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特表2022-532501ラセミ混合物のキラル分離によるエチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボン酸塩の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】ラセミ混合物のキラル分離によるエチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボン酸塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/04 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
C07D405/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564484
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2020062180
(87)【国際公開番号】W WO2020221914
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】19172248.7
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チャセイン,クリストフ・ピエール・アラン
(72)【発明者】
【氏名】グリム,カール・ハインツ
【テーマコード(参考)】
4C063
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC78
4C063DD22
4C063EE05
(57)【要約】
エチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシラート及びエチル3-アミノ-1-[(3S,4R)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシラートのラセミ混合物(V)からのエチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシラート(VI)のキラル分離方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エナンチオマーの混合物から、下記式VIの化合物:
【化1】
を製造する方法であって、下記式V:
【化2】
のラセミ混合物のエナンチオマーを、溶離液とアミローストリス(3-クロロ-4-メチルフェニルカルバメート)及びアミローストリス(3-クロロ-5-メチルフェニルカルバメート)から選択されるキラル固定相を用いるキラルクロマトグラフィーによって分離することを含む方法。
【請求項2】
前記方法の生産性が2.0KKDより大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キラル固定相がシリカゲルに固定化されたアミローストリス(3-クロロ-5-メチルフェニルカーバメート)である、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記キラル固定相がシリカゲルにコーティングされたアミローストリス(3-クロロ-4-メチルフェニルカーバメート)である、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶離液がアセトニトリルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法の生産性が、約2.0~約6.0KKD、好ましくは約3.0~約5.0KKDの範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法の選択性が、約1.0~約4.0、好ましくは約1.5~約3.5の範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法を、約20℃~約40℃、好ましくは約25℃~約35℃の温度で行う、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、約100g/L~約300g/L、好ましくは約200g/Lのラセミ混合物(V)の濃度を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
エチル3-アミノ-1-[(3S,4R)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレートを実質的に含まないエチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレート(VI)を単離する方法であって、
a)エチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレート及びエチル3-アミノ-1-[(3S,4R)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレートのラセミ混合物(V)をキラル分離媒体に吸収させること;
b)エチル3-アミノ-1-[4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレートエナンチオマーを分離媒体から溶出するのに十分な量で溶媒系をキラル分離媒体に通すこと;
c)エチル3-アミノ-1-[(3S,4R)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレートを実質的に含まないエチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレート(VI)を単離すること
を含み;
前記キラル分離媒体が、シリカゲル上に固定化されたアミローストリス(3-クロロ-5-メチルフェニルカルバメート)又はシリカゲル上にコーティングされたアミローストリス(3-クロロ-4-メチルフェニルカルバメート)である方法。
【請求項11】
前記キラル分離媒体が、シリカゲルに固定化されたアミローストリス(3-クロロ-5-メチルフェニルカルバメート)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記キラル分離媒体が、シリカゲルにコーティングされたアミローストリス(3-クロロ-4-メチルフェニルカルバメート)である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒系がアセトニトリルを含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、約2.0~約6.0KKD、好ましくは約3.0~約5.0KKDの範囲の生産性を有する、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法の選択性が約1.0~約4.0、好ましくは約1.5~約3.5の範囲である、請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記温度が約20℃~約40℃、好ましくは約25℃~約35℃である、請求項10~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ラセミ混合物(V)の濃度が約100g/L~約300g/L、好ましくは約200g/Lである、請求項10~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
WO2018/108969に、選択的ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤であり、したがって、アトピー性皮膚炎、関節炎、及びがんなどのJAK介在疾患の治療に有用である式Iの化合物が開示されている。具体的には、1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]-3-[(2-フルオロ-6-メトキシ-4-ピリジル)アミノ]ピラゾール-4-カルボキサミド(I)が開示されている。
【化1】
【0002】
式(I)の化合物の製造方法において、ラセミ混合物(5)に対してキラル分離を実施して、重要な中間体(6)を単離している。
【化2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2018/108969
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キラルクロマトグラフィーの溶離液として習慣的に使用される有機溶媒へのラセミ化合物5の溶解度が低いため、次の条件(流量:220mL/分;カラム温度:38℃)下でセルローストリス(3,5-ジクロロフェニルカルバメート)キラル固定相(ChiralPak(登録商標) IC、10μM、300×50mm)及び45%の2-プロパノール、55%COからなる移動相を用いる超臨界流体クロマトグラフィーによって、それの分離を行わなければならなかった。
【0005】
WO2013/041042は、関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及びがんの治療に有用なヤヌスキナーゼ阻害剤としてのピラゾールカルボキサミドを開示している。本開示の化合物は、下記式のものである。
【化3】
【0006】
EP18212188及びPCT/CN2018/120821には、1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]-3-[(2-フルオロ-6-メトキシ-4-ピリジル)アミノ]ピラゾール-4-カルボキサミドの製造方法が開示されている。この方法は、下記の図式1にまとめてある。
【0007】
図式1
【化4】
【0008】
さらに、式(V)のラセミ混合物の式(VI)のエナンチオマーへの分離は、HPLCによって行われると記載されている。使用されるカラムの種類の開示はない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、エチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレート及びエチル3-アミノ-1-[(3S,4R)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレートのラセミ混合物(V)からエチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレート(VI)をキラル分離する新規かつ有利な方法を開発した。
【0010】
本発明の1実施形態は、式VIの化合物:
【化5】
【0011】
の製造方法であって、式V:
【化6】
【0012】
のラセミ混合物のエナンチオマーを、溶離液とアミローストリス(3-クロロ-4-メチルフェニルカルバメート)及びアミローストリス(3-クロロ-5-メチルフェニルカルバメート)から選択されるキラル固定相を用いるキラルクロマトグラフィーによって分離することを含む方法である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特許請求された方法の利点は、高い生産性と高い選択性の両方でのエナンチオマーの効率的分離である。単一のエナンチオマーの製造方法には、通常、ラセミ化合物のキラル分離又はエナンチオマー的に選択的な反応が関与する。キラル分離を伴う方法において、その方法のできるだけ早期に、このキラル分離を行うことが望ましい。これにより、望ましくないエナンチオマーが後続の段階に持ち越されないことから、効率が向上する。真に効率的であるためには、そのプロセスは二つのエナンチオマーを分離する際に高度に選択的でなければならない。さらに、このプロセスは、手頃なコストで妥当な時間内に十分な量の所望のエナンチオマーを製造するために、十分に高いスループット又は生産性を持たなければならない。WO2018/108969(上記参照)に開示されたプロセスでは、同様の中間体のキラル分離は、0.5KKD未満の生産性しか達成できておらず、これにより、式(I)の化合物を製造するプロセス全体が大規模製造での使用には受け入れられないと決定されている。
【0014】
エチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレート(VI)は、1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]-3-[(2-フルオロ-6-メトキシ-4-ピリジル)アミノ]ピラゾール-4-カルボキサミド(I)の合成における重要な中間体である。上記のように、EP18212188及びPCT/CN2018/120821に、HPLCを用いることによる式Vのラセミ混合物の式VIのエナンチオマー化合物への分離が開示されている。以下の図式2を参照する。
【0015】
図式2
【化7】
【0016】
エチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシラート及びエチル3-アミノ-1-[(3S,4R)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシラート(V)のラセミ混合物からエチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシラート(VI)を分離する効率的な方法によって、上記の図式1に記載の残りの段階プロセスをエナンチオマー的に純粋な材料について行うことができ、それにより、各段階の収率及び全体収率がより高くなることから、そのような方法が必要とされている。化合物(IV)と(III)の反応により、最初に四つのジアステレオマーの混合物が生成される。上記ラセミ混合物(V)として示された(3R,4S)及び(3S,4R)エナンチオマーに加えて、(3R,4R)及び(3S,4S)エナンチオマーのペアも生成される。しかしながら、これらの後者の二つのエナンチオマーは、選択的再結晶によって(V)から効率的に分離される。
【0017】
Chiralpak(登録商標) IGは、3μmシリカゲルに固定化されたアミローストリス(3-クロロ-5-メチルフェニルカルバメート)である。
【0018】
Chiralpak(登録商標) AZは、3又は5μmのシリカゲルにコーティングされたアミローストリス(3-クロロ-4-メチルフェニルカルバメート)である。
【0019】
キラル固定相(CSP)は、キラルセレクターで修飾され、エナンチオマー化合物の混合物を分離するように設計された多糖類で誘導体化されたシリカベースの材料である。CSPはキラル分離媒体としても知られている。
【0020】
コーティングされた多糖類ベースのキラル固定相は、多糖類が基礎のシリカに共有結合していない相である。
【0021】
固定化多糖キラル固定相は、多糖が基礎のシリカに共有結合している相である。
【0022】
キラル分離プロセスの効率は、ラセミ体のエナンチオマー間で達成される分離の程度と、24時間あたりに使用されるキラル固定相の質量あたりに処理されるラセミ体の質量に関して測定される生産性によって判断できる。
【0023】
生産性(KKD)は、1日あたりのキラル固定相(CSP)1kgあたりで分離できるラセミ体のkg量として定義される。
【0024】
選択性(α)は、等式1に示すように、二つのエナンチオマーの二つのUVシグナルの保持係数の比率である。それは、二つのUVシグナルの頂点間の距離として視覚化することができる。
【0025】
等式1
【数1】
【0026】
式中、TE2は2番目に溶出するエナンチオマーの保持時間であり、TE1は最初に溶出するエナンチオマーの保持時間、Tは移動相がカラムを通過するのにかかる時間である。
【0027】
ベースライン分離とは、プロセスが十分に選択的であることで、UVクロマトグラムにおいて、次の成分のUV信号の表示が始まる前に、最初の成分に相当するUVシグナルがベースラインに対して消えていくことを意味する。
【0028】
溶離液は、クロマトグラフィーの実行に使用される移動相である。
【0029】
キラルとは、分子がその鏡像に重ね合わせることができないことを意味する。
【0030】
エナンチオマーは、二つの重ね合わせることができない画像のそれぞれである。ダウコーニングシステムを用いて、各エナンチオマーを指定する。分子のキラル中心には、キラル中心に結合している基の立体配置に応じて、R又はSの指定が割り当てられる。不斉炭素(キラル中心)に結合した四つの基の各基は、一連の優先ルールに基づいて順位付けされる。分子が配向していることで、最下順位の基が見る者の反対側を向いている場合、残りの基は降順でカウントされる。順序が時計回りに進む場合、キラル中心はRと指定される。順序が反時計回りに進む場合、キラル中心はSと指定される(March, Advanced Organic Chemistry, 3rdEd. 1985, p97を参照)。
【0031】
エナンチオマー過剰(e.e.)又はエナンチオマー純度は、等式2に示すように、パーセンテージで表される組成物のエナンチオマー純度の度合いである。
【0032】
等式2:
【数2】
【0033】
「エチル3-アミノ-1-[(3S,4R)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレート」を実質的に含まないエチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレート(VI)」という句は、少なくとも約80%eeの化合物(VI)を含む組成物を意味する。好ましくは、そのような組成物は、少なくとも約90%eeの化合物(VI)を含み、より好ましくは、その組成物は、少なくとも約95%eeの化合物(VI)を含み、最も好ましくは、その組成物は、98%eeを超える化合物(VI)を含む。
【0034】
SFCは超臨界流体クロマトグラフィーを意味する。
【0035】
SMBは、模擬移動床プロセスを意味する。
【0036】
ラセミ体又はラセミ混合物は、同量のキラル分子の左巻き及び右巻き(R及びS)エナンチオマーを有するものである。
【0037】
本発明の代替の実施形態は、エチル3-アミノ-1-[(3S,4R)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレートを実質的に含まないエチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレート(VI)を単離する方法であって、
a)エチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレート及びエチル3-アミノ-1-[(3S,4R)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレートのラセミ混合物(V)をキラル分離媒体に吸収させること;
b)エチル3-アミノ-1-[4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレートエナンチオマーを分離媒体から溶出するのに十分な量で溶媒系をキラル分離媒体に通すこと;
c)エチル3-アミノ-1-[(3S,4R)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレートを実質的に含まないエチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシレート(VI)を単離すること
を含み;
前記キラル分離媒体は、シリカゲル上に固定化されたアミローストリス(3-クロロ-5-メチルフェニルカルバメート)又はシリカゲル上にコーティングされたアミローストリス(3-クロロ-4-メチルフェニルカルバメート)である。
【0038】
本発明の別の実施形態において、キラル固定相は、アミローストリス(3-クロロ-4-メチルフェニルカーバメート)、アミローストリス(5-クロロ-2-メチルフェニルカーバメート)、アミローストリス(3,5-ジメチルフェニルカーバメート)及びアミローストリス(3-クロロ-5-メチルフェニルカーバメート)から選択される。
【0039】
1実施形態において、キラル固定相は、シリカゲル上にコーティングされているか、固定化されている。
【0040】
本発明の別の実施形態において、キラル固定相は、シリカゲル上に固定化されたアミローストリス(3-クロロ-5-メチルフェニルカルバメート)である。
【0041】
本発明の別の実施形態において、カラムは、シリカゲル上にコーティングされたアミローストリス(3-クロロ-4-メチルフェニルカルバメート)である。
【0042】
本発明の別の実施形態において、溶離液はアセトニトリルである。本発明の別の実施形態において、当該方法の生産性は2.0KKDより大きい。
【0043】
本発明の別の実施形態において、当該方法の生産性は、約2.0~約6.0KKD、好ましくは約3.0~約5.0KKDの範囲である。
【0044】
本発明の別の実施形態において、当該方法の選択性は、約1.0~約4.0、好ましくは約1.5~約3.5の範囲である。
【0045】
本発明の別の実施形態において、温度は約20℃~約40℃、好ましくは約25℃~約35℃である。
【0046】
本発明の別の実施形態において、ラセミ体(V)の濃度は、約100g/L~約300g/L、好ましくは約200g/Lである。
【実施例
【0047】
実施例1:有機溶媒中の化合物(V)の溶解度
化合物(V)の水中及び一組の有機溶媒中の溶解度を求めた。結果を表1に示してある。
【表1】
【0048】
化合物(V)が、クロマトグラフィー分離を行うための選択溶媒の一つであるアセトニトリル中で驚くほど高溶解性であることが認められた。
【0049】
実施例2:キラル固定相スクリーニング
サンプルを希釈するための溶媒として、そしてクロマトグラフィーを行うための溶離液(又は移動相)としてアセトニトリルを用いて、一組のキラル固定相がエチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシラート及びエチル3-アミノ-1-[(3S,4R)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシラートのラセミ混合物(式V)からエチル3-アミノ-1-[(3R,4S)-4-シアノテトラヒドロピラン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキシラート(式VI)を分離する能力を求めた。結果を表2に示している。
【0050】
本試験の操作条件を、下記の表2に示している。
【表2】
【0051】
表3
【表3】
【0052】
表3に示した結果で証明されているように、調べたキラル固定相の半分未満で、(V)のラセミ混合物をある程度分離することができた。(V)の分離を可能にするものの中で、(V)のベースライン分離を可能にしたのは二つのカラム:シリカゲルカラムに固定化されたアミローストリス(3-クロロ-5-メチルフェニルカルバメート)(Chiralpak(登録商標)IG)とシリカゲルカラム(Chiralpak(登録商標)AZ)にコーティングされたアミローストリス(3-クロロ-4-メチルフェニルカルバメート)のみであった。
【0053】
実施例3-生産性
ラセミ混合物(V)20mgを200g/Lでアセトニトリルに溶解させた。この溶液を、シリカゲルカラム(Chiralpak(登録商標) IG)に固定化されたアミローストリス(3-クロロ-5-メチルフェニルカルバメート)に注入した(250×4.6mm)。サンプルを25℃でアセトニトリルで溶離した。両方のエナンチオマーが得られた。生産性(KKD)は、ラセミ体3.0~3.5kg/キラル固定相kg/日と推計された。
【0054】
アセトニトリルに200g/Lで可溶化したラセミ混合物(V)20mgも、シリカゲルカラム(Chiralpak(登録商標) AZ)(250×4.6mm)にコーティングしたアミローストリス(3-クロロ-4-メチルフェニルカルバメート)に注入しました。25℃でアセトニトリルで溶離した後、両方のエナンチオマーが得られた。生産性(KKD)は、ラセミ体4.0~5.0kg/キラル固定相kg/日と推計された。
【国際調査報告】