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特表2022-532998選択的イントロンのスプライシングを調節するための方法及び組成物
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  • 特表-選択的イントロンのスプライシングを調節するための方法及び組成物 図1
  • 特表-選択的イントロンのスプライシングを調節するための方法及び組成物 図2A
  • 特表-選択的イントロンのスプライシングを調節するための方法及び組成物 図2B
  • 特表-選択的イントロンのスプライシングを調節するための方法及び組成物 図2C
  • 特表-選択的イントロンのスプライシングを調節するための方法及び組成物 図3
  • 特表-選択的イントロンのスプライシングを調節するための方法及び組成物 図4
  • 特表-選択的イントロンのスプライシングを調節するための方法及び組成物 図5
  • 特表-選択的イントロンのスプライシングを調節するための方法及び組成物 図6A
  • 特表-選択的イントロンのスプライシングを調節するための方法及び組成物 図6B
  • 特表-選択的イントロンのスプライシングを調節するための方法及び組成物 図6C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】選択的イントロンのスプライシングを調節するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20220713BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220713BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220713BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220713BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220713BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220713BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20220713BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20220713BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P43/00 111
A61K35/12
A61K31/7105
A61P15/00
A61P9/00
A61P35/00
A61P1/16
A61P13/12
A61P27/02
A61P21/00
A61P25/18
A61P11/00
A61P31/16
A61P25/00
A61P1/04
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/06
A61K9/08
C12N5/10 ZNA
C12N15/113 Z
C12N15/113 130Z
C12N15/113 140Z
C12N15/12
C12N15/55
C12N15/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563623
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2020029953
(87)【国際公開番号】W WO2020219977
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】62/839,572
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518195690
【氏名又は名称】ストーク セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】アズナレズ,イザベル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA46
4C076AA11
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB24
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC27
4C076CC29
4C076CC35
4C076FF11
4C076FF68
4C084AA13
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA52
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA18
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB15
4C084ZB26
4C084ZB33
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA52
4C086MA58
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA18
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZC41
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA16
4C087MA17
4C087MA52
4C087MA58
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA18
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZC41
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、プレmRNAのスプライシングを調節することによって標的タンパク質または標的RNAの発現を調節するための、及び標的タンパク質または標的RNAの発現レベルに関連する疾患または状態を治療するための方法及び組成物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)を有する細胞による標的タンパク質または標的RNAの発現を調節する方法であって、前記AICプレmRNAは、選択的イントロン、前記選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分、前記選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接している前記エクソンの第2の部分を含み、前記細胞を、前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする前記AICプレmRNAの標的化領域に結合する治療剤と接触させることを含み、これにより、前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする前記AICプレmRNAからの前記選択的イントロンのスプライシングが調節され、それにより、前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードするプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、前記細胞における前記標的タンパク質または前記標的RNAの前記発現を調節する、前記方法。
【請求項2】
対象の細胞における標的タンパク質または標的RNAの発現を調節することによって、疾患または状態の治療を必要とする前記対象における疾患または状態を治療する方法であって、前記対象の細胞を、前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)からの選択的イントロンのスプライシングを調節する治療剤と接触させることを含み、前記AICプレmRNAは、前記選択的イントロン、前記選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分、前記選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接している前記エクソンの第2の部分を含み、前記治療剤は、前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする前記AICプレmRNAの標的化領域に結合し、これにより、前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする前記AICプレmRNAからの前記選択的イントロンのスプライシングが調節され、それにより、前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードするプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、前記対象の前記細胞における前記標的タンパク質または前記標的RNAの前記発現を調節する、前記方法。
【請求項3】
前記細胞における前記標的タンパク質の前記発現を調節することが、前記細胞における前記標的タンパク質の前記発現を増加させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAの前記レベルを調節することが、前記標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAの前記レベルを増加させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記標的タンパク質をコードする前記AICプレmRNAからの前記選択的イントロンの包含が増加する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAの前記レベルを調節することが、前記選択的イントロン、前記エクソンの前記第1の部分及び前記エクソンの前記第2の部分を含むプロセシングされたmRNAの前記レベルを調節することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記治療剤が小分子である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記治療剤が、前記AICプレmRNAの前記標的化領域に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記治療剤が、前記標的タンパク質をコードする前記AICプレmRNAの前記標的化領域に、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記AICプレmRNAの前記標的化領域の少なくとも一部が、前記選択的イントロン内にある、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記AICプレmRNAの前記標的化領域の少なくとも一部が、前記エクソンの前記第1の部分内にある、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記AICプレmRNAの前記標的化領域の少なくとも一部が、前記エクソンの前記第2の部分内にある、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
産生される前記標的タンパク質が、完全に機能的なタンパク質である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
産生される前記標的RNAが、機能的RNAである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
産生される前記標的RNAが、完全に機能的なRNAである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記標的タンパク質がPD-L1(CD274)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記治療剤が結合する前記AICプレmRNAの前記標的化領域が、CD274のエクソン4内に位置している、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記治療剤が、CD274 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が、配列番号68、69、及び71~76から選択される配列内にある、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記治療剤が、CD274の前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記AICプレmRNAが、配列番号71~76に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記標的タンパク質がRho GTPアーゼ活性化タンパク質23(ARHGAP23)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記治療剤が、Rho GTPアーゼ活性化タンパク質23(ARHGAP23)AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号77及び91から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記治療剤が、ARHGAP23の前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号77に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記治療剤が、ARHGAP23の前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号91に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患または状態が、硬化嚢胞性卵巣または多嚢胞性卵巣症候群である、請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記標的タンパク質がBRD1である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記治療剤が、BRD1 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号78及び92から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記治療剤が、BRD1の前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号78に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記治療剤が、BRD1の前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号92に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患または状態が、統合失調症または双極性障害または腺様嚢胞癌である、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記標的タンパク質がプロトカドヘリン-16(DCHS1)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記治療剤が、DCHS1 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号79及び93から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記治療剤が、DCHS1の前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号79に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記治療剤が、DCHS1の前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号93に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記疾患または状態が、ヴァン・マルデルゲム・ヴェッツバーガー・ヴェロエス症候群(Van Maldergem Wetzburger Verloes syndrome)または僧帽弁逸脱症、粘液腫性2または結腸直腸癌または脳室周囲異所性、常染色体劣性または家族性僧帽弁逸脱症である、請求項30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記標的タンパク質がバンド4.1様タンパク質2(EPB41L2)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記治療剤が、EPB41L2 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号80及び94から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記治療剤が、EPB41L2の前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号80に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記治療剤が、EPB41L2の前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号94に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患または状態が肝硬変である、請求項35~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記標的タンパク質がルタチオンペルオキシダーゼ8(GPX8)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記治療剤が、GPX8 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号81及び95から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記治療剤が、GPX8の前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号81に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記治療剤が、GPX8の前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号95に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記疾患または状態が肝硬変である、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記標的タンパク質が、ヒト免疫不全ウイルスI型エンハンサー結合タンパク質3(HIVEP3)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記治療剤が、HIVEP3 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号82及び96から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記治療剤が、HIVEP3の前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号82に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記治療剤が、HIVEP3の前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号96に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記疾患または状態が結腸直腸癌である、請求項45~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記標的タンパク質がインバーシン(INVS)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記治療剤が、INVS AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号83及び97から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記治療剤が、INVSの前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号83に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記治療剤が、INVSの前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号97に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記疾患または状態が、ネフロン癆2または胆汁うっ滞または乳児胆汁うっ滞または腎異形成及び網膜形成不全(障害)である、請求項50~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記標的タンパク質が失読症関連タンパク質KIAA0319である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記治療剤が、失読症関連タンパク質KIAA0319 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号84及び98から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記治療剤が、KIAA0319の前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号84に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記治療剤が、KIAA0319の前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号98に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記疾患または状態が、読字障害または発達性読み書き障害または失読症である、請求項55~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記標的タンパク質がNLRファミリーアポトーシス阻害タンパク質(NAIP)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記治療剤が、NAIP AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号85及び99から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記治療剤が、NAIPの前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号85に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記治療剤が、NAIPの前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号99に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記疾患または状態が、脊髄性筋萎縮症II型または脊髄性筋萎縮症、乳児慢性型または遺伝性運動性神経障害近位I型または若年性脊髄性筋萎縮症である、請求項60~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記標的タンパク質がタンパク質Patchedホモログ2(PTCH2)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記治療剤が、PTCH2 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号86及び100から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記治療剤が、PTCH2の前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号86に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記治療剤が、PTCH2の前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号100に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記疾患または状態が、髄芽腫または色素性基底細胞癌または消化管間質肉腫または眼・歯・指症候群または髄筋芽細胞腫または基底細胞癌または小児髄芽腫または巨口症または線維形成性髄芽腫または水頭症または成人髄芽腫またはメラニン性髄芽腫または基底細胞母斑症候群である、請求項65~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記標的タンパク質が、タンパク質チロシンホスファターゼ受容体タイプZ1(PTPRZ1)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記治療剤が、PTPRZ1 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号87及び101から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記治療剤が、PTPRZ1の前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号87に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記治療剤が、PTPRZ1の前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号101に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記疾患または状態が、統合失調症またはじん肺症またはバガス病である、請求項70~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記標的タンパク質がSONである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記治療剤が、SON AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号88、89、102、及び103から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記治療剤が、SONの前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号88または89に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記治療剤が、SONの前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号102または103に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記疾患または状態が、唾液腺の悪性新生物またはZTTK症候群または腺様嚢胞癌である、請求項75~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記標的タンパク質がジンクフィンガーCCHCドメイン含有タンパク質2(ZCCHC2)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記治療剤が、ZCCHC2 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、前記標的化領域が配列番号90及び104から選択される配列内にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記治療剤が、ZCCHC2の前記AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記選択的イントロンが、配列番号90に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記治療剤が、ZCCHC2の前記AICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、前記エクソンが、配列番号104に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記疾患または状態がインフルエンザである、請求項80~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記疾患または前記状態が、免疫疾患または免疫障害である、請求項2~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記免疫疾患または前記免疫障害が、自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、炎症性疾患もしくは炎症性障害、慢性感染症、移植片対宿主病(GVHD)、移植拒絶、またはT細胞増殖性障害である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記免疫疾患または前記免疫障害が、多発性硬化症、炎症性腸疾患、自己免疫性肝炎、腎臓の炎症、関節リウマチ、乾癬、ループス腎炎、角膜移植、及びブドウ膜炎、から選択される自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、または炎症性疾患もしくは炎症性障害である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記疾患または前記状態が、前記標的タンパク質の量または活性の欠乏によって引き起こされる、請求項2~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記疾患または状態が、前記標的タンパク質の量または活性の増加によって治療または予防される、請求項2~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記疾患または前記状態が、前記標的タンパク質における機能喪失型変異によって誘導される、請求項2~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記治療剤が、前記細胞における前記標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAの前記レベルを増加させる、請求項1~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記治療剤と接触した前記細胞における前記標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAの前記レベルが、対照細胞における前記標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加する、請求項1~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記治療剤が、前記細胞における前記標的タンパク質の前記発現を増加させる、請求項1~92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記治療剤と接触した前記細胞における前記標的タンパク質のレベルが、対照細胞における前記標的タンパク質のレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加する、請求項1~93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記標的タンパク質をコードする前記AICプレmRNAからの前記選択的イントロンの包含が減少する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項96】
前記治療剤が、前記細胞における前記標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAの前記レベルを低下させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項97】
前記治療剤と接触した前記細胞における前記標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAの前記レベルが、対照細胞における前記標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAの前記レベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍低下する、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記治療剤が、前記細胞における前記標的タンパク質の前記発現を減少させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項99】
前記治療剤と接触した前記細胞における前記標的タンパク質の前記レベルが、対照細胞における前記標的タンパク質のレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍低下する、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記治療剤が、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む、請求項6または8~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記治療剤が、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロック核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、または2’-O-メトキシエチル部分を含む、請求項6または8~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記治療剤が、少なくとも1つの修飾糖部分を含む、請求項6または8~101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
各糖部分が修飾糖部分である、請求項6または8~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記治療剤が、8~50核酸塩基、8~40核酸塩基、8~35核酸塩基、8~30核酸塩基、8~25核酸塩基、8~20核酸塩基、8~15核酸塩基、9~50核酸塩基、9~40核酸塩基、9~35核酸塩基、9~30核酸塩基、9~25核酸塩基、9~20核酸塩基、9~15核酸塩基、10~50核酸塩基、10~40核酸塩基、10~35核酸塩基、10~30核酸塩基、10~25核酸塩基、10~20核酸塩基、10~15核酸塩基、11~50核酸塩基、11~40核酸塩基、11~35核酸塩基、11~30核酸塩基、11~25核酸塩基、11~20核酸塩基、11~15核酸塩基、12~50核酸塩基、12~40核酸塩基、12~35核酸塩基、12~30核酸塩基、12~25核酸塩基、12~20核酸塩基、または12~15核酸塩基、からなる、請求項6または8~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
請求項1~104のいずれか1項に記載の方法であって、前記標的タンパク質のmRNAレベルまたは発現レベルを評価することをさらに含む、前記方法。
【請求項106】
前記対象がヒトである、請求項2~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記対象が非ヒト動物である、請求項2~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記対象が、胎児、胚、または小児である、請求項2~107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
前記1つまたは複数の細胞が、エクスビボであるか、またはエクスビボで組織にあるか、もしくは器官にある、請求項1~108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
前記治療剤が、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、経口投与、滑膜注射、硝子体内投与、網膜下注射、局所適用、移植、または静脈内注射によって前記対象に投与される、請求項2~108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする前記AICプレmRNAからの前記選択的イントロンのスプライシングによって、未成熟終止コドン(PTC)を有するプロセシングされたmRNAが産生される、請求項1~110のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする前記AICプレmRNAからの前記選択的イントロンのスプライシングによって、機能的標的タンパク質をコードしないか、または機能的RNAをコードしない未成熟終止コドン(PTC)を有するプロセシングされたmRNAが産生される、請求項1~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする前記AICプレmRNAからの前記選択的イントロンのスプライシングによって、非機能的標的タンパク質または非機能的標的RNAをコードする未成熟終止コドン(PTC)を有するプロセシングされたmRNAが産生される、請求項1~112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする前記AICプレmRNAからの前記選択的イントロンのスプライシングによって、前記選択的イントロンを含むがそれ以外は同一である、対応するプロセシングされたmRNAと比較して、前記標的タンパク質を産生するためのより低い翻訳効率または発現効率を有するプロセシングされたmRNAが産生される、請求項1~113のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする前記AICプレmRNAからの前記選択的イントロンのスプライシングによって、ナンセンス変異依存性分解(NMD)を受けるプロセシングされたmRNAが産生される、請求項1~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする前記AICプレmRNAからの前記選択的イントロンのスプライシングによって、前記選択的イントロンを含むがそれ以外は同一である、対応するプロセシングされたmRNAよりも多く、ナンセンス変異依存性分解(NMD)を受けるプロセシングされたmRNAが産生される、請求項1~115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
請求項1~116のいずれか1項に記載の方法で使用するための治療剤。
【請求項118】
請求項117に記載の治療剤及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項119】
治療を必要とする対象を治療する方法であって、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、経口投与、滑膜注射、硝子体内投与、網膜下注射、局所適用、移植、または静脈内注射により、請求項118に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項120】
対象における異常なタンパク質または異常なRNAに関連する、疾患または状態の治療を必要とする前記対象における疾患または状態を治療するための、細胞による標的タンパク質または標的RNAの発現を調節する方法において使用するための治療剤を含む組成物であって、前記異常なタンパク質または前記異常なRNAは、前記対象において量または活性が異常であり、前記治療剤は、前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)のスプライシングを調節し、
前記標的タンパク質は:
(a)前記異常なタンパク質;
(b)細胞シグナル伝達機構を機能的に活性化もしくは非活性化して、前記疾患もしくは状態に関連する細胞活性を変化させるタンパク質;
(c)前記対象における前記異常なタンパク質を機能的に増強もしくは置換するタンパク質;または
(d)前記対象における前記異常なタンパク質を機能的に減少させるかもしくは阻害するタンパク質であり;
前記標的RNAは:
(a)前記異常なRNA;
(b)細胞シグナル伝達機構を機能的に活性化もしくは非活性化して、前記疾患もしくは状態に関連する細胞活性を変化させるRNA;
(c)前記対象における前記異常なRNAを機能的に増強もしくは置換するRNA;または
(d)前記対象における前記異常なRNAを機能的に減少させるかもしくは阻害するRNAであり;
前記AICプレmRNAは、選択的イントロン、前記選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分、前記選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接している前記エクソンの第2の部分を含み、これにより、前記標的タンパク質または前記標的RNAをコードする前記AICプレmRNAからの前記選択的イントロンのスプライシングが調節され、それにより、前記対象における前記標的タンパク質または前記標的RNAの産生または活性を調節する、前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2019年4月26日出願の米国仮特許出願第62/839,572号の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2020年4月23日作成の前記ASCIIコピーは、47991-726_601_SL.txtという名称であり、サイズは1,023,445バイトである。
【背景技術】
【0003】
遺伝子によってコードされるプレmRNAの選択的スプライシングイベントは、非生産的mRNA転写物をもたらす可能性があり、それによりタンパク質発現の減少がもたらされる可能性がある。遺伝子によってコードされるプレmRNAの選択的スプライシングイベントを標的化することができる治療剤は、患者の機能的タンパク質の発現レベルを高めることができ、及び/または異常なタンパク質発現を阻害することができる。そのような治療剤を使用して、タンパク質発現の増加から利益を得るであろう状態を治療することができ、またはタンパク質の発現レベルの変化によって引き起こされる疾患、例えば、タンパク質欠損によって引き起こされる状態もしくは疾患を治療することができる。そのような例の1つは、プログラム細胞死-1(PD-1、CD279)のリガンドであるプログラム死リガンド1(PD-L1、またはCD274)である。
【0004】
PD-1(CD279)は、適応免疫応答、特にT細胞機能に重大な影響を与える非常に重要な免疫制御チェックポイント分子である(Keir et al., 2008, Ann. Rev. Immunol., 26: 677-704)。そのリガンドであるPD-L1(CD274)、及びより限定された範囲でPD-L2は、特殊な免疫細胞及び組織の両方において発現している。PD-L1及びPD-L2は、PD-1と相互作用して、浸潤するT細胞に抑制性シグナルを送り、免疫制御、アネルギー、制御性表現型、及び「攻撃」の制御を誘導する。PD-1及びPD-L1の発現は、例えば、PD-1の場合はT細胞が活性化され、PD-L1の場合は炎症性サイトカインにさらされると、炎症性環境において上方制御され、内因性の「ブレーキ」、すなわちチェックポイントを構成する。PD-L1は、幅広い腫瘍群でも上方制御され、その存在によって抗腫瘍T細胞応答が抑制される。
【0005】
PD-1:PD-L1相互作用は、末梢免疫寛容、すなわち自己組織を不適切に攻撃するT細胞の抑制の非常に重要なメディエーターであり、さらに、動物モデルで確立された自己免疫を調節することが示されている。PD-L1が重要であることが示されている炎症性疾患のモデルとしては、自己免疫性糖尿病の非肥満糖尿病(NOD)モデル、多発性硬化症の実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデル、関節リウマチのコラーゲン誘発関節炎モデル、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の複数のモデル、移植及び移植片対宿主病、自己免疫性ブドウ膜炎及び他の多くの設定のモデル、が挙げられ、これらは、炎症性疾患におけるPD-1:PD-L1経路の幅広い役割を示唆している(レビューについては、Keir, 2008;Gianchecchi, 2013 を参照のこと)。ヒトでは、PD-1の遺伝子多型は、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、関節リウマチ、バセドウ病、及び多発性硬化症に関連している(Okazaki & Honjo, International Immunology, 2007)。
【0006】
NODマウス、EAE、接触過敏症、ループス腎炎の研究など、ある特定の研究では、PD-L1の異所性または過剰発現によって、病原性免疫応答を制御及び抑制できることが示唆されている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に記載されているのは、選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)を有する細胞による標的タンパク質または標的RNAの発現を調節する方法であって、AICプレmRNAは、選択的イントロン、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分、選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンの第2の部分を含み、細胞を、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAの標的化領域に結合する治療剤と接触させることを含み、これにより、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングが調節され、それにより、標的タンパク質または標的RNAをコードするプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、細胞における標的タンパク質または標的RNAの発現を調節する、方法である。
【0008】
本明細書に記載されているのは、対象の細胞における標的タンパク質または標的RNAの発現を調節することによって、疾患または状態の治療を必要とする対象における疾患または状態を治療する方法であって、対象の細胞を、標的タンパク質または標的RNAをコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)からの選択的イントロンのスプライシングを調節する治療剤と接触させることを含み、AICプレmRNAは、選択的イントロン、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分、選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンの第2の部分を含み、治療剤は、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAの標的化領域に結合し、これにより、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングが調節され、それにより、標的タンパク質または標的RNAをコードするプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、対象の細胞における標的タンパク質または標的RNAの発現を調節する、方法である。
【0009】
いくつかの実施形態では、細胞における標的タンパク質の発現を調節することは、細胞における標的タンパク質の発現を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを調節することは、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを増加させることを含む。いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンの包含が増加する。いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを調節することは、選択的イントロン、エクソンの第1の部分及びエクソンの第2の部分を含むプロセシングされたmRNAのレベルを調節することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、治療剤は、小分子である。いくつかの実施形態では、治療剤は、AICプレmRNAの標的化領域に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)である。いくつかの実施形態では、治療剤は、標的タンパク質をコードするAICプレmRNAの標的化領域に、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第1の部分の上流のイントロン内にある。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第2の部分の下流のイントロン内にある。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、選択的イントロン内にある。いくつかの実施形態では、産生される標的タンパク質は、完全に機能的なタンパク質である。いくつかの実施形態では、産生される標的RNAは、機能的RNAである。いくつかの実施形態では、産生される標的RNAは、完全に機能的なRNAである。
【0011】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質はPD-L1(CD274)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、CD274のエクソン4内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、CD274(PD-L1)AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号68、69、及び71~76から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、CD274のAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号68に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、CD274のAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、AICプレmRNAは、配列番号71~76のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、Rho GTPアーゼ活性化タンパク質23(ARHGAP23)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、ARHGAP23のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、ARHGAP23 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号77及び91から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、ARHGAP23のAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号77に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、ARHGAP23のAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号91に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、ブロモドメイン含有1(BRD1)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、BRD1のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、BRD1 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号78及び92から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、BRD1のAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号78に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、BRD1のAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号92に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、プロトカドヘリン-16(DCHS1)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、DCHS1のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、DCHS1 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号79及び93から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、DCHS1のAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号79に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、DCHS1のAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号93に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、赤血球膜タンパク質バンド4.1様2(EPB41L2)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、EPB41L2のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、EPB41L2 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号80及び94から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、EPB41L2のAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号80に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、EPB41L2のAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号94に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、グルタチオンペルオキシダーゼ8(GPX8)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、GPX8のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、GPX8 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号81及び95から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、GPX8のAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号81に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、GPX8のAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号95に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、ヒト免疫不全ウイルスI型エンハンサー結合タンパク質3(HIVEP3)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、HIVEP3のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、HIVEP3 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号82及び96から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、HIVEP3のAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号82に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、HIVEP3のAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号96に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、インバーシン(INVS)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、INVSのエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、INVS AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号83及び97から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、INVSのAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号83に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、INVSのAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号97に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、失読症関連タンパク質 KIAA0319(KIAA0319)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、KIAA0319のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、KIAA0319 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号84及び98から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、KIAA0319のAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号84に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、KIAA0319のAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号98に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、NLRファミリーアポトーシス阻害タンパク質(NAIP)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、NAIPのエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、NAIP AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号85及び99から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、NAIPのAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号85に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、NAIPのAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号99に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、Patched 2(PTCH2)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、PTCH2のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、PTCH2 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号86及び100から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、PTCH2のAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号86に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、PTCH2のAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号100に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、プロテインチロシンホスファターゼ受容体タイプZ1(PTPRZ1)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、PTPRZ1のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、PTPRZ1 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号87及び101から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、PTPRZ1のAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号87に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、PTPRZ1のAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号101に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質はSONである。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、SONのエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、SON AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号88、89、102及び103から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、SONのAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号88または配列番号89に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、SONのAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号102または配列番号103に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、ジンクフィンガーCCHCドメイン含有タンパク質2(ZCCHC2)である。いくつかの実施形態では、治療剤が結合するAICプレmRNAの標的化領域は、ZCCHC2のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、治療剤は、ZCCHC2 AICプレmRNAの標的化領域に結合し、標的化領域は、配列番号90及び104から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、ZCCHC2のAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、選択的イントロンは、配列番号90に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、ZCCHC2のAICプレmRNAのエクソンからの選択的イントロンのスプライシングを調節し、エクソンは、配列番号104に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、疾患または状態は、免疫疾患または免疫障害である。いくつかの実施形態では、免疫疾患または免疫障害は、自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、炎症性疾患もしくは炎症性障害、慢性感染症、移植片対宿主病(GVHD)、移植拒絶反応、またはT細胞増殖性障害である。いくつかの実施形態では、免疫疾患または免疫障害は、多発性硬化症、炎症性腸疾患、自己免疫性肝炎、腎臓の炎症、関節リウマチ、乾癬、ループス腎炎、角膜移植、及びブドウ膜炎、から選択される自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、または炎症性疾患もしくは炎症性障害である。
【0026】
いくつかの実施形態では、疾患または状態は、標的タンパク質の量または活性の欠乏によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、標的タンパク質の量または活性の増加によって治療または予防される。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、標的タンパク質における機能喪失型変異によって誘導される。
【0027】
いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを増加させる。いくつかの実施形態では、治療剤と接触した細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルは、対照細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加する。
【0028】
いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞における標的タンパク質の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、治療剤と接触した細胞における標的タンパク質のレベルは、対照細胞における標的タンパク質のレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加する。
【0029】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンの包含が減少する。いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを低下させる。いくつかの実施形態では、治療剤と接触した細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルは、対照細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍低下する。
【0030】
いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞における標的タンパク質の発現を減少させる。いくつかの実施形態では、治療剤と接触した細胞における標的タンパク質のレベルは、対照細胞における標的タンパク質のレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍低下する。
【0031】
いくつかの実施形態では、治療剤は、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロック核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、または2’-O-メトキシエチル部分を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、少なくとも1つの修飾糖部分を含む。いくつかの実施形態では、各糖部分は、修飾糖部分である。いくつかの実施形態では、治療剤は、8~50核酸塩基、8~40核酸塩基、8~35核酸塩基、8~30核酸塩基、8~25核酸塩基、8~20核酸塩基、8~15核酸塩基、9~50核酸塩基、9~40核酸塩基、9~35核酸塩基、9~30核酸塩基、9~25核酸塩基、9~20核酸塩基、9~15核酸塩基、10~50核酸塩基、10~40核酸塩基、10~35核酸塩基、10~30核酸塩基、10~25核酸塩基、10~20核酸塩基、10~15核酸塩基、11~50核酸塩基、11~40核酸塩基、11~35核酸塩基、11~30核酸塩基、11~25核酸塩基、11~20核酸塩基、11~15核酸塩基、12~50核酸塩基、12~40核酸塩基、12~35核酸塩基、12~30核酸塩基、12~25核酸塩基、12~20核酸塩基、または12~15核酸塩基、からなる。
【0032】
いくつかの実施形態では、この方法は、標的タンパク質のmRNAレベルまたは発現レベルを評価することをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は非ヒト動物である。いくつかの実施形態では、対象は、胎児、胚、または小児である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の細胞は、エクスビボであるか、またはエクスビボで組織にあるか、もしくは器官にある。
【0033】
いくつかの実施形態では、治療剤は、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、経口投与、滑膜注射、硝子体内投与、網膜下注射、局所適用、移植、または静脈内注射によって対象に投与される。
【0034】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングによって、未成熟終止コドン(PTC)を有するプロセシングされたmRNAが産生される。いくつかの実施形態では、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングによって、機能的標的タンパク質をコードしないか、または機能的RNAをコードしない未成熟終止コドン(PTC)を有するプロセシングされたmRNAが産生される。いくつかの実施形態では、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングによって、非機能的標的タンパク質または非機能的標的RNAをコードする未成熟終止コドン(PTC)を有するプロセシングされたmRNAが産生される。いくつかの実施形態では、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングによって、選択的イントロンを含むがそれ以外は同一である、対応するプロセシングされたmRNAと比較して、標的タンパク質を産生するためのより低い翻訳効率または発現効率を有するプロセシングされたmRNAが産生される。いくつかの実施形態では、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングによって、ナンセンス変異依存性分解(NMD)を受けるプロセシングされたmRNAが産生される。いくつかの実施形態では、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングによって、ナンセンス変異依存性分解(NMD)を受けるプロセシングされたmRNAが産生される。
【0035】
本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の方法において使用するための治療剤である。本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の治療剤及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。
【0036】
本明細書で提供されるのは、治療を必要とする対象を治療する方法であって、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、経口投与、滑膜注射、硝子体内投与、網膜下注射、局所適用、移植、または静脈内注射により、請求項48に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法である。
【0037】
本明細書で提供されるのは、対象における異常なタンパク質または異常なRNAに関連する、疾患または状態の治療を必要とする対象における疾患または状態を治療するための、細胞による標的タンパク質または標的RNAの発現を調節する方法において使用するための治療剤を含む組成物であって、異常なタンパク質または異常なRNAは、対象において量または活性が異常であり、治療剤は、標的タンパク質または標的RNAをコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)のスプライシングを調節し、標的タンパク質は、(a)異常なタンパク質;(b)細胞シグナル伝達機構を機能的に活性化もしくは非活性化して、疾患もしくは状態に関連する細胞活性を変化させるタンパク質(c)対象における異常なタンパク質を機能的に増強もしくは置換するタンパク質;または(d)対象における異常なタンパク質を機能的に減少させるかもしくは阻害するタンパク質であり;標的RNAは、(a)異常なRNA;(b)細胞シグナル伝達機構を機能的に活性化もしくは非活性化して、疾患もしくは状態に関連する細胞活性を変化させるRNA;(c)対象における異常なRNAを機能的に増強もしくは置換するRNA;または(d)対象における異常なRNAを機能的に減少させるかもしくは阻害するRNAであり;AICプレmRNAは、選択的イントロン、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分、選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンの第2の部分を含み、これにより、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングが調節され、それにより、対象における標的タンパク質または標的RNAの産生または活性を調節する、組成物である。
【0038】
参照による組み込み
この明細書において言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に特に記述される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】異なるスプライスバリアントの生成の概略図を示す。
図2A】異なる細胞及び条件における異なるmRNAアイソフォームの測定値を示す。
図2B】異なる細胞及び条件における異なるmRNAアイソフォームの測定値を示す。
図2C】異なる細胞及び条件における異なるmRNAアイソフォームの測定値を示す。
図3】ASO walkの概略図を示す。
図4】A~Cは、異なるASOでトランスフェクトされた細胞におけるmRNAアイソフォーム及びタンパク質発現の測定値を示す。
図5】A~Dは、ASO有効性の測定値を示す。
図6A】ASO有効性の測定値を示す。
図6B】ASO有効性の測定値を示す。
図6C】ASO有効性の測定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
配列
本出願には、表1~3に列挙されている配列番号1~3651のヌクレオチド配列が含まれる。表1に配列番号1~67として記述されたヌクレオチド配列は、本明細書に記載の方法において有用なアンチセンスオリゴマー(ASO)の例である。表2に配列番号68として記述されたヌクレオチド配列は、本明細書に記載の方法によってASOにより標的化され得る配列の例である。表2に配列番号69として記述されたヌクレオチド配列は、CD274 mRNA配列である。表2に配列番号70として記述されたヌクレオチド配列は、CD274アミノ酸配列である。表2に配列番号71として記述されたヌクレオチド配列は、CD274ゲノム配列である。配列番号72~76としての表2は、プレmRNA配列である。表2に配列番号77~90として記述されたヌクレオチド配列は、表に列挙された遺伝子において標的化される選択的イントロンである。表2に配列番号91~104として記述されたヌクレオチド配列は、表に列挙されている遺伝子において標的化されるエクソンである。表2に配列番号105~3651として記述されたヌクレオチド配列は、本明細書に記載の方法において有用なアンチセンスオリゴマー(ASO)の例である。大文字はエクソン配列を表し、小文字はイントロン配列を表す。
【0042】
本発明の詳細な説明
スプライシング及び選択的スプライス部位
介在配列またはイントロンは、スプライソソームと呼ばれる、大きく、高度に動的なRNA-タンパク質複合体によって除去され、このことにより、一次転写物と、核内低分子RNA(snRNA)と、多数のタンパク質との間の複雑な相互作用が調整される。スプライソソームは、その都度各イントロン上に規則正しく集合し、U1 snRNAによる5’スプライス部位(5’ss)またはU2経路による3’スプライス部位(3’ss)の認識から開始し、U2経路は、U2補助因子(U2AF)の3’ss領域への結合に関与して、U2が分岐点配列(BPS)に結合することを容易にする。U2AFは、ポリピリミジントラクト(PPT)に結合する、U2AF2によってコードされる65kDのサブユニット(U2AF65)、及び3‘ssにおいて高度に保存されたAGジヌクレオチドと相互作用し、U2AF65が結合することを安定化させる、U2AF1によってコードされる35kDのサブユニット(U2AF35)から構成される安定なヘテロ二量体である。正確なスプライシングは、BPS/PPTユニット及び3’ss/5’ssに加えて、イントロンまたはエクソンスプライシングエンハンサーまたはサイレンサーとして既知の、スプライス部位認識を活性化または抑制する補助配列または構造を必要とする。これらのエレメントにより、真のスプライス部位を、同じ配列を有するが本来の部位の数を一桁上回る高等真核生物のゲノムにおける非常に過剰な潜在的または偽部位の中から認識することが可能になる。
【0043】
スプライスするか否かの決定は、最も明確なスプライシングシグナルでも、誤ってスプライスする可能性があるように、典型的には、決定論的プロセスではなく確率的プロセスとしてモデル化することができる。しかし、通常の条件下では、プレmRNAスプライシングは驚くほど高い忠実度で進行する。これは、部分的には、隣接するシス作用性補助エクソン及びイントロンスプライシング制御エレメント(ESRまたはISR)の活性に起因する。典型的には、これらの機能的エレメントは、スプライシングを刺激または阻害する能力に基づいて、それぞれエクソンもしくはイントロンスプライシングエンハンサー(ESEもしくはISE)またはサイレンサー(ESSもしくはISS)のいずれかに分類される。現在、一部の補助的なシス作用性エレメントは、スプライソソーム集合の動力学、例えばU1 snRNPと5’ssとの間における複合体の布置に影響を及ぼすことによって作用し得るというエビデンスが存在するが、多くのエレメントはトランス作用性RNA結合タンパク質(RBP)と協力して機能するという可能性は、非常に高いように思われる。例えば、セリン及びアルギニンが豊富なRBPのファミリー(SRタンパク質)は、エクソンの定義において重要な役割を果たす保存されたタンパク質のファミリーである。SRタンパク質は、プレスプライソソームの成分を隣接するスプライス部位に動員することによって、またはその近傍においてESSの効果に拮抗することによって、エクソン認識を促進する。ESSの抑制効果は、ヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)ファミリーのメンバーによって媒介することができ、コアスプライシング因子の隣接するスプライス部位への動員を変更することができる。サイレンサーエレメントは、スプライシング制御における役割に加えて、エクソンの典型的な間隔を有するが機能的オープンリーディングフレームを有していない数組のデコイイントロンスプライス部位である偽エクソンの抑制において役割を有することが示唆される。ESE及びESSは、同族のトランス作用性RBPと共に、mRNAがその前駆体から集合化する方法、場所、及び時を指定する1組のスプライシング制御における重要な成分を表す。
【0044】
エクソン-イントロン境界を示す配列は、ヒト遺伝子内に高頻度で生じ得る、様々な強度の縮重シグナルである。マルチエクソン遺伝子では、異なる対のスプライス部位が多くの異なる組合せで一緒に連結して、単一の遺伝子から多種多様な転写物を作出することができる。これは一般的に、選択的プレmRNAスプライシングと呼ばれる。選択的スプライシングによって産生される大半のmRNAアイソフォームは、核から輸送され、機能的ポリペプチドに翻訳され得るが、単一の遺伝子に由来する異なるmRNAアイソフォームは、その翻訳効率に大きくばらつきがある可能性がある。エクソンジャンクション複合体の少なくとも50bp上流に未成熟終止コドン(PTC)を有するこれらのmRNAアイソフォームは、ナンセンス変異依存性mRNA分解機構(NMD)経路による分解の標的となる可能性が高い。従来の(BPS/PPT/3’ss/5’ss)及び補助的なスプライシングモチーフにおける変異は、異常なスプライシング、例えばエクソンスキッピング、または潜在的(もしくは偽)エクソン包含またはスプライス部位活性化を引き起こし、ヒトの罹患率及び死亡率に大きく寄与する可能性がある。異常なスプライシングパターンと選択的スプライシングパターンの両方が、エクソン及びイントロンにおける天然のDNAバリアントの影響を受ける可能性がある。
【0045】
潜在的(または偽スプライス部位)は、真のスプライス部位と同じスプライシング認識配列を有するが、スプライシング反応において使用されない。それらは、ヒトゲノムの真のスプライス部位の数を一桁上回り、通常、これまで十分に理解されていない分子機構によって抑制されている。潜在的5’スプライス部位は、コンセンサスなNNN/GUNNNNまたはNNN/GCNNNN(ここで、Nは任意のヌクレオチドであり、エクソン-イントロン境界である)を有する。潜在的3’スプライス部位は、コンセンサスなNAG/Nを有する。これらのスプライス部位の活性化は、それらを本来のスプライス部位の最適なコンセンサス、すなわち、それぞれ、MAG/GURAGU及びYAG/Gにより類似させる周囲のヌクレオチドによって正の影響を受け、ここで、MはCまたはAであり、RはGまたはAであり、YはCまたはUである。潜在的(または偽)スプライス部位の活性化は、異常なスプライス部位の固有の強度とそれらの真の対応物との間の均衡、変異スプライス部位の近傍での従来のシグナルの利用可能性、エクソン及びイントロンのサイズ、変異の性質によって、ならびにESE、ESS、ISE、またはISSを妨害するかもしくは作出することによって、影響を受けるかまたは決定される可能性がある。
【0046】
スプライス部位及びその制御配列は、当業者であれば、例えば Kralovicova, J. and Vorechovsky, I.(2007) Global control of aberrant splice site activation by auxiliary splicing sequences: evidence for a gradient in exon and intron definition. Nucleic Acids Res., 35, 6399-6413、に列挙されている公的に利用可能である好適なアルゴリズムを使用して容易に同定することができる。
【0047】
エクソン配列は5’及び3’の両方の選択的スプライス部位を含有する場合があり、これは、U2AFなどのRNA結合タンパク質をエクソン配列内の選択的スプライス部位へ推進させ、これによりプレmRNAからのエクソンの一部のスプライシングがもたらされ、エクソンの一部を欠いているプロセシングされたmRNAが産生される。エクソン内の選択的5’スプライス部位と選択的3’スプライス部位の間の領域または配列を、選択的イントロンと呼ぶことができる。エクソン配列内に位置している5’及び3’の選択的スプライス部位を有するプレmRNAを、選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、薬剤は、選択的スプライス部位またはスプライシング制御配列に結合して、RNA結合タンパク質の結合を防止し、それにより、選択的イントロンのスプライシングを阻害し得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、選択的スプライス部位またはスプライシング制御配列に結合して、RNA結合タンパク質の結合を促進し、それにより、選択的イントロンのスプライシングを増強し得る。
【0048】
本明細書で提供されるのは、選択的スプライス部位での異常なスプライシングイベントを調節して、標的遺伝子によってコードされる機能的mRNAのレベル及び標的遺伝子によってコードされるタンパク質の発現レベルを調節することができる方法及び組成物である。本発明の方法及び組成物を使用して、対象または対象の細胞における標的タンパク質の発現レベルを調節することができる。例えば、本発明の方法及び組成物を使用して、対象または対象の細胞における標的タンパク質の発現レベルを、(タンパク質配列を変更することなく)増加または低下させることができる。本発明の方法及び組成物を使用して、対象または対象の細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを調節することができる。例えば、本発明の方法及び組成物を使用して、対象または対象の細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを増加または低下させることができる。
【0049】
本明細書で提供されるのは、選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)を有する細胞による標的タンパク質または標的RNAの発現を調節する方法である。一態様では、AICプレmRNAは、選択的イントロン、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分、及び選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンの第2の部分を含む。一態様では、この方法は、細胞を、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAの標的化領域に結合する治療剤と接触させることを含み、これにより、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングが調節され、それにより、標的タンパク質または標的RNAをコードするプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、細胞における標的タンパク質または標的RNAの発現を調節する。
【0050】
本明細書で提供されるのは、対象の細胞における標的タンパク質または標的RNAの発現を調節することによって、疾患または状態の治療を必要とする対象の疾患または状態を治療する方法である。一態様では、この方法は、対象の細胞を、標的タンパク質または標的RNAをコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)からの選択的イントロンのスプライシングを調節する治療剤と接触させることを含み、AICプレmRNAは、選択的イントロン、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分、選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンの第2の部分を含み、治療剤は、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAの標的化領域に結合し、これにより、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングが調節され、それにより、標的タンパク質または標的RNAをコードするプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、対象の細胞における標的タンパク質または標的RNAの発現を調節する。
【0051】
いくつかの実施形態では、細胞における標的タンパク質の発現を調節することは、細胞における標的タンパク質の発現を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、細胞における標的タンパク質の発現は、調節されていない標的タンパク質の発現と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500、または1000%増加する。いくつかの実施形態では、細胞における標的タンパク質の発現は、調節されていない標的タンパク質の発現と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加する。
【0052】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを調節することは、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを増加させることを含む。いくつかの実施形態では、細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルは、調節されていない、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルと比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500、または1000%増加する。いくつかの実施形態では、細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルは、調節されていない、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加する。
【0053】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングが阻害される。いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを調節することは、選択的イントロン、エクソンの第1の部分及びエクソンの第2の部分を含むプロセシングされたmRNAのレベルを調節することを含む。いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを増加させることは、選択的イントロン、エクソンの第1の部分及びエクソンの第2の部分を含むプロセシングされたmRNAのレベルを増加させることを含む。いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを低下させることは、選択的イントロン、エクソンの第1の部分及びエクソンの第2の部分を含むプロセシングされたmRNAのレベルを低下させることを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングが促進される。いくつかの実施形態では、細胞における標的タンパク質の発現を調節することは、細胞における標的タンパク質の発現を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、細胞における標的タンパク質の発現は、調節されていない標的タンパク質の発現と比較して、少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%減少する。いくつかの実施形態では、細胞における標的タンパク質の発現は、調節されていない標的タンパク質の発現と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍減少する。
【0055】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを調節することは、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを低下させることを含む。いくつかの実施形態では、細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルは、調節されていない標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルと比較して、少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%低下する。いくつかの実施形態では、細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルは、調節されていない、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍低下する。
【0056】
いくつかの実施形態では、治療剤は、小分子である。いくつかの実施形態では、治療剤は、AICプレmRNAの標的化領域に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)である。いくつかの実施形態では、治療剤は、標的タンパク質をコードするAICプレmRNAの標的化領域に、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である。
【0057】
いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第1の部分の上流のイントロン内にある。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第2の部分の下流のイントロン内にある。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、選択的イントロン内にある。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第1の部分内にある。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第2の部分内にある。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第1の部分の上流のイントロンとエクソンの第1の部分とのジャンクションと重複する。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第1の部分と選択的イントロンとのジャンクションと重複する。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、選択的イントロンとエクソンの第2の部分とのジャンクションと重複する。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第2の部分とエクソンの第2の部分の下流のイントロンとのジャンクションと重複する。
【0058】
いくつかの実施形態では、この方法は、標的タンパク質をコードするAICプレmRNAを有する対象の細胞による標的タンパク質の発現を増加させる方法であって、対象は、標的タンパク質の量または活性の欠乏によって引き起こされる疾患または障害を有する、方法である。いくつかの実施形態では、標的タンパク質の量の欠乏は、標的タンパク質のハプロ不全によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、標的タンパク質をコードする遺伝子のハプロ不全に関連している。いくつかの実施形態では、対象は、機能的標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及び標的タンパク質が産生されない第2の対立遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、対象は、機能的標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及び標的タンパク質が低減されたレベルで産生される第2の対立遺伝子を有する。別の実施形態では、対象は、機能的標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及び非機能的標的タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有する。別の実施形態では、対象は、機能的標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及び部分的に機能的な標的タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有する。これらの実施形態のいずれにおいても、ASOは、第1の対立遺伝子(機能的標的タンパク質をコードする)から転写されたAICプレmRNAの標的化領域に結合し、それにより、AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを阻害し、機能的標的タンパク質をコードする成熟mRNAのレベルの増加、及び対象の細胞における標的タンパク質の発現の増加を引き起こす。
【0059】
いくつかの実施形態では、疾患または状態の原因となるタンパク質をコードするAICプレmRNA転写物は、本明細書に記載のASOによって標的化される。いくつかの実施形態では、疾患の原因ではないタンパク質をコードするAICプレmRNA転写物は、ASOによって標的化される。例えば、特定の経路における第1のタンパク質の変異または欠損の結果である疾患を、第2のタンパク質をコードするAICプレmRNAを標的化することによって改善することができ、それにより第2のタンパク質の産生を増加させる。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質の機能は、第1のタンパク質の変異または欠損(これは、疾患または状態の原因である)を補うことができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、AICプレmRNA転写物は、疾患または状態を緩和するのに役立つタンパク質をコードする。例えば、AICプレmRNA転写物は、疾患に関連するシグナル伝達経路を活性化または非活性化する場合があるシグナル伝達タンパク質をコードし得る。この経路は免疫応答に関連している場合があり、免疫応答の上方制御を引き起こして、例えば、異常な細胞増殖または外来病原体に対抗する場合がある。この経路は免疫応答に関連している場合があり、免疫応答の下方制御を引き起こして、例えば、炎症または異常な免疫応答(すなわち、自己免疫またはアレルギー反応)を低下させる場合がある。
【0061】
いくつかの実施形態では、対象は:
a.第1の変異対立遺伝子であって、
i)標的タンパク質は、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、低いレベルで産生されるか、
ii)標的タンパク質は、同等の野生型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で産生されるか、または
iii)標的タンパク質もしくは機能的RNAは産生されないもの;及び
b.第2の変異対立遺伝子であって、
i)標的タンパク質は、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、低いレベルで産生され、
ii)標的タンパク質は、同等の野生型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で産生されるもの、を有し、
AICプレmRNAは、第1の対立遺伝子及び第2の対立遺伝子から転写される。これらの実施形態では、ASOは、第1の対立遺伝子及び第2の対立遺伝子から転写されたAICプレmRNAの標的化領域に結合し、それにより、AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを阻害し、標的タンパク質をコードするmRNAのレベルの増加、及び対象の細胞における標的タンパク質または機能的RNAの発現の増加を引き起こす。これらの実施形態では、AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを阻害することから生じる発現レベルの増加を有する標的タンパク質または機能的RNAは、同等の野生型タンパク質と比較して機能が低下した(部分的に機能的である)形態であるか、または同等の野生型タンパク質と比較して機能が完全な(完全に機能的である)形態のいずれかである。
【0062】
本明細書に開示されるのは、対象における異常なタンパク質または異常なRNAに関連する、疾患または状態の治療を必要とする対象における疾患または状態を治療するための、細胞による標的タンパク質または標的RNAの発現を調節する方法において使用するための治療剤を含む組成物であって、異常なタンパク質または異常なRNAは、対象において量または活性が異常であり、治療剤は、標的タンパク質または標的RNAをコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)のスプライシングを調節し、
標的タンパク質は:
(a)異常なタンパク質;
(b)細胞シグナル伝達機構を機能的に活性化もしくは非活性化して、疾患もしくは状態に関連する細胞活性を変化させるタンパク質;
(c)対象における異常なタンパク質を機能的に増強もしくは置換するタンパク質;または
(d)対象における異常なタンパク質を機能的に減少させるかもしくは阻害するタンパク質であり;
標的RNAは:
(a)異常なRNA;
(b)細胞シグナル伝達機構を機能的に活性化もしくは非活性化して、疾患もしくは状態に関連する細胞活性を変化させるRNA;
(c)対象における異常なRNAを機能的に増強もしくは置換するRNA;または
(d)対象における異常なRNAを機能的に減少させるかもしくは阻害するRNAであり;
AICプレmRNAは、選択的イントロン、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分、選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンの第2の部分を含み、これにより、標的タンパク質または標的RNAをコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングが調節され、それにより、対象における標的タンパク質または標的RNAの産生または活性を調節する、組成物である。
【0063】
いくつかの実施形態では、産生される標的タンパク質は、完全に機能的なタンパク質である。いくつかの実施形態では、産生される標的RNAは、機能的RNAである。いくつかの実施形態では、産生される標的RNAは、完全に機能的なRNAである。いくつかの実施形態では、標的タンパク質はPD-L1(CD274)である。いくつかの実施形態では、標的RNAは、CD274遺伝子から転写され、かつPD-L1タンパク質をコードする機能的RNAである。いくつかの実施形態では、標的RNAは、CD274遺伝子から転写され、かつPD-L1タンパク質をコードする完全に機能的なRNAである。
【0064】
PD-L1タンパク質
T細胞の活性化、耐性、及び免疫病理学の間の均衡は、自己免疫疾患、例として全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、関節リウマチ、及びバセドウ病、多発性硬化症(MS)、ならびに移植片拒絶反応及び移植片対宿主病(GVHD)、において重要な役割を果たす。T細胞応答の主要な制御因子は、プログラム死1(PD-1;CD279としても知られている)ならびにそのリガンドであるPD-L1(CD274)及びPD-L2である。PD-1とそのリガンドとの間の相互作用は、阻害シグナルを送達することによってT細胞の活性化を制御し、エフェクターT細胞応答を制限し、免疫介在性損傷から組織を保護することによって免疫応答を制御する。
【0065】
自己免疫のマウスモデルでT細胞活性化の負の制御因子として最初に同定されたPD-1タンパク質は、1つの免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリードメイン、免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)、及び免疫受容体チロシンベーススイッチモチーフ(ITSM)を含有する288アミノ酸(aa)I型膜貫通タンパク質である。PD-1リガンドであるPD-L1は、7つのエクソンを含むヒト9番染色体上のCD274遺伝子によってコードされる290アミノ酸のI型膜貫通タンパク質である。PD-L1タンパク質は、IgV様ドメイン、IgC様ドメイン、及び機能不明の約30アミノ酸の短い尾部を有する。PD-L1とPD-1受容体との相互作用は、IgV様ドメインによって媒介される。CD274遺伝子のヒトゲノム配列はNCBI遺伝子ID29126に記述されている。CD274カノニカルmRNA配列は、NCBI参照配列:NM_014143.3に記述されている。
【0066】
PD-L1は、B細胞、T細胞、形質細胞様樹状細胞(pDC)、間葉系幹細胞、血管内皮細胞など、造血細胞と非造血細胞の両方で構成的に発現している。PD-L1の発現は、I型とII型の両方のインターフェロン(IFN)によって上方制御され、MyD88、TRAF6、及びMEKがない場合は減少する。PD-L1がPD-1受容体に結合すると、PD-1細胞質チロシンのリン酸化、SHP-2の動員、PI3K及びAkt活性の阻害が起こり、最終的にはT細胞受容体(TCR)シグナル伝達が阻害され、これはCD28共刺激によって克服することができる。CD28共刺激がない場合、PD-1ライゲーションは、IFN-γなどのサイトカイン及びBcl-xLなどの細胞生存タンパク質の誘導を減少させる(参照により本明細書に組み込まれる、Keir et al., 2008、及びTrabattoni, et al., 2009, J. Immunol. 183: 4984-4993)。PD-1に加えて、B7-1が、PD-L1の結合パートナーとして同定されている。B7-1とPD-L1との間の相互作用は、IgV様ドメインを介して発生し、T細胞で抑制性シグナルを誘導し、それによってT細胞応答を制限する。
【0067】
PD1及びPD-L1は、自己免疫の開始及び進行を防ぎ、末梢のT細胞耐性において役割を果たす(Keir et al., 2008、及びTrabattoni, et al., 2009)。例えば、自己免疫におけるPD-1:PD-L1相互作用の役割は、PD-1を欠損したマウスにおいて実証されている。PD-1:PD-L1相互作用は、胸腺における正と負の両方のT細胞選択において役割を果たし、中枢性寛容誘導における役割と一致している。PD-1:PD-L1による負のT細胞制御は、自己反応性T細胞の応答を阻害し、制御性T細胞の応答を媒介することにより、末梢性寛容にも役割を果たす。一例として、PD-1またはPD-L1の喪失は、自己免疫T細胞介在性糖尿病のマウスモデルにおいて急速なまたは悪化した糖尿病をもたらすことが報告された。マウスモデルにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の誘導中の抗PD-1または抗PD-L1 mAbの投与によって、疾患の発症及び重症度の加速がもたらされた(Keir et al., 2008により要約されている)。NODマウス(Li et al, 2015, Diabetes 64:529-540;Wang et al, 2008, Diabetes 57:1861-69)、EAE(Hirata et al, 2005, J. Immunology 174:1888-1897)、接触過敏症(Ritprajak et al, 2010, J. Immunology 184:4918-4925)、及びループス腎炎(Ding et al., 2006, Clinical Immunology 118:258-67)の研究は、PD-L1の異所性発現または過剰発現により病原性免疫応答を制御及び抑制することができることを示している(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。これらの異所性の組織ベースの過剰発現研究に加えて、多くのさらなる報告によって可溶性PD-L1-FcまたはPD-L1ーIg融合の効果が評価されており、外因性/異所性PD-L1投与の免疫制御結果の追加のエビデンスが提供されている。
【0068】
自己免疫における役割に加えて、PD-L1とPD-1との相互作用は、臓器移植及び移植片対宿主病(GVHD)を制御する。PD-1とPD-L1の両方が、移植レシピエントのアロ反応性T細胞で上方制御され、アロ反応性免疫応答を制御する場合がある。PD-1はGVHDの発症後に上方制御され、PD-L1はGVHD標的臓器のほとんどの細胞において発現する。重要なことに、PD-L1遮断抗体の投与によって、心臓、角膜、及び皮膚の移植モデルにおける移植拒絶反応が加速した。移植片耐性におけるPD-L1の中心的な役割は、耐性を誘導するためにCTLA-4-Ig治療を受け、CD274-/-マウスを移植ドナーまたはレシピエントとして使用する移植モデルにおいて実証されている。局所病理から保護された移植片におけるPD-L1発現、及びレシピエント免疫系におけるPD-L1発現は、移植寛容の誘導及び維持に必要であった。PD-L1が移植片拒絶反応を軽減し得る潜在的機構は、T細胞アポトーシスの誘導によるものである。特に、移植モデルにおけるPD-1及びPD-L1遮断抗体の使用は、アロ反応性T細胞アポトーシスの誘導を介した寛容の促進におけるPD-L1のPD-1非依存的役割を示唆した(Keir, et al., 2008)。いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物は、PD-L1のレベルを増加させ、それにより、例えば、病原性T細胞アポトーシス、アネルギー、及び/または消耗を含むT細胞機能に対する効果をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞機能に対する本発明の方法及び組成物の効果(複数可)は、当技術分野において説明されている任意の適切な方法、例えば、Keir, et al., 2008によって評価される。
【0069】
本発明の方法及び組成物を使用して、対象におけるPD-L1の発現を増加させることができる。自己免疫疾患の標的組織におけるPD-L1の発現の増加によって、自己免疫疾患に関与する自己免疫応答の抑制及び/または制御をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、自己免疫応答、例えば、自己反応性T細胞応答は、活性化CD4+及びCD8+ T細胞、例えば、キラーCD8+ T細胞上のPD-1とPD-L1との相互作用によって抑制及び/または制御される。PD-L1の過剰発現は、T細胞受容体抗原特異性を維持しながら、インビボで、病原性CD4+ T1またはT17エフェクター表現型からT細胞制御性表現型、例えばFOXP3+制御性T細胞(TREG)表現型へのT細胞スイッチを誘導するものとして説明されている(参照により本明細書に組み込まれる、Amarnath et al., 2011, Science Translational Medicine 3(111):1-13)。いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物を使用して、PD-L1の発現を増加させて、病原性CD4+ T細胞、例えば、T1またはT17細胞から制御性T細胞、例えば、FOXP3+ T細胞へのT細胞スイッチを誘導する。いくつかの実施形態では、Tr1制御性表現型へのスイッチが誘導される。Tr1細胞はIL-10を発現するが、古典的には、IL-27及びその他の寛容化刺激(潜在的にPD-L1)への曝露時の(Tbet転写因子を発現している)Th1細胞(Tbet転写因子を発現している)の露出に由来する。いくつかの実施形態では、T細胞制御性表現型は、長期間安定して維持される。いくつかの実施形態では、T細胞制御性の長期安定性は、少なくとも約30日間、少なくとも約35日間、少なくとも約40日間、少なくとも約45日間、少なくとも約50日間、少なくとも約55日間、少なくとも約60日間、少なくとも約65日間、少なくとも約70日間、少なくとも約75日間、少なくとも約80日間、少なくとも約85日間、少なくとも約90日間、少なくとも約95日間、少なくとも約100日間、少なくとも約110日間、少なくとも約120日間、約30日~約90日間、約40日~約90日間、約50日~約90日間、約60日~約90日間、約70日~約90日間、約30日~約100日間、約40日~約100日間、約50日~約100日間、約60日~約100日間、約70日~約100日間、約80日~約100日間、約30日~約120日間、約40日~約120日間、約50日~約120日間、約60日~約120日間、約70日~約120日間、約80日~約120日間、約30日~約120日間、約40日~約120日間、約50日~約120日間、約60日~約120日間、約70日~約120日間、約80日~約120日間、約30日~約150日間、約40日~約150日間、約50日~約150日間、約60日~約150日間、約70日~約150日間、約80日~約150日間、約30日~約150日間、約40日~約150日間、約50日~約150日間、約60日~約150日間、約70日~約150日間、約80日~約150日間、約30日~約200日間、約40日~約200日間、約50日~約200日間、約60日~約200日間、約70日~約200日間、約80日~約200日間、約30日~約200日間、約40日~約200日間、約50日~約200日間、約60日~約200日間、約70日~約200日間、または約80日~約200日間、のTREG表現型の存在によって示される。
【0070】
いくつかの実施形態では、制御性T細胞表現型の存在は、TREG関連マーカーまたは分泌サイトカインの発現に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、制御性T細胞表現型の存在は、CD4、CD25、CD39、CD73、CD45RO、CD121a(IL-1R1)、CD121b(IL-1R2)、CD127low、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD152(CTLA-4)、CD357(GITR/AITR)、FOXP3、FR4(m)、GARP、Helios、LAP/TGFβ;及びTIGIT、から選択される1つまたは複数のTREG関連マーカーの発現;及び/またはIL-10、IL-35、及びTGFβから選択される1つまたは複数のTREG関連分泌サイトカインの発現、に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、TREG表現型の存在は、FOXP3の発現に基づいて決定される。T細胞マーカーの発現またはサイトカイン分泌は、当業者に既知であり、かつ例えば、Amarnath, et al., 2011による、文献に記載された任意の方法、例えば、ELISA、ウェスタンブロットアッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、または任意の適切なマルチプレックスアッセイなど、により評価することができる。本発明の方法で要求されるように、サイトカイン、ケモカイン、サイトカイン受容体、及び活性化マーカーの産生を測定するための市販のアッセイが利用可能である。例えば、ヒトサイトカイン及びケモカインを検出するためのマルチプレックスアッセイは、BD(商標)Cytometric Bead Array Flex Set system(BD Biosciences, San Jose, CA)を使用して作出することができる。
【0071】
選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、CD274遺伝子から転写され、かつPD-L1タンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたCD274 mRNAを産生するための同定されたCD274 AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟CD274 mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるPD-L1タンパク質の量を増加させ、免疫障害の症状、またはPD-L1タンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはCD274遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0072】
表1は、CD274 AICプレmRNAの領域を標的化することによりPD-L1の産生を増加させるために有用な、CD274 ASOの配列の非限定的なリストを提供する。いくつかの実施形態では、これらの目的に有用な他のASOは、例えば、本明細書に記載の方法を使用して同定される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0073】
いくつかの実施形態では、CD274 AICプレmRNAの標的化領域は、エクソン4にある。本明細書で使用されるCD274イントロン付番は、NM_014143.3のmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの標的化領域へのASOのハイブリダイゼーションによって、エクソン4の選択的イントロンにおける選択的スプライス部位(5’スプライス部位または3’スプライス部位)でのスプライシングの阻害がもたらされ、その後PD-L1タンパク質の産生が増加する。イントロンの付番は、異なるCD274アイソフォーム配列を参照して変更される場合があると理解されている。当業者は、本明細書で提供されるイントロン配列に基づいて、またはNM_014143.3のmRNA配列を参照して提供されるイントロン番号を使用して、任意のCD274アイソフォーム中の対応するイントロン番号を決定することができる。当業者はまた、本明細書で提供されるイントロン配列に基づいて、またはNM_014143.3のmRNA配列を参照して提供されるイントロン番号を使用して、本発明の方法を使用して標的化するための任意のCD274アイソフォーム中の隣接エクソンの配列を決定することができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物を使用して、任意の既知のCD274アイソフォームの発現を増加させる。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、ARHGAP23遺伝子から転写され、かつRho GTPアーゼ活性化タンパク質23タンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたARHGAP23 mRNAを産生するための同定されたARHGAP23 AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟ARHGAP23 mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるRho GTPアーゼ活性化タンパク質23タンパク質の量を増加させ、ホルモン障害の症状、またはRho GTPアーゼ活性化タンパク質23タンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはARHGAP23遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、BRD1遺伝子から転写され、かつブロモドメイン含有1タンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたBRD1 mRNAを産生するための同定されたBRD1 AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟 BRD1 mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるブロモドメイン含有1タンパク質の量を増加させ、免疫障害の症状、またはブロモドメイン含有1タンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはBRD1 遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、DCHS1遺伝子から転写され、かつプロトカドヘリン-16タンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたDCHS1 mRNAを産生するための同定されたDCHS1 AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟DCHS1 mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるプロトカドヘリン-16タンパク質の量を増加させ、心機能障害の症状、またはプロトカドヘリン-16タンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはDCHS1遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、EPB41L2遺伝子から転写され、かつバンド4.1様タンパク質2タンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたEPB41L2 mRNAを産生するための同定されたEPB41L2 AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟EPB41L2 mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるバンド4.1様タンパク質2タンパク質の量を増加させ、肝臓関連障害の症状、またはバンド4.1様タンパク質2タンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはEPB41L2遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、GPX8遺伝子から転写され、かつグルタチオンペルオキシダーゼ8タンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたGPX8 mRNAを産生するための同定されたGPX8 AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟GPX8 mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるグルタチオンペルオキシダーゼ8タンパク質の量を増加させ、肝臓関連障害の症状、またはグルタチオンペルオキシダーゼ8タンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはGPX8遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、HIVEP3遺伝子から転写され、かつヒト免疫不全ウイルスI型エンハンサー結合タンパク質3タンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたHIVEP3 mRNAを産生するための同定されたHIVEP3 AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟HIVEP3 mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるヒト免疫不全ウイルスI型エンハンサー結合タンパク質3タンパク質の量を増加させ、免疫障害の症状、またはヒト免疫不全ウイルスI型エンハンサー結合タンパク質3タンパク質タンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはHIVEP3遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、INVS遺伝子から転写され、かつインバーシンタンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたINVS mRNAを産生するための同定されたINVS AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟INVS mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるインバーシンタンパク質の量を増加させ、免疫障害の症状、またはインバーシンタンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはINVS遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、KIAA0319遺伝子から転写され、かつ失読症関連タンパク質KIAA0319タンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたKIAA0319 mRNAを産生するための同定されたKIAA0319 AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟KIAA0319 mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞における失読症関連タンパク質KIAA0319タンパク質の量を増加させ、発達障害の症状、または失読症関連タンパク質KIAA0319タンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはKIAA0319遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、NAIP遺伝子から転写され、かつNLRファミリーアポトーシス阻害タンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたNAIP mRNAを産生するための同定されたNAIP AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟NAIP mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるNLRファミリーアポトーシス阻害タンパク質の量を増加させ、筋肉関連障害の症状、またはNLRファミリーアポトーシス阻害タンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはNAIP遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、PTCH2遺伝子から転写され、かつタンパク質Patchedホモログ2タンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたPTCH2 mRNAを産生するための同定されたPTCH2 AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟PTCH2 mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるタンパク質Patchedホモログ2タンパク質の量を増加させ、免疫障害の症状、またはタンパク質Patchedホモログ2タンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはPTCH2遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、PTPRZ1遺伝子から転写され、かつタンパク質チロシンホスファターゼ受容体タイプZ1タンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたPTPRZ1 mRNAを産生するための同定されたPTPRZ1 AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟PTPRZ1 mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるタンパク質チロシンホスファターゼ受容体タイプZ1タンパク質の量を増加させ、精神障害の症状、またはタンパク質チロシンホスファターゼ受容体タイプZ1の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはPTPRZ1遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、SON遺伝子から転写され、かつSONタンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたSON mRNAを産生するための同定されたSON AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟SON mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるSONタンパク質の量を増加させ、免疫障害の症状、またはSONタンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはSON遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞における、ZCCHC2遺伝子から転写され、かつジンクフィンガーCCHCドメイン含有タンパク質2タンパク質をコードする選択的イントロン含有プレmRNA(AICプレmRNA)の存在を利用する。成熟した完全にスプライスされたZCCHC2 mRNAを産生するための同定されたZCCHC2 AICプレmRNA種のスプライシングは、選択的イントロンのスプライシングを阻害する治療剤またはアンチセンスオリゴマー(ASO)を使用して誘導される。得られた成熟ZCCHC2 mRNAは細胞質に輸送され、翻訳され、それによって患者の細胞におけるジンクフィンガーCCHCドメイン含有タンパク質2タンパク質の量を増加させ、免疫障害の症状、またはジンクフィンガーCCHCドメイン含有タンパク質2タンパク質の量もしくは活性の欠乏に関連するかまたはZCCHC2 遺伝子の機能喪失型変異によって誘導された任意の疾患もしくは障害を緩和することができる。
【0087】
表3は、AICプレmRNAの領域を標的化することにより、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、PD-L1、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2によってコードされるタンパク質の産生を増加させるのに有用な、ASOの配列の非限定的なリストを提供する。いくつかの実施形態では、これらの目的に有用な他のASOは、例えば、本明細書に記載の方法を使用して同定される。
【0088】
タンパク質発現
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、タンパク質の産生の増加を必要とする対象におけるタンパク質の産生を増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、機能的タンパク質の産生の増加を必要とする対象における機能的タンパク質の産生を増加させる。本明細書で使用される場合、「機能的」という用語は、治療される状態の任意の1つまたは複数の症状、例えば、BRD1遺伝子の遺伝的欠陥によって引き起こされる精神障害を排除するために必要なタンパク質の活性または機能の量を指す。いくつかの実施形態では、この方法を使用して、完全に機能的なタンパク質またはRNAの産生を増加させる。いくつかの実施形態では、この方法を使用して、部分的に機能的なタンパク質またはRNAの産生を増加させる。本明細書で使用される場合、「部分的に機能的」という用語は、疾患または状態の任意の1つまたは複数の症状を排除または予防するために必要な活性または機能の量よりも少ないタンパク質の活性または機能の任意の量を指す。いくつかの実施形態では、部分的に機能的なタンパク質またはRNAは、完全に機能的なタンパク質またはRNAと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、85%、少なくとも90%、または少なくとも95%少ない活性を有する。いくつかの実施形態では、標的タンパク質及びRICプレmRNAは、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、PD-L1、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、PD-L1タンパク質の産生の増加を必要とする対象におけるPD-L1タンパク質の産生を増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、機能的PD-L1タンパク質の産生の増加を必要とする対象における機能的PD-L1タンパク質の産生を増加させる。本明細書で使用される場合、「機能的」という用語は、治療される状態の任意の1つまたは複数の症状、例えば、PD-L1の遺伝的欠陥によって引き起こされる免疫障害を排除するために必要なPD-L1タンパク質の活性または機能の量を指す。いくつかの実施形態では、この方法を使用して、完全に機能的なPD-L1タンパク質またはRNAの産生を増加させる。いくつかの実施形態では、この方法を使用して、部分的に機能的なPD-L1タンパク質またはRNAの産生を増加させる。いくつかの実施形態では、この方法は、標的タンパク質をコードするAICプレmRNAを有する対象の細胞による標的タンパク質の発現を増加させる方法であって、対象は、標的タンパク質の量または活性の欠乏によって引き起こされる免疫疾患または障害を有する、方法である。いくつかの実施形態では、標的タンパク質の量の欠乏は、標的タンパク質のハプロ不全によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、標的タンパク質をコードする遺伝子のハプロ不全に関連している。そのような実施形態では、対象は、機能的標的タンパク質(functional the target protein)をコードする第1の対立遺伝子、及び標的タンパク質が産生されない第2の対立遺伝子を有する。そのような実施形態では、対象は、機能的標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及び標的タンパク質が低減されたレベルで産生される第2の対立遺伝子を有する。別のそのような実施形態では、対象は、機能的標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及び非機能的標的タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有する。別のそのような実施形態では、対象は、機能的標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及び部分的に機能的な標的タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有する。これらの実施形態のいずれにおいても、ASOは、両方の対立遺伝子、すなわち、(機能的標的タンパク質をコードする)第1の対立遺伝子及び(標的タンパク質が産生されないか、標的タンパク質が低下したレベルで産生されるか、または標的タンパク質が非機能的である)第2の対立遺伝子から転写されたAICプレmRNAの標的化領域に結合し、それにより、AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを阻害し、機能的標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子からの成熟mRNAのレベルの増加、及び対象の細胞における標的タンパク質の発現の増加を引き起こす。いくつかの実施形態では、標的タンパク質及びRICプレmRNAは、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、CD274、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。
【0090】
いくつかの実施形態では、この方法は、PD-L1タンパク質をコードするAICプレmRNAを有する対象の細胞によるPD-L1タンパク質の発現を増加させる方法であって、対象は、PD-L1タンパク質の量または活性の欠乏によって引き起こされる免疫疾患または障害を有する、方法である。いくつかの実施形態では、PD-L1タンパク質の量の欠乏は、PD-L1タンパク質のハプロ不全によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、PD-L1タンパク質をコードする遺伝子のハプロ不全に関連している。そのような実施形態では、対象は、機能的PD-L1タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及びPD-L1タンパク質が産生されない第2の対立遺伝子を有する。そのような実施形態では、対象は、機能的PD-L1タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及びPD-L1タンパク質が低減されたレベルで産生される第2の対立遺伝子を有する。別のそのような実施形態では、対象は、機能的PD-L1タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及び非機能的PD-L1タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有する。別のそのような実施形態では、対象は、機能的PD-L1タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及び部分的に機能的なPD-L1タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有する。これらの実施形態のいずれにおいても、ASOは、(機能的PD-L1タンパク質をコードする)第1の対立遺伝子から転写されたAICプレmRNAの標的化領域に結合し、それにより、AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを阻害し、機能的PD-L1タンパク質をコードする成熟mRNAのレベルの増加、及び対象の細胞におけるPD-L1タンパク質の発現の増加を引き起こす。
【0091】
いくつかの実施形態では、対象は、機能的標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及び部分的に機能的な標的タンパク質(partially functional the target protein)をコードする第2の対立遺伝子を有し、ASOは、(機能的標的タンパク質をコードする)第1の対立遺伝子から転写されたAICプレmRNAの標的化領域、または(部分的に機能的な標的タンパク質をコードする)第2の対立遺伝子から転写されたAICプレmRNAの標的化領域に結合し、それにより、AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを阻害し、標的タンパク質をコードする成熟mRNAのレベルの増加、及び対象の細胞における機能的または部分的に機能的な標的タンパク質の発現の増加を引き起こす。いくつかの実施形態では、標的タンパク質及びRICプレmRNAは、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、PD-L1、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。
【0092】
いくつかの実施形態では、対象は、機能的PD-L1タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及び部分的に機能的なPD-L1タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有し、ASOは、(機能的PD-L1タンパク質をコードする)第1の対立遺伝子から転写されたAICプレmRNAの標的化領域、または(部分的に機能的なPD-L1タンパク質をコードする)第2の対立遺伝子から転写されたAICプレmRNAの標的化領域に結合し、それにより、AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを阻害し、PD-L1タンパク質をコードする成熟mRNAのレベルの増加、及び対象の細胞における機能的または部分的に機能的なPD-L1タンパク質の発現の増加を引き起こす。
【0093】
関連する実施形態では、この方法は、ASOを使用してタンパク質または機能的RNAの発現を増加させる方法である。いくつかの実施形態では、標的タンパク質及びRICプレmRNAは、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、CD274、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、ASOを使用してPD-L1タンパク質をコードするAICプレmRNAを有する対象の細胞におけるPD-L1タンパク質の発現を増加させ、対象は、PD-L1タンパク質の量または機能に欠乏がある。
【0094】
いくつかの実施形態では、疾患または状態の原因となるタンパク質をコードするAICプレmRNA転写物は、本明細書に記載のASOによって標的化される。いくつかの実施形態では、疾患の原因ではないタンパク質をコードするAICプレmRNA転写物は、ASOによって標的化される。例えば、特定の経路における第1のタンパク質の変異または欠損の結果である疾患を、第2のタンパク質をコードするAICプレmRNAを標的化することによって改善することができ、それにより第2のタンパク質の産生を増加させる。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質の機能は、第1のタンパク質の変異または欠損(これは、疾患または状態の原因である)を補うことができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、対象は:
a.第1の変異対立遺伝子であって、
i)タンパク質は、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、低いレベルで産生される、
ii)タンパク質は、同等の野生型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で産生される、または
iii)タンパク質もしくは機能的RNAは産生されないもの;及び
b.第2の変異対立遺伝子であって、
i)タンパク質は、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、低いレベルで産生される、
ii)タンパク質は、同等の野生型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で産生されるもの、を有し、
AICプレmRNAは、第1対立遺伝子及び第2対立遺伝子から転写され、かつ標的タンパク質または機能的RNAは、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、CD274、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。これらの実施形態では、ASOは、第1の対立遺伝子及び第2の対立遺伝子から転写されたAICプレmRNAの標的化領域に結合し、それにより、AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを阻害し、タンパク質をコードするmRNAのレベルの増加、及び対象の細胞における標的タンパク質または標的機能的RNAの発現の増加を引き起こす。これらの実施形態では、AICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを阻害することから生じる発現レベルの増加を有するタンパク質または機能的RNAは、同等の野生型タンパク質と比較して機能が低下した(部分的に機能的である)形態であるか、または同等の野生型PD-L1タンパク質と比較して機能が完全な(完全に機能的である)形態のいずれかである。
【0096】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルは、対照細胞、例えば、ASOで処理されていない細胞、または標的AICプレmRNAの標的化領域に結合しない、ASOで処理された細胞、における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加しており;ここで、標的タンパク質は、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、CD274、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。
【0097】
いくつかの実施形態では、本発明の方法を使用して治療される対象は、1つの対立遺伝子から部分的に機能的な標的タンパク質を発現し、部分的に機能的な標的タンパク質は、フレームシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、スプライシング変異、または部分的な遺伝子欠失によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、本発明の方法を使用して治療される対象は、1つの対立遺伝子から非機能的標的タンパク質を発現し、非機能的標的タンパク質は、1つの対立遺伝子における、フレームシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、スプライシング変異、または部分的な遺伝子欠失によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、本発明の方法を使用して治療される対象は、1つの対立遺伝子において、標的全遺伝子欠失を有する。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、CD274、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。
【0098】
タンパク質発現の増加
上記のように、いくつかの実施形態では、本発明の方法を使用して、標的タンパク質の発現を増加させる。標的タンパク質は、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、CD274、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされ得る。これらの実施形態では、標的タンパク質をコードする選択的イントロンプレmRNA(AICプレmRNA)は、細胞の核内に存在する。標的タンパク質をコードする、選択的イントロン、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分、及び選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンの第2の部分を含む標的AICプレmRNAを有する細胞は、AICプレmRNAの標的化領域に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触している。AICプレmRNAの標的化領域へのASOのハイブリダイゼーションによって、選択的イントロンのスプライシングの阻害がもたらされ、その後、標的タンパク質の産生が増加する。
【0099】
「プレmRNA」及び「プレmRNA転写物」という用語は交換可能に使用してもよく、少なくとも1つのイントロンを有する任意のプレmRNA種を指すことがある。いくつかの実施形態では、プレmRNAまたはプレmRNA転写物は、5’-7-メチルグアノシンキャップ及び/またはポリAテールを含む。いくつかの実施形態では、プレmRNAまたはプレmRNA転写物は、5’-7-メチルグアノシンキャップ及びポリAテールの両方を含む。いくつかの実施形態では、プレmRNA転写物は、5’-7-メチルグアノシンキャップ及び/またはポリAテールを含まない。プレmRNA転写物は、タンパク質に翻訳されていない(または核から細胞質に輸送されていない)場合、非生産的メッセンジャーRNA(mRNA)分子である。
【0100】
本明細書で使用される場合、「選択的イントロン含有プレmRNA」(「AICプレmRNA」)は、少なくとも1つの選択的イントロンを含有するプレmRNA転写物である。AICプレmRNAは、選択的イントロン、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分、及び選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンの第2の部分を含有し、標的タンパク質をコードする。「標的タンパク質をコードするAICプレmRNA」は、完全にスプライスされたときに標的タンパク質をコードすると理解されている。「選択的イントロン」は、プレmRNAがプロセシングされてmRNAを産生するときにスプライスアウトされ得るプレmRNA転写物のエクソン内の5’選択的スプライス部位と3’選択的スプライス部位との間の領域または配列である(プロセシングされたmRNAはエクソンの一部を欠いている)。
【0101】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、標的タンパク質をコードするAICプレmRNAの標的化領域に、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第1の部分の上流のイントロン内にある。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第2の部分の下流のイントロン内にある。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、選択的イントロン内にある。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第1の部分内にある。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第2の部分内にある。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、エクソンの第1の部分と選択的イントロンとのジャンクションと重複する。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAの標的化領域の少なくとも一部は、選択的イントロンとエクソンの第2の部分とのジャンクションと重複する。領域または配列の位置を特定するために使用される場合、「内」は、列挙された位置の残基を含むと理解される。例えば、+6~+100の領域には、+6及び+100の位置の残基が含まれる。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAは、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、CD274、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。
【0102】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードする成熟mRNAは、それによって産生される。いくつかの実施形態では、産生された標的タンパク質は、完全に機能的な標的タンパク質である。いくつかの実施形態では、産生された標的RNAは、機能的標的RNAである。いくつかの実施形態では、産生された標的RNAは、完全に機能的な標的RNAである。「成熟mRNA」、「完全にスプライスされたmRNA」、及び機能的RNA」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、標的タンパク質をコードする完全にプロセシングされたmRNA(例えば、核から細胞質に輸送され、標的タンパク質に翻訳されたmRNA)または完全にプロセシングされた機能的RNAを説明する。「生産的mRNA」という用語を使用して、標的タンパク質をコードする完全にプロセシングされたmRNAを説明することもできる。
【0103】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」という用語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などのその変形は、列挙された特徴(例えば、ASOの場合、定義された核酸塩基配列)を包含することを示すが、他の特徴を除外するように示してはいないと解釈されるべきである。したがって、本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は包含的であり、追加の、列挙されていない特徴(例えば、ASOの場合、追加の、列挙されていない核酸塩基の存在)を除外しない。
【0104】
本明細書で提供される方法及び組成物のいずれかのいくつかの実施形態では、「含む(comprising)」は、「から本質的になる」または「からなる(consisting of)」に置換することができる。「から本質的になる」という句は、指定された特徴(複数可)(例えば、核酸塩基配列)、ならびに特許請求される発明の性質または機能に実質的に影響を及ぼさない特徴を必要とするために本明細書で使用される。本明細書で使用される場合、「なる(consisting)」という用語は、列挙された特徴(例えば核酸塩基配列)単独の存在を示すために使用される(その結果、指定された核酸塩基配列からなるアンチセンスオリゴマーの場合には、追加の列挙されていない核酸塩基の存在は除外される)
【0105】
本明細書で使用される場合、「野生型配列」は、生物学的及び科学的情報のNCBIリポジトリ(National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, 8600 Rockville Pike, Bethesda, MD USA 20894によって運営される)に寄託された公開された参照ゲノム中の標的遺伝子に対するヌクレオチド配列を指す。本明細書で使用される場合、「野生型配列」は、NCBI遺伝子ID29126で利用可能なカノニカル配列を指す。また本明細書で使用される、「e」で示されたヌクレオチド位置は、ヌクレオチドがエクソン(例えば、5’スプライス部位に隣接しているエクソンまたは3’スプライス部位に隣接しているエクソン)の配列中に存在することを示す。
【0106】
この方法は、細胞を、標的タンパク質をコードするプレmRNAの領域に相補的である治療剤またはASOと接触させることを含み、これによって、標的の発現が増加する。本明細書で使用される場合、「接触させること」または細胞に投与することは、ASOと細胞が相互作用するように、ASOを細胞に近接させる任意の方法を指す。ASOと接触している細胞は、ASOを細胞に取り込むか、または輸送する。この方法は、状態もしくは疾患に関連する細胞または状態もしくは疾患に関係する細胞を、本明細書に記載のASOのいずれかと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ASOを、さらに修飾するかまたは別の分子に付着させて(例えば、共有結合させて)、ASOを細胞型に対して標的化する、ASOと状態もしくは疾患に関連する細胞または状態もしくは疾患に関係する細胞との間の接触を強化する、またはASOの取り込みを強化することができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、「タンパク質産生を増加させる」または「標的タンパク質の発現を増加させる」という用語は、細胞においてmRNAから翻訳されるタンパク質の量を増強することを意味する。「標的タンパク質」は、発現/産生の増加が望まれる任意のタンパク質であり得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAを発現する細胞を、標的AICプレmRNA転写物の標的化領域に相補的であるASOと接触させることによって、プレmRNAによってコードされた標的タンパク質(例えば標的タンパク質)の量の測定可能な増加がもたらされる。タンパク質の産生を測定または検出する方法は、当業者には明らかであり、任意の既知の方法、例えば、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、及びELISAを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、治療剤、すなわちASOは、細胞における標的タンパク質の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、細胞を、標的AICプレmRNA転写物の標的化領域に相補的であるASOと接触させることによって、産生される標的タンパク質の量が、ASOの非存在下/治療の不在下で細胞によって産生されるタンパク質の量と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500、または1000%増加する。いくつかの実施形態では、ASOが接触した細胞によって産生された標的タンパク質の発現レベルは、対照化合物によって産生された標的タンパク質の発現レベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加する。対照化合物は、例えば、AICプレmRNAの標的化領域に相補的ではないオリゴヌクレオチドであり得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、治療剤、すなわちASOは、細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAまたは標的タンパク質をコードする成熟mRNAのレベルを増加させる。いくつかの実施形態では、細胞を、標的AICプレmRNA転写物の標的化領域に相補的であるASOと接触させることによって、標的タンパク質をコードする成熟mRNAを含む、標的をコードするプロセシングされたmRNAのレベルが増加する。いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNA、または標的タンパク質をコードする成熟mRNAのレベルは、ASOの非存在下/処理の不在下での細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルと比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500、または1000%増加する。いくつかの実施形態では、標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNA、またはASOが接触した細胞において産生された標的タンパク質をコードする成熟mRNAのレベルは、未処理の細胞、例えば、未処理の細胞または対照化合物で処理された細胞におけるプロセシングされたmRNAまたは成熟RNAのレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加する。対照化合物は、例えば、標的AICプレmRNAの標的化領域に相補的ではないオリゴヌクレオチドであり得る。
【0111】
アンチセンスオリゴマー(ASO)
本開示の一態様は、AICプレmRNAの標的化領域に結合することによってスプライシングを調節する(例えば、阻害または増強する)治療剤を含む方法及び組成物である。いくつかの実施形態では、本開示は、AICプレmRNAの標的化領域に結合することによってスプライシングを調節する(例えば、阻害または増強する)アンチセンスオリゴマー(ASO)を含む方法及び組成物を含む。本明細書で使用される場合、「ASO」、「アンチセンスオリゴマー」、及び「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は交換可能に使用され、ワトソン・クリック塩基対またはゆらぎ塩基対(G-U)によって標的核酸(例えば、CD274 AICプレmRNA)配列にハイブリダイズする核酸塩基を含む、ポリヌクレオチドなどのオリゴマーを指す。ASOは、標的配列に相補的である正確な配列か、またはほぼ相補性(例えば、標的配列に結合し、スプライス部位でのスプライシングを増強するのに十分な相補性)を有し得る。ASOは、標的核酸(例えば、プレmRNA転写物の標的化領域)に結合(ハイブリダイズ)し、生理学的条件下でハイブリダイズしたままになるように設計されている。典型的には、ASOは、意図した(標的化された)核酸配列以外の部位にハイブリダイズする場合、標的核酸でない限られた数の配列に(標的核酸以外の少数の部位に)ハイブリダイズする。ASOの設計では、プレmRNA転写物の標的化領域の核酸配列、またはゲノムもしくは細胞プレmRNAもしくはトランスクリプトームにおける他の場所での十分に類似した核酸配列の出現を考慮に入れることができ、したがって、ASOが他の部位に結合し「オフターゲット」効果を引き起こす可能性は、限定されている。当技術分野において既知である任意のASO、例えば、「Reducing Nonsense-Mediated mRNA Decay」という表題の、WO2015/035091として公開されている、PCT出願番号PCT/US2014/054151にあるASOを使用して、本明細書に記載の方法を実践することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、ASOは、標的核酸またはAICプレmRNAの標的化領域に「特異的にハイブリダイズする」か、または「特異的」である。典型的には、そのようなハイブリダイゼーションは、37℃より実質的に高いTmで、好ましくは少なくとも50℃で、及び典型的に60℃~およそ90℃の間で発生する。そのようなハイブリダイゼーションは、好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に対応する。与えられたイオン強度及びpHで、Tmは、標的配列の50%が相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする温度である。
【0113】
オリゴヌクレオチドなどのオリゴマーは、ハイブリダイゼーションが2つの一本鎖ポリヌクレオチド間の逆平行構成において生じるときに、互いに「相補的」である。二本鎖ポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションが第1のポリヌクレオチドの鎖の1つと第2のポリヌクレオチドの鎖の1つとの間に生じる場合に、別のポリヌクレオチドに「相補的」であり得る。相補性(あるポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドと相補的である程度)は、一般に許容された塩基対合則に従って、互いに水素結合を形成すると予想される対向する鎖における塩基の割合(例えばパーセンテージ)の点から定量化可能である。ASOの配列は、ハイブリダイズするその標的核酸の配列に100%相補的である可能性がある;しかし、ASOの配列は、ハイブリダイズするその標的核酸の配列に100%相補的である必要はない。ある特定の実施形態では、ASOは、標的化される標的核酸配列内の標的領域に対する、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列相補性を含むことができる。例えば、オリゴマー化合物の20核酸塩基中18核酸塩基が標的領域に相補的であり、したがって特異的にハイブリダイズするASOは、90パーセントの相補性を示す。この例では、残りの非相補的核酸塩基は、ともにクラスタ化していても、残りの非相補的核酸塩基に相補的核酸塩基が散在していてもよく、互いに連続している必要も、相補的核酸塩基と連続している必要もない。ASOの、標的核酸の領域との相補性パーセントは、BLASTプログラム(基本局所配列検索ツール((basic local alignment search tools)、及び当技術分野において既知であるPowerBLASTプログラム(Altschul et al., J. Mol. Biol., 1990, 215, 403-410;Zhang and Madden, Genome Res., 1997, 7, 649-656)を使用して、定型的に決定され得る。
【0114】
ASOは、標的配列内の全ての核酸塩基にハイブリダイズする必要はなく、ASOがハイブリダイズする核酸塩基は、連続していても非連続であってもよい。ASOは、介在セグメントまたは隣接セグメントがハイブリダイゼーションイベントに関与しないように、プレmRNA転写物の1つまたは複数のセグメントにわたってハイブリダイズしてもよい(例えば、ループ構造またはヘアピン構造が形成され得る)。ある特定の実施形態では、ASOは、標的プレmRNA転写物中の非連続核酸塩基にハイブリダイズする。例えば、ASOは、ASOがハイブリダイズしない1つまたは複数の核酸塩基によって分離されている、プレmRNA転写物中の核酸塩基にハイブリダイズすることができる。
【0115】
本明細書に記載のASOは、AICプレmRNAの標的領域に存在する核酸塩基に相補的である核酸塩基を含む。ASOという用語は、オリゴヌクレオチド、及び標的mRNA上の相補的な核酸塩基にハイブリダイズすることができる核酸塩基を含むが、ペプチド核酸(PNA)などの糖部を含まない、他のオリゴマー分子を具体化する。ASOは、天然に存在するヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、修飾ヌクレオチド、または前述の2つまたは3つの任意の組合せを含み得る。「天然に存在するヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを含む。「修飾ヌクレオチド」という用語は、修飾または置換された糖基及び/または修飾された骨格を有するヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ASOのヌクレオチドの全てが、修飾ヌクレオチドである。本明細書に記載の方法及び組成物と適合性のあるASOの化学修飾またはASOの成分は、当業者に明らかであり、例えば、米国特許第8,258,109号B2、米国特許第5,656,612号、米国特許公開番号2012/0190728、及びDias and Stein, Mol. Cancer Ther. 2002, 1, 347-355に見出すことができ、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
ASOの核酸塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、及びウラシルなどの任意の天然に存在する未修飾の核酸塩基、または標的プレmRNA上に存在する核酸塩基との水素結合が可能であるような程度で未修飾の核酸塩基に類似している任意の合成または修飾核酸塩基であってもよい。修飾核酸塩基の例には、ヒポキサンチン、キサンチン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、及び5-ヒドロキシメトイルシトシンが含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書に記載のASOはまた、オリゴマーの成分を接続する骨格構造を含む。「骨格構造」及び「オリゴマー結合」という用語は交換可能に使用され得、ASOのモノマー間の接続を指すことができる。天然に存在するオリゴヌクレオチドでは、骨格は、オリゴマーの糖部分を接続する3’-5’ホスホジエステル結合を含む。本明細書に記載のASOの骨格構造またはオリゴマー結合には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホルアニリデート(phoshoranilidate)、ホスホルアミデートなどが含まれ得る(ただしこれらに限定されない)。例えば、LaPlanche et al., Nucleic Acids Res. 14:9081(1986);Stec et al., J. Am. Chem. Soc. 106:6077(1984), Stein et al., Nucleic Acids Res. 16:3209(1988), Zon et al., Anti Cancer Drug Design 6:539(1991);Zon et al., Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, pp. 87-108(F. Eckstein, Ed., Oxford University Press, Oxford England(1991));Stec et al.,米国特許第5,151,510号;Uhlmann and Peyman, Chemical Reviews 90:543(1990)を参照のこと。いくつかの実施形態では、ASOの骨格構造は、リンを含有せず、例えば、ペプチド核酸(PNA)、またはカルバメート、アミド、ならびに直鎖状及び環状炭化水素基を含む連結基におけるペプチド結合を含有する。いくつかの実施形態では、骨格修飾は、ホスホチオエート結合である。いくつかの実施形態では、骨格修飾は、ホスホルアミデート結合である。
【0118】
いくつかの実施形態では、ASO骨格のリンヌクレオチド間結合のそれぞれにおける立体化学は、ランダムである。いくつかの実施形態では、ASO骨格のリンヌクレオチド間結合のそれぞれにおける立体化学は制御されており、ランダムではない。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0194610号「Methods for the Synthesis of Functionalized Nucleic Acids」は、核酸オリゴマー中の各リン原子におけるキラリティーの掌性を独立して選択するための方法を記載している。いくつかの実施形態では、本明細書において表1または3に記述されているASOのいずれかを含むがこれらに限定されない、本発明の方法で使用されるASOは、ランダムではないリンヌクレオチド間結合を有するASOを含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される組成物は、純粋なジアステレオマーASOを含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される組成物は、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、約100%、約90%~約100%、約91%~約100%、約92%~約100%、約93%~約100%、約94%~約100%、約95%~約100%、約96%~約100%、約97%~約100%、約98%~約100%、または約99%~約100%のジアステレオマー純度を有するASOを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、ASOは、そのリンヌクレオチド間結合において、Rp及びSp配置の非ランダム混合物を有する。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドでは、良好な活性とヌクレアーゼ安定性との間の均衡をとるために、RpとSpの混合物が必要であることが示唆されている(参照により本明細書に組み込まれる、Wan, et al., 2014, “Synthesis, biophysical properties and biological activity of second-generation antisense oligonucleotides containing chiral phosphorothioate linkages,” Nucleic Acids Research 42(22): 13456-13468)。いくつかの実施形態では、本明細書において表1または3に記述されているASOのいずれかを含むがこれらに限定されない、本発明の方法で使用されるASOは、約5~100%Rp、少なくとも約5%Rp、少なくとも約10%Rp、少なくとも約15%Rp、少なくとも約20%Rp、少なくとも約25%Rp、少なくとも約30%Rp、少なくとも約35%Rp、少なくとも約40%Rp、少なくとも約45%Rp、少なくとも約50%Rp、少なくとも約55%Rp、少なくとも約60%Rp、少なくとも約65%Rp、少なくとも約70%Rp、少なくとも約75%Rp、少なくとも約80%Rp、少なくとも約85%Rp、少なくとも約90%Rp、または少なくとも約95%Rpを、残りのSpとともに含み、または約100%Rpを含む。いくつかの実施形態では、本明細書において表1または3に記述されているASOのいずれかを含むがこれらに限定されない、本発明の方法で使用されるASOは、約10%~約100%Rp、約15%~約100%Rp、約20%~約100%Rp、約25%~約100%Rp、約30%~約100%Rp、約35%~約100%Rp、約40%~約100%Rp、約45%~約100%Rp、約50%~約100%Rp、約55%~約100%Rp、約60%~約100%Rp、約65%~約100%Rp、約70%~約100%Rp、約75%~約100%Rp、約80%~約100%Rp、約85%~約100%Rp、約90%~約100%Rp、または約95%~約100%Rp、約20%~約80%Rp、約25%~約75%Rp、約30%~約70%Rp、約40%~約60%Rp、または約45%~約55%Rpを、残りのSpとともに含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書において表1または3に記述されているASOのいずれかを含むがこれらに限定されない、本発明の方法で使用されるASOは、約5~100%Sp、少なくとも約5%Sp、少なくとも約10%Sp、少なくとも約15%Sp、少なくとも約20%Sp、少なくとも約25%Sp、少なくとも約30%Sp、少なくとも約35%Sp、少なくとも約40%Sp、少なくとも約45%Sp、少なくとも約50%Sp、少なくとも約55%Sp、少なくとも約60%Sp、少なくとも約65%Sp、少なくとも約70%Sp、少なくとも約75%Sp、少なくとも約80%Sp、少なくとも約85%Sp、少なくとも約90%Sp、または少なくとも約95%Spを、残りのRpとともに含み、または約100%Spを含む。いくつかの実施形態では、本明細書において表1または3に記述されているASOのいずれかを含むがこれらに限定されない、本発明の方法で使用されるASOは、約10%~約100%Sp、約15%~約100%Sp、約20%~約100%Sp、約25%~約100%Sp、約30%~約100%Sp、約35%~約100%Sp、約40%~約100%Sp、約45%~約100%Sp、約50%~約100%Sp、約55%~約100%Sp、約60%~約100%Sp、約65%~約100%Sp、約70%~約100%Sp、約75%~約100%Sp、約80%~約100%Sp、約85%~約100%Sp、約90%~約100%Sp、または約95%~約100%Sp、約20%~約80%Sp、約25%~約75%Sp、約30%~約70%Sp、約40%~約60%Sp、または約45%~約55%Spを、残りのRpとともに含む。
【0121】
本明細書に記載のASOのいずれも、天然に存在するヌクレオチドに存在するリボースまたはデオキシリボースを含む糖部分、または修飾糖部分またはモルホリン環を含む糖アナログを含有し得る。修飾糖部分の非限定的な例には、2’置換基、例として2’-O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’MOE)、2’-O-アミノエチル、2’-フルオロ(2’F);N3’->P5’ホスホルアミデート、2’ジメチルアミノオキシエトキシ、2’ジメチルアミノエトキシエトキシ、2’-グアニジニジウム(2’-guanidinidium)、2’-O-グアニジニウムエチル、カルバメート修飾糖、及び二環式修飾糖、が含まれる。いくつかの実施形態では、糖部分修飾は、2’-O-Me、2’F、及び2’MOEから選択される。いくつかの実施形態では、糖部分の修飾は、ロック核酸(LNA)などの追加の架橋結合である。いくつかの実施形態では、糖アナログは、ホスホロジアミデートモルホリノ(PMO)などのモルホリン環を含有している。いくつかの実施形態では、糖部分は、リボフラノシル(ribofuransyl)または2’デオキシリボフラノシル(2’deoxyribofuransyl)修飾を含む。いくつかの実施形態では、糖部分は、2’,4’拘束2’O-メチルオキシエチル(cMOE)修飾を含む。いくつかの実施形態では、糖部分は、cEt 2’,4’拘束2’-OエチルBNA修飾を含む。いくつかの実施形態では、糖部分は、トリシクロDNA(tcDNA)修飾を含む。いくつかの実施形態では、糖部分は、エチレン核酸(ENA)修飾を含む。いくつかの実施形態では、糖部分は、MCE修飾を含む。修飾は当技術分野において既知であり、文献、例えば、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる、Jarver, et al., 2014, “A Chemical View of Oligonucleotides for Exon Skipping and Related Drug Applications,” Nucleic Acid Therapeutics 24(1): 37-47に記載されている。
【0122】
いくつかの例では、ASOの各モノマーは同じ方法で修飾され、例えば、ASOの骨格の各結合はホスホロチオエート結合を含むか、または各リボース糖部分は2’O-メチル修飾を含む。ASOのモノマー成分のそれぞれに存在するこのような修飾は、「均一修飾」と呼ばれる。いくつかの例では、異なる修飾の組合せが望まれる場合があり、例えば、ASOは、ホスホロジアミデート結合とモルホリン環(モルホリノ)を含む糖部分との組合せを含み得る。ASOに対する異なる修飾の組合せは、「混合修飾」または「混合化学」と呼ばれる。
【0123】
いくつかの実施形態では、ASOは、1つまたは複数の骨格修飾を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、1つまたは複数の糖部分修飾を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、1つまたは複数の骨格修飾及び1つまたは複数の糖部分修飾を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、2’MOE修飾及びホスホロチオエート骨格を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、ホスホロジアミデートモルホリノ(PMO)を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、ペプチド核酸(PNA)を含む。本明細書に記載のASOのいずれかまたはASOの任意の成分(例えば、核酸塩基、糖部分、骨格)を、ASOの所望の特性または活性を達成するため、またはASOの望ましくない特性または活性を低減するために修飾することができる。例えば、ASOまたは任意のASOの1つまたは複数の成分は、プレmRNA転写物上の標的配列への結合親和性を増強するように;任意の非標的配列への結合を低減するように;細胞ヌクレアーゼ(すなわち、RNase H)による分解を低減するように;細胞及び/または細胞の核へのASOの取り込みを改善するように;ASOの薬物動態または薬力学を変更するように;ASOの半減期を調整するように;修飾することができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、ASOは、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)ホスホロチオエート修飾ヌクレオチドで構成される。そのようなヌクレオチドで構成されたASOは、本明細書に開示されている方法に特に良好に適しており;そのような修飾を有するオリゴマーは、ヌクレアーゼ分解に対する抵抗性が著しく増強され、生物学的利用能が増加することが示されており、これにより、例えば、本明細書に記載のいくつかの実施形態における経口送達に好適となる。例えば、Geary et al., J Pharmacol Exp Ther. 2001;296(3):890-7;Geary et al., J Pharmacol Exp Ther. 2001;296(3):898-904を参照のこと。
【0125】
ASOを合成する方法は、当業者に既知であろう。あるいは、またはさらに、ASOは、商業的供給源から入手することができる。
【0126】
特に明記しない限り、一本鎖核酸(例えば、プレmRNA転写物、オリゴヌクレオチド、ASOなど)配列の左手端は5’末端であり、一本鎖または二本鎖核酸配列の左手方向は、5’方向と呼ばれる。同様に、核酸配列(一本鎖または二本鎖)の右手端または右手方向は、3’末端または3’方向である。一般に、核酸中の基準点に対して5’側にある領域または配列は「上流」と呼ばれ、核酸の基準点に対し3’側にある領域または配列は「下流」と呼ばれる。一般に、mRNAの5’方向または5’末端は、開始(initiation)コドンまたは読み始め(start)コドンが位置する場所であり、3’末端または3’方向は、終止コドンが位置する場所である。いくつかの態様では、核酸中の基準点の上流にあるヌクレオチドは、負の数によって指定することができるが、一方、基準点の下流にあるヌクレオチドは、正の数によって指定することができる。例えば、基準点(例えば、mRNA中のエクソン-エクソンジャンクション)は「ゼロ」部位として指定することができ、基準点に直接隣接しその上流にあるヌクレオチドは、「マイナス1」例えば「-1」と指定され、一方、基準点に直接隣接しその下流にあるヌクレオチドは、「プラス1」例えば「+1」と指定される。
【0127】
他の実施形態では、ASOは、標的AICプレmRNAにおける選択的イントロンの5’スプライス部位の下流(3’方向)(例えば、選択的イントロンの5’選択的スプライス部位に対して正の数で指定された方向)にある標的AICプレmRNAの標的化領域に、相補的である(及びそれに結合する)。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に対して+1~+100の領域内にある標的AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に対してヌクレオチド+1~ヌクレオチド+50の間の領域内にある標的AICプレmRNAの標的化領域に相補的であり得る。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に対して、+1~+90、+1~+80、16~+70、+1~+60、1~+50、+1~+40、+1~+30、または+1~+20の領域内にある標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAは、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、CD274、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。
【0128】
他の実施形態では、ASOは、CD274 AICプレmRNAにおける選択的イントロンの5’スプライス部位の下流(3’方向)(例えば、選択的イントロンの5’選択的スプライス部位に対して正の数で指定された方向)にあるCD274 AICプレmRNAの標的化領域に、相補的である(及びそれに結合する)。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に対して+1~+100の領域内にあるCD274 AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に対してヌクレオチド+1~ヌクレオチド+50の間の領域内にあるCD274 AICプレmRNAの標的化領域に相補的であり得る。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に対して、+1~+90、+1~+80、16~+70、+1~+60、+1~+50、+1~+40、+1~+30、または+1~+20の領域内にある標的化領域に相補的である。
【0129】
いくつかの実施形態では、ASOは、標的AICプレmRNAにおける選択的イントロンの3’スプライス部位の上流(5’方向)(例えば、負の数で指定された方向)にある標的AICプレmRNAの標的化領域に、相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの3’スプライス部位に対して-1~-100の領域内にある標的AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの3’スプライス部位に対して-1~-50の領域内にある標的AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの3’スプライス部位に対して、-1~-90、-1~-80、-1~-70、-1~-60、-1~-50、-1~-40、または-1~-30の領域内にある標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAは、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、CD274、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。
【0130】
いくつかの実施形態では、ASOは、CD274 AICプレmRNAにおける選択的イントロンの3’スプライス部位の上流(5’方向)(例えば、負の数で指定された方向)にあるCD274 AICプレmRNAの標的化領域に、相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの3’スプライス部位に対して-1~-100の領域内にあるCD274 AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの3’スプライス部位に対して-1~-50の領域内にあるCD274 AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの3’スプライス部位に対して、-1~-90、-1~-80、-1~-70、-1~-60、-1~-50、-1~-40、または-1~-30の領域内にある標的化領域に相補的である。
【0131】
いくつかの実施形態では、CD274 AICプレmRNAの標的化領域は、選択的イントロンの5’スプライス部位に対して+100の領域~選択的イントロンの3’スプライス部位に対して-100の領域内にある。
【0132】
いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン内(上流)にある標的AICプレmRNAの標的化領域(例えば、選択的イントロンが位置しているエクソンの第1の部分)に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分における+2e~-1eの領域内にある標的AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に対して-1e~-100e、-1e~-90e、-1e~-80e、-1e~-70e、-1e~-60e、-1e~-50e、-1~-40e、-1e~-30e、または-1e~-20eの領域内にある標的AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAは、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、CD274、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。
【0133】
いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン内(上流)にあるCD274 AICプレmRNAの標的化領域(例えば、選択的イントロンが位置しているエクソンの第1の部分)に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分における+2e~-1eの領域内にあるCD274 AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に対して-1e~-100e、-1e~-90e、-1e~-80e、-1e~-70e、-1e~-60e、-1e~-50e、-1~-40e、-1e~-30e、または-1e~-20eの領域内にあるCD274 AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。
【0134】
いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソン内(下流)にある標的AICプレmRNAの標的化領域(例えば、選択的イントロンが位置しているエクソンの第2の部分)に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+1e~-4eの領域内にある標的AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの3’スプライス部位に対して+1e~+100e、+1e~+90e、+1e~+80e、+1e~+70e、+1e~+60e、+1e~+50e、+1~+40e、+1e~+30e、または+1e~+20eの領域内にある標的AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAは、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、CD274、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。
【0135】
いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソン内(下流)にあるCD274 AICプレmRNAの標的化領域(例えば、選択的イントロンが位置しているエクソンの第2の部分)に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+1e~-4eの領域内にあるCD274 AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、選択的イントロンの3’スプライス部位に対して+1e~+100e、+1e~+90e、+1e~+80e、+1e~+70e、+1e~+60e、+1e~+50e、+1~+40e、+1e~+30e、または+1e~+20eの領域内にあるCD274 AICプレmRNAの標的化領域に相補的である。
【0136】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、CD274 AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号68、69、及び71~76から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、CD274のエクソン4内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号1~67から選択される配列を有する。
【0137】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、ARHGAP23 AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号77及び91から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、ARHGAP23のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号105~153から選択される配列を有する。
【0138】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、BRD1 AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号78及び92から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、BRD1のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号154~217から選択される配列を有する。
【0139】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、DCHS1 AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号79及び93から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、DCHS1のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号218~334から選択される配列を有する。
【0140】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、EPB41L2 AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号80及び94から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、EPB41L2のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号335~406から選択される配列を有する。
【0141】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、GPX8 AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号81及び95から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、GPX8のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号407~443から選択される配列を有する。
【0142】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、HIVEP3 AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号82及び96から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、HIVEP3のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号444~1027から選択される配列を有する。
【0143】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、INVS AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号83~97から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、INVSのエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号1028~1112から選択される配列を有する。
【0144】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、KAII0319 AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号84~98から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、KAII0319のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号1013~1212から選択される配列を有する。
【0145】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、NAIP AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号85~99から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、NAIPのエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号1213~1501から選択される配列を有する。
【0146】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、PTCH2 AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号86~100から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、PTCH2のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号1502~1547から選択される配列を有する。
【0147】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、PTPRZ1 AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号87~101から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、PTPRZ1のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号1548~2039から選択される配列を有する。
【0148】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、SON AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号88、89、102及び103から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、SONのエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号2040~3458から選択される配列を有する。
【0149】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、ZCCHC2 AICプレmRNAの標的化領域に結合する。いくつかの実施形態では、標的化領域は、配列番号90及び104から選択される配列内にある。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOが結合するAICプレmRNAの標的化領域は、ZCCHC2のエクソン内に位置している。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号3459~3651から選択される配列を有する。
【0150】
ASOは、特異的結合及びスプライシングの効果的な調節(例えば、阻害または増強)に好適な任意の長さであり得る。いくつかの実施形態では、ASOは、8~50核酸塩基からなる。例えば、ASOは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、または50核酸塩基長であり得る。いくつかの実施形態では、ASOは、50を超える核酸塩基からなる。いくつかの実施形態では、ASOは、8~50核酸塩基、8~40核酸塩基、8~35核酸塩基、8~30核酸塩基、8~25核酸塩基、8~20核酸塩基、8~15核酸塩基、9~50核酸塩基、9~40核酸塩基、9~35核酸塩基、9~30核酸塩基、9~25核酸塩基、9~20核酸塩基、9~15核酸塩基、10~50核酸塩基、10~40核酸塩基、10~35核酸塩基、10~30核酸塩基、10~25核酸塩基、10~20核酸塩基、10~15核酸塩基、11~50核酸塩基、11~40核酸塩基、11~35核酸塩基、11~30核酸塩基、11~25核酸塩基、11~20核酸塩基、11~15核酸塩基、12~50核酸塩基、12~40核酸塩基、12~35核酸塩基、12~30核酸塩基、12~25核酸塩基、12~20核酸塩基、12~15核酸塩基、13~50核酸塩基、13~40核酸塩基、13~35核酸塩基、13~30核酸塩基、13~25核酸塩基、13~20核酸塩基、14~50核酸塩基、14~40核酸塩基、14~35核酸塩基、14~30核酸塩基、14~25核酸塩基、14~20核酸塩基、15~50核酸塩基、15~40核酸塩基、15~35核酸塩基、15~30核酸塩基、15~25核酸塩基、15~20核酸塩基、20~50核酸塩基、20~40核酸塩基、20~35核酸塩基、20~30核酸塩基、20~25核酸塩基、25~50核酸塩基、25~40核酸塩基、25~35核酸塩基、または25~30核酸塩基長である。いくつかの実施形態では、ASOは、18ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ASOは、15ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ASOは、25ヌクレオチド長である。
【0151】
いくつかの実施形態では、異なる化学的性質を有するが、AICプレmRNAの同じ標的化領域に相補的である2つ以上のASOが使用される。いくつかの実施形態では、AICプレmRNAの異なる標的化領域に相補的である2つ以上のASOが使用される。
【0152】
いくつかの実施形態では、本発明のASOは、1つもしくは複数の部分またはコンジュゲート、例えば、オリゴヌクレオチドの活性もしくは細胞取り込みを増強する標的化部分または他のコンジュゲートに化学的に連結している。そのような部分には、脂質部分、例えばコレステロール部分、コレステリル部分、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸が含まれるが、これらに限定されない。親油性部分を含むオリゴヌクレオチド及び調製方法は、公開文献に記載されている。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されないが、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-Ac-グルコサミン(GluNAc)、またはマンノース(例えば、マンノース-6-リン酸)、脂質、またはポリ炭化水素化合物、を含む部分とコンジュゲートされる。コンジュゲートは、当技術分野で理解され、文献に記載されているように、例えばリンカーを使用して、糖、塩基またはリン酸基上のいくつかの位置のいずれかでアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む任意のヌクレオチドの1つまたは複数に連結することができる。リンカーとしては、二価または三価の分岐鎖リンカーを挙げることができる。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端に付着している。オリゴヌクレオチドコンジュゲートを調製する方法は、例えば、本明細書に参照によって組み込まれる米国特許第8,450,467号、「Carbohydrate conjugates as delivery agents for oligonucleotides」に記載されている。
【0153】
いくつかの実施形態では、ASOによって標的化される核酸は、細胞、例として真核細胞において発現するCD274 AICプレmRNAである。いくつかの実施形態では、「細胞」という用語は、細胞の集団を指すことができる。いくつかの実施形態では、細胞は対象にある。いくつかの実施形態では、細胞は対象から単離される。いくつかの実施形態では、細胞はエクスビボである。いくつかの実施形態では、細胞はエクスビボで組織にある。いくつかの実施形態では、細胞はエクスビボで器官にある。いくつかの実施形態では、細胞は、状態もしくは疾患関連細胞または細胞株である。いくつかの実施形態では、細胞はインビトロ(例えば、細胞培養中)である。
【0154】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、標的タンパク質をコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを阻害する。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを増加させる。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOと接触した細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルは、対照細胞、例えば、治療剤もしくはASOと接触していない細胞、またはAICプレmRNAの標的化領域に相補的ではない治療剤もしくはASOと接触した細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加する。
【0155】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、細胞における標的タンパク質の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、治療剤と接触した細胞における標的タンパク質のレベルは、対照細胞、例えば、治療剤もしくはASOと接触していない細胞、またはAICプレmRNAの標的化領域に相補的ではない治療剤もしくはASOと接触した細胞における標的タンパク質のレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加する。
【0156】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、標的タンパク質をコードするAICプレmRNAからの選択的イントロンのスプライシングを促進または増強する。いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルを低下させる。いくつかの実施形態では、治療剤と接触した細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルは、対照細胞、例えば、治療剤もしくはASOと接触していない細胞、またはAICプレmRNAの標的化領域に相補的ではない治療剤もしくはASOと接触した細胞における標的タンパク質をコードするプロセシングされたmRNAのレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍低下する。
【0157】
いくつかの実施形態では、治療剤またはASOは、細胞における標的タンパク質の発現を減少させる。いくつかの実施形態では、治療剤と接触した細胞における標的タンパク質のレベルは、対照細胞、例えば、治療剤もしくはASOと接触していない細胞、またはAICプレmRNAの標的化領域に相補的ではない治療剤もしくはASOと接触した細胞における標的タンパク質のレベルと比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍低下する。
【0158】
疾患及び障害
いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物を使用して、免疫疾患または免疫障害の治療を必要とする対象における任意の免疫疾患または免疫障害を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物を使用して治療される免疫疾患または免疫障害は、例えば、自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、炎症性疾患もしくは炎症性障害、慢性感染症、移植片対宿主病(GVHD)、移植拒絶反応、またはT細胞増殖性障害である。いくつかの実施形態では、免疫疾患または免疫障害は、多発性硬化症、炎症性腸疾患、自己免疫性肝炎、腎臓の炎症、関節リウマチ、乾癬、ループス腎炎、角膜移植、及びブドウ膜炎、から選択される自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、または炎症性疾患もしくは炎症性障害である。いくつかの実施形態では、免疫障害の免疫疾患は、T細胞、B細胞、またはNK細胞によって媒介される障害である。
【0159】
自己免疫疾患または自己免疫障害は、対象自身の細胞、組織、及び/または器官に対する対象の免疫学的反応によって引き起こされる細胞、組織、及び/または器官の損傷を特徴とする状態である。炎症性疾患または炎症性障害は、例えば、慢性炎症を含む、炎症を特徴とする対象の状態を指す。自己免疫疾患は、炎症に関連している場合または関連していない場合がある。炎症は、自己免疫疾患によって引き起こされる場合または引き起こされない場合がある。したがって、ある特定の障害は、自己免疫障害と炎症性障害の両方として特徴付けられる場合がある。本発明の方法及び組成物を使用して治療される自己免疫疾患または自己免疫障害は、例えば、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性副腎疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状狼瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、糖尿病、好酸球性筋膜炎(fascites)、線維筋痛症・線維筋炎、糸球体腎炎、バセドウ病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、特発性肺線維症、特発性/自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA神経障害、若年性関節炎、扁平苔癬、全身性エリテマトーデス、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、1型または免疫介在性真性糖尿病、重症筋無力、天疱瘡関連障害(例えば、尋常性天疱瘡)、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎(polychrondritis)、多腺症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆道性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、スウィート症候群、スティル病、エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、疱疹状皮膚炎血管炎などの血管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症、であり得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物を使用して治療される免疫疾患または免疫障害は、炎症性疾患または炎症性障害、例えば、関節炎(例えば、関節リウマチ、変形性関節症)、肺炎、肝炎(ウイルス性肝炎を含む)に伴う炎症、感染疾患に伴う炎症、炎症性腸疾患、腸炎、腎炎(例えば、糸球体腎炎、腎線維症)、胃炎、血管炎、膵炎、腹膜炎、気管支炎、心筋炎、脳炎、虚血後再灌流傷害(心筋虚血再灌流傷害)における炎症、組織及び臓器の移植後の免疫拒絶に起因する炎症、火傷、種々の皮膚炎症(乾癬、アレルギー性接触型皮膚炎、扁平苔癬)、多臓器不全における炎症、PTCAまたはPTCRの手術後の炎症、動脈硬化を伴う炎症、自己免疫性甲状腺炎、喘息、脳炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性疾患、敗血症性ショック、肺線維症、診断未確定脊椎関節症、診断未確定関節症、脊椎関節症(例えば、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、ライター症候群または反応性関節炎)、炎症性骨溶解、ウィルソン病、及び慢性ウイルス感染または細菌感染に起因する慢性炎症、である。
【0161】
いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物を使用して治療される免疫疾患または免疫障害は、例えば、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎など)、バセドウ病、橋本甲状腺炎、アレルギー性接触型皮膚炎、慢性炎症性皮膚症(例えば、扁平苔癬)、及び真性糖尿病(diabetes mellitis)、から選択される慢性炎症性疾患または慢性炎症性障害である。
【0162】
いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物を使用して治療される免疫疾患または免疫障害は、例えば、毒素性ショック症候群、炎症性腸疾患、輸血による同種感作、またはT細胞依存性B細胞介在性疾患、骨関節炎(OA)、移植片対宿主反応(GVH反応)、移植片対宿主病(GVHD)、組織(例えば、皮膚、角膜、骨)もしくは臓器(例えば、肝臓、心臓、肺、腎臓、膵臓)の移植に伴う免疫拒絶、外来抗原もしくは自己抗原によって引き起こされる免疫応答(例えば、当該抗原に対する抗体の産生、細胞増殖、サイトカインの産生)、または異常な腸の免疫によって引き起こされる障害(例えば、炎症性腸障害、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び消化管アレルギー)、である。
【0163】
自己免疫疾患は、限定されないが、心臓、脳、神経、筋肉、皮膚、眼、関節、肺、腎臓、腺(例えば、甲状腺)、消化管、及び血管を含む、あらゆる組織または身体部分に影響を与える可能性がある。自己免疫疾患の全身性エリテマトーデスは、皮膚、関節、腎臓、心臓、神経、血管、及びその他の組織に影響を与える可能性がある。1型糖尿病は、例えば、腺、眼、腎臓、及び筋肉に影響を与える可能性がある。いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物を使用して治療される対象は、治療時に自己免疫疾患を発症する傾向を有する。いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物を使用して治療される対象は、予防的に治療される。
【0164】
いくつかの実施形態では、自己炎症性障害を有する対象は、本発明の方法及び組成物を使用して治療される。自己炎症性障害は、発熱、発疹、関節の腫れなどの症状をもたらす激しい炎症のエピソードを特徴とする。場合によっては、慢性状態が原因で炎症性障害が発生する。例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、脂肪肝疾患に関連する炎症性障害である。本発明の方法及び組成物を使用する治療のために企図される他の炎症性障害としては、例えば、家族性地中海熱(FMF)、新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID)、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS)、インターロイキン1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA)、連鎖球菌感染後及び自己免疫性(autiommune)腎不全、敗血症性ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、及び毒物注入による炎症、が挙げられる。
【0165】
本発明により治療される自己免疫障害の例としては、例えば、全身性エリテマトーデス、甲状腺炎、ブドウ膜炎、白斑、多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー病)、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス/ループス腎炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性肝炎、重症筋無力症、心筋炎、多発性硬化症、天疱瘡/類天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、関節リウマチ、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群、円形脱毛症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、皮膚筋炎、糖尿病(1型)、若年性特発性関節炎、糸球体腎炎、バセドウ病、ギラン・バレー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、ベーチェット病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症(全身性強皮症及び進行性全身性強皮症)、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、結節性動脈周囲炎(結節性多発動脈炎及び顕微鏡的多発血管炎)、大動脈炎症候群(高安動脈炎)、悪性関節リウマチ、関節リウマチ、混合性結合組織病、成人発症スティル病、アレルギー性肉芽腫性血管炎、過敏性血管炎、コーガン症候群、RS3PE、側頭動脈炎、リウマチ性多発筋痛、線維筋痛症候群、抗リン脂質抗体症候群、好酸球性筋膜炎、IgG4関連疾患(例えば、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性膵炎)、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、慢性萎縮性胃炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、大動脈炎症候群、グッドパスチャー症候群、急速進行性糸球体腎炎、巨赤芽球性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)、橋本甲状腺炎、自己免疫性副腎機能不全、原発性甲状腺機能低下症、特発性アジソン病(慢性副腎機能不全)、I型糖尿病、慢性円板状エリテマトーデス、限局性強皮症、乾癬、乾癬性関節炎、天疱瘡、類天疱瘡、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚疾患、後天性表皮水疱症、円形脱毛症、白斑、原田病、自己免疫性視神経症、特発性無精子症、再発性胎児喪失、及び炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及びクローン病)、が挙げられる。
【0166】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、対象の細胞をASOと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触された細胞は、任意の分化状態にある免疫系細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞、前駆細胞、樹状細胞、マクロファージ、腹膜B1 B細胞、メモリーB細胞、骨髄(BM)由来肥満細胞、造血細胞、非造血細胞、B細胞、またはT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫系細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、またはキラーCD8+ T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、活性化T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、病原性CD4+ T1またはT17エフェクター細胞である。
【0167】
いくつかの実施形態では、本発明の方法において接触された細胞は、非造血細胞、例えば、血管内皮細胞、線維芽細網細胞、上皮細胞、膵島細胞、星状細胞、ニューロン、CNS/PNSのシュワン細胞、肝細胞、角膜、腎細胞、または胎盤の栄養膜もしくは眼の網膜色素上皮細胞またはニューロンを含む免疫特権部位の細胞、または当技術分野において既知であり、免疫学的障害の治療における標的化のために同定された他の適切な細胞型、である。いくつかの実施形態では、接触された細胞は、標的タンパク質を発現する細胞型である。いくつかの実施形態では、接触された細胞は、PD-L1を発現する細胞型である。
【0168】
本発明のいくつかの実施形態では、細胞は、細胞を必要とする対象から得られ、エクスビボでASOにより修飾されて、標的タンパク質発現(例えば、PD-L1)を誘導し、対象に養子移入される。他の実施形態では、細胞、例えば、T1細胞は、それを必要とする対象から得られ、TREG細胞に変換するように誘導され、それを必要とする当該患者に養子移入され得る。場合によっては、細胞を必要とする対象は、移植関連の自己免疫疾患を有する。いくつかの実施形態では、GVHDは、標的細胞集団においてPD-L1発現を誘導することによって治療される。いくつかの実施形態では、免疫障害は、エクスビボで修飾された細胞を使用する本発明の方法によって治療される。いくつかの実施形態では、免疫障害は、本発明の治療法の全身注入により治療される。
【0169】
いくつかの実施形態では、遺伝的障害または状態は、常染色体優性障害、常染色体劣性障害、X連鎖優性障害、X連鎖劣性障害、Y連鎖障害、ミトコンドリア疾患、または多因子性もしくは多遺伝子性障害であり得る。時には、遺伝性疾患はまた、常染色体優性、常染色体劣性、X連鎖優性、X連鎖劣性、Y連鎖、ミトコンドリア、または多因子性もしくは多遺伝子性の遺伝性疾患として特徴付けることもできる。常染色体優性障害、常染色体劣性障害、X連鎖優性障害、X連鎖劣性障害、Y連鎖障害、ミトコンドリア疾患、または多因子性もしくは多遺伝子性障害は、タンパク質の産生障害を特徴とする可能性がある。常染色体優性障害、常染色体劣性障害、X連鎖優性障害、X連鎖劣性障害、Y連鎖障害、ミトコンドリア疾患、または多因子性もしくは多遺伝子性障害は、欠陥スプライシングを特徴とする可能性がある。常染色体優性障害、常染色体劣性障害、X連鎖優性障害、X連鎖劣性障害、Y連鎖障害、ミトコンドリア疾患、または多因子性もしくは多遺伝子性障害を有する対象は、完全にプロセシングされたmRNAに適切に転写されると、タンパク質の完全長機能(full-length functional)をコードすることができるエクソンを含む遺伝子のコピーを含むことができるゲノムを有することができる。常染色体優性障害、常染色体劣性障害、X連鎖優性障害、X連鎖劣性障害、Y連鎖障害、ミトコンドリア疾患、または多因子性もしくは多遺伝子性障害を有する対象は、完全にプロセシングされたmRNAに適切に転写されると、タンパク質の完全長機能形態をコードすることができる1組のエクソンを含む遺伝子のコピーを含むことができるゲノムを有することができる。常染色体優性障害、常染色体劣性障害、X連鎖優性障害、X連鎖劣性障害、Y連鎖障害、ミトコンドリア疾患、または多因子性もしくは多遺伝子性障害を有する対象は、遺伝子の欠陥コピーであって、タンパク質の完全長機能形態を産生することができない可能性があるものを含むことができるゲノムを有することができる。
【0170】
例示的な遺伝性疾患としては、軟骨発育不全症、遺伝性ヘモクロマトシス、ダウン症候群、遺伝性球状赤血球症、テイ・サックス症、アッシャー症候群、遺伝性果糖不耐症、血友病、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはDMD)、多遺伝子障害、乳癌、卵巣癌、パーキンソン病、バルデー・ビードル症候群、プラダー・ウィリー症候群、糖尿病、心疾患、関節炎、運動ニューロン疾患、色素欠乏症、猫鳴き症候群、嚢胞性線維症、脆弱X症候群、ガラクトース血症、ハンチントン病、ジャクソン・ワイス症候群、クラインフェルター症候群、クラッベ病、ランガー・ギーディオン症候群、レッシュ・ナイハン症候群、マルファン症候群、筋強直性ジストロフィー、ネイル・パテラ症候群、神経線維腫症、ヌーナン症候群、トリプルX症候群、骨形成不全症、パトウ症候群、フェニルケトン尿症、ポルフィリン症、網膜芽細胞腫、レット症候群、鎌状赤血球症、ターナー症候群、アッシャー症候群、フォン・ピッぺル・リンドウ症候群、ワールデンブルグ症候群、ウィルソン病、色素性乾皮症、XXXX症候群、またはYY症候群、を挙げることができる。
【0171】
遺伝性疾患、例えば、軟骨発育不全症、遺伝性ヘモクロマトシス、ダウン症候群、遺伝性球状赤血球症、テイ・サックス症、アッシャー症候群、遺伝性果糖不耐症、血友病、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはDMD)、多遺伝子疾患、乳癌、卵巣癌、パーキンソン病、バルデー・ビードル症候群、プラダー・ウィリー症候群、糖尿病、心疾患、関節炎、運動ニューロン疾患、色素欠乏症、猫鳴き症候群、嚢胞性線維症、脆弱X症候群、ガラクトース血症、ハンチントン病、ジャクソン・ワイス症候群、クラインフェルター症候群、クラッベ病、ランガー・ギーディオン症候群、レッシュ・ナイハン症候群、マルファン症候群、筋強直性ジストロフィー、ネイル・パテラ症候群、神経線維腫症、ヌーナン症候群、トリプルX症候群、骨形成不全症、パトウ症候群、フェニルケトン尿症、ポルフィリン症、網膜芽細胞腫、レット症候群、鎌状赤血球症、ターナー症候群、アッシャー症候群、フォン・ピッぺル・リンドウ症候群、ワールデンブルグ症候群、ウィルソン病、色素性乾皮症、XXXX症候群、またはYY症候群などは、タンパク質の産生障害、または欠陥スプライシングを特徴とする場合がある。遺伝性疾患、例えば、軟骨発育不全症、遺伝性ヘモクロマトシス、ダウン症候群、遺伝性球状赤血球症、テイ・サックス症、アッシャー症候群、遺伝性果糖不耐症、血友病、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはDMD)、多遺伝子疾患、乳癌、卵巣癌、パーキンソン病、バルデー・ビードル症候群、プラダー・ウィリー症候群、糖尿病、心疾患、関節炎、運動ニューロン疾患、色素欠乏症、猫鳴き症候群、嚢胞性線維症、脆弱X症候群、ガラクトース血症、ハンチントン病、ジャクソン・ワイス症候群、クラインフェルター症候群、クラッベ病、ランガー・ギーディオン症候群、レッシュ・ナイハン症候群、マルファン症候群、筋強直性ジストロフィー、ネイル・パテラ症候群、神経線維腫症、ヌーナン症候群、トリプルX症候群、骨形成不全症、パトウ症候群、フェニルケトン尿症、ポルフィリン症、網膜芽細胞腫、レット症候群、鎌状赤血球症、ターナー症候群、アッシャー症候群、フォン・ピッぺル・リンドウ症候群、ワールデンブルグ症候群、ウィルソン病、色素性乾皮症、XXXX症候群、またはYY症候群などは、完全にプロセシングされたmRNAに適切に転写されると、タンパク質の完全長機能をコードすることができるエクソンを含む遺伝子のコピーを含むことができる、完全にプロセシングされたmRNAに適切に転写されると、タンパク質の完全長機能形態をコードすることができる1組のエクソンを含む遺伝子のコピーを含むことができる(遺伝子のコピーを含むことができる)、または遺伝子の欠陥コピーであって、タンパク質の完全長機能形態を産生することができない可能性があるものを含むことができる。
【0172】
上記のように、遺伝的障害または状態は、常染色体優性障害、常染色体劣性障害、X連鎖優性障害、X連鎖劣性障害、Y連鎖障害、ミトコンドリア疾患、または多因子性もしくは多遺伝子性障害であり得る。遺伝的障害または状態は、常染色体優性障害、常染色体劣性障害、X連鎖優性障害、X連鎖劣性障害、Y連鎖障害、ミトコンドリア疾患、または多因子性もしくは多遺伝子性障害であり得、タンパク質の産生障害、または欠陥スプライシングを特徴とする場合がある。
【0173】
例示的な常染色体優性疾患としては、ハンチントン病、神経線維腫症1型、神経線維腫症2型、マルファン症候群、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌、遺伝性多発性外骨腫、結節性硬化症、フォン・ウィルブランド病、または急性間欠性ポルフィリン症を挙げることができる。
【0174】
医薬組成物
記載された組成物のアンチセンスオリゴマー(ASO)を含み、記載された方法のいずれかで使用するための医薬組成物または製剤は、医薬業界において周知であり、公開文献に記載されている従来の技術に従って調製することができる。いくつかの実施形態では、対象を治療するための医薬組成物または製剤は、有効量の上記の任意のASO、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、もしくはエステル、及び薬学的に許容される希釈剤を含む。ASOの医薬製剤は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体をさらに含み得る。
【0175】
薬学的に許容される塩は、過度の毒性、刺激、アレルギー応答等を伴わないためにヒト及び下等動物の組織との接触における使用に好適であり、合理的な利益/リスク比に見合ったものである。塩は、化合物の最終単離及び精製の間にインサイチュで、またはその遊離塩基官能基を好適な有機酸と反応させることによって別個に調製することができる。薬学的に許容される非毒性酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、及び過塩素酸などの無機酸を用いて、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸などの有機酸を用いて、あるいはイオン交換などの他の文書化された方法論を使用することによって形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に許容される塩としては、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボキシレート、サルフェート、ホスフェート、ニトレート、低級アルキルスルホネート塩、及びアリールスルホネートなどの対イオンを使用して形成される、非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。
【0176】
いくつかの実施形態では、組成物は、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、液体シロップ剤、ソフトゲル、坐剤、及び浣腸剤などであるがこれらに限定されない多くの可能な剤形のいずれかに製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、水性、非水性、または混合媒体中の懸濁液として製剤化される。水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/またはデキストランを含む、懸濁液の粘度を増加させる物質をさらに含有し得る。懸濁液はまた、安定剤を含有してもよい。いくつかの実施形態では、本発明の医薬製剤または組成物は、溶液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、発泡体、またはリポソーム含有製剤(例えば、カチオン性または非カチオン性リポソーム)を含むが、これらに限定されない。
【0177】
本発明の医薬組成物または製剤は、必要に応じて、当業者に周知であるか、または公開文献に記載されている、1つもしくは複数の浸透促進剤、担体、賦形剤、または他の活性もしくは不活性成分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、リポソームにはまた、立体的に安定化したリポソーム、例えば、1つまたは複数の特殊化された脂質を含むリポソームが含まれる。これらの特殊化された脂質によって、循環寿命が向上したリポソームがもたらされる。いくつかの実施形態では、立体的に安定化したリポソームは、1つまたは複数の糖脂質を含むか、またはポリエチレングリコール(PEG)部分などの1つまたは複数の親水性ポリマーで誘導体化される。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、医薬製剤または組成物中に含まれる。医薬品、製剤、及びエマルションにおける界面活性剤の使用は、当技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、本発明は、浸透促進剤を使用して、ASOの効率的な送達をもたらし、例えば、細胞膜を越える拡散を助け、及び/または親油性薬物の透過性を増強する。いくつかの実施形態では、浸透促進剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、または非キレート性非界面活性剤である。
【0178】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は複数のASOを含む。いくつかの実施形態では、ASOは、別の薬物または治療剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、ASOは、当技術分野において既知の任意の方法によって、血液脳関門を通過する対象ASOの浸透を促進することができる1つまたは複数の薬剤とともに投与される。例えば、アデノウイルスベクターの投与による筋肉組織の運動ニューロンへの薬剤の送達は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,632,427号、「Adenoviral-vector-mediated gene transfer into medullary motor neurons」に記載されている。ベクターの、脳、例えば、線条体、視床、海馬、または黒質への直接の送達は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,756,523号「Adenovirus vectors for the transfer of foreign genes into cells of the central nervous system particularly in brain」に記載されている。
【0179】
いくつかの実施形態では、ASOは、望ましい薬学的または薬力学的特性を提供する薬剤と連結またはコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ASOは、血液脳関門を通過する浸透または輸送を促進することが当技術分野において既知である物質、例えば、トランスフェリン受容体に対する抗体に結合する。いくつかの実施形態では、ASOは、ウイルスベクターと連結して、例えば、アンチセンス化合物をより効果的にするか、または血液脳関門を通過する輸送を増加させる。いくつかの実施形態では、浸透圧性血液脳関門破壊は、糖、例えば、メソエリスリトール、キシリトール、D(+)ガラクトース、D(+)ラクトース、D(+)キシロース、ダルシトール、ミオイノシトール、L(-)フルクトース、D(-)マンニトール、D(+)グルコース、D(+)アラビノース、D(-)アラビノース、セロビオース、D(+)マルトース、D(+)ラフィノース、L(+)ラムノース、D(+)メリビオース、D(-)リボース、アドニトール、D(+)アラビトール、L(-)アラビトール、D(+)フコース、L(-)フコース、D(-)リキソース、L(+)リキソース、及びL(-)リキソース、またはアミノ酸、例えば、グルタミン、リシン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、バリン、及びタウリンの注入によって補助される。血液脳関門浸透を増強させるための方法及び材料は、例えば、それぞれが参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第4,866,042号、「Method for the delivery of genetic material across the blood brain barrier」、米国特許第6,294,520号、「Material for passage through the blood-brain barrier」、及び米国特許第6,936,589号「Parenteral delivery systems」に記載されている。
【0180】
いくつかの実施形態では、本発明のASOは、1つもしくは複数の部分またはコンジュゲート、例えば、オリゴヌクレオチドの活性もしくは細胞取り込みを増強する標的化部分または他のコンジュゲートに化学的に連結している。そのような部分には、限定されないが、脂質部分、例えばコレステロール部分、コレステリル部分、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸が含まれる。親油性部分を含むオリゴヌクレオチド及び調製方法は、公開文献に記載されている。いくつかの実施形態では、ASOは、限定されないが、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-Ac-グルコサミン(GluNAc)、またはマンノース(例えば、マンノース-6-リン酸)、脂質、またはポリ炭化水素化合物、を含む部分とコンジュゲートされる。コンジュゲートは、当技術分野で理解され、文献に記載されているように、例えばリンカーを使用して、糖、塩基またはリン酸基上のいくつかの位置のいずれかでASOを含む任意のヌクレオチドの1つまたは複数に連結することができる。リンカーとしては、二価または三価の分岐鎖リンカーを挙げることができる。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、ASOの3’末端に付着している。オリゴヌクレオチドコンジュゲートを調製する方法は、例えば、本明細書に参照によって組み込まれる米国特許第8,450,467号、「Carbohydrate conjugates as delivery agents for oligonucleotides」に記載されている。
【0181】
対象の治療
本明細書で提供される組成物のいずれも、個体に投与することができる。「個体」は、「対象」または「患者」と交換可能に使用することができる。個体は、哺乳動物、例えば、ヒト、または非ヒト霊長類、げっ歯類、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ロバ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、もしくはヒツジなどの動物であり得る。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は胎児、胚、または小児である。いくつかの実施形態では、個体は非ヒト動物である。他の実施形態では、個体は、植物などの別の真核生物であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、エクスビボで細胞に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、臓器または組織の移植の前に、エクスビボで(例えば、灌流または他の手段によって)臓器または組織に投与される。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、疾患または障害を治療する方法として個体に投与される。いくつかの実施形態では、個体は、本明細書に記載の疾患のいずれかなどの自己免疫疾患または炎症性疾患を有する。いくつかの実施形態では、個体は、本明細書に記載の疾患のいずれかなどの疾患を有するリスクがある。いくつかの実施形態では、個体は、不十分な量のタンパク質またはタンパク質の不十分な活性によって引き起こされる疾患または障害を有するリスクが増加している。個体が、不十分な量のタンパク質またはタンパク質の不十分な活性によって引き起こされる疾患または障害を有する「リスクが増加している」場合、この方法は予防(preventative)または予防的(prophylactic)治療を伴う。例えば、個体は、疾患の家族歴のためにそのような疾患または障害を有するリスクが増加している場合がある。典型的には、そのような疾患または障害を有するリスクが増加している個体は、予防的治療から(例えば、疾患または障害の発症または進行を予防または遅延させることによって)利益を得る。いくつかの実施形態では、個体は、異常な量のタンパク質またはタンパク質の異常な活性によって引き起こされる疾患または障害を有するリスクが増加している。
【0183】
いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物を使用して治療される対象は、疾患または障害(例えば、免疫疾患または免疫障害)の以前の治療を受けている。以前の治療としては、例えば、コルチコステロイド、シクロホスファミド及びアザチオプリンなどの移植薬、TNF、IL-17、IL-12/23を遮断する、またはCD20(リツキシマブ)もしくはCD52(アレムツズマブ)、IFN-βを含むサイトカインに対して向けられた、mAbを含む標的生物製剤、フマル酸ジメチルなどの小分子、及びJAKもしくはスフィンゴシン1リン酸阻害剤、または静脈内免疫グロブリン、が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、他の治療と同時に、または他の治療に続いて使用される。
【0184】
一般に、本発明のASOの投与のための好適な経路は、ASOの送達が望まれる細胞型に応じて変化するであろう。当業者に既知であり、文献に記載されているように、障害及び影響を受ける個体に応じて、異なる組織及び器官が障害(例えば、免疫障害)によって影響を受ける可能性がある。いくつかの実施形態では、本発明のASOは、非経口的に患者に投与される。いくつかの実施形態では、本発明のASOは、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、経口投与、滑膜注射、硝子体内投与、網膜下注射、局所適用、移植、または静脈内注射によって患者に投与される。いくつかの実施形態では、胎児は、例えば、ASO組成物を胎児に直接的または間接的に(例えば、母親を介して)投与することによって、子宮内で治療される。
【0185】
いくつかの実施形態では、脳またはCNSに影響を与える免疫障害、例えば、多発性硬化症などの自己免疫障害を有する対象は、髄腔内注射によって、脳室内注射によって、皮下投与によって、または静脈内投与によって治療される。腸に影響を与える免疫障害、例えば、炎症性腸疾患などの炎症性障害を有する対象は、本発明の経口または皮下投与により治療される。いくつかの実施形態では、肝臓または腎臓の炎症に影響を与える炎症状態は、本発明の皮下または静脈内投与により治療される。いくつかの実施形態では、関節炎症、例えば、関節リウマチまたは乾癬性関節炎は、本発明の直接滑膜注射または局所投与により治療される。いくつかの実施形態では、例えば乾癬を有する対象における皮膚の炎症は、本発明の局所投与により治療される。いくつかの実施形態では、例えば、角膜移植後またはブドウ膜炎における眼の炎症は、本発明の局所または硝子体内または網膜下またはインプラント投与により治療される。いくつかの実施形態では、狼瘡を有する対象は、本発明の皮下投与により治療される。いくつかの実施形態では、投与様式は、組織特異性を達成するために、すなわち、標的組織における標的タンパク質レベル(例えば、PD-L1)を上方制御して、抗病原体免疫の抑制の可能性を最小化するように選択される。いくつかの実施形態では、適切な投与様式は、当業者により、入手可能な文献及び所与の状態に関する当業者の知識に基づいて選択される。
【0186】
いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物は、免疫抑制療法と組み合わせて使用される。免疫抑制療法は、免疫系を抑制する任意の治療を含むことができる。免疫抑制療法は、レシピエントにおける移植拒絶を緩和、最小化、または排除するのに役立ち得る。例えば、免疫抑制療法は、免疫抑制薬を含むことができる。移植前、移植中、及び/または移植後に使用することができる免疫抑制薬としては、例えば、MMF(ミコフェノール酸モフェチル(Cellcept))、ATG(抗胸腺細胞グロブリン)、抗CD154(CD4OL)、抗CD40(2C10、ASKP1240、CCFZ533X2201)、アレムツズマブ(Campath)、抗CD20(リツキシマブ)、抗IL-6R抗体(トシリズマブ、Actemra)、抗IL-6抗体(サリルマブ、オロキズマブ(olokizumab))、CTLA4-Ig(アバタセプト/オレンシア)、ベラタセプト(LEA29Y)、シロリムス(Rapimune)、エベロリムス、タクロリムス(Prograf)、ダクリズマブ(Ze-napax)、バシリキシマブ(Simulect)、インフリキシマブ(Remicade)、シクロスポリン、デオキシスパガリン、可溶性補体受容体1、コブラ毒因子、コンプスタチン、抗C5抗体(エクリズマブ/Soliris)、メチルプレドニゾロン、FTY720、エベロリムス、レフルノミド、抗IL-2R-Ab、ラパマイシン、抗CXCR3抗体、抗ICOS抗体、抗OX40抗体、及び抗CD122抗体、が挙げられる。いくつかの実施形態では、2つ以上の免疫抑制剤または薬物が一緒にまたは連続して使用される。免疫抑制はまた、全身照射、胸腺照射、及び脾臓全摘出術及び/または部分的脾臓摘出術を含むがこれらに限定されない非薬物レジメンを使用して達成することができる。これらの技術はまた、必要に応じて、本発明の方法及び組成物と併せて、1つまたは複数の免疫抑制薬と組み合わせて使用することができる。
【0187】
スプライシングを調節する追加のASOを同定する方法
また、本発明の範囲内にあるのは、AICプレmRNA、具体的には選択的イントロンのスプライシングを調節する(例えば、阻害または増強する)追加のASOを同定(決定)するための方法である。いくつかの実施形態では、標的AICプレmRNAは、ARHGAP23、BRD1、DCHS1、EPB41L2、GPX8、HIVEP3、INVS、KIAA0319、NAIP、CD274、PTCH2、PTPRZ1、SON、ZCCHC2から選択される遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、本発明の範囲内にあるのは、CD274 AICプレmRNA、具体的には選択的イントロンのスプライシングを調節する(例えば、阻害または増強する)追加のASOを同定(決定)するための方法である。プレmRNAの標的領域内の異なるヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするASOをスクリーニングして、選択的イントロンのスプライシングの速度及び/または範囲を調節する(例えば、減じるまたは改善する)ASOを同定(決定)することができる。いくつかの実施形態では、ASOは、スプライシングリプレッサー(複数可)/サイレンサーの結合を促進し得る。いくつかの実施形態では、ASOは、スプライシングリプレッサー(複数可)/サイレンサーの結合部位(複数可)を遮断または妨害し得る。当技術分野において既知の任意の方法を使用して、プレmRNAの標的領域にハイブリダイズしたときに所望の効果(例えば、増強されたタンパク質または機能的RNA産生)をもたらすASOを同定(決定)することができる。また、これらの方法を使用して、選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分の上流のイントロンにおける、選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンの第2部分の下流のイントロンにおける、エクソンの第1部分における、エクソンの第2部分における、または選択的イントロンにおける、標的化領域に結合することにより、選択的イントロンのスプライシングを調節するASOを特定することができる。使用できる方法の例を以下に提供する。
【0188】
ASO「walk」と呼ばれる、1ラウンドのスクリーニングを、プレmRNAの標的領域にハイブリダイズするように設計されたASOを使用して実行してもよい。例えば、ASO walkで使用されるASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位のおよそ100ヌクレオチド上流(例えば、標的イントロンもしくは選択的イントロンの上流に位置するエクソンの配列の一部、または選択的イントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンの第1の部分の配列の一部)から、選択的イントロンの5’スプライス部位のおよそ100ヌクレオチド下流まで、及び/または、選択的イントロンの3’スプライス部位のおよそ100ヌクレオチド上流から、選択的イントロンの3’スプライス部位のおよそ100ヌクレオチド下流(例えば、標的イントロンもしくは選択的イントロンの下流に位置するエクソンの配列の一部、または選択的イントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンの第2の部分の配列の一部)まで、5ヌクレオチドごとにタイル表示することができる。例えば、15ヌクレオチド長の第1のASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に対して+1~+15ヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするように設計され得る。第2のASOは、選択的イントロンの5’スプライス部位に対して+6~+20ヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするように設計されている。ASOは、プレmRNAの標的領域に跨るように設計されている。いくつかの実施形態では、ASOは、より密接に、例えば、1、2、3、または4ヌクレオチドごとにタイル表示することができる。さらに、ASOは、5’スプライス部位の下流の100ヌクレオチドから3’スプライス部位の上流の100ヌクレオチドまでタイル表示することができる。
【0189】
1つもしくは複数のASOまたは対照ASO(標的領域にハイブリダイズするとは予想されていない配列である、スクランブル配列を有するASO)は、例えば、トランスフェクションによって、標的プレmRNA(例えば、本明細書の他の場所に記載されているAICプレmRNA)を発現する疾患関連細胞株に送達される。ASOのそれぞれのスプライシング調節効果(例えば、スプライシング阻害効果またはスプライシング誘導効果)は、当技術分野における既知の方法、例えば、スプライスジャンクションに跨るプライマーを使用する逆転写酵素(RT)-PCRによって評価され得る。対照ASO処理細胞と比較して、ASO処理細胞におけるスプライスジャンクションに跨るプライマーを使用して産生されたRT-PCR産物の増加は、標的イントロンのスプライシングが阻害されたことを示している。対照ASO処理細胞と比較して、ASO処理細胞におけるスプライスジャンクションに跨るプライマーを使用して産生されたRT-PCR産物の減少または不存在は、標的イントロンのスプライシングが増強されたことを示している。実施例2に記載されるように、RT-PCRはまた、スプライスジャンクションに隣接しているプライマーを使用し得る。RT-PCR産物は、スプライシングイベントの不存在もしくは存在またはスプライスジャンクションの変更もしくは追加のために、異なるサイズであり得る。例えば、より小さなRT-PCR産物の存在は、追加のスプライシングイベントが起こったこと、またはスプライシングイベントが異なる位置で発生したことを示している場合がある。より小さいRT-PCR産物は、選択的イントロンがスプライスアウトされたことを示している場合がある。
【0190】
いくつかの実施形態では、スプライシング効率、スプライスされたプレmRNAのスプライシングされていないプレmRNAに対する比、スプライシングの速度、またはスプライシングの範囲を、本明細書に記載のASOを使用して調節する(例えば、減じるまたは改善する)ことができる。標的プレmRNAによってコードされるタンパク質または機能的RNAの量を評価して、各ASOが所望の効果(例えば、タンパク質産生の増強)を達成したかどうかを判定することもできる。qPCR、RT-PCR、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、及びELISAなど、RNAまたはタンパク質産生を評価及び/または定量化するための当技術分野において既知である任意の方法を使用することができる。
【0191】
ASO「micro-walk」と呼ばれる、第2のラウンドのスクリーニングを、プレmRNAの標的領域にハイブリダイズするように設計されたASOを使用して実行してもよい。ASO micro-walkで使用されるASOは、1ヌクレオチドごとにタイル表示されて、ASOによりハイブリダイズされると、スプライシングが変調する(例えば、阻害または強化される)プレmRNAのヌクレオチド酸配列をさらに精密化する。
【0192】
標的イントロンのスプライシングを阻害または促進するASOによって定義される領域を、1ヌクレオチドステップで間隔を空けたASO、ならびに典型的には18~25ヌクレオチドのより長いASOを伴うASO「micro-walk」によってより詳細に調査する。
【0193】
上記でASO walkについて説明したように、ASO micro-walkを、1つまたは複数のASO、または対照ASO(標的領域にハイブリダイズするとは予想されていない配列である、スクランブル配列を有するASO)を、例えばトランスフェクションによって標的プレmRNAを発現する疾患関連細胞株へ送達することにより実行する。それぞれのASOのスプライシング阻害効果またはスプライシング誘導効果は、当技術分野における既知の方法、例えば、スプライスジャンクションに跨るプライマーを使用する逆転写酵素(RT)-PCRによって評価され得る。対照ASO処理細胞と比較して、ASO処理細胞におけるスプライスジャンクションに跨るプライマーを使用して産生されたRT-PCR産物の増加は、標的イントロンのスプライシングが阻害されたことを示している。対照ASO処理細胞と比較して、ASO処理細胞におけるスプライスジャンクションに跨るプライマーを使用して産生されたRT-PCR産物の減少または不存在は、標的イントロンのスプライシングが増強されたことを示している。実施例2に記載されるように、RT-PCRはまた、スプライスジャンクションに隣接しているプライマーを使用し得る。RT-PCR産物は、スプライシングイベントの不存在もしくは存在またはスプライスジャンクションの変更もしくは追加のために、異なるサイズであり得る。例えば、より小さなRT-PCR産物の存在は、追加のスプライシングイベントが起こったこと、またはスプライシングイベントが異なる位置で発生したことを示している場合がある。より小さいRT-PCR産物は、選択的イントロンがスプライスされたことを示している場合がある。いくつかの実施形態では、スプライシング効率、スプライスされたプレmRNAに対するスプライシングされていないプレmRNAの比、スプライシングの速度、またはスプライシングの範囲を、本明細書に記載のASOを使用して調節する(例えば、減じるまたは改善する)ことができる。標的プレmRNAによってコードされるタンパク質または機能RNAの量を評価して、各ASOが所望の効果(例えば、タンパク質産生の増強)を達成したかどうかを判定することもできる。qPCR、RT-PCR、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、及びELISAなど、RNAまたはタンパク質産生を評価及び/または定量化するための当技術分野において既知である任意の方法を使用することができる。
【0194】
プレmRNAの領域にハイブリダイズしたときに、スプライシングの調節(例えば、スプライシングの阻害または増強)及びタンパク質産生の調節(例えば、タンパク質産生の増加または減少)をもたらすASOは、動物モデル、例えば、完全長ヒト遺伝子がノックインされたトランスジェニックマウスモデルまたは疾患のヒト化マウスモデルを使用して、インビボで試験され得る。ASOの投与のための好適な経路は、ASOの送達が望まれる疾患及び/または細胞型に応じて変化し得る。ASOは、例えば、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、経口投与、滑膜注射、硝子体内投与、網膜下注射、局所適用、移植、または静脈内注射によって投与してもよい。投与後に、モデル動物の細胞、組織、及び/または臓器を評価して、例えば、当技術分野において既知でありかつ本明細書に記載の方法によって、スプライシング(効率、速度、範囲)及びタンパク質産生を評価することにより、ASO治療の効果を判定することができる。動物モデルはまた、疾患または疾患重症度の任意の表現型指標または行動指標であり得る。
【0195】
本発明の好適な実施形態が本明細書に示され記載されたが、そのような実施形態は、ほんの一例として提供されることが当業者に自明であろう。ここで、当業者は、多数の変化形、変更、及び置換を本発明から逸脱することなく想定するであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替手段が、本発明の実施において使用され得ることを理解すべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲に含まれる方法及び構造、ならびにそれらの等価物が、それにより包含されることが意図される。
【実施例
【0196】
本開示を以下の実施例によってより具体的に例証する。しかしながら、本発明は、これらの実施例によっていかなる方法でも限定されないことを理解すべきである。
【0197】
実施例1:次世代シーケンシングを使用したRNAseqによるCD274転写物における選択的イントロンの同定
全トランスクリプトームショットガンシーケンシングを、次世代シーケンシングを使用して実行し、CD274遺伝子によって産生された転写物のスナップショットを明らかにして、選択的イントロンを同定することができる。この目的のために、AST(ヒト星状細胞)細胞の核及び細胞質画分からのポリA+ RNAを単離し、IlluminaのTruSeq Stranded mRNAライブラリー調製キットを使用してcDNAライブラリーを構築することができる。ライブラリーはペアエンドシーケンシングが可能であり、これにより、100ヌクレオチドのリードが可能になり、ヒトゲノムにマッピングすることができる。マッピングされたリードは、UCSCゲノムブラウザー(UCSC Genome Informatics Group(Center for Biomolecular Science & Engineering, University of California, Santa Cruz, 1156 High Street, Santa Cruz, CA 95064)によって運営され、例えば、Rosenbloom, et al., 2015, “The UCSC Genome Browser database: 2015 update,” Nucleic Acids Research 43, Database Issue, doi: 10.1093/nar/gku1177に記載されている)を使用して視覚化され、カバレッジ及びリード数を、ピークシグナルによって推測することができる。シーケンシングリードに基づいて、CD274におけるエクソン4は潜在的な選択的イントロンを有すると同定された。選択的イントロン構築物の概略図を図1に示す。機能的タンパク質をコードするmRNA配列は110とラベル付けされている。配列110は、3つのエクソン、すなわち101、103~105、及び107で構成されている。イントロン102及び106はスプライスアウトされており、構築物110の一部ではない。しかし、120とラベル付けされたmRNAの代替形態が生成される場合があり、これにより未成熟終止コドン(PTC)が生じ、したがってこれは機能的タンパク質をコードしない。この代替mRNAは、代わりに101、103、105、及び107で構成されおり、104(構築物110のエクソンの一部)が「選択的イントロン」としてスプライスアウトされる。
【0198】
実施例2:エクソン4における選択的イントロンのインビトロ観察。
PCRプライマーは、エクソン4及びエクソン6と相同性を伴って設計されており、RT-PCR反応を実行して、Huh7細胞におけるmRNA転写物に関連するアンプリコンを生成する。全RNA(ラベルT)、ならびに核(ラベルN)及び細胞質(ラベルC)に対応する分画細胞からのRNAを使用して増幅反応を実行して、mRNA転写物のアンプリコンを生成する。アンプリコンをポリアクリルアミドゲル上で泳動させて、異なるPCR産物の強度を観察することができる。「選択的イントロン」(a.i.)の除去から生じる産物は、完全長の機能的mRNA転写物(canとラベル付けされている)に対応する産物よりもゲル上で低く、サイズが小さいことが観察される。a.i.除去のレベルを視覚化するために、細胞をシクロヘキシミド(CHX)またはDMSO対照により処理した。翻訳阻害剤であるCHXは、a.i.の除去がPTCの導入につながるため、通常は選択的イントロンを欠くmRNAを分解するナンセンス変異依存性mRNA分解機構(nonsense-mediated mRNA decay)を阻害する。図2Aは、can及びa.i.産物のゲルならびに概略図を示している。図2Bは、合計(CAN+a.i.)に対するa.i.の除去から得られる産物の存在量パーセントを示す。図2Cは、2つのヒト細胞株(ARPE-19及びHUVEC)及び非ヒト霊長類網膜(cyno網膜)における合計に対するa.i.の除去から得られる産物のゲル、概略図、及び存在量パーセントを示す。
【0199】
実施例3:CD274のエクソン4を標的化するASO-walkの設計
ASO walkを、エクソン4(配列番号1~67)を標的化するように設計した。ヌクレオチド+68~+253に跨る領域を、5ヌクレオチド間隔でシフトされた2’-O-MOE RNA、PS骨格、18-mer ASOを用いて標的化した。図3は、このASO walkを示しており、黒いボックスそれぞれは、ASOの範囲を示し、黒いブロックの下に示されている配列は、エクソン4の標的配列を示している。各ブロックは18ヌクレオチドに跨り、18ヌクレオチドのASOを表し、5ヌクレオチド離れて開始して、5ヌクレオチド間隔の「walk」を表す。
【0200】
実施例4:CD274のエクソン4を標的化するASO-walkのスクリーニング
実施例3からのASOを、ARPE-19細胞を使用してスクリーニングした。ASOを、図3に示す80nMのASOを使用してARPE-19細胞に24時間トランスフェクトした。RT-PCR産物を、エクソン4及びエクソン6におけるプライマーを使用して増幅させ、ポリアクリルアミドゲル上で泳動させた。図4Aは、完全長can mRNAに対応するより高いバンド、及びより短いa.i.mRNAに対応するより低いバンドを示す。図4Bは、選択的イントロンのパーセンテージとしてプロットされたRT-PCR産物の定量化を示す(a.i./(can+a.i.)*100)。a.i.の相対的存在量が減少した場合、ASOは潜在的候補として示された。例えば、ASO34による処理は、対照(モック(mock))と比較して相対的な存在量の減少と相関している。図4Cは、パネルAのサンプルからのRNAを使用したTaqman qPCR分析を示す。Taqmanプローブはエクソン3-エクソン4ジャンクション上に配置されている。観察されたように、CD247 mRNAの発現は、a.i.転写物の相対的な存在量と一般的に逆相関がある。例えば、ASO34は、対照と比較してCD247発現の増加を示している。
【0201】
実施例5:ASO活性の測定
選択したASOを、80nMのASOを使用してHuh7細胞に21時間トランスフェクトした。複数のアッセイを使用して、選択したASOの一般的な活性を決定した。図5Aは、選択されたた80nM ASOにより21時間トランスフェクトし、それに続いて3時間のシクロヘキシミド処理を行ったHuh7細胞からのRNAを使用したRT-PCRを示す。プライマーを、エクソン4及び6に配置した。図5Bは、選択的イントロンのパーセンテージとしてプロットされたRT-PCR産物の定量化を示す(a.i./(can+a.i.)*100)。ASO34により、a.i.産物の量の減少がもたらされた。これは図5Bで観察され、a.i.に対応するバンドの強度は、モックトランスフェクト細胞と比較して、ASO34トランスフェクト細胞では低くなっている。図5Cは、24時間トランスフェクトされたHuh7細胞からのRNAを使用したTaqMan qPCR分析を使用して、モックと比較した80nMのASOの活性を定量化したことを示す。TaqMan qPCRプローブを、エクソン3-4ジャンクション上に配置した。結果は、モックトランスフェクト細胞と比較して、ASO34トランスフェクト細胞における完全長can mRNAの相対的存在量が高いことを示している。図5Dは、PD-L1タンパク質の発現を定量化するために、対照(モック)に対する倍率変化としてプロットされた、80nM ASO34により5日間トランスフェクトされたHuh7細胞のフローサイトメトリー分析の平均蛍光強度を示す。
【表2】
【0202】
実施例6:種々の遺伝子転写物における選択的イントロン
全トランスクリプトームショットガンシーケンシングを、次世代シーケンシングを使用して実行し、遺伝子によって産生された転写物のスナップショットを明らかにして、選択的イントロンを同定することができる。実施例1にも記載されているように、IlluminaのTruSeq Stranded mRNAライブラリー調製キットを使用して、細胞を単離し、cDNAライブラリーを構築することができる。ライブラリーを分析し、シーケンシングリードに基づいて、他の遺伝子におけるエクソンが潜在的な選択的イントロンを有すると同定することができる。
ASO walkを、実施例3と同様に5ヌクレオチド間隔でシフトされた2’-O-MOE RNA、PS骨格、18-mer ASOを使用して同定されたエクソンを標的化するように設計することができる。次に、実施例4の例示的なスクリーニング方法を介してASOをバリデーションすることができ、次に、このASOを使用して、mRNA転写物への選択的イントロンイベントの包含を防止または促進することができる。ASOをマウスモデルにさらに注射して、活性及び発現の増加を確認することができる。種々の動物疾患モデルを使用して、標的タンパク質の発現増加をバリデーションすることができる。表3は、上記で説明した方法で標的化することができる遺伝子の一部の例を提供する。表3に列挙されている遺伝子は、選択的イントロンを構成することが知られている。標的エクソンに加えて、遺伝子の染色体座標が提供されている。表3にはまた、遺伝子の発現の増加によって治療することができるいくつかの例示的な疾患を列挙している。表3に提供されている配列及び染色体座標は、GRCh38/hg38アセンブリから生成されている。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0203】
本開示の好ましい実施形態を示し、本明細書に記載しているが、そのような実施形態が、例示として提供されるにすぎないことは当業者に明らかである。そして、当業者は、本開示から逸脱することなく、数多くの変形、変更及び置換を思いつくであろう。本開示を実施する際には、本明細書に記載されている本開示の実施形態に対する種々の代替物を用いてよいことを理解すべきである。以下の特許請求の範囲が本開示の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲の方法及び構造ならびにそれらの均等物がそれにより包含されることが意図されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
【配列表】
2022532998000001.app
【国際調査報告】