IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゲー エフ ペー エス- ゲゼルシャフト フュア プロドゥクツィオーンスヒュギーネ ウント シュテリリテーツズィヒェルング エムベーハーの特許一覧

特表2022-532984クリーンルームを消毒するための方法およびデバイス
<>
  • 特表-クリーンルームを消毒するための方法およびデバイス 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】クリーンルームを消毒するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   B64D 1/18 20060101AFI20220713BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220713BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20220713BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20220713BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20220713BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
B64D1/18
B64C39/02
B64C27/04
B64D47/08
B64F1/36
A61L2/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021560361
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(85)【翻訳文提出日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 DE2020100268
(87)【国際公開番号】W WO2020200368
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】102019108397.4
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521440817
【氏名又は名称】ゲー エフ ペー エス- ゲゼルシャフト フュア プロドゥクツィオーンスヒュギーネ ウント シュテリリテーツズィヒェルング エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ディーツ, ジーモン
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB07
4C058DD01
4C058DD05
4C058DD07
4C058DD11
4C058DD13
4C058EE03
4C058EE26
4C058EE29
4C058JJ06
4C058JJ23
(57)【要約】
本発明は、消毒剤の散布に関するクリーンルームを消毒する方法に関し、消毒剤は、空中から無人航空機を用いて消毒されるべき表面上に噴霧され、消毒剤は、航空機に搭載された少なくとも1つのタンク内に貯蔵される。本発明はさらに、この方法を実施するためのデバイスに関し、デバイスは、適宜適合された無人航空機を備える。無人航空機は、消毒剤の適切な塗布を検出するための少なくとも1つのデバイスを備える。デバイスは、好ましくは、写真、サーモグラフィ、UV写真、反射測定から成る群から選択される撮像方法を使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消毒剤の散布によるクリーンルームの消毒のための方法であって、前記消毒剤は、無人航空機(10)を用いて空中から消毒されるべき表面上に噴霧され、前記消毒剤は、前記航空機に搭載された少なくとも1つのタンク内に貯蔵される、方法。
【請求項2】
前記航空機は、前記消毒剤の適切な塗布を検出するための少なくとも1つのデバイスを備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
適切な塗布を検出するための前記少なくとも1つのデバイスは、好ましくは、写真、サーモグラフィ、UV写真、反射測定から成る群から選択される撮像方法を使用することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
適切な塗布を検出するための前記少なくとも1つのデバイスは、以下の噴霧パラメータ、すなわち、
a)噴霧持続時間、
b)噴霧量、
c)噴霧強度、
d)噴霧角度、
e)噴霧表面
のうちの少なくとも1つを検出することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのタンクは、推進剤ガスを含有する圧力タンクであるか、または別個の圧力源に接続されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記航空機は、噴霧ノズル、弁、円形ブレードノズル等の単一物質用圧力ノズル、乱流ノズルもしくはジェット形成ノズル、外部混合を伴う二重物質用ノズル、内部混合を伴う二重物質ノズル、および回転式噴霧器から成る群から選択される、少なくとも1つの噴霧デバイスを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法を実施するためのデバイスであって、少なくとも1つの無人航空機を備え、前記少なくとも1つの無人航空機を用いて、前記消毒剤が、空中から消毒されるべき前記表面上に噴霧されることができ、前記航空機は、前記消毒剤を貯蔵するための少なくとも1つのタンクを含有することを特徴とする、デバイス。
【請求項8】
前記デバイスは、前記消毒剤の適切な塗布を検出するためのカメラユニットを含有し、前記カメラユニットは、以下の撮像方法、すなわち、写真、サーモグラフィ、UV写真、反射測定のうちの1つ以上を実施することを可能にすることを特徴とする、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記デバイスは、以下の噴霧パラメータ、すなわち、噴霧持続時間、噴霧量、噴霧強度、噴霧角度、噴霧表面のうちの1つ以上を制御するための少なくとも1つのユニットを含有することを特徴とする、請求項7または8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記航空機は、噴霧ノズル、弁、円形ブレードノズル等の単一物質用圧力ノズル、乱流ノズルもしくはジェット形成ノズル、外部混合を伴う二重物質用ノズル、内部混合を伴う二重物質用ノズル、および回転式噴霧器から成る群から選択される少なくとも1つの噴霧デバイスを有することを特徴とする、請求項7-9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記無人航空機は、材料のタイプおよびその表面構造の観点からDIN ISO14644-14に準拠するクリーンルームのために好適な材料から成ることを特徴とする、請求項7~10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記無人航空機は、静的空気を有する領域が回避されるように構築されることを特徴とする、請求項7~11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
DIN ISO14644-14に準拠する十分な清浄性を達成するための前記無人航空機は、以下の構築特性、すなわち、
a)少ない継合表面、
b)VDI2083,sheet9.1に準拠する前記表面の平坦性、亀裂の不在、および不浸透性、
c)VDI2083 sheet4.1に規定されるような前記表面の清浄性、
d)VDI2083 sheet4.1における仕様または試験試料上での試験に準拠する規定された脱ガス挙動としての放出容量
のうちの1つ以上を有することを特徴とする、請求項7~12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスは、清浄化されるべき前記クリーンルーム内の人々の存在を検出するための手段を含有することを特徴とする、請求項7~13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記デバイスは、前記無人航空機を受け取るための基地局を有し、前記基地局は、好ましくは、以下のデバイス、すなわち、
a)電気充電デバイス、
b)消毒剤タンクを充填するためのデバイス、
c)消毒剤タンクを交換するためのデバイス、
d)推進剤ガスタンクを充填するためのデバイス、
e)推進剤ガスタンクを交換するためのデバイス、
f)データ転送デバイス、
g)前記航空機を清浄化するためのデバイス、
h)緊急スイッチオフのためのデバイス、
のうちの1つ以上を含有することを特徴とする、請求項7~14のいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機を用いて消毒剤を散布することによってクリーンルームを消毒する方法に関する。本発明はさらに、対応して設計される無人航空機を備えるこの方法を実施するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームの衛生および清浄度は、製品品質を確実にするための中心的役割を果たす。クリーンルームは、薬剤学、生殖医療、化粧品、食品産業、もしくは生物学実験室等の生物学領域、ならびに、半導体生産、マイクロ電子機器、マイクロ力学、光学、衛星技術、または表面コーティング技術等の無機物領域の両方において存在する。
【0003】
多くの分野、例えば、薬剤学において、クリーンルーム条件は、所定の規格によって法的に要求される。また、半導体生産等の分野にも存在し、半導体生産等の分野において、クリーンルーム技術は、生産品質を増加させスクラップを低減させるために不可欠である。
【0004】
したがって、表面の清浄化および消毒は、医薬品生産における清浄度を維持するための重要なステップを表す。例えば、米国薬局方(USP)の第797章は、医薬品製品を製造することにおいて厳密なプロセスの遵守を要求する。クリーンルーム内の微生物制御を達成するための1つの措置は、壁、天井、床、および作業高さにおける表面のための定義された清浄化技法の使用、ならびに好適な清浄化剤および消毒剤の使用である。
【0005】
多剤耐性細菌の増加させられた発生に対して、効果的な消毒が決定的に重要である。
【0006】
最先端技術では、クリーンルームは、手動で清浄化および消毒される。この目的のために、職員は、消毒剤を制御された態様で消毒されるべき部屋の表面上に塗布するために、有資格訓練を受けなければならない。均一な加湿が、消毒剤の効果のために不可欠である。薬剤は、ある最小時間にわたって、表面全体を均等に加湿しなければならず、そうでなければ、効果的な力が達成されない。
【0007】
消毒プロセスは、表面上の微生物学的粒子状不純物が人間の眼には見えないという事実によってより困難にされる。職員は、汚染された領域を認識することも、自身の消毒活動の成功を視覚的に制御することもできない。
【0008】
別の課題は、プロセスのための監査証跡(100%制御)がまだ可能ではないため、成功の監視が、ランダムベースでのみ生じるという事実にある。確かに、多くの場合、生命科学産業は、監視カメラを使用している。しかしながら、それらは、成功した消毒および均一な消毒の間接的な制御のみを可能にする。ますます、外部の清浄化請負業者が、表面を消毒するために利用されている。この場合、成功の監視は、さらにより必要とされる。ここでは、監査は、往々にして、要求通りの消毒剤の取り扱いおよび全ての表面の完全な消毒における逸脱を示す。一時的作業機関の多くの職員は、表面の細菌汚染の見えない課題を十分には認知していない。
【0009】
通常、制御は、衛生スケジュールの締結によって生じる。この場合、入室(日付および職員に関して)は、申し立てられた消毒ステップ後に実施される。
【0010】
加えて、応用衛生協会であるVerband Angewandter Hygiene(VAH)は、長期における噴霧消毒が職員の健康に致命的であることを指摘している。多くの床が拭かれるが、作業台およびキャビネットは、多くの場合、機器の幾何学形状に起因して払拭消毒が困難であるため、噴霧される。
【0011】
家庭的領域では、定義された表面を清浄化および吸引し得る塵埃および払拭用ロボットシステムが、ここ数年にわたって採用されている。しかしながら、それらは、テーブルにわたって、または、キャビネットに沿って、移動することができないため、それらは、産業分領域のためにあまり好適ではない。加えて、ここでは、コストの圧迫が、「清浄化」の快適性において得られるものより高い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、クリーンルームを消毒するための改良された方法およびデバイスを提供することである。
【0013】
本発明によると、この目的は、独立請求項1の特徴を伴う消毒方法によって達成される。消毒方法の有利なさらなる開発が、従属請求項2-6から生じる。付加的側面では、本タスクは、請求項7の特徴を有する無人航空機によって解決される。無人航空機の有利なさらなる開発は、従属請求項8-15からの、無人飛行機のさらなる開発である。
【0014】
(概要)
第1の側面では、本発明は、消毒剤の散布によりクリーンルームを消毒する方法に関し、消毒剤は、無人航空機を用いて空中から消毒されるべき表面上に噴霧され、消毒剤は、航空機に搭載された少なくとも1つのタンク内に貯蔵される。
【0015】
本発明による方法は、最新技術から公知である方法に優るいくつかの決定的利点を組み合わせる。
【0016】
現代の無人航空機は、精密に制御され、また、ホバリング飛行で精密に位置付けられることもできる。したがって、無人航空機を用いて、消毒が精密に制御されることができる。これは、表面への標的化されたアプローチだけではなく、効果的な噴霧のために特に重要である表面から定義された距離を維持することにも関連する。
【0017】
この態様では、消毒剤の使用も、運営コストと同様に低減させられることができる。
【0018】
無人航空機の使用は、職員を低減させることに役立ち得る。噴霧消毒が職員にとって健康上の危険を伴う活動であることが、考慮されなければならない。したがって、本発明による方法は、作業安全性を増加させるための措置である。
【0019】
さらに、人間は、クリーンルームの汚染に最も影響を及ぼす粒子源であり、したがって、これは、本発明による方法によって決定的に低減させられる。
【0020】
無人航空機は、現時点までに、無人航空機がクリーンルーム内の未使用の駐機空間上(例えば、キャビネットの上部)に(例えば、基地局内に)置かれることができ、次いで、直接、この部屋を通って飛行し、部屋を消毒することができる点まで、小型化されている。
【0021】
無人航空機は、標的化された態様で、これまで到達することが困難であった表面(天井、キャビネット表面)に到達し、処置することができる。噴霧プログラムに伴う飛行ルートが、中に含有される物体とともに、クリーンルーム座標の事前の記憶によって、確立されることができる。加えて、航空機は、位置のずれた物体を検出することが可能な距離センサを装備することができ、故に、これは、飛行ルートの改変につながる。
【0022】
制御は、(例えば、カメラを用いた撮像によって)消毒中にすでに行われ得る。
【0023】
包括的センサシステムを採用することによって、例えば、消毒剤タンク内の充填レベル測定、センサを介した噴霧プロセスの検出、または現在の飛行ルートの検出等、正しい消毒を示す他のパラメータも、測定され、消毒プロセスを制御するために使用されることができる。
【0024】
したがって、データセットが、消毒プロセス毎に記録されることができ、これは、オンライン制御だけではなく、正しい消毒の後続評価を可能にする。
【0025】
関連パラメータにおける逸脱が、記録され、視覚的および/または音響的に警告として表示されることができる。
【0026】
加えて、既存のセンサシステムが、撮像とともに、クリーンルーム内の臨界的逸脱(排除されていない汚染物、さびスポット、水溜り等)を検出するために使用されることができ、したがって、航空機は、「制御ドローン」としても機能することができる。
【0027】
マーキング流体を使用することによって、飛行および噴霧プログラムは、事前に試験され、処置されるべき表面に最適に適合されることができる。これは、最初から、消毒プロセスの完全な清浄化プロセス関連制御を可能にし、これは、衛生スケジュールの以前の単純な契約では提供されなかったものである。
【0028】
したがって、清浄化プロセスの新規検証も、同様に可能である。第1のステップでは、最適化された飛行および噴霧プログラムが、制御された態様で確立され得る。第2のステップでは、単に、このプログラムが正しく実施されていることが保証される必要があり得る。
【0029】
無人ドローンは、任意の「人間保護機器」を必要とせず、余剰期間または「休止時間」でも使用されることができる。
【0030】
(好ましくは、クリーンルーム内に事前に駐機されている)航空機は、汚染物質の浸入および放出を低減させる。
【0031】
本発明による方法に関して、すでに確立されている全ての消毒剤が使用されることができる。加えて、毒性が強すぎる/人間と適合性がない消毒剤を初めて使用することも可能である。
【0032】
さらに、例えば、純ガスの放出、煙放出、またはUV光線を用いた処置等、完全に異なる消毒方法もまた、本発明に従って採用されることができる。
【0033】
加えて、無人航空機をアップグレードすることによって、方法は、例えばUV照射等の他の消毒方法と噴霧消毒との組み合わせも可能にする。
【0034】
要するに、本発明による消毒方法は、信頼性があり安価かつ迅速であり包括的に制御されることができるクリーンルーム消毒を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明による無人航空機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、消毒されるべき表面上への噴霧のために、無人航空機を用いてクリーンルームを消毒する方法に関する。消毒剤を航空機に搭載されたタンク内に貯蔵することによって、(例えば、管を用いた)外部供給なしで済ますことができ、航空機は、部屋の内側を自由に移動することができる。
【0037】
好ましい実施形態では、消毒剤は、希釈されていない形式でタンク内に貯蔵される。したがって、航空機は、より軽量であり、より少ないエネルギーを消費する。
【0038】
本発明の一実施形態では、航空機は、消毒剤の適切な塗布を記録するための少なくとも1つのデバイスを備える。このデバイスは、有利なこととして、オンライン、すなわち、飛行の間に生じる消毒の間に塗布をすでに記録し、記録されたデータを収集し、および/または記録されたデータを制御ユニットに転送する。この少なくとも1つの記録デバイスは、いくつかのレベルにおいて、すなわち、タンク内の充填レベルの降下によって、噴霧塗布の観点から正しい噴霧プロセスを検出することによって、および表面上において、正しく噴霧された表面を検査することによって、適切な塗布を検出することができる。
【0039】
有利なこととして、適切な塗布を検出するために、本デバイスは、好ましくは、写真、サーモグラフィ、UV写真、および反射測定から成る群から選択される撮像方法を使用する。
【0040】
写真撮像では、湿った表面は、光沢表面として検出されることができる。サーモグラフィは、消毒剤が高頻度で揮発性有機溶媒を含有するという事実を利用することができる。蒸発のために要求される蒸発エンタルピーは、環境から得られ(「蒸発冷却」)、したがって、噴霧された表面を冷却し、これは、したがって、サーモグラフィ的に検出されることができる。塗布されたUV-活性消毒剤は、直接、UV-写真によって検出されることができる。湿潤表面は、増加させられた反射を有するため、反射測定が、ここで使用されることができる。
【0041】
航空機は、好ましくは、1つ以上の噴霧ノズルを含有する。これらのノズルを用いて、消毒剤は、微細な液滴に分散させられることができる。さらに、噴霧画像、特に、消毒剤が塗布される噴霧角度が、決定されることができる。代替として、またはそれを補完して、精密な量の制御を可能にするように、弁を介して消毒剤を塗布することが提案される。弁は、ノズルへの流動を調整するように、噴霧ノズルの前に配列されることができる。
【0042】
別の実施形態では、正しい塗布を検出するための少なくとも1つのデバイスが、以下の噴霧パラメータのうちの少なくとも1つを検出するために適合される。
a)噴霧の持続時間
b)噴霧量
c)噴霧強度
d)噴霧角度
e)噴霧表面
【0043】
有利なこととして、1つ以上のセンサが、この目的のために使用され、1つ以上のセンサは、噴霧デバイスに取り付けられ、したがって、上記に述べられた噴霧パラメータのうちの1つ以上に関して噴霧プロセスを直接検出することができる。
【0044】
本発明による無人航空機は、消毒剤を貯蔵するための少なくとも1つのコンテナを含有する。このコンテナは、有利なこととして、推進剤ガスを含有する圧力タンクである。これは、圧送デバイスをなしで済ますことができ、消毒剤が直接タンクから噴霧デバイスに給送されることができるという利点を伴う。
【0045】
代替として、貯蔵装置タンクが、別個の圧力源に接続されることができる。圧力源として、当業者に公知の任意のデバイス、例えば、圧力ポンプ、または推進剤ガスで充填される別個の圧力タンクが、使用されることができる。
【0046】
方法において使用される航空機は、消毒剤を処置されるべき表面上に噴霧するように適合される少なくとも1つの噴霧デバイスを有する。
【0047】
好ましい実施形態では、噴霧デバイスは、噴霧ノズル、弁、単一物質用圧力ノズル(円形ブレードノズル等)、乱流ノズルもしくはジェット形成ノズル、外部混合を伴う二重物質用ノズル、内部混合を伴う二重物質用ノズル、および回転式噴霧器から成る群から選択される。
【0048】
第2の側面では、本発明は、上記に説明される消毒方法を実施するためのデバイスに関し、デバイスは、少なくとも1つの無人航空機を備え、これを用いて消毒剤が空中から消毒されるべき表面上に噴霧され得、航空機は、消毒剤を貯蔵するための少なくとも1つのタンクを備える。
【0049】
消毒剤タンク(好ましくは、圧力タンクである)は、好ましくは、消毒剤の消費後、新しい満タン(圧力)タンクと容易に交換されるように、無人航空機に解放可能に接続される。航空機上では、噴霧を搬送するための支持体が、交換が迅速かつ容易に実施され得るように形成されることができる。
【0050】
無人航空機は、デバイスの中心ユニットであり、中心ユニットは、1つ以上の付加的ユニットによって補完されてもよい。いくつかの例は、基地ユニット(「基地局」と同義語)、制御ユニット、GPSユニット、データ交換ユニット、充填ユニット、清浄化ユニット、使用済みタンクのための廃棄ユニット、電気充電ユニットである。これらのユニットは、別個のデバイスとして存在してもよい。好ましくは、いくつかのユニットは、デバイス内に統合される。したがって、基地局は、電気充電ユニット、充填ユニット、および制御ユニットを備えてもよい。
【0051】
一実施形態では、デバイスは、モバイルGPSユニットおよびGPS受信機を含む。モバイルGPSユニットを用いることで、消毒されるべき領域がマークされることができ、対応するGPSデータが、GPS受信機によって受信され、消毒スケジュールを策定するために使用され得る。代替として、消毒されるべき部屋およびその物体は、超音波、Bluetooth(登録商標)、またはレーザベースの距離計によって測定されることができる。
【0052】
本発明による航空機は、有利なこととして、精密な飛行制御のために少なくとも1つの距離計を有する。この距離計は、超音波またはレーザを用いて動作することができる。
【0053】
当業者は、無人航空機を精密にナビゲートする多くの実施形態を熟知している。基本的な構造タイプの例は、デュオコプタ、トリコプタ、クアッドコプタ、ヘクサコプタ、またはオクタコプタである。これらのマルチコプタは、いくつかの回転子またはプロペラを有し、いくつかの回転子またはプロペラは、好ましくは、浮力、および回転子平面の傾斜度によって推進力も生成するために、1つの平面上に配列され、垂直に下向きに作用する。ヘリコプタのように、マルチコプタは、垂直に離陸および着陸することができる。
【0054】
一実施形態では、無人航空機は、消毒剤の正しい塗布を検出するためのカメラユニットを含み、カメラユニットは、以下の撮像方法、すなわち、写真、サーモグラフィ、UV写真、および反射測定のうちの1つ以上の実施を可能にする。
【0055】
本発明の別の実施形態では、無人航空機は、以下の噴霧パラメータ、すなわち、噴霧持続時間、噴霧量、噴霧強度、噴霧角度、噴霧表面のうちの1つ以上を制御するための少なくとも1つのユニットを有する。
【0056】
別の実施形態では、航空機は、自動シャットオフシステムを有し、これは、例えば、人物の存在または接近等の危険な事象が検出されるとき、噴霧プロセスおよび/または飛行を終了する。
【0057】
消毒剤の塗布のために、無人航空機は、噴霧ノズル、弁、円形ブレードノズル等の単一物質用圧力ノズル、乱流ノズル、ジェット形成ノズル、外部混合を伴う二重物質用ノズル、内部混合を伴う二重物質用ノズル、および回転式噴霧器から成る群から選択される少なくとも1つの噴霧ユニットを有する。
【0058】
別の実施形態では、少なくとも1つの噴霧デバイスは、弁を装備し、弁は、電子的に制御されるか、または、定義された流体圧力が超えられると開くかのいずれかである。
【0059】
一実施形態によると、少なくとも1つの噴霧デバイスは、このプロセスの間、噴霧の間に回転子の空気流によって噴霧が妨げられないように向けられる。これは、噴霧デバイスを航空機の回転子と反対の側に取り付けることによって達成されることができる。その結果、回転子が上部に位置付けられる場合、噴霧デバイスを航空機の筐体の真下に位置付けることが有利である。代替として、航空機は、1つ以上の遮蔽デバイスを有することができ、これは、噴霧デバイスを回転子(単数または複数)によって生産される空気流に対して遮蔽する。
【0060】
代替実施形態では、噴霧デバイスは、噴霧プロセスが回転子の空気流によって支援されるように取り付けられる。飛行モードにおいて、回転子が、下向きに指向される空気流を発生させるため、この空気流は、噴霧プロセスを支援し、消毒剤の加速させられた乾燥を提供することができる。好ましい実施形態では、噴霧デバイスは、その中心を回転子の中心の下に(すなわち、例えば、回転子ハブの下方に)取り付けられる。
【0061】
好ましい実施形態では、無人航空機は、最大20kgの重量(「小型UAV」)、特に好ましくは、最大5kgの重量(「超小型UAV」)を有する。小さい航空機ほど、取り扱いがより容易であり、より少ないエネルギーを消費する。
【0062】
無人航空機は、有利なこととして、屋内、好ましくは、クリーンルームの内側において使用されるように適合される。
【0063】
クリーンルームにおける使用によると、無人航空機は、有利なこととして、タイプおよび表面構造が、DIN ISO14644-14に準拠するクリーンルームのために好適な材料から成る。
【0064】
さらに、無人航空機が、静的空気領域が回避されるように構築される場合、有利である。ここでは、無人航空機は、一般に、回転子を用いて動作されることが考慮されなければならない。したがって、シャーシの外側形状は、静的空気を回避して、回転子によって発生される空気流に適合されなければならない。
【0065】
本発明の別の実施形態では、無人航空機は、回転子の空気流が低乱流一方向性空気流動として、表面に接触するように設計される。
【0066】
本発明の一実施形態では、DIN ISO14644-14に準拠する十分な清浄化力を達成するための無人航空機は、以下の構造特徴のうちの1つ以上を有する。
a)少ない継合表面
b)DIN18 202に準拠するかまたはより優れた平坦性、画定された亀裂の不在、およびVDI2083 sheet9.1に準拠する表面の不浸透性
c)VDI2083 sheet4.1に規定されるような表面の清浄性
d)VDI2083 sheet4.1での仕様または試験試料における試験に準拠する規定された脱ガス挙動としての放出容量
【0067】
クリーンルームの汚染に著しい影響を及ぼす粒子放出は、採用される材料の表面品質に密接に結び付けられることに留意されたい。
【0068】
好ましい実施形態では、無人航空機は、全ての側面が閉鎖された筐体を有する。この態様では、粒子放出は低減される。この目的のためには、ドローンが冷却デバイスとして熱交換器を有する場合が有利である。空気冷却器は、増加させられた粒子放出という不利な点を有し得る。
【0069】
好ましい実施形態では、熱交換器は、推進剤ガス含有タンクに隣接する。この場合、ガスの断熱膨張によって引き起こされる冷却効果は、熱交換器を介して、デバイスを冷却するために使用されることができる。
【0070】
特定の実施形態では、航空機の可動部品の領域内に位置する材料であって、クリーンルームのために好適な材料が、特に適切である。移動が、摩擦を2つの材料間に引き起こし、これは、ひいては、粒子放出の最も頻繁な原因となる。VDI2083 sheet8に準拠する分類測定および評価を用いて、当業者は、それぞれの航空機のために、材料の組み合わせおよび対応する材料の対のクリーンルーム好適性を決定することができる。材料試験における摩擦の測定は、一般に、「ボールオンディスク試験」、「ディスクオンディスク試験」、または「ローラオンディスク試験」によって行われる。
【0071】
静電気の観点から、別の実施形態では、航空機の表面は、4、好ましくは3、特に2、特に好ましくは1の感度レベルを有する電場(e-場)を有する。感度レベルは、以下の表に従って、表面上の電場の強度によって定義される。
【表1】
【0072】
別の実施形態では、航空機の表面は、7.5×10オーム~10オームの接触抵抗、および10オーム/基準表面~1010オーム基準表面の表面抵抗を有する。
【0073】
好ましい実施形態では、デバイスは、清浄されるべきクリーンルーム内の人々の存在を検出するための手段を有する。これは、航空機が存在する人々と衝突せず、人々が消毒剤と接触しないことを確実にすることができる。この検出手段は、無人航空機の一部であることができるか、または基地局内もしくは別個の制御デバイス内に存在することができる。この検出手段は、好ましくは、撮像ユニットまたは運動センサを介して、人々の存在を検出することができる。
【0074】
本発明の別の実施形態では、デバイスは、無人航空機を受け取るための基地局を有し、基地局は、好ましくは、以下のタスクのうちの1つ以上を実施するために装備されている。
a)電気充電
b)消毒剤タンクの再充填
b)推進剤タンクの再充填
c)消毒剤タンクの交換
c)推進剤タンクの交換
d)無人航空機の清浄化
e)データの転送
f)緊急スイッチオフ
【0075】
上記に述べられたタスクに従って、基地局は、以下のデバイスのうちの1つ以上を含有する。
a)電気充電デバイス
b)消毒剤タンクを充填するためのデバイス
c)消毒剤タンクを交換するためのデバイス
d)推進剤ガスタンクを充填するためのデバイス
e)推進剤ガスタンクを交換するためのデバイス
f)データ転送デバイス
g)航空機を清浄化するためのデバイス
h)緊急スイッチオフのためのデバイス
【0076】
別の側面では、本発明は、無人航空機を消毒する方法に関し、(好ましくは、基地局内に)着陸後、航空機は、回転子のスラスト反転を実施し、消毒剤は、噴霧デバイスが航空機の筐体にわたって上向きに指向されることによって分注される。この態様では、航空機は、容易に消毒されることができる。
【0077】
この方法は、消毒するために使用されるだけではなく、清浄化流体の噴霧を用いてドローンを清浄化することもできる。この清浄化流体は、基地局によって分注されることもできる。
【0078】
好ましい実施形態では、筐体は、クリーンルームのために好適なプラスチックから構成され、または、少なくとも、実質的もしく完全に、クリーンルームのために好適なプラスチックから成る表面を有する。このプラスチックは、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、テレフタル酸ポリエチレン(PET)、ポリ塩化ビニル、エチレンプロピレンジエン(モノマー)ゴム(EPDM)、およびポリアミドから成る群から選択される。
【0079】
有利なこととして、この航空機では、表面上に暴露される材料/コーティングは、使用される消毒剤に対して不活性ある。
【0080】
無人航空機は、好ましくは、外部充填デバイスへの接続のための接続要素を有する。この接続要素は、供給ユニットへの可逆的接続を可能にし、好ましくは、プラグ式コネクタ、スナップ嵌合コネクタ、ねじコネクタ、またはバヨネットコネクタである。
【0081】
定義:
本発明の枠組内の「無人航空機」(UAV、無人航空機システム、AUS、または口語的には、ドローンとも呼ばれる)は、乗組員が乗車せずに、コンピュータまたは地面からの遠隔制御によって、自給式に動作およびナビゲートされ得る航空機である。本発明の枠組内では、ICAOの定義と異なり、これは、飛行モデル、すなわち、低ふぇんされたサイズまたは小型サイズで動作される飛行デバイスを含む。
【0082】
本願の枠組内では、「クリーンルーム」は、中で空気媒介および他の汚染の濃度が定義された閾値未満にとどまる部屋であると理解される。
【0083】
本願の枠組内の消毒は、病原を死滅させまたは不活性化し、物体上または生体表面上の病原の数を有意に低減させるように設計される衛生措置と定義される。その目的は、感染が起こり得ない状態を達成することである。用語「消毒」は、用語「消毒清浄化」と同義語である。
【0084】
本願の枠組内では、「清浄度」は、定義された汚染度を有する製品、表面、デバイス、ガス、または流体の状態であると理解される。汚染物は、部屋内で処理される製品または部屋の内部で行われるプロセスに悪影響を及ぼし得る任意の粒子、分子、非粒子、または生体単位であると定義される。
【0085】
本願において、「低乱流一方向性空気流動(TAV)」は、全体領域の全体断面にわたって均一速度かつ略平行の流動線を有する制御された空気流動であると定義される(VDIガイドライン2083,sheet4.1,item3.4.2に準拠する)。
【0086】
本発明において、用語「適格性」は、クリーンルームまたはその部品における消毒性能を決定および/またはチェックするために使用される定義された方法に準拠する消毒のための作業プロセスであると定義される。
【0087】
本発明によると、粒子表面清浄度クラス
【化1】
(ORK)は、VDIガイドライン2083,sheet9.1の2006年12月バージョン図4に準拠する10段階評価システムにおいて1μmの基準粒子径と称される1cmの基準表面上の個々の粒子の数によって定義される。
【0088】
本発明の文脈では、表面抵抗は、この表面上の2つの電極間で測定された電気抵抗であると定義される。
【0089】
本発明の他の利点、特異性および有用なさらなる開発は、従属請求項、および図を用いた以下の好ましい実施形態の説明に見出されることができる。
【0090】
本発明の種々の実施形態が、図を用いて以下に説明される。
【0091】
図1は、本発明による無人航空機10の概略図である。航空機は、クリーンルームのために好適な表面5を有するクリーンルームのために好適な材料から作製されるエンクロージャを有し、クリーンルームのために好適な2つの回転子4を有するデュオコプタとして具現化される。さらに、噴霧ノズル1と、消毒剤2のための側方に取り付けられたタンクと、屋内ナビゲーションのためのセンサ3と、撮像ユニットとしてのデジタルカメラ6と、データ転送のためのデバイスとを有する。冷却は、表面に取り付けられる熱交換器9を介して生じる。加えて、航空機は、基地局のための接続手段8を底部に有し、これらの手段は、電気充電および充填のために使用される。
【0092】
ここに示される実施形態は、本発明の例にすぎず、したがって、限定として理解されるべきではない。当業者によって検討される代替実施形態が、本発明の保護の範囲によって等しく含められる。
【符号の説明】
【0093】
参照番号一覧
10 無人航空機
1 噴霧ノズル
2 消毒剤のためのタンク
3 屋内ナビゲーションのためのセンサ
4 DIN ISO14644-15に準拠するクリーンルームのために好適な回転子
5 クリーンルームのために好適な表面を伴うエンクロージャ
6 撮像ユニットとしてのデジタルカメラ
7 データ転送のためのデバイス
8 充電およびタンク充填のための基地局のための接続手段
9 航空機を冷却するための熱交換器
図1
【国際調査報告】