(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】カーボンフェルトベースの電極アセンブリおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/88 20060101AFI20220708BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20220708BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220708BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20220708BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20220708BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20220708BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20220708BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20220708BHJP
H01G 11/28 20130101ALI20220708BHJP
H01G 11/68 20130101ALI20220708BHJP
H01G 11/40 20130101ALI20220708BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20220708BHJP
【FI】
H01M4/88 C
H01M4/88 K
H01M12/06 F
H01M4/66 A
H01M4/74 A
H01M4/74 C
H01M4/80 C
H01M4/70 A
H01M12/08 K
H01G11/86
H01G11/28
H01G11/68
H01G11/40
H01G11/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568435
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 IN2020050436
(87)【国際公開番号】W WO2020230166
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】201811043134
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521209373
【氏名又は名称】ログ 9 マテリアルズ サイエンティフィック プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LOG 9 MATERIALS SCIENTIFIC PRIVATE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】アクシャイ ヴィヴェック シンハル
(72)【発明者】
【氏名】アンシュル クマール シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】クナル ポール
(72)【発明者】
【氏名】アーヴィンド バードワージ
(72)【発明者】
【氏名】サイード シャジャル アリ イマム
(72)【発明者】
【氏名】ヘマント チャラヤ
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H018
5H032
【Fターム(参考)】
5E078AA03
5E078AA10
5E078AB02
5E078BA14
5E078BB24
5E078BB38
5E078FA02
5E078FA03
5E078FA04
5E078FA07
5E078FA12
5E078FA13
5H017AA07
5H017AA10
5H017AS02
5H017CC01
5H017CC05
5H017CC28
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H018AA08
5H018AA10
5H018AS01
5H018BB01
5H018BB03
5H018BB08
5H018BB11
5H018DD06
5H018DD08
5H018EE02
5H018EE05
5H018EE08
5H018EE17
5H018HH03
5H018HH05
5H018HH08
5H018HH09
5H032AA01
5H032AS01
5H032AS12
5H032BB02
5H032BB03
5H032BB05
5H032BB10
5H032CC13
5H032EE01
5H032EE12
5H032EE18
5H032HH01
5H032HH04
5H032HH06
(57)【要約】
本発明の様々な実施形態は、バインダー添加剤を使用せずにカーボンフェルトベースの電極を作製する方法を提供するものである。導電性高分子接着剤のコーティングを集電体上に塗布する。集電体の両側にカーボンフェルトを配置してアセンブリを得る。集電体とカーボンフェルトからなるアセンブリを、集電体の表面に塗布された接着剤を硬化させるための所定の条件を備えたホットプレスのプレート間に配置し、電極のサンドイッチ構造体を得る。この電極のサンドイッチ構造体を、必要な厚さとポロシティに応じて、ローラーで挟んでプレスする。この電極を、仕立てプロセスにより、電極切断用の金型を用いて所望の形状に切断する。製造されたカーボンフェルト電極は、バインダーベースで脆い性質であるカーボンフェルト電極と比較して、高い柔軟性および機械的な堅牢性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー添加剤を使用せずにカーボンフェルトベースの電極を製造する方法であって、以下の工程:
集電体上に導電性高分子接着剤のコーティングを塗布する工程、
集電体の両側にカーボンフェルトを配置/位置づけして、カーボンフェルトおよび集電体のアセンブリを得る工程、
集電体およびカーボンフェルトからなるアセンブリを、集電体表面に塗布された接着剤を硬化させるための所定の条件を備えたホットプレスの板の間に配置し、ホットプレスにより集電体およびカーボンフェルトの結合を促進して、電極のサンドイッチ構造体を得る工程、
電極のサンドイッチ構造体を、カーボンフェルトベースの電極の所望の厚さとポロシティに応じてローラーで圧延する工程、および、
仕立てプロセスにより、電極切断用金型を用いて電極を所望の形状に切断する工程
を含む、カーボンフェルトベースの電極の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、集電体の表面に塗布された接着剤をホットプレスで硬化させるための所定の条件が、圧力と温度であり、印加圧力が0.1MPaから200MPaの範囲であり、ホットプレスの温度が25℃から200℃の範囲であり、ホットプレスによってカーボンフェルトの厚さが元の値の5%から25%に減少することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、金属集電体が、カーボンフェルトベースの電極に機械的強度を付与し、金属集電体が圧力に対して耐え、カーボンフェルトベースの電極の集電能力を高め、集電体が、アルミニウム、銀、ニッケル、金、鉄、白金および合金からなる群から選択される金属から製造され、集電体の構造形態が、メッシュ、スクリーン、ホイル、フォーム、穴あき金属シート、不織布金属繊維からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、導電性高分子接着剤が、カーボンナノチューブ(CNT)ベースの接着剤、カーボンブラックベースの接着剤、銀ペースト、導電性エポキシおよびミールナノ粒子ベースの接着剤からなる群から選択され、導電性高分子接着剤が、金属集電体およびカーボンフェルトの間の結合の強化を提供することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、カーボンフェルトベースの電極を製造するための圧延技術が、熱間圧延および冷間圧延からなる群から選択され、圧延プロセス/技術が、カーボンフェルトベースの電極の厚さを0.4から5mmの範囲で最適化し、圧延プロセス/技術が、カーボンフェルトベースの電極のポロシティを5から150μmの範囲で最適化し、圧延プロセス/技術が、カーボンフェルトベースの電極の密度を0.3g/cm
3から2g/cm
3の範囲で最適化することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、製造されたカーボンフェルトベースの電極が、バインダーベースのカーボンフェルトベースの電極と比較して、強化された柔軟性と機械的堅牢性を示し、カーボンフェルトおよび金属集電体の間の結合が高出力をもたらすことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2018年11月16日に出願され、続いて2019年5月16日に6か月繰り下げられた、タイトル「Assembly of Carbon Felt Based Electrodes and Preparation Method Thereof」を有するシリアル番号第201811043134号のインド仮特許出願の優先権を主張するものであり、その内容を、本明細書において参照することにより完全に取り入れる。本出願は、さらに、2018年11月15日に出願された、タイトル「Methods For The Preparation Of Graphene Felts」を有するシリアル番号第201811043051号のインド仮特許出願の内容を、本明細書において参照することにより完全に取り入れる。
【0002】
(発明の背景)
<技術分野>
本発明の実施形態は、一般に、電極アセンブリに関する。本発明の実施形態は、特に、燃料電池、電気二重層コンデンサ、金属空気電池、金属イオン電池、レドックスフロー電池などの電気化学的用途のためのカーボンフェルトベースの電極に関する。本発明の実施形態は、より詳細には、カーボンフェルトベースの電極構造体または組成物、および柔軟で自立した、機械的に堅牢なカーボンフェルトベースの電極であり、強化された集電能力を有するカーボンフェルトベースの電極を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
<関連技術の説明>
任意のエネルギー貯蔵技術にとって、電極材料は、エネルギー密度および出力密度に直接影響を与えるため、重要な構成要素である。適切で有能な電極材料は、良好な電気伝導性、高い比表面積、優れた電気化学的活性、および低コストを有するべきである。従来の金属電極は、電気化学的な可逆性に乏しく、電解質媒体によって容易に不動態化/不活性化される。しかし、白金、イリジウム、セレン、ジルコニウム、ルテニウムを含む貴金属系の電極は、高い電気化学活性、良好な触媒特性、良好な化学的安定性を有するが、これらの材料は非常に高価であるため、大規模な応用は制限されていた。
【0004】
一般的に電気化学的用途に使用されている現在の形態のカーボンフェルト電極は、壊れやすく脆いため機械的安定性が低く、抵抗率が高いため抵抗損失が大きく、濡れ性が低いため電気化学活性が不十分であるという問題がある。
【0005】
大規模な応用とともに費用対効果を達成するために、高い導電性、高い比表面積、良好な電気化学的安定性、強酸性/塩基性条件(硫酸、水酸化ナトリウム/カリウム支持電解質)での安定性を持ち、大規模に生産される電極を製造する必要がある。特に、カーボンフェルトは、高導電性、高比表面積、良好な電気化学的安定性、強酸性/強塩基性条件(硫酸、水酸化ナトリウム/水酸化カリウム支持電解液)での安定性などから、最も広く使用されている電極材料として選ばれる。このようなカーボンフェルト電極材料を得るために、様々な炭素粉末が高分子バインダー材料と混合される。しかし、これらの高分子バインダーは、実際には、炭素系材料の電極触媒特性、導電性および集電能力に大幅に悪影響を及ぼす。
【0006】
有機/無機の高分子バインダーをベースとして、炭素質の織布を炭化して形成したカーボンフェルト電極は、その性質上、脆いことが多い。これらの脆いカーボンフェルトで作られたカーボンフェルト電極を、燃料電池または金属空気電池またはレドックスフロー電池に組み入れると、柔軟性が低く、機械的安定性が低いため、電極の漏れおよび劣化などの多くの問題が発生する。
【0007】
これらのカーボンフェルトを用いた電極の改質および改変は、その電気化学的および触媒的な活性を向上させ、燃料電池、電気二重層コンデンサ、金属空気電池、金属イオン電池、レドックスフロー電池などの様々なエネルギー貯蔵用途での利用を改善するために、非常に望ましい研究分野である。
【0008】
それゆえ、バインダー添加剤を使用せずにカーボンフェルトベースの電極を製造する方法が必要である。さらに、柔軟性があり、機械的に堅牢で、他の市販のカーボンフェルトと比較して優れた集電能力を示すカーボンフェルトベースの電極を製造する必要がある。またさらに、高表面積、調整可能な細孔構造および表面形態、ならびに電気化学的活性を持つカーボンフェルトベースの電極が必要である。また、金属空気電池、燃料電池、レドックスフロー電池、電気二重層コンデンサなどのエネルギー貯蔵用途においても、カーボンフェルトベースの電極が必要である。
【0009】
上述の欠点、短所、および課題について、本明細書で取り組み、それは以下の詳述を検討することによって理解されるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(実施形態の目的)
本発明の主な目的は、燃料電池、電気二重層コンデンサ、金属空気電池、金属イオン電池、レドックスフロー電池などの電気化学的用途のための、カーボンフェルトベースの電極組成物またはカーボンフェルトベースの電極アセンブリ構造体、およびカーボンフェルトベースの電極を作製する方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、カーボンフォーム、膨張化黒鉛、剥離黒鉛、グラフェンフォーム、グラフェン3Dアーキテクチャ、3Dグラフェン、グラフェンシート、グラフェンプレートレット、活性炭、単層および多層カーボンナノチューブ、カーボンブラックおよびそれらの誘導体からなる群から選択される複数の炭素系材料から、カーボンフェルトベースの電極を作製する方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、バインダー添加剤を使用せずにカーボンフェルトベースの電極を作製する方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、柔軟で機械的に堅牢なカーボンフェルトベースの電極アセンブリ構造体を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、強化された集電能力を有するカーボンフェルトベースの電極アセンブリを提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、カーボンフェルト、ならびに、金属メッシュ、金属スクリーン、金属ホイル、金属フォーム、穴あき金属シート、および不織布金属繊維、などの様々な形態の集電体、ならびに、導電性高分子との間に形成された強い結合からなるカーボンフェルトベースの電極アセンブリを提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、カーボンフェルトと、Al、Ag、Ni、Au、FeまたはPtからなる群から選択される金属集電体との間の強い結合からなるカーボンフェルトベースの電極アセンブリ構造体を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、カーボンフェルトベースの電極の集電能力を向上させる導電性接着剤を提供することであり、当該接着剤は、グラフェンベースの接着剤、CNTベースの接着剤、カーボンブラックベースの接着剤、銀ペースト、導電性エポキシ、金属ナノ粒子ベースの接着剤およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、集電体が2枚のカーボンフェルトで挟まれた前記カーボンフェルトベースの電極アセンブリを作製する加工技術を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、前記カーボンフェルトベースの電極アセンブリを作製するための加工技術を提供することであり、当該加工技術は、ホットプレス、コールドプレス、および油圧圧縮からなる群から選択される。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、前記カーボンフェルトベースの電極を作製するための圧延プロセスを提供することであり、この圧延プロセスとしては、2つの高圧延機、3つの高圧延機、および2つの可逆圧延機を用いた、熱間圧延や冷間圧延が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、カーボンフェルトベースの電極アセンブリの厚さが、圧延プロセスによって0.4mmから5mmの範囲になるように最適化されたカーボンフェルトベースの電極アセンブリを提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、カーボンフェルトベースの電極のポロシティ(孔)が、圧延プロセスによって5から150μmの範囲になるように最適化されたカーボンフェルトベースの電極アセンブリを提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、カーボンフェルトベースの電極の密度が、圧延プロセスによって0.3g/cm3から2g/cm3の範囲に最適化されたカーボンフェルトベースの電極アセンブリを提供することである。
【0024】
本発明のさらに他の目的は、調整可能な表面形態を有するカーボンフェルトベースの電極を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、前記カーボンフェルトベースの電極を所望の形状にするためのカーボンフェルトベースの電極アセンブリの仕立てプロセスを提供することである。
【0026】
本発明のこれらおよび他の目的および利点は、添付の図面と併せて捉えられる以下の詳細な説明から容易に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本明細書の様々な実施形態は、機械的支持のために2枚のカーボンフェルトの間に金属集電体が組み込まれているカーボンフェルトベースの電極アセンブリを提供する。本発明の実施形態は、高圧に耐える能力を有し、電極の集電効率を改善し、それによって抵抗損失の形で失われるエネルギーの割合を低減する、カーボンフェルトベースの電極アセンブリを作製する方法を提供する。また、本発明の実施形態は、バインダー添加剤を使用せずにカーボンフェルトベースの電極を作製する方法を提供する。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、バインダー添加剤を使用せずにカーボンフェルトベースの電極を作製する方法は、以下の工程を含む。導電性高分子接着剤のコーティングを集電体上に塗布する。カーボンフェルトを集電体の両側に配置/位置づけして、カーボンフェルトと集電体とのアセンブリを得る。集電体およびカーボンフェルトからなるアセンブリをホットプレスの板の間に挟み、所定の条件で加工することで、集電体表面に塗布した接着剤を硬化させ、集電体とカーボンフェルトとの結合を促進/増加させて、電極のサンドイッチ構造体を得る。この電極のサンドイッチ構造体をローラーで加圧し、所望のカーボンフェルト電極の厚みおよびポロシティに応じてプレスする。仕立てプロセスによって、この電極を、電極切断用の金型を用いて所望の形状に切断する。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、集電体の表面に塗布された接着剤をホットプレスで硬化させるための所定の条件は、圧力と温度である。所定の印加圧力は、0.1MPaから200MPaの範囲である。ホットプレスにおける所定の温度は、25℃から200℃の範囲である。ホットプレスにより、カーボンフェルトの厚さは、元の値の5%から25%に減少する。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、金属集電体は、カーボンフェルトベースの電極に機械的強度を付与する。金属集電体は、圧力に対して耐えるように設計されており、カーボンフェルトベースの電極の強化された集電能力を達成するようになっている。集電体は、アルミニウム、銀、ニッケル、金、鉄、白金、および合金からなる群から選択された金属から製造される。集電体の構造形態は、メッシュ、スクリーン、ホイル、フォーム、穴あき金属シート、不織布金属繊維からなる群から選択される。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、導電性高分子接着剤は、カーボンナノチューブ(CNT)ベースの接着剤、カーボンブラックベースの接着剤、銀ペースト、導電性エポキシおよびミールナノ粒子ベースの接着剤からなる群から選択される。導電性高分子接着剤は、金属集電体とカーボンフェルトとの間の結合を強化する。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、カーボンフェルトベースの電極を作製するための圧延技術は、熱間圧延プロセスおよび冷間圧延プロセスからなる群から選択される。圧延プロセス/技術は、カーボンフェルトベースの電極の厚さを0.4から5mmの範囲で最適化し、当該圧延プロセス/技術は、カーボンフェルトベースの電極のポロシティを5から150μmの範囲で最適化する。圧延プロセス/技術は、カーボンフェルトベースの電極の密度を0.3g/cm3から2g/cm3の範囲で最適化する。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、製造されたカーボンフェルトベースの電極は、バインダーベースのカーボンフェルトベースの電極と比較して、強化された柔軟性および機械的堅牢性を示す。カーボンフェルトと金属集電体との間の結合は、高出力をもたらす。
【0034】
本明細書の実施形態のこれらおよび他の態様は、以下の説明および添付の図面と併せて考慮すると、よりよく認識され、理解されるであろう。しかしながら、以下の説明は、好ましい実施形態およびその多数の具体的な詳細を示しているが、説明のために与えられるものであり、限定するものではないことを理解すべきである。その精神から逸脱することなく、本明細書の実施形態の範囲内で多くの変更および修正を行うことができ、本明細書の実施形態には、そのような修正がすべて含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
好ましい実施形態の以下の説明および添付の図面から、当業者は、他の目的、特徴および利点に気付くであろう。
【
図1】
図1は、本明細書の一実施形態による、バインダー添加剤を使用せずにカーボンフェルトベースの電極を作製する方法を説明するフローチャートを示す。
【
図2】
図2は、本明細書の一実施形態による、カーボンフェルトベースの電極アセンブリの分解組立図を示す。
【0036】
本発明の特徴を、図面に記載しているが、そのうちのいくつかについては、すべてを示してはいない。これらの特徴は、本発明に存在する任意のまたはすべての他の特徴と組み合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(本明細書の実施形態の詳細な説明)
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照し、その中で、実施され得る特定の実施形態を実例として示す。当業者が実施できるよう、これらの実施形態を、十分詳細に説明しており、実施形態の範囲を逸脱することなく、論理的、機械的、およびその他の変更を行い得ることを理解すべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で捉えるべきではない。
【0038】
本明細書の様々な実施形態は、機械的支持のために2枚のカーボンフェルトの間に金属集電体が組み込まれているカーボンフェルトベースの電極アセンブリを提供するものである。本発明の実施形態は、高圧に耐える能力を有し、電極の集電効率を改善し、それによって抵抗損失の形で失われるエネルギーの割合を低減する、カーボンフェルトベースの電極アセンブリを作製する方法を提供する。また、本発明の実施形態は、バインダー添加剤を使用せずにカーボンフェルトベースの電極を作製する方法を提供する。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、バインダー添加剤を使用せずにカーボンフェルトベースの電極を作製する方法は、以下の工程を含む。導電性高分子接着剤のコーティングを集電体上に塗布する。カーボンフェルトを集電体の両側に配置/位置づけして、カーボンフェルトと集電体とのアセンブリを得る。集電体およびカーボンフェルトからなるアセンブリをホットプレスの板の間に挟み、所定の条件で加工することで、集電体表面に塗布した接着剤を硬化させ、集電体とカーボンフェルトとの結合を促進/増加させて、電極のサンドイッチ構造体を得る。この電極のサンドイッチ構造体をローラーで加圧し、所望のカーボンフェルト電極の厚みおよびポロシティに応じてプレスする。仕立てプロセスによって、この電極を、電極切断用の金型を用いて所望の形状に切断する。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、集電体の表面に塗布された接着剤をホットプレスで硬化させるための所定の条件は、圧力と温度である。所定の印加圧力は、0.1MPaから200MPaの範囲である。ホットプレスにおける所定の温度は、25℃から200℃の範囲である。ホットプレスにより、カーボンフェルトの厚さは、元の値の5%から25%に減少する。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、金属集電体は、カーボンフェルトベースの電極に機械的強度を付与する。金属集電体は、圧力に対して耐えるように設計されており、カーボンフェルトベースの電極の強化された集電能力を達成するようになっている。集電体は、アルミニウム、銀、ニッケル、金、鉄、白金、および合金からなる群から選択された金属から製造される。集電体の構造形態は、メッシュ、スクリーン、ホイル、フォーム、穴あき金属シート、不織布金属繊維からなる群から選択される。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、導電性高分子接着剤は、カーボンナノチューブ(CNT)ベースの接着剤、カーボンブラックベースの接着剤、銀ペースト、導電性エポキシおよびミールナノ粒子ベースの接着剤からなる群から選択される。導電性高分子接着剤は、金属集電体とカーボンフェルトとの間の結合を強化する。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、カーボンフェルトベースの電極を作製するための圧延技術は、熱間圧延プロセスおよび冷間圧延プロセスからなる群から選択される。圧延プロセス/技術は、カーボンフェルトベースの電極の厚さを0.4から5mmの範囲で最適化し、当該圧延プロセス/技術は、カーボンフェルトベースの電極のポロシティを5から150μmの範囲で最適化する。圧延プロセス/技術は、カーボンフェルトベースの電極の密度を0.3g/cm3から2g/cm3の範囲で最適化する。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、製造されたカーボンフェルトベースの電極は、バインダーベースのカーボンフェルトベースの電極と比較して、強化された柔軟性および機械的堅牢性を示す。カーボンフェルトと金属集電体との間の結合は、高出力をもたらす。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、バインダーを使用せずにカーボンフェルトベースの電極を作製するプロセスの全体は、以下の工程からなる。第1工程は、集電体上に導電性高分子または接着剤のコーティングを塗布することからなる。第2工程では、集電体の両側にカーボンフェルトを配置する。第3工程では、集電体に塗布された接着剤を硬化させるために、アセンブリ全体をホットプレスの板の間に配置し、圧力をかける。加える圧力は、0.1MPaから200MPaの範囲である。加圧は25℃から200℃の温度範囲で行う。硬化により、カーボンフェルトと集電体との間の強固な結合が確保される。硬化後のサンドイッチ構造体を、電極の必要な厚さとポロシティに応じて、所定の圧力でローラーによって圧延する。最後の工程である仕立てプロセスでは、複数の用途に応じて、金型を使用して電極を所望の形状に切断する。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、カーボンフェルトベースの電極は、金属集電体、カーボンフェルトおよび導電性接着剤からなる。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、金属集電体は、機械的強度/頑丈さを付与するために、カーボンフェルトベースの電極に組み込まれる。カーボンフェルトベースの電極の機械的強度が強化されることで、高圧に耐え、電極の集電能力が高まり、抵抗損失の形で失われるエネルギーの割合が減少する。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、集電体は、メッシュ、スクリーン、ホイル、フォーム、穴あき金属シート、不織布金属繊維からなる群から選択された構造形態から選択される。集電体は、アルミニウム、銀、ニッケル、金、鉄、白金およびそれらの合金からなる群から選択される金属から製造される。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、導電性高分子接着剤は、カーボンナノチューブ(CNT)ベースの接着剤、カーボンブラックベースの接着剤、銀ペースト、導電性エポキシおよび金属ナノ粒子ベースの接着剤からなる群から選択される。前述の導電性高分子接着剤は、金属集電体とカーボンフェルトとの間に強力な結合をもたらす。さらに、導電性が強化され、カーボンフェルトと金属集電体との間の電荷移動抵抗が低減される。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、導電性高分子接着剤は高分子ベースである。典型的な導電性高分子接着剤は、サーモスタット、エラストマーまたは熱可塑性の様々な高分子のマトリックスからなり、金属フレーク、金属ナノ粒子、またはカーボンブラック、カーボンナノチューブおよびグラフェンを含む任意の導電性炭素同素体などの導電性フィラーを含む。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、カーボンフェルトまたはグラフェンフェルトは、2018年11月16日に出願された、タイトル「Methods for the Preparation of Graphene Felts」を有するシリアル番号201811043051のインド仮特許出願において、出願人により公知となったプロトコルによって合成される。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、バインダーを含まないグラフェンフェルトは、カーボンフォーム、膨張化グラファイト、剥離グラファイト、グラフェンシート、グラフェンリボン、グラフェンプレートレット、グラフェンフォーム、グラフェンスポンジ、グラフェンエアロゲル、グラフェン3Dアーキテクチャ、高膨張化グラファイト、架橋グラフェンシート、グラフェンオニオン、およびグラフェンボールおよびそれらの誘導体からなる群から選択されるグラフェン材料から合成される。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、グラフェンフェルトは、グラフェン材料のデアグロメレーション(解凝集)に続いて、グラフェンフェルト/カーボンフェルトの成形によって合成される。
【0054】
図1は、本明細書の一実施形態による、バインダー添加剤を使用せずにカーボンフェルトベースの電極を作製する方法を説明するフローチャートである。集電体上に導電性高分子接着剤のコーティングを塗布する(101)。集電体の両側にカーボンフェルトを配置して、カーボンフェルトおよび集電体のアセンブリを得る(102)。集電体およびカーボンフェルトのアセンブリを、集電体表面に塗布した接着剤を硬化させ、集電体とカーボンフェルトとの結合を促進するためにホットプレスの板の間に配置し、電極のサンドイッチ構造体を得る(103)。電極のサンドイッチ構造体を、必要な厚さとポロシティに応じてローラーで圧延する(104)。電極を、仕立てプロセスにより、電極切断金型を用いて所望の形状に切断する(105)。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、プレス技術は、集電体が2枚のカーボンフェルトの間に挟まれている、カーボンフェルトベースの電極を作製するために使用される。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、プレス技術は、カーボンフェルトの厚さを元の値の5から25%に減少させるホットプレス、コールドプレス、油圧圧縮のうちの1つである。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、カーボンフェルトベースの電極を作製するための圧延技術は、熱間圧延および冷間圧延からなる群から選択される。この圧延技術は、2つの高圧延機、3つの高圧延機、または2つの可逆圧延機を用いて行われる。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、圧延技術は、カーボンフェルトベースの電極の厚さを0.4mmから5mmの範囲で最適化する。圧延技術は、カーボンフェルトベースの電極のポロシティを5から150μmの範囲で最適化し、この調整可能なポロシティは、効率的な触媒反応のための燃料電池、金属空気電池およびレドックスフロー電池に適用出来る。圧延技術/プロセスに供した後のカーボンフェルトベースの電極の密度は、0.3g/cm3から2g/cm3の範囲である。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、カーボンフェルトベースの電極は、調整可能な表面形態を有し、この調整可能な形態は、効率的な電子移動度および集電能力を目的とする燃料電池、金属イオン電池、金属空気電池およびレドックスフロー電池にとって適切である。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、カーボンフェルトベースの電極に所定の形状を与えるために、仕立てプロセスが用いられる。仕立てプロセスでは、切断用金型が使用される。
【0061】
図2は、本明細書の一実施形態による、カーボンフェルトベースの電極アセンブリの分解組立図である。
図2は、カーボンフェルト(201および202)の間にある集電体(203)を、それぞれ示している。集電体(203)の表面には、導電性高分子接着剤のコーティングが塗布されている。導電性高分子接着剤のコーティングは、集電体(203)とカーボンフェルト(201および202)との間の結合を促進するために適用される。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、カーボンフォーム、膨張化黒鉛、剥離黒鉛、グラフェンフォーム、グラフェン3Dアーキテクチャ、3Dグラフェン、グラフェンシート、グラフェンプレートレット、活性炭、単層および多層カーボンナノチューブ、カーボンブラックおよびそれらの誘導体のうち少なくとも1つである様々な炭素系材料から、カーボンフェルトベースの電極を調製する方法が提供される。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、作製されたカーボンフェルトベースの電極は、バインダーベースで且つ脆い性質である他のカーボンフェルト電極と比較して、高い柔軟性および機械的堅牢性を示す。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、カーボンフェルトベースの電極は、優れた集電能力を有する。また、この電極は、金属メッシュ、金属スクリーン、金属箔、金属発泡体、穴あき金属シート、不織布金属繊維、導電性高分子などの様々な形態の集電体との強い結合の形成を含む。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、カーボンフェルトベースの電極は、カーボンフェルトと金属集電体との間の強い結合を含む。この強い結合は、カーボンフェルトおよび金属集電体の相乗的な集電能力により、高出力につながる。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、カーボンフェルトベースの電極は、高い比表面積、制御可能な表面形態、高い集電特性につながる調整可能な細孔構造、非常に高い導電性を示し、これは最終的に高いエネルギーおよび出力につながり、燃料電池、金属空気電池、金属イオン電池、電気二重層コンデンサ、レドックスフロー電池などの様々なエネルギー貯蔵および環境発電の用途に応用可能である。
【0067】
上述の具体的な実施形態の説明は、他者が、現在の知識を適用することによって、一般的な概念から逸脱することなく、様々な用途のためにそのような具体的な実施形態を容易に変更および/または適応することができるように、本明細書の実施形態の一般的な性質を十分に明らかにするものであり、したがって、そのような適応および変更は、開示された実施形態の等価物の意味および範囲内で理解するべきであり、またそのように意図している。
【0068】
本明細書で用いる言い回しまたは用語は、説明のためのものであり、限定のためのものではないことを理解すべきである。したがって、本明細書の実施形態は、好ましい実施形態の観点から説明しているが、当業者であれば、本明細書の実施形態は、その精神および範囲内で修正して実施し得ることを認識する。
【0069】
本明細書の実施形態を、様々な具体的な実施形態を用いて説明しているが、本明細書の実施形態を変更して実施することは、当業者にとって明らかである。本明細書の実施形態を、様々な具体的な実施形態を用いて説明しているが、本明細書の実施形態を変更して実施することは、当業者にとって明らかである。
【0070】
本明細書で用いる言い回しまたは用語は、説明のためのものであり、限定のためのものではないことを理解すべきである。したがって、本明細書の実施形態は、好ましい実施形態の観点から説明しているが、当業者であれば、本明細書の実施形態は、以下で提出する請求項の精神および範囲内で変更して実施し得ることを認識する。本発明の範囲は、以下の請求項によって確定される。
【国際調査報告】