(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(54)【発明の名称】加速度計測定による風検出のための装置および風検出の方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20220712BHJP
G01P 15/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H04R3/00 320
G01P15/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575434
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(85)【翻訳文提出日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 GB2020051449
(87)【国際公開番号】W WO2020254792
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515233476
【氏名又は名称】シラス ロジック インターナショナル セミコンダクター リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィタリー・サポーズニコフ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・イヴァン・ハーヴェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホック・リム
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ワッツ
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220BA30
5D220BB04
5D220BC02
(57)【要約】
加速度計から導出された1つまたは複数の加速度計信号を受信するステップと、1つまたは複数の加速度計信号に基づき加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定するステップとを含む方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度計から導出された1つまたは複数の加速度計信号を受信するステップと、
前記1つまたは複数の加速度計信号に基づき前記加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記加速度計における風の前記1つまたは複数のパラメータは、前記加速度計における風の速度および/または前記加速度計における風の入射角を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の加速度計信号は、加速度の異なる軸を表す2つ以上の加速度計信号を含み、前記加速度計における風の前記入射角を決定するステップは、前記2つ以上の加速度計信号を比較するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記加速度計における風の前記1つまたは複数のパラメータは、前記加速度計における風の存在の指示および/または前記加速度計における風の存在の確率を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
非風切り音を除去するために前記1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数をフィルタリングするステップをさらに含み、風の前記1つまたは複数のパラメータは、前記フィルタリングされた1つまたは複数の加速度計信号に基づき決定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数の中の非風切り音の存在を検出するステップをさらに含み、決定する前記ステップは、非風切り音が検出されないときにのみ実行される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記加速度計の近くにあるマイクロフォンからマイクロフォン信号を受信するステップと、
前記加速度計における風の前記決定された1つまたは複数のパラメータに基づき前記マイクロフォン信号中の風切り音を低減するステップと
をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記加速度計における1つまたは複数の風パラメータを決定するステップは、
前記加速度計信号のうちの1つまたは複数におけるサブバンドパワーを決定するステップと、
前記1つまたは複数の加速度計信号中の前記決定されたサブバンドパワーに基づき前記マイクロフォン信号中の騒音のカットオフ周波数を推定するステップと
を含み、
前記推定されたカットオフ周波数を使用して前記マイクロフォン信号中の風切り音が低減される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロフォン信号中の風切り音は、圧縮器を使用して低減され、前記圧縮器のニーポイントは、前記推定されたカットオフ周波数に応じて決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記加速度計における1つまたは複数の風パラメータを決定するステップは、風速を決定するステップをさらに含み、前記圧縮器の前記ニーポイントは、前記決定された風速に応じてさらに決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記カットオフ周波数を推定するステップは、ルックアップテーブルを使用して前記サブバンドパワーを前記カットオフ周波数に変換するステップを含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロフォンにおける風の存在を検出するステップ、または前記マイクロフォン信号に基づき前記マイクロフォンにおける風の確率を決定するステップをさらに含む、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定する前記ステップは、前記マイクロフォンにおける風の存在を検出したことに応答して実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
メモリと、
前記メモリに結合されているプロセッサであって、
加速度計から導出された1つまたは複数の加速度計信号を受信することと、
前記1つまたは複数の加速度計信号に基づき前記加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定することと
を行うように構成されている、プロセッサと
を備える、装置。
【請求項15】
前記加速度計における風の前記1つまたは複数のパラメータは、前記加速度計における風の速度および/または前記加速度計における風の入射角を含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記1つまたは複数の加速度計信号は、加速度の異なる軸を表す2つ以上の加速度計信号を含み、前記加速度計における風の前記入射角を決定することは、前記2つ以上の加速度計信号を比較することを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記加速度計における風の前記1つまたは複数のパラメータは、前記加速度計における風の存在の指示および/または前記加速度計における風の存在の確率を含む、請求項14から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記プロセッサは、非風切り音を除去するために前記1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数をフィルタリングするようにさらに構成され、風の前記1つまたは複数のパラメータは、前記フィルタリングされた1つまたは複数の加速度計信号に基づき決定される、請求項14から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記プロセッサは、前記1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数の中の非風切り音の存在を検出するようにさらに構成され、前記決定することは、非風切り音が検出されないときにのみ実行される、請求項14から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記プロセッサは、
前記加速度計の近くにあるマイクロフォンから導出されるマイクロフォン信号を受信することと、
前記加速度計における風の前記決定された1つまたは複数のパラメータに基づき前記マイクロフォン信号中の風切り音を低減することと
を行うようにさらに構成される、請求項14から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記加速度計における1つまたは複数の風パラメータを決定することは、
前記加速度計信号のうちの1つまたは複数におけるサブバンドパワーを決定することと、
前記1つまたは複数の加速度計信号中の前記決定されたサブバンドパワーに基づき前記マイクロフォン信号中の騒音のカットオフ周波数を推定することと
を含み、
前記推定されたカットオフ周波数を使用して前記マイクロフォン信号中の風切り音が低減される、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記プロセッサは、前記マイクロフォン信号中の風切り音を低減するために圧縮器を実装するように構成され、前記圧縮器のニーポイントは、前記推定されたカットオフ周波数に応じて決定される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記加速度計における1つまたは複数の風パラメータを決定することは、風速を決定することをさらに含み、前記圧縮器の前記ニーポイントは、前記決定された風速に応じてさらに決定される、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記カットオフ周波数を推定することは、前記メモリに記憶されているルックアップテーブルを使用して前記サブバンドパワーを前記カットオフ周波数に変換することを含む、請求項20から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記プロセッサは、
前記マイクロフォンにおける風の存在を検出するか、または前記マイクロフォン信号に基づき前記マイクロフォンにおける風の確率を決定するようにさらに構成される、請求項20から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定することは、前記マイクロフォンにおける風の存在を検出したことに応答して実行される、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記マイクロフォンをさらに備える、請求項20から26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記加速度計をさらに備える、請求項14から27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
請求項14から28のいずれか一項に記載の装置を備える、電子デバイス。
【請求項30】
命令を記憶する非一時的機械可読媒体であって、前記命令は処理回路によって実行されたときに、電子装置に
加速度計から導出された1つまたは複数の加速度計信号を受信することと、
前記1つまたは複数の加速度計信号に基づき前記加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定することと
を行わせる、非一時的機械可読媒体。
【請求項31】
マイクロフォンから受信されたマイクロフォン信号中の風切り音を低減する方法であって、
前記マイクロフォンに近接する1つまたは複数の加速度計から1つまたは複数の加速度計信号を受信するステップと、
前記1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数におけるサブバンドパワーを決定するステップと、
前記決定されたサブバンドパワーに基づき前記マイクロフォン信号中の騒音のカットオフ周波数を推定するステップと、
前記推定されたカットオフ周波数を使用して前記マイクロフォン信号中の風切り音を低減するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、風を検出し、風パラメータ(wind parameter)を推定し、マイクロフォン信号中の風切り音を低減するための方法、装置、およびシステムに関し、詳細には、加速度計を使用して風を検出し、推定し、風切り音を低減するための方法、装置、およびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーディオシステムにおける風切り音は、マイクロフォンポートを通り過ぎて流れる、またはマイクロフォン膜の上を流れる空気流の乱流から発生する。これは、マイクロフォン膜に入射する音圧波により生じる非風切り音(たとえば、交通、列車、工事など)とは対照的である。
【0003】
風切り音は、しばしば、音声などのマイクロフォン信号中のより価値のある音をマスクするのに十分な大きさの振幅を有することができる。したがって、このような乱流によって生じるマイクロフォン信号中の風切り音を抑制して、マイクロフォン信号の非風切り音成分が聞き取られ、および/または処理されることを可能にすることが望ましい。
【0004】
最先端の風切り音低減アルゴリズムは、いくつか挙げると、風の存在確率、風速、風向、短期および長期スペクトル振幅、短期および長期スペクトルカットオフ周波数などの、一般に「風切り音パラメータ」と称される、マイクロフォン信号中に存在する風切り音に関する情報を必要とする。しかしながら、従来のマイクロフォンでは、風切り音単独と、非風切り音(交通騒音など)と混ざった風切り音とを区別することができないので、風低減アルゴリズムによって使用されるべき風切り音パラメータを正確に決定することが困難な場合がある。
【0005】
それに加えて、従来のマイクロフォンは、多くの場合に、強風が存在している場合に飽和し、その結果、マイクロフォン出力信号のクリッピングが生じる。非常に強い風(たとえば、12ms-1を超える速度)は、マイクロフォン信号の完全な飽和につながる可能性があり、これは、完全な飽和が発生する速度を超える速度を有する風の特性の線引きをすることができないことを意味する。
【0006】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品、または同様のものなどの説明は、これらの事項のいずれかまたはすべてが先行技術基盤の一部をなすこと、または添付の請求項の各々の優先日前に存在していたような本開示に関連する分野における一般的な知識であったことを認めるものとはみなされない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第9,516,408号
【特許文献2】米国特許第9,589,573号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態は、加速度計または慣性測定ユニット(IMU)を使用して風切り音の存在および特性を推定することによってこれらの問題のうちの1つまたは複数に対処するか、または少なくとも軽減しようとするものである。本発明者らは、加速度計信号が、移動する空気流に起因して発生する乱流と入射音圧波によって引き起こされる振動との間を線引きするために使用できることを立証した。これは、加速度計(または加速度計が配置されているエンクロージャ)の周りの空気(たとえば、風)の動きによって加えられる力は、加速度計の感度の閾値を超える傾向があるが、非常に大きな音圧波(たとえば、100dB SPLを超える)であっても、この音圧波によって加えられる力は、一般的には、加速度計の感度の閾値を超えるには不十分であるからである。
【0009】
それに加えて、典型的なMEMSマイクロフォンの有効質量は、MEMS加速度計のプルーフマスよりも数桁小さい。したがって、マイクロフォンは高速度風が存在すると飽和してしまうが、加速度計およびIMUは高速度風によって飽和されない。典型的なMEMS加速度計は、±16g以上の測定範囲を有するように設計されており、これは、著しい風速(たとえば、12ms-1以上)の体積空気流によって加えられる力を超えている。
【0010】
本開示の実施形態は、加速度計およびIMUの上記の現象および特性を利用して、非風切り音レベルに関係なく、また強風条件、たとえば、12ms-1を超える速度において、風切り音を検出し、風切り音パラメータを決定する。さらに、本開示の実施形態は、加速度計からの信号を使用して決定された風切り音パラメータに基づきマイクロフォン信号中の風切り音を低減することを目的とする。
【0011】
本開示の第1の態様により、方法が提供され、これは加速度計から導出された1つまたは複数の加速度計信号を受信するステップと、1つまたは複数の加速度計信号に基づき加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定するステップとを含む。
【0012】
加速度計における風の1つまたは複数のパラメータは、加速度計における風の速度および/または加速度計における風の入射角を含み得る。1つまたは複数の加速度計信号は、加速度の異なる軸を表す2つ以上の加速度計信号を含み得る。その場合、加速度計における風の入射角を決定するステップは、2つ以上の加速度計信号を比較するステップを含み得る。
【0013】
加速度計における風の1つまたは複数のパラメータは、加速度計における風の存在の指示および/または加速度計における風の存在の確率を含み得る。
【0014】
方法は、非風切り音を除去するために1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数をフィルタリングするステップをさらに含み得る。風の1つまたは複数のパラメータは、フィルタリングされた1つまたは複数の加速度計信号に基づき決定され得る。フィルタリングは、ローパスフィルタリングを含み得る。それに加えて、または代替的に、ハイパスフィルタリングが、動きなどの、風に関連付けられていない騒音の高周波成分を除去するために適用されてよい。
【0015】
方法は、1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数の中の非風切り音の存在を検出するステップをさらに含み得る。決定するステップは、非風切り音が検出されないときにのみ実行され得る。
【0016】
この方法は、加速度計の近くにあるマイクロフォンからマイクロフォン信号を受信するステップと、加速度計における風の決定された1つまたは複数のパラメータに基づきマイクロフォン信号中の風切り音を低減するステップとをさらに含み得る。
【0017】
加速度計における1つまたは複数の風パラメータを決定するステップは、加速度計信号のうちの1つまたは複数におけるサブバンドパワーを決定するステップと、1つまたは複数の加速度計信号中の決定されたサブバンドパワーに基づきマイクロフォン信号中の騒音のカットオフ周波数を推定するステップとを含み得る。次いで、マイクロフォン信号中の風切り音が、推定されたカットオフ周波数を使用して低減され得る。たとえば、圧縮器を使用してマイクロフォン信号中の風切り音が低減されてよく、圧縮器のニーポイントは推定されたカットオフ周波数に応じて動的に調整される。
【0018】
加速度計における1つまたは複数の風パラメータを決定するステップは、風速を決定するステップをさらに含み得る。次いで、圧縮器のニーポイントは、推定されたカットオフ周波数の代わりに、またはそれに加えて、決定された風速に応じて決定され得る。
【0019】
カットオフ周波数を推定するステップは、ルックアップテーブルを使用してサブバンドパワーをカットオフ周波数に変換するステップを含み得る。
【0020】
方法は、マイクロフォンにおける風の存在を検出するステップ、またはマイクロフォン信号に基づきマイクロフォンにおける風の確率を決定するステップをさらに含み得る。
【0021】
加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定するステップは、マイクロフォンにおける風の存在を検出したことに応答して実行され得る。
【0022】
本開示の別の態様により、装置が提供され、これはメモリと、メモリに結合されているプロセッサであって、加速度計から導出された1つまたは複数の加速度計信号を受信することと、1つまたは複数の加速度計信号に基づき加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定することとを行うように構成されている、プロセッサとを備える。
【0023】
加速度計における風の1つまたは複数のパラメータは、加速度計における風の速度および/または加速度計における風の入射角を含み得る。
【0024】
1つまたは複数の加速度計信号は、加速度の異なる軸を表す2つ以上の加速度計信号を含み得る。加速度計における風の入射角を決定することは、2つ以上の加速度計信号を比較することを含み得る。
【0025】
加速度計における風の1つまたは複数のパラメータは、加速度計における風の存在の指示および/または加速度計における風の存在の確率を含み得る。
【0026】
プロセッサは、非風切り音を除去するために1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数をフィルタリングするようにさらに構成され得る。風の1つまたは複数のパラメータは、フィルタリングされた1つまたは複数の加速度計信号に基づき決定され得る。
【0027】
プロセッサは、1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数の中の非風切り音の存在を検出するようにさらに構成され得る。決定することは、非風切り音が検出されないときにのみ実行され得る。
【0028】
プロセッサは、加速度計の近くにあるマイクロフォンから導出されるマイクロフォン信号を受信することと、加速度計における風の決定された1つまたは複数のパラメータに基づきマイクロフォン信号中の風切り音を低減することとを行うようにさらに構成され得る。
【0029】
加速度計における1つまたは複数の風パラメータを決定することは、加速度計信号のうちの1つまたは複数におけるサブバンドパワーを決定することと、1つまたは複数の加速度計信号中の決定されたサブバンドパワーに基づきマイクロフォン信号中の騒音のカットオフ周波数を推定することとを含み得る。次いで、マイクロフォン信号中の風切り音が、推定されたカットオフ周波数を使用して低減され得る。たとえば、プロセッサは、マイクロフォン信号中の風切り音を低減するために圧縮器を実装するように構成されてよく、圧縮器のニーポイントは推定されたカットオフ周波数に応じて決定され得る。いくつかの実施形態において、加速度計における1つまたは複数の風パラメータを決定することは、風速を決定することをさらに含み得る。その場合、圧縮器のニーポイントは、推定されたカットオフ周波数を使用することに加えて、またはその代わりに、決定された風速に応じて決定され得る。
【0030】
カットオフ周波数を推定することは、メモリに記憶されているルックアップテーブルを使用してサブバンドパワーをカットオフ周波数に変換することを含み得る。
【0031】
プロセッサは、マイクロフォンにおける風の存在を検出するか、またはマイクロフォン信号に基づきマイクロフォンにおける風の確率を決定するようにさらに構成され得る。加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定するステップは、マイクロフォンにおける風の存在を検出したことに応答して実行され得る。
【0032】
装置は、マイクロフォンをさらに備え得る。装置は、加速度計をさらに備え得る。
【0033】
本開示の別の態様により、上で説明されているような装置を含む電子デバイスが提供される。
【0034】
本開示の別の態様により、命令を記憶する非一時的機械可読媒体が提供され、命令は処理回路によって実行されたときに、電子装置に、加速度計から導出された1つまたは複数の加速度計信号を受信することと、1つまたは複数の加速度計信号に基づき加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定することとを行わせる。
【0035】
本開示の別の態様により、マイクロフォンから受信されたマイクロフォン信号中の風切り音を低減する方法が提供され、この方法はマイクロフォンに近接する1つまたは複数の加速度計から1つまたは複数の加速度計信号を受信するステップと、1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数におけるサブバンドパワーを決定するステップと、決定されたサブバンドパワーに基づきマイクロフォン信号中の騒音のカットオフ周波数を推定するステップと、推定されたカットオフ周波数を使用してマイクロフォン信号中の風切り音を低減するステップとを含む。
【0036】
本明細書全体を通して、「備える(comprise)」という語、または「備える(comprises)」もしくは「備えている(comprising)」などの活用形は、述べられている要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップのグループの包含を暗示するが、任意の他の要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップのグループの除外を暗示しないと理解される。
【0037】
本開示の実施形態は、添付図面を参照しつつ、非限定的な例としてのみ、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1a】本開示の一実施形態による装置の概略図である。
【
図1b】本開示の一実施形態による装置の概略図である。
【
図1c】使用者の耳に位置決めされた
図1aおよび
図1bの装置を示す平面図である。
【
図2】様々な騒音状態に対する
図1aから
図1cに示されている装置のマイクロフォンおよび加速度計に関する周波数対パワーを示すグラフである。
【
図3a】内部および外部マイクロフォンの出力信号ならびに
図1aから
図1cに示されている装置の加速度計の3本の空間軸の出力に関するパワー相関行列である。
【
図3b】内部および外部マイクロフォンの出力信号ならびに
図1aから
図1cに示されている装置の加速度計の3本の空間軸の出力に関するパワー相関行列である。
【
図4a】
図1aから
図1cに示されている装置の加速度計にそれぞれ入射する4m/sの速度を有する風に関する風の入射角対500Hzより低い加速度計サブバンド信号パワーの散布図である。
【
図4b】
図1aから
図1cに示されている装置の加速度計にそれぞれ入射する6m/sの速度を有する風に関する風の入射角対500Hzより低い加速度計サブバンド信号パワーの散布図である。
【
図4c】
図1aから
図1cに示されている装置の加速度計にそれぞれ入射する8m/sの速度を有する風に関する風の入射角対500Hzより低い加速度計サブバンド信号パワーの散布図である。
【
図5a】4m/sの速度を有する風が存在しているときの
図1aから
図1cに示されている装置の加速度計によって測定されたパワー密度を表す密度プロットである。
【
図5b】6m/sの速度を有する風が存在しているときの
図1aから
図1cに示されている装置の加速度計によって測定されたパワー密度を表す密度プロットである。
【
図5c】8m/sの速度を有する風が存在しているときの
図1aから
図1cに示されている装置の加速度計によって測定されたパワー密度を表す密度プロットである。
【
図6a】
図1aから
図1cに示されている装置で受けた風の、異なる入射する風の角度および風速に関する加速度計サブバンドパワー対マイクロフォンサブバンドパワーの散布図である。
【
図6b】
図1aから
図1cに示されている装置で受けた風の、異なる入射する風の角度および風速に関する加速度計サブバンドパワー対マイクロフォンサブバンドパワーの散布図である。
【
図6c】
図1aから
図1cに示されている装置で受けた風の、異なる入射する風の角度および風速に関する加速度計サブバンドパワー対マイクロフォンサブバンドパワーの散布図である。
【
図7】
図1aから
図1cに示されている装置によって実装されている例示的なパラメータ推定モジュールのブロック図である。
【
図8】
図7に示されているパラメータ推定モジュールによって実装され得るプロセスの流れ図である。
【
図9】
図7のパラメータ推定モジュールを組み込んでいる風切り音低減システムのブロック図である。
【
図10】
図7のパラメータ推定モジュールを組み込んでいる風切り音低減システムのブロック図である。
【
図11】
図7のパラメータ推定モジュールを組み込んでいる風切り音低減システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示の実施形態は、風切り音を検出するための加速度計信号の取得および使用、風切り音と非風切り音との間の線引きをすること、風状態の広い範囲にわたる風の特性を決定すること、およびマイクロフォン信号中の風切り音を低減することに関係する。
【0040】
MEMSマイクロフォンおよび加速度計デバイスは、両方とも単純な調和振動子(質点-バネ系)としてモデル化され得る。しかしながら、これらのデバイスの設計は異なる問題、すなわち、1つは加速度を測定すること、もう1つは音圧を測定することについて最適化されている。したがって、MEMSマイクロフォン膜の有効質量は、加速度計MEMSのプルーフマスよりも数桁小さい。MEMSマイクロフォン膜の有効質量は比較的小さいので、空間信号の変換は劣る。さらに、MEMSマイクロフォンは風切り音の影響を受けやすく、この問題はMEMSマイクロフォンの構造、特にポート寸法によってMEMSマイクロフォンにおいて悪化する。ポートのサイズは、不純物の進入を最小限に抑えることと、乱流対流圧を制限することとの間のトレードオフである。一般に、マイクロフォンのポート周辺の空気の流れは、3つの騒音源、すなわち、上流の乱流、後縁の渦流離脱、および境界層の乱流を生み出す。これらの騒音源のレベルおよびスペクトルは、入射風速、相対的マイクロフォン配向、ならびに風よけなどの、物理的障壁の存在および特性に依存する。
【0041】
本発明者らは、MEMSマイクロフォンとは対照的に、MEMS加速度計は移動する空気流に起因して発生する乱流と入射音圧波によって引き起こされる振動との間を線引きするために使用できることに気付いた。これは、空気(たとえば、風)の動きによって加えられる典型的な力は典型的なMEMS加速度計の感度の閾値を超える傾向があるが、非常に大きな音圧波(たとえば、100dB SPLを超える)であっても、この音圧波によって加えられる典型的な力は、加速度計の感度の閾値を超えるには不十分である傾向があるからである。本開示の実施形態では、上記の現象を、マイクロフォン信号中の風切り音の低減および抑制など、マイクロフォン音処理の様々な態様に適用する。
【0042】
図1aは、外部マイクロフォン102、内部マイクロフォン103、および加速度計104を備える本開示の実施形態による装置100の概略図である。いくつかの実施形態において、外部および内部マイクロフォン102、103は、MEMSマイクロフォンである。外部および内部マイクロフォン102、103は、それぞれの基準および誤差マイクロフォンであってもよく、当技術分野でよく知られている技術を使用してノイズキャンセルに使用され得る。いくつかの実施形態において、加速度計104は、MEMS加速度計である。いくつかの実施形態において、加速度計104は、1つまたは複数の次元における動きを測定するように構成され得る。たとえば、加速度計104は、3次元空間内の複数の空間次元(xおよびy、またはxおよびyおよびz、またはyおよびz)における加速度を表す出力信号を生成し得る。次の説明では、加速度計104は、x、y、およびz空間軸を表す3つの出力信号を生成するように構成されているものとして説明されるが、本開示の実施形態は、3つの軸を有する加速度計に限定されないことは理解されるであろう。装置100は、外部マイクロフォン102および内部マイクロフォン103の両方を備えるものとして示されているが、実施形態は、
図1aに例示されているマイクロフォンの提供および配置に限定されないことは理解されるであろう。たとえば、代替的実施形態において、装置は、1つのマイクロフォンまたは2つ以上のマイクロフォンを備えてもよく、これらは、装置100上または装置内の任意の場所に配置されてよい。
【0043】
図1に示されている実施形態では、装置100は、使用者107の耳106に配置するように構成されているヘッドフォンである。しかしながら、本明細書において説明されている技術は、マイクロフォンおよび加速度計を備える任意の装置上に実装され得ることは理解されるであろう。そのような装置は、限定はしないが、イヤフォン、ヘッドフォン、ヘッドセット、イヤバッド、イヤフォン、イヤディフェンダ、スマートフォン、タブレット、または鼓膜に音を届けるための、および/または鼓膜で音をキャンセルするための他の装置(能動的にまたは受動的に)を含み得る。任意のそのような装置は、耳の上に被せるか、耳に付けるか、または外耳道内に配置され得る。
【0044】
図1bは、例示的な構成の装置100の概略図である。装置100は、プロセッサ108と、メモリ110と、トランシーバ112とを備える。プロセッサ108は、単一のコンポーネントとして、または複数のコンポーネントとして提供されてよい。同様に、メモリ110は、単一のコンポーネントとして、または複数のコンポーネントとして提供されてよい。データは、当技術分野で知られている任意の方式でバス114または類似のものを介して装置100の要素間で伝送され得る。プロセッサ108は、装置100のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)またはアプリケーションプロセッサであってよい。プロセッサ108は、マイクロフォン102および加速度計104から受信される信号を受信して処理するように構成され得る。プロセッサ108は、マイクロフォン102および/または加速度計104から受信される信号に演算を実行するように構成され得る。装置100は、マイクロフォン102および/または加速度計104から受信された信号の暫定的処理を実行するための追加の処理回路116をさらに含み得る。たとえば、処理回路は、1つもしくは複数のアナログ-デジタルコンバータ(ADC)、1つもしくは複数のデジタル-アナログコンバータ(DAC)、および/または1つもしくは複数のFFTモジュールを備え得る。簡単のため、
図1bにはマイクロフォン102が1つしか示されていない。また、
図1aに示されている内部マイクロフォン103は、バス114または同様のものと通信し得る。メモリ110は、データおよび/またはプログラム命令を記憶するために設けられ得る。トランシーバ112は、スマートフォン、コンピュータ、または同様のものなどの、外部デバイスとの通信(有線もしくはワイヤレス)を可能にするように構成され得る。いくつかの実施形態において、トランシーバは、Bluetooth接続を確立するように構成され得る。装置100は、スピーカー、追加のマイクロフォンなど、
図1aおよび
図1bに示されていない追加のコンポーネントを含み得ることは理解されるであろう。
【0045】
図1cは、使用者107の耳106に配置された装置100の空中写真であり、この場合、耳106は使用者107の左耳である。装置100の次の説明全体を通して、デバイスへの風の入射角は度数で記述される。
図1cは、これらの角度の基準フレームを示しており、0°は使用者の顔の正面に入射する風を表し、90°は使用者の頭の右側に入射して右耳に向かって進む風を表し、180°は使用者の後頭部に入射する風を表し、270°は使用者の頭の左側に入射して左耳106に向かって進む風を表している。以下でより詳しく説明されるように、装置における風の入射角に応じて、マイクロフォン102、103および/または加速度計104が拾う風切り音の量は、頭部、耳106および装置100それ自体の周囲の乱流、ならびに装置100の本体部および使用者107によるマイクロフォン102、103および/または加速度計104のシャドーイングの影響を受ける可能性があることは理解されるであろう。このことは、様々な風の入射角で加速度計104で受けた信号パワーに関する以下の説明においてより明らかになるであろう。
【0046】
図2は、様々な騒音条件に対するマイクロフォン102および加速度計104の周波数対パワーのグラフである。線202は、風切り音のみが存在する場合のマイクロフォン102の出力信号のパワースペクトルを表す。線204は、風切り音および非風切り音(列車騒音)が存在する場合のマイクロフォン102の出力信号のパワースペクトルを表す。線206は、風切り音のみが存在する場合の加速度計104の出力信号のパワースペクトルを表す。線208は、風切り音および非風切り音(列車騒音)が存在する場合の加速度計104の出力信号のパワースペクトルを表す。
【0047】
風切り音がある場合とない場合のマイクロフォン102からの出力信号のパワースペクトル202、204は、約2.5kHz以下の周波数では非常によく似ていることが分かる。しかしながら、特に2.5kHzより高い、非風切り音が存在する場合のマイクロフォン102からの出力信号のパワースペクトルにはかなりの差がある。いくつかの周波数について、dBパワーの差は25dBを超える。対照的に、風切り音がある場合とない場合の加速度計104からの出力信号のパワースペクトル206、208は、最大でも5dBの差があり、500Hzより高い周波数では、いかなる差も実質的に周波数に依存しない。500Hzより低い場合、風切り音がある場合またはない場合にパワースペクトル206、208の間に差はない。したがって、加速度計104の出力信号は、非風切り音の影響を実質的に受けないことが分かる。
【0048】
図3aおよび
図3bはそれぞれ、発話(
図3a)および4ms
-1の風(
図3b)が存在する場合の、内部および外部マイクロフォン102、103の出力信号ならびに加速度計104の3本の空間軸(「x」、「y」、および「z」)の出力信号に関するパワー相関行列である。発話または風のいずれかが存在する場合、いかなる空間次元においても、マイクロフォン102によって記録されるような音響領域と加速度計104によって記録されるような空間領域との間には統計的に有意な相関関係が存在しないことが分かる。特に風が存在する場合には、マイクロフォン102によって生成される信号と加速度計104によって生成される信号との間には、全く相関関係がないように見える。対照的に、加速度計104からのx軸、y軸、およびz軸の出力信号の各々の間には、何らかの相関関係が存在することが分かる。
【0049】
風が存在する場合には、内部マイクロフォンの信号と外部マイクロフォンの信号の間にもほとんど相関がない。これは、各マイクロフォン102、103に関連付けられているポート開口部で形成される渦によるマイクロフォン102、103のポートの周りに存在する乱流に起因すると考えられている。この渦は、風速の増大およびまたポートサイズ/直径が減少に伴って大きくなる。したがって、風速が増大すると、ポート開口部周辺の乱流のためにマイクロフォン信号が飽和し始める。この飽和は、ポートのサイズを大きくすることによってある程度緩和でき、より大きいポートについては、より小さい離脱が生じ、次いでこれは渦を平均化する。しかしながら、ポート入り口での潜在的な汚染および/または進入により実際にポートを作ることができるサイズには制限がある。
【0050】
一般的に、MEMSマイクロフォンの飽和は、2~3m/s程度の風速で発生し始める。MEMSマイクロフォンは、典型的には、発話に対して120dBから130dB SPLの間の音圧レベル(SPL)制限を有する。風切り音の波高因子は発話の波高因子よりも低いので、風に対するMEMSマイクロフォンのSPL限界は110~120dB SPLの間となる。また、MEMSマイクロフォンは、35~85Hzの間のカットオフが3dBである高域応答を有する。
【0051】
従来、風パラメータは、マイクロフォン102、103の一方または両方から受信された信号に基づき推定される。マイクロフォン信号中の風切り音のスペクトルパワーは、この関係が崩れるカットオフ周波数より低いその周波数にほぼ反比例する。言い換えると、風切り音は、スペクトル領域内で1/fプロファイルに従う。したがって、風切り音を推定する既存のアプローチは、たとえばフーリエ解析を使用してマイクロフォン信号のサブバンドパワースペクトルを決定することと、その後カットオフ周波数、すなわちマイクロフォンにおける騒音のスペクトルパワーが平坦になる周波数を決定することとを伴う。この決定されたカットオフ周波数は、次いで、たとえば、後続の抑制ステップの圧縮帯域幅およびニーポイントを変化させるために使用されてよく、それにより、そのような抑制は騒音の影響を受けたマイクロフォン信号から低周波数成分を過度に除去することがない。
【0052】
このアプローチの問題点は、マイクロフォン信号が、多くの場合、乱流および風以外の騒音源、たとえば、車の騒音、自分の声などの形で、騒音の非線形成分を含むことである。このタイプの非線形騒音は、マイクロフォン信号中に存在する騒音の風部分のカットオフ周波数を決定することを困難にし得る。
【0053】
本開示の実施形態は、非風切り音源に対して加速度計104が敏感でないことを利用して、特に風切り音と非風切り音の両方が存在する環境内で、風パラメータを決定する。これらの決定されたパラメータは、次いで、マイクロフォン102、103の一方または両方で受信されたオーディオ信号の風切り音の低減/抑制のために使用され得る。加速度計104によって生成された信号から、いくつかの有用なパラメータが導出され得る。たとえば、風力、速度、および風の入射角の線形推定値が決定され得る。そのようなパラメータは、マイクロフォン102における風切り音のカットオフ周波数を推定するために使用され得、次いで、これは風切り音の低減のために使用され得る。それに加えて、サブバンドパワー推定の形の自声の信頼できる推定値が、加速度計104から来る信号から決定され得る。加速度計信号から導出される自声の推定値は、風速および角度の線形推定値が正確になる期間を決定するために使用され得るが、それは、装置100における自声の存在が、加速度計信号パワーと風速および風の入射角の各々との間の関係に影響を及ぼし得るからである。同様に、加速度計104の動きに関連付けられる非風切り音は、加速度計から出力される信号から推定されてよく、これは正確な風パラメータ推定の期間を決定するために使用され得る。
【0054】
図4a、
図4b、および
図4cは、加速度計104にそれぞれ入射する4m/s、6m/s、および8m/sの速度を有する風に関する風の入射角(x軸)対500Hzより低い加速度計サブバンド信号パワー(y軸)の散布図である。
図4a、
図4b、および
図4cから、加速度計サブバンドパワーが風速に依存していることが分かる。すべての風の入射角において、風速が高いほど、加速度計信号のサブバンドパワーが高くなる。また、加速度計サブバンドパワーは、風速に関係なく、入射する風の角度に依存していることも分かる。したがって、加速度計サブバンドパワーは、加速度計104に関する風の入射角を推定するために使用され得ることが分かる。また、これらの図から、
図1cを参照しつつ上で述べたように、使用者107の頭部に関して0°、45°、225°から315°の角度で入射する風が存在する場合(
図1cに示されているように)加速度計104の近くにある乱流および/またはシャドーイングが加速度計104によって測定される加速度計サブバンドパワーの低下につながる可能性があることが分かる。したがって、180°と225°の間で加速度計104で測定されたサブバンドパワーに大きな落ち込みがあり、次いで、275°から315°までの入射する風の角度で増加する。
【0055】
図4a、
図4b、および
図4cは、
図1cに示されているように、装置100が使用者107の左耳106に配置された状態での、加速度計104の単一軸のデータを示している。加速度計104の単一軸を使用することで、角分解能は角度のグルーピングによって定義される2つのクラスに制限される。これは、225°、275°、および315°(左手の曲線)ならびに0°、45°、90°、135°、および180°(右手の曲線)に入射する風が存在している場合に加速度計104によって測定されるパワーを表す2つの密度曲線を各々示す
図5a、
図5b、および
図5cによって例示される。
図5a、
図5b、および
図5cは、それぞれ4m/s、6m/s、8m/sの速度の風に関するパワー密度のプロットを示している。ここでもまたこれらの図から、使用者107からのシャドーイングの結果、加速度計104における測定された信号パワーの減少が生じることが分かる。
【0056】
加速度計104の追加の軸を使用することによって、各追加の軸の測定されたサブバンドパワーが、加速度計104による風角度の推定値の角分解能を高めるために使用され得ることが理解されるであろう。たとえば、加速度計104の第2の軸を使用することで、加速度計104の1つの軸における風の入射角に関するいかなる曖昧さも、第2の軸からの信号を使用することで解決され得る。
【0057】
図6a、
図6b、および
図6cは、静かな環境における異なる入射する風の角度および風速に対する加速度計サブバンドパワー(横軸)対マイクロフォンサブバンドパワー(縦軸)の散布図である。静かな環境(非風切り音がない)では、マイクロフォン信号のパワーは風によるものであり、その結果マイクロフォン信号中に風切り音が出現することは理解されるであろう。同じ点が図の各々にプロットされているが、各プロット内では色/濃淡によって異なるグループに分けられる。
図6aは、
図1cに示されているように、風の入射角(0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°)を色/濃淡で線引きしている。
図6bは、風速(4m/s、6m/s、8m/s)を色/濃淡で線引きしている。
図6cでは、入射角に基づき点を2つのグループに分けており、第1のグループは角度0°、45°、および225°の風が存在している場合に行われた測定を含み、第2のグループは角度90°、135°、180°、270°、および315°の風が存在している場合に行われた測定を含む。
【0058】
これらの図は、マイクロフォンのサブバンドパワー(風による)が、風速の増加とともに分散が増大することを示している。これは、風速の増大に伴い、マイクロフォンポートの周辺の乱流が大きくなる結果である。また、
図6cに最も明確に例示されている2つの角度クラスタがあり、これは同じ測定された加速度計サブバンドパワーに対するマイクロフォンサブバンドパワーの相違によって明らかであることが分かる。これら2つのクラスタは、装置100の前面(前方)および背面(後方)から入射する風にほぼ対応する。線形回帰線602、604も
図6cに提示されている。第1の回帰線602は、0°、45°、および225°の角度からの風に応じて加速度計とマイクロフォン信号との間のサブバンドパワー相関を表している。第2の回帰線604は、90°、135°、180°、270°、および315°の角度の風に応じて加速度計とマイクロフォン信号との間のサブバンドパワー相関(500Hz未満)を表している。したがって、中程度の風速では、マイクロフォンと加速度計サブバンドパワーとの間の
図6aから
図6cに示されている関係は、加速度計104から出力される信号のサブバンドパワーに基づきマイクロフォン102からの出力信号中に存在する風切り音に起因するサブバンドパワーを推定するために使用され得る。たとえば、モデルまたはルックアップテーブルまたは同様のものが、受信した加速度計信号の1つまたは複数のサブバンド加速度計パワーを、風速、風向、マイクロフォン騒音カットオフ周波数の1つまたは複数に変換するために、上記のまたは類似のデータに基づき生成され得る。
【0059】
図7は、
図1bに示されている装置100によって実装され得る本開示の一実施形態によるパラメータ推定モジュール700のブロック図である。パラメータ推定モジュール700は、加速度計104から出力される1つまたは複数の加速度計信号702を受信するように構成される。加速度計104からの加速度計信号702は、最初に、パラメータ推定モジュール700に提供される前に一定の持続時間(要素数、M)のフレームに2値化(量子化および離散化)され得る。加速度計104は、加速度計104の1つまたは複数の軸の各々について信号を生成し得る。たとえば、加速度計104が3つの測定軸を含む場合、1つまたは複数の加速度計信号702は、測定の各軸について1つずつ、3つの信号を含み得る。パラメータ推定モジュール700は、加速度計104に入射する風の1つまたは複数の推定パラメータを含むパラメータ推定出力704を生成するように構成される。そのようなパラメータは、限定はしないが、加速度計104における風の存在、風速、風向、およびマイクロフォン信号中の騒音のカットオフ周波数を含み得る。
【0060】
任意選択で、パラメータ推定モジュール700に加えて非風切り音検出器706が提供され得る。いくつかの実施形態において、非風切り音検出器706は、パラメータ推定モジュール700に組み込まれてもよい。非風切り音検出器706は、風に関連付けられていない加速度計104における騒音の存在を検出するように構成され得る。たとえば、非風切り音検出器706は、加速度計104における使用者の発話を検出するように構成されている音声活動検出器(VAD)を実装し得る。前述したように、発話の存在は、加速度計信号に基づき風パラメータを正確に推定する能力に影響を及ぼし得る。したがって、非風切り音検出器706は、発話が検出されたか否かを示す音声活動信号をパラメータ推定モジュール700に出力し得る。別の例では、非風切り音検出器706は、使用者107が走っているのか歩いているのかを決定し得、これは加速度計104の方向(すなわち、上および下)の激しい変化に起因して加速度計104における騒音を引き起こし得る。走ることによるそのような騒音は、たとえば、加速度計105において約100Hzより高い広帯域信号として提示される。したがって、非風切り音検出器706は、非風切り音が存在し、加速度計104から出力される1つまたは複数の信号の任意の風切り音成分を破損している可能性があることを示す信号を出力し得る。非風切り音検出器706から受信された1つまたは複数の信号に応答して、パラメータの不正確な推定を回避するために、パラメータ推定モジュール700は、非風切り音が存在しないこと、またはそのような非風切り音が加速度計104から出力された信号に実質的に影響を及ぼしていないことが示されている期間中に加速度計104から受信された加速度計信号702のみを使用してよい。それに加えて、または代替的に、非風切り音検出器706からの出力は、非風切り音に関係する1つまたは複数の加速度計信号の成分を除去する1つまたは複数のフィルタを切り替えるために使用され得る。
【0061】
装置100の加速度計104から加速度計信号702を受信することに加えて、パラメータ推定モジュール700は、任意選択で、1つまたは複数の追加の加速度計710から追加の加速度計信号708を受信し得る。たとえば、1つまたは複数の追加の加速度計710は、装置100の加速度計104から空間的に分離され得る。装置100がイヤフォンもしくはヘッドフォン、またはイヤフォンもしくはヘッドフォンのセットを備える場合、たとえば、1つまたは複数の追加の加速度計710は、この対の他方のイヤフォンもしくはヘッドフォン内に配置される加速度計を備え得る。加速度計104と1つまたは複数の追加の加速度計710との空間的分離は、パラメータ推定モジュール700が風の入射方向を解決することを可能にし得る。これは、たとえば、サブバンドパワーなどの、各加速度計から受信される加速度計信号の共通の特性を比較することによって達成され得る。
【0062】
パラメータ推定モジュール700は、1つまたは複数の加速度計信号の様々な特性を決定することによって上記パラメータのうちの1つまたは複数を決定し得る。いくつかの実施形態において、パラメータ推定モジュールは、1つまたは複数の加速度計信号702のサブバンドのパワーを決定し得る。
【0063】
図8は、
図7に示されているパラメータ推定モジュール700によって実装され得るプロセスの流れ図である。ステップ802において、パラメータ推定モジュール700は、1つまたは複数の加速度計104、710から1つまたは複数の加速度計信号702、708を受信し得る。次いで、加速度計信号702、708は、ステップ804でフィルタリングされ、1つまたは複数のサブバンド加速度計信号を生成し得る。フィルタリングは、閾値周波数より高い加速度計信号の成分を除去するローパスフィルタリングを含み得る。いくつかの実施形態において、閾値周波数は、加速度計104のスペクトルパワープロファイルに基づき決定される。閾値周波数は、発話、装置100内のスピーカーからのクロストーク、タップ、またはヘッドセットとの他の物理的相互作用、および/または任意のアイドルチャネルノイズに起因して存在する実質的にすべての非風切り音を除去するように選択され得る。いくつかの実施形態において、閾値(カットオフ)周波数は約500Hzである。いくつかの実施形態において、閾値は、加速度計信号間で異なっていてもよい。それに加えて、フィルタリングは、たとえば、ヘッドセットの動き(歩行/ランニングなど)による加速度計の動きに関連する加速度計信号の成分を除去する高域フィルタリングも含み得る。次いで、パラメータ推定モジュール700は、ステップ806において、サブバンド加速度計信号の各々のサブバンドパワーを決定し得る。次いで、決定されたサブバンドパワーは、ステップ808において、マイクロフォンに入射する風の1つまたは複数のパラメータまたは特性を推定するために使用され得る。たとえば、サブバンドパワーは、加速度計104における風速を決定するために使用されてよい。それに加えて、または代替的に、サブバンドパワーは、加速度計104における風の入射角を決定するために使用され得る。それに加えて、または代替的に、サブバンドパワーは、騒音がマイクロフォン102の一方または両方から出力される信号に影響を及ぼしている以下のマイクロフォン102、103の一方または両方のマイクロフォン騒音カットオフ周波数を決定するために使用されてよい。決定は、メモリに記憶されている1つまたは複数のモデルまたはルックアップテーブルに基づき行われ得る。1つまたは複数のモジュールまたはルックアップテーブルは、上で説明されているように、あらかじめ生成され得る。次いで、1つまたは複数の風パラメータまたは特性は、ステップ810において、パラメータ推定出力704に出力され得る。
【0064】
上で説明され、
図6cに例示されているように、マイクロフォンサブバンドパワーと加速度計サブバンドパワーとの間の関係は、装置100における風の入射角に依存する。したがって、入射する風の角度に関する知識は、パラメータ推定に使用する複数のモデルまたはルックアップテーブルのいずれかを決定するために使用され得る。たとえば、パラメータ推定モジュール700が、1つまたは複数の追加の加速度計710に加えて加速度計104から加速度計信号702、708を受信する場合、ステップ808において、パラメータ推定モジュール700は、それぞれの加速度計信号の決定されたサブバンド信号パワーを比較し、装置100に関する風の入射角の決定を行い得る。次いで、パラメータ推定モジュール700は、これに基づき、風パラメータの決定のために使用する複数のモデルまたはルックアップテーブルのいずれかを決定し得る。
【0065】
図9、
図10、および
図11は、
図7のパラメータ推定モジュール700を組み込んでいる風切り音低減システム900、1000、1100のブロック図である。簡単のため、
図7に示されている任意選択の非風切り音検出器706および追加の加速度計710は、
図9、
図10、または
図11には示されていないが、システム900、1000、1100に組み込まれ得る。
【0066】
図9を参照すると、システム900は、風切り音検出(WND)モジュール902と、風切り音低減(WNR)モジュール904とを備える。風検出モジュール(WND)902は、マイクロフォン102からのマイクロフォン出力信号906を受信するための入力を備える。WNDモジュール902は、受信されたマイクロフォン出力信号906に基づきマイクロフォン102における風を検出し、風検出信号908をWNRモジュール904に出力するように構成される。例示的なWNDモジュールは、米国特許第9,516,408号において説明されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0067】
WNRモジュール904は、WNDモジュール902からの風検出信号908、パラメータ推定モジュール700からのパラメータ信号704、およびマイクロフォン102からのマイクロフォン信号906を受信し、WNDモジュール902によって騒音が検出されたときに、パラメータ推定モジュールからのパラメータ信号700に基づき、マイクロフォン信号906中の風切り音を低減するように構成される。たとえば、WNRモジュール904は、各マイクロフォン102、103における風の強さを決定し、風を最小にするように、結果として得られる信号において風力が低減されるように信号を結合してもよい。たとえば、WNRモジュール904は、各サブバンドにおける風強度に基づき、風の影響を受けるサブバンドを動的に減衰させ得る。たとえば、WNRモジュール904は、圧縮アルゴリズムの帯域幅またはニーポイントを動的に設定するために推定されたカットオフ周波数を使用して抑制または圧縮を実装し得る。したがって、圧縮の量は、カットオフ周波数および/または風の強さに基づき制御されることが可能である。風切り音低減の例示的な方法は、米国特許第9,589,573号において説明されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0068】
図10は、
図9に示されているシステム900の変形形態である風切り音低減システム1000のブロック図であり、同様の部品には同様の数字が付されている。風切り音低減システム1000において、風切り音検出は、パラメータ推定モジュール700によって実行される。パラメータ推定モジュール700は、風が存在する、または存在する可能性が高いというフラグに加えて、1つまたは複数の風パラメータ1004をWNRモジュール904に出力し得る。
【0069】
図11は、
図9に示されているシステム900のさらなる変形形態である風切り音低減システム1100のブロック図であり、同様の部品には同様の数字が付されている。風切り音低減システム1100は、WNDモジュール1102と、パラメータ推定モジュール1104と、WNRモジュール1106とを備える。
図11において、WNDモジュール1102は、マイクロフォン信号906および加速度計信号702の一方または両方を受信し、これらの信号906、702の一方または両方に基づき風の存在の決定を行ってもよい。次いで、WNDモジュール1102は、風検出信号1108をパラメータ推定モジュール1104に出力し得る。次いで、パラメータ推定モジュール1104は、WNDモジュール1102によって風が検出されたときのみ、すなわち、風検出信号1108がパラメータ推定モジュール1104に風の存在を指示するときのみ、加速度計信号702に基づき風の1つまたは複数のパラメータを決定し得る。次いで、パラメータ推定モジュール1104は、WNDモジュール1102によって風が存在すると決定されたときに1つまたは複数のパラメータ信号1110をWNRモジュール1106に出力し得る。WNDモジュール1102によって風が存在していないと決定されたときに、パラメータ推定モジュール1104は、そのような指示をWNRモジュール1106に出力してもよく、または代替的に、信号をWNRモジュール1106に出力しなくてもよい。パラメータ推定モジュール1104から受信された信号704に基づき、WNRモジュール1106は、マイクロフォン信号906に風切り音低減を適用し得る。WNRモジュール1106は、
図9および
図10のWNRモジュール906を参照しつつ説明されているものなど、当技術分野で知られている任意の方式でマイクロフォン信号906の風切り音を低減し得る。
【0070】
実施形態は、スマートフォン、オーディオプレーヤー、携帯電話もしくはセルラーフォン、ハンドセットなどの電子的、ポータブル、および/または電池式ホストデバイスに実装され得る。実施形態は、そのようなホストデバイス内に設けられた1つまたは複数の集積回路上に実装されてもよい。代替的に、実施形態は、スマートフォン、携帯電話またはセルラーフォン、ヘッドフォン、イヤフォンなど、一人の人にオーディオ再生を行うように構成可能なパーソナルオーディオデバイス内に実装されてもよい。ここでまた、実施形態は、そのようなパーソナルオーディオデバイス内に設けられた1つまたは複数の集積回路上に実装されてもよい。なおもさらなる代替的形態において、実施形態は、ホストデバイスとパーソナルオーディオデバイスとの組合せで実装されてもよい。たとえば、実施形態は、パーソナルオーディオデバイス内に設けられた1つまたは複数の集積回路、およびホストデバイス内に設けられた1つまたは複数の集積回路で実装され得る。
【0071】
本明細書において、特に図に関連して説明されている、様々な動作は、他の回路または他のハードウェアコンポーネントによって実装され得ることは-特に本開示の恩恵を受ける当業者によって-理解されるべきである。所与の方法の各動作が実行される順序は、変更されてもよく、本明細書において例示されているシステムの様々な要素は、追加され、並べ替えられ、組み合わされ、省かれ、修正される、などがなされてもよい。本開示は、すべてのそのような修正および変更を包含することが意図されており、したがって、上記の説明は、制限的な意味ではなく例示的な意味で考慮されるべきである。
【0072】
同様に、本開示は、特定の実施形態に言及しているが、本開示の範囲および対象範囲から逸脱することなくそれらの実施形態にいくつかの修正および変更が加えられ得る。さらに、特定の実施形態に関して本明細書において説明されている任意のメリット、利点、または問題への解決策は、重要な、必要な、または本質的な特徴もしくは要素として解釈されることを意図されていない。
【0073】
本開示の恩恵を受ける同様のさらなる実施形態および実装形態は、当業者には明らかであり、そのような実施形態は、本明細書に包含されているとみなされるべきである。さらに、当業者は、説明された実施形態の代わりに、またはそれと組み合わせて、様々な等価な技術が適用され得ることを認識するであろうし、またそのような均等物はすべて本開示に包含されるものとみなされるべきである。
【0074】
当業者であれば、上で説明されている装置および方法のいくつかの態様、たとえば発見および構成方法が、たとえばディスク、CD-ROM、もしくはDVD-ROMなどの不揮発性キャリア媒体、リードオンリーメモリ(ファームウェア)などのプログラムされたメモリ、または光もしくは電気信号キャリアなどのデータキャリア上で、プロセッサ制御コードとして具現化され得ることを認識するであろう。多くのアプリケーションについて、本開示の実施形態は、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(特定用途向け集積回路)、またはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)上に実装される。したがって、コードは、従来のプログラムコードまたはマイクロコードまたはASICもしくはFPGAをセットアップするか、もしくは制御するためのコードを含み得る。コードは、再プログラム可能なロジックゲートアレイなどの再構成可能な装置を動的に構成するためのコードも含み得る。同様に、Verilog(登録商標)またはVHDL(超高速集積回路ハードウェア記述言語)などのハードウェア記述言語に対するコードを含み得る。当業者であれば理解するように、コードは、互いに通信する複数の結合されたコンポーネントの間に分散され得る。適切であれば、実施形態は、アナログハードウェアを構成するためにフィールド(再)プログラマブルアナログアレイまたは類似のデバイス上で実行するコードを使用して実装されてもよい。
【0075】
本明細書において使用されているように、モジュールという用語は、カスタム定義済み回路などの専用ハードウェアコンポーネントによって少なくとも部分的に実装され得る機能ユニットもしくはブロック、および/または1つもしくは複数のソフトウェアプロセッサもしくは好適な汎用プロセッサもしくは同様のものにおいて実行される適切なコードによって少なくとも部分的に実装され得る機能ユニットもしくはブロックを指すために使用されるものとする。モジュールは、それ自体、他のモジュールまたは機能ユニットを含み得る。モジュールは、複数のコンポーネントまたはサブモジュールによって提供されてもよく、これらは同じ場所に配置される必要はなく、異なる集積回路上で提供され、および/または異なるプロセッサ上で実行されることが可能である。
【0076】
上述の実施形態は、本発明を制限するのではなく本発明を例示するものであり、当業者であれば、添付の請求項または実施形態の範囲から逸脱することなく多くの代替的実施形態を設計することができることに留意されたい。「備えている(comprising)」という語は、請求項または実施形態に列挙されているもの以外の要素またはステップの存在を除外せず、「1つの(a)」または「1つの(an)」は複数を除外せず、単一の特徴または他のユニットが、請求項または実施形態において記載されているいくつかのユニットの機能を遂行し得る。請求項または実施形態における任意の参照番号またはラベルは、その範囲を制限するものとして解釈されないものとする。
【0077】
本開示およびいくつかの代表的な利点は詳細に説明されているが、添付の請求項または実施形態によって定義されているような本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく本明細書において様々な変更、置換、および改変が行われ得ることは理解されるべきである。さらに、本開示の範囲は、本明細書の対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか、または実質的に同じ結果を達成する、現在存在しているか、または後から開発されるであろう、プロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、またはステップの特定の実施形態に限定されることを意図されていない。したがって、添付の請求項または実施形態は、その範囲内に、そのようなプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、またはステップを含めることを意図されている。
【0078】
当業者であれば、本開示の広い一般的な範囲から逸脱することなく上述の実施形態に対して多数の変更および/または修正が加えられ得ることも理解するであろう。したがって、本実施形態は、すべての点で、例示としてみなされるべきであり、制限としてとみなされるべきでない。
【符号の説明】
【0079】
100 装置
102 外部マイクロフォン
103 内部マイクロフォン
104 加速度計
106 耳、左耳
107 使用者
108 プロセッサ
110 メモリ
112 トランシーバ
114 バス
116 処理回路
202 線、パワースペクトル
204 線、パワースペクトル
206 線、パワースペクトル
208 線、パワースペクトル
602 線形回帰線
604 線形回帰線
700 パラメータ推定モジュール、パラメータ信号
702 加速度計信号
704 パラメータ推定出力、パラメータ信号
706 非風切り音検出器
708 加速度計信号
710 加速度計
900 風切り音低減システム
902 風切り音検出(WND)モジュール
904 風切り音低減(WNR)モジュール
906 マイクロフォン出力信号
908 風検出信号
1000 風切り音低減システム
1004 風パラメータ
1102 WNDモジュール
1104 パラメータ推定モジュール
1106 WNRモジュール
1108 風検出信号
1100 風切り音低減システム
1110 パラメータ信号
【手続補正書】
【提出日】2021-12-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度計から導出された1つまたは複数の加速度計信号を受信するステップと、
前記加速度計の近くにあるマイクロフォンからマイクロフォン信号を受信するステップと、
前記1つまたは複数の加速度計信号に基づき前記加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定するステップと
、
前記加速度計における風の前記決定された1つまたは複数のパラメータに基づき前記マイクロフォン信号中の風切り音を低減するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記加速度計における風の前記1つまたは複数のパラメータは、前記加速度計における風の速度および/または前記加速度計における風の入射角を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の加速度計信号は、加速度の異なる軸を表す2つ以上の加速度計信号を含み、前記加速度計における風の前記入射角を決定するステップは、前記2つ以上の加速度計信号を比較するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記加速度計における風の前記1つまたは複数のパラメータは、前記加速度計における風の存在の指示および/または前記加速度計における風の存在の確率を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
非風切り音を除去するために前記1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数をフィルタリングするステップをさらに含み、風の前記1つまたは複数のパラメータは、前記フィルタリングされた1つまたは複数の加速度計信号に基づき決定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数の中の非風切り音の存在を検出するステップをさらに含み、決定する前記ステップは、非風切り音が検出されないときにのみ実行される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記加速度計における1つまたは複数の風パラメータを決定するステップは、
前記加速度計信号のうちの1つまたは複数におけるサブバンドパワーを決定するステップと、
前記1つまたは複数の加速度計信号中の前記決定されたサブバンドパワーに基づき前記マイクロフォン信号中の騒音のカットオフ周波数を推定するステップと
を含み、
前記推定されたカットオフ周波数を使用して前記マイクロフォン信号中の風切り音が低減される、請求項
1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロフォン信号中の風切り音は、圧縮器を使用して低減され
る、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記加速度計における1つまたは複数の風パラメータを決定するステップは、風速を決定するステップをさらに含
む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記カットオフ周波数を推定するステップは、ルックアップテーブルを使用して前記サブバンドパワーを前記カットオフ周波数に変換するステップを含む、請求項
7から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロフォンにおける風の存在を検出するステップ、または前記マイクロフォン信号に基づき前記マイクロフォンにおける風の確率を決定するステップをさらに含む、請求項
1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定する前記ステップは、前記マイクロフォンにおける風の存在を検出したことに応答して実行される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
メモリと、
前記メモリに結合されているプロセッサであって、
加速度計から導出された1つまたは複数の加速度計信号を受信することと、
前記加速度計の近くにあるマイクロフォンからマイクロフォン信号を受信することと、
前記1つまたは複数の加速度計信号に基づき前記加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定することと
、
前記加速度計における風の前記決定された1つまたは複数のパラメータに基づき前記マイクロフォン信号中の風切り音を低減することと
を行うように構成されている、プロセッサと
を備える、装置。
【請求項14】
前記加速度計における風の前記1つまたは複数のパラメータは、前記加速度計における風の速度および/または前記加速度計における風の入射角を含む、請求項
13に記載の装置。
【請求項15】
前記1つまたは複数の加速度計信号は、加速度の異なる軸を表す2つ以上の加速度計信号を含み、前記加速度計における風の前記入射角を決定することは、前記2つ以上の加速度計信号を比較することを含む、請求項
14に記載の装置。
【請求項16】
前記加速度計における風の前記1つまたは複数のパラメータは、前記加速度計における風の存在の指示および/または前記加速度計における風の存在の確率を含む、請求項
13から
15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記プロセッサは、非風切り音を除去するために前記1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数をフィルタリングするようにさらに構成され、風の前記1つまたは複数のパラメータは、前記フィルタリングされた1つまたは複数の加速度計信号に基づき決定される、請求項
13から
16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記1つまたは複数の加速度計信号のうちの1つまたは複数の中の非風切り音の存在を検出するようにさらに構成され、前記決定することは、非風切り音が検出されないときにのみ実行される、請求項
13から
17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記加速度計における1つまたは複数の風パラメータを決定することは、
前記加速度計信号のうちの1つまたは複数におけるサブバンドパワーを決定することと、
前記1つまたは複数の加速度計信号中の前記決定されたサブバンドパワーに基づき前記マイクロフォン信号中の騒音のカットオフ周波数を推定することと
を含み、
前記推定されたカットオフ周波数を使用して前記マイクロフォン信号中の風切り音が低減される、請求項
13から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記プロセッサは、前記マイクロフォン信号中の風切り音を低減するために圧縮器を実装するように構成され
る、請求項
19に記載の装置。
【請求項21】
前記加速度計における1つまたは複数の風パラメータを決定することは、風速を決定することをさらに含
む、請求項
20に記載の装置。
【請求項22】
前記カットオフ周波数を推定することは、前記メモリに記憶されているルックアップテーブルを使用して前記サブバンドパワーを前記カットオフ周波数に変換することを含む、請求項
13から
21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記プロセッサは、
前記マイクロフォンにおける風の存在を検出するか、または前記マイクロフォン信号に基づき前記マイクロフォンにおける風の確率を決定するようにさらに構成される、請求項
13から
22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定することは、前記マイクロフォンにおける風の存在を検出したことに応答して実行される、請求項
22に記載の装置。
【請求項25】
前記マイクロフォンをさらに備える、請求項
13から
24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記加速度計をさらに備える、請求項
13から
25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
請求項
13から
26のいずれか一項に記載の装置を備える、電子デバイス。
【請求項28】
命令を記憶する非一時的機械可読媒体であって、前記命令は処理回路によって実行されたときに、電子装置に
加速度計から導出された1つまたは複数の加速度計信号を受信することと、
前記加速度計の近くにあるマイクロフォンからマイクロフォン信号を受信することと、
前記1つまたは複数の加速度計信号に基づき前記加速度計における風の1つまたは複数のパラメータを決定することと
、
前記加速度計における風の前記決定された1つまたは複数のパラメータに基づき前記マイクロフォン信号中の風切り音を低減することと
を行わせる、非一時的機械可読媒体。
【国際調査報告】