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特表2022-532697死亡およびその他の状態の予測、スクリーニングおよびモニタリングのための装置、システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(54)【発明の名称】死亡およびその他の状態の予測、スクリーニングおよびモニタリングのための装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/374 20210101AFI20220711BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20220711BHJP
【FI】
A61B5/374
G16H50/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559274
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(85)【翻訳文提出日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 US2020026914
(87)【国際公開番号】W WO2020206446
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/829,411
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521105640
【氏名又は名称】篠崎 元
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 元
【テーマコード(参考)】
4C127
5L099
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127BB03
4C127GG11
4C127GG16
5L099AA04
(57)【要約】
本開示の装置、システムおよび方法は、死亡およびその他のネガティブな患者予後の予測、スクリーニングおよびモニタリングに関する。システムおよび方法は、1つまたは複数の検出デバイスから1つまたは複数の信号を受信することと、上記1つまたは複数の信号から1つまたは複数の特徴を抽出するために上記1つまたは複数の信号を処理することと、上記1つまたは複数の特徴のそれぞれの1つまたは複数の値を求めるために上記1つまたは複数の特徴を分析することと、上記1つもしくは複数の値のうちの少なくとも1つ、または上記1つもしくは複数の値のうちの少なくとも1つに基づく尺度を、閾値と比較することと、その比較に基づいて患者のその後の死亡、転倒または長期入院の有無または可能性を判定することと、患者の予後不良または死亡の続発の有無または可能性を示す標識を出力することとを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予後リスクのための患者スクリーニング方法であって、
ハンドヘルドデバイスによって未加工BSEEG値を記録するステップと、
NBSEEGを計算するために前記未加工BSEEG値を正規化するステップと、
予後NBSEEGスコアを出力するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記NBSEEGは、
前記未加工BSEEGをBSEEG母平均と比較するステップと、
前記の結果をBSEEG母標準偏差で割るステップとによって計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予後NBSEEGスコアは、NBSEEG陽性スコアまたはNBSEEG陰性スコアを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記予後NBSEEGスコアは連続的である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記記録するステップはプライマリポイントオブケアで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記予後BSEEGは病院滞在期間(「LOS」)、退院時の傾向、および/または死亡リスクのうちの少なくとも1つと相関する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
死亡リスクの患者スクリーニングのためのハンドヘルドシステムであって、
a.1つまたは複数の脳周波数を記録するように構成された少なくとも2つのセンサと、
b.プロセッサと、
c.少なくとも1つのモジュールであって、
i.未加工BSEEG値を記録し、
ii.NBSEEGを計算するために前記未加工BSEEG値を正規化し、
iii.予後NBSEEGスコアを出力する
ように構成された少なくとも1つのモジュールとを含む、ハンドヘルドシステム。
【請求項8】
前記予後NBSEEGは、病院LOS、退院時の傾向、および/または死亡リスクのうちの少なくとも1つと相関する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
閾値データを出力することをさらに含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記予後NBSEEGスコアを閾値と比較することをさらに含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
信号処理デバイスをさらに含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
被験者における死亡リスクのスクリーニング方法であって、
ハンドヘルドデバイスによって前記被験者から未加工BSEEG値を記録するステップと、
NBSEEGを計算するために前記未加工BSEEG値を正規化するステップと、
予後NBSEEGスコアを出力するステップとを含む方法。
【請求項13】
前記予後NSBFスコアを閾値と比較するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記未加工BSEEG値は、前記ハンドヘルドデバイス内の信号処理モジュールまたは特徴分析モジュールによって処理される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記予後NBSEEGスコアは、1つまたは複数の閾値との比較によって低リスク、中リスクまたは高リスクに分類される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
BSEEG母集団ノルムを維持するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記NBSEEGは、
前記未加工BSEEGを前記BSEEG母集団ノルムの平均と比較するステップと、
前記の結果をBSEEG母標準偏差で割るステップとによって計算される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
被験者予後を記録するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記BSEEG母集団ノルムは、前記未加工BSEEG値と被験者予後とを含むように更新される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記予後NBSEEGは、病院滞在期間(「LOS」)および/または退院時の傾向のうちの少なくとも1つと相関する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[001]本出願は、2019年4月4日出願の「Apparatus, Systems And Methods For Predicting, Screening And Monitoring Of Mortality And Other Conditions(死亡およびその他の状態の予測、スクリーニングおよびモニタリングのための装置、システムおよび方法)」という名称の米国仮特許出願第62/829,411号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援
[002]本発明は、米国国立科学財団によって授与された第1664364号の下で政府支援により行われた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
[003]本明細書では、医学において、および特に医療デバイスに対して使用するための様々なデバイス、システムおよび方法について記載する。
【背景技術】
【0004】
[004]せん妄は、非注意、認知障害、精神運動障害および漸増漸減経過によって特徴づけられる急性錯乱状態である。せん妄は、高齢の入院中の成人に特によく見られ、総合医療フロア、電気ショック療法を含む術後処置室、および集中治療室における有意な数の患者に発症する。
【0005】
[005]入院高齢患者のせん妄は好発で、危険であり、費用がかかる。また、著しく過小診断され、したがって処置不十分となる。米国だけでも年に少なくとも200万~300万のせん妄症例があると見積もられている。せん妄は、患者の予後不良の強力な予測因子である。せん妄は、死亡率、合併症、病院滞在期間、および退院後施設収容を増大させる。このような患者は生存した場合でも、長期認知機能障害のリスクが高い。発見されない場合、せん妄は1年当たり患者1人当たりの医療費を数千ドル増大させる可能性があり、それによって数十億ドルの追加医療費を生じさせる。
【0006】
[006]せん妄は、好発で危険であるが、発見不十分であり、処置不十分である。現行のスクリーニング質問票は主観的であり、多忙な病院ワークフローでは実施が不十分である。脳波記録(EEG)は、せん妄の広汎性徐波化特性を客観的に検出することができるが、リード線の配置と解釈に必要なサイズ、コストおよび専門知識のために、高スループットスクリーニングには適さない。
【0007】
[007]認知症はせん妄のリスクファクタの1つであるため、せん妄と認知症の関係は併発関係である場合が多い。さらに、せん妄は認知症の進行を加速させることが知られている。また、せん妄と認知症とは、死亡を含む患者の予後(outcome)に関連する。特に、患者がせん妄と認知症の両方を患っている場合、患者の死亡率は上昇することになる。
【0008】
[008]当技術分野では、死亡の予測およびスクリーニングのための効率的で信頼性の高いデバイス、システムおよび方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
[009]本明細書では、患者の死亡および/またはその他の状態を検出、特定またはその他の方法で予測するための、システム、デバイスおよび方法に関連する、様々なデバイス、システムおよび方法について説明する。様々な実装形態において、広汎性徐波化、すなわち上記の状態の特徴を検出するためにデバイスが使用される。
【0010】
[010]本開示の実施形態は、死亡またはその他の状態の予測、スクリーニングおよびモニタリングのためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、信号分析による患者の死亡またはその他の状態の続発の有無または可能性を判定するためのシステムおよび方法に関する。出力データには、死亡、長期入院、退院後の施設収容、および病院内での転倒の可能性を含む予後不良のリスクを示す標識の提示が含まれる。様々な実装形態において、出力は、スコアが高いほど患者が予後不良を有する可能性が高い、連続スコアである。さらなる実装形態では、本開示のシステム、方法およびデバイスは、望ましくない予後を防ぐ介入または治療の実行を含む。
【0011】
[011]死亡、および長期入院、退院後の施設収容、病院内での転倒の可能性などの予後不良の予測、スクリーニングおよびモニタリングのための様々な手段および手順を使用するシステムおよび方法について記載する。特定の実施形態では、本明細書で開示する手段および手順は、死亡の予測、スクリーニングおよびモニタリングのための1つまたは複数の追加の手段および/または手順とともに使用してもよい。本明細書に記載の実施例は、例示のみを目的として、予測、スクリーニングおよびモニタリングに関する。複数ステッププロセスまたは方法の場合、ステップは1人もしくは1つまたは複数の異なる当事者、サーバ、プロセッサなどによって行われてもよい。
【0012】
[012]1つまたは複数のコンピュータからなるシステムを、動作時にシステムにアクションを行わせるシステムにインストールされたソフトウェア、ハードウェアまたはこれらの組み合わせを有することにより、特定の操作またはアクションを行うように構成することができる。データ処理装置によって実行されると装置にアクションを行わせる命令を含むことにより、特定の操作またはアクションを行うように1つまたは複数のコンピュータプログラムを構成することができる。
【0013】
[013]実施例1では、予後リスクのための患者スクリーニングの方法が、ハンドヘルドデバイスにより未加工(raw)BSEEG値を記録することと、NBSEEGを計算するために未加工BSEEG値を正規化することと、予後NBSEEGスコアを出力することとを含む。
【0014】
[014]実施例2は実施例1の方法に関し、NBSEEGは、未加工BSEEGをBSEEG母平均と比較し、母集団による結果をBSEEG母標準偏差によって割ることによって計算される。
【0015】
[015]実施例3は実施例1の方法に関し、予後NBSEEGスコアがNBSEEG陽性スコアまたはNBSEEG陰性スコアを含む。
[016]実施例4は実施例1の方法に関し、予後NBSEEGスコアが連続的である。
【0016】
[017]実施例5は実施例1の方法に関し、記録がプライマリポイントオブケア(primary point of care)で行われる。
[018]実施例6は実施例1の方法に関し、予後NBSEEGは病院滞在期間(「LOS」)、退院時の傾向(discharge disposition)、および/または死亡リスクのうちの少なくとも1つと相関する。
【0017】
[019]実施例7では、死亡リスクの患者スクリーニングのためのハンドヘルドシステムが、1つまたは複数の脳周波数を記録するように構成された少なくとも2つのセンサと、プロセッサと、少なくとも1つのモジュールとを含む。少なくとも1つのもモジュールは、未加工BSEEG値を記録し、NBSEEGを計算するために未加工BSEEG値を正規化し、予後NBSEEGスコアを出力するように構成される。
【0018】
[020]実施例8は実施例7のシステムに関し、予後NBSEEGは、病院LOS、退院時の傾向、および/または死亡リスクのうちの少なくとも1つと相関する。
[021]実施例9は実施例7のシステムに関し、閾値データを出力することをさらに含む。
【0019】
[022]実施例10は実施例7のシステムに関し、予後NBSEEGスコアを閾値と比較することをさらに含む。
[023]実施例11は実施例7のシステムに関し、信号処理デバイスをさらに含む。
【0020】
[024]実施例12では、被験者の死亡リスクのスクリーニング方法が、被験者からの未加工BSEEG値をハンドヘルドデバイスにより記録することと、NBSEEGを計算するために未加工BSEEG値を正規化することと、予後NBSEEGスコアを出力することとを含む。
【0021】
[025]実施例13は実施例12の方法に関し、予後NBSEEGスコアを閾値と比較することをさらに含む。
[026]実施例14は実施例12の方法に関し、未加工BSEEG値がハンドヘルドデバイス内の信号処理モジュールまたは特徴分析モジュールによって処理される。
【0022】
[027]実施例15は実施例12の方法に関し、予後NBSEEGスコアが、1つまたは複数の閾値との比較によって低リスク、中間リスクまたは高リスクに分類される。
[028]実施例16は実施例12の方法に関し、BSEEG母集団ノルムを維持することをさらに含む。
【0023】
[029]実施例17は実施例16の方法に関し、NBSEEGが、未加工BSEEGをBSEEG母集団ノルムの平均と比較することと、母集団による結果をBSEEG母標準偏差によって割ることとによって計算される。
【0024】
[030]実施例18は実施例17の方法に関し、被験者予後を記録することをさらに含む。
[031]実施例19は実施例18の方法に関し、BSEEG母集団ノルムが、未加工BSEEG値と被験者予後とを含むように更新される。
【0025】
[032]実施例20は実施例19の方法に関し、予後NBSEEGが、病院滞在期間(「LOS」)および/または退院時の傾向のうちの少なくとも1つと相関する。
[033]特定の実装形態では、本開示の実施例は、高周波成分と低周波成分との比を含むEEGスコアを記録することによって死亡を予測する方法に関する。特定の実装形態では、限られた数の電極を備えたポイントオブケア携帯型EEGデバイスによりEEG信号が記録される。特定の実装形態では、未加工EEG信号がスペクトル密度解析によって、次に、2つ以上のパワーの比など、高周波パワーと低周波パワーを結合するためのアルゴリズムよって処理されて未加工BSEEG値を生成する。
【0026】
[034]様々な実施例は、未加工BSEEGスコアとBSEEGスコア母集団ノルムの平均との差をBSEEG母集団ノルムの標準偏差で割ることによって、正規化BSEEGに予後NBSEEGスコア(「NBSEEGスコア」)を割り当てることに関する。特定の実装形態では、平均と標準偏差との関係における母集団BSEEGスコア分布と比較して未加工BSEEG値が評価される。母平均は特定の患者グループまたは健常母集団グループによって定義することができる。特定の実装形態によるNBSEEGスコアは、(未加工BSEEG値-母集団ノルムBSEEG平均)を母集団ノルムからのBSEEGの標準偏差で割った値によって求められる。
【0027】
[035]様々な実施例は、結果の予後NBSEEGスコアを、死亡予後などの予後の2つ、3つまたはそれ以上の異なるレベルのうちの1つにして出力することを含む。NBSEEGスコアは、体温、血圧、および心拍数とまったく同様に、新たなバイタルサインとしての連続値として使用することができる。死亡のリスク閾値は、疫学研究により定義される現行リスクスコアにより閾値化される。本開示で提示されるデータは、高いNBSEEGスコアはより高い死亡率につながる可能性があり、低いNBSEEGスコアがよりリスクが少ない可能性があることを示した。スコアを3つのグループに分けたとき、スコアは死亡リスクとの用量依存関係を示した。
【0028】
[036]一般的な一態様は、ハウジングと、1つまたは複数の脳信号を記録し、1つまたは複数の値を生成するように構成された少なくとも2つのセンサと、プロセッサと、1つまたは複数の値のスペクトル密度解析を行い、死亡の続発の有無または可能性を示す標識を提示するデータを出力するように構成された少なくとも1つのモジュールとを含む、ハンドヘルドスクリーニングデバイスを含む、患者スクリーニングのためのシステムを含む。この態様の他の実施形態は、それぞれが上記の方法のアクションを行うように構成された、対応するコンピュータシステムと、装置と、1つまたは複数のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムとを含む。
【0029】
[037]実装形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数の特徴を含む場合がある。モジュールが1つまたは複数の脳信号からの1つまたは複数の値を閾値と比較するように構成されたシステム。閾値が、低周波の発生回数に対する高周波の発生回数を含む比であるシステム。1つまたは複数の脳信号が脳波図(EEG)信号であるシステム。2つのセンサがあるシステム。ハウジングがディスプレイを含むシステム。プロセッサがハウジング内に配置されたシステム。1つまたは複数の値が、高周波と、低周波と、これらの組み合わせとを含むグループから選択されるシステム。1つまたは複数の値が、一定期間にわたる1つまたは複数の特徴のそれぞれの発生回数の数値表現であるシステム。閾値が予め決定されているシステム。閾値が機械学習モデルに基づいて設定されるシステム。ディスプレイを含むハンドヘルドハウジングをさらに含むシステムであって、少なくとも2つのセンサがハウジングと電気通信し、プロセッサがハウジング内に配置され、ディスプレイが出力データを表示するように構成されているシステム。脳信号を評価するように構成された検証モジュールをさらに含み、プロセッサが1つまたは複数の脳周波数を信号データに変換し、検証モジュールが、少なくとも1つの所定の信号品質閾値を超える信号データを廃棄する、システム。信号データが、等しい存続期間の窓に区分されるシステム。信号処理モジュールをさらに含むデバイス。検証モジュールをさらに含むデバイス。閾値モジュールをさらに含むデバイス。本記載の技術の実装形態は、ハードウェア、方法またはプロセス、またはコンピュータアクセス可能媒体上のコンピュータソフトウェアを含む場合がある。
【0030】
[038]一般的な一態様は、死亡リスクの存在を評価するシステムであって、1つまたは複数の脳周波数を記録するように構成された少なくとも2つのセンサと、プロセッサと、経時的に脳波周波数を比較し、比を設定するために脳波周波数のスペクトル密度解析を行い、比を設定された閾値と比較し、死亡の続発の有無または可能性を示す標識を提示するデータを出力するように構成された少なくとも1つのモジュールとを含むシステムを含む。この態様の他の実施形態は、それぞれが上記の方法のアクションを行うように構成された、対応するコンピュータシステムと、装置と、1つまたは複数のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムとを含む。
【0031】
[039]実装形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数の特徴を含む場合がある。閾値が予め決定されているシステム。閾値が機械学習モデルに基づいて設定されるシステム。ディスプレイを含むハンドヘルドハウジングをさらに含み、少なくとも2つのセンサがハウジングと電気通信し、プロセッサがハウジング内に配置され、ディスプレイが出力データを表示するように構成されたシステム。信号脳を評価するように構成された検証モジュールをさらに含み、プロセッサが1つまたは複数の脳周波数を信号データに変換し、検証モジュールが少なくとも1つの所定の信号品質閾値を超える信号データを廃棄するシステム。信号データが、等しい存続期間の窓に区分されるシステム。信号処理モジュールをさらに含むデバイス。検証モジュールをさらに含むデバイス。閾値モジュールをさらに含むデバイス。本記載の技術の実装形態は、ハードウェア、方法またはプロセス、またはコンピュータアクセス可能媒体上のコンピュータソフトウェアを含む場合がある。
【0032】
[040]一般的な一態様は、患者の死亡の続発の有無、または可能性を評価するハンドヘルドデバイスであって、ハウジングと、少なくとも1つの脳波信号を生成するように構成された少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのシステムメモリと、少なくとも1つの脳波信号のスペクトル密度解析を行い、患者出力データを生成するように構成された少なくとも1つのプログラムモジュールと、患者出力データを表示するように構成されたディスプレイとを含む、ハンドヘルドデバイスを含む。この態様の他の実施形態は、それぞれが上記の方法のアクションを行うように構成された、対応するコンピュータシステムと、装置と、1つまたは複数のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムとを含む。
【0033】
[041]実装形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数の特徴を含む場合がある。信号処理モジュールをさらに含むデバイス。検証モジュールをさらに含むデバイス。閾値モジュールをさらに含むデバイス。特徴分析モジュールをさらに含むデバイス。信号処理モジュールをさらに含むデバイス。本記載の技術の実装形態は、ハードウェア、方法またはプロセス、またはコンピュータアクセス可能媒体上のコンピュータソフトウェアを含む場合がある。
【0034】
[042]1つまたは複数のコンピューティングデバイスは、コンピュータ可読形態で表されたソフトウェア命令にアクセスすることによって必要な機能を提供するようになされてもよい。ソフトウェアを使用する場合、本明細書に記載されている技術を実装するために、任意の適切なプログラミング言語、スクリプト言語もしくはその他の種類の言語または言語の組み合わせを使用してもよい。しかし、もっぱらソフトウェアのみを使用する必要はなく、ソフトウェアをまったく使用しなくてもよい。例えば、本明細書に記載の方法およびシステムの一部の実施形態は、特定用途向け回路を含むがこれには限定されないハードワイヤードロジックまたはその他の回路によって実装してもよい。コンピュータ実行ソフトウェアおよびハードワイヤードロジックまたはその他の回路の組み合わせも適切な場合がある。
【0035】
[043]複数の実施形態を開示するが、当業者には、本開示の装置、システムおよび方法の例示の実施形態を示して説明する以下の詳細な説明から、本開示のさらに他の実施形態も明らかになるであろう。当然ながら、本開示の装置、システムおよび方法は、すべてが本開示の精神および範囲から逸脱することなく様々な明白な態様で修正が可能である。したがって、図面および詳細な説明は、例示的な性質のものであり、制限的なものではないとみなされるべきである。
【0036】
[044]本発明をさらによく理解することができるようにするために含まれており、本明細書に組み込まれ、その一部をなす添付図面は、本発明の好ましい実施形態を図示し、詳細な説明とともに本発明の原理を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A】[045]患者上で使用中の例示のスクリーニングシステムの概要を示す図である。
図2】[046]図2Aは、脳波図に現れる脳波における広汎性徐波化(diffuse slowing)の一例を示す図である。 [047]図2Bは、脳波図に現れる脳波における例示の正常状態を示す図である。
図3】[048]図3Aは、脳波図に現れる脳波における広汎性徐波化の一例を示す図である。 [049]図3Bは、脳波図に現れる脳波における2チャネル広汎性徐波化の一例を示す図である。 [050]図3Cは、脳波図に現れる2チャネル正常状態脳波の一例を示す図である。
図4A】[051]死亡リスクの予測、スクリーニングおよびモニタリングのための例示のシステムを示す図である。
図4B】[052]死亡リスクの予測、スクリーニングおよびモニタリングの計算態様のための例示のシステムを示す図である。
図5A】[053]死亡を含む予後不良の脳信号高リスクの予測、スクリーニングおよびモニタリングのための例示のシステムを示す図である。
図5B】[054]死亡を含む予後不良の脳信号高リスクの予測、スクリーニングおよびモニタリングのための例示のシステムを示す図である。
図5C】[055]死亡を含む予後不良の脳信号高リスクの予測、スクリーニングおよびモニタリングのための例示のシステムを示す図である。
図5D】[056]死亡を含む予後不良の脳信号高リスクの予測、スクリーニングおよびモニタリングのための別の例示のシステムを示す図である。
図6】[057]例示の一実施形態による、スクリーニングデバイスのプログラムモジュールおよびプログラムデータを示す図である。
図7】[058]例示の一実施形態による、死亡を含む予後不良の脳信号高リスクの予測、スクリーニングおよびモニタリングの方法の概要を示す図である。
図8-1】[059]例示の一実施形態による、死亡を含む予後不良の脳信号高リスクの予測、スクリーニングおよびモニタリングの方法の概要を示す図である。
図8-2】[059]例示の一実施形態による、死亡を含む予後不良の脳信号高リスクの予測、スクリーニングおよびモニタリングの方法の概要を示す図である。
図9】[060]図9Aは、未加工脳波図信号の一例を示す図である。 [061]図9Bは、未加工脳波図信号の一例を示す図である。 [062]図9Cは、スペクトル密度解析の一例を示す図である。 [063]図9Dは、スペクトル密度解析の一例を示す図である。
図10】[064]図10Aは、患者上で使用中の例示のスクリーニングシステムの概要を示す図である。 [065]図10Bは、一実施形態による、予後BSEEGスコアを予測するためのモデルフローチャートを示す図である。
図11】[066]正規化BSEEG(NBSEEG)スコアの分布を示す図である。スコアは、全年齢層の428人の患者からの合計2938件の記録に基づく。NBSEEGスコアは、平均からの標準偏差の数として定義され、平均はスコア0である。
図12】[067]対象患者参加フローチャートを示す図である。対象母集団は、臨床せん妄状態とBSEEGスコアとの2つの方式で分類した。
図13】[068]臨床せん妄状態(左図)とNBSEEGスコア(右図)とに基づく360日間の生存曲線を示す図である。臨床せん妄状態であった患者は、臨床せん妄のない患者と比較して死亡率が上昇した(P=0.0038)。臨床せん妄状態にかかわらずNBSEEG陽性患者は、NBSEEG陰性患者よりも高い死亡率を示した(P=0.0032)。
図14】[069]3つのNBSEEGカテゴリに基づく360日間の生存曲線を示す図である。死亡率はNBSEEGスコアに正比例し、NBSEEGスコアのより高いグループがより高い死亡率と関連性がある(P=0.005)。
図15】[070]臨床せん妄状態とNBSEEGカテゴリの両方に基づく死亡率のサブグループ分析を示す図である。臨床せん妄状態とNBSEEG陽性の両方である患者が最も高い死亡率を示した(紫の線)。臨床せん妄状態を示したがNBSEEG陰性だった患者は、死亡率がより低く(青の線)、臨床非せん妄状態とNBSEEG陰性の両方であった患者(オレンジの線)とほぼ同程度の低さであった。それに対して、臨床非せん妄状態であったが、NBSEEG陽性の患者は、より高い死亡率を示し(緑の線)、NBSEEGスコアが臨床せん妄状態よりもすぐれた死亡の予測因子であることを示している。
図16】[071]ランダムフォレスト(RF)を使用したEEG特徴に基づく診断の予測モデルを示す図である。臨床状態の個別の属(EEG特徴)の予測力をボルータ特徴選択アルゴリズムによって評価した。箱の3つの水平線は、第1四分位数、第2四分位数(メジアン)、および第3四分位数をそれぞれ表し、ひげが1.5の四分位間範囲(IQR)まで延びている。青い箱プロットは、RF分類子に導入された実際の属をシャッフルしたものであり、真の予測属を検出するためのベンチマークの役割を果たす、シャドウ属の最小、平均および最大Zスコアに対応する。赤色、黄色、および緑色は、ボルータ選択による選外属、示唆属および確定属を表す。ここで、重要度は分類精度の平均低下と定義される。
図17】[072]図17Aは、228人の被験者(複製コホート)における2NBSEEGカテゴリの、NBSEEGカテゴリに基づく180日間の生存曲線を示す図である。 図17Bは、228人の被験者(複製コホート)における3NBSEEGカテゴリの、NBSEEGカテゴリに基づく180日間の生存曲線を示す図である。 図17Cは、502人の被験者(発見コホートおよび複製コホート)における2NBSEEGカテゴリの、NBSEEGカテゴリに基づく180日間の生存曲線を示す図である。 図17Dは、502人の被験者(発見コホートおよび複製コホート)における3NBSEEGカテゴリの、NBSEEGカテゴリに基づく180日間の生存曲線を示す図である。略語:NBSEEG:バイスペクトル脳波記録、B(-):NBSEEG陰性、B(+):NBSEEG陽性。
図18】[073]認知症とNBSEEGカテゴリとに基づく180日間の生存曲線を示す図である。略語:NBSEEG:正規化バイスペクトル脳波記録、B(-):NBSEEG陰性、B(+):NBSEEG陽性、D(-):認知症陰性、D(+):認知症陽性。
図19】[074]図19Aは、502人の被験者(発見コホートおよび複製コホート)におけるNBSEEGカテゴリに基づく30日間の短期死亡率を示す図である。 図19Bは、502人の被験者(発見コホートおよび複製コホート)におけるNBSEEGカテゴリに基づく60日間の短期死亡率を示す図である。 図19Cは、502人の被験者(発見コホートおよび複製コホート)におけるNBSEEGカテゴリに基づく90日間の短期死亡率を示す図である。注:*相対リスクがNBSEEG陰性グループよりも有意に高かった。略語:NBSEEG:正規化バイスペクトル脳波記録。
図20】[075]502人の被験者(発見コホートおよび複製コホート)における認知症とNBSEEGカテゴリとに基づく短期死亡率を示す図である。*相対リスクがNBSEEG陰性グループよりも有意に高かった。略語:NBSEEG:正規化バイスペクトル脳波記録。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[076]本明細書で開示または企図される様々な実施形態は、死亡リスクの客観的臨床測定値を提供することができるシステム、方法およびデバイスに関する。これらの実装形態は、患者の脳波における広汎性徐波化の存在を検出する。本明細書で説明する実装形態は、患者の頭部上の少数の離散的位置から記録された脳波のスペクトル密度解析を行うことによって広汎性徐波化を検出することができ、それによってハンドヘルドデバイスなどによる、より容易なベッドサイド診断を可能にする。すなわち、様々な実装形態は、患者の頭部上に配置された2つ以上のリード線を介して脳波を記録することができ、記録された高周波に対する低周波の比を評価し、その比を決定済みの閾値と比較して死亡のリスクを特定するためにアルゴリズムを実行する。さらなる実施形態では、これらの実装形態は、診断精度を向上させるために、機械学習と、医療記録からのデータなどの追加のデータとを使用する。
【0039】
[077]本開示の正規化バイスペクトル脳波記録(「NBSEEG」)方法、システムおよびデバイスは、病院滞在期間、退院時の傾向、および、患者の入院初日に得たNBSEEGスコアからの死亡率を含む、患者の予後を予測することができる。患者の前頭部から脳信号を取得し、新規なアルゴリズムを使用して未加工BSEEG値データを計算し、このデータを患者からの約3,000の未加工BSEEG値記録からのマスデータと比較して正規化BSEEG(NBSEEG)スコアを求める。スコアが高い場合は、より長期の入院、自宅以外への退院のより高い可能性、およびより高い死亡率に関連付けられる。本記載の実装形態は、多数の患者をスクリーニングするために使用することができ、患者の予後を予測するための客観的スコアを提供し、したがって患者の予後を改善させるために早期介入を可能にすることができる。
【0040】
[078]本開示のシステム、デバイス、および方法は、従来技術に見られる16、20または24リード線EEGより少ないリード線を使用する非侵襲性のポイントオブケア診断に関する。例えば、図1に概要を示すように、特定の実装形態では、2本のリード線12A、12Bを患者30の前頭部に10分未満、当てることによってハンドヘルドスクリーニングデバイス10を使用して行うことができる、2リード線BSEEGスクリーニングシステム1を採用する。これらの実装形態では説明のためにBSEEGにおいて2本のリード線またはチャネルを使用するが、本明細書では多数のリード線またはチャネルが企図されることを理解されたい。様々な実装形態において、デバイス10は、最新測定値4、傾向6、信号品質8などの、死亡、脳機能障害、および/または長期入院およびそれに付随するリスクの予測のために使用する有用な情報のグラフ表現および/または数値表現7を表示することができる。これらの表現7は、ディスプレイ16上の周知のグラフィカルユーザインターフェース技術の結果とすることができることを理解されたい。
【0041】
[079]脳波は様々な周波数および/または周波数帯を有し得る。「広汎性徐波化」は、死亡の強力な予測因子である。図2Aから図3Dに、正常対照3と比較した、死亡2の症候に直面している患者からのいくつかのEEG読み取り値を示す。当業者には明らかなように、様々な状況で、死亡状態の脳波は、観察チャネルのそれぞれで緩慢になった波形を観察することができることを意味する「広汎性徐波化」2によって特徴づけられる。図2Aおよび図3Aからわかるように、この徐波化は局在的ではなく広汎性であるため、(図2Aおよび図3Aに示す)徐波化は、EEGの様々な電極のほとんど、および典型的には全部で観察される。
【0042】
[080]図3Aに示すように、より高い周波数の波の数と比較して緩徐な波2の出現は、患者が死亡または本明細書に記載のその他のネガティブな医学的転帰(medical outcome)に直面しているかまたはその可能性が高いことを示す徴候である可能性がある。
【0043】
[081]図3Bに示すように、広汎性徐波化は通常、すべてのまたはほとんどすべてのEEG電極で観察されるため、標準の16本から24本のEEGチャネル数より少ないチャネル数を使用して広汎性徐波化を特定し、したがって死亡のリスクを予測することができる。これらの実装形態では、本明細書に記載のBSEEG実装形態で使用される2本のリード線で、広汎性徐波化を検出するのに十分な場合があり、適切な信号処理とユーザインターフェースにより、配置または解釈のために特別な専門知識を必要とせず、簡易なハンドヘルドスクリーニングデバイスを用いて行うことができる。死亡のリスクを定量化するために、未加工BSEEG値を設定母集団ノルム分布と比較して、NBSEEG陽性(BSEEG(+))またはNBSEEG陰性(BSEEG(-))として表せる正規化BSEEG(NBSEEG)スコアを正確に計算する。
【0044】
[082]スクリーニングデバイス10の一実装形態を図4Aに示す。様々な実装形態において、本明細書で開示する死亡の予測、スクリーニングおよびモニタリングのためのシステムおよび方法は、このようなハンドヘルドまたはその他の携帯型スクリーニングデバイス10を使用してもよい。これらの実装形態では、スクリーニングデバイス10は、例えば1つまたは複数のセンサ12A、12Bから信号を受信するように構成される。広汎性緩徐化は、患者の脳全体にわたって容易に特定可能であるため、これらのデバイス10は2個、3個、4個、5個またはそれ以上などの20個よりもはるかに少ない数のセンサ12を使用することができる。特定の実装形態では、6個と20個の間またはそれ以上の間の数のセンサが使用される。したがって、使用されるセンサ12の数が20個より少ないため、本開示のデバイスおよびシステムは、典型的な従来技術のEEGキャップを付ける必要がないので容易に持ち運ぶことができ、患者30上で使用することができる。
【0045】
[083]図4Aの実装形態では、1つまたは複数のセンサ12A、12Bは、患者の上に配置される電極などであるがこれには限定されない脳センサである。特定の実施形態では、信号は、患者の脳の活動を計測する1つまたは複数の電極からの脳波記録(「EEG」)信号であってもよい。信号は、信号の1つまたは複数の特徴を抽出するために処理されてもよい。1つまたは複数の特徴は、1つまたは複数の特徴のそれぞれの1つまたは複数の値を求めるために分析されてもよい。これらの値または、値のうちの1つもしくは複数の値に基づく尺度は、患者が現在、疾患の臨床徴候または症状を示していない場合に死亡の続発の有無または可能性を判定するために、閾値と比較してもよい。
【0046】
[084]図4Aおよび図4Bを続けて参照すると、スクリーニングデバイス10はハウジング14を含むことができる。様々な実装形態において、ハウジング14はハンドヘルドまたはその他の方式の携帯型の大きさとすることができる。ハウジング14は、当業者にはわかるように、ディスプレイ16と、ボタンまたはタッチスクリーンなどのインターフェース18とを有することができる。様々な実装形態において、センサ12A、12Bはポート22A、22Bとワイヤ24A、24Bとを介してデバイス10に接続され、一方、別の実装形態はBluetooth(登録商標)(R)などの無線インターフェースを使用する。図4Aに示すように、貼付を簡素化するためにワイヤ24A、24Bのうちの1つと束ねることができる、接地リード線13も備えることができる。様々な実装形態において、図5Aおよび図5Bに関して説明するようにデバイス10をサーバまたはその他のコンピューティングデバイスと電気通信させるために伝送コード26またはその他の接続を使用することができる。
【0047】
[085]図4Bに示すように、様々な実装形態において、ディスプレイ16は、1つまたは複数の脳波2A、2Bと、最新の測定値4と、傾向6と、信号品質8などのうちの少なくとも1つを含む、死亡および/またはせん妄の診断で使用するための有用な情報のグラフ表現および/または数値表現7を表示することができる。例示の実装形態では、スペクトル密度を設定閾値と比較する後述する閾値ステップのグラフ表現が最新測定値4として示される。これらの表現7は、任意のプログラムデータ67を含むことができ、医療提供者にディスプレイ16上の周知のグラフィカルユーザインターフェース技術の結果として示すことができることを理解されたい。これらの実施形態では、脳波2A、2Bは患者の上に配置されたセンサ12から引き出され、臨床またはその他の場で死亡の徴候を診断および/または予測するために使用することができる。様々な実装形態において、ハウジング14は、電源と、マイクロプロセッサ、メモリなどのコンピューティングコンポーネントも含む。さらなる実装形態では、計算およびその他の処理がプログラムモジュール(図6および図7に関連して説明する)などにより、デバイスハウジング14内で行われ、一方、本明細書で説明するように追加の処理を他の場所で行うことができる。これらの実装形態のそれぞれにおいて、スクリーニングデバイス10および/またはシステム1は、広汎性徐波化を特定するために20未満のチャネルで行われるスペクトル密度解析によって患者の広汎性徐波化を評価するように構成されたプロセッサを含む。
【0048】
[086]図5Aに、一実装形態による死亡の予測、スクリーニングおよびモニタリングのための例示のシステム1を示す。この実装形態では、システム1は、1つまたは複数のスクリーニングデバイス10(例えばスクリーニングデバイス1、スクリーニングデバイス2、...、スクリーニングデバイスn)を含んでもよく、これは特定の実装形態では図1のデバイス10である。この実装形態におけるスクリーニングデバイス10は、1つまたは複数のセンサ12-1から12-nに動作可能に結合される。1つもしくは複数のセンサ12は、個別センサ、センサのアレイ、医療デバイスであってもよく、または他のコンピューティングデバイス、リモートアクセスデバイスなどであってもよい。特定の実施形態では、1つまたは複数のセンサ12は、1つまたは複数の電極および/またはその他の脳機能モニタリングデバイスであってもよい。1つまたは複数のセンサ12は、患者30の生体信号をモニタリングするために患者30に直接または間接的に結合してもよい。特定の実施形態では、1つまたは複数のセンサ12のうちの特定のセンサ12が、ポート22(図4Aに最もよく示されている)を介してスクリーニングデバイス10に直接結合され、および/または、一体化されてもよい。
【0049】
[087]図5Aに示すように、センサ12-1、12-2、12-3、12-nから受信した信号の様々な処理および分析を、図6および図8に関連して説明するようにスクリーニングデバイス10で行うことができる。図5Bから図5Dに示す実装形態などの特定の別の実装形態では、スクリーニングデバイス10は、他のコンピューティングデバイスと併用することができる。
【0050】
[088]図5Bの実装形態に示すように、スクリーニングデバイスはベッドサイドデバイス11に接続またはその他の方式でインターフェースをとることができる。様々な実装形態において、ベッドサイドデバイス11は、患者モニタまたはその他の統合ベッドサイドモニタリングデバイス11とすることができる。様々な実装形態において、ベッドサイドデバイス11は、医療提供者が特定の分析ステップまたは観察ステップを観察および/または実行するために使用することができる。
【0051】
[089]図5Cおよび図5Dに示すように、1つまたは複数のスクリーニングデバイス10は、1つまたは複数のサーバ/コンピューティングデバイス42、システムデータベース36(例えばデータベース1、データベース2、...、データベースn)に直接および/またはネットワークを介するなどして間接的に、動作可能に接続してもよい。様々なデバイスを、医療デバイス、医療モニタリングシステム、クライアントコンピューティングデバイス、消費者コンピューティングデバイス、医療提供者コンピューティングデバイス、リモートアクセスデバイスなどを含むがこれらには限定されないシステムに接続してもよい。このシステム1は、様々なセンサ、医療デバイス、コンピューティングデバイス、サーバ、データベースなどから、1つもしくは複数の入力38および/または1つもしくは複数の出力40を受信してもよい。
【0052】
[090]図5Dに示すように、特定の実施形態では、1つまたは複数のスクリーニングデバイス10は、接続32を介して1つもしくは複数のサーバ/コンピューティングデバイス42に直接結合され、および/もしくは一体とされて、ならびに/または、1つもしくは複数のネットワークインターフェース接続32を介して1つもしくは複数のサーバ/コンピューティングデバイス42に結合されてもよい。スクリーニングデバイス10および/または1つまたは複数のサーバ/コンピューティングデバイス42は、1つまたは複数のサードパーティサーバ/データベース34(例えばデータベース1、データベース2、...、データベースn)に直接、および/またはネットワークを介するなどして間接的に、動作可能に接続されてもよい。1つまたは複数のサーバ/コンピューティングデバイス42は、例えば、サーバ、パーソナルコンピュータ(PC)、ラップトップ、スマートフォン、タブレットなどの、サーバ、コンピューティングデバイスのうちのいずれか1つまたは複数に相当し得る。
【0053】
[091]様々な実装形態において、接続32は、例えばハードワイヤ接続、無線接続、インターネット、イントラネットなどのローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、セルラネットワーク、および/またはWi-Fiネットワークなどの任意の組み合わせに相当し得る。1つまたは複数のセンサ12は、それ自体が少なくとも1つのプロセッサおよび/またはメモリを含んでもよく、それぞれが1つもしくは複数のスクリーニングデバイス10もしくはサーバ/コンピューティングデバイス42にデータ入力を送信し、および/または1つもしくは複数のスクリーニングデバイス10もしくはサーバ/コンピューティングデバイス42からデータ出力を受信する、1組の任意のセンサ、医療デバイスまたは、アプリケーションを実行するその他のコンピューティングデバイスに相当し得る。このようなサーバ/コンピューティングデバイス42は、例えば、1つまたは複数のデスクトップコンピュータ、ラップトップ、モバイルコンピューティングデバイス(例えばタブレット、スマートフォン、ウェアラブルデバイス)、サーバコンピュータなどを含んでもよい。特定の実装形態では、入力データは、例えば、他の脳波測定値など、1つまたは複数のサーバ/コンピューティングデバイス10による処理のための、EEGシステムからなどのアナログおよび/またはデジタル信号を含んでもよい。
【0054】
[092]様々な実装形態において、データ出力40は、例えば、医療指示、推奨事項、通知、警告、データ、および/または画像などを含んでもよい。本開示の実施形態のうちの実施形態は、様々な場所からログインしてデータプロジェクトに関する様々な操作を行う複数のユーザとの共同プロジェクトのためにも使用することができる。特定の実施形態は、コンピュータベース、ウェブベース、スマートフォンベース、タブレットベースおよび/または人間が装着可能なデバイスベースであってもよい。
【0055】
[093]別の例示の一実装形態では、スクリーニングデバイス10(および/またはサーバ/コンピューティングデバイス42)は、図6に示すように、システムメモリ46に結合された少なくとも1つのプロセッサ44を含んでもよい。システムメモリ46は、コンピュータプログラムモジュール48とプログラムデータ50とを含んでもよい。上述のように、プログラムモジュール48内のそれぞれのコンピュータプログラム命令に関連付けられた操作は、複数のコンピューティングデバイスに分散させることもできる。
【0056】
[094]リード線からのスペクトル密度解析を様々な電子およびコンピューティング機構によって行うことができる。図6の実装形態では、プログラムモジュール48が備えられる。これらのプログラムモジュールは、信号処理モジュール52、特徴分析モジュール54、検証モジュール55、広汎性徐波化または死亡判定閾値モジュール56、出力モジュール59、および/または、オペレーティングシステム、デバイスドライバなどのその他のプログラムモジュール58を含んでもよい。様々な実装形態において、各プログラムモジュール52から58は、プロセッサ44による実行が可能な、コンピュータプログラム命令のそれぞれのセットを含んでもよい。
【0057】
[095]図6は、プログラムモジュールのセットの一例を示しており、プログラムモジュールの他の数および構成も、サーバ/コンピューティングデバイス10および/またはシステム1の特定の任意の設計および/またはアーキテクチャに応じて企図される。例示の一実装形態では、プログラムデータ50は、信号データ60、特徴データ62、検証データ63、広汎性徐波化または死亡判定モジュール64、出力データ67、ならびにデータ入力、サードパーティデータおよび/または図7および図8に記載されている様々なステップを行うように構成されたその他のデータなどのその他のプログラムデータ66を含んでもよい。
【0058】
[096]様々な実装形態において、プログラムデータ50は上述の様々なプログラムモジュール48に対応してもよい。これらの様々な実装形態では、プログラムモジュール48および/またはプログラムデータ50は、(図1Aおよび図8の16に示すような)ディスプレイならびに/または、図5Bのベッドサイドモニタリングデバイス11、図5Cの様々なシステムデータベース36および/もしくはサードパーティサーバもしくはデータベース34、図5Dのシスステムサーバ/コンピューティングデバイス42、またはハウジング14内にモジュールが収容されていない実装形態ではスクリーニングデバイス自体10などの本明細書に記載のその他のコンピューティングデバイスのいずれか、ならびに、図12のゲートウェイ210または、出力モジュールと電気通信または物理通信する任意のその他のコンピューティングデバイス、ストレージデバイスまたは通信デバイスへの出力データ67を、記録、分析およびその他により生成するために使用することができる。出力データ67は、せん妄または死亡の徴候の診断またはその他による特定のために、ポイントオブケア提供者に患者の脳波の特性を提供することを理解されたい。例えば、特定の実装形態では、本明細書の他の個所で説明したように、その提供者にスペクトル密度の最新の測定読み取り値と、信号品質および傾向の定性測定値とを提供することができる。
【0059】
[097]図7に、死亡の予測、スクリーニング、およびモニタリングと、NBSEEG予測予後NBSEEGスコアの設定のための、一実施形態による例示の方法5の概要を示す。死亡の予測、スクリーニングおよびモニタリングを行うために、システムおよび方法はいくつかの任意によるステップを行ってもよい。
【0060】
[098]任意による1つのステップは記録ステップ70である。このステップでは、1つまたは複数の未加工BSEEG値入力信号などの入力データが、例えば図4A図4B図5Aから図5D、および図6に示す、センサ12、デバイス10、プロセッサ40および/またはシステムメモリ46のうちの1つまたは全部によって受信および/または記録されてもよい。
【0061】
[099]図7を続けて参照すると、任意による処理ステップ71で、1つまたは複数の信号は、図6に示すプログラムデータ50および/または信号処理モジュール52などによって処理されてもよい。また、これらの信号は、図8にも示すように信号を窓に区分化するために処理することもできる。信号は、図8Aに関連して詳述するように、1つまたは複数の信号および/または窓から1つまたは複数の値を抽出するために処理することもできる。これらの値は、特定の実装形態ではEEGからの未加工BSEEG信号値の特徴を含むことができる。様々な実装形態において、システム1は、図11Aおよび図11Bに関連して詳述するように、システムの精度を向上させるためにこれらの値の傾向を調べることができる。
【0062】
[0100]図7を続けて参照すると、任意による分析ステップ72を行うことができ、信号または窓の特定の特徴を判定するために1つまたは複数の値が分析されてもよい。特定の実装形態では、この分析ステップは、(図6の64に示すように)特徴データを作成またはその他の方式で比較するために高速フーリエ変換100を行うことを含むことができる。
【0063】
[0101]特定の実装形態では、信号処理モジュール52および/または特徴分析モジュール54は、分析ステップ72で、正規化BSEEG(NBSEEG)スコアを設定するために、母平均または閾値との記録BSEEG値の差分をとり、次にBSEEG母集団ノルムの標準偏差または閾値によって割るなどして、未加工BSEEG値を正規化するように構成される。閾値を使用する場合、NBSEEGは、以下の実施例で説明するように、NBSEEG陽性(NBSEEG(+))スコアまたはNBSEEG陰性(NBSEEG(-))スコアとして分類することができる。
【0064】
[0102]任意による別のステップでは、検証ステップ73を行うことができる。このような実装形態で、図8に示すように、後続の各ステップでの使用に含めるかまたは除外するために、区分化された信号窓(84A、84Bに概略的に示す)からの個別読み取り値を比較するために、スペクトル密度102および/またはその他の未加工BSEEG信号値104A、104Bまたはその他の特徴を使用することができる。様々な実装形態において、このステップは検証モジュール55および検証データ63を用いて行うことができる。様々な実装形態において、検証ステップ73は、後の分析のために結果の信号データの準備ができるまで、反復回で、本明細書に記載の他のステップと並行してまたはその他の方式で行うことができ、誤り訂正アルゴリズムを使用することができる。例えば、図8で詳述するように、検証ステップ73は、特定の決定された所定エラー値を上回るかまたは下回るすべての読み取り値がさらなる処理から確実に除外されているようにするために使用することができる。
【0065】
[0103]図7を続けて参照すると、広汎性徐波化もしくは死亡判定ステップまたは閾値ステップ74を行うことができる。このステップでは、1つもしくは複数の値もしくは特徴のうちの少なくとも1つ、または1つもしくは複数の値のうちの少なくとも1つの値に基づく尺度を、(図6の64に示すような)広汎性徐波化閾値データによって実装可能な設定された広汎性徐波化閾値(図8の65に示す)と比較してもよい。特定の実施形態では、この閾値比較に基づいて患者の長期入院、自宅以外への退院または死亡などのネガティブな予後の続発の有無または可能性を判定してもよい。例えば、以下の実施例で説明するように、閾値データ64としての3Hz/10Hz読み取り値の平均と、1.44の閾値65(陽性>=1.44および陰性<1.44)とを使用して、スクリーニングデバイス10が、閾値65も表示して、または表示せずに、陽性および/または陰性読み取り値をグラフで表示してもよい。閾値65は、システムの改善と強化の結果として、および追加のデータ66およびその他の因子に基づいて、時間と共に修正されてもよいことを理解されたい。
【0066】
[0104]例示の実装形態では、閾値ステップのグラフ表現がスクリーニングデバイス10またはその他のモニタリングシステム上で表示され、スペクトル密度と設定された閾値との比較が最新測定値4として示される。これらの任意によるステップのそれぞれについては、本開示の実施例に関連して以下で詳述する。
【0067】
[0105]図8に示すように、システム1の例示の一実装形態では、図1のスクリーニングデバイス10などを使用してセンサ12A、12Bによって患者30がモニタリングされている。この実装形態では、センサ12は患者30からの1つまたは複数の信号80A、80Bを生成する。1つまたは複数の信号80A、80Bは、アナログおよび/またはデジタル信号であってもよい。1つまたは複数のセンサ12A、12Bは、1つもしくは複数の信号を受信するシステムとは別個であってもよく、または1つもしくは複数の信号を受信するシステムに組み込まれていてもよい。本説明のシステム1はEEG信号の収集に関するが、別の実装形態では、1つまたは複数のセンサ12A、12Bは以下の生理学的状態、すなわち、心拍数、脈拍数、EKG、心臓変動性、呼吸数、皮膚温度、運動パラメータ、血圧、酸素レベル、深部体温、身体からの熱流量、電気皮膚反応(GSR)、筋電図(EMG)、電気眼球図(EOG)、体脂肪、水和レベル、活動レベル、酸素消費量、グルコースまたは血糖値、体位、筋肉または骨の圧迫、および紫外線(UV)吸収などのうちの1つまたは複数を測定、検出、判定および/またはモニタリングしてもよいことを理解されたい。
【0068】
[0106]様々な実装形態において、図4Aから図6に関連して説明しているように、システム1は1つまたは複数の信号処理デバイスを含み、スクリーニングデバイス10内または他の場所に配置することができる。処理により、特定の信号特徴に対応する信号情報を探すために1つまたは複数の信号を解析することによって1つまたは複数の特徴を判定してもよい。特定の実施形態では、1つまたは複数の信号は、1つもしくは複数の高周波および/または1つもしくは複数の低周波の存在を判定するために処理されてもよい。1つまたは複数の特徴は、例えば高周波および/または低周波などであるがこれらには限定されない種類の波であってもよい。
【0069】
[0107]図8の実装形態では、信号80A、80Bが上述のように処理のために第1のチャネル82Aおよび第2のチャネル82Bを介して受信される。他の実装形態も可能である。方法は、8ビットもしくは16ビットの内蔵デバイス環境、またはより堅牢な環境に組み込まれてもよい。方法は、既存の病院患者ワークフローに組み込まれてもよい。
【0070】
[0108]また、図8に示すように、特定の実装形態では、信号80A、80Bは、信号を等分の連続した区間(84Aおよび84Bに概略的に示す)に窓分割するように処理することができる。図の実装形態では、10分間の信号継続期間が示されており、信号は10の個別の1分窓に分割されている(これも84Aおよび84Bに概略的に示されている)が、別の実装形態では他の信号持続期間および窓数も使用可能であることを理解されたい。様々な実装形態において、信号は1秒未満の長さまたは1時間より長い長さ、または任意の分数であってもよい。同様に、任意の数の窓が存在可能であり、窓は1秒の数分の1から多くの分数またはそれ以上の時間の範囲にわたることができる。
【0071】
[0109]図8の実装形態では、信号80A、80Bが区分化された後、図7に関連して説明しているように、いくつかの任意による処理および分析ステップを行うことができる。様々な実装形態において、値86A、86Bが抽出され、それぞれの信号80A、80Bについて、最小/最大振幅88A、88B、平均振幅90A、90B、四分位間範囲(IQR)振幅92A、92B、振幅の平均偏差94A、94B、および/または信号エントロピー96A、96Bを設定することができるように、未加工データ特徴104A、104Bを特定するために値86A、86Bに対して様々な任意によるステップを行うことができる。当業者にはわかるように、他の未加工信号特徴104A、104Bも特定可能である。
【0072】
[0110]分析ステップで、広汎性徐波化を特定するためにスペクトル密度解析102を使用することができる。これも図8に示すように、特定の実施形態では、追加の特徴104A、104Bを特定するために1つまたは複数の信号80A、80Bに対して高速フーリエ変換100を行ってもよい。高速フーリエ変換100は、スペクトル密度を評価するために、単独でまたは他の分析手段と組み合わせて使用してもよい。低周波密度105A、高周波密度105B、および低周波密度と高周波密度との比105Cなどの1つまたは複数のスペクトル密度特徴104A、104Bを判定するために、1つまたは複数の信号についてスペクトル密度解析102を行ってもよい。スペクトル密度解析102からのこれらの特徴104A、104Bは、様々な任意によるステップおよび組み合わせを使用して死亡を予測および/または予測するために、単独で、または、未加工信号から引き出される様々な値104A、104Bとともに使用してもよい。
【0073】
[0111]特定の実装形態では、異なる患者状態を区別するために、図のEEG信号などの1つまたは複数の信号80A、80Bのそれぞれについてスペクトル密度解析102A、102Bを行うことができる。特定の実施形態では、スペクトル密度解析102A、102Bは、低周波脳電気活動に対する高周波脳電気活動の比105Cを含む値104A、104Bを提供してもよい。例えば、広汎性徐波化を確証するために、約2Hz、3Hzまたは4Hzの信号に対する約10Hzの信号の比を比較することができる。本明細書に記載のシステムおよび方法で使用するために、1つまたは複数の信号80A、80B内の1つまたは複数の帯域または窓を特定してもよい。
【0074】
[0112]特定の実装形態では、(ボックス106に示されている)検証ステップ73を行うことができる。このような実装形態では、分析に含めるかまたは除外するように区分化された信号窓(84A、84Bに概略的に示す)からの個別の読み取り値を比較するために、スペクトル密度102および/またはその他の未加工信号値104A、104Bを使用することができる。例えば、特定の実装形態では、訂正アルゴリズム108を実行することができる。一実装形態では、誤り訂正アルゴリズム108は任意によるいくつかのステップを行う。任意による1つのステップでは、ある窓内の特定の所定の誤り閾値を上回るかまたは下回る様々な値104A、104Bが廃棄される110。別の任意によるステップでは、IQRおよび/または密度比105Cが特定の所定近接度内である場合112、これらの窓信号は後述する集約および再結合116のために維持される。他の任意によるステップも可能である。
【0075】
[0113]これらの実装形態では、任意による追加の再結合ステップ116を行うことができる。再結合ステップ116では、検証ステップ73(ボックス106)の結果として除去されなかった窓84A、84Bを、それらの窓からの値104、104B、104A、104Bが広汎性徐波化閾値データ64として集約されるように結合することができる。
【0076】
[0114]広汎性徐波化閾値データ(図6の64に示す)を使用して、図9Aから図9Dにさらに示すように、広汎性徐波化または死亡閾値化ステップ74を行う。これらの実装形態では、集約された閾値データ64を、閾値モジュール56を使用して設定閾値65と比較することができる。様々な実装形態において、例えば図5Aから図5Dに関連してなど、本明細書で説明している他のデバイスおよびシステムのいずれかでグラフで提示することができる出力67を設定するために、電子医療記録などの他の供給源66からのデータも閾値65と比較することができる。そのような一実施例は、出力データ67の表示であり、出力データ67の表示は、最新測定値4と、傾向6と、品質8と、パワー75と、図9Aから図9Dに示すものなどのその他のグラフ表現とを含むことができる。
【0077】
[0115]図2Aから図3Dに示したように、死亡する可能性のある患者の脳波は「広汎性徐波化」、すなわちEEGからの電極、好ましくはすべての電極が緩徐化波形を示すことにより特徴づけられる場合がある。上述のように、脳波は様々な周波数および/または周波数帯を有し得る。広汎性徐波化は、緩徐化した波、より低い周波数の波が、EEG上の全部ではないにしてもほとんどの電極にわたって見られることを意味し得る。より高い周波の数に比較して遅い波の出現は、患者が死亡しているかまたは死亡の可能性が高いことを示す徴候である場合がある。広汎性徐波化を検出するためには2本のリード線(および接地線)で十分な場合があり、適切な信号処理およびユーザインターフェースにより、配置または解釈のために特別な専門知識を必要としない場合がある。
【0078】
[0116]特定の実施形態では、図9Aおよび図9Bに示すように、1つまたは複数の信号における高周波の数および/または1つまたは複数の信号における低周波の数であってもよい1つまたは複数の値104A、104Bに対してスペクトル密度解析102A、102Bが行われる。図9Aに示すように、出力データ67としての「高」周波および「低」周波の周波数およびその他の特性を判定するために、図8Aに関連して説明したステップによって各チャネル82A、82Bを分析することができる。様々な実装形態において、これらの表現を、このプロセスで上述したデータの様々な形態のいずれかとして使用することができ、デバイスディスプレイ16(図4Bに示す)に表示することができる。
【0079】
[0117]特定の実施形態では、値104A、104Bは、上述のステップのいずれかの一部として1つまたは複数の信号80A、80Bの全体にわたって計算してもよい。特定の実施形態では、値104A、104Bは、1つもしくは複数の信号のサブセットまたは1つもしくは複数の信号の時間のサブセットにわたって計算してもよい。例えば、1つまたは複数の信号の持続期間が5分である場合、値104A、104Bを、4分、3分、2分、1分、30秒など、5分未満の時間にわたって計算してもよい。したがって、1つまたは複数の値104A、104Bは、所定時間にわたる特徴104A、104Bおよび/または値104A、104Bであってもよい。特定の実施形態では、1つまたは複数の値104A、104Bは、一定期間の高周波の数および/または一定期間の低周波の数であってもよい。特定の実施形態では、1つまたは複数の値104A、104Bは、低周波の数に対する高周波の数の比であってもよい。特定の実施形態では、1つまたは複数の値104A、104Bは、一定期間の低周波の数に対する一定期間の高周波の数の比であってもよい。
【0080】
[0118]図8A図8Bおよび図9Aから図9Dに示すように、デバイス10、システム1および方法5の様々な実装形態において、広汎性徐波化または死亡判定ステップ(図7の74に示す)で、チャネルごとの高周波と低周波の比をプロットし、比較することができる。これらの実装形態では、閾値データ64に含まれる、1つもしくは複数の値もしくは特徴のうちの少なくとも1つ、または1つもしくは複数の値のうちの少なくとも1つに基づく尺度を、モジュール56によって設定広汎性徐波化閾値65と比較してもよい。特定の実施形態では、この比較に基づいて患者の死亡の続発の有無または可能性を判定してもよい。様々な実装形態において、信号ごとに周波数を経時的に比較し、その結果を分析する。以下で詳述するように、図9Aおよび図9Bは、それぞれのチャネルの一定時間にわたる未加工EEGチャネル信号を示す。図9Cおよび図9Dは、チャネルごとの結果のスペクトル密度解析102を示す。
【0081】
[0119]図10Aおよび図10Bに示すように、様々な実装形態において、システム1および方法5は、図6から図8に関連して説明したように様々なプログラムモジュール48などにより、サーバ/コンピューティングデバイス42および/またはプロセッサ44によって、一連の任意によるステップを実行するように構成される。図10Aおよび図10Bの実装形態では、システム1は、被験者からの未加工BSEEGスコアを記録するために(ボックス200)スクリーニングデバイス10が使用されるように構成される。これらおよびその他の実装形態では、出力された正規化BSEEG(NBSEEG)スコアをNBSEEG陽性(NBSEEG(+))またはNBSEEG陰性(NBSEEG(-))として定量化することができ、これを、本明細書で説明しているように死亡またはその他のネガティブな予後を予測するために使用することができる。
【0082】
[0120]様々な実装形態において、NBSEEGによって予後NBSEEGスコアを出力する(ボックス204)ために、NBSEEG(ボックス202)を(記録未加工BSEEGとBSEEG母平均との差)/(BSEEG母集団の標準偏差)によって計算する。予後NBSEEGは、NBSEEG陽性(NBSEEG(+))またはNBSEEG陰性(NBSEEG(-))などの分類として使用することができる。
【0083】
[0121]また、これらの予後NBSEEGスコアは、血圧または体温などの他のバイタルサインの場合のように、連続数として使用することができる。NBSEEG陽性(NBSEEG(+))またはNBSEEG陰性(NBSEEG(-))。
【0084】
[0122]添付の実施例において実験結果を示し、結論を示す。
【実施例1】
【0085】
スクリーニングデバイス評価
[0123]この実施例では、データセットの初期トレーニングセットは、せん妄の臨床的エビデンスまたはCAMエビデンスと相関する合計186の患者EEGサンプルを含んでいた。これらのサンプルは、5例の陽性症例と、179例の陰性症例と、データ品質が分析を行うには不十分であり、したがってさらなる検討から除外された2例の陰性症例とを表していた。
【0086】
[0124]この実施例では、当初、15Hzのローパスフィルタを使用したが、予備段階の結果が陽性症例と陰性症例との間のFFT周波数情報の不均一な減衰を示し、したがってこのローパスフィルタを除去した。
【0087】
[0125]処理サンプルの処理中、良好な結果を示すために4秒の窓で十分であることが観察された。また、この実施例では、例えば図9Aおよび図9Bに示すように500μVの閾値を使用して高振幅ピークを含む窓を除外した。
【0088】
[0126]図9Cおよび図9Dに、低周波:高周波比を設定するために強度(W/Hz単位)を各周波数(Hz単位)と比較することができる、チャネルのスペクトル密度を示す。このトレーニングセットでは、2Hz/10Hzの比または4Hz/10Hzの比に対して、3Hz/10Hzの比を使用することにより、好ましい予測結果が得られることが観察された。
【0089】
[0127]値、特徴および閾値。本明細書で使用する「値」および「特徴」という用語は交換可能な場合があり、数値、時間スケール、グラフ、またはその他のデータを問わず、未加工データと分析済みデータとを意図している場合がある。本明細書に記載されている実装形態のような様々な実装形態において、高周波の数などの値を閾値と比較してもよい。これに代えて、またはこれに加えて、2つ以上の値の比を閾値と比較してもよい。閾値は所定の値であってもよい。閾値は、個人からなる母集団からの情報など、せん妄の続発の有無または可能性に関する統計情報に基づいてもよい。特定の実施形態では、閾値は1人または複数の患者について予め決定されてもよい。特定の実施形態では、閾値はすべての患者について一貫した値であってもよい。特定の実施形態では、閾値は、現在の健康状態、年齢、性別、人種、病歴、その他の医学的条件など、患者の1つまたは複数の特性に固有であってもよい。特定の実施形態では、閾値は、患者の電子医療記録(EMR)における病理学的データに基づいて調整してもよい。
【0090】
[0128]特定の実施形態では、閾値は、低周波に対する高周波の比であってもよい。特定の実施形態では、閾値は、一定期間にわたる低周波に対する一定期間にわたる高周波の比であってもよい。本明細書の開示全体を通じて、この比を低周波に対する高周波の比と呼ぶが、この比は、比の形式がプロセス全体を通じて一貫している限り、高周波に対する低周波の比であってもよいことを理解されたい。例えば、比較は低周波に対する高周波の比の比較であってもよく、またはその逆、すなわち低周波/高周波であってもよい。
【0091】
[0129]1つまたは複数の特徴または値は予め決定されたものであってもよい。例えば、高周波である波の範囲を、設定値よりも高いものとして予め決定してもよい。同様に、低周波である波の範囲を、設定値未満であるものとして予め決定してもよい。設定値は、すべての患者について同じであってもよく、または特定の患者の特性に応じて変化してもよい。
【0092】
[0130]1つまたは複数の信号のその他の特徴または値を抽出してもよい。例えば、他の用途では信号対雑音比も判定してもよい。電気的活動の非生理的周波数を探すことによってデータ品質を評価してもよい。データ品質が受容可能なレベルを下回る場合にデータ収集および/または解釈を停止するように制限してもよい。
【0093】
[0131]デバイス特性および信号収集。本明細書に記載のシステムおよび方法は、簡易で便利で使いやすい、専用スクリーニングデバイス10と、システム1と、方法5とを提供することができる。特定の実施形態では、システムおよび方法は、エンドユーザ向けに簡略化された脳波図(EEG)技術を利用してもよい。システムおよび方法は、データを自動的に解釈し、患者によるせん妄のモニタリング、スクリーニングまたは続発に関して医療従事者にガイダンスを提供してもよい。従来、EEGデータは経験のある神経科医によって目視検査され、このプロセスの自動化は行われない。本明細書に記載の特定の実施形態では、自動化プロセスを作成するために、標準モニタリング装置、モバイルデバイス、クラウド技術などと連係するための選択肢があってもよい。
【0094】
[0132]本明細書に記載の特定の実施形態は、集中治療、術前および術後治療、高齢医学、養護施設、緊急治療室、外傷治療などであるがこれらには限定されない様々な医療領域で有用となり得る。モニタリング、スクリーニングまたは予測は、病院またはその他の医療の場にいる間の患者治療を向上させることができる。患者は、医療の場にいないときに患者の状態をリモートでモニタリングすることができるようにするために、パーソナルヘルスケアデバイスおよびモニタリングも使用してもよい。例えば、パーソナルヘルスケアデバイスが自宅または医療の場以外の他の場所にいる患者をモニタリングし、せん妄のモニタリング、スクリーニングまたは予測を提供してもよい。リモートセンシングおよび/または分析システムが、医療従事者によって使用されるシステムと連係してもよい。
【0095】
[0133]様々な実装形態で示すように、1つまたは複数のセンサ12を患者30と通信させてもよい。特定の実施形態では、1つまたは複数のセンサ12は、1つまたは複数のEEGリード線/電極などのEEGデバイスなどであるがこれには限定されない、1つまたは複数の脳センサであってもよい。本開示では、「リード線」という用語と「電極」という用語は交換可能に使用される。1つまたは複数の信号は、EEG信号であってもよい。EEG信号は、患者の脳のニューロン内のイオン電流によって生じる電圧変動を含み得る。特定の実施形態では、複数のセンサがあってもよい。特定の実施形態では、2つのEEG電極などの2つのセンサがあってもよい。従来の16または24の電極EEGシステムよりも少ない数の電極EEGシステムの使用により、せん妄の予測、スクリーニングまたはモニタリングのコストと複雑さを低減することができる。様々な実装形態において、2つ以上のリード線またはセンサが使用される。特定の実装形態では、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のセンサが使用される。さらなる実装形態では、11、12、13、14または15個のセンサが使用される。さらに他の実装形態では、15個を超えるセンサが使用される。様々な実装形態において、従来技術で示されているよりも少ない、配置が容易な最小限の数のEEGリード線が使用されてもよく、それによって、熟練したEEG技師および/または専門分科神経科医の必要がなくなり、および/または必要度が低くなる。様々な実装形態において、少なくとも1つの接地リード線が使用され、別の実装形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16個またはそれ以上の接地リード線など、複数の接地リード線が使用される。
【0096】
[0134]特定の実施形態では、1つまたは複数のセンサ12は非侵襲性であってもよい。特定の実施形態では、非侵襲性電極が患者の皮膚上に配置されてもよい。特定の実施形態では、最小限の2つの皮膚接触点、すなわちセンサと接地センサがあってもよい。センサを流れる外部電流がないという点で受動的なセンサがあってもよい。特定の実施形態では、電気的に能動的なセンサを使用してもよい。特定の実施形態では、1つまたは複数のセンサは、プリント回路を備えた接着パッチ、またはセンサを皮膚に結合する非接着ヘッドセットであってもよい。特定の実施形態では、1つまたは複数のセンサは、前頭部上および/または患者の耳のうちの1つまたは複数の後ろなど、患者の頭部上に配置されてもよい。特定の実施形態では、1つまたは複数のセンサが互いに接触しないように、1つまたは複数のセンサの間に最小限の離隔距離が設けられてもよい。
【0097】
[0135]特定の実施形態では、低侵襲性または侵襲性センサを使用してもよい。低侵襲性または侵襲性センサは、1つまたは複数の信号を、脳活動などの生理学的状態を示す標識として提供してもよい。
【0098】
[0136]1つまたは複数の信号は、必要であればアナログ信号からデジタル信号に変換されてもよい。変換は、1つまたは複数の信号が処理デバイスによって受信される前に、処理デバイスで、または別個のデバイスで行われてもよい。1つまたは複数の信号がデジタル信号として生成または受信される場合は、変換は不要な場合がある。
【0099】
[0137]1つまたは複数の信号は、患者の1つまたは複数の脳機能を示すことができる。特定の実施形態では、1つまたは複数の信号は、患者の脳波活動に関する情報を提供することができる。脳波は、患者について測定されてもよい。特定の実施形態では、脳波は、頭皮からの脳の電気的活動の記録とすることができるEEGによって行われてもよい。記録された波形は、皮質電気活動を反映することができる。特定の実施形態では、EEGの信号強度は小さくてもよく、マイクロボルト単位で測定されてもよい。従来、EEGを使用して検出可能ないくつかの周波数および/または周波数帯がある。高周波数と低周波数の定義は、患者母集団を含むがこれには限定されない様々な要因にきわめて大きく依存する場合がある。特定の実施形態では、高周波数と低周波数の定義は、患者母集団全体にわたって一貫していてもよい。特定の実施形態では、低周波は約7.5Hz未満、約7.0Hz未満、約6.5Hz未満、約5.5Hz未満、約5Hz未満、約4.5Hz未満、約4.0Hz未満、約3.5Hz未満、または約3.0Hz未満の波であってもよい。特定の実施形態では、高周波は、約7.5Hz超、約8.0超、約8.5Hz超、約9.0Hz超、約9.5Hz超、約10.0Hz超、約10.5Hz超、約11.0Hz超、約11.5Hz超、約12.0Hz超、約12.5Hz超、約13.0Hz超、または約14.0Hz超の波であってもよい。
【0100】
[0138]特定の実施形態では、1つまたは複数の信号は、リアルタイムまたはほぼリアルタイムのデータのストリームであってもよい。特定の実施形態では、1つまたは複数の信号は、処理および/または分析の前の一定期間に測定および/または記憶されてもよい。
【0101】
[0139]必須ではないが、システムおよび方法について、従来型サーバ/デスクトップ/ラップトップの形態を取ることができる1つまたは複数のコンピューティングデバイス、スマートフォンまたはタブレットなどのモバイルデバイス、ウェアラブルデバイス、医療デバイス、その他のヘルスケアシステムなどによって実行される、ソフトウェアおよび/またはコンピュータプログラム命令の一般的な文脈で説明する。コンピューティングデバイスは、コンピュータプログラムモジュールおよびデータのためのデータストレージに結合された1つまたは複数のプロセッサを含んでもよい。主要技術には、MicrosoftおよびLinux(登録商標)/Unix(登録商標)ベースのオペレーティングシステムの多業種標準、SQLサーバ、Oracle、NOSQLおよびDB2などのデータベース、SPSS、Cognos、SASなどのビジネス分析/インテリジェンスツール、Java(登録商標)、.NET Framework(VB.NET、ASP.NET、AJAX.NETなど)などの開発ツール、ならびにその他のeコマース製品、コンピュータ言語、および開発ツールが含まれるが、これらには限定されない。このようなプログラムモジュールは、特定のタスクを実行し、データ、データ構造体を使用し、および/または特定の抽象データタイプを実装するように、1つまたは複数のプロセッサによる実行のための、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネントなどのコンピュータプログラム命令を含む場合がある。上記の文脈ではシステム、方法および装置について説明しているが、以下に記載する行為および操作はハードウェアで実装することも可能である。
【実施例2】
【0102】
NBSEEG、せん妄および死亡
[0140]方法:これは、高齢患者の予後を評価するために高齢患者からバイスペクトルEEG(「BSEEG」)を測定するためのプロスペクティブ研究である。せん妄について評価した428人の被験者からの2938件のBSEEG記録の分布に基づいて、正規化BSEEG(「NBSEEG」)スコアを定義した。測定した主要予後は、病院滞在期間(「LOS」)、退院時の傾向、および死亡であった。
【0103】
[0141]結果:274人の患者が分析に利用可能なNBSEEGスコアデータを有していた。せん妄とNBSEEGスコアとは有意な関連性があった(P<0.001)。より高いNBSEEGスコアがLOS(P<0.001)および自宅以外の退院(P<0.01)と有意な相関があった。年齢、性別、チャールソン併存疾患指数、およびせん妄状態の生存コントロールの危険率は、1.35であった(95%信頼区間=1.04から1.76、P=0.025)。
【0104】
[0142]本明細書では、脳機能状態の客観的測定値を提供する効率的で信頼性の高いデバイスについて説明する。NBSEEGスコアは、患者の死亡、病院滞在期間、退院時の傾向の臨床予後と有意な関連がある。NBSEEGスコアは、実際に、臨床せん妄状態よりも死亡をよりよく予測する。本明細書に記載のデバイスおよびシステムの使用は、死亡リスクが高まったせん妄の臨床的特徴のない患者の、以前は認識されていなかった部分母集団の特定を可能にする。
【0105】
[0143]せん妄の電気生理学的信号特性は、しばしば「広汎性徐波化」として報告される。この用語は、ほとんどのチャネルの脳波が、周波数が低下した脳波であることを意味している。低周波の出現は、せん妄の発生の可能性を示している。すべてのチャネルが同じ周波数低下を検出することができるということは、関係データを得るのに少数のチャネルだけで十分であることを示唆している。BSEEGは、2つのチャネルのみを使用し、適切な信号分析アルゴリズムと組み合わせた場合、非熟練者によって容易に適用可能であり、したがってスクリーニング手段としての使用をきわめて容易にする。その客観性により、評定者間信頼性はBSEEGに影響を与えず、患者の予後により強く相関可能である。以下の実施例では、BSEEG値とNBSEEGスコアとが、死亡を含む、患者の予後を予測できるか否かの研究を示す。
【0106】
[0144]方法
[0145]研究デザインおよび管理。これは、患者治療に対するBSEEG手法の有用性を試験するものであり、このアルゴリズムによるNBSEEGスコアと患者予後との関連性を調べた。
【0107】
[0146]変数およびデータ源。せん妄の臨床症状の測定のために、CAM-ICUとDRS-R-98とせん妄観察スクリーニングスコア(「DOSS」)とを使用した。ベースライン認知機能の評価のために、モントリオール認知評価(MoCA)を使用した。被験者がその評価の依頼を拒絶しない限り、各被験者に毎日2回、CAM-ICUとDRS-R-98を実施した。DOSSを臨床看護職員が定期看護時に集計し、医療記録の審査により得た。せん妄を、いずれかの質問票スクリーニング陽性、すなわちCAM-ICU陽性、DRS-R-98≧18、DOSS>2、または、医療記録のせん妄と一致する精神状態変容もしくは錯乱の臨床文書に基づいて定義した。有資格相談リエゾン精神科医が主導する週1回の研究会議で各症例を検討した。
【0108】
[0147]BSEEGデータ収集。脳波記録のためにハンドヘルド2チャネルEEGデバイスを使用した。被験者がその評価の依頼を拒絶しない限り、毎日2回、未加工BSEEG値を収集した。図10に示すように、10分間の未加工BSEEG値を得るために、前頭部の中央の1つの電極を接地として、前頭部の左側と右側とに2つの電極を配置し、参照として耳朶の両側に2つの電極を配置した。10分間の持続期間は、スクリーニング試験の基本的特徴である、効率とスループットを犠牲にすることなく十分な量のEEGデータを収集することを可能にする時間の長さとして選定した。記録は、患者が、患者の臨床状態が許す限り覚醒し、意識がはっきりしているように、意識レベルが最高の状態である間に取得した。患者には目を閉じたままで、顎をリラックスさせ、できる限り静かにじっとしているように指示した。取得した未加工BSEEG値データをスペクトル密度プロットに変換し、信号処理アルゴリズムを使用して1つまたは複数の未加工BSEEG値を生成した。
【0109】
[0148]スペクトル密度解析およびNBSEEGスコア。各チャネルからの未加工EEG信号をパワースペクトル密度解析にかけて「高」周波成分と「低」周波成分の相対的存在を判定した。反復アプローチにより、高周波活動と低周波活動の相対的存在を反映するスコアを作成した。428人の対象患者すべてからの未加工BSEEG値の2938件の記録から、図11に示す平均値と標準偏差(SD)とを計算した。NBSEEGスコアは、対象母集団の平均からのSDの数として定義した。
【0110】
[0149]予後尺度。以下のように3つの患者予後を追跡し、測定した。すなわち、1)病院LOS、2)入院中の死亡を含む自宅以外への退院、3)研究結果時点での死亡である。LOS、退院予後および死亡状態を、各被験者の入院記録から取得した。死亡は、追跡調査電話による聞き取りと死亡記録によっても評価した。
【0111】
[0150]統計的方法および分析。本提案のNBSEEGスコアが、臨床せん妄と、病院LOS、自宅以外の退院、および死亡などの患者予後とにいかに関連しているかを明らかにするために、回帰分析を使用した。具体的には、せん妄と自宅以外の退院とをそれぞれ二値応答変数とみなしてロジスティック回帰を行うとともに、入院LOSとNBSEEGスコアとの関係を評価するために線形回帰を使用した。さらに、コックス比例ハザード回帰分析により死亡の危険率を計算した。回帰分析では、年齢、性別および重症度をコントロールした。NBSEEG陽性グループとNBSEEG陰性グループの2つのノンパラメトリック生存時間関数を比較することによって、死亡とNBSEEGスコアとの関連をさらに明らかにした。生存時間関数は、死亡数とその時点でのリスクのある合計個人数とから求められる一連のカプラン・マイヤー推定値である。2つの生存時間関数が異なるか否かを判定するためにログランク検定を行った。0.05以下の両側P値を、統計的有意性を示すものとみなした。すべての分析はRソフトウェアのバージョン3.4.3を使用して行った。
【0112】
[0151]結果
[0152]参加者、記述的データおよび予後データ。この研究には428人の患者が参加した。428人のうち337人の患者が55歳以上で、337人のうちの274人が分析に利用可能なNBSEEGスコアであった。質問票スクリーニングまたは臨床記述により、55歳以上のグループで患者の37.2%がせん妄状態と分類された。また、図12に示すように、以下の項で説明するような患者の予後を区別するための閾値に基づいて、対象母集団を独立して、脳波により多くの低周波成分があることを示すより高いNBSEEGスコアを有するNBSEEG陽性のグループと、脳波の低周波成分がより少ないことを示すより低いNBSEEGスコアを有するNBSEEG陰性のグループの2つのグループに分けた。その他の点では、これらのコホートは表1に示す全体的なベースライン特性に関してバランスがとられていた。
【0113】
[0153]NBSEEGスコアと臨床せん妄との関連。NBSEEGスコアと臨床せん妄との関連を立証するために、274人の被験者からのデータを分析した。ロジスティック回帰は、せん妄カテゴリとNBSEEGスコアとの有意な関連を示した(P=6.39×10-6、未調整;P=1.22×10-5、年齢、性別およびCCIに応じて調整)。
【0114】
[0154]NBSEEGスコアと患者予後:患者予後の予測におけるNBSEEGスコアの有用性を試験するために、発明人らは、55歳以上の274人の被験者から得られる予後データを使用して、研究参加時点で得られたNBSEEGスコアとせん妄によって一般に影響される患者予後との関連を調べた。具体的には、病院LOSと退院時の傾向と死亡とを評価した。
【0115】
[0155]第1に、LOSとNBSEEGスコアとは有意に関連性があった(P=0.00099、未調整;P=0.0014、年齢、性別およびCCIに応じて調整)。より高いNBSEEGスコアは患者のLOSの増加と一致する。
【0116】
[0156]第2に、退院予後とNBSEEGスコアとを比較した。自宅に退院した人と、入院中に死亡した人を含む自宅以外に退院した人とのNBSEEGを比較すると、より高いNBSEEGスコアが自宅以外への退院と有意に関連性があった(P=0.0038、年齢、性別およびCCIに応じて調整)。
【0117】
[0157]第3に、年齢、性別およびCCIについてコントロールして被験者の死亡率を分析し、NBSEEGスコアの1SD変化に基づく危険率は1.44であった(1.12から1.84、P=0.004)。年齢、性別およびCCIに加えて臨床せん妄状態についてのコントロール後であっても、NBSEEGスコアに基づくHRは1.35で有意なままであった(95%信頼区間=1.04から1.76、P=0.025)。
【0118】
[0158]数学的関連に加えて、NBSEEGスコアを患者の予後不良のリスクを評価するための潜在的に有用な尺度として分析した。上述のように対象母集団をNBSEEG陽性グループとNBSEEG陰性グループとに分けた。次に、発明人らのデータセット内の患者の研究期間の終了時点でのNBSEEGスコアと全死因死亡率とに基づいて、グループ間に相関があるか否かを判定するためにデータを評価した。第1に、せん妄の臨床分類が、せん妄と高死亡率との間の確立した関連を複製するのに十分に有効であるか否かを確認するために、対象参加者の全生存率を評価した。結果は、臨床せん妄のある患者とない患者とで死亡率に差があることを示した(P=0.0038)図13。第2に、NBSEEGカットオフスコアに基づいてグループ差を検査し、NBSEEG陽性グループがNBSEEG陰性グループに比べて悪い生存率を示すことを確認した(P=0.0032)(図13)。この分類は、LOSおよび退院時の傾向を含む他の予後も有意に区別した(表2)。
【0119】
[0159]NBSEEGスコアはせん妄の存在を計測するだけでなく、せん妄の重症度も表す。NBSEEGスコアに基づいて、被験者をNBSEEG高、NBSEEG中、およびNBSEEG低の3つのグループに分けた。生存曲線は、死亡率上昇とNBSEEGスコア上昇との「用量依存的」関係を示し(図14、P=0.005)、NBSEEGスコアと死亡率との強い関係を示唆した。
【0120】
[0160]臨床せん妄診断とBSEEGとに基づいてコホートを4つのグループに分けた。陽性NBSEEGスコアを有する臨床せん妄被験者は、最も高い死亡率を示した。それに対して、臨床せん妄と分類されたが陰性NBSEEGスコアを有する患者は、陰性NBSEEGスコアを有する非せん妄被験者と同様のより低い死亡率であった。また、臨床評価の結果に基づいて非せん妄被験者と考えられたが陽性のNBSEEGスコアを有する被験者は、臨床せん妄を有するが陰性のNBSEEGスコアの患者と比較しても死亡率がより高かった(図15)。
【0121】
[0161]考察 - 重要結果および解釈:NBSEEGスコアは、年齢、性別およびCCIについてコントロールした後であってもせん妄の臨床的存在と有意な関連があった。さらに重要なことに、NBSEEGスコアは、入院患者の病院LOS、退院時の傾向、および死亡を含む患者予後と強い相関があった。重要なことに、この関連は参加時、しばしば入院後24時間以内に得られたNBSEEGスコアに基づいていた。これらの結果は、入院開始時に得られた単一のNBSEEGスコアで患者の予後を予測することができることを示唆している。この結果は、せん妄であると臨床的に特定することができない患者の中で、NBSEEGによって検出された脳波活動の相違によって区別可能なサブセットが死亡のリスクが高いことを示している。この状態は、無症状脳機能不全(「SBF」)と分類することができる。したがって、NBSEEG法によるこの集団の特定は、結果として早期介入と生存率の潜在的改善につながる可能性がある。
【0122】
[0162]本明細書で開示しているデータは、非せん妄患者からのせん妄症例の区別と、高齢入院患者の病院LOS、退院時の傾向および死亡などの患者の予後の予測におけるNBSEEGスコアの有用性を実証している。
【0123】
[0163]このようなNBSEEGベースのバイオマーカは、早期介入を可能にし、せん妄のリスクのある患者のための現行の薬物治療および手術の実施を向上させる可能性がある。例えば、NBSEEG分析は、待機的手術を行う決定において重要なファクタとなる可能性があり、または手術後の厳重モニタリングに使用することができる。NBSEEG分析によって高リスク患者が特定された場合、病院資源を現行の標準治療と比較してより効率的かつ効果的に差配することが可能になる。
【0124】
[0164]NBSEEGモニタリングは、プライマリケア診療所、救急科などの付加的現場および養護施設または在宅療養現場でも適用可能である可能性がある。せん妄は、患者が病院外で直面すると、それを管理する認識と資源がないため特に危険である。この検査の簡易で非侵襲的な性質は、この検査を日常のスクリーニングにとって理想的なものにする。また、本明細書に記載のNBSEEG検査は適切な集団における死亡のリスクを評価するためのモニタリング手段として使用することができる。例えば、高齢化人口が急激に増大しつつあるため、NBSEEGは死亡リスクのスクリーニングのための効率的モダリティとして実装することができる。
【0125】
[0165]制約。前頭部への電極の配置が、使い勝手のよいスクリーニング方法として使用された。当然ながら、他のリード線配置形態も可能な場合がある。
[0166]一部の実装形態では、本明細書に記載のデバイスおよび方法は、ラメルテオンおよびスボレキサントなどの様々な治療法の効果を調査し、評価して、NBSEEGスコアおよび予後に対する特定の治療法/薬物の影響を判定するために使用することができる。したがって、本開示のデバイスおよび方法は、せん妄のよりよい治療法を提供し、調査するために使用可能であり、最終的には患者の予後を改善することができる。
【0126】
[0167]診療に対する意義。NBSEEGスコアリングと併用した非侵襲性のポイントオブケアEEG採取は、死亡を含む患者予後不良を予測することができる。重要なことに、現行の臨床的評価では患者を特定することができないが高い死亡リスクがある、特定の患者集団を特定することができる。
【実施例3】
【0127】
[0168]この実施例は、せん妄を定量的に特性評価し、転倒リスクおよび死亡を含む予後を予測するための2チャネル前頭EEG活動の使用を評価する。
[0169]方法
[0170]入院後または緊急治療室来診時に、患者から前頭EEG活動(Fp1およびFp2EEG位置)を収集した。せん妄の臨床的存在がないか被験者を評価し、主要な計測予後は、せん妄診断、退院時の傾向、死亡および転倒歴であった。両方のチャネルについてEEG特徴(帯域パワーおよび低-高周波数活動の異なる組合せ)を計算し、平均をとった。k最近傍法、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン(SVM)、カーネル化SVM、およびニューラルネットワーク手法を使用して、5分割交差検証でせん妄状態、生存率および転倒を予測するEEG特徴の性能を評価した。
【0128】
[0171]結果
[0172]274人の患者のEEG特徴および予後データが分析のために利用可能であった。ランダムフォレストを使用してEEGによる上位9つの予測特徴を選択した。これらのすべての分類方法のうち、カーネル化SVMが、せん妄状態、死亡および転倒についてそれぞれ69%、81%、89%の最高予測精度を示した。臨床的原因の変動からせん妄を客観的に測定するために前頭EEGを使用することができ、転倒リスクと死亡を含む関連臨床予後を予測することができた。
【0129】
[0173]頭部に2つのチャネルのみを配置-BSEEG-することにより、非熟練者がデバイスを適用することを可能にし、それによって専門の神経科医および技師の必要をなくし、この技術の大規模な浸透を可能にする。この実施例では、ポイントオブケア技術とともに本開示のBSEEG法を使用して患者予後(せん妄診断、死亡、転倒リスクおよび退院状態)を予測した。具体的には、限られた前頭部EEGリード線からのパワースペクトル密度解析により患者予後を予測することができる。
【0130】
[0174]方法
[0175]質問手段およびせん妄の定義。せん妄の臨床症状の測定のために、CAM-ICUとDRS-R-98とDOSSとを使用した。ベースライン認知機能の評価のために、MoCAを使用した。せん妄は、CAM-ICU陽性、DRS-R-98>18、DOSS>2などの質問スクリーニング陽性、または医療記録のせん妄と一致する精神状態変容もしくは錯乱の臨床文書に基づいて定義した。有資格心身医学精神科医が主導する週1回の研究会議で各症例を検討した。
【0131】
[0176]BSEEGデータ収集および処理手順。脳波記録のためにハンドヘルド2チャネルEEGデバイスを使用した。10分間のBSEEG信号を得るために、前頭部の中央に1つの電極を接地として配置し、前頭部の左側と右側とに2つの電極を配置し、参照として耳朶の両側に2つの電極を配置した。取得したBSEEGデータをスペクトル密度プロットに変換し、信号処理アルゴリズムを実行してEEG特徴を抽出した。
【0132】
[0177]EEG信号処理、分析および解釈。記録されたEEGデータをさらなる分析のために欧州データ形式で調査した。EEGデータの各チャネルを抽出し、その後、4秒の窓に分割し、次にそれを過剰ノイズがないかフィルタリングした。干渉のある区分化窓は、さらなる分析から除外した。高速フーリエ変換により残りの窓のパワースペクトル密度(PSD)を求め.すべての残りの窓のメジアンとして集約した。両方のチャネルのBSEEG特徴(帯域パワーおよび低-高周波数活動の異なる組合せ)を計算し、平均をとった。低-高周波数活動の様々なPSD比(PSDR)を使用して、ベースライン入院時にさらなる分析のための特徴を求めた。
【0133】
[0178]予後。患者予後を以下のように測定区分した。すなわち、1)せん妄診断、2)生存、3)入院中の死亡を含む自宅外への退院である。すべての予後を患者入院記録により取得した。死亡は、追跡調査電話による聞き取りと死亡記録によっても評価した。エンドポイント分類が、BSEEG特徴を知らない研究メンバーによって決定された。
【0134】
[0179]ランダムフォレストを使用した予測モデル:決定木の集合体に基づいて病状を予測することができるボルータアルゴリズムとともにランダムフォレスト(RF)を使用して、BSEEG特徴の予測力を評価した。RFを使用して、すべてのEEG特徴を入力として使用したEEGプロファイルに基づく予測モデルを作成した。予測モデルにおける各EEG特徴の相対重要度を、精度の平均低下とジニ係数を使用して評価した。
【0135】
[0180]分類アルゴリズム:せん妄状態とEEG特徴との関連の確定後、分類分析を使用して、死亡および転倒リスクなどの予後不良の発症がEEG信号と関連しているか否かを検査した。異なる種類の分類作業のためにEEGデータセットに様々な機械学習(ML)アルゴリズムを適用した。学習により作成された分類モデルを、せん妄、死亡、転倒および退院などの患者予後の予測のために直接使用した。機械学習階層では、分類作業は、教師なし学習作業とは異なり学習システムに利用可能なフィードバックがあることを意味する、教師あり学習作業に該当する。このフィードバックは、ゴールドスタンダード、トレーニングデータ、例示データまたはラベル付きデータとも呼ばれる。
【0136】
[0181]k最近傍法。k最近傍アルゴリズム(k-NN)はトレーニングデータを記憶する。新たなデータ点が入来すると、k-NNはトレーニングデータセット内でその新たなデータ点に最も近い、すなわち最近傍の点を見つける。ここで、kは考慮する最近傍点の数である。次に、k-NNは、k個の最近傍点のうちで多数決を使用して予測を行うことができる。k-NNアルゴリズムが学習のために取る唯一の入力パラメータはkである。発明人らのモデルでは、検査データセットで最高の予測精度を示すkを取得するために、kの値を1から10に調整した。k-NNアルゴリズムは、きわめてわかりやすく、大幅な調整なしに妥当なパフォーマンスを提供することが多い。その一方で、新たなデータ点とトレーニングデータセット内のすべてのデータ点との距離をリアルタイムで計算する必要があるため、大規模なトレーニングデータセットの場合は予測が低速である。また、多くの特徴のあるデータセットまたは疎なデータセットではパフォーマンスがよくない。これらの理由により、k-NNアルゴリズムは実際にはあまり頻繁に使用されず、その代わりに高度な技術を考慮する前に試行する好適なベースライン方法の役割を果たす。
【0137】
[0182]ロジスティック回帰。ロジスティック回帰アルゴリズムは、入力特徴変数の線形関数を使用して目標関数の予測を行う線形回帰アルゴリズムに基づく。2つのアルゴリズムの相違は、線形回帰アルゴリズムが連続数値に関する予測を行うのに対して、ロジスティック回帰アルゴリズムは事前定義されたクラスラベルに関する予測を行い、そのため分類作業に使用することができる点である。クラスラベルに関する予測を行うために、線形関数全体が、0と1との間の範囲のシグモイド関数と呼ばれる別の関数に入れられる。シグモイド関数が0.5より大きい場合はクラスを+1と予測し、0.5より小さい場合は、-1と予測する。ロジスティック回帰アルゴリズムは+1と-1とを返す二値分類アルゴリズムである。二値分類アルゴリズムを、複数のクラスを扱う分類作業に使用することができる多クラス分類アルゴリズムに拡張するために、1対全または1対その他などのいくつかの技術が提案されている。線形モデルはトレーニングと予測が高速である。これらの技術は、きわめて大きなデータセットに対応し、疎なデータでもうまく機能する。これらは、線形関数を使用して予測がどのようにして行われるかが比較的わかりやすい。一方、線形モデルは、その名が示す通り、目標変数が特徴変数の線形結合によって予測可能であるという強い前提に基づいており、現実世界の問題に適用するには弱過ぎる場合がある。
【0138】
[0183]サポートベクターマシン。サポートベクターマシンアルゴリズムまたはSVMは、大きなマージンの直観に基づく。言い換えると、2つのクラスの最大の離隔すなわちマージンを表す、最大マージンの厳密な線、面または超平面を見つけようとする。典型的には、決定境界の決定においてデータ点のサブセット、特に、サポートベクターと呼ばれるクラス間の境界上にあるデータ点のみが重要である。新たなデータ点のための予測を行うために、サポートベクターのそれぞれまでの距離が測定され、サポートベクターまでの距離と、トレーニング時に学習したサポートベクターの重みとに基づいて分類の決定が行われる。SVMアルゴリズムは高次元データの場合にうまく機能し、これは複雑な決定境界を引くことができることを意味する。この場合、データ点間の距離は、ガウスカーネルによって測定することができる。ガウスカーネル関数を使用するSVMアルゴリズムは、カーネル化SVMアルゴリズムと呼ばれる。発明人らが学習のために調整した2つのパラメータは、正則化のための誤差項のペナルティーパラメータと、カーネル係数またはガンマである。SVMアルゴリズムは様々なデータセットについてきわめてパフォーマンスがよく、これが最も一般的に使用されている分類アルゴリズムの1つとして知られている理由である。データセットにわずかな特徴しかない場合でも上述のように複雑な決定境界を可能にする。また、特徴が少ない低次元データと多くの特徴がある高次元データに対してもうまく機能する。一方、データのスケーリングとパラメータの設定に対してきわめて敏感である。場合によっては、このアルゴリズムによって特定の決定がなぜ行われたのかわかりにくいことがある。
【0139】
[0184]ニューラルネットワーク。ニューラルネットワークアルゴリズムは、動物の脳を構成する実際の生体神経回路網から着想を得たものである。このアルゴリズムは基本的に、決定に至るまでに複数段階の処理を行う線形モデルの一般化である。例えば、ロジスティック回帰モデルを、入力特徴ノードを有する入力層と目標ノードを有する出力層とからなる2層ニューラルネットワークとして表すことができる。次に、いくつかの隠れノードを有する新たな隠れ層を入力層と出力層との間に追加してモデルをより複雑にすることができる。モデルをより複雑にするように様々な隠れ層および隠れノードを追加することができる。初期重みはすべてランダムに設定され、したがってこのランダムな初期設定は学習されるモデルに影響を与え得る。発明人らは、検査データセットについて最高の予測精度を与えるランダム状態を取得するために、0から10の重みのランダム初期設定のためのランダム状態の値を調整した。ニューラルネットワークアルゴリズムは、大量のデータを含む情報を捕捉することができ、きわめて複雑なモデルを構築することができる。十分な計算時間とデータと、パラメータの入念な調整があれば、他の機械学習アルゴリズムよりもパフォーマンスが優れることが多い。一方、トレーニングには長い時間がかかることが多い。また、データの入念な前処理とパラメータの調整も必要とする。
【0140】
[0185]結果
[0186]ボルータアルゴリズムを使用して有意なBSEEG特徴を選択し、図16に示す予測におけるそれらの特徴の重要度について9つの属を確認した。予測モデルは、特定のBSEEG特徴、具体的には3対10HzPSD比、シータ対アルファパワー比、および5対10HzPSD比が、せん妄状態を予測していることを確認した。
【0141】
[0187]KNN、ロジスティック回帰、SVM、カーネル化SVMおよびニューラルネットワークアルゴリズムを使用して、せん妄診断、生存率、転倒および、入院中の死亡を含む自宅以外への退院の予後を予測した。すべての分析の結果を表3から表6に示す。
【0142】
[0188]考察
[0189]結果は、患者予後を予測するためのバイスペクトル密度解析(BSEEG法)を使用した簡易化携帯型自動EEGの有用性を示した。熟練したEEG技師によって患者の頭部全体に>20本のリード線が配置される必要がある従来のEEGと比較して、このシステムは前頭部に配置される少数のリード線しか必要とせず、したがって最小限のトレーニングしか必要としない。スクリーニングを最小の時間(すなわち数分)で行うことができ、さらに拡張モニタリングをより長い持続期間の記録によって動的にも行うことができる。著しい遅延を生じさせる、専門家によって解釈される従来のEEG読み取りと比較して、これは大きな利点である。BSEEGは、検査者による主観的な変動を生じやすい質問型の方法や、実施するのに広範囲のトレーニングと長い時間を必要とする精神状態検査などの現在実際に使用されている多くのスクリーニング方法の改良でもある。
【0143】
[0190]BSEEGによる連続モニタリングは、患者を3つ以上の異なる死亡レベルに分類することができる。神経科医が読み取る通常のEEGは、広汎性徐波化であるか正常であるかの患者の二分類しか行うことができない。実際に、BSEEGは死亡の予想を従来のEEGと同様にうまく行うことができる。
【0144】
[0191]BSEEGは、より少数の電極しか必要とせず、専門の神経科医による解釈を必要としないという点で改良型である。様々な実装形態において、BSEEGは連続測定値を提供することができ、それによって、従来のEEGおよび神経科医から得られるよりも死亡のリスクに関するより総合的で追加的な情報を提供することができる。
【0145】
[0192]本明細書に記載のBSEEGデバイスおよび方法は、さらに、せん妄に関連する患者予後を予測することも可能である。臨床診療では、この方法は患者の予後を予測するための付加的バイオマーカとして使用することができる。前頭部に電極を配置してもよく、一方、他のリード線配置も可能である。本明細書に記載の様々な実装形態において、EEGによって得られる特徴は、せん妄状態の予測における病院滞在期間などの従来の臨床的評価指標と同様の重要度であった(図16)。
【0146】
[0193]BSEEGは、せん妄症例と正常被験者とを区別するためと、高齢入院患者の死亡、転倒リスクおよび退院予後を含む患者予後を予測するのにも有用である可能性がある。BSEEGは、明らかな精神状態変化のある患者のみならず、より広い患者コホートにも使用することができる。
【0147】
[0194]BSEEGは、せん妄関連予後の早期介入および防止を可能にし、せん妄のリスクとしての患者の現行の医療活動を改良することができる。例えば、BSEEG分析によって高リスクの患者を特定された場合、病院資源を現行の標準治療と比較してより効率的かつ効果的に差配することができる。BSEEGモニタリングは、プライマリケア診療所、救急科および養護施設または在宅療養現場などの付加的現場でも適用可能な可能性がある。せん妄は、患者が病院外で直面すると、現場で利用可能な医学的配慮がないため特に危険である。本明細書に記載のデバイス、システムおよび方法は、日常のスクリーニングおよびモニタリングに使用してもよい。
【実施例4】
【0148】
[0195]NBSEEGによる1ヶ月の全死因死亡の予測。NBSEEGスコアは、せん妄を検出することができ、30日以下という早期に高齢患者の死亡を別個に予測することができる。NBSEEGスコアは、認知症患者の死亡を予測することができる。
【0149】
[0196]結果:複製コホート(N=228)と統合コホート(N=502)の両方において、NBSEEG陽性グループにおける180日後の死亡率は、NBSEEG陰性グループよりも高かった。その死亡率は両方のコホートで用量依存的上昇を示した。NBSEEG陽性グループの30日後の死亡率は、陰性のグループよりも有意に高かった(相対リスク=3.65%;95%CI、1.73から7.69;P<0.001)。認知症患者がNBSEEG陽性を示した場合、その死亡率は、60日後(相対リスク=3.00;95%CI、1.17から7.70;P=0.025)も90日後(相対リスク=3.80;95%CI、1.52から9.48;P=0.002)も、認知症があるがNBSEEG陰性の患者よりも有意に高かった。
【0150】
[0197]次のような質問法を使用してせん妄をスクリーニングした。すなわち、集中治療室用のCAM(CAM-ICU)、せん妄評価尺度改訂版98(DRS-R-98)、およびせん妄観察スクリーニングスケール(DOSS)である。せん妄状態は次のようなスクリーニングの結果に従って定義した。すなわち、CAM-ICU陽性、DRS-R-98スコア≧19、またはDOSSスコア≧3である。モントリオール認知評価(MoCA)を使用してベースライン認知機能を測定した。認知症をカルテ審査に基づいて記録した。せん妄および認知症状態は、最終的に有資格相談リエゾン精神科医によって測定と詳細なカルテ審査の結果を使用して判定された。
【0151】
[0198]NBSEEGデータを図10Aに示すもののような携帯型EEGデバイスを使用して収集した。
[0199]すべての統計分析を、Rを使用して行った。t検定を行って、せん妄と認知症、およびNBSEEGスコアの陽性と陰性について、症例と対照との間で連続データを比較した。ログランク検定を行って180日後の2つの生存時間関数を比較した。また、NBSEEGが死亡リスクをどれだけ早期に区別することができるかを調べるために、30日の時点でのNBSEEG陽性グループと陰性グループの両方の死亡率を比較した。さらに、NBSEEG陽性グループと陰性グループとの間で30日後の死亡の相対リスクを計算した。年齢、性別、およびチャールソン併存疾患指数(CCI)を調整する危険率を計算するために、コックス比例ハザード回帰分析を行った。0.05未満のp値を統計的有意として決定した。
【0152】
[0200]結果 - 死亡の予測におけるNBSEEGの有用性に関する複製。228人の被験者(複製コホート)からのデータの分析により、死亡の予測におけるNBSEEGの有用性を確認した。被験者の人口学的特性を表7に示す。年齢とCCIは、各対照グループと比較して、せん妄グループ、認知症グループおよびNBSEEG陽性グループの患者で有意により高かった(表7)。女性の割合は、対照グループと比較して認知症のある患者で有意に高かった(表7)。NBSEEG陽性グループの180日後の未調整死亡率は、NBSEEG陰性グループよりも高かった(図17A)。NBSEEGスコアに基づいて、患者をNBSEEG低、中および高の3つのカテゴリに、ほぼ等しいサンプルサイズになるように分けた場合、その死亡率はNBSEEGカテゴリに基づく用量依存的上昇を示した(図17B)。年齢、性別、CCIおよびせん妄で調整したコックス比例ハザードモデルの結果によると、NBSEEGは180日後の死亡率の有意な予測因子であることを示した(95%CI、1.33から6.00;P=0.007)(表8)。さらに、年齢とCCIは死亡の有意な予測因子であった(表8)。
【0153】
[0201]502人の分析被験者の人口学的特性を表9に示す。年齢とCCIは、各対照グループと比較してせん妄グループ、認知症グループおよびNBSEEG陽性グループの患者において有意により高かった(表9)。NBSEEG陽性グループの180日後の未調整死亡率は、NBSEEG陰性グループよりも高かった(図17C)。また、NBSEEGスコアに基づいて患者をNBSEEG低、中および高の3つのカテゴリに、ほぼ等しいサンプルサイズになるように分けた場合、その死亡率はNBSEEGカテゴリに基づくスコア依存上昇を示した(図17D)。年齢、性別、CCIおよびせん妄により調整したコックス比例ハザードモデルの結果によると、NBSEEGは180日後の死亡率の有意な予測因子であることを示した(95%CI、1.55から3.82;P<0.001)(表10)。年齢、せん妄状態およびCCIは、死亡の有意な予測因子であった(表10)。
【0154】
[0202]認知症ありと認知症なしの患者の死亡率の予測におけるBSEEGの有用性:認知症のある患者の死亡予測に対するNBSEEGの有用性を検査するために、502人の被験者を分析した。認知症のある患者がNBSEEG陽性を示した場合、その死亡率は認知症があるがNBSEEG陰性の患者よりも高かった(図18)。コックス比例ハザードモデルに認知症を共変量として加えた場合、BSEEGは180日後の死亡率の有意な予測因子を依然として示した(95%CI、1.55から3.82;P<0.001)(表11)。
【0155】
[0203]短期死亡予測におけるNBSEEGの有用性。NBSEEGが合計502人の被験者(発見コホートと複製コホート)のうちの死亡リスクをどれだけ早期に区別することができるかを検査するために、30日後、60日後、および90日後の死亡率を比較した。NBSEEG陽性グループの30日後の死亡率はNBSEEG陰性グループよりも有意に高かった(相対リスク=3.65;95%CI、1.73から7.69;P<0.001)(図19A)。同様に、NBSEEG陽性グループの60日後の死亡率はNBSEEG陰性グループよりも有意に高く(相対リスク=2.96;95%CI、1.74から5.03;p<0.001)(図19B)、NBSEEG陽性グループの90日後の死亡率も陰性グループと比較して有意に高かった(相対リスク=2.86;95%CI、1.78から4.60;p<0.001)(図19C)。
【0156】
[0204]合計502人の被験者(発見コホートおよび複製コホート)のうち、認知症ありと認知症なしの患者の差を示すために短期死亡率を分析した。NBSEEG陽性グループで認知症ありの60日後の死亡率はNBSEEG陰性グループよりも有意に高く(相対リスク=3.00;95%CI、1.17から7.70;p=0.025)、認知症なしよりも有意に高かった(相対リスク=2.78;95%CI、1.46から5.28;p<0.001)(図20)。同様に、NBSEEG陽性グループの認知症ありの90日後の死亡率はNBSEEG陰性のグループよりも有意に高く(相対リスク=3.80;95%CI、1.52から9.48;p=0.002)、認知症なしよりも有意に高かった(相対リスク=2.39;95%CI、1.35から4.22;p=0.003)(図20)。
【0157】
[0205]本研究は、複製研究を行うことによって独立コホートによる死亡予測におけるNBSEEGの有用性を示した。また、高いNBSEEGスコアを示した認知症ありの患者の死亡率は、認知症があるが陰性のNBSEEGスコアを有する患者よりも高かった。この結果は、NBSEEGスコアが認知症患者の死亡率を予測することができるという発明人らの仮説と一致していた。発明人らの知る限りでは、これは認知症患者の死亡率の予測におけるNBSEEGスコアの有用性を示した最初の研究である。
【0158】
[0206]NBSEEGは、独立コホートと増大サンプルサイズのコホートの死亡予測において有用であることが示された。また、NBSEEGスコアによる死亡率のスコア依存上昇が、前のコホートにおいて示されたように複製された。介入とケアプランとを最適化するために高齢患者における死亡を含む予後のリスクを評価することは重要であるため、以下に示すように、死亡のリスクを評価するための多くの測定基準が開発されている。例えば、CCIは併存疾患を評価することによって死亡を予測するために使用される。同様に、多次元予後指標(MPI)、エリックスハウザー併存疾患システム、および単一一般自己評価健康調査(GSRH)などの様々な測定基準が、死亡の予測のために使用されている。しかし、上記の測定基準には生物学的基礎の欠落という限界がある。上記の測定基準に加えて、NBSEEGスコアは、死亡の予測のために電気生理学的バイオマーカとして使用される可能性を有する。
【0159】
[0207]NBSEEGは、認知症患者についても死亡の予測のための有用性を有することが示された。この結果は、単にせん妄の臨床診断に依存するのではなく、NBSEEGスコアを使用することによって認知症患者の死亡を予測することができる可能性があることを示唆している。適切な介入はせん妄のある患者の予後を改善することができるが、認知症のある患者のせん妄の発見は難しいことがよく知られている。したがって、NBSEEG陽性の患者の発見に続いて迅速な介入を行うことで、認知症の有無にかかわらず、患者の予後が改善する可能性がある。
【0160】
[0208]重要なのは、NBSEEG陽性と陰性のグループには30日後であっても死亡率の有意な差があったことである。NBSEEG陽性では30日後に約8人に1人が死亡し、一方、NBSEEG陰性の場合は32人に1人であった。高齢患者の予後は死亡に直接関係する可能性があるため、高齢患者における短期予後を予測することは重要である。NBSEEGは、高齢患者の短期と長期の両方の死亡を予測するのに有用である可能性がある。また、NBSEEG陽性の短期死亡率と相対リスクは、認知症のない患者と比較して認知症のある患者の方が高い。NBSEEG陽性で認知症のある約3人に1人が90日後に死亡し、一方、NBSEEG陽性だが認知症がない場合は6人に1人であった。これらの結果は、NBSEEGが認知症のある患者の短期死亡を予測するのに有用である可能性を示している。
【0161】
[0209]NBSEEGスコアは、高齢患者一般の死亡、さらに認知症患者の死亡を、入院後30日という早期に予測することができる。
[0210]本開示について好ましい実施形態を参照しながら説明したが、当業者は、本開示の装置、システムおよび方法の精神および範囲から逸脱することなく形態および詳細に変更を加えることができることがわかるであろう。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
図1A
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】