(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(54)【発明の名称】再生廃棄物を用いた、疎水性および強度が改善されたセメント質材料の製造
(51)【国際特許分類】
C04B 16/04 20060101AFI20220712BHJP
C04B 24/08 20060101ALI20220712BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20220712BHJP
C04B 22/02 20060101ALI20220712BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20220712BHJP
C04B 14/04 20060101ALI20220712BHJP
C04B 24/02 20060101ALI20220712BHJP
C04B 24/32 20060101ALI20220712BHJP
C04B 18/22 20060101ALI20220712BHJP
C04B 18/20 20060101ALI20220712BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C04B16/04
C04B24/08
C04B28/02
C04B22/02
C04B18/14 Z
C04B14/04 Z
C04B24/02
C04B24/32 A
C04B18/22
C04B18/20
C09K3/18 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568314
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 US2020037583
(87)【国際公開番号】W WO2021003012
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521089465
【氏名又は名称】シン チュアン テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】リー モーティエン
(72)【発明者】
【氏名】シェン ジーヤオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン チーヤオ
(72)【発明者】
【氏名】リー フーミン
(72)【発明者】
【氏名】リー ジョン
【テーマコード(参考)】
4G112
4H020
【Fターム(参考)】
4G112PA03
4G112PA20
4G112PA25
4G112PA28
4G112PA31
4G112PA32
4G112PB02
4G112PB04
4G112PB15
4G112PB36
4H020AA01
4H020BA02
(57)【要約】
セメントペースト、モルタル、およびコンクリートなどのセメント質材料のための疎水性混和材料は、疎水剤および界面活性剤の被膜を有する固体ポリマー粒子を含む。固体ポリマー粒子はセメントマトリックス中の水和セメント粒子の外面に付着する。固体ポリマー粒子は親水性のセメントマトリックス中に疎水剤を届ける。疎水剤はセメントマトリックス全体に均一に分布する。固体ポリマー粒子は、廃ゴムタイヤ由来のクラムラバー粒子、リサイクルプラスチック、および同様の固体材料とすることができる。疎水剤は、廃潤滑油、使用済みモーターオイル、ベースオイル、脂肪酸のエステル、植物油などから得られる。活性炭、シリカフューム、および使用済み触媒などの微粒子を用いて、セメント質マトリックス中に生じる空孔または隙間を埋めることができる。硬化したセメント質材料は、大きな接触角および高い圧縮強度を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント質材料の疎水性を改善するための混和材料組成物であって、
疎水剤を含む表面被膜を有する固体ポリマー粒子を含み、
前記セメント質材料は、その中に分散した水和セメント粒子を有するセメント混合物を含み、
前記固体ポリマー粒子が、前記水和セメント粒子の外面と、活性炭、シリカフューム、使用済み触媒、およびこれらの混合物からなる群から選択される微粒子とに付着している、混和材料組成物。
【請求項2】
前記表面被覆が、廃潤滑油、使用済みモーターオイル、ベースオイル、脂肪酸のエステル、植物油、およびこれらの混合物からなる群から選択される前記疎水剤と界面活性剤とのブレンドを含む、請求項1に記載の混和材料組成物。
【請求項3】
粒径が1μm~1000μmの範囲の微粒子を含む、請求項1または2に記載の混和材料組成物。
【請求項4】
固体ポリマー粒子と微粒子の重量比が、10:1~1:10の範囲内である、先行請求項のいずれか一項に記載の混和材料組成物。
【請求項5】
固体ポリマー粒子と微粒子の重量比が、2:1~1:2の範囲内である、先行請求項のいずれか一項に記載の混和材料組成物。
【請求項6】
(i)固体ポリマー粒子および前記微粒子の組合せと(ii)疎水剤の重量比が、10:1~10:3の範囲内である、先行請求項のいずれか一項に記載の混和材料組成物。
【請求項7】
前記表面被覆が、非イオン性界面活性剤と前記疎水剤とのブレンドを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の混和材料組成物。
【請求項8】
固体ポリマー粒子10重量%~40重量%、微粒子20重量%~80重量%、および前記ブレンド1重量%~10重量%を含み、非イオン性界面活性剤と疎水剤の重量比が、0.1~0.5である、請求項7に記載の混和材料組成物。
【請求項9】
前記固体ポリマー粒子が、クラムラバー粒子を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の混和材料組成物。
【請求項10】
前記微粒子が活性炭を含む、請求項9に記載の混和材料組成物。
【請求項11】
前記クラムラバー粒子が、廃ゴムタイヤ、リサイクルプラスチック、およびこれらの混合物から作られる、請求項9または10に記載の混和材料組成物。
【請求項12】
前記固体ポリマー粒子の粒径が、100μm~1000μmの範囲内である、先行請求項のいずれか一項に記載の混和材料組成物。
【請求項13】
担体粒子10重量%~40重量%および疎水剤1重量%~10重量%を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の混和材料組成物。
【請求項14】
担体粒子10重量%~40重量%および前記ブレンド1重量%~10重量%を含み、前記ブレンド中の界面活性剤と疎水剤の重量比が、0.1~0.5である、請求項2または7に記載の混和材料組成物。
【請求項15】
前記界面活性剤のHLB値が、1.0~15.0である、請求項2、7または14に記載の混和材料組成物。
【請求項16】
前記界面活性剤のHLB値が、5.0~10.0である、請求項15に記載の混和材料組成物。
【請求項17】
(a)ドライセメント、水、および疎水性混和材料を混合することによりセメント混合物を形成する工程と;
(b)前記セメント混合物を硬化させて凝結セメント質組成物を形成する工程とを含み、
前記疎水性混和材料が、疎水剤を含む表面被覆を有する固体ポリマー粒子を含むことにより、前記固体ポリマー粒子が、前記セメント混合物中に生じる水和セメント粒子の外面と、(i)前記疎水剤と混和した界面活性剤または(ii)微粒子の少なくとも1つとに付着する、セメント質組成物の調製方法。
【請求項18】
前記表面被覆が、界面活性剤と前記疎水剤とのブレンドを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記凝結セメント質組成物中の空孔または隙間を埋める微粒子をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記固体ポリマー粒子が、クラムラバー粒子からなり、
前記疎水剤が、廃潤滑油、使用済みモーターオイル、ベースオイル、脂肪酸のエステル、植物油、およびこれらの混合物からなる群から選択され、
前記微粒子が、活性炭、シリカフューム、使用済み触媒、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項17、18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記疎水性混和材料が、(i)前記疎水剤と前記界面活性剤を混合して変性疎水剤を形成すること、(ii)前記固体ポリマー粒子を前記変性疎水剤と混合して被覆固体ポリマー粒子を形成すること、および(iii)前記微粒子を前記被覆固体ポリマー粒子に混和させること、により調製される、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
凝結セメント質組成物であって、
疎水剤を含む表面被膜を有する固体ポリマー粒子を含み、
前記凝結セメント質組成物は、その中に分散した水和セメント粒子を有するセメント混合物を含み、
前記固体ポリマー粒子が、前記水和セメント粒子の外面と、(i)前記疎水剤と混和した界面活性剤または(ii)微粒子の少なくとも1つとに付着している、凝結セメント質組成物。
【請求項23】
前記組成物が、セメントペースト、モルタル、またはコンクリートを含む、請求項22に記載の凝結セメント質組成物。
【請求項24】
前記組成物が、接触角が少なくとも45度の外面を有する、請求項22または23に記載の凝結セメント質組成物。
【請求項25】
前記組成物が、少なくとも15MPa~50MPaの圧縮強度を有する、請求項22、23または24に記載の凝結セメント質組成物。
【請求項26】
前記セメント混合物が、セメント質材料、水、および疎水性混和材料から調製されており、
前記疎水性混和材料が、前記疎水剤で被覆された固体ポリマー粒子を含む被覆固体ポリマー粒子を含み、
前記被覆固体ポリマー粒子を、1:1~1:100の重量比で前記セメント質材料と混合する、請求項22~25のいずれか一項に記載の凝結セメント質組成物。
【請求項27】
前記重量比が、1:1~1:10である、請求項26に記載の凝結セメント質組成物。
【請求項28】
前記表面被覆が、界面活性剤と前記疎水剤とのブレンドを含む、請求項22~27のいずれか一項に記載の凝結セメント質組成物。
【請求項29】
活性炭、シリカフューム、使用済み触媒、およびこれらの混合物からなる群から選択され、かつ、前記組成物中の空孔または隙間を埋める、微粒子をさらに含む、請求項22~28のいずれか一項に記載の凝結セメント質組成物。
【請求項30】
前記固体ポリマー粒子が、クラムラバー粒子からなり、
前記疎水剤が、廃潤滑油、使用済みモーターオイル、ベースオイル、脂肪酸のエステル、植物油、およびこれらの混合物からなる群から選択され、
前記微粒子が、活性炭、シリカフューム、使用済み触媒、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項22~29のいずれか一項に記載の凝結セメント質組成物。
【請求項31】
活性炭、シリカフューム、使用済み触媒、およびこれらの混合物からなる群から選択され、かつ、前記組成物中の空孔または隙間を埋める、微粒子を含む、請求項22~30のいずれか一項に記載の凝結セメント質組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント質材料用の疎水性混和材料、より詳細には、セメント質材料の機械的強度を損なうことなく撥水特性をもたらす、(i)廃ゴムタイヤ由来のクラムラバーおよびプラスチック、(ii)廃潤滑油など、(iii)界面活性剤、ならびに(iv)微粒子から形成される混和材料に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント質混合物は、硬練りから超硬練りに亘るコンシステンシーを有する水硬性セメント結合材を含むペースト、モルタル、およびコンクリート組成物を指す。ペーストは、水硬性セメント結合材のみ、または水硬性セメント結合材と、フライアッシュ、シリカフュームなどのポゾランもしくは高炉スラグとの組合せ、および水で構成される混合物として定義される。モルタルは、細骨材をさらに含むペーストとして定義される。コンクリートはさらに粗骨材を含む。これらの組成物は、凝結遅延剤、凝結促進剤、消泡剤、空気連行剤または脱気剤、防錆剤、減水剤、および顔料などの他の混和材料をさらに含み得る。
【0003】
従来のセメント混合物には撥水成分も混合されているが、製造される疎水性セメント質混合物は、機械的強度が劣る傾向がある。また、セメントマトリックスは親水性であるが、疎水剤の多くは親油性有機溶媒である。疎水剤は水相に不溶であるため、水性セメント質混合物内での疎水剤の不均一な分散を引き起こす。産業界は、低コストの添加物、特に再生廃材由来の添加物を用いた、改良された疎水性セメント質混合物を開発することを必要としている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、(i)クラムラバー粒子(クラムラバー粒子は好ましくは廃ゴムタイヤ、リサイクルプラスチックおよび同様の固体材料に由来)および(ii)疎水液剤(好ましくは廃潤滑油、使用済みモーターオイル、ベースオイル、脂肪酸のエステル、植物油などに由来)を含む混和材料の開発に一部基づく。クラムラバー粒子は、その疎水剤を保持する固体ポリマー担体として働く。混和材料は、セメント質混合物またはセメント質材料に混合され、それらの強度を低下させることなくそれらの疎水性を向上させる。界面活性剤をその疎水剤に混和させて変性疎水剤を形成することもできる。界面活性剤は、その担体粒子の表面特性を改善する。疎水性混和材料は、例えば、活性炭素、シリカフューム、および使用済み触媒などの非ポリマー(ゴムでもプラスチックでもない)固体粒子である微粒子も含み得る。微粒子は、セメント質マトリックス中に生じる大きな空孔または隙間を埋め、セメント質材料の機械的強度を高める。セメントペースト、モルタル、およびコンクリートを含んで形成された、硬化または凝結したセメント質材料は、接触角が大きく、圧縮強度が高い。
【0005】
一態様において、本発明は、疎水剤を含む表面被膜を有する固体ポリマー粒子を含む水和セメント粒子が分散したセメント混合物を含むセメント質材料の疎水性を改善するための混和材料組成物を対象とし、固体ポリマー粒子は、水和セメント粒子の外面と、(i)疎水剤と混和した界面活性剤または(ii)微粒子の少なくとも1つとに付着している。
【0006】
別の態様において、本発明は、疎水剤を含む表面被膜を有する固体ポリマー粒子を含む水和セメント粒子が分散したセメント混合物を含む凝結セメント質組成物を対象とし、固体ポリマー粒子が水和セメント粒子の外面と、(i)疎水剤と混和した界面活性剤または(ii)微粒子の少なくとも1つに付着している。
【0007】
さらに別の態様において、本発明は、(a)ドライセメント、水、および疎水性混和材料を混合することによりセメント混合物を形成する工程と、(b)セメント混合物を硬化させて凝結セメント質組成物を形成する工程とを含み、疎水性混和材料が疎水剤を含む表面被覆を有する固体ポリマー粒子を含み、それにより、固体ポリマー粒子が、セメント混合物中に生じる水和セメント粒子の外面と、(i)疎水剤と混和させた界面活性剤または(ii)微粒子の少なくとも1つとに付着する、セメント質組成物の調製方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1A、1B、1C、および1Dは、水性セメント質混合物中に均一に分布した処理済みの疎水性担体を示す模式図である。
【
図2】
図2A、2B、および2Cは、ラバー粒子、潤滑油(界面活性剤を全く含まない)、および活性炭の疎水性混和材料を用いたセメントペーストサンプルの写真図である。
【
図3】
図3A、3B、および3Cは、ラバー粒子、潤滑油、SPAN20および活性炭の疎水性混和材料を用いたセメントペーストサンプルの写真図である。
【
図4】
図4A、4B、および4Cは、ラバー粒子、潤滑油、SPAN80および活性炭の疎水性混和材料を用いたセメントペーストサンプルの写真図である。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、(i)潤滑油を含まない、クラムラバー粒子40wt%および活性炭60wt%を含むゴム混合物の疎水性混和材料を含むモルタル試料と、(ii)SPAN20界面活性剤を含まない疎水性混和材料を含むモルタル試料の写真図である。
【
図6】クラムラバー粒子35wt%、潤滑油とSPAN20とのブレンド5wt%、および活性炭60wt%の疎水性混和材料を含むモルタル試料の写真図である。なお、界面活性剤と潤滑油の重量比は、3:7である。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、クラムラバー粒子52.2wt%、潤滑油とSPAN20とのブレンド7.8wt%、および活性炭40wt%の疎水性混和材料を含むモルタル試料および(ii)界面活性剤の疎水性混和材料を含むモルタル試料の写真図である。なお、界面活性剤と潤滑油の重量比は、3:7である。
【
図8】
図8Aおよび8Bは、クラムラバー粒子41.7wt%、潤滑油とSPAN20とのブレンド8.3wt%、および活性炭50wt%の疎水性混和材料を含むモルタル試料の写真図である。なお、界面活性剤と潤滑油の重量比は、3:7である。
【
図9】
図9Aおよび9Bは、クラムラバー粒子32wt%、潤滑油とSPAN20とのブレンド8wt%、および活性炭60wt%の疎水性混和材料を含むモルタル試料の写真図である。なお、界面活性剤と潤滑油の重量比は、3:7である。
【
図10】
図10は、クラムラバー粒子30wt%、潤滑油とSPAN20とのブレンド10wt%、および活性炭60wt%の疎水性混和材料を含むモルタル試料の写真図である。なお、界面活性剤と潤滑油の重量比は、3:7である。
【
図11】
図11Aおよび11Bは、クラムラバー粒子25wt%、潤滑油とSPAN20とのブレンド15wt%、および活性炭60wt%の疎水性混和材料を含むモルタル試料の写真図である。なお、界面活性剤と潤滑油の重量比は、3:7である。
【
図12】
図12は、クラムラバー粒子15wt%、潤滑油とSPAN20とのブレンド15wt%、および活性炭70wt%の疎水性混和材料を含むモルタル試料の写真図である。なお、界面活性剤と潤滑油の重量比は、3:7である。
【
図13】
図13は、クラムラバー粒子5wt%、潤滑油とSPAN20とのブレンド15wt%、および活性炭80wt%の疎水性混和材料を含むモルタル試料の写真図である。なお、界面活性剤と潤滑油の重量比は、3:7である。
【
図14】
図14A、14B、14C、および14Dは、クラムラバー粒子35wt%、油とSPAN20とのブレンド5wt%、および活性炭60wt%の疎水性混和材料を含むモルタル試料の写真図である。なお、界面活性剤と潤滑油の重量比は、3:7であり、油は、それぞれ、使用済み潤滑油、使用済みモーターオイル、ヒマシ油およびカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドからなる。
【
図15】
図15A、15B、15C、15D、15E、15F、15G、15H、および15Iは、クラムラバー粒子30wt%、油とSPAN20とのブレンド10wt%、および活性炭60wt%の疎水性混和材料を含むモルタル試料の写真図である。なお、界面活性剤と油の重量比は、3:7であり、油は、それぞれ、使用済み潤滑油、使用済みモーターオイル、ヒマシ油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、シリコーン油350、シリコーン油1000、ベースオイル150、ベースオイル500、およびステアリン酸n-ブチルからなる。
【
図16】
図16は、クラムラバー粒子30wt%、潤滑油とSPAN20とのブレンド10wt%、活性炭20wt%、およびシリカフューム40wt%の疎水性混和材料を含むモルタル試料の表面および内部の写真図である。なお、界面活性剤と潤滑油の重量比は、3:7である。
【
図17】
図17は、クラムラバー粒子30wt%、潤滑油とSPAN20とのブレンド10wt%、活性炭20wt%、および使用済みRFCC触媒40wt%の疎水性混和材料を含むモルタル試料の表面および内部の写真図である。なお、界面活性剤と潤滑油の重量比は、3:7である。
【
図18】
図18Aは、クラムラバー粒子30wt%、使用済み潤滑油とSPAN20とのブレンド10wt%、および活性炭60wt%の疎水性混和材料を含むセメントペースト試料の写真図である。なお、界面活性剤と使用済み潤滑油の重量比は、3:7であり、
図18Bおよび18Cは、同試料のSEM画像である。
【
図19】
図19Aは、クラムラバー粒子30wt%、ベースオイル500とSPAN20とのブレンド10wt%、および活性炭60wt%の疎水性混和材料を含むセメントペースト試料の写真図である。なお、界面活性剤とベースオイルの重量比は、3:7であり、
図19B、19C、および19Dは、同試料のSEM画像である。
【
図20】
図20Aは、クラムラバー粒子30wt%、ステアリン酸n-ブチルとSPAN20とのブレンド10wt%、および活性炭60wt%の疎水性混和材料のセメントペースト試料の写真図である。なお、界面活性剤とステアリン酸n-ブチルの重量比は、3:7であり、
図20Bおよび20Cは、同試料のSEM画像である。
【
図21】
図21Aは、クラムラバー粒子30wt%、ステアリン酸n-ブチルとSPAN20とのブレンド10wt%、活性炭40wt%、およびシリカフューム20wt%の疎水性混和材料を含むセメントペースト試料の写真図である。なお、界面活性剤とステアリン酸n-ブチルの重量比は、3:7であり、
図21B、21C、および21Dは、同試料のSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、セメント質材料の強度に悪影響を及ぼすことなく、セメント質材料に疎水特性を与える疎水性混和材料を提供する。疎水性混和材料は、疎水剤を含む表面被覆を有する固体ポリマー粒子を含む。混和材料の好ましい実施形態はまた、疎水剤に混和させた界面活性剤および混和材料中に分散された微粒子を含む。
【0010】
固体ポリマー粒子は、使用済みまたは廃棄されたタイヤ、リサイクルプラスチック、および他のポリマー廃棄物の原料に由来するクラムラバー粒子であることが好ましい。原料が廃タイヤである場合、クラムラバーは、初めにゴム成分をスチールワイヤ、ガラス繊維、および他の非ゴム材料から分離し、その後ごみの無いゴムを液体窒素を用いた低温凍結または他の適切な手段により回収する処理で再資源化されたタイヤである。このゴムは、その後機械的に粉砕され、ふるいによって典型的には100μm~1000μm、好ましくは300μm~600μmの所望のサイズの不規則な形状の粒子が選別される。クラムラバーは、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、および/またはイソプレンゴムを含む。これらのポリマーは、通常、硬化ゴムの耐久性および強度を改善させる有機硫黄化合物によって架橋される。固体ポリマー粒子は、疎水剤の担体粒子として働き、典型的に、疎水性混和材料の10重量%~40重量%、好ましくは15重量%~30重量%を構成する。
【0011】
微粒子は、通常1μm~1000μm、好ましくは1μm~500μmの範囲の粒径を有する非ポリマー材料を指す。非ポリマー材料は、廃材から回収することができる。好適な微粒子は、例えば、活性炭素、熱分解装置または焼却炉の底から回収されたシリカフューム、および製錬所のFCC(流動接触分解)装置から回収された使用済み触媒を含む。微粒子は、セメントマトリックス中の大きな空孔または隙間を埋めて疎水性セメント質材料の機械的強度を高めるのに特に適している。一部の微粒子は、セメントマトリックスに結合する極性官能基をその表面に有する。微粒子を用いる場合、これらの粒子は通常、疎水性混和材料の1重量%~80重量%、好ましくは40重量%~60重量%を構成する。固体ポリマー粒子と微粒子の重量比は、通常2:1~1:2の範囲内である。好適な実施形態では、(i)固体ポリマー粒子および微粒子の組合せと(ii)疎水剤との重量比が、10:1~10:3の範囲内である。
【0012】
疎水剤は、周囲温度(20℃)で液体であり、水を吸着または吸収せず、処理済み固体ポリマー粒子上に被膜を形成する材料を指す。好適な疎水剤は、炭化水素系疎水剤であり、炭化水素系疎水剤としては、例えば、廃潤滑油、使用済みモーターオイル、ベースオイル、脂肪酸のエステル、および植物油が挙げられる。疎水剤は、典型的に、疎水性混和材料の0.1重量%~15重量%、好ましくは1重量%~10重量%を構成する。
【0013】
界面活性剤は、エネルギー的に水と溶媒和しやすい親水性極性頭部基と、水によって溶媒和しにくい疎水性尾部の両方を有する分子を指す。界面活性剤は、水または水溶液に溶解すると表面張力を低下させ、あるいは2種の液体間または液体と固体の間の界面張力を低下させる。陽イオン界面活性剤はカチオン頭部基を有し、陰イオン界面活性剤はアニオン頭部基を有し、両性界面活性剤はカチオン頭部基とアニオン頭部基の両方を同時に保持する。界面活性剤は、固体ポリマー粒子と混合される前に疎水剤に加えて粘性の変性疎水剤を形成することが好ましい。好適な界面活性剤は、1.0~15.0、好ましくは5.0~10.0のHLB値を有する。界面活性剤を用いる場合、界面活性剤は典型的には、疎水性混和材料の1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%を構成する。界面活性剤は、疎水剤と混和させることが好ましく、ブレンド中の界面活性剤と疎水剤の重量比は、通常0.1~0.7、好ましくは0.1~0.5の範囲内である。
【0014】
イオンによるセメント水和への影響を防ぐためには、非イオン性界面活性剤が好ましい。SPANおよびTWEEN系の界面活性剤は、イオン性界面活性剤に対して向上した安定性、配合自由度、およびより幅広い適合性などの利点を有する、市販の非イオン性界面活性剤である。TWEEN界面活性剤は、ポリエトキシル化ソルビタンエステルであり、SPAN界面活性剤は、ソルビタンエステルである。これらは弱酸、アルカリ、および電解液中ならびに広いpH範囲にわたって安定である。特に、非イオン性界面活性剤は、表1でさらに説明するTWEENシリーズ(20-21-40-60-61-65-80)およびSPANシリーズ(20-40-60-80-83-85-120)から選択することが好ましい。
【0015】
【0016】
表1に記載のSPAN製品は、25℃で10%w/wで水に部分的に可溶である。TWEEN20および60も部分的に可溶であり、TWEEN40および60は可溶であり、TWEEN65は水中でゲルを形成する。HLB値が低いため、SPAN界面活性剤は、TWEEN界面活性剤よりも油相での溶解性が良好である。さらなる試験のためにSPAN界面活性剤を選択し、疎水剤と混合してポリマー粒子を被覆した。
【0017】
接触角は、水の静滴と、その液滴が置かれる平らで水平な表面との間の角度である。接触角は、従来、気液界面が固体表面に接する液体を用いて測定され、固体表面の液体によるぬれ性を定量化する。接触角が大きいほど、表面と液体の疎水相互作用が大きくなる。液体が表面に完全に広がって膜を形成する場合、接触角はゼロ度になる。接触角が大きくなるにつれ、ぬれ抵抗は、液体が表面上で球状液滴を形成する理論最大値である180°まで増大する。「疎水性」は、標準液体が水である場合のぬれ抵抗性の表面を説明するために用いられる用語である。接触角が大きいほど、表面と液体の疎水相互作用が大きくなる。本発明に関して、疎水性混和材料をセメント質材料に含ませることにより、硬化または凝結したセメント質材料が疎水性になるため、その表面は標準液体としての水と90°より大きい接触角を生じうる。好適な凝結セメント質材料は、少なくとも45度、より好ましくは90度より大きい接触角を有する。
【0018】
疎水性混和材料を調製する方法では、まず、廃潤滑油などの疎水剤を界面活性剤と組み合わせ、これらの成分を一緒に混合することで界面活性剤が疎水剤中に分散した強粘液の粘稠度を有する変性疎水剤を生成する。変性疎水剤は、その後クラムラバーなどの固体ポリマー粒子と混合される。活性炭などの微粒子を用いる場合、それらがその混合物に混和されて、使用可能な状態の疎水性混和材料となる。
【0019】
本発明の疎水性混和材料を、水硬性セメント結合材などのセメント質材料および水と混合することにより、セメント混合物が形成される。必要に応じて、ポゾラン、細骨材、および粗骨材を加えることができる。疎水性混和材料とセメント質材料(セメントおよび骨材を含む)の重量比は、通常1:1~1:100、好ましくは1:1~1:10である。
図1Aおよび1Bに示すように、セメント混合物が硬化すると、セメント粒子および水で構成された水和セメント(2)がセメント溶液またはセメントマトリックス(4)全体に形成される。各水和セメント(2)は、処理済み固体ポリマー粒子(14)に囲まれている。セメントマトリックス(4)中には、孤立した固体ポリマー粒子12もある程度分布している。微粒子は図示していない。
【0020】
図1Cおよび1Dに示すように、処理済み固体ポリマー粒子は、固体ポリマー粒子(6)と、粒子(6)の外面を被覆する変性疎水剤の層(8)とを含む。層(8)中での界面活性剤(10)の整列により、固体ポリマー粒子(6)の外面特性がさらに改善され、担体としての疎水性固体粒子が、保持された疎水剤とともに、各水和セメント(2)の周囲で薄い連続する油相を形成する。セメントペーストの水和は、連続する油相中の変性疎水剤の妨げなく進行する。水和の完了に伴い、薄い連続する油相は、セメント質材料に優れた疎水特性および機械的強度をもたらす。凝結または硬化すると、セメント質材料は15MPa~50MPa、好ましくは25MPa~40MPaの圧縮強度を有する。
【実施例】
【0021】
(セメントペーストサンプル)
最初に、異なる疎水性混和材料を含むセメントペーストの疎水特性を評価した。(i)クラムラバー、(ii)廃潤滑油(疎水剤)、(iii)SPAN20(HLB=8.6)およびSPAN80(HLB=4.3)(非イオン性界面活性剤)、および(iv)活性炭を異なる量で含む様々な疎水性混和材料をセメントペーストに組み込み、疎水特徴を評価した。クラムラバーは、ゴムタイヤから作り、サイズは300μm~600μmであった。詳細には、様々な界面活性剤/疎水剤ブレンド(SHB)を、非イオン性界面活性剤および廃潤滑油を重量比0:10、1:9、および3:7で混合することにより調製した。様々なクラムラバーと活性炭(RAC)の組合せを試験し、クラムラバー粒子および活性炭粒子は、重量比で10:0、8:2、6:4、4:6、2:8、および0:10であった。選択された疎水性混和材料は、SHBとRACの組合せとを比10:0、10:1、10:2、・・・、10:9、および0:10にわたる異なる重量比率で有し、疎水性混和材料を得た。実際には、各疎水性混和材料は、まずクラムラバーをSHBと完全に混和させた後、続いてもしあれば活性炭を加えることで調製した。
【0022】
それぞれのセメントペーストサンプルの調製において、セメント粉末および疎水性混和材料は10:1の重量比で混合した。水とセメントの重量比は、0.45であった。セメントペーストサンプルをペトリ皿に注ぎ、28日間約20℃の周囲温度で硬化させた。水滴をサンプルの表面に付着させ、接触角を目視で評価した。
【0023】
概して、界面活性剤も活性炭も含まない疎水性混和材料はごく僅かな疎水性改善をセメントペーストサンプルにもたらしたことが観察された。すなわち、吸着された廃潤滑油のみを含む変性ゴム粒子は、撥水性に軽微な改善をもたらした。これに対し、界面活性剤/疎水剤ブレンド(廃潤滑油および非イオン性界面活性剤)を含む変性ゴム粒子は、実際に撥水性を大幅に向上させた。また、疎水剤および活性炭を含む変性ゴム粒子も撥水性を改善させた。水滴を付着させた代表的な硬化セメントサンプルを
図2~6に示す。
【0024】
図2A、2B、および2Cは、セメント粉末、クラムラバー、潤滑油、および活性炭から作られ、界面活性剤を含まない硬化セメントペーストサンプルである。各サンプルは直径6cmであった。詳細には、疎水性混和材料は、クラムラバー30wt%を含み、クラムラバーと活性炭(もしあれば)を合わせた量は、疎水性混合物の85wt%~90wt%を構成した。活性炭とクラムラバーの重量比は、変動があった。サンプルのクラムラバーと活性炭の重量比はそれぞれ、10:0(
図2A)、6:4(
図2B)、および4:6(
図2C)であった。画像は、活性炭比率の増加にともなう接触角の少々の増大を示している。このように、界面活性剤を含まない場合であっても、活性炭を使用することにより撥水性が改善された。
【0025】
図3A、3B、および3Cは、セメント粉末、クラムラバー、潤滑油、活性炭、およびSPAN20から作られた硬化セメントペーストサンプルである。詳細には、疎水性混和材料は、クラムラバー30wt%および使用済み潤滑油とSPAN20とのブレンド10wt%を含み、ブレンド中の界面活性剤と使用済み潤滑油の重量比は3:7であった。クラムラバーと活性炭(もしあれば)を合わせた量は、疎水性混合物の85wt%~90wt%を構成した。活性炭とクラムラバーの重量比は、変動があった。サンプルのクラムラバーと活性炭の重量比はそれぞれ、10:0(
図3A)、6:4(
図3B)、および4:6(
図3C)である。画像は、活性炭比率の増加にともなう接触角の増大を示している。
【0026】
図4A、4B、および4Cは、セメント粉末、クラムラバー、潤滑油、活性炭、およびSPAN80から作られた硬化セメントペーストサンプルである。詳細には、疎水性混和材料は、クラムラバー30wt%および使用済み潤滑油とSPAN80とのブレンド10wt%を含み、ブレンド中の界面活性剤と使用済み潤滑油の重量比は3:7であった。クラムラバーと活性炭(もしあれば)を合わせた量は、疎水性混合物の85wt%~90wt%を構成した。活性炭とクラムラバーの重量比は、変動があった。サンプルのクラムラバーと活性炭の重量比はそれぞれ、10:0(
図4A)、6:4(
図4B)、および4:6(
図4C)である。画像は、活性炭比率の増加にともなう接触角の増大を示している。
【0027】
疎水性混和材料中の非イオン性界面活性剤または活性炭の割合を上げることにより、セメントペーストサンプルの撥水性を改善させることができる。SPAN20を含むセメントペーストは、SPAN80を含み、HLB値がより低いものと比較して、より高い撥水性を示した。より強い親油性(油状)の性質により、SPAN80は水性セメントマトリックスに分散しにくい。
【0028】
(モルタルサンプル)
異なる疎水性混和材料を含むセメントモルタル試料を試験し、(i)混和材料として未処理クラムラバーを含むコントロールセメントモルタル試料、および(ii)混和材料を含まずに作られたコントロールセメントモルタル試料と比較した。混和材料を全く含まないコントロールモルタル試料の混合重量比は、セメント1:砂2.75:水0.6であった。例えば、水硬性セメントの開始量が100グラムである場合であれば、275グラムのけい砂および60グラムの水が必要となる。
【0029】
試験セメントモルタル試料では、けい砂4.5wt%または6wt%を疎水性混和材料で置換した。4.5wt%置換の場合、100グラムの水硬性セメントでは、それぞれ262.625グラム、12.375グラム、および60グラムのけい砂、疎水性混和材料、および水を用いた。モルタル試料は、5cm角のブロックであった。
【0030】
疎水性混和材料は、(i)クラムラバー、(ii)廃潤滑油(疎水剤)、(iii)SPAN20(非イオン性界面活性剤)、(iv)活性炭、および任意に(v)シリカフュームを含有した。SPAN20および廃潤滑油を重量比3:7で混合することで界面活性剤疎水剤ブレンドを調製した。このブレンドをクラムラバー粒子、微粉末と混合して疎水性混和材料を得た。
【0031】
モルタル試料は、セメント、砂、疎水性ブレンド(もしあれば)を2分間乾式混合し、6分間水と湿式混合し、その混合したものを立方体型枠(50mm×50mm×50mm)に注型することで調製した。24時間後、すべての試料が常温で飽和石灰水中で硬化した。
【0032】
未処理ゴム粒子、セメント、および砂のみを含む試料もコントロールとして調製した。
【0033】
用いたポルトランドType I セメントは、Taiwan Cement Corporation(台湾)製であった。その物理化学特性を表2に記載する。使用した精製砂は、Ching-Ching Foundry Sand Co., Ltd.(台湾)から入手した。砂の化学組成および粒度分布を表3に示す。圧縮強度の測定は、ASTM C109に準拠して行った。
【0034】
【0035】
【0036】
例1
この例では、添加物なしでコントロールモルタル試料を調製した。それらの圧縮強度を硬化後7日、14日、および28日後に測定した。試験モルタル試料を、けい砂に対する疎水性混和材料置換率4.5wt%および6wt%で調製し、それらの圧縮強度を測定した。表4は、使用した各種の疎水性混和材料の成分を記載する。使用した疎水性油は、使用済み潤滑油であった。表に記載の油の量は、潤滑油およびSPAN20界面活性剤の両方を含むブレンドである。ブレンドのSPAN20と潤滑油の比は、重量比で3:7である。
【0037】
【0038】
未処理クラムラバーを唯一の添加物として含むモルタル試料は、コントロール試料よりも低い圧縮強度を有していた。疎水性混和材料の存在により、添加物を含まないコントロールモルタルのそれと比較してモルタルの圧縮強度が低下した。ゴムおよび油の比率が高いと、モルタル試料の圧縮強度が低下した。活性炭が存在することにより、圧縮強度が高まった。
【0039】
例2
この例では、けい砂に対する疎水性混和材料置換率4.5wt%で試験モルタル試料を調製し、それらの圧縮強度を測定した。表5は、使用した各種の疎水性混和材料の成分を記載する。使用した疎水性油は、使用済み潤滑油であった。表に記載の油の量は、潤滑油およびSPAN20界面活性剤の両方を含むブレンドである。ブレンドのSPAN20と廃潤滑油の比は、重量比で3:7である。
【0040】
【表5】
*は例3において疎水性評価したモルタル試料を示す。
*に付された数字は図面中の図番を表す。
【0041】
このデータは、未処理クラムラバーを含むモルタル試料が、コントロール試料よりも低い圧縮強度を有することを示している。この結果はさらに、高い割合の油を含む疎水性混和材料を組み込むことで、モルタル試料の圧縮強度を大幅に低下できることを示している。また一方で、50%を超える活性炭を有する疎水性混和材料を用いることで、モルタル試料の圧縮強度が改善された。
【0042】
例3
モルタル試料の表面に付着させた水滴の挙動は、疎水性混和材料の効果の指標となる。例2で説明した良好な圧縮強度を示したモルタル試料のいくつかの表面に水滴を置いた。詳細には、表5中の(*)で示したモルタル試料に水滴を滴下し、これらの試料の写真を、水滴を付着させた約30秒後に撮影した。
【0043】
図5Aおよび5Bは、モルタル試料の写真図であり、疎水性混和材料は、クラムラバー粒子40wt%を含み、潤滑油を含まず、活性炭60wt%を含み、SPAN20界面活性剤を含まなかった。水はその表面を完全に濡らし、この混和材料の組合せが撥水性をもたらさないことを示唆した。
図6に示すように、クラムラバー35wt%、油5wt%、および活性炭60wt%を含むモルタル試料は、撥水性の顕著な改善を示さなかった。一方、疎水性混和材料が
図7~13の写真に示すように7wt%を超える油を有するモルタル試料では、撥水性の改善が顕著である。
【0044】
例4
この例では、使用済み潤滑油、使用済みモーターオイル、ヒマシ油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、シリコーン油350、シリコーン油1000、ベースオイル150N、ベースオイル500N、およびステアリン酸n-ブチルを含む様々な油(疎水剤)源を含有する疎水性混和材料を試験した。試験モルタル試料を調製し、けい砂に対する疎水性混和材料置換率は、4.5wt%であった。表に記載の油の量は、潤滑油およびSPAN20界面活性剤の両方を含むブレンドである。ブレンドのSPAN20と廃潤滑油の比は、重量比で3:7である。表6は、モルタル試料の圧縮強度への各種の油の影響をまとめたものである。
【0045】
【0046】
このデータは、ヒマシ油、トリグリセリド、またはシリコーン油を含むモルタル試料が、添加物不使用のコントロール試料よりも低い圧縮強度を有することを示している。疎水性混和材料が使用済み潤滑油、使用済みモーターオイル、ベースオイル150N、またはベースオイル500Nを含む石油系油を含むモルタル試料では、未処理クラムラバー粒子を唯一の添加物として含むかまたは添加物不使用の試料よりも大幅に高い圧縮強度を有していた。
【0047】
モルタル試料の表面に水滴を置き、これらの試料の写真を、水滴を付着させた約30秒後に撮影した。
図14A~14Dの一連の画像は、ゴム35wt%、活性炭60wt%、ならびにそれぞれ使用済み潤滑油、使用済みモーターオイル、ヒマシ油、およびカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドからなる油5wt%を含むモルタル試料の表面および内部を示している。
【0048】
図15A~15Iの一連の画像は、ゴム30wt%、活性炭60wt%、ならびにそれぞれ使用済み潤滑油、使用済みモーターオイル、ヒマシ油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、シリコーン油350、シリコーン油1000、ベースオイル150、ベースオイル500、およびステアリン酸n-ブチルからなる油10wt%を含むモルタル試料の表面および内部を示している。
【0049】
油10wt%を含む疎水性混和材料が、油が5wt%の混和材料よりもモルタル試料の表面および内部の両方の撥水特性を改善させたことは明らかである。内部表面の接触角が大きかったことにより、サンプル内部の疎水性が良好であることが確かめられた。疎水性混和材料が表面だけでなく、セメントペースト中に均一に分散することも示された。
【0050】
例5
この例では、クラムラバー粒子、使用済み潤滑油、活性炭、およびシリカフュームまたは使用済みRFCC触媒を混合することで疎水性混和材料を形成した。試験モルタル試料を調製し、けい砂に対する疎水性混和材料置換率は、4.5wt%であった。表に記載の油の量は、潤滑油およびSPAN20界面活性剤の両方を含むブレンドである。ブレンドのSPAN20と潤滑油の比は、重量比で3:7である。表7では、圧縮試験の結果がまとめられている。
【0051】
【0052】
シリカフュームまたはRFCCを加えることで、モルタル試料の圧縮強度が低下した。
図16および17は、ラバー粒子30wt%、油10wt%、活性炭40wt%、およびシリカフュームまたはRFCC触媒20wt%をそれぞれ含む疎水性混和材料を用いて作られた試料の表面および内部の写真である。これらのモルタル試料の撥水性は、
図10に示す、ラバー粒子30wt%、油10wt%、および活性炭60wt%を含む疎水性混和材料で作られたモルタル試料の撥水性と同等であるように見える。
【0053】
例6
選択された疎水性混和材料を用いて作られた水和セメントペーストの微細構造を走査電子顕微鏡を用いて調査した。セメント粉末および混和材料を10:1の重量比で混合した。水とセメントの重量比は0.45であった。セメントペーストサンプルをペトリ皿に注ぎ、28日間約20℃の周囲温度で硬化させた。硬化したセメントペーストサンプルに水滴を付着させた。表8は、試験した4つのサンプルの混和材料成分を記載している。油成分は、SPAN20界面活性剤を含み、界面活性剤と油の重量比は、3:7である。
【0054】
【0055】
図18Aは、第1の試料の写真であり、
図18Bおよび18Cは、その試料のSEM画像である。
【0056】
図19Aは、第2の試料の写真であり、
図19B、19C、および19Dは、その試料のSEM画像である。
【0057】
図20Aは、第3の試料の写真であり、
図20B、および20Cは、その試料のSEM画像である。
【0058】
図21Aは、第4の試料の写真であり、
図21B、21C、および21Dは、その試料のSEM画像である。
【0059】
これらの写真は、良好な疎水特性を示した各セメントペースト試料を示している。SEM画像は、非常に緻密で均一な微細構造を示し、疎水性担体および疎水剤がセメントマトリックス中によく分散していることを示している。SEM画像は、よりアモルファスなケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)ゲルが形成されることを示し、これは疎水性混和材料をセメントペーストに加えたことがセメントの水和に悪影響を及ぼさなかったことを意味する。様々なモルフォロジーのC-S-Hゲルの形成は、ゲルの異なる相組成によるものである。
【国際調査報告】