(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】サンプルを同定及び/又は確証するための質量分析法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20220708BHJP
H01J 49/00 20060101ALI20220708BHJP
H01J 49/16 20060101ALI20220708BHJP
H01J 49/26 20060101ALI20220708BHJP
G01N 33/14 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
G01N27/62 D
G01N27/62 G
H01J49/00 360
H01J49/00 310
H01J49/16 500
H01J49/00 090
H01J49/26
G01N33/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021567889
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(85)【翻訳文提出日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2020062869
(87)【国際公開番号】W WO2020229346
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521493536
【氏名又は名称】オルビヌム アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】フランク ヨッヘン ディターレ
(72)【発明者】
【氏名】ティム ファビアン マンフレート ヘットリヒ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ベルヒトルト
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ シュロッターベック
(72)【発明者】
【氏名】マルクス エーラト
【テーマコード(参考)】
2G041
5C038
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA04
2G041DA05
2G041FA10
2G041FA11
2G041FA12
2G041GA09
5C038HH02
5C038HH28
(57)【要約】
本発明は、サンプルを同定及び/又は確証するための方法であって、方法は、少なくとも1つの化学化合物をサンプルに転化すること;サンプルへの添加後少なくとも1つの化合物のレベルを決定すること;並びに少なくとも1つの化合物のレベルを参照レベルと比較して参照サンプルとの比較及び少なくとも1つの化合物のレベルに対するサンプルの効果に基づいてサンプルを同定することを含む、方法に関する。本発明は、サンプルを同定及び/又は確証するための方法における少なくとも1つの化合物の使用にさらに関する。さらに、本発明は、本発明の方法における少なくとも1つの化合物を備えるキットの使用に関する。加えて、本発明は、少なくとも1つの化合物を含む組成物に関する。さらに、本発明は、例えば、本明細書で提供される方法を較正するための本明細書で提供される組成物を備えるキット及び/又は本明細書で提供される方法おいて使用される装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを同定及び/又は確証する方法であって、前記方法は:
(i)少なくとも1つの化合物を前記サンプルに添加するステップであって、前記少なくとも1つの化合物は可変イオン化を有する、ステップと;
(ii)前記少なくとも1つの化合物の質量スペクトルを得て、前記サンプルの添加後に前記少なくとも1つの化合物のレベルを決定するステップと;
(iii)(ii)で決定された前記少なくとも1つの化合物の前記レベルを参照レベルと比較するステップであって、前記参照レベルは参照サンプルへの添加後に決定された同じ化合物のレベルである、ステップと;
(iv)ステップ(iii)における前記比較及び前記少なくとも1つの化合物の前記レベルに対する前記サンプルの効果に基づいて前記サンプルを同定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記レベルは、質量分析シグナルレベルであり、特に、前記レベルは、前記質量スペクトルにおいて決定された存在量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルは、前記少なくとも1つの化合物に対するイオン抑制を有するか、若しくはイオン増感効果を有するか、又は前記サンプルは、前記少なくとも1つの化合物の前記イオン化を実質的に変更させない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの化合物に対する前記サンプルの前記イオン抑制効率又は前記イオン増感効率を決定し、前記イオン抑制効率又は前記イオン増感効率を、同じ少なくとも1つの化合物に対する前記参照サンプルの前記イオン抑制効率又は前記イオン増感効率と比較し、これに基づいて、前記サンプルを同定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記参照レベルと比較されるとき前記少なくとも1つの化合物の同様なレベル若しくは同じレベルは、前記サンプルが前記参照サンプルと一致することを示すか;又は
前記参照レベルと比較された前記少なくとも1つの化合物のレベルが異なっていることは、前記サンプルが前記参照サンプルと一致しないことを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(iv)において、前記サンプルを、前記少なくとも1つの化合物のイオン抑制又はイオン増感の特定のパターンに基づいて同定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(ii)において、前記レベルを、クロマトグラフィー分離を行わずに決定するように適切に、ステップ(i)において、分離ステップを行わずにサンプルを使用し、好ましくは、イオン源、特に、エレクトロスプレーイオン化結合質量分析計によって前記質量スペクトルを得る、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(i)において、前記少なくとも1つの化合物の異なる濃度を前記サンプルに添加し、ステップ(ii)において、前記サンプルへの添加後に前記少なくとも1つの化合物の前記異なる濃度のレベルを決定するか;又は
ステップ(i)において、前記少なくとも1つの化合物を前記サンプルの異なる濃度に添加し、ステップ(ii)において、前記サンプルへの添加後の前記少なくとも1つの化合物のレベルを決定する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、特に、用量反応曲線を作成することを含み、
前記用量反応曲線は、前記少なくとも1つの化合物の異なる濃度のレベルに基づくか;又は
前記用量反応曲線は、前記サンプルの前記異なる濃度への添加後の前記少なくともあつの化合物のレベルに基づく、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(i)において、少なくとも1~100又は好ましくは1~15化合物を添加する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物は、前記サンプル中に含まれる特定物質のイオン抑制及び/又はイオン増感効果に影響を受けやすい、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物は、前記質量スペクトルにおいて識別可能である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物は、高分子量若しくは低分子量、異なる分配係数(logP)、及び/又は異なるpkaを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(ii)において、前記少なくとも1つの化合物の各々のレベルを決定し、ステップ(iii)において、前記少なくとも1つの化合物の各々のレベルを各参照レベルと比較する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの化合物は、前記サンプル中に含まれない、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの化合物は、スルファグアニジン、ナプロキセンナトリウム、スルファジメトキシン、シプロフロキサシン、テトラサイクリン塩酸塩、ベラパミル塩酸塩、テルフェナジン、ロイシンエンケファリン酢酸塩水和物及びレセルピンからなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの化合物は、スルファグアニジン、ナプロキセンナトリウム、スルファジメトキシン、シプロフロキサシン、テトラサイクリン塩酸塩、ベラパミル塩酸塩、テルフェナジン、ロイシンエンケファリン酢酸塩水和物及びレセルピンである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの化合物は、前記サンプルへの添加後に定量限界の少なくとも5倍の前記サンプル中の濃度を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの化合物は、前記サンプルの非存在下で決定された前記同じ化合物のレベルと比較して約20%~約80%の前記少なくとも1つの化合物のレベルを抑制及び/又は増感するように、前記サンプルへの添加後の前記サンプルの濃度を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
特に、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を較正するために、標準品のさらなるレベルを決定する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記サンプルは、品質管理用途に適したプールされたサンプルである、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記サンプルは、ワイン、アルコール性飲料、食料品、加工食品、茶、コーヒー、ハーブエキス、天然物、天然物エキス、ビール、フルーツジュース(例えば、オレンジ及びリンゴ)、医薬組成物、医薬製剤、体液、組織抽出物、血液、血漿、血清、及び尿からなる群から選択され、特に、前記サンプルは、ワインである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記参照サンプルは、前記サンプルの前記同定及び/又は確証を可能とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記サンプル及び前記参照サンプルは、同じ種類由来である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記参照サンプルは、基準サンプル又は既知の組成を有するサンプルである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記参照サンプルは、特定のビンテージのワインサンプル、特定のブドウ品種のワインサンプル、又は特定の地域のワインサンプル、若しくは特定の生産者のワインサンプルである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記サンプルの前記同定は、前記サンプルの希釈物の前記同定であり、
特に、前記サンプルの前記希釈物を、前記サンプルの前記用量反応曲線と前記参照サンプルの前記用量反応曲線との比較に基づいて同定し、特に、前記用量反応曲線は、前記少なくとも1つの化合物の前記異なる濃度のレベル又は前記少なくとも1つの化合物の一定濃度のレベルに基づく、
請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は較正ステップを含み、前記サンプルは、既知の可変イオン化及び/若しくは前記少なくとも1つの化合物に対する既知のイオン抑制効果、前記少なくとも1つの化合物に対する既知のイオン増感効果などの既知のイオン化効果を有する、又は前記少なくとも1つの化合物のレベルを実質的に変化させないことが分かっている既知の化合物を含み、前記サンプルを使用して請求項1~27のいずれか一項において使用される前記方法及び/若しくは前記装置を較正する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の方法において可変イオン化を有する前記少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載の方法における、可変イオン化及び必要に応じて前記参照サンプルの参照レベルを有する少なくとも1つの化合物を備えるキットの使用。
【請求項31】
可変イオン化を有する少なくとも5化合物を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルを同定及び/又は確証するための方法であって、方法は、少なくとも1つの化学化合物をサンプルに転化すること;サンプルへの添加後少なくとも1つの化合物のレベルを決定すること;並びに少なくとも1つの化合物のレベルを参照レベルと比較して参照サンプルとの比較及び少なくとも1つの化合物のレベルに対するサンプルの効果に基づいてサンプルを同定することを含む、方法に関する。本発明は、サンプルを同定及び/又は確証するための方法における少なくとも1つの化合物の使用にさらに関する。さらに、本発明は、本発明の方法における少なくとも1つの化合物を備えるキットの使用に関する。加えて、本発明は、少なくとも1つの化合物を含む組成物に関する。さらに、本発明は、例えば、本明細書で提供される方法を較正するための本明細書で提供される組成物を備えるキット及び/又は本明細書で提供される方法おいて使用される装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルの同定又は確証は、退屈であり、高価であり、時間がかかる。これは、複合組成を有するサンプル、例えば、食料品(例えば、ワイン)、医薬組成物、又は体液について特に当てはまる。かかるサンプルは、多数の代謝物、低分子化学物質、脂質、ペプチド、核酸及び/又はタンパク質を含み得る。従来の方法は、多くの労力を要し時間がかかる:
【0003】
例えば、国際公開第2016/196181(A1)号パンフレットは、メタボロミクス及びリピドミクスに関し、単純な及び複合混合物中の代謝物及び脂質の分析に関する。より詳細には、国際公開第2016/196181号パンフレットは、代謝物及び脂質の同定及び定量のためにデータ独立取得を用い四重極及びイオン移動度分離能力を有する質量分析システムに関する。国際公開第2016/196181号パンフレットは、必要に応じて、サンプル同定のためにHPLC分離を含み、四重極;イオン移動度分光計;及び質量分析計を連結することを開示している。
【0004】
加えて、国際公開第2016/181299号パンフレットは、少なくとも1つのペプチド又はタンパク質を含むサンプル溶液から複数の前駆体ペプチド又はタンパク質イオンを生成するためのイオン源を利用して、ペプチド及びタンパク質を究明するトップダウン法について記載している。
【0005】
さらに、Mann(Nature Reviews Molecular Cell Biology volume 17,678頁(2016))は、サンプル中に存在する全物質の公正な検出のためのストラテジーを開示している。この種の分析は、少数の専門研究所に限られることが多い。欠乏、消化、クロマトグラフィー分離及び/又は高解像度質量分析などの時間がかかりコストがかかるサンプル調製技術は、物質の完全スペクトルを検出するために行う必要がある。例えば、可能のある偽物由来の基準サンプルを同定するために、大多数のサンプルにわたって同じタンパク質又は代謝物を定量する定量的に精密で高再現性のデータセットの作成が必要である。
【0006】
複合サンプルの同定を困難にする1つの要因は、サンプルの構成成分/物質を原因とする干渉効果、例えば、マトリックス並びにイオン抑制及び増感効果である。
【0007】
質量分析では、検出干渉効果は、揮発性のマトリックス中の存在だけでなく、検出器に達する気相中に生成される分析物イオン量だけでなく、分析物液滴形成(又は蒸発)の効率を変化させることができる非揮発性化合物によっても誘導されるイオン抑制又は増感現象をしばしばもたらす(T.M.Annesley,Clin.Chem.49(2003)1041)。マトリックス成分により潜在的に誘導される種々の現象は、検出能、選択性、繰返し精度、正確度、反応も線形性(シグナル対濃度)及び定量限界に関して方法性能に劇的に影響を与える。さらに、イオン抑制又は増感現象によりもたらされるスペクトル変化のせいで、スペクトルライブラリーを作り上げることは難しい。加えて、完全走査スペクトルにおけるフラグメントイオンの欠如は、ライブラリー情報を著しく減少させる。
【0008】
イオン抑制及び増感は、分析物の同定及び決定の両方に影響を与える。存在する分析物の検出を妨げる場合に偽陰性診断を招くだけでなく、例えば、内部標準(I.S.)レベルが分析物レベルより大きく抑制される場合に偽陽性診断を招き得る(F.Gosetti et al./J.Chromatogr.A 1217(2010)3929~3937)。例えば、尿中クレンブテロール分析では、イオン抑制のパーセンテージは、93gL-1の分析物濃度レベルにおける37%から45gL-1の濃度に対して69%までの範囲であることが分かった(T.M.Annesley,Clin.Chem.49(2003)1041)。
【0009】
陽イオンモード(PI)又は陰イオンモード(NI)の選択もシグナルに影響を与え得る。化学種がPI及びNIモードの両方においてイオン化することができ、選択性が問題ない場合、より選択的及びより低いマトリックス効果が理由で、NIモードの使用が推奨される。例えば、37農薬(除草剤、殺虫剤及び真菌剤)の環境及び排水においてESI(NIモード)を使用した場合、ほんの少数の例外はあるが、PIモードで観察されるのと対照的に、シグナル抑制は有意でない(J.M.Marin,E.Gracia-Lor,J.V.Sancho,F.J.Lopez,F.Hernandez,J.Chromatogr.A 1216(2009)1410)。
【0010】
Furey(Talanta.2013 Oct 15;115:104-22.doi:10.1016/j.talanta.2013.03.048.Epub 2013 Apr 16)は、質量分光測定分析におけるマトリックス効果の因果関係は、分析化学者にとって心配の種である主課題であることも開示している。
【0011】
1つのさらなる従来の質量分析法は、直接噴射質量分析(DIMS)である。DIMSでは、希釈サンプル、例えば、尿サンプルは、いかなる事前クロマトグラフィー分離もなく、ESI装備質量分析計に直接噴射される。DIMSは、著しく高いイオン化抑制を示す(Dunn & Ellis,2005;Dettmer,Aronov,& Hammock,2007;Want et al.,2010;Dunn et al.,2011)。ラット尿中にスパイクされた内部標準の60%イオン抑制を、オンラインSPE抽出を用いて尿から塩を除去したにもかかわらず、生理食塩水溶液中でスパイクされた標準品と比較して観察した(Dettmer,Aronov,& Hammock,2007)。かかる傷害物のせいで、大多数のサンプルをフィンガープリント又は推定同定するために調査する場合、その使用は、迅速高スループットスクリーニング目的に限定される(Mikami,Aoki,& Kimura,2012;Zhang et al.,2012a)。(Lit:DOI 10.1002/mas.21455 MASS SPECTROMETRIC BASED APPROACHES IN URINE METABOLOMICS AND BIOMARKER DISCOVERY)
【0012】
サンプルを同定するさらなるストラテジーは、Khamis(Mass Spectrom Rev.2017 Mar;36(2):115-134.doi:10.1002/mas.21455.Epub 2015 Apr 16)に開示されている。この方法は、複合多段階アプローチを含む。代替アプローチは、Causon et al.(2019)Analytica Chimica Acta 1052, pp.179-189により提供されている。質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィーを用いたワインのフィンガープリント法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、サンプルを同定及び/又は確証する方法は、時間がかかり多くの労力を要する。したがって、本発明の根底にある技術的課題は、サンプル(例えば、食料品、特に、ワイン)の迅速かつ信頼できる同定及び/又は確証するための手段及び方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
技術的課題は、クレームにおいて特徴付けられた実施形態の提供により解決される。
【0015】
したがって、本発明は、サンプルの同定及び/又は確証する方法であって、前記方法は:
(i)少なくとも1つの化合物を前記サンプルに添加するステップであって、特に、前記少なくとも1つの化合物は可変イオン化を有する、ステップと;
(ii)前記少なくとも1つの化合物の質量スペクトルを得て、前記サンプルの添加後に前記少なくとも1つの化合物のレベルを決定するステップと;
(iii)(ii)で決定された前記少なくとも1つの化合物の前記レベルを参照レベルと比較するステップであって、前記参照レベルは参照サンプルへの添加後に決定された同じ化合物のレベルである、ステップと;
(iv)ステップ(iii)における前記比較及び前記少なくとも1つの化合物の前記レベルに対する前記サンプルの効果に基づいて前記サンプルを同定するステップと、
を含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、上記確認された技術的課題を解決する。以下本明細書及び添付実施例に記載されているように、サンプルに添加される少なくとも1つの化合物のレベルに対するサンプルの効果に基づいてサンプルを同定することが予想外に実証された。以下本明細書中に示されているように、本発明の方法は、サンプルのいずれか又は全ての構成成分/物質を決定する必要なく、サンプル、例えば、ワインの容易、迅速かつ信頼できる同定を可能とする。方法を使用してサンプルが確証してもよい。例えば、本明細書に提供されている方法は、サンプル(例えば、ワインサンプル)がオリジナルであるか又は偽物であるかどうかを容易、迅速かつ信頼して決定することを可能とする。方法は、サンプルが折木成るサンプルと比較して希釈されているかどうかを決定することをさらに可能とする。本発明の根底にある原理は、サンプルに添加された少なくとも1つの化合物レベルを決定することである。したがって、本発明の方法は、少なくとも1つの化合物をサンプルに添加することを含む。添付実施例では、次の好ましい化合物をサンプルに添加する:スルファグアニジン、ナプロキセンナトリウム、スルファジメトキシン、シプロフロキサシン、テトラサイクリン塩酸塩、ベラパミル塩酸塩、テルフェナジン、ロイシンエンケファリン酢酸塩水和物及びレセルピン。サンプルの構成成分/物質はイオン化、したがって、質量分析計においてサンプルに添加された少なくとも1つの化合物レベルに影響を与え得る。例えば、サンプルの構成成分又は物質は、少なくともあつの化合物に対するイオン抑制又はイオン増感効果を有し得る。少なくとも1つの化合物のイオン化をレベルにより決定することができる。
【0017】
従来技術は、イオン抑制が質量分析法の検出能、精度、及び正確度に悪影響を与える。この主張された悪影響を利用し、少なくとも1つの化合物レベルに対するサンプルの効果に基づいてサンプルを同定及び/又は確証することは、本発明者らの天才的アイデアであった。例えば、散布津の物質は、少なくとも1つの化合物に対するイオン抑制効果、又はイオン増感効果を有することができ、あるいは、少なくとも1つの化合物のイオン化を実質的に変化させることができないかもしれない。本明細書で提供されている方法は、少なくとも1つの化合物レベルを決定することによってサンプルを同定及び/又は確証するために、少なくとも1つの化合物レベルに対するこれらの効果を利用する。したがって、本発明の方法は、サンプルへの添加後の少なくとも1つの化合物レベルの固有パターンを決定する。少なくとも1つの化合物レベルの固有パターンに基づいてサンプルを同定する。かかる好ましい方法を、添付実施例に以下の本明細書中に記載する。
【0018】
従来技術では、サンプルに含まれている物質及びそのレベルに基づいてサンプルを同定する。対照的に、本明細書に提供されている方法では、サンプルへの添加後の少なくとも1つの化合物レベル及び少なくとも1つの化合物レベルに対するサンプルの効果に基づいてサンプルを同定する。したがって、本発明内で、サンプル構成成分のレベルは、これを決定する必要はなく、サンプルの同定/確証にとって無関係である。換言すれば、同定/確証しようとするサンプルは、少なくとも1つの化合物を添加する本明細書で使用される質量分析法において使用されるマトリックスに一致する。
【0019】
したがって、サンプルに添加され、次いで、質量分析により分析された確定されている化合物セット(少なくとも1つの化合物)に基づいた本発明の概念を以下本明細書に記載されている。少なくとも1つの化合物の分析レベルは、サンプル(マトリックス)に含まれる物質により影響を受ける。少なくとも1つの化合物レベルに対するサンプルの影響を定量し、参照サンプル、すなわち、標準品(例えば、健康、較正又は基準サンプル、その他)と比較してサンプルの同定を可能とする。
【0020】
従来技術アプローチは、複合サンプル組成物を原因とするマトリックス/イオン抑制及び増感効果を低減しようとする。かかる従来技術アプローチは、分析全体の時間(サンプル調製及びクラマトグラフィー実行時間を含む)、分析装置の複雑さ及びコストに対する悪影響を有する効果に基づく。マトリックス及びイオン抑制又は増感効果を低減又は除く典型的手段は、マトリックスから特定の妨害成分を激減させること、クロマトグラフィー法を拡張すること、脱塩及びバッファ/溶媒を変更すること又は他のイオン源を導入することである。
【0021】
本発明は、従来の悪影響を逆転させ、これらを使用する:複合サンプル組成物による少なくとも1つの化合物の1つ以上のライブラリーのレベル低減/増感を定量し、固有サンプル同定と相関する。この場合、少なくとも1つの化合物の1つ以上のライブラリーのイオン抑制又は増感に対する複合サンプルの固有パターンを、サンプルそれ自体のフィンガープリントとして使用する。以下本明細書に記載されているように、少なくとも1つの化合物のライブラリーは、本明細書において、少なくとも1つの化合物を含む組成物とも呼ぶ。本明細書で提供されている方法は、例えば、前例のない最小サンプル調製及び実行時間を特徴とする。さらなる利点は、正確な効果定量のための多重化用量反応曲線(各化合物対サンプル濃度又はサンプル対化合物濃度)である。本明細書に記載されている実施例は、異なる起源のワインを、化合物のライブラリーを使用することによって、例えば、直接噴射質量分析又は別の質量分析法を使用することによって、5分未満の実行時間で明白に識別することができることを示す。
【0022】
さらに、添付実施例は、水のサンプルを、本明細書に提供されている方法により同定することができることを示す;実施例2を参照。特に、実施例は、6つの異なる水サンプルを、少なくとも1つの化合物の質量スペクトルを得ることによって同定/確証した。以下本明細書では、純水は、イオン含有水と比較して少なくとも1つの化合物レベルに対する異なる効果を有することも示されている。異なるイオン含有水サンプルは、少なくとも1つの化合物に対する異なる効果も示した。したがって、本明細書で提供されている方法は、水サンプルも同定/確証することができる。したがって、本明細書で提供されている方法は、質量分析により分析することができるいずれものサンプルに適用することができる。
【0023】
さらに、実施例は、異なるアルコール性飲料を同定することを記載している。例えば、本明細書で提供されている方法は、ジン及びウイスキーサンプルを同定及び/又は確証する;実施例3を参照。実施例3は、実施例1と比較して、さらなる化合物を使用する。
【0024】
さらに、実施例は、本明細書で提供されている方法における既知の1つの化合物の使用は、サンプルを同定することを記載している;実施例4を参照。したがって、1つの化合物は、本明細書で提供されている方法によりサンプルを同定及び/又は確証することができる。追加の化合物の添加は、同定又は確証のロバストネス、正確度及び解決をさらに改善する;実施例3を参照。したがって、本明細書で提供されている実施例は、本明細書で提供されている目的物を妥当にする。
【0025】
加えて、実施例は、サンプルが少なくとも1つの化合物又は少なくとも1つの化合物の1つを既に含む場合に、サンプルを同定することもできることを示す;例えば、下記実施例5を参照。換言すれば、サンプルの同定及び確証は、少なくとも1つの化合物がサンプル中に含まれている場合に可能である。例えば、アトラジン及びキニンは同定しようとするサンプル中に含まれていた;実施例5を参照。アトラジン及び/又はキニンのさらなる添加はこれらの化合物のレベルを増大し、少なくとも1つの化合物レベルに対するサンプルの特定の効果を決定することができた。したがって、サンプルの同定及び確証は、サンプルが少なくとも1つの化合物又は少なくとも1つの化合物の1つを既に含む場合にも可能である。
【0026】
本発明の方法並びに本明細書で提供されているキット及び組成物の使用は、従来技術の方法より優れた少なくとも以下の利点を提供する。少なくとも1つの化合物はサンプルの同定を可能とするので、本明細書で提供されている方法は従来技術の方法より迅速である。したがって、分析時間を約30分から約3分未満まで低減することができる。例えば、同位体標識された標準品も高解像度質量分光測定(MS)分析計も必要はない。加えて、少なくとも1つの化合物を含むサンプルをイオン化チャンバーに直接注入することができ、少なくとも1つの化合物の反応を直接測定することができるので、本明細書で提供されている方法は多くの労力を要するサンプル調製を必要としない。例えば、本明細書で提供されている方法は、液体クロマトグラフィーステップを必要としない。したがって、サンプル調製を有意に低減又は省略する。加えて、本明細書で提供されている方法は、様々なバッファ及び溶媒の使用を可能とする。したがって、本明細書で提供されている方法は、サンプルバッファ及び溶媒組成物に関してほとんど制限を有しない。本明細書で提供されている方法は、さらなる開発を可能とする。例えば、サンプルに添加される少なくとも1つの化合物を、適切な濃度においてサンプルの物質を含む最も相互作用化合物を選択するために、化合物ライブラリーのスクリーニングによって容易に得ることができる。さらに、本明細書で提供されている方法は、全ての種類のサンプル及びサンプル混合物に適用可能である。したがって、本明細書で提供されている方法、使用、キット及び組成物は、根底にある技術的課題を解決し、サンプルの迅速、対費用効果の高い及び信頼できる同定及び/又は確証を提供する。
【0027】
本発明は、下記及び上記本明細書で提供されている態様及び項目に関する。以下では、本発明の態様をより詳細に説明する。これらの説明は、本明細書で提供されている方法、使用、組成物及びキットに関する。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「少なくとも1つの化合物をサンプルに添加すること(adding at least one compound to the sample)」は、少なくとも1つの化合物をサンプルに添加することを意味する。あるいは、この用語は、サンプルを少なくとも1つの化合物に添加する」ことも意味し得る。1つより多い化合物をサンプルに添加する場合、化合物をサンプルに添加する前に化合物を予備混合することができ、例えば、混合物は組成物中に含まれているかもしれない。かかる場合では、少なくとも1つの化合物を含む組成物をサンプルに添加してよい。あるいは、化合物を、本明細書で提供されている方法においてサンプルに別々に添加してよい。
【0029】
本明細書で使用されるとき、本発明の実施形態で使用される又は含まれる「少なくとも1つの化合物」は、化学又は生化学化合物を表すことができる。好ましくは、「少なくとも1つの化合物」は、少なくとも1つの化学化合物であってよい。特定の態様では、化合物は、可変イオン化を有し得(イオン抑制効果の影響を受けやすくあり得)、そのイオンは、使用中のMS検出システムの電荷比に対する質量であり得る。特に、少なくとも1つの化合物は、化学又は生化学化合物、特に、低分子化学又は生化学化合物であってよい。例えば、少なくとも1つの化合物は、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、DNA鎖又は本明細書で提供されている好ましい化合物であってよい。 本明細書で使用されるとき、「少なくとも1つの化合物」又は「少なくとも1つの化学化合物」は、本明細書において互換的に使用される。特定の態様では、少なくとも1つの化合物は、サンプル(又はサンプルに含まれている物質)が少なくとも1つの化合物レベルに対する効果を有するように質量分析計において可変イオン化を有する。ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド又はDNAなどのポリマー鎖を、多かれ少なかれ荷電アミノ酸、ヌクレオチド、その他を有することによってイオン抑制に対する感受性に関して変化することができる。タンパク質を、トップダウン(全タンパク質イオン化)又はボトムアップ(消化後のペプチド分析)アプローチにより分析してよい。ペプチドだけでなくタンパク質もイオン抑制の影響を受けやすいことがさらに分かっている。換言すれば、サンプルは、少なくとも1つの化合物レベルに対する効果を潜在的に有する。附属の実施例において上述及び以下本明細書に記載されているように、根底にある本発明の発明概念は、少なくとも1つの化合物レベルに対するサンプルの効果に基づいてサンプルを同定及び/又は確証することであり、少なくとも1つの化合物に対するサンプルの効果を質量分析計で決定する。換言すれば、サンプルへの添加後に決定される少なくとも1つの化合物レベルは、サンプルの同定及び/又は確証を可能とする。
【0030】
当業者は、サンプル(又はサンプルに含まれている物質)が少なくとも1つの化合物レベルに対する効果を有するかどうかを如何に決定するかを認識する。例えば、少なくとも1つの化合物レベルを、サンプルに少なくとも1つの化合物を添加しないで決定することができる。換言すれば、少なくとも1つの化合物レベルを、サンプルの非存在下で決定する。さらなるステップでは、サンプルを、少なくとも1つの化合物に添加することができる。換言すれば、少なくとも1つの化合物レベルを、サンプルの存在下で決定する。サンプルの存在下又はサンプルの非存在下における少なくとも1つの化合物レベルの比較は、サンプルが少なくとも1つの化合物に対する効果を有するかどうかを明らかにする。したがって、少なくとも1つの化合物は、サンプルが少なくとも1つの化合物レベルに対する効果を有するように、質量分析計で可変イオン化を有する。
【0031】
可変イオン化を、ポジティブモード又はネガティブモードで決定してよい。
【0032】
用語「イオン化」又は「イオン化効率」は、本明細書において互換的に使用することができる。これらの用語は、質量分析計又は質量分析計の質量フィルターにおける解決及び決定に適した気相イオンの生成を表す。したがって、特定の化合物のイオン化を、質量分析計において特定の化合物(特に特定の化合物のイオン)のレベルの決定によって決定することができる。用語「可変イオン化」又は「可変イオン化効率」は、少なくとも1つの化合物の少なくとも1つは、マトリックス効果に影響を受けやすい(サンプルに含まれている物質が原因となる)ことを意味する。換言すれば、用語「可変イオン化」又は「可変イオン化効率」は、サンプル(又はサンプルに含まれている物質)(1)は少なくとも1つの化合物に対するイオン抑制効果を有することができる、(2)は少なくとも1つの化合物に対するイオン増感効果を有することができる、又は(3)は少なくとも1つの化合物に対するイオン化を実質的に変化させることができないことを意味する。したがって、少なくとも1つの化合物の可変イオン化は、少なくとも1つの化合物がサンプルの存在下及び非存在下において可変イオン化効率を有することも意味する。したがって、特定の態様では、少なくとも1つの化合物は、サンプルの存在下及び非存在下において可変イオン化を有する。したがって、少なくとも1つの化合物の可変イオン化は、サンプルが少なくとも1つの化合物レベルに対する効果を有する。上記のように、少なくとも1つの化合物レベルに対する効果を、サンプルの存在下及び非存在下において少なくとも1つの化合物レベルを決定し、これらのレベルを相互に比較することによって決定することができる。上記のように、サンプルレベルに対する効果は、サンプルが少なくとも1つの化合物のイオン化を実質的に変化させないことであり得る。用語「少なくとも1つの化合物のイオン化を実質的に変化させない」又はその文法的変化形は、サンプルが少なくとも1つの化合物に対する測定可能なイオン抑制効果もイオン増感効果も有しないことを意味する。それ故、サンプルは、特定の化合物に対する測定可能な効果を有しない。したがって、少なくとも1つの化合物レベルは、サンプルによって変化されなかった。
【0033】
用語「イオン抑制効果」又は「イオン抑制」は、少なくとも1つの化合物のイオン化効率がサンプルに含まれている物質の存在により低下する現象を表す。例えば、次の場合、イオン抑制又はイオン増感に関してより大きな可能性がある:
サンプルの目的分析物/物質は、複合マトリックスを含むサンプル中のほんの微量で存在する場合、
ほんの最小限のサンプルクリーンアップを行う場合、
LC流出液中に酸若しくはアルカリバッファ若しくはイオン対形成剤が存在する場合、
短い非分解能(non-resolving)クロマトグラフィー実行を使用する場合、及び/又は
クロマトグラフィー分離を行わない場合。
【0034】
イオン抑制及び増感は、本発明の方法で使用される化合物に依存し、イオン源におけるイオン化過程の早期段階で起こる。これは、極性及び非滞留マトリックス構成成分(例えば、サンプルに含まれている物質)又はLCカラムのオーバーローディングに起因し得る。種々のメカニズムが、イオン抑制及び増感現象を説明するために提案された。これらとしては:
(a)サンプルのマトリックス構成成分及び気相に対する液滴表面への接近するための噴霧溶液中の共溶出する分析物イオン間の競合、
(b)利用できる荷電を獲得するために競合するマトリックス干渉、
(c)分析物と結合するか又は分析物を共沈殿させるマトリックス、
(d)気相酸/塩基反応により中和され得る分析物イオン、
(e)移動相添加物、並びに
(f)装置設計
が挙げられる。
【0035】
用語「イオン増感効果」又は「イオン増感」は、少なくとも1つの化合物のイオン化効率がサンプルに含まれている物質の存在により増大する現象を表す。イオン抑制効果及びイオン増感効果を、特定の化合物のレベルによって決定することができる。本発明の特定の態様では、少なくとも1つの化合物は、サンプルに含まれている特定又は選択された物質のイオン抑制及び/又はイオン増感効果に影響を受けやすい。換言すれば、少なくとも化合物のレベルは、好ましくは、サンプルに含まれている物質により変化させられる。特に、様々なイオン化又はイオン化効率を有する本発明の方法で添加される少なくとも1つの化合物の適切な化合物、化合物のライブラリー、例えば、サンプルの同定及び/又は確証するために適切なサンプルの存在下、特定のレベルを提供する化合物を提供する。
【0036】
特定の態様では、少なくとも1つの化合物は、1~100化合物、好ましくは1~80化合物、より好ましくは1~60化合物、さらにより好ましくは1~50化合物、さらにより好ましくは1~40化合物、さらにより好ましくは1~30化合物、さらにより好ましくは1~20化合物、さらにより好ましくは1~15化合物、さらにより好ましくは1~12化合物、又はさらにより好ましくは少なくとも9化合物を表す。用語「少なくとも」は、サンプルに、特定の数より多い化合物を添加すること又は特定の数の化合物を添加することを意味する。
【0037】
好ましい態様では、少なくとも1つの化合物は、1つより多い化合物を表す。特定の態様では、少なくとも1つの化合物は、サンプルの物質の特定の物質/分類に対する特定のイオン抑制又はイオン増感を有する。サンプルに添加された少なくとも1つの化合物は、質量スペクトルにおいて識別し得る。少なくとも1つの化合物は、異なる化学特性又は物理特性(例えば、log P、pKa、及び分子量)を有し得、従来のクロマトグラフィーをベースとした方法で種々の分離メカニズムから得られる情報と比較可能である、サンプルからの直交性情報を得ることを可能とする。特定の態様では、本明細書で提供されている方法で添加される化合物は、質量分析計、異なる分配係数(logP)、及び/又は異なるpkaで決定される高分子量(例えば、ペプチド又はタンパク質)又は低分子量(例えば、小分子)を有し得る。これらの態様で使用されるとき、用語「高」及び「低」は、異なる質量を質量分析計で決定してよいことを意味し、すなわち、1つより多い化合物のレベルを質量分析計で分解することができる。少なくとも1つの化合物は、サンプルに添加後の定量限界の少なくとも5倍のサンプル濃度を有し得る。特に、少なくとも1つの化合物は、サンプルの非存在下で決定された同じ化合物のレベルと比較して約20%~約80%まで少なくとも1つの化合物のレベルを抑制及び/又は増感するように、サンプルへの添加後のサンプル濃度を有する。
【0038】
特定の態様では、少なくとも1つの化合物は、サンプルへの添加前、サンプルに含まれていない。本明細書で使用されるとき、用語「サンプルに含まれていない」は、サンプルへの少なくとも1つの化合物の添加前に方法を使用するために使用される少なくとも1つの化合物レベルを、質量分析計で決定することができない。したがって、少なくとも1つの化合物レベルは、かかる態様において検出限界未満である。好ましくは、少なくとも1つの化合物は、サンプル中に存在しない。
【0039】
下記本明細書に示されているように、少なくとも1つの化合物が、少なくとも1つの化合物をサンプルに添加する前にサンプルに既に含まれている場合、サンプルを同定及び/又は確証することができる。かかる態様では、少なくとも1つの化合物を、レベルが増加し、サンプルが質量分析で決定することができるレベルに対する効果を有するような濃度でサンプルに添加する。あるいは、少なくとも1つの化合物を、例えば、2つの異なる濃度でサンプルの2つ以上のアリコートに添加してよく、サンプルから得られるレベル差を較正系列のシグナルのレベル差と比較する。
【0040】
本発明の方法で添加され、本明細書で提供されている少なくとも1つの化合物(又は本明細書で提供され、使用されるキット)は、好ましくは、スルファグアニジン、ナプロキセンナトリウム、スルファジメトキシン、シプロフロキサシン、テトラサイクリン塩酸塩、ベラパミル塩酸塩、テルフェナジン、ロイシンエンケファリン酢酸塩水和物及びレセルピンからなる群から選択され得る。
【0041】
本発明の方法で添加され、本明細書で提供されている少なくとも1つの化合物(又は本明細書で提供され、使用されるキット)は、好ましくは、ロイシンエンケファリン酢酸塩水和物、テルフェナジン、ベラパミル塩酸塩、テトラサイクリン塩酸塩、ジルチアゼム塩酸塩、リノマイシン塩酸塩、ブスピロン塩酸塩、サラフロキサシン塩酸塩水和物、ハロペリドール、トラゾドン塩酸塩、シプロフロキサシン、キニン、ラニチジン塩酸塩、トリクロカルバン、スルファジメトキシン、トリメトプリム、アミトリプチリン塩酸塩、アテノロール、プロプラノロール塩酸塩、スルファチアゾール、スルファメトキサゾール、シメチジン、サルブタモール、メラトニン、ナプロキセンナトリウム、アトラジン、スルファグアニジン、メトホルミン塩酸塩及びレセルピンからなる群から選択され得る。本明細書で提供されている好ましい化合物を、そのいずれかの他の塩として使用してもよい。
【0042】
特に、少なくとも1つの化合物は、スルファグアニジン、ナプロキセンナトリウム、スルファジメトキシン、シプロフロキサシン、テトラサイクリン塩酸塩、ベラパミル塩酸塩、テルフェナジン、ロイシンエンケファリン酢酸塩水和物及びレセルピンである。かかる化合物は、添付実施例で使用される好ましい化合物である。CAS番号を以下本明細書に開示する。化合物が質量分析計で化合物レベルにより決定することができる可変イオン化効率を提供する限り、いずれかの他の化合物を本明細書で提供されている態様で使用してよい。したがって、特定の態様では、少なくとも1つの化合物レベルがサンプルの同定及び/又は確証を可能とするように、少なくとも1つの化合物を特定のサンプルに合わせる。適切な化合物を、質量分析により化合物ライブラリーをスクリーニングすることによって同定してよい。スクリーニング方法は、サンプルに起因する変化されたイオン化を示す化合物を選択してよい。換言すれば、サンプルが上記少なくとも1つの化合物レベルに対する効果を有するように、少なくとも1つの化合物は、好ましくは、質量分析計において可変イオン化を有する少なくとも1つの化合物であってよい。例えば、スクリーニング方法は、好ましくは、サンプルが化合物に対するマトリックス効果を有する、化合物が市販され、安定、純粋、サンプルに可溶、及び/又はサンプルに含まれる、化合物を選択してよい。
【0043】
さらに、本明細書で提供されている方法では、クエンチャーを付加的にサンプルに添加してよく、特に、方法を較正及び品質管理を提供するのに適した1つ以上の濃度においてクエンチャーをサンプルに添加する。かかるクエンチャーは、少なくとも1つの化合物を含む本明細書に提供されている組成物又はキットに含まれていてもよい。クエンチャーは、標準品を表し得る。あるいは、クエンチャーは、クエンチング効果を増大してもよい。
【0044】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書で提供されている方法の較正のための標準品として使用することができるサンプルを提供する。かかる較正サンプルは、例えば、既知の化合物、特に、既知の可変イオン化及び/又は少なくとも1つの化合物に対するイオン抑制効果、少なくとも1つの化合物に対するイオン増感効果などの既知のイオン化効果を有する、若しくは少なくとも1つの化合物レベルを実質的に変化させないことが分かっている化合物を含んでよい。したがって、かかるサンプルを使用して、本明細書で提供されている方法及び本明細書で提供されている方法で使用される装置を較正してよい。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「質量スペクトル」は、ビームを生成するイオンの相対的存在量のプロット又はそのm/z値の関数としての他の収集を表す。本明細書で提供されている方法では、少なくとも、少なくとも1つの化合物の「質量スペクトル」を得る。質量スペクトルのレベル及び取得の決定を、ポジティブモード又はネガティブモードで得てよい。本明細書で提供されている方法では、少なくとも1つの化合物の質量スペクトルを得ることができ、必要に応じて、さらなる質量スペクトルをサンプルの物質について得てもよい。本発明の特定の態様では、1つより多い化合物をサンプルに添加してよいので、少なくとも1つの化合物の各々の質量スペクトルを得てよい。特定の態様では、少なくとも1つの化合物のレベルのみを、本発明の方法で決定する。特に、態様として、サンプルに含まれている物質のレベルを決定しない。したがって、特定の態様では、少なくとも1つの化合物のレベルのみを決定し、少なくとも1つの化合物の添加前に含まれている物質のレベルを決定しない。下記及び上記本明細書に記載されているように、少なくとも1つの化合物レベルに対するサンプルの効果に基づいてサンプルを同定及び/又は確証する。したがって、少なくとも1つの化合物レベルは、サンプルの同定及び/又は確証するのに充分であってよい。本発明のいくつかの態様では、サンプルに含まれている物質のレベルを決定してもよい。かかるレベルは、例えば、質量スペクトルに内部標準を提供し得る。
【0046】
特定の態様では、イオン化源及び界面を用いて質量分析法によって、質量スペクトルを得る。好ましくは、直接噴射質量分析によって、質量スペクトルを得る。特に、イオン源と結合された質量分析計、特に、エレクトロスプレーイオン化によって、質量スペクトルを得る。
【0047】
上記のような様々なMS技術によって、質量スペクトルを得てよい。サンプル調製方法は、溶解、分取、サンプルのペプチドへの消化、欠乏、濃縮、透析、脱塩、アルキル化及び/又はペプチド還元に関する技術を含む。しかしながら、本明細書で提供されている方法の1つの利点は、かかる方法が下記にも示すように前処理を必要としないことであるので、これらのステップは選択が自由である。分析物イオンの選択的検出を、タンデム質量分析(MS/MS)を用いて行ってよい。タンデム質量分析は、質量選択ステップ(本明細書で使用されるとき、用語「質量選択」は指定m/z又は狭いm/z範囲を有するイオンの単離を示す)、次いで、選択されたイオンの断片化及び得られた生成物(断片)イオンの質量分析を特徴とする。
【0048】
本発明の特定の態様では、質量分析計のイオン源に、サンプルを直接注入してよい。本明細書の附属実施例は、分離ステップを使用しなかった方法を示す。かかる態様では、ステップ(i)で使用されたサンプルは、分離ステップを行なっていない。これは、例えば、少なくとも1つの化合物レベルの添加及び決定前に、サンプルを特定の物質に対して濃縮しなかったことを意味する。例えば、本明細書で提供されている方法のステップ(ii)におけるレベルを、クロマトグラフィー分離、例えば、液体クロマトグラフィーを用いないで決定する。
【0049】
特定の実施形態では、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)によって、質量スペクトルを得てもよい。サンプル、参照サンプル及び少なくとも1つの化合物のレベルを同じイオン化及び質量分析法、例えば、MALDI-MSによって決定する限り、イオン化技術及び/又は質量分析法の影響がサンプルのレベル及び参照レベルと同様であるので、本明細書で提供されている方法によってサンプルを同定及び/又は確証することができる。したがって、少なくとも1つの化合物レベルに対するサンプルの効果を、MALDI-MSで決定することもできる。マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)を、本明細書で提供されている方法で使用してよい。
【0050】
さらに、Journal of Chromatography A,1493(2017)57~63及びFood Chemistry 244(2018)128~135に記載されているように、例えば、MSシステムに対する影響を有することもあり得る塩などの特定の物質分類を除去するためのオンラインサンプル調製、並びに目的の化合物の検出及びシグナルを向上する特定の薬剤のポストカラム添加が知られている。したがって、例えば、潜在的妨害物質分類を除去し、ポストカラム誘導体化法と同様に、少なくとも1つの化合物を添加するために、クロマトグラフィーステップの形態の初期サンプル調製を行う。したがって、クロマトグラフィー分離の適用及びその後の少なくとも1つの化合物の添加によって、質量スペクトルを得てもよい。
【0051】
本明細書で使用されるとき、「サンプル」は、サンプルを同定及び/又は確証するために添加するために少なくとも1つの化合物を添加する、物質を含むサンプルを表す。本明細書で使用されるサンプルは、物質、例えば、多数の代謝物、化学物質、脂質、ペプチド、核酸及び/又はタンパク質を含む複合組成物を有してよい。用語「サンプル」は、マトリックスを表し得る。提供された方法は質量分析法であるので、サンプルは、質量分析計により分析するのに適しているサンプルである。したがって、本明細書で提供されている方法は、サンプルを同定及び/又は確証するための質量分析法である。サンプルは、液体サンプルであってよい。しかしながら、サンプルは、質量分析により分析するのに適しているか又は質量分析により分析するのに適するようにした固体サンプルであってもよい。当業者は、質量分析で分析するのに適するように如何にサンプルを調製するか認識している。例えば、質量分析計で分析することができる(液体)サンプルを調製するために、(固体)サンプルに含まれる物質を抽出又は溶解することができる。例えば、Journal of Chromatography A 1617(2020)460830に記載されているように、当業者に公知のサンプル調製方法後に、固体サンプルをLC-MSにより分析することができる。例えば、固体サンプルを、例えば、カッティングミルにおいて目的の物質の熱損失を避けるために液体窒素で凍結した後に微粉砕し、次いで、例えば、溶媒抽出又は固体サンプル中の目的の物質に適したいずれかの他の抽出/サンプル調製方法などの抽出ステップを行うことができる。少なくとも1つの化合物を抽出物に添加することができ、本明細書に記載されている方法により、サンプルを処理することができる。したがって、質量分析によりサンプルを分析することができる限り、又はサンプルに添加された少なくとも1つ以上の化合物の質量スペクトルを得ることができる限り、本明細書で提供されている方法のサンプルは特に限定されない。
【0052】
下記本明細書に示されているように、本明細書で提供されている方法は、水サンプルを同定することもできる。水サンプルは、少なくとも1つの化合物レベルに対する効果を有する物質を含む。可能性ある結果は、サンプルは、少なくとも1つの化合物レベルに対する効果を有する物質を含まないかどうかである。これは、サンプルの画分に対して当てはまることになるだろう。したがって、サンプル(又はサンプルに含まれている物質)が上記のように少なくとも1つの化合物レベルに対する効果を有する限り、いずれものサンプルは本明細書で提供されている方法で使用するのに適している。当業者は、サンプルが上記のように少なくとも1つの化合物レベルに対する効果を有するかどうかを如何に決定するかを認識する。例えば、少なくとも1つの化合物レベルを、サンプルに少なくとも1つの化合物を添加しないで決定することができる。さらなるステップでは、サンプルを、少なくとも1つの化合物に添加することができる。したがって、サンプルの存在下及び非存在下、少なくとも1つの化合物レベルを決定することができ、これらのレベルを相互に比較することができる。レベルの比較は、サンプルが少なくとも1つの化合物の効果を有するかどうかを明らかにする。したがって、少なくとも1つの化合物に対する効果を有する本明細書で提供されている方法で、いずれものサンプルも使用することができるだろう。換言すれば、少なくとも1つの化合物に対するマトリックス効果を提供する本明細書で提供されている方法で、いずれものサンプルも使用することができる。
【0053】
特に、サンプルは、ワイン、アルコール性飲料、食料品、加工食品、茶、コーヒー、ハーブエキス、天然物、天然物エキス、ビール、フルーツジュース(例えば、オレンジ及びリンゴ)、医薬組成物、医薬製剤、体液、組織抽出物、血液、血漿、血清、及び尿からなる群から選択される。特に、これは、食料品である。好ましい態様では、サンプルはワインである。より好ましい態様では、ワインサンプルに添加される少なくとも1つの化合物に対する効果を有する本明細書で言及されるマトリックスであるサンプルは、ワインである。 サンプルは、単一のワインを含んでもよく、ワインの混合物であってもよい。例えば、サンプルは、品質管理用に使用するのに適したプールサンプルであってよい。
【0054】
本明細書で使用されるとき、用語「参照サンプル」は、既知のサンプル、例えば、基準サンプル、例えば、標準サンプルを表す。特定の態様では、サンプル及び参照サンプルは、同じ種類由来である。例えば、サンプルがワインサンプルである場合、参照サンプルもワインサンプル、特に既知の起源、ビンテージ、その他のワインサンプルである。好ましい態様では、参照サンプルは、基準サンプルである。最も好ましい態様では及び添付の実施例に示されているように、参照サンプルは、特定のぶどう、又は特定の起源の特定のビンテージのワインサンプルである。本明細書に述べられているように、サンプルは、医薬組成物又は医薬品の製剤であってもよい。かかる場合では、本明細書で提供されている方法を使用して、同定しようとする医薬品の医薬組成物若しくは製剤が本来のものかどうか、又はサンプルが偽物若しくは希釈されたサンプルであるかどうかを明らかにしてよい。サンプルは、体液、血液、血漿、血清、及び尿であってもよい。かかる場合では、本明細書で提供されている方法を、診断、予後、リスクアセスメント、リスク層別化、モニタリング、治療ガイダンス及び/又は対象の治療コントロールにおいて使用してよい。例えば、例えば、対象が特定の病態「例えば、疾病又は障害)に罹患している場合、特定の病態が発生する場合、サンプル中に物質は含まれ得る。かかる物質は、サンプルへの添加後、少なくとも1つの化合物のイオン化に影響を与え得る。したがって、サンプル中に物質が含まれる場合又は物質が含まれない場合、かかる物質は、サンプルへの添加後、少なくとも1つの化合物のイオン化に影響を与え得る。したがって、本発明の方法を、診断、予後、リスクアセスメント、リスク層別化、モニタリング、治療ガイダンス及び/又は対象の治療コントロールにおいて使用してよい。特定の態様では、参照サンプル又は参照レベルを、少なくとも1つの化合物レベルと同じ質量分析技術により決定する。したがって、同じ質量分析技術、例えば、ESI若しくはMALDI及び/又は質量分析計のイオン源への直接注入を、参照レベル/サンプル及び少なくとも1つの化合物レベルのために使用する。
【0055】
本明細書で提供されている方法では、サンプルへの添加後の少なくとも1つの化合物レベルを決定する。本明細書で使用されるとき、用語「サンプルへの添加後の少なくとも1つの化合物レベルを決定する」又はその文法的変化形は、少なくとも1つの化合物又はその断片のイオンのレベルを決定することを意味し得る。本明細書で使用されるとき、本明細書において決定又は比較される少なくとも1つの化合物レベルは、少なくとも1つの化合物又はその断片のイオンのレベルを表し得る。これは、参照レベルに当てはまる。
したがって、方法は:
(i)少なくとも1つの化合物をサンプルに添加するステップであって、特に、少なくとも1つの化合物は可変イオン化を有する、ステップと;
(ii)少なくとも1つの化合物の質量スペクトルを得て、サンプルの添加後に少なくとも1つの化合物又はその断片のイオンのレベルを決定するステップと;
(iii)(ii)で決定された少なくとも1つの化合物又はその断片のイオンのレベルを参照レベルと比較するステップであって、参照レベルは参照サンプルへの添加後に決定された同じ化合物又はその断片のイオンのレベルである、ステップと;
(iv)ステップ(iii)における比較及び少なくとも1つの化合物又はその断片のレベルに対するサンプルの効果に基づいてサンプルを同定するステップと、
を含む方法を表し得る。
【0056】
本明細書で使用されるとき、用語「レベル」は、質量分析計により決定されるピーク強度又はピークの積分を表す。特に、用語「レベル」は、質量分析計により生成されるイオンの相対的存在量を表す。本明細書で使用されるとき、用語「レベル」は、少なくとも1つの化合物の1つ以上のレベルを表す。当業者は、特定の化合物の質量分析計により決定されるレベルは、特定の化合物又はその断片のイオンのレベルを含み得る。したがって、(少なくとも1つの)化合物のレベルは、質量分析計における(少なくとも1つの)化合物から生成されるイオンの存在量を表し得る。したがって、1つのレベルを特定の化合物に対して得てもよく、1つより多いレベルを本発明の態様における特定の化合物に対して得てもよい。特定の態様では、1つより多い化合物をサンプルに添加する。かかる態様では、サンプルへの添加後の化合物のレベルをステップ(ii)において決定し、ステップ(iii)では化合物のレベルを対応する参照レベルと比較する。特に、サンプルへの添加後の化合物の各々のレベルをステップ(ii)において決定し、ステップ(iii)では化合物の各々のレベルを各対応する参照レベルと比較する。
特定の代替の態様では、用語「レベル」は、質量スペクトルも表し得る。かかる態様では、本発明は:
(i)少なくとも1つの化合物をサンプルに添加するステップであって、特に、少なくとも1つの化合物は可変イオン化を有する、ステップと;
(ii)サンプルへの添加後、少なくとも1つの化合物の質量スペクトルを決定するステップと;
(iii)(ii)で決定された少なくとも1つの化合物の質量スペクトルを参照質量スペクトルと比較するステップであって、参照質量スペクトルは参照サンプルへの添加後に決定された同じ化合物の質量スペクトルである、ステップと;
(iv)ステップ(iii)における比較及び少なくとも1つの化合物の質量スペクトルに対するサンプルの効果に基づいてサンプルを同定するステップと、
を含む方法を表し得る。
【0057】
本明細書で提供されている方法では、(ii)で決定された少なくとも1つの化合物のレベルを、参照レベルと比較する。当業者は、この用語は、(ii)で決定された少なくとも1つの化合物のイオンのレベルを、参照レベルと比較することを意味し得ると理解する。 特定の態様では、特定の化合物のレベルを、参照レベル又は対応する参照レベルと比較する。したがって、少なくとも1つの化合物のレベルを、参照レベル又は対応する参照レベルと比較してよい。本明細書で使用されるとき、用語「参照レベル」は、参照サンプルへの添加後に決定される同じ化合物のレベルである。したがって、用語「参照レベル」は、既知の及び特定のサンプルを示すレベルを意味する。参照レベルを本発明の方法で決定してもよく、既知であってもよい。したがって、参照レベルはキットに含めることができ、サンプルの決定されたレベルをかかる参照レベルと比較することができるだろう。
【0058】
純粋に本発明の方法の一例として及びいずれもの限定的特徴もなく、化合物X及びYを、本発明の方法のステップ(i)においてサンプルAに添加する。各化合物X及びYの質量スペクトルを得て、サンプルへの添加後の化合物X及びYのレベル(例えば、各X及びYのいくつかのレベル)を、本発明の方法のステップ(ii)において決定する。本発明の方法のステップ(iii)において、ステップ(ii)において決定される化合物Xのレベルを、参照サンプルへの添加後に決定される化合物Xの参照レベルと比較する。加えて、ステップ(ii)において決定される化合物Yのレベルを、参照サンプルへの添加後に決定される化合物Yの参照レベルと比較する。したがって、対応するレベルを比較する。したがって、「参照レベルは同じ化合物のレベルである」は、少なくとも1つの化合物の決定されたレベルを、対応する参照レベルと比較することを意味し、例えば、化合物Xのレベルを、化合物Xの参照レベルと比較する。
【0059】
本発明の方法のステップ(iv)において、サンプルを、ステップ(iii)における比較及び少なくとも1つの化合物レベルに対するサンプルの効果に基づいて同定する。上記及び下記本明細書に記載されているように、サンプル(1)が少なくとも1つの化合物のイオン化を実質的に変化させることができないか、(2)少なくとも1つの化合物に対するイオン抑制効果を有することができないか、又は(3)少なくとも1つの化合物に対するイオン増感効果を有することができるように、サンプル(又はサンプルに含まれる物質)は、少なくとも1つの化合物に対するマトリックス効果を有し得る。かかる効果は、少なくとも1つの化合物レベルが増減するか、あるいは少なくとも1つの化合物レベルを実質的に変化させないように、少なくとも1つの化合物レベルに影響を与える。少なくとも1つの化合物レベルを参照レベルと比較することによって、サンプルを同定する。例えば及び特定の態様では、参照レベルと比較された少なくとも1つの化合物の同様な若しくは同レベルは、サンプルが参照レベルと一致することを示す;又は参照レベルと比較されたとき少なくとも1つの化合物のレベルが異なっていることは、サンプルが参照レベルに一致しないことを示す。本明細書で使用されるとき、「異なる」は、少なくとも1つの化合物のレベルは、参照レベルと比較して増減することができる。例えば、増加はイオン増感効果に起因し、又は減少はイオン抑制効果に起因し得るだろう。示されているように、1つより多いレベルを、少なくとも1つの化合物の特定の化合物について決定する場合、特定の化合物のレベルを対応する参照レベルと比較してよい。したがって、本発明の方法は、方法であって、参照レベルと比較された少なくとも1つの化合物の同様若しくは同レベルはサンプルが参照レベルと一致することを示し;又は参照レベルと比較されたとき少なくとも1つの化合物のレベル差はサンプルが参照レベルに一致しないことを示す、方法にも関し得る。上記示されているように、1つより多いレベルを化合物毎に決定することができ、1つより多い化合物を本明細書で提供されている方法で使用してもよい。かかる態様では、参照レベルと比較された化合物の同様なレベル若しくは同レベルは、サンプルが参照レベルと一致することを示す;又は参照レベルと比較されたとき少なくとも1つの化合物のレベル差は、サンプルが参照レベルに一致しないことを示す。当業者は、どのレベルが互いに比較するのに適切であるか、及び参照サンプルの対応する参照レベルが既知であるので、どのレベルを使用してサンプルを同定するかを認識している。したがって、最も適切なレベル(例えば、最も存在するレベル)を決定し、対応する参照レベルと比較することができ、これに基づいてサンプルを同定することができるだろう。換言すれば、化合物のレベルは、サンプルの同定において重みを加えてもよい。
【0060】
上記示され下記本明細書において実証されているように、少なくとも1つの化合物のイオン化効率は、如何に多くのイオンが生成されるか、質量分析計で決定することができるかを決定する。サンプル(又はサンプルに含まれる物質)は、少なくとも1つの化合物のイオン化効率を決定する。したがって、本発明の方法は、方法であって、少なくとも1つの化合物のイオン抑制効率又は前記イオン増感効率を決定し、前記イオン抑制効率又は前記イオン増感効果を、参照サンプルのイオン抑制効率又はイオン増感効果と比較し、これに基づいて、サンプルを同定する、方法にも関し得る。
【0061】
特定の態様では、本発明の方法は、方法であって、ステップ(iv)において、サンプルを、少なくとも1つの化合物のイオン抑制又はイオン増感の特定のパターンに基づいて同定する、方法にも関し得る。
【0062】
本発明の方法の特定の態様では、1つ以上の用量反応曲線を決定する。サンプル及び/又は少なくとも1つの化合物の希釈は、多重用量反応曲線の作成を可能とする。本明細書で使用されるとき、用量反応曲線は、決定されるレベルの関数を表す。用量反応曲線は、本発明の方法で決定されるレベルに基づき得る。特定の態様では、用量反応曲線は、少なくとも1つの化合物の濃度に基づくか;又は用量反応曲線は前記サンプルの前記異なる濃度への添加後の少なくとも1つの化合物のレベルに基づく。かかる態様のため、本発明の方法のステップ(i)において、前記少なくとも1つの化合物の異なる濃度を前記サンプルに添加し、ステップ(ii)において、前記サンプルへの添加後に前記少なくとも1つの化合物の前記異なる濃度のレベルを決定する。あるいは、本発明の方法のステップ(i)において、少なくとも1つの化合物をサンプル(例えば、サンプルの異なる希釈物)の異なる濃度に添加し、ステップ(ii)において、サンプルへの添加後に少なくとも1つの化合物のレベルを決定する。かかるレベルを使用して上記のように用量反応を作成してよい。上記にように、少なくとも1つの化合物を、異なる濃度でサンプルに添加してよい。適切に、少なくとも1つの化合物は、サンプルに添加後の定量限界の少なくとも5倍のサンプル濃度を有する。したがって、かかる濃度から始めて、少なくとも1つの化合物をより高濃度で添加することができる。特定の態様では、少なくとも1つの化合物は、サンプルの非存在下で決定された同じ化合物のレベルと比較して約20%~約80%まで少なくとも1つの化合物のレベルを抑制及び/又は増感するように、サンプルへの添加後のサンプル濃度を有する。
【0063】
用量反応曲線を、異なる濃度を有するサンプルへの添加後の少なくとも1つの化合物のレベルに基づき得、前記用量反応曲線を、参照サンプルの用量反応曲線と比較し、前記参照サンプルの用量反応曲線は、異なる濃度を有する参照サンプルへの添加後の少なくとも1つの化合物の参照レベルに基づく。
【0064】
本明細書で提供されている方法では、少なくとも1つの化合物を、サンプルに対する最適なイオン抑制効果及びイオン増感効果について調整してよい。好ましくは、少なくとも1つの化合物の濃度は、少なくとも1つの化合物のレベルが定量限界の少なくとも5倍である方法で選択され、サンプルは約20%以下のシグナル増強又は約80%以下のシグナル低下の効果を引き起こす。
【0065】
特定の態様では、サンプルの同定は、上記サンプルの希釈物の同定である。かかる方法は、サンプルが元の参照サンプルと同じであるかどうか、又はサンプルが参照サンプルと比較して希釈されているかどうかを明らかにするのに特に適している。サンプルが、例えば、高価なワインである場合、又はサンプルが医薬組成物である場合、サンプルの希釈は重要で有り得、サンプル濃度は医療有効性を決定し得る。かかる態様では、参照サンプルの用量反応曲線に対するサンプルの用量反応曲線の比較に基づいて、サンプルの希釈を同定してよい。特定の態様では、用量反応曲線は、サンプルにおいて決定され、及び参照サンプルにおいて決定される少なくとも1つの化合物の異なる濃度のレベルに基づいてよい。あるいは、用量反応曲線は、サンプルの異なる濃度において決定され、及び参照サンプルの異なる濃度において決定される少なくとも1つの化合物のレベルに基づいてよい。
【0066】
本発明は、少なくとも1つの化合物の一定又は様々な濃度に対する参照サンプルの用量反応曲線の比較によってサンプルの希釈物の同定方法にさらに関する。
【0067】
添付の実施例に示されているように、本明細書で提供されている方法を、好ましくは、上記本明細書に記載のステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の順で行ってよい。
【0068】
本発明は、方法の使用及び本明細書で提供されている方法における少なくとも1つの化合物の使用にさらに関する。本発明は、キット及び本明細書で提供されている方法におけるキットの使用にさらに関する。上記及び下記本明細書で提供されている全ての説明、定義及び情報も、本発明の態様を適用する。以下に、これらの態様のさらなる特定の実施形態を説明する。
【0069】
本発明は、本明細書に記載されている少なくとも1つの化合物の使用に関する。特に、本発明は、可変イオン化効率を有する少なくとも1つの化合物の使用に関する。本発明は、1~100化合物、好ましくは1~80化合物、より好ましくは1~60化合物、さらにより好ましくは1~50化合物、さらにより好ましくは1~40化合物、さらにより好ましくは1~30化合物、さらにより好ましくは1~20化合物、さらにより好ましくは1~15化合物、さらにより好ましくは1~12化合物、又はさらにより好ましくは少なくとも9化合物、又は29化合物を含む組成物にさらに関する。本発明の組成物は、化合物の異なる分類の化合物を含んでよい。添付の実施例では、9化合物を含む組成物を使用した。さらに、添付の実施例では、29化合物又は1つの化合物を含む組成物を使用した。 したがって、かかる組成物は好ましい。少なくとも1つの化合物を含む組成物及び本明細書で提供されている方法におけるその使用は好ましい。特に、本明細書で提供されている組成物は、スルファグアニジン、ナプロキセンナトリウム、スルファジメトキシン、シプロフロキサシン、テトラサイクリン塩酸塩、ベラパミル塩酸塩、テルフェナジン、ロイシンエンケファリン酢酸塩水和物及びレセルピンを含む。さらに、組成物は、ロイシンエンケファリン酢酸塩水和物、テルフェナジン、ベラパミル塩酸塩、テトラサイクリン塩酸塩、ジルチアゼム塩酸塩、リノマイシン塩酸塩、ブスピロン塩酸塩、サラフロキサシン塩酸塩水和物、ハロペリドール、トラゾドン塩酸塩、シプロフロキサシン、キニン、ラニチジン塩酸塩、トリクロカルバン、スルファジメトキシン、トリメトプリム、アミトリプチリン塩酸塩、アテノロール、プロプラノロール塩酸塩、スルファチアゾール、スルファメトキサゾール、シメチジン、サルブタモール、メラトニン、ナプロキセンナトリウム、アトラジン、スルファグアニジン、メトホルミン塩酸塩及びレセルピン又はそのいずれかの他の塩を含んでよい。
【0070】
この組成物を、好ましくは、本発明のキットに備えてよい。少なくとも1つの化合物を、組成物中に含んでもよく、別々にサンプルに添加してもよい。
【0071】
本発明は、キット及び本明細書で提供されている方法におけるキットの使用にさらに関する。キットは、前の項のいずれか1つの方法において本明細書に記載されている少なくとも1つの化合物、及び必要に応じて参照サンプルの参照レベルを含む。したがって、参照レベルを、キット中、例えば、説明書の形態で備えてよい。さらなる態様では、特に、本明細書で提供されている方法で使用される装置を較正するため、本明細書で提供されている標準サンプルを含むキットを提供する。したがって、かかるキットは、既知の化合物を含む本明細書に記載されている標準サンプル、加えて、提供されている方法において使用するのに適している装置を較正するための説明書を備えてよい。
【0072】
本明細書で使用されるとき、用語「含む(comprising)」及び「含む(including)」又はこれらの文法的変化形は、少なくとも指定された特徴、整数、ステップ又は構成要素を規定するが、1つ以上の追加の特徴、整数、ステップ、構成要素又はこれらの群を付加することを排除しないことと考えられるものとする。この用語は、いずれもの追加の特徴を排除するように指定された特徴、整数、ステップ又は構成要素のみを規定すると理解される用語「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0073】
したがって、用語「含む(comprising)」/「含む(including)」/「有する(having)」は、さらなる構成要素(又は同様に特徴、整数、ステップなど)が存在することができる/してもよいことを意味する。
【0074】
用語「からなる(consisting of)」は、さらなる構成要素(又は同様に特徴、整数、ステップなど)が存在しないことを意味する。
【0075】
用語「方法」は、これに限定されないが、化学的技術、生物学的技術及び生物物理学的技術の熟練者により既知の方法、手段、技術及び手順から開発されると分かる、あるいは容易に開発されるこれらの方法、手段、技術及び手順を含む所与の課題を達成するための方法、手段、技術及び手順を表す。
【0076】
用語「約(about)」は、好ましくは、指定された数値の±10%、より好ましくは、指定された数値の±5%、特に、示された正確な数値を表す。
【0077】
本明細書で使用されるとき、用語「約(about)」は、示された数値の±10%、特に、示された数値の±5%を表す。用語「約(about)」を使用する場合、示された正確な数値の特定指示も含まれる。所与の拡散中のヌクレオチド数などの整数で定量されるパラメータとの関連で用語「約(about)」使用される場合、指定された数値の±10%又は±5%に相当する数は、近似の整数に四捨五入されるものとする。例えば、「約25アミノ酸」と言う表現は、23~28アミノ酸の範囲、特に24~26アミノ酸の範囲を表し、好ましくは、25アミノ酸の特定値を表す。
【0078】
特定の態様では、本発明は、以下に関する:
1.サンプルを同定及び/又は確証する方法であって、前記方法は:
(i)少なくとも1つの化合物をサンプルに添加するステップであって、特に、少なくとも1つの化合物は可変イオン化を有する、ステップと;
(ii)前記少なくとも1つの化合物の質量スペクトルを得て、前記サンプルの添加後に前記少なくとも1つの化合物のレベルを決定するステップと;
(iii)(ii)で決定された前記少なくとも1つの化合物の前記レベルを参照レベルと比較するステップであって、前記参照レベルは参照サンプルへの添加後に決定された同じ化合物のレベルである、ステップと;
(iv)ステップ(iii)における前記比較及び前記少なくとも1つの化合物の前記レベルに対する前記サンプルの効果に基づいて前記サンプルを同定するステップと、
を含む、方法。
2.前記レベルは、質量分析シグナルレベルであり、特に、前記レベルは、前記質量スペクトルにおいて決定された存在量である、項1に記載の方法。
3.前記サンプルは、前記少なくとも1つの化合物に対するイオン抑制を有するか、若しくはイオン増感効果を有するか、又は前記サンプルは、前記少なくとも1つの化合物の前記イオン化を実質的に変更させない、項1又は2に記載の方法。
4.前記少なくとも1つの化合物に対する前記サンプルの前記イオン抑制効率又は前記イオン増感効率を決定し、前記イオン抑制効率又は前記イオン増感効果を、同じ少なくとも1つの化合物に対する前記参照サンプルの前記イオン抑制効率又は前記イオン増感効果と比較し、これに基づいて、前記サンプルを同定する、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
5.前記参照レベルと比較されるとき前記少なくとも1つの化合物の同様なレベル若しくは同じレベルは、前記サンプルが前記参照サンプルと一致することを示すか;又は
前記参照レベルと比較された前記少なくとも1つの化合物のレベルが異なっていることは、前記サンプルが前記参照サンプルと一致しないことを示す、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
6.ステップ(i)において、1~15化合物を添加する、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
7.前記化合物は、前記サンプル中に含まれる特定物質のイオン抑制及び/又はイオン増感効果に影響を受けやすい、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
8.ステップ(ii)において、前記少なくとも1つの化合物の各々のレベルを決定し、ステップ(iii)において、前記少なくとも1つの化合物の各々のレベルを各参照レベルと比較する、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.前記サンプルは、品質管理用途に適したプールされたサンプルである、項1~8のいずれか一項に記載の方法。
10.前記サンプルは、ワイン、アルコール性飲料、食料品、加工食品、茶、コーヒー、ハーブエキス、天然物、天然物エキス、ビール、フルーツジュース(例えば、オレンジ及びリンゴ)、医薬組成物、医薬製剤、体液、組織抽出物、血液、血漿、血清、及び尿からなる群から選択され、特に、前記サンプルは、ワインである、項1~9のいずれか一項に記載の方法。
11.前記参照サンプルは、前記サンプルの前記同定及び/又は確証することを可能とする、項1~10のいずれか一項に記載の方法。
12.前記参照サンプルは、基準サンプル又は既知の組成を有するサンプルである、項1~11のいずれか一項に記載の方法。
13.前記参照サンプルは、特定のビンテージのワインサンプル、特定のブドウ品種のワインサンプル、又は特定の地域のワインサンプル、若しくは特定の生産者のワインサンプルである、項1~12のいずれか一項に記載の方法。
14.項1~13のいずれか一項に記載の方法において可変イオン化を有する前記少なくとも1つの化合物の使用。
15.項1~14のいずれか一項に記載の方法における、可変イオン化及び必要に応じて前記参照サンプルの参照レベルを有する少なくとも1つの化合物を備えるキットの使用。
16.前記サンプルは、既知の可変イオン化及び/若しくは前記少なくとも1つの化合物に対する既知のイオン抑制効果、前記少なくとも1つの化合物に対する既知のイオン増感効果などの既知のイオン化効果を有する、又は前記少なくとも1つの化合物のレベルを実質的に変化させないことが分かっている既知の化合物を含み、前記サンプルを使用して項1~13のいずれか一項において使用される前記方法及び/若しくは前記装置を較正する、項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0079】
本発明を、以下の非限定的図面及び実施例を参照することによりさらに説明する。
【
図1】実施例1からの第一の2つの好ましい化合物のスコアプロット。
【
図2】実施例1からの第一の2つの好ましい化合物のスコアプロット。
【
図3】階層的クラスター分析(類似度はx軸により表される)の結果。
【
図4】主成分分析のスコアプロット(PC1対PC2)。各ソースからのサンプルの95%信頼限界は、ソースの100%分離の表現と重複しない。
【
図5】主成分分析のスコアプロット(PC1対PC3)。各ソースからのサンプルの95%信頼限界は、ソースの100%分離の表現と重複しない。
【
図6】主成分分析のスコアプロット(PC1対PC3対PC2)。全クラスターは、3次元射影で分離する。
【
図7】ウイスキー及びジンサンプルのセットの主成分分析のスコアプロット(PC1対PC2)。ジンサンプル(クラスター左下)及びウイスキーサンプル(2クラスター右上)は明白に分離する。
【
図8】ワインサンプルへのアトラジンの添加の影響-アトラジンピークのシグナル変化。
【実施例】
【0080】
実施例1
次の化合物を、好ましい方法で使用した:
-スルファグアニジン-CAS番号57-67-0
-ナプロキセンナトリウム-CAS番号26159-34-2
-スルファジメトキシン-CAS番号122-11-2
-シプロフロキサシン-CAS番号85721-33-1
-テトラサイクリン塩酸塩-CAS番号64-75-5
-ベラパミル塩酸塩-CAS番号152-11-4
-テルフェナジン-CAS番号50679-08-8
-ロイシンエンケファリン酢酸塩水和物-MDL番号MFCD11045938
-レセルピン-CAS番号50-55-5
使用されたさらなる化学薬品:
自家給水システム(Sartorius Arium Lab Water System、18.2MΩ)
エタノール-CAS番号64-17-5(Merck,、LiChrosolv)
アセトニトリル-CAS番号75-05-8(Fisher Chemicals、LC-MSグレード)
ギ酸-CAS番号64-18-6(Fluka、MSグレード)
液体ハンドリングシステム及びMS:
バイナリーポンプモデルG1312B(Agilent Technologies)
オートサンプラーモデルG1329A(Agilent Technologies)
三連四重極型質量分析計モデル6460A(Agilent Technologies)
エレクトロスプレーソースモデルG1958B(Agilent Technologies)
【0081】
サンプル調製
化学化合物を含む組成物を、10μgの各化合物を1mLのアセトニトリル/水(50/50(v/v)に添加することによって調製した。
【0082】
5本のボトルにより各々代表される3つの異なるワイン1組から、1mLのサンプルをCoravin(商標)モデル2ワインシステムを用いて各ボトルから採取し、1.5mLのエッペンドルフPCRチューブに入れた。15チューブを、12,500gで10分間遠心分離した。水/エタノール85/15(v/v)の溶液を調製し、5分間窒素で脱気した。ワインサンプルを15の異なるHPLCバイアルに入れ、ワイン1体積に対して水/エタノール16体積を添加することによって水/エタノール85/15(v/v)で希釈した。このステップ後、10μLの体積の化学化合物を含む組成物を希釈されたワインに添加して、ピペットのプッシュプル機能を用いて20回混合した。例えば:31μLのワイン、10μLの化合物を含む組成物、459μLの水/エタノール85/15(v/v)を混合した。サンプルをオートサンプラーに無作為に入れて、次いで、LC-MSシステムにより測定した。
【0083】
質量分析方法
モジュラー式サンプル導入システムは、脱気装置、バイナリーポンプ及びオートサンプラーで構成される。一定な背圧のため、リストリクションキャピラリー(0.12mmID、2000mm)を、ポンプ及びオートサンプラー間に配置した。オートサンプラーバルブを、化合物分離用カラムを用いないでエレクトロスプレーソース(ESI)と直接的に0.12mmIDキャピラリーを用いて連結した。移動相Aは水(チャネルA)からなり、移動相Bはアセトニトリルからなり、双方0.1%のギ酸を含有した。25%Bを用いて600μL/分の一定流量でアイソクラティック混合を行った。フローインジェクション分析モードで1μLを用いて測定を行い、0.2分後に注入を行った。停止時間を0.7分に設定した。ESIソースを次のパラメータ設定を用いてポジティブモードで運転した:ネブライザー圧45psig(約3.1×105Pa[G])、ノズル電圧0V、シースガスフロー12L/分、シースガス温度375℃、乾燥ガスフロー8L/分、乾燥ガス温度350℃、及びキャピラリー電圧3000V。質量分析計を、トランジション当たり40ミリ秒の滞留時間において多重反応モニタリングモードで実行した。第一及び第二四重極の解像度を、単位解像度0.7m/z FWHM(半値全幅)に設定した。セル加速電圧を、全化合物に対して4Vに固定し、デルタエレクトロ増倍管電圧を0に設定した。MassHunter Acquisitionバージョン10を用いてシステムを制御し、MassHunter Quantitative Analysisバージョン10及びMicrosoft Excel2016を用いてデータ解析を行った。
【0084】
化合物のピーク高さを、その後の多変量データ解析のために使用した。同じサンプルの2つの次の測定のピーク高さを積分し、変数(列)としてピーク高さ及び行として積分測定値を用いてデータ行列を作成した。次いで、変数を第一目盛設定した(各変数の平均を減算し、次いで各変数の標準偏差で除算)。ソフトウェアMetaboanalyst4.0を用いて、主成分分析(PCA)を行った。スコアを、
図1及び2に示されている第一2つの好ましい化合物に対してプロットした。
【0085】
【0086】
実施例2:水サンプルの同定
水サンプルを、6つの異なるソースから分析した。
1.Aquinaボトルミネラルウォーター
2.Arkinaボトルミネラルウォーター
3.(「Normale」)と呼ばれるムッテンツ(スイス)の水道水
4.エフリンゲンキルヒェン(ドイツ)の水道水
5.脱イオン水
6.Nanopur水(Nanopur lab water systemを用いて精製)
【0087】
各ソースの3サンプルを、次の29化合物を添加することによって分析した(サンプル当たり3注入の積分)。
【0088】
次の化合物を、好ましい方法で使用した:
-ロイシンエンケファリン酢酸塩水和物
MDL N MFCD11045938
-テルフェナジン-CAS番号50679-08-8
-ベラパミル塩酸塩-CAS番号152-11-4
-テトラサイクリン塩酸塩-CAS番号64-75-5
-ジルチアゼム塩酸塩
-CAS番号33286-22-5
-リンコマシン塩酸塩
-CAS番号859-18-7
-ブスピロン塩酸塩-CAS番号33386-08-2
-サラフロキサシン塩酸塩水和物-CAS番号91296-87-6
-ハロペリドール-CAS番号52-86-8
-トラゾドン塩酸塩-CAS番号25332-39-2
-シプロフロキサシン-CAS番号85721-33-1
-キニン
-CAS番号130-95-0
-ラニチジン塩酸塩
-CAS番号66357-59-3
-トリクロカルバン-CAS番号101-20-2
-スルファジメトキシン-CAS番号122-11-2
-トリメトプリム-CAS番号738-70-5
-アミトリプチリン塩酸塩-CAS番号549-18-8
-アテノロール-CAS番号29122-68-7
-プロプラノロール塩酸塩-CAS番号318-98-9
-スルファチアゾール-CAS番号72-14-0
-スルファメトキサゾール-CAS番号723-46-6
-シメチジン-CAS番号51481-61-9
-サルブタモール-CAS番号18559-94-9
-メラトニン-CAS番号73-31-4
-ナプロキセンナトリウム-CAS番号26159-34-2
-アトラジン-CAS番号1912-24-9
-スルファグアニジン-CAS番号57-67-0
-メトホルミン塩酸塩-CAS番号1115-70-4
-レセルピン-CAS番号50-55-5
使用されたさらなる化学薬品:
自家給水システム(Sartorius Arium Lab Water System、18.2MΩ)
エタノール-CAS番号64-17-5(Merck,、LiChrosolv)
アセトニトリル-CAS番号75-05-8(Fisher Chemicals、LC-MSグレード)
ギ酸-CAS番号64-18-6(Fluka、MSグレード)
液体ハンドリングシステム及びMS:
バイナリーポンプモデルG1312B(Agilent Technologies)
オートサンプラーモデルG1329A(Agilent Technologies)
三連四重極型質量分析計モデル6460A(Agilent Technologies)
エレクトロスプレーソースモデルG1958B(Agilent Technologies)
【0089】
サンプル調製
6つの異なる水サンプルを収集した。各サンプルから、800μLの3アリコートを、200μLの化合物混合物(水/エタノール溶液85/15(v/v)中の調整濃度を有する29化合物の希釈混合物)と混合した。LC-MSシステムにより完全に無作為の順でサンプルを測定した。
【0090】
液体取扱い、質量分析及びデータ解析方法
モジュラー式サンプル導入システムは、脱気装置、バイナリーポンプ及びオートサンプラーで構成される。一定な背圧のため、リストリクションキャピラリー(0.12mmID、2000mm)を、ポンプ及びオートサンプラー間に配置した。オートサンプラーバルブを、化合物分離用カラムを用いないでエレクトロスプレーソース(ESI)と直接的に0.12mmIDキャピラリーを用いて連結した。移動相Aは水(チャネルA)からなり、移動相Bはアセトニトリルからなり、双方0.1%のギ酸を含有した。25%Bを用いて600μL/分の一定流量でアイソクラティック混合を行った。フローインジェクション分析モードで1μLを用いて測定を行い、0.2分後に注入を行った。停止時間を0.7分に設定した。ESIソースを次のパラメータ設定を用いてポジティブモードで運転した:ネブライザー圧45psig(約3.1×105Pa[G])、ノズル電圧0V、ガスフロー12L/分、ガス温度350℃、キャピラリー電圧3000V。質量分析計を、トランジション当たり20ミリ秒の滞留時間において多重反応モニタリングモードで実行した。第一及び第二四重極の解像度を、単位解像度0.7m/z FWHM(半値全幅)に設定した。セル加速電圧を、全化合物に対して4Vに固定し、デルタエレクトロ増倍管電圧を0に設定した。MassHunter Acquisitionバージョン10を用いてシステムを制御し、MassHunter Quantitative Analysisバージョン10及びMicrosoft Excel2016を用いてデータ解析を行った。
【0091】
化合物のピーク高さを、その後の多変量データ解析のために使用した。同じサンプルの2つの次の測定のピーク高さを積分し、変数(列)としてピーク高さ及び行として積分測定値を用いてデータ行列を作成した。次いで、変数を第一目盛設定した(各変数の平均を減算し、次いで各変数の標準偏差で除算)。
【0092】
次いで、多変量データ解析(階層的クラスター分析HCA、主成分分析PCA及び線形判別分析)を、全29化合物の測定されたピークの高さを用いて行った。
【0093】
定性分析(HCA及びPCA、
図3~5を参照)は、水の全6サンプルの分離を示した。さらに、同様なソース(一方での水道水ソース及び他方でのNanopur/脱イオン水の両方)は、水の他のソースとより同程度であった。特に、分析された水道水サンプル(ムッテンツ又はエフリンゲンキルヒェン)は同様であった。三通りのムッテンツの1サンプルは、両方の場所における水道水の類似性及びクラスター分析は異なる分類を判別するために最適化されていない教師なしの類似性検索であるという事実に起因し得るエフリンゲンキルヒェンクラスターにおいてクラスター化された。それにもかかわらず、サンプルのLDAを用いた教師ありパターン認識解析はサンプルの10倍交差検定予測の100%分類化を示したので、全水サンプルの区別、したがって同定を観察した。
【0094】
要約すると、水の全ソースを、本明細書に記載されている方法を用いて上手く判別した。
【0095】
【0096】
【0097】
実施例3:ジン及びウイスキーの同定
31の異なるウイスキーサンプル及び16の異なるジンサンプルを調査した。各サンプルから、5アリコートを採取した。29化合物を用いてサンプルを測定し、線形判別分析を用いて分類化(29ピーク高さを用いた10倍交差検定)した。
【0098】
アリコートの97%は、正しいジン又はウイスキーサンプルに帰属した。これは、本明細書で提供されている方法がジン及びウイスキーを同定/確証することもできることを実証する。
【0099】
次の化合物を、好ましい方法で使用した:
-ロイシンエンケファリン酢酸塩水和物
MDL N MFCD11045938
-テルフェナジン-CAS番号50679-08-8
-ベラパミル塩酸塩-CAS番号152-11-4
-テトラサイクリン塩酸塩-CAS番号64-75-5
-ジルチアゼム塩酸塩-CAS番号33286-22-5
-リンコマシン塩酸塩-CAS番号859-18-7
-ブスピロン塩酸塩-CAS番号33386-08-2
-サラフロキサシン塩酸塩水和物-CAS番号91296-87-6
-ハロペリドール-CAS番号52-86-8
-トラゾドン塩酸塩-CAS番号25332-39-2
-シプロフロキサシン-CAS番号85721-33-1
-キニン-CAS番号130-95-0
-ラニチジン塩酸塩-CAS番号66357-59-3
-トリクロカルバン-CAS番号101-20-2
-スルファジメトキシン-CAS番号122-11-2
-トリメトプリム-CAS番号738-70-5
-アミトリプチリン塩酸塩-CAS番号549-18-8
-アテノロール-CAS番号29122-68-7
-プロプラノロール塩酸塩-CAS番号318-98-9
-スルファチアゾール-CAS番号72-14-0
-スルファメトキサゾール-CAS番号723-46-6
-シメチジン-CAS番号51481-61-9
-サルブタモール-CAS番号18559-94-9
-メラトニン-CAS番号73-31-4
-ナプロキセンナトリウム-CAS番号26159-34-2
-アトラジン-CAS番号1912-24-9
-スルファグアニジン-CAS番号57-67-0
-メトホルミン塩酸塩-CAS番号1115-70-4
-レセルピン-CAS番号50-55-5
使用されたさらなる化学薬品:
自家給水システム(Sartorius Arium Lab Water System、18.2MΩ)
エタノール-CAS番号64-17-5(Merck,、LiChrosolv)
アセトニトリル-CAS番号75-05-8(Fisher Chemicals、LC-MSグレード)
ギ酸-CAS番号64-18-6(Fluka、MSグレード)
液体ハンドリングシステム及びMS:
バイナリーポンプモデルG1312B(Agilent Technologies)
オートサンプラーモデルG1329A(Agilent Technologies)
三連四重極型質量分析計モデル6460A(Agilent Technologies)
エレクトロスプレーソースモデルG1958B(Agilent Technologies)
【0100】
サンプル調製
各ウイスキー又はジンサンプルから、1.5ml HPLCバイアル中に、100μLのアリコートを採取して400μL化合物混合物と混合した。各化合物(下表参照)について水/エタノール溶液85/15(v/v)中の調整濃度を有する29化合物の化合物混合物を使用した。
【0101】
液体取扱い、質量分析及びデータ解析方法
モジュラー式サンプル導入システムは、脱気装置、バイナリーポンプ及びオートサンプラーで構成される。一定な背圧のため、リストリクションキャピラリー(0.12mmID、2000mm)を、ポンプ及びオートサンプラー間に配置した。オートサンプラーバルブを、化合物分離用カラムを用いないでエレクトロスプレーソース(ESI)と直接的に0.12mmIDキャピラリーを用いて連結した。移動相Aは水(チャネルA)からなり、移動相Bはアセトニトリルからなり、両方とも0.1%のギ酸を含有した。25%Bを用いて600μL/分の一定流量でアイソクラティック混合を行った。フローインジェクション分析モードで1μLを用いて測定を行い、0.2分後に注入を行った。停止時間を0.7分に設定した。ESIソースを次のパラメータ設定を用いてポジティブモードで運転した:ネブライザー圧45psig(約3.1×105Pa[G])、ノズル電圧0V、シースガスフロー12L/分、シースガス温度350℃、キャピラリー電圧3000V。質量分析計を、トランジション当たり20ミリ秒の滞留時間において多重反応モニタリングモードで実行した。第一及び第二四重極の解像度を、単位解像度0.7m/z FWHM(半値全幅)に設定した。セル加速電圧を、全化合物に対して4Vに固定し、デルタエレクトロ増倍管電圧を0に設定した。MassHunter Acquisitionバージョン10を用いてシステムを制御し、MassHunter Quantitative Analysisバージョン10及びMicrosoft Excel2016を用いてデータ解析を行った。
【0102】
化合物のピーク高さを、その後の多変量データ解析のために使用した。同じサンプルの2つの次の測定のピーク高さを積分し、変数(列)としてピーク高さ及び行として積分測定値を用いてデータ行列を作成した。次いで、変数を第一目盛設定した(各変数の平均を減算し、次いで各変数の標準偏差で除算)。
【0103】
次いで、多変量データ解析(階層的クラスター分析HCA、主成分分析PCA及び線形判別分析)を、全29化合物の測定されたピークの高さを用いて行った。
【0104】
【0105】
実施例4:1つの化合物のみを用いた分析
分類ジン対ウイスキーの分析
上記合わせたウイスキー及びジンデータセットを再解析したが、この時、分類「ウイスキー」対「ジン」は各アリコートに正確に割り当てなければならなかった。LDAモデルを構築し、サンプルを10倍交差検定手順で分類した。
【0106】
全29化合物のピーク高さを用いたモデルに関して、分類「ウイスキー」対「ジン」の100%正確な予測を達成した。
【0107】
1つのみの化合物のピーク高さを用いたLDAモデルに関して、68.5%~100%の予測性能を達成した(平均87.5%、標準偏差7.1%)。2つのマーカー(キニン及びサラフロキサシン)は、そのままで各々100%の正確な分類化を可能とした。これは、関連する少数の分類で予測するため、単一の化合物アプローチを使用することができることを実証する。
【0108】
実施例5:アトラジン及びキニンのスパイクによるロバストネスの同定
化合物シグナルに対するサンプル中の化合物として方法で使用される同じ化学薬品混入の影響を調査するため、アトラジン及びキニンを用いたスパイク実験を行った(アトラジン及びキニンは両方とも実験に使用される化合物であった)。したがって、アトラジン及びキニンはサンプル中に既に含まれており、追加のアトラジン及びキニンを少なくとも1つの化合物の代表物として異なる濃度でサンプルに添加した。
・アトラジン試験:ワインの3サンプルを調製した:1つのオリジナルワインサンプル、15.16ng/mLアトラジンをスパイクされた1サンプル及び30.32ng/mLアトラジンを含む1サンプル。したがって、示されているように異なる濃度で3ワインサンプルにアトラジンを添加した。
・キニン試験:ワインの2サンプルを調製した:1オリジナルワインサンプル、0.25mg/mLキニンをスパイクされた1サンプル。したがって、ワインサンプルの1つにキニンを添加した。
【0109】
サンプルを三通り測定し、ピークを解析した。アトラジン試験では、15.16ng/mLのアトラジンのスパイクはアトラジンピーク高さの有意ではない増加をもたらしたが、30.32ng/mLのアトラジンのスパイクはアトラジンピーク高さの有意な増加をもたらした(
図8参照)。全ての他の化合物のピーク高さは影響を受けなかった。
【0110】
キニン試験では、0.25mg/mlの添加は、キニンピーク高さの有意な増加を引き起こしたが、他のピークは影響を受けなかった。
【0111】
したがって、本明細書で提案されている分析システムの特定の化合物を代表する物質のスパイクは、これらの化合物の増加を引き起こすだろう。したがって、少なくとも1つの化合物がサンプル中に既に含まれている場合、サンプルを同定することもでき、前記化合物レベルが増加するように同じ化合物をサンプルに添加する。さらに、ワイン又は他のサンプル中のアトラジン又はキニン混入の潜在的影響は、同定全体に影響を与えないだろう。これは、このマーカーのシグナルに影響を与えるかもしれず、かかる混入されたサンプルバッチの同定に寄与し、したがって、サンプルの同定/確証をさらに改善することができる。
【国際調査報告】