IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テンセント・テクノロジー・(シェンジェン)・カンパニー・リミテッドの特許一覧

特表2022-532469量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法、装置及びチップ並びにコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法、装置及びチップ並びにコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/00 20220101AFI20220708BHJP
   H03M 13/37 20060101ALI20220708BHJP
   G06F 11/08 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
G06N10/00
H03M13/37
G06F11/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553277
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2021073296
(87)【国際公開番号】W WO2021208555
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】202010296673.1
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514187420
【氏名又は名称】テンセント・テクノロジー・(シェンジェン)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジォン,イツォン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ションユィ
【テーマコード(参考)】
5J065
【Fターム(参考)】
5J065AB01
5J065AC04
5J065AD03
5J065AE02
5J065AF01
(57)【要約】
本出願は量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法、装置及びチップを開示し、人工知能及び量子技術分野に関する。前記方法は、量子回路のリアルエラー症候情報を取得し、該リアルエラー症候情報は量子誤り訂正符号を採用して量子回路に対してノイズ有りのエラー症候測定を行うことで得られる情報であり;リアルエラー症候情報に対して復号を行い、リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得し;及び、論理エラークラス及び完璧エラー症候情報に基づいて、量子回路のエラー結果情報を決定し、該エラー結果情報は、量子回路においてエラーが発生するデータ量子ビット及び対応するエラー類型を指示するために用いられることを含む。本出願はフォールトトレランス・誤り訂正・復号を1つの分類の問題と等価にすることを実現し得るため、効率的なニューラルネットワーク分類器を採用してエラー症候情報に対してフォールトトレランス・誤り訂正・復号を行うことが適切であり、これにより、フォールトトレランス・誤り訂正・復号の速度を上げ、リアルタイムなフォールトトレランス・誤り訂正・復号を実現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ装置が実行する、量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法であって、
量子回路のリアルエラー症候情報を取得するステップであって、前記リアルエラー症候情報は、量子誤り訂正符号を採用して前記量子回路に対してノイズ付きのエラー症候測定を行うことで得られる情報である、ステップ;
前記リアルエラー症候情報に対して復号を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得するステップであって、前記論理エラークラスは、前記量子回路に発生するエラーがマッピングされることで得られるクラスであり、前記完璧エラー症候情報は、前記量子回路に対してノイズ無しのエラー症候測定を行うことで得られる情報である、ステップ;及び
前記論理エラークラス及び前記完璧エラー症候情報に基づいて、前記量子回路のエラー結果情報を決定するステップであって、前記エラー結果情報は、前記量子回路においてエラーが発生するデータ量子ビット及び対応するエラー類型を指示するために用いられる、ステップを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記の、前記リアルエラー症候情報に対して復号を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得するステップは、
第一復号器を採用して前記リアルエラー症候情報に対して復号を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する前記論理エラークラスを得るステップであって、前記第一復号器は、前記論理エラークラスを決定するためのニューラルネットワーク分類器である、ステップ;及び
第二復号器を採用して前記リアルエラー症候情報に対して復号を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する前記完璧エラー症候情報を得るステップであって、前記第二復号器は、前記完璧エラー症候情報を決定するためのニューラルネットワーク分類器である、ステップを含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記の、第一復号器を採用して前記リアルエラー症候情報に対して復号を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する前記論理エラークラスを得るステップは、
前記第一復号器を採用して前記リアルエラー症候情報に対してブロック分けを行い、少なくとも2つのブロックを取得し、少なくとも2つの特徴抽出ユニットを採用して前記少なくとも2つのブロックに対して並列特徴抽出処理を行い、特徴情報を得るステップ;及び
前記第一復号器を採用して前記特徴情報に対して融合及び復号処理を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する前記論理エラークラスを得るステップを含む、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
前記の、第二復号器を採用して前記リアルエラー症候情報に対して復号を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する完璧エラー症候情報を得るステップは、
前記リアルエラー症候情報をそれぞれk個の前記第二復号器に入力し、k個の完璧エラー症候ビットを得るステップであって、kは正の整数であり、かつkは前記量子誤り訂正符号の尺度に関連している、ステップ;及び
前記k個の完璧エラー症候ビットを統合し、前記リアルエラー症候情報に対応する前記完璧エラー症候情報を得るステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、
前記第一復号器及び前記第二復号器の訓練過程は、
サンプル量子回路のデータエラー及び測定エラーに対してシミュレーションを行い、シミュレーション結果を得るステップであって、前記データエラーとは、前記サンプル量子回路のデータ量子ビット上で発生するエラーを指し、前記測定エラーとは、エラー症候測定過程で発生するエラーを指す、ステップ;
前記シミュレーション結果に基づいて前記サンプル量子回路のT回のエラー症候測定のエラー症候情報を得るステップであって、Tは1よりも多きい整数である、ステップ;
T回のエラー症候情報が目標時刻に投影される等価データエラー情報を決定するステップ;
前記等価データエラー情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を決定するステップ;
訓練サンプルを生成するステップであって、前記訓練サンプルのサンプルデータは前記T回のエラー症候情報を含み、前記訓練サンプルはラベルデータを含み、前記ラベルデータは前記等価データエラー情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を含む、ステップ;及び
前記訓練サンプルを採用して前記第一復号器及び前記第二復号器に対して訓練を行うステップを含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記の、サンプル量子回路のデータエラー及び測定エラーに対してシミュレーションを行うことは、
前記サンプル量子回路に含まれるデータ量子ビット上でエラーを確率的に生成するステップ;
前記サンプル量子回路に対応する補助量子ビット上でエラーを確率的に生成するステップであって、前記補助量子ビットは、前記サンプル量子回路のエラー症候情報を測定して取得するために用いられる、ステップ;
固有値測定回路に含まれる制御NOTゲート上でエラーを確率的に生成するステップであって、前記固有値測定回路は前記サンプル量子回路に対応し、前記固有値測定回路はスタビライザー生成元の固有値を測定するために用いられる、ステップ;及び
量子誤り訂正符号を採用して前記サンプル量子回路に対してエラー症候測定を行うときに測定エラーを確率的に生成するステップを含む、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、
前記の、サンプル量子回路のデータエラー及び測定エラーに対してシミュレーションを行うことは、
前記サンプル量子回路に対して量子プロセストモグラフィーを行い、前記サンプル量子回路のノイズモデルを抽出するステップであって、前記ノイズモデルは、シミュレーションにより前記データエラー及び前記測定エラーを生成するために用いられる、ステップ;及び
前記ノイズモデルに基づいて前記サンプル量子回路の量子状態のノイズ作用下の発展(Evolution)に対してシミュレーションを行うステップを含む、方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であって、
前記第一復号器及び前記第二復号器の訓練過程は、
サンプル量子回路に対してノイズ付きのエラー症候測定を行い、前記サンプル量子回路のエラー症候情報を得るステップ;
前記サンプル量子回路のエラー症候情報に対して他の復号器を用いて復号を行い、前記サンプル量子回路のエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を得るステップ;
訓練サンプルを生成するステップであって、前記訓練サンプルのサンプルデータは前記サンプル量子回路のエラー症候情報を含み、前記訓練サンプルはラベルデータを含み、前記ラベルデータは、前記サンプル量子回路のエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を含む、ステップ;及び
前記訓練サンプルを採用して前記第一復号器及び前記第二復号器に対して訓練を行うステップを含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記の、前記論理エラークラス及び前記完璧エラー症候情報に基づいて、前記量子回路のエラー結果情報を決定するステップは、
前記論理エラークラスに対応する第一エラー結果を得るステップ;
前記完璧エラー症候情報に対応する第二エラー結果を得るステップ;及び
前記第一エラー結果及び前記第二エラー結果に基づいて、前記量子回路の前記エラー結果情報を決定するステップを含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記の、前記論理エラークラスに対応する第一エラー結果を得るステップは、
前記論理エラークラスに含まれる要素のうちから、任意の1つの要素を前記第一エラー結果として選択するステップを含み。
前記論理エラークラスには少なくとも1つの等価のエラー要素が含まれる、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、
前記の、前記完璧エラー症候情報に対応する第二エラー結果を得るステップは、
マッピング表に対してのルックアップを行い、前記完璧エラー症候情報における各エラー症候点にそれぞれ対応するシンプルエラーを得るステップであって、前記マッピング表には、少なくとも1組のエラー症候点と、シンプルエラーとの間のマッピング関係が含まれる、ステップ;及び
各エラー症候点にそれぞれ対応するシンプルエラーの乗算を行い、前記第二エラー結果を得るステップを含む、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、
前記の、前記第一エラー結果及び前記第二エラー結果に基づいて、前記量子回路のエラー結果情報を決定するステップは、
前記第一エラー結果と前記第二エラー結果との積を決定し、前記量子回路のエラー結果情報を得るステップを含む、方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちの何れか1項に記載の方法であって、
前記の、前記論理エラークラス及び前記完璧エラー症候情報に基づいて、前記量子回路のエラー結果情報を決定するステップの後に、
前記エラー結果情報に基づいて誤り訂正制御信号を生成するステップであって、前記誤り訂正制御信号は、前記量子回路に発生したエラーを訂正するために用いられる、ステップ;及び
前記量子回路に前記誤り訂正制御信号を送信するステップをさらに含む、方法。
【請求項14】
量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号装置であって、
量子回路のリアルエラー症候情報を取得するための症候情報取得モジュールであって、前記リアルエラー症候情報は、量子誤り訂正符号を採用して前記量子回路に対してノイズ付きのエラー症候測定を行うことで得られる情報である、症候情報取得モジュール;
前記リアルエラー症候情報に対して復号を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得するための症候情報復号モジュールであって、前記論理エラークラスは、前記量子回路に発生するエラーがマッピングされることで得られるクラスであり、前記完璧エラー症候情報は、前記量子回路に対してノイズ無しのエラー症候測定を行うことで得られる情報である、症候情報復号モジュール;及び
前記論理エラークラス及び前記完璧エラー症候情報に基づいて、前記量子回路のエラー結果情報を決定するためのエラー結果決定モジュールであって、前記エラー結果情報は、前記量子回路においてエラーが発生するデータ量子ビット及び対応するエラー類型を指示するために用いられる、エラー結果決定モジュールを含む、装置。
【請求項15】
プログラマブルロジック回路及び/又はプログラム指令を含むチップであって、
前記チップはコンピュータ装置上で実行され、請求項1乃至13のうちの何れか1項に記載の量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法を実現するように構成される、チップ。
【請求項16】
コンピュータに、請求項1乃至13のうちの何れか1項に記載の量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年04月15日に中国専利局に出願した、出願番号が202010296673.1、発明の名称が「量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法、装置及びチップ」である中国特許出願に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。
【0002】
本発明は、人工知能及び量子技術分野に関し、特に、量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法、装置及びチップに関する。
【背景技術】
【0003】
量子ビットがノイズの影響を非常に受けやすいので、現在の技術から見ると、物理量子ビット上で量子計算を直接実現することは現実的でない。量子誤り訂正技術及びフォールトトレラント量子計算技術の発達により、原則として、ノイズ有り量子ビット上で任意の精度の量子計算を実現する可能性を提供している。
【0004】
量子誤り訂正符号(コード)を採用して量子回路のエラー症候を測定し、エラー症候情報を得た後に、復号アルゴリズムを採用して該エラー症候情報に対して復号を行い、量子回路においてエラーが発生したデータ量子ビット及び対応するエラー類型を決定することができる。エラー症候情報が完璧(perfect)な場合(即ち、エラー症候測定過程ではノイズがない場合)について、関連技術では、ニューラルネットワーク復号器を採用してエラー症候情報に対して復号を行い、対応するエラー結果情報を得ることが提案されている。
【0005】
しかし、リアルな場合、エラー症候情報は完璧なものではない(即ち、エラー症候測定過程ではノイズがある)。このような場合、エラー症候情報に対して如何にリアルタイムなフォールトトレランス・誤り訂正・復号を行うかは、今のところ、有効な解決案が未だに無い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の実施例は、少なくとも、量子回路のエラー症候情報が完璧でない場合、エラー症候情報に対してリアルタイムなフォールトトレランス・誤り訂正・復号を行うことを実現し得る量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法、装置及びチップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面によれば、本出願の実施例は、コンピュータ装置に応用される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法を提供し、前記方法は、
量子回路のリアルエラー症候情報を取得するステップであって、前記リアルエラー症候情報は、量子誤り訂正符号を採用して前記量子回路に対してノイズ付きのエラー症候測定を行うことで得られる情報である、ステップ;
前記リアルエラー症候情報に対して復号を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得するステップであって、前記論理エラークラスは、前記量子回路に発生するエラーをマッピングして得られるクラスであり、前記完璧エラー症候情報は、前記量子回路に対してノイズ無しのエラー症候測定を行うことで得られる情報である、ステップ;及び
前記論理エラークラス及び前記完璧エラー症候情報に基づいて、前記量子回路のエラー結果情報を決定するステップであって、前記エラー結果情報は、前記量子回路においてエラーが発生するデータ量子ビット及び対応するエラー類型を指示するために用いられる、ステップを含む。
【0008】
もう1つの側面によれば、本出願の実施例は、量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号装置を提供し、前記装置は、
量子回路のリアルエラー症候情報を取得するための症候情報取得モジュールであって、前記リアルエラー症候情報は、量子誤り訂正符号を採用して前記量子回路に対してノイズ付きのエラー症候測定を行うことで得られる情報である、症候情報取得モジュール;
前記リアルエラー症候情報に対して復号を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得するための症候情報復号モジュールであって、前記論理エラークラスは、前記量子回路に発生するエラーをマッピングして得られるクラスであり、前記完璧エラー症候情報は、前記量子回路に対してノイズ無しのエラー症候測定を行うことで得られる情報である、症候情報復号モジュール;及び
前記論理エラークラス及び前記完璧エラー症候情報に基づいて、前記量子回路のエラー結果情報を決定するためのエラー結果決定モジュールであって、前記エラー結果情報は、前記量子回路においてエラーが発生するデータ量子ビット及び対応するエラー類型を指示するために用いられる、エラー結果決定モジュールを含む。
【0009】
もう1つの側面によれば、本出願の実施例はコンピュータ装置を提供し、前記コンピュータ装置は処理器及び記憶器を含み、前記記憶器には少なくとも1つの指令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は指令セットが記憶されており、前記少なくとも1つの指令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は指令セットは、前記処理器によりロード及び実行されることで、上述の量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法を実現し得る。
【0010】
もう1つの側面によれば、本出願の実施例はコンピュータ可読記憶媒体を提供し、前記記憶媒体には少なくとも1つの指令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は指令セットが記憶されており、前記少なくとも1つの指令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は指令セットは、処理器によりロード及び実行されることで、上述の量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法を実現し得る。
【0011】
またもう1つの側面によれば、本出願の実施例はチップを提供し、前記チップはプログラマブルロジック回路及び/又はプログラム指令を含み、前記チップはコンピュータ装置上で実行され、上述の量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法を実現するために用いられる。
【0012】
他の側面によれば、本出願の実施例はコンピュータプログラムプロダクト又はコンピュータプログラムを提供し、該コンピュータプログラムプロダクト又はコンピュータプログラムはコンピュータ指令を含み、該コンピュータ指令はコンピュータ可読記憶媒体に記憶されている。コンピュータ装置の処理器により、コンピュータ可読記憶媒体から該コンピュータ指令を読み取り、処理器により該コンピュータ指令を実行することで、該コンピュータ装置に、上述の実施例のうちの任意の1つに記載の量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法を実行させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本出願の実施例により提供される技術案は、以下のような有利な効果を奏することができる。
【0014】
量子回路のリアルエラー症候情報に対して復号を行い、対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得し、その後、該論理エラークラス及び完璧エラー症候情報に基づいて、量子回路においてエラーが発生したデータ量子ビット及び対応するエラー類型を決定することで、量子回路のエラー症候情報が完璧でない場合、エラー症候情報に対してのフォールトトレランス・誤り訂正・復号を実現することができる。また、このような技術案は、フォールトトレランス・誤り訂正・復号を1つの分類の問題と等価にすることを実現し得るため、効率的なニューラルネットワーク分類器を採用してエラー症候情報に対してフォールトトレランス・誤り訂正・復号を行うことが適切であり、これにより、フォールトトレランス・誤り訂正・復号の速度を上げ、リアルタイムなフォールトトレランス・誤り訂正・復号を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本出願の実施例における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例を説明するに用いる必要のある図面について簡単に紹介する。明らかのように、以下の説明における図面は本出願の幾つかの実施例のみであり、当業者は、創造的労働をせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
図1】本出願の一実施例に示す表面コードの構成を示す図である。
図2】本出願の一実施例に示す表面コードエラーの発生を示す図である。
図3】本出願の一実施例により提供される技術案の適用シナリオを示す図である。
図4図3に示す技術案の適用シナリオに係るフォールトトレランス・誤り訂正・復号プロセスを示す図である。
図5】本出願の一実施例に示す単一症候点に対応するシンプルエラーを示す図である。
図6】本出願の一実施例に示す症候測定回路にノイズが含まれる場合のエラー症候分布を示す図である。
図7】本出願の一実施例に示す3次元症候分布を示す図である。
図8】本出願の一実施例に示すエラーの時空格子上のマッピングを示す図である。
図9】本出願の一実施例に示すエラー症候測定回路を示す図である。
図10】本出願の一実施例に示すホモロジークラスの判定を示す図である。
図11】本出願の一実施例により提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法のフローチャートである。
図12】本出願の一実施例に示すエラー症候情報の2次元データアレイを示す図である。
図13】本出願の一実施例に示すエラー症候情報の3次元データアレイを示す図である。
図14】本出願の一実施例に示す完璧エラー症候情報を示す図である。
図15】本出願のもう1つの実施例により提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法のフローチャートである。
図16】本出願のもう1つの実施例により提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法のフローチャートである。
図17】本出願の一実施例に示すフォールトトレランス・誤り訂正・復号プロセスを示す図である。
図18】本出願の一実施例に示す訓練データ生成プロセスのフローチャートである。
図19】本出願のもう1つの実施例に示す訓練データ生成プロセスのフローチャートである。
図20】本出願の一実施例に示すブロック特徴の抽出を示す図である。
図21】本出願のもう1つの実施例に示すブロック特徴の抽出を示す図である。
図22】本出願の一実施例により提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号装置のブロック図である。
図23】本出願のもう1つの実施例により提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号装置のブロック図である。
図24】本出願の一実施例により提供されるコンピュータ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願の目的、技術案及び利点をより明らかにするために、以下、図面と併せて本出願の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0017】
本出願の実施例を説明する前に、まず、本出願に係る幾つかの名詞(用語)を紹介する。
【0018】
1、量子計算(Quantum Computation,QC):量子状態の重ね合わせ及びもつれ(エンタングルメント)の性質を利用して特定の計算タスクを迅速に完了する方法である。
【0019】
2、量子テレポーテーション(Quantum Teleportation):分散量子エンタングルメント状態(distributed
quantum entanglement state)を利用して幾つかの古典情報を伝送する方式で、任意の未知量子状態を任意の距離まで伝送する技術である。
【0020】
3、量子誤り訂正(Quantum Error Correction,QEC):量子状態を量子多体系ヒルベルト空間における1つのサブ空間(部分空間)にマッピング(写像)して符号化する方式である。量子ノイズにより、符号化された量子状態を他のサブ空間に移すことができる。量子状態の所在する空間を持続観測すること(シンドローム(症候)抽出)により、符号化された量子状態を干渉することなく、量子ノイズを評価及び訂正し得るため、符号化された量子状態を量子ノイズの干渉から保護することができる。具体的に言えば、1つの量子誤り訂正符号
【数1】
が、n個の物理量子ビットのうちk個の論理量子ビットを符号化することを表す場合、それは、任意のシングル量子ビット上で発生する任意の
【数2】
個のエラーを訂正するために用いられる。
【0021】
4、データ量子状態:量子計算時に量子情報を格納するためのデータ量子ビットの量子状態である。
【0022】
5、スタビライザー生成元(stabilizer generator):パリティチェック演算子とも呼ばれる。量子ノイズ(エラー)の発生により幾つかのスタビライザー生成元の固有値を変えることができるため、これらの情報に基づいて量子誤り訂正を行うことができる。
【0023】
6、スタビライザー群(stabilizer group):スタビライザー群は、スタビライザー生成元により生成される群である。k個のスタビライザー生成元があれば、スタビライザー群には2k個の要素が含まれ、これは1つの可換群(Abelian group)である。
【0024】
7、エラー症候(error syndrome):エラーがないときに、スタビライザー生成元の固有値は0であり、量子ノイズが発生したときに、幾つかの誤り訂正符号のスタビライザー生成元(パリティチェック演算子)の固有値は1に変えることができる。これらの0及び1の症候ビットからなるビット列はエラー症候と称される。
【0025】
8、症候測定回路:チェック回路とも呼ばれ、エラー症候を得るための量子回路である。通常の場合、該回路自体もノイズで汚染される場合がある。
【0026】
9、トポロジカル量子誤り訂正符号(topological quantum code):量子誤り訂正符号のうちの特殊カテゴリーである。このような誤り訂正符号の量子ビットは2次元よりも大きい格子アレイ(lattice array)に分布している。格子は1つの高次元マニホールドの離散的構造を構成する。このとき、誤り訂正符号のスタビライザー生成元は、幾何学的近隣でかつ有限な量子ビット上に定義され、すべて、幾何学的にローカライズされており、かつ測定されやすい。このような誤り訂正符号の論理演算子が作用する量子ビットは、格子アレイのマニホールド上で1種のノントリビアルトポロジー(nontrivial topology)の幾何学的オブジェクトを構成する。
【0027】
10、表面コード(surface code):表面コードは、2次元マニホールド上で定義される1種のトポロジカル量子誤り訂正符号である。そのスタビライザー生成元は、通常、4つの量子ビットによりサポートされ(境界のところでは2つの量子ビットによりサポートされる)、論理演算子はストリップ状のクロスアレイのノントリビアルチェーンである。表面コードの具体的な2次元構成(5×5であり、トータルで25個のデータ量子ビット及び24個の補助量子ビットがあり、2つの量子ビット上で発生する任意のエラーを訂正することができる)は図1に示すとおりであり、即ち、白い円11は量子計算を行うためのデータ量子ビットを表し、黒い円12は補助量子ビットを表す。補助量子ビットは、最初に、
【数3】
又は
【数4】
状態で準備(prepare)される。斜線充填13及び白色充填14のスクエア(又は半円)は2つの異なる類型のスタビライザー生成元を表し、それぞれ、Zエラー及びXエラーを検出するために用いられる。本出願では、図1に示すような回転表面コード(rotated surface code)を使用し、なぜなら、それは約半分の物理量子ビットを節約することできため、最近の実験でより便利に検証し得るからである。
【0028】
11、表面コード尺度L:表面コードアレイの周長の4分の1である。図1における表面コードアレイの場合、L=5である。
【0029】
12、スタビライザー符号:1組のスタビライザー生成元により定義される量子誤り訂正符号である。スタビライザー生成元は、互いに可換であり、かつn個の量子ビットに独立して作用する1組のパウリ演算子である。この組のパウリ演算子の共通固有値が+1である固有サブ空間は、スタビライザー符号の符号化空間である。
【0030】
13、ホモロジークラス(homology class):トポロジーにおいて、ホモロジー論におけるホモロジークラスは、境界が0である幾何学的サブオブジェクトの有限線形結合により表される。このような線形結合の幾何学的オブジェクトは、次元数が1よりも大きい幾何学的オブジェクトの境界と見なされ得る場合、“0”(ここでの0とは、トポロジーの意味上のトリビアルクラスを指し、点に連続して収縮し得る幾何学的オブジェクトである)と同一(ホモロジー)であると見なすことができる。以下、“エラークラス”と混用する場合がある。
【0031】
14、X及びZエラー:物理量子ビットの量子状態で、ランダムに生成されたパウリX及びパウリZの発展(Evolution)によって引き起こされるエラーである。量子誤り訂正の理論によれば、誤り訂正符号は、X及びZエラーを訂正することができれば、単一量子ビット上で発生する任意のエラーを訂正することができる。
【0032】
15、フォールトトレラント量子誤り訂正(Fault Tolerant Quantum Error Correction,FTQEC):リアルな量子計算におけるすべての操作過程(量子ゲート及び量子測定を含む)においてノイズが付いており、言い換えれば、量子誤り訂正を行うのための回路自体もノイズを含み得る。フォールトトレラント量子誤り訂正とは、誤り訂正回路を巧みに設計することにより、ノイズ付きの誤り訂正回路を使用して誤り訂正を行うことができ、かつ依然としてエラーの訂正、及び時間の経過に伴うエラー拡散の阻止の目的を達成し得ることを指す。
【0033】
16、フォールトトレラント量子計算(Fault Tolerant Quantum Computation,FTQC):即ち、量子誤り訂正保護有りの量子計算である。量子計算の過程では、量子誤り訂正回路自体や量子ビット測定などのあらゆる物理操作にノイズが含まれる。フォールトトレラント量子計算は、量子誤り訂正スキームを合理的に設計し、また、符号化された論理量子状態に対して特定方式のゲート操作を行う方法により、ノイズ付き量子ビットを使用して量子計算を行う過程でエラーを効果的に制御及び訂正し得るように保証する技術的解決策である。
【0034】
17、物理量子ビット:リアルな物理デバイスを用いて実現する量子ビットである
18、論理量子ビット:誤り訂正符号により定義されるヒルベルトサブ空間における数学的自由度である。その量子状態の記述は、通常、多体エンタングルメント状態であり、一般的には、複数の物理量子ビットとヒルベルト空間がジョイントされた2次元サブ空間である。フォールトトレラント量子計算は、誤り訂正符号により保護される論理量子ビット上で実行される必要がある。
【0035】
19、物理量子ゲート/回路:物理量子ビットに作用する量子ゲート/回路である。
【0036】
20、論理量子ゲート/回路:論理量子ビットに作用する量子ゲート/回路である。
【0037】
21、データエラー:データ量子ビット上で発生するエラーである。
【0038】
22、測定エラー:測定過程の不完璧によって生成されるエラーである。
【0039】
23、閾値定理(threshold theorem):フォールトトレラント量子計算の要件を満たす計算スキームについて、すべての操作のエラー率が或る閾値よりも低いときに、より良い誤り訂正符号、より多くの量子ビット、及びより多くの量子操作を使用することにより、計算される正確率が1に近づくようにさせることができると同時に、これらの追加のリソースオーバーヘッドは量子計算の指数関数的な加速に比べて無視されても良い。
【0040】
24、ニューラルネットワーク:人工ニューラルネットワークは適応型非線形動的システムであり、大量の簡単な基本要素、即ち、ニューロンが相互に接続されることで構成される。各ニューロンの構成及び機能が比較的簡単であるが、大量のニューロンの組み合わせによって生成されるシステムの動作は非常に複雑であり、原則として、任意の関数を表すことができる。
【0041】
本出願の技術案は量子技術及び人工知能技術分野に関する。人工知能(Artificial Intelligence,AI)はデジタルコンピュータ又はデジタルコンピュータにより制御される機器を利用して人間の智能をシミュレーション、延伸及び拡張し、環境を感知し、知識を取得し、そして、知識を使用して最適な結果を得る理論、方法、技術及び応用システムである。
【0042】
人工知能技術は、ハードウェアレベルの技術とソフトウェアレベルの技術の両方を含む幅広い分野をカバーする包括的なサブジェクトである。
【0043】
機器学習(Machine Learning、ML)はマルチ分野のインタークロスサブジェクトであり、確率理論、統計学、近似理論、凸解析、アルゴリズム複雑性理論などの複数のサブジェクトを含む。コンピュータがどのように人間の学習行動をシミュレーション又は実現して新しい知識又はスキルを取得し、そして、既存の知識構成を再編成してそれ自身のパフォーマンスを継続的に改善するかの研究を専門とする。機器学習は人工知能の中核であり、コンピュータに智能を持たせる基本的な仕方であり、その応用は人工知能のすべての分野をカバーしている。機器学習及び深層学習は、通常、人工ニューラルネットワーク、信頼ネットワーク、強化学習、転移学習、帰納法的学習、ティーチング学習などの技術を含む。
【0044】
人工知能技術の研究及び進歩に伴い、人工知能技術は複数の分野で研究及び応用が展開されており、例えば、一般的なスマートホーム、スマートウェアラブルデバイス、仮想アシスタント、スマートスピーカー、スマートマーケティング、無人運転、自律運転、ドローン、ロボティクス、インテリジェント医療、インテリジェントカスタマーサービスなどである。技術の発展に伴い、人工知能技術はより多くの分野で適用され、ますます重要な価値を発揮し得ると考えられる。
【0045】
本出願の実施例により提供される技術案は、人工知能の機器学習技術の量子技術分野における応用に関し、特に、機器学習技術の量子誤り訂正符号の復号化アルゴリズムにおける応用に関する。具体的には、以下の実施例に基づいて説明を行う。
【0046】
1つの誤り訂正符号として、エラーが発生した後に、パリティチェックによりエラー症候を得ることができる。その後、これらの症候に基づいて、誤り訂正符号に対しての具体的な復号アルゴリズムによってエラー発生の位置及び類型(Xエラーであるか、それとも、Zエラーであるか、あるいは、両方があるか、即ち、Yエラーであるか)を判断する。表面コードについて言えば、エラー及びエラー症候は具体的な空間位置を有するのである。症候を引き起こすエラーがあるときに、対応位置の補助量子ビットの固有値は1であり(該位置で1つの点粒子が出現したと見なしても良い)、エラーがないときに、対応位置の補助量子ビットの固有値は0である。復号過程は次のように要約することができ、即ち、1つの空間数字アレイ(2次元又は3次元であり、値は0又は1である)を与え、特定のエラー発生モデル(error model)に基づいて、どの量子ビットのエラー発生可能性が最も高いか、及び具体的なエラー類型を推論し、そして、この推論結果に基づいてエラー訂正を行う。
【0047】
図2は、表面コードエラーの発生を示す図である。図2に示すように、量子ビットは2次元アレイの辺(エッジ)にあり、エラー症候を測定する補助量子ビットは2次元アレイのノードにある(これらの症候は完璧な測定によるものである)。図2では、黒い色の辺21は、エラー発生の量子ビットが形成するエラーチェーンを表し、斜線充填の円部分22は、エラーによる症候値が1である点を表す。点状症候によりチェーン状エラーを決定することができれば、復号を完了することができる。
【0048】
上述したように、量子誤り訂正符号の復号アルゴリズム(復号器とも言う)を採用してエラー症候情報に対して復号を行うことで、対応するエラー結果情報、例えば、エラー発生の位置及び類型を得ることができる。エラー症候情報が完璧である場合(測定過程ではノイズが無い場合)、ニューラルネットワークに基づいて構築された復号器(ニューラルネットワーク復号器とも言う)を使用してエラー症候情報に対して復号を行うことで、対応するエラー結果情報を得ることができる。復号プロセス自体が1つの入出力関数であるので、ニューラルネットワークを生成し、そして、正確な入出力結果を用いて、ニューラルネットワークがエラーの位置及び類型の正確な判断を学習(教師有り学習)し得るように訓練することができる。ニューラルネットワーク復号器の出力のタイプの違いに基づいて次のように2種類に分けることができ、即ち、1つは物理レベルであり、もう1つは論理レベルである。物理レベルで出力するモデルは、エラーが発生する具体的な量子ビット情報、即ち、具体的にどの量子ビット上で何の類型のエラーが発生したかを直接生成する。論理レベルで出力するモデルが出力するのは、1つの具体的なエラーに対して特定のマッピングを行った後の論理エラークラス(表面コードについて言えば、ホモロジークラスである)であり、その後、この論理エラークラスに基づいて、量子ビット上で具体的に発生する等価エラーを逆推定する(このように推定されたエラーは必ずしも元のエラーと完全に同じではないが、生成する効果は同様であり、これは量子誤り訂正符号特有のエラー縮退(degeneracy)現象である)。論理レベルでの誤り訂正は、症候が完璧な(測定過程ではノイズがない)場合、ホモロジークラスの分類の問題に同等であり、ニューラルネットワークが教師有り学習訓練を経た後の推論による分類に適しているが、フォールトトレラント誤り訂正の問題に完全に適していない。比較的に良く用いられているニューラルネットワーク復号アルゴリズムは、全連通(全結合)ネットワーク、CNN(Convolutional Neural Network,畳み込みニューラルネットワーク)、RNN(Recurrent Neural Network,リカレントニューラルネットワーク)などを使用する。ニューラルネットワークの演算はほとんど行列演算であり、高度に並列化することができ、また、特定のハードウェア(例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array,フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit,特定用途向け集積回路)上でかなり短いリアルタイム計算時間で実行されるのに非常に適している。
【0049】
エラー症候情報が完璧でない場合(ノイズ有り症候測定とも言い、測定過程でエラーが発生する可能性がある場合を指す)、ニューラルネットワーク復号器を用いて復号を行うことにより、エラー症候情報に対してのフォールトトレランス・誤り訂正・復号を実現し得ることも望ましい。
【0050】
本出願では、1つの厳密な数学的フレームワークを構築し、フォールトトレランス・誤り訂正・復号の問題を複数の分類の問題にリダクション(reduction)し、そして、如何に分類結果に基づいてエラー発生の位置及び類型をポジショニング(特定)するかの技術案を与える。これらの分類の問題は同時に並列して実行することができ、かつ消費時間はほぼ同じであるので、大きいな遅延が発生することはない。この理論フレームワークをもとに、ニューラルネットワーク復号器(入力されるエラー症候情報は3次元データアレイである)を用いてフォールトトレラント誤り訂正時に復号を行う具体なプロトコルを提案し、誤り訂正のフォールトトレランスを証明している。
【0051】
図3を参照する。それは、本出願の一実施例により提供される技術案の適用シナリオを示す図である。図3に示すように、該適用シナリオは超伝導量子計算プラットフォームであっても良く、該適用シナリオは量子回路31、希釈冷凍機32、制御装置33及びコンピュータ34を含む。
【0052】
量子回路31は物理量子ビットに作用する回路であり、量子回路31は量子チップ、例えば、絶対零度近傍にある超伝導量子チップとして実現され得る。希釈冷凍機32は超伝導量子チップに絶対零度の環境を提供するために用いられる。
【0053】
制御装置33は量子回路31を制御するために用いられ、コンピュータ34は制御装置33を制御するために用いられる。例えば、書かれた量子プログラムがコンピュータ34におけるソフトウェアによって指令にコンパイルされ、該指令が制御装置33に送信されることで、制御装置33はこの指令を電子/マイクロ波制御信号に変換して希釈冷凍機32に入力し、10mKにある超伝導量子ビットを制御する。なお、読み取りプロセスはそれとは逆である。
【0054】
図4に示すように、本出願の実施例により提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法は、制御装置33と組み合わせる必要があり、制御装置33の全体制御システム33a(例えば、中央ボードFPGA)が量子回路31からエラー症候情報を測定した後に、全体制御システム33aは誤り訂正指令を制御装置33の誤り訂正モジュール33bに送信し、該誤り訂正指令には上述の量子回路31のエラー症候情報が含まれ、誤り訂正モジュール33bはFPGA又はASICチップであって良く、誤り訂正モジュール33bはフォールトトレランス・誤り訂正・復号アルゴリズムを実行することにより、エラー症候情報に対して復号を行い、そして、リアルタイムに、復号により得たエラー結果情報を誤り訂正制御信号に変換し、量子回路31に送信してエラー訂正を行ってもらう。
【0055】
エラー症候情報に対して復号を行うときに、ニューラルネットワーク復号器(ニューラルネットワーク分類器とも言う)を採用してエラー症候情報に対して復号を行うことができる。本出願により提供されるフォールトトレランス・誤り訂正・復号のフレームワークプロトコルによれば、実際の状況に応じて適切なニューラルネットワーク分類器を自由に選択してフォールトトレランス・誤り訂正・復号を完了することができる。
【0056】
以下の説明を容易にするために、ここで、まず、症候が完璧な場合の最優な復号アルゴリズムを紹介する。1つの誤り訂正符号として、エラーが発生した後に、パリティチェックを行うことによりエラー症候(syndrome)を得ることができる。エラー症候に基づいて、誤り訂正符号に対しての具体的な復号アルゴリズムにより、エラー発生の位置及び類型を判断する。言い換えれば、復号過程は次のようなことと同等であり、即ち、1つのエラー発生モデル(量子ビット上で発生するエラーの確率分布)及び一回の完璧な症候測定により得られた症候を与え、発生の可能性が最も高いエラーが何であるかを推論する。ノイズ無しエラー症候について、最大事後確率(Maximum A Posterior、MAP)推定アルゴリズムが存在し、それは同時に最優なアルゴリズムでもある。MAPアルゴリズムは、本出願によるフォールトトレランス・誤り訂正・復号フレームワークの出発点である。
【0057】
Sが量子誤り訂正符号
【数5】
のスタビライザー群(stabilizer group)であると定義し、LがSのn桁のパウリ群における或る規範的サブクラスであると定義する。任意に発生するパウリエラーEについて、それは
【数6】
に分解され得る。
【0058】
ここで、L(E)∈Lであり、即ち、L(E)は或る規範的サブクラスLに属し、かつEの関数であり、S(E)はエラーEの症候であり、エラー症候に基づいてマッピングすることにより得られた1つのエラーであり、そのうち、該マッピングすることにより1組のエラー集合が生成され、症候集合と一対一対応し、T(S(E))は、シンプル誤り訂正(simple decoding)と称され、このエラー集合における要素はシンプルエラー(simple
error)と称される。T(S(E))の選択は非常に任意である。もう1つのエラーE’について、E及びE’が同様のエラー症候を有する場合、
【数7】
である。
【0059】
L(E’)及びL(E)がともに同一の規範的サブクラスLに属する場合、この2つのエラーは1つのスタビライザー群における要素のみが異なり、言い換えれば、それらの符号化空間に対する作用は等価である。そのため、E’を選んでEに対して誤り訂正を行い(即ち、現実に発生するエラーがEであるが、両者が等価であるから、実際にはE’に基づいて誤り訂正を行うことができる)、同様の効果を得ることができる。表面コードを代表とするトポロジカル量子誤り訂正符号について言えば、異なる規範的サブクラスLは、演算子が異なるトポロジカルホモロジークラスに属することを表す。トポロジカル誤り訂正符号について、以下、“ホモロジークラス”又は“エラークラス”などの名詞を用いて規範的サブクラスを表す。なお、ホモロジークラスに属するエラーは何れのエラー症候をも生成することができない(エラー症候はすべて0である)。よって、このタイプのエラーは論理エラーと等価である。その理由は、ホモロジークラスのエラーにより、数学上、論理エラーになることにある。論理エラーが符号化空間で発生し、それに対して症候測定を行った結果はすべて0である。
【0060】
このように、発生したエラーEを与えると、MAP復号器の推論過程は以下のように記述することができる。
【数8】
つまり、シンプルエラーを除去した後に、エラーがどの規範的サブクラス(normalizer class)に属する可能性が一番高いかを判定すれば良く、その後、該クラス内の任意の要素を選んでシンプル復号器の出力のエラーに乗算することで、訂正する必要のあるエラーを得ることができる。表面コードについて言えば、規範的サブクラスに対応する3つのクラスは、論理量子ビットのX、Y及びZの3つの演算子及びそれらの等価演算子の集合である。高パフォーマンスのニューラルネットワーク分類器により効果的に解決することができる(近似最優解)。かなり高い正確率でホモロジークラス
【数9】
を推定した後に、エラー症候が完璧であるので、直ぐにシンプルエラーT(S(E))を得て
【数10】
内の任意の要素
【数11】
に乗算することで、訂正する必要のあるエラーを以下のように取得することができる。
【数12】
(この公式は“式1”と記される)
一般的な誤り訂正符号に比較して、表面コードのエラー及び症候は何れも幾何学的な意味を有し、表面コードについて言えば、誤り訂正プロセス自体のエラーを考慮しない場合、エラー症候情報は、0及び1からなる1つの2次元アレイ画像と見なすことができる。表面コードについて言えば、誤り訂正は、これらの症候の位置によりエラー発生の位置及び類型を判定することである。後続の記述の便宜のため、ここで、幾何学的な意味を有する1種のシンプル復号器を紹介し、“最小境界距離”復号器と称する。表面コードのパリティチェック演算子がそれぞれXエラー及びZエラーを検出及び測定し、また、この2つの類型のエラーが対称的であるから、そのうちの1つのみを考慮しても良く、Zエラーであると想定する。回転表面コードについて言えば、値が1である任意の1つの症候ビットは、1つのX演算子チェーン(エラーチェーン)により生成されるものと見なされ、かつ該チェーンは、症候点を2つの境界のうちの任意の1つに接続する。これらのチェーンのうち、境界までの距離が最も小さいものを取り、また、この症候点に対応するシンプルエラーを記録する。図5を参照する。それは、単一症候点に対応するシンプルエラーを示す図である。図5では、黒い丸51は、単一の値が1である症候ビットを表し、直線52は、X類型のシンプルエラーチェーンを表し、該エラーチェーンは、症候点を境界に接続する最短距離である。L×Lの回転表面コードの場合、X類型のエラーについて、値が1である(L2-1)/2個の症候に対してすべて“最小境界距離”復号器を使用して復号を行い、また、それに対応するシンプルエラーを
【数13】
として記録する必要がある。
【0061】
その後、症候
【数14】
を測定したときに、シンプル復号器の復号出力が
【数15】
であると定義し、即ち、症候ビットが1であるすべてのシンプルエラーの積である。同様に、Z類型のエラーについても、値が1である(L2-1)/2個の症候に対してすべて“最小境界距離”復号器を用いて復号を行い、また、それに対応するシンプルエラーを記録する必要がある。最終的には、(L2-1)組のマッピング関係を含む1つのマッピング表を構築し、各組のマッピング関係は、1つのエラー症候点と1つのシンプルエラーとの間のマッピング関係を含む。シンプル復号プロセスは並列実行することができ、実際には時間複雑度がO(1)であっても良い。
【0062】
リアルなシナリオにおける量子誤り訂正について、スタビライザー生成元に対してのすべての症候測定回路はノイズで干渉される可能性がある。
【0063】
図6は、症候測定回路にノイズが含まれる場合のエラー症候分布を示す図である。図6では、白い点61は、測定値が1でありかつ測定が正しいエラー症候を表し、黒い点62は、測定値が1でありかつ測定が正しくないエラー症候を表す。そのうち、左下隅の中心にある白色付きの黒い点63は、1が測定されるべきであったが、0が測定されたことを意味する。誤った症状点が1つしかない場合でも、壊滅的な結果を招き得るため、1つの不正確な症候点に基づいて復号及び誤り訂正を行うことは、非常に多くのエラーを引き起こし、直ぐに誤り訂正符号の誤り訂正能力を超えてしまうので、任意の1回の症候測定の結果を頼りにすることができない。それに対応して、複数回の症候測定を行う必要がある。フォールトトレラント誤り訂正の有効性を保証するために、T=O(L)回の測定のエラー症候情報を収集し、そして、これらの症候を利用してエラー発生の類型及び位置を推定し、誤り訂正を行う。
【0064】
図7は、1つの3次元症候分布を示す図であり、そのうち、縦方向は時間を表す。それは、0及び1からなる1つの3次元のデータアレイと見なされ得る。図7では、トータルで4つのスライス71が含まれ、各スライス71は1回の測定により取得されたエラー症候情報を表す。ライン72はZエラーによる症候を表し、ライン73はXエラーによる症候を表し、ライン74は測定エラーを表す。
【0065】
フォールトトレランスの場合、時空エラーの分布は、最終的に、1組の、或る時刻tiに発生する等価データエラー、及びtjからtj+1までの間に発生する等価測定エラーと同等になり得る。図8に示すように、値が1である症候点は3次元空間のチェーン(例えば、図8に示す斜線充填の線分81)を形成し、これらの線分の端点82を取ってMWPM(Minimum
Weight Perfect Matching,最小重み完全マッチング)接続を行えば、接続により形成されるエラーチェーンは、測定エラー及び異なる時間に発生するデータ量子ビットエラーを同時にポジショニング(特定)し、帰納して誤り訂正を行うことができる。図8に示すように、端点82を接続する点状充填線分83は発生のエラーを表し、そのうち、水平方向の点状充填線分83はデータエラーを表し、垂直方向の点状充填線分83は測定エラーを表す。MWPM復号器の作業に比較的長い時間がかかり、十分に並列化されたとしても、依然として、O(L6)の時間複雑度が要される。しかし、フォールトトレラント量子計算を行うときに、量子回路自体は、エラー類型をリアルタイムに変えることができるため、症候情報だけを頼りにして、異なる時空で発生するエラーを正確に追跡及びポジショニングすることができない。量子計算をスムーズに行い得るには、エラー症候を得た後に直ぐに復号を行い、量子アルゴリズムの各計算ステップの実行の前(又は、次のラウンドの誤り訂正の開始の前)に誤り訂正を完了しなければならず、これはリアルタイム誤り訂正と称され、リアルタイム誤り訂正は、量子誤り訂正符号の復号アルゴリズムの実行時間マージンに非常に厳しい要求を課すが、MWPM復号器は、リアルタイム誤り訂正の要求を満たすことができない。
【0066】
ニューラルネットワーク復号器を用いて量子誤り訂正復号を行う試みが行われる。ニューラルネットワーク復号器は論理エラークラス(ホモロジークラス)の分類に優れている。ここで、以下のように幾つかの問題が引き出される。
【0067】
1、1ラウンドのT=O(L)回の症候測定を行う前に、その前に発生したすべてのエラーをできるだけクリアする必要があり、このように、この1ラウンドのT=O(L)回の症候測定により得られるエラー症候情報は、1つ前の時空の残りのローカライズされたエラー、この時空においてデータ量子ビット上で発生したエラー、及び補助量子ビットに対してのエラー測定にのみ依存する。
【0068】
2、どの分類を実行するかを明確にする必要がある。エラー症候情報が完璧な場合、決定する必要があるのは、リアルエラーからシンプルエラーを除去した後に残されたエラーの属するホモロジークラスであり、即ち、症候に基づいて分類を行う。フォールトトレラント誤り訂正の場合、エラーが異なる期間で発生するが、量子状態に実際に影響を与えるのは、リアルデータエラーの最終時点での累積であり、即ち、誤り訂正開始前の合計エラーである。図8を例にとり、すべてのエラーのt7時刻での投影の合計が気になるので、1つの自然な選択は、すべての症候に基づいて、t7時刻での残りのすべての、データ量子ビット上で発生するエラーに対して分類を行うことである。
【0069】
3、最終的に如何にエラー位置を決定するかである。上述の式1に基づいて、最終時点でのエラーの属するホモロジークラスを決定したとしても、真に復号するには、依然として、信頼できるエラー症状が必要である。一旦、採用される症候点のうち1つの値が間違っていると、該間違っている症候点の値に対して、対応するエラーチェーンを採用するようになる。エラーチェーンがすべて非ローカルである(Lの増加に伴って増加する)ので、任意の不正確な症候ビットは、誤り訂正後に、リアルに発生したエラーを訂正することができないだけでなく、大量のエラーを導入することもできる。これらのエラーが迅速に蓄積され、最悪の場合、1ラウンドのこのような誤り訂正を経た後に、累積されたエラーの数は、かなり大きな確率で、表面コードの誤り訂正能力を超えるように多くなっており、このような誤り訂正プロセスは、エラーを訂正することができず、逆に、記憶されている量子状態を破壊することができる。
【0070】
4、異なるビット・測定エラーの時空分布のt7時刻での投影の合計は、同じ症候分布を生成する可能性がある。これらのエラーの互いの間に、ローカリゼーションが限られたという違いのみがあるにも関わらず、これらの最終的なエラーは、完全に異なるホモロジークラス及び症候を有する可能性がある。しかし、それらにより生成される3次元エラー症候分布は同じである。このように、ランダムに生成されるエラーを用いて最終時点に直接投影した後にホモロジークラスを抽出することで、エラー症候データに対応することができない(同一の入力訓練データは複数の異なるラベルに対応し得る)。
【0071】
上記の分析に基づいて、次の結論を導き出すことができる。
【0072】
1、分類情報を具体的に発生するエラーにマッピングするときに、単一時刻での信頼できない症候を頼りにすることができず、O(L3)時空全体の症候を頼りにする必要がある。
【0073】
2、3次元空間の症候を使用したとしても、この問題は依然として簡単なホモロジークラスの分類の問題に変換することができない。
【0074】
明らかのように、これは式1により記述することができず、上述の問題を解決するための新しい方法を提供する必要がある。
【0075】
まず、すべての類型のエラー及び症候の時空における関係を観察する。例示的に、2つの類型のエラーの症候測定回路がそれぞれ図9に示されている。そのうち、図9における(a)の部分は、Zエラーを検出及び測定する症候測定回路を示しており、図9における(b)の部分は、Xエラーを検出及び測定する症候測定回路を示している。この2つのタイプの回路は固定したものであり、そのうち、回路における任意の要素の時間及び対応するビットの順序を逆にすることはできない。
【0076】
この回路におけるすべての要素、例えば、
【数16】
及び
【数17】
の補助状態の準備、制御NOTゲート(control-not,CNOT)、量子ビット自身の記憶、及びエラー症候の測定(それぞれ、状態準備エラー、量子ゲートエラー、メモリエラー、及び測定エラーと定義される)は、すべて、ノイズの干渉を受け得る。分析を簡単にするために、制御NOTゲート、補助状態準備、補助状態測定などのすべてのノイズを回路の右端(図9では、白い矩形91で表される部分である)に等価に伝播させる。図9における(a)の部分に示す回路について言えば、この類型のノイズは、補助量子ビット上のみで等価Zエラーを生成することができ、同様に、図9における(b)の部分に示す回路について言えば、このタイプのノイズは、補助量子ビット上のみで等価Xエラーを生成することができる(これは、図9に示す回路の特殊なレイアウトによるものである)。図9に示す回路が採用されているから、X測定について言えば、Xエラーは影響を与えず、Zエラーのみは実際に影響を及ぼすことができる。同様に、Z測定について言えば、Zエラーは影響を及ばず、Xエラーのみは実際に影響を与えることができる。同時に、等価エラーとメモリエラー(図9では、黒い矩形92で表される部分である)を組み合わせて等価データエラーを構成し、等価エラーはノイズを含む測定回路のデータ量子ビット上でのものであり、メモリエラーは、次の1ラウンドの測定前のデータ量子ビット上でのものである。言い換えると、tiとti+1の時間層の間の症候値は、対応するのは等価データエラーと等価測定エラーの共同結果であると見なすことができ、等価データエラーがtiに発生するときに、等価測定エラーはtiとti+1の間に発生する、補助量子ビットに対しての測定エラーである。このように、図8に示す時空格子を用いてすべてのエラー及び症候履歴を表すことができる。
【0077】
以下、リアルエラー症候情報に対応するホモロジークラスのみを分類することによりフォールトトレラント量子誤り訂正を行い得ないこと、及び、リアルエラー症候情報に対応するホモロジークラスを用いて訓練データのラベル付けを行い得ないことについて説明する。例示的に、依然としてXエラーのみが考慮されるが、Zエラーについても同様である。図8に示す時空格子を例にとり、t6とt7の間のこのラウンドの症候測定が終了した後に、すべての症候の履歴を得てt0からt6までのすべての類型のエラーの情報を表すことができる。後述のように、誤り訂正過程が完全に正しい場合、原則として、この期間においてデータ量子ビット上で発生するすべての等価エラーの影響を除去することができる。しかし、t7に発生する等価データエラーについて、それらを表すための対応する症候が無いため、それらを後続の誤り訂正ステップために残す(これらのエラーは、自然に発生する独立したノイズによるものであるから、非ローカルエラーではなく、フォールトトレランスを破壊することがない)。同様に、t0に発生する等価エラーも、1つ前のラウンドのO(L)時間の誤り訂正から残されたローカルエラーと見なすことができる(他のエラーはすべて1つ前のラウンドの誤り訂正プロセスにより訂正されている)。言い換えれば、毎回選択されるエラー及び症候図に対応する時空格子は、1つの半開集合(時間の正方向に対しての境界は開である)である。
【0078】
そうすると、次のようなことを発見することができ、即ち、本当に訂正する必要があるのは、全体の半開集合時空マニホールド内で発生するすべての等価データエラーEDの最終的な累積、即ち、最終時点での投影である。一旦、時空におけるすべての等価エラー(例えば、図10に示す灰色のライン101)を与えると、すべての症候が決定されており(リアルなデータ量子ビット上で発生する等価エラーが反映されているかどうかにも関わらず)、これらの症候は、実験で測定し得るものでもある(図10の(a)の部分における黒いライン102)。まず、症状が完璧な場合を模倣してシンプル誤り訂正を行い、即ち、これらの症候の時空上の端点(図10における黒い端点103)を取り、その後、時空格子における各端点について、その属する時間層内で、端点を、値が1である症候点として“最小境界距離誤り訂正”アルゴリズムを実行することによりシンプルエラー(図10の(b)の部分における点線104)を取得し、そして、取得したすべてのシンプルエラーを組み合わせてESと定義する。そのうち、図10における灰色のライン101及び点線104は症候端点103をシェアし、様々な類型のエラーチェーンを形成することができる。ここで、以下のように3種類に分けて説明する。
【0079】
1、灰色のライン101及び点線104により構成されるエラーチェーンの開始点及び終了点はすべて同一の空間境界を有する。この場合、エラーチェーンがホモロジートリビアルクラス(又は“0”クラス)に属すると言い、この類型のエラーチェーン集合をτと定義し、このタイプのエラーチェーンにおけるすべての、データ量子ビットに作用するエラーをEτ,Dと定義する。
【0080】
2、灰色のライン101及び点線104により構成されるエラーチェーンは、1つの空間の1つの境界からもう1つの境界に連通して、トポロジカル・ノントリビアル・ホモロジー・クラス(non-trivial homology class)を形成する。このタイプのエラーチェーンの集合を
【数18】

と定義し、この類型のエラーチェーンにおけるすべての、データ量子ビットに作用するエラーを
【数19】
と定義する。
【0081】
3、灰色のライン101及び点線104により構成されるエラーチェーンは、一端が時空格子の時間の正方向の境界で終わり、もう1つの端が1つの空間の境界で終わる。この類型のエラーチェーンを“時空非閉エラーチェーン”と称し、このタイプのエラーチェーン集合をσと定義する。この類型のエラーチェーンにおけるすべての、データ量子ビットに作用するエラーをEσ,Dと定義する。なお、ここで、σは、最終時点より前に等価測定エラーが発生する可能性があるすべてのチェーンを含む。σタイプのエラーチェーンの存在(このタイプのエラーは、任意のシンプル復号器にとってすべて存在する)が原因で、シンプル誤り訂正を経た後に、フォールトトレラント誤り訂正の復号は、簡単な3次元空間のホモロジークラスの分類の問題にマージすることができず、何故なら、Eσ,Dチェーン自体は時空における閉チェーンでないからである。よって、Eσ,Dチェーンを除去した後に、再び空間上のホモロジークラスを計算することができる。
【0082】
エラー時空図が時間の正方向に対して半開であるため、最終時点より前に発生する測定エラー(シンプル復号後にσタイプのエラーチェーンを引き起こす)は、問題の複雑さを大幅に増大させてしまう。ここでの主な問題は以下のとおりである。
【0083】
1、異なるホモロジークラスを生成するエラーは同じ症候を生成することができる。例えば、最終時点より前に同じ症候は、等価測定エラーによるものである可能性があり、等価データエラーによるものである可能性もある。これらの異なるエラーは、異なるホモロジークラスを有し得る。ランダムにエラーを生成する方式を用いて訓練データを生成し、ホモロジークラスを算出し、そして、これらのデータを、入力される3次元症候に対応するラベルとして使用する場合、各症候は、各種の異なるラベルに対応し得る(かつ、各ラベルの発生確率はすべて1桁にある)。このように、これらのデータを用いて、1つのニューラルネットワークモデルがホモロジークラスの分類を学習し得るように訓練することができない。
【0084】
2、ランダムに生成されるエラーのデータを強制的に使用して分類を行う場合、該エラーのホモロジークラス及び完璧エラー症候を同時に使用する必要があり、トータルでL2個のパラメータがあり、かつ特定の入力症候についてこのL2個のパラメータを固定する必要がある。このように、異なるラベルの潜在的な数は
【数20】

になる。明らかのように、これほど多くのラベルを使用することは非現実的である。
【0085】
3、同時に、最終エラーの完璧症候も必要である。ホモロジークラスと同様に、異なる最終エラーは異なる完璧症候を有するが、同じ3次元症候を生成することができる。よって、最終には、それが関心のある最終的なエラー症状情報を学習し得るように訓練することができない。
【0086】
最終時刻での測定により得られたエラー症候情報が完璧なエラー症候情報であると仮定し、これに基づいて、ニューラルネットワーク復号器の訓練データセットを生成する場合、データラベルの不一致性の問題は存在しなくなる。このようなやり方には一定の合理性があり、即ち、量子状態の記憶のみを行う場合、データ量子ビットのエラー位置及び類型をリアルタイムに知る必要がない。最終的に状態を読み取るときに、完璧なものであると仮定することができる。しかし、このように訓練されたニューラルネットワーク復号器は、量子計算におけるリアルタイムな誤り訂正復号の問題を処理することができず(量子計算は幾つかのステップの前に直ぐにエラーの発生位置及び類型を知り、訂正を行う必要があるからである)、かつ実際に量子計算に用いることができない。
【0087】
図11を参照する。それは、本出願の一実施例により提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法のフローチャートを示しており、該方法が図3に示す適用シナリオにおける制御装置に応用されることを例にとり、該方法は以下のようなステップを含んでおも良い。
【0088】
ステップ1101:量子回路のリアルエラー症候情報を取得し、該リアルエラー症候情報は、量子誤り訂正符号を採用して量子回路に対してノイズ付きのエラー症候測定を行うことによって得られた情報である。
【0089】
量子誤り訂正符号を採用して量子回路に対してエラー症候測定を行うことにより、対応するエラー症候情報を得ることができ、該エラー症候情報は、量子誤り訂正符号のスタビライザー生成元の固有値により構成されるデータアレイである。オプションとして、エラー症候情報は、0及び1からなる2次元又は3次元のデータアレイである。例えば、エラーが無いときに、スタビライザー生成元の固有値は0であり、エラーが発生したときに、スタビライザー生成元の固有値は1である。リアルなシナリオにおいて量子誤り訂正符号を採用して量子回路に対してエラー症候測定を行うときにノイズが有り、即ち、測定エラーが存在するので、ここでのリアルエラー症候情報とは、リアルなシナリオにおいて測定することによって得られたノイズ有りのエラー症候情報を指す。
【0090】
量子誤り訂正符号が表面コードであることを例にとり、表面コードについて言えば、エラー及びエラー症候は具体的な空間位置を有し、症候を引き起こすエラーが存在するときに、対応位置の補助量子ビットの固有値は1であり、エラーがないときに、対応位置の補助量子ビットの固有値は0である。よって、表面コードについて言えば、誤り訂正プロセス自体のエラーが考慮されない(即ち、測定過程が完璧なものである)場合、エラー症候情報は、0及び1からなる1つの2次元データアレイと見なすことができる。例示的に、図12を参照することができ、それは、エラー症候情報の1つの2次元データアレイ121を示す図であり、そのうち、0は、エラーが無いことを示し、1は、エラーが存在することを示す。
【0091】
また、フォールトトレラント誤り訂正の有効性を保証するために、取得されるリアルエラー症候情報はT個のデータアレイを含み、各データアレイは、量子誤り訂正符号を採用して量子回路に対して1回のノイズ有りのエラー症候測定を行うことで得られるものであり、Tは1よりも大きい整数である。上述のように、T=O(L)であり、Lは量子誤り訂正符号の尺度である。このように、毎回のエラー症候測定により得られるリアルエラー症候情報は1つの(L+1)×(L+1)の2次元データアレイであっても良く(機械学習を容易にするために、各時刻の症候の境界が適切に拡張されている)、T回のエラー症候測定により得られるリアルエラー症候情報は、1つの(L+1)×(L+1)×Tの3次元データアレイを構成することができる。例示的に、図13を参照することができ、それはエラー症候情報の1つの3次元データアレイ131を示す図であり、そのうち、0は、エラーが無いことを示し、1は、エラーが存在することを示す。
【0092】
ステップ1102:リアルエラー症候情報に対して復号を行い、リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得する。
【0093】
論理エラークラスは、量子回路に発生したエラーがマッピングされた後のクラスである。論理エラークラスはホモロジークラスと称されても良く、I、X、Y及びZの4種類を含む。ここで、Iは、エラーがないことを示し、Xは、Xエラーを表し、Zは、Zエラーを表し、Yは、Xエラー及びZエラーの両方が存在することを表す。各論理エラークラスには、少なくとも1つの等価エラー要素が含まれる。オプションとして、各論理エラークラスには、複数の等価エラー要素が含まれる。論理エラークラスIにおける要素は、スタビライザー群における要素である。論理エラークラスXにおける要素は、論理X演算子にそれぞれスタビライザー群における各要素を乗算した後に得られた要素集合である。論理エラークラスYにおける要素は、論理Y演算子にそれぞれスタビライザー群における各要素を乗算した後に得られた要素集合である。論理エラークラスZにおける要素は、論理Z演算子にそれぞれスタビライザー群における各要素を乗算した後に得られた要素集合である。同一の論理エラークラスに属する各要素は等価である。例示的に、リアルに発生するエラーE及びもう1つエラーE’が同じ論理エラークラスに属する場合、エラーEに対して誤り訂正を行うこととエラーE’に対して誤り訂正を行うことは等価であり、同様の効果を得ることができる。
【0094】
完璧エラー症候情報とは、量子回路に対してノイズ無しのエラー症候測定を行うことにより得られた情報を指す。本出願の実施例では、リアルエラー症候情報に対して復号を行うことは、対応する論理エラークラスを得る必要がある以外に、対応する完璧エラー症候情報を得る必要もある。このようにして、上述した式1に従って最終的に量子回路のエラー結果情報を決定することができる。例示的に、図14を参照することができ、それは1つの完璧エラー症候情報を示す図である。図14では、黒い丸141はデータ量子ビットを表し、十字142は、補助量子ビットを表し、補助量子ビット上で発生するエラーは完璧症候測定に影響を及ばず、各エラーは図中でX、Y及びZで示されている。
【0095】
また、ニューラルネットワーク復号器を採用してリアルエラー症候情報に対して復号を行っても良く、他の適切な復号器を採用しても良いが、本出願の実施例はこれについて限定しない。ニューラルネットワーク復号器は、ニューラルネットワークに基づいて構築される、エラー症候情報に対して復号を行うための機器学習モデルである。ニューラルネットワーク復号器を用いてリアルエラー症候情報に対して復号を行う場合、該ニューラルネットワーク復号器の入力データはリアルエラー症候情報を含み、出力データはリアルエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を含む。また、復号することにより論理エラークラスを得るためのニューラルネットワーク復号器と、復号することにより完璧エラー症候情報を得るためのニューラルネットワーク復号器とは、同じであっても良く、又は、異なるニューラルネットワーク復号器であっても良い。
【0096】
例示的な実施例において、図15に示すように、上述のステップ1102は以下のようなステップ1102a及び1102bにより代替的に実現され得る。
【0097】
ステップ1102a:第一復号器を採用してリアルエラー症候情報に対して復号を行い、リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラスを取得し、該第一復号器は、論理エラークラスを決定するためのニューラルネットワーク分類器である。
【0098】
本出願の実施例では、訓練済みの第一復号器により、リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラスを予測し得る。幾つかの実施例において、第一復号器は1つあり、第一復号器は1つの4分類モデルであり、その出力は4つの論理エラークラス、即ち、I、X、Y及びZを含む。第一復号器は全連通ネットワーク、CNN、RNN又は他のニューラルネットワークに基づいて構成される分類モデルであっても良いが、本出願の実施例はこれについて限定しない。
【0099】
幾つかの実施例において、第一復号器を採用してリアルエラー症候情報に対してブロック分けを行い、少なくとも2つのブロックを取得する。少なくとも2つの特徴抽出ユニットを採用して少なくとも2つのブロックに対して並列特徴抽出処理を行い、特徴情報を取得する。そして、第一復号器を採用して特徴情報に対して融合及び復号処理を行い、リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラスを取得する。
【0100】
ステップ1102b:第二復号器を採用してリアルエラー症候情報に対して復号を行い、リアルエラー症候情報に対応する完璧エラー症候情報を取得し、該第二復号器は、完璧エラー症候情報を決定するためのニューラルネットワーク分類器である。
【0101】
本出願の実施例では、訓練済みの第二復号器によりリアルエラー症候情報に対応する完璧エラー症候情報を予測し得る。幾つかの実施例において、第二復号器は1つ又は複数ある。オプションとして、第二復号器の数はkであり、kは正の整数であり、かつkは量子誤り訂正符号の尺度に関連している。量子誤り訂正符号がスタビライザー符号であり、かつその尺度がLであるとする場合、第二復号器の数はk=L2-1である。このような場合、第二復号器は1つの2分類モデルであっても良く、その出力は2つの分類する必要のあるエラー症候値、即ち、0及び1を含み、そのうち、0は、エラーが無いことを示し、1は、エラーが有ることを表す。
【0102】
なお、上述のステップ1102a及び1102bは順次実行されても良く、並列実行されても良いが、両者が並列実行されるときには、フローの実行時間を短縮することができる。リアルタイムなフォールトトレランス・誤り訂正・復号を実現するために、できるだけ多くの装置や適切な通信接続を選択することにより並列実行を完了する必要がある。
【0103】
例示的な実施例において、図16に示すように、上述のステップ1102bは以下のようなステップにより代替的に実現され得る。
【0104】
ステップ1102b-1:リアルエラー症候情報をそれぞれk個の第二復号器に入力し、k個の完璧エラー症候ビットを取得し;
ステップ1102b-2:k個の完璧エラー症候ビットを統合し、リアルエラー症候情報に対応する完璧エラー症候情報を取得する。
【0105】
各第二復号器は、1つの症候測定位置の完璧エラー症候ビットを出力して得るために用いられる。k個の第二復号器の出力結果を統合することにより、すべての症候測定位置の完璧エラー症候ビット、即ち、リアルエラー症候情報に対応する完璧エラー症候情報を得ることができる。
【0106】
図17に示すように、リアルエラー症候情報に対応する3次元データアレイ171がそれぞれ第一復号器172及び各第二復号器173に入力されることで、第一復号器172はリアルエラー症候情報に対応する論理エラークラス174を出力し、第二復号器173は完璧エラー症候ビットを出力し、各第二復号器173が出力する完璧エラー症候ビットを統合することにより、リアルエラー症候情報に対応する完璧エラー症候情報175を取得し、最後には、論理エラークラス174及び完璧エラー症候情報175に基づいて、量子回路のエラー結果情報176を決定する。
【0107】
また、第二復号器は全連通ネットワーク、CNN、RNN又は他のニューラルネットワークに基づいて構築される分類モデルであっても良いが、本出願の実施例はこれについて限定しない。
【0108】
上述の第一復号器及び各第二復号器のモデル構成は同じであっても良く、異なっても良いが、最大の並列化を達成するには、モデルの深さを可能な限り一致にする必要がある。
【0109】
ステップ1103:論理エラークラス及び完璧エラー症候情報に基づいて、量子回路のエラー結果情報を決定し、該エラー結果情報は、量子回路においてエラーが発生するデータ量子ビット及び対応するエラー類型を指示するために用いられる。
【0110】
上述した式1と併せて、論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を得た後に、該完璧エラー症候情報に基づいて対応するシンプルエラーを決定することができ、その後、該シンプルエラーを論理エラークラスにおける任意1つの要素に乗算することで、訂正する必要のあるエラー、即ち、量子回路のエラー結果情報を取得することができる。
【0111】
量子回路のエラー結果情報に基づいて、量子回路においてエラーが発生するデータ量子ビット及び対応するエラー類型を決定することができる。例えば、量子回路においてエラーが発生するデータ量子ビットの位置、及び該位置でエラーが発生するデータ量子ビットのエラー類型、例えば、Xエラー、Zエラー又はYエラーを決定することができる。
【0112】
例示的な実施例において、図15に示すように、上述のステップ1103は以下のようなステップ1103a、ステップ1103b及びステップ1103cにより代替的に実現され得る。
【0113】
ステップ1103a:論理エラークラスに対応する第一エラー結果を取得する。
【0114】
例示的な実施例において、図16に示すように、上述のステップ1103aは以下のようなステップにより代替的に実現され得る。
【0115】
ステップ1103a-1:論理エラークラスに含まれる要素のうちから、任意の1つの要素を第一エラー結果として選択し、そのうち、論理エラークラスには少なくとも1つの等価のエラー要素が含まれる。
【0116】
例えば、復号により得られたリアルエラー症候情報に対応する論理エラークラスがXである場合、該論理エラークラスXに含まれる各エラー要素のうちから、任意の1つの要素を第一エラー結果として選択する。
【0117】
ステップ1103b:完璧エラー症候情報に対応する第二エラー結果を取得する。
【0118】
復号によりリアルエラー症候情報に対応する完璧エラー症候情報を得た後に、シンプル復号器を採用して該完璧エラー症候情報に対応する第二エラー結果を取得することができる。
【0119】
例示的な実施例において、図16に示すように、上述のステップ1103bは以下のようなステップにより代替的に実現され得る。
【0120】
ステップ1103b-1:マッピング表をルックアップし、完璧エラー症候情報における各エラー症候点にそれぞれ対応するシンプルエラーを取得し、そのうち、マッピング表には、少なくとも1組のエラー症候点と、シンプルエラーとの間のマッピング関係が含まれ;
ステップ1103b-2:各エラー症候点にそれぞれ対応するシンプルエラーの乗算を行い、第二エラー結果を取得する。
【0121】
ステップ1103c:第一エラー結果及び第二エラー結果に基づいて、量子回路のエラー結果情報を決定する。
【0122】
例示的な実施例において、図16に示すように、上述のステップ1103cは以下のようなステップにより代替的に実現され得る。
【0123】
ステップ1103c-1:第一エラー結果と第二エラー結果の積を決定し、量子回路のエラー結果情報を取得する。
【0124】
なお、上述の方式で論理エラークラスを逆推定することにより得られたのは、データ量子ビット上で発生する等価エラーであり、このように推定されたエラーは必ずしも元のエラーと同じではないが、効果は同様である(又はエラーの相違はローカライズされる)。
【0125】
また、上述のステップ1103a及び1103bは順次実行されても良く、並列実行されても良いが、両者が並列実行されるときには、フローの実行時間を短縮することができる。
【0126】
オプションとして、図16に示すように、量子回路のエラー結果情報が決定された後に、以下のようなステップがされに実行されても良い。
【0127】
ステップ1104:エラー結果情報に基いて誤り訂正制御信号を生成し、誤り訂正制御信号は、量子回路に生成するエラーを訂正するために用いられ;
ステップ1105:量子回路に誤り訂正制御信号を送信する。
【0128】
オプションとして、該誤り訂正制御信号はマイクロ波制御信号であっても良く、電子制御信号であっても良く、又は他の形式の制御信号であっても良いが、本出願の実施例はこれについて限定しない。量子回路に該誤り訂正制御信号を送信し、量子回路に、該誤り訂正制御信号に基いてその発生したデータ量子ビットエラーに対して訂正を行わせることにより、リアルタイム誤り訂正の目的を達成することができる。
【0129】
要約すると、本出願の実施例により提供される技術案は、量子回路のリアルエラー症候情報に対して復号を行い、対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得し、その後、該論理エラークラス及び完璧エラー症候情報に基いて、量子回路においてエラーが発生するデータ量子ビット及び対応するエラー類型を決定することにより、量子回路のエラー症候情報が完璧でない場合、エラー症候情報に対してのフォールトトレランス・誤り訂正・復号を実現することができる。
【0130】
また、このようなスキームは、フォールトトレランス・誤り訂正・復号を1つの分類問題と同等にすることを実現し得るため、効率的なニューラルネットワーク分類器を採用してエラー症候情報に対してフォールトトレランス・誤り訂正・復号を行うことが適切であり、これにより、フォールトトレランス・誤り訂正・復号の速度を上げ、リアルタイムなフォールトトレランス・誤り訂正・復号を実現することができる。適切なニューラルネットワーク分類器を選択すれば、復号アルゴリズムの速度を大幅に上げ、リアルタイムなフォールトトレランス・誤り訂正・復号の実現への道を開くことができる。
【0131】
以上の実施例では、ニューラルネットワークを使用してフォールトトレランス・誤り訂正・復号を行うフレームワークが与えられた。以下、第一復号器及び前記第二復号器の訓練過程について説明する。
【0132】
ランダムに生成されるエラー(メモリ、状態準備、量子ゲート、測定などのエラー)を使用して、訓練に適したサンプルを生成することができないため、1つのマッピングが要される。このマッピングは、3次元のエラー症候情報を或るエラーと一対一対応させる(即ち、各サンプル)。このエラーは、リアルエラーの最終マッピングに完全に等価である必要がなく、任意に生成される3次元症候分布の最終エラーとの相違がローカライズされれば良い。ローカライズ(ローカライゼーション)とは、マッピングにより得られたエラーと、リアルエラーとの相違の数がnである場合、このような相違の発生確率はO(pn)であることを指し、pは、ほぼ、各種の物理エラーの発生確率である。このように、各3次元のエラー症候情報は、すべて、1つのみの明確なエラーの対応があり、つまり、唯一の明確な論理エラークラス及び完璧エラー症候である。同時に、このエラーを得るための計算時間が許容され得ることも必要である(少なくともLの指数関数的に上昇しない)。何故なら、訓練の過程でこのようなマッピングを呼び出してデータにラベル付けする必要があるからである。
【0133】
これらの条件を自然に満たすマッピングは例えば、3次元空間を使用するMWPMアルゴリズム又は深層強化学習アルゴリズムなどのフォールトトレラント復号アルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、データエラー及び測定エラーの時空分布を与えている。該マッピングにより得られた推定エラーに対して最終時点において投影を行い、その後、該推定最終エラーに対応する論理エラークラス及び該推定最終エラーに対応する完璧エラー症候を計算することができ、これらはすべて訓練ラベルであり、その後、論理エラークラス及び取得された各完璧エラー症候ビットについてすべて1つのニューラルネットワークモデルを設定する。尺度がLである表面コードを例にとり、1つの論理エラークラス及びL2-1個の完璧エラー症候ビットが有り得る。よって、論理エラークラスの学習について1つのモデル(即ち、上述した第一復号器)をバインドし、その後、L2-1個の症候についてそれぞれL2-1個のモデル(即ち、上述した第二復号器)をバインドする(例えば、座標が(i,j)である完璧エラー症候ビットについてモデルMi,jをバインドする)。このように、トータルでL2個のモデルを訓練する必要がある。
【0134】
上記の説明と組み合わせて、モデルの訓練データセットは、シミュレーションの方式で生成することができ、リアルな実験データを取集することで得ることもできる。
【0135】
1つの可能な実現方式において、シミュレーションの方式で訓練データセットを生成する。図18に示すように、該プロセスは以下のようなステップを含んでも良い。
【0136】
ステップ181:サンプル量子回路のデータエラー及び測定エラーに対してシミュレーションを行い、シミュレーション結果を取得する。
【0137】
データエラーとは、サンプル量子回路のデータ量子ビット上で発生するエラーを指し、測定エラーとは、エラー症候測定過程で発生するエラーを指す。データエラーは上述のメモリエラーである。測定エラーは上述の状態準備エラー、量子ゲートエラー及び測定エラーを含んでもい。
【0138】
ステップ182:シミュレーション結果に基いてサンプル量子回路のT回のエラー症候測定のエラー症候情報を取得し、Tは1よりも大きい整数である。
【0139】
サンプル量子回路に対してT回のエラー症候測定を行い、T回のエラー症候情報を取得する。尺度がLである表面コードについて、2種類のパリティチェックの結果から結合される1つの2次元のT×(L+1)×(L+1)の0と1のアレイを得ることができる。
【0140】
ステップ183:T回のエラー症候情報が目標(ターゲット)時刻に投影される等価データエラー情報を決定する。
【0141】
等価データエラー情報及び等価測定エラー情報の時空における位置が異なるので、図8に示すように、等価データエラー情報は水平線であり、等価測定エラー情報は垂直線である。よって、エラー症候情報に対して目標時刻において投影を行うことにより、等価エラー情報から等価データエラー情報を容易に抽出することができる。
【0142】
ステップ184:等価データエラー情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を決定し;
ステップ185:訓練サンプルを生成し、訓練サンプルのサンプルデータはT回のエラー症候情報を含み、訓練サンプルのラベルデータは等価データエラー情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を含み;
ステップ186:訓練サンプルを用いて第一復号器及び第二復号器に対して訓練を行う。
【0143】
1つの例において、図18に示すように、上述のステップ181は以下のようなサブステップ181a乃至181dを含んでも良い。
【0144】
ステップ181a:サンプル量子回路に含まれるデータ量子ビット上で確率的にエラーを生成する。例えば、各データ量子ビットについて、パリティチェック開始前に、確率pを用いて各量子ビット上でX、Y又はZエラー(メモリノイズ)を生成する。例えば、確率pを以ってサンプル量子回路の各データ量子ビット上でX又はY又はZエラーを生成することは、具体的には、標準の乱数生成方法を用いて、[0,1]の間に均一分布する乱数をサンプリングし、[0,p/3]にある場合、Xエラーと設定し、[p/3,2p/3]にある場合、Yエラーと設定し、[2p/3,p]にある場合、Xエラーと設定し、[p,1]にある場合、I(即ち、エラー無し)と設定する。
【0145】
ステップ181b:サンプル量子回路に対応する補助量子ビット上で確率的にエラーを生成し、該補助量子ビットはサンプル量子回路のエラー症候情報を測定し得るために用いられる。例えば、
【数21】

(又は
【数22】
)状態にあるように準備された補助量子ビットについて、確率pを以って1つのX又はZエラー(状態準備ノイズ)を生成する。
【0146】
ステップ181c:固有値測定回路に含まれる制御NOTゲート上で確率的にエラーを生成し、固有値測定回路はサンプル量子回路に対応し、該固有値測定回路はスタビライザー生成元の固有値を測定するために用いられる。例えば、固有値測定回路の中の各制御NOTゲートについて、確率pで15個の双パウリ演算子(IX、IY、IZ、XI、YI、ZI、XX、XY、XZ、YX、YY、YZ、ZX、ZY及びZZを含む)のうちの1つのエラー(量子ゲートノイズ)を生成する。
【0147】
ステップ181d:量子誤り訂正符号を用いてサンプル量子回路に対してエラー症候測定を行うときに確率的に測定エラーを生成する。例えば、確率pでZ(X)測定前に1つのX(Z)エラー(測定ノイズ)を生成し、そのうち、Z(X)はXエラーのみがZ測定に影響し得ることを表し、X(Z)は、ZエラーのみがX測定に影響し得ることを表す。
【0148】
しかし、このようなノイズモデルは理想的過ぎる。もう1つの可能な実施方式において、先に、実験で量子ビットに対して量子プロセストモグラフィー(Quantum
Process Tomography、QPT)を行ってリアルなノイズモデルを抽出しても良い。これは、3つ以上の量子ビットのノイズの関連付けを無視することと同等である。このような関連付けがかなり強い場合、最初にすべきことは、実験でこのような関連付けを除去することである。何故なら、それらは量子誤り訂正に致命的な影響を与え得るからである。QPTを完了した後に、QPTに基いてMonte
Carlo(モンテカルロ)法を用いて、リアルな物理ノイズの量子状態に対する影響を直接シミュレーションすることができ、その後、理想的なパリティチェックを行い、症候及びエラーのホモロジークラスを抽出することによりラベルデータを取得する。そのうち、QPTのリソースの消費が多過ぎるため、最大でも幾何学的に隣接する2つの量子ビットにQPTを作用することに限られる。このようにすることの欠点は、尺度がかなり大きい表面コード(例えば、L>10の表面コード)に対してシミュレーションを行い得ないことにある。何故なら、これは、完全な量子力学シミュレーション(full quantum simulation)を要し、計算の複雑度がかなり高いからである。
【0149】
もう1つの例において、図18に示すように、上述のステップ181は以下のようなサブステップ181h及び181iを含んで良い。
【0150】
ステップ181h:サンプル量子回路に対して量子プロセストモグラフィーを行い、サンプル量子回路のノイズモデルを抽出し、該ノイズモデルは、シミュレーションによるデータエラー及び測定エラーの生成のために用いられ;
ステップ181i:ノイズモデルに基づいて、サンプル量子回路の量子状態のノイズ作用下の発展(Evolution)に対してシミュレーションを行う。
【0151】
このような方式を採用する場合、まず、実験で量子ビットに対して量子プロセストモグラフィーを行い、メモリノイズ、状態準備ノイズ、量子ゲートノイズ及び測定ノイズの精確な数学的記述を抽出し、その後、量子状態のノイズ作用下の発展(Evolution)に対してシミュレーションを直接行い、症候及びラベルを生成することができる。
【0152】
以上、シミュレーションの方式で訓練データセットを生成することについて説明した。1番目の訓練データ生成方式では、理想的なノイズモデルによりエラーのシミュレーションを行うことで訓練データを生成し、2番目の訓練データ生成方式では、量子プロセストモグラフィーを採用してリアルなノイズモデルを抽出し、その後、該リアルなノイズモデルを用いてリアルな物理ノイズのサンプル量子回路への影響をシミュレーションすることで訓練データを生成する。
【0153】
もう1つの可能な実現方式において、リアルな実験データを収集することで訓練データセットを取得する。図19に示すように、該プロセスは以下のような幾つかのステップ(191~194)を含んでも良い。
【0154】
ステップ191:サンプル量子回路に対してノイズ有りのエラー症候測定を行い、サンプル量子回路のエラー症候情報を取得し;
ステップ192:サンプル量子回路のエラー症候情報に対して他の復号器を用いて復号を行い、サンプル量子回路のエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得し;
ステップ193:訓練サンプルを生成し、訓練サンプルのサンプルデータはサンプル量子回路のエラー症候情報を含み、訓練サンプルはラベルデータを含み、ラベルデータはサンプル量子回路のエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を含み;
ステップ194:訓練サンプルを採用して第一復号器及び第二復号器に対して訓練を行う。
【0155】
上述の他の復号器は、量子誤り訂正復号能力を有する任意の復号器であっても良い。1つの例において、他の復号器は深度強化学習復号器を採用しても良く、深度強化学習復号器が採用するのは教師無しの訓練方式であるので、リアルな実験データを収集することで深度強化学習復号器に対して訓練を行い、それがリアルエラー症候情報と、対応する論理エラークラス及び対応する完璧エラー症候情報との間の関係を学習し得るようにさせることができる。その後、訓練済みの該深度強化学習復号器により、リアルエラー症候情報に基いてサンプルデータを生成することができる。
【0156】
また、ニューラルネットワーク復号器の訓練は、標準のニューラルネットワーク訓練方式に従う。オプションとして、交差エントロピー(cross entropy)を目標関数とし、ランダム勾配降下(stochastic
gradient decent)アルゴリズムを用いて訓練を行う。一般的な場合、ADAM(Adaptive Moment Estimation,適応モーメント推定)アルゴリズムを使用することで、より良いパフォーマンスを得ることができる。訓練サンプルの数は100万から3000万であり、学習レート(learning rate)は1e-5乃至1e-2の区間を取り、学習モメンタ(momentum)は1e-4乃至1e-6を取る。実験によれば、上記のハイパーパラメータの設定の下で、pytorch 1.2で満足の訓練結果を取得し得ることが分かった。
【0157】
以上、訓練データセットを生成する幾つかの方式を紹介した。シミュレーションを採用する方式はよりシンプルで効率的であり、リアルな実験データの収集を採用する方式は、強化学習を行う必要があるため、かかる時間が比較的長いが、このような方式により生成されるサンプルデータはより現実的でよりリアルである。実際の応用では、実際のニーズに応じて適切な方式を選択して訓練データセットを生成することができるが、本出願の実施例はこれについて限定しない。
【0158】
例示的な実施例において、ニューラルネットワーク復号器(上述した第一復号器及び第二復号器を含む)は、エラー症候情報に対して特徴抽出を行うときに、分割して個別対応するというアイデアを使用し、ブロック特徴抽出方式を採用する。いわゆるブロック特徴抽出とは、ニューラルネットワーク復号器の特徴抽出層が特徴情報を抽出するときに、入力データに対してブロック分けを行い、複数のスモールブロックに分け、そして、各スモールブロックに対してそれぞれ特徴抽出を行うことを指す。即ち、ブロック特徴抽出とは、入力データに対してブロック分けを行って少なくとも2つのブロックを得た後に、少なくとも2つの特徴抽出ユニットを採用して該少なくとも2つのブロックに対して並列特徴抽出処理を行うことを指す。そのうち、少なくとも2つのブロックは少なくとも2つの特徴抽出ユニットと一対一対応し、各特徴抽出ユニットは1つのブロックに対して特徴抽出を行うために用いられる。また、上述の少なくとも2つのブロックは特徴抽出時に並列であるため、特徴抽出に必要な時間を短縮することができる。
【0159】
例示的に、完璧エラー症候を取得し得る場合を考慮しても良く、このような場合はモデルの有効性を検証することができる。復号の問題が1つの分類の問題と等価になり得るため、従来のニューラルネットワークを使用して異なる入力エラー症候を分類する試みを行うことができる。最も簡単なやり方では、1つの全連通ネットワークを使用し、それは、入力層(input layer)、中間隠れ層(hidden layers)及び出力層(output layer)からなる。出力層は、分類する必要のある4つのホモロジークラス(I,X,Y,Z)のみを含む。このようなネットワークは、復号する必要のある表面コードの尺度がますます大きくなるにつれて、含まれるパラメータの数が指数関数的に増加し、訓練の難しさ(必要なデータセット及び収斂(収束)速度)も指数関数的に上昇する。このようなことに対応するために、本出願では、分割して個別対応するという思想が提案され、ブロック特徴抽出方式が採用される。即ち、大きな表面コードを幾つかのスモールブロックに分解し、スモールブロックに対して“分類”(ここでの“分類”とは、特徴情報を抽出することを指す)を行い、そして、分類された情報(各クラスの確率)を1つ上の層に渡し、その後、1つ上の層は1つ下の層からの情報及び1つ上の層での等価エラー症候に基づいて再び該層の各エラークラスの発生確率を判断する。これを以って再帰処理を行い、表面コード全体のエラークラスの確率が最終的に集められた後に、分類及び誤り訂正を行う。
【0160】
例示的な実施例において、第一復号器について、それは、リアルエラー症候情報に対して復号を行うことで対応する論理エラークラスを得るときに、以下のようにブロック特徴抽出方式を採用することができる。
【0161】
1、第一復号器を採用してリアルエラー症候情報に対してブロック特徴抽出を行い、特徴情報を取得し;
2、第一復号器を採用して特徴情報に対して融合及び復号処理を行い、リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラスを取得する。
【0162】
例示的な実施例において、第二復号器について、それは、リアルエラー症候情報に対して復号を行うことで対応する完璧エラー症候ビットを得るときに、同様に、以下のようにブロック特徴抽出方式を採用することができる。
【0163】
1、第二復号器を採用してリアルエラー症候情報に対してブロック特徴抽出を行い、特徴情報を取得し;
2、第二復号器を採用して特徴情報に対して融合及び復号処理を行い、完璧エラー症候ビットを取得する。
【0164】
例示的な実施例において、ニューラルネットワーク復号器(上記の第一復号器及び第二復号器を含む)はm個のカスケード接続される特徴抽出層を含み、mは正の整数である。特徴抽出層は特徴抽出のためのニューラルネットワーク層である。上述のリアルエラー症候情報に対してブロック特徴抽出を行うステップは、m個の特徴抽出層によりリアルエラー症候情報に対してブロック特徴抽出を行い、特徴情報を得ることを含んでも良い。そのうち、1番目の特徴抽出層は、リアルエラー症候情報に対してブロック特徴抽出を行うために用いられ、i番目の特徴抽出層は、1つ前の特徴抽出層の特徴抽出結果に対してブロック特徴抽出を行うために用いられ、iは1よりも大きく、かつm以下の整数である。
【0165】
オプションとして、ニューラルネットワーク復号器はさらに複数のカスケード接続される特徴融合層を含み、特徴融合層は、特徴抽出層により抽出された特徴情報に対して融合及び復号処理を行うために用いられるニューラルネットワーク層である。
【0166】
畳み込みニューラルネットワークを例にとり、特徴抽出層は畳み込み層であり、特徴融合層は全連通層(全結合層)である。ニューラルネットワーク復号器は入力層、少なくとも1つの畳み込み層、少なくとも1つの全連通層及び出力層を含む。畳み込み層の数は通常、複数であり、全連通層の数も通常、複数である。図20に示すように、エラー症候情報201は、複数のデータユニットに分けられ、図20では、エラー症候情報が4×4のデータアレイであることを例にとり、それは、4つのデータユニットに分けれ(異なるデータユニットは図20において異なる充填方式により示されている)、各データユニットは2×2のサブアレイである。エラー症候情報201はニューラルネットワーク復号器202に入力される。ニューラルネットワーク復号器202の畳み込み層について、ブロック特徴抽出方式を採用し、異なるデータユニットは同時に1つの同じ畳み込みカーネルにより読み取られ、C個の特徴を読み取る必要がある場合、C個のこのような畳み込みカーネルが要される。そのうち、Cは畳み込み層に対応するチャネルの数である。尺度がLである1つの表面コードについて、毎回の畳み込みに対応するサブアレイの尺度がlであり、第一層は、1つのチャネルからC1(L)個のチャネルにマッピングする1つのl×lの畳み込みカーネルを要し、第二層は、C1(L)個のチャネルからC2(L)個のチャネルにマッピングする1つのl×lの畳み込みカーネルを要する。これに基づいて類推して、トータルで約log(L/l)層の畳み込みを要する。そのうち、チャネルの数は、調節が必要な1つのハイパーパラメータであり、Lに伴って増加する。最終的には、畳み込み層から、サイズが約O(Clog(L/l)(L))である1つのアレイを出力し、それを全連通層に入力し、その後、1つの全連通層を通過する度に、Ck(L)~O(L2)を選択する場合、全連通層の深さは約O(logL)であり、このように、サブアレイの尺度が比較的大きくても、比較的小さい深さのモデルを使用することができ、モデルの深さは徐々にO(logL)になる。Ck(L)~O(L2)を選択する場合、第k層から第k+1層までの畳み込みニューラルネットワークはO(L2)個のパラメータを含み、全部の畳み込み層の合計パラメータの数はO(L4logL)である。同様に、全連通層の合計パラメータもO(L4logL)個ある。なお、ここでサブアレイのサイズは、毎回の繰り込み(renormalization)にあたって異なる値を選択しても良い。また、このような増加方式は、明らかのように、指数関数でなく多項式によるものであり、つまり、このスキームはスケーラブルであり得る。
【0167】
エラー症候情報が1つの8×8のデータアレイであることを例にとり、16個の2×2のサブアレイに分割することができ、第一層の畳み込み層の畳み込みカーネルのサイズは2×2であり、該第一層の畳み込み層によりブロック特徴抽出を行うことで、1つの4×4の特徴データアレイを得ることができ、該4×4の特徴データアレイは4つの2×2のサブアレイに分割することができ、また、第二層の畳み込み層の畳み込みカーネルのサイズは2×2であり、該第二層の畳み込み層によりブロック特徴抽出を行うことで、1つの2×2の特徴データアレイを得ることができる。なお、エラー症候情報又は特徴データアレイに対してブロック分けを行うときに、分割された各サブアレイのサイズは同じであっても良く、異なっても良い。量子ビットエラー率が異なる場合、異なるサイズは原則としてメリットを来すことができるが、サイズが同じである場合は、操作が比較的簡単である。
【0168】
オプションとして、特徴抽出層がブロック特徴抽出を行うときに、任意の2つのブロックの間には共通部分がない。即ち、各層の特徴抽出について、すべてのサブアレイの間に通信が無く、畳み込みカーネルが作用する区域の間にも症候の共通部分がない。それらの特徴情報が収集された後に1つ下の層に集められたときにのみ、それらの情報は同時に加工され総合的に利用される。ここでの特徴抽出が必ずしも具体的な量子ビットエラー確率に対応せず、確率伝播(belief propagation)を行って周辺確率(marginal
probability)のアライメントを行う必要がないため、これは同時にアルゴリズムを簡素化し、より良いパフォーマンスを提供し得る可能性がある。
【0169】
例示的に、L=15を例にとってアルゴリズムについて説明を行う。ここで、トータルで2層の畳み込みがあり、即ち、第一層の畳み込みは4×4の畳み込みカーネルを使用し、1つのチャネルから500個のチャネルにマッピングすることができ、第二層の畳み込みカーネルのサイズは2×2であり、500個のチャネルから1000個のチャネルにマッピングすることができ、このときに、第二層のニューロンの数は4000である。その後、全連通ネットワークを用いてこの4000個のニューロンの値に対して分類を行い、即ち、第一層の全連通層は4000と1024個のニューロンを接続し、第二層の全連通層は1024と512個のニューロンを接続し、第三層の全連通層は512と128個のニューロンを接続し、第四層の全連通層は128から4つの(I、X、Y、Z)まで接続する。具体的なネットワークモデルのpytorchコードは以下のとおりであっても良い。
【0170】
from
torch import nn
class
CNN_2D(nn.Module):
def
__init__(self, input_size, output_size = 4):
self.input_size
= input_size
super(CNN_2D,
self).__init__()
self.conv1
= nn.Conv2D(15, 500, stride = 4, kernel_size = 4, padding = 0)
self.relu1
= nn.ReLU()
self.conv2
= nn.Conv2D(500, 1000, stride = 2, kernel_size = 2, padding = 0)
self.relu2
= nn.ReLU()
self.fc1
= nn.Linear(1000*2*2, 1024)
self.relu3
= nn.ReLU()
self.fc2
= nn.Linear(1024, 512)
self.relu4
= nn.ReLU()
self.fc3
= nn.Linear(512, 128)
self.relu5
= nn.ReLU()
self.fc4
= nn.Linear(128, 4)
def
forward(self, x):
x
= self.conv1(x)
x
= self.relu1(x)
x
= self.conv2(x)
x
= self.relu2(x)
x
= x.view(-1, 1000*2*2)
x
= self.c1(x)
x
= self.relu3(x)
x
= self.fc2(x)
x
= self.relu4(x)
x
= self.fc3(x)
x
= self.relu5(x)
x
= self.fc4(x)
上述の例から分かるように、簡単なReLU(Rectified Linear Units,ランプ関数)層を除いたら、ニューラルネットワーク全体の層の数は6であり(6層のみある)、非常に浅いニューラルネットワークである。
【0171】
例示的な実施例において、フォールトトレラント誤り訂正の有効性を保証するために、取得されるエラー症候情報はT個のデータアレイを含み、各データアレイは、量子誤り訂正符号を採用して目標量子回路に対して1回のエラー症候測定を行うことで得られるものであり、Tは1よりも大きい整数である。オプションとして、上述のように、T=O(L)である。
【0172】
このような場合、エラー症候情報を得た後に、該エラー症候情報を少なくとも2つのデータユニットに分割し、そのうち、1つのデータユニットはT個のデータアレイのうち同じ位置にあるT個のアレイユニットを含む。具体的なニューラルネットワークのアルゴリズムは図21に示すようであり、その構造は完璧症候の場合と非常に似ているが、異なるところもある。図21に示すように、エラー症候情報211は複数のデータユニットに分けられ、図21では、エラー症候情報が4×4×4のデータアレイであることを例にとり、それは4つのデータユニットに分けられ(異なるデータユニットは図21において異なる充填方式で示されている)、各データユニットは2×2×4のサブアレイである。エラー症候情報211はニューラルネットワーク復号器212に入力される。ニューラルネットワーク復号器212の畳み込み層について、ブロック特徴抽出方式を採用して特徴情報の抽出を行う。リアルタイム誤り訂正過程では、ホモロジークラスを分類する以外に、症候を分類する必要もある。重複を避けるために、ここでは、依然としてホモロジークラスに対する分類のみを例として示す。まず、第一層のCNNの入力チャネルがT層になる。次に、残りの各層のCNNの出力チャネルの数もO(L2)からにO(L3)に増加する。このように、最終復号器の深さは依然としてO(logL)であり、約O(L6logL)個のパラメータを要する。なお、ハードウェアを選んでアルゴリズムを実行するときに、これらのパラメータの格納及び各畳み込み層と全連通層の並列化のための十分な空間があるかを十分に考慮しなければならない。
【0173】
要約すると、本出願の実施例により提供される技術スキームは、量子回路のエラー症候情報に対してブロック特徴抽出を行い、複数組の特徴情報を取得し、その後、さらにこれらの複数組の特徴情報に対して融合及び復号処理を行い、エラー結果情報を取得することができる。ブロック特徴抽出の方式が採用されているため、入力データに対しての完全な特徴抽出に比べて、1つの側面において、毎回の特徴抽出により得られた特徴情報のチャネルの数を減少させることができるため、次の1回の特徴抽出のための入力データも減少し、これは、ニューラルネットワーク復号器における特徴抽出層の数を減少させ、ニューラルネットワーク復号器の深さを短くすることができ、また、ニューラルネットワーク復号器の深さが短くなり得るため、その復号時間もそれ相応に短縮され得る。
【0174】
もう1つの側面において、ブロック特徴抽出を行うときに、複数の特徴抽出ユニットを使用して複数のブロックに対して並列特徴抽出処理を行い、即ち、複数の特徴抽出ユニットは同期(同時とも言う)に特徴抽出処理を行うことができ、これも、特徴抽出に必要な時間を短くし、復号の時間を短縮することができる。最終的には、上述の2つの側面の両方によれば、ニューラルネットワーク復号器を採用して量子誤り訂正復号を行うときに、復号の時間が十分に短縮され、リアルタイム誤り訂正の要求を満たすことができる。
【0175】
また、ニューラルネットワーク復号器は、論理レベルでの出力を使用することで、その複雑度を下げ、復号の時間をさらに短縮することができる。
【0176】
なお、本出願では、説明の便宜のため、フォールトトレランス・誤り訂正・復号フレームワークにおいて1種の直観的なシンプル復号器が使用されている。実際には、任意のシンプル復号器が用いられても良く、かつ、原則として、すべてのシンプル復号器は等価である。スキームの説明では、回転表面コードが例とされているが、本出願は境界を有する他の表面コードに拡張することができる。エラー症候を修正し、LRU(Leakage Reduction Unit,リーケージリダクションユニット)を追加することで回路を抽出し、これにより、フォールトトレラント誤り訂正プロトコル全体がビットの状態リーケージを検出及び測定し得るようにさせることができる。その後、パフォーマンスが優れており、かつLRUを含む1つのフォールトトレラント誤り訂正プロトコルにより、ニューラルネットワークを訓練することができる。復号を行うときに、論理エラークラス及びエラー症候に対して分類を行うことで、状態リーケージを抑制し得るフォールトトレランス・誤り訂正・復号アルゴリズムを取得する。原則として、他の量子トポロジカル誤り訂正符号、例えば、高次元トーリックコード(high dimension toric code)、双曲線コード(hyperbolic
code)及びカラーコード(color code)に拡張することができる。しかし、他のトポロジカル誤り訂正符号を使用するときに、症候測定時(パリティチェック時)にone-shot又はflag qubitのような技術を使用する必要があり、これは、スキームの複雑性を増加させ、誤り訂正のパフォーマンスを低下させる可能性がある。本出願により提供されるフォールトトレランス・誤り訂正・復号フレームワークは、3次元離散アレイに対して有限分類を行う任意のニューラルネットワーク(CNN、RNNなどを含むが、これに限定されない)に適用することができ、違いは、異なるニューラルネットワークにより、復号のパフォーマンス及びリアルタイムな復号の時間が異なることにある。本出願では、超伝導量子計算プラットフォームを例としているが、アルゴリズムの汎用性により、本出願は同様に任意の量子計算物理プラットフォームに適用することができる。
【0177】
以下、本出願の装置の実施例であり、それは本出願の方法の実施例を実行するために用いられる。なお、本出願の装置の実施例に未披露の細部については、本出願の方法の実施例を参照することができる。
【0178】
図22を参照する。それは、本出願の一実施例により提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号装置のブロック図である。該装置は上述の方法を実現し得る機能を有し、該機能はハードウェアにより実現されても良く、ハードウェアがその対応するソフトウェアを実行することにより実現されても良い。該装置はコンピュータ装置であっても良く、コンピュータ装置に設けられても良い。該装置2200は症候情報取得モジュール2210、症候情報復号モジュール2220及びエラー結果決定モジュール2230を含んでも良い。
【0179】
症候情報取得モジュール2210は、量子回路のリアルエラー症候情報を取得するために用いられ、前記リアルエラー症候情報は、量子誤り訂正符号を採用して前記量子回路に対してノイズ付きのエラー症候測定を行うことで得られる情報である。
【0180】
症候情報復号モジュール2220は、前記リアルエラー症候情報に対して復号を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得するために用いられ、そのうち、前記論理エラークラスは、前記量子回路に発生するエラーをマッピングして得られるクラスであり、前記完璧エラー症候情報は、前記量子回路に対してノイズ無しのエラー症候測定を行うことで得られる情報である。
【0181】
エラー結果決定モジュール2230は、前記論理エラークラス及び前記完璧エラー症候情報に基づいて、前記量子回路のエラー結果情報を決定するために用いられ、前記エラー結果情報は、前記量子回路においてエラーが発生するデータ量子ビット及び対応するエラー類型を指示するために用いられる。
【0182】
例示的な実施例において、図23に示すように、前記症候情報復号モジュール2220は第一復号ユニット2221及び第二復号ユニット2222を含む。
【0183】
第一復号ユニット2221は、第一復号器を採用して前記リアルエラー症候情報に対して復号を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラスを得るために用いられ、前記第一復号器は、前記論理エラークラスを決定するためのニューラルネットワーク分類器である。
【0184】
第二復号ユニット2222は、第二復号器を採用して前記リアルエラー症候情報に対して復号を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する完璧エラー症候情報を得るために用いられ、前記第二復号器は、前記完璧エラー症候情報を決定するためのニューラルネットワーク分類器である。
【0185】
例示的な実施例において、前記第一復号ユニット2221は、以下のようなことを行うために用いられ、即ち、
前記第一復号器を採用して前記リアルエラー症候情報に対してブロック特徴抽出を行い、前記第一復号器を採用して前記リアルエラー症候情報に対してブロック分けを行い、少なくとも2つのブロックを取得し、少なくとも2つの特徴抽出ユニットを採用して前記少なくとも2つのブロックに対して並列特徴抽出処理を行い、特徴情報を取得し;
前記第一復号器を採用して前記特徴情報に対して融合及び復号処理を行い、前記リアルエラー症候情報に対応する論理エラークラスを取得する。
【0186】
例示的な実施例において、前記第二復号ユニット2222は、以下のようなことを行うために用いられ、即ち、
前記リアルエラー症候情報をそれぞれk個の前記第二復号器に入力し、k個の完璧エラー症候ビットを取得し、そのうち、kは正の整数であり、かつkは、前記量子誤り訂正符号の尺度に関連しており;
前記k個の完璧エラー症候ビットを統合し、前記リアルエラー症候情報に対応する完璧エラー症候情報を取得する。
【0187】
例示的な実施例において、前記第一復号器及び前記第二復号器の訓練過程は以下のとおりであり、即ち、
サンプル量子回路のデータエラー及び測定エラーに対してシミュレーションを行い、シミュレーション結果を取得し、前記データエラーとは、前記サンプル量子回路のデータ量子ビット上で発生するエラーを指し、前記測定エラーとは、エラー症候測定過程で発生するエラーを指し;
シミュレーション結果に基づいて前記サンプル量子回路のT回のエラー症候測定のエラー症候情報を取得し、前記Tは1よりも大きい整数であり;
前記T回のエラー症候情報が目標時刻に投影される等価データエラー情報を決定し;
前記等価データエラー情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を決定し;
訓練サンプルを生成し、前記訓練サンプルのサンプルデータは前記T回のエラー症候情報を含み、前記訓練サンプルはラベルデータを含み、前記ラベルデータは前記等価データエラー情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を含み;
前記訓練サンプルを採用して前記第一復号器及び前記第二復号器に対して訓練を行う。
【0188】
例示的な実施例において、サンプル量子回路のデータエラー及び測定エラーに対してシミュレーションを行うことは、
前記サンプル量子回路に含まれるデータ量子ビット上でエラーを確率的に生成し;
前記サンプル量子回路に対応する補助量子ビット上でエラーを確率的に確率し、前記補助量子ビットは、前記サンプル量子回路のエラー症候情報を測定することで得るために用いられ;
固有値測定回路に含まれる制御NOTゲート上でエラーを確率的に生成し、前記固有値測定回路は前記サンプル量子回路に対応し、前記固有値測定回路はスタビライザー生成元の固有値を測定するために用いられ;
量子誤り訂正符号を採用して前記サンプル量子回路に対してエラー症候測定を行うときに測定エラーを確率的に生成することを含む。
【0189】
例示的な実施例において、前記対サンプル量子回路のデータエラー及び測定エラーに対してシミュレーションを行うことは、
前記サンプル量子回路に対して量子プロセストモグラフィーを行い、前記サンプル量子回路のノイズモデルを抽出し、前記ノイズモデルは、シミュレーションにより前記データエラー及び前記測定エラーを生成するために用いられ;
前記ノイズモデルに基づいて前記サンプル量子回路の量子状態のノイズ作用下の発展(Evolution)に対してシミュレーションを行うことを含む。
【0190】
例示的な実施例において、前記第一復号器及び前記第二復号器の訓練過程は以下のとおりであり、即ち、
サンプル量子回路に対してノイズ有りのエラー症候測定を行い、前記サンプル量子回路のエラー症候情報を取得し;
前記サンプル量子回路のエラー症候情報に対して他の復号器を用いて復号を行い、前記サンプル量子回路のエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得し;
訓練サンプルを生成し、前記訓練サンプルのサンプルデータは前記サンプル量子回路のエラー症候情報を含み、前記訓練サンプルはラベルデータを含み、前記ラベルデータは前記サンプル量子回路のエラー症候情報に対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を含み;
前記訓練サンプルを採用して前記第一復号器及び前記第二復号器に対して訓練を行う。
【0191】
例示的な実施例において、図23に示すように、前記エラー結果決定モジュール2230は第一取得ユニット2231、第二取得ユニット2232及び結果決定ユニット2233を含む。
【0192】
第一取得ユニット2231は、前記論理エラークラスに対応する第一エラー結果を得るために用いられる。
【0193】
第二取得ユニット2232は、前記完璧エラー症候情報に対応する第二エラー結果を得るために用いられる。
【0194】
結果決定ユニット2233は、前記第一エラー結果及び前記第二エラー結果に基づいて、前記量子回路のエラー結果情報を決定するために用いられる。
【0195】
例示的な実施例において、前記第一取得ユニット2231は、前記論理エラークラスに含まれる要素のうちから、任意1つの要素を前記第一エラー結果として選択し、そのうち、前記論理エラークラスには、少なくとも1つの等価のエラー要素が含まれる。
【0196】
例示的な実施例において、前記第二取得ユニット2232は、マッピング表をルックアップし、前記完璧エラー症候情報における各エラー症候点のそれぞれに対応するシンプルエラーを取得し、そのうち、前記マッピング表には少なくとも1組のエラー症候点とシンプルエラーとの間のマッピング関係が含まれ、前記各エラー症候点にそれぞれ対応するシンプルエラーの乗算を行い、前記第二エラー結果を取得するために用いられる。
【0197】
例示的な実施例において、前記結果決定ユニット2233は、前記第一エラー結果と前記第二エラー結果との積を決定し、前記量子回路のエラー結果情報を得るために用いられる。
【0198】
例示的な実施例において、図23に示すように、前記装置2200はさらに、誤り訂正信号生成モジュール2240及び誤り訂正信号送信モジュール2250を含む。
【0199】
誤り訂正信号生成モジュール2240は、前記エラー結果情報に基づいて誤り訂正制御信号を生成するために用いられ、前記誤り訂正制御信号は前記量子回路に生成するエラーを訂正するために用いられる。
【0200】
誤り訂正信号送信モジュール2250は、前記量子回路に前記誤り訂正制御信号を送信するために用いられる。
【0201】
要約すると、本出願の実施例により提供される技術案は、量子回路のリアルエラー症候情報に対して復号を行い、対応する論理エラークラス及び完璧エラー症候情報を取得し、その後、該論理エラークラス及び完璧エラー症候情報に基づいて、量子回路においてエラーが発生するデータ量子ビット及び対応するエラー類型を決定することで、量子回路のエラー症候情報が完璧でない場合、エラー症候情報に対してのフォールトトレランス・誤り訂正・復号を実現することができる。
【0202】
また、このようなスキームは、フォールトトレランス・誤り訂正・復号を1つの分類の問題と等価にすることを実現し得るため、効率的なニューラルネットワーク分類器を採用してエラー症候情報に対してフォールトトレランス・誤り訂正・復号を行うことが適切であり、これにより、フォールトトレランス・誤り訂正・復号の速度を上げ、リアルタイムなフォールトトレランス・誤り訂正・復号を実現することができる。適切なニューラルネットワーク分類器を選ぶ場合、復号アルゴリズムの速度を大幅に上げ、リアルタイムなフォールトトレランス・誤り訂正・復号の実現への道を開くことができる。
【0203】
なお、上述の実施例により提供される装置は、その機能を実現するときに、上記の機能モジュールの分割のみを例して説明を行っているが、実際の応用では、ニーズに応じて上述の機能を異なる機能モジュールに割り当てて完了しても良く、即ち、装置の内部構造を異なる機能モジュールに分けることで、上述の全部又は一部の機能を完了しても良い。また、上述の実施例により提供される装置は方法の実施例と同一の構想に属し、その具体的な実現過程は方法の実施例を参照することができ、ここではその詳しい説明を省略する。
【0204】
図24を参照する。それは、本出願の一実施例により提供されるコンピュータ装置の構成を示す図である。該コンピュータ装置は図3に示す技術案の適用シナリオにおける制御装置33であっても良い。該コンピュータ装置は上述の実施例で提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法を実現することができる。具体的に言えば、以下のとおりである。
【0205】
前記コンピュータ装置2400は処理ユニット2401(例えば、CPU及び/又はGPUを含む)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory,RAM)2402及びリードオンリーメモリ(Read-Only Memory,ROM)2403を含むシステム記憶器2404、及びシステム記憶器2404と処理ユニット2401とを接続するシステムバス2405を含む。前記コンピュータ装置2400はさらに、コンピュータ内の各部品間の情報伝送を支援するための基本入出力システム(I/O(Input/Output)システム)2406、及びオペレーティングシステム2413、アプリケーションプログラム2414、他のプログラムモジュール2415などを記憶するための大容量記憶装置2407を含む。
【0206】
前記基本入出力システム2406は、情報を表示するための表示器2408、ユーザが情報を入力するための例えばマウス、キーボードなどの入力装置2409などを含む。そのうち、前記表示器2408及び入力装置2409はシステムバス2405に接続される入出力制御器2410によって処理ユニット2401に接続される。前記基本入出力システム2406はさらに、キーボード、マウス、又は電子タッチペンなどの複数の他の装置の入力を受信及び処理するための入出力制御器2410を含む。同様に、入出力制御器2410はさらに、表示スクリーン、プリンター又は他の類型の出力装置への出力を提供する。
【0207】
前記大容量記憶装置2407は、システムバス2405に接続される大容量記憶制御器(図示せず)によって処理ユニット2401に接続される。前記大容量記憶設備2407及びその関連するコンピュータ可読媒体は、コンピュータ装置2400に不揮発性記憶を提供する。言い換えれば、前記大容量記憶設備2407はハードディスク又はCD-ROM(Compact Disc Read-Only Memory)ドライブのようなコンピュータ可読媒体(図示せず)を含んでも良い。
【0208】
一般性を失うことなく、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含み得る。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール又は他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法又は技術で実装された揮発性及び不揮発性の取り外し可能及び取り外し不可能な媒体を含む。コンピュータストレージメディアには、RAM、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory,消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only
Memory,電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ)、フラッシュメモリ又はその他のソリッドステートストレージテクノロジ、CD-ROM、DVD(Digital Video Disc,高密度デジタルビデオディスク)又はその他の光ストレージ、テープカセット、磁気テープ、ディスクストレージ、又はその他の磁気ストレージデバイスが含まれる。もちろん、当業者は、コンピュータ記憶媒体が前述のものに限定されないことを知ることができる。前述のシステムメモリ2404及び大容量記憶装置2407は、まとめてメモリと呼ばれることがある。
【0209】
本出願の各実施例によれば、前記コンピュータ装置2400はさらに、例えばインターネットなどのネットワークを介してネットワーク上のリモートコンピュータに接続され実行されても良い。即ち、コンピュータ装置2400は、前記システムバス2405に接続されるネットワークインタフェースユニット2411を介してネットワーク2412に接続されても良く、あるいは、ネットワークインタフェースユニット2411を用いて他の類型のネットワーク又はリモートコンピュータシステム(図示せず)に接続されると言っても良い。
【0210】
前記記憶器には、少なくとも1つの指令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は指令セットが記憶されており、前記少なくとも1つの指令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は指令セットは、1つ又は1つ以上の処理器により実行され得るように構成されることで、上述の実施例により提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法を実現することができる。
【0211】
例示的な実施例において、コンピュータ可読記憶媒体がさらに提供され、前記記憶媒体には、少なくとも1つの指令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は指令セットが記憶されており、前記少なくとも1つの指令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は前記指令セットは、コンピュータ装置の処理器により実行されるときに、上述の実施例により提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法を実現し得る。例示的な実施例において、上述のコンピュータ可読記憶媒体はROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データストレージデバイスなどであっても良い。
【0212】
例示的な実施例において、コンピュータプログラムプロダクトが提供され、該コンピュータプログラムプロダクトは実行されるときに、上述の実施例により提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法を実現するために用いられる。
【0213】
例示的な実施例において、チップがさらに提供され、該チップはプログラマブルロジック回路及び/又はプログラム指令を含み、該チップはコンピュータ装置上で実行され、上述の実施例により提供される量子回路のフォールトトレランス・誤り訂正・復号方法を実現するために用いられる。
【0214】
オプションとして、該チップはFPGAチップ又はASICチップである。
【0215】
なお、本文で言及される「複数」は、2つ以上を指すことを理解されたい。「及び/又は」は、関連付けられたオブジェクトの関連付け関係を説明し、例えば、A及び/又はBの3つのタイプの関係があり得ることを示し、これは、Aのみが存在し、A及びBが同時に存在し、そして、Bのみが存在することを意味し得る。文字「/」は通常、前後の関連オブジェクトが「又は」の関係にあることを示す。さらに、本文で説明されるステップの番号は、ステップ間の実行可能な順序を例示的に示すためのものにすぎない。他の幾つかの実施例では、上記のステップは、番号の順序で実行されなくても良く、例えば、番号が異なる2つのステップが同時に実行されても良く、番号が異なる2つのステップが図示とは逆の順序で実行されても良いが、本出願の実施例はこれについて限定しない。
【0216】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、本発明の趣旨を離脱しない限り、本発明に対するあらゆる変更は本発明の技術的範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】