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特表2022-532647プリコーダを用いるビームフォーミングされた送信
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】プリコーダを用いるビームフォーミングされた送信
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0456 20170101AFI20220708BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
H04B7/0456 110
H04B7/0456 130
H04B7/06 950
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568221
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(85)【翻訳文提出日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 SE2019050455
(87)【国際公開番号】W WO2020236045
(87)【国際公開日】2020-11-26
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.コンパクトフラッシュ
(71)【出願人】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161470
【弁理士】
【氏名又は名称】冨樫 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100194294
【弁理士】
【氏名又は名称】石岡 利康
(74)【代理人】
【識別番号】100194320
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100150670
【弁理士】
【氏名又は名称】小梶 晴美
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブソン, スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】レザエイ アグダム, シナ
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ファルハーディー, ハメド
(72)【発明者】
【氏名】グスタフソン, ウルフ
(57)【要約】
プリコーダを用いるビームフォーミングされた送信のメカニズムが提供されている。方法は、無線トランシーバデバイスによって実行される。無線トランシーバデバイスは、ハードウェアを備えている。ハードウェアは、無線トランシーバデバイスからの信号の送信に影響を与える。この方法は、無線トランシーバデバイスと少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイスとの間の無線伝搬チャネルのチャネル条件を取得することを有する。この方法は、線形プリコーディングマトリクスの形態で、少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイスに向けたビームフォーミングされた送信のために、プリコーダを定めることを有する。プリコーダは、チャネル条件と、ハードウェアが無線トランシーバデバイスからの信号の送信にどのような影響を与えるかのモデルと、に応じて定められる。この方法は、プリコーダを用いて、少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイスに向けて信号を送信することを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリコーダ(240)を用いるビームフォーミングされた送信のための方法であって、前記方法は、無線トランシーバデバイス(200a、200b)によって実行され、前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)は、ハードウェアを備え、前記ハードウェアは、前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)からの信号の送信に影響を与えており、前記方法は、
前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)と少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)との間の無線伝搬チャネルのチャネル条件を取得する(S102)ことと、
線形プリコーディングマトリクスの形態で、前記少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)に向けたビームフォーミングされた送信のためにプリコーダ(240)を決定する(S104)ことであって、前記プリコーダ(240)は、前記チャネル条件と、前記ハードウェアが前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)からの前記信号の送信にどのような影響を与えるかのモデルと、に応じて決定される、ことと、
前記プリコーダ(240)を用いて、前記少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)に向けて信号を送信する(S106)ことと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記ハードウェアはパワーアンプ(258)を備え、前記モデルは前記パワーアンプ(258)の入出力特性が前記送信にどのように影響するかを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パワーアンプ(258)は、前記信号を前記少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)に向けて送信するときに、前記パワーアンプ(258)の非線形領域で動作する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ハードウェアはオシレータ(254)を備え、前記モデルは前記オシレータ(254)の位相ノイズが前記送信にどのように影響するかを表す、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ハードウェアはデジタル-アナログコンバータ(252)を備え、前記モデルは前記デジタル-アナログコンバータ(252)のビット解像度が前記送信にどのように影響するかを表す、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ハードウェアは、前記モデルに応じて、前記送信に無記憶性および/または非線形の影響を与える、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プリコーダ(240)は、非凸最適化問題を解くことによって決定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プリコーダ(240)は、合計レート最適化問題、ユーザ単位最大最小レート問題、または平均二乗誤差問題を解くことによって決定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
入力パラメータとしての前記最適化問題は、前記チャネル条件、前記モデル、送信電力制約、および前記ハードウェアの影響を受けないデフォルトのプリコーダ(240)を有する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記最適化問題を解くことは、送信される前記信号を表す信号ベクトルに前記プリコーダ(240)を適用するときに与えられる前記送信電力制約のもとで、前記プリコーダ(240)の達成可能な合計レートを最大化することを含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記問題を解くことは、信号対干渉ノイズおよび歪み比を決定することを含む、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記チャネル条件は、チャネル状態情報によって規定され、前記無線伝搬チャネルにおける干渉の情報を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記モデルは、前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)に事前設定されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記モデルは、推定によって得られる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)は、前記信号が送信される送信アンテナ要素(260)を備え、前記少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)に向けて前記信号を送信するときには、全前記送信アンテナ要素(260)よりも少ない数の送信アンテナ要素が利用される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)は、無線アクセスネットワークノード(140)またはターミナルデバイス(150)の一部である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
プリコーダ(240)を用いるビームフォーミングされた送信のための無線トランシーバデバイス(200a、200b)であって、前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)は、ハードウェアを備え、前記ハードウェアは、前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)からの信号の送信に影響を与え、前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)は、処理回路(210)をさらに備え、前記処理回路は、前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)に、
前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)と少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)との間の無線伝搬チャネルのチャネル条件を取得することと、
線形プリコーディングマトリクスの形態で、前記少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)に向けたビームフォーミングされた送信のためにプリコーダ(240)を決定することであって、前記プリコーダ(240)は、前記チャネル条件と、前記ハードウェアが前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)からの前記信号の送信にどのような影響を与えるかのモデルと、に応じて決定される、ことと、
前記プリコーダ(240)を用いて、前記少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)に向けて信号を送信することと、
を実行させるように設定されている、無線トランシーバデバイス。
【請求項18】
プリコーダ(240)を用いるビームフォーミングされた送信のための無線トランシーバデバイス(200a、200b)であって、前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)は、ハードウェアを備え、前記ハードウェアは、前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)からの信号の送信に影響を与え、前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)は、
前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)と少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)との間の無線伝搬チャネルのチャネル条件を取得するように設定された取得モジュール(210a)と、
線形プリコーディングマトリクスの形態で、前記少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)に向けたビームフォーミングされた送信のためにプリコーダ(240)を決定するように設定された決定モジュール(210b)であって、前記プリコーダ(240)は、前記チャネル条件と、前記ハードウェアが前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)からの前記信号の送信にどのような影響を与えるかのモデルと、に応じて決定される、決定モジュール(210b)と、
前記プリコーダ(240)を用いて、前記少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)に向けて信号を送信するように設定された送信モジュール(210c)と、
をさらに備える、無線トランシーバデバイス。
【請求項19】
請求項2から16のいずれか一項に記載の方法を実行するようにさらに設定されている、請求項17または18に記載の無線トランシーバデバイス(200a、200b)。
【請求項20】
プリコーダ(240)を用いるビームフォーミングされた送信のためのコンピュータプログラム(1020)であって、前記コンピュータプログラムは、コンピュータコードを有し、前記コンピュータコードは、無線トランシーバデバイス(200a、200b)からの信号の送信に影響を与えるハードウェアを備えた前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)の処理回路(210)上で実行されると、前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)に、
前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)と少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)との間の無線伝搬チャネルのチャネル条件を取得する(S102)ことと、
線形プリコーディングマトリクスの形態で、前記少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)に向けたビームフォーミングされた送信のためにプリコーダ(240)を決定する(S104)ことであって、前記プリコーダ(240)は、前記チャネル条件と、前記ハードウェアが前記無線トランシーバデバイス(200a、200b)からの前記信号の送信にどのような影響を与えるかのモデルと、に応じて決定される、ことと、
前記プリコーダ(240)を用いて、前記少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス(200a、200b)に向けて信号を送信する(S106)ことと、
を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項21】
請求項20に記載のコンピュータプログラム(1020)と、前記コンピュータプログラムが格納されるコンピュータ可読記憶媒体(1030)と、を有するコンピュータプログラム製品(1010)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に提示される実施形態は、プリコーダを用いるビームフォーミングされた送信のための方法、無線トランシーバデバイス、コンピュータプログラム、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
通信ネットワークでは、所与の通信プロトコル、そのパラメータ、および通信ネットワークが展開されている物理環境に対して優れたパフォーマンスとキャパシティを取得することが難しい場合がある。
【0003】
例えば、マルチユーザ(MU)多入力多出力(MIMO)通信が可能な通信ネットワークでは、MU MIMO ダウンリンク(つまり、ネットワーク側のネットワークノードからユーザ側のターミナルデバイスに向かう方向)では、スペクトル効率の向上は、空間多重化を通じて、同じ時間-周波数リソース内での、複数のターミナルデバイスのサービングによって達成され得る。さらに、エネルギー効率の向上は、ネットワークノードに複数のアクティブなアンテナ要素を持つことで、アンテナアレイゲイン(ビームフォーミングゲインとも表される)が可能になるために達成され得る。これらのゲインは、ネットワークノードでのプリコーディング(またはビームフォーミング)によって実現される。これは、要するに、情報シンボルを送信アンテナアレイにマッピングする動作である。
【0004】
実際には、MIMO通信のパフォーマンスは、種々のハードウェア障害、例えば、ネットワークノードおよび/またはターミナルデバイスの無線トランシーバデバイスにおける、パワーアンプ(PA)の非線形性、オシレータの位相ノイズ、同相/直交不均衡、およびデジタル-アナログコンバータ(DAC)の量子化ノイズ、などによって制限される。非理想的なハードウェアによるパフォーマンスの低下は、消費電力とコストの制約のために、低コストの(したがって非理想的な)ハードウェアコンポーネントを用いて実現せざるを得ないかもしれない大規模MIMO通信では重大になり得る。非理想的なハードウェアによるパフォーマンスの低下は、ミリ波周波数で広い帯域幅で動作する通信ネットワークでも懸念され、ハードウェアのコストがよりいっそう重要である。
【0005】
したがって、無線トランシーバデバイスからの信号の改善された送信が必要であり、特にネットワークノードおよび/またはターミナルデバイスの無線トランシーバデバイスに非理想的なハードウェアが存在する場合において必要である。
【発明の概要】
【0006】
本明細書における実施形態の目的は、特に無線トランシーバデバイスに非理想的なハードウェアが存在する場合に、無線トランシーバデバイスからの信号の効率的な送信を可能にすることである。
【0007】
いくつかの態様では、無線トランシーバデバイスからの信号の効率的な送信は、非理想的なハードウェアを考慮に入れたプリコーディングによって可能になる。
【0008】
第1の態様によれば、プリコーダを用いるビームフォーミングされた送信のための方法が提示される。この方法は、無線トランシーバデバイスによって実行される。無線トランシーバデバイスは、ハードウェアを備える。このハードウェアは、無線トランシーバデバイスからの信号の送信に影響を与える。この方法は、無線トランシーバデバイスと少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイスとの間の無線伝搬チャネルのチャネル条件を取得することを含む。この方法は、線形プリコーディングマトリクスの形態で、少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイスに向けたビームフォーミングされた送信のためにプリコーダを決定することを含む。プリコーダは、チャネル条件と、ハードウェアが無線トランシーバデバイスからの信号の送信にどのような影響を与えるかのモデルと、に応じて決定される。この方法は、プリコーダを用いて、少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイスに向けて信号を送信することを含む。
【0009】
第2の態様によれば、プリコーダを用いるビームフォーミングされた送信のための無線トランシーバデバイスが提示される。無線トランシーバデバイスは、ハードウェアを備える。このハードウェアは、無線トランシーバデバイスからの信号の送信に影響を与える。無線トランシーバデバイスは、処理回路をさらに含む。この処理回路は、無線トランシーバデバイスに、無線トランシーバデバイスと少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイスとの間の無線伝搬チャネルのチャネル条件を取得させるように設定される。処理回路は、無線トランシーバデバイスに、線形プリコーディングマトリクスの形態で、少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイスに向けたビームフォーミングされた送信のためにプリコーダを決定するように設定される。プリコーダは、チャネル条件と、ハードウェアが無線トランシーバデバイスからの信号の送信にどのような影響を与えるかのモデルと、に応じて決定される。処理回路は、無線トランシーバデバイスに、プリコーダを用いて、少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイスに向けて信号を送信させるように設定される。
【0010】
第3の態様によれば、プリコーダを用いるビームフォーミングされた送信のための無線トランシーバデバイスが提示される。無線トランシーバデバイスは、ハードウェアを備える。このハードウェアは、無線トランシーバデバイスからの信号の送信に影響を与える。無線トランシーバデバイスは、無線トランシーバデバイスと少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイスとの間の無線伝搬チャネルのチャネル条件を取得するように設定された取得モジュールをさらに備える。無線トランシーバデバイスは、プリコーダを、線形プリコーディングマトリクスの形態で、少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイスに向けたビームフォーミングされた送信のために決定するように設定された決定モジュールをさらに備える。プリコーダは、チャネル条件と、ハードウェアが無線トランシーバデバイスからの信号の送信にどのような影響を与えるかのモデルと、に応じて決定される。無線トランシーバデバイスは、プリコーダを用いて、少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイスに向けて信号を送信するように設定された送信モジュールをさらに備える。
【0011】
第4の態様によれば、プリコーダを用いるビームフォーミングされた送信のためのコンピュータプログラムが提示され、コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムコードを有し、コンピュータプログラムコードは、無線トランシーバデバイス上で実行され、無線トランシーバデバイスに第1の態様による方法を実行させる。
【0012】
第5の態様によれば、第4の態様によるコンピュータプログラムと、コンピュータプログラムが格納されるコンピュータ可読記憶媒体と、を有するコンピュータプログラム製品が提示される。コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であり得る。
【0013】
有利なことに、これは、無線トランシーバデバイスからの信号の効率的な送信を提供する。有利なことに、これは、無線トランシーバデバイスに非理想的なハードウェアが存在する場合に、無線トランシーバデバイスからの信号の効率的な送信を提供する。
【0014】
最先端の線形プリコーダは、送信機の非理想的なハードウェアに関する事前情報を考慮していない。有利なことに、ハードウェア障害を考慮に入れることにより、提案された線形プリコーディングは、最先端の線形プリコーダよりも優れている。
【0015】
有利なことに、線形プリコーダの提案された決定を用いることにより、ハードウェアコンポーネント、例えばPAなど、は、それらの非線形領域で動作することが許容される。これにより、最高水準と比較して高いエネルギー効率が可能になる。
【0016】
有利なことに、プリコーダの提案された決定を用いることにより、利用可能な送信アンテナのサブセットは、送信電力および回路電力の消費を低減するために、可能ならいつでもオフにできる。
【0017】
有利なことに、利用可能な送信アンテナのサブセットがオフになっている場合でも、バックオフによって総送信電力を制御する利用可能な送信アンテナのすべてを用いる最高水準の線形プリコーダを、高い信号対雑音比(SNR)で、まだ上回ることが可能である。このようなアンテナ選択手続は、パフォーマンスを犠牲にすることなく、通信ネットワークのエネルギー効率をさらに改善できる。
【0018】
付属の実施形態の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な開示、添付の従属請求項、ならびに図面から明らかになる。
【0019】
一般に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で別段の定めがない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。「ある(a)/1つの(an)/前記の(the)要素、装置、コンポーネント、手段、モジュール、ステップなど」へのすべての言及は特に別段に明記しない限り、要素、装置、コンポーネント、手段、モジュール、ステップなどの少なくとも1つの例を指すものとして公然と解釈されるべきである。本明細書に開示される任意の方法のステップは、明示的に述べられない限り、開示される正確な順序で実行される必要はない。
【0020】
本発明の概念は、一例として、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態による通信ネットワークを示す概略図である。
図2】一実施形態による無線トランシーバデバイスのプリコーダおよびハードウェアを概略的に示す図である。
図3】実施形態による方法のフローチャートである。
図4】一実施形態による無線トランシーバデバイスのブロック図である。
図5】実施形態によるシミュレーション結果を示す図である。
図6】実施形態によるシミュレーション結果を示す図である。
図7】実施形態によるシミュレーション結果を示す図である。
図8】一実施形態による無線トランシーバデバイスの機能ユニットを示す概略図である。
図9】一実施形態による無線トランシーバデバイスの機能モジュールを示す概略図である。
図10】一実施形態による、コンピュータ可読記憶媒体を有するコンピュータプログラム製品の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の概念は、本発明の概念の特定の実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下でより完全に説明される。しかしながら、この発明の概念は、多くの異なる形態で具体化でき、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本発明の概念の範囲を当業者に完全に伝えるように、例として提供される。同様の番号は、説明全体で同様の要素を指す。破線で示されているどのステップまたは機能も、オプションと見なされるべきである。
【0023】
図1は、本明細書に提示された実施形態を適用できる通信システム100aを示す概略図である。通信システム100は、無線アクセスネットワーク110内のターミナルデバイス150への1つまたは複数の無線伝搬チャネル(hで示される)を介したネットワークアクセスを提供するように設定された無線アクセスネットワークノード140を備える。ターミナルデバイス150の限定されない例は、携帯無線デバイス、移動局、携帯電話、ハンドセット、無線ローカルループ電話、ユーザ機器(UE)、スマートフォン、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ネットワーク装備センサー、ネットワーク装備車両、およびモノのインターネット(IoT)デバイスである。いくつかの実施形態では、無線アクセスネットワークノード140は、無線基地局、基地トランシーバ局、ノードB、エボルブドノードB、gNB、アクセスポイントなどの一部であるか、それらと統合されるか、またはそれらと併置される。無線アクセスネットワーク110は、コアネットワーク120に動作可能に接続されている。次に、コアネットワーク120は、インターネットなどのパケットデータネットワーク130に動作可能に接続されている。これにより、ターミナルデバイス200は、無線アクセスネットワークノード140aを介して、サービスネットワーク130のサービスにアクセスし、サービスネットワーク130とデータを交換することが可能になる。
【0024】
無線アクセスネットワークノード140およびターミナルデバイス150のそれぞれは、それぞれの無線トランシーバデバイス200a、200bを備える。次に、無線トランシーバデバイス200a、200bは、プリコーダを備える。
【0025】
上に開示したように、特に無線トランシーバデバイスに非理想的なハードウェアが存在する場合、無線トランシーバデバイスからの信号の改善された送信が必要である。
【0026】
より詳細には、現在の最高水準の線形プリコーディングアルゴリズム、例えば、最大比送信(MRT)やゼロフォーシング(ZF)は、送信機側の非理想的なハードウェアによって引き起こされる歪みを考慮していない。
【0027】
したがって、本明細書に開示される実施形態は、プリコーダを用いるビームフォーミングされた送信のメカニズムに関する。そのようなメカニズムを得るために、無線トランシーバデバイス200a、200b、その無線トランシーバデバイス200a、200bによって実行される方法、コードを有するコンピュータプログラム製品、が提供され、例えばコンピュータプログラムの形態で、無線トランシーバデバイス200a、200bで起動したときに、その無線トランシーバデバイス200a、200bにその方法を実行させる。
【0028】
図2は、無線トランシーバデバイス200a、200bをより詳細に示している。無線トランシーバデバイス200a、200bは、プリコーダ240を備える。どのようにプリコーダ240を決定するかは、以下でさらに開示される。無線トランシーバデバイス200a、200bは、さらにハードウェアを備える。本開示のために検討中のハードウェアは、プリコーダ240とアンテナ要素260との間に配置された無線回路250を有する。ハードウェアコンポーネントの例は、例えば無線回路の一部として、DAC252、オシレータ254、およびPA258である。図2は、シンボルがどのようにして、プリコーダ240によってプリコーディングされ(結果として実(Re)部分および虚(Im)部分を有する信号をもたらす)、そして次に(オシレータ254が、DACからの信号をPA258に供給される前に高い周波数にミキサー256によって変換する無線周波数信号を提供する場合)ハードウェアによって、1つまたは複数の他の無線トランシーバデバイス200a、200bに向けて送信するためにアンテナ要素260に供給されるか、を概略的に示す。プリコーダ240に入力されるN個の信号はそれぞれ、それ自身の記号のシーケンスを表す(図2では、記号1、…、記号Nとして概略的に示されている)。無線トランシーバデバイスが無線アクセスネットワークノード140の一部である場合(図1の無線トランシーバデバイス200aとして)、サーブされるターミナルデバイス150ごとに1つのシンボルのストリーム、そのためN個のサーブされるターミナルデバイス150、が存在し得る。この点で、アンテナ要素260(各アンテナ要素260は、それ自体の無線チェーンを表す無線回路によって給電される)の数は、Nに等しい必要はない。
【0029】
ハードウェアは、無線トランシーバデバイス200a、200bからの信号の送信に影響を与えるので、送信に悪影響を与える。それ故、ハードウェアが無線トランシーバデバイス200a、200bからの信号の送信にどのように影響するかを表すモデルが提供される。いくつかの例では、モデルは関数φ(・)で表される。以下に開示されるように、プリコーダ240は、モデルによって与えられるように、ハードウェアの影響を考慮して決定される。
【0030】
図3は、プリコーダを用いるビームフォーミングされた送信の方法の実施形態を示すフローチャートである。これらの方法は、コンピュータプログラム1020として有利に提供される。これらの方法は、無線トランシーバデバイス200a、200bによって実行される。無線トランシーバデバイス200a、200bは、ハードウェアを備える。ハードウェアは、無線トランシーバデバイス200a、200bからの信号の送信に影響を与える。
【0031】
プリコーダは、とりわけチャネル条件に応じて決定される。それ故に、無線トランシーバデバイス200a、200bは、S102を実行するように設定される。
【0032】
S102:無線トランシーバデバイス200a、200bは、無線トランシーバデバイス200a、200bと少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス200a、200bとの間の無線伝搬チャネルのチャネル条件を取得する。
【0033】
チャネル条件とチャネル条件がどのように取得され得るかの例が、以下に提供される。
【0034】
プリコーダは、さらに、送信される信号に対するハードウェアの影響を考慮に入れるように決定される。それ故に、無線トランシーバデバイス200a、200bは、S104を実行するように設定される。
【0035】
S104:無線トランシーバデバイス200a、200bは、少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス200a、200bに向けたビームフォーミングされた送信のために、線形プリコーディングマトリクスの形態で、プリコーダを決定する。プリコーダは、チャネル条件と、ハードウェアが無線トランシーバデバイス200a、200bからの信号の送信にどのような影響を与えるかのモデルと、に応じて決定される。
【0036】
次に、信号は、決定されたプリコーダを用いて、少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス200a、200bに向けて送信される。それ故に、無線トランシーバデバイス200a、200bは、S106を実行するように設定される。
【0037】
S106:無線トランシーバデバイス200a、200bは、プリコーダを用いて、少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス200a、200bに向けて信号を送信する。
【0038】
これにより、プリコーダは、プリコーディング動作において、無線回路の非理想的なハードウェアの使用を考慮に入れる。具体的には、線形プリコーディングマトリクスは、取得されたチャネル条件に基づいて、および無線トランシーバデバイス200a、200bで使用される非理想的なハードウェアの動作モデルに基づいて決定される。
【0039】
無線トランシーバデバイス200a、200bによって実行されるようなプリコーダを用いるビームフォーミングされた送信のさらなる詳細に関する実施形態が、ここで開示される。
【0040】
無線トランシーバデバイス200a、200bの図4のブロック図を並行して参照する。図4のブロック図は、(周波数分割複信(FDD)動作用の)チャネル条件のフィードバックベースの取得のためのブロックD1、D2、D3と、(時分割複信(TDD)動作用の)チャネル条件の相反性ベースの取得のためのブロックU1、U2の両方を有している。
【0041】
以下の例のいくつかは、無線トランシーバデバイス200aがネットワークノード140の一部であるシナリオについて示されている。しかしながら、当業者は、無線トランシーバデバイス200bがターミナルデバイス150の一部であるシナリオに、これらの例をどのように適合させるかを理解するはずである。
【0042】
チャネル条件には種々の例がある。一実施形態によれば、チャネル条件は、チャネル状態情報(CSI)によって定義され、無線伝搬チャネルにおける干渉の情報を含む。チャネル条件(干渉に関する認識を含むCSIなど)は、S102と同様に無線トランシーバデバイス200a、200bで取得される。TDDシステムでは、チャネル推定値は、ターミナルデバイスから送信されたアップリンクパイロットシンボルに基づいて計算される(図4のブロックU1およびU2)。FDDシステムでは、チャネル推定値は、ネットワークノードから送信されたダウンリンクパイロットに基づいてターミナルデバイスで計算され、ネットワークノードに報告される(図4のブロックD1、D2、D3)。
【0043】
モデルに関して、無線トランシーバデバイス200a、200bで使用される非理想的なハードウェアが送信信号にどのように影響するかについての情報が収集される(図4のブロックM0で)。いくつかの態様では、モデルによれば、ハードウェアは、無線トランシーバデバイス200a、200bからの信号の送信に無記憶性および/または非線形の影響を与える。一般的に、モデルはハードウェアのコンポーネントの動作を表す。種々のタイプのコンポーネントがあり、コンポーネントによる信号の送信に種々の影響が及び得る。図2に示すように、いくつかの態様では、ハードウェアはPAを備える。一実施形態によれば、モデルは、PAの入出力特性がどのように送信に影響を与えるかを表す。当業者に知られているように、PAは線形動作領域と非線形動作領域を有する。PAの入出力特性が送信にどのように影響するかを表すモデルがあると、PAの非線形性の補償が可能になり、PAが非線形領域で動作しているときに信号を送信可能にもなり得る。このため、一実施形態によれば、PAは、S106で少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス200a、200bに向けて信号を送信するとき、PAの非線形領域で動作する。図2に示すように、いくつかの態様では、ハードウェアはオシレータを備える。一実施形態によれば、モデルは、オシレータの位相ノイズが送信にどのように影響するかを表す。図2に示すように、いくつかの態様では、ハードウェアはDACを備える。一実施形態によれば、モデルは、DACのビット分解能が送信にどのように影響するかを表す。このため、収集された情報は、PAの入出力特性、オシレータの位相ノイズ、およびDACの分解能(つまり、ビット数)を含み得る。
【0044】
このような情報は、データシートから、または推定手続を通じて収集され得る。特に、一実施形態によれば、モデルは、無線トランシーバデバイス200a、200bで事前設定され、別の実施形態によれば、モデルは、推定を通じて、例えば、附属書AのセクションIIIでより詳細に説明されるような無線測定によって得られる。
【0045】
以下では、Mはネットワークノードのアンテナ数を示し、Kは(単一アンテナ)ターミナルデバイスの数を示す。
【0046】
いくつかの態様において、プリコーダは、最適化問題を解くことによって決定される。種々のタイプの最適化問題が存在し得る。以下に、非凸最適化問題を解くことによってプリコーダが決定される例が提示される。その後に、プリコーダを決定するために使用できる他の最適化問題の例が提示される。
【0047】
いくつかの態様によれば、プリコーダは、合計レート最適化問題を解くことによって決定される(図4のブロックS0)。以下では、PはM×Kプリコーディングマトリクス(プリコーダを定義)、sはK次元のシンボルベクトル、Rsum(P)は達成可能な合計レート(プリコーディングマトリクスPに依存)、φ(・)は、ネットワークノードでのハードウェア障害をモデル化し、Ptotは平均的な送信電力の制約である。これらは、最適化問題への入力パラメータの例である。特に、一実施形態によれば、入力パラメータとしての最適化問題は、チャネル条件、モデル、送信電力制約(例えば平均送信電力、瞬時電力、アンテナ電力など)、およびハードウェアの影響を受けないデフォルトのプリコーダを有する。一実施形態によれば、最適化問題を解決することは、送信される信号を表す信号ベクトルにプリコーダを適用するときに付される送信電力制約を条件のもとで、プリコーダの達成可能な合計レートを最大化することを含む。この送信電力制約は、ハードウェアを通過した後に送信される信号にある。
【0048】
第1の例によれば、次の最適化問題が解決される。
ここで、
は、達成可能な合計レートである。それ故に、いくつかの態様において、問題を解決することは、信号対干渉ノイズおよび歪み比(SINDR)を決定することを含む。いくつかの例では、
は、k番目のターミナルデバイスのSINDRである(k=1,2、・・・、K)。ここで、hはk番目のターミナルデバイスに対応するM次元のチャネルベクトル、pはプリコーディングマトリクスPのk番目の列、Nはターミナルデバイスでの熱雑音のパワーである(簡単にするために、すべてのターミナルデバイスで同じである必要がある)。さらに、B(P)はハードウェア障害に依存するM×Mゲインマトリクスであり、C(P)はハードウェア障害による歪みのM×M共分散マトリクスである。第1の実施形態による最適化問題は、プリコーディングマトリクスを見つけ、このためプリコーダ、および平均送信電力制約Ptotを満たす最適送信電力を見つける。
【0049】
第2の例によれば、次の最適化問題が解決される。
【0050】
この最適化問題は、平均送信電力の等式制約の下で、つまり平均送信電力が固定されている場合に、プリコーディングマトリクスを見つけ、このため線形プリコーダを見つける。
【0051】
上述の第1の例と第2の例による最適化問題は両方とも非凸である。最適化問題を近似的に解く方法はたくさんある。例えば、プリコーダは、第2の例の最適化問題を繰り返し解決するために、付録Aに開示の勾配射影アルゴリズムを使用して決定され得る。
【0052】
合計レート以外のパフォーマンスメトリック、例えばユーザ単位最大最小レートや平均二乗誤差(MSE)など、を使用できる。すなわち、一実施形態によれば、プリコーダは、合計レート最適化問題、ユーザ単位最大最小レート問題、またはMSE問題を解くことによって決定される。
【0053】
次に、最高水準の線形プリコーダと比較した、本明細書に開示されたプリコーダの利点を実証する数値例を提示する。これらの数値例のより完全な説明は、附属書Aに記載されている。具体的には、以下では、ハードウェアの非線形性に関する次の3次多項式モデルを使用する。
【0054】
ここで、βとβはハードウェアの非線形性のモデルのパラメータであり、ネットワークノードに認識されていると想定される。このモデルの場合、次のようになる。
【0055】
さらに、次のようになる。
【0056】
以下では、数値結果のために、アンテナの数はM=16に設定され、モデルパラメータ(3次多項式のカーネル)を、β=0.98およびβ=-0.04-0.01j、送信電力制約は、Ptot=43dBmに設定される。
【0057】
図5に、ネットワークノードに対して出発角度(AoD)ψ=90°に配置された単一のターミナルデバイスに対してプリコーディングが実行されるケース(図5(c)および図5(e))、および、ネットワークノードに対して、AoDがψ=30°およびψ=90°にある2つのターミナルデバイスに対してプリコーディングが実行されるケース(図5(d)および図5(f))、のそれぞれのケースについて、開示のプリコーダを用いた結果として生じる遠方界放射パターンを示す。参考までに、従来のMRTプリコーダの遠方界放射パターンも示している(図5(a)および図5(b))。図5からわかるように、提案のプリコーダは、SNRが高い場合(つまり、図5(e)および(f)のように非線形歪みがエンドユーザのパフォーマンスを支配する場合)、アンテナアレイゲインの低下と不要な方向への放射の増加を代償として、ターミナルデバイスの方向の歪みをゼロにする。低SNR(つまり、図5(c)および(d)のように熱雑音がエンドユーザのパフォーマンスを支配する場合)では、提案のプリコーダのパフォーマンスはMRTプリコーダと一致する。
【0058】
図6に、ネットワークノードが同じ時間-周波数リソースでK=2のターミナルデバイスにサービスを提供する場合の見通し外(nLoS)無線伝搬チャネルで達成可能な合計レートを示す。正確なシミュレーションパラメータは、附属書AのセクションIV-Bで指定されている。提案されたプリコーダは、特に高いSNRで、最高水準の線形プリコーダ(MRTやZFなど)よりも優れていることに注意されたい。これは、最高水準の線形プリコーダと比較して、提案のプリコーダの1つの利点を示している。
【0059】
高SNRレジームでは、最高水準の線形プリコーダを優先して提案のプリコーダに使用することにより、一部の送信アンテナをオフにして、それにより(スペクトル効率に関して)パフォーマンスの犠牲無しで、総送信電力をバックオフできる。すなわち、図2の例のように、無線トランシーバデバイス200a、200bは、信号が送信される送信アンテナ要素を含み、一実施形態によれば、少なくとも1つの他の無線トランシーバデバイス200a、200bに向けて信号を送信するときには、全送信アンテナ要素よりも少ない数の送信アンテナ要素(すなわち、Mの代わりにMused)が利用される。これを実証するために、図7に、提案されたプリコーダと、Mused≦MのみがオンになっているM=30アンテナ要素を備えたネットワークノードのZFプリコーダで達成可能な合計レートを示す。この例のターミナルデバイスの数はK=2に設定されている。図7からわかるように、SNRが14dBを超える場合、提案されたプリコーダを使用することにより、利用可能なすべてのアンテナが使用されるZFプリコーダを上回りながら、送信アンテナの3分の1をオフにする(そのため送信電力を3分の1分減らす)ことが可能である。この例は、提案されたプリコーダをアンテナ選択手続と組み合わせて使用することにより、MIMOシステムのエネルギー効率を改善できることを示している。
【0060】
上記の実施形態、態様、シナリオ、および例のいくつかは、単一セルのダウンリンクシナリオの文脈で開示されてきた。ただし、ターミナルデバイスに複数のアンテナ要素が装備されている場合は、提案されたプリコーダをアップリンクにも使用できる。さらに、提案されたプリコーダは、マルチセルシナリオでも使用できる(他のセル(またはネットワークノード)からの干渉を表す用語を、上記のSINDRの式の分母に導入できる)。さらに、メモリを用いた非線形性および周波数選択的プリコーディングへの拡張が可能であるが、本開示の簡潔さのために省略されている。
【0061】
図8は、いくつかの機能ユニットに関して、一実施形態による無線トランシーバデバイス200a、200bの構成要素を、概略的に示している。処理回路210は、適切な中央処理装置(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)などのうちの1つまたは複数の任意の組み合わせを使用して、(図10に示されるように)例えば、記憶媒体230の形態でコンピュータプログラム製品1010に格納されたソフトウェア命令を実行可能に提供される。処理回路210は、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)としてさらに提供され得る。
【0062】
特に、処理回路210は、無線トランシーバデバイス200a、200bに、上記に開示された一連の動作またはステップを実行させるように設定される。例えば、記憶媒体230は、動作のセットを記憶でき、処理回路210は、記憶媒体230から動作のセットを検索して、無線トランシーバデバイス200a、200bに動作のセットを実行させるように設定され得る。一連の動作は、一連の実行可能命令として提供され得る。
【0063】
したがって、処理回路210は、それによって、本明細書に開示されるような方法を実行するように構成される。記憶媒体230は、永続記憶も有し得て、これは、例えば、磁気記憶、光記憶、固体記憶、または遠隔的に取り付けられた記憶の任意の単一または組合せであり得る。無線トランシーバデバイス200a、200bは、通信システム100の他の構成要素、エンティティ、機能、ノード、およびデバイスとの通信のために少なくとも設定された通信インターフェース220をさらに備え得る。したがって、通信インターフェース220は、アナログおよびデジタル構成要素を有し、1つまたは複数の送信機および受信機を備えることができる。処理回路210は、例えば、通信インターフェース220および記憶媒体230にデータおよび制御信号を送信することにより、通信インターフェース220からデータおよびレポートを受信することにより、および記憶媒体230からデータと命令を引き出すことによって、無線トランシーバデバイス200a、200bの一般的な動作を制御する。無線トランシーバデバイス200a、200bの他の構成要素、ならびに関連する機能は、本明細書に提示された概念を曖昧にしないために省略されている。
【0064】
図9は、いくつかの機能モジュールに関して、一実施形態による無線トランシーバデバイス200a、200bの構成要素を概略的に示している。図9の無線トランシーバデバイス200a、200bは、いくつかの機能モジュール、すなわち、ステップS102を実行するように設定された取得モジュール210a,ステップS104を実行するように設定された決定モジュール210b、およびステップS106を実行するように設定された送信モジュール210c、を備える。図9の無線トランシーバデバイス200a、200bは、機能モジュール210dによって象徴されるように、いくつかのオプションの機能モジュールをさらに備え得る。一般的に、各機能モジュール210a~210dは、一実施形態ではハードウェアでのみ実装され、別の実施形態ではソフトウェアの助けを借りて実装され得る、すなわち後者の実施形態は、記憶媒体230に格納されたコンピュータプログラム命令を有する。記憶媒体230は、処理回路で実行されるときに、無線トランシーバデバイス200a、200bに、図9と併せて上記の対応するステップを実行させる。モジュールがコンピュータプログラムの一部に対応しても、モジュール内で個別のモジュールである必要はなく、ソフトウェアでの実装方法は、使用するプログラミング言語によって異なる。好ましくは、1つまたは複数またはすべての機能モジュール210a~210dは、おそらく通信インターフェース220および/または記憶媒体230と協力して、処理回路210によって実装され得る。このため、処理回路210は、機能モジュール210a~210dによって提供されるような記憶媒体230フェッチ命令から、これらの命令を実行するように設定され得るとともに、それにより、本明細書に開示される任意のステップを実行し得る。
【0065】
無線トランシーバデバイス200a、200bは、スタンドアロンデバイスとして、または少なくとも1つのさらなるデバイスの一部として提供され得る。例えば、図1を参照して開示されるように、無線トランシーバデバイス200a、200bは、無線アクセスネットワークノード140、および/またはターミナルデバイス150の一部であり得る。
【0066】
図10は、コンピュータ可読記憶媒体1030を有するコンピュータプログラム製品1010の一例を示している。このコンピュータ可読記憶媒体1030上に、コンピュータプログラム1020を記憶でき、そのコンピュータプログラム1020は、処理回路210と、通信インターフェース220および記憶媒体230などの動作可能に結合されたエンティティおよびデバイスに、本明細書に記載の実施形態に応じた方法を、実行させることができる。このため、コンピュータプログラム1020および/またはコンピュータプログラム製品1010は、本明細書に開示される任意のステップを実行するための手段を提供できる。
【0067】
図10の例では、コンピュータプログラム製品1010は、CD(コンパクトディスク)またはDVD(デジタル多用途ディスク)またはブルーレイディスクなどの光ディスクとして示されている。コンピュータプログラム製品1010はまた、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、または電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、さらには特に、USB(ユニバーサルシリアルバス)メモリ、またはコンパクトフラッシュメモリなどのフラッシュメモリなどの外部メモリ内のデバイスの不揮発性ストレージメディアとしても、メモリとして具体化できる。このため、コンピュータプログラム1020は、ここでは、図示の光ディスク上のトラックとして概略的に示されているが、コンピュータプログラム1020は、コンピュータプログラム製品1010に適した任意の方法で格納できる。
【0068】
本発明の概念は、主に、いくつかの実施形態を参照して上で説明されてきた。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上に開示されたもの以外の実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
【0069】
附属書A
I.はじめに
大規模なマルチアンテナ送信技術と組み合わせたミリ波(mmWave)周波数帯域での無線通信は、今日の最高水準の通信システムと比較して、スペクトル効率の大幅な改善を約束する[1]。これらのテクノロジーは、第5世代(5G)セルラーネットワークを含む将来の通信システムの主要な実現要因であると考えられている[2]。最近、ミリ波マルチアンテナ送信方式の可能性を研究するための多くの学術調査が行われている(調査については、例えば[3]を参照)。ただし、これらの作業の大部分は、理想的なトランシーバハードウェアの前提に依存しており、現実的なシステムでは有効な前提ではない。
実際には、マルチアンテナシステムのパフォーマンスは、例えばアンプの非線形性、位相ノイズ、同相/直交(I/Q)の不均衡、量子化ノイズなど、種々のトランシーバのハードウェア障害によって制限される。これらの障害のモデル化とそれらによって課せられるパフォーマンスのロスの評価は、最近の関心の高いトピックである。この分野の既存の研究は、2つのグループに分類できる。第1作業グループは、単一の(または優勢な)ハードウェア障害の影響に焦点を当てている。例えば、マルチアンテナシステムのパフォーマンスに対するパワーアンプ(PA)の非線形性の影響は、例えば[4]~[6]で調査されている。[7]の作業は、PAの非線形性とクロストークが存在する場合のミリ波マルチアンテナシステムの性能(スペクトル効率とエネルギー効率の観点から)を特徴づけている。位相ノイズ、I/Q不均衡、量子化などの他のハードウェア障害の影響は、例えば[8]-[12]で調査されている。第2作業グループは、いくつかのハードウェア障害の総合的な影響の評価に関係している([13]~[15]などを参照)。これらの作業では、非理想的なハードウェアによって引き起こされる歪みは、アンテナアレイ全体で無相関の加法性ガウスノイズとしてモデル化されている。ただし、これは現実的な前提ではなく、非線形性によって引き起こされる歪みは、一般に、アンテナアレイ上で相関している[16]、[17]。より最近では、非線形アンプ、位相ノイズ、および量子化によって引き起こされる歪みを集約したハードウェア障害モデルが提供された。これは、歪み内の固有の相関関係をキャプチャする[18]。
本開示では、送信機での非線形PAの使用を考慮に入れた線形プリコーダを見つけるために、歪み認識ビームフォーミング(DAB)と呼ばれる反復スキームを提案する。具体的には、ダウンリンクミリ波マルチユーザ多入力単一出力(MISO)システムを検討し、非凸最適化問題を定式化して、合計レートの下限を最大化する線形プリコーダを見つける。これは、ほぼ勾配上昇法を使用して解決する。数値シミュレーションにより、提案されたDABプリコーダの有効性を示す。具体的には、非線形歪みを考慮に入れることにより、DABプリコーダが従来の最大比送信(MRT)およびゼロフォーシング(ZF)プリコーディングよりも優れていることを示す。
小文字と大文字の太字は、それぞれベクトルとマトリクスを示す。上付き文字(・)、(・)、および(・)は、それぞれ複素共役、転置、およびエルミート転置を示す。期待値を表すために
を使用する。||a||を使用してaのlノルムを示す。MxM単位マトリクスはIで示され、M×Mオールゼロマトリクスは0M×Mで示される。
を使用して、2つの等しいサイズのマトリクスAとBのアダマール(エントリ単位)積を示す。さらに、diag(A)は正方マトリクスAの主対角である。共分散マトリクス
を持つ円対称の複素ガウスランダムベクトルの分布はCN(0M×M、C)で表される。最後に、
を使用してインジケーター関数を示す。これは、a∈Aの場合は
、a
Aの場合は
として定義される。
II. システムモデルと問題の定式化
図1に示す非線形に歪んだマルチユーザMISOシステムを検討する。ここで、Mアンテナ送信機は同じ時間-周波数リソースでK個の単一アンテナユーザにサービスを提供する。k番目(k=1、・・・、K)のユーザで受信した信号は次の式で与えられる。
ここで、
は送信機とk番目のユーザの間のチャネル(各コードワードの期間中一定であると想定)、
はプリコード化されたベクトル、w~CN(0、N)、は加法性ホワイトガウスノイズ(AWGN)である。ベクトルにエントリごとに適用される非線形関数
を使用して、送信機での非線形PAをモデル化する。
x=Psであるような線形プリコーディングを検討する。ここで、
はプリコーディングマトリクスであり、s=[s,...,s~CN(0KxK,I)は送信シンボルである。
A.送信機のハードウェア障害のモデリング
システムの性能に対する非線形歪みの影響を分析するために、例えば[8]、[17]、[18]と同様に、ブッシュガンの定理[19]を使用する。非線形に歪んだ信号φ(x)を次のように書くことができる。
φ(x)=Bx+e (2)
ここで、歪み項
はxと無相関である。つまり、
である。さらに、
は対角マトリクスであり、その対角線に沿ったエントリは、m=1,..,Mに対して
で与えられる。この開示では、簡単にするために、送信機の非線形PAに3次多項式モデルを使用する。具体的には、
φ(x)=βx+βx|x| (3)
ここで、

はモデルパラメータであり、送信機には既知であると想定している。このような認識を取得するための可能な方法は、送信機で1つまたは少数の観測受信機を使用して無線測定を実行することである(例えば、[20]、[21]を参照)。(3)の3次多項式モデルおよびx=Psの場合、(2)のゲインマトリクスBは次のようにプリコーディングマトリクスPに依存すると考えられる。
B(P)=β+2βdiag(PP) (4)
B.達成可能な合計レート
(1)に(2)を挿入することにより、k番目のユーザで受信した信号を次のように書くことができる。
ここで、sはk番目のユーザで所望のシンボルである。(5)の実効ノイズ項
は、一般に、送信機の非線形性のために非ガウス分布であることに注意すべきである。ガウスノイズは、共分散制約下でのガウス入力の(相互情報量の観点からの)最悪の加法性ノイズであるため[22]、達成可能な合計レートは次のように定式化できる。
ここで、SINDR(P)は、k番目のユーザでの信号対干渉ノイズおよび歪み比(SINDR)であり、次の式で与えられる。
ここで、
は、歪みeの共分散であり、次の式で与えられる(例えば、[17,式(24)]を参照)
C.最適化問題
明らかに、プリコーディングマトリクスPの選択は、(6)の合計レートに影響を与える。送信機での完全なチャネル状態情報(CSI)の仮定の下で、私たちの目的は、平均送信電力の等式制約
の下で(6)の合計レートを最大化するプリコーディングマトリクスPを見つけることである。この最適化問題は次のように定式化できる。
sum(P)はPの非凸関数であるため、(9)は非凸最適化問題であることに注意されたい。次に、セクションIIIで説明した反復アルゴリズムを使用してこの問題をほぼ解決する。
III.歪み-認識線形プリコーディング
以下では、制約付き非凸最適化問題(9)を、勾配上昇とそれに続く投影ステップに基づく反復スキームを使用して解決し、ソリューションの実現可能性を確保する。反復スキームの出力をDABプリコーディングマトリクスと呼ぶ。具体的には、反復ソリューションは、目的関数Rsum(P)の最も急な上昇方向に沿ってステップを実行し、続いて次のように結果のプリコーディングマトリクスを正規化することにより、プリコーディングマトリクスを更新する。
ここで、i=1,・・・,Iは、イテレーションインデックスであり、Iはイテレーションの最大数であり、μ(i)は、i番目のイテレーションのステップサイズであり、
は、(9)での電力制約が満足する更新後のプリコーディングマトリクスの正規化を表す。
の場合、プリコーディングマトリクスを
に更新し、ステップサイズをμ(i)=μ(0)にリセットする。それ以外の場合、プリコーディングマトリクスを更新しない。つまり、P(i)=P(i-1)であり、ステップサイズを
に小さくする。最後に、DABプリコーディングマトリクスとしてPDAB=P(I)を選択する。アルゴリズム1に、投影勾配上昇アプローチを使用してDABプリコーディングマトリクスを計算するために必要なステップを要約する。
次に、勾配
の閉形式の式を提供する。この式は、更新ステップ(10)を評価するために必要である。この目的のために、
は、(7)のSINDRの分子を示す。さらに、
は、(7)のSINDRの分母を示す。ここで、

は、それぞれマルチユーザ干渉と非線形歪みに対応する分母の一部である。
これらの定義により、勾配∇sum(P)は次のように書くことができる。
ここで、

である。したがって、勾配∇sum(P)を計算するには、k=1,…,Kの場合のn(P)とd(P)の導関数を計算する必要がある。分子から始めて、
に関する導関数は、k’=1,…,Kについて、次のように書くことができることが示され得る。
ここでは、
を次のように定義している。
さらに、
を次のように定義した。
分母の
に関する導関数は次のように書くことができる。
ここで、分母のマルチユーザ干渉項の導関数は、k’=1,...,Kについて、次の式で与えられる。
さらに、分母の非線形歪み項の導関数のm番目のエントリは、k’=1,…,K、および、m=1,...,Mについて、次の式で与えられる。
ここでhk、m=[hおよびpm、k=[pである。最後に、(11)、(12)、(14)、(17)、(18)および(19)を(13)に挿入することにより、勾配∇sum(P)の閉形式の式を取得する。
アルゴリズム1の目的関数(つまり、合計レート)は、あるイテレーションから次まで減少せず、特定のSNRに対して上位から制限されることに注意されたい。このため、このアルゴリズムの収束が保証される。ローカルな最大値ではなくグローバルな最大値に収束する可能性を高めるために、複数の初期化を使用してアルゴリズムを繰り返し、最高の合計レートを達成するソリューションを選択する。初期化のセットにMRTおよびZFプリコーディングマトリクスを含めることにより、DABプリコーダがこれらの従来の線形プリコーダよりもパフォーマンスが低下しないことを保証できる。
IV.数値例
数値シミュレーションにより、提案されたDABプリコーディングスキームの有効性を検証する。まず、アルゴリズム1の収束行動だけでなく、達成可能な合計レートを評価するために、いくつかの散乱体を含む幾何学的チャネルモデルを採用する。次に、送信信号の遠方にある放射パターンを研究する。これにより、提案されたプリコーディング方式の作動原理についての洞察が得られる。
以下では、特に明記しない限り、M=16アンテナ、β=0.98、β=-0.04-0.01j、およびPtot=43dBmに設定する。反復回数をI=50に設定し、P(0)の50の異なる初期化に対してアルゴリズム1を実行する。具体的には、アルゴリズム1をMRTおよびZFプリコーディングマトリクスと48個のランダム初期化(P(0)の要素がガウス分布から抽出される場合)で初期化する。
A.幾何学的チャネルモデル
見通し外(nLoS)環境でのmm波チャネルのスパース散乱特性をキャプチャするために、つまり、支配的なパスがない場合、k=1,...,Kについて、例えば[23]、[24]のように、Lの散乱体を有する幾何学的なチャネルモデルを採用する。
ここで、ak、l~CN(0,γ)は、l番目のパスに対応するチャネルゲイン(パスロスを含む)である。ここで、γは平均パスロスである。さらに、ψk、lはl番目のパスの出発角度(AoD)であり、a(ψk、l)は対応するアレイ応答ベクトルである。送信アンテナは、m=1,...,Mについて、a(ψk、l)のm番目のエントリが
となるように、λ/2間隔(λはキャリア波長)の均一線形アレイ(ULA)に配置されていると仮定する。シミュレーション全体を通して、信号対雑音比(SNR)の次の定義を使用する。
B.パフォーマンスの比較
図6では、K=2の場合、DABプリコーディングによって達成された合計レートを、SNRの関数として従来のMRTおよびZFプリコーディングによって達成された合計レートと比較している。AoD ψk、lが、区間[0°,180°]に均一に分布していると仮定して、(20)のモデルを使用して生成された10のランダムチャネル実現にわたる(6)の合計レートを平均する。[25、表I]に示されているnLoSパスロスモデルを採用し、システムが平均距離でキャリア周波数f=28GHz(λ≒10.7mmとなるように)で動作すると仮定する。送信機からユーザまでの平均距離が20mの場合、平均パス損失はγ=-110dBであることがわかる。
図6から、DABプリコーディングは、非線形PAによって導入される歪みを考慮しない従来の線形プリコーダよりも優れていることがわかる。パフォーマンスの向上は、パフォーマンスが非線形歪みによって制限される高SNRレジームで特に顕著である。低SNRレジームでは、つまり、熱雑音が非線形歪み(およびマルチユーザ干渉)を支配する場合、DABプリコーダのパフォーマンスはMRTプリコーダのパフォーマンスと一致する。
C.遠方界放射パターン
DABプリコーディングが高SNRで従来の線形プリコーダよりも優れている理由を理解するために、図5に、K∈{1,2}ユーザおよびSNR∈{-10,30}dBの送信信号の遠方界放射パターンを示す。(2)から想起できるように、送信信号は非線形性への入力の線形関数と歪み項の合計として記述できる。ψ方向の線形成分の累乗はa(ψ)BPP(ψ)である。ψ方向の歪み項の累乗はa(ψ)C(ψ)である。図5では、K=1の場合、h=a(ψ)、ψ=90°に設定する。K=2の場合、h=a(ψ)およびh=a(ψ)、ψ=30°およびψ=90°に設定する。参考までに、SNR動作点に依存しないMRTプリコーディングの遠方界放射パターンも示す。
図5(a)と図5(b)から、MRTプリコーディングを使用すると、歪みがユーザに向けてビーム形成されることがわかる。一方、高いSNR値の場合、DABプリコーディングは、結果として生じるSINDRを改善するために、ユーザの方向に送信される歪みを最小限に抑える。これは、図5(e)で特に明白になる。ここでは、DABプリコーディングにより、ユーザへのアレイゲインの低下と不要な方向への放射の増加を犠牲にして、ユーザの方向の歪みがゼロになることがわかる(このシナリオではψ=90°であることが想起される)。これにより、パフォーマンスが非線形歪みによって制限される高SNRレジームでDABがMRTおよびZFよりも優れている理由が明らかになる。パフォーマンスが熱雑音によって制限される低いSNR値の場合、DABプリコーダは代わりに、ユーザの方向のアレイゲインを最大化して、受信電力を最大化する。したがって、DABプリコーダはMRTソリューションと一致する(例えば、図5(a)および図5(b)を、図5(c)および図5(d)と比較)。
V.結論
本開示では、歪み認識線形プリコーダを計算するための反復スキームを提案した。提案された方式は、送信機で非線形PAが使用される場合に、ミリ波マルチユーザMISOダウンリンクチャネルを介して従来の線形プリコーダと比較して大幅なゲインをもたらすことが示されている。高SNRレジームとシングルユーザの場合、提案されたアルゴリズムはユーザの方向の歪みをゼロにできることを観察した。
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【国際調査報告】