の)刺激持続時間、刺激強度、又は刺激周波数のコントロールとして、量が使用されてもよい。(パルス列内及び/又はパルス列間の)刺激持続時間、刺激強度、刺激周波数、又はレップ(rep)送達の周波数のコントロールとして、血液ガスが使用されてもよい。
【0190】
吸息筋及び呼息筋の両方は刺激され得、各刺激は、所望の呼吸結果をもたらすように連係する。本明細書に記載されるように、患者の肺内における分泌物の移動を助けるための咳応答を誘発するために、所定の刺激周波数におけるより高い刺激レベルが使用されてもよい。
【0191】
筋肉の数回の収縮を開始することによって横隔膜などの呼吸筋を運動させてもよい(レップ)。レップは、患者の関与、電気刺激、その他の手段、又はこれらの組み合わせによって開始され得る。各レップは、収縮強度を有し得、レップによって生成される収縮の強度に基づき、レップは、弱から強までの範囲であり得る。連続して実施される所望のレップ数は、セットと呼ばれる。セット間には待機期間(静止)もあり得る。運動レジームにおけるレップ、セット、及び静止の決定は、用量であるとみなされる。異なる患者パラメータ、条件、及び/又は状況に対して異なる用量が必要である。本明細書に開示される用量の例は例示であり、横隔膜を運動させるために用量を規定する必要性に対処することができる。
【0192】
手術又は集中治療環境時において、外部呼吸補助を利用してもよい。外部呼吸補助下において、横隔膜の状態及び強度は急激に低下する。横隔神経刺激又は横隔膜ペーシングを使用して、前記低下を防止してもよい。横隔膜を1日に約60~約120回刺激すると、呼吸筋の強度を向上させることができる。理論によって制限されるものではないが、このような刺激は、既に強い横隔膜の強度の維持を支援することができる。
【0193】
呼吸筋をより頻繁に(例えば、数分間/毎時、数秒ごとに約5分~約10分間/毎時、数秒ごとに約10分~約20分間/毎時、又は数秒ごとに約20分~約50分間/毎時)刺激することも有益であり得る。隔呼吸又は各呼吸と同じ位の頻度で1つ以上の呼吸筋を刺激すると、横隔膜筋力を向上させる及び/又は維持することができるとともに、陽圧呼吸による肺損傷を低減する。
【0194】
手術中、約15分ごと、20分ごと、30分ごと、又は1時間ごと(例えば、断続的に)に約5個の刺激列~約60個の刺激列を用いて横隔膜を刺激すると、横隔膜の強度を保持することができるとともに、また、無気肺及びその他の肺損傷の低減を補助することができる。電気刺激を使用する場合、レップは、オペレータによって手動で、機械的人工呼吸器による直接トリガーによって、刺激システムのセンサによるフィードバックによって、コントローラからの指示によって、又はこれらの組み合わせでトリガーされてもよい。いくつかの実施形態では、筋肉の過剰使用を軽減するために筋疲労が測定され得る。
【0195】
様々な治療及び運動用量及びレジメン(regimen)は、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許出願公開第2019/0175908号明細書に記載されている。
【0196】
横隔膜の運動は、横隔膜の劣化を防止することができ、患者が呼吸補助を受けている任意の状況において使用され得る。呼吸補助としては、PPMV、ECMO、ECCO2R、CPAP、及びBiPAPが挙げられ得るがこれらに限定されない。横隔膜の劣化を防止するために、患者に呼吸補助が行われるとすぐに横隔膜の運動用量が理想的には適用される。横隔膜を時々(例えば、1回の呼吸ごとから3回の呼吸ごと、毎分ごとから10分ごと、又はより低い頻度、例えば、3~8時間ごとに約60回の収縮)刺激すると、不使用による横隔膜の劣化を阻止することができる。電気刺激を使用する場合、刺激列は、オペレータによって手動で、機械的人工呼吸器による直接トリガーによって、刺激システムのセンサからのフィードバックによって、又はこれらの組み合わせでトリガーされてもよい。
【0197】
横隔膜の運動により、劣化後の横隔膜を回復させることができ、患者が呼吸補助を受ける任意の状況において使用され得る。いくつかの実施形態では、横隔膜は既に劣化しており、刺激は、横隔膜を強化及び修復するために使用される。このような刺激は、セットで送達され得、複数の刺激列(例えば、約10から約30個の刺激列)がセットで送達される。複数のセットは、例えば、1セッション当たり約2~約8セットなどのセッションで送達され得、セット間に約1分~約10分の静止期間がある。24時間で複数のセッション(例えば、2~4)が送達され得る。横隔膜を回復させるために本明細書に記載されるその他の用量も使用してよい。電気刺激を使用する場合、レップは、オペレータによって手動で、機械的人工呼吸器による直接トリガーによって、刺激システムのセンサからのフィードバックによって、又はこれらの組み合わせでトリガーされてもよい。
【実施例
【0198】
以下の実施例は、本開示を本質的に限定することなく説明することを意図するものである。本開示が前述の記載及び以下の実施例と整合する追加的な実施形態を包含することは理解される。
【0199】
実施例1
呼吸筋刺激システムを用いた試験のために11名の被験者を選択した。選択した各被験者は、機械的人工呼吸器による陽圧外部呼吸補助を少なくとも7日間受けていた成人である。試験の被験者群の概要は、以下、表1に示される。
【0200】
【表1】
11名の被験者のうち、9名を呼吸筋刺激デバイスを用いて処置した。少なくとも1つの電極アレイが左横隔神経に近接し、少なくとも1つの電極アレイが右横隔神経に近接するように、少なくとも2つの電極アレイに接続された刺激リードを含む9.5フレンチ(直径約3.2mm)のカテーテルを各被験者の左鎖骨下静脈に挿入した。
【0201】
各被験者は、毎日、刺激リードを介した治療的呼吸筋刺激の3回のセッションを受ける予定とした。各セッションには4セットが含まれ、セット間に5分間の静止期間があった。各セットは10個の刺激列を含んでいた。刺激は、クアッドポーラ電極とバイポーラ電極の組み合わせによって約15Hzの周波数にて左横隔神経と右横隔神経に同時に送達した。刺激の振幅は、0.1mA~13.5mAの範囲であり、約200μ秒~約300μ秒のパルス幅にて送達した。
【0202】
試験の被験者の全9名が刺激リードを含むカテーテルを無事に受け入れ、カテーテルは各被験者から無事に取り外された。更に、全被験者は、少なくとも1つの横隔神経の捕捉に成功したことが実証され、刺激に応答して呼吸筋収縮を示した。ほとんどの患者が予定された治療の大部分を受け、各被験者は、平均10.2日の刺激セットを受けた。最終的に、7名の被験者が機械的人工呼吸器から無事に離脱した。離脱しなかった者のうち、1名は肺移植を受けるために試験を離れ、もう1名は、既存の診断未確定疾患が原因で機械的人工換気を継続しないことを試験4日目に選択した。
【0203】
被験者は、最大吸気圧(MIP)の改善及び頻呼吸指数(RSBI:rapid shallow breathing index)の改善を示した。このことは、機械的人工呼吸器の離脱時間の短縮及びICU及び病院環境滞在の長さの短縮をもたらした。MIP及びRSBIデータは表2及び表3にまとめられており、研究開始時のMIP及びRSBI測定値(ベースライン)と継続管理予約時のMIP及びRSBI測定値とが比較された。
【0204】
【表2】
【0205】
【表3】
上記結果は、機械的人工換気を必要とする患者に本明細書に記載されるシステム及び方法を安全に使用できることを示唆する。これらは、以前機械的人工換気に依存していた患者の吸息筋の強度(MIPの増加から分かるように)及び呼吸機能(RSBIスコアの変化によって示されるように)を向上させるようであった。更に、本明細書に記載されるシステムは、長期の機械的人工換気が必要であった患者の離脱の成功を促進するようであった。
【0206】
更に、呼吸筋刺激セッションの総数に対するMIPの平均変化をプロットした。このプロットは、図20に示される。図20から分かるように、より多くの刺激セッションが実施されるにつれてMIPの平均変化は向上した。
【0207】
これらのデータは、本明細書に記載されるシステム及び方法(参照により援用される特許に記載されているものを含む)は、長期の機械的人工換気を受けている患者の呼吸筋刺激システムとして使用するのに安全であり且つ適していることを示す。更に、本明細書に記載されるシステム及び方法は、長期の機械的人工換気を必要とする患者の離脱結果を向上させる可能性がある。
【0208】
実施例2
驚くべきことに、刺激療法は、被験者の気道内の粘液及び流体の移動を誘発した。被験者が、痛みを伴わない「引っ張られるような感じ」、「牽引感」、及び「吃逆感」を感じたと報告したことは、呼吸筋刺激療法が、外部呼吸補助を受ける患者の気道からの流体の除去を支援する可能性があることを示す。
【0209】
実施例1に記載した試験の少なくとも1名の被験者において、無気肺ベースからの粘液栓の移動が認められた。粘液栓は、気管内チューブから気管支鏡を介して取り除かれた。
精神状態異常及び全身性の脱力感の5日の既往歴を有する75歳の白人女性の被験者が入院した。この被験者は、急性呼吸不全のために挿管され、広域スペクトラム抗生物質の投与を開始していた。この被験者の既往歴は、外因性拘束性肺疾患が顕著で、自宅でCPAPを使用しており、高血圧、慢性腎臓病、貧血、肥満症、うつ状態、及び甲状腺機能亢進症である。更に、この被験者は、外部施設での精密検査の複数回の不成功で非特異的な慢性無力症という長期の病歴がある。
【0210】
重症筋無力症の抗体は陰性であり、この被験者は、自発呼吸試験の失敗を繰り返した後に試験に登録された。カテーテル挿入は難なく完了した。カテーテル配置は、胸部x線によって確認された。研究の開始時、この被験者のMIPは、-14.3cmHOであった。呼吸筋刺激療法の毎日のセッションを3回まで行った後、この被験者は、粘液栓の移動による2度の別々の急性低酸素症状発現が持続した。
【0211】
最初の低酸素状発現時、この被験者は、移動した大きな粘液栓による呼吸促迫症を経験した。この粘液栓は排出された。移動した粘液の除去後、この被験者の呼吸状態は回復した。この被験者の回復を支援するために陽圧機械的人工換気を一晩増加させた。
【0212】
2日後、この被験者は、急性低酸素状態及び呼吸促迫症の2回目の症状発現を示した。この被験者は、この被験者の気管内チューブの下部にある大きな濃い粘液栓を除去するためにベッドサイド光ファイバー気管支鏡を施された。この粘液栓は吸引によって除去された。両肺の評価により、下葉の薄い分泌物は緩やかに吸引されたことが明らかとなった。明らかな出血又は気管支内病変は認められなかった。
【0213】
粘液栓の除去後、この被験者の外部呼吸補助は日ごとに低減し、この患者は、9日目に機械的人工換気から離脱した。この被験者のMIPは、-18cmHOに改善した。この被験者は、18回の呼吸筋刺激のセッション後に機械的人工換気から無事に離脱し、研究に登録後9日目に抜管した。9日間の患者の呼吸状態の概要を、以下、表4に示す。
【0214】
【表4】
SBTとは、最小限の外部呼吸補助(ERS)又は外部呼吸補助(ERS)なしで呼吸する被験者の能力を評価するための自発呼吸試験の持続時間(分)を指す。ERSパラメータの列は、事前設定陽圧及びERSによって送達される呼気終末陽圧(PEEP)を指す。
【0215】
表4に示される結果は、機械的人工換気を必要とする患者に本明細書に記載されるシステム及び方法を安全に使用でき、気道からの流体の移動及び除去を促進することができることを示唆する。この場合の粘液栓の移動は、ペーシング治療による横隔膜の強度の増加及び強制的な収縮が、無気性の下葉内の遠位粘液栓の分解及び除去を可能にすることに起因する。これは、MIPのわずかな改善及び圧支持の減少によって実証される。具体的には、呼吸筋刺激療法を使用すると、下部気道の分泌物の移動によって呼吸クリアランスを患者が達成するのを支援することができる。大きな粘液栓の除去は、少なくとも部分的に、無気肺ベースの膨張により、本明細書に記載されるシステム及び方法によって容易になり得る。これらの患者の綿密な監視は、分泌物の移動が一時的な気道閉塞をもたらす場合、多くが介助(例えば、吸引など)を必要とすることを明らかに示した。
【0216】
実施例3
上述のように、無気肺は、鎮静状態にされた危篤状態の患者における、人工呼吸器誘発肺損傷の大きな原因である。無気肺を低減することが肺を保護する戦略であるが、鎮静状態にされた受動的に呼吸する患者においてこれは達成が困難な場合がある。呼吸筋刺激療法は、機械的人工換気と組み合わせると、終末呼気肺気量(EELV:end-expiratory lung volume)を維持することによりこの課題に対する解決策を提供し得る。
【0217】
無気肺の進行は、非侵襲的手法である電気インピーダンストモグラフィ(EIT:electrical impedance tomography)を使用してEELVの変化を観察することによりリアルタイムで測定され得る。局所空気量の変化は肺組織の電気インピーダンスを変更し、これは再構築され、一連の画像で表示され得る。
【0218】
擬似的なICU環境で50キログラムのブタのモデルを使用して研究を行った。MVのみの対照群(n=8)に通常の標準的な世話を施し、6~8mL/kgにて量を制御した陽圧換気を行った。MV+刺激群(n=8)に呼吸筋刺激を施し、人工呼吸器によりトリガーされる呼吸の吸息相中の毎秒の呼吸に対して横隔膜収縮をもたらした。各被験者について、EITを使用してEELVの変化を記録し、ペーシングされていない呼吸の最初の画像と最終画像とを比較し、EELVの変化を計算した。
【0219】
MVのみの群の例示的なEIT画像は、図21Aに示される。第1の画像は、MVが適用される前であり、第2の画像は、50時間のMVの後である。これらのEIT画像は、EELVの1841mLの損失を示す。
【0220】
比較として、MV+刺激群のEIT画像が図21Bに示される。第1の画像は、MVと刺激が適用される前であり、第2の画像は、50時間のMVと刺激の後である。これらのEIT画像は、EELVの271mLの損失を示す。
【0221】
両群において同一の受動換気を確保し、ペーシングの効果を排除するために、実験群のペーシングされていない呼吸と対照群の呼吸とを比較した。両側t検定によって平均を比較し、αの有意水準は0.5、βの有意水準は0.80であった。MV+刺激群における最初のペーシングされていない呼吸と最後のペーシングされていない呼吸との比較では、50時間の換気にわたる、MVのみの群の1230mlと比較して、EELVの平均低減は430mlを示した(p=0.005)。このEIT解析では、MVのみの群には286%大きな無気肺が存在することを示す。これら結果をまとめた箱ひげ図が図22に示される。
【0222】
MVと組み合わせて使用される呼吸筋刺激療法は、EELVの損失を50時間にわたって大幅に減少させる。EELVは、無気肺の一般に認められている測度であり、MV+刺激群におけるより小さな量は、より多くの肺胞が換気に関与するために利用可能であることを反映する。無気肺が減少すると、1回換気量のためにより大きく且つより均一な形状の領域が配分されるため、換気のより均質な分布の維持を促進する。無気肺の低減には無気肺損傷の低減、必要な人工呼吸器駆動圧力の低下、及び機械的人工換気からの早期離脱の可能性などの多くの利点があるため、これは重要である。
【0223】
実施例4
上述のように、無気肺形成及び気圧外傷によるストレス及びひずみの増加は、炎症経路を活性化させ、炎症性サイトカインのレベルを増加させ、肺損傷プロセスを増大させ且つ永続させる。実施例3に記載した50キログラムのブタの研究について述べると、50時間の治療時間の前及び後の両方に、各被験者の右上葉の気管支肺胞洗浄(BAL:bronchoalveolar lavage)を実施した。気管支肺胞洗浄によるサンプルをIL-1β、IL-6、及びIL-8のレベルに関して分析した。IL-1βは、生物学的に活性のサイトカインであり、高い血清レベルは、多くの場合、早期急性肺損傷を示すものであることはもとより、悪い臨床的成果の予測因子且つ肺線維症の強い誘発因子である。IL-1βは、炎症促進性サイトカインIL-6及びIL-8の放出の原因となる。IL-6及びIL-8レベルは、多くの場合、急性肺損傷患者の血清中において高い。更に、これらサイトカインの高レベルは、悪い臨床的成果と関連付けられることが多い。両側t検定によって平均を比較し、αの有意水準は0.5、βの有意水準は0.80であった。IL-6及びIL-8アッセイによる結果は、図23A図23B、及び図23Cに示される箱ひげ図にまとめられている。
【0224】
図23A図23Cに見られるように、呼吸筋刺激療法は、機械的人工換気のみの場合と比較して、右上葉内の気管支肺胞洗浄流体中の炎症性サイトカインの増加を50時間にわたって低減する。全体的なIL-1β、IL-6、及びIL-8血清レベルは、MV+刺激群(n=8)がMVのみの群(n=8)に比べて大幅に低く、全身性炎症の減少及び人工呼吸器誘発肺損傷による二次的な臓器損傷の可能性の低下を示す。MV+刺激群における炎症性サイトカインの全身性レベルの低下は、この群では肺区画が保持されたため、損傷のレベルが低かったことを示す。理論によって制限されるものではないが、無気肺及び気圧外傷の減少は、換気のより均質な分布及び人工呼吸器誘発肺損傷の減少をもたらし得る。治療群と対照群との間の炎症マーカの有意な差は、制御された呼吸中の同期性横隔膜収縮が、正常で健康な被験者の肺炎症の減少を助けることを示す。
【0225】
本明細書に記載されるサイトカインレベルの測定に加えて、ERSによる呼吸補助(MVのみ)中及びERSによる呼吸補助と刺激(MV+刺激)中に被験者の最大吸気圧、プラトー圧、及び動的コンプライアンスを測定した。換言すると、刺激補助呼吸中及び刺激補助なしの呼吸中の両方において、各被験者の圧力及びコンプライアンスを測定した。
【0226】
図24A図24Cに示される最大吸気圧及びプラトー圧データは、刺激補助呼吸では、刺激補助のない呼吸と比較して、平均がより低い最大吸気圧及び平均がより低いプラトー圧が含まれることを示す。
【0227】
動的コンプライアンスは、呼吸系(例えば、肺及び関連する気道)が伸展する、膨張する、又は体積を受け入れる能力の測度である。動的コンプライアンスは、空気移動中の呼吸システムの圧力の変化をその時間枠にわたる体積の変化で除して測定され得る。図25A及び図25Bに示されるコンプライアンスデータは、刺激により補助された呼吸が、ERSのみにより補助された呼吸と比較して大きな動的コンプライアンスをもたらしたことを示す。
【0228】
実施例5
異なるタイプの横隔膜筋線維が、呼吸筋刺激により引き起こされる仕事需要の増加にいかにして適応するかを調べるために、50キログラムのブタのモデルを使用して研究を行った。MVのみの対照群(n=4)に陽圧換気を施した。換気パラメータは、肺を保護する量を実現するように設定し、1回換気量は8mL/kg、呼気終末陽圧呼吸は5cmHO、及びFiOは、適切な酸素化を実現するのに必要な最小限に設定した。ブタは、プロポフォール、フェンタニル、及びミダゾラムの輸注により深い鎮静状態にし、バイスペクトル解析(BIS:bi-spectral analysis)によって案内される適切な鎮静レベルを達成するために、ケタミンのボーラス投与を行った。MV+刺激群(n=4)に呼吸筋刺激を施し、人工呼吸器によりトリガーされる呼吸の吸息相中の毎秒の呼吸に対して横隔膜収縮をもたらした。2つの群間の様々なタイプの筋線維の断面積を比較した。具体的には、後に安楽死させる各被験者の左肋骨横隔膜からサンプルを切除し、切除前にその静止状態にてクランプし、分析のために即座に保存した。
【0229】
各治療群の断面積による各筋線維型の相対的な存在量を、以下、表5に示す。
【0230】
【表5】
I型筋線維は遅筋線維であり、遅酸化線維と呼ばれる場合がある。これらは、電気刺激後の遅い収縮時間を有し、2型の筋線維に比べて小さい力を発生させる。遅筋線維は、他の筋線維型よりも低い刺激閾値にて動員され得る。I型筋線維は、持続的な低レベルの活動のために使用され、酸化代謝のために多数の大きなミトコンドリア及び比較的豊富な細胞内脂質を備える。
【0231】
II型筋線維は速筋線維であり、速解糖線維と呼ばれる場合がある。これらは、刺激後の急速な収縮時間を有する。II型筋線維は、I型筋線維よりも高い閾値刺激にて動員され、短時間の高強度の活動のために、及び重量物を運ぶために使用される。いくつかのII型筋線維は、嫌気性代謝に特化しており、小さく且つより少数のミトコンドリアを含み得、より少ない脂質を蓄え、I型線維よりも大きなグリコーゲン貯蔵部を有する。
【0232】
II型線維は、IIA型線維とIIX型線維に分かれている。これら線維は両方とも高い収縮速度を有し、それゆえ、I型線維と比較して大きな力を発生させる。IIA型線維は、適度に高い収縮速度を有し、本質的に嫌気性である。IIA型線維はまた、高密度のミトコンドリアを有し、酸化可能性が高く、IIb型線維は、非常に高い収縮速度を有し、本質的に嫌気性である。IIA型線維は、哺乳動物においてはミオシンアイソフォームMyh2を主に含み、IIb型線維は、低いミトコンドリア密度を有し、ミオシンアイソフォームMyh4を主に含む。
【0233】
例えば呼吸筋刺激中にIIX型筋線維を犠牲にしてI型筋線維を増加させると、呼吸筋の持久力増加に寄与することができる。
各左肋骨横隔膜サンプルに関して同定された筋線維の断面積を測定した。面積はサンプルの重量に対して正規化し、図26A図26Cにグラフ化した。マンホイットニーのU検定統計を使用して、両群間の差の有意性のレベルを決定した。正規化したプール平均断面積は、マンホイットニーのU検定によるp値とともに、以下、表6にまとめられている。
【0234】
【表6】
したがって、呼吸筋刺激中、少なくともI型筋線維の成長が促進される。更に、機械的人工換気との同期性を持つ呼吸筋刺激は、全横隔膜筋線維型をVIDDによる萎縮から保護する。
【0235】
本開示の原理、代表的実施形態、及び動作モードについて、前述の明細書で説明してきた。しかしながら、保護されることが意図される本開示の態様は、開示された特定の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。更に、本明細書に記載される実施形態は、限定的ではなく例示的であるとみなされるべきである。本開示の趣旨から逸脱することなく、変形及び変更が他者によって加えられてもよく、均等物が用いられてもよいことは理解されるであろう。したがって、このような全ての変形、変更、及び均等物が、特許請求される本開示の趣旨及び範囲内にあることは明確である。
【0236】
いくつかの実施形態では、組織を刺激するためのシステムは、刺激デバイスと、インピーダンスセンサと、制御ユニットとを含んでもよい。制御ユニットは、インピーダンスセンサからインピーダンス信号を受信し、インピーダンス信号に基づいて肺ガスパラメータの第1の値を決定し、第1の値と肺ガスパラメータの所定値とを比較し、第1の値と所定値との比較に基づいて1つ以上の第1の刺激パラメータを決定し、刺激デバイスを介して、1つ以上の第1の刺激パラメータを含む刺激信号を組織に送達するように構成されてもよい。
【0237】
本明細書に記載されるシステムは、以下の特徴のいずれかを含んでもよい。組織刺激用のシステムは、外部呼吸補助デバイス及び/又はリモートコントローラを更に含んでもよい。制御ユニットは更に、リモートコントローラから調整信号を受信し、調整信号を受信すると、刺激デバイスを介して、1つ以上の第2の刺激パラメータを含む第2刺激信号を組織に送達するように構成されてもよい。制御ユニットは更に、第1の値と所定値との比較に基づいて、外部呼吸補助デバイスにより供給される圧力又は容量を調整する及び/又は肺の区域間の空気の分布に対応する画像を生成するように構成されてもよい。画像は、インピーダンス信号に基づいて生成されてもよい。1つ以上の第1の刺激パラメータは、持続時間、パルス幅、周波数、振幅、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含んでもよい。制御ユニットは、刺激デバイス又はインピーダンスセンサと無線通信してもよい。刺激デバイスは、管状部材に支持された2つ以上の電極を含んでも、及び/又はインピーダンスセンサは管状部材に支持されてもよい。フレキシブル回路は、管状部材の外部に取り付けられ、2つ以上の電極とインピーダンスセンサとに接続されてもよい。肺ガスパラメータは、肺の区域間の空気の分布に対応してもよく、肺の区域間の空気の分布は、肺の後区と前区との間の空気分布、肺の上区と下区との間の空気分布、及び/又は右肺と左肺との間の空気分布を含んでもよい。肺ガスパラメータは、1つ以上の肺気量に対応してもよい。組織は第1組織であり得、インピーダンスセンサは、インピーダンスセンサのアレイの一部であってもよく、アレイは、第1組織に近接する第2組織に取り付けられるように構成されてもよい。インピーダンス信号は第1のインピーダンス信号であり得、刺激信号は第1の刺激信号であり得、制御ユニットは更に、第2のインピーダンス信号を受信し、第2のインピーダンス信号に基づいて、肺ガスパラメータの第2の値を決定し、肺ガスパラメータの第2の値と肺ガスパラメータの第1の値又は肺ガスパラメータの所定値とを比較し、第2の値と第1の値又は所定値との比較に基づいて、1つ以上の第2の刺激パラメータを決定するように構成されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図24C
図25A
図25B
図26A
図26B
図26C
【国際調査報告】