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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(54)【発明の名称】18F放射性ラベルされた生体分子
(51)【国際特許分類】
   C07B 59/00 20060101AFI20220712BHJP
   C07K 1/13 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C07B59/00
C07K1/13
A61K51/10 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569929
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 US2020034243
(87)【国際公開番号】W WO2020242948
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/852,681
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503164937
【氏名又は名称】デューク・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ザルツスキー,マイケル ロッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイディアナタン,ガネーシャン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ツェンユアン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H006
4H045
【Fターム(参考)】
4C085HH03
4C085KA03
4C085KA29
4C085KB20
4C085KB56
4C085KB82
4C085LL18
4H006AA02
4H006AC84
4H006CN40
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA71
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA51
(57)【要約】
本発明は、18F放射性ラベルされた残留化剤および生体分子、並びに、放射性フッ素原子を用いて生体分子をラベルする方法に関する。生体分子は、特定のタイプの細胞に対して親和性を有し、特定の細胞(癌細胞など)に特異的に結合することができる。当該生体分子には、抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、ペプチド、他のタンパク質、ナノ粒子、および、アプタマーが含まれる。本発明はさらに、このようなラベルされた生体分子を含む組成物、および、イメージングの用途にラベルされた生体分子および/または組成物を使用する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエノフィルを含む官能化された生体分子を準備する工程と、
ジエンを含む18F含有試薬を準備する工程と、
上記官能化された生体分子と上記18F含有試薬とを、逆電子要請型ディールス・アルダー付加環化反応にて反応させて、18Fラベルされた生体分子を準備する工程と、を有する、18Fラベルされた生体分子の調製方法。
【請求項2】
上記ジエノフィルは、オクテン部分を含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
上記ジエノフィルは、trans-シクロオクテン(TCO)部分を含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
上記ジエンは、テトラジン(Tz)部分を含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
上記18F含有試薬は、[18F]フルオロニコチニル(FN)基を含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
上記18F含有試薬は、6-[18F]フルオロニコチニル-PEG-メチルテトラジンを含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
上記官能化された生体分子は、更にリンカーを含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
上記リンカーは、腎臓刷子縁酵素切断リンカーを含む、請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
上記官能化された生体分子は、TCO-GK-PEG-NHSによって誘導体化された生体分子を含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項10】
上記生体分子は、ナノボディである、請求項1~9の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項11】
上記ナノボディは、HER2特異的なナノボディである、請求項10に記載の調製方法。
【請求項12】
上記18Fラベルされた生体分子は、[18F]FN-PEG-Tz-TCO-PEG-GK-生体分子である、請求項1に記載の調製方法。
【請求項13】
ジエンを含む官能化された生体分子を準備する工程と、
ジエノフィルを含む18F含有試薬を準備する工程と、
上記官能化された生体分子と上記18F含有試薬とを、逆電子要請型ディールス・アルダー付加環化反応にて反応させて、18Fラベルされた生体分子を準備する工程と、を有する、18Fラベルされた生体分子の調製方法。
【請求項14】
上記ジエノフィルは、オクテン部分を含む、請求項13に記載の調製方法。
【請求項15】
上記ジエノフィルは、trans-シクロオクテン(TCO)部分を含む、請求項13に記載の調製方法。
【請求項16】
上記ジエンは、テトラジン(Tz)部分を含む、請求項13に記載の調製方法。
【請求項17】
上記18F含有試薬は、[18F]フルオロニコチニル(FN)基を含む、請求項13に記載の調製方法。
【請求項18】
上記18F含有試薬は、腎臓刷子縁酵素切断リンカーを含む、請求項13に記載の調製方法。
【請求項19】
上記18F含有試薬は、6-[18F]フルオロニコチニル-PEG-GK-TCOを含む、請求項13に記載の調製方法。
【請求項20】
上記官能化された生体分子は、更にリンカーを含む、請求項13に記載の調製方法。
【請求項21】
上記リンカーは、PEGを含む、請求項20に記載の調製方法。
【請求項22】
上記官能化された生体分子は、-Mal-PEG-Tzによって誘導体化された生体分子を含む、請求項13に記載の調製方法。
【請求項23】
上記生体分子は、ナノボディである、請求項13~22の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項24】
上記ナノボディは、HER2特異的なナノボディである、請求項23に記載の調製方法。
【請求項25】
上記18Fラベルされた生体分子は、[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-生体分子である、請求項13に記載の調製方法。
【請求項26】
18F]FN-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-、および、[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-から選択される18Fラベルされた残留化剤に結合させた生体分子を含む、18Fラベルされた生体分子。
【請求項27】
上記生体分子は、ナノボディである、請求項26に記載の18Fラベルされた生体分子。
【請求項28】
上記ナノボディは、HER2特異的なナノボディである、請求項27に記載の18Fラベルされた生体分子。
【請求項29】
グアニジン部分およびアルキン部分を含む第1の化合物を準備する工程と、
フルオロアルキルアジドおよびPEGリンカーを含む第2の化合物を準備する工程と、
上記第1の化合物と上記第2の化合物とを、クリックケミストリーにて反応させて、18Fラベルされた残留化剤を得る工程と、を有する、18Fラベルされた残留化剤の調製方法。
【請求項30】
上記クリックケミストリーは、銅触媒によって触媒される、請求項27に記載の調製方法。
【請求項31】
上記第1の化合物は、N-スクシンイミジル 3-((2,3-ビス(tert-ブトキシカルボニル)17uanidine当該残留化剤は、)メチル)-5-エチニル安息香酸であり、
上記第2の化合物は、1-アジド-2-(2-(2-(2-[18F]フルオロエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタンである、請求項27に記載の調製方法。
【請求項32】
請求項29~31の何れか1項に記載の調製方法を実施する工程と、
上記18Fラベルされた残留化剤と生体分子とを反応させる工程と、を有する、18Fラベルされた生体分子の調製方法。
【請求項33】
上記生体分子は、ナノボディである、請求項32に記載の調製方法。
【請求項34】
上記ナノボディは、HER2特異的なナノボディである、請求項32に記載の調製方法。
【請求項35】
N-スクシンイミジル 3-(1-(2-(2-(2-(2-[18F]フルオロエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)-5-(グアニジノメチル)安息香酸を含む、18Fラベルされた残留化剤。
【請求項36】
請求項35に記載の18Fラベルされた残留化剤に結合させた生体分子を含む、18Fラベルされた生体分子。
【請求項37】
上記生体分子は、ナノボディである、請求項36に記載の18Fラベルされた生体分子。
【請求項38】
上記ナノボディは、HER2特異的なナノボディである、請求項37に記載の18Fラベルされた生体分子。
【請求項39】
グアニジン部分を含むボロネート前駆体を準備する工程と、
上記ボロネート前駆体と18F含有試薬とを、18Fフルオロ脱ホウ素化にて反応させる工程と、を有する、18Fラベルされた残留化剤の調製方法。
【請求項40】
上記ボロネート前駆体は、更にTFPエステルを含む、請求項39に記載の調製方法。
【請求項41】
上記18F含有試薬は、[18F]テトラエチルアンモニウムフルオリドである、請求項39に記載の調製方法。
【請求項42】
上記反応させる工程は、銅触媒の存在下にて行われる、請求項39に記載の調製方法。
【請求項43】
請求項39~42の何れか1項に記載の調製方法を実施する工程と、
上記18Fラベルされた生体分子と生体分子とを反応させる工程と、を有する、18Fラベルされた生体分子の調製方法。
【請求項44】
上記生体分子は、ナノボディである、請求項43に記載の調製方法。
【請求項45】
上記ナノボディは、HER2特異的なナノボディである、請求項44に記載の調製方法。
【請求項46】
テトラフルオロフェニル 3-[18F]フルオロ-5-グアニジノメチル安息香酸を含む、18Fラベルされた残留化剤。
【請求項47】
請求項46に記載の18Fラベルされた残留化剤に結合させた生体分子を含む、18Fラベルされた生体分子。
【請求項48】
上記生体分子は、ナノボディである、請求項47に記載の18Fラベルされた生体分子。
【請求項49】
上記ナノボディは、HER2特異的なナノボディである、請求項47に記載の18Fラベルされた生体分子。
【請求項50】
請求項26~28、36~38、47~49の何れか1項に記載の18Fラベルされた生体分子を使用することを含む、癌細胞のイメージング方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、生体分子の放射性ラベルに役立つ化合物の調製方法、および、そのような放射性ラベルされた生体分子の調製方法に関する。本開示はまた、放射性ラベルされた生体分子および対応する放射性ラベルされた生体分子の前駆体を提供する。当該化合物は、細胞内に取り込まれるようになる生体分子からの放射能を効果的に保持することができ、そのような化合物は、疾患(特に癌)の診断に有用である。
【0002】
〔背景〕
多くのモノクローナル抗体(mAb)、mAb断片、および、ペプチドが、異なる放射性核種によって標識され、これらが、癌の検出および処置に使用されている。最も臨床的に重要な標的分子(例えば、HER2、上皮成長因子受容体(EGFR)、および、腫瘍特異的変異EGFRvIII)の多くは、腫瘍細胞内に急速に取り込まれる。このことは、ラベル化の観点において大きな問題である。その理由は、放射性ラベルされた生体分子が腫瘍に関連する受容体または抗原に結合すると、放射性ラベルされた生体分子は、細胞内に輸送され、エンドソーム/リソソーム内に取り込まれ、そこで速やかに分解されるからである。難しい点は、これらの放射性分解生成物が、腫瘍細胞から急速に失われることである。その結果、腫瘍の画像化、または、腫瘍の治療を可能にするのに十分な放射能が、もはや腫瘍細胞内に存在しない。
【0003】
一例として、放射性ヨウ素によって、EGFRvIIIとの反応性を有するmAbをラベルすることを考える。なお、ここで使用される標準的なラベル法は、直接求電子置換である。この場合、大規模な内在化の結果、腫瘍内に保持される放射能は、受容体への結合およびそれに続くタンパク質分解の後では、少ない。これは、主要なカタボライトであるヨードチロシンが速やかにウォッシュアウトされるためである。この問題を回避するために、ラベルされたmAbが内在化された後に腫瘍細胞内に放射能を捕捉しようとする「残留化剤(residualizing agents)」が開発されている。放射性ヨウ素のためのこのような残留化剤には、N-スクシンイミジル 4-グアニジノメチル-3-ヨード安息香酸塩(SGMIB);Nε-(3-ヨードベンゾイル)-Lys-Nα-マレイミド-Gly-Geeekが含まれ、ここで、eおよびkは、それぞれ、D-グルタミン酸およびD-リシンの残基を表す。別名、N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロル-1-イル)アセチル)-D-グルタミル-D-グルタミル-D-グルタミル-N’-(3-ヨードベンゾイル)-D-リジン、または、IB-MalGeeekとして知られる;および、2,2’,2’’-(10-(2-((6-(3-(((N-スクシンイミジル)オキシ)カルボニル)-5-ヨードベンズアミド)ヘキシル)アミノ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸(SIB-DOTA)が挙げられる。直接ラベルされた生体分子と比較して、同じ生体分子をこれらの残留化補綴基(residualizing prosthetic groups)の1つを用いてラベルした場合に、腫瘍における放射能の保持のかなりの増強が見られる。
【0004】
陽電子放出断層撮影(Positron emission tomography:PET)は、最先端の画像化技術であり、非常に高感度であり、優れた定量能力を有する。世界中で最も広く利用可能な陽電子放出放射性核種は、フッ素-18である。フッ素-18は、110分間の半減期を有する。当該画像化技術の利点と、内在化分子の標的化特性とを組み合わせるために、これらの生体分子をフッ素-18にてラベルすることができる残留化剤を開発することが必要である。さらに、このようなラベルされた生体分子の調製のための更に有効な方法が求められている。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明は、放射性ハロゲン原子(特に18F)を用いて生体分子(高分子とも呼ばれる)を放射性ラベルするための、方法、化合物、および、組成物に関する。有利なことに、これらの方法、化合物、および、組成物は、in vivoでの脱ハロゲン化による放射性ハロゲン18Fの損失を最小限にし、生体分子の生物学的活性を保存し、異常細胞(例えば、癌細胞)内での保持を最大限にし、および、in vivoでの投与後における正常組織内での放射能の保持を最小限にする。当該生体分子は、特定のタイプの細胞に対して親和性を有する。すなわち、当該生体分子は、特定の細胞(例えば、癌細胞)に特異的に結合し得る。本発明の組成物は、放射性ラベルされた生体分子を含む。このような生体分子には、抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、ペプチド、他のタンパク質、ナノ粒子、および、アプタマーが含まれる。本発明のための生体分子の例には、二重特異性抗体(diabodies)、scFv断片、DARPins、フィブロネクチン タイプIIIに基づく足場(scaffolds)、アフィボディ、VHH分子(シングルドメイン抗体フラグメント(sdAb)およびナノボディとしても知られる)、核酸またはタンパク質アプタマー、および、ナノ粒子が含まれる。さらに、大きな分子(例えば、抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、および、F(ab’)断片を含む、50kDaを超えるタンパク質)を、本明細書に開示される方法に使用することができる。さらに、50nm未満のサイズを有するナノ粒子を、本明細書に開示される方法に使用することができる。本明細書中に開示される原理は、いくつかの実施形態において、本明細書中により詳細に記載されるように、特にVHH分子および他の種類の小さなタンパク質構築物に関連する。
【0006】
本発明の方法は、放射性ラベルに有効な補綴化合物(prosthetic compounds)を利用する。そのようなものとして、本開示は、そのような放射性標識化合物、および、そのような補綴化合物を調製するための前駆体を提供する。本発明はさらに、放射性ラベルされた高分子(例えば、生体分子)を提供する。当該高分子には、このような化合物/ラジカル、および、1つ以上の高分子が含まれる。いくつかの実施形態では、これらの放射性ラベルされた高分子が、目標とされる放射線治療薬である。本発明の補綴化合物および放射性ラベルされた化合物は、例えば、病気の診断に有効である。
【0007】
一態様において、本発明は、ジエノフィルを含む官能化(functionalized)された生体分子を準備する工程と、ジエンを含む18F含有試薬を準備する工程と、上記官能化された生体分子と上記18F含有試薬とを、逆電子要請型ディールス・アルダー付加環化反応にて反応させて、18Fラベルされた生体分子を準備する工程と、を有する、18Fラベルされた生体分子の調製方法を提供する。上記試薬、および、得られる18Fラベルされた生体分子は、変わり得る。限定されない特定の一実施形態における上記調製方法において、18F含有試薬は、6-[18F]フルオロニコチニル-PEG-メチルテトラジンを含む。限定されない特定の一実施形態において、官能化された生体分子は、TCO-GK-PEG-NHSによって誘導体化された生体分子を含む。特定の一実施形態において、上記方法は、以下の化学式にて示される18Fラベルされた生体分子を提供するために使用され得る:[18F]FN-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-生体分子、例えば、[18F]FN-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-5F7を含むが、これに限定されない。
【0008】
別の態様において、本発明は、ジエンを含む官能化された生体分子を準備する工程と、ジエノフィルを含む18F含有試薬を準備する工程と、上記官能化された生体分子と上記18F含有試薬とを、逆電子要請型ディールス・アルダー付加環化反応にて反応させて、18Fラベルされた生体分子を準備する工程と、を有する、18Fラベルされた生体分子の調製方法を提供する。この場合も、当該方法に関連して、上記試薬、および、得られる18Fラベルされた生体分子は、変わり得る。限定されない特定の一実施形態における上記調製方法において、18F含有試薬は、6-[18F]フルオロニコチニル-PEG-GK-TCOを含む。限定されない特定の一実施形態において、官能化された生体分子は、-Mal-PEG-Tzによって誘導体化された生体分子を含む。特定の一実施形態において、上記方法は、以下の化学式にて示される18Fラベルされた生体分子モジュールを提供するために使用され得る:[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-生体分子、例えば、[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal 5F7GCを含むが、これに限定されない。
【0009】
上述の方法のいくつかの実施形態では、18F含有試薬は、[18F]フルオロニコチニル(FN)基を含む。ジエノフィルの機能性は、変わり得る。いくつかの実施形態では、ジエノフィルは、オクテン部分を含む。例えば、1つの好適なジエノフィルは、trans-シクロオクテン(TCO)部分を含む。同様に、ジエンの機能性は、変わり得る。いくつかの実施形態では、ジエンは、テトラジン(Tz)部分を含む。IEDDARに適したジエンおよびジエノフィルの様々な別の例は、当業者によって、理解されるであろう。いくつかの実施形態において、18F含有試薬、および/または、官能化された生体分子は、更にリンカーを含み得る。このようなリンカーには、例えば、PEG、および/または、腎臓刷子縁酵素切断リンカー(renal brush border enzyme-cleavable linkers)が含まれ得る。
【0010】
本発明はさらに、特定の18Fラベルされた生体分子を提供する。当該生体分子は、[18F]FN-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-、および、[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-から選択される18Fラベルされた残留化剤に結合させた生体分子を含む。ラベルされた生体分子の限定されない特定の例として、[18F]FN-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-5F7、および、[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-5F7GGCが挙げられる。
【0011】
本発明の別の態様は、グアニジン部分およびアルキン部分を含む第1の化合物を準備する工程と、フルオロアルキルアジドおよびPEGリンカーを含む第2の化合物を準備する工程と、上記第1の化合物と上記第2の化合物とを、クリックケミストリー(click chemistry)にて反応させて、18Fラベルされた残留化剤を得る工程と、を有する、18Fラベルされた残留化剤の調製方法を提供する。いくつかの実施形態では、クリックケミストリーは、例えば、銅触媒によって触媒される。当該方法の試薬は、変わり得る。限定されない特定の一実施形態において、第1の化合物は、N-スクシンイミジル 3-((2,3-ビス(tert-ブトキシカルボニル)3uanidine)メチル)-5-エチニル安息香酸であり、第2の化合物は、1-アジド-2-(2-(2-(2-[18F]フルオロエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタンである。本発明はさらに、直上に参照される方法を実施する工程と、上記ラベルされた部分と生体分子とを反応させる工程と、を有する、18Fラベルされた生体分子の調製方法を提供する。本発明はさらに、特定の18Fラベルされた残留化剤を提供する。当該残留化剤は、N-スクシンイミジル 3-(1-(2-(2-(2-(2-[18F]フルオロエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)-5-(グアニジノメチル)安息香酸、および、対応する18Fラベルされた生体分子を含み、これらは、18Fラベルされた残留化剤に結合させた生体分子を含む。しかしながら、当該残留化剤は、これらに限定されない。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、グアニジン部分を含むボロネート前駆体を準備する工程と、上記ボロネート前駆体と18F含有試薬とを、18Fフルオロ脱ホウ素化にて反応させる工程と、を有する、18Fラベルされた残留化剤の調製方法を提供する。上記試薬は、変わり得る。いくつかの実施形態では、ボロネート前駆体は、更にTFPエステルを含む。いくつかの実施形態では、18F含有試薬は、[18F]テトラエチルアンモニウムフルオリドである。いくつかの実施形態では、反応させる工程は、触媒の存在下で行われ得、当該触媒としては、例えば銅触媒が挙げられるが、当該銅触媒に限定されない。また、本発明は、直上に参照される方法を実施して18Fラベルされた残留化剤を準備する工程と、上記18Fラベルされた残留化剤と生体分子とを反応させる工程と、を有する、18Fラベルされた生体分子の調製方法を提供する。本発明はさらに、18Fラベルされた残留化剤を提供する。当該残留化剤は、テトラフルオロフェニル 3-[18F]フルオロ-5-グアニジノメチル安息香酸、および、18Fラベルされた生体分子を含み、これらは、このような試薬に結合させた生体分子を含む。
【0013】
本発明は更に、本明細書に記載の18Fラベルされた生体分子のいずれか1つを使用することを含む、癌細胞のイメージング方法を提供する。
【0014】
本明細書中に記載の方法に従ってラベルされ、かつ、本明細書中に記載の18Fラベルされた生体分子内に組み込まれる適切な生体分子は、広範に変化し得る。様々な実施形態において、上述した方法によってラベルされた生体分子は、ナノボディである。例示的なナノボディとしては、HER2特異的なナノボディを挙げることができるが、本発明は、これに限定されない。HER2特異的なナノボディの具体例としては、5F7、5F7GCC、2Rs15d、および、それらの変異体を挙げることができるが、本発明は、これらに限定されない。
【0015】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の実施形態の理解を助けるために、添付の図面を参照する。当該図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、当該図面における参照番号は、本発明の例示的な実施形態の構成要素を示す。図面は、単に例示的なものであって、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0016】
図1Aは、[18F]AlF-NOTA-PEG-Tz-TCO-GK-2Rs15dの構造である;
図1Bは、[18F]FN-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-5F7の合成のための例示的な反応スキームである;
図2Aは、[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-5F7GGCの構造である;
図2Bは、BT474M1異種移植片を有する胸腺欠損マウスの対ラベルバイオディストリビューション(paired-label biodistribution)から得られた、腫瘍、腎臓、血液および筋肉における、iso-[125I]SGMIB-5F7(ブラック)、および、[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-5F7GGC(ブラック/ホワイト ストライプ)の取り込みのプロットである;
図2Cは、BT474M1異種移植片を有するマウスにおいて、[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-5F7GGCの投与後に得られる、一連の最大強度投影(maximum intensity projection:MIP)の像である;
図3は、[18F]RL-III-2Rs15dの合成のための例示的な反応スキームである;
図4Aは、BT474M1BrM3-Fluc頭蓋内異種移植片を有するマウスにおいて、[18F]RL-III-5F7の投与2時間後に得られる、MicroPET/CTの像である;
図4Bは、H&Eによって染色された、図2Aのマウスの脳の断面である;
図4Cは、マウスの隣接する部分のオートラジオグラフィーの像である(図4Bおよび図4Cの像のサイズは、同じ縮尺ではない);
図5Aは、SGMIBの構造である;
図5Bは、[18F]TFPFGMBの合成のための例示的な反応スキームである。
【0017】
〔詳細な説明〕
本発明は、一般的に、生体分子を18Fラベルするための特定の方法、並びに、それによって得られる特定の前駆体および製品を提供する。開示された方法は、主に、特定の18Fラベルされた残留化剤、および、特定の例示的なラベルされた生体分子の調製に焦点を当てている。しかしながら、このような方法は、状況によって、広範な適用性を見出し得る。このような方法は、例えば、Zalutskyらの米国特許第9,839,704号、または、Zalutskyらの国際特許出願公開第WO2018/178936号に開示されている、他のラベルされた生体分子の調製において、適用性を見出し得る。これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明はさらに、特定の18Fラベルされた残留化剤、特定の18Fラベルされた生体分子、それらを含む組成物、および、イメージングを目的としたこれらラベルされた生体分子および/または組成物の使用方法を提供する。
【0018】
本願を通して特定の略語が用いられ、当該略語は当該分野で一般的に認識されるように用いられる。便宜上、それらの定義は、以下の通りである。
【0019】
2Rs15d:「Vaneycken I, et al (2011) Preclinical screening of anti-HER2 nanobodies for molecular imaging of breast cancer. FASEB J 25:2433-2446」などに記載されているナノボディ。当該文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる;
5F7:「M. Pruszynski et al., Nuclear Medicine and Biology 40 (2013) 52-59」などに記載されているナノボディ;
5F7-GCC:「M. Pruszynski et al. / Nuclear Medicine and Biology 40 (2013) 52-59」などに記載されている、カルボキシル末端にシステインを含む5F7ナノボディ変異体;
Boc: tert-ブチルオキシカルボニル保護基;
DMA:ジメチルアセトアミド;
FN:フルオロニコチニル;
GK:グリシンリジン;
HER-2:ヒト上皮増殖因子受容体2タンパク質;
HPLC:高速液体クロマトグラフィー;
IEDDAR:逆電子要請型ディールス・アルダー付加環化反応;
iso-[131I]SGMIB:N-スクシンイミジル 3-グアニジノメチル-5-[131I]ヨード安息香酸;
Mal:マレイミド;
PEG:ポリ(エチレングリコール);
RBBE:腎臓刷子縁酵素;
RCY:放射化学的収率;
sdAbs:シングルドメイン抗体フラグメント;
I]SGMIB:N-スクシンイミジル 4-グアニジノメチル-3-[I]ヨード安息香酸;
TCO:trans-シクロオクテン含有部分;
TFA:トリフルオロ酢酸;
TFP:テトラフルオロフェニル;
Tz:テトラジン含有部分(テトラジン、3-メチル-6-フェニル-1,2,4,5-テトラジン、および、さらなる誘導体を含むが、これらに限定されない);
VHH:重鎖のみの抗体の可変ドメイン(aka sdAb、ナノボディ)。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、18Fラベルの方法が提供される。当該方法は、sdAbおよび他のタイプの小タンパク質の構築物をラベルする状況において、特定の適用を見出し得る。この方法は、逆電子要請型ディールス・アルダー付加環化反応(IEDDAR)を含む。当該方法は、a)18F含有試薬を準備する工程と、b)IEDDARを用いて、上記18F含有試薬を官能化された生体分子(例えば、sdAb、または、他の小タンパク質の構築物)に結合させて、18Fラベルされた生体分子を準備する工程と、を含む。
【0021】
開示された方法は、部位非特異的なラベル、または、部位特異的なラベルを提供することができる。有利には、当該方法は、高い産物収率、並びに、親和性および/または免疫反応性の保持が可能である。一般的に、18F含有試薬は、18F部分に加えて、IEDDARに適した部分(すなわち、ジエン官能基、または、ジエノフィル官能基のいずれか)を含む。同様に、官能化された生体分子は、生体分子に加えて、IEDDARに適した相補的な部分を含む。このとき、18F部分がジエンを含む場合、官能化された生体分子は、ジエノフィルを含む。18部分がジエノフィルを含む場合、官能化された生体分子は、ジエンを含む。このような試薬の選択および/または調製は、いくつかの実施形態において、生体分子の部位特異的または部位非特異的なラベルのいずれかを提供し得る。
【0022】
一実施形態では、18F含有試薬(当該18F含有試薬は、準備され、次いで、官能化された生体分子に結合される)は、ラベル(18F)に加えて、上記工程b)のIEDDARに適したジエンを含む。1つの例示的なジエンは、テトラジン含有部分である。当該テトラジン含有部分は、有利には、18F含有試薬内に含めることができる。有利には、いくつかのそのような実施形態における18F含有試薬は、フルオロニコチニル部分を含み、当該フルオロニコチニル部分は、18Fを含む。様々な他の官能基が、当該他の官能基が所望のIEDDARを負に妨害しない限りにおいて、18F含有試薬内に存在することができる。例えば、18F含有試薬は、様々な長さのリンカー(例えば、PEG)を更に含んでもよい。開示された方法に有効に利用され得る、1つの具体的な例示的な18F含有(ジエン)試薬は、6-[18F]フルオロニコチニル-PEG-メチルエトラジンである。
【0023】
18F含有試薬が工程b)のIEDDARに適したジエンを含む場合、本方法に使用される官能化された生体分子は、ジエノフィルを含む。本明細書に開示されるIEDDARに好適な1つの例示的なジエノフィルは、オクテン部分(例えば、TCO官能基内)である。当該「官能化された生体分子(functionalized biomolecule)」の生体分子は、一般的に、様々なsdAbまたは他の小タンパク質の構築物を含み得る。1つの特定の実施形態において、生体分子は、抗HER2 sdAbを含む。当該方法が効果的に実施された1つの例示的な生体分子は、5F7であるが、当該方法は、これに限定されない。いくつかの実施形態において、官能化された生体分子は、1つ以上の化学部分(例えば、1つ以上のリンカー)によってさらに修飾され得る。特定の実施形態において、リンカーは、腎臓刷子縁酵素(RBBE)切断リンカーを含む。この場合も、いくつかの実施形態において、種々な他の官能基が、当該他の官能基が所望のIEDDARを負に妨害しない限りにおいて、官能化された生体分子内に存在することができる。開示された方法に有用な1つの特定の実施形態において、官能化された生体分子は、TCO-GK-PEG-NHSリンカーを含む。官能化された生体分子(そのジエノフィルを介する)と18F含有試薬(そのジエンを介する)との間の反応は、IEDDARを介して、所望のラベルされた生体分子を提供することができる。
【0024】
他の実施形態では、官能化された生体分子および18F含有試薬に付随する(associated with)部分が交換される。例えば、ジエンは、(上記のような18F含有試薬に付随するのではなく、むしろ)官能化された生体分子に付随し、ジエノフィルは、(上記のような官能化された生体分子に付随するのではなく、むしろ)18F含有試薬に付随する。有利には、いくつかの実施形態では、18F含有試薬はフルオロニコチニル部分を含み、当該フルオロニコチニル部分は18Fを含む。このような実施形態では、18F含有試薬(当該18F含有試薬は、準備され、次いで、官能化された生体分子に結合される)は、ラベル(18F)に加えて、上記工程b)のIEDDARに適したジエノフィルを含む。本明細書に開示されるIEDDARに好適な1つの例示的なジエノフィルは、オクテン部分(例えば、TCO官能基内)である。様々な他の官能基が、当該他の官能基が所望のIEDDARを負に妨害しない限りにおいて、18F含有試薬内に存在することができる。例えば、18F含有試薬は、様々な長さのリンカーを更に含んでもよい。当該リンカーは、PEG、および/または、腎臓刷子縁酵素(RBBE)切断リンカーを含む。開示された方法に有効に利用され得る、1つの具体的な例示的な18F含有(ジエノフィル)試薬は、6-[18F]フルオロニコチニル-PEG-GK-TCOである。
【0025】
18F含有試薬が工程b)のIEDDARに適したジエノフィルを含む場合、本方法に使用される官能化された生体分子は、ジエンを含む。1つの例示的なジエンは、テトラジン含有部分である。当該テトラジン含有部分は、有利には、官能化された生体分子内に含まれ得る。当該「官能化された生体分子」の生体分子は、一般的に、様々なsdAbまたは他の小タンパク質の構築物を含み得る。1つの特定の実施形態において、生体分子は、抗HER2 sdAbを含む。当該方法が効果的に実施された1つの例示的な生体分子は、5F7-GGCであるが、当該方法は、これに限定されない。種々な他の官能基が、当該他の官能基が所望のIEDDARを負に妨害しない限りにおいて、官能化された生体分子内に存在することができる。例えば、官能化された生体分子は、様々な長さのリンカー(例えば、PEG)を更に含んでもよい。さらなる実施形態において、18F含有試薬は、RBBE切断リンカーを含む。開示された方法に効果的に利用され得る、1つの特定の例示的な官能化された生体分子(ジエン)試薬は、5F7-GGC-Mal-PEG-Tzである。官能化された生体分子(そのジエンを介する)と18F含有試薬(そのジエノフィルを介する)との間の反応は、IEDDARを介して、所望のラベルされた生体分子を提供することができる。
【0026】
一実施形態において、参照される方法は、18Fラベルされた生体分子(例えば、本明細書中に参照される上記方法の1つに従って調製される)を提供する。2つの例示的な18Fラベルされた生体分子を、以下の式Iおよび式IIに示す。
【0027】
【化1】
【0028】
【化2】
【0029】
別の実施形態では、クリック反応(例えば、銅に触媒されるクリック反応)を含む、18Fラベルされた残留化剤および18Fラベルされた生体分子の調製方法が提供される。開示された反応は、a)アルキン部分を含むグアニジン含有化合物を準備する工程と、b)フルオロアルキルアジドを含み、かつ、PEGリンカーを含む化合物を準備する工程と、c)a)工程の化合物とb)工程の化合物とを、クリックケミストリーにて反応させる工程であって、任意で放射性ラベルされた生体分子を形成する工程と、d)得られた化合物を生体分子と反応させる工程と、を含む。クリック反応が銅によって触媒される場合、使用される銅触媒は、様々であってよく、反応を触媒するのに適した任意の銅含有化合物または塩であり得る。特定の一実施形態において、銅触媒は、硫酸銅である。有利には、いくつかの実施形態において、クリック反応に基づく方法は、グアニジン含有化合物上にアジド部分が存在する同様の反応について以前に報告された放射化学的収率よりも、高い放射化学的収率を提供することができる。なお、上記グアニジン含有化合物は、アルキン(6-[18F]フルオロヘキシン)と反応する。「Glaser, Bioconjugate Chem. 2007, 18, 989-993」を参照されたい。当該文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
フルオロアルキルアジドを含み、かつ、PEGリンカーを含む化合物は、様々であり得る。一実施形態において、当該化合物は、1-アジド-2-(2-(2-(2-[18F]フルオロエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタンである。同様に、当該化合物が反応する化合物(すなわち、グアニジン含有化合物)は、様々であり得る。そのような化合物の一例は、N-スクシンイミジル 3-((2,3-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジン)メチル)-5-エチニルベンゾエートである。
【0031】
上記の工程a)~c)を介して提供される18Fラベルされた残留化剤を、様々な生体分子と反応させて、18Fラベルされた生体分子を得ることができる。当該方法に使用される生体分子は、一般的に、種々のsdAbまたは他の小タンパク質の構築物(例えば、本明細書中で概説される生体分子のタイプ)を含むことができる。1つの特定の実施形態において、生体分子は、抗HER2 sdAbを含む。本方法が効果的に実施された2つの例示的な生体分子は、2Rs15dおよび5F7であるが、当該方法は、これらに限定されない。当該方法は、このような化合物の調製のための以前のクリックケミストリーの方法よりも単純な合成操作を提供し得、いくつかの実施形態では、より高い全体的な放射化学的収率を提供し得る。本発明はさらに、このような反応によって得られる、18Fラベルされた生体分子および中間体(18Fラベルされた残留化剤を含む)を提供する。1つの例示的な18Fラベルされた生体分子を、以下の式IIIに示す。
【0032】
【化3】
【0033】
18Fラベルされた残留化剤、および、18Fラベルされた生体分子の調製のためのさらなる一方法が本明細書中に提供され、当該方法では、フルオロ脱ホウ素化(fluorodeborylation)を用いる。特定の実施形態では、該方法は、TFPエステルおよびグアニジン部分を含むボロネート前駆体を準備する工程を含み、ここで、グアニジン部分上の窒素原子は保護される(例えば、Boc基または他の適切な保護基であって、所望の反応に負に影響しない条件下で導入/除去され得る保護基を用いて)。ボロネート前駆体は、適切な18F含有試薬(例えば、[18F]テトラエチルアンモニウムフルオリド、[18F]TEAF)を用いた処理による、18Fフルオロ脱ホウ素化に供される。当該フルオロ脱ホウ素化は、有利には、銅試薬によって触媒される。当該銅試薬には、Cu(Py)(OTf)が含まれるが、これに限定されない。次いで、得られた化合物を処理して、グアニジン部分上の窒素原子を脱保護することができる(例えば、保護基がBocである場合、これらの保護基は、TFAによる処理を介して除去され得る)。
【0034】
次いで、当該脱保護された18Fラベルされた残留化剤は、生体分子に結合させることができる。当該生体分子は、本明細書に記載される生体分子のいずれかを含み得る。1つの特定の非限定的な実施形態において、生体分子は、ナノボディ(例えば、5F7、または、5F7の変異体)である。本発明はさらに、このような反応によって得られる、18Fラベルされた生体分子および中間体を提供する。1つの例示的なこのような18Fラベルされた生体分子は、以下の式IVに示される。
【0035】
【化4】
【0036】
本発明はさらに、本明細書に開示される放射性ラベルされた生体分子(例えば、上記に記載/示した18Fラベルされた生体分子、例えば、式I、II、III、および/またはIVのものを含む)を、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または、担体と組み合わせて含む、組成物を提供する。開示のさらなる態様において、癌を診断する方法が提供される。当該方法は、それを必要とする個々に対して、本明細書に開示される放射性ラベルされた生体分子の有効量、および/または、本明細書に開示される医薬組成物の有効量を投与する工程を含む。
【0037】
以下の実施例は、例示として提供されるものであって、限定として提供されるものではない。
【0038】
〔実施例1:腎臓刷子縁酵素切断リンカーを含む逆電子要請型ディールス・アルダー反応(IEDDAR)を介した、6-フルオロニコチニル部分による抗HER2 sdAbのフッ素-18ラベル〕
(目的)
シングルドメイン抗体フラグメント(sdAb)は、現在、低分子量であるが故に短寿命である陽電子エミッター(例えば、18F)を用いてラベルするための、有益なプラットホームとして考えられている。低分子量の陽電子エミッターは、腫瘍の取り込みが迅速であり、かつ、全身におけるクリアランスが速い。しかしながら、ラベルされたsdAbに由来する腎臓における高レベルの活性は、重大な問題である。以前、我々は、[18F]AlF-NOTA部分を用い、補欠分子団(prosthetic group)を有する腎臓刷子縁酵素(BBE)切断リンカーを含むテトラジン(Tz)/trans-シクロオクテン(TCO)[4+2]逆電子要請型ディールス・アルダー付加環化反応(IEDDAR)を介して、18FにてHER2特異的sdAbである2Rs15dをラベルした([18F]AlF-NOTA-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-2Rs15d;図1A、および、「Zhou et al., Bioconjugate Chem. 2018, 29, 12, 4090-4103」を参照されたい。当該文献は、その全体が本明細書中に参考として援用される。)。非BBE切断リンカーを含む対照における腎臓の活性レベルと比較して、[18F]AlF-NOTA-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-2Rs15dでは、有意に低い(>15倍)腎臓の活性レベルであったが、腫瘍の取り込みは適度(moderate)であった。このことは、[18F]AlF-NOTAがあまり残留していないことを示唆している。フルオロニコチニル部分がより高い腫瘍取り込みをもたらすか否かを調べるために、[18F]AlF-NOTAを6-[18F]フルオロニコチニル(FN)基に置き換えることによって、上記の手法を改変した。
【0039】
(方法)
別のHER2特異的sdAbである5F7をTCO-GK-PEG-NHSによって誘導体化し、次いで、図1Bに示すように、IEDARによって6-[18F]フルオロニコチニル-PEG-メチルテトラジン([18F]2)と結合させた。[18F]2は、N,N,N-トリメチル-5-((2-(2-(2-(2-(4-(6-メチル-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェノキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)10uanidin-2-アミニウムトリフレート(1)(図1B参照))から合成した。比較のために、5F7を、有効な残留化剤であるN-スクシンイミジル 3-グアニジノメチル-5-[125I]ヨード安息香酸を用いてラベルした(iso-[125I]SGMIB;「Choi et al., Nucl. Med. Biol. 2014, 41, 10, 802-812」を参照のこと。当該文献は、その全体が参考として本明細書に援用される)。放射化学的純度(RCP)は、SDS-PAGE、および、Lindmo法による免疫反応性フラクション(immunoreactive fraction:IRF)によって測定した。HER2結合親和性および対ラベル(18F/125I)細胞取り込みアッセイを、HER2発現SKOV-3ヒト卵巣癌細胞に対して行った。SKOV-3異種移植片を有する胸腺欠損マウスにおいて、対ラベルバイオディストリビューションを行った。
【0040】
(結果)
中間体[18F]2を、44.8±3.5%の収率で、前駆物質1から合成した。[18F]FN-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-5F7は、IEDDARに対して76.0% RCYで得られ、そのRCPは、SDS-PAGEにより>99%であった。KおよびIRFは、各々、5.4±0.7nM、および、77.5%であった。in vitroにおけるSKOV-3セル内への[18F]FN-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-5F7の取り込みは、1、2、4hの各々において、入力活性の2.4±0.2%、2.3±0.3%、2.6±0.1%であった。共インキュベートしたiso-[125I]SGMIB-5F7について、有意に高い値が得られた(25.9±1.5%、32.6±2.3%、40.8±0.8%)。in vitroでの結果とは異なり、[18F]FN-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-5F7のSKOV3異種移植片取り込み(1時間および3時間において、2.6±2.0%ID/g、および、3.7±1.4%ID/g)は、共注入(co-injected)されたiso-[125I]SGMIB-5F7(各々、2.0±2.2%ID/g、および、6.5±2.6%ID/g、P>0.05)と有意差はなかった。18Fは腎臓において7倍低いので、[18F]FN-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-5F7における腎臓に対する腫瘍の比(tumor-to-kidney ratios)(T:K)は、1時間および3時間において、各々、0.6±0.2、および、4.6±2.0であった。当該比は、共注入されたiso-[125I]SGMIB-5F7における比(0.1±0.1、および、1.3±1.2)よりも、有意に高かった(P<0.05)。sdAbsは異なっているものの、[18F]FN-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-5F7に関する当該試験にて得られたT:Kの値は、[18F]AlF-NOTA-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-2Rs15dに関して以前に報告された値(1時間および3時間において、各々、0.4±0.1、および、2.1±0.8;3時間においてP<0.05)よりも、大幅に高かった。
【0041】
(結論)
テトラジン部分は、一般的に、SNArによる標準的な18Fラベル条件下では不安定であると考えられるが、塩基の量を減少させることによって、47%までのRCYが得られた。TCO部分および刷子縁酵素切断リンカーによって修飾されたsdAb 5F7を、IEDDARを介して18Fにてラベルした。当該IEDDARは、優れた収率にて[18F]2を使用し、当該[18F]2は、HER2に対する親和性および免疫反応性を保持していた。当該18Fラベル法は、sdAbおよび他の種類の小タンパク質の構築物への適用のための、さらなる研究を保証する。
【0042】
〔実施例2:腎臓刷子縁酵素切断リンカーを含む逆電子要請型ディールス・アルダー反応(IEDDAR)を介した、6-フルオロニコチニル部分による抗HER2 sdAbのフッ素-18ラベル〕
(目的)
HER2特異的sdAbである5F7を、以下のように誘導体化した。最初に、5F7-GGCをマレイミド-PEG-Tzを用いたマイケル付加反応に供し、SE-HPLCによって、5F7-GGC-Mal-PEG4-Tzである1:1結合体を単離した。IEDDARによる18Fラベルを行うために、18FラベルされたTCO含有試薬を合成した([18F]FN-PEG-GK-TCO)。なお、当該18FラベルされたTCO含有試薬は、腎臓刷子縁酵素(RBBE)切断リンカー、PEGリンカー、および、6-[18F]フルロニコチニル部分も含むものであった。Fの代わりにトリメチルアンモニウムトリフレートを有する、類似の試薬(前駆体)も合成した。18Fラベルされた物質である[18F]FN-PEG-GK-TCOが、上記前駆体から、47.8±9.4%(n=10)の放射化学的収率(RCY)にて得られた。当該物質を、27.3±8.2%(n=5)の収率にて、5F7-GGC-Mal-PEG-Tzに結合させた。[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-5F7GGC(図2A)の合成の全減衰補正収率(overall decay-corrected yield)は、7-8%であり、ラベルされたナノボディは、HER2との親和性を保持していた。[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-5F7GGC、および、iso-[125I]SGMIB-5F7の対ラベルバイオディストリビューションから得られた、腫瘍、腎臓、血および筋肉における取り込みの値を、図2Bに示す。18F対125Iについて、実質的に高い、腫瘍/腎臓比、および、腫瘍/血液比が得られた。BT474M1異種移植片を有するマウスにおけるMIP像を、図2Cに示す。仮説のとおり、肝胆道系器官への取り込みは非常に少なく、3時間において(at 3 h p.i.)、実質的に腫瘍および膀胱のみに、取り込みによる非常に高いコントラスト像が認められた。
【0043】
〔実施例3:N-スクシンイミジル 3-(1-(2-(2-(2-(2-[18F]フルオロエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)-5-(グアニジノメチル)安息香酸、別の残留化補綴基を用いた、シングルドメイン抗体フラグメントのフッ素-18ラベル〕
(目的)
シングルドメイン抗体フラグメント(sdAb)は、免疫PETのための魅力的なベクターである。以前に、本発明者らは、残留化補綴剤(residualizing prosthetic agent)であるN-スクシンイミジル 3-((4-(4-[18F]フルオロブチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)メチル)-5-(グアニジノメチル)安息香酸([18F]SFBTMGMB、または、[18F]RL-I;「Vaidyanathan et al., J. Nucl. Med., 2018, 115, 171306」および「Zhou et al., Mol. Imag. Biol., 2018, 19, 867-877」、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を用いて、18Fによる抗HER2 sdAbのラベルを行った。上記補綴剤は、6-[18F]フルオロヘキシン(FH)を用いた、アジド担持分子およびグアニジン担持分子の間の銅触媒されるクリック反応により合成した。しかしながら、FHの1つの欠点は、その極端な不安定さであり、合成操作を困難にする。この問題を克服するために、本発明者らは、クリックパートナーを逆転させることによって、類似の薬剤を開発した。グアニジン担持分子は、アルキン部分を含み、当該アルキン部分は、PEGリンカーを含むフルオロアルキルアジドによってクリック(clicked)された。
【0044】
(方法)
N-スクシンイミジル 3-((1,2-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)メチル)-5-エチニル安息香酸(6;図3)を、2-(トリメチルシリル)エチル 3-(ヒドロキシメチル)-5-ヨード安息香酸(3;「Choi et al., Nucl. Med. Biol. 2014, 41, 10, 802-812」も参照されたい。当該文献は、その全体が本明細書中に参考として援用される。)から、3段階にて合成した。N-スクシンイミジル 3-((1,2-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)メチル)-5-エチニル安息香酸を、1-アジド-2-(2-(2-(2-[18F]フルオロエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタン(「Michel et al., J. Med. Chem. 2011, 54, 4, 939-948」を参照されたい。当該文献は、その全体が本明細書中に参考として援用される。)とクリック反応させた。得られた中間体7からBoc基を除去して、N-スクシンイミジル 3-(1-(2-(2-(2-(2-[18F]フルオロエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)-5-(グアニジノメチル)安息香酸(8;[18F]SFETGMB;[18F]RL-III;図3を参照)を得た。抗HER2 sdAb 2Rs15dを、[18F]RL-IIIおよびN-スクシンイミジル 4-グアニジノメチル-3-[125I]ヨード安息香酸([125I]SGMIB;「Vaidyanathan and Zalutsky, Nat. Protocols, 2007, 2, 282-286」を参照されたい。当該文献は、その全体が本明細書中に参考として援用される。)と結合させることによって、18Fおよび125Iの各々にてラベルした。[18F]RL-III-2Rs15dの純度を、TCA沈殿、SDS-PAGE、および、サイズ排除HPLCによって評価した。[18F]RL-III-2Rs15dのHER2結合親和性を、HER2発現BT474M1ヒト乳癌細胞を用いた飽和結合アッセイによって決定し、[18F]RL-III-2Rs15dの免疫反応性フラクション(IRF)を、Lindmo法によって評価した。[18F]RL-III-2Rs15dおよび[125I]SGMIB-2Rs15dの対ラベルの内在化を、in vitroにて、BT474M1細胞に対して行った。[18F]RL-III-2Rs15d、および、[125I]SGMIB-2Rs15dのバイオディストリビューションを、皮下HER2発現SKOV3ヒト卵巣癌異種移植片を有する、胸腺欠損マウス内で比較した。
【0045】
(結果)
Boc-[18F]SFETGMBを、125分間にて、22.1±2.4%(n=5)の総放射化学的収率にて、合成した。[18F]RL-IIIを、37.5±13.5%の収率にて、2Rs15d(2mg/mL)に結合させた。[18F]RL-III-2Rs15dの放射化学的純度は、>96%であった。K、および、IRFは、各々、5.7±0.3nM、および、81.5±1.0%であった。BT474M1細胞内に取り込まれた[18F]RL-III-2Rs15dからの最初に結合した放射能活性(initially bound radioactivity)の割合は、1、2および4時間の各々にて、10.8±1.0%、10.6±0.4%、および、9.8±0.7%であった。[125I]SGMIB-2Rs15dの対応する値は、10.2±0.6%、10.0±0.4%、および、9.1±0.4%であった。[18F]RL-III-2Rs15dのSKOV3異種移植片内への取り込みは、1、2および3時間の各々にて、4.0±0.5%ID/g、4.2±1.4%ID/g、および、2.5±0.3%ID/gであった。[125I]SGMIB-2Rs15dにおけるこれらの値は、5.5±0.8%ID/g、6.4±3.1%ID/g、および、3.8±0.7%ID/gであった(2時間を除いて、P<0.05)。いくつかの正常組織内への取り込みは、[125I]SGMIB-2Rs15d(腎臓 2-4倍;肝臓 25-43倍;脾臓 14-19倍)と比較して、[18F]RL-III-2Rs15dは、かなり高かった。
【0046】
さらに、[18F]RL-IIIを用いて2つのナノボディ(5F7、および、2Rs15d)をラベルすることによって、この新しい残留化補綴剤RL-IIIを評価した。本発明者らは、さらに、頭蓋内腫瘍を有するマウスにおけるイメージングにおける、[18F]RL-III-5F7の可能性を評価した。図4に示すように、頭蓋内BT474M1腫瘍は、[18F]RL-III-5F7によって、明瞭に可視化された(図4A)。脳切片の組織学およびオートラジオグラフィーによって、腫瘍の存在および位置が確認された(図4BおよびC)。
【0047】
(結論)
補綴剤である[18F]RL-IIIを、[18F]RL-Iについて先に得られた放射化学的収率よりも約3倍高い放射化学的収率にて、合成した。[18F]RL-Iに関して得られた収率と同様の収率にて、[18F]RL-IIIを用いて、sdAb 2Rs15dをラベルした。これによって、[18F]RL-III-2Rs15dのRCYに関して、かなりの優位性が得られた。[18F]RL-III-2Rs15dのin vitroおよびin vivoでの腫瘍内への取り込みは、共に、共インキュベート/共注入された[125I]SGMIB-2Rs15dと同様であり、このことは、[18F]RL-IIIの残留化能を示している。[18F]RL-III-2Rs15dの正常組織内への取り込みは、異なるモデルにもかかわらず、先に[18F]RL-I-2Rs15dに見られた取り込みと、同様であった。これらの結果は、[18F]RL-IIIは[18F]RL-Iよりも優れた補綴剤であって、ラベルされたsdAbに由来する活性のいくつかの正常組織内への取り込みを減少させるための構造的な修飾を用いたさらなる研究を保証する、ことを示唆している。頭蓋内腫瘍に関連して、当該補綴剤を用いてラベルされたsdAbの使用は、[18F]RL-III-sdAbが良好な造影剤であることを示している。
【0048】
〔実施例4:テトラフルオロフェニル 3-[18F]フルオロ-5-グアニジノメチル安息香酸([18F]TFPFGMB)の調製〕
(目的)
本発明者らは、SGMIBと同様の18Fラベルされた残留化剤の調製に着手した(図5A)。特に、本発明者らは、iso-SGMIBに類似し、かつ、許容できるRCYにてN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルの代わりにテトラフルオロフェニル(TFP)エステルを含む(([18F]TFPFGMB;図5B)、残留化剤を目的物とした。
【0049】
(方法)
このために、グアニジン基中の全ての窒素がBoc基によって保護されている、TFPエステルを含有するボロネート前駆体を合成し(9、図5Bに示す)、当該ボロネート前駆体を18Fフルオロ脱ホウ素化に供した。18Fフルオロ脱ホウ素化では、5~10分間、~100℃の温度にて、DMA中の[18F]テトラエチルアンモニウムフルオリド([18F]TEAF)、Cu(Py)(OTf)にて処理を行った。生成物(図5Bの中間体2)を、18.0±7.0%(n=4)RCYにて、順相HPLCによって単離した。TFAにて処理することによって、得られたラベルされた中間体10脱保護した。ホウ酸緩衝液(pH8.5)中の5F7のナノボディ変異体(「5F7変異体」)の溶液を37℃にて20分間「3」と共にインキュベートすることによって、4.7±0.2%の収率にて、(図5Bに示すように)5F7変異体を化合物11に結合させた(n=2)。
【0050】
(結果)
単一の実験にて、HER2発現BT474M1細胞を37℃にて[18F]TFPFGMB-5F7変異体とインキュベートした1、2および4時間後に、各々、入力量の30.2±1.7%、40.1±1.5%、および、45.5±1.6%が取り込まれることが示された。2時間にて測定された非特異的結合は、6.9±0.3%であった。これら3つの時点で細胞内に捕捉された活性は、各々、13.8±0.3%、17.1±1.0%、および、24.0±1.4%であった。
【0051】
明細書中に言及された全ての刊行物、特許、および、特許出願は、本発明に関係する当業者の水準を示している。全ての刊行物、特許、および、特許出願は、個々の刊行物、特許、および、特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個々に示されており、同じ程度にまで参照により本明細書に組み込まれる。以上、わかりやすくするために、例示および実施例として、ある程度詳細に説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本実施形態の範囲内で、いくらかの変更および修正を実施できることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1A】[18F]AlF-NOTA-PEG-Tz-TCO-GK-2Rs15dの構造である。
図1B】[18F]FN-PEG-Tz-TCO-GK-PEG-5F7の合成のための例示的な反応スキームである。
図2A】[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-5F7GGCの構造である。
図2B】BT474M1異種移植片を有する胸腺欠損マウスの対ラベルバイオディストリビューションから得られた、腫瘍、腎臓、血液および筋肉における、iso-[125I]SGMIB-5F7(ブラック)、および、[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-5F7GGC(ブラック/ホワイト ストライプ)の取り込みのプロットである。
図2C】BT474M1異種移植片を有するマウスにおいて、[18F]FN-PEG-GK-TCO-Tz-PEG-Mal-5F7GGCの投与後に得られる、一連の最大強度投影(maximum intensity projection:MIP)の像である。
図3】[18F]RL-III-2Rs15dの合成のための例示的な反応スキームである。
図4A】BT474M1BrM3-Fluc頭蓋内異種移植片を有するマウスにおいて、[18F]RL-III-5F7の投与2時間後に得られる、MicroPET/CTの像である。
図4B】H&Eによって染色された、図2Aのマウスの脳の断面である。
図4C】マウスの隣接する部分のオートラジオグラフィーの像である(図4Bおよび図4Cの像のサイズは、同じ縮尺ではない)。
図5A】SGMIBの構造である。
図5B】[18F]TFPFGMBの合成のための例示的な反応スキームである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B-4C】
図5A
図5B
【国際調査報告】