(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(54)【発明の名称】多層構造
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
B32B27/32 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568647
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2020063569
(87)【国際公開番号】W WO2020234135
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】ヌンミラ-パカリネン,アウリ
(72)【発明者】
【氏名】オルトナー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ニーダーズュース,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】スワグテン-リンセン,ヨセフィーン
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK62A
4F100AK62B
4F100AK62C
4F100AK64A
4F100AK64B
4F100AK64C
4F100AK66A
4F100AK66B
4F100AK66C
4F100AL03A
4F100AL03B
4F100AL03C
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AL05C
4F100BA03
4F100BA03C
4F100BA05
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EH20
4F100EH23
4F100EH23B
4F100EJ37A
4F100EJ38B
4F100GB16
4F100GB23
4F100GB66
4F100JA04B
4F100JA06B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
本発明は多層構造に関する。より具体的には、本発明は、十分な耐熱性および機械的特性を与え、多層構造をリサイクルすることが可能な、ポリプロピレン多層押出積層構造に関する。本発明はさらに、押出積層法による該多層構造の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)少なくとも機械方向に配向したポリプロピレン組成物の少なくとも1つのフィルム層A-1)を含む、第1外層A);
ii)非配向型ポリプロピレン組成物の少なくとも1つのフィルム層B-1)を含む、第2外層B)
iii)第1外層A)および第2外層B)の間の、分枝状ポリプロピレンの少なくとも1つのフィルム層C-1)を含むコア層C)
を含む多層構造であって、該多層構造の追加の任意のフィルム層の全てがポリプロピレン組成物である、多層構造。
【請求項2】
i)少なくとも機械方向に配向したポリプロピレン組成物の少なくとも1つのフィルム層A-1)を含む、第1外層A);
ii)非配向型ポリプロピレン組成物の少なくとも1つのフィルム層B-1)を含む、第2外層B)
iii)第1外層A)と第2外層B)の間に配置された、分枝状ポリプロピレンの少なくとも1つのフィルム層C-1)を含む、コア層C)、ここで、該コア層C)は、外層A)と外層B)の間に押出積層されている
を含む多層押出積層構造であって、ここで、多層構造の追加の任意のフィルム層の全てがポリプロピレン組成物である、多層押出積層構造。
【請求項3】
分枝状ポリプロピレンのフィルム層C-1)は、10~13g/10分の範囲のMFR
2(230℃、2,16kg荷重)、および160~164℃の範囲の溶融温度を有する、請求項1または2に記載の多層構造。
【請求項4】
第1外層A)は二軸配向型ポリプロピレンフィルムである、請求項1~3のいずれかに記載の多層構造。
【請求項5】
第2外層B)は非配向型の単層または多層のキャストフィルムまたはブローフィルムである、請求項1~3のいずれかに記載の多層構造。
【請求項6】
第2外層B)は少なくとも3層の多層フィルムである、請求項5に記載の多層構造。
【請求項7】
ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレンホモポリマー、エチレンとのポリプロピレンコポリマー、または、エチレンとのおよび/または4~10個のC原子のα-オレフィンコモノマー、好ましくは4~6個のC原子のα-オレフィンコモノマーとのポリプロピレンコポリマーの組成物である、請求項1~6のいずれかに記載の多層構造。
【請求項8】
ポリプロピレンコポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーのポリマーマトリックス、または、エチレンとのおよび/または4~4個のC原子のα-オレフィンモノマーとのポリプロピレンコポリマーのポリマーマトリックスを含む、ポリプロピレンランダムコポリマーまたはポリプロピレン異相コポリマーである、請求項1~7のいずれかに記載の多層構造。
【請求項9】
ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレンと、最大で15重量%、好ましくは最大で10重量%の、エチレンとC6-C10α-オレフィンコポリマーとのプラストマー、および/または、ポリエチレンとのプラストマーのブレンドである、請求項1~8のいずれかに記載の多層構造。
【請求項10】
多層構造中のポリプロピレンポリマーの量は、多層構造中のポリマーの総量の少なくとも90重量%である、請求項1~9のいずれかに記載の多層構造。
【請求項11】
請求項2~10のいずれかに記載の多層構造の製造方法であって、該方法は以下のステップ:
(I)少なくとも機械方向に配向したポリプロピレン組成物の少なくとも1つのフィルム層A-1)を含む第1外層A)を提供するステップ;
(II)ポリプロピレン組成物の少なくとも1つのフィルム層B-1)を含む第2外層B)を提供するステップ;
(III)分枝状ポリプロピレンの少なくとも1つの層C-1)を含むコア層C)を提供するステップ;および
(IV)第1外層A)、第2外層B)をコア層C)と共に押出積層し、多層積層構造を製造するステップ、ここで、A)、B)およびC)の全ての追加のフィルム層は、ポリプロピレン組成物の層である
を含む、方法。
【請求項12】
層A)は二軸配向型ポリプロピレンフィルムであり、層B)はポリプロピレン組成物の非配向型のキャストフィルムおよびブローフィルムから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
層A)、B)またはC)のいずれかは多層フィルムである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
多層フィルムは共押出によって製造される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載の、または、請求項11~14のいずれかに記載の方法によって製造された、ポリプロピレン単材料多層構造の、包装材料としての、特に食品および/または医療品用の耐熱性包装材料としての、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層構造に関する。より具体的には、本発明は、十分な耐熱性および機械的特性を与え、その多層構造をリサイクルすることが可能な多層構造に関する。本発明はさらに、押出積層法による該多層構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル包装材料は、多層フィルムのような多層構造の層において異なる材料を組み合わせることによって達成される、製品保護の非常に資源効率的な方法である。しかし、PET/PEまたはPET/PPの組み合わせのような、これらのタイプのマルチ材料多層構造は、サーキュラーエコノミーにとっての課題である。リサイクルは、機械的リサイクルおよび化学的リサイクルの両方で、リサイクル物の品質が悪いために、非常に要求が厳しいか、不可能である。
【0003】
多層構造は、最終製品に所望される特性および要求、ならびに多層物質の製造に使用される材料に応じて、異なる方法で製造される。
【0004】
押出コーティング法においては、フラットダイを通じて溶融ポリマーの薄膜が押出され、基材上または基材中にプレスされる。基材としては、紙、板紙、布、金属箔、プラスチックフィルムまたは別のポリマー層が通常使用される。
【0005】
積層プロセスにおいて、2またはそれより多くの基材層が基材層間の層を用いて共に結合される。
【0006】
接着積層法では、2またはそれより多くの基材層を共に結合するために接着剤層が必要である。このような接着剤層は、基材層間の糊(グルー)として作用する。
【0007】
押出積層法において、溶融ポリマーが2つの基材間で押出積層され、それによって、該ポリマーが該層間で接着剤として作用する。基材は、重合性物質、紙、板紙、布又は金属箔であり得る。
【0008】
多層構造はいくつかのタイプの用途で使用される。多層フィルム材料は通常いくつかの包装用途において使用される。最終的な用途分野に応じて、該材料は、例えば機械的、光学的、および/またはシーリング特性の所望の基準を満たさねばならない。さらに、いくつかの用途においては、許容可能な加工特性を忘れることなしに、例えば耐熱性が最も重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
〔解決しようとする課題〕
多層構造は通常、所望される最終製品の特性および加工性を達成するために異なる材料を組み合わせたものである。多層構造がポリマー層のみを含む場合でさえ、該層は通常、異なる種類のポリマーであるか、または該層は異なるポリマー材料のブレンドであり得る。さらに、接着積層によって製造された多層材料は、非適合性であり、層に使用されるいずれのポリマー材料とも異なる、別個の接着剤グルーを含む。
【0010】
しかし、リサイクルがますます重要になるにつれて、異なるポリマーのポリマー層、または、例えば極性および非極性ポリマーの組み合わせのような、限られた適合性のポリマーブレンドを含む、またはこれらからなる、2またはそれより多くの異なる材料で構成される多層材料が、リサイクルプロセスにおいて要求されている。すなわち、このような構造はリサイクルの観点では望ましくないかまたは適当ではないが、機械的特性、シーリング特性および他の特性が良好なレベルであり得る。
【0011】
したがって、1種類のポリマーまたは適合性のポリマーのみで製造され、それでもなお所望の特性を有する製品をもたらす、多層構造を製造するための解決策を見出す必要がある。すなわち、所望される特性を満たす単材料多層構造を製造するための解決策を見出す必要がある。
【0012】
PE/PE積層体は簡単にリサイクル可能であるが、これは、例えば熱間充填または低温殺菌に求められる十分な耐熱性を有さない。そのため、上記の所望の特性を有する単一材料の解決手段の開発が必要である。
【0013】
ポリプロピレン(PP)は包装用フィルムおよび成形形状などの種々の製品に使用されるよく知られた市販のポリマーである。市販のプロピレンポリマーは、このようなプロピレンポリマーを多くの用途で魅力的なものとする、優れた耐熱性や透明性などの、いくつかの望ましい特性を示す。しかし、このようなポリマーは、不十分な機械的特性にしばしば悩まされる。例えば、二軸配向型(bi-oriented)PP(BOPP)フィルムは高い剛性および良好な光学特性を有する。BOPPフィルムはフレキシブル包装材料における良好な印刷特性のために印刷基材として広く使用されている。しかし、穿刺強度および引裂強度のような他の機械的特性は低い。ブローフィルムまたはキャストフィルムのいずれかである非配向型PPフィルムは、よりずっと良好な機械的特性を有する。
【0014】
プロピレンポリマーの特性は多様であるために、ポリプロピレン組成物のみから製造される多層材料は多くの用途について魅力的な解決策となるであろう。
【0015】
接着積層は、ポリマー層であり得る2またはそれより多くの基材を組み合わせるための一般的な方法である。良好な接着が必要とされるため、基材層間の接着剤層として接着剤物質が使用される。したがって、接着積層法は、例えば、BOPPフィルムと非配向型キャストまたはブローPPフィルムとを組み合わせる、異なるプロピレンポリマーフィルム層の多層積層体を製造するための解決策となるであろう。この組み合わせは、耐熱性のような他の周知の特性に加えて良好な機械的特性を有する、所望される最終製品をもたらすことが期待されるであろう。
【0016】
しかし、接着積層が最終的な多層構造の機械的特性の劣化をもたらすことが見られた。該構造に含まれる、BOPPフィルムのような低い機械的特性を有するフィルム層は、最終的な接着積層体の機械的特性に大きな悪影響を及ぼす。すなわち、接着積層体が他の基材層として良好な機械的特性を有するフィルムを含んでいるとしても、このような特性を有さない層(例えばBOPP層)の影響によって、かかる特性が劣化する。したがって、ポリプロピレン単材料の多層接着積層構造は、良好な機械的特性が必要とされる用途には適当ではない。
【0017】
さらに、接着剤成分(すなわち接着剤グルー)はPP材料ではなく、ポリプロピレンと非適合性である。そのため、このような接着PP積層体は、非適合性の成分を含有し、そのためこのような製品のリサイクル可能性が損なわれる。
【0018】
したがって、機械的特性の劣化に悩まされることなく、使用されるPPフィルムの全ての所望される良好な特性を有する、PP単材料多層構造を見出すことに対する要求が存在する。さらに、このような構造は完全にリサイクル可能であるべきであり、すなわち、循環ソリューション(circular solutions)の要求を満たすべきである。さらに、このような製品を製造するための方法を提供すべきである。
【0019】
〔本発明の主題〕
したがって、本発明の主題は、機械的特性の改善されたバランスを有し、十分な耐熱性を有し、かつ、リサイクル用の高品質材料である、ポリプロピレン単材料多層構造、すなわちポリプロピレン単材料多層積層体を提供することである。
【0020】
さらに、本発明の主題は、ポリプロピレン単材料多層積層体を製造するための方法を提供することである。
【0021】
さらには、本発明の主題は、包装用途において、特に食品および/または医療品用の耐熱性包装材料において使用するための、ポリプロピレン単材料多層積層体を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔発明の概要〕
多層積層体の、特に従来技術によるポリプロピレン多層接着積層体の機械的特性およびリサイクルについての問題に関する問題および欠点は、本発明の押出積層によって製造されたポリプロピレン多層積層体を提供することによって、回避できるまたは少なくとも顕著に低減できることがわかった。ポリプロピレン組成物の第1外層A)およびポリプロピレン組成物の第2外層B)、ならびに第1外層A)と第2外層B)との間に位置するポリプロピレン層C)を含む、本発明のポリプロピレン単材料多層押出積層体は、該目的に合致することがわかった。
【0023】
本発明の一態様に見られるように、本発明は、以下:
i)少なくとも機械方向に配向したポリプロピレン組成物の少なくとも1つのフィルム層A-1)を含む、第1外層A);
ii)非配向型ポリプロピレン組成物の少なくとも1つのフィルム層B-1)を含む、第2外層B)
iii)第1外層A)および第2外層B)の間に、分枝状ポリプロピレンの少なくとも1つのフィルム層C-1)を含むコア層C)
を含む単材料多層構造であって、
ここで、該多層構造の追加の任意のフィルム層の全てがポリプロピレン組成物である、単材料多層構造を提供する。
【0024】
本発明の別の態様に見られるように、本発明は、以下:
i)少なくとも機械方向に配向したポリプロピレン組成物の少なくとも1つのフィルム層A-1)を含む、第1外層A);
ii)ポリプロピレン組成物の少なくとも1つのフィルム層B-1)を含む、第2外層B)
iii)第1外層A)と第2外層B)の間に配置された、分枝状ポリプロピレンの少なくとも1つのフィルム層C-1)を含む、コア層C)、ここで、該コア層C)は外層A)と外層B)の間に押出積層されている、
を含む単材料多層構造であって、
ここで、該多層構造の追加の任意のフィルム層の全てがポリプロピレン組成物である、単材料多層押出積層構造を提供する。
【0025】
さらなる別の態様に見られるように、本発明は、上記に定義されるような多層構造を製造するための方法を提供し、該方法は以下のステップを含む:
(I)少なくとも機械方向に配向したポリプロピレン組成物の少なくとも1つのフィルム層A-1)を含む、第1外層A)を提供するステップ;
(II)非配向型ポリプロピレン組成物の少なくとも1つのフィルム層B-1)を含む、第2外層B)を提供するステップ;
(III)分枝状ポリプロピレンの少なくとも1つの層C-1)を含む、コア層C)を提供するステップ;および
(IV)第1外層A)、第2外層B)を、コア層C)と共に押出積層し、多層積層構造を製造するステップ、ここで、層A)、B)およびC)の追加の任意のフィルム層の全てがポリプロピレン組成物である。
【0026】
さらに、本発明の主題は、特に食品および/または医療品用の耐熱性包装材料としての、包装材料として使用するためのポリプロピレン単材料多層構造を提供することである。
【0027】
〔発明の詳細な説明〕
〔定義〕
ポリプロピレン組成物は、本発明において、ポリプロピレンホモポリマー、あるいは、エチレンとのおよび/または4~10個のC原子のα-オレフィンコモノマーとのポリプロピレンコポリマーの組成物であると定義される。α-オレフィンコモノマーは、好ましくは4~6個のC原子のものである。したがって、プロピレンコポリマーは、エチレンおよび/または4~10個のC原子のα-オレフィンコモノマーとの、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレン異相コポリマー、またはポリプロピレンターポリマーである。該組成物は、任意に、最大15重量%の、好ましくは最大10重量%の、エチレンとC6-C10α-オレフィンコポリマーとのプラストマー、および/または、ポリプロピレンホモまたはコポリマーとブレンドされたポリエチレンを含有する。
【0028】
本発明で使用される表現「ホモポリマー」は、実質的にプロピレン単位からなる、すなわち少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%、最も好ましくは少なくとも99.8重量%のプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。好ましい一実施形態において、ポリプロピレンホモポリマーにおいてプロピレン単位のみが検出可能である。
【0029】
ポリプロピレンコポリマーにおいて、モノマーの主な部分はプロピレンであり、すなわち、モノマーの少なくとも50%はプロピレンである。ポリプロピレンコポリマーは非極性である。
【0030】
層A)およびB)は、1つ以上のポリプロピレンフィルム層、例えば1~7つのフィルム層を含有し得り、ここで、全てのポリプロピレンフィルム層は本明細書に定義されるようなポリプロピレン組成物の層である。
【0031】
コア層C)は、分枝状ポリプロピレンの少なくとも1つのフィルム層を含む。コア層は、本明細書に定義されるような1つ以上の追加のポリプロピレンフィルム層を含んでもよい。コア層C)のフィルム層のための分枝状ポリプロピレンは、以下に詳細に定義される。
【0032】
外層A)およびB):
外層のポリプロピレンフィルム層は、(機械方向(MD)および横方向(Transfer Direction)(TD)に配向した)二軸配向型PPフィルム(BOPPフィルム)、単配向型(mono-oriented)(MD)PPフィルム、および非配向型PPフィルムから選択してよい。
【0033】
層A)およびB)が多層フィルム構造の層である場合、これらは共押出され、多層のフィルム外層を形成する。
【0034】
外層A)
外層A)は、単配向型PPフィルム、すなわち少なくとも機械方向に配向したPPフィルム、および、(機械方向(MD)および横方向(TD)に配向した)二軸配向型PPフィルム(BOPPフィルム)から選択される。外層A)は、少なくとも機械配向したフィルムの少なくとも1つの層A-1)を含む。
【0035】
好ましい一実施形態において、層A)はBOPPフィルムである。BOPPフィルムは、例えば良好な印刷表面が所望される場合に、好ましくは使用される。BOPPフィルムは高い光沢と透明性を有し剛性が高い。しかし、穿刺強度や引裂強度などの他の機械的特性は低い。
【0036】
層A)は、ポリプロピレン組成物の、1つ以上の配向フィルム層、例えば1~7つのフィルム層、好ましくは1~5つのフィルム層を含んでよい。好ましい一実施形態において、層A)は、少なくとも1つの二軸配向型PP(BOPP)フィルム層、最も好ましくは1~3つのBOPPフィルム層を含む。BOPPフィルムのポリプロピレンは、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーのポリプロピレン組成物である。好ましい一実施形態によれば、BOPPフィルムは、エチレンおよびC4~C10コモノマーとの、好ましくはエチレンおよびC4~C6コモノマーとの、ポリプロピレンコポリマーである。コモノマー含量は、1~20重量%の範囲内、好ましくは2~15重量%の範囲内である。ISO1133(230℃、2.16kg荷重)で測定したメルトフローレート(MFR2)は、好ましくは2~10g/10分であり、溶融温度Tmは120~150℃の範囲内である。
【0037】
1より多いフィルム層が層A)に含まれる場合、これらは共に共押出され、外層A)を形成する。層A)のポリプロピレンは、通常、プラストマーとブレンドされない。
【0038】
層A)の厚さは、好ましくは5~100μmの範囲、より好ましくは10~60μmの範囲、特に15~40μmの範囲、さらにより好ましくは15~30μmの範囲、例えば15~25μmの範囲である。市販のBOPPフィルムは、通常、20μmの厚さを有する。
【0039】
外層B)
十分な機械的特性を有する多層単材料フィルム構造を提供するために、本発明の多層構造において、前記の配向型PP層A)を非配向型ポリプロピレン層と組み合わせる。このような非配向型フィルムは、通常、ブローフィルムまたはキャストフィルムである。
【0040】
キャストおよびブローのPPフィルムは、上記に定義したポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーもしくはターポリマーのものである。コモノマーは、エチレンおよび/または4~10個のC原子の1つ以上のα-オレフィン、好ましくはエチレンおよび/または4~6個のC原子の1つ以上のα-オレフィンである。好ましい一実施形態によれば、層B)において使用されるポリプロピレンコポリマーは異相ポリプロピレンである。異相ポリプロピレンは、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンランダムコポリマーであるポリマーマトリックスを含有する。ポリプロピレンマトリックスがポリプロピレンコポリマーである場合、コモノマーはエチレンまたはブテンであることが好ましい。しかし、当技術分野において知られる他のα-オレフィンコモノマーも適当である。ポリプロピレンマトリックス中のコモノマー、より好ましくはエチレンの好ましい量は、8.00モル%以下である。ポリプロピレンコポリマーマトリックスがコモノマー成分としてブテンを有する場合、マトリックス中のブテンの量は6.00モル%以下であることが特に好ましい。好ましくは、全ポリプロピレンコポリマー中のエチレン-プロピレンゴム(EPR)は60重量%以下であり、より好ましくは、全ポリプロピレンコポリマー中のエチレン-プロピレンゴム(EPR)の量は15~60重量%の範囲、さらにより好ましくは20~50重量%の範囲である。
【0041】
ポリプロピレン組成物は、少量のプラストマー、すなわち最大15重量%、好ましくは最大10重量%のプラストマーを、ポリプロピレン組成物とブレンドして、含有してもよい。少量のポリエチレンを、追加的にまたは代わりに、ポリプロピレンとブレンドしてもよい。好ましくは、該プラストマーはエチレン-オクテンコポリマーである。プラストマーは以下で詳細に説明する。
【0042】
外層B)は、1つ以上のフィルム層、例えば1~7つのフィルム層、好ましくは1~5つのポリプロピレンフィルム層を含んでもよく、該フィルム層は、本明細書に定義されるのと同様または異なるポリプロピレン組成物の層であってよい。外層B)の1つまたはそれより多くのフィルム層は、本明細書に定義するようなプラストマーおよび/またはポリエチレンとの、好ましくはプラストマーとの、ポリプロピレンブレンドの組成物であってよい。
【0043】
外層B)のフィルム厚さは、40~200μmの範囲、好ましくは50~150μmの範囲、より好ましくは50~120μmの範囲、さらにより好ましくは60~100μmの範囲である。
【0044】
1より多いフィルム層が層B)に含まれる場合、それらを共に共押出して外層B)を形成する。
【0045】
適当なポリプロピレンは、例えばシングルサイト触媒またはチーグラーナッタ触媒を用いて、当技術分野の技術の範囲内で製造される。プロピレン、および任意にエチレンおよび/またはアルファ-オレフィンは、当技術分野の技術の範囲内で、1つまたはそれより多くのオレフィン重合段階における重合条件下で(共)重合される。
【0046】
上記に定義したポリマーに加えて、ポリマー層のポリプロピレン組成物は、例えば酸化防止剤、プロセス安定剤、抗ブロック剤、潤滑剤、酸捕捉剤、顔料などの添加剤を含んでもよく、好ましくは含む。
【0047】
単配向型または二軸配向型、および、非配向型のフィルム(ブローフィルムまたはキャストフィルム)の製造は、当技術分野において一般的に知られている。
【0048】
層C)
コア層C)は、分枝状ポリプロピレンの少なくとも1つのフィルム層C-1)を含む。本発明において使用される分枝状ポリプロピレンは、高い溶融強度を有することを特徴とし、一般にHMSポリプロピレン(HMS-PP)と称される。高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、当技術分野において知られるように、化学修飾によって製造される。本明細書で定義される分枝状ポリプロピレンは、押出コーティング法および押出積層法において使用するに適当である。
【0049】
本発明においてフィルム層C-1)で使用される適当な分枝状ポリプロピレンはプロピレンコポリマーである。好ましくは、分枝状ポリプロピレンは、10~16g/10分の範囲、好ましくは12~14g/10分の範囲のメルトフローレート(MFR2、230℃、および2,16kg荷重、ISO 1133)および160~164℃の範囲の溶融温度(ISO11357-3)を有する。さらに、分枝状ポリプロピレンの結晶化温度(DSC)は、122~126℃の範囲(ISO11357-3)であり、Vicat軟化温度A(10N)は、146-150℃の範囲(ISO306)である。分枝状ポリプロピレンは意図的に添加された核剤を何ら含有しない。
【0050】
本発明において使用される適当な市販の分枝状ポリプロピレンは、とりわけ、WF420HMSおよびSF313HMSである。
【0051】
したがって、本発明の押出積層において必須のフィルム層は、上記に定義したような分枝状ポリプロピレンの少なくとも1つのフィルム層C-1)を含むポリプロピレン層C)である。
【0052】
本発明の押出積層において、上記に定義したような分枝状ポリプロピレンをフィルム層C-I)として使用することにより、良好な機械的特性および前記特性のバランスを有する多層構造がもたらされる。すなわちそれは、機械的特性が低い外層が最終的な多層構造へ及ぼす悪影響を防ぐだけでなく、多くの機械的特性に良い影響ももたらす。したがって、フィルム層C-1)は、押出積層において、コア層C)において均一なコーティング重量を有する単一層(モノレイヤー)として使用するによく適する。
【0053】
上記に示したように、コア層C)は1つより多くのフィルム層C-1)を含んでよい。層C)はバリア層等のような追加のフィルム層を含んでもよいが、但し、全ての追加のフィルム層は本明細書で定義するようなポリプロピレン組成物の層である。
【0054】
分枝状ポリプロピレンを得るために修飾されるポリプロピレンは、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーであってよい。ポリプロピレンコポリマーは、ポリプロピレンランダムコポリマーまたは異相コポリマー、すなわちポリプロピレンマトリックスおよびエチレン-プロピレンゴム(EPR)を含むポリプロピレンコポリマーである。
【0055】
プラストマー
本発明の多層押出積層構造において使用されるポリプロピレンと場合によりブレンドされる適当なプラストマーは、915kg/m3未満の密度を有するエチレン系プラストマーである。該エチレン系プラストマーは、少なくとも1つのオレフィンコモノマーとのエチレンポリマーを含む、低密度エチレンコポリマーである。該コモノマーは、4~10個のC原子のα-オレフィンコモノマーであり、但し、少なくとも1つのコモノマーは少なくとも6個のC原子を有するモノマーである。すなわち、プラストマーがエチレンターポリマーである場合、少なくとも1つのモノマーは6個又はそれより多くのC原子を有する。好ましくは、エチレンコポリマーのプラストマーにおけるコモノマーは、6~10個のC原子、好ましくは6~8個のC原子のα-オレフィンから選択され、より好ましくはエチレンと6~8個のC原子の1つのα-オレフィンとのコポリマー、とりわけエチレン-オクテンコポリマーである。
【0056】
適当なエチレン系プラストマーは、860~915kg/m3の範囲、好ましくは870~912kg/m3の範囲、より好ましくは885~910kg/m3の範囲、いくつかの態様において890~905kg/m3の範囲の密度を有する。プラストマーのMFR2(190℃/2,16kg)は、0.01~25g/10分の範囲、好ましくは0,05~20g/10分の範囲、より好ましくは1~15g/10分の範囲、いくつかの態様において1~10g/10分の範囲である。
【0057】
適当なエチレン系プラストマーの融点(ISO 11357-3:1999に従いDSCを用いて測定される)は、130℃未満、好ましくは120℃未満、より好ましくは110℃未満、最も好ましくは100℃未満である。さらに適当なエチレン系プラストマーは、-25℃未満、好ましくは-30℃未満、より好ましくは-35℃未満のガラス転移温度Tg(ISO 6721-7に従いDMTAを用いて測定される)を有する。プラストマーがエチレンとC4-C10αオレフィンとのコポリマーである場合、これは、60~95重量%、好ましくは65~90重量%、より好ましくは70~88重量%のエチレン含量を有する。
【0058】
適当なエチレン系プラストマーは、上記に定義した特性を有する、エチレンとプロピレンとの、または、エチレンとC4-C10アルファオレフィンとの、任意のコポリマーであってよく、これは例えばBorealisから商品名Queo、Dow Chemical Corp(USA)から商品名EngageまたはAffinity、あるいはMitsuiから商品名Tafmerで市販され入手可能である。
【0059】
あるいは、これらのエチレン系プラストマーは、酸化バナジウム触媒またはシングルサイト触媒、例えばメタロセン触媒または幾何拘束型触媒(constrained geometry catalyst)のような当業者に既知の適当な触媒の存在下で、溶液重合、スラリー重合、気相重合またはそれらの組み合わせを含む、またはそれらからなる、一段階または二段階重合プロセスでの既知の方法によって製造することができる。
【0060】
好ましくは、かかるエチレン系プラストマーは、一段階または二段階溶液重合プロセスで、特に100℃より高い、好ましくは少なくとも110°、より好ましくは少なくとも150℃の温度での高温溶液重合プロセスで製造される。重合温度は、250℃以下であり得る。
【0061】
このようなプロセスは、本質的に、得られるポリマーが可溶性である液状炭化水素溶媒中での、モノマーおよび適当なコモノマーの重合に基づく。該重合はポリマーの融点を超える温度で行われ、その結果、ポリマー溶液が得られる。該溶液は、未反応モノマーおよび溶媒からポリマーを分離するためにフラッシュされる。次いで溶媒が回収され、プロセスにリサイクルされる。
【0062】
このような溶液重合プロセスにおける圧力は、好ましくは10~100bar、好ましくは15~100bar、より好ましくは20~100barの範囲である。
【0063】
使用される液状炭化水素溶媒は、好ましくはC5-12-炭化水素であり、これは、非置換であるか、または、ペンタン、メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、および水素化ナフサなどのC1-4アルキル基で置換されていてよい。より好ましくは非置換のC6-10-炭化水素溶媒が使用される。このようなプロセスは、とりわけ、WO-A-1997/036942、WO-A-2006/083515、WO-A-2008/082511、およびWO-A-2009/080710に開示されている。
【0064】
本発明において使用されるプラストマーは、好ましくは、メタロセン触媒の存在下での溶液プロセスにおいて製造される。
【0065】
ポリマーブレンド
上記に述べた層において任意に使用される任意のブレンド(例えばポリプロピレンと、プラストマー、ポリエチレン、および添加剤とのブレンド)は、各ブレンドの融点を超える温度での、任意の適当な溶融混合プロセスによって製造することができる。
【0066】
本出願において、「ブレンド」または「ブレンディング」は、異なる成分(すなわちポリプロピレンおよびプラストマー)が、溶融ブレンディングまたはドライブレンディングのような機械的ブレンディングによって合わされることを意味する。本明細書において定義されるプラストマー、およびポリプロピレンは、互いに適合性であるため、本発明におけるブレンドとして使用するに適当である。個々の成分は、異なるプロセスにおいて別々に製造される。
【0067】
本発明の多層構造のいずれかの層のポリプロピレン組成物中の任意のプラストマーの量は、15重量%未満、好ましくは最大10重量%であり、該量はリサイクル品として使用されるポリプロピレン単材料多層構造において含まれることがなお可能な量である。
【0068】
本発明の最終的な多層構造において、ポリプロピレンポリマーの量は少なくとも90重量%である。
【0069】
上記の溶融混合プロセスを行うための典型的な装置は、場合により静的ミキサー、ファレルニーダーのようなチャンバーニーダー、バンバリー型ミキサー、およびバスコニーダーのようなレシプロコニーダーと組み合わせた、二軸スクリュー押出機、一軸スクリュー押出機である。好ましくは、溶融混合プロセスは、高強度混合セグメントを備えた二軸押出機において行われる。
【0070】
十分な均質性が得られる限り、ポリプロピレンとプラストマーとのブレンドを、水平および垂直撹拌チャンバー、タンブリング容器、ターブラミキサーのような適当な混合装置内でドライブレンドすることによって製造することも可能である。
【0071】
任意に、フィラー、スリップ剤、アンチブロック剤、酸化防止剤、チルロール離型剤、およびポリマープロセス助剤などの追加の添加剤を溶融ブレンドまたはドライブレンドに組み込むことができる。典型的には、添加剤の量は2重量%以下、好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。
【0072】
フィルム製造
外層A)およびB)
配向型フィルムは、典型的には一軸または二軸配向型フィルムであるのに対し、非配向型フィルムはキャストフィルムまたはブローフィルムである。したがって、非配向型フィルムは、配向型フィルムでなされるような機械方向および/または垂直方向での強い引張りがなされていない。したがって、本発明による非配向型フィルムは、一軸または二軸配向型フィルムではない。好ましくは、本発明における非配向型フィルムは、ブローフィルムまたはキャストフィルムである。
【0073】
本発明による非配向型の外層は、当技術分野において既知の任意の従来のフィルム押出方法、例えばブローフィルム押出(blown film extrusion)を用いる方法によって製造してよい。好ましくは、該非配向型多層フィルム構造は、原則として当業者に既知であり利用可能な、ブローフィルム押出によって、より好ましくは共押出プロセスによって形成される。
【0074】
本発明による層のための多層フィルム構造を製造するに典型的なプロセスは、環状ダイを介した押出プロセスである。フィルムによって形成された管の中に空気を吹き込むことによって気泡が形成され、それによってフィルムが冷却される。固化後にローラー間で気泡が崩壊される。この点に関して、従来のフィルム製造技術を用いてよい。典型的に、外層のフィルム層は、当技術分野で既知の方法で共押出される。ブローアップ比は、1(1:1)~4(1:4)、好ましくは1.5(1:1.5)~3.5(1:3.5)の範囲であり得る。
【0075】
本発明のフィルム製造プロセスステップは既知であり、当技術分野で知られる方法の1つのフィルムラインで実施され得る。このようなフィルムラインは、例えばWindmoeller & Hoelscher、Reifenhauser、Hosokawa Alpine等から市販され入手可能である。
【0076】
典型的には、三層共押出ラインにおいて三層構造が製造されるが、いくつかの実施形態において、とりわけバリア層またはタイ層が共押出される場合、使用される共押出機は5または7層の共押出ラインであることが望まれ得る。
【0077】
ブロック型フィルム構造
ブロック型フィルムタイプ構造について、多層共押出されたフィルムは気泡の形でダイを出て、例えばニップロールで該気泡が切断される、すなわち形成された気泡が崩壊し、上記のフィルムが形成され、次いで、2つの半分が共に押し付けられて多層構造が効果的に形成される。このようにして、フィルム厚さが効果的に2倍になり、所望の初期フィルム厚さが達成される。これは、当技術分野においてフィルムブロッキングと称される。
【0078】
第1外層A)層を形成するフィルムは、本発明によれば、少なくとも機械方向に配向している。
【0079】
配向型の単層または多層A)は続く延伸工程に供され、ここで該フィルムは機械方向(MDO)に延伸される。延伸は、当業者によく知られる任意の従来の延伸装置を用いる、任意の従来技術により行ってよい。
【0080】
MDOプロセスはインラインで行うことができ、ここで、MDOユニットはブローフィルムユニットに直接連結されている、すなわち、ブローフィルムラインを出たフィルムがMDOユニットに直接移送される。
【0081】
MDOプロセスはオフラインで行うこともでき、ここで、MDOユニットは自律ユニットである。この場合、ブローフィルムラインを出たフィルムは最初にワインダーに巻き取られ、次いで、オフラインMDOユニットに供され、ここで、フィルムが延伸され得る前に、該フィルムをアンワインダーにおいて巻き戻さねばならない。
【0082】
ブロック型フィルム構造が使用される場合、MDOプロセスは好ましくはインラインで行われる。
【0083】
MDO中に、ブローフィルムラインから得たフィルムが配向温度まで加熱される。好ましくは、配向のための該温度範囲は、フィルム(外)層材料のVICAT A-レベルより25℃低い温度から、フィルム(外)層材料の溶融温度までであり得る。加熱は、好ましくは複数の加熱ローラーを用いて行われる。
【0084】
次に、加熱されたフィルムは、ニップローラーを備えた低速ドローロールへと供給され、これは加熱ローラーと同じ圧下速度を有する。次いで、フィルムは高速ドローロールに入る。高速ドローロールは、低速ドローロールの2~10倍速い速度を有し、これによってフィルムを連続的に効果的に配向させる。
【0085】
配向したフィルムは次いで、アニーリングサーマルローラーに入り、これは、フィルムを高温で一定時間保持することによって、応力緩和が可能となる。
【0086】
アニーリング温度は、好ましくは、延伸に使用した温度範囲と同じ温度範囲であるか、または、それよりもわずかに低い温度(例えば10~20℃低い温度)であり、室温がその下限である。最終的に、該フィルムは冷却ローラーを通じて周囲温度まで冷却される。
【0087】
配向前後のフィルム厚さの割合は、延伸割合(stretch ratio)とも称される。延伸割合は、所望されるフィルム厚さ、フィルム特性および多層フィルム構造を含む多くの要因に応じて変化する。
【0088】
本発明において有用な、MDに一軸配向型の単層または多層フィルムの製造プロセスは、少なくとも、単層または多層フィルムを形成するステップ、および、得られた単層または多層フィルムを、機械方向に、1:1.5~1:12、好ましくは1:2.0~1:10、より好ましくは1:3.0~1:8のドロー割合で延伸するステップを含む。
【0089】
フィルムは、その元の長さの1.5~12倍に機械方向に延伸される。これは、本明細書において1:1.5~1:12の延伸割合と称され、すなわち、「1」はフィルムの元の長さを表し、「1.5」または「12」は、元の長さの1.5倍または12倍まで延伸されたことを表す。
【0090】
延伸(またはドローイング)の効果は、フィルムの厚さが同様に小さくなることである。したがって、1:1.5または1:12の延伸割合は、通常、得られるフィルムの厚さが、元の厚さの1/1.5~1/12であることも意味する。
【0091】
配向後、第1外層A)を形成するフィルムは、5~100μm、好ましくは10~80μm、より好ましくは10~40μmのフィルム厚さを有する。これは、例えば1:3の延伸割合を用いて0μmのフィルムを得るためには、90μmの初期フィルムが必要であり、1:12の延伸割合を用いて30μmのフィルムを得るには、360μmの初期フィルムが必要であることを意味する。
【0092】
押出積層
本発明によれば、ポリプロピレン単材料多層構造は押出積層により製造される。押出積層法は、押出コーティング法に似ているが、押出積層において、コア層は2つの基材間、すなわち外層間に押し出される。それによって、本明細書において定義されるような外層A)およびB)が押出積層プロセスに基材として供される。次いで、本明細書において定義されるような、少なくとも1つの層C-1)を含むコア層C)が、外層A)と外層B)との間に押出積層される。本出願において示されるように、層A)およびB)は1つまたはそれより多くのフィルム層を含む。コア層C)は、フィルム層C-1)に加えて、1つまたはそれより多くの層を含んでいてもよい。このような追加の層は、必要に応じて、上記に定義されるようなさらなるプロピレンポリマー組成物であり得る。
【0093】
押出積層法におけるライン速度は、典型的には50~1000m/分、好ましくは75~650m/分、特に100~500m/分である。
【0094】
分枝状ポリプロピレンの少なくとも1つのフィルム層を含むコア層C)が、2つの外層A)およびB)の間に押出積層される際、構造体はチルロールおよび圧力ロールにより形成されたニップへと渡される。チルロールは、典型的には水冷式であり、押し出された構造体を適当な温度まで冷却することを目的とする。典型的には、チルロールの表面温度は約15℃~約60℃であり得る。ポリマー溶融物の温度は、典型的には240~330℃、好ましくは250~315℃である。層A)およびB)に予備的コロナ処理を施してもよく、層C)にオゾン処理を施してもよい。
【0095】
分枝状ポリプロピレンの層は、3~20g/m2、好ましくは5~15g/m2、より好ましくは8~12g/m2の坪量を有する。坪量が低すぎると不十分な接着を生じる可能性がある。坪量が高すぎると、大きな技術的欠点は生じないが、構造体のコストが不必要に高くなり、所望されるよりもコア層が厚くなる可能性がある。
【0096】
〔本発明の利点〕
本発明のポリプロピレン単材料多層押出積層体は、リサイクル可能であり、機械的特性の改善されたバランスを有する構造を提供する。すなわち、押出積層構造は、機械的特性の劣化に悩まされることはないが、押出積層によってポリプロピレン単材料多層構造を製造することによって、ほとんどの機械的特性を改善することができるか、または、少なくとも維持できる。これは、接着積層によって製造されたポリプロピレン単材料多層構造に比べて明らかな利点である。
【0097】
さらに、接着積層において使用される接着剤は、通常、プロピレン系ポリマーではなく、ポリプロピレンと適合性でないため、リサイクルにおいて問題が生じる。代わりに、本発明の多層構造は、本明細書に定義されるようなポリプロピレン組成物のみを含み、したがって、リサイクルの目的によく適する。
【0098】
押出積層は、機械的、熱的および光学的特性のバランスが改善された、広いバリエーションのポリプロピレン単材料構造を提供する。
【実施例】
【0099】
以下において、実施例を用いて本発明を説明する。
方法の説明
メルトフローレート MFR2-ポリプロピレンについてのISO1133(230℃、2,16kg荷重)
メルトフローレート MFR2-ポリエチレンについてのISO1133(190℃、2,16kg荷重)
密度-ISO1183
溶融温度 Tm(DSC)-ISO 3146
機械方向(MD)および横方向(TD)における引張弾性率 機械方向は室温でISO 527-3に従い測定した。
機械方向(MD)および横方向(TD)における引張強度 機械方向は室温でISO 527-3に従い測定した。
穿刺ピーク力 N/mmはDynatestを用いて測定した-ISO7765-2、
全貫通エネルギー J/mmはDynatestを用いて測定した-ISO7765-2、
相対的エレメンドルフ引裂強度 MD/TD N/mmは、ISO6383/2に従い測定した。
【0100】
〔実験例〕
以下の実験的試験において、次の材料を使用した:
材料a) 1g/10分(230℃)のMFR2を有するポリプロピレン異相コポリマー
材料b) 3g/10分(190℃)のMFR2および882kg/m3の密度を有するポリエチレンプラストマー
材料c) 3g/10分(230℃)のMFR2を有するC3/C2/C4 ポリプロピレンターポリマー
材料d) 8g/10分(230℃)のMFR2を有するポリプロピレンホモポリマー
材料e) 3g/10分(230℃)のMFR2を有するポリプロピレン異相コポリマー
材料f) 13g/10分(230℃)のMFR2を有する、HMS-分枝状ポリプロピレンコポリマー SF313HMS、Borealis製
BOPP-市販され入手可能なBOPPフィルム
【0101】
〔比較例1-CE1〕
比較のために、以下の構造を有する合計80μmの厚さの3層キャストフィルムを、表1に記載するように製造した。フィルム層1、2および3の厚さは、3層キャストフィルムの合計厚さの%として示す。
【0102】
【0103】
〔比較例2-CE2〕
比較のために、以下の構造を有する合計80μmの厚さの3層ブローフィルムを、表2に記載するように製造した。フィルム層1、2および3の厚さは、3層ブローフィルムの合計厚さの%として示す。
【0104】
【0105】
〔比較例3-CE3〕
比較のために、20μmのBOPPフィルムと、CE1の3層キャストフィルム(80μm)との接着積層体を製造した。BOPPとキャストフィルムとの間の接着剤として、接着性グルーを使用した。
【0106】
【0107】
〔本発明の実施例1-IE1〕
押出積層により製造された本発明の多層フィルム構造は表4に記載されている。BOPPフィルムとして、CE3におけるものと同じBOPPフィルムを使用した。非配向型層として、CE2のブローフィルムを使用した。コア層として、材料f)の分枝状PPを使用した。
【0108】
【0109】
【0110】
結果を見ると、本発明の押出積層構造(IE1)では、穿刺ピーク力、全貫通エネルギー、相対的エレメンドルフ引裂強度および引張弾性率が、ブローフィルム層(CE2)と比較して改善されていることがわかる。すなわち、BOPPフィルムは、積層体のコア層に分枝状ポリマーを含む多層押出積層構造のこれらの特性に悪影響を及ぼさない。
【0111】
さらに、接着積層体(CE3)では、引張弾性率MDと穿刺ピーク力のみが改善されるが、全貫通エネルギー、引張強度MDおよび相対的エレメンドルフ引裂強度は、キャストフィルム層と比較して低下していることがわかる。すなわち、BOPPフィルムは、多層接着積層体の多くの機械的特性に悪影響を及ぼす。
【国際調査報告】