(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】導電性パターンの製造法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/12 20060101AFI20220713BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220713BHJP
C09D 11/52 20140101ALI20220713BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20220713BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220713BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20220713BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20220713BHJP
H05K 3/10 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H05K3/12 610B
H01B13/00 503D
C09D11/52
C09D11/30
B22F1/00 K
B22F7/04 D
B22F9/00 B
H05K3/10 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564539
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 EP2020061316
(87)【国際公開番号】W WO2020221650
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593194476
【氏名又は名称】アグフア-ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムイス,バヴォ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラールト,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デン・ボッシェ,カール
(72)【発明者】
【氏名】コルテス・サラザール,フェルナンド
【テーマコード(参考)】
4J039
4K017
4K018
5E343
5G323
【Fターム(参考)】
4J039BA39
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4K017AA03
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4K018KA33
5E343AA12
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5E343ER32
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5G323CA05
(57)【要約】
基材上に導電性銀パターンを調製する方法であって;―銀インキを基材に適用して銀パターンを形成し、そして―適用した銀パターンを1段階で少なくとも50℃の温度、そして少なくとも50%の相対湿度(RH)で焼結する工程を含んでなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に導電性銀パターンを調製する方法であって、
―銀インキを基材に適用して銀パターンを形成し;そして
―適用した銀パターンを、1段階で、少なくとも50℃の温度及び少なくとも50%の相対湿度(RH)で焼結する
工程を含んでなる前記方法。
【請求項2】
温度が少なくとも70℃である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
相対湿度が少なくとも80%である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
焼結が1分から200時間の間の期間行われる前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
期間が30分から50時間の間である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
銀インキが式IからIV
【化1】
式中
Qは置換もしくは非置換の5または6員のヘテロ芳香族環を形成するために必要な原子を表し;
Mは水素、一価のカチオン性基およびアシル基からなる群から選択され;
R1およびR2は水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換アリールまたはヘテロアリール基、ヒドロキシル基、チオエーテル、エーテル、エステル、アミド、アミン、ハロゲン、ケトンおよびアルデヒドからなる群から独立して選択され;
R1およびR2は5から7員環を形成するために必要な原子を表すことができ;
R3からR5は水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換アリールまたはヘテロアリール基、ヒドロキシル基、チオール、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、エーテル、エステル、アミド、アミン、ハロゲン、ケトン、アルデヒド、ニトリルおよびニトロ基からなる群から独立して選択され;
R4およびR5は5から7員環を形成するために必要な原子を表すことができる
に従う化学構造を有する分散安定化化合物(DSC)を含んでなる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
銀インキが式I
【化2】
式中、
Mは水素、一価のカチオン性基およびアシル基からなる群から選択され;そして
Qは5員のヘテロ芳香族環を形成するために必要な原子を表す
による分散安定化化合物を含んでなる前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
式IのMが水素である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
Qがイミダゾール;ベンズイミダゾール;チアゾール;ベンゾチアゾール;オキサゾール;ベンゾオキサゾール;1,2,3-トリアゾール;1,2,4-トリアゾール;オキサジアゾール;チアジアゾールおよびテトラゾールからなる群から選択される5員のヘテロ芳香族環である請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
分散安定化化合物がN,N-ジブチル-(2,5-ジヒドロ-5-チオキサ-1H-テトラゾール-1-イル-アセトアミド、5-ヘプチル-2-メルカプト-1,3,4-オキサジアゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、5-メチル-1,2,4-トリアゾロ-(1,5-a)ピリミジン-7-オールおよびS-[5-[(エトキシカルボニル)アミノ]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]O-エチルチオカルボネートからなる群から選択される請求項6ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
分散安定化化合物(DSC)の量が、インキ中の銀の重量に対して5重量%未満である請求項6ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
銀インキが銀インキジェットインキまたは銀スクリーンインキである前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
受容層が、銀インキを適用する前に基材に適用される前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
銀インキが、2-フェノキシエタノール、プロピレンカーボネート、プロピレングリコール、n-ブタノールおよび2-ピロリドンからなる群から選択される液体担体を含んでなる前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
基材がポリカーボネート、ポリビニルクロライド、ポリスチレンまたはポリエステル系基材である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は様々な基材上への導電性パターンの調製法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ粒子を含んでなるメタリック印刷またはコーティング液(coating fluids)における関心は、所定の金属のバルク特性と比べた場合のそれらの独自な特性により、過去数十年の間に増大した。例えば金属ナノ粒子の融点は、粒度の低下と共に下がり、印刷された電子機器、電気化学的、光学的、磁気的および生物学的応用への関心をもたらす。
【0003】
例えばインキジェット印刷により印刷できる、または高速でコートされる安定かつ濃縮されたメタリック印刷またはコーティング液の生産は、電子装置の調製を低コストで可能にできるので大変興味深い。
【0004】
メタリック印刷またはコーティング液は、一般に金属ナノ粒子および分散媒を含んでなる金属ナノ粒子分散物(metallic nanoparticle dispersion)である。そのような金属ナノ粒子分散物は、印刷またはコーティング液として直接用いることができる。しかしながら、得られるメタリック印刷またはコーティング液の特性を最適化するために、追加の成分を金属ナノ粒子分散物に加えることが多い。
【0005】
特許文献1(アグファ ゲヴエルト:Agfa Gevaert)は、特定の分散媒、例えば2-ピロリドンを含み、高分子分散剤を使用せずにより安定な分散物を生じる金属ナノ粒子分散物、例えば銀インキジェットインキを開示する。
【0006】
典型的には、基材上にメタリック印刷またはコーティング液を適用した後、硬化工程とも呼ばれる焼結工程が高温で行われ、適用されたパターンまたは層に導電性の誘導/増強が行われる。
【0007】
メタリック印刷またはコーティング液の有機成分、例えば高分子分散剤は焼結効率を低下させ、すなわち適用されたパターンまたは層の導電率を低下させる可能性がある。この理由で、そのような有機成分を分解するためにより高い焼結温度およびより長い焼結時間が多くの場合に必要である。
【0008】
高温に耐えない基材では高温焼結は不可能である。その理由からそのような基材上に高度に導電性のパターンを調製することは難しいことが多い。
【0009】
特許文献2(アグファ ゲヴエルト)は、銀ナノ粒子、液体担体および特定の分散物安定化化合物を含んでなる金属ナノ粒子分散物を開示する。
【0010】
特許文献3(TEコネクティビティ社:TE Connectivity Corp)は、印刷した銀インキの乾燥/アニーリング後に湿度処理(humidity treatment)が行われる基材上の導電性銀パターンの調製法を開示する。湿度処理は乾燥/アニーリング工程を低温で行えるようにする。しかしこの「2段階」焼結工程は、方法に追加の複雑さを導入する。
【0011】
このように高い焼結温度に耐えない基材上に高度に導電性の銀パターンを調製するための簡素化された方法の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2671927(A)号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3037161(A)号明細書
【特許文献3】国際公開第2017/139641号パンフレット
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、様々な基材上で高い導電性、十分な接着および良好な解像度を有する導電性銀パターンの信頼性のある調製法を提供することである。
【0014】
この目的は、請求項1に定義された方法により実現される。
【0015】
本発明のさらなる利点および態様は、以下の記載および従属請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用する場合、高分子支持体および箔という用語は、自立性のポリマーに基づくシートを意味し、それは1もしくは複数の接着層、例えば下塗り層を伴う場合がある。支持体および箔は通常、押出法で製造される。
【0017】
本明細書で使用する場合、層という用語は自立性(self-supporting)ではないと考えられ、(高分子)支持体または箔の上にそれをコーティングまたは噴霧することにより製造される。
【0018】
PETはポリエチレンテレフタレートの略語である。
【0019】
アルキルという用語は、アルキル基中の炭素原子のそれぞれの数に可能なすべての変形、すなわちメチル、エチル、3個の炭素原子に関して:n-プロピルおよびイソプロピル;4個の炭素原子に関して:n-ブチル、イソブチルおよび第3級-ブチル;5個の炭素原子に関して:n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチルプロピルおよび2-メチル-ブチル等を意味する。
【0020】
特段の定めがない場合、置換もしくは非置換アルキル基は、好ましくはC1~C6-アルキル基である
【0021】
特段の定めがない場合、置換もしくは非置換アルケニル基は、好ましくはC2~C6-アルケニル基である。
【0022】
特段の定めがない場合、置換もしくは非置換アルキニル基は、好ましくはC2~C6-アルキニル基である。
【0023】
特段の定めがない場合、置換もしくは非置換アルカリール基は、好ましくは1、2、3個またはそれより多いC1~C6-アルキル基を含むフェニルまたはナフチル基である。
【0024】
特段の定めがない場合、置換もしくは非置換アラルキル基は、1個のアリール基、
好ましくはフェニル基またはナフチル基を含むC1~C6-アルキル基である。
【0025】
特段の定めがない場合、置換もしくは非置換アリール基は、好ましくは置換もしくは非置換フェニル基またはナフチル基である。
【0026】
環式基は少なくとも1個の環構造を含み、そして単環式または1個以上の一緒に融合した環を意味する多環式基の場合がある。
【0027】
複素環式基は、その環(1もしくは複数)の員として少なくとも2種類の元素の原子を有する環式基である。複素環式基の対立概念は同素環式基であり、その環構造は炭素のみから作られている。特段の定めがない場合、置換もしくは非置換複素環式基は、好ましくは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子またはそれらの組み合わせから選択される1、2、3または4個のヘテロ原子により置換された好ましくは5員環または6員環である。
【0028】
脂環式基は、環原子が炭素原子からなる非芳香族同素環式基である。
【0029】
ヘテロアリール基という用語は、環構造中に炭素原子ならびに窒素、酸素、セレンおよび硫黄から独立して選択される1もしくは複数のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子を含んでなる単環式または多環式芳香環を意味する。ヘテロアリール基の好適な例にはピリジニル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジル、トリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、(1,2,3,)-および(1,2,4)-トリアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリルおよびオキサゾリルが含まれるが、これらに限られない。ヘテロアリール基は非置換であるか、または1、2個もしくはそれより多い適した置換基で置換されることができる。好ましくはヘテロアリール基は単環式環であり、ここで環は1~5個の炭素原子および1~4個のヘテロ原子を含んでなる。
【0030】
例えば置換されたアルキル基における置換されたという用語は、アルキル基が通常そのような基中に存在する原子、すなわち炭素および水素以外の他の原子により置換されることができることを意味する。例えば置換されたアルキル基はハロゲン原子またはチオール基を含むことができる。非置換アルキル基は炭素および水素原子のみを含む。
【0031】
特段の定めがない場合、置換されたアルキル基、置換されたアルケニル基、置換されたアルキニル基、置換されたアラルキル基、置換されたアルカリール基、置換されたアリール基、置換されたヘテロアリール基および置換された複素環式基は、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、1-イソブチル、2-イソブチルおよび第3級-ブチル、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、スルホンアミド、-Cl、-Br、-I、-OH、-SH、-CNおよびNO2からなる群から選択される1個以上の置換基により置換される。
【0032】
導電性パターンの調製法
本発明による基材上に導電性銀パターンを調製する方法は、
―銀インキを基材に適用して銀パターンを形成し;そして
―適用した銀パターンを1段階(one-step)で少なくとも50℃、そして少なくとも50%の相対湿度(RH)で焼結する
工程を含んでなる。
【0033】
1段階焼結法の温度は、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも70℃、最も好ましくは少なくとも80℃である。
【0034】
1段階焼結法は、単工程(single step)焼結法とも呼ばれる。
【0035】
1段階焼結法の相対湿度は、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%である。
本発明による「1段階」焼結工程は、高導電性の銀パターンを比較的低温で形成できるようにする。そのような低温は、例えばポリビニルクロライド(PVC)、ポリカーボネート(PC)、またはポリスチレン(PS)基材のような高温に耐性がない基材の使用を可能にする。国際公開第2017/139641号パンフレットにされている「2段階」焼結工程に比べて、「1段階」焼結工程の利点は、全工程の複雑さが低いこと、およびより高い処理量である。
【0036】
焼結工程
1段階焼結法の温度は、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも70℃、最も好ましくは少なくとも80℃である。
【0037】
1段階焼結法の相対湿度は、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%である。
【0038】
本発明による「1段階」焼結工程は、高導電性の銀パターンを比較的低温で形成できるようにする。そのような低温は、例えばPVC基材のような高温に耐性がない基材の使用を可能にする。
【0039】
言及する1段階焼結工程とは、印刷した銀が焼結工程にかけられる前に乾燥、アニーリング、加熱のような追加処理に供されないことを意味する。
【0040】
任意の乾燥工程は、1段階焼結工程の後に行うことができる。
【0041】
1段階焼結工程で使用される期間は、1分から200時間の間、好ましくは5分から150時間の間、より好ましくは10分から100時間の間、最も好ましくは30分から50時間の間である。
【0042】
1段階焼結工程は、相対湿度の制御を有するオーブン中で行われることが好ましい。例えば所定の温度ならびに正確な相対湿度値が設定できる場所である。
【0043】
例えば国際公開第2017/139641号パンフレットに開示された「2段階」焼結工程と比べて、「1段階」焼結工程の利点は全行程の複雑さが低いこと、および高い処理量である。
【0044】
銀インキ
銀インキは、銀粒子、好ましくは銀ナノ粒子を含んでなる。
【0045】
銀インキはフレキソ印刷用インキ、オフセットインキ、輪転グラビアインキ、スクリーンインキ、またはインキジェットインキであることができる。
【0046】
銀インキはさらにその特性を至適化するために、液体担体、安定化化合物、結合剤、高分子分散剤および他の添加剤をさらに含んでなることができる。
【0047】
銀粒子
本発明の銀インキは銀粒子、好ましくは銀ナノ粒子を含んでなる。
【0048】
銀ナノ粒子は、透過型電子顕微鏡を用いて測定される150nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満、最も好ましくは30nm未満の平均粒度または平均粒径を有する。
【0049】
インキ中の銀ナノ粒子の量は、好ましくは銀インキの総重量に対して少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも15重量%、特に好ましくは少なくとも20重量%である。
【0050】
銀ナノ粒子は、好ましくは欧州特許出願第2671927(A)号明細書の段落[0044]~[0053]および実施例に開示されている方法により調製される。
【0051】
銀インキは銀フレークまたは銀ナノワイヤーを含んでもよい。
【0052】
分散安定化化合物(Dispersion-stabilizing compound:DSC)
銀インキジェットインキは、好ましくは銀ナノ粒子、液体担体および式I、II、IIIまたはIV
【化1】
式中
Qは置換もしくは非置換の5または6員のヘテロ芳香族環を形成するために必要
な原子を表し;
Mは水素、一価のカチオン性基およびアシル基からなる群から選択され;
R1およびR2は水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アル
ケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、
置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロア
リール基、ヒドロキシル基、チオエーテル、エーテル、エステル、アミド、アミン、
ハロゲン、ケトンおよびアルデヒド基からなる群から独立して選択され;
R1およびR2は5から7員環を形成するために必要な原子を表すことができ;
R3からR5は水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アル
ケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、
置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロア
リール基、ヒドロキシル基、チオール、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、
エーテル、エステル、アミド、アミン、ハロゲン、ケトン、アルデヒド、ニトリル
およびニトロ基からなる群から独立して選択され;
R4およびR5は5から7員環を形成するために必要な原子を表すことができる
による分散安定化化合物(DSC)を含んでなる。
【0053】
分散安定化化合物は好ましくは式I
【化2】
式中
Mは水素、一価のカチオン性基およびアシル基からなる群から選択され;そして
Qは5員のヘテロ芳香族環を形成するために必要な原子を表す
による分散安定化化合物である。
【0054】
式IのMが好ましくは水素である。
【0055】
Qはイミダゾール;ベンズイミダゾール;チアゾール;ベンゾチアゾール;オキサゾール;ベンゾオキサゾール;1,2,3-トリアゾール;1,2,4-トリアゾール;オキサジアゾール;チアジアゾールおよびテトラゾールからなる群から選択される5員のヘテロ芳香族環であることが好ましい。
【0056】
Qはテトラゾールであることがより好ましい。
【0057】
本発明による分散安定化化合物の幾つかの例を表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0058】
分散安定化化合物は、好ましくはN,N-ジブチル-(2,5-ジヒドロ-5-チオキソ-1H-テトラゾール-1-イル-アセトアミド、5-ヘプチル-2-メルカプト-1,3,4-オキサジアゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、5-メチル-1,2,4-トリアゾロ-(1,5-a)ピリミジン-7-オールおよびS-[5-[(エトキシカルボニル)アミノ]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]O-エチルチオカーボネートからなる群から選択される。
【0059】
式I~IVに従う分散安定化化合物は、好ましくは非高分子化合物である。本明細書で用いられる非高分子化合物は、好ましくは1000未満、より好ましくは500未満、最も好ましくは350未満の分子量を有する化合物を意味する。
【0060】
銀インキ中の銀の総重量に対する重量%として表される分散安定化化合物(DSC)の量は、少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.25、より好ましくは少なくとも2.0である。銀インキ中の銀の総重量に対する重量%として表される分散安定化化合物の量は、好ましくは10未満、より好ましくは7.5未満、最も好ましくは5未満である。
【0061】
銀の総重量に対する分散安定化化合物の量が少なすぎると、安定化効果は低すぎる場合があり、一方、分散安定化化合物の量が多すぎると銀インキジェットインキを用いて得られるコーティングまたはパターンの導電率に不利に影響する場合がある。
【0062】
高分子分散剤
銀インキは、高分子分散剤を含有することができる。
【0063】
高分子分散剤は一般に、分子の一部分にいわゆるアンカー基を含有し、それが分散されるべき銀粒子上に吸着する。分子の別の部分には、高分子分散剤は液体賦形剤とも呼ばれる分散媒および最終的な印刷またはコーティング液中に存在するすべての成分と適合性のあるポリマー鎖を有する。
【0064】
高分子分散剤は、典型的にアクリル酸、メタクリル酸、ビニルピロリジノン、ビニルブチラール、酢酸ビニルまたはビニルアルコールモノマーから調製されるホモ-またはコポ
リマーである。
【0065】
欧州特許出願公開第2468827号(A)明細書に開示され、熱重量分析により測定される300℃未満の温度で95重量%分解する高分子分散剤も使用することができる。
【0066】
しかしながら好ましい態様では、金属ナノ粒子分散物は、分散物の総重量に対して5重量%未満の高分子分散剤、より好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の高分子分散剤を含んでなる。特に好ましい態様では、分散物は高分子分散剤を全く含まない。
【0067】
高分子分散剤の存在は、焼結効率に良くない影響を及ぼす可能性がある。
【0068】
液体担体
銀インキは、好ましくは液体担体を含んでなる。
【0069】
液体担体は、好ましくは有機溶媒である。有機溶媒はアルコール、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、カルビトール、セロソルブおよび
高級脂肪酸エステルから選択することができる。
【0070】
適したアルコールにはメタノール、エタノール、プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ブタノール、t-ブタノールを含む。
【0071】
適切な芳香族炭化水素にはトルエンおよびキシレンを含む。
【0072】
適したケトンにはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2,4-ペンタンジオンおよびヘキサ-フルオロアセトンを含む。
【0073】
グリコール、グリコールエーテル、N,N-ジメチル-アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドも使用することができる。
【0074】
金属ナノ粒子分散物の性質を至適化するために有機溶媒の混合物を使用することできる。
【0075】
好適な有機溶媒は高沸点溶媒である。本明細書で言及する高沸点有機溶媒は、水の沸点より高い沸点(>100℃)を有する溶媒である。
【0076】
好適な高沸点溶剤を表2に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0077】
特に好ましい高沸点溶媒は、2-フェノキシ-エタノール、プロピレンカーボネート、プロピレングリコール、n-ブタノール、2-ピロリドンおよびそれらの混合物である。
【0078】
銀インキは、好ましくは銀インキの総重量に基づいて少なくとも25重量%の、より好ましくは少なくとも40重量%の2-フェノキシエタノールを含んでなる。
【0079】
添加剤
印刷特性を最適化するために、ならびにまたそれが用いられる用途に依存して、還元剤、湿潤剤/レベリング剤、ディウェッティング剤(dewetting agent)、レオロジー改質剤、接着剤、粘着剤、保湿剤、噴射剤、硬化剤、殺生物剤または酸化防止剤のような添加剤を前記の銀インキに加えることができる。
【0080】
銀インキは界面活性剤を含んでなることができる。好適な界面活性剤は、両方とも変性ウレアの溶液であるByk(商標)410および411ならびに高分子量ウレア変性中極性ポリアミドの溶液であるByk(登録商標)430である。
【0081】
界面活性剤の量は、銀インキの総量に対して好ましくは0.01重量%から10重量%の間、より好ましくは0.05重量%から5重量%の間、最も好ましくは0.1重量%から0.5重量%の間である。
【0082】
欧州特許出願公開第2821164号(A)明細書に開示されているような少量の無機酸の金属、またはそのような酸を生成することができる化合物を銀インキに加えることが有利となり得る。より高い導電性が、そのような銀インキから形成される層またはパターンで観察された。
【0083】
またより高い導電性は、欧州特許出願公開第3016763号(A)明細書に開示されている式Xによる化合物を含む場合にも得られる。
【化3】
式中、
Xは置換もしくは非置換環の形成に必要な原子を示す。
【0084】
式Xの特に好適な化合物は、アスコルビン酸またはエリソルビン酸誘導体化合物である。
【0085】
基材
基材はガラス、紙または高分子支持体であることができる。
【0086】
本明細書で使用する基材は支持体とも呼ぶ。
【0087】
好適な高分子支持体は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリ塩化ビニル(PVC)系の基材である。
【0088】
前記支持体は、適用する導電性インキジェット、スクリーンまたはフレキソインキの接着、吸収または広がりを改善するために1もしくは複数の層を提供することができる。
【0089】
高分子支持体には、適用する導電性インキジェット、スクリーンまたはフレキソインキの接着を改善するためにいわゆる下塗り層が提供されることが好ましい。そのような下塗り層は一般にビニリデンコポリマー、ポリエステルまたは(メタ)アクリレートに基づく。
【0090】
この目的に有用な下塗り層は当該技術分野では周知であり、そして例えばビニリデンクロライド/アクリロニトリル/アクリル酸ターポリマーまたはビニリデンクロライド/メチルアクリレート/イタコン酸ターポリマーのようなビニリデンクロライドのポリマーを含む。
【0091】
他の好適な下塗り層にはポリエステル-ウレタンコポリマー系の結合剤を含む。より好適な態様では、ポリエステル-ウレタンコポリマーは、好ましくはテレフタル酸およびエチレングリコールおよびヘキサメチレンジイソシアネートに基づくポリエステルセグメントを使用したアイオノマー型のポリエステルウレタンである。適切なポリエステル-ウレタンコポリマーはDIC Europe GmbHからのHydran(商標)APX101Hである。
【0092】
下塗り層の適用は、ハロゲン化銀の写真用フィルム用のポリエステル支持体の製造技術において当該技術分野で周知である。例えばそのような下塗り層の調製は米国特許第3649336号明細書および英国特許第1441591号明細書に開示されている。
【0093】
国際公開第2015/000932号パンフレットに開示されているように、酸生成化合物を支持体上のプライマー層に包含することができる。好適なプライマーは、ビニリデンクロライド、アクリル酸エステルおよびイタコン酸のコポリマーを含んでなる。
【0094】
好適な態様では、下塗り層は0.2μm以下の厚さ、または好ましくは200mg/m2以下を有する。
【0095】
別の好適な支持体は、透明導電性酸化物に基づく支持体である。そのような支持体は一般にガラスまたはポリマー支持体であり、その上に透明導電性酸化物(TCO)の層またはパターンが提供される。そのような導電性酸化物の例は、ITO(インジウムスズ酸化物),ZnO,SnO2 またはZnO:Alのようなドープした酸化物である。
【0096】
特に好適なTCOはITOである。
【0097】
好適な紙系の支持体は、Powercoat HD(商標)紙基材であるアルジョウイングスクリエイティブペーパーズ(Arjowiggins Creative Papers)によるプリンテッドエレクトロニクス用に設計された基材である。
【0098】
多金属層またはパターン、すなわちパターン化された、またはパターン化されていない層のスタックを基材に適用することができる。このように金属層またはパターンを調製する方法で言及する支持体は、事前に適用した金属層またはパターンも包含する。
【0099】
受容層(Receiving layer)
好適な態様では、受容層が基材に適用され、そして次に銀インキが受容層に適用される。
【0100】
そのような好適な方法は:
-基材に受容層を適用し;
-前記の銀インキを受容層の少なくとも一部に適用し、これにより銀パターンを形成し、そして
-銀パターンを焼結する
工程を含んでなる。
【0101】
受容層がコーティングとして基材に適用され、実質的に全基材を覆う。次に銀インキが受容層の少なくとも一部に適用される。
【0102】
しかし受容層は基材上に画像通りに適用することもできる。
【0103】
例えば受容層は第1画像に従い基材上に適用されることができる。次いで銀インキがその第1画像の少なくとも一部に適用される。
【0104】
受容層は改善された接着、解像度および効率的な硬化を確実にするために、銀インキよりもわずかに広く印刷されることが好ましい。
【0105】
これは追加のインキの使用が最少で実現され得る。なぜならばインキジェット装置の高い配置性能により、受容層に必要なパターン(第1画像)は銀パターン(例えば銀回路構成(silver circuitry))を単に「太くする」または「広くする」ことにより作成できるからである。これはデジタルワークフローにおいて極めて容易に達成できる。
【0106】
受容層は好ましくは、インキジェット印刷によりUV硬化型インキジェットインキとして基材に適用される。
【0107】
UV硬化型インキジェットインキは、十分な粗さRzの受容層を得、そして様々な基材上への受容層の十分な接着を実現することが好ましい。得られるRzはインキジェットインキの延展性(spreading property)を調整することにより、またはUV硬化パラメータを調整することにより至適化することができる。
【0108】
UV硬化型インキジェットインキが好適であるが、熱硬化型インキを使用することもでき、そして同様な粗面層を熱硬化パラメータを調整することにより達成することができる。
【0109】
受容層の粗さRzは、好ましくは1から75μmの間であり、好ましくは2μmから60μmの間であり、より好ましくは5から50μmの間である。
【0110】
受容層の粗さRaは、好ましくは0.5から20μmの間であり、より好ましくは1から15μmの間であり、最も好ましくは2から10μmの間である。
【0111】
基材と金属パターンとの間に1から75μmの間の粗さを有する受容層の挿入が、パターンの改善された接着、およびパターンのより良い印刷解像度をもたらすことが観察された。
【0112】
受容層の厚さは好ましくは10から500μmの間、より好ましくは20から350μmの間、最も好ましくは30から250μmの間である。
【0113】
好適な白色受容層、およびそのような白色受容層を調製するための白色UV硬化型インキジェットは、欧州特許出願公開第18171221.7(A)号明細書(08-05-2018出願)に開示されている。
【0114】
銀インキの調製
銀インキの調製は、一般的に撹拌、高剪断混合、超音波処理またはそれらの組み合わせのような均一化方法の使用により金属粒子に液体担体および他の材料を加えることを含んでなる。
【0115】
銀インキが作られる銀粒子は、一般的に銀ナノ粒子のペーストまたは高度に濃縮された分散物である。
【0116】
金属ナノ粒子の好適な調製方法は欧州特許出願公開第2671927(A)号明細書に開示されている。
【0117】
分散安定化化合物のすべてまたは一部を、銀ナノ粒子の調製方法の間に加えるとより良い結果が得られることが観察された。銀ナノ粒子の調製の間に加えられる分散安定化化合物は、銀ナノ粒子へのそれらの吸着の故に、調製方法において1回以上の洗浄工程が行われても、少なくとも部分的に最終的な銀ナノ粒子分散物中に保持されることになる。
【0118】
均一化工程は、最高100℃の高温で行うことができる。好ましい態様では、均一化工程は60℃以下の温度で行われる。
【0119】
インキジェット印刷装置
インキジェット印刷により導電性パターンまたは受容層を作製するために、装置の種々の態様を使用することができる。
【0120】
平台印刷装置において、支持体は平台上に準備される。銀インキジェット液の液滴がプリントヘッドから支持体上に噴射される。
【0121】
プリントヘッドは、動いている支持体(y-方向)を横切って横方向(x-方向)に行ったり来たりスキャンするのが一般的である。そのような二方向印刷はマルチ-パス印刷と呼ばれる。
【0122】
別の好適な印刷方法はいわゆるシングルパス印刷法であり、その方法ではプリントヘッドまたは複数の互い違いのプリントヘッドが支持体の幅全体をカバーする。そのようなシングルパス印刷法では、プリントヘッドは通常静止したままであるが、支持体はプリントヘッドの下を移動する(y-方向)。
【0123】
最大のドット配置精度(dot placement accuracy)を得るために、プリントヘッドは可能な限り支持体の表面近くに置かれる。プリントヘッドと支持体表面との間の距離は、好ましくは3mm未満、より好ましくは2mm未満、最も好ましくは1mm未満である。
【0124】
プリントヘッドと支持体表面との間の距離はドット配置精度に影響する可能性があるので、支持体の厚さを測定し、プリントヘッドと支持体表面との間の距離を支持体の厚さの測定値に基づいて合わせることが有利となり得る。
【0125】
静止プリントヘッドと印刷装置上に取り付けられた支持体表面との間の距離は、例えば支持体の起伏または支持体表面における他の不規則性のために、支持体全体にわたって変動する恐れがある。従って支持体の表面トポグラフィーを測定し、そして測定された表面トポグラフィーの差を、支持体上の硬化性流体の液滴のいわゆる噴射時間(firing
time)を制御するか、またはプリントヘッドと支持体表面の間の距離を調整することにより補償することも有利となり得る。平版印刷支持体の表面トポグラフィーを測定するための測定装置の例は、ISO12635:2008(E)に開示されている。
【0126】
好適な態様では、インキジェット印刷装置は、例えば真空により支持体をいわゆる押さえ込み(hold-down)区域内に押さえ込むために、真空室のような押さえ込み手段を支持体の下に有する。より好適な態様では、支持体下の複数の真空室のような独立して作用する押さえ込み手段により、支持体は支持体に対して押さえ込まれ、複数の真空室は支持体への真空圧を強化するように独立して制御されて1つ以上の押さえ込み区域が支持体上に生ずる。支持体の押さえ込みは、噴射される液滴の配置および位置の精度を強化する。
【0127】
プリントヘッド
UV硬化型インキジェットインキおよび銀インキジェットインキは、インキの小液滴を制御された様式でノズルに通してインキ受容層表面に排出する1もしくは複数のプリントヘッドにより噴射されることができ、この面はプリントヘッド(1もしくは複数)に対して移動している。
【0128】
インキジェット印刷システムのための好ましいプリントヘッドは圧電ヘッドである。圧電インキジェット印刷は、圧電セラミック変換器に電圧が適用されるときのその動きに基づく。電圧の適用は、プリントヘッド中の圧電セラミック変換器の形を変化させて空隙を作り、次いでそれはインキで満たされる。再び電圧が取り除かれると、セラミックはその最初の形に膨張し、プリントヘッドからインキ滴を排出する。しかしながら、本発明に従うインキジェット印刷方法は圧電インキジェット印刷に制限されない。
【0129】
好適なプリントヘッドは、50pL以下、例えば35pL以下または25pL以下の体積を有する液滴を排出する。より大きい体積を有する液滴は、印刷された受容層により高い粗さを生じることが観察された。
【0130】
別の好適なプリントヘッドは、通過流(throughflow)圧電インキジェットプリントヘッドである。通過流圧電インキジェットプリントヘッドは、流れに撹乱効果および悪い液滴配置(drop placement)を引き起こす可能性がある液中の凝集を避けるために、液の連続流がプリントヘッドの液路(liquid channels)を通って循環しているプリントヘッドである。通過流圧電インキジェットプリントヘッドの使用により悪い液滴配置を避けることは支持体上の導電性パターンの質を向上させることができる。そのような通過流プリントヘッドを用いる別の利点は、噴射されるべき硬化可能な流体のより高い粘度限界、流体の組成的変動の範囲を拡げることである。
【0131】
インキジェット印刷ヘッドは通常、移動するインキ受容層表面を横切って横方向に前後を走査する。インキジェット印刷ヘッドは戻って印刷しないことが多い。二方向印刷は高い面積処理量を得るために好ましい。別の好適な印刷法は「シングルパス印刷法(sin
gle pass printing process)」であり、この方法は頁幅のインキジェット印刷ヘッドまたはインキ受容層表面の幅全体を覆う多数のずらして配置されたインキジェット印刷ヘッドを使用することにより行うことができる。シングルパス印刷法では、インキジェット印刷ヘッドは、通常は静止したままであり、そして基材表面がインキジェット印刷ヘッド下を移送される。
【0132】
受容層は、マルチパス印刷法のシングルパスに応用されることができる。マルチパス印刷法には受容層に十分な厚さがあることが好ましくなる。
【0133】
応用
本発明による方法を用いて、高度に導電性の金属層またはパターンを使用することが、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルアクリレート(PMMA)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン―6,6、ポリエステル、ポリビニルクロライド(PVC)またはポリスチレン(PS)のような高温に耐えられない基材上で実現することができる。
【0134】
高い生産性および信頼性を必要とする工業的応用は、本明細書で開発されるAgインキジェットインキの使用から利益を得ることができる。スマートパッケージング用のRFIDアンテナ、臨床現場での診断用センサおよび静電容量式タッチセンサーの作製のような応用。
【0135】
この方法を用いて、高度に導電性のパターンを、一般にPCBの調製で使用されるFR-4基材上に提供することができる。
【実施例】
【0136】
材料
以下の実施例で用いられるすべての材料は、他に特定しなければALDRICHCH MICAL Co.(ベルギー)およびACROS(ベルギー)のような標準的な供給源から容易に入手可能であった。用いた水は脱イオン水であった。
【0137】
測定法
銀コーティングの導電率
4点コリニアプローブ(four-point collinear probe)を用いて銀コーティングの表面抵抗(SER)を測定した。表面もしくはシート抵抗を次式:
SER=(π/ln2)*(V/I)
[式中、
SERはΩ/平方で表される層の表面抵抗であり;
πは約3.14に等しい数学定数であり;
ln2は2の自然対数に等しい数学定数であり、約0.693に等しく;
Vは4点プローブ測定機器の電圧計により測定される電圧であり;
Iは4点プローブ測定機器により測定されるソース電流である]
により算出した。
【0138】
各サンプルに関し、コーティングの異なる位置で6回の測定を行い、そして平均値を算出した。
【0139】
コーティングの銀含有率MAg(g/m2)をWD-XRFにより決定した。
【0140】
次いで次式:
【数1】
[式中、
σ
Agは銀の比導電率(6.3x10
7S/mに等しい)であり、σ
coatはAgコーティングの比導電率であり、そしてρ
Agは銀の密度(1.049gx10
7/m
3)である]を用いて銀のバルク導電率(bulk conductivity)の割合として導電率を計算することにより、コーティングされた層の導電率を決定した。
【0141】
粘度測定
他に提供しない限り、粘度はTAインスツルメント(Instruments)からの例えばDHR-2Rheometer(二重壁リング)のような市販の粘度計を使用して、25℃で1000s-1の剪断速度で測定した。
【実施例1】
【0142】
アグファ ゲヴエルトNVから市販されている銀スクリーンインキSI-P2000は、表3に示す異なる基材上にP150スクリーンメッシュを使用してスクリーン印刷された。
【0143】
LexanTM基材は、すべてテクラ(Tekra)から市販されているポリカーボネート基材である。
【0144】
Makrofol(商標)基材は、すべてコベストロ(Covestro)から
市販されているポリカーボネート基材である。
【0145】
Autostat CT7は、マクデルミド(MacDermid)から市販されているポリエステル基材である。
【0146】
印刷した銀の焼結は、「1段階」または「2段階」工程の両方で行った。
【0147】
「1段階」焼結法では、印刷した銀は表3に示す高温およびまたは相対湿度にかけられる。
【0148】
「2段階」焼結法では、国際公開第2017/139641号パンフレットに開示されているように、第1段階で印刷した銀は低いRHの熱処理にかけられ(乾燥/アニーリングと呼ぶ)、そして次に第2段階で高いRHの熱処理にかけられる。
【0149】
【0150】
表3の結果から、1段階焼結法で得た導電性は2段階焼結法より高い導電性を生じることが明らかである。
【0151】
さらに2段階焼結法を使用することは、印刷した銀パターンの泥割れを生じることが多いが、1段階焼結法を使用した場合にはそのようなことはない。
【実施例2】
【0152】
銀インキジェットインキSI-J20Xは、Ceraprinter(セラドロップ:Ceradropから市販され、そしてコニカミノルタ:Konica Minolta
30pLプリントヘッドKM1024iLHEを備えている)を使用して表4に示す基材に印刷した。
【0153】
Mylar Aは、デュポン(Dupont)から市販されているポリエステル基材である。
【0154】
Powerecoat HDは、アルジョウイングスクリエイティブペーパーズから市販されている高精細パターニング用に設計された紙基材である。
【0155】
印刷した銀インキは、表4に示す条件を使用して「1段階」焼結法にかける。
【表4】
【0156】
表4の結果から、1段階焼結法では低温、例えば85℃での良好な導電性が高い相対湿度、例えば85%だけで得られることが明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に導電性銀パターンを調製する方法であって、
―銀インキを基材に適用して銀パターンを形成し;そして
―適用した銀パターンを、1段階で、少なくとも50℃の温度及び少なくとも50%の相対湿度(RH)で焼結する
工程を含んでなる前記方法。
【請求項2】
温度が少なくとも70℃である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
相対湿度が少なくとも80%である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
相対湿度が少なくとも80%である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
焼結が1分から200時間の間の期間行われる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
期間が30分から50時間の間である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
銀インキが式IからIV
【化1】
式中
Qは置換もしくは非置換の5または6員のヘテロ芳香族環を形成するために必要な原子を表し;
Mは水素、一価のカチオン性基およびアシル基からなる群から選択され;
R1およびR2は水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換アリールまたはヘテロアリール基、ヒドロキシル基、チオエーテル、エーテル、エステル、アミド、アミン、ハロゲン、ケトンおよびアルデヒドからなる群から独立して選択され;
R1およびR2は5から7員環を形成するために必要な原子を表すことができ;
R3からR5は水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換アリールまたはヘテロアリール基、ヒドロキシル基、チオール、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、エーテル、エステル、アミド、アミン、ハロゲン、ケトン、アルデヒド、ニトリルおよびニトロ基からなる群から独立して選択され;
R4およびR5は5から7員環を形成するために必要な原子を表すことができる
に従う化学構造を有する分散安定化化合物(DSC)を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
銀インキが式I
【化2】
式中、
Mは水素、一価のカチオン性基およびアシル基からなる群から選択され;そして
Qは5員のヘテロ芳香族環を形成するために必要な原子を表す
による分散安定化化合物を含んでなる前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
式IのMが水素である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Qがイミダゾール;ベンズイミダゾール;チアゾール;ベンゾチアゾール;オキサゾール;ベンゾオキサゾール;1,2,3-トリアゾール;1,2,4-トリアゾール;オキサジアゾール;チアジアゾールおよびテトラゾールからなる群から選択される5員のヘテロ芳香族環である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
分散安定化化合物がN,N-ジブチル-(2,5-ジヒドロ-5-チオキサ-1H-テトラゾール-1-イル-アセトアミド、5-ヘプチル-2-メルカプト-1,3,4-オキサジアゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、5-メチル-1,2,4-トリアゾロ-(1,5-a)ピリミジン-7-オールおよびS-[5-[(エトキシカルボニル)アミノ]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]O-エチルチオカルボネートからなる群から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項12】
分散安定化化合物(DSC)の量が、インキ中の銀の重量に対して5重量%未満である請求項7に記載の方法。
【請求項13】
銀インキが銀インキジェットインキまたは銀スクリーンインキである請求項1に記載の方法。
【請求項14】
受容層が、銀インキを適用する前に基材に適用される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
銀インキが、2-フェノキシエタノール、プロピレンカーボネート、プロピレングリコール、n-ブタノールおよび2-ピロリドンからなる群から選択される液体担体を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項16】
基材がポリカーボネート、ポリビニルクロライド、ポリスチレンまたはポリエステル系基材である請求項1記載の方法。
【国際調査報告】