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特表2022-532608T細胞疲弊を処置するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】T細胞疲弊を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20220708BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 31/08 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220708BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220708BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220708BHJP
   C12N 5/078 20100101ALN20220708BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20220708BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20220708BHJP
【FI】
A61K35/17 Z
A61P43/00 107
A61P43/00 105
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/10
A61P33/00
A61P31/06
A61P31/08
A61P33/06
A61P31/22
A61P31/18
A61P31/20
A61P1/16
A61P31/14
A61P31/16
A61P35/00
A61L27/38 300
C12N5/078 ZNA
C07K19/00
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021567940
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 US2020032702
(87)【国際公開番号】W WO2020232141
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】62/847,701
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511017508
【氏名又は名称】タイガ バイオテクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ラファエリ ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】ターナー ブライアン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ペイン トーマス アール.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C081
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AC14
4B065BA30
4B065BB19
4B065CA24
4B065CA44
4C081BA12
4C081CD34
4C081DA11
4C081DA14
4C081DA15
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087MA13
4C087MA17
4C087MA23
4C087MA28
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA43
4C087MA44
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA56
4C087MA58
4C087MA59
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB21
4C087ZB22
4C087ZB26
4C087ZB31
4C087ZB32
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZB37
4C087ZB38
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045EA22
4H045EA28
(57)【要約】
PTD-MYC融合タンパク質(例えば、HIV TAT-MYC融合タンパク質)、またはPTD-MYC融合タンパク質で処理された免疫細胞を投与することによって、対象におけるT細胞疲弊を処置するための組成物および方法が、本明細書において提供される。本方法の実施において使用するためのキットもまた、本明細書において提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の1つまたは複数の修飾された免疫細胞を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象においてT細胞疲弊を処置するための方法であって、
該1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、
(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列
を含むMYC融合タンパク質
を含む、前記方法。
【請求項2】
健常対照における少なくとも1つの免疫細胞マーカーの発現と比較して、T細胞疲弊の少なくとも1つの免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象が同定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
免疫細胞マーカーが免疫チェックポイントタンパク質である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
対象が微生物感染症を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
微生物感染症が、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、原生動物感染症、または寄生虫感染症である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
微生物感染症が、結核菌 (Mycobacterium tuberculosis)、らい菌 (Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・ボビス (Mycobacterium bovis)、ピロリ菌 (Helicobacter pylori)、黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)、チフス菌 (Salmonella Typhi)、梅毒トレポネーマ (Treponema pallidum)、大腸菌 (Escherichia coli)、インフルエンザ菌 (Hemophilus influenza)、緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa)、熱帯熱マラリア原虫 (Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫 (Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫 (Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫 (Plasmodium malariae)、ヒト免疫不全ウイルス (HIV)、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス (HSV)、B型肝炎ウイルス (HBV)、C型肝炎ウイルス (HCV)、麻疹ウイルス、パポバウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、T細胞白血病ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、エプスタイン・バーウイルス、エンテロウイルス、マウス肝炎ウイルス (MHV)、サイトメガロウイルス (CMV)、パピローマウイルス、およびリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV) からなる群より選択される病原体によって引き起こされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
微生物感染症が慢性微生物感染症である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
対象ががんを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、対象から単離された免疫細胞に由来する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
対象から単離された免疫細胞が、対象の末梢血から得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象から単離された免疫細胞が、対象のリンパ節、脾臓、または腫瘍から得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、免疫細胞をインビトロでMYC融合タンパク質と接触させることによって調製される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、対象からの末梢血単核細胞の集団をインビトロでMYC融合タンパク質と接触させることによって調製される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
修飾された免疫細胞をMYC融合タンパク質と接触させる前および/または後に、修飾された免疫細胞をインビトロで増大させる段階をさらに含む、請求項12~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
タンパク質導入ドメイン配列がTATタンパク質導入ドメイン配列である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
MYC融合タンパク質がSEQ ID NO: 1を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
MYC融合タンパク質が、1つまたは複数の修飾された免疫細胞の核に移行する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
MYC融合タンパク質がMYCの生物学的活性を示す、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
発現の変化が、1つまたは複数の免疫細胞受容体の細胞表面発現の増加を含む、請求項2~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
1つまたは複数の細胞表面受容体が、PD-1、LAG-3、CD160、2B4、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、または腫瘍内に投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
対象がヒトまたは非ヒト動物である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数のT細胞を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数のCD8+ T細胞を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数の疲弊した免疫細胞を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数の疲弊したT細胞を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数の疲弊したCD8+ T細胞を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
有効量の1つまたは複数の修飾された免疫細胞を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象において慢性微生物感染症を処置するための方法であって、
該1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、
(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列
を含むMYC融合タンパク質
を含む、前記方法。
【請求項29】
健常対照における少なくとも1つの免疫細胞マーカーの発現と比較して、T細胞疲弊の少なくとも1つの免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象が同定される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
免疫細胞マーカーが免疫チェックポイントタンパク質である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
微生物感染症が、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、または原生動物感染症である、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
微生物感染症が、結核菌、らい菌、マイコバクテリウム・ボビス、ピロリ菌、黄色ブドウ球菌、チフス菌、梅毒トレポネーマ、大腸菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、ヒト免疫不全ウイルス (HIV)、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス (HSV)、B型肝炎ウイルス (HBV)、C型肝炎ウイルス (HCV)、麻疹ウイルス、パポバウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、T細胞白血病ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、エプスタイン・バーウイルス、エンテロウイルス、マウス肝炎ウイルス (MHV)、サイトメガロウイルス (CMV)、パピローマウイルス、およびリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV) からなる群より選択される病原体によって引き起こされる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
対象が、以前に病原体に対するワクチン接種を受けている、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、対象から単離された免疫細胞に由来する、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
対象から単離された免疫細胞が、対象の末梢血から得られる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
対象から単離された免疫細胞が、対象のリンパ節または脾臓から得られる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、T細胞をインビトロでMYC融合タンパク質と接触させることによって調製される、請求項28~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
細胞をMYC融合タンパク質と接触させる前および/または後に、細胞をインビトロで増大させる段階をさらに含む、請求項28~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
タンパク質導入ドメイン配列がTATタンパク質導入ドメイン配列である、請求項28~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
MYC融合タンパク質がSEQ ID NO: 1を含む、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
MYC融合タンパク質が、免疫細胞集団中の1つまたは複数の免疫細胞の核に移行する、請求項28~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
MYC融合タンパク質がMYCの生物学的活性を示す、請求項28~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
発現の変化が、1つまたは複数の免疫細胞受容体の細胞表面発現の増加を含む、請求項28~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
1つまたは複数の細胞表面受容体が、PD-1、LAG-3、CD160、2B4、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、または腫瘍内に投与される、請求項28~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
対象がヒトまたは非ヒト動物である、請求項28~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数のT細胞を含む、請求項28~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数のCD8+ T細胞を含む、請求項28~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数の疲弊した免疫細胞を含む、請求項28~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数の疲弊したT細胞を含む、請求項28~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数の疲弊したCD8+ T細胞を含む、請求項28~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
有効量の1つまたは複数の修飾された免疫細胞を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象においてT細胞障害を伴う急性呼吸器ウイルス感染症を処置するための方法であって、
該1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、
(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列
を含むMYC融合タンパク質
を含む、前記方法。
【請求項53】
健常対照における少なくとも1つの免疫細胞マーカーの発現と比較して、T細胞疲弊の少なくとも1つの免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象が同定される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
免疫細胞マーカーが免疫チェックポイントタンパク質である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
急性呼吸器ウイルス感染症が、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス (RSV)、肺炎ウイルス、呼吸器ワクシニアウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器アデノウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス (SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス (MERS-CoV)、またはヒトメタニューモウイルス (HMPV) からなる群より選択される病原体によって引き起こされる、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
対象が、以前に病原体に対するワクチン接種を受けている、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、対象から単離された免疫細胞に由来する、請求項52~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
対象から単離された免疫細胞が、対象の末梢血から得られる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
対象から単離された免疫細胞が、対象のリンパ節または脾臓から得られる、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、T細胞をインビトロでMYC融合タンパク質と接触させることによって調製される、請求項52~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
細胞をMYC融合タンパク質と接触させる前および/または後に、細胞をインビトロで増大させる段階をさらに含む、請求項52~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
タンパク質導入ドメイン配列がTATタンパク質導入ドメイン配列である、請求項52~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
MYC融合タンパク質がSEQ ID NO: 1を含む、請求項52~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
MYC融合タンパク質が、免疫細胞集団中の1つまたは複数の免疫細胞の核に移行する、請求項52~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
MYC融合タンパク質がMYCの生物学的活性を示す、請求項52~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
発現の変化が、1つまたは複数の免疫細胞受容体の細胞表面発現の増加を含む、請求項52~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
1つまたは複数の細胞表面受容体が、PD-1、LAG-3、CD160、2B4、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、または腫瘍内に投与される、請求項52~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
対象がヒトまたは非ヒト動物である、請求項52~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数のT細胞を含む、請求項52~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数のCD8+ T細胞を含む、請求項52~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数の疲弊した免疫細胞を含む、請求項52~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数の疲弊したT細胞を含む、請求項52~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、1つまたは複数の疲弊したCD8+ T細胞を含む、請求項52~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
それを必要とする対象においてT細胞疲弊を処置するための1つまたは複数の修飾された免疫細胞の使用であって、
該1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、
(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列
を含むMYC融合タンパク質
を含む、前記使用。
【請求項76】
それを必要とする対象において慢性微生物感染症を処置するための1つまたは複数の修飾された免疫細胞の使用であって、
該1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、
(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列
を含むMYC融合タンパク質
を含む、前記使用。
【請求項77】
がんがメラノーマである、請求項8に記載の方法。
【請求項78】
メラノーマが再発難治性メラノーマである、請求項77に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月14日に出願された米国仮特許出願第62/847,701号に対する優先権の恩典を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
T細胞疲弊は、慢性感染症およびがんの過程で生じるT細胞機能不全の状態である。それは、不十分なT細胞エフェクター機能、阻害性受容体の持続的な発現、ならびに機能的エフェクターおよびメモリーT細胞とは異なる転写状態を特徴とする。疲弊は、感染ならびに腫瘍の成長および転移を制御する免疫系の能力に悪影響を及ぼす。
【0003】
急性感染後、ナイーブ抗原特異的CD8+ T細胞は活性化され、増殖し、エフェクター機能を獲得し、かつエフェクターCD8+ T細胞に分化する。急性感染のクリアランス後、大部分のエフェクターCD8+ T細胞はアポトーシスを起こす;しかしながら、約5~10%はメモリーCD8+ T細胞に分化する。慢性感染中に、CD8+ T細胞応答の著しい欠陥が生じ得、抗原特異的CD8+ T細胞はメモリーCD8+ T細胞に分化できない場合が多い。エフェクター機能の喪失(例えば、T細胞疲弊)は階層的に起こり、CD8+ T細胞は、IL-2産生、増殖能、および細胞傷害性などの機能を徐々に失っていく。腫瘍抗原に対する慢性的な抗原曝露は、がん細胞が発現する腫瘍抗原を認識するCD8+ T細胞に同様の疲弊現象をもたらす。
【0004】
T細胞疲弊は、急性ウイルス感染中にも同様に起こり得る。例えば、急性呼吸器感染症 (ARI) のある特定の例において、CD8+ T細胞は、多くの場合に、サイトカインおよび細胞傷害性分子の産生の減少を示し、慢性感染中の疲弊したT細胞において観察されるのと同様の遺伝子発現パターンを示す。これに関連して、呼吸器ウイルス感染症との関連における、CD8+ T細胞が著しく低下した機能性を有する傾向は、T細胞障害と称される。
【0005】
現在、慢性感染後または慢性感染中に、およびがんの処置のために、T細胞の疲弊/障害を減少および/または逆転させ、エフェクター機能を回復させることができる組成物および方法のまだ満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
PTD-MYC融合タンパク質(例えば、HIV TAT-MYC融合タンパク質)、またはドナー対象から単離され、PTD-MYC融合タンパク質で処理された免疫細胞を投与することによって、対象におけるT細胞疲弊またはT細胞障害を処置するための組成物および方法が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、T細胞疲弊は、慢性微生物感染症(例えば、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、もしくは寄生虫)またはがんと関連している。いくつかの態様において、T細胞疲弊またはT細胞障害は、急性ウイルス感染症(例えば、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス (RSV)、肺炎ウイルス、呼吸器ワクシニアウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器アデノウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス (SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス (MERS-CoV)、またはヒトメタニューモウイルス (HMPV) による感染症などの急性呼吸器ウイルス感染症)と関連している。いくつかの態様では、PTD-MYC融合タンパク質またはPTD-MYCで修飾された免疫細胞の投与により、対象におけるT細胞疲弊またはT細胞障害が軽減される。例えば、いくつかの態様では、PTD-MYC融合タンパク質またはPTD-MYCで修飾された免疫細胞の投与により、対象における疲弊した細胞(例えば、疲弊したT細胞)の数が減少する。いくつかの態様では、PTD-MYC融合タンパク質またはPTD-MYCで修飾された免疫細胞の投与により、慢性微生物感染症に関連する病原体に対する免疫応答が増加する。いくつかの態様では、PTD-MYC融合タンパク質またはPTD-MYCで修飾された免疫細胞の投与により、慢性微生物感染症の1つまたは複数の症状が緩和される。
【0007】
ある特定の態様において、有効量の1つまたは複数の修飾された免疫細胞を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象においてT細胞疲弊またはT細胞障害を処置するための方法であって、1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、MYC融合タンパク質、を含む、前記方法が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、健常対照における少なくとも1つの免疫細胞マーカーの発現と比較して、T細胞疲弊またはT細胞障害の少なくとも1つの免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象は同定される。いくつかの態様において、免疫細胞マーカーは免疫チェックポイントタンパク質である。いくつかの態様において、対象は微生物感染症を有する。いくつかの態様において、微生物感染症は慢性微生物感染症である。いくつかの態様において、微生物感染症は、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、原生動物感染症、または寄生虫感染症である。いくつかの態様において、微生物感染症は、結核菌 (Mycobacterium tuberculosis)、らい菌 (Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・ボビス (Mycobacterium bovis)、ピロリ菌 (Helicobacter pylori)、黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)、チフス菌 (Salmonella Typhi)、梅毒トレポネーマ (Treponema pallidum)、大腸菌 (Escherichia coli)、インフルエンザ菌 (Hemophilus influenza)、緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa)、熱帯熱マラリア原虫 (Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫 (Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫 (Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫 (Plasmodium malariae)、ヒト免疫不全ウイルス (HIV)、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス (HSV)、B型肝炎ウイルス (HBV)、C型肝炎ウイルス (HCV)、麻疹ウイルス、パポバウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、T細胞白血病ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、エプスタイン・バーウイルス、エンテロウイルス、マウス肝炎ウイルス (MHV)、サイトメガロウイルス (CMV)、パピローマウイルス、およびリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV) からなる群より選択される病原体によって引き起こされる。いくつかの態様において、T細胞疲弊またはT細胞障害は、急性ウイルス感染症、例えば、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス (RSV)、肺炎ウイルス、呼吸器ワクシニアウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器アデノウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス (SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス (MERS-CoV)、またはヒトメタニューモウイルス (HMPV) による感染症などの急性呼吸器ウイルス感染症と関連している。いくつかの態様において、対象はがんを有する。いくつかの態様において、がんはメラノーマである。いくつかの態様において、メラノーマは再発難治性メラノーマである。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、対象から単離された免疫細胞に由来する。いくつかの態様において、対象から単離された免疫細胞は、対象の末梢血から得られる。いくつかの態様において、対象から単離された免疫細胞は、対象のリンパ節、脾臓、または腫瘍から得られる。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、免疫細胞をインビトロでMYC融合タンパク質と接触させることによって調製される。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、対象からの末梢血単核細胞の集団をインビトロでMYC融合タンパク質と接触させることによって調製される。いくつかの態様において、本方法は、修飾された免疫細胞をMYC融合タンパク質と接触させる前および/または後に、修飾された免疫細胞をインビトロで増大させる段階をさらに含む。いくつかの態様において、タンパク質導入ドメイン配列はTATタンパク質導入ドメイン配列である。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質はSEQ ID NO: 1を含む。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質は、1つまたは複数の修飾された免疫細胞の核に移行する。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質はMYCの生物学的活性を示す。いくつかの態様において、発現の変化は、1つまたは複数の免疫細胞受容体の細胞表面発現の増加を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の細胞表面受容体は、PD-1、LAG-3、CD160、2B4、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、または腫瘍内に投与される。いくつかの態様において、対象はヒトまたは非ヒト動物である。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数のT細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数のCD8+ T細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数の疲弊した免疫細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数の疲弊したT細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数の疲弊したCD8+ T細胞を含む。
【0008】
ある特定の態様において、有効量の1つまたは複数の修飾された免疫細胞を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象において慢性微生物感染症を処置するための方法であって、1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、MYC融合タンパク質、を含む、前記方法が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、健常対照における少なくとも1つの免疫細胞マーカーの発現と比較して、T細胞疲弊またはT細胞障害の少なくとも1つの免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象は同定される。いくつかの態様において、免疫細胞マーカーは免疫チェックポイントタンパク質である。いくつかの態様において、微生物感染症は、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、原生動物感染症、または寄生虫感染症である。いくつかの態様において、微生物感染症は、結核菌、らい菌、マイコバクテリウム・ボビス、ピロリ菌、黄色ブドウ球菌、チフス菌、梅毒トレポネーマ、大腸菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、ヒト免疫不全ウイルス (HIV)、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス (HSV)、B型肝炎ウイルス (HBV)、C型肝炎ウイルス (HCV)、麻疹ウイルス、パポバウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、T細胞白血病ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、エプスタイン・バーウイルス、エンテロウイルス、マウス肝炎ウイルス (MHV)、サイトメガロウイルス (CMV)、パピローマウイルス、およびリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV) からなる群より選択される病原体によって引き起こされる。いくつかの態様において、対象は、以前に病原体に対するワクチン接種を受けている。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、対象から単離された免疫細胞に由来する。いくつかの態様において、対象から単離された免疫細胞は、対象の末梢血から得られる。いくつかの態様において、対象から単離された免疫細胞は、対象のリンパ節、脾臓、または腫瘍から得られる。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、T細胞をインビトロでMYC融合タンパク質と接触させることによって調製される。いくつかの態様において、本方法は、細胞をMYC融合タンパク質と接触させる前および/または後に、細胞をインビトロで増大させる段階をさらに含む。いくつかの態様において、タンパク質導入ドメイン配列はTATタンパク質導入ドメイン配列である。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質はSEQ ID NO: 1を含む。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質は、免疫細胞集団中の1つまたは複数の免疫細胞の核に移行する。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質はMYCの生物学的活性を示す。いくつかの態様において、発現の変化は、1つまたは複数の免疫細胞受容体の細胞表面発現の増加を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の細胞表面受容体は、PD-1、LAG-3、CD160、2B4、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、または腫瘍内に投与される。いくつかの態様において、対象はヒトまたは非ヒト動物である。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数のT細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数のCD8+ T細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数の疲弊した免疫細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数の疲弊したT細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数の疲弊したCD8+ T細胞を含む。
【0009】
ある特定の態様において、有効量の1つまたは複数の修飾された免疫細胞を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象においてT細胞障害を伴う急性呼吸器感染症を処置するための方法であって、1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、MYC融合タンパク質、を含む、前記方法が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、健常対照における少なくとも1つの免疫細胞マーカーの発現と比較して、T細胞疲弊またはT細胞障害の少なくとも1つの免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象は同定される。いくつかの態様において、免疫細胞マーカーは免疫チェックポイントタンパク質である。いくつかの態様において、急性呼吸器ウイルス感染症は、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス (RSV)、肺炎ウイルス、呼吸器ワクシニアウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器アデノウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス (SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス (MERS-CoV)、およびヒトメタニューモウイルス (HMPV) からなる群より選択される病原体によって引き起こされる。いくつかの態様において、対象は、以前に病原体に対するワクチン接種を受けている。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、対象から単離された免疫細胞に由来する。いくつかの態様において、対象から単離された免疫細胞は、対象の末梢血から得られる。いくつかの態様において、対象から単離された免疫細胞は、対象のリンパ節、脾臓、または腫瘍から得られる。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、T細胞をインビトロでMYC融合タンパク質と接触させることによって調製される。いくつかの態様において、本方法は、細胞をMYC融合タンパク質と接触させる前および/または後に、細胞をインビトロで増大させる段階をさらに含む。いくつかの態様において、タンパク質導入ドメイン配列はTATタンパク質導入ドメイン配列である。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質はSEQ ID NO: 1を含む。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質は、免疫細胞集団中の1つまたは複数の免疫細胞の核に移行する。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質はMYCの生物学的活性を示す。いくつかの態様において、発現の変化は、1つまたは複数の免疫細胞受容体の細胞表面発現の増加を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の細胞表面受容体は、PD-1、LAG-3、CD160、2B4、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、または腫瘍内に投与される。いくつかの態様において、対象はヒトまたは非ヒト動物である。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数のT細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数のCD8+ T細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数の疲弊した免疫細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数の疲弊したT細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、1つまたは複数の疲弊したCD8+ T細胞を含む。
【0010】
ある特定の態様において、それを必要とする対象においてT細胞疲弊またはT細胞障害を処置するための1つまたは複数の修飾された細胞の使用であって、1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、MYC融合タンパク質、を含む、前記使用もまた、本明細書において提供される。
【0011】
ある特定の態様において、それを必要とする対象においてT細胞疲弊またはT細胞障害を伴う慢性微生物感染症または急性呼吸器ウイルス感染症を処置するための1つまたは複数の修飾された細胞の使用であって、1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、MYC融合タンパク質、を含む、前記使用もまた、本明細書において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1A~1Cは、PTD-MYC融合ポリペプチドまたは媒体対照での前処理、および様々な条件下での活性化後の、ドナー対象から単離された免疫細胞の集団におけるCD86発現のレベルを示す。
図1B図1Aの説明を参照のこと。
図1C図1Aの説明を参照のこと。
図2A図2A~2Eは、PTD-MYC融合ポリペプチドまたは媒体対照での前処理、および様々な条件下での活性化後の、ドナー対象から単離された免疫細胞の集団におけるCD279 (PD-1) 発現のレベル(図2A~2C)ならびにCD152 (CTLA-4) 発現のレベル(図2Aおよび2D~2E)を示す。
図2B図2Aの説明を参照のこと。
図2C図2Aの説明を参照のこと。
図2D図2Aの説明を参照のこと。
図2E図2Aの説明を参照のこと。
図3A図3A~3Eは、PTD-MYC融合ポリペプチドまたは媒体対照での前処理、および様々な条件下での活性化後の、ドナー対象から単離された免疫細胞の集団におけるCD274 (PD-L1) 発現のレベル(図3A~3C)ならびにCD25 (IL2RA) 発現のレベル(図3Aおよび3D~3E)を示す。
図3B図3Aの説明を参照のこと。
図3C図3Aの説明を参照のこと。
図3D図3Aの説明を参照のこと。
図3E図3Aの説明を参照のこと。
図4A図4A~4Cは、再発難治性メラノーマの臨床研究に登録された患者から単離された末梢血単核細胞 (PBMC) におけるCD279 (PD-1) およびCD152 (CTLA-4) 発現のレベルを示す。図4Aは、Tat-MYCタンパク質 (TBX-3400) による1時間の処理の前および後の、2名の再発難治性メラノーマ患者(101および103)から採取された、CD279に対する蛍光抗体で標識されたPBMC試料のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。図4Bは、再発難治性メラノーマ試験に登録された患者から単離されたPBMCにおけるTat-MYCタンパク質上の2つの異なるタグ(HisまたはV5)の細胞内染色結果を示す一連のフローサイトメトリー図である。患者のPBMCは、未処理のままにするか(左パネル)、またはTat-MYCで1時間処理した(TBX-4000)(右パネル)。図4Cは、閉鎖系においてTat-MYCで1時間処理されたPBMC試料 (TBX-4000) のフローサイトメトリー解析の結果を示す一連のチャートである。2つの異なるTat-MYCタグ(HisタグおよびV5タグ)に結合する蛍光抗体を用いて、試料をTat-MYCの細胞内レベルについて解析した。左側のチャートは、0日目 (0d) および翌日 (1d) の、細胞を該タンパク質について染色した結果を示す。右側のチャートでは、患者からのTat-MYC処理細胞(TBX-3400;(+))および未処理細胞(PBMC-未処理;(-))を、CD3およびCD28に対する抗体で活性化した。T細胞活性化マーカーであるCD25ならびにチェックポイントマーカーであるCD279およびCD152の発現レベルを、フローサイトメトリーにより解析した。
図4B図4Aの説明を参照のこと。
図4C図4Aの説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本技術の実質的な理解をもたらすために、本技術のある特定の局面、様式、態様、変形物、および特色が様々な詳細なレベルで以下に記載されることが認識されるべきである。
【0014】
I. 定義
本明細書で用いられるある特定の用語の定義を、以下に提供する。特に定義されない限り、本明細書で用いられる技術用語および科学用語はすべて、一般的に、本技術が属する技術分野の当業者によって共通して理解されている意味と同じ意味を有する。
【0015】
本明細書で用いられる場合、「1つの (a)」、「1つの (an)」、および「その」という単数形は、文脈が明確に他のことを示していない限り、複数形も同様に含むことが意図される。
【0016】
本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、値が、+/- 20%、+/- 15%、+/- 10%、または+/- 5%変動しても、本開示の範囲内にとどまり得ることを意味する。例えば、「約200 IU/mLの濃度」は、160 IU/mL~240 IU/mLの濃度を包含する。
【0017】
本明細書で用いられる場合、作用物質の対象への「投与」という用語は、その意図された機能を果たすように、作用物質を対象に導入または送達する任意の経路を含む。投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下を含む任意の適切な経路によって実施され得る。投与には、自己投与および他者による投与が含まれる。
【0018】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および非天然アミノ酸、ならびに天然アミノ酸に類似した様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然にコードされるアミノ酸は、20種類の一般的なアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン)、ならびにピロリジンおよびセレノシステインである。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同一の基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているα炭素を有する作用物質、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなどを指す。そのような類似体は、(ノルロイシンのように)修飾されたR基または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同一の基本化学構造を保持する。いくつかの態様において、ポリペプチドを形成するアミノ酸はD型である。いくつかの態様において、ポリペプチドを形成するアミノ酸はL型である。いくつかの態様において、ポリペプチドを形成する第1の複数のアミノ酸はD型であり、第2の複数のアミノ酸はL型である。
【0019】
アミノ酸は、本明細書において、一般に公知のその3文字記号、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会 (Biochemical Nomenclature Commission) により推奨される1文字記号のいずれかによって言及される。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられているその1文字コードによって言及される。
【0020】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。本用語は、天然アミノ酸ポリマーにも、1つまたは複数のアミノ酸残基が非天然アミノ酸、例えばアミノ酸類似体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。本用語は、アミノ酸残基が共有結合性ペプチド結合によって連結されている、全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含する。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「対照」は、比較目的のために実験において用いられる代替試料である。対照は、「陽性」または「陰性」であってよい。例えば、実験の目的が、特定の型の疾患のための処置について治療剤の有効性の相関を判定することである場合、陽性対照(所望の治療効果を示すことが公知である組成物)および陰性対照(治療を受容しないかまたはプラセボを受容する対象または試料)が、典型的には用いられる。
【0022】
本明細書で用いられる場合、「有効量」または「治療有効量」という用語は、所望の治療効果を達成するために十分な作用物質の量を指す。治療的適用に関して、対象に投与される治療用タンパク質の量は、感染の型および重症度、ならびに全身健康状態、年齢、性別、体重、および薬物に対する耐容能などの個体の特徴に依存し得る。それは、疾患の程度、重症度、および型にもまた依存し得る。当業者は、これらおよびその他の要因に応じて、適切な投薬量を決定することができるであろう。
【0023】
本明細書で用いられる場合、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写される過程、および/または転写されたmRNAがその後、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に翻訳される過程を指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。遺伝子の発現レベルは、細胞試料または組織試料中のmRNAまたはタンパク質の量を測定することにより決定することができる。1つの局面においては、ある試料からの遺伝子の発現レベルを、対照試料または参照試料からのその遺伝子の発現レベルと直接比較することができる。別の局面においては、ある試料からの遺伝子の発現レベルを、本明細書において開示される組成物の投与後の同じ試料からのその遺伝子の発現レベルと直接比較することができる。「発現」という用語はまた、以下の事象のうちの1つまたは複数を指す:(1) 細胞内での(例えば、転写による)DNA配列からのRNA鋳型の生成;(2) 細胞内での(例えば、スプライシング、編集、5'キャップ形成、および/または3'末端形成による)RNA転写物のプロセシング;(3) 細胞内でのRNA配列のポリペプチドまたはタンパク質への翻訳;(4) 細胞内でのポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾;(5) 細胞表面上でのポリペプチドまたはタンパク質の提示;ならびに (6) 細胞からのポリペプチドまたはタンパク質の分泌または提示または放出。
【0024】
「リンカー」という用語は、2つの配列を接続または連結する、例えば2つのポリペプチドドメインを連結する合成配列(例えば、アミノ酸配列)を指す。いくつかの態様において、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸配列を含む。
【0025】
本明細書で用いられる場合、免疫細胞という用語は、免疫応答において役割を果たす任意の細胞を指す。免疫細胞は造血系起源のものであり、これには、B細胞およびT細胞などのリンパ球;ナチュラルキラー細胞;単球、マクロファージ、樹状細胞、好酸球、好中球、マスト細胞、好塩基球、および顆粒球などの骨髄系細胞が含まれる。
【0026】
「リンパ球」という用語は、組織特異的な種類および特殊な種類を含む、すべての未熟型、成熟型、未分化型、および分化型の白色リンパ球集団を指す。それは、非限定的な例として、B細胞、T細胞、NKT細胞、およびNK細胞を包含する。いくつかの態様において、リンパ球には、プレB細胞、前駆B細胞、初期プロB細胞、後期プロB細胞、大型プレB細胞、小型プレB細胞、未熟B細胞、成熟B細胞、形質B細胞、メモリーB細胞、B-1細胞、およびB-2細胞の集団を含むすべてのB細胞系列が含まれる。
【0027】
本明細書で用いられる場合、T細胞という用語は、ナイーブT細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、メモリーT細胞、活性化T細胞、疲弊T細胞、寛容T細胞、キメラT細胞、および抗原特異的T細胞を含む。
【0028】
「1つのB細胞」または「複数のB細胞」という用語は、非限定的な例として、プレB細胞、前駆B細胞、初期プロB細胞、後期プロB細胞、大型プレB細胞、小型プレB細胞、未熟B細胞、成熟B細胞、ナイーブB細胞、形質B細胞、活性化B細胞、疲弊B細胞、寛容B細胞、キメラB細胞、抗原特異的B細胞、メモリーB細胞、B-1細胞、およびB-2細胞の集団を指す。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「養子細胞治療用組成物」は、養子細胞移入に適した細胞を含む任意の組成物を指す。例示的な態様において、養子細胞治療用組成物は、腫瘍浸潤リンパ球 (TIL)、TCR(すなわち、異種T細胞受容体)改変リンパ球、およびCAR(すなわち、キメラ抗原受容体)改変リンパ球からなる群より選択される細胞型を含む。別の態様において、養子細胞治療用組成物は、T細胞、疲弊T細胞、CD8+細胞、CD4+細胞、NK細胞、δγT細胞、および制御性T細胞からなる群より選択される細胞型を含む。別の態様においては、TIL、T細胞、CD8+細胞、CD4+細胞、NK細胞、δγT細胞、制御性T細胞、または末梢血単核細胞が、養子細胞治療用組成物を形成する。1つの態様において、養子細胞治療用組成物はT細胞を含む。1つの態様において、養子細胞治療用組成物は、(i) タンパク質導入ドメイン;(ii) MYCポリペプチド配列を含む、PTD-MYC融合タンパク質、と接触した、ドナー対象から単離された1つまたは複数の初代免疫細胞を含む組成物であってよい。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「疲弊した免疫細胞」、「疲弊したT細胞」、および「疲弊したB細胞」という用語は、機能不全のT細胞およびB細胞を指し、アネルギー性免疫細胞、アネルギー性T細胞、またはアネルギー性B細胞を包含しない。疲弊した免疫細胞、疲弊したT細胞、および疲弊したB細胞は、慢性感染症またはがんの過程でエフェクター機能が徐々に失われることを特徴とし、早期に疲弊する機能(例えば、IL-2、細胞傷害性、および増殖)もあれば、より長く持続する機能(例えば、IFN-γ)もある。アネルギー性免疫細胞、アネルギー性T細胞、またはアネルギー性B細胞は、免疫細胞が共刺激の非存在下で最初のTCRシグナルを受け取り、低応答性の状態を引き起こした場合に生じ得る。注目すべきことには、アネルギーは、疲弊とは分子的に異なる非応答性の状態であると考えられる(Wherry, J.E. Nature Immunology 12:492-499 (2011);Wherry, J.E. et al. Immunity 27:670-684 (2007))。
【0031】
「MYC」および「MYC遺伝子」という用語は、同義語である。それらは、MYCポリペプチドをコードする核酸配列を指す。MYC遺伝子は、NCBIアクセッション番号NM-002467の配列と少なくとも60%~100%同一または相同、例えば、少なくとも60、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または約70%~約100%からの任意の他のパーセントで同一である、少なくとも120ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、MYC遺伝子はがん原遺伝子である。ある特定場合において、MYC遺伝子は、8番染色体上の8q24.21に見出される。場合によっては、MYC遺伝子は、pterから128,816,862 bpで始まり、pterから128,822,856 bpで終わる。場合によっては、MYC遺伝子は約6 kbである。場合によっては、MYC遺伝子は、少なくとも8種類の別々のmRNA配列‐選択的スプライシングを受けた5種類の変種およびスプライシングを受けていない3種類の変種をコードする。
【0032】
「MYCタンパク質」、「MYCポリペプチド」、および「MYC配列」という用語は、同義語であり、NCBIアクセッション番号UniProtKB/Swiss-Prot:P01106.1(MYCアイソフォーム1)またはNP_002458.2(UniProtKB/Swiss-Prot:P01106.2;MYCアイソフォーム2)に開示されたアミノ酸残基のポリマー、およびそれらの機能的相同体、類似体、または断片を指す。UniProtKB/Swiss-Prot:P01106.1の配列は、
である。
NP_002458.2 (UniProtKB/Swiss-Prot:P01106.2) の配列は、
である。
【0033】
いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、完全なMYCポリペプチド配列である。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、部分的なMYCポリペプチド配列である。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、SEQ ID NO:2または11の少なくとも400個の連続アミノ酸を含む。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、SEQ ID NO:2または11の少なくとも400個の連続アミノ酸を含み、かつ少なくとも1種類のMYC活性を保持する。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、SEQ ID NO:2または11の少なくとも400個、少なくとも410個、少なくとも420個、少なくとも430個、または少なくとも450個の連続アミノ酸を含む。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、SEQ ID NO:2または11の少なくとも400個、少なくとも410個、少なくとも420個、少なくとも430個、または少なくとも450個の連続アミノ酸を含み、かつ少なくとも1種類のMYC活性を保持する。いくつかの態様において、MYCポリペプチドはc-MYCである。いくつかの態様において、MYCポリペプチド配列は、以下に示される配列:
を含む。
【0034】
いくつかの態様において、MYCポリペプチド配列は、以下に示される配列:
を含む。
【0035】
いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP002458.2またはUniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号P01106.1の配列と少なくとも40%~100%同一、例えば、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または約40%~約100%からの任意の他のパーセントで同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、439アミノ酸のポリマー、いかなる翻訳後修飾も受けていないMYCポリペプチドを指す。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、翻訳後修飾を受けた439アミノ酸のポリマーを指す。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは48,804 kDaである。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックスロイシンジッパー (bHLH/LZ) ドメインを含む。いくつかの態様において、bHLH/LZドメインは、
の配列を含む。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは転写因子(例えば、転写因子64)である。いくつかの態様において、MYCポリペプチドはEボックスDNA結合ドメインを含む。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、CACGTGを含む配列に結合する。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、細胞の生存および/または増殖のうちの1つまたは複数を促進する。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、上記のもののうちの1つまたは複数を含み、かつ1つまたは複数の翻訳後修飾(例えば、アセチル化を含む)。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、ポリペプチドのN末端またはC末端に1つまたは複数の付加的なアミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは融合タンパク質である。いくつかの態様において、MYCポリペプチドは、ポリペプチドのN末端またはC末端において、1つまたは複数の付加的なペプチドに連結されている。
【0036】
本明細書に記載される方法において使用するのに適したタンパク質には、本明細書に記載される任意のタンパク質のアミノ酸配列と比較して、1~15個のアミノ酸変化、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有するタンパク質を含む、機能的変種もまた含まれる。他の態様において、変更されたアミノ酸配列は、本明細書に記載される任意のタンパク質阻害剤のアミノ酸配列と少なくとも75%同一、例えば、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。そのような配列変種タンパク質は、変更されたアミノ酸配列が、本明細書に記載される組成物および方法において機能的であるために十分な生物学的活性を保持する限り、本明細書に記載される方法に適している。アミノ酸置換が行われる場合、置換は保存的アミノ酸置換であってよい。一般的な天然アミノ酸の中で、例えば、「保存的アミノ酸置換」は、以下の群のそれぞれの中でのアミノ酸間の置換によって例示される:(1) グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン、(2)フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(3) セリンおよびスレオニン、(4) アスパラギン酸およびグルタミン酸、(5) グルタミンおよびアスパラギン、ならびに (6) リジン、アルギニン、およびヒスチジン。BLOSUM62表は、500を超える関連タンパク質群の高度に保存された領域を表す、タンパク質配列セグメントの約2,000の局所的多重アライメントに由来するアミノ酸置換行列である (Henikoff et al. (1992), Proc. Natl Acad. Sci. USA, 89:10915- 10919)。したがって、いくつかの態様において、本明細書において記載または開示されるアミノ酸配列に導入される保存的アミノ酸置換を規定するために、BLOSUM62置換頻度が使用される。(上記のように)化学的特性のみに基づいてアミノ酸置換を設計することも可能であるが、「保存的アミノ酸置換」という言語は、好ましくは、-1を上回るBLOSUM62値によって表される置換を指す。例えば、アミノ酸置換は、置換が0、1、2、または3というBLOSUM62値により特徴づけられる場合に保存的である。この系によれば、好ましい保存的アミノ酸置換は、少なくとも1(例えば、1、2、または3)というBLOSUM62値により特徴づけられるが、より好ましい保存的アミノ酸置換は、少なくとも2(例えば、2または3)というBLOSUM62値により特徴づけられる。
【0037】
「Eボックス配列」および「エンハンサーボックス配列」という語句は、本明細書において互換的に用いられ、Nが任意のヌクレオチドであるヌクレオチド配列CANNTGを意味する。場合によっては、Eボックス配列はCACGTGを含む。場合によっては、MYCによってコードされる転写因子の塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックスドメインは、Eボックス配列に結合する。場合によっては、Eボックス配列は、遺伝子(例えば、p21、Bc1-2、またはオルニチンデカルボキシラーゼ)の上流に位置する。場合によっては、MYCポリペプチドはEボックスDNA結合ドメインを含む。場合によっては、EボックスDNA結合ドメインは、KRRTHNVLERQRRN (SEQ ID NO: 6) の配列を含む。場合によっては、MYCによってコードされる転写因子のEボックス配列への結合により、RNAポリメラーゼがEボックス配列の下流の遺伝子を転写することが可能になる。
【0038】
「MYC活性」または「MYC生物学的活性」または「生物学的に活性のあるMYC」または「MYCの生物学的活性」という用語は、細胞生存、細胞増殖、および/または抗体産生の増強または誘導のうちの1つまたは複数を含む。例としてかつ非限定的に、MYC活性には、抗CD3および抗CD28活性化T細胞の増大の増強、ならびに/または長期自己再生性造血幹細胞の増殖の増加が含まれる。MYC活性には、細胞の核への侵入、核酸配列への結合(例えば、Eボックス配列との結合)、および/またはMYC標的遺伝子の発現の誘導もまた含まれる。
【0039】
「患者」、「対象」、「個体」などの用語は、本明細書において互換的に用いられ、動物、典型的には哺乳動物を指す。1つの態様において、患者、対象、または個体は哺乳動物である。1つの態様において、患者、対象、または個体はヒトである。いくつかの態様において、患者、対象、または個体は、動物、例えば、これらに限定されないが、ウマ、ウシ、マウス、ヒツジ、イヌ、およびネコなどの飼育動物である。
【0040】
「タンパク質導入ドメイン (PTD) 」または「輸送体ペプチド配列」という用語(細胞透過性タンパク質 (CPP) または膜移行配列 (MTS) としても公知である)は、本明細書において互換的に用いられ、古典的なエンドサイトーシスには依存せずに、はるかにより大きな分子を細胞内に輸送することができる小さいペプチドを指す。いくつかの態様において、分子の細胞核へのさらなる移行を媒介する核局在化シグナルが、タンパク質導入ドメイン内に見出され得る。
【0041】
本明細書で用いられる場合の「処置すること」または「処置」という用語は、ヒトなどの対象における疾患の処置を包含し、(i) 疾患を阻害すること、すなわち、その発症を抑止すること;(ii) 疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすこと;(iii) 疾患の進行を遅らせること;および/または (iv) 疾患の1つもしくは複数の症状を阻害する、軽減する、もしくはその進行を遅らせることを含む。腫瘍に関して、「処置すること」または「処置」はまた、腫瘍の退縮、腫瘍成長を遅らせること、腫瘍の転移を阻害すること、再燃もしくは再発がんを阻害すること、および/または寛解を維持することを包含する。
【0042】
記載される医学的な疾患および状態の処置または防止の様々な様式は、完全な処置または防止のみならず不完全な処置または防止も含み、いくらかの生物学的または医学的に関連する結果が達成される、「実質的」を意味することが意図されることもまた認識されるべきである。処置は、慢性疾患のための継続的な長期的処置、または急性状態の処置のための単回もしくは少数回の投与であってよい。
【0043】
本明細書で用いられる場合の「治療的」という用語は、処置および/または予防を意味する。治療効果は、疾患状態の抑制、寛解、または根治によって得られる。
【0044】
II. 概要
本開示は、タンパク質導入ドメインおよびMYCポリペプチド配列を含むMYC融合タンパク質を用いた、対象におけるT細胞疲弊またはT細胞障害の処置に関する。ある特定の態様において、T細胞疲弊またはT細胞障害は、慢性ウイルス感染症またはがんなどの慢性状態に起因する。ある特定の態様において、T細胞疲弊またはT細胞障害は、急性呼吸器ウイルス感染症に起因する。いくつかの態様において、T細胞疲弊またはT細胞障害は、ワクチン接種後に起こる。いくつかの態様において、T細胞疲弊またはT細胞障害は、以前にワクチン接種を受けた個体における活動性感染中に起こる。
【0045】
本開示は、少なくとも一部には、ドナー対象から単離されたT細胞を、MYCポリペプチドおよびHIV TATタンパク質導入ドメインなどのタンパク質導入ドメイン (PTD) を含むPTD-MYC融合ポリペプチドと接触させると、有利に、CD279(分化のクラスター279)としても公知であるプログラム細胞死タンパク質1 (PD-1)、またはCD152(分化のクラスター152)としても公知である細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4 (CTLA-4) を含むがこれらに限定されない細胞表面免疫チェックポイントタンパク質の発現が減少するという発見に基づく。PD-1およびCTLA-4は、慢性微生物感染症中のおよびがんにおけるT細胞疲弊を促進する阻害性受容体である。LAG-3、CD244 (2B4)、CD160、TIM-3などの付加的な共受容体もまた、この効果に寄与している。これらの受容体からの受容体シグナル伝達を、例えば、これらの受容体を標的として遮断する阻害抗体を用いて遮断することにより、T細胞機能不全が実質的に減少し、細胞傷害性T細胞応答が増加することが示されている。MYC融合タンパク質を用いてこれらの受容体を下方制御し、それによってT細胞疲弊またはT細胞障害をもたらす負のシグナル伝達経路を減少させることで、同様の効果を達成することができることが、本明細書において判明した。いくつかの態様において、本明細書において提供されるMYC融合タンパク質は、免疫細胞の疲弊/障害を逆転させるために利用される。いくつかの態様において、本明細書において提供されるMYC融合タンパク質は、免疫細胞の疲弊/障害を予防または改善するために利用される。
【0046】
1つの局面において、本開示は、有効量の1つまたは複数の修飾された免疫細胞(例えば、例えばCD8+ T細胞などのT細胞)を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象においてT細胞疲弊またはT細胞障害を処置または予防するための方法であって、1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、PTD-MYC融合タンパク質、を含む、前記方法を提供する。いくつかの態様において、健常対照において観察されるものと比較して、T細胞疲弊またはT細胞障害に関連する少なくとも1つまたは複数の免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象は同定される。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、対象から単離された免疫細胞に由来する。いくつかの態様において、免疫細胞は同種ドナーから単離される。免疫細胞は、末梢血、リンパ節、脾臓、または腫瘍から得られ得る。いくつかの態様において、免疫細胞は1つまたは複数のリンパ球を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のリンパ球は、T細胞、B細胞、NK細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のリンパ球はT細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のリンパ球はCD8+ T細胞を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のリンパ球は、対象からの1つまたは複数の疲弊したリンパ球(例えば、1つまたは複数の疲弊したT細胞、例えば、1つまたは複数の疲弊したCD8+ T細胞)を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のリンパ球は、疲弊したリンパ球を含まないが、1つまたは複数の疲弊したリンパ球を有する対象から単離される。
【0047】
いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、免疫細胞(例えば、CD8+ T細胞)の集団を、対象から単離した後に、インビトロでMYC融合タンパク質と接触させることによって調製することができる。いくつかの態様において、本方法は、細胞をMYC融合タンパク質と接触させる前に、免疫細胞をインビトロで増大させる段階をさらに含み得る。いくつかの態様において、本方法は、初代免疫細胞をMYC融合タンパク質と接触させた後に、免疫細胞をインビトロで増大させる段階をさらに含み得る。
【0048】
別の局面において、本開示は、有効量の、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、MYC融合タンパク質、を投与する段階を含む、それを必要とする対象においてT細胞疲弊またはT細胞障害を処置または予防するための方法を提供する。いくつかの態様において、健常対照において観察されるものと比較して、T細胞疲弊またはT細胞障害に関連する少なくとも1つまたは複数の免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象は同定される。
【0049】
いくつかの態様において、MYC融合タンパク質またはMYC融合タンパク質を含む1つもしくは複数の修飾された免疫細胞は、任意の適切な方法によって、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、または腫瘍内に投与することができる。
【0050】
本方法において使用するための例示的なPTD-MYC融合タンパク質が、本明細書において提供される。提供されるPTD-MYC融合タンパク質は、免疫細胞(例えば、T細胞)に侵入し、核に移行することができ、そこで融合タンパク質は1つまたは複数のMYC応答性遺伝子を活性化し得る。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質のタンパク質導入ドメイン配列は、TATタンパク質導入ドメイン配列を含む。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質のMYCポリペプチド部分は、SEQ ID NO: 2または11に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、PTD-MYC融合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1に記載のアミノ酸配列を含む。
【0051】
いくつかの態様において、本明細書において提供されるMYC融合タンパク質または本明細書において提供されるMYC融合タンパク質を含む修飾された免疫細胞で処置するための対象は、健常対照(例えば、疲弊していないT細胞)において観察されるものと比較して、1つまたは複数の免疫細胞マーカーの発現の増加を示し、この場合、免疫細胞マーカーの発現の増加または持続は、T細胞疲弊またはT細胞障害と関連している。いくつかの態様において、増加している1つまたは複数の免疫細胞マーカーは、免疫チェックポイントタンパク質である。いくつかの態様において、増加している1つまたは複数の免疫細胞マーカーは、PD1、LAG3、CD160、2B4 (CD244)、およびそれらの任意の2つまたはそれ以上の組み合わせからなる群より選択される。
【0052】
いくつかの態様において、増加している1つまたは複数の免疫細胞マーカーは、PD-1、CTLA-4、LAG-3、CD160、2B4、IL-7ra、IL-15ra、KLRG-1、TIM-3、Eomes、およびそれらの任意の2つまたはそれ以上の組み合わせからなる群より選択される。
【0053】
いくつかの態様において、疲弊したT細胞において増加している1つまたは複数の免疫細胞マーカーは、CD244、PDCD1、CTLA4、GP49B、PTGER4、CD160、LAG3、IL7R、IL15RA、HAVCR2、PTGER2、CD7、TNFRSF9、GLYCOP、VCAM1、TNFSF6、ITM2A、MOX2、ITGAV、CD9、CCL3、CXCR4、CCL4、CCRL2、SMAD1、RGS16、GPR56、TANK、DUSP1、GPR65、PTPN13、PRKWNK、IL6ST、ITPR5、JAK3、MAP3K1、SH2D2A、SOCS3、ACTN1、ISG20、G1P2、ICSBP1、SERPINA、TCRG-V4、TCRB-V1、PBX3、EOMES、ATF1、AHR、EGR2、HFATC1、ZFP91、HIST1H2、BCL2、CASP3、GAS2、CKS2、CAR2、PLSCR1、SLC12A2、ART3、GPD2、NDUFA5、CYP4V3、ENTPD1、P2RX4、C76628、SFRS7、MTV43、C79248、PENK1、COCH、NR4A2、A43010、IER5、SEPTIN、RCN、WBP5、PBEF1、PPM1B、DDIT4、KDT1、TRIM47、HRB、RNF11、NRIP1、TUBB2、SPP1、KLK6、LY75、SCL29A1、BUB1、NDFIP1、SPRED2、CBX4、およびそれらの任意の2つまたはそれ以上の組み合わせからなる群より選択される。
【0054】
いくつかの態様において、本明細書において提供されるMYC融合タンパク質またはMYC融合タンパク質を含む修飾された免疫細胞による処置は、投与前に観察されたものと比較して、CD244、PDCD1、CTLA4、GP49B、PTGER4、CD160、LAG3、IL7R、IL15RA、HAVCR2、PTGER2、CD7、TNFRSF9、GLYCOP、VCAM1、TNFSF6、ITM2A、MOX2、ITGAV、CD9、CCL3、CXCR4、CCL4、CCRL2、SMAD1、RGS16、GPR56、TANK、DUSP1、GPR65、PTPN13、PRKWNK、IL6ST、ITPR5、JAK3、MAP3K1、SH2D2A、SOCS3、ACTN1、ISG20、G1P2、ICSBP1、SERPINA、TCRG-V4、TCRB-V1、PBX3、EOMES、ATF1、AHR、EGR2、HFATC1、ZFP91、HIST1H2、BCL2、CASP3、GAS2、CKS2、CAR2、PLSCR1、SLC12A2、ART3、GPD2、NDUFA5、CYP4V3、ENTPD1、P2RX4、C76628、SFRS7、MTV43、C79248、PENK1、COCH、NR4A2、A43010、IER5、SEPTIN、RCN、WBP5、PBEF1、PPM1B、DDIT4、KDT1、TRIM47、HRB、RNF11、NRIP1、TUBB2、SPP1、KLK6、LY75、SCL29A1、BUB1、NDFIP1、SPRED2、CBX4、およびそれらの任意の2つまたはそれ以上の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つまたは複数の免疫細胞マーカーの減少をもたらす。
【0055】
いくつかの態様において、本明細書において提供されるMYC融合タンパク質または本明細書において提供されるMYC融合タンパク質を含む修飾された免疫細胞で処置するための対象は、健常対照(例えば、疲弊していないT細胞)において観察されるものと比較して、1つまたは複数の免疫細胞マーカーの発現の減少を示し、この場合、免疫細胞マーカーの発現の減少は、T細胞疲弊またはT細胞障害と関連している。いくつかの態様において、減少している1つまたは複数の免疫細胞マーカーは、IGSF10、SELPL、H2-Q8、FCGR2B、CD3D、ITGB2、ITGA1、ITGA4、KLRK1、SEMA4A、IL18R1、KLRD1、LY6C、KLRC1、EDG6、ITGB7、ITGAX、KLRG1、CKLFSF7、LSP1、CCR5、CCR2、H2-K1、H2-D1、H2-Q10、H2-Q7、SIAT10、LGALS10、RAC2、PIK3CD、ILK、MAP3K8、ARHGEF1、S100A6、STK38、LCK、ARHGAP1、S100A4、RASA3、JAK1、S100A1、HCPH、DGKA、PTK9L、IL18RAP、MAP1LC3、ACTB、IFNGR、TPP2、LYZS、CAPN2、CTSD、USP3、PRSS19、MUS、BZW1、RORA、KLF2、RUNX1、HOD、KLF3、SATB1、BNIP3L、ANXA2、ANXA6、ANXA1、VAMP3、SNX5、SNX10、CDC37、CDKN2D、PAK2、CDC34、HMGCS1、RPN2、NDUFB6、PDHA1、ARL6IP5、PSMD13、FXYD5、ARL2BP、UBE1X、APOBEC、KCTD10、SSR3、UGCG、MGC68、GARS、SDHA、HSPA8、RRM2、ATP5L、PFKP、HBB-B1、HBB-A1、TCEB2、EIF3S8、RPS16、EIF2S1、SFPQ、RPL10A、RPL36、EEF2、RPS7、PIGT、RPL27A、PPGB、TAGLN2、HINT1、LEF1、LSP1、TOB1、SDCBP、SEP15、MTVR2、GABARAPL2、PLD3、ETS1、DSTN、LBR、GOLPH2、WDR1、PLP2、NME2、KCNAB2、DIAP1、TXNDC5、SMFN、STARD10、CLIC1、TMSB10、IAP、GM2A、ATP6V0B、DNAJD1、SUPT4H、PTPRC、CRIP1、EMP1、PLAC8、およびそれらの任意の2つまたはそれ以上の組み合わせからなる群より選択される。
【0056】
いくつかの態様において、本明細書において提供されるMYC融合タンパク質またはMYC融合タンパク質を含む修飾された免疫細胞による処置は、投与前に観察されたものと比較して、IGSF10、SELPL、H2-Q8、FCGR2B、CD3D、ITGB2、ITGA1、ITGA4、KLRK1、SEMA4A、IL18R1、KLRD1、LY6C、KLRC1、EDG6、ITGB7、ITGAX、KLRG1、CKLFSF7、LSP1、CCR5、CCR2、H2-K1、H2-D1、H2-Q10、H2-Q7、SIAT10、LGALS10、RAC2、PIK3CD、ILK、MAP3K8、ARHGEF1、S100A6、STK38、LCK、ARHGAP1、S100A4、RASA3、JAK1、S100A1、HCPH、DGKA、PTK9L、IL18RAP、MAP1LC3、ACTB、IFNGR、TPP2、LYZS、CAPN2、CTSD、USP3、PRSS19、MUS、BZW1、RORA、KLF2、RUNX1、HOD、KLF3、SATB1、BNIP3L、ANXA2、ANXA6、ANXA1、VAMP3、SNX5、SNX10、CDC37、CDKN2D、PAK2、CDC34、HMGCS1、RPN2、NDUFB6、PDHA1、ARL6IP5、PSMD13、FXYD5、ARL2BP、UBE1X、APOBEC、KCTD10、SSR3、UGCG、MGC68、GARS、SDHA、HSPA8、RRM2、ATP5L、PFKP、HBB-B1、HBB-A1、TCEB2、EIF3S8、RPS16、EIF2S1、SFPQ、RPL10A、RPL36、EEF2、RPS7、PIGT、RPL27A、PPGB、TAGLN2、HINT1、LEF1、LSP1、TOB1、SDCBP、SEP15、MTVR2、GABARAPL2、PLD3、ETS1、DSTN、LBR、GOLPH2、WDR1、PLP2、NME2、KCNAB2、DIAP1、TXNDC5、SMFN、STARD10、CLIC1、TMSB10、IAP、GM2A、ATP6V0B、DNAJD1、SUPT4H、PTPRC、CRIP1、EMP1、PLAC8、およびそれらの任意の2つまたはそれ以上の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つまたは複数の免疫細胞マーカーの増加をもたらす。いくつかの態様において、本明細書において提供されるMYC融合タンパク質またはMYC融合タンパク質を含む修飾された免疫細胞による処置は、投与前に観察されたものと比較して、対象におけるサイトカイン産生の増加をもたらす。いくつかの態様において、本明細書において提供されるMYC融合タンパク質またはMYC融合タンパク質を含む修飾された免疫細胞による処置は、投与前に観察されたものと比較して、対象におけるIL-2、TNF、グランザイムB、および/またはIFNγの産生の増加をもたらす。
【0057】
別の局面において、本開示は、有効量の1つまたは複数の修飾された免疫細胞(例えば、CD8+ T細胞)を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象において慢性微生物感染症を処置するための方法であって、1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、PTD-MYC融合タンパク質、を含む、前記方法を提供する。別の局面において、本開示は、有効量の、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、PTD-MYC融合タンパク質、を投与する段階を含む、それを必要とする対象において慢性微生物感染症を処置するための方法を提供する。いくつかの態様において、健常対照において観察されるものと比較して、T細胞疲弊またはT細胞障害に関連する少なくとも1つまたは複数の免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象は同定される。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、対象から単離された免疫細胞に由来する。
【0058】
いくつかの態様において、慢性微生物感染症は、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、原生動物感染症、または寄生虫感染症である。いくつかの態様において、慢性微生物感染症は、慢性型または潜伏型のウイルス感染症である。いくつかの態様において、慢性微生物感染症は、結核菌、らい菌、マイコバクテリウム・ボビス、ピロリ菌、黄色ブドウ球菌、チフス菌、梅毒トレポネーマ、大腸菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、ヒト免疫不全ウイルス (HIV)、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス (HSV)、B型肝炎ウイルス (HBV)、C型肝炎ウイルス (HCV)、麻疹ウイルス、パポバウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、T細胞白血病ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、エプスタイン・バーウイルス、エンテロウイルス、マウス肝炎ウイルス (MHV)、サイトメガロウイルス (CMV)、パピローマウイルス、およびリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV) からなる群より選択される病原体によって引き起こされる。いくつかの態様において、慢性微生物感染症は、抗生物質耐性または抗ウイルス剤耐性の感染症(例えば、抗生物質耐性結核 (TB)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)、エンテロウイルス68、ニパウイルス、中東呼吸器症候群 (MERS) である。
【0059】
別の局面において、本開示は、有効量の1つまたは複数の修飾された免疫細胞(例えば、CD8+ T細胞)を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象において急性呼吸器ウイルス感染症を処置するための方法であって、1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、PTD-MYC融合タンパク質、を含む、前記方法を提供する。別の局面において、本開示は、有効量の、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、PTD-MYC融合タンパク質、を投与する段階を含む、それを必要とする対象において急性呼吸器ウイルス感染症を処置するための方法を提供する。いくつかの態様において、健常対照において観察されるものと比較して、T細胞疲弊またはT細胞障害に関連する少なくとも1つまたは複数の免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象は同定される。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、対象から単離された免疫細胞に由来する。
【0060】
いくつかの態様において、対象は、病原体に対する1つまたは複数のワクチンを以前に投与されている。いくつかの態様において、対象は、病原体に対するワクチン接種後に、T細胞疲弊またはT細胞障害を示す。いくつかの態様において、対象は、病原体感染中にT細胞疲弊またはT細胞障害を示し、この場合、対象は以前に病原体に対するワクチン接種を受けている。
【0061】
いくつかの態様において、慢性微生物感染症または急性呼吸器ウイルス感染症を有する対象は、健常対照(例えば、疲弊していないT細胞)において観察されるものと比較して、1つまたは複数の免疫細胞マーカーの発現の増加を示し、この場合、免疫細胞マーカーの発現の増加は、T細胞疲弊またはT細胞障害と関連している。いくつかの態様において、増加している1つまたは複数の免疫細胞マーカーは、免疫チェックポイントタンパク質である。いくつかの態様において、増加している1つまたは複数の免疫細胞マーカーは、PD1、LAG3、CD160、2B4 (CD244)、およびそれらの任意の2つまたはそれ以上の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、増加している1つまたは複数の免疫細胞マーカーは、PD-1、CTLA-4、LAG-3、CD160、2B4、IL-7ra、IL-15ra、KLRG-1、TIM-3、Eomes、およびそれらの任意の2つまたはそれ以上の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、増加している1つまたは複数の免疫細胞マーカーは、CD244、PDCD1、CTLA4、GP49B、PTGER4、CD160、LAG3、IL7R、IL15RA、HAVCR2、PTGER2、CD7、TNFRSF9、GLYCOP、VCAM1、TNFSF6、ITM2A、MOX2、ITGAV、CD9、CCL3、CXCR4、CCL4、CCRL2、SMAD1、RGS16、GPR56、TANK、DUSP1、GPR65、PTPN13、PRKWNK、IL6ST、ITPR5、JAK3、MAP3K1、SH2D2A、SOCS3、ACTN1、ISG20、G1P2、ICSBP1、SERPINA、TCRG-V4、TCRB-V1、PBX3、EOMES、ATF1、AHR、EGR2、HFATC1、ZFP91、HIST1H2、BCL2、CASP3、GAS2、CKS2、CAR2、PLSCR1、SLC12A2、ART3、GPD2、NDUFA5、CYP4V3、ENTPD1、P2RX4、C76628、SFRS7、MTV43、C79248、PENK1、COCH、NR4A2、A43010、IER5、SEPTIN、RCN、WBP5、PBEF1、PPM1B、DDIT4、KDT1、TRIM47、HRB、RNF11、NRIP1、TUBB2、SPP1、KLK6、LY75、SCL29A1、BUB1、NDFIP1、SPRED2、CBX4、およびそれらの任意の2つまたはそれ以上の組み合わせからなる群より選択される。
【0062】
いくつかの態様において、慢性微生物感染症または急性呼吸器ウイルス感染症を有する対象は、健常対照(例えば、疲弊していないT細胞)において観察されるものと比較して、1つまたは複数の免疫細胞マーカーの発現の減少を示し、この場合、免疫細胞マーカーの発現の減少は、T細胞疲弊またはT細胞障害と関連している。いくつかの態様において、減少している1つまたは複数の免疫細胞マーカーは、IGSF10、SELPL、H2-Q8、FCGR2B、CD3D、ITGB2、ITGA1、ITGA4、KLRK1、SEMA4A、IL18R1、KLRD1、LY6C、KLRC1、EDG6、ITGB7、ITGAX、KLRG1、CKLFSF7、LSP1、CCR5、CCR2、H2-K1、H2-D1、H2-Q10、H2-Q7、SIAT10、LGALS10、RAC2、PIK3CD、ILK、MAP3K8、ARHGEF1、S100A6、STK38、LCK、ARHGAP1、S100A4、RASA3、JAK1、S100A1、HCPH、DGKA、PTK9L、IL18RAP、MAP1LC3、ACTB、IFNGR、TPP2、LYZS、CAPN2、CTSD、USP3、PRSS19、MUS、BZW1、RORA、KLF2、RUNX1、HOD、KLF3、SATB1、BNIP3L、ANXA2、ANXA6、ANXA1、VAMP3、SNX5、SNX10、CDC37、CDKN2D、PAK2、CDC34、HMGCS1、RPN2、NDUFB6、PDHA1、ARL6IP5、PSMD13、FXYD5、ARL2BP、UBE1X、APOBEC、KCTD10、SSR3、UGCG、MGC68、GARS、SDHA、HSPA8、RRM2、ATP5L、PFKP、HBB-B1、HBB-A1、TCEB2、EIF3S8、RPS16、EIF2S1、SFPQ、RPL10A、RPL36、EEF2、RPS7、PIGT、RPL27A、PPGB、TAGLN2、HINT1、LEF1、LSP1、TOB1、SDCBP、SEP15、MTVR2、GABARAPL2、PLD3、ETS1、DSTN、LBR、GOLPH2、WDR1、PLP2、NME2、KCNAB2、DIAP1、TXNDC5、SMFN、STARD10、CLIC1、TMSB10、IAP、GM2A、ATP6V0B、DNAJD1、SUPT4H、PTPRC、CRIP1、EMP1、PLAC8、およびそれらの任意の2つまたはそれ以上の組み合わせからなる群より選択される。
【0063】
本明細書において提供される方法のいずれにおいても、本明細書において提供されるMYC融合タンパク質または本明細書において提供されるMYC融合タンパク質を含む修飾された免疫細胞で処置するための対象は、ヒトまたは非ヒト動物であってよい。
【0064】
別の局面において、本開示は、有効量の1つまたは複数の修飾された免疫細胞(例えば、CD8+ T細胞)を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象においてがんを処置するための方法であって、1つまたは複数の修飾された免疫細胞が、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、PTD-MYC融合タンパク質、を含み、健常対照において観察されるものと比較して、T細胞疲弊またはT細胞障害に関連する少なくとも1つまたは複数の免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象が同定される、前記方法を提供する。別の局面において、本開示は、有効量の、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、PTD-MYC融合タンパク質、を投与する段階を含む、それを必要とする対象においてがんを処置するための方法であって、健常対照において観察されるものと比較して、T細胞疲弊またはT細胞障害に関連する少なくとも1つまたは複数の免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象が同定される、前記方法を提供する。いくつかの態様において、1つまたは複数の修飾された免疫細胞は、対象から単離された免疫細胞に由来する。いくつかの態様において、がんは転移性がんである。いくつかの態様において、がんは、がん腫、腺腫、腺がん、芽細胞腫、肉腫、またはリンパ腫である。いくつかの態様において、がんは、基底細胞がん、胆道がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、絨毛がん、CNSがん、結腸がん、結腸直腸がん、結合組織がん、消化器系のがん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、胃がん、グリア細胞腫瘍、頭頸部がん、ヘパトーマ、肝がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、メラノーマ、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、呼吸器系のがん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、扁平上皮がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮がん、泌尿器系のがん、または外陰がんである。いくつかの態様において、免疫細胞は、固形腫瘍を有するドナー対象から得られ、この場合、健常対照において観察されるものと比較して、T細胞疲弊またはT細胞障害に関連する少なくとも1つまたは複数の免疫細胞マーカーの発現が変化している、と対象は同定される。いくつかの態様において、固形腫瘍は転移性腫瘍である。
【0065】
III. 移植用の免疫細胞を入手および調製する方法
本明細書において提供される方法において使用するための免疫細胞は、当技術分野において公知の任意の適切な方法を用いて入手することができる。いくつかの態様において、免疫細胞は初代免疫細胞である。いくつかの態様において、免疫細胞は、T細胞およびB細胞などのリンパ球である。いくつかの態様において、免疫細胞は、ナチュラルキラー (NK) 細胞である。いくつかの態様において、免疫細胞は、リンパ球とNK細胞の混合物である。いくつかの態様において、免疫細胞は、ドナー対象の末梢血から得られる。いくつかの態様において、免疫細胞は末梢血単核細胞 (PBMC) である。いくつかの態様において、免疫細胞は、ドナー対象の脾臓またはリンパ節から得られる。
【0066】
いくつかの態様において、免疫細胞は、ドナーからの単離後に改変される。例えば、いくつかの態様において、免疫細胞はCAR T細胞である。
【0067】
いくつかの態様において、免疫細胞は、慢性感染症を有する対象から得られる。いくつかの態様において、慢性感染症は、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、原生動物感染症、または寄生虫感染症である。
【0068】
いくつかの態様において、免疫細胞は、がんを有する対象から得られる。いくつかの態様において、免疫細胞は、腫瘍に浸潤したT細胞(例えば、腫瘍浸潤リンパ球)である。いくつかの態様において、T細胞は、腫瘍の手術中に採取される。例えば、いくつかの態様において、T細胞は、生検による腫瘍組織の採取後に単離される。
【0069】
いくつかの態様において、T細胞は、血液、リンパ液、脾臓、または組織生検試料などの、細胞の集団を含む試料から単離される。T細胞は、当技術分野において公知の任意の手段によって、細胞の集団から単離することができる。1つの態様において、本方法は、当技術分野において公知の任意の適切な方法によって、腫瘍試料からT細胞のバルク集団を入手する段階を含む。例えば、T細胞のバルク集団は、腫瘍試料を細胞懸濁液に解離させることによって、腫瘍試料から入手することができ、そこから特定の細胞集団を選択することができる。T細胞のバルク集団を入手する適切な方法には、腫瘍の機械的解離(例えば、粉砕)、腫瘍の酵素的解離(例えば、消化)、および/または(例えば、針による)吸引のうちの任意の1つまたは複数が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0070】
腫瘍試料から得られたT細胞のバルク集団は、任意の適切な型のT細胞を含み得る。好ましくは、腫瘍試料から得られたT細胞のバルク集団は、腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) を含む。
【0071】
免疫細胞の集団は、任意の哺乳動物から入手することができる。特に明記されない限り、本明細書で用いられる場合、「哺乳動物」という用語は、ウサギなどのウサギ目;ネコ科(ネコ)およびイヌ科(イヌ)を含む食肉目;ウシ亜科(ウシ)およびイノシシ科(ブタ)を含む偶蹄目;またはウマ科(ウマ)を含む奇蹄目の哺乳動物を含むがこれらに限定されない、任意の哺乳動物を指す。哺乳動物は、例えば、霊長目、セボイド目 (Ceboid)、もしくはシモイド目 (Simoid)(サル)、または真猿亜目(ヒトおよび類人猿)の非ヒト霊長類であってよい。いくつかの態様において、哺乳動物は、マウスおよびハムスターなどの齧歯目の哺乳動物であってよい。好ましくは、哺乳動物は、非ヒト霊長類またはヒトである。例示的な哺乳動物はヒトである。
【0072】
いくつかの態様において、免疫細胞を受け取るべき対象はまた、免疫細胞のドナーである(すなわち、自己ACT)。いくつかの態様において、免疫細胞を受け取るべき対象は、腫瘍試料のドナーとは異なる(すなわち、同種ACT)。
【0073】
T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、および腫瘍を含む、多くの供給源から入手することができる。ある特定の態様において、T細胞は、Ficoll分離などの、当業者に公知のいくつもの技法を用いて対象から採取された血液の単位から入手することができる。1つの態様において、個体の循環血液からの細胞は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス生成物は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含む。1つの態様においては、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、細胞をその後の処理段階に適した緩衝液または培地中に入れることができる。本発明の1つの態様では、細胞をリン酸緩衝生理食塩水 (PBS) で洗浄する。代替の態様において、洗浄溶液は、カルシウムを欠き、かつマグネシウムを欠き得るか、またはすべてではないが多くの二価陽イオンを欠き得る。カルシウムの非存在下での初期活性化段階は、活性化の拡大をもたらす。当業者が容易に認識するように、洗浄段階は、製造業者の説明書に従って半自動化「フロースルー」遠心分離(例えば、Cobe 2991細胞処理装置)を使用するなど、当業者に公知の方法によって達成することができる。洗浄後、例えばCa不含、Mg不含PBSなどの種々の生体適合性緩衝液に、細胞を再懸濁することができる。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない構成成分を除去し、細胞を培養液に直接再懸濁することもできる。
【0074】
別の態様において、T細胞は、赤血球を溶解し、かつ例えばPERCOLL(商標)勾配を通した遠心分離によって単球を枯渇させることにより、末梢血リンパ球から単離される。T細胞の特定の亜集団、例えば、CD28+、CD4+、CDC、CD45RA+、およびCD45RO+ T細胞などを、陽性または陰性選択技法によってさらに単離することができる。例えば、1つの態様において、T細胞は、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 TまたはXCYTE DYNABEADS(商標)などの抗CD3/抗CD28(すなわち、3×28)結合ビーズと共に、所望のT細胞の陽性選択に十分な期間インキュベートすることにより単離される。1つの態様において、期間は約30分間である。さらなる態様において、期間は、30分から36時間またはそれよりも長く、およびそれらの間のすべての整数値である。さらなる態様において、期間は、少なくとも1、2、3、4、5、または6時間である。さらに別の態様において、期間は10~24時間である。1つの態様において、インキュベーション期間は24時間である。白血病患者からT細胞を単離するために、24時間などのより長いインキュベーション時間を使用することで、細胞収量を増加させることができる。より長いインキュベーション時間を用いて、例えば、腫瘍組織からまたは免疫無防備状態の個体から腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) を単離する場合のように、他の細胞型と比較してT細胞が少ししか存在しない任意の状況において、T細胞を単離することができる。さらに、より長いインキュベーション時間を使用することで、CD8+ T細胞の捕捉効率を増加させることができる。
【0075】
ネガティブ選択によるT細胞集団の濃縮は、ネガティブ選択される細胞に特有の表面マーカーに対する抗体の組み合わせによって達成され得る。1つの態様において、この方法は、ネガティブ選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用するネガティブ磁気免疫付着またはフローサイトメトリーを介した細胞の選別および/または選択である。例えば、ネガティブ選択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは典型的に、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。
【0076】
さらに、抗CD14によってコーティングされたビーズもしくはカラム、または除去を容易にするためのこれらの細胞の食作用活性の利用を含む、種々の方法論によって、血液調製物から単球集団(すなわち、CD14+細胞)を枯渇させることができる。したがって、1つの態様において、本発明は、食作用性単球によって貪食されるために十分なサイズの常磁性粒子を使用する。ある特定の態様において、常磁性粒子は、市販のビーズ、例えば、Dynabeads(商標)という商標でLife Technologiesによって作製されているものである。1つの態様において、その他の非特異的細胞は、常磁性粒子を「無関係の」タンパク質(例えば、血清タンパク質または抗体)でコーティングすることによって除去される。無関係のタンパク質および抗体には、単離されるべきT細胞を特異的に標的としないタンパク質および抗体またはそれらの断片が含まれる。ある特定の態様において、無関係のビーズには、ヒツジ抗マウス抗体、ヤギ抗マウス抗体、およびヒト血清アルブミンでコーティングされたビーズが含まれる。
【0077】
簡潔に説明すると、単球のそのような枯渇は、全血、アフェレーシスされた末梢血、または腫瘍から単離されたT細胞を、単球の除去を可能にする任意の量(およそ20:1のビーズ:細胞比)の、1種類もしくは複数種類の無関係の抗体がカップリングされた常磁性粒子または抗体がカップリングされていない常磁性粒子と共に、22~37℃で約30分~2時間プレインキュベートした後に、常磁性粒子に付着した細胞または常磁性粒子を貪食した細胞を磁気的に除去することによって行われる。そのような分離は、当技術分野において利用可能な標準的な方法を用いて行うことができる。例えば、市販されている種々のもの(例えば、DYNAL(登録商標)磁性粒子濃縮装置(DYNAL MPC(登録商標))を含む、任意の磁気分離方法論を使用することができる。枯渇の前および後に、CD14陽性細胞のフローサイトメトリー解析を含む、当業者に公知の種々の方法論によって、必要な枯渇の保証をモニターすることができる。
【0078】
ポジティブ選択またはネガティブ選択による所望の細胞集団の単離のために、細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度は変動し得る。ある特定の態様においては、細胞とビーズとの最大接触を確実にするために、ビーズと細胞を共に混合する体積を有意に減少させる(すなわち、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。例えば、1つの態様においては、細胞20億個/mLの濃度が使用される。1つの態様においては、細胞10億個/mLの濃度が使用される。さらなる態様においては、細胞1億個/mL超が使用される。さらなる態様においては、細胞1000万個、1500万個、2000万個、2500万個、3000万個、3500万個、4000万個、4500万個、または5000万個/mLの細胞の濃度が使用される。さらに別の態様においては、細胞7500万、8000万個、8500万個、9000万個、9500万個、または1億個/mLからの細胞の濃度が使用される。さらなる態様においては、細胞1億2500万個または1億5000万個/mLの濃度が使用され得る。高濃度を使用することで、細胞収率、細胞活性化、および細胞増大の増加をもたらすことができる。さらに、高い細胞濃度を使用することで、CD28陰性T細胞などの関心対象の標的抗原を弱く発現し得る細胞の、または多くの腫瘍細胞が存在する試料(例えば、白血病血液、腫瘍組織)からのより効率的な捕捉が可能になる。そのような細胞集団は、治療的価値を有し得、したがって入手することが望ましい。例えば、高濃度の細胞を使用することで、通常はCD28発現がより弱いCD8+ T細胞のより効率的な選択が可能になる。
【0079】
関連する態様において、より低い細胞の濃度を使用することが望ましい場合がある。T細胞と表面(例えば、ビーズなどの粒子)の混合物を有意に希釈することにより、粒子と細胞との間の相互作用が最小化される。これにより、粒子に結合すべき所望の抗原を多量に発現する細胞が選択される。例えば、CD4+ T細胞は、より高レベルのCD28を発現し、希釈濃度においてCD8+ T細胞よりも効率的に捕捉される。1つの態様において、使用される細胞の濃度は5×106個/mLである。他の態様において、使用される濃度は、約1×105個/ml~1×106個/mL、およびそれらの間の任意の整数値であってよい。したがって、使用される濃度は、約1×105個/mL、約1.1×105個/mL、約1.2×105個/mL、約1.3×105個/mL、約1.4×105個/mL、約1.5×105個/mL、約1.6×105個/mL、約1.7×105個/mL、約1.8×105個/mL、約1.9×105個/mL、約2×105個/mL、約2.2×105個/mL、約2.4×105個/mL、約2.6×105個/mL、約2.8×105個/mL、約3×105個/mL、約3.2×105個/mL、約3.4×105個/mL、約3.6×105個/mL、約3.8×105個/mL、約4×105個/mL、約4.2×105個/mL、約4.4×105個/mL、約4.6×105個/mL、約4.8×105個/mL、約5×105個/mL、約5.5×105個/mL、約6×105個/mL、約6.5×105個/mL、約7×105個/mL、約7.5×105個/mL、約8×105個/mL、約8.5×105個/mL、約9×105個/mL、約9.5×105個/mL、約1×106個/mL、またはそれらの間の任意の整数値であってよい。
【0080】
T細胞を凍結させることもできる。凍結およびその後の融解段階は、細胞集団内の顆粒球を除去し、かつある程度まで単球を除去することによって、より均一な生成物を提供し得る。血漿および血小板を除去するための洗浄段階の後、細胞を凍結溶液に懸濁することができる。多くの凍結溶液およびパラメータが当技術分野において公知であり、この状況において有用であるが、1つの方法は、20% DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、またはその他の適切な細胞凍結培地の使用を伴い、次いで、細胞を毎分1度の速度で-80℃まで凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相中で保存する。制御された凍結のその他の方法、および-20℃または液体窒素中での制御されない即時凍結を使用することもできる。
【0081】
いくつかの態様において、細胞は、フローサイトメトリーによる単離および/または濃縮とその後の細胞表現型の特徴決定のために、エピトープ特異的な試薬によって直接標識される。いくつかの態様において、免疫細胞は、免疫細胞特異的抗体を接触させることによって単離される。本発明の任意の細胞の選別は、MoFloソーター(DakoCytomation、Fort Collins, Colo.)、FACSAria(商標)、FACSArray(商標)、FACSVantage(商標)、BD(商標)LSR II、およびFACSCalibur(商標)(BD Biosciences、San Jose, Calif.)を含むがこれらに限定されない、種々の市販のセルソーターのいずれかを使用して実施することができる。
【0082】
1つの態様において、本方法は、濃縮された細胞集団においてT細胞の数を増大させる段階をさらに含む。そのような方法は、米国特許第8,637,307号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。PTD-MYC融合ポリペプチドによる細胞の処理の前または後に、T細胞を増大させることができる。T細胞の数は、少なくとも約3倍(または4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、もしくは9倍)、より好ましくは少なくとも約10倍(または20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、もしくは90倍)、より好ましくは少なくとも約100倍、より好ましくは少なくとも約1,000倍、または最も好ましくは少なくとも約100,000倍、増加し得る。T細胞の数は、当技術分野において公知の任意の適切な方法を用いて増大させることができる。細胞数を増大させる例示的な方法は、特許公報第WO 2003057171号、米国特許第8,034,334号、および米国特許出願公開第2012/0244133号に記載されており、これはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0083】
1つの態様において、エクスビボでのT細胞増大は、T細胞の単離とその後の刺激または活性化、これに続くさらなる増大によって行うことができる。本発明の1つの態様において、T細胞は、単一の作用物質によって刺激または活性化され得る。別の態様において、T細胞は、2種類の作用物質によって刺激または活性化され、第1のものは一次シグナルを誘導し、第2のものは共刺激シグナルである。単一のシグナルを刺激するか、または一次シグナル、および二次シグナルを刺激するアクセサリー分子を刺激するのに有用なリガンドは、可溶型で使用することができる。リガンドは、細胞の表面に、設計された多価シグナル伝達プラットフォーム (EMSP) に付着させるか、または表面上に固定化することができる。1つの態様では、一次および二次作用物質の両方が、表面、例えばビーズまたは細胞上に同時に固定化される。1つの態様において、一次活性化シグナルを提供する分子はCD3リガンドであってよく、共刺激分子はCD28リガンドまたは4-1BBリガンドであってよい。いくつかの態様では、メラノーマ腫瘍抗原または患者の腫瘍に由来する抗原などの1種または複数種類の抗原による刺激によって、細胞を増大させる。
【0084】
いくつかの態様において、単離された免疫細胞は、単離後にPTD-MYC融合ポリペプチドで直ちに処理される。他の態様において、単離された免疫細胞は、PTD-MYC融合ポリペプチドで処理する前に、適切な緩衝液中に保存され、凍結される。いくつかの態様において、単離された免疫細胞は、単離後にPTD-MYC融合ポリペプチドで直ちに処理され、処理された細胞は、患者への投与に必要とされるまで、適切な緩衝液で保存され、凍結される。
【0085】
ある特定の態様においては、単離された免疫細胞(例えば、混合集団免疫細胞、またはCD8+ T細胞などの単離された型)を、細胞に取り込まれるのに十分な期間、PTD-MYC融合ポリペプチドを含む組成物と接触させる。いくつかの態様においては、免疫細胞を、PTD-MYC融合ポリペプチドを含む組成物と、約24時間未満、約23時間未満、約22時間未満、約21時間未満、約20時間未満、約19時間未満、約18時間未満、約17時間未満、約16時間未満、約15時間未満、約14時間未満、約13時間未満、約12時間未満、約11時間未満、約10時間未満、約9時間未満、約8時間未満、約7時間未満、約6時間未満、約5時間未満、約4時間未満、約3時間未満、約2時間未満、または約1時間未満、接触させる。
【0086】
ある特定の態様においては、免疫細胞を、PTD-MYC融合ポリペプチドを含む組成物と、約55分未満、約50分未満、約45分未満、約40分未満、約35分未満、約30分未満、約29分未満、約28分未満、約27分未満、約26分未満、約25分未満、約24分未満、約23分未満、約22分未満、約21分未満、約20分未満、約19分未満、約18分未満、約17分未満、約16分未満、約15分未満、約14分未満、約13分未満、約12分未満、約11分未満、または約10分未満、接触させる。ある特定の態様においては、免疫細胞を、PTD-MYC融合ポリペプチドを含む組成物と、約1時間接触させる。
【0087】
ある特定の態様においては、免疫細胞を、PTD-MYC融合ポリペプチドを含む組成物と、24時間またはそれ以上接触させる。ある特定の態様においては、免疫細胞を、PTD-MYC融合ポリペプチドを含む組成物と、約12日未満、約11日未満、約10日未満、約9日未満、約8日未満、約7日未満、約6日未満、約5日未満、約4日未満、約2日未満、または約1日未満、接触させる。
【0088】
前述の態様のいずれかと組み合わせることができるある特定の態様では、免疫細胞を、0.5μg/ml~500μg/mlの濃度のPTD-MYC融合ポリペプチドと接触させる。0.5μg/ml、少なくとも0.6μg/ml、少なくとも0.7μg/ml、少なくとも0.8μg/ml、少なくとも0.9μg/ml、少なくとも1μg/ml、少なくとも2μg/ml、少なくとも3μg/ml、少なくとも4μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも6μg/ml、少なくとも7μg/ml、少なくとも8μg/ml、少なくとも9μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/ml、少なくとも20μg/ml、少なくとも25μg/ml、少なくとも30μg/ml、少なくとも35μg/ml、少なくとも40μg/ml、少なくとも45μg/ml、少なくとも50μg/ml、少なくとも55μg/ml、少なくとも60μg/ml、少なくとも65μg/ml、少なくとも70μg/ml、少なくとも75μg/ml、少なくとも80μg/ml、少なくとも85μg/ml、少なくとも90μg/ml、少なくとも95μg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも110μg/ml、少なくとも120μg/ml、少なくとも130μg/ml、少なくとも140μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも160μg/ml、少なくとも170μg/ml、少なくとも180μg/ml、少なくとも190μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも220μg/ml、少なくとも240μg/ml、少なくとも260μg/ml、少なくとも280μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも320μg/ml、少なくとも340μg/ml、少なくとも360μg/ml、少なくとも380μg/ml、少なくとも400μg/ml、少なくとも420μg/ml、少なくとも440μg/ml、少なくとも460μg/ml、少なくとも480μg/ml、少なくとも500μg/ml。
【0089】
いくつかの態様において、PTD-MYC融合ポリペプチドを含む組成物と接触させる免疫細胞は、キメラ抗原受容体 (CAR)-T細胞を含む、遺伝子改変された抗原受容体を有するT細胞である。例えば様々な戦略を利用して、例えば選択されたペプチド特異性を有する新たなTCRα鎖およびβ鎖を導入することによってT細胞受容体 (TCR) の特異性を変更することにより、T細胞を遺伝子改変することができる(例えば、米国特許第8,697,854号;PCT特許公報:WO2003020763、WO2004033685、WO2004044004、WO2005114215、WO2006000830、WO2008038002、WO2008039818、WO2004074322、WO2005113595、WO2006125962、WO2013166321、WO2013039889、WO2014018863、WO2014083173;米国特許第8,088,379号を参照されたい)。キメラ抗原受容体 (CAR) は、悪性細胞などの選択された標的に特異的な、T細胞などの免疫応答細胞を作製するために使用することができ、多種多様な受容体キメラ構築物が記載されている(例えば、米国特許第5,843,728号;第5,851,828号;第5,912,170号;第6,004,811号;第6,284,240号;第6,392,013号;第6,410,014号;第6,753,162号;第8,211,422号;およびPCT公報WO9215322を参照されたい)。CAR T細胞の調製方法は、当技術分野において公知であり、本明細書に記載されるMYC融合ポリペプチド(例えば、PTD)を含む、修飾されたCAR T細胞を生成するために、本明細書において提供される方法と組み合わせて使用することができる。いくつかの態様において、PTD-MYC融合ポリペプチドは、対象に投与する前のCAR T細胞の増大を改善し得る。
【0090】
一般に、CARは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインからなり、細胞外ドメインは、所定の標的に特異的な抗原結合ドメインを含む。CARの抗原結合ドメインは、抗体または抗体断片(例えば、一本鎖可変断片、scFv)である場合が多いが、標的の特異的な認識をもたらす限り、結合ドメインは特に限定されない。例えば、いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、CARがその受容体のリガンドに結合することができるように、受容体を含み得る。あるいは、抗原結合ドメインは、CARがそのリガンドの内在性受容体に結合することができるように、リガンドを含み得る。
【0091】
いくつかの態様において、所望のCARを発現するT細胞は、抗原および共刺激分子を同時発現するγ線照射された活性化および増殖細胞 (AaPC) との共培養を通して選択される。いくつかの態様では、例えば、IL-2およびIL-21などの可溶性因子の存在下でAaPC上で共培養することよって、操作されたCAR T細胞を増大させる。この増大は、例えば、メモリーCAR+ T細胞を提供するために実施され得る。このようにして、(任意で、インターフェロンγなどの所望のケモカインの産生と共に)抗原保持腫瘍に対する特異的な細胞傷害活性を有するCAR T細胞が提供され得る。
【0092】
いくつかの態様では、T細胞疲弊またはT細胞障害に関連する疾患または状態(例えば、慢性ウイルス感染症、がん、または急性呼吸器ウイルス感染症)の処置のための修飾されたCAR T細胞を生成するために、CAR T細胞を、本明細書において提供されるPTD-MYC融合ポリペプチドとインビトロで接触させる。修飾されたCAR T細胞は、上記のPTD-MYC融合ポリペプチドで修飾された免疫細胞の投与のための方法を含む、任意の適切な方法に従って投与することができる。
【0093】
IV. MYC融合タンパク質
いくつかの態様において、PTD-MYC融合ポリペプチドは、タンパク質導入ドメイン (PTD)、細胞の生存または増殖のうちの1つまたは複数を促進するMYCポリペプチド、および任意に、タンパク質タグドメイン、例えば融合タンパク質の精製を容易にする1つまたは複数のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、MYCポリペプチドと接触した細胞は、(例えば、MYCと接触していない同じ型の同一もしくは類似の細胞と比較して)生存時間の延長、および/または(例えば、MYCと接触していない同じ型の同一もしくは類似の細胞と比較して)増殖の増加を示す。
【0094】
いくつかの態様において、MYC融合タンパク質は、(a) タンパク質導入ドメイン;および (b) MYCポリペプチド配列を含む。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質は、式 (I):
タンパク質導入ドメイン‐MYCポリペプチド配列
のポリペプチドである。
【0095】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるMYC融合タンパク質は、(a) タンパク質導入ドメイン;(b) MYCポリペプチド配列;および (c) タンパク質導入ドメインとMYCポリペプチド配列を連結する1つまたは複数の分子を含む。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質は、式 (II) :
タンパク質導入ドメイン‐X‐MYCポリペプチド配列
のポリペプチドであり、式中、‐X‐は、タンパク質導入ドメインとMYCポリペプチド配列を連結する分子である。いくつかの態様において、‐X‐は少なくとも1個のアミノ酸である。
【0096】
いくつかの態様において、本明細において開示されるMYC融合タンパク質は、(a) タンパク質導入ドメイン;(b) MYCポリペプチド配列;(c) 少なくとも2つのタンパク質タグ;および任意に (d) リンカーを含む。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質は、式(III~VI):
タンパク質導入ドメイン‐X‐MYCポリペプチド配列‐X‐タンパク質タグ1‐X‐タンパク質タグ2(式 (III))、または
タンパク質導入ドメイン‐MYCポリペプチド配列‐X‐タンパク質タグ1‐X‐タンパク質タグ2(式 (IV))、または
タンパク質導入ドメイン‐MYCポリペプチド配列‐タンパク質タグ1‐X‐タンパク質タグ2(式 (V))、または
タンパク質導入ドメイン‐MYCポリペプチド配列‐タンパク質タグ1‐タンパク質タグ2(式 (VI))
のポリペプチドであり、式中、‐X‐はリンカーである。いくつかの態様において、‐X‐は1つまたは複数のアミノ酸である。
【0097】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるMYC融合タンパク質は、(a) タンパク質導入ドメイン;(b) MYCポリペプチド配列;(c) 6-ヒスチジンタグ;(d) V5エピトープタグ;および (e) 任意にリンカーを含む。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質は、式(VII~XIV):
タンパク質導入ドメイン‐X‐MYCポリペプチド配列‐X‐6-ヒスチジンタグ‐X‐V5エピトープタグ(式 (VII))、または
タンパク質導入ドメイン‐MYCポリペプチド配列‐X‐6-ヒスチジンタグ‐X‐V5エピトープタグ(式 (VIII))、または
タンパク質導入ドメイン‐MYCポリペプチド配列‐6-ヒスチジンタグ‐X‐V5エピトープタグ(式 (IX))、または
タンパク質導入ドメイン‐MYCポリペプチド配列‐6-ヒスチジンタグ‐V5エピトープタグ(式 (X))、
タンパク質導入ドメイン‐X‐MYCポリペプチド配列‐X‐V5エピトープタグ‐X‐6-ヒスチジンタグ(式 (XI))、または
タンパク質導入ドメイン‐MYCポリペプチド配列‐X‐V5エピトープタグ‐X‐6-ヒスチジンタグ(式 (XII))、または
タンパク質導入ドメイン‐MYCポリペプチド配列‐V5エピトープタグ‐X‐6-ヒスチジンタグ(式 (XIII))、または
タンパク質導入ドメイン‐MYCポリペプチド配列‐V5エピトープタグ‐6-ヒスチジンタグ(式 (XIV))
のポリペプチドであり、式中、‐X‐はリンカーである。いくつかの態様において、‐X‐は1つまたは複数のアミノ酸である。
【0098】
上記のように、いくつかの態様において、MYC融合タンパク質は1つまたは複数のリンカー配列を含む。リンカー配列は、融合タンパク質のタンパク質導入ドメイン、MYCポリペプチド配列、V5エピトープタグ、および/または6-ヒスチジンタグを連結するために用いることができる。いくつかの態様において、リンカーは1つまたは複数のアミノ酸を含む。いくつかの態様において、リンカーのアミノ酸配列はKGELNSKLEを含む。いくつかの態様において、リンカーはRTGのアミノ酸配列を含む。
【0099】
タンパク質導入ドメイン (PTD)
いくつかの態様において、MYC融合タンパク質はタンパク質導入ドメインを含む。ペプチド輸送は、低分子、タンパク質、または核酸の、細胞の細胞内区画への細胞膜を介した送達のための代替法を提供する。1つの非限定的な例であって、十分に特徴決定されているタンパク質導入ドメイン (PTD) は、TAT由来ペプチドである。Frankelら(例えば、米国特許第5,804,604号、米国特許第5,747,641号、米国特許第5,674,980号、米国特許第5,670,617号、および米国特許第5,652,122号を参照されたい)は、TATのアミノ酸48~57を含むペプチドをカーゴタンパク質(βガラクトシダーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)にコンジュゲートすることによる、カーゴタンパク質の細胞内への輸送を実証した。いくつかの態様において、TATはMRKKRRQRRR (SEQ ID NO: 7) のアミノ酸配列を含む。
【0100】
PTDの別の非限定的な例は、ペネトラチンである。ペネトラチンは、細胞膜を介して親水性高分子を輸送することができる(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Derossi et al., Trends Cell Biol., 8:84-87 (1998))。ペネトラチンは、培養中の細胞に内部移行するショウジョウバエ転写因子、アンテナペディアのホメオドメインのアミノ酸43~58に相当する16アミノ酸ペプチドである。
【0101】
PTDのさらに別の非限定的な例は、VP22である。単純ヘルペスウイルス1型 (HSV-1) 由来の外被タンパク質であるVP22は、細胞膜を介してタンパク質および核酸を輸送する能力を有する(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Elliot et al., Cell 88:223-233, 1997)。VP22の残基267~300は必要であるが、輸送のために十分とはなり得ない。輸送機能を担う領域が同定されていないため、細胞膜を介してカーゴタンパク質および核酸を輸送するために、VP22タンパク質全体が一般的に使用される (Schwarze et al., Trends Pharmacol Sci, 21:45-48, 2000)。
【0102】
いくつかの態様において、PTD-MYC融合ポリペプチドはタンパク質導入ドメインを含む。例として、しかし非限定的に、いくつかの態様において、タンパク質導入ドメインは、TAT、ペネトラチン、VP22、vpr、EPTD、R9、R15、VP16、およびアンテナペディアのうちの1つまたは複数のタンパク質導入ドメインを含む。いくつかの態様において、タンパク質導入ドメインは、TAT、ペネトラチン、VP22、vpr、およびEPTDのうちの1つまたは複数のタンパク質導入ドメインを含む。いくつかの態様において、タンパク質導入ドメインは、TAT、ペネトラチン、VP22、vpr、EPTD、R9、R15、VP16、およびアンテナペディアのうちの少なくとも1つのタンパク質導入ドメインを含む。いくつかの態様において、タンパク質導入ドメインは、合成タンパク質導入ドメイン(例えば、ポリアルギニンまたはPTD-5)を含む。特定の態様において、タンパク質導入ドメインは、TATタンパク質導入ドメインを含む。いくつかの態様において、タンパク質導入ドメインは、MYCポリペプチドに共有結合で連結されている。いくつかの態様において、タンパク質導入ドメインは、ペプチド結合を介してMYCポリペプチドに連結されている。いくつかの態様において、タンパク質導入ドメインは、リンカー配列を介してMYCポリペプチドに連結されている。いくつかの態様において、リンカーは短いアミノ酸配列を含む。例として、しかし非限定的に、いくつかの態様において、リンカー配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸長であり得る。
【0103】
本技術のPTD-MYC融合タンパク質は、任意の所望の順序で配置することができる。例えば、いくつかの態様において、MYC融合タンパク質は、(a) MYCポリペプチドにインフレームで連結されたタンパク質導入ドメイン、(b) V5ドメインにインフレームで連結されたMYCポリペプチド、および c) 6ヒスチジンエピトープタグにインフレームで連結されたV5ドメインの順序で配置することができる。いくつかの態様において、MYC融合タンパク質は、(a) タンパク質導入ドメインにインフレームで連結されたMYCポリペプチド、(b) V5ドメインにインフレームで連結されたタンパク質導入ドメイン、および c) 6ヒスチジンエピトープタグにインフレームで連結されたV5ドメインという成分の順序を有する。いくつかの態様においては、付加的なアミノ酸配列が、配列のそれぞれの間に含まれ得る。いくつかの態様において、付加的なアミノ酸は、ポリペプチド配列の最初および/または最後に含まれ得る。
【0104】
いくつかの態様において、タンパク質導入ドメインはTATタンパク質導入ドメインである。いくつかの態様において、タンパク質導入ドメインはTAT[48-57]である。いくつかの態様において、タンパク質導入ドメインはTAT[57-48]である。
【0105】
タンパク質タグドメイン
いくつかの態様において、MYC融合タンパク質は、融合タンパク質の精製を容易にする1つまたは複数のアミノ酸配列を含むタンパク質タグドメインを含む。いくつかの態様において、タンパク質タグドメインは、ポリヒスチジンタグおよびエピトープタグのうちの1つまたは複数を含む。例として、しかし非限定的に、例示的なタグには、V5、ヒスチジンタグ(例えば、6-ヒスチジンタグ)、HA(赤血球凝集素)タグ、FLAGタグ、CBP(カルモジュリン結合ペプチド)、CYD(共有結合性であるが解離可能なNorpDペプチド)、Strepll、またはHPC(プロテインCの重鎖)のうちの1つまたは複数が含まれる。いくつかの態様において、タンパク質タグドメインは約10~約20アミノ酸長を含む。いくつかの態様において、タンパク質タグドメインは、2アミノ酸長~40アミノ酸長、例えば6~20アミノ酸長を含む。いくつかの態様において、いくつかの態様において、タンパク質タグドメインは、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸、16アミノ酸、17アミノ酸、18アミノ酸、19アミノ酸、20アミノ酸、21アミノ酸、22アミノ酸、23アミノ酸、24アミノ酸、25アミノ酸、26アミノ酸、27アミノ酸、28アミノ酸、29アミノ酸、30アミノ酸、31アミノ酸、32アミノ酸、33アミノ酸、34アミノ酸、35アミノ酸、36アミノ酸、37アミノ酸、38アミノ酸、39アミノ酸、または40アミノ酸を含む。いくつかの態様においては、上記の列挙されたタグのうちの2つ(例えば、V5および6-ヒスチジンタグ)が、タンパク質タグドメインを形成するために共に使用される。
【0106】
いくつかの態様において、ヒスチジンタグは6-ヒスチジンタグである。いくつかの態様において、ヒスチジンタグは配列HHHHHH (SEQ ID NO:8) を含む。いくつかの態様において、本明細書において開示されるMYC融合ペプチドは、V5エピトープタグを含む。いくつかの態様において、V5タグはGKPIPNPLLGLDST (SEQ ID NO:9) のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、V5タグはIPNPLLGLD (SEQ ID NO:10) のアミノ酸配列を含む。
【0107】
タンパク質タグは、任意の適切な方法によって、本明細書において開示される融合タンパク質に付加することができる。例として、しかし非限定的に、いくつかの態様において、TAT-MYCポリペプチド配列は、1つまたは複数のタンパク質タグ、例えばポリHisタグおよび/またはV5タグをコードする発現ベクターにクローニングされる。いくつかの態様において、ポリヒスチジンタグおよび/またはV5タグは、PCRによって付加される(すなわち、PCRプライマーは、ポリヒスチジン配列および/またはV5配列を含む)。
【0108】
PTD-MYC融合ポリペプチドの構築
本明細書において開示されるPTD-MYC融合ポリペプチド(例えば、TAT-MYC融合ポリペプチド)は、当技術分野において周知の方法によって構築することができる。例として、しかし非限定的に、TAT-MYC融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、PCRによって作製することができる。いくつかの態様において、ヒトMYC配列のフォワードプライマーは、TATタンパク質導入ドメインのインフレームのN末端9アミノ酸配列(例えば、RKKRRQRRR)を含む。いくつかの態様において、ヒトMYC配列のリバースプライマーは、終止コドンを除去するように設計される。いくつかの態様において、PCR産物は、任意の適切な発現ベクターにクローニングされる。いくつかの態様において、発現ベクターはポリヒスチジンタグおよびV5タグを含む。
【0109】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるMYC融合タンパク質は、 (a) TATおよび (b) c-MYCを含む。いくつかの態様において、本明細書において開示されるMYC融合タンパク質は、(a) TAT[48-57]および (b) c-MYCを含む。いくつかの態様において、本明細書において開示されるMYC融合タンパク質は、(a) TAT[57-48]および (b) c-MYCを含む。
【0110】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるMYC融合タンパク質は、(a) TAT、(b) c-MYC、(c) リンカー、(d) V5タグ、および (e) 6-ヒスチジンタグを含む。いくつかの態様において、本明細書において開示されるMYC融合タンパク質は、(a) TAT[48-57]、(b) c-MYC、(c) リンカー、(d) V5タグ、および (e) 6-ヒスチジンタグを含む。いくつかの態様において、本明細書において開示されるMYC融合タンパク質は、(a) TAT[57-48]、(b) c-MYC、(c) リンカー、(d) V5タグ、および (e) 6-ヒスチジンタグを含む。
【0111】
いくつかの態様において、PTD-MYC融合ポリペプチドはSEQ ID NO: 1を含み;いくつかの態様において、PTD-MYC融合ポリペプチドはSEQ ID NO: 1である。
【0112】
融合タンパク質は、1つまたは複数の官能基を含むように、合成中または合成後に修飾することができる。例として、しかし非限定的に、タンパク質は、アセチル基、リン酸基、酢酸基、アミド基、アルキル基、および/またはメチル基のうちの1つまたは複数を含むよう修飾することができる。このリストは網羅的であることは意図されず、例示的なものに過ぎない。いくつかの態様において、タンパク質は少なくとも1つのアセチル基を含む。
【0113】
PTD-MYC融合ポリペプチドは、当技術分野において公知の適切な方法によって、例えば、細菌細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞などの細胞における組換えタンパク質発現によって作製することができる。いくつかの態様において、PTD-MYC融合ポリペプチドは、微生物発酵によって組換えにより生成される。いくつかの態様において、微生物発酵は、約1~約10,000リットルの発酵体積、例えば約10~約1,000リットルの発酵体積で行われる。発酵は、任意の適切な微生物宿主細胞および培養液を用いることができる。例示的な態様においては、大腸菌 (E.coli) が微生物宿主細胞として用いられる。別の態様においては、他の微生物、例えば、S. セレビシエ (S. cerevisiae)、P. パストリス (P. pastoris)、ラクトバチルス、バチルス、およびアスペルギルスが使用され得る。例示的な態様において、微生物宿主細胞はBL-21 Star(商標)大腸菌株 (Invitrogen) である。例示的な態様において、微生物宿主細胞はBLR DE3大腸菌株である。
【0114】
いくつかの態様において、宿主細胞は、宿主微生物細胞のコドンバイアスを克服して発現タンパク質の翻訳を改善するために用いられる、稀なコドンに対するtRNAを提供するように改変される。例示的な態様において、宿主細胞(例えば、大腸菌)は、AGG、AGA、AUA、CUA、CCC、GGAコドンに対するtRNAを発現する、pRARE (CamR) などのプラスミドで形質転換される。特定のコドンに対するtRNAを提供するのに適した付加的なプラスミドまたは構築物は、当技術分野で公知であり、提供される方法において用いることができる。
【0115】
選択された宿主細胞にPTD-MYC融合ポリペプチドの発現カセットを導入する目的で、組込み型ベクターまたは自己複製型ベクターを使用することができる。発現カセットにおいて、PTD-MYC融合ポリペプチドのコード配列は、誘導性プロモーターなどのプロモーターに機能的に連結される。誘導性プロモーターは、培養条件の何らかの変化、例えば栄養素の有無または温度の変化に応答して、プロモーターの制御下にあるDNAからの転写を、増加したレベルで開始するプロモーターである。いくつかの態様において、PTD-MYC融合ポリペプチドをコードする核酸は、細菌発現のためにコドン最適化される。
【0116】
多種多様な可能性のある宿主細胞によって認識される例示的なプロモーターは、周知である。これらのプロモーターは、存在する場合、制限酵素消化により供給源DNAからプロモーターを取り出し、単離されたプロモーター配列をベクターに挿入することによって、PTD-MYC融合ポリペプチドをコードするDNAに機能的に連結することができる。微生物宿主と共に使用するのに適したプロモーターには、βラクタマーゼおよびラクトースプロモーターシステム(Chang et al. (1978) Nature, 275:617-624;Goeddel et al. (1979) Nature, 281:544)、アルカリホスファターゼ、トリプトファン (trp) プロモーターシステム(Goeddel (1980) Nucleic Acids Res. 8:4057;EP 36,776)、ならびにtacプロモーター (deBoer et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 21-25) などのハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。選択された宿主細胞による発現に適した任意のプロモーターを使用することができる。適切なヌクレオチド配列は公開されており、それによって当業者は、任意の必要とされる制限部位を供給するためのリンカーまたはアダプターを使用して、PTD-MYC融合ポリペプチドをコードするDNAにそれらを機能的に連結することが可能になる(例えば、Siebenlist et al. (1980) Cell 20: 269を参照されたい)。例示的な態様において、細菌系において使用するためのプロモーターは、コード配列に機能的に連結されたシャイン・ダルガーノ (S.D.) 配列を含み得る。いくつかの態様において、誘導性プロモーターは、当技術分野において周知のように、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド (IPTG) によって誘導されるlacZプロモーターである。プロモーターおよび発現カセットはまた、関心対象のDNA配列を合成するための周知の技法を使用して、新規に合成することもできる。例示的な態様において、本明細書におけるPTD-MYC融合ポリペプチドの発現のための発現ベクターは、pET101/D-Topo (Invitrogen) である。
【0117】
PTD-MYC融合ポリペプチドの発現のためには、PTD-MYC融合ポリペプチドをコードする発現ベクターを含む微生物宿主を、典型的には、発酵リアクター内で高密度まで増殖させる。いくつかの態様において、リアクターは、グルコースの制御された供給を有する。いくつかの態様においては、最初に、発酵槽接種材料を、抗生物質が補充された培地中で培養する(例えば、終夜培養)。次いで、この発酵槽接種材料を用いて、タンパク質の発現用の発酵槽培養液に接種する。発酵槽培養液の少なくとも約15、通常は少なくとも約20、少なくとも25、少なくとも約30、またはそれ以上のOD600の時点で、組換えタンパク質の発現を誘導する。例示的な態様においては、誘導性プロモーターがlacZプロモーターである場合、PTD-MYC融合ポリペプチドの発現を誘導するために、IPTGを発酵培地に添加する。一般に、IPTGは、対数増殖期を表すOD600の時点で、発酵槽培養液に添加する。
【0118】
提供される方法のある特定の態様において、誘導されたタンパク質発現は、誘導後約2時間前後~約5時間前後維持し、かつ誘導後約2時間前後~約3時間前後であってもよい。より長い誘導期間は、組換えタンパク質の分解のため、望ましくない場合がある。誘導中の反応混合物の温度は、好ましくは約28℃~約37℃、通常は約30℃~約37℃である。特定の態様において、誘導は約37℃でなされる。
【0119】
PTD-MYC融合ポリペプチドは、典型的には、微生物細胞においてサイトゾル封入体として発現される。封入体を回収するためには、細胞ペレットを、誘導後に発酵培養液を遠心分離することにより収集し、-70℃またはそれ以下で凍結し、融解し、かつ破壊緩衝液に再懸濁する。従来の方法、例えば、超音波処理、ホモジナイズ、等によって、細胞を溶解する。次いで、通常は、タンパク質を可溶化するのに有効な濃度、例えば、約5M、6M、7M、8M、9M前後、またはそれ以上の尿素の存在下で、溶解物を可溶化緩衝液に再懸濁する。再懸濁は、ペレットを機械的にばらばらにし、均一性を達成するために撹拌することを必要とし得る。いくつかの態様においては、細胞ペレットを尿素緩衝液に直接再懸濁し、均一になるまで混合する。いくつかの態様において、再懸濁/可溶化緩衝液は8M尿素、50 mMリン酸 pH7.5であり、懸濁物はホモジナイザーに通す。
【0120】
いくつかの態様においては、均一化された懸濁液をスルホニル化する。例えば、いくつかの態様においては、均一化された懸濁液を、200 mM亜硫酸ナトリウムおよび10 mMテトラチオン酸ナトリウムを含むように調整する。次いで、その溶液を均一になるまで室温で混合する。次いで、混合された溶解液をさらなる期間(例えば、2~8℃で≧12時間)混合して、スルホニル化を完了させる。次いで、スルホニル化された溶解液を1時間遠心分離した。次いで、スルホニル化されたPTD-MYC融合ポリペプチドを含む上清を、遠心分離により収集し、細胞ペレットを廃棄する。次いで、上清をフィルター、例えば0.22μm膜フィルターに通して、溶解液を清澄化する。
【0121】
次いで、可溶化されたタンパク質を精製する。精製方法には、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、および同様のものが含まれ得る。いくつかの態様においては、アフィニティークロマトグラフィーが使用される。例えば、タンパク質には、簡便な精製のためにエピトープタグまたは6-ヒスチジンタグが提供される。本方法において、例示的なPTD-MYC融合ポリペプチドは、Ni樹脂を用いたNiアフィニティークロマトグラフィーを用いる精製のために、6-ヒスチジンタグを含む。
【0122】
例示的な態様においては、Ni樹脂カラムを、尿素を含有する緩衝液で平衡化する。いくつかの態様において、平衡化緩衝液は、6M尿素、50 mMリン酸、500 mM NaCl、10%グリセロール溶液である。次いで、PTD-MYC融合ポリペプチドを含むスルホニル化され清澄化された上清を、Ni樹脂カラムに負荷する。次いで、カラムを、洗浄緩衝液、例えば、6M尿素、50mMリン酸、10%グリセロール、500 mM NaCl、pH7.5で洗浄する。次いで、カラムを、塩濃度が減少していく順次的な洗浄緩衝液で洗浄した。例えば、例示的なその後の洗浄には、6M尿素、50mMリン酸、10%グリセロール、および2M NaCl、pH7.5と、それに続く6M尿素、50mMリン酸、10%グリセロール、50mM NaCl、および30mMイミダゾール、pH7.5のさらなる洗浄が含まれ得る。
【0123】
洗浄緩衝液の順次的な適用の後、溶出緩衝液、例えば、100~300 mMイミダゾールの勾配を有する6M尿素、50mMリン酸、10%グリセロール、および50mM NaCl、pH7.5を添加することにより、PTD-MYC融合ポリペプチドをカラムから溶出させ、画分を収集する。次いで、プールすべきタンパク質含有画分を、0.22μm膜を通して濾過する。タンパク質収率の評価は、任意の適切な方法、例えばUV波長280での分光光度法を使用して測定することができる。
【0124】
いくつかの態様においては、1つまたは複数の付加的な精製方法を用いて、単離されたPTD-MYC融合ポリペプチドをさらに精製することができる。例示的な態様では、Ni-Sepharoseクロマトグラフィー段階からプールされた画分を、Q-Sepharose樹脂を用いる陰イオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製する。いくつかの態様では、試料を第2の洗浄緩衝液(例えば、6M尿素、50mMリン酸、10%グリセロール、2M NaCl、pH7.5)でQ Sepharose緩衝液の伝導率(17.52 +/- 1mS/cm)まで希釈することにより、Ni Sepharoseクロマトグラフィー段階からのプールを、Q-Sepharoseカラムへの負荷のために調製する。次いで、希釈されたプールをQ-Sepharoseカラムに負荷し、続いてチェイス (chase) 緩衝液(例えば、6M尿素、50mMリン酸、300mM NaCl、および10%グリセロール)を用いる2回のチェイス段階を行い、UV追跡がベースラインに到達し、タンパク質がカラムから溶出されたことが示されるまで、チェイス緩衝液をさらに順次的に適用する。
【0125】
V. PTD-MYC融合タンパク質およびPTD-MYCで修飾された免疫細胞の対象への投与
先に提供されたように、本開示は、有効量の、(i) タンパク質導入ドメイン;および (ii) MYCポリペプチド配列を含む、MYC融合タンパク質、またはMYC融合タンパク質を含む1つもしくは複数の免疫細胞を投与する段階を含む、それを必要とする対象においてT細胞疲弊またはT細胞障害を処置するための方法を提供する。いくつかの態様において、本方法は、有効量の、MYC融合タンパク質を含む修飾された免疫細胞を投与する段階を含む。
【0126】
細胞、器官、または組織を、本明細書において開示される1つまたは複数のPTD-MYC融合ポリペプチドと接触させるための、当業者に公知の任意の方法を利用することができる。適切な方法には、インビトロ、エクスビボ、またはインビボの方法が含まれる。インビボ方法は、典型的には、1つまたは複数のPTD-MYC融合ポリペプチドを哺乳動物に、適切にはヒトに投与することを含む。インビトロまたはエクスビボの方法は、典型的には、PTD-MYC融合ポリペプチドで処理された1つまたは複数の修飾された免疫細胞を哺乳動物に、適切にはヒトに投与することを含む。本明細書に記載される1つまたは複数のPTD-MYC融合ポリペプチドまたはPTD-MYCで修飾された免疫細胞は、有効量(すなわち、所望の治療効果を有する量)で対象に投与される。用量および投与計画は、対象の疾患状態の程度、使用される特定のPTD-MYC融合ポリペプチドの特性、例えばその治療指数、および対象の病歴に依存する。
【0127】
有効量は、医師および臨床医によく知られている方法によって、前臨床試験および臨床試験中に決定され得る。本明細書において開示される方法において有用な、有効量の1つまたは複数のPTD-MYC融合ポリペプチドまたはPTD-MYCで修飾された免疫細胞は、薬学的化合物および細胞を投与するための多くの周知の方法のいずれかにより、それを必要とする哺乳動物に投与され得る。PTD-MYC融合ポリペプチドまたはPTD-MYCで修飾された免疫細胞は、全身的にまたは局所的に投与され得る。
【0128】
PTD-MYCで修飾された免疫細胞組成物の投与には、細胞を対象に投与するための任意の適切な方法を利用することができる。例えば、養子細胞療法に適した方法は、典型的には、修飾された免疫細胞を、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と共に全身に注入(例えば、静脈内または腹腔内注入)することを伴う。いくつかの態様において、PTD-MYCで修飾された免疫細胞は、局所的に、例えば腫瘍内または感染部位に投与される。
【0129】
いくつかの態様において、本明細書に記載される1つまたは複数のPTD-MYC融合ポリペプチドは、微生物感染症の処置または予防のために対象に投与するための薬学的組成物中に、単独でまたは組み合わせて組み込むことができる。いくつかの態様において、本明細書に記載される1つまたは複数のPTD-MYC融合ポリペプチドまたは修飾された免疫細胞は、免疫細胞疲弊の処置または予防のために対象に投与するための薬学的組成物中に、単独でまたは組み合わせて組み込むことができる。このような組成物は、典型的には、活性作用物質および薬学的に許容される担体を含む。本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与と適合する生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに同様のものを含む。補助的な活性化合物を組成物中に組み込むこともできる。
【0130】
薬学的組成物は、典型的には、その意図される投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内、または皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼内、イオン注入での、および経粘膜投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の構成成分を含み得る:滅菌希釈剤、例えば、注射用の水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶媒など;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸など;緩衝剤、例えば、酢酸、クエン酸、またはリン酸など、および張度の調整のための作用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースなど。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基を用いて調整することができる。非経口調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数回用量バイアル中に封入され得る。治療する内科医の便宜のため、投薬製剤は、処置過程(例えば、7日間の処置)のためのすべての必要な装備(例えば、薬物のバイアル、希釈剤のバイアル、シリンジ、および針)を含むキット内に提供され得る。
【0131】
注射用途に適した薬学的組成物には、無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および無菌注射溶液または分散液を即時調製するための無菌粉末が含まれ得る。静脈内投与の場合、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR EL(商標)(BASF、Parsippany, N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩水 (PBS) が含まれる。いずれの場合においても、非経口投与のための組成物は無菌でなければならず、シリンジ操作が容易である程度まで流動性であるべきである。組成物は製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。
【0132】
本明細書において開示される1つまたは複数のPTD-MYC融合ポリペプチドを有する薬学的組成物は、担体を含んでよく、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロプレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、および同様のもの)、ならびにそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であってよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チオメラソール (thiomerasol)、および同様のものにより達成することができる。酸化を防ぐために、グルタチオンおよびその他の抗酸化剤を含めることができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトールなど、または塩化ナトリウムを組成物中に含めることが有利であり得る。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含めることにより行うことができる。
【0133】
無菌注射溶液は、活性化合物を、必要に応じて上記の成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に組み込み、その後濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、基礎分散媒および上記の成分からの必要な他の成分を含む無菌媒体中に活性化合物を組み込むことにより調製される。無菌注射溶液を調製するための無菌粉末の場合、典型的な調製方法には真空乾燥および凍結乾燥が含まれ、これにより、前もって滅菌濾過したその溶液から有効成分と任意の付加的な所望の成分との粉末が得られる。
【0134】
経口用組成物は一般的に、不活性希釈剤または可食担体を含む。経口による治療投与を目的とする場合、活性化合物は、賦形剤と共に組み込み、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセル剤の形態で使用することができる。経口用組成物はまた、口腔洗浄液として用いるために液体担体を用いて調製することもできる。薬学的に適合する結合剤および/または補助物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤、および同様のものは、以下の成分または類似の性質の化合物のうちのいずれかを含み得る:結合剤、例えば、微晶質セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチンなど;賦形剤、例えばデンプンもしくはラクトースなど、崩壊剤、例えば、アルギン酸、Primogel、もしくはコーンスターチなど;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステロート (Sterote) など;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素など;甘味剤、例えばスクロースもしくはサッカリンなど;または香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバーなど。
【0135】
吸入によって投与する場合、化合物は、適切な噴霧剤、例えば二酸化炭素などの気体を含む加圧容器もしくはディスペンサー、または噴霧器からエアロゾルスプレーの形態で送達することができる。そのような方法には、米国特許第6,468,798号に記載されるものが含まれる。
【0136】
本明細書に記載されるPTD-MYC融合ポリペプチドの全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によるものであってよい。経粘膜または経皮投与するには、障壁を透過するのに適した浸透剤を製剤中で使用する。そのような浸透剤は当技術分野で一般的に公知であり、例えば経粘膜投与の場合、これには界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーによって達成することができる。経皮投与するには、活性化合物を、当技術分野で一般的に公知である軟膏、膏薬、ゲル、またはクリーム中に製剤化する。1つの態様において、経皮投与はイオン注入によって行うことができる。
【0137】
治療用作用物質は、担体系中に製剤化することができる。担体はコロイド系であってよい。コロイド系は、リポソーム、リン脂質二重層媒体であってよい。1つの態様において、治療用作用物質は、作用物質の構造の完全性を維持しながら、リポソーム中に封入される。当業者は、リポソームを調製するための種々の方法が存在することを認識するであろう(Lichtenberg et al., Methods Biochem. Anal., 33:337-462 (1988); Anselem et al., Liposome Technology, CRC Press (1993) を参照されたい)。リポソーム製剤は、クリアランスを遅らせ、細胞の取り込みを増加させることができる(Reddy, Ann. Pharmacother., 34(7-8):915-923 (2000) を参照されたい)。活性作用物質はまた、可溶性、不溶性、浸透性、不浸透性、生分解性、または胃保持性ポリマーまたはリポソームを含むがこれらに限定されない、薬学的に許容される成分から調製された粒子中に負荷することもできる。そのような粒子には、ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、微粒子、生分解性微粒子、ナノスフェア、生分解性ナノスフェア、ミクロスフェア、生分解性ミクロスフェア、カプセル、エマルジョン、リポソーム、ミセル、およびウイルスベクター系が含まれるが、これらに限定されない。
【0138】
担体はまた、ポリマー、例えば生分解性生体適合性ポリマーマトリックスであってよい。1つの態様において、治療用作用物質は、作用物質の構造の完全性を維持しながら、ポリマーマトリックス中に包埋することができる。ポリマーは、ポリペプチド、タンパク質、もしくは多糖のように天然であるか、またはポリα-ヒドロキシ酸のように合成であってよい。例には、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、酢酸セルロース、ニトロセルロース、多糖、フィブリン、ゼラチン、およびそれらの組み合わせから作製された担体が含まれる。1つの態様において、ポリマーは、ポリ乳酸 (PLA) または乳酸/グリコール酸共重合体 (PGLA) であってよい。ポリマーマトリックスは、ミクロスフェアおよびナノスフェアを含む、種々の形態およびサイズで調製および単離することができる。ポリマー製剤は、治療効果の期間の延長をもたらし得る(Reddy, Ann. Pharmacother., 34(7-8):915-923 (2000) を参照されたい)。ヒト成長ホルモン (hGH) 用のポリマー製剤が、臨床試験で用いられてきた(Kozarich and Rich, Chemical Biology, 2:548-552 (1998) を参照されたい)。
【0139】
ポリマーミクロスフェア徐放製剤の例は、PCT公報WO 99/15154 (Tracy, et al.)、米国特許第5,674,534号および第5,716,644号(両者ともZale, et al.)、PCT公報WO 96/40073 (Zale, et al.)、ならびにPCT公報WO 00/38651 (Shah, et al.) に記載されている。米国特許第5,674,534号および第5,716,644号ならびにPCT公報WO 96/40073号は、塩との凝集に対して安定化されたエリスロポエチンの粒子を含むポリマーマトリックスについて記載している。
【0140】
いくつかの態様において、治療用化合物は、植込錠およびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤のように、治療用化合物が体内から急速に排出されるのを防ぐ担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤は、公知の技法を用いて調製することができる。材料はまた、例えばAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液(細胞特異的抗原に対するモノクローナル抗体によって特定の細胞に標的化されるリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0141】
治療用化合物は、細胞内送達を増強するように製剤化することもできる。例えば、リポソーム送達系が当技術分野で公知であり、例えば、Chonn and Cullis, 「Recent Advances in Liposome Drug Delivery Systems,」 Current Opinion in Biotechnology 6:698-708 (1995);Weiner, 「Liposomes for Protein Delivery: Selecting Manufacture and Development Processes,」 Immunomethods, 4(3):201-9 (1994);およびGregoriadis, 「Engineering Liposomes for Drug Delivery: Progress and Problems,」 Trends Biotechnol., 13(12):527-37 (1995) を参照されたい。Mizguchi et al., Cancer Lett., 100:63-69 (1996) は、インビボおよびインビトロの両方でタンパク質を細胞に送達するための融合性リポソームの使用を記載している。
【0142】
任意の治療用作用物質の投薬量、毒性、および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養物または実験動物において標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果との用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が有利である。毒性副作用を示す化合物を使用してもよいが、非感染細胞に対する潜在的損傷を最小限に抑え、それにより副作用を軽減するために、罹患組織の部位にそのような化合物を標的化する送達系を設計するよう注意が払われるべきである。
【0143】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための投薬量の範囲を規定する上で使用することができる。そのような化合物の投薬量は、毒性のほとんどないED50を含む循環濃度の範囲内にあってよい。投薬量は、用いられる剤形および使用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。本方法で用いられる任意の化合物に関して、治療有効用量は、最初に培養細胞アッセイから推定することができる。用量は、細胞培養物で決定されたIC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて規定することができる。そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量を正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0144】
典型的には、治療または予防効果を達成するのに十分な、本明細書において開示される1つまたは複数のPTD-MYC融合ポリペプチドの有効量は、約0.000001 mg/体重1キログラム/日~約10,000 mg/体重1キログラム/日の範囲である。適切には、投薬量範囲は、約0.0001 mg/体重1キログラム/日~約100 mg/体重1キログラム/日である。例えば、投薬量は、毎日、2日ごと、もしくは3日ごとに1 mg/体重1キログラムもしくは10 mg/体重1キログラムであるか、または毎週、2週間ごと、もしくは3週間ごとに1~10 mg/体重1キログラムの範囲内であってよい。1つの態様において、治療用化合物の単回投薬量は、0.001~10,000マイクログラム/体重1 kgの範囲である。1つの態様において、担体中の1つまたは複数のPTD-MYC融合ポリペプチドの濃度は、0.2~2000マイクログラム/送達1ミリリットルの範囲である。例示的な処置計画は、1回/日または1回/週の投与を必要とする。治療的適用では、疾患の進行が軽減されるかもしくは終結するまで、または対象が疾患の症状の部分的もしくは完全な改善を示すまで、相対的に短い間隔での相対的に高い投薬量が必要とされる場合がある。その後、患者に予防計画を施すことができる。
【0145】
いくつかの態様において、1つまたは複数のPTD-MYC融合ポリペプチドの治療有効量は、10-32~10-6モル、例えばおよそ10-7モルの、標的組織での阻害剤の濃度として定義することができる。この濃度は、0.001~100 mg/kgの全身用量、または体表面積による同等の用量によって送達され得る。投与のスケジュールは、例えば、連続投与(例えば、非経口注入または経皮適用)もまた含めて、1日1回または週1回の投与により、標的組織における治療濃度を維持するように最適化される。
【0146】
当業者は、疾患または障害の重症度、以前の処置、対象の健康全般および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むがこれらに限定されない、ある特定の要因が、対象を効率的に処置するために必要とされる投薬量およびタイミングに影響し得ることを認識するであろう。さらに、本明細書に記載される治療用組成物の治療有効量による対象の処置は、単回の処置または一連の処置を含み得る。
【0147】
本方法に従って処置される哺乳動物は、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、およびウマなどの家畜;イヌおよびネコなどのペット動物;ラット、マウス、およびウサギなどの実験動物を含む任意の哺乳動物であってよい。いくつかの態様において、哺乳動物はヒトである。
【0148】
VI. 併用療法
いくつかの態様において、PTD-MYC融合ポリペプチドまたはPTD-MYCで修飾された免疫細胞は、付加的な治療剤と共に投与される。併用療法のための適切な治療剤は、処置されるべき状態または疾患に基づいて選択することができる。いくつかの態様において、付加的な治療剤は、PTD-MYC融合ポリペプチドまたはPTD-MYCで修飾された免疫細胞による処置の前に、該処置と同時に、該処置の合間合間に、または該処置の後に投与される。いくつかの態様において、付加的な治療剤は、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-7、IL-12)、サイトカイン、ケモカイン、またはおよび免疫調節薬などの免疫調節剤である。いくつかの態様において、付加的な治療剤は、抗がん剤(例えば、化学療法、放射線療法、腫瘍溶解剤、免疫療法、モノクローナル抗体、抗がん核酸もしくはタンパク質、抗がんウイルスもしくは微生物、およびそれらの任意の組み合わせ)、抗菌剤、または抗ウイルス剤である。
【0149】
VII. キット
本態様によるキットは、バイアル、チューブ、アンプル、ボトル、シリンジ、またはバッグなどの1つまたは複数の容器をその中に密封している、箱、カートン、チューブなどの運搬手段を含み得る。キットはまた、本技術のPTD-MYC融合ポリペプチド、および/またはPTD-MYC融合ポリペプチドで修飾された免疫細胞を使用するための関連する説明書を含み得る。いくつかの態様において、キットは、MYC融合ポリペプチドで修飾された免疫細胞などの、養子細胞療法の有効量を含む。いくつかの態様において、キットは、投与されたMYC融合ポリペプチドおよび/またはMYC融合ポリペプチドで修飾された免疫細胞を検出するための1つまたは複数の試薬を含む。
【実施例
【0150】
本技術を以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例は決して限定として解釈されるべきではない。本明細書における実施例は、本技術の利点を説明するために、および当業者が本技術の組成物およびシステムを調製または使用することをさらに支援するために提供される。実施例は、添付の特許請求の範囲によって定義される本技術の範囲を限定するものとして、決して解釈されるべきではない。実施例は、上記の本技術の変化形、局面、または態様のいずれかを含むか、または組み込むことができる。上記の変化形、局面、または態様はまた、さらにそれぞれが、本技術のありとあらゆるその他の変化形、局面、または態様の変化形を含むか、または組み込むことができる。
【0151】
実施例1:単離された免疫細胞は、TAT-MYCによる処理後に、免疫チェックポイント受容体PD-1およびCTLA-4のレベル低下を示す
全血試料をドナー対象から単離し、血液抗凝固剤であるエチレンジアミン四酢酸 (EDTA) と混合した。細胞を37℃、5% CO2で少なくとも24時間インキュベートした後、次いで、SEPAX-100細胞処理システム(Biosafe America Inc.、Houston, TX)上で密度勾配溶液 (DGS) を用いて、全血試料を、リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)および単球を含む末梢血単核細胞(PBMC;免疫細胞)と廃棄物(すなわち、赤血球、血小板、血漿、等)に分離する。PBMCを、細胞分離工程中に、生理食塩水中の2.5% (w/v) HSA(ヒト血清アルブミン)溶液で2回洗浄した。洗浄段階の後、免疫細胞を細胞1×106個/mlの濃度で2.5% (w/v) HSA溶液に再懸濁して、細胞懸濁液を提供した。
【0152】
細胞分離工程の後、免疫細胞の試料をDPBS(陰性対照)またはTAT-MYC融合タンパク質(細胞106個に対して25μg/mL)で処理し、室温で1時間インキュベートした。次いで、処理された免疫細胞(TBX-3400と称される)をSEPAX-100上で再度洗浄し、過剰なTAT-MYCを2.5% (w/v) HSA溶液で細胞から洗い流した。最後の洗浄段階の後、TBX-3400を細胞1×106個/mlの濃度で2.5% (w/v) HSA溶液に再懸濁した。
【0153】
24ウェルプレートを、滅菌DPBS中の抗CD3e抗体の溶液(500μL、5μg/mL;BD Biosciences)でコーティングした。対照ウェルについては、500μLのDPBSのみを添加した。プレートを4℃で一晩インキュベートした後、溶液を除去した。次いで、各ウェルを2 mLの滅菌DPBSで2回洗浄した。次いで、細胞を細胞2×106個/mLの濃度で完全RPMI培地 (cRPMI) に再懸濁し、続いて1 mLのDPBSで洗浄した。次に、プレートのレイアウトに従って、1.0 mLの細胞懸濁液を各ウェルに添加した。次に、抗CD28抗体の溶液(100μL、200μg/mL;BD Biosciences)をcRPMIで調製し、10倍に段階希釈して、cRPMI中のCD28抗体の2つの保存溶液(20μg/mLおよび2μg/mL)を作製した。次に、10μLの適切なCD28抗体溶液またはDPBS(対照もしくは単一活性化細胞)を、指定のウェルに添加した。次いで、アッセイプレートを37℃、5% CO2で48時間または72時間インキュベートし、その後、適切な抗体(抗ヒトCD25-PE、抗ヒトCD274-APC、抗ヒトCD279-APC、抗-ヒトCD152-PE、および抗ヒトCD86-PE;BD Biosciences)で染色し、FACS解析により免疫チェックポイントタンパク質の細胞表面発現の大きさを可視化した(図1~3)。図2A~2Eは、細胞活性化後にフローサイトメトリーにより判定して、TBX-3400が、対照免疫細胞と比較して、PD-1およびCTLA-4の発現レベルの低下を示すことを示す。
【0154】
したがって、これらの結果から、本明細書において開示されるPTD-MYC融合タンパク質が、T細胞上に発現される免疫チェックポイントタンパク質を減少させ、それを必要とする対象においてT細胞疲弊を改善するおよび/または逆転させるための方法において有用であることが実証される。
【0155】
実施例2:単離された免疫細胞は、TAT-MYCによる処理後に、機能不全の免疫細胞マーカーの発現減少を示す
末梢血単核細胞 (PBMC) を上記のように調製する。細胞分離工程の後、免疫細胞の試料をDPBS(陰性対照)またはTAT-MYC融合タンパク質(細胞106個に対して25μg/mL)で処理し、室温で1時間インキュベートする。次いで、処理された免疫細胞(TBX-3400と称される)をSEPAX-100上で再度洗浄し、過剰なTAT-MYCを2.5% (w/v) HSA溶液で細胞から洗い流す。最後の洗浄段階の後、TBX-3400を細胞1×106個/mlの濃度で2.5% (w/v) HSA溶液に再懸濁する。
【0156】
24ウェルプレートを、滅菌DPBS中の抗CD3e抗体の溶液(500μL、5μg/mL;BD Biosciences)でコーティングする。対照ウェルについては、500μLのDPBSのみを添加した。プレートを4℃で一晩インキュベートした後、溶液を除去した。次いで、各ウェルを2 mLの滅菌DPBSで2回洗浄する。次いで、細胞を細胞2×106個/mLの濃度で完全RPMI培地 (cRPMI) に再懸濁し、続いて1 mLのDPBSで洗浄する。次に、プレートのレイアウトに従って、1.0 mLの細胞懸濁液を各ウェルに添加する。次に、抗CD28抗体の溶液(100μL、200μg/mL;BD Biosciences)をcRPMIで調製し、10倍に段階希釈して、cRPMI中のCD28抗体の2つの保存溶液(20μg/mLおよび2μg/mL)を作製する。次に、10μLの適切なCD28抗体溶液またはDPBS(対照もしくは単一活性化細胞)を、指定のウェルに添加する。次いで、アッセイプレートを37℃、5% CO2で48時間または72時間インキュベートし、その後、LAG3、CD160、2B4、IL-7ra、IL-15ra、KLRG-1、TIM-3、およびEomesに対する抗体で染色し、FACS解析により免疫細胞機能不全タンパク質のこれらの免疫細胞マーカーの細胞表面発現の大きさを可視化する。細胞活性化後にフローサイトメトリーにより判定して、TAT-MYC処理細胞 (TBX-3400) が、対照免疫細胞と比較して、LAG3、CD160、2B4、IL-7ra、IL-15ra、KLRG-1、TIM-3、およびEomesの発現レベルの低下を示すことが予想される。
【0157】
したがって、これらの結果から、本明細書において開示されるPTD-MYC融合タンパク質が、T細胞上に発現される免疫細胞機能不全の免疫細胞マーカーの細胞表面発現を減少させ、それを必要とする対象においてT細胞疲弊またはT細胞障害を改善するおよび/または逆転させるための方法において有用であることが実証されるであろう。
【0158】
実施例3:慢性ウイルス感染後に、TAT-MYCで処置されたマウスは、機能不全の免疫細胞マーカーの発現減少を示す
本実施例では、マウスを本技術のPTD-MYC融合タンパク質で処置して、マウスのT細胞が、慢性ウイルス感染後のT細胞機能不全の免疫細胞マーカーの発現増加を特徴とするT細胞疲弊から救済され得るかどうかを判定する。簡潔に説明すると、2×105プラーク形成単位 (PFU) のマウス肝炎ウイルス (MHV)、サイトメガロウイルス (CMV)、C型肝炎ウイルス (HEPC)、またはリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV)をマウスにi.v.注射して、慢性感染症を惹起させる。感染後の所定の時点で(例えば、感染の1~10週間後)、マウスを2群に分け、s.c.尾静脈注射により50 ug/kg PTD-MYC融合タンパク質で処置するか(例えば、毎日、毎週、もしくは隔週)、または処置しない(NT;対照群)。
【0159】
次いで、マウス肝炎ウイルス (MHV)、サイトメガロウイルス (CMV)、もしくはリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV) 感染マウスおよび対照マウスから単離された免疫細胞を、適切な蛍光色素標識抗体で染色し、FACS解析により免疫チェックポイントタンパク質の細胞表面発現の大きさを可視化する。慢性微生物感染症を示すマウス(NT;対照群)は、PD-1、CTLA-4、およびKLRG-1を含むがこれらに限定されない機能不全の免疫細胞マーカーのレベル上昇を示すことが予測される。さらに、本技術のPTD-MYC融合タンパク質で処置されたマウスは、機能不全の免疫細胞マーカーのレベル低下を示すことが予想される。
【0160】
したがって、これらの結果から、本明細書において開示されるPTD-MYC融合タンパク質が、免疫チェックポイントタンパク質の増加を特徴とする慢性ウイルス感染症を処置し、免疫細胞機能不全の細胞マーカーの細胞表面発現を減少させ、それを必要とする対象において免疫細胞疲弊を改善するおよび/または逆転させるための方法において有用であることが実証されることが予想される。さらに、MYC融合タンパク質による処置は、未処置と比較して、対象におけるサイトカイン産生(例えば、IL-2、TNF)、グランザイムB、および/またはIFNγの発現の増加をもたらすことが予想される。
【0161】
実施例4:慢性ウイルス感染症の処置のための、TAT-MYC処理免疫細胞で処置されたマウス
本実施例では、慢性ウイルス感染症を有するマウスを、リンパ節または脾臓から単離され、PTD-MYC融合タンパク質で処理された免疫細胞(例えば、TBX-3400)で処置する。簡潔に説明すると、2×105プラーク形成単位 (PFU) のマウス肝炎ウイルス (MHV)、サイトメガロウイルス (CMV)、C型肝炎ウイルス (HEPC)、またはリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV)をマウスにi.v.注射して、慢性感染症を惹起させる。感染後の所定の時点で(例えば、感染の1~10週間後)、マウスを群に分ける。リンパ節または脾臓から単離され、PTD-MYC融合タンパク質で処理された免疫細胞(例えば、TBX-3400)を、感染の初期波の間(慢性疾患を予防するため)またはウイルスのスパイクが過ぎてT細胞機能が低下し始めた後(慢性疾患を処置するため)のいずれかに、尾静脈注射によりマウスに静脈内投与する。マウスを、1つまたは複数の免疫チェックポイントタンパク質および/または免疫細胞疲弊のマーカーについてアッセイする。
【0162】
TBX-3400で処置されたマウスは、TBX-3400で処置されていない対照マウスと比較して、ウイルス力価の低下および/または慢性ウイルス感染症の1つもしくは複数の症状の減少を示すことが予想される。したがって、処置されたマウスは、TBX-3400で処置されていない対照マウスと比較して、1つもしくは複数の免疫チェックポイントタンパク質の増加、免疫細胞機能不全の細胞マーカーの細胞表面発現の減少、ならびに免疫細胞疲弊の改善および/または逆転を示すことが予想される。さらに、TBX-3400による処置は、未処置と比較して、対象におけるサイトカイン産生(例えば、IL-2、TNF)、グランザイムB、および/またはIFNγの発現の増加をもたらすことが予想される。
【0163】
実施例5:微生物ワクチン接種後に、TAT-MYCで処置されたマウスは、機能不全の免疫細胞マーカーの発現減少を示す
本実施例では、マウスを本技術のPTD-MYC融合タンパク質で処置して、マウスのT細胞が、微生物ワクチン接種後の機能不全の免疫細胞マーカーの発現増加から救済され得るかどうかを判定する。簡潔に説明すると、BALB/cマウスに、鼻腔内 (i.n.) ワクチン接種または皮下 (s.c.) ワクチン接種のいずれかにより、M.・ボビス カルメット ゲラン桿菌 (BCG) をワクチン接種する。i.n.ワクチン接種は、マイクロピペットを用いて、1×106 CFUを含む合計30 mLのBCGワクチン懸濁液を外鼻腔に1滴ずつ適用し、マウスが懸濁液を肺に自然に吸入できるようにすることによって行う。s.c.ワクチン接種の場合は、針を用いて50 mLのBCG懸濁液を左右の側腹部両方に注射して、合計で1×106 CFUを送達する。ワクチン希釈液を投与したマウスまたはナイーブマウスを対照とする。BCGワクチン接種マウスおよび対照マウスを2群に分け、s.c.尾静脈注射により50 ug/kg PTD-MYC融合タンパク質で処置するか、または注射しない(NT-BCGワクチン接種;対照群)。感染後の所定の時点で(例えば、感染の1~10週間後)、気道i.n.経路によりマウスに負荷して、5×104 CFUのMtb Erdmanを送達する。
【0164】
次いで、BCGワクチン接種マウスおよび対照マウスから回収された肺または脾臓細胞を、適切な蛍光色素標識抗体で染色し、FACS解析により免疫チェックポイントタンパク質の細胞表面発現レベルを可視化する。NT-BCGワクチン接種マウスは、PD-1、CTLA-4、およびKLRG-1を含むがこれらに限定されない機能不全の免疫細胞マーカーのレベルが上昇していることが予測される。さらに、本技術のPTD-MYC融合タンパク質で処置されたマウスは、機能不全の免疫細胞マーカーのレベル低下を示すことが予想される。
【0165】
したがって、これらの結果から、本明細書において開示されるPTD-MYC融合タンパク質が、免疫チェックポイントタンパク質の発現を増加させることによって微生物ワクチンに応答したT細胞機能を維持し、免疫細胞機能不全の細胞マーカーの細胞表面発現を減少させ、それを必要とする対象においてT細胞疲弊を改善するおよび/または逆転させるための方法において有用であることが実証されることが予想される。さらに、MYC融合タンパク質による処置は、未処置と比較して、対象におけるサイトカイン産生(例えば、IL-2、TNF)、グランザイムB、および/またはIFNγの発現の増加をもたらすことが予想される。
【0166】
実施例6:慢性微生物感染症の処置のための、TAT-MYC処理免疫細胞で処置されたマウス
本実施例では、慢性微生物感染症を有するマウスを、リンパ節または脾臓から単離され、PTD-MYC融合タンパク質で処理された免疫細胞(例えば、TBX-3400)で処置する。簡潔に説明すると、マウスに微生物病原体(例えば、M.・ボビス カルメット ゲラン桿菌 (BCG))を感染させて、慢性感染症を惹起させる。感染後の所定の時点で(例えば、感染の1~10週間後)、マウスを群に分ける。リンパ節または脾臓から単離され、PTD-MYC融合タンパク質で処理された免疫細胞(例えば、TBX-3400)を、感染の初期波の間(慢性疾患を予防するため)または感染の初期スパイクが過ぎてT細胞機能が低下し始めた後(慢性疾患を処置するため)のいずれかに、尾静脈注射によりマウスに静脈内投与する。マウスを、1つまたは複数の免疫チェックポイントタンパク質および/または免疫細胞疲弊のマーカーについてアッセイする。
【0167】
TBX-3400で処置されたマウスは、TBX-3400で処置されていない対照マウスと比較して、CFUの低下および/または慢性微生物感染症の1つもしくは複数の症状の減少を示すことが予想される。したがって、処置されたマウスは、TBX-3400で処置されていない対照マウスと比較して、1つもしくは複数の免疫チェックポイントタンパク質の増加、免疫細胞機能不全の細胞マーカーの細胞表面発現の減少、ならびに免疫細胞疲弊の改善および/または逆転を示すことが予想される。さらに、TBX-3400による処置は、未処置と比較して、対象におけるサイトカイン産生(例えば、IL-2、TNF)、グランザイムB、および/またはIFNγの発現の増加をもたらすことが予想される。
【0168】
実施例7:急性呼吸器ウイルス感染症後に、TAT-MYCで処置されたマウスは、機能不全の免疫細胞マーカーの発現減少を示す
本実施例では、マウスを本技術のPTD-MYC融合タンパク質で処置して、マウスのT細胞が、慢性ウイルス感染後のT細胞機能不全の免疫細胞マーカーの発現増加を特徴とするT細胞障害から救済され得るかどうかを判定する。簡潔に説明すると、約2×105プラーク形成単位 (PFU) の呼吸器ウイルス(例えば、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス (RSV)、肺炎ウイルス、呼吸器ワクシニアウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器アデノウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス (SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス (MERS-CoV)、またはヒトメタニューモウイルス (HMPV))をマウスに投与して、ウイルス感染症を惹起させる。感染後の所定の時点で(例えば、感染の1~10週間後)、マウスを2群に分け、s.c.尾静脈注射により50 ug/kg PTD-MYC融合タンパク質で処置するか(例えば、毎日、毎週、もしくは隔週)、または処置しない(NT;対照群)。
【0169】
次いで、ウイルス感染マウスおよび対照マウスから単離された免疫細胞を、適切な蛍光色素標識抗体で染色し、FACS解析により免疫チェックポイントタンパク質の細胞表面発現の大きさを可視化する。急性呼吸器ウイルス感染症の間にT細胞障害を示すマウス(NT;対照群)は、PD-1、CTLA-4、およびKLRG-1を含むがこれらに限定されない機能不全の免疫細胞マーカーのレベル上昇を示すことが予測される。さらに、本技術のPTD-MYC融合タンパク質で処置されたマウスは、機能不全の免疫細胞マーカーのレベル低下を示すことが予想される。
【0170】
したがって、これらの結果から、本明細書において開示されるPTD-MYC融合タンパク質が、免疫チェックポイントタンパク質の増加を特徴とする慢性ウイルス感染症を処置し、免疫細胞機能不全の細胞マーカーの細胞表面発現を減少させ、それを必要とする対象において免疫細胞疲弊/障害を改善するおよび/または逆転させるための方法において有用であることが実証されることが予想される。さらに、TBX-3400による処置は、未処置と比較して、対象におけるサイトカイン産生(例えば、IL-2、TNF)、グランザイムB、および/またはIFNγの発現の増加をもたらすことが予想される。
【0171】
実施例8:急性呼吸器ウイルス感染症後に、TAT-MYCで処置されたマウスは、機能不全の免疫細胞マーカーの発現減少を示す
本実施例では、マウスを本技術のPTD-MYC融合タンパク質で処置して、マウスのT細胞が、慢性ウイルス感染後のT細胞機能不全の免疫細胞マーカーの発現増加を特徴とするT細胞障害から救済され得るかどうかを判定する。簡潔に説明すると、約2×105プラーク形成単位 (PFU) の呼吸器ウイルス(例えば、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス (RSV)、肺炎ウイルス、呼吸器ワクシニアウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器アデノウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス (SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス (MERS-CoV)、またはヒトメタニューモウイルス (HMPV))をマウスに投与して、感染症を惹起させる。感染後の所定の時点で(例えば、感染の1~10週間後)、マウスを群に分ける。リンパ節または脾臓から単離され、PTD-MYC融合タンパク質で処理された免疫細胞(例えば、TBX-3400)を、尾静脈注射によりマウスに静脈内投与する。マウスを、1つまたは複数の免疫チェックポイントタンパク質および/または免疫細胞疲弊のマーカーについてアッセイする。
【0172】
TBX-3400で処置されたマウスは、TBX-3400で処置されていない対照マウスと比較して、ウイルス力価の低下および/またはウイルス感染症の1つもしくは複数の症状の減少を示すことが予想される。したがって、処置されたマウスは、TBX-3400で処置されていない対照マウスと比較して、1つもしくは複数の免疫チェックポイントタンパク質の増加、免疫細胞機能不全の細胞マーカーの細胞表面発現の減少、ならびに免疫細胞疲弊の改善および/または逆転を示すことが予想される。さらに、TBX-3400による処置は、未処置と比較して、対象におけるサイトカイン産生(例えば、IL-2、TNF)、グランザイムB、および/またはIFNγの発現の増加をもたらすことが予想される。
【0173】
実施例9:再発難治性メラノーマの患者から単離された免疫細胞は、TAT-MYCによる処理後に、免疫チェックポイント受容体PD-1およびCTLA-4のレベル低下を示す
本実施例は、再発難治性メラノーマの患者から単離された末梢血単核細胞 (PBMC) のTat-MYC融合タンパク質処理が、Tat-MYC融合タンパク質で処理された細胞上のCD279 (PD-1) およびCD152 (CTLA-4) の表面発現レベルの低下をもたらすことを実証する。
【0174】
Ficoll-Hypaque勾配遠心分離により、ヒトPBMCを末梢血から得る。この細胞を、5%ヒト血清アルブミン (HSA) を補充した0.9%生理食塩水で2回洗浄する。次いで、0.9%生理食塩水および5% HSA中の50μg/mL Tat-MYCタンパク質と共に室温で1時間インキュベートする。インキュベーション後、細胞を0.9%生理食塩水および5% HSA中のタンパク質で3回洗浄し、さらなる解析および臨床使用のためにその緩衝液に再懸濁する。
【0175】
細胞の一部を遠心分離し、リンパ球増殖培地に再懸濁する。この培地は、10%ヒト血清、ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸、および2β-メルカプトエタノールを補充したRPMI培地からなる。プレートに結合した抗ヒトCD3抗体および可溶性抗CD28抗体を用いて、細胞を4~6日間活性化する。細胞を活性化した後、細胞を収集し、洗浄し、フローサイトメトリー解析のために染色する。FACS解析は、蛍光色素に直接結合されたモノクローナル抗体の使用に依存する。
【0176】
図4Aは、再発難治性メラノーマの臨床研究に登録された2名の患者(101および103)から採取された血液を解析した結果を示す。上記したように、採取された血液を処理して、赤血球を除去し、PBMCを精製した。Tat-MYCタンパク質による1時間の処理の前および後に、PBMCの試料を採取した。細胞を洗浄し、T細胞活性化のためにCD3抗体およびCD28抗体と共に培養した。活性化T細胞を、CD279 (PD-1) に対する蛍光抗体で標識し、フローサイトメトリーによって解析した。図4Aに示されるように、両患者において、未処理細胞(PBMC-未処理)と比較してTat-MYC処理細胞 (TBX-3400) において、CD279 (PD-1) の測定可能な下方制御が存在した。したがって、Tat-MYC融合タンパク質による処理は、メラノーマ患者から単離された免疫細胞におけるCD279 (PD-1) 発現を減少させる。
【0177】
図4Bは、再発難治性メラノーマ試験に登録された患者から精製されたPBMCの研究の結果を示す。患者のPBMCは、未処理のままにするか(左パネル)、またはTat-MYCで1時間処理した(TBX-4000)(右パネル)。図は、HisタグまたはV5タグの細胞内染色の結果を示す。FIB. 4Bに示されるように、タンパク質で処理された細胞 (TBX-3400) の20%超がタンパク質を取り込んでいた。
【0178】
図4Cは、Tat-MYCで閉鎖系において1時間処理されたPBMC (TBX-4000) に関する研究の結果を示す。Tat-MYC中にコードされる2つの異なるタグ(HisタグおよびV5タグ)に結合する蛍光抗体を用いて、試料をタンパク質の細胞内レベルについてフローサイトメトリーにより解析した。図4C(左パネル)に示されるように、0日目 (0d) には25%超の細胞がタンパク質に対して陽性に染色され、翌日 (1d) にも同様のレベルが検出された。患者から単離されたTat-MYC処理細胞 (TBX-3400) および未処理細胞(PBMC-未処理)を、CD3およびCD28に対する抗体で活性化し、T細胞活性化マーカーであるCD25ならびにチェックポイントマーカーであるCD279 (PD-1) およびCD152 (CTLA-4) の発現レベルを、フローサイトメトリーにより解析した。図4C(右パネル)に示されるように、Tat-MYC処理細胞は、未処理細胞と比較して、同様のレベルのCD25を有したが、より低レベルの両チェックポイントマーカーを有した。
【0179】
したがって、これらの結果から、本明細書において開示されるPTD-MYC融合タンパク質が、T細胞上に発現される免疫チェックポイントタンパク質を減少させ、T細胞疲弊を改善するおよび/または逆転させるための方法において有用であり、それを必要とする対象においてT細胞疲弊を処置するための方法において有用であることが実証される。
【0180】
本開示は、本出願において記載される特定の態様の点で限定されるべきではなく、それらは本開示の個々の局面の単なる例示として意図される。本開示の様々な態様がすべて、本明細書において記載されるわけではない。当業者に明白であるように、本開示の多くの改変物および変形物が、その精神および範囲から逸脱することなく作製され得る。本明細書において列挙されたものに加えて、本開示の範囲内にある機能的に等価な方法および装置が、前述の説明から当業者に明白になるであろう。そのような改変物および変形物は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。本開示は、そのような特許請求の範囲の権利が与えられる等価物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲の条件によってのみ限定されるべきである。
【0181】
本開示は、特定の使用、方法、試薬、化合物、組成物、または生物システムに限定されず、それらは当然、変動し得ることが理解されるべきである。本明細書で用いられる専門用語は、特定の態様を説明する目的のために過ぎず、限定を意図していないこともまた理解されるべきである。
【0182】
加えて、本開示の特徴または局面がマーカッシュ群の観点から記載されている場合、当業者は、本開示がまたそれにより、そのマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点からも記載されていることを認識するであろう。
【0183】
当業者によって理解されるように、ありとあらゆる目的のために、特に書面の説明を提供する観点から、本明細書において開示される範囲はすべて、それらのありとあらゆる可能な部分範囲および部分範囲の組み合わせもまた包含する。任意の列挙された範囲は、同じ範囲が少なくとも半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、等に等分されることを十分に説明し、可能にすることが、容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書において論じられる各範囲は、下方の3分の1、中央の3分の1、および上方の3分の1、等に容易に分割され得る。同様に当業者によって理解されるように、「最大で~まで」、「少なくとも」、「~を超える」、「~未満」、および同様のものなどの言語はすべて、列挙される数字を含み、後に上記のような部分範囲に分割され得る範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲には、個々の各メンバーが含まれる。従って、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1個、2個、または3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1個、2個、3個、4個、または5個の細胞を有する群を指し、他も同様である。
【0184】
本方法を実施する際には、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、免疫学、微生物学、および組換えDNAにおける多くの従来技法が用いられる。例えば、Sambrook and Russell eds. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition; Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biologyのシリーズ;Methods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.) のシリーズ;MacPherson et al. (1991) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press);MacPherson et al. (1995) PCR 2: A Practical Approach;Harlow and Lane eds. (1999) Antibodies, A Laboratory Manual;Freshney (2005) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 5th edition;Gait ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization;Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins eds. (1984) Transcription and Translation;Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press (1986));Perbal (1984) A Practical Guide to Molecular Cloning;Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides ed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;Mayer and Walker eds. (1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London);およびHerzenberg el al. eds (1996) Weir’s Handbook of Experimental Immunologyを参照されたい。ポリペプチド遺伝子発現産物のレベル(すなわち、遺伝子翻訳レベル)を検出および測定する方法は、当技術分野で周知であり、これには、抗体検出および定量化技法などのポリペプチド検出方法の使用が含まれる。(Strachan & Read, Human Molecular Genetics, Second Edition. (John Wiley and Sons, Inc., NY, 1999) もまた参照されたい)。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
【手続補正書】
【提出日】2022-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022532608000001.app
【国際調査報告】