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特表2022-532833堆積物を除去し、地熱井を刺激するための、フッ素無機酸と無機酸との相乗効果ブレンド
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  • 特表-堆積物を除去し、地熱井を刺激するための、フッ素無機酸と無機酸との相乗効果ブレンド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(54)【発明の名称】堆積物を除去し、地熱井を刺激するための、フッ素無機酸と無機酸との相乗効果ブレンド
(51)【国際特許分類】
   C09K 8/60 20060101AFI20220712BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C09K8/60
E21B43/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557585
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(85)【翻訳文提出日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019024558
(87)【国際公開番号】W WO2020197559
(87)【国際公開日】2020-10-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル フロレンシオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ミシェル マクィンヘン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスバー エス.ギル
(57)【要約】
【課題】本開示は、累層岩またはスケールの処理に関する。
【解決手段】岩またはスケールは、地熱井内に位置し得る。岩またはスケールは、刺激流体で処理され得る。刺激流体は、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩、および酸成分を含む。岩は、石英を含み得る。酸成分は、塩酸を含み得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
累層岩を処理する方法であって、
刺激流体を井戸の坑井に導入することであって、前記井戸が、前記累層岩を含む、導入することと、
前記累層岩を、前記刺激流体と接触させることであって、前記刺激流体が、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩、および酸成分を含む、接触させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記井戸が、地熱井である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロ無機アニオンが、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記窒素塩基が、尿素、ビウレット、アルキル尿素、アルカノールアミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ポリアミン、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記窒素塩基が、尿素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フルオロ無機アニオンを有する前記窒素塩基の前記塩が、尿素テトラフルオロボレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸成分が、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メチルスルホン酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記酸成分が、塩酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸成分が、フッ化水素酸を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記刺激流体が、前記フルオロ無機アニオンを有する前記窒素塩基の前記塩を約1重量%~約50重量%、かつ前記酸成分を約1重量%~約50重量%含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記累層岩を処理することが、前記累層岩の少なくとも一部を前記刺激流体で溶解することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記累層岩が、石英、方解石、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、カルシウム、マグネシウム、鉄、酸化鉄、硫化鉄、鉛、ヒ素、アンチモン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される部層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記累層岩が、石英を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記刺激流体が、水性キャリア流体および腐食防止剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記刺激流体が、化学注入ポンプ、ドリップ技術、噴霧技術、浸漬技術、またはそれらの任意の組み合わせを使用して前記坑井に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
累層岩を処理する方法であって、
前記累層岩を、刺激流体と接触させることであって、前記刺激流体が、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩、および酸成分を含む、接触させることを含む、方法。
【請求項17】
前記フルオロ無機アニオンが、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記窒素塩基が、尿素、ビウレット、アルキル尿素、アルカノールアミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ポリアミン、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記酸成分が、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メチルスルホン酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記累層岩が、石英、方解石、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、カルシウム、マグネシウム、鉄、酸化鉄、硫化鉄、鉛、ヒ素、アンチモン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される部層を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
スケールを処理する方法であって、
前記スケールを、刺激流体と接触させることであって、前記刺激流体が、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩、および酸成分を含む、接触させることを含む、方法。
【請求項22】
前記刺激流体を井戸の坑井に導入するステップであって、前記井戸が、前記スケールを含む、導入するステップと、前記スケールを前記刺激流体と接触させるステップと、をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記スケールが、パイプライン、熱交換器、蒸発器、累層岩、加熱ユニット、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される部材上に位置する、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、地熱システムと関連する累層岩および/またはスケールを処理するための方法および流体に関する。
【背景技術】
【0002】
地熱エネルギーは、地球内部の熱の形態をとるエネルギーであり、地熱井によって採取される。地球内部は、極端に高温であるため、膨大な潜在的エネルギー供給を含有する。しかしながら、このエネルギー源の採取を最適化するに際しては、多くの技術的および経済的課題が存在する。それでもなお、他のエネルギー源が減っていき、より高価になりつつあるため、再生可能エネルギー源としての地熱エネルギーの使用は、重要性を増している。
【0003】
地熱エネルギーは、岩盤を通じた熱伝導によって、地表に向かって移動している。熱エネルギーはまた、相互に接続された亀裂および孔を通じた、溶岩の移動または流体(蒸気または水としてのHO)の循環によって地表に向かって伝達されている場合もある。この場合、より表面に近い熱貯留層、したがって地熱エネルギーを採取するために削井するのにより利用可能な場所が提供され得る。
【0004】
多くの商業用地熱井が位置する天然地熱貯留層は、高温(井戸の深さおよび資源の地理的位置に応じて最大約350℃またはそれ超)の、高い多孔性および流体への高い浸透性を備えた岩石のボリュームを含む。そのような貯留層に井戸が掘削され、岩内の熱エネルギーは、伝導によって流体(水または蒸気としてのHO)に伝達され、続いて、その流体は、井戸へ、次いで、地表まで流動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地熱発電所は、環境の観点から魅力的なままであるが、地熱井の規模管理および地熱井と関連する設備は、対処しなければならない問題のままである。これらの資源からの発電に加えて、資源は、プロセスおよび地域暖房にも使用され得る。さらに、地熱井は、累層の多孔性を改善し、資源の生産性を増加させるために刺激される必要性があり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、地熱システムと関連する累層岩および/またはスケールを処理するための方法および流体を提供する。いくつかの実施形態では、累層岩を処理する方法は、刺激流体を井戸の坑井に導入することであって、井戸が、累層岩を含む、導入することと、累層岩を、刺激流体と接触させることであって、刺激流体が、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩、および酸成分を含む、接触させることと、を含む。
【0007】
井戸は、地熱井であり得、フルオロ無機アニオンは、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0008】
窒素塩基は、尿素、ビウレット、アルキル尿素、アルカノールアミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ポリアミン、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、窒素塩基は、尿素を含む。いくつかの実施形態では、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩は、尿素テトラフルオロボレートである。
【0009】
いくつかの実施形態では、酸成分は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メチルスルホン酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、酸成分は、塩酸である。いくつかの実施形態では、酸成分は、フッ化水素酸を含まない。
【0010】
刺激流体は、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を約1重量%~約50重量%、かつ酸成分を約1重量%~約50重量%含み得る。
【0011】
この方法によれば、累層岩を処理することは、累層岩の少なくとも一部を刺激流体で溶解することを含み得る。いくつかの実施形態では、累層岩は、石英、方解石、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、カルシウム、マグネシウム、鉄、酸化鉄、硫化鉄、鉛、ヒ素、アンチモン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される部層を含む。いくつかの実施形態では、累層岩は、石英を含む。
【0012】
刺激流体は、水性キャリア流体および腐食防止剤を含み得る。刺激流体は、化学注入ポンプ、ドリップ技術、噴霧技術、浸漬技術、またはそれらの任意の組み合わせを使用して坑井に導入され得る。
【0013】
本開示はまた、累層岩を、刺激流体と接触させることであって、刺激流体が、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩、および酸成分を含む、接触させることを含む、累層岩を処理する方法も提供する。
【0014】
フルオロ無機アニオンは、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0015】
窒素塩基は、尿素、ビウレット、アルキル尿素、アルカノールアミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ポリアミン、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0016】
酸成分は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メチルスルホン酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0017】
累層岩は、石英、方解石、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、カルシウム、マグネシウム、鉄、酸化鉄、硫化鉄、鉛、ヒ素、アンチモン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される部層を含み得る。
【0018】
本開示はまた、スケールを、刺激流体と接触させることであって、刺激流体が、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩、および酸成分を含む、接触させることを含む、スケールを処理する方法も提供する。本方法はまた、刺激流体を井戸の坑井に導入するステップであって、井戸が、スケールを含む、導入するステップと、スケールを刺激流体と接触させるステップと、を含み得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、スケールは、パイプライン、熱交換器、蒸発器、累層岩、加熱ユニット、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される部材上に位置する。
【0020】
前述は、後に続く発明を実施するための形態をより良好に理解することができるように、本開示の特徴および技術的利点を概括的に概説した。本願の特許請求の範囲の主題を形成する、本開示のさらなる特徴および利点は、以下に説明される。開示される概念および具体的な実施形態は、本開示と同じ目的を実行するための他の実施形態を修正または設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者により理解されるべきである。そのような等価の実施形態はまた、添付の特許請求の範囲に明記される本開示の趣旨および範囲から逸脱しないことが、当業者により認識されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
発明の詳細な説明を、以下の図面に対する具体的な参照とともに本明細書において以下に説明する。
【0022】
図1】異なる流体を使用したさまざまな溶解試験からの結果を示すグラフである。
図2】異なる流体を使用したさまざまな溶解試験からの結果を示すグラフである。
図3】異なる流体を使用したさまざまな溶解試験からの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、刺激流体、刺激流体を使用して岩を処理する方法、刺激流体を使用して地熱井などの井戸を処理する方法、および刺激流体を使用してスケールを処理する方法を提供する。本開示によれば、スケールに関して、「処理」は、防止、溶解、除去、低減、上記の任意の組み合わせ、およびスケールを本開示の刺激流体と接触させることによって起こり得る任意の他の効果を含み得る。岩に関して、「処理」は、溶解、除去、低減、上記の任意の組み合わせ、および岩を本開示の刺激流体と接触させることによって起こり得る任意の他の効果を含み得る。さらに、「岩」、「累層岩」、「貯留岩」などの用語は、互換的に使用され、石英などのすべての固体鉱物材料、および例えば地熱井に見られる任意の他の岩を含むことが意図される。いくつかの実施形態では、「刺激」は、地熱井からのブラインの流動を増加させるために使用されるプロセスを指す。
【0024】
本明細書に開示される刺激流体は、さまざまな成分を含み得る。例えば、刺激流体は、連続相として、水性キャリア流体を含み得る。水性キャリア流体は、淡水、酸性水、塩水、海水、生成水、またはそれらの任意の組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、刺激流体はまた、1つ以上の有機溶媒も含み得る。
【0025】
本明細書に開示される刺激流体はまた、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩、および酸成分も含む。いくつかの実施形態では、フルオロ無機アニオンは、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、フルオロ無機アニオンは、テトラフルオロボレートを含む。その上、刺激流体は、フッ素原子を含有するテトラフルオロボレートおよび/またはヘキサフルオロホスフェートの加水分解生成物を含み得る。
【0026】
窒素塩基(例えば、尿素)はフルオロ無機酸(例えば、フルオロホウ酸)と反応して、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩(例えば、尿素テトラフルオロホウ酸塩)を形成することができる。いくつかの実施形態では、窒素塩基は、尿素、ビウレット、アルキル尿素、アルカノールアミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ポリアミン、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、窒素塩基は、尿素を含む。
【0027】
他に示されない限り、本明細書に記載される「アルキル」基は、単独でまたは別の基の一部として、任意に置換された直鎖飽和一価炭化水素基、または任意に置換された分岐飽和一価炭化水素基である。直鎖または分岐鎖アルキル基は、1~32個の炭素原子をいずれかに有し得る。非置換アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチルなどが挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、一般にフルオロホウ酸(HBF)と称されるテトラフルオロホウ酸は、窒素塩基と組み合わされて、対応するテトラフルオロホウ酸塩を形成する。本開示のより広義な態様と一致して、塩基性強度に関して1つ以上の実質的に同等の塩基、または塩基性の機能性を付与する化合物を、尿素の代わりに、または尿素と組み合わせて使用することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、刺激流体は、例えば、約1:3~約5:1、約1:3~約3:1、または約1:2~約3:1の塩を調製するために使用される窒素塩基(尿素など)とフルオロ無機酸(テトラフルオロホウ酸など)とのモル比を含み得る。窒素塩基、例えば尿素成分は、テトラフルオロホウ酸などの無機酸と反応して、尿素テトラフルオロボレートなどの窒素塩基の塩を形成し得る。
【0030】
刺激流体中の窒素塩基(尿素など)と、無機酸(テトラフルオロホウ酸)との塩の濃度は、例えば、約1重量%~約50重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約15重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約15重量%、約5重量%~約90重量%、約10重量%~約80重量%、約50重量%~約70重量%、約50重量%~約60重量%、約60重量%~約90重量%、約60重量%~約80重量%、約60重量%~約70重量%、約70重量%~約90重量%、約80重量%~約90重量%、または約70重量%~約80重量%であり得る。
【0031】
本明細書に開示される刺激流体はまた、酸成分も含む。いくつかの実施形態では、酸成分は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メチルスルホン酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。しかしながら、酸成分は、上記に限定されない。加えて、本開示の刺激流体は、フッ化水素酸などの上記の酸のいずれも含まない場合がある。一般に、本明細書に明示的に開示される任意の成分は、刺激流体に含まれ得るか、または刺激流体に含まれない場合がある。
【0032】
いくつかの実施形態では、刺激流体は、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を約1重量%~約50重量%、かつ酸成分を約1重量%~約50重量%含む。例えば、刺激液は、酸成分を約15重量%、かつフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を約30重量%含み得るか、刺激液は、酸成分を約5重量%~約15重量%、かつフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を約5重量%~約15重量%含み得る。追加の例として、刺激流体は、酸成分を約5重量%、かつフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を約5重量%含み得る。刺激流体の残りは、例えば、水性キャリア流体、溶媒、追加の添加剤などを含み得る。
【0033】
上記成分に加えて、本開示の刺激流体は、1つ以上の追加の添加剤を含み得る。添加剤としては、界面活性剤、ゲル安定剤、酸化防止剤、浸透性改質剤、スケール防止剤、腐食防止剤、発泡剤、消泡剤(defoaming agent)、消泡剤(antifoaming agent)、乳化剤、脱乳化剤、鉄分調整剤、プロパントまたは他の微粒子、微粒子ダイバータ、塩、酸、流体損失調整添加剤、ガス、触媒、粘土調整剤、分散剤、凝集剤、捕捉剤(例えば、HS捕捉剤、CO捕捉剤、またはO捕捉剤)、ゲル化剤、潤滑剤、摩擦低減剤、架橋剤、増粘剤、加重剤、可溶化剤、pH調整剤(例えば、緩衝剤)、水和物防止剤、固結剤、殺菌剤、触媒、粘土安定剤、ブレーカー、遅延放出ブレーカーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの添加剤のいずれかの組み合わせも使用され得る。
【0034】
尿素とテトラフルオロホウ酸との上記塩は、米国特許第8,389,453号および同第8,796,195号に開示されており、その内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0035】
刺激流体中のさまざまな成分/添加剤の相対量および/または濃度は、流体の所望の機能、処理される岩の量、処理されるスケールのレベルなどに応じて、大きく変動し得る。
【0036】
前述のように、本明細書に開示される岩は、多くの異なる鉱物を含み得る。いくつかの実施形態では、岩は、石英、方解石、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、カルシウム、マグネシウム、鉄、酸化鉄、硫化鉄、鉛、ヒ素、アンチモン、非晶質シリカ、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分を含む。いくつかの実施形態では、岩は、石英、方解石、非晶質シリカ、およびそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、岩は、石英および/または方解石を含む。
【0037】
本開示によれば、「スケール」という用語は、鉱物の固形物および/または堆積土砂を含む堆積物/コーティングを指すために使用される。堆積物/コーティングは、岩の表面などのさまざまな表面、または熱交換器もしくはパイプラインなどの機器の一部の表面上に形成され得る。いくつかの実施形態では、スケールは、カルシウム塩、マグネシウム塩、シリカ、輝安鉱(硫化アンチモン)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される部材を含む。
【0038】
本明細書に開示される刺激流体は、岩を処理するために使用され得、処理は、岩の一部または全部を溶解することを含み得る。いくつかの実施形態では、岩は、地熱井、油井、ガス井、注入井、および/または生産井などであるがこれらに限定されない井戸内に存在する。刺激流体は、岩に接触して処理するダウンホールに注入される。岩を処理することによって、刺激流体は、岩または岩の一部を溶解して、鉱脈、細孔などを形成し、例えば、地熱流体または油の流動を強化し得る。刺激流体は、化学注入ポンプを使用して井戸の坑井に注入され得る。当該技術分野で既知の他の方法を使用して、刺激流体を井戸に導入し得る。そのような他の方法としては、例えば、オンラインまたはオフラインの両方を含む、さまざまな圧力デバイスの使用、滴下、噴霧、および/または浸漬が挙げられる。本開示の刺激流体は、井戸/地下の累層内に見られる岩を処理するために使用され得るか、またはプロセスプラントに位置する岩などの地表から除去された岩を処理するために使用され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、スケールは、地熱流体と接触した位置または機器の一部に存在する。例えば、スケールは、岩の表面の坑井内、パイプライン内、またはタービン上に存在し得る。方法は、例えば、タービン上のスケール堆積物を、本明細書に開示される刺激流体と接触させること、またはパイプライン内のスケール堆積物を、本明細書に開示される刺激流体と接触させることを含み得る。加えてまたはあるいは、本明細書に開示される刺激流体は、スケール堆積物が形成されるのを防止するために地熱流体に添加され得る。
【0040】
本開示の特定の態様は、岩を処理する方法に関する。本方法は、刺激流体を、岩を含む井戸の坑井に導入することと、岩を刺激流体と接触させて、それによって岩を処理することと、を含む。刺激流体は、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩、および酸成分を含む。井戸は、地熱井であり得る。フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩は、尿素テトラフルオロボレートであり得る。酸成分は、フッ化水素酸を含まない場合がある。刺激流体は、水性キャリア流体および腐食防止剤を含み得る。刺激流体を使用して、岩を溶解し得、それによって岩内の割れ目、鉱脈、および細孔をより多く開き、それによって追加のスペースが作成され、ブラインの流動に対する抵抗が低くなる。
【0041】
本開示の特定の態様は、スケールを処理する方法に関する。本方法は、刺激流体を、スケールを含む井戸の坑井に導入することと、スケールを刺激流体と接触させて、それによってスケールを処理することと、を含む。刺激流体は、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩、および酸成分を含む。井戸は、地熱井であり得る。フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩は、尿素テトラフルオロボレートであり得る。酸成分は、フッ化水素酸を含まない場合がある。刺激流体は、水性キャリア流体および腐食防止剤を含み得る。
【0042】
本開示の発明に従って使用され得る腐食防止剤は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、腐食防止剤は、イミダゾリン、四級アミン、脂肪酸、リン酸エステル、カルボン酸、アミン、ホスフェート、ポリホスフェート、重金属、またはそれらの組み合わせである。
【0043】
いくつかの実施形態では、腐食防止剤は、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはアリールアミンの四級塩;単環式または多環式芳香族アミン塩;イミダゾリン誘導体;モノ、ジ、もしくはトリアルキル、またはアルキルアリールのリン酸エステル;ヒドロキシルアミンのリン酸エステル;ポリオールのリン酸エステル;およびモノマーまたはオリゴマーの脂肪酸から選択され得る。
【0044】
当業者は、刺激流体に含めるために、適切な量の腐食防止剤を選択し得る。いくつかの実施形態では、刺激流体は、約0~約5重量%、約0~約3重量%、または約0~約1重量%などの、約0~約10重量%の腐食防止剤を含み得る。いくつかの実施形態では、刺激流体は、約0.1~約3重量%、約0.1~約1重量%、または約0.1~約0.5重量%などの、約0.1~約5重量%の腐食防止剤を含む。
【0045】
経時的に、地熱井などの井戸は、生産性を損失し得る。生産性の損失は、貯留層の物理的変化、および/または岩内の鉱脈、亀裂、および細孔を塞ぎ、それによってブラインが流動する空隙を低減させるスケール鉱物の堆積に起因し得る。本開示の刺激流体は、スケールを処理し、スケールが処理されると、刺激流体はまた、あらゆる下層にある岩も処理し得る。
【0046】
本開示はまた、岩を、刺激流体と接触させることであって、刺激流体が、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩、および酸成分を含む、接触させることを含む、岩を処理する方法も提供する。岩は、井戸内に位置する必要はない。岩は、例えば、プロセスプラントに位置し得る。
【0047】
その上、本開示は、スケールを、刺激流体と接触させることであって、刺激流体が、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩、および酸成分を含む、接触させることを含む、スケールを処理する方法を提供する。スケールは、井戸内に位置する必要はない。スケールは、例えば、地熱井内で使用される機器、またはパイプライン、タービン、熱交換器、蒸発器、加熱ユニット、およびそれらの任意の組み合わせなどの地熱井の外側で使用される機器などの、地熱プロセスに関連して使用される機器の一部に位置し得る。
【実施例
【0048】
実施例
【0049】
ドリルカットを入手し、蛍光X線および回折によって分析した。カッティングの組成が表1に示され得る。
【0050】
【表1】
【0051】
カッティングを、約105℃で約24時間乾燥させた。既知量のカッティングを、試料ボトルに添加し、ボトルの重量を記録した。次いで、既知量の流体を、ボトルに添加し、ボトルの重量をもう一度記録した。次いで、ボトルを、振盪浴に入れた。試験には、約40℃~約90℃の範囲の、浴中におけるさまざまな水温を使用した。振盪を、約100rpm~約500rpmで実施した。ボトルを、約4時間~約168時間、浴中に放置した。各試験の最後に、ボトルを浴から取り出し、約5mLの流体をボトルから抜き取り、濾過して、1%溶液(カチオン)のイオンクロマトグラフィー分析にかけた。表2は、濾液分析結果を示す。
【0052】
【表2】
【0053】
カッティングのすべてを溶解する場合、任意のカチオンについて最大濃度の計算を行った。この濃度を、分析された濃度と比較した。溶液の残りおよびカッティングを濾過した。残りのカッティングを重量測定して、溶解の重量パーセントを評価した。
【0054】
図1~3で試験された試料は、表3に示される以下の特性を有していた。
【0055】
【表3】
【0056】
図1~3に見られるように、さまざまな流体ならびにさまざまな元素(Ca、SiO、Mg、Al、およびFe)を試験した。図中の各元素は、上記の5つのカラムを含む。すべての図面図中の各元素の第1のカラムは水であり、値は、x軸上に0として示される(溶解が発生しなかったことを意味する)。第2のカラムは、尿素で中和されたテトラフルオロボレートであるGEO991の4重量%溶液である。第3のカラムは、GEO991の16重量%溶液であり、第4のカラムは、16重量%のHCl溶液である。第5のカラムは、GEO991を約4重量%、かつHClを約12重量%含む流体である。
【0057】
図1~3に示される結果は、本明細書に開示される刺激流体の特定の成分が相乗効果を示すことを示している。例えば、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩(尿素テトラフルオロボレートなど)、および酸成分(塩酸など)は、岩および/またはスケールを溶解するために使用される場合、相乗効果を示す。例えば、図2に関しては、16%のHCl溶液を使用して、SiOを処理した場合、0%の溶解が発生した。尿素テトラフルオロボレートの4%溶液を使用して、SiOを処理した場合、約25%の溶解が発生した。しかしながら、尿素テトラフルオロボレートを約4重量%、かつHClを約12重量%含む流体を使用した場合、約56%の溶解が発生し、これは、HClが単独で使用された場合に溶解に影響を及ぼさなかったので予期せぬことである。
【0058】
本明細書に開示される刺激流体の成分は、相乗効果的に作用して、スケールおよび/または岩を処理し、岩内に見られる開口部、細孔、鉱脈などを拡大し、それによって、地熱生産性を増加させる(生産流動の増加および/または再注入流動の増加を含む)。
【0059】
有利なことには、本開示の刺激流体は、有害な蒸気を発生するフッ化水素酸の使用を含む処理などの他の処理とは対照的に、機能している間はガスを放出しない。本開示の刺激流体はまた、その上フッ化水素酸よりもはるかに腐食性が低い。
【0060】
本明細書に開示される任意の流体は、本明細書に開示される成分/添加剤のいずれかを含み得る、それからなり得る、またはそれから本質的になり得る。本開示によれば、「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、「から本質的になること(consisting essentially of)」などの語句は、特許請求の範囲の範囲を、特定の材料またはステップ、および特許請求された発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料またはステップに限定する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差から生じる誤差内にある引用された値を指し、それらの誤差が判定され得ない場合、「約」は、引用された値の10%以内を指す。
【0062】
本明細書で開示および特許請求される流体および方法のすべては、本開示を考慮して、過度の実験を伴わずに作製および実行され得る。本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本発明の特定の好ましい実施形態が、本明細書で詳細に説明される。本開示は、本発明の原理の例示であり、本発明を例解された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0063】
加えて、明示的に反対の記載がない限り、「a(1つの)」という用語の使用は、「少なくとも1つの」または「1つ以上の」を含むことが意図される。例えば、「a corrosion inhibitor(1つの腐食防止剤)」は、「少なくとも1つの腐食防止剤」または「1つ以上の腐食防止剤」を含むことが意図される。
【0064】
絶対項または近似項のいずれかで与えられる任意の範囲は、双方を包含することを意図するものであり、本明細書で使用されるいかなる定義も、明確にすることを意図するものであり、限定を意図するものではない。本発明の広範な範囲を明記する数値範囲およびパラメータは、近似値ではあるものの、特定の実施例で明記される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含有する。さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、その中に包含されるあらゆる部分範囲(すべての小数値および全体値を含む)を包含するものとして理解されるべきである。
【0065】
さらに、本発明は、本明細書に記載のさまざまな実施形態の一部または全部の、あらゆる可能な組み合わせを包含する。また、本明細書に記載される本発明の好ましい実施形態に対するさまざまな変更および修正が、当業者にとって明らかであろうことも理解されるべきである。そのような変更および修正は、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、かつその意図される利点を縮小することなく行われ得る。したがって、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】