(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(54)【発明の名称】rAAVベクターによる免疫寛容の誘導
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20220707BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20220707BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20220707BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220707BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220707BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220707BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220707BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20220707BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N15/864 100Z
A61P21/04
A61P21/00
A61P43/00 121
A61K48/00
C12N15/12 ZNA
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568193
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2020063733
(87)【国際公開番号】W WO2020229695
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(71)【出願人】
【識別番号】503197304
【氏名又は名称】ジェネトン
(71)【出願人】
【識別番号】506369944
【氏名又は名称】サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フェデリコ・ミンゴッツィ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ダブスト
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・バルトロ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZC751
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA16
4C087MA17
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA94
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、2つの組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの組み合わせに関し、第1のものはキャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容に有用な目的の導入遺伝子をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含み、第2のものはキャプシドと、5’ITR配列、目的の組織に特異的なプロモーター、第1のrAAVベクターのカセットに挿入された核酸配列に対応する核酸配列、膜貫通配列、ポリA鎖を含むカセットとを含み、核酸配列は、目的の組織に向けて投与される。前記組み合わせは、コーディングされたタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導するのに使用でき、したがって、特に筋ジストロフィーを治療するための対象における薬物として使用できる。本発明はまた、対応する医薬組成物、キット、及び方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における筋ジストロフィー、好ましくは単一遺伝子性筋障害の治療のために使用される、以下の組み合わせ:
i.キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;及び
ii.キャプシドと、5’ITR配列、筋肉特異的プロモーター、前記第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクター(i)の免疫系寛容対象の前記タンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;
前記第1のrAAVは肝臓を標的とするために投与され、前記第2のrAAVは筋肉組織を標的とするために投与される、組み合わせ。
【請求項2】
前記免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする前記核酸配列が、細胞関連タンパク質産物をコーディングする、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
前記細胞関連タンパク質産物が、細胞質ゾルにデリバリーされるタンパク質産物又は膜貫通タンパク質産物である、請求項2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
前記免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする前記核酸配列が、T細胞又はB細胞によって認識されるエピトープを含むタンパク質産物をコーディングする、請求項1~3のいずれか1項に記載の組み合わせ。
【請求項5】
筋ジストロフィーの治療は、タンパク質産物に対する細胞性及び体液性免疫応答の発生を排除又は減弱することを含み、前記タンパク質産物が免疫系及び/又は筋肉におけるその発現に寛容されることを可能にし、より好ましくは、筋ジストロフィーの治療は、細胞傷害性CD8
+T細胞寛容を誘導することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組み合わせ。
【請求項6】
前記対象は、前記免疫系寛容対象の前記タンパク質産物に対する既存の免疫を示す、請求項1~5のいずれか1項に記載の組み合わせ。
【請求項7】
前記第1のrAAVベクター(i)の肝臓特異的プロモーターは、肝細胞特異的プロモーター(hAAT)である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組み合わせ。
【請求項8】
前記第1及び第2のrAAVベクターのキャプシドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組み合わせ。
【請求項9】
前記第1のrAAVベクターのキャプシドがAAV8キャプシドである、請求項8に記載の組み合わせ。
【請求項10】
前記免疫系寛容対象の前記タンパク質産物は、筋肉特異的タンパク質又は神経筋タンパク質である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組み合わせ。
【請求項11】
前記免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする前記核酸配列は、以下の配列から選択されるペプチドをコーディングする、請求項1~10のいずれか1項に記載の組み合わせ:マイクロジストロフィン構築物、エメリン、ラミンA/C、スペクトリンリピート内包、核エンベロープ1(ネスプリン1)、スペクトリンリピート内包、核エンベロープ2(ネスプリン2)、膜貫通タンパク質43、トルシンA相互作用タンパク質1、ダブルホメオボックス4、染色体の柔軟ヒンジドメイン内包1の構造維持、ポリメラーゼIと転写物放出因子(M)、ミオチリン、カベオリン3、HSP-40ホモログ、サブファミリーB、ナンバー6、デスミン、トランスポーチン3、異種核リボヌクレオプロテインD型、カルパイン3、ディスフェリン、ガンマサルコグリカン、アルファサルコグリカン、ベータサルコグリカン、デルタ-サルコグリカン、テレトニン、三者モチーフ内包32、フクチン関連タンパク質、チチン、タンパク質-O-マンノシルトランスフェラーゼ1、アノクタミン5、タンパク質-O-マンノシルトランスフェラーゼ2、O-結合マンノースベータ1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、ジストログリカン1、プレクチン、デスミン、輸送タンパク質粒子複合体11、GDP-マンノースピロホスホリラーゼB、イソプレノイドシンターゼドメイン内包、酸性アルファ-グルコシダーゼプレプロタンパク質、LIM及び老化細胞抗原様ドメイン2、血管心外膜物質、トルシンA相互作用タンパク質1、プロテインO-グルコシルトランスフェラーゼ1、ドリチルリン酸マンノシルトランスフェラーゼポリペプチド3、バロシン内包タンパク質、プレクチン。
【請求項12】
前記筋ジストロフィーがデュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD)であり、前記免疫系寛容対象の前記タンパク質産物がマイクロジストロフィン構築物である、請求項11に記載の組み合わせ。
【請求項13】
前記第1のrAAVベクターが対象に静脈内投与され、前記第2のrAAVベクターが対象に筋肉内投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の組み合わせ。
【請求項14】
前記第1のrAAVベクターが、前記第2のrAAVベクターの前に、好ましくは1週間、さらにより好ましくは第2のrAAVベクターの1ヶ月前に投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の組み合わせ。
【請求項15】
筋ジストロフィー、好ましくは単一遺伝子性筋障害、より好ましくはデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療に使用するための、請求項1~14のいずれか1項に記載の第1の組換えrAAVベクター及び第2の組換えrAAVベクターを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子治療の分野に関する。特に、本発明は、2つの組換えアデノ随伴ウイルス(recombinant adeno-associated viral、rAAV)ベクターの組み合わせに関し、第1のものはキャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象の有用な核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含み、第2のものはキャプシドと、5’ITR配列、目的の組織に特異的なプロモーター、第1のrAAVベクターのカセットに挿入された核酸配列に対応する核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含み、核酸配列は、目的の組織に向けて投与される。前記組み合わせは、前記目的の組織にデリバリーされた前記核酸配列からコーディング及び翻訳されるタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導するのに使用でき、したがって、特に筋ジストロフィーを治療するための対象における薬物として使用できる。本発明はまた、前記核酸配列の拒絶のリスクを防止するための医薬組成物、キット、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターは、末梢組織での遺伝子導入用途に広く使用されており、神経筋、眼、神経変性、血友病などの単一遺伝子起源の影響を治療するためのさまざまな治療用導入遺伝子を安全にデリバリーすることが証明されている。これらの遺伝子修復医学での用途は、目的の組織への定義された導入遺伝子の生着の成功に依存している。同種細胞及びMHC成分の導入を意味する古典的な組織生着手順と比較して、rAAV遺伝子導入は、rAAVキャプシドの免疫原性、及び宿主免疫系による新たに発現した導入遺伝子のプロセシング及び認識に関連する特定の懸念をもたらす。主にヒトに遍在しているAAV血清型で観察される既存の抗キャプシド抗体反応は、治療の無効果性を損なう可能性があり、他のrAAV血清型、操作されたキャプシド、及び免疫抑制手順の使用を促す。同様に重要なこととして、キャプシドに対する細胞傷害性T細胞(cytotoxic T cell、CTL)の応答は、現在一過性の免疫抑制レジメンで取り扱われている重要な懸念を表すヒト肝臓臨床試験で遭遇された。
【0003】
抗キャプシド応答と並行して、新たに発現した導入遺伝子に対する免疫応答は、宿主の突然変異遺伝子型、注射経路、使用されるプロモーター、rAAVの用量、及び注射される組織に存在する初期の炎症性と代謝性障害の状態など、受容者に固有の複数の要因に依存する。導入遺伝子に対する既存の免疫応答の発生もまた、挑戦的な問題になる。血友病B患者の場合、凝固因子IX(FIX)に対する既存の体液性応答が、タンパク質置換療法に関連してヒトで観察されている。動物実験はまた、特にFIX KO動物において、FIX遺伝子導入に対する免疫応答を証明しており、FIX導入遺伝子は免疫系によって外来抗原と見なされている。これは、導入遺伝子特異的T細胞の生成における宿主の遺伝的背景の重要な役割と、特定の導入遺伝子に対する免疫応答の定義に一致する複数の遺伝的要素を示している。一例として、細胞傷害性CD8+T細胞応答は、C57/Bl6マウスでのヒトFIX遺伝子導入後に観察されたが、他のマウス系統では見られなかった。標的組織自体も遺伝子導入後の免疫応答の結果に影響を与える重要な要因であり、rAAV筋肉標的はモデル導入遺伝子を使用するとき高度に免疫原性であるだけでなく、単一遺伝子の筋肉障害を治療するための細胞関連導入遺伝子デリバリーも伴うことが知られている。注目すべきことに、ジストロフィンに対する既存の循環T細胞免疫の存在は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者のかなりの割合で観察され、おそらくAAVベクターで筋肉内にデリバリーされた微小ジストロフィー導入遺伝子の免疫介在性拒絶をもたらし、導入遺伝子特異的免疫調節を促す。
【0004】
肝臓の寛容原性を利用して、肝臓でのアロMHC成分の発現により、同じアロMHC抗原を有する遺伝子導入植皮の生着が成功したことが報告されている。同様に、rAAVを介した肝臓標的は、ヒトFIX導入遺伝子を使用した、又はさまざまな導入遺伝子とrAAV血清型を使用した血友病マウスモデルで安全かつ効率的であることが証明された。肝臓でのrAAV FIX遺伝子導入は、FIX導入遺伝子(体全体でアクセス可能な典型的な分泌タンパク質である。)に対して顕著な体液性又は細胞性応答を誘発せず、この寛容状態は、げっ歯類で二次FIX免疫化後に保存された。さらに、最近のマウス研究は、rAAV FIX肝臓標的が既存の抗導入遺伝子体液性免疫を無効化することができることを示した。導入遺伝子に対するCTL応答に関して、導入遺伝子特異的TCR導入遺伝子CD8+T細胞の帰趨を制御する肝臓形質導入の能力は、Bertolinoのチームによって最初に解明され(Bowenら2004)、一次T細胞の活性化部位が肝内寛容と免疫のバランスを決定することが示された。この結果は他のモデルで確認されている。形質導入された肝細胞の画分は、肝遺伝子導入後の免疫寛容を誘導するために重要であり、TCR導入遺伝子CD8+T細胞の疲弊した表現型の獲得につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
肝臓から離れた複数の組織の形質導入が導入遺伝子に対する顕著な体液性及び細胞性免疫応答の生成につながるという事実を考慮すると、免疫寛容、特に細胞関連導入遺伝子に対するCD8+及びCD4+T細胞を含む体液性及び細胞性応答の免疫寛容を利用できる新しいベクター形質導入プロトコルが必要である。さらに、導入遺伝子に対する既存のCD8+及びCD4+T細胞免疫の悪影響を無効化し、導入遺伝子に向けられたCD4+及びCD8+メモリーT細胞(存在する場合)の再活性化を回避する必要がある。したがって、特にrAAVベクターに基づく代替及び/又は改善された方法は、複数の組織でデリバリーされる細胞関連導入遺伝子に対する有害な体液性及び細胞性免疫応答を回避するための遺伝子治療を成功させるために必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、先行技術の不利な点を改善することを目的としている。特に、本発明は、タンパク質産物に対する免疫寛容を誘導する際の薬物として使用するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの組み合わせを提案する。タンパク質産物は、対象における前記組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターのカセットに存在する核酸配列からコーディング及び翻訳される。
【0007】
第1の態様では、本発明は、対象における筋ジストロフィー、好ましくは単一遺伝子性筋障害の治療のために使用される、以下の組み合わせに関する:
i.キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;及び
ii.キャプシドと、5’ITR配列、筋肉特異的プロモーター、前記第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクター(i)の免疫系寛容対象の前記タンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;
前記第1のrAAVは肝臓を標的とするために投与され、前記第2のrAAVは筋肉組織を標的とするために投与される、組み合わせ。
【0008】
本発明の組み合わせは、細胞関連タンパク質産物、例えば、分泌されない、膜貫通タンパク質のような細胞質ゾル又は膜関連タンパク質に、免疫寛容を提供するのに特に適している。したがって、特定の態様では、本発明は、上記で公開された組み合わせに関するものであり、寛容されるタンパク質産物は、細胞関連タンパク質産物、例えば、膜貫通タンパク質のような細胞質ゾル又は膜関連タンパク質である。
【0009】
本発明者らが示すように、本発明による組み合わせは、免疫原性タンパク質に対する免疫寛容を提供するのに特に効果的である。次に、本発明の組み合わせの特定の実施形態において、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列は、T細胞又はB細胞によって認識されるエピトープを含むタンパク質産物をコーディングする。
【0010】
本発明の組み合わせは、体液性及び細胞性免疫応答の両方、特に筋ジストロフィーの治療に特に関心のあるCD8+免疫応答を排除又は減弱することを可能にする。したがって、さらなる実施形態において、本発明は、タンパク質産物に対する細胞性及び体液性免疫応答の発生を排除又は減弱することを含む筋ジストロフィーの治療に使用するための上記の組み合わせに関するものであり、それにより、前記タンパク質産物が免疫系及び/又は筋肉におけるその発現に寛容されることを可能にする。より特定の実施形態では、本発明は、細胞傷害性CD8+T細胞寛容を誘導することを含む筋ジストロフィーの治療に使用するための、上記のような組み合わせに関する。
【0011】
例示されるように、本発明の組み合わせを使用する筋肉肝臓二重形質導入は、本発明の組み合わせのタンパク質産物に対して免疫応答を示さない対象、又は組み合わせによって発現されるタンパク質産物に対して既存の免疫応答を示す対象の両方において免疫寛容を誘導することを可能にする。前記既存の応答は、例えば、対象が適用された以前の遺伝子置換療法に起因する可能性がある。したがって、特定の対象において、組み合わせは、免疫系寛容対象のタンパク質産物に対する既存の免疫を提示する対象に投与される。
【0012】
本発明に従って使用するための組み合わせの他の任意の態様において:
-第1のrAAVベクター(i)の肝臓特異的プロモーターは肝細胞特異的プロモーター(hepatocyte-specific promotor、hAAT)である;
-第1及び第2のrAAVベクターのキャプシドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される;
-第1のrAAVベクターのキャプシドはAAV8キャプシドである;
-免疫系寛容対象のタンパク質産物は、筋肉特異的タンパク質又は神経筋タンパク質である;
-免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする前記核酸配列は、以下の配列から選択されるペプチドをコーディングする:マイクロジストロフィン構築物、エメリン、ラミンA/C、スペクトリンリピート内包、核エンベロープ1(ネスプリン1)、スペクトリンリピート内包、核エンベロープ2(ネスプリン2)、膜貫通タンパク質43、トルシンA相互作用タンパク質1、ダブルホメオボックス4、染色体の柔軟ヒンジドメイン内包1の構造維持、ポリメラーゼIと転写物放出因子(M)、ミオチリン、カベオリン3、HSP-40ホモログ、サブファミリーB、ナンバー6、デスミン、トランスポーチン3、異種核リボヌクレオプロテインD型、カルパイン3、ディスフェリン、ガンマサルコグリカン、アルファサルコグリカン、ベータサルコグリカン、デルタ-サルコグリカン、テレトニン、三者モチーフ内包32、フクチン関連タンパク質、チチン、タンパク質-O-マンノシルトランスフェラーゼ1、アノクタミン5、タンパク質-O-マンノシルトランスフェラーゼ2、O-結合マンノースベータ1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、ジストログリカン1、プレクチン、デスミン、輸送タンパク質粒子複合体11、GDP-マンノースピロホスホリラーゼB、イソプレノイドシンターゼドメイン内包、酸性アルファ-グルコシダーゼプレプロタンパク質、LIM及び老化細胞抗原様ドメイン2、血管心外膜物質、トルシンA相互作用タンパク質1、プロテインO-グルコシルトランスフェラーゼ1、ドリチルリン酸マンノシルトランスフェラーゼポリペプチド3、バロシン内包タンパク質、プレクチン。
-第1のrAAVベクターが静脈内投与され、第2のrAAVベクターが対象に筋肉内投与される;又は
-第1のrAAVベクターは、第2のrAAVベクターの前に、好ましくは1週間、さらにより好ましくは第2のrAAVベクターの1ヶ月前に投与される。
【0013】
本発明の特定の実施形態において、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne Muscular Dystrophy、DMD)の治療に使用するための、上記の実施形態のいずれかにおける組み合わせであり、免疫系寛容対象のタンパク質産物は、ミクロジストロフィン構築物である。
【0014】
本発明の別の目的は、筋ジストロフィー、好ましくは単一遺伝子性筋障害、より好ましくはデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療に使用するための、上記の実施形態のいずれかにおける本発明の組み合わせを含む医薬組成物である。
【0015】
別の態様では、本発明は、対象の目的の組織にデリバリーされた核酸配列からコーディング及び翻訳されるタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導する際の薬物として使用するための、以下を含む組み合わせに関する:
i.キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容に有用な目的の核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクターであって、当該核酸配列は、肝臓に向けてデリバリーされるように投与される第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクター;及び
ii.キャプシドと、5’ITR配列、目的の組織に特異的プロモーター、第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクターのカセットに挿入された核酸配列に対応する核酸配列、膜貫通配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルスベクターであって、当該核酸配列は、目的の組織に向けて投与される第2の組換えアデノ随伴ウイルスベクター。
【0016】
前記2つの組換えアデノ随伴ウイルスベクターは、細胞関連タンパク質産物(好ましくは膜貫通タンパク質産物)をコーディングする核酸配列を含むカセットを含む。
【0017】
好ましい実施形態では、2つの組換えアデノ随伴ウイルスベクターのカセットに挿入された目的の核酸配列は、T細胞又はB細胞によって認識されるエピトープを含むタンパク質産物をコーディングする。あるいは、目的の核酸配列は、筋肉関連タンパク質、好ましくは膜タンパク質をコーディングする。別の実施形態において、目的の核酸配列は、筋肉特異的タンパク質又は神経筋タンパク質をコーディングし、好ましくは、目的の核酸配列は、マイクロジストロフィン構築物の配列をコーディングする。別の非限定的な好ましい実施形態では、第2のベクター(ii)における目的の組織に特異的なプロモーターは、筋肉特異的プロモーターである。
【0018】
有利には、本発明による2つの組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの組み合わせは、CD4、CD8及び/又はBリンパ球の事前の免疫化の後に対象に投与される。好ましくは、組み合わせは、前記核酸配列によってコーディングされるタンパク質産物に向けられたCD4、CD8及び/又はBリンパ球の顕著なレベルの免疫化を示す対象に投与される。
【0019】
別の好ましい実施形態において、第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクターのプロモーターは、肝臓特異的プロモーター、好ましくは肝細胞特異的プロモーター(hAAT)である。本発明による第1、第2、又は両方の組換えアデノ随伴ウイルスベクターのキャプシドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11及び任意の組み合わせからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、肝臓に向けてデリバリーされる第1のrAAVのキャプシドは、AAV8キャプシドである。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明の組み合わせは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を治療するために使用するのに有用である。別の好ましい実施形態において、目的の核酸配列を含む第2の組換えアデノ随伴ウイルスベクターは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療に使用するためのものである。
【0021】
好ましい実施形態では、組み合わせは、同時に又は連続して投与される。
【0022】
第2の態様では、本発明は、以下に記載されるような第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクター、並びに、キャプシドと、5’ITR配列、目的の組織に特異的なプロモーター、第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクターのカセットに挿入された核酸配列に対応する核酸配列、膜貫通配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む第2の組換えアデノ随伴ウイルスベクターを含む医薬組成物に関し、核酸配列は、対象の前記目的の組織にデリバリーされる前記核酸配列に対する免疫寛容を誘導する際の薬物として使用するために、目的の組織に向けて投与される。
【0023】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、同時に又は連続して投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、2回又は3回、必要な回数だけ、及び/又は繰り返し投与することができる。有利には、医薬組成物は、静脈内又は筋肉内に投与される。
【0024】
より好ましい実施形態において、医薬組成物は、遺伝子治療において、好ましくは筋ジストロフィーにおいて、好ましくは単一遺伝子性筋障害において、より好ましくはデュシェンヌ型筋ジストロフィーにおいて有用である。あるいは、医薬組成物は、自己免疫応答によって標的とされるタンパク質をコーディングする前記核酸配列を使用して、自己免疫障害において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】rAAV構築物。mOVA構築物は、H-2Kb遺伝子のリーダーペプチド(LS)と、それぞれMHCI及びMHCIIのエピトープ、OVA257及びOVA323を含む完全長さOVA cDNAと、H-2Db膜貫通配列(transmembrane sequence、TM)と、それに続くSTOPコドン及びポリA鎖(poly A、pA)を含む。mOVA-GFP構築物は、H-2Kb遺伝子のリーダーペプチド(LS)、完全長さOVA cDNA、H-2Db膜貫通配列(TM)、及び完全長さEGFPcDNAを含む。筋肉標的構築物(A)には、筋肉に強い親和性を持つrAAV1にカプセル化するための筋肉特異的プロモーターSPc5-12と2つのITR(Inverted Terminal Repeat、逆方向末端反復)配列が含まれる。肝臓標的構築物(B)には、肝臓に強い親和性を持つrAAV8にカプセル化するための肝臓特異的プロモーターhAATと2つのITR配列が含まれる。肝臓標的構築物(C)には、rAAV8にカプセル化するため肝臓特異的プロモーターhAATと2つのITR配列、及び完全なhFIX導入遺伝子カセットが含まれる。
【
図2】筋肉の導入遺伝子特異的免疫寛容は、同時肝臓標的によって付与される。オスのC57/Bl6マウスに、筋肉特異的SPc5-12プロモーターの下でmOVAをコーディングするrAAV1の10
9ウイルスゲノム(viral genome、vg)を左前脛骨筋に注射し、肝臓特異的プロモーターhAATの下でmOVAをコーディングする10
10vgのrAAV8を静脈注射(i.v.)した。記載された実験条件は、rAAV1/mOVA筋肉注射(i.m.)に対応し、rAAV1/mOVAの筋肉注射とrAAV8/mOVAの静脈注射の同時注射に対応する。14日目と28日目にリンパ球を血液から抽出し、Kb/OVA257テトラマー染色とサイトメトリーによってOVA特異的CD8
+T細胞を分析した。(A)d28での代表的なドットプロット。(B)CD8
+T細胞でゲートされた血中のCD8
+Kb/OVA257テトラマー
+(テトラマー
+)の頻度。(C)任意単位(arbitrary unit、AU)における対照血清と比較した抗OVA IgGの濃度。(D)記載された実験条件で29日目に筋肉で実行されたRT-qPCR。RT-qPCRの結果は、「筋肉注射+静脈注射」のグループ内のOVA RNA発現と比較して示される(材料と方法を参照)。各ドットは、個々の動物を表し、平均±SEM(n=9マウス/グループ、3つの独立した実験からプール)。
**p<0.01、
****p<0.0001(マン・ホイットニー検定(Mann-Withney test))。
【
図3】導入遺伝子特異的CD8
+T細胞寛容は、肝臓への形質導入の長時間後に筋肉で確立される。オスのC57/Bl6マウスに28日目又は7日目に10
10vgのrAAV8/mOVAを静脈注射し、又は注射しなかった(対照群)。0日目に、マウスに1×10
10vgのrAAV1/mOVAを左前脛骨筋に筋肉注射した。14日目と28日目に採血し、29日目にマウスを安楽死させて注射した筋肉と肝臓を採取した。(A)実験のタイムライン。(B)記載された3つの実験条件で28日目に評価されたCD8
+T細胞でゲートされたCD8
+Kb/OVA257テトラマー
+(テトラマー
+)の頻度。(C)記載された3つの実験条件で29日目に筋肉で実行されたRT-qPCR。RT-qPCRの結果は、「筋肉注射+静脈注射 7日目」のグループ内のOVA RNA発現と比較して示される。各ドットは、個々の動物を表し、平均±SEM(n=6マウス/グループ、2つの独立した実験からプール)。
**p<0.01(マン・ホイットニー検定)。
【
図4】導入遺伝子特異的CD8
+T細胞寛容は、事前の免疫化にもかかわらず、筋肉で発生する。オスのC57/Bl6マウスは、0日目に尾部ベース注射によってIFA(OVA/IFA)に乳化されたOVAで免疫化し、又は免疫化しなかった後、14日目に示されたrAAVを注射した。28日目に採血し、29日目にマウスを安楽死させて脾臓と注射した筋肉を採取した。rAAV1/mOVAの筋肉注射及びrAAV8/mOVAの静脈注射は
図2に示すように実行された。rAAV1/mOVA筋肉注射は、T細胞集団の分析を改善するために10
10vgで実行された。脾臓からリンパ球を抽出して、Kb/OVA257テトラマー染色を行った。(A)脾臓のCD8
+T細胞にゲートされたCD8
+Kb/OVA257テトラマー
+(テトラマー
+)の頻度。(B)任意単位(AU)における対照血清と比較した抗OVA IgGの量。(C)記載された4つの実験条件で29日目に筋肉で実行されたRT-qPCR。RT-qPCRの結果は、免疫化されていない「筋肉注射+静脈注射」のグループ内のOVA RNA発現と比較して示される。各ドットは、個々の動物を表し、平均±SEM(n=9マウス/グループ、3つの独立した実験からプール)。
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001(マン・ホイットニー検定)。
【
図5】残存OVA特異的CD8
+T細胞は、事前の免疫化と寛容誘導の後にPD-1
hi表現型を示す。オスのC57/Bl6マウスは、IFAに乳化されたOVA又はOVA257(OVA/IFA又はOVA257/IFA)で免疫化され、又は免疫化されずに、
図4に説明されているように注射された(10
10vgのrAAV1-mOVA筋肉注射及びrAAV8-mOVA静脈注射)。(A)脾臓のCD8
+CD44
hiT細胞にゲートされたCD8
+Kb/OVA257テトラマー
+(テトラマー
+)及びPD-1
+T細胞の代表的なドットプロットを、記載された4つの実験条件で28日目に評価した。(B)脾臓のCD8
+CD44
hiT細胞にゲートされたCD8
+Kb/OVA257テトラマー
+(テトラマー
+)T細胞の頻度を、記載されている6つの実験条件で28日目に評価した。(C)OVA/IFA又はOVA257/IFA免疫化後にCD8
+CD44
+テトラマー
+T細胞でゲートされたPD-1(上のパネル)、CD44(中央のパネル)及びCD8(下のパネル)の発現レベルのMFI。各ドットは、個々の動物を表し、平均±SEM(n=6マウス/グループ、2つの独立した実験からプール)。
*p<0.05、
**p<0.01(マン・ホイットニー検定)。
【
図6】残存OVA特異的PD-1
hiCD8
+T細胞におけるIFNγ産生の欠如。
図5に示す実験から、IFAに乳化したOVA又はOVA257(OVA/IFA又はOVA257/IFA)で免疫化され、又は免疫化されなかったオスC57/Bl6マウスの脾細胞は、OVA257ペプチドでインヴィトロ(in vitro)で4時間刺激され、細胞内染色のために処理された。(A)OVA257ペプチドによるインヴィトロ刺激後のCD8
+T細胞集団でゲートされたPD-1
+及びIFNγ
+脾細胞の代表的なドットプロット。(B)OVA257ペプチドによるインヴィトロ刺激後の脾臓のCD8
+T細胞にゲートされたINFγ
+産生細胞の頻度。(C)記載された4つの実験条件で、29日目に筋肉で実行されたRT-qPCR。RT-qPCRの結果は、免疫化されていない「筋肉注射+静脈注射」のグループ内のOVA RNA発現と比較して示される。各ドットは、個々の動物を表し、平均±SEM(n=6マウス/グループ、2つの独立した実験からプール)。
**p<0.01、ns p>0.05(マン・ホイットニー検定)。
【
図7】導入遺伝子特異的CD8
+T細胞寛容は、CD4
+T細胞免疫化にもかかわらず確立される。オスのC57/Bl6マウスは、IFAに乳化されたOVA323ペプチド(MHCIIエピトープ)(OVA323/IFA)で免疫化され、又は免疫化されずに、
図4に説明されているように注射された(10
10vgのrAAV1-mOVA筋肉注射及びrAAV8-mOVA静脈注射)。脾臓からリンパ球を抽出して、CD8
+T細胞Kb/OVA257テトラマー及び細胞内INFγの染色を行った。(A)脾臓のCD4
+CD44
hiT細胞でゲートされたINFγ
+の頻度。(B)任意単位(AU)における対照血清と比較した抗OVA IgGの量。(C)脾臓のCD8
+CD44
hiT細胞でゲートされたCD8
+Kb/OVA257テトラマー
+(テトラマー
+)の頻度。(D)記載された4つの実験条件で29日目に筋肉で実行されたRT-qPCR。RT-qPCRの結果は、免疫化されていない「筋肉注射+静脈注射」のグループ内のOVA RNA発現と比較して示される。各ドットは、個々の動物を表し、平均±SEM(n=6~9マウス/グループ、2つ~3つの独立した実験からプール)。ns p>0.05、
**p<0.01、
****p<0.0001(マン・ホイットニー検定)。
【
図8】異種の導入遺伝子の筋肉注射及び静脈注射後の寛容の欠如。オスのC57/Bl6マウスに、筋肉特異的Spc512プロモーターの下でmOVAをコーディングするrAAV1の10
9ウイルスゲノム(vg)を左前脛骨筋に筋肉注射し、肝臓特異的プロモーターhAATの下でhFIXをコーディングする10
10vgのrAAV8を静脈注射した。リンパ球は、サイトメトリーによってCD8
+T細胞のOVA特異的テトラマー染色を分析するために、14日目と28日目に血液から、29日目に肝臓から抽出した。(A)血中の28日目での代表的なドットプロット。(B)CD8
+T細胞でゲートされた血中のCD8
+Kb/OVA257テトラマー
+(テトラマー
+)の頻度。(C)任意単位(AU)における対照血清と比較した抗OVA IgGの量。(D)記載された実験条件で29日目に筋肉で実行されたRT-qPCR。RT-qPCRの結果は、「rAAV1/mOVA筋肉注射及びrAAV8/mOVA静脈注射」のグループ内のOVA RNA発現と比較して示される。各ドットは、個々の動物を表し、平均±SEM(n=9マウス/グループ、3つの独立した実験からプール)。ns p>0.05(マン・ホイットニー検定)。
【
図9】追加のCD4エピトープを有するmOVA-GFP導入遺伝子の筋肉及び肝臓への形質導入による寛容の誘導。12匹のオスのC57/Bl6マウスは、0日目にMHCIIGFPエピトープで免疫化され、又は免疫化されずに、14日目に、筋肉特異的なSpc512プロモーターの下でmOVA/GFPをコーディングする2.5×10
10vgのrAAV1を筋肉注射し、肝臓特異的プロモーターhAATの下でmOVA/GFPをコーディングする10
10vgのrAAV8を静脈注射した。脾臓及び注射された筋肉を収集するために、29日目にマウスを安楽死させた。脾臓からリンパ球を抽出して、CD8
+T細胞でKb/OVA257テトラマーの染色を行い、CD4
+T細胞で細胞内INFγの染色を行った。(A)実験のタイムライン。(B)記載された2つの実験条件(下のパネル)における、代表的なドットプロット(上のパネル)、及び28日目でのCD8
+T細胞におけるCD8
+Kb/OVA257テトラマー
+(テトラマー
+)(左軸)の頻度と筋肉におけるOVA RNAの発現(右軸、下のパネル)。(C)記載された2つの実験条件(下のパネル)の28日目における、CD4
+CD44
hiINFγ
+T細胞の代表的なドットプロット(上のパネル)、脾臓のCD4
+CD44
hiT細胞でゲートされたINFγ
+の頻度(左軸)、及び任意単位における対照血清と比較した血中抗OVA IgGの量(AU、右軸、下のパネル)。各ドットは個々の動物を表し、平均±SEM(n=3マウス/グループ)。
【
図10】rAAV8/mOVA肝臓デリバリー及び異種mOVA-GFP筋肉デリバリーによる持続的免疫寛容の誘導。オスのC57/Bl6マウスに28日目又は7日目に10
10vgのrAAV8/mOVAを静脈注射し、又は注射しなかった(対照群)。0日目に、マウスに2.5×10
10vgのrAAV1/mOVA-GFPを左前脛骨筋に筋肉注射した。14日目と28日目に採血し、29日目にマウスを安楽死させて注射した筋肉と肝臓を採取した。(A)実験のタイムライン。(B)記載された3つの実験条件(下のパネル)で28日目におけるCD8
+T細胞(下のパネル)でゲートされたCD8
+Kb/OVA257テトラマー
+(テトラマー
+)の血中の代表的なドットプロット(上のパネル)と頻度。(C)「rAAV1/mOVA-GFP筋肉注射及びrAAV8/mOVA静脈注射 7日目」と比較した、29日目に筋肉でのOVA RNA発現を定量化するためのRT-qPCR。各ドットは、個々の動物を表し、平均±SEM(n=6マウス/グループ、2つの独立した実験からプール)。
**p<0.01(マン・ホイットニー検定)。
【
図11】mOVA-GFP導入遺伝子の筋肉肝臓二重形質導入後の筋肉における局所炎症の欠如。筋肉特異的SPc5-12プロモーターの下でmOVA-GFPをコーディングするrAAV1の10
10ウイルスゲノム(vg)を左前脛骨筋に注射し、さらに肝臓特異的プロモーターhAATの下でmOVA-GFPをコーディングする1×10
10vgのrAAV8を静脈注射し(B)又はしなかった(A)マウスの筋肉切片の代表的な免疫染色画像。mOVA-GFP:mOVA-GFP導入遺伝子を発現する筋線維のGFPラベル。MCHII:細胞のMHCIIラベル;DAPI:核免疫染色。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明者らは、特異的T細胞応答を解読するのによく適合した高度に免疫原性のOVA導入遺伝子を使用し、驚くべきことに、筋肉肝臓におけるrAAVの二重形質導入が、rAAV筋肉形質導入によって生成される抗導入遺伝子CD8+T細胞及び体液性応答の両方に対して持続的寛容を付与することを発見した。重要なことに、CD8+及びCD4+T細胞を含む免疫前物質の存在下では、この寛容誘導は、導入遺伝子特異的CD8+T細胞の部分的欠失及び疲弊の誘導を通じて機能することが示されている。したがって、本発明者らは、肝臓のrAAV形質導入が、導入遺伝子に対する既存の免疫応答に関係なく、筋肉形質導入後に誘発される導入遺伝子特異的T細胞レパートリー全体に免疫寛容を付与することを発見した。
【0027】
rAAVベクターの投与後の免疫反応を治療及び予防するために、本発明は、対象の目的の組織にデリバリーされた核酸配列からコーディング及び翻訳されるタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導する際の薬物として使用するための、以下を含む2つの組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの組み合わせを提供する:
i.キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容に有用な目的の核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであって、当該核酸配列は、肝臓に向けてデリバリーされるように投与される第1のrAAVベクター;及び
ii.キャプシドと、5’ITR配列、目的の組織に特異的プロモーター、第1のrAAVベクターのカセットに挿入された核酸配列に対応する核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであって、当該核酸配列は、目的の組織に向けて投与される第2のrAAVベクター。
【0028】
定義
本明細書で意図されるように、「含む」という用語は、「備える」又は「有する」の意味を有する。すなわち、対象が1つ又は複数の要素を「含む」場合、上記以外の要素も対象に含まれ得る。対照的に、対象が1つ又は複数の要素「からなる」と書かれる場合、対象には、言及されている要素以外の要素を含めることはできない。
【0029】
本発明によれば、「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、遺伝子治療で治療できる疾患に罹患している、又は罹患する可能性が高い哺乳動物を指す。対象は好ましくはヒトである。
【0030】
疾患又は病状の「治療」とは、患者の健康状態を改善することを目的としたあらゆる行為を指す。「治療」には、以下が含まれるが、これらに限定されない:1つ又は複数の症状又は病状の緩和又は改善、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(例えば、患者の寛解の維持)、疾患の予防又は疾患の拡大の予防、疾患の進行の先延ばし又は遅延、疾患状態の改善又は緩和、疾患の再発の抑制、及び寛解(部分的又は全体的を問わず)。治療には、治癒、緩和、又は予防効果が含まれ得る。「予防的」という用語は、特定の病状の重症度又は発症を軽減すると見なすことができる。「予防的」はまた、以前に特定の病状と診断された患者におけるその病状の再発を防ぐことを含む。「療法」はまた、既存の病状の重症度を軽減又は遅延させ得る。治療の望ましい効果には、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。緩和は、疾患又は病状の徴候又は症状が現れる前、及びそれらが現れた後に起こり得る。したがって、「治療」は、疾患又は望ましくない病状の「予防」を含み得る。
【0031】
第1及び第2のrAAVベクターの本発明の組み合わせに関する場合の「組み合わせ」、「組み合わせ治療」又は「組み合わせ療法」という用語は、前記第1及び第2のrAAVベクターの同時投与に得られる生物学的効果(例えば免疫寛容及び/又は治療用ペプチド若しくはタンパク質の発現の改善)を引き起こすために対象に同時投与する治療を指す。本発明による組み合わせ療法において、前記第1及び第2のrAAVベクターは、同時に、一緒に、又は別々に、又は連続して投与され得る。また、それらは異なるルート及びプロトコルを介して投与され得る。例えば、ベクターの一方は静脈内に投与され得、他方は筋肉内に投与され得る。それらは、同じ経路及びプロトコル(例えば、両方とも静脈内)を介して投与することができる。また、第1及び第2のrAAVベクターは一緒に処方され得るが、別々に処方されてもよい。
【0032】
本明細書で使用される場合、「障害」又は「疾患」という用語は、遺伝的又は発達上のエラー、感染、毒、栄養不足若しくは不均衡、毒性、又は不利な環境要因の影響から生じる、身体の正常に機能しない器官、部分、構造、又は系統を指す。好ましくは、これらの用語は、健康障害又は疾患(例えば、正常な身体的又は精神的機能を害する病気)を指す。より好ましくは、障害という用語は、動物及び/又はヒトに影響を与える免疫及び/又は炎症性疾患を指す。
【0033】
本明細書で使用される「免疫疾患」又は「自己免疫疾患」という用語は、対象自身の細胞、組織及び/又は臓器に対する対象の免疫学的反応によって引き起こされる細胞、組織及び/又は臓器の損傷を特徴とする対象の病状を指す。
【0034】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
「組換えアデノ随伴ウイルス」又は「rAAV」は、ヌクレオチド配列の交換を使用して、細胞内のDNA配列の挿入、削除、又は置換を可能にする。他の遺伝子編集方法とは異なり、これは二本鎖DNA切断を引き起こすことなく達成され、代わりに内因性の相同組換え(homologous recombination、HR)を刺激する。その非病原性のため、生きている患者の遺伝子治療にも適している。特に、rAAVゲノムは、長さが約4.7キロベースのポジティブ又はネガティブセンスの一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)で構成されている。これらの一本鎖DNAウイルスベクターは、高い形質導入率を持ち、ゲノムに二本鎖DNA切断を引き起こすことなく、内因性HRを刺激するという独特の特性を持っている。rAAVは、遺伝子治療、などの眼疾患での使用に特に適しており、例えばLUXTURNA(商標)(voretigene neparvovec-rzyl;Spark Therapeutics,Inc.、ペンシルベニア州フィラデルフィア)があり、これは、二対立遺伝子RPE65突然変異関連網膜ジストロフィーの治療のためにRPE65遺伝子の正常なコピーを網膜細胞にデリバリーする。rAAVベクターを使用し、2012年11月にヨーロッパで承認された遺伝子治療のもう1つの例は、Alipogene tiparvovec(商品名GLYBERA(商標)で販売)である。この遺伝子治療は、重度の膵炎を引き起こす可能性のあるまれな遺伝性疾患であるリポタンパク質リパーゼ欠損症(lipoprotein lipase deficiency、LPLD)を改善するように設計されている。アデノ随伴ウイルス血清型1(AAV1)ウイルスベクターは、ヒトリポタンパク質リパーゼ(LPL)遺伝子の完全なコピーを筋肉細胞にデリバリーする。注射の後には、ウイルスに対する免疫反応を防ぐための免疫抑制療法が後続する。
【0035】
本発明はまた、対象の目的の組織にデリバリーされた核酸配列からコーディング及び翻訳されるタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導する際の薬物として使用するための、以下を含む2つの組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの組み合わせの使用に関する:
i.キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容に有用な目的の核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであって、当該核酸配列は、肝臓に向けてデリバリーされるように投与される第1のrAAVベクター;及び
ii.キャプシドと、5’ITR配列、目的の組織に特異的プロモーター、第1のrAAVベクターのカセットに挿入された核酸配列に対応する核酸配列、膜貫通配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであって、当該核酸配列は、目的の組織に向けて投与される第2のrAAVベクター。
【0036】
本発明の特定の実施形態は、第1又は第2のrAAVベクターのいずれかによってコーディングされるタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導するのに使用される、以下の組み合わせに関する:
i.キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;及び
ii.キャプシドと、5’ITR配列、筋肉特異的プロモーター、第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクターの免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;
前記第1のrAAVは肝臓を標的とするために投与され、前記第2のrAAVは筋肉組織を標的とするために投与される、組み合わせ。
【0037】
本発明の別の特定の実施形態は、第1又は第2のrAAVベクターのいずれかによってコーディングされるタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導するのに使用される、以下の組み合わせに関する:
i.キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;及び
ii.キャプシドと、5’ITR配列、筋肉特異的プロモーター、第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクターの免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、膜貫通配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;
前記第1のrAAVは肝臓を標的とするために投与され、前記第2のrAAVは筋肉組織を標的とするために投与される、組み合わせ。
【0038】
特定の実施形態において、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターに挿入されたカセットは、細胞関連タンパク質産物をコーディングする核酸配列を含む。「細胞関連タンパク質産物」とは、本発明において、リーダー配列の非存在下でタンパク質を細胞質ゾルにデリバリーするために、膜貫通ドメインを介して、又はデフォルトでタンパク質を膜に固定することを可能にする特定の配列を指す。好ましくは、カセットに挿入された目的の核酸配列は、膜貫通タンパク質産物をコーディングする。
【0039】
好ましい実施形態において、本発明は、2つの組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの組み合わせに関し、カセットに挿入された目的の核酸配列は、T細胞又はB細胞によって認識されるエピトープを含むタンパク質産物をコーディングする。「核酸配列」又は「導入遺伝子」とは、本発明において、疾患の治療のための治療作用を有する、目的であると考えられる核酸の配列を指す。好ましくは、目的の核酸配列は療法的に有効である。好ましくは、導入遺伝子は、治療用(ポリ)ペプチド又は治療用タンパク質をコーディングし、本明細書では、「治療用タンパク質産物」、「タンパク質産物」又は「免疫系寛容対象のタンパク質産物」を指す。前記タンパク質産物は、置換によって、又は対象における欠陥タンパク質の活性を補充することによって、細胞内の欠陥活性を治癒するのに特に効果的である。
【0040】
特定の実施形態では、第1のrAAVベクターに挿入されたカセットは、治療用タンパク質の免疫原性部分のみをコーディングする核酸配列を含み、この部分は、T細胞又はB細胞のいずれかによって認識されるエピトープを含み、免疫反応に悪影響(例えば、導入遺伝子の拒絶及び/又は治療用タンパク質産物の低発現)を及ぼす。その場合、第1のrAAVベクターによって発現されるタンパク質産物は、その全長又は活性部分のいずれにおいても、細胞の欠陥のある活動を置換又は補充することによって、治療用タンパク質の生物学的活性を示さず、対象の免疫系に対してのみ活性を示す可能性がある。
【0041】
別の特定の実施形態では、第1のrAAVベクターに挿入されたカセットは、タンパク質産物(これは、細胞の欠陥のある活動を置換又は補充することによって、病気の治療に治療的に効果的である。)をコーディングする核酸配列を含み、より具体的には、タンパク質産物は、当技術分野で説明又は知られているように、その全長において活性タンパク質に対応する。
【0042】
さらに特定の実施形態では、第1のrAAVベクターによってコーディングされるタンパク質産物は、治療用タンパク質の免疫原性部分、すなわち、T細胞又はB細胞のいずれかによって認識され、有害な免疫反応の原因であるエピトープを含む部分のみである一方で、第2のrAAVベクターによって発現されるタンパク質産物は、対象の欠陥タンパク質の活性を置換又は補充することによって疾患を治癒することを可能にするタンパク質産物に対応する。第2のrAAVによって発現される前記タンパク質産物は、当技術分野で知られているように、その全長にわたって活性タンパク質であり得る。
【0043】
別の特定の実施形態では、第2のrAAVベクターのカセットは、タンパク質産物をコーディングする配列に融合される膜貫通ヌクレオチド配列を含み、これにより、形質導入された細胞で発現された場合、タンパク質産物は、膜貫通ドメインを介して形質導入された細胞の表面に維持される。
【0044】
本発明の文脈で使用するための治療用(ポリ)ペプチド及びタンパク質は、以下を含むが、これらに限定されない:ジストロフィンの人工形態を表すマイクロジストロフィン、エメリン、ラミンA/C、スペクトリンリピート内包、核エンベロープ1(ネスプリン1)、スペクトリンリピート内包、核エンベロープ2(ネスプリン2)、膜貫通タンパク質43、トルシンA相互作用タンパク質1、ダブルホメオボックス4、染色体の柔軟ヒンジドメイン内包1の構造維持、ポリメラーゼIと転写物放出因子(M)、ミオチリン、カベオリン3、HSP-40ホモログ、サブファミリーB、ナンバー6、デスミン、トランスポーチン3、異種核リボヌクレオプロテインD型、カルパイン3、ディスフェリン、ガンマサルコグリカン、アルファサルコグリカン、ベータサルコグリカン、デルタ-サルコグリカン、テレトニン、三者モチーフ内包32、フクチン関連タンパク質、チチン、タンパク質-O-マンノシルトランスフェラーゼ1、アノクタミン5、タンパク質-O-マンノシルトランスフェラーゼ2、O-結合マンノースベータ1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、ジストログリカン1、プレクチン、デスミン、輸送タンパク質粒子複合体11、GDP-マンノースピロホスホリラーゼB、イソプレノイドシンターゼドメイン内包、酸性アルファ-グルコシダーゼプレプロタンパク質、LIM及び老化細胞抗原様ドメイン2、血管心外膜物質、トルシンA相互作用タンパク質1、プロテインO-グルコシルトランスフェラーゼ1、ドリチルリン酸マンノシルトランスフェラーゼポリペプチド3、バロシン内包タンパク質、プレクチン。
【0045】
本発明の組み合わせは、免疫寛容が求められるタンパク質産物に対する細胞性及び体液性免疫応答の発生を排除又は減弱するのに特に効果的である。より具体的には、この組み合わせは、導入遺伝子によってコーディングされるタンパク質産物に対する既存の体液性及びCD8+T細胞免疫にもかかわらず、CD8+T細胞免疫寛容を可能にする。
【0046】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、対象においてrAAVベクターのカセットによってコーディングされるタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導する際に使用するための、上記で開示された第1のrAAV及び第2のrAAVベクターの組み合わせに関し、ここで、免疫寛容を誘導することは、免疫寛容が求められるタンパク質産物(例えば、治療用タンパク質製品)に対する細胞性及び体液性免疫応答の発生を排除又は減弱することを含む。別の特定の実施形態では、本発明は、対象においてrAAVベクターのカセットによってコーディングされるタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導する際に使用するための、上記で開示された第1のrAAV及び第2のrAAVベクターの組み合わせに関し、ここで、免疫寛容の誘導には、CD8+T細胞の免疫寛容を可能にすることが含れる。別の特定の実施形態では、本発明は、対象においてrAAVベクターのカセットによってコーディングされるタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導する際に使用するための、上記で開示された第1のrAAV及び第2のrAAVベクターの組み合わせに関し、ここで、対象は、前記タンパク質産物に対する既存の免疫を有する。
【0047】
連続して投与される場合、本発明による組み合わせでの第1及び第2のrAAVベクターの投与間の時間間隔は、導入遺伝子によってコーディングされるタンパク質産物に対する免疫寛容が少なくとも維持されるか、又は最適になるべきである。
【0048】
本発明者らは、免疫寛容が求められる導入遺伝子を最初に肝臓投与した長時間後に免疫寛容を発見した。したがって、本発明の組み合わせにおいて、第1のrAAVベクターは、第2のrAAVベクターの前に、好ましくは1週間、さらにより好ましくは第2のrAAVベクターの1ヶ月前に投与される。
【0049】
有利には、核酸配列又は導入遺伝子は、T細胞又はB細胞によって認識されるエピトープを含むタンパク質産物をコーディングする。このエピトープは、対象によって認識され、特定の免疫応答を開始することができ、これは、遺伝子導入操作及び前記核酸配列によってコーディングされる導入遺伝子の治療的発現レベルの回復にとって有害である。
【0050】
本発明の文脈において、本発明者らは、驚くべきことに、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの組み合わせが、CD4、CD8及び/又はBリンパ球の以前の免疫化の状態を有した対象に投与され得ることを見出した。本発明のこの態様は、導入遺伝子に対する既存の免疫に遭遇する臨床状況に特に適している。まれなエクソンスキッピングイベント、遺伝子変異の逆転、又は以前に投与されたタンパク質置換療法に対する既存の免疫を発達させたために欠陥タンパク質の発現が自発的に部分的に回復した患者は、導入遺伝子に対するそのような既存の免疫を発生させ得る。より好ましい実施形態において、組み合わせは、前記核酸配列によってコーディングされるタンパク質産物に対してCD4、CD8及び/又はBリンパ球の顕著なレベルの免疫化を示す対象に投与される。本発明によれば、対象が、前記核酸配列からコーディング及び翻訳されたタンパク質産物に対して以前の免疫化状態を有していた場合に、組み合わせを投与することができる。好ましくは、組み合わせは、前記核酸配列からコーディング及び翻訳されたタンパク質産物に対する以前の免疫化状態が、前記タンパク質産物に特異的なCD4、CD8及び/又はBリンパ球の存在をもたらす対象に投与することができる。
【0051】
好ましい実施形態において、カセットを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの組み合わせは、リーダーペプチドをさらに含む。リーダーペプチドは、第1のrAAV又は第2のrAAVのみ、あるいは両方のrAAVに挿入できる。本発明の文脈において、リーダーペプチドは、転写又は翻訳の減衰、mRNAの転写又は翻訳を調節するメカニズムに関与する、細菌のリーダーRNA配列から翻訳されるのに特に適した短いペプチドである。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明による組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの組み合わせは、第1のrAAVベクターにおいて、肝細胞特異的プロモーター(hAAT)である肝臓特異的プロモーターを含む。肝細胞特異的プロモーター(hAAT)は、特に肝臓、より具体的には遺伝子治療における肝細胞を標的とするように適合されている。
【0053】
本発明の別の実施形態において、第1及び/又は第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11及びそれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択されるキャプシドを含む。上記のグループで選択されたキャプシドは、組み合わせの第1及び第2のrAAVベクターにおいて同じであり得るか、又は、本発明の組み合わせの各第1、第2のrAAVベクターのキャプシドが異なる。例えば、限定的ではないが、第1のrAAVベクターは、AAV7、AAV8又はAAV9キャプシドを含み、第2のrAAVベクターは、AAV1、AAV7、AAV8又はAAV9又はAAV2キャプシドを含む。別の例では、第1のrAAVベクターは、AAV8又はAAV9キャプシドを含み、第2のrAAVベクターは、AAV1又はAAV9又はAAV2キャプシドを含む。
【0054】
アデノ随伴ウイルスのキャプシドは、直径約25nmの二十面体を形成する。それは、構造タンパク質VP1(ウイルスタンパク質(viral protein)1)、VP2、VP3で構成され、1:1:10の比率で組み立てられている。VAA変異体の屈性は、主にVPタンパク質のループドメインによって決定される。アデノ随伴ウイルスが標的細胞に侵入するメカニズムは、血清型によって異なる。一般に、アデノ随伴ウイルス感染は、細胞受容体への付着から始まり、二次受容体を介したエンドサイトーシスによる内在化が続く。エンドソーム及び細胞質の輸送に続いて、ウイルスは脱キャップされ、核内にそのDNAを放出する。
【0055】
現在、AAVのキャプシドである11の血清型が同定されており、最もよく特徴付けられ、最も一般的に使用されているのはAAV2である。これらの血清型は、その向性又は感染する細胞の種類が異なるため、AAVは特定の細胞型を優先的に形質導入するための非常に有用なシステムになっている。以下の表は、AAV血清型の向性の要約を示しており、特定の臓器の形質導入に最適な血清型を示している。
【0056】
【0057】
本発明の文脈において、キャプシドは、好ましくは、AAV1、AAV6、AAV7、AAV8及びAAV9キャプシドからなる群から選択される。筋ジストロフィーを治療する状況で免疫寛容を誘導することを検討する場合、キャプシドは、AAV7、AAV8、及びAAV9からなる群からより好ましくは選択され、さらにより好ましくは、キャプシドはAAV8キャプシドである。
【0058】
実験のセクションに示されているように、筋肉において、本発明による組み合わせによってもたらされるタンパク質産物に対する細胞性及び体液性免疫応答の排除又は減弱は、免疫寛容が誘導されない場合に観察される筋肉組織の局所炎症をなくす結果となる。さらに、形質導入された細胞におけるタンパク質産物の発現の改善が観察される。これらの特徴により、本発明の組み合わせは筋ジストロフィーの治療のために特に好適になる。
【0059】
したがって、本発明の特定の実施形態は、対象における筋ジストロフィー、好ましくは単一遺伝子性筋障害の治療のために使用される、以下の組み合わせに関する:
i.キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;及び
ii.キャプシドと、5’ITR配列、筋肉特異的プロモーター、第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクターの免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;
第1のrAAVは肝臓を標的とするために投与され、第2のrAAVは筋肉組織を標的とするために投与される、組み合わせ。
【0060】
また、本発明のより具体的な実施形態は、対象における筋ジストロフィー、好ましくは単一遺伝子性筋障害の治療のために使用される、以下の組み合わせに関する:
i.キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;及び
ii.キャプシドと、5’ITR配列、筋肉特異的プロモーター、第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクターの免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、膜貫通配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;
第1のrAAVは肝臓を標的とするために投与され、第2のrAAVは筋肉組織を標的とするために投与される、組み合わせ。
【0061】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、筋ジストロフィーの治療のために使用される、上記で開示された第1のrAAV及び第2のrAAVベクターの組み合わせに関し、ここで、筋ジストロフィーの治療は、免疫寛容が求められているタンパク質産物に対する細胞性及び体液性免疫応答の発生を排除又は減弱することを含み、前記タンパク質産物が免疫系及び/又は対象の筋肉におけるその発現によって許容されることを可能にする。別の特定の実施形態において、筋ジストロフィーを治療することは、対象におけるタンパク質産物に対するCD8+T細胞免疫寛容を可能にすることを含む。より好ましい実施形態において、本発明は、上記のような第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターと、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターとの組み合わせに関し、ここで、目的の核酸配列は、筋肉関連タンパク質、好ましくは膜タンパク質をコーディングする。
【0062】
より具体的には、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターは、キャプシドと、5’ITR配列、筋肉特異的プロモーター、第1のrAAVベクターのカセットに挿入された核酸配列に対応する核酸配列、膜貫通配列、ポリA鎖を含むカセットとを含み、ここで、核酸配列は、対象において前記核酸配列からコーディング及び翻訳されたタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導する薬物として使用するために、筋肉に投与される。
【0063】
別の実施形態では、目的の核酸配列は、筋肉特異的タンパク質又は神経筋タンパク質をコーディングする。
【0064】
本発明の特定の実施形態において、組み合わせは、2つのrAAVベクターにおいて、以下からなる群から選択された配列をコーディングする核酸配列を含む:マイクロジストロフィン構築物、エメリン、ラミンA/C、スペクトリンリピート内包、核エンベロープ1(ネスプリン1)、スペクトリンリピート内包、核エンベロープ2(ネスプリン2)、膜貫通タンパク質43、トルシンA相互作用タンパク質1、ダブルホメオボックス4、染色体の柔軟ヒンジドメイン内包1の構造維持、ポリメラーゼIと転写物放出因子(M)、ミオチリン、カベオリン3、HSP-40ホモログ、サブファミリーB、ナンバー6、デスミン、トランスポーチン3、異種核リボヌクレオプロテインD型、カルパイン3、ディスフェリン、ガンマサルコグリカン、アルファサルコグリカン、ベータサルコグリカン、デルタ-サルコグリカン、テレトニン、三者モチーフ内包32、フクチン関連タンパク質、チチン、タンパク質-O-マンノシルトランスフェラーゼ1、アノクタミン5、タンパク質-O-マンノシルトランスフェラーゼ2、O-結合マンノースベータ1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、ジストログリカン1、プレクチン、デスミン、輸送タンパク質粒子複合体11、GDP-マンノースピロホスホリラーゼB、イソプレノイドシンターゼドメイン内包、酸性アルファ-グルコシダーゼプレプロタンパク質、LIM及び老化細胞抗原様ドメイン2、血管心外膜物質、トルシンA相互作用タンパク質1、プロテインO-グルコシルトランスフェラーゼ1、ドリチルリン酸マンノシルトランスフェラーゼポリペプチド3、バロシン内包タンパク質、プレクチン。
【0065】
より好ましくは、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター及び第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの組み合わせが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療のために使用される。
【0066】
代替の実施形態によれば、本発明は、キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター及び目的の組織に特異的な第2のプロモーター、免疫系寛容に有用な目的の核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターに関し、ここで、核酸配列は、対象の前記目的の組織にデリバリーされた前記核酸配列からコーディング及び翻訳されたタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導する際の薬物として使用するために、肝臓及び目的の組織に向けてデリバリーされるように投与される。
【0067】
医薬組成物
別の側面において、本発明は、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、並びに、キャプシドと、5’ITR配列、目的の組織に特異的なプロモーター、第1のrAAVベクターのカセットに挿入された核酸配列に対応する核酸配列、膜貫通配列、ポリA鎖含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含む医薬組成物に関し、ここで、核酸配列は、対象の前記対象組織にデリバリーされる前記核酸配列に対する免疫寛容を誘導する際の薬物として使用するために、対象の組織に向けて投与される。
【0068】
上記の第1のrAAVは、キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容に有用な目的の核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、rAAVであり、ここで、核酸配列は肝臓にデリバリーされるために投与される。免疫系寛容に有用な目的の核酸配列は、薬物として有用な目的の導入遺伝子に対応し、治療的に有効である。目的の導入遺伝子とは、本発明において、前記導入遺伝子の任意の産物を指す。本発明の文脈において、目的の導入遺伝子の産物は、薬物として有用であり、治療的にも有効である。
【0069】
本発明の医薬組成物は、治療的に活性であり、対象の疾患の治療に有用である目的の導入遺伝子を含む、肝臓にデリバリーされる第1のrAAVと、第1のrAAVベクターのカセットに挿入された核酸配列に対応し、目的の組織、例えば筋肉にデリバリーされるのに有用である導入遺伝子を含む第2のrAAVに関する。
【0070】
好ましい実施形態において、第1及び第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、同時に又は連続して、好ましくは同時に投与される。
【0071】
本発明の特定の態様では、医薬組成物は、2回又は3回、必要な回数だけ、及び/又は繰り返し投与することができる。好ましい実施形態では、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)投与の後に、第1のrAAVベクターのカセットに挿入された核酸配列に対応し、目的の組織、例えば筋肉にデリバリーされるのに有用である導入遺伝子を含む、異なる血清型のrAAVを使用した第3のアデノ随伴ウイルス(rAAV)投与が続く。このプロセスは、非交差反応性血清型を持つrAAVで数回繰り返すことができる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態において、医薬組成物は、静脈内又は筋肉内に投与される。もちろん、疾患に応じて、例えば眼内注射などの他の投与方式に従って組成物を投与することは可能である。
【0073】
本発明によれば、医薬組成物は、遺伝子治療、好ましくは単一遺伝子障害の遺伝子治療で使用するのに特に適している。複数遺伝子療法の治療が実行可能である可能性があるが、本発明による医薬組成物は、筋ジストロフィー、好ましくは単一遺伝子性筋障害、より好ましくはデュシェンヌ型筋ジストロフィーで使用するように特に適合されている。別の実施形態では、医薬組成物は、自己反応性B及びTリンパ球によって標的とされるタンパク質をコーディングする導入遺伝子を含むrAAVベクターを使用して、自己免疫障害を治療するのに有用である。
【0074】
方法
別の側面では、本発明は、本発明による第1のrAAVを投与するステップを含む、目的の導入遺伝子の拒絶を防止するための方法、又は目的の導入遺伝子を保護するための方法であって、以下の実験部分に記載される方法に関し、ここで、rAAVへの目的の核酸は、目的の導入遺伝子に対応する核酸である。
【0075】
一実施形態では、本発明による方法は、対象においてタンパク質産物に対する免疫寛容を誘導するための方法に関する。前記方法は、以下のステップを含み:
-キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを、対象に投与すること、及び
-キャプシドと、5’ITR配列、筋肉特異的プロモーター、第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクターの免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、膜貫通配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを、対象に投与すること、
それにより、第1及び/又は第2のrAVVベクターによってコーディングされる免疫系寛容対象のタンパク質産物の拒絶の予防又は低下を可能にする。前記方法は、筋ジストロフィー、好ましくは単一遺伝子型筋障害、さらにより好ましくはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療において特に好適である。
【0076】
一実施形態では、本発明の方法において、免疫寛容及び/又は目的の導入遺伝子によってコーディングされる寛容対象のタンパク質の発現を改善するために、rAAVベクターのそれぞれを対象に繰り返し投与することができる。
【0077】
また、特定の実施形態では、この方法は、寛容対象のタンパク質の所望の免疫寛容及び/又は発現を得るために、上記の第1のrAAVの対象への反復投与を含む。さらに特定の実施形態では、このrAAVは、対象に1回、2回、又は3回も投与される。
【0078】
別の特定の実施形態では、この方法は、寛容対象のタンパク質の所望の免疫寛容及び/又は発現を得るために、上記のように第2のrAAVの対象への反復投与を含む。さらに特定の実施形態では、このrAAVは、対象に1回、2回、又は3回も投与される。
【0079】
別の特定の実施形態において、上記の第1及び第2のrAAVの投与は、例えば、第2のrAAVの投与時に肝臓において所望の免疫寛容誘導を得るために、時間的に分離され、それにより、免疫寛容の誘導が求められている導入遺伝子によってコーディングされるタンパク質に対する免疫寛容につき、第2のrAAVの投与の効果を最適化する。驚くべきことに、この方法は、前記目的の導入遺伝子による事前の免疫化の後に投与されるように特に適合されている。
【0080】
特定の実施形態では、本発明の方法は、寛容対象のタンパク質産物に対する既存の免疫の存在を試験又は検出するステップをさらに含む。前記検出は、例えば、免疫寛容が求められている導入遺伝子によってコーディングされるタンパク質に対する抗体又は反応性免疫細胞の存在を対象において検出するために、当業者に周知の任意の免疫学的方法を使用することによって容易に実行することができる。このステップは、上記の2つのrAAVベクターの投与ステップの前に実行できる。これは、例えば、各rAAVベクターの投与回数又は治療期間を決定する際に、治療を対象に適合させるために好適であり得る。このステップは、例えば、対象における免疫寛容の誘導を評価するために、上記の2つのrAAVベクターの投与ステップの後に適用することもできる。
【0081】
本発明の治療方法及び使用のためのキット
本発明はまた、本発明の治療的使用、方法又は組成物のいずれかを実施するのに適したキットに関する。
【0082】
したがって、本発明のさらなる目的は、以下を含むキットである:
-キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;及び
-キャプシドと、5’ITR配列、筋肉特異的プロモーター、第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクター(i)の免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター。
【0083】
特定の実施形態では、前記キットは以下を含む:
-キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第1の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;及び
-キャプシドと、5’ITR配列、筋肉特異的プロモーター、第1の組換えアデノ随伴ウイルスベクター(i)の免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、膜貫通配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、第2の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター。
【0084】
別の特定の実施形態では、前記キットは、寛容対象のタンパク質産物(前記第1及び第2のrAAVのそれぞれによってデリバリーされる核酸配列からコーディング及び翻訳される)に対する免疫寛容を誘導する際に前記第1及び第2のrAAVのそれぞれを使用するための説明書をさらに含む。
【0085】
より特定の実施形態では、前記キットは、対象の筋ジストロフィー、好ましくは単一遺伝子性筋障害を治療するための、寛容対象のタンパク質産物(前記第1及び第2のrAAVのそれぞれによってデリバリーされる核酸配列からコーディング及び翻訳される)に対する免疫寛容を誘導する際に前記及び第2のrAAVのそれぞれについての説明書をさらに含む。より具体的には、さらなる実施形態では、対象はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を患っている。これに関して、本発明によるキットにおいて、前記第1のrAAV及び第2のrAAVは、本発明のrAAVベクター、治療方法又は使用、及び医薬組成物について上記した特徴のいずれかを含む。
【0086】
上記で開示したように、本発明による治療用途又は方法において、第1及び第2のrAAVは、長い又は短い時間間隔で、同じ製剤で又は別々に対象に投与することができる。また、本発明はまた、本発明の使用又は方法の枠内で、肝臓の形質導入に適したキット及び筋肉の形質導入に適した別のキットに関する。
【0087】
よりさらなる実施形態では、本発明は、以下を含むキットに関する:
-キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;及び
-寛容対象のタンパク質産物(前記rAAVによってデリバリーされる核酸配列からコーディング及び翻訳される)に対する免疫寛容を誘導する際の前記rAAVの使用に関する説明書、より具体的には、対象の肝臓における標的化及び形質導入のための、さらにより具体的には、対象における筋ジストロフィー、好ましくは単一遺伝子性筋障害を治療するための説明書。
【0088】
別のさらなる実施形態では、本発明は、以下を含むキットに関する:
-キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;及び
-寛容対象のタンパク質産物(前記rAAVによってデリバリーされる核酸配列からコーディング及び翻訳される)に対する免疫寛容を誘導する際の前記rAAVの使用に関する説明書、より具体的には、対象の骨格筋における標的化及び形質導入のための、さらにより具体的には、対象における筋ジストロフィー、好ましくは単一遺伝子性筋障害を治療するための説明書。
【0089】
別のさらなる実施形態では、本発明は、以下を含むキットに関する:
-キャプシドと、5’ITR配列、肝臓特異的プロモーター、免疫系寛容対象のタンパク質産物をコーディングする核酸配列、膜貫通配列、ポリA鎖を含むカセットとを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;及び
-寛容対象のタンパク質産物(前記rAAVによってデリバリーされる核酸配列からコーディング及び翻訳される)に対する免疫寛容を誘導する際の前記rAAVの使用に関する説明書、より具体的には、対象の骨格筋における標的化及び形質導入のための、さらにより具体的には、対象における筋ジストロフィー、好ましくは単一遺伝子性筋障害を治療するための説明書。
【0090】
本発明の組み合わせの肝臓特異的プロモーターを含むrAAV及び筋肉特異的プロモーターを含むrAAVが対象に連続して投与される場合、肝臓又は筋肉標的化のいずれかに専用のキットの使用は特に好適であり、さまざまな経路で投与するとさらに好適である。2つの別々のキットのさらなる目的は、例えば、筋肉を標的とする第2のrAAVベクターを投与する前に、望ましい肝臓特異的免疫寛容を得るために、肝臓の標的化と筋肉の標的化の間に時間間隔が適用される場合、さらに第1のAAVの反復投与が適用される場合にある。また、筋肉特異的プロモーターを伴うrAAVの反復投与を適用して、例えば、寛容対象のタンパク質産物の望ましい免疫寛容及び/又は筋細胞による発現を得ることができる。
【0091】
本発明によるキットにおいて、肝臓又は筋肉特異的プロモーターのいずれかを有するrAAVベクターのそれぞれは、例えば、投与経路又は前記rAAVベクターのそれぞれの投与回数に応じて、単位剤形である。有利なことに、前記キットは、寛容対象のペプチドの望ましい免疫寛容を得るために適切な数の単位剤形を含むことができる。
【0092】
特定の実施形態では、本発明によるキットは、例えば、適切な免疫寛容及び/又は効果的な治療を誘発するための治療プロトコル(例えば、第1及び第2のrAAVベクターのそれぞれの用量又は投与回数を適応させること)を決定するために、rAAVベクターにコーディングされたタンパク質産物に対する既存の免疫を試験又は検出するための手段をさらに含む。
【0093】
本発明のさらなる態様及び利点は、以下の実施例に開示されるが、これらは例示と見なされるべきである。
【実施例】
【0094】
材料と方法
マウス及びインビボ(in vivo)注射
6~8週齢のC57BL/6JRjオスマウスは、JANVIER LABSから購入し、特定病原体除去条件下で動物施設に収容し、フランス及びヨーロッパの指令に従って取り扱った。筋肉注射では、マウスをイソフルランで麻酔し、25μLのPBSで希釈した指定用量のrAAVベクターを、30GRNハミルトンシリンジを使用して左前脛骨筋に注射した。静脈注射では、PBSで希釈された200μLの示されたrAAVベクターを、0.5mLのインスリンMyjector U-100シリンジ(TERUMO)を使用して尾静脈に注射した。
【0095】
プラスミド構築及び組換えAAVベクターの産生
mOVA19 cDNAを、PCRによってpSMD2rAAV1又はrAAV8プラスミドのSPc5-12筋肉特異的プロモーター又はhAAT肝細胞特異的プロモーターとポリAシグナルの間に挿入し、それぞれ、筋肉を標的とするrAAV1/SPc5-12-mOVA(rAAV1/mOVA)又は肝臓を標的とするrAAV8/hAAT-mOVA(rAAV8/mOVA)を作成した。あるいは、GFPタンパク質の完全長さcDNA配列をmOVAcDNAの膜貫通ドメインに融合させて、mOVA-GFP配列を作成し、上記のように、rAAV1/SPc5-12-mOVA-GFP(rAAV1/mOVA-GFP)及びrAAV8/hAAT-mOVA-GFP(rAAV8/mOVA-GFP)を作成した。この試験で使用されたすべてのAAVベクターは、アデノウイルスを含まない一過性トランスフェクション法を使用して生成され、前述のように精製された(Vidalら、2018)。AAVベクターストックの力価は、リアルタイムqPCRを使用して決定され、SDS-PAGE、続いてSYPRORubyタンパク質ゲル染色及びバンドデンシトメトリーによって確認された。
【0096】
OVAmRNAの定量化
Nucleospin RNA plusキット(MACHEREY-NALGEL、デューレン、ドイツ)を使用して、各臓器の20個の12μm凍結切片から全RNAを抽出した。OVAmRNAの定量化のために、SuperscriptIIキット(Invitrogen)を使用して100ngのトータルRNAを逆転写した。次に、4μLのRT-PCR産物は、Ova-F(5’-AAGCAGGCAGAGAGGTGGTA-3’)、Ova-R(5’-GAATGGATGGTCAGCCCTAA-3’)、β-アクチン-F(5’-AAGATCTGGCACCACACCTTCT-3’)、及びβ-アクチン-R(5’-TTTTCACGGTTGGCCTTAGG-3’)プライマーを使用して、リアルタイムPCR増幅にかけた。すべての反応混合物は、QuantiFAst SYBR Green PCRキットの説明書(QUIAGEN、ドイツ)に従って作成し、前述の53のように、OVAプライマーを500nmol/Lで、β-アクチンプライマーを400nmol/Lで使用した。各サンプルのOVAmRNAの絶対量は、ΔΔCt式を使用して計算及び正規化された:1/(2^(-(Ctβactin-CtOVA)サンプル-(Ctβactin-CtOVA)参照)。この式で使用される参照は、各実験で定義された二重注射「rAAV1/mOVA筋肉注射及びrAAV8/mOVA静脈注射」グループの平均ΔCt値である。
【0097】
リンパ球の分離
末梢血リンパ球の単離のために、赤血球は、BD Pharm Lyseバッファー(BD Biosciences)を用いた低張ショックによって排除された。脾臓細胞を単離するために、脾臓を1×PBSの0.1%HSAにおいて手動で粉砕した。肝臓からリンパ球を分離するために、肝臓を収集し、1×PBSの0.1%HSAにおいて手動で粉砕し、4mLの1×PBSの0.1%HSAにおいて再懸濁し、細胞の破片を除去するために4℃で2分間30gで回転させた。上清を300gで4℃で5分間回転させた。細胞ペレットを室温で40%パーコール(Sigma、USA)に再懸濁した。次に、室温の70%パーコール溶液2mLを40%細胞懸濁液の下に加えた。パーコール勾配を1300gで20分間、室温で中断せずに遠心分離した。上部脂肪層を除去し、界面細胞バンドを収集した。
【0098】
フローサイトメトリー分析
テトラマー染色については、Ghenassia Aら(2017)又はGross DAら(2019)によって以前に説明された方法に従った。簡単に説明すると、細胞懸濁液を最初にiTAgテトラマー/PE-H-2 Kb OVA(Clinisciences、ナンテール、フランス)と室温で30分間培養し、次に抗CD16/CD32抗体(2.4G2、Bio X Cell)で4℃で10分間ブロックし、続いて、BV421又はAPC抗CD8α(53-6.7)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)抗CD44(IM7)、BV421抗PD-1(29F.1A12)、PE-Cy7抗CD4(RM4-5)の組み合わせを使用して、4℃で15分間膜染色した。
【0099】
細胞内染色では、細胞懸濁液を最初に抗CD16/CD32抗体(2.4G2、Bio X Cell)で4℃で10分間ブロックし、続いて、FITC抗CD44(IM7)、V500抗CD4(RM4-5)、PE-Cy7抗CD8α(53-6.7)及びBV421抗PD-1(29F.1A12)の組み合わせを使用して4℃で15分間膜染色した。次に、eBioscience固定/透過処理(Thermo Fisher)を使用して、製造元の指示に従って細胞を固定し、透過処理した。次に、透過処理した細胞を抗CD16/CD32抗体(2.4G2、Bio X Cell)で4℃で15分間ブロックし、続いて、eBioscience透過処理バッファー(eBioscience)でPE抗Foxp3(FJK-16a)及びAPC抗-IFNγ(XMG1.2)を使用して、4℃で30分間細胞内染色を行った。
【0100】
どちらの場合も、LIVE/DEAD固定近赤外線死細胞染色キット(Life Technologies)を使用して死細胞を除外した。LSR-II Fortessaフローサイトメーターでデータを収集し、FlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用してさらに分析した。特に明記しない限り、すべての抗体はBioLegendから購入した。
【0101】
筋肉セクションのIHC分析
オスのC57BL/6マウスに、筋肉特異的SPc5-12プロモーター下でmOVA-GFPをコーディングするrAAV1の1010のウイルスゲノム(vg)を左前脛骨筋に注射し、同時に肝臓特異的プロモーターhAATの下でmOVA-GFPをコーディングする1×1010vgのrAAV8を静脈注射し、又はしなかった。14日目に死亡させた後、筋肉の凍結切片を調製し、緑色で示されたGFP、AlexaFluor(登録商標)647標識ヤギ抗ラット抗体(Abcam)によって検出されたMAb抗マウスMHCクラスII M5/114(Bio X Cell)を使用した赤の主要組織適合遺伝子クラスII(MHCII)分子、及び青の核のDAPIに染色した。代表的なセクションは、40倍の対物レンズと200μm×200μmのフィールドサイズを備えたライカSP8共焦点イメージングステーションで記録された。
【0102】
抗OVA IgG ELISA
ELISAマイクロタイタープレート(Nunc)を、炭酸緩衝液pH9.5中のOVAタンパク質(Sigma-Aldrich)の10μg/ml希釈液のウェルあたり50μlで一晩コーティングした。次に、プレートを1×PBSの0.05%Tweenで3回洗浄し、ブロッキングバッファー:1×PBSの2%BSAで室温で2時間ブロックし、3回洗浄した。実験血清、及び不完全フロイントアジュバントに乳化したOVAタンパク質で免疫したマウスの参照血清の段階希釈液をブロッキングバッファーで調製し、96ウェルプレートで37℃で1時間培養した。次に、プレートを2回洗浄し、結合した抗OVA IgGを、ブロッキングバッファーで1/4000に希釈した100μLのビオチン化ウマ抗マウスIgG(Vector Laboratories、Eurobio、レ・ジュリス、フランス)とともに培養した。次にプレートを2回洗浄し、ブロッキングバッファーで1/4000に希釈した100μL/ウェルのHorseradishペルオキシダーゼアビジン(Vector Laboratories、Eurobio、レ・ジュリス、フランス)と室温で30分間培養し、再度3回洗浄した。最後に、抗OVA IgGは、TMB基質試薬セット(BD Biosciences)で明らかにされた。50μL/ウェルのH2SO4 2Nで3~5分後に反応を停止し、450nmでの吸光度を測定した。抗体レベルは、検量線の直線範囲を考慮して、同じ光学密度に対応する参照血清希釈に対するサンプル希釈の比率として表される。
【0103】
統計分析
すべてのデータは平均±SEMとして示される。すべての統計分析について、マン・ホイットニー検定が実行された。データは、p値が<0.05、すなわち*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001である場合に有意であると見なされ、p値が>0.05の場合に有意ではない(ns)。
【0104】
結果
導入遺伝子特異的免疫寛容は、筋肉肝臓二重形質導入によって確立される。
rAAV肝臓形質導入が筋肉導入遺伝子生着に対する免疫寛容を促進することを確立するために、発明者らは、筋肉におけるrAAV遺伝子導入後に高度に免疫原性であると報告されている膜形態のオーバルブミン(mOVA)をコーディングするモデル導入遺伝子を選択する。そのために、2つのベクターが設計された:筋肉特異的プロモーターSPc5-12の下でmOVAをコーディングする筋肉向性rAAV1ベクターと肝臓特異的プロモーターhAATの下で同じmOVA導入遺伝子をコーディングする肝臓向性rAAV8ベクター(
図2)。予想通り、rAAV1/mOVAベクターの筋肉注射(im)は、注射後d14とd28に血中の強力な抗OVA CD8
+Kb/OVA257テトラマー
+(テトラマー
+)T細胞応答を誘導し(
図2A-2B)、d29までに筋肉のOVA発現が大幅に減少する(
図2D)。これは、免疫関連の導入遺伝子拒絶を示す。注目すべきことに、肝臓リンパ球集団の分析は、血液と比較して抗OVA CD8
+T細胞の割合が高いことを証明した。これは、活性化CD8
+T細胞が抗原認識とは無関係に肝臓に蓄積できることを示す以前の報告と一致する結果である。これらの導入遺伝子特異的CD8
+T細胞応答は、OVAに対する体液性応答に関連している(
図2C)。まとめると、これらの結果は、rAAV1/mOVA筋標的が導入遺伝子拒絶に関連する細胞性及び体液性応答を誘発したことを示している。
【0105】
並行して、導入遺伝子の免疫応答と拒絶を軽減する肝臓向性rAAV8/mOVAベクターの能力を評価し、10
10のvgrAAV8/mOVAの尾静脈静脈注射(iv)が、d14及びd28における血中の抗OVAテトラマー
+CD8
+T細胞応答も抗OVA抗体応答も誘導しないことを発見した(図示せず)。肝臓のmOVA発現は、これらの条件下でRT-qPCRによって確認され(図示せず)、導入遺伝子に対する細胞性及び体液性応答の欠如に応じた導入遺伝子産物の長期受容性が証明された。次に、それぞれ筋向性rAAV1及び肝臓向性rAAV8ベクターの筋肉注射及び静脈注射を同時に使用して、d14とd28における血液(
図2A-2B)及びd29の肝臓リンパ球集団(
図S2)には抗OVA CD8
+T細胞応答は見られず、OVA抗体反応も見られなかった(
図2C)。導入遺伝子発現の維持は、免疫拒絶の欠如を証明する筋肉(
図2D)と肝臓(データは図示せず)の両方で効果的であった。次に、この抑制の特異性を評価し、rAAV1/mOVAを注射して筋肉を標的にすると同時に、無関係なrAAV8/hAAT-hFIXを注射して肝臓を標的にし、筋肉注射のみのrAAV1/mOVA注射条件と同様にOVAに対する細胞性及び体液性応答を証明した(
図8A-C)。ここで、筋肉と肝臓に異なる導入遺伝子が存在すると、筋肉のmOVA導入遺伝子が完全に拒絶され(
図8D)、肝臓のhFIX導入遺伝子が完全に受け入れられた(図示せず)。この結果は、寛容誘導プロセスが筋肉と肝臓で同じ導入遺伝子の二重発現を必要とすることを示している。注目すべきことに、筋肉肝臓二重形質導入プロトコルでは、rAAV1及びrAAV8キャプシドに対する体液性応答の低下は観察されなかった(データは図示せず)。また、血液循環から肝臓へのrAAV1/mOVA漏出の最終的な寛容効果を評価し、静脈注射ルートを使用したrAAV1/mOVAの注射は、筋肉形質導入に対する免疫保護を与えることができないことを発見した(データは図示せず)。これは、実際のrAAV8/hAAT-mOVA肝臓標的が導入遺伝子特異的寛容を促進するために必須であることを示している。これらの結果を補完するために、mOVA-GFP構築物をコーディングするrAAVベクターの第2のセットを設計した。ここで、完全長さeGFPタンパク質はmOVAの膜貫通部分の後に融合され(
図1)、筋肉導入遺伝子の生着を達成するために、同じ導入遺伝子の筋肉-肝臓の二重発現について同様の要件を発見した(
図9)。注目すべきことに、mOVA-GFP構築物はMHCクラスIIエピトープを含み、これにより、検出可能なIFNγ産生CD4
+T細胞が誘導され、対応するGFPペプチドで最初にプライミングされたマウスのOVA特異的抗体応答が増強される(
図9C)。結論として、rAAVベクターによる筋肉と肝臓の二重標的は、導入遺伝子に対する細胞性及び体液性免疫応答の発生を排除し、筋肉での導入遺伝子の発現を可能にするのに役立つ。
【0106】
次に、この導入遺伝子特異的寛容の持続可能性と堅牢性を調査し、d7又はd28でマウスにrAAV1/mOVAの筋肉注射を試す前に、静脈注射ルートを介してrAAV8/mOVAベクターを注射した(
図3A)。どちらの場合も、体液性(データは図示せず)が検出されず、及び限られた細胞性応答(
図3B)が検出され、OVA発現はrAAV1/mOVAの筋肉注射のみのコントロールと比較して筋肉で有意に維持された(
図3C)。mOVAに対するこの末梢性寛容の堅牢性を評価するために、d7又はd28のマウスの第2のセットにrAAV1/mOVA-GFPの筋肉注射を試した(
図10A)。これは、CD4
+T細胞応答をプライミングできるGFP配列内に免疫反応性MHCクラスIIエピトープを持っている(
図9C)。前と同様、体液性(データは図示せず)が検出されず、及び限られた細胞性応答(
図10B)が検出され、筋肉におけるOVA-GFP発現は持続した(
図10C)。したがって、肝臓導入遺伝子の発現に関連するこの免疫寛容は、追加のMHC IIエピトープを含む筋肉導入遺伝子を使用した場合でも、堅牢で長寿命であるように見える。
【0107】
mOVA-GFP導入遺伝子の筋肉肝臓二重形質導入後の筋肉における強力な寛容誘導及び局所炎症の欠如。
導入遺伝子の発現レベルと筋肉の局所炎症のレベルを視覚化するために、rAAV1/mOVA-GFPを注射して筋肉を標的とし、同時又は異時にrAAV8/mOVA-GFPを注射して肝臓を標的とし、MHC II陽性細胞及び核染色の存在を介したGFP染色及び炎症細胞の局所的誘引を証明した。高レベルの炎症細胞は、rAAV1/mOVA-GFP筋肉注射のみの条件でOVA-GFP陽性筋線維に近接して検出され(
図11A)、一方で、筋線維は、筋肉rAAV1/mOVA-GFP及び肝臓rAAV8/mOVA-GFPの二重注射条件では、炎症細胞なしでmOVA-GFPに対して集中的かつ完全に明確である(
図11B)。したがって、
図8の結果と合わせて、これらの結果は、同じ導入遺伝子の二重発現が筋肉と肝臓で達成される場合、筋肉肝臓二重形質導入が、筋肉におけるmOVA-GFP導入遺伝子の完全かつ強力な免疫寛容につながることを示している。
【0108】
既存の免疫の存在下での免疫寛容及び疲弊したOVA特異的CD8
+T細胞の誘導。
筋肉肝臓二重形質導入が筋肉導入遺伝子の生着を可能にすることを確立したので、導入遺伝子産物に対する既存の免疫応答が導入遺伝子特異的寛容の誘導を損なうかどうかを評価した。そのために、マウスは、d0で不完全フロイントアジュバント(incomplete Freund’s adjuvant、IFA)に乳化されたOVAタンパク質で事前免疫化され、又は免疫化されずに、14日目に、rAAV1/mOVAの単一の筋肉注射、又はrAAV1/mOVA筋肉注射とrAAV8/mOVA静脈注射の二重注射をした。予想通り、OVA/IFA免疫はrAAV1/mOVA筋肉注射後にモニターされた体液性抗OVA応答をプライミングするのに特に効果的であった(
図4B)。重要なことに、rAAV1/mOVA筋肉注射とrAAV8/mOVA静脈注射の二重注射により、OVA特異的CD8
+T細胞応答と体液性応答が非常に低レベルに低下し(
図4A-B)、既存の免疫の発生にもかかわらず、筋肉での長期OVA発現が保証されることがわかった(
図4C)。したがって、筋肉肝臓二重形質導入によって付与される導入遺伝子特異的寛容は、導入遺伝子産物に対する既存の抗体応答だけでなく、出現及び記憶CD8
+T細胞の両方を無効化する。
【0109】
上に示したように、筋肉肝臓二重形質導入は、宿主に存在する既存の導入遺伝子特異的免疫に関連する有害反応を防ぐことができる。これらの条件下で、最初にOVA/IFAでプライミングされ、rAAV8/mOVA静脈注射を受けたマウスの脾臓に、導入遺伝子特異的CD8
+T細胞の残存部分が存在することがわかった(データは図示せず)。OVA/IFAの事前免疫化は導入遺伝子の筋肉発現を損なうことはなかったため(
図4C)、OVA/IFA又はOVA257ペプチド/IFA免疫化とそれに続く筋肉肝臓二重形質導入後に存在する残存OVA特異的CD8
+T細胞の表現型を分析した(
図5)。OVA257ペプチド/IFA注入条件を使用して、CD4
+T細胞及びB細胞のプライミングとは無関係に導入遺伝子特異的CD8
+T細胞の帰趨を視覚化した。これらの後半の2つの事前免疫条件では、筋肉肝臓二重形質導入により、rAAVの筋肉単一形質導入と比較してOVA特異的CD8
+T細胞の量が大幅に減少し、両方の場合にOVA特異的CD8
+T細胞の残存部分が存在した(
図5A-B)。興味深いことに、これらの残存OVA特異的CD8
+T細胞は、筋肉形質導入のみの後に生成されたもの(
図5C)と比較して、高レベルのPD-1(
図5A-5C)及びわずかに高レベルのCD44及びCD8を発現することがわかった。これは、OVA特異的CD8
+エフェクターT細胞が疲弊したCD8
+T細胞に変換される可能性を高める。
【0110】
これらの残存OVA特異的CD8
+T細胞の機能的能力を定性するために、PD-1表面発現と組み合わせたMHC I制限OVA257ペプチド刺激に応答してINFγを産生する能力を試験した(
図6)。細胞内染色によって証明されるように、rAAV1/mOVA筋肉注射による筋肉のみの形質導入は主に、INFγ産生が高くPD-1表面発現が低いOVA特異的CD8
+T細胞を生成した。一方、rAAV1/mOVA筋肉注射とrAAV8/mOVA静脈注射の筋肉肝臓二重形質導入は主に、INFγ産生能力を持たないの残存OVA特異的CD8
+T細胞を生成した(
図6A)。定量化すると、OVA/IFAとOVA257/IFAの両方の事前免疫条件では、rAAV1/mOVA筋肉注射とrAAV8/mOVA静脈注射の同時注射の後、INFγの産生は観察されなかった(
図6B)。その結果、筋肉肝臓二重形質導入後に観察された高レベルのPD-1を発現する残存OVA特異的CD8
+T細胞(
図5)は、INFγ産生能を欠き、通常は疲弊したCD8
+T細胞に対応する。さらに、OVA筋導入遺伝子の生着は、事前免疫とは無関係に、rAAV1/mOVA筋肉注射とrAAV8/mOVA静脈注射の二重注射後に効果的であった(
図6C)。これらの結果は、OVA/IFA及びOVA257ペプチド/IFAによって誘導される既存のCD8
+T細胞免疫が存在する場合でも、筋肉肝臓二重形質導入は、典型的に疲弊した表現型を示すCD8
+T細胞の生成を部分的に表現するメカニズムを介して、筋肉のOVA発現を保護するのに十分であることを示している。
【0111】
導入遺伝子特異的CD8
+T細胞寛容は、既存のCD4
+T細胞応答にかかわらず確立される。
最後に、ジストロフィンに対する既存のCD4
+T細胞応答がDMD患者24、25で観察されているため、既存のOVA特異的CD4
+T細胞応答が筋肉肝臓二重標的後に達成される導入遺伝子特異的寛容のレベルに影響を与える可能性があるかどうか疑問に思った。そのために、rAAV1/mOVAの筋肉注射、又はrAAV1/mOVA筋肉注射とrAAV8/mOVA静脈注射の二重注射の前に、マウスを最初にMHCクラス II制限OVA323エピトープで免疫化した。予想通り、OVA323免疫は、rAAV1/mOVAの単一の筋肉注射(
図7A)及び抗OVA体液性応答(
図7B)の後に生成された活性化CD4
+CD44
hiT細胞におけるINFγ産生を有意にプライミングすることを発見した。rAAV1/mOVA筋肉注射とrAAV8/mOVA静脈注射の二重注射をしたマウスでは、INFγ産生は、これらの条件下で観察されたOVA257テトラマー
+CD8
+T細胞及び体液性応答の欠如に応じて(
図7B-C)、筋肉のOVA発現(
図7D)を損なうことなく、活性化CD4
+CD44
hiT細胞(
図7A)で等しく検出された。全体として、OVA323免疫化は、筋肉注射のみの後に抗体産生を促進するのに効果的であったが(
図7B)、筋肉注射と静脈注射の二重注射は、体液性及び細胞性CD8
+Tの制御にオペラントであり、導入遺伝子に対するCD4
+T細胞応答ではなく、これは筋肉のOVA発現を保護するのに十分であった。結果は、既存のCD4
+T細胞応答にもかかわらず、筋肉肝臓二重形質導入後も持続した導入遺伝子特異的CD8
+T細胞寛容が確立されていることを示している。
【0112】
結論
筋肉の適用に対する導入遺伝子特異的寛容の誘導に対する同時の筋肉及び肝臓の形質導入の影響を扱った先行研究はなく、これらの状況下で既存の免疫が筋肉導入遺伝子の生着に有害であるかどうかを扱った研究はない。
【0113】
驚くべきことに、本発明者らは、筋肉及び肝細胞の二重OVA発現が、肝臓、血液、及び脾臓におけるOVA特異的CD8+T細胞の完全な欠如をもたらすことを発見した。さらに、本発明者らは、rAAV1/SPc5-12-mOVA筋肉特異的ベクターを単一筋肉注射した後、肝臓におけるOVA特異的CD8+T細胞の蓄積を観察した。これは、局所抗原発現とは無関係に肝臓で発生する活性化CD8+T細胞の一過性の蓄積を反映している。
【0114】
これらの結果は、筋肉形質導入によって生成された活性化OVA特異的CD8+T細胞が、OVA抗原との二次同族相互作用が起こり得る肝臓組織へのアクセスを獲得し、OVA特異的CD8+T細胞の廃棄及び/又は機能的不活性化をもたらすことを示している。実際、CD8+T細胞は、自殺細胞内細胞貫入と呼ばれるメカニズムで肝細胞による直接的な捕捉と内在化による抗原認識に続いて、肝臓に配置されることが示されている。
【0115】
筋肉肝臓rAAV二重標的の文脈での結果は、導入遺伝子に関する宿主免疫系の初期状態に応じて、内因性CD8+T細胞の2つの結果を示している。マウスが導入遺伝子にナイーブである場合、導入遺伝子特異的CD8+T細胞は試験されたすべての組織に存在しない。導入遺伝子に対する既存の免疫を誘導するためにマウスをプライミングすると、発明者らは、脾臓におけるOVA特異的CD8+T細胞が大幅に減少し、OVA特異的CD8+T細胞の残りの部分が高レベルのPD-1を発現し、CD44の発現がいくらか高くなることを観察した。これは、疲弊したCD8+T細胞に見られる特徴であるが、それらの状態を明確に示すには不十分である。これらのOVA特異的CD8+T細胞の機能を試験したところ、発明者らは、これらのPD-1hiCD8+T細胞が抗原刺激に応答してIFNγを産生しないことを発見した。これは、筋肉における持続的な導入遺伝子の発現と相関し、疲弊したCD8+T細胞の状態を支持する結果である。
【0116】
さらに、結果はここで、宿主の抗原提示細胞による定義された筋肉導入遺伝子のプロセシングがCD8+T細胞応答につながることを示している。これは、既存の免疫の存在下でも、肝細胞で発現した宿主MHCクラスI導入遺伝子複合体の認識後に寛容される。
【0117】
導入遺伝子に対する体液性応答を監視して、本研究は筋肉関連導入遺伝子にも拡張される。導入遺伝子に対する体液性応答は、筋肉肝臓二重形質導入後に劇的に減少したが、それにもかかわらず、OVAタンパク質で事前免疫された受容者において寛容誘導後に抗OVA抗体の限界レベルが検出された、OVA257ペプチドでは検出されなかった。
【0118】
抗OVA抗体産生に対するOVA特異的CD4+T細胞応答の可能性を評価して、本発明者らは、MHCクラスII制限OVAエピトープOVA323ペプチドによる事前免疫がCD4+T細胞をプライミングするのに効果的であり、rAAV/mOVA筋転移後の抗OVA抗体産生を増強することを観察し、導入遺伝子に対する体液性免疫におけるCD4+T細胞応答の役割を確認した。
【0119】
OVA323ペプチド免疫化後に生成された導入遺伝子特異的CD4+T細胞の帰趨を調査したところ、筋肉肝臓二重形質導入により、検出可能な抗OVA323IFNγ産生CD4+T細胞が得られたが、抗OVA抗体応答のレベルはほとんど検出されなかった。したがって、導入遺伝子に対する既存の免疫に遭遇する臨床状況にとって非常に興味深いことに、抗OVA CD4+T細胞応答の存在がCD8+T細胞の誘導及び体液性耐性を損なうことはなかった。この結果は、CD4+T細胞の質的変化、及びFIXへの肝臓ベースの寛容誘導がCD4+T細胞コンパートメントに伝達可能な寛容原性特性を与えるという事実と比較し得る。ここで、モデル導入遺伝子システムは、複数の状況で既存の免疫応答を打ち消す肝臓ベースの寛容誘導の有効性を総括することを可能にした。既存の体液性応答と、CD8+及びCD4+T細胞応答の両方が、筋肉肝臓二重形質導入遺伝子発現によって影響を受けることが発見され、導入遺伝子特異的CD8+T細胞は保持及び/又は枯渇と疲弊し、導入遺伝子特異的CD4+T細胞は存在したままであるが、抗体産生を促進することはできなかった。これらのCD4+T細胞は、多発性硬化症モデルで証明されているように、おそらくFoxp3+Treg細胞への変換を受けることができる細胞のプールを形成している。
【0120】
治療用導入遺伝子に対する筋肉の免疫応答を克服することは、筋ジストロフィーの治療において重要である。筋肉の単一遺伝子障害は、特にデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者において、組織の炎症を引き起こす可能性がある。収縮によって誘発される損傷は、自然免疫を刺激し、慢性的な筋肉の炎症を促進し、治療用導入遺伝子に対する有害な免疫応答を悪化させる可能性のある細胞質内容物を放出させる。本明細書では、筋肉と肝臓での導入遺伝子の同時デリバリーは、既存の免疫による有害な免疫応答の対処に関連している。
【0121】
参考文献
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【配列表】
【国際調査報告】