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特表2022-532783向上した異種移植生存及び/又は耐性のための1つ以上の改変遺伝子を有する細胞、組織、器官、及び/又は動物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(54)【発明の名称】向上した異種移植生存及び/又は耐性のための1つ以上の改変遺伝子を有する細胞、組織、器官、及び/又は動物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/85 20060101AFI20220711BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220711BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20220711BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220711BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220711BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20220711BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20220711BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
C12N5/10 ZNA
A01K67/027
C12N15/12
C12N15/11 Z
C12N15/54
C12N15/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568652
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 CN2020090440
(87)【国際公開番号】W WO2020228810
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/087310
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/087314
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/112038
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/112039
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519375457
【氏名又は名称】イージェネシス,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521500155
【氏名又は名称】ハンチョウ キハン バイオテクノロジー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ルハン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ヤンビン
(72)【発明者】
【氏名】グエル,マーク
(72)【発明者】
【氏名】カン,イーナン
(72)【発明者】
【氏名】チン,ウェニング
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
(57)【要約】
向上した異種移植生存及び/又は耐性のための1つ以上の改変遺伝子を有する細胞、組織、器官、及び/又は動物、並びに細胞、組織、器官、及び/又は動物を生産及び使用する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症応答導入遺伝子、免疫応答導入遺伝子、免疫調節物質導入遺伝子、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも2つのタイプの複数の導入遺伝子を含む、単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項2】
複数の導入遺伝子を含む単離された細胞、組織、器官、又は動物であって、前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの炎症応答導入遺伝子、少なくとも1つの免疫応答導入遺伝子、及び少なくとも1つの免疫調節物質導入遺伝子を含む、単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項3】
前記炎症応答導入遺伝子は、TNFα誘導タンパク質3(A20)、ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)、分化のクラスター47(CD47)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項4】
前記免疫応答導入遺伝子は、ヒト白血球抗原-E(HLA-E)、β-2ミクログロブリン(B2M)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項5】
前記免疫調節物質導入遺伝子は、プログラムデスリガンド1(PD-L1)、Fasリガンド(FasL)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項6】
前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの凝固応答導入遺伝子をさらに含む、請求項1又は2に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項7】
前記凝固応答導入遺伝子は、分化のクラスター39(CD39)、トロンボモジュリン(THBD)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項8】
前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの補体応答導入遺伝子をさらに含む、請求項1又は2に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項9】
前記補体応答導入遺伝子は、ヒト膜補因子タンパク質(hCD46)、ヒト補体崩壊促進因子(hCD55)、ヒトMAC-阻害剤因子(hCD59)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項10】
補体応答導入遺伝子、凝固応答導入遺伝子、炎症応答導入遺伝子、免疫応答導入遺伝子、及び免疫調節物質導入遺伝子からなる群からそれぞれ独立して選択される6個以上の導入遺伝子を含む、単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項11】
前記単離された細胞、組織、器官、又は動物は、9、10、11、又は12個の導入遺伝子を含む、請求項10に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項12】
前記補体応答導入遺伝子は、ヒト膜補因子タンパク質(hCD46)、ヒト補体崩壊促進因子(hCD55)、ヒトMAC-阻害剤因子(hCD59)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項13】
前記凝固応答導入遺伝子は、分化のクラスター39(CD39)、トロンボモジュリン(THBD)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項14】
前記炎症応答導入遺伝子は、TNFα誘導タンパク質3(A20)、ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)、分化のクラスター47(CD47)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項15】
前記免疫応答導入遺伝子は、ヒト白血球抗原-E(HLA-E)、β-2ミクログロブリン(B2M)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項16】
前記免疫調節物質導入遺伝子は、プログラムデスリガンド1(PD-L1)、Fasリガンド(FasL)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項17】
前記6個以上の導入遺伝子は、hCD46、hCD55、hCD59、HLA-E、B2M、CD47、CD39、THBD、TFPI、A20、PD-L1、及びHO-1からなる群から選択される、請求項10~16のいずれか一項に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項18】
前記細胞、組織、器官、又は動物は、hCD46、hCD55、hCD59、CD39、THBD、TFPI、A20、HO-1、CD47、HLA-E、B2M、及びPD-L1導入遺伝子又はTHBD、TFPI、CD39、CD46、CD55、CD59、CD46、HO-1、A20、B2M、HLA-E SCT、及びCD47導入遺伝子を含む、請求項17に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項19】
図17~20、31、又は47~49の1つにおけるベクターを含む、請求項18に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項20】
前記少なくとも6個の導入遺伝子は、単一の遺伝子座から発現される、請求項10~19のいずれか一項に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項21】
前記少なくとも6個の導入遺伝子は、臨床的に有効なレベルで発現される、請求項10~20のいずれか一項に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項22】
遺伝子改変されているフォン・ウィルブランド因子(vWF)遺伝子をさらに含む、請求項10~21のいずれか一項に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項23】
前記改変vWF遺伝子は、ヒト化されている、請求項22に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項24】
アシアロ糖タンパク質受容体1(ASGR1)の欠失、破壊、又は不活性化をさらに含む、請求項10~23のいずれか一項に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項25】
1つ以上の炭水化物抗原遺伝子の欠失、破壊、又は不活性化をさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項26】
前記1つ以上の炭水化物抗原遺伝子は、糖タンパク質α-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(GGTA)、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ2(B4GalNT2)、シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)からなる群から選択される、請求項25に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項27】
前記単離された細胞、組織、器官、又は対象は、ブタ細胞、ブタ組織、ブタ器官、豚又はその子孫である、請求項1~26のいずれか一項に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項28】
前記単離された細胞、組織、器官、又は動物は、PERV非含有ブタ細胞、PERV非含有ブタ組織、又はPERV非含有ブタである、請求項27に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項29】
前記器官は腎臓又は肝臓である、請求項1~28のいずれか一項に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項30】
炎症応答導入遺伝子、免疫応答導入遺伝子、免疫調節物質導入遺伝子、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも2つのタイプの複数の導入遺伝子を含むベクター。
【請求項31】
複数の導入遺伝子を含むベクターであって、前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの炎症応答導入遺伝子、少なくとも1つの免疫応答導入遺伝子、及び少なくとも1つの免疫調節物質導入遺伝子を含む、ベクター。
【請求項32】
前記炎症応答導入遺伝子は、TNFα誘導タンパク質3(A20)、ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)、分化のクラスター47(CD47)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項30又は31に記載のベクター。
【請求項33】
前記炎症応答導入遺伝子の少なくとも一部の発現は、組織特異的プロモーター、遍在性プロモーター、又はそれらの任意の組合せによって駆動される、請求項30~32のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項34】
前記組織特異的プロモーターは内皮特異的プロモーターである、請求項33に記載のベクター。
【請求項35】
前記免疫応答導入遺伝子は、ヒト白血球抗原-E(HLA-E)、β-2ミクログロブリン(B2M)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項30又は31に記載のベクター。
【請求項36】
前記免疫応答導入遺伝子の少なくとも一部の発現は、遍在性プロモーターによって駆動される、請求項30、31、又は35に記載のベクター。
【請求項37】
前記免疫調節物質導入遺伝子は、プログラムデスリガンド1(PD-L1)、Fasリガンド(FasL)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項30又は31に記載のベクター。
【請求項38】
前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの凝固応答導入遺伝子をさらに含む、請求項30又は31に記載のベクター。
【請求項39】
前記凝固応答導入遺伝子は、分化のクラスター39(CD39)、トロンボモジュリン(THBD)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項38に記載のベクター。
【請求項40】
前記凝固応答導入遺伝子の少なくとも一部の発現は、組織特異的プロモーターによって駆動される、請求項38又は39に記載のベクター。
【請求項41】
前記組織特異的プロモーターは、内皮特異的プロモーターである、請求項40に記載のベクター。
【請求項42】
前記内皮特異的プロモーターは、低発現内皮特異的プロモーターである、請求項41に記載のベクター。
【請求項43】
前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの補体応答導入遺伝子をさらに含む、請求項30又は31に記載のベクター。
【請求項44】
前記補体応答導入遺伝子は、ヒト膜補因子タンパク質(hCD46)、ヒト補体崩壊促進因子(hCD55)、ヒトMAC-阻害剤因子(hCD59)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項43に記載のベクター。
【請求項45】
前記補体応答導入遺伝子の少なくとも一部の発現は、遍在性プロモーターによって駆動される、請求項43又は44に記載のベクター。
【請求項46】
補体応答導入遺伝子、凝固応答導入遺伝子、炎症応答導入遺伝子、免疫応答導入遺伝子、及び免疫調節物質導入遺伝子からなる群からそれぞれ独立して選択される6個以上の導入遺伝子を含むベクター。
【請求項47】
前記ベクターは、9、10、11、又は12個の導入遺伝子を含む、請求項46に記載のベクター。
【請求項48】
前記補体応答導入遺伝子は、ヒト膜補因子タンパク質(hCD46)、ヒト補体崩壊促進因子(hCD55)、ヒトMAC-阻害剤因子(hCD59)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項46に記載のベクター。
【請求項49】
前記補体応答導入遺伝子の少なくとも一部の発現は、遍在性プロモーターによって駆動される、請求項46~48のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項50】
前記凝固応答導入遺伝子は、分化のクラスター39(CD39)、トロンボモジュリン(THBD)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項46に記載のベクター。
【請求項51】
前記凝固応答導入遺伝子の少なくとも一部の発現は、組織特異的プロモーターによって駆動される、請求項43~50のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項52】
前記組織特異的プロモーターは、内皮特異的プロモーターである、請求項51に記載のベクター。
【請求項53】
前記内皮特異的プロモーターは、低発現内皮特異的プロモーターである、請求項52に記載のベクター。
【請求項54】
前記炎症応答導入遺伝子は、TNFα誘導タンパク質3(A20)、ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)、分化のクラスター47(CD47)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項46に記載のベクター。
【請求項55】
前記炎症応答導入遺伝子の少なくとも一部の発現は、組織特異的プロモーター、遍在性プロモーター、又はそれらの任意の組合せによって駆動される、請求項46~54のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項56】
前記組織特異的プロモーターは、内皮特異的プロモーターである、請求項55に記載のベクター。
【請求項57】
前記免疫応答導入遺伝子は、ヒト白血球抗原-E(HLA-E)、β-2ミクログロブリン(B2M)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項46に記載のベクター。
【請求項58】
前記免疫応答導入遺伝子の少なくとも一部の発現は、遍在性プロモーターによって駆動される、請求項46~57のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項59】
前記免疫調節物質導入遺伝子は、プログラムデスリガンド1(PD-L1)、Fasリガンド(FasL)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項46に記載のベクター。
【請求項60】
前記6個以上の導入遺伝子は、hCD46、hCD55、hCD59、HLA-E、B2M、CD47、CD39、THBD、TFPI、A20、PD-L1、及びHO-1からなる群から選択される、請求項46~59のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項61】
前記ベクターは、hCD46、hCD55、hCD59、CD39、THBD、TFPI、A20、HO-1、CD47、HLA-E、B2M、及びPD-L1導入遺伝子又はTHBD、TFPI、CD39、CD46、CD55、CD59、CD46、HO-1、A20、B2M、HLA-E SCT、及びCD47導入遺伝子を含む請求項60に記載のベクター。
【請求項62】
図17~20、31、又は47~49の1つにおけるベクターを含む、請求項61に記載のベクター。
【請求項63】
前記少なくとも6個の導入遺伝子は、単一の遺伝子座から発現される、請求項46~62のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項64】
請求項1~29のいずれか一項に記載の単離された細胞、組織、又は動物の作製方法。
【請求項65】
転位を介した単一コピーポリシストロン性導入遺伝子組込み、リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を介した一/二対立遺伝子部位特異的組込み、ゲノム置換、内因性遺伝子ヒト化、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
豚のものではない血液に暴露された際に、減少した肝臓損傷及び/又は安定な凝固を有する遺伝子導入豚肝臓であって、
前記減少した肝臓損傷は、胆汁産生、1つ以上の代謝酵素、及び1つ以上の血清電解質の1つ以上のレベルを決定することによって評価され、及び
前記安定な凝固は、プロトロンビン時間(PT)及び国際標準化比(PT-NIR)、フィブリノーゲンレベル(FIB)、並びにより低い活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の1つ以上のレベルを決定することによって評価される、遺伝子導入豚肝臓。
【請求項67】
前記代謝酵素は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、及びアルブミン(ALB)からなる群から選択される、請求項66に記載の遺伝子導入豚肝臓。
【請求項68】
前記血清電解質は、カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)である、請求項66又は67に記載の遺伝子導入豚肝臓。
【請求項69】
(a)炎症応答導入遺伝子、免疫応答導入遺伝子、免疫調節物質導入遺伝子、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも2つのタイプの複数の導入遺伝子を含み、
(b)異種指向性ブタ内因性レトロウイルス(PERV)ビリオンの産生が実質的にない、
単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項70】
(a)複数の導入遺伝子を含み、前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの炎症応答導入遺伝子、少なくとも1つの免疫応答導入遺伝子、及び少なくとも1つの免疫調節物質導入遺伝子を含み、
(b)異種指向性ブタ内因性レトロウイルス(PERV)ビリオンの産生が実質的にない、
単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項71】
前記ブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物は、PERVポリメラーゼ(pol)の酵素活性が実質的にない、請求項69又は70に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項72】
前記ブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物は、機能的全長PERV polタンパク質の発現が実質的にない、請求項69又は70に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項73】
ゲノムPERV polコピーのコード配列の少なくとも約97%が破壊されている、請求項69又は70に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項74】
ゲノムPERV polコピーの実質的に全部のコード配列が破壊されている、請求項69又は70に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項75】
ゲノムPERV polコピーから転写されたPERV pol mRNAの少なくとも約97%のコード配列が破壊されている、請求項69又は70に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項76】
破壊は、前記PERV pol コード配列の少なくとも1つのヌクレオチド位置での少なくとも1つのフレームシフト挿入/欠失(インデル)を含む、請求項73~75のいずれか一項に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項77】
前記ブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物は、機能的PERV gag及び/又はenvタンパク質を発現する、請求項69~76のいずれか一項に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項78】
前記ブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物は、PERV gag及び/又はenv遺伝子の実質的に全部のゲノムコピーの無傷コード配列を含む、請求項69~77のいずれか一項に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項79】
前記ブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物は、ヒト細胞への低下したPERV感染力を示す、請求項69~78のいずれか一項に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項80】
前記ブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物は、野生型ブタ細胞と比較して少なくとも200倍低い、ヒト細胞へのPERV感染力を示す、請求項79に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項81】
前記ブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物は、PERV pol遺伝子又はmRNAを標的とするゲノム改変を欠く、ブタの単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物と比較して、ヒト細胞への低下したPERV感染力を示す、請求項79又は80に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項82】
PERV感染力は、前記ブタの単離された細胞、組織、器官、若しくは動物、又はその外科的外植片をヒト細胞と共培養することによって確認される、請求項79~81のいずれか一項に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項83】
PERV感染力は、前記ブタ動物由来の細胞外液をヒト細胞と共培養することによって確認される、ブタ動物である請求項79~81のいずれか一項に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項84】
PERV感染力は、前記共培養後に、PERVゲノム配列又は抗原の存在について、前記ヒト細胞をシーケンシング、PCR、又はイムノアッセイにより分析することによって、少なくとも部分的に確認される、請求項82又は83に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項85】
前記PERVは、PERV-A、PERV-B、PERV-A/C、又はその組換え変異体である、請求項69~84のいずれか一項に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項86】
前記炎症応答導入遺伝子は、TNFα誘導タンパク質3(A20)、ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)、分化のクラスター47(CD47)、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項69~85のいずれか一項に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項87】
前記免疫応答導入遺伝子は、ヒト白血球抗原-E(HLA-E)、β-2ミクログロブリン(B2M)、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項69~86のいずれか一項に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項88】
前記免疫調節物質導入遺伝子は、プログラムデスリガンド1(PD-L1)、Fasリガンド(FasL)、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項69~87のいずれか一項に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項89】
前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの凝固応答導入遺伝子をさらに含む、請求項69~88のいずれか一項に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項90】
前記凝固応答導入遺伝子は、分化のクラスター39(CD39)、トロンボモジュリン(THBD)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項89に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項91】
前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの補体応答導入遺伝子をさらに含む、請求項69~90のいずれか一項に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項92】
前記補体応答導入遺伝子は、ヒト膜補因子タンパク質(hCD46)、ヒト補体崩壊促進因子(hCD55)、ヒトMAC-阻害剤因子(hCD59)、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項91に記載のブタの単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項93】
前記単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物は、前記導入遺伝子のゲノム組込みを含む、請求項69~92のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項94】
前記単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物は、前記導入遺伝子の生殖系列伝達可能なゲノム組込みを含む、請求項93に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項95】
前記ブタ細胞、組織、器官、又は動物は、前記導入遺伝子から転写された検出可能なレベルのmRNAを発現する、請求項69~94のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項96】
前記ブタ細胞、組織、器官、又は動物は、前記導入遺伝子から翻訳された検出可能なレベルのタンパク質を発現する、請求項69~95のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項97】
前記ブタ細胞、組織、器官、又は動物は、前記導入遺伝子から転写されたmRNAから翻訳された、治療的に有効なレベルのタンパク質を発現する、請求項69~95のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項98】
(a)補体応答導入遺伝子、凝固応答導入遺伝子、炎症応答導入遺伝子、免疫応答導入遺伝子、及び免疫調節物質導入遺伝子からなる群からそれぞれ独立して選択される6個以上の導入遺伝子を含み、
(b)異種指向性ブタ内因性レトロウイルス(PERV)ビリオンの産生が実質的にない、
単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項99】
前記単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物は、前記導入遺伝子の9、10、11、又は12個を含む、請求項98に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項100】
前記補体応答導入遺伝子は、ヒト膜補因子タンパク質(hCD46)、ヒト補体崩壊促進因子(hCD55)、ヒトMAC-阻害剤因子(hCD59)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項98又は99に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項101】
前記補体応答導入遺伝子の少なくとも一部の転写は、遍在性プロモーターの転写制御下にある、請求項100に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項102】
前記凝固応答導入遺伝子は、分化のクラスター39(CD39)、トロンボモジュリン(THBD)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項98~101のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項103】
前記凝固応答導入遺伝子の少なくとも一部の転写は、組織特異的プロモーターの転写制御下にある、請求項98~102のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項104】
前記組織特異的プロモーターは内皮特異的プロモーターである、請求項103に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項105】
前記内皮特異的プロモーターは、低発現内皮特異的プロモーターである、請求項104に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項106】
前記炎症応答導入遺伝子は、TNFα誘導タンパク質3(A20)、ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)、分化のクラスター47(CD47)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項98~105のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項107】
前記炎症応答導入遺伝子の少なくとも一部の転写は、組織特異的プロモーター、遍在性プロモーター、又はそれらの任意の組合せによって駆動される、請求項98~106のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項108】
前記組織特異的プロモーターは内皮特異的プロモーターである、請求項107に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項109】
前記免疫応答導入遺伝子は、ヒト白血球抗原-E(HLA-E)、β-2ミクログロブリン(B2M)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項98~108のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項110】
前記免疫応答導入遺伝子の少なくとも一部の発現は、遍在性プロモーターによって駆動される、請求項98~109のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項111】
前記免疫調節物質導入遺伝子は、プログラムデスリガンド1(PD-L1)、Fasリガンド(FasL)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項98~110のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項112】
前記6個以上の導入遺伝子は、hCD46、hCD55、hCD59、HLA-E、B2M、CD47、CD39、THBD、TFPI、A20、PD-L1、及びHO-1からなる群から選択される、請求項98~111のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項113】
前記細胞、組織、器官、又は動物は、hCD46、hCD55、hCD59、CD39、THBD、TFPI、A20、HO-1、CD47、HLA-E、B2M、及びPD-L1導入遺伝子又はTHBD、TFPI、CD39、CD46、CD55、CD59、CD46、HO-1、A20、B2M、HLA-E SCT、及びCD47導入遺伝子を含む、請求項98~112のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項114】
前記導入遺伝子は、単一の遺伝子座から発現される、請求項98~113のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項115】
前記導入遺伝子は、3つ以下のシストロンに転写される、請求項98~114のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項116】
シストロンは、少なくとも3つの異なる導入遺伝子のコード配列を含み、前記少なくとも3つの異なる導入遺伝子は、ブタテッショウウイルス2A(P2A)ペプチドのコード配列によって分離される、請求項115に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項117】
1つ以上の異種性炭水化物抗原産生遺伝子の欠失、破壊、又は不活性化をさらに含む、請求項69~116のいずれか一項に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項118】
前記1つ以上の異種性炭水化物抗原産生遺伝子は、糖タンパク質α-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(GGTA)、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ2(B4GalNT2)、シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)からなる群から選択される、請求項117に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項119】
GGTAの2コピー、B4GALNT2の4コピー、又はCMAHの2コピー、又はそれらの任意の組合せにおける欠失、破壊、又は不活性化を含む、請求項118に記載の単離された細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項120】
(a)補体応答導入遺伝子、凝固応答導入遺伝子、炎症応答導入遺伝子、免疫応答導入遺伝子、及び免疫調節物質導入遺伝子からなる群からそれぞれ独立して選択される6個以上の導入遺伝子を含み、
(b)異種指向性ブタ内因性レトロウイルス(PERV)ビリオンの産生が実質的になく、
(c)GGTAの2コピー、B4GALNT2の4コピー、又はCMAHの2コピー、又はそれらの任意の組合せにおける欠失、破壊、又は不活性化を含む、
単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項121】
前記細胞、組織、器官、又は動物は、ヒト血液又はその画分に暴露された際に、ヒト抗体への低下した結合を示す、請求項69~120のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項122】
前記細胞、組織、器官、又は動物は、ヒト血液又はその画分に暴露された際に、ヒト抗体への少なくとも約5倍低下した結合を示す、請求項121に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項123】
前記細胞、組織、器官、又は動物は、ヒト血液又はその画分に暴露された際に、ヒト抗体への少なくとも約10倍低下した結合を示す、請求項121に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項124】
前記抗体はIgM抗体である、請求項121~123のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項125】
前記抗体はIgG抗体である、請求項121~123のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項126】
前記細胞、組織、器官、又は動物は、ヒト血液に暴露された際に、低下したナチュラルキラー(NK)細胞毒性を示す、請求項69~125のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項127】
前記細胞、組織、器官、又は動物は、ヒト血液に暴露された際に、少なくとも約20%低いナチュラルキラー(NK)細胞毒性を示す、請求項126に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項128】
前記細胞、組織、器官、又は動物は、ヒト血液由来の補体に暴露された際に、低下した補体毒性を示す、請求項69~127のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項129】
前記細胞、組織、器官、又は動物は、ヒト血液由来の補体に暴露された際に、少なくとも約5倍低い補体毒性を示す、請求項128に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項130】
前記細胞、組織、器官、又は動物は、ヒト血液に暴露された際に、減少したTAT複合体形成を示す、請求項69~129のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項131】
前記細胞、組織、器官、又は動物は、ヒト血液に暴露された際に、少なくとも約3倍減少したTAT複合体形成を示す、請求項130に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項132】
前記細胞、組織、器官、又は動物は、ヒト血液に暴露された際に、少なくとも約10倍減少したTAT複合体形成を示す、請求項130に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項133】
白血球、血小板、単球、好中球、好酸球、又はそれらの任意の組合せの正常な血球数を示す、動物である、請求項69~132のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項134】
血清アルカリホスファターゼレベル、アスパルテームアミノアシルトランスフェラーゼレベル、アラニンアミノトランスフェラーゼレベル、ALT/ASTレベル、コレステロール、総ビリルビン、トリグリセリド、又はアルブミン/グロブリンレベル、又はそれらの任意の組合せによって評価された場合に正常な肝臓機能を示す、動物である、請求項69~133のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項135】
血清クレアチンキナーゼレベル、クレアチンキナーゼ-MBレベル、乳酸デヒドロゲナーゼレベル、又はそれらの任意の組合せによって評価された場合に正常な心臓機能を示す、動物である、請求項69~134のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項136】
血清クレアチニンレベル、尿素レベル、又はそれらの組合せによって評価された場合に正常な腎臓機能を示す、動物である、請求項69~135のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項137】
トロンビン時間、プロトロンビンレベル、又はそれらの組合せによって評価された場合に正常な凝固機能を示す、動物である、請求項69~136のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【請求項138】
(a)α-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(GGTA)、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ2(B4GalNT2)、若しくはシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)、若しくはそれらの組合せを含む1つ以上の異種性炭水化物抗原産生遺伝子の欠失、破壊、若しくは不活性化;
(b)前記導入遺伝子;
(c)異種指向性ブタ内因性レトロウイルス(PERV)ビリオンの産生の非存在;又は
(d)それらの任意の組合せ;
を子孫動物に伝達することが可能であり、(a)~(d)は、正常なメンデル遺伝によって伝達される、動物である、請求項69~137のいずれか一項に記載の単離されたブタ細胞、組織、器官、又は動物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
[0001] 本出願は2019年5月16日出願のPCT/CN19/87310号、2019年5月16日出願のPCT/CN19/87314号、2019年10月18日出願のPCT/CN19/112038号、及び2019年10月18日出願のPCT/CN19/112039号の開示の全体を、全目的のために組み込むものである。
【0002】
配列表に対する相互参照
[0002] 電子的に提出されたテキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:配列表のコンピューター可読形式(ファイル名:EGEN_037_00WO_SeqList_ST25.txt、記録された日付:2020年5月14日、ファイルサイズ189キロバイト)。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 移植のためのヒト器官及び組織の不足は、過去数十年にわたって増加しており、最も有意な未だ対処されていない医療ニーズの1つである。異種移植は、慢性器官不全を有する患者に対して、ほぼ無限の移植器官供給を提供する可能性がある。器官の大きさと生理機能の類似性は、分子不適合を排除するための遺伝子工学と相まって、ブタを腎異種移植片の選択肢とする。前臨床試験は、ブタ腎異種移植片がヒト以外の霊長類レシピエントにおいて数週間から数ヶ月間生命を維持することを実証した(Higginbotham 2015、Iwase 2015b)。しかしながら、ブタとヒトの間の進化的距離の結果として、ブタ器官は、(i)超急性拒絶反応、(ii)無秩序な血栓調節と白血球動員を伴うII型内皮細胞(EC)活性化からなる急性体液性拒絶反応、(iii)血小板消費とEC活性化を伴う血管内血栓症、フィブリン沈着、及び血栓調節の欠如に起因する血栓症からなる血栓性微小血管症、並びに(iv)慢性血管障害を含む多くの形態でヒト免疫系による拒絶を誘発する。これらの有害事象は、少なくとも部分的には、特に補体、凝固、炎症、及び免疫応答系に関与する遺伝子に関して、ドナーとレシピエントとの間の分子不適合によるものである。異種器官(例えば、ブタ)の臨床使用は、これらの免疫学的不適合により妨げられており、これまでのところ、これは臨床的異種移植におけるブタ細胞、組織、及び血管柄付豚器官の使用を妨げてきた。
【0004】
[0004] 過去20年間に、ブタとヒトの種間不和合性を減少させるいくつかの遺伝子改変が同定されている。しかしながら、以前に同定されたこれらの遺伝子改変は、長期の異種移植片生存を達成していない。さらに、大規模なゲノム工学の技術的限界により、これらの改変を1つの動物に統合することが妨げられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
概要
[0005] 異種移植に使用するため、及び関連した方法を開発するために、遺伝子改変の新規な組合せを有するブタ細胞、組織、器官、及び/又はブタ動物を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] したがって、本開示は、向上した免疫学的適合性をもたらす遺伝子改変を含む細胞、組織、器官、及び動物、並びにこれらの細胞、組織、器官、及び動物の作製に使用するためのベクター及び方法、並びに異種移植におけるこれらの細胞、組織、器官、及び動物の使用を提供する。特定の実施形態では、向上した免疫学的適合性を生じさせる遺伝子改変は、1つ以上の補体応答遺伝子(本明細書では互換的に補体毒性遺伝子と称される)、凝固応答遺伝子(本明細書では互換的に凝固遺伝子と称される)、炎症応答遺伝子(本明細書では互換的にアポトーシス/炎症遺伝子と称される)、免疫応答遺伝子(本明細書では互換的に細胞毒性遺伝子と称される)、及び/又は免疫調節物質遺伝子を含む。
【0007】
[0007] いくつかの態様では、本開示は、炎症応答導入遺伝子、免疫応答導入遺伝子、免疫調節物質導入遺伝子、又はそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも2つのタイプの複数の導入遺伝子を含む、単離された細胞、組織、器官、及び動物を提供する。いくつかの態様では、本開示は、複数の導入遺伝子を含む単離された細胞、組織、器官、又は動物を提供し、前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの炎症応答導入遺伝子、少なくとも1つの免疫応答導入遺伝子、及び少なくとも1つの免疫調節物質導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、前記複数の導入遺伝子は、炎症応答導入遺伝子、免疫応答導入遺伝子、免疫調節物質導入遺伝子、又はそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも3つの導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、炎症応答導入遺伝子は、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質3(A20)、ヘムオキシゲナーゼ(HO-1又はHMOX1)、分化のクラスター(Cluster of Differentiation)47(CD47)、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫応答導入遺伝子は、ヒト白血球抗原-E(HLA-E)、β-2ミクログロブリン(B2M)、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫調節物質導入遺伝子は、プログラムデスリガンド1(PD-L1)、Fasリガンド(FasL)、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記複数の導入遺伝子は、さらに少なくとも1つの凝固応答導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、凝固応答導入遺伝子は、分化のクラスター39(CD39)、トロンボモジュリン(THBD、TBM、又はTM)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記複数の導入遺伝子は、さらに少なくとも1つの補体応答導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、補体応答導入遺伝子は、ヒト膜補因子タンパク質(hCD46又は単にCD46);ヒト補体崩壊促進因子(hCD55又は単にCD55)、ヒトMAC-阻害剤因子(hCD59又は単にCD59)、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0008】
[0008] 一態様において、本開示は、補体応答導入遺伝子(例えば、CD46、CD55、CD59);凝固応答導入遺伝子(例えば、CD39、THBD又はTBM、TFPI);炎症応答導入遺伝子(例えば、A20、HO-1、CD47);免疫応答導入遺伝子(例えば、HLA-E、B2M);及び/又は免疫調節物質導入遺伝子(例えば、PD-L1、FasL)からなる群からそれぞれ独立して選択される1つ以上の導入遺伝子を含む、単離された細胞、組織、器官、及び動物を提供する。特定の実施形態では、細胞、組織、器官、又は動物は、他の遺伝子カテゴリーからの1つ以上の追加の導入遺伝子をさらに含むことができる。
【0009】
[0009] 特定の実施形態では、本明細書に提供される単離された細胞、組織、器官、及び動物は、hCD46、hCD55、及びhCD59からなる群から選択される1つ以上の補体応答導入遺伝子を含む。これらの実施形態のいくつかでは、補体応答導入遺伝子の1つ以上の発現は、遍在性プロモーターによって駆動される。
【0010】
[0010] 特定の実施形態では、本明細書に提供される単離された細胞、組織、器官、及び動物は、CD39、THBD、及びTFPIからなる群から選択される1つ以上の凝固応答導入遺伝子を含む。これらの実施形態のいくつかでは、凝固応答導入遺伝子の1つ以上の発現は、組織特異的プロモーターによって駆動される。これらの実施形態の特定のものでは、組織特異的プロモーターは、内皮特異的プロモーターであり、これらの実施形態の特定のものでは、内皮特異的プロモーターは、低発現内皮特異的プロモーターである。
【0011】
[0011] 特定の実施形態では、本明細書に提供される単離された細胞、組織、器官、及び動物は、A20、HO-1、及びCD47からなる群から選択される1つ以上の炎症応答導入遺伝子を含む。これらの実施形態のいくつかでは、炎症応答導入遺伝子の1つ以上の発現は、遍在性プロモーター、内皮特異的プロモーターなどの組織特異的プロモーター、又はそれらの任意の組合せによって駆動される。
【0012】
[0012] 特定の実施形態では、本明細書に提供される単離された細胞、組織、器官、及び動物は、HLA-E及びB2Mからなる群から選択される1つ以上の免疫応答導入遺伝子を含む。これらの実施形態のいくつかでは、免疫応答導入遺伝子の1つ以上の発現は、遍在性プロモーターによって駆動される。
【0013】
[0013] 特定の実施形態では、本明細書に提供される単離された細胞、組織、器官、及び動物は、PD-L1、FasL、又は両方を含むがこれらに限定されない1つ以上の免疫調節物質導入遺伝子を含む。
【0014】
[0014] 細胞、組織、器官、又は動物における臨床的に有効なレベルでのこれらの導入遺伝子の少なくとも6個の発現は、向上した免疫学適合性をもたらす。したがって、特定の実施形態では、本明細書に提供される単離された細胞、組織、器官、及び動物は、6個以上の導入遺伝子、例えば、補体応答、凝固応答、炎症応答、免疫遺伝子、及び免疫調節物質導入遺伝子からなる群から選択される6、7、8、9、10、11、又は12個の導入遺伝子を含む。これらの実施形態の特定のものでは、細胞、組織、器官、又は動物は、各カテゴリーからの少なくとも1つの導入遺伝子を含むことができる。他の実施形態では、導入遺伝子の特定のカテゴリーは除外され得る。特定の実施形態では、補体応答、凝固応答、炎症応答、免疫応答、及び/又は免疫調節物質導入遺伝子は、全て、検出可能な及び/又は臨床的に有効なレベルで同時に発現され得る。他の実施形態では、導入遺伝子の特定のサブセットのみが、特定の時点で又は特定のシグナルに応答して、臨床的に有効なレベルで発現され得る。これらの実施形態では、導入遺伝子の1つ以上の発現は、特定の時点で検出可能な及び/又は臨床的に有効なレベル未満に低下し得る。
【0015】
[0015] 特定の実施形態では、本明細書に提供される単離された細胞、組織、器官、及び動物は、導入遺伝子CD46、CD55、HLA-E、CD47、CD39、THBD、及びTFPIを含む。
【0016】
[0016] 特定の実施形態では、本明細書に提供される単離された細胞、組織、器官、及び動物は、導入遺伝子CD46、CD55、CD59、HLA-E、B2M、CD47、CD39、THBD、及びTFPIを含む。
【0017】
[0017] 特定の実施形態では、本明細書に提供される単離された細胞、組織、器官、及び動物は、導入遺伝子CD46、CD55、CD59、HLA-E、B2M、CD47、CD39、THBD、TFPI、A20、PD-L1、及びHO-1を含む。
【0018】
[0018] 本明細書に参照されるタンパク質又は遺伝子は、以下の表によるものであり得る。配列は、参照により組み込まれる。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
[0019] 特定の実施形態では、本明細書に開示する単離された細胞、組織、器官、及び動物は、補体応答遺伝子、凝固応答遺伝子、炎症応答遺伝子、免疫応答遺伝子、及び/又は、免疫調節物質遺伝子に対する1つ以上の改変をさらに含む。例えば、細胞、組織、器官、又は動物がブタである特定の実施形態では、細胞、組織、器官、又は動物は、フォン・ウィルブランド因子(vWF)遺伝子の変更(ある場合に、遺伝子のヒト化をもたらす変更を含む)を含むことができる。
【0022】
[0020] 特定の実施形態では、本明細書に開示する細胞、組織、器官、及び動物は、遺伝子の他のカテゴリーに対する1つ以上の改変をさらに含む。これらの改変には、例えば、遺伝子の全部若しくは一部の欠失又は切除(即ち、ノックアウト)、又は任意の他の不活性化、破壊、若しくは変更が含まれ得る。例えば、特定の実施形態では、細胞、組織、器官、及び動物は、アシアロ糖タンパク質受容体1(ASGR1)のノックアウト、不活性化、又は破壊を含むことができる。特定の実施形態では、細胞、組織、器官、及び動物は、低下した炭水化物抗原応答を示すように遺伝子改変され得る。例えば、細胞、組織、器官、又は動物は、1つ以上の炭水化物抗原産生遺伝子(例えば、糖タンパク質α-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(GGTA)、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ2(B4GalNT2)、シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH))のノックアウト、不活性化、又は破壊を含むことができる。
【0023】
[0021] 特定の実施形態では、本明細書に提供される単離された細胞、組織、器官、及び動物は、導入遺伝子CD46、CD55、HLA-E、CD47、CD39、THBD、及びTFPIを含み、GGTA、B4GalNT2、及びCMAHのノックアウト、不活性化、又は破壊をさらに含む。特定の実施形態では、単離された細胞、組織、器官、及び動物は、導入遺伝子CD59及びB2Mをさらに含み、それらの実施形態の特定のものでは、単離された細胞、組織、器官、及び動物は、導入遺伝子A20、PD-L1、及びHO-1をさらに含む。特定の実施形態では、これらの細胞、組織、器官、及び動物は、低下した炭水化物抗原応答、並びに向上した凝固、補体、炎症性、及び/又は免疫応答を含む、向上した免疫学的適合性を示す。
【0024】
[0022] いくつかの実施形態では、本明細書に提供される単離された細胞、組織、器官、及び動物は、ブタ、即ち、ブタ細胞、ブタ組織、ブタ器官、若しくは豚又はその子孫である。これらの実施形態の特定のものでは、細胞、組織、器官、又は動物は、ブタ内因性レトロウイルスを含まない(「PERV非含有」)。これらの実施形態の特定のものでは、「PERV非含有」細胞、組織、器官、又は動物は、異種指向性PERVビリオンを生成しない。これらの実施形態の特定のものでは、「PERV非含有」細胞、組織、器官、又は動物は、PERVビリオンを生成しない。これらの実施形態の特定のものでは、「PERV非含有」細胞、組織、器官、又は動物は、感染性PERVビリオンを生成しない。これらの実施形態の特定のものでは、PERV非含有細胞、組織、器官、及び動物は、導入遺伝子CD46、CD55、HLA-E、CD47、CD39、THBD、及びTFPIを含み、場合により、GGTA、B4GalNT2、及び/又はCMAHのノックアウト、不活性化、又は破壊をさらに含む。他の実施形態では、PERV非含有細胞、組織、器官、及び動物は、導入遺伝子CD46、CD55、CD59、HLA-E、B2M、CD47、CD39、THBD、及びTFPIを含み、場合により、GGTA、B4GalNT2、及び/又はCMAHのノックアウト、不活性化、又は破壊をさらに含む。さらに他の実施形態では、PERV非含有細胞、組織、器官、及び動物は、導入遺伝子CD46、CD55、CD59、HLA-E、B2M、CD47、CD39、THBD、TFPI、A20、PD-L1、及びHO-1を含み、場合により、GGTA、B4GalNT2、又はCMAHのノックアウト、不活性化、又は破壊をさらに含む。
【0025】
[0023] 本明細書に提供される単離された細胞及び組織の特定の実施形態では、細胞又は組織は、腎臓又は肝臓の細胞又は組織である。本明細書に提供される単離された器官の特定の実施形態では、器官は、腎臓又は肝臓である。
【0026】
[0024] 別の態様では、本開示は、炎症応答導入遺伝子、免疫応答導入遺伝子、免疫調節物質導入遺伝子、又はそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも2つのタイプの複数の導入遺伝子を含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、前記複数の導入遺伝子は、炎症応答導入遺伝子、免疫応答導入遺伝子、免疫調節物質導入遺伝子、又はそれらの組合せからなる群から選択される3つのタイプを含む。いくつかの態様では、本開示は、複数の導入遺伝子を含むベクターを提供し、前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの炎症応答導入遺伝子、少なくとも1つの免疫応答導入遺伝子、及び少なくとも1つの免疫調節物質導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、炎症応答導入遺伝子は、A20、HO-1、CD47、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫応答導入遺伝子は、HLA-E、B2M、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫調節物質導入遺伝子は、PD-L1、FasL、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの凝固応答導入遺伝子をさらに含む。いくつかの実施形態では、凝固応答導入遺伝子は、CD39、THBD、TFPI、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記複数の導入遺伝子は、少なくとも1つの補体応答導入遺伝子をさらに含む。いくつかの実施形態では、補体応答導入遺伝子は、CD46、CD55、CD59、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0027】
[0025] 他の態様では、本開示は、本明細書に提供される細胞、組織、器官、又は動物を生産するために、細胞、組織、器官、又は動物を遺伝子改変するのに使用されるベクター(例えば、1つ以上の補体応答、凝固応答、炎症応答、免疫応答、及び/又は免疫調節物質導入遺伝子を挿入する(即ち、ノックインする)ためのベクターを含む)を提供する。これらの実施形態の特定のものでは、ベクターは、導入遺伝子の少なくとも6、7、8、9、10、11、又は12個を含む。これらの実施形態のいくつかでは、導入遺伝子の少なくとも6個は、単一の遺伝子座から発現される。細胞、組織、器官、又は動物を生産するために、本明細書に提供される細胞、組織、器官、又は動物を遺伝子改変するのに使用される他の構成要素(例えば、ガイドRNA(gRNA)又はエンドヌクレアーゼなどのCRISPRベースの編集構成要素を含む)も、本明細書に提供される。
【0028】
[0026] 特定の実施形態では、本明細書に提供されるベクターは、導入遺伝子CD46、CD55、HLA-E、CD47、CD39、THBD、及びTFPIを含む。これらの実施形態の特定のものでは、ベクターは、導入遺伝子CD59及びB2Mをさらに含む。これらの実施形態の特定のものでは、ベクターは、導入遺伝子A20、PD-L1、及びHO-1をさらに含み、これらの実施形態の特定のものでは、ベクターは、図17~20、31、又は48~50に示す構成要素を含む。特定の実施形態では、ベクターは、配列番号212~214のいずれかに示す配列を含む。
【0029】
[0027] 特定の実施形態では、本明細書に提供される単離された細胞、組織、器官、及び動物の作製方法も本明細書に提供される。これらの実施形態の特定のものでは、方法は、本明細書に提供されるベクターの1つ以上を導入することを含む。したがって、特定の実施形態では、本明細書に提供される細胞、組織、器官、及び動物は、本明細書に開示するベクターの1つ以上を含む。
【0030】
[0028] いくつかの実施形態では、本明細書に開示及び記載される方法は、転位を介した単一コピーポリシストロン性導入遺伝子組込み、リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を介した一/二対立遺伝子部位特異的組込み、ゲノム置換、内因性遺伝子ヒト化、又はそれらの任意の組合せを含む。
【0031】
[0029] 作製される細胞、組織、器官、及び動物がブタである、本明細書に提供される方法の特定の実施形態では、方法は、1つ以上のPERV遺伝子、例えばPERV polをノックアウト又は別様に破壊若しくは不活性化することをさらに含み、これらの実施形態の特定のものでは、得られたブタ細胞、組織、器官、又は動物は、PERVを含まない。
【0032】
[0030] 別の態様では、本開示は、豚のものではない血液に曝露された際に、減少した肝臓損傷及び/又は安定な凝固を有する遺伝子導入豚肝臓を提供し、ここで減少した肝臓損傷は、胆汁産生、1つ以上の代謝酵素、及び/又は1つ以上の血清電解質のレベルを決定することにより評価され、安定な凝固は、プロトロンビン時間(PT)及び国際標準化比(PT-NIR)、フィブリノーゲンレベル(FIB)、及び/又はより低い活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)のレベルを決定することにより評価される。いくつかの実施形態では、代謝酵素は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、及びアルブミン(ALB)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、血清電解質は、カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)である。
【0033】
[0031] いくつかの実施形態では、本明細書に開示及び記載される遺伝子導入豚肝臓は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、及びアルブミン(ALB)からなる群から選択される天然代謝酵素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図面の簡単な説明
図1A】[0032]補体因子3ノックアウト(「C3-KO」)豚の遺伝子型決定の結果を示すチャートである。導入された欠失のサイズを示す。
図1B】[0032]補体因子3ノックアウト(「C3-KO」)豚の遺伝子型決定の結果を示すチャートである。インデルの位置を示す。
図1C】[0032]補体因子3ノックアウト(「C3-KO」)豚の遺伝子型決定の結果を示すチャートである。生成されたインデル(配列番号253~289)の配列を列挙する。
図2】[0033]SLA-1、SLA-2、及びSLA-3遺伝子を含む遺伝子座がloxP部位に隣接している、主要組織適合遺伝子複合体クラスI(「MHCクラスI」)置換戦略を描写するスキームのブロック図である。
図3A】[0034]主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIIノックアウト(「MHCII-KO」)豚遺伝子型、特にMHCII遺伝子DQAの遺伝子型決定の結果を示すチャートである。アンプリコンの位置126及び127に1bpの2つの挿入を有する位置及びサイズ及びインデルを示す。
図3B】[0034]主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIIノックアウト(「MHCII-KO」)豚遺伝子型、特にMHCII遺伝子DQAの遺伝子型決定の結果を示すチャートである。挿入の1つの位置を示す。
図4A】[0035]別のMHCクラスII-KO豚遺伝子型、特にMHCII遺伝子DRAの遺伝子型決定の結果を示すチャートである。アンプリコンの位置106及び107に1bpの2つの挿入を有する位置及びサイズ及びインデルを示す。
図4B】[0035]別のMHCクラスII-KO豚遺伝子型、特にMHCII遺伝子DRAの遺伝子型決定の結果を示すチャートである。挿入の1つ(配列番号290~327)の位置を示す。
図5】[0036]MHCII-KO豚(「H3-9P01」)及び野生型(「WT」)豚の蛍光補助細胞選別(FACS)分析の結果を示す6つのチャートを含む。
図6】[0037]MHCII-KO表現型に関連する1つ以上の表現型を描写する一連の画像である。
図7】[0038]PD-L1遺伝子を変更するためのスキームを示す一連のブロック図である。
図8】[0039]2つのアンプリコンを用いてqPCRにより測定したPD-L1の発現を示すチャートである。
図9】[0040]ブタ(配列番号329)及びヒト(配列番号328)vWFタンパク質のアラインメントを示す配列表である。A1ドメインはボックス中で強調されているが、隣接領域中の潜在的なグリコシル化部位はダッシュで標識されている。pvWFにおいて削除されたヒト特異的残基は、水平線で標識されている。ヒト化されたA1及び隣接領域は、半分の括弧で標識されている。
図10】[0041]pvWF及び2つのsgRNA(配列番号5及び6)を標的とする相同組換え修復(「HDR」)ベクターの設計を示す。
図11】[0042]SphI及びBspEI消化によるHDRのスクリーニング結果を示す。
図12A】[0043]vWFが標的化された(配列番号330~333)図11から得られた二対立遺伝子HDRクローンのシーケンシング結果を示す。両方のシーケンシング結果のクロマトグラフィーを、オーバーラップする配列の1つのラインを用いて説明する。ヒト化A1及び隣接領域は、半分の括弧で標識される。
図12B】[0043]vWFが標的化された(配列番号330~333)図11から得られた二対立遺伝子HDRクローンのシーケンシング結果を示す。両方のシーケンシング結果のクロマトグラフィーを、オーバーラップする配列の1つのラインを用いて説明する。ヒト化A1及び隣接領域は、半分の括弧で標識される。
図13】[0044]剪断応力によって誘導され、WT(ブタA1ドメイン)又はHDR標的化(ヒトA1ドメイン)豚から単離された血小板について光透過によってモニターされた種特異的血小板凝集応答を示すグラフである。
図14】[0045]ブタMHCクラスI遺伝子座の概略図である。全ての古典的MHCI遺伝子は色分けされている。MHCI遺伝子のUTRのすぐ隣にある独特の隣接領域を緑の括弧で標識する。これらの領域から選択された4つの高度に活性なsgRNA(配列番号1~4)も示される。
図15】[0046]図14のsgRNAを用いて誘導されたMHCI古典的クラスターの断片的欠失を示す。図15Aは、sgRNAトランスフェクト細胞の集団におけるMHCI 5’、3’及び5’-3’欠失接合部の独特の領域にわたるPCRアンプリコンを示す。図15Bは、5’-3’接合PCRがTOPOクローニングされ、シーケンシング結果がMHC5’_sg1及びMHC3’_sg2によって生成された予想されるMHCI 5’-3’接合部に整列されたことを示す(配列番号335~343)。
図16】[0047]ブタ特異的SLA-1抗体を用いたMHCI陰性細胞の濃縮を示す。
図17】[0048]本明細書に開示及び記載される実施形態による、複数の導入遺伝子(例えば、ヒト化導入遺伝子)を発現するための導入遺伝子発現ベクターを示す。ペイロード5(Pig 2.1):12個の導入遺伝子、遍在性発現。
図18】[0049]本明細書に開示及び記載される実施形態による、複数の導入遺伝子(例えば、ヒト化導入遺伝子)を発現するための導入遺伝子発現ベクターを示す。ペイロード9(Pig 2.2):12の導入遺伝子、内皮特異性。
図19】[0050]本明細書に開示及び記載される実施形態による、複数の導入遺伝子(例えば、ヒト化導入遺伝子)を発現するための導入遺伝子発現ベクターを示す。ペイロード10(Pig 2.3):12の導入遺伝子、内皮/島特異性。
図20】[0051]本明細書に開示及び記載される実施形態による、複数の導入遺伝子(例えば、ヒト化導入遺伝子)を発現するための導入遺伝子発現ベクターを示す。ペイロード10-Exo(Pig 2.4):12の導入遺伝子、内皮/島特異性、膵外分泌腺切除を有する。
図21】[0052]本明細書に記載される遺伝子操作されたソースドナー豚の系統を示す概略図である。
図22】[0053]ヒト組織との増強された適合性を有する遺伝子操作された豚線維芽細胞が、ヒト抗体に対する有意に減少した結合親和性を示すことを示す。
図23】[0054]本明細書に記載される遺伝子操作された豚初代線維芽細胞又は内皮細胞からの組織特異的mRNA発現を示す。図23Aは、分子クローニング技術を用いて組み立てられた遺伝子導入構築物の概略図である。CD46、CD55、及びCD59カセットを、遍在性EF1αプロモーターの制御下に配置し、HLA-E、B2M、及びCD47カセットを、遍在性CAGプロモーターの制御下に配置し、A20、PD-L1、HO-1カセットを、島特異的NeuroDプロモーターの制御下に配置し、THBD、TFPI、及びCD39カセットを、内皮特異的ICAM2プロモーターの制御下に配置した。遺伝子導入構築物をブタ初代線維芽細胞(図23B)又は不死化ブタ大動脈内皮細胞株(PEC-A)(図23C)に電気穿孔し、mRNA発現をqRT-PCRによって決定した。
図24】[0055]Pig 2.0(「3KO+12TG」)脾臓及び線維芽細胞における導入遺伝子タンパク質発現を示す。
図25】[0056]ヒト細胞との適合性が増強された遺伝子操作された豚線維芽細胞が、有意に低いレベルの補体媒介細胞死を示したことを示す。
図26】[0057]図26は、ヒトHLA-Eを発現するように遺伝子操作された豚線維芽細胞がNK媒介溶解に対する感受性の低下を示すことを示す。
図27】[0058]GGTAKO+CD55KI豚に由来する内皮細胞がトロンビン-アンチトロンビンIII(TAT)複合体の形成の減少を示すことを示す。
図28】[0059]4-7匹の豚から分離され、ヒト血液で潅流された肝臓が野生型(WT)肝臓と比較して、増加した胆汁産生を有することを示す。
図29】[0060]4-7匹の豚から分離され、ヒト血液で潅流された肝臓がWT肝臓と比較して、肝臓損傷及び血清電解質レベルのマーカーによって評価されるように、改善された肝臓機能を有することを示す。
図30】[0061]4-7匹の豚から分離され、ヒト血液で潅流された肝臓がWT肝臓と比較して改善された凝固を有することを示す。
図31】[0062]本明細書に開示及び記載される実施形態による導入遺伝子発現ベクターを示す。ペイロード13(Pig 2.5):10個の導入遺伝子、バイシストロン性。
図32A】[0063]ペイロード9ドナー豚から分離された腎臓を移植した宿主サルが安定した血清クレアチニンレベルを示すことを示す。
図32B】[0063]ペイロード10ドナー豚から分離された腎臓を移植した宿主サルが安定した血清クレアチニンレベルを示すことを示す。
図33A】[0064]ペイロード9ドナー豚から分離した腎臓を移植した宿主サルにおけるヘマトクリットレベルを示す。
図33B】[0064]ペイロード10ドナー豚から分離した腎臓を移植した宿主サルにおけるヘマトクリットレベルを示す。
図34A】[0065]ペイロード9ドナー豚から分離した腎臓を移植した宿主サルにおける血小板数を示す。
図34B】[0065]ペイロード10ドナー豚から分離した腎臓を移植した宿主サルにおける血小板数を示す。
図35A】[0066]ペイロード9ドナー豚から分離した腎臓を移植した宿主サルにおける白血球(WBC)数の変動を示す。
図35B】[0066]ペイロード10ドナー豚から分離した腎臓を移植した宿主サルにおける白血球(WBC)数の変動を示す。
図36】[0067]補体及び細胞毒性遺伝子がペイロード9及びペイロード10豚から収集されたサンプルにおいて発現されることを示す、RNAseq発現データを示す。
図37】[0068]ペイロード5、ペイロード9、及びペイロード10豚から収集されたサンプルにおいて発現された補体及び細胞毒性タンパク質を示すFACSデータを示す。
図38A】[0069]豚からヒヒへの同所性肝臓異種移植(OLTx)後の臨床検査を示す。
図38B】[0069]豚からヒヒへの同所性肝臓異種移植(OLTx)後の臨床検査を示す。
図38C】[0069]豚からヒヒへの同所性肝臓異種移植(OLTx)後の臨床検査を示す。
図38D】[0069]豚からヒヒへの同所性肝臓異種移植(OLTx)後の臨床検査を示す。
図38E】[0069]豚からヒヒへの同所性肝臓異種移植(OLTx)後の臨床検査を示す。
図38F】[0069]豚からヒヒへの同所性肝臓異種移植(OLTx)後の臨床検査を示す。
図38G】[0069]豚からヒヒへの同所性肝臓異種移植(OLTx)後の臨床検査を示す。
図38H】[0069]豚からヒヒへの同所性肝臓異種移植(OLTx)後の臨床検査を示す。
図38I】[0069]豚からヒヒへの同所性肝臓異種移植(OLTx)後の臨床検査を示す。
図39A】[0070]OLTx由来のH+E染色肝臓サンプルの代表的な画像である。
図39B】[0070]OLTx由来のH+E染色肝臓サンプルの代表的な画像である。
図39C】[0070]OLTx由来のH+E染色肝臓サンプルの代表的な画像である。
図39D】[0070]OLTx由来のH+E染色肝臓サンプルの代表的な画像である。
図39E】[0070]OLTx由来のH+E染色肝臓サンプルの代表的な画像である。
図39F】[0070]OLTx由来のH+E染色肝臓サンプルの代表的な画像である。
図40A】[0071]遺伝子組換え豚肝臓のヒト全血によるex vivo異種潅流後の臨床検査を示す。
図40B】[0071]遺伝子組換え豚肝臓のヒト全血によるex vivo異種潅流後の臨床検査を示す。
図40C】[0071]遺伝子組換え豚肝臓のヒト全血によるex vivo異種潅流後の臨床検査を示す。
図40D】[0071]遺伝子組換え豚肝臓のヒト全血によるex vivo異種潅流後の臨床検査を示す。
図40E】[0071]遺伝子組換え豚肝臓のヒト全血によるex vivo異種潅流後の臨床検査を示す。
図41A】[0072]異種潅流豚肝臓のH+E染色の代表的な画像である。
図41B】[0072]異種潅流豚肝臓のH+E染色の代表的な画像である。
図41C】[0072]異種潅流豚肝臓のH+E染色の代表的な画像である。
図41D】[0072]異種潅流豚肝臓のH+E染色の代表的な画像である。
図41E】[0072]異種潅流豚肝臓のH+E染色の代表的な画像である。
図41F】[0072]異種潅流豚肝臓のH+E染色の代表的な画像である。
図41G】[0072]異種潅流豚肝臓のH+E染色の代表的な画像である。
図41H】[0072]異種潅流豚肝臓のH+E染色の代表的な画像である。
図42】[0073]GalTKO.hCD55肺と比較して、ヒト血液で潅流された「未処置」Pig 2.0(「3KO+12TG」)肺において、肺血管抵抗(PVR)上昇が有意に減弱され、遅延されたことを示す。
図43A】[0074]ヒトT細胞へのヒト血清のパネルの結合を示し、高PRA血清は、低PRAよりもヒト細胞を染色する可能性が高い。
図43B】[0074]ブタT細胞へのヒト血清のパネルの結合を示す。低PRA患者及び高PRA患者の両方由来の血清は、ブタ標的に対する高いレベルの結合を示す。
図43C】[0074]ヒトB細胞へのヒト血清のパネルの結合を示し、高PRA血清は、低PRAよりもヒト細胞を染色する可能性が高い。
図43D】[0074]ブタB細胞へのヒト血清のパネルの結合を示す。低PRA患者及び高PRA患者の両方由来の血清は、ブタ標的に対する高いレベルの結合を示す。
図44】[0075]高PRAヒト血清のパネルが野生型細胞(WT pAEC)と比較して、遺伝子改変ブタ大動脈内皮細胞(Pig 2.0(「3KO+12TG」)pAEC)への有意に低いレベルの結合を示すことを示す。Pig 2.0細胞は、aGal、Neu5Gc、及びSdaを欠いている。
図45A】[0076]様々な時点で、腎臓異種移植レシピエント動物から採取した血清によるPig 2.0(「3KO+12TG」)pAECの染色を示す。移植後に採取した血清サンプルは、結合レベルの低下、特に肝臓異種移植後の結合レベルの低下を示す。
図45B】[0076]様々な時点で、心臓異種移植レシピエント動物から採取した血清によるPig 2.0(「3KO+12TG」)pAECの染色を示す。移植後に採取した血清サンプルは、結合レベルの低下、特に肝臓異種移植後の結合レベルの低下を示す。
図45C】[0076]様々な時点で、肝臓異種移植レシピエント動物から採取した血清によるPig 2.0(「3KO+12TG」)pAECの染色を示す。移植後に採取した血清サンプルは、結合レベルの低下、特に肝臓異種移植後の結合レベルの低下を示す。
図46A】[0077]ヒト血清の野生型(WT)及びPig 2.0(「3KO+12TG」)pAECへの結合を、IdeS処理の前後で示す。IdeSは、ヒト及びカニクイザルのIgG結合を効果的に減少させる一方で、無傷のIgMの結合には影響を及ぼさない。
図46B】[0077]ヒト血清のpAECへの結合を、IdeS処理の前後で示す。IdeSは、ヒト及びカニクイザルのIgG結合を効果的に減少させる一方で、無傷のIgMの結合には影響を及ぼさない。
図46C】[0077]カニクイザル血清のpAECへの結合を、IdeS処理の前後で示す。IdeSは、ヒト及びカニクイザルのIgG結合を効果的に減少させる一方で、無傷のIgMの結合には影響を及ぼさない。
図47】[0078]本明細書に開示及び記載される実施形態(配列番号344及び345)による導入遺伝子発現ベクターを示す。ペイロード12F:12個の導入遺伝子。
図48】[0079]本明細書に開示及び記載される実施形態による導入遺伝子発現ベクターを示す。ペイロード12G:12個の導入遺伝子。
図49】[0080]本明細書に開示及び記載される実施形態による導入遺伝子発現ベクターを示す。ペイロード13A:10個の導入遺伝子。
図50】[0081]補体及び細胞毒性遺伝子の発現を実証するRNAseqの結果を示す。
図51A】[0082]CRISPR遺伝子ノックアウト及びPiggyBac組込みのためのスキームを示す。GGTA1遺伝子の2コピー、CMAH遺伝子の2コピー及びB4GALNT2遺伝子の4コピーを標的とするCRISPR/Cas9を用いて3KOを作製し、Pig 2.0におけるPERVのコピー(「3KO+9TG」)を標的とするCRISPR/Cas9を用いてPERV-KO細胞を作製した。PiggyBac媒介ランダム組込みを用いて、9個の導入遺伝子を豚ゲノムに挿入した。導入遺伝子は3カセットで発現し、各カセットはブタ2A(P2A)ペプチドによって連結した3遺伝子を発現した。
図51B】[0083]GGTA1(配列番号346~348)、CMAH(配列番号349~351)、及びB4GALNT2(配列番号352~356)ノックアウトのシーケンシングの結果を示す。全ゲノム配列解析は、Pig 2.0(3KO+9TG)とPig 3.0(3KO+9TG)では、i)GGTA1遺伝子は1つの対立遺伝子に-10bp欠失と別の遺伝子に導入遺伝子ベクター挿入を有し、ii)CMAH遺伝子は1つの対立遺伝子に-391bp欠失と別の対立遺伝子に2bp(AA)挿入を有し、iii)B4GALNT2はB4GALNT2遺伝子の4つの対立遺伝子のそれぞれに-13、-14、-13、-14を有することを明らかにした。全ての改変はgRNA標的部位で起こり、このことは、改変が使用されるCRISPR/Cas9のオンターゲット活性によって媒介されることを示す。
図51C】[0084]PERVノックアウトのシーケンシング分析の結果を示す。Pig 2.0(3KO+9TG)(約2,000X)及び3.0(約20,000X)についての生の読み取りを、概略的なPERV遺伝子構造の下に示す。読み取りは、それらの配列組成によってグループ化され、それらのカバレッジに比例して示される。カバレージトラックにおける赤、青、緑及びオレンジの垂直線は、それぞれ、参照対立遺伝子からT、C、A、Gへの単一ヌクレオチド変化を表す。
図51D】[0085]9TG組込みのPCR分析を示す。Pig 2.0(3KO+9TG)及びPig 3.0(3KO+9TG)の導入遺伝子組込みは、PCRによりゲノムDNA(gDNA)レベルで検証されている。PCRゲル画像は、Pig 2.0及びPig 3.0胎児線維芽細胞由来のgDNAにおける9個のヒト導入遺伝子の存在を示すが、WT豚胎児線維芽細胞及びNTC(gDNAの添加なし)群は陰性対照の役割を果たす。
図51E】[0086]Pig 2.0(3KO+9TG)及び3.0(3KO+9TG)細胞についての正常核型を示す。Pig 2.0(A)及びPig 3.0(B)線維芽細胞をギムザ染色に基づくGバンド法を用いて核型分析した。SmartTypeソフトウエアを用いて中期スプレッドを分析した。Pig 2.0及びPig 3.0の両方は、正常な[36+XY]核型を示す。
図52A】[0087]9個の導入遺伝子の発現のヒートマップを示す。導入遺伝子発現は、HUVEC内皮、PUVEC内皮、Pig 2.0(3KO+9TG)PUVEC内皮、Pig 2.0耳線維芽細胞及びPig3.0胎児線維芽細胞におけるRNA-Seqにより測定した。各行は1つの導入遺伝子を表し、各列は1つのサンプルを表す。発現レベルは、低-中-高を表すために青-黄-赤でコード化されて着色される。各サンプルについての組織タイプ及びペイロード情報は、カラーバーとしてヒートマップの上部にラベル付けされる。
図52B】[0088]FACSによる3KO及び9TG発現の分析を示す。Pig 2.0(3KO+9TG)及びPig 3.0(3KO+9TG)の遺伝子改変(KO及びTG)は、FACSによってタンパク質レベルで検証されている。Pig 2.0及びPig 3.0 PUVECは、hCD39(ヒト内因性よりも高い)及びhTHBD(ヒト内因性よりも低い)を除いて、一般的にヒト内因性(HUVEC)と同等のTG発現レベルを示す。
図52C】[0089]3KO及び9TG発現の免疫蛍光分析を示す。Pig 2.0(3KO+9TG)及びPig 3.0(3KO+9TG)の遺伝子改変(KO及びTG)は、免疫蛍光法(IF)により腎臓凍結切片のタンパク質レベルで検証されている。
図53A】[0090]Pig 2.0(3KO+9TG)及び3.0(3KO+9TG)細胞へのヒト抗体の結合を示す。Pig 2.0及びPig 3.0 PUVECは、それらのWT対応物と比較して、ヒトIgG及びIgMへの抗体結合を実質的に減弱させる。プールしたヒト血清のPUVEC及びHUVEC(陽性対照)への抗体結合を、それぞれFACSによって測定した。エラーバーは、平均±標準偏差(n=3)を示す。
図53B】[0091]WT豚、Pig 2.0(3KO+9TG)、Pig 3.0(3KO+9TG)及びHUVEC細胞に対する補体毒性を示す。Pig 2.0及びPig 3.0 PUVECは、HUVECと比較して同等の抗体依存性補体毒性を示し、これはWT PUVECと比較して有意に低い。エラーバーは、平均±標準偏差(n=4)を示す。
図53C】[0092]WT豚、Pig 2.0(3KO+9TG)、Pig 3.0(3KO+9TG)及びHUVEC細胞に対するNK媒介細胞毒性を示す。Pig 2.0及びPig 3.0 PUVECは、それらのWT対応物と比較して有意に低いNK媒介細胞毒性を明らかにする。エラーバーは、平均±標準偏差(n=3)を示す。
図53D】[0093]ヒトマクロファージによるPig 2.0(3KO+9TG)及び3.0(3KO+9TG)脾細胞の食作用を示す。Pig 2.0及びPig 3.0の脾細胞は、ヒトマクロファージ細胞株による食作用の低下を示す。CFSE標識Pig 2.0及びPig 3.0脾細胞(標的細胞、T)を、CD11b標識ヒトマクロファージ細胞株(エフェクター細胞、E)とそれぞれ37℃で4時間インキュベートした。2つの異なるE:T比、1:1及び1:5を行った。CFSEで標識した標的の食作用をFACSで測定した。FACSでは、非食作用性マクロファージの領域が左上四分円(Q1)に、食作用性マクロファージの領域が右上四分円(Q2)に示されている。食作用活性は、Q2/(Q1+Q2)×100%として計算した。
図53E】[0094]WT豚、Pig 2.0(3KO+9TG)、Pig 3.0(3KO+9TG)及びHUVEC細胞によるトロンビン-アンチトロンビン(TAT)形成のレベルを示す。Pig 2.0及びPig 3.0 PUVECは、示された時間のヒト全血とのインキュベーション時に、HUVECと同等の、WT PUVECよりも有意に低い、非常に低いレベルのトロンビン-アンチトロンビン(TAT)形成を媒介する。エラーバーは、平均±標準偏差(n=4)を示す。
図53F】[0095]CD39導入遺伝子のADPase活性を示す。Pig 2.0(3KO+9TG)及びPig 3.0(3KO+9TG)PUVECは、WT PUVEC及びHUVECと比較して有意に高いCD39 ADPase生化学活性を示す。(A)ヒト導入遺伝子CD39 mRNAは、Pig 2.0及びPig 3.0において内因性CD39よりも高発現している。(B)FACSは、Pig 2.0及びPig 3.0がWT PUVEC及びHUVECよりも高いヒトCD39タンパク質発現を有することを明らかにした。(C)Pig 2.0及びPig 3.0PUVECは、ADPとともにインキュベートした場合のリン酸濃度によって測定されるように、CD39の有意に高いADPase生化学活性を有する。より高いCD39 ADPase生化学活性は、Pig 2.0及びPig 3.0におけるそのより高いCD39タンパク質発現レベルと一致する。エラーバーは標準偏差(n=6)を示す。
図53G】[0096]3.0細胞におけるTFPI機能を示す。活性化Pig 2.0(3KO+9TG)及びPig 3.0(3KO+9TG)PUVECは、細胞表面にヒトTFPIを発現し、in vitroでWT PUVEC及びHUVECと比較して、ヒトXaへの有意に高い結合能を示す。(A)RNA‐Seqは、Pig 2.0 PUVECがHUVECにおいてその内因性レベルよりも多くのヒトTFPIを発現し、WT PUVECにおいてブタTFPIレベルを発現することを明らかにした(n=2)。(B)活性化Pig 2.0PUVECは、in vitroでWT PUVEC及びHUVECと比較して有意に高いXa結合能を示す。左パネル:標準曲線は、ヒト組換えTFPI(rTFPI)タンパク質の濃度と非結合Xaレベルとの間の線形回帰を測定する。右パネル:左の標準曲線を用いて非結合Xaレベルから予測されたtTFPIレベルは、PMA活性化の有無にかかわらず、Pig 2.0EC、WT PUVEC及びHUVECにおけるTFPI Xa結合能を測定する。PMA(1μM):PUVECとHUVECはPMAにより6時間活性化され、これはhTFPIのサイトゾルから細胞膜への移行を導いた。エラーバーは標準偏差(n=4)を示す。
図54A】[0097]Pig 1.0及び2.0豚(3KO+9TG)の正常な表現型を示す。Pig 1.0及びPig 2.0は、WT豚と比較して、全血球数(A)に関して同様の病態生理を示す。Pig 1.0、Pig 2.0及びWT豚のサンプル番号は、それぞれ18、16及び21である。「no sig」はスチューデントのt検定により、Pig 1.0、Pig 2.0及びWT群の間に統計的有意性がないことを示す。
図54B】[0097]Pig 1.0及び2.0豚(3KO+9TG)の正常な表現型を示す。Pig 1.0及びPig 2.0は、WT豚と比較して、肝臓(B)に関して同様の病態生理を示す。Pig 1.0、Pig 2.0及びWT豚のサンプル番号は、それぞれ18、16及び21である。「no sig」はスチューデントのt検定により、Pig 1.0、Pig 2.0及びWT群の間に統計的有意性がないことを示す。
図54C】[0097]Pig 1.0及び2.0豚(3KO+9TG)の正常な表現型を示す。Pig 1.0及びPig 2.0は、WT豚と比較して、心臓(C)に関して同様の病態生理を示す。Pig 1.0、Pig 2.0及びWT豚のサンプル番号は、それぞれ18、16及び21である。「no sig」はスチューデントのt検定により、Pig 1.0、Pig 2.0及びWT群の間に統計的有意性がないことを示す。
図54D】[0097]Pig 1.0及び2.0豚(3KO+9TG)の正常な表現型を示す。Pig 1.0及びPig 2.0は、WT豚と比較して、腎臓機能(D)に関して同様の病態生理を示す。Pig 1.0、Pig 2.0及びWT豚のサンプル番号は、それぞれ18、16及び21である。「no sig」はスチューデントのt検定により、Pig 1.0、Pig 2.0及びWT群の間に統計的有意性がないことを示す。
図54E】[0097]Pig 1.0及び2.0豚(3KO+9TG)の正常な表現型を示す。Pig 1.0及びPig 2.0は、WT豚と比較して、凝固機能(E)に関して同様の病態生理を示す。Pig 1.0、Pig 2.0及びWT豚のサンプル番号は、それぞれ18、16及び21である。「no sig」はスチューデントのt検定により、Pig 1.0、Pig 2.0及びWT群の間に統計的有意性がないことを示す。
図55】[0098]PERV-KOのメンデル遺伝を示す。PERV-KOの遺伝子改変は、自然交配生産中にメンデル遺伝学に従って受け継がれる可能性がある。x軸は、挿入の合計から欠失の合計を引いたものとして計算されたシフトされた塩基の総数を表す。y軸は、読み取りのパーセントを表す。赤色及び緑色は、それぞれフレームシフトを示すか、又は示さない。1頭のPig 1.0豚が野生型Bama豚と交配し、11頭の子豚を生んだ。子孫子豚1頭の肝臓、腎臓、心臓組織を、親の線維芽細胞とともにハイスループットDNAシーケンシングにより分析して、PERV-KO改変の遺伝を評価した。Pig 1.0は、ノックアウトされるべきPERVコピーの100%を有しており、一方、WT豚は、WT長と同じサイズで約80%のPERVコピーを有している(挿入-欠失=0)。注目すべきことに、WTサンプル中の一部のPERVコピーは機能していないか、又はKOを保有している可能性がある。対照的に、子孫豚の肝臓、腎臓及び心臓は、ノックアウトを保有する約50%のみのPERVコピーを有する。このパターンは組織間で類似しており、PERV-KOの改変は異なる組織間でメンデル遺伝学に従って安定して受け継がれることを示している。
図56A】[0099]繁殖を通じた9TG構築物及び3KOのメンデル遺伝を示す。Pig 2.0のこの反復の遺伝子改変(3KO及び9TG)は、ゲノムDNA(A)、mRNA(B)及びタンパク質レベル(C)で検証されているように、自然交配生産を通してメンデル遺伝学に従って次世代に伝達することができる。本発明者らは、WT豚9頭をPig 2.0と、3KO豚11頭をPig 2.0とそれぞれ交配し、F1子孫における3KO及び9TGの存在を検出した。(A)9TGについては、Pig 2.0xWT豚及びPig 2.0x3KO豚の子孫の約半数がゲノム中に導入遺伝子を保有している。GGTA1、CMAH及びB4GALNT2については、Pig 2.0 X WT豚の子孫は全てヘテロ接合体ノックアウトであり、Pig 2.0 X 3KO豚の子孫は全てホモ接合体ノックアウトである。注目すべきことに、B4GALNT2は、その高度に相同な偽遺伝子が含まれているため、4つの対立遺伝子を有するものとして解析された。
図56B】[0099]繁殖を通じた9TG構築物及び3KOのメンデル遺伝を示す。Pig 2.0のこの反復の遺伝子改変(3KO及び9TG)は、ゲノムDNA(A)、mRNA(B)及びタンパク質レベル(C)で検証されているように、自然交配生産を通してメンデル遺伝学に従って次世代に伝達することができる。本発明者らは、WT豚9頭をPig 2.0と、3KO豚11頭をPig 2.0とそれぞれ交配し、F1子孫における3KO及び9TGの存在を検出した。(B)Pig 2.0 X 3KO豚の子孫の約半数(5/11)が、そのmRNA転写物中の9TGに相当するmRNAを保有している。
図56C】[0099]繁殖を通じた9TG構築物及び3KOのメンデル遺伝を示す。Pig 2.0のこの反復の遺伝子改変(3KO及び9TG)は、ゲノムDNA(A)、mRNA(B)及びタンパク質レベル(C)で検証されているように、自然交配生産を通してメンデル遺伝学に従って次世代に伝達することができる。本発明者らは、WT豚9頭をPig 2.0と、3KO豚11頭をPig 2.0とそれぞれ交配し、F1子孫における3KO及び9TGの存在を検出した。(C)FACS分析により、Pig 2.0 X 3KO及びPig 2.0 X WT豚の3KO及び9TGの遺伝が、細胞表面グリカンの減少若しくは欠如、又はヒトタンパク質の存在として検証された。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
I. 定義
[0100] 本明細書で使用される用語「豚(pig)」、「豚(swine)」及び「ブタ(porcine)」は、飼育豚、イノシシ(Sus scrofa)種の様々な品種に関するもの全てを互換的に指す。
【0036】
[0101] 用語「生物学的に活性な」は、タンパク質又はポリペプチドの断片又は誘導体を指すのに使用される場合、断片又は誘導体が、参照全長タンパク質又はポリペプチドの測定可能な及び/又は検出可能な少なくとも1つの生物学的活性を保持することを意味する。例えば、CRISPR/Cas9タンパク質の生物学的に活性な断片又は誘導体は、本明細書で時々、単一ガイドRNA(sgRNA)とも称されるgRNAに結合し、ガイドRNAと複合体化した際に標的DNA配列に結合し、及び/又は1つ以上のDNA鎖を切断することが可能であり得る。
【0037】
[0102] 用語「処置」、「処置している」、「軽減」などは、疾患、傷害又は障害の文脈において使用される場合、本明細書では一般に所望の薬理的及び/又は生理的効果を得ることを意味するように使用され、処置されている状態の1つ以上の症状の重症度を改善、軽減、及び/又は低減することを指すのにも使用され得る。効果は、疾患、状態若しくはその症状の開始また再発を完全に若しくは部分的に遅延させる点で予防的であり得、及び/又は、疾患又は状態、及び/又は疾患若しくは状態に起因し得る有害作用を部分的に又は完全に治癒する点で治療的であり得る。本明細書で使用される「処置」は、哺乳動物、特にヒトの疾患又は状態の任意の処置を包含し、(a)疾患若しくは状態に罹りやすい可能性があるが、未だそれを有すると診断されていない対象が、疾患若しくは状態が生じることを防ぐこと;(b)疾患若しくは状態を阻害すること(例えば、その発生を阻止すること);又は(c)疾患若しくは状態を緩和すること(例えば、疾患又は状態の退行を引き起こし、1つ以上の症状の改善を提供すること)を含む。
【0038】
[0103] 用語「同時に」は、本明細書では、別の事象と同時に、例えば、別の事象の発生と比較した場合に、数秒以内、数ミリ秒以内、数マイクロ秒以内、又はそれ未満に起こる事象を指すのに使用される。
【0039】
[0104] 用語「ノックアウト」(「KO」)又は「ノッキングアウト」は、本明細書では、豚又は他の動物における、又は豚若しくは他の動物における任意の細胞における遺伝子の欠失、非活性化若しくは消失、又は欠損遺伝子を指すのに使用される。本明細書で使用されるKOは、遺伝子又はその一部の欠失、非活性化、若しくは消失を行う方法、又はそれらを行ったことも指し得る。
【0040】
[0105] 用語「ノックイン」(「KI」又は「ノッキングイン」は、本明細書では、豚又は他の動物における、又は豚若しくは他の動物における任意の細胞における遺伝子のヌクレオチドの追加、置換、又は変異を指すのに使用される。本明細書で使用されるKIは、遺伝子又はその一部のヌクレオチドの追加、置換、若しくは変異を行う方法、又はそれらを行ったことも指し得る。
【0041】
II. 細胞、組織、器官、及び動物
[0106] ブタ異種移植片は、ヒトの器官のサイズ及び生理学に広く適合し、米国の一般集団に倫理的に受け入れられる。しかしながら、異種移植されたブタ組織は、以下を含む移植片拒絶に至る複雑な一連の事象を誘発する:豚抗原に対する予め形成された抗体の存在による超急性拒絶反応、補体の活性化及び凝固性亢進、並びに分子不適合による自然及び適応免疫応答の亢進。本開示は、異種移植の現在の欠点に対処するために遺伝子工学的アプローチを用いる。
【0042】
[0107] 特に、自然及び適応免疫機能を含む多くの免疫学的及び機能的課題が存在する。補体及び凝固を介した機能不全は、ドナーのブタ組織とヒトの生理機能との間の分子不適合により生じ、急性異種移植片不全につながる。α-1,3-ガラクトシル-ガラクトース(αGal)エピトープに対する予め形成された抗体は、補体の活性化を介して超急性移植片拒絶反応を開始させる。糖タンパク質α-ガラクトシルトランスフェラーゼ1遺伝子(GGTA1)の遺伝的不活性化は、この急速な移植片破壊を減少させることができる。ヒト補体制御タンパク質(hCRP)CD46(膜補因子タンパク質)、CD55(補体崩壊促進因子)、及びCD59(MAC阻害タンパク質)の遺伝子の過剰発現を介して防護がさらに向上する。
【0043】
[0108] ほとんどの非Gal異種抗体は、シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロラーゼ(CMAH)遺伝子によって合成されるシアル酸N-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)を認識する。この遺伝子は、ヒトでは不活性であり、そのため、ブタNeu5Gcはヒトで免疫原性を示す。したがって、異種移植における臨床的成功のためには、ブタCMAHを不活性化しなければならない可能性が高い。補体制御因子の発現とGGTA1(GTKO)のノックアウトは、超急性拒絶反応を減少させるが、これらの遺伝子改変は、急性血管型拒絶反応(AVR)に影響しない。
【0044】
[0109] 血栓性微小血管症及び全身性消費性凝固障害を含む凝固機能障害は、主として豚と非ヒト霊長類(NHP)の間の凝固系の分子不適合によるGTKO及びhCRPの過剰発現でも持続している。
【0045】
[0110] 他者による安全な異種移植のための遺伝子導入豚の作製の試みにもかかわらず、これらの遺伝子導入豚は、構築能力の制約及び導入遺伝子間の転写干渉のため、限られた数の導入遺伝子しか保有していなかった。これらの方法は、異種移植片の不適合性を克服するには不十分であることが判明した。例えば、米国特許出願公開第2018/0249688号は、導入遺伝子の異なる組合せを有するマルチシストロン性発現ベクターを利用した。重要なことに、これらのマルチシストロン性ベクターは、4つの導入遺伝子のみからなり、αGalのKO(GTKO)を含む6個の遺伝子改変を有する豚の作製に用いられた。本開示では、KO、KI、及びゲノム置換戦略の組合せが利用される。単一遺伝子座から6個を超える導入遺伝子を発現するPERV非含有豚が初めて生産されている。
【0046】
[0111] 本明細書に記載及び開示された実施例は、ブタ補体因子がKO’dであり得ること、並びに1つ以上の改変MHCクラスI遺伝子、MHCクラスII遺伝子の不活性化、適応免疫に基づく拒絶反応を減少させるためのPD-L1のKI、血小板凝集を調節するための改変ブタvWF、及びブタMHCクラスI遺伝子の欠失を有する生存豚を作製できることを実証する。これらの実施例は、同じ豚内でより多くの遺伝子改変を達成するためのプラットフォームを提供した。この研究から、ブタ細胞を6個を超える導入遺伝子で遺伝子改変して、免疫学的に適合する細胞、組織、器官、豚、及び子孫を生産した。CRISPR-Cas9を用いて、GGTA1、CMAH、及びB4GALNT2を含む複数の遺伝子を機能的にノックアウトして、ヒトの予め形成された抗豚抗体によって認識されるグリカンを除去した。さらに、9個又は12個のいずれかのヒト導入遺伝子を、豚ゲノム中の単一のマルチ導入遺伝子カセットに組み込んだ。具体的には、ブタゲノムへの9個の導入遺伝子CD46、CD55、CD59、CD39、CD47、HLA-E、B2M、THBD、及びTFPI、又は12個の導入遺伝子(CD46、CD55、CD59、HLA-E、B2M、CD47、CD39、THBD、TFPI、A20、PD-L1、及びHO-1)のPiggyBACを介したランダム組込みと結合した3つの主要な異種性炭水化物抗原産生遺伝子(「3KO」;GGTA1、B4GALNT2及びCMAH)を破壊するために、CRISPRを介した非相同末端結合(NHEJ)を利用して豚を作製した。さらなる進展は、PERV非含有バックグラウンドで3KO及び9T又は12TGの改変を有するソースドナー豚を用いることである。そこから、ソースドナー豚はまた、中でも、vWF遺伝子のヒト化、並びにアシアロ糖タンパク質受容体1(ASGR1)及び内因性B2M遺伝子の欠失又は破壊を含む、さらなる遺伝子改変を保有するように遺伝子操作されるであろう。
【0047】
[0112] 本開示は、複数の改変遺伝子を有する細胞、組織、器官、及び動物、並びにそれらを作製する方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞、組織、器官は、動物から得られ、又は動物である。いくつかの実施形態では、動物は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、非ヒト哺乳動物、例えば、ウマ、霊長類、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、又はネコである。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ブタである。
【0048】
[0113] 本開示に従う遺伝子の改変は、ドナーとレシピエントとの間の分子適合性を改善し、超急性拒絶反応、急性体液性拒絶反応、血栓性微小血管症、及び慢性脈管障害を含む有害事象を低減する役割を果たす。例えば、超急性拒絶反応は、非常に短い期間で、典型的には移植後数分~数時間以内に生じ、補体及び移植片内皮細胞を活性化し、これは次いでうっ血をもたらす凝固促進性の変化を生じ、最終的に移植された器官の破壊をもたらす予め形成された抗体から生じる。特定の実施形態では、細胞、組織、器官、及び動物は、低下した超急性拒絶反応を生じる。
【0049】
[0114] いくつかの実施形態では、本開示は、複数の改変遺伝子を有する1つ以上の細胞、組織、器官、又は動物を提供する。いくつかの実施形態では、細胞、組織、器官、又は動物は、複数の遺伝子が追加、欠失、不活性化、破壊されている、その一部が切除されている、又は遺伝子配列が変更されているように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、細胞、組織、器官、又は動物は、改変された5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、改変された5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20遺伝子は、単一の遺伝子座から発現する。いくつかの実施形態では、改変された5、10、又は12遺伝子は、単一の遺伝子座から発現する。いくつかの実施形態では、改変された12遺伝子は、単一の遺伝子座から発現する。いくつかの実施形態では、細胞、組織、器官、又は動物は、改変された20を超える、15を超える、10を超える、5を超える、3を超える、又は2遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、細胞、組織、器官、又は動物は、改変された10を超える、5を超える、3を超える、2を超える、又は1を超える遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、細胞、組織、器官、又は動物は、改変遺伝子の1コピーを有し、他の実施形態では、細胞、組織、器官、又は動物は、1つ以上の改変遺伝子の1を超えるコピー、例えば、改変遺伝子の2を超える、3を超える、4を超える、5を超える、6を超える、7を超える、8を超える、9を超える、10を超える、15を超える、20を超える、25を超える、30を超える、35を超える、40を超える、50を超える、60を超える、70を超える、80を超える、90を超える、又は100を超えるコピーを有する。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上の改変遺伝子の100コピー~約1コピー、90コピー~約1コピー、80コピー~約1コピー、約70コピー~約1コピー、60コピー~約1コピー、約50コピー~約1コピー、約40コピー~約1コピー、約30コピー~約1コピー、約20コピー~約5コピー、約15コピー~約10コピー、又は約5コピー~約1コピーを有する。
【0050】
[0115] いくつかの実施形態では、本開示は、改変遺伝子の1つ以上の複数のコピーを有する1つ以上の細胞、組織、器官、又は動物を提供する。例えば、細胞、組織、器官、又は動物は、改変遺伝子の1つ以上の2、3、4、5、6、7、8、9、約10、約15、約20、約25、約30、又はそれを超えて有し得る。
【0051】
[0116] いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、初代細胞である。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、体細胞である。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、生後細胞である。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、成体細胞(例えば、成体耳線維芽細胞)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、胎性/胚細胞(例えば、胚割球)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、生殖系列細胞である。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、卵母細胞である。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、幹細胞である。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、初代細胞株からの細胞である。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は:上皮細胞、肝臓細胞、顆粒膜細胞、脂肪細胞からなる群から選択される。特定の実施形態では、1つ以上の細胞は、線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は、雌胎性線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、in vitroである。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、in vivoである。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、単一の細胞である。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、細胞コロニーのメンバーである。
【0052】
[0117] いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞は、ブタ細胞である。起源とし又は由来するブタ細胞品種の非限定的な例は、以下の豚品種のいずれかを含む:アメリカン・ランドレース(American Landrace)、アメリカン・ヨークシャー(American Yorkshire)、アクサイ・ブラック・パイド(Aksai Black Pied)、アンゲルン・サドルバック(Angeln saddleback)、アパラチアンイングリッシュ(Appalachian English)、アラパワ・アイランド(Arapawa Island)、オークランド・アイランド(Auckland Island)、オーストラリアン・ヨークシャー(Australian Yorkshire)、バビカンプン(Babi Kampung)、バ・スーエン(Ba Xuyen)、バンツ(Bantu)、バスク(Basque)、バズナ(Bazna)、北京黒豚(Beijing Black)、ベラルーシ・ブラック・パイド(Belarus Black Pied)、ベルギー・ランドレース(Belgian Landrace)、ベンガリ・ブラウン・シャナイ(Bengali Brown Shannaj)、ベントハイム・ブラック・パイド(Bentheim Black Pied)、バークシャー(Berkshire)、ビサロ(Bisaro)、バングル(Bangur)、ブラック・スラボニアン(Black Slavonian)、ブラック・カナリアン(Black Canarian)、ブレイトボ(Breitovo)、ブリティッシュ・ランドレース(British Landrace)、ブリティッシュ・ロップ(British Lop)、ブリティッシュ・サドルバック(British Saddleback)、ブルガリアン・ホワイト(Bulgarian White)、キャンボロー(Cambrough)、カントニーズ(Cantonese)、セルティック(Celtic)、チャト・ムルシアノ(Chato Murciano)、チェスター・ホワイト(Chester White)、チェンマイ・ブラックピッグ(Chiangmai Blackpig)、チョクトー・ホッグ(Choctaw Hog)、クレオール(Creole)、チェコ改良白豚(Czech Improved White)、ダニッシュ・ランドレース(Danish Landrace)、ダニッシュ・プロテスト(Danish Protest)、ダーマンシ・パイド(Dermantsi Pied)、リ・ヤン(Li Yan)、デュロック(Duroc)、ダッチ・ランドレース(Dutch Landrace)、イースト・ランドレース(East Landrace)、イースト・バルカン(East Balkan)、エセックス(Essex)、エストニアン・ベーコン(Estonian Bacon)、フェンジン(Fengjing)、フィニッシュ・ランドレース(Finnish Landrace)、フォレスト・マウンテン(Forest Mountain)、フレンチ・ランドレース(French Landrace)、ガスコン(Gascon)、ジャーマン・ランドレース(German Landrace)、グロスター・シャー・オールドスポット(Gloucestershire Old Spots)、ゲッティンゲン・ミニピッグ(Gottingen minipig)、グリス(Grice)、ギニア・ホッグ(Guinea Hog)、ハンプシャー(Hampshire)、ハンテ(Hante)、ヘレフォード(Hereford)、ヘズオ(Hezuo)、ホーガン・ホッグ(Hogan Hog)、ハンチントン・ブラック・ホッグ(Huntington Black Hog)、イベリアン(Iberian)、イタリアン・ランドレース(Italian Landrace)、ジャパニーズ・ランドレース(Japanese Landrace)、チェジュ・ブラック(Jeju Black)、金華(Jinhua)、カヘティアン(Kakhetian)、ケレ(Kele)、ケメロボ(Kemerovo)、コリアン・ネイティブ(Korean Native)、クルスコポリエ(Krskopolje)、クネクネ(Kunekune)、ラムコム(Lamcombe)、ラージ・ブラック(Large Black)、ラージ・ブラック・ホワイト(Large Black-White)、ラージ・ホワイト(Large White)、ラトビアン・ホワイト(Latvian White)、レイコマ(Leicoma)、リトアニアン・ネイティブ(Lithuanian Native)、リトアニアン・ホワイト(Lithuanian White)、リンカーンシャー・カーリー・コート(Lincolnshire Curly-Coated)、リブニー(Livny)、マルハド・デ・アルコバカ(Malhado de Alcobaca)、マンガリッツァ(Mangalitsa)、メイシャン(Meishan)、ミドル・ホワイト(Middle White)、ミンジュー(Minzhu)、ミノカワ・ブタ(Minokawa Buta)、モン・カイ(Mong Cai)、モラ・ロマグノラ(Mora Romagnola)、モウラ(Moura)、ムコタ(Mukota)、ミュールフット(Mulefoot)、ムロム(Murom)、ミルロッド(Myrhorod)、ネロデイ・ネブロディ(Nero dei Nebrodi)、ネイジャン(Neijiang)、ニュー・ジーランド(New Zealand)、寧郷(Ningxiang)、ノース・コーカシアン(North Caucasian)、ノース・シベリアン(North Siberian)、ノルウェー・ランドレース(Norwegian Landrace)、ノルウェー・ヨークシャー(Norwegian Yorkshire)、オサバウ島(Ossabaw Island)、オックスフォードサンディー及びブラック(Oxford Sandy and Black)、パクチョン(Pakchong)5、フィリピン・ネイティブ(Philippine Native)、ピエトレン(Pietrain)、ポーランド・チャイナ(Poland China)、レッド・ワトル(Red Wattle)、サドルバック(Saddleback)、セミレチェンスク(Semirechensk)、シベリアン・ブラック・パイド(Siberian Black Pied)、スモール・ブラック(Small Black)、スモール・ホワイト(Small White)、スポット(Spots)、スラバヤ・バビ(Surabaya Babi)、スワビアン・ホール(Swabian-Hall)、スェーディッシュ・ランドレース(Swedish Landrace)、スワロー・ビリーフ・マンガリッツァ(Swallow Belied Mangalitza)、タイフ(Taihu)豚、タムワース(Tamworth)、ツオク・ニュー(Thuoc Nhieu)、チベタン(Tibetan)、トウキョウ(Tokyo)-X、チビルスク(Tsivilsk)、トゥロポリェ(Turopolje)、ウクライニアン・スポッテッド・ステッペ(Ukrainian Spotted Steppe)、ウクライニアン・ホワイト・ステッペ(Ukrainian White Steppe)、ウルツム(Urzhum)、ベトナミーズ・ポットベリイー(Vietnamese Potbelly)、ウェルシュ(Welsh)、ウェセックス・サドルバック(Wessex Saddleback)、ウエスト・フレンチ・ホワイト(West French White)、ウィンズニヤー(Windsnyer)、ウツィシャム(Wuzhishanm)、ヤナン(Yanan)、ヨークシャー(Yorkshire)及びヨークシャー・ブルー及びホワイト(Yorkshire Blue and White)。いくつかの実施形態では、ブタ細胞は、ヨークシャー(Yorkshire)及びユカタン(Yucatan)ブタ細胞である。
【0053】
[0118] いくつかの実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、1つ以上の遺伝子が、その一部の追加、欠失、不活性化、破壊、切除により改変されており、又は遺伝子配列の一部が変更されているように遺伝子改変されている。
【0054】
[0119] いくつかの実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、1つ以上の遺伝子を不活性化する1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、細胞、組織、器官又は動物は、1つ以上の変異を有する1つ以上の遺伝子の発現の低下又は排除をもたらす1つ以上の変異又はエピジェネティック変化を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子は、細胞、組織、器官又は動物中に存在する核酸を遺伝子改変することによって不活性化される。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子の不活性化は、アッセイによって確認される。いくつかの実施形態では、アッセイは、感染力アッセイ、逆転写酵素PCRアッセイ、RNA-seq、リアルタイムPCR、又はジャンクションPCRマッピングアッセイである。
【0055】
特定の遺伝子型
[0120] 細胞、組織、器官及び動物が、ヒト臨床使用に安全且つ有効であることを保証するために、本開示の細胞、組織、器官、及び動物(例えば、ドナー豚)は、それらをヒトにおいて適合性にする、向上した補体(即ち、補体毒性)、凝固、炎症性(即ち、アポトーシス/炎症)、免疫(即ち、細胞毒性)、及び/又は免疫調節系を有するように遺伝子操作される。ノックアウト(KO)、ノックイン(KI)(或いは、本明細書では導入遺伝子(TG)と称される)、及び/又はゲノム置換戦略の新規な組合せは、向上した補体、凝固、炎症性、免疫、及び/又は免疫調節系を提供する。
【0056】
[0121] 例えば遺伝的KOによって、主要な異種性炭水化物抗原の発現を欠く細胞、組織、器官及び動物は、異種移植中の体液性拒絶反応を低下させ又は排除する。主要な異種性炭水化物抗原のうちの3つは、グリコシルトランスフェラーゼ/グリコシルヒドロラーゼGGTA1、CMAH、及びB4GALNT2によって産生されるものを含む。これらの遺伝子の機能喪失の目的は、予め形成された抗豚抗体の、ブタ移植片の内皮への結合を低下させ及び/又は排除することである。
【0057】
[0122] 1つ以上のゲノム遺伝子座、例えばAAVS1などのセーフハーバーゲノム遺伝子座への重要な補体、凝固、炎症性、免疫、及び/又は免疫調節因子の挿入は、ヒト補体システム、及びナチュラルキラー(NK)、マクロファージ、及びT細胞機能の調節を助けるであろう。非限定的な例には、ヒト補体カスケードを阻害するためのKIによるhCD46、hCD55、及びhCD59の過剰発現;例えば、ブタvWF配列のA1ドメイン及び/又は隣接領域のヒト化による、無秩序な血小板隔離及び血栓性微小血管症を予防するためのvWFのヒト化;ヒトNK細胞の細胞毒性に対する保護及びブタ細胞のヒト化を提供するためのB2M-HLA-E SCTのKI;並びに免疫抑制剤、免疫調節物質、及び/又は抗凝固剤として機能するためのCD47、CD39、THBD、TFPI、A20のKIが含まれる。
【0058】
[0123] いくつかの実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、1つ以上の遺伝子が、その一部の追加、欠失、不活性化、破壊、切除により改変されており、又は遺伝子配列の一部が変更されているように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、本開示は、複数の改変遺伝子を有する単離された細胞、組織、器官、又は動物を提供する。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、α 1,3、ガラクトシルトランスフェラーゼ(GGTA)、β-1,4-N-アセチル-ガラクトサミニルトランスフェラーゼ2(B4GalNT2)、シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)、THBD、TFPI、CD39、HO-1、CD46、CD55、CD59、主要組織適合性複合体、クラスI、E単鎖三量体(HLA-E SCT)、A20、PD-L1、CD47、豚白血球抗原1(SLA-1)、SLA-2、SLA-3、vWF、B2M、DQA、DRA、及びCD47の1つ以上を含む。
【0059】
[0124] いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、GGTA、B4GalNT2、CMAH、又はそれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態では、GGTA、B4GalNT2、及び/又はCMAHは、遺伝的にKOである。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、THBD、TFPI、CD39、HO-1、又はそれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態では、THBD、TFPI、CD39、及び/又はHO-1は、遺伝的にKIである。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、CD46、CD55、CD59、B2M-HLA-E SCT、A20、PD-L1、CD47、又はそれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態では、CD46、CD55、CD59、B2M-HLA-E SCT、A20、PD-L1、及び/又はCD47は、遺伝的にKIである。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、SLA-1、SLA-2、SLA-3、B2M、又はそれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、DQA及び/又はDRAである。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、PD-L1、外来性vWF、HLA-E、HLA-G、B2M、CIITA-DN、及び又はそれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、TBM、PD-L1、HLA-E、CD47、又はそれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態では、TBM、PD-L1、HLA-E、及び/又はCD47は、遺伝的にKIである。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、MHC-I遺伝子SLA-1、SLA-2、及びSLA-3、MHC-II遺伝子DQA及びDRA、内因性vWF、CD9、アシアロ糖タンパク質受容体、少なくとも1つの補体阻害剤遺伝子(例えば、C3、CD46、CD55、及びCD59)、及びそれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態では、CD46、CD55及び/又はCD59は、遺伝的にKIである。
【0060】
[0125] 一実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、B2M、HLA-E SCT、CD47、THBD、TFPI、CD39、A20、PD-L1、FasL、CD46、CD55、CD59、又はそれらの任意の組合せを含む導入遺伝子発現ベクターで遺伝子改変されている。一実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、B2M、HLA-E SCT、CD47、THBD、TFPI、CD39、A20、PD-L1、FasL、CD46、CD55、及びCD59のそれぞれを含む導入遺伝子発現ベクターで遺伝子改変されている。導入遺伝子発現ベクターの一実施形態は、図17に示される。一実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、例えば遺伝的KOによって、GGTA、B4GalNT2、CMAH、又はそれらの任意の組合せの発現が低下されているか、又は発現がないように、さらに遺伝子改変されている。
【0061】
[0126] 一実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、B2M、HLA-E SCT、CD47、THBD、TFPI、CD39、A20、PD-L1、HO-1、CD46、CD55、CD59、又はそれらの任意の組合せを含む導入遺伝子発現ベクターで遺伝子改変されている。一実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、B2M、HLA-E SCT、CD47、THBD、TFPI、CD39、A20、PD-L1、HO-1、CD46、CD55、及びCD59のそれぞれを含む導入遺伝子発現ベクターで遺伝子改変されている。導入遺伝子発現ベクターの一実施形態は、図18に示される。一実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、例えば遺伝的KOによって、GGTA、B4GalNT2、CMAH、又はそれらの任意の組合せの発現が低下されているか、又は発現がないように、さらに遺伝子改変されている。
【0062】
[0127] 一実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、B2M、HLA-E SCT、CD47、PD-L1、HO-1、THBD、TFPI、CD39、A20、CD46、CD55、CD59、又はそれらの任意の組合せを含む導入遺伝子発現ベクターで遺伝子改変されている。一実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、B2M、HLA-E SCT、CD47、PD-L1、HO-1、THBD、TFPI、CD39、A20、CD46、CD55、及びCD59のそれぞれを含む導入遺伝子発現ベクターで遺伝子改変されている。導入遺伝子発現ベクターの一実施形態は、図19に示される。一実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、例えば遺伝的KOによって、GGTA、B4GalNT2、CMAH、又はそれらの任意の組合せの発現が低下されているか、又は発現がないように、さらに遺伝子改変されている。
【0063】
[0128] 一実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、CD46、CD55、CD59、A20、THBD、TFPI、CD39、HO-1、2xFKBP(FK506結合タンパク質の融合物)、hCaspase8、PD-L1、B2M、HLA-E SCT、CD47、又はそれらの任意の組合せを含む導入遺伝子発現ベクターで遺伝子改変されている。一実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、CD46、CD55、CD59、A20、THBD、TFPI、CD39、HO-1、2xFKBP、hCaspase8、PD-L1、B2M、HLA-E SCT、及びCD47のそれぞれを含む導入遺伝子発現ベクターで遺伝子改変されている。導入遺伝子発現ベクターの一実施形態は、図20に示される。一実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、GGTA、B4GalNT2、CMAH、又はそれらの任意の組合せの発現が低下されているか、又は例えば遺伝的KOによって、発現がないように、さらに遺伝子改変されている。
【0064】
[0129] 本開示の細胞、組織、器官又は動物は、任意の方法によって遺伝子改変され得る。本明細書に開示及び記載されるノックアウト(KO)、ノックイン(KI)、及び/又はゲノム置換戦略のための適切な方法の非限定的な例は、Cas9、Cas12a(Cpf1)、又は他のCRISPRエンドヌクレアーゼ、Argonauteエンドヌクレアーゼ、転写活性化因子様(TAL)エフェクター及びヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、発現ベクター、トランスポゾンシステム(例えば、PiggyBacトランスポザーゼ)、又はそれらの任意の組合せを使用するCRISPR媒介遺伝子改変を含む。
【0065】
[0130] 本開示の細胞、組織、器官又は動物は、PERVを含まないようにさらに改変され得る。本開示の細胞、組織、器官又は動物は、それらのゲノムから機能的に削除されたPERVコピーを有するようにさらに改変され得る。本開示の細胞、組織、器官又は動物は、それらのゲノムにおいて機能的に不活性化されたPERVコピーを有するようにさらに改変され得る。PERVは、ブタ細胞、組織、又は器官がヒトレシピエントに移植されるべき場合、リスク因子に相当する。PERVは、正常な豚細胞から放出され、感染性である。PERV-A及びPERV-Bは、数種、中でもヒトの細胞に感染するポリトロピックウイルスであり(例えばそれらは、異種指向性である);一方PERV-Cは、豚細胞のみに感染するエコトロピックウイルスである。機能的に削除されたPERVコピーの非限定的な方法は、両方ともそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Niu 2017及びWIPO公開番号国際公開第2018/195402号に開示及び記載されている。いくつかの実施形態では、豚は、PERV-A、PERV-B、又はPERV-C(又はそれらの任意の組合せ)非含有であるように遺伝子操作される。
【0066】
[0131] いくつかの実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物の追加の遺伝子は、その一部の追加、欠失、不活性化、破壊、切除により改変され、又は遺伝子配列の一部が変更されている。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、以下の遺伝子の1つ以上の欠失を含み:MHC-I遺伝子SLA-1、SLA-2、及びSLA-3、MHC-II遺伝子DQA及びDRA、内因性vWF、CD9、アシアロ糖タンパク質受容体、及びC3、且つ以下の導入遺伝子の1つ以上を発現している:PD-L1、外来性vWF、HLA-E、HLA-G、B2M、及びCIITA-DN。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、以下の遺伝子の1つ以上の欠失を含み:αガラクトシルトランスフェラーゼ1、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、及びシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ、且つ以下の導入遺伝子の1つ以上を発現している:CD46、CD55、CD59、CD47、HO-1、A20、TNFR1-Ig、CD39、THBD、TFPI、EPCR、PD-1、CTLA-Ig、CD73、SOD3、CXCL12、FasL、CXCR3、CD39L1、GLP-1R、M3R、IL35、IL12A及びEB13。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、CD46、CD55、CD59、CD47、HO-1、A20、TNFR1-Ig、CD39、THBD、TFPI、EPCR、PD-1、CTLA-Ig、CD73、SOD3、CXCL12、FasL、CXCR3、CD39L1、GLP-1R、M3R、IL35、IL12A及びEB13である。
【0067】
[0132] いくつかの実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、1つ以上の遺伝子が、その一部の追加、欠失、不活性化、破壊、切除によって改変されており、遺伝子配列の一部が変更されており、又は導入遺伝子若しくはその一部を導入するように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上の改変遺伝子を有する単離された細胞、組織、器官、又は動物を提供する。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、MHCクラスI遺伝子である。いくつかの実施形態では、改変MHCクラスI遺伝子は、以下のSLA-1、SLA-2、SLA-3、及びB2Mの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、SLA-1、SLA-2、及び/又はSLA-3である。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、B2Mである。いくつかの実施形態では、改変MHCクラスI遺伝子は、以下のSLA-1、SLA-2、SLA-3、及びB2Mの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、改変B2M、SLA-1、SLA-2、及び/又はSLA-3遺伝子、及び/又はその一部は、ヒトHLA-E遺伝子、ヒトHLA-G遺伝子、ヒトB2M遺伝子、及び/又はヒト(ドミナントネガティブ突然変異体クラスIIトランス活性化因子)CIITA-DN遺伝子、及び/又はその一部で置換される。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、条件的に及び/又は誘導性に改変されている。いくつかの実施形態では、条件的プロモーター及び/又は誘導性プロモーターは、1つ以上の改変遺伝子を条件的に及び/又は誘導性に改変するために使用される。いくつかの実施形態では、単離された細胞、組織、器官、又は動物は、B2M、SLA-1、SLA-2、又はSLA-3遺伝子、又はそれらの任意の組合せを条件的に変更し、条件的に変更された遺伝子をヒトHLA-E遺伝子、ヒトHLA-G遺伝子、ヒトB2M遺伝子、及び/又はヒトCIITA-DN遺伝子の少なくとも一部で置換することを含む。
【0068】
[0133] いくつかの実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、1つ以上の遺伝子が、その一部の追加、欠失、不活性化、破壊、切除によって改変されており、遺伝子配列の一部が変更されており、又は導入遺伝子若しくはその一部を導入するように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上の改変遺伝子を有する単離された細胞、組織、器官、又は動物を提供する。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、MHCクラスII遺伝子である。いくつかの実施形態では、改変MHCクラスII遺伝子は、DRQ、DRA、又はそれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態では、DRQ及び/又はDRAは、その一部の追加、欠失、不活性化、破壊、切除により改変され、遺伝子配列の一部が変更されている。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、条件的に及び/又は誘導性に改変されている。いくつかの実施形態では、条件的プロモーター及び/又は誘導性プロモーターは、1つ以上の改変遺伝子を条件的に及び/又は誘導性に改変するために使用される。いくつかの実施形態では、単離された細胞、組織、器官、又は動物は、DRQ及び/又はDRA遺伝子、又はそれらの任意の組合せを条件的に変更することを含む。
【0069】
[0134] いくつかの実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、1つ以上の遺伝子が、その一部の追加、欠失、不活性化、破壊、切除によって改変されており、遺伝子配列の一部が変更されており、又は導入遺伝子若しくはその一部を導入するように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、本開示は、改変vWF遺伝子を有する単離された細胞、組織、器官、又は動物を提供する。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、vWF遺伝子及びvWF関連遺伝子である。いくつかの実施形態では、改変vWF遺伝子、及び/又はその一部は、ヒトvWF遺伝子及び/又はその一部で置換される。いくつかの実施形態では、改変vWF遺伝子、改変vWF関連遺伝子、及び/又はその一部は、ヒトvWF遺伝子、1つ以上のヒトvWF関連遺伝子、及び/又はその一部で置換される。いくつかの実施形態では、改変vWF遺伝子及び/又はvWF関連遺伝子は、条件的に及び/又は誘導性に改変されている。いくつかの実施形態では、条件的プロモーター及び/又は誘導性プロモーターは、1つ以上の改変遺伝子を条件的に及び/又は誘導性に改変するために使用される。いくつかの実施形態では、単離された細胞、組織、器官、又は動物は、vWF、vWF関連遺伝子、その一部、又はそれらの任意の組合せを条件的に変更し、条件的に変更された遺伝子をヒトvWF遺伝子、ヒトvWF遺伝子の少なくとも一部、1つ以上の他のヒトvWF関連遺伝子、1つ以上のヒトvWF関連遺伝子の少なくとも一部、又はそれらの任意の組合せで置換することを含む。いくつかの実施形態では、vWF遺伝子は、内因性ブタゲノムにおいてHDR置換を開始し、ヒト配列で置換されるべき領域の付近を切断するように設計されたgRNAを使用して改変される。適切なgRNAの非限定的な例は、配列番号5~157のいずれかの1つ以上である。
【0070】
[0135] いくつかの実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、1つ以上の遺伝子が、その一部の追加、欠失、不活性化、破壊、切除によって改変されているか、遺伝子配列の一部が変更されているか、又は導入遺伝子若しくはその一部を導入するように、遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、1つ以上の外来性遺伝子、又はその一部、例えば導入遺伝子を、細胞、組織、器官、又は動物に導入することによって遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上の改変遺伝子を有する単離された細胞、組織、器官、又は動物を提供する。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、プログラム死遺伝子である。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、PD-L1である。いくつかの実施形態では、細胞、組織、器官、又は動物は、外来性PD-L1遺伝子、又はその一部、例えば導入遺伝子を発現するように改変されている。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、条件的に及び/又は誘導性に改変されている。いくつかの実施形態では、条件的プロモーター及び/又は誘導性プロモーターは、1つ以上の改変遺伝子を条件的に及び/又は誘導性に改変するために使用される。いくつかの実施形態では、単離された細胞、組織、器官、又は動物は、PD-L1を条件的に変更することを含む。いくつかの実施形態では、PD-L1は、配列番号211に記載される配列、又はその任意の変異体若しくは一部を含む。
【0071】
[0136] いくつかの実施形態では、本開示の細胞、組織、器官又は動物は、1つ以上の遺伝子が、その一部の追加、欠失、不活性化、破壊、切除によって改変されており、遺伝子配列の一部が変更されており、又は導入遺伝子若しくはその一部を導入するように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上の改変遺伝子を有する単離された細胞、組織、器官、又は動物を提供する。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、補体遺伝子である。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、C3である。いくつかの実施形態では、C3は、その一部の追加、欠失、不活性化、破壊、切除により改変され、遺伝子配列の一部が変更されている。いくつかの実施形態では、改変C3遺伝子及び/又は補体関連遺伝子は、条件的に及び/又は誘導性に改変されている。いくつかの実施形態では、条件的プロモーター及び/又は誘導性プロモーターは、1つ以上の改変遺伝子を条件的に及び/又は誘導性に改変するために使用される。いくつかの実施形態では、単離された細胞、組織、器官、又は動物は、C3、補体関連遺伝子、その一部、又はそれらの任意の組合せを条件的に変更することを含む。いくつかの実施形態では、C3遺伝子は、gRNAを用いて改変される。適切なgRNAの非限定的な例は、配列番号158~210の任意の1つ以上を含む。
【0072】
[0137] いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、C3のノックアウトである。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、PD-L1のノックインである。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、ブタvWFのヒト化vWFである。いくつかの実施形態では、改変遺伝子は、MHC-I遺伝子SLA-1、SLA-2、及びSLA-3条件的ノックインである。
【0073】
[0138] いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞、組織又は器官に対する、宿主による免疫応答は、誘発されず、又は実質的に誘発されない。
【0074】
[0139] いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示する細胞のいずれかから得られる核酸を提供する。いくつかの実施形態では、細胞中の核酸は、細胞中の1つ以上の遺伝子が変更され、又は細胞のゲノムが別様に改変されるように遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、遺伝子、又はその一部は、当技術分野で既知の及び/又は本明細書に開示する遺伝子改変システムのいずれかを用いて遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、遺伝子改変システムは、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、及び/又はCRISPRベースのシステムである。いくつかの実施形態では、遺伝子改変システムは、CRISPR-Cas9システムである。いくつかの実施形態では、遺伝子改変システムは、クラスII、タイプII CRISPRシステムである。いくつかの実施形態では、遺伝子改変システムは、クラスII、タイプV CRISPRシステムである。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞中の1つ以上の遺伝子又はその一部が不活性化されるように遺伝子改変され、また細胞は、細胞(又は細胞からクローン化/誘導された組織若しくは器官)がヒトに移植された場合に免疫応答を誘導するであろう1つ以上の遺伝子又はその一部の発現が低下するように、さらに遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のヒト遺伝子、又はその一部の発現が増加するように遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のヒト化遺伝子、又はその一部の発現が増加するように遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞中の1つ以上の遺伝子又はその一部が不活性化するように遺伝子改変され、また細胞は、細胞(又は細胞からクローン化/誘導された組織若しくは器官)がヒトに移植された場合に免疫応答を抑制するであろう1つ以上の遺伝子の発現が増加するように、さらに遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞中の1つ以上の遺伝子又はその一部が不活性化するように遺伝子改変され、また細胞は、細胞(又は細胞からクローン化/誘導された組織若しくは器官)がヒトに移植された場合に免疫応答を誘導するであろう1つ以上の遺伝子の発現が低下するようにさらに遺伝子改変され、また細胞は、細胞(又は細胞からクローン化/誘導された組織若しくは器官)がヒトに移植された場合に免疫応答を抑制するであろう1つ以上の遺伝子の発現が増加するように、さらに遺伝子改変される。
【0075】
[0140] いくつかの実施形態では、本開示は、遺伝子改変細胞からクローン化された胚を提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変核酸は、遺伝子改変細胞から抽出され、異なる細胞中にクローン化される。例えば、体細胞核移植では、遺伝子改変細胞からの遺伝子改変核酸は、脱核卵母細胞中に導入される。いくつかの実施形態では、卵母細胞は、極体の付近での部分的な帯状切開と、次いで解剖領域で細胞質を押し出すこととによって脱核することができる。いくつかの実施形態では、鋭い斜角の先端を有する注入ピペットを使用して、第2減数分裂で停止した脱核卵母細胞中に遺伝子改変細胞を注入する。第2減数分裂で停止した卵母細胞は、度々「卵」と称される。いくつかの実施形態では、胚は、卵母細胞を融合及び活性化することによって生成される。そのような胚は、本明細書では、「遺伝子改変胚」と称され得る。いくつかの実施形態では、遺伝子改変胚は、レシピエント雌豚の輸卵管に移動される。いくつかの実施形態では、遺伝子改変胚は、活性化から20~24時間後にレシピエント雌豚の輸卵管に移動される。例えば、Cibelli 1998及び米国特許第6,548,741号を参照されたい。いくつかの実施形態では、レシピエント雌は、遺伝子改変胚の移動から約20~21日後に妊娠に関してチェックされる。
【0076】
[0141] いくつかの実施形態では、遺伝子改変胚は、生後遺伝子改変動物に成長する。いくつかの実施形態では、生後遺伝子改変動物は、新生児遺伝子改変動物である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変豚は、若年遺伝子改変動物である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変動物は、成体遺伝子改変動物(例えば、5~6か月齢を超える)である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変動物は、雌遺伝子改変動物である。いくつかの実施形態では、動物は、雄遺伝子改変動物である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変動物は、非遺伝子改変動物と交配される。いくつかの実施形態では、遺伝子改変動物は、別の遺伝子改変動物と交配される。いくつかの実施形態では、遺伝子改変豚は、活性なウイルスが低下した又は該ウイルスを有さない別の遺伝子改変動物と交配される。いくつかの実施形態では、遺伝子改変動物は、第2の遺伝子改変動物からの細胞、組織又は器官が、ヒトに移植された場合に免疫応答を誘導する可能性が低いように遺伝子改変されている、第2の遺伝子改変動物と交配される。
【0077】
[0142] いくつかの実施形態では、遺伝子改変動物は、1つ以上の改変遺伝子を有し、妊娠後少なくとも1か月、少なくとも6か月、少なくとも1年、少なくとも5年、少なくとも10年、同じ又は同様のレベルの改変遺伝子の発現又は不活性化を維持する動物である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変動物は、遺伝子改変豚として、非ウイルス不活性化代理からの分娩後でさえも、又は施設/空間に他の非ウイルス不活性化動物といた後も、1つ以上の改変遺伝子を有する遺伝子改変された状態に留まる。
【0078】
[0143] いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される生後遺伝子改変豚のいずれかから得られた細胞、組織、又は器官を提供する。いくつかの実施形態では、細胞、組織、又は器官は、肝臓、腎臓、肺、心臓、膵臓、筋肉、血液、及び骨からなる群から選択される。特定の実施形態では、器官は、肝臓、腎臓、肺又は心臓である。いくつかの実施形態では、生後遺伝子改変豚からの細胞は:膵臓膵島、肺上皮細胞、心臓性筋肉細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、肝細胞、非実質肝臓細胞、胆嚢上皮細胞、胆嚢内皮細胞、胆管上皮細胞、胆管内皮細胞、肝血管上皮細胞、肝血管内皮細胞、類洞細胞、脈絡叢細胞、線維芽細胞、セルトリ細胞、神経細胞、幹細胞、及び副腎クロム親和性細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子改変器官、組織又は細胞は、それらの天然環境から分離されている(即ち、内部でそれらが成長した豚から分離されている)。いくつかの実施形態では、天然環境からの分離は、天然環境からの全体的な物理的分離、例えば、遺伝子改変ドナー動物からの除去、及び遺伝子改変器官、組織又は細胞の、それらが直接接触している隣接細胞との関連性の変更(例えば、解離により)を意味する。
【0079】
III. 細胞、組織、器官、又は動物の作製方法
[0144] 本開示は、本明細書に開示する1つ以上の改変遺伝子を有する細胞、組織、器官、又は動物のいずれかの作製方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示する細胞のいずれかにおいて、1つ以上の遺伝子又はその一部を不活性化、欠失、又は別様に破壊する方法を提供し、該方法は、遺伝子に特異的な遺伝子編集薬剤を細胞に投与することを含み、ここで薬剤は、遺伝子の転写及び/又は翻訳を妨害する。いくつかの実施形態では、薬剤は、遺伝子の開始コドンを標的とし、遺伝子の転写を阻害する。いくつかの実施形態では、薬剤は、遺伝子中のエクソンを標的とし、薬剤は、遺伝子においてフレームシフト変異を誘導する。いくつかの実施形態では、薬剤は、不活性化変異を遺伝子に導入する。いくつかの実施形態では、薬剤は、遺伝子の転写を阻止する。
【0080】
[0145] いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上の遺伝子又はその一部をin vivoで変更する方法を提供し、該方法は、遺伝子に特異的な遺伝子編集薬剤を細胞に投与することを含み、ここで薬剤は例えば、遺伝子をヒト化し又は遺伝子の天然(例えば、野生型)配列を別様に変更することによって、遺伝子の配列を変更する。
【0081】
[0146] いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上の遺伝子又はその一部、例えば導入遺伝子(例えば、非天然遺伝子)を発現する方法を提供し、該方法は、導入遺伝子に特異的な遺伝子編集薬剤を細胞に投与することを含み、ここで薬剤は、導入遺伝子の配列を導入する。いくつかの実施形態では、薬剤は、核酸配列、例えばプラスミド、ベクターなどである。いくつかの実施形態では、核酸配列は、1つ以上の核酸配列、例えばプロモーター、導入遺伝子、及び/又は追加の遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、核酸配列又はその一部は、1つ以上の種及び/又は1つ以上の供給源に由来する。いくつかの実施形態では、種は、遺伝子改変細胞、組織、又は器官を受容するであろう種である。いくつかの実施形態では、種は、ヒトである。他の実施形態では、種は、非ヒト、例えば哺乳動物、動物、細菌、及び/又はウイルスである。
【0082】
[0147] いくつかの実施形態では、本明細書に開示する薬剤のいずれも、ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるヌクレアーゼ及び/又はニッカーゼ及び/又はRNA若しくはDNA分子の1つ以上をコードする。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド薬剤は、1つ以上の細胞に導入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが1つ以上の細胞によって一過性に発現されるように、1つ以上の細胞に導入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが1つ以上の細胞によって安定的に発現されるように、1つ以上の細胞に導入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、それが細胞ゲノムに安定的に組み込まれるような方法で導入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、1つ以上の転位因子と共に導入される。いくつかの実施形態では、転位因子は、トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態では、転位因子は、PiggyBacトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態では、転位因子は、誘導性である。いくつかの実施形態では、転位因子は、ドキシサイクリン誘導性である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、選択マーカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、選択マーカーは、ピューロマイシン耐性マーカーである。いくつかの実施形態では、選択マーカーは、蛍光タンパク質(例えば、GFP)である。
【0083】
[0148] いくつかの実施形態では、薬剤は、細胞中のDNAを標的とするのに使用されるヌクレアーゼ又はニッカーゼである。いくつかの実施形態では、薬剤は、遺伝子を特異的に標的とし、該遺伝子の発現を抑制する。いくつかの実施形態では、薬剤は、転写リプレッサードメインを含む。いくつかの実施形態では、転写リプレッサードメインは、Krueppel関連ボックス(KRAB)である。
【0084】
[0149] いくつかの実施形態では、薬剤は、任意のプログラム可能ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、薬剤は、天然ホーミングメガヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、薬剤は、TALENベースの薬剤、ZFNベースの薬剤、又はCRISPRベースの薬剤、又は任意の生物学的に活性な断片、融合物、誘導体又はそれらの組合せである。CRISPRベースの薬剤には、例えば、例えばCas9及びCpf1の様々な種変異体を含む、クラスIIタイプII及びタイプVシステムが含まれる。いくつかの実施形態では、薬剤は、デアミナーゼ又はデアミナーゼをコードする核酸である。いくつかの実施形態では、細胞は、TALENベースの薬剤、ZFNベースの薬剤、及び/又はCRISPRベースの薬剤を安定的に及び/又は一過性に発現するように遺伝子操作される。
【0085】
[0150]
IV. 処置の方法
[0151] いくつかの実施形態では、本明細書に開示する遺伝子改変細胞、組織又は器官のいずれも、遺伝子改変細胞として異なる種の対象の処置に使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される遺伝子改変細胞、組織又は器官のいずれかを、それを必要とする対象に移植する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト霊長類である。
【0086】
[0152] いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法のいずれかに使用するための遺伝子改変器官は、遺伝子改変豚の心臓、肺、肝臓、眼、下垂体、甲状腺、副甲状腺、食道、胸腺、副腎、虫垂、膀胱、胆嚢、小腸、大腸、小腸、腎臓、膵臓、脾臓、胃、皮膚、及び/又は前立腺から選択され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法のいずれかに使用するための遺伝子改変組織は、遺伝子改変豚の軟骨(例えば、食道軟骨、膝の軟骨、耳の軟骨、鼻の軟骨)、筋肉、例えば非限定的に平滑筋及び心筋(例えば、心臓弁)、腱、靱帯、骨(例えば、骨髄)、角膜、中耳並びに静脈から選択され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法のいずれかに使用するための遺伝子改変細胞は、血液細胞、皮膚濾胞、毛包、及び/又は幹細胞を含む。器官又は組織の任意の部分(例えば、角膜などの眼の部分)を、本開示の組成物の投与に使用することができる。
【0087】
[0153] いくつかの実施形態では、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、又は脾臓は、(a)GGTA1、CMAH、及びB4GALNT2の欠失又は破壊;(b)豚ゲノムの単一のマルチ導入遺伝子カセットから発現されるCD46、CD55、CD59、CD39、CD47、A20、PD-L1、HLA-E、B2M、THBD、TFPI、及びHO導入遺伝子(例えばヒト又はそのヒト化コピー)の追加;並びに(c)全PERVコピーの機能的欠失を含むように遺伝子改変されている豚から分離される。いくつかの実施形態では、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、又は脾臓は、(a)GGTA1、CMAH、及びB4GALNT2の機能的破壊;(b)豚ゲノムの単一のマルチ導入遺伝子カセットから発現されるCD46、CD55、CD59、CD39、CD47、A20、PD-L1、HLA-E、B2M、THBD、TFPI、及びHO導入遺伝子(例えばそのヒト化コピー)の追加;並びに(c)全PERVコピーの機能的不活性化を含むように遺伝子改変されている豚から分離される。特定の実施形態では、豚は、ヒト化vWF、ASGR1の欠失、及び/又はB2M遺伝子の欠失を有するようにさらに遺伝子改変されている。
【0088】
[0154] いくつかの実施形態では、異種移植された器官(例えば、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓)は、ヒト又は非ヒト霊長類に異種移植された後、約300日を超える、約1年を超える、約1.5年を超える、約2年を超える、約2.5年を超える、約3年を超える、約3.5年を超える、約4年を超える、約4.5年を超える、約5年を超える、約5.5年を超える、約6年を超える、約6.5年を超える、約7年を超える、約7.5年を超える、約8年を超える、約8.5年を超える、約9年、約9.5年を超える、又は約10年を超える持続的機能を示す。
【0089】
[0155] いくつかの実施形態では、本開示は、損傷した、欠損した又は存在しない器官、組織又は細胞機能をもたらす疾患、障害又は傷害を有する対象の処置を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、対象の1つ以上の細胞、組織又は器官の損傷をもたらす傷害又は外傷(例えば、自動車事故)を患っている。いくつかの実施形態では、対象は、火又は酸によるやけどを患っている。いくつかの実施形態では、対象は、損傷した、欠損した又は存在しない器官、組織又は細胞機能をもたらす疾患又は障害を有する。いくつかの実施形態では、対象は、自己免疫性疾患を患っている。いくつかの実施形態では、疾患は:心臓疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症)、拡張型心筋症、重度の冠動脈疾患、瘢痕化した心臓組織、心臓の先天性欠損、I型若しくはII型糖尿病、肝炎、のう胞性線維症、肝硬変、腎不全、ループス、強皮症、IgA腎症、多のう胞性腎臓疾患、心筋梗塞、肺気腫、慢性気管支炎、閉塞性細気管支炎、肺高血圧症、先天性横隔膜ヘルニア、先天性サーファクタントタンパク質B欠乏症、及び先天性のう胞性気腫性肺疾患、原発性胆汁性胆管炎、硬化性胆管炎、胆道閉鎖症、アルコール依存、ウィルソン病、ヘモクロマトーシス、及び/又はα-1アンチトリプシン欠乏症からなる群から選択される。
【0090】
[0156] いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子改変細胞、組織及び/又は器官のいずれも、遺伝子改変ドナーから分離され、非ドナー対象宿主に投与される。この文脈で使用される「投与する」又は「投与」は、導入する、適用する、注入する、インプラントする、移植(graft)する、抱合する、及び移植(transplant)する、を含むがこれらに限定されない。本開示によれば、遺伝子改変細胞、組織及び/又は器官は、本開示の器官、組織、細胞又は組成物の所望の部位への局在化をもたらす方法又は経路によって投与され得る。本開示の器官、組織、細胞又は組成物は、細胞の少なくとも一部が生存した状態に留まる、対象内の所望の位置への細胞の送達をもたらす、任意の適切な経路によって対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%(別個に投与されたか、又は組織若しくは器官の一部として投与されたかにかかわらず)は、対象への投与後に生存した状態に留まる。本開示の器官、組織、細胞又は組成物の投与方法は、当技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、細胞、組織及び/又は器官は、宿主内に移植される。いくつかの実施形態では、細胞、組織及び/又は器官は、宿主内に注入される。いくつかの実施形態では、細胞、組織及び/又は器官は、宿主の表面(例えば、骨又は皮膚)上に移植(graft)される。
【0091】
[0157] いくつかの実施形態では、GGTA1、CMAH、及びB4GALNT2の欠失又は破壊;豚ゲノムの単一のマルチ導入遺伝子カセットからのCD46、CD55、CD39、CD47、HLA-E、THBD、及びTFPI、並びに場合によりCD59、B2M、A20、PD-L1、及びHO-1の1つ以上の発現;を全PERVコピーの欠失とともに有するように遺伝子改変されている、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、又は脾臓は、宿主内に移植される。いくつかの実施形態では、GGTA1、CMAH、及びB4GALNT2の欠失;豚ゲノムの単一のマルチ導入遺伝子カセットからのCD46、CD55、CD39、CD47、HLA-E、THBD及びTFPI、並びに場合によりCD59、B2M、A20、PD-L1、及びHO-1の1つ以上の発現;並びに全PERVコピーの機能的不活性化を有するように遺伝子改変されている、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、又は脾臓は、宿主内に移植される。いくつかの実施形態では、移植された心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、又はその一部は、生存し、約1日間、約1週間、約2週間、約3週間、約1か月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約9ヵ月間、約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、又はそれを超えて機能性である。
【0092】
[0158] いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞、組織又は器官を、遺伝子改変細胞、組織又は器官が投与されている宿主の免疫系から保護する必要があるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞、組織又は器官は、マトリクス又はコーティング(例えば、ゼラチン)とともに投与されて、遺伝子改変細胞、組織又は器官を、宿主からの免疫応答から保護する。いくつかの実施形態では、マトリクス又はコーティングは、生分解性マトリクス又はコーティングである。いくつかの実施形態では、マトリクス又はコーティングは、天然である。他の実施形態では、マトリクス又はコーティングは、合成である。
【0093】
[0159] いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞、組織又は器官は、免疫抑制化合物とともに投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制化合物は、小分子、ペプチド、抗体、及び/又は核酸(例えば、アンチセンス又はsiRNA分子)である。いくつかの実施形態では、免疫抑制化合物は、小分子である。いくつかの実施形態では、小分子は、ステロイド、mTOR阻害剤、カルシニューリン阻害剤、抗増殖薬剤又はIMDH阻害剤である。いくつかの実施形態では、小分子は、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、ブデソニド、プレドニゾロン)、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス)、mTOR阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムス)、IMDH阻害剤(アザチオプリン、レフルノミド、ミコフェノレート)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミスラマイシン)及びメトトレキサート、又はその塩若しくは誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫抑制化合物は:CTLA4、抗b7抗体、アバタセプト、アダリムマブ、アナキンラ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、イキセキズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、セクキヌマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、及びムロモナブからなる群から選択されるポリペプチドである。
【0094】
[0160] いくつかの実施形態では、対象に投与されるべき遺伝子改変細胞、組織又は器官は、それらが、対象において免疫応答を誘導する可能性が低いように、さらに遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞、組織又は器官は、それらが機能性免疫賦活性分子を発現しないように、さらに遺伝子改変されている。
【0095】
[0161] 以下の実施例は、本開示を説明するために提供され、単に説明を目的とするものであり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0096】
実施例
[0162] 本開示は、ここで一般的に記載されているが、本開示の特定の態様及び実施形態を単に説明することを目的として含まれ、本開示を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。例えば、本明細書に開示する特定の構築物及び実験設計は、適切な機能を検証するための例示的なツール及び方法を表す。したがって、開示される特定の構築物及び実験プランのいずれも、本開示の範囲内で置換できることがすぐに明らかとなるであろう。
【0097】
実施例1:補体系を阻害するためのブタ補体成分3(C3)のノックアウト
[0163] C3の高度に保存された領域を選択し、C3ドメインを標的とする2つのsgRNAを設計した。2つのgRNA配列の配列は、TCTCCAGACGCAGGACGTTG(配列番号158)及びGGAGGCCCACGAAGGGCAAG(配列番号159)である。C3 sgRNAを、GGTA sgRNA(GAGAAAATAATGAATGTCAA(配列番号210))プラスミド及びcas9プラスミドと一緒に、ネオントランスフェクションマシン及び試薬を用いてブタ胎児線維芽細胞に一時的にトランスフェクトした。C3を欠く細胞(「C3-KO」)を、GGTA抗体カウンター選択法を用いて選択して、C3-KO細胞を共濃縮し、次いで、これを単一細胞選別し、遺伝子型決定して、ディープシーケンシングを用いてC3標的をノックダウンする効率を決定した。
【0098】
[0164] スクリーニングした156クローンのうち、108クローンは二対立遺伝子C3-KOであった。二対立遺伝子C3-KO細胞のノックダウン効率は69%であった。得られたC3-KO細胞株を用いて、体細胞核移植法を用いて豚を作製した。C3-KO豚は63日間生存し、肝臓及び肺の感染により死亡した。図1A~Cに示すように、C3-KO豚は100%のNHEJノックアウトであった。図1Aは、C3に導入された欠失のサイズを示し、図1Bはインデルの位置を示し、図1Cは、C3-KO豚において生成されたインデルの配列を示す。
【0099】
[0165] 記載したC3-KO豚は、いかなる機能的C3タンパク質も産生しなかったであろうことが予想される。機能的C3タンパク質が欠如しているため、C3-KO豚の補体系が活性化されず、それによってC3-KO豚の自然免疫系が低下すると考えられる。さらに、C3-KO豚は、野生型豚と比較して細菌及び/又はウイルス感染を起こしやすい可能性があると予想される。さらに、C3-KO豚の細胞、組織、及び/又は器官のヒトへの異種移植は、ヒトの補体系を活性化することは予想されない。したがって、これはC3-KO豚異種移植片に対するヒト自然免疫応答を最小限に抑える筈である。
【0100】
実施例2:1つ以上の改変MHCクラスI遺伝子を有する豚
[0166] 豚のMHC主要クラスI対立遺伝子を、ヒトMHCマイナークラスI対立遺伝子(「MHC-I豚」)と条件的に置換した。これを行うために、SLA-1、SLA-2、及びSLA-3遺伝子を含む豚のゲノムの領域を、ヒトマイナー対立遺伝子HLA-Eの改変バージョンで置換した。
【0101】
[0167] 図2は、MHCクラスI置換戦略のスキームを示す:SLA-1、SLA-2、及びSLA-3遺伝子を含む遺伝子座は、loxP部位に隣接していた。Creで処理した後、SLA-1、SLA-2、及びSLA-3を切除し、HLA-E、HLA-G、B2M、及びCIITA-DN遺伝子の様々な組合せなどのヒトHLA-Eで置換した。MHC-I豚は生存可能であり、重度の免疫不全状態であった。したがって、SLA-1、SLA-2、及びSLA-3遺伝子を普遍的にヒト遺伝子で置換するのではなく、条件的ノックアウトを使用し、細胞、組織、及び/又は器官を回収する前に、SLA-1、SLA-2、及びSLA-3遺伝子をヒトHLA-E及び他のヒト遺伝子で置換した。
【0102】
[0168] 豚のMHC I領域を、長い読み取り技術を用いてシーケンシングした。SLA-1、SLA-2、及びSLA-3遺伝子を捕捉するためのプローブを設計し、MHC-I遺伝子領域を捕捉するために使用した。MHC-I遺伝子領域を正確に決定するために、PacBioシーケンシングと10Xシーケンシングを用いた。SLA-1、SLA-2、SLA-3の構成を図9に示す。MHC-I領域に隣接するloxP部位を有する2つのカセットを設計した。カセット1はプロモーター、loxP部位、及び選択剤(即ち、ピューロマイシン)を含む。カセット2は、第2のマーカー(GFP)、loxP部位、及びHLA-E、B2M及びCIITA-DNを含む遺伝子のプロモーターを含まないカセットを含む。
【0103】
[0169] カセット1及び2を、Golden Gate Assembly戦略(New England BioLabs)を用いて個々の成分から合成し、挿入部位に対応する800bp相同配列に隣接させた。2つの連続したCRISPR-cas9ラウンドを用いて、両方の部位を挿入した17。ピューロマイシン選択及びGFP FACS選別を用いてクローンを単離し、ジャンクションPCRを用いて挿入を検証した。
【0104】
[0170] 細胞にCreリコンビナーゼをトランスフェクトし、Creリコンビナーゼの発現を誘導した。単一細胞選別を行い、選別した細胞を接合PCRを用いてスクリーニングして、SLA-1、SLA-2、及びSLA-3をヒトMHC-1で二対立遺伝子置換した細胞を単離した。
【0105】
[0171] in vivo Cre切除のために、代替カセット1が設計されており、組織特異的プロモーター又は誘導性プロモーターの制御下にあるCreリコンビナーゼを含む。組織特異的プロモーター又は誘導性プロモーターを使用することによって、SLA-1、SLA-2、及びSLA-3遺伝子は、細胞、組織、及び/又は器官を回収する前に、目的の細胞、組織、及び/又は器官において切除されるか、又は切除が動物において誘導され得る。ヒトMHC-Iで置換されたSLA-1、SLA-2、及びSLA-3を有する豚は、体細胞核移植(SCNT)によって作製することができ、条件的及び/又は組織特異的条件的置換遺伝子をコードする子豚を作製することができる。
【0106】
実施例3:MHCクラスII不活性化
[0172] MHC-IIα鎖の発現を欠く豚(「MHC-II KO豚」)を、確立されたgRNA技術をブタ細胞内で用いて、DQA遺伝子を切除し、DRA遺伝子を不活性化することにより作製し、その後SCNTを介して宿主豚に移入した。簡潔には、ブタ細胞へのgRNA移入後、ゲノムをシーケンシングし、MHC-II遺伝子座における変異を同定した。Cas9をこれらの細胞に送達し、次いでこれを選別して単一細胞を単離した。これらの単一細胞をシーケンシングして、標的とするDQA及びDRA遺伝子の遺伝子型を決定した。DQA及びDRA不活性化を有する単一細胞において、胚をSCNT後に生成し、その後豚にインプラントしてMHC-II KO豚を作製した。生後4週で、MHC-II KO豚は健康のままであった。
【0107】
[0173] 図3A及び3Bは、DQA遺伝子に基づくMHC-II KOの遺伝子型を示している。MHC-II KO豚の遺伝子型を、DQA遺伝子のエクソンターゲティングに基づく増幅及びシーケンシング並びにDRA遺伝子のシーケンシングによって遺伝子型決定した。左のパネルに示すように、インデルのサイズ及び位置は、DRA遺伝子に位置する。DRA遺伝子の不活性化は、右のパネルに示すように、DRAアンプリコン中の126位及び127位のそれぞれにおける2つの単一ヌクレオチド挿入によって引き起こされた。
【0108】
[0174] 図4A及び4Bは、MHC-II KO豚の別の遺伝子型を示している。DRA遺伝子型は、DRA遺伝子のエクソンターゲティングに基づく増幅及びシーケンシングを用いて決定した。DRAからのエクソン標的化領域を増幅及びシーケンシングした。左のパネルに示すように、インデルのサイズ及び位置は、DRA遺伝子に位置する。DRA遺伝子の不活性化は、右のパネルに示すように、DRAアンプリコン中の106位及び107位のそれぞれにおける2つの単一ヌクレオチド挿入によって引き起こされた。
【0109】
[0175] MHC-II発現を欠くヒトと同様に、MHC-II KO豚は、CD4 T細胞の減少した集団を有するが、CD8 T細胞集団は無傷のままである(図5)。さらに、MHC-II KO豚は、他の問題の中でも、免疫抑制されており、増加した自己免疫及びリンパ系欠損を有する。これらの表現型は、MHC-II KO表現型と関連することが知られており、MHC-II発現を欠くマウスで観察されている。これらの類似性から、MHC-II KO豚は、活性な遺伝子改変ではなく、有効なMHC-II KOであることが確認される(図6)。
【0110】
実施例4:適応免疫に基づく拒絶を低減するためのPD-L1ノックイン
[0176] ヒトPD-L1遺伝子(例えば、PD-L1導入遺伝子)を豚ゲノムに送達した。図7の構造を有するスキームを参照されたい。ヒトPD-L1導入遺伝子の発現を、2つの異なるPD-L1アンプリコンを使用するqPCRによって確認した(図8)。
【0111】
[0177] PD-L1を発現しているブタ組織は、異種移植後にヒトなどの宿主による拒絶反応が減少した可能性がある。
【0112】
実施例5:血小板凝集を調節するブタフォン・ウィルブランド因子の遺伝子改変
[0178] pvWF由来の相同アーム、A1ドメイン、及びhvWF由来の隣接領域中の特定の残基を含むHDRベクターを設計し、構築した。(図10)。2つのsgRNAもまた、内因性ブタゲノムにおいてHDR置換を開始し、ヒト配列:TCTCACCTGTGAAGCCTGCG(配列番号5)及びCACAGTGACTTGGGCCACTA(配列番号6)によって置換されるべき領域の近くで切断するように設計した。
【0113】
[0179] HDRベクターは、ブタvWF及びヒトA1及び隣接ドメインからの約1kbの相同アーム、並びに、sgRNAがドナー及び改変されたブタゲノムを切断するのを妨げるためのsgRNA切断部位における不活性化突然変異から構成される。HDRベクターはまた、sgRNA切断部位近傍の内因性ブタゲノムからHDRベクターを識別できるSphI及びBspEI部位を含む。
【0114】
[0180] ブタ初代線維芽細胞を、Neon Transfection System(Invitrogen)を使用して、8μgのCas9、1μgのsgRNA1、及び1μgのsgRNA2、並びに10μgのHDRベクターでトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、細胞をFACSを用いて単一細胞サブクローニングした。単一細胞を、HDRベクターのエピソーム型が細胞分裂の間に失われるまで、さらに12日間培養した。hvWFのA1及び隣接領域を、隣接プライマーを用いて増幅した。PCR産物をSphI及びBspEI連続消化に供して、連続消化後に700bp、323bp及び258bpの大きさの断片を有するPCR産物に新規SphI及びBspEI部位を付加するHDR置換を有するクローンをスクリーニングした(図11)。完全な二対立遺伝子HDRは、1281bpの野生型産物、及び700bpより大きい任意の部分消化産物を排除する。
【0115】
[0181] 二対立遺伝子HDRを有する細胞を、約150個の単一細胞コロニーから単離した(図11)。シーケンシングによって確認されたように、ブタA1ドメイン及び隣接領域の対立遺伝子は、いずれもヒト対応物と置換された(図12A及び12B)。A1ドメインは強調されているが、隣接領域の潜在的なグリコシル化部位は、ダッシュで標識されている。pvWFにおいて欠失したヒト特異的残基をバーで標識し、ヒト化A1ドメイン及び隣接領域を半括弧で標識する。この単離された細胞は、細胞株に増殖され、SCNTによって遺伝子改変豚を作製するために使用され得る。
【0116】
[0182] A1-ヒト化pvWFを発現している細胞は、血小板活性化アッセイの間、ヒト血小板に対して有意に減少した凝集応答を有した(図13)。簡潔には、細胞をヒト血小板とともにインキュベートし、剪断応力によって凝集を誘導した。A1-ヒト化pvWFを発現している細胞は、より穏やかで誘導性の凝集曲線を示したが、野生型pvWFを発現している細胞は、ヒト血小板に対してより強い凝集応答を有した。したがって、A1 hvWFを有するブタの器官は、pvWFを発現しているブタの器官と比較して、ヒト血液においてより軽度の凝固応答を誘導する可能性が高く、豚からヒトへの異種移植で観察される血管不適合を改善する可能性がある。
【0117】
[0183] 合わせて、これらのデータは、内因性ブタpvWFの1つ以上の隣接ドメインにおけるA1ドメイン及び特定の残基を、ヒト対応物(hvWF)由来の対応する残基で置換することが、異種移植の間に生じる血小板凝集応答を調節し得ることを示す(図9)。
【0118】
実施例6:CD8+ T細胞活性化を防止するブタ古典的MHCI抗原のゲノム欠失
[0184] MHCクラスI分子は、CD8+ T細胞へのペプチド提示を介して同種移植の拒絶に重要な役割を果たす。ここでは、ブタ初代線維芽細胞における約200kbの古典的MHCクラスI遺伝子座全部の削除が、異種移植におけるCD8+ T細胞媒介毒性を防止したか否かを試験した。
【0119】
[0185] 古典的MHCクラスI遺伝子は、細胞表面に広く発現している高度に多型のタンパク質をコードしている。これらは、外来ペプチドをCD8+ Tリンパ球に提示し、標的細胞の溶解をもたらす。また、ミスマッチしたMHCI分子も移植における抗原として働く。異種移植のためのドナーブタ器官における古典的MHCI分子を除去する様々な戦略が検討されている。1つの試みにおいて、Tectorのグループは、Cas9及び3sgRNAを使用して、SLA-1、SLA-2及びSLA-3分子の保存されたエクソン4をノックアウトした(Reyes 2014)。しかしながら、このエクソンは、他の古典的及び非古典的MHCI分子によっても共有されており、予測されないオフターゲット効果を生み出す可能性がある。また、残りのエクソン1~3は、依然として細胞表面抗原として提示され得る。別の試みでは、ヘテロ二量体化パートナーB2Mを、TALENを用いてノックアウトした(Wang 2016)。この方法はまた、非古典的MHCI分子に影響を及ぼし得、残りのMHCIは、依然として、細胞表面上に脱構造化タンパク質として提示され得る。異種移植との関連において、ヒトHLA-E/B2M分子は、通常、NK細胞媒介毒性を防止するために、MHCI欠損細胞において補完される。ヒトB2Mは、B2Mノックアウト豚において、ブタSLAと二量体を形成し、その抗原性を回復させる可能性がある。
【0120】
[0186] この実施例では、古典的MHCI抗原を特異的且つ完全に除去するために、ブタゲノム中に独特の隣接配列を有するMHC古典的クラスIクラスターを最初に同定した(図14)。この約200kbクラスターは、他のタンパク質コード遺伝子を有さない8つの古典的MHCI遺伝子の全てを含む。次いで、独特の隣接領域中のsgRNA(配列番号1~4)を同定して、この遺伝子クラスター全体の断片的欠失を誘導した。約200kbの断片的欠失の頻度は比較的低いので、二対立遺伝子削除クローンを単離するように濃縮戦略も設計された。
【0121】
[0187] ブタ初代線維芽細胞を、Neonトランスフェクションシステム(Invitrogen)を用いて、1.25μgのTrueCut Cas9タンパク質及び7.5nmoleのcrRNA/tracrRNA二重鎖(Invitrogen)でトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後、ゲノムDNAをトランスフェクトした細胞から回収し、図15Aに示す指定プライマー対を用いてPCRに供した。断片的欠失は、予想される欠失接合部に隣接するプライマーを用いて検出した。このPCR産物を、トポイソメラーゼに基づくクローニング(「TOPOクローニング」)を用いてサブクローニングし、個々のTOPOクローンをサンガーシーケンシングして欠失接合部の配列を確認した。配列を、図15Bに示す予想される接合部に整列させた。同時に、細胞のアリコートを豚特異的SLA-1抗体で染色した。MHCI陰性細胞の部分を図16に示した。
【0122】
[0188] 単一細胞サブクローニング後、二対立遺伝子欠失を含む細胞を用いて、体細胞核移植を介して古典的MHCIノックアウト豚を作製することができる。豚は、全ての古典的MHCI分子を完全に欠損し、受精能及び他の生理学的機能に関与する可能性のある非古典的MHCI分子に熟達していると考えられる。残りのB2M分子は非多型であり、ヒト対応物に高度に保存されているので、抗原性である可能性は低い。また、ヒトHLA-E/B2Mの外因性発現は、古典的MHCI分子の欠損を救済することができない。得られた豚は、以前の報告と比較して、最もクリーンな古典的MHCIノックアウトバックグラウンドを有する筈である。
【0123】
実施例7:免疫学的に適合するブタ細胞、組織、器官、豚及び子孫の作製
[0189] 安全な異種移植のために遺伝子導入豚を作製するための他の研究者による多くの試みにもかかわらず、現在までのところ、異種移植のための最も進んだ遺伝子導入豚は、構築物のコンパシティと導入遺伝子間の転写干渉のため、限られた数の導入遺伝子を保有していた。ここでは、KO、KI、及びゲノム置換の組合せを利用して、ドナー豚のいくつかの反復を作製した。図21は、連続的な遺伝子編集によるドナー豚作製の進行を概説する。以下に記載するように、Pig 2.0(3KO+12TG)の場合、これらの遺伝子編集には、免疫学的、凝固、種不適合に対処するために設計された3つのノックアウトと12個の導入遺伝子ノックインが含まれていた。
【0124】
[0190] CRISPR-Cas9媒介NHEJを用いて、3つの主要な炭水化物産生グリコシルトランスフェラーゼ/グリコシルヒドロラーゼ遺伝子GGTA1、CMAH及びB4GALNT2を機能的にノックアウトした。野生型豚組織に結合する予め形成された抗体は、異種移植に対する主要な初期免疫学的障壁であり、これらの3つの遺伝子は、これらの抗体によって標的化される異種抗原を産生する主な原因であると同定されている(Byrne 2014、Lai 2002、Lutz 2013、Martens 2017、Tseng 2006)。したがって、これらの遺伝子の機能喪失は、予め形成された抗豚抗体のブタ移植片の内皮への結合をほとんど排除するであろうと予測された。このことは、標的Pig 2.0(3KO+12TG)線維芽細胞への宿主抗体の結合の減少を示すフローサイトメトリーの結果によって確認された(図22)。抗体結合の減少を実証するために、遺伝子操作した豚線維芽細胞をプールしたヒト血清とともにインキュベートし、結合したヒトIgM及びIgGを結合した二次抗ヒト抗体で検出し、フローサイトメトリーによって分析した。野生型豚線維芽細胞(赤色輪郭プロット)とは対照的に、3つの遺伝子を排除すると、抗体結合が有意に減少した(緑色及び褐色の輪郭プロット、約98%の減少)。
【0125】
[0191] 12個のヒト導入遺伝子(CD46、CD55、CD59、CD39、CD47、A20、PD-L1、HLA-E、B2M、THBD、TFPI、HO-1)を、PiggyBACトランスポゾン媒介ランダム組込みを介して豚ゲノム中の単一マルチ導入遺伝子カセットに組み込み、Pig 2.0(3KO+12TG)の最初の反復を生成した(図17~20、31、47~49;配列番号212~214参照)。導入遺伝子を、所望の遍在性又は組織特異的プロモーターを有する4つの異なるシストロンに配置した。各シストロン内の導入遺伝子を、リボソームスキッピング2Aペプチドで分離して、同様のモル比での発現を確実にした。さらに、遍在性クロマチンをプニングエレメント(UCOE)などのシスエレメントの組合せを導入して、導入遺伝子サイレンシングを防止し、強いポリアデニル化部位及びターミネーターを有するインスレーターを導入して、導入遺伝子間及び導入遺伝子と隣接染色体間の相互作用を最小にした。
【0126】
[0192] 導入遺伝子発現レベル及び組織特異的プロモーター駆動発現を、qPCRを使用して決定し(図23)、組込み部位及びコピー数を、逆PCRに基づく接合捕捉を使用して決定した。原理の証明として、隣接するシストロンの全ての導入遺伝子は、検出可能な転写干渉なしに線維芽細胞及び内皮細胞株において所望の組織特異性を示した。さらに、全ての導入遺伝子は、ゲノム組込みの様々な位置を有するクローン全体にわたって高度に一致した発現レベルを示し、このことは、導入遺伝子発現が染色体状況とは無関係であることを示す。予想通り、補体制御遺伝子(CD46、CD55、及びCD59;EF1αプロモーター)及びB2M、HLA-E、並びにCD47(CAGプロモーター)を含む、遍在性プロモーターの制御下に挿入された6つの遺伝子は、線維芽細胞及び内皮細胞の両方で発現した。対照的に、組織特異的プロモーター(NeuroD又はICAM2)の調節下で発現した6つの遺伝子(A20、PD-L1、HO1、THBD、TFPI、及びCD39)は、内皮細胞における発現と比較して線維芽細胞における発現レベルが低いことを示した。qPCRデータと一致して、タンパク質の細胞表面発現は、豚脾臓細胞及び豚線維芽細胞において、挿入されたヒト導入遺伝子によって発現されることが観察された(図24)。簡潔には、Pig 2.0(3KO+12TG)脾臓細胞又は線維芽細胞を単離し、示したように特異的ヒトタンパク質を認識する抗体とともにインキュベートし、染色細胞をフローサイトメトリーを用いて分析した。図24の各パネルにおいて、左側のピークは、アイソタイプ対照で染色された細胞を表し、右側のピークは、特異的抗体で染色された細胞を表す。
【0127】
[0193] 前臨床実験では、導入遺伝子ノックインをPiggyBacトランスポザーゼを用いてゲノムにランダムに組み込み、遺伝子間領域に単一コピーが組み込まれ、予測可能な結果を有さないクローンを豚生産に用いる。臨床開発のために、ホモ接合の雌/雄豚を、ソースドナー豚の大規模飼育及び生産に先立って、セーフハーバー(例えば、AAVS1ゲノム遺伝子座)への二対立遺伝子部位特異的導入遺伝子組込みで作製する。
【0128】
[0194] 自然及び適応免疫細胞機能並びに補体及び凝固カスケードのさらなるin vitro評価には、抗体反応性プロファイリング、混合リンパ球反応、補体依存性細胞毒性、NK細胞細胞毒性、マクロファージ食作用、並びに凝固因子及び血小板凝集への影響が含まれる。
【0129】
[0195] 豚移植片機能を維持し、補体媒介毒性からドナー器官を保護するために、ヒト補体調節タンパク質を過剰発現させた。簡潔には、遺伝子操作された豚線維芽細胞及び豚脾細胞を、25%ヒト補体とともに1時間インキュベートした。細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、フローサイトメトリーにより分析して細胞死を定量した。野生型線維芽細胞及び脾細胞は、ヒト補体との培養後に細胞死の割合が最も高かった。4-7P及び4-7H細胞は、Pig 2.0(3KO+12TG)子豚に由来し、4-7F細胞(3KO+12TG)は、Pig 2.0(3KO+12TG)胎児に由来する。3-9は、3種の炭水化物抗原産生酵素KO、HLA-DQA KO、HLA-DRA KO、及びヒト補体調節因子C3 KOである。図25に示すように、ヒトCD46、CD55、及びCD59を発現するように遺伝子操作された豚線維芽細胞及び脾細胞は、対照ヒト線維芽細胞と比較して、補体媒介性細胞死のレベルが有意に低かった。
【0130】
[0196] 標的細胞上のMHC Iと、ナチュラルキラー(NK)細胞上のキラー阻害受容体(KIR)とを連結すると、NK細胞を介した標的細胞の殺傷が阻害される。豚MHC Iは、ヒトNK KIRを介してシグナルを伝達することができないため、豚細胞は、NK細胞による標的細胞殺傷の影響を受けやすい。NK媒介細胞死を克服するために、ヒトNK KIR受容体を連結するヒトHLA-Eを豚細胞で過剰発現させた。WT豚線維芽細胞及びK562細胞(ヒトMHC欠損細胞株)の70%が、NK細胞による殺傷の標的となった。図26に示すように、ヒトHLA-E+操作豚線維芽細胞は、有意に低いNK媒介細胞殺傷を示した。対照的に、HLA-E+豚線維芽細胞は、NK細胞による殺傷が有意に低いことを示し、このことは、HLA-Eの発現がこれらの細胞を溶解から保護することを示唆している。
【0131】
[0197] 豚細胞におけるヒトCD55の過剰発現は、補体媒介毒性を低下させ、これは凝固を減少させ、異種移植片の生存を改善する可能性がある。凝固の活性化は、最終的には、安定したトロンビン-アンチトロンビン(TAT)複合体中でアンチトロンビンと結合することによって不活性化されるトロンビンの形成につながる。簡潔には、野生型、CD55 KI+GGTA1欠損細胞、及びヒト内皮細胞をヒト血液とともに培養した。図27に示すように、ヒト血液単独又はヒト内皮細胞と60分間インキュベートしたヒト血液は、約10ng/mLのTATタンパク質を産生した。さらに、ヒト血液と野生型豚内皮細胞との共培養により、凝固が活性化され、TAT複合体形成が58ng/mLに増加した。対照的に、CD55 KI+GGTA欠損豚内皮細胞との共培養は、TAT複合体形成の有意な減少をもたらした。これらのデータは、ヒトCD55発現が凝固活性化を調節することができることを示唆する。
【0132】
[0198] ペイロード9又はペイロード10で遺伝子改変された豚から単離したサンプルについてRNAseqを実施した。結果から、細胞毒性遺伝子(B2M、HLA-E、CD47)とともに、ペイロード免疫改変導入遺伝子、即ち補体導入遺伝子の発現増加が示された(図36)。
【0133】
実施例8:異種移植における抗体と機能的結合を妨げる酵素切断の可能性
[0199] 抗体媒介性拒絶反応は、歴史的に、末期器官不全に対する実行可能な処置としての異種移植の開発の主な妨げとなっている。しかしながら、最近の遺伝学的進歩により、確立された異種抗原標的を欠く多重遺伝子ノックアウト豚の開発が可能になった。aGal、Neu5Gc、及びSDaのノックアウトは、移植片生存の改善に関連している。しかしながら、他の異種抗原標的への残留抗体結合の影響、及びこれらの抗原の除去が高度に感作されたヒト血清から組織を保護するか否かを十分に理解するために、さらなる研究が必要である。ここでは、異種抗原ノックアウトが高いPRA血清結合を減少させるか否か、また酵素分解によって機能的抗体結合が減少するか否かを調べた。
【0134】
[0200] ヒト及びブタのPBMCを、Ficoll分離を用いて末梢血から収集した。WT豚及び実施例7の遺伝子改変Pig 2.0(3KO+12TG)から、ブタ大動脈内皮細胞(pAEC)を処理した。Massachusetts General Hospital HLA研究室から、無記名の高及び低PRA血清サンプルが惜しみなく提供された。心臓、肝臓、腎臓の異種移植レシピエントから血清を収集した。血清抗体をIdeS(Genovis Inc.)によって酵素的に切断した。
【0135】
[0201] 低PRAヒト血清は、ヒトPBMC標的細胞への最小の結合を示すが、高PRAヒト血清は、高レベルで同じヒトPBMCに結合する(図43A)。対照的に、高PRA血清及び低PRA血清の両方がブタPBMCに強く結合する(図43B)。高PRA血清はまた、ブタ大動脈内皮細胞(pAEC)への有意な結合を示す。遺伝的改変は、全ヒト血清の結合を劇的に(>95%)減少させる(図44)。重要なことに、Pig 2.0(3KO+12TG)由来の心臓、肝臓、及び腎臓異種移植片を用いたin vivo異種移植実験は、移植後に採取されたレシピエント血清からの抗体結合の減少を通してブタ特異的抗体の隔離を示す(図45)。これらのデータは、低いレベルの残留異種抗体が存在することを示唆する。図46A~46Cは、IgG特異的プロテアーゼ、IdeSがヒト及びカニクイザル血清からの機能的IgGの結合をバックグラウンドレベルへ効果的に減少させることを示す。
【0136】
[0202] 既知の異種抗原標的を除去する遺伝子改変は、ヒト及び霊長類の血清のブタ細胞への結合を減少させるが、低レベルの異種抗体結合は残っている。高PRA血清と低PRA血清は類似しており、結合はHLA-SLA交差反応性に関係しない可能性が示唆される。高度に感作された患者の血清をIdeS処理したところ、Pig 2.0(3KO+12TG)細胞との交差適合が陰性であった。未知の標的を有する抗体から異種移植片標的を保護する他のアプローチは、補体活性化及び血栓形成などの下流の後遺症を防止するためにさらなる遺伝子改変を用いることである。このデータは、酵素的抗体切断が残留IgGの機能的結合を首尾よく減少させ得ることを初めて示し、この処置はまた、予め形成された異種抗体結合の影響を減少させるためのアプローチであり得ることを示唆する。
【0137】
実施例9:PERV非含有免疫学的に適合するブタ細胞、組織、器官、豚、及び子孫の作製
[0203] ブタの器官は、大きさ及び機能がヒトの器官と類似しており、豚を多数飼育できることから、異種移植に有利な資源と考えられている。しかしながら、ブタ内在性レトロウイルス(PERV)伝播の潜在的リスク、及び免疫学的不適合により、ブタ器官の臨床使用が妨げられている。PERVは、全ての豚系統のゲノムにみられるγレトロウイルスである。豚ゲノムには、PERVエレメントが数コピーから数十コピー含まれている(Lee 2011)。他の人畜共通病原体とは異なり、PERVは、豚ゲノムの不可欠な部分である。このように、それらは、生物学的に安全な繁殖によって排除することはできない(Schuurman 2009)。現在までのところ、臨床現場でヒトへのPERV伝播を示した研究はないが、PERVは、「コピー&ペースト」機構を介してヒト細胞に感染し、増殖することができることが示されている。細胞培養において、ウイルス粒子が放出され得、ヒト細胞に感染し得、ヒトゲノムに、優先的に遺伝子内領域において、及び活性クロマチンリモデリングの領域において、ランダムに組み込まれ得ることが示されている(Armstrong 1971、Moalic 2006、Niu 2017、Patience 1997)。また、PERV-A及びPERV-Bの両方がヒト細胞に感染できることが示されている。PERV-Cはエコトロピックであるが、組換えウイルス型(A/C)は最大の感染能を示す。さらに、いったんPERVがLTR配列の伸長を介して新たな宿主ゲノム環境に適応すると、感染能が増大する可能性がある。PERVはまた、感染したヒト細胞から、ブタ細胞と接触したことのない他のヒト細胞へ水平伝播することができる。in vivoの免疫不全マウスでは、PERVが豚細胞からマウス細胞へと伝播できることが示されている(Clemenceau 2002)。PERVの組込みは、他のレトロウイルスで報告されているように、免疫不全及び腫瘍形成につながる可能性がある。遺伝子工学における最近のブレークスルーは、不死化豚細胞株におけるPERVのゲノム全体にわたる不活性化(Yang 2015;PCT公開番号国際公開第17/062723号)及びPERV非含有豚の作製(Niu 2017;PCT公開番号国際公開第18/195402号)を示している。
【0138】
[0204] CRISPR-Cas9技術を利用して、PK15豚腎臓上皮細胞ゲノムからのPERVエレメントの全62コピー(Yang 2015)、及びブタ胎児線維芽細胞からの全25コピーの完全排除と、その後の全PERVエレメントを不活性化した生きた豚の作製(Niu 2017)が達成されている。この成功は、現在、PERV非含有豚を誘導することが可能であり、それが異種移植のための安全なドナープールを提供する可能性があることを示した。
【0139】
[0205] PERVが依然として活性であり、ヒト細胞において伝播しているか否かを判定するために、PERV感染HEK293T-GFP細胞(iHEK293T-GFP)の集団及びクローンの両方において4ヶ月を超えてPERVコピー数を監視した。ddPCR(Pinheiro 2012)により測定したところ、PERVコピー数は、経時的に増加することが観察された。
【0140】
[0206] 豚ゲノム中のPERV polの全コピーを破壊することが、豚からヒト細胞へのPERVのin vitro伝播を排除できるか否かを調べる研究が実施されている(Niu 2017)。高度に操作されたPERV胎児線維芽細胞クローンの細胞培養上清中に逆転写酵素活性は検出できなかったことから、改変された細胞がPERV粒子を産生することはあったとしてもごくわずかであることが示唆される。97%を超えるPERV polを標的とするPK15クローンは、バックグラウンドレベルと同様のPERV感染の最大1000倍の減少を示した。これらの結果は、PK15クローンとの接触歴のあるヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞の連続希釈液のPCR増幅によって確認された。豚の様々な組織から単離した総RNAは、mRNAレベルで約100%のPERV不活性化を確認している。
【0141】
[0207] 現在までに、ヨークシャー(Yorkshire)種から100%のPERV KOを有する複数のクローンが作製され、豚クローニングが進行中である。PERV不活性化豚生産は、頑健で、63頭のPERV不活性化子豚が生産されており、そのうち47頭は雌、16頭は雄である。今日まで、最も古い健康な動物は、2年間生存してきた。43頭のPERV KO豚は、現在、繁殖のために老化している。豚のクローニングに用いた細胞の正常な核型と一致して、PERV不活性化豚では、異常な染色体構造変化は検出されていない。
【0142】
[0208] PERVの不活性化及び遺伝子編集が大動物に及ぼす影響をモニタリングするための長期研究が実施されている。この技術は、米国においてヨークシャー(Yorkshire)及びユカタン(Yucatan)の両豚系統を含むさらなる豚系統に適用されている。ソースのドナー豚は、全てのPERVエレメントを無効にしてバックグラウンドラインで遺伝子操作されるであろう。
【0143】
[0209] PERV非含有及び免疫学的に適合性の豚のバージョン反復。ゲノム中に活性PERVを保有していないドナー豚、並びにヒト組織に適合する免疫系、炎症系、及び凝固系が亢進している豚を遺伝子操作するための研究が行われている。前者に関しては、豚ゲノム中の全てのPERVの機能が、PERVエレメント中の逆転写酵素遺伝子(pol)の触媒ドメインを破壊するためのCRISPR-Cas9工学を用いて根絶されている豚(Niu 2017及びWIPO公開番号国際公開第2018/195402号に記載されている方法を用いて)、並びにヒト組織適合性器官を提供するためのノックアウト(KO)、ノックイン(KI)、及びゲノム置換の組合せを用いている。後者に関しては、体液性拒絶を誘発する主要な異種炭水化物抗原産生遺伝子/酵素のうちの3つ、GGTA1、CMAH、及びβ1,4N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ2(B4GALNT2)が遺伝的に不活性化された豚を、本明細書に記載されるように作製した。これらの遺伝子の機能喪失は、ブタ移植片の内皮への予め形成された抗豚抗体の結合を大部分排除することが意図された。さらに、例えばヒト補体系(hCD46、hCD55、及びhCD59)、凝固系(例えば、hCD39、hTHBD、及びhTFPI)、炎症応答(例えば、hA-20、hCD47、及びhHO-1)、並びにNK(例えば、PD-L1)及びT細胞応答(例えば、hHLA-E、hB2M)を調節するために、重要な免疫調節因子をPERV非含有豚ゲノム内の単一遺伝子座に挿入した。転位を介した単一コピーポリシストロン性導入遺伝子組込みを用いて、これらのヒト化遺伝子をノックインした。
【0144】
[0210] PERVを含まず、免疫適合性ペイロードを有する豚が作製され得、この豚は、種々の所望の特性を有することが意図された。この目標に向けて、ドナー豚は、遺伝子改変のいくつかの反復を介して作出された。図21は、連続的な遺伝子編集によるドナー豚作製の進行を概説する。最初の反復、Pig 1.0において、ブタ線維芽細胞は、全PERVコピーがゲノム内から機能的に削除されるか、又はゲノム内で不活性化されるように、CRISPR-Cas9仲介非相同末端結合(NHEJ)を用いて遺伝的に操作された。Pig 2.0は、異種免疫応答の様々な成分を改変するCD46、CD55、CD59、HLA-E、B2M、CD47、CD39、THBD、TFPI、A20、PD-L1、及びHO-1から選択した12個までの導入遺伝子又はノックインのPiggyBACを介したブタゲノムへのランダム組込みと結合させて、3つの主要な異種炭水化物抗原産生遺伝子(3KO;GGTA1、B4GALNT2、CMAH)を欠失させるために、CRISPRを介したNHEJによって作製した。Pig 3.0反復に関しては、次いで、3KO及び最大12の特定の導入遺伝子をPERV非含有バックグラウンド上に保有するソースドナー豚を作製した。ソースドナー豚の次世代(Pig 3.1、3.2など)は、vWF遺伝子のヒト化並びにアシアロ糖タンパク質受容体1(ASGR1)及び内因性B2M遺伝子の欠失などの追加的改変を保有するように遺伝子操作されるであろうと考えられる。
【0145】
[0211] PERV非含有3KO+TG豚(Pig 3.0、図21)を遺伝子操作した後、これらの豚を交雑させて、豚の子孫及び/又はドリフト(drift)、ドローブ(drove)、同腹仔、及び/又はサウンダー(sounder)が作製されるであろう。
【0146】
[0212] 免疫適合性ペイロード、異種抗原破壊、及びPERV破壊を組み込んだPig 3.0を作製するための細胞工学及びSCNT
[0213] PERV非含有Pig 3.0の作製のために、異種適合性改変を有するPig 2.0(3KO+9TG)を最初に作製した。Pig 2.0(3KO+9TG)には、導入遺伝子hCD46、hCD55、hCD59、hB2M、hHLA-E、hCD47、hTHBD、hTFPI及びhCD39が含まれていた。Pig 2.0を作製するための体細胞核移植(SCNT)のためのドナー細胞を生成するために、野生型ブタ耳線維芽細胞を、最初に、以下の両方で電気穿孔した:a)GGTA、CMAH、及びB4GALNT2遺伝子を標的とするCRISPR-Cas9試薬;及びb)(i)PiggyBacトランスポザーゼカセット(ii)3つの発現可能なシストロンに組織化された9つのヒト導入遺伝子(hCD46、hCD55、hCD59、hB2M、hHLA-E、hCD47、hTHBD、hTFPI、及びhCD39)からなる遺伝子導入構築物を有するペイロードプラスミド(図51参照)。線維芽細胞の単一細胞クローンを作製し、a)所望のゲノム改変を有するクローンを同定するための断片分析/全ゲノムシーケンシング(図51C参照)及びb)従来のPCR(図51D参照)によってスクリーニングした。次いで、所望の改変を有するクローンをドナーとして使用して、SCNTによりPig 2.0を作製した。
【0147】
[0214] Pig 2.0(3KO+9TG)から単離された細胞を手に入れて、CRISPR-Cas9システムを使用するPERV工学を用いて、PERV非含有でもある異種適合性改変を有する細胞を作製した。Pig 2.0線維芽細胞を、PERVエレメントの全ゲノムコピーに共通の逆転写酵素(Pol)遺伝子を標的とするCRISPR-Cas9試薬で電気穿孔した。電気穿孔した細胞の単一細胞クローンを作製し、これらのクローンをディープシーケンシングによってスクリーニングして、Pol遺伝子の触媒コアが破壊されたクローンを同定した(図51C参照)。次いで、Polにおいて所望の破壊を有するクローンを核型分析に供し(図51E参照);次いで、正常な核型を有するクローンをSCNTにおいて使用して、Pig 3.0(3KO+9TG)胚及び豚を作製した。
【0148】
[0215] Pig 3.0のゲノム、生化学、表現型特徴のキャラクタリゼーション
[0216] A)導入遺伝子及びノックアウトの完全性の評価
[0217] Pig 3.0(3KO+9TG)を作製したので、次に、本発明者らは、そこでの遺伝子改変のオンターゲット及びオフターゲット効果を綿密に調べることを模索した。これを目的として、本発明者らは、WT線維芽細胞並びに上記で作製したPig 2.0及びPig 3.0線維芽細胞について、10X全ゲノムシーケンシング(WGS)を実施した。スクリーニングのために行われたディープシーケンシングと一致して、WGSは、PERV pol及びGGTA/B4GALNT2/CMAH遺伝子のゲノムコピーに導入された突然変異は全て、改変された遺伝子コピーの機能的ノックアウトに翻訳されると予想されるフレームシフト挿入又は欠失であることを確認した(図51A及び51C参照)。さらに、本発明者らは、ブタゲノム中に9つの全導入遺伝子が存在することを確認し、驚くべきことに、遺伝子導入構築物は、CRISPR-Cas9標的部位のGGTA1対立遺伝子の1つに組み込まれていることがわかった。
【0149】
[0218] CRISPR編集の潜在的に交絡するオフターゲット効果に関して、本発明者らは、本発明者らの所望の編集の機能を妨害することが予想されるアーチファクト、又は豚の健康に対する予想される有害な効果を妨害することが予想されるアーチファクトを見出さなかった。本発明者らは、WTとPig 2.0(3KO+9TG)の間、又はPig 2.0(3KO+9TG)とPig 3.0(3KO+9TG)の間で構造変異体の差は観察せず、これらの豚の全般的なゲノム安定性を示した。小さなインデルのようなより小さなゲノム変化に関して、本発明者らは、使用したガイドRNAの全1,211の予測オフターゲット部位を調べ、WTと比較してPig 2.0のB4GALNT2 gRNAオフターゲット部位に2つの小さな挿入を見出した;しかしながら、どちらもタンパク質コード配列に影響しなかった。さらに、本発明者らがPig 3.0細胞とPig 2.0細胞を比較すると、結果として予想されるさらなるゲノム変更は観察されなかった。本発明者らは、2つのPERV gRNAオフターゲット部位内に2つの欠失と1つの挿入のみを認め、どちらもタンパク質コード領域外に発生し、実際には体細胞突然変異を表している可能性がある(Kim 2014参照)。機能的意味がなく、本発明者らの豚の大部分が正常な病態生理学データとあわせて考えて、本発明者らは、選択したPig 3.0がゲノム安定性を維持していると結論付ける。
【0150】
[0219] DNAレベルでゲノム改変を確認したので、本発明者らは、Pig 3.0(3KO+9TG)が適切なトリプルノックアウトと9TG発現を有するか否かを、RNA発現と免疫アッセイ法を用いてさらに検討した。本発明者らは、最初にRNA-seqを実施し、Pig 2.0及びPig 3.0の両方が、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)からのものと同等のレベルで全ての導入遺伝子を発現することを見出した(図52A)。さらに、本発明者らは、豚臍帯静脈内皮細胞(PUVEC)と線維芽細胞の両方で同等の導入遺伝子発現プロファイルとレベルを観察し、導入遺伝子がこれらの細胞型の間で遍在的に発現することを示唆した。次に、本発明者らは、遺伝子操作した豚におけるタンパク質発現の特性を調べた。本発明者らは、細胞表面上のα-Gal、Neu5GC、及びSDaのグリカンマーカーの減少を認め、これは、Pig 2.0細胞(3KO+9TG)及びPig 3.0細胞の両方において、これらのグリカンエピトープの合成に関与する3つの遺伝子(それぞれ、GGTA、CMAH、及びB4GALNT2)の機能的排除を示唆する(図52B)。PUVECのFACS分析により、本発明者らは、Pig 2.0及びPig 3.0の両方がタンパク質レベルで全ての導入遺伝子を発現することを認めた。実際、9つの導入遺伝子のうち8つは、HUVECのものと同等のレベルで強固に発現している。興味深いことに、THBD発現は検出可能であるが、はるかに低いレベルである。FACS分析と一致して、IHC研究は、Pig 3.0腎臓が3つのグリカン抗原を欠くことを示した(図52C)。また、FACS染色と一致して、本発明者らは、THBDを除いて、Pig 3.0腎臓における8つの導入遺伝子の発現を検出した(図52C)。まとめると、本発明者らは、RNA発現及び免疫アッセイデータから、本発明者らのトリプルノックアウト及び9TG遺伝子改変が、遺伝子操作した豚において、細胞及び組織レベルでのRNA及びタンパク質発現の成功につながると結論付ける。
【0151】
[0220] B)Pig 3.0細胞の異種適合性の特徴の評価
[0221] 次に、本発明者らは、ゲノム改変豚が異種適合性機能を獲得したか否かを検討した。本発明者らは、最初に、改変豚細胞が予め形成されたヒト抗体結合を回避することを遺伝子改変が可能にするか否かを試験した。Pig 2.0及びPig 3.0 PUVECは、WT PUVECと比較して、ヒトIgG及びIgMへの抗体結合の90%を超える減少を示し、異種移植に対する抗体障壁が3KOによって大幅に軽減され得ることを確認した(図53A)。さらに、プールされたヒト血清由来のヒト補体とインキュベートした場合、ヒト補体モジュレーターCD46、CD55、及びCD59を発現するトリプルノックアウトを有するPig 3.0 PUVECは、それらのヒトHUVEC対応物と同様に、最小のin vitroヒト補体毒性を示した(図53B)。まとめると、これらの結果は、移植した場合、抗体結合及び補体活性化が有意に低下した結果として、Pig 3.0由来異種移植片は、体液性損傷及び超急性拒絶反応に対する感受性が低いことが予想されることを示唆している。
【0152】
[0222] さらに、本発明者らは、Pig 3.0がヒト自然細胞免疫によって媒介される損傷に対してより抵抗性であるか否かを検討した。ex vivoアッセイに供した場合、HLA-E/B2Mを発現するPig 3.0は、WT PUVECのものと比較して、NK媒介細胞殺傷に対して有意に強い耐性を示した(図53C)。まとめると、これらの結果は、移植した場合、Pig 3.0細胞は、ヒト自然免疫による攻撃に対してより抵抗性であることが期待されることを示唆した。
【0153】
[0223] 最後に、本発明者らは、Pig 3.0(3KO+9TG)が異種移植でしばしば観察される血小板の活性化及び凝固カスケードの調節不全を減弱できるか否かを検討した。血管新生したWTブタ器官をヒトに移植すると、予め形成された抗体、補体、自然免疫細胞は、内皮細胞の活性化を誘導し、凝固及び炎症を誘発し得る。豚内皮細胞からの凝固調節因子とヒト血液との不適合は、異常な血小板活性化とトロンビン形成を導き、損傷を悪化させる。さらに、豚とヒトとの間の凝固調節因子(例えば、組織因子経路阻害剤、TFPI)の分子不適合性は、外因性凝固調節を無効にする。
【0154】
[0224] これらの異種凝固問題に対処するために、本発明者らは、Pig 3.0に対する本発明者らのマルチ導入遺伝子構築物の一部として、Pig 3.0において以下の両方を過剰発現した:a)ヒトCD39(凝固カスケードにおけるADPの血栓効果を打ち消すADPヒドロラーゼ)及びb)ヒトTFPI(内皮細胞活性化後に細胞表面に移行する因子)。次いで、本発明者らは、ブタ細胞に移植された場合に、これらの導入遺伝子が正しく機能し、凝固経路を調節する能力を検証するために、様々なin vitro及びex vivoアッセイを行った。in vitro ADPase生化学アッセイは、WT PUVEC及びHUVECと比較した場合、Pig 3.0 PUVECにおいて有意に高いCD39活性を示し、導入遺伝子からのそのより高いmRNA及びタンパク質発現と一致した(図53F)。同様に、活性化Pig 3.0 PUVECは、ヒトXaに効果的に結合し、中和する能力を示し、これは、凝固を軽減し、トロンビン-アンチトロンビン(TAT)複合体の形成を減少させることができる(図53G)。最後に、Pig 3.0 PUVECと共培養されたヒト全血を用いたex vivo凝固アッセイにおいて、最少のTAT(トロンビンアンチトロンビン)が形成され、TAT形成のレベルはHUVECのそれと同様であり(図53E)、Pig 3.0がヒト因子との強化された凝固適合性を獲得したことを示唆した。
【0155】
[0225] まとめると、これらの異種適合性実験の結果から、ヒト抗体結合の減弱、補体毒性、NK細胞毒性、食作用、凝固調節の回復から明らかなように、Pig 3.0(3KO+9TG)は、ヒト免疫系との適合性の増強を獲得したことが示された。
【0156】
[0226] C)Pig 3.0祖先の生理学的表現型/概念実証豚
[0227] 遺伝子操作された豚の全体的な適応度を評価するために、本発明者らは、遺伝子操作された豚の生理学、受胎能、及び遺伝子改変の子孫への伝播を調べた。本発明者らは、PERVエレメント、免疫学的経路及び凝固経路上で広範に操作されたが、Pig 1.0及び2.0(3KO+9TG)のいずれも、総白血球及び血小板、単球、好中球、及び好酸球数を含む正常な血球数を示すことを観察した(図54A)。本発明者らはまた、操作された豚について、正常な生体器官機能(肝臓、腎臓、及び心臓)を観察した(図54B、54C、及び54D)。さらに、操作された豚は、WT豚と比較して、類似のプロトロンビン及びトロンビン時間を有した(図54E)。
【0157】
[0228] さらに、本発明者らは、Pig 1.0及び2.0が繁殖性であり、7匹の正常平均同腹仔サイズを産生することを見出した。WT豚と繁殖するPig 1.0の子孫は、その肝臓、腎臓、心臓組織に約50%のPERV不活性化対立遺伝子を保有しており、このことは、メンデル遺伝学に従ってPERV-KO対立遺伝子が安定して遺伝することを示している(図55)。同様に、Pig 2.0及びWT豚の全ての子孫は、3KOについてヘテロ接合であり(図56A)、約半分が9TGを有し、発現は、mRNA(図56B)及びタンパク質レベルの両方で確認された(図56C)。このことは、遺伝子改変が通常の繁殖によって一掃されていないことを示唆している。したがって、本発明者らは、遺伝子操作された豚が編集された対立遺伝子の正常な生理学、受精能、及び生殖系列伝達を示すと結論付ける。
【0158】
[0229] D)結論
[0230] 遺伝子操作された豚は、器官不足の未解決の必要性に対処する上で非常に有望である。本報告では、本発明者らは、PERV活性を根絶し、ヒトの免疫適合性を高めるように改変した42のゲノム遺伝子座を有するPig 3.0(3KO+9TG)を操作した。Pig 3.0の広範な分析から、操作された豚細胞は、ヒト抗体結合の低下、補体毒性、NK細胞毒性、及び凝固調節異常を示すことが示された。また、本発明者らは、本発明者らの遺伝子操作した豚の正常な病態生理、受胎能、及び遺伝性を調べ、検証した。Pig 3.0の作製の成功は、臨床移植のための安全で有効な器官を提供する能力を高める。
【0159】
[0231] Pig 3.0(3KO+9TG)の作製の成功は、ゲノムを広範囲に操作し、大型動物に新規機能を付与する合成生物学の力を実証している。Pig 3.0では、本発明者らは、PERVエレメントの25コピー、異種遺伝子の8対立遺伝子を欠失させ、同時に9つのヒト導入遺伝子を生理学的に適切なレベルまで発現させた。これは、大型動物モデルにおけるゲノム改変の記録を42に拡張する。この規模で複雑な遺伝子工学を実施できるようになり、本発明者らは、追加の編集を操作し、最終的には、異種移植に最も適した組合せで豚を選択する立場にある。さらに、本発明者らは、ツールを用いて、免疫寛容、器官寿命、及びウイルス免疫などのさらなる新規機能を達成するようにPig 3.0をさらに操作することができると考える。
【0160】
[0232] E)方法
[0233] CRISPR-Cas9 gRNA設計
[0234] 本発明者らは、RライブラリDECIPHERを用いて、Pig 2.0ゲノム中の全てのpol触媒配列を特異的に標的化するために、特異的gRNA(PERV-3N:5’-TCTGGCGGGAGCCACCAAAC-3’、PERV-5N:5’-GGCTTCGTCAAAGATGGTCG-3’、PERV-9N:5’-TTCTAAGCAGTCCTGTTTGG-3’)を設計した。さらに、本発明者らは、特異的gRNA(GGTA1:5’-GCTGCTTGTCTCAACTGTAA-3’、CMAH:5’-GAAGCTGCCAATCTCAAGGA-3’、B4GALTN2:5’GATGCCCGAAGGCGTCACAT-3’)を用いて、GGTA1、CMAH及びB4GALNT2をそれぞれ標的とした。
【0161】
[0235] 細胞培養
[0236] ブタ胎児線維芽細胞及び線維芽細胞FFF3を、15%ウシ胎児血清(Invitrogen)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep、Invitrogen)及び1% HEPES(Thermo Fisher Scientific)を補充したピルビン酸ナトリウムを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Invitrogen)高グルコース中で維持した。全ての細胞を、38℃、5% CO2、90% N2、及び5% O2の加湿トリガスインキュベーター中で維持した。
【0162】
[0237] ブタ臍帯静脈内皮細胞(PUVEC)を臍帯静脈から新たに単離し、10%ウシ胎児血清(Gibco)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep、Invitrogen)及び1% HEPES(Thermo Fisher Scientific)を補充したPriGrow II培地(abm)中で培養した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、ATCC、PCS-100-010)を、Endothelial Cell Growth Kit-BBE(ECGキット、ATCC)を補充した血管細胞基底培地(ATCC)中で培養した。ヒトNK-92細胞株を、12.5%ウシ胎児血清(Gibco)、12.5%ウマ胎児血清(FES、Solarbio)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep、Invitrogen)を補充したMinimum Essential Medium Alpha(α-MEM、Gibco)中で培養した。ヒトマクロファージ細胞株THP-1を、10%ウシ胎児血清(Gibco)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep、Invitrogen)を補充したRPMI 1640(BI)中で培養した。THP-1細胞の分化は、62.5nMのPhorbol-12-ミリステート-13-アセテート(PMA、Sigma)中で3日間達成され、これらの細胞の組織培養プラスチックへの付着によって確認された。
【0163】
[0238] PiggyBac-Cas9/2gRNAの構築及び細胞株の樹立
[0239] 以前に記載された手順(Yang 2015)と同様に、本発明者らは、U6-gRNA1-U6-gRNA2(Genewiz)をコードするDNA断片を合成し、それを以前に構築されたPiggyBac-cas9プラスミドに組み込んだ。PiggyBac-Cas9/2gRNA組込みを有するFFF3細胞株を確立するために、本発明者らは、Neonトランスフェクションシステムを使用して、ベンダー(Thermo Fisher Scientific)によって提供される指示に従って、14.3μgのPiggyBac-Cas9/2gRNAプラスミド及び5.7μgのSuper PiggyBac Transposaseプラスミド(System Biosciences)で5×105のFFF3細胞をトランスフェクトした。組み込まれた構築物を有する細胞を選択するために、2μg/mLのピューロマイシンをトランスフェクトされた細胞に適用した。本発明者らが野生型FF3細胞にピューロマイシンを適用した陰性対照に基づき、本発明者らは、ピューロマイシン選択が4日で完了することを決定した。その後、FFF3-PiggyBac細胞株を2μg/mLのピューロマイシンで維持し、2μg/mlのドキシサイクリンを適用してドキシサイクリン誘導性FFF3-PiggyBac細胞株のCas9発現を1週間誘導した。
【0164】
[0240] FFF3細胞株における構成的Cas9発現を回避するために、本発明者らは、Lipofectamine 2000試薬を用いて3μgのPiggyBac Excision-Only Transposaseベクターで5×105細胞をトランスフェクトすることによって、FFF3ゲノムからPiggyBac-Cas9/2gRNA切除を行った。次いで、PiggyBac-Cas9/2gRNA切除FF3細胞を、クローン増殖及び遺伝子型決定のために96ウェルプレートに単一細胞選別した。
【0165】
[0241] 単一細胞及び単一細胞クローンの遺伝子型決定
[0242] まず、FFF3-PiggyBac-Cas9/2gRNA細胞株について、ピューロマイシン選択とそれに続くPiggyBac切除を行った。次いで、細胞を、直接遺伝子型決定のための96ウェルPCRプレート及びコロニー増殖のための96ウェル細胞培養プレートの両方に、単一細胞に選別した。クローン増殖なしに単一FF細胞の遺伝子型決定を行うために、本発明者らは、選別した単一細胞からPERV遺伝子座を直接増幅した。本発明者らはまた、選別した単一細胞から増殖したクローンについて遺伝子型決定を行った。遺伝子型決定の手順は、Yangら(6)の方法に従った。簡潔には、本発明者らは、0.5μlの10×KAPA発現抽出緩衝液(KAPA Biosystems)、0.1μlの1U/μlのKAPA Express Extract Enzyme、及び4.4μlの水を含有する5μlの溶解混合物を有する各ウェルを有する96ウェルPCRプレートに単一細胞を選別した。本発明者らは、溶解反応物を75℃で15分間インキュベートし、反応物を95℃で5分間不活性化した。次いで、全ての反応物を、1×KAPA 2G fast(KAPA Biosystems)、0.2μM PERV Illuminaプライマーを含有する20μlのPCR反応物に添加した(方法表2)。反応物を95℃で3分間インキュベートし、95℃の30サイクル(単一細胞について)又は25サイクル(単一細胞クローンについて)、20秒;59℃、20秒及び72℃、10秒が続いた。Illumina配列アダプターを添加するために、3μlの反応生成物を、次いで、1×KAPA 2G fast(KAPA Biosystems)及びIllumina配列アダプターを有する0.3μMプライマーを含有する20μlのPCRミックスに添加した。反応物を95℃で3分間インキュベートし、95℃の20(単一細胞について)又は10(単一細胞クローンについて)サイクル、20秒;59℃、20秒及び72℃、10秒が続いた。PCR産物をEX2%ゲル(Invitrogen)で試験し、続いてゲルから約360bpの標的生成物を回収した。次いで、これらの生成物をほぼ同量で混合し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit)、MiSeq Personal Sequencer(Illumina)でシーケンシングした。本発明者らは、次いで、ディープシーケンシングデータを分析し、CRISPR-GAを用いてPERV編集効率を決定した(5)。
【0166】
[0243] PERV pol遺伝子型決定に用いられるプライマー
[0244] Illumina_PERV_polフォワード:5’-ACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTCGACTGCCCCAAGGGTTCAA-3’
[0245] Illumina_PERV_polリバース:5’-GTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTTCTCTCCTGCAAATCTGGGCC-3’
【0167】
[0246] SCNT胚を生成するための体細胞マイクロインジェクション及び豚クローニングのための胚移植
[0247] 体細胞マイクロインジェクション手順は、Weiらによるものであった。全ての動物実験は、Yunnan Agricultural University,ChinaのAnimal Care Committeeの承認を得て行った。全ての化学物質は、特に断らない限り、Sigma Chemical Co.(St.Louis、MO、USA)から購入した。ブタの卵巣は、Hongteng Abattoir(Chenggong Ruide Food Co、Ltd、Kunming、Yunnan Province、China)から収集した。卵巣を、75mg/mLのペニシリンGカリウム及び50mg/mLの硫酸ストレプトマイシンを補充した0.9%(w/v)NaCl溶液中、25℃~30℃で実験室に移した。卵丘細胞-卵母細胞複合体(COC)を直径3~6mmの卵胞から単離し、次いで、0.1mg/mLピルビン酸、0.1mg/mL L-システイン塩酸塩水和物、10ng/mL表皮成長因子、10%(v/v)ブタ卵胞液、75mg/mLペニシリンGカリウム、50mg/mL硫酸ストレプトマイシン、並びに10IU/mLのeCG及びhCG(帝国臓器株式会社、東京、日本)を補充した200μL TCM-199培地中で、5% CO2加湿雰囲気中で38.5℃で培養した(APC30D、ASTEC、日本)。38~42時間のin vitro成熟後、COCの増殖した卵丘細胞を、0.1%(w/v)ヒアルロニダーゼ中のCOCのピペッティングを繰り返すことによって除去した。
【0168】
[0248] SCNTは、前述したように行った。簡潔には、無傷の膜を有する第1の極体を押し出す卵母細胞を、0.1mg/mLのデメコルシン、0.05Mスクロース、及び4mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を補充したNCSU23培地中で、核突出のために0.5~1時間培養した。次いで、突出した核を、0.1mg/mLのデメコルシン及び5mg/mLのサイトカラシンBの存在下で、10μMのヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、0.3%(w/v)のポリビニルピロリドン、及び10%のFBSを補充したTyrodeの乳酸培地中で、斜角を付けたピペット(直径約20μm)を使用することによって、極体とともに除去した。WT又はPERV非含有線維芽細胞を核ドナーとして使用した。単一のドナー細胞を除核卵母細胞の囲卵腔に注入した。
【0169】
[0249] ドナー細胞を、0.25MのD-ソルビンアルコール、0.05mMのMg(C2H3O2)2、20mg/mLのBSA及び0.5mMのHEPES(遊離酸)を含有する融合培地中で、胚細胞融合システム(ET3、富士平工業株式会社、東京、日本)を使用することによって、200V/mmの単一の直流パルスで20μs、レシピエント細胞質体と融合させた。再構築された胚を、PZM-3溶液(van’t Veer 1997)中で2時間培養して、核再プログラミングを可能にし、次いで、0.25M D-ソルビンアルコール、0.01mM Ca(C2H3O2)2、0.05mM Mg(C2H3O2)2及び0.1mg/mL BSAを含有する活性化培地中で、150V/mmの単一パルスで100μs活性化した。次いで、活性化された胚を、5mg/mLのサイトカラシンBを補充したPZM-3中で、5% CO2、5% O2、及び90% N2(さらなる活性化のためのAPM30D、ASTEC、日本)を有する加湿雰囲気中、38.5℃で2時間培養した。次いで、再構築された胚を新たなPZM-3培地に移し、5% CO2、5% O2、及び90% N2を有する加湿空気中で38.5℃で2日間及び7日間培養して、胚の卵割及び胚盤胞の発生率をそれぞれ検出した。
【0170】
[0250] 1回の出産歴のある交雑種(Large White/Landrace Duroc)雌豚を、構築した胚の代理母として用いた。毎日午前9:00及び午後6:00に発情を調べた。活性化後6時間培養したSCNT胚を外科的に代理物の卵管に移植した。胚移植23日後に、超音波スキャナー(HS-101 V、本多電子株式会社、Yamazuka、日本)を用いて妊娠を調べた。
【0171】
[0251] 免疫蛍光法によるタンパク質発現のキャラクタリゼーション
[0252] WT、Pig 2.0及びPig 3.0の新生児(3~6日齢)ブタ腎臓凍結切片を免疫蛍光法に供して、組織レベルでの遺伝子改変(3KO及び9TG)の特性を評価した。凍結切片を氷冷アセトンで固定し、ブロックし、次いで1段階直接又は2段階間接免疫蛍光技術のいずれかを用いて染色した。使用した一次及び二次抗体を補足表2にまとめた。ProLong Gold DAPI(Thermo Fisher、P36931)を用いて核染色を行った。切片をLeica Fluorescence Microscopeを用いて画像化し、ImageJソフトウエアを用いて分析した。全ての写真は、WT、Pig 2.0及びPig 3.0凍結切片の間の蛍光強度の正確な比較を可能にするために、同じ条件下で撮られた。
【0172】
[0253] ブタ内皮細胞へのヒト抗体の結合
[0254] ブタ及びヒト内皮細胞へのヒトIgG及びIgM抗体の抗体結合を、以前に記載されたようにフローサイトメトリーによって評価した(Xenotransplantation, Methods and Protocols, Editors:Costa, Cristina, Manez, Rafael, ISBN 978-1-61779-845-0)。簡潔には、Pig 2.0、Pig 3.0、WT PUVEC及びHUVECを収集し、2回洗浄し、染色緩衝液(1% BSAを含有するPBS)に再懸濁した。正常ヒト男性AB血清(Innovative Research、IPLA-SERAB-H26227)を56℃で30分間加熱不活性化し、染色緩衝液で1:4に希釈した。Pig 2.0、Pig 3.0、WT PUVEC及びHUVEC(試験当たり1×105細胞)を、希釈したヒト血清とともに、それぞれ37℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞を冷染色緩衝液で洗浄し、ヤギ抗ヒトIgG Alexa Fluor 488(Invitrogen、A11013、1:200希釈)及びヤギ抗ヒトIgM Alexa Fluor 647(Invitrogen、A21249、1:200希釈)とともに4℃で30分間インキュベートした。冷染色緩衝液で洗浄した後、細胞を、死/生ゲーティングを含むために、7-AAD(BD、559925、1:100希釈)を含有する染色緩衝液に再懸濁した。CytoFLEX Sフローサイトメーターで蛍光を取得し、FlowJo分析ソフトウエアを用いてデータを分析した。各サンプルについて、5,000の事象を生細胞ゲートに収集し、「試験MFI(IgG又はIgM)-対照(二次抗体のみ)MFI」によって生成される特異的メジアン蛍光強度(MFI)としてプロットした。
【0173】
[0255] ヒト補体細胞毒性アッセイ
[0256] Pig 2.0、Pig 3.0、WT PUVEC及びHUVECを回収し、PBSで2回洗浄し、無血清培養培地に再懸濁した。細胞(試験当たり1×10細胞)を、種々の濃度(0%、25%、50%及び75%)のヒト血清補体(Quidel、A113)の均一なプールとともに、37℃及び5% CO2で45分間インキュベートした。その後、細胞をヨウ化プロピジウム(Invitrogen、P3566、1:500希釈)で5分間染色し、CytoFLEX Sフローサイトメーターを使用することによって分析した。5,000事象を各サンプルについて収集し、ヒト補体を介した細胞死の割合としてPI陽性細胞の割合を用いた。
【0174】
[0257] NK細胞毒性アッセイ
[0258] PUVEC及びHUVECを標的細胞として使用し、それぞれ抗豚CD31-FITC抗体(Bio-Rad)及び抗ヒトCD31-FITC抗体(BD)で標識した。一方、ヒトNK 92細胞をエフェクター細胞として使用し、抗ヒトCD56-APC抗体(eBioscience)で標識した。エフェクター(E)及び標的細胞(T)を、37℃及び5% COで4時間、E/T比3で共培養した。細胞をヨウ化プロピジウムで5分間染色し、次いでFACS分析に供した。CD31+ゲートにおけるPI陽性細胞の割合を用いて、死滅した標的細胞の割合を計算した。
【0175】
[0259] 食作用アッセイ
[0260] ヒトマクロファージ細胞株THP-1の分化は、62.5μMの酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)によって3日間達成され、これらの細胞の組織培養プラスチックへの付着によって確認された。ブタ脾細胞(標的細胞)を、製造者のプロトコルに従って蛍光色素5/6-CFSE(Molecular Probes)で染色した。CFSE標識標的細胞を、ヒト分化THP-1細胞(エフェクター細胞)と、それぞれ1:1及び1:5のE/T比で、37℃で4時間インキュベートした。マクロファージを抗ヒトCD11b抗体で対比染色し、CFSE標識標的の食作用をFACSで測定した。食作用活性は、以前に記載されているように計算した(Ide 2007)。
【0176】
[0261] CD39生化学的ADPaseアッセイ
[0262] Pig 2.0、Pig 3.0及びWT PUVEC及びHUVECを、アッセイの1日前に、96ウェルプレートにおいてウェル当たり2×104で播種した。細胞を、37℃及び5% CO2で30分間、500μM ADP(Chrono-Log Corp、#384)とともにインキュベートした。マラカイトグリーン(Sigma、MAK307)を添加して反応を停止し、630nmで吸光度を測定して、KH2PO4の標準曲線に対するリン酸生成レベルを決定した。
【0177】
[0263] TFPI活性及びヒト第Xa因子結合アッセイ
[0264] アッセイの前に、細胞を1μMのPMAで6時間処理して、Pig 2.0及びPig 3.0 PUVECの細胞表面上でhTFPI発現を誘導した。次いで、TFPI活性及びヒト第Xa因子結合アッセイを、以前に記載されたように実施した(Xenotransplantation, Methods and Protocols, Editors:Costa, Cristina, Manez, Rafael, ISBN 978-1-61779-845-0)。全てのアッセイは、4連で行った。
【0178】
[0265] TAT形成アッセイ
[0266] Pig 2.0、Pig 3.0及びWT PUVEC及びHUVECを、6ウェルプレートにおいて1ウェル当たり3×105で播種した。1日後、細胞を、1mLの新鮮なヒト全血(0.5U/mLヘパリンを含む)とともに、37℃で穏やかに振盪しながらインキュベートした。示された異なる時点で、血液を吸引し、そこから血漿を単離した。血漿中のTAT含有量を、Thrombin-Antithrombin Complex Human ELISAキット(Abcam、ab108907)を用いて測定した。
【0179】
[0267] 全ゲノムシーケンシングデータからの変異体コール
[0268] 対になった読み取りを、BWA(v0.7.17-r1188)によってSus Scrofa 11.1ゲノム(ftp://ftp.ensembl.org/pub/release-91/fasta/sus_scrofa/dna/)にマッピングする。変異体(SNP及びINDEL)を、GATK(v4.0.7.0)を使用して、標準フィルターに加えて最小深度10を必要とするGATKベストプラクティス推奨に従ってコールした。
【0180】
[0269]オン/オフターゲット部位のIn silico予測
[0270] R(v3.5.0)におけるCRISPRSeek(v1.22.1)を用いて、6個までのミスマッチを可能にして、ゲノム全体のオンターゲット及びオフターゲット部位を予測する。インプットゲノムは、Sus Scrofa 11.1(ftp://ftp.ensembl.org/pub/release-91/fasta/sus_scrofa/dna/)のいずれかである。
【0181】
[0271] 全ゲノムシーケンシングデータからのオフターゲットコール
[0272] CRISPRSeek(v1.22.1)によって予測されたオフターゲットのPAM部位に隣接する20bp以内に含まれるGATKからのフィルターされた変異体を、潜在的なオフターゲット改変としてコールする。親系統WGSデータが入手可能である場合、親系統から有意に0.5より多いか又は少ない対立遺伝子頻度を有する変異体を、自社開発の統計検定を用いて濾別する。この検定の仮定は、オフターゲット突然変異がまれな事象であるため、両対立遺伝子が同時に改変される可能性がきわめて低いことである。
【0182】
[0273] 突然変異の機能的影響解析
[0274] 変異体がフターゲット又は生殖系列突然変異であるかにかかわらず、VEP(変異体効果予測因子、v93.3)を用いてその潜在的機能的影響を評価するために、転写レベルでの配列変化及びタンパク質レベルでのアミノ酸変化について注釈付けされる。高い影響を有する突然変異は、それらがフレームシフト、開始ゲイン/ロスト、停止ゲイン/ロスト、スプライスドナー/アクセプターシフト又はスプライス領域変化を生じ得る場合に、特に選択される。利用可能な場合はいつでも、突然変異は、APPRISデータベースを使用して、それが原理又は代替転写物に影響を及ぼしているかを示すために注釈付けされる。
【0183】
[0275] RNA-Seqからの転写解析
[0276] RNA-Seq読み取りを、スプライシング認識モード下でSTAR(v2.6.1a)を用いてSus Scrofa 11.1ゲノムに整列させる。発現レベルは、豚トランスクリプトームと導入遺伝子の両方を入力転写物としてSalmon(v0.11.3)を用いてTPM(100万当たりの転写物)として定量される。
【0184】
[0277] Amplicon-SeqによるPERVノックアウト効率解析
[0278] Q20未満の3’末端低品質塩基をトリミングした後、それらの重複が100塩基を超える場合、対になった読み取りを断片にマージする。マージされた断片は、Q20未満の低品質塩基をハードマスクするためにさらにスキャンされ、スプライシング認識モード下でSTAR(v2.6.1a)を使用してPERVアンプリコン標的配列に整列される。次いで、出力BAMファイルを社内Rスクリプト(v3.5.0)によって解析して、アラインメントパターンを消化し、PERVアンプリコン標的配列内のINDELの分布を評価し(触媒中心に対して)、ノックアウト効率を導出する。
【0185】
[0279] Capture-SeqによるPERVノックアウト効率解析
[0280] 対になった読み取りを、最初に、スプライシング認識モード下でSTAR(v2.6.1a)を使用してPERV標的配列に整列させ、続いて、Picard(v2.18.14)による整列位置依存性重複排除を行う。次いで、重複排除された対の読み取りを、社内スクリプトによって断片にマージする。次いで、マージされた断片を、スプライシング認識モード下でSTAR(v2.6.1a)を使用してPERV捕捉標的配列に再整列させる。次いで、出力BAMファイルを社内Rスクリプト(v3.5.0)によって解析して、アラインメントパターンを消化し、捕捉標的配列内のINDELの分布を評価し、ノックアウト効率を導出する。
【0186】
[0281] Capture-SeqによるPERVハプロタイプ解析
[0282] 対になった読み取りを、最初に、スプライシング認識モード下でSTAR(v2.6.1a)を使用してPERV標的配列に整列させる。Mutect2(v4.1.2.0)を使用して体細胞変異体をコールし、所与の閾値(MAF>0.01)を超える小さい対立遺伝子頻度を有する変異体についてフィルタリングする。複数のサンプルからの濾過された変異体をマージして、ハプロタイプをタイピングするための変異体部位の集合を導出する。次に、適切に整列された対の読み取りを、社内スクリップによって断片にマージした。次いで、マージした断片を、スプライシング認識モード下でSTAR(v2.6.1a)を使用してPERV標的配列に再整列させる。目的の領域をカバーする各断片について、本発明者らは、改変部位の収集のための対立遺伝子を抽出して、断片のハプロタイプを規定する。最後に、ハプロタイプの分布を、目的の領域をカバーする全ての断片を計数することによって導出する。
【0187】
[0283] 全ゲノムシーケンシングデータを用いたペイロード組込み部位の同定
[0284] Sus Scrofa 11.1ゲノム、PERVハプロタイプ、及びペイロードプラスミド配列からなる参照ライブラリに、スプライシング認識モード下でSTAR(v2.6.1a)を使用して、対の読み取りを整列させる。構造変異体(SV)は、DNA融合点を検出するためにLumpy(v0.2.13)を使用してBAMファイルからコールされる。次に、本発明者らは、豚ゲノム及び組込み部位でのミスマッチ読み取りを伴うペイロード配列を架橋するSVについてスクリーニングする。
【0188】
[0285] 統計解析
[0286] 全ての統計解析は、R(v3.5.0)及びExcel(v2016)によって実施される。特に明記しない限り、p値<0.05が有意である。複数のテストが同時に含まれる場合、全体的な誤発見率(FDR)を制御するために、Benjamini-Hochberg手順に従ってp値補正が実行される。特に明記しない限り、FDR<0.05が典型的に使用される。
【0189】
実施例10:ヒト血液による免疫学的に適合する豚肝臓の潅流
[0287] 器官機能解析のための異種移植の代用実験として、Pig 2.0(4-7;3KO+12TG)から分離した免疫学的に適合する豚肝臓を用いて肝潅流実験を行った。12か月齢の豚から野生型肝臓と4-7肝臓(約80kg)を分離した。肝臓をヒト全血及びヒト新鮮凍結血漿(FFP)で潅流した。簡潔な肝臓潅流プロトコルの概要を表1に示す。
【0190】
【表3】
【0191】
[0288] 種々の時点で肝臓から胆汁を収集し、分析した。図28に示すように、総胆汁産生は、WT肝臓と比較して、4-7肝臓において約2倍増加した。さらに、4-7肝臓は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、及びアルブミン(ALB)を含む肝障害のマーカーである代謝酵素の安定した血清レベルを示した(図29A~C)。さらに、4-7肝臓は、カリウム(K)及びナトリウム(Na)を含む安定した血清電解質レベルを示した(図29D~E)。4-7及びWT肝臓は、WT肝臓と比較して、4-7肝臓においてより高い、より安定したレベルで持続した補体(C3)発現についても試験された(図29F)。凝固について分析した場合、4-7肝臓は、安定なプロトロンビン時間(PT)及び国際標準化比(PT-NIR)、フィブリノーゲンレベル(FIB)、並びにより低い活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を示した(図30A~D)。まとめると、これらのデータは、4-7肝臓が、改善された肝機能を有することを示している。
【0192】
実施例11:豚から非ヒト霊長類(NHP)への腎移植
[0289] 2014年以前は、豚から非ヒト霊長類(NHP)への腎異種移植片の最長は90日であり、移植片生着期間>30日はきわめて珍しい。宿主の自然免疫応答及び適応免疫応答を標的とする遺伝子変更を有するドナー豚の入手可能性の増加と相まって、導入及び維持免疫抑制療法レジメンが最近進歩した結果、移植片生着期間が>125日に延長した(Higginbotham 2015、Iwase 2015b)。免疫、凝固、補体、炎症反応経路における分子不適合を補うためのさらなる遺伝子工学が、異種移植の分野を進歩させ始めている。GTKOを作製する遺伝子改変及び1つのhCRPの過剰発現にもかかわらず、主として豚とNHPの間の分子不適合に起因して、血栓性微小血管症及び全身性消費性凝固障害を含む凝固機能障害が持続した。
【0193】
[0290] 前臨床腎移植研究。腎移植前臨床研究のために、NHPで安全性及び有効性試験が実施される。安全性及び有効性検査のために、8~10週齢のPig 2.0ドナーの腎臓を、移植時に両側腎摘出術を受けるNHP(カニクイザル)レシピエントに移植する。異種移植片の機能は、血清クレアチニン値、全血球数、及びタンパク質の尿分析、並びに連続的な生検及び体重と全身状態の検査によってモニタリングする。免疫抑制は、同種移植において許容される組合せ及び強度の臨床的に関連する試薬からなる。これらには、ステロイド、抗NHP胸腺細胞グロブリン、抗CD20による誘導処置、及びステロイド、抗CD40、MMF及びラパマイシンによる維持免疫抑制が含まれる。予防的抗ウイルス療法、抗菌療法、及び抗凝固療法を実施し、ヘマトクリット値に基づいて必要に応じてEpogenの補充を行う。
【0194】
[0291] 正常なクレアチニンで、タンパク尿がないか又は低レベルであり、急性抗体又は細胞媒介性損傷がない生検で示された、6か月の良好に機能する異種移植片の生存は、有効性の十分な証拠を提供すると考えられる。
【0195】
[0292] 同種移植との類推により、予め形成された抗体-媒介性損傷のリスクが最も高い期間は、移植後の最初の数週間であり、急性細胞媒介性拒絶反応は、移植後の最初の3カ月間に最も起こりやすく、その後リスクが減弱することが予想される(Cowan 2014)。
【0196】
[0293] 同種移植片拒絶。2016年12月に改訂されたガイダンス原案「Source Animal, Product, Preclinical, and Clinical Issues Concerning the Use of Xenotransplantation Products in Humans」(FDA 2016)に従って、異種移植製品の拒絶反応がレシピエントをその後の異種移植製品又は同種移植の拒絶反応に先行させる可能性が存在する(セクションIX.C.1.g)。
【0197】
[0294] in vitro抗体反応性及び混合リンパ球反応(MLR)アッセイを用いて、前臨床モデルにおける異種移植後の反応性の欠如を実証する。異種移植片及びその後の同種移植片に対する反応の間の交差反応の可能性を試験するために、フローサイトメトリー交差適合試験を、上述のように正常豚及びPig 2.0ドナーから腎臓移植を受けた雄NHP由来の血清を用いて実施する。NHPドナーのパネル由来のリンパ球とブタドナー由来のリンパ球に対する血清の反応性を試験する。ブタ細胞への反応は、抗ブタ抗体レベルの上昇によって異種感作事象が起こったことを確認する。NHP前移植(ナイーブ)からのサンプルを拒絶後サンプルと比較して、NHPリンパ球パネルへの抗体結合の変化を評価する。並行して、同種刺激因子パネルに対する移植前後(拒絶後)のNHPレシピエントT細胞による直接的及び間接的T細胞応答を評価して、細胞媒介性同種応答が異種移植片の拒絶後に増大するか否かを判定する(Baertschiger 2004、Cooper 2004、Ye 1995)。
【0198】
[0295] 異種反応と同種反応との間の交差反応性が少なくとも低レベルで観察されることが予想される。しかしながら、これらの結果は、提案された試験との関連で考慮されるべきである。腎臓の試験では、適切な適合を同定できないために移植を受けることができなかった高度に感作された患者を対象に移植が計画されている。わずかな追加感作では、その後に同種移植片を受ける機会が変わる可能性は低いと考えられる。さらに、T細胞感作は、再移植に対する有意な障壁として同定されておらず、したがって、臨床的にモニターすることができない可能性がある(Baertschiger 2004、Cooper 2015)。したがって、異種細胞を介した感作が同種移植片の生存を妨げる可能性は低いと思われる。
【0199】
[0296] 生体内分布。異種移植の結果としての、レシピエントにおけるドナー細胞の遠位組織/器官への移動の可能性が残されている。キメラ研究は、これが生着の成功を実際に増加させ、拒絶の確率を減少させ得ることを実証する(Starzl 1993、Vagefi 2015)。しかしながら、豚ドナー細胞移動の未知の結果がある可能性があり、したがって細胞の移動が生じたか否かを決定するための戦略が開発されている。生体内分布は、Source Animal, Product, Preclinical, and Clinical Issues Concerning the Use of Xenotransplantation Products in Humans, Dec 2016 (Section IX.C.5; FDA Dec 2016)、Gene Therapy Clinical Trials - Observing Subjects for Delayed Adverse Events, Nov 2016 (Section IV.B.2; FDA Nov 2016)、及びPreclinical Assessment of Investigational Cellular and Gene Therapy Products, Nov 2013 (Section V.C.5.; FDA 2013)を含むFDAガイダンス文書に概説されている原則に従って、豚-NHP異種移植研究の一部として研究される。
【0200】
[0297] 腫瘍原性。SCNT及び生殖補助医療施設に含まれる全ての動物について、腫瘍形成の証拠について日常的にモニタリングする。瀕死状態又は死亡が認められた動物は全て、動物病理学者による全剖検並びに肉眼的及び顕微鏡的病理検査を実施する。遺伝子操作された全ての動物の健康及び病理学の記録を、特定の又は非意図的な遺伝子改変に起因する腫瘍原性の可能性のリスクを判定するために維持し、まとめる。
【0201】
実施例12:豚からヒトへの腎移植
[0298] 腎異種移植は、数十年間研究されており、豚異種移植片は、初期の臨床試験で評価されている(Starzl 1964)。課題は、同種移植片の生存と同等の臨床的利益をもたらす異種移植手技を可能にすることである。
【0202】
[0299] 臨床試験デザイン。提案された臨床試験集団には、高いレベルのパネル反応性抗HLA抗体(PRA)が存在するために、適時に適切な腎臓ドナーを見つける見込みのない18~65歳の末期腎疾患の移植患者が含まれる。高PRAは、適切な死体ドナー又は生体ドナーとマッチングさせる上で実質的な課題を生じさせ、血液透析のさらなる年からの移植待ち時間の延長、及び過剰な罹病を引き起こす。待機リストの優先順位が付与されているにもかかわらず、>90%のPRA患者は、感作がより低い患者と比較して依然として顕著に長い待機時間を経験する。HLA抗原に対して>90%のPRA感作を有し、ブタドナーリンパ球(又は内皮細胞)に対して負のフロークロスマッチを示す対象を標的とする。
【0203】
[0300] 患者は、40~50mL/分/1.73mの予想糸球体濾過率(GFR)を提供する120±10gmのブタドナー腎臓を受ける。9~12ヶ月齢のドナー由来の単一のブタ腎臓を、同種腎移植に用いたものと同一の方法で、右又は左腸骨窩に移植する。主要評価項目は、移植後1年間の血液透析からの解放である。患者は、クレアチニンレベル、尿タンパク、及び、MDRD式:GFR(mL/分/1.73m)=175×(Scr)-1.154×(年齢)-0.203×(女性の場合、0.742)×(アフリカ系アメリカ人の場合、1.212)を用いたGFRの算出についての連続血液検査によって評価される。プロトコルで指定された移植片生検は、移植後最初の1ヵ月間における最良の連続3回のクレアチニン測定値の平均として定義されるベースラインからのクレアチニンの>20%上昇、又は300mg/日を超えるタンパク尿に基づいて、3ヵ月ごと及び原因別に実施する。安全対策には、凝固パラメータ、臨床化学、血液学、及び外来性感染症のモニタリングが含まれる。
【0204】
[0301] ブタ-ヒト腎移植のための器官。データにより、ブタの腎臓は、ヒトの腎臓と同様の腎臓重量により機能的効力を発現することが示唆され、したがって、移植片による腎臓の移植及びレシピエントの体重は、同種移植片で臨床的に使用されるものと同等であることができる。ヒトでは、同種腎移植片の移植は、レシピエントの体重に対する腎臓重量の広い範囲にわたって行われる。平均して、成人男性腎臓の重量は125~170グラムであり、成人女性腎臓の重量は115~155グラムである(Boron 2003)。レシピエント体重に対する腎臓重量の比についての投与量の上限範囲を考慮すると、腎機能の過剰がいかなる形でも有害であるという証拠はない。むしろ、移植可能な腎質量の上限は、技術的問題によって制限される。例えば、1人の成人の腎臓を10kgの乳児にうまく移植することができ、これは、平均的な成人の腎質量比(3~4gmの腎臓/kg;Donati-Bourne 2014)の約3~4倍である12~17gmの腎臓/kgに等しい。この移植片重量対レシピエント重量の上限範囲は、以下に詳述する提案された前臨床試験に関連する。実験的前臨床試験では、8~10週齢のブタドナーからの50~75gmの腎臓を5~12kgのNHPレシピエント(約10gmの腎臓/kg)に移植する。
【0205】
[0302] 糸球体濾過率(GFR;mL/分/1.73m2)は、透析及び/又は移植に適格な慢性腎臓疾患(CKD)及び腎不全の進行をステージ分類するために使用される腎機能又は腎効力の標準的な尺度である。レシピエント体重に対する腎臓重量についての投与量の下限範囲の決定において、目標は、45~60mL/分/1.73mのGFRを達成することである(CKDステージ3A;Levey 2011)。このGFRの目標範囲は、CKD 3Aの腎機能はヒトの単腎同種移植で達成される腎機能と同等で安定しているが、CKDステージ3B(GFR 30~45mL/分/1.73m)のより低いGFRは末期腎疾患及び全死因死亡率及び心血管死亡率の増加に関連することを示唆するデータに基づいている(Sharma 2010)。45~60mL/分/1.73mの目標GFR範囲は、ヒトにおける単腎同種移植によって達成されるものと同等である(50~65mL/分/1.73m;Gourishankar 2003、Marcen 2010)。
【0206】
[0303] これには、腎質量当たりのGFRがヒトとブタの腎臓で同等であることを考慮すると、同種移植で日常的に用いられているもの(115~170gm)と同等の腎臓質量の異種移植が必要であろう。カルシニューリン阻害剤の形態の腎毒性免疫抑制を用いたレシピエントの処置に起因して、提供プロセス及び移植後に何らかの腎機能が失われる可能性があることを考慮するべきである。
【0207】
[0304] 薬理学及び毒性学の情報。有効性及び安全性は、げっ歯類及びNHPの両モデルを用いた薬理試験により評価される。様々な統合的安全性エンドポイント、並びに遺伝子操作ドナーブタ組織における臨床病理学及び病態生理学の評価を用いる。in vitroの細胞及び組織機能、並びにドナー豚及びNHP異種移植片における臨床病理学及び組織病理学の評価を含む段階的アプローチを採用する。エンドポイントには、移植片機能及び拒絶反応、並びに自然及び適応免疫、炎症、並びに補体及び凝固カスケードの機能に関連するレシピエントの安全性が含まれる。
【0208】
[0305] 体細胞核移植及び遺伝子操作されたドナー豚の補助された生殖。遺伝子操作されたドナー豚は、臨床化学及び血液学、並びに肉眼的及び顕微鏡的組織病理学的検査を含む完全な臨床病理学的検査を伴う安全性の検討のために、日常的にモニタリングされる。繁殖コロニー内の全てのドナー豚について、生殖能、胚・胎児発生、器官及び組織発生、並びに潜在的な腫瘍形成をモニタリングし、記録する。
【0209】
[0306] 動物は、永久インク(原点に置かれた)で印刷された独特の耳タグによって識別される。豚の流れは隔離区域を含み、隔離区域は、木材削り屑の床敷きを備えた、野外の集団飼育小屋である。飼料トラフは木製で、ごみ及び廃棄物がないように清潔に保たれている。新鮮で自由選択の水は、ニップルドリンカーを介して常に利用可能である。小屋は、空気を循環させるために屋外の風の動きに頼っており、温度は10℃超に維持されている。バイオセキュリティは、少なくとも24時間他の豚と接触しないこと、特定の小屋の服装、及び小屋との接触の前後の消毒剤へのブーツの浸漬を必要とする。隔離期間は、35~40日間の隔離、Parvo Shield L5E、FluSure XP/ER Bac Plus、Ingelvac FLEXコンボ(サーコウイルス及びマイコウイルス)、及びDectomaxの接種を含み、疾患抗体(PRRSV、PRRSX3)の増加がないことを証明する2回の採血を含む。隔離からのクリアランス後、豚を施設の緩衝領域に移動させる。この領域は、12匹までのグループの閉鎖された集団飼育小屋であり、おがくず敷きの小屋である。寝具は毎週交換する。温度は、サーモスタット制御ファンとプロパンヒーターによって15~24℃の範囲に制御される。豚はステンレス鋼のトラフに給餌され、新鮮で自由選択の水がニップルドリンカーを介して常に利用可能である。豚を1日に少なくとも1回、健康状態に応じて観察する。
【0210】
[0307] 健康上の問題が観察された豚は、個別のケア及び注意のために単一の小屋に収容され、担当獣医師及び発生学部長の指示に従って処置される。バイオセキュリティは、他の豚群との接触が少なくとも24時間ないことを必要とする。小屋領域での使用に限定されたカバーオール及びブーツは、小屋接触の前後に、Virkon-S又はSynergizeのいずれかで消毒される。臨床試験に使用するソースドナー豚の作製は、関連する全てのガイダンス及び規則に従う。
【0211】
[0308]遺伝子工学の検証。内因性遺伝子KO及びヒト導入遺伝子発現は、ゲノムレベル、mRNAレベル、及びタンパク質レベルで検証される。遺伝子KOについては、サンガーシーケンシング又はディープシーケンシングのいずれかを実施して、意図された標的部位での遺伝子突然変異を確認する。第2に、RNA-seq及び/又はRT-PCRを実施して、mRNAが意図された突然変異を含み、ナンセンス媒介崩壊を受けやすいことを保証する。RTアッセイを実施して、PERV KO細胞におけるRT活性の消失を実証する。さらに、免疫組織化学(IHC)染色及び/又はフローサイトメトリーを実施して、遺伝子産物が細胞中又は細胞表面に存在しないことを確実にする。
【0212】
[0309]オフターゲット変異は、精密遺伝子編集の分野の進歩にもかかわらず依然として存在する可能性があり、臨床的異種移植のための安全且つ有効なドナー器官を作製するために理解する必要がある。CRISPR-Cas9遺伝子編集の潜在的なオフターゲット効果を確認するために、以下の多段階評価アプローチを使用した:
1. 染色体構造の完全性を決定するための改変された細胞クローンの核型;
2. CIRCLE-Seq:任意の所与のgRNAのゲノムワイドなCRISPR-Cas9オフターゲット突然変異を包括的に検出する高感度のin vitroスクリーニング戦略。潜在的なオフターゲット部位は、その後の標的化アンプリコンシーケンシングを使用して、特定のgRNA由来の任意の派生細胞株において監視(censor)される;
3. 全ゲノムシーケンシング(WGS):単一点突然変異、及び遺伝子操作した細胞株又は豚の小さな構造変異を調べるため。表2は、使用した検出方法の分解能及び感度を列挙する。
【0213】
【表4】
【0214】
[0310] 導入遺伝子の発現に関しては、ゲノムレベル、mRNAレベル、及びタンパク質レベルにおけるヒト導入遺伝子の無傷性及び発現を、シーケンシング、RT-PCR/RNA-seq、及びIHC/フローサイトメトリー技術を用いて検証する。さらに、ランダム導入遺伝子組込みの位置を、逆PCRに基づく接合部捕捉によって決定し、結果を接合PCRによって検証する。
【0215】
[0311] クローンは、任意の既知の遺伝子及びncRNAから少なくとも10,000bp、並びに任意の癌遺伝子及び腫瘍抑制因子から少なくとも50,000bpの遺伝子間領域に組み込まれた単一コピー導入遺伝子を用いて選択される。部位特異的組込み及び内因性遺伝子ヒト化のために、二対立遺伝子部位特異的組込み/置換は、接合PCR及び液滴デジタルPCR(ddPCR)により検証される。
【0216】
実施例13:非ヒト霊長類(NHP)腎移植
[0312] 前臨床移植研究。移植前臨床研究のために、NHPで安全性及び有効性試験を実施した。8~10週齢のPig 2.0ドナーの心臓、腎臓、及び肝臓を移植固形器官研究に用い、肝臓及び肺を潅流器官研究に用いた。5ヶ月の期間で、15回の器官移植及び11回の器官潅流を行った。具体的には、表3にまとめたように、4回の肝臓及び7回の肺潅流を実施しながら、7回の腎臓移植、4回の心臓移植、4回の肝臓移植を実施した。
【0217】
【表5】
【0218】
[0313] 腎臓移植の免疫抑制レジメンは、同種移植で許容可能な臨床的に関連する試薬の組合せ及び強度で構成された。臨床モニタリングには:2、5、7、9、12、14日目の腹部超音波と、2、5、7、9、12、14日目及び週1回の臨床検査(CBC、Chem 17、血液、血清)が含まれた。
【0219】
[0314] Pig2.0ドナー及び対照豚(GTKO.hCD55)からの移植腎臓の生存を分析した。結果の概要を表4に提供する。
【0220】
【表6】
【0221】
[0315] GTKO.hCD55豚腎臓の最も長期間生存した2頭のレシピエントは、腎不全及び体重減少によりそれぞれ安楽死させた76日目及び93日目まで生存した。これら2頭のうち、1頭は血栓性微小血管症(TMA)、慢性抗体媒介性拒絶反応(AMR)及び境界型T細胞媒介性拒絶反応(TCMR)を有することが判明し;一方、他の1頭はC4d沈着を有したが、それ以外では明らかな拒絶反応の組織学的証拠はなかった。残りの7頭のレシピエントは、Pig 2.0から腎臓を受けた。これらの豚では、免疫応答又は補体活性化を調節する形質導入ヒトタンパク質が高レベルで発現していた。これらの遺伝子改変豚腎臓のNHPレシピエントは、腎臓移植のための免疫抑制レジメンにより>190、72、20、15及び6日間生存した。
【0222】
[0316] 1頭のレシピエントは、現在、腎臓移植のための免疫抑制レジメンにより、190日目に正常な腎臓機能(クレアチニン0.6mg/dl)で良好に経過している。複数回の生検では、拒絶反応又はTMAの所見は認められなかった。
【0223】
[0317] これらのデータを総合すると、自然応答及び補体経路における調節タンパク質をコードするヒト遺伝子の複数の形質導入を伴う三重異種抗原KOを有する腎臓異種移植片の長期生存が実証され、即ち拒絶反応又はTMAがないことが、最小限の維持免疫抑制で達成されている。
【0224】
[0318] サルの健康状態の悪化は、異種移植サルのいくつかの早期終了に寄与した。合併症には、輸血、注射部位膿瘍及び感染、創傷治癒が含まれた。いくつかの症例は、おそらく過剰抗凝固により、膀胱及び/又は尿管に出血を呈した。Pig2.0移植片の概要を表5に示す。
【0225】
【表7】
【0226】
[0319] ペイロード9(A)及びペイロード10(B)ドナー豚から分離した腎臓を移植した宿主サルを分析したところ、宿主は安定した血清クレアチニン濃度を示すことが実証された(図32A及び32B)。いくつかの宿主サルはまた、安定な又は回復するヘマトクリットレベルを示した(図33A及び33B)。血小板数は、いくつかの宿主サルで低かったが、他のサルでは回復していた(図34A及び34B)。WBCの変動は、免疫抑制レジメン及び感染事象を反映している(図35A及び35B)。
【0227】
[0320] 肝臓異種移植。最近まで、豚からヒヒへの同所性肝臓異種移植(OLTx)生存期間は9日間に限られていた。GTKO肝臓のレシピエント2例では、ヒト凝固因子の投与により生存期間が25日及び29日に改善したが、一貫した生存は依然として解明されていない。
【0228】
[0321] 今回、4頭の豚からヒヒへのOLTxを実施した。肝臓は、異種抗体の標的を欠損し、補体活性化及び自然免疫細胞機能に対処するためのヒト導入遺伝子を含む遺伝子導入豚の2つの遺伝子構築物から得た(グループ1:B1、B2;グループ2:B3、B4)。免疫抑制は、ATG、リツキシマブ、コルチコステロイド、MMF及びaCD154で構成された。全レシピエントはKCentraの注入を受けた。先行研究と異なり、脾摘出術は行わず、コブラ毒因子及びタクロリムスは省略した。B2及びB4は、GpIIb/IIIa阻害剤の連続注入を受けた。移植片機能を、毎日の化学、乳酸塩、CBC、INR及び毎週の凝固プロファイルを用いて評価した。
【0229】
[0322] ヒヒB1、B2及びB4は、生命維持移植片機能を有するOLTxに成功した。LFTは、全てのヒヒにおいてPOD1でピークに達し、POD4~7の間で正常化された(図38A、38B)。各ヒヒは血小板減少症を示し、B2ではPOD8及びB4ではPOD4で自然回復が始まった(図38C)。輸血要求(図38D)は、歴史的経験よりも少なかった。凝固因子の消費は、OLTxの直後に起こり、その後、正常な豚レベルで産生された(図38E~38I)。B1は、体液過負荷と腹部コンパートメント症候群による呼吸不全のため、POD8に安楽死させた。肝臓生検では、限局性虚血が認められ、拒絶反応は認められず、C4d陰性であった(図38A~B)。B2は順調に回復し、POD8の生検は正常であった。喀血の発現と輸血要求の増加により、POD14に安楽死させる必要が生じた。剖検で肺出血が確認された。肝臓のH+E染色は、びまん性類洞好中球浸潤(diffuse sinusoidal neutrophil infiltrate)を示し、これは、拒絶に対する感染性合併症を示唆し、B2はC4d陰性であり、LFTは全体を通して正常のままであった(図38C~D)。B3は低血圧で、再潅流後の術中低酸素血症であり、安楽死が必要であった。剖検では、正常な肝臓及び開存性血管系を伴うびまん性肺出血が認められた。B4は無事に回復した。1回のみの術後輸血を必要とした。POD7に、Tbili及びLFTの上昇は探索を促し、そこで胆汁漏出及び肝動脈血栓症(HAT)が確認され、安楽死が必要であった。生検はC4d陰性を有する限局性被膜下壊死を示し、拒絶の証拠はなく、HATと一致した(図38E~F)。
【0230】
[0323] 新規な遺伝子組換え豚器官を用いたOLTxのこれらのデータを総合すると、再潅流傷害の減少、RBC消費の減少、及び脾摘出術又はCVFの使用を伴わない最初の抗体媒介性拒絶反応のない生存が実証される。明らかな拒絶反応が存在しなかったことから、このブタ系統は、さらなるOLTx研究に適していることが示唆される。
【0231】
[0324] 肝臓異種潅流。異種豚肝臓移植の成功の障壁には、予め形成された異種抗体による超急性拒絶反応、調節不全の補体、凝固、並びに自然及び適応免疫をもたらす分子不適合がある。遺伝子改変豚は、これらの障害を回避する可能性があり、様々な遺伝子構築物の有効性を評価するための迅速且つ効率的なモデルが必要となる。ここでは、野生型(WT)のex-vivo肝臓異種潅流(EVLXP)と、ヒト血液及び血漿で潅流した遺伝子改変豚肝臓(hWB+P)を用いて、最初の結果を報告する。
【0232】
[0325] 簡潔には、Pig 2.0(EG群、n=3)、WT(n=2)由来の肝臓、及びGTKO.hCD55(n=4)肝臓を研究した。EVXLPを、新鮮なヘパリン化hWB+Pを用いて37℃で行った。EVXLP中の失敗は、血管抵抗の上昇、重度の代謝攪乱又は肉眼的壊死による血流の減少によって定義した。CBC、血清臨床化学、及び血液ガス分析を行った。組織生検は、H+Eで染色し、IgG、IgM及び補体(C4d)の沈着を調べた。
【0233】
[0326] 全ての群は、対応する血管抵抗の上昇を伴う進行性の血流減少を示した。血行動態の悪化は、EG肝臓と比較して、WT及びGTKO.CD55でより早期に生じ、より速く進行し(図39A、39B)、より長いEG肝臓生存と相関した。WTの平均肝臓生存時間は、5時間(5~7時間の範囲)、GTKO.CD55で4.5時間(4~6時間の範囲)及びEG肝臓で13時間(11~14時間の範囲)であった。血小板及び好中球は、全ての群で急速に減少し、WTで最も大きい損失が観察されたが、差は統計的有意差を満たさなかった(図39C、39D)。RBC数は、EGで潅流を通して保存され、WT肝臓よりも有意に高く、GTKO.CD55よりも高い傾向があった(図39E)。
【0234】
[0327] EG肝臓組織生検は、軽度のびまん性門脈及び類洞炎症を伴う保存された肝構造をH+E上で示した(図41A)。WT肝臓は、H+E上で限局性虚血性壊死及び血管うっ血を示し(図41E)、IgM及びIgGについての強い染色(図41F~41G)並びにC4d陽性を示した(図41H)。対照的に、EG肝臓は、C4d陰性(図41D)を伴う、びまん性の軽度の類洞IgG及びIgM沈着(図41B~41C)を示し、おそらく、予め形成された抗原の減少及びヒト補体調節タンパク質発現の添加による補体調節の改善が、より少ない傷害をもたらしたことを示唆した。
【0235】
[0328] 異種特異的抗原を欠き、補体活性化及び免疫細胞機能に関連するヒト化導入遺伝子を含む遺伝子導入豚由来の異種肝臓は、WT又はGTKO.CD55異種移植片と比較して、血小板捕捉の程度が軽度で、RBC量が維持され、抗体及び補体沈着が減少し、生存期間が有意に延長した。このモデルは、豚からヒトへの異種移植をシミュレートし、特定の遺伝子改変の有効性を評価するための効率的で有益なツールである。
【0236】
[0329] 肺異種潅流。ヒト血液を用いたEx vivo肺潅流は、導入遺伝子の組合せの影響を評価するための標準化された方法である。ここでは、参照コホートの関連で評価した、新規遺伝子導入豚系統と関連した結果を報告する。
【0237】
[0330] 簡潔には、Gal1、3αGal、β4Gal、及びNeu5Gcノックアウト(TKO)の組合せを有し、補体活性化と自然及び適合免疫細胞機能における分子不適合に対処するヒト導入遺伝子を含む豚由来の組合せた8対の肺を有する豚由来の8対の肺を、新たに収集したヘパリン化ヒト血液でex vivoで潅流した。GalTKO.hCD55肺は、参照群としての役割を果たした。各豚の肺の対では、血液を「未処置」のままとし(n=5 Pig 2.0、n=3参照)、又はトロンボキサンシンターゼ阻害薬及びヒスタミン受容体遮断薬である1-BIAで「処置」した(Pig 2.0はn=7、参照はn=4)。組織及び血液サンプルを所定の時点で収集し、肺が早期に機能しなくなっていない場合には、8時間の潅流後に実験を選択的に終了した。
【0238】
[0331] Pig 2.0肺の生存期間中央値は、未処置群では、450分(300~480分の範囲)、対、参照肺の30分(20~300分の範囲)(P=0.04)であり、処置コホートでは480分(360~480分の範囲)、対、300分(145~360分の範囲)(P=0.009)であった。肺血管抵抗(PVR)上昇は、GalTKO.hCD55肺と比較して、「未処置」豚2.0肺で有意に減弱し、遅延した(図42)。1-BIA及びH-ブロッカーによる追加の血液処置は、Pig 2.0と参照群の両方でPVR上昇を減弱した。好中球及び血小板の捕捉は、通常、潅流後5~15分以内に起こり、Pig 2.0マルチ遺伝子導入肺に関連して減弱しなかった。
【0239】
[0332] これらのデータは、新規なPig 2.0ドナー遺伝学がPVR上昇及び肺傷害から肺を保護し、この厳密なモデルにおいて肺生存の有意な改善と関連していることを実証している。他の肺遺伝学で既に報告されているように、白血球(leukocyte)及び白血球(white cell)の捕捉は予防されなかった。Pig 2.0肺によって発現される導入遺伝子の組合せは、肺、及び他の器官の異種移植の成功を達成するために役立つ可能性がある。
【0240】
[0333] 導入遺伝子の発現。RNAseq発現データは、補体及び細胞毒性遺伝子がペイロード9及びペイロード10Pig 2.0豚から収集されたサンプルにおいて発現されることを示した(図36)。FACSデータは、補体及び細胞毒性タンパク質がペイロード5、ペイロード9及びペイロード10豚から収集されたサンプルにおいて発現されることを示した(図37)。3つのペイロードの全ては、補体(CD46、CD55、及びCD59)及び細胞毒性関連タンパク質(例えば、B2M、HLA-E、CD47)を発現した。さらに、ペイロード5はCD39を発現するとともに、ペイロード10はPDL1を発現した。NHPにおける性能は大幅に異なるが、ペイロード5を保有する5頭の豚間では遺伝子発現プロファイルは類似している。
【0241】
[0334] 本出願において特定される数値の使用は、特に明記しない限り、記載された範囲内で特定される最小値及び最大値を通じた近似として記載され、前に「約」という語が付されている。範囲の開示は、記載された最小値と最大値との間の全ての値、並びにそのような値を通して形成され得る任意の範囲を含む連続的な範囲として意図される。本出願で提示される数値は、本開示の様々な実施形態を表す。
【0242】
[0335] この開示は、網羅的であること、又は本技術を本明細書に開示された厳密な形態に限定することを意図していない。特定の実施形態が例示の目的で本明細書に開示されているが、関連分野の当業者が認識するもののように、様々な同等の修正が本技術から逸脱することなく可能である。場合によっては、本技術の実施形態の説明を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の構造及び機能は示されておらず、及び/又は詳細に記載されていない。方法のステップは、本明細書において特定の順序で提示され得るが、代替の実施形態では、ステップは別の適切な順序を有する可能性がある。同様に、特定の実施形態の文脈で開示された本技術の特定の実施形態は、他の実施形態において組合せるか、又は排除することができる。さらに、特定の実施形態に関連する利点がそれらの実施形態の文脈で開示されてきたが、他の実施形態もそのような利点を示すことができ、全ての実施形態が、本技術の範囲内に含まれるそのような利点又は本明細書に開示される他の利点を必ずしも示す必要はない。したがって、本開示及び関連技術は、本明細書に明示的に示されておらず、及び/又は記載されていない他の実施形態を包含することができる。
【0243】
[0336] 上記から、本開示の特定の実施形態が、例示の目的のために本明細書に記載されたが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正がなされ得ることが理解される。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲による場合を除いて、制限されない。
【0244】
[0337] 本開示の特定の実施形態が議論されてきたが、上記の明細書は例示であり、限定ではない。本開示の多くの変形が本明細書及び以下の特許請求の範囲を検討することにより、当業者に明らかになるであろう。本開示の全範囲は、特許請求の範囲をそれらの均等物の全範囲とともに、及び明細書をそのような変形とともに参照することによって決定されるべきである。
【0245】
略語
急性血管拒絶反応(AVR);活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT);アデノ関連ウイルス組込み部位1(AAVS1):アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT);アルブミン(ALB):α1,3-ガラクトシル-ガラクトース(Gal又はαGal);抗体媒介性拒絶反応(AMR);抗胸腺細胞グロブリン(ATG);アシアロ糖タンパク質受容体1(ASGR1);アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST);β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ2(B4GalNT2);β-2ミクログロブリン(B2M);分化のクラスター39(CD39);分化のクラスター47(CD47);クラスター化された規則的に間隔を空けた短いパリンドロームリピート(CRISPR);クラスIIトランスアクチβードミナントネガティブ(CIITA-DN);CMV初期エンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG);補体因子3(C3);補体因子3ノックアウト(C3-KO);全血球数(CBC);C-X-Cモチーフケモカイン受容体3(CXCR3);C-X-Cモチーフケモカイン受容体12(CXCR12);シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH);細胞傷害性Tリンパ球関連免疫グロブリン(CTLA-Ig);デオキシリボ核酸(DNA);DQα(DQA);DRα(DRA);液滴デジタルpCR(ddPCR);エクト-5’ヌクレオチダーゼ(CD73);伸長因子1α(EF1α);内皮細胞(EC);内皮タンパク質C受容体(EPCR);ex-vivo肝臓異種潅流(EVLXP);Fasリガンド(FasL);フィブリノーゲンレベル(FIB);蛍光活性化細胞選別(FACS);新鮮凍結血漿(FFP);緑色蛍光タンパク質(GFR);糸球体濾過率(GFR);グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R);糖タンパク質IIb/IIIa(GpIIb/IIIa);糖タンパク質α-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(GGTA);GGTAノックアウト(GTKO);ガイドリボ核酸(gRNA);ヘモトキシリンとエオシン(H+E);肝動脈血栓症(HAT);ヒト胎児腎臓293(HEK293);ヘムオキシゲナーゼ(HO-1);相同組換え修復(HDR);ヒト血液及び血漿(hWB+P);ヒト膜補因子タンパク質(hCD46);ヒト補体崩壊促進因子(hCD55);ヒト補体調節タンパク質(hCRP);ヒト白血球抗原(HLA);ヒト白血球抗原E(HLA-E);ヒトMAC阻害因子(hCD59);免疫グロブリンG(IgG);化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)の免疫グロブリンG分解酵素(IdeS);免疫グロブリンM(IgM);免疫組織化学(IHC);イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMDH);インターロイキン12(IL12);インターロイキン35(IL35);国際標準化比(INR);細胞内接着分子-2(ICAM2);キラー阻害受容体(KIR);ノックイン(KI);ノックアウト(KO);Krueppel関連ボックス(KRAB);肝機能検査(LFT);長鎖末端反復配列(LTR);主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHCクラスI);主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHCクラスII);主要組織適合遺伝子複合体、クラスI、E単鎖三量体(HLA-ESCT);ラパマイシンの機械的標的(mTOR);メッセンジャーリボ核酸(mRNA);腎疾患における食事の変更(MDRD);混合リンパ球反応(MLR);ミコフェノール酸モフェチル(MMF);ナチュラルキラー(NK);N-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc);神経分化1(NeuroD);非ヒト霊長類(NHP);非相同末端結合(NHEJ);同所性肝臓異種移植(OLTx);パネル反応性抗体(PRA);末梢血単核細胞(PBMC);豚腎臓-15細胞(PK15);ブタ内在性レトロウイルス(PERV);ブタ内在性レトロウイルスノックアウト(PERV KO);プログラム死リガンド1(PD-L1);ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);ブタ大動脈内皮細胞株(PEC-A又はpAEC);カリウム(K);プロトロンビン時間(PT)及び国際標準化比(PT-NIR);定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR);リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE);赤血球(RBC);リボ核酸シーケンシング(RNAseq);逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCT);sgRNA(単一ガイドRNA);低分子干渉リボ核酸(siRNA);ナトリウム(Na);体細胞核移植(SCNT);スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3);豚白血球抗原(SLA);T細胞媒介性拒絶反応(TCMR);トロンビン-アンチトロンビンIII(TAT);トロンボモジュリン(THBD、TBM又はTM);血栓性微小血管症(TMA);組織因子経路阻害剤(TFPI);トポイソメラーゼ(TPO);総ビリルビン(Tbili);転写活性化因子様(TAL)エフェクター及びヌクレアーゼ(TALEN);腫瘍壊死因子α誘導タンパク質3(A20);腫瘍壊死因子受容体1免疫グロブリン(TNFR1-Ig);遍在性クロマチン開放エレメント(UCOE);フォン・ウィルブランド因子(vWF);全ゲノムシーケンシング(WGS);野生型(WT);ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)。
【0246】
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【0247】
配列
【0248】
【表8】
【0249】
【表9】
【0250】
【表10】
【0251】
【表11】
【0252】
【表12】
図1A
図1B
図1C
図1C-2】
図2
図3A
図3B
図3B-2】
図3B-3】
図3B-4】
図4A
図4B
図4B-2】
図4B-3】
図4B-4】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図15-2】
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32A
図32B
図33A
図33B
図34A
図34B
図35A
図35B
図36
図37
図37-2】
図38A
図38B
図38C
図38D
図38E
図38F
図38G
図38H
図38I
図39
図40A
図40B
図40C
図40D
図40E
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51A
図51B
図51C
図51D
図51E
図52A
図52B
図52C
図53A
図53B
図53C
図53D
図53E
図53F
図53G
図54A
図54B
図54C
図54D
図54E
図55
図56A
図56B
図56C
【配列表】
2022532783000001.app
【国際調査報告】