(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】抗ヒトエフリンB1抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220708BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220708BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220708BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220708BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220708BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220708BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220708BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20220708BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220708BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220708BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220708BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220708BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220708BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
C12N15/113 Z
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K45/00
A61P31/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564384
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 US2020032707
(87)【国際公開番号】W WO2020232144
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515223112
【氏名又は名称】サンフォード ヘルス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フェルメール,パオラ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC412
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
単離された抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片、および腫瘍の治療におけるそれらの使用のための方法が、本明細書に開示される。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片であって、
(T/D)(Y/F)(N/Y)(V/I/M)(H/N)(配列番号1)、TYN(V/I)H(配列番号2)、TYNVH(配列番号3)、TYNIH(配列番号4)、およびDFYMN(配列番号5)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR1(H-CDR1);
(F/-)(I/-)(R/-)(A/N)(M/K)(W/V)NG(G/Y)(R/G/T)TDYN(S/P)(A/S)(F/V)K(S/G)(配列番号6)、AMWNGG(R/G)TDYNSAFKS(配列番号7)、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)、およびFIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR2(H-CDR2);ならびに
(E/-)(D/-)(Y/-)(Y/-)(Y/-)(S/-)(G/-)(R/-)(L/P/F)(D/T)(D/Y)(配列番号11)、LDY、PTD、およびEDYYYSGRFDY(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR3(H-CDR3)からなる群から選択される1つ、2つ、または3つすべての相補性決定領域(CDR)を含む重鎖を含む、単離された抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項2】
前記重鎖が、以下からなる群から選択されるCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
H-CDR1が、TYNVH(配列番号3)、TYNIH(配列番号4)、およびDFYMN(配列番号5)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
H-CDR2が、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)、およびFIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
H-CDR3が、LDY、PTD、およびEDYYYSGRFDY(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項3】
前記重鎖が、以下のようなCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
H-CDR1が、TYNVH(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2が、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3が、LDYのアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項4】
前記重鎖が、以下のようなCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
H-CDR1が、TYNIH(配列番号4)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2が、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3が、PTDのアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項5】
前記重鎖が、以下のようなCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
H-CDR1が、DFYMN(配列番号5)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2が、FIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3が、EDYYYSGRFDY(配列番号12)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項6】
単離された抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片であって、以下からなる群から選択される1つ、2つ、または3つすべての相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖を含み、
軽鎖CDR1(L-CDR1)が、KASQ(S/N)(V/I)(G/N)(I/K)(D/N/Y)(V/L)D(配列番号13)、KASQSVGI(D/N)VD(配列番号14)、KASQSVGIDVD(配列番号15)、KASQSVGINVD(配列番号16)、およびKASQNINKYLD(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2(L-CDR2)が、(G/H)(A/T)(S/N)(S/N)(R/L)(H/T)T(配列番号18)、GAS(N/S)RHT(配列番号19)、GASNRHT(配列番号20)、GASSRHT(配列番号21)、およびHTNNLQT(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR3(L-CDR3)が、L(H/Q)(Y/H)(G/D)S(I/R)P(F/R)T(配列番号23)、LHYGSIPFT(配列番号24)、およびLQHDSRPRT(配列番号25)からなる群から選択される、単離された抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項7】
前記軽鎖が、以下からなる群から選択されるCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
L-CDR1が、KASQSVGIDVD(配列番号15)、KASQSVGINVD(配列番号16)、およびKASQNINKYLD(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
L-CDR2が、GASNRHT(配列番号20)、GASSRHT(配列番号21)、およびHTNNLQT(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
L-CDR3が、LHYGSIPFT(配列番号24)およびLQHDSRPRT(配列番号25)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項8】
前記軽鎖が、以下のようなCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
L-CDR1が、KASQSVGIDVD(配列番号15)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2が、GASNRHT(配列番号20)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3が、LHYGSIPFT(配列番号24)のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項9】
前記軽鎖が、以下のようなCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
L-CDR1が、KASQSVGINVD(配列番号16)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2が、GASSRHT(配列番号21)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3が、LHYGSIPFT(配列番号24)のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の抗ヒトエフリンB1またはその断片。
【請求項10】
前記軽鎖が、以下のようなCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
L-CDR1が、KASQNINKYLD(配列番号17)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2が、HTNNLQT(配列番号22)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3が、LQHDSRPRT(配列番号25)のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項11】
単離された抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片であって、以下からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべての相補性決定領域(CDR)を含み、
重鎖CDR1(H-CDR1)が、(T/D)(Y/F)(N/Y)(V/I/M)(H/N)(配列番号1)、TYN(V/I)H(配列番号2)、TYNVH(配列番号3)、TYNIH(配列番号4)、およびDFYMN(配列番号5)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2(H-CDR2)が、(F/-)(I/-)(R/-)(A/N)(M/K)(W/V)NG(G/Y)(R/G/T)TDYN(S/P)(A/S)(F/V)K(S/G)(配列番号6)、AMWNGG(R/G)TDYNSAFKS(配列番号7)、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)、およびFIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3(H-CDR3)が、(E/-)(D/-)(Y/-)(Y/-)(Y/-)(S/-)(G/-)(R/-)(L/P/F)(D/T)(D/Y)(配列番号11)、LDY、PTD、およびEDYYYSGRFDY(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1(L-CDR1)が、KASQ(S/N)(V/I)(G/N)(I/K)(D/N/Y)(V/L)D(配列番号13)、KASQSVGI(D/N)VD(配列番号14)、KASQSVGIDVD(配列番号15)、KASQSVGINVD(配列番号16)、およびKASQNINKYLD(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2(L-CDR2)が、(G/H)(A/T)(S/N)(S/N)(R/L)(H/T)T(配列番号18)、GAS(N/S)RHT(配列番号19)、GASNRHT(配列番号20)、GASSRHT(配列番号21)、およびHTNNLQT(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR3(L-CDR3)が、L(H/Q)(Y/H)(G/D)S(I/R)P(F/R)T(配列番号23)、LHYGSIPFT(配列番号24)、およびLQHDSRPRT(配列番号25)からなる群から選択される、単離された抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項12】
前記CDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべてが、以下からなる群から選択され、
H-CDR1が、TYNVH(配列番号3)、TYNIH(配列番号4)、およびDFYMN(配列番号5)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
H-CDR2が、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)、およびFIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
H-CDR3が、LDY、PTD、およびEDYYYSGRFDY(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
L-CDR1が、KASQSVGIDVD(配列番号15)、KASQSVGINVD(配列番号16)、およびKASQNINKYLD(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
L-CDR2が、GASNRHT(配列番号20)、GASSRHT(配列番号21)、およびHTNNLQT(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
L-CDR3が、LHYGSIPFT(配列番号24)およびLQHDSRPRT(配列番号25)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項13】
前記CDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべてが、以下の通りであり、
H-CDR1が、TYNVH(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2が、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3が、LDYのアミノ酸配列を含み、
L-CDR1が、KASQSVGIDVD(配列番号15)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2が、GASNRHT(配列番号20)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3が、LHYGSIPFT(配列番号24)のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項14】
前記CDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべてが、以下の通りであり、
H-CDR1が、TYNIH(配列番号4)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2が、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3が、PTDのアミノ酸配列を含み、
L-CDR1が、KASQSVGINVD(配列番号16)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2が、GASSRHT(配列番号21)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3が、LHYGSIPFT(配列番号24)のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項15】
前記CDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべてが、以下の通りであり、
H-CDR1が、DFYMN(配列番号5)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2が、FIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3が、EDYYYSGRFDY(配列番号12)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR1が、KASQNINKYLD(配列番号17)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2が、HTNNLQT(配列番号22)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3が、LQHDSRPRT(配列番号25)のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項16】
以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含み、括弧内の残基が、任意である、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【化1】
【請求項17】
以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含み、括弧内の残基が、任意である、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【化2】
【請求項18】
以下のアミノ酸配列を有する重鎖(括弧内の残基は、任意である)と、
【化3】
以下のアミノ酸配列を有する軽鎖(括弧内の残基は、任意である)と、を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【化4】
【請求項19】
以下のアミノ酸配列を有する重鎖(括弧内の残基は、任意である)と、
【化5】
以下のアミノ酸配列を有する軽鎖(括弧内の残基は、任意である)と、を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【化6】
【請求項20】
以下のアミノ酸配列を有する重鎖(括弧内の残基は、任意である)と、
【化7】
以下のアミノ酸配列を有する軽鎖(括弧内の残基は、任意である)と、を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【化8】
【請求項21】
前記抗体またはその断片が、配列番号32(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)からなるアミノ酸配列内のヒトエフリンB1エピトープに結合する、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項22】
前記抗体またはその断片が、配列番号32(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)からなるアミノ酸配列内の少なくとも14アミノ酸長のヒトエフリンB1エピトープに結合する、請求項21に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項23】
前記抗体またはその断片が、配列番号32(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)からなるアミノ酸配列内の14アミノ酸長~20アミノ酸長のヒトエフリンB1エピトープに結合する、請求項21または22に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項24】
前記ヒトエフリンB1エピトープが、配列番号33~35のSWSSLNPKFLSGKG(配列番号33)、KNLEPVSWSSLNPKFLSGKG(配列番号34)、およびSGKGLVIYPKIGDKL(配列番号35)からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項21~23のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項25】
前記抗体またはその断片が、配列番号32(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)からなるアミノ酸配列内のヒトエフリンB1エピトープに選択的に結合する、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項26】
前記ヒトエフリンB1エピトープが、配列番号32(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)からなるアミノ酸配列内の少なくとも14アミノ酸長である、請求項25に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項27】
前記ヒトエフリンB1エピトープが、配列番号32(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)からなるアミノ酸配列内の14アミノ酸長~20アミノ酸長である、請求項25または26に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項28】
前記ヒトエフリンB1エピトープが、配列番号33~35からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項25~27のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項29】
前記抗体が、モノクローナル抗体またはその断片を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項30】
前記抗体が、ヒト化抗体またはその断片を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項31】
検出可能な標識をさらに含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項32】
前記抗体またはその断片にコンジュゲートされた治療薬をさらに含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片。
【請求項33】
請求項1~30のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片をコードする核酸。
【請求項34】
好適な制御配列に作動可能に連結された、請求項33に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項35】
請求項34に記載の発現ベクターまたは請求項33に記載の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項36】
(a)請求項1~32のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体もしくはその断片、またはその薬学的に許容される塩と、
(b)薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項37】
腫瘍エクソソーム放出の阻害剤、またはその薬学的に許容される塩をさらに含む、請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
前記腫瘍エクソソーム放出の阻害剤が、Rab27aの阻害剤および/またはRab27bの阻害剤を含む、請求項37に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
前記Rab27aの阻害剤および/または前記Rab27bの阻害剤が、Rab27aおよび/もしくはRab27b特異的抗体、アプタマー、低分子干渉RNA、低分子内部セグメント化干渉RNA、短ヘアピンRNA、マイクロRNA、ならびに/またはアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項38に記載の薬学的組成物。
【請求項40】
腫瘍の成長または転移を制限するのに有効な量の、請求項1~32のいずれか一項に記載の抗ヒトエフリンB1抗体もしくはその断片、または請求項36~39のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、腫瘍を有する対象に投与することを含む、腫瘍治療のための方法。
【請求項41】
前記方法が、腫瘍神経支配を制限する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記方法が、E6とPTPN13との間の相互作用の阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することをさらに含む、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記方法が、エフリンB1リン酸化の阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することをさらに含む、請求項40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記腫瘍が、神経支配された固形腫瘍である、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記腫瘍が、頭部、頸部、乳房、肺、肝臓、卵巣、結腸、結腸直腸、脳、黒色腫、膵臓、骨、または前立腺の腫瘍からなる群から選択される、請求項40~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記腫瘍が、高リスクのヒトパピローマウイルス(HPV)陽性腫瘍である、請求項40~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記HPV陽性腫瘍が、前記頭部もしくは頸部の腫瘍、または子宮頸部の腫瘍である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記頭部もしくは頸部、または子宮頸部の前記ヒトパピローマウイルス陽性腫瘍が、扁平上皮がんを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記投与が、前記腫瘍への局所送達を含む、請求項40~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記腫瘍が、対照と比較して、低レベルのPTPN13発現、タンパク質レベル、またはタンパク質活性レベルを有する、請求項40~49のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月14日に出願された米国仮特許出願第62/847863号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供に関する記載
本発明は、国立一般医科学研究所(NIGMS)によって授与された助成金番号P20GM103548の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
配列表への参照
本出願は、「18-285-PCT_Sequence-Listing_ST25.txt」という名前の30kbのバイトサイズを有する、2020年5月13日に作成された電子テキストファイルとして提出された配列表を含む。本電子ファイルに含まれる情報は、米国特許法第1.52条(e)(5)に従ってその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
神経支配された腫瘍は、神経支配の少ない腫瘍よりも侵襲性である。例えば、前立腺がんでは、がん組織への神経線維の動員は、より高い腫瘍増殖指数ならびにより高い再発および転移のリスクと関連付けられている。前臨床および遺伝子操作されたマウスがんモデルにおける除神経研究は、疾患の進行における神経要素の機能的寄与を裏付けている。これらの研究は、神経系が傍観者ではなく、むしろ発がんおよびがんの進行に積極的に関与していることを強く示している。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本開示は、
(T/D)(Y/F)(N/Y)(V/I/M)(H/N)(配列番号1)、TYN(V/I)H(配列番号2)、TYNVH(配列番号3)、TYNIH(配列番号4)、およびDFYMN(配列番号5)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR1(H-CDR1)、
(F/-)(I/-)(R/-)(A/N)(M/K)(W/V)NG(G/Y)(R/G/T)TDYN(S/P)(A/S)(F/V)K(S/G)(配列番号6)、AMWNGG(R/G)TDYNSAFKS(配列番号7)、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)、およびFIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR2(H-CDR2)、ならびに
(E/-)(D/-)(Y/-)(Y/-)(Y/-)(S/-)(G/-)(R/-)(L/P/F)(D/T)(D/Y)(配列番号11)、LDY、PTD、およびEDYYYSGRFDY(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR3(H-CDR3)からなる群から選択される1つ、2つ、または3つすべての相補性決定領域(CDR)を含む重鎖を含む、単離された抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片を提供する。
【0006】
様々な実施形態では、重鎖は、以下からなる群から選択されるCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
H-CDR1は、TYNVH(配列番号3)、TYNIH(配列番号4)、およびDFYMN(配列番号5)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)、およびFIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、LDY、PTD、およびEDYYYSGRFDY(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または
H-CDR1は、TYNVH(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、LDYのアミノ酸配列を含むか、または
H-CDR1は、TYNIH(配列番号4)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、PTDのアミノ酸配列を含むか、または
H-CDR1は、DFYMN(配列番号5)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、FIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、EDYYYSGRFDY(配列番号12)のアミノ酸配列を含む。
【0007】
別の実施形態では、単離された抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、以下からなる群から選択される1つ、2つ、または3つすべての相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖を含み、
軽鎖CDR1(L-CDR1)は、KASQ(S/N)(V/I)(G/N)(I/K)(D/N/Y)(V/L)D(配列番号13)、KASQSVGI(D/N)VD(配列番号14)、KASQSVGIDVD(配列番号15)、KASQSVGINVD(配列番号16)、およびKASQNINKYLD(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2(L-CDR2)は、(G/H)(A/T)(S/N)(S/N)(R/L)(H/T)T(配列番号18)、GAS(N/S)RHT(配列番号19)、GASNRHT(配列番号20)、GASSRHT(配列番号21)、およびHTNNLQT(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR3(L-CDR3)は、L(H/Q)(Y/H)(G/D)S(I/R)P(F/R)T(配列番号23)、LHYGSIPFT(配列番号24)、およびLQHDSRPRT(配列番号25)からなる群から選択される。
【0008】
様々な実施形態では、軽鎖は、以下からなる群から選択されるCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
L-CDR1は、KASQSVGIDVD(配列番号15)、KASQSVGINVD(配列番号16)、およびKASQNINKYLD(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、GASNRHT(配列番号20)、GASSRHT(配列番号21)、およびHTNNLQT(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LHYGSIPFT(配列番号24)およびLQHDSRPRT(配列番号25)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または
L-CDR1は、KASQSVGIDVD(配列番号15)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、GASNRHT(配列番号20)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LHYGSIPFT(配列番号24)のアミノ酸配列を含むか、または
L-CDR1は、KASQSVGINVD(配列番号16)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、GASSRHT(配列番号21)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LHYGSIPFT(配列番号24)のアミノ酸配列を含むか、または
L-CDR1は、KASQNINKYLD(配列番号17)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、HTNNLQT(配列番号22)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LQHDSRPRT(配列番号25)のアミノ酸配列を含む。
【0009】
別の実施形態では、単離された抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、以下からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべての相補性決定領域(CDR)を含み、
重鎖CDR1(H-CDR1)は、(T/D)(Y/F)(N/Y)(V/I/M)(H/N)(配列番号1)、TYN(V/I)H(配列番号2)、TYNVH(配列番号3)、TYNIH(配列番号4)、およびDFYMN(配列番号5)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2(H-CDR2)は、(F/-)(I/-)(R/-)(A/N)(M/K)(W/V)NG(G/Y)(R/G/T)TDYN(S/P)(A/S)(F/V)K(S/G)(配列番号6)、AMWNGG(R/G)TDYNSAFKS(配列番号7)、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)、およびFIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3(H-CDR3)は、(E/-)(D/-)(Y/-)(Y/-)(Y/-)(S/-)(G/-)(R/-)(L/P/F)(D/T)(D/Y)(配列番号11)、LDY、PTD、およびEDYYYSGRFDY(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1(L-CDR1)は、KASQ(S/N)(V/I)(G/N)(I/K)(D/N/Y)(V/L)D(配列番号13)、KASQSVGI(D/N)VD(配列番号14)、KASQSVGIDVD(配列番号15)、KASQSVGINVD(配列番号16)、およびKASQNINKYLD(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2(L-CDR2)は、(G/H)(A/T)(S/N)(S/N)(R/L)(H/T)T(配列番号18)、GAS(N/S)RHT(配列番号19)、GASNRHT(配列番号20)、GASSRHT(配列番号21)、およびHTNNLQT(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR3(L-CDR3)は、L(H/Q)(Y/H)(G/D)S(I/R)P(F/R)T(配列番号23)、LHYGSIPFT(配列番号24)、およびLQHDSRPRT(配列番号25)からなる群から選択される。
【0010】
様々な実施形態では、CDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべては、以下からなる群から選択され、
H-CDR1は、TYNVH(配列番号3)、TYNIH(配列番号4)、およびDFYMN(配列番号5)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)、およびFIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、LDY、PTD、およびEDYYYSGRFDY(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
L-CDR1は、KASQSVGIDVD(配列番号15)、KASQSVGINVD(配列番号16)、およびKASQNINKYLD(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、GASNRHT(配列番号20)、GASSRHT(配列番号21)、およびHTNNLQT(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LHYGSIPFT(配列番号24)およびLQHDSRPRT(配列番号25)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または
H-CDR1は、TYNVH(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、LDYのアミノ酸配列を含み、
L-CDR1は、KASQSVGIDVD(配列番号15)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、GASNRHT(配列番号20)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LHYGSIPFT(配列番号24)のアミノ酸配列を含むか、または
H-CDR1は、TYNIH(配列番号4)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、PTDのアミノ酸配列を含み、
L-CDR1は、KASQSVGINVD(配列番号16)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、GASSRHT(配列番号21)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LHYGSIPFT(配列番号24)のアミノ酸配列を含むか、または
H-CDR1は、DFYMN(配列番号5)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、FIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、EDYYYSGRFDY(配列番号12)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR1は、KASQNINKYLD(配列番号17)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、HTNNLQT(配列番号22)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LQHDSRPRT(配列番号25)のアミノ酸配列を含む。
【0011】
他の実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含み、括弧内の残基は、任意である。
【化1】
【0012】
他の実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含み、括弧内の残基は、任意である。
【化2】
【0013】
様々なさらなる実施形態では、本開示は、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片を提供し、抗体またはその断片は、配列番号32からなるアミノ酸配列内のヒトエフリンB1エピトープに選択的に結合する。(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)。
【0014】
様々な他の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体もしくはその断片を含み、抗体は、ヒト化抗体もしくはその断片を含み、かつ/または抗体もしくはその断片は、抗体もしくはその断片にコンジュゲートした検出可能な標識および/もしくは治療薬をさらに含む。
【0015】
他の実施形態では、本開示は、本開示の抗体をコードする核酸、好適な制御配列に作動可能に連結された本開示の核酸を含む発現ベクター、発現ベクターもしくは本開示の核酸を含む宿主細胞、本開示の抗体もしくはその断片および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物、および腫瘍を有する対象に、腫瘍成長もしくは転移を制限するのに有効な量の抗ヒトエフリンB1抗体もしくはその断片を投与することを含む、腫瘍を治療するための方法、または薬学的組成物、あるいは本明細書に開示される任意の実施形態または実施形態の組み合わせを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】(A)抗エフリンB1抗体がインビトロで神経突起伸長を遮断する能力を試験するために、それらをSCC47-エフリンB1細胞からの馴化培地と共にインキュベートした。24時間後、培地を使用してPC12細胞を刺激した。翌日、PC12細胞を固定し、β-IIIチューブリンについて染色し、神経突起伸長を定量化した。棒グラフは、1つの抗体(2G4)を除いてすべての試験された抗体が、SCC47-エフリンB1からの馴化培地によって誘導されたものと比較して、神経突起伸長を有意に減衰させることができたことを示す。
【
図1B】(B)腫瘍成長を遮断するためのエフリンB1抗体の有用性を試験するために、免疫不全のNOD SCIDマウスにヒトSCC47-エフリンB1腫瘍を移植した。4つのマウス群があり、N=5マウス/群であった。1つのマウス群は、アイソタイプが一致するIgG(IgG2a/2b)対照群とした。他の3つの群には、各々異なるエフリンB1抗体クローン(1H7、2G8、または6C4)を注射した。腫瘍成長を追跡し、腫瘍移植後14日目にマウスを犠牲死させた。1H7および2G8エフリンB1抗体を注射した群の腫瘍成長は、対照よりも有意に小さかった。6C4エフリンB1抗体を注射した群の腫瘍成長は、腫瘍体積の低減を示したが、この所見は、統計的に有意ではなかった。
【
図2A】NSGマウスに、内因性(基底)エフリンB1を発現するヒトSCC1(HPV陰性ヒト頭頸部扁平上皮がん細胞株)細胞またはエフリンB1を安定して過剰発現するSCC1細胞(SCC1 OE#18)を注射した。これらの動物を精製抗体で毎日処置したところ、腫瘍成長が続いた。下の
図2A~Bに示されるように、HPV陰性SCC1細胞は、エフリンB1を基底レベルで発現しているか(A)、またはエフリンB1を過剰発現しているか(B)にかかわらず、抗体治療に応答し、腫瘍成長の減少を伴う。
【
図2B】NSGマウスに、内因性(基底)エフリンB1を発現するヒトSCC1(HPV陰性ヒト頭頸部扁平上皮がん細胞株)細胞またはエフリンB1を安定して過剰発現するSCC1細胞(SCC1 OE#18)を注射した。これらの動物を精製抗体で毎日処置したところ、腫瘍成長が続いた。下の
図2A~Bに示されるように、HPV陰性SCC1細胞は、エフリンB1を基底レベルで発現しているか(A)、またはエフリンB1を過剰発現しているか(B)にかかわらず、抗体治療に応答し、腫瘍成長の減少を伴う。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「a」および「an」という用語は、「1つ」、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈される。文脈上特に必要がない限り、本明細書で使用される単数形には複数形が含まれ、複数形には単数形が含まれるものとする。
【0018】
本出願で使用されるすべての科学的および技術的用語は、特に明記しない限り、当該技術分野で一般的に使用される意味を有する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「約」は、列挙された寸法または単位の+/-5%を意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、アミノ酸残基は、以下のように省略される:アラニン(Ala;A)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、アルギニン(Arg;R)、システイン(Cys;C)、グルタミン酸(Glu;E)、グルタミン(Gln;Q)、グリシン(Gly;G)、ヒスチジン(His;H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リジン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、スレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)、およびバリン(Val;V)。
【0021】
本開示の任意の態様のすべての実施形態は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、組み合わせて使用することができる。
【0022】
第1の態様では、本開示は、単離された抗ヒトエフリンB1抗体、またはそのエフリンB1結合断片(本明細書では「その断片」と呼ばれる)を提供する。抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、例えば、腫瘍の成長または転移を制限するために有用である。
【0023】
一実施形態では、エフリンB1特異的抗体は、以下の配列番号36に示される配列を有するエフリンB1タンパク質に結合する。
【0024】
ヒトエフリンB1アミノ酸配列
細胞外ドメインは太字/下線付き、細胞質ドメインはイタリック体、膜貫通ドメインは拡大/アウトラインフォント
MARPGQRWLGKWLVAMVVWALCRLATPLAKNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKLDIICPRAERPYEYYKLYLVRPEQAAACSTVLDPNVLVTCNRPEQEIRFTIKFQEFSPNYMGLEFKKHHDYYITSTSNGSLEGLENREGGVCRTRTMKIIMKVGQDPNAVTPEQLTTSRPSKEADNTVKMATQAPGSRGSLGDSDGKHETVNQEEKSGPGASGGSSGDPDGFFNSKVALFAAVGAGCVIFLLIIIFLTVLLLKLRKRHRKHTQQRAAALSLSTLASPKGGSGTAGTEPSDIIIPLRTTENNYCPHYEKVSGDYGHPVYIVQEMPPQSPANIYYKV(配列番号36)
【0025】
別の実施形態では、エフリンB1特異的抗体は、エフリンB1タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)における1つ以上のエピトープに結合し、ECD配列は、以下の配列番号37として示される配列を含むか、またはそれからなる。
MARPGQRWLGKWLVAMVVWALCRLATPLAKNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKLDIICPRAERPYEYYKLYLVRPEQAAACSTVLDPNVLVTCNRPEQEIRFTIKFQEFSPNYMGLEFKKHHDYYITSTSNGSLEGLENREGGVCRTRTMKIIMKVGQDPNAVTPEQLTTSRPSKEADNTVKMATQAPGSRGSLGDSDGKHETVNQEEKSGPGASGGSSGDPDGFFNSK(配列番号37、ヒトエフリンB1細胞外ドメイン)
【0026】
別の実施形態では、エフリンB1特異的抗体は、配列番号36のアミノ酸配列を有するが、配列番号36のアミノ酸配列に対して以下のアミノ酸変化のうちの1つ以上を有するエフリンB1タンパク質に結合する。
27位P~R
54位P~L
62位I~T
98位L~S
111位T~I
115位Q~P
119位P~T
119位P~S
137位T~A
138位S~F
151位G~S
151位G~V
153位C~S
153位C~Y
155位T~P
158位M~I
158位M~V
182位S~R
【0027】
これらの位置変化は、頭蓋前頭鼻症候群と関連付けられる変異体などの、ヒトエフリンB1タンパク質(配列番号36)の変異体に存在する。
【0028】
本明細書に開示されるように、「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、ヒトエフリンB1タンパク質のエピトープに免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。したがって、抗体という用語は、抗体分子全体だけでなく、抗体断片、ならびに抗体および抗体断片の変異体(誘導体を含む)も包含する。そのような抗体またはその抗体断片には、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv、rIgG、組換え単鎖Fv断片(scFv)、二価または二重特異性分子、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用される場合、「単離された」とは、示された分子が、同じ種類の他の生物学的高分子の実質的な不在下で存在することを意味する。本明細書で使用される「単離された」という用語は、好ましくは、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくはさらに少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%の同じ種類の生体高分子が存在することを意味する。
【0030】
一実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、
(T/D)(Y/F)(N/Y)(V/I/M)(H/N)(配列番号1)、TYN(V/I)H(配列番号2)、TYNVH(配列番号3)、TYNIH(配列番号4)、およびDFYMN(配列番号5)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR1(H-CDR1);
(F/-)(I/-)(R/-)(A/N)(M/K)(W/V)NG(G/Y)(R/G/T)TDYN(S/P)(A/S)(F/V)K(S/G)(配列番号6)、AMWNGG(R/G)TDYNSAFKS(配列番号7)、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)、およびFIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR2(H-CDR2);ならびに
(E/-)(D/-)(Y/-)(Y/-)(Y/-)(S/-)(G/-)(R/-)(L/P/F)(D/T)(D/Y)(配列番号11)、LDY、PTD、およびEDYYYSGRFDY(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR3(H-CDR3)からなる群から選択される1つ、2つ、または3つすべての相補性決定領域(CDR)を含む重鎖を含む。
【0031】
別の実施形態では、重鎖は、以下からなる群から選択されるCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
H-CDR1は、TYNVH(配列番号3)、TYNIH(配列番号4)、およびDFYMN(配列番号5)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)、およびFIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、LDY、PTD、およびEDYYYSGRFDY(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0032】
さらなる実施形態では、重鎖は、以下のようなCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
H-CDR1は、TYNVH(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、LDYのアミノ酸配列を含む。
【0033】
一実施形態では、重鎖は、以下のようなCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
H-CDR1は、TYNIH(配列番号4)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、PTDのアミノ酸配列を含む。
【0034】
別の実施形態では、重鎖は、以下のようなCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
H-CDR1は、DFYMN(配列番号5)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、FIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、EDYYYSGRFDY(配列番号12)のアミノ酸配列を含む。
【0035】
別の実施形態では、本開示は、以下からなる群から選択される1つ、2つ、または3つすべての相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖を含む、単離された抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片を提供し、
軽鎖CDR1(L-CDR1)は、KASQ(S/N)(V/I)(G/N)(I/K)(D/N/Y)(V/L)D(配列番号13)、KASQSVGI(D/N)VD(配列番号14)、KASQSVGIDVD(配列番号15)、KASQSVGINVD(配列番号16)、およびKASQNINKYLD(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2(L-CDR2)は、(G/H)(A/T)(S/N)(S/N)(R/L)(H/T)T(配列番号18)、GAS(N/S)RHT(配列番号19)、GASNRHT(配列番号20)、GASSRHT(配列番号21)、およびHTNNLQT(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR3(L-CDR3)は、L(H/Q)(Y/H)(G/D)S(I/R)P(F/R)T(配列番号23)、LHYGSIPFT(配列番号24)、およびLQHDSRPRT(配列番号25)からなる群から選択される。
【0036】
一実施形態では、軽鎖は、以下からなる群から選択されるCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
L-CDR1は、KASQSVGIDVD(配列番号15)、KASQSVGINVD(配列番号16)、およびKASQNINKYLD(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、GASNRHT(配列番号20)、GASSRHT(配列番号21)、およびHTNNLQT(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LHYGSIPFT(配列番号24)およびLQHDSRPRT(配列番号25)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0037】
別の実施形態では、軽鎖は、以下のようなCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
L-CDR1は、KASQSVGIDVD(配列番号15)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、GASNRHT(配列番号20)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LHYGSIPFT(配列番号24)のアミノ酸配列を含む。
【0038】
さらなる実施形態では、軽鎖は、以下のようなCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
L-CDR1は、KASQSVGINVD(配列番号16)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、GASSRHT(配列番号21)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LHYGSIPFT(配列番号24)のアミノ酸配列を含む。
【0039】
一実施形態では、軽鎖は、以下のようなCDRのうちの1つ、2つ、または3つすべてを含み、
L-CDR1は、KASQNINKYLD(配列番号17)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、HTNNLQT(配列番号22)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LQHDSRPRT(配列番号25)のアミノ酸配列を含む。
【0040】
別の実施形態では、単離された抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、
(T/D)(Y/F)(N/Y)(V/I/M)(H/N)(配列番号1)、TYN(V/I)H(配列番号2)、TYNVH(配列番号3)、TYNIH(配列番号4)、およびDFYMN(配列番号5)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR1(H-CDR1);、
(F/-)(I/-)(R/-)(A/N)(M/K)(W/V)NG(G/Y)(R/G/T)TDYN(S/P)(A/S)(F/V)K(S/G)(配列番号6)、AMWNGG(R/G)TDYNSAFKS(配列番号7)、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)、およびFIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR2(H-CDR2);
(E/-)(D/-)(Y/-)(Y/-)(Y/-)(S/-)(G/-)(R/-)(L/P/F)(D/T)(D/Y)(配列番号11)、LDY、PTD、およびEDYYYSGRFDY(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR3(H-CDR3);
KASQ(S/N)(V/I)(G/N)(I/K)(D/N/Y)(V/L)D(配列番号13)、KASQSVGI(D/N)VD(配列番号14)、KASQSVGIDVD(配列番号15)、KASQSVGINVD(配列番号16)、およびKASQNINKYLD(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖CDR1(L-CDR1);
(G/H)(A/T)(S/N)(S/N)(R/L)(H/T)T(配列番号18)、GAS(N/S)RHT(配列番号19)、GASNRHT(配列番号20)、GASSRHT(配列番号21)、およびHTNNLQT(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖CDR2(L-CDR2);ならびに
L(H/Q)(Y/H)(G/D)S(I/R)P(F/R)T(配列番号23)、LHYGSIPFT(配列番号24)、およびLQHDSRPRT(配列番号25)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖CDR3(L-CDR3)からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべての相補性決定領域(CDR)を含む。
【0041】
さらなる実施形態では、CDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべては、
TYNVH(配列番号3)、TYNIH(配列番号4)、およびDFYMN(配列番号5)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、H-CDR1;
AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)、およびFIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、H-CDR2;
LDY、PTD、およびEDYYYSGRFDY(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、H-CDR3;
KASQSVGIDVD(配列番号15)、KASQSVGINVD(配列番号16)、およびKASQNINKYLD(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、L-CDR1;
GASNRHT(配列番号20)、GASSRHT(配列番号21)、およびHTNNLQT(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、L-CDR2;ならびに
LHYGSIPFT(配列番号24)およびLQHDSRPRT(配列番号25)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、L-CDR3からなる群から選択される。
【0042】
別の実施形態では、CDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべては、以下の通りであり、
H-CDR1は、TYNVH(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、AMWNGGRTDYNSAFKS(配列番号8)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、LDYのアミノ酸配列を含み、
L-CDR1は、KASQSVGIDVD(配列番号15)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、GASNRHT(配列番号20)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LHYGSIPFT(配列番号24)のアミノ酸配列を含む。
【0043】
一実施形態では、CDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべては、以下の通りであり、
H-CDR1は、TYNIH(配列番号4)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、AMWNGGGTDYNSAFKS(配列番号9)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、PTDのアミノ酸配列を含み、
L-CDR1は、KASQSVGINVD(配列番号16)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、GASSRHT(配列番号21)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LHYGSIPFT(配列番号24)のアミノ酸配列を含む。
【0044】
さらなる実施形態では、CDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべては、以下の通りであり、
H-CDR1は、DFYMN(配列番号5)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR2は、FIRNKVNGYTTDYNPSVKG(配列番号10)のアミノ酸配列を含み、
H-CDR3は、EDYYYSGRFDY(配列番号12)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR1は、KASQNINKYLD(配列番号17)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR2は、HTNNLQT(配列番号22)のアミノ酸配列を含み、
L-CDR3は、LQHDSRPRT(配列番号25)のアミノ酸配列を含む。
【0045】
一実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含み、括弧内の残基は、任意である。
【化3】
【0046】
別の実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含み、括弧内の残基は、任意である。
【化4】
【0047】
さらなる実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、以下のアミノ酸配列を有する重鎖(括弧内の残基は、任意である)と、
【化5】
以下のアミノ酸配列を有する軽鎖(括弧内の残基は、任意である)と、を含む。
【化6】
【0048】
一実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、以下のアミノ酸配列を有する重鎖(括弧内の残基は、任意である)と、
【化7】
以下のアミノ酸配列を有する軽鎖(括弧内の残基は、任意である)と、を含む。
【化8】
【0049】
別の実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、以下のアミノ酸配列を有する重鎖(括弧内の残基は、任意である)と、
【化9】
以下のアミノ酸配列を有する軽鎖(括弧内の残基は、任意である)と、を含む。
【化10】
【0050】
上記のすべての一実施形態では、任意のアミノ酸残基は存在しない。別の実施形態では、任意のアミノ酸残基が存在する。
【0051】
別の実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、配列番号32(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)からなるアミノ酸配列内のヒトエフリンB1エピトープに結合する。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号32(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)からなるアミノ酸配列内の少なくとも14アミノ酸長のヒトエフリンB1エピトープに結合する。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号32(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)からなるアミノ酸配列内の14アミノ酸長~20アミノ酸長のヒトエフリンB1エピトープに結合する。さらなる実施形態では、ヒトエフリンB1エピトープは、配列番号33~35 SWSSLNPKFLSGKG(配列番号33)、KNLEPVSWSSLNPKFLSGKG(配列番号34)、およびSGKGLVIYPKIGDKL(配列番号35)からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0052】
別の態様では、本開示は、本開示の抗ヒトエフリンB1抗体またはその抗原結合断片のいずれかと同じエピトープに選択的に結合する抗体およびその断片を提供する。一実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体または断片は、配列番号32(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)からなるアミノ酸配列内のヒトエフリンB1エピトープに選択的に結合する。一実施形態では、ヒトエフリンB1エピトープは、配列番号32(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)からなるアミノ酸配列内の少なくとも14アミノ酸長である。別の実施形態では、ヒトエフリンB1エピトープは、配列番号32(KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL)からなるアミノ酸配列内の14アミノ酸長~20アミノ酸長である。さらなる実施形態では、ヒトエフリンB1エピトープは、配列番号33~35からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0053】
抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、意図された使用に好適であるとみなされる任意の追加の成分と連結することができる。一実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、検出可能な標識をさらに含む。そのような実施形態は、例えば、治療過程を監視するために有用であり得る。放射性同位元素、蛍光分子、磁性粒子(ナノ粒子を含む)、金属粒子(ナノ粒子を含む)、蛍光分子、および酵素を含むがこれらに限定されない、任意の好適な検出可能な標識を、共有結合的に、遺伝的に、または任意の他の手段によって抗体に結合させることができる。
【0054】
他の実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、抗体またはその断片にコンジュゲートされた治療薬をさらに含み得る。腫瘍エクソソーム放出の阻害剤(Rab27aの阻害剤、Rab27bの阻害剤、および/もしくはGW4869、またはそれらの薬学的塩を含むがこれらに限定されない)、E6とPTPN13との間の相互作用の阻害剤(PTPN13への結合についてE6と競合するペプチド、またはE6への結合についてPTPN13と競合するペプチドを含むが、これらに限定されない)、ならびに/あるいはエフリンB1リン酸化の阻害剤(ダサタニブまたはその薬学的に許容される塩を含むが、これらに限定されないSrcキナーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない所与の目的のための任意の好適な追加の治療薬が連結され得る。GW4869の構造は以下に提供され、エクソソーム放出のためのその使用は、Chen et al.,Journal of Cell Commun Signal 2018 12:343-357 PMID 29063370、Richards et al.Oncogene 2017 36:1770-1778,PMID 27669441、Essandoh et al.,Biochim Biophys Acta 2015 1852:2362-71 PMID 26300484、およびGong et al.,Oncotarget 2017 8:45200-45212 PMID 28423355に提供されている。
GW4869
【化11】
【0055】
別の態様では、本明細書に開示される任意の実施形態または実施形態の組み合わせの抗体をコードする、単離された核酸が開示される。単離された核酸配列は、RNAまたはDNAを含み得る。そのような単離された核酸配列は、コードされたタンパク質の発現および/または精製を促進するのに有用な追加の配列を含み、ポリA配列、修飾コザック配列、ならびにエピトープタグ、輸送シグナル、および分泌シグナル、核局在化シグナル、および形質膜局在化シグナルをコードする配列を含むが、これらに限定されない。
【0056】
さらなる態様では、本開示の単離された核酸を含む組換え発現ベクターが提供される。「組換え発現ベクター」は、核酸コード領域または遺伝子を、遺伝子産物の発現をもたらすことができる任意のプロモーターに作動可能に連結するベクターを含む。哺乳動物系において開示される核酸配列の発現を促進するために使用されるプロモーター配列は、構成的(限定されないが、CMV、SV40、RSV、アクチン、EFを含む様々なプロモーターのうちのいずれかによって促進される)または誘導性(限定されないが、テトラサイクリン、エクジソン、ステロイド応答性を含む多数の誘導性プロモーターのうちのいずれかによって促進される)であり得る。発現ベクターは、エピソームとして、または宿主染色体DNAへの組込みによって、好適な宿主生物において複製可能である。様々な実施形態では、発現ベクターは、プラスミドまたはウイルスベクターを含む。
【0057】
さらなる態様では、本開示の核酸ベクターを含む組換え宿主細胞が提供される。宿主細胞は、原核生物または真核生物のいずれかであり得る。細胞は、一時的または安定的にトランスフェクトされ得る。一実施形態では、細胞は、本開示の抗体を発現および分泌するハイブリドーマ細胞である。したがって、組換え宿主細胞は、例えば、
(a)核酸でコードされた抗体の発現に好適な条件下で組換え宿主細胞を培養することと、
(b)培養細胞から抗体を単離することと、を含む、抗体を産生するための方法において使用することができる。
【0058】
核酸でコードされた抗体の発現に好適な条件は、本明細書の教示、使用される特定の宿主細胞およびベクター、ならびに当該技術分野の当業者の一般知識に基づいて当業者によって決定することができる。
【0059】
「組換え」という用語は、例えば、細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入、または天然の核酸もしくはタンパク質の改変によって修飾されていること、あるいは細胞が、そのように修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態内に見られない遺伝子を発現するか、またはそうでなければ異常に発現されるか、発現不足であるか、もしくは全く発現されない天然遺伝子を発現する。本明細書における「組換え核酸」という用語は、元々インビトロで、一般に、例えば、ポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを使用して、自然界では通常見られない形態で核酸を操作することによって最初に形成された核酸を意味する。このようにして、異なる配列の作動可能な連結が達成される。したがって、腺形の単離された核酸、または通常は接合されていないDNA分子を結紮することによってインビトロで形成された発現ベクターは、両方とも、本明細書に開示される目的のために組換えであるとみなされる。一度組換え核酸が作製され、宿主細胞または生物に再導入されると、それは非組換え的に、すなわち、インビトロ操作ではなく、宿主細胞のインビボ細胞機構を使用して複製されることが理解されるが、そのような核酸は、一度組換え的に産生されると、その後に非組換え的に複製されるが、それでも本明細書に開示される目的のために組換えであるとみなされる。
【0060】
一態様では、
(a)本明細書に開示される任意の実施形態または実施形態の組み合わせの抗体、単離された核酸、組換え発現ベクター、または宿主細胞と
(b)薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物が提供される。
【0061】
例えば、本開示の抗体は、製剤中に存在し得る。この実施形態では、抗体は、薬学的に許容される担体と組み合わされる。そのような塩を形成することができる好適な酸には、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アントラニル酸、ケイ皮酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸などの有機酸が含まれる。そのような塩を形成することができる好適な塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;さらにモノ、ジ、およびトリアルキルおよびアリールアミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルアミン、ジメチルアミンなど)、ならびに任意に置換されたエタノールアミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミンなど)などの有機塩基が含まれる。
【0062】
薬学的組成物は、本発明の組成物に加えて、(a)凍結乾燥保護剤、(b)界面活性剤、(c)増量剤、(d)張度調整剤、(e)安定剤、(f)防腐剤、および/または(g)緩衝剤を含み得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中の緩衝剤は、トリス緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、ホスフェート緩衝剤、シトレート緩衝剤、またはアセテート緩衝剤である。薬学的組成物はまた、凍結乾燥保護剤、例えば、スクロース、ソルビトール、またはトレハロースも含み得る。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、防腐剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、クロロヘキシジン、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、o-クレゾール、p-クレゾール、クロロクレゾール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、安息香酸、およびこれらの様々な混合物を含む。他の実施形態では、薬学的組成物は、グリシンのような増量剤を含む。さらに他の実施形態では、薬学的組成物は、界面活性剤、例えば、ポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-60、ポリソルベート-65、ポリソルベート-80、ポリソルベート-85、ポロキサマー-188、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリラウリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ソルビタントリオレアスト(sorbitan trioleaste)、またはこれらの組み合わせを含む。薬学的組成物はまた、張度調整剤、例えば、製剤をヒトの血液と実質的に等張または等浸透圧にする化合物も含み得る。例示的な張度調整剤には、スクロース、ソルビトール、グリシン、メチオニン、マンニトール、デキストロース、イノシトール、塩化ナトリウム、アルギニン、および塩酸アルギニンが含まれる。他の実施形態では、薬学的組成物は、安定剤、例えば、目的のタンパク質と組み合わせると、凍結乾燥または液体の形態での目的のタンパク質の化学的不安定性および/または物理的不安定性を実質的に防止または低減する分子、をさらに含む。例示的な安定剤には、スクロース、ソルビトール、グリシン、イノシトール、塩化ナトリウム、メチオニン、アルギニン、および塩酸アルギニンが含まれる。
【0063】
本発明の薬学的組成物は、任意の好適な製剤、好ましくは注射による投与に好適な製剤で構成することができる。そのような薬学的組成物は、例えば、本明細書に開示される治療方法において使用することができる。
【0064】
薬学的組成物は、追加の治療薬など、所与の使用に適切であるとみなされる任意の他の成分を含み得る。一実施形態では、薬学的組成物は、腫瘍エクソソーム放出の阻害剤、またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。一実施形態では、腫瘍エクソソーム放出の阻害剤は、Rab27aの阻害剤および/またはRab27bの阻害剤を含む。別の実施形態では、Rab27aの阻害剤および/またはRab27bの阻害剤は、Rab27aおよび/またはRab27b特異的抗体、アプタマー、低分子干渉RNA、低分子内部セグメント化干渉RNA、短ヘアピンRNA、マイクロRNA、および/またはアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。
【0065】
別の態様では、腫瘍の成長または転移を制限するのに有効な量の、本明細書に開示される任意の実施形態または実施形態の組み合わせの抗ヒトエフリンB1抗体もしくはその断片、または薬学的組成物を、腫瘍を有する対象に投与することを含む、腫瘍治療のための方法が提供される。以下の実施例に示されるように、本発明者らは、本開示の抗体が腫瘍の成長または転移を制限するのに有用であることを実証した。
【0066】
ここで使用される場合、「腫瘍成長を治療する」という用語は、(i)腫瘍サイズを制限すること、(ii)腫瘍サイズの増加率を制限すること、(iii)腫瘍神経支配を低減すること、(iv)腫瘍神経支配の増加率を制限すること、(v)腫瘍転移を制限すること、(vi)腫瘍転移の増加率を制限すること、(vii)腫瘍によって引き起こされる副作用(すなわち、疼痛、病気の行動等)を制限すること、および/または(viii)腫瘍によって引き起こされる副作用の増加率を制限することを意味する。
【0067】
投与される抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片の有効量は、腫瘍を治療するという目標を達成する任意の量であり、当該技術分野の技術者(主治医など)によって、腫瘍の種類、対象の状態、対象が受けている他の治療的処置(すなわち、化学療法、放射線療法、腫瘍を除去するための手術等)、およびすべての他の要因を含むがこれらに限定されないすべての状況に照らして決定することができる。
【0068】
本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」という用語は、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ニワトリなどを含む、治療が望まれる任意の対象を意味する。最も好ましくは、対象はヒトである。
【0069】
一実施形態では、方法は、腫瘍神経支配を制限するのに役立つ。本明細書で使用される場合、「腫瘍神経支配」は、腫瘍塊の中、周囲、および/またはそれを介して侵入する神経線維として定義される。本明細書で使用される場合、「限定的神経支配」は、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片による治療なしの場合と比較して、新神経支配または既存の神経支配の任意の低減(すなわち、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、またはそれ以上の低減)を含むと定義される。
【0070】
一実施形態では、本開示の方法は、有効量の腫瘍エクソソーム放出の阻害剤を対象に投与することをさらに含む。Rab27aおよび/またはRab27bの阻害剤を含むがこれらに限定されない、腫瘍エクソソーム放出の任意の好適な阻害剤を使用することができる。Rab27aおよびRab27bは、エクソソームの放出で機能する低分子量GTPase Rabファミリーのメンバーである。この実施形態では、Rab27aの阻害剤および/またはRab27bの阻害剤には、Rab27aおよび/またはRab27b特異的抗体、アプタマー、低分子干渉RNA、低分子内部セグメント化干渉RNA、短ヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および/または低分子阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。ヒトRab27aおよびRab27bのアミノ酸配列を以下に提供する。
ヒトRab27a:
MSDGDYDYLIKFLALGDSGVGKTSVLYQYTDGKFNSKFITTVGIDFREKRVVYRASGPDGATGRGQRIHLQLWDTAGQERFRSLTTAFFRDAMGFLLLFDLTNEQSFLNVRNWISQLQMHAYCENPDIVLCGNKSDLEDQRVVKEEEAIALAEKYGIPYFETSAANGTNISQAIEMLLDLIMKRMERCVDKSWIPEGVVRSNGHASTDQLSEEKEKGACGC(配列番号38)
ヒトRab27b:
MTDGDYDYLIKLLALGDSGVGKTTFLYRYTDNKFNPKFITTVGIDFREKRVVYNAQGPNGSSGKAFKVHLQLWDTAGQERFRSLTTAFFRDAMGFLLMFDLTSQQSFLNVRNWMSQLQANAYCENPDIVLIGNKADLPDQREVNERQARELADKYGIPYFETSAATGQNVEKAVETLLDLIMKRMEQCVEKTQIPDTVNGGNSGNLDGEKPPEKKCIC(配列番号39)
【0071】
本開示の方法は、任意の好適な腫瘍型を治療するために使用することができる。一実施形態では、腫瘍は、任意の神経支配された固形腫瘍であり得る。様々な非限定的な実施形態では、この方法は、頭部、頸部、乳房、肺、肝臓、卵巣、結腸、結腸直腸、黒色腫、脳、または前立腺の腫瘍を治療するために使用され得る。さらなる実施形態では、腫瘍は、頭部もしくは頸部のHPV+腫瘍および/または子宮頸がんを含むがこれらに限定されない、ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性腫瘍であり得る。さらなる非限定的な実施形態では、頭部または頸部のHPV+腫瘍は、扁平上皮がんを含む。。別の実施形態では、腫瘍は、HPV16、18、16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、または68などの高リスクHPVに対して陽性である。高リスクHPVサブタイプはすべて、タンパク質チロシンホスファターゼ非受容体タイプ13(PTPN13)などのPDZドメイン含有タンパク質と結合する、C末端PDZ結合モチーフ(PDZBM)を含むE6タンパク質を有する。HPV16 E6腫瘍性タンパク質は、細胞ホスファターゼおよび腫瘍抑制因子であるPTPN13と相互作用し、この相互作用により、PTPN13の劣化をもたらす。PTPN13は、ホスファターゼ基質でもあるエフリンB1と相互作用する。エフリンB1は、同族のEph受容体チロシンキナーゼに結合して活性化する、1回膜貫通型タンパク質リガンドである。さらに、エフリンB1自体がリン酸化され、独自の下流シグナル伝達事象を開始する。HPV感染細胞では、PTPN13の発現が損なわれるため、エフリンB1のリン酸化が持続し、攻撃的な表現型および疾患の進行に寄与する。したがって、さらなる実施形態では、方法は、E6とPTPN13との間の相互作用の阻害剤を対象に投与することをさらに含む(E6は、PTPN13のPDZBM#4においてPTPN13に結合する)。PTPN13への結合についてE6と競合するペプチド、またはE6への結合についてPTPN13と競合するペプチドを含むがこれらに限定されない、任意の好適な阻害剤を使用することができる。別の実施形態では、方法は、エフリンB1リン酸化の阻害剤を対象に投与することをさらに含み得る。ダサタニブ(以下に示される化学構造)またはその薬学的に許容される塩を含むがこれらに限定されないSrcキナーゼ阻害剤を含むがこれらに限定されない、任意の好適な阻害剤を使用することができる。
【化12】
【0072】
別の実施形態では、腫瘍は、プロモーターのメチル化、mRNA分解等のためにPTPN13発現レベルまたはタンパク質レベル/活性が低い腫瘍など、低いPTPN13発現レベルまたはタンパク質/タンパク質活性レベルを有する。この実施形態では、閾値レベルを下回るPTPN13発現またはタンパク質レベル/活性を有する腫瘍(PTPN13発現の正常レベルの対照など)は、本開示の方法で治療される。この実施形態では、エフリンB1リン酸化は持続し、本開示の方法は、そのような腫瘍を治療するのに効果的である。PTPN13の発現が低いか、まったく無い例示的な腫瘍型には、ある特定の乳がん(トリプルネガティブ乳がんなど:Revillion F,Puech C,Rabenoelina F,Chalbos D,Peyrat JP,Freiss G.Int J Cancer2009 Feb 1;124(3):638-43、Vermeer PD,Bell M,Lee K,Vermeer DW,Wieking BG,Bilal E,Bhanot G,Drapkin RI,Ganesan S,Klingelhutz AJ,Hendriks WJ,Lee JH.PLoS One.2012;7(1):e30447)が含まれるが、これらに限定されない。Science.2004 May 21;304(5674):1164-6(PTPN13は、結腸直腸、肺、乳房、および胃のがんにおいて変異され得る)も参照されたい。
【0073】
抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルを含む投薬単位製剤での経口、局所、非経口、鼻腔内、肺、または直腸投与を含むがこれらに限定されない任意の好適な経路によって投与され得る。一実施形態では、抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、腫瘍内または腫瘍周囲への直接注射などによる局所送達を介して投与される(すなわち、腫瘍に隣接し、腫瘍を取り巻く微小環境に接触する。これらは両方とも治療標的であるエクソソームを有するであろう)。
抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、1つ以上の非毒性の薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/またはアジュバントと共に投与することができる。抗ヒトエフリンB1抗体またはその断片は、単独の療法として投与され得るか、または他の治療法(すなわち、化学療法、放射線療法、腫瘍の外科的除去等)と組み合わせて投与され得る。
【実施例】
【0074】
抗体産生
3匹のラットを各々、ヒトエフリンB1の細胞外ドメインを含むDNAベクターで免疫した。各ラットは、4回の遺伝子免疫を受けた(1週間に1回)。31日目に、免疫血清を収集して試験した。スクリーニングは、ヒトエフリンB1のECDを含む免疫化コンストラクトによる哺乳動物細胞のトランスフェクションで構成された。免疫化されたラットの血清を使用して、トランスフェクトされた哺乳動物細胞(エフリンB1のECDの表面発現を有する)に抗体が結合するかどうかを確認した。これは、フローサイトメトリーによって評価した。3匹すべてのラットの免疫血清は、表面に発現したヒトエフリンB1 ECDに結合することが実証された。ラットを犠牲死させ、脾臓を単離し、骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを生成した。融合したハイブリドーマを96ウェルディッシュにおいてクローニングし、フローサイトメトリーによってスクリーニングして、エフリンB1のECDに最もよく結合するクローンを特定した。108個のクローンが生成され、これらのうち54個のクローンは、最も高い結合を有し、10個のクローンを、さらなる試験のために選択した。これらの10個のクローンをT25ディッシュに拡大し、適切な活性を評価した。詳細な分析のために3つのクローンを選択した(BXD-1H7-G5、BXD-2G8-D3、およびBXD-6C4-B9)。
【0075】
抗体配列分析
TRIzol(登録商標)試薬の技術マニュアルに従い、RNAlaterで凍結されたハイブリドーマ細胞溶解物から全RNAを単離した。次いで、PrimeScript(商標)1st Strand cDNA合成キットの技術マニュアルに従い、アイソタイプ特異的アンチセンスプライマーまたはユニバーサルプライマーを使用して、全RNAをcDNAに逆転写した。VHおよびVLの抗体断片を、cDNA末端の迅速増幅(RACE)の標準操作手順(SOP)に従って増幅させた。増幅した抗体断片を、標準クローニングベクターに別々にクローニングした。コロニーPCRを実施して、正しいサイズのインサートを持つクローンをスクリーニングした。正しいサイズのインサートを持つ5つ以上のコロニーを、各断片に対して配列決定した。
抗体配列
【化13】
【0076】
抗エフリンB1抗体は、軸索形成および腫瘍成長を減衰させる。我々のデータは、軸索形成および腫瘍成長の増強におけるエクソソームエフリンB1の役割を裏付ける。疾患制御のためにエフリンB1を遮断することの有用性を試験するために、上記のように抗ヒトエフリンB1抗体を生成した。表面発現したエフリンB1への抗体の結合、および抗体が、ヒトのエフリンB1を認識するが、マウスのエフリンB1を認識しないことを確認した(データは示さず)。エフリンB1抗体がインビトロで神経突起伸長を遮断する能力を試験するために、ヒトエフリンB1を過剰発現するSCC47細胞(ヒトHPV陽性頭頸部扁平上皮がん細胞株)であるSCC47-エフリンB1細胞からの馴化培地と共にインキュベートした。24時間後、培地を使用してPC12細胞を刺激し、これを刺激してニューロン様細胞に分化することができ、したがって、神経突起伸長を誘導するためにエクソソームをスクリーニングするためのモデルを提供する。翌日、PC12細胞を固定し、β-IIIチューブリン(ニューロン特異的チューブリンアイソフォーム)について染色し、神経突起伸長を定量化した。図は、1つの抗体(2G4)を除いてすべての試験された抗体が、SCC47-エフリンB1からの馴化培地によって誘導されたものと比較して、神経突起伸長を有意に減衰させることができたことを示す(
図1A)。
図1における対照は次の通りである。PC12=未処理のPC12細胞、NGF=100ng/mlの組換え神経成長因子(NGF)で刺激されたPC12細胞(陽性対照)。NGF条件での神経突起の数を100%に設定し、それと比較して、馴化された他のすべてをグラフ化する。
【0077】
腫瘍成長を遮断するためのエフリンB1抗体の有用性を試験するために、免疫不全のNOD SCIDマウスにヒトSCC47-エフリンB1腫瘍を移植した。4つのマウス群があり、N=5マウス/群であった。2つのマウス群を対照とした。1つの対照群にはビヒクルのみを注射し、第2の対照群にはアイソタイプが一致するIgG(IgG2a/2b)を注射した。他の2つの群には、各々異なるエフリンB1抗体クローン(1H7または2G8)を注射した。腫瘍成長を追跡し、腫瘍移植後14日目にマウスを犠牲死させた。エフリンB1抗体を注射した群の腫瘍は、対照よりも有意に小さかったのに対し、対照群の腫瘍成長は、互いに有意差はなかった(
図1B)。これらのデータは、エフリンB1抗体が、インビボで腫瘍成長を減衰させることを実証する。
【0078】
HPV陰性疾患
免疫系を持たないNSGマウスに、内因性(基底)エフリンB1を発現するヒトSCC1(HPV陰性ヒト頭頸部扁平上皮がん細胞株)細胞またはエフリンB1を安定して過剰発現するSCC1細胞(SCC1 OE#18)を注射した。これらの動物は、腹腔内注射によって毎日20μgの精製抗体で治療され、腫瘍の成長が続いた。下の
図2A~Bに示されるように、HPV陰性SCC1細胞は、エフリンB1を基底レベルで発現しているか、またはエフリンB1を過剰発現しているかにかかわらず、抗体治療に応答し、腫瘍成長の減少を伴う。
【0079】
エピトープマッピング
エフリンB1/1H7、エフリンB1/2G8、およびエフリンB1/6C4複合体の特徴付けのために、CovalX(商標)のHM4インタラクションモジュールを備えたAutoflex(商標)II MALDI ToF質量分析計(Bruker)を使用して測定を実施した。1μlの得られた混合物を、アセトニトリル/水(1:1、v/v)、TFA 0.1%(K200 MALDIキット)中の再結晶化シナピン酸マトリックス(10mg/ml)で構成される1μlのマトリックスと混合した。混合後、1
μlの各試料をMALDIプレート(SCOUT(商標)384)上にスポットした。室温で結晶化した後、プレートをMALDI質量分析計に導入し、即時に分析した。分析を3回繰り返した
【0080】
エフリンB1/1H7、エフリンB1/2G8、およびエフリンB1/6C4複合体のエピトープを高解像度で決定するために、タンパク質複合体を重水素化架橋剤と共にインキュベートし、多酵素的切断に供した。架橋されたペプチドの濃縮後、試料を高分解能質量分析(nLC-LTQ-Orbitrap(商標)MS)によって分析し、生成されたデータを、XQuest(商標)およびStavrox(商標)ソフトウェアを使用して分析した。
【0081】
具体的には、20μLの調製したエフリンB1/1H7、エフリンB1/2G8、またはエフリンB1/6C4混合物を、2μLのDSS d0/d12(2mg/mL、DMF)と混合した後、室温で180分間インキュベートした。インキュベーション後、1μLの重炭酸アンモニウム(20mM最終濃度)を添加することによって反応を停止させた後、室温で1時間インキュベートした。次いで、SPEEDVAC(商標)の後にH2O 8M尿素懸濁液(20μL)を使用して、溶液を乾燥させた。混合後、2μlのDTT(500mM)を溶液に添加した。次いで、混合物を37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後に、2μlのヨードアセトアミド(1M)を添加した後、暗室において室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、80μlのタンパク質分解緩衝液を添加した。トリプシン緩衝液には、50mM Ambic(商標)pH8.5、5%アセトニトリルが含まれ、キモトリプシン緩衝液には、Tris HCl 100mM、CaCL2 10mM pH7.8が含まれ、ASP-N緩衝液には、リン酸緩衝液50MM pH7.8が含まれ、エラスターゼ緩衝液には、Tris HCl
50mM pH8.0が含まれ、サーモリシン緩衝液には、Tris HCl 50mM、CaCL2 0.5mM pH9.0が含まれる。
【0082】
エピトープマッピングの結果は、抗体のヒトエフリンB1エピトープが、以下の通りであることを示した。
1H7:SWSSLNPKFLSGKG(配列番号33)、
2G8 KNLEPVSWSSLNPKFLSGKG(配列番号34)、および
6C4 SGKGLVIYPKIGDKL(配列番号35)。
【0083】
これらの配列を互いに整列させることは、3つすべてのエピトープが、ヒトエフリンB1配列KNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKL(配列番号32)内にあることを実証する。
【配列表】
【国際調査報告】