(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】人工腱索を乳頭筋または心臓壁に係留するための装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/08 20060101AFI20220708BHJP
A61F 2/24 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
A61F2/08
A61F2/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564461
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 US2020040678
(87)【国際公開番号】W WO2021003375
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シューイ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】エッゲルト、ジョエル ティ.
(72)【発明者】
【氏名】アボット、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ロール、ジェームズ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】コウデラ、クリストファー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA21
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC05
4C097DD10
4C097MM09
(57)【要約】
本開示は、概して、患者内に人工腱索を送達するための医療装置の分野に関する。実施形態において、アンカーは送達形態と展開形態との間を移行可能であり、アンカーは送達カテーテル内に配置されたときには送達形態にあり、アンカーはアンカーが送達カテーテルの遠位端部を越えて移動されたときには展開形態にある。アンカーが送達形態にあるとき、アンカーは第1の外形寸法を有し、アンカーが展開形態にあるとき、アンカーは第2の外形寸法を有し、第1の外形寸法は第2の外形寸法よりも小さい。アンカーは、アンカーが展開形態にあるときに、乳頭筋または心臓壁と係合可能であり、また、人工腱索を乳頭筋または心臓壁に係留するように、人工腱索に結合可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工腱索を乳頭筋または心臓壁に係留するためのシステムにおいて、
送達形態と展開形態との間を移行可能なアンカーを備え、前記アンカーは送達カテーテル内に配置されたときには送達形態にあり、前記アンカーは前記アンカーが前記送達カテーテルの遠位端部を越えて移動されたときには展開形態にあり、
前記アンカーが送達形態にあるとき、前記アンカーは第1の外形寸法を有し、前記アンカーが展開形態にあるとき、前記アンカーは第2の外形寸法を有し、第1の外形寸法は第2の外形寸法よりも小さく、
前記アンカーは、前記アンカーが展開形態にあるときに、乳頭筋または心臓壁と係合可能であり、
前記アンカーは、前記人工腱索を前記乳頭筋または心臓壁に係留するように、前記人工腱索に結合可能である、システム。
【請求項2】
前記アンカーは複数のアームを備え、前記複数のアームは該アームの近位端部で本体部分に結合されており、前記複数のアームのうちの少なくとも1つのアームは、前記アンカーが送達形態から展開形態に移行するときに、第1の位置と第2の位置との間で可動であり、前記複数のアームは、前記乳頭筋または心臓壁に係合するための遠位先端部をそれぞれ有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのアームの遠位先端部は、前記少なくとも1つのアームが第1の位置から第2の位置に動くときに、前記乳頭筋または心臓壁と係合可能である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数のアームのすべてが第1の位置と第2の位置との間で可動である、請求項2または3に記載のシステム。
【請求項5】
前記アンカーが前記送達カテーテルの遠位端部から放出されるにつれて、前記アンカーは前記送達形態および前記展開形態から移行可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記アンカーが前記送達形態から前記展開形態に移行されるにつれて、前記複数のアームは伸長した形状から湾曲した形状に移行可能である、請求項2~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数のアームは、前記複数のアームの各々における付勢により、第1の位置から第2の位置に可動である、請求項2~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数のアームは形状記憶材料から製造されている、請求項2~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアームは、前記少なくとも1つのアームが第1の位置から第2の位置に動くときに、前記複数のアームのうちの別のアームにある開口部を通って受容可能である、請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアームは、前記少なくとも1つのアームに外力が加えられない中立形態において前記少なくとも1つのアームの中央部分が前記開口部内に受容されるように、湾曲した形状を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアームは第1のアームを備え、前記複数のアームのうちの前記別のアームは第2のアームを備え、第1のアームは、第1の位置において、第1のアームの遠位先端部が第2のアームの遠位先端部とは反対方向に向かうように曲げられている、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのアームは、前記アンカーを前記乳頭筋または心臓壁にロックするためのループを形成する、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記アンカーは編組部分を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記アンカーは、本体部分および前記編組部分を通って延びる内側部材をさらに備え、前記内側部材は針部分に結合される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記編組部分は、前記内側部材を前記編組部分の一方の端部に対して移動させることによって、前記送達形態から前記展開形態に移行可能である、請求項13または14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して心臓壁に係留するための医療装置の分野に関する。特に、本開示は、患者内に人工腱索を送達するための医療装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
僧帽弁疾患は、典型的には侵襲的な外科的介入を通じて、または弁尖を複雑に挟んで2つのより小さな開口部を生じさせること、もしくは自然弁の僧帽弁置換によって、修復される。これらのアプローチは、直接観察および修復を目的として僧帽弁を露出させるために患者の胸部および心腔への開口を含み得る危険なバイパス手術を伴う。患者の弁尖の切除、部分的な除去、および/または修復は、外科的リングの植え込みと併せて、患者の僧帽弁輪の直径を低減し、それにより弁尖が適切に接合して、僧帽弁逆流(mitral regurgitate flow)を低減できるようにするために、外科医によって用いられる複雑な技術である。いくつかの技術はわずかに逆流を低減し得るが、恒久的な解決策を提供しない可能性があり、弁の損傷した腱索を修復かつ/または置換するものではない。したがって、僧帽弁疾患の経管的な解決策が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
心臓壁に対する係留を伴う本開示の医療装置、システムおよび方法によって様々な有利な医学的転帰が実現され得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施形態は、概して、心臓弁の把持およびフィラメントに対する接続点の提供を支援し得る。一態様において、人工腱索を乳頭筋または心臓壁に係留するためのシステムが開示される。本システムは、送達形態と展開形態との間を移行可能なアンカーを備え得る。アンカーは、送達カテーテル内に配置されたときには送達形態にあり、アンカーが送達カテーテルの遠位端部を越えて移動されたときには展開形態にあり得る。アンカーが送達形態にあるとき、アンカーは第1の外形寸法を有することができ、アンカーが展開形態にあるとき、アンカーは第2の外形寸法を有することができる。第1の外形寸法は第2の外形寸法よりも小さい場合がある。アンカーは、アンカーが展開形態にあるときに、乳頭筋または心臓壁と係合可能であり得る。アンカーは、人工腱索を乳頭筋または心臓壁に係留するように、人工腱索に結合可能であり得る。
【0005】
アンカーは複数のアームを有することができ、複数のアームは該アームの近位端部で本体部分に結合されている。複数のアームのうちの少なくとも1つのアームは、アンカーが送達形態から展開形態に移行するときに、第1の位置と第2の位置との間で可動であり得る。複数のアームは、乳頭筋または心臓壁に係合するための遠位先端部をそれぞれ有することができる。少なくとも1つのアームの遠位先端部は、少なくとも1つのアームが第1の位置から第2の位置に動くときに、乳頭筋または心臓壁と係合可能であり得る。いくつかの実施形態では、複数のアームのすべてが第1の位置と第2の位置との間で可動である。
【0006】
アンカーが送達カテーテルの遠位端部から放出されるにつれて、アンカーは送達形態および展開形態から移行可能であり得る。アンカーが送達形態および展開形態から移行されるにつれて、複数のアームは伸長した形状から湾曲した形状に移行することができる。複数のアームは、複数のアームの各々における付勢により、第1の位置から第2の位置に動くことができる。いくつかの限定されない例示的な実施形態において、複数のアームは形状記憶材料から製造されている。
【0007】
少なくとも1つのアームは、少なくとも1つのアームが第1の位置から第2の位置に動くときに、前記複数のアームのうちの別のアームにある開口部を通って受容可能であり得る。少なくとも1つのアームは、少なくとも1つのアームに外力が加えられない中立形態において少なくとも1つのアームの中央部分が開口部内に受容されるように、湾曲した形状を有することができる。少なくとも1つのアームは、アンカーを乳頭筋または心臓壁にロックするためのループを形成することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアームは、形状記憶材料から製造されている。
【0008】
いくつかの実施形態において、アンカーは編組部分を備える。アンカーはまた、本体部分および編組部分を通って延びる内側部材も備えることができる。内側部材は針部分に結合され得る。編組部分は、内側部材を編組部分の一方の端部に対して移動させることによって、送達形態から展開形態に移行可能であり得る。
【0009】
乳頭筋または心臓の壁に係留するための装置も開示される。本装置は、送達形態と展開形態との間を移行可能なアンカーを備え得る。アンカーは、送達カテーテル内に配置されたときには送達形態にあり、アンカーが送達カテーテルの遠位端部を越えて移動されたときには展開形態にあることが可能である。アンカーが送達形態にあるとき、アンカーは第1の外形寸法を有し、アンカーが展開形態にあるとき、アンカーは第2の外形寸法を有する。第1の外形寸法は第2の外形寸法よりも小さい場合がある。アンカーは、アンカーが展開形態にあるときに、乳頭筋または心臓壁と係合することができる。いくつかの限定されない実施形態において、アンカーは編組部分を備える。
【0010】
アンカーは、本体部分と複数のアームとを備えることができ、複数のアームは該アームの近位端部で本体部分に結合されている。複数のアームのうちの少なくとも1つのアームは、アンカーが送達形態から展開形態に移行するときに、第1の位置と第2の位置との間で可動であり得る。複数のアームは、乳頭筋または心臓壁に係合するための遠位先端部をそれぞれ有することができる。いくつかの実施形態では、複数のアームのすべてが第1の位置と第2の位置との間で可動である。
【0011】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアームは、少なくとも1つのアームが第1の位置から第2の位置に動くときに、複数のアームのうちの別のアームにある開口部を通って受容可能である。アンカーが送達カテーテルの遠位端部から放出されるにつれて、アンカーは送達形態と展開形態との間を移行可能であり得る。アンカーが送達形態と展開形態との間を移行されるにつれて、複数のアームは伸長した形状から湾曲した形状に移行することができる。
【0012】
人工腱索を乳頭筋または心臓壁に係留するための方法が開示される。本方法は、心臓弁を介してカテーテルを挿入することであって、カテーテルは人工腱索に結合された本体部分を有するアンカーを収容している、ことと、カテーテルを標的とされる乳頭筋または心臓壁に隣接して配置することと、アンカーが送達形態から展開形態に移行するように、アンカーをカテーテルの外へ移動させることとを含み得る。アンカーが送達形態にあるとき、アンカーは第1の外形寸法を有し、アンカーが展開形態にあるとき、アンカーは第2の外形寸法を有する。第1の外形寸法は第2の外形寸法よりも小さい。アンカーは、アンカーが展開形態に移行されるときに、乳頭筋または心臓壁と係合され得る。本方法はまた、アンカーをカテーテルの外へ移動させる前に、医用可視化技術を用いて、標的とされる乳頭筋または心臓壁に対するアンカーの位置を可視化することも含み得る。アンカーは、本体部分に結合された少なくとも1つのアームをさらに有し、アンカーが送達形態から展開形態に移行されるとき、少なくとも1つのアームは、第1の位置から第2の位置に動く。アンカーのアームが第1の位置から第2の位置に動くときに、アームの先端部が標的とされる乳頭筋または心臓壁を刺通する。アンカーは、本体部分に結合された複数のアームを有し得る。アンカーがカテーテルの外へ移動されるとき、複数のアームは、第1の位置から第2の位置に動いて、標的とされる乳頭筋または心臓壁に係合することができる。
【0013】
本開示の限定されない実施形態を添付した図を参照しながら例として説明する。図は概略であり、一定の縮尺で描かれていることを意図していない。図において、示された同一またはほぼ同一の各構成要素は、典型的には単一の数字によって表されている。明瞭にする目的で、当業者が本開示を理解できるようにするために図解が必要でない場合には、すべての図ですべての構成要素に符号を付しているとは限らず、また各実施形態のすべての構成要素が示されているとも限らない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】血流逆流時における僧帽弁の動揺弁尖の断面図。
【
図2A】本開示の実施形態による、送達形態にあるアンカーの斜視図。
【
図2D】展開ワイヤに結合され、例示的な送達カテーテルの端部に隣接した
図2Aおよび
図2Bのアンカーを示す図。
【
図3A】本開示の実施形態による、展開形態にあるアンカーの斜視図。
【
図3C】例示的な送達カテーテル内に配置された、送達形態にある
図3Aおよび
図3Bのアンカーの透視側面図。
【
図3D】送達カテーテルの端部を越えて配置された、展開形態にある
図3Aのアンカーの透視側面図。
【
図4A】本開示の実施形態によるアンカーの側面図。
【
図5A】本開示の実施形態による、送達形態にあるアンカーの側面図。
【
図6A】本開示の実施形態による、送達形態にあるアンカーの斜視図。
【
図7】本開示の実施形態による、アンカーを心臓壁の一部と係合させるためのシステムの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、説明する特定の実施形態に限定されるものではない。本願に用いられる用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、添付する請求項の範囲を超えて限定するものではない。別段に定義されていない限り、本願において用いられる技術用語はすべて、本開示が属する技術における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0016】
本開示の実施形態は、特に心臓組織への選択的なアクセスのための医療装置およびシステム(例えば大腿静脈などを通って挿入される経管的装置)に関連して説明される場合があるが、当然のことながら、そのような医療装置およびシステムは、心臓組織(hear tissue)への係留を必要とする様々な医療処置に用いられてもよい。開示される医療装置およびシステムはまた、異なるアクセスポイントおよびアプローチを通じて、例えば、経皮的に、内視鏡下で、腹腔鏡下で、またはそれらの組み合わせによって、挿入され得る。
【0017】
本願に用いられる場合、単数形「a」「an」および「the」は、文脈が明らかに他の意味を示していない限り、同様に複数形を含むものとする。「備える(comprises)」および/もしくは「備えた(comprising)」、または「含む(includes)および/もしくは「含んだ(including)」という用語は、本願で用いられる場合、記載された特徴、領域、ステップ、要素、および/または構成要素の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。
【0018】
本願で用いられる場合、「近位端部」は、装置を患者に導入するときに装置に沿って医療専門家の最も近くに位置する装置の端部を指し、「遠位端部」は、植え込み、配置、または送達の間に装置に沿って医療専門家から最も遠くに位置する装置または対象の端部を指す。
【0019】
本願に用いられる場合、「および」という接続詞は、文脈が明らかに他の意味を示していない限り、そのように等位接続される構造、構成要素、特徴などの各々を含み、「または」という接続詞は、文脈が明らかに他の意味を示していない限り、そのように単独で、任意の組み合わせおよび数で、等位接続される構造、構成要素、特徴などのうちの1つまたは他のものを含む。
【0020】
すべての数値は、明示的に示されているか否かに関わらず、本願では「約」という語によって修飾されるものと見なされる。数値に関連した「約」という用語は、一般に、当業者が列挙された値と同等である(例えば、同じ機能または結果を有する)と考える一定範囲の数を指す。多くの場合において、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められる数を含み得る。「約」という用語の他の用法(例えば数値以外の文脈において)は、特段の定めがない限り、明細書の文脈から理解され、かつそれらの文脈と矛盾しないように、それらの用法の通常かつ慣習的な定義を有するものとされ得る。終点による数値範囲の列挙は、終点を含むその範囲内のすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
【0021】
明細書中における「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造または特性を含み得るが、すべての実施形態が必ずしもそれらの特定の特徴、構造または特性を含むとは限らない場合があることを示すことが留意される。さらに、そのような句は必ずしも同一の実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造または特性が実施形態に関連して記載される場合、明らかに反対の記述がない限り、明示的に記載されているか否かに関わらず、他の実施形態に関連して、そのような機能、構造、または特性に影響を与えることは当業者の知識内であろう。すなわち、以下に記載される様々な個々の要素は、特定の組合せで明示的に示されていない場合であっても、当業者によって理解されるように、他の付加的な実施形態を形成するために、または記載された実施形態を補足および/もしくは強化するために、互いに組み合わせ可能または構成可能であると考えられる。
【0022】
房室心臓弁機能不全を含む心疾患は患者の心拍出を妨げ、これにより患者の生活の質が低下し、寿命が縮められる。
図1に示した心臓154を参照すると、心臓病が進行するにつれて、乳頭筋または心臓壁152を弁尖151に接続する腱索155が非弾性的に伸長してしまうことがあり、また破断する場合もある。伸長および/または破断した腱索156は、もはや通常の心臓機能のための弁の封止を形成する能力を有さない動揺弁尖150を生じ得る。例えば、ベクトル158の方向の異常な血流の逆流が発生し得る。逆流は、心血管系を通って送達されるべき血液の適切な供給を妨げる。
【0023】
弁の1つ以上の弁尖および/または腱索の再配置、修復および/または置換は、心疾患を治療するために用いられ得る。本開示の装置、システムおよび方法は、心疾患を治療するために、単独で、または他の装置、システムおよび方法と共に用いられてもよい。本開示の実施形態が実施され得る装置、システムおよび方法の例としては、「DEVICES, SYSTEMS, AND METHODS FOR ADJUSTABLY TENSIONING AN ARTIFICIAL CHORDAE TENDINEAE BETWEEN A LEAFLET AND A PAPILLARY MUSCLE OR HEART WALL」と題された米国特許出願第 号[代理人整理番号8150.0591]、「DEVICES, SYSTEMS, AND METHODS FOR CLAMPING A LEAFLET OF A HEART VALVE」と題された米国特許出願第 号[代理人整理番号8150.0592]、および「DEVICES, SYSTEMS, AND METHODS FOR ARTIFICIAL CHORDAE TENDINEAE」と題された米国特許出願第 号[代理人整理番号8150.0594]に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記出願の各々は本願と同日に出願され、上記出願の各々は参照によりその全体があらゆる目的のために本願に援用される。上記出願に記載された装置の例は、本開示の実施形態または1つ以上の特徴に組み込むために変更されてもよい。
【0024】
弁の1つ以上の弁尖および/または腱索の再配置、修復および/または置換は、1つ以上の装置が心臓壁の一部に固定されることを必要とし得る。本願に記載する実施形態の装置は、アンカーを乳頭筋および/または心臓壁と係合させることによって心臓壁に固定され得る。そのような装置は、弁の弁尖を操作するため、ならびに/または乳頭筋および/もしくは心臓壁に取り付けられる装置を送達するために他の装置、システム、またはツールが係合するための固定点を提供し得る。
【0025】
開示するアンカーの1つ以上の態様は、カテーテルまたは他の適切な送達装置を用いて、乳頭筋および/または心臓壁に送達され得ることが認識されよう。例えば、カテーテルは、アンカーのうちの1つ以上を送達形態(例えば、アンカーがカテーテルの一部内に配置されたとき)から展開形態(例えば、アンカーが標的位置で乳頭筋および/または心臓壁に係合できるように、アンカーがカテーテルの端部分を越えて送出された場合)に移行させるために用いられ得る。カテーテルは、使用者が、1つ以上のケーブル、ワイヤなどを操作することなどによって、アンカーをカテーテルから送出することができるようにするために1つ以上の制御装置を有し得る。いくつかの実施形態において、カテーテルはまた、アンカーがカテーテルから送出される前、最中、または後に、使用者がアンカーを回転させて、アンカーと標的組織との係合を容易できるようにするために1つ以上の制御装置を有してもよい。
【0026】
認識されるように、使用者がアンカーを標的とされる心臓組織位置に送達して植え込むことができるように送達装置が構成されている限り、送達装置の特定の性質は本開示にとっては重要ではない。
【0027】
開示する実施形態の送達、展開および係合は、蛍光透視法、超音波、心内エコーなどのような既知の医用可視化技術を用いることによって容易にされ得ることも認識されよう。
ここで
図2A~
図2Dを参照すると、本開示による、標的とされる乳頭筋または心臓壁に係合するためのアンカー200の実施形態が示されている。一般に、アンカー200は、本体部分206に結合された近位端部204a~204cと近位端部から離れるように延びた遠位端部208a~208cとを有した複数のアーム202a~202cを有し得る。遠位端部208a~208cは、アンカーが標的組織部位と係合されたときにアンカー200が標的組織部位に確実に固定され得るように組織を刺通するのに適した、テーパー状のまたは尖った先端部210a~210cをそれぞれ有し得る。
【0028】
アーム202a~202cは、アームが中立位置(例えば、外部の力の作用を受けない位置)にあるときに、アームの各々の中央部分211a~211cが、本体部分とアームの遠位端部208a~208cとの間の距離を上回る距離まで本体部分206から半径方向に外側に延びるように、湾曲した外観を有し得る。加えて、アーム202a~202cの各々の尖った先端部210a~210cは、アームが前述の中立位置にあるときに、本体部分206から離れる方向に向き得る。
【0029】
図2Aは、アンカー200が適切なカテーテル214または他の送達装置のルーメン212内に収容されるのを可能にする形態(送達形態と称する)に配置された複数のアーム202a~202cを示している。この形態において、アンカー200はカテーテルを介して標的組織部位まで運ばれ、そこでアンカー200は次に標的とされる乳頭筋または心臓壁との係合のために展開され得る。送達形態では、複数のアーム202a~202cは共に押圧され得、その結果、複数のアームは伸長した若干扁平な形状をとることになる。いくつかの実施形態では、複数のアーム202a~202cは、アームが互いに向かって押圧されて送達形態をとることができるようにする弾性特性を有する材料から製造されている。一実施形態では、複数のアーム202a~202cは、ニチノールなどの形状記憶材料から製造されている。このように構成されて、複数のアーム202a~202cが送達形態に配置されると、アーム202a~202cは互いから離れるように付勢され得る。アンカー200がカテーテル214のルーメン212内に配置されるとと、複数のアーム202a~202cは
図2Aの送達形態に維持される。アンカー200がカテーテル214のルーメン212の外に移動されると、複数のアーム202a~202cにおける付勢により、アーム202a~202cは互いから離れるように移動させられ、
図2Bに示す展開形態をとる。送達形態から展開形態に移行する際に、複数のアーム202a~202cは外向きに移動し、そのため、アームの先端部210a~210cが標的とされる乳頭筋または心臓壁に係合して突き刺さる。いくつかの実施形態では、先端部210a~210cは乳頭筋または心臓壁に刺通し、そのため、筋肉または心臓壁が複数のアーム202a~202cの中央部分211a~211cによって堅固に保持される。
【0030】
図2Cは、複数のアーム202a~202cが送達形態から展開形態に移行するにつれて、アーム202a~202cが互いに交差することができるアンカー200の実施形態を示している。見て分かるように、複数のアーム202a~202cの近位端部204a~204cは、
図2Bの実施形態で示した接続構成と比較すると、本体部分の反対側で本体部分206に結合されている。複数のアーム202a~202cをこのように形成し配置することによって、展開時に、アームが展開するにつれてアームが組織を捕捉するためのループを形成することができる。
【0031】
見て分かるように、
図2A~
図2Dに示したアンカーの実施形態は、展開形態において、アームの遠位端部208a~208cが本体部分206に向かって内側に向けられるように付勢されたアーム202a~202cを備える。例示した実施形態では、アーム202a~202cはほぼ120度の間隔で配置されているが、これは重要ではなく、本開示の範囲から逸脱することなく、アームの他の角度間隔も用いることができる。加えて、アンカー200は3つのアーム202a~202cを備えるように示されているが、アンカー200は、所望により、より多数またはより少数のアームを有することができることが認識されよう。
【0032】
このように構成されて、アンカー200は、アンカーがカテーテル214内に配置された送達形態と、アンカーがカテーテルの外部に展開された展開形態とを有する。アンカー200が送達形態にあるとき、アーム202a~202cは第1の位置にある。アンカー200がカテーテル214の外部に展開されるとき、アームは第1の位置から第2の位置に動き得る。したがって、アンカー200は、カテーテルの内部に配置されたときの半径方向に拘束された形態から、カテーテルの遠位端部を越えて移動されたときの半径方向に拡張した形態に移行する。いくつかの実施形態において、アンカー200は、半径方向に拘束された形態では第1の外形寸法を有し、半径方向に拡張した形態では第2の外形寸法を有する。いくつかの実施形態において、第1の外形寸法は第2の外形寸法よりも小さい。
【0033】
図3A~
図3Dを参照すると、本開示による、標的とされる乳頭筋または心臓壁に係合するためのアンカー300の実施形態が示されている。アンカー300は、本体部分306に結合された近位端部304a~304cと、近位端部から離れるように延びた遠位端部308a~308cとを有した複数のアーム302a~302cを有し得る。遠位端部308a~308cは、アンカーが標的組織部位と係合されたときにアンカー300が標的組織部位に確実に固定され得るように組織に刺通するのに適したテーパー状のまたは尖った先端部310a~310cをそれぞれ有し得る。
【0034】
図3Cは、適切なカテーテル314または他の送達装置のルーメン312内に送達形態で配置された複数のアーム302a~302cを示している。この形態において、アンカー300はカテーテル314によって標的組織部位まで運ばれ、そこで次にアンカー300は展開され得る。見て分かるように、送達形態では、複数のアーム302a~302cは、先端部310a~310cがカテーテル314の開放端316の方に向いている伸長した形状をとる。いくつかの実施形態では、複数のアーム302a~302cは、アームが互いに向かって押圧されて送達形態をとることを可能にする弾性特性を有する材料から製造されている。一実施形態では、複数のアーム302a~302cは、ニチノールなどの形状記憶材料から製造されている。複数のアーム302a~302cが送達形態に配置されると、アーム302a~302cは互いから離れるように自然に付勢され得る。認識されるように、カテーテル314は、アンカー300が標的とされる乳頭筋または心臓壁318に隣接して配置されるまで、複数のアーム302a~302cを送達形態に維持し得る。次にアンカー300がカテーテル314のルーメン312の外に移動され得、すると複数のアーム302a~302cにおける付勢により、アームは互いから離れるように動き、
図3A、
図3B、および
図3Dに示す展開形態をとり得る。アーム302a~302cが送達形態から展開形態に移行するとき、複数のアーム302a~302cは、アームの先端部310a~310cが標的とされる乳頭筋または心臓壁318に係合して突き刺さるように離れて動き、したがってアンカー300を乳頭筋または心臓壁318に固定する。
【0035】
前述の実施形態でのように、例示したアンカー300のアーム302a~302cは、アームが中立位置(例えば、外部の力の作用を受けない位置)にあるとき、湾曲した外観を有し得る。アーム302a~302cの各々の湾曲した中央部分311a~311cは、アンカー300が送達形態(カテーテル314内-
図3C)から展開形態(カテーテルの外部-
図3D)に移行されるときに、アームの先端部310a~310cを本体部分306から半径方向に外側に動かすためのばねとして作用する。したがって、
図3Aおよび
図3Dの展開形態において、アーム302a~302cの各々の尖った先端部310a~310cは、組織に係合するために、本体部分306から離れる方向に向き得る。
【0036】
見て分かるように、
図3A~3Dに示したアンカー300は、展開形態において先端部310a~310cがほぼ120度の間隔で互いから離れる方向に向くように付勢されたアーム302a~302cを備えているが、これは重要ではなく、本開示の範囲から逸脱することなく、アームの他の角度間隔も用いることができる。加えて、アンカー300は3つのアーム302a~302cを備えるように示されているが、アンカー300は、所望により、より多数またはより少数のアームを有することができることが認識されよう。
【0037】
このように構成されて、アンカー300は、アンカーがカテーテル314内に配置された送達形態と、アンカーがカテーテルの外部に展開された展開形態とを有する。アンカー300が送達形態にあるとき、アーム302a~302cは第1の位置にある。アンカー300がカテーテル314の外部に展開されると、アームは第1の位置から第2の位置に動き得る。したがって、アンカー300は、カテーテルの内部に配置されたときの半径方向に拘束された形態から、カテーテルの遠位端部を越えて移動されたときの半径方向に拡張した形態に移行する。いくつかの実施形態において、アンカー300は、半径方向に拘束された形態では第1の外形寸法を有し、半径方向に拡張した形態では第2の外形寸法を有する。いくつかの実施形態において、第1の外形寸法は第2の外形寸法よりも小さい。
【0038】
図4A~
図4Bは、本開示による、標的とされる乳頭筋または心臓壁に係合するためのアンカー400の実施形態を示している。アンカー400は、本体部分406に係合するための近位端部404と、近位端部から離れるように延びた遠位端部408とを有する組織係合部分402を備えることができる。遠位端部408は、アンカーが標的組織部位と結合されるときにアンカー400が標的組織部位(乳頭筋または心臓壁)と確実に係合され得るように組織に刺通するのに適したテーパー状のまたは尖った先端部410を有し得る。
【0039】
見て分かるように、例示した実施形態において、組織係合部分402は、らせん形状に形成されたワイヤ本体を備える。組織係合部分の近位端部404は、ワイヤ本体の延長部であってもよく、本体部分406の突出部分414を内部に受容して本体部分406を組織係合部分402に固定するための開口部412を形成し得る。このようにして、本体部分406および組織係合部分402は、回転方向および軸線方向において共にロックされる。
【0040】
使用時、標的組織は、アンカー400の先端部410で組織(例えば乳頭筋または心臓壁)を刺通し、続いて本体部分406によってアンカーを回転させることによって係合され得、このアンカーの回転は、組織係合部分402のワイヤ本体を引き下げて組織との係合を深くするように働く。
【0041】
示していないが、アンカー400は、カテーテルまたは他の適切な送達装置を用いて、乳頭筋および/または心臓壁に送達され得る。本体部分406は、アンカー400に軸線方向力および回転力を加えることができるように、一方の端部416でケーブル、ワイヤなどに結合され得る。例えば、軸線方向力を加えて、アンカー400をカテーテルの外へ、組織係合部分402の先端部410を標的とされる乳頭筋または心臓壁の一部と係合させるのに十分な量だけ移動させることができる。次に、アンカー400に回転力を加えることができ、それにより、組織係合部分402のらせん形状がアンカーを引っ張って、乳頭筋(papillary much)または心臓壁と係合させるように作用することができる。
【0042】
図5A図~5Dを参照すると、本開示による、標的とされる乳頭筋または心臓壁に係合するためのアンカーの実施形態が示されている。アンカー500は、第1アームおよび第2アーム502,504と、本体部分506とを有し得る。第1アームおよび第2アーム502,504は各遠位先端部508,510を有することができ、遠位先端部508,510は、これらの遠位先端部が組織に刺通できるようにするために、テーパー状になっていてもよいし、または尖っていてもよい。第1アームおよび第2アーム502,504はまた、本体部分506に結合されているか、または本体部分506と一体的に形成されている近位端部512,514も備え得る。
【0043】
第1のアーム502は、遠位先端部508と第2のアーム504の近位端部514との間に配置された開口部516をさらに備え得る。開口部516は、アンカー500が送達形態と展開形態との間を移行されるときに第2のアーム504の遠位先端部510を内部に受容するような大きさに形成され得る。
【0044】
図5Aは、部分的に展開された形態にあるアンカー500を示している。見て分かるように、第2のアーム504は、依然として送達形態にある(例えば、その一部がカテーテル520のルーメン518内に配置されている)。この位置において、第1のアーム502は、その遠位先端部508が標的とされる乳頭筋または心臓壁522と係合されるように展開される。アンカー500がカテーテル520からさらに外側へ移動されるにつれて、第2のアーム504が解放され、第2のアームを矢印「A」の方向に回転させて、
図5Bおよび
図5Cに示す展開形態をとるようにさせる。
【0045】
第2のアーム504は、中立形態(例えば外力が第2のアームに加えられない場合)において第2のアームの中央部分505が第1のアーム502の開口部516内に部分的に受容されるように、湾曲した形状を有し得る。この位置(
図5B、
図5C)では、遠位先端部510は第1のアーム502の開口部516を越えて配置され、第1のアーム502に対して斜角に向いている。
【0046】
第2のアーム504が送達形態(
図5A)から展開形態(
図5B~
図5C)に移動されるにつれて、遠位先端部510は矢印「A」の方向に動いて、標的とされる乳頭筋または心臓壁522を貫く。次いで、遠位先端部510は、遠位先端部510が第1のアーム502の開口部516を通過して、
図5Bおよび
図5Cに示す最終位置をとるまで組織内を動く。アンカー500は、このように標的とされる乳頭筋または心臓壁522にロックされる。
【0047】
いくつかの実施形態において、第2のアーム504は、第2のアーム504を送達形態から展開形態に移行させる弾性特性を有する材料から製造されている。一実施形態では、第2のアーム504は、ニチノールなどの形状記憶材料から製造されている。したがって、第2のアーム504が送達形態に配置されると、第2のアーム504は自然に外向きに付勢され得る。例示した実施形態では、第2のアーム504は、その遠位先端部510が第1のアーム502の遠位先端部508とは反対方向に向かうように曲げられている。認識されるように、カテーテル520は、アンカー500が標的とされる乳頭筋または心臓壁522に隣接して配置されるまで、第2のアーム504を送達形態に維持し得る。次に、アンカー500は、第1のアーム502の遠位先端部508が乳頭筋または心臓壁522に係合するように、カテーテル520のルーメン518の外に移動され得る。アンカー500を、第2のアーム504がカテーテル520から解放されるまで、乳頭筋または心臓壁522の中にさらに押し下げることができ、すると第2のアームにおける付勢により、第2のアームが
図5Bおよび
図5Cの展開形態をとるようになり得る。
【0048】
このように構成されて、アンカー500は、アンカーがカテーテル520内に配置された送達形態と、アンカーがカテーテルの外部に展開された展開形態とを有する。アンカー500が送達形態にあるとき、第2のアーム504は第1の位置にある。アンカー500がカテーテル520の外部に展開されるとき、第2のアーム504は第1の位置から第2の位置に動き得る。したがって、アンカー500は、カテーテル520の内部に配置されたときの半径方向に拘束された形態から、カテーテルの遠位端部を越えて移動されたときの半径方向に拡張した形態に移行することができる。いくつかの実施形態において、アンカー500は、半径方向に拘束された形態では第1の外形寸法を有し、半径方向に拡張した形態では第2の外形寸法を有する。いくつかの実施形態において、第1の外形寸法は第2の外形寸法よりも小さい。
【0049】
図6A~
図6Bを参照すると、本開示による、標的とされる乳頭筋または心臓壁に係合するためのアンカーの実施形態が示されている。アンカー600は、針部分602、編組部分604、および本体部分606を備え得る。針部分602は、針部分が標的とされる乳頭筋または心臓壁610に刺通できるようにするための尖端部608を有し得る。ワイヤ、ケーブル、コイルなどのような内側部材612は、本体部分および編組部分604を通って延びることができ、針部分602に固定され得る。内側部材612は、送達中にアンカーに剛性を与えることができ、針部分602を標的とされる乳頭筋または心臓壁610と係合するように押圧するために用いられ得る。
【0050】
アンカー600は、形状記憶材料などの可撓性材料から製造され得、そのため、アンカーは半径方向に圧縮された状態で送達可能となり、次いで半径方向に拡張されて
図6Bに示す形状をとることができる。いくつかの実施形態では、編組部分604は、編組部分604が選択的に拡張され得るように、可撓性の編組ニチノールまたは他の適切な材料から形成され得る。編組部分604は、溶接、接着剤、または他の適切な接合技術によって、針部分602および本体部分606に結合され得る。
【0051】
図6Aに示すように、アンカー600は、適切なカテーテルを用いて、標的とされる組織部位に送達するために送達形態(例えば、半径方向に圧縮された状態)で提供され得る。アンカー600が標的とされる組織部位に配置されると、針部分602の尖端部608は、アンカーが
図6Aに示すように組織内に埋め込まれるまで、組織内に押し込まれ得る。次に、内側部材612を後退させることができ、これにより、編組部分604が
図6Bの展開形態をとるように、編組部分604を拡張させることができる。
【0052】
このように構成されて、アンカー600は、アンカーが送達カテーテル(図示せず)内に配置された送達形態と、アンカーがカテーテルの外部に展開された展開形態とを有する。アンカー600が送達形態にあるとき、編組部分604は第1の位置にある。アンカー600が送達カテーテルの外部に展開されると、編組部分は第1の位置から第2の位置に動き得る。したがって、アンカー600は、カテーテルの内部に配置されたときの半径方向に拘束された形態から、カテーテルの遠位端部を越えて移動されたときの半径方向に拡張した形態に移行することができる。いくつかの実施形態において、アンカー600は、半径方向に拘束された形態では第1の外形寸法を有し、半径方向に拡張した形態では第2の外形寸法を有する。いくつかの実施形態において、第1の外形寸法は第2の外形寸法よりも小さい。
【0053】
図7図を参照すると、本開示による、乳頭筋または心臓壁152に係留するための実施形態システムが示されており、該システムは、心臓154の乳頭筋または心臓壁152に取り付けられるアンカー702を備える。アンカー702の各々は、人工腱索である係留フィラメント704の端部に取り付けられる。係留フィラメント704はフィラメント706に取り付けられ、フィラメント706は、心臓弁の弁尖150に結合される複数の弁尖クリップ708にさらに取り付けられる。医療専門家は、フィラメント706および係留フィラメント704が心臓154の腱索を再現し、かつ/または腱索に置き換わって、弁の弁尖150とともに機能することができるように、フィラメント706および係留フィラメント704の長さおよび張力を調節し得る。医療専門家は、経食道心エコー図および/または蛍光透視法によって観察され得る心臓弁逆流の所見に応じて、フィラメント704,706を調節し得る。フィラメント704,706は、一方の端部ではクリップ708によって弁尖150に固定され、第2の端部ではアンカー702によって乳頭筋または心臓壁152に固定される。1つの係留フィラメント704および1つのアンカー702が複数のクリップ708に対して用いられ得るように、単一の係留フィラメント704が1つ以上のフィラメント706に結合されてもよい。いくつかの実施形態において、フィラメント706および係留フィラメント704は、心臓154へのシステムの送達中に、1つ以上のクリップ708に結合されていてもよく、また互いに結合されていてもよい。
【0054】
本願において開示し権利請求する装置および/または方法はすべて、本開示を踏まえて、過度の実験作業を行うことなく、製造し、実施することができる。この開示の装置および方法は好ましい実施形態に関して記載されているが、本開示の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本願に記載した装置および/または方法に対して、並びにそれらの方法のステップまたはステップの順序において、変形例を適用できることは当業者には明らかである。当業者には明らかなそのような類似した代替物および変更例はすべて、添付する特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨、範囲および概念の内にあると考えられる。
【国際調査報告】