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特表2022-532409改変されたシステインを含む酸化還元酵素モチーフを有する免疫原性ペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(54)【発明の名称】改変されたシステインを含む酸化還元酵素モチーフを有する免疫原性ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20220707BHJP
   C12N 9/02 20060101ALI20220707BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220707BHJP
   C07K 2/00 20060101ALI20220707BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220707BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220707BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220707BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220707BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220707BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220707BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220707BHJP
   A61K 39/35 20060101ALI20220707BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220707BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220707BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20220707BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220707BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220707BHJP
   C07K 4/00 20060101ALN20220707BHJP
   C07K 14/55 20060101ALN20220707BHJP
   C07K 14/005 20060101ALN20220707BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N9/02 ZNA
C12N5/0783
C07K2/00
A61P37/06
A61P37/04
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/08
A61P43/00 105
A61K39/00 H
A61K39/35
A61K35/76
A61K47/64
A61K47/65
A61K35/17 Z
A61K47/68
C07K4/00
C07K14/55
C07K14/005
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568352
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(85)【翻訳文提出日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2020063860
(87)【国際公開番号】W WO2020229703
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】19174917.5
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518370219
【氏名又は名称】アンシス・エスア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミロス・エラック
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C076
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050LL01
4B065AA94X
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC03
4C076CC06
4C076CC07
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC31
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA03
4C085AA06
4C085BB01
4C085BB03
4C085BB11
4C085CC31
4C085DD51
4C085EE01
4C085GG03
4C085GG04
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087DA32
4C087NA13
4C087ZB08
4C087ZB09
4C087ZB13
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB32
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA11
4H045BA12
4H045BA13
4H045BA14
(57)【要約】
本発明は、T細胞エピトープ及び改変されたシステインを含む酸化還元酵素モチーフを含む免疫原性ペプチド、及び対象で免疫応答を調節することにおけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一般式R1-C1-Xn-C2-(式Ib)又は-C1-Xm-C2-R5(式IIb)を有する酸化還元酵素ペプチドモチーフ;
b)抗原性タンパク質のT細胞エピトープ、及び
c)a)とb)の間の0~7アミノ酸のリンカー
を含む免疫原性ペプチドであって、
式中、Xは任意のアミノ酸部分に対応し;
n及びmはともに、2であり;
式(Ib)中のC末端ハイフン(-)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のN末端のアミノ基への結合点を示し、式IIb中のN末端ハイフン(-)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のC末端のカルボニル基への結合点を示し;
R1は、CH3-CH2-C(=O)-、CH3-C(=O)-、-CH2-CH3及び-CH3を含む群から選択され;
R5は、CH3-CH2-C(=O)-O-、CH3-C(=O)-O-、-O-CH2-CH3、-O-CH3、CH3-CH2-C(=O)-NH-、CH3-C(=O)-NH-、-NH-CH2-CH3、及び-NH-CH3を含む群から選択され;
R1-C1は、N-アセチル化、N-メチル化、N-エチル化又はN-プロピオニル化を通して化学的に改変されたシステイン残基を表し;
C2-R5は、C末端アミド若しくは酸基のアセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基のC末端置換により化学的に改変されたシステイン残基を表す、免疫原性ペプチド。
【請求項2】
Xがそれぞれ独立して、H、R、及びKから選択される、請求項1に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項3】
Xがそれぞれ独立して、Y又はPから選択される、請求項1又は2に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項4】
前記酸化還元酵素モチーフが式(Ib)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項5】
抗原性ペプチドの前記T細胞エピトープが、MHCクラスII T細胞エピトープ又はNKT細胞エピトープであり、及び/又は前記エピトープが、それぞれ、MHCクラスII分子又CD1d分子の結合裂け目にフィットする、請求項1から4のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項6】
10~75アミノ酸、好ましくは10~50アミノ酸、より好ましくは10~40アミノ酸、より好ましくは10~30アミノ酸、更に好ましくは10~25アミノ酸の長さを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項7】
前記リンカーが、0~4アミノ酸を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項8】
前記抗原性タンパク質が、自己抗原、可溶性同種因子、移植から脱落した同種抗原、細胞内病原体の抗原、遺伝子療法又は遺伝子ワクチン接種のために使用されるウイルスベクターの抗原、腫瘍関連抗原又はアレルゲンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項9】
医療で使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項10】
自己免疫性疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種異系移植拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種用のウイルスベクターへの免疫応答の処置及び/又は予防で使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチドを調製する方法であって、天然アミノ酸並びにN-アセチル化システイン、N-メチル化システイン、N-エチル化システイン、N-プロピオニル化システイン、又はC末端にあるC末端アミド若しくは酸基が、アセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基で置換されているシステインから選択される化学的に改変されたシステインから出発して、前記免疫原性ペプチドを合成する工程を含む方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチドを調製する方法であって、
a2)0~7アミノ酸のリンカー(c)に必要に応じてカップリングされる抗原性タンパク質のT細胞エピトープ(b)からなるペプチドを提供する工程と、
b2)以下の一般構造: C1-Xn-C-又は-C-Xm-C2
(式中、Xは任意のアミノ酸部分に対応し;
n及びmはともに、2であり;
式(Ib)中のC末端ハイフン(-)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のN末端のアミノ基への結合点を示し、式IIb中のN末端ハイフン(-)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のC末端のカルボニル基への結合点を示す)
を有する酸化還元酵素モチーフを提供する工程と、
b3)N-アセチル化、N-メチル化、N-エチル化、N-エチル化又はN-プロピオニル化を通して、前記C1アミノ酸残基を化学的に改変するか、又はC末端アミド若しくは酸基のアセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基によるC末端置換により、前記C2アミノ酸残基を化学的に改変する工程と
を含む方法。
【請求項13】
その抗原を提示するAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団又は抗原特異的NKT細胞の集団を得る方法であって、
- 末梢血細胞を提供する工程と、
- 前記細胞を、請求項1~10のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチドと接触させる工程と、
- IL-2の存在下で前記細胞を増量する工程と
を含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法によって得られる、その抗原を提示するAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団又は抗原特異的NKT細胞の集団。
【請求項15】
医療で使用するための、請求項14に記載のその抗原を提示するAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団又は抗原特異的NKT細胞の集団。
【請求項16】
自己免疫性疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種異系移植拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種用のウイルスベクターへの免疫応答の処置及び/又は予防で使用するための、請求項14に記載のその抗原を提示するAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団又は抗原特異的NKT細胞の集団。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
抗原に対する望ましくない免疫応答の生成を阻止するために、いくつかの戦略が記載されている。WO2008017517は、所与の抗原性タンパク質のMHCクラスII抗原及び典型的なC-XX-[CST]又は[CST]-XX-C酸化還元酵素ペプチドモチーフを含むペプチドを使用した新しい戦略を記載する。これらのペプチドは、CD4+T細胞を細胞溶解性CD4+T細胞と呼ばれる細胞溶解特性を有する細胞型に変換する。これらの細胞は、アポトーシス誘発を通して、ペプチドが由来する抗原を提示する抗原提示細胞(APC)を死滅させることが可能である。WO2008017517は、アレルギー及び自己免疫疾患、例えばI型糖尿病のためにこの概念を実証する。ここで、インスリンは自己抗原として作用することができる。WO2009101207及びCarlier等(2012)Plos one 7,10 e45366は、抗原特異的細胞溶解性細胞、並びにCD4 T細胞の表面でジスルフィド架橋を還元することによって、抗原特異的な方法で作用するそれらのペプチドの作用機序をより詳細に更に記載する。
【0002】
例えば、アレルゲン又は抗原のMHCクラスIIエピトープを含むペプチドに加えて、WO2012069568は、酸化還元酵素モチーフに連結されたNKT細胞エピトープを使用し、CD1d受容体に結合し、前記特異的抗原を提示するAPCを抗原特異的な方法で排除することが示されている、細胞溶解性抗原特異的NKT細胞の活性化をもたらす可能性を更に開示する。
【0003】
WO2016059236及びWO2017182528は、追加のヒスチジン又はトリプトファンが酸化還元酵素モチーフに近接して存在し、それにより、酸化還元酵素モチーフの安定性を増加させる改変されたペプチドを更に開示する。
【0004】
WO2008017517はまた、酸化還元酵素モチーフが、in vivoで遊離チオール基を有するシステインに変換されるメチル化システイン等の改変された側鎖を有するアミノ酸を含み得ることを開示する。
【0005】
しかし、従来技術は、SH側鎖以外の基上でのシステインの推定改変に関しては無変化のままである。酸化還元酵素モチーフにおけるシステインのN又はC末端改変は、報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2008017517
【特許文献2】WO2009101207
【特許文献3】WO2012069568
【特許文献4】WO2016059236
【特許文献5】WO2017182528
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Carlier等(2012)Plos one 7,10 e45366
【非特許文献2】Matsuda等(2008)、Curr. Opinion Immunol.、20 358~368頁
【非特許文献3】Godfrey等(2010)、Nature rev. Immunol 11、197~206頁
【非特許文献4】Zhang等(2005) Nucleic Acids Res 33、W180~W183頁(PREDBALB)
【非特許文献5】Salomon & Flower (2006) BMC Bioinformatics 7、501 (MHCBN)
【非特許文献6】Schuler等(2007) Methods Mol. Biol.409、75~93頁(SYFPEITHI)
【非特許文献7】Donnes & Kohlbacher (2006) Nucleic Acids Res. 34、W194~W197頁(SVMHC)
【非特許文献8】Kolaskar & Tongaonkar (1990) FEBS Lett. 276、172~174頁
【非特許文献9】Guan等(2003) Appl. Bioinformatics 2、63~66頁(MHCPred)
【非特許文献10】Singh and Raghava (2001) Bioinformatics 17、1236~1237頁(Propred)
【非特許文献11】ScanProsite De Castro等(2006) Nucleic Acids Res. 34(ウェブサーバー発行):W362~W365頁
【非特許文献12】Curr Protoc Protein Sci. 2012年8月;CHAPTER: Unit-18.1; Introduction to Peptide Synthesis; Maciej Stawikowski及びGregg B. Fields
【非特許文献13】Amide bond formation and peptide coupling、Tetrahedron、2005年、61巻、10827~10852頁
【非特許文献14】Advances in Fmoc solid-phase peptide synthesis、J Pept Sci. 2016年、22巻、4~27頁
【非特許文献15】Solid-phase peptide synthesis: from standard procedures to the synthesis of difficult sequences、Nat. Protoc、2007年、3247~3256頁
【非特許文献16】Robust Chemical Synthesis of Membrane Proteins through a General Method of Removable Backbone Modification、J. Am. Chem. Soc. 2016年、138巻、3553~3561頁
【非特許文献17】Tomazzolli等(2006) Anal. Biochem. 350、105~112頁
【非特許文献18】Vijayasaradhi等(1995) J. Cell. Biol. 130、807~820頁
【非特許文献19】Copier等(1996) J. lmmunol. 157、1017~1027頁
【非特許文献20】Mahnke等(2000) J. Cell Biol.151、673~683頁
【非特許文献21】Bonifacio及びTraub(2003) Annu. Rev. Biochem. 72、395~447頁
【非特許文献22】「McCutcheon's Detergents and Emulsifiers Annual」(MC Publishing Crop.社、Ridgewood、New Jersey、1981)
【非特許文献23】「Tensid-Taschenbucw」、第2版(Hanser Verlag社、Vienna、1981)
【非特許文献24】「Encyclopaedia of Surfactants」(Chemical Publishing Co.社、New York、1981)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、抗原のT細胞エピトープ及びN又はC末端改変システインを有する酸化還元酵素モチーフを含む免疫原性ペプチドを提供する。
【0009】
本発明は以下の態様に関する:
態様1:
a)式(I)又は(II)を有する酸化還元酵素モチーフ、
b)抗原性タンパク質のT細胞エピトープ、及び
c)a)とb)の間の0~7アミノ酸のリンカー
を含む免疫原性ペプチドであって、
【0010】
【化1】
【0011】
式中、式(I)中の波線(
【0012】
【化2】
【0013】
)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のN末端のアミノ基に対する結合点を示し、式II中の波線(
【0014】
【化3】
【0015】
)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のC末端のカルボニル基に対する結合点を示し;
R1は、CH3-CH2-C(=O)-、CH3-C(=O)-、-CH2-CH3及び-CH3を含む群から選択され、好ましくはCH3-CH2-C(=O)-、CH3-C(=O)-又は-CH3であり;
R2及びR4はそれぞれ独立して、-CH2-SH、-CH2-OH、及び-CH(OH)-CH3を含む群から選択され、R2又はR4の少なくとも1つは、-CH2-SHであり;
R3及びR7はそれぞれ独立して、H、-CH3、-(CH2)3-NH-C(=NH)-NH2、-CH2-C(=O)-NH2、-CH2-C(=O)-OH、-(CH2)2-C(=O)-NH2、-CH2-SH、-(CH2)2-C(=O)-OH、-CH2-(1H-イミダゾール-4-イル)、-CH2-CH(CH3)2、-(CH2)4-NH2、-CH(CH3)-CH2-CH3、-CH2-OH、-CH(CH3)2、-CH(OH)-CH3、-CH2-フェニル、-CH2-1H-インドール-3-イル、-(CH2)2-S-CH3、及び-CH2-(4-ヒドロキシフェニル)を含む群から選択されるか、又はNH-R3若しくはNH-R7は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、ピロリジニル環を形成し;
R5は、CH3-CH2-C(=O)-O-、CH3-C(=O)-O-、-O-CH2-CH3、-O-CH3、CH3-CH2-C(=O)-NH-、CH3-C(=O)-NH-、-NH-CH2-CH3、及び-NH-CH3を含む群から選択され;
R6及びR8はそれぞれ独立して、-CH2-SH、-CH2-OH、及び-CH(OH)-CH3を含む群から選択され、R6又はR8の少なくとも1つは、-CH2-SHであり;
n及びmはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5及び6を含む群から選択される整数である、免疫原性ペプチド。
【0016】
本明細書に開示される全ての実施形態において、式(I)又は(II)
【0017】
【化4】
【0018】
を有する前記酸化還元酵素ペプチドモチーフはまた、
【0019】
【化5】
【0020】
(式中、式(Ia)中の波線(
【0021】
【化6】
【0022】
)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のN末端のアミノ基に対する結合点を示し、式IIa中の波線(
【0023】
【化7】
【0024】
)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のC末端のカルボニル基に対する結合点を示し;
R1は、CH3-CH2-C(=O)-、CH3-C(=O)-、-CH2-CH3及び-CH3を含む群から選択され、好ましくはCH3-CH2-C(=O)-、CH3-C(=O)-又は-CH3であり;
R5は、CH3-CH2-C(=O)-O-、CH3-C(=O)-O-、-O-CH2-CH3、-O-CH3、CH3-CH2-C(=O)-NH-、CH3-C(=O)-NH-、-NH-CH2-CH3、及び-NH-CH3を含む群から選択され;
R1-[C1S1T1]は、N-アセチル化、N-メチル化、N-エチル化又はN-プロピオニル化を介してR1を通して化学的に改変された、それぞれシステイン、セリン又はトレオニンから選択されるアミノ酸部分を表し、好ましくは、前記アミノ酸は、N-アセチル化、N-メチル化、N-エチル化又はN-プロピオニル化を通して化学的に改変されたシステインであり;
[C2S2T2]-R5は、C末端アミド又は酸基のアセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基によって、C末端置換R5を通して化学的に改変された、それぞれシステイン、セリン又はトレオニンから選択されるアミノ酸部分を表し、好ましくは、前記アミノ酸は、そのC末端アミド又は酸基のアセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基によって、C末端置換により化学的に改変されたシステインであり;
各式Ia又はIIaにおいて、[C1S1T1]又は[C2S2T2]アミノ酸部分の少なくとも1つはシステインであり、より好ましくは、R1-C1-Xn-C2-(式Ib)又は-C1-Xm-C2-R5(式IIb)で見られるように、アミノ酸部分はともにシステインであり;
Xは、任意のアミノ酸部分に対応し;
n及びmはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5及び6を含む群から選択される整数である)
として要約されて、表され得る。
態様2:R2は-CH2-SHであり、R6は-CH2-SHであり、すなわち、[C1S1T1]又は[C2S2T2]において、システインが、セリン又はトレオニンに代わって選択される、態様1による免疫原性ペプチド。
態様3:R3及びR7はそれぞれ独立して、-CH2-(1H-イミダゾール-4-イル)、-(CH2)3-NH-C(=NH)-NH2、及び-(CH2)4-NH2から選択される、態様1又は2のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様4:R3及びR7はそれぞれ独立して、-CH2-(1H-イミダゾール-4-イル)であり、NH-R3は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、ピロリジニル環を形成するか、又はNH-R7は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、ピロリジニル環を形成する、態様1~3のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様5:n又はmは2である、態様1~4のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様6:R4又はR8は-CH2-SHである、態様1~5のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様7:前記酸化還元酵素モチーフは、式(I)を有する、態様1~6のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様8:前記T細胞エピトープは、前記T細胞エピトープのN末端若しくはC末端の、その配列中及び/又は11アミノ酸の領域中に、システイン、セリン、又はトレオニン残基を天然に含まない、態様1~7のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様9:前記酸化還元酵素モチーフは、前記抗原性タンパク質のN末端若しくはC末端の、11アミノ酸の領域中に天然に存在しない、態様1~8のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様10:前記T細胞エピトープは、前記酸化還元酵素モチーフを天然に含まない、態様1~9のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様11:抗原性タンパク質の前記T細胞エピトープは、MHCクラスII T細胞エピトープ又はNKT細胞エピトープである、態様1~10のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様12:前記エピトープは、MHCクラスII分子又CD1d分子の結合裂け目にフィットする、態様1~11のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様13:前記エピトープは、7~30アミノ酸、好ましくは7~25アミノ酸、より好ましくは7~20アミノ酸の長さを有する、態様1~12のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様14:10~75アミノ酸、好ましくは10~50アミノ酸、より好ましくは10~40アミノ酸、より好ましくは10~30アミノ酸、更に好ましくは10~25アミノ酸の長さを有する、態様1~13のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様15:前記リンカーは、0~4アミノ酸を有する、態様1~14のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様16:前記抗原性タンパク質は、自己抗原、可溶性同種因子、移植から脱落した同種抗原、細胞内病原体の抗原、遺伝子療法又は遺伝子ワクチン接種のために使用されるウイルスベクターの抗原、腫瘍関連抗原又はアレルゲンである、態様1~15のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様17:医療で使用するための、態様1~16のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様18:自己免疫性疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種異系移植拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種用のウイルスベクターへの免疫応答の処置及び/又は予防で使用するための、態様1~17のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様19:態様1~18のいずれか1つによる免疫原性ペプチドを調製する方法であって、
a1)例えば、例として従来のペプチド合成機を使用した従来のペプチド合成によって、前記免疫原性ペプチドを合成する工程、又は
a2)抗原性タンパク質のT細胞エピトープからなるペプチドを提供する工程と、
b2)式(III)又は(IV)を有する化合物及び前記エピトープが互いに隣接するか又は多くても7アミノ酸のリンカーによって分離されるように、前記ペプチドのN又はC末端で、それぞれ式(III)又は(IV)(式中、R1~R7、m及びnは、請求項1で規定される通りである)を有する化合物を連結する工程と
【0025】
【化8】
【0026】
を、或いは、
a3)抗原性タンパク質のT細胞エピトープからなるペプチドを提供する工程と、
b3)前記モチーフ及び式(V)又は(VI)を有する化合物が互いに隣接するか又は多くても7アミノ酸のリンカーによって分離されるように、前記ペプチドのN又はC末端で、それぞれ式(V)又は(VI)(式中、R10は水素であるか、又はR11はNH2若しくはOHであり、R2~R4及びR6~R8、m及びnは、請求項1で規定される通りである)を有する化合物を連結する工程、及び式(V)又は(VI)を有する前記化合物の前記R10又はR11を、少なくとも1つのCH3-CH2-C(=O)-、CH3-C(=O)-、-CH2-CH3、又は-CH3で置き換える工程と
【0027】
【化9】
【0028】
を含む方法。
態様20:態様1~18のいずれか1つによる免疫原性ペプチドを調製する方法であって、天然アミノ酸並びにN-アセチル化システイン、N-メチル化システイン、N-エチル化システイン、N-プロピオニル化システイン、又はC末端にあるC末端アミド若しくは酸基が、アセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基で置換されているシステインからなる群から選択される化学的に改変されたシステインから出発して、前記免疫原性ペプチドを合成する工程を含む方法。
態様21:態様1~18のいずれか1つによる免疫原性ペプチドを調製する方法であって、
a2)0~7アミノ酸のリンカー(c)に必要に応じてカップリングされる抗原性タンパク質のT細胞エピトープ(b)からなるペプチドを提供する工程と、
b2)以下の一般構造:C1-Xn-C-又は-C-Xm-C2
(式中、Xは任意のアミノ酸部分に対応し;
n及びmはともに、2であり;
式(Ib)中のC末端ハイフン(-)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のN末端のアミノ基への結合点を示し、式IIb中のN末端ハイフン(-)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のC末端のカルボニル基への結合点を示す)
を有する酸化還元酵素モチーフを提供する工程と、
b3)N-アセチル化、N-メチル化、N-エチル化、N-エチル化又はN-プロピオン化により、前記C1アミノ酸残基を化学的に改変するか、又はC末端アミド若しくは酸基のアセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基によるC末端置換により、前記C2アミノ酸残基を化学的に改変する工程と
を含む方法。
態様22:その抗原を提示するAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団を得る方法であって、
- 末梢血細胞を提供する工程と、
- 前記細胞を、態様1~18のいずれか1つによる免疫原性ペプチドと接触させる工程と、
- IL-2の存在下で前記細胞を増量する工程と
を含む方法。
態様23:抗原特異的NKT細胞を得る方法であって、
- 末梢血細胞を提供する工程と、
- 前記細胞を、態様1~18のいずれか1つによる免疫原性ペプチドと接触させる工程と、
- IL-2の存在下で前記細胞を増量する工程と
を含む方法。
態様24:その抗原を提示するAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団を得る方法であって、
- 態様1~18のいずれか1つによる免疫原性ペプチドを提供する工程と、
- 前記ペプチドを対象に投与する工程と、
- 抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の前記集団を前記対象から得る工程と
を含む方法。
態様25::抗原特異的NKT細胞の集団を得る方法であって、
- 態様1~18のいずれか1つによる免疫原性ペプチドを提供する工程;
- 前記ペプチドを対象に投与する工程;及び
- 抗原特異的NKT細胞の前記集団を前記対象から得る工程
を含む方法。
態様26:自己免疫性疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種異系移植拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種用のウイルスベクターへの免疫応答の処置及び/又は予防で使用するための、態様22~25のいずれか1つの方法によって入手できる抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞の集団。
態様27:個体で自己免疫性疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種異系移植拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種用のウイルスベクターへの免疫応答を処置及び/又は予防する方法であって、態様1~18のいずれか1つによる免疫原性ペプチド又は態様26による細胞集団を前記個体に投与する工程を含む方法。
態様28:個体で自己免疫性疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種異系移植拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種用のウイルスベクターへの免疫応答を処置又は予防する方法であって、
- 前記個体の末梢血細胞を提供する工程、
- 前記細胞を態様1~18のいずれか1つによる抗原性ペプチドと接触させる工程、
- 前記細胞を増量する工程、及び
- 増量された前記細胞を前記個体に投与する工程
を含む方法。
【0029】
本発明のペプチドは、本明細書に開示される改変された酸化還元酵素ペプチドモチーフの活性が、[CST]-Xn/m-C又はC-Xn/m-[CST]型の公知の酸化還元酵素ペプチドモチーフと比較した場合、増強された酸化還元酵素活性を有するという利点を有する。したがって、本発明のペプチドは、先行技術のペプチドと比較した場合、より大きな効力及び細胞溶解性CD4+T細胞を生成するより大きな能力を有する。
【0030】
本発明は、以下の図面によって説明されるが、これらの図面は、単に説明の目的のためであるとみなされ、本発明を、本明細書に開示される実施形態に限定するものでは全くない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】配列CPYCSLQPLALEGSLQKRGを有するペプチド1及び配列N-アセチル-CPYCSLQPLALEGSLQKRGを有するペプチド2の酸化還元酵素活性の比較を表す図である。DTTは、陽性対照として使用される。
図2】配列CPYCVQYIKANSKFIGITELを有するペプチド6及び配列N-アセチル-CPYCVQYIKANSKFIGITELを有するペプチド7の酸化還元酵素活性の比較を表す図である。DTTは、陽性対照として使用される。
図3】ペプチド21~25の酸化還元酵素活性の比較を表す図である(詳細な配列に関しては、table 5(表5)を参照)。DTTは、陽性対照として使用される。
図4】ペプチド26及び27の酸化還元酵素活性の比較を表す図である(詳細な配列に関しては、table 6(表6)を参照)。DTTは、陽性対照として使用される。
図5】ペプチド28~30の酸化還元酵素活性の比較を表す図である(詳細な配列に関しては、table 7(表7)を参照)。DTTは、陽性対照として使用される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は特定の実施形態に関して記載されるが、本発明はそれに限定されず、請求項によって限定されるだけである。請求項の中のいかなる参照符号も、請求範囲を限定するものと解釈されるべきでない。以下の用語又は定義は、本発明の理解を助けるためにだけ提供される。本明細書で特記されない限り、本明細書で使用される全ての用語は、それらが本発明の分野の当業者にとって有するだろうものと同じ意味を有する。本明細書で提供される定義は、当業者が理解するもの未満の請求範囲を有するものと解釈されるべきでない。
【0033】
別途指示されない限り、具体的に詳細に記載されない全ての方法、工程、技術及び操作は、当業者に明らかになるように、それ自体公知の様式で実行することができ、及び実行されている。例えば標準のハンドブック、上で言及した一般的な背景技術、及びその中の更なる引用文献に再び言及される。
【0034】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに別途指図しない限り、単数及び複数の両方の指示を含む。用語「任意の」は、本明細書で使用される通り、態様、請求項又は実施形態に関して使用される場合、任意の単一のもの(すなわち誰か)、並びに、言及される前記態様、請求項又は実施形態の全ての組合せを指す。
【0035】
本明細書で使用される用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised of)」は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」又は「含有している(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていないメンバーも、要素も、方法工程も排除しない。前記用語は、実施形態「事実上からなる」及び「からなる」も包含する。
【0036】
エンドポイントによる数値範囲の列挙は、それぞれの範囲の中に包含される全ての数字及び分数、並びに列挙されるエンドポイントを含む。
【0037】
測定可能な値、例えばパラメータ、量、期間等を指す場合に本明細書で使用される用語「約」は、そのような変動が開示される発明で実行するのに適当である限り、指定値の及びそれから+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、更により好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含するものである。修飾子「約」が指す値は、それ自体も具体的に、及び好ましくは開示されることを理解すべきである。
【0038】
本明細書で使用されるように、「疾患の処置で使用するための組成物」で使用される用語「使用するための」は、対応する処置方法、及び疾患の処置のための医薬の製造のための調製物の対応する使用も開示するものとする。
【0039】
本明細書で使用される用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結される10~200アミノ酸のアミノ酸配列を含む分子を指すが、それは非アミノ酸構造を含むことができる。
【0040】
本明細書で使用される用語「免疫原性ペプチド」は、免疫原性である、すなわち、免疫応答を導き出すことが可能なT細胞エピトープを含むペプチドを指す。
【0041】
本発明によるペプチドは、従来の20アミノ酸又はその改変バージョンのいずれかを含有することができるか、又は、化学的ペプチド合成によって、若しくは化学的若しくは酵素的改変によって組み込まれる天然に存在しないアミノ酸を含有することができる。
【0042】
用語「酸化還元酵素モチーフ」、「酸化還元酵素ペプチドモチーフ」、「チオール-酸化還元酵素モチーフ」、「チオレダクターゼモチーフ」、「チオオキシレドックスモチーフ」又は「酸化還元モチーフ」は、本明細書で同義語として使用され、1つの分子(還元体、水素又は電子供与体とも呼ばれる)から別のもの(酸化体、水素又は電子受容体とも呼ばれる)への電子の移動に関与するモチーフを指す。典型的な酸化還元酵素ペプチドモチーフは、C-Xn/m-[CST]又は[CST]-C-Xn/m-ペプチドモチーフとして表され、式中、Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを、Xは任意のアミノ酸部分又は残基を表し、nは、1、2、3、4、5又は6、通常、1、2又は3からなる群から選択される整数である。本発明では、C又は[CST]残基の1つは、モチーフのアミノ酸残基のN末端アミド上、又はC末端カルボキシ基上のいずれかで、アセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基を保有するように改変されている。
【0043】
これは、以下の一般式:
【0044】
【化10】
【0045】
(式中、式(I)中の波線(
【0046】
【化11】
【0047】
)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のN末端のアミノ基に対する結合点を示し、式II中の波線(
【0048】
【化12】
【0049】
)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のC末端のカルボニル基に対する結合点を示し;
R1は、CH3-CH2-C(=O)-(プロピオニル)、CH3-C(=O)-(アセチル)、-CH2-CH3(エチル)及び-CH3(メチル)を含む群から選択され、好ましくはCH3-CH2-C(=O)-(プロピオニル)、CH3-C(=O)-(アセチル)又は-CH3(メチル)であり;
R2及びR4はそれぞれ独立して、-CH2-SH(それにより、システイン残基を形成する)、-CH2-OH(それにより、セリン残基を形成する)、及び-CH(OH)-CH3(それにより、トレオニン残基を形成する)を含む群から選択され、R2又はR4の少なくとも1つは、-CH2-SH(それにより、システイン残基を形成する)であり;
R3及びR7はそれぞれ独立して、H(それにより、グリシン残基を形成する)、-CH3(それにより、アラニン残基を形成する)、-(CH2)3-NH-C(=NH)-NH2(それにより、アルギニン残基を形成する)、-CH2-C(=O)-NH2(それにより、アスパラギン残基を形成する)、-CH2-C(=O)-OH(それにより、アスパラギン酸を形成する)、-(CH2)2-C(=O)-NH2(それにより、グルタミン残基を形成する)、-CH2-SH(それにより、システイン残基を形成する)、-(CH2)2-C(=O)-OH(それにより、グルタミン酸残基を形成する)、-CH2-(1H-イミダゾール-4-イル)(それによりヒスチジン残基を形成する)、-CH2-CH(CH3)2(それにより、ロイシン残基を形成する)、-(CH2)4-NH2(それにより、リジン残基を形成する)、-CH(CH3)-CH2-CH3(それにより、イソロイシン残基を形成する)、-CH2-OH(それにより、セリン残基を形成する)、-CH(CH3)2(それにより、バリン残基を形成する)、-CH(OH)-CH3(それにより、トレオニン残基を形成する)、-CH2-フェニル(それにより、フェニルアラニン残基を形成する)、-CH2-1H-インドール-3-イル(それにより、トリプトファン残基を形成する)、-(CH2)2-S-CH3(それにより、メチオニン残基を形成する)、及び-CH2-(4-ヒドロキシフェニル)(それにより、チロシン残基を形成する)を含む群から選択されるか、又はNH-R3若しくはNH-R7は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、ピロリジニル環を形成し(それにより、プロリン残基を形成する);
R5は、CH3-CH2-C(=O)-O-(プロピオニルによって置換された酸基)、CH3-C(=O)-O-(アセチルによって置換された酸基)、-O-CH2-CH3(エチルによって置換された酸基)、-O-CH3(メチルによって置換された酸基)、CH3-CH2-C(=O)-NH-(プロピオニルによって置換されたアミド基)、CH3-C(=O)-NH-(アセチルによって置換されたアミド基)、-NH-CH2-CH3(エチルによって置換されたアミド基)、及び-NH-CH3(メチルによって置換されたアミド基)を含む群から選択され;
R6及びR8はそれぞれ独立して、-CH2-SH(それにより、システイン残基を形成する)、-CH2-OH(それにより、セリン残基を形成する)、及び-CH(OH)-CH3(それにより、トレオニン残基を形成する)を含む群から選択され、R6又はR8の少なくとも1つは、-CH2-SH(それにより、システイン残基を形成する)であり;
n及びmはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5及び6を含む群から選択される整数である)
による酸化還元酵素モチーフを生じる。
【0050】
本明細書に開示される全ての実施形態において、上記で表される式(I)又は(II)を有する前記酸化還元酵素ペプチドモチーフはまた、
【0051】
【化13】
【0052】
(式中、式(Ia)中の波線(
【0053】
【化14】
【0054】
)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のN末端のアミノ基に対する結合点を示し、式IIa中の波線(
【0055】
【化15】
【0056】
)は、該リンカー(c)又は該エピトープ(b)のC末端のカルボニル基に対する結合点を示し;
R1は、CH3-CH2-C(=O)-、CH3-C(=O)-、-CH2-CH3及び-CH3を含む群から選択され;
R5は、CH3-CH2-C(=O)-O-、CH3-C(=O)-O-、-O-CH2-CH3、-O-CH3、CH3-CH2-C(=O)-NH-、CH3-C(=O)-NH-、-NH-CH2-CH3、及び-NH-CH3を含む群から選択され;
[C1S1T1]は、システイン、セリン又はトレオニンから選択されるアミノ酸部分を表し;
[C2S2T2]は、システイン、セリン又はトレオニンから選択されるアミノ酸部分を表し;
各式Ia又はIIaにおいて、[C1S1T1]又は[C2S2T2]アミノ酸部分の少なくとも1つはシステインであり;
Xは、任意のアミノ酸部分に対応し;
n及びmはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5及び6を含む群から選択される整数である)
として要約されて、表され得る。
【0057】
したがって、上記で列挙した酸化還元酵素モチーフにおけるシステインは、いずれかのシステインを表すが、同様に、メルカプトバリン、ホモシステイン等のチオール基を有する別のアミノ酸又はチオール官能基を有する他の天然若しくは非天然アミノ酸を表し得る。還元活性を有するためには、酸化還元酵素モチーフ中に存在する1つ又は複数のシステインは、システインジスルフィド架橋の一部として存在すべきではない。
【0058】
好ましくは、上記式Ia又はIIa中の前記Xは、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、及びR、H、又は非天然アミノ酸からなる群から選択される。
【0059】
より好ましくは、上記式Ia又はIIa中の少なくとも1つのXは、K、R、H又は非天然の塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸である。用語「塩基性アミノ酸」はブレンステッド-ローリー及びルイス塩基のように作用する任意のアミノ酸を指し、天然の塩基性アミノ酸である、アルギニン(R)、リジン(K)又はヒスチジン(H)、又は非天然の塩基性アミノ酸、例えば、限定されずに以下のものが含まれる:
・リジン変異体、例えばFmoc-β-Lys(Boc)-OH(CAS番号219967-68-7)、L-オルニチン又はオルニチンとも呼ばれるFmoc-Orn(Boc)-OH(CAS番号109425-55-0)、Fmoc-β-Homolys(Boc)-OH(CAS番号203854-47-1)、Fmoc-Dap(Boc)-OH(CAS番号162558-25-0)又はFmoc-Lys(Boc)OH(DiMe)-OH(CAS番号441020-33-3);
・チロシン/フェニルアラニン変異体、例えばFmoc-L-3Pal-OH(CAS番号175453-07-3)、Fmoc-β-HomoPhe(CN)-OH(CAS番号270065-87-7)、Fmoc-L-β-HomoAla(4-ピリジル)-OH(CAS番号270065-69-5)又はFmoc-L-Phe(4-NHBoc)-OH(CAS番号174132-31-1);
・プロリン変異体、例えばFmoc-Pro(4-NHBoc)-OH(CAS番号221352-74-5)又はFmoc-Hyp(tBu)-OH(CAS番号122996-47-8);
・アルギニン変異体、例えばFmoc-β-Homoarg(Pmc)-OH(CAS番号700377-76-0)。
【0060】
式Ia又はIIaの好ましい実施形態では、整数n又はmは1であり、Xは、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びH、又は非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸である。好ましくは、モチーフ中のXは、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態では、モチーフ中のXは、H、K、若しくはR、又は本明細書に規定されるような非天然塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸である。
【0061】
式Ia又はIIaの好ましい実施形態では、整数n又はmは2であり、それにより、酸化還元酵素モチーフ内に内部X1X2アミノ酸対を創出する。X1及びX2は、それぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びH、又は非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフ中のX1及びX2は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態では、前記モチーフ中のX1又はX2の少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に規定されるような非天然塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸である。別の特定の実施形態では、前記モチーフ中のX1又はX2の少なくとも1つは、P又はYである。酸化還元酵素モチーフ内の内部X1X2アミノ酸対の具体例:PY、HY、KY、RY、PH、PK、PR、HG、KG、RG、HH、HK、HR、GP、HP、KP、RP、GH、GK、GR、GH、KH、及びRH。
【0062】
式Ia又はIIaの好ましい実施形態では、整数n又はmは3であり、それにより、酸化還元酵素モチーフ内に一続きの内部X1X2X3アミノ酸を創出する。X1、X2、及びX3は、それぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びH、又は非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフ中のX1、X2、及びX3は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態では、前記モチーフ中のX1、X2、又はX3の少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に規定されるような非天然塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸である。
【0063】
酸化還元酵素モチーフ内の一続きの内部X1X2X3アミノ酸の具体例は、XPY、PXY、及びPYX
(式中、Xは、例えば:
KPY、RPY、HPY、GPY、APY、VPY、LPY、IPY、MPY、FPY、WPY、PPY、SPY、TPY、CPY、YPY、NPY、QPY、DPY、EPY、及びKPY、又は
PKY、PRY、PHY、PGY、PAY、PVY、PLY、PIY、PMY、PFY、PWY、PPY、PSY、PTY、PCY、PYY、PNY、PQY、PDY、PEY、及びPLY、又は
PYK、PYR、PYH、PYG、PYA、PYV、PYL、PYI、PYM、PYF、PYW、PYP、PYS、PYT、PYC、PYY、PYN、PYQ、PYD、PYE、及びPYL
における任意のアミノ酸であり得る);
XHG、HXG、及びHGX
(式中、Xは、例えば:
KHG、RHG、HHG、GHG、AHG、VHG、LHG、IHG、MHG、FHG、WHG、PHG、SHG、THG、CHG、YHG、NHG、QHG、DHG、EHG、及びKHG、又は
HKG、HRG、HHG、HGG、HAG、HVG、HLG、HIG、HMG、HFG、HWG、HPG、HSG、HTG、HCG、HYG、HNG、HQG、HDG、HEG、及びHLG、又は
HGK、HGR、HGH、HGG、HGA、HGV、HGL、HGI、HGM、HGF、HGW、HGP、HGS、HGT、HGC、HGY、HGN、HGQ、HGD、HGE、及びHGL
における任意のアミノ酸であり得る);
XGP、GXP、及びGPX
(式中、Xは、例えば:
KGP、RGP、HGP、GGP、AGP、VGP、LGP、IGP、MGP、FGP、WGP、PGP、SGP、TGP、CGP、YGP、NGP、QGP、DGP、EGP、及びKGP、又は
GKP、GRP、GHP、GGP、GAP、GVP、GLP、GIP、GMP、GFP、GWP、GPP、GSP、GTP、GCP、GYP、GNP、GQP、GDP、GEP、及びGLP、又は
GPK、GPR、GPH、GPG、GPA、GPV、GPL、GPI、GPM、GPF、GPW、GPP、GPS、GPT、GPC、GPY、GPN、GPQ、GPD、GPE、及びGPL
における任意のアミノ酸であり得る);
XGH、GXH、及びGHX
(式中、Xは、例えば:
KGH、RGH、HGH、GGH、AGH、VGH、LGH、IGH、MGH、FGH、WGH、PGH、SGH、TGH、CGH、YGH、NGH、QGH、DGH、EGH、及びKGH、又は
GKH、GRH、GHH、GGH、GAH、GVH、GLH、GIH、GMH、GFH、GWH、GPH、GSH、GTH、GCH、GYH、GNH、GQH、GDH、GEH、及びGLH、又は
GHK、GHR、GHH、GHG、GHA、GHV、GHL、GHI、GHM、GHF、GHW、GHP、GHS、GHT、GHC、GHY、GHN、GHQ、GHD、GHE、及びGHL
における任意のアミノ酸であり得る);
XGF、GXF、及びGFX
(式中、Xは、例えば:
KGF、RGF、HGF、GGF、AGF、VGF、LGF、IGF、MGF、FGF、WGF、PGF、SGF、TGF、CGF、YGF、NGF、QGF、DGF、EGF、及びKGF、又は
GKF、GRF、GHF、GGF、GAF、GVF、GLF、GIF、GMF、GFF、GWF、GPF、GSF、GTF、GCF、GYF、GNF、GQF、GDF、GEF、及びGLF、又は
GFK、GFR、GFH、GFG、GFA、GFV、GFL、GFI、GFM、GFF、GFW、GFP、GFS、GFT、GFC、GFY、GFN、GFQ、GFD、GFE、及びGFL
における任意のアミノ酸であり得る);
XRL、RXL、及びRLX
(式中、Xは、例えば:
KRL、RRL、HRL、GRL、ARL、VRL、LRL、IRL、MRL、FRL、WRL、PRL、SRL、TRL、CRL、YRL、NRL、QRLRL、DRL、ERL、及びKRL、又は
GKF、GRF、GHF、GGF、GAF、GVF、GLF、GIF、GMF、GFF、GWF、GPF、GSF、GTF、GCF、GYF、GNF、GQF、GDF、GEF、及びGLF、又は
RLK、RLR、RLH、RLG、RLA、RLV、RLL、RLI、RLM、RLF、RLW、RLP、RLS、RLT、RLC、RLY、RLN、RLQ、RLD、RLE、及びRLL
における任意のアミノ酸であり得る);
XHP、HXP、及びHPX
(式中、Xは、例えば:
KHP、RHP、HHP、GHP、AHP、VHP、LHP、IHP、MHP、FHP、WHP、PHP、SHP、THP、CHP、YHP、NHP、QHP、DHP、EHP、及びKHP、又は
HKP、HRP、HHP、HGP、HAF、HVF、HLF、HIF、HMF、HFF、HWF、HPF、HSF、HTF、HCF、HYP、HNF、HQF、HDF、HEF、及びHLP、又は
HPK、HPR、HPH、HPG、HPA、HPV、HPL、HPI、HPM、HPF、HPW、HPP、HPS、HPT、HPC、HPY、HPN、HPQ、HPD、HPE、及びHPL
における任意のアミノ酸であり得る)
である。
【0064】
式Ia又はIIaの好ましい実施形態では、整数n又はmは4であり、それにより、酸化還元酵素モチーフ内に一続きの内部X1X2X3X4アミノ酸を創出する。X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びH、又は本明細書に規定されるような非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフ中のX1、X2、X3及びX4は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態では、前記モチーフ中のX1、X2、X3又はX4の少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に規定されるような非天然塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸である。
【0065】
具体例は、LAVL、TVQA又はGAVH及びX1AVL、LX2VL、LAX3L、又はLAVX4;X1VQA、TX2QA、TVX3A、又はTVQX4;X1AVH、GX2VH、GAX3H、又はGAVX4(式中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びH、又は本明細書に規定されるような非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であり得る)等のそれらの変異体である。
【0066】
式Ia又はIIaの好ましい実施形態では、整数n又はmは5であり、それにより、酸化還元酵素モチーフ内に一続きの内部X1X2X3X4X5アミノ酸を創出する。X1、X2、X3、X4及びX5は、それぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びH、又は非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフ中のX1、X2、X3、X4及びX5は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態では、前記モチーフ中のX1、X2、X3、X4又はX5の少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に規定されるような非天然塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸である。
【0067】
具体例は、PAFP又はDQGGE及びX1AFPL、PX2FPL、PAX3PL、PAFX4L、又はPAFPX5;X1QGGE、DX2GGE、DQX3GE、DQGX4E、又はDQGGX5(式中、X1、X2、X3、X4、及びX5は、それぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びH、又は本明細書に規定されるような非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であり得る)等のそれらの変異体である。
【0068】
式Ia又はIIaの好ましい実施形態では、整数n又はmは6であり、それにより、酸化還元酵素モチーフ内に一続きの内部X1X2X3X4X5X6アミノ酸を創出する。X1、X2、X3、X4、X5及びX6は、それぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びH、又は非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフ中のX1、X2、X3、X4、X5及びX6は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態では、前記モチーフ中のX1、X2、X3、X4、X5及びX6の少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に規定されるような非天然塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸である。
【0069】
具体例は、DIADKY又はX1IADKY、DX2ADKY、DIX3DKY、DIAX4KY、DIADX5Y、又はDIADKX6(式中、X1、X2、X3、X4、X5及びX6は、それぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びH、又は本明細書に規定されるような非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であり得る)等のその変異体である。
【0070】
本発明との関連で、又は本明細書に開示される場合、アミノ酸部分、好ましくは、システインは、L-アミノ酸、又はD-アミノ酸又はL-若しくはD-アミノ酸のラセミ混合物を指す。
【0071】
用語「N-アセチルシステイン」は、アミノ酸システインのN-アセチル誘導体を指す。本明細書で使用される場合、「N-アセチルシステイン(NAC)」又は「アセチルシステイン」は、N-アセチル-L-システイン(CAS番号616-91-1)、N-アセチル-D-システイン(CAS番号26117-28-2)、並びにラセミN-アセチルシステイン又はN-アセチル-L-システイン及びN-アセチル-D-システインの(ラセミ)混合物の任意の形態を包含する。
【0072】
用語「N-メチルシステイン」は、アミノ酸システインのN-メチル誘導体を指す。本明細書で使用される場合、「N-メチルシステイン」又は「メチルシステイン」は、N-メチル-L-システイン(CAS番号4026-48-6)、N-メチル-D-システイン、並びにラセミN-メチルシステイン又はN-メチル-L-システイン及びN-メチル-D-システインの(ラセミ)混合物の任意の形態を包含する。S-メチルシステインは、それが、チオレドックス活性の考え得る崩壊をもたらし得るため、本発明の全ての実施形態において明確に排除される。
【0073】
用語「N-エチルシステイン」は、アミノ酸システインのN-エチル誘導体を指す。本明細書で使用される場合、「N-エチルシステイン」又は「エチルシステイン」は、N-エチル-L-システイン、N-エチル-D-システイン、並びにラセミN-エチルシステイン又はN-エチル-L-システイン及びN-エチル-D-システインの(ラセミ)混合物を含む、エチルシステインの任意の形態を包含する。
【0074】
用語「N-プロピオニルシステイン」は、アミノ酸システインのN-プロピオニル誘導体を指す。本明細書で使用される場合、「N-プロピオニルシステイン」又は「プロピオニルシステイン」は、N-プロピオニル-L-システイン(CAS番号2885-79-2)、N-プロピオニル-D-システイン、並びにラセミN-プロピオニルシステイン又はN-プロピオニル-L-システイン及びN-プロピオニル-D-システインの(ラセミ)混合物を含む、プロピオニルルシステインの任意の形態を包含する。本明細書で使用される用語「抗原」は、巨大分子、一般的にはタンパク質(多糖の有無にかかわらず)の、又は1つ又は複数のハプテンを含み、T又はNKT細胞エピトープを含むタンパク質性の組成物で作製される構造を指す。
【0075】
本明細書で使用される用語「抗原性タンパク質」は、1つ又は複数のT又はNKT細胞エピトープを含むタンパク質を指す。本発明による抗原性タンパク質は、自己抗原、可溶性同種因子、移植から脱落した同種抗原、細胞内病原体の抗原、遺伝子療法又は遺伝子ワクチン接種のために使用されるウイルスベクターの抗原、腫瘍関連抗原又はアレルゲンであり得る。
【0076】
用語「エピトープ」は、抗原性タンパク質の1つ又はいくつかの部分(コンホメーション依存エピトープを規定することができる)を指し、それは、抗体又はその部分(Fab'、Fab2'等)又はB-、若しくはT-、若しくはNKT細胞の細胞表面に提示される受容体が特異的に認識、結合し、それは、前記結合によって免疫応答を誘導することができる。
【0077】
本発明との関連で、用語「T細胞エピトープ」は、優勢、亜優勢又は劣勢のT細胞エピトープ、すなわち、Tリンパ球の細胞表面で受容体が特異的に認識、結合する抗原性タンパク質の部分を指す。エピトープが優勢、亜優勢又は劣勢であるかどうかは、エピトープに対して導き出される免疫反応に依存する。優勢は、タンパク質の全ての可能なT細胞エピトープの中で、そのようなエピトープがT細胞によって認識され、それらを活性化することができる頻度に依存する。
【0078】
ある実施形態では、抗原性タンパク質のT細胞エピトープは、MHCクラスII T細胞エピトープ又はNKT細胞エピトープである。
【0079】
用語「MHCクラスII T細胞エピトープ」は、MHC II分子の溝にフィットする、一般的に+/-9アミノ酸を有する配列を指す。MHC II T細胞エピトープを表すペプチド配列の中で、エピトープのアミノ酸はP1~P9と番号付けされ、エピトープのN末端のアミノ酸はP-1、P-2等と番号付けされ、エピトープのC末端のアミノ酸はP+1、P+2等と番号付けされる。MHCクラスII分子によって認識され、MHCクラスI分子によって認識されないペプチドは、MHCクラスII限定T細胞エピトープと呼ばれる。
【0080】
用語「NKT細胞エピトープ」は、NKT細胞の細胞表面で受容体が特異的に認識、結合する抗原性タンパク質の部分を指す。特に、NKT細胞エピトープは、CD1d分子が結合するエピトープである。NKT細胞エピトープは、一般モチーフ[FWYHT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYHT]を有する。この一般モチーフの代わりのバージョンは、位置1及び/又は位置7に代替物[FWYH]を有し、したがって[FWYH]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYH]である。
【0081】
この一般モチーフの代わりのバージョンは、位置1及び/又は位置7に代替物[FWY]を有し、[FWY]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWY]である。この一般モチーフの代わりのバージョンは、位置1及び/又は位置7に代替物[FWY]を有し、[FWY]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWY]である。
【0082】
位置1及び/又は位置7のアミノ酸に関係なく、一般モチーフの代わりのバージョンは、位置4に代替物[ILM]を有し、例えば[FWYH]-X(2)-[ILM]-X(2)-[FWYH]又は[FWYHT]-X(2)-[ILM]-X(2)-[FWYHT]又は[FWY]-X(2)-[ILM]-X(2)-[FWY]である。
【0083】
「ナチュラルキラーT」又は「NKT」細胞は、非古典的MHC複合体分子CD1dによって提示される抗原を認識する非従来のTリンパ球の異なるサブセットを構成する。NKT細胞の2つのサブセットが、目下記載される。不変のNKT細胞(iNKT)とも呼ばれるタイプI NKT細胞が、最も豊富である。それらは、不変のアルファ鎖、マウスではValphal4及びヒトではValpha24で構成される、アルファ-ベータT細胞受容体(TCR)の存在によって特徴付けられる。このアルファ鎖は、可変であるが限定された数のベータ鎖に会合する。タイプ2 NKT細胞はアルファ-ベータTCRを有するが、多形性アルファ鎖による。しかし、NKT細胞の他のサブセットが存在することが明らかであり、その表現型はまだ不完全にしか規定されていないが、それはCD1d分子との関連で提示される糖脂質によって活性化されるという特徴を共有する。
【0084】
NKT細胞は、NKG2D及びNK1.1を含むナチュラルキラー(NK)細胞受容体の組合せを一般的に発現する。NKT細胞は先天性免疫系の一部であり、それらは、それらが完全なエフェクター能力を獲得する前に増量を必要としないという事実によって適応性免疫系から区別することができる。それらの媒介物のほとんどは予め形成され、転写を必要としない。NKT細胞は、細胞内病原体に対する免疫応答及び腫瘍拒絶における主要な当事者であることが示されている。自己免疫性疾患及び移植拒絶の制御におけるそれらの役割も、提唱される。
【0085】
認識単位CD1d分子は、ベータ-2ミクログロブリンの存在を含め、MHCクラスI分子のそれに極めて似ている構造を有する。それは、2つのアルファ鎖が接し、脂質鎖を受け入れる高疎水性残基を含有する深い裂け目によって特徴付けられる。裂け目は両方の末端が開放しており、より長い鎖をそれが収容することを可能にしている。CD1dの正規のリガンドは、合成アルファガラクトシルセラミド(アルファGalCer)である。しかし、糖-及びリン脂質、ミエリンで見出される天然の脂質スルファチド、微生物ホスホイノシトールマンノシド及びアルファ-グルクロノシルセラミドを含む、多くの天然の代わりのリガンドが記載されている。当技術分野の現在のコンセンサスは(Matsuda等(2008)、Curr. Opinion Immunol.、20 358~368頁; Godfrey等(2010)、Nature rev. Immunol 11、197~206頁)、まだ、CD1dが脂質鎖、又は一般的に、CD1dに埋没する脂質テール及びCD1dから突き出る糖残基頭基で構成される共通構造を含有するリガンドだけに結合するということである。
【0086】
抗原性タンパク質由来のT細胞エピトープの同定及び選択は、当業者に公知である。
【0087】
本発明との関連で適したエピトープを同定するために、抗原性タンパク質の単離ペプチド配列は、例えば、T細胞生物学技法によって検査されて、ペプチド配列が、MHCクラスII分子又はCD1d分子の結合裂け目に結合又はフィットするかどうか、及び/又はT細胞応答(すなわち、T細胞又はNKT細胞応答)を導き出すかどうかを決定する。T細胞応答を導き出すことがわかったペプチド配列は、T細胞刺激活性を有すると規定される。
【0088】
MHCクラスII又はCD1d分子への結合親和性実験を実施して、本発明との関連で適したエピトープが、MHCクラスII分子又はCD1d分子の結合裂け目にフィットするかどうかを決定することができる。例えば、可溶性HLAクラスII分子又はCD1d分子は、所与のクラスII又はCD1d分子にホモ接合性の細胞の溶解によって得られる。後者は、アフィニティクロマトグラフィによって精製される。可溶性クラスII又はCD1d分子は、そのクラスII又はCD1d分子に対するその強力な結合親和性に従って生成された、ビオチンで標識された参照ペプチドととともにインキュベートされる。続いて、クラスII又はCD1d結合に関して評価されるべきペプチドは、種々の濃度でインキュベートされ、そのクラスII又はCD1d結合から参照ペプチドに取って代わるそれらの能力は、ニュートラビジンの添加によって算出される。
【0089】
非天然の(又は改変された)T細胞エピトープは、上述するように、MHCクラスII又はCD1d分子に対するそれらの結合親和性に関して、必要に応じて更に検査され得る。ヒトT細胞刺激活性は、例えばT1Dを有する個体から得たT細胞をT1Dに関与する自己抗原に由来するペプチド/エピトープと培養し、T細胞の増殖が、例えばトリチウム化チミジンの細胞取り込みによって測定したときにペプチド/エピトープに応答して起こるかどうか決定することによって更に試験することができる。ペプチド/エピトープへのT細胞による応答の刺激指数は、ペプチド/エピトープに応答した最大CPMを対照CPMで割り算して計算することができる。バックグラウンドレベルの2倍以上のT細胞刺激指数(S.I.)は、「陽性」とみなされる。陽性結果は、試験したペプチド/エピトープの群の各ペプチド/エピトープの平均刺激指数を計算するために使用される。
【0090】
最適なT細胞エピトープを、例えば精密マッピング技術によって決定するために、T細胞刺激活性を有し、したがってT細胞生物学技術によって決定される少なくとも1つのT細胞エピトープを含むペプチドを、ペプチドのアミノ又はカルボキシ末端でのアミノ酸残基の付加又は欠失によって改変し、改変されたペプチドへのT細胞反応性における変化を決定するために試験する。天然のタンパク質配列に重複領域を共有する2つ以上のペプチドが、T細胞生物学技術によって決定されるようなヒトT細胞刺激活性を有することが見出される場合、そのようなペプチドの全てか又は一部を含む追加のペプチドを生成することができ、これらの追加のペプチドは、類似の手順によって試験することができる。この技術に従って、ペプチドが選択され、組換えで又は合成的に生成される。T細胞エピトープ又はペプチドは、ペプチド/エピトープへのT細胞応答の強度(例えば、刺激指数)及び個体集団でのペプチドへのT細胞応答の頻度を含む様々な因子に基づいて選択される。
【0091】
更に、及び/又は代わりに、抗原性タンパク質の中でT細胞エピトープ配列を同定するために、1つ又は複数のin vitroアルゴリズムを使用することができる。好適なアルゴリズムには、限定されずに、Zhang等(2005) Nucleic Acids Res 33、W180~W183頁(PREDBALB); Salomon & Flower (2006) BMC Bioinformatics 7、501 (MHCBN); Schuler等(2007) Methods Mol. Biol.409、75~93頁(SYFPEITHI); Donnes & Kohlbacher (2006) Nucleic Acids Res. 34、W194~W197頁(SVMHC); Kolaskar & Tongaonkar (1990) FEBS Lett. 276、172~174頁, Guan等(2003) Appl. Bioinformatics 2、63~66頁(MHCPred)及びSingh and Raghava (2001) Bioinformatics 17、1236~1237頁(Propred)の中に記載されるものが含まれる。特に、そのようなアルゴリズムは、MHC II分子の溝にフィットする1つ又は複数のオクタ又はノナペプチド配列の抗原性タンパク質の中での予測を、異なるHLAタイプについて可能にする。
【0092】
タンパク質中のCD1d結合モチーフは、上記配列モチーフについて、手動で、又はScanProsite De Castro等(2006) Nucleic Acids Res. 34(ウェブサーバー発行):W362~W365頁等のアルゴリズムを使用して配列をスキャンすることによって同定することができる。
【0093】
用語「MHC」は、「主要組織適合抗原」を指す。ヒトでは、MHC遺伝子はHLA(「ヒト白血球抗原」)遺伝子として知られる。一貫して追従される規則はないが、一部の文献ではHLAタンパク質分子を指すのにHLAを使用し、HLAタンパク質をコードする遺伝子を指すのにMHCを使用する。このように、本明細書で使用する場合、用語「MHC」及び「HLA」は同等物である。ヒトのHLA系は、マウスでのその同等物、すなわちH2系を有する。最も熱心に研究されたHLA遺伝子は、9つのいわゆる古典的MHC遺伝子:HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA DQB1、HLA-DRA及びHLA-DRB1である。ヒトでは、MHCは3つの領域:クラスI、II及びIIIに分類される。A、B及びC遺伝子はMHCクラスIに属すが、6つのD遺伝子はクラスIIに属する。MHCクラスI分子は、細胞表面でベータ2ミクログロブリンと会合する、3つのドメイン(アルファ1、2及び3)を含有する単一の多形鎖で構成される。クラスII分子は、2つの鎖(アルファ1及び2、並びにベータ1及び2)を各々含有する、2つの多形鎖で構成される。
【0094】
クラスI MHC分子は、事実上全ての有核細胞で発現される。
【0095】
クラスI MHC分子との関連で提示されるペプチド断片は、CD8+Tリンパ球(細胞溶解性Tリンパ球又はCTL)によって認識される。CD8+ Tリンパ球は、刺激性抗原を有する細胞を溶解することができる細胞溶解性エフェクターに頻繁に成熟する。クラスII MHC分子は活性化リンパ球及び抗原提示細胞の上で主に発現される。CD4+ Tリンパ球(ヘルパーTリンパ球又はTh)は、マクロファージ又は樹状細胞のような抗原提示細胞の上で通常見出されるクラスII MHC分子によって提示される特異なペプチド断片の認識で活性化される。CD4+ Tリンパ球は増殖し、抗体媒介及び細胞媒介の応答を支持するIL-2、IFN-ガンマ及びIL-4等のサイトカインを分泌する。
【0096】
機能的HLAは、内因性並びに外来の、潜在的に抗原性のペプチドが結合する深い結合溝によって特徴付けられる。溝は、明確な形状及び物理化学的性質によって更に特徴付けられる。ペプチド末端が溝の末端にピン留めされるという点で、HLAクラスI結合部位は閉鎖的である。それらは、保存されたHLA残基との水素結合のネットワークにも関与する。これらの制限を考慮すれば、結合するペプチドの長さは8、9又は10残基に限定される。しかし、最高12アミノ酸残基のペプチドもHLAクラスIに結合することが可能であることが実証された。異なるHLA複合体の構造の比較は、ペプチドが比較的直線状の伸長した立体配置を採用するか又は溝からはみ出る中央の残基を含むことができる、結合の一般様式を確認した。
【0097】
HLAクラスI結合部位と対照的に、クラスII部位は両端が開放的である。これは、ペプチドが実際の結合領域から伸長し、それによって両端で「張り出す」ことを可能にする。したがって、クラスII HLAは、9から25を超えるアミノ酸残基の様々な長さのペプチドリガンドに結合することができる。HLAクラスIに類似して、クラスIIリガンドの親和性は「定常」及び「可変」構成要素によって決定される。定常部分は、HLAクラスII溝の中の保存された残基と結合したペプチドの主鎖の間で形成される水素結合のネットワークから再びもたらされる。しかし、この水素結合パターンはペプチドのN-及びC末端残基に制限されず、全鎖に分布する。後者は、それが複合型ペプチドの立体配置を厳密に直線状の様式の結合に制限するので重要である。これは、全てのクラスIIアロタイプに共通する。ペプチドの結合親和性を決定する第2の構成要素は、クラスII結合部位の中の多型のある特定の位置のために変動する。異なるアロタイプは溝の中に異なる相補的ポケットを形成し、それによって、ペプチドのサブタイプ依存性選択又は特異性を説明する。重要なことに、クラスIIポケットの中に保持されるアミノ酸残基への制約は、クラスIの場合より一般に「ソフト」である。異なるHLAクラスIIアロタイプの間に、ペプチドの大いにより多くの交差反応性がある。MHC II分子の溝にフィットするMHCクラスII T細胞エピトープの+/-9アミノ酸(すなわち8、9又は10)の配列は、通常P1~P9と番号付けされる。エピトープのN末端の追加のアミノ酸はP-1、P-2等と番号付けされ、エピトープのC末端側のアミノ酸はP+1、P+2等と番号付けされる。
【0098】
酸化還元酵素モチーフを含む本発明のペプチドでは、モチーフは、エピトープがMHC II分子又はCD1d分子の結合裂け目にフィットする場合、モチーフがMHC又はCD1d受容体結合溝の外側に留まるように位置する。酸化還元モチーフは、ペプチドの中のエピトープ配列の直近に[言い換えると、モチーフとエピトープとの間のゼロアミノ酸のリンカー配列]置かれるか、又は、7アミノ酸以下のアミノ酸配列を含むリンカーによってT細胞エピトープから分離される。特に、リンカーは1、2、3、4、5、6又は7アミノ酸を含む。好ましい実施形態は、エピトープ配列と、酸化還元酵素モチーフ配列との間に0、1、2、3又は4アミノ酸のリンカーを有するペプチドである。より好ましくは、リンカーは、4アミノ酸である。ペプチドリンカーの他に、ペプチドの部分を互いに(例えば酸化還元酵素モチーフ配列とT細胞エピトープ配列を)連結するリンカーとして、他の有機化合物を使用することができる。
【0099】
本発明のペプチドは、T細胞エピトープ及び酸化還元酵素モチーフを含む配列のN又はC末端に、追加の短いアミノ酸配列を更に含むことができる。そのようなアミノ酸配列は、本明細書では「隣接配列」と一般的に呼ばれる。隣接配列は、エピトープと、エンドソーム標的配列との間に、及び/又は酸化還元酵素モチーフと、エンドソーム標的配列との間に配置することができる。エンドソーム標的配列を含まないある特定のペプチドでは、ペプチド中の酸化還酵素モチーフ及び/又はエピトープ配列のN及び/又はC末端に短いアミノ酸配列が存在してよい。特に隣接配列は、1~7アミノ酸の配列、例えば、1、2、3、4、5、6又は7アミノ酸の配列、特に2アミノ酸の配列である。
【0100】
本発明のペプチドは、長さがかなり異なることができる。
【0101】
免疫原性ペプチドに含まれるT細胞エピトープの長さは、7~30アミノ酸、好ましくは7~25アミノ酸、より好ましくは7~20アミノ酸、例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20アミノ酸まで異なることができる。
【0102】
より詳細な実施形態では、T細胞エピトープは、7、8、又は9アミノ酸の配列からなる。更に特定の実施形態では、T細胞エピトープは、MHC-クラスII分子によってT細胞に提示されるエピトープ[MHCクラスII制限T細胞エピトープ]である。通常、T細胞エピトープ配列は、オクタペプチド、又はより具体的にはMHC IIタンパク質の裂け目にフィットするノナペプチド配列を指す。
【0103】
更に特定の実施形態では、T細胞エピトープは、CD1d分子によって提示されるエピトープ[NKT細胞エピトープ]である。通常、NKT細胞エピトープ配列は、CD1dタンパク質に結合して、CD1dタンパク質によって提示される7アミノ酸ペプチド配列を指す。
【0104】
本発明の免疫原性ペプチドの長さは、10~75アミノ酸、好ましくは10~50アミノ酸、より好ましくは10~40アミノ酸、より好ましくは10~30アミノ酸、更に好ましくは10~25アミノ酸を有し得る。
【0105】
特定の実施形態では、本発明の免疫原性ペプチドの長さは、10又は12アミノ酸まで異なることができ、すなわち、7~9アミノ酸のエピトープ、それに隣接した3アミノ酸、最高20、25、30、40、50又は75アミノ酸の酸化還元酵素モチーフからなる。
【0106】
好ましい実施形態では、本発明の免疫原性ペプチドの長さは、15又は17アミノ酸まで異なることができ、すなわち、7~9アミノ酸のエピトープ、4アミノ酸のリンカー、それに隣接した4アミノ酸、最高20、25、30、40、50又は75アミノ酸の酸化還元酵素モチーフからなる。
【0107】
ペプチドはまた、例えば、40アミノ酸のエンドソーム標的配列、約2アミノ酸の隣接配列、4アミノ酸の本明細書に記載される酸化還元酵素モチーフ、4アミノ酸のリンカー及び9アミノ酸のT細胞エピトープペプチドを含み得る。
【0108】
「エピトープ-酸化還元酵素モチーフ」は、特に、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19アミノ酸の長さを特に有する。そのようなペプチドは、サイズがより重大でないエンドソーム標的化シグナルに必要に応じてカップリングさせることができる。
【0109】
ある実施形態では、抗原性タンパク質は、自己抗原、可溶性同種因子、移植から脱落した同種抗原、細胞内病原体の抗原、遺伝子療法又は遺伝子ワクチン接種のために使用されるウイルスベクターの抗原、腫瘍関連抗原又はアレルゲンである。
【0110】
本明細書で使用される「自己抗原」は、体内に存在するヒト又は動物タンパク質を指し、それは同じヒト又は動物の体の中で免疫応答を導き出し、それにより、自己免疫疾患を誘導する。自己免疫疾患は、臓器特異的疾患及び全身性疾患の2つのカテゴリーに広く分類される。全身性自己免疫疾患の正確な病因論は同定されていない。対比して、臓器特異的自己免疫疾患は、臓器を標的とするB細胞及びT細胞を含む特異的免疫応答に関連されており、それにより、局所炎症の慢性状態を誘導及び維持する。臓器特異的自己免疫疾患の例として、1型糖尿病、重症筋無重力症、甲状腺炎及び多発性硬化症が挙げられる。これらの状態のそれぞれにおいて、それぞれインスリン、アセチルコリン筋肉受容体、甲状腺ペルオキシダーゼ及び主要塩基性タンパク質を含む、単一又は少数の自己抗原が同定されている。
【0111】
「同種因子」は、本明細書で使用される場合、同じ種の2つの個体間で比較した場合に多形性を示すタンパク質、ペプチド又は因子(すなわち、任意の分子)、より一般的には、同種因子を受け入れた対象において(アロ反応性)免疫応答を誘導する任意のタンパク質、ペプチド又は因子を指す。可溶性同種因子は、補充療法において適用されるタンパク質、又は治療目的で使用される凝固因子若しくは線溶因子、若しくはホルモン、若しくはサイトカイン若しくは増殖因子、若しくは抗体であり得る。考え得る同種因子の非限定的なリストとして、第VIII因子、第IX因子、スタフィロキナーゼ、成長ホルモン、インスリン、サイトカイン及び増殖因子(例えば、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ガンマ、GM-CSF及びG-CSF)、免疫応答の調節用の抗体(アレルギー疾患における抗IgE抗体、移植拒絶及び様々な自己免疫疾患における抗CD3及び抗CD4抗体、非ホジキンリンパ腫における抗CD20を含む)、並びに腎不全におけるエリスロポエチンが挙げられる。
【0112】
用語「移植から脱落した同種抗原」又は「同種異系抗原」は、本明細書で使用される場合、ドナーからレシピエントに移動されると、レシピエントの抗体又はB若しくはT細胞を認識して、それによって結合され得る細胞又は組織に由来する(から脱落される、及び/又はに存在する)抗原を指す。同種抗原は通常、多形性遺伝子の産物である。同種抗原は、ドナーと、レシピエント(同じ種に属する)との間で比較された場合に、わずかな構造的差異を示すタンパク質又はペプチドである。レシピエントの体におけるそのようなドナー抗原の存在は、レシピエントにおいて免疫応答を導き出すことができる。そのような同種反応性免疫応答は、同種抗原に特異的である。同種抗原の例は、マイナー組織適合抗原、主要組織適合抗原又は組織特異的抗原である。
【0113】
「細胞内病原体の抗原」は、細胞内生活環を有する細菌、抗酸菌(mycobacteria)又は寄生虫に由来する任意の抗原であり得る。細菌及び抗酸菌として、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、及びエルシニア属(Yersiniae)、ブルセラ属(Brucellae)、クラミジア属(Chlamydiae)、マイコプラズマ属(Mycoplasmae)、リケッチア属(Rickettsiae)、サルモネラ属(Salmonellae)及びシゲラ属(Shigellae)等のヒト又は動物にとって病原性の他の抗酸菌が挙げられる。寄生虫として、マラリア原虫(Plasmodiums)、リーシュマニア(Leishmanias)、トリパノソーマ(Trypanosomas)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、リステリアsp.(Listeria sp.)、ヒストプラズマsp.(Histoplasma sp.)が挙げられる。
【0114】
用語「遺伝子療法又は遺伝子ワクチン接種のために使用されるウイルスベクター」は、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス若しくはポックスウイルス又はそれらのいずれかに由来するウイルスベクターを指す。或いは、ウイルスベクターは、レトロウイルス(例えば、ガンマ-レトロウイルス)、レンチウイルス又はそれらのいずれかに由来するウイルスベクターであり得る。遺伝子療法又は遺伝子ワクチン接種のために使用されるウイルスベクター由来の抗原は、カプシドタンパク質等のウイルスベクター中に存在するタンパク質、又はその断片であり得る。
【0115】
用語「腫瘍関連抗原」は、腫瘍又は腫瘍細胞と関連付けられる(によって運搬される、によって生成される、によって分泌される、等)任意のタンパク質、ペプチド又は抗原を指す。腫瘍関連抗原は、(ほぼ)専ら腫瘍又は腫瘍細胞と関連付けられる可能性があり、健常な正常細胞とは関連付けられない可能性があり、或いは健常な正常細胞と比較して、腫瘍又は腫瘍細胞において過剰発現される(例えば、10倍、100倍、1000倍又はそれ以上)可能性がある。特に、腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞のMHC決定基によって提示されることが可能な抗原(プロセシングされた形態で)である。したがって、腫瘍関連抗原は、MHC分子を発現する腫瘍又は腫瘍細胞のみと関連付けられる可能性が高い。腫瘍関連抗原は、オンコジーン、プロトオンコジーン、ウイルスタンパク質、生存因子又はクロノタイプ/イディオタイプ決定基から選択され得る。そのような抗原は、当技術分野で公知であり、受け入れられている。
【0116】
「アレルゲン」は、素因のある、特に遺伝的に素因のある個体(アトピー性)患者において、lgE抗体の生成を導き出す物質、通常巨大分子又はタンパク質性組成物を指す。アレルゲンの例は、花粉、針、薬物又は食物である。
【0117】
用語「食品又は医薬抗原性タンパク質」は、食品又は医薬製品、例えばワクチンに存在する抗原性タンパク質を指す。
【0118】
ある実施形態では、本発明による免疫原性ペプチドは、医療で使用するための、自己免疫性疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種異系移植拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種用のウイルスベクターへの免疫応答の処置及び/又は予防で使用するためのものである。
【0119】
酸化還元酵素モチーフ及びMHCクラスII T細胞エピトープを含むペプチド(又は、そのようなペプチドを含む組成物)の哺乳動物への投与(すなわち注射)時に、ペプチドは抗原由来のT細胞エピトープを認識するT細胞の活性化を導き出し、表面受容体の還元を通してT細胞に追加のシグナルを提供することが示された。この最適以上の活性化の結果、T細胞はT細胞エピトープを提示する細胞のための細胞溶解特性並びにバイスタンダーT細胞への抑制特性を獲得する。
【0120】
更に、酸化還元酵素モチーフ及びNKT細胞エピトープを含むペプチド(又は、そのようなペプチドを含む組成物)の哺乳動物への投与(すなわち注射)時に、ペプチドは抗原由来のT細胞エピトープを認識するT細胞の活性化を導き出し、CD1d表面受容体への結合を通してT細胞に追加のシグナルを提供することが示された。この活性化の結果、NKT細胞はT細胞エピトープを提示する細胞のための細胞溶解特性を獲得する。
【0121】
このように、抗原由来のT細胞エピトープ及びエピトープ以外に酸化還元酵素モチーフを含有する、本発明に記載されるペプチド又はペプチドを含む組成物は、ヒトを含む哺乳動物の直接的な免疫化のために使用することができる。したがって、本発明は医薬品として使用するための本発明のペプチド又はその誘導体を提供する。したがって、本発明は、それを必要とする患者に本発明による1つ又は複数のペプチドを投与することを含む治療方法を提供する。
【0122】
本発明は、細胞溶解特性を与えられる抗原特異的T細胞を小ペプチドによる免疫化によって導き出すことができる方法を提供する。(i)抗原からのT細胞エピトープをコードする配列、及び(ii)酸化還元酵素特性を有するコンセンサス配列を含有し、必要に応じて効率的なMHCクラスII提示又はCD1d受容体結合のために後期エンドソームへのペプチドの取り込みを促進する配列も更に含むペプチドは、細胞溶解性CD4+T細胞又はNKT細胞をそれぞれ導き出すことが見出された。
【0123】
本発明のペプチドの免疫原特性は、免疫反応の処置及び予防で特に興味を持たれている。
【0124】
本明細書に記載されるペプチドは医薬として使用され、特に哺乳動物、特にヒトにおける免疫障害の予防又は処置のための医薬の製造のために使用される。
【0125】
本発明は、本発明のペプチド、その相同体又は誘導体の使用による、そのような処置又は予防を必要とする哺乳動物の免疫障害の処置又は予防の方法であって、免疫障害を患っているかその危険がある前記哺乳動物に、例えば免疫障害の症状を低減するために、本発明のペプチド、その相同体又は誘導体の治療的有効量を投与する工程を含む方法を記載する。ヒト及び動物、例えばペット及び畜産動物の両方の処置が想定される。一実施形態では、処置される哺乳動物はヒトである。上で言及される免疫障害は、特定の実施形態では、アレルギー性疾患及び自己免疫性疾患から選択される。
【0126】
本明細書に規定される本発明のペプチド又はそれを含む医薬組成物は、好ましくは皮下又は筋肉内投与を通して投与される。好ましくは、ペプチド又はそれを含む医薬組成物は、肘と肩の中間の上腕の側部の領域で皮下に注射する(SC)ことができる。2回以上の別個の注射が必要な場合、それらは両腕に同時投与することができる。
【0127】
本発明によるペプチド又はそれを含む医薬組成物は、治療的有効用量で投与される。例示的であるが非限定的な投薬レジメンは、50~1500μg、好ましくは100~1200μgである。より具体的な投薬スキームは、患者の状態及び疾患の重症度によって50~250μg、250~450μg又は850~1300μgであってよい。投薬レジメンは、同時に又は連続的に、単回投与又は2、3、4、5若しくはそれより多い回数の用量での投与を含むことができる。例示的な非限定的投薬スキームは、以下の通りである:
- 各々25μg(各々100μL)の2回の別個の注射による50μgのペプチドのSC投与と、続く各々12.5μg(各々50μL)の2回の別個の注射による25μgのペプチドの3回の連続注射を含む低用量スキーム。
- 各々75μg(各々300μL)の2回の別個の注射による150μgのペプチドのSC投与と、続く各々37.5μg(各々150μL)の2回の別個の注射による75μgのペプチドの3回の連続投与を含む中間用量スキーム。
- 各々225μg(各々900μL)の2回の別個の注射による450μgのペプチドのSC投与と、続く各々112.5μg(各々450μL)の2回の別個の注射による225μgのペプチドの3回の連続投与を含む高用量スキーム。
【0128】
公知の酸化還元酵素モチーフ及びT細胞エピトープを含む免疫原性ペプチドの例示的な用量スキームは、ClinicalTrials.govにおいて識別子NCT03272269の下で見出すことができる。
【0129】
好ましい実施形態では、酸化還元酵素モチーフは、エピトープのN末端側に配置される。或いは、酸化還元酵素モチーフは、エピトープのC末端側に配置され得る。
【0130】
好ましい実施形態では、本発明の免疫原性ペプチドの酸化還元酵素モチーフにおける[C1S1T1]又は[C2S2T2]は、免疫原性ペプチドのN又はC末端に対応する。それは、酸化還元酵素モチーフがエピトープのN末端側に配置される場合に、[C1S1T1]のN末端側に配置される他のアミノ酸は存在しないことを意味する。酸化還元酵素モチーフがエピトープのC末端側に配置される場合、それは、[C2S2T2]のC末端側に配置される他のアミノ酸は存在しないことを意味する。
【0131】
好ましい実施形態では、本発明による免疫原性ペプチドは、T細胞エピトープのN末端若しくはC末端の、その配列中及び/又は11アミノ酸の領域中に、[CST]残基を天然に含まないT細胞エピトープを有する。
【0132】
別の好ましい実施形態では、本発明による免疫原性ペプチドは、前記抗原性タンパク質におけるT細胞エピトープのN末端若しくはC末端の、11アミノ酸の領域中に天然に存在しない酸化還元酵素モチーフを有する。
【0133】
更に好ましい実施形態では、本発明による免疫原性ペプチドは、前記酸化還元酵素モチーフを天然に含まないT細胞エピトープを有する。
【0134】
ペプチド又はエピトープを指す場合の用語「天然」又は「天然に」は、配列が天然に存在するタンパク質(野生型又は突然変異体)又はその断片と同一であるという事実に関する。それと対照的に、用語「人工」は、そのように天然に存在しない配列を指す。人工配列は、限定的な改変、例えば天然に存在する配列の中で1つ又は複数のアミノ酸を変更/削除/挿入することによって、又は、天然に存在する配列のN若しくはC末端でアミノ酸を付加/除去することによって天然に存在する配列から得られる。
【0135】
好ましい実施形態では、本発明によるペプチドは、人工ペプチドである。したがって、本発明のペプチドは、好ましくは天然ではなく(したがって、そのようなタンパク質の断片がない)、T細胞エピトープに加えて本明細書に記載されるような酸化還元酵素モチーフを含有する人工ペプチドであり、それによって、酸化還元酵素モチーフは、最高7つ、特に最高4つ又は最高2つのアミノ酸からなるリンカーによってT細胞エピトープの近くに分離される。
【0136】
これに関連して、ペプチド断片は、一般的にエピトープスキャニングとの関連で抗原から生成されると理解される。偶然に、そのようなペプチド断片は、それらの配列において、その配列中及び/又は前記T細胞エピトープに隣接した多くても11アミノ酸、多くても7アミノ酸、多くても4アミノ酸、多くても2アミノ酸の領域中にT細胞エピトープ(MHCクラスIIエピトープ又はNKT細胞エピトープ)を天然に含んでいてもよい。好ましい実施形態では、そのような天然に存在するペプチドは除外される。偶然に、そのようなペプチド断片はまた、それらの配列において、その配列中及び/又は前記エピトープと前記酸化還元酵素モチーフとの間の多くても11アミノ酸、多くても7アミノ酸、多くても4アミノ酸、多くても2アミノ酸、又は更には0アミノ酸(言い換えると、エピトープ及び酸化還元酵素モチーフ配列は互いに直近している)の領域中に、本明細書中に規定されるような酸化還元酵素モチーフ(好ましくは、式中、C1は、N-メチルシステインである)を有するT細胞エピトープ(MHCクラスT細胞IIエピトープ又はNKT細胞エピトープ)を天然んでいてもよい。好ましい実施形態では、そのような天然に存在するペプチドはまた除外される。
【0137】
好ましい実施形態では、[C1S1T1]-Xn/m-[C2S2T2]モチーフの1つ又は2つのシステインは、ペプチドの非エピトーブ部分における唯一のシステインである。更に好ましい実施形態では、[C1S1T1]-Xn/m-[C2S2T2]モチーフの1つ又は2つのシステインは、免疫原性ペプチドの唯一のシステインである。
【0138】
代わりの実施形態では、T細胞エピトープは、MHC裂け目への又はCD1d分子へのエピトープの結合を確実にするアミノ酸の任意の配列を含むことができる。抗原性タンパク質の目的のエピトープがそのエピトープ配列の中に本明細書に記載されるもの等の酸化還元酵素モチーフを含む場合、本発明による免疫原性ペプチドは、本明細書に記載される酸化還元酵素モチーフの配列、及び/又は、(裂け目の中に埋没する、エピトープの中に存在する酸化還元酵素モチーフに反して)結合している酸化還元酵素モチーフが還元活性を確保することができるように、エピトープ配列のN又はC末端にカップリングされた別の還元性配列の配列を含む。
【0139】
本発明はまた、本発明による免疫原性ペプチドを調製する方法であって、
a1)例えば、例として従来のペプチド合成機を使用した従来のペプチド合成によって、前記免疫原性ペプチドを合成する工程、又は
a2)抗原性タンパク質のT細胞エピトープからなるペプチドを提供する工程と、
b2)式(III)又は(IV)を有する化合物及び前記エピトープが互いに隣接するか又は多くても7アミノ酸のリンカーによって分離されるように、前記ペプチドのN又はC末端で、それぞれ式(III)又は(IV)(式中、R1~R7、m及びnは、請求項1で規定される通りである)を有する化合物を連結する工程
【0140】
【化16】
【0141】
とを、或いは、
a3)抗原性タンパク質のT細胞エピトープからなるペプチドを提供する工程と、
b3)前記モチーフ及び式(V)又は(VI)を有する化合物が互いに隣接するか又は多くても7アミノ酸のリンカーによって分離されるように、前記ペプチドのN又はC末端で、それぞれ式(V)又は(VI)(式中、R10は水素であるか、又はR11はNH2若しくはOHであり、R2~R4及びR6~R8、m及びnは、請求項1で規定される通りである)を有する化合物を連結する工程、及び式(V)又は(VI)を有する前記化合物の前記R10又はR11を、少なくとも1つのCH3-CH2-C(=O)-、CH3-C(=O)-、-CH2-CH3、又は-CH3基で置き換える工程と
【0142】
【化17】
【0143】
を含む方法に関する。
【0144】
ペプチドは、化学的ペプチド合成、組換え発現方法、又はより例外的な場合では、タンパク質のタンパク質分解性又は化学的断片化によって生成され得る。
【0145】
好ましくは、本発明のペプチドは、化学的ペプチド合成によって調製することができ、ここで、ペプチドは、種々のアミノ酸のC-又はN末端カップリングによって調製される。化学合成は、D-アミノ酸又は改変されたアミノ酸、例えば、N-アセチルシステイン、N-メチルシステイン、N-エチルシステイン又はN-プロピオニルシステイン等の非天然改変の包含に特に適している。
【0146】
ペプチド合成は、例えば固相ペプチド合成(SPPS)を使用した標準的なペプチド合成機を通して、任意の標準的な技術を使用して行われ得る。前記技術は、例えば、Curr Protoc Protein Sci. 2012年8月;CHAPTER: Unit-18.1; Introduction to Peptide Synthesis; Maciej Stawikowski及びGregg B. Fieldsに詳述されている。
【0147】
化学的ペプチド合成方法は、十分に記載されている。ペプチドはまた、LifeTein, Eurogentec社その他等の企業に発注することができる。
【0148】
ペプチド化学的合成は、例えば、固相ペプチド合成(SPPS)として、又は溶液相ペプチド合成として実施することができる。最良の公知のSPPS法は、Fmoc/tBu及びBoc/Bzl法である。
【0149】
Fmoc/tBu SPPSでは、アミノ酸の側鎖上の反応性基は、以下の基:Cys、Glu、Asn、Hisに関してはTrt(トリチル);Asp、Ser、Thr及びTyrに関してはtBuO(tert-ブトキシ);Lys及びTrpに関してはBoc(tert-ブチルオキシカルボニル);Argに関してはPbf(2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)で保護される。簡潔に述べると、Fmoc-AAは、高分子樹脂ビーズに、そのC末端を介して活性化試薬を使用することによってカップリングされる。カップリングした後、カップリングされたアミノ酸のFmoc基を除去して(通常、ピペリジン、又は同等にものによって)、次のFmoc-AAがカップリングされる。カップリング及び脱保護サイクルを反復することによって、ペプチド鎖は伸長されて、所望のペプチド配列を生じる。ペプチドは、樹脂から除去されて、側鎖基は、TFA(トリフルオロ酢酸)を使用することによって脱保護される(最後のアミノ酸をカップリングした後に除去されるFmoc以外)。当該プロセスは周知されており、例えば、参照により本明細書に援用されるAmide bond formation and peptide coupling、Tetrahedron、2005年、61巻、10827~10852頁;Advances in Fmoc solid-phase peptide synthesis、J Pept Sci. 2016年、22巻、4~27頁に記載されている。
【0150】
別の実施形態では、ペプチドはまた、当技術分野で公知の技法を使用して、合成(例えば、官能基の付加/除去)後に、化学的に改変させることができる。したがって、酸化還元酵素モチーフにおけるシステインのN-アセチル化、N-メチル化、N-エチル化若しくはN-プロピオニル化、又はシステインのC末端アミド若しくは酸基のアセチル、メチル、エチル若しくはプロピオニル基によるC末端置換は、ペプチド合成後に実施することができる。
【0151】
C末端が酸の形態で存在するシステインのC末端置換の場合、メチル又はエチルによる酸基の置換は、エステル化によって行われる。ペプチドのC末端エステル化は、例えば、そのC-及びN末端上にオルソゴナル(orthogonal)保護基を有している間に、C末端アミノ酸部分を、その側鎖を介して樹脂(又は他の固相)に結合することによって実施され得る。固相ペプチド合成(SPPS)によってペプチド配列の伸長を完了した後、C末端を脱保護することができ、エステル化反応は、ペプチドを樹脂に結合した状態のままで実施することができる。
【0152】
アセチル又はプロピオニルによる酸基の置換は、無水物を創出することによって行われる。ペプチドのC末端無水物の創出は、例えば、C末端アミノ酸部分を、そのC-及びN末端上にオルソゴナル保護基を有している間に、その側鎖を介して樹脂(又は他の固相)に結合することによって実施され得る。SPPSによってペプチド配列の伸長を完了した後、C末端を脱保護することができ、無水物反応は、ペプチドを樹脂に結合した状態のままで実施することができる。
【0153】
C末端がアミドの形態で存在するシステインのC末端置換の場合、C末端アルキル化は、インドールAM樹脂(エチル、又はメチル)を使用することによって達成され得る。ペプチドを樹脂から取り出した後、得られたペプチドは、N-メチル又はN-エチル置換C末端アミドの形態で存在する。
【0154】
アセチル又はプロピオニルによるアミド基の置換は、それを樹脂に結合した状態のままで、酢酸4-ニトロフェニル又はプロピオン酸4-ニトロフェニルを、ペプチドの遊離C末端と反応させることによって行われる。
【0155】
システインのN-アセチル化は、例えば、塩基性条件下で、無水酢酸(CH3CO)2Oを、完全に側鎖を保護したペプチドの遊離N末端と反応させることによって実施され得る。この方法は、例えば、参照により本明細書に援用されるSolid-phase peptide synthesis: from standard procedures to the synthesis of difficult sequences、Nat. Protoc、2007年、3247~3256頁に記載されている。
【0156】
システインのN-メチル化は、例えば、2工程の還元的アミノ化反応によって実施され得る:
1. 完全に側鎖が保護されたペプチドの遊離N末端を、ホルムアルデヒド(CH2O)と反応させて、イミンを得る工程;
2. 例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)による還元的アミノ化。
【0157】
類似した方法が、参照により本明細書に援用されるRobust Chemical Synthesis of Membrane Proteins through a General Method of Removable Backbone Modification、J. Am. Chem. Soc. 2016年、138巻、3553~3561頁に記載されている。
【0158】
システインのN-エチル化は、例えば、2工程の還元的アミノ化反応によって実施され得る:
1. 完全に側鎖が保護されたペプチドの遊離N末端を、アセトアルデヒド(CH3CHO)と反応させて、イミンを得る工程;
2. 例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)による還元的アミノ化。
【0159】
類似した方法が、参照により本明細書に援用されるRobust Chemical Synthesis of Membrane Proteins through a General Method of Removable Backbone Modification、J. Am. Chem. Soc. 2016年、138巻、3553~3561頁に記載されている。
【0160】
システインのN-プロピオニル化は、例えば、塩基性条件下で、無水プロピオン酸((CH3CH2CO)2O)を、完全に側鎖を保護したペプチドの遊離N末端と反応させることによって実施され得る。類似した方法は、参照により本明細書に援用されるSolid-phase peptide synthesis: from standard procedures to the synthesis of difficult sequences、Nat. Protoc、2007年、3247~3256頁に記載されている。
【0161】
上記方法において生成されるようなペプチドは、in vitro及びin vivo方法で、T細胞エピトープの存在に関して検査することができ、in vitroアッセイでそれらの還元活性に関して検査することができる。最終的な品質管理として、ペプチドをin vitroアッセイで検査して、ペプチドが、酸化還元酵素モチーフを有するペプチド中にも存在するエピトープ配列を含有する抗原を提示する抗原提示細胞に関して、アポトーシス経路を介して細胞溶解性であるCD4+T又はNKT細胞を生成することができるかどうかを検証することができる。
【0162】
本発明との関連で使用されるエピトープに関して本明細書で使用される用語「相同体」は、天然に存在するエピトープと少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有し、それによって抗体又はB及び/又はT細胞の細胞表面受容体に結合するエピトープの能力を維持する分子を指す。エピトープの特定の相同体は、多くても3つ、特に多くても2つ、特に1つのアミノ酸で改変される天然のエピトープに対応する。
【0163】
本発明のペプチドに関して本明細書で使用される用語「誘導体」は、少なくともペプチド活性部分(すなわち、酸化還元酵素モチーフ及び細胞溶解CD4+ T細胞活性を導き出すことが可能なMHCクラスIIエピトープ)を含有し、及び、それに加えてペプチドを安定させるか又はペプチドの薬物動態学的若しくは薬力学的特性を変更すること等の異なる目的を有することができる相補部分を含む分子を指す。
【0164】
本明細書で使用される、2つの配列の「配列同一性」という用語は、同一のヌクレオチド又はアミノ酸を有する位置の数を、2つの配列を整列させたときの短い方の配列におけるヌクレオチド又はアミノ酸の数で割り算したものに関する。特に、配列同一性は70%~80%、81%~85%、86%~90%、91%~95%、96%~100%、又は100%である。
【0165】
本明細書で使用される用語「ペプチドをコードするポリヌクレオチド(又は、核酸)」及び「ペプチドをコードするポリヌクレオチド(又は、核酸)」は、適当な環境で発現されるとき、関連するペプチド配列又はその誘導体若しくは相同体の生成をもたらすヌクレオチド配列を指す。そのようなポリヌクレオチド又は核酸には、そのペプチドをコードする正常な配列、並びに要求される活性を有するペプチドを発現することが可能であるこれらの核酸の誘導体及び断片が含まれる。本発明によるペプチド又はその断片をコードする核酸は、哺乳動物を起源とするか、又は哺乳動物、特にヒトのペプチド断片に対応するペプチド又はその断片をコードする配列である。
【0166】
用語「免疫障害」又は「免疫疾患」は、免疫系の反応が生物体における機能不全又は非生理的状況の責任を負うか又は維持する疾患を指す。免疫障害には、とりわけ、アレルギー性障害及び自己免疫性疾患が含まれる。
【0167】
本明細書で使用される用語「アレルギー性疾患」又は「アレルギー性障害」は、アレルゲン(花粉、針、薬物又は食物等)と呼ばれる特異的物質への免疫系の過敏性反応によって特徴付けられる疾患を指す。アレルギーは、アトピー性の個々の患者が感作されたアレルゲンに遭遇するたびに観察される徴候及び症状の集合であり、それは様々な疾患、特に呼吸器の疾患及び症状、例えば気管支喘息の発生をもたらすことができる。各種の分類が存在するが、大部分、哺乳動物の体のどこでそれが起こるかによってアレルギー性障害は異なる名称を有する。「過敏症」は、それが感作された抗原への曝露により個体で発生する望ましくない(有害で、不快を引き起こす、時には致命的な)反応である;「即時過敏症」はlgE抗体の生成に依存し、したがって、アレルギーと同等物である。
【0168】
用語「自己免疫性疾患」又は「自己免疫性障害」は、生物体がそれ自身の構成成分部分を「自己」として認識する(分子未満のレベルまで)ことができないことによる、それ自身の細胞及び組織に対する生物体の異常な免疫応答からもたらされる疾患を指す。疾患の群は、2つのカテゴリー(臓器特異的で全身性疾患)では分裂されうる。
【0169】
用語「治療的有効量」は、患者で所望の治療的又は予防的効果をもたらす本発明のペプチド又はその誘導体の量を指す。例えば、疾患又は障害に関して、それは、疾患又は障害の1つ又は複数の症状をある程度低減する量、特に、疾患又は障害に関連するかそれを引き起こす生理的又は生化学的パラメータを部分的又は完全に正常に戻す量である。一般的に、治療的有効量は、正常な生理的状況の改善又は復旧へ導く、本発明のペプチド又はその誘導体の量である。例えば、免疫障害によって侵された哺乳動物を治療的に処置するために使用される場合、それは前記哺乳動物の体重1kgあたりの1日量のペプチドである。或いは、投与が遺伝子療法による場合、裸のDNA又はウイルスベクターの量は、本発明のペプチド、その誘導体又は相同体の妥当な投薬量の局所生成を確実にするように調整される。
【0170】
本明細書では、アミノ酸はそれらのフルネーム、それらの3文字略記号又はそれらの1文字略記号で呼ばれる。
【0171】
本明細書では、アミノ酸配列のモチーフは、Prositeのフォーマットに従って書かれる。モチーフは、配列の特異的部分でのある特定の配列多様性を記載するために使用される。記号X又はBは、任意のアミノ酸が受け入れられる位置のために使用される。角括弧(「[]」)の間に所与の位置のための許容されるアミノ酸を掲載することによって、代わりのアミノ酸を指示することができる。例えば、[CST]は、Cys、Ser又はThrから選択される1つのアミノ酸を表し、すなわち、[CST]は、システイン、セリン、又はトレオニンのいずれか1つを包含する。代替物として排除されるアミノ酸は、中括弧(「{}」)の間にそれらを掲載することによって指示することができる。例えば、{AM}は、Ala及びMet以外の任意のアミノ酸を表す。必要に応じてモチーフの中の異なる要素は、ハイフン(-)によって互いから分離される。アミノ酸を区別するために、酸化還元酵素モチーフの外側のものは外部アミノ酸と呼ぶことができ、酸化還元酵素モチーフの中のものは内部アミノ酸と呼ばれる。
【0172】
T細胞エピトープ、例えばMHCクラスII T細胞エピトープ又はNKT細胞エピトープ(又は、CD1d結合性ペプチドエピトープ)及び還元活性を有する改変されたペプチドモチーフ配列を含むペプチドは、抗原提示細胞への抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞、又は細胞溶解性NKT細胞の集団を生成することが可能である。
【0173】
したがって、その最も広い意味で、本発明は、免疫反応を誘発する能力を有する抗原(自己又は非自己)の少なくとも1つのT細胞エピトープ(MHCクラスII T細胞エピトープ又はNKT細胞エピトープ)、及び改変されたシステインを有する酸化還元酵素配列モチーフを含むペプチドに関する。T細胞エピトープ及び改変された酸化還元酵素モチーフ配列はペプチドの中で互いに直近していることができるか、又は必要に応じて1つ又は複数のアミノ酸(いわゆる、リンカー配列)によって分離されてもよい。必要に応じて、ペプチドはエンドソーム標的配列及び/又は追加の「隣接」配列を更に含む。
【0174】
本発明のペプチドは、免疫反応を誘発する能力を有する抗原(自己又は非自己)のT細胞エピトープ及び酸化還元酵素モチーフを含む。ペプチドの中のモチーフ配列の還元活性は、例えばインスリンの溶解性が還元後に変更されるインスリン溶解性アッセイで、又はインスリン等の蛍光標識基質によって、スルフヒドリル基を還元するその能力について検査することができる。そのようなアッセイの例は蛍光ペプチドを使用し、Tomazzolli等(2006) Anal. Biochem.350、105~112頁に記載される。FITC標識を有する2つのペプチドは、それらがジスルフィド架橋を通して互いと共有結合するときに自己失活する。本発明によるペプチドによる還元の結果、還元された個々のペプチドは再び蛍光性になる。
【0175】
更に詳細に説明されるように、本発明のペプチドは、非天然アミノ酸の組み込みも可能にする化学的合成によって作製することができる。
【0176】
本発明のある特定の実施形態では、1つのエピトープ配列及び酸化還元酵素モチーフ配列を含むペプチドが提供される。更なる特定の実施形態では、酸化還元酵素モチーフは、ペプチドの中で例えば互いから1つ又は複数のアミノ酸の間隔で配置することができる酸化還元酵素モチーフの反復配列として、又は互いに直近の反復配列として、数回(1、2、3、4回又はそれ以上も)出現する。或いは、1つ又は複数の酸化還元酵素モチーフは、T細胞エピトープ配列のN及びC末端の両方で提供される。
【0177】
本発明のペプチドのために想定される他の変形形態には、T細胞エピトープ配列の反復配列を含有するペプチドが含まれ、ここで、各エピトープ配列の前及び/又は後には酸化還元酵素モチーフがある(例えば「酸化還元酵素モチーフ-エピトープ」の反復配列又は「酸化還元酵素モチーフ-エピトープ-酸化還元酵素モチーフ」の反復配列)。本明細書では、酸化還元酵素モチーフは全て同じ配列を有することができるが、これは義務的でない。それ自体酸化還元酵素モチーフを含むエピトープを含むペプチドの反復配列は、「エピトープ」及び「酸化還元酵素モチーフ」の両方を含む配列をももたらすことに注意する。そのようなペプチドでは、1つのエピトープ配列の中の酸化還元酵素モチーフは、第2のエピトープ配列の外で酸化還元酵素モチーフとして機能する。
【0178】
本発明のペプチドのT細胞エピトープは、タンパク質の天然のエピトープ配列に対応することができるか、又は、天然のT細胞エピトープ配列と同様に改変されたT細胞エピトープがMHC裂け目内で結合するか又はCD1d受容体に結合するその能力を保持する場合には、その改変バージョンであってもよい。改変されたT細胞エピトープは、MHCタンパク質又はCD1d受容体に対して天然のエピトープと同じ結合親和性を有することができるが、より低い親和性を有することもできる。特に、改変されたペプチドの結合親和性は、元のペプチドより10分の1以上、特に5分の1以上低い。本発明のペプチドは、タンパク質複合体に安定化効果を有する。したがって、ペプチド-MHC又はCD1d複合体の安定化効果は、MHC又はCD1d分子への改変されたエピトープのより低い親和性を補償する。
【0179】
ペプチドの中にT細胞エピトープ及び還元性化合物を含む配列は、MHCクラスII決定因子の中でのプロセシング及び提示のために後期エンドソームへのペプチドの取り込みを促進するアミノ酸配列(又は、別の有機化合物)に更に連結することができる。後期エンドソーム標的化はタンパク質の細胞質テールに存在するシグナルによって媒介され、良好に同定されたペプチドモチーフに対応する。後期エンドソーム標的配列は、MHCクラスII分子による抗原由来のT細胞エピトープのプロセシング及び効率的な提示を可能にする。そのようなエンドソーム標的化配列は、例えば、gp75タンパク質(Vijayasaradhi等(1995) J. Cell. Biol. 130、807~820頁)、ヒトCD3ガンマタンパク質、HLA-BM 11(Copier等(1996) J. lmmunol. 157、1017~1027頁)、DEC205受容体の細胞質テール(Mahnke等(2000) J. Cell Biol.151、673~683頁)の中に含有される。エンドソームへの選別シグナルとして機能するペプチドの他の例は、Bonifacio及びTraub(2003) Annu. Rev. Biochem. 72、395~447頁のレビューの中で開示される。或いは、配列は、抗原に対するT細胞応答を克服することなく後期エンドソームでの取り込みを促進する、タンパク質からの亜優勢又は劣勢なT細胞エピトープのそれであってよい。後期エンドソーム標的化配列は、効率的な取り込み及びプロセシングのために抗原由来のペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端に位置することができ、最高10アミノ酸のペプチド配列等の隣接配列を通してカップリングさせることもできる。標的化目的のために劣勢なT細胞エピトープを使用する場合、後者は抗原由来のペプチドのアミノ末端に一般的に位置する。
【0180】
或いは、本発明は、CD1d分子に結合する能力を付与する疎水性残基を含有するペプチドの生成に関する。投与時に、そのようなペプチドはAPCによって取り込まれ、後期エンドソームに誘導され、そこで、それらはCD1dにロードされ、APCの表面で提示される。前記疎水性ペプチドは一般配列[FWYHT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYHT]に対応するモチーフによって特徴付けられる。この一般モチーフの代わりのバージョンは、位置1及び/又は位置7に代替物[FWYT]を有し、したがって[FWYT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYT]であり、そこでは、位置P1及びP7はフェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)等の疎水性残基によって占有される。しかし、P7は、それがフェニルアラニン又はトリプトファンの代わりの疎水性残基、例えばトレオニン(T)又はヒスチジン(H)を受け入れるという点で許容的である。P4の位置は、イソロイシン(I)、ロイシン(L)又はメチオニン(M)等の脂肪族残基によって占有される。本発明は、CD1d結合モチーフを天然に構成する疎水性残基で構成されるペプチドに関する。一部の実施形態では、前記モチーフのアミノ酸残基は、15 CD1dに結合する能力を増加させる残基による置換によって通常改変される。具体的な実施形態では、モチーフは一般モチーフ[FW]-xx-[ILM]-xx-[FWTH]により緊密にフィットするように改変される。特に、ペプチドは7位にF又はWを含有するように生成される。
【0181】
したがって、本発明は、抗原性タンパク質のペプチド及び特異的免疫反応を導き出すことにおけるそれらの使用を想定する。これらのペプチドは、それらの配列の中に、すなわち、多くても10、好ましくは7アミノ酸以下で分離されている還元性化合物及びT細胞エピトープを含む、タンパク質の断片に対応することもできる。或いは、及びほとんどの抗原性タンパク質では、本発明のペプチドは、還元性化合物、特に本明細書に記載される還元性の酸化還元酵素モチーフを、抗原性タンパク質のT細胞エピトープのN末端又はC末端に結合させることによって生成される(それの直近に、又は多くても10、特に多くても7アミノ酸のリンカーにより)。更に、タンパク質のT細胞エピトープ配列及び/又は酸化還元酵素モチーフを改変することができ、及び/又は、天然に存在する配列と比較して、1つ又は複数の隣接配列及び/又は標的配列を導入すること(又は、改変すること)ができる。したがって、本発明の特色を目的の抗原性タンパク質の配列の中で見出すことができるかどうかによって、本発明のペプチドは「人工の」又は「天然に存在する」配列を含むことができる。
【0182】
本発明は更に、その抗原を提示するAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団を得る方法であって、
- 末梢血細胞を提供する工程と、
- 前記細胞を、本発明による免疫原性ペプチドと接触させる工程と、
- IL-2の存在下で前記細胞を増量する工程と
を含む方法に関する。
【0183】
本発明はまた、抗原特異的NKT細胞の集団を得る方法であって、
- 末梢血細胞を提供する工程と、
- 前記細胞を、本発明による免疫原性ペプチドと接触させる工程と、
- IL-2の存在下で前記細胞を増量する工程と
を含む方法に関する。
【0184】
本発明は更に、その抗原を提示するAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団を得る方法であって、
- 本発明による免疫原性ペプチドを提供する工程と、
- 前記ペプチドを対象に投与する工程と、
- 抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の前記集団を前記対象から得る工程と
を含む方法に関する。
【0185】
本発明はまた更に、抗原特異的NKT細胞の集団を得る方法であって、
- 本発明による免疫原性ペプチドを提供する工程と、
- 前記ペプチドを対象に投与する工程と、
- 抗原特異的NKT細胞の前記集団を前記対象から得る工程と
を含む方法に関する。
【0186】
したがって、本発明は、抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞(MHCクラスIIエピトープを含む、本明細書に開示されるような免疫原性ペプチドを使用する場合)、又は抗原特異的細胞溶解性NKT細胞(CD1d分子を結合するNKT細胞エピトープを含む、本明細書に開示されるような免疫原性ペプチドを使用する場合)をin vitro又は in vivoで生成する方法を提供する。
【0187】
標準の酸化還元酵素モチーフ及びMHCクラスII T細胞エピトープを含む免疫原性ペプチドの作用機構は、上で引用されたPCT出願WO2008017517及び本発明者の刊行物で開示される実験データで立証される。標準の酸化還元酵素モチーフ及びCD1d結合性NKT細胞エピトープを含む免疫原性ペプチドの作用機構は、上で引用されたPCT出願WO2012069568及び本発明者の刊行物で開示される実験データで立証される。
【0188】
本発明で得られるような細胞溶解性CD4+T細胞は、in vitro及びin vivoで実証されるようにMHC-クラスII依存性同族活性化の後にAPCアポトーシスを誘導し、樹状細胞及びB細胞の両方に影響し、IL-10及び/又はTGF-ベータの不在下で接触依存性機構によってバイスタンダーT細胞を抑制する。WO2008017517で詳細に議論されるように、細胞溶解性CD4+T細胞は天然及び適応性のTregsから区別することができる。
【0189】
CD1d分子に結合する能力を付与する疎水性残基を含有する本発明の免疫原性ペプチドは、投与の後、APCによって取り込まれ、後期エンドソームに誘導され、そこで、それらはCD1dにロードされ、APCの表面で提示される。CD1d分子によって提示されると、ペプチドの中の酸化還元酵素モチーフはNKT細胞を活性化する能力を増強し、細胞溶解性NKT細胞になる。前記免疫原性ペプチドはIFN-ガンマ等のサイトカインの生成を活性化し、それは、CD4+T細胞及びCD8+T細胞を含む他のエフェクター細胞を活性化する。CD4+及びCD8+T細胞はともに、WO2012069568で詳細に議論されるように、抗原を提示する細胞の排除に加わることができる。
【0190】
本発明は、抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞の生成のためのin vivo方法を記載する。特定の実施形態は、本明細書に記載される本発明のペプチドで動物(ヒトを含む)を免疫化し、次に、免疫化された動物からCD4+ T細胞又はNKT細胞を単離することによってCD4+ T細胞又はNKT細胞を生成又は単離する方法に関する。
【0191】
本発明はまた、APCに向けた抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞の生成のためのin vitro方法を記載する。本発明は、APCに向けた抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞及びNKT細胞を生成する方法を提供する。
【0192】
一実施形態では、末梢血細胞の単離、本発明による免疫原性ペプチドによるin vitroでの細胞集団の刺激、及び刺激された細胞集団の、特にIL-2の存在下での増量を含む方法が提供される。本発明による方法は、多数のCD4+ T細胞が生成され、抗原性タンパク質に特異的であるCD4+ T細胞を生成することができる(抗原特異的エピトープを含むペプチドを使用することによって)という利点を有する。
【0193】
代わりの実施形態では、CD4+ T細胞はin vivoで、すなわち本明細書に記載される免疫原性ペプチドの対象への注射、及びin vivoで生成される細胞溶解性CD4+ T細胞の収集によって生成することができる。
【0194】
本発明の方法によって得ることが可能な抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞又はNKT細胞は、医薬として使用するために、特に、自己免疫性疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種異系移植拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種用のウイルスベクターへの免疫応答の処置及び/又は予防で使用するために特に興味がある。
【0195】
同種異系及び自原性細胞の両方の使用が想定される。
【0196】
一実施形態では、本発明は、結果として以下を限定されずに含む活性の増加をもたらす、特異的NKT細胞を増量する方法を提供する:
(i)サイトカイン生成の増加
(ii)抗原提示細胞の接触-及び可溶性因子依存性の排除の増加。したがって、結果は、細胞内病原体、自己抗原、同種因子、アレルゲン、腫瘍細胞へのより効率的な応答、並びに移植及び遺伝子療法/遺伝子ワクチン接種で使用されるウイルスタンパク質に対する免疫応答のより効率的な抑制である。
【0197】
本発明は、体液又は臓器における必要な特性を有するNKT細胞の同定にも関する。本方法は、NK1.1、CD4、NKG2D及びCD244の発現を含むそれらの表面表現型による、NKT細胞の同定を含む。細胞は次に、CD1d分子が提示することができるペプチドと規定されるNKT細胞エピトープと接触させる。細胞は次に、IL-2又はIL-15又はIL-7の存在下でin vitroで増量される。
【0198】
記載される通りに生成した単離された細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞又は細胞集団、特に抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞集団は、免疫障害の予防又は処置のための医薬の製造のためにもまた使用される。単離又は生成された細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞を使用した処置の方法が、開示される。
【0199】
WO2008017517で説明される通り、APCに向けた細胞溶解性CD4+ T細胞は、細胞の発現特性に基づいて天然のTreg細胞から区別することができる。特に、細胞溶解性CD4 + T細胞集団は、天然のTreg細胞集団と比較して以下の特徴の1つ又は複数を実証する:
活性化の後のCD103、CTLA-4、Fasl及びICOSを含む表面マーカーの発現の増加、CD25の中間的発現、CD4、ICOS、CTLA-4、GITRの発現、及びCD127(IL7-R)の低い発現か無発現、CD27の無発現、転写リプレッサーFoxp3のではなく、転写因子T-bet及びegr-2 (Krox-20)の発現、IFN-ガンマの高い生成、及びIL-10、IL-4、IL-5、IL-13又はTGF-ベータの無又は極微量の生成。
【0200】
更に、細胞溶解性T細胞はCD45RO及び/又はCD45RAを発現し、CCR7、CD27を発現せず、高レベルのグランザイムB及び他のグランザイム並びにFasリガンドを提示する。
【0201】
WO2008017517で説明される通り、APCに向けた細胞溶解性NKT細胞は、細胞の発現特性に基づいて非細胞溶解性のNKT細胞から区別することができる。特に、細胞溶解性CD4+ NKT細胞集団は、非細胞溶解性のNKT細胞集団と比較して以下の特徴: NK1.I、CD4、NKG2D及びCD244の発現の1つ又は複数を実証する。
【0202】
本発明のペプチドは、生きている動物、一般的にヒトへの投与の後に、第三者T細胞に抑制性活性を発揮する特異的T細胞を導き出す。
【0203】
具体的な実施形態では、本発明の細胞溶解性細胞集団は、FasL及び/又はインターフェロンガンマの発現によって特徴付けられる。具体的な実施形態では、本発明の細胞溶解性細胞集団は、グランザイムBの発現によって更に特徴付けられる。
【0204】
この機構は、本発明のペプチドは、ある特定の抗原の特異的T細胞エピトープを含むが、本発明のペプチドによって活性化されるT細胞の近くのMHCクラスII分子又はCD1d分子によって同じ機構を通してそれらが提示されるならば、同じ抗原の他のT細胞エピトープに対する免疫反応によって導き出される障害の予防若しくは処置のために、又はある特定の状況では、他の異なる抗原の他のT細胞エピトープに対する免疫反応によって導き出される障害の処置のためにも使用することができることも暗示する。
【0205】
本発明はまた、個体において、自己免疫性疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種異系移植拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種用のウイルスベクターへの免疫応答を処置及び/又は予防する方法であって、本発明による免疫原性ペプチド又は本発明の細胞集団を、前記個体に投与する工程を含む方法に関する。
【0206】
本発明は更に、個体において、自己免疫性疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種異系移植拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種用のウイルスベクターへの免疫応答を処置及び/又は予防する方法であって、
- 前記個体の末梢血細胞を提供する工程と、
- 前記細胞を、本発明による免疫原性ペプチドと接触させる工程と、
- 前記細胞を増量する工程と、
- 前記増量細胞を前記個体に投与する工程と
を含む方法に関する。
【0207】
処置若しくは予防目的の医療上の使用又は方法のために、ペプチドは、医薬組成物の一部であり得る。本明細書で更に記載される医薬組成物の一例として、本発明によるペプチドは、水酸化アルミニウム(ミョウバン)等の、哺乳動物への投与に好適なアジュバントの上に吸着される。一般的に、ミョウバンの上に吸着されるペプチドの50μgが、2週間隔の3つの機会に皮下経路によって注射される。経口、鼻腔内又は筋肉内を含めて他の投与経路が可能であることは、当業者に明らかなはずである。更に、注射の回数及び注射する量は、処置する状態によって異なることができる。更に、それらがMHC-クラスII又はCD1d分子提示及びT細胞活性化においてペプチド提示を促進するならば、ミョウバン以外の他のアジュバントを使用することができる。したがって、有効成分を単独で投与することが可能であるが、それらは医薬製剤として一般的に提示される。獣医及びヒト使用のための本発明の製剤は、上記の少なくとも1つの有効成分を、1つ又は複数の薬学的に許容される担体と一緒に含む。
【0208】
本発明は、有効成分としての本発明による1つ又は複数のペプチドを、薬学的に許容される担体と一緒に混合物中に含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、処置又は予防の方法に関して以降指示されるもの等の有効成分の治療的有効量を含むべきである。必要に応じて、組成物は他の治療成分を更に含む。好適な他の治療成分、並びにそれらが属するクラスに依存するそれらの通常の投薬量は当業者に周知であり、免疫障害を処置するために使用される他の公知の薬物から選択することができる。
【0209】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」は、例えば組成物を溶解、分散若しくは拡散することによって処置する部位へのその適用若しくは伝播を容易にするために、及び/又はその有効性を損なうことなくその保存、輸送若しくは取扱いを容易にするために、それと一緒に有効成分が製剤化される任意の材料又は物質を意味する。それらには、全溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤(例えばフェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(糖又は塩化ナトリウム等)等が含まれる。組成物中の免疫原性ペプチドの作用期間を制御するために、追加の成分が含まれてもよい。薬学的に許容される担体は、固体又は液体又は液体を形成するために圧縮される気体であってよく、すなわち、この発明の組成物は濃縮液、乳剤、溶液、粒状体、粉剤、噴霧剤、エアゾール、懸濁液、軟膏、クリーム、錠剤、ペレット又は粉末として好適に使用することができる。医薬組成物及びそれらの製剤で使用するための好適な医薬担体は当業者に周知であり、本発明の中でのそれらの選択に特に制限はない。それらには、添加剤、例えば湿潤剤、分散剤、展着剤、接着剤、乳化剤、溶媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤(例えば、フェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(糖又は塩化ナトリウム等)等が含まれてもよいが、それらが製薬慣行と一貫している場合に限られ、すなわち哺乳動物に恒久的な傷害を与えない担体及び添加剤に限る。本発明の医薬組成物は、任意の公知の方法で、例えば有効成分を選択された担体材料及び適当な場合には界面活性剤等の他の添加剤と一緒に、一段階又は多段階手順で均一に混合し、コーティングし、及び/又は磨砕することによって調製することができる。それらは、例えば通常約1~10μmの直径を有するマイクロスフェアの形でそれらを得る目的で、すなわち、有効成分の制御されたか又は持続的放出のためのマイクロカプセルの製造のために、微粉化によって調製することもできる。
【0210】
本発明の医薬組成物で使用するのに好適である、搾出剤又は乳化剤としても知られる界面活性剤は、優れた乳化、分散及び/又は湿潤特性を有する非イオン性、カチオン性及び/又はアニオン性の材料である。好適なアニオン性界面活性剤には、水溶性石鹸及び水溶性の合成界面活性剤の両方が含まれる。好適な石鹸は、アルカリ若しくはアルカリ土類金属塩、高級脂肪酸(C10~C22)の非置換の若しくは置換されたアンモニウム塩、例えばオレイン酸若しくはステアリン酸のナトリウム若しくはカリウム塩、又はヤシ油若しくは獣脂オイルから入手できる天然脂肪酸混合物のものである。合成界面活性剤には、ポリアクリル酸のナトリウム又はカルシウム塩;脂肪スルホン酸塩及び硫酸塩;スルホン化されたベンズイミダゾール誘導体及びアルキルアリールスルホン酸塩が含まれる。脂肪スルホン酸塩又は硫酸塩は通常アルカリ又はアルカリ土類金属塩、非置換のアンモニウム塩又は8~22の炭素原子を有するアルキル若しくはアシル基で置換されるアンモニウム塩、例えば、リグニンスルホン酸又はドデシルスルホン酸のナトリウム又はカルシウム塩、又は天然脂肪酸から得られる脂肪アルコール硫酸塩の混合物、硫酸又はスルホン酸エステル(ラウリル硫酸ナトリウム等)及び脂肪アルコール/エチレンオキシド付加物のスルホン酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩の形である。好適なスルホン化されたベンズイミダゾール誘導体は、8~22の炭素原子を一般的に含有する。アルキルアリールスルホン酸の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸又はジブチル-ナフタレンスルホン酸又はナフタレン-スルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物のナトリウム、カルシウム又はアルカノールアミン塩である。対応するリン酸塩、例えばリン酸エステルの塩、及びp-ノニルフェノールとエチレン及び/又はプロピレンオキシドの付加物、又はリン脂質も好適である。例えば、この目的のための好適なリン脂質は、ケファリン又はレシチンタイプの天然(動物又は植物細胞を起源とする)又は合成リン脂質、例えば、ホスファチジル-エタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセリン、リゾレシチン、カルジオリピン、ジオクタニルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びそれらの混合物である。
【0211】
好適な非イオン性界面活性剤には、分子中に少なくとも12の炭素原子を含有するアルキルフェノール、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪族アミン又はアミドのポリエトキシル化及びポリプロポキシル化誘導体、アルキルアレーンスルホン酸塩及びジアルキルスルホコハク酸塩、例えば、脂肪族及び脂環式アルコールのポリグリコールエーテル誘導体、飽和及び不飽和脂肪酸及びアルキルフェノールが含まれ、誘導体は、(脂肪族)炭化水素部分に3~10のグリコールエーテル基及び8~20の炭素原子を、アルキルフェノールのアルキル部分に6~18の炭素原子を一般的に含有する。更なる好適な非イオン性界面活性剤は、アルキル鎖に1~10の炭素原子を含有するポリプロピレングリコール、エチレンジアミノポリプロピレングリコールとのポリエチレンオキシドの水溶性付加物であり、その付加物は20~250のエチレングリコールエーテル基及び/又は10~100のプロピレングリコールエーテル基を含有する。そのような化合物は、プロピレングリコール単位につき1~5のエチレングリコール単位を通常含有する。非イオン性界面活性剤の代表的な例は、ノニルフェノール-ポリエトキシエタノール、ヒマシ油ポリグリコールエーテル、ポリプロピレン/ポリエチレンオキシド付加物、トリブチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコール及びオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである。ポリエチレンソルビタン(ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等)、グリセロール、ソルビタン、スクロース及びペンタエリスリトールの脂肪酸エステルも、好適な非イオン性界面活性剤でもある。好適なカチオン性界面活性剤には、ハロ、フェニル、置換されたフェニル又はヒドロキシで必要に応じて置換される4炭化水素基を有する四級アンモニウム塩、特にハライドが含まれる;例えば、N置換基として少なくとも1つのC8C22アルキル基(例えば、セチル、ラウリル、パルミチル、ミリスチル、オレイル等)及び、更なる置換基として、非置換であるかハロゲン化された低級アルキル、ベンジル及び/又はヒドロキシ-低級アルキル基を含有する四級アンモニウム塩。
【0212】
この目的のために好適な界面活性剤のより詳細な記載は、例えば、「McCutcheon's Detergents and Emulsifiers Annual」(MC Publishing Crop.社、Ridgewood、New Jersey、1981)、「Tensid-Taschenbucw」、第2版(Hanser Verlag社、Vienna、1981)及び「Encyclopaedia of Surfactants」(Chemical Publishing Co.社、New York、1981)に見出すことができる。本発明によるペプチド、その相同体又は誘導体(並びに、用語「有効成分」に全て含まれるそれらの生理的に許容される塩又は医薬組成物)は、処置される状態に適当であり、化合物、ここでは投与されるタンパク質及び断片、に適当である任意の経路によって投与することができる。可能な経路には、領域性、全身性、経口(固体の形又は吸入)、直腸、経鼻、局所(目、口内及び舌下を含む)、経膣及び非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、クモ膜下及び硬膜外を含む)が含まれる。好ましい投与経路は、例えばレシピエントの状態で、又は処置される疾患で異なることができる。本明細書で記載されるように、担体は、製剤の他の成分に適合し、レシピエントに有害でないという意味において、最適には「許容される」。製剤には、経口、直腸、経鼻、局所(口内及び舌下を含む)、経膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、クモ膜下及び硬膜外を含む)投与に適するものが含まれる。
【0213】
非経口投与に適する製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、及びその製剤を予定レシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる水性及び非水性の無菌注射溶液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含むことができる水性及び非水性の無菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位用量又は多回用量容器、例えば密封アンプル及びバイアルで提示することができ、使用直前に無菌の液体担体、例えば注射用水を付加するだけでよい、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時使用の注射溶液及び懸濁液は、前に記載した種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0214】
一般的な単位薬量製剤は、本明細書で上に挙げたような有効成分の日用量又は単位下位日用量、又はその適当な分数を含有するものである。上で特に指摘した成分に加えて、本発明の製剤は、問題の製剤タイプに関係する技術分野で慣用される他の薬剤を含むことができることを理解すべきであり、例えば、経口投与に適するものは着香料を含むことができる。本発明によるペプチド、その相同体又は誘導体は、より低い頻度の投薬を可能にするために、又は所与の発明化合物の薬物動態学的若しくは毒性プロファイルを改善するために有効成分の放出を制御及び調節することができる、有効成分として1つ又は複数の本発明の化合物を含有する制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を提供するために使用することができる。個別の単位が1つ又は複数の本発明の化合物を含む経口投与のために適合させた制御放出製剤は、従来の方法によって調製することができる。組成物中の有効成分の作用期間を制御するために、追加の成分が含まれてもよい。したがって、制御放出組成物は、適当なポリマー担体、例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン等を選択することによって達成することができる。薬物放出の速度及び作用期間は、有効成分をポリマー物質、例えばヒドロゲル、ポリ乳酸、ヒドロキシメチルセルロース、ポリニエチルメタクリレート及び他の上記のポリマーの粒子、例えばマイクロカプセル、に組み込むことによって制御することもできる。そのような方法には、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル等のようなコロイド薬物送達系が含まれる。投与経路によっては、医薬組成物は、保護コーティングを必要とすることがある。注射のために好適な医薬形態には、無菌の水性溶液又は分散液、及びその即時使用の調製のための無菌の粉末が含まれる。したがって、この目的のための一般的な担体には、生体適合性の水性緩衝液、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等及びそれらの混合物が含まれる。いくつかの有効成分を組合せて使用する場合、それらは処置される哺乳動物において必ずしも共同の治療効果を同時に直接的にもたらすとは限らないという事実を考慮して、対応する組成物は、2つの成分を別々であるが隣接したリポジトリ又はコンパートメントに含有する医療用のキット又はパッケージの形であってもよい。後者との関連で、各有効成分は、したがって、他の成分のそれと異なる投与経路に好適な方法で製剤化することができ、例えば、それらのうちの1つは経口又は非経口製剤の形であってよく、他は静脈内注射又はエアゾールのためのアンプルの形である。
【0215】
本発明のペプチドは、試料中のクラスII制限CD4+T細胞を検出するためのin vitro診断方法で使用することもできる。この方法では、試料をMHCクラスII分子及び本発明によるペプチドの複合体と接触させる。CD4+T細胞は、複合体の試料中の細胞との結合を測定することによって検出され、ここで、細胞への複合体の結合は試料中のCD4+T細胞の存在の指標となる。複合体は、ペプチド及びMHCクラスII分子の融合タンパク質であってよい。或いは、複合体中のMHC分子は四量体である。複合体は可溶性分子として提供することができるか、又は担体に結合していてよい。
【0216】
本発明のペプチドは、試料中のNKT細胞を検出するためのin vitro診断方法で使用することもできる。この方法では、試料をCD1d分子及び本発明によるペプチドの複合体と接触させる。NKT細胞は、試料中の細胞と複合体の結合を測定することによって検出され、ここで、細胞への複合体の結合は試料中のNKT細胞の存在の指標となる。複合体は、ペプチド及びCD1d分子の融合タンパク質であってよい。
【0217】
本発明は、限定する意図のない以下の実施例によってここから例示される。更に、本明細書に記載される全ての参考文献は、参照により本明細書に明示的に含まれる。
【実施例
【0218】
(実施例1)
ペプチド設計
T細胞エピトープに関係した酸化還元酵素モチーフの活性に対する、N末端システインのN-改変(すなわち、酸化還元酵素モチーフが、ペプチドのN末端に置かれる場合)、又はC末端システインのC末端アミド基のアルキル化(すなわち、酸化還元酵素モチーフが、ペプチドのC末端に置かれる場合)の影響を評価するために、以下のペプチド(table 1(表1)、table 2(表2)、table 3(表3)、table 4(表4)、table 5(表5)、table 6(表6)、table 7(表7)、及びtable 8(表8))を合成して、非改変システインを含む免疫原性ペプチドと比較した。table 1(表1)に表示されるペプチドは、C1PYC酸化還元酵素モチーフ(式中、C1は、N-改変されているか、若しくはN-改変されておらず、インスリンのMHCクラスII T細胞エピトープに連結されたペプチドのN末端に対応する)を含む。table 2(表2)に表示されるペプチドは、C1PYC酸化還元酵素モチーフ(式中、C1は、N-改変されているか、若しくはN-改変されておらず、破傷風毒素のMHCクラスII T細胞エピトープに連結されたペプチドのN末端に対応する)を含む。table 3(表3)に表示されるペプチドは、C1HGC酸化還元酵素モチーフ(式中、C1は、N-改変されているか、若しくはN-改変されておらず、インスリンのMHCクラスII T細胞エピトープに連結されたペプチドのN末端に対応する)を含む。table 4(表4)に表示されるペプチドは、C1PYC酸化還元酵素モチーフ(式中、C1は、N-改変されているか、若しくはN-改変されておらず、アデノウイルス(Ad5)のヘキソンタンパク質のNKT細胞エピトープに連結されたペプチドのN末端に対応する)を含む。table 5(表5)に表示されるペプチドは、C1PYC酸化還元酵素モチーフ(式中、C1は、N-改変されているか、若しくはN-改変されておらず、ミエリンオリゴデンドロサイト(MOG)タンパク質のMHCクラスII T細胞エピトープに連結されたペプチドのN末端に対応する)を含む。
【0219】
table 6(表6)に表示されるペプチドは、C1HGC酸化還元酵素モチーフ(式中、C1は、N-改変されているか、若しくはN-改変されておらず、MOGのMHCクラスII T細胞エピトープに連結されたペプチドのN末端に対応する)を含む。
【0220】
table 7(表7)に表示されるペプチドは、C1PYC酸化還元酵素モチーフ(式中、C1は、C末端アミド基でアルキル化(エチル化又はメチル化)されているか、若しくはアルキル化(エチル化又はメチル化)されておらず、MOGのMHCクラスII T細胞エピトープに連結されたペプチドのC末端に対応する)を含む。table 8(表8)に表示されるペプチドは、C1GC酸化還元酵素モチーフ(式中、C1は、N-改変されているか、若しくはN-改変されておらず、インスリンのMHCクラスII T細胞エピトープに連結されたペプチドのN末端に対応する)を含む。
【0221】
【表1】
【0222】
【表2】
【0223】
【表3】
【0224】
【表4】
【0225】
【表5】
【0226】
【表6】
【0227】
【表7】
【0228】
【表8】
【0229】
(実施例2)
ペプチドの還元活性の評価
ペプチドの還元酵素活性は、Tomazzolli等(2006) Anal. Biochem. 350、105~112頁に記載される蛍光アッセイを使用して決定される。FITC標識を有する2つのペプチドは、それらがジスルフィド架橋により互いと共有結合するときに自己失活する。本発明によるペプチドによる還元時に、還元された個々のペプチドは再び蛍光性になる。
【0230】
対照実験は、ジチオトレイトール(100%還元活性)及び水(0%還元活性)で実施される。
【0231】
本発明のペプチドを、それらの還元活性に関して検査した。
【0232】
対照実験は、100%の還元活性として割り当てられるDTT(ジチオトレイトール)、及び水(0%還元活性)で実施される。
【0233】
図1に表示されるように、ペプチドN-アセチル-CPYCSLQPLALEGSLQKRGは、N-改変されたシステインを有さない対照ペプチドCPYCSLQPLALEGSLQKRGよりも高い酸化還元酵素活性を有する。
【0234】
図2に表示されるように、ペプチドN-アセチル-CPYCVQYIKANSKFIGITELは、N-改変されたシステインを有さない対照ペプチドCPYCVQYIKANSKFIGITELよりも高い酸化還元酵素活性を有する。
【0235】
図3に表示されるように、ペプチドN-アセチル-又はN-プロピオニル-CPYCGWYRSPFSRVVHLYRは、N-改変されたシステインを有さない対照ペプチドCPYCGWYRSPFSRVVHLYRよりも高い酸化還元酵素活性を有する。ペプチドN-メチル-CPYCGWYRSPFSRVVHLYRは、N-改変されたシステインを有さない対照ペプチドと比較した場合に同等の活性を有する。ペプチドN-エチル-CPYCGWYRSPFSRVVHLYRは、酸化還元酵素活性を有さなかった。
【0236】
図4に表示されるように、ペプチドN-アセチル-CHGCGWYRSPFSRVVHLYRは、N-改変されたシステインを有さない対照ペプチドCHGCGWYRSPFSRVVHLYRよりも高い活性を有する。
【0237】
図5に表示されるように、ペプチドGWYRSPFSRVVHLYRCPYC-NH-メチル又は-NH-エチルは、特に初期の時点で、改変されたシステインを有さない対照ペプチドGWYRSPFSRVVHLYRCPYC-NHよりもわずかに高い酸化還元酵素活性を有する。
【0238】
(実施例3)
ペプチド変異体の、細胞溶解性CD4+T細胞を引き出す能力の評価
ペプチド変異体の、特異的細胞溶解性CD4+T細胞を引き出す能力を評価するために、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)に特異的なTCRを有する2D2トランスジェニックマウスを使用した。table 5(表5)に表示されるペプチドの3回皮下注射を、アラムで作用を増強した(adjuvanted)個々のペプチド変異体50μgを用いて、12日間隔で2D2マウスに実施した。最後の注射の14日後、マウスを屠殺して、脾細胞を準備した。最初の未加工実験では、脾臓CD4+T細胞を、分化マーカー(CD44及びCD62L)に関して染色して、CD4+T細胞を刺激するペプチド効力の比較を可能にした。同様に、同じ細胞を野生型ペプチド(チオレドックスモチーフを欠如している(devoided of))で刺激して、グランザイムA及びグランザイムB、FasL並びに脱顆粒マーカーCD107a+bとしてこれらの細胞によって生成される溶解性分子の検出を可能にした。改変されたシステインを有する変異体は、細胞溶解性表現型に対して特異的なCD4+T細胞の分化でより強力であると予想される。
【0239】
別の実験セットでは、脾細胞(特異的CD4+T細胞及び抗原提示細胞、APCを含有する)を、野生型ペプチドの存在下又は不在下で18時間培養した後、同族相互作用に続いて細胞溶解能力を有するCD4+T細胞の発現に起因して、APCにおけるアポトーシス及び細胞死の検出を可能にするように、CD19及びCD11cを認識する抗体とともに、アネキシンV発現及び7-ADDに関して染色した。APC細胞死の最も高い比率は、改変されたシステインを有する変異体を注射したマウス由来の脾細胞において測定されると予想される。
【0240】
(実施例4)
ペプチド変異体の、CD4+T細胞の表面にあるジスルフィド架橋を還元する能力の評価
ペプチド変異体を、特異的CD4+T細胞の表面にあるジスルフィド架橋を還元するそれらの能力に関して比較した。
【0241】
脾臓CD4+T細胞を、2D2 TCRトランスジェニック動物から精製して、table 5(表5)に表示される個々のペプチド変異体をロードした種々の脾臓APC調製物と接触させた。30分後、細胞を洗浄して、細胞表面にある還元されたジスルフィドを反応する蛍光マレイミド試薬とともに、抗-CD4抗体で染色した後、フローサイトメトリーによって分析した。APCによって提示されると、改変されたシステインを有する変異体は、マレイミド蛍光シグナル強度の増加によって示されるように、CD4+T細胞の表面にあるジスルフィド架橋の標的及び還元で最も強力であると予想される。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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【国際調査報告】