(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】ポリイミドフィルムの製造方法及びそれにより製造されたポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20220708BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20220708BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C08G73/10
C08L79/08
C08J5/18 CFG
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566166
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 KR2019014398
(87)【国際公開番号】W WO2020226243
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0053583
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514225065
【氏名又は名称】ピーアイ アドヴァンスド マテリアルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PI Advanced Materials CO., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム・ドン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ドン ユン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ・ジョン ユル
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
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4J043ZB50
(57)【要約】
本発明は、ポリイミドフィルムの製造方法及びそれにより製造されたポリイミドフィルムに関する。一具体例において、前記ポリイミドフィルムの製造方法は、芳香族ジアミン(diamine)及び芳香族酸二無水物(dianhydride)を含む混合物を重合してポリアミック酸を製造するステップと、前記ポリアミック酸、アミン系触媒、酸無水物系脱水剤、及び溶媒を含む第1組成物を製造するステップと、前記第1組成物を150℃以下で製膜するステップと、を含み、前記第1組成物は、アミン系触媒及び酸無水物系脱水剤を1:2~1:5のモル比で含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミン(diamine)及び芳香族酸二無水物(dianhydride)を含む混合物を重合してポリアミック酸を製造するステップと、
前記ポリアミック酸、アミン系触媒、酸無水物系脱水剤、及び溶媒を含む第1組成物を製造するステップと、
前記第1組成物を150℃以下で製膜するステップと、を含み、
前記第1組成物は、アミン系触媒及び酸無水物系脱水剤を1:2~1:5のモル比で含むことを特徴とする、ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記混合物は、芳香族ジアミン100重量部及び芳香族酸二無水物70~350重量部を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記芳香族ジアミンは、ジアミノフェニルエーテル、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、4,4-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-メチレンジアミン、3,4’-オキシジアニリン、4,4’-オキシジアニリン、2-(4-アミノフェニル)-1H-ベンゾオキサゾール-5-アミン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンズイミダゾール、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、及び4,4’-ジアミノ-p-テルフェニルのうち1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記芳香族酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1H,3H-ナフト[2,3-c:6,7-c’]ジフラン-1,3,6,8-テトロン2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシビス(2-ベンゾフラン-1,3-ジオン)、4-[(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-イル)オキシ]-2-ベンゾフラン-1,3-ジオン、及び5,5’-スルホニルビス-1,3-イソベンゾフランジオンのうち1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記製膜ステップの後に、前記製膜されたポリアミドフィルムを硬化するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項6】
ポリアミック酸は、23℃で測定された粘度が10,000~200,000cPであることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記第1組成物は、ポリアミック酸100重量部、アミン系触媒5~25重量部、酸無水物系脱水剤8~50重量部、及び溶媒30~200重量部を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第1組成物は、23℃で測定された粘度が50,000~500,000cPであることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記酸無水物系脱水剤は酢酸無水物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、m-クレゾール、テトラヒドロフラン、及びクロロホルムのうち1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記アミン系触媒は、β-ピコリン、イソキノリン、トリエチレンジアミン、及びピリジンのうち1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記第1組成物は添加剤をさらに含み、前記添加剤は、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、熱安定剤、難燃剤、及び無機フィラーのうち1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記製膜は130~150℃で行うことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項1~13の何れか一項に記載のポリイミドフィルムの製造方法により製造されたポリイミドフィルム。
【請求項15】
前記ポリイミドフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が350℃以上であり、ASTM D 1003の基準により測定された透過度が30%以上であることを特徴とする、請求項14に記載のポリイミドフィルム。
【請求項16】
前記ポリイミドフィルムは、密度が1.2~1.8g/cm
3であり、ASTM E 831の基準により測定された熱膨張係数が10μm/(m・℃)以下であることを特徴とする、請求項14に記載のポリイミドフィルム。
【請求項17】
前記ポリイミドフィルムは、ASTM D 882の基準により測定された引張強度が300MPa以上、引張モジュラスが6GPa以上、及び伸びが30%以上であることを特徴とする、請求項14に記載のポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルムの製造方法及びそれにより製造されたポリイミドフィルムに関する。より詳細には、優れた光学的特性及び柔軟性を有し、フォルダブルフォンなどに好適に使用可能なポリイミドフィルムの製造方法、及びそれにより製造されたポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(polyimide、PI)は、優れた耐熱性と機械的物性を有する材料であり、自動車、航空宇宙分野、フレキシブル回路基板などの核心材料として広く用いられている。
一方、ポリイミドフィルムは、芳香族ジアミンと芳香族酸二水物を溶液重合して触媒とともに混合した後、フィルム状に塗布し、高温で乾燥し、脱水により閉環(ring closure)させることにより製造される。近年、無色透明なポリイミドフィルムが開発され、光学特性、耐屈曲性、耐磨耗性、寸法安定性などが求められるディスプレイの絶縁、保護フィルムにも用いられている。
本発明に係る背景技術は、韓国特許登録第10-1966737号(2019.04.09.公開、発明の名称:ポリイミド前駆体組成物及びそれを用いたポリイミドフィルム)公報に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一目的は、透明性及び光学的特性に優れたポリイミドフィルムの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、耐熱性、耐薬品性、及び柔軟性に優れたポリイミドフィルムの製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、迅速な製膜が可能であり、生産性及び経済性に優れたポリイミドフィルムの製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、フィルムの製造時に破断が発生することなく、表面欠陥の防止効果に優れたポリイミドフィルムの製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記のポリイミドフィルムの製造方法により製造されたポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一観点は、ポリイミドフィルムの製造方法に関する。一具体例において、前記ポリイミドフィルムの製造方法は、芳香族ジアミン(diamine)及び芳香族酸二無水物(dianhydride)を含む混合物を重合してポリアミック酸を製造するステップと、前記ポリアミック酸、アミン系触媒、酸無水物系脱水剤、及び溶媒を含む第1組成物を製造するステップと、前記第1組成物を150℃以下で製膜するステップと、を含み、前記第1組成物は、アミン系触媒及び酸無水物系脱水剤を1:2~1:5のモル比で含む。
一具体例において、前記混合物は、芳香族ジアミン100重量部及び芳香族酸二無水物70~350重量部を含んでもよい。
一具体例において、前記芳香族ジアミンは、ジアミノフェニルエーテル、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、4,4-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-メチレンジアミン、3,4’-オキシジアニリン、4,4’-オキシジアニリン、2-(4-アミノフェニル)-1H-ベンゾオキサゾール-5-アミン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンズイミダゾール、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、及び4,4’-ジアミノ-p-テルフェニルのうち1つ以上を含んでもよい。
一具体例において、前記芳香族酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1H,3H-ナフト[2,3-c:6,7-c’]ジフラン-1,3,6,8-テトロン2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシビス(2-ベンゾフラン-1,3-ジオン)、4-[(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-イル)オキシ]-2-ベンゾフラン-1,3-ジオン、及び5,5’-スルホニルビス-1,3-イソベンゾフランジオンのうち1つ以上を含んでもよい。
一具体例において、前記製膜ステップの後に、前記製膜されたポリアミドフィルムを硬化するステップをさらに含んでもよい。
一具体例において、ポリアミック酸は、23℃で測定された粘度が10,000~200,000cPであってもよい。
一具体例において、前記第1組成物は、ポリアミック酸100重量部、アミン系触媒5~25重量部、酸無水物系脱水剤8~50重量部、及び溶媒30~200重量部を含んでもよい。
一具体例において、前記第1組成物は、23℃で測定された粘度が50,000~500,000cPであってもよい。
一具体例において、前記酸無水物系脱水剤は、酢酸無水物を含んでもよい。
一具体例において、前記溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、m-クレゾール、テトラヒドロフラン、及びクロロホルムのうち1つ以上を含んでもよい。
一具体例において、前記アミン系触媒は、β-ピコリン、イソキノリン、トリエチレンジアミン、及びピリジンのうち1つ以上を含んでもよい。
一具体例において、前記第1組成物は添加剤をさらに含み、前記添加剤は、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、熱安定剤、難燃剤、及び無機フィラーのうち1つ以上を含んでもよい。
一具体例において、前記乾燥は130~150℃で行ってもよい。
本発明の他の観点は、前記ポリイミドフィルムの製造方法により製造されたポリイミドフィルムに関する。
一具体例において、前記ポリイミドフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が350℃以上であり、ASTM D 1003の基準により測定された透過度が30%以上であってもよい。
一具体例において、前記ポリイミドフィルムは、密度が1.2~1.8g/cm3であり、ASTM E 831の基準により測定された熱膨張係数が10μm/(m・℃)以下であってもよい。
一具体例において、前記ポリイミドフィルムは、ASTM D 882の基準により測定された引張強度が300MPa以上、引張モジュラスが6GPa以上、及び伸びが30%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法によりポリイミドフィルムを製造する場合、透明性及び光学的特性に優れ、耐熱性、耐薬品性、及び柔軟性に優れるとともに、迅速な製膜が可能であり、生産性及び経済性に優れ、フィルムの製造時における破断及び表面欠陥の防止効果に優れる。また、製造されたポリイミドフィルムは、フォルダブル(foldable)フォンなどに好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一具体例に係るポリイミドフィルムの製造方法を示した図である。
【
図2】
図2(a)は実施例のポリイミドフィルム、
図2(b)は比較例1のポリイミドフィルム、
図2(c)は比較例2のポリイミドフィルム、
図2(d)は比較例3のポリイミドフィルムを示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明を説明するにあたり、関連する公知技術あるいは構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
そして、後述する用語は本発明での機能を考慮して定義された用語であり、これは、使用者、運用者の意図又は慣例などによって変わり得る。したがって、その定義は本発明を説明する本明細書の全般における内容を基に下すべきであろう。
また、本明細書において、「上部」と「下部」は図面を基準として定義したものであり、みる観点によって、「上部」が「下部」に、「下部」が「上部」に変更され得る。
【0008】
ポリイミドフィルムの製造方法
本発明の一観点は、ポリイミドフィルムの製造方法に関する。
図1は本発明の一具体例に係るポリイミドフィルムの製造方法を示した図である。
上記の
図1を参照すると、前記ポリイミドフィルムの製造方法は、(S10)ポリアミック酸の製造ステップと、(S20)第1組成物の製造ステップと、(S30)製膜ステップと、を含む。より具体的に、前記ポリイミドフィルムの製造方法は、(S10)芳香族ジアミン(diamine)及び芳香族酸二無水物(dianhydride)を含む混合物を重合してポリアミック酸を製造するステップと、(S20)前記ポリアミック酸、アミン系触媒、酸無水物系脱水剤、及び溶媒を含む第1組成物を製造するステップと、(S30)前記第1組成物を150℃以下で製膜するステップと、を含み、前記第1組成物は、アミン系触媒及び酸無水物系脱水剤を1:2~1:5のモル比で含む。
【0009】
以下、本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法をステップ別に詳細に説明する。
(S10)ポリアミック酸の製造ステップ
前記ステップは、芳香族ジアミン及び芳香族酸二無水物を含む混合物を重合してポリアミック酸(polyamic acid)を製造するステップである。
一具体例において、前記混合物は、芳香族ジアミン100重量部、芳香族酸二無水物70~350重量部、及び重合溶媒500~2500重量部を含んでもよい。
一具体例において、前記芳香族ジアミンは、ジアミノフェニルエーテル(diaminophenyl ether)、p-フェニレンジアミン(p-phenylenediamine)、o-フェニレンジアミン(o-phenylenediamine)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、2,6-ジアミノピリジン(2,6-diaminopyridine)、4,4-ジアミノジフェニルスルホン(4,4-diaminodiphenylsulfone)、4,4’-メチレンジアミン(4,4’-methylenediamine)、3,4’-オキシジアニリン(3,4’-oxydianiline)、4,4’-オキシジアニリン(4,4’-oxydianiline)、2-(4-アミノフェニル)-1H-ベンゾオキサゾール-5-アミン(2-(4-aminophenyl)-1H-benzoxazole-5-amine)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,4-bis(4-aminophenoxy)benzene)、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンズイミダゾール(2-(4-aminophenyl)-5-aminobenzimidazole)、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(6-amino-2-(p-aminophenyl)benzoxazole)、及び4,4’-ジアミノ-p-テルフェニル(4,4’-diamino-p-terphenyl)のうち1つ以上を含んでもよい。
一具体例において、前記芳香族酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)、3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-benzophenonetetracarboxylic dianhydride、BTDA)、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,4,3’,4’-biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)、3,4,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(3,4,3’,4’-diphenylsulfonetetracarboxylic dianhydride)、1H,3H-ナフト[2,3-c:6,7-c’]ジフラン-1,3,6,8-テトロン2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(1H,3H-naphtho[2,3-c:6,7-c’]difuran-1,3,6,8-tetrone 2,3,6,7-naphthalenetetracarboxylic dianhydride)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(1,4,5,8-naphthalenetetracarboxylic dianhydride)、4,4’-オキシビス(2-ベンゾフラン-1,3-ジオン)、4-[(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-イル)オキシ]-2-ベンゾフラン-1,3-ジオン、及び5,5’-スルホニルビス-1,3-イソベンゾフランジオンのうち1つ以上を含んでもよい。
【0010】
例えば、前記芳香族ジアミンは、4,4’-オキシジアニリン及びp-フェニレンジアミンを含んでもよい。前記芳香族ジアミンを含む場合、ポリアミック酸の粘度調節が容易であり、製造されたポリイミドフィルムの機械的物性に優れており、フォルダブルフォンの用途に好適に使用可能である。
一具体例において、前記芳香族ジアミンは、前記4,4’-オキシジアニリン及びp-フェニレンジアミンを1:1~1:4の重量比で含んでもよい。前記重量比の範囲で含む場合、ポリアミック酸の粘度調節が容易であり、製造されたポリイミドフィルムの機械的物性に優れる。例えば、1:2~1:4の重量比で含んでもよい。例えば、1:2.5~1:3.5の重量比で含んでもよい。
一具体例において、前記芳香族酸二無水物は、前記芳香族ジアミン100重量部に対して70~350重量部含まれてもよい。上記の範囲で含まれる場合、ポリアミック酸の粘度調節が容易であって成形性に優れ、ポリイミドフィルムの形成時における、未反応の芳香族酸二無水物によるフィルムの加水分解を防止することで、安定性に優れる。例えば、前記芳香族酸二無水物は、前記芳香族ジアミン100重量部に対して130~320重量部含まれてもよい。
一具体例において、前記重合は、窒素などの不活性雰囲気で、-10℃~60℃の温度で1~24時間反応させてもよい。前記混合物の重合反応のための重合溶媒は、上記の混合物を溶解可能なものを含んでもよい。一具体例において、前記重合溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、m-クレゾール、テトラヒドロフラン、及びクロロホルムのうち1つ以上を含んでもよい。
一具体例において、前記重合溶媒は、前記芳香族ジアミン100重量部に対して500~2500重量部含まれてもよい。上記の範囲で含まれる場合、ポリアミック酸の粘度調節が容易であり、優れた重合効率を示すことができる。例えば、前記重合溶媒は、前記芳香族ジアミン100重量部に対して1500~2200重量部含まれてもよい。
一具体例において、ポリアミック酸は、23℃で測定された粘度が10,000~200,000cPであってもよい。上記の粘度範囲で、混合性及び成形性に優れる。例えば、110,000~130,000cPであってもよい。
前記ポリアミック酸(ポリアミック酸)は、重量平均分子量が150,000~1,000,000g/molであってもよい。例えば、260,000~700,000g/mol以下であってもよい。上記の範囲の重量平均分子量を有するポリアミック酸を適用する場合、ポリイミドフィルムの耐熱性及び機械的物性に優れることができる。
【0011】
(S20)第1組成物の製造ステップ
前記ステップは、前記ポリアミック酸、アミン系触媒、酸無水物系脱水剤、及び溶媒を含む第1組成物を製造するステップである。
一具体例において、前記第1組成物は、ポリアミック酸100重量部、アミン系触媒5~25重量部、酸無水物系脱水剤8~50重量部、及び溶媒30~200重量部を含んでもよい。
一具体例において、前記アミン系触媒は、β-ピコリン、イソキノリン、トリエチレンジアミン、及びピリジンのうち1つ以上を含んでもよい。前記触媒を含む場合、イミド化反応速度及び透明性に優れる。
一具体例において、前記アミン系触媒は、前記ポリアミック酸100重量部に対して5~25重量部含まれてもよい。上記の範囲で含まれる場合、製膜時におけるイミド化反応速度に優れ、製造されたポリイミドフィルムの透過率に優れるとともに、表面欠陥を防止することができる。
前記酸無水物系脱水剤は、ポリアミック酸に対する脱水作用により閉環反応を促進することができる。例えば、酢酸無水物(acetic anhydride)を含んでもよい。前記脱水剤を含む場合、優れた製膜効率を示す。
一具体例において、前記酸無水物系脱水剤は、前記ポリアミック酸100モルに対して8~50重量部含まれてもよい。上記の範囲で含まれる場合、ポリイミドフィルムの機械的強度の低下又はクラックなどの欠陥が発生することを防止するとともに、イミド化反応速度に優れる。
一具体例において、前記第1組成物は、23℃で測定された粘度が50,000~500,000cPであってもよい。上記の範囲で含まれる場合、成形性とポリイミドフィルムの機械的強度に優れる。例えば、80,000~300,000cPであってもよい。さらに例えば、80,000~110,000cPであってもよい。
前記第1組成物は、アミン系触媒及び酸無水物系脱水剤を1:2~1:5のモル比で含む。上記のモル比の範囲で含む場合、アミド化反応速度が向上し、製膜の形成速度に優れ、ポリイミドフィルムのバブル(bubble)の発生を防止して優れた外観を示し、ポリイミドフィルムの砕け(brittle)現象を防止して、機械的物性に優れる。前記アミン系触媒に対して、前記酸無水物系脱水剤を1:2未満のモル比で含む場合には、ポリイミドフィルムの機械的強度の低下又はクラックなどの欠陥が発生し、1:5のモル比を超えて含む場合には、反応速度が低下するか、ポリイミドフィルムの機械的強度の低下又はクラックなどの欠陥が発生し得る。例えば、前記第1組成物は、アミン系触媒及び酸無水物系脱水剤を1:2.5~1:4.5のモル比で含んでもよい。
さらに例えば、前記第1組成物は、アミン系触媒及び酸無水物系脱水剤を1:1.6~1:4の重量比で含んでもよい。上記の重量範囲で含む場合、アミド化反応速度が向上し、製膜の形成速度に優れ、ポリイミドフィルムの機械的物性に優れる。
一具体例において、前記溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、m-クレゾール、テトラヒドロフラン、及びクロロホルムのうち1つ以上を含んでもよい。
一具体例において、前記溶媒は、前記ポリアミック酸100重量部に対して30~200重量部含まれてもよい。上記の範囲で含まれる場合、ポリアミック酸の粘度調節が容易であり、優れた重合効率を示す。例えば、前記重合溶媒は、前記ポリアミック酸100重量部に対して100~1000重量部含まれてもよい。
前記第1組成物は、アミン系触媒、酸無水物系脱水剤、及び溶媒を1:2:2~1:5:6の重量比で含んでもよい。上記の範囲で含まれる場合、第1組成物の混合性に優れ、アミド化反応速度が向上し、製膜の形成速度に優れ、ポリイミドフィルムのクラックなどの表面欠陥を防止するとともに、機械的物性に優れる。
一具体例において、前記第1組成物は添加剤をさらに含み、前記添加剤は、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、熱安定剤、難燃剤、及び無機フィラーのうち1つ以上を含んでもよい。
例えば、前記添加剤として無機フィラーを含んでもよい。前記無機フィラーは、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、及び雲母などが挙げられる。一具体例において、前記無機フィラーの平均粒径は、特に限定されるものではないが、0.05~100μmであってもよい。一具体例において、前記添加剤は、前記ポリアミック酸100重量部に対して0.01~100重量部含まれてもよい。
【0012】
(S30)製膜ステップ
前記ステップは、前記第1組成物を150℃以下で乾燥させて製膜するステップである。従来は、150℃を超える高度で乾燥及び製膜を行っていたが、この場合、フィルムの破断が発生した。本発明では、破断が発生しない組成とするとともに、それに適した製膜温度として150℃以下の温度で乾燥させるため、破断が発生することがない。乾燥温度が150℃を超える場合には、乾燥時にアミン系触媒が分解し、ポリイミドフィルムの破断が発生するか、機械的物性が低下する恐れがある。一具体例において、前記乾燥は130~150℃で行うことができる。さらに例えば、135~145℃で行うことができる。
乾燥手段(dryer)の温度が150℃超過170℃以下の高温で製膜する場合、前記第1組成物のアミン系触媒及び酸無水物系脱水剤を、1:5のモル比を超えて適用した際にのみ製膜が行われ、また、製膜速度が低下して生産性及び経済性が低下し、製膜されたポリイミドフィルムの透光性が低下するか、表面欠陥が発生するという問題がある。例えば、第1組成物を150℃以下で150~240秒乾燥することで、製膜することができる。
【0013】
(S40)硬化ステップ
前記製膜ステップの後に、前記製膜されたポリイミドフィルムを硬化するステップをさらに含んでもよい。一具体例において、前記硬化は200~650℃で行うことができる。前記条件で硬化する場合、ポリイミドフィルムの機械的物性に優れることができる。
【0014】
ポリイミドフィルムの製造方法により製造されたポリイミドフィルム
本発明の他の観点は、前記ポリイミドフィルムの製造方法により製造されたポリイミドフィルムに関する。一具体例において、前記ポリイミドフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が350℃以上であり、ASTM D 1003の基準により測定された透過度が30%以上であってもよい。上記の範囲で、フォルダブルフォンの用途に好適に使用可能である。例えば、前記ガラス転移温度は350~600℃であり、前記透過度は30~50%であってもよい。
一具体例において、前記ポリイミドフィルムは、密度が1.2~1.8g/cm3であり、ASTM E 831の基準により測定された熱膨張係数が10μm/(m・℃)以下であってもよい。例えば、前記密度は1.3~1.7g/cm3であり、熱膨張係数は6μm/(m・℃)以下であってもよい。
一具体例において、前記ポリイミドフィルムは、ASTM D 882の基準により測定された引張強度が300MPa以上、引張モジュラスが6GPa以上、及び伸びが30%以上であってもよい。例えば、引張強度が300~800MPa、引張モジュラスが6~15GPa、及び伸びが50~100%であってもよい。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げて、発明の構成及び作用をさらに詳述する。但し、これは、本発明の例示として提示されたものに過ぎず、如何なる意味でもこれらにより本発明が制限されると解釈されてはならない。
これに記載されていない内容は、この技術分野において熟練された者であれば十分に技術的に類推可能なものであるため、その説明を省略する。
【0016】
実施例及び比較例
実施例
(a)ポリアミック酸の製造:撹拌機及び窒素注入・排出管を備えた300kgの反応器に窒素を注入させながら、重合溶媒(DMF)250kgを投入し、反応器の温度を30℃に設定した後、4,4’-オキシジアニリン(4,4’-ODA)3~7kg、p-フェニレンジアミン(pPDA)9~12kg、芳香族酸二無水物(PMDA)10.5~16.5kg、及び3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)14~22kgを投入して完全に溶解させた。窒素雰囲気下で、30℃に温度を上げて加熱しながら120分間撹拌を続いた後、総固形分の含量が15重量%、23℃での粘度が下記表1のとおりであるポリアミック酸を製造した。
(b)第1組成物の製造:上記で製造されたポリアミック酸50g、アミン系触媒(イソキノリン)5g、酸無水物系脱水剤(酢酸無水物)11.86g、及び溶媒(DMF)19.25gを含み、23℃での粘度が下記表1のとおりである第1組成物を製造した(イソキノリン:酢酸無水物=1:3モル比)
(c)製膜:前記第1組成物を支持体上に塗布した後、110~140℃で3分間製膜し、厚さ25μmのポリアミドフィルムを製造した。
(d)硬化:前記ポリアミドフィルムを600℃で硬化し、下記表1の密度を有するポリイミドフィルムを製造した。
【0017】
比較例1
上記の製膜を152℃で3分間行ったことを除き、上記の実施例と同様の方法によりポリイミドフィルムを製造した。
【0018】
比較例2
上記の製膜を170℃で3分間行ったことを除き、上記の実施例と同様の方法によりポリイミドフィルムを製造した。
【0019】
比較例3
前記第1組成物として、ポリアミック酸50g、アミン系触媒(イソキノリン)5g、酸無水物系脱水剤(酢酸無水物)26g、及び溶媒(DMF)25gを含むものを適用したことを除き、上記の実施例と同様の方法によりポリイミドフィルムを製造した。(イソキノリン:酢酸無水物=1:6.6モル比)。
【0020】
前記実施例及び比較例のうち代表的に、実施例及び比較例3に対して、下記の方法により物性を評価し、その結果を下記表1に示した。また、前記実施例及び比較例1~比較例3で製造されたポリイミドフィルムを添付の
図2に示した。
(1)ポリイミドフィルムの表面特性の分析:実施例及び比較例のポリイミドフィルムの表面を目視観察し、10*10cmの面積当たりの表面欠陥の個数を確認し、等級別に分類して結果を示した。
(分類基準-S等級:表面欠陥0個;A等級:表面欠陥5個以下;B等級:表面欠陥10個以下;C等級:表面欠陥10個超過)。
(2)ガラス転移温度:TA社の動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis)Q800モデルにて、実施例及び比較例のポリイミド基材を幅9mm、長さ20mmに切断した後、窒素雰囲気下で5℃/minの昇温速度で、常温から500℃の温度区間条件でガラス転移温度を測定した。前記ガラス転移温度は、貯蔵弾性率(storage modulus)と損失弾性率(loss modulus)の比により計算されるtanδの最大ピークから判定した。
(3)透過度:ASTM D 1003の基準に準じて測定した。
(4)熱膨張係数:ASTM E 831の基準に準じて測定した。
(5)引張強度、引張モジュラス、伸び:ASTM D 882の基準に準じて測定した。
【0021】
【0022】
上記の表1及び
図2の結果を参照すると、本発明に係る実施例のポリイミドフィルムは、迅速な製膜が可能であり、表面欠陥が発生せず、引張強度、引張モジュラス、及び伸びに優れていたが、本発明の製膜温度を超えた比較例1及び比較例2は、前記実施例に比べてポリイミドフィルムのバブルが増加し、砕け(brittle)が発生することが分かった。また、本発明の第1組成物のアミン系触媒及び酸無水物系脱水剤のモル比の条件を外れた比較例3は、ポリイミドフィルムの表面に表面欠陥が発生し、伸びなどの機械的物性が低下していることが分かった。
本発明の単純な変形乃至変更は、この分野の通常の知識を有する者により容易に実施されることができ、かかる変形や変更は何れも本発明の領域に含まれるといえる。
【国際調査報告】