(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(54)【発明の名称】複合材料ロービングを配置するためのトーチ及びプラズマ加熱方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/32 20060101AFI20220707BHJP
B29C 43/28 20060101ALI20220707BHJP
B29C 43/46 20060101ALI20220707BHJP
B29C 43/52 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
H05H1/32
B29C43/28
B29C43/46
B29C43/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568248
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2020063140
(87)【国際公開番号】W WO2020229449
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519436127
【氏名又は名称】アクリビア
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】カミー-ペイレ, フレデリック
【テーマコード(参考)】
2G084
4F204
【Fターム(参考)】
2G084AA15
2G084BB24
2G084CC23
2G084CC25
2G084CC34
2G084DD12
2G084DD25
2G084DD35
2G084DD63
2G084FF13
2G084FF33
2G084GG02
2G084GG07
2G084GG18
2G084GG24
2G084GG26
2G084GG30
2G084HH02
2G084HH20
2G084HH36
4F204AC02
4F204AG03
4F204AH31
4F204AK08
4F204FA07
4F204FB02
4F204FE06
4F204FG02
4F204FH06
4F204FQ32
(57)【要約】
本発明は、複合材料で形成された1つ又は複数のロービング(3)を基板(5)上に配置するシステム(100)であって、少なくとも1つのロービング(3)の敷設に適したロービング敷設ヘッド(4)、発電機(G)、及び前記ロービング敷設ヘッド(4)に取り付けられ且つ前記発電機(G)により電力が供給される少なくとも1つのプラズマトーチ(1)を少なくとも備え、前記プラズマトーチ(1)に更に、前記基板に敷設される前記ロービング又は複数のロービング(3)の加熱に適した少なくとも1つのプラズマジェット(2)を生成するための少なくとも1つのプラズマ形成流体が供給されることを特徴とするシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料の1つ又は複数のロービング(3)を基板(5)上に配置するシステム(100)であって、
少なくとも1つのロービング(3)を敷設できるロービング敷設ヘッド(4)、
発電機(G)、及び
前記ロービング敷設ヘッド(4)に取り付けられ且つ前記発電機により電力が供給される少なくとも1つのプラズマトーチ(1)を少なくとも備え、
前記プラズマトーチ(1)に更に、前記基板に敷設される前記ロービング(3)の加熱に適した少なくとも1つのプラズマジェット(2)を生成するための少なくとも1つのプラズマ形成流体が供給されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記プラズマジェット(2)が層流状態で作動されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記トーチ(1)が、前記ロービング(3)と前記基板(5)との間の接触ライン(圧縮ラインとも呼ばれる)に近接する前記ロービング(3)の表面及び前記基板(5)の表面を加熱するために前記プラズマジェット(2)を前記接触ラインに向けて方向付けることを可能とする支持体(1a)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複合材料のロービング(3)を前記基板(5)に押し付ける圧力ローラ(6)を更に備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記プラズマトーチからの熱流に曝された前記圧力ローラ(6)の表面を過熱から保護するために、前記プラズマジェット(2)と前記圧力ローラ(6)との間、又は前記複合材料ロービング(3)と前記圧力ローラ(6)との間に熱シールド(8)が配置されたことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記圧力ローラ(6)の両側に配置された略平面形状の2つのパーテションを有する空気閉じ込めスクリーン(10)を更に備えることを特徴とする請求項4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは前記圧力ローラ(6)のための冷却システムを更に備え、該冷却システムは、熱伝導材料により形成された少なくとも1つの冷却ローラ(9)を有し、該冷却ローラ(9)は伝導により前記圧力ローラ(6)を冷却するために前記圧力ローラ(6)に接触されることを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記発電機(G)が、少なくとも1つのAC/DC変換を確実とする電気供給ネットワークに接続された共通一次ステージ(21)と、複数の個別第二ステージ(22)であって、各々がマルチジェットプラズマトーチ(1)又は同時に作動される複数のシングルジェットプラズマトーチ(1)のいくつかの電極(11)に調整された電流を独立して供給する複数の個別二次ステージ(22)を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記プラズマトーチ(1)は、所望の熱敷設ゾーンの周辺に向けられ、好ましくは少なくとも1つの高温プラズマジェットと略平行な方向に向けられた少なくとも1つの気体冷却保護ジェット(50、50b)を生成可能であり、前記気体冷却保護ジェット(50、50b)は好ましくは層流状態で作動され、前記気体冷却保護ジェット(50、50b)は専用ノズル若しくはゼロ又は公称加熱出力と比較して極めて低い出力、例えば公称加熱出力の10%未満、好ましくは公称加熱出力の2%~5%のオーダで作動されたプラズマノズルによって生成され得ることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記プラズマトーチ(1)が、複数のノズル(48、48b)であって、該複数のノズルの出口開口部を介してプラズマ加熱ジェット(49)の両横に、圧縮ラインに平行な軸に沿って配置された複数の気体冷却保護ジェット(50、50b)を生成可能な複数のノズル(48、48b)を有することを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数の気体冷却保護ジェット(50、50b)の前記複数の出口開口部は、好ましくは前記複数のジェットの前記複数の出口開口部の方向に垂直な軸を有する略横長の部分を有し、したがって圧縮ラインに垂直な略平面形状のジェットを形成し、
前記複数の出口開口部は例えば、略矩形又は長円形の複数の出口部(62)又は略矩形及び長円形のハイブリッドであり、若しくは長辺又は底部が敷設される前記ロービングの方向と平行に配置された略三角形であることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記気体冷却保護ジェット(50、50b)のための流体は圧縮空気を含み、該圧縮空気は好ましくは乾燥した脱油状態の圧縮空気であることを特徴とする請求項9~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記プラズマトーチは、複数のプラズマジェット(71)であって、各々が各々の電力供給及び/又は各々の独立調整可能な気体流れ供給を有する複数のプラズマジェット(71)を生成可能であり、
前記複数のプラズマジェット(71)は、好ましくは前記複合材料ロービング(3)と前記基板(5)との間の圧縮ラインに平行な略同一平面内に配置されていることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムはプラズマトーチ加熱出力を制御する調整システムを備え、
前記調整システムが、前記基板(5)上、及び/又は敷設されている前記ロービング(3)上の加熱ゾーンの1つ又は複数のポイントにおいて温度を測定する1つ又は複数のデバイスであって、前記1つ又は複数のデバイスの信号を、直接的に若しくは空間的及び/又は時間的に処理した後に、プラズマ加熱出力を設定温度に制御するために使用できる1つ又は複数のデバイスを備えることを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
プラズマ形成流体がアルゴン‐窒素混合物を含み、好ましくは体積比で10%~50%のアルゴンを含み、好ましくは15%~30%のアルゴンを含み、理想的には約25%のアルゴンと追加の窒素とを含むことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のシステムにより実施される、複合材料の1つ又は複数のロービング(3)を基板上に配置する方法であって、
前記基板上に敷設される1つ又は複数のロービング(3)を少なくとも1つのプラズマジェット(2)により加熱する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料ロービングを配置するためのトーチ及びプラズマ加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料で部品を製造する技術のうち、ロービング(ファイバ、テープ、又は最も幅広のものはバンドとも呼ばれる)の配置は、複合材料の連続したプライ(撚り、重ね)を自動敷設する付加技術である。当該技術では、略平坦な部分を持ち、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂のマトリックスでコーティングされた単位ファイバの束で形成されたロービングが、製造される部品(部分)に敷設される。これにより、ロービングの配置に大きな柔軟性が与えられ、強化されたエリアと軽量化されたエリアとを持つ複雑な形状の部品(部分)が可能になる。
【0003】
ロービング配置マシンは一般的に、敷設ヘッドと製造される部品(部分)のための支持体とを相対移動に設定するデバイス、例えばプリフォーム(予備成形物)上のロボット(自動機械)を備える。当該プリフォームも移動可能である。アセンブリはデジタル制御システムにより位置的に及び速度的に制御されている。
【0004】
例えば、文献US2018/370152は、複合材料ロービングを配置するための装置(設備)を示す。当該装置は、敷設される複合材料層の形成中の、複合材料ロービングのための加熱デバイスを備える。
【0005】
製造される部品の例は構造的な部品(翼、胴体、等)であり得る。或いは、製造される部品の例は、敷設プリフォームが回転マンドレル(心金、心棒)であるフィラメント巻き線によるタンクでさえあり得る。
【0006】
ロービングの配置は、一般に、いくつかの主機能を提供する敷設ヘッドにより実行される。
・1/4インチ(6.35mm)から数インチの幅を有するロービング(典型的には、1個から32個のロービング又はそれ以上のロービング)の供給及び案内。一般的には、運搬された或いはオフセットされたコイルマガジン、及びロービングのための案内チャネルの助力を用いる。
・所望の敷設端部位置にできるだけ近接して配置されたロービングガイドの終端部におけるロービングの切断。一般的にはナイフの助力を用いる。
・材料をアセンブリプロセスの温度(熱硬化性樹脂マトリックスの反応温度(一般的に100℃未満)、熱可塑性マトリックスのマトリックス溶融温度、例えばPEEKマトリックスを有するカーボンファイバ複合材料については最大数百度)とするためのファイバ及び基板の加熱。
・ファイバと基板との間の圧力を維持するための高温ゾーンにおける圧縮力の適用。一般的には、基板上を回転し、接合のための溶接(溶着)時間、固定(硬化)時間又は固化(凝固)時間を通してロービングを基板に押し付ける圧力ローラによる。
【0007】
敷設ヘッド及びその加熱システムの設計が受ける制約は、寸法、熱抵抗、最大重量、購入コスト及び操業コスト、保守性、耐用期間である。
【0008】
ロービングの材料と基材の材料を複合材料ロービングの配置に必要な温度とするために使われる主な熱源は:
・ 文献FR3033729で言及されている、ガス又は熱風の有向(方向付けられた、管理された)噴射による対流加熱、
・放射源を利用した放射(輻射)加熱:
・・特許US6451152号に記載されているレーザビーム。レーザビームは加熱ゾーンに向けられており、一定の波長と高い空間的指向性を持つコヒーレントな光である。レーザビームは一般的には光学素子を用いて成形されて、当該文献の
図2に示すように、ロービングの幅に正確に適合された高さと幅を有する熱流束のための敷設面を得る。
・・文献FR3033729に記載されている、非コヒーレントな放射によって加熱する赤外線ランプ。
・文献US2018370152に説明されている、上述のいくつかの熱源を同時に実行するハイブリッドヒータ。当該ハイブリッドヒータは、赤外線ランプで構成された熱源を含む。当該赤外線ランプの冷却が、加熱を補助するために冷却後に流れが溶接(溶着)エリアに向けられる気体により与えられる。
【発明の概要】
【0009】
しかしながら、レーザ源は以下の欠点を有する。
・高い投資コスト。
・技術的な困難性および高いコストにより限定される出力。この点は、事実上工程の生産性を限定する。敷設率(敷設速度)の増大、特に速度、幅、又は同時に敷設されるロービングの数の増大による敷設率の増大が可能ではないためである。
・エネルギー効率が20%から最大で45%のオーダと劣る。これにより、大きな冷却グループが必要となり、さらに装置の購入及び維持のコストが増大する。また、これに対応して、装置の使用に必要な冷却グループの電気消費を考慮に入れた総エネルギー効率が低下する。
・最も一般的に用いられるレーザの波長(約1μm)において大抵は透明である(電磁波を通す)マトリックスと、同波長に対して時折大いに吸収性である(カーボンファイバ)個別ファイバとの間の異なるレーザ‐材料相互作用により生じる品質問題。この異なる(区別された)熱吸収は、敷設品質に有害なホットスポットにつながる。
・レーザビームに起因する危険性。この点につき、大抵の規制により装置全体にカバーを設けることと、アクセス及びセキュリティ制御のための技術的計画(device)及び人的計画(device)(トレーニング及び権限)を設けることが要求されている。これにより、購入及び使用のための追加的費用が生じる。
【0010】
他の公知の熱源の不利な点は下記の通りである。
・限定された熱流:
・・高温ガス流は事実上は、電気加熱トーチの場合は1000℃に制限され、空気中の水素の燃焼の場合は、1000℃のオーダ、例えば最大2100℃(断熱炎温度)のオーダである理論最大温度に制限される。気体燃料の使用は、保管中や使用中の爆発や偶発的な発火のリスクを管理するという既知の欠点も有する。
・・赤外線ランプは、エネルギー効率が劣り、高い光束を達成することができない一方で、スペースが限られたゾーンで多くの体積を占める。
・低い空間的コヒーレンス。
・・高温ガスは、より多くの熱を運ぶため及び対流交換を増大させるために高い、乱れた流れにより動かされないといけない。したがって、大きなエネルギー設置エリアを要する。
・・非方向性で放射する赤外線ランプは、両側で望ましい温度上昇を達成するために、ロービング及び基板の上方のすぐ近傍に設置し、圧縮点から上流側に長い距離に渡って設置する必要がある。
【0011】
対流源又はランプによる加熱に対するこれらの二つの固有の限定事項は、圧縮点の上流側に広く実装(提供)される必要があるという点に帰結する。この点は、ヘッドにおいて不必要に多くの空間を使用し、エネルギー効率に有害である。
【0012】
本発明の目的は、1つ又は複数の複合材料ロービングを基板上に配置するシステムを提案して上述の欠点を効果的に改善することである。当該システムは少なくとも、
―少なくとも1つのロービングを敷設できるロービング敷設ヘッド、
―発電機、及び
―前記ロービング敷設ヘッドに取り付けられ且つ前記発電機により電力(パワー)が供給される少なくとも1つのプラズマトーチを備え、
―前記プラズマトーチに更に、前記基板に敷設される前記ロービングの加熱に適した少なくとも1つのプラズマジェットを生成するための少なくとも1つのプラズマ形成流体が供給される。
【0013】
プラズマジェットによる加熱の利点は以下の通りである。
・プラズマジェットの温度は5000℃~20,000℃、即ち高温ガスより5倍~25倍高いレベルに達することが出来る。したがって、高温ガスに基づく全ての既存の装置と比較して向上された熱伝達効率が可能となる。
・アークプラズマトーチを供給する電流発生器の効率は95%~98%に達する。これにより、ソース(電源、光源)のエネルギー消費を、レーザに比較して少なくとも半分にすることが出来る。
・プラズマ源の価格は、同等のレーザ源よりも6倍~10倍低い。
・プラズマ源が与えることのできる出力は、数百キロワット及びそれ以上まで増大させることができる。これに対して、最も強力な産業レーザは現在25kWに制限されており、且つ既に極めて高いコストに達している。
【0014】
したがって、基板に敷設される複合材料ロービングの加熱にプラズマトーチを使用することで、コストを低減しつつ生産性を高めることができる。
【0015】
本発明の一実施形態に従えば、プラズマジェットが層流状態で作動される。これにより、敷設されるロービング(単数又は複数)の安定的な加熱が確実とされる。実際のところ、層状プラズマジェットの使用は、限定的な空間コヒーレンスを有する従来のプラズマジェット応用の乱流性を克服することを可能とする。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、トーチが、ロービング(単数又は複数)と基板との間の接触ライン(圧縮ラインとも呼ばれる)に近接するロービング(単数又は複数)の表面及び基板の表面を加熱するためにプラズマジェット(単数又は複数)を接触ラインに向けて方向付けることを可能とする支持体を有する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、上述のシステムは複合材料のロービング(単数又は複数)を基板に押し付ける圧力ローラを更に備える。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、プラズマトーチの熱流に曝された圧力ローラの表面を過熱から保護するために、プラズマジェットと圧力ローラとの間、又は複合材料ロービング(単数又は複数)と圧力ローラとの間に熱シールドが配置される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、上述のシステムは圧力ローラの両側に配置された略平面形状の2つのパーテションを有する空気閉じ込めスクリーンを更に備える。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、上述のロービング配置システムは圧力ローラのための冷却システムを更に備え、該冷却システムは、熱伝導材料により形成された少なくとも1つの冷却ローラを有し、該冷却ローラは伝導により圧力ローラを冷却するために圧力ローラに接触される。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、発電機が、少なくとも1つのAC/DC変換を確実とする電気供給ネットワークに接続された共通一次ステージと、複数の個別第二ステージであって、各々がマルチジェットプラズマトーチ又は同時に作動される複数のシングルジェットプラズマトーチのいくつかの電極に調整された電流を独立して供給する複数の個別二次ステージを有する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、プラズマトーチは、所望の熱敷設ゾーンの周辺(周囲、外縁)に向けられ、好ましくは少なくとも1つの高温プラズマジェットと略平行な方向に向けられた少なくとも1つの気体冷却保護ジェットを生成可能であり、前記気体冷却保護ジェットは好ましくは層流状態で作動され、前記気体冷却保護ジェットは専用ノズル若しくはゼロ又は公称加熱出力と比較して極めて低い出力、例えば公称加熱出力の10%未満、好ましくは公称加熱出力の2%~5%のオーダで作動されたプラズマノズルによって生成され得る。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、プラズマトーチが、複数のノズルであって、該複数のノズルの出口開口部を介してプラズマ加熱ジェットの両横(横方向の両側、左右の両側)に、圧縮ラインに平行な軸に沿って配置された複数の気体冷却保護ジェットを生成可能な複数のノズルを有する。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、複数の気体冷却保護ジェットの複数の出口開口部は、好ましくは複数のジェットの複数の出口開口部の方向に垂直な(直交する)軸を有する略横長の部分を有し、したがって圧縮ラインに垂直な(直交する)略平面形状のジェットを形成し、
複数の出口開口部は例えば、略矩形又は長円形の複数の出口部又は略矩形及び長円形のハイブリッドであり、若しくは長辺又は底部(底辺)が敷設される前記ロービング(単数又は複数)の方向と平行に配置された略三角形である。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、前記気体冷却保護ジェット(単数又は複数)のための流体は圧縮空気を含み、該圧縮空気は好ましくは乾燥した脱油状態の圧縮空気である。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、プラズマトーチは、複数のプラズマジェットであって、各々が各々の電力供給及び/又は各々の独立調整可能な気体流れ(ガスフロー)供給を有する複数のプラズマジェットを生成可能であり、
当該複数のプラズマジェットは、好ましくは複合材料ロービング(単数又は複数)と基板との間の圧縮ラインに平行な略同一平面内に配置されている。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、上述のシステムはプラズマトーチ加熱出力を制御する調整システムを備え、
当該調整システムが、基板上、及び/又は敷設されているロービング(単数又は複数)上の加熱ゾーンの1つ又は複数のポイントにおいて温度を測定する1つ又は複数のデバイスであって、当該1つ又は複数のデバイスの信号を、直接的に若しくは空間的及び/又は時間的に処理した後に、プラズマ加熱出力を設定温度に制御するために使用できる1つ又は複数のデバイスを備える。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、プラズマ形成流体がアルゴン‐窒素混合物を含み、好ましくは体積比で10%~50%のアルゴンを含み、好ましくは15%~30%のアルゴンを含み、理想的には約25%のアルゴンと追加の窒素とを含む。
【0029】
本発明のある目的はまた、上記に規定されたシステムにより実施される、複合材料の1つ又は複数のロービングを基板上に配置する方法であって、
基板上に敷設される1つ又は複数のロービングを少なくとも1つのプラズマジェットにより加熱する工程を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下の詳細な説明を読むことにより本発明はよりよく理解され、その他の特徴及び有利な点が明らかになるであろう。以下の詳細な説明は、非限定的な例として与えられる添付の図面を参照して説明的な例示として与えられる実施形態を含む。図面は、本発明及びその実施の説明を完全に理解するために使用することができ、もし必要であればその定義に寄与することが出来る。
【0031】
【
図1】
図1は、1つ又は複数の複合材料ロービングを基板上に配置するシステムの、圧力ローラの軸に垂直な面に沿った概略断面図(概略断面表示)である。
【0032】
【
図2】
図2は、電気ネットワークの周波数において入力で絶縁された共通一次整流ステージの出力に並列に接続された複数の個別二次整流ブロックを備える二次ステージを有する発電機の概略図(概略表示)である。
【0033】
【
図3】
図3は、共通整流器及び電気フィルタを有する一次ステージの出力に並列に接続された高周波絶縁を有する複数の個別二次インバータブロックを有する二次ステージを備える発電機の概略図である。
【0034】
【
図4】
図4は、2つの冷却ジェット及び共通保護ノズルを備えるシングルジェットプラズマトーチを示す。
【0035】
【
図5】
図5はシングルジェットプラズマトーチの前面の出口部のトポロジーの例を示す。
【0036】
【
図6】
図6は、分離した複数の冷却保護ノズルを有するシングルジェットプラズマトーチの前面の出口部のトポロジーの例を示す。
【0037】
【
図7】
図7は、マルチジェットトーチ又は複数層流ジェットのプラズマトーチの2つの変形を示す。
【0038】
【
図8】
図8は、
図7の第1実施形態のマルチジェットプラズマトーチの複数のプラズマジェットを制御するための電力プロファイルと、当該複数のプラズマジェットの流量の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、複合材料の1つ又は複数のロービング(粗紡糸、粗撚り糸)3を基板5上に配置するシステム100を示している。システム100は、発電機Gによって電力が供給されるプラズマトーチ1を備えている。プラズマトーチ1は、基板5上に敷設(堆積、設置)される複合材料の1つ又は複数のロービング3を加熱するために、プラズマジェット2、好ましくは層流のプラズマジェット2を生成するのに適している。
【0040】
この目的で、プラズマトーチ1が取り付けられた(載置された、設置された)ロービング敷設(堆積、設置)ヘッド4は、複合(複合材料)ロービング3(単数又は複数)を基板5上に案内する。
【0041】
圧力ローラ(加圧ローラ)6は、ロービング3(単数又は複数)を基板5に押し付ける。このようにして、圧力ローラ6は、敷設ヘッド4の参照記号7で示される移動方向に沿った変位の間にロービング3と基板5との間の圧力を維持するために、高温ゾーン(ホットゾーン)に圧縮力を与える。
【0042】
プラズマトーチの熱流にさらされる圧力ローラ6の表面を過熱から保護するために、プラズマジェット2と圧力ローラ6の間に、又はロービングとローラの間に、又はロービング3がない領域においてロービング3と平行に且つ接触ラインにできるだけ近付けて熱シールド8が配置される。この熱シールド8の幅は、例えば、ローラ6の幅と略等しいか、ローラ6の幅よりも大きい。熱シールド8は、例えば、金属やセラミックなどの耐火性材料で作られている。熱シールド8は、例えば、略平坦な形状又は湾曲した形状を有する。熱シールド8は、例えば、熱伝達流体により、自然対流又は強制対流によりに冷却される。
【0043】
圧力ローラ6の冷却システムは、熱伝導材料、例えば、銅、アルミニウム又はそれらの合金などの金属材料で作られた少なくとも1つの冷却ローラ9を備える。冷却ローラ9は、圧力ローラ6を伝導により冷却するために圧力ローラ6に接触させられる。オプションではあるが、冷却ローラ9は、熱伝達流体に関する自然対流又は強制対流により、例えば内部流路又は当該熱伝達流体の流路に曝された外部フィンにより冷却される。
【0044】
空気閉じ込め(封じ込め、包含)シールド10は、例えば、圧力ローラの両側に配置された略平面形状の2つの仕切り(パーテション)を備える。当該仕切りは、例えば、圧縮ラインにできるだけ近いところから始まり、プラズマトーチ1に向かってジェット(単数又は複数)に略平行な方向に延び、トーチの出口端に向かって幅が広がる少なくとも1つの区域(ゾーン)を覆う形状を有する。
【0045】
より具体的には、プラズマトーチ(ブロウン・アーク(blown arc)プラズマトーチ)1は、少なくとも1つの電極11を備える。電極11は、固体タングステンにより形成された尖った電極により従来の方法で構成され得る。変形例として、電流や熱の良導体である材料(銅又は銅合金)で形成された平坦な電極内に、タングステンの挿入物(インサート)を配置してもよい。タングステンは、好ましくはトリウム入りタングステン又はランタン化タングステンである。
【0046】
少なくとも1つのノズル12が、上述の電極に対して略同心状に配置されている。ノズル12は、共通ノズル13によって終端されている。
【0047】
プラズマ流体の主なソースは例えば、ガス容器(ガスボトル)、若しくは空気又は一般的な産業用ガスの圧縮ガスのネットワークにより構成され得る。一般的な産業用ガスは好ましくはアルゴン又は窒素であり、好ましくはアルゴン‐窒素混合物であり、定常状態での加熱中に使用されるガスとは異なる、プラズマを開始させるための混合物(例えば純アルゴン)であってよい。混合は、上流において主なソース(一次ソース)で、トーチの前の独立したミキサーで行われ得る。ロービングを加熱するためのプラズマ流体は、好ましくは体積比で10~50%のアルゴンを含み、好ましくは15~30%のアルゴンを含み、理想的には約25%のアルゴンと残りは窒素で構成されている。
【0048】
システム100はまた、例えば、圧力調整器、手動バルブ、又はラインのための開閉制御、電極11とノズル12との間で注入(入射)を確実に行うためのクイック連結ソケットを備える又は備えないパイプ及び接続継手などにより構成された制御・調節システムを介して、トーチのソースからノズル12までのプラズマ流体を供給、制御、調節するための要素を含む。離散弁や比例弁などの圧力及び流量制御手段と、圧力センサ、温度センサ及び/又は流量センサと、旋回流を生成するらせん形状を有する又は有さない多孔質ディフューザ又はボルテックスなどの流れを案内し成形する要素、例えば熱スプレー又はカッティングであり、トーチの出口においてカーボン層流(carbon laminar)特性を備えるプラズマジェット(単数又は複数)を与えるプラズマトーチの技術水準で記載されるアークプラズマの安定化を設けることができる。
【0049】
プラズマジェット(単数又は複数)は、流速の3次元的な変動がないことと、流れの見かけ上の拡散係数又は有効拡散係数により特徴付けられる。即ち、乱流粘度、乱流プランドル数、乱流シュミット数はそれらの温度の静止プラズマ流体におけるそれらの物理量に等しい。
【0050】
供給、制御、及び冷却を調整する要素は、水、又は水と不凍液との混合物などの熱伝達流体、若しくは空気又はプラズマガス自身などの気体と接触させることで、トーチ1、特にノズル及び電極などのアークプラズマに曝されるトーチ1の要素の冷却を確実とする。
【0051】
発電機Gは、例えばマイクロ波や高周波による誘導結合(電磁結合)によってプラズマにエネルギーを供給する。しかし、発電機Gは、エネルギー効率の観点から、好ましくは負極により電極11に接続された端子と好ましくは正極によりノズル12(又は複数のノズル12)に接続された端子との間での電流生成によりプラズマにエネルギーを供給し、電極11とノズル12の間に電気アークプラズマを与えることが好ましい。
【0052】
システム100は、電極11とノズル12との間に電気アークプラズマを与えるための少なくとも1つの従来のシステム、例えば、限定はされないが高電圧、高周波のスパーク発生装置、又は、電極とノズルとの間の一時的な短絡を与えるための機械的システムを備える。
【0053】
さらに、トーチ1は、敷設されるロービング3(単数又は複数)と基板5との間の接触ライン(又は圧縮ライン)の近くでロービング3(単数又は複数)の表面及び基板5の表面を加熱するために、プラズマジェット2(単数又は複数)を、接触ラインに向かって方向付けることを可能にする支持体1aを備える。この支持体1aは、トーチ1のロービングの適用ライン(施工ライン)に対する相対的な位置を、手動又は自動で、角度と変位の両方について調整することを可能とする。
【0054】
プラズマトーチ1は、有利には、溶射トーチに従来用いられているステップドノズルシステムを備えてもよい。これにより、以下のことが可能となる。即ち、まず、電極11と、接触器によって発電機に接続された第1ノズルステージとの間にアークを与え、次いで、一旦与えられ、ノズルチャネル内を下流に移流されたアークを、ノズルの第1ステージの接触器を開くことにより、第2ノズルステージに移すことができる。第2ノズルステージも発電機に接続されており、且つ第1ステージノズルとは電気的に絶縁されている。
【0055】
敷設される単一のロービング3の幅が大きい場合、又はいくつかのロービングが敷設ヘッド4によって同時に敷設される場合、本発明は以下を伴う。即ち、トーチ1(単数又は複数)は複数の円形プラズマジェットを放出する。複数の円形プラズマジェットは、有利には、材料への衝突位置で平面状のプラズマジェット2を形成するように、ローラ6とロービング3(単数又は複数)及び基板5との間の圧縮ラインに平行な同一平面に配置される。
【0056】
敷設ヘッド4が複数のロービング3を有する場合、本発明は以下を伴う。即ち、ロービングの複数の加熱パラメータ(加熱に関する複数のパラメータ)を他とは独立して制御できるように、出力及びプラズマガスの流量(流速)が他のプラズマジェットとは独立して調整される少なくとも1つのプラズマジェット2又はプラズマジェット群が、複数のロービング3の各々に対向して配置される。
【0057】
独立した電流調整を有する複数のジェットは、別々の発電機によって供給されるか、あるいは、有利には、共通の一次ステージ(プライマリステージ)21と、独立した複数の二次ステージ(セカンダリステージ)22を備える発電機Gによって供給される。複数の二次ステージ22はそれぞれ、一次ステージ21に対する共通のアノード逆電流により、電流I1、I2などを発生する。
【0058】
より具体的には、発電機Gは、少なくとも一つのAC/DC変換(整流器、整流部)を確実とする(保証する)電力供給ネットワークに接続された共通の一次ステージ21と、複数の個別の二次ステージ22であって、各々が、マルチジェット(複ジェット)プラズマトーチ1又は同時に作動する複数のシングルジェット(単ジェット)プラズマトーチ1のいくつかの電極11に独立調整された電流を供給する複数の個別の二次ステージ22とを有する。電極11はプラズマジェットを形成するアークを与える。逆電流は発電機Gの共通の一次ステージ21の同一の共通極に集められる。
【0059】
図2は、共通の一次整流器ステージ21の出力に並列に接続された個別の二次整流器ブロックを有する二次ステージ22を備える発電機Gの概略図である。共通の一次整流器ステージ21の入力は電気ネットワークの周波数で分離されている。一次ステージ21は更に、電気フィルタ及び共通の整流器を備える。
【0060】
図3は、高周波絶縁を有する個別の二次インバータブロックを有する二次ステージ22を備える発電機Gの概略図である。個別の二次インバータブロックは、共通の整流器及び電気フィルタを備える一次ステージ21の出力に並列に接続されている。
【0061】
例えば、
図4は、2つの冷却ジェットと共通の保護ノズルを有するシングルプラズマ(単プラズマ)ジェットトーチ40を示す。シングルプラズマジェットトーチ40は、タングステンで形成された略円錐形の端部を有する電極41を備える。直流発電機(図示せず)の負極に、導電性材料で形成された電極ホルダ42が接続されている。均質化且つ層状化のためのディフューザ43は、例えば熱可塑性又は熱硬化性の材料、セラミック材料、若しくは鉱物材料などの絶縁材料で作られている。導電性材料で形成された点火ノズル44は、負荷の下で作動できる電力接触器(パワーコンタクタ)を介して発電機の正極に接続されている。点火ノズルは、好ましくは、図示しない流路を循環する水や油などの高い熱伝達能を有する冷却液により冷却される。
【0062】
加熱ノズル45は、導電性材料、具体的には銅又は銅合金により形成されている。加熱ノズル45は、電流発生装置の正極に接続されている。加熱ノズル45は、図示しない流路を循環する水や油などの冷却液によって冷却される。また、トーチ40は、絶縁挿入物(インサート)46を備える。絶縁挿入物46は好ましくはセラミック又は耐火性鉱物材料で形成されている。
【0063】
冷却水のための供給コネクタ47と戻りコネクタ47bは冷却回路に接続されている。左側冷却保護ノズル48及び右側冷却保護ノズル48b(図では不可視)は加熱ノズル45の両側に配置されている。したがって、左側気体冷却保護ジェット50及び右側気体冷却保護ジェット50bは、プラズマ加熱ジェット49の両側に配置されている。
【0064】
共通保護ノズル51が、プラズマ加熱ジェット49、左側気体冷却保護ジェット50、及び右側気体冷却保護ジェット50bを囲んでいる。共通保護ノズル(共通ノズル)51は、最も下流側のジェット排出部から、共通保護ノズル51の排出部のいずれの点においても合体流がトーチの外部(下流)に向けられることを、即ちノズルの内部に向かう周囲空気の再循環がないことを確実とする長さに渡って延びる。ノズルの排出部の最小寸法に対する当該長さの比は1よりも大きく、好ましくは2よりも大きく、理想的には3~5の間である。
【0065】
層状の左側気体冷却保護ジェット50及び右側気体冷却保護ジェット50bは敷設されるバンド(帯)を横切る方向への副次的な熱流を低減する機能を有する。左側気体冷却保護ジェット50及び右側気体冷却保護ジェット50bは左側冷却保護ノズル48及び右側冷却保護ノズル48bによって生成される。左側冷却保護ノズル48及び右側冷却保護ノズル48bのオリフィス(開口部)はプラズマ加熱ノズル49のオリフィス(開口部)の両側に配置されている。左側気体冷却保護ジェット50及び右側気体冷却保護ジェット50bはプラズマジェットに略平行な方向を有し、複合(複合材料)バンドの接合領域に並ぶ2つの領域に向けられる。
【0066】
左側気体冷却保護ジェット50及び右側気体冷却保護ジェット50bはプラズマジェットの偏向及び合体を避けることを可能とし、例えば、複数プラズマジェットの場合にはサイドジェットであり、或いはトーチの複数のプラズマジェットの一つが対向するロービングが敷設されない時に消される場合には隣接するジェットである。
【0067】
左側気体冷却保護ジェット50及び右側気体冷却保護ジェット50bはまた、加熱ジェット及び冷却ジェットを、酸化する周囲空気の加熱ジェット及び冷却ジェットへの取り込み(巻き込み)から保護することを可能とし、したがって保護下にある加熱ゾーンを不活性環境、例えば窒素又はアルゴンの不活性環境に維持することを可能とする。
【0068】
図4は、層状のプラズマシングルジェットと2つの左右の(側部の)の左側気体冷却保護ジェット50及び右側気体冷却保護ジェット50bを有する本発明の例示的な実施形態を示す。
図4の実施形態は、例えば、電極の直径を1.6~2.4mm、出口部(排出部)におけるノズル直径を3~8mm、アーク強度を20~200アンペアとして、1/4インチ(6. 35mm)又はハーフインチ(12.7mm)幅のロービングを用いるフィラメント巻き機のための単ロービング敷設ヘッドに用いることが出来る。
【0069】
左側気体冷却保護ジェット50及び右側気体冷却保護ジェット50bは、好ましくは、層流状態で作動される。左側気体冷却保護ジェット50及び右側気体冷却保護ジェット50bは、
図4に例示される1つ又は複数の専用のノズルで生成され得るか、若しくはゼロ又は名目上(公称)の加熱出力と比べて極めて低い出力(例えば名目上の加熱出力の10%より低く、好ましくは名目上の加熱出力の2%~5%のオーダ)で作動されるプラズマノズルによって生成され得る。
【0070】
左側気体冷却保護ジェット50及び右側気体冷却保護ジェット50bは、これらの冷却ジェットの平均流体出力速度が、冷却ジェットの平均動圧(1/2ρV2)coldが隣接する(高温の)プラズマジェット(単数又は複数)の平均動圧(1/2ρV2)hotに略等しくなるような値に設定されるように調整され得る。
【0071】
左側気体冷却保護ジェット50及び/又は右側気体冷却保護ジェット50bのための流体は、例えば圧縮空気を含み、好ましくは乾燥した脱油状態の圧縮空気を含む。
【0072】
図5は、プラズマシングルジェットトーチの前面の複数の出力部の複数のトポロジーの例を示す。この図において、参照番号61はプラズマジェットを形成するノズルの出口部(排出部)を示す。参照番号62は冷却保護ジェットを形成するノズルの出口部(排出部)を示す。
【0073】
参照番号63は、トーチの端面の外形(輪郭線)を示す。
【0074】
このように、冷却保護ジェットを形成するノズルの出口は次のような部分62を有することができる。
・プラズマジェットを形成するノズルの出口の両側にある円形、長方形、三角形のタイプ、又は
・プラズマジェットを形成するノズルの出口を略取り囲む円弧のタイプ。
【0075】
冷却ジェットのための出口開口部(出口オリフィス)は、好ましくは、ジェットのための出口開口部の方向に垂直な軸を有する略横長(オブロング、oblong)の部分62を有し、したがって、圧縮ラインに垂直な略平坦な形状のジェットを形成する。横長の部分62は例えば、略長方形又は楕円(長円)形の出口部であり、又はこれら2つの形状のかけ合わせ(ハイブリット)であり、又は長辺又は底部(底辺)が敷設されるロービングの方向と平行に配置された略三角形である。
【0076】
図6は、分離した冷却保護ノズルを有するシングルプラズマジェットトーチの前面の出力部(出口部)のトポロジーの例を示す。
【0077】
この図では、参照番号61は、プラズマジェットを形成するノズルの出口部を示す。参照番号62は冷却保護ジェットを形成するノズル(単数又は複数)の出口部を示す。参照番号63はトーチの端面の外形(輪郭)を示す。参照番号64は気体保護流れを形成するノズル(単数又は複数)の出口部を示す。
【0078】
図6の実施形態では、動圧(速度)がプラズマジェットに近い冷却保護ジェット62が層流気体保護流れの噴出ノズル64により完成される。層流気体保護流れはジェットの保護及び不活性環境の加熱ゾーンを保証するために低速である。
【0079】
ガス保護ノズル(単数又は複数)64は、プラズマジェット61及び冷却保護ジェット62を形成する複数のノズルの複数の出口部の全部を取り囲むか(
図6の左側の実施形態)、或いはプラズマジェット61及び冷却保護ジェット62を形成する複数のノズルの複数の出口部を個別に取り囲むことができる。
【0080】
本発明の変形例は、
図4の参照番号51で示すように、共通ノズルの使用又は共通保護ノズルの使用を含む。この共通ノズルは、プラズマジェット、及び冷却保護ジェットを、トーチ61の外側の周囲空気に関して分離することを可能とする。そのため、トーチ61の出口でのジェットによる周囲空気の巻き込みが大幅に減少されるか、又は除去される。
【0081】
プラズマトーチは、複数のプラズマジェットを形成することができる。複数のプラズマジェットの各々は独自の電力供給(単一又は複数の発電機による)、及び/又は独自の独立制御可能な気体流れ(ガスフロー)供給により形成される。複数のプラズマジェットは好ましくは、敷設される複合(複合材料)ロービングと基板との間の接触ラインに平行な略同一面内に配置される。
【0082】
複数のプラズマジェットのうちのプラズマジェット又はプラズマジェット群は、敷設ヘッドの複合材料の各ロービング(ファイバー/バンド)のための供給ガイドに略対向して配置されていてもよい。
【0083】
図7は、マルチジェットトーチ又は複数の層状ジェットを有するプラズマトーチの2つの変形例を示す。
図7の左側部分に示す第1の変形例では、平行平面内に配置された8つのプラズマジェット71と2つの冷却ジェット72を有するトーチ73を示す。トーチ73は、左側の動作モードでは、例えば1/4インチ(6.35mm)幅の8つのロービング74、例えば1インチ(25.4mm)幅の2本のロービング75、または例えば2インチ(50.8mm)幅のバンド76に対向している。バンド76は幅グレード(幅等級)の複合(複合材料)ロービングであると理解される。
【0084】
層状プラズマジェットを発生させるノズル(生成ノズル)の典型的な直径は、この例では、タングステン電極の直径を1.6mmとして、3mmである。層状プラズマジェットを発生させるノズルはバンド幅(6.35mm)か、又は各ロービング74の間の隙間の場合にはバンド幅よりもわずかに大きい幅で、等間隔に配置される。層状プラズマジェットを発生させるノズルの各々は10アンペアから110アンペアの間の連続可変電流により作動される。
【0085】
この配置は更に、プラズマジェット71の両側で放出されたサイド冷却ジェット72を含む。サイド冷却ジェット72は、隣接するプラズマジェットの動圧と略等しい動圧を有している。これにより、中央ジェットによって誘起される動圧降下(動的減圧)に関連した吸引(ベンチュリ効果)によるプラズマジェットのトーチ内部に向かう偏向が除去される。このようにして形成された平面ジェットの二面体(二面角)の底部の圧縮ラインへの衝突中には、サイドジェット72は、プラズマジェット71がロービング(単数又は複数)に平行にかつ前方に(in advance)偏向されること、即ちプラズマジェット71が所望の方向において基板及びロービング(単数又は複数)を加熱し続け、圧縮ラインに沿ったいずれかのサイド(両サイド)に横に偏向しないことを確実とする。
【0086】
この効果は、平面ジェットのローラ77の両サイドへの横偏向を妨げる、高い熱抵抗(耐熱性)を有する、例えばセラミックにより形成された複数の壁78を実行する(用いる)ことで強化される。
【0087】
図7の右側部分に示されている第2の変形例では、ヘッドが例えばロービング74、75の部分敷設で作動される前述のプラズマジェットトーチ73を示す。例えば、ロービング74、75の半分、又は2つのロービング74、75の一方が敷設される。プラズマジェットに隣接するノズルはゼロ又は最小出力で作動され、これによりサイド冷却ジェット72と同じ機能を提供する冷却ジェットを生成する。
【0088】
図8は、前述の第1変形例(
図7の左側)のマルチジェットプラズマトーチ(
図7の左側)の複数のプラズマジェットを制御するための電力プロファイルと当該複数のプラズマジェットの流量の一例を指数(インデックス)2~9の縦棒で示し、複数の冷却ジェットの流量(流速)を指数(インデックス)1、10で示す。
【0089】
また、この図の実線曲線は、接触ライン上の温度を測定値を、当該接触ラインに沿って示す。
【0090】
このように、プラズマトーチ1の複数のプラズマジェットを制御するための電力プロファイル及び当該複数のプラズマジェットのための流量は、一度だけ実験により適合され予め決定されているか、或いは接触ラインに沿った少なくとも1つの温度計測に基づくリアルタイム調整により適合される。有利には、これらの適合は、接触ラインに沿って略平坦又は一定の温度プロファイルを得ることを目的として行われる。任意であるが、具体的な温度プロファイルを、例えば、複数のロービングの材料(複数又は単数)(様々な材料の複数のロービングが用いられる場合)に基づいて、基板に基づいて、所望の製品特性に基づいて、或いは任意の他のパラメータのうちのロービング進み速度に基づいて決定できる。
【0091】
接触ラインに沿った温度測定(温度計測)は、例えば、レーザセンサ、パイロメータ、サーマルカメラ(例えば赤外線カメラ)などの任意の非接触温度測定センサによって行うことが出来る。
【0092】
このように、プラズマトーチあたりの加熱出力を制御するための調整システムを使用することができる。この調整システムは、基板上及び/又は敷設されるロービング(単数又は複数)上の加熱ゾーンの1つ又は複数のポイントに設けられた1つ又は複数の温度測定装置を含む。当該温度測定装置の信号は、直接的に、若しくは空間的及び/又は時間的に処理された後に、プラズマ加熱出力を設定された温度に制御するために使用される。そして、トーチの出力はプラズマトーチに供給される発電機の電流を調整することで制御できる。測定温度が設定温度よりも低い場合には電流は増加され、そうでなければ電流は低減される。
【0093】
先の加熱出力調整システムは、トーチ又はジェットを供給する電流及びプラズマ形成ガスの流量(流速)の連結調整を含んでもよい。連結調整の制御ロジックは、トーチの端部のアーク電圧の測定信号に基づく。上記の流量(流速)は当該アーク電圧が強度に基づく所定の閾値を越えないように制限される。
【0094】
プラズマジェットのノズル、又はプラズマジェットを生成するためのノズルの一部は、各電極回路の電流について、独立して調整され得る。このプラズマジェット用のノズルは全てのプラズマジェット用の電流のための共通集合(集電)アノードの役割を果たす。
【0095】
複合材料の1つ又は複数のロービングを基板に配置する方法は、プラズマトーチのプラズマジェット(単数又は複数)の出力を独立調整するモードを含んでもよい。当該調整モードは、有利には、分離した設定点により始動(作動される、トリガーされる)「パイロット(試験)」型である。「パイロット」型において、加熱出力は最小値まで低減され、電流をその技術的な最小値に調整し流量をその技術的最小に調整することで、電気アークプラズマの安定したメンテナンスを確実とすることを可能とする。動作モード(運転モード)は、いかなる敷設プロセスも伴わない部分のうちのヘッドの一点から他の点への移動の段階(フェーズ)中に、或いはプラズマジェットの前に配置されたバンドが敷設されない場合に、優先的にトリガーされる。
【0096】
変形例として、プラズマトーチのプラズマジェット(単数又は複数)の出力を独立調整するモードは、分離した起動指示、即ちオン/オフによりトリガーされる「コールドジェット」型である。「コールドジェット」型においては、加熱出力はゼロに低減され、流量は非ゼロの値に調整される。動作モードは、いかなる敷設プロセスも伴わない部分のうちのヘッドの一点から他の点への移動の段階(フェーズ)中に、或いはプラズマジェットの前に配置されたバンドが敷設されない場合に、優先的にトリガーされる。動作モードは、理想的には、低減出力の動作モードが設定された期間を超える期間続いた後にトリガーされる。
【0097】
もちろん、本発明の、異なる複数の特徴、複数の変形例及び/又は複数の実施形態は、互いに両立しないか互いに排他的でない限り、様々な組合せにおいて互いに関連付けることができる。
【0098】
明らかに、本発明は上記に記載され、例示としてのみ提示された実施形態には限定されない。本発明は、当業者が本発明の文脈において考慮し得る様々な変形例、代替形態、その他の変形例を包含し、特に上述の様々な動作モード(分離して或いは組合せで取り出され得る)の任意の組合せを包含する。
【国際調査報告】