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特表2022-532627グルコース転移酵素を含むグルコース転移ステビオール配糖体生産用組成物及びそれを用いたグルコース転移ステビオール配糖体製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】グルコース転移酵素を含むグルコース転移ステビオール配糖体生産用組成物及びそれを用いたグルコース転移ステビオール配糖体製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/10 20060101AFI20220708BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20220708BHJP
   C12P 19/44 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C12N9/10 ZNA
C12N1/20 A
C12P19/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568034
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 KR2020007396
(87)【国際公開番号】W WO2020251228
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0070925
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514158497
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンウン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,テジュ
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソンボ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウンジョン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B050DD02
4B050LL02
4B064AF41
4B064CA02
4B064CA21
4B064DA10
4B065AA30X
4B065CA41
(57)【要約】
本出願は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素を含むグルコース転移ステビオール配糖体生産用組成物及び前記酵素を用いたグルコース転移ステビオール配糖体製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を含むグルコース転移ステビオール配糖体生産用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、ステビオール配糖体及びグルコース供与体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記グルコース供与体は、グルコースのオリゴマー、グルコースの重合体又はその環状形態である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体にグルコースがα-(1,6)結合により付加されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体の19-OH位置に結合されたグルコースにα-(1,6)結合によりグルコースが付加されたものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体にグルコースが1~3個付加されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ステビオール配糖体は、ステビオシド、ルブソシド、ズルコシドA、レバウジオシドA、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF及びレバウジオシドMからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物をステビオール配糖体に接触させるステップを含むグルコース転移ステビオール配糖体製造方法。
【請求項9】
前記方法は、
配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物の存在下でグルコース供与体とステビオール配糖体を反応させるステップを含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記反応させるステップは、pH1~10で行われるものである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記反応させるステップは、1~80℃で行われるものである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体にグルコースがα-(1,6)結合により付加されたものである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項13】
前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体の19-OH位置に結合されたグルコースにα-(1,6)結合によりグルコースが付加されたものである、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体にグルコースが1~3個付加されたものである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ステビオール配糖体は、ステビオシド、ルブソシド、ズルコシドA、レバウジオシドA、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF及びレバウジオシドMからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、グルコース転移酵素を含むグルコース転移ステビオール配糖体生産用組成物及びそれを用いたグルコース転移ステビオール配糖体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖摂取による疾病(肥満)の恐れから1日当たりの糖摂取量を低減することを世界保健機関(WHO)が勧告しており、先進国を中心に政府主導の下で糖類摂取量を低減するための様々な政策が盛んに論議されている。また、市場においては様々な代替甘味料素材に対するニーズが増加しており、代替甘味料素材の開発、製品化が続けられている。代替甘味料は、合成高甘味料(Saccharin、Aspartame、Sucraloseなど)、合成糖アルコール類(Maltitol, Xylitol)、高甘味料(Rebaudioside A, Liquorice)と変化を続けている。しかし、持続的な合成甘味料の安全性についての懸念から天然甘味料に対する消費者のニーズが大きくなってきているものの、天然甘味料特有の異味・異臭を有する味質の限界により、従来の合成甘味料中心の低カロリー・ゼロカロリー製品を本格的に代替することができていない現状である。
【0003】
近年、多くの注目を集めている天然の高甘味料は、ステビアレバウディアナベルトニー(Stevia rebaudiana Bertoni)の葉から抽出したステビア(Stevia)である。ステビアは、天然素材であり、砂糖の200~300倍の甘味度を有し、ステビオシド(Stevioside)、レバウジオシド(Rebaudioside)A、B、C、D、E、Mなどからなる。また、ステビアは、カロリーがなく、血中グルコース及びインスリンレベルに有益な効果をもたらし、人体に副作用がないことが報告されており、代替甘味料としての潜在力を有しているが、苦味が非常に強いという欠点があるので、使用に制限がある。
【0004】
ステビアの甘味質改善方法としては、酵素を用いた糖転移方法が挙げられ、酵素を用いた糖転移方法としては、CGTaseを用いてステビオール配糖体にグルコース(1~12個)を転移する方法が現在広く用いられている(特許文献1)。しかし、ステビオール配糖体に転移したグルコース構造がα-(1,4)であり、腸内微生物により全て分解されるので、カロリーを上昇させるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許出願第10-1991-0020769号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444
【非特許文献2】Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277
【非特許文献3】Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453
【非特許文献4】Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)
【非特許文献5】Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990)
【非特許文献6】Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994
【非特許文献7】[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073
【非特許文献8】Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2:482
【非特許文献9】Schwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)
【非特許文献10】Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745
【非特許文献11】J. Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory press, Cold Spring Harbor, New York, 1989
【非特許文献12】F.M. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした背景の下、本発明者らは、ラクトバチルス・マリ(Lactobacillus mali)由来の酵素がステビオール配糖体にグルコースをα-(1,6)結合により転移して難消化性グルコース転移ステビオール配糖体を生成することを確認し、本出願を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を含むグルコース転移ステビオール配糖体生産用組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本出願は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物をステビオール配糖体に接触させるステップを含むグルコース転移ステビオール配糖体製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本出願は、前記製造方法で製造したグルコース転移ステビオール配糖体を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本出願は、前記グルコース転移ステビオール配糖体を含む甘味料組成物を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本出願は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を含む甘味改善用組成物を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本出願は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を用いてステビオール配糖体をグルコース転移ステビオール配糖体に変換するステップを含む、ステビオール配糖体の甘味改善方法を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0014】
本出願のグルコース転移ステビオール配糖体生産用組成物及びグルコース転移ステビオール配糖体製造方法は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素を用いるものであり、グルコース転移ステビオール配糖体を特異的に生産することができる。
【0015】
また、前記酵素は、ステビオール配糖体からグルコース転移ステビオール配糖体への変換率が高いので、非常に効率的にグルコース転移ステビオール配糖体を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ラクトバチルス・マリ培養液から精製した4種の画分(fraction)中のタンパク質のSDS-PAGE結果を示す図である。
図2】レバウジオシドAと砂糖をラクトバチルス・マリ粗酵素液と反応させる前のHPLC結果を示す図である。
図3】レバウジオシドAと砂糖をラクトバチルス・マリ粗酵素液と反応させた後のHPLC結果を示す図である。
図4】ステビオシドと砂糖をラクトバチルス・マリ粗酵素液と反応させる前のHPLC結果を示す図である。
図5】ステビオシドと砂糖をラクトバチルス・マリ粗酵素液と反応させた後のHPLC結果を示す図である。
図6】レバウジオシドAと砂糖を配列番号1のアミノ酸配列を含む酵素と反応させる前のHPLC結果を示す図である。
図7】レバウジオシドAと砂糖を配列番号1のアミノ酸配列を含む酵素と反応させた後のHPLC結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。
【0018】
前記目的を達成するための本出願の一態様は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を含むグルコース転移ステビオール配糖体生産用組成物を提供する。
【0019】
本出願における「グルコース転移酵素」とは、グルコース供与体(donor)からグルコース受容体(acceptor)にグルコースを転移する酵素を意味する。
【0020】
前記グルコース転移酵素は、グルコース供与体からステビオール配糖体にグルコースを転移し、グルコース転移ステビオール配糖体を生産する用途を有するものであってもよい。
【0021】
前記グルコース転移酵素は、配列番号1のアミノ酸配列を含む酵素であってもよい。配列番号1のアミノ酸配列を含む酵素は、配列番号1のアミノ酸配列を有する酵素、配列番号1のアミノ酸配列から必須に構成される酵素、又は配列番号1のアミノ酸配列からなる酵素と混用される。
【0022】
また、本出願におけるグルコース転移酵素は、たとえ配列番号1のアミノ酸配列を含む酵素であると定義したとしても、配列番号1のアミノ酸配列の前後の無意味な配列付加、自然発生する突然変異、又はその非表現突然変異(silent mutation)を除外するものではなく、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、配列番号1のアミノ酸配列から必須に構成されるか、又は配列番号1のアミノ酸配列からなる酵素と同一又は相当する活性を有するものであれば、本出願のグルコース転移酵素に含まれることは当業者にとって自明である。具体的には、本出願のグルコース転移酵素は、配列番号1のアミノ酸配列であってもよく、それと80%、90%、95%又は97%以上の相同性又は同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。また、そのような相同性又は同一性を有し、前記酵素に相当する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、改変、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も本出願のグルコース転移酵素に含まれることは言うまでもない。
【0023】
すなわち、本出願に「特定配列番号で表されるアミノ酸配列を有する酵素又はタンパク質」、「特定配列番号で表されるアミノ酸配列からなる酵素又はタンパク質」と記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列を含むポリペプチドと同一又は相当する活性を有するものであれば、一部の配列が欠失、改変、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であっても本出願に用いられることは言うまでもない。例えば、「配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド」は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドと同一又は相当する活性を有するものであれば、「配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド」に属することは言うまでもない。
【0024】
本出願における「相同性(homology)」又は「同一性(identity)」とは、2つの与えられたアミノ酸配列又は塩基配列が関連する程度を意味し、百分率で表される。相同性及び同一性は、しばしば相互交換的に用いられる。
【0025】
保存されている(conserved)ポリヌクレオチド又はポリペプチドの配列相同性又は同一性は標準的な配列アルゴリズムにより決定され、用いられるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に用いられてもよい。実質的には、相同性を有するか(homologous)又は同じ(identical)配列は、中程度又は高いストリンジェントな条件(stringent conditions)下において、一般に配列全体又は全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%又は90%以上ハイブリダイズすることができる。ハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドがコドンの代わりに縮退コドンを有するようにするものであってもよい。
【0026】
任意の2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列が相同性、類似性又は同一性を有するか否かは、例えば非特許文献1のようなデフォルトパラメーターと「FASTA」プログラムなどの公知のコンピュータアルゴリズムを用いて決定することができる。あるいは、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, 非特許文献2)(バージョン5.0.0又はそれ以降のバージョン)で行われるように、ニードルマン=ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(非特許文献3)を用いて決定することができる(GCGプログラムパッケージ(非特許文献4)、BLASTP、BLASTN、FASTA(非特許文献5,6,7)を含む)。例えば、国立生物工学情報センターのBLAST又はClustal Wを用いて相同性、類似性又は同一性を決定することができる。
【0027】
ポリヌクレオチド又はポリペプチドの相同性、類似性又は同一性は、例えば非特許文献8に開示されているように、非特許文献3などのGAPコンピュータプログラムを用いて、配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列のうち短いものにおける記号の総数で、類似する配列記号(すなわち、ヌクレオチド又はアミノ酸)の数を割った値と定義している。GAPプログラムのためのデフォルトパラメーターは、(1)一進法比較マトリックス(同一性は1、非同一性は0の値をとる)及び非特許文献9に開示されているように、非特許文献10の加重比較マトリックス(又はEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス)と、(2)各ギャップに3.0のペナルティ、及び各ギャップの各記号に追加の0.10ペナルティ(又はギャップオープンペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5)と、(3)末端ギャップに無ペナルティとを含む。
【0028】
また、任意の2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列が相同性、類似性又は同一性を有するか否かは、定義されたストリンジェントな条件下にてサザン(Southern)ハイブリダイゼーション実験で配列を比較することにより確認することができ、定義される好適なハイブリダイゼーション条件は当該技術の範囲内であり、当業者に周知の方法(例えば、非特許文献11、12)で決定される。
【0029】
配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素は、ラクトバチルス(Lactobacillus)属由来の酵素であり、具体的にはラクトバチルス・マリ(Lactobacillus mali)由来の酵素であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0030】
配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素は、ステビオール配糖体からグルコース転移ステビオール配糖体への変換率が50%以上であり、具体的には60%以上、より具体的には70%以上、さらに具体的には80%以上、一層具体的には90%以上であるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本出願のグルコース転移ステビオール配糖体生産用組成物は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素を発現する微生物、又は前記微生物の培養物を含んでもよい。
【0032】
具体的には、前記微生物は、ラクトバチルス属微生物、より具体的にはラクトバチルス・マリであってもよいが、本出願のグルコース転移酵素を含むか又は発現する微生物であれば、これらに限定されるものではない。
【0033】
具体的には、前記培養物は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素を発現する微生物を含む培養液であってもよく、前記微生物を除いた培養液であってもよい。
【0034】
本出願のグルコース転移ステビオール配糖体生産用組成物は、ステビオール配糖体及びグルコース供与体をさらに含んでもよい。
【0035】
前記「ステビオール配糖体(steviol glycoside)」は、天然甘味料の一つであり、次の化学式1で表されるものである。
【0036】
【化1】
【0037】
化学式1において、Rには水素(H)が結合されるか、グルコース(Glucose)がβ結合により1個~3個結合され、Rにはグルコース(Glucose)、キシロース(Xylose)又はラムノース(Rhamnose)がβ結合により1個結合され、そこにグルコース(Glucose)がβ結合により0個~2個結合されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記ステビオール配糖体は、ステビオシド(stevioside)、ルブソシド、ズルコシド(dulcoside)A、レバウジオシド(rebaudioside)A、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF及びレバウジオシドMからなる群から選択される少なくとも1つであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0039】
前記グルコース供与体は、少なくとも1つのグルコースがステビオール配糖体に転移するようにグルコース転移酵素の存在下で反応し得る、グルコースのオリゴマー、グルコースの重合体及びその環状形態のいずれか任意のものであり、具体的には砂糖であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0040】
前記「グルコース転移ステビオール配糖体(glucosylated steviol glycoside)」とは、前記ステビオール配糖体にグルコース(glucose)が付加されたものを意味する。
【0041】
具体的には、前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体にグルコースがα-(1,6)結合により付加されたものであってもよい。
【0042】
具体的には、前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体の19-OH位置に結合されたグルコースにα-(1,6)結合によりグルコースが付加されたものであってもよい。
【0043】
具体的には、前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体にグルコースが1~3個付加されたものであってもよい。
【0044】
本出願のグルコース転移ステビオール配糖体生産用組成物は、グルコースのステビオール配糖体への転移活性を有利にしたり、前記組成物の安定性を向上させる補因子をさらに含んでもよいが、これらに限定されるものではない。前記補因子の例としては、金属イオン、金属塩、賦形剤、保存剤などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0045】
前記目的を達成するための本出願の他の態様は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物をステビオール配糖体に接触させるステップを含むグルコース転移ステビオール配糖体製造方法を提供する。
【0046】
前記「配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素」、「微生物」、「培養物」及び「グルコース転移ステビオール配糖体」については前述した通りである。
【0047】
本出願のグルコース転移ステビオール配糖体製造方法は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物の存在下でグルコース供与体(例えば、砂糖)とステビオール配糖体を反応させるステップを含んでもよい。ここで、前記「グルコース供与体」及び「ステビオール配糖体」については前述した通りである。
【0048】
前記グルコース供与体とステビオール配糖体を反応させるステップは、pH1~10で行われ、具体的にはpH2~9、より具体的にはpH3~8、さらに具体的にはpH5~6で行われてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0049】
前記グルコース供与体とステビオール配糖体を反応させるステップは、1~80℃で行われ、具体的には5~70℃、より具体的には25~50℃、さらに具体的には35~45℃で行われてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0050】
また、前記グルコース供与体とステビオール配糖体を反応させるステップは、pH1~10、pH2~9、pH3~8又はpH5~6、及び1~80℃、5~70℃、25~50℃又は35~45℃で行われてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本出願のグルコース転移ステビオール配糖体製造方法は、グルコース転移ステビオール配糖体を回収するステップをさらに含んでもよく、前記回収には、当該技術分野で周知の様々な方法、例えば濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、結晶化、HPLCなどが用いられるが、これらに限定されるものではない。また、前記回収ステップは、精製工程を含んでもよい。
【0052】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、本出願のグルコース転移ステビオール配糖体製造方法で製造したグルコース転移ステビオール配糖体を提供する。
【0053】
前記「グルコース転移ステビオール配糖体」については前述した通りである。
【0054】
具体的には、前記グルコース転移ステビオール配糖体は、グルコース転移ステビオシド、グルコース転移ルブソシド、グルコース転移ズルコシドA、グルコース転移レバウジオシドA、グルコース転移レバウジオシドC、グルコース転移レバウジオシドD、グルコース転移レバウジオシドE、グルコース転移レバウジオシドF及びグルコース転移レバウジオシドMからなる群から選択される少なくとも1つであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0055】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、本出願のグルコース転移ステビオール配糖体を含む甘味料組成物を提供する。
【0056】
本出願の甘味料組成物は、ステビオール配糖体を含む甘味料組成物に比べて、苦味が改善され、溶解度が改善されたものであってもよい。
【0057】
前記苦味の改善は、苦味の減少であってもよい。
【0058】
前記溶解度の改善は、溶解度の増加であってもよい。
【0059】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を含むステビオール配糖体甘味改善用組成物を提供する。
【0060】
前記「配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素」、「微生物」、「培養物」及び「ステビオール配糖体」については前述した通りである。
【0061】
前記甘味の改善は、苦味の減少による苦味の改善であってもよい。
【0062】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を用いてステビオール配糖体をグルコース転移ステビオール配糖体に変換するステップを含む、ステビオール配糖体の甘味改善方法を提供する。
【0063】
前記「配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素」、「微生物」、「培養物」、「ステビオール配糖体」及び「グルコース転移ステビオール配糖体」については前述した通りである。
【0064】
前記変換するステップは、pH1~10で行われ、具体的にはpH2~9、より具体的にはpH3~8、さらに具体的にはpH5~6で行われてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0065】
前記変換するステップは、1~80℃で行われ、具体的には5~70℃、より具体的には25~50℃、さらに具体的には35~45℃で行われてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0066】
また、前記変換するステップは、pH1~10、pH2~9、pH3~8又はpH5~6、及び1~80℃、5~70℃、25~50℃又は35~45℃で行われてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0067】
前記甘味の改善は、苦味の減少による苦味の改善であってもよい。
【実施例
【0068】
以下、実施例及び実験例を挙げて本出願をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例及び実験例は本出願を例示するものにすぎず、本出願がこれらの実施例及び実験例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0069】
酵素の精製
試験管(test tube)にMRS broth(BD Difco)を5mL充填し、その後それにラクトバチルス・マリ(Lactobacillus mali)を接種し、30℃、180rpmで15時間培養した。
【0070】
その後、250mLフラスコにMRS brothを100mL充填し、次いで前記培養液を5%(v/v)で接種し、30℃、180rpmで15時間培養した。
【0071】
その後、3L発酵槽にModified MRS broth 1Lを充填し、次いで前記培養液を5%(v/v)で接種し、30℃、300rpmで24時間培養した。その際の前記Modified MRS brothの組成を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
前記培養液を13000rpmで15分間遠心分離し、上清を回収した。上清を20mM Tris-HCl pH7.4バッファで透析(dialysis)し、その後タンパク質精製を行った。
【0074】
1次精製には陰イオン交換クロマトグラフィー(anion exchange chromatography)を用いた。用いたカラムはHitrapTM DEAE FF(GE healthcare)である。試料を1mL/minの流速で前記カラムにローディングし、1M NaClを含む20mM Tris-HCl pH7.4バッファで溶出(elution)した。
【0075】
2次精製にはゲル濾過クロマトグラフィー(Gel filtration chromatography)を用いた。用いたカラムはHiloadTM 16/60 Superdex 200pg(GE healthcare)である。150mM NaClを含む20mM Tris-HClバッファで精製した。
【0076】
前記精製により4種の画分(fraction)を得た。各画分のSDS-PAGE結果を図1に示す。
【実施例2】
【0077】
酵素の活性の確認
標的酵素の存在を確認するために、各画分の砂糖加水分解活性を還元糖の定量法(DNS法)により確認した。
【0078】
50mM酢酸ナトリウムバッファ(sodium acetate buffer)に200mMの砂糖水溶液と前記各画分を1:1で混合し、その後40℃の水槽(water bath)で10分間反応させ、次いで100℃で失活させた。DNS試薬を1:3の比で添加して混合し、100℃で5分間反応させ、その後直ちに氷でDNS反応を停止させた。その後、DNS試薬の吸光度(OD)を575nmで測定し、次いで作成したフルクトース標準曲線式に代入して活性を確認した。ここで、1Unitとは、1分間当たり1μmoleのフルクトースを増加させる酵素の量(mL)を意味するものと定義する。
【0079】
その結果、2番の画分(Fraction No.2)の75kDaタンパク質に砂糖を加水分解する活性があることが確認された。
【実施例3】
【0080】
酵素の同定
LC-MSにより前記75kDaタンパク質を同定した。
【0081】
実施例3-1:試料の前処理(In gel trypsin digestion)
質量分析器(MS)を用いたタンパク質同定のためには、分析するタンパク質をペプチドに断片化する必要がある。
【0082】
よって、図1のfraction#2の75kDaゲルを切り出し、その後In-gel piece試料に50%CHCN(HO)溶媒を入れ、次いで15分間反応させて脱色した。その後、50mM ABC(ammonium bicarbonate, SIGMA)バッファに溶解した1M DTT(Dithiothreitol, GE)を2μl添加し、常温で1時間保管した。その後、50mM ABC(ammonium bicarbonate, SIGMA)バッファに溶解した1M IAA(iodoacetamide, SIGMA)を4μl添加し、光を遮断して常温で1時間保管した。脱色したIn-gel piece試料に1μgのトリプシン(trypsin)溶液(Sequencing-grade modified porcine trypsin, Thermofisher, Madison, WI, USA)を入れ、37℃で16時間反応させた。50%CHCN(HO)溶媒200μlを添加し、gel脱水反応により加水分解されたペプチドを回収し、それを回転乾燥機(SpeedDry Vacuum Concentrator)で乾燥させた。塩とその他の不純物の除去のために、C18 Ziptip(Millipore)を用いて脱塩(desalting)した。
【0083】
実施例3-2:液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)
液体クロマトグラフィー質量分析は、Ultimate 3000 RS UHPLC,Q-Exactive Orbitrap(Thermo Scientific)質量分析器で行った。分析条件は次の通りである。
【0084】
(1)クロマトグラフィー:Thermo(Dionex)UHPLC Ultimate 3000
(2)カラム:Acclaim prepMapTM RSLC 50μm×15cm,nanoviper C18,2μm,100A
(3)溶媒:A=蒸留水(0.1%ギ酸を含む),B=アセトニトリル(0.1%ギ酸を含む)
(4)溶出条件
【0085】
【表2】
【0086】
(5)流速:0.2μl/min
(6)試料注入:1μl
【0087】
その後、de novo peptide sequencingによりアミノ酸配列を確認した。その際に、分析プログラムとしてProteome Discoverer 2.1(Thermo)を用いた。
【0088】
このようにして確認したアミノ酸配列は、配列番号1の配列である。
【実施例4】
【0089】
粗酵素液のステビオール配糖体にグルコースを転移する活性の確認
50mM酢酸ナトリウムバッファ(pH5.0)に6%レバウジオシドA(purecircle)又は6%ステビオシド(carbosynth)及び6%白砂糖(CJ第一製糖)を溶解し、その後それに配列番号1のアミノ酸配列を含む酵素を含むラクトバチルス・マリ粗酵素液を添加し、40℃で24時間反応させた。その後、グルコース転移レバウジオシドA又はグルコース転移ステビオシドが生成されたか否かをHPLCで確認した。その結果を図2図5に示す。一方、HPLC分析条件は次の通りである。
【0090】
【表3】
【0091】
図2及び図4は酵素反応前のHPLC分析結果であり、図3及び図5は酵素反応後のHPLC分析結果である。
【0092】
図2図3を比較すると、前記酵素反応によりレバウジオシドAがグルコース転移レバウジオシドA(Rebaudioside A-G1)に変換されたことが分かる。ここで、確認された変換率は約90%であった。
【0093】
また、図4図5を比較すると、前記酵素反応によりステビオシドがグルコース転移ステビオシド(Stevidoside-G1)に変換されたことが分かる。ここで、確認された変換率は約90%であった。
【0094】
一方、前記グルコース転移ステビオシド(Stevidoside-G1)及びグルコース転移レバウジオシドA(Rebaudioside A-G1)は、それぞれステビオシド及びレバウジオシドAの19-OH位置に結合されたグルコースにα-(1,6)結合によりグルコースが1個転移したものであることをNMRで確認した。
【実施例5】
【0095】
配列番号1のアミノ酸配列を含む酵素のステビオール配糖体にグルコースを転移する活性の確認
実施例3で確認した、配列番号1のアミノ酸配列を含む酵素の活性を確認した。具体的には、前記酵素がステビオール配糖体にグルコースを転移する活性を有するか否かを確認した。
【0096】
実施例5-1:酵素を含む微生物の作製及び酵素の精製
配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドをポリヌクレオチド合成方法((株)バイオニア)により作製し、得られたポリヌクレオチドをpBT7-N-Hisベクターに挿入し、その後それを大腸菌BL21(DE3)に形質転換した。アンピシリン(Ampicillin)を含む平板培地に形質転換した大腸菌を塗抹し、組換え菌株(微生物)を得た。
【0097】
一方、前記微生物を2019年6月11日付けでブダペスト条約上の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms)に寄託番号KCCM12561Pとして寄託した。
【0098】
アンピシリン(Ampicillin)を含むLB培地5mlに、組換え大腸菌菌株を接種し、600nmでの吸光度が2.0になるまで37℃で種菌培養を行った。アンピシリン(Ampicillin)を含むLB培地500mlに、種菌培養した培養液を添加し、本培養を行った。その後、600nmでの吸光度が0.4になったとき、0.1mM IPTG(イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド)を添加し、配列番号1のアミノ酸配列を含む酵素の大量発現を誘導した。前記過程中は、攪拌速度180rpm、培養温度37℃が保持されるようにし、IPTG添加後は、攪拌速度120rpm、培養温度16℃で培養した。
【0099】
前記培養液を10000×g、4℃で20分間遠心分離して細胞ペレット(cell pellet)を得て、前記ペレットに50mMトリス塩酸緩衝液を添加して細胞溶液に再懸濁した。前記細胞溶液を超音波破砕機(sonicator)で破砕した。細胞破砕物を再び13000×g、4℃で20分間遠心分離し、上清のみ採取した。その後、Ni-NTA superflowカラムを用いて前記酵素を精製した。
【0100】
実施例5-2:酵素の活性の確認
50mM酢酸ナトリウムバッファ(pH5.0)に6%レバウジオシドA(purecircle)及び6%白砂糖(CJ第一製糖)を溶解し、その後それに実施例5-1で得られた配列番号1のアミノ酸配列を含む酵素を添加し、40℃で24時間反応させた。その後、グルコース転移レバウジオシドAが生成されたか否かをHPLCで確認した。その結果を図6及び図7に示す。
【0101】
図6は酵素反応前のHPLC分析結果であり、図7は酵素反応後のHPLC分析結果である。
【0102】
図6図7を比較すると、前記酵素反応によりレバウジオシドAがグルコース転移レバウジオシドA(Rebaudioside A-G1)に変換されたことが分かる。ここで、確認された変換率は約90%であった。
【0103】
一方、前記グルコース転移レバウジオシドA(Rebaudioside A-G1)は、レバウジオシドAの19-OH位置に結合されたグルコースにα-(1,6)結合によりグルコースが1個転移したものであることをNMRで確認した。
【0104】
すなわち、配列番号1のアミノ酸配列を含む酵素は、実施例4のラクトバチルス・マリ粗酵素液と同じ活性を有することが確認された。
【実施例6】
【0105】
グルコース転移ステビオール配糖体の溶解度の評価
ステビオール配糖体及びグルコース転移ステビオール配糖体の溶解度を測定した。
【0106】
具体的には、レバウジオシドA(RA)、ステビオシド(STV)、実施例4のグルコース転移レバウジオシドA(RA-Glu)、実施例4のグルコース転移ステビオシド(STV-Glu)のそれぞれの溶解度を測定した。
【0107】
レバウジオシドA、ステビオシド、グルコース転移レバウジオシドA、グルコース転移ステビオシド、それぞれ6gを10mlに混合し、その後sonicationにより50℃で60分間溶解した。それを5、15、25、35、45又は55℃の水槽(water bath)で1週間インキュベーション(incubation)した。その後、溶液を12000rpmで10分間遠心分離して上清1mlを採取し、105℃のオーブン(oven)で乾燥させ、溶解度を測定した。それを表4に示す。
【0108】
【表4】
【0109】
表4の結果から、グルコース転移ステビオシド及びグルコース転移レバウジオシドAは、ステビオシド、レバウジオシドAに比べて溶解度が著しく増加したことが分かる。
【実施例7】
【0110】
α-(1,6)グルコース転移レバウジオシドAの甘味度及び甘味質の評価
従来の物質として知られるα-(1,4)グルコース転移レバウジオシドAと実施例4のα-(1,6)グルコース転移レバウジオシドAをそれぞれ水に溶解し、パネルに提供して実測甘味度と甘味質を評価した。その結果を表5に示す。
【0111】
【表5】
【0112】
表5に示すように、α-(1,6)グルコース転移レバウジオシドAは、α-(1,4)グルコース転移レバウジオシドAと比較して甘味度が高く、甘味質の評価に優れることが確認された。
【0113】
以上の説明から、本出願の属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、前記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
【0114】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2022532627000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-11-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を含むグルコース転移ステビオール配糖体生産用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、ステビオール配糖体及びグルコース供与体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記グルコース供与体は、グルコースのオリゴマー、グルコースの重合体、その環状形態又はショ糖(sucrose)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体にグルコースがα-(1,6)結合により付加されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体の19-OH位置に結合されたグルコースにα-(1,6)結合によりグルコースが付加されたものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体にグルコースが1~3個付加されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ステビオール配糖体は、ステビオシド、ルブソシド、ズルコシドA、レバウジオシドA、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF及びレバウジオシドMからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物をステビオール配糖体に接触させるステップを含むグルコース転移ステビオール配糖体製造方法。
【請求項9】
前記方法は、
配列番号1のアミノ酸配列を含むグルコース転移酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物の存在下でグルコース供与体とステビオール配糖体を反応させるステップを含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記反応させるステップは、pH1~10で行われるものである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記反応させるステップは、1~80℃で行われるものである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体にグルコースがα-(1,6)結合により付加されたものである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項13】
前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体の19-OH位置に結合されたグルコースにα-(1,6)結合によりグルコースが付加されたものである、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記グルコース転移ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体にグルコースが1~3個付加されたものである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ステビオール配糖体は、ステビオシド、ルブソシド、ズルコシドA、レバウジオシドA、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF及びレバウジオシドMからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項8に記載の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】