(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(54)【発明の名称】バッテリー包装材料、その製作方法及び使用
(51)【国際特許分類】
H01M 50/124 20210101AFI20220711BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220711BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20220711BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20220711BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20220711BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20220711BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20220711BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20220711BHJP
H01M 10/659 20140101ALI20220711BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20220711BHJP
H01M 10/655 20140101ALI20220711BHJP
【FI】
H01M50/124
C08L101/00
C08K5/09
C08K5/101
C08K5/01
H01M50/121
H01M50/129
H01M50/131
H01M10/659
H01M10/658
H01M10/655
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566279
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 US2020031297
(87)【国際公開番号】W WO2020227201
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521138305
【氏名又は名称】ロジャーズ・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ウィリアム・ベイカー
【テーマコード(参考)】
4J002
5H011
5H031
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002AA021
4J002AE002
4J002AE032
4J002AF002
4J002BB001
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4J002BG051
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4J002BG131
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4J002CN021
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4J002GG02
4J002GQ01
5H011AA01
5H011AA02
5H011AA09
5H011AA10
5H011AA13
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5H011CC14
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5H011KK00
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5H031BB02
5H031BB03
5H031HH00
5H031HH03
5H031KK02
(57)【要約】
熱管理バッテリー包装材料は、相変化材料とポリマーとの組合せを含む相変化組成物を含む相変化層、及び相変化層の一面上に配置されたバッテリー包装層を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化材料とポリマーとの組合せを含む相変化組成物を含む相変化層;及び
相変化層の一面上に配置されたバッテリー包装層
を含む、熱管理バッテリー包装材料。
【請求項2】
前記バッテリー包装層とは反対側の相変化層の一面上に配置された保護ポリマー層を更に含む、請求項1に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項3】
前記相変化層の厚さが、5マイクロメートルから10ミリメートルである、請求項1又は2に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項4】
前記ポリマーが、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、スチレン-アクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、シリコーンゴム、環状オレフィンポリマー、フルオロポリマー、ポリアセタール、ポリ(C
1-6アルキル)アクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアンハイドライド、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリアリーレンケトン、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンスルホン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリ(C
1-6アルキル)メタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリオレフィン、ポリオキシメチレン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホンアミド、ポリスルホネート、ポリチオエステル、ポリトリアジン、ポリウレア、熱可塑性ポリウレタン、ビニルポリマー、アルキド、ビスマレイミドポリマー、ビスマレイミドトリアジンポリマー、シアネートエステルポリマー、ベンゾシクロブテンポリマー、ジアリルフタレートポリマー、エポキシ、ヒドロキシメチルフランポリマー、メラミン-ホルムアルデヒドポリマー、フェノール性ポリマー、ベンゾオキサジンポリマー、ポリジエン、ポリイソシアネート、ポリウレア、熱硬化性ポリウレタン、シリコーン、トリアリルシアヌレートポリマー、トリアリルイソシアヌレートポリマー、又はそれらの組合せを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項5】
前記相変化材料が、C10~C35アルカン、C10~C35脂肪酸、C10~C55脂肪酸エステル、植物油、又はそれらの組合せを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項6】
前記相変化材料が、カプセル化されていない第1の相変化材料を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項7】
前記相変化材料が、カプセル化された第1の相変化材料を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項8】
前記相変化材料が、カプセル化されていない第2の相変化材料を更に含み、第1の及び第2の相変化材料が、同じであるか又は異なることができ、好ましくは、前記相変化材料が、少なくとも80%のカプセル化された第1の相変化材料を含む、請求項7に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項9】
前記相変化組成物が添加組成物を更に含み、前記添加組成物が、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、伝導性充填剤、断熱充填剤、磁性充填剤、着色剤、又はそれらの組合せを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項10】
前記相変化組成物が、
2から40質量パーセントの前記ポリマー;
40から97質量パーセントの前記相変化材料;及び
存在する場合には、最高で60質量パーセントまでの添加組成物
を含み;
各質量パーセントは相変化組成物の合計質量に基づき、合計で100質量パーセントになる、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項11】
前記相変化組成物が5から70℃の転移温度を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項12】
前記相変化組成物が、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定により決定される、少なくとも120ジュール/グラムの転移温度での融解熱を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項13】
前記バッテリー包装層が、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、スチレン-アクリロニトリル、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、シリコーンゴム、ポリアミド、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンのコポリマー、フッ素化されたポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化されたエチレン-プロピレン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、又はそれらの組合せを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項14】
前記バッテリー包装層が熱収縮性ポリマーを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項15】
前記ポリマーの溶解度パラメーターが、前記相変化材料の溶解度パラメーターの±1以内である、請求項1から14のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項16】
前記相変化層の表面に配置された熱伝導性材料を更に含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料。
【請求項17】
前記相変化層と前記バッテリー包装層とを接触させる工程を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料を製作する方法。
【請求項18】
前記相変化材料及び前記ポリマー及び任意選択で添加物を組み合わせて、相変化組成物を形成させる工程;及び
前記相変化組成物から前記相変化層を形成させる工程
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記接触させる工程が、前記相変化層を前記バッテリー包装層上にコーティングする工程、前記バッテリー包装層を前記相変化層上にコーティングする工程、前記相変化層と前記バッテリー包装層とをラミネートする工程、前記相変化層と前記バッテリー包装層とを共押出しする工程、又は前記相変化層と前記バッテリー包装層とを接着剤で接着する工程を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記バッテリー包装層とは反対側の前記相変化層の表面を、熱伝導性材料と接触させる工程を更に含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
バッテリー;及び
請求項1から16のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料又は請求項17から20のいずれか一項に記載の方法により作製された熱管理バッテリー包装材料
を含む、物品。
【請求項22】
バッテリー構成要素;及び
請求項1から16のいずれか一項に記載の熱管理バッテリー包装材料又は請求項17から20のいずれか一項に記載の方法により作製された熱管理バッテリー包装材料
を含む、物品。
【請求項23】
前記バッテリー構成要素がバッテリーセルである、請求項22に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示されるものは、特にバッテリー包装に有用な多層、多機能性材料、及びその多層、多機能性材料を作製する方法及び使用する方法である。
【背景技術】
【0002】
包装は、動作のために最適化され、信頼性があり、かつ安全なバッテリーの設計における重要な技術的側面である。バッテリー包装のために望ましい特徴には、機械的安定性及び耐久性、密封性(例えば、リチウム-イオンバッテリーのための湿度に対する高い透過バリア)、高いパッキング効率、安全デバイスの装置(例えば、電流中断デバイス、バルブ等)との適合性、及び化学的不活性が含まれる。包装が低コストであり、及び製作が容易であれば、それは更なる利点であろう。コインセル及び円筒形のバッテリーは、典型的には金属又は合金ケーシング、例えば、ステンレス鋼、ニッケルメッキされた鋼、又はアルミニウム合金内に封じられている。円筒形セルのケーシングは、熱収縮性ポリマー等のポリマー系材料で包むことができる。角柱セルは、典型的には金属又は合金(例えば、ニッケルメッキされた鋼、鋼、又はアルミニウム合金)又はポリマー系材料 (例えば、ポリプロピレン)であることができるケーシング内に封じられていて、外側のポリマー系ラップを有していてもよい。パウチセルは、外部にポリマー層がある金属ラミネート袋(「パウチ」)内に封じられており;金属は一般的にアルミニウム又はアルミニウム合金であるが、銅、ステンレス鋼、又は金等の他の金属であることもできる。
【0003】
バッテリー包装(例えば、ラップ、スリーブ、又はパウチ)に使用するために利用可能な広範囲のポリマー系材料が知られているが、少なくとも1つの改善された特性、及び好ましくは改善された特定の組合せを有する材料を求める当技術分野における必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,911,923号
【特許文献2】米国特許第6,703,127号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示されるものは、熱管理バッテリー包装材料、及び熱管理バッテリー包装材料を作製する方法である。
【0006】
熱管理バッテリー包装材料は、相変化材料とポリマーとの組合せを含んだ相変化組成物を含む相変化層と、相変化層の一面上に配置されたバッテリー包装層とを含む。
【0007】
熱管理バッテリー包装材料を製作する方法は、相変化層とバッテリー包装層とを接触させることを含む。
【0008】
バッテリー又はバッテリー構成要素及び熱管理バッテリー包装材料を含む物品も開示される。
【0009】
上の記載及び他の特徴は、以下の図、詳細な説明、及び請求項によって実例で示される。
【0010】
以下の図は、本開示を例示するために提供される典型的実施形態である。図は例示であり、本明細書で説明される材料、条件、又はプロセスパラメーターの開示により作製される物品又はデバイスを限定することは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】典型的熱管理バッテリー包装材料を示す模式図である。
【
図2】典型的熱管理バッテリー包装材料の模式的例示である。
【
図3】先行技術の材料で包装された対照円筒形のバッテリー及び実例例1の熱管理バッテリー包装材料で包装された円筒形のバッテリーの放出試験における、容量(mAh)の関数としての電圧又は温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上で記述したように、種々なバッテリー包装材料が当技術分野において公知である。しかしながら、そのような材料は、熱管理性も有するように、即ち、バッテリーの加熱及び冷却を提供するようにデザインされてはいない。バッテリーにおける過熱は、増大したセルの内部抵抗を生じさせ得、バッテリーのサイクル寿命を低下させ得、安全上のトラブル、例えば、熱暴走を起こす可能性がある。効果的な熱管理は、バッテリーの急速充電及び放電中に特に有用であろう。
【0013】
用語「バッテリー」は、必要とされる動作電圧及び電流を提供するために電気的に接続される1種又は複数の電気化学的セルを指す。「バッテリーセル」は、単一の電気化学的セルを指す。
【0014】
本明細書は、多層、多機能性熱管理バッテリー包装材料を開示する。熱管理バッテリー包装材料は、容易に製作されて、個々のバッテリーセル又は複数のセルを含むバッテリーのための包装材料として容易に使用され得る。有利には、熱管理バッテリー包装材料は、バッテリー包装材料の望ましい特性(機械的安定性及び耐久性、密封性、高い包装効率、安全デバイスの装置との適合性、及び化学的不活性)と熱管理能力とを組み合わせることができる。多層、多機能性熱管理バッテリー包装材料は、容易に管理可能であり、良好な断熱性を有し、セルの加熱を最小化する優秀な吸熱性を有する。
【0015】
熱管理バッテリー包装材料は、相変化組成物を含む相変化層及び相変化層の一面上に配置されたバッテリー包装層を含む。相変化組成物は、ポリマーと相変化材料との組合せを含み、好ましくは、相変化材料が、ポリマー中に均一に分散されている。任意選択で、相変化組成物は、添加組成物を更に含む。相変化材料及びポリマーは、選択された相転移温度における機械的特性と高い融解熱との良好な組合せを有する相変化組成物を提供するように各々選択される。
【0016】
バッテリー包装層は、所望のセル又はバッテリーのための適切な包装を提供するように選択されたポリマー、金属、又は合金を含む。バッテリー包装層のために適切な金属及び合金の例は、ステンレス鋼、ニッケルメッキされた鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、金フォイル、又はそれらの合金、例えば、ニッケル銅、クロムニッケル鋼、アルミニウム鉄、及びニッケルクロム鉄合金等を含む。バッテリー包装層のために適切なポリマー材料の例は、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)、ポリエステル、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びポリエチレンテレフタレート(PET)等、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ある種のシリコーンゴム、ポリアミド例えばPA6等、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリエチレン若しくはポリプロピレンのコポリマー等、及びフッ素化されたポリオレフィン、例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びフッ素化されたエチレン-プロピレン(FEP)等、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等、及びそれらの組合せを含む。ある実施形態では、バッテリー包装層は、熱収縮性ポリマーを含む。典型的な熱収縮性ポリマーは、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ある種のシリコーンゴム、ポリオレフィン、及びフッ素化ポリオレフィン、例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びフッ素化エチレン-プロピレン(FEP)等を含む。
【0017】
図1は、典型的熱管理バッテリー包装材料(10)を示す模式図である。
図1に示したように、バッテリー包装層(12)は、相変化層(16)の上に配置される。別の層、例えば、熱伝導層(
図1に示さず)は、相変化層(16)の一面上に、例えば、バッテリー包装層の反対側に、任意選択で存在することができる。本明細書において使用する「層」は、例えば、バッテリーセルに適合するバッテリー中で使用するために適切な種々の3次元配置、又はモジュール配置を含むことが理解されるべきである。したがって、層は、任意の適切な厚さであることができるか、又は厚さが変化することができる。特定の実施形態及び層の形態を下でより詳細に記載する。本明細書において使用する「の上に配置された」とは、層同士が直接接触することができるか、又は介在層、例えば、接着剤層又は下記で更に詳細に説明する他の介在層が存在し得ることを意味する。
【0018】
相変化材料(PCM)は、高い融解熱を有し、高量の潜熱を融解及び固化等の、それぞれの相転移中に吸収及び放出することができる物質である。相変化中には、相変化材料の温度は、ほとんど一定に留まる。相変化材料は、相変化材料が熱を吸収又は放出しつつある時間中、典型的には材料の相変化中に材料を通る熱エネルギーの流動を阻害するか又は停止させる。幾つかの事例で、相変化材料は、相変化材料が熱を吸収又は放出している期間、典型的には、相変化材料が2つの状態間の転移を経る期間中の熱移動を阻害することができる。この作用は、典型的には一過性であり、相変化材料の潜熱が加熱又は冷却過程中に吸収又は放出されるまで起こるであろう。熱は貯蔵され得るか又は相変化材料から除去され得て、相変化材料は、典型的には、熱又は冷気の供給源により効果的に再充填され得る。
【0019】
従って、相変化材料は、特徴的な転移温度を有する。用語「転移温度」又は「相変化温度」とは、材料が2つの状態間の転移を経るおよその温度を指す。幾つかの実施形態において、例えば、混合された組成物の市販のパラフィンワックスでは、転移温度は、相転移が起こる温度範囲であることができる。原則として、相変化組成物において-100から150℃の転移温度を有する相変化材料を使用することが可能であり、又は、相変化材料は、-5から150℃、若しくは0から90℃、若しくは30から70℃、若しくは35から50℃の転移温度を有することができる。相変化材料の選択は、特定の適用のために望まれる転移温度に依存し得る。発光ダイオード及電子部品バッテリーで使用されるために、例えば、相変化材料は、0から115℃、10から105℃、20から100℃、又は30から95℃の転移温度を有することができる。一実施形態において、相変化材料は、25から105℃、又は28から60℃、又は45から85℃、又は60から80℃、又は80から100℃の転移温度を有する。正常体温の付近又はおよそ37℃の転移温度を有する相変化材料は、使用者の傷害を防止するため及び過熱成分を保護するために、エレクトロニクス用途にとって望ましい場合がある。他の用途では、例えば、電動車のためのバッテリーでは、65℃以上の転移温度が望ましい場合がある。そのような用途のための相変化材料は、45から85℃、又は60から80℃、又は80から100℃の範囲内に転移温度を有することができる。
【0020】
転移温度は、相変化材料の純度、それらの分子構造、相変化材料のブレンド、又は任意のそれらの組合せを改変することにより拡げるか又は狭めることができる。2つ以上の異なる相変化材料を選択して組合せを形成させることにより、相変化材料の温度安定化範囲を任意の所望の用途のために調節することができる。温度安定化範囲は、特定の転移温度又は転移温度の範囲を含むことができる。生じる組合せは、本明細書に記載された相変化組成物に組み込まれたときに、2つ以上の異なる転移温度又は単一の改変された転移温度を示すことができる。
【0021】
幾つかの実施形態において、複数の又は広い転移温度を有することは有利であり得る。単一の狭い転移温度が使用されるならば、これにより、転移温度に到達する前に熱/エネルギーの蓄積が引き起こされ得る。転移温度に到達すると、次にエネルギーは、潜在エネルギーが消費されるまで吸収され、次に温度は上昇し続けるであろう。広い又は複数の転移温度は、温度が上昇し始めるやいなや、温度調節及び熱吸収を可能にして、それにより任意の熱/エネルギーの蓄積を緩和する。複数の又は広い転移温度は、重なり合う又は互い違いの熱吸収により構成要素から熱を逃がすことをより効率的に助けることもできる。例えば、35から40℃で吸収する第1の相変化材料(PCM1)及び38から45℃で吸収する第2の相変化材料(PCM2)を含有する組成物について、PCM1は、吸収を開始して大部分の潜熱が使用されるまで温度を制御して、その時PCM2は吸収を開始してPCM1からエネルギーを運び、それによりPCM1を再活性化して、それが機能することを保つことを可能にするであろう。
【0022】
相変化材料の選択は、相変化材料の潜熱にも依存し得る。相変化材料の潜熱は、典型的には、エネルギー/熱を吸収し放出するか又は物品の熱移動の特性を改変するその能力と相関する。幾つかの事例で、相変化材料は、少なくとも80ジュール/グラム(J/g)、又は少なくとも100J/g、又は少なくとも120J/g、又は少なくとも140J/g、又は少なくとも150J/g、又は少なくとも170J/g、又は少なくとも180J/g、又は少なくとも185J/g、又は少なくとも190J/g、又は少なくとも200J/g、又は少なくとも220J/gである潜在的融解熱を有することができる。したがって、例えば、相変化材料は、20J/gから400J/g、例えば、80J/gから400J/g、又は100J/gから400J/g、又は150J/gから400J/g、又は170J/gから400J/g、又は190J/gから400J/g等の融解潜熱を有することができる。
【0023】
ASTM D3418に従って示差走査熱量測定により決定される相変化材料の融解熱は、150ジュール/グラムを超え、好ましくは180ジュール/グラムを超え、より好ましくは210ジュール/グラムを超えることができる。
【0024】
相変化材料は、カプセル化されていないか(「粗」)又はカプセル化されていていよい。相変化材料のカプセル化は、相変化材料のためのコンテナを本質的に創り出して、その結果、相変化材料が固体状態であるか又は液体状態であるかに関わらず、相変化材料を包み込む。相変化材料等の材料をカプセル化するための方法は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許第5,911,923号及び第6,703,127号を参照されたい)。マイクロカプセル化された及びマクロカプセル化された相変化材料も、市販で入手できる(例えば、Microtek Laboratories, Inc.社から)。マクロカプセルは、1000から10,000マイクロメートルの平均粒径を有するが、それに対して、マイクロカプセルは、1000マイクロメートル未満の平均粒径を有する。カプセル化された相変化材料はマイクロカプセル中にカプセル化され得て、該マイクロカプセルの平均粒径は、1から100マイクロメートル、又は2から50マイクロメートル、又は5から40マイクロメートルであることができる。ここで、平均粒径は、例えば、Malvern Mastersizer 2000 Particle Analyzer、又は等価の機器を使用して決定される体積加重平均粒径である。
【0025】
広範囲の相変化材料が公知であり、使用可能であり、種々の有機及び無機物質を含む。相変化材料の例には、炭化水素(例えば、直鎖アルカン又はパラフィン系炭化水素、分岐鎖アルカン、不飽和炭化水素、ハロゲン化された炭化水素、及び脂環式炭化水素)、シリコーンワックス、フッ素化されたワックス、アルカン、アルケン、アルキン、アレン、水和塩(例えば、塩化カルシウム六水和物、臭化カルシウム六水和物、硝酸マグネシウム六水和物、硝酸リチウム三水和物、フッ化カリウム四水和物、アンモニウムミョウバン、塩化マグネシウム六水和物、炭酸ナトリウム十水和物、リン酸二ナトリウム十二水和物、硫酸ナトリウム十水和物、及び酢酸ナトリウム三水和物)、ワックス、油、水、飽和及び不飽和脂肪酸、例えば、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸等)、脂肪酸エステル(例えば、脂肪酸C1-4アルキルエステル、例えば、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、アラキジン酸メチル、ベヘン酸メチル、リグノセリン酸メチル等)、脂肪アルコール(例えば、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、リグノセリルアルコール、セリルアルコール、モンタニルアルコール、ミリシルアルコール、及びゲッジルアルコール等)、二塩基性酸、二塩基性エステル、1-ハロゲン化物、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコール、芳香族化合物、クラスレート、半クラスレート、ガスクラスレート、酸無水物(例えば、ステアリン酸無水物)、エチレンカーボネート、メチルエステル、多価アルコール(例えば、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、ペンタグリセリン、テトラメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、テトラメチロールプロパン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、モノアミノペンタエリトリトール、ジアミノペンタエリトリトール、及びトリス(ヒドロキシメチル)酢酸)、糖アルコール(エリトリトール、D-マンニトール、ガラクチトール、キシリトール、D-ソルビトール)、ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンマロン酸塩、ポリネオペンチルグリコールセバケート、ポリペンタングルタレート、ポリビニルミリステート、ポリビニルステアレート、ポリビニルラウレート、ポリヘキサデシルメタクリレート、ポリオクタデシルメタクリレート、グリコール(又はそれらの誘導体)と二酸(又はそれらの誘導体)との重縮合により生成されるポリエステル、及びコポリマー、例えば、アルキル炭化水素側鎖又はポリエチレングリコール側鎖を有するポリアクリレート又はポリ(メタ)アクリレート等、及びポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコール)、金属を含むコポリマー、及びそれらの組合せが含まれる。種々の植物油、例えば、ダイズ油、パーム油等が使用され得る。そのような油は、精製されるか又は他の方法で処理されて、相変化材料として使用するために適切なものにすることができる。一実施形態において、相変化組成物で使用される相変化材料は有機物質である。
【0026】
パラフィン系相変化材料は、パラフィン系炭化水素、即ち、式CnHn+2により表される炭化水素であることができて、式中nが10から44個の範囲の炭素原子であることができる。相同性シリーズのパラフィン炭化水素の融点及び融解熱は、炭素原子の数に直接関係する。同様に、脂肪酸の融点は鎖長に依存する。
【0027】
一実施形態において、相変化材料は、15から40個の炭素原子、18から35個の炭素原子、又は18から28個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素、脂肪酸、又は脂肪酸エステルを含むことができる。相変化材料は、単一のパラフィン系炭化水素、脂肪酸、又は脂肪酸エステル、又は炭化水素、脂肪酸、及び/又は脂肪酸エステルの組合せであることができる。好ましい実施形態では、相変化材料は、5から70℃、25から65℃、35から60℃、又は30から50℃の転移温度を有する。
【0028】
相変化組成物は、ポリマーを更に含む。本明細書において使用する「ポリマー」は、オリゴマー、イオノマー、デンドリマー、ホモポリマー、及びコポリマー(グラフトコポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等(例えば、星状ブロックコポリマー)、ランダムコポリマー等を含む。ポリマーは、単一のポリマー又はポリマーの組合せであることができる。ポリマーの組合せは、例えば、異なる化学組成、異なる質量平均分子量、又はそれらの組合せを有する2種以上のポリマーのブレンドであることができる。ポリマー又はポリマーの組合せの注意深い選択により相変化組成物の特性の調整が可能になる。
【0029】
広範囲のポリマーが、相変化材料及び相変化組成物の他の所望の特性に依存して使用され得る。ポリマーは熱硬化性又は熱可塑性であることができる。一般的に熱硬化性とみなされる典型的ポリマーは、アルキッド、ビスマレイミドポリマー、ビスマレイミドトリアジンポリマー、シアン酸エステルポリマー、ベンゾシクロブテンポリマー、ベンゾオキサジンポリマー、フタル酸ジアリルポリマー、エポキシ類、ヒドロキシメチルフランポリマー、メラミン-ホルムアルデヒドポリマー、フェノール樹脂(ノボラック及びレゾール等のフェノール-ホルムアルデヒドポリマーを含む)、ポリブタジエン等のポリジエン(それらのホモポリマー及びコポリマー、例えばポリ(ブタジエン-イソプレン)を含む)、ポリイソシアネート、ポリウレア、ポリウレタン、トリアリルシアヌレートポリマー、トリアリルイソシアヌレートポリマー、ある種のシリコーン、及び重合性プレポリマー(例えば、不飽和ポリエステル、ポリイミド等のエチレン性不飽和を有するプレポリマー)等を含む。プレポリマーは、例えば、反応性モノマー、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、アクリル酸、(メタ)アクリル系酸、(C1-6アルキル)アクリレート、(C1-6アルキル)メタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、酢酸アリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、又はアクリルアミド等と重合、共重合、又はそれらで架橋することができる。プレポリマーの分子量は平均で400から10,000ダルトンであることができる。
【0030】
一般的に熱可塑性とみなされる典型的ポリマーは、環状オレフィンポリマー(ポリノルボルネン及びノルボルネニルユニットを含有するコポリマー、例えば、ノルボルネン等の環状ポリマー及びエチレン又はプロピレン等の非環式オレフィンのコポリマーを含む)、フルオロポリマー(例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化されたエチレン-プロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-テトラフルオロエチレン(PETFE)、ペルフルオロアルコキシ(PFA))、ポリアセタール(例えば、ポリオキシエチレン及びポリオキシメチレン)、ポリ(C1-6アルキル)アクリレート、ポリアクリルアミド(非置換及びモノN-及びジ-N-(C1-8アルキル)アクリルアミドを含む)、ポリアクリロニトリル、ポリアミド(例えば、脂肪族ポリアミド、ポリフタルアミド、及びポリアラミド)、ポリアミドイミド、ポリ酸無水物、ポリアリーレンエーテル(例えば、ポリフェニレンエーテル)、ポリアリーレンエーテルケトン(例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリエーテルケトンケトン(PEKK))、ポリアリーレンケトン、ポリアリーレンスルフィド(例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS))、ポリアリーレンスルホン(例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルホン(PPS)等)、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリカーボネート(ホモポリカーボネート及びポリカーボネートコポリマー、例えば、ポリカーボネート-シロキサン、ポリカーボネート-エステル、及びポリカーボネート-エステル-シロキサン等を含む)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリーレート、及びポリエステルコポリマー、例えば、ポリエステル-エーテル等)、ポリエーテルイミド(ポリエーテルイミド-シロキサンコポリマー等のコポリマーを含む)、ポリイミド(ポリイミド-シロキサンコポリマー等のコポリマーを含む)、ポリ(C1-6アルキル)メタクリレート、ポリメタクリルアミド(非置換及びモノN-及びジ-N-(C1-8アルキル)アクリルアミドを含む)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらのハロゲン化誘導体(ポリテトラフルオロエチレン等)、及びそれらのコポリマー、例えば、エチレン-α-オレフィンコポリマー)、ポリオキサジアゾール、ポリオキシメチレン、ポリフタリド、ポリシラザン、ポリシロキサン(シリコーン)、ポリスチレン(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)及びメチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)等のコポリマーを含む)、ポリスルフィド、ポリスルホンアミド、ポリスルホネート、ポリスルホン、例えばポリエーテルスルホン等、ポリチオエステル、ポリトリアジン、ポリウレア、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ビニルポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポリハロゲン化ビニル(例えば、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニルを含む)、ポリビニルケトン、ポリビニルニトリル、ポリビニルチオエーテル、及びポリフッ化ビニリデン)等を含む。前述のポリマーの少なくとも1種を含む組合せが使用され得る。
【0031】
好ましいタイプのポリマークラスは、任意選択で架橋され得るエラストマーである。幾つかの実施形態において、架橋した(即ち、硬化した)エラストマーの使用は、比較的高温における組成物の流動性を低下させる。適切なエラストマーは、弾性体のランダム、グラフト、又はブロックコポリマーであることができる。例には、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ポリジシクロペンタジエンゴム、フルオロエラストマー、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-ブテンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM、又はエチレンプロピレンジエンターポリマー)、アクリレートゴム、水素化されたニトリルゴム(HNBR)、シリコーンエラストマー、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-(エチレン-ブテン)-スチレン(SEBS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン(AES)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-(エチレン-プロピレン)-スチレン(SEPS)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)、高ゴムグラフト(HRG)等が含まれる。
【0032】
弾性体のブロックコポリマーは、アルケニル芳香族化合物から誘導されたブロック(A)及びコンジュゲートジエンから誘導されたブロック(B)を含む。ブロック(A)及び(B)の配列は、直鎖状及び分岐鎖を有する半径方向のテレブロック構造を含むグラフト構造を含む。直鎖状構造の例は、ジブロック(A-B)、トリブロック(A-B-A又はB-A-B)、テトラブロック(A-B-A-B)、及びペンタブロック(A-B-A-B-A又はB-A-B-A-B)構造並びにA及びBの合計で6個以上のブロックを含有する直鎖状構造を含む。特定のブロックコポリマーは、ジブロック、トリブロック、及びテトラブロック構造、及び特にA-Bジブロック及びA-B-Aトリブロック構造を含む。幾つかの実施形態において、エラストマーは、ポリスチレンブロック及びゴムブロックからなるスチレン系ブロックコポリマー(SBC)である。ゴムブロックは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、それらの水素化された等価物、又はそれらの組合せであることができる。スチレン系ブロックコポリマーの例は、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、例えばKraton D SBSポリマー(Kraton Performance Polymers, Inc.社);スチレン-エチレン/プロピレンブロックコポリマー、例えば、Kraton G SEPS(Kraton Performance Polymers, Inc.社)又はスチレン-エチレン/ブタジエンブロックコポリマー、例えば、Kraton G SEBS(Kraton Performance Polymers, Inc.社);及びスチレン-イソプレンブロックコポリマー、例えば、Kraton D SISポリマー(Kraton Performance Polymers, Inc.社)を含む。一実施形態において、ポリマーは、スチレン-エチレン/プロピレンブロックコポリマー、例えば、Kraton G 1642である。他の実施形態において、ポリマーは、スチレンブタジエンブロックコポリマー、例えばKraton D 1118である。
【0033】
一実施形態において、ポリマーは、Kraton G SEBS又はSEPS、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、ポリブタジエン、EPDM、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、熱可塑性ポリウレタン、環状オレフィンコポリマー、ポリジシクロペンタジエンゴム、又はそれらの組合せである。
【0034】
好ましくは、ポリマーは、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンのコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化されたエチレン-プロピレン(FEP)、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー、ポリブタジエン、イソプレン、ポリブタジエン-イソプレンコポリマー、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、環状オレフィンコポリマー、ポリジシクロペンタジエンゴム、熱可塑性ポリウレタン、又はそれらの組合せを含むことができる。
【0035】
相変化組成物中における相変化材料の量は、使用される材料のタイプ、所望の転移温度、使用されるポリマーのタイプ、及び同様の考慮に依存する。相変化材料の量は、相変化組成物の合計質量に基づいて、20から98質量パーセント、又は40から97質量パーセント、又は50から96質量パーセント、又は50から95質量パーセント、又は40から95質量パーセント、又は50から90質量パーセント、又は60から85質量パーセント、又は75から85質量パーセントであることができる。
【0036】
相変化材料は、カプセル化された第1の相変化材料及びカプセル化されていない第2の相変化材料の組合せを含むことができる。第1の及び第2の相変化材料は、同じである又は異なることができる。該相変化材料は、相変化組合せの合計質量に基づいて50質量パーセントから100質量パーセントのカプセル化された第1の相変化材料及び0から50質量パーセントのカプセル化されていない第2の相変化材料;相変化組合せの合計質量に基づいて、80質量パーセントから100質量パーセントのカプセル化された第1の相変化材料及び0質量パーセントから20質量パーセントのカプセル化されていない第2の相変化材料;又は相変化組合せの合計質量に基づいて少なくとも90質量%のカプセル化された第1の相変化材料及び10質量パーセント以下のカプセル化されていない第2の相変化材料;又は相変化組合せの合計質量に基づいて、少なくとも95質量%のカプセル化された第1の相変化材料及び5質量パーセント以下のカプセル化されていない第2の相変化材料;又は100質量%のカプセル化された相変化材料を含むことができる。
【0037】
ポリマーは、相変化組成物中に、相変化組成物の合計質量に基づいて2から40質量パーセント、又は4から30質量パーセント、又は5から20質量パーセント、又は5から15質量パーセント、又は2から80質量パーセント、又は3から60質量パーセント、又は4から20質量パーセント、又は5から50質量パーセント、又は10から50質量パーセント、又は15から40質量パーセント、又は15から25質量パーセントの量で各々存在することができる。
【0038】
一実施形態において、相変化材料及びポリマーは、良好な適合性を有し、大量の相変化材料がポリマー基盤内に存在することを可能にするように選択される。ポリマーのタイプ及び量は、相変化材料と良好な適合性を有するように選択され、ポリマーマトリックス内に大量の相変化材料を効率的に保持するようにする。例えば、大量の相変化材料は、合計相変化組成物の少なくとも40質量%、又は合計相変化組成物の少なくとも50質量%、又は合計組成物の少なくとも75質量%、又は合計組成物の少なくとも80質量%、又は更に合計組成物の90から95質量%である。相変化材料を効率的に相変化組成物のポリマーマトリックス内に保持するポリマーの収容能力が、長期間にわたる優れた熱管理性能を付与する。
【0039】
ある実施形態では、2種以上のポリマーの組合せを使用する場合に、ポリマーは好ましくは混和性であり、又は相変化材料と組み合わせた場合に混和性である。ポリマーは、所望の特性、例えば所望のゲル化温度を相変化組成物に提供するように選択することもできる。
【0040】
ある実施形態では、ポリマー及びカプセル化されていない相変化材料が、良好な適合性を有し、その結果、混合された場合に、ポリマー及びカプセル化されていない相変化材料が混和性ブレンドを形成することができる。ポリマーのカプセル化されていない相変化材料との適合性を評価するために使用され得る1つのパラメーターは、ポリマー及びカプセル化されていない相変化材料の「溶解度パラメーター」(δ)である。溶解度パラメーターは、当技術分野における任意の公知の方法により決定され得るか又は多くのポリマー及び相変化材料について公表された表から得られ得る。ポリマー及び相変化材料は、混和性ブレンドを形成するために類似した溶解度パラメーターを有するべきである。ポリマーの溶解度パラメーター(δ)は、カプセル化されていない相変化材料の溶解度パラメーターの±1、又は±0.9、又は±0.8、又は±0.7、又は±0.6、又は±0.5、又は±0.4、又は±0.3以内である。
【0041】
相変化組成物は、5から70℃、好ましくは25から65℃、より好ましくは35から60℃、更により好ましくは30から50℃の転移温度を有することができる。
【0042】
製作及び使用の容易さのために、相変化組成物は、100℃以下、又は80℃以下、又は50℃以下、又は30℃以下の温度で、明らかな流動を示さない。
【0043】
相変化組成物は、ASTM D3418に従った示差走査熱量測定により決定される、少なくとも120ジュール/グラム、少なくとも150ジュール/グラム、好ましくは少なくとも180ジュール/グラム、より好ましくは少なくとも200ジュール/グラムの転移温度での融解熱を有することができる。
【0044】
相変化組成物は、上述した量の、相変化材料及びポリマーの組合せだけからなるか又は本質的になることができる。或いは、相変化組成物は、他の成分を添加剤、例えば、充填剤として更に含むことができ、あるいは当技術分野において公知の他の添加剤を更に含むことができる。そのような追加の成分は、相変化組成物の所望の特性に有意に有害な影響を及ぼさないように選択される。個々の添加剤は、一般的に当技術分野において公知の量で、例えば、酸化防止剤又は硬化剤等の添加剤について0.1から5質量パーセントで存在することができる。添加組成物は、合計で、相変化組成物中に、相変化組成物の合計質量に基づいて60質量パーセントまでの量(0.1質量パーセントから60質量パーセント)で、又は0.1から40質量パーセント、又は0.5から30質量パーセント又は1から20質量パーセントで存在することができ、ここで、相変化組成物の全ての成分の質量パーセントが合計で100質量パーセントになる。
【0045】
相変化組成物は、充填剤、例えば、相変化組成物の誘電性、熱伝導性、又は磁性を調節するための充填剤を含むことができる。低率の増量充填剤、例えば、ガラスビーズ、シリカ又は粉砕されたミクロガラス繊維等を、使用することができる。芳香族ポリアミド、又はポリアクリロニトリル等の熱的に安定な繊維を使用することができる。代表的誘電性充填剤には、二酸化チタン(ルチル及びアナターゼ)、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、溶融非晶質シリカ、コランダム、ウォラストナイト、アラミド繊維(例えば、DuPont社からのKEVLAR(登録商標))、ガラス繊維、Ba2Ti9O20、石英、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、アルミナ、マグネシア、マイカ、タルク、ナノクレイ、アルミノシリケート(天然及び合成)、酸化鉄、CoFe2O4(Nanostructured & Amorphous Materials, Inc.社から入手可能なナノ構造粉体)、単壁又は多壁炭素ナノチューブ、及びヒュームド二酸化ケイ素が含まれ、これらの各々を単独で又は組合せて使用することができる。
【0046】
使用され得る他のタイプの充填剤は、熱伝導性充填剤、断熱性充填剤、磁性充填剤、又はそれらの組合せを含む。熱伝導性充填剤は、例えば、窒化ホウ素、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、及び窒化アルミニウムを含む。断熱充填剤の例は、例えば、粒子状形態の有機ポリマーを含む。磁性充填剤はナノサイズであることができる。
【0047】
充填剤は、固体、多孔性、又は中空粒子の形態であることができる。充填剤の粒径は、熱膨張係数、モジュラス、伸度、及び耐炎性を含む多くの重要な特性に影響する。一実施形態において、充填剤は、0.1から15マイクロメートル、特に0.2から10マイクロメートルの平均粒径を有する。充填剤は、ナノ粒子、即ち、1から100ナノメートル(nm)、又は5から90nm、又は10から80nm、又は20から60nmの平均粒径を有するナノ充填剤であることができる。2峰性の、3峰性の、又はより高度の平均粒径分布を有する充填剤の組合せが使用され得る。充填剤は、相変化組成物の合計質量に基づいて0.1から80質量パーセント、特に1から65質量パーセント、又は5から50質量パーセントの量で含まれ得る。
【0048】
それに加えて、相変化組成物は、任意選択で、添加剤、例えば、難燃剤、硬化開始剤、架橋剤、粘度改変剤、加湿剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤等、又は前述の少なくとも1種を含む組合せを更に含むことができる。添加剤の具体的な選択は、使用されるポリマー、相変化組成物の特定の用途、及びその用途にために所望の特性に依存し、回路のサブアセンブリーの電気的特性、例えば、熱伝導度、誘電率、損失係数、誘電損失等、又は他の所望の特性を強化するか又は実質的に有害に影響しないように選択される。
【0049】
難燃剤は、金属炭酸塩、金属水和物、金属酸化物、ハロゲン化された有機化合物、有機リン-含有化合物、窒素-含有化合物、又はホスフィン酸塩であることができる。代表的な難燃性添加剤は、臭素-、リン-、及び金属酸化物-含有難燃剤を含む。適切な臭素-含有難燃剤は、一般的に芳香族であり、化合物当たり少なくとも2個の臭素を含有する。
【0050】
適切なリン-含有難燃剤は、種々の有機リン化合物、例えば、式(GO)3P=Oの芳香族リン酸を含み、式中、各Gは、独立に、C1-36アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキル基であるが、ただし、少なくとも1つのGは芳香族基である。G基の2つが一緒になって、環状基、例えば、ジフェニルペンタエリトリトールジホスフェートを提供することができる。他の適切な芳香族ホスフェートは、例えば、フェニルビス(ドデシル)リン酸、フェニルビス(ネオペンチル)リン酸、フェニルビス(3,5,5'-トリメチルヘキシル)リン酸、エチルジフェニルリン酸、2-エチルヘキシルジ(p-トリル)リン酸、ビス(2-エチルヘキシル)p-トリルリン酸、トリトリルリン酸、ビス(2-エチルヘキシル)フェニルリン酸、トリ(ノニルフェニル)リン酸、ビス(ドデシル)p-トリルリン酸、ジブチルフェニルリン酸、2-クロロエチルジフェニルリン酸、p-トリルビス(2,5,5'-トリメチルヘキシル)リン酸、2-エチルヘキシルジフェニルリン酸等であることができる。特定の芳香族リン酸は、各Gが、芳香族、例えば、トリフェニルリン酸、トリクレジルリン酸、イソプロピル化されたトリフェニルリン酸等であるものである。適切な二-又は多官能性芳香族リン-含有化合物の例は、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)リン酸、及びビスフェノール-Aのビス(ジフェニル)リン酸、それらのそれぞれのオリゴマー及びポリマーの対応物等を含む。
【0051】
ホスフィン酸金属塩も使用され得る。ホスフィネートの例は、例えば、脂環式ホスフィン酸塩及びホスフィン酸エステル等のホスフィン酸塩である。ホスフィネートの更なる例は、ジホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、及びこれらの酸の塩、例えば、アルミニウム塩及び亜鉛塩等である。ホスフィンオキシドの例は、イソブチルビス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキシド及び1,4-ジイソブチレン-2,3,5,6-テトラヒドロキシ-1,4-ジホスフィンオキシド又は1,4-ジイソブチレン-1,4-ジホスホリル-2,3,5,6-テトラヒドロキシシクロヘキサンである。リン-含有化合物の更なる例は、NH1197(登録商標)(Chemtura Corporation社)、NH1511(登録商標)(Chemtura Corporation社)、NcendX P-30(登録商標)(Albemarle社)、Hostaflam OP5500(登録商標)(Clariant社)、Hostaflam OP910(登録商標)(Clariant社)、EXOLIT 935(Clariant社)、及びCyagard RF 1204(登録商標)、Cyagard RF 1241(登録商標)及びCyagard RF 1243R(CyagardはCytec Industries社の製品である)である。特に有利な実施形態において、ハロゲンを含まない組成物は、EXOLIT 935(アルミニウムホスフィン酸塩)とともに使用された場合に、優れた難燃性を有する。更なる他の難燃剤は、メラミンポリホスフェート、メラミンシアヌレート、Melam、Melon、Melem、グアニジン、ホスファザン、シラザン、DOPO(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10ホスファフェナントレン-10-オキシド)、及び10-(2,5ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-ホスファフェナントレン-10-オキシドを含む。
【0052】
適切な金属酸化物難燃剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、スズ酸亜鉛、及び酸化ホウ素である。好ましくは、難燃剤は、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、デカブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエタン、エチレン-ビス(テトラブロモナフタルイミド)、メラミン、スズ酸亜鉛、又は酸化ホウ素であることができる。難燃性添加物は、使用される添加物の特定のタイプについて当技術分野において公知の量で存在することができる。
【0053】
典型的硬化開始剤は、組成物中でポリマーの硬化(架橋)を開始させることに有用なものを含む。例には、アジド、過酸化物、イオウ、及びイオウ誘導体が含まれるが、これらに限定されない。フリーラジカル開始剤は、硬化開始剤として特に望ましい。フリーラジカル開始剤の例は、過酸化物、ヒドロペルオキシド、及び非ペルオキシド開始剤、例えば、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等を含む。ペルオキシド硬化剤の例は、ジクミルペルオキシド、α,α-ジ(t-ブチルペルオキシ)-m,p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン-3、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、又はそれらの組合せを含む。硬化開始剤は、使用される場合には、相変化組成物の合計質量に基づいて0.01質量パーセントから5質量パーセントの量で存在することができる。
【0054】
架橋剤は、反応性モノマー又はポリマーである。一実施形態において、そのような反応性モノマー又はポリマーは、相変化組成物中のポリマーと共反応することができる。適切な反応性モノマーの例は、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、及び多官能性アクリレートモノマー(Sartomer Co.社から入手可能なSartomer化合物等)を、とりわけ含み、それらの全ては市販されている。架橋剤の有用な量は、相変化組成物の合計質量に基づいて0.1から50質量パーセントである。
【0055】
典型的酸化防止剤は、ラジカルスカベンジャー及び金属不活性化剤を含む。フリーラジカルスカベンジャーの例は、Ciba Chemicals社から商品名CHIMASSORB 944で市販されているポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-s-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]であるが、これらに限定されない。金属不活性化剤の例は、Chemtura Corporation社から商品名NAUGARD XL-1で市販されている2,2-オキサリルジアミドビス[エチル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]であるが、これらに限定されない。単一の酸化防止剤又は2種以上の酸化防止剤の組合せが使用され得る。酸化防止剤は、典型的には、相変化組成物の合計質量に基づいて3質量パーセントまで、特に0.5から2.0質量パーセントの量で存在する。
【0056】
カップリング剤は、金属表面又は充填剤表面とポリマーとを接続する共有結合の形成を促進するか又はそれに関与するように存在させることができる。典型的カップリング剤は3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びヘキサメチレンジシラザンを含む。
【0057】
相変化組成物は、ポリマー、相変化材料、任意の添加剤、及び任意選択で相変化組成物を製作するための溶媒を組み合わせることにより製作することができる。組合せは、ブレンド、混合、又は攪拌等の任意の適切な方法によることができる。一実施形態において、相変化材料が溶融されて、ポリマーは溶融された相変化材料に溶解される。別の実施形態において、ポリマー及び相変化材料及び任意選択の添加剤を含む相変化組成物を形成するために使用される成分は、溶媒中に溶解されるか又は懸濁されることにより組み合わされて、混合物又は溶液を提供することができる。
【0058】
溶媒は、含まれる場合には、ポリマーを溶解して、相変化材料及び存在し得る任意の他の任意選択の添加剤を分散させ、形成及び乾燥のために便利な蒸発速度を有するように選択される。可能な溶媒の非排他的リストは、キシレン;トルエン;メチルエチルケトン;メチルイソブチルケトン;ヘキサン、及び液体の高級直鎖状アルカン、例えば、ヘプタン、オクタン、ノナン等;シクロヘキサン;イソホロン;種々のテルペンを主成分とする溶媒;及びブレンドされた溶媒である。特定の典型的溶媒は、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びヘキサン、更により具体的にはキシレン及びトルエンを含む。溶液又は分散体中における組成物の成分の濃度は、重要ではなく、成分の溶解度、使用される充填剤レベル、適用方法、及び他の要因次第である。一般的に、溶液は、溶液の合計質量に基づいて10から80質量パーセントの固体(溶媒以外の全ての成分)、より具体的には50から75質量パーセントの固体を含む。
【0059】
いずれの溶媒も、環境条件下で又は強制によるか若しくは加熱された空気により蒸発させることが可能であり、該組合せが冷却されて、ゲル化した相変化組成物がもたらされる。相変化組成物は、公知の方法、例えば、押出し、金型成形、又はキャスティングによっても成形することができる。例えば、相変化組成物は、後でその層から相変化組成物が剥離される担体上に若しくは代替的に保護ポリマー層上にキャスティングされることにより層に形成することができるか、又は下で記述する保護ポリマー層と共押出しすることができる。相変化層は、未硬化であるか若しくは乾燥プロセスで部分的に硬化(B段階)され得、又は層は、所望であれば、乾燥後に部分的に若しくは完全に硬化され得る。層は、例えば、20から200℃、特に30から150℃、より具体的には40から100℃で加熱され得る。生じる相変化組成物は、使用前、例えば、層化及び硬化の前に貯蔵され得て、部分的に硬化された後に貯蔵されるか、又はラミネートされて完全に硬化される。
【0060】
熱管理バッテリー包装材料は、保護ポリマー層を更に含むことができる。保護ポリマー層は、バッテリー用として、特にバッテリーにおける包装材料として公知の任意のポリマーであり得る。典型的材料は、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)、ポリエステル、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びポリエチレンテレフタレート(PET)等、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ある種のシリコーンゴム、ポリアミド、例えば、PA6等、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリエチレン若しくはポリプロピレンのコポリマー等、及びフッ素化されたポリオレフィン、例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びフッ素化されたエチレン-プロピレン(FEP)、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等、又はそれらの組合せを含む。二軸配向ポリエステル又はポリアミドが使用され得る。保護ポリマー層は、複数の層、例えば、二軸配向ポリエステルフィルム及び二軸配向ポリアミドフィルム等を含むことができる。
【0061】
一実施形態において、保護ポリマー層は、熱収縮性ポリマーを含む。熱収縮性ポリマーの使用により、より共形の包装の製作が可能になる。典型的熱収縮性ポリマーは、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ある種のシリコーンゴム、ポリオレフィン、及びフッ素化されたポリオレフィン、例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びフッ素化されたエチレン-プロピレン(FEP)等を含む。
【0062】
別の実施形態において、保護ポリマー層は、熱伝導性ポリマー、即ち、上で記載された熱伝導性充填剤の添加により熱伝導性を付与されたポリマーを含む。
【0063】
他の層は、相変化層上に、バッテリー包装層上に、又は相変化層とバッテリー包装層の間に配置されて、熱管理バッテリー包装材料中に存在することができる。接着剤、プライマー、又は両方が、種々の層間の接着を改善するために使用され得る。種々の層のためのプライマー及び接着剤が公知である。金属接着層は、例えば、不飽和カルボキシ基を有する、例えば、マレイン酸、イタコン酸、及びフマル酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸等のエステル及び酸無水物を含むフマル酸モノエステル、フマル酸ジエステルのグラフト改変ポリオレフィン樹脂を含む。ポリオレフィンは、ポリプロピレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、及びエチレン-メタクリレートコポリマーであることができる。
【0064】
図2は、6層を有する典型的パウチ熱管理バッテリー包装材料(20)を図式的に示す。
図2に示すように、熱管理バッテリー包装材料(20)は相変化層(26)上に配置された金属バッテリー包装層(22)を含み、接着剤層(24)は相変化層(26)と保護ポリマー層(28)との間に配置され、接着剤層(30)は金属バッテリー包装層(22)と内部シール材層(32)の間に配置されている。
【0065】
特定の実施形態において、金属バリア層、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、金、又はそれらの合金、例えば、ニッケル-銅、アルミニウム-鉄、又はニッケル-クロム-鉄合金等の層が、熱管理バッテリー包装材料中に存在する。金属バリア層は、バッテリー材料の機械的安定性及び耐熱性を改善することができる。アルミニウム又はアルミニウム合金バリア層は、コスト、性能、及び製作の容易さの理由のために好ましい。
【0066】
存在し得る他の層は、
図2に示した内部シール材層を含む。内部シール材層は、包装材料の他の層をバッテリーで使用される電解質又は他の腐食性材料から保護するために使用され得る。この層で使用するための典型的材料は、保護層で使用するための上で記述した熱収縮性ポリマーを含む種々のポリマーを含む。オレフィンを主成分とする熱可塑性エラストマー(TPO)が使用され得る。一実施形態において、内部シール材層は、例えば上で記述した熱伝導性充填剤の組み入れによって、熱伝導性であることができる。
【0067】
熱管理バッテリー包装材料の各々の層の厚さは、バッテリーのタイプ、その配置、及び意図される出荷及び操作条件を含むその意図される使用に依存して様々であり得る。
【0068】
相変化層は、少なくとも5マイクロメートル、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、又は少なくとも100マイクロメートル及び300マイクロメートル以下、500マイクロメートル以下、1ミリメートル(mm)以下、2ミリメートル以下、又は5ミリメートル以下の厚さを有することができる。
【0069】
バッテリー包装層は、包装されるべきバッテリー又はセルのサイズ及びタイプのために適切な厚さを有する。例えば、パウチセルのために、バッテリー包装金属層の典型的な厚さは、20マイクロメートルから100マイクロメートルまでの範囲内である。20マイクロメートル未満の厚さは、ピンホール及び金型成形中のフォイルの低下した機械的安定性に起因する低下したバリア性を生じ得る。
【0070】
保護ポリマー層は、少なくとも5マイクロメートル、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、又は少なくとも100マイクロメートル及び400マイクロメートル以下、500マイクロメートル以下、1ミリメートル以下、又は2ミリメートル以下、又は10mm以下の厚さを有することができる。例えば、保護ポリマー層は、5マイクロメートルから10ミリメートル、10マイクロメートルから2ミリメートル、又は20マイクロメートルから1ミリメートルであることができる。
【0071】
金属バリア層は、少なくとも1マイクロメートル、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、又は少なくとも100マイクロメートル及び200マイクロメートル以下、250マイクロメートル以下、300マイクロメートル以下、400マイクロメートル以下、又は500マイクロメートル以下の厚さを有することができる。
【0072】
内部シール材層は、少なくとも5マイクロメートル、少なートル、又は少なくとも100マイクロメートル及び400マイクロメートル以下、500マイクロメートル以下、1ミリメートル以下、又は2ミリメートル以下の厚さを有することができくとも10マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも50マイクロメる。例えば、内部シール材層は、5マイクロメートルから10ミリメートル、10マイクロメートルから2ミリメートル、又は20マイクロメートルから1ミリメートルであることができる。
【0073】
熱管理バッテリー包装材料は、相変化層とバッテリー包装層とを接触させることにより製作することができる。相変化層とバッテリー包装層とを接触させることは、任意の適切な方法によって実施することができる。適切な方法の例は、相変化層をバッテリー包装層上にコーティングすること、バッテリー包装層を相変化層上にコーティングすること、相変化層とバッテリー包装層とをラミネートすること、相変化層とバッテリー包装層とを共押出しすること、又は相変化層とバッテリー包装層とを接着剤で接着することを含む。各層は、予め形成されて、次に接触させられるか、又は1層又は複数の層が接触中に形成され得る。例えば、接触させることは、相変化層とバッテリー包装層とを介在する接着剤を用いて又は用いずにラミネートすることによることができる。或いは、相変化組成物とバッテリー包装層とを共押出しして熱管理バッテリー包装材料を形成することができる。熱管理バッテリー包装材料は、熱管理バッテリー包装材料中に包装されるべき物品、例えば、1個又は複数のバッテリーセルの表面上に、又はパウチセルを封入するためのラミネート上に直接共押出しされ得る。
【0074】
熱管理バッテリー包装材料を製作する方法は、相変化層の表面と熱伝導性材料とを接触させることを更に含む。該表面は、保護ポリマー層を有する表面と向かい合うことができる。熱伝導性材料は金属であることができる。一実施形態において、相変化層の表面はアルミニウムバリア層等の金属バリア層の少なくとも部分的なコーティングでコートされ得る。金属バリア層は、相変化層の表面を完全にコートすることができる。アルミニウム等の金属を、相変化層上にコーティングすることは、任意の適切な方法、例えば、物理的蒸着、スパッタリング、熱的蒸発、化学蒸着、又はそれらの組合せにより実施され得る。相変化層は、接着剤を用いて又は用いずに、予め形成された熱伝導性層、例えば、アルミニウム層にコート又はラミネートすることもできる。
【0075】
熱管理バッテリー包装材料を含む物品が開示される。物品は、バッテリー及び熱管理バッテリー包装材料を含むことができる。物品は、バッテリー構成要素及び熱管理バッテリー包装材料を含むことができる。例えば、バッテリー構成要素は、熱管理バッテリー包装材料で包装されたバッテリーセルであることができる。熱管理バッテリー包装材料は、コインセル、角柱セル、パウチセル、及び円筒形セルで使用するために適当であるように形成され得る。熱管理バッテリー包装材料は、バッテリー包装及び電子的デバイスを含む種々の用途で使用され得る。熱管理バッテリー包装材料は、熱を発生して性能を損傷する、広範囲の電子デバイス、及びバッテリー、プロセッサー、及び他の作動回路(記憶、ビデオチップ、電気通信チップ等)の任意の他のデバイスで使用され得る。
【0076】
本明細書に記載した熱管理バッテリー包装材料は、容易に加工することができ、特に急速充電及びバッテリーの放電中におけるセル加熱を最小化するために、優れた吸熱性を提供することができ、それによってバッテリーの電気化学的性能、寿命及び安全性を改善することができる。
【0077】
以下の実施例は、本開示を例示するために提供される。これらの実施例は、単に例示であって、そこで説明される材料、条件、又はプロセスパラメーターの開示によりなされる考案を限定することは意図されない。
【実施例】
【0078】
材料の転移の転移温度及びエンタルピー(ΔH)は、示差走査熱量測定(DSC)により、例えば、Perkin Elmer DSC 4000、又は等価物を使用して、ASTM D3418に従って測定することができる。
【0079】
(実施例1)
収縮性熱管理包装材料
バッテリーセルを包装するための収縮性熱管理バッテリー包装材料を作製した。材料を模式的に
図1に示す。この熱管理包装材料で、バッテリー包装層(12)は、収縮性ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムである。熱吸収材料の相変化層は、所望の相転移温度(約42℃)で所望の潜熱吸収(少なくとも150kJ/kgの融解熱)を提供するように選択された相変化組成物である。この例で、HEATSORB熱管理材料(相変化層を含む多層フィルム生成物、Rogers Corporation社)を、熱管理バッテリー包装材料における相変化層を提供するために使用した。バッテリー包装層は、熱吸収相変化材料をカプセル化することに役立つ。
【0080】
(実施例2)
パウチセル熱管理包装材料
リチウムイオンパウチセル包装は、典型的には、アルミニウムラミネート材料を含む。
【0081】
この実施例で、
図2に図式的に示した典型的パウチセル熱管理包装材料を作製した。相変化組成物フィルムを、アルミニウムラミネート材料に取り付けた。標準的アルミニウムラミネート包装材料に相変化組成物フィルムを加えることにより、封じられたバッテリーセルの動的操作中の温度の変動を減じることに役立つ。
【0082】
(実施例3)
収縮性熱管理包装材料の熱的性能の放出試験
実施例1の収縮性熱管理包装材料の熱的性能を調べるために、実施例1のラミネートで包装された試料バッテリーを試験のために構築した。
【0083】
試料バッテリーを、市販の円筒形の18650再充電可能なLiイオンバッテリー(容量2500mAh、最大放出電流20A、公称電圧3.6V)から元のラップフィルムを取り除いて、次に露出したバッテリーケーシングの周りを相変化組成物の層(37℃の相変化温度;厚さ1.4ミリメートル)の外被で包み、続いてPVC熱収縮性フィルムで包むことにより構築する。加熱銃を使用して、バッテリーをゆっくり回転させながら、熱収縮性フィルムの表面に60℃未満の温度で熱収縮性フィルムがバッテリーセル上に収縮するまで熱風を吹き付ける。
【0084】
改良されていない市販の18650再充電可能なLiイオンバッテリーを、対照試料として選択した。
【0085】
放電試験を、人工気候室中25℃にて、下の試験パラメーターで実施した:
電流:8C (20A)
充電カットオフ:4.2V
放電カットオフ:2.5V。
【0086】
図3は、対照バッテリー及び実施例1のラミネートで包装されたバッテリーについての放電曲線を示す。
図3は、実施例及び対照バッテリーについて放電にともなって上昇する温度も示す。一般的に、実施例のバッテリーは、任意の所与の放電レベルで対照バッテリーより低い温度を示す。
【0087】
この開示は、以下の態様によって更に例示されるが、これらは本発明を限定するものではない。
【0088】
態様1 相変化材料とポリマーとの組合せを含んだ相変化組成物を含む相変化層と、相変化層の一面上に配置されたバッテリー包装層とを含む、熱管理バッテリーの包装材料。
【0089】
態様2 バッテリー包装層の反対側の相変化層の一面上に配置された保護ポリマー層を更に含む、態様1の熱管理バッテリー包装材料。
【0090】
態様3 相変化層の厚さが、5マイクロメートルから10ミリメートル、10マイクロメートルから2ミリメートル、又は20マイクロメートルから1ミリメートルである、態様1又は2の熱管理バッテリー包装材料。
【0091】
態様4 態様1から3の任意の1つ又は複数の熱管理バッテリー包装材料であって、ポリマーが、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シリコーンゴム、環状オレフィンポリマー、フルオロポリマー、ポリアセタール、ポリ(C1-6アルキル)アクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアンハイドライド、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリアリーレンケトン、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンスルホン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリ(C1-6アルキル)メタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリオレフィン、ポリオキシメチレン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホンアミド、ポリスルホネート、ポリチオエステル、ポリトリアジン、ポリウレア、熱可塑性ポリウレタン、ビニルポリマー、アルキド、ビスマレイミドポリマー、ビスマレイミドトリアジンポリマー、シアネートエステルポリマー、ベンゾシクロブテンポリマー、ジアリルフタレートポリマー、エポキシ、ヒドロキシメチルフランポリマー、メラミン-ホルムアルデヒドポリマー、フェノール性ポリマー、ベンゾオキサジンポリマー、ポリジエン、ポリイソシアネート、ポリウレア、熱硬化性ポリウレタン、シリコーン、トリアリルシアヌレートポリマー、トリアリルイソシアヌレートポリマー、又はそれらの組合せを含み;好ましくはポリマーは、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンのコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化されたエチレン-プロピレン(FEP)、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジ
エンブロックコポリマー、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー、ポリブタジエン、イソプレン、ポリブタジエン-イソプレンコポリマー、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、環状オレフィンコポリマー、ポリジシクロペンタジエンゴム、熱可塑性ポリウレタン、又はそれらの組合せを含む、熱管理バッテリー包装材料。
【0092】
態様5 態様1から4の任意の1つ又は複数の熱管理バッテリー包装材料であって、該相変化材料が、C10~C35アルカン、C10~C35脂肪酸、C10~C55脂肪酸エステル、植物油、又はそれらの組合せを含み;好ましくは、相変化材料は、C18~28アルカン、C18~28脂肪酸、C18~28脂肪酸エステル、又はそれらの組合せを含む、熱管理バッテリー包装材料。
【0093】
態様6 相変化材料がカプセル化されていない第1の相変化材料を含む、態様1から5の任意の1つ又は複数の熱管理バッテリー包装材料。
【0094】
態様7 相変化材料がカプセル化された第1の相変化材料を含む、態様1から5の任意の1つ又は複数の熱管理バッテリー包装材料。
【0095】
態様8 相変化材料がカプセル化されていない第2の相変化材料を更に含み、第1の及び第2の相変化材料は同じであるか又は異なることができて、好ましくは、相変化材料が少なくとも80%のカプセル化された第1の相変化材料を含む、態様7の熱管理バッテリー包装材料。
【0096】
態様9 態様1から8の任意の1つ又は複数の熱管理バッテリー包装材料であって、相変化組成物が添加組成物を更に含み、添加組成物が難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、熱伝導性充填剤、断熱充填剤、磁性充填剤、着色剤、又はそれらの組合せを含む、熱管理バッテリー包装材料。
【0097】
態様10 態様1から9の任意の1つ又は複数の熱管理バッテリー包装材料であって、相変化組成物は、2から40質量パーセント、又は4から30質量パーセント、又は5から20質量パーセント、又は5から15質量パーセントのポリマー;40から95質量パーセント、又は50から90質量パーセント、又は60から85質量パーセント、又は75から85質量パーセントの相変化材料を含み;存在する場合には、60質量パーセントまで、0.1質量パーセントから60質量パーセント、又は0.1から40質量パーセント、又は0.5から30質量パーセント又は1から20質量パーセントの添加組成物を含み;ここで各質量パーセントは、相変化組成物の合計質量に基づき、合計で100質量パーセントになる、熱管理バッテリー包装材料。
【0098】
態様11 相変化組成物が5から70℃、好ましくは25から65℃、より好ましくは35から60℃、更により好ましくは30から50℃の転移温度を有する、態様1から10の任意の1つ又は複数の熱管理バッテリー包装材料。
【0099】
態様12 態様1から11の任意の1つ又は複数の熱管理バッテリー包装材料であって、相変化組成物が、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定により決定される、少なくとも120ジュール/グラム、又は少なくとも150ジュール/グラム、好ましくは少なくとも180ジュール/グラム、より好ましくは少なくとも200ジュール/グラムの転移温度での融解熱を有する、熱管理バッテリー包装材料。
【0100】
態様13 態様1から12の任意の1つ又は複数の熱管理バッテリー包装材料であって、バッテリー包装層が、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、スチレン-アクリロニトリルポリエステル、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、シリコーンゴム、ポリアミド、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンのコポリマー、フッ素化されたポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化されたエチレン-プロピレン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、又はそれらの組合せを含む、熱管理バッテリー包装材料。
【0101】
態様14 態様1から13の任意の1つ又は複数の熱管理バッテリー包装材料であって、バッテリー包装層が、熱収縮性ポリマーを含み、好ましくは熱収縮性ポリマーがポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、シリコーンゴム、フッ素化されたポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化されたエチレン-プロピレン(FEP)、又はそれらの組合せを含む、熱管理バッテリー包装材料。
【0102】
態様15 態様1から14の任意の1つ又は複数の熱管理バッテリー包装材料であって、ポリマーの溶解度パラメーターが、カプセル化されていない相変化材料の溶解度パラメーターの±1、又は±0.9、又は±0.8、又は±0.7、又は±0.6、又は±0.5、又は±0.4、又は±0.3以内である、熱管理バッテリー包装材料。
【0103】
態様16 態様1から15の任意の1つの熱管理バッテリー包装材料は、相変化層の表面に配置された熱伝導性材料を更に含み、好ましくは、熱伝導性材料は、アルミニウムを含み、より好ましくは、熱伝導性材料は、アルミニウムを含む層を含む。
【0104】
態様17 相変化層とバッテリー包装層とを接触させることを含む、態様1から16の任意の1つ又は複数の熱管理バッテリー包装材料を製作する方法。
【0105】
態様18 相変化材料とポリマー及び任意選択で相変化組成物を形成する添加物を組み合わせる工程;及び相変化組成物から相変化層を形成する工程を更に含む、態様17の方法。
【0106】
態様19 接触させる工程は、相変化層をバッテリー包装層上にコーティングする工程、バッテリー包装層を相変化層上にコーティングする工程、相変化層とバッテリー包装層とをラミネートする工程、相変化層とバッテリー包装層とを共押出しする工程、又は相変化層とバッテリー包装層とを接着剤で接着する工程を含む、態様17又は18の方法。
【0107】
態様20 バッテリー包装層と反対側の相変化層の表面と熱伝導性材料とを接触させる工程を更に含み、好ましくは、熱伝導性材料はアルミニウムを含み、より好ましくは熱伝導性材料はアルミニウムを含む層を含む、態様17から19のいずれか1つの方法。
【0108】
態様21 バッテリー及び態様1から16の任意の1つ若しくは複数の熱管理バッテリー包装材料を含むか、又は態様17から20の任意の1つ若しくは複数の方法により作製される物品。
【0109】
態様22 態様1から16の任意の1つ若しくは複数の又は態様17から20の任意の1つ若しくは複数の方法により作製されたバッテリー構成要素及び熱管理バッテリー包装材料を含む物品。
【0110】
態様23 バッテリー構成要素がバッテリーセルである、態様22の物品。
【0111】
一般的に、本明細書に記載された物品及び方法は、或いは、本明細書で開示された任意の成分又は工程を含むか、それらからなる又は本質的にからなることができる。物品及び方法は、それに加えて、又は代替的に、本発明の請求項の機能又は目的を達成するために必要でない任意の成分、工程、又は成分を欠くか又はそれらを実質的に含まないように製作又は実施することができる。
【0112】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、明確に他のように指示されていない限り、複数の指示対象を含む。「又は」は、「及び/又は」を意味する。他のように定義されていない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語は、請求項が属する当業者により共通的に理解されるものと同じ意味を有する。「組合せ」は、ブレンド、混合物、溶液、合金、反応生成物等を含む。本明細書に記載された値は、当業者により決定される特定の値について許容される誤差範囲を含み、誤差範囲は、その値がどのように測定又は決定されたかに、即ち、測定系の限界に部分的に依存するであろう。同じ構成要素又は特性に向けられた全ての範囲の終点は、終点及び中間値を含み、独立に結合することができる。或いは使用可能な種のリストにおいて、「それらの組合せ」は、組合せがリストの少なくとも1つの要素と指名されていない1つ又は複数の類似の要素との組合せを含むことができることを意味する。また、「の少なくとも1つ」は、リストが、個々の各要素、並びにリストの2種以上の要素の組合せ、更にリストの少なくとも1つの要素と指名されていない類似の要素との組合せを含むことを意味する。
【0113】
特に断りのない限り、全ての試験標準は、本出願の出願日、又は、優先権が主張されていれば、試験標準が現れる最も早い優先権適用の出願日として効力を有する最も最近の標準である。他のように定義されていない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語は、この開示が属する当業者により共通的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0114】
全ての引用された特許、特許出願、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本出願における用語が組み込まれた参考文献における用語と矛盾するか又は相反するならば、本出願からの用語が、組み込まれた参考文献からの相反する用語に対して優先される。
【0115】
開示された対象事物が、幾つかの実施形態及び代表的実施例によって本明細書に記述されているが、当業者は、種々の変形及び改善が開示された対象事物に対してそれらの範囲から離れずになされ得ることを認識するであろう。当技術分野において公知の追加の特徴も、同様に組み込まれ得る。それに加えて、開示された対象事物の幾つかの実施形態の個々の特徴が、他の実施形態においてでなく本明細書において論じられ得るが、幾つかの実施形態の個々の特徴が、別の実施形態の1つ若しくは複数の特徴又は複数の実施形態からの特徴と組み合わされ得ることは明らかであろう。
【符号の説明】
【0116】
10 典型的熱管理バッテリー包装材料
12 バッテリー包装層
16 相変化層
20 典型的パウチ熱管理バッテリー包装材料
22 金属バッテリー包装層
24 接着剤層
26 相変化層
28 保護ポリマー層
30 接着剤層
32 内部シール材層
【国際調査報告】