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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ガス検知器
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20220713BHJP
【FI】
G01N21/3504
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559547
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(85)【翻訳文提出日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2020059746
(87)【国際公開番号】W WO2020207962
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】1903745
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518023164
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デテュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル
(71)【出願人】
【識別番号】510122762
【氏名又は名称】トタルエネルジ エスウ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】フシェ,ピエール-イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥルアール,ギヨーム
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB02
2G059CC04
2G059CC09
2G059EE01
2G059EE12
2G059FF01
2G059FF04
2G059FF06
2G059HH01
2G059JJ02
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM14
2G059NN01
(57)【要約】
ターゲットガスを明らかにするためのガス検知器は、複数の光学チャネル(10a、10b、・・・)を有するイメージ取り込みユニット(10)と、イメージ処理ユニット(20)と、計算ユニット(30)と、を備える。前記イメージ処理ユニットは、分析スペクトルバンドに関係し、かつ視野の一部内に存在する前記ターゲットガスの量に起因する放射透過係数の値を導出するように構成されている。好ましくは、複数の分析バンドが並行して用いられる。前記計算ユニットは、各分析バンドに関係する前記放射透過係数の値に基づき、前記ターゲットガスの前記量の評価を導出するよう構成されている。かかるガス検知器は、小さな寸法を有し得、ドローンへの搭載を含め容易に輸送可能であり、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで、前記ターゲットガスの前記量についての複数の評価結果を提供し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットガスと称される、視野内に存在し得る少なくとも1つのガスを明らかにするためのガス検知器であって、
イメージ取り込みユニット(10)であって、複数の光学チャネル(10a、10b、・・・)が1対1に対応する異なる複数のスペクトルバンドにおける、複数のスペクトルイメージと称される、前記視野の1つの同一の内容の複数のイメージのそれぞれを別々かつ同時に取り込むように平行に配置された少なくとも2つの前記光学チャネルを備える、イメージ取り込みユニット(10)と、
第1の取得手段(21)であって、バックグラウンドシーンと前記イメージ取り込みユニット(10)との間の前記視野内に存在する前記ターゲットガスの量に起因することが意図される周囲温度値を提供するように構成された、第1の取得手段(21)と、
第2の取得手段(22)であって、分析バンドと称される複数の前記スペクトルバンドのうちの少なくとも1つについて、前記バックグラウンドシーンの複数の要素に起因することが意図される複数のバックグラウンド輝度温度値を提供するように構成された、第2の取得手段(22)と、
イメージ処理ユニット(20)であって、前記イメージ取り込みユニット(10)の各チャネル(10a、10b、・・・)により取り込まれた複数の前記スペクトルイメージを受け取るよう構成され、かつ、前記分析バンドに関係する放射透過係数であって、前記バックグラウンドシーンの前記複数の要素と前記イメージ取り込みユニットとの間の前記視野の一部内に存在する前記ターゲットガスの量に少なくとも部分的に起因する前記放射透過係数の評価を、
前記周囲温度値、
前記分析バンドについての、前記視野の前記一部内における前記バックグラウンドシーンの前記複数の要素に起因する、前記バックグラウンド輝度温度値、および
前記視野の前記一部内における、前記分析バンドについて取り込まれた前記スペクトルイメージに対応する見かけの輝度温度値と称される、少なくとも1つの輝度温度値、
を結び付ける等式に基づいて、各分析バンドについて別々に導出するように構成されたイメージ処理ユニット(20)と、
計算ユニット(30)であって、前記分析バンドに関係する前記放射透過係数の値に基づき、前記視野内に存在する前記ターゲットガスの前記量の評価を導出するよう構成された、計算ユニット(30)と、
を備えるガス検知器において、
前記第1の取得手段(21)が、以下の複数の方法:
前記イメージ取り込みユニット(10)の複数の入力チャネル(10a、10b、・・・)のうちの1つによって取り込まれたスペクトルイメージの少なくとも1つの部分に基づく方法であって、バックグラウンドシーンの複数の要素がないと宣言されたか、またはバックグラウンドシーンの複数の要素がないとみなされた前記視野のセクタに、前記スペクトルイメージの前記部分が対応している方法;および、
前記イメージ取り込みユニット(10)の複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)のうちの1つによって取り込まれたスペクトルイメージの少なくとも1つの部分に基づく方法であって、その関連するスペクトルバンドが、前記スペクトルイメージの部分に対応する前記視野のセクタ内に存在するガスについて完全な不透明性を有するスペクトル領域内に含まれる方法、
のうちの1つにしたがって、前記周囲温度値を提供するよう構成されており、
前記イメージ処理ユニット(20)が分析バンドの前記スペクトルイメージの少なくとも1つの輝度温度値と前記周囲温度値とを組み合わせるとき、前記ガス検知器は、各分析バンドの前記スペクトルイメージと同時に、または各分析バンドの前記スペクトルイメージと同一のイメージ取り込みシーケンス中に、前記周囲温度値を提供するために少なくともその一部が使用される前記スペクトルイメージを取り込むよう構成されている、
ということを特徴とする、ガス検知器。
【請求項2】
前記イメージ処理ユニット(20)が、前記分析バンドに関係し、前記ターゲットガスに少なくとも部分的に起因する前記放射の前記透過係数を、等式:
τband_1=1+(TBapparent_1-TBbackground_1)/(TBbackground_1-Tambient
にしたがって評価するように構成され、
τband_1は、band_1によって示される前記分析バンドに関係し、前記視野の前記一部内に存在する前記ターゲットガスに少なくとも部分的に起因する、前記放射についての前記透過係数の値であり、
ambientは、前記第1の取得手段(21)によって提供される前記周囲温度値であり、
TBbackground_1は、前記第2の取得手段(22)によって提供され、かつ前記分析バンドband_1について、前記視野の前記一部内に含まれる前記バックグラウンドシーンの前記複数の要素に起因する、前記バックグラウンド輝度温度値であり、
TBapparent_1は、前記視野の前記一部内において、前記分析バンドband_1について取り込まれた前記スペクトルイメージに対応する前記見かけの輝度温度値である、請求項1に記載のガス検知器。
【請求項3】
前記イメージ処理ユニット(20)が、前記イメージ取り込みユニット(10)によって取り込まれた複数の輝度値の補正を各スペクトルイメージに対して適用し、その結果、前記視野内に存在する少なくとも1つの大気化合物を考慮に入れ、そして、補正された複数の前記輝度値を使用して、各分析バンドに対する前記放射の前記透過係数の評価を導出するようにさらに構成されている、請求項1または2に記載のガス検知器。
【請求項4】
前記計算ユニット(30)が、複数の分析バンドについて別々に前記イメージ処理ユニット(20)により導出された複数の前記放射透過係数の複数の値を、同一の複数の前記分析バンドについてあらかじめ決定されて前記計算ユニットにアクセス可能なデータ記憶ユニット(40)内に記録された複数の前記放射透過係数の複数の値と比較することによって、前記視野の前記一部内に存在するターゲットガスの前記量を決定するように構成されており、
前記あらかじめ決定されて記録された複数の値が、バックグラウンドシーンの要素を前記イメージ取り込みユニット(10)へと結ぶ放射経路上における前記ターゲットガスの濃度の可変的な複数のプロフィールに関係している、請求項1~3のいずれか1項に記載のガス検知器。
【請求項5】
前記第2の取得手段(22)が、以下の複数の方法:
前記バックグラウンドシーンの前記複数の要素のうちの1つを含み、前記分析バンドに専用の前記イメージ取り込みユニット(10)の前記チャネルによって取り込まれ、かつ、前記視野がターゲットガスを含まないときに取り込まれたと宣言されたか、または前記視野がターゲットガスを含まないときに取り込まれたとみなされた少なくとも1つのスペクトルイメージから複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供する方法;
前記バックグラウンドシーンの前記複数の要素のうちの1つを含み、基準バンドと称される対応する前記スペクトルバンドは、前記ターゲットガスの透明性を有するスペクトル領域内に含まれる、または、前記ターゲットガスが各分析バンドにおいてよりも大きな透明性を有する透明バンドである、前記イメージ取り込みユニット(10)の複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)のうちの1つにより取り込まれた少なくとも1つのスペクトルイメージから複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供する方法であって、
前記イメージ処理ユニット(20)が、前記基準バンドについて取り込まれた前記スペクトルイメージから前記バックグラウンドシーンの前記要素の物質を特定して、前記バックグラウンドシーンの前記要素についての、前記周囲温度値および特定された前記物質のスペクトル放射率値に基づき、各分析バンドについておよび前記バックグラウンドシーンの前記要素についての前記バックグラウンド輝度温度値を導出するよう構成されている、当該少なくとも1つのスペクトルイメージから複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供する方法;ならびに、
前記バックグラウンドシーンの前記複数の要素のうちの1つを含み、基準バンドと称される対応する前記スペクトルバンドは、前記ターゲットガスの透明性を有するスペクトル領域内に含まれる、または、前記ターゲットガスが各分析バンドにおいてよりも大きな透明性を有する透明バンドである、前記イメージ取り込みユニット(10)の複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)のうちの1つにより取り込まれた少なくとも1つのスペクトルイメージから複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供する方法であって、
前記イメージ処理ユニット(20)が、前記基準バンドについて取り込まれた前記スペクトルイメージから導出された複数のバックグラウンド輝度温度値に基づく線型回帰を用いることによって、各分析バンドについての複数の前記バックグラウンド輝度温度値を生み出すように構成されている、当該少なくとも1つのスペクトルイメージから複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供する方法、
のうちの1つにしたがって、複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供するように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のガス検知器。
【請求項6】
基準バンドと称される対応する前記スペクトルバンドが前記ターゲットガスの透明性を有するスペクトル領域内に含まれる、または、前記ターゲットガスが各分析バンドにおいてよりも大きな透明性を有する透明バンドである、前記イメージ取り込みユニット(10)の複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)のうちの1つによって取り込まれた少なくとも1つのスペクトルイメージに基づき、複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供するように前記第2の取得手段(22)がさらに構成されており、
前記ガス検知器が、各分析バンドについての前記スペクトルイメージと同時に、または各分析バンドについての前記スペクトルイメージと同一のイメージ取り込みシーケンス中に、前記基準バンドに対応する前記スペクトルイメージを取り込むよう構成されている、請求項5に記載のガス検知器。
【請求項7】
複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)の全てに対して共通であり、かつ複数の前記チャネルの複数の前記スペクトルバンドの全てにおいて同時に感度のよいマトリックスイメージセンサ(2)を、前記イメージ取り込みユニット(10)が備え、
前記イメージセンサの感光面(S)の部分(Sa、Sb)が、各チャネルに対して他のチャネルの各々から別々に専用であり、
各チャネル(10a、10b、・・・)が、前記イメージ取り込みユニット(10)の内部に、
前記チャネルに対して専用である前記感光面の前記部分(Sa、Sb)上に前記視野の内容のイメージを形成するよう配置された光学部材(1a、1b)であって、前記視野が複数の前記チャネルの全てに対して共通である光学部材(1a、1b)と、
前記チャネルの前記スペクトルバンドを決定するように構成された複数のスペクトルフィルタリング手段(3a、3b)と、
を備える、請求項1~6のいずれか1項に記載のガス検知器。
【請求項8】
前記イメージ取り込みユニット(10)の各チャネル(10a、10b、・・・)が、前記チャネルの前記スペクトルバンドが前記放射の波長に関して10nmと500nmとの間に含まれる幅を有するような複数のスペクトルフィルタリング手段(3a、3b)を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のガス検知器。
【請求項9】
複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)の複数の前記スペクトルバンドが7μmと10μmとの間に含まれる複数の放射波長に対応する第1のスペクトル領域内に含まれるか、または複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)の複数の前記スペクトルバンドが3μmと5μmとの間に含まれる複数の放射波長に対応する第2のスペクトル領域内に含まれるように、複数の前記スペクトルフィルタリング手段(3a、3b)が構成されている、請求項8に記載のガス検知器。
【請求項10】
複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)の第1の前記スペクトルバンドが、0.35μm未満のスペクトルバンド幅で7.7μmの周りに広がっており、および
複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)の第2の前記スペクトルバンドが、0.35μm未満のスペクトルバンド幅で8.05μmの周りに広がっており、
さらに任意選択的に、
複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)の第3の前記スペクトルバンドが、0.35μm未満のスペクトルバンド幅で7.35μmの周りに広がっており、および
複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)の第4の前記スペクトルバンドが、0.35μm未満のスペクトルバンド幅で8.35μmまたは9.05μmの周りに広がっている、
前記ターゲットガスとしてのメタンに対して適合された、請求項9に記載のガス検知器。
【請求項11】
複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)の第1の前記スペクトルバンドが、0.30μm未満のスペクトルバンド幅で3.375μmの周りに広がっており、および
複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)の第2の前記スペクトルバンドが、0.30μm未満のスペクトルバンド幅で3.225μmの周りに広がっており、
さらに任意選択的に、
複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)の第3の前記スペクトルバンドが、0.30μm未満のスペクトルバンド幅で3.05μmの周りに広がっており、および
複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)の第4の前記スペクトルバンドが、0.30μm未満のスペクトルバンド幅で4.237μmまたは3.505μmの周りに広がっている、
前記ターゲットガスとしてのメタンに対して適合された、請求項9に記載のガス検知器。
【請求項12】
合成光学チャネルのスペクトルバンドに対応するスペクトルイメージを得るために、複数のベース光学チャネルと称される、前記イメージ取り込みユニット(10)の複数の前記光学チャネル(10a、10b、・・・)のうちの2つにより別々に取り込まれた前記視野の前記内容の複数の前記スペクトルイメージを組み合わせるように構成されており、
前記合成光学チャネルの前記スペクトルバンドが、2つの前記ベース光学チャネルの複数の前記スペクトルバンドのそれぞれの複数の相対的な位置および複数のスペクトルバンド幅から得られる、請求項1~11のいずれか1項に記載のガス検知器。
【請求項13】
同一の前記視野内に同時に存在し得る複数の異なるターゲットガスを明らかにするように構成されており、
前記イメージ取り込みユニット(10)の複数の前記チャネル(10a、10b、・・・)のうちの少なくとも1つの前記スペクトルバンドが、複数の前記ターゲットガスのうちの少なくとも2つの前記ターゲットガスの複数のスペクトル吸収領域のそれぞれの内に同時に含まれており、
その結果、前記チャネルによって取り込まれた1つの同一のスペクトルイメージが、前記視野内に存在する前記少なくとも2つのターゲットガスの複数の量のそれぞれの複数の評価を導出するために、前記イメージ処理ユニット(20)および前記計算ユニット(30)によって使用されている、請求項1~12のいずれか1項に記載のガス検知器。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明はガス検知器に関する。当該ガス検知器は例えば、任意の環境、特に屋外においてメタン等のガスの漏れを検知するためのガス検知器である。
【0002】
[関連技術の説明]
屋外環境においてであろうと、または、閉鎖された体積の内部、例えば建物内または鉱坑内であろうと、多くの状況において、特定のガスが空間ゾーン内に存在するかどうかを判定することが求められる。これは、多量の危険なガスまたは多量の有毒ガスを含み得る場所の安全を確かめるため、または、ガスを運搬または分配するために使用されるパイプラインにおける偶発的な漏れの発生を探索するためであり得る。特に、かかる検知の必要性は、メタン(CH)を送り、分配するための設備に関する。しかし、かかる必要性はまた、関連する用途に応じて、他のガスについて存在する。
【0003】
ガスを検知するための周知の方法は、ガスが吸収しているスペクトルバンド(spectral band)における放射に感度のよい(sensitive)イメージング機器(撮像装置:imaging instrument)を使用することによるものである。文献US2016/097713およびUS2018/011009は、かかるイメージング機器の説明を提供している。一般に、それは大気が少なくとも部分的に透明である赤外線バンドを含み、1つの同じシーンのイメージ(像:image)が繰り返し取り込まれる。ガスの放出がシーン内において起こり、その結果、ガスの分布がイメージング機器の視野内において変化したとき、継続的に取り込まれるイメージは、シーンがガスによって少なくとも部分的に隠されるエリアを含み、これらのエリアの範囲は、継続的なイメージの間において変化する。これらの変化は、バックグラウンドにおいて撮像されるシーンが静的であるという条件において、ガスの存在を確認するのに役立つ。
【0004】
しかしながら、かかる検知方法は一般に、高率の誤警報を発生させる。これらの誤警報は、特に取り込まれたイメージのバックグラウンドに起因し得る。これらのイメージに対するその寄与は、捜し求められているガスに不正確に起因する。例えば、かかる寄与は、バックグラウンドに存在するシーンの要素上への直接的かつ不安定な太陽光の照明から生じ得る。
【0005】
[技術的な課題]
そこで、本発明の目的は、誤警報の発生率が低減された、ガスの新たな検知法を提供することにある。特に、バックグラウンドに存在するシーン要素に対して捜し求められるガスをより効率的に検知するのに役立つ、かかる方法が望まれており、かかるシーン要素は、さまざまな環境において、屋外において、または屋内において存在し得る。
【0006】
本発明の別の目的は、空間ゾーン内に存在するガスの量を評価することを可能にする、ガスを検知するための定量的方法を得ることであるが、この方法は、この量の時間的変動を評価することに限定されるものではない。
【0007】
さらなる目的は、現場、すなわちガスの存在が疑われるエリアにおいて、容易に実施され得るガスを検知するためのかかる方法を提案することである。特に、本発明の目的は、特に容易に運搬されるかまたはドローンに搭載されるために、重くなく、かさばらないガス検知器を提案することである。
【0008】
最後に、本発明の別の目的は、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで定量的な評価結果を提供する、ガスを検知するための方法を提案することである。
【0009】
[発明の概要]
これらの目的のうちの少なくとも1つ、または別の目的を達成するために、本発明は、ターゲットガスと称される、視野内に存在し得る少なくとも1つのガスを明らかにするための新しいガス検知器を提案する。このガス検知器は:
-イメージ取り込みユニットであって、複数の光学チャネルが1対1に対応する異なる複数のスペクトルバンドにおける、(複数の)スペクトルイメージと称される、前記視野の1つの同一の内容(content)の複数のイメージ(像:image)のそれぞれを別々かつ同時に取り込むように平行に配置された少なくとも2つの前記光学チャネルを備える、イメージ取り込みユニットと;
-第1の取得手段であって、バックグラウンドシーンと前記イメージ取り込みユニットとの間の前記視野内に存在する前記ターゲットガスの量に起因することが意図される周囲温度値を提供するように構成された、第1の取得手段と;
-第2の取得手段であって、分析バンドと称される複数の前記スペクトルバンドのうちの少なくとも1つについて、前記バックグラウンドシーンの複数の要素に起因することが意図される複数のバックグラウンド輝度温度値を提供するように構成された、第2の取得手段と;
-イメージ処理ユニットであって、前記イメージ取り込みユニットの各チャネルにより取り込まれた複数の前記スペクトルイメージを受け取るよう構成され、かつ、この分析バンドに関係する(結びつく)放射透過係数(radiation transmission coefficient)であって、前記バックグラウンドシーンの前記複数の要素と前記イメージ取り込みユニットとの間の前記視野の一部内に存在する前記ターゲットガスの量に少なくとも部分的に起因する前記放射透過係数の評価を、
・前記周囲温度値;
・前記分析バンドについての、前記視野の前記一部内における前記バックグラウンドシーンの前記複数の要素に起因する、前記バックグラウンド輝度温度値;および
・前記視野の関心のある(of concern)前記一部内における、前記分析バンドについて取り込まれた前記スペクトルイメージに対応する、見かけの輝度温度値と称される、少なくとも1つの輝度温度値、
を結び付ける等式に基づいて、各分析バンドについて別々に導出するように構成されたイメージ処理ユニットと;
-計算ユニットであって、前記分析バンドに関係する前記放射透過係数の値に基づき、前記視野内に存在するターゲットガスの前記量の評価を導出するよう構成された、計算ユニットと、
を備える。
【0010】
特に、存在するターゲットガスの前記量が評価される前記視野の前記一部は、この分析バンドについて取り込まれた前記スペクトルイメージの像点(ピクセル)に対応し得る。あるいは、それは、互いに隣接し得るいくつかの像点のまとまり(binning)に対応し得る。
【0011】
本発明によれば、前記第1の取得手段は、以下の複数の方法:
-前記イメージ取り込みユニットの複数の入力チャネルのうちの1つによって取り込まれたスペクトルイメージの少なくとも1つの部分に基づく方法であって、バックグラウンドシーンの複数の要素がないと宣言されたか、またはバックグラウンドシーンの複数の要素がないとみなされた前記視野のセクタに、このスペクトルイメージの前記部分が対応している方法;および、
-前記イメージ取り込みユニットの複数の前記チャネルのうちの1つによって取り込まれたスペクトルイメージの少なくとも1つの部分に基づく方法であって、その関連するスペクトルバンドが、前記スペクトルイメージ部分に対応する前記視野のセクタ内に存在するガスの完全な不透明性を有する(ガスが完全に不透明な)スペクトル領域内に含まれる方法、
のうちの1つにより、前記周囲温度値を提供するよう構成されている。そのため、本発明では、前記ガス検知器が追加の温度センサ、特に熱測定を行う温度センサを組み込む必要がない。前記ガス検知器の設計は、その点において簡略化されている。さらに、前記周囲温度値が各分析バンド輝度温度値の方法と同様の方法により得られるため、複数の値のより良い一致がもたらされ、前記ターゲットガス検知の信頼性と精度が向上する。
【0012】
本発明の追加の特徴によれば、前記ガス検知器は、前記イメージ処理ユニットが分析バンドの前記スペクトルイメージの少なくとも1つの輝度温度値と前記周囲温度値とを次に組み合わせるとき、各分析バンドの前記スペクトルイメージと同時に、または各分析バンドの前記スペクトルイメージと単一のイメージ取り込みシーケンス中に、この周囲温度値を提供するために少なくともその一部が使用される前記スペクトルイメージを取り込むよう構成されている。したがって、前記ガス検知器の各動作シーケンスは、より早く取り込まれた1つ以上のスペクトルイメージを使用する必要なしに、前記視野の前記一部内に存在する前記ターゲットガスの前記量の評価を提供するのに十分でありかつ自律的であり得る。前記ガス検知器のメモリ容量はその点において低減され得、ターゲットガス量の評価を得るために組み合わされる複数のスペクトルイメージの複数の内容のそれぞれの間における時間整合性(time consistency)が保証される。
【0013】
本発明のさまざまな実施形態において、前記イメージ取り込みユニットは、例えば2個、4個、6個、9個、12個または16個の光学チャネルを含み得、これらの光学チャネルは平行に配置されている。限定ではないものの好ましくは、前記イメージ取り込みユニットは、多くとも20個のチャネルを含む。
【0014】
前記分析バンドに関係し、前記ターゲットガスに少なくとも部分的に起因する前記放射の前記透過係数を評価する前記イメージ処理ユニットにより使用され得る等式は、
τband_1=1+(TBapparent_1-TBbackground_1)/(TBbackground_1-Tambient)の形式を有し得る。ただし、
τband_1は、band_1によって示される前記分析バンドに関係し、前記視野の前記一部内に存在する前記ターゲットガスに少なくとも部分的に起因する、前記放射についての前記透過係数(transmission coefficient)の値;
ambientは、前記第1の取得手段によって提供される前記周囲温度値(ambient temperature value);
TBbackground_1は、前記第2の取得手段によって提供され、かつ前記分析バンドband_1について、前記視野の前記一部内に含まれる前記バックグラウンドシーンの前記複数の要素に起因する、前記バックグラウンド輝度温度値(background brightness temperature value);
TBapparent_1は、前記視野の前記一部内において、前記分析バンドband_1について取り込まれた前記スペクトルイメージに対応する前記見かけの輝度温度値(apparent brightness temperature value)である。かかる等式は実装が単純かつ迅速であり、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで前記ターゲットガスについての定量的な検知結果を得ることに適合する。前記透過係数τband_1についての前記結果の値が0と1との間に含まれないとき(ただし、これら2つの端は受け入れられる)、前記結果は退けられ得る。かかる不整合は、前記バックグラウンド輝度温度が決定されたある瞬間と、前記見かけの輝度温度を決定するために使用される前記スペクトルイメージの取得の瞬間との間における、前記バックグラウンドの変化により生じたものであり得る。それはまた、この周囲温度が決定されたある瞬間と、前記見かけの輝度温度を決定するために使用される前記スペクトルイメージの取得の瞬間との間における、前記周囲温度における変化により生じたものであり得る。さらに別の理由は、前記視野の前記一部内における別のガスの存在であり得、これは、前記スペクトルイメージ内において取り込まれた輝度に寄与したか、または、前記第1の取得手段および/もしくは前記第2の取得手段の動作に関与している。不整合のこれらの原因は、各分析バンドのスペクトルイメージの取り込みの瞬間と同じ瞬間に対するデータを生み出す第1および第2の取得手段を使用することにより、低減され得るであろう。
【0015】
有利には、前記ガス検知器がいくつかの分析バンドを含むとき、他の各分析バンドとは独立して、その分析バンドに関係する前記放射についての前記透過係数を評価するために、前記放射の前記透過係数を評価するための前述の等式がこれらの分析バンドの各々について別々に使用され得る。多数の分析バンドの使用は、一般に本発明にとって、前記ターゲットガスの量のより信頼性のある評価を得るのに役立つ。
【0016】
好ましくは、前記イメージ処理ユニットは、前記イメージ取り込みユニットによって取り込まれた複数の輝度値の補正を各スペクトルイメージに対して適用し、その結果、前記視野内に存在する少なくとも1つの大気化合物を考慮に入れるよう、さらに構成され得る。そして、補正された複数の前記輝度値は、各分析バンドに関係する前記放射の前記透過係数を評価するために、前記イメージ処理ユニットによって使用される。そのように考慮に入れられ得る前記大気化合物は、水蒸気、および/または、場合によっては二酸化炭素であり得る。
【0017】
前記計算ユニットは、各分析バンドについて、前記放射透過係数の値を前記ターゲットガスの前記量に結び付ける等式を逆にすることによって、Qtarget_gasとして参照される、前記視野の前記一部内に存在する前記ターゲットガスのその量を決定するように適合され得る。実際、プルーム(plume)内における前記ターゲットガスの一様分布という単純化した場合には、前記等式は:τband_1=exp(-Qtarget_gas・Absband_1)型であり得る。ここで、Absband_1は、前記分析バンドband_1内における前記ターゲットガスの吸光度(absorbance)である。しかしながら、前記プルーム内における前記ターゲットガスの濃度のより複雑な変動を考慮するために、より精密な計算が実行され得る。その場合、各分析バンドについて、バックグラウンドシーン要素(バックグラウンドシーンの要素)を前記イメージ取り込みユニットへと結ぶ放射経路に沿った前記ターゲットガスの前記濃度の複数のプロフィールの関数として、前記放射透過係数についての複数の値のテーブルを有することが好ましい。この目的のために、前記計算ユニットは有利には、複数の分析バンドについて別々に前記イメージ処理ユニットにより導出された複数の前記放射透過係数の複数の値と、同一の複数の前記分析バンドについてあらかじめ決定されたこれら複数の放射透過係数の複数の値とを比較することによって、前記視野の前記一部内に存在する前記ターゲットガスの前記量を判定するよう構成され得る。前記ターゲットガス濃度について得られる複数のデジタルな結果(数値:results)に影響し得る複数の誤差は、このようにして低減され得る。そして、事前の複数の計算によって得られ得る、複数の前記放射透過係数についてのあらかじめ決定された複数の前記値は、前記計算ユニットにアクセス可能なデータ記憶ユニット内に記録され得る。それらは、バックグラウンドシーン要素を前記イメージ取り込みユニットへと結ぶ前記放射経路上の前記ターゲットガスの前記濃度の複数の可変プロフィールに関係する。そして、前記ターゲットガスの前記量の値は、前記バックグラウンドシーン要素と前記イメージ取り込みユニットとの間の前記放射経路にわたる、前記ターゲットガスの前記濃度のプロフィールの空間積分に対応する。前記ターゲットガスの前記濃度の複数のプロフィールの関数としてインデックス付け(indexed)されたテーブルの形式において、あらかじめ決定された複数の値をこのように使用することにより、各ターゲットガス検知セッション中に実行される複数の計算を削減することが可能となる。このようにして、定量的なターゲットガス検知結果は、実行される各検知シーケンスについて、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで得られ得る。
【0018】
好ましくは、前記イメージ取り込みユニットの複数の前記チャネルの複数の前記スペクトルバンドは、前記ターゲットガスが異なる2つのスペクトルバンド間において異なる複数の吸収値(absorption value)を有するようなものであり得る。代替的に、または組み合わせにおいて、前記イメージ取り込みユニットの複数の前記チャネルの複数の前記スペクトルバンドは、前記ターゲットガスが異なる2つのスペクトルバンド間において異なる商の複数の値を有するようなものであり得る。ここで、前記商は、各スペクトルバンドについて、そのスペクトルバンド内において前記視野内に存在する少なくとも1つの大気の構成要素の前記吸収値で割った、同一のスペクトルバンド内における前記ターゲットガスの前記吸収値として、計算される。
【0019】
複数のバックグラウンドシーン要素がないと宣言された(declared)か、または複数のバックグラウンドシーン要素がないとみなされた(considered)前記視野のセクタに対応するスペクトルイメージ部分に基づいて前記周囲温度値が前記第1の取得手段によって提供されるとき、前記イメージ取り込みユニットは、空ゾーン(sky zone)と前記イメージ取り込みユニットとの間における中間のシーン要素なしに、前記視野の前記セクタが前記空ゾーンによって少なくとも部分的に占められるように、このスペクトルイメージを取得するように向き付けられ得る。一般に、前記周囲温度値は、使用される前記チャネルの前記スペクトルバンドについての関心のある前記スペクトルイメージの部分から導出される大気化合物の輝度温度値に対応し得る。
【0020】
前記第2の取得手段は、以下の複数の方法:
-前記バックグラウンドシーンの前記複数の要素のうちの1つを含み、前記分析バンドに専用の前記イメージ取り込みユニットの前記チャネルによって取り込まれ、かつ、前記視野がターゲットガスを含まないときに取り込まれたと宣言されたか、または前記視野がターゲットガスを含まないときに取り込まれたとみなされた少なくとも1つのスペクトルイメージから複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供する方法;
-前記バックグラウンドシーンの前記複数の要素のうちの1つを含み、基準バンドと称される対応する前記スペクトルバンドは、前記ターゲットガスの透明性を有するスペクトル領域内に含まれる、または、前記ターゲットガスが各分析バンドにおいてよりも大きな透明性を有する透明バンドである、前記イメージ取り込みユニットの複数の前記チャネルのうちの1つにより取り込まれた少なくとも1つのスペクトルイメージから複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供する方法であって、
前記イメージ処理ユニットが、前記基準バンドについて取り込まれた前記スペクトルイメージから前記バックグラウンドシーンの前記要素の物質を特定して、前記バックグラウンドシーンの前記要素についての、前記周囲温度値および特定された前記物質のスペクトル放射率値(spectral emissivity value)に基づき、各分析バンドについておよび前記バックグラウンドシーンの前記要素についての前記バックグラウンド輝度温度値を導出するよう構成されている、当該少なくとも1つのスペクトルイメージから複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供する方法;ならびに、
-前記バックグラウンドシーンの前記複数の要素のうちの1つを含み、基準バンドと称される対応する前記スペクトルバンドは、前記ターゲットガスの透明性を有するスペクトル領域内に含まれる、または、前記ターゲットガスが各分析バンドにおいてよりも大きな透明性を有する透明バンドである、前記イメージ取り込みユニットの複数の前記チャネルのうちの1つにより取り込まれた少なくとも1つのスペクトルイメージから複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供する方法であって、
前記イメージ処理ユニットが、前記基準バンドについて取り込まれた前記スペクトルイメージから導出された複数のバックグラウンド輝度温度値に基づく線型回帰を用いることによって、各分析バンドについての複数の前記バックグラウンド輝度温度値を生み出すように構成されている、当該少なくとも1つのスペクトルイメージから複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供する方法、
のうちの1つにしたがって、複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供するように構成され得る。一改良によれば、いくつかの線型回帰は、複数の前記スペクトルイメージに対して共通の複数の分解ゾーン内において別々に実施され得る。これらの分解ゾーンは、前記基準バンドについて取り込まれた前記スペクトルイメージに基づいて定められ得、それらは、このスペクトルイメージ内の複数の前記輝度温度値が各分解ゾーン内の限られた範囲内において変化するように定められる。
【0021】
有利には、前記第2の取得手段が、基準バンドに対応する前記イメージ取り込みユニットのチャネルによって取り込まれた少なくとも1つのスペクトルイメージに基づいて複数の前記バックグラウンド輝度温度値を提供するようにさらに構成されているとき、前記ガス検知器は、各分析バンドの前記スペクトルイメージと同時に、または各分析バンドの前記スペクトルイメージと同一のイメージ取り込みシーケンス中に、この基準バンドに対応する前記スペクトルイメージを取り込むように構成され得る。そのようにして、本発明の以下の複数の利点がさらに増大する:
-前記ガス検知器の各動作シーケンスは、より早く取り込まれた1つ以上のスペクトルイメージを必要とせずに、前記ターゲットガスの前記量の評価を提供するのに十分でありかつ自律的である;
-前記ガス検知器の複数の前記メモリ容量が削減され得る;
-ターゲットガス量の評価を得るために組み合わされる複数のスペクトルイメージの複数の内容のそれぞれの間における時間整合性が保証される。
【0022】
本発明の複数の好ましい実施形態では、複数の前記チャネルの全てに対して共通であり、かつ複数の前記チャネルの複数の前記スペクトルバンドの全てにおいて同時に感度のよいマトリックスイメージセンサを、前記イメージ取り込みユニットは備え得る。そして、このイメージセンサの感光面の部分は、各チャネルに対して他のチャネルの各々から別々に専用であり得る。そして、各チャネルは、前記イメージ取り込みユニットの内部に:
-このチャネルに対して専用である前記感光面の前記部分上に前記視野の内容のイメージを形成するよう配置された光学部材であって、前記視野が複数の前記チャネルの全てに対して共通である光学部材と;
-前記チャネルの前記スペクトルバンドを決定するように構成されたスペクトルフィルタリング手段と、
を備える。かかる光学的構成により、前記イメージ取り込みユニットは、単一モジュールの形態において実施され得、特にコンパクトでかつ重量が低減され得る。そして、前記ガス検知器はポータブルであり得、および/または、ドローンに搭載することが容易であり得る。ドローンに搭載して使用することの可能性は、検知すべき前記ガスが危険であるとき、特に、それが有毒であるとき、特に有利である。
【0023】
前記イメージセンサは、量子センサ型であり得、任意選択的に、前記ガス検知器は、前記イメージセンサを150K(ケルビン)未満の温度に冷却するよう構成される冷却手段をさらに備え得る。
【0024】
一般に本発明について、前記イメージ取り込みユニットの各チャネルは、このチャネルの前記スペクトルバンドが前記放射の波長に関して10nm(ナノメートル)と500nm(または0.50μm)との間に含まれる幅を有するような複数のスペクトルフィルタリング手段を備え得る。これらのスペクトルフィルタリング手段は、複数の前記チャネルの複数の前記スペクトルバンドが7μmと10μmとの間に含まれる複数の放射波長に対応する第1のスペクトル領域内に含まれるように構成され得る。この第1のスペクトル領域は一般に、「長波長赤外線(long wavelength infrared)」LWIRとして、指し示されている。あるいは、複数の前記スペクトルフィルタリング手段は、複数の前記チャネルの複数の前記スペクトルバンドが3μmと5μmとの間に含まれる複数の放射波長に対応する第2のスペクトル領域内に含まれるように構成され得る。この第2のスペクトル領域は一般に、「中波長赤外線(mid-wavelength infrared)」MWIRとして指し示されている。
【0025】
本発明に適合するガス検知器については、当該ガス検知器は、前記ターゲットガスとしてメタンに対して適合されており、前記LWIRの範囲内において動作する:
-複数の前記チャネルの第1の前記スペクトルバンドは、0.35μm未満のスペクトルバンド幅で7.7μmの周りに広がるものであり得る;
-複数の前記チャネルの第2の前記スペクトルバンドは、0.35μm未満のスペクトルバンド幅で8.05μmの周りに広がるものであり得る;
-複数の前記チャネルの第3の前記スペクトルバンドは、任意選択的に、0.35μm未満のスペクトルバンド幅で7.35μmの周りに広がるものであり得る;および
-複数の前記チャネルの第4の前記スペクトルバンドは、やはり任意選択的に、0.35μm未満のスペクトルバンド幅で8.35μmまたは9.05μmの周りに広がるものであり得る。
【0026】
本発明に適合する別のガス検知器については、当該ガス検知器は、やはり前記ターゲットガスとしてメタンに対して適合されており、前記MWIRの範囲内において動作する:
-複数の前記チャネルの第1の前記スペクトルバンドは、0.30μm未満のスペクトルバンド幅で3.375μmの周りに広がるものであり得る;
-複数の前記チャネルの第2の前記スペクトルバンドは、0.30μm未満のスペクトルバンド幅で3.225μmの周りに広がるものであり得る;
-複数の前記チャネルの第3の前記スペクトルバンドは、任意選択的に、0.30μm未満のスペクトルバンド幅で3.05μmの周りに広がるものであり得る;および
-複数の前記チャネルの第4の前記スペクトルバンドは、やはり任意選択的に、0.30μm未満のスペクトルバンド幅で4.237μmまたは3.505μmの周りに広がるものであり得る。
【0027】
いくつかの場合において、前記イメージ取り込みユニットについての複数の前記光学チャネルのうちの少なくとも1つの前記光学チャネルの前記スペクトルバンドを生成するためにバンドパスフィルタを配置することは、困難であり得る。このとき、(複数の)ベース光学チャネル(base optical channels)とこの場合に称される、前記イメージ取り込みユニットの複数の前記光学チャネルのうちの2つの前記光学チャネルに基づき、合成光学チャネル(composite optical channel)の形態においてこの光学チャネルを作ることが可能である。前記合成光学チャネルの前記スペクトルバンドは、これら2つのベース光学チャネルの複数の前記スペクトルバンドのそれぞれの複数の相対的な位置および複数のスペクトルバンド幅から得られる。各ベース光学チャネルの前記スペクトルフィルタは、バンドパス型(bandpass type)であり得、特に、スペクトル位置(spectral position)および/またはスペクトルバンド幅が前記合成光学チャネルの前記スペクトルバンドのそれ(それら)と異なるとき、各ベース光学チャネルの前記スペクトルフィルタは、バンドパス型またはハイパス型(high-pass type)若しくはローパス型(low-pass type)であり得る。前記ガス検知器、特にイメージ取得ユニットおよび前記イメージ処理ユニットは、前記合成光学チャネルの前記スペクトルバンドに対応するスペクトルイメージを得るために、前記視野の1つおよび内容について2つの前記ベース光学チャネルによって別々に取り込まれる複数の前記スペクトルイメージを組み合わせるように構成され得る。特に、前記ガス検知器は、前記合成光学チャネルの前記スペクトルバンドに対応する前記スペクトルイメージを得るために、前記視野の同一の内容について2つの前記ベース光学チャネルによって取り込まれる複数の前記スペクトルイメージ間の差を計算するように構成され得る。
【0028】
最後に、一般に、本発明に適合するガス検知器は、同一の前記視野内に同時に存在し得る複数の異なるターゲットガスを明らかにするように構成され得る。この場合、前記イメージ取り込みユニットの少なくとも1つのチャネルの前記スペクトルバンドは、複数の前記ターゲットガスのうちの少なくとも2つの前記ターゲットガスの複数のスペクトル吸収領域のそれぞれの内に同時に含まれ得る。その結果、このチャネルによって取り込まれた1つの同一のスペクトルイメージは、前記視野内に存在するこれら少なくとも2つのターゲットガスの複数の量のそれぞれの複数の評価を導出するために、前記イメージ処理ユニットおよび前記計算ユニットによって使用され得る。換言すれば、前記イメージ取り込みユニットからの同一のスペクトルバンドは、前記少なくとも2つのターゲットガスについての分析バンドとして機能し得る。
【0029】
[図面の簡単な説明]
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照しつつ、実施の非限定的な複数の実施例の以下の詳細な記載において、より明確に明らかになるであろう:
図1は、本発明に適合するガス検知器の一部であるイメージ取り込みユニットの断面図である;
図2は、本発明に適合するガス検知器のさまざまな要素の概要図である;
図3は、本発明に適合するガス検知器の可能な一使用を示す。
【0030】
[発明を実施するための形態]
明確さのために、これらの図に示された要素の寸法は、実際の寸法または実際の寸法比のいずれにも対応していない。さらに、さまざまな図に示される同一の参照符号は、同一の要素か、または同一の機能を有する要素を示す。
【0031】
残りの部分では、4つの光学チャネルを有するガス検知器であって、地上環境(terrestrial environment)におけるガスメタンの存在を明らかにするように設計されたガス検知器について、本発明が詳細に説明される。スペクトルバンドは、検知されるべきターゲットガス、すなわちメタンの関数としてだけでなく、地上大気の化合物の吸収バンドにも依存して、選択される。考慮される必要のある大気の化合物の中で、水蒸気(HO)が特に重要である。しかし、二酸化炭素(CO)もまた、当該検知器において実施される分析法に関わり得る。しかしながら、本発明はターゲットガスとしてメタンに限定しないこと、異なる数の光学チャネルが使用され得、ここで、このチャネルの数は2以上であり、好ましくは9未満であること、および、当該検知器は地上環境以外の他の環境に適合され得ることを理解されたい。
【0032】
図1によれば、イメージ取り込みユニット(像取り込みユニット:image capturing unit)10は、単一モジュール内において組み立てられた結像光学系(image formation optics)およびイメージセンサ2を備え得る。例えば、側壁11は、4つの並置されたレンズの2×2マトリックスを保持し得る。図中に見ることができる、これらのレンズのうちの2つが、1a、1bと参照されている。全てのレンズは、イメージセンサ2の感光面Sの前方に、一定の距離において配置されている。レンズ1a、1b、・・・は各々、イメージセンサ2の感光面Sの互いに共通部分をもたない部分上に、1つの同じ視野の内容のそれぞれのイメージを形成することによって、別々の光学チャネルを定める。参照番号10aおよび10bは、図中に見える2つの光学チャネルを示し、参照符号SaおよびSbは、イメージセンサ2の感光面Sの対応する部分を示す。各光路10a、10b、・・・はそれぞれ、スペクトルフィルタ3a、3b、・・・をさらに備え、これらは、関連する光学チャネルのレンズとイメージセンサ2との間に位置し得る。光学チャネル10a、10b、・・・のうちの少なくとも1つの光学チャネルのレンズ1a、1b、・・・の光学表面のうちの少なくとも1つは、このチャネルのフィルタ3a、3b、・・・の透過スペクトルバンドにしたがって、適合され得るだろう。図示のイメージ取り込みユニット10の構成については、各レンズ1a、1b、・・・とイメージセンサ2との間の距離は、全てのチャネルにより共有される焦点距離値に対応している。そのようにして、4つの光学チャネル10a、10b、・・・は同時に、フィルタ3a、3b、・・・によって決定されるものであるところのスペクトルバンドが異なる点を除き、視野の同じ内容の4つの分離したイメージ(像:image)を形成する。これらの別々のイメージは、本明細書において(複数の)スペクトルイメージ(spectral images)と称される。開口ダイヤフラム4a、4b等のマトリックスはさらに、4つのチャネル10a、10b、・・・によって生成されるスペクトルイメージの強度レベルの一部を他のものに対して調整するために、使用され得る。さらに、不透明なセパレータ5が、異なるチャネル間を通過し得る寄生光線(parasitic rays)を排除するために、チャネル10a、10b、・・・の間に配置され得るだろう。
【0033】
一例として、イメージ取り込みユニット10の各光学チャネルについて、以下の数値が採用され得る:
レンズの焦点距離:約7mm(ミリメートル)、
開口数:約3.9、
イメージセンサ2の感光面Sにおける光検知器(photodetector)(ピクセル)のピッチ:15μm(マイクロメートル)、
視野:40°(度)×30°。
【0034】
これらの値は、0.12°または2.1ミリラジアンの、「瞬間視野(instantaneous field-of-view)」IFOVによって一般に指し示される角度分解能(angular resolution)に対応している。焦点距離値は特に、低減されたイメージ取り込みユニット10の外形寸法に適合している。
【0035】
イメージセンサ2は、例えば、フィルタ3a、3b、・・・の全ての透過スペクトルバンドに対して感度のよい(sensitive)、テルル化カドミウム水銀(Mercury-Cadmium Telluride)MCTにより示されるHgCdTe技術(HgCdTe technology)の、マトリックス量子センサ型(matrix quantum sensor type)であり得る。そして、イメージセンサ2の各動作シーケンスにつき、それは、4つのチャネル10a、10b、・・・のスペクトルバンドについてそれぞれ、視野の内容の4つのスペクトルイメージのデータを出力する。例えば、4つのスペクトルバンドは、LWIR領域またはMWIR領域に属し得る。LWIR領域の場合には、しかし場合によってはMWIR領域の場合にも、イメージ取り込みユニット10は、このイメージ取り込みユニットの部品の物質によって放出される熱放射を低減するために、ならびに、イメージセンサ2からの光子ノイズ(photonic noise)および器械のバックグラウンドノイズを低減するためにも、冷却システムと結合され得る。イメージ取り込みユニット10の動作温度は、150K未満であり得る。かかる冷却システムが使用される場合、イメージ取り込みユニット10は、冷却機械に熱的に結合された、一般にクライオスタットと称される真空のエンクロージャ内に収容される。参照番号12は、イメージ取り込みユニット10の光学的入口の前方に配置され得る透明な窓を示す。この窓12は、クライオスタットのためのシールを提供しつつ、放射がイメージ取り込みユニット10内に入るための光学的開口を提供する。
【0036】
ターゲットガスとしてのメタンに対する、LWIRスペクトル領域における検知のための、イメージ取り込みユニット10の4つの光学チャネルについてのスペクトルバンドについての可能な選択は:
スペクトルバンドband_1について:7.75μmを中心とし、0.30μmに等しいスペクトルバンド幅であり得る;
スペクトルバンドband_2について:8.05μmを中心とし、0.30μmに等しいスペクトルバンド幅であり得る;
スペクトルバンドband_3について:7.35μmを中心とし、0.30μmに等しいスペクトルバンド幅であり得る;
スペクトルバンドband_4について:8.35μmまたは9.05μmを中心とし、0.30μmに等しいスペクトルバンド幅であり得る;
であり得る。これらのスペクトル値は、本明細書において与えられる全てのスペクトル値のように、波長の観点から理解される。このように定義されたスペクトルバンドband_1は、メタンの存在に対して非常に感度がよく、このガスの重要な吸収領域に対応している。しかしながら、それはまた、大気組成物中の水蒸気の存在に対しても非常に感度がよい。スペクトルバンドband_2もまた、メタンおよび水蒸気に対して感度がよいが、スペクトルバンドband_1よりもその程度は小さい。スペクトルバンドband_3は、メタンに対して感度が非常に小さく、以下に述べる取得手段21によって使用され得る。最後に、スペクトルバンドband_4は、バックグラウンドに存在するものを含む、シーン要素の全てによって放出される熱放射に対して特に感度がよい。したがって、それは後述する取得手段22によって使用され得る。
【0037】
ターゲットガスとしてのメタンに対する、しかしMWIRスペクトル領域における検知のための可能なスペクトルバンドの別の選択は:
スペクトルバンドband_1について:3.375μmを中心とし、0.20μmに等しいスペクトルバンド幅であり得る;
スペクトルバンドband_2について:3.225μmを中心とし、0.20μmに等しいスペクトルバンド幅であり得る;
スペクトルバンドband_3について:3.05μmを中心とし、0.20μmに等しいスペクトルバンド幅であり得る;
スペクトルバンドband_4について:4.237μmまたは3.505μmを中心とし、0.20μmに等しいスペクトルバンド幅であり得る;
であり得るだろう。この別の選択では、スペクトルバンドband_1はメタンの存在に対して非常に感度がよく、やはり、このガスの重要な吸収領域に対応している。このスペクトルバンドの利点は、大気組成物中に存在する水蒸気に対して、減少した程度において感度がよいことである。しかしながら、それは、バックグラウンドシーンの要素への太陽フラックスの直接入射に対して、一般に非常に感度がよい。スペクトルバンドband_2もまた、メタンに対して感度がよいが、スペクトルバンドband_1よりもその程度は小さい。スペクトルバンドband_2は、スペクトルバンドband_1よりも水蒸気の存在に対して感度がよい。しかし、スペクトルバンドband_2は、やはりスペクトルバンドband_1と比較して、直接の太陽フラックスの入射に対して、より感度が小さい。スペクトルバンドband_3は、メタンの存在に対してあまり感度がよくないが、しかし、水蒸気の存在に対して非常に感度がよい。それは、取得手段によって使用され得る。最後に、スペクトルバンドband_4は、4.237μmおよび3.505μmにおいて、メタンに対して非常に感度が小さい。4.237μmにおいて、それは大気組成物中に存在する二酸化炭素に特に感度がよく、取得手段21によって使用され得る。3.505μmにおいて、スペクトルバンドband_4は、バックグラウンドシーンの要素に対して特に感度がよく、取得手段22によって使用され得る。
【0038】
図2によれば、ガス検知器は、イメージ取り込みユニット10と、イメージ処理ユニット20と、計算ユニット30と、を備え、以下のデータ転送を可能にするために互いに接続されている:
-イメージ取り込みユニット10からイメージ処理ユニット20へ:band_1、・・・、band_4が4つのスペクトルバンドを示す、イメージ取り込みユニットが4つの光学チャネルを有する図1の場合には、イメージband_1、・・・、イメージband_4と記された、異なるスペクトルバンド内において同時に取り込まれたイメージ(像:image)。そして、イメージband_1は、例えば光学チャネル10aを通って、スペクトルバンドband_1にしたがって放射をフィルタリングすることによって取り込まれたものであり、・・・、イメージband_4は、複数の光学チャネルのうちのイメージband_1の光学チャネル以外の1つの光学チャネルを通って、スペクトルバンドband_4にしたがって放射をフィルタリングすることによって取り込まれたものである;
-イメージ処理ユニット20から計算ユニット30へ:スペクトルバンドband_1、・・・、band_4に別々に関係する(結びつく)、τband_1、・・・、τband_4と記された、放射透過係数の値。複数の透過係数のうちの1つの透過係数についての各値はさらに、イメージ取り込みユニット10の視野内の識別された1つの部分に関係する。例えば、各透過係数τband_1、・・・、τband_4の値は、各スペクトルイメージイメージband_1、・・・、イメージband_4の各像点(image point)またはピクセルについて、別々に決定される;
-計算ユニット30の出力において:視野の各識別された部分内に含まれるターゲットガスの量の値Qtarget_gas
【0039】
参照番号21は、周囲温度(ambient temperature)値Tambientを得てイメージ処理ユニット20に送信するための手段を示す。この値Tambientは、イメージ取り込みユニット10の視野内に存在するガス大気に関係し、また、そこに存在し得るターゲットガスにも関係する。実際、異なる温度を有する点源から生じ得るターゲットガスは、非常に迅速に周囲の大気との熱平衡に至る。したがって、ターゲットガスは実質的に、視野内の温度値Tambientを有する。ただし、恐らくその点源に非常に近いエリアは除くが、これはすでに現れたターゲットガスプルームの体積と比較して、大抵、無視できるものである。
【0040】
周囲温度の値Tambientを提供する手段21は、本明細書の概略部分において、第1の取得手段と称されていた。それらは、原則として、例えば温度計等の、大気との接触状態にある熱的温度センサ(thermal temperature sensor)から構成され得るだろう。本発明に対応しないかかるケースでは、手段21はイメージ処理ユニット20に対して外部にあり、値Tambientを送信するためにそれに接続されているだろう。
【0041】
本発明において、値Tambientは、例えばイメージ取り込みユニット10の光学チャネル10a、10b、・・・のうちの1つによって取り込まれたスペクトルイメージにおいて検出される放射強度に基づき、プランクの法則にしたがって導かれる。この目的のために、視野内に含まれるシーン要素の物質を知り、その結果、その放射率値を得ることが必要であり得る。2つの状況が、プランクの放射法則B(λ、T)の、温度に関する逆関数を用いることにより、値Tambientを光学的に決定することを可能にする。ここで、λは、検出された放射の波長であり、Tは、当該放射を放出する物質の温度であり、Bは、検出された輝度値(brightness value)である。第1の状況は、大気の熱放出挙動がよく知られた、晴れた空のエリアに向けられた視野のセクタのそれである。特に、いかなる量のターゲットガスもその中に存在しないか、またはさもなければ、使用されるスペクトルバンドはターゲットガスに対して感度が小さい。第2の状況は、既知のガス組成物によって占められる視野のセクタのそれであり、この組成物は使用されるスペクトルバンドに対して完全に不透明である。バックグラウンドに存在し得るシーン要素は、このスペクトルバンドについてイメージ取り込みユニット10によって検知される放射に寄与しない。ガス組成物は、その放射率値を得るために、既知でなければならない。かかる場合は、ガス組成物にターゲットガスがない、したがってガス組成物が大気組成物に対応する、視野のセクタにおける場合である。ユニット10によって取り込まれたスペクトルイメージから値Tambientが導かれる、本発明に適合するかかる実施形態では、第1の取得手段21は、イメージ処理ユニット20に対して内部にあり得る。
【0042】
参照番号22は、各スペクトルバンドについて、視野内に含まれるバックグラウンド輝度温度値を得て、イメージ処理ユニット20に送信するための手段を示す。取得手段22は、本明細書の概略部分において、第2の取得手段と称されていた。バックグラウンドの組成物が最初から知られている、本発明の可能な実施形態では、このバックグラウンド輝度温度値は、周囲温度値から、およびさまざまなバックグラウンド要素に関する相対的な放射率値から、プランクの放射法則を使用することによって導かれ得る。そのためには、これらのバックグラウンドシーンの要素の表面は、大気との熱平衡状態になければならない。特に、シーン要素は、熱源であってもいけないし、また、直接的な太陽フラックスを受けてもいけない。取得手段22のかかる実施形態は、ある量のターゲットガスの起こり得る出現を除き、シーン要素が数十秒のスケールで実質的に変化しそうにないエリアを監視するためにガス検知器が固定して設置される場合に、特に適している。
【0043】
本発明の他の可能な実施形態では、各スペクトルバンドについてのバックグラウンド輝度温度値は、イメージ取り込みユニット10の視野内にいかなる量のターゲットガスも存在していなかった瞬間にユニット10によって取り込まれたスペクトルイメージから導かれ得る。本発明のかかる他の実施形態では、取得手段22は、イメージ処理ユニット20に対して内部にあり得る。かかるバックグラウンド輝度温度値は、各スペクトルバンドに対して別々に相対的であり、また、例えば視野内に含まれるさまざまなバックグラウンド部分に対して別々に相対的でもある。例えば、TBbackground_1(i、j)は、スペクトルバンドband_1において取り込まれたスペクトルイメージについてのイメージ座標点(i、j)におけるバックグラウンド輝度温度を示す。以下で使用される表記TBbackground_2(i、j)、・・・、TBbackground_4(i、j)はそれぞれ、スペクトルバンドband_2、・・・、band_4について、同じ意味を有する。
【0044】
しかしながら、本発明に適合するガス検知器の使用のいくつかの状況下では、視野にターゲットガスのないスペクトルイメージを得ることは不可能である。かかる状況は、それが漏れの存在を確認するためにガス検知器が現場に持ち込まれる前に始まった進行中のガス漏れを伴う場合の状況である。正確なTBbackground_2(i、j)、・・・、TBbackground_4(i、j)の値のこのような不在を改善するために、いくつかの方法が可能である。
【0045】
これらの方法のうちの第1の方法によれば、基準バンド(reference band)と称される、ガス検知器のスペクトルバンドのうちの1つが、ターゲットガスおよび大気の全てまたはほぼ全ての透過性の領域に対応するように、選択され得る。この基準バンドについて取り込まれたスペクトルイメージは、イメージ処理ユニット20がバックグラウンドシーンの要素に関係する輝度温度値を決定することを可能にする。バックグラウンドシーンの各要素が認識された場合、スペクトルイメージにおいて見ることができるその形状の検知を実行することにより、そして、形状認識を実行することによって、その物質が特定され得る。そして、基準バンドにおけるその輝度(luminance)からその熱力学的温度値を決定し、次いで、その放射率関数のスペクトル変動に基づき、他の任意のスペクトルバンドについて、特に分析バンドについて、その輝度温度値を決定することが可能である。各分析バンドは、その後、視野の一部内に存在するターゲットガスの量を定量的に評価するために使用されることが意図される。原則として、各分析バンドは、ターゲットガスがその分析バンドにおいて、かなりの(意味のある:significant)放射吸光度(radiation absorbance)を有するように選択される。この原則を拡張することによって、バックグラウンド輝度温度値を決定するための同じ方法が、ターゲットガスが異なる吸光度値を有する2つのスペクトルバンドの間において適用され得る:ターゲットガスの吸光度が最も弱い2つのスペクトルバンドのうちの一方は、基準バンドとして使用され得、ターゲットガスの吸光度がより高い他方のスペクトルバンドは、分析バンドとして使用され得る。
【0046】
以下は、正確なTBbackground_2(i、j)、・・・、TBbackground_4(i、j)の値の不在を改善する別の方法であり得る。基準バンドについて取り込まれたスペクトルイメージの複数の輝度温度値は、事前設定され互いに共通部分をもたないある区間に、例えば5つの区間に区分し得る。これらの区間の各々について、基準バンドのスペクトルイメージ内において複数のゾーンが識別され、その結果、各ゾーン内において、複数の輝度温度値がこの区間内に含まれるようになる。その結果、イメージの分解が生じ、これは分析バンド内において取り込まれた各スペクトルイメージにおいて置き換えられる(変換される:transpose)。次に、各分解ゾーン内において別々に、基準バンドのスペクトルイメージ内の複数の輝度温度値を、同じ分解ゾーンについての分析バンドのスペクトルイメージ内の複数の輝度温度値と結びつける線型回帰について、係数が決定され得る。そして、対応する分解ゾーン内の像点の各々について、この線型回帰が使用され得、その結果、基準バンドのスペクトルイメージ内における各輝度温度値を、分析バンドについてのバックグラウンド輝度温度値に、すなわち、考慮する分析バンドがband_1である場合にはTBbackground_1(i、j)に変換し得る。かかる別の方法は、形状認識処理を実施することも必要としないし、また、バックグラウンドシーンの要素について可能な物質の放射率値を記憶することも必要としない。実際、先の方法において形状分析により提供されるさまざまなバックグラウンドシーンの要素間の区別は、互いに共通部分をもたない区間における基準バンドについての輝度温度値の分類により、経験的に置き換えられる。しかし、この別の方法は、ターゲットガスプルームが各分解ゾーンの重要でない部分を占める場合にのみ信頼性がある。換言すれば、プルームは、バックグラウンドシーンの要素と比較して、各スペクトルイメージにおいて小さく見えている。
【0047】
図2の参照番号40は、計算ユニット30が任意選択的なデータ記憶ユニット(data storage unit)内のデジタル値を読み取り得る、当該任意選択的なデータ記憶ユニットを示す。記憶ユニット40は、任意のメモリまたはデータ書込媒体によって構成され得る。かかるデータ記憶ユニットの使用については後述する。
【0048】
図3は、本発明によるガス検知器を使用する場合の可能な状況を示す。イメージ取り込みユニット10の視野は、バックグラウンドシーン100と、このバックグラウンドシーン100とイメージ取り込みユニット10との間における大気ガスで満たされた自由空間(free space)と、を含む。バックグラウンドシーン100は、例えば居住用建物101、工業用建物102、煙突103、植生要素104等の、さまざまなシーン要素から構成され得る。メタンパイプライン111は自由空間を通過し、このパイプライン内の位置において漏れを有し得る。この漏れはメタンプルーム110を生じる。したがって、メタンプルーム110はバックグラウンドシーンの要素100のうちのいくつかの要素の前方に位置する。本発明の目的は、イメージ取り込みユニット10とバックグラウンドシーン100との間に存在するメタンの量のデジタルな評価を提供することにより、メタンプルーム110の存在を明らかにすることである。(i、j)は像点を、例えばイメージセンサ2によって識別されたその行および列座標により示す。その個々の検知表面積―または画素サイズ―のためにこの像点が、また視野とイメージセンサ2との間のイメージ取り込みユニット10の各光学チャネル10a、10b、・・・によって生み出される結像関係(イメージング関係:imaging relationship)が、視野の一部を画定する。
【0049】
さて、ユニット20によって実行されるスペクトルイメージの処理について説明する。
【0050】
大気組成物がターゲットガスを含まない場合に大気組成物が透明とみなされ得る各スペクトルバンドについて、対応するスペクトルイメージの像点(i、j)における輝度は近似的に、例えばバンドband_1について:
band_1(i、j)=Lbackground_1(i、j)・τband_1+εband_1・B(Tambient
である。ここで、τband_1は、像点(i、j)において有効な、関心のあるスペクトルバンド、すなわちband_1についてのターゲットガスの放射透過係数、εband_1は、像点(i、j)において有効な、この同じスペクトルバンドについてのターゲットガスの放射率係数(emissivity coefficient)、Lbackground_1(i、j)は、同じスペクトルバンドについての像点(i、j)におけるバックグラウンドシーンの要素の輝度(luminance)、そして、B(Tambient)は、プランクの放射法則である。スペクトルバンドband_1についてイメージ取り込みユニット10によりスペクトルイメージ内において捕捉された輝度についてのこの表式では、第1項は、ターゲットガスプルーム110を通じたバックグラウンド100の寄与であり、第2項は、ターゲットガスプルーム110の寄与である。ターゲットガスについて:εband_1=1-τband_1。よって:
band_1(i、j)=Lbackground_1(i、j)・τband_1+(1-τband_1)・B(Tambient)、
そうでなければ:
band_1(i、j)-Lbackground_1(i、j)=Lbackground_1(i、j)・(τband_1-1)+(1-τband_1)・B(Tambient)、
あるいは:
τband_1=1+[Lband_1(i、j)-Lbackground_1(i、j)]/[Lbackground_1(i、j)-B(Tambient)]、
使用された値を含む輝度温度値および/または輝度値の区間内におけるプランクの放射法則の逆関数である擬似関係(affine relation)にしたがって、輝度値を輝度温度値に変換することによって、次の結果が得られる:
τband_1=1+[TBapparent_1(i、j)-TBbackground_1(i、j)]/[TBbackground_1(i、j)-Tambient]、
ここで、TBapparent_1(i、j)は、分析バンドband_1について取り込まれたスペクトルイメージ内の像点(i、j)における見かけの輝度温度値(apparent brightness temperature value)であり、TBbackground_1(i、j)は、取得手段22によって提供されたバックグラウンド輝度温度値であり、Tambientは、取得手段21によって提供された周囲温度値である。全てのスペクトルバンドについて、同じ周囲温度値が使用される。分析バンドkにおいて、すなわち、ターゲットガスの存在を検知するために使用されるスペクトルバンドのうちの1つにおいて取り込まれる各スペクトルイメージについて別々に、イメージ処理ユニット20は、輝度値Lband_k(i、j)を輝度温度値TBapparent_k(i、j)に変換し、次いで、像点(i、j)についてのターゲットガスに起因する透過係数値τband_kを計算する。実際、それはτband_k(i、j)を指す。
【0051】
任意選択的であるが有利には、メタンプルーム110とイメージ取り込みユニット10との間の大気組成物中に含まれる水蒸気の量の影響について、イメージ取り込みユニット10によって提供された輝度値を補正することによって、ターゲットガスの検知結果についてより正確な数値を得ることが可能である。実際、各スペクトルバンドについて、この水蒸気の量は、例えばイメージセンサ2によって捕捉された輝度に対する追加の寄与を生み出し、この水蒸気量に関係する放射透過スペクトル係数(radiation transmission spectral coefficient)の値にしたがって、バックグラウンド100およびターゲットガスの寄与を減じる。この目的のために、例えば大気圧、相対湿度レベルおよび周囲温度等の、他の場所で得られた大気データに基づいて、スペクトル輝度(spectral luminance)およびスペクトル透過係数(spectral transmission coefficient)の値が、水蒸気について計算され得る。水蒸気に関係するこれらの輝度および透過係数の値は、スペクトルバンドband_1について、τH2O band_1およびLH2O band_1、・・・、スペクトルバンドband_4について、τH2O band_4およびLH2O band_4である。補正は、ターゲットガスについての透過係数τband_1を計算するために、イメージ取り込みユニット10によって送られる各輝度値Lband_1(i、j)を、[Lband_1(i、j)-LH2O band_1]/τH2O band_1によって置き換えることによるものである。他のスペクトルバンドの各々についても同様である。バックグラウンドの輝度値Lbackground_1(i、j)、・・・、Lbackground_4(i、j)に対して、それらがバックグラウンド輝度温度値TBbackground_1(i、j)、・・・、TBbackground_4(i、j)を決定するために使用されるとき、同じ補正が適用され得る。
【0052】
イメージ処理ユニット20によって出力される透過係数値τband_1、・・・、τband_4についての第1の検証基準は、これらの値の各々が0と1との間に含まれる(これらの端0および1は許容される)ことであり得る。この基準を満たさないτband_1、・・・、τband_4の値は退けられ得、検知処理はスペクトルイメージの取り込みから再開され得る。スペクトルバンドのうちの1つのスペクトルバンドの透過係数について、輝度値への影響が補正されていないターゲットガスおよび/または大気組成物の要素が、このスペクトルバンドにおいて非常に吸収性を有する場合、0に近い値が期待される。逆に、ターゲットガスが弱い吸収性を有するスペクトルバンドについて1に近い値が期待されるが、これはこのスペクトルバンド内において吸収性があり、輝度値への影響が補正されていない大気組成物における要素がない場合である。
【0053】
イメージ処理ユニット20によって出力される透過係数τband_1、・・・、τband_4の値についての第2の検証基準は、ターゲットガスが大気組成物よりもより吸収性のある複数のスペクトルバンドについて1つずつ有効である、ターゲットガスについてのスペクトル吸収係数(spectral absorption coefficient)値の序列にしたがって、これらの数値が順序付けられることであり得る。
【0054】
次に、計算ユニット30の動作について説明する。
【0055】
第1の可能性によれば、各分析バンドについて別々にターゲットガスの量を評価するための数値結果を導出するようにガス検知器は構成され得、これは並行に処理されるいくつかの分析バンドについてである。すべての分析バンドについて独立に、これらの分析バンドについて取り込まれたそれぞれのスペクトルイメージに基づき、見かけの輝度温度値が決定されている。イメージ処理ユニット20は、互いに独立に全ての分析バンドについて、これらの分析バンドに1対1に関係する放射透過係数の評価を、これから導出する。そして、計算ユニット30は、各分析バンドについてやはり独立に、この分析バンドに関する放射透過係数について得られた値のみに基づいて、視野の一部内に存在するターゲットガスの量Qtarget_gas(例えば像点(i、j)におけるQtarget_gas(i、j))の評価を導出するように構成され得る。言い換えれば、ターゲットガスの量は、各分析バンドに基づいて、各分析バンドに対して置き換えられる(変換される:transpose)が同じ方法を使用することによって、完全にかつ別々に評価され得る。そして、視野内におけるターゲットガスの存在は、視野の一部内に含まれるターゲットガス量についての全ての分析バンドから得られた値に適用される整合性基準(consistency criterion)に基づいて、肯定されるか、否定されるか、または不確定であると宣言され得る。さらに、像点に存在するターゲットガスの量についてのより信頼性の高い値が計算され得る。例えば、いくつかの分析バンドについてまたはすべての分析バンドについて、この像点に存在するターゲットガスの量について別々に得られた値の平均として計算され得る。
【0056】
しかしながら、次に説明する、好ましい計算ユニット30の動作についての別の可能性は、最良一致選択アルゴリズム(best-match selection algorithm)を使用し得る。
【0057】
知られているように、各スペクトルバンドについての透過係数の値は、スペクトル像点(i、j)に到達する放射経路にわたる、exp[-Atarget_gas・Ctarget_gas-Σother gasother gas・Cother gas]型の因子の積分から得られる。ここで、Ctarget_gasは、放射経路の各点におけるターゲットガスの局所濃度(local concentration)であり、Atarget_gasは、考慮するスペクトルバンド内におけるターゲットガスの吸光度である。また、Cother gasは、放射経路内に存在する他の各々のガス、主に、取り込まれた輝度値への影響が補正されていない大気組成物のガスの局所濃度であり、Aother gasは、考慮するスペクトルバンド内における、この他のガスの吸光度である。したがって、考慮下にあるスペクトルバンドについて、ターゲットガスの吸光度値が他の各々のガスの吸光度値よりも大きいか、またははるかに大きいとき、ターゲットガスの量を評価するために、スペクトルバンドのうちの1つがより適切になる。かかる適切なスペクトルバンドは、本明細書全体を通じて分析バンド(analysis band)と称されている。好ましくは、イメージ取り込みユニット10の光学チャネルについてのスペクトルバンドは、そのうちの少なくとも2つ、例えばband_1およびband_2がターゲットガスについての分析バンドであるように、すなわち、本実施例ではメタンについての分析バンドであるように、選択された。原則として、分析バンドは、周囲温度Tambientを決定するために使用され得ず、また、基準バンドとして使用することもできない。
【0058】
計算ユニット30の好ましい構成によれば、それは記憶ユニット40とのデータ通信状態にあり得、テーブルはその中に最初から記録されており、本実施例における各分析バンドの透過係数:τband_1およびτband_2についてのあらかじめ計算された値が含まれている。大気組成物におけるターゲットガスの可変的な局所的希薄化(variable local dilution)に対応する、放射経路に沿ったターゲットガスの可変的な濃度プロフィールについて、これらの値が計算された。これらの計算のために使用されるスペクトル吸光度値Atarget_gasおよびAother gasは、当業者に知られた分光評価法(spectroscopic evaluation methods)によって決定された。そして、複数の分析バンドの少なくとも2つのスペクトルイメージに共通する各像点(i、j)について、計算ユニット30は、放射経路に沿ったターゲットガスの濃度プロフィールのうちの1つを選択するが、それは、これらの分析バンドについての透過係数のあらかじめ計算された値が、これらの同じ透過係数についてイメージ処理ユニット20により提供される値と数値的に最も良く一致するものである。ターゲットガスの検知のための追加の検証基準は、放射経路に沿ったターゲットガスの1つの同じ濃度プロフィールが、いくつかの分析バンドについてのスペクトルイメージから導かれた透過係数の値について同時に十分な精度を有する計算を可能にすることであり得る。
【0059】
いったん像点(i、j)に到達する放射経路に沿ったターゲットガスの濃度プロフィールが決定されると、計算ユニット30は当該濃度プロフィールから、この放射経路上に存在するターゲットガス量Qtarget_gasの値を導出する。場合によっては、ターゲットガスの各濃度プロフィールについて、放射経路上に存在するターゲットガスの量の結果があらかじめ計算され得、分析バンドについてのこの濃度プロフィールに対応する放射透過係数の値とともに、記憶ユニット40内に記録され得るだろう。場合によっては、この量は、視野内におけるプルーム110全体を評価するために、ゼロでない濃度点が決定された全ての像点にわたり積分され得るだろう。
【0060】
上述の利点のうちの少なくともいくつかを保ちつつ、上に詳細に説明した実施形態のうちのいくつかの二次的な態様を変更または適合させることによって本発明が再現され得る、ということを理解されたい。特に、以下の適合が可能である:
-メタン以外のガスを検知するために、例えば特に海岸において藻類が分解することにより生成され得る、硫化水素(HS)の量を例えば検知するために、または、偶発的に漏れた化学工業ガスを検知するためにさえ、スペクトルバンドは選択され得る;
-特に各分析バンドについて放射透過係数を計算するために、または捕捉された輝度値への大気組成物中に含まれる水蒸気の影響を補正するために、または、分析バンドに関係する各放射透過係数に基づきターゲットガスの量を導出するために、引用された等式および式は、同等のまたは実質的に同等の等式または式により、置き換えられ得る;
-各分析バンドについてのターゲットガスの透過係数の値を導出するために使用される輝度値は、各々が単一の像点に関係する代わりに、スペクトルイメージ内におけるいくつかの隣り合う像点に対応するイメージ取り込みユニットの視野の一部について、それぞれ決定され得る;
-透過係数値を得るためにイメージ処理ユニットにより使用される輝度値は、ガス検知器が使用される場所における大気組成物およびスペクトルバンドに応じて、水蒸気以外の大気化合物の影響に関して、例えば二酸化炭素の影響に関して、補正され得る;
-引用された全ての数値は、単に例示の目的のために提供されているだけであって、考慮する用途(応用)に応じて変更され得る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本発明に適合するガス検知器の一部であるイメージ取り込みユニットの断面図である。
図2】本発明に適合するガス検知器のさまざまな要素の概要図である。
図3】本発明に適合するガス検知器の可能な一使用を示す。
図1
図2
図3
【国際調査報告】