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特表2022-532541特に淹出されたコーヒーの調製のための、飲料粉末などの材料を含有するカプセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】特に淹出されたコーヒーの調製のための、飲料粉末などの材料を含有するカプセル
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/804 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
B65D85/804 200
B65D85/804 BRQ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566015
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2020061094
(87)【国際公開番号】W WO2020224952
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】19172933.4
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518003948
【氏名又は名称】スイス コーヒー イノベーション アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニッケル,アクセル
(57)【要約】
本発明は、カプセルに水を導入することによって、特に飲料粉末から飲料を調製するための、最も特に挽かれたコーヒーからコーヒーを調製するためのカプセルであって、カプセルは、少なくとも1つの多糖で構成されるとともに多糖を含有する粉末で満たされるカプセル本体を備え、カプセル本体は少なくとも1つの第1コーティング層によって全体的に包まれており、少なくとも1つの第1コーティング層は少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーを含有するカプセルに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセルに水を導入することによって、特に、飲料粉末から飲料を、特にコーヒー粉末からコーヒーを調製するための前記カプセルであって、少なくとも1つの多糖で構成されるとともに多糖含有材料で満たされるカプセル本体を備え、前記カプセル本体は、少なくとも1つの第1コーティング層によって全体的に包まれており、前記少なくとも1つの第1コーティング層は、少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーを含む、カプセル。
【請求項2】
前記カプセル本体を満たす前記多糖含有材料は、コーヒー、茶、ドリンキングチョコレート、ココアおよびミルク粉末からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1コーティング層は、0.5~10μm、好ましくは1~2μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1または2に記載のカプセル。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1コーティング層は、9000~120000g/mol、好ましくは13000~30000g/molの、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィによって測定された重量平均分子量を有する、少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーを含むことを特徴とする、先行請求項の少なくとも一項に記載のカプセル。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1コーティング層は、1~2μmの層厚において、3cm/m/日/1.01325MPa未満、好ましくは2cm/m/日/1.01325MPa未満、特に好ましくは1cm/m/日/1.01325MPa未満のガス透過率を有することを特徴とする、先行請求項の少なくとも一項に記載のカプセル。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1コーティング層は、1~5層、好ましくは1~3層、最も好ましくは1層または2層、最も好ましくは1層を含み、各々、少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーを含むことを特徴とする、先行請求項の少なくとも一項に記載のカプセル。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1コーティング層の最外は、少なくとも1つの第2コーティング層でコーティングされ、前記少なくとも1つの第2コーティング層は多糖を含むことを特徴とする、先行請求項の少なくとも一項に記載のカプセル。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第2コーティング層は、デンプン、セルロース、キチン、カラギーナン、寒天およびアルギン酸塩からなる群から選択される架橋多糖を含むことを特徴とする、請求項7に記載のカプセル。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2コーティング層の前記多糖は、アルギン酸塩、好ましくはアルギン酸アルカリ土類金属塩、特に好ましくはアルギン酸カルシウムであることを特徴とする、請求項8に記載のカプセル。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第2コーティング層は、繊維、好ましくはセルロース繊維を含むことを特徴とする、請求項8または9に記載のカプセル。
【請求項11】
前記カプセル本体は、非架橋多糖、好ましくはセルロース、より好ましくは紙、ボール紙または板紙の1つ以上の層で構成されることを特徴とする、先行請求項の少なくとも一項に記載のカプセル。
【請求項12】
前記カプセル本体は、架橋多糖、好ましくはアルギン酸塩、より好ましくはアルギン酸アルカリ土類金属塩、最も好ましくはアルギン酸カルシウムの1つ以上の層で構成されることを特徴とする、請求項1~10の少なくとも一項に記載のカプセル。
【請求項13】
前記カプセル本体を満たす前記多糖含有材料は、ペレットとして存在し、前記ペレットは、好ましくは、0.01~1000MPa、好ましくは0.05~500MPa、より好ましくは0.1~100MPa、より好ましくは0.5~100MPa、さらにより好ましくは1~100MPa、最も好ましくは5~50MPa、最も好ましくは15~30MPaの圧力でプレスすることによって得られることを特徴とする、先行請求項の少なくとも一項に記載のカプセル。
【請求項14】
i)少なくとも1つの多糖で構成されるとともに多糖含有材料で満たされるカプセル本体を提供するステップと、
ii)ステップi)で提供された前記カプセル本体の表面全体を、溶媒中のポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーの溶液、または分散剤中のポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーの分散液で濡らすステップと、
iii)ステップii)で得られた前記カプセル本体を乾燥させるステップと、
iv)任意選択的に、ステップii)からiii)を、1~10回、好ましくは1~5回、より好ましくは1~3回繰り返すステップとを含む、先行請求項のいずれか一項に記載のカプセルを作製する方法。
【請求項15】
飲料、好ましくはコーヒー、茶、ドリンキングチョコレート、ココアまたは粉末状にされたミルク飲料を調製するための、請求項1~13のいずれか一項に記載のカプセルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ココア、茶またはコーヒーなどの、飲料の調製に特に好適である、飲料粉末などの材料を含有するカプセルに関する。加えて、本発明は、このようなカプセルを製造する方法およびこのようなカプセルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コーヒーポッドに加えて、カプセル壁が通常、ステンレス鋼、アルミニウムまたはプラスチックでできているコーヒーカプセルが、飲料、特に淹出されたコーヒーのポーション式の調製のためにますます用いられている。このようなカプセルは、香りを損なうことなくコーヒー粉末をより長期間保存することを可能にする。さらに、このようなカプセルは、所望のタイプのコーヒーを有するカプセルをそれに適合されたコーヒーマシーン内へ挿入し、その後、熱湯がカプセル内に圧入され、そこから淹出されたコーヒーが生成されることによって、所望の風味を有するコーヒー一杯分の迅速かつユーザーフレンドリーな調製を可能にする。しかしながら、このようなカプセルは、とりわけ、用いられるカプセル材料および製造集約的なカプセル構造のために、比較的高価である。さらに、このようなカプセルは、環境上問題がある。一方では、カプセルはリサイクルできず、通常、消費者は使用後に残留廃棄物として処分する。したがって、コーヒーカプセルのリサイクルは事実上行われず、これはアルミニウムベースのコーヒーカプセルの場合に特に厄介である。なぜなら、アルミニウム製造は非常にエネルギー集約的であり、このようなカプセルのCOバランスを特に悪くするためである。
【0003】
別の主要な欠点は、このようなカプセルは生分解性ではないため、生物学的に処分できないという点である。ドイツだけで年間40億個をはるかに上回るコーヒーカプセルが消費されていることを考えると、これは深刻な問題である。
【0004】
同じ問題は、輸送包装や食品包装などの他の包装にも関連する。
このようなカプセルについての上記の問題を少なくとも部分的に回避するために、代替材料でできたカプセルが既に提案されている。
【0005】
DE 10 2014 000 187 B4から、特にコーヒー粉末などのセルロース粉末のペレットからなり、ペレットが生分解性材料で構成される層でコーティングされるカプセルが知られている。コーティング層は、好ましくは、ポリオールスペーサおよび関連する架橋剤と組み合わせられる多糖またはその誘導体からなる液体セルロースである。
【0006】
EP 3 115 316 B1は、カプセルに水を導入することによって、特に、飲料粉末から飲料を、特にコーヒー粉末からコーヒーを調製するためのカプセルを開示しており、カプセルは少なくとも1つの多糖を含有する粉末のペレットを含み、上記ペレットは少なくとも1つの層でコーティングされており、上記少なくとも1つのコーティング層は架橋多糖を含み、上記架橋多糖はポリオールスペーサを使用することなく架橋剤で多糖を架橋することによって得られる。
【0007】
EP 3 225 566 B1は、カプセルに水を導入することによって、特に、飲料粉末から飲料を、特にコーヒー粉末からコーヒーを調製するためのカプセルを開示しており、カプセルは少なくとも1つの多糖を含有する粉末で満たされた、少なくとも1つの多糖を含有するカプセル本体からなり、上記カプセル本体は少なくとも1つのコーティング層でコーティングされており、上記少なくとも1つのコーティング層は架橋多糖を含み、上記架橋多糖は架橋剤で多糖を架橋することによって得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらのカプセルは、容易に生分解可能であるため、環境に優しい。しかしながら、生物源由来のコーティングの香り保護または酸素不透過性には改良の必要がある。多数のコーティングによって不透過性は増大され得るものの、一般に、十分な香り保護および酸素不透過性を有する追加の二次的な包装が使用されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これに基づいて、本発明は、特に、ココア、茶およびコーヒーなどの飲料粉末からの飲料のポーション式の調製のためのカプセルであって、製造が容易かつ安価であり、生分解可能であり、したがって処分が環境に優しいだけでなく、カプセル内容物をより長期間にわたって香りが著しく損なわれることから保護し、酸素によって生じる酸化に起因する味の変化を回避するカプセルを提供するという仕事に基づく。
【0010】
本発明によれば、この仕事は、カプセルに水を導入することによって、特に、飲料粉末から飲料を、特にコーヒー粉末からコーヒーを調製するためのカプセルであって、少なくとも1つの多糖で構成されるとともに多糖含有材料で満たされるカプセル本体を備え、カプセル本体は少なくとも1つの第1コーティング層によって全体的に包まれており、少なくとも1つの第1コーティング層は少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーを含むカプセルによって解決される。
【0011】
この解決法の主要な利点は、少なくとも1つの多糖で構成されるとともに多糖含有材料で満たされるカプセル本体からなり、カプセル本体が少なくとも1つの第1コーティング層でその表面全体を覆うようにコーティングされており、少なくとも1つの第1コーティング層が少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーを含有する、このようなカプセルが、環境に優しく処分されることが可能であり、さらに輸送保護および接触保護を有するという点である。さらに、この解決法は、このようなカプセルが、コーヒーなどの飲料の一杯分の調製のために、その使用に要求される必要な特性をすべて有しているという認識に基づいている。特に、カプセルは、その高い安定性によって、淹出された飲料の調製中に生じ得る高圧にも耐えることができ、これはカプセルに十分に高いレベルの輸送保護および接触に対する保護を提供する。これとは別に、本発明に係るカプセルは、ポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーの少なくとも1つの第1コーティング層によって、明らかに香りを損なうことがないのはもちろんのこと、少しも香りを損なうことなく、より長期間にわたってカプセル内容物を保護するとともに、酸素によって生じる酸化に起因する味の変化からもそれらを保護する。これは、ポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーの少なくとも1つのコーティング層が著しく低いガス透過率を特徴とするためである。これとは別に、本発明に係るカプセルは、製造が容易かつ安価である。さらに、カプセル本体および少なくとも1つの第1コーティング層の両方が無毒で生分解性であることが特に重要である。
【0012】
本発明に係るカプセルのカプセル本体を満たす多糖含有材料に関して、本発明は特に限定されない。特に、上記材料は、室温で液体、ペーストまたは固体であってもよい。特に、カプセル本体が粉末状の飲料として好適である多糖含有材料で満たされているとき、良好な結果が得られる。特に好適な例は、コーヒー、茶、ドリンキングチョコレート、ココア、ミルク粉末からなる群から選択されるものである。
【0013】
特に、カプセル本体が挽かれたコーヒー粉末で満たされているとき、良好な結果が得られる。
【0014】
この意味における多糖は非常に広義に理解されるべきであり、2つ以上の単糖がグリコシド結合を介して結合されているすべての糖類を含む。したがって、本特許出願の意味における多糖という用語は、特に、ミルク粉末の必須成分である、二糖ラクトースなどの、二糖、三糖または四糖も含む。
【0015】
本発明の第1の実施形態によれば、少なくとも1つの第1コーティング層は、完全にまたは少なくとも実質的に、1つ以上のポリビニルアルコールおよび/または1つ以上のポリビニルアルコールコポリマーで構成される。たとえば、少なくとも1つの第1コーティング層は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%であり、最も好ましくは完全に1つ以上のポリビニルアルコールおよび/または1つ以上のポリビニルアルコールコポリマーで構成され得る。
【0016】
所望の機械特性を調節するために、少なくとも1つの第1コーティング層は、1つ以上のポリビニルアルコールおよび/または1つ以上のポリビニルアルコールコポリマーに加えて、特に1つ以上の添加物などの、他の成分を含んでもよい。この実施形態によれば、少なくとも1つの第1コーティング層は、好ましくは、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%の1つ以上のポリビニルアルコールおよび/または1つ以上のポリビニルアルコールコポリマーで構成され、1つ以上の添加物をさらに含み、たとえば好ましくは、タルク、グリセロール、ポリエチレングリコールおよび先述の添加物のうちの2つ以上の任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの添加物を含む。グリセロールまたはポリエチレングリコールに混合することによって、少なくとも1つの第1コーティング層の弾性を向上することができ、タルクを添加することによって、少なくとも1つの第1コーティング層の機械的安定性を所望の値に調節することができる。
【0017】
十分に低いガス透過率を達成するために、本発明の観念のさらなる発展において、少なくとも1つの第1コーティング層が0.5~10μm、好ましくは1~5μm、より好ましくは1~2μmの厚さを有することが提案される。カプセルが少なくとも1つの第1コーティング層を備えるという構成は、カプセルが少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび/または1つのポリビニルアルコールコポリマーの1つまたは2つ以上の相互接続層を備え、相互接続層は対応する単一層または互いの頂部上に適用される2つ以上の層のラミネートであることを意味する。カプセルが2つ以上の第1コーティング層を備えるとき、上記の厚さはすべての第1コーティング層の総厚である。
【0018】
好ましくは、カプセルは、1~5層、より好ましくは1~3層、最も好ましくは1層または2層、最も好ましくは1層を有し、各々、少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーを含む。
【0019】
特に、カプセルの少なくとも1つの第1コーティング層が、9000~120000g/mol、好ましくは13000~30000g/molの、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィによって測定された重量平均分子量を有する、少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーを含むとき、良好な結果が得られる。このようなポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコールコポリマーは、十分に低いガス透過率を有する層を形成し、処理も容易である。これは、それらが水中で好適な粘度で溶液または分散液を形成するため、それらはカプセル本体を溶液または分散液中に浸すことによってカプセル本体に容易に適用可能であるためである。
【0020】
上記の理由のため、DIN53015にしたがって測定された20℃での4%水溶液において、3~110mPa・s、特に好ましくは3~20mPa・sの密度を有する、ポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーを使用することが好ましい。
【0021】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの第1コーティング層の材料およびその厚さは、第1コーティング層が、1~2μmの層厚において、3cm/m/日/1.01325MPa未満、好ましくは2cm/m/日/1.01325MPa未満、特に好ましくは1cm/m/日/1.01325MPa未満のガス透過率を有するように調節される。
【0022】
本発明によれば、カプセル本体は、少なくとも1つの第1コーティング層によって完全に包まれている。
【0023】
本発明のさらなる発展において、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコールコポリマーの少なくとも1つの第1コーティング層の最外を、少なくとも1つの第2コーティング層でコーティングすることが提案され、少なくとも1つの第2コーティング層は多糖を含む。この方法において、一方では、カプセルが水または別の液体と接触するとき、カプセルからのポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコールコポリマーの溶解を回避することができるとともに、他方では、カプセルの安定性などの機械的特性を所望の値に調節することができる。
【0024】
カプセルが少なくとも1つの第2コーティング層を有する構成は、カプセルが、少なくとも1つの多糖の1つまたは2つ以上の相互接続層、すなわち対応する単一層または互いに適用される2つ以上の層のラミネートを備えることを意味する。カプセルが2つ以上の第2コーティング層を有するとき、上記厚さはすべての層の総厚である。
【0025】
たとえば、カプセルの安定性を増大させるために、少なくとも1つの第2コーティング層が、架橋剤で多糖を架橋することによって得られる架橋多糖を含むことが好ましい。
【0026】
原理的には、本発明は、少なくとも1つの第2コーティング層の多糖の化学的性質に関して限定されない。特に、少なくとも1つの第2コーティング層の多糖が、デンプン、セルロース、キチン、カラギーナン、寒天およびアルギン酸塩からなる群から選択されるとき、良好な結果が得られる。少なくとも1つの第2コーティング層の多糖がカラギーナンまたはアルギン酸塩であることが特に好ましく、少なくとも1つの第2コーティング層の多糖がアルギン酸塩であることが特に好ましい。これらの多糖は、飲料の調製中に味の劣化を生じさせない。さらに、多糖のカプセル本体は、アルギン酸塩で容易かつ安価にコーティングされることが可能であることがわかっている。この点に関して、アルギン酸塩は生分解性であり、十分に安定なコーティングを提供し、著しく風味を損なうことなくカプセル内容物を保護する。さらに、アルギン酸塩は水の硬度を低減させることが可能であることもわかっている。加えて、不快な酸味が防止されるまたは少なくとも緩和される。
【0027】
好ましくは、少なくとも1つの第2コーティング層の多糖は架橋される。この点に関して、本発明の一実施形態に係る多糖の架橋は共有結合を介したものであり得る。共有結合を介した架橋は、非常に耐久性の高いコーティングを可能にする。この場合、共有結合を介した架橋は、通常、好適な架橋剤で多糖を反応させることによって実行される。特に、二官能性の有機化合物が架橋剤として好適であり、官能基は、たとえば、カルボン酸、カルボン酸の塩、活性カルボン酸、アミン、アルコール、アルデヒドおよびケトンからなる群から選択される。この文脈において、活性カルボン酸は、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸の活性エステル、カルボン酸の無水物またはカルボン酸の他の反応性誘導体であると理解される。
【0028】
この点に関して、架橋はスペーサを使用することなく行うことができ、特にポリオールスペーサを用いずに行うことができる。
【0029】
しかしながら、架橋は、スペーサを用いて、特にポリオールスペーサを用いて実行されてもよい。ポリオールスペーサは、好ましくは、脂肪族、環状または芳香族ポリオールであり、特に好ましくはエチレングリコール、プロパントリオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、ガラクトース、シアニジン、コリラギン、二没食子酸、没食子酸またはタンニン酸である。ポリオールスペーサによって、コーティング層のある程度の弾性が達成され、水吸収および蒸気浸透性は特に影響を受け得る。
【0030】
本発明の代替的かつ特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの第2コーティング層の多糖は、イオン結合および/または配位結合を介して架橋される。イオン結合および/または配位結合を介して架橋されたこのような多糖は特に調製が容易であり、使用される多糖の生分解性を低下させない。イオン架橋および/または配位架橋は、たとえば、カルボキシレート基またはスルホン酸基などのアニオン性基を有する多糖によって達成可能である。多糖のアニオン性基のイオン架橋および/または配位架橋は、その後、二価以上の価数のカチオン、特にアルカリ土類金属イオンを導入することによって達成され、安定したコーティング層を形成する。
【0031】
この文脈において、配位結合は、ヒドロキシル基における酸素原子の自由電子対とカチオンとの間に起こり得るような、電子対供与体と電子対受容体との間における相互作用を意味する。
【0032】
最も好ましくは、架橋多糖は、アルギン酸アルカリ土類金属塩、最も好ましくはアルギン酸カルシウムである。この場合、カルシウムイオンは、アルギン酸塩の基と配位結合またはイオン結合を形成するため、架橋剤である。驚くべきことに、本発明の文脈において、アルギン酸カルシウムを含むコーティングは、カプセルから生成された飲料の味に影響を与えない非水溶性の層を提供し、カプセル内容物に対して明らかに風味を損なうことなく輸送および接触保護を保証するのに十分なカプセルの安定性を提供することがわかった。加えて、アルギン酸カルシウムは、優れた生分解性を有する。別の利点は、アルギン酸カルシウムは、E番号E405を有する認可された食品添加物であるため、健康に無害であるということである。
【0033】
本発明のさらなる発展において、少なくとも1つの第2コーティング層が、少なくとも1つの第2コーティング層の機械的安定性を増大させるように繊維を含むことが提案される。好ましくは、繊維は、多糖繊維であり得る。なぜなら、それらは生分解性であるためである。特に綿繊維などのセルロース繊維において、良好な結果が得られる。繊維は、好ましくは、長繊維、好ましくは少なくとも100μm、好ましくは少なくとも1mm、特に好ましくは少なくとも5mmの長さを有するものである。このとき、これらの長繊維は、層における高い引張力を吸収し得る。
【0034】
繊維に代わって、または繊維に加えて、少なくとも1つの第2コーティング層に、このような繊維でできた糸または織物が提供されてもよい。
【0035】
原理的には、本発明に係るカプセルは、架橋多糖の第2コーティング層のみを備えてもよい。カプセルの安定性、ひいては輸送安全性および接触保護を増大させるために、本発明の観念のさらなる発展において、本発明に係るカプセルが2つ以上の第2コーティング層を備えることが提案される。好ましくは、カプセルのカプセル本体は、2~100層、より好ましくは2~20層、最も好ましくは2~10層、最も好ましくは2~5層の第2コーティング層で、すなわち多糖を含有するコーティング層でコーティングされる。カプセルのカプセル本体を2つ以上の第2コーティング層でコーティングすることによって、酸素バリアとしてのコーティングの効果だけでなく、関連する効果的な香り保護の提供も特に高度に達成される。
【0036】
本発明の別の特に好ましい実施形態によれば、カプセル本体の第2コーティングは、2~100層、好ましくは2~20層、より好ましくは2~10層、最も好ましくは2~5層の、任意選択的にはセルロース繊維を含む、アルギン酸カルシウム層を含む。
【0037】
アルギン酸ナトリウム溶液の粘度および用いられる処理に応じて、個々の第2コーティング層は、40~600μmの厚さを有する。70~300μmの厚さは、安定性と乾燥スピードとの間において最適な妥協点を示すため、第1層について特に好ましい。その後のコーティング層は、迅速な乾燥を可能にするために、好ましくはより薄いものであり、好ましくは40~200μmである。
【0038】
ゲルに含まれる水をより容易に除去し、架橋剤、すなわちカルシウムイオンのアルギン酸ナトリウムへの拡散をできるだけ速く促進にするために、薄い第2コーティング層が好ましい。原理的には、架橋剤の濃度を高くすることによって、カルシウムイオンのアルギン酸ナトリウムへの拡散のスピードも増大し得るが、この変形例の実用的な実施においては、薄いコーティング厚さは、拡散のスピードおよび扱いのために有利であることが示された。
【0039】
原理的には、少なくとも1つの第2コーティング層を有する本発明に係るカプセルのカプセル本体を部分的にのみ包むことが実際には可能である。しかしながら、カプセル本体が少なくとも1つの第2コーティング層によって完全に包まれることが好ましい。
【0040】
本発明の代替的な実施形態によれば、カプセル本体は、非架橋多糖の1つ以上の層で構成される。この実施形態においては、カプセル本体に好適な機械的安定性を提供するために、繊維状多糖のカプセル本体を提供することが好ましい。特に、繊維状多糖は、デンプン、セルロース、キチン、カラギーナン、寒天およびアルギン酸塩を含む繊維状材料であり得る。セルロース繊維でできた繊維状材料が特に好ましい。なぜなら、これらは、入手しやすいことに加えて、低価格で高強度であるという特徴があるためである。カプセル本体を構成する特に好ましい繊維状材料は、紙、ボール紙および板紙である。好ましくは、カプセル本体の厚さは、0.1~10mm、好ましくは0.25~2.5mm、特に好ましくは0.5~1.5mmである。
【0041】
本発明の代替的な好ましい実施形態によれば、カプセル本体は、架橋多糖の1つ以上の層で構成される。この実施形態において、カプセル本体は、架橋多糖の1つ以上の層で構成されることが好ましい。好ましくは、カプセル本体は、アルギン酸塩の1つ以上の層で構成される。この点に関して、アルギン酸塩がアルギン酸アルカリ土類金属塩、特に、任意選択的にはセルロース繊維を含む、アルギン酸カルシウムである場合、特に好ましい。
【0042】
本発明の代替的な好ましい実施形態によれば、カプセル本体は、非架橋多糖(好ましくは、デンプン、セルロース、キチン、カラギーナンおよび寒天、より好ましくは紙、ボール紙または板紙から選択された繊維状材料を含む繊維状多糖)の1つ以上の層と、それに適用される架橋多糖の1つ以上の層(好ましくは、アルギン酸塩、好ましくはアルギン酸カルシウムの1つ以上の層)とで構成されてもよい。特に、この実施形態において、カプセル本体を満たす多糖含有材料がペレットの形態であり、ペレットが、好ましくは、0.01~1000MPa、好ましくは0.05~500MPa、より好ましくは0.1~100MPa、さらに好ましくは0.5~100MPa、さらにより好ましくは1~100MPa、最も好ましくは5~50MPa、最も好ましくは15~30MPaでプレスすることによって得られることが好ましい。
【0043】
本発明の別の目的は、先行請求項のいずれか一項に記載のカプセルを作製する方法であって、
i)少なくとも1つの多糖で構成されるとともに材料で満たされるカプセル本体を提供するステップと、
ii)ステップi)で提供されたカプセル本体の表面全体を、溶媒中のポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーの溶液で、または分散剤中のポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーの分散液で濡らすステップと、
iii)ステップii)で得られたカプセル本体を乾燥させるステップと、
iv)任意選択的に、ステップii)からiii)を、1~10回、好ましくは1~5回、より好ましくは1~3回繰り返すステップとを含む方法を提供することである。
【0044】
好ましくは、カプセル本体は、ステップi)において、非架橋多糖、好ましくは紙、ボール紙または板紙を多糖含有粉末で満たすことによって提供される。
【0045】
カプセル本体が、ステップi)において、多糖含有粉末のペレットの一部、好ましくは表面全体を、溶媒中の多糖の溶液で、または分散剤中の多糖の分散液で濡らし、その後、少なくとも1つの架橋剤と接触させ、次いでそれを乾燥することによって提供されることがさらに好ましい。
【0046】
代替的には、カプセル本体が、ステップi)において、非架橋多糖、好ましくは紙、ボール紙または板紙を多糖含有粉末で満たし、その後、満たされた非架橋多糖の一部、好ましくは表面全体を、溶媒中の多糖の溶液で、または分散剤中の多糖の分散液で濡らし、その後、それを少なくとも1つの架橋剤と接触させ、次いでそれを乾燥することによって提供されることが好ましい。
【0047】
好ましくは、ステップiii)またはiv)で得られたカプセル本体の一部、より好ましくは表面全体は、溶媒中の多糖の溶液で、または分散剤中の多糖の分散液で濡らされ、その後、少なくとも1つの架橋剤と接触させられ、その後、乾燥され、任意選択的にはこれらのステップを1~10回、好ましくは1~5回、より好ましくは1~3回繰り返す。
【0048】
本発明の別の目的は、本発明に係るカプセルを水と接触させることによって飲料を調製するために、本発明に係るカプセル使用することである。好ましくは、カプセルは、コーヒー、茶、ドリンキングチョコレート、ココアおよびミルク粉末からなる群から選択される材料を含有する。
【0049】
コーヒー飲料の調製のための本発明に係るカプセル本使用は、飲料が要求されるとおりに一杯分で調製されることを可能にする。本発明に係る使用の格別の利点は、生分解可能な廃棄物のみが生成されるという点である。
【0050】
飲料、特にコーヒー飲料を調製するために本発明に係るカプセルを用いるとき、コーヒーカプセルは、好ましくは、水による圧搾または穿孔されたコーヒーカプセルのその後の抽出の前に、圧搾または穿孔される。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、本発明の例示であって限定ではない3つの実施例を参照して、以下に説明される。
【0052】
実施例1
6.5gの挽かれた焙煎されたコーヒーが、プレス機を用いて球状のペレットにプレスされた。結果として生じた球状のペレットは、1.5重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液に浸漬され、1~2秒後にアルギン酸ナトリウム溶液から取り出された。ペレットがアルギン酸ナトリウム溶液から取り出された後、5重量%のCaCl2溶液でスプレーされた。ペレットは、その後、室温で15分間、空気乾燥された。
【0053】
アルギン酸カルシウムのコーティング層を有するペレットからなるカプセルが得られた。
【0054】
得られたカプセルは、5重量%のポリビニルアルコール水溶液(Kuraray Exceval AQ-4104)に浸漬され、1~2秒後にポリビニルアルコール溶液から取り出された。カプセルの取出し後、空気流において室温で5分間、乾燥された。
【0055】
球状のカプセルが得られ、これは完全に包まれ、亀裂または穴を有せず、5μm未満の範囲のポリビニルアルコールについての膜厚を有した。
【0056】
このポリビニルアルコールの薄層は非常に高い酸素気密性を達成するのに既に十分であることが示された。
【0057】
実施例2
実施例1と同様に、コーヒーカプセルが準備された。その後、このカプセルは1.5重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液に浸漬され、1~2秒後にアルギン酸ナトリウム溶液から取り出された。カプセルがアルギン酸ナトリウム溶液から取り出された後、5重量%のCaCl2溶液でスプレーされた。カプセルは、その後、室温で15分間、空気乾燥された。
【0058】
カプセルが得られ、これは外側アルギン酸カルシウム層から得られる強度を有しており、これは淹出プロセスの間に内層からポリビニルアルコールが溶液に移ることを防止した。
【0059】
実施例3
上部リムを有するカップ形状のカプセル本体が混凝紙から形成され、乾燥された。このカプセルベース本体は、6.5gの挽かれた焙煎されたコーヒーで満たされた。満たされたカプセル本体は、その後、紙キャップでシールされ、紙キャップはメチルセルロースでカプセル本体リムに接着された。このようにしてシールされたカプセルは、1.5重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液に浸漬され、1~2秒後にアルギン酸ナトリウム溶液から取り出された。カプセルがアルギン酸ナトリウム溶液から取り出された後、5重量%のCaCl2溶液でスプレーされた。カプセルは、その後、室温で15分間、空気乾燥された。
【0060】
紙で形成されたベース本体からなり、コーヒー挽粉で満たされ、アルギン酸カルシウムのコーティング層を有するカプセルが得られた。
【0061】
得られたカプセルは、5重量%のポリビニルアルコール水溶液(Kuraray Exceval AQ-4104)に浸漬され、1~2秒後にポリビニルアルコール溶液から取り出された。カプセルの取出し後、空気流において室温で5分間、乾燥された。
【0062】
カップ形状のカプセルが得られ、これは完全に覆われており、亀裂または穴を有せず、5μm未満の範囲のポリビニルアルコールについての層厚を有した。
【0063】
このポリビニルアルコールの薄層は非常に高い酸素気密性を達成するのに既に十分であることがわかった。
【国際調査報告】