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特表2022-532859メチル化修飾に基づく腫瘍マーカーSTAMP-EP8及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(54)【発明の名称】メチル化修飾に基づく腫瘍マーカーSTAMP-EP8及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20220712BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20220712BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/6886 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564600
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 CN2020087885
(87)【国際公開番号】W WO2020221315
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】201910363470.7
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521036193
【氏名又は名称】上▲海▼奕▲譜▼生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】李 振▲艶▼
(72)【発明者】
【氏名】董 世▲華▼
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR62
4B063QR66
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
SEQ ID NO:1に示されたポリヌクレオチド、又は修飾されたCpGサイトが存在するそのフラグメント、又はそれらと相補する核酸である単離されたポリヌクレオチド及びその用途は提供された。さらに、腫瘍検出用の試薬又はキットを調製するためのポリヌクレオチドの用途、その製造方法、試薬及びその用途、キット、並びに生体外でサンプルのメチル化プロファイルを検出する方法も提供された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) SEQ ID NO:1に示されたヌクレオチド配列のポリヌクレオチド;
(b) (a)のポリヌクレオチドのフラグメントであって、かつその中に少なくとも1個の修飾されたCpGサイトが存在するもの;及び/又は
(c) 上記(a)又は(b)のポリヌクレオチド又はフラグメントと相補する核酸;
を含むことを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
上記の修飾は、5-メチル化修飾、5-ヒドロキシメチル化修飾、5-ホルミル化修飾又は5-カルボキシル化修飾を含むことを特徴とする請求項1に記載された単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
(b)には、上記のポリヌクレオチドのフラグメントに、
SEQ ID NO: 1又は2の204~223位塩基;
SEQ ID NO: 1又は2の1~478位塩基;
SEQ ID NO: 1又は2の513~1040位塩基;
SEQ ID NO: 1又は2の1082~1602位塩基;
SEQ ID NO: 1又は2の1621~2117位塩基;又は
SEQ ID NO: 1又は2の2160~2700位塩基;
が存在することを特徴とする請求項1に記載された単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載されたポリヌクレオチドから転換され、請求項1又は3の配列と対応し、修飾されたCpGサイトのシトシンCが変化しなく、未修飾のシトシンがT又はUに転換することを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
(d) SEQ ID NO:2又はSEQ ID NO: 4に示されたヌクレオチド配列のポリヌクレオチド;
(e) 上記の(d)のポリヌクレオチドのフラグメントであって、かつその中に少なくとも1個の修飾されたCpGサイトが存在するもの;
を含むことを特徴とする請求項4に記載されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
(e)には、上記のポリヌクレオチドのフラグメントに、
SEQ ID NO: 1又は2の204~223位塩基;
SEQ ID NO: 1又は2の1~478位塩基;
SEQ ID NO: 1又は2の513~1040位塩基;
SEQ ID NO: 1又は2の1082~1602位塩基;
SEQ ID NO: 1又は2の1621~2117位塩基;
SEQ ID NO: 1又は2の2160~2700位塩基;
SEQ ID NO: 4又は3の2478~2497位塩基;
SEQ ID NO: 4又は3の2223~2700位塩基;
SEQ ID NO: 4又は3の1661~2188位塩基;
SEQ ID NO: 4又は3の1099~1619位塩基;
SEQ ID NO: 4又は3の584~1080位塩基;又は
SEQ ID NO: 4又は3の1~541位塩基;
が存在することを特徴とする請求項5に記載されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
腫瘍検出用の試薬又はキットを調製するために用いられることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載されたポリヌクレオチドの使用。
【請求項8】
上記の腫瘍が、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などの血液系腫瘍;乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、外陰がん、精巣がん、前立腺がん、陰茎がんなどの婦人科および生殖器系の腫瘍;食道がん、胃がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、胆管がん、胆嚢がんなどの消化器系腫瘍;肺がん、胸膜腫などの呼吸器系腫瘍;神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫などの神経系腫瘍;口腔がん、舌がん、喉頭がん、鼻咽頭がんなどの頭頸部がん;腎臓がん、膀胱がんなどの泌尿器系腫瘍、皮膚がん、黒色腫、骨肉腫、脂肪肉腫、甲状腺がんなどの皮膚および他のシステム腫瘍を含むことを特徴とする請求項7に記載された使用。
【請求項9】
上記の腫瘍のサンプルが、組織サンプル、パラフィン包埋サンプル、血液サンプル、胸水サンプル、肺胞洗浄液サンプル、腹水および洗浄液サンプル、胆汁サンプル、便サンプル、尿サンプル、唾液サンプル、喀痰サンプル、脳脊髄液サンプル、細胞塗抹サンプル、子宮頸部塗抹サンプルまたはブラシサンプル、組織および細胞生検サンプルを含むことを特徴とする請求項7又は8に記載された使用。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一つに記載されたポリヌクレオチドを提供し、上記のポリヌクレオチドの全長又はフラグメントを標的配列とし、当該標的配列を特異性的に検出する検出試薬をデザインすることを含む腫瘍検出試薬を調製する方法;ただし、上記の標的配列には、少なくとも1個の修飾されたCpGサイトが存在する;好ましくに、上記の検出試薬が、プライマー、プローブを含む、方法。
【請求項11】
標的配列のCpGサイトの修飾状況を特異的に検出し、上記の標的配列とは、請求項1~6のいずれか一つに記載されたポリヌクレオチドの全長又はフラグメントであり、ただし、少なくとも1個の修飾されたCpGサイトが存在することを特徴とする試薬又は組み合わせた試薬。
【請求項12】
上記の試薬又は組み合わせた試薬が、上記の標的配列を含む遺伝子配列を標的とし、上記の遺伝子配列が、遺伝子パネル又は遺伝子グループを含むことを特徴とする請求項11に記載された試薬又は組み合わせた試薬。
【請求項13】
上記の試薬又は組み合わせた試薬が、プライマー、プローブを含むことを特徴とする請求項11に記載された試薬又は組み合わせた試薬;好ましくに、上記のプライマーは、
SEQ ID NO:5と6に示されたプライマー;
SEQ ID NO:7と8に示されたプライマー;
SEQ ID NO:9と10に示されたプライマー;
SEQ ID NO:11と12に示されたプライマー;
SEQ ID NO:13と14に示されたプライマー;又は
SEQ ID NO:15と16に示されたプライマーである、試薬又は組み合わせた試薬。
【請求項14】
腫瘍検出用のキットを調製するための、請求項11~13のいずれか一つに記載された試薬又は組み合わせた試薬の使用;好ましくに、上記の腫瘍が、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などの血液系腫瘍;乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、外陰がん、精巣がん、前立腺がん、陰茎がんなどの婦人科および生殖器系の腫瘍;食道がん、胃がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、胆管がん、胆嚢がんなどの消化器系腫瘍;肺がん、胸膜腫などの呼吸器系腫瘍;神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫などの神経系腫瘍;口腔がん、舌がん、喉頭がん、鼻咽頭がんなどの頭頸部がん;腎臓がん、膀胱がんなどの泌尿器系腫瘍、皮膚がん、黒色腫、骨肉腫、脂肪肉腫、甲状腺がんなどの皮膚および他のシステム腫瘍を含む、使用。
【請求項15】
容器、及び容器に位置する請求項11~13のいずれか一つに記載された試薬又は組み合わせた試薬
を含むことを特徴とする検出キット。
【請求項16】
(i)試料を提供し、核酸を抽出すること;
(ii)(i)の核酸における標的配列のCpGサイトの修飾状況を検出し、上記の標的配列は、請求項1~3のいずれか一つに記載されたポリヌクレオチド又はこれから転換されてなる請求項3~6のいずれか一つに記載されたポリヌクレオチドであること;
を含むことを特徴とする生体外でサンプルのメチル化プロファイルを検出する方法。
【請求項17】
ステップ(3)には、分析する方法が、パイロシーケンス法、バイサルファイトシーケンス法、メチル化チップ法、qPCR法、デジタルPCR法、次世代シーケンス法、3世代シーケンス法、全ゲノムメチル化シーケンス法、DNA濃縮検出法、Reduced Representation Bisulfite Sequencing(RRBS)技術、HPLC法、MassArray、メチル化特異的PCR、又はそれらの組み合わせ及びSEQ ID NO:1に示された配列における一部又は全部のメチル化サイトの組み合わせた遺伝子グループの生体外での検出方法及び生体内トレーサー検出方法を含むことを特徴とする請求項16に記載された方法。
【請求項18】
ステップ(ii)が、
(1)その中の未修飾のシトシンがウラシルに転化するように(i)の産物を処理する;好ましくに、上記の修飾が、5-メチル化修飾、5-ヒドロキシメチル化修飾、5-ホルミル化修飾又は5-カルボキシル化修飾を含む;好ましくに、バイサルファイトでステップ(i)に記載された核酸を処理すること;
(2)(1)で処理された核酸における上記の標的配列の修飾状況を分析すること;
を含むことを特徴とする請求項16に記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患診断用マーカー分野に関わり、より具体的に、本発明は、メチル化修飾に基づく腫瘍マーカーSTAMP(Specific Tumor Aligned Methylation of Pan-cancer)及びその応用に関わる。
【背景技術】
【0002】
腫瘍が遺伝病であるという考えは、何十年もの間当分野で根強く残っている。人々の数回の体系的な大規模シーケンスにより、癌組織における体細胞変異の数が、予想よりも大幅に少ないことが確認され、これらの結果は、癌が単純な遺伝病ではないことを示唆している。
【0003】
腫瘍診断を達成するために、近年、多くの新しい腫瘍マーカーが発見され、臨床診断に使用されている。1980年以前は、腫瘍マーカーは主にホルモン、酵素、タンパク質などの細胞分泌物であり、例えば、癌胎児性抗原(CEA)、アルファフェトプロテイン抗原(AFP)などは、胃がんや肝臓がんなどの多くの腫瘍のマーカーであり、炭水化物抗原125(CA125)は子宮頸癌のマーカーとして使用でき、前立腺特異抗原(PSA)は前立腺癌マーカーとして使用でき;このような腫瘍マーカーはまだ臨床で使用されているが、その感度と精度は臨床ニーズを満たすのが困難である。
【0004】
ますます多くの証拠が、エピジェネティック調節の小さな変化が、腫瘍において重要な役割を果たすことを示している。エピジェネティクスとは、遺伝子のDNA配列を変更せずに、遺伝子機能における遺伝可能な変化、及び最終的にもたらされた表現型の変化を研究する学科である。エピジェネティクスには、主にDNAメチル化(DNA methylation))、ヒストン修飾(histone modification)、マイクロRNAレベルの変化などの生化学的プロセスが含まれる。エピジェネティクス機構の一つであるDNAメチル化とは、生体内で、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNA methyltransferase、DMT)の触媒作用下で、S-アデノシルメチオニン(SAM)をメチルドナーとし、メチル基を特定の塩基に転移させるプロセスを指す。哺乳類では、DNAメチル化は主に5’-CpG-3’のCで発生し、5-メチルシトシン(5mC)を生成する。
【0005】
リキッドバイオプシー技術は、血液中の循環腫瘍細胞または循環腫瘍DNAを検出標的として使用する腫瘍を診断および予測する技術である。当該技術は、多くの欠点がある:まず、感度と特異性は十分に高くない;腫瘍自体は非常に不均一で、複数のサブタイプの細胞集団が含まれている;臨床サンプル、特に血液サンプルでは、腫瘍DNAの割合は非常に小さく、既存の腫瘍マーカーが臨床ニーズの感度を満たすことが難しく、臨床で誤診を引き起こしやすい;次、一つのマーカーは一つまたは少数の腫瘍にしか効かなく、血液中のDNAの由来は非常に複雑であるため、既存の腫瘍マーカーは複雑な腫瘍の発生源と転移に対処できない。これらの複雑な状況があるため、多くのDNAメチル化腫瘍マーカーが臨床応用で使用される際に統一の基準を有し難くなり、マーカーの感度と精度にひどく影響を及す。
【0006】
本発明者らの以前の研究では、メチル化修飾に基づくいくつかの腫瘍マーカーが発見されたが、腫瘍診断のためのより多くの手段を提供するために、より多くの新しい腫瘍マーカーを見つける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】CN109971860A
【特許文献2】CN105886657A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的としては、DNAメチル化修飾を腫瘍マーカーとして使用し、腫瘍の特異性サイトで異常な高メチル化を利用して腫瘍を検出する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の様態では、(a) SEQ ID NO: 1に示されたヌクレオチド配列のポリヌクレオチド;(b) (a)のポリヌクレオチドのフラグメントであって、かつその中に少なくとも1個の修飾されたCpGサイト(例えば2~191個、より具体的に3、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、90、110、130、150、170、180、190個)が存在するもの;及び/又は(c) 上記(a)又は(b)のポリヌクレオチド又はフラグメントと相補する核酸(例えばSEQ ID NO: 3に示されたヌクレオチド配列のポリヌクレオチド)を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0010】
一つの好ましい例では、上記の修飾が、5-メチル化修飾、5-ヒドロキシメチル化修飾、5-ホルミル化修飾又は5-カルボキシル化修飾を含む。
【0011】
別の好ましい例では、(b)には、上記のポリヌクレオチドのフラグメントに中、以下のものが存在する:204~223位(021~024号メチル化サイトを含む)塩基;SEQ ID NO: 1又は2の1~478位塩基(001~040号メチル化サイトを含む);SEQ ID NO: 1又は2の513~1040位塩基(041~077号メチル化サイトを含む);SEQ ID NO: 1又は2の1082~1602位塩基(078~114号メチル化サイトを含む);SEQ ID NO: 1又は2の1621~2117位塩基(115~153号メチル化サイトを含む);又はSEQ ID NO: 1又は2の2160~2700位塩基(154~191号メチル化サイトを含む)。
【0012】
本発明の第二の様態では、上記のポリヌクレオチドから転換される、前記の第一の様態の配列と対応する単離されたポリヌクレオチドを提供し、ただし、修飾されたCpGサイトのシトシンCが変化しなく、未修飾のシトシンがT又はUに転換する。
【0013】
一つの好ましい例では、それが、バイサルファイトで処理される前記第一の様態と対応するポリヌクレオチドから転換されてなる。もう一つの好ましい例では、上記のポリヌクレオチドが、(d) SEQ ID NO:2又はSEQ ID NO:4に示されたヌクレオチド配列のポリヌクレオチド;(e) 上記(d)のポリヌクレオチドのフラグメントであって、かつその中に少なくとも1個の修飾されたCpGサイト(例えば2~191個、より具体的に3、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、90、110、130、150、170、180、190個)が存在するものを含む。
【0014】
別の好ましい例では、(e)には、上記のポリヌクレオチドのフラグメントに、以下のものが存在する:204~223位(021~024号メチル化サイトを含む)塩基;SEQ ID NO: 1又は2の1~478位塩基(001~040号メチル化サイトを含む);SEQ ID NO: 1又は2の513~1040位塩基(041~077号メチル化サイトを含む);SEQ ID NO: 1又は2の1082~1602位塩基(078~114号メチル化サイトを含む);SEQ ID NO: 1又は2の1621~2117位塩基(115~153号メチル化サイトを含む);SEQ ID NO: 1又は2の2160~2700位塩基(154~191号メチル化サイトを含む);2478~2497位(021~024号メチル化サイトと対応する)塩基;SEQ ID NO: 4又は3の2223~2700位塩基(001~040号メチル化サイトと対応する);SEQ ID NO: 4又は3の1661~2188位塩基(041~077号メチル化サイトと対応する);SEQ ID NO: 4又は3の1099~1619位塩基(078~114号メチル化サイトと対応する);SEQ ID NO: 4又は3の584~1080位塩基(115~153号メチル化サイトと対応する);又はSEQ ID NO: 4又は3の1~541位塩基(154~191号メチル化サイトと対応する)。
【0015】
本発明の第三の様態では、腫瘍検出用の試薬又はキットを調製するための、前記の第一の様態又は第二の様態に記載されたポリヌクレオチドの用途を提供する。
【0016】
一つの好ましい例では、上記の腫瘍が、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などの血液系腫瘍;乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、外陰がん、精巣がん、前立腺がん、陰茎がんなどの婦人科および生殖器系の腫瘍;食道がん、胃がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、胆管がん、胆嚢がんなどの消化器系腫瘍;肺がん、胸膜腫などの呼吸器系腫瘍;神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫などの神経系腫瘍;口腔がん、舌がん、喉頭がん、鼻咽頭がんなどの頭頸部がん;腎臓がん、膀胱がんなどの泌尿器系腫瘍、皮膚がん、黒色腫、骨肉腫、脂肪肉腫、甲状腺がんなどの皮膚および他のシステム腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【0017】
もう一つの好ましい例では、上記の腫瘍のサンプルが、組織サンプル、パラフィン包埋サンプル、血液サンプル、胸水サンプル、肺胞洗浄液サンプル、腹水および洗浄液サンプル、胆汁サンプル、便サンプル、尿サンプル、唾液サンプル、喀痰サンプル、脳脊髄液サンプル、細胞塗抹サンプル、子宮頸部塗抹サンプルまたはブラシサンプル、組織および細胞生検サンプルを含むが、これらに限定されない。
【0018】
本発明の第四の様態では、腫瘍検出試薬を調製する方法を提供し、上記の方法が、以下を含む:前記第一の様態又は第二の様態に記載されたポリヌクレオチドを提供し、上記のポリヌクレオチドの全長又はフラグメントを標的配列とし、当該標的配列のCpGサイトの修飾状況を特異的に検出する検出試薬をデザインする;ただし、上記の標的配列には、少なくとも1個(例えば2~191個、より具体的に3、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、90、110、130、150、170、180、190個)の修飾されたCpGサイトが存在する;好ましくに、上記の検出試薬が、プライマー、プローブを含むが、これらに限定されない。
【0019】
本発明の第五の様態では、標的配列のCpGサイトの修飾状況を特異的に検出する試薬又は組み合わせた試薬を提供し、ただし、上記の標的配列とは、前記第一の様態又は第二の様態のいずれか一つに記載されたポリヌクレオチドの全長又はフラグメントであり、少なくとも1個(例えば2~191個、より具体的に3、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、90、110、130、150、170、180、190個)の修飾されたCpGサイトが存在する。
【0020】
一つの好ましい例では、上記の試薬又は組み合わせた試薬が、上記の標的配列を含む遺伝子配列を標的とし(上記の遺伝子配列に基づきデザインされ)、上記の遺伝子配列が、遺伝子パネル又は遺伝子グループを含む。
【0021】
もう一つの好ましい例では、上記の検出試薬が、プライマー、プローブを含む。
【0022】
もう一つの好ましい例では、上記のプライマーは、SEQ ID NO:3と4に示されたプライマー;SEQ ID NO:7と8に示されたプライマー;SEQ ID NO:9と10に示されたプライマー;SEQ ID NO:11と12に示されたプライマー;又はSEQ ID NO:13と14に示されたプライマー;又はSEQ ID NO:15と16に示されたプライマーである。
【0023】
本発明の第六の様態では、腫瘍検出用のキットを調製するための、前記の第五の様態に記載された試薬又は組み合わせた試薬の用途を提供する;好ましくに、上記の腫瘍が、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などの血液系腫瘍;乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、外陰がん、精巣がん、前立腺がん、陰茎がんなどの婦人科および生殖器系の腫瘍;食道がん、胃がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、胆管がん、胆嚢がんなどの消化器系腫瘍;肺がん、胸膜腫などの呼吸器系腫瘍;神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫などの神経系腫瘍;口腔がん、舌がん、喉頭がん、鼻咽頭がんなどの頭頸部がん;腎臓がん、膀胱がんなどの泌尿器系腫瘍、皮膚がん、黒色腫、骨肉腫、脂肪肉腫、甲状腺がんなどの皮膚および他のシステム腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の第七の様態では、容器、及び容器に位置する前記の試薬又は試薬の組み合わせを含む検出キットを提供する;好ましくに、各試薬は別々の容器に位置する。
【0025】
一つの好ましい例では、上記のキットは、さらに、バイサルファイト、DNA精製試薬、DNA抽出試薬、PCR増幅試薬及び/又はユーザーマニュアル(検出操作ステップと結果判定標準を表示するもの)を含む。
【0026】
本発明の第八の様態では、(i)試料を提供し、核酸を抽出すること;(ii)(i)の核酸における標的配列のCpGサイトの修飾状況を検出し、上記の標的配列は、前記の第一の様態に記載されたポリヌクレオチド又はこれから転換されてなる前記の第二の様態に記載されたポリヌクレオチドであることを含む、生体外で試料のメチル化プロファイルを検出する方法を提供する。
【0027】
一つの好ましい例では、ステップ(3)には、分析する方法が、パイロシーケンス法、バイサルファイトシーケンス法、メチル化チップ法、qPCR法、デジタルPCR法、次世代シーケンス法、3世代シーケンス法、全ゲノムメチル化シーケンス法、DNA濃縮検出法、Reduced Representation Bisulfite Sequencing(RRBS)技術、HPLC法、MassArray、メチル化特異的PCR(MSP)、又はそれらの組み合わせ及びSEQ ID NO:1に示された配列における一部又は全部のメチル化サイトの組み合わせた遺伝子グループの生体外での検出方法及び生体内トレーサー検出方法を含む。また、他のメチル化検出方法及び将来の新たに開発されるメチル化検出方法も本発明に適用できる。
【0028】
もう一つの好ましい例では、ステップ(ii)が、(1)その中の未修飾のシトシンがウラシルに転化するように(i)の産物を処理する;好ましくに、上記の修飾が、5-メチル化修飾、5-ヒドロキシメチル化修飾、5-ホルミル化修飾又は5-カルボキシル化修飾を含む;好ましくに、バイサルファイトでステップ(i)に記載された核酸を処理すること;(2)(1)で処理された核酸における上記の標的配列の修飾状況を分析すること;を含む。
【0029】
もう一つの好ましい例では、上記のメチル化プロファイル異常とは、当該ポリヌクレオチドCpGにおけるCが、高度にメチル化されることを意味する。
【0030】
もう一つの好ましい例では、上記のメチル化プロファイルの方法は、疾患の診断結果を直接取得することを目的としたものではなく、診断的な方法ではない。
【0031】
本発明の第九の様態では、本発明の第一の様態又は第二の様態に示された配列に基づきデザインされたプライマーペアと、当該配列を含む遺伝子パネル又は遺伝子グループとを含み、DNAメチル化状態の検出によって、正常細胞と腫瘍細胞の特徴を得る腫瘍診断キットを提供する。
【0032】
本文に開示された内容に基づき、当業者にとって、本発明の他の面は自明なものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】SEQ ID NO: 1区域における001-040メチル化サイトの肺がん細胞と正常肺細胞とのメチル化レベルのBSP検証。図の暗いボックスは、メチル化の存在を示す。
図2】SEQ ID NO: 1区域における041-077メチル化サイトの肺がん細胞と正常肺細胞とのメチル化レベルのBSP検証。図の暗いボックスは、メチル化の存在を示す。
図3】SEQ ID NO: 1区域における078-114メチル化サイトの肺がん細胞と正常肺細胞とのメチル化レベルのBSP検証。図の暗いボックスは、メチル化の存在を示す。
図4】SEQ ID NO: 1区域における115-153メチル化サイトの肺がん細胞と正常肺細胞とのメチル化レベルのBSP検証。図の暗いボックスは、メチル化の存在を示す。
図5】SEQ ID NO: 1区域における154-191メチル化サイトの肺がん細胞と正常肺細胞とのメチル化レベルのBSP検証。図の暗いボックスは、メチル化の存在を示す。
図6】白血病臨床サンプルに対して、非がん組織サンプル及びがん組織サンプルにおけるSTAMP-EP8のメチル化値の比較。
図7】乳がん臨床サンプルに対して、腫瘍随伴サンプル及びがん組織サンプルにおけるSTAMP-EP8のメチル化値の比較。
図8】結腸直腸がん臨床サンプルに対して、腫瘍随伴サンプル及びがん組織サンプルにおけるSTAMP-EP8のメチル化値の比較。
図9】食道がん臨床サンプルに対して、腫瘍随伴サンプル及びがん組織サンプルにおけるSTAMP-EP8のメチル化値の比較。
図10】肝臓がん臨床サンプルに対して、腫瘍随伴サンプル及びがん組織サンプルにおけるSTAMP-EP8のメチル化値の比較。
図11】肺がん臨床サンプルに対して、腫瘍随伴サンプル及びがん組織サンプルにおけるSTAMP-EP8のメチル化値の比較。
図12】、膵臓がん臨床サンプルに対して、腫瘍随伴サンプル及びがん組織サンプルにおけるSTAMP-EP8のメチル化値の比較。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明者らが、腫瘍マーカーの研究に取り組んだ結果として、広範な研究とスクリーニングによって、汎用なDNAメチル化腫瘍マーカーSTAMP(Specific Tumor Aligned Methylation of Pan-cancer)を提供し、STAMPは、正常組織では低メチル化状態にあり、腫瘍組織では高メチル化状態にあり、臨床腫瘍の検出や腫瘍診断試薬のデザインの基礎として使用できる。
【0035】
用語
本明細書で使用される場合、「単離」とは、物質をその元の環境から単離することを指す(天然物質である場合、元の環境は自然環境である)。例えば、生細胞において、自然状態にあるポリヌクレオチドとポリペプチドは、単離・精製されないが、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドが自然状態で共存する他の物質から単離される場合、それは単離・精製されるものである。
【0036】
本明細書で使用される場合、「サンプル」または「試料」は、任意の個体または単離された組織、細胞、または体液(血漿など)から得られる、DNAメチル化状態の検出に適した物質を含む。例えば、示されたサンプルが、組織サンプル、パラフィン包埋サンプル、血液サンプル、胸水サンプル、肺胞洗浄液サンプル、腹水および洗浄液サンプル、胆汁サンプル、便サンプル、尿サンプル、唾液サンプル、脳脊髄液サンプル、細胞塗抹サンプル、子宮頸部塗抹サンプルまたはブラシサンプル、組織および細胞生検サンプルを含むが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用される場合、「高(度)メチル化」は、遺伝子配列におけるCpGの高度的なメチル化、ヒドロキシメチル化、ホルミル化またはカルボキシル化修飾の存在を指す。たとえば、メチル化特異的PCR(MSP)分析法の観点から、メチル化特異的プライマーを使用したPCR反応では、陽性のPCR結果が得られると、テスト対象のDNA(遺伝子)領域が高メチル化状態にあることを意味する。例えば、リアルタイム定量的メチル化特異的PCRの場合、高メチル化状態の判定は、コントロール試料のメチル化状態の相対値に基づく統計的差異について分析することができる。
【0038】
遺伝子マーカー
腫瘍を診断するために有用な標的を見つけるために、本発明者らは、広範囲で詳細な研究を行い、STAMP-EP8という標的を確定した。STAMP-EP8遺伝子配列領域のメチル化状態が、腫瘍組織と非腫瘍組織では有意差があるので、STAMP-EP8遺伝子配列領域には異常な高メチル化状態の存在を検出すると、当該受検者が、がんのハイリスクグループであることを判定できる。さらに、STAMP-EP8によって提示される腫瘍組織と非腫瘍組織の間の有意差が、固形腫瘍と非固形腫瘍を含むさまざまな種類の腫瘍に広範に存在する。
【0039】
そして、本発明が、単離されたポリヌクレオチドを提供し、上記のポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 3(SEQ ID NO: 1と逆相補する配列)に示されたヌクレオチド配列を有し、腫瘍細胞において、当該ポリヌクレオチド配列の複数箇所の5’-CpG-3’の塩基Cポジションに、5-メチルシトシン(5mC)が生成される。本発明が、SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 3に示されたヌクレオチド配列のポリヌクレオチドのフラグメントであって、かつ少なくとも1個(例えば2~191個、より具体的に3、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、90、110、130、150、170、180、190個)のメチル化CpGサイトが存在するものも含む。上記のポリヌクレオチド又はフラグメントは、検出試薬又は検出キットのデザインに用いられても良い。
【0040】
本発明のいくつかの具体的な実施例には、上記のポリヌクレオチドのフラグメントは、例えば、SEQ ID NO: 1の281~309位塩基を含むフラグメント(017~020号CpGサイトを含有するもの)である。上記のフラグメントのアンチセンス鎖も使用することができる。これらのフラグメントは、本発明の好ましい実施形態の例である;本発明によって提供される情報によれば、他のフラグメントも選択することができる。
【0041】
なお、SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 2に示されたヌクレオチド配列又は配列フラグメントを含む遺伝子パネル又は遺伝子グループも本発明に含まれる。上記の遺伝子パネル又は遺伝子グループに対して、DNAメチル化状態の検出によって、正常細胞と腫瘍細胞の特徴も得る。
【0042】
上記のポリヌクレオチドは、メチル化状態を分析するためのゲノムの重要な領域として使用することができ、それらのメチル化状態は、当技術分野で既知された様々な技術によって分析することができる。メチル化状態を分析するために使用することができる任意の技術を本発明に適用することができる。
【0043】
上記のポリヌクレオチドをバイサルファイトで処理した後に、メチル化されないシトシンは、ウラシルに転化され、メチル化されたシトシンは、変化しない。
【0044】
そして、本発明が、上記ポリヌクレオチド(それと相補する鎖(アンチセンス鎖)を含む)をバイサルファイトで処理して得るポリヌクレオチドも提供し、SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 4に示されたヌクレオチド配列のポリヌクレオチドを含む。これらのポリヌクレオチドは、検出試薬又は検出キットのデザインに用いられても良い。
【0045】
本発明が、上記ポリヌクレオチド又はそのアンチセンス鎖をバイサルファイトで処理して得るポリヌクレオチドのフラグメントも含み、ただし、少なくとも1個(例えば2~191個、より具体的に3、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、90、110、130、150、170、180、190個)のメチル化CpGサイトが存在する。センス鎖に対応するアンチセンス鎖の各CpGサイトの番号は、本発明によって提供される内容に従って容易に得られる。
【0046】
検出試薬とキット
本発明の新たな発見に基づき、生体外で試料におけるポリヌクレオチドのメチル化プロファイルを検出するための、ポリヌクレオチド配列に基づいてデザインされた検出試薬も提供する。本分野に既知された確定なゲノムの配列、その変異とメチル化状態の検出方法と試薬は、いずれも本発明に適用できる。
【0047】
そして、本発明が、腫瘍検出試薬を調製する方法を提供し、以下を含む:上記のポリヌクレオチドを提供し、上記のポリヌクレオチドの全長又はフラグメントを標的配列とし、当該標的配列を特異的に検出する検出試薬をデザインする;ただし、上記の標的配列には、少なくとも1個のメチル化CpGサイトが存在する。
【0048】
本発明に記載された検出試薬が、プライマー、プローブなどを含むが、これらに限定されない。
【0049】
上記の試薬は、例えばプライマーペアであり、ポリヌクレオチドの配列を知っている場合、プライマーのデザインは当業者に既知されたものであり、2つのプライマーが、増幅される標的遺伝子の特定の配列の両側に隣接している(CpG配列を含み、その中のCpGと相補するのは、元のメチル化された遺伝子領域を標的とするものであり、その中のTpGと相補するのは、元の脱メチル化された遺伝子領域を標的とするものである)。本発明の新たな発見によれば、上記の標的配列の異なる位置にあるCpGサイトまたはそれらの組み合わせについて、当業者は、様々なプライマーまたはプローブまたは他のタイプの検出試薬をデザインすることができ、これらは、本発明の技術案に含まれることを理解すべきである。本発明の好ましい実施例では、上記のプライマーは、SEQ ID NO: 1の001~040号CpGサイトを含む増幅産物を得られるSEQ ID NO: 5と6に示されたプライマー;SEQ ID NO: 1の041~077号CpGサイトを含む増幅産物を得られるSEQ ID NO: 7と8に示されたプライマー;SEQ ID NO: 1の078~114号CpGサイトを含む増幅産物を得られるSEQ ID NO: 9と10に示されたプライマー;SEQ ID NO: 1の115~153号CpGサイトを含む増幅産物を得られるSEQ ID NO: 11と12に示されたプライマー;SEQ ID NO: 1の154~191号CpGサイトを含む増幅産物を得られるSEQ ID NO: 13と14に示されたプライマー;又はSEQ ID NO: 1の021-024号CpGサイトを含む増幅産物を得られるSEQ ID NO: 15と16に示されたプライマー。
【0050】
上記の試薬は、試薬の組み合わせ(プライマー組み合わせ)であっても良く、複数グループのプライマーを含み、複数の上記ポリヌクレオチドを別々に増幅することができる。
【0051】
本発明が、生体外で試料におけるポリヌクレオチドのメチル化プロファイルを検出するキットも提供し、当該キットが、容器、及び容器に位置する上記のプライマーペアを含む。
【0052】
また、上記のキットには、さらに、DNAの抽出、DNAの精製、PCR増幅などに必要な様々な試薬も含んでも良い。
【0053】
さらに、上記のキットは、当業者の使用を便利にするための、検出操作ステップおよび結果判断基準を示すユーザーマニュアルを含むことができる。
【0054】
検出方法
ポリヌクレオチドのメチル化プロファイルは、既存の技術(例えばメチル化特異的PCR(MSP)またはリアルタイム定量的メチル化特異的PCR、Methylight)、または開発中と開発予定の他の技術によって測定することができる。
【0055】
定量的メチル化特異的PCR(QMSP)を使用して、メチル化レベルを検出することもできる。この方法は、MSP法よりも感度の高い、蛍光PCRの連続光学モニタリングに基づくものである。それが高いスループットを有し、かつその結果を分析するための電気泳動の使用を避ける。
【0056】
他の使用できる技術は、パイロシーケンス法、バイサルファイトシーケンス法、qPCR法、次世代シーケンス法、全ゲノムメチル化シーケンス法、DNA濃縮検出法、Reduced Representation Bisulfite Sequencing(RRBS)技術、HPLC法、及び組み合わせた遺伝子グループ検出法などの、当技術分野の通常方法がある。本発明の新たな開示に基づいて、当技術分野で公知されたこれらの技術ならびに開発しようとする技術は、いずれも本発明に適用できることを理解すべきである。
【0057】
本発明の好ましい様態として、生体外で試料におけるポリヌクレオチドのメチル化プロファイルを検出する方法も提供する。上記の方法は、以下の原理に基づくものである:バイサルファイトは、メチル化されていないシトシンをウラシルに変換でき、その後のPCR増幅プロセスでチミンに変換されるが、メチル化されたシトシンは変化しない;したがって、ポリヌクレオチドをバイサルファイトで処理した後、メチル化されたサイトには、C/Tのようなポリヌクレオチド多型(SNP)が生成される。上記の原理に基づいて試料におけるポリヌクレオチドのメチル化プロファイルを検出すると、メチル化シトシンと非メチル化シトシンを効果的に区別できる。
【0058】
本発明に記載された方法が、以下を含む:(a)試料を提供し、ゲノムDNAを抽出する;(b)バイサルファイトでステップ(a)のゲノムDNAを処理し、ゲノムDNAにおけるメチル化されていないシトシンをウラシルに転化する;(c)ステップ(b)で処理されたゲノムDNAにメチル化プロファイル異常の存在の有無を分析する。
【0059】
本発明の方法は、(i)受験者の試料に検出を行い、受験者が腫瘍を罹患しているかどうかを分析すること;(ii)腫瘍のハイリスクグループを区別することに用いられても良い。上記の方法は、直接的な疾患診断結果を得ることを目的としない状況でもあり得る。
【0060】
本発明の好ましい実施例において、DNAメチル化は、PCR増幅およびパイロシーケンシングによって検出されるが、当業者は、実際の応用には、当該方法に限定されず、他のDNAメチル化検出方法も可能であることを理解すべきである。PCR増幅に使用されるプライマーは、実施例で提供されるものに限定されない。
【0061】
ゲノムDNAはバイサルファイトで処理された後に、メチル化されていないシトシンはウラシルに変換され、その後のPCRプロセスでチミンに変換されることが、ゲノムの配列の複雑さを軽減するので、PCRによる特定の標的フラグメントの増幅がより困難になる。したがって、好ましくに、ネステッドPCR増幅を採用し、外周と内周に2ペアのプライマーをデザインし、2回のPCR増幅反応を行ってもよく、1回目の増幅産物を2回目の増幅のテンプレートとして使用し、増幅の効率と特異性を効果的に改善することができる。しかしながら、本発明で利用可能な検出方法はこれに限定されないことを理解すべきである。
【0062】
臨床サンプルに関する研究および検証によって、本発明の方法は、臨床腫瘍の診断に使用される場合、非常に高い精度を有する。本発明は、腫瘍補助診断、治療効果判断、予後モニタリングなどの分野に適用することができ、高い臨床応用価値を有する。
【0063】
以下、具体的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の単なる例示であることが理解されるべく。以下の実施例における特定の条件を特定しない実験方法は、通常に、J.Sambrookら、Guide to Molecular Cloning、Third Edition、Science Press、2002に記載された通常条件に従って実施され、或いはメーカーが推奨する条件に従って実施される。
【実施例
【0064】
実施例1:STAMP-EP8の検出に関わる核酸配列
本発明者らは、研究とスクリーニングを繰り返した後に、腫瘍マーカーSTAMP-EP8を得、その配列は、SEQ ID NO: 1(chr8:23562476-23565175,Human/hg19)に示された;ただし、下線が引かれた塩基はメチル化されたCpGサイトであり、下線が引かれた数字はそのサイトの番号を示す。
【0065】
【化1-1】
【化1-2】
【0066】
バイサルファイトで処理された上記のSEQ ID NO:1配列は以下のSEQ ID NO:2の通りである(ただし、YはCまたはUを表す):
【0067】
【化2-1】
【化2-2】
【0068】
上記SEQ ID NO:1に示されたヌクレオチド配列の逆相補配列はSEQ ID NO:3の通りである:
【0069】
【化3】
【0070】
バイサルファイトで処理された上記のSEQ ID NO:3配列は以下のSEQ ID NO:4の通りである(ただし、YはCまたはUを表す):
【0071】
【化4】
【0072】
実施例2:腫瘍細胞株と非腫瘍細胞株の間のSTAMP-EP8 CpGサイトのメチル化の違いーBSP-バイサルファイトシーケンシングPCR(BSP-Bisulfite Sequencing PCR)
当該バイサルファイトシーケンシングPCRのステップは、以下に示された:
1. 肺がん細胞株A549および正常な肺細胞株MRC5からゲノムDNAを抽出した;
2. 肺がん細胞株A549及び正常な肺細胞株MRC5から抽出されたゲノムDNAをそれぞれバイサルファイトで処理し、その後のPCR増幅のテンプレートとした;
3. SEQ ID NO: 1の配列に従って増幅プライマー(SEQ ID NO:5~14)を表1に示されるようにデザインし、増幅を行った。
4. PCR増幅後、2%アガロースゲル電気泳動でPCRフラグメントの特異性を検出し、ゲルを切断して標的フラグメントを回収し、Tベクターをライゲートして挿入し、コンピテント大腸菌を形質転換し、プレートに塗り広げ、2日目に、シーケンスのためにクローンを選択し、サンガーシーケンスのために各フラグメントから10個を超えるクローンを選択した。
【0073】
【表1】
【0074】
SEQ ID NO:1の区域における001-040メチル化サイトの肺がん細胞と正常肺細胞とのメチル化レベルのBSP検証結果は、図1に示され、肺がん細胞のSTAMP-EP8メチル化レベルは、著しく正常肝細胞より高いことを示した。
【0075】
SEQ ID NO:1の区域における041-077メチル化サイトの肺がん細胞と正常肺細胞とのメチル化レベルのBSP検証結果は、図2に示され、肺がん細胞のSTAMP-EP8メチル化レベルは、著しく正常肝細胞より高いことを示した。
【0076】
SEQ ID NO:1の区域における078-114メチル化サイトの肺がん細胞と正常肺細胞とのメチル化レベルのBSP検証結果は、図3に示され、肺がん細胞のSTAMP-EP8メチル化レベルは、著しく正常肝細胞より高いことを示した。
【0077】
SEQ ID NO:1の区域における115-153メチル化サイトの肺がん細胞と正常肺細胞とのメチル化レベルのBSP検証結果は、図4に示され、肺がん細胞のSTAMP-EP8メチル化レベルは、著しく正常肝細胞より高いことを示した。
【0078】
SEQ ID NO:1の区域における154-191メチル化サイトの肺がん細胞と正常肺細胞とのメチル化レベルのBSP検証結果は、図5に示され、肺がん細胞のSTAMP-EP8メチル化レベルは、著しく正常肝細胞より高いことを示した。
【0079】
実施例3:腫瘍細胞株と非腫瘍細胞株の間のSTAMP-EP8 CpGサイトのメチル化の違い-パイロシーケンス法(pyrosequencing)
当該パイロシーケンス法のステップは、以下に示された:
1. 臨床サンプルの入手:臨床から腫瘍随伴/非癌性-癌組織サンプルを得、腫瘍随伴/非癌性サンプルをコントロールグループとし、癌組織サンプルを腫瘍検出実験グループとした;
2. DNAの抽出:それぞれに実験グループとコントロールグループのDNAを抽出した;この実験では、フェノール-クロロホルム抽出法を使用したが、この方法に限定されない;
3. バイサルファイトの処理:抽出されたDNAサンプルをバイサルファイトで処理し、手順に厳密に従った;この実験では、ZYMO Research社のEZDNA Methylation-Gold Kit、アイテム番号D5006を使用したが、このキットに限定されない;
4. プライマーのデザイン:STAMP-EP8配列とするSEQ ID NO:1の特徴に基づき、PCR増幅プライマーとパイロシーケンスプライマーをデザインした;021-024号CpGサイトのメチル化値を検出し、STAMP-EP8メチル化値の代表として、PCRプライマー増幅配列、パイロシーケンスプライマー配列、パイロシーケンスマシン検出配列及び検出サイトは、SEQ ID NO 15~18に示された(表2);
5. PCR増幅とアガロースゲル電気泳動:バイサルファイトで処理されたサンプルをPCRのテンプレートとして使用し、PCR増幅を行い、増幅産物は、PCR増幅の特異性を特定するためにアガロースゲル電気泳動によって特定された;
6. パイロシーケンシング:QIAGEN会社のPyroMark Q96 IDパイロシーケンサーで検出し、ユーザーマニュアルのステップに従って厳密に操作した;
7. STAMP-EP8のメチル化値の計算:パイロシーケンシングは、標的領域の各CpGサイトのメチル化値を独立に検出することができる;サンプル中のSTAMP-EP8のメチル化値として、すべてのCpGサイトの平均メチル化値を計算した;
8. 結果の分析:腫瘍随伴/非癌性コントロールグループと、腫瘍実験グループとのSTAMP-EP8メチル化値を比較した。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例4:白血病-臨床サンプルの検証-パイロシーケンス法
臨床から得られた8例の非白血病骨髄スミアサンプルをコントロールグループとし、8例の白血病骨髄スミアサンプルを実験グループとし、上記実施例3のパイロシーケンスステップによって、コントロールグループと実験グループのSTAMP-EP8メチル化レベルを比較した。
【0082】
結果は、図6に示されたように、白血病臨床サンプルにおいて、実験グループにおけるSTAMP-EP8のメチル化値は、著しく非癌性組織より高い。
【0083】
実施例5:乳がん-臨床サンプルの検証-パイロシーケンス法
臨床から得られた5例の乳がん腫瘍随伴サンプルをコントロールグループとし、5例の乳がん組織サンプルを実験グループとし、上記実施例3のパイロシーケンスステップによって、コントロールグループと実験グループのSTAMP-EP8メチル化レベルを比較した。
【0084】
結果は図7に示されたように、乳がん臨床サンプルにおいて、実験グループにおけるSTAMP-EP8のメチル化値は、著しく腫瘍随伴組織より高い。
【0085】
実施例6:結腸直腸がん-臨床症例サンプルの検証-パイロシーケンス法
臨床から得られた8例の結腸直腸がん腫瘍随伴サンプルをコントロールグループとし、8例の結腸直腸がんサンプルを実験グループとし、実施例3のパイロシーケンスステップによって、STAMP-EP8のメチル化レベルを分析した。
【0086】
結果は図8に示されたように、結腸直腸がん臨床サンプルにおいて、実験グループにおけるSTAMP-EP8のメチル化値は、著しく腫瘍随伴組織より高い。
【0087】
実施例7:食道がん-臨床症例サンプルの検証-パイロシーケンス法
臨床から得られた10例の食道がん腫瘍随伴サンプルをコントロールグループとし、10例の食道がんサンプルを実験グループとし、実施例3のパイロシーケンスステップによって、STAMP-EP8のメチル化レベルを分析した。
【0088】
結果は図9に示されたように、食道がん臨床サンプルにおいて、実験グループにおけるSTAMP-EP8のメチル化値は、著しく腫瘍随伴組織より高い。
【0089】
実施例8:肝臓がん-臨床症例サンプルの検証-パイロシーケンス法
臨床から得られた8例の肝臓がん腫瘍随伴サンプルをコントロールグループとし、8例の肝臓がんサンプルを実験グループとし、実施例3のパイロシーケンスステップによって、STAMP-EP8のメチル化レベルを分析した。
【0090】
結果は図10に示されたように、肝臓がん臨床サンプルにおいて、実験グループにおけるSTAMP-EP8のメチル化値は、著しく腫瘍随伴組織より高い。
【0091】
実施例9:肺がん-臨床症例サンプルの検証-パイロシーケンス法
臨床から得られた4例の肺がん腫瘍随伴サンプルをコントロールグループとし、4例の肺がんサンプルを実験グループとし、実施例3のパイロシーケンスステップによって、STAMP-EP8のメチル化レベルを分析した。
【0092】
結果は図11に示されたように、肺がん臨床サンプルにおいて、実験グループにおけるSTAMP-EP8のメチル化値は、著しく腫瘍随伴組織より高い。
【0093】
実施例10:膵臓がん-臨床サンプルの検証-パイロシーケンス法
臨床から得られた4例の膵臓がん腫瘍随伴サンプルをコントロールグループとし、4例の膵臓がんサンプルを実験グループとし、実施例3のパイロシーケンスステップによって、STAMP-EP8のメチル化レベルを分析した。
【0094】
結果は図12に示されたように、膵臓がん臨床サンプルにおいて、実験グループにおけるSTAMP-EP8のメチル化値は、著しく腫瘍随伴組織より高い。
【0095】
本出願に言及されている全ての参考文献は、参照として単独に引用されるように、本出願に引用されて、参照になる。理解すべきことは、本発明の上記の開示に基づき、当業者は、本発明を様々な変更または修正を行っても良い、これらの同等の形態も本出願に添付された請求の範囲に規定される範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2022532859000001.app
【国際調査報告】