(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】電池セパレータ構成要素へのリグノスルホン酸塩及び高表面積炭素の塗布
(51)【国際特許分類】
H01M 50/457 20210101AFI20220708BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20220708BHJP
H01M 50/437 20210101ALI20220708BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20220708BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20220708BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20220708BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20220708BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20220708BHJP
B32B 17/00 20060101ALI20220708BHJP
H01M 10/14 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
H01M50/457
H01M50/403 D
H01M50/437
H01M50/434
H01M50/414
H01M50/446
H01M50/46
H01M50/489
B32B17/00
H01M10/14 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560735
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(85)【翻訳文提出日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 US2020032962
(87)【国際公開番号】W WO2020232288
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521448592
【氏名又は名称】マイクロポーラス、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティワリ、ディブヤ
(72)【発明者】
【氏名】ミハラ、デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
4F100
5H021
5H028
【Fターム(参考)】
4F100AA20C
4F100AD11C
4F100AG00A
4F100AH04C
4F100AJ04C
4F100AK54C
4F100AN00C
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4F100CC00C
4F100DG00A
4F100EH46C
4F100EJ86
4F100GB41
4F100YY00C
5H021AA06
5H021BB12
5H021BB13
5H021CC02
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5H021EE02
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5H028EE06
5H028EE09
5H028HH00
5H028HH01
5H028HH08
(57)【要約】
電池セパレータの製造方法及び使用方法が、高表面積炭素を含むスラリを負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムに塗布することを含む。鉛蓄電池の電荷受容性及び/又はサイクル寿命を向上させるために、高表面積炭素を含むスラリを負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムに塗布する方法。鉛蓄電池の電荷受容性及び/又はサイクル寿命を向上させるための、高表面積炭素を含むスラリを有するガラス・マット・スクリムを有する電池セパレータ。スラリが高表面積炭素、リグノスルホン酸塩、及びバインダを含む、方法又は電池セパレータ。本明細書で開示される方法又は電池セパレータは、満液式又は改良型満液式電池「EFB」で使用されている。本明細書で開示される方法又は電池セパレータは、吸収ガラス・マット「AGM」電池で使用されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、電池セパレータを製造する方法であって、
前記負極セパレータ上の前記ガラス・マット・スクリムを、高表面積炭素及びリグノスルホン酸塩を含むスラリでコーティングするステップを含む、方法。
【請求項2】
前記負極セパレータ上の前記ガラス・マット・スクリムを前記スラリで前記コーティングするステップが、前記鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鉛蓄電池が、満液式又は改良型満液式電池(EFB)或いは吸収ガラス・マット(AGM)電池であり、前記製造する方法が、
前記コーティングされたガラス・マット・スクリムを乾燥するステップであって、
前記コーティングされたガラス・マット・スクリムを空気乾燥すること、又は
50℃~100℃の温度範囲の対流式加熱トンネル又は赤外加熱を使用することを含む、乾燥するステップと、
負極セパレータ薄片又は外被上に前記塗布されたスラリを有する前記ガラス・マット・スクリムを、前記塗布されたスラリを有する前記ガラス・マット・スクリムが、セル組立体内部で負極の表面に面するように、配置するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記負極セパレータ上の前記ガラス・マット・スクリムにコーティングされる前記スラリが、
前記高表面積炭素と、
前記リグノスルホン酸塩と、
バインダと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記高表面積炭素が、15~1800m
2/gの比表面積を有するか、
前記リグノスルホン酸塩が、疎水性炭素添加物と比較して、親水性且つ水溶性であり、前記リグノスルホン酸塩は、前記スラリの混合及び準備を支援するか、
前記バインダが、混合助剤であるか、
又は、
これらの組合せである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記高表面積炭素の前記比表面積が、1300~1500m
2/gであるか、
前記リグノスルホン酸塩が、悪影響を及ぼす再充電及び結果として生じるPbSO
4のPbへの変化を妨げる、強い反凝集特性を用いて、放電状態中に大きなPbSO
4結晶の形成を防止するように構成されるか、
前記バインダが、前記ガラス・マット又はスクリムのコーティングのために、前記スラリの界面エネルギーを低減することを援助し、均質なスラリを効果的に混合及び準備することを支援する、界面活性剤であるか、
又は、
これらの組合せである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記高表面積炭素が、前記スラリの乾燥重量の10%~40%であり、
前記リグノスルホン酸塩が、前記再充電状態の前記負極上のスポンジ状の鉛構造を保持するか、
前記バインダが、MA80、グアーゴム、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒュームド・シリカ、又はPEGであるか、
又は、
これらの組合せである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記高表面積炭素が、PBX51であって、前記スラリの乾燥重量の30%~40%であるか、
前記リグノスルホン酸塩が、Vanisperse Aであるか、
前記バインダが、MA80であるか、
又は、
これらの組合せである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記負極セパレータ上の前記ガラス・マット・スクリムに塗布される前記スラリが、前記スラリを混合するための溶媒をさらに含み、前記溶媒が、イオン化水を含まない、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記高表面積炭素が、その大きな表面が集電体グリッド又は負極活物質に近接近していることにより、容量性の効果を有するように構成されるか、
前記高表面積炭素が、大きな硫酸鉛結晶の成長で立体障害を呈し、鉛に戻る硫酸鉛の効果的な再充電を保証し、それにより前記負極の硫酸化を防止し、前記鉛蓄電池の前記寿命を向上させるか、
前記高表面積炭素が、負極活物質内に用いられる場合、酸の蓄積空間を提供することによって、電極の利水を援助するように構成されるか、
前記高表面積炭素が、前記負極の表面に近接近して用いられる場合でも、酸の蓄積空間として有益な効果を有するように構成されるか、
前記鉛蓄電池の電荷受容性が、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルの前記セパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、2~3倍に増大されるか、
前記ガラス・マット又はスクリム上に塗布される前記スラリが、前記炭素、前記ガラス・マット、又は両方の組合せから、酸の層形成を緩和する利益を提供するか、
又は、
これらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池用の電池セパレータであって、
前記負極セパレータ上の前記ガラス・マット・スクリム上にコーティングされるスラリであって、
高表面積炭素と、
リグノスルホン酸塩と
を含むスラリを有する、電池セパレータ。
【請求項12】
前記負極セパレータ上の前記ガラス・マット・スクリム上にコーティングされる前記スラリが、前記鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように構成された、請求項11に記載の電池セパレータ。
【請求項13】
前記鉛蓄電池が、満液式又は改良型満液式電池(EFB)或いは吸収ガラス・マット(AGM)電池であり、前記塗布されたスラリを有する前記ガラス・マット・スクリムが、セル組立体内部で負極の表面に面するように、前記電池セパレータが、負極セパレータ薄片又は外被上に前記塗布されたスラリを有する前記ガラス・マット・スクリムを含む、請求項11に記載の電池セパレータ。
【請求項14】
前記負極セパレータ上の前記ガラス・マット・スクリムにコーティングされる前記スラリが、
前記高表面積炭素と、
前記リグノスルホン酸塩と、
バインダと
を含む、請求項11に記載の電池セパレータ。
【請求項15】
前記高表面積炭素が、15~1800m
2/gの比表面積を有しするか、
前記リグノスルホン酸塩が、疎水性炭素添加物と比較して、親水性且つ水溶性であり、前記リグノスルホン酸塩は、前記スラリの混合及び準備を支援するか、
前記バインダが、混合助剤であるか、
又は、
これらの組合せである、請求項14に記載の電池セパレータ。
【請求項16】
前記高表面積炭素の前記比表面積が、1300~1500m
2/gであるか、
前記リグノスルホン酸塩が、悪影響を及ぼす再充電及び結果として生じるPbSO
4のPbへの変化を妨げる、強い反凝集特性を用いて、放電状態中に大きなPbSO
4結晶の形成を防止するように構成されるか、
前記バインダが、前記ガラス・マット又はスクリムのコーティングのために、前記スラリの界面エネルギーを低減することを援助し、均質なスラリを効果的に混合及び準備することを支援する、界面活性剤であるか、
又は、
これらの組合せである、請求項15に記載の電池セパレータ。
【請求項17】
前記高表面積炭素が、前記スラリの乾燥重量の10%~40%であるか、
前記リグノスルホン酸塩が、前記再充電状態の前記負極上のスポンジ状の鉛構造を保持するか、
前記バインダが、MA80、グアーゴム、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒュームド・シリカ、又はPEGであるか、
又は、
これらの組合せである、
請求項16に記載の電池セパレータ。
【請求項18】
前記高表面積炭素が、PBX51であって、前記スラリの乾燥重量の30%~40%であるか、
前記リグノスルホン酸塩が、Vanisperse Aであるか、
前記バインダが、MA80であるか、
又は、
これらの組合せである、請求項17に記載の電池セパレータ。
【請求項19】
前記負極セパレータ上の前記ガラス・マット・スクリムに塗布される前記スラリが、前記スラリを混合するための溶媒をさらに含み、前記溶媒が、イオン化水を含まない、請求項13に記載の電池セパレータ。
【請求項20】
前記高表面積炭素が、その大きな表面が集電体グリッド又は負極活物質に近接近していることにより、容量性の効果を有するように構成されるか、
前記高表面積炭素が、大きな硫酸鉛結晶の成長で立体障害を呈し、鉛に戻る硫酸鉛の効果的な再充電を保証し、それにより前記負極の硫酸化を防止し、前記鉛蓄電池の前記寿命を向上させるか、
前記高表面積炭素が、負極活物質内に用いられる場合、酸の蓄積空間を提供することによって、電極の利水を援助するように構成されるか、
前記高表面積炭素が、前記負極の表面に近接近して用いられる場合でも、酸の蓄積空間として有益な効果を有するように構成されるか、
前記鉛蓄電池の電荷受容性が、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルの前記セパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、2~3倍に増大されるか、
前記ガラス・マット又はスクリム上に塗布される前記スラリが、前記炭素、前記ガラス・マット、又は両方の組合せから、酸の層形成を緩和する利益を提供するか、
又は、
これらの組合せである、請求項11に記載の電池セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に鉛蓄電池に関し、詳細には、改良型満液式鉛蓄電池の電荷受容性及びサイクル寿命を高めるために、高表面積炭素及びリグノスルホン酸塩添加物でコーティングされたガラス・マットを含む、新たな改善されたセパレータに関する。本開示は、鉛蓄電池内で用いられる電池セパレータに使用される添加物を含む、新たな若しくは改善された電池セパレータを対象にしており、且つ/或いは関連した製造方法及び/又はその使用を対象にしている。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、1世紀以上にわたり、人気の低コストの充電式エネルギー貯蔵装置であり続けている。体積に対するエネルギーの比が低いにもかかわらず、鉛蓄電池は、高いサージ電流を提供でき、そのことがそれをスタータ・モータ、自動車、フォークリフト、無停電電源装置など用に、魅力的なものにしている。鉛蓄電池の2つの主要な種類は、満液式電池及び制御弁式鉛(VRLA:valve regulated lead acid)電池である。「改良型」満液式電池は、「アイドル・スタート・ストップ」技術を採用する自動車内で用いられる、改善された且つよりロバストな満液式鉛蓄電池である。この技術では、電池は、オルタネータが発電を停止した場合に、乗用車の電気系を維持するために電力を供給しなければならない。この技術のその他の機能は、回生制動及び好機充電を含む。そのような要求により、技術は、急速充電及び改善されたサイクル性能を有する電池を必要としている。
【0003】
現在、「スタート・ストップ」車両は、吸収ガラス・マット(AGM:Absorbed Glass Mat)及び改良型満液式電池(EFB:Enhanced Flooded Battery)を使用しており、両方ともサイクル寿命及び急速充電能力を向上させることを支援している。本開示は、特に高速部分充電状態(HRPSoC:High Rate Partial State of Charge)用途において、改善されたサイクル寿命及び高い電荷受容性を必要とする、AGM並びに改良型満液式電池及び電池システムの両方に役立ち得る。
【0004】
本開示は、既存のAGM又は満液式電池セパレータに追加される構成要素を提供するように設計され得る。電池セパレータは、鉛蓄電池内部の正極と負極を分離又は分断する。セパレータは、最小限の抵抗でイオンの交換を可能にし、一方で、正極及び負極が互いに接触することから引き起こされ得る、短絡を防止する。満液式電池セパレータは、多孔質母材から成り得て、当業者に知られているシリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、鉱物粘土、又は他のものなどの無機充填剤を含有し得る。満液式電池セパレータは、明確に所望の働きをもたらす他の材料の中でもとりわけ、水分損失緩和剤、酸化防止剤、及びゴムラテックスなどの特定の添加物をさらに含有し得る。セパレータのバルクは、架橋天然及び/又は合成ゴム、ポリエステル、ポリスルホン、及びポリオレフィンなどの多様な分子量の有機重合体(典型的には分子量300Kから12MMの)からなり得る。満液式電池セパレータを製造するために用いられる他の材料は、通常ポリエステル及び/又はガラス繊維から生産される湿式及び乾式不織布を含む。一定の事例では、不織布セパレータが、対酸化性を高めるために、フェノール化合物でコーティングされている。多くのそのようなセパレータが、正極板に面したセパレータ側面に取り付けられた、ガラス又はポリエステルからなる、開放多孔構造をもつスクリムの形態の層状組織を有する。層状組織又はスクリムは、正極の酸化電位によるゴム又は重合体の酸化を防止し、それによりセパレータ寿命を向上させる。
【0005】
AGM電池セパレータは通常、粗な及び微細なガラス繊維を用いた不織布マットからなり得る。同一のAGMセパレータは、電池製造中の簡潔な処理及び有効寿命のために、引張強度及び穿刺抵抗を改善するように、重合体添加物も含有し得る。AGM電池では、電解質が、吸収性のガラス・マット間又は内部で不動化されている。それは、再結合のための負極板への酸素輸送を可能にし、それにより水分損失を低減する。AGMセパレータは、任意のガラス・マット、張合せ紙、などであり得る。AGMセパレータの実例は、それだけに限定されないが、0.4~2.2m2/gの比表面積を有していてもよい。粗なガラス繊維及び/又はポリエステル若しくは他の重合体混合物を用いる層状組織又はスクリムが、AGMセパレータにさらに取り付けられ得る。
【0006】
しかしながら、鉛蓄電池技術、並びに特に改良型満液式鉛蓄電池技術及びAGM電池技術には、常に改善への必要性又は要望が存在している。スタート・ストップ車両のエネルギー貯蔵電池及び改良型満液式電池のエネルギー需要の高まりとともに、鉛蓄電池技術の継続的な改良の必要性が存在している。本開示は、鉛蓄電池、並びに特に改良型満液式鉛蓄電池及びAGM電池に、より高い電荷受容性及び/又はサイクル寿命を提供する必要性を認識している。
【0007】
鉛蓄電池での電荷受容性改善は、これまでの数十年での研究の重要な焦点となってきた。カーボンブラック、先進的なグラファイト、多層ナノカーボン、高表面積炭素などの炭素が、多くの形態の鉛蓄電池内に組み込まれてきた。Exideは、米国特許第8,765,297のように、先進的なグラファイトを負極活物質(NAM:Negative Active Material)内に組み込んできた。Daramicは、セパレータ表面上に炭素コーティングを塗布し、East Penn Manufacturingは、負極表面上に吹付け炭素を用いている(以下を参照のこと、J.Furukawa、K.Smith、L.T.Lam、D.A.J.Rand、「Towards sustainable road transport with the UltraBattery(商標)」、J.Garche、E.Karden、P.T.Moseley、D.A.J.Randら編、「Lead-Acid Batteries for Future Automobiles」、Elsevier、アムステルダム、オランダ、2017年、349~391ページ、ISBN:978-0-444-63700-0)。
【0008】
本開示は、改良型満液式鉛蓄電池及び吸収ガラス・マット電池の電荷受容性及び/又はサイクル寿命を高めるために、高表面積炭素及びリグノスルホン酸塩添加物でコーティングされたガラス・マットを有する、新たな且つ/又は改善された電池セパレータを提供することによって、上記の問題又は必要性の少なくともある一定の側面において対処するように設計され得る。したがって、本開示は一般に、炭素及びリグノスルホン酸塩の混合物を、AGM又は満液式電池セパレータに取り付けられ得る、ポリエステル或いはガラス不織布又はスクリムのような任意の積層構造上に、コーティング処理することを提供するように設計されていることがある。コーティングされたポリエステル又はガラス不織布マット/スクリムは、EFB又は満液式電池セパレータ、負極板に面した層状組織又はスクリム構成要素にさらに取り付けられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8,765,297号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.Furukawa、K.Smith、L.T.Lam、D.A.J.Rand、「Towards sustainable road transport with the UltraBattery(商標)」、J.Garche、E.Karden、P.T.Moseley、D.A.J.Randら編、「Lead-Acid Batteries for Future Automobiles」、Elsevier、アムステルダム、オランダ、2017年、349~391ページ、ISBN:978-0-444-63700-0
【非特許文献2】P.Baca、K.Micka、P.Krivik、K.Tonar、P.Toser、「Study of the influence of carbon on the negative lead-acid battery electrodes」、J.Power Sources196(2011)、3988~3992ページ
【非特許文献3】K.Micka、M.Calabek、P.Baja、P.Krivik、R.Labus、R.Bilko、「Studies of doped negative valve-regulated lead-acid battery electrodes」、J.Power Sources191(2009)、154~158ページ
【非特許文献4】P.T.Moseley、D.A.J.Randら、「Understanding the functions of supplementary carbon and its management in the negative active-mass of lead-acid battery:A review of progress」、J.Energy Storage 19(2018)、272~290ページ
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、改良型満液式及びVRLAのAGM電池における高い電荷受容性のために、リグノスルホン酸塩及び高表面積炭素の、電池セパレータ構成要素上への塗布を提供することによって、目下利用可能な電池セパレータ技術の上述の限界を、解決し得る。したがって、一態様では、本開示は、負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、電池セパレータを製造する方法を包含する。この開示される方法は一般に、負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムを、高表面積炭素及びリグノスルホン酸塩を含むスラリでコーティングするステップを含む。
【0012】
負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、開示される電池セパレータを製造する方法の1つの特徴である、負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムをスラリでコーティングするステップは、鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように構成され得る。
【0013】
負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、開示される電池セパレータを製造する方法の、選択された実施例では、鉛蓄電池は、改良型満液式電池(EFB)であり得る。
【0014】
負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、開示される電池セパレータを製造する方法の、他の選択された実施例では、鉛蓄電池は、吸収ガラス・マット(AGM)電池であり得る。
【0015】
選択された実施例では、負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させる、開示される電池セパレータの製造方法は、コーティングされたガラス・マット・スクリムを空気乾燥するステップと、負極セパレータ薄片又は外被上に塗布されたスラリを有するガラス・マット・スクリムを、塗布されたスラリを有するガラス・マット・スクリムが、セル組立体内部で負極の表面に面するように、配置するステップと、をさらに含む。
【0016】
負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、開示される電池セパレータを製造する方法の、選択された実施例では、負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムにコーティングされるスラリは、高表面積炭素、リグノスルホン酸塩、及びバインダを含み得る。
【0017】
負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムにコーティングされるスラリ内に用いられる高表面積炭素は、15~1800m2/gの比表面積を有し得る。選択されたできる限り好ましい実施例では、高表面積炭素の比表面積が、1300~1500m2/gであり得る。選択された実施例では、高表面積炭素は、スラリの乾燥重量の10%~40%であり得る。選択されたできる限り好ましい実施例では、高表面積炭素は、スラリの乾燥重量の30%~40%であり得る。一実例として、明確にそれに限定されないが、選択されたできる限り好ましい実施例では、高表面積炭素は、PBX51であり得る。選択された実施例では、高表面積炭素は、その大きな表面が集電体グリッド又は負極活物質に近接近していることにより、容量性の効果を有するように構成され得る。他の選択された実施例では、高表面積炭素は、大きな硫酸鉛結晶の成長で立体障害を呈し得て、鉛に戻る硫酸鉛の効果的な再充電を保証し得て、それにより負極の硫酸化を防止し、鉛蓄電池の寿命を向上させる。他の選択された実施例では、高表面積炭素は、負極活物質内に用いられる場合、酸の蓄積空間を提供することによって、電極の利水を援助するように構成され得る。やはり他の選択された実施例では、高表面積炭素は、負極の表面に近接近して用いられる場合でも、酸の蓄積空間として有益な効果を有するように構成され得る。他の選択された実施例では、高表面積炭素は、本明細書で示される、且つ/又は説明される、実施例の組合せとして構成され得る。
【0018】
負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムにコーティングされるスラリ内に用いられるリグノスルホン酸塩は、疎水性炭素添加物と比較して、親水性且つ水溶性であり得る。ここでリグノスルホン酸塩は、スラリの混合及び準備を支援し得る。選択された実施例では、スラリ内のリグノスルホン酸塩は、悪影響を及ぼす再充電及び結果として生じるPbSO4のPbへの変化を妨げ得る、強い反凝集特性を用いて、放電状態中に大きなPbSO4結晶の形成を防止するように構成され得る。選択された他の実施例では、リグノスルホン酸塩は、再充電状態の負極上のスポンジ状の鉛構造を保持し得る。選択されたできる限り好ましい実施例では、明確にそれに限定されないが、リグノスルホン酸塩は、Vanisperse Aであり得る。
【0019】
負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムにコーティングされるスラリ内に用いられるバインダは、混合助剤であり得る。選択された実施例では、バインダは、ガラス・マット又はスクリムのコーティングのために、スラリの界面エネルギーを低減することを援助し、均質なスラリを効果的に混合及び準備することを支援する、界面活性剤であり得る。実例として、それに明確に限定されないが、選択された実施例では、バインダは、MA80、グアーゴム、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒュームド・シリカ、PEG、など又はそれらの組合せであり得る。できる限り好ましい実施例では、バインダは、MA80であり得る。
【0020】
負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させる、開示される電池セパレータの製造方法の、選択された実施例では、負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムにコーティングされるスラリは、溶媒をさらに含み得る。溶媒は、スラリを混合するために構成され得る。ここで、選択された実施例では、溶媒は、イオン化水を含まない。
【0021】
負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、開示される電池セパレータを製造する方法の1つの特徴は、鉛蓄電池の電荷受容性が、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルのセパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、少なくとも2倍に増大され得ることであり得る。選択された実施例では、鉛蓄電池の電荷受容性は、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルのセパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、2~3倍に増大され得る。選択されたできる限り好ましい実施例では、鉛蓄電池の電荷受容性は、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルのセパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、約3倍に増大され得る。
【0022】
負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、開示される電池セパレータを製造する方法の、別の特徴は、ガラス・マット又はスクリム上に塗布されるスラリが、炭素、ガラス・マット、又は両方の組合せから、酸の層形成を緩和する利益を提供し得ることであり得る。
【0023】
別の態様では、本開示は、鉛蓄電池用の電池セパレータを包含する。電池セパレータは、ガラス・マット・スクリムを含み得る。電池セパレータは、負極セパレータ上に配置され得る。電池セパレータは、負極セパレータ上のガラス・マット・スクリム上にコーティングされるスラリを含み得る。スラリは一般に、高表面積炭素及びリグノスルホン酸塩を含み得る。
【0024】
開示される電池セパレータの1つの特徴は、負極セパレータ上のガラス・マット・スクリム上にコーティングされるスラリが、鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように構成され得ることであり得る。
【0025】
開示される電池セパレータの選択された実施例では、鉛蓄電池は、満液式又は改良型満液式電池(EFB)であり得る。
【0026】
開示される電池セパレータの他の選択された実施例では、鉛蓄電池は、吸収ガラス・マット(AGM)電池であり得る。
【0027】
負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、開示される電池セパレータの選択された実施例では、負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムにコーティングされるスラリは、高表面積炭素、リグノスルホン酸塩、及びバインダを含み得る。
【0028】
負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムにコーティングされるスラリ内に用いられる高表面積炭素は、15~1800m2/gの比表面積を有し得る。選択されたできる限り好ましい実施例では、高表面積炭素の比表面積が、1300~1500m2/gであり得る。選択された実施例では、高表面積炭素は、スラリの乾燥重量の10%~40%であり得る。選択されたできる限り好ましい実施例では、高表面積炭素は、スラリの乾燥重量の30%~40%であり得る。一実例として、明確にそれに限定されないが、選択されたできる限り好ましい実施例では、高表面積炭素は、PBX51であり得る。選択された実施例では、高表面積炭素は、その大きな表面が集電体グリッド又は負極活物質に近接近していることにより、容量性の効果を有するように構成され得る。他の選択された実施例では、高表面積炭素は、大きな硫酸鉛結晶の成長で立体障害を呈し得て、鉛に戻る硫酸鉛の効果的な再充電を保証し得て、それにより負極の硫酸化を防止し、鉛蓄電池の寿命を向上させる。他の選択された実施例では、高表面積炭素は、負極活物質内に用いられる場合、酸の蓄積空間を提供することによって、電極の利水を援助するように構成され得る。やはり他の選択された実施例では、高表面積炭素は、負極の表面に近接近して用いられる場合でも、酸の蓄積空間として有益な効果を有するように構成され得る。他の選択された実施例では、高表面積炭素は、本明細書で示される、且つ/又は説明される、実施例の組合せとして構成され得る。
【0029】
負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムにコーティングされるスラリ内に用いられるリグノスルホン酸塩は、疎水性炭素添加物と比較して、親水性且つ水溶性であり得る。ここでリグノスルホン酸塩は、スラリの混合及び準備を支援し得る。選択された実施例では、スラリ内のリグノスルホン酸塩は、悪影響を及ぼす再充電及び結果として生じるPbSO4のPbへの変化を妨げ得る、強い反凝集特性を用いて、放電状態中に大きなPbSO4結晶の形成を防止するように構成され得る。選択された他の実施例では、リグノスルホン酸塩は、再充電状態の負極上のスポンジ状の鉛構造を保持し得る。選択されたできる限り好ましい実施例では、明確にそれに限定されないが、リグノスルホン酸塩は、Vanisperse Aであり得る。
【0030】
負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムにコーティングされるスラリ内に用いられるバインダは、混合助剤であり得る。選択された実施例では、バインダは、ガラス・マット又はスクリムのコーティングのために、スラリの界面エネルギーを低減することを援助し、均質なスラリを効果的に混合及び準備することを支援する、界面活性剤であり得る。実例として、それに明確に限定されないが、選択された実施例では、バインダは、MA80、グアーゴム、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒュームド・シリカ、PEG、など又はそれらの組合せであり得る。できる限り好ましい実施例では、バインダは、MA80であり得る。
【0031】
開示される電池セパレータの選択された実施例では、負極セパレータ上のガラス・マット・スクリムにコーティングされるスラリは、溶媒をさらに含み得る。溶媒は、スラリを混合するために構成され得る。ここで、選択された実施例では、溶媒は、イオン化水を含まない。
【0032】
開示される電池セパレータの1つの特徴は、鉛蓄電池の電荷受容性が、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルのセパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、少なくとも2倍に増大され得ることであり得る。選択された実施例では、鉛蓄電池の電荷受容性は、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルのセパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、2~3倍に増大され得る。選択されたできる限り好ましい実施例では、鉛蓄電池の電荷受容性は、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルのセパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、約3倍に増大され得る。
【0033】
開示される電池セパレータの別の特徴は、ガラス・マット又はスクリム上に塗布されるスラリが、炭素、ガラス・マット、又は両方の組合せから、酸の層形成を緩和する利益を提供し得ることであり得る。
【0034】
上記の例示的な概略は、他の例示の本開示の目的及び/又は利益、並びに同一のことを実現する方法と同様に、以下の詳細な説明及びその添付図面内で、さらに説明される。
【0035】
本開示は、必ずしも正しい縮尺で描かれていない、全体を通して同様の参照符号が類似の構造体を示し、同様の要素を参照する、添付図面を参照しながら、発明を実施するための形態を読むことによって、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本開示の選択された実施例による添加物を利用するための、鉛蓄電池の内部構成要素を示す切断部分を有する、鉛蓄電池を示す図である。
【
図2A】本開示の選択された実施例による、底部(セパレータの負極板側面)上のミニリブ又は平坦なシート側面に取り付けられた、上側(セパレータの正極板側面)上の主要リブ、及び炭素-リグノスルホン酸塩をコーティングされたガラス・マット又はスクリムを有する満液式又はEFB電池セパレータの2重層ロールを示す図である。
【
図2B】本開示の選択された実施例によるミニリブ側面上を炭素-リグノスルホン酸塩-バインダでコーティングされた、ガラス・マット/層状組織/スクリム/張合せ紙の、上部層セパレータ(満液式又はEFB電池セパレータ)及び底部層を有する
図2Aからの電池セパレータの断面を示す図である。
【
図2C】
図2Bからの電池セパレータの断面の拡大詳細図である。
【
図3】本開示の選択された実施例による、満液式又はEFB電池セパレータ及び炭素-リグノスルホン酸塩-バインダがコーティングされたガラス・マット/層状組織/スクリムの2重層ロールの側面図である。
【
図4】本開示の選択された実施例による、負極セパレータ上にガラス・マット・スクリムを有する鉛蓄電池の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、電池セパレータを製造する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
提示された図面は、図解の目的のためにのみ意図されており、したがってそれらは、それらが請求される開示に本質的であると考えられ得る範囲を除いて、示された構造の正確な詳細のいずれ又は全てに、本開示を限定することを所望又は意図されないことに留意されたい。
【0038】
ここで
図1~4を参照すると、本開示の例示的の実施例の説明では、特定の専門用語が、分かりやすいように、利用されている。本開示はしかしながら、そのように選択された特定の専門用語に限定されることを意図されておらず、各々の特定の要素が、同様の機能を達成するために同様の方法で動作する、全ての技術的等価物を含むことが理解されよう。請求項の実施例はしかしながら、多くの異なる形態で実施され得て、本明細書で表明された実施例に限定されると解釈されるべきでない。本明細書で表明された例は、非限定的な例であり、他のあり得る例の中の例であるだけである。
【0039】
ここで
図1を参照すると、できる限り好ましい実施例では、本開示は、上記の不利益を克服し、そのような装置又は方法のための認知された要求を、鉛蓄電池10を提供することによって満足する。鉛蓄電池10は、任意の大きさ又は種類の鉛蓄電池であり得て、それだけには限らないが、満液式の、又は
図1に示すような改良型満液式電池(「EFB」)60を含む。加えて、鉛蓄電池10は、吸収性のガラス・マット15を有する制御弁式鉛(VRLA)電池のような、吸収ガラス・マット(「AGM」)電池62であり得る。図に示すように、電池10は、負極板(電極)12及び正極板(電極)16を、それらの間に挟まれたセパレータ14とともに、含む。これらの構成要素は、端子支柱20、バルブアダプタ及びバルブ22、並びに電解質24をさらに含む、容器、ケース、又は筐体18内に収容される。正極板パックが、正極セル接続28及び負極柱32とともに示されている。負極板パック36は、負極セル接続34とともに示されている。電解質24を封止する電解質密封リング30が示されている。さらにグリッドプレート38が示されている。具体的な電池が示されているが、本発明の付加物は、たとえば、それだけには限らないが密封式鉛、満液式鉛、ISS鉛、及び組合せ電池、並びにコンデンサ・ユニット、他の電池種類、コンデンサ、蓄電池、などを含む、多くの異なる種類の電池又はデバイス内で用いられ得る。
【0040】
ここで
図2~3を参照すると、本開示は、目下利用可能な電池セパレータ技術の上述の限界を、鉛蓄電池10に電池セパレータ14を提供することによって、解決する。電池セパレータ14は、ガラス・マット・スクリム15を含み得る。電池セパレータ14は、鉛蓄電池10内の負極セパレータとして配置され得る。電池セパレータ14は、負極セパレータ上のガラス・マット・スクリム15上にコーティングされたスラリ50を含み得る。スラリ50は一般に、高表面積炭素52及びリグノスルホン酸塩54含み得る。負極セパレータ上のガラス・マット・スクリム15上にコーティングされたスラリ50は、鉛蓄電池10の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように構成され得る。電池セパレータ14の選択された実施例では、鉛蓄電池10は、満液式又は改良型満液式電池(EFB)60であり得る。電池セパレータ14の他の選択された実施例では、鉛蓄電池10は、吸収ガラス・マット(AGM)電池62であり得る。負極セパレータ上のガラス・マット・スクリム15上にコーティングされたスラリ50は、高表面積炭素52、リグノスルホン酸塩54、及びバインダ56を含み得る。
【0041】
負極セパレータ14上のガラス・マット・スクリム15にコーティングされるスラリ50内に用いられる高表面積炭素52は、15~1800m2/gの比表面積を有し得る。選択されたできる限り好ましい実施例では、高表面積炭素52の比表面積が、1300~1500m2/gであり得る。選択された実施例では、高表面積炭素52は、スラリ50の乾燥重量の10%~40%であり得る。選択された好ましい実施例では、高表面積炭素52は、スラリ50の乾燥重量の30%~40%であり得る。一実例として、明確にそれに限定されないが、選択されたできる限り好ましい実施例では、高表面積炭素52は、PBX51であり得る。選択された実施例では、高表面積炭素52は、その大きな表面が集電体グリッド38又は負極活物質に近接近していることにより、容量性の効果を有するように構成され得る。他の選択された実施例では、高表面積炭素52は、大きな硫酸鉛結晶の成長で立体障害を呈し得て、鉛に戻る硫酸鉛の効果的な再充電を保証し得て、それにより負極の硫酸化を防止し、鉛蓄電池10の寿命を向上させる。他の選択された実施例では、高表面積炭素52は、負極活物質内に用いられる場合、酸の蓄積空間を提供することによって、電極の利水を援助するように構成され得る。やはり他の選択された実施例では、高表面積炭素52は、負極の表面に近接近して用いられる場合でも、酸の蓄積空間として有益な効果を有するように構成され得る。他の選択された実施例では、高表面積炭素52は、本明細書で示される、且つ/又は説明される、実施例の組合せとして構成され得る。
【0042】
負極セパレータ14上のガラス・マット・スクリム15にコーティングされるスラリ50内に用いられるリグノスルホン酸塩54は、疎水性炭素添加物と比較して、親水性且つ水溶性であり得る。ここでリグノスルホン酸塩54は、スラリ50の混合及び準備を支援し得る。選択された実施例では、スラリ50内のリグノスルホン酸塩54は、悪影響を及ぼす再充電及び結果として生じるPbSO4のPbへの変化を妨げ得る、強い反凝集特性を用いて、放電状態中に大きなPbSO4結晶の形成を防止するように構成され得る。選択された他の実施例では、リグノスルホン酸塩54は、再充電状態の負極上のスポンジ状の鉛構造を保持し得る。選択されたできる限り好ましい実施例では、明確にそれに限定されないが、リグノスルホン酸塩54は、Vanisperse Aであり得る。
【0043】
負極セパレータ14上のガラス・マット・スクリム15にコーティングされるスラリ50内に用いられるバインダ56は、混合助剤であり得る。選択された実施例では、バインダ56は、ガラス・マット又はスクリム15のコーティングのために、スラリ50の界面エネルギーを低減することを援助し、均質なスラリを効果的に混合及び準備することを支援する、界面活性剤であり得る。実例として、それに明確に限定されないが、選択された実施例では、バインダ56は、MA80、グアーゴム、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒュームド・シリカ、PEG、など又はそれらの組合せであり得る。できる限り好ましい実施例では、バインダ56は、MA80であり得る。
【0044】
電池セパレータ14の選択された実施例では、負極セパレータ14上のガラス・マット・スクリム15にコーティングされるスラリ50は、溶媒58をさらに含み得る。溶媒58は、スラリ50を混合するために構成され得る。ここで、選択された実施例では、溶媒58は、イオン化水を含まない。
【0045】
ガラス・マット・スクリム15にコーティングされるスラリ50を有する電池セパレータ14の1つの特徴は、鉛蓄電池10の電荷受容性が、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルのセパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、少なくとも2倍に増大され得ることであり得る。選択された実施例では、ガラス・マット・スクリム15にコーティングされるスラリ50を伴うセパレータ14を有する鉛蓄電池10の電荷受容性は、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルのセパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、2~3倍に増大され得る。選択されたできる限り好ましい実施例では、ガラス・マット・スクリム15にコーティングされるスラリ50を伴うセパレータ14を有する鉛蓄電池10の電荷受容性は、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルのセパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、約3倍に増大され得る。
【0046】
電池セパレータ14の別の特徴は、ガラス・マット又はスクリム15上に塗布されるスラリ50が、炭素52、ガラス・マット15、又は両方の組合せから、酸の層形成を緩和する利益を提供し得ることであり得る。
【0047】
ここで
図4を参照すると、一態様では、本開示は、負極セパレータ14上にガラス・マット・スクリム15を有する鉛蓄電池10の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、電池セパレータ14を製造する方法100を包含する。方法100は一般に、スラリ50を伴う負極セパレータ14上のガラス・マット・スクリム15をコーティングするステップ102を含み、ここでスラリ50は一般に、高表面積炭素52及びリグノスルホン酸塩54を含む。スラリ50を伴う負極セパレータ14上のガラス・マット・スクリム15をコーティングする方法100のステップ102は、鉛蓄電池10の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように構成され得る。方法100の選択された実施例では、鉛蓄電池10は、満液式又は改良型満液式電池(EFB)60であり得る。方法100の他の選択された実施例では、鉛蓄電池10は、吸収ガラス・マット(AGM)電池62であり得る。
【0048】
選択された実施例では、負極セパレータ14上にガラス・マット・スクリム15を有する鉛蓄電池10の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させる、電池セパレータ14を製造する方法100は、コーティングされたガラス・マット・スクリム15を空気乾燥するステップ104と、負極セパレータ薄片又は外被上に塗布されたスラリ50を有するガラス・マット・スクリム15を、塗布されたスラリ50を有するガラス・マット・スクリム15が、セル組立体内部で負極の表面に面するように、配置するステップと、をさらに含み得る。
【0049】
負極セパレータ14上にガラス・マット・スクリム15を有する鉛蓄電池10の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、電池セパレータ14を製造する方法100は、スラリ50の本明細書で示された且つ/或いは説明された多様な実施例及び/又は実施例の組合せのうちの任意のものにおける、スラリ50をガラス・マット・スクリム15にコーティングするステップを含み得る。
【0050】
負極セパレータ14上にガラス・マット・スクリム15を有する鉛蓄電池10の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させる、電池セパレータ14を製造する方法100の1つの特徴は、鉛蓄電池10の電荷受容性が、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルのセパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、少なくとも2倍に増大され得ることであり得る。方法100の選択された実施例では、鉛蓄電池10の電荷受容性は、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルのセパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、2~3倍に増大され得る。方法100の、選択されたできる限り好ましい実施例では、鉛蓄電池の電荷受容性は、DCA条件下で試験される、鉛蓄電池の2Vセルのセパレータ内の炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準セルのそれと比較して、約3倍に増大され得る。
【0051】
負極セパレータ14上にガラス・マット・スクリム15を有する鉛蓄電池10の電荷受容性、サイクル寿命、又はその組合せを向上させるように、電池セパレータ14を製造する方法100の、別の特徴は、それが、炭素52、ガラス・マット15、又は両方の組合せから、酸の層形成を緩和する利益を提供可能であることであり得る。
【0052】
要するに、本開示は、満液式又はEFB電池及びAGM電池を高電荷受容性用途で用いるための、満液式又は改良型満液式電池セパレータ或いはAGM電池セパレータの層状組織の構成要素の処理に関し、且つ/或いはその処理及び製造方法に関し得る。負極の高電荷受容性能力の改善のために、層状組織が、高表面積炭素52、リグノスルホン酸塩54、及びバインダ56の混合物でコーティングされ得る。コーティングされた層状組織15は、空気乾燥され、負極用のスクリムとして用いられ得る。このコーティングされ乾燥されたガラス・マット又はスクリム15は、負極セパレータ薄片又は外被のいずれかの上に、それがセル組立体内で負極の表面に面するように、配置され得る。炭素添加物は、15~1500m2/gの範囲の比表面積を有し得る。一実例として、リグノスルホン酸塩は、満液式のEFB及びVRLA電池内で負極活物質用の増量剤として広く用いられている、ノルウェーのBorregaard Lignotech of Sarpsborgによって提供されている、Vanisperse Aであり得る。
【0053】
実例
本開示の実例は、溶媒58、好ましくは脱イオン水、高表面積炭素52、リグノスルホン酸塩54、及びバインダ56を用いて、ガラス繊維マット15をコーティングするための、スラリ50を対象にし得る。脱イオン水以外の任意の溶媒が、炭素、リグノスルホン酸塩、及びバインダを混合するために、さらに用いられ得る。高表面積炭素52、リグノスルホン酸塩54、及びバインダ56の混和は、ガラス・マットのコーティングの工程に限定されない。たとえば、高表面積炭素52、リグノスルホン酸塩54、及びバインダ56の混和は、押出し又は吹付け塗布などの他の可能な塗布方法によって、組み込まれ得る。各々の構成要素及びその意図された利益及び/又は効果が、本項で説明される。
【0054】
リグノスルホン酸塩54(Vanisperse A)
リグノスルホン酸塩54の実例は、疎水性炭素添加物と比較して、親水性且つ水溶性であり得る。リグノスルホン酸塩54は、水性スラリの混合及び準備を支援し得る。強い反凝集特性を有するリグノスルホン酸塩54は、物理的に補助するだけでなく、放電状態中に大きなPbSO4結晶の形成を防止することをさらに援助する。大きなPbSO4結晶は、絶縁破壊しにくく、効果的に充電することを許容しない。これは、効果的な再充電、及び結果として起こるPbSO4のPbへの変化を妨げる。再充電状態では、同一のリグノスルホン酸塩54は、負極上のスポンジ状の鉛構造を保持し得る。リグノスルホン酸塩54は、大きなPbSO4結晶の堆積を通して、負極の不活性化をさらに妨げ得る。リグノスルホン酸塩54は、負極の表面での不活性な斜方晶系のPbOの正方晶系PbOへの変化を支援し得て、それにより電極の電気化学的働きを増大させる。
【0055】
調査は、高表面積炭素52が単独で、鉛蓄電池10の電荷受容性能力を高め得るが、それが、リグノスルホン酸塩54の効果を妨げ、結果的に電池の冷間クランキング能力を低下させる、ことを示してきた。本開示は、上記の問題が、スラリ50内に、炭素52と比較して過剰なリグノスルホン酸塩54を用いることによって、軽減され得ることを認識している。Vanisperse A以外のリグノスルホン酸塩54が、スラリ内に用いられ得る。
【0056】
高表面積炭素52
スラリ50内に用いることができる高表面積炭素52の実例は、15~1800m2/gの範囲の比表面積を有し得る。選択された実施例では、炭素の比表面積のできる限り好ましい範囲は、マサチューセッツ州、ボストンのCabot Corporationによって提供されているPBX51として知られ得る、1300~1500m2/gの範囲であり得る。炭素52は、重量で最終乾燥コーティングの10%~40%を構成し得る。PBX51のできる限り好ましい範囲は、コーティング混合物又はスラリ50の乾燥重量の30%~40%であり得る。スラリ50内の炭素52は、スイスのImerys Graphite and Carbons of Bironicoによって提供される、Timrex C-Sperse 2053又はTimrex CyPbridであり得る。炭素52の装填はやはり、スラリ50内の固体の10%~40%の範囲であり得る。
【0057】
マイクロ・ハイブリッド車両、マイルド・ハイブリッド車両、エネルギー貯蔵システム、及び電動アシスト自転車などの高出力用途で、電荷受容性及びサイクル寿命を著しく向上させる、高表面積を有する炭素52が、知られてきた。炭素52は、集電体グリッド及び/又は負極活物質に近接近しているその大きな表面積により、容量性の効果を有し得る。また、炭素52は、大きな硫酸鉛結晶の成長で立体障害を呈し得て、鉛に戻る硫酸鉛の効果的な再充電を保証し得る。これが、負極の硫酸化を妨げ、電池10の寿命を向上させる(裏付けのため以下を参照のこと、P.Baca、K.Micka、P.Krivik、K.Tonar、P.Toser、「Study of the influence of carbon on the negative lead-acid battery electrodes」、J.Power Sources196(2011)、3988~3992ページ、及びK.Micka、M.Calabek、P.Baja、P.Krivik、R.Labus、R.Bilko、「Studies of doped negative valve-regulated lead-acid battery electrodes」、J.Power Sources191(2009)、154~158ページ)。
【0058】
深い放電の繰り返し用途において、充電中に生成された濃い硫酸が、セルの低い部分に定着する場合、満液式電池は、酸の層形成問題により、故障することが多い。酸が、炭素コーティングされたシート及び/又は炭素シートの細孔を通過するときに、小さい酸の液滴を生成することによって、層形成過程を制限する、負極表面と接触する隣接する炭素シートを有するいくつかの電池設計が、知られてきた(裏付けのため以下を参照のこと、J.Furukawa、K.Smith、L.T.Lam、D.A.J.Rand、「Towards sustainable road transport with the UltraBattery(商標)」、J.Garche、E.Karden、P.T.Moseley、D.A.J.Randら編、「Lead-Acid Batteries for Future Automobiles」、Elsevier、アムステルダム、オランダ、2017年、349~391ページ、ISBN:978-0-444-63700-0)。高表面積炭素52は、NAMで用いられる場合、酸の蓄積空間を提供することによって、電極の利水を援助し得る(裏付けのため以下を参照のこと、P.T.Moseley、D.A.J.Randら、「Understanding the functions of supplementary carbon and its management in the negative active-mass of lead-acid battery:A review of progress」、J.Energy Storage 19(2018)、272~290ページ)。負極の表面に近接近して用いられる場合でも、炭素52は、酸の蓄積空間として有益な効果を有し得る。
【0059】
炭素52は、高表面積炭素52の代わりに用いられ得る、グラファイト、活性化炭素、アセチレン・ブラック、グラフェン、分散型カーボン・ナノチューブなどの、増大している電荷受容性において能動的な役割を行い得る、他の炭素であり得る。炭素の構成要素は、高表面積炭素52及び導電性カーボンブラックの混合物であり得る。カーボンブラックは、コーティングされたマット又はスクリム15のコンダクタンスを増大させることを援助し得て、高表面積炭素52は容量性の効果を増大させることを援助し得る。
【0060】
バインダ/混合助剤56
バインダ/混合助剤56の実例は、SLI及びEFB満液式電池セパレータ内の湿潤剤として用いられ得る、テネシー州サウス・ピッツバーグのColonial Chemical製のMA80であり得る。界面活性剤であるMA80は、スラリ50の界面エネルギーを低減することを援助し、ガラス・マット・スクリム15のコーティングのために、均質なスラリ50の効果的な混合及び準備を支援し得る。MA80以外のバインダ及び/又は混合助剤が、スラリ50内で用いられ得る。他の有用なバインダは、カルボキシメチルセルロース(CMC:carboxymethylcellulose)、ヒュームド・シリカ、アラビアゴム、グアーゴム、ポリビニルアルコール(PVA:Polyvinylalcohol)、ポリエチレン・グリコール300(PEG:polyethylene glycol)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:polyvinylidene fluoride)、及び液体Teflonであり得る。
【0061】
ガラス層状組織/AGM張合せ紙/AGM薄セパレータ
AGMセパレータ又はEFB若しくは満液式電池セパレータとともに用いられる積層構造の実例は、ガラス超極細繊維、又は合成繊維若しくはガラス及び合成繊維の複合材からなり得る。層状組織は、Johns Manville製のEvalithのB10、B15又はB20ガラス・マット、又はOwens CorningのB3A又はB4Aガラス・マットであり得る。層状組織はさらに、ガラス超極細繊維スクリム、セパレータが細断されたガラス・ストランド、粗なガラス超極細繊維、微細なガラス超極細繊維及び合成繊維からなるセパレータの張合せ紙、並びにバインダであり得る。粗なガラス超極細繊維の直径は、0.8μm~2.8μmの範囲であり得る。微細なガラス超極細繊維の直径は、0.1μm~1.5μmの範囲であり得る。合成繊維は、ポリエチレン・テレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)、ポリブチレン・テレフタレート(PBT:polybutylene terephthalate)、ポリアクリロニトリル(PAN:polyacrylonitrile)の繊維を含み得る。層状組織バインダは、Aquasetなどのような水性アクリレートであり得る。そのようなガラス超極細繊維スクリム又は張合せ紙のBET表面積は、Micromeritics Gemini 2390p又はTriStarのような同種の表面積分析器を用いて、BCIS-3A技術マニュアル(Battery Council International Standard 3A)のように測定される場合、0.4~2.2m2/gであり得る。そのようなAGM薄セパレータ又は張合せ紙の最大細孔サイズは、毛細管流動ポロメータ及びBCIS-3A技術マニュアルのように液体多孔度測定法又は第1気泡法で測定された場合、4μm~30μmの範囲であり得る。
【0062】
上記の実例の構成要素により、水性スラリ50は、高表面積炭素52、過剰なVanisperse A54、溶媒58として脱イオン水、及びバインダ56を用いて準備された。粗な又は微細な繊維ガラス・マット15は、このスラリ50でコーティングされ、20℃~25℃の周囲温度で空気乾燥された。乾燥工程は、それだけには限らないが、50℃~100℃の温度範囲の対流式加熱トンネル又は赤外加熱を含む、空気乾燥以外の工程であり得る。ポリエステル・スクリムが、ガラス・マットの代わりに用いられ得る。
【0063】
電荷受容性改善の程度を試験するために、コーティングされたガラス・マット/スクリム15が、自動車用2Vセルの構成で試験された。コーティングされたガラス・マット/スクリム15は、負極セパレータ外被内に配置され、7プレートの2Vセルで試験された。テネシー州のMicroporous LLC of Pine Flats製のEFB用途のDuroForce ULR電池セパレータが、選抜試験全体で利用された。DuroForce ULRは、UHMWPEセパレータ膜である。セルのC20容量は、約30Ahである。セルは次に、EN 50342:6~2015ページの動的電荷受容性試験のように構成され試験された。この試験法のように、セル又は電池は、ある一定の放電の深さ(DoD:Depth of Discharge)、たとえば20%DoD、40%DoD、60%DoD、80%DoDまで放電され、次に充放電サイクルを20回課せられる。20サイクルにわたる平均充電電流が、次に計算される。DCA条件下で試験された、2V鉛蓄電池セルでのスラリ50を有するコーティングされたガラス・マット/スクリム15を使用した結果、平均充電電流は、セパレータ内に炭素コーティングされたガラス・マットを有さない標準電池のそれと比較して、3倍であった。充電電流の増大は、標準的制御セル充電電流の200%である。炭素及び/又はガラス・マット並びに/或いは両方の組合せによる、酸の層形成の緩和の利益が、達成された。
【0064】
要するに、スラリ50をスクリム又は層状組織或いはAGMセパレータに含有させることによって、本開示は、処理の不便さを回避する、使いやすい塗布方法を可能にした。
【0065】
満液式又は改良型満液式電池セパレータ又はAGM電池セパレータのスクリム又は層状組織をコーティングするために、上記のスラリ50を用いるいくつかの利点は、以下に示される。
・リグノスルホン酸塩及び炭素の添加は、容易に対象とすることができる。
・より多くの特定のNAM(負極活物質)を、リグノスルホン酸塩-炭素接触に許容する。
・より多くの電解質を、リグノスルホン酸塩-炭素接触に許容する。
・NAM製造中の増量剤及び炭素を処理する課題を回避する。
・増量剤及び炭素がNAMに含有される場合と比較して、負極内でより高いペースト密度を許容する。
【0066】
明細書及び/又は図において、本開示の典型的な実施例が開示されてきた。本開示は、そのような例示的な実施例に限定されない。用語「及び/又は」の使用は、1つ又は複数の関連する列挙された事項のいずれか及び全ての組合せを包含する。図は、概略図であり、よって、必ずしも一定の比率に縮小して描かれていない。別段記述されていない限り、個別の用語は、汎用的且つ記述的な意味で使用されており、限定を目的としていない。
【0067】
上記の記述と図面は、例示的な実施例を含む。したがって、例示的な実施例を説明してきたが、本開示内には例示のみが存在し、多様な他の代替物、改作物、及び変形例が、本開示の範囲内でなされ得ることが、当業者よって留意されよう。方法のステップを、単にある順序で列挙又は番号付けしていることは、その方法のステップの順序についていかなる限定も構成しない。多くの変形例及び他の実施例が、本開示が関係し、上記の記述及び関連する図面で提示された教示の利益を有する、当業者には想起されよう。本明細書では、個別の用語が使用され得るが、それらは汎用的且つ記述的な意味のみで使用されており、限定を目的としていない。したがって、本開示は、本明細書で説明された具体的な実施例に限定されず、以下の請求項によってのみ限定される。
【国際調査報告】