(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(54)【発明の名称】セルローススパンボンド不織布の製造中にスピナレットを洗浄するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
D01D 4/04 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
D01D4/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568489
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2020063519
(87)【国際公開番号】W WO2020234122
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】ザゲレル-フォリック,イブラヒム
(72)【発明者】
【氏名】マルツナー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】グシュヴァントナー,マティアス
【テーマコード(参考)】
4L045
【Fターム(参考)】
4L045BA03
4L045CA33
4L045CB31
4L045CB35
(57)【要約】
本発明は、スパンボンド用スピナレットのスピナレット孔を通して溶液を押し出してフィラメントを形成することと、ガス流を使用してフィラメントを押し出し方向に延伸することと、によって、水性有機溶剤中のセルロースの溶液からセルローススパンボンド不織布を製造するための、スパンボンド用スピナレットを洗浄するための方法であって、この方法中に、セルロースを含有する不純物がスピナレット表面上に蓄積する、方法、に関する。本発明に係る方法は、以下のステップを有する:a)不純物にセルロースを凝集させる水含有流体を噴霧するステップ、および、b)ガス流を使用して不純物を引き離し運び去るステップ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性有機溶剤中のセルロースの溶液から、前記溶液をスパンボンド用スピナレットのノズル孔を通して押し出してフィラメントを形成し、前記フィラメントをガス流によって押し出しの方向に延伸することによって、セルローススパンボンド不織布を製造するための、前記スパンボンド用スピナレットを洗浄するための方法であって、前記方法中にセルロースを含有する汚染物が前記スパンボンド用スピナレットの表面上に蓄積し、前記方法が、以下のステップ:
a)前記セルロースを凝集させる水性流体を前記汚染物に噴霧するステップ、
b)前記ガス流によって前記汚染物を引き離し運び去るステップ、を含む、方法。
【請求項2】
製造工程の進行中にそれを中断することなく実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の更なるステップ:
c)前記スパンボンド用スピナレットの前記表面の目視検査
d)前記スパンボンド用スピナレットの前記表面上の汚染物の検出
e)前記汚染物に噴霧を行うのに適した位置への噴霧デバイスの位置決め、を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)からステップe)のうちの少なくとも1つが、好ましくはステップc)からステップe)の全てが、自動的に実行されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水性流体が、水、水蒸気、前記水性有機溶剤、またはこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
引き離され運び去られた汚染物が製造工程から排除されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記セルロースを凝集させる前記水性流体を前記スパンボンド用スピナレットの前記表面上に適用するための少なくとも1つの噴霧ノズルを備える、噴霧デバイスを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実行するためのデバイス。
【請求項8】
前記噴霧デバイスを所望の場所へと移動させるための少なくとも1つの位置決めデバイスによって特徴付けられる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記汚染物を検出するための検出デバイスを更に備える、請求項7または8に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルローススパンボンド不織布の製造中にスパンボンド用スピナレットを洗浄するための方法に関する。
【0002】
また更に、本発明は、セルローススパンボンド不織布の製造中にスパンボンド用スピナレットを洗浄するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
様々なポリマー融液および溶液から、微細な繊維およびフィラメントを、スピナレットから押し出されたフィラメントを押し出しの方向と本質的に平行に方向付けられる高温ガス流を利用して延伸することで製造するために、様々なスピナレットを用いる多様な方法が、数十年にわたって使用されている。次いで、このようにして生成された繊維および場合によってはフィラメントを、穿孔された表面上に、例えばドラムまたはコンベヤベルト上に、不織布として堆積させることができる。使用される方法およびポリマーに応じて、製造された不織布はその後、直接巻き取られるか、または、まず後処理を行い、その後続けてロールとして巻き上げられるか、のいずれかを行い、販売できるように仕上げられる。製造コストを更に下げるために、スパンボンド不織布業界で最適化の最大の領域を成しているのは、不織布の品質を少なくとも一定に保ったままで、スループットを増大することおよびエネルギー需要を低減することである。
【0004】
米国特許第3543332号に記載されているように、原材料として、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、セルロースアセテート、および他の多くの溶融性または溶解性物質が使用され得る。米国特許第6306334号、米国特許第8029259号、および米国特許第7922943号に記載されているような、リヨセル紡糸液からスパンボンド不織布を製造するための方法も開発されている。更なる例として、デンプンからのスパンボンド不織布の製造が、米国特許第7939010号に記載されている。使用される原材料は時としてそれらの特性が特に流動学の観点で大きく異なるので、スピナレット設計の柔軟性および適合性に関する要件は高くなる。
【0005】
これまでに使用されているメルトブローン工程によるスパンボンド不織布の製造のためのスピナレットは、単列スピナレットと多列スピナレットとに大きく分けることができる。
【0006】
溶融物および溶液からスパンボンド不織布を製造するために、米国特許第3825380号に記載されているような単列スピナレットを実際には使用することができるが、溶融物または場合によっては溶液の粘度に応じて、圧力損失が非常に大きくなる可能性があり、最大スループットがその結果非常に低くなる可能性がある。より微細な繊維およびより高いスループットへの要求を満たすために、単列スピナレットは実際には、米国特許第6245911号および米国特許第7316552号に記載されているような更なる発展も経ているが、その設計は、幾何形状および製造技術の観点からは既にその限界に達している。例えば、開発の過程で、スピナレットあたりのスループットを高めるために、および処理中の紡糸不良のリスクを下げるために、押し出しキャピラリ間の距離がますます小さくなっている。使用される溶融物または場合によっては溶液、および選択される動作パラメータに応じて、単列スピナレットのスループットは、10kg/h/mから100kg/h/mの範囲にわたる。
【0007】
スループットを高めるために、米国特許第4380570号に記載されているような多列ニードルスピナレットが開発されている。この場合、融液または場合によっては溶液が、スピナレットを通るいくつかの行および列を有する中空の針を介して押し出される。単列スピナレットと比較して、結果的に得られるニードル面積によって、スピナレットあたりのスループットを高めることができる。
【0008】
国際出願公開第2019/068764号には、少なくとも2つの連続した行で配置された複数の押し出しキャピラリを有する新しいタイプのスピナレットが記載されており、ここでは押し出しキャピラリは、基部プレートと一体に形成され上記基部プレートから突出している、押し出しカラム内に配置されている。このタイプのスピナレットを以下では「カラムスピナレット(column spinneret)」と呼ぶ。
【0009】
既に記載したように、スパンボンド用スピナレットあたりのスループットを高めるために、スパンボンド用スピナレットの設計および製造に多くの努力が費やされている。しかしながら、選ばれるスパンボンド用スピナレット技術に関係なく、スパンボンド用スピナレットはやはり問題なく機能すべきであり、スパンボンド用スピナレットあたりの稼働時間は可能な限り長いべきである。
【0010】
溶融物または場合によっては紡糸液の温度、一次空気の温度、溶融物または場合によっては紡糸液の分布および紡糸圧力などの、重要なパラメータが均一であっても、溶融物または場合によっては紡糸液中の原材料中の不純物に起因して、押し出し不良、フィラメントが裂ける現象、押し出し出口における短鎖高分子の蓄積、または一次空気出口孔の周囲の溶融物もしくは紡糸液の堆積が生じ得る。上述した不良は後から、スパンボンド不織布において穴または「ショット」として発見される可能性がある。スパンボンド用スピナレット上の汚染が時間の経過とともに大きくなる場合、押し出し孔が互いに干渉しスパンボンド用スピナレットが閉じられてしまうので、プラントを停止せねばならず、製造の損失につながる。
【0011】
スピナレットはその後取り外され(dismantled)、米国特許第3485670号、米国特許第3865628号、および日本国特許公開第2009155769号に記載されているようなプラスチック溶融物を処理するためのスパンボンド用スピナレットの場合には、熱分解または加水分解によって洗浄される。
【0012】
ステープルファイバーの製造のためのリヨセルスピナレットの場合にも、スピナレットの洗浄に関する教示が存在し(米国特許第5415697号)、さらにまた、フィラメントの押し出し中に溶融物または場合によっては紡糸液中の不純物を防止してそのことにより紡糸の安定性を高めるための、プラスチック溶融物用のおよびセルロース紡糸液用の濾過デバイス(米国特許第6033609号)も存在する。しかしながら、選ばれたフィルタが細かくなるほど詰まりの発生が早くなり、大きな圧力損失が生じる。最後に、フィルタを交換しなければならないので、スピナレットをその後再びオフにして分解し(dismantled)なければならないが、このことは製造の損失につながる。
【0013】
スパンボンド不織布の製造用の原材料はプラスチック溶融物から合成によって製造されており、純度および分子量の両方が制御可能であるので、ノズル孔の事前の洗浄およびチェック、恒常的プロセス制御、ならびにスピナレットの正面のフィルタによって、スピナレットの良好な稼働時間が達成される。押し出し孔が依然として紡糸不良を生む場合、それが恒常的に塞がれることになるか、または既に記載したように、スパンボンド用スピナレット全体が分解され洗浄されることになる。
【0014】
セルロース紡糸液からスパンボンド不織布を製造する場合、これは天然の原材料であり、パルプ中の分子量分布および汚染の程度が製造中に大きく変動する。ある量の溶融物からほぼ同じ量のスパンボンド不織布が製造される、合成スパンボンド不織布の製造とは対照的に、セルローススパンボンド不織布の製造において同じ生産性を達成するためには、約10倍の量の紡糸液を処理しなければならない。紡糸液は通常、セルロースの質量分率が3%から17%の溶液であるので、スピナレットあたりのスループット、スパンボンド用システムの全体的なスループット、スパンボンド用スピナレットの紡糸安定性、およびスピナレットの稼働時間に関する要件は、合成スパンボンド不織布の製造のための既知の技術の場合よりも高い。
【0015】
セルローススパンボンド不織布の製造用のスパンボンド用スピナレット動作中に、押し出し不良および紡糸不良が繰り返し生じる可能性があり、このことによって、紡糸液がスピナレットの押し出し側に、または場合によっては一次空気出口開口の付近に、詰まったままになる。このことにより一次空気流が妨害され、スパンボンド用スピナレットの下方で好ましくない乱流が生じる。
【0016】
別の結果としては、隣り合う押し出し孔も妨げられ、そこでも紡糸不良が生じることになるが、これは、最終的に製品における「ショット」となるか、またはスピナレットの表面上に蓄積するかのいずれかとなる。
【0017】
スピナレット表面が過度に汚れている場合は、スパンボンド用スピナレットをオフにして洗浄しなければならない。時間の経過とともに製品の品質も損なわれることになるが、その理由は、スパンボンド用スピナレットの汚染のレベルが上がるにつれて、製品においてより多くの紡糸不良が見つかることにもなるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって本発明の目的は、スパンボンド用スピナレットの稼働時間を延ばすこと、および、セルローススパンボンド不織布を製造するためのプラントの生産性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
目的は、水性有機溶剤中のセルロースの溶液から、この溶液をスパンボンド用スピナレットのノズル孔を通して押し出してフィラメントを形成し、フィラメントをガス流によって押し出しの方向に延伸することによって、セルローススパンボンド不織布を製造するための、スパンボンド用スピナレットを、洗浄するための方法であって、この方法中にセルロースを含有する汚染物がスパンボンド用スピナレットの表面上に蓄積し、方法が、以下のステップ:
a.セルロースを凝集させる水性流体を汚染物に噴霧するステップ
b.ガス流によって汚染物を引き離し運び去るステップ、を含む、方法、によって達成される。
【0020】
また更に、目的は、本発明に係る方法を実行するためのデバイスであって、
セルロースを凝集させる水性流体をスパンボンド用スピナレットの表面上に適用するための少なくとも1つの噴霧ノズルを備える噴霧デバイスを備える、デバイス、によって達成される。
【0021】
従属請求項には好ましい実施形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】スパンボンド用スピナレットの下にある本発明に係るデバイスの実施形態を示す側面図である。
【
図2】本発明に係るデバイスの2つの実施形態を示す正面図である。
【
図3】本発明に係る方法の実施形態の機能を示す斜視図である。
【
図4】直列に接続されたスパンボンド用スピナレットを有する、本発明に係る方法の実施形態を示す側面図である。
【
図5】本発明に係る方法の実施形態のシークエンスを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明によって、スパンボンド用スピナレットの稼働時間を延ばすことのできる、および、セルローススパンボンド不織布を製造するためのプラントの生産性を改善することのできる、方法およびデバイスが提供される。
【0024】
特に、本発明に係る方法では、本発明に係るデバイスによって、スパンボンド用スピナレットのスピナレット表面を、処理の進行中に洗浄することが可能になる。
【0025】
本発明に係る方法は、セルロースを溶解させた紡糸液からスパンボンド不織布を製造するためのスパンボンド用スピナレットを洗浄するために使用され得る。
【0026】
セルローススパンボンド不織布の製造の例を用いれば、本発明に係る方法は、製造プラントの経済効率、プラントの稼働、製品品質、および作業安全性の観点から、多数の改善および利点をもたらすが、その理由は、プラントの可用性が高くなり、スパンボンド用スピナレットの分解(dismantled)および洗浄の頻度が低くなるからである。
【0027】
本発明によれば、セルロースを凝集させる水性流体が、スパンボンド用スピナレットの表面上の汚染上に選択的に、または汚染エリア全体にわたってのいずれかで噴霧されるという点で、予期しない洗浄効果が達成される。その結果、スパンボンド用スピナレット上に一次的に更に多くの汚染が形成されることになることが分かっている。一時的に、噴霧の結果、より多くの押し出し不良および紡糸不良も生じることになる。しかしながら、汚染はこの場合、押し出された紡糸液(すなわち、セルロース溶液)から成るものである。噴霧の結果、汚染/紡糸液からセルロースが凝結し、スパンボンド用スピナレット上に固体の膜または場合によっては被膜が形成される。これはその後すぐに、スパンボンド用スピナレットから出て来るガス流に一瞬で取り込まれ、スパンボンド用スピナレットの表面からはぎ取られる。スパンボンド用スピナレットの表面がこうして急激に洗浄される。
【0028】
これを行う場合、ガス流が生成される様式は、上記したスパンボンド用スピナレットのタイプにおいて様々であり得るが、本発明に係る方法の実施にとっては重要ではない。
【0029】
上記した全てのタイプのスパンボンド用スピナレットは、一次空気出口開口を有し、いずれの場合も個別のガス流案内を行うが、それらはいずれも本発明に係る洗浄原理を実現できる。
【0030】
有利には、本発明に係る方法によって、スパンボンド用スピナレットの必要な交換頻度が遥かに低くなる。したがって、スパンボンド用スピナレットの稼働時間が延長されることになり、製造プラントの生産性が向上することになる。
【0031】
本発明に係る方法を用いない場合のスパンボンド用スピナレットの動作の継続時間は、数時間から数日間である。このことには、過剰な背圧に起因して定期的に交換しなければならない、スパンボンド用スピナレットの正面に位置付けられ微細フィルタの、必須の交換も寄与している。本発明に係る方法によって、フィルタはより粗いものを選ぶことができるか、または場合によっては完全に省くことができるが、その理由は、スパンボンド用スピナレットの表面上の汚染物を、短時間で除去できるからである。このことにより、スパンボンド用スピナレットの稼働時間を何週間も延長することができる。
【0032】
スパンボンド用スピナレットの交換の間隔が延びる結果、スパンボンド用スピナレットの取り外し、分解、洗浄、再検査、組立、および再取り付けのための労力が低減する。ステープルファイバーの製造のためのスピナレットと比較して、スパンボンド用スピナレットは顕著に大きい。スパンボンド用スピナレットあたり1mから5mの長さ、および紡糸液分配器を含め数トンの質量では、スパンボンド用スピナレットの毎回の操作ならびに毎回の取り付けおよび取り外しは、取扱者にとって大きな労力となる。非常に高価な精機が含まれているので、取り外し、組立、および洗浄中には、大きな注意を払わなければならない。
【0033】
数日停止した後であっても、計画された製品切り換えまたは停止の発生時にスパンボンド用スピナレットを分解する(dismantled)必要のないことが、本発明に係る方法の更なる利点であることが分かっている。紡糸液が更新されスパンボンド用スピナレットが紡糸を開始すると、最初はスパンボンド用スピナレットの表面上に汚染が実際に生じることになるが、それらは本発明に係る方法によって除去され、製造を問題なく継続することができる。
【0034】
本発明に係る方法の利点は、大きな労力なしに所望の頻度で繰り返し可能なことである(スパンボンド用スピナレットを分解する(dismantled)必要がないため)。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明に係る方法は、製造工程の進行中にそれを中断することなく実行されることを特徴とする。
【0036】
本発明に係る方法によって、製造工程、特に紡糸液の準備およびスパンボンド用スピナレットへの供給を、洗浄工程中に停止する必要のないことが実現される。粒状プラスチック(plastic granulate)からのスパンボンド不織布製造とは特に対照的に、紡糸液供給のおよび溶剤回収の、遮断、洗浄、および再開は非常に複雑である。紡糸液の供給の工程を一定にできるほど、操業上の労力が低減され、プラントの生産性が向上する。
【0037】
本発明に係る方法が製造ロールの終わりに、またはあるロールから次のロールへの切り換え時に実行される場合、はぎ取られた汚染物を包含する、ロールの最後の層、または切り換えロールの全体が、廃棄され得る。その後、紡糸不良および汚染を生じることなく、きれいなスパンボンド用スピナレットで製造を継続することができる。したがって、中断のない継続的な製造工程が可能になる。
【0038】
好ましい実施形態では、本発明に係る方法は、以下の更なるステップを備えることを特徴とする:
c.スパンボンド用スピナレットの表面の目視検査
d.スパンボンド用スピナレットの表面上の汚染物の検出
e.汚染物に噴霧を行うのに適した位置への噴霧デバイスの位置決め。
【0039】
本発明に係る方法は、製造工程を中断することなく実行できることに起因して、基本的には特定のモニタリング手段または制御手段を有さずに実行され得る。例えば、方法は、実際に生じる汚染から完全に独立して、ある所定の時間間隔でのみ(または、例えば、ロール交換時ごとに)、スパンボンド用スピナレットの表面全体にわたって実行されてもよい。
【0040】
ただし、スパンボンド用スピナレットの汚染されている部分だけを特定的に洗浄するために、汚染の発生に関してスパンボンド用スピナレットの表面がチェックされるのが好ましい。
【0041】
この実施形態では、本発明に係る方法は好ましくは、ステップc)からステップe)のうちの少なくとも1つが、好ましくはステップc)からステップe)の全てが、自動的に実行されることを特徴とする。
【0042】
任意選択的に、ステップc)からステップe)のうちの少なくとも1つを、好ましくはステップc)からステップe)の全てを、当然ながら手動で行うこともできる。
【0043】
ステップc)からステップe)は好ましくは、ステップa)およびステップb)の前に行われる。
【0044】
更なる好ましい実施形態では、本発明に係る方法は、水性流体が、水、水蒸気、水性有機溶剤、またはこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする。
【0045】
スパンボンド用スピナレットの表面を洗浄するために、水蒸気、好ましくは湿り蒸気が使用され得る。
【0046】
更なる好ましい実施形態では、本発明に係る方法は、引き離され運び去られた汚染物が製造工程から排除されることを特徴とする。
【0047】
本発明によれば、汚染物の固体膜はスパンボンド用スピナレットから出て来るガス流に一瞬で取り込まれ、スパンボンド用スピナレットの表面からはぎ取られる。スパンボンド用スピナレットの表面がこうして急激に洗浄される。その結果、汚染物は、最終的に製造されたスパンボンド不織布上にあるか、または場合によってはその中に含有される。それが搬送方向に沿って運ばれ、製造速度で製品と一緒に巻き上げられる。
【0048】
本発明によれば、例えば0.1mから6mの範囲の長さを有する、単列間隙スピナレット(米国特許第3825380号)、多列ニードルスピナレット(米国特許第4380570号)、または好ましくは上述したカラムスピナレット(国際出願公開第2019/068764号)を洗浄することができる。
【0049】
本発明に係る方法は、カラムスピナレットの洗浄に特に適していることが分かっている。
【0050】
スパンボンド用スピナレットあたりのセルロースのスループットは、5kg/h/mスピナレット長さから500kg/h/mスピナレット長さの範囲であり得る。
【0051】
紡糸液中のセルロース含有量は、4%から17%まで、好ましくは5%から15%まで、より好ましくは6%から14%の範囲であり得る。
【0052】
ガス流の温度は、20℃から200℃まで、好ましくは60℃から160℃まで、より好ましくは80℃から140℃の範囲であり得る。
【0053】
ガス流圧力は0.05バールから5バールまで、好ましくは0.1バールから3バールまで、より好ましくは0.2バールから1バールの範囲であり得る。
【0054】
有機溶剤は三級アミンオキシド、好ましくはN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)、またはイオン性液体であり得る。
【0055】
本発明に係る方法を実行するための本発明に係るデバイスは、セルロースを凝集させる水性流体をスパンボンド用スピナレットの表面上に適用するための少なくとも1つの噴霧ノズルを備える、噴霧デバイスを備える。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明に係るデバイスは、噴霧デバイスを所望の場所へと移動させるための少なくとも1つの位置決めデバイスによって特徴付けられる。
【0057】
製造プラントにおいて、本発明に係る少なくとも1つの洗浄用デバイスを各々有する複数のスパンボンド用スピナレットを、製造方向において直列に接続することができる。
【0058】
噴霧ノズルとしては、単一成分ノズルまたは多成分ノズル、より好ましくは二成分ノズルが使用され得る。
【0059】
例えば、セルロースを凝集させる水性流体として水、水性有機溶剤、または水蒸気を適用するために、単一成分ノズルが使用され得る。
【0060】
単一成分ノズルを動作させるために、少なくとも1つの液体ポンプ、または場合によっては1つの蒸気供給ラインが提供されるのが好ましい。
【0061】
単一成分ノズルの圧力は、1バールから50バールの範囲であり得る。このことにより、洗浄中に、噴霧の微細度、液体または場合によっては水蒸気の量、および勢いを調節することが可能になる。
【0062】
二成分ノズルは例えば、セルロースを凝集させる水性流体として、水または場合によっては水蒸気、および水性有機溶剤を適用するために使用され得る。
【0063】
二成分ノズルの圧力は好ましくは0.5バールから20バールの範囲とすることができ、流体側および気体側で変えることができる。このことにより、洗浄中に、噴霧の微細度、液体または場合によっては水蒸気の量、および勢いを調節することが可能になる。
【0064】
二成分ノズルを動作させるために、単一成分ノズルとは異なり、液体ラインに加えて、液体を霧化するための圧縮空気ラインが提供される。
【0065】
位置決めデバイスは直線状の軸棒、好ましくはレールとすることができ、その上で、噴霧ノズルをスパンボンド用スピナレットの長辺に沿って移動させることができるとともに、正確に位置付けることができる。
【0066】
本発明に係るデバイスは、洗浄効果を高めるために、位置決めデバイスによってスパンボンド用スピナレットの1つの長辺へと移動され得るが、好ましくは両長辺へと移動され得る。
【0067】
スパンボンド用スピナレットあたり1つまたは複数の位置決めデバイスが使用され得る。各位置決めデバイスは1つまたは複数の噴霧ノズルを制御する。
【0068】
位置決めデバイスによっていくつかの噴霧ノズルを制御することによって、かなり広い面積を同時に洗浄することができる。一実施形態では、スパンボンド用スピナレットに沿って長手側に沿って、噴霧ノズルを有する少なくとも1つの一続きのレールが位置付けられており、この場合、スパンボンド用スピナレットの全長が同時に洗浄され得る。
【0069】
位置決めデバイスによって、噴霧ノズルとスパンボンド用スピナレットの間の距離の調節が可能になり得る。
【0070】
位置決めデバイスによって、噴霧ノズルがスパンボンド用スピナレットに対して向けられる角度の変更が可能になり得る。
【0071】
位置決めデバイスは、少なくとも1つの電気モータによって動作させることができる。
【0072】
位置決めデバイスはリモート制御が可能である。
【0073】
好ましい実施形態では、本発明に係るデバイスは、汚染物を検出するための検出デバイスを更に備える。
【0074】
検出デバイスは、位置決めデバイス上にカメラを備えてもよい。上記カメラは、噴霧ノズルの隣に配置されてもよい。カメラを利用して、スパンボンド用スピナレットの表面が横断方向にチェックされ、これに基づき、汚染物に噴霧を行うのに適した位置に噴霧デバイスを移動させることができる。このことは、手動および自動の両方で行うことができる。
【0075】
スパンボンド用スピナレットごとに、少なくとも1つの本発明に係るデバイスが、各側に(製造の方向において、スパンボンド用スピナレットよりも上流に、またはスパンボンド用スピナレットよりも下流に、のいずれかで)配置されることが実現されるのが好ましい。
【0076】
デバイスがスパンボンド用スピナレットよりも製造の方向において上流に配置される場合、噴霧デバイスはスパンボンド用スピナレットに製造方向に噴霧を行う。デバイスがスパンボンド用スピナレットよりも製造の方向において下流に配置される場合、噴霧デバイスはスパンボンド用スピナレットに製造方向とは反対の方向に噴霧を行う。
【0077】
これら2つの変形形態の混合もまた可能である。
【0078】
特に好ましくは、デバイスは、電気的に調節可能な位置決めデバイスとカメラを備える検出デバイスとを利用して、汚染物を自動的に検出し、汚染物に噴霧を行うのに適した位置に噴霧ノズルを位置決めし、セルロースを凝集させる水性流体を短い間隔で噴霧してスパンボンド用スピナレットを洗浄するように、設計される。
【0079】
図面の詳細な説明
図1には、スパンボンド用スピナレット2の下にある本発明に係るデバイスの実施形態が側面
図1で示されており、スパンボンド用スピナレット2は、流入する高温空気13および急速に流出する高温の一次空気を利用して、紡糸液12からスパンボンド不織布フィラメント4を生成する。スパンボンド用スピナレット表面3は本発明に係るデバイス5によってチェックされ、必要であれば洗浄される。本発明に係るデバイスは、例えばカメラ6を利用して、汚染物を検出することができる。その後、位置決めデバイス7を利用して噴霧ノズル8をスパンボンド用スピナレットの汚染された表面へと移動させることができ、スパンボンド用スピナレットの表面を、セルロースを凝集させる水性流体9によって洗浄することができる。
【0080】
図2aは、位置決めデバイス7に少なくとも1つの噴霧ノズル8を取り付けることができ、それがスパンボンド用スピナレットに沿って横向きに移動可能であることを示す。
【0081】
図2bは、位置決めデバイス7に複数の噴霧ノズル8を取り付けることができることを示す。
【0082】
図3には、本発明に係る方法の実施形態が斜視図で示されており、この場合、本発明に係るデバイス5は、汚染10を洗浄するために、スパンボンド用スピナレット2の下で横方向に使用することができ、このときスパンボンド不織布11の製造は中断されない。
【0083】
図4には、本発明に係る方法の実施形態が側面図で示されており、この場合、複数のスパンボンド用スピナレット2が直列に接続されている。スパンボンド用スピナレット2ごとに、ある(本明細書に示されているケースでは、製造方向において見たときに常にスパンボンド用スピナレットよりも下流の)辺に対して、少なくとも1つの本発明に係るデバイス5が提供される。本明細書に示すケースでは、本発明に係る方法が実施されるとき、スパンボンド用スピナレットに、噴霧デバイスによって、製造の方向とは反対の方向に噴霧が行われる。
【0084】
図5は、セルローススパンボンド不織布の製造中にスパンボンド用スピナレットを洗浄するための、本発明に係る方法の好ましい実施形態であって、以下:
スパンボンド用スピナレットの表面の目視検査(14、ステップ(c)に相当する)
スパンボンド用スピナレットの表面上の汚染物の検出(15、ステップ(d)に相当する)
汚染物に噴霧を行うのに適した位置への噴霧デバイスの位置決め、および、セルロースを凝集させる水性流体による汚染物への噴霧(16、ステップ(e)および(a))
スパンボンド用スピナレットの表面上でのセルロースの凝結(17)
ガス流による汚染物の引き離しおよび運び去り(18、ステップ(b))
を含み、このときスパンボンド不織布の製造が好ましくは中断されない、本発明に係る方法の好ましい実施形態を、概略的に示す。ステップ18の後で、ステップ14から開始して、方法を繰り返すことができる。
【国際調査報告】