(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】限られた数のNK細胞を有する患者における抗CD19療法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20220708BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220708BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220708BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220708BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220708BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220708BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220708BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220708BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
G01N33/53 Y
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565055
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2020062289
(87)【国際公開番号】W WO2020225196
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316005432
【氏名又は名称】モルフォシス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】クッファー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】フィンガール - ロウソン,ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンダーリヒ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】エンデル,ヤン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C085AA14
4C085AA15
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、抗CD19抗体による治療から利益を受ける患者における特徴及びバイオマーカーを提供する(MOR00208、XmAb5574)。さらに、本出願は、ベースラインで100NK細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有する患者における白血病またはリンパ腫の治療のための抗CD19抗体に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体であって、前記患者が、ベースラインで100NK細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有する、前記抗CD19抗体。
【請求項2】
前記抗CD19抗体が、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む、請求項1に記載の血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体。
【請求項3】
前記抗CD19抗体が、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の可変重鎖
及び配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の可変軽鎖を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体。
【請求項4】
前記抗CD19抗体が、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)を有する重鎖
及び配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を有する軽鎖を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体。
【請求項5】
前記抗CD19抗体が、1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体。
【請求項6】
前記薬剤が、生物学的薬剤もしくは化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩である、請求項5に記載の血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体。
【請求項7】
前記1つ以上の薬剤が、治療用抗体または抗体断片、窒素マスタード、プリン類似体、サリドマイド類似体、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、BCL-2阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤またはその薬学的に許容される塩である、請求項6に記載の血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体。
【請求項8】
前記1つ以上の薬剤が、リツキシマブ、R-CHOP、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、イホスファミド、メルファラン、ベンダムスチン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン、フルダラビン、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド、イデラリシブ、デュベリシブ、コパンリシブ、イブルチニブ、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩である、請求項7に記載の血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体。
【請求項9】
前記血液癌患者が、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)または急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体。
【請求項10】
前記血液癌患者が、非ホジキンリンパ腫を有する、請求項9に記載の血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体。
【請求項11】
前記非ホジキンリンパ腫が、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される、請求項10に記載の血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体。
【請求項12】
前記非ホジキンリンパ腫が、再発または難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r-r DLBCL)である、請求項11に記載の血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体。
【請求項13】
前記抗CD19抗体が、以下の特徴:
(i)無増悪生存期間(PFS)、
(ii)客観的奏効率(ORR)、
(iii)奏効期間(DoR)、
(iv)全生存期間(OS)、
(v)無憎悪期間(TTP)のうちの1つ以上を増加させる、先行請求項のいずれか1項に記載の血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体。
【請求項14】
抗CD19抗体の治療的投与から利益を得ると予測される血液癌患者の選択方法であって、前記方法が、
a)前記抗CD19抗体による治療前に前記患者から得られた血液試料を提供するステップと、
b)前記末梢NK細胞数を決定するステップと、
c)前記患者がベースラインで100細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有することに基づいて、前記患者を選択するステップと、を含む、前記方法。
【請求項15】
以下のステップ:
d)抗CD19抗体による前記選択された患者の治療をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗CD19抗体による治療から利益を受ける患者における特徴及びバイオマーカーを特定することを対象とする。さらに、本開示は、限られた数のNK細胞を有する患者における白血病またはリンパ腫の治療のための抗CD19抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
CD19は、2つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン及び広範囲の細胞質尾部を含有する免疫グロブリンスーパーファミリーの95kDa膜貫通糖タンパク質である。タンパク質は、pan-Bリンパ球表面受容体であり、pre-B細胞発達の初期段階から、形質細胞への終末分化中に下方調節されるまで、普遍的に発現される。CD19は、Bリンパ球系統特異的であり、一部の濾胞性樹状細胞を除いて、造血幹細胞及び他の免疫細胞では発現しない。CD19は、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達の正の調節因子として機能し、B細胞の活性化及び増殖、ならびに体液性免疫応答の発達に重要である。CD19は、CD21及びCD81と併せて共刺激分子として作用し、T細胞依存性抗原に対するB細胞応答に重要である。CD19の細胞質尾部は、タンパク質チロシンキナーゼのsrcファミリーを介して下流シグナル伝達経路をトリガーするチロシンキナーゼのファミリーと物理的に会合する。CD19は、ほぼすべての慢性リンパ球性白血病(CLL)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)、ならびに急性リンパ球性白血病(ALL)及び有毛細胞白血病(HCL)を含む多くの他の異なるタイプの白血病において高度に発現されるため、リンパ系由来のがんに対する魅力的な標的である。
【0003】
MOR00208(旧称:XmAb(登録商標)5574)は、B細胞受容体シグナル伝達に関与する膜貫通タンパク質である抗原CD19を標的とするヒト化モノクローナル抗体である。MOR00208は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を増強するようにIgG Fc領域で操作されており、したがって、腫瘍細胞死滅のための重要な機序を改善し、従来の抗体、すなわち、非増強抗体と比較して有効性が増強される可能性を提供する。MOR00208は、CLL、ALL及びNHLなどのいくつかの臨床試験で研究されているか、または現在研究されている。これらの試験のうちのいくつかでは、MOR00208は、イデラリシブ、レナリドマイドまたはベネトクラクスと組み合わせて使用される。
【0004】
B-MINDと呼ばれる第II/III相試験では、MOR00208の、ベンダムスチン(BEN)との組み合わせの有効性及び安全性は、再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r-r DLBCL)を有する成人患者において評価される。この研究では、MOR00208+BENの組み合わせを、リツキシマブ(RTX)及びBENの組み合わせと比較する。キメラマウス/ヒト抗体リツキシマブは、再発または難治性の低グレードまたは濾胞性CD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する患者の治療のために、1997年に米国食品医薬品局(FDA)によって最初に承認された。欧州では、リツキシマブが、1998年にNHL患者の治療のために承認された。
【0005】
最近、B細胞悪性腫瘍を有する患者の治療選択肢の数が増加し、モノクローナル抗体(mAb)及びmAbベースの療法の臨床的有効性は、多数の血液悪性腫瘍において、主に化学療法剤と組み合わせて実証されている。しかしながら、相当量のB細胞悪性腫瘍を有する患者は、それらの組み合わせた抗体化学療法に応答して、初期の腫瘍寛解後に難治性であるか、または再発する。全体として、異なる患者プロファイルに基づく、抗体療法に対する患者の可変奏効率が観察される。療法の成功をさらに最適化するために、どの患者がそのような抗体療法に応答する可能性があるか、及び/または最良に応答する可能性があるかを正確に予測するための追加の方法が必要である。特定のバイオマーカーまたは患者の特性は、各バイオマーカーの特定の濃度または範囲が、そのような療法に対する応答性と相関することが見出され得る。
【0006】
したがって、抗CD19抗体を含む療法によるがんの治療に関連して使用するための、バイオマーカーまたは特定の患者特性を使用する方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
リツキシマブ、シクロホスファミド、塩酸ドキソルビシン(ヒドロキシダウノマイシン)、硫酸ビンクリスチン(オンコビン)及びプレドニゾン(まとめて「R-CHOP」として知られる)で治療したDLBCL患者の生存率に対するナチュラルキラー(NK)細胞数(NKCC)の影響は、Kim et al.,Blood Research,49:3,162-169(2014年9月)において評価された。先に、末梢NK細胞数は、aaIPI 2-3 DLBCLを有する患者における臨床転帰と関連付けられることが報告された(Plonquet et al.,Ann Oncol 2007;18:1209-15)。
【0008】
今日までに、ベースラインでのNKCCが、抗CD20を含有するレジメンによるB細胞リンパ腫の治療に予後的価値があることを示唆するエビデンスが現れている(He et al.,Blood Cancer J.2016 Aug;6(8)、Kim et al.,Blood Res.2014 Sep;49(3):162-9、Klanova et al.,Blood 2017 130:727)。過去に未治療のFL及びDLBCL(GALLIUM、GOYA)を有する2,000人超の患者を対象とした大規模試験では、ベースラインでのNKCCは、多変量分析によって独立した予後パラメータであることが示された。ベースラインでNKCC高を有する患者は、NKCC低患者と比較して良好な予後と相関した。ほとんどの研究において、カットオフは、両方のサブグループ間の最高示差効果に基づいて選択され、一貫して血液1μL当たり100NK細胞の範囲内であった。抗CD19抗体療法についても一般に、NKCC高患者(血液1μL当たり100個超のNK細胞)の陽性予後は、WO2017/207574において開示され、MOR00208C201研究では、DLBCL及びFLにおけるMOR00208単剤療法の治療転帰の予後として、少なくとも100NK細胞/μLのカットオフが使用された。
【0009】
しかしながら、血液癌に罹患しているNKCC低患者もかなり存在する。したがって、これらの患者は、この特定の患者サブグループに対する特定の高い満たされていない医療ニーズに変換される低いNKCCに基づいて、予後不良を有するとみなされる。
【0010】
本開示は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)及び/または急性リンパ芽球性白血病(ALL)などのB細胞悪性腫瘍を患うNKCC低患者の治療のための改良された方法に関する。本開示は、特に、NKCC低患者における非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病及び/または急性リンパ芽球性白血病などのB細胞悪性腫瘍の治療のためのCD19に特異的な抗体に関する。
【0011】
本開示では、MOR00208のADCC活性を、様々なエフェクター対標的(E:T)比でのB細胞腫瘍細胞株における抗CD20抗体リツキシマブのADCC活性と比較した。リツキシマブは、それらの適応症におけるゴールドスタンダード治療であると説明することができる。標的細胞株は、DLBCL、MCL及びCLLに由来し、CD19及びCD20レベルは、Boltezar et al.2018、Ginaldi et al.1998及びOlejniczak et al.2006によって報告されたB細胞腫瘍患者試料上の発現レベルの範囲内である。いくつかの細胞株に関するADCCアッセイにおけるそれぞれのE:T比を使用して、MOR00208対リツキシマブとMOR00208対NKCCとの間の優位性の潜在的な相関を解明した。得られたデータは、E:T比の減少に伴うMOR00208の相対的な利益の増加を示し、したがって、NKCC低サブグループにおけるMOR00208の優位性について理論的根拠を提供した。カットオフ判定のための利用可能なデータに基づいて、NKCC低サブグループは、ベースラインで100NK細胞/μl以下を有する患者として定義される。
【0012】
したがって、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病及び/または急性リンパ芽球性白血病などのB細胞悪性腫瘍であると診断され、かつベースラインで100細胞/μl以下のベースライン末梢NK細胞数を有する患者は、利用可能な療法と比較して、MOR00208治療から利益を受ける可能性が高い。
【0013】
本開示は、血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体を提供し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有する。一実施形態では、該患者は、1つの抗CD20標的療法(例えば、抗体リツキシマブ)を含む、1~3つ以下の以前の療法ラインによる治療に対して抵抗性であるか、非応答性であるか、または不十分に応答性である。さらなる実施形態では、該患者は、高用量化学療法及び自己幹細胞移植の対象外である。好ましい実施形態では、該患者は、ヒトである。
【0014】
実施形態では、血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。
【0015】
さらなる実施形態では、血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の可変重鎖
及び配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の可変軽鎖を含む。
【0016】
本開示の別の実施形態では、抗CD19抗体は、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体である。本開示の別の実施形態では、抗CD19抗体は、IgGアイソタイプのものである。別の実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2またはIgG1/IgG2キメラである。本開示の別の実施形態では、抗CD19抗体のアイソタイプは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を増強するように操作される。別の実施形態では、抗CD19抗体の重鎖定常領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、Fc番号付けは、Kabatと同様にEUインデックスに従う。別の実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2またはIgG1/IgG2であり、抗CD19抗体のキメラ重鎖定常領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、Fc番号付けは、Kabatと同様にEUインデックスに従う。
【0017】
さらなる実施形態では、血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)を有する重鎖
及び配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を有する軽鎖を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】漸増するE:T比でのMOR00208及びリツキシマブの代表的なADCCアッセイ。MOR00208(黒色)またはリツキシマブ(白色)及び健康なドナーからのNK細胞によって媒介される、死んだ標的細胞%として表される特異的死滅の結果を、3つの標的細胞株MEC-1、JVM-2及びToledoについて示す。単一の実験において、1つの代表的なドナーからのNK細胞で得られた例示的なデータが示される。バー及びエラーバーは、個々の実験から3回測定された特異的死滅の幾何平均及び幾何標準偏差を表す。
【
図2】漸増するE:T比でのMOR00208及びリツキシマブの代表的なADCCアッセイ。MOR00208(青色)またはリツキシマブ(オレンジ色)及び健康なドナーからのNK細胞によって媒介される、リツキシマブに対して正規化された特異的死滅の対応する比を、3つの標的細胞株MEC-1、JVM-2及びToledoについて示す。散布図は、MOR00208(三角形)及びリツキシマブ(円)の特異的死滅比に対する代表的な実験のリツキシマブ値の中央値の個々の値を示す。点線は、95%のブートストラップ信頼区間を有する幾何平均を表す。
【
図3】漸増するE:T比でのADCCアッセイにおける、33人の健康なドナーから単離されたNK細胞、ならびにMEC-1、JVM-2及びToledo細胞を用いたMOR00208及びリツキシマブの特異的死滅比。MOR00208(白い三角形)及びリツキシマブ(黒い円)のADCC活性を、MEC-1細胞(8NK細胞ドナー、2つの独立した実験、単一の実験では9NK細胞ドナー)、JVM-2(8NK細胞ドナー、1ドナー当たり2つの独立した実験)及びToledo細胞(10NK細胞ドナー、2つの独立した実験)で分析した。特異的死滅比を、リツキシマブの中央値を正規化することによって各抗体について決定した特異的死滅%から算出した。それぞれの円または三角形は、1つの個々の血液ドナーからのNK細胞を用いて3回行われた1つまたは2つの独立した実験の幾何平均値を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
非ホジキンリンパ腫(「NHL」)は、リンパ球に由来する異種悪性腫瘍である。米国(U.S.)では、発生率は65,000/年と推定され、死亡者数はおよそ20,000人である(American Cancer Society,2006及びSEER Cancer Statistics Review)。この疾患はすべての年齢で発生する可能性があり、通常の発症は40歳以上の成人で始まり、発生率は年齢とともに増加する。NHLは、リンパ節、血液、骨髄及び脾臓に蓄積するリンパ球のクローン増殖を特徴とするが、任意の主要な器官が関与し得る。病理学者及び臨床医によって使用されている現在の分類システムは、NHLを前駆及び成熟B細胞またはT細胞新生物に組織化する、世界保健機関(WHO)の腫瘍分類である。PDQは現在、臨床試験への登録のために、NHLを遅進性または侵襲性として分割している。遅進性NHL群は、主に濾胞性サブタイプ、小リンパ球性リンパ腫、MALT(粘膜関連リンパ組織)及び辺縁帯で構成され、遅進性は、新たに診断されたB細胞NHL患者のおよそ50%を包含する。侵襲性NHLには、主にびまん性大細胞型B細胞(DLBL、「DLBCL」またはDLCL)(新たに診断された全患者の40%がびまん性大細胞を有する)、バーキット細胞及びマントル細胞(「MCL」)の組織学的診断を有する患者が含まれる。NHLの臨床経過は、大きく変動する。臨床経過の主要な決定因子は、組織学的サブタイプである。ほとんどの遅進型のNHLは、不治の病であると考えられている。患者は、化学療法または抗体療法のいずれかに最初に応答し、ほとんどが再発する。これまでの研究では、早期介入による生存期間の改善は実証されていない。無症候性患者では、患者が症状を示すか、または疾患のペースが加速しているように見えるまで「待機する」ことが許容される。時間の経過とともに、疾患は、より侵襲性の組織学に変化し得る。生存期間の中央値は、8~10年であり、遅進性患者は、その疾患の治療相の間に3つ以上の治療を受けることが多い。症候性の遅進性NHL患者の初期治療は、歴史的に併用化学療法であった。最も一般的に使用される薬剤としては、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CVP);またはシクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン、プレドニゾン(CHOP)が挙げられる。およそ70%~80%の患者が初期化学療法に応答し、寛解期間は2~3年程度続く。最終的に、大多数の患者が再発する。抗CD20抗体であるリツキシマブの発見及び臨床使用により、奏効率及び生存率が有意に改善された。ほとんどの患者に対する現在の標準治療は、リツキシマブ+CHOP(R-CHOP)またはリツキシマブ+CVP(R-CVP)である。リツキシマブ療法は、いくつかの種類のNHLにおいて有効であることが示されており、現在、遅進性(濾胞性リンパ腫)及び侵襲性NHL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の両方の第一選択治療として承認されている。しかしながら、抗CD20モノクローナル抗体(mAb)には、一次抵抗(再発遅進性患者における50%の奏効)、獲得抵抗(再治療時の50%の奏効率)、稀な完全奏効(再発集団における2%の完全奏効率)、及び継続的パターンの再発を含む有意な制限がある。最後に、多くのB細胞がCD20を発現しないため、多くのB細胞障害は、抗CD20抗体療法を使用して治療することができない。
【0020】
NHLに加えて、B細胞の調節不全から生じる白血病にはいくつかの種類がある。慢性リンパ球性白血病(「慢性リンパ性白血病」または「CLL」としても知られる)は、Bリンパ球の異常な蓄積によって引き起こされる成人白血病の一種である。CLLでは、悪性リンパ球は、正常で成熟しているように見えることがあるが、感染に効果的に対応することはできない。CLLは、成人で最も一般的な白血病の形態である。男性は、女性の2倍の確率でCLLを発症する。しかしながら、重要なリスク因子は年齢である。新規症例の75%以上が、50歳以上の患者で診断されている。毎年10,000件超の症例が診断され、死亡者数は年間ほぼ5,000人である(American Cancer Society,2006及びSEER Cancer Statistics Review)。CLLは不治の病であるが、ほとんどの症例で進行が遅い。多くのCLL患者は、長年にわたって通常の活動的な生活を送っている。発症が遅いため、早期のCLL介入が生存期間または生活の質を改善しないと考えられるため、早期のCLLは一般に治療されない。代わりに、状態が経時的に監視される。初期のCLL治療は、正確な診断及び疾患の進行に応じて変化する。CLL療法には数十種類の薬剤が使用されている。FCR(フルダラビン、シクロホスファミド及びリツキシマブ)、ならびにBR(イブルチニブ及びリツキシマブ)などの併用化学療法レジメンは、新たに診断されたCLL及び再発CLLの両方において有効である。同種骨髄(幹細胞)移植は、そのリスクのため、CLLの第一選択治療として使用されることはほとんどない。
【0021】
別のタイプの白血病は、CLL診断に必要なクローン性リンパ球症を欠くが、それ以外の場合は病理学的特徴及び免疫表現性の特徴を共有するCLLバリアントとみなされる小リンパ球性リンパ腫(「SLL」)である(Campo et al.,2011)。SLLの定義には、リンパ節腫脹及び/または脾腫の存在が必要である。さらに、末梢血中のBリンパ球の数は、5×109/Lを超えてはならない。SLLでは、可能な限りリンパ節生検の組織病理学的評価によって診断を確認する必要がある(Hallek et al.,2008)。SLLの発生率は、米国におけるCLLのおよそ25%である(Dores et al.,2007)。
【0022】
別のタイプの白血病は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)であり、急性リンパ球性白血病としても知られる。ALLは、骨髄における悪性かつ未熟な白血球(リンパ芽球としても知られる)の過剰産生及び継続的な増殖を特徴とする。「急性」とは、循環リンパ球(「芽球」)の未分化で未成熟な状態を指し、未治療で放置すると疾患は急速に進行し、平均寿命は数週間~数ヶ月である。ALLは、小児期に最も一般的であり、ピーク発生率は、4~5歳である。12~16歳の子供は、他の子供よりも死亡しやすい。現在、小児ALLの少なくとも80%が治癒可能と考えられている。毎年4,000件未満の症例が診断され、死亡者数は年間ほぼ1,500人である(American Cancer Society,2006及びSEER Cancer Statistics Review)。
【0023】
非特異的B細胞リンパ腫におけるCD19抗体の使用は、WO2007/076950(US2007/154473)において論じられており、いずれも参照により組み込まれる。CLL、NHL及びALLにおけるCD19抗体の使用は、Scheuermann et al.,CD19 Antigen in Leukemia and Lymphoma Diagnosis and Immunotherapy,Leukemia and Lymphoma,Vol.18,385-397(1995)に記載されており、参照によりその全体が組み込まれる。
【0024】
CD19に特異的なさらなる抗体は、WO2005/012493(US7109304)、WO2010/053716(US12/266,999)(Immunomedics);WO2007/002223(US8097703)(Medarex);WO2008/022152(12/377,251)及びWO2008/150494(Xencor)、WO2008/031056(US11/852,106)(Medimmune);WO2007/076950(US11/648,505)(Merck Patent GmbH);WO2009/052431(US12/253,895)(Seattle Genetics);ならびにWO2010/095031(12/710,442)(Glenmark Pharmaceuticals)、WO2012/010562及びWO2012/010561(International Drug Development)、WO2011/147834(Roche Glycart)、及びWO2012/156455(Sanofi)に記載されており、すべて参照によりそれら全体が組み込まれる。
【0025】
薬学的組成物は、活性剤、例えば、ヒトにおける治療的使用のための抗体を含む。薬学的組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含み得る。
【0026】
定義
「CD19」という用語は、CD19として知られるタンパク質を指し、以下の同義語を有する:B4、Bリンパ球抗原CD19、Bリンパ球表面抗原B4、CVID3、分化抗原CD19、MGC12802、及びT細胞表面抗原Leu-12。
【0027】
ヒトCD19は、以下のアミノ酸配列を有する。
MPPPRLLFFLLFLTPMEVRPEEPLVVKVEEGDNAVLQCLKGTSDGPTQQLTWSRESPLKPFLKLSLGLPGLGIHMRPLAIWLFIFNVSQQMGGFYLCQPGPPSEKAWQPGWTVNVEGSGELFRWNVSDLGGLGCGLKNRSSEGPSSPSGKLMSPKLYVWAKDRPEIWEGEPPCLPPRDSLNQSLSQDLTMAPGSTLWLSCGVPPDSVSRGPLSWTHVHPKGPKSLLSLELKDDRPARDMWVMETGLLLPRATAQDAGKYYCHRGNLTMSFHLEITARPVLWHWLLRTGGWKVSAVTLAYLIFCLCSLVGILHLQRALVLRRKRKRMTDPTRRFFKVTPPPGSGPQNQYGNVLSLPTPTSGLGRAQRWAAGLGGTAPSYGNPSSDVQADGALGSRSPPGVGPEEEEGEGYEEPDSEEDSEFYENDSNLGQDQLSQDGSGYENPEDEPLGPEDEDSFSNAESYENEDEELTQPVARTMDFLSPHGSAWDPSREATSLGSQSYEDMRGILYAAPQLRSIRGQPGPNHEEDADSYENMDNPDGPDPAWGGGGRMGTWSTR(配列番号13)
【0028】
「MOR00208」は、抗CD19抗体である。アミノ酸配列は、表1に提供される。「MOR00208」及び「XmAb 5574」は、表1に示される抗体を説明するための同義語として使用される。MOR00208抗体は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願第12/377,251号に記載されている。米国特許出願第12/377,251号は、4G7 H1.52ハイブリッドS239D/I332E/4G7 L1.155(後にMOR00208と命名)という抗体を記載している。
【0029】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗原と相互作用する、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含むタンパク質を指す。各重鎖は、可変重鎖領域(本明細書ではVHと略される)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3で構成される。各軽鎖は、可変軽鎖領域(本明細書ではVLと略される)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序で配列された3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。「抗体」という用語は、例えば、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体及びキメラ抗体を含む。抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)またはサブクラスのものであり得る。軽鎖及び重鎖の両方が、構造及び機能相同性の領域に分割される。
【0030】
本明細書で使用される「抗体断片」という語句は、抗原と(例えば、結合、立体障害、空間分布の安定化によって)特異的に相互作用する能力を保持する抗体の1つ以上の部分を指す。結合断片の例としては、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片、VH及びCH1ドメインからなるFd断片、抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546)、ならびに単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされているが、それらは、組換え方法を使用して、VL及びVH領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって接合され得る(単鎖Fv(scFv)として知られる。例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照)。そのような単鎖抗体はまた、「抗体断片」という用語の中に包含されるように意図されている。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来の技法を使用して得られ、断片は、無傷の抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。抗体断片は、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR及びビス-scFvに組み込むこともできる(例えば、Hollinger and Hudson,(2005)Nature Biotechnology 23:1126-1136を参照)。抗体断片は、フィブロネクチンIII型(Fn3)などのポリペプチドに基づいて足場に移植することができる(フィブロネクチンポリペプチドモノボディを記載する米国特許第6,703,199号を参照)。抗体断片は、相補的な軽鎖ポリペプチドと一緒に、一対の抗原結合部位を形成する一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む単鎖分子に組み込むことができる(Zapata et al.,(1995)Protein Eng.8:1057-1062及び米国特許第5,641,870号)。
【0031】
「投与される」または「投与」には、例えば、静脈内、筋肉内、皮内もしくは皮下経路、または粘膜経路などの注射可能な形態による、例えば、吸入のための経鼻スプレーもしくはエアロゾルとして、または摂取可能な溶液、カプセルもしくは錠剤としての薬物の送達が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、投与は、注射可能な形態によるものである。
【0032】
「エフェクター機能」という用語は、抗体のアイソタイプにより異なる、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の非限定的な例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び/または抗体依存性細胞食作用(ADCP)、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節、ならびにB細胞活性化が挙げられる。
【0033】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」すなわち「ADCC」は、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)の上に結合した抗体により、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が、抗原を有する標的細胞に特異的に結合し、その後細胞毒素により標的細胞を死滅させることが可能になる細胞傷害の形態を指す。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。
【0034】
「補体依存性細胞傷害」すなわち「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的な補体経路の活性化は、補体系(C1q)の第1の成分の、それらの同族抗原に結合している本開示の(適切なサブクラスの)抗体への結合によって開始される。
【0035】
「抗体依存性細胞食作用」すなわち「ADCP」は、マクロファージまたは樹状細胞などの食細胞による内在化による抗体コーティングされた標的細胞の排除の機序を指す。
【0036】
「血液癌」という用語は、リンパ腫、白血病及び骨髄腫などの造血起源の組織における異常な細胞成長及び/または増殖を伴う血液由来の腫瘍及び疾患または障害を含む。
【0037】
本文脈で使用される「対象」または「患者」は、マウスまたはラットなどの齧歯類、ならびにカニクイザル(Macaca fascicularis)、アカゲザル(Macaca mulatta)またはヒト(Homo sapiens)などの霊長類を含む任意の哺乳動物を指す。好ましくは、対象または患者は、霊長類、最も好ましくはヒトである。
【0038】
本明細書で使用される「操作された」または「修飾された」という用語は、合成手段(例えば、組換え技法、インビトロペプチド合成、ペプチドの酵素的もしくは化学的カップリング、またはこれらの技法のうちのいくつかの組み合わせ)による核酸またはポリペプチドの操作を含む。好ましくは、本開示による抗体または抗体断片は、1つ以上の特性、例えば、抗原結合、安定性、半減期、エフェクター機能、免疫原性、安全性等を改善するように操作または修飾される。好ましくは、本開示による抗体または抗体断片は、ADCCなどのエフェクター機能を改善するように操作または修飾される。
【0039】
本明細書で使用される「バリアント」は、1つ以上の修飾、例えば、アミノ酸置換、挿入または欠失によって、参照ポリペプチドとは異なるポリペプチドを指す。
【0040】
本明細書で使用される「アンタゴニスト」抗体という用語は、抗原と相互作用し、標的抗原の生物学的活性もしくは機能、または任意の他の表現型特性を部分的または完全に阻害または中和する抗体または抗体断片を指す。
【0041】
「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。本明細書に別段の指定がない限り、Fc領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0042】
本開示に従って投与される抗体は、治療有効量で患者に投与される。「治療有効量」は、所与の疾患または障害の臨床症状のいくらかの改善を提供するのに十分な量を指す。特定の治療目的に有効な量は、疾患または傷害の重症度、ならびに対象の重量及び一般状態に依存する。適切な投薬量の決定は、日常的な実験を使用して、値のマトリックスを構築し、マトリックス内の異なる点を試験することによって達成され得、これらのすべては、訓練された医師または臨床科学者の通常のスキル内にあることが理解されるであろう。
【0043】
「ベースライン」または「ベースラインで」は、所望の療法の投与前を意味する。例えば、所望の抗CD19抗体の投与前。
【0044】
受信者動作特性(ROC)分析を使用して、予測性、感度、特異性を分析して、NK細胞数などの潜在的なバイオマーカーのカットオフを決定することができる。最適なカットオフを推定するために、以下の追加の方法が存在する:a)「Max.Accuracy」-精度を最大化するカットオフ、b)「Max.DOR」-診断オッズ比を最大化するカットオフ、c)「Error.rate」-誤差率を最小化するカットオフ、d)「Max.Accuracy.area」-精度面積を最大化するカットオフ、e)「Max.Sens+Spec」-感度及び特異性の合計を最大化するカットオフ、f)Max.Youden」-ヨーデン指標を最大化するカットオフ、g)「Se=Sp」-感度が特異性に等しいカットオフ、h)「Min.ROC.Dist」-曲線とグラフの左上隅との間の距離を最小化するカットオフ、i)「Max.Efficiency」-効率を最大化するカットオフ、J)「Min.MCT」-誤分類コストを最小化するカットオフ。Lopez-Raton,M.,Rodriguez-Alvarez,M.X,Cadarso-Suarez,C.and Gude-Sampedro,F.(2014).Optimal Cutpoints:An R Package for Selecting Optimal Cutpoints in Diagnostic Tests.Journal of Statistical Software 61(8),1-36を参照されたい。
【0045】
CD19に特異的な抗体はまた、他の薬物と組み合わせて前臨床的に試験されている。例えば、MOR00208は、窒素マスタード、プリン類似体、サリドマイド類似体、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、BCL-2阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤と組み合わせて試験された。
【0046】
「組み合わせて」は、別の療法に加えて1つの療法を投与することを指す。したがって、「と組み合わせて」は、任意の順序での同時(simultaneous)(例えば、同時(concurrent))及び連続投与を含む。非限定的な例として、第1の療法(例えば、抗CD19抗体などの薬剤)は、患者への第2の療法(例えば、薬剤またはその薬学的に許容される塩)の投与前(例えば、1分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、8週間、9週間、10週間、11週間もしくは12週間)、同時に、または投与後(例えば、1分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間もしくは12週間以上)に投与され得る。いくつかの実施形態では、「組み合わせ」という用語は、抗CD19抗体及び薬剤またはその薬学的に許容される塩が、同時または連続投与されることを意味する。ある特定の実施形態では、抗CD19抗体及び薬剤またはその薬学的に許容される塩は、別個の組成物で投与され、すなわち、抗CD19抗体及び薬剤またはその薬学的に許容される塩は各々、別個の単位剤形で投与される。抗CD19抗体及び薬剤またはその薬学的に許容される塩は、適切な投薬プロトコルに従って、同じ日にまたは異なる日に、任意の順序で投与されることを理解されたい。
【0047】
「窒素マスタード」は、化学療法として使用される非特異的DNAアルキル化剤である。アルキル化剤は、核酸塩基にアルキル基(CnH2n+1)を付加し、例えば、イミダゾール環の原子番号7の窒素原子において、DNAのグアニン塩基にアルキル基を付加する。アルキル化ステップは、鎖間架橋(ICL)の形成をもたらす。これらのICLは、複製及び転写などの基本的な代謝プロセスをブロックするため、細胞傷害性が高い。窒素マスタードとしては、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、イホスファミド、メルファラン及びベンダムスチンが挙げられる。
【0048】
ベンダムスチンは、Ribomustin(登録商標)及びTreanda(登録商標)の名称で市販されており、SDX-105としても知られている。ベンダムスチンは、慢性リンパ球性白血病(CLL)、遅進性B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)及び他のリンパ腫の治療のためのものである。ベンダムスチンは、以下の構造を有する。
【化1】
【0049】
プリン類似体は、代謝拮抗物質であり、代謝プリンの構造を模倣し、それによって核酸の合成を干渉する。例えば、フルダラビンは、プリンヌクレオチド、アデニン及びグアニンの置換によってRNA及びDNAに組み込まれ得る。プリン類似体は、個体の高速増殖細胞、例えば、がん細胞、骨髄細胞または胃腸管に存在する細胞の成長を阻害する。プリン類似体としては、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン及びフルダラビンが挙げられる。フルダラビンまたはリン酸フルダラビン(Fludara(登録商標))は、慢性リンパ球性白血病及び遅進性非ホジキンリンパ腫の治療に使用される化学療法薬である。フルダラビンは、プリン類似体である。フルダラビンは、リボヌクレオチドレダクターゼ及びDNAポリメラーゼを干渉することによってDNA合成を阻害し、S相特異的である(これらの酵素は、DNA複製中に高度に活性であるため)。フルダラビンは、以下の構造を有する。
【化2】
【0050】
「サリドマイド類似体」としては、サリドマイド自体、レナリドマイド(CC-5013、Revlimid(商標))、ポマリドマイド(CC4047、Actimid(商標))、ならびにWO2002/068414及びWO2005/016326(参照によりそれら全体が組み込まれる)に開示される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。この用語は、サリドマイド構造を骨格として使用する合成化学化合物を指す(例えば、側基が付加されているか、またはそのような基が親構造から欠失されている)。類似体は、例えば、アルキル鎖の長さの違い、1つ以上の官能基による分子断片、またはイオン化における4w5wwwwa変化により、サリドマイド及びその代謝物化合物とは構造が異なる。「サリドマイド類似体」という用語には、サリドマイドの代謝産物も含まれる。サリドマイド類似体には、それぞれの化合物のS-エナンチオマー及びR-エナンチオマーのラセミ混合物、ならびにS-エナンチオマーまたはR-エナンチオマーが個々に含まれる。ラセミ混合物が好ましい。
【0051】
サリドマイド類似体は、以下の構造を有するレナリドマイドなどの化合物を含む。
【化3】
【0052】
「ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤」は、PI3K/AKT/mTOR経路の一部であるホスホイノシチド3-キナーゼ酵素のうちの1つ以上を阻害することによって機能する医薬のクラスであり、成長制御、代謝及び翻訳開始などの多くの細胞機能のための重要なシグナル伝達経路である。
【0053】
PI3Kのいくつかの異なるクラス及びアイソフォームが存在する。クラス1 PI3Kは、p110として知られる触媒サブユニットを有し、p110α、p110β、p110γ及びp110δの4つのタイプ(アイソフォーム)を有する。研究されている現在の阻害剤は、クラスI PI3Kの1つ以上のアイソフォームを阻害する。
【0054】
ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤としては、少なくともイデラリシブ、デュベリシブ及びコパンリシブが挙げられる。イデラリシブは、Gilead Sciences,Inc.によって市販されている(商品名Zydelig、別名GS-1101またはCAL-101)。イデラリシブは、現在、リツキシマブと組み合わせて、リツキシマブ単独が他の併存疾患のために適切な療法とみなされる患者における再発慢性リンパ球性白血病(CLL)、少なくとも2つの以前の全身療法を受けた患者における再発濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫(FL)、少なくとも2つの以前の全身療法を受けた患者における再発小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療のために標識されている。この物質は、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤として作用し、より具体的には、酵素ホスホイノシチド3-キナーゼのデルタアイソフォームであるP110δをブロックする。
【0055】
【0056】
「ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤」は、B細胞発達において重要な役割を果たすチロシン-タンパク質キナーゼBTK酵素を阻害することによって機能する薬物のクラスである。具体的には、BTKは、ホスファチジルイノシトール(3,4,5)-トリスリン酸塩(PIP3)に結合するPHドメインを含有する。PIP3結合は、BtkにホスホリパーゼCをリン酸化させるように誘導し、次にホスファチジルイノシトールであるPIP2を2つの第2のメッセンジャーであるイノシトール三リン酸塩(IP3)及びジアシルグリセロール(DAG)に加水分解し、次いで、B細胞シグナル伝達中に下流タンパク質の活性を調節する。
【0057】
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤としては、イブルチニブが挙げられる。イブルチニブは、Pharmacyclics,Inc及びJohnson&JohnsonのJanssen Pharmaceuticalによって市販されている(商品名Imbruvica、別名PCI-32765)。イブルチニブは、現在、少なくとも1つの以前の療法を受けたマントル細胞リンパ腫(MCL)、少なくとも1つの以前の療法を受けた慢性リンパ球性白血病(CLL)、17p欠失を伴う慢性リンパ球性白血病、及びワルデンストレームマクログロブリン血症を有する患者の治療のために標識されている。イブルチニブの式は、1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]-1-ピペリジニル]-2-プロペン-1-オンであり、以下の構造を有する。
【化5】
【0058】
「BCL-2阻害剤」は、抗アポトーシスB細胞リンパ腫-2(Bcl-2)タンパク質を阻害することによって機能し、細胞のプログラム細胞死をもたらす薬物のクラスである。BCL-2阻害剤としては、ベネトクラクスが挙げられる。ベネトクラクスは、Abbvie及びGenentech(商品名VENCLEXTA(商標)、GDC-0199、ABT-199及びRG7601としても知られる)によって市販されている。ベネトクラクスは、現在、FDAの承認試験により検出された17pの欠失を有する慢性リンパ球性白血病(CLL)を有する患者であって、少なくとも1つの以前の療法を受けた患者の治療のために標識されている。「ベネトクラクス」は、米国特許第8,546,399号及び同第9,174,982号に記載されており、これらはすべて参照によりそれら全体が組み込まれる。ベネトクラクスの式は、
4-(4-{[2-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル]メチル}-1-ピペラジニル)-N-({3-ニトロ-4-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルメチル)アミノ]フェニル}スルホニル)-2-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イルオキシ)ベンズアミドであり、以下の構造を有する。
【化6】
【0059】
実施形態
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体を指し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下、90細胞/μl以下、80細胞/μl以下、70細胞/μl以下、60細胞/μl以下または50細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有する。
【0060】
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体を指し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl未満、90細胞/μl未満、80細胞/μl未満、70細胞/μl未満、60細胞/μl未満または50細胞/μl未満の末梢NK細胞数を有する。
【0061】
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体を指し、該患者は、ベースラインで1~最大100細胞/μl、10~最大100細胞/μl、20~最大100細胞/μl、30~最大100細胞/μl、40~最大100細胞/μl、50~最大100細胞/μl、60~最大100細胞/μl、70~最大100細胞/μlまたは80~最大100細胞/μlの末梢NK細胞数を有する。
【0062】
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体の使用を指し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl未満、90細胞/μl未満、80細胞/μl未満、70細胞/μl未満、60細胞/μl未満または50細胞/μl未満の末梢NK細胞数を有する。
【0063】
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体の使用を指し、該患者は、ベースラインで最大100細胞/μl、最大90細胞/μl、最大80細胞/μl、最大70細胞/μl、最大60細胞/μl、最大50細胞/μlの末梢NK細胞数を有する。
【0064】
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体の使用を指し、該患者は、ベースラインで1~最大100細胞/μl、10~最大100細胞/μl、20~最大100細胞/μl、30~最大100細胞/μl、40~最大100細胞/μl、50~最大100細胞/μl、60~最大100細胞/μl、70~最大100細胞/μlまたは80~最大100細胞/μlの末梢NK細胞数を有する。
【0065】
実施形態では、血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の可変重鎖
及び配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の可変軽鎖、
または配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有する可変重鎖及び可変軽鎖を含む。
【0066】
実施形態では、血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の可変重鎖
及び配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の可変軽鎖、
または配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する可変重鎖及び可変軽鎖を含み、抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。別の実施形態では、抗CD19抗体の重鎖領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、Fc番号付けは、Kabatと同様にEUインデックスに従う。
【0067】
さらなる実施形態では、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)を有する重鎖
及び配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を有する軽鎖、
または配列番号7の重鎖及び配列番号8の軽鎖に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有する重鎖及び軽鎖を含む。
【0068】
さらなる実施形態では、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)を有する重鎖
及び配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を有する軽鎖、
または配列番号7の重鎖及び配列番号8の軽鎖に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有する重鎖及び軽鎖を含み、抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。別の実施形態では、抗CD19抗体の重鎖領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、Fc番号付けは、Kabatと同様にEUインデックスに従う。
【0069】
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体を指し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下、90細胞/μl以下、80細胞/μl以下、70細胞/μl以下、60細胞/μl以下または50細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有する。本開示の一実施形態では、該治療後の該血液癌患者は、
(i)少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも13ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも15ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも17ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも19ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも30ヶ月、少なくとも36ヶ月、少なくとも42ヶ月、少なくとも48ヶ月もしくは少なくとも54ヶ月の無増悪生存期間(PFS);
(ii)少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%もしくは少なくとも80%の客観的奏効率(ORR);
(iii)少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも30ヶ月、少なくとも36ヶ月、少なくとも42ヶ月、少なくとも48ヶ月もしくは少なくとも54ヶ月にわたる奏効期間(DoR);
(iv)少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも30ヶ月、少なくとも36ヶ月、少なくとも42ヶ月、少なくとも48ヶ月もしくは少なくとも54ヶ月の全生存期間(OS)、または
(v)上記のうちの1つ以上の組み合わせを有する。本開示の別の実施形態では、該抗CD19抗体は、本明細書に開示される薬剤と組み合わせて投与される。
【0070】
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体を指し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl未満、90細胞/μl未満、80細胞/μl未満、70細胞/μl未満、60細胞/μl未満または50細胞/μl未満の末梢NK細胞数を有する。本開示の一実施形態では、該治療後の該血液癌患者は、
(i)少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも13ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも15ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも17ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも19ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも30ヶ月、少なくとも36ヶ月、少なくとも42ヶ月、少なくとも48ヶ月もしくは少なくとも54ヶ月の無増悪生存期間(PFS);
(ii)少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%もしくは少なくとも80%の客観的奏効率(ORR);
(iii)少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも30ヶ月、少なくとも36ヶ月、少なくとも42ヶ月、少なくとも48ヶ月もしくは少なくとも54ヶ月にわたる奏効期間(DoR);
(iv)少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも30ヶ月、少なくとも36ヶ月、少なくとも42ヶ月、少なくとも48ヶ月もしくは少なくとも54ヶ月の全生存期間(OS)、または
(v)上記のうちの1つ以上の組み合わせを有する。本開示の別の実施形態では、該抗CD19抗体は、本明細書に開示される薬剤と組み合わせて投与される。
【0071】
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体を指し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下、90細胞/μl以下、80細胞/μl以下、70細胞/μl以下、60細胞/μl以下または50細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有し、該抗CD19抗体は、以下の特徴のうちの1つ以上を増加させる:
(i)無増悪生存期間(PFS)、
(ii)客観的奏効率(ORR)、
(iii)奏効期間(DoR)、
(iv)全生存期間(OS)、
(v)無憎悪期間(TTP)。
【0072】
別の実施形態では、該特徴(i)~(v)のうちの1つ以上は、抗CD20抗体を含む治療と比較して増加する。さらなる実施形態では、該特徴(i)~(v)のうちの1つ以上は、抗CD20抗体及び化学療法剤を含む治療と比較して増加する。さらなる実施形態では、該抗CD20抗体は、リツキシマブまたはそのバイオシミラーである。さらなる実施形態では、該特徴(i)~(v)のうちの1つ以上は、抗CD20抗体と、シクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチンまたはプレドニゾンのうちの1つ以上とを含む治療と比較して増加する。さらなる実施形態では、該特徴(i)~(v)のうちの1つ以上は、R-CHOPを含む治療と比較して増加する。
【0073】
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体を指し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl未満、90細胞/μl未満、80細胞/μl未満、70細胞/μl未満、60細胞/μl未満または50細胞/μl未満の末梢NK細胞数を有し、該抗CD19抗体の投与は、無増悪生存期間(PFS)の改善、客観的奏効率(ORR)の改善、奏効期間(DoR)の改善、全生存期間(OS)の改善または無憎悪期間(TTP)の改善をもたらす。
【0074】
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体を指し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下、90細胞/μl以下、80細胞/μl以下、70細胞/μl以下、60細胞/μl以下または50細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有し、該抗CD19抗体の投与により、抗CD20抗体の投与と比較して無増悪生存期間(PFS)が改善される、抗CD20抗体の投与と比較して客観的奏効率(ORR)が改善される、抗CD20抗体の投与と比較して奏効期間(DoR)が改善される、抗CD20抗体の投与と比較して全生存期間(OS)が改善される、または抗CD20抗体の投与と比較して無憎悪期間(TTP)が改善される。
【0075】
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体を指し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下、90細胞/μl以下、80細胞/μl以下、70細胞/μl以下、60細胞/μl以下または50細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有し、該抗CD19抗体の投与により、抗CD20抗体及び化学療法剤の投与と比較して無増悪生存期間(PFS)が改善される、抗CD20抗体及び化学療法剤の投与と比較して客観的奏効率(ORR)が改善される、抗CD20抗体及び化学療法剤の投与と比較して奏効期間(DoR)が改善される、抗CD20抗体及び化学療法剤の投与と比較して全生存期間(OS)が改善される、または抗CD20抗体の投与と比較して無憎悪期間(TTP)が改善される。さらなる実施形態では、該抗CD20抗体は、リツキシマブまたはそのバイオシミラーである。さらなる実施形態では、該化学療法剤は、シクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチンまたはプレドニゾンのうちの1つ以上を含む。
【0076】
他の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体を指し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下、90細胞/μl以下、80細胞/μl以下、70細胞/μl以下、60細胞/μl以下または50細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有し、該抗CD19抗体の投与により、R-CHOPの投与と比較して無増悪生存期間(PFS)が改善される、R-CHOPの投与と比較して客観的奏効率(ORR)が改善される、R-CHOPの投与と比較して奏効期間(DoR)が改善される、R-CHOPの投与と比較して全生存期間(OS)が改善される、またはR-CHOPの投与と比較して無憎悪期間(TTP)が改善される。
【0077】
一実施形態では、本開示は、抗CD19抗体を提供し、該抗CD19抗体は、12mg/kgの濃度で投与される。
【0078】
さらなる実施形態では、抗CD19抗体は、毎週、隔週または毎月投与される。さらなる実施形態では、抗CD19抗体は、最初の3ヶ月間は毎週、少なくとも次の3ヶ月間は隔週投与される。さらなる実施形態では、抗CD19抗体は、最初の3ヶ月間は毎週投与される。さらなる実施形態では、抗CD19抗体は、最初の3ヶ月間は毎週、少なくとも次の3ヶ月間は隔週投与される。別の実施形態では、抗CD19抗体は、最初の3ヶ月間は毎週、次の3ヶ月間は隔週、その後は毎月投与される。さらに別の実施形態では、抗CD19抗体は、最初の3ヶ月間は毎週、次の3ヶ月間は隔週、その後は毎月投与される。
【0079】
組み合わせ
本開示は、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体を提供し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl未満の末梢NK細胞数を有し、該抗CD19抗体は、1つ以上の薬剤と組み合わせて投与される。本開示の一実施形態では、該抗CD19抗体は、薬剤と組み合わせて投与される。本開示の別の実施形態では、該抗CD19抗体は、1つ以上の追加の薬剤または追加の薬剤と組み合わせて投与される。一態様では、該薬剤は、追加の薬剤である。
【0080】
本開示の一実施形態では、該薬剤は、生物学的薬剤または化学療法剤である。本開示の別の実施形態では、該薬剤は、治療用抗体もしくは抗体断片、窒素マスタード、プリン類似体、サリドマイド類似体、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、BCL-2阻害剤またはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤である。さらなる実施形態では、該薬剤は、リツキシマブ、R-CHOP、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、イホスファミド、メルファラン、ベンダムスチン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン、フルダラビン、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド、イデラリシブ、デュベリシブ、コパンリシブ、イブルチニブまたはベネトクラクスである。
【0081】
別の実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療における使用のための抗CD19抗体を提供し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有し、該抗CD19抗体は、リツキシマブ、R-CHOP、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、イホスファミド、メルファラン、ベンダムスチン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン、フルダラビン、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド、イデラリシブ、デュベリシブ、コパンリシブ、イブルチニブまたはベネトクラクスと組み合わせて投与される。さらなる実施形態では、本開示は、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体を提供し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有し、該抗CD19抗体は、ベンダムスチンと組み合わせて投与される。
【0082】
適応症及び患者
本開示は、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体を提供し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有し、該血液癌患者は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)または急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する。別の実施形態では、該血液癌患者は、非ホジキンリンパ腫を有する。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、再発または難治性びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(r-r DLBCL)である。別の実施形態では、該血液癌患者は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有し、高用量化学療法(HDC)及び/または自己幹細胞移植(ASCT)の対象外である。別の実施形態では、該血液癌患者は、再発または難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r-r DLBCL)を有し、高用量化学療法(HDC)及び/または自己幹細胞移植(ASCT)の対象外である。
【0083】
別の実施形態では、該血液癌患者は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有し、該患者は、以下の基準のうちの1つ以上に基づいて選択される。
1. 年齢18歳以上
2. 世界保健機関(WHO、2008年)の分類による、DLBCL NOS、THRLBCL、EBV陽性DLBCL、DLBCL治療後のDLBCL再発を伴うDLBCL成分を含む複合リンパ腫、低悪性度リンパ腫(すなわち、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫などの遅進性病理)の以前の診断からDLBCL治療後のDLBCL再発を伴うDLBCLに変容した疾患の組織学的に確認された診断。
3. 中央病理レビューのための新鮮な腫瘍組織は、この研究への参加の補助として提供されなければならない。新鮮な腫瘍組織試料を得ることができない場合は、このプロトコルのスクリーニング前の3年以内に取得したアーカイブパラフィン包埋腫瘍組織が、この目的で利用可能でなければならない。
4. 患者は、以下を有していなければならない。
1.再発または難治性DLBCL
2.少なくとも1つの二次元的に測定可能な疾患部位。病変は、ベースラインで最大横径が≧1.5cm、最大垂直径が≧1.0cmでなければならない。病変は、PETスキャンで陽性でなければならない
3.DLBCLの治療のために少なくとも1つ、ただし3つ以下の以前の全身療法ラインを受けた。少なくとも1つの以前の療法ラインには、CD20標的が含まれていなければならない。
4. ECOG 0~2
5. ASCTの失敗後の患者または治験責任医師の見解で検討された患者は、現在、後続のASCTによるHDCの対象外である。
6. 患者は、スクリーニング時に以下の臨床検査基準を満たさなければならない。
a)ANC≧1.5×109/L(DLBCLによる骨髄関与に続く場合を除く)
b)PLT≧90×109/L(DLBCLによる骨髄関与に続く場合を除く)及び活動性出血の非存在
c)ギルバート症候群(もしくはギルバート症候群と一致するパターン)に続くか、またはリンパ腫による肝臓関与が記録されている場合を除き、総血清ビリルビン≦2.5×ULN。ギルバート症候群を有するか、またはリンパ腫による肝臓関与が記録されている患者は、総ビリルビンが≦5×ULNである場合に含まれ得る。
d)リンパ腫による肝臓関与が記録された場合、ALT、AST及びAP≦3×ULNまたは<5×ULN
e)血清クレアチニン≦2.0×ULNまたはクレアチニンクリアランスは、標準的なCockcroft-Gault式を使用して算出して≧40mL/分以上でなければならない(Cockroft&Gault,1976)。
7. 妊娠可能な女性(FCBP)の場合、登録前に妊娠検査で陰性が確認されなければならない。FCBPは、研究中及びMOR00208、BENまたはRTXのそれぞれの最後の投与後3、6または12ヶ月間のいずれか遅い方で中断することなく、非常に効果的な避妊措置を講じることを約束しなければならない。FCBPは、研究の経過中及びMOR00208、BENまたはRTXのそれぞれの最後の投与後3、6または12ヶ月間のいずれか遅い方で、授乳及び血液または卵母細胞の提供を控えなければならない。献血に関する制限は、妊娠可能でない女性にも同様に適用される。
8. 男性は、患者がFCBPで性的に活発である場合、研究中及びMOR00208、BENまたはRTXのそれぞれの最後の投与後3、6または12ヶ月間のいずれか遅い方で中断することなく、有効な避妊法を使用しなければならない。男性は、研究参加中及びMOR00208、BENまたはRTXのそれぞれの最後の投与後3、6または12ヶ月間のいずれか遅い方で、血液または精子の提供を控えなければならない。
9. 治験責任医師の見解において、患者は、
a)すべての研究関連手順、薬の使用及び評価を遵守することができなければならない
b)インフォームドコンセントを理解し、同意することができなければならない
c)潜在的に信頼性が低い、及び/または協力的でないとみなされてはならない。
【0084】
別の実施形態では、該血液癌患者は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有し、該患者は、以下の基準のうちの1つ以上に基づいて除外される。
1. 例えば、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫(PMBL)またはバーキットリンパ腫、原発性難治性DLBCL、既知の「二重/三重ヒット」DLBCL遺伝子を有する患者、現在または過去の病歴におけるCNSリンパ腫の関与を含む、任意の他の組織型のリンパ腫を有する患者
2. 1日目の投薬前30日未満に大手術を受けた患者
3. 1日目の投薬前14日以内に、以下を有する患者:
a)CD20標的療法、化学療法、放射線療法、治験用抗癌療法または他のリンパ腫特異的療法が中断されていない
b)生ワクチンを受けた
c)活動性の併発する全身感染症に必要な非経口抗菌療法
4. 以下の患者:
a)治験責任医師の見解において、以前の療法、大手術または重大な外傷の有害な毒性作用から十分に回復していない
b)CD19標的療法またはBENで以前に治療された
c)MOR00208、RTX、マウスタンパク質もしくはBEN、または治験薬製剤に含まれる賦形剤に類似する生物学的または化学的組成の化合物に対して以前に重度のアレルギー反応の病歴を有する
d)インフォームドコンセントフォームに署名する前の3ヶ月以内にASCTを受けたことがある。ASCTのより遠い病歴を有する患者は、研究に登録する前に完全な血液学的回復を示さなければならない。
e)以前に同種異系幹細胞移植を受けたことがある
f)他の抗がん剤または実験的治療を同時に使用する
5. DLBCL以外の悪性腫瘍の既往歴。ただし、患者は、スクリーニング前に3年間以上疾患を患っていない。3年以上の期限の例外には、以下の履歴が含まれる:
a)皮膚の基底細胞癌
b)皮膚の扁平上皮癌
c)子宮頸部、乳房及び膀胱の原位置における癌腫
d)前立腺癌の偶発的組織所見(T1aまたはT1bの腫瘍/節/転移[TNM]段階)
6. 以下を有する患者:
a)陽性のB型及び/またはC型肝炎血清学
b)HIVへの活動性ウイルス感染の既知の血清陽性または病歴
c)活動性の重度の制御不能な全身感染症または敗血症の証拠
d)重度の免疫不全状態の病歴または証拠
e)重度の肝障害(総血清ビリルビン>3mg/dL)、ギルバート症候群に続くか、またはリンパ腫による肝臓関与が記録されている場合を除き、黄疸の病歴または証拠
f)治験責任医師の意見において、研究への参加を妨げるか、または患者のインフォームドコンセントを付与する能力を損なうであろう、臨床的に有意な心血管、脳血管、CNS、及び/または他の疾患の病歴もしくは証拠
【0085】
治療方法
本開示は、抗CD19抗体の投与によって血液癌患者を治療する方法を提供し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下、90細胞/μl以下、80細胞/μl以下、70細胞/μl以下、60細胞/μl以下または50細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有する。
【0086】
本開示は、抗CD19抗体の投与によって血液癌患者を治療する方法を提供し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl未満、90細胞/μl未満、80細胞/μl未満、70細胞/μl未満、60細胞/μl未満または50細胞/μl未満の末梢NK細胞数を有する。
【0087】
別の実施形態では、本開示は、血液癌の治療における使用のために本明細書に開示される抗CD19抗体を含む薬学的組成物を指す。別の実施形態では、本開示は、血液癌の治療のための薬剤の調製における本明細書に開示される抗CD19抗体を含む該薬学的組成物の使用を指す。別の実施形態では、本開示は、血液癌の治療のための本明細書に開示される抗CD19抗体を含む該薬学的組成物の使用を指す。別の実施形態では、該血液癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)または急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。別の実施形態では、該血液癌は、非ホジキンリンパ腫である。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、再発または難治性びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(r-r DLBCL)である。別の実施形態では、該血液癌患者は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有し、高用量化学療法(HDC)及び/または自己幹細胞移植(ASCT)の対象外である。
【0088】
別の態様では、患者における血液癌を治療する方法が本明細書に提供され、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下、90細胞/μl以下、80細胞/μl以下、70細胞/μl以下、60細胞/μl以下または50細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有し、該方法は、本明細書に開示される治療有効量の抗CD19抗体を含む薬学的組成物を投与することを含む。一実施形態では、該患者は、1つの抗CD20標的療法(例えば、抗体リツキシマブ)を含む、1~3つ以下の以前の療法ラインによる治療に対して抵抗性であるか、非応答性であるか、または不十分に応答性である。さらなる実施形態では、該患者は、高用量化学療法及び自己幹細胞移植の対象外である。好ましい実施形態では、該患者は、ヒトである。代替的態様では、該患者は、ラットまたはマウスなどの齧歯類である。別の実施形態では、該患者は、非ホジキンリンパ腫などの血液癌を患っている。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、再発または難治性びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(r-r DLBCL)である。
【0089】
別の態様では、本開示は、血液癌患者の治療における使用のための薬の製造における抗CD19抗体の使用を提供し、該患者は、ベースラインで100細胞/μl以下、90細胞/μl以下、80細胞/μl以下、70細胞/μl以下、60細胞/μl以下または50細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有する。
【0090】
別の態様では、本開示は、血液癌の治療における使用のための薬剤の製造における抗CD19抗体の使用を提供する。別の実施形態では、本開示は、血液癌の治療のための薬剤の調製における本明細書に開示される該抗CD19抗体の使用を指す。別の実施形態では、本開示は、血液癌の治療のための本明細書に開示される抗CD19抗体を含む該薬学的組成物の使用を指す。別の実施形態では、該血液癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)または急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。別の実施形態では、該血液癌は、非ホジキンリンパ腫である。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、再発または難治性びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(r-r DLBCL)である。別の実施形態では、該血液癌患者は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有し、高用量化学療法(HDC)及び/または自己幹細胞移植(ASCT)の対象外である。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗CD19抗体は、静脈内に投与される。他の態様では、本明細書に開示される抗CD19抗体は、皮下、関節内または脊髄内に投与される。
【0092】
方法
本開示は、抗CD19抗体の治療的投与から利益を得ると予想される血液癌患者を選択する方法を提供し、該方法は、以下のステップを含む:
a)該抗CD19抗体による治療前に該患者から得られた血液試料を提供する、
b)末梢NK細胞数を決定する、及び
c)患者がベースラインで100細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有することに基づいて、患者を選択する。
【0093】
本開示の実施形態では、方法は、以下のステップをさらに含む:
d)抗CD19抗体による選択された患者の治療。
【0094】
本開示は、薬剤と組み合わせた抗CD19抗体の治療的投与から利益を得ると予想される血液癌患者を選択する方法を提供し、該方法は、以下のステップを含む。
a)該抗CD19抗体による治療前に該患者から得られた血液試料を提供する、
b)末梢NK細胞数を決定する、及び
c)患者がベースラインで100細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有することに基づいて、患者を選択する。
【0095】
本開示の実施形態では、方法は、以下のステップをさらに含む:
d)抗CD19抗体による選択された患者の治療。
【0096】
本開示は、抗CD19抗体の治療的投与から利益を得ると予測される血液癌患者を選択する方法を提供し、該方法は、以下のステップを含む:
a)該抗CD19抗体による治療前に該患者から得られた血液試料を提供する、
b)末梢NK細胞数を決定する、及び
c)患者がベースラインで100細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有することに基づいて、患者を選択する。
【0097】
本開示の実施形態では、方法は、以下のステップをさらに含む:
d)抗CD19抗体による選択された患者の治療。
【0098】
本開示は、薬剤と組み合わせた抗CD19抗体の治療的投与から利益を得ると予測される血液癌患者を選択する方法を提供し、該方法は、以下のステップを含む。
a)該抗CD19抗体による治療前に該患者から得られた血液試料を提供する、
b)末梢NK細胞数を決定する、及び
c)患者がベースラインで100細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有することに基づいて、患者を選択する。
【0099】
本開示の実施形態では、方法は、以下のステップをさらに含む:
d)抗CD19抗体による選択された患者の治療。
【0100】
本開示の一実施形態では、該抗CD19抗体と組み合わせて投与される該薬剤は、生物学的薬剤または化学療法剤である。本開示の別の実施形態では、該薬剤は、治療用抗体または抗体断片、窒素マスタード、プリン類似体、サリドマイド類似体、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、BCL-2阻害剤またはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤である。さらなる実施形態では、該薬剤は、リツキシマブ、R-CHOP、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、イホスファミド、メルファラン、ベンダムスチン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン、フルダラビン、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド、イデラリシブ、デュベリシブ、コパンリシブ、イブルチニブまたはベネトクラクスである。
【0101】
本開示は、抗CD19抗体の治療的投与から利益を得ると予測される血液癌患者を特定する方法を提供し、該方法は、以下のステップを含む:
a)該抗CD19抗体による治療前に該患者から得られた血液試料を提供する、
b)末梢NK細胞数を決定する、及び
c)患者がベースラインで100細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有することに基づいて、患者を選択する。
【0102】
本開示の実施形態では、方法は、以下のステップをさらに含む:
d)抗CD19抗体による選択された患者の治療。
【0103】
本開示は、血液癌患者への抗CD19抗体の投与によって血液癌を治療する方法を提供し、該患者は、以下のステップを含む方法に従って選択された:
a)該抗CD19抗体による治療前に該患者から得られた血液試料を提供する、
b)末梢NK細胞数を決定する、及び
c)患者がベースラインで100細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有することに基づいて、患者を選択する。
【0104】
本開示の実施形態では、方法は、以下のステップをさらに含む:
d)抗CD19抗体による選択された患者の治療。
【0105】
本開示は、抗CD19抗体の治療的投与から利益を得ると予測される血液癌患者を選択する方法を提供し、該方法は、以下のステップを含む:
a)該抗CD19抗体による治療前に該患者から得られた血液試料を提供する、
b)末梢NK細胞数を決定する、及び
c)患者がベースラインで100細胞/μl以下の末梢NK細胞数を有することに基づいて、患者を選択する。
【0106】
本開示の実施形態では、方法は、以下のステップをさらに含む:
d)抗CD19抗体による選択された患者の治療。
【0107】
本開示の別の実施形態では、抗CD19抗体の治療的投与からの予測される利益は、改善された無増悪生存期間(PFS)、改善された客観的奏効率(ORR)、改善された奏効期間(DoR)、改善された全生存期間(OS)もしくは改善された無憎悪期間(TTP)、またはそれらの組み合わせである。
【0108】
本開示の別の実施形態では、抗CD19抗体の治療的投与からの予測される利益は、抗CD20抗体の投与と比較して改善された無増悪生存期間(PFS)、抗CD20抗体の投与と比較して改善された客観的奏効率(ORR)、抗CD20抗体の投与と比較して改善された奏効期間(DoR)、抗CD20抗体の投与と比較して改善された全生存期間(OS)もしくは抗CD20抗体の投与と比較して改善された無増悪期間(TTP)、またはそれらの組み合わせである。
【0109】
本開示の別の実施形態では、抗CD19抗体の治療的投与からの予測される利益は、
(i)少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも13ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも15ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも17ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも19ヶ月もしくは少なくとも20ヶ月の無増悪生存期間(PFS);
(ii)少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%もしくは少なくとも80%の客観的奏効率(ORR);
(iii)少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも30ヶ月、少なくとも36ヶ月、少なくとも42ヶ月、少なくとも48ヶ月もしくは少なくとも54ヶ月にわたる奏効期間(DoR);
(iv)少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも30ヶ月、少なくとも36ヶ月、少なくとも42ヶ月、少なくとも48ヶ月もしくは少なくとも54ヶ月の全生存期間(OS)、または
(v)上記のうちの1つ以上の組み合わせである。本開示の別の実施形態では、該抗CD19抗体は、本明細書に開示される薬剤と組み合わせて投与される。
【0110】
本開示の別の実施形態では、抗CD19抗体の治療的投与からの予測される利益は、抗CD20抗体及び化学療法剤の投与と比較して改善された無増悪生存期間(PFS)、抗CD20抗体及び化学療法剤の投与と比較して改善された客観的奏効率(ORR)、抗CD20抗体及び化学療法剤の投与と比較して改善された奏効期間(DoR)、抗CD20抗体及び化学療法剤の投与と比較して改善された全生存期間(OS)または抗CD20抗体及び化学療法剤の投与と比較して改善された無増悪期間(TTP)である。さらなる実施形態では、該抗CD20抗体は、リツキシマブまたはそのバイオシミラーである。さらなる実施形態では、該化学療法剤は、シクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチンまたはプレドニゾンのうちの1つ以上を含む。
【0111】
本開示の別の実施形態では、抗CD19抗体の治療的投与からの予測される利益は、R-CHOPの投与と比較して改善された無増悪生存期間(PFS)、R-CHOPの投与と比較して改善された客観的奏効率(ORR)、R-CHOPの投与と比較して改善された奏効期間(DoR)、R-CHOPの投与と比較して改善された全生存期間(OS)またはR-CHOPの投与と比較して改善された無増悪期間(TTP)である。
【0112】
本開示の別の実施形態では、抗CD19抗体の治療的投与からの該予測される利益は、以下の特徴のうちの1つ以上の増加である:
(i)無増悪生存期間(PFS)、
(ii)客観的奏効率(ORR)、
(iii)奏効期間(DoR)、
(iv)全生存期間(OS)、
(v)無憎悪期間(TTP)。
【0113】
別の実施形態では、特徴(i)~(v)のうちの1つ以上の該増加は、抗CD20抗体を含む治療と比較して、である。さらなる実施形態では、特徴(i)~(v)のうちの1つ以上の該増加は、抗CD20抗体及び化学療法剤を含む治療と比較して、である。さらなる実施形態では、該抗CD20抗体は、リツキシマブまたはそのバイオシミラーである。さらなる実施形態では、特徴(i)~(v)のうちの1つ以上の該増加は、抗CD20抗体と、シクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチンまたはプレドニゾンのうちの1つ以上とを含む治療と比較して、である。さらなる実施形態では、特徴(i)~(v)のうちの1つ以上の該増加は、R-CHOPを含む治療と比較して、である。
【0114】
本開示の実施形態では、抗CD19抗体の治療的投与から利益を受けると予測される血液癌患者を選択する該方法の該血液癌患者は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)または急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する。さらなる実施形態では、該血液癌患者は、非ホジキンリンパ腫を有する。さらなる実施形態では、該血液癌患者は、非ホジキンリンパ腫を有し、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。さらなる実施形態では、該血液癌患者は、再発または難治性びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(r-r DLBCL)を有する。
【0115】
本開示のさらなる実施形態では、抗CD19抗体の治療的投与から利益を受けると予測される血液癌患者を選択する方法の抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。別の実施形態では、該抗CD19抗体は、
配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の可変重鎖
及び配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の可変軽鎖を含む。
【0116】
さらなる実施形態では、該抗CD19抗体は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)を有する重鎖
及び配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を有する軽鎖を含む。
【0117】
別の実施形態では、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体は、配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する、可変重鎖及び可変軽鎖を含む。
【0118】
実施形態では、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体は、配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する可変重鎖及び可変軽鎖を含み、抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。別の実施形態では、抗CD19抗体の重鎖領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、Fc番号付けは、Kabatと同様にEUインデックスに従う。
【0119】
さらなる実施形態では、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体は、配列番号7の重鎖及び配列番号8の軽鎖に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する重鎖及び軽鎖を含む。
【0120】
さらなる実施形態では、血液癌患者の治療のための抗CD19抗体は、配列番号7の重鎖及び配列番号8の軽鎖に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する重鎖及び軽鎖を含み、抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。別の実施形態では、抗CD19抗体の重鎖領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、Fc番号付けは、Kabatと同様にEUインデックスに従う。
【0121】
さらなる実施形態では、本開示は、抗CD19抗体で治療される血液癌患者の末梢NK細胞数を決定する手段を含むキットを提供する。
【0122】
さらなる実施形態では、本開示は、抗CD19抗体による治療に対する血液癌患者の感受性を予測するためのバイオマーカーとしての末梢NK細胞数の使用を指す。別の実施形態では、ベースラインでの末梢NK細胞数は、100細胞/μl以下、90細胞/μl以下、80細胞/μl以下、70細胞/μl以下、60細胞/μl以下または50細胞/μl以下である。他の実施形態では、ベースラインでの末梢NK細胞数は、1~最大100細胞/μl、10~最大100細胞/μl、20~最大100細胞/μl、30~最大100細胞/μl、40~最大100細胞/μl、50~最大100細胞/μl、60~最大100細胞/μl、70~最大100細胞/μlまたは80~最大100細胞/μlである。
【0123】
さらなる実施形態では、本開示は、抗CD19抗体による治療に対する血液癌患者の感受性を予測するためのバイオマーカーとしての末梢NK細胞数の使用を指す。別の実施形態では、ベースラインでの末梢NK細胞数は、100細胞/μl未満、90細胞/μl未満、80細胞/μl未満、70細胞/μl未満、60細胞/μl未満または50細胞/μl未満である。他の実施形態では、ベースラインでの末梢NK細胞数は、1~最大100細胞/μl、10~最大100細胞/μl、20~最大100細胞/μl、30~最大100細胞/μl、40~最大100細胞/μl、50~最大100細胞/μl、60~最大100細胞/μl、70~最大100細胞/μlまたは80~最大100細胞/μlである。
【0124】
【0125】
実施例
種々のE:T比でのDLBCL、MCL及びCLL細胞株におけるMOR00208及びリツキシマブのADCC活性
【0126】
実施例1:試験した細胞株上のCD19及びCD20発現の特徴付け
方法及びデータ分析
本研究では、QuantiBRITE(商標)システムを使用して、製造業者の指示に従って細胞当たりの結合したフィコエリスリン(PE)標識CD19及びCD20抗体の量を定量化した。QuantiBRITE(商標)システムは、異なる事前較正されたレベルのPE分子でコーティングされた4セットのビーズに基づいており、これらを使用して、平均蛍光強度(MFI)値をビーズ当たりのPE分子の数と相関させた。各個々の細胞型について、PE標識抗体で染色した際に測定したMFIを線形回帰式に適用して、それぞれの細胞当たりの結合抗体(ABC)値を算出した。ABC値は、Biolegend CD19-PE(Biolegend番号302208、クローンHIB19)及びCD20-PE(Biolegend番号302306、クローン2H7)抗体が抗体当たり1つのPE分子のみを担持するため、細胞当たりのCD19及びCD20分子の数と直接的に相関する。蛍光色素/タンパク質(F/P)の1:1の標識比で、MESF(等価可溶性蛍光色素の分子)値は、MESF/ABC=有効F/Pの式によるABC値に対応する。MFIをABC値に変換するために、GraphPad PRISMTMソフトウェアを使用した。
【0127】
結果
Toledo(DLBCL)、MEC-1(CLL)及びJVM-2(MCL)細胞のCD19及びCD20発現レベルを分析した。PE標識抗CD19及び抗CD20抗体と組み合わせたQuantiBRITETMシステムを使用して、試験したB細胞腫瘍細胞株におけるCD19及びCD20の発現レベルを決定した。DLBCL細胞株Toledoについて、35,721及び28,008の細胞当たりの結合抗体(ABC)のCD19及びCD20発現レベルを決定した(表1)。MEC-1細胞(CLL)上のCD19及びCD20発現を、60,925及び71,320 ABCとして定量化したが、JVM-2細胞(MCL)は、26,157のCD19発現レベル及び15,540 ABCのCD20発現レベルを示した。
【表2】
【0128】
実施例2:可変E:T比でのADCC活性アッセイ
方法及びデータ分析
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、免疫細胞傷害エフェクター機序であり、主に抗体の、NK細胞上のFc受容体との相互作用に依存する。ADCCは、抗体が標的細胞の表面上の特異的抗原、例えば、がん細胞上のCD19またはCD20に結合し、抗体のFc断片がNK細胞などのエフェクター細胞上のFc受容体と相互作用するときにトリガーされる。この相互作用は、エフェクター細胞を活性化し、標的細胞の溶解は、パーフォリン及びグランザイムの放出によって誘導される。
【0129】
エフェクター細胞の調製のために、Biocoll分離液及びSepMateチューブを用いた密度勾配遠心分離により、末梢血単核細胞(PBMC)を健康なボランティアの全血から単離した。次に、NK細胞を、製造業者のプロトコルに従い、MACSキットを介してPBMCから単離した。抗体及びNKエフェクター細胞とのインキュベーションの前に、1つのCLL細胞株(MEC-1)、1つのMCL(JVM-2)細胞株及び1つのDLBCL細胞株(Toledo)を、1μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)により室温で3分間染色した。
【0130】
ADCC実験では、ウェル当たり2×104個のDLBCL、MCLまたはCLL標的細胞を、様々なエフェクター対標的(E:T)比でエフェクター細胞としてのNK細胞とインキュベートし、MOR00208またはリツキシマブを、10μg/mlの濃度で2時間、37℃及び5%CO2でインキュベートした。腫瘍細胞の非特異的NK細胞媒介性死滅を、抗体の非存在下での標的細胞とのNK細胞のインキュベーションによって決定した。
【0131】
フローサイトメトリーベースのアッセイを利用して、膜不透過性であり、損傷した膜を有する死細胞のDNA内にのみインターカレートするが、無傷の膜を有する生細胞から除外される、DNAインターカレーター性色素である4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を使用して、死細胞及び生細胞を定量化することによって、標的細胞の死滅を測定した。細胞を1μg/mlの最終濃度でDAPIで染色し、FACS測定を行う前に氷上で10分間インキュベートした。
【0132】
生データをFACS Verse器具で収集し、FlowJoソフトウェアで分析した。細胞集団は、生きている(DAPI陰性)及び死んだ標的細胞(DAPI陽性)についてゲーティングした。データをMicrosoft Excel(登録商標)にエクスポートして、死細胞のパーセンテージ及び特定の死滅のパーセンテージを以下の式で算出した。
死細胞%=死んだ標的細胞/(死んだ標的細胞+生標的細胞)×100(試料)
特異的死滅%=死細胞%-NK及び標的細胞対照(抗体を含まない)における死細胞%。
【0133】
データ分析は、統計的ソフトウェアパッケージR及びR Studio(バージョン1.0.153 RStudio,Inc)を用いて行った。各独立した実験について、3回測定された特異的死滅%を、幾何平均及びその標準偏差で要約した。さらに、リツキシマブの中央値を正規化することによって、特異的死滅比を特異的死滅%の値から算出した。視覚化のために、幾何平均及びその95%信頼区間を算出した。幾何平均の信頼区間は、1000回の反復を用いたブートストラップリサンプリングによって算出した。
【0134】
細胞株当たりのすべての実験からのデータを要約するために、各ドナーの特異的死滅比を2段階プロセスで組み合わせた。最初に、個々の実験からの三重値を幾何平均値に集約した。続いて、独立した実験の幾何平均値を、個々のドナーのそれぞれのE:T比で1つの幾何平均値に組み合わせた。各E:T比で、中央値及びその信頼区間は、個々のドナーの要約された幾何平均値に基づいて10,000回の反復を伴うブートストラップリサンプリングによって算出した(R Core Team 2017、Davison and Hinkley 1997、Wickham 2017)。
【0135】
結果
健康なヒトドナーから単離されたNK細胞を用いた2時間のインキュベーション後に、Fc増強抗CD19抗体MOR00208及び抗CD20抗体リツキシマブの、Toledo(DLBCL)、MEC-1(CLL)及びJVM-2(MCL)細胞に対するADCC活性を測定した。
【0136】
MOR00208及びリツキシマブの抗腫瘍活性を、10μg/mlの抗体濃度で0.1:1、0.3:1、1:1、3:1及び6:1のE:T比で評価した。0.1:1~6:1の範囲のE:T比を、アッセイの下限比及び上限比として選択した。最低比(1NK細胞対10腫瘍細胞、比0.1:1)を、そのようなインビトロアッセイにおける最小可検ADCCシグナルによって決定した。上限(6NK細胞対1腫瘍細胞、6:1)を、そのようなインビトロアッセイの条件下で最大溶解が達成される比で選択した。
【0137】
図1は、特異的死滅%として示される各標的細胞株の個々の実験からの代表的な結果を示し、
図2は、リツキシマブに対して正規化されたMOR00208の特異的死滅比を示す。
【0138】
図1は、NK細胞の存在下、2時間のアッセイにおいて37℃での、MOR00208(黒色)またはリツキシマブ(白色)によって媒介されるMEC-1細胞中の特異的細胞死滅の1つの代表的なアッセイ結果を示す。3:1及び6:1のE:T比では、MOR00208によって媒介される40~65%、及びリツキシマブについては34~60%の平均特異的死滅レベルが、MEC-1細胞で見出された。例示的なJVM-2 ADCCアッセイでは、MOR00208対リツキシマブの特異的死滅はまた、46~56%対39~48%の範囲で3:1及び6:1のE:T比で上昇した。Toledo特異的細胞死滅は、MOR00208及びリツキシマブについて、2つのより高いE:T比で同様であり、値はおよそ60%であった。0.1:1の低E:T比でのリツキシマブの特異的死滅は、MEC-1細胞の3%であったが、MOR00208は、6%の特異的死滅を示した。同様の発見は、MOR00208(3.4%)対リツキシマブ(0.5%)の特異的細胞死滅が上昇したJVM-2細胞において、MOR00208(8%)対リツキシマブ(3%)の細胞死滅が増加したToledo細胞において0.1:1のE:T比で見られた。
【0139】
MOR00208(黒色三角形)及びリツキシマブ(円)特異的死滅対リツキシマブの中央値の比は、DLBCL、MCL及びCLL細胞株を用いたすべての代表的な個々のADCC実験で、0.1:1のE:T比で1.9~6.9倍増加した(
図2)。3:1及び6:1のより高いE:T比では、特異的死滅は、飽和レベルに達し(
図1を参照)、MOR00208対リツキシマブの特異的死滅比にわずかな差しかなかった(
図2)。すべての実験データポイントを3回評価した。要約すると、E:T滴定を、33人の健康な血液ドナーから単離された61個の血液試料の3つのB細胞腫瘍細胞株及びNK細胞を用いたADCCアッセイにおいて行った。MOR00208及びリツキシマブのADCC活性は、JVM-2細胞については8人のドナー、Toledo細胞については10人のドナーで、各ドナーについては2つの独立した実験で評価した。MEC-1細胞を、2つの独立した実験において8人のドナー、及び単一の実験において9人のさらなるドナーで試験した。
【0140】
図3は、各細胞株を用いて実施したすべての実験におけるリツキシマブに対して正規化された特異的死滅比を示す。ここで、各円または三角形は、1つの個々の血液ドナーからのNK細胞を用いて三回行われる2つの独立した実験の幾何学的平均値を表す。リツキシマブに対して正規化されたMOR00208の5.3または2.5倍の特異的死滅比は、多数のドナーの中央値として示されるE:T比0.1:1でJVM-2またはToledo細胞において見出された(
図3)。個々のドナーのNK細胞は、最低E:T比でのリツキシマブと比較して、最大20または30倍のMOR00208の特異的死滅比の増加を示した(例えば、JVM-2標的細胞を有するドナー296またはToledo標的細胞を有するドナー299)(データ図示せず)。MEC-1細胞では、この効果は低く、17人の異なるドナーから単離されたNK細胞を用いた複数のADCCアッセイの結果として、0.1:1のE:T比でリツキシマブよりもMOR00208の特異的死滅比が平均1.6倍増加した。高いE:T比では、リツキシマブと比較して、MOR00208の特異的死滅比の増加は、試験したすべてのB細胞腫瘍細胞株ではあまり明確でなかったが、低いE:T比では、MOR00208は、リツキシマブよりも明らかに優れていた。
図3に示されるようなMOR00208の信頼区間は、E:T比が6:1のToledo細胞を除いてリツキシマブの信頼区間と重複せず、MOR00208対リツキシマブの観察された優位性に関して一般的な堅牢性を示唆することに留意すべきである。結論として、特異的死滅比は、より低いE:T比に向かって増加し、JVM-2及びToledo細胞について最も顕著であったが、一貫した効果は、MEC-1細胞について見られた。
【0141】
モノクローナル抗体MOR00208は、B細胞上のCD19抗原を標的とし、Fc領域内に2つの変異(S239D及びI332E)を有し、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を増強する。ADCCは、主に腫瘍浸潤NK細胞によって媒介されるがん細胞死滅の重要な機序である。Bhat及びWatzl(2007)は、リツキシマブの存在下でのNK細胞の連続死滅の増加を示し、0.05:1、0.1:1及び0.2:1の低いE:T比で最大効果を示した。さらに、抗体のFc増強は、CD33特異的抗体の非増強バージョンと比較して、NK細胞の連続死滅の増加をもたらすことが報告されている(Romain et al.2014)。ここでは、幅広い健康なドナーにわたって、DLBCL由来の1つの細胞株、MCL由来の1つ、及びNK細胞によって媒介されるCLL由来の1つを用いて、0.1:1の低いE:T比でリツキシマブに正規化されたMOR00208の特異的死滅の1.6~5.3倍増加した比が実証されている。特異的死滅比は、より低いE:T比に向かって増加し、JVM-2及びToledoについて最も顕著であったが、一貫した効果は、MEC-1細胞について観察された。より高いE:T比3:1及び6:1では、MOR00208媒介特異的死滅は、10μg/mlの飽和抗体濃度のリツキシマブと同様であった。
【0142】
低いE:T比でのリツキシマブと比較したMOR00208の特異的死滅の増加は、Toledo、JVM-2及びMEC-1細胞における61回の独立した実験において、33人の健康なドナーからの新たに単離されたNK細胞で確認された。これらの結果は、より低いE:T比でのNK細胞の連続死滅の増加を示し、MOR00208が、低いNK細胞数のDLBCL、MCL及びCLL患者における抗腫瘍活性の増加を有することの証拠を提供する。結論として、MOR00208のADCC活性は、NK細胞が制限されている条件下で、リツキシマブに対して最も顕著な優位性を示した。したがって、MOR00208の使用を含む療法は、ベースラインで低いNKCCを有する患者の標準治療(例えば、リツキシマブ)よりも好ましい。
【0143】
実施例3:T細胞及びNK細胞計数
実施例として、末梢T及びNK細胞計数は、以下の手順に従って行うことができる。
T細胞は、細胞性免疫において中心的な役割を果たすリンパ球の一種(白血球のサブタイプ)である。それらは、細胞表面上にT細胞受容体が存在することによって、B細胞及びNK細胞などの他のリンパ球と区別することができる。
【0144】
ナチュラルキラー細胞またはNK細胞は、先天性免疫系に不可欠な細胞傷害性リンパ球の一種である。NK細胞は、ウイルス感染細胞に迅速な応答を提供し、感染後約3日で作用し、腫瘍形成に応答する。典型的には、免疫細胞は、感染した細胞表面上に提示される主要組織適合性複合体(MHC)を検出し、サイトカイン放出をトリガーし、溶解またはアポトーシスを引き起こす。しかしながら、NK細胞は、抗体及びMHCの非存在下でストレス細胞を認識する能力を有し、はるかに速い免疫反応を可能にするため、独特である。
【0145】
材料及び方法
TriTest CD3 FITC/CD16+CD56 PE/CD45 PerCP(TruCOUNTチューブを含む)、BD Biosciences、カタログ番号340403(米国)、342442(欧州)。20μL、50μL及び450μLを送達することができるピペッター及びピペットチップ、Gilson Inc.FACS Lysing Solutions,BD Biosciences、カタログ番号349202。
器具:フローサイトメーター、Vortex
【0146】
フローサイトメトリーの背景:
全血を、白血球表面抗原に特異的に結合する蛍光色素標識抗体(TriTEST)で染色する。細胞は、レーザービームを通過し、レーザー光を散乱させる。染色された細胞は、蛍光を発する。器具によって検出されたこれらの散乱及び蛍光シグナルは、細胞のサイズ、内部複雑性及び相対的な蛍光強度に関する情報を提供する。TriTEST試薬は、蛍光トリガーを用い、NK細胞及びT細胞リンパ球集団の直接蛍光ゲーティングを可能にして、ゲート内の未溶解または有核赤血球の汚染を低減する。
【0147】
染色:
各患者試料について、TruCOUNTチューブは、試料識別番号で標識される。20μLのTriTEST CD3/CD16+CD56/CD45試薬をチューブの底部にピペットで分注した。50μLの十分に混合された抗凝固全血を、チューブの底部にピペットで分注した。室温(20~25℃)で保存された抗凝固血液(EDTA)は、抽出後24時間以内に染色し、染色後6時間以内に分析しなければならない(室温で保管し、光から保護する)。チューブをゆるやかに渦動させて混ぜる。チューブを、暗所において室温(20~25℃)で15分間インキュベートする。450μL 1×FACS溶解液をチューブに付加する。チューブを渦動させ、暗所において室温(20~25℃)で15分間再びインキュベートする。
【0148】
TruCOUNTチューブを使用して、既知の体積の試料をTruCOUNTチューブに直接染色する。チューブ内の凍結乾燥ペレットは溶解し、既知の数の蛍光ビーズを放出する。分析中、試料中の陽性細胞の絶対数(細胞/μL)は、細胞事象をビーズ事象と比較することによって決定することができる。
【0149】
フローサイトメトリー
細胞は、フローサイトメーターで実行する前に、凝集を低減するために完全に(低速で)渦動される。
【0150】
データ分析
CD45対SSCドットプロットを目視検査する。リンパ球は、低~中程度のSSCを有する明るくコンパクトな細胞集団として現れる。単球(M)及び顆粒球(G)は、別個の集団として現れる。分析は、単球及びリンパ球の細胞集団が明確な分離を示した場合に完了する。
【0151】
最初に、リンパ球を、CD45陽性、低SSC細胞集団としてゲーティングする。CD16/CD56対CD3は、事前に選択される。T細胞(T)は、コンパクトで明るいCD3陽性クラスターとして現れるはずである。NK細胞(NK)は、コンパクトな明るいCD16/CD56陽性クラスターとして現れるはずである。ゲーティングが完了し、T細胞及びNK細胞を数えることができる。
【0152】
ビーズ事象計数は、事前に選択されたゲートなしで、CD16/CD56対CD3プロットを使用して行われる。ビーズは、PE/FITC二重陽性クラスターとして現れるはずである。
【0153】
絶対数を算出する
試料中のT細胞またはNK細胞の絶対数(血液1μL当たりの細胞)は、細胞事象をビーズ事象と比較することによって決定される。MultiSETソフトウェアまたは手動(CellQuestまたは他のソフトウェアを使用する)のいずれかのデータ分析を使用することができる。手動計数の場合、陽性の細胞獲得事象の数(#)を獲得ビーズ事象の数(#)で割った後、(総TruCOUNTビーズ数(ロット依存)を50μLの全血試料体積で割った数)を乗じる。結果は、マイクロリットル当たりの絶対細胞数である。
【化7】
【化8】
【配列表】
【国際調査報告】