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特表2022-532895グリセロールと、シクロデキストリンと、オクテニジンとを含有するエラストマーシリコーン組成物
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  • 特表-グリセロールと、シクロデキストリンと、オクテニジンとを含有するエラストマーシリコーン組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(54)【発明の名称】グリセロールと、シクロデキストリンと、オクテニジンとを含有するエラストマーシリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4409 20060101AFI20220712BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20220712BHJP
   A61P 31/02 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220712BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20220712BHJP
   C08L 5/16 20060101ALI20220712BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A61K31/4409
A61K9/70 401
A61K47/10
A61K47/69
A61P31/02
A61K47/02
A61K9/107
C08K5/053
C08L5/16
C08L83/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021568174
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 DK2020050137
(87)【国際公開番号】W WO2020228917
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】19174276.6
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19174565.2
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500085884
【氏名又は名称】コロプラスト アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】アネ レーゼゴー スコウ
(72)【発明者】
【氏名】ピーオトル スタニスラウ マスレク
(72)【発明者】
【氏名】バレリア シアウラ
(72)【発明者】
【氏名】イェンス トーヌー
(72)【発明者】
【氏名】アナス クレスチャン ニルスン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4J002
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA72
4C076AA74
4C076BB31
4C076CC31
4C076CC47
4C076DD38
4C076EE39
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA10
4C086BC17
4C086GA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZB35
4J002AB05W
4J002CP03X
4J002EC056
4J002FD200
4J002GB01
4J002HA07
(57)【要約】
本明細書では、シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、シクロデキストリンと、シリコーンプレエラストマーの重合に使用するために適した金属触媒とを含有するエマルジョン、該エマルジョンから形成されるシリコーンエラストマー、及び該シリコーンエラストマーから形成されるオクテニジン放出のための皮膚パッチが開示される。更に、エマルジョン、シリコーンエラストマー、及び皮膚パッチの形成方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、シクロデキストリンと、前記シリコーンプレエラストマーの重合における使用に適した金属触媒とを含有する、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン。
【請求項2】
前記シクロデキストリンが、α、β、若しくはγ-シクロデキストリン又はそれらの誘導体から選択される、請求項1に記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン。
【請求項3】
前記シクロデキストリンがβ-シクロデキストリンである、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン。
【請求項4】
前記金属触媒がSn又はPtのいずれかである、請求項1~3のいずれかに一項に記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン。
【請求項5】
前記エマルジョンが疎水性活性物質を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン。
【請求項6】
前記疎水性活性物質が、窒素、硫黄、及び/又はリンのうちのいずれか1つ以上の原子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン。
【請求項7】
前記疎水性活性物質がピルテニジン又はその誘導体である、請求項5又は6に記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン。
【請求項8】
前記疎水性活性物質がオクテニジンである、請求項5~7のいずれか一項に記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン。
【請求項9】
シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、少なくとも1種のシクロデキストリンと、オクテニジンとを含有するエマルジョン。
【請求項10】
前記少なくとも1種のシクロデキストリンが、α、β、γ-シクロデキストリンの少なくとも1つ又はそれらの誘導体から選択される、請求項9に記載のエマルジョン。
【請求項11】
前記少なくとも1種のシクロデキストリンがβ-シクロデキストリンである、請求項9又は請求項10に記載のエマルジョン。
【請求項12】
前記シリコーンプレエラストマーが、前記シリコーンプレエラストマーの重合に使用するために適した金属触媒を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項13】
金属触媒がSn又はPtのいずれか、好ましくはPtである、請求項12に記載のエマルジョン。
【請求項14】
シリコーンプレエラストマーが添加される前に、シクロデキストリン及びオクテニジンがグリセロールに溶解される、請求項9~13のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項15】
前記エマルジョン中のグリセロールの濃度が20phr~140phrである、請求項9~14のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項16】
オクテニジンがオクテニジン二塩酸塩である、請求項9~15のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項17】
前記エマルジョン中のオクテニジンの濃度が、エマルジョンの総質量を基準として0.1重量%~6重量%である、請求項9~16のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項18】
前記エマルジョン中の少なくとも1種のシクロデキストリンの濃度が、エマルジョンの総質量を基準として0.1重量%~6重量%である、請求項9~17のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項19】
オクテニジン対シクロデキストリンのモル比が3:1~1:1.5である、請求項9~18のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項20】
前記シリコーンプレエラストマーが2成分シリコーンプレエラストマーである、請求項9~19のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項21】
前記エマルジョンが請求項1~8のいずれか一項に記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンである、請求項9~20のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項22】
グリセロールと少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマー。
【請求項23】
前記グリセロールが少なくとも1種のシクロデキストリンの少なくとも一部を含む別個の相として前記シリコーンエラストマー中に存在する、グリセロールと少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有する請求項22に記載のシリコーンエラストマー。
【請求項24】
グリセロールと少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有し、更に疎水性活性物質を含有する、請求項22又は23のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー。
【請求項25】
前記疎水性活性物質がピルテニジン又はその誘導体である、請求項22~24のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー。
【請求項26】
前記疎水性活性物質がオクテニジン又はオクテニジン二塩酸塩である、請求項22~25のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー。
【請求項27】
請求項1~8のいずれか一項に記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン、又は請求項9~21のいずれか一項に記載のエマルジョンの重合によって形成される、請求項22~26のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー。
【請求項28】
前記エマルジョンの重合が、重合温度で、且つ重合したエマルジョンを得るのに適した重合時間の間、前記エマルジョンを重合することを含む、請求項27に記載のシリコーンエラストマー。
【請求項29】
前記エマルジョンの重合が、1分~120分の重合時間前記エマルジョンを重合することを含む、請求項27又は28に記載のシリコーンエラストマー。
【請求項30】
前記エマルジョンの重合が50℃~90°の重合温度で前記エマルジョンを重合することを含む、請求項27~29のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー。
【請求項31】
グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有する請求項22~30のいずれか一項に記載の前記シリコーンエラストマー(3)を含む、皮膚パッチ(1)。
【請求項32】
前記シリコーンエラストマーが、少なくとも0.1μg/cm/時の投与速度でオクテニジンを放出する、請求項31に記載のシリコーンエラストマー(3)含有皮膚パッチ(1)。
【請求項33】
前記シリコーンエラストマーの厚さ(tEL)が0.05mm~5mmである、請求項30又は請求項32に記載のシリコーンエラストマー(3)含有皮膚パッチ(1)。
【請求項34】
前記シリコーンエラストマーが、不活性プラスチックによって形成された除去可能な層(4)を備える、請求項30~33のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー(3)含有皮膚パッチ(1)。
【請求項35】
前記シリコーンエラストマーが、不活性プラスチックによって形成された支持層(2)を備える、請求項30~34のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー(3)含有皮膚パッチ(1)。
【請求項36】
前記除去可能な層(4)及び前記支持層(2)が、前記シリコーンエラストマーに対して反対側に配置され、前記シリコーンエラストマーの前記厚さ(tEL)によって隔てられる、請求項30~35のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー(3)含有皮膚パッチ(1)。
【請求項37】
前記シリコーンエラストマーが、少なくとも0.1μg/cm/時の投与速度でオクテニジンを放出する、請求項30~36のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー(3)含有皮膚パッチ(1)。
【請求項38】
シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するエマルジョンを形成する方法であって、
i.グリセロールと、オクテニジンと、シクロデキストリンとを混合すること;
ii.透明な溶液が形成されるまで、得られた混合物を撹拌しながら50℃~90℃の温度まで加熱すること;
iii.シリコーンプレエラストマーを添加すること;
iv.エマルジョンが形成されるまでせん断を加えること;
を含む方法。
【請求項39】
前記シリコーンプレエラストマーを添加する前に、前記得られた透明な溶液が5℃~50℃まで冷却される、請求項38に記載のエマルジョンの形成方法。
【請求項40】
前記エマルジョンが、請求項1~8のいずれか一項に記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン、又は請求項9~21のいずれか一項に記載のエマルジョンである、請求項38又は39に記載のエマルジョンの形成方法。
【請求項41】
シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するエマルジョンを重合することを含む、シリコーンエラストマーの形成方法。
【請求項42】
前記エマルジョンが、請求項1~8のいずれか一項に記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン、又は請求項9~21のいずれか一項に記載のエマルジョンである、請求項41に記載のシリコーンエラストマーの形成方法。
【請求項43】
前記エマルジョンが、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法に従って形成されたものである、請求項41又は42に記載のシリコーンエラストマーの形成方法。
【請求項44】
前記エマルジョンを1分~120分重合することを含む、請求項28~30のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマーの形成方法。
【請求項45】
前記エマルジョンを50℃~90°の重合温度で重合することを含む、請求項38~40のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマーの形成方法。
【請求項46】
i.請求項1~21のいずれか一項に従って、シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するエマルジョンを準備すること;
ii.不活性プラスチックから形成された支持層(2)上に前記エマルジョンをキャストすること;
iii.前記エマルジョンを支持層上に塗り、塗布厚さ(tEL)を有する塗布層を形成すること;
iv.前記エマルジョンを重合温度で重合時間重合し、それにより、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマー(3)を形成すること;
を含む、請求項31~37のいずれか1項に記載の皮膚パッチ(1)の形成方法。
【請求項47】
不活性プラスチックから形成された除去可能な層(4)を、前記支持層(2)の反対側の前記シリコーンエラストマー(3)の上に設けることを更に含む、請求項46に記載の皮膚パッチ(1)の形成方法。
【請求項48】
前記エマルジョンを1分~120分重合することを含む、請求項46又は47に記載の皮膚パッチ(1)の形成方法。
【請求項49】
50℃~90°の重合温度で前記エマルジョンを重合することを含む、請求項46~48のいずれか一項に記載の皮膚パッチ(1)の形成方法。
【請求項50】
前記皮膚パッチ(1)を1cm~1000cmのサイズに切断することを含む、請求項46~49のいずれか一項に記載の皮膚パッチ(1)の形成方法。
【請求項51】
オクテニジンを含有する請求項46~49のいずれか一項に記載の皮膚パッチ(1)で創傷部位を覆うことを含む、哺乳動物の皮膚上の創傷部位の治療方法であって、前記皮膚パッチ(1)がある投与速度でオクテニジンを放出し、前記皮膚パッチ(1)が、少なくとも1種のグラム陽性菌又はグラム陰性菌に対する殺菌効果を得るのに十分な有効量のオクテニジンを放出するのに十分な適用時間、前記創傷部位に適用される、治療方法。
【請求項52】
前記哺乳動物がヒトである、請求項51に記載の哺乳動物の皮膚上の創傷部位の治療方法。
【請求項53】
前記少なくとも1種のグラム陽性菌又はグラム陰性菌が、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、又はシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)から選択される、請求項51又は52に記載の哺乳動物の皮膚上の創傷部位の治療方法。
【請求項54】
前記オクテニジン放出の投与速度が少なくとも0.1μg/cm/時である、請求項51~53のいずれか一項に記載の哺乳動物の皮膚上の創傷部位の治療方法。
【請求項55】
前記適用時間が少なくとも1時間である、請求項51~54のいずれか一項に記載の哺乳動物の皮膚上の創傷部位の治療方法。
【請求項56】
前記有効量のオクテニジンが少なくとも0.1μg/cmである、請求項51~55のいずれか一項に記載の哺乳動物の皮膚上の創傷部位の治療方法。
【請求項57】
請求項51~55のいずれか一項に記載の方法において使用するための、請求項31~37のいずれか一項に記載の皮膚パッチ(1)。
【請求項58】
オクテニジン二塩酸塩とβ-シクロデキストリンとの1:1分子複合体。
【請求項59】
グリセロール中の、請求項58に記載のオクテニジン二塩酸塩とβ-シクロデキストリンとの1:1分子複合体。
【請求項60】
請求項1~21のいずれか一項に記載のエマルジョンにおける、請求項58又は59に記載のオクテニジン二塩酸塩とβ-シクロデキストリンとの1:1分子複合体の使用。
【請求項61】
請求項51~56のいずれか一項に記載の、哺乳動物の皮膚上の創傷部位の治療に使用するためのオクテニジン。
【請求項62】
オクテニジンが請求項58又は59によるオクテニジン二塩酸塩とβ-シクロデキストリンとの1:1複合体に存在する、請求項61に記載の哺乳動物の皮膚上の創傷部位の治療に使用するためのオクテニジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
活性物質の放出に適したグリセロールを含有するシリコーンエラストマーの分野内において、少なくとも1種のシクロデキストリン、特にシクロデキストリンと、疎水性活性物質、特にピルテニジン又は例えばオクテニジンなどのその誘導体とを含有する、特にβ-シクロデキストリンとオクテニジン二塩酸塩とを含有する、例えば哺乳動物の皮膚などに活性物質を放出するための新規な組成物について詳述される。
【背景技術】
【0002】
本発明者らのうちの一人であるProf.A.L.Skovの研究グループからの一連の最近の刊行物及び特許出願において、グリセロール包接物を含有するシリコーンエラストマーマトリックスの化学が、そのようなマトリックスの活性物質の放出における使用を含め、検討されてきた。これに関連するいくつかの関連する刊行物には、例えば、P.Mazurek et al.J.Appl.Polym.Sci.,2016,44153,pp.1-8、P.Mazurek et al.Polymer,2016,v 87,pp.1-7、若しくはP.Mazurek et al.,RSC.Adv.,2015,v.5,pp.15379-15386、又はSkov et al.,国際公開第2016/189117A1号パンフレットが含まれる。シリコーンエラストマーは、グリセロールの少なくとも1つの包接相を含めるためのマトリックスを提供し、この少なくとも1つのグリセロール相は、別個の液滴として存在することができ、或いはエラストマーマトリックス中に両連続ネットワークを形成することができる。この技術の基礎は、シリコーンプレエラストマーとグリセロールの2つの液相の混合であり、この混合により、グリセロール-イン-シリコーンのプレエラストマーエマルジョンが形成され、シリコーンプレエラストマーの架橋後のこのエマルジョンは、シリコーンエラストマーマトリックスに埋め込まれた別個のグリセロール相を含む感圧性シリコーンエラストマーマトリックスを形成することができる。何人かの発明者らによる研究からは、埋め込まれたグリセロール相が、グリセロールの複数の別々の小球として、又は部分的若しくは完全に連続シリコーンエラストマーに埋め込まれた連続グリセロール相として(両連続シリコーン-グリセロールエラストマー組成物)、存在できることが示されている。
【0003】
本発明者ら及びその共同研究者によって開示された研究からは、グリセロール-シリコーンエラストマーが概して安定であり、幅広い範囲のシリコーンプレエラストマーから形成できることが示されている。この研究は、一般的にシリコーンプレエラストマーが(非常に)疎水性である場合には、一部のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンが他のものよりも安定性が低いこと、並びに安定剤として機能し、且つグリセロールとシリコーンプレエラストマーとのプレエマルジョン混合物に添加される少量の界面活性剤が、乳化後、後に形成されるグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンを十分な時間安定化させて、埋め込まれたグリセロール相を含有する得られるシリコーンエラストマー組成物を形成するためのプレエラストマーを分離させずに架橋可能にすることも示している。
【0004】
本発明者らのうちの2人であるA.L.Skov及びP.Mazurekによる別の共同研究者との更なる研究では、国際公開第2016/189117A1号パンフレットに詳述されているグリセロールを含有するシリコーンエラストマーマトリックスが、活性物質放出のための調整可能なマトリックスであることが示されており、これによって、含まれる少なくとも1つのグリセロール相の形態が影響を受けることにより、グリセロール相に含まれる活性物質のエラストマーマトリックスからの放出動態がゼロ次放出と一次放出との間で調整可能になる。この更なる研究の中で、一次、ほぼゼロ次、及びゼロ次の放出動態が、様々な親水性活性物質について実証された。
【0005】
シリコーンプレエラストマーとグリセロールの2つの液体は事実上非混和性であることから、混合すると、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンが形成される。シリコーン相を架橋すると、自立型のシリコーン-グリセロール(粘着剤)マトリックスが得られる。
【0006】
当該技術分野で知られているように、重合条件に応じて、シリコーンマトリックスは粘着剤であってもなくてもよい。本発明との関係において、当業者は、必要に応じて粘着性及び/又は非粘着性シリコーンエラストマーマトリックスを調製できることができると考えられており、そのため、本発明のシリコーンエラストマーマトリックスは、いくつかの実施形態では粘着剤であってよく、別の実施形態は、それらの使用目的に応じて非粘着剤であってよい。同様に、いくつかの実施形態では、本発明のシリコーンエラストマーマトリックスを形成するために、粘着性と非粘着性のシリコーンエラストマーの組み合わせを使用することができる。
【0007】
シリコーンは、系に機械的完全性を付与する一方で、グリセロールは、図1に示されているように、シリコーンマトリックス内に均一に分布しているマイクロメートルサイズの液滴の形態で液体フィラーとして機能する。本発明者らのうちの何人かの研究により、サブミクロンの液滴も十分な界面活性剤の添加によって可能であることが示された。シリコーンプレエラストマーとサブミクロンのグリセロール液滴と由来のエマルジョンは、シリコーンプレエラストマーとマイクロメートルサイズの液滴とのエマルジョンと同等に安定であることが見出された。
【0008】
グリセロールは、活性物質の担体として機能し、活性物質は、例えば水性環境と接触するとエラストマーから放出される。グリセロール-シリコーンエラストマーからの親水性活性物質の放出についての推定される機構が図2に示されている。簡潔には、放出は、グリセロールと、シリコーンと、エラストマー組成物の外表面と接触している相(図2では隣接する水相によって示されている)との間の界面で起こる拡散プロセスの結果とみなされる。しかしながら、送達は、グリセロール相及び形成されたエラストマーマトリックスの中での活性物質の拡散による影響も受ける。
【0009】
従来技術である国際公開第2016/189117号パンフレットで報告されているように、シリコーンエラストマーの硬化は、過酸化物に基づく硬化、例えば触媒としてのSnの存在下などでの縮合に基づく硬化、又は例えば触媒としてのPtの存在下などでの付加に基づく硬化のような、当該技術分野で公知の通常の方法を使用して行われ、付加に基づく硬化中、架橋剤のSi-H基はシリコーンプレエラストマー上のビニル基と反応する。一般的に、本発明との関係においては、触媒及び架橋剤を後に添加すると、不均一で塊状のエラストマーマトリックスを形成する傾向のあるエマルジョンになるため、グリセロールを添加する前にいずれの触媒及び架橋剤もプレエラストマー溶液に供給することが好ましい。
【0010】
金属触媒の存在下で縮合硬化又は付加硬化されたシリコーンを使用する場合の最大の課題の1つが、被毒に対する金属触媒の脆弱性であることは当該技術分野で周知である。触媒の毒物には、特に窒素、硫黄、及び/又はリンを含むあらゆる化合物が含まれる。特に、例えばシリコーンエラストマーの付加に基づく硬化における例えば高い変換効率などの高い汎用性のため使用されている白金触媒は、重合前にエマルジョンを形成する物質中の不純物による被毒作用に対して特に脆弱である。白金は高価であり、形成されるシリコーンエラストマーマトリックスに不可逆的に組み込まれるため、本グリセロール-シリコーンエラストマー組成物を商業的に利用する前に触媒被毒を防止するという課題を解決する必要がある。
【0011】
当該技術分野では、上述した問題を解決するための多くの解決手段が知られている。例えばhttp://www.us-tech.com/RelId/1082642/pagenum/2/ISvars/default/Troubleshooting_Platinum_Catalyzed_Silicones.htm(2018年6月20日に接続)を参照のこと。しかしながら、製造プロセスに関連する広く一般的に知られている予防措置を遵守すると、現在研究されている系についても上述した問題のいくつかが軽減される一方で、多くの場合、活性物質は、アクセス可能な活性物質の分子及び/又は活性物質の分子内の官能基を含む可能性があり、この分子基は特に窒素、硫黄、及び/又はリンのうちの1つ以上を含むことから、プレエラストマーエマルジョンのグリセロール相又はシリコーン相のいずれかに含まれる活性物質の存在下では、当該技術分野の標準的な方法は、残念ながら現在の系に関して不十分であることが証明されている。
【0012】
したがって、先行技術の硬化したエラストマー組成物からの放出が意図された活性物質を不活性化せずに金属触媒の保護を可能にする、触媒被毒に対する解決手段を提供することが必要とされている。
【0013】
驚くべきことに、シクロデキストリンの分類に属するもの、特にβ-シクロデキストリンが、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーのエマルジョンを含む組成物において、金属触媒の触媒被毒の防止、特に白金触媒の触媒被毒の防止における使用に適していることが、本発明者らのうちの何人かによって見出された。
【0014】
中国特許出願公開第102716104A号明細書には、β-シクロデキストリンが、N、S、及びPから選択される元素を含む植物油の存在下で、シリコーンゲルの重合プロセスにおける触媒被毒から白金触媒を保護できることが報告されている。保護は、シリコーンの重合前に植物油及びβ-シクロデキストリンの不溶性微粒子を調製することによって得られた。重合後、微粒子は、硬化したシリコーン中で完全なまま且つ非拡散性のままであった。しかしながら、β-シクロデキストリンと調査した植物油との強い相互作用、及び結果として起こる不溶性微粒子の形成は、硬化したシリコーンの植物油の保持能力を増加させ、調査した植物油の得られる送達を制限することによる、先行技術の重大な欠点である。
【0015】
更に、本発明に関し、特に、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーと、硫黄、リン、及び/又は窒素のうちの少なくとも1つの原子を含む少なくとも1種の活性物質とのエマルジョンを含めることに関し、驚くべきことに、本発明者らは、触媒被毒を防止するためにシクロデキストリンを使用できることに気付いた。本発明は、少なくとも白金の触媒被毒の防止におけるシクロデキストリンのこの驚くべき効果を有利に使用して、殺菌創傷ケアのためのオクテニジンを含有するシリコーンエラストマーの既存の皮膚パッチ送達系を改善することを提案する。
【0016】
殺菌創傷ケアの分野では、局所適用後に、特に哺乳動物の体、特に人体に侵入しない殺菌剤、特に哺乳動物、特にヒトの真皮又は血流に侵入しない殺菌剤は、それによって治療を受ける者に害を及ぼす可能性が最小限に抑えられるため、非常に有利である。局所適用における使用に適した有力な殺菌剤のリストは、例えばエタノールやクロルヘキシジンなど数多く存在する。しかしながら、有力な殺菌剤が創傷治癒中に創傷部位に長期間放出されるために創傷被覆材に含めることを考える場合、そのリストはかなり短くなる。いくつかの適切な候補には、スルファジアジン銀又は銀ナノ粒子として提供される銀が含まれ、それらのみならず、ピルテニジン及びその誘導体、例えばオクテニジンなどの疎水性殺菌剤も広く使用されている。
【0017】
特に、カチオン性界面活性系殺菌剤であるオクテニジン(基本薬:オクテニジン二塩酸塩)は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対する幅広い有効性のため、広く注目を集めている(Steward et al.Scientific Reports,2018,8:895)。オクテニジンは、例えば洗口液、創傷洗浄、局所殺菌剤などの広範囲の潜在的な用途と、高い生体適合性及び未知の細菌耐性とを結び付けることが当該技術分野で知られている。その臨界ミセル濃度は、Stewardらによって3.79mMであると推定されている。懸濁液中でのオクテニジンの有効濃度は、通常0.005重量%超、例えば0.01重量%、0.015重量%、0.020重量%、0.025重量%、又は0.030重量%である。
【0018】
【表1】
【0019】
創傷被覆材の分野では、製剤には、少量のグリセロールと共に製剤化されたヒドロゲル、例えばヒドロキシエチルセルロース4000を含むヒドロゲル(例えば米国特許出願公開第2011/0091551号明細書を参照)と、オクテニジンとが含まれる。ポリマーマトリックス内に含まれる活性物質の局所薬物送達に適した様々なポリマーに基づく製剤(例えば国際公開第2008/008617号パンフレット、国際公開第2010/005680号パンフレット、国際公開第2014/044869号パンフレットを参照)、及びオクテニジンを含有するシリコーン由来のポリマーマトリックスも科学的な注目を集めている(国際公開第2007/124855号パンフレット、米国特許出願公開第2016/0106104号明細書を参照)。しかしながら、上述した製剤は、哺乳動物、例えばヒトの皮膚にオクテニジンを供給するために適している一方で、提案された製剤は、バースト送達や早いオクテニジン枯渇などの送達動態の欠点の問題を抱えており、そのため、皮膚パッチの下の創傷部位へのオクテニジンの送達は、安定な送達及び/又は一定の長時間の送達など不利である。
【0020】
本発明者らは、今回、ピルテニジン及びその誘導体、特に及び好ましくは、とりわけ、オクテニジンのゼロ次又はほぼゼロ次の長時間にわたる放出を可能にし、それによってバースト効果が回避され、創傷治癒に必要な長い時間、創傷部位でのオクテニジンの有効濃度が維持されるように製剤可能なオクテニジンを含む、皮膚シリコーンパッチの改善を提示している。
【0021】
定義
本文脈において、「シリコーンエラストマー」という用語は、式-RR’SiO-のシロキサンの繰り返し単位から構成される任意の不活性化合物を含むポリマーを指し、式中のR及びR’は同じ又は異なる炭化水素基であり、この用語は、IUPACの定義に従って、ゴム様の弾性を示すポリマーとして使用される。グリセロール相の存在下で重合されると、本発明のシリコーンエラストマーは、グリセロール相のマトリックスを形成し、シリコーンエラストマーマトリックスの中にグリセロール相を埋め込む。
【0022】
本文脈では、「ポリシロキサン」という用語は、[RR’SiO]nの形態の化合物を指し、式中、R及びR’は同じ又は異なる炭化水素基であり、nは繰り返し単位の数である。「ポリシロキサン」という用語は、[RR’SiO]nの形態の化合物も指し、これは、複数のR、R’基が置換基によって置き換えられている又は置換されているという意味で部分的に官能化されていてもよい。そのような置換基の非限定的な例としては、Cl、CN、F、OH、アルケニル、及びアルキニルが挙げられる。更に、架橋に使用されるシリコーン化合物又はシリコーンプレエラストマー又は添加剤は、SiH、SiOR、Si-オキシム、及びSi-カルボキシレート官能基を含む化合物を含む、当該技術分野で知られている官能基を含み得る。
【0023】
本文脈では、「PDMS」と略される「ポリジメチルシロキサン」という用語は、式CH[Si(CHO]Si(CH(nは繰り返し単位の数である)の化合物を指す。「ポリジメチルシロキサン」という用語には、PDMS中の1つ以上のメチル基が、例えば、ペンダント又は末端位置にあるSiH、ヒドロキシ基、ビニル基、アリル基によって置き換えられているその誘導体が包含される。
【0024】
本発明との関係において、シリコーンプレエラストマーという用語は、重合及び/又は架橋後に、本発明における使用に適したシリコーンエラストマーマトリックスを形成する任意のシリコーン出発組成物を表すために使用される。状況によっては、シリコーンプレポリマーという用語も使用され、シリコーンプレポリマーは、シリコーンプレポリマーがシリコーンエラストマーの形成に適した関連するモノマー及オリゴマーからのシリコーンの完全な重合を必要とするのに対し、プレエラストマーが、シリコーンポリマーの架橋のみがシリコーンエラストマーを形成するための次の必要な工程である予め形成されたシリコーンポリマーも含むという点で、シリコーンプレエラストマーの下位群である。
【0025】
本発明との関係において、及び本発明の実施形態で使用するために、本発明で使用するために適したシリコーンエラストマーは、国際公開第2016/189117A1号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の教示に従って、シリコーンモノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーから形成することができる。本発明で使用するために適したモノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーには、とりわけ、本明細書で上述したようなモノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーが含まれる。一般に、本発明は、選択されたシリコーンエラストマーが、ミセルであるか両連続であるかにかかわらず、含まれるグリセロール相のマトリックスエラストマーを形成できる限り、粘着剤であるか否かにかかわらずシリコーンエラストマーの具体的な選択によって制限されない。本発明で使用するための具体的なシリコーンプレエラストマーの適合性についての簡単な試験は、国際公開第2016/189117A1号パンフレットに詳述されている通りのグリセロール含有シリコーンエラストマーを調製する方法を使用して、20phr~140phrのグリセロールの存在下でシリコーンプレエラストマーがシリコーンエラストマーを形成するか否かである。
【0026】
本発明との関係において、シリコーンプレエラストマーは、架橋後に非粘着性及び粘着性のシリコーンエラストマーが得られるように配合することができる。
【0027】
本文脈では、「硬化」という用語は、ポリマー鎖の架橋のプロセスを指す。
【0028】
本文脈では、「架橋剤(crosslinker、crosslinking agent)」という用語は交換可能に使用され、ポリマー鎖、特にシリコーンポリマー鎖の架橋を促進する化合物又は化合物群を指す。架橋剤の実際の組成に対する具体的な制限は、選択された言葉によって推測されるべきではなく、或いはそれによって意図されるべきではない。架橋剤の例は、例えば金属、小分子、高分子架橋剤、更には架橋プロセスに関与する2種以上の活性架橋剤を含有する架橋組成物であってもよい。
【0029】
本文脈では、全ての組成物中のグリセロール含有量を説明するために使用される「phr」という用語は、シリコーンプレエラストマー100重量部あたりのグリセロール重量に対応する。
【0030】
本文脈では、「薄膜」という用語は、約0.01mm~20mm、例えば約0.05mm~10mm、例えば約0.1mm~5mm、例えば約0.5mm~2.5mm、例えば約1mmのような典型的な厚さ範囲を有するエラストマー膜を指す。
【0031】
本文脈では、賦形剤という用語は、本発明のシリコーン相又はグリセロール相のいずれかに添加される物質の意味で使用される。したがって、本開示の文脈において、賦形剤は、グリセロール又はシリコーンのいずれかに加えて、本発明の組成物中に含まれる物質である。賦形剤は、例えば、活性物質、特にヒト若しくは動物用の活性物質、特に薬物からなる群から、並びに/又は触媒、抑制剤、流動化剤、シリコーンオイル、溶剤、充填剤、発泡剤、強化物質、及び可塑剤から選択することができる。賦形剤の他の例は本明細書の以下に示されている。
【0032】
本発明との関係において、活性物質は、本明細書に詳述されるように、ゼロ次以上の放出速度に従って本発明の組成物から放出され得る物質である。特に、活性物質には、本発明の組成物から放出されるとヒト又は動物の体の表面又は中で化学的及び/又は生物学的に活性である物質(薬理学的有効成分及び/又は薬剤など)が含まれることが意図されている。
【0033】
本発明との関係において、皮膚パッチ又は(同義的に)スキンパッチは、例えば哺乳動物の皮膚上に配置された場合、特にヒトの皮膚上に配置された場合に、活性物質又は薬剤を皮膚に送達する薬用貼付パッチである。したがって、本発明との関係において、皮膚パッチという用語は、本発明の対象を経皮パッチと区別するために使用され、経皮パッチは、哺乳動物の皮膚上に経皮パッチを配置したときに、特にヒトの皮膚上に経皮パッチを配置したときに、薬剤又は活性物質を血流に送達することができる薬剤又は活性物質を含む皮膚パッチであるとみなされる。
【0034】
本開示全体を通じて、シクロデキストリンという用語は、例えばメチル化シクロデキストリンなど、5個以上であるが10個未満であるα-D-グルコピラノシド単位を連結する、1->4によって形成される閉環した円錐形の分子及びそれらの誘導体を表すために使用される。本発明の実施形態における好ましいシクロデキストリンは、α、β、若しくはγ-シクロデキストリン(図3を参照)、又はそれらの誘導体、例えばメチル化シクロデキストリンなどである。本発明の実施形態において特に好ましくは、シクロデキストリンはβ-シクロデキストリンである。本開示全体を通じて、様々なシクロデキストリンの略記法が使用される場合があり、例えばβ-シクロデキストリンについてはβCD、α-シクロデキストリンについてはαCD、γ-シクロデキストリンについてはγCDなどである。
【0035】
本開示全体を通じて、ピルテニジンは、N,1-ジオクチルピリジン-4-イミンに対して使用され、オクテニジン及びオクテニジン二塩酸塩は、N-オクチル-1-[10-(4-オクチルイミノピリジン-1-イル)デシル]ピリジン-4-イミン二塩酸塩(図4を参照)と互換的に使用される。ピルテニジンは電荷を持たない共有結合性有機化合物として単離される一方で、オクテニジンは(通常)二塩酸塩として単離される。しかしながら、出発物質がオクテニジン二塩酸塩である本発明の組成物中では、オクテニジン二塩酸塩が、グリセロール及びシリコーンプレエラストマーと混合した後にその塩酸塩分子の一方又は両方を失うかについてはまだ不明である。したがって、本開示との関係においては、オクテニジンは、N-オクチル-1-[10-(4-オクチルイミノピリジン-1-イル)デシル]ピリジン-4-イミン及びその任意の塩、特にN-オクチル-1-[10-(4-オクチルイミノピリジン-1-イル)デシル]ピリジン-4-イミン二塩酸塩を意味すると解釈するものとする。塩酸塩の存在を強調することが意図されている場合には、本開示は、より長い用語のオクテニジン二塩酸塩が使用される。本開示との関係において、オクテニジンは、2つのピルテニジン分子の縮合によるピルテニジンの誘導体とみなされ、これによりオクテニジンと2つのC脱離基とが得られる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の第1の態様では、シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、シクロデキストリンと、シリコーンプレエラストマーの重合における使用に適した金属触媒とを含有する、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンが開示される。
【0037】
本発明の第2の態様では、グリセロールとシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマー、好ましくは、本明細書に開示の実施形態のいずれかによるグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの重合によって形成されるシリコーンエラストマーが開示される。
【0038】
好ましい実施形態では、シリコーンエラストマーは、疎水性活性物質、好ましくはグリセロール相に含まれる疎水性活性物質を含む。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、少なくとも1種のシクロデキストリンと、オクテニジンとを含有する、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンが開示される。好ましい実施形態では、シクロデキストリンはβ-シクロデキストリンである、及び/又はオクテニジンはオクテニジン二塩酸塩である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマー、好ましくは、本明細書に開示の第1の態様のいずれかの実施形態によるグリセロール-イン-シリコーン-プレエラストマーエマルジョンの重合によって形成されるシリコーンエラストマーが開示される。好ましくは、シリコーンエラストマーは、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含めるためのシリコーンエラストマーマトリックスである。
【0041】
本発明の第3の態様では、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマー(3)含む皮膚パッチ(1)が開示され、シリコーンエラストマーは、第2の態様のいずれかの実施形態によるものである。
【0042】
本発明の第4の態様では、シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンを形成する方法が開示され、この方法は、
i.グリセロールと、オクテニジンと、シクロデキストリンとを混合すること;
ii.透明な溶液が形成されるまで、得られた混合物を撹拌しながら50℃~90℃の温度まで加熱すること;
iii.シリコーンプレエラストマーを添加すること;
iv.エマルジョンが形成されるまでせん断を加えること;
を含む。
【0043】
本発明の第4の態様の好ましい実施形態では、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンは、第1の態様のいずれかの実施形態によるエマルジョンである。
【0044】
本発明の第5の態様では、シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンを重合することを含む、シリコーンエラストマーの形成方法が開示される。本発明の第4の態様の好ましい実施形態では、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンは、第1の態様のいずれかの実施形態によるグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンである。
【0045】
本発明の第6の態様及びその実施形態では、
i.本明細書に記載の態様及び実施形態のいずれかに従って、シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するエマルジョンを準備すること;
ii.不活性プラスチックから形成された支持層(2)上にエマルジョンをキャストすること;
iii.エマルジョンを支持層上に塗り、塗布厚さ(tEL)を有する塗布層を形成すること;
iv.エマルジョンを重合温度で重合時間重合し、それにより、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマー(3)を形成すること;
を含む、第3の態様の実施形態のいずれかによる皮膚パッチ(1)の形成方法が開示される。
【0046】
本発明の第7の態様及びその実施形態では、オクテニジンを含む第3の態様の実施形態のいずれかによる皮膚パッチ(1)で創傷部位を覆うことを含む、哺乳動物の皮膚上の創傷部位を治療する方法であって、皮膚パッチ(1)がある投与速度でオクテニジンを放出し、皮膚パッチ(1)が、少なくとも1種のグラム陽性菌又はグラム陰性菌に対する殺菌効果を得るのに十分な有効量のオクテニジンを放出するのに十分な適用時間、創傷部位に適用される治療方法が開示される。好ましい実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0047】
本発明の第8の態様及びその実施形態では、オクテニジン二塩酸塩とβ-シクロデキストリンとの1:1分子複合体が開示される。好ましい実施形態では、1:1の複合体は、グリセロールに可溶化される。更に、第1~第6の態様及びその実施形態のいずれかによる、エマルジョン、シリコーンエラストマー、及び皮膚パッチにおけるオクテニジン二塩酸塩及びβ-シクロデキストリンの1:1分子複合体の使用が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】先行技術-硬化したグリセロール-シリコーンエラストマーの断面のSEM画像である。
図2】グリセロール-シリコーンエラストマーから物質が放出されるメカニズムである。
図3】構造及び空間充填モデルとしてのα、β、及びγ-シクロデキストリンである。
図4】(A)ピルテニジン及び(B)オクテニジン二塩酸塩の分子構造である。
図5】シリコーンプレエラストマーとグリセロールを含み、β-シクロデキストリン及びオクテニジンを含まない(A)、及び含む(B)、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンである。
図6】皮膚パッチ中のオクテニジン含有量の関数としての放出されたオクテニジンを示すグラフである。
図7】皮膚パッチ中のβ-シクロデキストリン含有量の関数としての放出されたオクテニジンを示すグラフである。
図8】皮膚パッチ中のグリセロール含有量の関数としての放出されたオクテニジンを示すグラフである。
図9】例示的な皮膚パッチである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明者ら及び共同研究者らの一部によって報告された以前の研究において、シリコーンエラストマーからの親水性活性物質の放出が調査されており、このシリコーンエラストマーは、親水性活性物質を溶解するミセル状のグリセロール相を含む。
【0050】
先行技術の調査のために、疎水性活性物質の放出挙動も調査された。しかしながら、分子構造中に窒素、硫黄、又はリンのうちの少なくとも1つを含む疎水性活性物質がシリコーンとグリセロールとのエマルジョンに添加された場合、触媒被毒のため金属触媒作用によるシリコーンプレエラストマーの重合が大幅に阻害されることが観察された。例えば、ピルテニジン及びピルテニジンの誘導体を用いた実験では、活性物質は2つ以上の窒素原子(ピルテニジン中の2つの窒素原子など、図4を参照)を含み、シリコーンプレエラストマーの重合を触媒するために適した金属触媒、特にPt触媒の触媒被毒は、重合プロセスに悪影響を及ぼしていた。一般的に、市販のプレエラストマー溶液が使用される場合、シリコーンプレエラストマーは通常シリコーンオリゴマー及びポリマーであり、これらは架橋されて、上で定義したように硬化することによってシリコーンマトリックスを形成する。しかしながら、本発明との関係において、上述したように、シリコーンプレエラストマーは、硬化に加えて重合して本発明のシリコーンマトリックスを形成するシリコーンモノマーも含み得る。
【0051】
中国特許出願公開第102716104A号明細書と比較して、驚くべきことに、本発明者らは、シクロデキストリンが、一部の状況では、グリセロールを含むエマルジョン中のシリコーンプレエラストマーの重合プロセスを妨げずに、試験された活性物質をマスキングするために適している可能性があることを発見した。したがって、本発明では、シクロデキストリン、特にβ-シクロデキストリンとの可逆的複合体を形成する、N、S、及びPから選択される少なくとも1つの元素を含む固体疎水性活性物質の溶解について記述され、それにより、シリコーンプレエラストマーを硬化させるために本発明のエマルジョン中に存在するPt触媒は、活性物質による触媒被毒から保護されたが、全体の活性物質送達又は活性物質送達速度に影響を与えなかった。更に、それに加えて、驚くべきことに、シクロデキストリンが少なくとも部分的にシリコーン/グリセロール界面で分配され、その結果シリコーンプレエラストマーとグリセロールとを含む調査された乳化系に関して界面活性剤として機能し、触媒被毒に関与し得る窒素、硫黄、又はリンなどの原子を含む活性物質の可溶化及びマスキングに加えて、驚くべきことに重合前のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの安定性を改善させる(図5を参照)ことが観察された。
【0052】
本発明者らによるこれらの観察は、別途出願された特許出願の対象であり、優先権の主張によって本明細書に含まれ、本発明によれば、シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、シクロデキストリンと、シリコーンプレエラストマーの重合における使用に適した金属触媒とを含有する、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンが開示される。更に、エマルジョンは、例えばピルテニジン又はその誘導体を含む活性疎水性物質を含み得る。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、シクロデキストリンは、α、β、若しくはγ-シクロデキストリン、又は例えばメチル化シクロデキストリン(図3を参照)などのこれらの誘導体から選択することができる。以前に出願された発明の特に好ましい実施形態では、シクロデキストリンがβ-シクロデキストリンである、開示された実施形態のいずれかによるグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンが開示される。
【0054】
本発明の更なる実施形態では、本明細書に開示の実施形態のいずれかによる、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンが開示され、金属触媒はSn又はPtのいずれかであり、好ましくは、金属触媒はPtである。
【0055】
更に、本発明の実施形態では、詳述される実施形態のいずれかによるグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンが開示され、このグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンは、疎水性活性物質を更に含む。いくつかの実施形態では、疎水性活性物質は、窒素、硫黄、及び/又はリンのうちのいずれか1つ以上の原子を含む。好ましくは、疎水性活性物質は少なくとも1つの窒素原子を含む。好ましくは、活性物質はピルテニジン又はその誘導体である。
【0056】
更に、本発明の更なる態様では、グリセロールとシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマー、好ましくは開示される実施形態のいずれかによるエマルジョンの重合によって形成されたシリコーンエラストマーが開示される。本発明の好ましい実施形態では、疎水性活性物質は、窒素、硫黄、及び/又はリンのうちのいずれか1つ以上の原子を含み、最も好ましくは、活性物質はピルテニジン又はその誘導体である。
【0057】
本発明に従って、本発明者らは、オクテニジン、特にオクテニジン二塩酸塩(図4を参照)が、シクロデキストリンとの複合体形成によってシリコーン-グリセロールエラストマーマトリックスから活性物質を放出させるために利用可能であるかについて調べた。上で詳述したように、オクテニジン二塩酸塩は、皮膚殺菌剤として複数の利点、特に有効性及び(非常に)限定的な皮膚バリアの通過の利点を有するが、皮膚パッチ、特にシリコーンエラストマーを含む皮膚パッチで成功した製剤はまだ市場で入手不可能である。従来技術で提案された製剤のいくつかの欠点には、バースト送達及び早いオクテニジン枯渇などの不適切な送達動態、オクテニジンの長期送達の欠如などが含まれる。
【0058】
本発明者らによって本明細書で提示される改善は、とりわけ、かなり長期間にわたってオクテニジンのゼロ次又はほぼゼロ次の放出を可能にし、それによってバースト効果が回避され、創傷治癒に必要なかなりの期間の間創傷部位でのオクテニジンの有効濃度が維持されるように製剤することができる、オクテニジンを含有するシリコーン皮膚パッチを含む。
【0059】
更に、本発明のそのような皮膚パッチの形成のための使用に適したシリコーンエマルジョン及びシリコーンポリマー、並びに本発明の対象を形成するための適切な方法が本明細書に詳述されている。
【0060】
本発明の一態様では、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン及びその実施形態、シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、少なくとも1種のシクロデキストリンと、オクテニジンとを含有する本発明によるグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンが詳細に記載される。
【0061】
本発明との関係において、本発明での使用に適したシリコーンプレエラストーは、それ自体液体であってよく、或いはこれは、例えば本発明のエマルジョンに含まれるようになることを可能にするシリコーンオイルなどの液化剤を含んでいてもよい。本発明の好ましい実施形態では、シリコーンプレエラストマーは2成分シリコーンプレエラストマーであり、これは、架橋されると本発明のシリコーンエラストマーを形成する。
【0062】
このような二成分シリコーンプレエラストマーは、様々な製造業者から市販されており、予め調整された特性を有する二成分シリコーンプレエラストマーは、架橋すると、例えば皮膚又は経皮活性物質放出などの活性物質放出に特に適していることが知られているシリコーンエラストマーの形成を可能にする。
【0063】
したがって、本発明のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの好ましい実施形態では、シリコーンプレエラストマーは2成分シリコーンプレエラストマーである。
【0064】
通常、シリコーンエラストマーマトリックスの実際の組成及び配合は、本発明の範囲外であると見なされる。上で説明したように、シリコーンプレエラストマーは、グリセロールとのエマルジョンの形成及びその後の重合を支援してグリセロール含有シリコーンエラストマーを形成することが必要である。
【0065】
本発明での使用に適した市販のシリコーンプレエラストマーの非限定的な例としては、出願日現在では、Dow CorningのSylgard(登録商標)184及びWacker Chemie,GermanyのElastosil(登録商標)RT625などのPDMSプレエラストマー、並びに本明細書で示される実験で使用されている、架橋剤とPt触媒とを含有するジビニル末端ポリジメチルシロキサンプレエラストマーであるDow Corningの2成分感圧シリコーン粘着剤MG7-9900が挙げられる。いくつかの実施形態では、強化剤としてシリカが存在する。
【0066】
本発明の複数の実施形態では、シリコーンプレエラストマーは、メチルシリコーンエラストマー、フェニルシリコーンエラストマー、クロロアルキルシリコーンエラストマー、及びフルオロシリコーンエラストマー、又はそれらの組み合わせのプレエラストマーを含む群から選択することができる。
【0067】
本発明の複数の実施形態では、シリコーンプレエラストマーは、ポリアルキルシロキサン、好ましくはポリジメチルシロキサン(PDMS)、及びその誘導体のプレエラストマーを含む群から選択することができる。例示的なPDMSプレエラストマーとしては、ヒドリド官能性架橋剤で架橋可能なビニル官能性PDMSプレエラストマー、又はSn若しくはPtの存在下で架橋可能なヒドロキシル官能性PDMSプレエラストマーが挙げられる。
【0068】
本発明の複数の実施形態では、シリコーンプレエラストマーは、本発明での使用に適したエラストマー組成物であってよい。
【0069】
本発明の複数の実施形態では、シリコーンプレエラストマーは、本発明で使用するのに適したエラストマー組成物とすることができ、このシリコーンプレエラストマーはクロロシリコーンプレエラストマーである。適切なクロロシリコーンプレエラストマーの非限定的な例は、クロロアルキルベースのクロロシリコーンプレエラストマー、クロロメチル末端ポリジメチルシロキサン(例えばGelestのDMS-L21)由来の組成物、又は国際公開第2015/043792号パンフレットに開示されているクロロシリコーンエラストマーである。
【0070】
本発明の複数の実施形態では、シリコーンプレエラストマーは、本発明で使用するために適したエラストマー組成物とすることができ、このシリコーンプレエラストマーはフルオロシリコーンプレエラストマーである。市販のフルオロシリコーンプレエラストマーの非限定的な例は、Dow CorningのエラストマーのSilastic(登録商標) F-LSRの範囲、ShinEtsu siliconesのFE/FEAシリーズ、DuPontのKrytox、又はWacker ChemieのElastosil(登録商標)FLRシリーズである。
【0071】
本発明での使用に適したエラストマー組成物の一実施形態では、エラストマー組成物は、活性物質、特にヒト若しくは動物用の活性物質、特に薬物からなる群から、及び/又は触媒、抑制剤、流動化剤、シリコーンオイル、溶剤、充填剤、発泡剤、強化物質、及び可塑剤から選択される1種以上の賦形剤を更に含有する。
【0072】
本発明での使用に適したエラストマー組成物の一実施形態では、1種以上の賦形剤は、触媒(Pt錯体(付加硬化)、Sn(縮合硬化)、過酸化物(過酸化物硬化)など)及び抑制剤(ジビニルテトラメチルジシロキサン及び1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンなど)からなる群から選択することができる。市販の抑制剤の例は、Gelest Inc.のSID4613.0(1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン)及びSIT7900.0(1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン)である。
【0073】
本発明によるグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの好ましい実施形態では、シリコーンプレエラストマーは、シリコーンプレエラストマーの重合に使用するために適した金属触媒を含有する。好ましくは、金属触媒は、Sn又はPtのいずれかであり、最も好ましくはPtである。
【0074】
本発明での使用に適したエラストマー組成物の一実施形態では、エラストマー組成物は、充填剤、強化物質、及び可塑剤からなる群から選択される1種以上の賦形剤、例えば加工中のエラストマーの溶融粘度を低下させるための可塑剤油、例えば既知の量の活性充填剤(例えば酸化亜鉛及びステアリン酸)、不活性充填剤(カーボンブラック、二酸化チタン、シリカ、炭酸塩、カオリン、粘土、及びタルクなど)、又はGelest Inc.のVinyl Q樹脂などの樹脂を含有する鉱油などを更に含み得る。そのような賦形剤は、市販のシリコーンエラストマー中に存在していてもよく、或いはシリコーンエラストマーに個別に添加されてもよい。
【0075】
必要とされる賦形剤の量は、対象のエラストマー組成物に応じて独立して変えることができるが、通常、エラストマー組成物の0~40重量%、例えば5~30重量%、例えば10~25重量%の範囲である。
【0076】
本発明での使用に適したエラストマー組成物の一実施形態では、エラストマー組成物は、流動化剤、シリコーンオイル、及び溶剤からなる群から選択される賦形剤を更に含み得る。その市販の例には、シリコーンオイルWACKER(登録商標)AK SILICONE FLUID又はDow Corning(登録商標)のOS-20などの溶剤が含まれる。他の適切な例は、例えばシクロメチコン(D4~D6)などの例えば低分子量の環である。
【0077】
本発明での使用に適したエラストマー組成物の一実施形態では、エラストマー組成物は、賦形剤として少なくとも1種の発泡剤を含有する。
【0078】
本発明での使用に適したエラストマー組成物の一実施形態では、少なくとも1種の発泡剤は、0.1~10phr、例えば0.2~8phr、例えば0.3~6phr、例えば0.4~5phr、例えば0.5~4phr、例えば0.6~3phr、例えば0.7~2phr、例えば0.8~1.5phr、又は例えば0.9~1phrの範囲の量で存在する。好ましくは、少なくとも1種の発泡剤は、1phr未満、例えば0.9phr未満、例えば0.8phr未満の量で存在する。
【0079】
本発明での使用に適したエラストマー組成物の一実施形態では、発泡剤は塩基である。その非限定的な例としては、NaOH、KOH、及びLiOHなどの無機塩基;トリエタノールアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、メチルアミン、ポリエーテルアミン(Huntsmanから市販されているJeffAmines(登録商標)等)などのアミン系の化合物;並びにBEMP(2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン)、及びP1-t-Bu(N,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサメチル-N’’’-(2-メチル-2-プロパニル)ホスホルイミド酸トリアミド)などのホスファゼン塩基が挙げられる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種のシクロデキストリンが、α、β、γ-シクロデキストリン、又はこれらの誘導体のうちの少なくとも1種から選択される、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンが開示される。特に好ましい実施形態では、エマルジョンに含まれる少なくとも1種のシクロデキストリンはβ-シクロデキストリンである。複数の実施形態では、少なくとも1種のシクロデキストリンはヒドロキシ-プロピルシクロデキストリン(HPCD)である。
【0081】
本発明の更なる好ましい実施形態では、グリセロールとシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマー、好ましくは本明細書に開示の実施形態のいずれかによるグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの重合によって形成されるシリコーンエラストマーが開示される。
【0082】
好ましい実施形態では、疎水性活性物質は、窒素、硫黄、及び/又はリンのうちのいずれか1つ以上の原子を含み、最も好ましくは、活性物質は、ピルテニジン又はその誘導体、好ましくはオクテニジンである。
【0083】
本発明の好ましい実施形態では、オクテニジンがオクテニジン二塩酸塩である、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンが開示される。
【0084】
本発明の特に好ましい実施形態では、及び提示される実験によれば、オクテニジンはオクテニジン二塩酸塩であり、シクロデキストリンはβ-シクロデキストリンである。
【0085】
実験で詳述されるように(実施例3及び図7を参照)、オクテニジン二塩酸塩は、β-シクロデキストリンと複合体を形成し、これは、データに基づいて、複合体が1:1の分子複合体であることと一致する。
【0086】
実験の項及び本明細書の以降で詳述される方法に開示されているように、オクテニジン二塩酸塩とβ-シクロデキストリンとの1:1複合体は、例えばグリセロール溶液中のオクテニジン二塩酸塩及びβ-シクロデキストリンを、透明な溶液が得られるまで撹拌しながら50℃~90℃の温度まで加熱することによって形成することができる。好ましくは、温度は80℃である。
【0087】
本発明者らの知る限り、オクテニジン二塩酸塩とβ-シクロデキストリンとのそのような1:1複合体は、先行技術でこれまで説明されていなかった。オクテニジン二塩酸塩との間の複合体化の形式はまだ未知であるため、本発明者らは、オクテニジンの他の塩、特に例えばHF、HBr、又はHIなどのハロゲン化物塩も、観察されたβ-シクロデキストリンとの1:1複合体を形成するために適していると暫定的に提案している。したがって、オクテニジンのそのような別の塩、特にそのような別のハロゲン化物塩も、本発明に含まれると見なされる。しかしながら、好ましくは、オクテニジンは、本発明のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン中にオクテニジン二塩酸塩として存在する。
【0088】
したがって、本発明は、更に、オクテニジン二塩酸塩とβ-シクロデキストリンと1:1分子複合体、特にグリセロール中のオクテニジン二塩酸塩とβ-シクロデキストリンとの1:1分子複合体に関する。本発明は、更に、本発明のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン、エラストマー、及び皮膚パッチにおけるそのような分子複合体の使用に関する。
【0089】
したがって、本発明のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの好ましい実施形態では、シリコーンプレエラストマーが添加される前に、シクロデキストリン及びオクテニジンがグリセロールに溶解される。好ましくは、シクロデキストリン及びオクテニジンは、グリセロール中で1:1の分子複合体として存在し、より好ましくは、β-シクロデキストリン及びオクテニジンは、グリセロール中で1:1の分子複合体として存在し、更により好ましくは、β-シクロデキストリン及びオクテニジン二塩酸塩は、グリセロール中で1:1分子複合体として存在する。
【0090】
本発明によるグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの好ましい実施形態では、エマルジョン中のグリセロールの濃度は、20phr~150phr、好ましくは30~140phr、40phr~130phr、50phr~120phr、60phr~110phr、70phr~100phr、又は80phr~90phrである。
【0091】
本発明者らのうちの何人かの研究から、グリセロールの濃度が約100phr未満である場合には、グリセロールは別個の小球として存在し(図5を参照)、その一方でグリセロールの濃度が約100phrを超えると、シリコーンプレエラストマーとグリセロールとの両連続エマルジョンが形成されることが知られている。重合後、両連続エマルジョンから形成されたグリセロールを含有するシリコーンエラストマーは、ゼロ次の活性物質放出を示す。グリセロールの濃度が約70phr~約100phrの場合、放出動態は小さな活性物質ではほぼゼロ次に近づき、グリセロールの濃度が約20phr~約70phrの場合には、放出動態は一次の放出メカニズムに従う。本明細書で示される実験では、様々なエマルジョン、シリコーンエラストマー、及び皮膚パッチは、一次放出を示すように配合され、そのため、20phr~70phr、特に40phr及び60phrのグリセロール含有量を有していた。
【0092】
したがって、本発明の複数の実施形態では、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンは、オクテニジン放出が一次の放出動態に従うシリコーンエラストマーの形成に使用するために、20phr~70phr、好ましくは30phr~60phr、又は40phr~50phrのグリセロール成分を含む。
【0093】
したがって、本発明の複数の実施形態では、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンは、オクテニジン放出がほぼゼロ次の放出動態に従うシリコーンエラストマーの形成に使用するために、70phr~100phr、好ましくは75phr~95phr、又は80phr~85phrのグリセロール成分を含む。
【0094】
したがって、本発明の複数の実施形態では、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンは、オクテニジン放出がゼロ次の放出動態に従うシリコーンエラストマーの形成に使用するために、100phr~150phr、好ましくは110phr~140phr、又は120phr~130phrのグリセロール成分を含む。
【0095】
本発明のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの複数の実施形態では、エマルジョン中のオクテニジンの濃度は、エマルジョンの総質量を基準として0.1重量%~6重量%である。好ましくは、エマルジョン中のオクテニジンの濃度は、エマルジョンの総質量を基準として0.3重量%~5.5重量%、エマルジョンの総質量を基準として0.6重量%~5重量%、1重量%~4.5重量%、1.5重量%~4重量%、2重量%~3.5重量%、又は2.5重量%~3重量%である。
【0096】
本発明のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの好ましい実施形態では、オクテニジンはオクテニジン二塩酸塩であり、エマルジョン中のオクテニジン二塩酸塩の濃度は、エマルジョンの総質量を基準として0.1重量%~6重量%である。好ましくは、エマルジョン中のオクテニジンの濃度は、エマルジョンの総質量を基準として0.3重量%~5.5重量%、エマルジョンの総質量を基準として0.6重量%~5重量%、1重量%~4.5重量%、1.5重量%~4重量%、2重量%~3.5重量%、又は2.5重量%~3重量%である。
【0097】
更に、本発明の複数の実施形態では、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン中の少なくとも1種のシクロデキストリンの濃度は、エマルジョンの総質量を基準として0.1重量%~6重量%である。好ましくは、エマルジョン中のシクロデキストリンの濃度は、エマルジョンの総質量を基準として0.3重量%~5.5重量%、エマルジョンの総質量を基準として0.6重量%~5重量%、1重量%~4.5重量%、1.5重量%~4重量%、2重量%~3.5重量%、又は2.5重量%~3重量%である。
【0098】
本発明のグリセロール-イン-シリコーン-プレエラストマーエマルジョンの好ましい実施形態では、少なくとも1種のシクロデキストリンはβ-シクロデキストリンであり、エマルジョン中のβ-シクロデキストリンの濃度は、エマルジョンの総質量を基準として0.1重量%~6重量%である。好ましくは、エマルジョン中のオクテニジンの濃度は、エマルジョンの総質量を基準として0.3重量%~5.5重量%、エマルジョンの総質量を基準として0.6重量%~5重量%、1重量%~4.5重量%、1.5重量%~4重量%、2重量%~3.5重量%、又は2.5重量%~3重量%である。
【0099】
加えて、本発明のグリセロール-イン-シリコーン-プレエラストマーエマルジョンの複数の実施形態では、エマルジョン中のオクテニジン対シクロデキストリンのモル比、好ましくはオクテニジン二塩酸塩対β-シクロデキストリンのモル比は、4:1~1:1.5、好ましくは3:1~1:1.5である。好ましくは、エマルジョン中のオクテニジン対シクロデキストリンのモル比は、4:1~3:1、2.5:1~1:1.4、2:1~1:1.3、1.5:1~1:1.2、1.3:1~1:1.1、又は1:1である。
【0100】
本発明のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの好ましい実施形態では、エマルジョンは、シリコーンプレエラストマーと、シリコーンプレエラストマーの質量を基準として20phr~150phrのグリセロールと、エマルジョンの総質量を基準として0.1重量%~6重量%のオクテニジンと、0.1重量%~6重量%のシクロデキストリンとを含有する。
【0101】
本発明の更なる態様では、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマーが開示される。好ましくは、シリコーンエラストマーは、先行技術によるグリセロール相の形態でグリセロールを含めるための、好ましくはオクテニジンと少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するグリセロール相を含めるための、シリコーンエラストマーマトリックスである。従来技術によれば、グリセロール相は、不連続な液滴として、又は両連続相として存在し得る。
【0102】
好ましくは、本発明のこの更なる態様によるシリコーンエラストマーは、本開示で詳述される実施形態のいずれかによる、グリセロール-イン-シリコーン-プレエラストマーエマルジョンの重合によって形成される。提示されている実験によって実証されるように、本明細書に開示のエマルジョンから形成されるシリコーンエラストマーは、オクテニジンを確実に放出し、且つ更に本発明の目的及び目標に従って皮膚パッチを形成するために適したシリコーンエラストマーマトリックスを形成する。
【0103】
本発明によれば、本発明のシリコーンエラストマーは、重合温度で、且つ重合したエマルジョンを得るのに適した重合時間の間、エマルジョンを重合することによって、本発明のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンから形成することができる。好ましくは、重合時間は、1分間~120分間、好ましくは2分間~90分間、3分間~60分間、4分間~50分間、5分間~40分間、6分間~30分間、7分間~20分間、8分間~17分間、9分間~15分間、又は10分間~12分間である。
【0104】
一実施形態では、重合温度は50℃~90℃である。本発明のエマルジョン中に含まれる所定のシリコーンプレエラストマーの重合時間と温度の適切な組み合わせを得ることは当業者の技能の範囲内である。代替の実施形態では、エマルジョンは低温重合抑制剤を含み、それにより、重合及び/又は硬化は、100℃超、110℃超、更には120℃超などの90℃を超える温度で行うことができる。これは、迅速なシリコーンマトリックス形成が望まれる場合に有利な可能性がある。必要に応じて、重合条件の詳しい指針は、国際公開第2016/189117A1号パンフレットから入手することができる。
【0105】
本発明の更なる態様では、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマー(3)を含む皮膚パッチ(1)が開示される。好ましくは、シリコーンエラストマーは、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するためのシリコーンエラストマーマトリックスである。本発明による皮膚パッチ(1)の例示的な非限定的な図面が図9に示されている。
【0106】
皮膚パッチは当該技術分野で周知であり、当該技術による皮膚パッチの構造は本発明の一部ではない。むしろ、本明細書に開示の情報を所有している場合には、当業者は様々な要求に従って皮膚パッチを製造できると考えられる。
【0107】
複数の実施形態では、皮膚パッチは、創傷被覆材などの創傷ケア用品である。
【0108】
本発明によれば、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマー(3)を含む皮膚パッチ(1)が開示され、このシリコーンエラストマーは、本開示で詳述される態様及び実施形態のいずれかによるものである。特に、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマー(3)を含む皮膚パッチ(1)が開示され、このシリコーンエラストマーは、本明細書に詳述される態様及び実施形態のいずれかによるグリセロール-イン-シリコーン-プレエラストマーエマルジョンから形成される。
【0109】
本発明の好ましい態様では、本開示に詳述される態様及び実施形態のいずれかによるシリコーンエラストマー(3)を含む皮膚パッチ(1)が開示され、このシリコーンエラストマーは、少なくとも0.1μg/cm/時の投与速度でオクテニジンを放出する。好ましくは、本発明のシリコーンエラストマーは、少なくとも0.3μg/cm/時、少なくとも0.5μg/cm/時、少なくとも0.8μg/cm/時、少なくとも1μg/cm/時、少なくとも1.3μg/cm/時、少なくとも1.5μg/cm/時、少なくとも1.8μg/cm/時、少なくとも2μg/cm/時、少なくとも2.3μg/cm/時、少なくとも2.5μg/cm/時、少なくとも2.8μg/cm/時、少なくとも3μg/cm/時、少なくとも3.3μg/cm/時、少なくとも3.5μg/cm/時、少なくとも3.8μg/cm/時、少なくとも4μg/cm/時、少なくとも4.3μg/cm/時、少なくとも4.5μg/cm/時、少なくとも4.8μg/cm/時、少なくとも5μg/cm/時、少なくとも5.3μg/cm/時、少なくとも5.5μg/cm/時、少なくとも5.8μg/cm/時、少なくとも6μg/cm/時、少なくとも6.3μg/cm/時、少なくとも6.5μg/cm/時、少なくとも6.8μg/cm/時、少なくとも7μg/cm/時、少なくとも7.3μg/cm/時、少なくとも7.5μg/cm/時、少なくとも7.8μg/cm/時、少なくとも8μg/cm/時、少なくとも8.3μg/cm/時、少なくとも8.5μg/cm/時、少なくとも8.8μg/cm/時、少なくとも9μg/cm/時、少なくとも9.3μg/cm/時、少なくとも9.5μg/cm/時、少なくとも9.8μg/cm/時、又は少なくとも10μg/cm/時の投与速度でオクテニジンを放出する。
【0110】
以下で報告される実験では、実験された皮膚パッチは、実験された経皮パッチの最初の一定な放出段階中に測定した場合に、約0.2μg/cm/時(0.3重量%のオクテニジン二塩酸塩、2:1のモル比のOCT:βCD)から約4.1μg/cm/時(3重量%のオクテニジン二塩酸塩、2:1のモル比のOCT:βCD)の速度でオクテニジンを放出した(図6~8を参照)。全体として、観察した全ての皮膚パッチについて観察されたオクテニジンの総放出量は、表1に示す一般的な細菌に対する殺菌効果を得るのに十分な量であった。
【0111】
実験項で述べられるように、β-シクロデキストリンと分子会合のため、本発明のシリコーンエラストマーマトリックスからオクテニジン二塩酸塩がどのような形態で放出されるのかは本発明者らには不明である。しかしながら、本発明者らは、この理論に拘束されるものではないが、オクテニジン二塩酸塩が、本発明のエマルジョン、エラストマー、及び皮膚パッチ中で二塩酸塩のままであると考えている。ただし、オクテニジンの生物学的有効性は二塩酸塩との会合の関連ではなく、オクテニジンの塩形成が水性送達の適合性に関連しているため、この態様はあまり重要ではない。本実験で実証されるように、オクテニジンは、本発明の皮膚パッチから確実に放出され、それによって生物学的有効性が達成される。
【0112】
本発明の皮膚パッチ(1)の好ましい実施形態では、シリコーンエラストマーは、0.05mm~5mmの厚さ(tEL)を有するシリコーンエラストマーの層(3)として皮膚パッチ中に存在する。好ましくは、厚さ(tEL)は、皮膚パッチの当該技術分野における既知の慣行に従って、意図される貼付の方向に対して垂直に測定されるシリコーンエラストマーの厚さである。以降で報告される実験における調査のために準備された皮膚パッチは、0.35mmの厚さ(tEL)を有しており、これは経皮薬物送達における多くのパッチに共通の厚さである。当該技術分野で周知のように、厚さ(tEL)は、活性物質のリザーバ含有量を調整するために当業者によって規定どおりに変更され、通常は本発明と関係するものではないとみなされる。好ましくは、厚さ(tEL)は、0.05mm~2mm、0.1mm~1.5mm、0.2mm~1.3mm、0.3mm~1mm、0.4mm~0.9mm、0.5mm~0.8mm、又は0.6mm~0.7mmである。
【0113】
本発明の皮膚パッチ(1)の好ましい実施形態では、シリコーンエラストマー(3)は、不活性プラスチックによって形成された除去可能な層(4)を備える。本発明の皮膚パッチ(1)の更に好ましい実施形態では、シリコーンエラストマー(3)は、不活性プラスチックによって形成された支持層(2)を備える。好ましくは、除去可能な層(4)及び支持層(2)は、シリコーンエラストマーに対して反対側に配置され、皮膚パッチの分野で慣習的なように、シリコーンエラストマーの厚さ(tEL)によって隔てられる。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態では、例えばシリコーンエラストマーが粘着性シリコーンエラストマーではない場合、支持層(2)は、シリコーンエラストマー(3)を支持層(2)に接触及び付着させるための粘着層を含み得る。多くの用途では、活性物質を含む皮膚パッチの要素自体が粘着剤である場合は、例えば開いている傷の創傷治癒に不利なことがあるため不利である。皮膚パッチのこれらの態様は当業者に周知であり、本発明の範囲外であるとみなされる。通常、本発明のシリコーンエラストマーは、それらの使用の状況によって必要に応じて、哺乳動物の皮膚、特にヒトの皮膚に対して粘着性であっても非粘着性であってもよい。
【0115】
本発明の更なる態様及びその実施形態では、シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンを形成する方法が開示され、この方法は、
i.グリセロールと、オクテニジンと、シクロデキストリンとを混合すること;
ii.透明な溶液が形成されるまで、得られた混合物を撹拌しながら50℃~90℃の温度まで加熱すること;
iii.シリコーンプレエラストマーを添加すること;
iv.エマルジョンが形成されるまでせん断を加えること;
を含む。
【0116】
本発明の方法に従うことにより、特にオクテニジンがオクテニジン二塩酸塩であり、且つシクロデキストリンがβ-シクロデキストリンである場合に、オクテニジンとシクロデキストリンが完全に会合し(実施例3及び図7を参照)、それによってそれらが本発明のシリコーンエラストマー及び皮膚パッチからの放出に最適に利用可能であることが保証される。
【0117】
ii.でオクテニジンとシクロデキストリンとの複合体が形成される最適温度は50℃~90℃の範囲であり、80℃が最適である。50℃未満では、オクテニジンとシクロデキストリンとの複合体形成はゆっくりである。上の方法に詳述されているように、加熱前に成分を混合することが通常好ましいが、必要に応じて、オクテニジン及びシクロデキストリンを高温のグリセロールに直接添加することも可能である。
【0118】
国際公開第2016/189117A1号パンフレットに詳述されているように、シリコーンプレエラストマーとグリセロールとのエマルジョンを形成するためにせん断を加える(iv.)ことが必要である。通常、エマルジョンが形成されるまで1500rpm~5000rpmでせん断を加えることが国際公開第2016/189117A1号パンフレットで推奨されているが、当業者に公知のせん断を加える他の方法も、本発明の方法における使用に適していると考えられる。
【0119】
本発明によるグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンを形成する方法の一実施形態では、(ii.)の得られる透明な溶液は、シリコーンプレエラストマーを添加する前に5℃~50℃に冷却される。通常、グリセロール含有量が適度に低い場合には、この工程は省略できるものの、グリセロール含有量が高い場合、例えば80℃の混合温度が使用されている場合には、シリコーンプレエラストマーの望ましくない熱により開始される重合が生じる可能性があるが、これは予め冷却することよって回避される。代替の実施形態では、エマルジョンは低温重合抑制剤を含み、それによって重合及び/又は硬化は、100℃超、110℃超、更には120℃超などの90℃を超える温度で行うことができる。これは、迅速なシリコーンマトリックス形成が望まれる場合に有利なことがある。
【0120】
本発明によるグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンを形成する方法の特に好ましい実施形態では、エマルジョンは、本明細書で詳述される本発明の態様及び実施形態のいずれかによるエマルジョンである。
【0121】
本発明の更なる態様及びその実施形態では、シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンを重合することを含む、シリコーンエラストマーの形成方法が開示される。好ましくは、シリコーンエラストマーは、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するためのシリコーンエラストマーマトリックスである。
【0122】
本発明によるシリコーンエラストマーの形成方法の好ましい実施形態では、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンは、本明細書で詳述される本発明の態様及び実施形態のいずれかによるエマルジョンである。
【0123】
本発明によるシリコーンエラストマーの形成方法の好ましい実施形態では、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンは、本明細書に詳述される本発明の態様及び実施形態のいずれかによる方法に従って形成された。
【0124】
本発明によるシリコーンエラストマーの形成方法の一実施形態では、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの重合は、1分間~120分間、好ましくは2分間~90分間、3分間~60分間、4分間~50分間、5分間~40分間、6分間~30分間、7分間~20分間、8分間~17分間、9分間~15分間、又は10分間~12分間である。
【0125】
本発明によるシリコーンエラストマーを形成する更なる方法では、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの重合は、50℃~90℃の重合温度で行われる。代替の実施形態では、エマルジョンは低温重合抑制剤を含み、それによって、重合及び/又は硬化は、100℃超、110℃超、更には120℃超などの90℃を超える温度で行うことができる。これは、迅速なシリコーンマトリックス形成が望まれる場合に有利なことがある。
【0126】
本発明の更なる態様及びその実施形態では、
i.本明細書に記載の態様及び実施形態のいずれかに従って、シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するグリセロール-イン-シリコーンエマルジョンを準備すること;
ii.不活性プラスチックから形成された支持層(2)上にエマルジョンをキャストすること;
iii.エマルジョンを支持層上に塗り、塗布厚さ(tEL)を有する塗布層を形成すること;
iv.エマルジョンを重合温度で重合時間重合し、それにより、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するシリコーンエラストマー(3)を形成すること;
を含む、本明細書に記載の態様及び実施形態のいずれかによる皮膚パッチ(1)の形成方法が開示される。
【0127】
皮膚パッチ(1)を形成する方法の一実施形態では、方法は、不活性プラスチックから形成された除去可能な層(4)を、支持層(2)の反対側のシリコーンエラストマー(3)の上に設けることを更に含む。
【0128】
皮膚パッチ(1)を形成する方法の一実施形態では、方法は、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンを1分間~120分間、好ましくは2分間~90分間、3分間~60分間、4分間~50分間、5分間~40分間、6分間~30分間、7分間~20分間、8分間~17分間、9分間~15分間、又は10分間~12分間重合することを更に含む。
【0129】
皮膚パッチ(1)を形成する方法の一実施形態では、方法は、50℃~90℃、好ましくは80℃の重合温度でグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンを重合することを更に含む。代替の実施形態では、エマルジョンは低温重合抑制剤を含み、それによって、重合及び/又は硬化は、100℃超、110℃超、更には120℃超などの90℃を超える温度で行うことができる。これは、迅速なシリコーンマトリックス形成が望まれる場合に有利なことがある。
【0130】
皮膚パッチ(1)を形成する方法の一実施形態では、方法は、皮膚パッチ(1)を1cm~1000cmのサイズに切断することを更に含む。
【0131】
本発明の更なる態様及びその実施形態では、本明細書に詳述される態様及び実施形態のいずれかによるオクテニジン含有皮膚パッチ(1)で創傷部位を覆うことを含む、哺乳動物の皮膚上の創傷部位を治療する方法であって、皮膚パッチ(1)がある投与速度でオクテニジンを放出し、皮膚パッチ(1)が、少なくとも1種のグラム陽性菌又はグラム陰性菌に対する殺菌効果を得るのに十分な有効量のオクテニジンを放出するのに十分な適用時間、創傷部位に適用される、治療方法が開示される。
【0132】
本明細書に開示の哺乳動物の皮膚上の創傷部位を治療する方法の一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0133】
本明細書に開示の哺乳動物の皮膚上の創傷部位を治療する方法の一実施形態では、少なくとも1種のグラム陽性菌又はグラム陰性菌は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、又はシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)から選択される。
【0134】
本明細書に開示の哺乳動物の皮膚上の創傷部位を治療する方法の一実施形態では、オクテニジン放出の投与速度は、少なくとも0.1μg/cm/時である。好ましくは、オクテニジン放出の投与速度は、少なくとも0.3μg/cm/時、少なくとも0.5μg/cm/時、少なくとも0.8μg/cm/時、少なくとも1μg/cm/時、少なくとも1.3μg/cm/時、少なくとも1.5μg/cm/時、少なくとも1.8μg/cm/時、少なくとも2μg/cm/時、少なくとも2.3μg/cm/時、少なくとも2.5μg/cm/時、少なくとも2.8μg/cm/時、少なくとも3μg/cm/時、少なくとも3.3μg/cm/時、少なくとも3.5μg/cm/時、少なくとも3.8μg/cm/時、少なくとも4μg/cm/時、少なくとも4.3μg/cm/時、少なくとも4.5μg/cm/時、少なくとも4.8μg/cm/時、少なくとも5μg/cm/時、少なくとも5.3μg/cm/時、少なくとも5.5μg/cm/時、少なくとも5.8μg/cm/時、少なくとも6μg/cm/時、少なくとも6.3μg/cm/時、少なくとも6.5μg/cm/時、少なくとも6.8μg/cm/時、少なくとも7μg/cm/時、少なくとも7.3μg/cm/時、少なくとも7.5μg/cm/時、少なくとも7.8μg/cm/時、少なくとも8μg/cm/時、少なくとも8.3μg/cm/時、少なくとも8.5μg/cm/時、少なくとも8.8μg/cm/時、少なくとも9μg/cm/時、少なくとも9.3μg/cm/時、少なくとも9.5μg/cm/時、少なくとも9.8μg/cm/時、又は少なくとも10μg/cm/時である。
【0135】
本明細書に開示の哺乳動物の皮膚上の創傷部位を治療する方法の一実施形態では、適用時間は少なくとも1時間である。
【0136】
本明細書に開示の哺乳動物の皮膚上の創傷部位を治療する方法の実施形態では、オクテニジンの有効投与量は、少なくとも0.1μg/cmである。好ましくは、オクテニジンの有効投与量は、少なくとも0.3μg/cm、少なくとも0.5μg/cm、少なくとも0.8μg/cm、少なくとも1μg/cm、少なくとも1.3μg/cm、少なくとも1.5μg/cm、少なくとも1.8μg/cm、少なくとも2μg/cm、少なくとも2.3μg/cm、少なくとも2.5μg/cm、少なくとも2.8μg/cm、少なくとも3μg/cm、少なくとも3.3μg/cm、少なくとも3.5μg/cm、少なくとも3.8μg/cm、少なくとも4μg/cm、少なくとも4.3μg/cm、少なくとも4.5μg/cm、少なくとも4.8μg/cm、少なくとも5μg/cm、少なくとも5.3μg/cm、少なくとも5.5μg/cm、少なくとも5.8μg/cm、少なくとも6μg/cm、少なくとも6.3μg/cm、少なくとも6.5μg/cm、少なくとも6.8μg/cm、少なくとも7μg/cm、少なくとも7.3μg/cm、少なくとも7.5μg/cm、少なくとも7.8μg/cm、少なくとも8μg/cm、少なくとも8.3μg/cm、少なくとも8.5μg/cm、少なくとも8.8μg/cm、少なくとも9μg/cm、少なくとも9.3μg/cm、少なくとも9.5μg/cm、少なくとも9.8μg/cm、又は少なくとも10μg/cmである。
【0137】
本明細書に開示の哺乳動物の皮膚上の創傷部位を治療する方法の好ましい実施形態では、オクテニジンはオクテニジン二塩酸塩である。
【0138】
本発明の更なる態様及びその実施形態では、本明細書の詳細な態様及び実施形態のいずれかによる方法で使用するための、本明細書の詳細な態様及び実施形態のいずれかによる皮膚パッチ(1)が開示され、好ましくは、オクテニジンはオクテニジン二塩酸塩であり、シクロデキストリンはβ-シクロデキストリンである。
【実施例
【0139】
材料
二成分感圧シリコーン粘着剤MG7-9900、すなわち、架橋剤とPt触媒とを含有するジビニル末端ポリジメチルシロキサンは、Dow Corningから購入した。バイオディーゼル生産の副産物であるグリセロール(食品グレード、最大0.5%の水)はEmmelev A/Sから提供され、空気との過度に長い接触を避けて受け取ったままの状態で使用した。Wacker Chemieのβ-シクロデキストリンは、Sigma Aldrichから購入した。オクテニジン二塩酸塩はDishman Groupから購入した。全ての化学物質は受け取ったままの状態で使用した。
【0140】
装置
全ての化合物の混合のために、デュアル非対称遠心分離機SpeedMixer DAC 150FVZ-Kを使用した。シリコーンエマルジョン形態のグリセロールを調べるためには、Leica DM LB光学顕微鏡を利用した。
【0141】
方法
グリセロール相を含む全てのシリコーン組成物は、国際公開第2016/189117A1パンフレットの工程i.~v.に従って調製した。得られたグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン及びシリコーンエラストマーは、特に光学顕微鏡を使用する目視検査によって、従来技術の方法に従って特性評価した。
【0142】
2成分MG7-9900シリコーンキットは、製造業者の推奨の通りに重量比1:1で混合した。続いて、望みの量のグリセロール、並びに該当する場合のβ-シクロデキストリン及びオクテニジンを、シリコーンプレエラストマーに添加し、別段の記載がない限り、安定したエマルジョンが形成されるまでスピードミキサーにより3500rpmで5分間撹拌した。場合によっては、混合工程の後、組成物を1mmのスペーサーを有する金属モールド上にキャストし、80℃で1時間硬化させた。その後、最終的な後硬化を行うために、得られたフィルムを室温で少なくとも2日間放置した。
【0143】
シリコーンプレエラストマーと混合する前に、グリセロール、β-シクロデキストリン、及びオクテニジンを、50℃~90℃、好ましくは80℃の範囲の温度で撹拌しながら混合することで、透明な溶液が得られることが有利に観察された。これは、β-シクロデキストリンによるオクテニジンの完全な複合体化、及び形成された複合体のグリセロールへの完全な可溶化を示唆する。その場合、オクテニジンとβ-シクロデキストリンとの複合体を含む、シリコーンプレエラストマーとグリセロールとの得られるグリセロール-イン-シリコーン-プレエラストマーエマルジョンは、光学顕微鏡の精度の範囲内で析出物を含まないであろう。
【0144】
全ての調べたサンプルの一覧を、適切なサンプル名及び組成に関する詳細事項と共に表2に示す。
【0145】
【表2】
【0146】
サンプルG40_1%Oct_2:1(Oct:CD)_MG7-9900をモデルサンプルとして選択し、サンプル調製手順をより詳細に示すために使用する。個々の化合物の質量を表3に示す。
【0147】
【表3】
【0148】
グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの安定性
エマルジョン1:グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの連続相-Dow Corningの未硬化感圧シリコーン粘着剤MG7-9900。分散相-グリセロール(40phr)。
【0149】
エマルジョン2:グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの連続相-Dow Corningの未硬化感圧シリコーン粘着剤MG7-9900。分散相-3重量%のβ-シクロデキストリンと3重量%のピルテニジン誘導体(組成全体を基準とする重量パーセント)とを含有するグリセロール(40phr)。
【0150】
β-シクロデキストリン-ピルテニジン誘導体複合体あり又はなしのグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの安定性を調査した。
【0151】
平均液滴サイズは、両方のエマルジョン中の少なくとも100個の隣接するグリセロールドメインの分析に基づいて計算した。実験(図4)から、混合してから10分後の平均液滴直径が、エマルジョン1及びエマルジョン2について、それぞれ16.0μm(±4.9μm)及び9.3μm(±2.4μm)であることを明らかになった。データは、シクロデキストリン、特にβ-シクロデキストリンが、グリセロールとシリコーンプレエラストマーとの間の界面でもそれ自体を分配し、そのため、本組成物に関して、成分の混合により得られるエマルジョンの安定化界面活性剤として機能することを示している。
【0152】
β-シクロデキストリンの存在下では、ピルテニジン誘導体中に窒素が存在するにもかかわらず、エマルジョン2の重合が可能であった。シクロデキストリンによる白金触媒の毒の複合体化が、付加硬化系の阻害を大幅に減少させることが観察された。ピルテニジン誘導体は、それ自体を(少なくとも部分的に)β-シクロデキストリンの空洞内の窒素基に配向させるため、白金被毒に関与できないと考えられる。
【0153】
グリセロール中へのオクテニジンの可溶化
オクテニジンは両親媒性物質であることから、グリセロールへの溶解度はごくわずかであるものの、溶解度を高めるためにミセルを形成することができる。この調査では、β-シクロデキストリン(βCD)を、多量の疎水性物質をグリセロールなどの親水性媒体に溶解させるためのツールとして使用した。疎水性分子とホスト-ゲスト複合体を形成し、それによって多数の潜在的な用途を可能にする環状オリゴ糖としてのシクロデキストリン。ここでは、オクテニジン(0.35g)及びβ-シクロデキストリン(0.3182g)をグリセロールに添加した。この実施例におけるオクテニジンとβ-シクロデキストリンとの間のモル比は2:1であった。混合物を80℃まで加熱し、透明な溶液が得られるまでマグネチックスターラーを使用して(通常は30分以内)撹拌した。透明な混合物が得られることは、βCD-オクテニジン複合体の調製に成功したことを示す。
【0154】
機能性粘着剤の調製
グリセロールとβCD-オクテニジン複合体とを含有する混合物をプラスチック容器に入れた。続いて、A液である12.5gのMG7-9900とB液である12.5gのMG7-9900を入れた。組成物は、デュアル非対称遠心分離機SpeedMixer Dac 150 FVZ-Kを使用して、3500回転/分(rpm)で5分間混合した。このようにして、グリセロール-イン-シリコーン-プレエラストマーエマルジョンを調製した。エマルジョンを不活性プラスチック製の支持体上にキャストし、市販のナイフを使用して広げて、厚さ350μmのフィルム(tEL)を形成した。続いて、材料を80℃のオーブンに1時間入れた。その後、得られた重合した皮膚パッチを、支持体に付着したままの状態で25cmの正方形のサンプルに切断した。得られた皮膚パッチは、経時的な粘着性に関しての優れた表面粘着性及び使用後の表面からの放出のし易さを示した。
【0155】
放出の調査
重合した皮膚パッチからのオクテニジンの放出挙動は、サンプルを200mlの脱イオン水に浸漬することによって決定した。オクテニジン放出の進行は、水性環境におけるオクテニジンの濃度変化を測定することによって観察した。試験のために、UV-vis分光光度計、BMG LabTechのPOLARstar Omegaマイクロプレートリーダーを使用した。結果は水溶液中のβCD-オクテニジン複合体の検量線と比較した。各放出挙動曲線は、3つの別々の実験の平均を表している。水の蒸発を回避するために、サンプルは密閉された容器(ロータリーシェーカー上に配置)中で試験した。様々なサンプルの放出プロファイルは、時間の関数としての、μg/cm単位での放出されたオクテニジンのプロットとして表される。
【0156】
実施例1
オクテニジンを含有するグリセロール-イン-シリコーンエマルジョンの安定性
エマルジョン1:エマルジョンの連続相-Dow Corningの未硬化感圧シリコーン粘着剤MG7-9900。分散相-グリセロール(40phr)。
【0157】
エマルジョン2:エマルジョンの連続相-Dow Corningの未硬化感圧シリコーン粘着剤MG7-9900。分散相-3重量%のβ-シクロデキストリンと3重量%のオクテニジン(組成全体を基準とする重量パーセント)とを含有するグリセロール(40phr)。
【0158】
β-シクロデキストリン-オクテニジン誘導体複合体あり又はなしのグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンの安定性を調査した。
【0159】
平均液滴サイズは、両方のエマルジョン中の少なくとも100個の隣接するグリセロールドメインの分析に基づいて計算した。実験(図5)から、混合してから10分後の平均液滴直径が、エマルジョン1及びエマルジョン2について、それぞれ16.0μm(±4.9μm)及び9.3μm(±2.4μm)であることが明らかになった。データは、β-シクロデキストリンが、グリセロール相及びグリセロールとシリコーンプレエラストマーとの間の界面でもそれ自体を分配し、そのため、本組成物に関して、成分の混合により得られるエマルジョンの安定化界面活性剤として機能することを示している。
【0160】
β-シクロデキストリンの存在下では、オクテニジン中に窒素が存在するにもかかわらず、エマルジョン2の重合が可能であった。シクロデキストリンによる白金触媒の毒の複合体化が、付加硬化系の阻害を大幅に減少させることが観察された。オクテニジンは、それ自体を(少なくとも部分的に)β-シクロデキストリンの空洞内の窒素基に配向させるため、白金被毒に関与できないと考えられる。
【0161】
実施例2
シリコーン皮膚パッチからのオクテニジンの放出に対するオクテニジン含有率の影響
0.3、1、及び3重量%のオクテニジンを含有する皮膚パッチを調査した。オクテニジンとβCDとのモル比は2:1で一定に保った(βCD1分子あたり2分子のオクテニジン)。図6に示されている放出挙動は、異なる皮膚パッチから送達される薬物投与量が、予想どおりオクテニジン含有率の増加に伴って増加することを明確に示している。
【0162】
24時間後、0.3、1、及び3重量%のオクテニジンを含むサンプルは、膜1cmあたりそれぞれ約3、12、及び39μgのオクテニジンを放出した。実験の精度の範囲内で、用量放出は、皮膚パッチ中のオクテニジン含有率(1:3:10)とそれぞれ放出された用量(1:4:13)に直線的に比例するように見える。発明者らは、この理論に拘束されるものではないが、観察された過剰分の放出は、実施例3について下で論じられるように、二次放出メカニズムに関連している可能性が高いと考えている。
【0163】
3つ全てのパッチは、表1に示す一般的な細菌に対する殺菌効果を得るのに十分な量でオクテニジンを放出した。
【0164】
実施例3
シリコーン皮膚パッチからのオクテニジンの放出に対するβ-シクロデキストリン含有率の影響
更なる実施例において、形成された皮膚パッチからのオクテニジンの放出に対するオクテニジン対β-シクロデキストリンのモル比の影響を調査した。この研究では、β-シクロデキストリン1分子あたり2分子(モル比2:1)及び1分子(モル比1:1)のオクテニジンを含有するサンプルを調査した。両方の膜の放出挙動を図7に示す。
【0165】
グラフから観察できるように、2:1の比率でオクテニジンとβ-シクロデキストリンを含有する皮膚パッチからのオクテニジンの水への放出は、1:1の組成物からの放出よりもわずかに速く、2つの組成物間の放出動態にあまり変化はない。データからは、オクテニジンとβ-シクロデキストリンが1:1の複合体を形成し、1:1の複合体がシリコーンエラストマー全体の拡散及び放出特性を支配するという仮定と一致しているように見える。
【0166】
特に、データは図2に示したモデルと一致しているようであり、ここでは、活性物質の放出は、主に、グリセロール相に含まれる活性物質リザーバーからの放出を介して行われ、このリザーバーは、シリコーンエラストマーマトリックス中の活性物質の(実質的に)一定な濃度を維持する。
【0167】
このモデルでは、疎水性活性物質の放出は、不十分な水への吸収によって阻害される。適度に高いCMC値を有する界面活性剤であるオクテニジン(Stewardらによって水中で3.79mMであると見積もられており、グリセロール中でより大きい可能性が高い)は、水及びグリセロールにある程度溶解し、これはシクロデキストリンの存在下で大幅に強化される。そのため、本発明者らは、この理論に拘束されるものではないが、オクテニジンの放出は、1:1オクテニジン-βCD-複合体の放出速度によって支配されていると共に、グリセロール及び(その後)水に直接溶解した(ミセル状)オクテニジンからの部分的な寄与がある可能性が高いと考えている。
【0168】
オクテニジン対β-シクロデキストリンのモル比が2:1では、1:1のモル比に対して約25%~30%の送達効率の増加のみ得られた。オクテニジン対β-シクロデキストリンの最適な配合(放出速度のみ考慮する場合)は、これらの2つの成分のモル比が1:1以下、好ましくは1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、更には1:1.5に近くなるように配合する必要がある。それにより、実質的に全てのオクテニジンがβ-シクロデキストリンと複合体を形成し(後者は過剰である)、それによって実質的に全てのオクテニジンが、オクテニジン-βCD-複合体の一部ではないオクテニジンのより遅い放出速度と比較してより速いオクテニジン-βCD-複合体放出メカニズムを介して放出に利用可能になる。
【0169】
しかしながら、β-シクロデキストリンに対して過剰のオクテニジン、例えば3:1、2.5:1、2:1、更には1.5:1の過剰のモル比を使用することは、二次放出メカニズムによる放出のためのオクテニジンの利用可能性のため、皮膚パッチからのオクテニジンの全体的な放出が増加するという利点がある。
【0170】
実施例4
シリコーン皮膚パッチからのオクテニジンの放出に対するグリセロール添加量の影響
40及び60phr(シリコーンゴム100重量部あたりの重量部)のグリセロールを含むサンプルを調製し、調査した。膜の中のオクテニジン及びβ-シクロデキストリンの量は1重量%で一定に保たれ、オクテニジン及びβ-シクロデキストリンは2:1のモル比で存在した。
【0171】
図8に示されている結果は、図2に示されている放出モデルと一致しており、このモデルでは、膜へのグリセロール添加量が増加するのに伴って活性物質の放出速度が増加する。
【0172】
薬物送達プロセスの最初の部分では、放出速度は同等に見えるものの、約5時間後にはその差は大きくなる。約24時間後、40phrのグリセロールを含有するサンプルは1cmあたり約12μgのオクテニジンを放出した一方で、60phrのグリセロールを含有するサンプルは1cmあたり約18μgのオクテニジンを放出した。
【0173】
図2に詳しく示されている放出モデルとの関係において、観察されたデータは説明可能である。最初に、オクテニジンとオクテニジン-β-シクロデキストリン1:1-複合体とを含有する皮膚パッチの表面近くのリザーバーが枯渇し、その結果2つの異なるサンプル間でほぼ等しい送達速度が得られる。その後、送達速度は、より深い位置にあるリザーバーと表面の薬物放出リザーバーとの間の交換速度によって支配されるようになり、60phrのグリセロールのリザーバー構造は、40phrのグリセロールのものよりも速いリザーバー交換を可能にする。
【0174】
本発明者らは、この理論に拘束されるものではないが、これは、オクテニジン及び/又はオクテニジン-β-シクロデキストリン複合体によるシリコーンマトリックス壁の通過が律速である、重合シリコーンマトリックスにおける壁の薄化によるものであると考えている。
【0175】
結論
結論として、本発明の組成物及びエラストマーマトリックス中でのオクテニジンとβ-シクロデキストリンとの複合体の形成は、シリコーンエラストマー皮膚パッチからのオクテニジンの広範囲の(容易に)調節可能な送達速度を可能にする。
【0176】
いくつかの実施形態では、オクテニジンは、シクロデキストリンと比較して過剰であり、それによって送達速度が増加し、オクテニジンは、皮膚パッチからの徐放性オクテニジンの長期リザーバーとして機能するシクロデキストリンと複合体を形成しない。別の実施形態では、シクロデキストリンは、オクテニジンの迅速な送達及びオクテニジンの皮膚パッチの急速な枯渇のため過剰になる。
【0177】
本発明者らの研究によれば、40phr又は60phrのグリセロールを含有するシリコーンエラストマーマトリックスは、ミセル構造を有する(図1及び5を比較)一方で、100phrを超えるグリセロールを含有するシリコーンエラストマーマトリックスはシリコーンエラストマー相とグリセロール相の両方において両連続である。本発明者らの研究によれば、約70phr未満のグリセロールの個別のミセル構造からの小さな親水性活性物質の送達速度は一次の放出挙動に従い、約70phrのグリセロールから約100phrのグリセロールでは、小さな親水性活性物質の送達はほぼゼロ次の放出挙動に従い、120phrなど約100phrを超えるグリセロールでは、小さな親水性活性物質の放出はゼロ次の放出挙動に従う。
【0178】
ここで示された放出データは、放出データが約70phr未満のグリセロール含有量に対して予想される一次放出動態を示すという点で、以前に行われた観察と一致している。
【0179】
したがって、いくつかの実施形態では、初期エマルジョンは、70phr未満のグリセロール含有量で調製され、それにより、重合されたシリコーンエラストマー中のグリセロールのミセル構造が形成される。別の実施形態では、グリセロール含有量は100phr超であり、それによって、両連続エマルジョン及び重合されたシリコーンエラストマーが形成される。
【0180】
オクテニジンがシクロデキストリンに対して過剰である、及び/又はグリセロール含有量が70phr未満である実施形態は、例えば皮膚パッチを容易に交換できない場所に有益に適用することができる。オクテニジンがシクロデキストリンよりも低いモル比で存在する、及び/又はグリセロール含有量が100phrを超える実施形態は、皮膚パッチが短期間のみの使用、若しくは頻繁な交換と組み合わせての使用を目的としている場合に、又は早期の創傷治癒中に皮膚パッチによる1回のみの皮膚被覆が意図されている場合に、有益に適用することができる。
【0181】
それにより、例えば殺菌剤の放出が望まれる創傷部位へのオクテニジンの送達のための広範囲の容易に調整可能な皮膚パッチが示され、それにより、放出量及び放出速度は、得られる皮膚パッチを形成するための最初の組成物及び得られるエマルジョンの重合の前に調製された組成物及びエマルジョンの成分の濃度の簡単な操作によって調整することができる。
【0182】
注釈
請求項で使用される「含む」という用語は、他の要素又は工程を除外するものではない。請求項で使用される「a」又は「an」という用語は、複数を除外するものではない。本発明は例示の目的で詳細に説明されてきたが、そのような詳細事項はその目的のためのみにすぎず、本発明の範囲から逸脱することなしに当業者が変更を行い得ることが理解される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-03-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、シクロデキストリンと、前記シリコーンプレエラストマーの重合における使用に適した金属触媒とを含有する、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョンであって、前記エマルジョンがオクテニジンを更に含有する、グリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン。
【請求項2】
前記シクロデキストリンが、α、β、若しくはγ-シクロデキストリン又はそれらの誘導体から選択される、請求項1に記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン。
【請求項3】
前記シクロデキストリンがβ-シクロデキストリンである、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン。
【請求項4】
前記金属触媒がSn又はPtのいずれかである、請求項1~3のいずれかに一項に記載のグリセロール-イン-シリコーンプレエラストマーエマルジョン。
【請求項5】
シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、少なくとも1種のシクロデキストリンと、オクテニジンとを含有するエマルジョン。
【請求項6】
前記少なくとも1種のシクロデキストリンが、α、β、γ-シクロデキストリンの少なくとも1つ又はそれらの誘導体から選択される、請求項5に記載のエマルジョン。
【請求項7】
オクテニジンがオクテニジン二塩酸塩である、請求項5又は6に記載のエマルジョン。
【請求項8】
前記エマルジョン中のオクテニジンの濃度が、エマルジョンの総質量を基準として0.1重量%~6重量%である、請求項5~7のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項9】
グリセロールと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有し、オクテニジン又はオクテニジン二塩酸塩を更に含有する、シリコーンエラストマー。
【請求項10】
グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有する請求項9に記載の前記シリコーンエラストマー(3)を含む、皮膚パッチ(1)。
【請求項11】
前記シリコーンエラストマーが、少なくとも0.1μg/cm/時の投与速度でオクテニジンを放出する、請求項10に記載のシリコーンエラストマー(3)を含む皮膚パッチ(1)。
【請求項12】
シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するエマルジョンを形成する方法であって、
i.グリセロールと、オクテニジンと、シクロデキストリンとを混合すること;
ii.透明な溶液が形成されるまで、得られた混合物を撹拌しながら50℃~90℃の温度まで加熱すること;
iii.シリコーンプレエラストマーを添加すること;
iv.エマルジョンが形成されるまでせん断を加えること;
を含む方法。
【請求項13】
シリコーンプレエラストマーと、グリセロールと、オクテニジンと、少なくとも1種のシクロデキストリンとを含有するエマルジョンを重合することを含む、シリコーンエラストマーの形成方法。
【国際調査報告】