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特表2022-532785チオエステル官能性有機ポリマー、その調製方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(54)【発明の名称】チオエステル官能性有機ポリマー、その調製方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/25 20060101AFI20220711BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
C08C19/25
C08L15/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568706
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2020033601
(87)【国際公開番号】W WO2020236816
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】62/851,297
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ヴィクラム
(72)【発明者】
【氏名】ピノー,マシュー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC111
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD090
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD170
4J002GN01
4J100AB02Q
4J100AS02P
4J100AS03P
4J100BA54H
4J100BA77H
4J100CA01
4J100CA04
4J100CA27
4J100CA31
4J100FA03
4J100HA35
4J100JA29
(57)【要約】
有機ポリマーフラグメントと、C-Si共有結合を介して有機ポリマーフラグメントの主鎖に結合した少なくとも1つのS-アルキルシリル炭化水素チオエート基または少なくとも1つのS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート基とを含む有機ポリマーおよびそれらの方法または生成物が提供される。有機ポリマー主鎖は、C-C不飽和を含むモノマーのアニオン重合に由来し得る。ケイ素またはスズ原子はさらに、2つのアルコキシ基、2つの炭化水素基、または1つのアルコキシ基および1つの炭化水素基に結合することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーフラグメントおよびC-Si共有結合を介して有機ポリマーフラグメントの主鎖に結合した少なくとも1つのS-アルキルシリル炭化水素チオエート基または少なくとも1つのS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート基を含む有機ポリマー。
【請求項2】
有機ポリマーフラグメントの主鎖が、C-C不飽和を含むモノマーのアニオン重合に由来する、請求項1に記載の有機ポリマー。
【請求項3】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート基のケイ素原子またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート基のスズ原子がさらに2つのアルコキシ基、2つの炭化水素基または1つのアルコキシ基および1つの炭化水素基に結合している、請求項1または2に記載の有機ポリマー。
【請求項4】
有機ポリマーは一般式(I)を有し、
[RC(=O)SR-M(OR(R2-a-]-[R2-b (I)
ここで
各Mは独立してケイ素またはスズ原子であり;
各Rは、独立して、1から24個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり;
各Rは、独立して2から6個の炭素原子の二価のアルキル基であり;
各Rは、独立して、1から12個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基、または構造-R(OR(ORを有する一価の基であり、ここでRは、2から6個の炭素原子を有する二価のアルキル基であり、Rはエチレンであり、各Rは独立してプロピレンまたはブチレンであり、Rは、1から20個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基、または-(C=O)Rであり、そして下付き文字cおよびdは整数であり、ここでcは0から6であり、そしてdは0から6であり、ただしc+dは1から10であるという条件であり;
各Rは独立してメチルまたはフェニルであり;
は、1から24個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり;
は、C-C単結合、C-C二重結合、またはC-C単結合とC-C二重結合の組み合わせによって共有結合した炭素原子の主鎖を有する有機ポリマーフラグメントであり;そして
下付き文字aおよびbは整数であり、ここでaは0、1、または2であり、そしてbは1または2である、
請求項1から3に記載の有機ポリマー。
【請求項5】
は、一般式(III)を有する有機ポリマーフラグメントであり、
【化1】

ここで
各々のR11、R12、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25およびR26は、独立して、1から6個の炭素原子を有する一価のアルキル基または水素であり;
各R14は、独立して水素または1から24個の炭素原子の一価アルキル、3から24個の炭素原子のシクロアルキル、1から24個の炭素原子のアルケニル、5から24個の炭素原子のシクロアルケニル、7から24個の炭素原子のアラルキル、または6から25個の炭素原子のアリール基であり;
下付き文字e、f、およびgは整数であり、ここでeは0またはそれよりも大きく、fは0またはそれよりも大きく、そしてgは0またはそれよりも大きく、ただしe+f+gは1またはそれよりも大きいという条件である、
請求項4に記載の有機ポリマー。
【請求項6】
eが0から10,000である、請求項5に記載の有機ポリマー。
【請求項7】
eが100から2,500である、請求項5に記載の有機ポリマー。
【請求項8】
fが0から10,000である、請求項5から7に記載の有機ポリマー。
【請求項9】
fが100から2,500である、請求項5から7に記載の有機ポリマー。
【請求項10】
gが0から10,000である、請求項5から9に記載の有機ポリマー。
【請求項11】
gが100から2,500である、請求項5から9に記載の有機ポリマー。
【請求項12】
e+f+gが1,000から5,000である、請求項5から9に記載の有機ポリマー。
【請求項13】
各々のR11、R12、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25およびR26が水素、メチルまたはエチルである、請求項5から12に記載の有機ポリマー。
【請求項14】
が2から14個の炭素原子の一価の直鎖アルキル基である、請求項5から13に記載の有機ポリマー。
【請求項15】
が5から11個の炭素原子の分枝鎖アルキル基である、請求項5から13に記載の有機ポリマー。
【請求項16】
が、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、ノニル、ユニデシル、オクタデシル、デス-3-エニル、ヘプタデス-5-エニル、ヘプタデス-5,7-ジエニル、ヘプタデス-5,7,9-トリエニル、2-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、6-メチルヘプチル、2-フェニルメチル、シクロヘキシル、フェニルまたはトリルである、請求項5から15に記載の有機ポリマー。
【請求項17】
が、1から6個の炭素原子の二価の直鎖アルキル基または3から6個の炭素原子の二価の分岐鎖アルキル基である、請求項5から15に記載の有機ポリマー。
【請求項18】
が、メチル、エチル、プロピル、2-メチルプロピル、2,2-ジメチルブチルまたはヘキシルである、請求項5から15に記載の有機ポリマー。
【請求項19】
は、1から4個の炭素原子の一価のアルキル基である、請求項5から18に記載の有機ポリマー。
【請求項20】
有機ポリマーは一般式(IV)を有し、
C(=O)SCHCHCHSi(OCHCHSi(OCHCHCHCHCHSC(=O)R (IV)
ここでRは、1から18個の炭素原子を有する一価の直鎖アルキル基であり、そしてGはC-C単結合、C-C二重結合、またはC-C単結合とC-C二重結合の組み合わせによって共有結合した炭素原子の主鎖を有する有機ポリマーフラグメントである、
請求項4から19に記載の有機ポリマー。
【請求項21】
有機ポリマーの数平均分子量が約2,000から約1,00,000ダルトンである、請求項1から20に記載の有機ポリマー。
【請求項22】
有機ポリマーの数平均分子量が、約90,000から約150,000ダルトンである、請求項1から20に記載の有機ポリマー。
【請求項23】
C-C不飽和炭素原子モノマーの鎖をアニオン開始剤と反応させて、第1のリビングアニオンポリマー中間体を形成すること、
リビングアニオンポリマー中間体を、2-チア-1-シラシクロアルカン環または2-チア-1-スタンナシクロアルカン環を含む化合物と反応させて、少なくとも1つのチオレート基を含む第2の中間体を形成すること、および
第2の中間体を一般式(II)を有するアシル反応性基と反応させて、
C(=O)X (II)
ここで
は、1から24個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアラルキル基であり、そしてXは、クロリド、ブロミド、ヨージド、または-SR10であり、
10は、1から12個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基である、
反応生成物および塩を形成すること、
を含む、有機ポリマーの製造の方法。
【請求項24】
モノマーが、共役または非共役のC-C12ジエン、またはC-C20ビニル芳香族化合物である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
モノマーは、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
方法が溶液重合を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
請求項1から22に記載の有機ポリマーを形成する方法。
【請求項28】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマー。
【請求項29】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端ポリマーまたはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーまたはそれらの組み合わせ;および
補強材;
任意選択での硬化剤;
任意選択での可塑剤;および
任意選択での1つまたは複数の添加剤;
を含む有機ポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオエステル官能性有機ポリマー、それらの製造方法、およびそれから作製される組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ポリマー組成物、特に1つまたは複数の補強材を含む有機ゴム組成物は、消費財および工業製品の調製にしばしば使用される。有機ポリマーは、硬化反応によって強化エラストマーに変換することができる。タイヤ、振動減衰パッド、クッションパッド、衝撃吸収パッド、ガスケット、およびこれらの硬化有機ポリマーから作製されたその他の製品は、使用中に振動、応力、およびひずみにさらされ得る。硬化有機ポリマーが末端ポリマー鎖端を含む場合、末端ポリマー鎖端は、多くの場合、一端のみで硬化有機ポリマーの結合点に接続されている。しばしば「ダングリング端」と呼ばれる末端ポリマー鎖端は、使用中のエラストマーの望ましくないヒステリシスの一因となる。
【0003】
硬化有機ポリマーのダングリング端によって引き起こされるヒステリシスは、使用中に熱を蓄積することがあり得る。高いヒステリシスを有する強化エラストマーは、ポリマーの劣化に寄与し、そして摩耗特性が低下し得る使用中に発生し得る高温のために、低下した長期エージング特性を有することになり得る。熱の蓄積とエネルギーの損失は、多くの適用にとって望ましくない特徴である。高いヒステリシスは、高い転がり抵抗に寄与するため、タイヤにとって特に不利である。一方、タイヤの転がり抵抗を最小限に抑えると、自動車の燃料効率が向上する。
【0004】
硬化有機ポリマーのヒステリシスを低減するための1つのアプローチは、官能化有機ポリマーを提供することである。スズまたはケイ素を含む反応性官能基で終端されている有機ポリマーが知られている。これらの官能基は、互いに反応して2つの末端有機ポリマー鎖端を共に結合することができ、それにより、ダングリング端の数を減らすことができる。しかしながら、これらの反応性官能端は、通常、互いに反応するだけであり、そして硬化反応には関与しない。
【0005】
官能化有機ポリマー、例えば、官能化溶液スチレンブタジエンは、タイヤ製造で使用されるゴム組成物などの重要な商業的用途を有する。官能化溶液スチレンブタジエンコポリマーは、タイヤの燃費特性に影響を与える転がり抵抗およびヒステリシスを改善するために使用されてきた。しかしながら、これらのポリマーは一般に硬化反応に関与せず、それは有機ポリマーおよびそれから作製される組成物の硬化物理的特性に影響を及ぼし得る。
【0006】
末端官能基を含む有機ポリマーは、オレフィンのアニオン重合によって調製されており、重合の最後に、2,2-ジメトキシ-1-チア-シラシクロペンタンを添加して、末端チオールアルキルシリル官能基を形成しており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2012/0232223号に記載されているとおりである。これらのポリマーはメルカプト基を含み、これは反応性であり、これらの有機ポリマーに基づくゴム組成物の調製中に早期硬化反応を引き起こし得る。一般にスコーチと呼ばれる早期硬化は、ゴム組成物の処理を困難にし、早期架橋ポリマー廃棄物を生成し得ることから、望ましくない。
【0007】
有機ゴム組成物用の架橋剤として、チオエステル官能性ポリシロキサンが調製されている。しかしながら、これらのチオエステル官能性ポリシロキサンは、それらの硬化特性が、特にタイヤの摩耗および取り扱い特性において、有機ポリマーベースの組成物よりも一般に劣るため、有機ポリマーの完全に適切な代替品ではない。
【0008】
したがって、良好なスコーチ安全性および低減されたヒステリシスを有する、ゴム組成物を含む有機ポリマーおよび有機ポリマー組成物、ならびにそれらのポリマーを調製する方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一態様によれば、有機ポリマーフラグメントと、C-Si共有結合を介して有機ポリマーフラグメントの主鎖に結合されている少なくとも1つのS-アルキルシリル炭化水素チオエート基または少なくとも1つのS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート基とを含む有機ポリマー、ならびにそれらの製造方法が提供される。
【0010】
一実施形態では、有機ポリマーフラグメントと、C-Si共有結合を介して有機ポリマーフラグメントの主鎖に結合している少なくとも1つのS-アルキルシリル炭化水素チオエート基または少なくとも1つのS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート基とを含む有機ポリマーは、S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよびS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーであり、そしてそれらの製造方法が提供され、ここで有機ポリマー主鎖は、C-C不飽和を含むモノマーのアニオン重合に由来し、そしてケイ素またはスズ原子はさらに2つのアルコキシ基、2つの炭化水素基、または1つのアルコキシ基および1つの炭化水素基に結合されている。
【0011】
一実施形態では、S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーは、一般式(I)を有し、
[RC(=O)SR-M(OR(R2-a-]-[R2-b (I)
ここで
各Mは独立してケイ素またはスズ原子であり;
各Rは、独立して、1から24個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり;
各Rは、独立して2から6個の炭素原子の二価のアルキル基であり;
各Rは、独立して、1から12個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基、または構造-R(OR(ORを有する一価の基であり、ここでRは、2から6個の炭素原子を有する二価のアルキル基であり、Rはエチレンであり、各Rは独立してプロピレンまたはブチレンであり、Rは、1から20個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアラルキル基または-(C=O)Rであり、そして下付き文字cおよびdは整数であり、ここでcは0から6であり、そしてdは0から6であり、但しc+dは1から10という条件であり;
各Rは独立してメチルまたはフェニルであり;
は、1から24個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり;
は、C-C単結合、C-C二重結合、またはC-C単結合およびC-C二重結合の組み合わせによって共有結合した炭素原子の主鎖を有する有機ポリマーフラグメントであり;および
下付き文字aおよびbは整数であり、ここでaは0、1、または2であり、そしてbは1または2である。
【0012】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーを調製するための方法は、C-C不飽和炭素原子をアニオン性開始剤と反応させて、第1のアニオン性「リビング」ポリマー中間体または第1の「シュード(疑似)リビング」ポリマー中間体を形成すること、第1のアニオン性リビングポリマー中間体または第1のシュードリビングポリマー中間体を、2-チア-1-シラシクロアルカン環または2-チア-1-スタンナシクロアルカン環を含む化合物と反応させることにより、第1のアニオン性リビングポリマー中間体または第1のシュードリビングポリマー中間体を終端させて、少なくとも1つのチオレート基を含む第2の中間体を形成すること、および少なくとも1つのチオレートを含む第2の中間体を、一般式(II)を有するアシル反応性基と反応させて、
C(=O)X (II)
ここでRは、1から24個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり、そしてXは、クロリド、ブロミド、ヨージド、または-SR10であり、ここでR10は、1から12個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり、反応生成物、S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマー、および塩を形成することを含む。塩は、粗反応生成物から取り出すことができる。
【0013】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端および/またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーを含む組成物は、補強材、硬化剤、可塑剤および添加剤を含む他の成分と組み合わせることによって形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここでの明細書および特許請求の範囲において、以下の用語および表現は、以下に示される意味を有するものとして理解されるべきである。
【0015】
単数形「a」、「an」、「the」には複数形が含まれる。
【0016】
実施例または他に示された場合を除き、明細書および特許請求の範囲に記載された材料の量、反応条件、持続時間、材料の定量化された特性などを表すすべての数字は、「約」によって修飾されていると理解される。
【0017】
本明細書に記載されているすべての方法は、別段の指示がない限り、または文脈によって明確に除外されていない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的な言語(例えば、「など」または「含む」)の使用は、単に本発明をよりよく照らすことを意図しており、それがその場合であることが明確に意図されていない限り、本発明の範囲を限定しない。
【0018】
明細書のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠であるとしてクレームされていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0019】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、「によって特徴付けられる(characterized by)」という用語、および同様の内容の用語は、包括的または開放的であり、追加の、記載されていない要素または方法のステップを除外しないものとして理解されるべきであり、さらにそのような用語は、「からなる(consisting of)」および「本質的にからなる(consistingessentially of)」というより限定的な用語を含むものとして理解されるべきである。
【0020】
組成パーセンテージは、特に明記しない限り、重量パーセントで示されている。
【0021】
文脈が明らかに他のことを示さない限り、特定の数値は少なくともその値を含み、そして数値の任意の範囲は、その範囲内の値のすべての下位範囲およびそのような範囲または下位範囲の様々な端点の任意の組み合わせを含むことが理解される。
【0022】
構造的、組成的および/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして明示的または黙示的に明細書に開示され、および/または特許請求の範囲に記載されている任意の化合物、材料または物質には、その群の個々の代表およびすべての組み合わせが含まれることがさらに理解されよう。
【0023】
「S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマー」という表現は、本明細書では、ケイ素原子を介して有機ポリマーに結合した1つまたは複数の末端および/またはペンダントチオエステル基を含む任意のポリマーに適用されると理解されるべきである。
【0024】
「S-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマー」という表現は、本明細書では、スズ原子を介して有機ポリマーに結合した1つまたは複数の末端および/またはペンダントチオエステル基を含む任意のポリマーに適用されると理解されるべきである。
【0025】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、「ゴム」と同義であると理解され、その逆もまた同様である。
【0026】
本明細書で使用される「100ゴムあたりの部」または「phr」という用語は、S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよびS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーの総重量の100重量部に基づく他の成分の重量部を意味すると理解されるべきである。
【0027】
本明細書で使用される場合、基に関する「一価」という用語は、その基が基ごとに1つの共有結合を形成できることを意味し、そして「二価」は、その基が基ごとに2つの共有結合を形成できることを意味する。本明細書で使用される場合、基に関する「多価」という用語は、その基が基ごとに2つ以上の共有結合を形成することができることを意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「炭化水素基」という用語は、炭素原子および水素原子からなる基であり、非環式炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基を含む。
【0029】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素、窒素、ケイ素、硫黄、リン、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される元素を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「非環式炭化水素基」という用語は、好ましくは1から約24個の炭素原子を含み、飽和または不飽和であり得る任意の直鎖または分岐炭化水素基を意味する。適切な一価の非環式炭化水素基には、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基が含まれる。非環式炭化水素基の代表的で非限定的な例は、メチル、エチル、sec-ブチル、tert-ブチル、オクチル、デシル、ドデシル、セチル、ステアリル、エテニル、プロペニル、およびブチニルである。
【0031】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、任意の飽和した直鎖または分岐炭化水素基を意味する。好ましい実施形態において、一価のアルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチルsec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、デシルおよびドデシルなどの、基あたり1から約24の炭素を含む直鎖または分岐アルキル基から選択される。「一価アルキル」基という用語は、例えば-CHCHCHのように、1つの開放原子価を有する任意の飽和炭化水素基を意味する。「二価アルキル」という用語は、例えば-CHCHCH-のように、2つの開放原子価を有する飽和した直鎖または分岐炭化水素基を指す。「多価アルキル」という用語は、例えば開放原子価の数が3である(-CHCH-のように、2つ以上の開放原子価を有する任意の飽和直鎖または分岐炭化水素基を意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、不飽和を含まない任意の脂環式炭化水素基を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、そして好ましくは2から約24個の炭素原子を含む任意の直鎖または分岐一価炭化水素基、例えば、エテニル、2-プロペニル、3-ブテニル、5-ヘキセニルおよび7-オクテニルを意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「脂環式炭化水素基」という用語は、1つまたは複数の炭化水素環を含み、好ましくは3から12個の炭素原子を含む基を意味し、これは、任意選択で、好ましくは1から約6個の炭素原子を含む1つまたは複数の一価または二価の非環式で1つまたは複数の環上で置換され得る。2以上の環を含む脂環式炭化水素基の場合、環は、2つの環が2つ以上の炭素原子を共有する縮合環、または共有結合または二価非環式基を介して互いに結合している環であり得る。適切な一価脂環式炭化水素基には、例えば、シクロヘキシルおよびシクロオクチルなどのシクロアルキル基、またはシクロヘキセニルなどのシクロアルケニル基が含まれる。適切な二価炭化水素基には、例えば、飽和または不飽和の二価単環式炭化水素基、例えば、1,4-シクロヘキシルが含まれ、ここで数字の1および4は、開放原子価がシクロヘキシル基のどこに位置するかを示す。二価脂環式炭化水素はまた、1,4-シクロヘキシレン基と称されることがあり得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、「芳香族炭化水素基」という用語は、1つまたは複数の芳香環を含む炭化水素基を意味し、これは任意選択にて、芳香環上で、好ましくは1から約6個の炭素原子を含む1つまたは複数の一価または二価の非環式基で置換され得る。2つ以上の環を含む芳香族炭化水素基の場合、環は、環が2つ以上の炭素原子を共有する縮合環、または共有結合または二価非環式基を介して互いに結合している環であり得る。適切な一価芳香族炭化水素基には、例えば、フェニル、トリル、ナフチルおよびアンスリル、ならびに2-フェニルエチルなどのアラルキル基が含まれる。
【0036】
本発明は、有機ポリマーフラグメントと、C-Si共有結合を介して有機ポリマーフラグメントの主鎖に結合されている少なくとも1つのS-アルキルシリル炭化水素チオエート基または少なくとも1つのS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート基とを含む有機ポリマーに関する。本発明の一実施形態では、S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーは、一般構造(I)を有し、
[RC(=O)SR-M(OR(R2-a-]-[R2-b (I)
ここで
各Mは、独立して、ケイ素またはスズ原子であり;
各Rは、独立して、1から24個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり;
各Rは、独立して、2から6個の炭素原子の二価のアルキル基であり;
各Rは、独立して、1から12個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基、または構造-R(OR(ORを有する一価の基であり、ここでRは、2から6個の炭素原子を有する二価のアルキル基であり、Rはエチレンであり、各Rは、独立してプロピレンまたはブチレンであり、Rは、1から20個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアラルキル基または-(C=O)Rであり、そして下付き文字cおよびdは整数であり、ここでcは0から6であり、そしてdは0から6であり、但しc+dは1から10であるという条件であり;
各Rは、独立してメチルまたはフェニルであり;
は、1から24個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり;
は、C-C単結合、C-C二重結合、またはC-C単結合およびC-C二重結合の組み合わせによって共有結合した炭素原子の主鎖を有する有機ポリマーフラグメントであり;そして
下付き文字aおよびbは整数であり、ここでaは0、1、または2であり、そしてbは1または2である。
【0037】
別の実施形態では、Gは、一般式(III)を有する有機ポリマーフラグメントであり、
【化1】

ここで
各々のR11、R12、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25およびR26は、独立して、1から6個の炭素原子を有する一価のアルキル基または水素であり;
各R14は、独立して水素または一価の1から24個の炭素原子のアルキル、3から24個の炭素原子のシクロアルキル、1から24個の炭素原子のアルケニル、5から24個の炭素原子のシクロアルケニル、7から24個の炭素原子のアラルキル、または6から25個の炭素原子のアリール基であり;
下付き文字e、f、およびgは整数であり、ここでeは0またはそれよりも大きく、fは0またはそれよりも大きく、そしてgは0またはそれよりも大きく、但しe+f+gは1またはそれよりも大きいという条件である。
【0038】
別の実施形態では、eは、好ましくは0から10,000、さらにより好ましくは0から5,000、さらにより好ましくは0から1,000、そしてまたさらにより好ましくは100から2,500であり;fは、より好ましくは0から10,000、さらにより好ましくは0から5,000、さらにより好ましくは0から1,000、そしてまたさらにより好ましくは100から2,500であり;そしてgは、より好ましくは0から10,000、さらにより好ましくは0から5,000、さらにより好ましくは0から1,000、そしてまたさらにより好ましくは100から2,500であり、但しe+f+gは1から10,000、より好ましくは100から7,500、さらにより好ましくは1,000から5,000、そしてまたさらにより好ましくは1,500から2,500であるという条件である。
【0039】
さらに別の実施形態では、各々のR11、R12、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25およびR26は、より好ましくは水素、メチルまたはエチル、さらにより好ましくは水素またはメチル、またさらにより好ましくは水素である。
【0040】
さらに別の実施形態では、R14は、水素、1から24個の炭素原子を有する一価の直鎖または分岐アルキル基、モノシクロアルキル、ビシクロアルキルまたはポリシクロアルキルを含む、3から24個の炭素原子を有する一価のシクロアルキル基、3から24個の炭素原子、より好ましくは4から16個の炭素原子、さらにより好ましくは6から10個の炭素原子を有するアルケニル基、5から24個の炭素原子、より好ましくは6から18個の炭素原子、さらにより好ましくは7から10個の炭素原子を有するシクロアルケニル、7から12個の炭素原子、より好ましくは8から10個の炭素原子のアラルキル、または6から12個の炭素原子、より好ましくは6から8個の炭素原子のアリールである。
【0041】
14の代表的で非限定的な例には、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ヘプタデシル、オクタデシル、2-メチルプロピル、3-メチルブチル、2-エチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロデシル、アダマンチル、ノルボルニル、フェニル、トリル、キシリル、2-フェニルエチル、2-メチルプロペニル、4-メチルヘキサ-4-エニル、ヘキサ-3-エニル、アダマンテニルおよびノルボルネニルが含まれる。
【0042】
さらに別の実施形態では、Rは、1から18個の炭素原子、より好ましくは2から14個の炭素原子、さらにより好ましくは5から9個の炭素原子の一価の直鎖アルキル基、3から18個の炭素原子、より好ましくは5から11個の炭素原子の一価の分岐鎖アルキル基、またはフェニルである。
【0043】
の代表的で非限定的な例は、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、ノニル、ユニデシル、オクタデシル、デク-3-エニル、ヘプタデク-5-エニル、ヘプタデク-5,7-ジエニル、ヘプタデク-5,7,9-トリエニル、2-メチルペンイル、2-メチルヘキシル、6-メチルヘプチル、2-フェニルメチル、シクロヘキシル、フェニルまたはトリルである。
【0044】
さらに別の実施形態では、Rは、1から6個の炭素原子の二価の直鎖アルキル基または3から6個の炭素原子の二価の分岐鎖アルキル基である。
【0045】
の代表的で非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、2-メチルプロピル、2,2-ジメチルブチルおよびヘキシルから選択される二価の基が含まれる。
【0046】
さらに別の実施形態では、Rは、1から4個の炭素原子の一価アルキル基または-R(OR(ORであり、ここでRは、2から4個の炭素原子を有する二価のアルキル基であり、Rはエチレンであり、Rはプロピレンであり、そしてRは、1から18個の炭素原子の一価の直鎖または分枝鎖アルキル基であり、より好ましくは、6から16の一価の基である。
【0047】
さらに別の実施形態では、Rはメチルである。
【0048】
さらに別の実施形態では、Rは二価のプロピルであり、Rはメチルであり、aは2であり、そしてbは2である。
【0049】
一実施形態では、Gは式(II)を有する有機フラグメントであり、ここでR15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、およびR26は水素であり、そしてeは0であり、そしてf:gのモル比は、0:100から100:0、より好ましくは約10:90から約90:10、さらにより好ましくは約25:75から約75:25である。
【0050】
さらに別の実施形態では、R11、R12、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26は水素であり、R14はフェニルであり、そしてe:gのモル比は1:99から60:40、より好ましくは約20:80から約50:50、さらにより好ましくは約35:65から約45:55である。
【0051】
さらに別の実施形態では、S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーは、一般式(IV)を有し、
C(=O)SCHCHCHSi(OCHCHSi(OCHCHCHCHCHSC(=O)R (IV)
ここでRは1から18個の炭素原子、より好ましくは5から11個の炭素原子を有する一価の直鎖アルキル基であり、Gは上記の定義のいずれかを有する。
【0052】
アニオン重合技術に従って作製されたS-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーまたはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーの数平均分子量(Mn)は、約2,000から約1,000,000ダルトン、より具体的には約50,000から約500,000ダルトン、さらにより好ましくは約75,000から約250,000ダルトン、またさらにより好ましくは約90,000から約150,000ダルトンである。
【0053】
数平均分子量は、高温ゲル浸透クロマトグラフィーによってポリオレフィンの分子量分布および分子量平均を決定するためのASTMD6474-12標準試験方法に従って決定される。
【0054】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーまたはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーは、オレフィン、ビニル芳香族化合物およびポリエンを含む、C-C不飽和を含む単一のモノマーまたはモノマーの混合物のアニオン重合から調製される。C-C不飽和を含むモノマーの混合物が使用される場合、重合は、マー(繰り返し単位)のランダム分布、またはマーのブロック分布、またはランダム分布とブロック分布の組み合わせを有するポリマー鎖をもたらすことがあり得る。
【0055】
モノマーの代表的で非限定的な例には、C-C12ジエン、特に共役ジエン、例えば、限定されるものではないが、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン;オレフィン、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-オクタデセン、ビニルノルボレンおよびビニルアダマンテン;および芳香族、具体的にはC-C20ビニル芳香族、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどが含まれる。1つまたは複数のポリエンと組み合わせて使用する場合、ペンダント芳香族基を有するマー単位は、一実施形態において、ポリマー鎖の約1から約50重量パーセント、より好ましくは約10から約45重量パーセント、さらにより好ましくは約20から約35重量パーセントを構成することができる。
【0056】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーまたはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーは、ポリエンを1,2-微細構造によってポリマー鎖に組み込むことができ、これは、重合に関与するC-C二重結合または1,4-微細構造の1つのみに起因し、2つの共役炭素-炭素二重結合が重合反応に関与している場合、新しい炭素-炭素二重結合が生成され、1,4位に組み込まれる。S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーまたはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーのポリマー鎖は、ポリエン由来のマーの総モル量のモルパーセントに基づいて、好ましくは約10から約80モルパーセント、より好ましくは約25から約65モルパーセント、さらにより好ましくは50モルパーセント以下のポリエンに由来するマーを含み、1,2-微細構造をもたらすことができる。特定の使用用途では、ポリイソプレンに基づき、ポリマーフラグメントに由来するものとして、1,2-微細構造の含有量はさらに低く、約7モルパーセント未満、またはさらに約1モルパーセント未満を含む。
【0057】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーまたはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーは、例えば、ブタジエンおよびポリイソプレンポリマーなどのホモポリマー、または例えばスチレン/ブタジエンコポリマーなどのコポリマーであり得る。
【0058】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーまたはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーは、好ましくは約-2から約-150、より好ましくは約2.5から約125、さらにより好ましくは、約10から約75のムーニー粘度(ML/100℃)を有し得る。ムーニー粘度は、ASTMD1646-17、ゴムの標準試験方法-粘度、応力緩和、および加硫前の特性(ムーニー粘度計)に従って測定できる。
【0059】
前述のタイプのポリマーは、乳化重合または溶液重合によって製造することができ、後者は、ランダム性、微細構造などのような特性に関してより優れた制御を提供する。所望のポリマーの性質に応じて、溶液重合の特定の条件は大幅に変化し得る。溶液重合は開始剤を含み得る。開始剤は、有機リチウム化合物または官能化開始剤であり得る。ポリマーを製造するための方法は、例えば、米国特許公開第2012/0232223A1号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
有機リチウム開始剤の代表的で非限定的な例には、単官能性リチウム塩、多官能性リチウム塩、および官能化開始剤が含まれる。
【0061】
単官能性リチウム塩には、n-ブチルリチウムまたはn-ヘキシルリチウムなどの、1から12個の炭素原子の炭化水素カルバニオンのリチウム塩が含まれる。
【0062】
1より多くのリビング端を備えたポリマーを形成することができる多官能性開始剤を使用することができる。多官能性開始剤には、1から24個の炭素原子を含む炭化水素カルバニオンの二価リチウム塩が含まれる。多官能性開始剤の代表的で非限定的な例には、1,4-ジリチオブタン、1,10-ジリチオデカン、1,20-ジリチオエイコサン、1,4-ジリチオベンゼン、1,4-ジリチオナフタレン、1,10-ジリチオアントラセンおよび1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタンが含まれる。
【0063】
有機リチウム開始剤に加えて、官能化開始剤も有用であり得る。これらはポリマー鎖に組み込まれるようになり、そのようにして鎖の開始端に官能基を提供する。そのような材料の例には、それぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,153,919号および米国特許公開第2012/0232223A1号に開示されているようなリチウム化アリールチオアセタール、有機リチウム化合物およびN含有有機化合物の反応生成物、例えば、それぞれがその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,153,159号および第5,567,815号ならびに米国特許公開第2012/0232223A1号に開示されているような、任意選択でジイソプロペニルベンゼンなどの化合物と前反応させた置換アルジミン、ケチミン、第二級アミンなどが含まれる。
【0064】
代表的で非限定的な例には、N-リチオ-ヘキサメチレンイミンなどのイミンのリチウム塩;トリブチルスズリチウムなどの1から12個の炭素原子のアルキル基を有するトリアルキルスズのリチウム塩;およびジメチルアミノリチウム、ジエチルアミノリチウム、ジプロピルアミノリチウムおよびジブチルアミノリチウムなどの、1から12個の炭素原子のアルキル基を有するジアルキルアミンのリチウム塩が含まれる。
【0065】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーまたはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーを調製する際に、反応は溶媒中で実施することができる。有用なアニオン重合溶媒には、様々なC-C12環状および非環状アルカン、ならびにそれらのアルキル化誘導体、特定の液体芳香族化合物、およびそれらの混合物が含まれる。
【0066】
溶液重合では、1,2-微細構造から生じるランダム化およびビニル含有量の両方を、重合成分の1つとしてコーディネーター、通常は極性化合物を含めることで増やすことができる。開始剤1当量あたり最大90当量以上のコーディネーターを使用することができ、その量は、所望のビニル含有量、使用される非ポリエンモノマーのレベル、反応温度、および使用される特定のコーディネーターの性質に依存する。コーディネーターとして有用な化合物には、非結合の電子対、特に酸素または窒素を有するヘテロ原子を含む有機化合物が含まれる。
【0067】
コーディネーターの代表的で非限定的な例には、ジエチルエーテル、モノ-およびオリゴ-アルキレングリコールのジアルキルエーテルなどのエーテル;クラウンエーテル;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルピペラジンおよびジアザビシクロオクタンなどの第三級アミン;テトラヒドロフラン;テトラヒドロフランオリゴマー;2,2-ビス(2’-テトラヒドロ-フリル)プロパン;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,429,091号に開示されているような、直鎖状および環状のオリゴマーオキソラニルアルカン;およびヘキサメチルホスホルアミドなどのホスホルアミドが含まれる。
【0068】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーまたはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーを調製するためのプロセスは、バッチ、半連続または連続プロセスで実施することができる。
【0069】
溶液アニオン重合は、典型的には、モノマーまたはモノマーと溶媒のブレンドを適切な反応容器に入れることによって始まり、続いてコーディネーター(使用される場合)および開始剤を添加し、これらはしばしば溶液またはブレンドの一部として添加される。あるいは、モノマーおよびコーディネーターを開始剤に加えることができる。手順は、通常、無水、嫌気性条件下で実行される。反応物は、最大約150℃、より好ましくは20℃から125℃の温度に加熱され、攪拌され得る。所望の変換度に達した後、熱源(使用される場合)を除去することができ、官能化および/またはクエンチングのために反応混合物を重合後容器に取り出される。この時点で、反応混合物は、その比較的高濃度のポリマーのために、一般に「ポリマーセメント」と呼ばれる。
【0070】
特定の最終用途の用途では、アニオン(リビング)重合では達成が困難または非効率的であり得る特性を持つポリマーを要する。例えば、いくつかの用途では、高いシス-1,4-結合含有量を有する共役ジエンポリマーが望ましいことがあり得る。中間有機ポリマーは、リビング重合で使用される開始剤とは対照的に、ポリエンおよび触媒を使用するプロセスによって調製することができ、そしてプロセスは、シュードリビング特性を示し得る。
【0071】
いくつかの触媒システムは優先的にシス-1,4-ポリジエンをもたらし、一方で他の触媒システムは優先的にトランス-1,4-ポリジエンを提供する。適切な触媒システムは、共役ジエンモノマーの重合に有用であることが知られているランタニド金属を使用することができる。好ましくは、ランタニド化合物を含む触媒システムを使用して、1つまたは複数のタイプの共役ジエンからシス-1,4-ポリジエンを提供することができる。好ましいランタニドベースの触媒組成物は、米国特許第6,699,813号および米国特許公開第2012/0232223A1号に開示されており、各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。「触媒組成物」という用語は、成分の単純な混合物、物理的または化学的吸引力によって引き起こされる様々な成分の複合体、成分の一部またはすべての化学反応生成物、または前述の組み合わせを包含することを意図している。
【0072】
例示的なランタニド触媒組成物には、(a)ランタニド化合物、アルキル化剤およびハロゲン含有化合物、ただしランタニド化合物またはアルキル化剤がハロゲン原子を含む場合、ハロゲン含有化合物の使用は任意である;(b)ランタニド化合物およびアルミノキサン;または(c)ランタニド化合物、アルキル化剤、およびそれらの非配位性アニオンまたは前駆体が含まれる。
【0073】
様々なランタニド化合物またはそれらの混合物を使用することができる。これらの化合物は、好ましくは炭化水素溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどを含む芳香族炭化水素;脂肪族炭化水素、例えば直鎖状および分枝状のC-C10アルカン、石油エーテル、灯油、石油スピリットなど;または脂環式炭化水素、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどに可溶である。炭化水素不溶性ランタニド化合物は、重合媒体に懸濁することができる。特定のランタニド化合物には、少なくとも1つのNd、La、またはSm原子を含むもの、またはジジミウム、モナザイト砂から得られる希土類元素の市販の混合物を含むものが含まれまる。ランタニド化合物中のランタニド原子は、酸化状態の数のいずれかにあり得るが、通常、+3酸化状態にあるランタニド原子を有する化合物が使用される。
【0074】
例示的なランタニド化合物には、ランタニドカルボキシレート、ランタニドオルガノホスフェート、ランタニドオルガノホスホネート、ランタニドオルガノホスフィネート、ランタニドキサンテート、ランタニドカルバメート、ランタニドジチオカルバメート、ランタニドβ-ジケトネート、ランタニドアルコキシド、ランタニドアリールオキシド、ランタニドハライド、ランタニドシュードハライド、ランタニドオキシハライドなどが含まれ、これらのタイプのランタニド化合物のそれぞれの多数の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,699,813号に見出すことができる。
【0075】
ランタニド化合物は、典型的には、1つ以上のアルキル化剤、例えば、ヒドロカルビル基を別の金属に移動させることができる有機金属化合物と組み合わせて使用される。通常、これらの薬剤は、第1、2、および3族の金属などの電気陽性金属の有機金属化合物である。
【0076】
例示的なアルキル化剤には、一般式(V)を有するものなどの有機アルミニウム化合物、
AlR27 3-n (V)
ここでnは1から3までの整数であり;各R27は独立して一価の有機基であり、これは、C原子を介してアルミニウム原子に接続された、窒素、酸素、ホウ素、ケイ素、硫黄、またはリンなどのヘテロ原子が含むことがあり得、そして各Xは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、またはアリールオキシド基;およびトリヒドロカルビルアルミニウム化合物を水と反応させることによって製造することができるオリゴマーの直鎖状または環状アルミノキサン、ならびに一般式(VI)を有するものなどの有機マグネシウム化合物が含まれ、
28 MgX2-m (VI)
ここでXは上記のように定義され、mは1または2であり、そしてR28はR27であり、ここで各一価の有機基は炭素原子を介してマグネシウム原子に接続されている。いくつかの触媒組成物は、1つまたは複数の不安定なハロゲン原子を有する化合物を含むことができる。
【0077】
好ましくは、ハロゲン含有化合物は、ランタニド化合物に関して上記のような炭化水素溶媒に可溶であるが、炭化水素不溶性化合物は、重合媒体に懸濁することができる。有用なハロゲン含有化合物には、元素ハロゲン、混合ハロゲン、ハロゲン化水素、有機ハロゲン化物、無機ハロゲン化物、金属ハロゲン化物、有機金属ハロゲン化物、および前述の任意の2つ以上の混合物が含まれる。
【0078】
他の触媒組成物は、非配位性アニオンまたは非配位性アニオン前駆体を含む。例示的な非配位性アニオンには、テトラアリールボレートアニオン、特にフッ素化テトラアリールボレートアニオンが含まれる。例示的な非配位性アニオン前駆体には、強電子吸引基を含むホウ素化合物が含まれる。
【0079】
上記のタイプの触媒組成物は、共役ジエンを重合して、広範囲の濃度および比率にわたる複数の炭素-炭素二重結合を有する立体特異的ポリマーにするための非常に高い触媒活性を有するが、最も望ましい特性を有するポリマーは、通常、比較的狭い範囲の濃度および成分の比率を使用するシステムから得られる。さらに、触媒成分は相互作用して活性触媒種を形成すると考えられており、したがって各成分の最適濃度は他の成分の濃度に依存し得る。モル比は、前述の成分に基づくさまざまな異なるシステムの例示であり;アルキル化剤対ランタニド化合物、ここでアルキル化剤/Ln比は、好ましくは約1:1から約200:1、より好ましくは約2:1から約100:1、さらにより好ましくは約5:1から約50:1であり;ハロゲン含有化合物対ランタニド化合物、ここでハロゲン原子/Ln比は、約1:2から約20:1、より好ましくは約1:1から約10:1、さらにより好ましくは約2:1から約6:1であり;アルミノキサン対ランタニド化合物、好ましくは、アルミノキサンのアルミニウム原子の当量対ランタニド化合物中のランタニド原子の当量、ここでAl/Lnのモル比は、約50:1から約50,000:1、より好ましくは約75:1から約30,000:1、さらにより好ましくは約100:1から約1,000:1であり;そして、非配位性アニオンまたは前駆体対ランタニド化合物、ここでモル比An/Lnは、好ましくは約1:2から約20:1、より好ましくは約3:4から約10:1、さらにより好ましくは約1:1から約6:1である。
【0080】
ランタニドベースの触媒で生成される有機ポリマー中間体の分子量は、使用される触媒の量および/または触媒システム内の助触媒濃度の量を調整することによって制御することができる。中間体は、広範囲の分子量を有するように製造することができる。一般に、触媒および助触媒の濃度を上げると、得られる中間体の分子量が減少するが、非常に低分子量の中間体は、非常に高い触媒濃度を要する。通常、これは、硫黄硬化速度の遅延などの悪影響を回避するために、ポリマーから触媒残留物を除去することを必要とする。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,699,813号は、ニッケル化合物が非常に効率的な分子量調節剤として使用できることを教示している。ランタニドベースの触媒組成物に1つまたは複数のニッケル含有化合物を含めることにより、触媒活性およびポリマー微細構造に重大な悪影響を与えることなく、得られる中間体の分子量を容易に調節することができる。
【0081】
様々なニッケル含有化合物またはそれらの混合物を使用することができる。ニッケル含有化合物は炭化水素溶媒に可溶であり得るが、炭化水素不溶性ニッケル含有化合物は重合媒体に懸濁して触媒活性種を形成することができる。
【0082】
ニッケル含有化合物中のニッケル原子は、0、+2、+3、および+4酸化状態を含む酸化状態の数のいずれかにあり得るが、Ni原子が+2酸化状態にある二価ニッケル化合物が一般的に好ましい。例示的なニッケル化合物には、ニッケルカルボキシレート、ニッケルオルガノホスフェート、ニッケルオルガノホスホネート、ニッケルオルガノホスフィネート、ニッケルキサンテート、ニッケルカルバメート、ニッケルジチオカルバメート、ニッケルβ-ジケトネート、ニッケルアルコキシド、ニッケルアリールオキシド、ニッケルハロゲン化物、ニッケルシュードハロゲン化物、ニッケルオキシハロゲン化物、有機ニッケル化合物、例としてニッケロセン、デカメチルニッケロセンなどの、少なくとも1つのC-Ni結合を含む化合物が含まれる。
【0083】
ニッケル含有化合物とランタニド化合物とのモル比(Ni/Ln)は、一般に、好ましくは約1:1000から約1:1、より好ましくは約1:200から約1:2、さらにより好ましくは約1:100から約1:5の範囲である。
【0084】
これらのタイプの触媒組成物は、in situ法、予備混合法、予備成形法、または二段階法を含む様々な方法を使用して形成することができる。in situ法は、触媒成分をモノマーまたはモノマーと溶媒を含む溶液に加えることを含む。追加は、段階的または同時の方法で行うことができる。後者の場合、アルキル化剤が最初に添加され、次にランタニド化合物、ニッケル含有化合物(使用される場合)、およびハロゲン含有化合物(使用される場合)または非配位性アニオンまたは非配位性アニオン前駆体が順番に添加されることが好ましい。予備混合法は、共役ジエンモノマーに導入される前に、一般に約-20℃から約80℃の温度で、重合システムの外側で成分を混合することを含み、または触媒成分は、少量の共役ジエンモノマーの存在下で、約-20℃から約80℃の温度で混合され、ここで共役ジエンモノマーの量は、ランタニド化合物1モルあたり、約1から約500モル、より好ましくは約5から約250モル、さらにより好ましくは約10から約100モルの範囲であり得、そしてここで得られた触媒組成物が、重合される共役ジエンモノマーの残りに添加される。二段階法は、共役ジエンモノマーの非存在下で、または少量の共役ジエンモノマーの存在下で、約-20℃から約80℃の温度で、アルキル化剤をランタニド化合物と組み合わせることを含む。次に、前述の混合物および残りの成分を、段階的または同時の方法で、重合される共役ジエンモノマーの残りの部分に入れる。ニッケル含有化合物を使用する場合は、どちらの段階にも含めることができる。前述の方法において、重合系の外で1つまたは複数の触媒成分の溶液を調製する場合、有機溶媒または担体は好ましくは使用される。有用な有機溶媒には、前述のものが含まれる。
【0085】
シス-1,4-微細構造炭素-炭素二重結合を含む中間体の生成は、触媒有効量の触媒組成物の存在下で共役ジエンモノマーを重合することによって達成される。重合量に使用される総触媒濃度は、成分の純度、重合温度、所望の重合速度および変換、所望の分子量、および他の多くの要因などの様々な要因の相互作用に依存し、したがって、特定の総触媒濃度は、触媒有効量のそれぞれの触媒成分を使用すべきであると言うことを除いて、明確に示すことはできない。使用されるランタニド化合物の量は、一般に、共役ジエンモノマー100グラムあたり、好ましくは約0.01ミリモルから約2ミリモル、より好ましくは約0.02ミリモルから約1ミリモル、さらにより好ましくは約0.05ミリモルから約0.5ミリモルの範囲である。他のすべての成分は、一般的に、ランタニド化合物の量に基づく量で添加される。
【0086】
他のすべての成分は、一般的に、ランタニド化合物の量に基づく量で添加される。触媒成分は、好ましくは、有機液体内に可溶化または懸濁されている。重合の開始時に重合媒体中に存在するモノマーの濃度は、一般に、重合媒体の重量に基づいて、約3から約80重量パーセント、より好ましくは約5から約50重量パーセント、さらにより好ましくは約10から約30重量パーセントの範囲である。重合はまた、凝縮液相または気相のいずれかで行われる塊状重合によって実施することができる。
【0087】
重合は、好ましくは、窒素、アルゴンまたはヘリウムなどの不活性保護ガスによって提供される嫌気性条件下で中程度から激しい攪拌で行われる。重合温度は大きく変動し得るが、典型的には約20℃から約90℃の温度が使用される。反応熱は、外部冷却またはモノマーまたは溶媒の蒸発による冷却によって除去することができる。使用される重合圧力は大きく変動し得るが、典型的には約0.1から約1MPaの圧力が使用される。
【0088】
1,3-ブタジエンが配位触媒系で重合されるとき、シス-1,4-ポリブタジエンは、一般に、ポリスチレン標準を使用してGPCによって決定される場合、約2,000から約200,000ダルトン、より好ましくは約25,000から約150,000ダルトン、さらにより好ましくは約50,000ダルトンから約120,000ダルトンの数平均分子量を有する。ポリマーの多分散度は、一般に、約1.5から約5.0の範囲であり、より典型的には、約2.0から約4.0の範囲である。中間体は、有利には、少なくとも約60モルパーセント、より好ましくは少なくとも約75%、さらにより好ましくは少なくとも約90モルパーセント、またさらにより好ましくは少なくとも約95モルパーセントのシス-1,4-微細構造(結合)含有量、および約7モルパーセント未満、より好ましくは約5モルパーセント未満、さらにより好ましくは約2モルパーセント未満、またさらには約1モルパーセント未満の1,2-微細構造(結合)含有量を有することができる。
【0089】
記載された重合プロセスの両方は、有利には、反応性(リビングまたはシュードリビング)末端を有するポリマー鎖をもたらし、これは、官能化ポリマーを提供するために1つまたは複数の官能化剤とさらに反応することができる。官能化は、ゴムコンパウンド中のポリマーと粒子状充填剤の間の相互作用を強化し、それによって、得られる加硫物の機械的および動的特性を改善することができる。
【0090】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーまたはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーは、末端活性ポリマーを、2-チア-1-シラシクロアルカン環または2-チア-1-スタンナシクロアルカン環を含む化合物と反応させて少なくとも1つのチオレート基を含む第2の中間体を形成し、そして少なくとも1つのチオレートを含む第2の中間体をアシル反応性化合物と反応させることによって提供することができる。2-チア-1-シラシクロアルカン環または2-チア-1-スタンナシクロアルカンは、その環構造中に、少なくとも1つのS原子および少なくとも1つのSiまたはSn原子を含む。環構造は、2から6個の炭素原子、好ましくは3から5個の炭素原子、最も好ましくは3個の炭素原子、硫黄原子およびケイ素原子またはスズ原子を有する二価の直鎖状アルキル基を含み得る。2-チア-1-シラシクロアルカン環または2-チア-1-スタンナシクロアルカン環を含む化合物は、式(VII)を有することができ、
【化2】

ここで
各Mは独立してケイ素またはスズ原子であり;
各Rは、独立して2から6個の炭素原子の二価のアルキル基であり;
各Rは、独立して、1から12個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基、または構造-R(OR(ORを有する一価の基であり、ここでRは、2から6個の炭素原子を有する二価のアルキル基であり、Rはエチレンであり、各Rは独立してプロピレンまたはブチレンであり、Rは、1から20個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基、または-(C=O)Rであり、そして下付き文字cおよびdは整数であり、ここでcは0から6であり、dは0から6であり、但しc+dは1から10であるという条件であり;
各Rは独立してメチルまたはフェニルであり;そして
下付き文字aは整数であり、ここでaは0、1、または2である。
【0091】
式(VIII)の化合物は、一般式(VIII)を有するメルカプト官能性アルキルアルコキシシランから調製することができ
HSRM(OR 3-i
ここで
各Mは独立してケイ素またはスズ原子であり;
各Rは、独立して2から6個の炭素原子の二価のアルキル基であり;
各Rは、独立して、1から12個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基、または構造-R(OR(ORを有する一価の基であり、ここでRは、2から6個の炭素原子を有する二価のアルキル基であり、Rはエチレンであり、各Rは独立してプロピレンまたはブチレンであり、Rは、1から20個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基、または-(C=O)Rであり、そして下付き文字cおよびdは整数であり、ここでcは0から6であり、そしてdは0から6であり、ただしc+dは1から10という条件であり;
各Rは独立してメチルまたはフェニルであり;そして
下付き文字iは整数であり、ここでiは1、2、または3である。
【0092】
式(VII)の化合物は、強塩基の存在下で、15℃から230℃の温度および1ミリバールから2バールの圧力で、より好ましくは50℃から200℃の温度および1ミリバールから500ミリバールの圧力で、メルカプト官能性アルキルアルコキシシランを反応させることによって調製することができる。
【0093】
強塩基は、好ましくは、一般式(IX)を有するアルカリ金属アルコキシド塩であり、
OR (IX)
ここでRは、1から12個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基、または構造-R(OR(ORを有する一価の基であり、ここでRは2から6個の炭素原子を有する二価のアルキル基であり、Rはエチレンであり、各Rは独立してプロピレンまたはブチレンであり、Rは、1から20個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基、または-(C=O)Rであり、そして下付き文字cおよびdは整数であり、ここでcは0から6であり、dは0から6であり、但しc+dは1から10という条件であり;Mはリチウム、ナトリウム、またはカリウムである。
【0094】
リチウム、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属および水素化ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物を含む、他の強塩基も使用することができる。
【0095】
S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーを調製するための1つの方法は、C-C不飽和炭素原子をアニオン開始剤と反応させて第1のアニオンリビングまたはシュードリビングポリマー中間体を形成すること、第1のアニオンリビングポリマー中間体またはシュードリビングポリマー中間体を2-チア-1-シラシクロアルカン環または2-チア-1-スタンナシクロアルカン環を含む化合物と反応させることにより、リビングアニオンまたはシュードリビングポリマーを終端させて少なくとも1つのチオレート基を含む第2の中間体を形成することを含む。反応は、約-20℃から約125℃、より好ましくは約20℃から約95℃、さらにより好ましくは約40℃から約75℃の温度および約1ミリバールから約2バール、より好ましくは約100ミリバールから約1.1バール、さらにより好ましくは約500ミリバールから1バールの圧力で実施することができる。反応は、溶媒の存在下で実施することができる。
【0096】
次に、少なくとも1つのチオレート基を含む第2の中間体を、一般式(II)を有するアシル反応性基と反応させることができる。
C(=O)X (II)
【0097】
ここでRは、1から24個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり、そしてXは、クロリド、ブロミド、ヨージド、または-SR10であり、ここでR10は、1から12個の炭素原子を有する一価のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり、生成物、S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマー、および塩を形成する。塩は、粗反応生成物から除去することができる。反応は、約-20℃から約125℃、より好ましくは約20℃から約95℃、さらにより好ましくは約40℃から約75℃の温度および約1ミリバールから約2バール、より好ましくは約100ミリバールから約1.1バール、さらにより好ましくは約500ミリバールから1バールの圧力で実施することができる。反応は、溶媒の存在下で実施することができる。
【0098】
粗S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーは、任意選択で、活性炭などの色吸収粒子での処理または濾過によってさらに精製することができる。
【0099】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのS-アルキルシリル炭化水素チオエート末端またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよび少なくとも1つの他の成分を含む組成物を含む。組成物の少なくとも1つの追加の成分は、硫黄化合物、活性剤、遅延剤および促進剤、油、可塑剤、粘着付与樹脂、シリカ、他の充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、酸化防止剤およびオゾン化防止剤などの加工添加剤、解膠剤、補強材、例えばカーボンブラックなどを含み得る。そのような添加剤は、使用目的および使用のために選択された硫黄加硫性材料に基づいて選択することができ、そのような選択は、当業者に知られているそのような添加剤の必要量と同様に、当業者の知識の範囲内である。
【0100】
珪質充填剤、カーボンブラックなどを含む粒子状充填剤を本発明の組成物に添加することもできる。本明細書で有用な充填材料には、シリカ(発熱性および/または沈殿物)、二酸化チタン、アルミノシリケートおよびアルミナ、粘土およびタルク、カーボンブラックなどの金属酸化物が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
粒子状の沈降シリカもまた、特にシリカがシランと組み合わせて使用される場合、そのような目的のために時として使用される。いくつかの場合では、シリカとカーボンブラックの組み合わせが、タイヤのトレッドを含むさまざまなゴム製品の補強充填剤ために使用される。アルミナは、単独でも、シリカと組み合わせて使用することもできる。アルミナという用語は、本明細書では酸化アルミニウムまたはAlとして説明することができる。充填剤は、水和または無水の形態であり得る。
【0102】
組成物は、適度に高い弾性率および高い引裂き抵抗に寄与するのに十分な量の充填剤を含むべきである。本発明の一実施形態では、充填剤の合計重量は、ゴム100部あたり約5から約120部(phr)と低くてもよい。別の実施形態では、充填剤の合計重量は約25から約85phrであり、少なくとも1つの沈降シリカを充填剤として利用することができる。好ましいシリカは、窒素ガスを使用して測定した場合、約40から約600m/gの範囲のBET表面積を有することを特徴とし得る。本発明の別の実施形態では、シリカは、約50から約300m/gの範囲のBET表面積を有する。表面積を測定するBET法は、the Journal of the American Chemical Society, Volume 60, page 304(1930)に記載されている。シリカはまた、典型的には、約100から約350m/g、より通常は約150から約300m/gの範囲のフタル酸ジブチル(DBP)吸収値を有することによって特徴付けられ得る。さらに、シリカ、ならびに前述のアルミナおよびアルミノシリケートは、約100から約220m/gの範囲のCTAB表面積を有すると予想され得る。CTAB表面積は、pHが約9の臭化セチルトリメチルアンモニウムによって評価される外部表面積である。この方法は、ASTMD 3849に記載されている。
【0103】
水銀気孔率表面積は、水銀気孔率測定によって決定される比表面積である。この方法の使用では、揮発性物質を除去するための熱処理後に水銀がサンプルの細孔に浸透する。セットアップ条件は、約100mgのサンプルを使用するものとして適切に説明でき、約105℃および周囲大気圧、周囲圧力から約2000バールの圧力測定範囲で約2時間の間に揮発性物質を除去する。このような評価は、Winslow, Shapiro in ASTM bulletin, p.39 (1959)に記載されている方法、またはDIN66133に従って実行できる。このような評価には、CARLO-ERBA Porosimeter2000を使用できる。シリカの平均水銀気孔率比表面積は、約100から約300m/gの範囲であるべきである。
【0104】
一実施形態では、このような水銀多孔度評価によるシリカ、アルミナおよびアルミノシリケートの適切な細孔径分布は、本明細書では、その細孔の5パーセント以下が約10nm未満の直径を有し、その細孔の約60から90パーセントが約10から約100nmの直径を有し、その細孔の約10から約30パーセントが約100から約1,000nmの直径を有し、そしてその細孔の約5から約20パーセントが約1,000nmより大きい直径を有するようなものであると考えられる。
【0105】
第2の実施形態では、シリカは、例えば、電子顕微鏡によって決定されるように、約10から約50nmの範囲の平均極限粒子サイズを有するように選択することができ、しかしながらシリカ粒子はサイズがより小さいか、あるいはより大きいことがあり得る。本発明での使用については、様々な市販のシリカ、例えば、HI-SIL 210、243などの名称のHI-SIL商標のPPG Industries製のシリカ;例えば、ZEOSIL 1165MPの名称のRhone-Poulencから入手可能なシリカ;たとえば、VN2およびVN3などの名称のDegussaから入手可能なシリカ;および例えば、HUBERSIL7 8745の名称のHuberから入手可能なシリカを検討することができる。
【0106】
本発明のさらに別の実施形態では、組成物は、カーボンブラック強化顔料と組み合わせて、シリカ、アルミナおよび/またはアルミノシリケートなどの珪質充填剤を利用することができる。組成物は、珪質充填剤の約15から約95重量パーセント、および約5から約85重量パーセントのカーボンブラックの充填剤混合物を含み得、ここでカーボンブラックは、約80から約150の範囲のCTAB値を有する。より典型的には、一実施形態では少なくとも約3/1、別の実施形態では少なくとも約10/1の珪質充填剤対カーボンブラックの重量比を使用することが望ましい。したがって重量比は、珪質充填剤対カーボンブラックについて、約3/1から約30/1の範囲であり得る。
【0107】
本発明の別の実施形態では、充填剤は、約60から約95重量パーセントの前記シリカ、アルミナおよび/またはアルミノシリケート、および対応する、約40から約5重量パーセントのカーボンブラックから構成することができる。珪質充填剤およびカーボンブラックは、組成物の製造において事前に混合または一緒に混合することができる。
【0108】
本発明のさらに別の実施形態では、組成物は、S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよび/またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーへの充填剤の配合前、配合中、または配合後に、1つまたは複数のシランカップリング剤を1つまたは複数のS-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーまたは1つまたは複数のS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーと混合することによって調製される。
【0109】
カップリング剤は、一般式(X)を有することができ、
A-T-Z (X)
ここでAは、シリカ充填剤の表面上の基(例えば、表面シラノール基)と物理的および/または化学的に結合することができる官能基を表し;Tは炭化水素基の結合を表し;そしてZは、(例えば、硫黄含有結合を介して)エラストマーと結合することができる官能基を表す。そのようなカップリング剤には、オルガノシラン、特に、米国特許3,873,489;3,978,103;3,997,581;4,002,594;5,580,919;5,583,245;5,663,396;5,684,171;5,684,172;5,696,197および6,414,061(これらの特許はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているような、多硫化アルコキシシラン、および上記のZおよびA官能基を有するポリオルガノシロキサンが含まれる。例示的なカップリング剤には、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(トリ-エトキシシリル)プロピル]テトラスルフィドおよびS-(3-トリエトキシシリルプロピル)チオオクタノエートが含まれる。
【0110】
得られる組み合わせに存在するシランカップリング剤の総量は、有機ポリマー100重量部あたり約0.05から約25重量部(phr)、別の実施形態では、約1から約10phrであり得る。
【0111】
さらに別の実施形態では、充填剤は、約5から約100phrの範囲の量で使用することができ、また別の実施形態では、充填剤は、約25から約80phrの範囲の量で使用することができる。
【0112】
実際には、組成物は、典型的には、ゴムと様々な成分を順次段階的に熱機械的に混合し、続いて配合ゴムを成形および硬化して加硫製品を形成することによって調製される。まず、S-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよび/またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーと、典型的には硫黄および硫黄加硫促進剤(総称して硬化剤)を除く様々な成分との前述の混合について、ゴムとさまざまなゴム配合成分は、通常、適切なミキサーで少なくとも1つ、多くの場合(シリカ充填低転がり抵抗タイヤの場合)2つ以上の予備熱機械混合段階で配合される。このような予備混合は、非生産的混合または非生産的混合のステップまたは段階と称される。このような予備混合は、通常、約140℃から約200℃、いくつかの組成物については、約150℃から約180℃の温度で行われる。
【0113】
このような予備混合段階に続いて、生産的混合段階と呼ばれることもある最終混合段階で、硬化剤、および場合によっては1つまたは複数の追加の成分が、ゴムコンパウンドまたは組成物と、時としてスコーチングと称される硫黄硬化性組成物の早期硬化を防止または遅延させるために典型的には約50℃から約130℃の低温で混合される。ゴムコンパウンドとも称されるこの組成物は、典型的には、プロセス中間ミル混合後またはプロセス中間ミル混合中に、前述の様々な混合ステップの間で、例えば、約50℃以下の温度に冷却することができる。組成物を成形および硬化することが望まれる場合、組成物は、好ましくは少なくとも約130℃および最大約200℃の温度で適切な型に入れることができ、これは通常、例えば硫化物または二硫化物、三硫化物、四硫化物または多硫化物官能基を含む化合物などのS-S結合含有化合物による組成物の加硫を引き起こす。
【0114】
熱機械的混合とは、混合によって組成物の温度tが上昇する現象を示す。ゴムミキサーの高せん断条件、高剪断ミキサーにおける組成物、またはS-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよび/またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよび他の成分の混合の結果として生じる剪断力および関連する摩擦において、温度は自動的に上昇する。混合および硬化プロセスのさまざまな段階で、いくつかの化学反応が生じ得る。
【0115】
最初の反応は比較的速い反応であり得、そして本明細書では、充填剤とシランカップリング剤との間で起こると考えられる。そのような反応は、例えば、約120℃などの比較的低温で起こり得る。第2の反応は、本明細書では、シランカップリング剤とS-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよび/またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーとの間で、より高い温度で起こる反応である考えられ得る。第2の反応は、例えば、約140℃を超えて生じ得る。
【0116】
硫黄は、例えば、Sなどであるがこれに限定されない元素硫黄の形態で使用することができる。硫黄供与体は、本明細書では、約140℃から約190℃の範囲の温度で遊離または元素硫黄を遊離する硫黄含有化合物と考えられる。そのような硫黄供与体は、例えば、限定されないが、ポリスルフィド加硫促進剤およびそのポリスルフィド架橋に少なくとも2つの接続硫黄原子を有するオルガノシランポリスルフィドであり得る。
【0117】
本発明の一実施形態では、組成物は、約100重量部の少なくとも1つのS-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよび/またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーと、総重量100重量部のS-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよびS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーあたり約5から120重量部、好ましくは、約25から80重量部の少なくとも1つの粒子状充填剤と、総重量100重量部のS-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよびS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーあたり最大約5重量部の硬化剤と、総重量100部のS-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよびS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマーあたり約0.05から約25部のシランカップリング剤とを含むことができる。
【0118】
本発明の別の実施形態では、充填剤は、充填剤の総重量に基づいて約1から約85重量パーセントのカーボンブラックと、充填剤の総重量に基づいて0から約20重量部の少なくとも1つのシランカップリング剤を含む。
【0119】
さらに別の実施形態では、組成物は、最初にS-アルキルシリル炭化水素チオエート末端有機ポリマーおよび/またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマー、充填剤およびシランカップリング剤を、約140℃から約200℃の温度までの第1の熱機械的混合ステップで約2から約20分混合することによって調製される。次に、任意選択で、硬化剤を別の熱機械的混合ステップで約50℃の温度で加え、そして約1から約30分間混合する。次に、温度を再び約130℃から約200℃の温度に加熱し、そして硬化は約5から約60分で達成される。
【0120】
本発明の別の実施形態では、プロセスはまた、タイヤ、振動パッド、または他の工業製品または消費財のアセンブリを調製する追加のステップを含み得る。
【0121】
加硫とも呼ばれる硬化は、追加の硫黄加硫剤の存在下で実施することができる。適切な硫黄加硫剤の例には、例えば、元素硫黄(遊離硫黄)または硫黄供与性加硫剤、例えば、最終生産的ゴム組成物混合ステップで従来から添加されるアミノジスルフィド、高分子ポリスルフィドまたは硫黄オレフィン付加物が含まれる。当技術分野で一般的である硫黄加硫剤は、約0.4から約3phrの範囲の量で、または場合によっては最大約8phrの範囲、一実施形態では約1.5から約2.5phrおよびその間のすべての下位範囲、別の実施形態ではそれらの間の約2から約2.5phrおよびその間のすべての下位範囲の量で、生産的混合段階で使用または添加される。
【0122】
加硫促進剤、すなわち追加の硫黄供与体をここで使用することができる。以下の例、ベンゾチアゾール、アルキルチウラムジスルフィド、グアニジン誘導体およびチオカルバメートを含み得ることが理解される。そのような促進剤の代表的なものは、限定されるものではないが、メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、ベンゾチアゾールジスルフィド、ジフェニルグアニジン、亜鉛ジチオカルバメート、アルキルフェノールジスルフィド、亜鉛ブチルキサンテート、N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレンベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド、N,N-ジフェニルチオウレア、ジチオカルバミルスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピルベンゾチオゾール-2-スルフェンアミド、亜鉛2-メルカプトトルイミダゾール、ジチオビス(N-メチルピペラジン)、ジチオビス(N-ベータ-ヒドロキシエチルピペラジン)およびジチオビス(ジベンジルアミン)が含まれる。他の追加の硫黄供与体は、例えば、チウラムおよびモルホリン誘導体であり得る。そのような供与体の代表は、例えば、これらに限定されないが、ジモルホリンジスルフィド、ジモルホリンテトラスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンゾチアジル-2,N-ジチオモルホリド、チオプラスト、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、およびジスルフィドカプロラクタムが含まれる。
【0123】
促進剤を使用して、加硫に必要な時間および/または温度を制御し、加硫物の特性を改善することができる。一実施形態では、単一の促進剤システム、すなわち一次促進剤を使用することができる。一次促進剤は、一実施形態では約0.5から約4およびそれらの間のすべての下位範囲の範囲、そして別の実施形態では約0.8から約1.5phrおよびそれらの間のすべての下位範囲の総量で使用することができる。加硫物の特性を活性化および改善するために、一次促進剤と二次促進剤の組み合わせを任意選択で使用することができ、ここで二次促進剤を少量(約0.05から約3phrおよびそれらの間のすべての下位範囲)で使用する。遅延作用促進剤も使用できる。加硫遅延剤も使用されることがあり得る。適切な種類の促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオウレア、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびキサンテートである。一実施形態では、一次促進剤はスルフェンアミドである。二次促進剤が使用される場合、二次促進剤は、グアニジン、ジチオカルバメート、またはチウラム化合物であり得る。
【0124】
粘着付与樹脂の典型的な量は、使用される場合、約0.5から約10phrおよびその間のすべての下位範囲、通常は約1から約5phrおよびその間のすべての下位範囲を含む。加工助剤の典型的な量は、約1から約50phrおよびその間のすべての下位範囲を含む。そのような加工助剤は、例えば、芳香族、ナフテン、および/またはパラフィン系の加工油を含むことができる。抗酸化剤の典型的な量は、約1から約5phrである。代表的な抗酸化剤は、例えば、ジフェニル-p-フェニレンジアミンおよび他のもの、例えば、the Vanderbilt Rubber Handbook (1978), pages 344-346に開示されるものであり得る。オゾン化防止剤の典型的な量は、約1から約5phrおよびその間のすべての下位範囲を含む。使用される場合、ステアリン酸を含むことができる脂肪酸の典型的な量は、約0.5から約3phrおよびその間のすべての下位範囲を含む。酸化亜鉛の典型的な量は、約2から約5phrを含む。典型的な量のワックスは、約1から約5phrおよびその間のすべての下位範囲を含む。多くの場合、マイクロクリスタリンワックスが使用される。解膠剤の典型的な量は、約0.1から約1phr、およびそれらの間のすべての下位範囲を含む。典型的な解膠剤は、例えば、ペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドであり得る。
【0125】
本発明の組成物は、様々な目的に使用することができる。例えば、さまざまなタイヤコンパウンド、振動減衰パッド、クッションパッド、衝撃吸収パッド、ガスケット、その他の商品のウェザーストリッピング、靴底およびその他の商品に使用できる。本発明の一実施形態では、本明細書に記載のゴム組成物は、タイヤトレッドに特に有用であるが、タイヤの他のすべての部分にも使用することができる。タイヤは、既知であり、そのような技術に熟練している人には容易に明らかになるであろう様々な方法によって、製造、形成、成形、および硬化することができる。
【0126】
本発明は、他に示されない限り、部およびパーセンテージが重量による以下の例を参照することによってよりよく理解することができる。例は例示のためのものであり、限定として解釈されるべきではない。
【実施例
【0127】
以下の材料は、以下の例において使用され、および/または本発明によるS-アルキルシリル炭化水素チオエート末端および/またはS-アルキルスタンニル炭化水素チオエート末端有機ポリマー組成物に含めるのに非常に適している。
【0128】
例1
S-(4,4-ジエトキシ-4-シラ-デシル)チオオクタノエートの調製
S-(4,4-ジエトキシ-4-シラ-デシル)チオオクタノエートは、モデルシステムでの反応ステップを説明するために調製された。攪拌子、加熱マントル、温度プローブ、コンデンサー、窒素入口を備えた100mLの丸底フラスコに、n-ヘキシルリチウム(5mLまたはヘキサン中の2.3M溶液)とヘキサン(10mL)を入れた。溶液を50℃に加熱し、次に1,1-ジエトキシ-2-チア-1-シラ-シクロペンタン(2.23グラム)を滴下して加えた。反応混合物は約64℃の温度まで発熱する。温度の上昇が止まった後、オクタノイルクロリド(1.91グラム)を、n-ヘキシルリチウムと1,1-ジエトキシ-2-チア-1-シラ-シクロペンタン混合物との中間反応生成物に加えた。得られた反応混合物のGC/MS分析により、S-(4,4-ジエトキシ-4-シラ-デシル)チオオクタノエートの存在が確認された。
【0129】
例2
スチレン-ブタジエンのアルファ-ブチル,オメガ-[S-(3,3-ジエトキシ-3-シラプロピル)チオオクタノエート]-末端コポリマーの調製
以下の例では、ガラス容器を乾燥させ、抽出したセプタムライナーで密封し、そして陽Nパージ下で穴あきクラウンキャップを使用する。ブタジエン溶液(ヘキサン中21.9%)、スチレン溶液(ヘキサン中33%)、ヘキサン、n-ブチルリチウム(ヘキサン中1.60M)、2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)-プロパン(ヘキサン中1.60M溶液、CaHにて保存)、およびヘキサン中ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)溶液が使用される。
【0130】
N-(n-ブチル)-アザ-2,2-ジメトキシシラシクロペンタンおよび2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタンを含む試薬は、さらに精製することなく使用される。
【0131】
攪拌機を備えたNパージされた反応器に、1.59キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン溶液、および2.49キログラムのブタジエン溶液を入れる。n-ブチルリチウム溶液(3.30mL)を反応器に加え、これに2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン溶液(1.1mL)が続く。反応器ジャケットは50℃に加熱され、そして反応は発熱反応を起こす。反応混合物を約1時間撹拌する。最初の中間ポリマーが得られる。
【0132】
第1の中間体を含む反応器に、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン(ヘキサン中の1.0M溶液5.3mL)を加え、50℃で約30分間攪拌して、第2の中間体を形成する。
【0133】
第2の中間体を含む反応器に、オクタノイルクロリド(0.9グラム)を加え、1時間撹拌する。塩化リチウムを粗生成物から除去して、スチレン-ブタジエンのアルファ-ブチル,オメガ-[S-(3,3-ジエトキシ-3-シラプロピル)チオオクタノエート]末端コポリマーを提供する。
【0134】
本発明は特定の実施形態を参照して説明されてきたが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、均等物をその要素に置き換えることができることを理解することになる。さらに、特定の状況または材料を、その本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の教示に適合させるために修正を加えることができる。したがって、本発明は、本明細書に開示される特定の実施形態に限定されないが、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。

【国際調査報告】