(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(54)【発明の名称】微生物の迅速な識別装置および方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20220711BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20220711BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20220711BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20220711BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220711BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20220711BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220711BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20220711BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12Q1/04
C12Q1/68
C12Q1/34
G01N21/64 Z
G01N33/49 Z
G01N33/53 M
G01N35/00 D
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568746
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(85)【翻訳文提出日】2022-01-05
(86)【国際出願番号】 US2020034047
(87)【国際公開番号】W WO2020237076
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521502872
【氏名又は名称】シトロジーン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088029
【氏名又は名称】保科 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】ホースエイニ,エス.,アッバース
(72)【発明者】
【氏名】トルク,アミア
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
2G058
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043BA17
2G043CA04
2G043DA05
2G043EA01
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4B063QX02
(57)【要約】
【課題】サンプリングデバイス内の微生物を迅速に識別するための装置および方法を提供する。
【解決手段】
サンプリングデバイスには複数の反応室があり、それらの各反応室に、微生物と反応する異なる反応剤がある。反応剤は、微生物との反応により、その反応室に微生物が存在することを示す。検出器によって、複数の反応室のそれぞれを検出し、その反応室に微生物が存在するかを検出する。この発明は、CRISPA CAS12および/またはCAS13の方法を自動化する。この発明は、CRISPA CAS12および/またはCAS13タンパク質を用いることにより、DNAあるいはRNAのセグメントを検出するための一般的なプラットフォームの技術である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリングデバイス内の微生物の迅速な識別のための装置であって、前記サンプリングデバイスは、複数の反応室をもち、各反応室には異なる反応剤があり、その反応剤は前記微生物と反応し、前記反応室内に微生物が存在することを示すためのものである、識別のための装置において、
前記反応室は、次の各構成を備える、識別のための装置。
・前記サンプリングデバイスを保持するグラバー
・前記グラバーに連結され、前記サンプリングデバイスを平面に動かす作動ステージ
・複数の前記反応室のそれぞれを検出し、前記反応室内に微生物が存在するかを検出する検出器
【請求項2】
前記サンプリングデバイスが、次の各構成を備える、請求項1に記載の微生物の迅速な識別のための装置。
・前記サンプルを受け入れ、そのサンプルの微生物を含む部分を分離するメインレザーバ
・前記サンプルを入れる前記メインレザーバからそのサンプルの微生物を含む部分を受け取る採集レザーバ
・それぞれが異なる反応剤をもつ複数の反応室
・前記サンプルの微生物を含む部分を前記複数の各反応室に移す流路であり、前記微生物と反応させ、その反応室に微生物が存在するかについて知るための、毛管マイクロ流路
【請求項3】
前記マイクロ流体サンプリングデバイスは、中央孔のある回転ディスクであり、そして、前記グラバーがその中央孔にかみ合い、前記回転ディスクを保持する構成の、請求項1に記載の微生物の迅速な識別のための装置。
【請求項4】
前記マイクロ流体サンプリングデバイスは、中央孔のある回転ディスクであり、そして、前記グラバーがその中央孔にかみ合い、前記回転ディスクを保持する構成であり、さらに、前記作動ステージは、回転ディスクを径方向に動かすスライダーと、前記回転ディスクを回転するモーターとを備える、請求項1に記載の微生物の迅速な識別のための装置。
【請求項5】
前記作動ステージは、前記マイクロ流体サンプリングデバイスを平面に動かすスライダーおよびモーターを備え、そして、前記作動ステージの動きに応じて、前記マイクロ流体サンプリングデバイスの選択部分をレーザーで照射する構成の、請求項1に記載の微生物の迅速な識別のための装置。
【請求項6】
前記レーザーは、前記マイクロ流体サンプリングデバイスを照射し、そのマイクロ流体サンプリングデバイス中のサンプルを熱し、前記微生物を溶解する構成の、請求項1に記載の微生物の迅速な識別のための装置。
【請求項7】
前記レーザーは、前記複数の各反応室がある前記マイクロ流体サンプリングデバイス内に照射し、反応室に微生物が存在するかを示す構成である、請求項1に記載の微生物の迅速な識別のための装置。
【請求項8】
前記レーザーは、前記複数の各反応室を照射し、その反応室における蛍光の放射によって、前記反応剤と微生物との反応を知らせる構成の、請求項1に記載の微生物の迅速な識別のための装置。
【請求項9】
前記複数の各反応室にある反応剤を備える、請求項1に記載の微生物の迅速な識別のための装置。
【請求項10】
前記検出器は分光計である、請求項1に記載の微生物の迅速な識別のための装置。
【請求項11】
次の各構成を備える、サンプルから微生物を迅速に識別するためのマイクロ流体サンプリングデバイス。
・メインリザーバをもち、そのメインレザーバが、前記サンプルを受け入れ、そのサンプルの前記微生物を含む部分を分離するサンプル本体
・前記サンプルを受け入れるメインレザーバからそのサンプルの微生物を含む部分を受け取る採集レザーバ
・それぞれが異なる反応剤をもつ複数の反応室
・前記微生物を含む部分を前記複数の各反応室に移し、前記サンプルの微生物を含む部分を前記複数の各反応室に移す流路であり、前記微生物と反応させ、その反応室に微生物が存在するかについて知るための、毛管マイクロ流路
【請求項12】
前記サンプル本体は回転ディスクであり、その回転ディスクの回転に応じて、前記サンプルの微生物を含む部分を分離する構成の、請求項11に記載のサンプルから微生物を迅速に識別するためのマイクロ流体サンプリングデバイス。
【請求項13】
前記サンプル本体が透明である、請求項11に記載のサンプルから微生物を迅速に識別するためのマイクロ流体サンプリングデバイス。
【請求項14】
前記メインレザーバは、熱により前記サンプルの微生物を含む部分を分離する、請求項11に記載のサンプルから微生物を迅速に識別するためのマイクロ流体サンプリングデバイス。
【請求項15】
前記メインレザーバは、電磁放射により前記サンプルの微生物を含む部分を分離する、請求項11に記載のサンプルから微生物を迅速に識別するためのマイクロ流体サンプリングデバイス。
【請求項16】
前記サンプル本体がガラス製である、請求項11に記載のサンプルから微生物を迅速に識別するためのマイクロ流体サンプリングデバイス。
【請求項17】
前記メインレザーバと前記採集レザーバとの間に位置し、前記採集レザーバへの流れを制御するメインレザーババルブを備える、請求項11に記載のサンプルから微生物を迅速に識別するためのマイクロ流体サンプリングデバイス。
【請求項18】
前記採集レザーバと前記毛管マイクロ流路との間に位置し、前記複数の反応室への流れを制御する採集レザーババルブを備える、請求項11に記載のサンプルから微生物を迅速に識別するためのマイクロ流体サンプリングデバイス。
【請求項19】
次の各構成および条件を備える、請求項11に記載のサンプルから微生物を迅速に識別するためのマイクロ流体サンプリングデバイス。
・前記メインレザーバと前記採集レザーバとの間に位置し、前記採集レザーバへの流れを制御するメインレザーババルブ
・前記採集レザーバと前記毛管マイクロ流路との間に位置し、前記複数の反応室への流れを制御する採集レザーババルブ
・前記メインレザーババルブおよび前記採集レザーババルブの少なくとも一つが、磁気的に作動するバルブであること
【請求項20】
次の各構成および条件を備える、請求項11に記載のサンプルから微生物を迅速に識別するためのマイクロ流体サンプリングデバイス。
・前記メインレザーバと前記採集レザーバとの間に位置し、前記採集レザーバへの流れを制御するメインレザーババルブ
・前記採集レザーバと前記毛管マイクロ流路との間に位置し、前記複数の反応室への流れを制御する採集レザーババルブ
・前記メインレザーババルブおよび前記採集レザーババルブの少なくとも一つが、光学的に作動するバルブであること
【請求項21】
次の各工程を備える、サンプル中の微生物を迅速に識別する方法。
・サンプルをサンプルレザーバに入れる工程
・前記サンプルの前記微生物を含む部分を分離する工程
・前記サンプルの前記微生物を含む部分を採集レザーバ中に採集する工程
・複数の反応室のそれぞれに異なる反応剤を入れる工程
・前記微生物を含む部分を前記複数の反応室のそれぞれの中に移す工程。
・前記複数の反応室のそれぞれを順番に照らし、その反応室内の微生物の存在を検出する工程
【請求項22】
前記サンプルの前記微生物を含む部分を分離する工程は、前記サンプルレザーバ内で前記サンプルを遠心分離することを含む、請求項21に記載のサンプル中の微生物を迅速に識別する方法。
【請求項23】
前記サンプルの前記微生物を含む部分を分離する工程は、レーザーで前記サンプルを加熱することを含む、請求項21に記載のサンプル中の微生物を迅速に識別する方法。
【請求項24】
前記複数の反応室のそれぞれを順番に照らし、その反応室内の微生物の存在を検出する工程は、レーザーで前記複数の反応室のそれぞれを照らし、前記反応剤と微生物との間の反応を示す独特な光を発光させることを含む、請求項21に記載のサンプル中の微生物を迅速に識別する方法。
【請求項25】
前記複数の反応室のそれぞれを順番に照らし、その反応室内の微生物の存在を検出する工程は、レーザーで前記複数の反応室のそれぞれを照らし、前記反応剤と微生物との間の反応を示す独特な光を発光させること、および、前記反応剤と微生物との間の前記反応から発する光を検出することにより、その反応室内の微生物の存在を検出することを含む、請求項21に記載のサンプル中の微生物を迅速に識別する方法。
【請求項26】
次の各工程を備える、血液サンプルを迅速に識別する方法。
・透明なカートリッジあるいはディスク中のメインレザーバに血液サンプルを注入する工程
・赤血球および白血球から血しょうおよび病原体を分離する工程
・前記分離した血しょうおよび病原体をレーザーで加熱することにより、前記病原体の壁にひびを入れて溶解を起こし、DNAおよびRNAsを解放する工程
・前記DNAおよびRNAsを含む液体を採集レザーバに移し、酵素と反応させて前記DNAおよびRNAsを切断し、そのDNAあるいはRNAsの特定のセグメントを拾う工程
・前記切断したDNAおよびRNAsならびにDNAあるいはRNAsの特定のセグメントを反応室に移し、CAS 12/13タンパク質と反応させる工程
・前記反応室を照らし、病原体の存在を検出する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医学診断の分野の技術に関し、より詳しくは、すべての臨床ステップを管理し、単一のサンプル本体中の微生物および病原体の範囲を検出するためのマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
チップ上にマイクロ流体デバイスを結合した、非常にコンパクトな分析生化学システムに対する要求が、勢いを増している。各製品に求められる特徴あるいは基準は、精度、全体分析、分析の迅速性、費用の有益性、サンプルの大きさの低減、性能およびユーザーの操作性についての向上である。
【0003】
いろいろな生化学研究所や生化学の会社で大きな努力がなされている。それは、患者の血液あるいは尿における、微生物および病原体(主に、バクテリアおよび菌類あるいはウイルス)を迅速に識別するシステムを開発することである。早期かつ有効な治療を決定、特には、新しい病原体の発生時の決定を行うための標準診断チップについて、包括的な健康管理システムは、まだ苦悶中である。毎年、世界的に生じる血液感染は、数百万である。それらの感染の大部分は、決まりきった医療サービスのない第三世界の国々で生じている。その上に、開発国における病院費用が異常に高いことから、病院費用を減らし、患者の健康を回復するため、入院日数を減らさざるを得ない。
【0004】
よく知られた診断方法として、病原体の表現型あるいは分子特性に基づくものがある。一般に、患者の血液サンプルは臨床診療ラボに送られ、そのサンプルはバクテリア培養処理がなされる。そのバクテリアを特別な条件下で成長させるために、長くなければ数日かかる。専門家が、そのサンプルを視覚的に診断あるいは判断する。バクテリアの形態特性によって、病理学者は感染タイプを知る。しかし、この方法には、かなりの時間、消耗品、装置、無菌の環境、そして熟練者が必要である。
【0005】
蛍光ISH法(Fluorescence In-Situ Hybridization, FISH)は、もう一つの一般的な診断方法である。その方法は、相補的プローブが発する蛍光を病原性物質に当てることに基づく。サンプルをスライド上に載せ、透過処理し固定し、その後、特殊なプローブでハイブリダイゼーションを行う。そして、サンプルを数回洗浄し、結合しない病原体および試薬を取り除く。プローブとハイブリダイゼーションを行った病原体は、蛍光顕微鏡で視覚的に見ることができ、病原体の存在を分析することができる。今では、一般にブルースペクトルのレーザー光によってサンプルを励起し、病原体が存在するとすれば、そのサンプルはグリーンスペクトルで蛍光を発する。グリーンスペクトルの蛍光を発することがないことは、バクテリアとプローブとのハイブリダイゼーションがなかったことを示す。怪しいバクテリアの存在を正確に判断するためには、テストを、他のプローブによって繰り返し行うことが求められるが、そのプロセスには時間がかかるし、試験のステップを行うための専門家が必要である。
【0006】
また、免疫診断のアプローチがある。そのアプローチでは、抗原抗体反応が検出の主要な手段である。そのような装置の二つの主なフォーマットは、酸素結合免疫吸着検定法(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay, ELISA)とラテラルフローテスト(Lateral-Flow test, LFD)であり、ディップスティックとして知られている。必要な抗原の抗体種に、プローブとして加えることにより、放射性同位元素の目印、蛍光標識、あるいは色彩形成の酵素を結合することができる。これらの方法を適用したものとして有名なものは、妊娠検査、血液型検査、そして、ウイルス学における微生物および薬剤の検出である。この方法は、有効な方法と考えられているが、他の多くの方法と同様、いくつかの欠点がある。たとえば、市場における抗体の入手性、特異的抗体製造のための長いプロセス(一週間から一ヶ月)、熟練した人員が必要なこと、頻繁なピペット操作および洗浄ステップ、さらに重大な抗体特異性などの欠点である。
【0007】
核酸を基礎にする方法は、一般に特殊であり、微量の検体に対して非常に敏感であり、微生物の異なるタイプに用いることができる(自力で生きられないもの、あるいは不活性なものを含む)。これらの技術は、培養が困難な生き物に対して特に有用である。ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerize Chain Reaction, PCR)は、分子診断の部門で最も広く使用されている、分子生物学技術の一つである。PCRは、大変有効で、信頼性があり、しかも速い。しかしながら、これらの試験(アセイ)は高感度であり、操作者の関係およびステップ数に起因して、クロスコンタミネーション(二次汚染)のおそれが大きい。このアセイの別の欠点は、類似はしているが完全には同一でない配列について、プライマーの特異的アニーリングに関係する。加えて、これらの技術は、酵素活性に頼っているので、酵素活性を抑制する試薬汚染があると、偽陰性を起こすおそれがある。アセイを準備し操作するための経験豊富な人員が必要であることから、このアセイには他の欠点もいくつかある。それにもかかわらず、この方法は、最も正確であり、緊急状態の患者に対して病院で最も広く用いられているものの一つである。一般に、一時間あれば、特異的病原体の存在をスキャンし判断することができる。
【0008】
バクテリオファージは、バクテリアに感染する拡散的ウイルスであり、それ自身を複製する遺伝的要素を用いる。バクテリアは、適応性のある免疫システム、つまり、クリスパー(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats, CRISPR)と呼ぶシステムを発達させた。CRISPRは、同一のリピートDNA配列(28から37の塩基対)と、不同一のスペーサーDNA領域(21から72の塩基対)との繰り返しによって構成されている。このCRISPRは、先の侵入ウイルスのゲノム配列と正確に一致し、バクテリアにウイルスを記憶させることができる。もし同じウイルス(あるいは緊密に関係するウイルス)が、そのバクテリアを再び襲うと、バクテリアは、そのCRISPRアセイからRNA配列を複写し、ウイルスの遺伝物質に目標を設定する。そしてバクテリアは、Casタンパク質を用いる。そのCasタンパク質は、ヘリックス(らせん)およびヌクレアーゼ(核酸分解酵素)の機能をもち、そのDNAをほどき、そのDNAを切り離す。それによって、ウイルスを不活性にする。CRISPR塩基の配列は、異なるバクテリアに独自であり、それらの指紋として用いることができる。Cas12a(ssDNAおよびdsDNA用)およびCas13(ssRNA用)は、二つのCasタンパク質ファミリーメンバーである。プログラマブルgRNAが、特定のRNAあるいは病原体のターゲットDNAに結合すると、二つの酵素が活性化し、近くのすべてのRNA分子を切り離す。この複合体を、二つの端部にフルオロフォアおよびクエンチャーをもつ、標識RNAリポーターと結合することによって、タンパク質としての活性化CがそのRNAリポーターを切り離し、測定できるような蛍光信号を作り出す。その蛍光信号によって、病原体の存在を知ることができる。しかしながら、この方法には、抽出した病原体を前増幅することが求められる。
【0009】
等温リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)方法で行う遺伝物質には、基礎的な温度制御装置を使用して行う。この発明は、この画期的な技術に用いるのに適した装置を提供しようとするものである。
【0010】
したがって、この発明の目的は、クリスパー(CRISPR)を含む、微生物の迅速な識別のための装置および方法を提供することである。
【0011】
この発明の他の目的は、バッチ処理ができ、ランダムアクセスが可能な、微生物の迅速な識別のための装置および方法を提供することである。
【0012】
また、この発明の他の目的は、手頃で信頼性のある、微生物の迅速な識別のための装置および方法を提供することである。
【0013】
この発明の他の目的は、セットアップおよびランが簡単であり、その分野の通常の専門家が少しの訓練で機械を操作することができる、微生物の迅速な識別のための装置および方法を提供することである。
【0014】
さらにまた、この発明の他の目的は、プロセシング例、テスト例およびレポート例を備える、微生物の迅速な識別のための装置および方法を提供することである。
【0015】
この発明の他の目的は、迅速かつ短いターンアラウンドタイムをもつ、微生物の迅速な識別のための装置および方法を提供することである。
【0016】
以上には、この発明に関連する目的のいくつかのあらましを述べた。それらの目的については、この発明に関連する特徴や応用を示す実例を通して理解することができる。この発明の考え方の範囲でこの発明を変形することにより、その他の多くの利点を得ることができる。したがって、この発明のさらなる目的については、以下に述べる発明の概要および好ましい実施例を含む詳しい説明を参照することにより、より深く理解することができるであろう。
【発明の概要】
【0017】
この発明は、付属の図面に示す具体的な実施例とともに、添付のクレームによって定まる。この発明のあらましを述べるとすれば、この発明は、サンプリングデバイス、特にはマイクロ流体サンプリングデバイスにおける、微生物の迅速な識別のための装置および方法に関する。マイクロ流体サンプリングデバイスには複数の反応室があり、それらの各反応室には、微生物と反応する異なる反応剤がある。微生物との反応により、その反応室における微生物が存在することが分かる。
【0018】
装置には、サンプリングデバイスを保持するグラバーがある。レーザーによって、マイクロ流体サンプリングデバイスを照射するようになっている。作動ステージがグラバーに連結され、レーザービームに関連してサンプリングデバイスの位置個所を平面に動かすようになっている。複数の各反応室から発する光を検出器が検出し、反応室の中に微生物が存在するかについて見出す。
【0019】
この発明の一つの実施例において、マイクロ流体サンプリングデバイスは、メインレザーバを備える。そのメインレザーバは、サンプルを受け入れ、そのサンプルの微生物を含む部分を分離する。採集レザーバは、サンプルレザーバからそのサンプルの微生物を含む部分を受け取る。複数の各反応室は、異なる反応剤をもつ。微生物を含む部分は、毛管マイクロ流路によって、複数の各反応室に移り、微生物との反応を通してその反応室に微生物が存在するかについて知る。
【0020】
この発明の他の実施例において、マイクロ流体サンプリングデバイスは、中央孔のある回転ディスクである。グラバーが中央孔にかみ合い、回転ディスクを保持する。作動ステージは、回転ディスクを径方向に動かすスライダーと、回転ディスクを回転するモーターとを備える。作動ステージの動きに応じて、マイクロ流体サンプリングデバイスの選択部分をレーザーで照射することができる。レーザーは、マイクロ流体サンプリングデバイスへの照射により、その中のサンプルを熱することができ、そのサンプルを効果的に溶解する。加えて、マイクロ流体サンプリングデバイスへのレーザーの照射は、複数の各反応室に微生物が存在するかについて知るために用いることができる。好ましくは、分光計である検出器で複数の各反応室から発する光を検出し、反応室に微生物が存在するかを知るのが良い。
【0021】
マイクロ流体サンプリングデバイスのさらに他の実施例において、そのデバイスは、メインリザーバをもつサンプル本体を備える。メインレザーバは、サンプルを受け入れ、そのサンプルの微生物を含む部分を分離する。採集レザーバは、サンプルレザーバからそのサンプルの微生物を含む部分を受け取る。複数の各反応室は、異なる反応剤をもつ。微生物を含む部分は、毛管マイクロ流路によって、複数の各反応室に移り、微生物との反応を通してその反応室に微生物が存在するかについて知る。好ましくは、サンプル本体は透明で、ガラス製である。ガラスのために、レーザーがサンプルを加熱する。
【0022】
メインレザーババルブが、メインレザーバと採集レザーバとの間に位置し、採集レザーバへの流れを制御する。また、採集レザーババルブが、採集レザーバと毛管マイクロ流路との間に位置し、複数の反応室への流れを制御する。メインレザーババルブおよび採集レザーババルブとして、磁気的に作動するバルブ、あるいは光学的に作動するバルブを用いることができる。
【0023】
他の実施例において、第1のデザインでは、単一のサンプルについて多数の生物を検出することができ、それに対して第2のデザインでは、多数のサンプルについて単一の生物を検出する。
【0024】
この発明は、また、サンプル中の微生物の迅速な識別のための装置および方法であるが、サンプルをサンプルレザーバに入れるステップを備える技術も組み込んでいる。微生物を含むサンプル部分は、サンプルから分離する。サンプルの微生物を含む部分は、採集レザーバ中に集める。複数の各反応室中に、異なる反応剤を入れる。微生物を含む部分を、複数の反応室のそれぞれの中に移す。複数の反応室のそれぞれに対し、続けて照射し、その反応室に微生物が存在するかについて検出する。
【0025】
他の実施例において、微生物を含むサンプルについて、レーザーでサンプルを加熱することによって、サンプルから分離する。この発明の装置および方法は、以下に述べるCRISPR技術と一緒に用いることが適している。
【0026】
この発明は、血液、尿、唾液、精液などの異なる体液の診断に適用するため、異なるプラットフォームを提供する。ここに、感染した液体、血液の病原体について、サンプルの識別のためのプラットフォームを説明する。一つの例では、全部の血液をディスクに注入し、それから回転するディスクからバクテリア含有の血しょうを分離する。高速の回転により、赤血球や白血球のような重い成分は、回転するディスクにおける迅速な沈降作用により、血しょうおよびバクテリアから分離する。したがって、そのディスクは、マイクロ遠心機と同様に働く。そして、血しょうおよびバクテリアは、孔を通って次のセクションに行く。その間、集光レーザービームが照射している。集光により、バクテリア壁は溶解し、DNAが解放される。この方法は、菌類の壁を切り開くためにも大変有効である。その後、サンプルは36反応室に導かれる。各反応室には、(1)CAS 12および/またはCAS13、(2)二つの端部にフルオロフォアおよびクエンチャーを伴う、ランダム標識RNA分子、(3)一つの単一タイプのgRNA分子であり、これは、問題の病原体の遺伝物質と相補性あり、の三つのキー成分がある。gRNA分子については、すべてのゲノムがすでに配列され、データベースで利用可能な病原体だけを標的にするようにプログラム可能である。
【0027】
短crRNAにおけるCRISPR RNAを作り出すために、異なる酵素を用いる。それから、サンプルを36反応室に導く。反応室においては、トップの感染症に対して、36の異なる補体を置く。それは、短gRNAにおけるガイドRNAと呼ばれる。また、CAS12タンパク質および/またはCAS13タンパク質も存在する。反応室の第3の成分は、ランダムRNAである。ランダムRNAは、すべての反応室に共通しており、各端部から遺伝的RNAをくっ付けた二つの蛍光インジケータ分子をもつ。三つの成分である、gRNA、CAS12/13タンパク質およびランダムRNAレポーターRNAのすべては、凍結乾燥し、長期間(長年)にわたってディスク内に取って置くことができる。ディスクは真空密閉し、黒の暗いカバーで包み、光との相互作用を避ける。もしも未知のバクテリアがあるとすれば、病原体に対する相補性のgRNAが反応室に存在し、その特定の反応室のgRNAのリストがあれば、病原体の遺伝物質と、crRNAおよびgRNAの間に融合を生じ、その結果としてCAS12/13タンパク質が活性化する。この特定のタンパク質は、レポーターRNAを含む近くのRNAを切り離す。CRISPR-Casシステムのリボヌクレアーゼによって切離しがなされるとき、蛍光標識レポーターが、可測の蛍光を発する。このことから、反応室を励起レーザーで励起すると、放射蛍光は大きな変化をする。伝統的な診断方法において、各バクテリアまたはバクテリアのDNAあるいはRNAの部分は、ただ一つのシグナルを生じる。そのシグナルを増幅するため、そのバクテリアを培養によって増幅すること、あるいは、バクテリアのDNAあるいはRNAの部分をPCRによって増大し、シグナルレベルを大きくすることが必要である。CRISPR Cas 12/13は、おもしろい考え方をとる。ソースを増幅することによりシグナルを増大する代わりに、ソースの存在を作動のためのスイッチとして用いて、そのCRISPR Cas 12/13およびレポーターRNAによってシグナル発生を行う。それら二つの成分分子は、反応室の中にいつでも互いに近くにいる。しかし、crRNAゲノム標的がgRNAと融合するとき、反応が始まる。
【0028】
この発明は、ガラスの新しいマイクロ流体デバイスおよび方法の発達に基礎を置く。そこでは、すべてのバイオセンサーならびにタンパク質および酵素を、一つの特定のレザーバ―の中に置く。この発明のいくつかの利点を挙げよう。
【0029】
相対的な真空力および回転プロセスによって、血しょう液体をレザーバ―に満たす。これは、簡単であるが、液体を動かすために内部あるいは外部のポンプを使用することを避ける上で有効な技術である。
【0030】
たとえば、赤血球および白血球サンプルから血しょう液体およびバクテリアを抽出するなど、異なる種の液体を分離するための、その場(in situ)遠心分離。
細胞壁を破壊してDNAおよびRNAを解放するための、その場(in situ)細胞溶解。
他の大きな利点は、同時に多数のテストを行うために、最小量のサンプルを用いることである。
【0031】
CRISPRに基礎を置く診断は、簡単で非常に正確である。
読取りが速く、正確な結果を速く得ることができる。
デバイス(装置)が小型かつ軽量であり、エネルギー消費量が少ない。
各作業で多数の分析を行うために低コストである。
ディスクがCDサイズの構成であり、保管のために冷蔵庫あるいは特別な場所を必要とせずに、-50℃から+50℃まで保管することができる。したがって、冷却あるいは冷蔵の必要がなく、室温で保管することができる。
ディスクが再生利用可能であり、環境を損ねることがない。
費用効果が妥当である。
ユーザーフレンドリーである。
診療現場や国境(たとえば、空港)で用いることができる。
【0032】
以上では、この発明を広く概観した。この発明に関連する大切な特徴については、引き続く詳しい説明によって、より深く理解することができるであろう。それにより、この発明の技術分野への貢献を充分に評価することができるであろう。この発明の追加の特徴について、以下に述べるが、それらもこの発明のものである。また、いわゆる当業者であれば、この発明の考え方や具体的な実施例を変更することにより、この発明の同様な目的を達成することができることは自明である。そのような等価の構成は、この発明の考え方の範囲から外れることはない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
この発明をより完全に理解するために、以下の説明および添付の図面を参照されたい。各図面の内容は、次のとおりである。
【
図1A】この発明の微生物の迅速な識別装置の側面図である。
【
図1B】
図1の装置の斜視図であり、さらに回転ディスクを示す。
【
図2B】そこで反応が生じる回転ディスクのメイン層を示す。
【
図2D】回転ディスクのカバー層を示し、レジン注入カバーおよびバルブを備えている。
【
図3B】
図3Aの回転ディスクの第2の実施例のメイン層を示す。
【
図3C】レジン注入カバーおよびバルブを備える回転ディスクの第2の実施例のカバー層を示す。
【
図4A】閉状態の磁気-機械変換バルブの斜視図である。
【
図4B】開状態の磁気-機械変換バルブの斜視図である。
【
図4C】閉状態にある等方性相の液晶エラストマーの斜視図である。
【
図4D】開状態にある等方性相の液晶エラストマーの斜視図である。
【
図5A】回転ディスクの第3の実施例のメイン層を示す。
【
図6A】リニアカートリッジのためのメイン層のデザインを示す。
【
図7】gRNAを伴うCAS12/13タンパク質の反応の模式図である。図面を通して、同様な部分に対して同様な符号を付ける。
【詳細な説明】
【0034】
図1Aおよび1Bは、バクテリア、菌類およびウイルスなどの微生物を迅速に識別するための装置を示す。その装置は、CRISPR Cas 12/13診断方法(技術)と一緒に用いるのに適する。装置は、マイクロ流体サンプリングデバイス1.0を収容し、マイクロ流体サンプリングデバイス1.0内部の微生物を迅速に識別する。以下により詳しく述べるが、マイクロ流体サンプリングデバイス1.0は、分析のためのサンプルを受け入れる。マイクロ流体サンプリングデバイス1.0は、微生物の迅速な識別のために交換可能かつ処分可能である。マイクロ流体サンプリングデバイス1.0は、よく知られた細菌感染に対して、たとえば血液サンプルなどのサンプルを診断することができる。しかし、マイクロ流体サンプリングデバイス1.0は、ウイルスあるいは菌類の検出にも立案することができる。
【0035】
この例では、マイクロ流体サンプリングデバイス1.0は、コンパクトディスク(CD)と近似した大きさの回転ディスク1.0として示す。その装置は、回転ディスク1.0を保持するグラバー1.1を備える。グラバー1.1は、作動ステージ1.2上に据えたモーター1.11を含み、それにより回転ディスク1.0を回転する。
【0036】
光学ミラー1.3は、レーザーソース1.4からのレーザービーム1.5を回転ディスク1.0に反射する。その光学ミラー1.3は、レール1.2上を動くことができる。回転ディスク1.0の回転と、レール1.2上の光学ミラー1.3の動きとによって、レーザービーム1.5を回転ディスク1.0のどの部分にも本質的にアクセスすることができる。分光検出器1.6は、回転ディスク1.0の選択部分を通過するおよび/または発する光を測定する。
【0037】
図2A-2Dは、回転ディスク2.0に組み込んだマイクロ流体サンプリングデバイス1.0の拡大図である。回転ディスク2.0は、ガラスあるいは他の材料などの透明な材料で、回転ディスク2.0の構造的なベースとして好ましい厚さが500-700μmのもので形作られたベース層2.1を備える。ベース層2.1は、回転ディスク2.0のより薄い残りの層を安定に固定させる。回転ディスク1.0には一つの孔2.2があり、それにより、グラバー1.1を保持し、回転ディスク1.0を回転可能にする。
【0038】
図2Bは、回転ディスクの孔2.2の部分を形作る同心の中央孔をもつ、回転ディスク2.0のメイン層2.3である。メイン層2.3は、ガラスあるいは他の材料などの透明材料から形作られる。メイン層2.3中にメインレザーバ2.4が定められ、そこにテストすべきサンプルを受け入れる。メインレザーババルブ2.5は、メインレザーバ2.4を毛管流路2.6に連結する。毛管流路2.6は、採集レザーバ2.7に連通し、メインレザーババルブ2.5によって採集レザーバへの流れを制御することができる。採集レザーババルブ2.8は、採集レザーバ2.7から毛管マイクロ流路2.9を通して複数の反応室2.11へと流れる流体の流れを制御する。
【0039】
複数の抵抗流路2.10が、毛管マイクロ流路2.9と複数の反応室2.11との間に入り、複数の反応室2.11から毛管マイクロ流路2.9への逆流を禁止している。
【0040】
カバー層2.13がメイン層2.3の上にある。カバー層2.13と同様、ベース層2.1およびメイン層2.3は、中央孔2.2の周囲だけでなく、回転ディスク2.0の周囲について真空機密の形態で固定されている。
【0041】
カバー層2.13には、サンプル液体を回転ディスク2.0に入れるための入口2.14がある。加えて、カバー層2.13には、メインレザーババルブ2.5を入れる開口2.15と、採集レザーババルブ2.8を入れる開口2.16とがある。サンプルを回転ディスク2.0中に導入した後、開口2.14を密封するために密封プラグ2.17を与える。以下に、採集レザーババルブ2.8だけでなく、メインレザーババルブ2.5の説明を詳しく述べる。
【0042】
多くの患者がいて、医者が36タイプすべての病原体ではない、一般的ではない病気を探すような状況のとき、回転ディスク2.0を12の異なる病原体に対してプログラムを組むことができ、各ランを三つの異なるサンプルに実行することができる。回転ディスク1.0について、各反応室が独特の識別を持つように、マーク付けおよびバーコード化(図示しない)することができる。装置はフレキシブルであり、顧客の求めに応じたバイオマテリアルを満たすことができる。
【操作方法1】
【0043】
この例において、回転ディスク2.0は、36の反応室2.11を含み、単一の回転ディスク2.0から同時に36のランを行う、36の異なるテストが可能である。30分ほどで、サンプルについて、36の異なるタイプの病原体を調べることができる。しかし、当業者であるなら理解するであろうが、回転ディスク2.0は、おおむねのテスト室を入れるようにすることができる。ランを行うサンプルテストが多い場合、各ディスクを、12の診断タイプに対して三つの異なるサンプルのランを同時に行うことができる。
【0044】
装置の操作方法の一例について、次に述べる。たとえば血液サンプルのようなサンプルを、三つのサンプル注入位置(開口)2.14の一つに導き入れる。そして、密封挿入プラグ2.17を取り付け、それら、三つのサンプル注入位置2.14を閉じる。
【0045】
その後、その回転ディスク2.0を装置中に置く。回転ディスク2.0が回転するとき、遠心力によって、血しょうおよびバクテリアは、たとえば赤血球や白血球のような重い種から分離する。赤血球は外に向かって動き、それに対し、血しょうは回転ディスク2.0の中心に向かって動く。バクテリアもまた、回転ディスク2.0の中心に向かって一層大きく動く。この時点で、レーザーソース1.4が、回転ディスク2.0の中心に向かって照射し始め、血液サンプルの温度を150℃近くまで上げる。回転ディスク2.0の最新の加工(ファブリケーション技術)によって、血液サンプルを上記温度まで加熱することができる。この局所的な熱によって、溶解が起こり始める。細胞壁が破壊し始め、DNAおよびRNAを解放する。遠心力および/または熱によって、サンプルの他の部分からサンプルの一部を含む必要な微生物を分離する。
【0046】
メインレザーババルブ2.5が開くに応じて、分離されたDNA/RNAおよび血しょう液体が毛管流路2.6に移動して、採集レザーバ2.7に入る。採集レザーバ2.7の中には、異なるタイプの酵素が、凍結乾燥の形態で備わっている。酵素の選択は、反応室2.11内で診断すべき病原体のタイプに基づく。酵素の働きは、特有のDNAを選び、適切な対位置で切断を行う。もし要望の残像がサンプル中にあると、検出の用意ができたDNAあるいはRNAセグメントをもつ。冗長性をもたせ、ノイズに対する信号レベルを増すため、検出するDNAあるいはRNAセグメントについて、少なくとも三つの異なるものを拾うことが好ましい。
【0047】
この採集レザーババルブ2.8を作動することにより、血しょう液体に浮いているDNA/RNAセグメントが、毛管マイクロ流路2.9の中へと動く。毛管マイクロ流路2.9は、サンプルを12の反応室2.11に分配する。その進路に抵抗流路2.10があり、凍結乾燥パウダーが反応室2.11から毛管流路2.9に向かって漏洩することを避ける。DNA/RNAセグメントが反応室2.11に到達すると、その反応室2.11内に用意された凍結乾燥パウダーと反応する。凍結乾燥パウダーとDNA/RNAセグメントとの間の反応について、
図7を参照しながら詳しく説明する。
【0048】
回転ディスク1.0内の反応室1.6を通して、レーザービーム1.5が伝播する。レーザービーム1.5は、レーザーソース1.4から光学ミラー1.3に照射し、回転ディスク2.0に集光し、反応室1.6内の蛍光分子を励起する。分光器検出器1.7が、反応室2.11内の例規蛍光分子を測定する。反応が起きると、ブルーのダイオードレーザーで励起したとき、特定の反応室2.11がグリーンの蛍光信号を発光する。
【ガラスの利点】
【0049】
ガラスには熱硬化性樹脂のカートリッジを超える多くの利点があるので、好ましくは、回転ディスク2.0をガラスから加工するのが良い。ガラスは多くの独特の特性をもち、それらの特性は、ライフサイエンス、生物医学において、たくさんの異なる用途に有益である。それらの独特な特性に含むものは、次のとおりである。
小さな蛍光バックラウンドの下で、光学的な透明性に優れている。
機械的な強度が大きく、熱的に安定であり、引っかき抵抗性がある。
化学的に不活性であり、液体および気体に不透過性であり、生体組織や生物体と共存できる。
【0050】
これらの独特な特性により、ガラスは、多くの用途に高く必要とされる。しかし、今日利用可能な伝統的な加工方法、たとえば、機械的な切断/ダイシング/ドリル加工、レーザー切除、ウオータージェット切断、およびフォトリソグラフィウエット/ドライエッチングは、研究者、エンジニアおよびデザイナが達成しようとしている、複雑で高アスペクト比の微小構造を作り出すことができない。
【0051】
ここ3~5年の間に、「選択的レーザーによるエッチング(Selective Laser Assisted Etching)」の分野では、高精度の特性をもつガラス製品の要求に応えるために、多くの進化を遂げている。しかし、それらの新しい進化は、非常に費用がかかり、大量のマーケットに取り組むには時間がかかるし困難である。それらの問題があるため、産業界では、その代わりにPMMAおよび/または熱可塑性樹脂を使用することにより、要求に応えるようにしている。また、PDMSおよび熱可塑性樹脂は、うわべは費用的に有益な解決策に見えるが、それらには、あまり好ましくない多くの欠点がまだある。両方ともに、製造すべき異なる装置のそれぞれの型が必要である。それらの型の寿命は有限であり、取替えが必要である。製品のデザイン変更するとき、型を設計し、リデザインすることには費用がかかる。PDMSおよび熱可塑性樹脂は、両方ともに蛍光に伴う問題があり、そしてまた、それらは多くの有機溶剤と不適合である。細胞溶解には、高温度の操作が必要であり、その温度は大抵の樹脂の融点である。
【0052】
この発明は、拡大を続けるライフサイエンスの要求に応えることができる、速く、費用的に有利で、大規模に実現可能な、ガラスマイクロ加工技術を提供する。この発明のレーザーに基づく解決法は、速くて経済的で、高い制御性があり、大量生産のために大規模に実現可能である。この発明の技術は、ライフサイエンスで今広く用いられている、ありふれたガラスのほとんどすべての使用を考えている。この発明は、装置を加工する型に頼ることなく、少々のキーストロークで装置の特性を変化させることができる。さらには、この私たちの技術は、フォトリソグラフィ方法を用いるような、費用のかかるナノ-ファブリケーション装置で必要なものを求めない。
【0053】
図3A-3Cは、この発明の第2の実施例を示す。この実施例において、回転ディスク3.0は、同時に多くのサンプルを受け入れ、しかも、単一の微生物あるいは病原体の検出を行うように、デザイン変更がなされている。回転ディスク3.0は、エボラ出血熱あるいはジカウイルス感染症と同様の世界に広がる病気、あるいは炭疽病と同様の軍が直面しているバイオスレッドの世界の領域に応えるように計画されている。36タイプの病原体に対して、各サンプルを診断する代わりに、回転ディスク3.0は、一つの特定の病原菌に対して単一のランで、できるだけ多くの人々を検査する。目下のデザインでは、境界バリアが均等に離れた25の反応室を、回転ディスク3.0中に独立して置いてある。この発明の明らかな用途の一つは、農業である。考えるに、庭師は、特定の病気に対して果樹のすべてを検査したがるだろう。そこで、各木から集めたサンプルについて、バーコード化し単一のディスクにロードする。
【0054】
回転ディスク3.0は、ガラスあるいは他の材料などの透明な材料で、回転ディスク3.0の構造的なベースとして好ましい厚さが500-700μmのもので形作られたベース層2.1を備える。回転ディスク3.0には一つの孔3.2があり、それにより、グラバー1.1を保持し、回転ディスク3.0を回転可能にする。
【0055】
図3Bは、ガラスあるいは他の材料などの透明材料から形作られた、回転ディスク3.0のメイン層3.3である。メイン層3.3中にメインレザーバ3.4が定められ、そこにテストすべきサンプルを受け入れる。メインレザーババルブ3.5は、メインレザーバ3.4を毛管流路3.6に連結する。毛管流路3.6は、採集レザーバ3.7に連通し、メインレザーババルブ3.5によって採集レザーバ3.7への流れを制御することができる。採集レザーババルブ3.8は、各採集レザーバ3.7からそれぞれの反応室3.11へと流れる流体の流れを制御する。採集レザーババルブ3.8はもちろんのこと、メインレザーババルブ3.5について、以後詳しく説明する。
【0056】
図3Cは、ガラスあるいは他の材料などの透明材料から形作られた、回転ディスク3.0のカバー層3.13である。カバー層3.13と同様、ベース層3.1およびメイン層3.3は、中央孔3.2の周囲だけでなく、回転ディスク3.0の周囲について真空気密の形態で固定されている。
【0057】
カバー層3.13には、サンプル液体を回転ディスク3.0に入れるための入口3.14がある。加えて、カバー層3.13には、メインレザーババルブ2.5を入れる開口3.15と、採集レザーババルブ2.8を入れる開口2.16とがある。サンプルを回転ディスク3.0中に導入した後、開口3.14を密封するために密封プラグ3.17を与える。
【操作方法2】
【0058】
たとえば血液サンプルのようなサンプルを、メインレザーバ3.4の注入位置(開口)3.14に注入する。そして、密封挿入プラグ3.17を取り付け、サンプル注入位置3.14を閉じる。回転ディスク3.0が回転するとき、血しょうおよび病原体は、遠心力によって赤血球や白血球から分離する。血しょうおよび病原体は、回転ディスク3.0の中心の外側に向かって動く。レーザービーム1.5を、回転ディスク3.0の中心に向かって照射することによって、溶解が起こり始め、病原体の細胞壁が破壊し、DNAおよびRNAを解放する。
【0059】
レザーババルブ3.5を作動すると、DNAおよびRNAsを含む液体が、毛管流路3.6を通る。湾曲した毛管流路3.6は、サンプルをメインレザーバ3.4から採集レザーバ3.7へ移す。採集レザーバ3.7内部には、特定の凍結乾燥酵素が置かれている。酵素は、液体と混じると、活性化する。酵素は、DNAを切断し、DNAおよびRNAsの特定のセグメントを拾う。その拾ったDNAおよびRNAsの特定のセグメントを、crRNAと称する。
【0060】
採集レザーババルブ3.8を作動すると、そのcrRNAsが反応室3.9へと動く。その反応室の内部には、gRNAおよびランダムRNAを伴う、CAS12/13タンパク質が置かれている。それらのすべてのバイオマテリアルは、凍結乾燥されており、光や湿度の下で保存したとしても、何年もの間持続する。もしcrRNAがgRNAと融合すると、次にはCAS12/13タンパク質が活性化し、その結果としてランダムRNAを含むRNAを切断する。
【0061】
マイクロ流体デバイスの中に適正なマイクロバルブを組み込むことは、やりがいのある課題である。なぜなら、そのバルブには、漏れやエラーなしの機能が求められるからである。同様に、それには、耐久性があり、シンプルであり、低コストであり、しかも、マイクロ流体デバイスの中に組み込む安いことが求められる。マイクロバルブは、5つの異なるグループに分類することができる。
【機械的作動のマイクロバルブ】
【0062】
表面マイクロマシニング技術を用いることにより、機械的に可動性の膜を、磁気の、電気の、圧電気の、あるいは熱の駆動方法に連結する。大抵の機械的作動のマイクロバルブは、伝統的に、フレキシブルな膜を磁気的、静電気の、圧電気のあるいは熱の駆動に連結する。マイクロバルブを小型化するため、静電気の駆動は、最良の候補の一つである。しかし、大きな力および大きな差を得ることが困難である。その理由は、極端に大きな電圧を必要とするからである。圧電気の駆動については、非常に大きな力を得ることはできるが、非常に小さな偏差のために高電圧が必要である。熱的な駆動によれば、ビッグショットにより大きな力を得るが、比較的に遅く、熱の散逸のため多くの流体に不適合である。そこで、磁気をベースにしたマイクロバルブは、この分類の中ですぐれた選択になろう。それについては、別に検討しよう。
【非機械的作動のマイクロバルブ】
【0063】
この例には、電気化学的な、流動性材料の相変化を駆動原理にするものを含む。相変化駆動は、たとえば、液晶エラストマー、ハイドロゲル、ゾル-ゲル、パラフィンのような作用である。加えて、電気粘性流体あるいは強磁性流体を、非機械的作動のマイクロバルブに用いることができる。これらの相変化マイクロバルブは、伝統的な機械的作動のマイクロバルブに比べて比較的に新しく、かつ安い。また、これらの相変化マイクロバルブは、それらのシンプルなデバイス構造、使い捨て性、ライフサイエンスへの良好な適用性の観点から特におもしろい。
【0064】
インテリジェントマテリアルによるマイクロバルブは、一般に、配向ネマチックサイドチェイン液晶エラストマーである。その液晶エラストマーは、粘弾性特性および非常に弱い分子間相互作用をもつ。弱い分子間相互作用について、ここで述べるだろう。
【外部作動のマイクロバルブ】
【0065】
一般に、このタイプのマイクロバルブは、内蔵のモジュールあるいは空気作用手段のような外部システムを用いることにより作動する。すなわち、外部作動のマイクロバルブは、一般に、統合型のモジュラーあるいは空気作用手段のような外部システムを用いて動かす。外部システムを用いることは、マイクロバルブを作る上で最も実際に即したアプローチの一つである。この作動は、高い入口圧力で漏れ磁束がない点で有利であるが、外部システムを加えることが必要であるから、小型化が困難である。
【機械的受動のマイクロバルブ】
【0066】
大抵の機械的受動のマイクロバルブ、あるいはチェックバルブは、機械的な可動部分として、相互置換マイクロポンプの入口開口および出口開口に組み込まれている。もっとも一般的なマイクロバルブは、フラップ、膜、球状ボールあるいは可動の構造である。PCRチップへの適用するための別のタイプの機械的受動のマイクロバルブは、ゲル光重合方法に基づく。この方法において、特定の場所のゲルプラグは、マイクロ流路内に光重合によって作り出す。この特定の場所のゲルプラグは、受動のマイクロバルブとして有効に働き、熱サイクルで熱的に生じる圧力差に起因する液体のバルク流を防ぐ。この方法は、非常に遅く、迅速なDNA分析には適さない。
【非機械的受動のマイクロバルブ】
【0067】
非機械的受動のマイクロバルブは、相互置換マイクロポンプの入口開口および出口開口に、ノズル、デフィーザあるいはテスラエレメントを用いる。PCRマイクロ流体デバイスにおいて、非機械的受動のマイクロバルブは、疎水性あるいは親水性という表面特性に基づき、マイクロ流路内の流体の流れを制御するために用いる。メインの流路に連絡するアクセスポート、所定のチップを備えることにより、流体プラグの位置を定めることができる。これらのポートに疎水性のポリテトラフルオロエチレン物質(フッソ樹脂)を被覆することにより、外部センサーを用いることなく受動のストップバルブとして用いることができる。このタイプのマイクロバルブは、信頼性に欠ける。なぜなら、被覆した疎水性の層は、PCR混合物中にしばしば含まれる界面活性剤で影響を受けるからである。
【0068】
この発明には、多くのタイプのバルブを組み込むことができるが、この発明は、二つのタイプのマイクロバルブを組み込むことが好ましい。第1の好ましいバルブは、たとえば、インテリジェント液晶エラストマーのような非機械的作動のバルブである。第2の好ましいバルブは、たとえば、磁気をベースにしたマイクロバルブのような機械的作動のマイクロバルブである。両マイクロバルブともに、マイクロ流体デバイス中に埋め込むことができる。
【0069】
図4Aおよび
図4Bは、磁気-機械バルブ4.0の斜視図であり、閉じ位置および開き位置を示す。磁気をベースにしたマイクロバルブ40では、作動のために外部の磁界4.1を用いる。漏れゼロおよびすぐれた特性をもつ、磁気をベースにしたマイクロバルブ40は、マイクロ流体デバイス中に埋め込む。その磁気ベースのマイクロバルブ40は、エラストマー性ポリマー4.3で被覆あるいは付着した永久磁石ロッド4.2を備える。このタイプのバルブは、検出可能な漏れフローアップがなく、デッドボリュームがなく、その表面をマイクロ流体デバイスに実装可能、というすぐれた特徴を示す。スプリング4.4が、常に磁石ロッド4.2に押し下げ力を与えている。そのスプリングは、カバー層に取り付けられている。バルブ部品の全体を互いに組立て連結し、先に述べたように、バルブ位置孔の中に挿入する。ハウジングボックス4.5は、カバー層に接着する。スプリングは圧縮タイプであり、デバイスのマイクロ流路を閉じるように磁石およびエラストマーを常に押し下げている。
【0070】
このタイプのマイクロバルブを用いることにより、パワー消費量が低減し、応答時間が速くなる。磁気マイクロバルブの場合、外部の磁界4.1をボックス4.5の上部から加えることによって、マイクロバルブを作動しマイクロバルブの操作を制御する。外部の磁界4.1が加わると、それが磁石ロッド4.2を磁界に向かって動かし、流路を開き、液体の流れを生じさせる。
【0071】
図4Cおよび
図4Dは、等方性相の液晶エラストマーバルブ4.10の斜視図であり、閉じ位置4.11および開き位置4.12を示す。インテリジェント液晶エラストマーを備えるマイクロバルブの他のタイプについて、細胞溶解および蛍光励起に用いる同様のレーザーソースを用いる。この種の液晶エラストマーを用いる主な理由は、可逆であり制御可能な伸長がそれらの根本的な特性であるからである。この発明において、液晶エラストマーマイクロバルブを組み込むことを提供するが、そのマイクロバルブは、機械的応力、温度変化あるいは露光などの外部のストレスが加わるとき、架橋の程度およびポリマー鎖の長さについて最大の可逆性に達するように最適化する。この弾性特性が最適化することにより、ポリマーの可逆性は、ヒステリシスがなく増し、マイクロ流体デバイスにおける統合マイクロバルブの性能を高める。
【0072】
エラストマー性マイクロバルブの伸びの方向は、分子のディレクターの方向に平行で、流路の壁および流体の流れに平行になるようにする。そこで、外部パワーソースを与えることにより、液体の流れを制御することができる。そのようなマイクロバルブに求められる特性は、漏れゼロ、デッドボリュームなし、表面から分離可能、迅速な応答時間、長時間の保存、小さなエネルギー消費およびコンタミネーションフリーである。以上の要素のすべてが、マイクロ流体デバイスにおける液体の流れについて重要な役割をする。
【0073】
図5Aおよび5Bは、この発明の第3の実施例におけるメイン層5.1およびカバー層5.13を示す。ベース層(図示しない)は、
図3Aのものと同様である。回転ディスク5.0のメイン層5.1は、各病原体に対して独占的な採集レザーバ5.11をもつように変更している。ディスク5.0のメイン層5.1は、中央孔5.2およびメインレザーバ5.3を定める。開口5.15は、液体をメインレザーバ5.3からU形状のマイクロ流路5.6に移すレザーババルブ5.5を受け入れる。U形状のマイクロ流路5.6は、採集レザーバ5.7に置いたバイオマテリアルがマイクロ流路5.6内に動くことを避けるようになっている。採集レザーババルブ5.8が、開口5.16内に位置する。crRNAの抽出した属に特有のマテリアルを、採集レザーバ5.7内に生み出した後、採集レザーババルブ5.8を作動し、サンプルは、反応室5.11に動く。サンプルは、反王室5.11内でgRNAと融合する。
【0074】
図5の回転ディスク5.0と
図2の回転ディスク2.0との大きな違いは、採集レザーバ5.7が12の反応室5.11に対して共通でないことである。各反応室11は、それ自体の採集レザーバ5.7をもっている。加えて、反応室5.11と採集レザーバ5.7とが一体であり、回転ディスク5.0全体の中のバルブ数を3に減らすことができる。この配置の下で、採集レザーバ5.7と反応室5.11は一つの室になり、採集レザーババルブ5.8が取り除かれる。
【0075】
図6Aおよび6Bは、この発明の第4の実施例を示し、マイクロ流体サンプリングデバイスをリニアカートリッジ6.0に組み入れている。
図1~3および
図5に示す先の実施例において、回転ディスク内部に液体を送る主な力は、遠心力であった。リニアカートリッジ6.0内部に液体を送る主な力は、真空および重力である。
【0076】
遠心力がないことにより、このデバイスは、外部ですでに遠心機にかけたサンプルを受けるか、あるいは、遠心機にかけることなくサンプルを受け取る。ということは、血液の場合、識別処理にすべての細胞が存在する。それらは、あるノイズを作り出すが、それらの影響は小さい。ディスクをベースにしたデバイスにおいてさえ、ディスクが高スピードで回転しないとき、サンプルは、遠心分離することなく反応室へと動く。反応室において、下側は病原体の濃度は低い。しかし、システムは、それでも動き、結果を生み出す。
【0077】
図6Aおよび6Bは、遠心機にかけたサンプルあるいは遠心機にかけないサンプルを保持するためのメインレザーバ6.1を示す。このレザーバにおいて、サンプルは、集束レーザービームで処理し、細胞溶解を行う。機械的作動のマイクロバルブ位置6.15が、メインレザーババルブ6.5を受け入れる。そのバルブは、主たる毛管マイクロ流路6.6を通して液体を移動し、サンプルを採集レザーバ6.7に分配する。マイクロサイフォン流路6.10は、採集レザーバ6.7から主たる毛管流路6.6へとバイオマテリアルが動くことを止める。採集レザーバ6.7の中には特定の酵素が置かれており、DNAおよびRNAを切り離す。処理がなされると、開口6.16に位置する採集レザーババルブ6.8が作動し、crRNAを反応室6.11に通す。反応室の内部には、CAS12/13タンパク質、レポーターRNA、gRNAが凍結乾燥し置かれている。この領域に液体が入るや否や、それらは活性化し始め、そして、crRNA標的核酸とgRNAとが融合すると、CAS12/13は、レポーターRNA分子を切断し始める。
【0078】
図5のディスクのデザインと同様、このデザインにおいて、各病原体はそれ自体の占有の採集レザーバ6.7をもつ。採集レザーバ6.7のすべてを互いに連絡し、単一のバルブを用いることにより、反応室6.11への分配を行うことができる。
【0079】
図7は、CRISPR-CAS13診断の原理の提示を表現している。この考え方は、RNA7.1を検出することである。バイオマテリアル7.2、7.3および7.4が、デバイスディスクの反応室内に置かれている。これらのマテリアルは、凍結乾燥されており、膜の内部に閉じ込めることができる。この膜については、生体組織や生物体と共存できる高分子電解質マテリアルを用いて加工する。そのマテリアルは、バイオマテリアルと錯体を形成し、長期間不変であり、そして、反応室に液体が存在すると遊離する。
【0080】
gRNAは、キーと同様にデザインされており、それは、標的遺伝マテリアル7.1を検出し、その結果としてCAS13タンパク質7.3を作動させる。CAS12 とCAS13とは二つの異なるタンパク質であり、前者が単一鎖および二重鎖のDNAセグメントによって作動され、後者がRNA分子によって作動されることは、当業者にとって明らかである。CAS12は、ヘリカーゼの働きによってDNAをほどき、それをプログラム可能なgRNAと融合するのに対し、CAS13は、ほどきの処理を必要とせずに、標的RNA分子とgRNAとを直接的に融合する。標的遺伝マテリアルのタイプに応じて、両方のタンパク質は、一緒にあるいは個々に反応室で用いることができる。
【0081】
符号7.4は、蛍光標識レポーターRNA分子を示している。それらは、一般的に、RNA分子7.4内に細長の線で示すように、短いオリゴヌクレオチド(20~30のベース対)のRNAベースの結合である。両端には、クエンチング蛍光分子7.5および7.6が結合されている。クエンチング蛍光分子7.5は、ブルーの光を吸収し、グリーンの蛍光を生じる。それに対し、分子7.6は、グリーンの光を吸収し、レッドの光を発光する。反応室をブルーの光で照射したとき、反応室内に融合がない場合、レポーターRNA7.4は切断されない。分子7.5はブルーの光を吸収するが、分子7.6がグリーン発光の蛍光ソースに非常に密接(10nm以下)しているため、それはグリーンの光を吸収し、レッドの光を発光する。ブルーによる励起により観察されるのは、レッドの光の発光であり、グリーン光のサインはない。さて、標識遺伝マテリアル7.1とgRNAとの間に融合が生じると、CAS13タンパク質7.3が作動し、レポーターRNA7.4は、CAS13タンパク質7.3によって切断される。このことは、分子7.5および7.6の両方の蛍光分子間の距離制限がもはや存在しないことを意味する。そして、反応室をブルーの光で照らすとき、グリーンの光が観察されるだろう。もちろん、レッドの光を生じる無傷のレポーターRNAはまだあるであろう。レッドの光に対するフィルターを加えることにより、クリアなグリーンのスペクトルを観察することができる。これは、その特定の室に病原体が存在することを意味する。蛍光の発光については、リアルタイムあるいは終点のいずれでも検出することができる。
【0082】
ディスク中に生物学的サンプルを注入するに先立ち、核酸の抽出を行うとき、あるいは、レーザーを用いる代わりに酵素あるいは浸透のメカニズムによって細胞溶解を行うとき、それらの場合には、レーザー溶解プロセスが不要になるであろう。結果的に、極端な熱の発生がなく、すべての部品を樹脂成形で作ることができる。それによって、製造コストを低減することができる。というのは、すべての調査研究をガラス部品で行い、最終的なデザインは樹脂成形技術を用いて行うことができるからである。
【0083】
この発明の内容には、以上の説明のほか、添付したクレームの記載事項も含む。また、この発明の好ましい形態についてある程度詳しく説明したが、好ましい形態の説明は、あくまで例証である。具体的な構成、組合せおよび配置について、この発明の考え方および範囲から離れることなく、多くの変形をすることができる。
【国際調査報告】