(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(54)【発明の名称】N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20220707BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20220707BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220707BHJP
A61K 9/30 20060101ALI20220707BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220707BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220707BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220707BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220707BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/4439
A61K9/20
A61K9/30
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/12
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568319
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 IB2020054628
(87)【国際公開番号】W WO2020230099
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】ドッド,ステファニ カイ
(72)【発明者】
【氏名】グランジャリ,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】ロウサキ,エヴゲニヤ
(72)【発明者】
【氏名】サファート,エマニュエル
【テーマコード(参考)】
4C063
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB01
4C063CC22
4C063DD12
4C063EE01
4C076AA36
4C076AA44
4C076BB01
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4C076DD29
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4C076DD41
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4C076GG16
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4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC36
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA13
4C086GA15
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZB27
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの特定の結晶性形態を記載する。本発明はさらに、前記結晶性形態の調製方法、前記結晶性形態を含む医薬組成物、及び疾患を処置するための前記結晶性形態及び医薬組成物の使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態A。
【請求項2】
0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、X線粉末回折パターンが、12.6±0.2°、18.9±0.2°及び20.9±0.2°の2-シータ角での反射を含む、請求項1に記載の結晶性形態。
【請求項3】
0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、X線粉末回折パターンが、12.6±0.2°、17.0±0.2°、18.9±0.2°、20.9±0.2°及び32.5±0.2°の2-シータ角での反射を含む、請求項1又は2に記載の結晶性形態。
【請求項4】
0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、X線粉末回折パターンが、8.5°±0.2°、9.5°±0.2°、11.8°±0.2°、12.3°±0.2°、12.6°±0.2°、13.9°±0.2°、14.8°±0.2°、15.9°±0.2°、16.5°±0.2°、17.0°±0.2°、17.6°±0.2°、18.9°±0.2°、19.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.4°±0.2°、20.9°±0.2°、21.2°±0.2°、22.4°±0.2°、22.7°±0.2°、23.9°±0.2°、24.3°±0.2°、24.8°±0.2°、25.0°±0.2°、25.9°±0.2°、26.8°±0.2°、27.0°±0.2°、28.3°±0.2°、28.6°±0.2°、28.9°±0.2°、29.8°±0.2°、30.5°±0.2°、31.3°±0.2°、31.5°±0.2°、31.8°±0.2°、32.1°±0.2°、32.5°±0.2°、32.9°±0.2°、33.6°±0.2°、34.0°±0.2°、34.6°±0.2°、35.0°±0.2°、35.6°±0.2°、36.3°±0.2°及び38.8°±0.2°からなる群から選択される3つ、4つ、5つ又はそれ以上の2シータ値を含む、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態A。
【請求項5】
図8に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態A。
【請求項6】
2℃/分の加熱速度で測定したときに、90℃の開始温度を有する吸熱ピークを含む示差走査熱量測定曲線を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の結晶性形態。
【請求項7】
30℃から300℃まで20℃/分の速度で加熱したときに、結晶性形態の重量を基準として3.3重量%以下の質量損失を示す熱重量分析曲線を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の結晶性形態。
【請求項8】
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態B。
【請求項9】
図11に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態B。
【請求項10】
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態H
A。
【請求項11】
0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、X線粉末回折パターンが、10.4±0.2°、21.8±0.2°及び30.6±0.2°の2-シータ角での反射を含む、請求項10に記載の結晶性形態。
【請求項12】
0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、X線粉末回折パターンが、10.4±0.2°、12.0±0.2°、16.8±0.2°、21.8±0.2°及び30.6±0.2の2-シータ角での反射を含む、請求項10に記載の結晶性形態。
【請求項13】
0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、X線粉末回折パターンが、7.9°±0.2°、10.4°±0.2°、12.0°±0.2°、13.0°±0.2°、13.3°±0.2°、13.8°±0.2°、15.5°±0.2°、15.9°±0.2°、16.4°±0.2°、16.8°±0.2°、17.5°±0.2°、19.7°±0.2°、20.1°±0.2°、20.5°±0.2°、20.8°±0.2°、21.1°±0.2°、21.8°±0.2°、22.2°±0.2°、22.7°±0.2°、23.0°±0.2°、23.5°±0.2°、23.9°±0.2°、24.2°±0.2°、24.6°±0.2°、25.0°±0.2°、26.0°±0.2°、26.3°±0.2°、26.5°±0.2°、26.8°±0.2°、27.8°±0.2°、28.2°±0.2°、28.5°±0.2°、28.8°±0.2°、29.5°±0.2°、30.0°±0.2°、30.6°±0.2°、31.0°±0.2°、31.3°±0.2°、31.7°±0.2°、32.0°±0.2°、33.2°±0.2°、34.0°±0.2°、34.2°±0.2°、35.3°±0.2°、35.9°±0.2°、36.7°±0.2°、37.0°±0.2°、37.4°±0.2°、37.7°±0.2°、38.2°±0.2°、28.9°±0.2°及び39.6°±0.2°からなる群から選択される3つ、4つ、5つ又はそれ以上の2シータ値を含む、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態H
A。
【請求項14】
図13に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態H
A。
【請求項15】
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態A。
【請求項16】
0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、X線粉末回折パターンが、12.7±0.2°、18.9±0.2°及び20.8±0.2°の2-シータ角での反射を含む、請求項15に記載の結晶性形態。
【請求項17】
0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、X線粉末回折パターンが、12.7±0.2°、15.3±0.2°、18.9±0.2°、20.8±0.2°及び25.0±0.2°の2-シータ角での反射を含む、請求項15又は16に記載の結晶性形態。
【請求項18】
0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、X線粉末回折パターンが、5.8°±0.2°、11.3°±0.2°、11.6°±0.2°、12.2°±0.2°、12.7°±0.2°、13.2°±0.2°、14.7°±0.2°、15.3°±0.2°、17.0°±0.2°、17.4°±0.2°、18.6°±0.2°、18.9°±0.2°、19.4°±0.2°、19.8°±0.2°、20.8°±0.2°、21.8°±0.2°、22.2°±0.2°、22.7°±0.2°、23.4°±0.2°、24.0°±0.2°、24.5°±0.2°、25.0°±0.2°、25.5°±0.2°、26.7°±0.2°、27.1°±0.2°、27.7°±0.2°、28.7°±0.2°、29.3°±0.2°、29.6°±0.2°、30.2°±0.2°、31.2°±0.2°、32.0°±0.2°、32.3°±0.2°、32.8°±0.2°、33.7°±0.2°、34.5°±0.2°、35.3°±0.2°、37.0°±0.2°、38.4°±0.2°、及び38.6°±0.2°からなる群から選択される3つ、4つ、5つ又はそれ以上の2シータ値を含む、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態A。
【請求項19】
図1に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態A。
【請求項20】
5℃/分の加熱速度で測定したときに、194℃の開始温度を有する吸熱ピークを含む示差走査熱量測定曲線を有することを特徴とする、請求項15~19のいずれか一項に記載の結晶性形態。
【請求項21】
30℃から300℃まで20℃/分の速度で加熱したときに、結晶性形態の重量を基準として0.3重量%以下の質量損失を示す熱重量分析曲線を有することを特徴とする、請求項15~19のいずれか一項に記載の結晶性形態。
【請求項22】
図4に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態S
A。
【請求項23】
図5に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態S
B。
【請求項24】
図6に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態S
C。
【請求項25】
図7に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態S
D。
【請求項26】
請求項1~25に記載の結晶性形態と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項27】
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aを調製するためのプロセスであって、
(a)塩酸及び適切なアルコール溶媒の混合物中に、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドを溶解させることと、
(b)前記混合物にtert-ブチルメチルエーテルを添加することと、任意選択的に
(c)N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aを単離することと
を含むプロセス。
【請求項28】
(a)治療的に有効な量の、請求項1~25のいずれか一項に記載のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又は塩酸塩の結晶性形態と、
(b)少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、媒体又は賦形剤と
を含む医薬組成物。
【請求項29】
前記結晶性形態が、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の形態Aである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記結晶性形態が、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の形態Bである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記結晶性形態が、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の形態H
Aである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記結晶性形態が、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの形態Aである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記結晶性形態が、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの形態S
Aである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記結晶性形態が、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの形態S
Bである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記結晶性形態が、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの形態S
Cである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記結晶性形態が、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの形態S
Dである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項37】
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aを含む錠剤製剤。
【請求項38】
前記錠剤を単位剤形で配合することができ、各剤形が、約5~約500mgの活性成分を含有する、請求項37に記載の錠剤製剤。
【請求項39】
前記単位剤形が、10mg~200mg(包括的)のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aを含有する、請求項38に記載の錠剤。
【請求項40】
前記単位剤形が、25mg~150mg(包括的)のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aを含有する、請求項38に記載の錠剤。
【請求項41】
前記単位剤形が、20mg、40mg、又は60mgのN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aを含有する、請求項38に記載の錠剤。
【請求項42】
重量百分率により、10~30%のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aと、60~80%の1つ又は複数の充填剤と、2~10%の1つ又は複数の崩壊剤と、0.2~3%の1つ又は複数の流動化剤とをさらに含む、請求項37に記載の錠剤製剤。
【請求項43】
粒内相、粒外相及びフィルムコーティングをさらに含み、前記粒内相が、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態A、ラクトース、Avicel PH101、HP-Celllulose low subst_40UM、ナトリウム-CMC XL、Aerosil 200PH、及びステアリン酸マグネシウムを含み、前記粒外相が、ラクトース、セルロースMK GR、ナトリウム-CMC XL、Aerosil 200PH、及びステアリン酸マグネシウムを含み、且つ、前記フィルムコーティングが1つ又は複数のフィルム形成物質を含むことができ、さらに可塑剤、腸の潤滑剤、着色剤及び/又は顔料などの物質を含むことができる、請求項37に記載の錠剤製剤。
【請求項44】
粒内相、粒外相及びフィルムコーティングをさらに含み、前記粒内相が、重量百分率により、約22%のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態A、約33%のラクトース、約18%のAvicel PH101、約5%のHP-Celllulose low subst_40UM、約2%のナトリウム-CMC XL、約0.25%のAerosil 200PH、及び約0.5%のステアリン酸マグネシウムを含む、請求項37に記載の錠剤製剤。
【請求項45】
前記粒外相が、重量百分率により、約10%のラクトース、約5.6%のセルロースMK GR、約3%のナトリウム-CMC XL、約0.25%のAerosil 200PH、及び約1%のステアリン酸マグネシウムを含有し、且つ、前記フィルムコーティングが、重量百分率により、約4.8%のコーティングプレミックス白、約0.16%のコーティングプレミックス黄、及び約0.008%のコーティングプレミックス赤を含有する、請求項44に記載の錠剤製剤。
【請求項46】
前記粒外相が、重量百分率により、約10%のラクトース、約5.6%のセルロースMK GR、約3%のナトリウム-CMC XL、約0.25%のAerosil 200PH、及び約1%のステアリン酸マグネシウムを含有し、且つ、前記フィルムコーティングが、重量百分率により、約8%のコーティングプレミックス白、約0.02%のコーティングプレミックス赤、及び約0.02%のコーティングプレミックス黒を含有する、請求項44に記載の錠剤製剤。
【請求項47】
請求項37に記載の錠剤製剤を製造するためのプロセスであって、
(a)粒内相成分:N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態A、Avicel PH101、HP-Celllulose low subst_40UM、ナトリウム-CMC XL、Aerosil 200PH及びステアリン酸マグネシウムをブレンドするステップと、
(b)前記ステップ(a)からのブレンドした成分をふるいにかけ、ブレンドし、ローラー圧縮し、製粉するステップと、
(c)粒外相成分:ラクトース、セルロースMK GR、ナトリウム-CMC XL、Aerosil 200PH及びステアリン酸マグネシウムをブレンドするステップと、
(d)前記ステップ(c)からの成分をふるいにかけるステップと、
(e)前記ステップ(b)及びステップ(d)からの成分をブレンドするステップと、
(f)前記ステップ(e)の成分を錠剤に圧縮して、前記錠剤を脱塵するステップと、
(g)精製水と、白、黄、赤及び黒から選択される1つ又は複数のコーティングプレミックスの混合物とを含むフィルムコーティングの懸濁液を形成するステップと、
(h)前記ステップ(f)の脱塵した錠剤をフィルムコートするステップと
を含むプロセス。
【請求項48】
ABL1/BCR-ABL1媒介性障害を処置するための方法であって、このような処置を必要としている患者に、請求項1~25のいずれか一項に記載の有効量のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又は塩酸塩の結晶性形態を投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態(結晶形)、その製造方法、それを含む医薬組成物、及びそれを使用する処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多形性は、物質の2つ以上の結晶性形態の存在を示す。多形体(又は結晶変態)は同一の化学構造を有するが、多くの場合、全く異なる物理化学的特性を有する。多形体は、エナンチオトロピー多形体及びモノトロピー多形体を含む。化学物質が2つ以上の結晶性形態で結晶化するこの能力は、薬物の貯蔵期間、溶解度、製剤特性、及び加工特性に対して重大な影響を与えることができる。加えて、薬物の作用は、薬物分子の多形性によって影響され得る。異なる多形体は体内で異なる取込み速度を有し、所望されるよりも低い又は高い生物活性をもたらし得る。極端な場合、望まれない多形体は、毒性を示すことさえある。製造中の未知の結晶性形態の発生は、大きい影響を与え得る。
【0003】
多形性を理解して制御することは、次に、新しい薬物を市場に出す際に明らかな利点を与える。何よりもまず、薬物製品のための可能性のあるあらゆる多形体の探索を用いて、薬物の製造又は貯蔵中に他の多形形態による汚染の可能性を低くすることができる。汚染を捕らえ損なうことは、場合により、生命にかかわる結果をもたらし得る。製造中の意図しない多形体の結晶化は、数週間又はさらに数か月の製造停止期間を意味することになり、その間、科学者は新しい結晶性形態の原因を見出して訂正するか、又は新しい結晶性形態の承認を得るために別の一連の試験を行う。
【0004】
第2に、特定の場合に薬物のどの結晶性形態が可能であるかを理解することにより、研究者らは、溶解度、製剤特性、加工特性、及び貯蔵期間などの化合物の所望の特性を最大にすることができる。新しい薬物の開発においてこれらの因子を早期に理解することは、より活性な薬物、より安定した薬物、又はより安価に製造された薬物を意味し得る。
【0005】
式
【化1】
の化合物N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドは、BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤である。式(I)の化合物、式(I)の化合物の調製、及び式(I)の化合物の医薬組成物は、最初に、国際公開第2013/171639A1号パンフレットにおいて実施例9として記載されている。式(I)の化合物は、(R)-N-(4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)-6-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ニコチンアミド、又はアシミニブとしても知られている。
【0006】
国際公開第2013/171639A1号パンフレットは、Abelsonタンパク質(ABL1)、Abelson関連タンパク質(ABL2)及び関連のキメラタンパク質、特にBCR-ABL1のチロシンキナーゼ酵素活性の阻害に応答する疾患を処置するのに有用であるとして式(I)の化合物を提供する。国際公開第2013/171639A1号パンフレットは、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの非晶質分散体を含む医薬組成物を記載するが、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの任意の結晶性形態又はそれを含む医薬品製剤は特に開示されていない。
【発明の概要】
【0007】
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態が発見されており、これらは、新しい薬理学的特性を得るために活用され得る、そしてN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの薬物製品の開発において利用され得る新しい物理的特性を示す。
【0008】
本発明は、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の結晶性形態に関する。
【0009】
また本発明は、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの塩酸塩の結晶性形態にも関する。
【0010】
また本発明は、(a)治療的に有効な量の、本発明のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又はその塩酸塩の結晶性形態と、(b)少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。
【0011】
また本発明は、ABL1/BCR-ABL1媒介性障害を処置するための方法であって、このような処置を必要としている対象に、治療的に有効な量の、本発明のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又はその塩酸塩の結晶性形態を投与するステップを含む方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の結晶性形態AのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【
図2】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の結晶性形態Aの示差走査熱量測定曲線を示す。
【
図3】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の結晶性形態Aの熱重量プロットを示す。
【
図4】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の形態S
AのXRPDパターンを示す。
【
図5】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の形態S
BのXRPDパターンを示す。
【
図6】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の形態S
CのXRPDパターンを示す。
【
図7】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の形態S
DのXRPDパターンを示す。
【
図8】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの塩酸塩の結晶性形態AのXRPDパターンを示す。
【
図9】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの塩酸塩の結晶性形態Aの示差走査熱量測定曲線を示す。
【
図10】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの塩酸塩の結晶性形態Aの熱重量プロットを示す。
【
図11】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの塩酸塩の結晶性形態BのXRPDパターンを示す。
【
図12】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの塩酸塩の形態A及びBのXRPDパターンを示す。
【
図13】本発明に従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの塩酸塩の形態H
AのXRPDパターンを示す。
【
図14】N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aを含む錠剤の製造のために使用される製造プロセスの流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明との関連において、他に明確に記載されない限り、以下の定義は指示された意味を有する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「室温」又は「RT」という用語は、20~30℃の範囲の温度を指す。
【0015】
本明細書で使用されるX線粉末回折(XRPD)に関する「反射」という用語はX線ディフラクトグラムにおけるピークを意味し、これは、固体材料内の原子の平行面で散乱されたX線からの建設的干渉によって特定の回折角(ブラッグ角)において起こり、長期間の位置秩序で規則正しい反復性のパターンに分配される。このような固体材料は結晶性材料として分類されるが、非晶質材料は、長期間の秩序を欠いており、短期間の秩序のみを示し、従って、幅広の散乱をもたらす固体材料として定義される。文献によれば、長期間の秩序は、例えば、約100~1000個の原子にわたって広がるが、短期間の秩序は、わずか数個の原子にわたるものである(“Fundamentals of Powder Diffraction and Structural Characterization of Materials”by Vitalij K.Pecharsky and Peter Y.Zavalij,Kluwer Academic Publishers,2003,page 3を参照)。
【0016】
本発明の結晶性形態は、本明細書では、図面「に示される」グラフィックデータ、例えばXRPDを特徴とすると言及され得る。当業者は、機器のタイプの変化、応答、並びにサンプル方向性、サンプル濃度、及びサンプル純度の変化などの因子が、グラフ形態で示されたときにこのようなデータの小さい変化、例えば、正確なピーク位置及び強度に関する変化をもたらし得ることを理解する。しかしながら、本明細書中の図面のグラフィックデータと、別の又は未知の固体形態について作成されたグラフィックデータとを比較し、2組のグラフィックデータが同じ結晶形態に関すると確認することは、十分に当業者の知識の範囲内である。
【0017】
本明細書で使用される「固体形態」又は「固体状態形態」という用語は、化合物の任意の結晶性相及び/又は非晶質相を互換的に指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「非晶質」という用語は、結晶性でない化合物の固体形態を指す。非晶質化合物は長期間の秩序を有さず、反射による明確なXRPDパターンを示さない。
【0019】
本明細書で使用される場合、「多形体」という用語は、同じ化学組成を有するが、結晶を形成する分子、原子、及び/又はイオンの異なる空間的配置を有する結晶性形態を指す。
【0020】
本明細書で使用される「水和物」という用語は、水が結晶構造内で協働しているか又は結晶構造により収容されている、例えば、結晶構造の一部であるか又は結晶内に捕捉されている(包含水)結晶性固体を指す。それにより、水は、化学量論量又は非化学量論量で存在することができる。水が化学量論量で存在する場合、水和物は、ギリシャ数字の接頭辞を付加することにより言及され得る。例えば、水和物は、水/化合物の化学量論に応じて、半水和物又は一水和物と呼ぶことができる。含水量は、例えば、カールフィッシャー電量分析によって測定することができる。
【0021】
本明細書で使用される「脱水すること」又は「脱水」という用語は、ホスト分子の結晶構造から水を少なくとも部分的に除去することを説明する。
【0022】
本明細書で使用される「溶媒和物」という用語は、1つ又は複数の有機溶媒が結晶構造内で協働しているか又は結晶構造により収容されている、例えば、結晶構造の一部であるか又は結晶内に捕捉されている(包含水)結晶性固体を指す。それにより、1つ又は複数の有機溶媒は、化学量論量又は非化学量論量で存在することができる。1つ又は複数の有機溶媒が化学量論量で存在する場合、溶媒和物は、ギリシャ数字の接頭辞を付加することにより言及され得る。例えば、溶媒和物は、溶媒/化合物の化学量論に応じて、半溶媒和物又は一溶媒和物と呼ぶことができる。溶媒含有量は、例えば、GC、NMR、SXRD及び/又はTGA/MSによって測定することができる。
【0023】
本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、所与の用量で有意な薬理活性を示さず、医薬品有効成分に加えて医薬組成物に添加される物質を指す。賦形剤は、特に、媒体、希釈剤、離型剤、崩壊剤、溶解変更剤、吸収増強剤、安定剤又は製造助剤の機能を担い得る。賦形剤は、充填剤(希釈剤)、結合剤、崩壊剤、潤滑剤及び流動化剤を含み得る。
【0024】
本明細書で使用される「充填剤」又は「希釈剤」という用語は、送達の前に医薬品有効成分を希釈するために使用される物質を指す。希釈剤及び充填剤は、安定剤としての機能を果たすこともできる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「結合剤」という用語は、医薬品有効成分及び薬学的に許容される賦形剤を結合させて、密着した別々の部分を保持する物質を指す。
【0026】
本明細書で使用される「崩壊剤」又は「崩壊する薬剤」という用語は、固体医薬組成物に添加されると、投与後にその分解又は崩壊を促進し、医薬品有効成分をできるだけ効率的に放出させて、その急速な溶解を可能にする物質を指す。
【0027】
本明細書で使用される「潤滑剤」という用語は、粉末ブレンドに添加されて、圧縮された粉末塊が錠剤化又はカプセル化プロセスの間に装置に粘着するのを防止する物質を指す。潤滑剤は錠剤をダイから排出するのを助け、粉末の流動を改善することができる。
【0028】
本明細書で使用される「流動化剤」という用語は、錠剤圧縮中の流動特性を改善するため、及び固化防止効果を生じるために錠剤及びカプセル製剤に使用される物質を指す。
【0029】
本発明の1つの態様は、化合物N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの遊離塩基及び塩酸塩の別個の結晶性形態を提供する。これらの「結晶性形態」(又は「結晶形態」又は「結晶変態」又は「多形形態」又は「多形体」、これら用語は本明細書中で互換的に使用され得る)は、熱力学的安定性、物理的パラメーター、x線構造及び調製方法に関して異なる。多形体は、エナンチオトロピー又はモノトロピーの2つの主要なカテゴリーにおいて存在する。「エナンチオトロピー」多形体は、所与の圧力で温度に応じて又は所与の温度で圧力に応じて(転移温度又は圧力と呼ばれる)、相互変換することができるものである。相対的な熱力学的安定性は、転移温度又は圧力の上下で反転する。温度に関係なく1つの多形体がより安定であれば、それは「モノトロピー」である。多形性は古典的には2つ以上の別個の結晶の種類(同一の化学構造を有するが、全く異なる物理化学的特性を有する)に結晶化する化合物の能力を指すが、偽多形性という用語は、通常、溶媒和物及び水和物結晶性形態に適用される。しかしながら、本発明の目的のために、真の多形体も偽多形体、すなわち水和物及び溶媒和物形態も「結晶性形態」の範囲内に含まれる。さらに、「非晶質」は、無秩序の固体状態を指す。特定の結晶性形態の異なるサンプルは、同じ主要なX線粉末回折(XRPD)「ピーク」又は「反射」を共有することになるが、小さいピークに関しては粉末パターンの変動があり得ることに注意すべきである。加えて、XRPDピーク値(度)に関する「約」という用語は、一般に、所与の値の0.3°以内、より好ましくは0.2°以内、最も好ましくは0.1°以内を意味する。或いは、「約」という用語(このこと及び全てに関して)は、当業者により考慮される場合に許容される標準誤差の範囲内を意味する。本明細書で使用される場合、「実質的に純粋」という用語は、結晶性N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド又はその塩酸塩の50%超が本明細書に記載される形態の1つで存在すること、そして好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の本明細書に記載される結晶性形態の1つが存在することを意味する。
【0030】
一実施形態では、遊離塩基の結晶性形態Aと呼ばれる、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態が提供される。遊離塩基の形態Aは非吸湿性(92%までの相対湿度において25℃で0.1%未満の水分取込みを示す)であり、pH3を超えるとかなり低い溶解度を有する。Cary 100光度計を用いてVanKel機器において測定したときに、形態Aの固有溶解速度は、pH4.5、pH6.8及び0.1NのHCl媒体中で以下の通りであると決定された:
【0031】
【0032】
一実施形態では、本発明は、0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、
12.7±0.2°、18.9±0.2°及び20.8±0.2°;又は
12.7±0.2°、15.3±0.2°、18.9±0.2°、20.8±0.2°及び25.0±0.2°;又は
5.8°±0.2°、11.3°±0.2°、11.6°±0.2°、12.2°±0.2°、12.7°±0.2°、13.2°±0.2°、14.7°±0.2°、15.3°±0.2°、17.0°±0.2°、17.4°±0.2°、18.6°±0.2°、18.9°±0.2°、19.4°±0.2°、19.8°±0.2°、20.8°±0.2°、21.8°±0.2°、22.2°±0.2°、22.7°±0.2°、23.4°±0.2°、24.0°±0.2°、24.5°±0.2°、25.0°±0.2°、25.5°±0.2°、26.7°±0.2°、27.1°±0.2°、27.7°±0.2°、28.7°±0.2°、29.3°±0.2°、29.6°±0.2°、30.2°±0.2°、31.2°±0.2°、32.0°±0.2°、32.3°±0.2°、32.8°±0.2°、33.7°±0.2°、34.5°±0.2°、35.3°±0.2°、37.0°±0.2°、38.4°±0.2°、及び38.6°±0.2°
の2-シータ角(2シータ値)での反射を含むXRPDパターンを有することを特徴とする、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態Aに関する。
【0033】
別の実施形態では、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態Aは、0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、5.8°、11.3°、11.6°、12.2°、12.7°、13.2°、14.7°、15.3°、17.0°、17.4°、18.6°、18.9°、19.4°、19.8°、20.8°、21.8°、22.2°、22.7°、23.4°、24.0°、24.5°、25.0°、25.5°、26.7°、27.1°、27.7°、28.7°、29.3°、29.6°、30.2°、31.2°、32.0°、32.3°、32.8°、33.7°、34.5°、35.3°、37.0°、38.4°、及び38.6°(2θ度±0.2°)からなる群から選択される少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は全ての2シータ値を含むXRPDパターンを有することを特徴とする。
【0034】
本発明の別の実施形態では、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の結晶性形態Aは、
図1のXRPDパターンを特徴とする。
【0035】
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態Aの熱的特性は、5℃/分の走査速度における示差走査熱量測定(DSC)(
図2)及び熱重量分析(TGA)(
図3)によって分析した。
【0036】
さらに、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態Aの平衡化、結晶化、及び沈殿研究中に、いくつかの溶媒和物が発見された。それぞれの溶媒を用いた平衡化及び結晶化研究中に、メタノール溶媒和物形態S
A、1-プロパノール溶媒和物形態S
B、及びエタノール溶媒和物形態S
Cが単離された。アセトン及び水を用いた沈殿研究では、アセトン溶媒和物形態S
Dが単離された。溶媒和物形態S
A、S
B、S
C、及びS
Dは、それぞれ
図4~7に示されるXRPDパターンを特徴とする。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、結晶性形態A及びB及び三水和物変態HAと呼ばれる、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの塩酸塩の結晶性形態に関する。形態A及びBは、エナンチオトロピー的に関連する。形態Aは、65℃~90℃のエナンチオトロピー転移温度範囲よりも低い温度でより大きい物理的安定性を有し、形態Bは、この範囲よりも高い温度でより大きい物理的安定性を有する。形態Bは、周囲条件で自然に形態Aに転換する。形態Aは、pH1の水中で平衡化されると、変態HA又は形態HAに変換され得る。
【0038】
塩酸塩の形態Aは非吸湿性(95%までの相対湿度において25℃で0.4%未満の水分取込みを示す)であり、pH3を超えるとかなり低い溶解度を有する。Cary 100光度計を用いてVanKel機器において測定したときに、形態Aの固有溶解速度は、pH3.5、pH4.5及び0.1NのHCl媒体中で以下の通りであると決定された:
【0039】
【0040】
別の実施形態では、本発明は、0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、
12.6±0.2°、18.9±0.2°及び20.9±0.2°;又は
12.6±0.2°、17.0±0.2°、18.9±0.2°、20.9±0.2°及び32.5±0.2°;又は
8.5°±0.2°、9.5°±0.2°、11.8°±0.2°、12.3°±0.2°、12.6°±0.2°、13.9°±0.2°、14.8°±0.2°、15.9°±0.2°、16.5°±0.2°、17.0°±0.2°、17.6°±0.2°、18.9°±0.2°、19.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.4°±0.2°、20.9°±0.2°、21.2°±0.2°、22.4°±0.2°、22.7°±0.2°、23.9°±0.2°、24.3°±0.2°、24.8°±0.2°、25.0°±0.2°、25.9°±0.2°、26.8°±0.2°、27.0°±0.2°、28.3°±0.2°、28.6°±0.2°、28.9°±0.2°、29.8°±0.2°、30.5°±0.2°、31.3°±0.2°、31.5°±0.2°、31.8°±0.2°、32.1°±0.2°、32.5°±0.2°、32.9°±0.2°、33.6°±0.2°、34.0°±0.2°、34.6°±0.2°、35.0°±0.2°、35.6°±0.2°、36.3°±0.2°及び38.8°±0.2°
の2-シータ角(2シータ値)での反射を含むXRPDパターンを有することを特徴とする、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aに関する。
【0041】
別の実施形態では、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態AのXRPDパターンは、0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、8.5°、9.5°、11.8°、12.3°、12.6°、13.9°、14.8°、15.9°、16.5°、17.0°、17.6°、18.9°、19.1°、19.8°、20.4°、20.9°、21.2°、22.4°、22.7°、23.9°、24.3°、24.8°、25.0°、25.9°、26.8°、27.0°、28.3°、28.6°、28.9°、29.8°、30.5°、31.3°、31.5°、31.8°、32.1°、32.5°、32.9°、33.6°、34.0°、34.6°、35.0°、35.6°、36.3°、38.8°(2θ度±0.2°)からなる群から選択される少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は全ての2シータ値を特徴とする。
【0042】
本発明の別の実施形態では、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aは、
図8及び/又は12のXRPDパターンを特徴とする。
【0043】
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aの熱的特性は、2℃/分の走査速度における示差走査熱量測定(DSC)(
図9)及び熱重量分析(TGA)(
図10)によって分析した。
【0044】
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態BのXRPDパターンは、0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線を用いて100~125℃の範囲の温度で測定したときに、8.5°、8.6°、9.2°、10.8°、11.8°、12.7°、13.8°、14.7°、15.6°、14.8°、15.9°、16.1°、16.9°、18.0°、18.4°、18.9°、19.2°、19.5°、19.8°、20.2°、20.4°、20.8°、20.9°、21.1°、21.6°、21.9°、22.3°、22.6°、23.1°、23.4°、23.7°、24.0°、24.1°、24.3°、24.6°、24.7°、25.2°、25.5°、25.9°、26.5°、27.0°、27.6°、28.4°、28.5°、28.9°、29.5°、及び29.8°(2θ度±0.2°)からなる群から選択される少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は全ての2シータ値を特徴とする。
【0045】
本発明の別の実施形態では、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Bは、
図11及び/又は12のXRPDパターンを特徴とする。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、
10.4±0.2°、21.8±0.2°及び30.6±0.2°;又は
10.4±0.2°、12.0±0.2°、16.8±0.2°、21.8±0.2°及び30.6±0.2°;又は
7.9°±0.2°、10.4°±0.2°、12.0°±0.2°、13.0°±0.2°、13.3°±0.2°、13.8°±0.2°、15.5°±0.2°、15.9°±0.2°、16.4°±0.2°、16.8°±0.2°、17.5°±0.2°、19.7°±0.2°、20.1°±0.2°、20.5°±0.2°、20.8°±0.2°、21.1°±0.2°、21.8°±0.2°、22.2°±0.2°、22.7°±0.2°、23.0°±0.2°、23.5°±0.2°、23.9°±0.2°、24.2°±0.2°、24.6°±0.2°、25.0°±0.2°、26.0°±0.2°、26.3°±0.2°、26.5°±0.2°、26.8°±0.2°、27.8°±0.2°、28.2°±0.2°、28.5°±0.2°、28.8°±0.2°、29.5°±0.2°、30.0°±0.2°、30.6°±0.2°、31.0°±0.2°、31.3°±0.2°、31.7°±0.2°、32.0°±0.2°、33.2°±0.2°、34.0°±0.2°、34.2°±0.2°、35.3°±0.2°、35.9°±0.2°、36.7°±0.2°、37.0°±0.2°、37.4°±0.2°、37.7°±0.2°、38.2°±0.2°、28.9°±0.2°及び39.6°±0.2°
の2-シータ角(2シータ値)での反射を含むXRPDパターンを有することを特徴とする、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性三水和物形態HAに関する。
【0047】
別の実施形態では、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性三水和物形態HAのXRPDパターンは、0.1541Åの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線を用いて20~25℃の範囲の温度で測定したときに、7.9°、10.4°、12.0°、13.0°、13.3°、13.8°、15.5°、15.9°、16.4°、16.8°、17.5°、19.7°、20.1°、20.5°、20.8°、21.1°、21.8°、22.2°、22.7°、23.0°、23.5°、23.9°、24.2°、24.6°、25.0°、26.0°、26.3°、26.5°、26.8°、27.8°、28.2°、28.5°、28.8°、29.5°、30.0°、30.6°、31.0°、31.3°、31.7°、32.0°、33.2°、34.0°、34.2°、35.3°、35.9°、36.7°、37.0°、37.4°、37.7°、38.2°、38.9°、及び39.6°(2θ度±0.2°)からなる群から選択される少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は全ての2シータ値を特徴とする。
【0048】
本発明の別の実施形態では、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性三水和物形態H
Aは、
図13のXRPDパターンを特徴とする。
【0049】
種々の方法を用いて、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの遊離塩基の結晶性形態(形態A、SA、SB、SC、及びSD)及び塩酸塩の結晶性形態(形態A、B、及びHA)を達成することができる。このような方法は上記に記載される通りであり、そして以下に提示される実施例に記載される通りであり、溶媒による平衡化、室温での結晶化、熱い飽和溶液からの結晶化、及び溶媒の添加による沈殿が含まれる。
【0050】
本発明の別の実施形態は、
(a)治療的に有効な量の、本発明の先の実施形態の1つに従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又はその塩酸塩の結晶性形態と、
少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、媒体又は賦形剤と
を含む医薬組成物に関する。
【0051】
好ましい実施形態では、結晶性形態は、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの塩酸塩の形態Aである。好ましくは、組成物中に存在する結晶性形態の50%超、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%は、選択される形態のうちの1つである。
【0052】
以下に詳細に記載されるように、本発明の医薬組成物は、以下に適しているものを含む、固体又は液体形態での投与のために特別に配合され得る:(1)経口投与、例えば、水薬(水性又は非水性の溶液又は懸濁液)、錠剤、例えば、頬側、舌下、及び全身性の吸収を標的とする錠剤、ボーラス、粉末、顆粒、舌への適用のためのペースト;(2)例えば、無菌溶液若しくは懸濁液、又は徐放性製剤としての、例えば、皮下、筋肉内、静脈内又は硬膜外注射による非経口投与;(3)例えば、皮膚へ適用されるクリーム、軟膏、又は制御放出パッチ若しくはスプレーとしての局所適用;(4)例えば、ペッサリー、クリーム又はフォームとしての腟内又は直腸内投与;(5)舌下投与;(6)眼内投与;(7)経皮投与;(8)経鼻投与;(9)肺投与;又は(10)髄腔内投与。
【0053】
以上及び以下において使用される一般用語は、他に記載されない限り、本開示の文脈において、好ましくは以下の意味を有し、ここでより一般的な用語は、使用される場合はいつも、互いに独立してより具体的な定義によって置き換えられても、又はそのままであってもよく、したがって、本発明のより詳細な実施形態を定義し得る:
【0054】
「崩壊剤」という用語は、湿潤したときに錠剤を膨張及び溶解させ、消化管内で錠剤を粉々にさせて、吸収のために活性成分を放出する物質を意味する。崩壊剤は、錠剤が水と接触したときに、急速に分解して、溶解を促進することを保証する。崩壊剤は、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、例えば、クロスカルメロースナトリウム及びデンプングリコール酸ナトリウム、好ましくは、クロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される。
【0055】
「希釈剤」としても知られる「充填剤」という用語は、活性薬物の量が少なすぎて便利に取り扱えない(製造及び取扱いが困難である)ので、剤形の内容物を増大させるために錠剤及びカプセルにおいてよく使用される不活性成分を意味する。充填剤/希釈剤の例としては、デンプン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、キシリトール、アスパルテーム、マンニトール、デンプン、PVP(ポリビニルピロリドン)、低分子量HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、微結晶セルロース(MCC)、低分子量HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、低分子量カルボキシメチルセルロース、エチル-セルロース、リン酸二カルシウム、ケイ化微結晶セルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリエチレンオキシド、アカシア、デキストリン、スクロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ポリメタクリレート、ラクチトール、ラクトース、適切な無機カルシウム塩、スクロース、グルコース、マンニトール、ケイ酸、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。充填剤は、錠剤製剤の全重量を基準として、重量百分率により約60%~約80%を構成する粒内成分である。
【0056】
「流動化剤」という用語は、粉末の「流動する」能力、すなわち流動性を改善するために粉末に添加される物質を意味する。例としては、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、炭酸マグネシウム、ヒュームドシリカ(二酸化ケイ素)、シリカ、エアロゾル(コロイド状無水/コロイド状二酸化ケイ素)及びデンプン、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
「潤滑剤」という用語は、圧縮及び排出の間に錠剤成分とダイ壁との間に中間層を挿入することにより摩擦を減らすように作用する化合物を意味する。潤滑剤の例としては、ステアレート、フマル酸ステアリルナトリウム、マグネシウム塩、及びステアリン酸マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
「治療的に有効な量」は、それを必要としている対象に投与されたときに、Abelsonタンパク質(ABL1)、Abelson関連タンパク質(ABL2)及び関連のキメラタンパク質、特にBCR-ABL1のチロシンキナーゼ酵素活性の阻害によって軽減される病状の処置をもたらすのに十分である、発明的な結晶性形態の量を意味することが意図される。治療的に有効であり得る本発明の所与の化合物の量は、病状及びその重症度、それを必要としている対象の同一性などの因子に応じて異なることになり、この量は、当業者によってルーチン的に決定され得る。
【0059】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書において、正しい医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激作用、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症を伴うことなく、人間及び動物の組織と接触して使用するのに適している化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために使用される。
【0060】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、1つの臓器又は身体の一部から別の臓器又は身体の一部への本化合物の運搬又は輸送に関与する、液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、潤滑剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウム若しくは亜鉛、又はステアリン酸(steric acid))、又は溶媒カプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物又は媒体を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、且つ患者に有害でないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体としての機能を果たすことができる材料のいくつかの例としては、(1)糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えば、コーンスターチ及びジャガイモデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)トラガント末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、ココアバター及び坐薬ワックス;(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物;並びに(22)医薬品製剤において使用される他の無毒の適合性物質が挙げられる。
【0061】
湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味料及び香料、防腐剤及び酸化防止剤も、組成物中に存在することができる。
【0062】
薬学的に許容される酸化防止剤の例としては、(1)水溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性酸化防止剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;及び(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0063】
本発明の製剤には、経口、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、直腸、膣及び/又は非経口投与に適したものが含まれる。製剤は便利に単位剤形で提供されることがあり、薬学分野において周知の任意の方法によって調製され得る。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置されているホスト、特定の投与方法に応じて異なり得る。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量となる。一般に、100パーセントのうち、この量は、約0.1パーセント~約99パーセント、好ましくは約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント~約30パーセントの活性成分の範囲となる。
【0064】
特定の実施形態では、本発明の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤、例えば、胆汁酸、及び高分子担体、例えば、ポリエステル及びポリ無水物からなる群から選択される賦形剤と、本発明の結晶性形態とを含む。特定の実施形態では、上記の製剤は、本発明の発明的な結晶性形態を経口的に生体利用可能にする。
【0065】
これらの製剤又は組成物の調製方法には、本発明の発明的な結晶性形態と、担体及び任意選択的に、1つ又は複数の補助的成分とを関連させるステップが含まれる。一般に、製剤は、本発明の発明的な結晶性形態と、液体担体若しくは微粉化固体担体又はその両方とを均一及び密接に関連させ、次に必要であれば、生成物を成形することによって調製される。
【0066】
経口投与に適した発明の製剤は、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(風味付けされた基剤、通常、スクロース及びアカシア又はトラガカントを用いる)、粉末、顆粒の形態で、又は水性若しくは非水性液体中の溶液、懸濁液若しくは固体分散体として、又は水中油若しくは油中水液体エマルションとして、又はエリキシル剤若しくはシロップとして、又は香錠(不活性基剤、例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアを用いる)として、及び/又はマウスウォッシュなどとしての形態でよく、これらはそれぞれ、所定量の本発明の発明的な結晶性形を活性成分として含有する。また本発明の発明的な結晶性形態は、ボーラス、舐剤又はペーストとして投与されてもよい。
【0067】
また本発明は、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又は塩酸塩の結晶性形態を含む錠剤製剤、並びにその使用方法にも関する。
【0068】
一実施形態では、本明細書に提供される錠剤製剤は単位剤形で配合することができ、各剤形は、約5~約500mgのN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又は塩酸塩の結晶性形態を含有する。
【0069】
さらなる実施形態では、単位剤形は、10mg~200mgのN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又は塩酸塩の結晶性形態を含有する。
【0070】
さらなる実施形態では、単位剤形は、25mg~150mg(包括的)のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又は塩酸塩の結晶性形態を含有する。
【0071】
さらなる実施形態では、単位剤形は、20mg、40mg、又は60mgのN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又は塩酸塩の結晶性形態を含有する。
【0072】
別の実施形態では、本発明の錠剤製剤は、重量百分率により、10~30%のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又は塩酸塩の結晶性形態、60~80%の1つ又は複数の充填剤、2~10%の1つ又は複数の崩壊剤、及び0.2~3%の1つ又は複数の流動化剤を含む。
【0073】
さらなる実施形態では、充填剤は、ラクトース、無水ラクトース、スプレー乾燥ラクトース、直接圧縮性デンプン、加水分解デンプン、MCC(セルロースMK GR、Avicel PH 101)、他のセルロース誘導体(ナトリウム-CMC XL)、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、ソルビトール、スクロース、脱水硫酸カルシウム及びデキストロースから選択される1つ又は複数である。
【0074】
さらなる実施形態では、崩壊剤は、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、ヒプロメロース(低置換ヒドロキシプロピルセルロース)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム)及びデンプングリコール酸ナトリウムから選択される1つ又は複数である。
【0075】
さらなる実施形態では、流動化剤は、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、炭酸マグネシウム、ヒュームドシリカ、シリカ、エアロゾル(コロイド状無水/コロイド状二酸化ケイ素;Aerosil 200PH)及びデンプンから選択される1つ又は複数である。
【0076】
別の実施形態では、本発明の錠剤製剤は、粒内相、粒外相及びフィルムコーティングを含む。
【0077】
さらなる実施形態では、粒内相は、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又は塩酸塩の結晶性形態、ラクトース、Avicel PH101、HP-Celllulose low subst_40UM、ナトリウム-CMC XL、Aerosil 200PH、及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0078】
さらなる実施形態では、粒外相は、ラクトース、セルロースMK GR、ナトリウム-CMC XL、Aerosil 200PH、及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0079】
さらなる実施形態では、本発明の錠剤製剤は、フィルムコートすることができる。
【0080】
さらなる実施形態では、フィルムコーティングは1つ又は複数のフィルム形成物質を含むことができ、さらに可塑剤、潤滑剤、着色剤及び/又は顔料などの物質を含むことができる。
【0081】
さらなる実施形態では、フィルムコーティングは、精製水と、白、黄、赤及び黒から選択される1つ又は複数のコーティングプレミックスの混合物とを含む。
【0082】
別の実施形態では、粒内相は、重量百分率により、22%のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態A、33%のラクトース、17%のAvicel PH101、5%のHP-Celllulose low subst_40UM、2%のナトリウム-CMC XL、0.25%のAerosil 200PH、及び0.50%のステアリン酸マグネシウムを含有する。
【0083】
さらなる実施形態では、粒外相は、重量百分率により、10%のラクトース、6%のセルロースMK GR、3%のナトリウム-CMC XL、0.25%のAerosil 200PH、及び1%のステアリン酸マグネシウムを含有する。
【0084】
さらなる実施形態では、フィルムコーティングは、重量百分率により、4.83%のコーティングプレミックス白、0.16%のコーティングプレミックス黄、0.008%のコーティングプレミックス赤及び85%の精製水を含有する。
【0085】
さらなる実施形態では、フィルムコーティングは、重量百分率により、7.96%のコーティングプレミックス白、0.019%のコーティングプレミックス赤、0.024%のコーティングプレミックス黒及び85%の精製水を含有する。
【0086】
さらなる実施形態では、錠剤製剤は、粒内相、粒外相及びフィルムコーティングを含み、ここで、前記粒内相は、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態A、ラクトース、Avicel PH101、HP-Celllulose low subst_40UM、ナトリウム-CMC XL、Aerosil 200PH、及びステアリン酸マグネシウムを含み、前記粒外相は、ラクトース、セルロースMK GR、ナトリウム-CMC XL、Aerosil 200PH、及びステアリン酸マグネシウムを含み、且つ前記フィルムコーティングは、1つ又は複数のフィルム形成物質を含むことができ、さらに可塑剤、腸の潤滑剤、着色剤及び/又は顔料などの物質を含むことができる。
【0087】
さらなる実施形態では、錠剤製剤は、粒内相、粒外相及びフィルムコーティングを含み、ここで、前記粒内相は、重量百分率により、約22%のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態A、約33%のラクトース、約17%のAvicel PH 101、約5%のHP-Celllulose low subst_40UM、約2%のナトリウム-CMC XL、約0.25%のAerosil 200PH、及び約0.50%のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0088】
さらなる実施形態では、粒外相は、重量百分率により、約10%のラクトース、約6%のセルロースMK GR、約3%のナトリウム-CMC XL、約0.25%のAerosil 200PH、約1%のステアリン酸マグネシウムを含有し、且つフィルムコーティングは、重量百分率により、約4.83%のコーティングプレミックス白、約0.16%のコーティングプレミックス黄、約0.008%のコーティングプレミックス赤及び約85%の精製水を含有する。
【0089】
別の実施形態では、粒外相は、重量百分率により、約10%のラクトース、約6%のセルロースMK GR、約3%のナトリウム-CMC XL、約0.25%のAerosil 200PH、約1%のステアリン酸マグネシウムを含有し、且つフィルムコーティングは、重量百分率により、約7.96%のコーティングプレミックス白、約0.019%のコーティングプレミックス赤、約0.024%のコーティングプレミックス黒及び約85%の精製水を含有する。
【0090】
また本発明は、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又は塩酸塩の結晶性形態を含む錠剤を製造するためのプロセス(方法)にも関し、ここで、本プロセスは、
(a)粒内相成分:N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態A、Avicel PH101、HP-Celllulose low subst_40UM、ナトリウム-CMC XL、Aerosil 200PH及びステアリン酸マグネシウムをブレンドするステップと、
(b)ステップ(a)からのブレンドした成分をふるいにかけ、ブレンドし、ローラー圧縮し、製粉するステップと、
(c)粒外相成分:ラクトース、セルロースMK GR、ナトリウム-CMC XL、Aerosil 200PH及びステアリン酸マグネシウムをブレンドするステップと、
(d)ステップ(c)からの成分をふるいにかけるステップと、
(e)ステップ(b)及びステップ(d)からの成分をブレンドするステップと、
(f)ステップ(e)の成分を錠剤に圧縮して、前記錠剤を脱塵するステップと、
(g)精製水と、白、黄、赤及び黒から選択される1つ又は複数のコーティングプレミックスの混合物とを含むフィルムコーティングの懸濁液を形成するステップと、
(h)ステップ(f)の脱塵した錠剤をフィルムコートするステップと
を含む。
【0091】
本発明の別の態様は、ABL1/BCR-ABL1媒介性障害を処置する方法であって、このような処置を必要としている対象に、治療的に有効な量の、本発明の先の実施形態の1つに従うN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基又はその塩酸塩の結晶性形態を投与するステップを含む方法に関する。好ましい実施形態では、結晶性形態は、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの塩酸塩の形態Aである。好ましくは、投与される結晶性形態の50%超、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%は、発明的な形態のうちの1つである。上記のように、実例となる投与方法には、経口、経鼻、非経口、局所、経皮、及び直腸が含まれる。結晶性形態の投与は、本発明の医薬組成物の投与によって、又は任意の他の有効な手段を介して達成され得る。
【0092】
本発明の特定の実施形態は、ここで、以下の実施例を参照することにより実証されるであろう。これらの実施例が単に本発明を説明するために開示されており、決して本発明の範囲を限定すると解釈されてはならないことは理解されるべきである。
【実施例】
【0093】
一般的な試験条件
以下の手順を各試験条件下で使用した。
【0094】
25℃における溶媒による平衡化
25℃における平衡化のために、25℃±0.5においてEppendorfシェーカー内で約50mgの原薬を1mlの溶媒により少なくとも1週間及び約4週間平衡化した。溶液をろ過し、空中で10分間乾燥させた。固体部分をXRPD(X線粉末回折)で調べた。XRPDからの情報が変化を評価するのに不十分であれば、TG及びNMRによる付加的な調査を実施した。
【0095】
50℃における溶媒による平衡化
50℃における溶媒による平衡化のために、50℃±0.1においてEppendorfシェーカー内で約50mgの原薬を1mlの溶媒により2日間平衡化した。ろ液を上記のように調べた。
【0096】
25℃における結晶化
平衡化と組み合わせて、重量測定により溶解度が決定された場合は、残渣をその多形形態について検査した。
【0097】
熱い飽和溶液からの結晶化
熱い飽和溶液からの結晶化のために、約300mgの原薬を60℃の最少量の溶媒に溶解させ、熱時ろ過した。残存する結晶は見られなかった。溶液を氷浴に入れ、攪拌した。沈殿物をフィルタ上に集め、乾燥させ、平衡化実施例において記載したように調べた。
【0098】
溶媒の添加による沈殿
溶媒の添加による沈殿のために、原薬を溶解度の高い溶媒中に溶解させ、物質が非常に溶けにくい溶媒を添加した。平衡化実施例において記載したように沈殿物を処理した。
【0099】
X線回折
本明細書に記載されるX線粉末回折(XRPD)パターンは、CuKα放射線を用いてBruker D8 Advance回折計において記録した。2°~40°(2-シータ)の間でXRPDパターンを記録した。
【0100】
当業者は、XRPDパターンが使用される測定条件に依存する測定誤差と共に獲得され得ることを認識するであろう。特に、XRPDパターンの強度は、使用される測定条件に応じて変動し得ることが一般的に知られている。さらに、相対強度も使用される実験条件及びX線放射線の波長に応じて異なり得ることが理解されるべきである。試料とリファレンスとの間の2-シータ-回折角の一致は、同じ結晶形態では0.2°以内であり、このような測定誤差の度合いは、上記の回折角に付随すると考慮されるべきである。その結果として、本発明の結晶形態は、本明細書に開示される添付図面に記載されるXRPDパターンと完全に同一であるX線回折パターンを提供する結晶形態に限定されないことが理解されるべきである。添付図面に開示されるものと実質的に同一であるXRPDパターンを提供するあらゆる結晶形態が本発明の範囲内に含まれる。XRPDパターンの実質的な同一性を確認する能力は当業者の範囲内である。
【0101】
熱重量測定法
結晶性形態を試験するために使用したTGA機器は、TA Q5000であった。10~20ミリグラムのサンプルを、30℃~約300℃の温度範囲において20℃/分の加熱速度で分析した。
【0102】
示差走査熱量測定(DSC)
結晶性形態を試験するために使用したDSC機器は、Mettler DSC1又はPerkin Elmer Diamondであった。30mL/分の窒素流の下で30℃~300℃の温度範囲において10℃/分で加熱するように機器をプログラムした。
【0103】
実施例1
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の形態Aの調製
出発材料のN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドは、国際公開第2013/171639A1号パンフレットの実施例9に従って調製される。出発材料をメタノール中に懸濁させ、30℃に加熱して溶液を得る。水を添加し、遊離塩基を結晶化させる。懸濁液を10℃に冷却し、ろ過及び乾燥により遊離塩基の結晶形態Aを単離する。
【0104】
遊離塩基の結晶形態AのXRPDパターンは
図1に示される。遊離塩基の形態Aの示差走査熱量測定曲線は、
図2に示されるように、約194℃における融解の開始と、それに続く約198℃におけるピークとを示した。
図3は、遊離塩基の結晶形態Aの熱重量プロットを示す。100Kにおける遊離塩基の結晶形態Aの単結晶データは次の通りである:
分子式: C
20H
18ClF
2N
5O
3
分子量: 449.84
空間対称性 単斜晶系
空間群 C2
セル容積(Å
3) 2001.0(8)
結晶密度(g/cm
3) 1.493
a(Å) 14.422(3)
b(Å) 9.368(2)
c(Å) 14.989(4)
ベータ(°) 98.853(12)
z 4
【0105】
実施例2
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の形態S
Aの調製
50℃のメタノール中での遊離塩基の結晶形態Aの平衡化と、60℃のメタノール中の遊離塩基の結晶形態Aの熱い飽和溶液からの結晶化とにより、遊離塩基のメタノール溶媒和物形態S
Aを得た。遊離塩基の結晶形態S
AのXRPDパターンは、
図4に示される。
【0106】
実施例3
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の形態S
Bの調製
25℃(1及び4週間)及び50℃の1-プロパノール中での遊離塩基の結晶形態Aの平衡化と、25℃での、及び1-プロパノール中の60℃の熱い飽和溶液での結晶化とにより、遊離塩基の1-プロパノール溶媒和物形態S
Bを得た。遊離塩基の結晶形態S
BのXRPDパターンは、
図5に示される。
【0107】
実施例4
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の形態S
Cの調製
50℃のエタノール中での遊離塩基の結晶形態Aの平衡化と、エタノール中の60℃の熱い飽和溶液からの結晶化とにより、遊離塩基のエタノール溶媒和物形態S
Cを得た。遊離塩基の結晶形態S
CのXRPDパターンは、
図6に示される。
【0108】
実施例5
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の形態S
Dの調製
アセトン及び水中の遊離塩基の結晶形態Aの溶媒の添加による沈殿により、遊離塩基のアセトン溶媒和物形態S
Dを得た。遊離塩基の結晶形態S
DのXRPDパターンは、
図7に示される。
【0109】
実施例6
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の形態Aの調製
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の結晶形態Aをメタノール中に懸濁させ、塩酸を添加する。懸濁液を加熱して、溶液を得る。tert-ブチルメチルエーテル(TBME)を添加して、塩酸塩の結晶形態Aを形成する。懸濁液を冷却し、ろ過によって塩酸塩の結晶形態Aを単離し、乾燥させる。
【0110】
或いは、塩酸塩の結晶形態Aは、以下の条件下で単離することもできる:
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド(1wt)を35℃のメタノール(8wt)中に溶解する。この溶液に塩酸(1.15eq)を添加して、塩酸塩の結晶形態Aを形成する。溶液を50℃に加熱する。tert-ブチルメチルエーテル(TBME)(5wt)を35分かけて添加する。TBME(0.01vol)中でスラリー化した塩酸塩の結晶形態A(0.0009wt)の種を用いて溶液に種入れする。懸濁液を135分間エージングする。TBME(9.25wt)を1.5時間かけて添加する。スラリーを3時間かけてIT=0℃まで冷却し、0℃に保持する。その後、スラリーをろ過し、ケーキをメタノール:TBME1:9w/w(2V)で洗浄してから、TBME(2V)で洗浄する。ウェットケーキを50℃で24時間、真空下で乾燥させる。
【0111】
塩酸塩の結晶形態AのXRPDパターンは、
図8に示される。塩酸塩の形態Aの示差走査熱量測定曲線は、
図9に示されるように、約90℃における吸熱事象を示す。
図10は、塩酸塩の結晶形態Aの熱重量プロットを示す。100Kにおける塩酸塩の結晶形態Aの単結晶データは次の通りである:
空間対称性 三斜晶系
空間群 P1
セル容積(Å
3) 1053.6(6)
結晶密度(g/cm
3) 1.533
a(Å) 8.203(3)
b(Å) 11.116(3)
c(Å) 12.627(4)
ベータ(°) 97.711(12)
Z 2
【0112】
298Kにおける塩酸塩の結晶形態Aの単結晶データは次の通りである:
空間対称性 三斜晶系
空間群 P1
セル容積(Å3) 1082.9(6)
結晶密度(g/cm3) 1.491
a(Å) 8.245(3)
b(Å) 11.352(4)
c(Å) 12.697(4)
ベータ(°) 97.289(18)
Z 2
【0113】
実施例7
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の形態Aの種結晶の調製
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の結晶形態A及び塩酸をイソプロパノール中に溶解させ、固体が完全に溶解するまで加熱する。透明溶液をRTにおいて平衡化させ、自発的な結晶化を観察する。固体材料を単離し、乾燥させ、XRPD、NMR及びHPLCにより分析する。
【0114】
実施例8
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の形態Bの調製
塩酸塩の結晶形態A及びBは、エナンチオトロピー的に関連する。加熱されると、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶形態Aは、自然に形態Bに転換する。分解が起こらなければ(分解は240℃超で観察される)、現象は完全に可逆的である。形態Bは、周囲条件で自然に転換して形態Aに戻る。転移温度を正確に決定することはできなかったが、65℃~90℃の範囲が画定されている。塩酸塩の結晶形態Aは、この転移温度よりも低温で熱力学的に安定な形態であり、結晶形態Bは、それよりも高温で好まれる形態である。
【0115】
塩酸塩の結晶形態BのXRPDパターンは、
図11に示される。塩酸塩の結晶形態A及びBのXRPDパターンの重ね合わせは、
図12に示される。363Kにおける塩酸塩の結晶形態Bの単結晶データは次の通りである:
空間対称性 三斜晶系
空間群 P1
セル容積(Å
3) 1114.6(15)
結晶密度(g/cm
3) 1.449
a(Å) 9.957(8)
b(Å) 10.461(8)
c(Å) 11.146(8)
ベータ(°) 75.71(5)
Z 2
【0116】
実施例9
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の形態A及びBの熱力学的安定性
熱的研究の間に、形態Bは300℃まで加熱されると融解する前に分解することが分かったので、塩酸塩の結晶形態A及びBの融点はいずれも決定できなかった。
【0117】
加熱速度が転移温度に与える影響は、-20℃から200℃まで、そして-20℃に戻るまでの40、20、10、5、1及び0.5℃/分の種々の速度の加熱及び冷却サイクルによって評価した。これらの測定の全てについて、密封して閉じた金るつぼを使用した。
【0118】
各実験(異なる加熱速度)のために、新しいサンプルを調製した。観察された転移温度は、表3に記載される。
【0119】
【0120】
形態A及びBは、その対応するXRPDパターン及び熱パラメーターによって同定及び確認される。
【0121】
実施例10
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の形態H
Aの調製
水中で平衡化される場合、pHに応じて、塩酸塩の結晶形態Aは不均衡になりやすく(pH>3.5)、遊離塩基の結晶形態Aとして再結晶して安定性を保つか、又は三水和物H
Aに転換している(pH1)。遊離塩基の結晶形態H
AのXRPDパターンは、
図13に示される。
【0122】
実施例11
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aを含む錠剤製剤
即時放出特性及び許容されるサイズと共に合理的な用量強度、好ましい溶解プロファイル、並びに経済的な製造プロセスを可能にする、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの適切な製剤を開発するために、いくつかの試みを行った。N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶形態Aのフィルムコート錠剤は、薬物開発のために有利な薬理学的特性を示すことが発見された。
【0123】
【0124】
実施例12
N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶形態Aを含むフィルムコート錠剤の製造プロセス
以下に記載されるプロセスは、異なるバッチサイズ及び/又は装置特性を補償するように同じ基本製造ステップを保持しながら、及び/又は経験に基づいて合理的に調整され得る。
【0125】
コア錠剤の製造は、標準的な混合ステップ、ふるい分けステップ、乾燥造粒ステップ、錠剤化ステップ及びフィルムコーティングステップからなる。手順は以下の通りである:
【0126】
ステップ1:適切な容器内へ内相の全ての成分を以下の順序で混合した:ラクトース、化合物1、ナトリウム-CMC XL、Aerosil 200PH、HP-Celllulose low subst_40UM及びAvicel PH101。混合物を拡散ミキサー内でブレンドした。
【0127】
ステップ2:0.800mmの手ふるい(hand sieve)を取り付けたスクリーニングミル又は振動ミルを用いて、ステップ1からのブレンドをスクリーニングした。拡散ミキサー内で、混合物をさらにステアリン酸マグネシウムとブレンドした。
【0128】
ステップ3:ローラー圧縮機を用いてステップ2からのブレンドを圧縮し、0.8mmのスクリーンを取り付けたスクリーニングミルを用いて製粉する。
【0129】
ステップ4:0.800mmの手ふるいを取り付けたスクリーニングミル又は振動ミルを用いてスクリーニングした後、外相賦形剤を以下の順序で適切なブレンド容器(blending bin)に入れた:ラクトース、ナトリウム-CMC XL、Aerosil 200PH及びセルロースMK GR。拡散ミキサー内でこの混合物をステップ3からのブレンドとブレンドした。
【0130】
ステップ5:拡散ミキサー内で、ステップ4からのブレンドからの混合物をさらにステアリン酸マグネシウムとブレンドした。
【0131】
ステップ6:ロータリー打錠機を用いて、ステップ5からの混合物を錠剤に圧縮した。コア錠剤を脱塵し、金属について検査した。
【0132】
ステップ7:孔あきパンコーターにおいて、コーティングプレミックス及び精製水を混合して、ステップ6の脱塵した錠剤をフィルムコートするために使用されるコーティング懸濁液を形成した。
【0133】
【0134】
実施例13
薬物動態学的研究
ヒトにおける食効予測を実証するために、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの固体非晶質分散体のカプセル製剤、及びN-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミドの結晶性形態Aのカプセル製剤を用いて、イヌの研究を行った。固体分散体製剤及び結晶性製剤の薬物動態パラメーター平均±SDは、投与の前に一晩絶食させ、給餌が吸収に与える影響を観察するために投与後2時間絶食及び給餌状態にした150mg用量の経口投与に従う群ごとにイヌモデルの血漿において評価した(n=3)。投与前、並びに投与の0.25、0.5、1、2、4、8、24、30、及び48時間後に、各動物からいくつかの血液サンプルを採取した。
【0135】
【0136】
食効は製剤に依存する。以下の観察を行った:
1.結晶性製剤については、食事なしの場合と比較して食事ありの場合に、投与後に133%(AUCinf、26100対11200ng・h/mL)の曝露の増大があった(正の食効)。
2.固体分散体製剤については、食事なしの場合と比較して食事ありの場合に、投与後に22.5%(AUCinf、41400対32100ng・h/mL)の曝露の減少があった(負の食効)。
3.絶食条件下では、結晶性製剤と比較して固体分散体製剤を用いると、3.7倍高い曝露(AUCinf、41400対11200ng・h/mL)があった。
【0137】
実施例14
薬物動態学的研究
ヒトにおける食効予測を実証するために、N-[4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル]-6-[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]-5-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の結晶性形態Aの製剤を用いて、イヌの研究を行った。製剤の薬物動態パラメーター平均±SDは、約18時間絶食させ、給餌が吸収に与える影響を観察するために投与の2時間後に給餌した150mgの経口投与に従うイヌモデルの血漿において評価した(n=3)。投与前、並びに投与の0.25、0.5、1、2、4、8、24、30、及び48時間後に、各動物からいくつかの血液サンプルを採取した。
【0138】
【0139】
以下の観察を行った:
1.食事なしで摂取した固体分散体製剤と比較して、塩酸塩製剤の場合に1.6倍高い曝露(AUCinf、51800対32000ng・h/mL)があった。
2.塩酸塩製剤及び固体分散体製剤は、ヒトにおいて同等の生物学的利用能を提供することが予想される。
【国際調査報告】