(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(54)【発明の名称】アルキル化反応器におけるガソリン及びジェット燃料の柔軟な製造
(51)【国際特許分類】
C10G 50/00 20060101AFI20220712BHJP
C07C 9/14 20060101ALI20220712BHJP
C07C 2/58 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C10G50/00
C07C9/14
C07C2/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569876
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2020034265
(87)【国際公開番号】W WO2020242961
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516148335
【氏名又は名称】ルーマス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ザン
(72)【発明者】
【氏名】メディナ ボリバル, ジャクリーン
(72)【発明者】
【氏名】コーペルショーク, モーリス
(72)【発明者】
【氏名】ルモワンヌ, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ソム, マノージ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H129
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB44
4H006AC21
4H006AD11
4H006BD84
4H129AA02
4H129CA02
4H129CA04
4H129CA13
4H129CA14
4H129DA13
4H129KA04
4H129KB01
4H129NA13
4H129NA14
4H129NA21
4H129NA30
4H129NA37
(57)【要約】
【課題】アルキル化反応器におけるガソリン及びジェット燃料の柔軟な製造の提供。
【解決手段】C4及びC5オレフィンのアルキル化によるガソリン及びジェット燃料の柔軟な製造のためのシステム及びプロセス。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリン及びジェット燃料の柔軟な製造のためのシステムであって、
硫酸アルキル化触媒の存在下でC4オレフィン、C5オレフィン、C6オレフィン、C4~C5オレフィン又はC4~C6オレフィンをC4~C6イソパラフィンと反応させて炭化水素流出物及び使用済み酸ストリームを生成するための1つ以上の反応器を含むアルキル化反応ゾーンと、
前記アルキル化反応ゾーンにC4オレフィンを供給するためのフローラインと、
前記アルキル化反応ゾーンにC5オレフィンを供給するためのフローラインと、
前記アルキル化反応ゾーンに未使用酸アルキル化触媒を供給するためのフローラインと、
前記炭化水素流出物をイソブタン留分、n-ブタン留分及びC5+留分に分離するための脱イソブタン装置と、
前記C5+留分をイソペンタン留分及びC6+留分に分離するための脱イソペンタン装置と、
前記C6+留分を軽質アルキレートオーバーヘッド留分及び重質アルキレートボトム留分に分離するためのスプリッタと、
前記イソブタン留分を前記アルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、前記イソブタン留分をイソブタン製品として回収するため、及び前記イソブタン留分の一部を前記アルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つ前記イソブタン留分の一部をイソブタン製品として回収するためのフローシステムと、
前記イソペンタン留分を前記アルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、前記イソペンタン留分をイソペンタン製品として回収するため、及び前記イソペンタン留分の一部を前記アルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つ前記イソペンタン留分の一部をイソペンタン製品として回収するためのフローシステムと、
前記軽質アルキレート留分を前記アルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、前記軽質アルキレートを軽質アルキレート製品として回収するため、及び前記軽質アルキレート留分の一部を前記アルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つ前記軽質アルキレート留分の一部を軽質アルキレート製品として回収するためのフローシステムと
を備えるシステム。
【請求項2】
前記アルキル化反応ゾーンにC6オレフィンを供給するためのフローラインをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アルキル化反応ゾーンへの前記C4オレフィン、前記C5オレフィン、前記リサイクルイソブタン留分、前記イソペンタンリサイクル留分及び前記軽質アルキレートリサイクル留分の各々の流量を調節することで、前記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を選択的に増加又は減少させるように構成された制御システムをさらに備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御システムが、前記アルキル化反応ゾーン内の前記1つ以上の反応器の反応温度を調節することで、前記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させるようにさらに構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御システムが、前記アルキル化反応ゾーン内の前記1つ以上の反応器への未使用酸触媒の流量を調節することで、前記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させるようにさらに構成されている、請求項3又は4に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御システムが、前記アルキル化反応ゾーン内の前記1つ以上の反応器における運転条件を調節することで、前記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させるようにさらに構成されており、前記運転条件が、酸強度、温度、空間速度、混合強度、リサイクルイソブタン/オレフィン比及びリサイクルイソペンタン/オレフィン比のうちの1つ以上から選択される、請求項3~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記C5+留分をガソリン製品留分として回収するためのフローラインをさらに備える、請求項3~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
ガソリン及びジェット燃料の柔軟な製造のためのシステムであって、
硫酸アルキル化触媒の存在下でC4オレフィン、C5オレフィン、C6オレフィン、C4~C5オレフィン又はC4~C6オレフィンをイソパラフィンと反応させて炭化水素流出物及び使用済み酸ストリームを生成するための1つ以上の反応器を含むアルキル化反応ゾーンと、
前記アルキル化反応ゾーンにC4オレフィンを供給するためのフローラインと、
前記アルキル化反応ゾーンにC5オレフィンを供給するためのフローラインと、
前記アルキル化反応ゾーンに未使用酸アルキル化触媒を供給するためのフローラインと、
前記炭化水素流出物をイソブタン留分、n-ブタン留分及びC5+留分に分離するための脱イソブタン装置と、
前記C5+留分をイソペンタン留分及びC6+留分に分離するための脱イソペンタン装置と、
前記C6+留分を軽質アルキレートオーバーヘッド留分及び重質アルキレートボトム留分に分離するためのスプリッタと、
前記イソブタン留分を前記アルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、前記イソブタン留分をイソブタン製品として回収するため、及び前記イソブタン留分の一部を前記アルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つ前記イソブタン留分の一部をイソブタン製品として回収するためのフローシステムと、
前記イソペンタン留分を前記アルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、前記イソペンタン留分をイソペンタン製品として回収するため、及び前記イソペンタン留分の一部を前記アルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つ前記イソペンタン留分の一部をイソペンタン製品として回収するためのフローシステムと、
前記アルキル化反応ゾーンへの前記C4オレフィン、前記C5オレフィン、前記リサイクルイソブタン留分及び前記イソペンタンリサイクル留分の各々の流量を調節することで、前記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を選択的に増加又は減少させるように構成された制御システムと
を備えるシステム。
【請求項9】
前記アルキル化反応ゾーンにC6オレフィンを供給するためのフローラインをさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御システムが、前記アルキル化反応ゾーン内の前記1つ以上の反応器の反応温度を調節することで、前記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させるようにさらに構成されている、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御システムが、前記アルキル化反応ゾーン内の前記1つ以上の反応器への未使用酸触媒の流量を調節することで、前記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させるようにさらに構成されている、請求項8~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御システムが、前記アルキル化反応ゾーン内の前記1つ以上の反応器における運転条件を調節することで、前記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させるようにさらに構成されており、前記運転条件が、酸強度、温度、空間速度、混合強度、リサイクルイソブタン/オレフィン比及びリサイクルイソペンタン/オレフィン比のうちの1つ以上から選択される、請求項8~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記軽質アルキレート留分を前記アルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、前記軽質アルキレートを軽質アルキレート製品として回収するため、及び前記軽質アルキレート留分の一部を前記アルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つ前記軽質アルキレート留分の一部を軽質アルキレート製品として回収するためのフローシステムをさらに備える、請求項8~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御システムが、前記アルキル化反応ゾーン内の前記1つ以上の反応器への前記軽質アルキレートリサイクル留分の流量を調節することで、前記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させるようにさらに構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記C5+留分をガソリン製品留分として回収するためのフローラインをさらに備える、請求項8~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御システムが、前記ガソリン製品留分を最大化する際、又は前記ガソリン製品留分を最小化する際に、それぞれ前記脱ペンタン装置及び前記スプリッタを停止及び起動するようにさらに構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
ガソリン及びジェット燃料の柔軟な製造のためのプロセスであって、
硫酸アルキル化触媒の存在下でC4~C5オレフィンをイソパラフィンと反応させて炭化水素流出物及び使用済み酸ストリームを生成するための1つ以上の反応器を含むアルキル化反応ゾーンにイソパラフィンと、C4及び/又はC5オレフィンを含むオレフィンとを供給することと、
前記炭化水素流出物をイソブタン留分、n-ブタン留分及びC5+留分に分離することと、
前記C5+留分をイソペンタン留分及びC6+留分に分離することと、
前記C6+留分を軽質アルキレートオーバーヘッド留分及び重質アルキレートボトム留分に分離することとを含み、
交互に、
前記アルキレート中のガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加させること及び
前記アルキレート中のガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を減少させることを含むプロセス。
【請求項18】
前記交互に行う増加及び減少が、前記アルキル化反応ゾーンへの前記C4オレフィン、前記C5オレフィン、イソブタンリサイクル留分、イソペンタンリサイクル留分及び軽質アルキレートリサイクル留分の各々の流量を調節することを含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記交互に行う増加及び減少が、前記アルキル化反応ゾーン内の前記1つ以上の反応器の1つ以上の反応温度を調節することで、前記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させることを含む、請求項17又は18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記交互に行う増加及び減少が、前記アルキル化反応ゾーン内の前記1つ以上の反応器への未使用酸触媒の流量を調節することで、前記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させることを含む、請求項17~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記交互に行う増加及び減少が、前記アルキル化反応ゾーン内の前記1つ以上の反応器における運転条件を調節することで、前記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させることを含み、前記運転条件が、酸強度、空間速度、混合強度、リサイクルイソブタン/オレフィン比及びリサイクルイソペンタン/オレフィン比のうちの1つ以上から選択される、請求項17~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記交互に行う増加が、前記C5+留分をガソリン製品留分として回収することを含む、請求項17~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される実施形態は、概して、硫酸触媒の存在下でのイソパラフィンによるオレフィンのアルキル化に関する。より詳細には、本明細書の実施形態は、ガソリン、ジェット燃料又は溶剤製造のいずれかを最大化する柔軟なアルキル化システム及び運転スキームに関する。
【背景技術】
【0002】
イソパラフィン-オレフィンアルキル化プロセスは、オクタン価が高い高分岐炭化水素の製造への重要な経路である。アルキル化は、フッ化水素、硫酸、イオン液体又は固体酸性触媒等の酸触媒の存在下でイソパラフィン(例えばイソブタン又はイソペンタン)をオレフィンと反応させることで達成される。アルキル化生成物は、硫黄、オレフィン及び芳香族含量が低いため、ガソリンプールのプレミアム混合成分として採用されている。しかしながら、ガソリンに比べてジェット燃料の需要が高まるにつれ、ジェット燃料製造のためにアルキル化ユニットを再利用することが経済的になっている。
【0003】
アルキル化プロセスは複雑な反応化学を伴う。オレフィン活性化、オレフィン付加、ヒドリド移動、重合/オリゴマー化、水素移動、クラッキング及び異性化等の主要な反応工程を含んでいる。この複雑な反応化学は、生成物の炭素数分布を広くするのに役立つ。代表的なアルキル化生成物の炭素数はC5~C14である。ガソリン及びジェット燃料の炭素数分布はC9~C14の範囲で重なっている。したがって、アルキル化プロセスにはガソリン及びジェット燃料を共製造できる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
製造されるガソリンとジェット燃料との比率を柔軟に変更するためのイソパラフィン-オレフィンアルキル化システム及びプロセスがこの度開発された。
【0005】
一態様において、本明細書に開示される実施形態は、ガソリン及びジェット燃料の柔軟な製造のためのシステムに関する。該システムは、硫酸アルキル化触媒の存在下でC4オレフィン、C5オレフィン、C6オレフィン、C4~C5オレフィン又はC4~C6オレフィンをC4~C6イソパラフィンと反応させて炭化水素流出物及び使用済み酸ストリームを生成するための1つ以上の反応器を含むアルキル化反応ゾーンを備えていてもよい。フローラインは、上記アルキル化反応ゾーンにC4オレフィンを供給してもよい。また、フローラインは、上記アルキル化反応ゾーンにC5オレフィンを供給してもよい。さらに別のフローラインは、上記アルキル化反応ゾーンに未使用酸アルキル化触媒を供給してもよい。上記炭化水素流出物をイソブタン留分、n-ブタン留分及びC5+留分に分離するための脱イソブタン装置が備えられていてもよい。上記C5+留分をイソペンタン留分及びC6+留分に分離するための脱イソペンタン装置が備えられていてもよい。さらに、上記C6+留分を軽質アルキレートオーバーヘッド留分及び重質アルキレートボトム留分に分離するためのスプリッタが備えられていてもよい。上記アルキル化反応ゾーンからの生成物混合物の柔軟性は、(i)上記イソブタン留分を上記アルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、上記イソブタン留分をイソブタン製品として回収するため、及び上記イソブタン留分の一部を上記アルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つ上記イソブタン留分の一部をイソブタン製品として回収するためのフローシステム、(ii)上記イソペンタン留分を上記アルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、上記イソペンタン留分をイソペンタン製品として回収するため、及び上記イソペンタン留分の一部を上記アルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つ上記イソペンタン留分の一部をイソペンタン製品として回収するためのフローシステム、並びに(iii)上記軽質アルキレート留分を上記アルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、上記軽質アルキレートを軽質アルキレート製品として回収するため、及び上記軽質アルキレート留分の一部を上記アルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つ上記軽質アルキレート留分の一部を軽質アルキレート製品として回収するためのフローシステムを介して得ることができる。いくつかの実施形態において、上記システムは、上記アルキル化反応ゾーンにC6オレフィンを供給するためのフローラインをさらに備えていてもよい。
【0006】
別の態様では、本明細書の実施形態は、ガソリン及びジェット燃料の柔軟な製造のためのシステムに関する。該システムは、硫酸アルキル化触媒の存在下でC4オレフィン、C5オレフィン、C6オレフィン、C4~C5オレフィン又はC4~C6オレフィンをイソパラフィンと反応させて炭化水素流出物及び使用済み酸ストリームを生成するための1つ以上の反応器を含むアルキル化反応ゾーンを備えていてもよい。フローラインは、上記アルキル化反応ゾーンにC4オレフィンを供給してもよい。また、フローラインは、上記アルキル化反応ゾーンにC5オレフィンを供給してもよい。さらに別のフローラインは、上記アルキル化反応ゾーンに未使用酸アルキル化触媒を供給してもよい。上記炭化水素流出物をイソブタン留分、n-ブタン留分及びC5+留分に分離するための脱イソブタン装置が備えられていてもよい。上記C5+留分をイソペンタン留分及びC6+留分に分離するための脱イソペンタン装置が備えられていてもよい。さらに、上記C6+留分を軽質アルキレートオーバーヘッド留分及び重質アルキレートボトム留分に分離するためのスプリッタが備えられていてもよい。上記アルキル化反応ゾーンでガソリン又はジェット燃料を製造する際の柔軟性は、(i)上記イソブタン留分を上記アルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、上記イソブタン留分をイソブタン製品として回収するため、及び上記イソブタン留分の一部を上記アルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つ上記イソブタン留分の一部をイソブタン製品として回収するためのフローシステム、(ii)上記イソペンタン留分を上記アルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、上記イソペンタン留分をイソペンタン製品として回収するため、及び上記イソペンタン留分の一部を上記アルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つ上記イソペンタン留分の一部をイソペンタン製品として回収するためのフローシステム、並びに(iii)上記アルキル化反応ゾーンへの上記C4オレフィン、上記C5オレフィン、上記リサイクルイソブタン留分及び上記イソペンタンリサイクル留分の各々の流量を調節することで、上記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を選択的に増加又は減少させるように構成された制御システムによって得ることができる。
【0007】
別の態様では、本明細書の実施形態は、ガソリン及びジェット燃料の柔軟な製造のためのプロセスに関する。該プロセスは、硫酸アルキル化触媒の存在下でC4~C5オレフィンをイソパラフィンと反応させて炭化水素流出物及び使用済み酸ストリームを生成するための1つ以上の反応器を含むアルキル化反応ゾーンにイソパラフィンと、C4及び/又はC5オレフィン等を含むオレフィンとを供給することを含んでもよい。上記炭化水素流出物は、イソブタン留分、n-ブタン留分及びC5+留分に分離されてもよく、上記C5+留分は、イソペンタン留分及びC6+留分にさらに分離されてもよい。上記C6+留分は、軽質アルキレートオーバーヘッド留分及び重質アルキレートボトム留分に分離されてもよい。上記プロセスはまた、交互に、上記アルキレート中のガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加させること及び上記アルキレート中のガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を減少させることを含んでもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、上記交互に行う増加及び減少は、上記アルキル化反応ゾーンへの上記C4オレフィン、上記C5オレフィン、イソブタンリサイクル留分、イソペンタンリサイクル留分及び軽質アルキレートリサイクル留分の各々の流量を調節することを含んでもよい。上記交互に行う増加及び減少は、上記アルキル化反応ゾーン内の上記1つ以上の反応器の1つ以上の反応温度を調節することで、上記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させることを追加的又は代替的に含んでもよい。他の実施形態では、上記交互に行う増加及び減少は、上記アルキル化反応ゾーン内の上記1つ以上の反応器への未使用酸触媒の流量を調節することで、上記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させることを追加的又は代替的に含んでもよい。さらに他の実施形態では、上記交互に行う増加及び減少は、上記アルキル化反応ゾーン内の上記1つ以上の反応器における運転条件を調節することで、上記アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させることを追加的又は代替的に含んでもよい。さらに別の実施形態では、上記交互に行う増加は、上記C5+留分をガソリン製品留分として回収することを含んでもよい。
【0009】
フィードストック、リサイクルイソブタン及びイソペンタンの組成を適切に変え、運転条件を変更することによって、ヒドリド移動(アルキル化)の最大化、あるいはオレフィン重合、オリゴマー化及び/又はクラッキングの最大化のいずれかを行うように反応経路を制御することができる。本明細書のシステム及びプロセスはこのような柔軟性を提供し、そのため、市場の需要を満たす目的及び/又は収益を最大化する目的で、運転者はアルキル化プロセスを調整してガソリンを最大化するか、ジェット燃料を最大化するか、あるいはこれらを中間的な比率で共製造することができる。
【0010】
以下の説明及び添付の特許請求の範囲から、他の態様及び利点が明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本明細書に開示される実施形態に係る生成物分布に対するオレフィン種及びイソパラフィン種の影響を示すチャートである。
【
図2】本明細書に開示される柔軟なアルキル化プロセス及びシステムの実施形態に係るジェット燃料製造のシフトを示すグラフである。
【
図3】本明細書の実施形態に係るシステムの簡略化されたプロセスフロー図を示す。
【
図4】本明細書の実施形態に係るシステムの簡略化されたプロセスフロー図を示す。
【
図5】本明細書の実施形態に係るシステムの簡略化されたプロセスフロー図を示す。
【
図6】本明細書の実施形態に係るシステムの簡略化されたプロセスフロー図を示す。
【
図7】本明細書の実施形態に係るアルキル化反応ゾーンにおいて有用なアルキル化反応システムを示す。
【
図8】本明細書の実施形態に係るジェット燃料及びガソリンを製造するプロセスの試験結果を示す。
【
図9】本明細書の実施形態に係るジェット燃料及びガソリンを製造するプロセスの試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の実施形態は、イソパラフィン-オレフィンアルキル化によるガソリン及びジェット燃料の柔軟な製造に関する。アルキル化反応は、1つ以上のアルキル化反応器を含んでもよいアルキル化反応ゾーンで行われてもよい。アルキル化反応器は、HFや硫酸等の液体酸アルキル化触媒を用いたアルキル化を促進する任意の種類の反応器であってもよい。アルキル化反応器は、垂直型でも水平型でもよく、静的又は非静的な混合装置を有していてもよい。アルキル化反応器システムが複数の反応器を備える場合、炭化水素流は並列でも直列でもよく、酸触媒は並列又は直列の反応器に注入されてもよい。
【0013】
また、ガソリン及びジェット燃料を柔軟に製造するのに有用なシステムは、脱イソブタン装置、脱イソペンタン装置及びアルキレートスプリッタ等の分離器を備えていてもよい。脱イソブタン装置の目的は、イソブタン、n-ブタン及びC4+炭化水素を分離することである。脱イソペンタン装置は、イソペンタンとC5+炭化水素とを分離するために使用される。運転モード(ガソリン、ジェット燃料又は共製造モード)によっては、イソペンタンをアルキル化反応ゾーンに戻してリサイクルすることもできる。スプリッタは、全アルキレートを軽質アルキレートに分離するために使用される。軽質アルキレートは、溶剤、自動車用ガソリン混合原料又は航空用ガソリン混合原料へと使用又は処理することができる。重質アルキレートは、ジェット燃料プールの混合成分として使用できる。運転モードによっては、軽質アルキレートの一部又はそれに含まれるイソヘキサンをアルキル化反応ゾーンに戻してリサイクルすることもできる。
【0014】
本明細書のシステムは、ガソリン及びジェット燃料の相対的な生産量を調節するために最大で3つの方法を利用できる。本明細書のシステム及びプロセスがガソリンとジェット燃料との比率を制御する第1の方法は、オレフィン種を調節することである。
図1に示すように、所定のイソパラフィンの場合、C4オレフィンをイソブテン又はイソペンタンのいずれかでアルキル化すると、C5オレフィンよりも多くのC8生成物が生成される傾向がある。C5オレフィンをイソブテン又はイソペンタンのいずれかでアルキル化すると、ジェット燃料範囲の生成物収率が高くなる。
【0015】
本明細書のシステム及びプロセスがガソリンとジェット燃料との比率を制御する第2の方法は、イソパラフィン種を調節することである。
図1に示すように、所定のオレフィン種の場合、イソペンタンを採用すると、イソブタンを用いたアルキル化と比較してより重質の炭化水素が生成される傾向がある。したがって、ガソリン及びジェット燃料の生産量を調節する非常に効果的な方法は、脱イソブタン装置及び脱イソペンタン装置の運転を調節して、リサイクルイソブタン及びイソペンタンを制御することである。最大ガソリン製造モードでは、イソブタンのリサイクルを最大化してもよく、イソペンタンを最終製品として取り除いてもよい。この場合、水素移動反応が高まって、より多くのイソペンタンが生成され、C8含量が高くなる。一方、最大ジェット燃料製造モードでは、イソペンタン濃度が高くなると水素移動反応が抑制されて、より多くのC9+炭化水素が生成されるため、イソペンタンをできるだけ多くリサイクルしつつイソブタンを最終製品として取り除いてもよい。加えて、イソヘキサンをリサイクルすることで、より重質の炭化水素の生産量を増加させて、ジェット燃料の収率を高めることもできる。
【0016】
本明細書のシステム及びプロセスがガソリンとジェット燃料との比率を制御する第3の方法は、酸強度(液体酸アルキル化の場合)、温度、空間速度、リサイクルイソブタン/オレフィン比及び混合強度等の運転条件を調節することである。所定のオレフィン及びイソパラフィン種の場合、酸強度が低いほど、温度が高いほど、空間速度が速いほど、イソパラフィン/オレフィン(I/O)比が低いほど、混合強度が低いほど、C9+生成量が多くなるため、ジェット燃料生産量を最大化できる。
図2に示すように、本明細書の実施形態に係る運転条件を変更することで、ジェット燃料範囲(330~580°F/165~305℃)の炭化水素の生産量を顕著に増加させることができる。
【0017】
上述したように、本明細書のシステム及びプロセスは、アルキル化によるガソリン及びジェット燃料の製造を柔軟に調節又は最適化することができる。本明細書の実施形態に係るアルキル化システムの簡略化されたプロセスフロー図を
図3に示す。
図3に示されるように、本明細書の実施形態に係るガソリン及びジェット燃料の柔軟な製造のためのシステムは、1つ以上のアルキル化反応器を含むアルキル化反応ゾーン10を備えていてもよく、2つ以上が使用される場合、反応器は直列及び/又は並列であってもよい。アルキル化反応器は、酸アルキル化触媒の存在下でC4~C5オレフィンをイソパラフィンと反応させて炭化水素流出物及び使用済み酸ストリームを生成するために使用してもよい。様々な実施形態において、C4オレフィン、C5オレフィン及び/又はC6オレフィンがアルキル化反応ゾーンに供給されてもよい。
【0018】
C4~C6オレフィンは、C4オレフィンストリーム、C5オレフィンストリーム又は混合C4/C5オレフィンストリーム等を含む1つ以上の粗オレフィンストリーム12として供給してもよい。粗C4及びC5オレフィンストリームは、オレフィン及びパラフィンの混合物を含んでもよい。それに含まれるオレフィンは、n-オレフィン、イソ-オレフィン又はそれらの混合物を含んでもよい。パラフィンは、例えば、C4アルカン(n-ブタン、イソブタン)、C5アルカン(n-ペンタン、ネオペンタン及びイソペンタン)又はそれらの混合物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、イソブタン又はイソペンタンフィード14等の高純度イソパラフィンが代替的又は追加的に供給されてもよい。他の実施形態では、オレフィン及びイソパラフィンを別々に供給してもよい。いくつかの実施形態において、C4オレフィン含有フィードストックは、C4オレフィンが50重量%を超えていてもよい。いくつかの実施形態では、C5オレフィン含有フィードストックは、C5オレフィンが50重量%を超えていてもよい。
【0019】
アルキル化反応は、硫酸又はHF等を用いて触媒してもよい。硫酸は、例えば、いくつかの実施形態では80重量%を超える濃度で、他の実施形態では88%を超える濃度で、さらに他の実施形態では96%を超える濃度で使用してもよい。アルキル化プロセスでは、アルキル化反応ゾーン10の1つ以上の反応器において酸触媒の存在下でイソパラフィンをオレフィンと反応させる。次に、アルキル化反応ゾーンで反応生成物を分離して、炭化水素に富む相及び酸に富む相を回収する。炭化水素に富む相は、操作の中でも特に、必要に応じて炭化水素相から硫酸エステルを除去するようアルキル化反応ゾーンでさらに処理して、未反応のイソパラフィン及びアルキレート製品を含んでもよい炭化水素流出物16を生成してもよい。
【0020】
酸に富む相の一部は、反応器内の所望の酸濃度を維持することなどを目的として、同じアルキル化反応器にリサイクルしてもよい。残りの酸は使用済み酸留分として回収してもよいし、使用済み酸留分は、アルキル化反応ゾーン内の異なる反応器(酸カスケード化)に送ってもよく、あるいは使用済み酸回収用のフローライン18を介して回収してもよい。また、反応器を所望の酸濃度に維持するために未使用酸フィード20を供給してもよい。例えば、アルキル化反応ゾーンに供給される硫酸は、未使用及び/又はリサイクル硫酸を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アルキル化反応器に入る硫酸相の濃度は、99.8重量%未満の強度の硫酸/水混合物又はそれ以下として滴定される濃度に維持してもよい。他の実施形態では、硫酸は、20~96重量%の硫酸/水混合物として、他の実施形態では25~75重量%の硫酸/水混合物として、さらに他の実施形態では30~70重量%の硫酸/水混合物として滴定される濃度範囲で維持してもよい。これらの例における酸相は、硫酸、硫酸エステル、ASO(酸可溶性オイル)及び水で構成されることが留意される。酸相は多量の水を含まず、典型的には0~5重量%であり、酸含量を説明する目的で、「~として滴定される」という用語を用いて、同じ酸度を有する硫酸/水混合物を示しており、本明細書で使用される酸混合物は化学組成の点でより複雑であることが理解される。酸度の測定は、例えばMETTLER DL-77又はMETTLER T-90滴定装置を用いて測定してもよい。
【0021】
したがって、様々な実施形態において、アルキル化反応ゾーン内のアルキル化反応器に供給される使用済み酸又はリサイクル酸に加えて、未使用酸を供給してもよい。未使用酸ストリーム、アルキル化反応器にリサイクルされる回収酸の一部、及び別のアルキル化ゾーン又は酸回収に送られる使用済み酸の一部の流量を制御して、それぞれの各アルキル化反応器において所望の又は最適な酸強度を達成してもよい。いくつかの実施形態では、アルキル化反応ゾーンは、例えばC4アルキル化反応器及びC5アルキル化反応器を含んでもよい。酸リサイクル、未使用酸及び酸カスケード化は、C4アルキル化反応器内の硫酸が87~95重量%の硫酸/水混合物として滴定される濃度範囲で維持されるとともに、C5アルキル化反応器内の硫酸が80~95重量%の硫酸/水混合物として滴定される濃度範囲で維持されるように制御してもよい。
【0022】
フローライン16を介して回収されるアルキル化生成物は、その後、ガソリン範囲の成分及びより重質のアルキレート製品に分離してもよい。本明細書の実施形態に係るシステムは、炭化水素流出物16をイソブタン留分24、n-ブタン留分26及びC5+留分28に分離するための脱イソブタン装置22を備えていてもよい。また、該システムは、C5+留分28をイソペンタン留分32及びC6+留分34に分離するための脱イソペンタン装置30を備えていてもよい。また、C6+留分を軽質アルキレートオーバーヘッド留分38及び重質アルキレートボトム留分40に分離するためのスプリッタ36が備えられていてもよい。
【0023】
本明細書の実施形態に係るジェット燃料及びガソリンの柔軟な製造を可能にするためのフローシステムが備えられる。フローライン42を介してイソブタン留分24をアルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、フローライン44を介してイソブタン留分をイソブタン製品として回収するため、及びイソブタン留分の一部42をアルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つイソブタン留分の一部44をイソブタン製品として回収するためのフローシステムが備えられていてもよい。また、フローライン46を介してイソペンタン留分32をアルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、イソペンタン留分をイソペンタン製品48として回収するため、及びイソペンタン留分の一部46をアルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つイソペンタン留分の一部48をイソブタン製品として回収するためのフローシステムが備えられていてもよい。さらに、フローライン50を介して軽質アルキレート留分38をアルキル化反応ゾーンにリサイクルするため、軽質アルキレートを軽質アルキレート製品52として回収するため、及び軽質アルキレート留分の一部50をアルキル化反応ゾーンにリサイクルし且つ軽質アルキレート留分の一部52を軽質アルキレート製品として回収するためのフローシステムが備えられていてもよい。軽質アルキレート又はその一部をリサイクルすることで、ヘキセン及び/又はイソヘキサンを反応ゾーンに導入でき、これらが反応してより高分子量のアルキレートを生成できる。
【0024】
また、プラントのバルブ調節等を制御又は作動させるために使用されるデジタル制御システムや同様のプロセス運転及び制御ソフトウェア及びハードウェア等の制御システム(図示せず)が備えられていてもよい。本明細書の実施形態に係る制御システムは、アルキル化反応ゾーン10への粗オレフィン12(C4オレフィン及びC5オレフィン)、リサイクルイソブタン留分42、イソペンタンリサイクル留分46及び軽質アルキレートリサイクル留分50の各々の流量を調節することで、アルキル化反応ゾーン10で生成されて流出物16に回収されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を選択的に増加又は減少させるように構成されていてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、制御システムは、アルキル化反応ゾーン内の1つ以上の反応器の反応温度を調節することで、アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させるようにさらに構成されている。制御システムは、アルキル化反応ゾーン内の1つ以上の反応器への未使用酸触媒の流量を調節することで、アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させるようにさらに構成されていてもよい。さらには、制御システムは、アルキル化反応ゾーン内の1つ以上の反応器における運転条件を調節することで、アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させるように追加的又は代替的に構成されていてもよく、ここで運転条件は、例えば、酸強度、温度、空間速度、混合強度、リサイクルイソブタン/オレフィン比及びリサイクルイソペンタン/オレフィン比のうちの1つ以上から選択されてもよい。
【0026】
システムはまた、C5+留分をガソリン製品留分として回収するためのフローライン54を備えていてもよい。上述したように、
図3に示されるシステムは、市場の需要を満たすために必要に応じて、アルキル化により製造されるガソリンとジェット燃料との比率を効果的且つ効率的に変更するためのプロセスで使用してもよい。ガソリン及びジェット燃料の柔軟な製造のためのプロセスは、酸アルキル化触媒20の存在下でC4~C5オレフィンをイソパラフィンと反応させて炭化水素流出物16及び使用済み酸ストリーム18を生成するための1つ以上の反応器を含むアルキル化反応ゾーン10にイソパラフィン14と、C4及び/又はC5オレフィンを含むオレフィン12とを供給することを含んでもよい。炭化水素流出物16は、次に、イソブタン留分24、n-ブタン留分26及びC5+留分28に分離してもよい。C5+留分28は、イソペンタン留分32及びC6+留分34に分離してもよい。さらに、C6+留分34は、軽質アルキレートオーバーヘッド留分38及び重質アルキレートボトム留分40に分離してもよい。
【0027】
また、本明細書のプロセスは、交互に、(i)アルキレート中のガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加させること及び(ii)アルキレート中のガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を減少させることを含んでもよい。交互に行う増加及び減少は、例えば、アルキル化反応ゾーンへの粗オレフィン12(別個のC4オレフィン及びC5オレフィンフィードであってもよい)、イソブタンリサイクル留分42、イソペンタンリサイクル留分46及び軽質アルキレートリサイクル留分50の各々の流量を調節することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、交互に行う増加及び減少は、アルキル化反応ゾーン内の1つ以上の反応器の1つ以上の反応温度を調節することで、アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させることを含んでもよい。交互に行う増加及び減少は、いくつかの実施形態では、アルキル化反応ゾーン内の1つ以上の反応器への未使用酸触媒の流量を調節することで、アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させることを含んでもよい。追加的又は代替的に、交互に行う増加及び減少は、アルキル化反応ゾーン内の1つ以上の反応器における運転条件を調節することで、アルキル化反応ゾーンで生成されるガソリンとジェット燃料範囲の炭化水素との比率を増加又は減少させることを含んでもよく、ここで運転条件は、酸強度、空間速度、混合強度、リサイクルイソブタン/オレフィン比及びリサイクルイソペンタン/オレフィン比のうちの1つ以上から選択される。
【0028】
いくつかの実施形態では、交互に行う増加は、フローライン54等を介してC5+留分又はその一部をガソリン製品留分として回収することを含む。C5+留分の全体が製品として回収される実施形態では、脱ペンタン装置30及びスプリッタ36並びに関連するフローストリームを一時的に停止してもよい。ジェット燃料生産量を増加させることが望まれるので、そのようなシステム(30、36及び関連するフローストリーム)をオンラインに戻してもよい。そのような実施形態では、制御システムは、ガソリン製品留分を増加/最大化する際、又はガソリン製品留分を減少/最小化する際に、それぞれ脱ペンタン装置及びスプリッタを停止及び起動するようにさらに構成されていてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、アルキル化反応ゾーンのそれぞれについて全反応器フィード(粗オレフィン、イソパラフィン及びリサイクル炭化水素)中のオレフィン/イソパラフィンモル比は、約1:1.5~約1:30、例えば約1:5~約1:15の範囲であってもよい。より低いオレフィン/イソパラフィン比を用いることもできる。アルキル化反応器における全リサイクルイソパラフィン/オレフィン比は、1:1~20:1の範囲であってもよい。
【0030】
ガソリン生産量を最大化する際、全リサイクルイソパラフィンストリーム中のイソブタン濃度は80~100%の範囲であってもよい。反応器内の温度は、例えば-10℃~50℃の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、C4オレフィン及び/又はC5オレフィンのアルキル化は、約-7℃~約38℃の範囲であってもよい。
【0031】
ジェット燃料生産量を最大化する際、全リサイクルイソパラフィンストリーム中のイソブタン濃度は0~80%の範囲であってもよい。アルキル化反応器の運転温度は、ガソリンを最大化する場合と同じ又はそれより高くてもよい。同様に、ガソリン生産量を最大化する場合と比べて、酸強度は同じ又はそれより低くてもよく、空間速度は同じ又はそれより高くてもよい。
【0032】
図4~6にまとめて示されているようないくつかの実施形態では、C4に富むオレフィンフィード及びC5に富むオレフィンフィードは、別々の専用反応器で処理される。
図4~6のプロセススキームはまとまったものであり、
図4はガソリンモードを最大化する際のC4/C5アルキル化プロセススキームを示し、
図5はジェット燃料モードを最大化する際のC4/C5アルキル化プロセススキームを示し、
図6は共製造モードのC4/C5アルキル化プロセススキームを示している。反応ゾーン10は、C4アルキル化反応器10A及びC5アルキル化反応器10Bを含んでいてもよく、粗オレフィンフィード12は、粗C4オレフィンフィード12A及び粗C5オレフィンフィード12Bを含んでもよい。
図4~6は、それぞれのモードにおいて運転中の炭化水素フローストリーム及びシステムを示しているが、全体的なシステムは、特定の機器又はフローラインをオフラインにしている以外は、
図3に示されるものと同様であってもよい。酸の流れは示されていないが、これらも
図3に関して示し説明したものと同様である。
【0033】
次に
図4を参照すると、ガソリン製造を最大化するスキームにおける本明細書のC4/C5アルキル化プロセス実施形態の簡略化されたフロー図であり、同様の数字は同様の部分を表す。
図4に示すように、最大ガソリンモードでは、イソブタン24/42のみがリサイクルされる。両反応器10A/10Bにおける運転条件は、ジェット燃料又は共製造モードと比較して、より遅い空間速度、より低い温度、より高い酸強度及びより高いイソブタン/オレフィン比を目標としてもよい。脱ペンタン装置30及びスプリッタ36は、最大ガソリンモードではオフラインである。
【0034】
次に
図5を参照すると、ジェット燃料製造を最大化するスキームにおける本明細書のC4/C5アルキル化プロセス実施形態の簡略化されたフロー図であり、同様の数字は同様の部分を表す。
図5に示すように、最大ジェット燃料モードでは、イソペンタンリサイクル32/46を最大化すべきである。イソブタンは、最終製品44としてシステムから取り除くべきである。エンドポイント(FBP)要件を満たすために、重質物濃度を制御する特定のイソブタンリサイクル(42、
図5には図示せず)が必要になる場合がある。運転条件については、全体的に見て、ガソリン製造モードと比較して、両反応器ともに空間速度が速く、温度が高く、酸強度が低く、リサイクルI/O比が低いことが好ましい。
【0035】
次に
図6を参照すると、ガソリン及びジェット燃料を共製造するスキームにおける本明細書のC4/C5アルキル化プロセス実施形態の簡略化されたフロー図であり、同様の数字は同様の部分を表す。
図6に示すように、共製造モードでは、イソブタン42をC4アルキル化反応器に戻してリサイクルすることが好ましく、イソペンタン46をC5反応器に戻してリサイクルすることが好ましい。これは、C4アルキル化によってC5アルキル化に比べてはるかに高いオクタン価のアルキレートが生成される傾向があるためである。C4オレフィンをイソブタンと反応させるとともに、C5オレフィンをイソペンタンと反応させることで、それらの特有の反応化学を最大限に収益化できる。加えて、C5反応器は、共製造モードのC4反応器と比較して、はるかに高い温度及び低い酸強度で運転することが好ましい。
【0036】
未使用イソパラフィンフィード14、リサイクルイソパラフィン42/46/50及び粗オレフィン10/10A/10Bに関連するフローシステムによって、それぞれの留分の混合、C5反応器へのC4オレフィン又はイソパラフィンの供給、C4反応器へのC5オレフィン又はイソパラフィンの供給、あるいは製品製造においてさらなる柔軟性を提供するための他の組み合わせを可能とすることができる。
【0037】
図4~6に関して説明したC4/C5アルキル化プロセスの実施形態では、C4反応器内の酸強度が87~95%の範囲、C5反応器内の酸強度が80~95%の範囲であってもよい。イソパラフィンは、C4及びC5反応器の両方に戻してリサイクルしてもよい。
【0038】
両反応器における全リサイクルイソパラフィン/オレフィン比は1:1~20:1の範囲であってもよい。ガソリン最大化モードでは、2つの反応器に戻る全リサイクルイソパラフィン中のイソブタン濃度は80~100%の範囲である。ジェット燃料最大化モードでは、2つの反応器に戻る全リサイクルイソパラフィン中のイソブタン濃度は0~80%の範囲である。ジェット燃料モードでの運転温度は、ガソリンモードの時と同じ又はそれよりも高くてもよい。同様に、酸強度はジェット燃料モードにおいて同じ又はそれより低くてもよく、空間速度は要求と同じ又はそれより速くてもよい。
【0039】
共製造モードでは、C4反応器に戻る全リサイクルイソパラフィン中のイソブタン濃度は80~100%の範囲であってもよく、C5反応器に戻る全リサイクルイソパラフィン中のイソブタン濃度は0~80%の範囲であってもよい。C4反応器は、C5反応器と同じ又はそれより高い酸強度を有してもよく、C4反応器は、C5反応器と同じ又はそれより低い温度を有してもよい。
【0040】
次に
図7を参照すると、本明細書の1つ以上の実施形態に係るアルキル化ゾーンの簡略化されたプロセス図が示されている。アルキル化ゾーンは、反応ゾーン及び分離ゾーンを含んでもよい。アルキル化ゾーン100は、例えば、上部反応セクション100a及び下部分離セクション100bを含んでもよい。オレフィン104、イソパラフィン106及び硫酸108の密接な接触を促進するために、接触構造体102を上部セクション100aに配置してもよい。
【0041】
アルキル化ゾーン100の条件は、上述したように、オレフィンの少なくとも一部又は全部がイソパラフィンと反応してアルキレートを形成するように維持してもよい。次いで、得られた反応混合物を、例えば下部セクション100bでデカンテーションすることで分離して、アルキレート、未反応イソパラフィン及び存在する場合には未反応オレフィンを含む炭化水素留分120と、使用済み又は部分的に使用済みの酸留分122とを回収してもよい。
【0042】
接触構造体を使用する場合、硫酸、イソパラフィン及びオレフィンフィードストリームと接触するためにアルキル化反応器100の上部セクション100aに配置してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実施形態で使用される接触構造体又は分散器は、少なくとも50%のボイドスペース、他の実施形態では少なくとも60%のボイドスペース、他の実施形態では少なくとも70%のボイドスペース、他の実施形態では少なくとも80%のボイドスペース、さらに他の実施形態では最大99%のボイドスペースを含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、接触構造体は、共編みワイヤーメッシュ、分散器又は他の好適な接触構造体等、マルチフィラメント要素及び構造要素を含んでもよい。例えば、米国特許第6,774,275号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される接触構造体を使用できる。
【0043】
いくつかの実施形態では、アルキル化反応器100の反応ゾーンにパルスフローレジームを使用することもできる。パルスは、大きな物質及び熱伝達率によって特徴付けることができる。接触構造体の濡れの増加や、平行に流れる細流間の連続的な混合によって、流れの偏在を減少させることができる。加えて、局所的なホットスポットの形成を抑制でき、より本質的に安全なプロセスとなる。パルスによって、停滞した液ホールドアップをその停滞性がなくなるまで継続的に動員できる。停滞したホールドアップはトリクルフロー運転における全液ホールドアップの10~30%を占めるため、パルスフローレジームの動的特性によって、半径方向の混合の改善などから反応器性能を向上できる。
【0044】
アルキル化ゾーンから回収された部分的に使用済みの酸留分122の一部又は全部は、上述のように、別のアルキル化ゾーン(図示せず)に供給されてもよい。いくつかの実施形態では、第1のアルキル化反応器100内の所望の酸濃度を維持することなどを目的として、酸留分158の一部124を同じアルキル化反応器100にリサイクルすることもできる。残りの酸は、使用済み酸留分126として回収してもよいし、これを異なる反応器に送ってもよく、あるいは使用済み酸回収のために回収してもよい。
【0045】
加えて、反応熱によっていくらか蒸気140が生成される場合があり、これを除去してもよい。所望であれば、これらの蒸気は、圧縮機142等を用いて凝縮又は圧縮し、回収された液体炭化水素留分120と組み合わせて炭化水素留分144を形成してもよい。いくつかの実施形態では、回収された炭化水素留分144は、下流のアルキル化ゾーン又は製品回収ゾーンに送られる第1の部分150に分割してもよく、所望のオレフィンフィード濃度の維持及び/又は温度制御などを目的として、第2の部分152を同じアルキル化反応器100にリサイクルしてもよい。
【実施例】
【0046】
パイロットプラントのテストランでは、FCCのC4カット及びイソブタンを、
図3に示すものと同様なプロセスのフィードストックとして使用した。生成物分布を変えるために運転条件を調節した。そして、カットポイントを慎重に選ぶことで、全アルキレートを軽質アルキレート及び重質アルキレートへと蒸留した。
図8に示すように、重質アルキレートの沸点範囲はジェット燃料範囲である。軽質アルキレートは、航空用ガソリン又は自動車用ガソリンのいずれかの混合成分として使用できる。
図9は、軽質アルキレート及び重質アルキレートの炭素数分布を表す。蒸留後、C11+製品のほとんどが重質アルキレートに含まれることがわかる。
【0047】
テストランでは、運転条件を変更して異なるジェット燃料収率を得た。ジェット燃料収率が高くなると、軽質アルキレートのアルキレート品質(オクタン価)が低くなる傾向にあり、酸総消費量が高くなる傾向にある。したがって、オレフィン種やガソリンとジェット燃料との価格差によっては、ガソリン及びジェット燃料を共製造して、収益を最大化するか、又は市場の需要を満たすための最適な運転条件が存在する。
【0048】
上述したように、本明細書の実施形態は、ガソリン及びジェット燃料を柔軟に製造するためのシステム及びプロセスを提供する。C5オレフィンを直接ガソリンプールに混合する場合と比較して、全体的なRVPが低下し、体積収率及びオクタン価が増加することから、C5アルキル化への関心が高まっている。一方、C5アルキル化のための運転酸強度ははるかに低いので、既存のC4アルキル化反応器からC5反応器への酸カスケードが可能である。有利なことには、本明細書の実施形態は、ガソリン収率の最大化、ジェット燃料収率の最大化又は両者の最適な共製造という様々な目標のためにC4オレフィン及びC5オレフィンを共製造するプロセススキームを提供する。
【0049】
本開示には限られた数の実施形態しか含まれていないが、本開示の範囲を逸脱しない他の実施形態も考えられることが、本開示の利益を享受する当業者には理解できるであろう。したがって、本範囲は添付の特許請求の範囲のみにより限定されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】