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特表2022-533018構造が最適化されたシリコン粒子を有するトリクロロシランの製造方法
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  • 特表-構造が最適化されたシリコン粒子を有するトリクロロシランの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】構造が最適化されたシリコン粒子を有するトリクロロシランの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/107 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
C01B33/107 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564378
(86)(22)【出願日】2019-04-29
(85)【翻訳文提出日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019060941
(87)【国際公開番号】W WO2020221421
(87)【国際公開日】2020-11-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】カール-ハインツ、リンベック
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA11
4G072AA14
4G072BB20
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH01
4G072HH08
4G072JJ01
4G072LL01
4G072MM01
4G072RR03
4G072RR11
4G072RR13
4G072RR17
4G072UU01
4G072UU02
(57)【要約】
本発明は、
一般式1
SiCl4-n (1)
(式中、nは1~4である。)
のクロロシランを流動床反応器中において製造するための方法であって、
水素及び四塩化シリコンを含有する反応ガスを、シリコンを含有する粒状接触剤と350℃~800℃の温度で反応させ、流動床反応器に導入された、造粒物又は造粒混合物の意味として理解される操作造粒物が、構造パラメータSにより表されるシリコン含有粒子Sを少なくとも1質量%含有し、
Sが、少なくとも0の値を有し、下記式:
【数1】
(式中、
φは対称性-加重真球度係数であり、
ρSDは充填密度[g/cm]であり、
ρは平均粒子固体密度[g/cm]である。)
により算出されるものである、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1
SiCl4-n (1)
(式中、nは1~3である。)
のクロロシランを流動床反応器中において製造するための方法であって、
水素及び四塩化シリコンを含有する反応ガスを、シリコンを含有する粒状接触剤と350℃~800℃の温度で反応させ、流動床反応器に導入された、造粒物又は造粒混合物の意味として理解される操作造粒物が、構造パラメータSにより表されるシリコン含有粒子Sを少なくとも1質量%含有し、
Sが、少なくとも0の値を有し、下記式:
【数1】
(式中、
φは対称性-加重真球度係数であり、
ρSDは充填密度[g/cm]であり、
ρは平均粒子固体密度[g/cm]である。)
により算出されるものである、方法。
【請求項2】
前記粒子Sの前記対称性-加重真球度係数φが0.70~1であり、前記粒子の真球度が粒子画像の表面積と外周との割合を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
構造パラメータS≧0を有する前記粒子の前記平均粒子固体密度ρが2.20~2.70g/cmであり、同定をDIN 66137-2:2019-03に従って実施する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記操作造粒物が70~1500μmの粒径パラメータd50を有し、前記粒径パラメータをDIN ISO 9276-2に従って同定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応器への導入の前に、前記反応ガスが少なくとも10体積%の水素及び四塩化シリコンを有することが好ましい、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
水素と四塩化シリコンとのモル比が1:1~10:1である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
製造される前記一般式1のクロロシランがトリクロロシラン(TCS)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床反応器中で、水素及び四塩化シリコンを含有する反応ガスと、構造が最適化されたシリコン粒子を含有する粒状シリコン接触剤とから、クロロシランを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ又は太陽電池を製造するための出発物質としての多結晶シリコンは、典型的には揮発性ハロゲン化合物、特にトリクロロシラン(TCS、HSiCl)の分解によって製造される。
【0003】
多結晶シリコン(ポリシリコン)はシーメンス法によってロッド状の形態に製造することができ、この場合、多結晶シリコンは反応器内で加熱されたフィラメントロッド上に堆積する。使用するプロセスガスは、典型的にはTCSと水素との混合物である。あるいは、多結晶シリコン造粒物を流動床反応器内で製造することができる。シリコン粒子は、ガス流によって流動床内で流動化し、このガス流は加熱装置によって高温に加熱される。TCS等のシリコン含有反応ガスを添加することで、高温の粒子表面にて熱分解反応が起こるため、粒径は増加する。
【0004】
クロロシラン、特にTCSの製造は、本質的に3つの工程によって実施することができ、国際公開2016/198264A1によれば、以下の反応に基づくものである。
(1)Si+3HCl→SiHCl+H+副生成物
(2)Si+3SiCl+2H→4SiHCl+副生成物
(3)SiCl+H→SiHCl+HCl+副生成物
【0005】
反応(1)による塩化水素化(HC)によれば、流動床反応器内で塩化水素(HCl)を添加することによってシリコン(典型的には冶金シリコン(Simg))からクロロシランを製造することができ、反応は発熱的に進行する。本工程では一般に、TCS及びSTCが主生成物として得られる。
【0006】
クロロシラン、特にTCSを製造する更なる選択肢としては、触媒の存在下又は不存在下における、気相でのSTC及び水素の熱変換がある。
【0007】
反応(2)による低温変換(LTC)は、弱吸熱工程であり、典型的には触媒(例えば、銅含有触媒又は触媒混合物)の存在下で行われる。LTCは、流動床反応器内において、Simgの存在下、高圧(0.5~5MPa)、400~700℃で実施することができる。無触媒反応モードでは、Simgの使用及び/又は反応ガスへのHClの添加をすることができる。しかしながら、他の生成物分布が生じる可能性があり、及び/又は、触媒を使用した場合よりも低いTCS選択性が得られる場合がある。
【0008】
反応(3)による高温変換は、吸熱工程である。本工程は、典型的には反応容器内において高圧下、600~1200℃で実施される。
【0009】
公知の方法は原理的にコストが掛かり、エネルギーを大量に消費する。必要なエネルギー投入は、通常は電気的手段によって行われており、著しいコスト要因となっている。流動床反応器内におけるLTCの運転性能は、調整可能な反応パラメータに依存するのみならず、とりわけ使用される原料に決定的に依存する。連続プロセスモードではさらに、反応物であるシリコン、水素及びSTC並びに所望によりHClを上記の反応条件で反応器内に導入する必要があり、これには相当の技術的な複雑さを伴う。このような背景に対して、可能な限り高い生産性(単位時間及び反応体積当たりに生成するクロロシランの量)、及び所望の目的生成物(典型的にはTCS)に基づく可能な限り高い選択性(TCS選択性-加重生産性)を実現することが重要である。
【0010】
LTCの性能に影響を及ぼす最重要パラメータは、原則としてTCS選択性、シリコン利用率、及び副生成物の形成である。
【0011】
HC及びMRDSを介してクロロシランを合成するための化学組成及び粒径分布に関してシリコンに要求されることは比較的よく研究されている。対照的に、シリコン粒子の構造的組成、及び、ハロゲン化物含有反応ガスとの反応に対する該構造的組成の影響は、これまでに金属間化合物相に関して、特にMRDSに関してしか説明されていない。LTCを介して、特に高生産量のクロロシランを製造する工程を操作するために、3つの影響要因すべてがどのように相互作用しなければならないかは、これまでに説明されていない。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、LTCを介してクロロシランを製造するための特に経済的な方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、一般式1
SiCl4-n (1)
(式中、nは1~3である。)
のクロロシランを流動床反応器中において製造するための方法であって、
水素及び四塩化シリコンを含有する反応ガスを、シリコンを含有する粒状接触剤と350℃~800℃の温度で反応させ、流動床反応器に導入された、造粒物又は造粒混合物の意味として理解される操作造粒物(operating granulation)が、構造パラメータSにより表されるシリコン含有粒子Sを少なくとも1質量%含有し、
Sが、少なくとも0の値を有し、下記式:
【数1】
(式中、
φは対称性-加重真球度係数であり、
ρSDは充填密度[g/cm]であり、
ρは平均粒子固体密度[g/cm]である。)
により算出されるものである、方法を提供する。
【0014】
今般、驚くべきことに、一定の構造的特徴を有するシリコン含有粒子を操作造粒物で使用すると、流動床反応器中におけるクロロシランの製造を特に経済的に実施できるとの知見を得た。この効果は、操作造粒物において、構造が最適化されたシリコン粒子が1質量%を超える割合で、顕著に見られることを見出した。このようなシリコン粒子を厳密に使用することで、摩耗により粉塵が形成されることが減少し、Lobusevich,N.Pら著「直接合成における触媒中のシリコン及び銅の分散の効果」、Khimiya Kremniiorganich. Soed.1988,27に記載されているような70μm未満の粉塵画分が製造工程で継続的に減少する。これにより、従来技術に対する利点が幾つも生じる。
・TCS選択性が一層高くなる。
・シリコン利用率が一層高くなる(粉塵の排出による損失が一層小さくなる)。
・接触剤の粒径分布が一層均質になり、それに伴い流動床の流体力学的特性が改善する。
・微粉化粒子又は粉塵画分(粒径70μm未満の粒子)が凝集し、工場の一部が封鎖及び/又は閉塞することが減少する。
・粒子混合物の搬送性が改善する。
・摩耗の減少によって反応器の運転可能時間が延びる(工場の利用可能性が一層高くなる)。
【0015】
クロロシランの製造においては、平均粒径が増加した造粒混合物に対してのみTCS選択性が増加する、というLobusevichらの先入観も、克服される。これは、本発明によれば構造パラメータSが0以上の粒子Sが、好ましくは構造パラメータSが0未満の粒子よりも小さい平均粒径を有するため、操作造粒物の平均粒径が小さくなるからである。驚くべきことに、比較的小さなシリコン粒子が反応器から排出されることが増加したり、凝集効果が発生したりするといった、現在の技術常識によって予想された、平均粒径を小さくすることの負の効果は観察されなかった。対照的に、本発明の方法では、前述の利点に加えて、接触剤の流動化特性が改善した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一例として、本発明の方法を実施するための流動床反応器1を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「造粒物」という用語は、例えばシリコン含有溶融物のいわゆる微粒化若しくは造粒で、及び/又は粉砕工場及び製粉工場によるシリコン塊の粉砕で、製造可能なシリコン含有粒子の混合物という意味として理解されるべきである。シリコン塊は好ましくは平均粒径10mm超、特に好ましくは20mm超、特に50mm超でよい。造粒物は基本的に、篩い掛け(sieving)及び/又は篩い分け(sifting)により画分に分類できる。
【0018】
異なる造粒物の混合物は造粒混合物と記載でき、造粒混合物を構成する造粒物は造粒画分と記載できる。例えば粗粒子画分と微粒子画分とのように、1以上の画分の特性に従って造粒画分を互いに等級分けできる。造粒混合物は原則的には、定義された相対的画分において1より多い造粒画分に等級分けできる。
【0019】
操作造粒物(operating granulation)は、流動床反応器に導入された、造粒物又は造粒混合物を表している。
【0020】
対称性-加重真球度係数φは、対称性係数と真球度との積である。どちらの形状パラメータもISO 13322に従い動的画像解析により決定でき、これにより得られた値は、操作造粒物の粒子混合物に関連する個々の試料についての、体積加重平均を表す。
【0021】
粒子Sの対称性-加重真球度係数は、小さくとも0.70が好ましく、小さくとも0.72が特に好ましく、小さくとも0.75が極めて特に好ましく、特に小さくとも0.77であり、最大でも1である。
【0022】
粒子の真球度は、粒子画像の表面積と外周との割合を表す。このように、球状の粒子は1に近い真球度を有し得る一方、尖っていて不規則な粒子画像は0に近い真円度を有し得る。
【0023】
粒子の対称性係数を決定する際は、先ず粒子画像の重心を決定する。次いで、個々の重心を通る端から端までの経路を各測定方向で描き、得られる2つの経路区間の割合を測定する。これらの半径の最小割合から、対称性係数の値を計算する。円又は正方形等の対称性の高い図形の場合は、個々の対称性係数の値は1に等しい。
【0024】
動的画像解析により決定できる更なる形状パラメータとして、粒子の幅/長さ比(粒子の延長/伸長の尺度)と粒子の凸性とがある。しかしながら、これらのパラメータは既に対称性係数という形で構造パラメータSに間接的に含まれているので、本発明の方法では決める必要がない。
【0025】
充填密度は、粒子の固体(いわゆるバルク固体)と、粒子間の隙間を満たす連続流体(例えば空気)との混合物の密度として定義される。構造パラメータSが0以上の操作造粒物の粒子画分の充填密度は、0.8~2.0g/cmが好ましく、1.0~1.8g/cmが特に好ましく、1.1~1.6g/cmが極めて特に好ましく、特に1.2~1.5g/cmである。充填密度は、バルク材料の占有体積に対するバルク材料の質量の割合によって、DIN ISO 697に従い決定できる。
【0026】
構造パラメータSが0以上の粒子画分の粒子の平均質量-加重粒子固体密度は、2.20~2.70g/cmが好ましく、2.25~2.60g/cmが特に好ましく、2.30~2.40g/cmが極めて特に好ましく、特に2.31~2.38g/cmである。固形物質の密度の同定はDIN 66137-2:2019-03に記載されている。
【0027】
操作造粒物において、構造パラメータSが0以上の粒子画分は、質量画分中に少なくとも1質量%存在することが好ましく、少なくとも5質量%存在することが特に好ましく、少なくとも10質量%存在することが極めて特に好ましく、特に少なくとも20質量%存在する。
【0028】
Sが0以上の粒子は、Sが0未満の粒子の粒径パラメータd50の、0.5倍~0.9倍の粒径パラメータd50を有することが好ましい。
【0029】
操作造粒物は70~1500μmの粒径パラメータd50を有することが好ましく、80~1000μmの粒径パラメータd50を有することが特に好ましく、100~800μmの粒径パラメータd50を有することが極めて特に好ましく、特に120~600μmの粒径パラメータd50を有する。
【0030】
粒径パラメータd90とd10との差は、造粒物又は造粒画分の幅の尺度である。造粒物又は造粒画分の幅と各粒径パラメータd50との商が、相対幅に対応する。相対幅は例えば、極めて異なる平均粒径を有する粒径分布同士の比較に用いることができる。
【0031】
操作造粒物における造粒物の相対幅は、0.1~500が好ましく、0.25~100が好ましく、0.5~50が特に好ましく、特に0.75~10である。
【0032】
粒径及び粒径分布は、ISO 13320(レーザー回折)及び/又はISO 13322(画像分析)に従って決定できる。粒径パラメータは、DIN ISO 9276-2に従い、粒径分布から計算できる。
【0033】
更に好ましい実施形態において、操作造粒物は80~1800cm/gの質量-加重表面積を有し、100~600cm/gの質量-加重表面積を有することが好ましく、120~500cm/gの質量-加重表面積を有することが特に好ましく、特に150~350cm/gの質量-加重表面積を有する。
【0034】
操作造粒物の造粒混合物は、p峰性体積-加重分布密度関数を有することが好ましく、p=1~10であり、p=1~6が好ましく、p=1~3が特に好ましく、特にp=1又は2である。例えば、2峰性分布密度関数は2つの極大値を有する。
【0035】
多峰性(例えばp=5~10)の分布密度関数を有する造粒混合物の接触剤を使用すると、篩効果(流動床中、例えば二連流動床中における個々の粒子画分の分離)を避けることができる。篩効果は、造粒混合物の分布密度関数の極大値が遠く離れているときに特に生じる。
【0036】
接触剤は特に、反応ガスと接触している造粒混合物である。接触剤は更なる成分を含まないことが好ましい。接触剤は、多くとも5質量%、特に好ましくは多くとも2質量%、特に多くとも1質量%の他の元素を不純物として含むシリコン含有造粒混合物であることが好ましい。接触剤は典型的には純度98%~99.9%のSimgであることが好ましい。典型的な接触剤は、例えば98質量%のシリコン金属を含む組成物であり、残り2質量%は、一般的にはFe、Ca、Al、Ti、Cu、Mn、Cr、V、Ni、Mg、B、C、P及びOから選択される元素から大部分が構成される。接触剤は、Co、W、Mo、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Zr、Ge、Sn、Pb、Zn、Cd、Sr、Ba、Y及びClから選択される元素を含んでもよい。75質量%~98質量%という一層低純度のシリコンを使用することもできる。しかし、シリコン金属の割合は75質量%超が好ましく、85質量%超が好ましく、95質量%超が特に好ましい。
【0037】
シリコン中に不純物として存在する元素には、触媒活性を有するものがある。従って、触媒の添加は原則として要しない。しかしながら、本方法は、追加の触媒の存在により、特に選択性に関して積極的に影響を受け得る。
【0038】
触媒はFe、Cr、Ni、Co、Mn、W、Mo、V、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Ti、Zr、C、Ge、Sn、Pb、Cu、Zn、Cd、Mg、Ca、Sr、Ba、B、Al、Y、Clからなる群からの1種以上の元素であってもよい。触媒はFe、Al、Ca、Ni、Mn、Cu、Zn、Sn、C、V、Ti、Cr、B、P、O、Cl及びこれらの混合物からなる群から選ばれることが好ましい。前述のように、これらの触媒活性元素は、シリコン中に、例えば酸化若しくは金属の形態で、他の冶金相中にケイ化物として、又は酸化物若しくは塩化物として、一定割合で不純物として既に存在する。その割合は、使用するシリコンの純度に依存する。
【0039】
触媒は、例えば金属、合金及び/又は塩の形態で操作造粒物及び/又は接触剤に添加することができる。この触媒は特に触媒活性元素の塩化物及び/又は酸化物であってよい。好ましい化合物は、CuCl、CuCl、CuO又はこれらの混合物である。操作造粒物は促進剤、例えばZn及び/又は塩化亜鉛を更に含んでもよい。
【0040】
使用するシリコン及び接触剤の元素組成は、例えばX線蛍光分析(XFA)、ICPに基づく分析法(ICP-MS、ICP-OES)及び/又は原子吸光分析法(AAS)で同定できる。
【0041】
触媒はシリコンに対し、好ましくは0.1質量%~20質量%、特に好ましくは0.5質量%~15質量%、特に0.8質量%~10質量%、特別に好ましくは1質量%~5質量%の割合で使用する。
【0042】
構造パラメータSが0未満の粒子画分及び0以上の粒子画分を、事前に調製した造粒混合物として、流動床反応器に供給することが好ましい。接触剤の任意の更なる成分が同様に存在してもよい。操作造粒物において構造パラメータSが0以上の画分が少なくとも1質量%という、本発明の割合によって、後に一層良好な流動特性が得られ、搬送特性が得られる。
【0043】
構造パラメータSが0未満の粒子画分及び0以上の粒子画分を、特に別個の供給導管及び容器を介して、流動床反応器に別個に供給することもできる。その後は原則として、流動床を形成するまで(原位置で)混合する。接触剤の任意の更なる成分も同様に別個に供給してもよいし、2つの粒子画分いずれかの成分として供給してもよい。
【0044】
本方法は400℃~700℃の温度で実施することが好ましく、450℃~650℃の温度で実施することが特に好ましい。流動床反応器の圧力は0.5~5MPaが好ましく、1~4MPaが特に好ましく、特に1.5~3.5MPaである。
【0045】
反応器への供給前に、反応ガスは少なくとも10体積%の水素及び四塩化シリコンを有することが好ましく、少なくとも50体積%の水素及び四塩化シリコンを有することが特に好ましく、特に少なくとも90体積%の水素及び四塩化シリコンを有する。
【0046】
水素と四塩化シリコンとのモル比は1:1~10:1が好ましく、1:1~6:1が特に好ましく、特に1:1~4:1である。
【0047】
反応ガスは更にHSiCl4-n(n=0~4)、HCl6-mSi(m=0~6)、HCl6-qSiO(q=0~4)、(CHSiCl4-u-v(u=1~4及びv=0又は1)、CH、C、CO、CO、O、Nの群から選ばれる1種以上の成分を含んでいてもよい。これらの成分は、例えば統合システムで回収した水素に由来してよい。
【0048】
特に、発熱反応モードを可能にし、反応の平衡位置に影響を及ぼすために、HCl及び/又はClを反応ガスに添加することもできる。この実施形態では、反応ガスは、反応器への導入前に存在する水素1モル当たり、0.01~1モルのHCl及び/又は0.01~1モルのClを有することが好ましい。HClはまた、回収した水素中に不純物として存在してもよい。
【0049】
反応ガスは、反応に関与しない搬送ガス、例えば窒素又はアルゴン等の希ガスを更に含んでいてもよい。
【0050】
反応ガスの組成は、反応器への供給前に、典型的にはラマン分光法及び赤外分光法、並びにガスクロマトグラフィーにより同定される。同定は、抜き取り検査の方法で抜き取った試料及びその後の「オフライン分析」、又はシステムに接続された「オンライン」分析装置のいずれかで行うことができる。
【0051】
本発明の方法で製造できる一般式1のクロロシランは、モノクロロシラン、ジクロロシラン、TCS、SiCl及びHSiClの群から選ばれる少なくとも1種のクロロシランが好ましい。TCSが特に好ましい。
【0052】
生成され得る副生成物としては、例えばモノクロロシラン(HSiCl)、ジクロロシラン(HSiCl)、四塩化シリコン(STC、SiCl)といった更なるハロシラン、並びにジ及びオリゴシランが挙げられる。炭化水素、オルガノクロロシラン、金属塩化物といった不純物も、副生成物となり得る。そのため、高純度の一般式1のクロロシランを製造するには、典型的には粗生成物の蒸留が続く。
【0053】
本発明の方法を、多結晶シリコン製造用の統合システムに取り込むことが好ましい。統合システムは特に以下の工程を有する:
- 記載の方法によりTCSを製造する工程。
- 半導体品質のTCSを提供するために、製造したTCSを精製する工程。
- 好ましくはシーメンス法により、又は造粒物として、多結晶シリコンを堆積させる工程。
- 得られた多結晶シリコンを更に加工する工程。
製造過程で発生する超高純度のシリコン粉塵をリサイクルする工程/更に多結晶シリコンを加工する工程。
【0054】
図1は、一例として、本発明の方法を実施するための流動床反応器1を示したものである。反応ガス2を、好ましくは下方から、所望により側面から(例えば、下方からのガス流に対して接線方向又は直交方向に)接触剤に吹き込み、接触剤の粒子を流動化して流動床3を形成する。反応を開始するため、一般的には反応器の外部に配置された加熱装置(図示せず)を用い、流動床3を加熱する。通常、連続操作の間は加熱を要しない。粒子の一部は、ガス流とともに流動床3から流動床3の上方の空間4内へ輸送される。空間4は、反応器出口5の方向に減少する非常に低い固体密度により特徴付けられる。
【実施例
【0055】
全ての実施例において、純度、品質、並びに二次元素及び不純物の含有量に関して同じタイプのシリコンを使用した。操作造粒物に使用した粒子画分は、Simg塊(98.9質量%のSi)の粉砕及び後に続く製粉、又は当業者にとって公知の粒状Simg(98.9質量%のSi)製造用の微粒化技術により製造した。粒子画分は、所望により篩掛け/篩分けにより等級分けした。このようにして、構造パラメータSが所定値の粒子画分を、目的の方法で製造した。続いて、これらの粒子画分を組み合わせて混合することで、構造パラメータSが0以上のシリコン含有粒子の質量画分を規定量有する接触剤を混合した。粒子画分の残部には、構造パラメータSが0未満のシリコン含有粒子が含まれていた。粒子画分は、合計すると100質量%となった。実験で使用した造粒物は、330~350μmの粒径パラメータd50を有していた。個々の実験間においてできるだけ高い相互比較性を保証するため、追加の触媒又は促進剤は添加しなかった。
【0056】
全ての実施例において以下の方法を用いた。実験中における流動床反応器の操作温度は約520℃であった。この温度を、全実験期間に亘り、加熱手段及び熱交換器を用いてほぼ一定に保持した。全実験期間に亘って流動床の高さが実質的に一定となるように、H及びSTC(モル比2.3:1)からなる反応ガスと操作造粒物の両方を添加した。全実験期間に亘り、1.5MPaの正圧で反応器を操作した。液体試料及び気体試料の両方をそれぞれ48時間及び49時間のランタイムで採取した。冷却トラップを用いて-40℃で凝縮させて、生成ガス流(クロロシランガス流)の凝縮し得る割合をガスクロマトグラフィー(GC)で分析し、その後にTCS選択性及びTCS選択性から[質量%]を測定した。検出は熱伝導度検出器を介して行った。なお、TCS選択性-加重生産性[kg/(kg×h)]、即ち、TCS選択性で重み付けした操作造粒物の反応器中での使用量[kg]に対する、1時間当たりに生成したクロロシランの量[kg/h]を、基礎として使用した。48及び49時間後に得られた値をそれぞれにおいて平均した。各運転後において、反応器を完全に空にし、操作造粒物で再充填した。
【0057】
使用した接触剤及び実験結果を表1に要約する。msとは、構造パラメータSが0超の粒子の質量画分である。
【0058】
【表1】
図1
【国際調査報告】