IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オプティメド メディツィニッシェ インストゥルメンテ ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特表-ステント 図1
  • 特表-ステント 図2
  • 特表-ステント 図3
  • 特表-ステント 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/915 20130101AFI20220711BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20220711BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20220711BHJP
   A61L 31/18 20060101ALI20220711BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
A61F2/915
A61L31/02
A61L31/14 500
A61L31/18
A61L31/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568516
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(85)【翻訳文提出日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2020062554
(87)【国際公開番号】W WO2020229255
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】102019112971.0
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518025489
【氏名又は名称】オプティメド メディツィニッシェ インストゥルメンテ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OPTIMED MEDIZINISCHE INSTRUMENTE GMBH
【住所又は居所原語表記】Ferdinand-Porsche-Str. 11 76275 Ettlingen DE
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ネニング エルンスト
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー ハーラルト
【テーマコード(参考)】
4C081
4C267
【Fターム(参考)】
4C081AB12
4C081AB13
4C081AB16
4C081BA16
4C081CE02
4C081CG08
4C081DA03
4C267AA44
4C267AA53
4C267BB26
4C267BB40
4C267BB43
4C267CC08
4C267CC20
4C267CC22
4C267CC24
4C267CC26
4C267EE01
4C267GG23
4C267GG43
4C267HH04
4C267HH08
(57)【要約】
本発明は、中空器官、特に血管、尿管、食道、結腸、十二指腸又は胆管内への経管的なインプラントのためのステントに関し、当該ステントは、軸方向に沿って延在しかつ第1の断面直径を有する収縮状態からそれより大きな第2の断面直径を有する拡張状態に変化させられ得る実質的に管状の本体を含む。当該ステントは、管状の本体によって形成された筋交い状またはストラット状の(strut-like)境界要素によって画定される複数のセルを含む。この境界要素は、軸方向周りのリング状に周回している少なくとも1つの支持支柱(または支持ストラット)を含んでいる。本発明のステントは、支持ストラットが、ステントが第2の断面直径を有する際に90°から150°のストラット角度を含む少なくとも1つのV形状支持セクションを有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空器官、特に血管、尿管、食道、結腸、十二指腸又は胆管内への経管的なインプラントのためのステント(10)であって、
軸方向(A)に沿って延在しかつ第1の断面直径を有する収縮状態からそれより大きな第2の断面直径を有する拡張状態に変化させられ得る実質的に管状の本体を含み、
前記ステント(10)は前記管状の本体によって形成された筋交い状の境界要素(14)によって画定される複数のセルを含み、前記境界要素(14)は、前記軸方向(A)周りにリング状に周回している少なくとも1つの支持ストラット(16)を含んでおり、
前記支持ストラット(16)は、前記ステント(10)が前記第2の断面直径を有する際に90°から150°のストラット角度(22)を含む少なくとも1つのV字型の支持セクション(18)を有することを特徴とするステント(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のステント(10)であって、前記ストラット角度(22)は、100°から130°、好ましくは105°から115°の角度を有する事を特徴とするステント(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のステント(10)であって、
前記境界要素(14)は、好ましくは亜鉛を含む生体吸収性の材料を少なくとも局所的に含むことを特徴とするステント(10)。
【請求項4】
請求項3に記載のステント(10)であって、
前記生体吸収性の材料は亜鉛及び銀からなり、前記生体吸収性の材料は90.0から99.95質量%の亜鉛及び0.05から10.0質量%の銀を含んでいることを特徴とするステント(10)。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のステント(10)であって、
前記支持ストラット(16)は上記範囲のストラット角度(22)を各々が有する複数のV字型の支持セクション(18)を含み、前記支持ストラット(16)のジグザグ形状が少なくとも局所的にもたらされることを特徴とするステント(10)。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載のステント(10)であって、
長手コネクタ(24)が前記ストラット角度(22)の領域内に取り付けられ、前記長手コネクタ(24)が前記支持ストラット(16)と少なくとも1つの他の支持ストラット(16)とを接続することを特徴とするステント(10)。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のステント(10)であって、
前記支持ストラット(16)は、前記軸方向(A)周りに少なくとも実質的に半径方向に周回し、前記軸方向が前記支持ストラット(16)によって画定される平面の法線ベクトルを形成することを特徴とするステント(10)。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載のステント(10)であって、
前記ステント(10)は、前記第2の断面直径よりも大きい第3の断面直径に拡張可能であり、前記ステント(10)が前記第3の断面直径を有する際に、前記ストラット角度(22)は、少なくとも120°まで、好ましくは少なくとも140°または160°まで増加することを特徴とするステント(10)。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載のステント(10)であって、
前記境界要素(14)は、予め規定された血管分岐領域(28)において、境界要素(14)の同一サイズの他の領域よりも小さい質量を有しており、例えば、当該小さい質量はより薄い境界要素(14)によってもたらされることを特徴とするステント(10)。
【請求項10】
請求項9に記載のステント(10)であって、
長手コネクタ(24)が前記血管分岐領域(28)に配されていないことを特徴とするステント(10)。
【請求項11】
請求項9または10に記載のステント(10)であって、
1または複数のX線マーカーが前記血管分岐領域(28)内に配されておりかつ/いるかまたは前記血管分岐領域に隣接して配されていることを特徴とするステント(10)。
【請求項12】
請求項1乃至11に記載のステント(10)であって、
前記境界要素(14)には、少なくとも局所的に薬剤がもたらされることを特徴とするステント(10)。
【請求項13】
請求項1乃至12に記載のステント(10)であって、
境界要素(14)は、第2の断面直径の最大4%、好ましくは最大2%、さらに好ましくは最大1.5%の壁厚さを有していることを特徴とするステント(10)。
【請求項14】
中空器官、特に血管、尿管、食道、結腸、十二指腸又は胆管内への経管的なインプラントのためのステント(10)であって、
軸方向(A)に沿って延在しかつ第1の断面直径を有する収縮状態からそれより大きな第2の断面直径を有する拡張状態に変化させられ得る実質的に管状の本体を含み、
前記ステント(10)は前記管状の本体によって形成された筋交い状の境界要素(14)によって画定される複数のセルを含み、前記境界要素(14)は、前記軸方向(A)周りにリング状に周回している少なくとも1つの支持ストラット(16)を含んでおり、
長手コネクタ(24)が前記支持ストラット(16)に取り付けられており、前記支持ストラット(16)と少なくとも1つの他の支持ストラット(16)とを接続しており、
長手コネクタ(24)が予め画定された血管分岐領域(28)内に配されていないことを特徴とするステント(10)。
【請求項15】
請求項14に記載のステント(10)であって、
1または複数のX線マーカーまたは位置マーカー(26)が前記血管分岐領域(28)に配されておりかつ/いるかまたは前記血管分岐領域に隣接して配されていることを特徴とするステント(10)。
【請求項16】
請求項14または15に記載のステント(10)であって、
前記境界要素(14)は、予め画定された血管分岐領域(28)内において、前記境界要素(14)の同一サイズの他の領域よりも小さい質量を有し、当該小さい質量は、例えば、より薄い境界要素によってもたらされることを特徴とするステント(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空器官、特に血管、尿管、食道、結腸、十二指腸又は胆管内への経管的なインプラントのためのステントに関し、当該ステントは、軸方向に沿って延在しかつ第1の断面直径を有する収縮状態からそれより大きな第2の断面直径を有する拡張状態に変化させられ得る実質的に管状の本体を含む。当該ステントは、管状の本体によって形成された筋交い状またはストラット状の(strut-like)境界要素によって画定される複数のセルを含む。この境界要素は、軸方向周りのリング状に周回している少なくとも1つの支持支柱(または支持ストラット)を含んでいる。
【0002】
この種のステントは、病理的に変化した中空器官の再疎通に用いられる。これに関して、第1の断面直径を有する収縮状態において、ステントが導入カテーテルを介して中空器官内の治療されるべき位置に持ち来され、そこで健常な中空器官の直径に対応する直径まで異なった寸法に拡張させられ、中空器官、例えば血管の壁を支持する効果がもたらされる。当該拡張の後、ステントは、具体的には、第2の断面直径を有する。
【0003】
この支持効果をもたらすために、本発明のステントは、可能な限り大きい展開力、言い換えれば、血管の壁を押す放射方向の力をもたらし得る。
【0004】
従って、本発明の目的は、上述のようなステントをさらに改良し、特に、比較的柔らかい材料から形成されたステントで、可能な限り大きい展開力をもたらすことである。
【0005】
この目的は、本願請求項1に記載の特徴を有するステントによる本発明によって達成される。
【0006】
本発明のステントは支持ストラットが少なくとも1つのV字型の支持セクションを有し、当該支持セクションは、ステントが第2の断面直径を有している際に90°から150°の支持柱角度(またはストラット角度)を含むことを特徴としている。支持セクションのV字型は、2つのリムによって形成され得る。リムは、境界要素の一部であり得る。
【0007】
本発明は、ステントが、例えば、比較的低い引っ張り強度を有している材料によって形成されている場合に、高い放射方向の展開力が、90°から150°の比較的大きいストラット角によってもたらされるという認識に基づいている。例えば、60°と80°との間のストラット角度を有する一般的な冠動脈ステントと対照的に、以下にさらに詳細に説明するように、本発明によれば、数多くの利点がもたらされ得る。
【0008】
このようなストラット角度は、特に、V字支持セクションの2つのリムによって測られるかまたは画定される角度として理解されるべきである。この点において、本明細書で特に説明なくとも、ストラット角度は、いつもステントが第2の断面直径を有する拡張状態にあるときに判定され、通常は第2の断面直径が公称直径を画定する。この公称直径は、ステントの恒常的な使用の間に永続的に必要とされる。
【0009】
本発明のステントは、通常、上記した境界要素によって形成され得、この境界要素は格子状の骨組みを形成する、すなわちステントの管状の本体を画定する複数のステントストラットとして設計され得る。
【0010】
この点において、上記境界要素は、複数のセルを形成するのが好ましく、このセルの各々は、セルを境界付けるそれぞれの境界要素を含み、さらなる境界要素によってさらなるセルと接続され得る。
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書、従属請求項及び図面から理解され得る。
【0012】
第1の有利な実施形態によれば、ストラット角度は、90°から140°であり、好ましくは100°から130°である。さらに好ましくは、ストラット角度は105°から115°である。本明細書において説明される角度表示は、限界値の各々が含まれると理解されるべきである。特に高い放射方向の展開力は、110°前後の範囲で達成され得ることが理解される。
【0013】
明確性のみのために、上述のストラット角度は、ステントが第2の断面直径にまで展開された際の状態について言及することに注意すべきである。ステントがサイズを減らされて体内に導入可能となる第1の断面直径において、V字支持セクションの角度は、可能な限り小さくなされ得、特にリムが互いに平行に延在する0°であり得る。具体的には、V字支持セクションの角度は、第1の断面直径を有する収縮状態において、特に30°未満であり得、好ましくは15°以下であり得る。
【0014】
別の有利な実施形態において、境界要素は、少なくとも部分的に、好ましくは亜鉛(Zn)からなるかまたは亜鉛を含む生体吸収性の材料を含む。生体吸収性の材料を用いる故に、ステントは無期限に体内に残留することが無い、すなわち外科的に除去する必要がない。その代わり、材料は2,3か月後に体内で溶けて、自然の代謝プロセスで吸収されて完全に除去される。このようにして、管の再閉鎖(例えば、後期動脈硬化症または血栓の生成によるもの)をもたらす生体適合性の問題及び体の自己防衛反応は最小化され得る。
【0015】
ポリマー材料、例えばポリ乳酸(PLA)またはポリL乳酸(PLLA)は、生体吸収性の材料として特に知られている。しかし、このようなポリマー材料は、機械的安定性が
低いので、亜鉛部分を有する生体吸収性の材料が好ましく用いられる。亜鉛または亜鉛合金の使用故に、PLA、PLLAまたはマグネシウム合金と比較したステントの放射線不透過性が著しく増大し得る。これによって、X線監視下のステントの挿入は著しく容易になり得、別個のX線マーカーは必ずしも必須ではない。
【0016】
他の知られている生態吸収性の材料は、上で既に示されたマグネシウム及びマグネシウム合金である。体内において、マグネシウムは体内の組織内に含まれる水分と悪く反応し、エネルギーを解放して酸化マグネシウムと水素を生成する。水素はガスの形で存在し、例えば、血流中の対応する濃度において生命を脅かす塞栓症をもたらし得る。従って、マグネシウム合金からなるステントは、通常は、複雑でありかつ/あるかまたは高価な態様のPLLAコーティングとともにもたらされ、分解プロセスが制御され得る。さらに、特に、機械的性質が破断点伸び(elongation at break)に関して亜鉛合金より悪い。
【0017】
純粋な亜鉛または亜鉛合金は、特に、生態吸収性の材料として用いられ得る。亜鉛合金は、例えば、銀(Ag)及び/またはチタン(Ti)を混ぜることで生成され得る。この亜鉛合金は、好ましくは、90.0から99.95質量%の亜鉛及び0.05から10.0質量%の銀を有し得る。同様に、0.05から10.0質量%のチタンが亜鉛合金に混合され得る。しかし、銀及び/またはチタンの0.9から4.0質量%の範囲が好ましく用いられ得、亜鉛合金は亜鉛から成っている。3.0質量%の銀及び/またはチタンは、亜鉛に加えて用いられるのが特に好ましく、特に2.8から3.2質量%の間が好ましい。3.0質量%の銀と97質量%の亜鉛との組み合わせは、本明細書に記載されているステントに関する機械的安定性について有利であることが見いだされている。
【0018】
さらなる有利な実施形態によれば、生体吸収性の材料は亜鉛及び銀から成り、当該生体吸収性の材料は、90.0から99.95質量%の亜鉛及び0.05から10.0%の銀を含む。
【0019】
このように、生体吸収性の材料は、亜鉛及び銀のみからなり得る。このような合金は、欧州特許出願EP 16 702 899.2に記載されている。
【0020】
例えば、本願明細書に記載の亜鉛並びに銀及び/またはチタンの亜鉛合金は、180から210MPaの引張強度を有し得、好ましくは190から200MPaの引張強度を有し得る。これについて、引張強度は、例えば、生体吸収性の材料ではなくかつ約586MPaの引張強度を有する316Lステンレスよりも低い。しかし、それにもかかわらず、高い放射方向展開力を有するステントは、本発明によって選択されたストラット角度によってもたらされ得る。
【0021】
さらに、本明細書に記載の亜鉛合金は、80から180%、例えば80から100%、好ましくは90から100%の範囲の破断点伸びを有し得る。破断点伸びは、材料が破断するまで延び得るパーセンテージを示す。
【0022】
上記亜鉛合金の破断点伸びの高い値は、例えば、316Lステンレス鋼(破断点伸び35%)又は純亜鉛(破断点伸び8%)を用いるよりも、ステントのさらに著しく柔軟な支持ストラットを実現可能とする。これにより、特に、本発明による大きなストラット角度が容易とされ、収縮している第1の断面直径を有している状態と拡張している第2の断面直径を有する状態との間でV字支持セクションの大きな角度差が実現される。
【0023】
本明細書における破断点伸びの値は、ステントの実際に処理された生体吸収性の材料に適用される。実際の処理に先駆けて、生体吸収性の材料は、例えば、押出成形及び/または管の引き抜きによって処理され得、それによって、破断点伸び(及び他の材料特性)が純粋な合金に比べて著しく変わり得る。
【0024】
更なる有利な実施形態によれば、支持ストラットは、上述の範囲のストラット角度を各々が有する複数のV字支持セクションを含み、支持ストラットのジグザグ形状が少なくとも部分的にもたらされる。従って、複数のV字支持セクションは、支持ストラットのジグザグ形状がもたらされるように列をなして配され得る。この点において、V字支持セクションの「開口部」が、各々交互に反対の方向に向いたリムによって画定される。
【0025】
個々の支持セクションのストラット角度は各々異なり得るが、上述の範囲の1つの範囲内あり得る。代替的に、ストラット角度の少なくとも幾つかまたは全ては同一であり得、この点に関して、10%まで、好ましくは5%まで、特に好ましくは3%までの偏差が同一と考えられる。同一又は少なくとも同様のストラット角度の故に、ステントの均質なデザインが達せられ得る。支持ストラットは、特に、例えば、8、12又は16のV字支持セクションから形成され得る。
【0026】
さらに有利な実施形態によれば、長手コネクタがストラット角度の領域内において支持ストラットに取り付けられ、支持ストラットを少なくとも1つの他の支持ストラットに接続する。長手コネクタは、特に、V字支持セクションの2つのリムが互いに接する点において取り付けられ得る。ストラット角度は、長手コネクタを考慮に入れずに判定されるのが好ましい。
【0027】
長手コネクタは、少なくとも実質的に軸方向に平行に伸張するのが好ましく、よって支持ストラットに対してほぼ直角であるのが好ましい。この長手コネクタは、特に、境界要素であり、2つの長手コネクタ及び支持ストラットの付随するセクションがセルに亘るかまたはセルを画定する。
【0028】
長手コネクタは、平面視においておおよそ円形又は楕円形の位置マーカーを有するのが好ましい。位置マーカーは、生体吸収性の材料の肥厚部を含み得るか又は当該肥厚部からなり得る。位置マーカーは、特に、カテーテルにおけるステントの位置決めを可能とし得る。位置マーカーは、支持ストラットと隣接しているかまたは隣り合って配されているのが好ましい。
【0029】
軸方向周りの支持ストラットの広がりに沿って、ストラット角度は、各々場合において、支持ストラットの長手コネクタから離れた側及び支持ストラットの長手コネクタに面した側に交互に配され得る。ストラット角度が長手コネクタに面した側にあるとき、長手コネクタはおおよそストラット角度の中心に配され得る。
【0030】
さらに、長手コネクタは、第2のストラット角度毎の領域にのみ取り付けられ得る。支持ストラットの周辺方向に沿って見ると、長手コネクタは支持ストラットの反対側にある側部に交互に取り付けられ得る。言い換えると、更なるV形状支持セクションは、長手コネクタよりむしろ支持ストラット毎に存在する。代替的に、長手コネクタの数と完全に同数のV形状支持セクションが存在し得る。
【0031】
複数の長手コネクタ、特に、ちょうど2つまたは3つの長手コネクタは、同じ側において支持ストラットの各々に取り付けられるのが好ましい。これは、2つの隣り合う支持ストラットが、ちょうど2つまたは3つの長手コネクタによって互いに接続されていることを意味する。2つまたは3つの長手コネクタへの接続の故に、支持されるべき中空器官の曲率及び曲線に容易に適応可能なように、ステントを柔軟に形成することが可能になる。同時に、高い放射方向展開力が支持ストラットによってもたらされる。
【0032】
ステントは、特に、支持ストラット及び支持ストラットを接続する長手コネクタのみからなる中間部分を有し得る。この中間部分は、軸方向に見てステントの2つの端部の間に配される。
【0033】
他の有利な実施形態によれば、支持ストラットは、軸方向周りに半径方向に少なくとも実質的に回転し、軸方向が支持スラットによって画定される平面の法線ベクトルを形成する。支持ストラットによって画定される平面の定義に関して、ジグザグ形状の支持ストラットは考慮されず、必要であれば平均化される。言い換えれば、支持ストラットは、軸方向に対して、横方向に、斜めに又は傾いて配されない。むしろ、軸方向は、支持ストラットによって画定される平面に垂直である。支持ストラットは、結果として、特に、互いに交わらない。支持ストラットの全ては、この態様で好ましく配される。
【0034】
他の有利な実施形態によれば、ステントが、第2の断面直径よりも大きい第3の断面直径まで拡張可能であり、ステントがこの第3の断面直径を有している際に、ストラット各℃は少なくとも120°増加し、好ましくは少なくとも140°または160°まで増加する。少なくとも165°または170°のストラット角度は、特に、第3の断面直径の場合に見られ得る。ストラット角度は、第2の断面直径の場合よりも第3の断面直径の場合の方が少なくとも10°または20°大きくなり得る。
【0035】
例えば、冠状動脈の領域にて、ステントの挿入においてステントを第3の断面直径まで一時的に大きくして、それによってステントが血管の各々の中でよりよく埋め込まれ、管腔を十分な寸法に維持して閉塞のないまたは邪魔のない血流を確保することが必要であり得る。これによって血栓症をもたらし得る血小板の付着が低減させられる。
【0036】
第3の断面直径は、第2の断面直径よりも、少なくとも7から20%(例えば、10%または14%)大きくともよい。特に、本命明細書に記載の亜鉛合金の故に、ステントの材料は、第3の断面直径の際の上述のストラット角度が材料の破壊を起こさずに達成され得るほど柔軟であり得る。第3の断面直径の際の最大ストラット角度は、170°であり得、好ましくは最大で150°であり得る
他の有利な実施形態によれば、端部領域を除いて軸方向において同一の態様でデザインされている。これは、ステントがどこにおいても同一のデザインを有しており、例えば、その端部においてその同様のデザインから逸脱しているのみであり得ることを意味する。軸方向における端部は、例えば、ステントが分岐なしに血液の経路に挿入された場合に、血液の流入または流出が起きる端部として理解される。
【0037】
代替的に、境界要素は、予め規定された血管分岐領域内で、同一のサイズの他の領域における境界要素よりも小さい質量を有し、このより小さい質量は、例えば、より薄い境界要素によって達せられる。予め規定された血管分岐領域は、ステントが拡張された状態で第2の断面直径を有する際にもたらされる領域、特に曲がった領域である。
【0038】
血管分岐領域は、血管分岐に位置する役目を果たし、血管分岐領域の領域のより小さい質量の故に、この分岐の拡張がさらに容易に可能となる。従って、これにより、血管分岐領域の領域において切欠きが形成され得、当該切欠きは、血管分岐に関して閉塞のないまたは邪魔のない血流を可能にする。
【0039】
このより小さい質量を達成するために、境界要素の経路長さ毎の質量は、例えば、少なくとも15%、好ましくは25%他の境界要素の場合よりも小さくあり得る。従って、境界要素及び、例えば、血管分岐領域を通って伸張する支持ストラットの領域も、例えば25%薄いか狭くあり得る。
【0040】
他の有利な実施形態によれば、長手コネクタは、血管分岐領域内に配されていない。言い換えれば、複数の支持ストラットのみが、例えば、V字支持セクションとともに、血管分岐領域にもうけられる。長手コネクタの省略の故に、境界要素の質量が小さくなる。分岐の拡張がこの態様にてさらにもっと単純化されるが、放射方向の強度は維持される。
【0041】
他の有利な実施形態によれば、1または複数のX線マーカーが血管分岐領域内にかつ/または血管分岐領域に隣接して廃される。このX線マーカーは、X線不透過性の材料、例えばタンタルを有し得る。このX線不透過性の材料は、境界要素の小穴またはアイレット形状の構造内に保持され得る。例えば、具体的には、4つのX線マーカーが設けられ得、これらの各々が、血管分岐領域の境界に一様な間隔で配される。このような態様で配されたX線マーカーの故に、X線監視下における血管分岐におけるステントまたは血管分岐領域の正確な位置決めが著しく容易になされる。
【0042】
他の有利な実施形態によれば、境界要素には少なくとも局所的に薬剤が提供され、この薬剤は所定の期間に亘ってステントによって投与されるのが好ましい。この薬剤は、ステントによる組織の異常増殖を防止するための増殖抑制効果を有し得る。例えば、リムスグループの抗増殖剤、スタチン、P2Y12拮抗薬またはトロンビン拮抗薬が薬剤として用いられ得る。
【0043】
他の実施形態によれば、境界要素の壁厚は、最大で第2の断面直径の4%、好ましくは最大で2%、さらに好ましくは最大で1.5%である。境界要素の幅、すなわち周方向から見た寸法は、好ましくは最大で第2の断面直径の4%、さらに好ましくは最大で2パーセント、特に好ましくは最大で1.7%である。この境界要素は、例えば、約105から120μmの幅を有し、かつ90から115μmの壁厚を有する。
【0044】
従って、本発明のステントは、PLLAからなる従来の生体吸収性のステントの境界要素よりも約25から40%細くかつ/または薄い境界要素を含み得る。この特に薄くかつ細い境界要素の故に、血小板の蓄積がさらに困難になるため、血栓症のリスクがさらに予防される。
【0045】
本発明のステントは、冠状動脈ステントであり得、その第2の断面直径は、例えば、最大で2mmまたは4mmである。
【0046】
本発明の更なる対象は、中空器官、特に血管、尿管、食道、結腸、十二指腸又は胆管内への経管的なインプラントのためのステントに関し、当該ステントは、軸方向に沿って延在しかつ第1の断面直径を有する収縮状態からそれより大きな第2の断面直径を有する拡張状態に変化させられ得る実質的に管状の本体を含む。当該ステントは、管状の本体によって形成された筋交い状またはストラット状の(strut-like)境界要素によって画定される複数のセルを含む。この境界要素は、軸方向周りのリング状に周回している少なくとも1つの支持支柱(または支持ストラット)を含んでおり、長手コネクタが支持ストラットに取り付けられ、支持ストラットを少なくとも1つの他の支持ストラットに接続する。このステントは、長手コネクタが、予め画定された血管分岐領域内に配されていないことを特徴としている。
【0047】
長手コネクタの省略の故に、上述のように、境界要素の質量が小さくなり、分岐の拡張が単純化される。言い換えれば、例えばV字型の支持セクションを有している支持ストラットのみが血管分岐領域内に設けられる。
【0048】
血管分岐領域は、特に、ステントの領域内においてステントによって支持されている血管に通じている動脈または静脈のサイズを有し得る。
【0049】
1つの実施形態によれば、1または複数のX線マーカーまたは位置マーカーが血管分岐領域内及び/かまたは当該血管分岐領域の隣に配されている。
【0050】
1つの実施形態によれば、境界要素は、所定の血管分岐領域内で、同一サイズの単領域内の境界要素よりも小さな質量を有し、この小さな質量は、例えば、より薄い境界要素によって達成される。
【0051】
開示される他のステントに関しては、冒頭に言及されたステントに関して本明細書にてなされた説明が適用され、特に、これは利点と好ましい実施形態に適用される。
【0052】
本発明は、以下に、図面を参照して単に例示として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】拡張状態のステントの外観を示す図である。
図2図1のステントの外観を示す図であり、ステントが過度の拡張状態にある。
図3】収縮状態の図1のステントを示す図である。
図4】ステントの血管分岐領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、ステント10の公称直径に対応する第2の断面直径を有する拡張状態のステント10の一部を示している。ステント10は、軸方向Aに沿って伸張する管状本体12を含む。この図は、軸方向Aと垂直な視認方向からみたステント10を示している。ステント10は、全体として格子状構造を形成する複数の境界要素14によって形成されている。ステント10は、図1に示した部分の左及び右に延在するように続いている。
【0055】
境界要素14の幾つかは、支持ストラット16を形成しており、当該支持ストラット16は、軸方向A周りにリング状に周回している。支持ストラット16は、複数のV字支持セクション18を含んでおり、当該V字支持セクション18は、支持ストラット16が周方向においてジグザグ形状の構造を有するように列をなして配されている。V字支持セクション18の各々は、2つのリム20を含んでおり、当該2つのリム20の間でストラット角度22が画定される。図示されている実施形態において、ストラット角度22は、約105°と110°との間である。
【0056】
ストラット角度22の領域において、支持ストラット16は長手コネクタ24によって互いに接続されており、いずれの場合も、第2の支持セクション18の各々のみが周方向において長手コネクタ24に接続されている。周方向で見ると、長手コネクタ24の各々は、支持ストラット16の反対にある側部に互い違いに取り付けられている。
【0057】
支持ストラット16のジグザグ形状は、隣り合う支持ストラット16が概ね平行に伸張するように選択される、すなわち支持ストラット16は、互いにオフセットしていないか又は互いに回転させられていない。これは、異なった支持ストラット16の2つのリム20の各々の接続点がそれぞれ概ね直線に沿って延在しており、ストラット角度22が、当該直線に沿って支持ストラット16の同一の側にそれぞれ配されていることを意味する。
【0058】
図示されているステント10は、97%の亜鉛(Zn)及び3%の銀(Ag)を有する生体吸収性の材料によって形成されている。この亜鉛合金の選択の故に、示されている大きなストラット角度22が境界要素14の破壊のリスクなしに達せられ得る。
【0059】
図2に示されているように、ステントを、一時的に上述の第2の断面直径よりも少なくとも7から20%大きい断面直径となる過拡張状態にすることも可能である。このような状態は図2に示されている。図2に示されているように、この状態において、ストラット角度22は120°よりも大きくあり得る。
【0060】
対照的に、図3は、第1の断面直径を有する収縮状態のステント10を示している。この状態において、リム20は、ストラット角度22が存在しないかまたは約0°であるように略平行である。
【0061】
最後に、図4は、ステント10の、図1乃至3に示されたのと異なる部分を示している。図4は、平面形状が略円形の血管分岐領域28を有するステント10の部分を示している。
【0062】
支持ストラット16は、血管分岐領域28がステント10の残りの部分よりも25%薄くデザインされている。さらに、長手コネクタ24が、血管分岐領域28内に配されておらず、これは破線で示された長手コネクタ24(存在しない)によって示されている。血管分岐領域28を通って延在している支持ストラット16は、血管分岐領域28の外側に配された長手コネクタ24によって接続されていることが理解される。これらは図4には示されていない。長手コネクタ24の省略及び支持ストラット16のより薄いデザインは、支持ストラット16が血管分岐の領域内で外方に撓む、すなわち、支持ストラット16が、例えば、血管分岐を通過する血流を改善するために、血管分岐領域28の周辺に向かって曲げられ得るような、血管分岐領域28の領域におけるステントの膨張を容易にする。
【0063】
省略された長手コネクタ24の領域において、全部で4つの円形又は楕円形の位置マーカー26がストラット16に取り付けられる。この位置マーカーは、カテーテル(図示せず)におけるステント10の位置決めを容易にする。
【符号の説明】
【0064】
10 ステント
12 管状本体
14 境界要素
16 支持ストラット
18 V字支持セクション
20 リム
22 ストラット角度
24 長手コネクタ
26 位置マーカー
28 血管分岐領域
A 軸方向
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】