(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(54)【発明の名称】イオン移動度分離のための電圧制御
(51)【国際特許分類】
G01N 27/623 20210101AFI20220712BHJP
H01J 49/02 20060101ALI20220712BHJP
H01J 49/06 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G01N27/623
H01J49/02 200
H01J49/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569034
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 US2020033976
(87)【国際公開番号】W WO2020237037
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520445886
【氏名又は名称】モビリオン・システムズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン・エー・アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ダニエル・デボード
【テーマコード(参考)】
2G041
5C038
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041CA02
2G041EA05
2G041FA09
2G041GA29
2G041HA03
5C038FF04
5C038FF13
(57)【要約】
デバイスは、第1の表面と、第2の表面と、コントローラとを含む。第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成する。第2の表面は、第1の電極と、離間された第2の電極とを有し、第1の電圧信号を受信し、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルを生成するように構成されている第1の複数の電極を含む。第2の複数の電極は、第1の電極と第2の電極との間に位置し、第2の電圧信号を受信して、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成された第1の移動駆動電位を生成するように構成されている。コントローラは、第1の電圧信号および第2の電圧信号を生成するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスであって:
第1の表面と;
該第1の表面に隣接した第2の表面であって、第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成し、該第1のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延び、第2の表面は:
第1の電極と、第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の電極から離間された第2の電極とを含み、第1の複数の電極は第1の方向に沿って延びる第1の複数の電極であって、第1の電圧信号を受信して、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルの少なくとも一部を生成するように構成されている、第1の複数の電極と;
第1の電極と第2の電極との間に位置し、第1の方向に沿って配置され、第2の電圧信号を受信して、第1の方向に沿って移動する第1の移動駆動電位を生成するように構成された第2の複数の電極であって、第1の移動駆動電位は、イオンを第1のイオンチャネルに沿って案内するように構成されている、第2の複数の電極とを含む、第2の表面と;
第1の表面および第2の表面に電気的に連結され、第1の電圧信号および第2の電圧信号を生成するように構成されたコントローラと
を含む前記デバイス。
【請求項2】
第2の電極は、第3の電圧信号を受信し、擬ポテンシャルの少なくとも第2の部分を生成するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
第1の電圧信号は第1の高周波(RF)信号であり、第3の電圧信号は第2のRF電圧信号であり、第1のRF電圧信号と第2のRF電圧信号との間の位相差は、約0°~約180°の範囲内の値を有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
コントローラは、第1のRF電圧信号を生成するように構成された第1のRF制御回路と、第2のRF電圧信号を生成するように構成された第2のRF制御回路とを含む、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
コントローラは、第1のRF制御回路および第2のRF制御回路に通信可能に連結されたマスタ制御回路を含み、該マスタ制御回路は:
第1のRF電圧信号の振幅および/または周波数、第2のRF電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに第1のRF電圧信号と第2のRF電圧信号との間の位相差のうちの1つまたはそれ以上を決定し;
1つまたはそれ以上のRF制御信号を第1のRF制御回路および第2のRF制御回路に提供するように構成され、1つまたはそれ以上のRF制御信号は、第1のRF電圧信号の振幅および/または周波数、第2のRF電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに第1のRF電圧信号と第2のRF電圧信号との間の位相差のうちの1つまたはそれ以上を示す、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
第2の電圧信号は電流波形であり、コントローラは、複数の進行波電圧信号を生成するように構成された複数の進行波制御回路を含み、該複数の進行波電圧信号の振幅および位相は予め決定されており、電流波形は複数の進行波電圧信号を含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
電流波形は、鋸歯状の電流波形、矩形の電流波形、および正弦波電流波形のうちの1つまたはそれ以上を含むパルス電流波形であり、鋸歯状の電流波形、矩形の電流波形、および正弦波電流波形のうちの1つまたはそれ以上はバイアスされている、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
複数の進行波制御回路は、複数のパルス電流制御回路および複数の直流制御回路のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
マスタ制御回路は:
複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数と、複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差とのうちの1つまたはそれ以上を決定し;
1つまたはそれ以上の進行波制御信号を複数の進行波制御回路に提供するように構成され、1つまたはそれ以上の進行波制御信号は、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差のうちの1つまたはそれ以上を示す、請求項6に記載のデバイス。
【請求項10】
コントローラは、第1の電圧信号を生成するように構成された第1のRF制御回路と、第1の直流(DC)電圧信号を生成するように構成された第1のDC制御回路とを含み、第1の電圧信号は、第1のRF電圧信号であり、第2の電極は、第1のDC電圧信号を受信するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
第1の複数の電極は、第2の電極に隣接し、第1の方向に沿って延びる第3の電極を含み、第3の電極は、第1の電圧信号を受信し、擬ポテンシャルの第2の部分を生成するように構成されている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
第1の表面および第2の表面は、間に第2のイオンチャネルを画成し、第2のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延び、第2の表面は:
第2の電極と第3の電極との間に位置する第3の複数の電極を含み、該第3の複数の電極は、第4の電圧信号を受信し、第1の方向に平行に移動する第2の移動駆動電位を生成するように構成され、該第2の移動駆動電位は、第2のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成され;
第1のイオンチャネルは、第2の方向に沿って第1の電極と第2の電極との間に位置し、第2のイオンチャネルは、第2の方向に沿って第2の電極と第3の電極との間に位置する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
第3の複数の電極は、スイッチ制御回路からスイッチ電圧信号を受信し、ゲート電位を生成するように構成されたスイッチ電極を含み、ゲート電位は、第2のイオンチャネルから第1のイオンチャネルにイオンを案内するように構成されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
コントローラは、スイッチ制御回路に通信可能に連結されたマスタ制御回路を含み、該マスタ制御回路は:
スイッチ電極がゲート電位を生成するように構成されている期間を決定し;
スイッチ制御信号をスイッチ制御回路に提供するように構成され、スイッチ制御回路は、スイッチ制御信号に基づいて、決定された期間中にスイッチ電圧信号を生成するように構成されている、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
コントローラは、電源に電気的に連結され、電源信号を受信するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
第1の複数の電極の第2の電極は、接地電位に電気的に連結されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
コントローラは、バイアスDC電圧信号を生成するように構成された第2のDC制御回路を含み、第1の表面の少なくとも1つの電極は、バイアスDC電圧信号を受信するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
第1の表面は:
第1のイオン操作デバイス電位を特徴とする第1のイオン操作デバイスであって、第1の表面は、第1のイオン操作デバイスからイオンを受け取るように構成された第1のイオン操作デバイスと;
第2のイオン操作デバイス電位を特徴とする第2のイオン操作デバイスであって、第1の表面は、第2のイオン操作デバイスへとイオンを輸送するように構成された、第2のイオン操作デバイスとのうちの1つまたはそれ以上に連結され、
バイアスDC電圧信号に関連するイオンのバイアスイオン電位エネルギーが、第1のイオン操作デバイス電位に関連するイオンの第1のイオン電位エネルギーよりも小さく、かつ/または、バイアスイオン電位エネルギーが、第2のイオン操作デバイス電位に関連するイオンの第2のイオン電位エネルギーよりも大きい、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
第1のイオン操作デバイスはイオン源であり、第2のイオン操作デバイスはイオン検出器であり、第1の表面は、該第1の表面の第1の端部でイオン源に連結され、第1の表面の第2の端部でイオン検出器に連結されている、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
方法であって:
第1の表面、および第1の表面に隣接した第2の表面を提供することであって、第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成し、該第1のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延び、第2の表面は:
第1の電極と、第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の電極から離間された第2の電極とを含む第1の複数の電極であって、第1の方向に沿って延びる第1の複数の電極と;
第1の電極と第2の電極との間に位置し、第1の方向に沿って配置されている第2の複数の電極とを含む、ことと;
第1のイオンチャネルに沿ってイオンを提供することと;
コントローラによって、第1の電圧信号を第1の電極に印加することであって、該第1の電極は、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルの少なくとも一部を生成するように構成されている、ことと;
コントローラによって、第2の電圧信号を第2の電極に印加することであって、該第2の電極は、第1の方向に沿って移動する第1の移動駆動電位を生成するように構成され、第1の移動駆動電位は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成されている、ことと、
を含む前記方法。
【請求項21】
第1の電圧信号は第1の高周波(RF)信号であり、第3の電圧信号は第2のRF電圧信号であり、第1のRF電圧信号と第2のRF電圧信号との間の位相差は、約0°~約180°の範囲内の値を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
コントローラによって、第3の電圧信号を第2の電極に印加することをさらに含み、第2の電極は、擬ポテンシャルの少なくとも第2の部分を生成するように構成されている、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
コントローラは、第1のRF電圧信号を生成するように構成された第1のRF制御回路と、第2のRF電圧信号を生成するように構成された第2のRF制御回路とを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
デバイスであって:
第1の表面と;
該第1の表面に隣接した第2の表面であって、第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成し、該第1のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延び、第2の表面は:
第1の電極と、第1の方向に沿って第1の電極に隣接した第2の電極とを含み、第1の複数の電極は第1の方向に沿って配置される第1の複数の電極であって、第1の電極は、第1のRF電圧信号を受信するように構成され、第2の電極は、第2のRF電圧信号を受信するように構成されている、第1の複数の電極と;
第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の複数の電極から離間され、第3の電極と、第3の電極に隣接して第1の方向に沿って配置された第4の電極とを含む第2の複数の電極であって、第3の電極は、第2のRF電圧信号を受信するように構成され、第4の電極は、第1のRF電圧信号を受信するように構成されている、第2の複数の電極とを含み、
第1の電極、第2の電極、第3の電極、および第4の電極は、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルの一部を生成するように構成されている、第2の表面と;
第1の表面および第2の表面に電気的に連結されたコントローラであって、第1の位相を有する第1のRF電圧信号を生成し、第2の位相を有する第2のRF電圧信号を生成するように構成され、第1の位相と第2の位相との間の第1の位相差は、第1の所定の値に設定される、コントローラと
を含む、前記デバイス。
【請求項25】
第1の複数の電極は、第1の方向に沿って第2の電極に隣接した第5の電極を含み、第2の複数の電極は、第1の方向に沿って第4の電極に隣接した第6の電極を含み、
コントローラは、第3の位相を有する第3のRF電圧信号を生成するように構成され、第2の位相と第3の位相との間の第2の位相差は、第2の所定の値に設定される、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
第1の複数の電極および第2の複数の電極は、第1の方向に沿って移動する移動駆動電位を生成するように構成され、第1の移動駆動電位は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成されている、請求項24に記載のデバイス。
【請求項27】
コントローラは、第1のRF電圧信号を生成するように構成された第1のRF制御回路と、第2のRF電圧信号を生成するように構成された第2のRF制御回路とを含む、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
コントローラは、第1のRF制御回路および第2のRF制御回路に通信可能に連結されたマスタ制御回路を含み、該マスタ制御回路は:
第1のRF電圧信号の振幅および/または周波数、第2のRF電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに第1の所定の値のうちの1つまたはそれ以上を決定し;
1つまたはそれ以上の制御信号を第1のRF制御回路および第2のRF制御回路に提供するように構成され、制御信号は、第1のRF電圧信号の振幅および/または周波数、第2のRF電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに第1の所定の値のうちの1つまたはそれ以上を示す、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
第1のイオンチャネルに沿った移動駆動電位の速度は、第1のRF電圧信号の周波数に基づく、請求項26に記載のデバイス。
【請求項30】
第1のイオンチャネルに沿った移動駆動電位の空間周波数は、第1の所定の値に基づく、請求項26に記載のデバイス。
【請求項31】
第1の電極は、第2の方向に沿って第3の電極に隣接し、第2の電極は、第2の方向に沿って第4の電極に隣接している、請求項24に記載のデバイス。
【請求項32】
第1の電極および第2の電極は、第1の方向に沿って第3の電極および第4の電極から空間的に変位している、請求項24に記載のデバイス。
【請求項33】
第1の複数の電極と第2の複数の電極の間に位置し、第1の方向に沿って配置されている第3の複数の電極をさらに含み、
該第3の複数の電極は、第3の電圧信号を受信し、第1の方向に沿って移動する第1の移動駆動電位を生成するように構成され、第1の移動駆動電位は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成されている、請求項24に記載のデバイス。
【請求項34】
第3の電圧信号は電流波形であり、コントローラは、複数の進行波電圧信号を生成するように構成された複数の進行波制御回路を含み、複数の進行波電圧信号の振幅および位相は予め決定されており、電流波形は複数の進行波電圧信号を含む、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
電流波形は、鋸歯状の電流波形、矩形の電流波形、およびAC波形のうちの1つまたはそれ以上を含むパルス電流波形であり、鋸歯状の電流波形、矩形の電流波形、およびAC波形のうちの1つまたはそれ以上はバイアスされている、請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
複数の進行波制御回路は、複数のパルス電流制御回路および複数の直流制御回路のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項35に記載のデバイス。
【請求項37】
コントローラは、複数の進行波制御回路に通信可能に連結されたマスタ制御回路を含み、該マスタ制御回路は:
複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数と、複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差とのうちの1つまたはそれ以上を決定し;
1つまたはそれ以上の進行波制御信号を複数の進行波制御回路に提供するように構成され、1つまたはそれ以上の進行波制御信号は、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差のうちの1つまたはそれ以上を示す、請求項36に記載のデバイス。
【請求項38】
コントローラは、第1の直流(DC)電圧信号を生成するように構成された第1のDC制御回路を含み、第3の複数の電極は、第1のDC電圧信号を受信するように構成されている、請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
コントローラは、バイアスDC電圧信号を生成するように構成された第2のDC制御回路を含み、第1の表面および第2の表面のそれぞれの少なくとも1つの電極は、バイアスDC電圧信号を受信するように構成されている、請求項24に記載のデバイス。
【請求項40】
第1の表面は:
第1のイオン操作デバイス電位を特徴とする第1のイオン操作デバイスであって、第1の表面は、第1のイオン操作デバイスからイオンを受け取るように構成された第1のイオン操作デバイスと;
第2のイオン操作デバイス電位を特徴とする第2のイオン操作デバイスであって、第1の表面は、第2のイオン操作デバイスへとイオンを輸送するように構成された、第2のイオン操作デバイスと
のうちの1つまたはそれ以上に連結され、
バイアスDC電圧信号は、第1のイオン操作デバイス電位よりも小さく、かつ/または、バイアスDC電圧信号は、第2のイオン操作デバイス電位よりも大きい、請求項39に記載のデバイス。
【請求項41】
第1の表面は、該第1の表面の第1の端部でイオン源電位を特徴とするイオン源に連結され、第1の表面の第2の端部でイオン検出器電位を特徴とするイオン検出器に連結され、
バイアスDC電圧信号は、イオン検出器電位よりも大きく、イオン源電位よりも小さい、請求項40に記載のデバイス。
【請求項42】
デバイスであって:
第1の表面と;
該第1の表面に隣接した第2の表面であって、第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成し、該第1のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延び、第2の表面は:
第1の電極と、第1の方向に沿って第1の電極に隣接した第2の電極とを含み、第1の複数の電極は第1の方向に沿って配置される第1の複数の電極であって、第1の電極は、第1のRF電圧信号を受信するように構成され、第2の電極は、DC電圧信号を受信するように構成されている、第1の複数の電極と;
第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の複数の電極から離間され、第3の電極と、第3の電極に隣接して第1の方向に沿って配置された第4の電極とを含む第2の複数の電極であって、第3の電極は、第2のRF電圧信号を受信するように構成され、第4の電極は、DC電圧信号を受信するように構成されている、第2の複数の電極とを含み、
第1の電極、第2の電極、第3の電極、および第4の電極は、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルの一部を生成するように構成されている、第2の表面と;
第1の表面および第2の表面に電気的に連結され、第1の位相を有する第1のRF電圧信号およびDC電圧信号を生成するように構成されたコントローラと
を含む、前記デバイス。
【請求項43】
デバイスであって:
第1の表面と;
該第1の表面に隣接した第2の表面であって、第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成し、該第1のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延び、第2の表面は:
第1の電極と、第1の方向に沿って第1の電極に隣接した第2の電極とを含み、第1の複数の電極は第1の方向に沿って配置される第1の複数の電極であって、第1の電極は、第1のRF電圧信号を受信するように構成され、第2の電極は、第2のRF電圧信号を受信するように構成されている、第1の複数の電極と;
第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の複数の電極から離間され、第3の電極と、第3の電極に隣接して第1の方向に沿って配置された第4の電極とを含む第2の複数の電極であって、第3の電極は、第1のRF電圧信号を受信するように構成され、第4の電極は、第2のRF電圧信号を受信するように構成されている、第2の複数の電極とを含み、
第1の電極、第2の電極、第3の電極、および第4の電極は、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルの一部を生成するように構成され、
第1の電極は、第2の方向に沿って第3の電極に位置合わせされ、第2の電極は、第2の方向に沿って第4の電極に位置合わせされている、第2の表面と;
第1の表面および第2の表面に電気的に連結されたコントローラであって、第1の位相を有する第1のRF電圧信号を生成し、第2の位相を有する第2の電圧信号を生成するように構成され、第1の位相と第2の位相との間の第1の位相差は、第1の所定の値に設定される、コントローラと
を含む、前記デバイス。
【請求項44】
方法であって:
第1の表面、および第1の表面に隣接した第2の表面を提供することであって、第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成し、該第1のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延び、第2の表面は、
第1の電極と、第1の方向に沿って第1の電極に隣接した第2の電極とを含む第1の複数の電極であって、第1の複数の電極は、第1の方向に沿って配置される、第1の複数の電極と;
第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の複数の電極から離間され、第3の電極と、第3の電極に隣接して第1の方向に沿って配置された第4の電極とを含む第2の複数の電極とを含む、ことと;
第1のイオンチャネルに沿ってイオンを提供することと;
コントローラによって、第1のRF電圧信号を第1の電極および第4の電極に、第2のRF電圧信号を第2の電極および第3の電極に印加することであって、第1の電極、第2の電極、第3の電極、および第4の電極は、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルの一部を生成するように構成されている、ことと
を含む前記方法。
【請求項45】
第1の複数の電極および第2の複数の電極は、第1の方向に沿って移動する移動駆動電位を生成するように構成され、第1の移動駆動電位は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成されている、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
第2の表面は、第1の複数の電極と第2の複数の電極の間に位置し、第1の方向に沿って配置されている第3の複数の電極をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
複数の進行波制御回路によって、第3の電圧信号を第3の複数の電極に印加することをさらに含み、第3の複数の電極は、第1の方向に沿って移動する第1の移動駆動電位を生成するように構成され、第1の移動駆動電位は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成されている、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
第3の電圧信号は所定の電流波形であり、複数の進行波制御回路は、複数の進行波電圧信号を生成するように構成され、所定の電流波形は複数の進行波電圧信号を含む、請求項47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月21日に出願された「Voltage Control for Ion Mobility Separation」と題する米国仮特許出願第62/850,823号の優先権の利益を主張し、その全文が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、イオン移動度分離の電圧制御のためのシステムおよび対応する方法、より詳細には、セグメント化された電極配置と、システム内でイオンを案内するためのパルス状またはバイアスされた電圧信号(例えば、符号反転のないパルス電流波形または周期的な波形)とを含むことができるシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イオンモビリティスペクトロメトリ(IMS)は、気相中のイオンをその移動度に基づいて分離し同定する技術である。例えば、IMSは、異なる移動度を有する構造異性体および高分子を分離するために利用される。IMSは、静的または動的な背景ガス中のイオンの混合物に、一定の、または経時変化する電界を印加することに頼る。移動度が大きい(または衝突断面積[CCS]が小さい)イオンは、移動度が小さい(またはCCSが大きい)イオンと比べて電界の影響下でより高速で移動する。IMSデバイスの分離距離(例えば、ドリフトチューブ内)にわたって電界を印加することによって、イオン混合物のイオンは移動度に基づいて空間的に分離される。異なる移動度を有するイオンは、ドリフトチューブの端部にそれぞれ異なる時間に到達するため(時間的分離)、イオンは、ドリフトチューブの端部にある検出器による検出時間に基づいて同定される。移動度分離の分解能は、分離距離を変えることによって変更される。
【0004】
質量分析法(MS)は、化学種の混合物をその質量電荷比に基づいて分離できる分析技術である。MSは、化学種の混合物を電離させ、次いで、電界および/または磁界の存在下でイオン混合物を加速させることを伴う。質量分析計によっては、同じ質量電荷比を有するイオンは同じ偏向を受ける。異なる質量電荷比を有するイオンは、異なる偏向を受けることができ、検出器(例えば、電子増倍管)による検出の空間的位置に基づいて同定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般的に、本開示の実施形態は、イオン移動度分離の電圧制御のためのシステムおよび対応する方法を提供する。
【0006】
デバイスは、第1の表面と、第2の表面と、コントローラとを含む。第2の表面は、第1の表面に隣接している。第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成する。第1のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延びている。第2の表面は、第1の電極と、第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の電極から離間された第2の電極とを含む第1の複数の電極を含む。第1の複数の電極は、第1の方向に沿って延びている。第1の電極は、第1の電圧信号を受信し、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルの少なくとも一部を生成するように構成されている。第2の複数の電極は、第1の電極と第2の電極との間に位置し、第1の方向に沿って配置されている。第2の複数の電極は、第2の電圧信号を受信して、第1の方向に沿って移動する第1の移動駆動電位を生成するように構成されている。第1の移動駆動電位は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成されている。本デバイスは、第1の表面および第2の表面に電気的に連結されたコントローラをさらに含む。コントローラは、第1の電圧信号および第2の電圧信号を生成するように構成されている。
【0007】
一実施態様では、第2の電極は、第3の電圧信号を受信し、擬ポテンシャルの少なくとも第2の部分を生成するように構成されている。別の実施態様では、第1の電圧信号は第1の高周波(RF)信号であり、第3の電圧信号は第2のRF電圧信号であり、第1のRF電圧信号と第2のRF電圧信号との間の位相差は、約0°~約180°の範囲内の値を有する。さらに別の実施態様では、コントローラは、第1のRF電圧信号を生成するように構成された第1のRF制御回路と、第2のRF電圧信号を生成するように構成された第2のRF制御回路とを含む。
【0008】
一実施態様では、コントローラは、第1のRF制御回路および第2のRF制御回路に通信可能に連結されたマスタ制御回路を含む。マスタ制御回路は、第1のRF電圧信号の振幅および/または周波数、第2のRF電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに第1のRF電圧信号と第2のRF電圧信号との間の位相差のうちの1つまたはそれ以上を決定するように構成されている。コントローラは、1つまたはそれ以上のRF制御信号を第1のRF制御回路および第2のRF制御回路に提供するようにさらに構成されている。1つまたはそれ以上のRF制御信号は、第1のRF電圧信号の振幅および/または周波数、第2のRF電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに第1のRF電圧信号と第2のRF電圧信号との間の位相差のうちの1つまたはそれ以上を示す。
【0009】
一実施態様では、第2の電圧信号は、所定の電圧/電流波形であり、コントローラは、複数の進行波電圧信号を生成するように構成された複数の進行波制御回路を含む。所定の電圧/電流波形は、複数の進行波電圧信号を含む。別の実施態様では、所定の電圧/電流波形は、鋸歯状の電圧/電流波形、矩形の電圧/電流波形、およびバイアスされたAC波形またはバイアスされた正弦波電圧/電流波形のうちの1つまたはそれ以上を含むパルス電圧波形である。さらに別の実施態様では、所定の電圧/電流波形は、符号反転のない周期的な波形であり、これは、電流の流れの方向を反転させないが、依然として経時変化する印加電位を示す。さらに別の実施態様では、複数の進行波制御回路は、複数の交流(AC)制御回路および複数の直流制御回路のうちの1つまたはそれ以上を含む。
【0010】
一実施態様では、マスタ制御回路は、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数と、複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差とのうちの1つまたはそれ以上を決定するように構成されている。マスタ制御回路は、1つまたはそれ以上の進行波制御信号を複数の進行波制御回路に提供するようにさらに構成されている。1つまたはそれ以上の進行波制御信号は、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数と、複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差とのうちの1つまたはそれ以上を示す。
【0011】
一実施態様では、コントローラは、第1の電圧信号を生成するように構成された第1のRF制御回路と、第1の直流(DC)電圧信号を生成するように構成された第1のDC制御回路とを含む。第1の電圧信号は、第1のRF電圧信号であり、第2の電極は、第1のDC電圧信号を受信するように構成されている。別の実施態様では、第1の複数の電極は、第2の電極に隣接し、第1の方向に沿って延びる第3の電極を含む。第3の電極は、第1の電圧信号を受信し、擬ポテンシャルの第2の部分を生成するように構成されている。
【0012】
一実施態様では、第1の表面および第2の表面は、間に第2のイオンチャネルを画成する。第2のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延びている。第2の表面は、第2の電極と第3の電極との間に位置する第3の複数の電極を含む。第3の複数の電極は、第4の電圧信号を受信し、第1の方向に平行に移動する第2の移動駆動電位を生成するように構成され、第2の移動駆動電位は、第2のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成されている。第1のイオンチャネルは、第1の電極と第2の電極との間に位置し、第2のイオンチャネルは、第2の電極と第3の電極との間に位置する。別の実施態様では、第3の複数の電極は、スイッチ制御回路からスイッチ電圧信号を受信し、ゲート電位を生成するように構成されたスイッチ電極を含み、ゲート電位は、第2のイオンチャネルから第1のイオンチャネルにイオンを案内するように構成されている。
【0013】
一実施態様では、コントローラは、スイッチ制御回路に通信可能に連結されたマスタ制御回路を含む。マスタ制御回路は、スイッチ電極がゲート電位を生成するように構成されている期間を決定するように構成されている。マスタ制御回路は、スイッチ制御信号を複数のスイッチ制御回路に提供するようにさらに構成されている。スイッチ制御回路は、スイッチ制御信号に基づいて、決定された期間中にスイッチ電圧信号を生成するように構成されている。別の実施態様では、コントローラは、電源に電気的に連結され、電源信号を受信するように構成されている。さらに別の実施態様では、第1の複数の電極の第2の電極は、接地電位に電気的に連結されている。
【0014】
一実施態様では、コントローラは、バイアスDC電圧信号を生成するように構成された第2のDC制御回路を含む。第1の表面の少なくとも1つの電極は、バイアスDC電圧信号を受信するように構成されている。別の実施態様では、第1の表面は、(a)第1のイオン操作デバイス電位を特徴とする第1のイオン操作デバイスであって、第1の表面は、第1のイオン操作デバイスからイオンを受け取るように構成された第1のイオン操作デバイスと、(b)第2のイオン操作デバイス電位を特徴とする第2のイオン操作デバイスであって、第1の表面は、第2のイオン操作デバイスへとイオンを輸送するように構成された第2のイオン操作デバイスとのうちの1つまたはそれ以上に連結される。バイアスDC電圧信号は、第1のイオン操作デバイス電位よりも小さく、かつ/または、バイアスDC電圧信号は、第2のイオン操作デバイス電位よりも大きい。さらに別の実施態様では、第1の表面は、第1の表面の第1の端部でイオン源電位を特徴とするイオン源に連結され、第1の表面の第2の端部でイオン検出器電位を特徴とするイオン検出器に連結される。バイアスDC電圧信号は、イオン検出器電位よりも大きく、イオン源電位よりも小さい。
【0015】
方法は、第1の表面と、第1の表面に隣接した第2の表面とを提供することを含む。第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成する。第1のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延びている。第2の表面は、第1の電極と、第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の電極から離間された第2の電極とを含む第1の複数の電極を含む。第1の複数の電極は、第1の方向に沿って延びている。第2の表面は、第1の電極と第2の電極との間に位置し、第1の方向に沿って配置されている第2の複数の電極をさらに含む。本方法は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを提供することをさらに含む。本方法は、コントローラによって、第1の電圧信号を第1の電極に印加することをさらに含む。第1の電極は、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルの少なくとも一部を生成するように構成されている。本方法は、コントローラによって、第2の電圧信号を第2の電極に印加することをさらに含む。第2の電極は、第1の方向に沿って移動する第1の移動駆動電位を生成するように構成され、第1の移動駆動電位は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成されている。
【0016】
一実施態様では、本方法は、コントローラによって、第3の電圧信号を第2の電極に印加することをさらに含む。第2の電極は、擬ポテンシャルの少なくとも第2の部分を生成するように構成されている。別の実施態様では、第1の電圧信号は第1の高周波(RF)信号であり、第3の電圧信号は第2のRF電圧信号であり、第1のRF電圧信号と第2のRF電圧信号との間の位相差は、約0°~約180°の範囲内の値を有する。さらに別の実施態様では、コントローラは、第1のRF電圧信号を生成するように構成された第1のRF制御回路と、第2のRF電圧信号を生成するように構成された第2のRF制御回路とを含む。
【0017】
デバイスは、第1の表面と、第2の表面と、コントローラとを含む。第2の表面は、第1の表面に隣接している。第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成する。第1のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延びている。第2の表面は、第1の電極と、第1の方向に沿って第1の電極に隣接した第2の電極とを含む第1の複数の電極を含む。第1の複数の電極は、第1の方向に沿って配置されている。第1の電極は、第1のRF電圧信号を受信するように構成され、第2の電極は、第2のRF電圧信号を受信するように構成されている。第2の表面は、第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の複数の電極から離間された第2の複数の電極を含む。第2の複数の電極は、第3の電極と、第3の電極に隣接して第1の方向に沿って配置された第4の電極とを含む。第3の電極は、第2のRF電圧信号を受信するように構成され、第4の電極は、第1のRF電圧信号を受信するように構成されている。第1の電極、第2の電極、第3の電極、および第4の電極は、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルの一部を生成するように構成されている。本デバイスは、第1の表面および第2の表面に電気的に連結されたコントローラをさらに含む。コントローラは、第1の位相を有する第1のRF電圧信号を生成し、第2の位相を有する第2のRF電圧信号を生成するように構成されている。コントローラは、第1の位相と第2の位相との間の第1の位相差を、第1の所定の値に設定する。
【0018】
一実施態様では、第1の複数の電極は、第1の方向に沿って第2の電極に隣接した第5の電極を含み、第2の複数の電極は、第1の方向に沿って第4の電極に隣接した第6の電極を含む。コントローラは、第3の位相を有する第3のRF電圧信号を生成するように構成されている。コントローラは、第2の位相と第3の位相との間の第2の位相差を、別の所定の値(または第1の所定の値)に設定する。別の実施態様では、第1の複数の電極および第2の複数の電極は、第1の方向に沿って移動する移動駆動電位を生成するように構成されている。第1の移動駆動電位は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成されている。
【0019】
一実施態様では、コントローラは、第1のRF電圧信号を生成するように構成された第1のRF制御回路と、第2のRF電圧信号を生成するように構成された第2のRF制御回路とを含む。一実施態様では、コントローラは、第1のRF制御回路および第2のRF制御回路に通信可能に連結されたマスタ制御回路を含む。マスタ制御回路は、第1のRF電圧信号の振幅および/または周波数、第2のRF電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに第1の所定の値のうちの1つまたはそれ以上を決定するように構成されている。マスタ制御回路は、1つまたはそれ以上の制御信号を第1のRF制御回路および第2のRF制御回路に提供するようにさらに構成されている。制御信号は、第1のRF電圧信号の振幅および/または周波数、第2のRF電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに第1の所定の値のうちの1つまたはそれ以上を示す。
【0020】
一実施態様では、第1のイオンチャネルに沿った移動駆動電位の速度は、第1のRF電圧信号および/または第2のRF電圧信号の周波数に基づく。一実施態様では、第1のイオンチャネルに沿った移動駆動電位の空間周波数は、第1の所定の値に基づく。一実施態様では、第1の電極は、第2の方向に沿って第3の電極に隣接し、第2の電極は、第2の方向に沿って第4の電極に隣接している。一実施態様では、第1の電極および第2の電極は、第1の方向に沿って第3の電極および第4の電極から空間的に変位している。
【0021】
一実施態様では、デバイスは、第1の複数の電極と第2の複数の電極との間に位置する第3の複数の電極をさらに含む。第3の複数の電極は、第1の方向に沿って配置されている。第3の複数の電極は、第3の電圧信号を受信し、第1の方向に沿って移動する第1の移動駆動電位を生成するように構成され、第1の移動駆動電位は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成されている。一実施態様では、第3の電圧信号は、所定の電圧/電流波形であり、コントローラは、複数の進行波電圧信号を生成するように構成された複数の進行波制御回路を含む。所定の電圧/電流波形は、複数の進行波電圧信号を含む。
【0022】
一実施態様では、所定の電圧/電流波形は、鋸歯状の電圧/電流波形、矩形の電圧/電流波形、およびバイアスされたAC波形またはバイアスされた正弦波電圧/電流波形のうちの1つまたはそれ以上を含むパルス電圧/電流波形である。一実施態様では、複数の進行波制御回路は、複数の交流(AC)制御回路および複数の直流制御回路のうちの1つまたはそれ以上を含む。一実施態様では、コントローラは、複数の進行波制御回路に通信可能に連結されたマスタ制御回路を含む。マスタ制御回路は、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数と、複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差とのうちの1つまたはそれ以上を決定するように構成されている。マスタ制御回路は、1つまたはそれ以上の進行波制御信号を複数の進行波制御回路に提供するようにさらに構成されている。1つまたはそれ以上の進行波制御信号は、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数と、複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差とのうちの1つまたはそれ以上を示す。一実施態様では、コントローラは、第1の直流(DC)電圧信号を生成するように構成された第1のDC制御回路を含み、第3の複数の電極は、第1のDC電圧信号を受信するように構成されている。
【0023】
一実施態様では、コントローラは、バイアスDC電圧信号を生成するように構成された第2のDC制御回路を含む。第1の表面および第2の表面のそれぞれ(またはいずれか1つ)の少なくとも1つの電極は、バイアスDC電圧信号を受信するように構成されている。一実施態様では、第1の表面は、(a)第1のイオン操作デバイス電位を特徴とする第1のイオン操作デバイスであって、第1の表面は、第1のイオン操作デバイスからイオンを受け取るように構成された第1のイオン操作デバイスと、(b)第2のイオン操作デバイス電位を特徴とする第2のイオン操作デバイスであって、第1の表面は、第2のイオン操作デバイスへとイオンを輸送するように構成された、第2のイオン操作デバイスとのうちの1つまたはそれ以上に連結される。バイアスDC電圧信号は、第1のイオン操作デバイス電位よりも小さく、かつ/または、バイアスDC電圧信号は、第2のイオン操作デバイス電位よりも大きい。一実施態様では、第1の表面は、第1の表面の第1の端部でイオン源電位を特徴とするイオン源に連結され、第1の表面の第2の端部でイオン検出器電位を特徴とするイオン検出器に連結される。バイアスDC電圧信号は、イオン検出器電位よりも大きく、イオン源電位よりも小さい。
【0024】
デバイスは、第1の表面と、第2の表面と、コントローラとを含む。第2の表面は、第1の表面に隣接している。第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成する。第1のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延びている。第2の表面は、第1の電極と、第1の方向に沿って第1の電極に隣接した第2の電極とを含む第1の複数の電極を含み、第1の複数の電極は、第1の方向に沿って配置されている。第1の電極は、第1のRF電圧信号を受信するように構成され、第2の電極は、DC電圧信号を受信するように構成されている。第2の表面は、第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の複数の電極から離間された第2の複数の電極を含む。第2の複数の電極は、第3の電極と、第3の電極に隣接して第1の方向に沿って配置された第4の電極とを含む。第3の電極は、第2のRF電圧信号を受信するように構成され、第4の電極は、DC電圧信号を受信するように構成されている。第1の電極、第2の電極、第3の電極、および第4の電極は、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルの一部を生成するように構成されている。本デバイスは、第1の表面および第2の表面に電気的に連結されたコントローラをさらに含む。コントローラは、第1の位相を有する第1のRF電圧信号およびDC電圧信号を生成するように構成されている。
【0025】
デバイスは、第1の表面と、第2の表面と、コントローラとを含む。第2の表面は、第1の表面に隣接している。第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成する。第1のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延びている。第2の表面は、第1の電極と、第1の方向に沿って第1の電極に隣接した第2の電極とを含む第1の複数の電極を含み、第1の複数の電極は、第1の方向に沿って配置される。第1の電極は、第1のRF電圧信号を受信するように構成され、第2の電極は、第2のRF電圧信号を受信するように構成されている。第2の表面は、第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の複数の電極から離間された第2の複数の電極を含む。第2の複数の電極は、第3の電極と、第3の電極に隣接して第1の方向に沿って配置された第4の電極とを含む。第3の電極は、第1のRF電圧信号を受信するように構成され、第4の電極は、第2のRF電圧信号を受信するように構成されている。第1の電極、第2の電極、第3の電極、および第4の電極は、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルの一部を生成するように構成されている。第1の電極は、第2の方向に沿って第3の電極に位置合わせされ、第2の電極は、第2の方向に沿って第4の電極に位置合わせされる。本デバイスは、第1の表面および第2の表面に電気的に連結されたコントローラをさらに含む。コントローラは、第1の位相を有する第1のRF電圧信号を生成し、第2の位相を有する第2の電圧信号を生成するように構成されている。第1の位相と第2の位相との間の第1の位相差は、(例えば、コントローラによって)第1の所定の値に設定される。
【0026】
方法は、第1の表面と、第1の表面に隣接した第2の表面とを提供することを含む。第1の表面および第2の表面は、間に第1のイオンチャネルを画成する。第1のイオンチャネルは、第1の方向に沿って延びている。第2の表面は、第1の電極と、第1の方向に沿って第1の電極に隣接した第2の電極とを含む第1の複数の電極を含む。第1の複数の電極は、第1の方向に沿って配置されている。第2の表面は、第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の複数の電極から離間された第2の複数の電極をさらに含む。第2の複数の電極は、第3の電極と、第3の電極に隣接して第1の方向に沿って配置された第4の電極とを含む。本方法は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを提供することをさらに含む。本方法は、コントローラによって、第1のRF電圧信号を第1の電極および第4の電極に、第2のRF電圧信号を第2の電極および第3の電極に印加することをさらに含む。第1の電極、第2の電極、第3の電極、および第4の電極は、第1のイオンチャネル内のイオンが第2の表面に近づくのを阻止する擬ポテンシャルの一部を生成するように構成されている。
【0027】
一実施態様では、第1の複数の電極および第2の複数の電極は、第1の方向に沿って移動する移動駆動電位を生成するように構成されている。第1の移動駆動電位は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成されている。一実施態様では、第2の表面は、第1の複数の電極と第2の複数の電極の間に位置し、第1の方向に沿って配置されている第3の複数の電極をさらに含む。一実施態様では、本方法は、複数の進行波制御回路によって、第3の電圧信号を第3の複数の電極に印加することをさらに含む。第3の複数の電極は、第1の方向に沿って移動する第1の移動駆動電位を生成するように構成されている。第1の移動駆動電位は、第1のイオンチャネルに沿ってイオンを案内するように構成されている。一実施態様では、第3の電圧信号は所定の電圧/電流波形であり、複数の進行波制御回路は、複数の進行波電圧信号を生成するように構成されている。所定の電圧/電流波形は、複数の進行波電圧信号を含む。
【0028】
これらおよび他の構成は、添付の図面と併せて以下の詳細な記述からより容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】例示的なイオン移動度分離(IMS)システムの概略図である。
【
図2】
図1のIMSシステムのSLIMデバイスの例示的実施形態を示す図である。
【
図3】
図2のSLIMデバイスの表面上の電極の例示的配置を示す図である。
【
図4A】SLIMデバイスの表面の電極の第1の例示的な作動方法を示す図である。
【
図4B】SLIMデバイスの表面の電極の第2の例示的な作動方法を示す図である。
【
図4C】SLIMデバイスの表面の電極の第3の例示的な作動方法を示す図である。
【
図5A】複数のイオンチャネルを有するSLIMデバイスの例示的な作動方法を示す図である。
【
図5B】
図5Aのイオンチャネル間の例示的な連結を示す図である。
【
図6】SLIMデバイス内のイオンを駆動することができるSLIMデバイスの電極に印加される例示的な移動電圧信号を示す図である。
【
図7】
図1のIMSシステムの様々なコンポーネントに印加されるバイアス電圧の例示的なプロットを示す図である。
【
図8】擬ポテンシャルを生成するためのセグメント化された電極を有する例示的なSLIMデバイスを示す図である。
【
図9】擬ポテンシャルおよび駆動電圧の両方を生成するためのセグメント化された電極を有する例示的なSLIMデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書で開示するシステム、デバイスおよび方法の構造、機能、製造および使用の原理を総括的に理解するために、特定の例示的実施形態について、ここで説明する。
【0031】
イオンモビリティスペクトロメトリ(IMS)は、その移動度に基づいてイオンを検出し分析する一般的に使用される技術である。例えば、IMSは、疾患の兆候を検出することを可能にする生体指標(タンパク質など)を検出するために使用される。IMSを用いたイオン検出は、正確であり(例えば、偽陽性が少ない)、高感度であり(例えば、低濃度の生体指標を検出できる)、ハイスループットを有し(例えば、検出速度が速い)、高分解能を有する(例えば、類似の移動度を有するイオンを差分により検出する)ことが望ましくなり得る。無損失イオン操作用構造(SLIM)技術は、改善されたIMS検出のためのデバイスおよび方法を提供することができる。例えば、SLIM技術は、電位の空間的および/または時間的分布の顕著な制御を提供することができ、これにより、イオン分離プロセスの改善された制御を可能にすることができる。本出願は、SLIMデバイスのスループットおよび効率の改善(例えば、消費電力の低減)につながり得る、SLIMデバイスの電圧制御のシステムおよび方法を記述する。
【0032】
図1は、例示的なイオン移動度分離(IMS)システム100の概略図である。IMSシステム100は、イオン(例えば、様々な移動度および質量対電荷比を有するイオン)を生成し、イオンをSLIMデバイス104に注入することができるイオン源102を含む。これは、複数のタイムインスタンスで(例えば、周期的に)行うことができる。SLIMデバイス104は、表面に配置された電極を含むことができる1つまたはそれ以上の表面(例えば、プリント基板材料で作られる)を含むことができる。電極は、電圧信号/電圧波形/電流波形(例えば、DC電圧/電流、RF電圧/電流、AC電圧/電流、またはそれらの重ね合わせ)を受信することができ、またはSLIMデバイス内にイオンを閉じ込めるための電位(例えば、電位勾配)を生成し、SLIMデバイス104を通ってイオンを案内できる(これにより、その移動度に基づくイオンの分離をもたらすことができる)。質量分析計106は、SLIMデバイス104からイオンを受け取り、受け取ったイオンに対して質量分析を行うことができる。
【0033】
コントローラ108は、イオン源102、SLIMデバイス104、および質量分析計106のうちの1つまたはそれ以上の作動方法を制御することができる。コントローラ108は、電源150(例えば、DC電圧をコントローラ108に供給するDC電源)から電力を受け取ることができる。コントローラ108は、SLIMデバイス104内の電極を駆動する様々な電圧(または電流)信号を生成する複数の電源モジュール(例えば、電流/電圧供給回路)を含むことができる。例えば、コントローラ108は、RF電圧信号を生成するRF制御回路、進行波電圧信号を生成する進行波制御回路、DC電圧信号を生成するDC制御回路などを含むことができる。コントローラ108は、RF/進行波/DC制御回路の作動方法を制御できるマスタ制御回路も含むことができる。例えば、マスタ制御回路は、SLIMデバイス104の望ましい作動方法を実現するために、RF/進行波/DC制御回路によって生成される電圧(または電流)信号の振幅および/または位相を制御することができる。
【0034】
いくつかの実施態様では、SLIMデバイス104は、移動度に基づく分離を行うことができる移動電圧/電流波形(SLIMデバイス104の複数の電極によって生成される電位から生じる)を生成することができる。電圧/電流波形は、例えば、SLIMデバイス104の電極に印加される電圧信号の周波数に基づいて、所定の速度でSLIMデバイス104を通って移動することができる。いくつかの実施態様では、移動電圧/電流波形は、空間的に周期的であることができ、空間的な周期性は、(例えば、SLIMデバイス104内のイオンの伝播方向に沿って)隣接する電極対に印加される電圧信号間の位相差に依存することができる。いくつかの実施態様では、位相差は、電圧/電流波形の伝播方向を決定することができる。マスタ制御回路は、移動電圧/電流波形が望ましい(例えば、所定の)空間的な周期性および/または速度を有するように、RF/進行波制御回路の電圧出力の周波数および/または位相を制御することができる。
【0035】
いくつかの実施態様では、コントローラ108は、コンピューティングデバイス160に通信可能に連結される。例えば、コンピューティングデバイス160は、マスタ制御回路に制御信号を介してSLIMデバイス104の動作パラメータを提供することができる。いくつかの実施態様では、ユーザは、コンピューティングデバイス160に(例えば、ユーザインタフェースを介して)動作パラメータを提供することができる。制御信号を介して受信した動作パラメータに基づいて、マスタ制御回路は、RF/AC/DC制御回路の作動方法を制御することができ、これにより、SLIMデバイス104の作動方法を決定することができる。いくつかの実施態様では、RF/AC/DC制御回路は、IMSシステム100に物理的に分散させることができる。例えば、RF/AC/DC制御回路のうちの1つまたはそれ以上は、SLIMデバイス104に配置することができる。
【0036】
図2は、SLIMデバイス104の例示的実施形態を示す。SLIMデバイス104は、第1の表面103および第2の表面105を含むことができる。第1の表面および第2の表面は、間に1つまたはそれ以上のイオンチャネルを画成するように(例えば、互いに平行に)配置される。第1の表面103および第2の表面105は、(例えば、イオンチャネルに面する表面上の電極のアレイとして配置される)電極を含むことができる。第1の表面103および第2の表面105上の電極は、コントローラ108に電気的に連結され、電圧信号/電圧波形を受信するように構成される。いくつかの実施態様では、第1の表面103および第2の表面105は、コントローラ108と、第1の表面103および第2の表面105上の電極との間の電気的連結を可能にする複数の導電性チャネルを含むバックプレーンを含むことができる。いくつかの実施態様では、導電性チャネルの数は、電極の数よりも少なくすることができる。換言すると、複数の電極は単一の電気チャネルに連結される。その結果、所定の電圧(または電流)信号は複数の電極に同時に送信される。受信した電圧信号に基づいて、電極は、伝播軸(例えば、z軸)に沿ってイオンを閉じ込め、駆動し、操作し、および/または分離することができる1つまたはそれ以上の電位(例えば、様々な電位の重ね合わせ)を生成することができる。
【0037】
コントローラ108は、1つまたはそれ以上のRF制御回路、DC制御回路、および進行波制御回路を含むことができる。いくつかの実施態様では、第1のRF制御回路は、第1の表面103に連結された1つまたはそれ以上の電極にRF電圧信号を提供することができ、第2のRF制御回路は、第2の表面105に連結された1つまたはそれ以上の電極にRF電圧信号を提供することができる。複数のRF制御回路(例えば、異なる表面のための別個の制御回路)を有することは、SLIMデバイス104を動作させるために必要なRF電力を複数のRF制御回路にわたって分配することができる(複数の電源から電力を受け取ることができる)ため、望ましくなり得る。
【0038】
上述したように、第1の表面103および第2の表面105は、複数の電極を含むことができる。
図3は、第1の表面103における電極の例示的配置を示す。第1の表面103における電極配置を以下で説明するが、第2の表面105は、同様の電極配置を有する電極を含むことができる。第1の表面103は、電圧信号を受信することができ(または接地電位に連結され)、イオンが第1の表面103に近づくのを防止/阻止することができる擬ポテンシャルを生成することができる第1の複数の電極120および125を含む。第1の複数の電極120および125は、矩形であることができ、矩形の長辺は、移動度分離されるイオンの伝播方向(「伝播軸」)に沿って配置される。例えば、
図3では、伝播軸はz軸と平行である。第1の複数の電極は、横方向に沿って(例えば、y軸に沿って)互いから分離されている。例えば、横方向は、伝播軸(例えば、z軸)に垂直であり得る。
【0039】
第1の表面103は、第1の複数の電極の電極間(例えば、第1の複数の電極120と125との間の空間)に位置する第2の複数の電極130を含むことができる。第2の複数の電極130は、伝播軸に沿って(または平行に)セグメント化/配置された複数の電極を含むことができる。第2の複数の電極130は、第2の電圧信号を受信し、イオンを伝播軸に沿って駆動することができる駆動電位を生成することができる。駆動電位は、イオンが伝播軸に沿って移動する際の移動度に基づいて、イオンの分離をもたらすことができる。
【0040】
第1の表面は、第1/第2の複数の電極の最も外側に隣接して位置するガード電極110を含むことができる。例えば、ガード電極110は、横方向に沿って第1の表面103の縁部に位置する。ガード電極110は、電圧信号(例えば、DC制御回路からのDC電圧信号)を受信し、横方向に沿ってガード電極間のイオンチャネル内にイオンを閉じ込めることができるガード電位を生成することができる。ガード電極110に印加される電圧信号に応じて、ガード電極は、第1の表面と第2の表面との間のイオンの移動を操作することもできる。
【0041】
第1の複数の電極、第2の複数の電極、およびガード電極は、1つまたはそれ以上の電圧制御回路(例えば、コントローラ108内の電圧制御回路)に連結される。いくつかの実施態様では、第1の複数の電極120および125は、互いに位相がシフトした無線周波数(RF)信号を受信することができる。いくつかの実施態様では、マスタ制御回路は、2つのRF制御回路の作動方法を制御して、互いに位相がシフトした2つのRF電圧信号を生成することができる。
図4Aは、第1の複数の電極のうちの隣接する電極が、180°位相がシフトしたRF電圧信号を受信する、SLIMデバイスの例示的な作動方法を示す。電極120は、第1のRF制御回路に電気的に連結され、電極125は、第2のRF制御回路に連結される。第1のRF制御回路および第2のRF制御回路は、互いに位相がシフトしたRF電圧信号を生成することができる。例えば、第1のRF制御回路および第2のRF制御回路によって生成されたRF電圧信号間の位相シフトは、0°~180°(例えば、0°、15°、30°、45°、60°、75°、90°、105°、120°、135°、150°、165°、180°など)であることができる。位相シフトは、RF制御回路の作動方法を制御することができるマスタ制御回路によって決定される。
【0042】
いくつかの実施態様では、隣接する電極120および125は、同じ位相を有する(例えば、ゼロ位相シフト)RF電圧信号を受信することができる。
図4Bは、第1の複数の電極のうちの隣接する電極が、同じ位相を有するRF電圧信号を受信する、SLIMデバイスの例示的な作動方法を示す。例えば、電極120および125は、同じRF制御回路に電気的に連結される。あるいは、電極120および125は、マスタ制御回路によって位相が同期したRF電圧信号を生成するように構成された、異なるRF制御回路に電気的に連結される。いくつかの実施態様では、電極120(または電極125)は、RF電圧信号を受信することができ、隣接する電極125(または電極120)は、(例えば、DC制御回路から)DC電位または接地電位を受信することができる。
図4Cは、第1の複数の電極のうちの近傍の電極(例えば、第2の複数の電極が存在する空間によって分離された電極)が、RF電圧信号およびDC電圧信号(または接地電位)を受信する、SLIMデバイスの例示的な作動方法を示す。
【0043】
第1の複数の電極は、イオンが第1の表面に近づくのを防止できる擬ポテンシャルを生成することができる。擬ポテンシャルを生成するために単一のRF制御回路(例えば、単一の電源のための電力を受け取る)を有することにより、SLIM技術の複雑さおよび/またはコストを低減することができる。例えば、RF制御回路/RF電圧源は高価である可能性があり、SLIMデバイスに電気的に連結されるRF制御回路/RF電圧源の数が少ないことが望ましくなり得る。単一のRF制御回路に連結するように構成されたSLIMデバイスは、少なくとも2相のRFを必要とするデバイスと比較して、より単純なアーキテクチャを有することができる。いくつかの実施態様では、この単純さは、単一のタップRFコイルを利用でき、信号を真空チャンバ内に通すために必要なリードバックコンポーネント、電気ケーブル、および真空フィードスルーコネクタの数が低減された、より単純なRF制御回路に起因する。このような単純化により、コストを低減し、かつ/またはSLIMデバイスをよりロバストにする(例えば、システムコンポーネントの低減により潜在的な故障箇所が少なくなることの結果として起こる)ことができる。
【0044】
いくつかの実施態様では、(RF基準電位に対して)分析されるイオンと同じ極性のDC電圧信号を、第1の複数の電極の交互の電極(例えば、電極125または電極120)に印加することで、横方向に(例えば、y軸に沿って)分離された複数のイオンチャネルを生成することができる。
図5Aは、複数のイオンチャネルを有するSLIMデバイスの例示的な作動方法を示す。電極120は、RF電圧信号(例えば、同じ位相を有するRF電圧)を受信し、電極120間に位置する電極125は、DC電圧信号を受信し、伝播軸に沿って延びる別々のイオンチャネル502および504を生成することができる反発電位を生成する。例えば、イオンチャネル502は、隣接する電極120と電極125との間に位置することができ、イオンチャネル504は、隣接する電極125と電極120との間に位置することができる。
【0045】
いくつかの実施態様では、複数のイオンチャネルは、SLIMデバイスのスループットを改善することができる。例えば、イオンチャネル502および504は、別個のイオン移動度分離を(例えば、同時に)行うことができる。これは、例えば、第1のイオンパケットをイオンチャネル502に提供し、第2のイオンパケットをイオンチャネル504に提供し、移動電圧信号を複数の電極130aおよび130bに印加することによって行われる。いくつかの実施態様では、所定の移動信号は複数の電極130aおよび130bの両方に印加される。いくつかの実施態様では、異なる移動電圧信号は複数の電極130aおよび130bに印加される。これにより、2つのチャネルで異なるイオン分離プロセスが生じ得る(例えば、出力時に2つのチャネルで異なるイオンが選択される)。このようなマルチチャネルSLIM構成は、デバイスを同時に通過できる分析物のm/z(質量電荷比)または移動度の範囲を広げるために使用される。例えば、移動度の高いイオンは高い進行波速度を用いて1つのチャネル内で輸送され、移動度の低いイオンは低い進行波速度を用いて隣のチャネル内で輸送される。このようにして、複数のIMS分離が並行して実現される。
【0046】
図5Bは、イオンチャネル502および504の例示的な連結を示す。各セットの電極群における進行波信号の方向性は、1~nの矢印によって示されている。イオンチャネル502および504の連結は、複数の電極130aにスイッチ電極132aを含めることによって達成される。スイッチ電極132aは、イオンチャネル502に沿って移動するイオンの経路内にあることができ、スイッチオン時に、イオンチャネル502内のイオンをイオンチャネル504に導くことができるゲート電位を生成することができる。スイッチオフ時には、イオンチャネル502内のイオンは、伝播軸(+z軸または-z軸)に沿って移動し続けることができる。スイッチ電極132aは、スイッチ制御回路(例えば、DC制御回路、AC制御回路など)に電気的に連結される。スイッチ制御回路は、スイッチ電極132aに(例えば、一定の間隔で)DC電圧信号を印加することができる。マスタ制御回路は、スイッチ制御回路の作動方法を制御することができる。例えば、マスタ制御回路は、スイッチ電極132aが切り替えられる(例えば、オンからオフへ、またはオフからオンへ)タイムインスタンス(「スイッチ時間」)を決定することができる。スイッチ時間は、イオンパケットがSLIMデバイスに導入される時間、SLIMデバイス内のイオンパケットの速度などに基づくことができる。いくつかの実施態様では、スイッチオン時にイオンチャネル504内のイオンをイオンチャネル502に導くことができる第2のスイッチ電極132bを、複数の電極130bに含めることができる。スイッチオフ時は、イオンチャネル502内のイオンは、伝播軸(+z軸または-z軸)に沿って移動し続けることができる。いくつかの実施態様では、スイッチ電極は、複数の電極130a(および/または130b)内に周期的に配置される。例えば、(n+1)
th個の電極ごとに、スイッチ電極とすることができる。
【0047】
図6は、繰り返しパターンの電極141~148を含む第2の複数の電極130に適用される(例えば、8つの電極ごとに同様の移動電圧信号を受信する)例示的な移動電圧信号を示す。
図6の例示的な電圧波形は、正弦波形(例えば、AC電圧波形)である。
図6において、電極141~148は、電圧波形(例えば、正弦波形、矩形波形、鋸歯状波形、バイアスされた正弦波形など)に基づいてその振幅が決定される電圧信号を受信することができる。例えば、AC波形/正弦波電圧波形の単一の波長が8つの電極(141~148)にわたって分布している場合、8つの電極に印加される電圧振幅は、単一の波長に関連付けられた電極の総数に対応する位相シフトに対してAC波形/正弦波電圧波形から値を選択することによって決定される。例えば、電極141~148の隣接する電極間の位相シフトは45°(360°[単一の波長に対応する]÷8)である。これは、電極141~148を、互いに位相がシフトされた電圧信号を生成する異なる進行波制御回路(例えば、AC制御回路、パルス電流制御回路など)に電気的に連結することによって達成される。いくつかの実施態様では、電圧/電流波形は、様々なパルス形状(例えば、方形、三角形、矩形、鋸歯状など)を取ることができ、周期的であることができ、非周期的であることができる、など。例えば、進行波制御回路は、DC電圧信号を生成する1つまたはそれ以上のDC制御回路と、正弦波信号を生成するAC制御回路とを含むことができる。いくつかの実施態様では、進行波制御回路は、パルス電圧波形および/またはパルス電流波形(例えば、方形、三角形、矩形、鋸歯状など)を生成することができる1つまたはそれ以上のパルス電流制御回路を含むことができる。パルス電流制御回路は、複数の電極(例えば、電極141~148)に電気的に連結される複数の出力を含むことができる。いくつかの実施態様では、パルス電流制御回路は、複数の電圧信号(例えば、パルス波形を構成する)を複数の電極に同時に印加することができる。電圧/電流波形の様々なパルス形状は、DC電圧信号と正弦波信号との重ね合わせによって作り出される。マスタ制御回路は、様々な進行波制御回路によって生成されたAC信号間の位相シフトを決定することができる。移動電圧信号の形状/周期性は、隣接する電極に印加されるAC信号間の位相シフトに基づくことができる。マスタ制御信号は、DC制御回路によって生成されるDC電圧信号の振幅を決定することができる。マスタ制御回路は、進行波制御回路によって生成されるAC信号の振幅および/または周波数を決定することができる。
【0048】
いくつかの実施態様では、AC信号の周波数は、移動電圧/電流波形の速度を決定することができる。移動電圧/電流波形のために位相シフトしたAC信号を生成する代替的アプローチは、多相変圧器の使用である。このアプローチでは、変圧器の複数の2次巻線の連結スキームに基づいて、複数の電圧出力間の位相関係を制御することができる。このようにして、1つまたはそれ以上の入力駆動電圧信号を使用して、アナログ回路のみで複数の位相依存出力を生成することができる。このアプローチと上述したデジタル生成方法との重要な違いは、位相依存性が変圧器の物理的な配線に完全に左右され、配線を物理的に変更しなければ変えられないことである。デジタルで生成された波形間の位相関係は、ハードウェアにおける変更なしに動的に変更することができる。
【0049】
時間が進むにつれて、電流/電圧波形(例えば、AC波形、正弦波電圧波形、パルス電流/電圧波形)は、(例えば、伝播方向に沿って)移動することができる。これにより、結果として、電極141~148に印加される電圧の振幅が変化する。例えば、最初の時間工程の間に第1の電極(例えば、電極141)に印加された電圧は、次の時間工程の間に隣接する電極(例えば、電極142)に印加される。コントローラ108は、パルス電圧/電流波形、AC波形などを生成することができる1つまたはそれ以上の進行波制御回路を含むことができる。いくつかの実施態様では、コントローラは、RF電圧波形を生成することができる1つまたはそれ以上のRF制御回路を含むことができる。コントローラ108は、AC/RF/パルス電圧/電流波形の移動速度を制御することができる。AC/パルス電流波形/パルス電圧波形が移動すると、イオンは伝播方向に沿って押され、その移動度に基づいて分離される。
【0050】
いくつかの実施態様では、移動電圧信号は、パルス電流波形、または電流の流れの方向を反転させないが、依然として経時変化する印加電位を示す符号反転のない周期的波形であることができる。例えば、移動電圧信号は、バイアスされた正弦波形(例えば、AC電圧/電流波形とDC電流/電圧との重ね合わせ)であることができる。いくつかの実施態様では、イオンがイオン源102からSLIMデバイス104へ、および/またはイオン源102からSLIMデバイス104を介して質量分析計106(またはイオン検出器)へ流れることを可能にする電位勾配を生み出すために、SLIMデバイス104をバイアスすることが望ましくなり得る。
図7は、IMSシステム100の様々なコンポーネントと関連付けられる電圧(例えば、印加されるバイアス電圧)の例示的なプロットを示す。イオン源102は、質量分析計106(四重極、飛行時間[TOF]リフレクトロン、および検出器を含むことができる)よりも高い電圧を有することができる。SLIMデバイス104の第1の表面および/または第2の表面は、バイアス電圧でバイアスされる(例えば、第1の複数の電極120および125、第2の複数の電極130、ガード電極110など)。SLIMデバイスのバイアス電圧の値は、イオン源102の電圧と質量分析計106の電圧との間の範囲とすることができる。当業者であれば、SLIMデバイスのバイアス電圧の値は、例えば、DCバイアスヒル(bias hill)を上がってイオンを運ぶためにガス流が使用される場合、イオン源および質量分析計によって確立された範囲外になり得ることを理解するであろう。その結果、SLIMデバイス104における移動電圧波形は、正弦波状のAC電圧波形と、SLIMデバイス104のバイアス電圧に対応するDC電圧との重ね合わせであり得る。コントローラ108は、バイアス電圧信号をSLIMデバイス104に印加することができるバイアス電圧源(例えば、DC電圧源)を含むことができる。いくつかの実施態様では、コントローラ108内の制御回路は、バイアス電圧の絶対的な電圧または大きさを決定することができる(例えば、ユーザ入力に基づいて、イオン源102および質量分析計106に関連する電圧の検出に基づいて、など)。
【0051】
図8は、電極のさらなる例示的配置を有するSLIMデバイスの表面800を示す。表面800は、(例えば、第1の表面103、第2の表面105またはその両方の代わりに)SLIMデバイス104に含まれる。表面800は、伝播軸に沿って(例えば、z軸に沿って)セグメント化された第1の複数の電極820および825を含む。第1の複数の電極820は、横方向に沿って(例えば、y軸に沿って)第1の複数の電極825から分離されている。例えば、横方向は、伝播軸(例えばz軸)に垂直であり得る。第1の複数の電極820および825は、RF電圧信号および/またはDC電圧信号を受信することができ(または、接地電位に連結される)、イオンが表面800に近づくのを防止/阻止することができる擬ポテンシャルを生成することができる。いくつかの実施態様では、第1の複数の電極820における第1の電極は、第1のRF電圧信号を受信することができ、(伝播方向に沿って)第1の電極に隣接した第2の電極は、第2のRF電圧信号(または、DC電圧信号/接地電位)を受信することができる。この配置は伝播方向に沿って繰り返される。
【0052】
いくつかの実施態様では、第1の複数の電極820(または電極825)におけるすべての第2の電極は、所定の位相の第1のRF電圧信号を生成するように構成された第1のセットのRF制御回路に連結される。例えば、複数の電極820(または電極825)におけるすべての第2の電極は、同じRF制御回路に電気的に連結される。第1の複数の電極820における残りの電極は、(第1のRF電圧信号から位相がシフトされた)第2のRF電圧信号、DC電圧信号、または接地電位を受信することができる。例えば、複数の電極820における残りの電極は、第2のRF電圧信号を生成するように構成された第2のセットのRF制御回路(または、DC電圧を生成するように構成されたDC制御回路)に連結される。いくつかの実施態様では、複数の電極820における残りの電極は、所定のRF制御回路および/またはDC制御回路に電気的に連結される。いくつかの実施態様では、第1のRF電圧信号を受信する第1の複数の電極820内の電極は、第1のRF電圧信号を受信する第1の複数の電極825内の電極から空間的に(例えば、伝播軸に沿って)変位される。これにより、第1のRF電圧信号(
図8ではRF1と標識付けされている)および第2の電圧信号(
図8ではRF2と標識付けされている)を受信する市松模様パターンの電極が得られる。第2の電圧信号は、第1のRF電圧信号と異なる位相を有する第2のRF電圧信号、DC電圧信号、または接地電位であることができる。マスタ制御回路は、第1のセットのRF制御回路および第2のセットのRF制御回路(またはDC制御回路)の作動方法を制御することができる。例えば、マスタ制御回路は、第1のセットの制御回路および第2のセットの制御回路によって生成されるRF電圧信号の振幅/周波数/位相を制御することができる。例えば、第1のRF電圧信号と第2のRF電圧信号との間の位相差は、(例えば、コンピューティングデバイス160へのユーザ入力に基づいて)所定の値に設定される。
【0053】
伝播軸に沿ってセグメント化された第2の複数の電極830a(または830b)は、第1の複数の電極820と第1の複数の電極825との間の空間に配置される。第2の複数の電極は、移動電圧波形を受信し、伝播軸に沿ってイオンを駆動することができる駆動電位を生成することができる。例えば、第2の複数の電極は、複数の進行波制御回路(例えば、
図6に記載されている)に電気的に連結され、移動度に基づく分離を引き起こすことができる移動電圧波形を生成することができる。
【0054】
表面800は、第1の複数の電極および第2の複数の電極の最も外側に隣接して位置するガード電極810を含むことができる。例えば、ガード電極810は、横方向に沿って表面800の縁部に位置する。ガード電極810は、電圧信号(例えば、DC制御回路からのDC電圧信号)を受信し、横方向に沿ってガード電極間のイオンチャネルにイオンを閉じ込めることができるガード電位を生成することができる。
【0055】
図9は、電極の例示的配置を有するSLIMデバイスの表面900を示す。表面900は、(例えば、第1の表面103、第2の表面105またはその両方の代わりに)SLIMデバイス104に含まれる。SLIMの表面のこの実施形態は、イオンが表面に近づくのを防止/阻止することと、イオンを伝播軸に沿って駆動すること(例えば、移動度に基づく分離を引き起こすこと)との両方を行うために、RF電位を生成することができる。表面900は、伝播軸に沿って(例えば、z軸に沿って)セグメント化された第1の複数の電極920、第2の複数の電極930、および第3の複数の電極940を含む。第1、第2、および第3の複数の電極920/930/940は、横方向に沿って(例えば、y軸に沿って)互いから分離されている。例えば、横方向は、伝播軸(例えばz軸)に垂直であり得る。
【0056】
第1、第2、および第3の複数の電極920~940のうちの1つまたはそれ以上は、RF電圧信号および/またはDC電圧信号を受信することができ(または、接地電位に連結される)、イオンが表面900に近づくのを防止/阻止することができる擬ポテンシャルを生成することができる。いくつかの実施態様では、第1の複数の電極920における第1の電極は、第1のRF電圧信号を受信することができ、(伝播方向に沿って)第1の電極に隣接した第2の電極は、第2のRF電圧信号(または、DC電圧信号/接地電位)を受信することができる。第1の電極および第2の電極のこの配置は、(例えば、
図8で説明したように)伝播方向に沿って繰り返される。例えば、すべての第2の電極は、所定の位相の第1のRF電圧信号を生成するように構成された第1のセットのRF制御回路に連結され、第1の複数の電極920の残りの電極は、第2のRF電圧信号を生成するように構成された第2のセットのRF制御回路(または、DC電圧を生成するように構成されたDC制御回路)に連結される。
【0057】
いくつかの実施態様では、第1のRF電圧信号を受信する第1の複数の電極920内の電極は、第1のRF電圧信号を受信する第2の複数の電極930内の電極から空間的に(例えば、伝播軸に沿って)変位される。同様に、第1のRF電圧信号を受信する第2の複数の電極930内の電極は、第1のRF電圧信号を受信する第3の複数の電極940内の電極から空間的に(例えば、伝播軸に沿って)変位される。これにより、第1のRF電圧信号(
図9では「RF1」と標識付けされている)および第2の電圧信号(
図9ではRF2と標識付けされている)を受信する市松模様パターンの電極が得られる。第2の電圧信号は、第1のRF電圧信号と異なる位相を有する第2のRF電圧信号、DC電圧信号、または接地電位であることができる。マスタ制御回路は、第1のセットのRF制御回路および第2のセットのRF制御回路(またはDC制御回路)の作動方法を制御することができる。
【0058】
いくつかの実施態様では、マスタ制御回路は、第1のセットの制御回路および第2のセットの制御回路によって生成されるRF電圧信号の振幅/周波数/位相を制御することができる。例えば、複数の電極920/930/940の隣接する電極間の位相差に基づいて、伝播軸に沿ってイオンを駆動し、移動度に基づく分離を引き起こすことができる移動RF波を生成することができる。
【0059】
上述した隣接する電極にRF電圧を印加する交互のパターンは例示的である。他の実施態様では、移動RF電圧信号は、伝播方向に沿って第1/第2/第3の複数の電極にわたって繰り返される。例えば、n番目の電極(n=2、3、4、5、6、7、8など)ごとに、同じRF電圧信号を受信することができる。これにより、第1の複数の電極、第2の複数の電極、および第3の複数の電極のうち、複数の(例えば、周期的な)電極に印加されるRF電圧信号を構成する正弦波波形が生じ得る。例えば、複数の電極920/930/940の電極3つごとに第3のRF電圧信号を印加する第3のセットのRF制御回路を有することにより、3つの電極ごとに繰り返す正弦波形が作り出される。
【0060】
いくつかの実施態様では、所定のRF電圧信号を受信する第1の複数の電極920内の電極は、所定のRF電圧信号を受信する第2の複数の電極930内の電極から空間的に(例えば、伝播軸に沿って)変位される。さらに、または代替的に、所定のRF電圧信号を受信する第2の複数の電極930内の電極は、所定のRF電圧信号を受信する第3の複数の電極940内の電極から空間的に(例えば、伝播軸に沿って)変位される。マスタ制御回路は、様々な電極にRF電圧信号を提供する様々なRF制御回路の作動方法を制御することができる。例えば、マスタ制御回路は、様々な制御回路によって生成されるRF電圧信号の振幅/周波数/位相を制御することができる。
【0061】
バイアスされた正弦波形と同様に、バイアスされた方形波形、バイアスされた鋸歯状波形、およびバイアスされた三角波形などの他の経時変化する信号はすべて、バイアスによって上昇した電位エネルギーでイオンをデバイスに送り込むのに適している。
【0062】
他の実施形態も開示される主題の範囲および趣旨の範囲内である。これらの実施形態の1つまたはそれ以上の実施例が、添付の図面に示されている。当業者であれば、本明細書に詳細に記載され、添付の図面に示されるシステム、デバイスおよび方法が、非限定的な例示的実施形態であり、本開示の範囲は、特許請求の範囲によってのみ規定されることを理解するであろう。ある例示的実施形態に関連して図示または記載された構成は、他の実施形態の構成と組み合わせることができる。そのような修正および変形は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。さらに、本開示では、実施形態の同名の構成要素は、概ね同様の構成を有し、したがって、特定の実施形態内では、同名の構成要素の各構成はそれぞれ、必ずしも完全に詳述されていない。
【0063】
本明細書に記載されている主題は、デジタル電子回路、または本明細書に開示されている構造的手段およびその構造的等価物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェア、またはそれらの組み合わせにおいて実装される。本明細書に記載されている主題は、例えば、データ処理装置(例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のコンピュータ)によって実行するために、またはデータ処理装置の作動方法を制御するために、情報担体(例えば、機械可読記憶デバイス)にタンジブルに具現化された、または伝播される信号に具現化された1つまたはそれ以上のコンピュータプログラムなどの1つまたはそれ以上のコンピュータプログラム製品として実装することができる。コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、またはコードとしても知られている)は、コンパイル済みまたは解釈済み言語を含む、任意の形のプログラミング言語で書かれ、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくはコンピューティング環境での使用に適したその他のユニットとしてを含め、任意の形で配置される。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルに対応していない。プログラムは、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部分内に記憶されるか、当該プログラムに専用の単一ファイル内に記憶されるか、または複数の協調ファイル(例えば、1つもしくは複数のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部を記憶するファイル)内に記憶される。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行するか、または1つのサイトにあるか、もしくは複数のサイトに分散されて通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行するように配置される。
【0064】
本明細書に記載されている主題の方法工程を含む本明細書に記載されているプロセスおよび論理フローは、入力データを操作して出力を生成することによって本明細書に記載されている主題の機能を実行するために、1つまたはそれ以上のコンピュータプログラムを実行する1つまたはそれ以上のプログラム可能なプロセッサによって実行される。プロセスおよび論理フローは、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)などの専用論理回路によっても実行され、本明細書に記載されている主題の装置は、専用論理回路として実装される。
【0065】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサとしては、例として、汎用および専用のマイクロプロセッサの両方、ならびに任意の種類のデジタルコンピュータのいずれか1つまたはそれ以上のプロセッサが挙げられる。一般的に、プロセッサは、読み出し専用メモリまたはランダムアクセスメモリ、またはその両方から命令およびデータを受信することができる。コンピュータの本質的な要素は、命令を実行するためのプロセッサ、ならびに命令およびデータを記憶するための1つまたはそれ以上のメモリデバイスである。一般的に、コンピュータはさらに、データを格納するための1つまたはそれ以上の大容量記憶装置、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、または光ディスクを含むか、またはそれらからデータを受信し、もしくはそれらにデータを転送し、またはその両方を行うように動作可能に連結される。コンピュータプログラムの命令およびデータを具現化するのに適した情報担体には、あらゆる形態の不揮発性メモリが含まれ、例として、半導体メモリデバイス(例えば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス)、磁気ディスク(例えば、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク)、光磁気ディスク、および光ディスク(CDおよびDVDディスクなど)が挙げられる。プロセッサおよびメモリは専用論理回路によって補完されるか、または組み込まれる。
【0066】
ユーザとのインタラクションを提供するために、本明細書に記載されている主題は、ユーザに情報を表示するための表示デバイス、例えば、CRT(ブラウン管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタと、ユーザがコンピュータに入力を提供できるキーボードおよびポインティングデバイス(例えば、マウスまたはトラックボール)とを有するコンピュータに実装することができる。他の種類のデバイスも、ユーザとのインタラクションを提供するために使用することができる。例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、任意の形態の感覚フィードバック(例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、または触覚フィードバック)であってもよく、ユーザからの入力は、聴覚、音声、または触覚入力を含む任意の形態で受信される。
【0067】
本明細書に記載されている技術は、1つまたはそれ以上のモジュールを使用して実装される。本明細書で使用する場合、「モジュール」という用語は、コンピューティングソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、および/またはそれらの様々な組み合わせを意味する。しかし、最低でも、モジュールは、ハードウェア、ファームウェアに実装されていない、または非一時的なプロセッサ読み取り可能で記録可能な記憶媒体に記録されていないソフトウェアとは解釈されるべきではない(すなわち、モジュールはそれ自体がソフトウェアではない)。実際、「モジュール」とは、プロセッサまたはコンピュータの一部など、少なくとも何らかの物理的で非一時的なハードウェアを常に含むものと解釈されるべきである。2つの異なるモジュールが同じ物理的ハードウェアを共有することができる(例えば、2つの異なるモジュールが同じプロセッサおよびネットワークインタフェースを使用することができる)。本明細書に記載されているモジュールは、様々なアプリケーションをサポートするために、組み合わせ、統合、分離、および/または複製することができる。また、特定のモジュールで実行されるものとして本明細書に記載されている機能は、特定のモジュールで実行される機能の代わりに、またはそれに加えて、1つまたはそれ以上の他のモジュールで、および/または1つまたはそれ以上の他のデバイスによって実行される。さらに、モジュールは、互いにローカルまたはリモートの複数のデバイスおよび/または他のコンポーネントにまたがって実装することができる。さらに、モジュールは、あるデバイスから移動して別のデバイスに追加することができ、かつ/または両方のデバイスに含めることができる。
【0068】
本明細書に記載されている主題は、バックエンドコンポーネント(例えば、データサーバ)、ミドルウェアコンポーネント(例えば、アプリケーションサーバ)、またはフロントエンドコンポーネント(例えば、ユーザが本明細書に記載されている主題の実施態様と相互作用できるグラフィカルユーザインタフェースまたはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータ)、またはそのようなバックエンドコンポーネント、ミドルウェアコンポーネント、およびフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせを含むコンピューティングシステムで実施することができる。システムのコンポーネントは、デジタルデータ通信の任意の形態または媒体、例えば通信ネットワークによって相互に連結することができる。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)およびワイドエリアネットワーク(「WAN」)、例えば、インターネットが挙げられる。
【0069】
本明細書および特許請求の範囲を通して使用されている近似表現は、関連する基本的な機能に変化をもたらすことなく許容範囲内で変化し得る任意の定量的表現を修飾するために適用される。したがって、「約」および「実質的に」などの1つまたはそれ以上の用語によって修飾された値は、指定された正確な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例では、近似表現は、値を測定するための器具の精度に対応することができる。ここでは、本明細書および特許請求の範囲を通して、範囲の制限を組み合わせたり、かつ/または入れ替えたりすることができ、このような範囲は、文脈または言語によって別の意味を示さない限り、特定され、そこに含まれるすべてのサブ範囲を含む。
【国際調査報告】