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特表2022-532947C-Cモチーフケモカインリガンド14の測定に基づく腎損傷の評価および処置のための方法
<図1A>
  • 特表-C-Cモチーフケモカインリガンド14の測定に基づく腎損傷の評価および処置のための方法 図1A
  • 特表-C-Cモチーフケモカインリガンド14の測定に基づく腎損傷の評価および処置のための方法 図1B
  • 特表-C-Cモチーフケモカインリガンド14の測定に基づく腎損傷の評価および処置のための方法 図1C
  • 特表-C-Cモチーフケモカインリガンド14の測定に基づく腎損傷の評価および処置のための方法 図1D
  • 特表-C-Cモチーフケモカインリガンド14の測定に基づく腎損傷の評価および処置のための方法 図2A
  • 特表-C-Cモチーフケモカインリガンド14の測定に基づく腎損傷の評価および処置のための方法 図2B
  • 特表-C-Cモチーフケモカインリガンド14の測定に基づく腎損傷の評価および処置のための方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(54)【発明の名称】C-Cモチーフケモカインリガンド14の測定に基づく腎損傷の評価および処置のための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20220712BHJP
   G01N 33/70 20060101ALI20220712BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G01N33/53 P
G01N33/70
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569931
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 US2020034400
(87)【国際公開番号】W WO2020243011
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/852,961
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520233962
【氏名又は名称】アスチュート メディカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カンプ,ジェームス パトリック
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マクファーソン,ポール
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CB03
2G045DA36
2G045DA42
2G045FB03
2G045JA01
2G045JA03
(57)【要約】
本発明は、腎損傷を罹患しているかまたは有する疑いのある対象のモニタリング、診断、予後判定、および処置レジメンの決定のための方法および組成物に関する。特に、本明細書において、遷延性急性腎損傷の尤度を予測するためのクレアチニン、尿量、および/またはシスタチンCと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14を検出するための方法、組成物、およびキット、ならびに対象の割り当てられた尤度に基づき上記対象を適切に処置する方法が、開示される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における腎損傷、腎機能の低下、または急性腎損傷(AKI)の発症の有無を診断する方法であって、
a.前記対象から得た第1の体液サンプルにおけるC-Cモチーフケモカイン14を検出するように構成された分析物結合アッセイを行うステップと、
b.1つ以上の腎損傷マーカーの測定値を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の腎損傷マーカーが、前記対象から得られた第1または第2の体液サンプルにおけるクレアチニンの濃度、前記対象から得られた第1または第2の体液サンプルにおけるシスタチンCの濃度、計算された糸球体濾過率、および尿量からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象が遷延性急性腎損傷を有する尤度を割り当てるステップを含む、対象のリスク層別化のための方法であって、
a.前記対象から得た第1の体液サンプルにおけるC-Cモチーフケモカイン14を検出するように構成された分析物結合アッセイを行うステップと、
b.1つ以上の腎損傷マーカーの測定値を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項4】
前記1つ以上の腎損傷マーカーが、前記対象から得た第1または第2の体液サンプルにおけるクレアチニンレベル、前記対象から得た第1または第2の体液サンプルにおけるシスタチンCレベル、計算された糸球体濾過率、および尿量からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
急性腎損傷の将来の遷延に関して対象の腎損傷をモニタリングする方法であって、
a.前記対象から得た第1の体液サンプルにおけるC-Cモチーフケモカイン14を検出するように構成された分析物結合アッセイを行うステップと、
b.1つ以上の腎損傷マーカーの測定値を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項6】
前記1つ以上の腎損傷マーカーが、前記対象から得た第1または第2の体液サンプルにおけるクレアチニンレベル、前記対象から得た第1または第2の体液サンプルにおけるシスタチンCレベル、計算された糸球体濾過率、および尿量からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルを得てから7日以内に尿量の体積、尿流速、血中クレアチニンレベル、または尿中クレアチニンレベルを測定するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
糸球体濾過率を計算するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アッセイ結果および1つ以上の腎損傷マーカーの測定値を単一の値に組み合わせて複合的なアッセイ結果を提供するステップをさらに含む、請求項1、2、7、または8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記診断が、腎損傷、腎機能の低下、または急性腎損傷(AKI)の発症の有無を含む、任意選択で複合的なアッセイ結果を使用して、前記アッセイ結果を前記測定値と共に前記対象の腎状態の診断と相関させるステップをさらに含む、請求項1、2、または7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前期相関させるステップが、前記対象を、腎損傷、腎機能の低下、または急性腎損傷(AKI)に関する既知の素因を有する個体の既定の部分集団に割り当てるステップを含み、任意選択で前記割り当てが、複合的なアッセイ結果を集団試験で選択した閾値と比較することによりなされ、前記閾値が、前記閾値以下の第2の部分集団と比較して、腎損傷、腎機能の低下、または急性腎損傷(AKI)を有する素因が増大している前記閾値を上回る第1の部分集団に前記集団を分ける、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が割り当てられた既定の個体の部分集団に基づき前記対象を処置するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処置が、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象を処置することが、前記第1の部分集団に割り当てられた対象を処置することを含み、前記処置が、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上を含み、任意選択で前記腎代替療法が、持続的腎代替療法、間欠的血液透析、腹膜透析、または腎移植を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記アッセイ結果および前記1つ以上の腎損傷マーカーの測定値を単一の値に組み合わせて複合的なアッセイ結果を提供するステップをさらに含む、請求項3~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
任意選択で複合的なアッセイ結果を使用して、前記測定値と共に前記アッセイ結果を、遷延性急性腎損傷を有する対象の尤度と相関させるステップをさらに含む、請求項3~8または15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記相関させるステップが、遷延性急性腎損傷(AKI)の既知の素因を有する既定の個体の部分集団に前記対象を割り当てるステップを含み、前記割り当てが、複合的なアッセイ結果を集団試験で選択された閾値と比較することによりなされ、前記閾値が、前記閾値以下の第2の部分集団と比較して、遷延性急性腎損傷(AKI)を有する素因が増大している前記閾値を上回る第1の部分集団に前記集団を分ける、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が割り当てられた既定の個体の部分集団に基づき前記対象を処置するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記処置が、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象を処置することが、前記第1の部分集団に割り当てられた対象を処置することを含み、前記処置が、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上を含み、任意選択で、腎代替療法が、持続的腎代替療法、間欠的血液透析、腹膜透析、または腎移植を含む、請求項18に記載の方法、
【請求項21】
任意選択で複合的なアッセイ結果を使用して、前記測定値と共に前記アッセイ結果を、前記対象の腎状態の変化の発生の有無と相関させるステップをさらに含む、請求項3~8または15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記相関させるステップが、遷延性急性腎損傷(AKI)の既知の素因を有する所定の個体の部分集団に前記対象を割り当てるステップを含み、任意選択で前記割り当てが、複合的なアッセイ結果を集団試験で選択された閾値と比較することによりなされ、前記閾値が、前記閾値以下の第2の部分集団と比較して、遷延性急性腎損傷(AKI)を有する素因が増大している前記閾値を上回る第1の部分集団に前記集団を分ける、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が割り当てられた既定の個体の部分集団に基づき前記対象を処置するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記処置が、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象を処置することが、前記第1の部分集団に割り当てられた対象を処置することを含み、前記処置が、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上を含み、任意選択で、腎代替療法が、持続的腎代替療法、間欠的血液透析、腹膜透析、または腎移植を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、前記第1および第2の体液サンプルを得る際にRIFLEステージIもしくはFまたはKDIGOステージ2もしくは3を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記結合試薬が、抗体である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の体液サンプルが、尿サンプルである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の体液サンプルが、血液サンプルである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の体液サンプルおよび前記第2の体液サンプルが、同じサンプルである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の体液サンプルおよび前記第2の体液サンプルが、異なるサンプルである、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
複合的なアッセイ結果が、ロジスティック回帰を使用して得られた関数を介して生成される、請求項9~14または26~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
複合的なアッセイ結果が、線形判別分析を使用して得た関数を介して生成される、請求項9~14または26~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記複合的なアッセイ結果が、CCL14、シスタチンC、クレアチニン、尿量、CCL14xシスタチンC、CCL14xシスタチンCxクレアチニン、CCL14xシスタチンC/尿量、CCL14xクレアチニン、CCL14xクレアチニン/尿量、およびCCL14/尿量からなる群から選択される2つ以上の独立変数を含むロジスティック回帰モデルまたは線形判別分析から導出される、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記複合的なアッセイ結果が、CCL14xシスタチンC、CCL14xシスタチンCxクレアチニン、CCL14xシスタチンC/尿量、CCL14xクレアチニン、CCL14xクレアチニン/尿量、CCL14/尿量、およびCCL14xシスタチンCxクレアチニン/尿量からなる群から選択される、請求項9~14または26~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記測定値と共に前記アッセイ結果を相関させるステップが、決定木分析またはランダムフォレスト分析の使用を含む、請求項10~14または26~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記測定値と共に前記アッセイ結果を相関させるステップが、数の実証分析の使用を含む、請求項10~14または26~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記複合的なアッセイ結果が、ロジスティック回帰を使用して得た関数を介して生成される、請求項15~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記複合的なアッセイ結果が、線形判別分析を使用して得た関数を介して生成される、請求項15~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記複合的なアッセイ結果が、CCL14、シスタチンC、クレアチニン、尿量、CCL14xシスタチンC、CCL14xシスタチンCxクレアチニン、CCL14xシスタチンC/尿量、CCL14xクレアチニン、CCL14xクレアチニン/尿量、およびCCL14/尿量からなる群から選択される2つ以上の独立変数を含むロジスティック回帰モデルまたは線形判別分析から導出される、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記単一の複合的な値が、CCL14xシスタチンC、CCL14xシスタチンCxクレアチニン、CCL14xシスタチンC/尿量、CCL14xクレアチニン、CCL14xクレアチニン/尿量、CCL14/尿量、およびCCL14xシスタチンCxクレアチニン/尿量からなる群から選択される、請求項15~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記測定値と共に前記アッセイ結果を相関させるステップが、決定木分析またはランダムフォレスト分析の使用を含む、請求項15~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記測定値と共に前記アッセイ結果を相関させるステップが、数の実証分析の使用を含む、請求項15~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、うっ血性心不全、子癇前症、子癇、真性糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、タンパク尿、腎不全、正常範囲を下回る糸球体濾過、硬変、正常範囲を上回る血清クレアチニン、敗血症、腎機能に対する損傷、腎機能の低下、および急性腎損傷のうちの1つ以上と診断されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記第1および第2の体液サンプルを、ショック、敗血症、出血、虚血性手術、腹腔内圧の増大、急性非代償性心不全、虚血、肺塞栓症、膵炎、熱傷、または過剰な利尿を含む、前記患者に急性腎不全を発症させやすくする急性の医学的イベントから7日以内に得た、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記第1および第2の体液サンプルを、ショック、敗血症、出血、虚血性手術、腹腔内圧の増大、急性非代償性心不全、虚血、肺塞栓症、膵炎、熱傷、または過剰な利尿を含む、前記患者に急性腎不全を発症させやすくする急性の医学的イベントから72時間以内に得た、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記第1および第2の体液サンプルを、ショック、敗血症、出血、虚血性手術、腹腔内圧の増大、急性非代償性心不全、虚血、肺塞栓症、膵炎、熱傷、または過剰な利尿を含む、前記患者に急性腎不全を発症させやすくする急性の医学的イベントから48時間以内に得た、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記第1および第2の体液サンプルを、ショック、敗血症、出血、虚血性手術、腹腔内圧の増大、急性非代償性心不全、虚血、肺塞栓症、膵炎、熱傷、または過剰な利尿を含む、前記患者に急性腎不全を発症させやすくする急性の医学的イベントから24時間以内に得た、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記第1および第2の体液サンプルを、ショック、敗血症、出血、虚血性手術、腹腔内圧の増大、急性非代償性心不全、虚血、肺塞栓症、膵炎、熱傷、または過剰な利尿を含む、前記患者に急性腎不全を発症させやすくする急性の医学的イベントから12時間以内に得た、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記第1および第2の体液サンプルを、NSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線不透過性造影剤、またはストレプトゾトシンへの曝露を含む、前記患者に急性腎不全を発症させやすくする急性の医学的イベントから7日以内に得た、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記第1および第2の体液サンプルを、NSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線不透過性造影剤、またはストレプトゾトシンへの曝露を含む、前記患者に急性腎不全を発症させやすくする急性の医学的イベントから72時間以内に得た、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記第1および第2の体液サンプルを、NSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線不透過性造影剤、またはストレプトゾトシンへの曝露を含む、前記患者に急性腎不全を発症させやすくする急性の医学的イベントから48時間以内に得た、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記第1および第2の体液サンプルを、NSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線不透過性造影剤、またはストレプトゾトシンへの曝露を含む、前記患者に急性腎不全を発症させやすくする急性の医学的イベントから24時間以内に得た、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記第1および第2の体液サンプルを、NSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線不透過性造影剤、またはストレプトゾトシンへの曝露を含む、前記患者に急性腎不全を発症させやすくする急性の医学的イベントから12時間以内に得た、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
C-Cモチーフケモカイン14を検出するように構成された分析物結合アッセイを、(i)前記対象から得た第1の体液サンプルの全てまたは一部を、C-Cモチーフケモカイン14の検出のためC-Cモチーフケモカイン14に特異的に結合する結合試薬と接触させ、(ii)C-Cモチーフケモカイン14の前記結合試薬に対する結合を表すアッセイ結果を生成するアッセイ機器に、前記第1の体液サンプルを導入することにより行う、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記対象が、前記第1および第2の体液サンプルを得る際にRIFLEステージRまたはKDIGOステージ1を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記対象が、前記第1および第2の体液サンプルを得る際にRIFLEステージIまたはKDIGOステージ2を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記対象が、前記第1および第2の体液サンプルを得る際にRIFLEステージFまたはKDIGOステージ3を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照の出願
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。2019年5月24日に出願の米国特許仮出願番号第62/852,961号の利益を主張する。
【0002】
配列リスト
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットに提出されている配列リストを含み、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれている。2020年5月21日に作成された上記ASCIIのコピーは、01962_PCT_Sequence_Listing_ST25.txtと命名されており、2,396バイトの大きさである。
【背景技術】
【0003】
腎臓は、身体からの水および溶質の排泄に寄与している。この機能として、酸-塩基のバランスの維持、電解質濃度の調節、血液量の制御、および血圧の調節が挙げられる。したがって、損傷および/または疾患を介した腎機能の喪失は、実質的な病的状態および死亡をもたらす。腎損傷の詳細な論述は、Harrison’s Principles of Internal Medicine, 17th Ed., McGraw Hill, New York, pages 1741-1830に提供されている。腎疾患および/または腎損傷は、急性または慢性であり得る。急性腎疾患および慢性腎疾患は、以下のように記載されている(Current Medical Diagnosis & Treatment 2008, 47th Ed, McGraw Hill, New York, pages 785-815から):「急性腎不全は、数時間~数日間の間での腎機能の悪化であり、窒素性廃棄物(尿素窒素など)およびクレアチニンの血中での滞留をもたらす。これら物質の保持は、高窒素血症と呼ばれる。慢性腎不全(慢性腎疾患)は、数カ月~数年の間での腎機能の異常な損失に起因する。」。
【0004】
急性腎不全(ARF、急性腎損傷またはAKIとしても知られている)は、糸球体濾過の突然の(通常約48時間~1週間以内に検出)低下である。この濾過能の喪失は、通常は腎臓により排出される窒素性廃棄物(尿素およびクレアチニン)および非窒素性廃棄物の保持、尿量の低下、またはその両方をもたらす。ARFは、入院の10%超、心肺バイパス手術の4~15%、および集中治療室の入室の最大2/3近くを悪化させ、ここでの生存は腎機能障害の重症度だけでなく期間にも関連することが報告されている(Hoste EA, Bagshaw SM, Bellomo R, Cely CM, Colman R, Cruz DN, et al. Intensive Care Med 2015;41(8):1411-23; Mehta S, Chauhan K, Patel A, Patel S, Pinotti R, Nadkarni GN, et al., BMC Nephrology. 2018;19(1):91)。ARFは、病的状態および死亡の両方の主要な一般的な原因である。ARFの症例の少なくとも半数が72時間以内に回復することが推定されている。72時間以内に回復するARFの症例は、特に重篤なARFの症例の場合、少なくとも72時間持続する症例と比較して著しく良好なアウトカムを有する傾向がある。少なくとも72時間持続する乏尿は、RRTの開始の基準として同定されている(Gaudry S, Hajage D, Schortgen F, Martin-Lefevre L, Pons B, Boulet E, et al. The New England Journal of Medicine. 2016;375(2):122-33)。近年のエビデンスは、AKI患者の2/3が3~7日以内に自身の腎障害を回復し、対して持続する患者は、翌年の間に生存率が劇的に低下している(Kellum JA, Sileanu FE, Bihorac A, Hoste EA, Chawla LS. Am J Respir Crit Care Med. 2017;195(6):784-91)。AKIの1週間以上の遷延は、急性腎疾患(AKD)と呼ばれ、個体が慢性腎疾患およびその結果を発症するリスクを増加させるという点で非常に重要である。慢性腎疾患(CKD)に対するこの関連は、過去数十年の間に確立されており、この推移に影響を与える試みで、AKD患者の管理に関して特定の推奨が提案されている(Chawla LS, Bellomo R, Bihorac A, Goldstein SL, Siew ED, Bagshaw SM, et al. Nat Rev Nephrol. 2017;13(4):241-57.; Chawla LS, Eggers PW, Star RA, Kimmel PL. The New England Journal of Medicine 2014;371(1):58-66.)。よって結果として、AKDのリスクがある個体の早期同定は、これらの提案された介入の適切な送達を可能にするだけでなく、AKIを減弱させるためのより新規の療法を標的化することができる個体を同定することも可能にし得る。
【0005】
AKIの遷延は、より長期間のアウトカムに関連するだけでなく、腎臓の回復および腎代替療法(RRT)をいつ開始するかの決定に関する医師の予測による臨床的な判断もまた非常に影響を受ける。これは現在、回復の尤度に関する臨床的な予測にほぼ完全に依存しており、この決定プロセスを支援するために商業的に利用可能な診断はない。よって、RRTのタイミングに関して重大な議論が行われており、一部の患者はRRTの早期開始から利益を得ることができることを示す試験もあれば、早期に腎機能を回復するため、このような処置を必要とし得ない一部の個体にRRTを行うことをす試験もある(Bagshaw SM, Lamontagne F, Joannidis M, Wald R. Critical care 2016;20(1):245; Forni LG, Joannidis M. Nat Rev Nephrol 2019;15(1):5-6.)。結果として、腎機能を回復する患者の早期かつ確実な同定は、処置の層別化を可能にし、体外療法の付随するリスクを回避し得る。
【0006】
これらの課題は、特に早期および前臨床のステージだけでなく、腎臓の回復および修復が起こり得る後期においても、AKIを検出および評価するための良好な方法の必要性を強調している。さらに、AKIを有するリスクのある患者を良好に同定する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
対象の腎機能を評価する方法および組成物が提供される。本明細書中記載されるように、C-Cモチーフケモカイン14(CCL14)の測定は、腎機能に対する損傷、腎機能の低下、急性腎不全(急性腎損傷とも呼ばれる)、および/または遷延性急性腎損傷を罹患しているかまたは罹患するリスクがある対象の診断、予後判定、リスク層別化、ステージ分類、モニタリング、カテゴリー化、ならびにさらなる診断および処置レジメンの決定のために使用され得る。
【0008】
様々な態様では、C-Cモチーフケモカイン14は、対象の腎状態を評価するために、個別に、または複数の腎損傷マーカーを含むパネルにおいて使用される。これらパネルは、シスタチンC、クレアチニン(たとえばまたは血漿中レベル)、および/または尿量のうちの1つ以上に加えて、C-Cモチーフケモカイン14を含み得る。一部の対象では、これら腎損傷マーカーのうちの1つ以上を、対象の腎状態を評価するため単一の複合的な値に組み合わせる。これらマーカーの測定を、たとえば乗算、除算、および/またはロジスティック回帰により組み合わせてもよい。これら方法は、対象から得られた尿などの体液サンプル中のC-Cモチーフケモカイン14を検出するように構成されたアッセイを行うことを含み得る。これら方法は、対象から得られた血漿などの体液サンプル中のシスタチンCを検出するように構成されたアッセイを行うことを含み得る。これらアッセイ方法は、クレアチニン(たとえば血清または血漿中レベル)を検出するように構成されたアッセイを行うことを含み得る。これらアッセイ方法は、尿量を測定する方法を行うことを含み得る。尿量は、体重により補正され得る。これらアッセイ結果、たとえばC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度と、シスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中レベル)、および/または尿量のうちの1つ以上の測定値との複合は、遷延性急性腎損傷の尤度に相関し得る。対象は、現在、急性腎損傷を経験していてもよい。「現在の急性腎損傷」は、本明細書中使用される場合、特段他の記載がない限り、RIFLEステージIまたはF、たとえばRIFLE F、またはKDIGOステージ2もしくは3、たとえば3にあると対象を分類する特徴を指し得る。
【0009】
これらアッセイ結果は、リスク層別化のため(すなわち、将来の腎機能に対する損傷のリスクがある対象、将来の腎機能の低下への進行のリスクがある対象、将来のARFへの進行のリスクがある対象、将来の腎機能の改善のリスクがある対象などを同定するため);既存の疾患の診断のため(すなわち、腎機能に対する損傷を受けたことのある対象、腎機能の低下へと進行した対象、ARFへと進行した対象などを同定するため);腎機能の悪化または改善に関してモニタリングするため;ならびに将来の医学的なアウトカム、たとえば腎機能の改善または悪化、死亡のリスクの減少または増加、対象が腎代替療法(すなわち血液透析、腹膜透析、血液濾過法、および/または腎移植)を必要とするリスクの減少または増加、対象が腎機能に対する損傷から回復するリスクの減少または増加、対象がARFから回復するリスクの減少または増加、対象が末期の腎疾患へと進行するリスクの減少または増加、対象が慢性腎不全へと進行するリスクの減少または増加、対象が移植された腎臓を拒絶するリスクの減少または増加などを予測するためなどに、使用され得る。
【0010】
本明細書において、対象の腎状態を評価する方法が開示される。これら方法は、対象から得た体液サンプルにおける本発明の腎損傷マーカーを検出するように構成されたアッセイ方法を行うことを含む。次に、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清もしくは血漿中)、および/または尿量のうちの1つ以上と組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、対象の腎状態に相関させる。この腎状態に対する相関は、アッセイ結果を、本明細書中記載されるように、対象のリスク層別化、診断、予後判定、ステージ分類、分類、およびモニタリングのうちの1つ以上に相関させることを含み得る。よって、本明細書中開示される腎損傷マーカーは、腎損傷の評価のために使用され得る。
【0011】
特定の態様では、本明細書中記載の腎状態を評価する方法は、対象のリスク層別化の方法、すなわち対象に腎状態の1つ以上の将来の変化の尤度を割り当てる方法である。これら態様では、アッセイ結果を、1つ以上のこのような将来の変化に相関させる。以下は、好ましいリスク層別化の態様である。
【0012】
好ましいリスク層別化の態様では、これら方法は、腎機能に対する将来の損傷に関する対象のリスクを決定するステップを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、腎機能に対するこのような将来の損傷の尤度に相関させる。たとえば、測定された濃度をそれぞれ、閾値と比較してもよい。「陽性(positive going)」腎損傷マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して、測定濃度が閾値を上回る場合、腎機能に対する将来の損傷を有する高い尤度が対象に割り当てられる。「陰性(negative going)」腎損傷マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して、測定された濃度が閾値を下回る場合に、腎機能に対する将来の損傷を有する高い尤度が対象に割り当てられる。
【0013】
他の好ましいリスク層別化の態様では、これら方法は、将来の腎機能の低下に関する対象のリスクを決定するステップを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、このような将来の腎機能の低下の尤度に相関させる。たとえば、測定濃度をそれぞれ、閾値と比較してもよい。「陽性」腎損傷マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して、測定された濃度が閾値を上回る場合、腎機能の将来の低下を有する高い尤度が対象に割り当てられる。「陰性」腎損傷マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して、測定された濃度が閾値を下回る場合、腎機能の将来の低下を有する高い尤度が対象に割り当てられる。
【0014】
さらなる他の好ましいリスク層別化の態様では、これら方法は、腎機能の将来の改善に関する対象の尤度を決定するステップを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、このような腎機能の将来の改善の尤度に相関させる。たとえば、測定濃度をそれぞれ、閾値と比較してもよい。「陽性」腎損傷マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して測定された濃度が閾値を下回る場合、腎機能の将来の改善の高い尤度が対象に割り当てられる。「陰性」腎損傷マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して測定された濃度が閾値を上回る場合、腎機能の将来の改善の高い尤度が対象に割り当てられる。
【0015】
なお他の好ましいリスク層別化の態様では、これら方法は、ARFへの進行に関する対象のリスクを決定するステップを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベル。たとえば、測定された濃度をそれぞれ、閾値と比較してもよい。「陽性」腎損傷マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して測定された濃度が閾値を上回る場合、ARFへの進行の高い尤度が対象に割り当てられる。「陰性」腎損傷マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して測定された濃度が閾値を下回る場合、ARFへの進行の高い尤度が対象に割り当てられる。
【0016】
他の好ましいリスク層別化の態様では、これら方法は、対象のアウトカムのリスクを決定するステップを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、対象が有する腎損傷に関連する臨床的アウトカムの発生の尤度に相関させる。たとえば、測定された濃度をそれぞれ、閾値と比較してもよい。「陽性」腎損傷マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して測定された濃度が閾値を上回る場合、急性腎損傷、AKIの悪化するステージへの進行、死亡、腎代替療法の必要性、腎毒素の除去の必要性、末期の腎疾患、心不全、脳卒中、心筋梗塞、慢性腎疾患への進行などのうちの1つ以上の高い尤度が対象に割り当てられる。「陰性」腎損傷マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して測定された濃度が閾値を下回る場合、急性腎損傷、AKIの悪化するステージへの進行、死亡、腎代替療法の必要性、腎毒素の除去の必要性、末期の腎疾患、心不全、脳卒中、心筋梗塞、慢性腎疾患への進行などのうちの1つ以上の高い尤度が対象に割り当てられる。
【0017】
このようなリスク層別化の態様では、好ましくは割り当てられた尤度またはリスクは、目的のイベントが体液サンプルを対象から得た時点から180日以内に事実上起こる可能性があることである。特に好ましい態様では、割り当てられた尤度またはリスクは、18カ月、120日、90日、60日、45日、30日、21日、14日、7日、5日、96時間、72時間、48時間、36時間、24時間、12時間、またはそれ以下の時間などのより短期間以内に起こる目的のイベントに関連する。体液サンプルを対象から得た時点である0時間でのリスクは、現在の病態の診断と等価である。
【0018】
好ましいリスク層別化の態様では、対象は、対象における腎前性、内因性腎性、または腎後性ARFに関する1つ以上の既知のリスク因子が既に存在することに基づくリスク層別化に関して選択される。たとえば、対象は、主要血管手術、冠動脈バイパス、または他の心臓手術を経験しているかまたは経験したことがある対象;既存のうっ血性心不全、子癇前症、子癇、真性糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、タンパク尿、腎不全、正常な範囲を下回る糸球体濾過、硬変、正常な範囲を上回る血清クレアチニン、もしくは敗血症を有する対象;またはNSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線不透過性造影剤、またはストレプトゾトシンへ曝露された対象は、全て、本明細書中記載の方法によりリスクをモニタリングするための好ましい対象である。このリストは、限定することを意図していない。「既に存在すること」は、この文脈において、生体サンプルを対象から得た時点でリスク因子が存在することを意味する。特に好ましい態様では、対象は、腎機能に対する損傷、腎機能の低下、またはARFの既存の診断に基づくリスク層別化に関して選択される。
【0019】
他の態様では、本明細書中記載される腎状態を評価する方法は、対象の腎損傷を診断する方法;すなわち、対象が腎機能に対する損傷、腎機能の低下、またはARFを罹患しているかどうかを評価する方法である。これら態様では、アッセイの結果を、腎状態の変化の発生の有無に相関させる。以下は、好ましい診断の態様である。
【0020】
好ましい診断の態様では、これら方法は、腎機能に対する損傷の発生の有無を診断することを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、このような損傷の発生の有無に相関させる。たとえば、測定された濃度をそれぞれ、閾値と比較してもよい。陽性マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合(測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎機能に対する損傷が発生する高い尤度が対象に割り当てられ;あるいは、測定された濃度が閾値を下回る場合(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎機能に対する損傷が発生しない高い尤度が対象に割り当てられ得る。陰性マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎機能に対する損傷が発生する高い尤度が対象に割り当てられ;あるいは、測定された濃度が閾値を上回る場合(測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎機能に対する損傷が発生しない高い尤度が対象に割り当てられ得る。
【0021】
他の好ましい診断の態様では、これら方法は、腎機能の低下の発生の有無を診断することを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、腎機能の低下をもたらす損傷の発生の有無に相関させる。たとえば、測定された濃度をそれぞれ、閾値と比較してもよい。陽性マーカーでは、(測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して)測定された濃度が閾値を上回る場合、腎機能の低下を引き起こす損傷が発生する高い尤度が対象に割り当てられ;あるいは、測定された濃度が閾値を下回る場合(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、高い腎機能の低下を引き起こす損傷が発生しない高い尤度が対象に割り当てられ得る。陰性マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎機能の低下を引き起こす損傷が発生する高い尤度が対象に割り当てられ;あるいは、測定された濃度が閾値を上回る場合(測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎機能の低下を引き起こす損傷が発生しない高い尤度が対象に割り当てられ得る。
【0022】
さらなる好ましい診断の態様では、これら方法は、ARFの発生の有無を診断することを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、ARFを引き起こす損傷の発生の有無に相関させる。たとえば、測定された濃度をそれぞれ、閾値と比較してもよい。陽性マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合(測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、ARFが発生する高い尤度が対象に割り当てられ;あるいは、測定された濃度が閾値を下回る場合(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、ARFが発生しない高い尤度が対象に割り当てられ得る。陰性マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、ARFが発生する高い尤度が対象に割り当てられ;あるいは、測定された濃度が閾値を上回る場合(測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、ARFが発生しない高い尤度が対象に割り当てられ得る。
【0023】
さらなる他の好ましい診断の態様では、これら方法は、腎代替療法を必要とすると対象を診断することを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、腎代替療法の必要性に相関させる。たとえば、測定された濃度をそれぞれ、閾値と比較してもよい。陽性マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合(測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎代替療法の必要がある損傷が発生する高い尤度が対象に割り当てられ;あるいは、測定された濃度が閾値を下回る場合(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎代替療法の必要がある損傷が発生しない高い尤度が対象に割り当てられ得る。陰性マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎代替療法の必要がある損傷が発生する高い尤度が対象に割り当てられ;あるいは、測定された濃度が閾値を上回る場合(測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎代替療法の必要がある損傷が発生しない高い尤度が対象に割り当てられ得る。
【0024】
さらなる他の好ましい診断の態様では、これら方法は、腎移植を必要とすると対象を診断することを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、腎移植の必要性に相関させる。たとえば、測定された濃度をそれぞれ、閾値と比較してもよい。陽性マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合(測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して)腎移植の必要がある損傷が発生する高い尤度が対象に割り当てられ;あるいは、測定された濃度が閾値を下回る場合(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎移植の必要がある損傷が発生しない高い尤度が対象に割り当てられ得る。陰性マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎移植の必要がある損傷が発生する高い尤度が対象に割り当てられ;あるいは、測定された濃度が閾値を上回る場合(測定された濃度が閾値を下回る場合に割り当てられる尤度と比較して)、腎移植の必要がある損傷が発生しない高い尤度が対象に割り当てられ得る。
【0025】
さらなる他の態様では、本明細書中記載の腎状態を評価する方法は、対象の腎損傷をモニタリングする方法;すなわち腎機能に対する損傷、腎機能の低下、またはARFを罹患している対象において腎機能が改善または悪化しているかどうかを評価する方法である。これら対象において、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、腎状態の変化の発生の有無に相関させる。以下は、好ましいモニタリングの態様である。
【0026】
好ましいモニタリングの態様では、これら方法は、腎機能に対する損傷を罹患している対象の腎状態をモニタリングすることを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、対象の腎状態の変化の発生の有無に相関させる。たとえば、測定された濃度を、閾値と比較してもよい。陽性マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合、腎機能の悪化が対象に割り当てられ得る;あるいは測定された濃度が閾値を下回る場合、腎機能の改善が対象に割り当てられ得る。陰性マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合、腎機能の悪化が対象に割り当てられ得る;あるいは測定された濃度が閾値を上回る場合、腎機能の改善が対象に割り当てられ得る。
【0027】
他の好ましいモニタリングの態様では、これら方法は、腎機能の低下を罹患している対象の腎状態をモニタリングすることを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、対象の腎状態の変化の発生の有無に相関させる。たとえば、測定された濃度を、閾値と比較してもよい。陽性マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合、腎機能の悪化が対象に割り当てられ得る;あるいは測定された濃度が閾値を下回る場合、腎機能の改善が対象に割り当てられ得る。陰性マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合、腎機能の悪化が対象に割り当てられ得る;あるいは測定された濃度が閾値を上回る場合、腎機能の改善が対象に割り当てられ得る。
【0028】
さらなる他の好ましいモニタリングの態様では、これら方法は、腎不全を罹患している対象の腎状態をモニタリングすることを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、対象の腎状態の変化の発生の有無に相関させる。たとえば、測定された濃度を、閾値と比較してもよい。陽性マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合、腎機能の悪化が対象に割り当てられ得る;あるいは測定された濃度が閾値を下回る場合、腎機能の改善が対象に割り当てられ得る。陰性マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合、腎機能の悪化が対象に割り当てられ得る;あるいは測定された濃度が閾値を上回る場合、腎機能の改善が対象に割り当てられ得る。
【0029】
他のさらなる好ましいモニタリングの態様では、これら方法は、腎前性、内因性腎性、または腎後性ARFに関する1つ以上の既知のリスク因子が既に存在することによる腎機能に対する損傷のリスクのある対象の腎状態をモニタリングすることを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、対象の腎状態の変化の発生の有無に相関させる。たとえば、測定された濃度を閾値と比較してもよい。陽性マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合、腎機能の悪化が対象に割り当てられ得る;あるいは測定された濃度が閾値を下回る場合、腎機能の改善が対象に割り当てられ得る。陰性マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合、腎機能の悪化が対象に割り当てられ得る;あるいは測定された濃度が閾値を上回る場合、腎機能の改善が対象に割り当てられ得る。
【0030】
なお他の好ましいモニタリングの態様では、これら方法は、急性腎損傷の将来の遷延に関して、腎機能に対する損傷を有するかまたはこのリスクのある対象の腎状態をモニタリングすることを含む。「将来の遷延」は、本明細書中使用される場合、21日間、14日間、7日間、5日間、96時間、72時間、48時間、36時間、24時間、および12時間からなる群から選択される期間の間続く既存の急性腎損傷を指す。特定の態様では、対象は、サンプルを得る時点で急性腎損傷を有する。このことは、対象がサンプルを得る時点で急性腎損傷を有さなければならないことを意味するという意図ではなく、むしろ、対象が、急性腎損傷の発症を受けて、持続する急性腎損傷に罹患することを意味するという意図である。様々な態様では、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、対象の急性腎損傷の将来の遷延に相関させる。たとえば、測定された濃度を閾値と比較してもよい。陽性マーカーでは、測定された濃度が閾値を上回る場合、急性腎損傷の将来の遷延が対象に割り当てられ得る;あるいは測定された濃度が閾値を下回る場合、腎機能の将来の改善が対象に割り当てられ得る。陰性マーカーでは、測定された濃度が閾値を下回る場合、急性腎損傷の将来の遷延が対象に割り当てられ得る;あるいは測定された濃度が閾値を上回る場合、腎機能の将来の改善が対象に割り当てられ得る。
【0031】
さらなる他の態様では、本明細書中記載される腎状態を評価する方法は、対象の腎損傷を分類する方法;すなわち対象の腎損傷が腎前性、内因性腎性、または腎後性であることを決定する;および/またはこれらクラスを急性尿細管損傷、急性糸球体腎炎、急性尿細管間質性腎炎、急性血管性腎症(vascular nephropathy)、もしくは浸潤性疾患などのサブクラスにさらに細分する;および/または対象が特定のRIFLEもしくはKDIGOのステージへ進行する尤度を割り当てる方法である。これら態様では、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、特定のクラスおよび/またはサブクラスに相関させる。以下は、好ましい分類の態様である。
【0032】
好ましい分類の態様では、これら方法は、対象の腎損傷が腎前性、内因性腎性、もしくは腎後性であるかを決定し;および/またはこれらクラスを急性尿細管損傷、急性糸球体腎炎、急性尿細管間質性腎炎、急性血管性腎症、もしくは浸潤性疾患などのサブクラスにさらに細分し;および/または対象が特定のRIFLEステージへ進行する尤度を割り当てることを含み、アッセイ結果、たとえばシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清または血漿中)、および尿量からなる群から選択される1つ以上のマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の測定された濃度またはレベルを、対象の損傷の分類に相関させる。たとえば、測定された濃度を閾値と比較してもよく、測定された濃度が閾値を上回る場合、特定の分類が割り当てられ;あるいは測定された濃度が閾値を下回る場合、異なる分類が対象に割り当てられ得る。
【0033】
これら方法に使用するための望ましい閾値を達成するために、様々な方法が当業者により使用され得る。たとえば、閾値は、正常な対象の集団から、このような正常な対象で測定された腎損傷マーカーの75、85、90、95、または99パーセンタイルを表す濃度を選択することにより決定され得る。あるいは、閾値は、「疾患状態の」対象集団、たとえば損傷を罹患しているかまたは損傷の素因(たとえばARFまたは他のいくつかの臨床的なアウトカム、たとえば死亡、透析、腎移植などに対する素因)を有する対象の集団から、このような対象で測定された腎損傷マーカーの75、85、90、95、または99パーセンタイルを表す濃度を選択することにより、決定され得る。別の代替案では、閾値を、同じ対象における腎損傷マーカーの以前の測定から決定してもよく;すなわち、対象における腎損傷マーカーのレベルの時間的な変化を使用して、対象へリスクを割り当ててもよい。
【0034】
しかしながら、上記の論述は、本明細書中開示される腎損傷マーカーを対応する個別の閾値と比較しなければならないことを意味するという意図ではない。アッセイ結果を組み合わせる方法は、多変量ロジスティック回帰、対数線形モデル、ニューラルネットワーク分析、mのうちのn分析(n-of-m analysis)、決定木分析、マーカー比率の計算の使用などを含み得る。このリストは、限定することを意図していない。これら方法では、個々のマーカーを組み合わせることにより決定される複合的な結果を、それ自体がマーカーであるかのように扱うことができ;すなわち、閾値を、個別のマーカーの本明細書中記載される複合的な結果に関して決定してもよく、個別の患者の複合的な結果を、この閾値と比較してもよい。
【0035】
特定の試験が2つの集団を区別する能力は、ROC分析を使用して確立され得る。たとえば、腎状態の1つ以上の将来の変化を発生しやすい「第1の」部分集団と、発生しにくい「第2の」部分集団とから確立されたROC曲線を使用してROC曲線を計算することができ、曲線下面積は、試験の質の尺度を提供する。好ましくは、本明細書中記載される試験は、0.5超、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは0.7、さらにより好ましくは0.75、さらにより好ましくは少なくとも0.8、さらにより好ましくは少なくとも0.9、および最も好ましくは0.95のROC曲線面積(ROC curve area)を提供する。
【0036】
特定の態様では、1つ以上の腎損傷マーカーの測定された濃度、またはこのようなマーカーの複合は、連続する変数として扱われ得る。たとえば、いかなる特定の濃度も、対象の腎機能の将来的な低下、損傷の発生、分類などの対応する確率に変換することができる。さらなる別の代替案では、閾値は、対象の集団を「第1の」部分集団(たとえば腎状態の1つ以上の将来の変化、損傷の発生、分類などになりやすい)部分集団およびなりにくい「第2の」部分集団などの「ビン」に分ける際の特異度および感度の許容されるレベルを提供し得る。閾値は、以下の試験の正確性の尺度のうちの1つ以上によりこの第1および第2の集団を分けるために選択される:
1超、好ましくは少なくとも約2以上または約0.5以下、より好ましくは少なくとも約3以上または約0.33以下、さらにより好ましくは少なくとも約4以上または約0.25以下、さらにより好ましくは少なくとも約5以上または約0.2以下、および最も好ましくは少なくとも約10以上または約0.1以下のオッズ比;
0.2超、好ましくは約0.3超、より好ましくは約0.4超、さらにより好ましくは少なくとも約0.5、さらにより好ましくは約0.6、さらにより好ましくは約0.7超、さらにより好ましくは約0.8超、より好ましくは約0.9超、および最も好ましくは約0.95超の対応する感度を伴う、0.5超、好ましくは少なくとも約0.6、より好ましくは少なくとも約0.7、さらにより好ましくは少なくとも約0.8、さらにより好ましくは少なくとも約0.9、および最も好ましくは少なくとも約0.95の特異度;
0.2超、好ましくは約0.3超、より好ましくは約0.4超、さらにより好ましくは少なくとも約0.5、さらにより好ましくは約0.6、さらにより好ましくは約0.7超、さらにより好ましくは約0.8超、より好ましくは約0.9超、および最も好ましくは約0.95超の対応する特異度を伴う、0.5超、少なくとも約0.6、より好ましくは少なくとも約0.7、さらにより好ましくは少なくとも約0.8、さらにより好ましくは少なくとも約0.9、および最も好ましくは少なくとも約0.95の感度;
少なくとも約75%の特異度と組み合わせた、少なくとも約75%の感度;
1超、少なくとも約2、より好ましくは少なくとも約3、さらにより好ましくは少なくとも約5、最も好ましくは少なくとも約10の陽性尤度比(感度/(1-特異度)として計算);または
1未満、約0.5以下、より好ましくは約0.3以下、および最も好ましくは約0.1以下の陰性尤度比((1-感度)/特異度として計算)。
【0037】
上記測定値のいずれかの文脈での用語「約」は、所定の測定値の±5%を指す。
【0038】
また、対象の腎状態を評価するために、複数の閾値が使用され得る。たとえば、腎状態の1つ以上の将来の変化、損傷の発生、分類などを発生しやすい「第1の」部分集団と、これを発生しにくい「第2の」部分集団とを、単一のグループに組み合わせることができる。次に、このグループを、3つ以上の均等なパート(細分の数に応じて、三分位数、四分位数、五分位数などとして知られている)に細分する。どの細分に患者が分類されるかに基づき、オッズ比を割り当てる。三分位数を企図する場合、最低または最大の三分位数を、他の細分の比較のための参照として使用することができる。この参照の細分に、オッズ比1を割り当てる。第2三分位数には、第1三分位数に関連するオッズ比を割り当てる。すなわち、第2三分位数の中の対象は、第1三分位数の対象と比較して腎状態の1つ以上の将来の変化に罹患する可能性が3倍以上高い可能性がある。同様に、第3三分位数には、第1三分位数に関連するオッズ比を割り当てる。
【0039】
特定の態様では、アッセイ方法は、イムノアッセイである。このようなアッセイに使用するための抗体は、完全長の目的の腎損傷マーカーに特異的に結合し、よってこれに「関連している」(この用語は本明細書中以下で定義される)1つ以上のポリペプチドにも結合し得る。多くのイムノアッセイの形式が当業者に公知である。好ましい体液サンプルは、尿、血液(全血、血清、および血漿を含む)、唾液、および涙からなる群から選択される。
【0040】
上記の方法のステップは、腎損傷マーカーのアッセイ結果が、本明細書中記載の方法での単離に使用されることを意味すると解釈してはならない。むしろ、追加の変数または他の臨床指標が、本明細書中記載の方法に含まれ得る。たとえば、リスク層別化、診断、分類、モニタリングなどの方法は、アッセイ結果を、人口統計情報(たとえば体重、性別、年齢、人種)、病歴(たとえば家族の病歴、外科手術の種類、既存の疾患、たとえば動脈瘤(aneurism)、うっ血性心不全、子癇前症、子癇、真性糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、タンパク尿、腎不全、または敗血症、NSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線不透過性造影剤、またはストレプトゾトシンなどの種類の毒素への曝露)、臨床変数(たとえば血圧、体温、呼吸速度)、リスクスコア(APACHEスコア、PREDICTスコア、TIMI Risk Score for UA/NSTEMI、Framingham Risk Score)、糸球体濾過率、推定糸球体濾過率、尿産生速度、血清または血漿中クレアチニンの濃度、尿中クレアチニンの濃度、ナトリウムの部分排泄率、尿中ナトリウム濃度、尿中クレアチニン対血清または血漿中クレアチニンの比率、尿比重、尿浸透圧、尿中尿素窒素対血漿中尿素窒素の比率、血漿中のBUN対クレアチニンの比率、尿中ナトリウム/(尿中クレアチニン/血漿中クレアチニン)として計算される腎不全指数、血清中または血漿中好中球ゼラチナーゼ(NGAL)濃度、尿中NGAL濃度、血清中または血漿中シスタチンCの濃度、血清中または血漿中心筋トロポニン濃度、血清中または血漿中BNP濃度、血清中または血漿中NTproBNP濃度、および血清中または血漿中proBNP濃度からなる群から選択される、対象において測定される1つ以上の変数と組み合わせ得る。1つ以上の腎損傷マーカーのアッセイ結果と組み合わせられ得る腎機能の他の測定値は、本明細書中以下ならびにHarrison’s Principles of Internal Medicine, 17th Ed., McGraw Hill, New York, pages 1741-1830およびCurrent Medical Diagnosis & Treatment 2008, 47th Ed, McGraw Hill, New York, pages 785-815(これらはそれぞれ参照によりその全体が組み込まれている)に記載されている。
【0041】
1超のマーカーが測定される場合、個別のマーカーは、同時に得たサンプルにおいて測定されてもよく、または異なる(たとえば早いまたは遅い)時間に得たサンプルから決定され得る。また個別のマーカーは、同じまたは異なる体液サンプルで測定され得る。たとえば、1つの腎損傷マーカーは、血清または血漿サンプルで測定されてもよく、腎損傷マーカーは、尿サンプルで測定されてもよい。さらに、尤度の割り当ては、個別の腎損傷マーカーのアッセイ結果を、1つ以上の追加の変数の時間的な変化と組み合わせ得る。
【0042】
様々な関連する態様では、本発明はまた、本明細書中記載の方法を行うためのデバイスおよびキットに関する。適切なキットは、記載される閾値の比較を行うための説明書と共に、記載される腎損傷マーカーの少なくとも1つでアッセイを行うために十分な試薬を含む。
【0043】
特定の態様では、このようなアッセイを行うための試薬は、アッセイデバイスに提供され、このようなアッセイデバイスは、このようなキットに含まれ得る。好ましい試薬は、1つ以上の固相抗体を含み得、この固相抗体は、固体の担体に結合した意図されるバイオマーカーの標的を検出する抗体を含む。サンドイッチイムノアッセイの場合、このような試薬はまた、1つ以上の検出可能に標識された抗体を含み得、この検出可能に標識された抗体は、検出可能な標識に結合した意図されるバイオマーカー標的を検出する抗体を含む。アッセイデバイスの一部として提供され得る追加の任意選択の要素を、本明細書中以下で記載する。
【0044】
検出可能な標識は、自身が検出可能である分子(たとえば蛍光部分、電気化学的標識、ecl(電気化学的発光)標識、金属キレート、コロイド金属粒子など)、ならびに検出可能な反応産物の産生により間接的に検出され得る分子(たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼなどの酵素)または自身が検出可能であり得る特異的な結合分子の使用を介して間接的に検出され得る分子(たとえば第2の抗体に結合する標識抗体、ビオチン、ジゴキシゲニン、マルトース、オリゴヒスチジン、2,4-ジニトロ(dintro)ベンゼン、フェニルヒ酸(phenylarsenate)、ssDNA、dsDNAなど)を含み得る。
【0045】
シグナル発生エレメントからのシグナルの生成は、当技術分野で周知である様々な光学的方法、聴覚の方法、および電気化学的な方法を使用して行うことができる。検出モードの例として、蛍光、放射化学的検出、反射率、吸光度、電流測定、コンダクタンス、インピーダンス、インターフェロメトリー、偏光分析などが挙げられる。これら方法の特定の例では、固相抗体を、シグナルの生成のためトランスデューサー(たとえば回折格子(diffraction grating)、電気化学的センサーなど)にカップリングさせ、他の例では、シグナルは、固相抗体から空間的に離れたトランスデューサー(たとえば励起光源および光検出器を使用する蛍光光度計)により生成される。このリストは、限定するように意図されてはいない。また、抗体ベースのバイオセンサーも、任意選択で標識分子の必要がなく、分析物の存在または量を決定するために使用され得る。
【0046】
一部の態様では、対象は、RIFLE IもしくはFまたはKDIGOステージ2もしくは3の定義を満たす急性腎損傷などの、急性腎損傷を有するリスクの増加を表す1つ以上のAKIバイオマーカーの測定値に基づく評価のために選択され得る。このようなバイオマーカーまたは指標は、限定するものではないが、インスリン様増殖因子-結合タンパク質7、メタロプロテイナーゼ阻害剤2、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、シスタチンC、インターロイキン-18、A型肝炎ウイルス細胞受容体1、グルタチオン S-トランスフェラーゼP、脂肪酸結合タンパク質、肝臓、クレアチニン、尿量、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0047】
特定の態様では、マーカーのレベルは、遷延性ALIの「除外基準(rule out)」として使用され得る。これらの態様では、マーカーの測定されたレベルを、閾値を超える第2の部分集団と比較して低い遷延性AKIの尤度である閾値を下回る第1の部分集団に集団を分けるために集団試験から選択された閾値と比較することができる。このような閾値は、たとえば、少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、さらにより好ましくは少なくとも0.75、さらにより好ましくは少なくとも0.8、最も好ましくは少なくとも0.9の第1の部分集団に負の予測値を提供することができる。本明細書中開示されるマーカーのいずれかを含む1つ以上のマーカーは、対象を除外するために使用される同じまたは異なるマーカーを含み得る他のマーカーまたはマーカーの複合に基づき、遷延性急性腎損傷の尤度を評価する前および/または後に対象を「除外」するために使用され得る。
【0048】
特定の態様では、マーカーのレベルは、遷延性AKIの「包含基準(rule in)」として使用され得る。これらの態様では、マーカーの測定されたレベルは、閾値未満である第2の部分集団と比較して高い遷延性AKIの尤度である閾値を超える第1の部分集団に集団を分けるための集団試験から選択される閾値と比較され得る。このような閾値は、たとえば、少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、さらにより好ましくは少なくとも0.75、さらにより好ましくは少なくとも0.8、最も好ましくは少なくとも0.9の第1の部分集団に正の予測値を提供し得る。本明細書中開示されるマーカーのいずれかを含む1つ以上のマーカーは、対象を包含するために使用される同じまたは異なるマーカーを含み得る他のマーカーまたはマーカーの複合に基づき、遷延性急性腎損傷の尤度を評価する前および/または後に対象を「包含」するために使用され得る。一部の態様では、対象を除外または包含するために、異なるマーカーが使用され得る。
【0049】
特定の態様では、除外され、および/または遷延性急性腎損傷の比較的低い尤度を有すると評価される対象は、腎代替療法(RRT)を含まないことを意味する「保存的」である対象の既存のAKIに対する処置経路に割り当てられる。同様に、特定の態様では、包含され、および/または遷延性急性腎損傷の比較的高い尤度を有すると評価される対象は、腎代替療法を行うことを含む対象の既存のAKIに対する処置経路に割り当てられる。
【0050】
本開示の一態様では、対象の腎損傷、腎機能の低下、または急性腎損傷(AKI)の発症の有無を診断する方法が開示される。本方法は、対象から得た第1の体液サンプルにおけるC-Cモチーフケモカイン14を検出するように構成された分析物結合アッセイを行うステップを含む。本方法は、1つ以上の腎損傷マーカーの測定値を決定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、1つ以上の腎損傷マーカーは、対象から得た第1の体液サンプルまたは第2の体液サンプルにおけるクレアチニンの濃度、第1または第2の体液サンプルにおけるシスタチンCの濃度、計算された糸球体濾過率、および尿量からなる群から選択される。
【0051】
本開示の一態様では、対象のリスク層別化のための方法が開示される。リスク層別化は、対象が遷延性急性腎損傷を有する尤度を割り当てることを含む。本方法は、対象から得た第1の体液サンプルにおけるC-Cモチーフケモカイン14を検出するように構成された分析物結合アッセイを行うステップを含む。本方法は、1つ以上の腎損傷マーカーの測定値を決定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、1つ以上の腎損傷マーカーは、対象から得た第1の体液サンプルまたは第2の体液サンプルにおけるクレアチニンの濃度、第1または第2の体液サンプルにおけるシスタチンCの濃度、計算された糸球体濾過率、および尿量からなる群から選択される。
【0052】
本開示の一態様では、急性腎損傷の将来の遷延に関して対象の腎損傷をモニタリングする方法が開示される。このリスク層別化は、対象が遷延性急性腎損傷を有する尤度を割り当てるステップを含む。本方法は、対象から得た第1の体液サンプルにおけるC-Cモチーフケモカイン14を検出するように構成された分析物結合アッセイを行うステップを含む。本方法は、1つ以上の腎損傷マーカーの測定値を決定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、1つ以上の腎損傷マーカーは、対象から得た第1の体液サンプルまたは第2の体液サンプルにおけるクレアチニンの濃度、第1または第2の体液サンプルにおけるシスタチンCの濃度、計算された糸球体濾過率、および尿量からなる群から選択される。
【0053】
上記方法の一部の実施形態では、本方法は、サンプルを得た後7日以内に尿量の体積、尿流速、血中クレアチニンレベル、または尿中クレアチニンレベルを測定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、糸球体濾過率を計算するステップをさらに含む。
【0054】
上記方法の一部の実施形態では、アッセイ結果および1つ以上の腎損傷マーカーの測定値を、複合的なアッセイ結果を提供するために単一の値に組み合わせる。
【0055】
上記方法の一部の実施形態では、本方法は、測定値と共にアッセイ結果を対象の腎状態の診断に相関させるステップをさらに含む。この診断は、腎損傷、腎機能の低下、または急性腎損傷(AKI)の発症の有無を含む。任意選択で、アッセイ結果および測定値は、上述されるように、複合的なアッセイ結果を使用して共に相互に関連付けられ得る。
【0056】
一部の実施形態では、相関させるステップは、対象を腎損傷、腎機能の低下、または急性腎損傷(AKI)の既知の素因を有する所定の個体の部分集団に割り当てるステップを含み得る。任意選択で、この割り当ては、集団試験において複合的なアッセイ結果を選択された閾値(この閾値は、閾値を上回る第1の部分集団および閾値以下の第2の部分集団に集団を分ける)と比較することによりなされ得る。第1の部分集団は、第2の部分集団と比較して、腎損傷、腎機能の低下、または急性腎損傷(AKI)を有する素因が増大し得る。
【0057】
一部の実施形態では、本方法は、対象が割り当てられる所定の個体の部分集団に基づき対象を処置するステップをさらに含む。この処置は、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上を含み得る。
【0058】
一部の実施形態では、本方法は、第1の部分集団に割り当てられた対象を処置するステップをさらに含む。この処置は、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上を含み得る。任意選択で、第1の部分集団に割り当てられた対象の腎代替療法は、持続的腎代替療法、間欠的血液透析、腹膜透析、または腎移植を含み得る。
【0059】
上記方法の一部の実施形態では、本方法は、測定値と共にアッセイ結果を、対象が遷延性急性腎損傷(AKI)を有する尤度に相関させるステップをさらに含む。任意選択で、アッセイ結果および測定値を、上述されるように、複合的なアッセイ結果を使用して共に相関させてもよい。
【0060】
一部の実施形態では、相関させるステップは、遷延性急性腎損傷(AKI)の既知の素因を有する所定の個体の既定の部分集団に対象を割り当てるステップを含み得る。任意選択で、この割り当ては、集団試験において複合的なアッセイ結果を選択された閾値(この閾値は、閾値を上回る第1の部分集団および閾値以下の第2の部分集団に集団を分ける)と比較することによりなされ得る。第1の部分集団は、第2の部分集団と比較して遷延性急性腎損傷(AKI)を有する素因が増大し得る。
【0061】
一部の実施形態では、本方法は、対象が割り当てられる所定の個体の部分集団に基づき対象を処置するステップをさらに含む。この処置は、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上を含み得る。
【0062】
一部の実施形態では、本方法は、第1の部分集団に割り当てられた対象を処置するステップをさらに含む。この処置は、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上を含み得る。任意選択で、第1の部分集団に割り当てられた対象の腎代替療法は、持続的腎代替療法、間欠的血液透析、腹膜透析、または腎移植を含み得る。
【0063】
上記方法の一部の実施形態では、本方法は、測定値と共にアッセイ結果を、対象の腎状態の変化の発生の有無に相関させるステップをさらに含む。任意選択で、アッセイ結果および測定値を、上述されるように、複合的なアッセイ結果を使用して共に相関させてもよい。
【0064】
一部の実施形態では、相関させるステップは、遷延性急性腎損傷(AKI)の既知の素因を有する所定の個体の部分集団に対象を割り当てるステップを含み得る。任意選択で、この割り当ては、集団試験において複合的なアッセイ結果を選択された閾値(この閾値は、閾値を上回る第1の部分集団および閾値以下の第2の部分集団に集団を分ける)と比較することによりなされ得る。第1の部分集団は、第2の部分集団と比較して、遷延性急性腎損傷(AKI)を有する素因が増大し得る。
【0065】
一部の実施形態では、本方法は、対象が割り当てられる所定の個体の部分集団に基づき対象を処置するステップをさらに含む。この処置は、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上を含み得る。
【0066】
一部の実施形態では、本方法は、第1の部分集団に割り当てられた対象を処置するステップをさらに含む。この処置は、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上を含み得る。任意選択で、第1の部分集団に割り当てられた対象の腎代替療法は、持続的腎代替療法、間欠的血液透析、腹膜透析、または腎移植を含み得る。
【0067】
上記方法の一部の実施形態では、対象は、第1および第2の体液サンプルを得る際にRIFLEステージIもしくはFまたはKDIGOステージ2もしくは3を有する。
【0068】
上記方法の一部の実施形態では、結合試薬は、抗体である。
【0069】
上記方法の一部の実施形態では、第1の体液サンプルは、尿サンプルである。
【0070】
上記方法の一部の実施形態では、第2の体液サンプルは、血液サンプルである。
【0071】
上記方法の一部の実施形態では、第1の体液サンプルおよび第2の体液サンプルは、同じサンプルである。他の実施形態では、第1の体液サンプルおよび第2の体液サンプルは、異なるサンプルである。
【0072】
上記方法の一部の実施形態では、複合的なアッセイ結果は、上述されるように、ロジスティック回帰または線形判別分析(linear discriminant analysis:LDA)を使用して得られる関数を介して生成される。一部の実施形態では、単一の複合的な値は、CCL14、シスタチンC、クレアチニン、尿量、CCL14xシスタチンC、CCL14xシスタチンCxクレアチニン、CCL14xシスタチンC/尿量、CCL14xクレアチニン、CCL14xクレアチニン/尿量、およびCCL14/尿量からなる群から選択される2つ以上の独立変数を含むロジスティック回帰モデルまたは線形判別分析から導出される。
【0073】
上記方法の一部の実施形態では、複合的なアッセイ結果は、上述されるように、CCL14xシスタチンC、CCL14xシスタチンCxクレアチニン、CCL14xシスタチンC/尿量、CCL14xクレアチニン、CCL14xクレアチニン/尿量、CCL14/尿量、およびCCL14xシスタチンCxクレアチニン/尿量からなる群から選択される。
【0074】
上記方法の一部の実施形態では、測定値と共にアッセイ結果を相関させるステップは、決定木分析またはランダムフォレスト分析の使用を含む。
【0075】
上記方法の一部の実施形態では、測定値と共にアッセイ結果を相関させるステップは、数の実証分析の使用を含む。
【0076】
上記方法の一部の実施形態では、対象は、うっ血性心不全、子癇前症、子癇、真性糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、タンパク尿、腎不全、正常な範囲を下回る糸球体濾過、硬変、正常な範囲を上回る血清クレアチニン、敗血症、腎機能に対する損傷、腎機能の低下、および急性腎損傷のうちの1つ以上と診断されたことがある。
【0077】
上記方法の一部の実施形態では、第1および第2の体液サンプルは、ショック、敗血症、出血、虚血性手術、腹腔内圧の増大、急性非代償性心不全、虚血、肺塞栓症、膵炎、熱傷、または過剰な利尿を含む、患者に急性腎不全を発症させやすくする急性の医学的イベントから7日以内に得た。一部の実施形態では、サンプルは、急性の医学的イベントから72時間以内に得た。一部の実施形態では、サンプルは、急性の医学的イベントから48時間以内に得た。一部の実施形態では、サンプルは、急性の医学的イベントから24時間以内に得た。一部の実施形態では、サンプルは、急性の医学的イベントから12時間以内に得た。
【0078】
上記方法の一部の実施形態では、第1および第2の体液サンプルは、NSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線不透過性造影剤、またはストレプトゾトシンへの曝露を含む、患者に急性腎不全を発症させやすくする急性の医学的イベントから7日以内に得た。一部の実施形態では、サンプルは、急性の医学的イベントから72時間以内に得た。一部の実施形態では、サンプルは、急性の医学的イベントから48時間以内に得た。一部の実施形態では、サンプルは、急性の医学的イベントから24時間以内に得た。一部の実施形態では、サンプルは、急性の医学的イベントから12時間以内に得た。
【0079】
上記方法の一部の実施形態では、アッセイは、対象から得た第1の体液サンプルの全てまたは一部を結合試薬と接触させるアッセイ機器に第1の体液サンプルを導入することにより行われる。結合試薬は、C-Cモチーフケモカイン14の検出のためC-Cモチーフケモカイン14特異的に結合する。このアッセイは、結合試薬に対するC-Cモチーフケモカイン14の結合を表すアッセイ結果をもたらす。
【0080】
上記方法の一部の実施形態では、対象は、第1および第2の体液サンプルを得る際にRIFLEステージRまたはKDIGOステージ1を有する。一部の実施形態では、対象は、第1および第2の体液サンプルを得る際にRIFLEステージIまたはKDIGOステージ2を有する。一部の実施形態では、対象は、第1および第2の体液サンプルを得る際にRIFLEステージFまたはKDIGOステージ3を有する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1図1A~1Dは、遷延性のKDIGOステージ3の急性腎損傷の決定木の様々な例を示す。図1Aは、「遷延性」のコホートおよび「非遷延性」のコホートの決定木を表す(ここで遷延は、サンプル収集から24時間以内に始まり、少なくとも72時間続く)。図1Bは、「遷延性」のコホートおよび「非遷延性」のコホートの別の決定木を表す(ここで遷延は、サンプル収集から48時間以内に始まり、少なくとも72時間続く)。図1Cは、「遷延性」のコホートおよび「非遷延性」のコホートの決定木のさらなる別の例を表す(ここで遷延は、サンプル収集から48時間以内に始まり、少なくとも72時間続く)。図1Dは、「遷延性」のコホートおよび「非遷延性」のコホートの決定木のさらなる別の例を表す(ここで遷延は、サンプル収集から72時間以内に始まり、少なくとも72時間続く)。
図2図2A~2Bは、尿中C-Cモチーフケモカインリガンド14の濃度(図2A)および血漿中シスタチンCの濃度(図2B)の箱ひげ図を表す。白抜きのボックス(open box)は、急性腎損傷のいずれのステージにおいても持続しなかった様々な急性および慢性の病態を有する患者のマーカーレベルを表す(表1参照)。影付きのボックスは、登録から48時間の進行ウィンドウ以内に開始する少なくとも72時間の遷延期間の間に最小のKDIGOステージ1、2、または3の急性レベルの腎損傷を維持した患者のマーカーレベルを表す。ボックスおよびひげは、それぞれ四分位間の範囲および総観察範囲(ボックスの範囲の1.5倍で打ち切り)を示す。
図3図3は、登録したサンプルにおける尿中C-Cモチーフケモカイン14の測定により定義される3つの三分位数により層別化されるそれぞれの登録後90日間の間の腎代替療法(RRT)を開始した患者または死亡した患者の累積的な複合パーセンテージを表す。グラフの下の数は、上述の時点で、RRTを経験または死亡することなく維持している各三分位数における患者の数を表す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
詳細な説明
本明細書において、急性腎損傷(AKI)を罹患する患者の処置レジメンの分類および決定のための方法および組成物が開示される。様々な態様では、C-Cモチーフケモカイン14(CCL14)またはそれに関連する1つ以上のマーカー、および任意選択で、当技術分野で知られている1つ以上の追加の腎損傷マーカーの測定された濃度を、対象の遷延性AKIの尤度に相関させ、この相関は、治療を導くために使用され得る。
【0083】
本明細書中使用される場合、「腎機能に対する損傷」は、腎機能の測定値の突然の(14日以内、好ましくは7日以内、より好ましくは72時間以内、さらにより好ましくは48時間以内)の測定可能な低下である。このような損傷は、たとえば糸球体濾過率(GFR)または推定GFRの減少、尿量の低下、血清クレアチニンの増加、血清中シスタチンCの増加、腎代替療法の必要性などにより、同定され得る。「腎機能の改善」は、腎機能の測定値の突然の(14日以内、好ましくは7日以内、より好ましくは72時間以内、さらにより好ましくは48時間以内)の測定可能な増大である。
【0084】
本明細書中使用される場合、「腎機能の低下」は、0.1mg/dL以上(≧8.8μmol/L)の血清クレアチニンの絶対的増加、20%以上(ベースラインから1.2倍)の血清クレアチニンのパーセンテージの増加、または尿量の低下(0.5mg/kg/時間未満の実証された乏尿)により同定される腎機能の突然の(14日以内、好ましくは7日以内、より好ましくは72時間以内、さらにより好ましくは48時間以内)の測定可能な低下である。
【0085】
本明細書中使用される場合、「急性腎不全」または「ARF」は、0.3mg/dl以上(≧26.4μmol/l)の血清クレアチニンの絶対的増加、50%以上(ベースラインから1.5倍)の血清クレアチニンのパーセンテージの増加、または尿量の低下(少なくとも6時間の0.5mg/kg/時間未満の実証された乏尿)により同定される腎機能の突然の(14日以内、好ましくは7日以内、より好ましくは72時間以内、さらにより好ましくは48時間以内)の低下である。
【0086】
これに関して、当業者は、イムノアッセイから得たシグナルが、1つ以上の抗体と抗体が結合する必要なエピトープを含む標的生体分子(すなわち分析物)およびポリペプチドとの間で形成される複合体の直接的な結果であることを理解する。このようなアッセイは、完全長バイオマーカーを検出し得、アッセイ結果は目的のバイオマーカーの濃度として表され得るが、アッセイからのシグナルは、実際には、サンプルに存在する全てのこのような「免疫反応性」ポリペプチドの結果である。またバイオマーカーの発現は、タンパク質の測定(ドットブロット、ウェスタンブロット、クロマトグラフィー法、質量分析など)および核酸の測定(mRNAの定量化)を含む、イムノアッセイ以外の手段により決定され得る。この列挙は限定することを意図してはいない。
【0087】
本明細書中使用される場合、用語「C-Cモチーフケモカイン14」は、C-Cモチーフケモカイン14前駆体(ヒト配列:Swiss-Prot Q16627(配列番号1)):
MKISVAAIPF FLLITIALGT KTESSSRGPY HPSECCFTYT TYKIPRQRIM 50
DYYETNSQCS KPGIVFITKR GHSVCTNPSD KWVQDYIKDM KEN 93
に由来する生体サンプルに存在する1つ以上のポリペプチドを指す。
【0088】
以下のドメインが、C-Cモチーフケモカイン14で同定されている。
【表1】
【0089】
本明細書中使用される場合、分析物の「存在または量にシグナルを関連付けること」は、この理解を反映している。アッセイシグナルは、通常、目的の分析物の既知の濃度を使用して計算される標準曲線の使用を介して分析物の存在または量に関連する。この用語が本明細書中使用される場合、アッセイは、分析物の生理的に適切な濃度の存在または量を表す検出可能なシグナルをもたらし得る場合、分析物を「検出するように構成されている」。抗体エピトープは8アミノ酸の位数であるため、目的のマーカーを検出するように構成されたイムノアッセイはまた、マーカー配列に関連するポリペプチドを、これらポリペプチドがアッセイで使用される抗体(複数可)に結合するために必要なエピトープを含む限り、検出する。
【0090】
用語「関連するマーカー」は、本明細書中記載の腎損傷マーカーのうちの1つなどのバイオマーカーに関して本明細書中使用される場合、特定のマーカーの1つ以上のフラグメント、バリアントなど、またはマーカー自体の代替物としてもしくは独立したバイオマーカーとして検出され得るその生合成の親を指す。またこの用語は、結合タンパク質、受容体、ヘパリン、脂質、糖などのさらなる種へと複合体形成するバイオマーカー前駆体に由来する生体サンプルに存在する1つ以上のポリペプチドも指す。
【0091】
用語「陽性」マーカーは、この用語が本明細書中使用される場合、疾患または病態を罹患していない対象と比較して、このような疾患または病態を罹患している対象において上昇していると決定されるマーカーを指す。用語「陰性」マーカーは、この用語が本明細書中使用される場合、疾患または病態を罹患していない対象と比較して、このような疾患または病態を罹患している対象において低下していると決定されるマーカーを指す。
【0092】
用語「対象」は、本明細書中使用される場合、ヒトまたは非ヒトの生物を指す。よって、本明細書中記載される方法および組成物は、ヒトの疾患および獣医学的な疾患の両方に適用可能である。さらに、対象は、好ましくは生きている生物であるが、本明細書中記載される発明は、死後の分析でも同様に使用され得る。好ましい対象はヒト、最も好ましくは、本明細書中使用される場合に疾患または病態に関する医療を受けている、生きているヒトを指す「患者」である。これは、病態の徴候に関して検査を受けている定義されない疾病を有する人を含む。
【0093】
好ましくは、分析物は、サンプルにおいて測定される。このようなサンプルは、対象から得てもよく、または対象に提供されることが意図される生体物質から得てもよい。たとえば、サンプルは、対象への可能性のある移植に関して評価される腎臓、および既存の損傷に関して腎臓を評価するために使用される分析物の測定から得てもよい。好ましいサンプルは、体液サンプルである。
【0094】
用語「体液サンプル」は、本明細書中使用される場合、患者または移植ドナーなどの目的の対象の診断、予後判定、分類、または評価のために得られる体液のサンプルを指す。特定の態様では、このようなサンプルは、進行中の病態のアウトカムまたは状態に及ぼす処置レジメンの作用を決定するために得られ得る。好ましい体液サンプルとして、血液(全血、血清、および血漿を含む)、脳脊髄液、尿、唾液、痰、および胸水が挙げられる。さらに、当業者は、特定の体液サンプルが、分画または精製の手法、たとえば全血の血清または血漿成分への分離後に、より容易に分析されることを認識するであろう。
【0095】
用語「診断」は、本明細書中使用される場合、当業者が、患者が所定の疾患または病態を罹患しているかどうかの確率(「尤度」)を推定および/または決定できる方法を指す。本発明の場合、「診断」は、サンプルを得てアッセイする対象の急性腎損傷またはARFとの診断(すなわち発症の有無)に達するために、任意選択で他の臨床特徴と共に、本発明の腎損傷マーカーに関するアッセイ、最も好ましくはイムノアッセイの結果を使用することを含む。このような診断を「決定」することは、診断が100%正確であることを意味するという意図ではない。多くのバイオマーカーは、複数の病態を表す。当業者は、情報が空のバイオマーカーの結果を使用するのではなく、試験結果は、診断に達するために他の臨床指標と共に使用される。よって、既定の診断閾値の片側で測定されたバイオマーカーのレベルは、既定の診断閾値の他の側で測定されたレベルと比較して対象において疾患が発症する高い尤度を表す。
【0096】
同様に、予後のリスクは、所定の過程またはアウトカムが起こる確率(「尤度」)のシグナルである。よって予後の指標のレベルまたはレベルの変化は、病的状態(たとえば腎機能の悪化、将来的なARF、または死亡)の確率の増加に関連し、患者の有害なアウトカムの「尤度の増大を表している」と呼ばれる。
【0097】
ARFは、因果関係において腎前性、内因性腎性、または腎後性として分類され得る。内因性腎性疾患は、糸球体、尿細管、間質、および血管の異常にさらに分割され得る。ARFの主な原因は、以下の表に記載されており、これは、その全体が本明細書中参照により組み込まれているMerck Manual, 17th ed., Chapter 222が出典である。
【0098】
【表2】
【0099】
虚血性ARFの場合、疾患の過程は、4つのフェーズに分割され得る。数時間~数日間持続する発症のフェーズでは、腎臓の灌流の低下は、損傷へと発達している。糸球体の限外ろ過は低下し、濾液の流量は、尿細管の中のデブリにより低下し、損傷した上皮を介した濾液の背中への漏出が起こる。腎損傷は、腎臓の再灌流によりこのフェーズの間に媒介され得る。発症した後、持続的な虚血性の損傷および炎症を特徴とし、内皮損傷および血管のうっ血を伴い得る拡張期が続く。1~2週間持続する維持期の間、腎細胞損傷が起こり、糸球体濾過および尿量は最小値に達する。腎上皮が修復されGFRが徐々に回復する回復期が続いて起こり得る。これにも関わらず、ARFを有する対象の生存率は、約60%もの低さであり得る。
【0100】
放射線造影剤(造影剤とも呼ばれる)および他の腎毒素、たとえばシクロスポリン、アミノグリコシドを含む抗菌剤、およびシスプラチンなどの抗がん剤により引き起こされる急性腎損傷は、数日~約1週間の期間にわたり顕在化する。造影剤により誘導される腎症(Contrast induced nephropaty:CIN、放射線造影剤により引き起こされるAKI)は、腎臓内の血管収縮(虚血性損傷をもたらす)により、および腎尿細管上皮細胞に直接毒性である活性酸素種の産生により引き起こされると考えられている。CINは、従来より、急性(24~48時間以内に発症)であるが、可逆的な(ピーク3~5日、1週間以内に回復)血中尿素窒素および血清クレアチニンの増加を呈する。
【0101】
AKIを定義および検出するための一般に報告されている基準は、血清クレアチニンの突然の(通常、約2~7日以内または入院期間内の)上昇である。AKIを定義および検出するための血清クレアチニン上昇の使用は良好に確立されているが、AKIを定義するために測定される血清クレアチニン上昇の程度および時間は、刊行物の間でかなり変動する。従来より、100%、200%などの血清クレアチニンの比較的大きな増加、2mg/dL超の値までの少なくとも100%の増加、および他の定義が、AKIを定義するために使用された。しかしながら、近年の傾向は、AKIを定義するためにより小さな血清クレアチニンの上昇を使用することに向けられている。血清クレアチニンの上昇、AKI、および関連する健康上のリスクの間の関係は、Praught and Shlipak, Curr Opin Nephrol Hypertens 14:265-270, 2005 and Chertow et al, J Am Soc Nephrol 16: 3365-3370, 2005に概説されており、これはその中に列挙される参照文献と共に、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。これら刊行物に記載されるように、現在では、急性の悪化している腎機能(AKI)ならびに死亡および他の有害なアウトカムのリスクの増加は、血清クレアチニンの非常に小さな増加に関連していることが知られている。これら増加は、相対的な(パーセントの)値または名目上の値として決定され得る。損傷前の値から20%もの小さい血清クレアチニンの相対的な増加が、急激に悪化している腎機能(AKI)および健康上のリスクの増大を表すことが報告されているが、AKIおよび健康上のリスクの増大を定義するためにより一般的に報告されている値は、少なくとも25%の相対的な増加である。わずか0.3mg/dL、0.2mg/dL、またはさらには0.1mg/dLの名目上の増加は、悪化している腎機能および死亡のリスクの増加を表すことが報告されている。たとえば2日間、3日間、7日間、または病院もしくは集中治療室に患者がいる時間として定義される可変の期間の範囲の、血清クレアチニンがこれら閾値まで上昇するまでの様々な期間が、AKIを定義するために使用されている。これら試験は、悪化している腎機能またはAKIに関する特定の閾値の血清クレアチニンの上昇(またはこの上昇の間の期間)が存在するのではなく、血清クレアチニンの上昇の程度が増大するとリスクが継続的に増加することを表している。
【0102】
1つの試験(Lassnigg et al, J Am Soc Nephrol 15:1597-1605, 2004)は、血清クレアチニンの増加および減少の両方を試験した。心臓手術の後に-0.1~-0.3mg/dLの血清クレアチニンの軽度の降下を伴う患者は、最小死亡率を有していた。より大きな血清クレアチニンの降下(-0.4mg/dL以上)または血清クレアチニンの何らかの増加を伴う患者は、死亡率がより高かった。これら知見により、著者らは、腎機能のさらに非常に微妙な変化(外科手術から48時間以内のクレアチニンの小さな変化により検出)が患者のアウトカムに著しく影響を及ぼすと結論付けた。臨床試験および臨床の実務においてAKIを定義するために血清クレアチニンを使用するための統一分類システムについてのコンセンサスを得る試みにおいて、RIFLE基準に関してその全体が本明細書中参照により組み込まれているBellomo et al., Crit Care. 8(4):R204-12, 2004は、AKI患者を層別化するために以下の分類:
「リスク」:血清クレアチニンのベースラインからの1.5倍の増加または6時間での0.5lg/kg体重/時間未満の尿産生;
「損傷」:血清クレアチニンのベースラインからの2.0倍の増加または12時間での0.5ml/kg/時間未満の尿産生;
「不全」:血清クレアチニンのベースラインからの3.0倍の増加または355μmol/l超のクレアチニン(44超の上昇を伴う)または24時間での0.3ml/kg/時間未満の尿量または少なくとも12時間の無尿;
を提案しており、かつ、2つの臨床上のアウトカム:
「喪失」4週間超の腎代替療法の持続的な必要性;
「ESRD」:末期の腎疾患-3カ月超の透析の必要性
を包含していた。
【0103】
これら基準は、RIFLE基準と呼ばれており、腎状態を分類するための有用な臨床ツールを提供する。それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれているKellum, Crit Care Med. 36: S141-45, 2008およびRicci et al., Kidney Int. 73, 538-546, 2008で論述されるように、RIFLE基準は、多くの試験で検証されているAKIの統一された定義を提供する。
【0104】
より最近では、その全体が参照により本明細書に組み込まれているMehta et al., Crit Care 11:R31 (doi:10.1186.cc5713), 2007は、RIFLEから修正されているAKI患者を層別化するための以下の同様の分類(AKIN)を提案している:
「ステージI」:0.3mg/dL以上(≧26.4μmol/L)の血清クレアチニンの増加またはベースラインからの150%以上(1.5倍)の増加または6時間超の間の0.5mL/kg/時間未満の尿量;
「ステージII」:ベースラインからの200%超(2倍超)までの血清クレアチニンの増加または12時間超にわたる0.5mL/kg/時間未満の尿量;
「ステージIII」:300%超(3倍超)までの血清クレアチニンの増加または少なくとも44μmol/Lの急性の増加を伴う血清クレアチニン≧354μmol/Lまたは24時間にわたる0.3mL/kg/時間未満の尿量または12時間の無尿。
【0105】
同様に、Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Acute Kidney Injury Work Group. KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury, Kidney inter., Suppl. 2012; 2: 1-138は、RIFLEおよびAKINの両方について言及し、以下のAKIステージ分類のガイドラインを提供する:
【表3】
【0106】
その全体が参照により本明細書に組み込まれているCIN Consensus Working Panel (McCollough et al, Rev Cardiovasc Med. 2006;7(4):177-197は、造影剤により誘導される腎症(AKIの一種である)を定義するために、血清クレアチニンの25%の上昇を使用している。様々なグループが、AKIを検出するために血清クレアチニンの使用に関してわずかに異なる基準を提案しているが、AKI(悪化している腎機能)を検出するためには、0.3mg/dLまたは25%などの血清クレアチンの小さな変化で十分であること、および血清クレアチニンの変化の大きさが、AKIの重症度および死亡リスクの指標であるというコンセンサスがある。
【0107】
これらAKIの分類システムは、全般的に、各ステージの血清クレアチニンの基準および尿量の基準を含む。本明細書中どこで明記されていても、AKIのいずれのステージは、対象がAKIの特定のステージにある条件を満たす個別の基準のいずれかと等価であると考えられ得る(すなわちいずれかと置き換えられ得る)。一部の実施形態では、本明細書中開示される方法はまた、特定のAKIのステージにより定義される腎状態(たとえば特定のAKIステージに達する尤度または特定のステージの遷延性(persistent)AKIの尤度)に相関させるために使用されてもよく、ここで特定のAKIのステージは、対象がその特定のステージの条件を満たす血清クレアチニンの基準および対象がその特定のステージの条件を満たす尿量の基準の両方を満たすことにより定義され得る。一部の実施形態では、特定のAKIステージは、全ての基準(すなわち全ての血清クレアチニンの基準および全ての尿量の基準の両方)を満たすことにより定義され得る。本明細書中開示される全ての方法は、他の記載がない限り、これら実施形態のいずれかによりAKIのステージを定義し得る。
【0108】
数日間にわたる血清クレアチニンの連続的な測定が、AKIの検出および診断の一般に認められている方法であり、AKI患者を評価するための最も重要なツールの1つとみなされているが、血清クレアチニンは、全般的に、AKI患者の診断、評価、およびモニタリングにおいていくつかの限定を有するとみなされている。血清クレアチニンがAKIに関して診断的であると考えられる値まで上昇(たとえば0.3mg/dLまたは25%上昇)する期間は、使用される定義に応じて48時間以上であり得る。AKIの細胞損傷は数時間で起こり得るため、48時間以上で検出される血清クレアチニンの上昇は、遅れた損傷の指標であり、よって血清クレアチニンに依存することにより、AKIの診断が遅れる可能性がある。さらに、血清クレアチニンは、腎機能が急速に変化しているAKIの最も急性期の間では、正確な腎状態および処置のニーズの良好な指標ではない。一部のAKI患者は完全に回復するが、何人かは透析を必要とし(短期間または長期間のいずれか)、何人かは、死亡、重大な心臓有害イベント、および慢性腎疾患を含む他の有害なアウトカムを有する。血清クレアチニンは濾過率のマーカーであるため、AKI(腎前性、内因性腎性、腎後性閉塞、アテローム塞栓性など)の原因、または内因性腎疾患の損傷のカテゴリーもしくは位置(たとえば尿細管、糸球体、または臓器の間質)を区別することはない。尿量も同様に限定されている。これらを知ることは、AKI患者の管理および処置に非常に重要であり得る。
【0109】
マーカーアッセイ
一般的に、イムノアッセイは、目的のバイオマーカーを含むかまたは含む疑いのあるサンプルを、上記バイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つの抗体と接触させることを含む。次に、抗体にサンプル中のポリペプチドを結合させることにより形成される複合体の存在または量を表すシグナルが生成される。次に、このシグナルを、サンプル中のバイオマーカーの存在または量と関連付ける。バイオマーカーの検出および分析に関する多くの方法およびデバイスが、当業者に周知である。たとえば、米国特許第6,143,576号;同第6,113,855号;同第6,019,944号;同第5,985,579号;同第5,947,124号;同第5,939,272号;同第5,922,615号;同第5,885,527号;同第5,851,776号;同第5,824,799号;同第5,679,526号;同第5,525,524号;および同第5,480,792号、ならびにThe Immunoassay Handbook, David Wild, ed. Stockton Press, New York, 1994を参照されたい。これらは、全ての表、図面、および特許請求の範囲を含むその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0110】
当技術分野で公知であるアッセイのデバイスおよび方法は、目的のバイオマーカーの存在または量に関連するシグナルをもたらすための、様々なサンドイッチアッセイ、競合アッセイ、または非競合アッセイの形式で標識した分子を利用できる。また、適切なアッセイ形式として、クロマトグラフィー、質量分析、およびタンパク質の「ブロッティング」法が挙げられる。さらに、特定の方法およびデバイス、たとえばバイオセンサーおよび光学的なイムノアッセイが、標識した分子を必要とすることなく分析物の存在または量を決定するために使用され得る。たとえば、米国特許第5,631,171号;および同第5,955,377号を参照されたい(これらは、全ての表、図面、および特許請求の範囲を含みその全体が参照により本明細書に組み込まれている)。また当業者は、限定するものではないが、Beckman ACCESS(登録商標)、Abbott AXSYM(登録商標)、Roche ELECSYS(登録商標)、Dade Behring STRATUS(登録商標)システムを含むロボット機器が、イムノアッセイを行うことができるイムノアッセイ分析装置の中にあることを認識している。しかしながら、たとえば、酵素結合免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、競合結合アッセイなどの任意の適切なイムノアッセイを利用してもよい。
【0111】
抗体または他のポリペプチドは、アッセイで使用するために様々な固体の担体に固定され得る。特定の結合メンバーを固定するために使用され得る固相は、固相結合アッセイの固相として開発および/または使用されるものを含む。適切な固相の例として、膜フィルター、セルロースベースの紙、ビーズ(重合体、ラテックス、および常磁性粒子を含む)、ガラス、シリコンウェハー、マイクロ粒子、ナノ粒子、TentaGels、AgroGels、PEGA gels、SPOCCゲル、および複数のウェルプレートが挙げられる。アッセイの条片は、固体の担体上のアレイに抗体または複数の抗体をコーティングすることにより調製され得る。次に、この条片を、試験サンプルに浸し、次に洗浄および検出ステップを介して迅速に処理すると、着色されたスポットなどの測定可能なシグナルを生成することができる。抗体または他のポリペプチドは、アッセイデバイスの表面に直接コンジュゲートするかまたは間接的な結合により、アッセイデバイスの特定の領域に結合し得る。後者の場合の例では、抗体または他のポリペプチドは、この固体の担体がデバイスの表面に固定され得る、粒子または他の固体の担体上に固定され得る。
【0112】
生物学的なアッセイは、検出のための方法を必要とし、結果の定量化の最も一般的な方法の1つは、試験される生物系における成分の1つに対して親和性を有するタンパク質または核酸に検出可能な標識をコンジュゲートすることである。検出可能な標識は、自身が検出可能である分子(たとえば蛍光部分、電気化学的な標識、金属キレートなど)、ならびに検出可能な反応産物の産生により(たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼなどの酵素など)または自身が検出可能であり得る特異的な結合分子の使用により(たとえばビオチン、ジゴキシゲニン、マルトース、オリゴヒスチジン、2,4-ジニトロ(dintro)ベンゼン、フェニルヒ酸(phenylarsenate)、ssDNA、dsDNAなど)間接的に検出され得る分子を含み得る。
【0113】
固相および検出可能な標識のコンジュゲートの調製は、多くの場合、化学的架橋剤の使用を含む。架橋剤は、少なくとも2つの反応基を含み、全般的にホモ官能性架橋剤(同一の反応基を含む)およびヘテロ官能性架橋剤(非同一の反応基を含む)に分けられる。アミン、スルフヒドリルを介してカップリングするかまたは非特異的に反応するホモ二官能性架橋剤は、多くの商業的な供給源から入手可能である。マレイミド、アルキルおよびアリールのハロゲン化物、α-ハロアシル、ならびにピリジルジスルフィドは、チオール反応基である。マレイミド、アルキルおよびアリールのハロゲン化物、ならびにα-ハロアシルは、スルフヒドリルと反応してチオールエーテル結合を形成し、ピリジルジスルフィドは、スルフヒドリルと反応して混合したジスルフィドを産生する。ピリジルジスルフィド生成物は、切断可能である。イミドエステルもまた、タンパク質間の架橋に非常に有用である。それぞれがコンジュゲートの成功のための異なる特性を組み合わせた、様々なヘテロ二官能性架橋剤が、市販されている。
【0114】
特定の態様では、本発明は、記載される腎損傷マーカーの分析のためのキットを提供する。本キットは、腎損傷マーカーである少なくとも1つの抗体を含む少なくとも1つの試験サンプルの分析のための試薬を含む。また本キットは、本明細書中記載される1つ以上の診断および/または予後判定の相関を行うためのデバイスおよび説明書を含み得る。好ましいキットは、サンドイッチアッセイを行うための抗体対または分析物に関して競合アッセイを行うための標識した種を含む。好ましくは、抗体対は、固相にコンジュゲートした第1の抗体および検出可能な標識にコンジュゲートした第2の抗体を含み、ここで第1および第2の抗体のそれぞれが腎損傷マーカーに結合する。最も好ましくは、各抗体は、モノクローナル抗体である。本キットの使用のためおよび相関を行うための説明書は、それに添付されるいずれかの書面での材料もしくは記録された材料を指すラベルの形態であり得るか、または他の場合では、その製造、輸送、販売、もしくは使用の間のいずれかの時点でキットに付随する。たとえば、用語ラベルは、広告ビラおよびパンフレット、包装材料、説明書、オーディオカセットまたはビデオカセット、コンピュータディスク、ならびにキットに直接刻印された書き込みを包有する。
【0115】
抗体
用語「抗体」は、本明細書中使用される場合、抗原またはエピトープに特異的に結合できる、免疫グロブリン遺伝子もしくは複数の免疫グロブリン遺伝子に由来するか、後にモデル化されるか、もしくはこれにより実質的にコードされているペプチドもしくはポリペプチド、またはそれらのフラグメントを表す。たとえば、Fundamental Immunology, 3rd Edition, W.E. Paul, ed., Raven Press, N.Y. (1993); Wilson (1994; J. Immunol. Methods 175:267-273; Yarmush (1992) J. Biochem. Biophys. Methods 25:85-97を参照されたい。用語抗体は、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL、およびCHlドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合した2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメント;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一のアームのVLドメインおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなる、dAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む、抗原結合部分、すなわち抗原結合能を保持する「抗原結合部位」(たとえばフラグメント、配列、相補性決定領域(CDR))を含む。一本鎖抗体もまた、参照により用語「抗体」に含まれる。
【0116】
本明細書中記載のイムノアッセイで使用される抗体は、好ましくは本発明の腎損傷マーカーに特異的に結合する。用語「特異的に結合する」は、上述のように、抗体は、抗体が結合するエピトープを表示するいずれかのポリペプチドに結合するため、その意図した標的に排他的に結合することを表すと意図していない。むしろ、その意図した標的に対する親和性が、適切なエピトープを表示しない非標的の分子に対するその親和性と比較した際に約5倍超である場合、抗体は「特異的に結合する」。好ましくは、本抗体の親和性は、非標的分子に対するその親和性よりも、標的分子に対して少なくとも約5倍、好ましくは10倍、より好ましくは25倍、さらにより好ましくは50倍、最も好ましくは100倍、またはそれ以上高い。好ましい態様では、好ましい抗体は、少なくとも約10-1、好ましくは約10-1~約10-1、約10-1~約1010-1、または約1010-1~約1012-1の親和性で結合する。
【0117】
親和性は、K=koff/konとして計算される(koffは、解離速度定数であり、Konは、結合速度定数であり、Kは、平衡定数である)。親和性は、平衡時に、様々な濃度(c)の標識したリガンドの結合分画(r)を測定することにより決定され得る。このデータを、スキャッチャード式:r/c=K(n-r)(式中、r=平衡時の結合したリガンドのモル/受容体のモル濃度;c=平衡時の遊離リガンド濃度;K=平衡結合定数;およびn=受容体分子あたりのリガンド結合部位の数)を使用してグラフ化する。グラフ分析により、r/cを、x軸上のrに対してy軸上にプロットし、これによりスキャッチャードプロットを生じる。スキャッチャード分析による抗体の親和性の測定は、当技術分野で周知である。たとえば、van Erp et al., J. Immunoassay 12: 425-43, 1991; Nelson and Griswold, Comput. Methods Programs Biomed. 27: 65-8, 1988を参照されたい。
【0118】
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合できる抗原性決定因子を表す。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基(grouping)からなり、通常、特有の3次元構造特徴および特有の電荷特徴を有する。立体構造のエピトープおよび非立体構造のエピトープは、変性溶媒の存在下で前者に対する結合が失われるが、後者に対する結合は失われないという点で、区別される。
【0119】
アッセイ相関
用語「相関させる」は、バイオマーカーの使用に関して本明細書中使用される場合、患者におけるバイオマーカーの存在または量を、所定の状態を罹患しているかもしくは所定の病態のリスクがあることが知られている人;または所定の状態を有さないことが知られている人におけるその存在または量と比較することを指す。多くの場合、これは、バイオマーカー濃度の形態のアッセイ結果を、疾患の発症の有無またはいくつかの将来的なアウトカムの尤度を表すように選択された既定の閾値と比較する形態をとる。
【0120】
診断の閾値を選択することは、特に、診断に基づいて、疾患の確率、異なる試験の閾値での真および偽の診断の分布、ならびに処置(または処置の失敗)の結果の推定値を検討することを含む。たとえば、著しく有効でありリスクレベルが低い特定の治療を投与することを検討する場合、臨床医は実質的な診断の不確実性を容認できるため、試験をほとんど必要としない。他方で、処置の選択肢の有効性が低くリスクが高い状況では、多くの場合、臨床医はより高い度合いの診断の確実性を必要とする。よって、診断の閾値の選択には費用便益分析が関係する。
【0121】
適切な閾値は、様々な方法で決定され得る。たとえば、心筋トロポニンを使用した急性心筋梗塞の診断で推奨される1つの診断の閾値は、正常な集団で見られる濃度の97.5パーセンタイルである。別の方法は、同じ患者に由来する連続的なサンプルを調べることであり得るが、この場合以前の「ベースライン」の結果を使用して、バイオマーカーレベルの時間的な変化をモニタリングする。
【0122】
集団試験もまた、決定閾値を選択するために使用され得る。受信者動作特性(ROC:Receiver Operating Characteristic)は、レーダーの画像の分析のため第2次世界大戦の間に開発されたシグナル検出理論の分野から生じたものであり、ROC分析は、多くの場合、「疾患状態の」部分集団を「非疾患状態の」部分集団と最良に区別できる閾値を選択するために使用される。この場合の偽陽性は、人が試験陽性であるが、実際は疾患を有さない場合に起こる。他方で、偽陰性は、人が試験陰性であり、健常であることが示唆されるが、実際には疾患状態を有する場合に起こる。ROC曲線を描くために、決定閾値が持続的に変動することから、真陽性率(TRR)および偽陽性率(FPR)を決定する。TRRは感度と同等であり、FRRは1-特異度に等しいため、ROCグラフは、場合により、感度対(1-特異度)のプロットと呼ばれる。完璧な試験は、1.0のROC曲線下面積を有し;無作為試験は、0.5の面積を有するであろう。閾値は、許容されるレベルの特異度および感度を提供するように選択される。
【0123】
この文脈では、「疾患状態の」は、1つの特徴(疾患もしくは状態の存在またはいくつかのアウトカムの発生)を有する集団を指すと意図され、「非疾患状態の」は、この特徴を欠いた集団を指すと意図されている。単一の決定閾値は、このような方法の最も単純な適用であるが、複数の決定閾値を使用してもよい。たとえば第1の閾値を下回る場合、疾患の非存在が比較的高い信頼性で割り当てられ得るか、第2の閾値を上回る場合、疾患の存在が比較的高い信頼性で割り当てられ得る。この2つの閾値の間は、不定とみなされ得る。これは、実際は単なる例示であると意図されている。
【0124】
閾値の比較に加えて、アッセイ結果を特定の分類(疾患の発生の有無、アウトカムの尤度など)に相関させるための他の方法として、決定木、ルールセット、ベイズ法、およびニューラルネットワーク法が挙げられる。これら方法は、対象が複数の分類のうちの1つの分類に属する程度を表す確率の値を生じることができる。
【0125】
試験の正確性の測定は、Fischer et al., Intensive Care Med. 29: 1043-51, 2003に記載されるように得てもよく、これを使用して所定のバイオマーカーの有効性を決定してもよい。これら測定値として、感度および特異度、予測値、尤度比、診断のオッズ比、ならびにROC曲線面積が挙げられる。ROCプロットの曲線下面積(「AUC」)は、分類子が無作為に選択した負の例よりも高い無作為に選択した正の例をランクづける確率に等しい。ROC曲線下面積は、グループが連続的なデータである場合に考慮される2つのグループで得られるスコア間の差の中央値に関して試験するマン・ホイットニーのU検定、またはウィルコクソンの順位検定(Wilcoxon test of ranks)と等価であると考えられ得る。
【0126】
上述のように、適切な試験は、これら様々な測定値に関する以下の結果のうちの1つ以上を示し得る:対応する0.2超、好ましくは0.3超、より好ましくは0.4超、さらにより好ましくは少なくとも0.5、さらにより好ましくは0.6、さらにより好ましくは0.7超、さらにより好ましくは0.8超、より好ましくは0.9超、および最も好ましくは0.95超の感度を伴う、0.5超、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、さらにより好ましくは少なくとも0.8、さらにより好ましくは少なくとも0.9、および最も好ましくは少なくとも0.95の特異度;対応する0.2超、好ましくは0.3超、より好ましくは0.4超、さらにより好ましくは少なくとも0.5、さらにより好ましくは0.6、さらにより好ましくは0.7超、さらにより好ましくは0.8超、より好ましくは0.9超、および最も好ましくは0.95超の特異度を伴う、0.5超、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、さらにより好ましくは少なくとも0.8、さらにより好ましくは少なくとも0.9、および最も好ましくは少なくとも0.95の感度;少なくとも75%の特異度と組み合わせた、少なくとも75%の感度;0.5超、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは0.7、さらにより好ましくは0.75、さらにより好ましくは少なくとも0.8、さらにより好ましくは少なくとも0.9、および最も好ましくは少なくとも0.95のROC曲線面積;1とは異なる、好ましくは少なくとも約2以上または約0、5以下、より好ましくは少なくとも約3以上または約0.33以下、さらにより好ましくは少なくとも約4以上または約0.25以下、さらにより好ましくは少なくとも約5以上または約0.2以下、最も好ましくは少なくとも約10以上または約0.1以下のオッズ比;1超、少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、さらにより好ましくは少なくとも5、および最も好ましくは少なくとも10の陽性尤度比(感度/(1-特異度)として計算);ならびに1未満、0.5以下、より好ましくは0.3以下、および最も好ましくは0.1以下の陰性尤度比((1-感度)/特異度として計算)。
【0127】
さらなる臨床指標を、本発明の腎損傷マーカーのアッセイ結果と組み合わせてもよい。これらは、腎状態に関連する他のバイオマーカーを含む。例として、以下が挙げられ、これは、一般的なバイオマーカー名、続いてそのバイオマーカーまたはその親のSwiss-Prot entry numberを記載している:アクチン(P68133);アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(DPP4、P27487);α1酸性糖タンパク質1(P02763);α1-マイクログロブリン(P02760);アルブミン(P02768);アンジオテンシノゲナーゼ(Angiotensinogenase)(レニン、P00797);アネキシンA2(P07355);ベータ-グルクロニダーゼ(P08236);B-2-マイクログロブリン(P61769);ベータ-ガラクトシダーゼ(P16278);BMP-7(P18075);脳性ナトリウム利尿ペプチド(proBNP、BNP-32、NTproBNP;P16860);カルシウム結合タンパク質ベータ(S100-β、P04271);炭酸脱水酵素9(Q16790);カゼインキナーゼ2(P68400);クラステリン(P10909);補体C3(P01024);システインリッチタンパク質(CYR61、O00622);チトクロムC(P99999);上皮増殖因子(EGF、P01133);エンドセリン-1(P05305);エクソソームフェツイン-A(P02765);脂肪酸結合タンパク質、心臓(FABP3、P05413);脂肪酸結合タンパク質、肝臓(P07148);フェリチン(軽鎖、P02792;重鎖P02794);フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(P09467);GRO-アルファ(CXCL1、(P09341);成長ホルモン(P01241);肝細胞増殖因子(P14210);インスリン様成長因子I(P05019);免疫グロブリンG;免疫グロブリン軽鎖(カッパおよびラムダ);インターフェロンガンマ(P01308);リゾチーム(P61626);インターロイキン-1アルファ(P01583);インターロイキン-2(P60568);インターロイキン-4(P05112);インターロイキン-9(P15248);インターロイキン-12p40(P29460);インターロイキン-13(P35225);インターロイキン-16(Q14005);L1細胞接着分子(P32004);乳酸脱水素酵素(P00338);ロイシンアミノペプチダーゼ(P28838);メプリンAアルファサブユニット(Q16819);メプリンAベータサブユニット(Q16820);ミッドカイン(P21741);MIP2-アルファ(CXCL2、P19875);MMP-2(P08253);MMP-9(P14780);ネトリン-1(O95631);中性エンドペプチダーゼ(P08473);オステオポンチン(O14788);腎乳頭抗原1(RPA1);腎乳頭抗原2(RPA2);レチノール結合タンパク質(P09455);リボヌクレアーゼ;S100カルシウム結合タンパク質A6(P06703);血清アミロイドP成分(P02743);ナトリウム/水素交換体アイソフォーム(NHE3、P48764);スペルミジン/スペルミンN1-アセチルトランスフェラーゼ(P21673);TGF-Β1(P01137);トランスフェリン(P02787);トレフォイル因子3(TFF3、Q07654);Toll-様タンパク質4(O00206);総タンパク質;尿細管間質性腎炎抗原(Q9UJW2);ウロモジュリン(タム・ホースフォールタンパク質、P07911)。
【0128】
リスク層別化のため、アディポネクチン(Q15848);アルカリフォスファターゼ(P05186);アミノペプチダーゼN(P15144);カルビンディンD28k(P05937);シスタチンC(P01034);F1FOATPaseの8つのサブユニット(P03928);ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(P19440);GSTa(α-グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、P08263);GSTpi(グルタチオン-S-トランスフェラーゼP;GSTクラス-pi;P09211);IGFBP-1(P08833);IGFBP-2(P18065);IGFBP-6(P24592);膜内在性タンパク質1(Itm1、P46977);インターロイキン-6(P05231);インターロイキン-8(P10145);インターロイキン-18(Q14116);IP-10(10kDaインターフェロンガンマ誘導性タンパク質、P02778);IRPR(IFRD1、O00458);イソバレリル-CoAデヒドロゲナーゼ(IVD、P26440);I-TAC/CXCL11(O14625);ケラチン19(P08727);Kim-1(A型肝炎ウイルス細胞受容体1、O43656);L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(P50440);レプチン(P41159);リポカリン2(NGAL、P80188);MCP-1(P13500);MIG(γ-インターフェロン誘導性モノカインQ07325);MIP-1a(P10147);MIP-3a(P78556);MIP-1ベータ(P13236);MIP-1d(Q16663);NAG(N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ、P54802);有機イオン輸送体(OCT2、O15244);オステオプロテジェリン(O14788);P8タンパク質(O60356);プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1、P05121);ProANP(1-98)(P01160);プロエンケファリン(P01210);プロテインホスファターゼ1-ベータ(PPI-β、P62140);Rab GDI-ベータ(P50395);腎カリクレイン(P06870);膜内在性タンパク質のRT1.B-1(α)鎖(Q5Y7A8);可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1A(sTNFR-I、P19438);可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1B(sTNFR-II、P20333);組織メタロプロテアーゼ阻害物質3(TIMP-3、P35625);uPAR(Q03405)が、本発明の腎損傷マーカーのアッセイ結果と組み合わせられ得る。
【0129】
アポトーシス、壊死、内皮損傷、細胞間接着および細胞-マトリックス間接着、細胞保護、酸化プロセス、細胞周期の調節、炎症、尿細管損傷、免疫機能、および線維症に関連するバイオマーカーは、腎臓組織の損傷または修復の妥当な機構に基づき、腎損傷、急性腎損傷、および/または遷延性急性腎損傷を含む腎状態の予測および/または診断のため、単独または組み合わされた適切な候補であり得る(Kashani K, Al-Khafaji A, Ardiles T, Artigas A, Bagshaw SM, Bell M, et al. Crit Care. 2013;17(1):R25)。C-Cモチーフケモカイン14(CCL14)は、現在および/または将来の遷延性急性腎損傷のマーカーを含む、腎状態に相関する腎損傷マーカーとして機能し得る。CCL14は、白血球の走化性における役割に関して最初に認識された小分子のケモカインファミリーのメンバーであり、組織の損傷および修復のプロセスに関与している。CCL14は、ケモカイン受容体CCR1およびCCR5に対しては高い親和性、およびCCR3に対しては低い親和性で結合する(Detheux M, Standker L, Vakili J, Munch J, Forssmann U, Adermann K, et al. J Exp Med. 2000;192(10):1501-8.)。CCL14は、単球/マクロファージの動員にとって重要なケモカインであり、関節リウマチ、多発性硬化症、およびループスを含む様々な疾患における炎症促進性の走化性に関連している(Rump L, Mattey DL, Kehoe O, Middleton J. Cytokine. 2017; 97:133-40; Vyshkina T, Sylvester A, Sadiq S, Bonilla E, Perl A, Kalman B. J Neuroimmunol. 2008;200(1-2):145-52)。
【0130】
本発明の腎損傷マーカーのアッセイ結果と組み合わせられ得る他の臨床指標として、人口統計情報(たとえば体重、性別、年齢、人種)、病歴(たとえば家族の病歴、外科手術の種類、既存の疾患、たとえば動脈瘤(aneurism)、うっ血性心不全、子癇前症、子癇、真性糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、タンパク尿、腎不全、または敗血症、NSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線不透過性造影剤、またはストレプトゾトシンなどの種類の毒素への曝露)、臨床変数(たとえば血圧、体温、呼吸速度)、リスクスコア(APACHEスコア、PREDICTスコア、TIMI Risk Score for UA/NSTEMI、Framingham Risk Score)、尿中の総タンパク質測定値、糸球体濾過率、推定糸球体濾過率、尿産生尿産生速度、血清または血漿中クレアチニンの濃度、腎乳頭抗原1(RPA1)の測定値;腎乳頭抗原2(RPA2)の測定値;尿中クレアチニンの濃度、ナトリウムの部分排泄率、尿中ナトリウム濃度、尿中クレアチニン対血清または血漿中クレアチニンの比率、尿比重、尿浸透圧、尿中尿素窒素対血漿中尿素窒素の比率、血漿中のBUN対クレアチニンの比率、および/または尿中ナトリウム/(尿中クレアチニン/血漿中クレアチニン)として計算される腎不全指数が挙げられる。腎損傷マーカーのアッセイ結果と組み合わせられ得る腎機能の他の測定値は、本明細書中以下ならびにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Harrison’s Principles of Internal Medicine, 17th Ed., McGraw Hill, New York, pages 1741-1830およびCurrent Medical Diagnosis & Treatment 2008, 47th Ed, McGraw Hill, New York, pages 785-815に記載されている。
【0131】
この方法でアッセイ結果/臨床指標を組み合わせることは、多変量ロジスティック回帰、対数線形モデル、ニューラルネットワーク分析、mのうちのn分析(n-of-m analysis)、決定木分析などの使用を含み得る。この列挙は、限定的であると意図されない。
【0132】
個々のマーカー(たとえばサンプルにおける個別のマーカー濃度のアッセイ結果)および/または他の臨床指標の測定値または値を、単一の複合的な値へと組み合わせる場合、単一の複合的な値を、たとえば統計の目的に関して、個別のバイオマーカーであるかのように扱ってもよい。一部の態様(「プロダクトモデル」)では、「X」(乗算)および「/」(除算)などの算術演算子を、その通常の意味で使用してマーカーのレベルなどの個別のパラメータを単一の複合的な値に組み合わせてもよい。別の態様では、ロジスティック回帰を使用して、個別のパラメータを単一の複合的な値へと組み合わせてもよい。ロジスティック回帰は、「遷延性」または「非遷延性」の二分法などの2元のアウトカムを有するモデルで広く使用される方法である。例として、ロジスティック回帰のための方法は、以下に簡潔に記載されているが、完全な処置は、文献で見出すことができる。このモデルは、以下の関数により表され得る:
【数1】
【0133】
このモデルでは、xおよびβはベクトルであり、xは、異なる観察可能な値または分析物の値を表し、yi=1は、疾患状態を表し、
【数2】
は、xiとして表されるi番目の例に関するこの状態のモデルの確率である。各サンプルのパネルの値は、
【数3】
である。logオッズまたはロジットは、
【数4】

である。
【0134】
真のアウトカムを観察する確率は、piとして定義され得る:
【数5】
【0135】
尤度関数は、真のアウトカムを観察する確率の積であり、よってlog尤度(LL)は、
【数6】
である。
【0136】
このモデルに最良に適合するパラメータ、αおよびβを見出すために、負の対数尤度(-LL)を最小化する。この最小化は、Levenberg-Marquardt法(Numerical Recipes: The Art of Scientific Computing, Third Edition, Cambridge University Press, 2007)を使用して行われ得る。各パラメータの開始点は、0である。
【0137】
2つのネストしたモデルの適合を比較するために一般に使用される統計は、尤度比検定である。この統計または逸脱は、2つのモデルに関する2倍の負の対数尤度(-2LL)の差であり、漸近的に、DFがモデル間の自由度の数(独立したパラメータの数)の変化に等しいχ2分布である。p値は、この統計から計算される。帰無仮説は、ロジスティックモデルが、定常モデル(βは0に設定)と異ならないことであり、尤度比検定を使用して各モデルに関して試験される。「モデルp値」は、帰無仮説が真である確率として定義される。定常モデルでは、αおよび-2LLの閉形式の解が見出され得る。これは、データセットにおける疾患状態の数(#D)および非疾患状態の数(#ND)の関数である。
【数7】
【0138】
一部の実施形態では、CCL14は、プロダクトモデルを使用して、シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と共に、単一の複合的な値へと組み合わせられ得る。例として、マーカーの測定は、CCL14xシスタチンC、CCL14xシスタチンCxクレアチニン、CCL14xシスタチンC/尿量、CCL14xクレアチニン、CCL14xクレアチニン/尿量、CCL14/尿量、およびCCL14xシスタチンCxクレアチニン/尿量のように組み合わせられ得る。
【0139】
一部の実施形態では、CCL14は、ロジスティック回帰を使用して、シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と単一の複合的な値へと組み合わせられ得る。ロジスティック回帰モデルでは、たとえば高いリスクおよび/または正の診断(たとえば遷延性AKIのリスク)を有する対象のオッズの対数(対数オッズ)を、予測因子の線形結合によりモデル化する。マーカーの測定は、たとえば本明細書中他の箇所で記載されるように、組み合わせられ得る。
【0140】
一部の実施形態では、CCL14は、対数線形モデル化を使用して、シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と単一の複合的な値へと組み合わせられ得る。例として、対数線形モデル化のための方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Khoury et al. ”Familial aggregation in chronic obstructive pulmonary disease: use of the loglinear model to analyze intermediate environmental and genetic risk factors. Genet Epidemiol. 2(2): 155-66 (1985)に記載されるように、行われ得る。
【0141】
一部の実施形態では、CCL14は、線形判別(linear discriminant)を使用して、シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と単一の複合的な値へと組み合わせられ得る。線形判別は、2つのグループ間の分離を最大限にする予測因子の線形結合を見出すことにより、高いリスクおよび低いリスクの対象の間、または正および負の診断を有する対象(たとえば遷延性AKIのリスクが高い対象および低い対象)の間の関係をモデル化する。
【0142】
一部の実施形態では、CCL14は、決定木分析において測定またはアッセイ結果を共に使用することにより、シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と共に(すなわちこれと組み合わせて)使用され得る。例として、決定木分析のための方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Song, YY, and Lu Y (2015) ”Decision tree methods: applications for classification and prediction.” Shanghai Arch Psychiatry. 2015 Apr 25; 27(2): 130-135に記載されるように行われ得る。決定木は2つ以上のノード(たとえば2、3、4、5、6、7、8、9、10のノード)のシーケンスを含み、ここで入力変数が試験され、ノードでの試験の2つの可能性のあるアウトカムを示す2つのブランチが各ノードから延びる。入力を分類するために、これは、木を上から「下に置き」、最終的に、木のブランチの累積的な末端で形成される少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類される確率を生じる。この入力は、さらなるマーカーもしくは指標(たとえばシスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上)の1つ以上の測定またはアッセイ結果に加え、CCL14の測定またはアッセイ結果を含み得る。出力は、本明細書中他で開示される腎状態のうちのいずれか1つ以上(たとえば、遷延性AKIのリスクまたは尤度、遷延性AKIの診断、AKIのリスクまたは尤度、AKIの診断、AKIに関連するアウトカムなど)を含み得る。特定のブランチの末端の必要条件を満たす対象が特定の腎状態を有する確率は、たとえば、特定の腎状態を実際に有する同じブランチの末端の必要条件を満たす(たとえば集団試験から)集団の比率に基づき、推定され得る。
【0143】
決定木分析は、2つ以上のブランチの末端に対応する2つ以上の腎状態(たとえば遷延性AKI)の確率を生成するために使用され得る。一部の実施形態では、各末端の確率は、降順/昇順でランク付けされてもよく、腎状態の相対的なリスクまたは尤度に相関し得る。たとえば、3つのブランチの末端を有する決定木を使用して、対象を、特定の腎状態を有する比較的高いリスク、中間のリスク、または低いリスクを有すると分類してもよい。一部の実施形態では、1つ以上のブランチの末端を、同じカテゴリーにグループ分けしてもよい。たとえば、閾値の確率を上回るまたは下回る全ての確率を、1つのカテゴリーにグループ分けしてもよい。例として、3つ以上のブランチの末端を有する決定木を使用して、遷延性急性腎損傷の比較的高いまたは低いリスクを対象に割り当ててもよく、または4つ以上のブランチの末端を有する決定木を使用して、遷延性腎損傷の比較的高いリスク、中間のリスク、もしくは低いリスクを対象に割り当ててもよい。一部の実施では、対象を最も高いリスクまたは尤度にあると分類するために、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の確率が十分であるとみなされ得る。一部の実施では、最小のリスクまたは尤度にあると対象を分類するために、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%未満の確率が十分であるとみなされ得る。一部の実施では、中間のリスクまたは尤度は、最大または最小のリスクまたは尤度のいずれの基準も満たさないいずれかの対象に割り当てられ得る。一部の実施では、複数のブランチを、単一のブランチへと統合してもよく、確率を、特定の腎状態を有する対象の調節された比率に基づき再計算してもよい。一部の実施では、より高いリスクグループの確率は、最小リスクグループよりも少なくとも1.10、1.25、1.5、1.75、2.0、3.0、4.0、または5.0倍高くなり得る。一部の実施では、最大のリスクのグループの確率は、中間のリスクのグループよりも少なくとも1.10、1.25、1.5、1.75、2.0、3.0、4.0、または5.0倍高くなり得る。一部の実施では、各リスクのグループは、次の最大のリスクのグループよりも少なくとも1.10、1.25、1.5、1.75、2.0、3.0、4.0、または5.0倍高くなり得る。
【0144】
決定木分析の様々な実施形態では、ノードは、1つのブランチが、測定値(たとえばマーカーの濃度)が閾値超であることを指定し、他のブランチが、測定値が閾値以下であることを指定するマーカーに関する閾値を含み得る。一部の実施形態では、決定木は、少なくとも1つのCCL14ノードと、シスタチンCノード、クレアチニンノード、および尿量ノードから選択される追加のノードとを含み得る。一部の実施形態では、決定木は、少なくとも1つのCCL14ノードと、シスタチンCノード、クレアチニンノード、および尿量ノードから選択される2つの追加のノードとを含み得る。一部の実施形態では、決定木は、少なくとも1つのCCL14ノード、シスタチンCノード、クレアチニンノード、および尿量ノードを含み得る。一部の実施形態では、決定木は、同じマーカーに関して1超のノードを含み得る。たとえば、このシリーズの第1のノード(すなわち木の上部に対するノード)は、第1の閾値を指定し得、このシリーズの第2のノード(すなわち木の下部に対するノード)は、第1のノードのどのブランチに対して第2のノードが配置されるかに応じて第1の閾値を上回るかまたは下回る第2の閾値を指定し得る。
【0145】
様々な実施形態では、1つ以上のノードは、RIFLEまたはKDIGO基準に対応する閾値検定を含み得る。たとえば、一実施形態では、ノードは、血清クレアチニンが、本明細書中他で定義されるように、対象がRIFLEステージR、I、もしくはFのうちの1つまたはKDIGOステージ1、2、もしくは3のうちの1つの条件を満たす閾値の値を上回るかどうかを試験し得る。別の実施形態では、ノードは、尿量が、本明細書中他で定義されるように、対象がRIFLEステージR、I、もしくはFのうちの1つまたはKDIGOステージ1、2、もしくは3のうちの1つの条件を満たす閾値の値を下回るかどうかを試験し得る。一般的に、RIFLEステージR、I、もしくはFのうちの1つまたはKDIGOステージ1、2、もしくは3のうちの1つに関する血清クレアチニンの基準および尿量の基準の両方を満たす対象は、同じステージの血清クレアチニンの基準または尿量の基準のみを満たす対象よりも、有害な腎状態(たとえばこのようなRIFLEステージの遷延性AKIまたは次のステージのAKIへの進行)に関して高いリスクまたは尤度にあり得る。一般的に、CCL14、シスタチンC、クレアチニン、および尿量に関する複数の閾値を満たす(すなわち陽性マーカーの閾値を超えるか、または陰性マーカーの閾値以下となる)対象は、対象がこれら閾値のうちの1つのみを満たした場合よりも、これら閾値を満たすことにより定義される腎状態を呈する尤度またはリスクが高い。リスクまたは尤度は、満たされる閾値の数が増加すると、増加し得る。いずれかのノードに関する特定の閾値は、本明細書中他で開示される閾値のいずれかであり得る。一部の実施では、集団のより大きい割合が、マーカーが単独で使用される場合よりも大きなブランチの基準を満たすことができるように、閾値を調節してもよく、さらには、試験される腎状態を実際に呈する選択された集団の確率は、マーカーを追加のマーカーと組み合わせて使用することにより改善され得る。
【0146】
一部の実施形態では、ノードのいずれかへの入力は、CCL14、シスタチンC、クレアチニン、および尿量の単一の測定またはアッセイ結果であり得る。一部の実施形態では、ノードのいずれかへの入力は、複合的な値であり得る。一部の実施形態では、ノードへの入力は、単一の測定/アッセイ結果および複合的な値の両方を含み得る。複合的な値は、本明細書中他で記載されるCCL14、シスタチンC、クレアチニン、および尿量の1つ以上の測定値またはアッセイ結果の組み合わせから生成され得る。たとえば、入力は、CCL14xシスタチンC、CCL14xシスタチンCxクレアチニン、CCL14xシスタチンC/尿量、CCL14xクレアチニン、CCL14xクレアチニン/尿量、CCL14/尿量、およびCCL14xシスタチンCxクレアチニン/尿量を含み得る。複合的な値は、ロジスティック回帰、対数線形モデル、線形判別、または本明細書中他で記載されるマーカーの比率を使用して生成され得る。
【0147】
一部の実施形態では、CCL14は、ランダムフォレスト分析において測定値またはアッセイ結果を共に使用することにより、シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と共に(すなわちこれと組み合わせて)使用され得る。ランダムフォレスト分析は、それぞれが同じアウトカムの確率を測定し得る複数の固有の決定木を含む。ランダムフォレスト分析の最終的な結果は、同じ入力に関して同じアウトカムを生成する木の数(比率)により決定され得る。一部の実施形態では、木の大部分の「票(vote)」は、対象に腎状態を割り当てるために使用され得る(たとえば対象は、木の大部分が遷延性AKIの高い尤度を予測する場合、遷延性AKIの比較的高い尤度に割り当てられる)。一部の実施形態では、リスクまたは尤度は、特定のアウトカムをもたらす木の数により層別化され得る。たとえば、高いリスクまたは尤度は、木の少なくとも70%が高い尤度を予測する場合に割り当てられ得、中程度のリスクまたは尤度は、木の30~70%が高い尤度を予測する場合に割り当てられ得、低いリスクまたは尤度は、木の30%未満が高い尤度を予測する場合に割り当てられ得、ここで、各木は、当該腎状態の高いまたは低いリスクまたは尤度を予測する。ランダムフォレストアルゴリズムは、本明細書中開示される決定木のいずれかのうちの1つ以上を使用して生成され得る。一部の実施形態では、ランダムフォレストアルゴリズムは、少なくとも3、5、10、50、100、200、300、400、500、または1000の固有の決定木を含む。
【0148】
一部の実施形態では、CCL14は、mのうちのn(陽性数(number positive))分析において測定またはアッセイ結果と共に使用することにより、シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と共に(すなわちこれと組み合わせて)使用され得る。例として、mのうちのn分析を使用する方法は、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、2012年3月29日に公開されたAnderbergらの国際特許公開公報第2012040592号により記載されるように行われ得る。数の実証分析では、多くの基準を試験する。合計「m」の基準の数のうち「n」の数の基準が満たされる場合、特定の腎状態が対象に割り当てられ得る。たとえば、高いリスクまたは尤度の遷延性AKIは、mの基準のうち少なくともnが満たされる場合に割り当てられ得る。一部の実施形態では、この基準の1つ以上は、本明細書中他の決定木分析に関して記載されたいずれかの個別のノードの検定と同じであり得る。一部の実施形態では、mは、2、3、4、5、またはそれ以上の基準であり得る。一部の実施形態では、nは、1、2、3、4、またはそれ以上の基準(正の基準の数)であり得る。一部の実施形態では、nは、m-1、m-2、m-3などに等しくなり得る。一部の実施形態では、数の実証分析は、CCL14の基準と、シスタチンCの基準、クレアチニンの基準、および尿量の基準から選択される1つ以上の追加の基準とを含む。一部の実施形態では、数の実証分析は、CCL14の基準と、シスタチンCの基準、クレアチニンの基準、および尿量の基準から選択される2つ以上の追加の基準とを含む。一部の実施形態では、数の実証分析は、CCL14の基準、シスタチンCの基準、クレアチニンの基準、および尿量の基準を含む。一部の実施形態では、数の実証分析は、所定のマーカー(たとえばCCL14、シスタチンC、クレアチニン、および尿量)に関する複数の基準を含み得る。
【0149】
一部の実施形態では、CCL14は、ニューラルネットワークにおいて測定値またはアッセイ結果を共に使用することにより、シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と共に(すなわちこれと組み合わせて)使用され得る。例として、人工的なニューラルネットワークを適用する方法は、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、Abiodu, OI et al. ”State-of-the art in artificial neural network applications: A survey.” Heliyon. 2018 Nov; 4(11): e00938に記載されるように行われ得る。
【0150】
一部の実施形態では、CCL14は、ベイジアンモデルにおいて測定値またはアッセイ結果を共に使用することにより、シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と共に(すなわちこれと組み合わせて)使用され得る。例として、ベイジアン分析法の方法は、その両方の全体が本明細書中に参照により組み込まれている、Zhaoらの”Evaluation of treatment efficacy using a Bayesian mixture piecewise linear model of longitudinal biomarker”. Stat Med. 2015 May 10; 34(10): 1733-1746またはJaysonらの”Plasma Tie2 is a tumor vascular response biomarker for VEGF inhibitors in metastatic colorectal cancer.” Nat Commun. 9: 4672 (2018)により記載されるように行われ得る。
【0151】
一部の実施形態では、CCL14は、マーカーの比率を使用して、シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と単一の複合的な値に組み合わせられ得る。例として、マーカーの比率を使用する方法は、測定された尿量に対する生体液中のCCL14のレベルの比率を評価することにより行われ得る。一部の例では、この比率は、分子としての陽性マーカーおよび分母としての陰性マーカーを含み得る。この例では、複合的な数は、陽性マーカーとみなされ得る。対照的に、この比率は、分子としての陰性マーカーおよび分母としての陽性マーカーを含み得る。この例では、複合的な数は、陰性マーカーとみなされ得る。
【0152】
一部の実施形態では、CCL14は、ルールセットにおいて測定値またはアッセイ結果を共に使用することにより、シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と共に(すなわちこれと組み合わせて)使用され得る。例として、マーカーを分析するためにルールセットを使用する方法は、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、Woetzel et al. ”Identification of rheumatoid arthritis and osteoarthritis patients by transcriptome-based rule set generation.” Arthritis Res Ther. 16(2): R84 (2014)により記載されるように、行われ得る。
【0153】
急性腎不全の診断
上述されるように、用語「急性の腎臓(renalまたはkidney)損傷」および「急性腎不全」は、本明細書中使用される場合、ベースラインの値からの血清クレアチニンの変化の観点から部分的に定義される。大部分のARFの定義は、血清クレアチニン、および多くの場合は尿量の使用を含む、一般的な要素を有する。患者が腎障害を呈し得る場合、この比較で使用される腎機能の利用可能なベースラインの測定がない。このようなイベントでは、患者が最初に正常な糸球体濾過率(GFR)を有していたと仮定することにより、ベースラインの血清クレアチニンの値を推定し得る。糸球体濾過率(GFR)は、単位時間あたりの腎臓の糸球体毛細管からボーマン嚢へと濾過された体液の体積である。糸球体濾過率(GFR)は、血液中で一定のレベルを有し、腎臓により再吸収も分泌もされずに自由に濾過されるいずれかの化学物質を測定することにより計算され得る。GFRは、通常、m/分で表される:
【数8】
【0154】
体表面積に対してGFRを正規化することにより、1.73mあたり約75~100ml/分のGFRを仮定することができる。よって、測定されたGFRは、計算可能な血液量を起源とする尿中の物質の量を表す。糸球体濾過率(GFRまたはeGFR)を計算または推定するために使用されるいくつかの異なる技術が存在する。しかしながら、臨床上の実務では、GFRを測定するためにクレアチニンクリアランスが使用される。クレアチニンは、本来身体により産生される(クレアチニンは、筋肉で見出されるクレアチニンの代謝物である)。これは、糸球体により自由に濾過されるが、非常に少量が腎尿細管により能動的に分泌されることにより、クレアチニンのクリアランスは、実際のGFRを、10~20%過大評価する。この誤差の範囲は、クレアチニンクリアランスを測定する簡便さを考慮すると、容認可能である。
【0155】
クレアチニンのクリアランス(CCr)は、クレアチニンの尿中濃度(UCr)、尿の流速(V)、およびクレアチニンの血漿中濃度(PCr)に関する値が既知である場合に、計算することができる。尿中濃度および尿の流速の積は、クレアチニンの排泄率を生じることから、クレアチニンクリアランスは、その血漿中濃度により除算した排泄率(UCr×V)とも言われる。これは、一般に
【数9】

として数学的に表される。
【0156】
一般的に、24時間の採尿を、
膀胱が空となった朝から朝以降に膀胱が満たされるまで行い、その後、比較血液検査を行う。
【数10】
【0157】
異なる体格の人々の間での結果の比較を可能にするために、多くの場合、CCrは、体表面積(BSA)で補正され、ml/min/1.73mとして平均の体格の男性と比較して表される。大部分の成年は、1.7(1.6~1.9)に近いBSAを有するが、過度に肥満または痩身の患者は、自身の実際のBSAで補正されたCCrを有する:
【数11】
【0158】
クレアチニンクリアランスの測定の正確性(さらには収集が完全である場合の正確性)は、糸球体濾過率(GFR)が低下すると、クレアチニンの分泌が増大し、よって血清クレアチニンの上昇が少なくなるため、限定される。よって、クレアチニンの排泄は、濾過した負荷量よりもはるかに高く、GFRの潜在的に大きな過大推定(2倍程度の差)が生じる。しかしながら、臨床目的では、腎機能が、安定しているか、または悪化しているかもしくは良くなっているかどうかを決定することが重要である。このことは、多くの場合、血清クレアチニン単独をモニタリングすることにより決定される。クレアチニンクリアランスのように、血清クレアチニンは、非定常状態のARFのGFRを正確に反映するものではない。しかしながら、ベースラインから血清クレアチニンが変化する程度は、GFRの変化を反映している。血清クレアチニンは、容易かつ簡便に測定され、腎機能に特異的である。
【0159】
尿量をmL/kg/hr単位の尿量として決定するために、時間単位の採尿および測定が適切である。たとえば累積24時間の尿量のみが利用可能であり、患者の体重が提供されない場合では、RIFLEの尿量の基準を少し修正したものが、記載されている。たとえば、Bagshaw et al., Nephrol. Dial. Transplant. 23: 1203-1210, 2008は、患者の平均体重を70kgと想定し、患者は、以下に基づいてRIFLE分類に割り当てられる:<35mL/h(リスク)、<21mL/h(障害)、または<4mL/h(不全)。
【0160】
処置レジメンの選択
診断が得られた後、臨床医は、腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること(たとえば、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の送達の撤回または低減)、腎移植、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延または回避すること、利尿剤の投与を修正すること、目標指向型治療を開始することなどの、診断に適合する処置レジメンを容易に選択することができる。当業者は、本明細書中記載される診断方法に関連して論述される多くの疾患にとって適切な処置を認識している。たとえばMerck Manual of Diagnosis and Therapy, 17th Ed. Merck Research Laboratories, Whitehouse Station, NJ, 1999を参照されたい。さらに、本明細書中記載される方法および組成物は予後の情報を提供することから、本発明のマーカーは、処置の過程をモニタリングするために使用され得る。たとえば、予後状態の改善または悪化は、特定の処置が有効であるかまたは有効でないことを表し得る。利尿剤は、急性腎損傷(AKI)の状況で、体液の管理を最適化し、電解質障害の管理を支援するために使用される。しかしながら、利尿剤療法はまた、体液量減少、低血圧、心拍出の減少、および腎機能の悪化を含む有害な作用も有し得る。利尿剤の投与、用量、または中止に関連する決定は、腎状態だけでなく、体液平衡などの患者の状態の他の態様にも依存する。AKIを有する患者またはAKIを発症するリスクのある患者での利尿剤の適切な使用を決定するこのような要因は、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、Cerda, J. ”Loop Diuretics in Acute Kidney Injury” Encyclopedia of Intensive Care Medicine, 2012 Ed, p 1337-1341に記載されるように、当業者により理解されている。
【0161】
一部の実施では、遷延性急性腎損傷などの腎損傷の比較的低いリスクが割り当てられた対象は、より少ないリスク、コスト、疼痛、不快感、および/または副作用を伴い得るより保存的または侵襲性が少ない(腎損傷に関する)処置レジメンにより、当技術分野で公知であるように処置され得る。この処置は、この病態が改善するかもしくは実質的に悪化することが予測される場合、既存の腎損傷(たとえば急性腎損傷)を処置するための当技術分野で公知である処置を含み得、および/またはこの処置は、患者の併存疾患もしくは他の病態のための処置を含み得る。このような処置は、腎損傷のリスクを全般的に増大させ得る処置(たとえば腎毒性作用物質の送達または虚血的な手法)を含み得る。このような処置は、腎損傷以外の併存疾患または他の病態の処置においてより侵襲性であり/あまり保存的ではない場合がある。処置レジメンは、腎損傷(たとえば遷延性急性腎損傷)のリスクが増大しているかを評価するためおよびリスクの低い対象の処置戦略を進行または続行すべきかどうかを決定するために十分な期間の後の、低リスクの対象の追加の試験を含み得る。一部の例では、処置は、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること(たとえば、限定するものではないが、造影剤、抗生剤などの本明細書中他で開示されるいずれかの腎毒性作用物質を含む、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の送達の中止または低減)、腎臓に損傷を与えることが知られている手法(たとえば、限定するものではないが、血管手術または心臓手術、または虚血を誘導する他のいずれかの外科手術などの急性腎損傷のリスクに対する素因を対象に与える、本明細書中他で開示されるいずれかの手法を含む)を遅延もしくは回避すること、または利尿剤の投与を修正することを含み得る。この例で中止され得る化合物の追加の例として、限定するものではないが、NSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線不透過性造影剤、またはストレプトゾトシンが挙げられる。
【0162】
一部の態様では、処置レジメンは、最初の試験の結果を確認するために高リスクの患者を再試験することを含んでもよく、または高リスクの対象を、腎状態が改善、悪化しているか、もしくは依然として比較的一定したままであるかどうかを決定するための十分な期間の後に、再試験してもよい。その後の対象の試験は、本明細書中記載されるものを含む、対象の腎状態を最初に評価するために最初に行った試験と同じ試験および/または異なる試験を含み得る。対象は、必要に応じて(たとえばおおよそ12時間ごと、24時間ごと、48時間ごと、72時間ごと、96時間ごと、120時間ごと、144時間ごと、168時間ごとなどで)再試験され得る。
【0163】
一部の実施では、遷延性急性腎損傷などの腎損傷の比較的高いリスクが割り当てられてられた対象は、比較的多くのリスク、コスト、疼痛、不快感、および/または副作用を伴い得る、あまり保存的でなくまたはより高侵襲性の(腎損傷に関する)処置レジメンにより当技術分野で公知であるように処置され得る。この処置は、患者の併存疾患または他の病態のための処置を含み得る。このような処置は、腎損傷以外の併存疾患または他の病態の治療において低侵襲性であり/より保存的である場合がある。処置は、既存の腎損傷(たとえば急性腎損傷)の処置のための当技術分野で公知である処置を含み得る。一部の実施形態では、高リスクの患者はまた、本明細書中他で記載されるように、以下:腎代替療法を開始すること、腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の量または選択を調節することにより前記化合物の投与を修正すること(たとえば腎臓に損傷を与えることが知られている化合物の送達の中止または低減、腎臓に損傷を与えることが知られている手法を遅延または回避すること)、および利尿剤の投与を修正することのうちの1つ以上により処置され得る。高リスクの対象は、これら処置の高侵襲性/低保存的のバージョンで処置され得る。たとえば、以下の種類の腎代替療法:持続的腎代替療法(たとえば持続的静静脈血液透析(CVVHD)、持続的静静脈血液濾過(CVVH)、持続的静静脈血液濾過透析(CVVHDF))、間欠的血液透析(IHD)、腹膜透析、および腎移植は、低リスクの対象よりも高リスクの対象に適切であり得る。一部の実施形態では、利尿剤の投与は、腎損傷のさらなる悪化を回避するために、高リスクの対象において低減、停止、または休止され得る。
【0164】
当業者は、本発明が、目的を実行し、言及される目標および利点、ならびにそれらに固有のものを得るために良好に適合されることを容易に理解している。本明細書中提供される実施例は、好ましい態様の代表であり、例示であり、本発明の範囲を限定すると意図されない。
【0165】
以下の実施例に含まれるサンプルは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Hoste, E., A. Bihorac, A. Al-Khafaji, L. M. Ortega, M. Ostermann, M. Haase, K. Zacharowski, et al. ”Identification and Validation of Biomarkers of Persistent Acute Kidney Injury: The Ruby Study.” Intensive Care Med (Feb 6 2020)に記載されるように収集した。
【0166】
実施例1.イムノアッセイ形式
ニトロセルロース膜を、バックカード(backing card)にあらかじめラミネートし、試験株抗体および陽性対照抗体を用いてストリッピングした。次に、ストリップしたニトロセルロース膜を硬化し、ウィッキングパッドおよびサンプルパッドをラミネートした。このカードを、5mm幅の試験条片に切断し、カートリッジの筐体に載置した。
【0167】
精製された、組み換え型ヒトC-Cモチーフケモカイン14タンパク質を、プールした尿にスパイクし、連続希釈して、ある範囲の濃度をカバーする標準サンプルのセットを生成した。ヒト尿サンプルの凍結した単回使用のアリコートを室温の水槽で20分未満解凍した後、試験を行った。
【0168】
100μLの試験バッファーを、C-Cモチーフケモカイン14検出抗体でコーティングした蛍光色素を充填したポリスチレン粒子を含む凍結乾燥したコンジュゲートビーズに添加した。100μlの標準物質またはヒト尿サンプルを、再構成したコンジュゲート溶液に添加した。次に、100μLの尿サンプル/コンジュゲート混合物を、試験カートリッジのサンプルポートに充填した。約20分で、644nmの励起後に663nmで発せられた蛍光を、蛍光リーダーを使用して読み取った。C-Cモチーフケモカイン14の濃度を、C-Cモチーフケモカイン14の標準物質から決定した標準曲線と比較することにより、試験尿サンプルに割り当てた。本明細書中報告されるC-Cモチーフケモカイン14の単位は、ng/mLである。
【0169】
実施例2:ICUに入院し:KDIGOステージ3であり遷延性の患者の腎状態を評価するためのプロダクトモデルにおける、C-Cモチーフケモカイン14、ならびに血清クレアチニン、尿量、およびシスタチンCのうちの1つ以上の使用
過去36時間以内にKDIGOステージ2または3の急性腎損傷を発症したと考えられる集中治療室(ICU)の患者を、以下の試験に登録した。以前に腎臓移植を行ったことがあるか、腎代替療法を受けていたかもしくは腎代替療法の必要に迫られていたか、緩和手段のみを受けていたか、またはヒト免疫不全ウイルスもしくは活動性肝炎を伴う既知の感染症を有したことがあった場合、患者は除外された。対象が入院していた間、各患者から血液サンプル(EDTA血漿では10mLおよび血清では3mL)ならびに尿サンプル(50mL)を、登録時、および3日目までは12時間ごとに、次にその後7日目まで24時間ごとに収集した。C-Cモチーフケモカイン14(CCL14)を、登録時の尿サンプルで測定した。シスタチンCを、登録時の血漿サンプルで測定した。血清クレアチニン(sCr)を、Roche COBAS C-701機器においてJaffe法により登録時の血清サンプルにおいて測定し、mg/dLの単位で報告する。尿流量および患者の体重を、臨床現場で記録し、体重により補正した尿量を、サンプル収集の時間の間にmL/kg/hの単位で報告した。登録後90日以内の血清クレアチニンレベル、腎代替療法(RRT)、および死亡の記録を、評価した。
【0170】
【表4】
【0171】
腎状態は、血清クレアチニンのみに基づき、尿量のみに基づき、または血清クレアチニンもしくは尿量のいずれかに基づき、KDIGOにより評価した。2つのコホートを、「遷延性」および「非遷延性」の集団を表すように定義した。「遷延性」は、24、48、または72時間の期間の間の最小のKDIGOステージが3である患者を表し、ここで遷延期間は、サンプル収集時から始まり、サンプル収集から24、48、72、96、または168時間後までであり得る。「非遷延性」は、ステージ3で遷延性ではなく、24、48、または72時間の期間の間の最小のKDIGOステージが、ステージ2以下であった患者を表し、ここで遷延期間は、サンプル収集の時間から始まり、サンプル収集から24、48、72、96、または168時間後までであり得る。患者が、遷延期間の間にKDIGOステージ3に達し死亡したか、または腎代替療法(RRT)を受けた場合、患者を「遷延性」とみなした。
【0172】
「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートを区別する能力を、受信者動作特性(ROC)分析を使用して決定した。感度、特異度、およびオッズ比は、アッセイ結果の25、50、および75パーセンタイル(第2四分位数、第3四分位数、および第4四分位数)に対応するカットオフに関して決定した。
【0173】
本明細書中記載されるように、個々のマーカーのアッセイ結果を組み合わせて単一の結果を提供した:C-Cモチーフケモカイン14/(体重により補正した尿量)、C-Cモチーフケモカイン14X血清クレアチニン、C-Cモチーフケモカイン14XシスタチンC、C-Cモチーフケモカイン14X血清クレアチニン/(体重により補正した尿量)、C-Cモチーフケモカイン14XシスタチンC/(体重により補正した尿量)。次に、この単一の結果を、標準的な統計法を使用して個別のバイオマーカーとして扱った。これら組み合わせを表記する場合、「X」(乗算)および「/」(除算)などの算術演算子は、それらの通常の数学的な意味で使用される。
【0174】
【表5】

【0175】
表2のベースラインの連続変数およびカテゴリー変数を、それぞれウィルコクソンの順位和検定およびフィッシャーの正確確率検定を使用して、エンドポイント陰性および陽性の患者の間で比較した。最初に登録した364人の患者のうち、331名(991%)が残り、分析に含まれた。表2に示されるように、遷延性急性腎損傷を発症した患者は、遷延性急性腎損傷を発症しなかった患者と比較した場合、BMIが低い可能性が高く、真正糖尿病の病歴を有する可能性が低かったが、登録時に高い血清クレアチニン値およびAPACHE IIIスコアを有していた。遷延性のステージ3の急性腎損傷を発症した患者は、登録時にステージ3の急性腎損傷を有する可能性が高く、これは、登録時の血清クレアチニンの高いレベルと一貫している。さらに、128人(39%)の患者は、90(±7)日に主要有害腎イベントまたは(MAKE90)を経験した。主要有害腎イベントは、死亡(このうち108人の患者(84%)が死亡した);17人の患者(13%)が経験した、25%以上のMDRD方程式を使用して計算された推定GFR(eGFR)の喪失;または7人の患者(5%)で開始した透析からなるとして定義された。
【0176】
【表6】
【0177】
【表7】
【0178】
【表8】
【0179】
【表9】
【0180】
【表10】
【0181】
【表11】
【0182】
【表12】
【0183】
【表13】
【0184】
【表14】
【0185】
表4:「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの尿サンプルにおけるマーカーレベルおよびROC曲線下面積(AUC)の比較(ここで、遷延は、サンプル収集から48時間以内に始まり、腎状態を、血清クレアチニン(sCr)のみ、尿量(UO)のみ、または血清クレアチニンもしくは尿量のKDIGOの基準のいずれかにより評価した)。マーカーは、陽性または陰性のいずれかであり、これはAUCの数値から区別することができる。より具体的には、0.5超のAUC値は、陽性マーカーを表し、0.5未満のAUC値は、陰性マーカーを表す。
【0186】
【表15】
【0187】
【表16】
【0188】
【表17】
【0189】
【表18】
【0190】
【表19】
【0191】
【表20】
【0192】
【表21】
【0193】
【表22】
【0194】
【表23】
【0195】
表5:「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの尿サンプルにおけるマーカーレベルおよびROC曲線下面積(AUC)の比較(ここで、遷延は、サンプル収集から72時間以内に始まり、腎状態を、血清クレアチニン(sCr)のみ、尿量(UO)のみ、または血清クレアチニンもしくは尿量のKDIGOの基準のいずれかにより評価した)。マーカーは、陽性または陰性のいずれかであり、これはAUCの数値から区別することができる。より具体的には、0.5超のAUC値は、陽性マーカーを表し、0.5未満のAUC値は、陰性マーカーを表す。
【0196】
【表24】
【0197】
【表25】
【0198】
【表26】
【0199】
【表27】
【0200】
【表28】
【0201】
【表29】
【0202】
【表30】
【0203】
【表31】

【0204】
【表32】
【0205】
表6:「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの尿サンプルにおけるマーカーレベルおよびROC曲線下面積(AUC)の比較(ここで、遷延は、サンプル収集から96時間以内に始まり、腎状態を、血清クレアチニン(sCr)のみ、尿量(UO)のみ、または血清クレアチニンもしくは尿量のKDIGOの基準のいずれかにより評価した。マーカーは、陽性または陰性のいずれかであり、これはAUCの数値から区別することができる。より具体的には、0.5超のAUC値は、陽性マーカーを表し、0.5未満のAUC値は、陰性マーカーを表す。
【0206】
【表33】
【0207】
【表34】
【0208】
【表35】
【0209】
【表36】
【0210】
【表37】
【0211】
【表38】
【0212】
【表39】
【0213】
【表40】
【0214】
【表41】
【0215】
表7:「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの尿サンプルにおけるマーカーレベルおよびROC曲線下面積(AUC)の比較(ここで、遷延は、サンプル収集から168時間以内に始まり、腎状態を、血清クレアチニン(sCr)のみ、尿量(UO)のみ、または血清クレアチニンもしくは尿量のKDIGOの基準のいずれかにより評価した。マーカーは、陽性または陰性のいずれかであり、これはAUCの数値から区別することができる。より具体的には、0.5超のAUC値は、陽性マーカーを表し、0.5未満のAUC値は、陰性マーカーを表す。
【0216】
【表42】
【0217】
【表43】
【0218】
【表44】
【0219】
【表45】
【0220】
【表46】
【0221】
【表47】
【0222】
【表48】
【0223】
【表49】
【0224】
【表50】
【0225】
実施例3.ICUに入室し:KDIGOステージ3であり遷延性の患者の腎状態を評価するためのロジスティック回帰モデルにおける、C-Cモチーフケモカイン14、ならびに血清クレアチニン、尿量、およびシスタチンCのうちの1つ以上の使用
上記の実施例2と同じ試験および患者コホートで、C-Cモチーフケモカイン14、血清クレアチニン、およびシスタチンCの濃度、ならびに体重により補正した尿量の組み合わせを予測因子として用いたロジスティック回帰を使用して、「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの間を区別した。「遷延性」コホートに属する患者のオッズの対数(対数オッズ)を、予測因子の線形結合によりモデル化した。予測因子の組み合わせが「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの間を区別する総合的な能力を、ROC分析を使用して決定し、感度および特異度を、対数オッズ値の25、50、および75パーセンタイルに対応するカットオフで決定した。
【0226】
ロジスティック回帰モデルは予測因子の重み付けについての事前の仮定を作成しないため、トレーニングデータセットと呼ばれる、マーカー濃度および体重により補正した尿量のデータの比率を使用して、モデルのパラメータを作成し、次にこれを使用して、バリデーションデータセットと呼ばれる残りのデータのコホート分類を予測した。ROC AUC、感度、および特異度の推定値のロバスト性を保証するために、K-分割交差検証技術を使用することにより、全データセットを、k個のおおよそ等しいサブセットに分割した。次に、モデルのパラメータを、トレーニングデータセットとしてk-1のサブセットを使用して推定し、コホートの分類を、残りのバリデーションデータセットを用いて予測した。このトレーニングおよび分類のプロセスを、バリデーションデータセットとしてk個のサブセットのそれぞれを使用して反復し、分類結果を平均化してROC AUC、感度、および特異度の推定値を提供した。
【0227】
個々のマーカーのアッセイ結果を、本明細書中記載されるように回帰の予測因子として組み合わせて使用した:C-Cモチーフケモカイン14と体重により補正した尿量、C-Cモチーフケモカイン14と血清クレアチニン、C-Cモチーフケモカイン14とシスタチンC、C-Cモチーフケモカイン14と血清クレアチニンおよび体重により補正した尿量、ならびにC-Cモチーフケモカイン14とシスタチンCおよび体重により補正した尿量。アッセイ結果および体重により補正した尿量は、当てはめ手法の前に対数変換した。
【0228】
【表51】

【0229】
【表52】
【0230】
【表53】
【0231】
【表54】
【0232】
【表55】

【0233】
【表56】
【0234】
【表57】
【0235】
【表58】

【0236】
【表59】
【0237】
【表60】
【0238】
【表61】
【0239】
【表62】
【0240】
【表63】
【0241】
【表64】
【0242】
【表65】
【0243】
実施例4.ICUに入室し:KDIGOステージ3であり遷延性の患者の腎状態を評価するための線形判別における、C-Cモチーフケモカイン14、ならびに血清クレアチニン、尿量、およびシスタチンCのうちの1つ以上の使用
上記の実施例2と同じ試験および患者コホートで、予測因子としてC-Cモチーフケモカイン14、血清クレアチニン、およびシスタチンCの濃度、ならびに体重により補正した尿量の組み合わせを用いた線形判別分析を使用して、「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの間を区別した。両技術は予測因子の線形結合を使用してクラスのメンバー(class membership)を決定したという点でロジスティック回帰モデル(上記の実施例3に記載)と類似しているが、これらは、アウトカムをモデル化するために使用した当てはめ関数が異なる。線形判別は、2つのグループ間の分離を最大限にした予測因子の線形結合を見出すことにより、「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの間の関係をモデル化し、最適な分類をもたらした。予測因子の組み合わせが、「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの間を区別する総合的な能力を、ROC分析を使用することにより決定し、感度および特異度を、判別スコアの25、50、および75パーセンタイルに対応するカットオフで決定した。
【0244】
線形判別は、は予測因子の重み付けについての事前の仮定を作成せず、よってK-分割交差検証技術(上記の実施例7に記載)を、ROC AUC、感度、および特異度の推定値のロバスト性を保証するために使用した。
【0245】
個々のマーカーのアッセイ結果を、本明細書中記載されるように回帰の予測因子としての組み合わせで使用した:C-Cモチーフケモカイン14と体重により補正した尿量、C-Cモチーフケモカイン14と血清クレアチニン、C-Cモチーフケモカイン14とシスタチンC、C-Cモチーフケモカイン14と血清クレアチニンおよび体重により補正した尿量、ならびにC-Cモチーフケモカイン14とシスタチンCおよび体重により補正した尿量。アッセイ結果および体重により補正した尿量は、当てはめ手法の前に対数変換した。
【0246】
【表66】
【0247】
【表67】

【0248】
【表68】
【0249】
【表69】
【0250】
【表70】
【0251】
【表71】
【0252】
【表72】
【0253】
【表73】
【0254】
【表74】
【0255】
【表75】

【0256】
【表76】
【0257】
【表77】
【0258】
【表78】
【0259】
【表79】
【0260】
【表80】
【0261】
実施例5.ICUに入室し:KDIGOステージ3であり遷延性の患者の腎状態を評価するための決定木における、C-Cモチーフケモカイン14、ならびに血清クレアチニン、尿量、およびシスタチンCのうちの1つ以上の使用
【0262】
上記の実施例2と同じ試験および患者コホートで、決定木のアルゴリズムを、C-Cモチーフケモカイン14、血清クレアチニン、およびシスタチンCの濃度、ならびに体重により補正した尿量を入力変数として使用して、サンプルを「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートに分類した。決定木は、入力変数を試験したノードおよびノードでの試験の可能性のあるアウトカムを表すブランチのシーケンスからなるものであった。入力を分類するために、これを、上から木に置き、最終的に、末端のブランチの2つのクラスのうちの1つへ確率分類をもたらした。データのサブセットを使用してノードの分岐を調節し、「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの間の最適な分離を提供した。腎状態は、血清クレアチニンまたは尿量のKDIGOの基準により評価した。
【0263】
図1Aは、「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの決定木の一例を表す(ここで、遷延は、サンプル収集から24時間以内に始まり、少なくとも72時間持続した)。C-Cモチーフケモカイン14(CCL14)、血清クレアチニン、および体重により補正した尿量を、この木のノードで使用した。「n」は、末端のブランチのサンプルの数を表し、「y」は、「非遷延性」サンプルおよび「遷延性」サンプルの比率を表す。バイオマーカーの単位は、上記の表1で見出され得る。
【0264】
図1Bは、「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの決定木の一例を表す(ここで、遷延は、サンプル収集から48時間以内に始まり、少なくとも72時間持続した)。C-Cモチーフケモカイン14(CCL14)、血清クレアチニン、および体重により補正した尿量を、この木のノードで使用した。
【0265】
図1Cは、「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの決定木の一例を表す(ここで、遷延は、サンプル収集から48時間以内に始まり、少なくとも72時間持続した)。C-Cモチーフケモカイン14(CCL14)、シスタチンC、および体重により補正した尿量を、この木のノードで使用した。図1Dは、「遷延性」コホート」および「非遷延性」コホートの決定木の一例を表す(ここで、遷延は、サンプル収集から72時間以内に始まり、少なくとも72時間持続した)。C-Cモチーフケモカイン14(CCL14)、血清クレアチニン、および体重により補正した尿量を、この木のノードで使用した。
【0266】
図1A~1Dにおいて、「n」は、末端のブランチのサンプルの数を表し、「y」は、「非遷延性」サンプルおよび「遷延性」サンプルの比率を表す(すなわち、y=(非遷延性の比率、遷延性の比率)。バイオマーカーの単位は、上記の表1で見出され得る。
【0267】
実施例6.ICUに入室し:KDIGOステージ3であり遷延性の患者の腎状態を評価するためのランダムフォレストアルゴリズムにおける、C-Cモチーフケモカイン14、ならびに血清クレアチニン、尿量、およびシスタチンCのうちの1つ以上使用
上記の実施例2と同じ試験および患者コホートで、ランダムフォレストアルゴリズムを、C-Cモチーフケモカイン14、血清クレアチニン、およびシスタチンCの濃度、ならびに体重により補正した尿量を入力変数として使用して適用し、サンプルを「遷延性」コホートおよび「非遷延性コホート」に分類した。分類木のアンサンブルを、データセットのランダムサンプリングを使用して成長させた。各個別の木は、他とは明確に異なり、各ノードは、入力変数の1つに関する木を表し、各ブランチは、試験のアウトカムを表す。入力を分類するために、これを各木の下に下ろし、クラスの1つに関する分類または「投票(vote)」を提供した。次に、フォレストは、最終的な分類を、全ての木から最も多い「投票」を有するクラスに与えた。あるクラスの投票の割合は、このクラスに属するサンプルの確率を近似し、これをROC分析に使用して、入力が「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートの間を区別する総合的な能力を決定した。さらに、感度および特異度を、投票の比率の25、50、および75パーセンタイルに対応するカットオフで決定した。
【0268】
実施例3および4のそれぞれのロジスティック回帰分析および線形判別分析と同様に、k分割交差検証を、ROC AUC、感度、および特異度の推定値のロバスト性を保証するために使用した。さらに、少なくとも500の木を、以下の表14~16におけるマーカーの組み合わせおよび遷延開始ウィンドウに関するランダムフォレストアルゴリズムの各計算のために使用した。
【0269】
個々のマーカーのアッセイ結果を組み合わせて、本明細書中記載されるように、ランダムフォレストアルゴリズムへの入力変数として使用した:C-Cモチーフケモカイン14と体重により補正した尿量、C-Cモチーフケモカイン14と血清クレアチニン、C-Cモチーフケモカイン14とシスタチンC、C-Cモチーフケモカイン14と血清クレアチニンおよび体重により補正した尿量、ならびにC-Cモチーフケモカイン14とシスタチンCおよび体重により補正した尿量。
【0270】
【表81】
【0271】
【表82】
【0272】
【表83】
【0273】
【表84】
【0274】
【表85】
【0275】
【表86】
【0276】
【表87】
【0277】
【表88】
【0278】
【表89】
【0279】
【表90】
【0280】
【表91】
【0281】
【表92】
【0282】
【表93】

【0283】
【表94】
【0284】
【表95】
【0285】
実施例7.ICUに入室し:KDIGOステージ3であり遷延性の患者の腎状態を評価するための「mのうちのn」(すなわち「陽性数」)の分析における、C-Cモチーフケモカイン14、ならびに血清クレアチニン、尿量、およびシスタチンCのうちの1つ以上の使用
上記の実施例2と同じ試験および患者コホートで、「mのうちのn」分析を、入力変数としてC-Cモチーフケモカイン14、血清クレアチニン、およびシスタチンCの濃度、ならびに体重により補正した尿量を使用して適用し、「遷延性」コホートであるリスクを層別化した(ここでリスクは、所定の集団にて「遷延性」コホートに属する患者のパーセンテージとして定義した)。「mのうちのn」分析では、サンプルの濃度または体重により補正した尿量を、カットオフと比較した。C-Cモチーフケモカイン14、血清クレアチニン、およびシスタチンCでは、カットオフを超える濃度は、「遷延」のリスクの増加に関連し、体重により補正した尿量では、カットオフ未満の値が、リスクの増加に関連した。このモデルでは、個別の入力変数からのリスクは、累積的であると仮定され、よって、「陽性」の数、すなわちC-Cモチーフケモカイン14、血清クレアチニン、およびシスタチンCでのカットオフを上回る濃度ならびに体重により補正した尿量でのカットオフを下回る値が、「遷延」のリスクを層別化した。
【0286】
「C-Cモチーフケモカイン14およびシスタチンC」では、各濃度の25、50、および75パーセンタイルの濃度を、カットオフとして使用した。血清クレアチニンでは、カットオフを、患者のベースラインのレベルの2倍に設定した。体重により補正した尿量では、カットオフは、少なくとも12時間、0.5mL/kg/h未満の尿であった。
【0287】
【表96】
【0288】
【表97】
【0289】
【表98】
【0290】
【表99】
【0291】
【表100】
【0292】
【表101】
【0293】
実施例8:ICUに入室し:遷延性でありKDIGOステージ2または3である患者の腎状態を評価するためのプロダクトモデルにおける、C-Cモチーフケモカイン14、ならびに血清クレアチニン、尿量、およびシスタチンCのうちの1つ以上の使用
上記の実施例2と同じ試験および患者コホートで、腎状態を、血清クレアチニンのみに基づき、尿量のみに基づき、または血清クレアチニンもしくは尿量のいずれかに基づき、KDIGO基準により評価した。2つのコホートを、「遷延性」集団および「非遷延性」集団を表すと定義した。「遷延性」は、24、48、または72時間の期間の間の最小KDIGOステージがステージ2または3である患者を表す(ここで遷延期間は、サンプル収集時から始まり、サンプル収集から24、48、72、96、または168時間後までであり得る)。「非遷延性」は、ステージ2または3で遷延性ではなく、24、48、または72時間の期間の間の最小KDIGOステージが、AKIではないかまたはステージ1である患者を表す(ここで遷延期間は、サンプル収集時間から始まり、サンプル収集から24、48、72、96、または168時間後までであり得る)。患者がKDIGOステージ2または3に達した後遷延期間の間に死亡したかまたは腎代替療法(RRT)を受けた場合、患者を「遷延性」とみなした。
【0294】
「遷延性」コホートおよび「非遷延性」コホートを区別する特性を、受信者動作特性(ROC)分析を使用して決定した。感度、特異度、およびオッズ比を、アッセイ結果の25、50、および75パーセンタイル(第2四分位数、第3四分位数、および第4四分位数)に対応するカットオフで決定した。
【0295】
【表102】
【0296】
【表103】
【0297】
【表104】
【0298】
【表105】
【0299】
【表106】
【0300】
【表107】
【0301】
【表108】
【0302】
【表109】
【0303】
【表110】
【0304】
【表111】
【0305】
【表112】
【0306】
【表113】
【0307】
【表114】
【0308】
【表115】
【0309】
【表116】
【0310】
【表117】
【0311】
【表118】
【0312】
【表119】

【0313】
【表120】
【0314】
【表121】
【0315】
【表122】
【0316】
【表123】
【0317】
【表124】
【0318】
【表125】
【0319】
【表126】
【0320】
【表127】
【0321】
【表128】
【0322】
【表129】
【0323】
【表130】
【0324】
【表131】
【0325】
【表132】
【0326】
【表133】
【0327】
【表134】
【0328】
【表135】
【0329】
【表136】
【0330】
【表137】
【0331】
【表138】
【0332】
【表139】
【0333】
【表140】
【0334】
【表141】
【0335】
【表142】
【0336】
【表143】

【0337】
【表144】
【0338】
【表145】
【0339】
【表146】

【0340】
実施例9:ICUに入室し:KDIGOステージ3であり遷延性の患者の腎状態を評価するためのさらなるマーカーと組み合わせたC-Cモチーフケモカイン14の使用
上記の実施例2および8と同じ試験および患者コホートで、腎状態を、血清クレアチニンのみ、尿量のみ、または血清クレアチニンもしくは尿量のいずれかに基づくKDIGO基準により評価した。2つのコホートを、「遷延性」集団および「非遷延性」集団を表すと定義した。「遷延性」は、24、48、または72時間の期間の間の最小KDIGOステージがステージ3であった患者を表す(ここで遷延期間は、サンプル収集から始まり、24、48、または72時間後までであり得る)。「非遷延性」は、ステージ3で遷延性ではなく、24、48、または72時間の期間の間の最小KDIGOステージが、ステージ2以下である患者を表す(ここで遷延期間は、サンプル収集時から始まり、24、48、または72時間後までであり得る)。患者がKDIGOステージ3に達し、遷延期間の間に死亡または腎代替療法(RRT)を受けた場合、患者を「遷延性」とみなした。
【0341】
遷延性AKIに関する2つのマーカーの全ての組み合わせを含む、バイオマーカーの予測能を、受信者動作特性(ROC)曲線下面積を使用して評価した。ROC曲線下面積(AUC)の信頼区間およびAUCの対応のある比較を、Delong法により計算した。MAKE90の発生を、コクラン-アーミテージ検定を使用してCCL14の三分位数を通して比較した。RRTの開始または死亡の複合である、MAKE90の累積発生曲線(cumulative incidence curve)を、Kaplan-Meier法により推定し、ログランク検定を使用してグループを比較した。統計分析は、R 3.5.1を使用して行った。両側のp値<0.05は、統計学的に有意であるとみなした。
【0342】
図2Aおよび2Bは、様々な患者のグループを通した尿中C-Cモチーフケモカイン14(図2A)および血漿中シスタチンC(図2B)の測定濃度を表す。白抜きのボックスは、急性腎損傷のいずれかのステージでも持続しなかった様々な急性病態および慢性病態を有する患者のマーカーレベルを表す。影付きのボックスは、登録から48時間の進行ウィンドウ以内に始まった少なくとも72時間の遷延期間の間に最小KDIGOステージ1、2、または3の急性レベルの腎損傷を維持した患者のマーカーレベルを表す。CCL14およびシスタチンCは両方とも、急性腎損傷のステージが増大するにつれて濃度が増大することを実証した。CCL14およびシスタチンCは、遷延性急性腎損傷に関して「陽性」であると決定された。急性腎損傷のいずれのステージでも持続しなかった患者の尿中C-Cモチーフケモカイン14レベルは、図2Aに示される異なる併存状態を経験した患者において類似していた。
【0343】
尿中C-Cモチーフケモカインリガンド14は、0.83(0.78~0.87)の受信者動作特性曲線下面積(AUC)(95%CI)で登録から48時間以内に始まった遷延期間の間少なくとも72時間持続する遷延性ステージ3の急性腎損傷が予測可能であることを実証した。急性腎損傷の遷延の定義に関する感度分析は、24、48、および72時間の持続期間の遷延期間にわたってC-Cモチーフケモカイン14の一貫した成績を実証した(ここで遷延期間は、登録から24、48、および72時間の進行ウィンドウ以内に始まった)。ROC AUC(95%CI)は、24時間の遷延および24時間以内の進行に関する0.79(0.74~0.84)から、48時間の遷延および48時間以内の進行に関する0.84(0.79~0.88)の範囲にあった。さらに、登録時にKDIGOステージ2~3にないことを遡及的に決定した53人の患者(表1)を除外した感度分析は、登録から48時間以内に始まる少なくとも72時間の遷延期間の間持続する遷延性KDIGOステージ3の急性腎損傷の結果においてほとんど変化を示さなかった(AUC(95%CI)=0.81(0.76~0.86))。
【0344】
【表147】
【0345】
【表148】
【0346】
図3は、登録サンプルにおける尿中C-Cモチーフケモカイン14の測定により定義される3つの三分位数のそれぞれに関する登録後90日の間に腎代替療法(RRT)を開始したかまたは死亡した患者の複合的なパーセンテージを表す。複合的なエンドポイントの発生は、三分位数を通して増大し(ログランクp<0.01)、第1三分位数および第3三分位数の間で約30%から約60%へとおおよそ倍となった。図3に示されるように、大部分の条件を満たすイベントは、登録から30日以内に発生した。25%以上のeGFRの喪失(不図示)を含むMAKE90エンドポイントの発生率は、C-Cモチーフケモカイン14の測定値の第1三分位数、第2三分位数、および第3三分位数のそれぞれで、29%、41%、および46%であった(p=0.01)。
【0347】
他の臨床変数と比較してC-Cモチーフケモカイン14が遷延性KDIGOステージ3の急性腎損傷の予測可能性を高める能力を、多変数ロジスティック回帰モデルを使用して試験した。尿中C-Cモチーフケモカインリガンド14は、ROC AUC、統合識別改善度(IDI:integrated discrimination improvement)、およびカテゴリーフリーネット再分類改善度(cfNRI)分析のいずれかを使用して登録から48時間以内に始まる遷延期間の間少なくとも72時間持続する遷延性KDIGOステージ3の急性腎損傷の5パラメータの臨床モデルに加えると、リスク予測を有意に改善させた。
【0348】
【表149】
【0349】
参照モデルのAUCと新規モデルのAUCとの間の差は、統計学的に有意であった(p=0.015)。血清クレアチニンのトラジェクトリーを、登録の18(±9)時間前および7(±4)時間前の平均値(±SD)収集時間での2つの血清クレアチニンの結果を使用して決定されるように、前日からの血清クレアチニンの濃度の変化として測定した。尿中CCL14濃度を対数変換した。全ての数値の変数は、平均値を減算し、標準偏差で除算することにより標準化した。合計308人の患者のうち、34%が遷延性と分類された。
【0350】
【表150】

【0351】
ロジスティック回帰モデルを介したシスタチンCおよび血清クレアチニンとC-Cモチーフケモカインリガンド14の組み合わせは、登録から48時間以内に始まる遷延期間の間少なくとも72時間持続する遷延性急性腎損傷の予測のAUCを改善した(血漿中シスタチンCに関してAUCの増大=0.028、p=0.04、および血清クレアチニンに関してAUCの増大=0.04,p<0.01)。
【0352】
【表151】
【0353】
【表152】
【0354】
【表153】

【0355】
尿中C-Cモチーフケモカイン14の上昇は、KDIGOステージ2または3の急性腎損傷を有する重症患者の大規模な不均一のコホートにおいて遷延性急性腎損傷の発症を予測することが示された。これら知見は、腎損傷におけるケモカインのシグナリングおよびマクロファージ移動の役割を裏付けており、C-Cモチーフケモカイン14が腎組織の損傷および/または非回復の重要なメディエーターであり得ることを表している。急性腎損傷は、腎臓の炎症に関連している。腎臓の炎症の間、循環する単球が動員され、活性化され、マクロファージへと分化する。糸球体および間質のマクロファージの浸潤の両方が、損傷後に観察され得る。マクロファージは、腎臓の損傷および修復において多様な役割を果たすと考えられる(Meng XM, Tang PM, Li J, Lan HY. Kidney Dis (Basel). 2015;1(2):138-46)。組織損傷に応答して、マクロファージは活性化され、マクロファージの機能的状態は腎臓の損傷および修復のステージに依存する。よって、マクロファージは、急性腎損傷の後の組織の損傷および修復の両方に寄与し得る(Huen SC, Cantley LG. Annu Rev Physiol. 2017;79:449-69)。このようなマクロファージの極性化は、周辺の微小環境により決定され、急性腎損傷の後の腎機能の回復に重要な役割を果たすと思われる。
【0356】
実施例10.ICUに入室し:RIFLEステージIもしくはFまたはKDIGOステージ2もしくは3の患者の腎状態を評価するためのプロダクトモデルにおける、C-Cモチーフケモカイン14、ならびに血清クレアチニン、尿量、およびシスタチンCのうちの1つ以上の使用
急性腎損傷を発症するリスクがあると考えられる集中治療室(ICU)の急性疾病患者を、以下の試験に登録した。患者が、以前に腎移植を受けたことがある場合、登録前に中程度から重篤なAKI(たとえばRIFLEステージIまたはRIFLEステージF/AKINステージIIまたはAKINステージIII/KDIGOステージ2またはKDIGOステージ3)であることが既知である場合、腎代替療法を受けていたかもしくはその必要に迫られていた場合、またはヒト免疫不全ウイルスによる感染症もしくは活動性肝炎が既知である場合、患者を除外した。患者は、その全体が本明細書中参照により組み込まれている。Kashani K., et al. Crit Care. 2013; 17(1):R25で試験した集団のサブセットであった。対象が入院している間、血液サンプル(EDTA血漿では10mLおよび血清では3mL)ならびに尿サンプル(50mL)を、登録時、および最大4日目まで12時間ごとに、その後最大7日目まで24時間ごとに収集した。分析物の濃度および尿量を、以下の表31~33に示される時間で、尿および/または血液のサンプルのコレクションにおいて測定した。
【0357】
腎状態を、血清クレアチニンまたは尿量、血清クレアチニンのみまたは尿量のみに基づきRIFLEおよびKDIGOの基準の両方により評価した。2つのコホートを、「疾患状態の」および「非疾患状態の」集団を表すと定義した。「疾患状態の」は、特定の期間以内に特定の最大RIFLEまたはKDIGOステージに達した患者を表す。「AKIステージより前の」時間は、特定の患者がそのコホートに関して定義された最小の疾患ステージに達した時間に対するサンプルを収集した時間を表す。たとえば、2つのコホートとして0とR、I、Fとの比較を使用する「24時間前(24h prior)」は、ステージR(またはサンプルがRにない場合はIまたはサンプルがRもしくはIにない場合はF)に達する前の24時間(±12時間)を意味する。
【0358】
「疾患状態の」コホートおよび「非疾患状態の」コホートの間を区別する能力を、ROC分析を使用して決定した。さらに、感度および特異度を、特定の値(70%、80%、もしくは90%)、またはC-Cモチーフケモカイン、血清クレアチニンおよびシスタチンCの濃度および体重により補正した尿量の25、50、および75パーセンタイル(または第2四分位数、第3四分位数、および第4四分位数)に対応するカットオフで決定した。
【0359】
個々のマーカーの結果を組み合わせて、本明細書中示されるように単一の結果を提供した:C-Cモチーフケモカイン14X血清クレアチニン/(体重により補正した尿量)およびC-Cモチーフケモカイン14XシスタチンC/(体重により補正した尿量)。次に、この単一の結果を、標準的な統計方法を使用して、個別のマーカーとして扱った。これら組み合わせを表す場合、「X」(乗算)および「/」(除算)などの算術演算子は、それらの通常の数学的な意味で使用される
【0360】
【表154】

【0361】
【表155】

【0362】
【表156】

【0363】
【表157】
【0364】
【表158】
【0365】
【表159】
【0366】
【表160】
【0367】
【表161】
【0368】
【表162】

【0369】
本明細書中開示される結果は、単独で、腎状態を少なくとも若干予測する本明細書中開示されるマーカーおよび/または指標(パラメータ)(特にシスタチンC、クレアチニン(たとえば血清クレアチニンまたは尿中クレアチニン)、および尿量のうちの1つ以上)と共に(すなわち組み合わせて)CCL14を使用することが、構成要素の個々のマーカーまたは指標を単独で使用する場合と比較して、腎状態、特には急性腎損傷、特には遷延性急性腎損傷の改善された予測可能性を提供し得ることを実証する。一部の実施形態では、本明細書中開示される1つ以上の追加の腎損傷マーカーと共に(すなわち組み合わせて)CCL14を使用することは、CCL14の測定値を、追加の腎損傷マーカーのうちの1つ以上の測定値と単一の複合的な値またはアッセイ結果へと組み合わせることを含む。一部の実施形態では、本明細書中開示される1つ以上の追加の腎損傷マーカーと共に(すなわち組み合わせて)CCL14を使用することは、測定値/アッセイ結果を単一の複合的な値またはアッセイ結果へと組み合わせることなく、CCL14の測定値または他のアッセイ結果を追加の腎損傷マーカーの1つ以上の測定値またはアッセイ結果と共に使用することを含む。たとえば、測定値/アッセイ結果を、決定木分析、ランダムフォレスト分析、mのうちn(陽性数)分析において共に使用してもよい。1つ以上の追加の腎損傷マーカーの測定/アッセイにより得られる予測情報が、CCL14を測定/アッセイすることにより得られる予測情報と重複しない場合、マーカーを共に使用することは、マーカー単独の使用と比較して予測力の改善をもたらし得る。各パラメータを評価するために使用した測定値は、同じサンプルまたは異なるサンプルに由来し得る。この測定は、実質的に同時になされてもよく、または時間的に間隔をあけてもよい(たとえば約6時間、12時間、24時間、48時間、72時間以内、またはそれ以上の範囲内)。マーカーを共に使用することによる予測力の改善は、たとえば、AUCの差、確率の差、感度の差、特異度の差、本明細書中他で記載されるものを含む他のいずれかの適切なモデルのアウトカムの差(たとえば予測されたイベントおよび/または非イベントでのスコアの差)、ならびに/または個別のパラメータと比較した他の適切な測定値により、評価され得る。
【0370】
一部の態様では、本明細書中開示されるパラメータまたはパラメータの組み合わせは、遷延性急性腎損傷の発症を予測し得る。遷延性急性腎損傷は、最小期間を有する遷延期間の間に腎損傷の最小レベル(たとえばKDIGOステージ1、KDIGOステージ2、またはKDIGOステージ3)を維持する対象として定義され得る。一部の例では、期間は、少なくとも約24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、または168時間であり得る。遷延性急性腎損傷は、パラメータが確認された時点(たとえば対象のサンプルを得た時点)または確認された後に始まるいずれかの遷延期間の間に測定され得る。たとえば、遷延期間は、サンプルを得た時から始まってもよく、または患者のサンプリングの時点もしくは関連する時点から始まり、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、188時間、もしくはそれより長い進行ウィンドウ以内であり得る。サンプルを得た時点から始まる遷延期間は、対象が現在遷延性急性腎損傷を経験しているとの診断とみなされ得る。一部の態様では、本明細書中開示されるパラメータまたはその組み合わせは、特定の時間枠またはおおよその時点の範囲内で始まる遷延性急性腎損傷の尤度に相関し得る。一部の実施では、遷延期間の発生は、特定の進行ウィンドウの中で発症する遷延性急性腎損傷の尤度に関連するデータから推定され得る。たとえば、遷延性急性腎損傷が12時間以内に発症する尤度および遷延性急性腎損傷が24時間以内に発症する尤度を比較すると、約12時間~24時間の間に発症する遷延性急性腎損傷の発症の尤度に関する情報を与え得る。
【0371】
遷延性急性腎損傷は、重症度のいずれかのステージにより定義され得る。たとえば、急性腎損傷は、KDIGOステージ1、KDIGOステージ2、またはKDIGOステージ3で持続し得る。一部の実施では、腎損傷のレベルの他の分類を、KDIGOステージの代わりに適切に使用してもよくまたは逆も同様であり得る(たとえばRIFLEステージRは、KDIGOステージ1に対応し得、RIFLEステージ1は、KDIGOステージ2に対応し得、RIFLEステージFは、KDIGOステージ3に対応し得る)。一部の実施では、本明細書中開示されるパラメータまたは組み合わせは、特定のレベルの重症度または特定の範囲内の重症度で維持される遷延性急性腎損傷の予測に使用され得る。たとえば、パラメータは、遷延期間の間KDIGOステージ2で持続するがKDIGOステージ3に達しない遷延性急性腎損傷、遷延期間の間KDIGOステージ1で持続するがKDIGOステージ2に達しない急性腎損傷、残留期間の間にKDIGOステージ1または2で持続するが、KDIGOステージ3に達しない急性腎損傷などを予測することができる場合がある。一部の例では、急性腎損傷が特定のステージで遷延する尤度は、2つ以上の最小ステージでの遷延の尤度から推定され得る。たとえば、KDIGOステージ3の遷延性急性腎損傷の尤度およびKDIGOステージ2または3での遷延性急性腎損傷の尤度は、遷延期間の間にKDIGOステージ3へと進行しないKDIGOステージ2の遷延性急性腎損傷の尤度に関する情報を与え得る。
【0372】
一部の態様では、対象は、遷延性急性腎損傷の尤度を予測するためのパラメータが確認された際(たとえばサンプルを収集する際)に急性腎損傷を経験していてもよい。たとえば、対象は、パラメータが確認された際に、少なくともKDIGOステージ1、少なくともKDIGOステージ2、または少なくともKDIGOステージ3を有し得る。一部の態様では、対象は、パラメータが確認された際に、急性腎損傷を経験していなくてもよい。一部の態様では、対象が急性腎損傷を経験しているかどうかおよび対象が有する急性腎損傷のステージが何であるかは、腎状態を評価するためのパラメータ(たとえば遷延性腎損傷を予測するためのパラメータ)を得た後まで不明であってもよく、または確認されなくてもよい。一部の実施では、対象は、急性腎損傷および/または遷延性急性腎損傷のリスクを有することに基づき試験され得る。リスクは、遷延性急性腎損傷などの腎損傷に関して対象の素因となる作用物質(たとえばNSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線不透過性造影剤、またはストレプトゾトシン)への比較的最近の曝露、ならびに/または遷延性急性腎損傷などの腎損傷のリスクに対し患者の素因となる比較的最近の急性の医学的イベント(ショック、敗血症、出血、虚血性手術、急性代償不全心不全を伴う腹腔内圧の増大、虚血、肺塞栓症、膵炎、熱傷、または過剰な利尿)であり得る。一部の態様では、対象は、遷延性急性腎損傷などの腎損傷のリスクを増大させる1つ以上の病態または併存疾患(たとえばうっ血性心不全、子癇前症、子癇、真性糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、タンパク尿、腎不全、正常範囲を下回る糸球体濾過、硬変、正常範囲を上回る血清クレアチニン、敗血症、腎機能に対する損傷、腎機能の低下、または急性腎損傷)と診断され得る。一部の例では、曝露、急性の医学的イベント、および/または診断は、対象を試験する前のおおよそ過去24時間、過去48時間、過去72時間、過去96時間、過去120時間、過去7日間、または過去1カ月以内に起こり得る。
【0373】
一部の態様では、対象は、試験の前の特定の期間の間、急性腎損傷または急性腎損傷の最小レベルを有したことがあってもよい。たとえば、対象は、少なくとも24時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間、少なくとも7日間、またはそれ以上長い期間の間、急性腎損傷を経験していたことがあってもよい。一部の実施では、急性腎損傷などの腎状態の予測可能性は、患者が試験前のより長い期間または少なくとも最小期間の間急性腎損傷を経験した後に評価される場合、改善し得る。一部の実施では、対象は、長くて24時間、長くて24時間、長くて48時間、長くて72時間、長くて96時間、長くて120時間、または長くて7日間の間、急性腎損傷を経験したことがあってもよい。一部の実施では、遷延性急性腎損傷などの腎状態の予測可能性は、患者が、試験前のより長い期間または少なくとも最小期間の間急性腎損傷を経験した後に評価される場合、改善し得る。一部の実施では、予測可能性は、対象が最大閾値以下および最小閾値以上の時間の範囲で急性腎損傷を経験した後に対象を試験することにより最適化され得る。一部の態様では、本明細書中開示される1つ以上のパラメータによる腎状態の評価は、対象が現在経験している急性腎損傷のレベルよりも重篤である遷延性急性腎損傷へ進行する対象の尤度(たとえばKDIGOステージ2の急性腎損傷を経験している対象が遷延性KDIGOステージ3の急性腎損傷へ進行する尤度、またはKDIGOステージ1の腎損傷を経験している対象が遷延性KDIGOステージ2もしくは3の急性腎損傷へと進行する尤度)を予測し得る。一部の態様では、この評価は、対象が遷延期間の間に少なくとも自身の急性腎損傷の現在のレベルを維持する尤度(たとえばKDIGOステージ2の急性腎損傷を経験している対象が遷延期間の間に遷延性KDIGOステージ2または3の急性腎損傷へと進行する尤度)を予測し得る。
【0374】
いずれかのステージまたは複数のステージでの遷延性急性腎損傷の尤度は、急性腎損傷からの回復の尤度を示唆し得る。たとえば、KDIGOステージ3の急性腎損傷を経験している対象が遷延性KDIGOステージ3の急性腎損傷へと進行する尤度が比較的低いことは、たとえば遷延期間の間に最大KDIGOステージ2を維持する対象により定義されるように、対象がステージ3の急性腎損傷から回復する可能性が高いことを提供し得る。一部の実施形態では、遷延性急性腎損傷は、持続期間(すなわち遷延期間)の間にAKIの最小レベル/ステージを維持することにより定義され、これに対応して回復は、持続期間(すなわち回復期間)の間に、遷延を定義する最小レベル/ステージ未満のAKIのレベル/ステージを達成することにより定義される。一部の実施形態では、急性腎損傷からの回復は、持続期間(すなわち回復期間)の間AKIの最大レベル/ステージを維持することにより定義され、遷延は、これに対応して持続期間(すなわち遷延期間)の間に、回復を定義する最大レベル/ステージを超えるAKIのレベル/ステージを達成することにより定義される。
【0375】
一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージRまたはKDIGOステージ1の急性腎損傷で遷延性であり得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージIまたはKDIGOステージ2の急性腎損傷で遷延性であり得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージFまたはKDIGOステージ3の急性腎損傷で遷延性であり得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージRまたはKDIGOステージ1の急性腎損傷で遷延性となり得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージIまたはKDIGOステージ2の急性腎損傷で遷延性となり得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージFまたはKDIGOステージ3の急性腎損傷で遷延性となり得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージRまたはKDIGOステージ1の急性腎損傷から回復し得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージIまたはKDIGOステージ2の急性腎損傷から(RIFLE/KDIGOステージ0またはRIFLEステージR/KDIGOステージ1へと)回復し得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージRまたはKDIGOステージ3の急性腎損傷から(RIFLE/KDIGOステージ0、RIFLEステージR/KDIGOステージ1、またはRIFLEステージI/KDIGOステージ2へと)回復し得る。シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と組み合わせたCCL14を、本明細書中開示される方法のいずれかにより相関させて、これらアウトカム(腎状態)のいずれかを予測してもよい。
【0376】
一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージRまたはKDIGOステージ1の急性腎損傷であり得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージIまたはKDIGOステージ2の急性腎損傷であり得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージFまたはKDIGOステージ3の急性腎損傷であり得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージRまたはKDIGOステージ1の急性腎損傷を発症し得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージIまたはKDIGOステージ2の急性腎損傷を発症し得る。一部の実施形態では、対象は、RIFLEステージFまたはKDIGOステージ3の急性腎損傷を発症し得る。シスタチンC、クレアチニン、および尿量のうちの1つ以上と組み合わせたCCL14を、本明細書中開示される方法のいずれかにより相関させて、これらアウトカム(腎状態)のいずれかを予測してもよい。
【0377】
一部の実施形態では、対象は、サンプルを得る際に、RIFLEステージRまたはKDIGOステージ1の急性腎損傷であり得る。一部の実施形態では、対象は、サンプルを得る際に、RIFLEステージIまたはKDIGOステージ2の急性腎損傷であり得る。一部の実施形態では、対象は、サンプルを得る際に、RIFLEステージFまたはKDIGOステージ3の急性腎損傷であり得る。対象の現在の腎状態は、既知(診断済み)であってもよく、または不明であってもよい。一部の実施形態では、現在の腎状態の診断は、将来の腎状態との相関を容易にするために使用され得る。一部の実施形態では、将来の腎状態(たとえば腎状態の変化)との相関は、現在の腎状態の診断と同時になされてもよい。
【0378】
一部の実施形態では、対象は、サンプルを得る際に、RIFLEステージRまたはKDIGOステージ1の遷延性急性腎損傷を有し得る。一部の実施形態では、対象は、サンプルを得る際に、RIFLEステージIまたはKDIGOステージ2の遷延性急性腎損傷を有し得る。一部の実施形態では、対象は、サンプルを得る際に、RIFLEステージFまたはKDIGOステージ3の遷延性急性腎損傷を有し得る。対象の現在の腎状態は、既知(診断済み)であってもよく、または不明であってもよい。一部の実施形態では、現在の腎状態の診断は、将来の腎状態との相関を容易にするために使用され得る。一部の実施形態では、将来の腎状態(たとえば腎状態の変化)との相関は、現在の腎状態の診断と同時になされてもよい。
【0379】
特に、C-Cモチーフケモカイン14の測定値は、単独で、またはクレアチニン/尿量、および/もしくはシスタチンCなどの1つ以上のマーカー/指標と組み合わせて、遷延性急性腎損傷などの腎状態を予測するために使用され得る。一部の態様では、これらパラメータのうちの2つ以上を、本明細書中他で記載されるものを含むいずれかの適切な方法により、単一の複合的な値へと組み合わせてもよい。たとえば、CCL14の濃度は、血清クレアチニンで乗算してもよく、および/またはシスタチンCの濃度で乗算してもよい。これらマーカーのいずれかまたはこれらマーカーのいずれかの複合の濃度は、尿量(たとえば体重により補正した尿量)で除算してもよい。あるいは、これらマーカーの全てを、ロジスティック回帰モデルもしくは他の適切なモデルを使用して組み合わせてもよく、またはこれらマーカーの一部を、まず、「プロダクトモデル」により組み合わせてもよく、次にこれら複合的な値を、ロジスティック回帰モデルもしくは他の適切なモデルを使用してさらなるパラメータと組み合わせてもよい。これらパラメータの1つ以上は、本明細書中他で記載されるものまたは当技術分野で知られているものを含む1つ以上のさらなるパラメータを用いて同じ方法によりさらに組み合わせられ得る。
【0380】
C-Cモチーフケモカイン14の測定値は、単独で、またはクレアチニン(たとえば血清または血漿中)、尿量、および/またはシスタチンCなどの1つ以上のマーカー/指標と組み合わせて、患者の前向き処置レジメンに影響する有効な情報を提供し得る。遷延性急性腎損傷、特に遷延性KDIGOステージ2または3の急性腎損傷、特に遷延性KDIGOステージ3の急性腎損傷の尤度が比較的高いと同定された患者は、RRTの開始の候補として同定され得る。このような分析からの予測情報は、そうでない場合に開始するよりも早くRRTの開始を可能にし、より有効な患者の処置を可能にし得る。反対に、遷延性急性腎損傷の尤度が比較的低いと同定された患者または単により重篤ではないステージ(たとえばKDIGOステージ1)で持続していると同定された患者は、RRT処置を用いることなく回復する可能性が高いことから、RRTの開始を回避することおよびその固有のリスクを回避することから利益を受けて得る。遷延性急性腎損傷のリスクが比較的高い患者は、持続している急性腎損傷の潜在的な関与を軽減するためにより高いレベルのケア(たとえば紹介施設)へとトリアージされ得る。遷延性急性腎損傷のリスクが比較的高い患者は、急性腎損傷から慢性腎疾患への移行を予防または軽減し得る追加の介入から利益を受け得る(Chawla LS, Bellomo R, Bihorac A, Goldstein SL, Siew ED, Bagshaw SM, et al. Nat Rev Nephrol. 2017;13(4):241-57)。
【0381】
本発明を、当業者にとって作製および使用するために十分に詳細に記載および例示してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することのない様々な代替案、修正、および改善は明らかである。本明細書中提供される実施例は、好ましい対象の代表であり、例であり、本発明の範囲の限定であるとは意図されていない。その中の修正および他の使用が、当業者により起こり得る。これら修正は、本発明の趣旨の範囲内に包有されており、特許請求の範囲により定義されている。
【0382】
様々な置換および修正が、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく本明細書中開示される発明に対してなされ得ることは、当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0383】
本明細書中言及される全ての特許および刊行物は、本発明が属する当業者のレベルを表すものである。全ての特許および刊行物は、各個別の刊行物が、具体的かつ個別に参照により組み込まれるように記載されている場合と同じ程度に参照により本明細書に組み込まれている。
【0384】
本明細書中例示的に記載されている発明は、本明細書中具体的に開示されていないいずれかの要素、限定の非存在下で行われ得る。よって、たとえば、本明細書中の各例において、用語「~を含む(comprising)」、「~から本質的になる(consisting essentially of)」、および「~からなる(consisting of)」のいずれかは、上記の他の2つの用語のいずれかと置き換えられ得る。使用されている用語および表現は、説明のためであり限定のためではない用語として使用され、示され記載された特性の全ての均等物を排除したこのような用語および表現を使用することを意図していないが、様々な修正が請求される本発明の範囲内で可能であることが認識されている。よって、本発明は好ましい態様および最適な特性により具体的に開示されているが、本明細書中開示される概念の修正および変形形態を、当業者が行ってもよく、およびこのような修正および変形形態は、添付の特許請求の範囲内に定義される限り本発明の範囲内にあるとみなされることを理解されたい。
【0385】
他の態様を、以下の特許請求の範囲内に記載する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022532947000001.app
【国際調査報告】